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1992-06-03 第123回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年六月三日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 太田 誠一君    理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君    理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君       赤城 徳彦君    浅野 勝人君       石原 伸晃君    岩村卯一郎君       上草 義輝君    衛藤征士郎君       岡田 克也君    狩野  勝君       河村 建夫君    小林 興起君       古賀 一成君    左藤  恵君       戸塚 進也君    林  大幹君       原田 義昭君    山下 元利君       池田 元久君    岩田 順介君       佐藤 観樹君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    仙谷 由人君       筒井 信隆君    富塚 三夫君       堀  昌雄君    堀込 征雄君       元信  堯君    渡辺 嘉藏君       石田 祝稔君    貝沼 次郎君       正森 成二君    中野 寛成君       阿部 昭吾君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         大蔵政務次官  村井  仁君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         農林水産大臣官         房審議官    今藤 洋海君  委員外出席者         水産庁漁政部長 長良 恭行君         労働省労政局勤         労者福祉部長  廣見 和夫君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ————————————— 委員の異動 六月三日  辞任         補欠選任   江口 一雄君     古賀 一成君   亀井 善之君     上草 義輝君   久野統一郎君     岡田 克也君   関谷 勝嗣君     原田 義昭君   前田  正君     赤城 徳彦君   池田 元久君     岩田 順介君   佐藤 恒晴君     堀込 征雄君   中村 正男君     元信  堯君   早川  勝君     筒井 信隆君   東  祥三君     石田 祝稔君   宮地 正介君     貝沼 次郎君   菅  直人君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     前田  正君   上草 義輝君     亀井 善之君   岡田 克也君     久野統一郎君   古賀 一成君     江口 一雄君   原田 義昭君     関谷 勝嗣君   岩田 順介君     池田 元久君   筒井 信隆君     早川  勝君   堀込 征雄君     佐藤 恒晴君   元信  堯君     中村 正男君   石田 祝稔君     東  祥三君   貝沼 次郎君     宮地 正介君   阿部 昭吾君     菅  直人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融制度及び証券取引制度改革のための関係  法律整備等に関する法律案内閣提出第七三  号      ————◇—————
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩田順介君。
  3. 岩田順介

    岩田委員 今回の金融制度改革の中に、労働金庫問題が基本的な部分で触れられておりますが、その観点から私は質問をさせていただきたい、こういうふうに思っております。  御承知のように、労働金庫昭和二十五年にそのはしりを見ることができますけれども労働者みずからが自助努力労働者のいわゆる福祉事業としての金融事業を行う、これは我が国金融制度のもとでは極めて特異なことではなかったかというふうに思っているわけであります。  近年のこの金融情勢を取り巻く環境というのが大きく変化をしておりまして、しかも、労働金庫だとかさらには共済組織形態金融機関等も例外なくその厳しい状況下の中に立たされておるということが言えるのではないかというふうに思います。しかしながら、この四十年の歴史を持つ労働金庫の使命というのは、ある意味では、ますます期待をされるし、増大をしてきたのではないか、かように私は感じるわけであります。しかし、この一連改正労働金庫機能をどういうふうに変えていくのか、影響していくのか、こういうことも心配をするわけであります。  したがいまして、まずお伺いをしたいのは、労働金庫現状はどういうふうになっているか、その認識を示していただきたいということと、あわせまして今回の金融制度改革の中で労働金庫機能に大きな変化が生じるのではないか、今後労働金庫の果たすべき役割についても御一緒に御答弁を願いたいと思います。
  4. 廣見和夫

    ○廣見説明員 お答えいたします。  労働金庫は、今先生もお話ございましたように、労働金庫法に基づき設立されております協同組織金融機関でございまして、労働組合あるいは消費生活協同組合、そのほか労働者団体が行います福利共済活動中心といたしまして、こういったような活動金融の円滑を図る、それで「労働者経済的地位向上に資する」ということを目的としている金融機関でございます。  こういった労働金庫、現在全国に四十七ございますが、長い歴史の中でそれぞれ業務の積み重ねに努力してこられたわけでございまして、会員数も逐次ふえ、現在会員は二十四万、間接構成員は一千万を超えるという状況になっておりますし、預金残高も逐次増大いたしまして、ことしの三月末現在で七兆五千五百億円というふうになっております。  しかしながら、これまた御指摘のように、金融自由化あるいは他の金融機関との競争が厳しくなってくる、あるいはまた労働組合組織率が低下しているといったような事情を背景にいたしまして、なかなか厳しい局面を迎えているだろうというふうに考えておりますし、また預貸率が低いあるいはまた余裕資金運用が必ずしも効率的に行われていない面がある、また経費率が高いなど、いろいろの問題を抱えておるという状況にございまして、勤労者のための金融機関としてよりよくこの機能を発揮していくためにも、今後一層の自主的経営努力関係者の支援が望まれる状況にあるのではなかろうかというふうに私ども認識しておるところでございます。  こういったような中でこの制度改革が行われますと、労働金庫としては業務範囲拡大等が行われ、そういったようなものを基盤にいたしまして、さらに今申し上げましたような労働者福祉向上に資する金融機関としてますますその機能が十分発揮することが期待されている、そういうふうに私ども考えておるところでございます。
  5. 岩田順介

    岩田委員 ますますこの機能の充実というか期待されている、こういう状況ということを確認するわけであります。  次に、今回労働金庫法改正が出されておりますが、その改正案の中で、労働金庫協会労働金庫法に位置づけるということになっておりますね。「労働金庫業務の健全かつ適切な運営に資するため、会員たる労働金庫指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とする。」こういうふうに規定をされておるわけでありますけれども、御承知のように、業界団体としての労働金庫協会というのは、既に昭和二十六年以来今日に至るまで、単なる運営調整のみならず、個別金庫、卑金の経営面への指導も行ってきているというふうに私は聞いているところであります。  そこで、あえて今回このように労働金庫協会法的根拠を持つものとして法改正をされたということは一体どういうことなのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  6. 廣見和夫

    ○廣見説明員 労働金庫協同組織金融機関ということでございますが、他の協同組織金融機関とは若干異なった特性も持っているかと思います。例えば、労働金庫の役員は原則として代議員の中から選任することとなっているため金融精通者が少ない、あるいはまた全国規模の大きな労働組合の支部、分会が各労働金庫会員になっておりまして、その間接構成員であります労働者が転勤による移転が多いということなどから、各労働金庫間での業務上の一定の提携や業務統一性が求められているといったような特徴がございます。  そういう中で、労働金庫経営につきましては、先ほども触れさせていただきましたように客観的には厳しい環境の中にございまして、いろいろの問題を抱えておられ、より的確な経営が求められているという状況にあるかと存じます。このため、行政指導とはまた別にいたしまして、労働金庫業界内におきます自主的な指導体制が確立されることが望まれるという状況にございます。こういったような状況にかんがみまして、今回の労働金庫法改正におきまして、自己責任原則のもとに労働金庫経営の的確な運営あるいはまた健全性を図る一つ方策といたしまして、全国労働金庫協会設立基盤あるいは業務目的等について法定化しようとするものでございます。
  7. 岩田順介

    岩田委員 労働金庫協会というのは二十六年にできまして、手探りの時代もあっただろうと思いますし暗中模索の時代もあっただろうと思いますけれども、果たしてきた役割というものは極めて大きなものがあったわけでありまして、先ほども申し上げましたように連絡調整、今言われましたようなことについてもやってきたわけですね。  今回この法律の中できちんと位置づけられることになるわけでありますが、これまで自主的に運営されてきた協会法的根拠を持つことになりますと、労働金庫協会組織だとか運営だとかについて、もし指導が不十分であったというようなことになりますと、かなり行政の方から指導責任を問われるのではないかというような懸念というか心配関係者にあることは十分予測されることですね。したがって、例えば労働金庫協会単位金庫に対して指導する、その場合にいろいろな問題があると思いますけれども、仮に何か指導が不十分だったということが起これは、これは協会責任であるという、責任追及といいますか、責任の問題が出てくるのではないか、こういうふうに思うのです。そうあってはならないと思いますけれども、一体この点についてはどういうふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  8. 廣見和夫

    ○廣見説明員 先ほども申し上げさせていただきましたように、労働金庫協会を今回法定化しようとする目的につきましては、行政指導指導として、それとはまた別に労働金庫業界内におきます自主的な指導体制を確立していただく、こういうことを期待したものでございます。したがいまして、私どもといたしますと、こういった法定化によりまして、全国労働金庫協会に対して行政が例えば干渉を強めるというようなことでは決してございませんでして、むしろ自己責任のもとに労働金庫経営を的確に運営していただく、あるいはまた健全な経営の確保に努力していただく、こういう自主的な努力協会中心といたします指導を通して努力していくということを期待しているわけでございます。
  9. 岩田順介

    岩田委員 ぜひこの自主的な運営が保障されるようにお願いをしておきたいと思います。  次に大蔵省にお伺いをしたいと思いますが、いわゆる合転法関係であります。  労働金庫法の六十二条には合併もしくは転換というものについて規定をいたしておりますけれども合転法には、労働金庫は他の金融機関との合併または転換というものが認められていなかったという歴史があります。ところが、今回の改正では労働金庫もこの法律対象になることになるわけであります。  そこで、この法律目的及び今日的な役割についてお伺いをしたいと思いますけれども、この法律を制定した昭和四十三年と今日では金融自由化が大きく進展をして、金融制度そのもの改革しなければならないというふうにこの法律の第一条にも述べておりますけれども、まさに金融機関を取り巻く状況は大きく変わっている。したがって、合併転換法目的も、一つにはそれぞれの金融機関みずからの意思経営路線を幅広く選択することを可能にするという側面、もう一つ経営が悪化した場合に備えた側面、すなわち信用秩序維持、預金保険機構による保険金運用を避けるために他業態合併または転換できる道を開いておく、このようなことが目的にあるのではないかというふうに私は理解をするわけでありますけれども、この点についての大蔵省見解をお聞きしたいと思います。
  10. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまお話がございましたように、今金融をめぐる環境というのは大変大きく変わってきておるということでございまして、特に金融自由化国際化進展する中にありまして、金融機関は今後みずからの責任でその経営路線選択し、それぞれの特性を生かしながら金融環境変化に適応した業務展開を図る必要があろうというふうに考えております。  そういうことで、この合併転換法改正する目的というのは、こういう状況を踏まえながら、長期信用銀行あるいは外国為替銀行及び労働金庫異種金融機関との合併、また異種金融機関への転換の手続を明確にすることによりまして、金融機関経営選択多様化に資するものであるということでございます。  ただ、金融機関合併転換というのはあくまでもおのおの金融機関経営意思に基づいて決定されるべき事柄でございまして、合併転換法改正というのは、経営の悪化した金融機関を他業態金融機関に救済させることを目的としておるものではないということは御理解をいただきたいと思います。
  11. 岩田順介

    岩田委員 ありがとうございました。  さらに大蔵省にお伺いをいたします。昨年の十月二十一日の日経新聞に「金融再編促進法改正」「異業態合併 労金にも道」という見出しで大きな記事が出されておりますけれども、この記事を要約いたしますと、労働金庫全国合併というものは困難である、それから、一方労働金庫経営は将来悪化する可能性もある、こうした場合に備え、他の業態による救済合併信用秩序維持する道をつくる必要があると大蔵省は判断している、このように大蔵省の判断がこの記事の上で示されているわけであります。これにつきましては、一点今大臣の方からも答弁の中にございましたけれども、当然こういう記事を読みますと、労働金庫会員労働金庫自体にも動揺が当時起きたことは事実当然であります。今回合併転換法対象労働金庫を加えることになるわけでありますが、一体どのような理由なのか、もう一度お伺いをしたいと思います。
  12. 土田正顕

    土田政府委員 合併転換法改正目的は、ただいま大蔵大臣から御説明申し上げたとおりでございますが、多少敷衍をいたしますと、この合併転換法規定をしておりますものは、異種業態異種金融機関との合併または異種金融業態への転換ということでございます。それで御案内のように、例えば労働金庫労働金庫同士合併は、先ほど指摘がございましたような労働金庫法六十二条に規定もございますし、それぞれその各業法の中で合併規定を入れておるのが通常でございます。そのような同種金融機関との合併ではなく、他の種類の金融機関との合併につきまして、特別の法律として合併及び転換に関する法律規定を設けておるわけであります。  そこで、昭和四十三年に法律が制定せられましたときには、一般民間金融機関、すなわち普通銀行相互銀行、信用金庫信用協同組合、このグループの中での合併転換に関する規定を設けておったわけでありますけれども、その後さらに、これも御指摘がございましたような全般的な自由化進展というような事情もございまして、このたびはいわば専門金融機関といわば一般民間金融機関との間の合併なり転換についての規定を整備する、こういう改正お願いをしております。それでこの趣旨は、これは大臣から申し上げたとおりでございますが、今後この金融機関がみずからの責任経営路線選択をし、経営上の創意工夫を発揮し、みずからの特性を生かしつつ金融環境変化に応じた業務展開を図ろうとする努力が現在以上に求められる、そういう情勢の中で、そのための対応策と申しますか、選択肢と申しますか、それの一つとしてこの合併転換法の枠組みを整備しておこうというものでございます。このような一般的な観点から、労働金庫についても他業態金融機関と同様に合併転換法対象とすることとしたものでございますが、言うまでもなく、実際の合併転換に際しては、各金融機関経営意思が最優先前提となるということは当然のことでございます。  ただいま、昨年のある新聞記事のことにつきまして言及をいただきましたけれども、この新聞記事にあるように、大蔵省が、いわゆる全国統一に対して難色を示しておるとか、「経営が悪化した労働金庫を他の労働金庫が救済することは難しいと判断している。」とかいうような記事は、その時点の状況説明としてもまた現在の状況説明としても、これはいささか妥当を欠く表現であったんではないか、報道のことでございますからとかくは申しませんが、私どもはそのように考えております。
  13. 岩田順介

    岩田委員 新聞報道は、出まして、その問題のいわゆる関係する省庁の見解を聞きますと、いや、そうではなかったんだ、趣旨は違っていたんだというふうにおっしゃいますけれども、何年か先になると新聞報道のとおりにきちんといったという事例が多いものですから、改めてお聞きをしておきたかったわけであります。  なお、今の御答弁状況はわかりましたけれども、重ねてお伺いをしておきたいと思いますが、合転法第六条三項で、「合併又は転換同種金融機関相互間の合併を妨げることとならないよう配慮しなければならない。」こういうふうに規定をしておるわけでありますが、この規定は、将来いろいろな合併転換というのが形態考えられますけれども同種合併または転換優先させる、こういうふうに理解をするわけでありますけれども、それでよろしいのですかね。
  14. 土田正顕

    土田政府委員 個別の合併または転換の動きにつきましては、あくまでおのおの金融機関経営意思に基づいて決定されるべき事柄であるというふうに私ども考えております。ただ、合併転換法におきましては、ただいま御指摘のような規定がございまして、同種合併の方が異種合併よりも自然であるという見地から、異種合併同種合併を妨げることとならないように配慮する必要がある旨をこの合転法の第六条第三項において定めているものである、そのように私ども理解をしております。
  15. 岩田順介

    岩田委員 次に、金融自由化国際化のもとで金融機関を取り巻く環境というのは非常に厳しいということは御答弁でもありましたけれども、したがって、今後金融機関合併転換というものはさまざまな形態で展開されることが予測されるというふうに思うわけでありますけれども、その際に大事なことは、当事機関、それぞれの金融機関経営意思というものが最優先されていかなければならないだろうというふうにも考えるわけであります。そこで、合併転換の際に信用秩序維持というものなどを口実にした行政意思指導というものが優先して働くことはあってはならない、こういうふうに思うわけでありますけれども、この点についても確認の意味大蔵省より御見解を賜っておきたい、このように思います。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 金融機関合併または転換に際しましては、ただいま岩田委員の方から御指摘がございましたとおり、各金融機関経営意思、これが最優先前提となることは当然でございまして、行政が介入し、また指導する、そういうものではないというふうに考えていることを申し上げたいと存じます。     〔委員長退席持永委員長代理着席
  17. 岩田順介

    岩田委員 ぜひ今の答弁をきっちり遵守をしていただきたいというふうに思うわけであります。  ところで、労働金庫の統合問題について一つだけお伺いをしておきたいと思いますが、先ほど労働省の方からも御答弁がありましたように、四十その金庫が今運営をされているわけでありますけれども労働金庫協会及びその単金の間でも労働金庫の統合問題についてはさまざまな議論が行われてきたであろうというふうに考えます。したがって、先ほどからもお話がありますように、金融情勢考えますと、労働金庫経営的な、経営体力を強めていく、そういった観点からは合併という問題が当然考えられるわけでありますが、この点について行政としては、労働金庫合併問題ですね、全国統合合併の問題についてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  18. 廣見和夫

    ○廣見説明員 今お話のございましたように、確かに労働金庫の側とされましては全国一本化の構想をお持ちになっておられまして、これの問題につきまして私どもともいろいろの話し合いをしてまいったわけでございます。私ども行政の立場といたしますと、こういった労働金庫側の真摯な意図というものを了知いたしまして、いろいろな議論を積み重ねてきたわけでございます。  ただ、現在の四十七労働金庫状況を見ますと、大きな経営上の格差も見られる、あるいはまた各金庫業務運営上改善すべき問題点も多く見られるという状況にございまして、こういったような現状考えてみますと、現段階一気かつ一斉に一本化するということには大変大きなリスクがあるのではなかろうか、そういう意味でこの一気かつ一斉の一本化は労働金庫の問題を解決するための最良の方策であるとの確信を持つことはできない、現段階ではそのように考えているわけでございます。もちろんこういった厳しい状況にございまして、今後とも個々の労働金庫経営体質の強化を図ることが基本となると思いますが、行政といたしましても、こういった金庫経営基盤整備を行う必要があるという視点から、全国労働金庫協会等ともまた協議を続けていくということが必要であろう、このように考えておるところでございます。
  19. 岩田順介

    岩田委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、いわゆる日本の労働金庫みたいな金融制度を有しているという国は先進国でどのような国があるか私はよくは存じませんが、ドイツではあるんではないか。また、ドイツ労働者財産形成等については何十年もかかって営々として積み上げてきておりますね。確かに金融制度状況が厳しい、労働金庫も厳しい、こういうお話がありましたけれども、しかし、ゆとり、豊かさを大事にしていこうというまさに我が国の国是は決まっているわけでありまして、その際、勤労者の生活をどうするかというのは今まさに焦点の問題でもありますね。そういった時期であります。したがって、なお今後にいたしましても、労働省さらには大蔵省労働金庫育成のバックアップを最後に要請を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  20. 持永和見

  21. 堀込征雄

    堀込委員 私は、今回の金融一括法の中で、特に農協法関連中心にお伺いをしてまいります。  最初に、今回の法案にはバックグラウンドとして自由化国際化というものがあり、それに対して一連法改正がなされているわけでありますけれども、一時に、地域金融機関につきましても、地域活性化という観点から金融制度を見直し、他業態に幅広く参入できる、こういう方途を目指しているわけでありまして、私はこれはこれでよく理解もできるし、そういう方向であらねばならない、こういうふうに思うわけであります。しかし、その運用をもし誤りますと、弱肉強食の世界といいますか、自由競争の資本の論理といいますか、そういうものが貫かれて、やはり中小金融機関に結果的に後退をもたらすような、そういう事態が生まれるのではないかという点を懸念するわけであります。  そこでまず、大臣政治改革も大変御熱心で、日ごろ敬服をしているわけでありますが、その改革の視点の先にはやはり地方分権とかいろいろな未来の国家像という思いもあるというふうに思うわけであります。そういう意味でも、将来、やはり地域金融機関地域で適切な役割を果たしながらその任務を全うしていくことが大事ではないか、こういうふうに思うわけであります。それから、地域金融機関の中でも、特に農林漁業を中心とした農協の金融機関ども現在貯金量が六十四兆円という額になっていまして、日本の農村地域に大変大きな役割を果たしているわけであります。しかも、各農協なり漁協の経営は大体信用事業にその経営を依存をしている、収益の大体四五%程度が信用事業だという実態もあるわけであります。また、羽田大蔵大臣は農林大臣ども歴任をされ全国農民からも非常に大きく期待をされている方でございますので、そういう点を含めましてこれからの地域金融機関の育成策などの方向につきまして、まず政治改革の思いを含めてお尋ねをしてまいりたいと思います。
  22. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  まず、今政治改革お話がありましたけれども、我々が政治改革というのを議論するときに、どうもお金ということがよく前に出るんですけれども、それだけじゃなくてやはりそれぞれの地域の活力、これを図る、そういったところにだんだん位置づけていきたいというのが一番の基本にありました。その意味で、まさに地方分権あるいは一極集中を排除した地方での活力を生み出すこと、こういったことが一つの大きな目標でございまして、そういった中でやはり地域金融機関が果たしていく役割というのは非常に大きいと思っております。  我々も久しぶりで郷里の方へ帰りますと、五年前、十年前あるいは二十年前と地方の様子が大変異なっているということ、あるいは地方の産業も非常に力をつけてきておるということ、そして地方の人たちも情報がいろいろと入ってくる、しかし本当に自分たちが手にできないというような問題もあろうということでございまして、そういう中にあって、地域金融機関というものは地域にあることを特性にしながら、また地縁性というものなどを大事にしながら、これからも非常に重要な地位を占めていくであろうというふうに思っております。その目的としては地域経済の活性化ですとか個性化、これが一つの重要な課題になっておるところでございますから、その意味で地方金融機関役割というものは一層重大になっていくものであろうというふうに考えます。  こうした観点からの今回の金融制度改革におきましては、地域金融機関が本体で補完的に信託業務を行うことといたしておりますほかに、農業協同組合ですとかあるいは信用組合などの協同組織金融機関につきましては、社債ですとか地方債等の募集の受託業務あるいは国債の窓販及びディーリングの業務、また外国為替業務も大変大きくなってきておりますけれども、こういったものにつきましても法令上認めることといたしております。これらの措置によりまして、地域金融機関というものが地域の利用者ニーズに対するより的確またきめ細かい対応あるいは組合員に対する資金のより円滑な供給、こういうことが可能となりまして、地域の個性ある発展にも十分資するものであろうというふうに私は考えておるところであります。
  23. 堀込征雄

    堀込委員 そういう立場で地域金融機関の育成について御努力を賜りたいと思います。  さて、具体的な改正内容について幾つかお伺いをしてまいります。  農協系統の金融は、今回の法改正で、単協は本体での一部信託業務、それから信連、県連につきましては証券子会社、そして一部は土地信託とか公益信託は本体での参入、それから農林中央金庫につきましては証券・信託子会社設置を認める、こうなっておりますが、具体的な形でこれらの業務にどういう参入の仕方が見込まれますでしょうか。
  24. 今藤洋海

    ○今藤政府委員 今回の法改正におきましては、今先生お話ございましたように、農林中金、信遵、単協それぞれについて信託・証券業務への取り組みができるような規定の整備が行われたわけでございます。これらの金融機関が証券・信託業務に参入するに当たりましては、さらにそれぞれの業法上の認可または免許が必要になるわけでございますが、実際上の参入につきましては、組合員のニーズ等業務遂行の必要性、能力、体制の整備の状況等に応じまして、それぞれの経営判断のもとに順次行われるものと考えておる次第でございます。
  25. 堀込征雄

    堀込委員 次に、証券子会社それから信託銀行の子会社の設立に当たっては大蔵大臣の免許が必要だ、そしてまた本体での信託業務の取り扱いについては行政庁の認可を必要としている、こうなっておるわけであります。この場合の条件につきまして、特に系統金融の場合、具体的にどのようなものを想定をしておるのか。あわせて、子会社が実施できる証券業務あるいは信託業務の範囲についてどういう条件が具体的に付されていくか、この点について大枠御説明をいただきたいと思います。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 土田正顕

    土田政府委員 金融制度調査会の答申におきまして新規参入の適格性について一般的に述べておりますのは、各業態子会社を設立しようとする親会社の経営健全性を確保する観点から、その親会社について各業態別子会社の設立を通じて新規業務へ参入を行うにふさわしい自己資本その他の面における財産的基礎、業務遂行能力などを求めるべきであるというふうにされているところでございます。一般的な議論といたしましては、銀行その他金融機関が証券または信託銀行子会社を保有する場合の審査基準について、この答申の考え方を踏まえて具体的に決定していく方針でございます。  そこで、大きく分けまして信託業務と証券業務とございますので、まず私から信託業務についてさらに立ち入った御説明を申し上げます。  信託銀行子会社の場合でございますが、これは最終的には法制上はすべての業務とすべきであるとされておりまして、これを受けた規定の整備を行っております。ただし、当初の業務範囲につきましては、金融機関相互間の競争条件の公平性の確保などに配慮いたしまして、一定の業務を除外するということで考えております。その除外する業務といたしましては、貸付信託、年金信託などの金銭の信託等の一部及び不動産売買・貸借の媒介に係る業務、これらを除くというようなことであろうと考えております。  ところで、基本的には信託銀行子会社をつくり、そこで信託業務に参入するのがいわば標準的な形態でございますが、そのような子会社をつくるということになりますと、それは人的にも資金的にも相当の準備が必要でありますし、それからまた全国地域によっては、子会社をつくって引き合うだけのニーズがあるのかどうか定かでない、そういうこともございまして、いわば地域活性化観点から、子会社を設立することではなくても他の方法で信託業務に部分的にも参入でき各、そういう方法を組み合わせてあるわけでございます。  他の方法といたしましては二つございまして、一つ地域金融機関が本体で行う信託業務、これは地域の住民等の金融に対するニーズの充足及び地域開発の支援のために必要であるというような観点考えておりまして、具体的には当面、土地信託や公益信託などを予定しております。  また、さらに第三の方法といたしまして、信託銀行その他の既存の信託業者の代理店になるという方法も考えられるという組み合わせでございます。この代理につきましては、これは代理になじまないような、例えば先ほど申しましたような不動産仲介業務などの業務を除きまして、基本的にはすべての業務を認めてもよろしいであろう。ただし、ここで代理ということは、代理に出す方と受ける方と両方の意思、条件が合致する、こういうことが必要でございますから、それがあくまでも基本的な前提でございますけれども業務の範囲としては比較的広く考えてよろしいのではないか。  以上、信託業務についてはそのように考えております。
  27. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、今回の法改正で今答弁ございましたように業務範囲の拡大がなされるわけでありますが、これまで特に農協系統の信用事業につきましては、法律なり政省令なりあるいは運用通達などでさまざまな制約があったわけであります。これが今日まで組合員の高度化あるいは多様化するニーズに十分こたえることができなかった、そういう嫌いがあったわけであります。あるいはまた、安定的な収益確保の機会も阻まれてきたという実態があるわけでありまして、今回の改正で国債の窓販やディーリング、あるいは外為業務だとか債務保証に係る制限の撤廃、有価証券の貸付業務、こういうものが行われるようになったことは私は歓迎すべきことだというふうに思うわけであります。しかし、今回の改正をもってしてもなおかつ金融自由化国際化という情勢の中で対応していくにはまだまだ規制がかなりあるわけであります。今後とも例えば貸出規制をさらに緩和するとか諸規制を緩和するという必要があるというふうに考えますが、その辺はいかがでございましょうか。
  28. 今藤洋海

    ○今藤政府委員 今回の法改正におきましては、農林中金、農協・信連につきまして、系統の組合員等の高度化、多様化いたします金融ニーズに的確にこたえ、より多様で良質な金融商品・サービスの供給を可能とするようにという観点から、信託・証券業務への参入を初めといたしまして、ただいま先生御指摘がございましたように、農協・信連についての外国為替、国債等の窓販、ディーリング、金銭債権の取得、そういった規制の緩和、または農林中金につきましても預金の受け入れなり貸出先に関する規制の緩和が図られたわけでございます。これによりましてかなり他業態と十分競争していけるような基礎的な条件は整備されてきたと思っておるわけでございますが、なお今後の規制緩和につきましては、金融自由化国際化進展、経済社会情勢変化、基本的には組合員のニーズの動向、こういったものを踏まえまして、系統金融機関が有する役割を十分に発揮し、かつ経営健全性が確保できるように、必要に応じまして今後とも適切に対処してまいる所存でございます。
  29. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、問題はこういうふうにいろいろな規制緩和が進む、しかし受ける側の農協側にその体制の確立がどう図られているかという問題があるわけであります。  例えば、一つはトップマネジメントの問題があるわけでありますが、農協の理事さんの選出は、御存じのように各地域から民主的な方法によって選出をされるわけであります。私が見ても大変優秀な方々が選任をされているという実態はあるわけでありますが、しかしどうしても金融畑で三十年も四十年もやってきたというような方々がなるというふうに限っているわけではありません。総合的見方や判断力に秀でていても、あるいは営農関係に非常にすぐれた人であっても、どうしても専門性に欠けるという嫌いはあるわけでありまして、このトップマネジメントの農協における対策をどうするか。  それからもう一つは職員体制の問題でありますが、御存じのように農協は総合事業でありまして、決して金融の職員が生涯金融をやるわけじゃない。購買に行ったり営農に行ったり販売をやったりする。そうすると、どうしても専門性に欠けるというような問題も出るわけでありまして、高度な事業展開に対応する体制をつくる意味で、そういう二つの問題についてどう指導を強化をしていくのか、体制づくりを進めていくのかという点について考え方を説明してください。
  30. 今藤洋海

    ○今藤政府委員 金融自由化進展の中で、農協の業務が高度化、複雑化しておるわけでございますが、お話ございましたように、そうした業務を適正に執行していくための執行体制の強化、さらには内部牽制によります適正な事業運営の確保、こういったことが大変重要なことであると認識しておるわけでございます。このため、今国会において成立させていただきました農協法の改正におきましても、理事会制なり代表理事制の法定化、さらには員外理事枠を四分の一から三分の一に拡大する、監事の業務、会計監査機能の充実といった法律的な措置を講じたわけでございますが、何はさておき、やはり実態面での対応が基本的に重要であるということでございます。  基本的には農協につきましても、全国農協大会で自主的な運動を盛り上げているところでございますけれども経営基盤の確立、人材の適正な養成、こういったことからも農協の合併を進めていって基盤の確立を図っていくということが何より重要だと思いますが、さらにそうしたことの上に立ちまして、学識経験者理事の登用、役員の資質の向上、さらには職員の研修、内部牽制体制の整備、そういうもろもろの執行体制の整備につきまして、今回の農協法の改正を契機としまして、さらに趣旨が徹底されますよう十分指導してまいりたいと考えております。
  31. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひきめ細かい指導を賜りたいというふうに思います。  さて、次に自己資本比率規制の問題でありますけれども、御存じのように今自己資本比率、農協の場合、単協で平均六・三%、信連で三・八%という大変低い実態にあるわけでありまして、これは、農協における自己資本の調達手段が組合員からの出資金、回転出資金あるいは内部留保に限定をされているという状況があるわけであります。他の金融機関におきましては、時価発行の増資だとか転換社債だとか優先株、いろいろな方法があるわけであります。その調達コストも相対的に低いという現実があるわけでありまして、これが今後の農協金融の非常に大きな問題になるのではないか。これはやはり何らかの対応策が必要だというふうに考えますが、この点。  それから金庫の問題につきましては、例えば金制調の報告でも、連合会等については協同組織性との関係に配慮しつつ優先出資制度の検討を進めるべきであるというふうに指摘がされているわけであります。この問題を具体的にどういうふうに進めるのかという点も大事な点だろうというふうに思うわけでありますが、この点の考え方はいかがですか。
  32. 今藤洋海

    ○今藤政府委員 ただいまお話のございました自己資本の充実、これは、金融機関にとりまして自己資本は資産面に損失が生じた場合の最終的な支払い原資でございますし、貯金者保護のための最終的な担保であるということから、私どもといたしましても、銀行等と同様に、昭和六十二年通達によりまして、農協については総資産の六%以上、信連については四%以上とするように指導を行ってきたわけでございます。こうした中で、金融自由化進展に伴い、経営健全性を確保する観点から、今回の法改正におきましても、ほかの業態と同様に農協・信連につきまして自己資本比率の基準に関する規定法律上定めることとしたところでございます。  農協・信連の自己資本の充実につきましては、今後とも出資の増強等に努めますとともに、内部留保につきましては、ただいま先生お話ございましたように、組合員への還元という点もございますが、そういうことにも配慮はしつつ、内部留保を充実していくというようなことによりまして、組合員の理解を得ながら、基本的に自己資本の充実を図っていかなきゃいかぬと考えておるところでございます。また、農林中央金庫につきましては、現在系統三段階のトータルという形で自己資本比率は九%を超えておるわけでございますが、中金自身につきましては、国際業務等も行っておる中で、自己資本の充実が十分でないということでございます。お話ございましたように、本年一月の金融制度調査会報告におきましては、協同組織金融機関の自己資本の充実について、「協同組織性との関係に配慮しつつ、優先出資制度の検討が進められるべきである。」ということがされておるわけでございます。今後専門家の意見も聞きながら、実務面、法制面の検討を早急に進めてまいりたいと考えております。
  33. 堀込征雄

    堀込委員 早急に対応いただきたいと思います。  次に、公衆向けの経営開示、ディスクロージャーの問題でありますが、今度農協法でこれが盛り込まれたわけであります。ところが、農協の事業は御存じのように総合事業でございますから、金融、共済、販売、購買、いろいろな事業を総合して決算書をつくる、こういうことになっているわけであります。そうなりますと、信用事業だけではないわけでありますが、具体的にこのディスクロージャーの対象になる事項、具体的開示の条件といいますか、対象ですね、これはどういうふうになるのでございましょうか。
  34. 今藤洋海

    ○今藤政府委員 農協系統金融機関につきましては、これまで協同組合組織であるといったようなこともありまして、ディスクロージャーの規定が置いてなかったわけでございますが、最近のこうした業務の拡大に伴いまして、構成員以外の利用者との取引も増加しておるわけでございます。したがいまして、ディスクロージャーの必要性が高まっておりますので、今回法改正の中で規定の整備をしておるわけでございますが、今後こうした金融機関のディスクロージャーの具体的な内容、あり方につきましては、銀行等のディスクロージャーのあり方についての金融制度調査会におきます今後の検討、さらには他の協同組織金融機関の動向も踏まえながら、みずからの判断により積極的に対応することが望まれるところであります。行政といたしましても、適切に指導を行ってまいりたいと考えております。
  35. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、農協系統の信用事業を概括的に見ますと、非常に預金量も順調に伸びているのでありますが、問題点は、やはり貯貸率が非常に低い、それから自己資本比率が低い、それから高度な金融情勢に対応できる自己体制の確立がおくれている、こういう問題点があるわけであります。  今単協段階の資金調達の原価を見ますと大体四・六%、平成二年度ですが、運用利回りが五・五三%、自己資本比率六・三、貯貸率二五・六、こういう実態で、非常に問題をはらんでいるという実態がございます。それから信連の経営状況を見ましても、最近新聞で二、三いろいろな問題点指摘をされておりますが、資金調達原価が非常に上がりまして、平成二年度で六・七一、資金運用利回りが六・七二、利ざやが実に〇・〇一というところまで落ち込んでいるというような実態もございまして、何とかこれは対応策が必要だろう。しかも単協の経営は県連の奨励金で成り立っておるというような面もかなりあるわけでありまして、何らかの対応策が必要かというふうに考えますが、この点、指導方策はお持ちでしょうか。
  36. 今藤洋海

    ○今藤政府委員 金融自由化進展とか株式市場の低迷、こういった中で農協系統の信用事業は大変厳しい経営環境にあるわけでございます。また、お話ございましたように、貯貸率も大変低いといったようなことで、運用の面でも厳しい状況にあるわけでございますが、今回、やはりこうした状況を踏まえまして、金融制度改革の中でも競争条件を整備していただくという法的な制度改正も行っていただくわけでございます。いずれにいたしましても、やはり貯貸率が低いといったことに示されますように、貸し出しを中心としました運用力の強化というのが大変必要だろうと思っております。また、利用者ニーズに対応した金融サービスの充実といったことが必要になるわけでございますが、やはりそうした仕事をやっていきます人材の育成、体制整備、ノウハウの蓄積、こういったことに努める必要がございます。事業の一層の合理化、効率化を図ってまいりまして、今回認められました新たな業務機能を十分活用していくということが必要だろうと思っておるわけでございます。こうした観点に立ちまして、農林水産省としましても系統金融機関経営健全性の確保のための一層の指導を行ってまいりたいと思っております。
  37. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひそういうことで指導強化をいただきたいと思います。とりわけ各種制度資金、特に農業近代化資金などについて非常に公庫資金が細かく入っておるわけでありまして、こういうこともできれば再調整をしていただきまして、農協資金の活国策を大いに拡大をいただきたいということを要望しておきます。  それでは最後に、漁協、信漁連の問題でありますが、漁協はさらに規模が非常に小さい組合が多いわけでありまして、貯金残高も二兆一千億円、貸出金が大体八千億円強というような実態にあるわけであります。規模は小さいけれども零細漁民に大変重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。ところが、自由化国際化の波に一体この規模で対応できるかどうかという懸念もあるわけでありまして、今度の業務規制の緩和策並びにこれからの中小漁協の体制強化策について考え方がありましたら、最後にお尋ねをしたいと思います。
  38. 長良恭行

    ○長良説明員 今回の改正法案におきまして、漁協につきましても信託業務の取り扱いを認める、信漁連につきましてもみずから信託業務を行うほか子会社による信託・証券業務への参入を認める、こういうようなことでお願いしているわけですが、今先生お話がありましたように、金融自由化の急速な進展に加えまして、漁業につきましては国際規制の強化でありますとか資源状態の悪化、こういうことで漁業経営の不振が漁協でありますとか信漁連の経営に影響を及ぼしているという場合がございますし、信用事業を含めまして、漁協を取り巻く状況というのが漁業の状況なり経済状況から厳しくなっているということは御指摘のとおりでございます。  こういうことで、現在漁協系統組織におきましても、全漁連を中心にいたしまして漁協系統事業それから組織の抜本的な見直しという検討を行っておりまして、その中で合併等の組織基盤の強化を最重点課題として取り組んでいるところでございます。  水産庁といたしましても、従来から漁協系統の信用事業の基盤強化の推進のための助成を行ってきたわけでございますが、さらに漁協の合併、信用事業の統合等を強力に推進いたしますとともに、漁協の事業組織のあり方につきまして検討を進め、漁協、信漁連の体質強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  39. 堀込征雄

    堀込委員 地域金融機関地域経済にとって非常に重要な役割を果たしています。特別な対応策を要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  40. 太田誠一

    太田委員長 佐藤観樹君。
  41. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まず羽田大蔵大臣にお伺いをいたしますけれども大臣もそこでずっと長いこと質疑を聞いておられて、かなり本法案については熟知をされたと私は思うわけでございます。それで、あなたが大蔵大臣という立場ではなくて都市銀行の頭取という立場になったときに、前の質問者各位からありましたように、都市銀行が持っている強大な力を企業に発揮しないで、ファイアウォールをつくって、そして例えば役員の配置につきましても、あるいは抱き合わせ販売はもちろんでありますけれども、そういう規制の中で五〇%超の資本を持つ子会社、子供を生んで一体どういうメリットがあるのだろうか。あなたが大臣としてではなくて都市銀行の頭取になったとして、一体今この情勢の中で子会社を、話がややこしくなりますから証券に限りましょう、あなたは頭取となったときにどういうメリットを感じて証券子会社をおつくりになりますか、なりませんか。
  42. 羽田孜

    羽田国務大臣 どうも頭取にはあれでございますけれども、このごろやはり利用者のニーズというものが大変幅広く多様化してきておるということが言えるだろうと思っております。ですから銀行としましても、単に銀行が利益が上がるとかそういうことだけでなくて、銀行本来の業務というもの、これとはもちろん子会社形態ということで変わるわけでありますけれども、しかしそういったニーズに対して、時代の要請といったものに対してこたえる、その意味でそういった子会社を持つということは必要なことであろうというふうに考えております。
  43. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと証券局長にお伺いしておきます。今大臣が言われますような利用者のニーズ、当分の間か当面がはわかりませんが、名前を出してどうかと思いますけれども、例えばさくら証券というものが、さくら銀行の証券子会社のさくら証券が入っていって、一般の顧客が行くようなものを当面とか当分の間とかやるのですか。
  44. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 金融機関がつくります証券子会社の業務範囲につきましては、法律では株式のブローカー業務は当分の間行わないということになっております。したがいまして株式のブローカー、いわゆる個人投資家対象の取次業務というものは行いません。しかし、それ以外の業務につきましては法律的には行えることになっているわけでございまして、証券市場というのは株式だけではなくて債券もあれば投資信託もあるわけでございます。もちろん子会社でございますから、いきなり広範な店舗網を備えるというようなことはコストの関係からしてそう簡単にはいかないと思います。しかし、いずれにしてもそういうことで、将来をにらんだ営業展開というものも考えられますし、あるいは機関投資家というのが非常に成長しておりますから、機関投資家を相手にした営業ということも考えられるわけでございます。また、証券行政の立場からいいますと、やはり問題は発行市場でございますかう、発行市場での競争を促進することによって、金融機関の証券子会社が直接一般の投資家に商品を提供するということもさることながら、発行市場で引受シ団などを組んで、中小証券会社が従来どうしても大手に支配されて余り一般投資家に提供できなかったようなことも考えられるわけでございまして、そういった意味では発行市場の競争促進ということを通じて一般投資家によりバラエティーのある商品が中小証券などを通じて販売されるという可能性も高まってくるというふうに考えるわけでございます。
  45. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 法律で株式のブローカー以外ということはわかっているわけです。ただ、今までの質疑の中では、当面とか当分の間という言葉を使って、一定の業務についての規制をするということを言っているわけで、したがって、大臣が言われますように、そうそう門前市をなすほど大きな子会社ができて、そして利用者がどんどんそこでふえるという形態ではないと思うわけであります。しかも、今まで銀行系は系列なり親密証券というものを持っておつき合いがあるわけですね。そういったおつき合いがあるにもかかわりませず、なおかつ銀行が証券子会社というものをつくっていく積極的なメリットというのはどういうふうにあるのだろうかということが、それはスパンを十年、二十年で見ればそれはそれなりにいろいろなことが言えるでしょうけれども、当面あなた方が、これだけこの法律を早く通せ、早く通せと言う限りは、そんな二十年先あるいは十年先の市場を見ている話ではないと思うのであります。銀行局長、今申しましたように、都市銀行が従来のおつき合いのある系列証券なり親密証券というものを持っておりながら、かつ、業務は極めて限られている中で、メリットを一体どういうところに置くとお考えでございますか。
  46. 土田正顕

    土田政府委員 証券子会社が当初の業務範囲は限られたものであるにいたしましても、いろいろと働き得る余地があるということは証券局長からただいま御説明申し上げたとおりであるというふうに私は考えております。  なお、系列証券会社を持っているではないかという御質問もございますわけですが、系列証券会社というのは、そもそもこれは昭和五十年代であろうと思いますが、国債の大量発行とか時価発行の定着とかいろいろな現象が起こりまして、いよいよ我が国においても本格的な金融の証券化の進展する時代になったというときに、いわば証券業務関係での親密先を開拓するということで、大手の銀行がいわゆる銀行系証券会社というものと提携関係を結ぶに至ったものでございます。確かに、その提携を通じまして、例えば人材の育成とかそれなりの成果は銀行の側から見ましてもあったと思いますけれども、しょせんいわゆる銀行系証券会社と銀行との結びつきの深さというものはまちまちでございますし、いわばこれは御縁のある会社というような意味であろうと思います。  これに対しまして、今度御提案申し上げております中の業態別子会社というのは、まさにこれは子会社でございまして、広い意味での業務の多角化を図り、それからいわば顧客により多様で良質な金融商品やサービスを提供する体制を整える、それで、よってもっていわば信託なり資本市場なりにおける有効かつ適正な競争の促進に資するものであり、これは積極的な理由があるというふうに私ども考えております。
  47. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 たまたま表の一番上にあるものですから、例に出してなにでございますけれども、例えば興銀の場合には、御承知のように新日本なり和光なりという系列の証券会社がありますね。もしこれで興銀が発行市場で企業の債券等を発行するというふうになった場合に、これは恐らく興銀の証券子会社が発行の実務をやる、そして流通は新日本なり和光さんなりの証券会社がやる、こういう形態になってくるのではないだろうかなというふうに思いますが、いかがでございますか。
  48. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今例に挙げられましたケースの場合には、親密証券会社であります新日本証券あるいは和光証券というのもかなりの地位を持っておりますし、発行市場においても、四社ほどではございませんけれども、ある程度の力を持っております。したがいまして、それは会社、発行する発行企業にもよるわけでございますけれども、必ずしもすべてがそういう格好になるとは思いません。ただ、新日本証券なり和光証券がそれほど引受面で力がないような発行企業の場合に、そういう興銀がつくる子会社が発行市場でその力を発揮するということは十分考えられ、それは我々としては、先ほど申し上げましたように発行市場における競争を促進するというメリットがあるというふうに考えているわけでございまして、それを新日本証券なり和光証券が実際に販売するということは十分考えられると思います。
  49. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、ちょっとこれは証券局長に聞いた方がいいと思いますが、いろいろなケースの話でありますからなにでありますけれども、例えば興銀さんが証券子会社をつくったときに、発行市場でみずから発行のお世話をする、それで割を食うのはどこが食いますか。
  50. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 割を食うことがどういうことを意味されるかちょっとはっきりしないのですが、要するに新たな競争者が発行市場に参入をするわけでございますから、それは既存の引き受けに力を持っております大手証券会社との間の競争ということは当然激化するわけでございまして、そういった意味では、既存の大手の証券会社が支配しております発行市場に新規参入が行われ、ある意味では大手証券会社との競争が激化し、場合によっては大手証券会社の今まで得ていた地位がある程度その競争によって揺らぐということは当然考えられると思います。
  51. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、話の前提というのは、その場合に都市銀行が企業に持っております資金供給という面におきます圧倒的な力というものが背景になければ、今までの話は全部成り立たないわけですね。今まで企業が債券を発行する、株を発行するときに、日本の現実の経済界の状況からいったら、それじゃ都市銀行が証券子会社をつくったときに、そこを通さずに一体本当に親密証券なりあるいは系列証券というものと従来のおつき合いになるだろうか。その背景には、企業に対して都市銀行、銀行が融資をしているあるいは役員を送っているという絶対的な力というものがその背景になければ今までの話というのは成り立たないわけでありまして、そこで、私は、今までの質問者からも出ましたように、ファイアウォールというものはそこでしっかりとしなければ、これは結局都市銀行が証券界を席巻すること以外の何物でもない。きょうは細かい話は時間がないのでできませんが、ファイアウォールの話については、今日までいろいろな角度から具体的な例にも触れてまいりました。それを一々挙げるつもりはありませんが、ただ、アメリカの連邦準備制度理事会が二十八にわたりますファイアウォールをつくっておりますね。アメリカの場合には、言うまでもなく持ち株会社といういわば兄弟会社であります。日本の場合には子会社ですから、しかも六十五条があるわけですから、アメリカのこの二十八よりもしっかりしたファイアウォールというものをつくらなければ、これは結局、主に都市銀行の持っております企業に対します圧倒的な力の優位さというものを、そのまま発行市場においてもこれは支配力を強めていくことになると言わざるを得ないと思います。したがって、アメリカのこの連邦準備制度理事会のつくっております二十八のファイアウォールというものは、その上に先ほど申しましたようにアメリカは片や兄弟であり、日本の場合には親子関係でありますから、いわば弱いわけでありますので、そういう意味では六十五条がその上にかかってくるわけでありますから、このアメリカのファイアウォールというものは極めて重要な参考要素にせざるを得ない、またしなければならぬと私は思いますが、いかがでございますか。
  52. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに、御指摘のように私どもも発行市場における競争を促進するということが必要だとはもちろん思うわけでございますけれども、適正な競争でなければならないわけでして、ハンディキャップがつくようなことになるとそれは競争がゆがめられる、あるいは銀行の証券子会社が非常に優位に立つということになってしまうわけでございます。そういった点からいいますと、ファイアウォールというものが非常に重要な役割を果たすということが必要なわけでございます。  アメリカのファイアウォール、二十八項目でございますけれども、これは御存じのようにFRB、つまり銀行を監督している当局がつくったファイアウォールでございます。そういったものを前提にして証券取引審議会でいろいろと議論をされ、我々がといいますか、この証券取引法でつくりますファイアウォールというのは、いわば銀行の健全性という側面ではなくて、市場の健全性あるいは適正な競争の確保というような観点からのファイアウォールでございまして、そういったことからいいまして、二十八項目についていろいろと議論が行われ、それが証券取引審議会の報告書の十一項目にまとめられたわけでございます。  二十八項目、いろいろと細かいのがございますが、その中には今申し上げた銀行の健全性を担保するものもかなり含まれておりますし、あるいは御指摘の、アメリカの場合は兄弟会社でございます、そういう兄弟会社、つまり持ち株会社制度だということでの特有なファイアウォールもございます。逆に、日本の場合には子会社、親子関係でございますから、親子関係に独特なファイアウォールというものも当然必要だというふうに思うわけでございまして、二十八と十一という数字を単純に比較することは、御存じのように二十八が非常に詳細なものでございますので、それを前提にして議論して十一項目にまとめてはおりますけれども、基本的な考え方といたしましては、二十八項目のうち今申し上げたような我が国にといいますか、証券取引法に規定するファイアウォールになじまないものは落とす、しかし日本独特の親子関係、兄弟関係ではなくて親子関係に起因するいろいろな弊害を防止するというものは強化するというような方向で検討する必要があるというふうに思っております。
  53. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、アメリカのように、アメリカだけじゃない、日本だって銀行の健全性を担保するためのファイアウォールというのはつくらなければ、それは今ノンバンクを初め大変な問題になっておるわけですから、市場のファイアウォールだけの問題じゃなくて銀行のファイアウオール、銀行の健全性を担保するためのファイアウォールという概念も当然なければ、これは今も問題になっておりますように、大体本法案の本質的な問題というのは企業に対する大変な影響力、確かに銀行離れということが大分起こってきてはいるけれども、しかしやはり銀行の持っております企業に対する圧倒的な力。これはもう私なんかが関係者に聞けば、先ほどちょっと触れ善したように、では銀行系の証券子会社があるのに、今までおつき合いをしておりました系列証券なりあるいは親密証券なりで発行しようというようなことが現実に起こるか。そんなこと言わなくたって、日本の場合には、暗黙にそれはだんだん銀行系の証券子会社にシフトしていくというのが日本の風土ですよ、これは。ですから、法律でかなりきつくこのことはつくっても、当然それでも網の目を逃れて、銀行が陰に陽にやはり企業に対する影響力を行使すると言わざるを得ないと私は思います。  実は、本当はこの問題もっともっと詰めたいのでありますけれども、時間がありませんからそのことだけを申し上げて、次に移ります。  問題は、一体日本の銀行が海外につくった証券会社、子会社じゃありませんよ、海外につくった証券会社、これが今度は日本に逆上陸をしてきて日本の市場の中で活動するときに、どういうことになるだろうか。国内の証券子会社と、日本の銀行が海外でつくった証券会社が今度逆上陸をしてきた場合の法律の建前はどうなるだろうかという問題であります。  これは、証券局長が五月二十七日に、今の外国証券業者に関する法律ということで、いわゆる外証法では日本がつくった海外での証券会社が日本に上陸してくるということは想定していない、したがってそれが支店をつくるということは考えられないということを言われておるわけでございます。つまり、まあこれは差別用語にならないと思いますが、黒い目の証券会社が日本に上陸をするということについて、証券局長は当委員会で答えられておるわけでございますが、一体外証法のどこで、その支店ができない、どういう理論構成、ロジックにおいて逆上陸はあり得ない。私はこういう法律、私も外証法を読んだ限り、どこを根拠にして証券局長が、日本の銀行が海外につくった証券会社が今度日本に支店をつくるということについて、どの法律に基づいて証券局長が支店はできない、こう言っていらっしゃるのかというのは、条文を読んでみた限りはできない、専門家に聞いてみてもできない、それは法律そのものが想定をしていないからというだけで一体こういったものをやっていいのか。今度の法律の中にも、なるべく日本の銀行なり証券行政というものを透明にしようということで通達等を法律にしているものもあるわけでありますから、透明性の面から申しますと、一体外証法のどういう理論でどういう条項で、証券局長がこの前当委員会で逆上陸はあり得ないんだということを言われたのか、お考えをお伺いをしたいと思います。
  54. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 日本の銀行が海外につくっております証券子会社が日本に上陸してくるという場合の問題でございます。  この上陸してくるという場合に、海外の証券子会社が日本に支店をつくるというような場合は、今御指摘になりました外国証券業者に関する法律、つまり外証法と言っておりますが、この外証法によってその支店ごとに免許を与えるというようなことになるわけでございます。その場合に、この外証法というものは日本の銀行の海外証券子会社が日本に支店をつくるというようなことは想定していないと私が申し上げましたのは、この外証法ができましたときの経緯でございまして、できましたときに、外国の証券業者が日本に支店をつくるということを前提にしてこの立法がなされているわけでございます。したがって全く想定していないということを申し上げたわけでございまして、では法律の中でどうかということは、その法律の条文そのものから見ればそれを明示的に禁止している条文はございません。したがって、あくまでも外証法ができたときの趣旨ということで申し上げているわけでございます。  なお、逆上陸のケースとして支店をつくるという場合ではなくて、さらに海外の証券子会社、つまり日本の銀行の海外の証券子会社が日本にまた子会社をつくるというようなケースも考えられないわけではないわけです。これは外証法ではなくて証取法の世界に入ってくるわけでございまして、それは証取法上どういうふうに評価するかということは検討の対象になるわけでございます。この前の御答弁でも、そういうケースというものも考えられるということを申し上げたわけでございます。  確かに、外証法には明示的には禁止の規定はございませんけれども、私どもの解釈としては、やはり外証法の趣旨からして、そういう外国にある日本の銀行の海外証券子会社が支店の形でやってくるということについては、これは外証法上、その趣旨からして、なかなかそういうものを認めるということは難しいのではないか、想定していないという言い方をしたわけでございます。
  55. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 海外につくる証券会社というのは、大抵一〇〇%だと思うのです。一〇〇%のものが今度日本に支店をつくる。そんなことをするのだったら、日本国内で証券子会社をつくればいいじゃないかということにもなってくるから、私も、必ずしもそういうケースが起こり得るかどうか、同じ黒い目の話でありますから、起こり得るかどうかというのはありますけれども、しかし想定をしていないというだけで果たしていいのかな。  ということは何かといいますと、言うまでもなく、外証法でつくられます外国の証券会社と日本におきます外国の証券会社というのは、日本のように株を持っているわけじゃありませんから、したがって、ファイアウォールが低いわけですね。そうすると、今局長言われましたように、黒い目であろうと、日本に上陸するときには形式上は外証法の枠の中に入るわけでありますから、そうなりますと、実体的には日本の証券会社、しかし、法律的には外証法の中に入る証券会社支店ということになりますと、それによってファイアウォールが違ってくるということになりますと、これはやはりファイアウォールについてはぴちっとしなければいかぬという問題が出てくるわけですね。将来どういうふうになるかわかりませんが、私も法律をつくったことがあるが、やはり法律をつくるときにはあらゆるケースというのは考えていかなければならぬのじゃないだろうか。そこは皆さん方の行政指導という大変な力で、いや、そんなことはもう首をねじ曲げても認めさせませんということで済ませるのかどうか。そういうこと自体が命不透明だということを言われておるわけでありますから、このことはひとつさらに研究しておく必要があると思うのであります。  もう一つ、同じようなケースを申し上げたい。それは、御承知のように、外証法の中に、日本に支店をつくらずに、外国の証券会社が日本で、日本の企業が外債を発行するというときに、例えばニューヨークから来て、そして日本の企業と相談をして、こういう条件でこういうふうに発行しましょうといって協議することだけは、外証法の中で日本に支店を持たなくてもできるという項目がありますね。これは協議のみですね。しかし、調印はニューヨークでやらなければいけません、こういうことになっていますね。  今度そのことを、もう一つは、海外で販売を前提として、国内でいわばシンジケート団に入るというような場合は認められるという、これは外証法の第三条の第二項のただし書きにあるわけでありますけれども、こういうようなケースの場合、もしこれから銀行の証券子会社ができたときに、先ほど申しましたように、圧倒的に企業に対して強い力を持っている。それが、企業が外債を発行する、このときに、実際には日本国内で日本の証券子会社が話し合い、協議だけをしておく、そして形だけは銀行の証券子会社がその企業と外債発行についてニューヨークで調印するということも、今銀行というものの企業に対する大変な影響力を考えますと、先ほど申しましたように、銀行系の証券子会社ができれば、やはり企業というのはお金を借りている、役員を派遣されているということになりますれば、系列証券会社や親密証券なんかよりはそちらに顔を立てていこう、ちょっと条件が悪くたって、それの方が全体丸くおさまるというのが日本の風土ですから、そういうことから申しますと、一体それについても、そういうケース、つまり、実際には日本の国内で日本の企業と銀行系の証券子会社とが話をして、そして協議はするけれども、形だけはニューヨークで調印をするというようなことを防がなければ、これは外証法の、本来青い目の方々のためにつくったこれが悪用されるケースというのは出てくる可能性は私は十分あると思います。これについても、そういうこともいけませんよというファイアウォールというのはちゃんとつくっていかなければいかぬというふうに思いますが、いかがでございますか。
  56. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かにこのファイアウォールにつきましても、我々は外証法におきましても、今回証取法で導入しますファイアウォールと同じものを導入することを予定しております。これは外証法の改正法の中に、証取法を準用しております。ただ、いわゆる純然たる外国の証券会社の支店、いわば青い目でございますけれども、純然たる外国の証券会社の支店の場合には、五〇%の子会社の支店というのではなくて、今度は一〇〇%の海外にある子会社の日本の支店というものも認められることになるわけでございますけれども、そういったものと、国内にあります外国の銀行との関係というものについては、これはファイアウォールをきちっと整備するということにしております。  そういった限りにおきましては、仮に日本の銀行の海外証券子会社が、外証法に基づいて日本に支店を持ってくるというようなことがありましても、同じファイアウォールが適用されますし、あるいはそこは、今御指摘のございましたような点も踏まえて、さらに国内におけるファイアウォールというものをそういう場合には厳しくするというようなことも考える必要があろうかと思います。  いずれにいたしましても、外証法については、今のところ私どもは、先ほど申し上げたように、いわゆる黒い目の支店ができるということを予定していないわけでございまして、それは、銀行が自分自身が国内に一〇〇%子会社がつくれるのに、あえて回りくどい形で逆上陸みたいな形でやってくるかどうかというようなことは、本当にあり得るのかということも考えているわけでございます。  確かに外証法には、国内に支店がない場合に協議をするということが認められておりまして、その協議をした後、調印は海外ですればいいという仕組みになっております。これもすべて、いわゆる純然たる外国の業者の支店ということを前提にしている規定でございます。いわゆる青い目の規定でございまして、そういった点についても、やはり御指摘のような、もし支店の形での逆上陸というような問題が起こってくる場合には、御指摘のような点についても十分また検討をしていく必要があるというふうに考えるわけでございます。
  57. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 あわせて、別の角度から申し上げますと、今度三局指導というものについてこれを見直すということになっていますね。そうしますと、結局今までやってまいりました海外におきます証券の証券子会社が銀行の証券子会社よりも優位というのか、上位に置くという表現がいいのか、それが崩れてくるわけでありますから、そういった意味におきまして、同じように三局指導との関係におきまして、今の日本風内におきます銀行と企業との関係というものが、そのまま銀行の証券子会社と企業との関係になり、それが形だけ外債発行の場合にも外でやる。今までは、証券会社の海外の証券の方が優位だ、こういうことになっておりましたから、まだ幾らか規制できておりましたが、今度三局指導をそういう格好にいたしますと、やはりそれも企業に対する銀行の影響力が海外でそのまま発揮されるということになりかねないわけでありまして、このことについてもファイアウォールというのはぴちっとしていくということが必要であると考えますが、よろしいですね。
  58. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の三局指導というものでございますが、これはそもそもといいますか、もともとは、日本の銀行の海外証券子会社というものが余りまた体制が整備されていないという時期に、日本の企業が海外で資金調達をするということを考えた場合に、もし日本の銀行の海外証券子会社が引受幹事をするということになりますと、どうしてもその体制の問題からして、国内で親銀行が発行会社と接触をするということになるのではないか。それは、六十五条に触れるような引受業務の一部を行うというような危険、おそれがあるということで、そういうものを予防するためにこういう三局指導というものができたわけでございます。  したがいまして、今回、銀行の証券子会社というものが参入という状態になりますと、それから海外の日本の銀行の証券子会社というのも相当実力をつけてきておりますから、三局指導について、これを見直すということは必要だというふうには考えるわけでございますけれども、今申し上げたその三局指導の基本的な趣旨といいますか、つまり、国内において日本の銀行が日本の発行会社に影響力を及ぼして、あるいはそこで引受業務の一部をやるというような、いわゆる六十五条に照らして違法になるような行為を行うということはやはり法律違反になるわけでございますから、それは避けなければならないというわけでございます。したがいまして、親銀行が発行会社である企業とやることはもちろん禁止といいますか、これは六十五条に触れる行為でございます。  それからもう一つは、銀行の証券子会社が発行体とやる場合についても、いろいろとファイアウォールをつくって、少なくとも銀行の影響力が直接発行会社と証券子会社との取引といいますか引き受けの問題に影響を及ぼさないようにというようなことを考えていく必要があるということでございまして、御指摘のように、この三局指導を見直す、あるいは緩和するといたしましても、基本的に、今申し上げたような三局指導の存在意義といいますか、三局指導が予防しようとしていた行為そのものはやはり依然として、銀行としてそういうことを行ってもらっては困るということは何らかの形で確保していくということになろうかと思います。
  59. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その六十五条というのは厳然とあるわけでありますから、今度の改正でそのこと自体を変えるわけじゃないわけでありますが、ただ、国内で事実上銀行の影響力を企業にもたらして、それを形だけ海外でやるということのないようなことは外債発行についてもちゃんとしていかなきゃいかぬ。それは、言うまでもなく六十五条の精神がちゃんと厳然と守られるようにしていかなきゃならぬ、このことはぴちっとしておいていただきたいと思います。  次に、市場の問題でございます。特に、国内の公募市場が空洞化をして、ユーロ市場の方がどんどん大きくなっているという問題でございます。  お手元に、大蔵省につくってもらった過去十年間におきます社債及び株式の年度別の発行状況というものを配ってもらいました。もう一目瞭然で、エクイティー物はこういう状況でありますから、とてもじゃないものです。企業の資金調達というのは普通社債というものが非常な大きなウエートを占めてきている。これはまことに重要な資金調達手段となってきているわけでありますから、一番最近でいえば、国内での平成三年度の数字が二兆四千億ということになっておるわけでございますけれども、海外での普通社債の方がそれよりも多くて三兆八千億円となっている。おととしぐらいからずっとその傾向、つまり国内で発行するより海外で発行する社債の方が多くなっているということであります。これはいろいろな問題があるわけでありますし、しかも国際的に最大の資産大国となると言ってみても、しょせん東京の市場、日本の市場というのはだんだん空洞化していって、海外の方が、特にユーロの方が大変大きくなってきているということは、特にヨーロッパの市場を考えますと、これからロシアの援助だとかあるいはポーランドの援助だとか、あるいはユーゴスラビアの援助だとか、いろいろ、ヨーロッパはヨーロッパなりのそういった資金需要がある中で、日本がそこにどんどん出ていって資金を吸収してしまうということは、これはまことにヨーロッパ市場におきますクラウディングアウトを起こしかねないということで、私は大変問題だと思うわけであります。  きょう、お手元にはそこまで配りませんでしたけれども、例えばOECDの資料を見ましても、日本は海外での発行が一番多いんですよね。ちょっと後で資料を申し上げますけれども、一体これはどういう原因が、理由があると考えておられますか。
  60. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のように、普通社債の発行につきましては海外が非常に多いわけでございます。これは従来から言われていることでございますが、やはり国内市場におきます手数料、受託手数料を初めとする手数料が、海外、特にユーロ市場に比べて非常に割高であるということ、それから、社債の商品性につきましても、ユーロ市場には非常に自由な商品設計ができる、国内市場では商品性が事実上かなり制約をされてきたというような問題、それから、社債が発行できる、いわゆる適債基準というものが、我が国企業が海外で行う場合にも適債基準というのはあるわけでございますが、海外で発行する場合の方が国内に比べて適債基準がやや緩いというような問題、そういったようなことがありまして、海外、特にユーロ市場における我が国の企業の普通社債というものの発行が多くなっているというふうに考えているわけでございまして、今申し上げたような要因をできるだけ緩和するといいますか、解消するように努力をしてきているわけでございまして、商品の多様化も進んでおりますし、あるいは手数料もここ一年ぐらいでかなり急激に下がってきております。商品性も多様化してきているわけでございまして、そういうようなことを背景にして、もちろんエクイティーファイナンスが非常に低迷しているというようなこともありまして、普通社債市場が国内市場も非常に活況になってきているわけでございますけれども、引き続きこの手数料の問題、まずこの手数料の問題は実は受託制度の問題にも絡んでくるわけでございます。そういう受託制度については、現在、商法改正を初めとする社債関係法の改正議論というものを法制審議会を中心にして行っていただいておりますし、あわせて社債の発行限度というものが商法で規定されておりますが、これにつきましても、発行限度というものが外国にはないわけでございますので、撤廃するというような方向で検討を進めているところでございます。
  61. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 通産省の産業構造審議会の産業金融委員会の提言というのが昨年の十一月に出ているので、それを読んでみたわけでありますけれども、一言で言えば、今局長が言われましたように、手数料の見直しをしなきゃならぬという問題があり、それから財務制限条項等の発行条件の弾力化、それから変動利付債の発行など商品性の多様化というようなことが指摘をされておるわけですね。  そこで、この手数料の問題について半ペラに、「日本市場、ユーロ市場での普通社債を発行した場合の手数料の比較」というので、発行額百億円、年限が七年、利率が六%、格付をAA、無担保、無保証ということで大蔵省につくってもらいました。ただ、私もちょっと時間がなかったのでもう少し精査する暇はなかったのでありますが、この数字はユーロの場合の期中の費用が抜けているのじゃないかなという感じがします。引受手数料というのが証券の取り分、それから受託手数料(当初)と受託手数料(期中)が銀行の取り分、それから利払い手数料から元金償還手数料が銀行の取り分ということになって、この数字では余り違いがよくわからないのでありますが、例えば今申しました産構審のこの数字を見ますと受託手数料、特に問題は受託手数料なんですが、八倍になっているというような数字もあったり、また別の専門家にはじいてもらいましたら、簡単に言いますと、今のように同じ条件の発行額でやってみますと、日本の方が〇・二%高い。〇・二%というのは、その数字自体は大したことはないのかと思いますけれども、百億だと二千万で、七年ですと一億四千万ということになるわけです。今局長が言われましたように、この半年間ぐらいの間に確かに下がってはきておるわけでありますが、一つは手数料の問題について、主に受託手数料の方の話でありますからこれは銀行局になるのか、発行市場ということで証券局になるのか知りませんけれども、この問題の改善ということもひとつやらなければいかぬのじゃないか。これだけじゃありませんよ、やらなければいかぬのじゃないだろうかと思いますが、いかがでございますか。
  62. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 お答え申し上げる前に、御請求によって提出したこの資料でございますが、ユーロは、このケースは財務代理人費用ということで、いわゆるフィスカルエージェントでございまして、それ以外のケースでこの受託、ユーロの場合にはトラスティーと呼んでおりますけれども、この受託を置きますと期中費用というのが若干かかります。それは日本に比べれば安いわけでございます。このケースはトラスティーを置かないということで計算しておりますので、非常に少ない金額になっておりますが、トラスティーを置いてもこれの五倍くらいの期中費用がかかるぐらいでございます。  それで、今言われましたように、この手数料の中で特に日本が割高なのは受託手数料、それも期中にかかる、あるいは当初受託あるいは期中費用といろいろあるわけでございますが、合わせた受託手数料がユーロに比べるとかなり高い水準にございます。  それからもう一つ、元利払い手数料というものも、これは銀行だけに入るわけではなくて、元利払いを行います事務取り扱いを行います機関に入るわけでございますが、これもかなり高い水準になっております。  受託手数料につきましては、先ほど申し上げましたように、これは受託制度というものと非常に密接に関連をしておりまして、受託制度というものを本当に、例えば諸外国におけるトラスティー、これは社債発行された後の専ら社債権者保護のための機能に限定されているわけでございますが、そういう機能に限定するということになりますと、当然手数料もそれなりに安くなるということが期待されるわけでございまして、もちろん受託制度を改正しなければ一銭も安くならない上いうわけではなくて、これは我々が努力してかなり下げてきておりますけれども、今後も下げていくようにいろいろと要請をしたいわけですが、基本的には、受託制度というものを見直すということによって、この手数料を適正な水準といいますか、諸外国と遜色のない、並ぶような水準まで下げていくということを期待しているわけでございます。
  63. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今お話があったように、専門家につくってもらいますと、一九九一年三月とユーロとを比べてみますと、先ほど申しましたように〇・一五%、ことしの三月とユーロとを比べてみますと〇・〇五%ということで、差は大分なくなっている。ただし、トラスティーの問題がありますから、これをどうするか。不満なのは、一体、日本の管理とヨーロッパの管理はそんなに違うわけはないのじゃないか、何でそんなにトラスティーが高いのかというような問題がいろいろあって、本当はやらなければいけないのですが、余り時間はありませんし、きょうは省かせていただきます。  もう一つ、ユーロ市場にどんどん流れてしまうという中には、日本の社債市場というのが例えば国内の国債の市場あるいはアメリカの市場に比べて非常に流動性がない、流動性が劣っているというような面、それから、今までは大した量ではなかったけれども、このままのような流通市場ではいずれ壁に突き当たるのではないかという面で、流通市場の基本的な改善をしていかなければいかぬのではないか。これもいろいろ難点があるのですね。小口だとか、いろいろな種類があるとか、いろいろ難点があるのでありますが、このこともやっていかないと、最大の債権国だとか言いながら資金の方はヨーロッパからどんどん取ってくるというのでは日本の市場の空洞化ということは避けられないし、それだけじゃなくて、資金が必要なヨーロッパに先ほど言いましたようなクラウディングアウトを起こさせかねない、金持ちだという割には日本は一体何をやっているのだ、こういうことになっていくわけでありますから、確かに対策は細かいけれども、このこともぴちっとしていかないと、いかに制度改革をやったって市場自体がうまく機能していなければ何にもならぬわけでありますので、その点についてお伺いしたい。その方針を伺っておきたいと思います。
  64. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに、日本の公社債の流通市場を見た場合には、九割以上の売買は国債で占められておりまして、特に普通社債の売買高というのは極めて少ないわけでございます。  この原因はいろいろあるわけでございますが、一つは、一つの発行額が比較的少ないという問題がございます。したがいまして、どうしても市場ができにくい。これに対しては、例えば一回の発行額をふやすとか、数回の発行をまとめて一つの銘柄にできるような、銘柄統合のようなことができるような工夫をする必要があろうかというふうに思うわけでございます。  それから二番目は、価格の公示機能といいますか、流通市場において形成される社債の流通価格の公示機能というものが必ずしも十分でない、一部の大手の機開投資家だけにその情報が渡っているというようなこともあるわけでございます。もちろん、価格公示の対象となっている銘柄数も少なかったというような問題もあるわけでして、これにつきましては、先般、損失補てんの禁止をした法律の具体的な運用としての自主ルールのようなものをつくりまして、そのときに、この社債も含めまして、特に店頭市場における債券の売買についての価格の公示あるいは公示する銘柄をふやすとか、価格を毎日公示するとかいうような改善をしております。それが効果を発揮してくれることを期待しているわけでございます。  それから三番目には、日本の場合には社債のたしか八〇%ぐらいはいわゆる登録債でございまして、登録されている。登録債といいますのは、これは社債等登録法という法律に基づく登録制度でございますが、これ自体が余り流通を予定していないという法律でございます、社債権者保護ということはあるわけでございますが。そこは、この法律改正をしまして、登録制度が流通性の阻害にならないような改善をする必要がある。現在の登録制度というのは非常に厳密でございまして、社債を一つ一つ記番号から同一性を確認するというようなことになっております。そういったような点について、もう少し流通性を考慮に入れたものにしていく、それによって、例えば振替決済制度のようなものにも乗ることができるというようなことが考えられるわけでございます。この社債登録法の改正につきましては、先ほど申し上げました社債関係法の改正議論と並行してやっておりまして、あわせて成案を得たいというふうに思っております。もちろん社債は、実は株式などと違いましてそんなに流通が頻繁に行われるという性格のものではございません。したがいまして、そこにはおのずから限度があるわけでございますが、ただ、今申し上げたように、流通性を阻害しているような要因というものは一つ一つであってもできるだけ早く取り除いていって、流通市場が拡大していくことが必要だというふうに考えております。
  65. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今答弁がありましたように、これをすればという簡単なものじゃないことは私も十分わかっているし、また性格が株などのようなものと違いますし、利幅が極めて薄いものでありますが、そうそう流通というのは、相手を見つけるのが難しい、いろいろな問題があることは私も存じておるわけであります。ただ、国際的に見たときに、最大の債権国といいながら、自分の金は使わないで人の、人のという言い方はよくないかもしれませんが、ユーロ市場にどんどん行って、向こうだって資金需要があるのに、しかもあそこは比較的狭いから、わっと行けばやはり金利が上がるということで迷惑がかかる人もいるわけですから、その視点を絶えず忘れずに、なお一層これは改善策をしてもらいたいと思います。  あわせまして、いわゆるサムライ債、円建て外債の話であります。  日本の市場において非居住者が、青い目と言っていいのかな、非居住者が日本の国内で余り発行——確かに九〇年度はかなり多かったが、九一年度になったらがくっと少なくなっていますよね。一方、今度は非居住者による債券発行というのを見てみますと、国際的にはスイスが一番多くて二百三十二億ドル、これは九〇年、暦年の話でありますが、スイスが一番多くて、二位がアメリカで九十九億ドル、三位が日本で七十九億ドルというように数字が出ております。時間がありませんから途中全部省きますけれども。ところが、ユーロ市場からの資金調達というのは日本がトップで四百三十三億ドル、いわば三百六十四億ドルの取り入れ超過ということになっているわけでして、我が国市場で外国の人が日本の資金というものを取り入れていく、調達をしていくということが一体なぜ低調なのか。このあたりもやはり改善していかないと、日本の国際的な摩擦、資本市場におきます摩擦ということもまた解消していかないのじゃないかということになると思いますが、その点はいかがでございますか。
  66. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 いわゆる非居住者、外国の発行体による日本の市場における資金調達、円建て外債、こう呼んでおりますが、これは確かに御指摘のようにここ二年ほど減少をしております。平成二年、三年とかなり低調になってきているわけでございます。これはやはり基本的には、先ほど申し上げました国内市場と、その反面ユーロ市場ではかなり発行されておりますので、国内市場とユーロ市場との差といいますか、やはり発行コストの問題、商品性の制約の問題等がありまして、どうもユーロ市場の方で円債を発行するというような動きがあるわけでございます。それに加えまして、非居住者の日本における発行の場合の一つの問題は、やはりその発行体に対するリスク判断という問題がございます。特に途上国などの発行体に対するリスク判断というのが、特に機関投資家を中心にしてかなり厳しいというような問題もございます。  いずれにいたしましても、今御指摘がありましたように。せっかくといいますか、日本の証券市場、特に外債市場といいますのほかなり順調に拡大をしてきたわけでございますけれども、今のような事情あるいは起債環境等もありまして、ここのところ少し低調になっております。それに対しては、基本的には国内市場のより一層の規制緩和といいますか、自由化というものを図るということ、あるいはその発行の方法をいろいろ考える、例えば国際機関の場合に、世界銀行でございますが、いろいろな市場で同時に発行するというようなことも試みられております。  いずれにいたしましても、この日本の国内における外国発行体の資金調達ということについても、やはり基本的にはこの規制緩和をしていって自由に使えるような市場にしていく必要があるというふうに考えているわけであります。
  67. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まださまざまな問題もありますけれども、時間ですから終わります。
  68. 太田誠一

    太田委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  69. 太田誠一

    太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日笠勝之君。
  70. 日笠勝之

    ○日笠委員 いよいよまさに金融制度改革法案が大詰めを迎えました。きのう積み残した問題を中心に何点かお伺いいたしますが、その前に一、二、大臣にお伺いしたいのです。  先ほどお手元にお届けしました国税庁長官尾崎護推薦とあります「私たちの税金」、これは毎年大蔵省の方から私たち委員にいただくわけでございます。昨日配付されたようでございますが、昨晩持ち帰って見ましたところ、ここの二百二十九ページ、パートのところでございますが、パートで働いた場合は配偶者控除であるとか配偶者特別控除等が受けられるようになったということで、税の面のいわゆる逆転現象はないということで、これはそのとおりでございます。  それで、二百二十九ページのところにただし書きが三行ほどありますね。「なお、パートの年収が一定額以上となった場合に、夫の健康保険が使えなくなったり、夫に扶養手当が支給されなくなったりすることがありますから、これらの点も注意した方がよいでしょう。」今のパート問題を適切に簡略に述べておると思うのですが、もう少し詳しい方がいいのじゃないかと思うのですね。夫の健康保険が使えないだけじゃなくて、一定額以上、すなわち百二十万円以上になりますと国民年金にも加入しなければいけなくなりますね。そういう点がございますし、今後改訂版をつくるときにはもう少し詳しくその点も書くようにされたらより親切なパンフレットになるのじゃなかろうかと思いますが、大臣いかがですか。
  71. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘の点、まさに考えなければいけない点でございますから、せっかくこういったものを発行するのですから、もう一言つけ加えることぐらいはできるであろうというふうに思っております。
  72. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから、過日、証券取引等監視委員会の制度についての法案は参議院も通過いたしました。今私どもがせっかく通した法案で、新たに監視委員会をつくるということで賛成をしたわけでございますが、国会の会期末も、延長ということがあれば別ですが、今のところ六月二十一日まで。ところが、二十一日が日曜日ですし、二十日は土曜日ですから、実質は六月十九日まで。となると、あと二週間あるかないかなんです。この人事は国会同意人事でございますが、その間に、衆参ともに同意人事として開会中にできるんだろうかどうか。初めての、初代の委員長委員の方でありますから、やはり事前に国会での同意ということが望ましいと私は思いますが、その大事について、今国会中同意人事ができる方向がどうか、またそのような検討を鋭意しているかどうかということをお伺いしたいと思います。
  73. 羽田孜

    羽田国務大臣 この委員会を創設することにつきまして、両議院の御同意を得て七月中に発足させる、そういうことになっております。その意味では、今国会におきまして委員長及び委員の任命につきまして国会の御同意を得られるよう、私どもとしても最善の努力を尽くしていきたいというふうに思います。
  74. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから、法案の審議の前にもう一点最後にお伺いしたいのですが、最近こういう要望が私どものところに多いので御質問を申し上げるわけですけれども、財形貯蓄のことです。財形貯蓄の中には、五百万円まで非課税ということで、住宅型と年金型があるわけですが、これにつきましては、一たん住宅型と決めますと、ほかに転用すると、これは住宅取得のための貯蓄であったということでさかのぼって利子が取られるということにもなります。しかし最近、住宅を購入しようと思って貯蓄しておったのだけれども、土地高騰などでもうあきらめて年金の方に回したいとか、また年金型の財形貯蓄の方も、手ごろな物件が入ったのでこのお金で住宅を買いたいとか、こういうふうなことが昨今多いようなんですね。この際、住宅型、年金型ともどもに、それぞれ五百万円まで非課税という特典があるわけですが、その限度内であれば住宅型の方でも一回だけなら年金型へ、年金型の方でも一回ぐらいであれば住宅型へとチェンジできるというぐらいの緩和は、経済社会情勢が刻々と変化しておる中で、一たん決めたら最後までよというのじゃなくて、せめて途中一回ぐらいならその変更を認める、相互交換できるというぐらいの御配慮があってもいいのじゃないかと私は思いますが、いかがでしょう。
  75. 羽田孜

    羽田国務大臣 財形貯蓄につきましては、勤労者自助努力による貯蓄制度といたしまして大変重要なものであろうと思っておりますし、また勤労者のニーズに沿ったものというふうに考え、今定着しておるというふうに考えております。今御指摘のございました財形年金貯蓄と財移住宅貯蓄、この間で一回ぐらいは相互変更があってもいいじゃないかという御指摘でありますけれども、これまで具体的な要望としては私どもまだ聞いておらないということであります。いずれにしましても、この制度は労働省の所管でもあるということがございますので、本件につきまして、労働省考え方も承ってみたいというふうに考えております。
  76. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、金融制度改革の中身といいましょうか、内容について何点かお伺いいたします。  先ほど佐藤委員でしたか、三局指導のことについて取り上げられました。私もかつてこの金融制度改革法案の審議の中で一度取り上げました。これは口頭通達なんですかね、口頭指導なんですかね。口頭指導とか口頭通達というのは一体どういうふうに関係者には内容を伝えたんでしょうか。具体的なその内容について述べていただきたいと思います。  私の方の手元に、各金融機関に銀行課として五十年八月二十九日「邦銀の海外現地法人の証券引受業務について」という文書があります。恐らくこのとおりに言ったんだと思うんですね。これを見ますと「一、本邦企業の外債発行にあたり、邦銀の現地法人が当該外債の幹事引受会社に参加することとなる場合には、当該邦銀は、本邦証券会社の従来果してきた経験・役割等を十分尊重すると共に、当該引受業務に関し、証券取引法第六十五条の定める規定に違反する事態が生ずることのないよう留意すること。 二、上記の趣旨を徹底するため、目論見書、墓石公告における社名の配列・順序等についても十分配慮すること。」非常に微に入り細に入り、これを口頭でやられたそうですが、それは間違いございませんか。
  77. 土田正顕

    土田政府委員 いわゆる公文書による通達によるものではないというふうに理解しております。これを口頭というか、それ七も文書を示しながら説明したというか、そこは昭和五十年ごろの話でございますのでよくわかりませんが、いわゆる正式の通達というようなものではございません。
  78. 日笠勝之

    ○日笠委員 正式な通達じゃないけれども、ちゃんとそれを聞いた銀行はこれを代々申し送りをしているわけですよ。ですから私の手元にこれがあるわけでして、私が偽造したわけじゃございません。  そういうことで、口頭通達が、五十年八月というと銀行局長は当時何をされておったのか、十六年前ですから恐らく該当者ではないと思うんですが、自分がいわゆる口頭指導した御当人ではないと思うんですが、こういう不明朗な、十六年前のことがわからないような、そんなことが、延々と受けた方の銀行では代々申し送りをしておるわけですね。  そこで、今回の、証取審の本年一月二十八日の報告書によりますと、そのところをきちっと書いてますね。お手元にございますれば三十一ページを見てください。口頭による行政指導原則として廃止し、廃止できないものについては法令化、規則、または廃止、整理統合の方向を踏まえつつ明文化しろと、こうありますが、この三局指導の口頭指導は今回どのような方向で検討をされるんでしょうか。明文化ということでの御答弁お願いします。
  79. 土田正顕

    土田政府委員 私どもの方は金融制度調査会をお預かりしておりますのでその観点から申しますと、本件はいわゆる諸規制、諸慣行の見直しの具体的な項目の一つということでございまして、この辺につきまして昨年の六月に出されました金融制度調査会の答申では「本邦企業の外債発行に当たり、邦銀系証券現地法人は引受主幹事となることができないこと等を内容とする三局指導は、これを撤廃する。」こういう答申をいただいているところでございます。  ただ、基本的方向はこのような答申を尊重するということではありましょうが、その過程において、これは先般来いろいろ証券局長の方から御答弁申し上げておりますけれども、国内社債市場の活性化など、なお考慮すべき事項も残されておりますので、その具体的方法について現在検討を進めているところでございます。
  80. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、この諸規制、諸慣行の一つである三局指導の場合は、口頭通達、口頭指導での行政指導ですから、いずれにしても廃止するか明文化する、このように理解していいですか。
  81. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 証取審報告書を御引用になりましたので、私の方から補足して説明させていただきますと、私の方は口頭通達は原則として廃止するということにしております。ですから問題は、それを明文化して例えば自主規制団体のルールにするとか、あるいは全く廃止してしまうのかということは、まだ検討中でございます。ただ、ここに書いてあります中身の精神といいますか、今お読み上げいただきましたけれども、要するに六十五条に違反するような行為が国内で行われないということ、これは必要なことでございまして、それを担保するための何らかの措置は必要がな、それは一体どういう措置が要るのかなというのを今検討している最中でございます。  いずれにしましても、このもの自体は、口頭通達は原則的に廃止するということの一つでございます。
  82. 日笠勝之

    ○日笠委員 今明文化するということをおっしゃいましたけれども、ファイアウォールの一部だと思うのですね。そういう意味では、運用基準だとかガイドラインをつくるときにはこの点もぜひ明確にするように、これは強く要請をしておきたいと思いますのでないと、先ほども青い目、黒い目が出ましたけれども、明文化しないと片方の目が黒で一方の目が青いというようなことになるわけですね、ブロンドで青い目の人に魂だけは大和魂よというような。日本の口頭通達が海外の方で通用するわけですからね。だから、そういうことがないようにひとつ明確に、基準なら基準をつくるなら、明文化するなら、それはそれで結構だと私は思いますので、要請をしておきたいと思います。  それから、投資顧問会社の損失補てんということについては余り議論をしてきませんでした。が、しかし、投資顧問会社もだんだんと一任勘定等で扱うボリュームも大きくなっておるようでございますし、やはりこれはこれとして損失補てんについて何らかの措置を講じなければならないんではないか、このように思いますが、投資顧問会社の損失補てんについて何か対応がございますか。     〔委員長退席持永委員長代理着席
  83. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先般明らかになりました損失補てんの中には、投資顧問業者みずからが補てんしたものはございません。投資顧問業者というのは、そもそも顧客と証券取引行為をすることが禁止されております。また双方代理になって、お互いの代理となることも禁止されておりますので、そういった限りでは証券取引行為を通じて投資顧問業者がお客に損失補てんをするということはないわけでございます。しかし、例えば投資顧問会社が親証券会社に補てんを要求するというようなことになりますと、これは証取法でこの前禁止していただきました損失補てんに該当することになります。したがいまして、投資顧問業者が損失補てんをする場合といいますのは、例えば現金を直接渡すというように非常に限られた場合になるわけでございますけれども、そういった場合についても、現在検討しておりますのは、投資顧問業法の二十三条は禁止行為が書いてございますが、それに基づく省令で禁止をしたいというふうに考えておりまして、省令に禁止行為を書きますと、それは当然違反いたしますと法律違反効果が出て行政処分の対象になるということになります。
  84. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから、証券子会社の免許基準の具体化、明確化ということがうたわれておるわけです。証取審の本年一月二十八日の報告書です。これは時間がありませんので、一つ一つ詳しく聞きたかったのですが、いわゆる収支条項というものと適格性条項というものと経済条項、この三つを基準に免許付与をしていくということのようでございますが、その中で適格性条項、証取法三十一条ですか、証取審報告では「適格性条項については、その性格に照らし定量化が困難である。」というふうに述べておりまして、しかし「その場合、審査の項目、留意点等について出来る限り明確にすることが適当である。」というふうに言っています。その中で「役員、主要株主等が十分な社会的信用を有し、かつ役職員についてはその経歴等に照らし、免許業務運営に不適切な資質を有する者がいないことこと非常に抽象的なのですが、これは一体何を言わんとしているのでしょうか。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この免許基準の中の社会的信用のところにつきましては、今御指摘のような報告書の表現になっております。  これは、一つは免許制を四十三年に導入いたしましたときにこの社会的信用というのは入ったわけでございますが、そのときの考え方は、例えば公私混同とかあるいは簿外の処理をしていたとかいうような、これは登録制を免許制に切りかえるときですからこういう運用があったわけでございますが、新規に免許をおろす場合に、不適切な資質というのは判断が非常に難しいわけでございますけれども、やはり証券市場の公正さを維持することがどうも期待できないような者というような、これはなかなか具体的に申し上げるのはいかがかと思うわけでございますが、やはり証券市場を利用して不正な行為を行う、あるいは行うようなおそれが非常に強い、これはよく俗に例えば仕手筋とかなんとかいうのが言われておりますし、あるいは暴力団がそういうふうなことをやっているというようなこともあるわけでございますが、基本的にはやはり今申し上げたように証券市場の公正さをどうも維持しないといいますか、それにもとるような行為を行うおそれがあるというようなことで判断していかざるを得ないのではないかというふうに思っております。     〔委員長退席持永委員長代理着席
  86. 日笠勝之

    ○日笠委員 証券子会社の免許を付与するときに、親銀行の健全性、体力が非常に大切である、影響を与えちゃいけないということで、例えばBIS規制の八%をクリアすれば一応健全性確保ということになるのでしょうが、しかしその八%ということが当然最低限の条件にはなると思いますよ、これをクリアしないのに証券子会社に進入するということもあり得ないでしょうから、それが最低限八%クリアをしておったとしても、その親銀行が持っておる株式を含めた八%になるわけですが、親銀行が持つ株式を除いて、例えばBIS規制六%であるとか、こういうふうな基準が設けられるべきではなかろうか、こういうふうにおっしゃる方がいらっしゃいますが、そういうふうなことに対するお考えはいかがですか。
  87. 土田正顕

    土田政府委員 今の御指摘のBIS規制を満たしているかどうかというのは、親会社、例えば証券会社を持つ親の銀行についての審査基準の考え方の一つであろうと思いますが、ただこのBIS規制というのは、いろいろ御説明申し上げておりますように、主たる目的は国際金融市場における銀行の活動が一定の基礎的な条件を満たした者によって行われるべきであることと、それからそういう者によっていろいろな活動が国際金融市場で行われるということが競争条件のいわばすり合わせに資するというような観点から、各国で合同の議論を経て採択されているものでございまして、この主たる目的が国際金融市場の円滑な発展を確保するためということであるというふうに考えますならば、必ずしもこの問題についての唯一絶対的な基準であるというふうにも考えられないわけでございます。その自己資本比率規制の問題も含めて、いわば総合的に財産的基礎を判断することが適切であると考えまして、その場合の審査基準についてなお種々研究の上、具体的に決定していきたいと考えております。
  88. 日笠勝之

    ○日笠委員 もう時間が来ましたので終わりますが、この金融制度改革法案につきましては、今日まで本会議を入れますと七十時間近い議論をしてまいりました。まだまだ不明確な点もありますが、後ほど附帯決議で私たちは担保したいと思っております。ですから、どうぞひとつ衆議院をスムーズに通過して参議院に行っても、国際性、自由化ということに対応できるための法案でありましょうから、速やかにこれが可決されることを心から願って、終わりたいと思います。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  89. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君。
  90. 正森成二

    ○正森委員 銀行などの子会社方式による証券業等への参入については、その弊害防止につき法律で三点ほど規定されております。しかし、参考人質問もございましたが、そこで証券業界の代表や信託業界の代表の意見を見ますと、表向きはこの法案に賛成でありますが、強大な支配力、影響力を持った銀行の参入については、弊害が起こらないようにという弊害防止措置が具体的に定められることを共通して望んでいるようであります。  そこで、特に証券業界について伺いますが、平成三年六月十九日の証取審の報告書において提案された内容がどのように規定されるのか。大蔵省では、聞いておりますところでは、法律規定した以外は省令で、あるいは認可で、あるいは自主ルールで、あるいは業務方法書というような、いろいろな四つぐらいの種類でさまざまな規定を行うというように承知しておりますが、できるだけ具体的に、証取審報告書のどの部分は何で規制するのか、お答え願いたいと思います。     〔委員長退席持永委員長代理着席
  91. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この平成三年六月の証取審報告書では、弊害防止措置として十一項目挙げられております。一般の参入についての弊害防止措置ということで十項目挙げておりまして、あと一項目は銀行の証券子会社による参入についての弊害防止ということでもう一項目追加がされております。  その中で、今回御提出しております法律に明示的に書いてありますのは三項目でございまして、残りの八項目についてはまだその具体的な中身を検討しているわけでございますが、私ども考え方としては、基本的には省令にすべて規定したいという感じでおります。  ただ、その中で一つ問題になりますのは、やはり最後につけ加わっております銀行の子会社の弊害防止措置のところで、親銀行が企業に対し影響力を及ぼし得る特別な地位を有しているということ、その影響力を行使するということを防止するということでございまして、これについてはまず影響力を及ぼし得る特別な地位というようなものをどう具体的に規定をするかという問題がございます。  これは、銀行の場合には御存じのように株式だけを見れば五%しか持てませんので、株式保有だけを見た場合には余り意味がないわけでございます。そうなりますと、人の問題とかあるいは融資の問題とか、いろいろなメルクマールがあろうかと思いますが、いろいろなものを総合的な要素として考えながら、影響力を及ぼし得る特別な地位というものを何らかの形で明らかにしたいというふうに考えておりますが、その中には、どうしても省令で規定するような表現になるかどうかという点は若干まだ詰めておりません。しかし、いずれにいたしましても、その場合でもこういったものについてはできれば協会のルールにする、あるいは免許申請者が申請する際に、みずから業務の方法としてこういうことはやらないというような規定をしてもらうとか、そういうようなことで対応できないのかなという気もしておりますし、基本的にはできるだけ省令に規定する方向で考えているということを申し上げたいと思います。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 正森成二

    ○正森委員 いよいよもう質問も残り少なになりましたので終わらせていただきたいと思いますが、私ども時間の関係で、有価証券の定義の拡大や公募概念の見直しの問題については質問する機会がございませんでした。そこで、残された時間について問題点だけを指摘しておきますので、両局長、答弁は要りません。恐らく時間が尽きると思いますから。  現行の証取法では、有価証券の定義の仕方として株券、社債券等個別の有価証券を列挙する方式になっていると思います。今後出ることが予想される新しい証券化関連商品について、政令で指定されない限り証取法による投資家保護は及ばない仕組みとなっているはずであります。そこで、証取審の先ほど言われました答申では、こうした「個別列挙には限界があり、投資者保護の観点からはこ「これらのものを包摂しうる包括条項を設けることが必要」、こういうように述べてあると思います。  有価証券概念については、アメリカにおいてもイギリスにおいても、包括条項が設けられております。ところが、本改正案においてはこの当然の措置を見送り、引き続き個別列挙方式で対応することになりました。なお、リースやクレジットの債権などの証券化関連商品については、通産省と大蔵省の調整の結果、たしかこれらのうち流通性の高いものは有価証券に政令指定し、証取法の改正を及ぼせるが、流通性の乏しいものについては別途、通産省提出の特定債権譲渡規制法案の規制対象とするということになるようであります。  また本改正案は、これらの証券化関連商品を証券会社のみならず銀行にも取り扱わせるようにしております。これによって、今後いろいろなタイプの証券化関連南昌が出回ることになり、政令で指定されるまでは投資家保護等の規定が及ばず、法律のすき間を縫った新商品が続発するなど、新たなトラブルの発生も予想されるところであります。また、流通性の程度によっては適用法規と監督当局が異なり、同種の商品であっても投資家保護の内容が異なるなどの問題も出てくるおそれがあります。  これらのことは、証券化関連商品の規制をめぐり、業界の利害調整と省庁間の、言葉は悪いですが、縄張り争いが優先され、不公正取引の規制や投資家保護の後回しにされたことを物語るものでもある、こう言えると思います。  また、本改正案では、有価証券の募集の概念を見合わせております。改正案は公募要件を見直すとともに、私募を初めて証取法の枠組みに取り込みましたが、適格機関投資家の範囲をどう定めるのか、転売制限をどうつけるのか、難しい問題が多いわけであります。転売制限に違反した行為の民法上の効果や、損害を受けたときの賠償の相手や要件など、いろいろ聞くべきことはあります。  また、公募市場での資金調達が難しい中堅企業にとって、私募市場の拡大は意義がないことはありませんが、優良企業までが本来公募できるところを私募で行うようになれば、私募市場が公募市場を浸食することになります。銀行も、融資先の企業に私募を一層プロモートする可能性も出てまいります。本来、資本市場は公募市場が中心であるべきであり、それによってこそ価格は公正に形成され、資金が適正に配分され、投資家が保護されるというのが私ども見解であります。  これらの問題について質問したいと思いましたが、今紙が回ってまいりまして、質問時間が尽きたということでございますので、あえて答弁は求めませんが、参議院でこれらの問題も質疑したい。もちろん私が参るわけにはまいりませんが、我が党の参議院議員が伺うことになるであろうということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  93. 太田誠一

    太田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  94. 中川昭一

    ○中川委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕     〔中川委員長代理退席、井奥委員長代理     着席〕     〔井奥委員長代理退席、柳本委員長代理     着席〕     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 太田誠一

    太田委員長 速記を起こして。     —————————————
  96. 太田誠一

    太田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  97. 太田誠一

    太田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  98. 太田誠一

    太田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、井奥貞雄君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩良主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。細谷治通君。
  99. 細谷治通

    ○細谷委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 個人、中小企業、農林漁業者等がその需要に応じた金融商品・サービスの提供を受けられるなど、小口利用者に対するサービスの向上が図られるよう努めるとともに、中小金融機関業務範囲の拡大に引き続き配意すること。  二 一連の証券・金融不祥事により低下した国民の信頼を回復するため、引き続き、金融機関及び証券会社の経営姿勢の是正を促すとともに、仮名取引の防止及び顧客情報の適正管理について、厳正な指導を行うこと。  三 金融機関及び証券会社の業務運営についての経営責任を自覚した自主的な努力を尊重するとともに、銀行法等に基づく金融機関業務及び不良債権を含め財産の状況に関する開示について一層の充実を図ること。また、労働時間短縮についても精力的に取り組むこと。  四 業態別子会社の設立に当たっては、今後の経済情勢、銀行、証券会社等の営業状況等の正常化を見極め、漸進的・段階的に慎重かつ適切に対処すること。  五 銀行による既存の証券会社の買収及び銀行の証券子会社と既存の証券会社の合併に際しては、銀行の証券子会社の株式ブローカー業務が禁止されている趣旨が損なわれることのないよう慎重に対処すること。  六 金融機関及び証券会社の相互参入に伴い発生する可能性のある弊害の防止については、適正な競争促進を旨とする制度改革の意義を損なうことなく、かつ、実効性のある明確な措置を講ずるとともに、政省令の制定については、法律施行後に混乱を生ずることのないよう早急に具体的・的確な内容を規定すること。  七 金融・資本市場における適正な競争を確保するため、免許基準の明確化により新規参入の推進を図るとともに、行政裁量を極力抑制し、諸規制・諸慣行の見直しを速やかに完了すること。また、小口取引等について配慮しつつ株式等売買委託手数料の自由化を推進すること。  八 ノンバンクの融資業務健全性を確保するため、業界団体に対して自主ルールの策定を要請すること。  九 金融機関の関連ノンバンクの管理体制の強化を図り、ノンバンクに対する金融機関の融資業務の適正化を求めるとともに、法改正後、ノンバンクの実効ある実態把握に努め、今後の事態の推移に適切に対応すること。  十 消費者金融に係る多重債務者の急増傾向に対応し、過剰借入れを抑制するため、業界団体に対して自主規制措置の推進を指導すること。 以上であります。  何とぞ御賛成賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  100. 太田誠一

    太田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  101. 太田誠一

    太田委員長 起立多数。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。羽田大蔵大臣
  102. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまの御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     —————————————
  103. 太田誠一

    太田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 太田誠一

    太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  105. 太田誠一

    太田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十九分散会