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喜多参考人 日夜国政について御活躍くださっている諸
先生方に心から感謝申し上げます。私は、
明治大学政治経済学部教授の
喜多でございます。このたび
参考人として
意見を申し述べさせていただく
機会を与えられたことを大変ありがたく存じております。
それでは、
参考人としての
意見をこれから開陳させていただきます。
私は、今回の改正案に対する
意見として、まず
結論部分から申し上げます。第一は、今回の改正案には、
地方の自治並びに
地方の行
財政の
運営という視点から見て、望ましいものと望ましくないものとが併存している、これが第一です。第二点は、内需拡大、
地方の自立的発展という今日の重大な
政策課題から見て、今回の改正案には大きく考慮すべき余地がある、こういうふうに思います。
しかしながら、こうした問題とする点はありながらも、この改正案は私は容認できると思います。そこで速やかにこの案を、
早期に
展開していただきたい、かように思うわけであります。
では、今申し上げた第一、第二について、その理由あるいはまたそれに対する
対策、これを申し述べたいと思います。
第一に関して、望ましいものということであります。
これは、
地方自治体の自主的
展開に関する
財源措置が実に克明に
措置せられているということです。私は、世界の
地方財政制度の中で、なかんずくこのような
財源補てんに関する仕組み、
我が国は世界にない精緻な仕組みをとっておると思います。そうした中で、今回の
措置は、さらに切り込んだ、非常にきめの細かいところに
展開されておるのでありまして、これはすばらしいものだと思います。
例えば、臨時
財政特例債償還基金を
地方財政計画に計上して
地方債の
措置を講じられているというような点、それから
地方の単独
事業費の拡大、この中で、私がかねがねあったらいいなと思っていたのが出ているのですね。それは、
地域づくりの
推進事業を
拡充させるとか、
都市生活環境整備特別
対策とか、
地方の特定道路
整備事業、あるいはまた土地の開発基金の
拡充、こういったところに非常にきめの細かい
配慮がなされた。これは大変すばらしいことだと思います。さらに、
地域の
福祉対策の
拡充、
国民健康保険財政の
改善、それから国庫
補助負担金の
一般財源化、国庫補助
負担率の暫定
措置に係る
財源措置、それから国保に関する
財源措置、こういうふうに実にきめの細かい
措置をとっているのでありまして、これは大変望ましいものと私は思います。
ところが、次に望ましくないものが出てきます。
それは、現在、
地方の自主的
財源である
地方税収入、この伸びがここで余りない。その上に、
一般財源補てんの
地方交付税が
平成四
年度の法定
総額から八千五百億円
減額されているということ。後にそれは
平成六
年度から十三
年度までに精算する
措置がとられている、こういうことがあります。
しかし、なぜこういう状態が出てくるかという、ここの論点を見ますと、例えば
財政制度
審議会の中で、これは
平成三年十二月二十日でありますが、「
地方財政は、
平成元
年度以降三年連続大幅な
財源余剰となっており、」云々で始まる、こういう声があるわけです。私は、どうもこのことに対応してこのような八千五百億円の
減額というところに結びついたのではないかと思うわけであります。
自治体の
財政運営というのは、昭和六十年代から
補助金一割カットが行われてまいりまして、そしてその結果は、
地方がやろうとする意欲的な部門の勢いを随分そいでおると思います。なかんずく
地方の
投資的経費支出が抑制されて、
事業の
展開というのはどうもいま一歩勢いを失っているような感じがいたします。
それに、もともと、
地方の
財政運営に関しては
健全化考慮が出てきております。御承知のように決算カードには、
財政運営の指針として、現況指標、
運営指標、ストック指標がありまして、それを類似
団体別に比較できるようになり、あなたの
財政状態はどうであるか、こういう形をここで見えるようにしてあるわけです。これは非常に大切なことだと私は思う。つまり、
健全化考慮という形で
地方の
財政運営をするということについては、これはまことに当を得ている指標であるし、やり方だと思います。さりながら、先ほど言いましたように一割カットの余波があり、萎縮させておいて、そこで
健全化考慮というふうになってきたら、
地方の自立的発展という見地から見てまいりますと、これは余り望ましいことではないのじゃないか、こういうことになります。そしてその上で、先ほどのような、
地方は黒字であるという話があります。
さて、
地方の赤字黒字を仕分けする
考え方というのは何かというと、
一定の基準で、例えば、国の
財政においては、
地方の
財政においてはどうであるかという比較をする場合に、
一定の基準で比較するならばよろしい。例えば国の場合について見ると、
歳出と
歳入、足りない、だからここで赤字、そこで国債を出してくる、だから云々という論で始まります。では、同じ論を
地方にしているかというと、違います。
地方はどう見ているかというと、
地方債を含めてその上での話になります。つまり、実質収支で話をとっていきます。そうしますと、同じ基準の上で話は出てこないわけです。まして今日、十八道県の
人口がここでマイナス化され、
市町村全体の六四%が
人口減をしておる、こういう状態であるとしたならば、後にちょっと触れることになるかと思いますが、基準
財政需要額を見積もる場合、非常に
人口というウエートが高いわけです。その高いウエートがここで減ってくる、その減ってきたウエートに立って、つまり先ほど
財政収支の話で押しつけていくということをしたならば、これはダウンスパイラルといって、だんだん
縮小していく。こういうような
地方自治体に対して、それを抜け出して新たな
展開をさせるという
措置というのがここには見られないのではないか、こういうふうに思います。
次に、
地方税の伸びが経済を反映して鈍化していくことは事実であります。したがって、ここでその部分を何とか補てんしてもらおうというのが
一般財源補てんの
地方交付税であるわけです。ところが、予定された額から先ほど申しましたように八千五百億の
減額が行われるということになります。もちろんこれにはいろいろな理由があり、ちょうどそこにはゼロサムの世界が一つあります。あるけれ
ども、私はこの八千五百億の
減額についてはもう少し考慮すべきではなかったか、こういうふうに思います。
それから次に、国庫支出金の
一般財源化、これが出てきております。国庫支出金というのは、例えば三分の二補助
事業があります。そうすると、残りの三分の一は
一般財源から出さなきゃいけない。つまり
地方税か
地方交付税、特に交付
団体でいうと
交付税であります。それからもう一つは起債があるわけです。こうした
動きにならざるを得ない。そうすると、肝心かなめの頼らなきゃならない
一般財源補てんの
交付税が
減額されるということになってきますと、片一方には
自主財源である
地方税が減り、こちらの方が同じような形でここで減るということになったら大変困ることになります。そこでいろいろな手だてが講じられたこと、これは私は大変すばらしいと思います。さりながら、こういう仕組みを常に残すよりも、もう少しここのところを改良すべき余地があるのじゃないかと思います。つまり、国庫支出金というのはいわば指図つきの国庫支出金でありまして、
地方の自主的発展という点から見てまいりますと、やはりこうした部門は
一般財源化するという、今日ここに
展開される
措置はよろしいと思います。
さて、
一般財源化されるならばなぜ
交付税の方にそれが
増額される形で
一般財源化されないのでしょうか、つまりこういう
考え方が一つ必要であるし、もう一つ
一般財源化について言うならば、レーガン大統領のときにアメリカでやりましたブロックグラントがあります。包括的
補助金といいます。つまり、これは今日の体制からいうとちょうど
交付税と国庫支出金の中間の状態であります。
地方の自由度を非常に高めていきます。今日
補助率を変化させるならば、その
補助率の変化に見合った部分をブロック化し、そして
地方の自由度を高めるような
方向をなぜとらないのでしょうか。私は今後の
地方行財政といった場合について見ると、こうした点の
考え方が必要ではないかと思います。
それから次に、第二の点について申し上げます。第二の点と申しますのは、内需拡大、
地方の自立的発展という今日の重大な
政策課題から見てこの改正案はどうだ、こういうことです。
私は現在の
景気の動向から見て、内需拡大のために国・
地方挙げて取り組まなければならないと存じます。したがって、
一般会計には現在
前倒しし、財投、
財政投融資の弾力的な
展開が行われていく、しかもまだ、この前政府の閣僚の方の御発言では、それでも足りなければ補正でやるというような、つまり後期の部門については、こういう御発言がございます。それならば、国と
地方と一体化してやるとするならば、なぜここに
前倒しができるような
措置を講じないのでしょうか。
地方の単独
事業を大きくするということは大変よろしいことです。それならば、それを
前倒しするためには
一般財源が大きな意味合いを持ちます。これを例えば
地方債という形でやるよりも、
地方の自由度を高めていく、その
措置の方が大切ではないかと私は思います。このときに当たってやむを得ない
措置とはいいながら、私はこの
交付税の
減額措置というのはもうちょっと切り込んでおいていただければありがたかったなと思うわけであります。ですから、その点を考えたならば、今後の、つまり現在の
前倒しの次に出てくる新しい補正のときに、今
減額された八千五百億、それの相当分を補正の中で再び復活できる余地を考えるべきではなかろうか、かように思う次第であります。
以上、私はまず最初に
結論部分を申し上げ、さらにその理由を述べ、さらに今後の
展開ということを含めながらも
地方の自治体の、先ほどからお二方の
参考人の申されたように、国と
地方が一体となってこれからの
景気をどうするか、この
対策に当たっていかなければならない。そのためには、在来からあった
機能分担、つまり中央の政府のやることと
地方のやることについて、その
機能分担の中で一番中心的な
役割をとるのは
一般財源補てんのこの
地方交付税だと私は思います。したがって、その
交付税の
あり方について余り大きな変化を与えるようなことではなくて、むしろ
地方側に自主的な
展開ができ、安全でしかも安心して
行政が
展開できるような
措置、これが望ましくなってくるのではないか、私はかように思う次第であります。
以上、私は
参考人として、特に私は国と
地方との
財政関係については随分昔からやっておりますので、そういうことから特に制度的なその内面に関して立ち入ったお話を申し上げた次第でございます。(拍手)