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1992-06-02 第123回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年六月二日(火曜日)     午前十時七分開議 出席委員   委員長 太田 誠一君    理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君    理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    江口 一雄君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       亀井 善之君    久野統一郎君       小林 興起君    左藤  恵君       坂本 剛二君    戸塚 進也君       林  大幹君    古屋 圭司君       前田  正君    光武  顕君       山下 元利君    池田 元久君       大畠 章宏君    佐藤 観樹君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       仙谷 由人君    早川  勝君       堀  昌雄君    渡辺 嘉藏君       宮地 正介君    正森 成二君       中野 寛成君    菅  直人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         内閣審議官   野村 一成君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         経済企画庁調整         局審議官    柳沢  勝君         経済企画庁総合         計画局長    長瀬 要石君         国土庁大都市圏         整備局長    西谷  剛君         大蔵政務次官  村井  仁君         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省理財局長 寺村 信行君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         中小企業庁計画         部長      桑原 茂樹君         郵政大臣官房人         事部長     谷  公士君         郵政省貯金局長 松野 春樹君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省婦人局長 松原 亘子君  委員外出席者         経済企画庁調整         局財政金融課長 筑紫 勝麿君         労働省労働基準         局監督課長   山中 秀樹君         参  考  人         (日本銀行理事福井 俊彦君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ――――――――――――― 委員の異動 六月二日  辞任         補欠選任   河村 建夫君     坂本 剛二君   関谷 勝嗣君     光武  顕君   池田 元久君     大畠 章宏君   東  祥三君     森本 晃司君 同日  辞任         補欠選任   坂本 剛二君     古屋 圭司君   光武  顕君     関谷 勝嗣君   大畠 章宏君     池田 元久君   森本 晃司君     東  祥三君 同日  辞任         補欠選任   古屋 圭司君     河村 建夫君     ――――――――――――― 六月二日  電波によるたばこ宣伝の廃止に関する請願(岩  田順介紹介)(第三三一八号)  同(関山信之紹介)(第三三六六号)  同(関山信之紹介)(第三四一六号)  同(寺前巖紹介)(第三四一七号)  同(三浦久紹介)(第三四一八号)  同(渡部行雄紹介)(第三四一九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融制度及び証券取引制度改革のための関係  法律整備等に関する法律案内閣提出第七三  号)      ――――◇―――――
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため一本日、参考人として日本銀行理事福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田誠一

    太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 太田誠一

    太田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  5. 大畠章宏

    大畠委員 日本社会党大畠章宏でございます。  政府より提出されました金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案に対し、商工委員としての立場から何点か質問をさせていただきたいと思います。  今回の法案提出は、六年間にわたる金融制度改革審議の結果、世界的な金融自由化国際化流れの中で、国民、すなわち利用者利便性金融業界透明性などを目指し、我が国金融制度の一層の自由化による競争を促進することが必要であり、そのための法案改正であると理解いたします。したがって、国民の、すなわち利用者利便性を第一義とし、国際的に整合性のとれた金融制度及び証券取引制度を構築する必要があります。その一方で、法案改正に伴う国内的影響も十分考慮しなければなりません。そのような観点から、以下質問をさせていただきます。  最初に、最近の中小企業を取り巻く景気動向及び金融動向について、さらに、その対応のための金融対策など基本的なお考えを大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  我が国経済は現在もう調整過程にある、いつも申し上げておることでございますけれども。過去数年間、これは非常に高い伸びで進んでまいりましたストック、これの調整的な動き、これが見られようと思っております。他方、労働需給は依然引き締まり基調で推移しておりまして、また、その中で住宅建設、こういったものには回復の兆しか見える、このように考えております。また在庫調整も、これは全般的にどんどん進んでいるということではございませんけれども分野におきましては進んできておるというものも最近では見えるんじゃなかろうかと思っております。また個人消費の方は、物価が安定しておるということ、あるいは労賃というものが着実な伸びをしておるということから、これを背景にしまして底がたくやはり推移をするものであろうというふうに考えております。  こうした状況に加えまして、例の三月三十一日に緊急経済対策、これを実施いたしましたし、また四月一日の日には公定歩合の〇・七五%の再引き下げ、四回の引き下げが続いたということでございまして、こういった政策の効果というものが着実に私どもは見えてくるんじゃなかろうかというふうに考えておりまして、おおよそこの秋口、ここらあたりから一つのはっきりとしたものが見えてくるんじゃないのか。そういう中で、我が国経済というものはインフレなき持続可能な成長へと移行していくというふうに考えております。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今日の経済動向というものにつきまして、そのいろいろな、もろもろの手を打ったものがどんなように効果を発現してくるか、注意深く見守っていきたいと思っております。  また、御指摘のございました中小企業につきましても、この金融対策というのは非常に重要なものであろうということでございまして、政府関係金融機関、こういったところを通じながら、中小企業実情というものにきめ細かい配慮をしてほしいという指示をいたしましたり、また民間金融機関に対しましても、中小企業金融、こういったものを円滑に進めるようにこれを要請する、そういった措置というものを今日までやってきておるということを申し上げたいと存じます。
  7. 大畠章宏

    大畠委員 中小企業実態十分配慮をするようにという、そういう指示をされたということでありますので、ぜひそういうことが末端の金融機関まで行き渡るように、これからも目をかけていただきたいなと思います。  それで、この法改正を受ける金融業界実態等について質問をさせていただきますが、これから質問させていただくのは、そういう金融業界実態から見て中小企業に対する融資等影響が出ているのではないか、そういう観点からちょっと質問させていただきます。  今回の法改正では、銀行証券業界相互乗り入れをするという内容だということを伺っておりますし、またいろいろ法改正内容について資料を見させていただきましたけれども、そういう法改正を受ける実際の金融業界実態について、いろんな話が出ております。一部には、現在の金融状況が非常に不確かなものになっているんじゃないか、例えば、これはもう既に御存じだと思いますけれども、五月十六日付のイギリスのフィナンシャル・タイムズ等で、日本銀行、深刻な負債問題に直面という記事が載っておる。そこには、都市銀行が十三兆から十八兆の不良債権、それから長期信用銀行では五兆円から七兆円、信託銀行では七兆円から九兆円、地方銀行では五兆円から六兆円、その他では十兆円から十三兆円、合計が四十二兆から五十六兆円に上る不良債権を抱えているのではないかという報道がされ、日銀部内資料ベースとしたレポートだということが報じられたのですが、日銀では、これは私どもがまとめた情報ではない、民間銀行のものだということで、事実上の訂正をして騒ぎがおさまってきたという話であります。大蔵省として、今回の法改正を受ける金融業界全体ではどのくらいの債権を抱え、そのうちいわゆる回収不能と目されている不良債権、これが大手銀行及びノンバンク等でどのくらいの状況になっているのか、その実態を把握されているかどうか、お伺いしたいと思います。
  8. 土田正顕

    土田政府委員 不良債権のお尋ねでございます。この不良債権というのはそもそも何かという明確な定義なしに世間でいろいろ取りざたされておる傾向があるやに今感ずるのでございますけれども、最近の状況ということになりますと、まだ決算が全部出そろってもおりませんので、私どもとしてはとりあえず本年三月末時点で、一つの切り口といたしまして、銀行の中の都市銀行長期信用銀行信託銀行の三業態からヒアリングを行いまして、貸付金利息が六カ月以上未収となっている貸出金を調べましたところ、その額は、この三つの業態合計でおおむね七、八兆円ということであり、かつ、そのうちから担保保証でカバーされているものを除いた貸出金残高は、やや見込みの要素が入りますが、二兆円から三兆円という数字をまとめてこれを外部に説明をしたところでございます。  なお、ただいま委員がお挙げになりましたようないろいろな記事がございますが、一部にそのような記事があったということは私どもも承知しておりますけれども、これも委員がおっしゃいましたように、日本銀行からはそのような資料はないというふうに私どもは聞いております。  それからノンバンクでございますが、実はノンバンクの財務の実態について、私どもは正確な計数を把握する立場にないわけでございます。不良債権がどのくらいあるかというようなことについてのいわば調査、統計のようなものはございません。ただ、一つ参考といたしまして、先般ノンバンクの上位三百社に対して。アンケート調査を行いました。これは昨年の十二月末現在で行ったのでございますが、そのアンケート調査によりますと、一カ月以上の延滞債権が二〇%以上あるノンバンクが全体の約三割であるというような結果になっております。ノンバンクにつきましては、私どもこの実情把握に限界があるわけでございますけれども銀行その他の金融機関に対しましては、その健全経営保持などの観点から、不良債権などその経営状況について、日々の行政及び検査を通じて実態把握に努め、適切に指導をしてまいりたいと考えております。
  9. 大畠章宏

    大畠委員 どのくらいの不良債権を抱えているのだというような質問をすると、例えば十万円の借金を抱えていても過小に、大体六、七万借金していますと大げさに証言しないのが常でありまして、そういうことから、今六カ月ぐらいの滞納だと七、八兆円、またノンバンク関係では、三割で遅滞が起こっているということであります。大蔵省としては、大蔵省所管め銀行あるいは金融機関がどういう状態にあるのかということをもうちょっと明確に把握することが、これから大蔵省一つ方針を出す上で大切だと思いますので、今後ともその努力をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  いずれにしても、このバブル経済一つの峠を越えて正常に戻ろうとしているところでありますが、そうなってくると、私が銀行経営者であれば、そういう不良債権を抱えていれば抱えているほど、確実な人にしか貸さない、確実な企業にしか貸さないという傾向が強まると思うのですね。そこで、一番対象になってくるのは中小企業じゃないかと思うのです。中小企業に貸すよりは、堅実と思われる大きな企業に貸そうということで、中小企業に対する選別融資というものが実態として起こってくるのじゃないか、そういうような感じもするわけでありますが、実際大蔵省としてそういうものについて、先ほど大蔵大臣からも中小企業に対する影響がないようにという話がありましたけれども、どういう形でこの選別融資といいますか、実態を把握され、そして銀行関係に対してきちっと先ほどの大蔵大臣のような趣旨を徹底されるような方策をとっておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  10. 土田正顕

    土田政府委員 まず、中小企業というものが今や銀行融資先として圧倒的なシェアを持っておるということを申し上げておきたいと思いますが、実は都市銀行、これは割合大手銀行であり、中小企業に対して縁が薄いのではないかというようなイメージはかつてございました。しかし、例えば総貸し出しの中の中小企業向け貸し出しの比率、これを都市銀行について見ますと、例えば昭和五十年三月期には、手元の数字では三四・九%、三分の一が中小企業向けであったというような数字がございますけれども昭和六十年三月末ではその数字は五〇・七%、約二分の一になっており、それから直近の平成四年二月時点では七一・六%、都市銀行でさえその全体の貸し出しの七一・六%は中小企業向けということになっております。  そこで、昨今のいろいろな状況を踏まえての御懸念でございますが、これはもちろん個別の融資金融機関みずからが自主的な経営判断に基づいて決定するのが基本でありますし、それからバブル経済当時の反省を踏まえて、健全性観点から融資審査、管理の厳正化に努めておるという傾向はうかがわれるわけでございます。しかし、各金融機関とも国内貸し出しにつきましては、これを収益の柱として位置づけまして、中小企業融資も含めることはもちろんでありますが、健全、優良な貸出需要に対しては引き続き積極的に応じていく方針であると承知しております。  それで、この昨今の情勢を踏まえ、先ほど大臣から御答弁申し上げたところでございますが、私ども中小企業に対する金融円滑化配慮するよう金融機関に要請を続けておるところでありまして、例えば緊急経済対策の中でも「中小企業金融対策」として、「民間金融機関についても、中小企業金融円滑化配慮するよう要請する。」とされたことを踏まえまして、私どもから全銀協等の各金融団体に対してその旨の周知徹底方を図るように、四月一日でございますが求めたところでございます。私どもとしては、今後とも地域経済の振興、地元企業への密着という観点から、中小企業金融円滑化について適切な対応を図るよう要請してまいりたいと存じております。
  11. 大畠章宏

    大畠委員 ひとつ、平成四年の二月時点で七一・六%が中小企業向け融資であるというお話がありましたけれども、今後ともよく現状調査していただきまして、そういう傾向があらわれないように、やはり苦しくなると安全なところにという傾向はこれは自然の流れでありますので、自然のままにしておくとそういう傾向が出てくると思いますので、特に中小企業、今経営の先行きの見通しの暗さ等でどうしたらいいかいろいろ、後継者の問題とか労働者が集まらないとか、非常に悩んでいるときでもありますので、そういう中小企業を援護する意味でもよく実態を調べて、適切な手を今後とも打っていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。  それでは次に、今回の法律によりまして、業態別子会社等による相互参入が可能になる、いわゆる銀行証券会社証券業務相互乗り入れが可能になるということでありますけれども、私は、過日、社会党独禁法改正案提案者の一人でありまして、独禁法についてもいろいろ日米間の問題あるいはヨーロッパと日本との関係等についても勉強をさせていただきました。自由競争とは何かということもいろいろ勉強させていただきましたけれども一つ考え方として、確かに、全く条件をつけない、全くフリーに競争させるというのも一つ自由競争というものの考え方だと思いますが、私は、強い者同士、強い者と強い者がぶつかり合う、あるいはその強い者と強い者のぶつかり合いの競争システムの中に弱い者同士のぶつかり合いもある、そういう組み合わせの全体的なシステムをつくることによってシステム全体の体質強化というものが図られるのじゃないかと思うのでありますが、今回の法改正でありますと、いわゆる弱い者も強い者もごっちゃにしてみんな総当たり制にせいというような形になってきますと、最近の大相撲ではありませんけれども、巨体と小さな舞の海とが当たったときどうなるかということを考えると、なかなかこれは何でも自由競争がいいということにはならないのじゃないかという感じもします。 私はそういうことから考えますと、大きな銀行証券業務を行えるような形にする、そういうことをすれば、大手銀行がますます自分のテリトリーといいますか、営業の活動分野というのは広がるわけでありまして、そういう状況を考えますと、例えば大手中小という銀行あるいは証券会社もそうだと思いますが、ますます強い者はより強くに、弱い者はより弱くになってしまうのじゃないか、そういう感じもいたします。そういうことから考えますと、当面この法案というものは中小金融業界証券業界というものに適応させて、大手業界については現状のままにしたらいいのじゃないかという声もありますが、そういう懸念に対してはどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  12. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の法律は、各金融機関あるいは証券会社、まさに御指摘がございましたように、大小これはいずれも競争機会拡大することが可能となるよう配慮されたものであります。具体的に申し上げますと、そのかわり大手の場合には業態別子会社による相互参入ということでありますし、また金融機関ですとかあるいは証券会社による有価証券私募取り扱いやあるいは証券化関連商品取り扱いなんというものも自由化されてきます。それから、地域金融機関、これは本体での一部信託業務の兼営をすることができるということですとか、あるいは信金、信組、労金、農協等の、これは協同組織金融機関業務範囲拡大をする、そういう措置が講じられておるということでございまして、大小各種金融機関ですとかあるいは証券会社が、経営上の創意工夫を発揮してみずからの特性を生かしながら、金融環境の変化に対応してさらに幅広い業務展開ができるようにするものでございまして、大手金融機関の独壇場になる、そういうものではないのじゃないのかというふうに私どもは考えておるところであります。  また、当面は中小金融機関に限定して法案を適用すべきじゃないかという御指摘が今あったわけでございますけれども、この点につきましても、金融資本市場効率化あるいは活性化、また利用者へのより多様で良質な金融商品・サービスの提供を図っていくためには、金融機関証券会社大小を問わず、そのいずれもが今回の法案によりまして確保された競争機会、この拡大を活用しながら金融あるいは資本市場における有効かつ適正な競争を行っていくことが重要でありまして、これを時期をもし分けるということになると逆にマイナスになってしまうのじゃないのかというふうに考えまして、私どもとしましては、やはり同時進行していくことが重要であろうというふうに考えておるところであります。  いずれにしましても、地方の金融機関ですとかそういったところは、やはりほかに大手の持っていない地縁性ですとかあるいは小回りがきくということ、そういったものが大きく有効に働いてくるのじゃないのかな、これをさらに助長することが私は重要であろうというふうに考えております。
  13. 大畠章宏

    大畠委員 言ってみれば、大蔵省等はそういう金融業界行司役といいますか、法律というものをベースとして行司役をやっていると考えられますので、今おっしゃったように、そういういろいろな観点から同時に施行すべきではないかというお話がありましたけれども、ぜひそういう懸念が及ばないように、大手銀行大手銀行なりに、また中小金融業界中小金融業界なりにそれぞれ切磋琢磨できる土壌を、環境を整えるように、今後とも十分な配慮をお願いしたいというふうに考えます。  それから、こういう金融業界状況の中、商工中金信用金庫信用協同組合等活動が円滑に行われることが重要と思いますが、今後これは中小企業にも非常に大きな影響力を持っている銀行金融機関でありますので、どういうことを考えておられるのか。また、農林中央金庫ですとか全国信用組合連合会商工中金などの協同組織金融機関は、協同組織という制度のために自己資金の充実など経営基盤強化するための抜本的対策を講じることが必要だと思いますが、こういう問題についてどのように考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  14. 土田正顕

    土田政府委員 御指摘のように、商工組合中央金庫、これは政府関係金融機関でございます。また、信用金庫信用組合、これは民間中小企業専門金融機関でございます。これらの機関中小企業に対する金融円滑化に重要な役割を果たしてきております。  そこでまず第一に、今回の改正につきましては、ただいま大臣から御説明申し上げましたような考え方に即しまして、業務範囲拡大業務についての規制の緩和をそれぞれ図っておるところでございます。一例を申しますならば、商工組合中央金庫については預金の受け入れや貸し付け対象範囲拡大するとか有価証券私募取り扱いを明記するとか社債受託及び担保つき社債に関する信託業務を営むことができるようにするとか、そのような規定を設けております。また、信用金庫信用組合、それぞれ手当てをしておりますが、信用組合の場合には国債等窓販ディーリング業務外国為替業務、それから員外有価証券等の保護預かり、それから余裕金の運用の制限の撤廃、社債の募集の受託債務保証範囲拡大員外有価証券貸し付けというようなことにつきまして、法律上梓取りをしておるわけでございます。このような枠取りと同時に、ただいま御指摘のありましたような連合会につきましては、これはどちらかといえば銀行並みに、例えば子会社を設けることができるというような位置づけを与えまして、この連合会活動基盤強化を図っておるわけでございます。  それに関連いたしまして、御指摘にもございますような自己資金の充実などの対策の必要性というものが議論になってまいります。これにつきましては、もちろん日常のこれまでの努力によって経営基盤強化を図ってきておるということもうかがわれるのでございますが、さらに今後の課題といたしましては、自己資本充実策につきまして、これは若干金融制度調査会報告書などにも述べられておりますが、「協同組織性との関係配慮しつつ、優先出資制度の検討が進められるべきである。」というような御指摘もございますので、これはいろいろ法制上解決を要する困難な問題が少なからずございますけれども、今後の研究課題として検討に取り組んでまいりたいというふうに考えております。  なお、最近の経済情勢にかんがみまして、経済対策閣僚会議で決定されました緊急経済対策の中におきましても、政府関係金融機関及び民間金融機関に対し、それぞれ中小企業金融円滑化についての配慮方を促しておるということは、大体先ほど申し上げたようなとおりでございます。
  15. 大畠章宏

    大畠委員 私は、この金融問題というのは正直言いまして素人でありますが、素人から見まして、去年等をピークにしましたバブル経済の中で大手銀行大手証券会社というのが暴走した、そういうことが非常に日本の社会の経済状態を混乱させたという認識をしております。そういう意味から見ますと、どうしても大手銀行大手証券会社というものが中心になりがちな金融行政だと思いますが、中小金融業界、こういうものをもっと重視して、健全な中小金融業界というものをしっかりと育てていく、そういうことを十分念頭に置いた金融行政であってほしいなと私は思っております。その件についてもぜひ今後とも御注目いただいて、適切な対応をしていただきたいと思います。  最後の質問になりますけれども中小金融業界基盤整備ということで今お話がありましたけれども、労働金庫の基盤強化策の一環として前々から全国統一問題が永年の懸案事項としてずっとあるということを、いろいろ私も地方の方で聞いておりますが、何が原因で統一できないのか、さらに今後全国統一への見通しというのはどう考えておられるのか、その件について最後に御質問したいと思います。
  16. 土田正顕

    土田政府委員 労働金庫につきましては、委員御案内のように多年金国一本化問題をめぐる議論が続けられてきたところでございます。また、その一環として、これは労働省、大蔵省両省にまたがるわけでございますが、私ども行政側と全国労働金庫協会との間で協議を続けてまいりました。  ただ、現時点では全国に四十七労働金庫がございますが、その中に経営状況の格差の問題、それから各金庫に業務運営上改善すべき問題点が多く見られるという問題、そのような状況にかんがみますと、現段階では一気かつ一斉に一本化することには大きなリスクが存し、労働金庫の抱える問題を解決するための最良の方策であるとの確信を持つまでには至らなかったのでございます。  しかし、労働金庫の状況それからさらには当面の厳しいいろいろな諸環境に対処するため、労働金庫につきましても何らかの対応策を講ずる必要があると考えておりまして、このため労働金庫協会と引き続き協議を進めていく考えでございます。  この中で具体的に話題となったものにつきましては、いきなり全国一本化というような話にはなりませんけれども、一定の地域を基礎とした労働金庫相互間の適切な合併に向けての自発的努力であるとか、系統利用率の向上策の検討であるとか、それからさらにこれは今回の改革法案にも入れさせていただいておるところでありますが、全国労働金庫協会の位置づけを見直しましてこれに法律上のステータスを与える、これを通じまして指導力の強化を図るというようなこと、さらにはこれも今回法案で手当てをしておりますが、業務量通者の理事への登用などを直近の具体的な対応策として考えておるところでございます。
  17. 大畠章宏

    大畠委員 ありがとうございました。  今お話がありましたけれども、ひとつ労働金庫の統一問題についてもぜひ積極的に推進できるような御指導をお願いしたいと思います。  最後に、いずれにしても、金融自由化のおかげで大きな影響を受けやすい中小企業者に対する金融円滑化十分配慮した金融自由化というものを進められるよう大蔵大臣に特にお願いを申し上げまして私の質問を終わります。ありがとうございました。
  18. 太田誠一

    太田委員長 早川勝君。
  19. 早川勝

    ○早川委員 金融制度改革法に関連いたしまして、質問させていただきますが、その前に大臣に、先ほどの大畠委員質問にもお答えされておりましたけれども経済の現況をどんなふうに認識されているのかなと伺いたいと思います。  サミットもまた来月あるわけですけれども、いわゆる三・五%の成長というのは必ずしも国際公約ではないと思うのですけれども、一般にそう言われているわけですね。そういった形でひとり歩きしている部分もあるわけでございます。そういったことを考えてみまして、先ほどは九月に、秋口になればという表現で、今のいわゆる調整局面でどういう形で表現すればいいのか、妥当かどうか、何とも言えないとは思うのですけれども、そういった意味で、秋口になれば今の状況がどう変わるのか。あるいは、この三・五%の成長絡みでどう認識されているのか。ちょっとお聞きしたいと思います。
  20. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほども申し上げましたように、我が国経済というのは現在調整過程にあるということでございます。この中で、消費財の消費及び製造業を中心といたします設備投資、こういったものにつきましては、先ほども申し上げましたように、過去数年間非常に高い伸びを示した後でストック調整的な動き、これが見られるということでございます。  また他方、労働力の方は依然引き締まり基調で推移しておりまして、住宅建設には一つの回復も逆に見られておるというふうに思っておりまして、私どもといたしましては、在庫調整というものが今順調に進展をしておるということが言えるのじゃなかろうかと思っております。  それから、個人消費につきましては、雇用者の所得というものは着実に伸びておるということがありますし、また、物価の方もずっとここのところ安定しておるということで、確かに額の面では少し落ち込んでいるところがありますけれども、量の面では、私どもは、これは着実に進んでおるということでございまして、底がたく消費は進むであろうというふうに見込まれます。  私どもは、今お話がありましたように、三月三十一日に緊急経済対策をやりましたり、あるいは公定歩合の引き下げをやる、そして、公共事業につきましては七五・二%というものを前倒しを進めたということでございまして、今こういったものがどんなふうに進んでおるのか、我々はフォローアップしていきたいと思っておりますけれども、いずれにしましても、そういったもろもろの効果というものが相まって、ことしの秋口ぐらいには私ども一つの日差しを見ることができるのじゃなかろうかという感じを実は持ちながら、しかも、こういった問題がどう進展していくかということを注意深く見守っていきたいと思っております。  今お話がありましたように、三・五%というのは、これはやはり民間の動きというものが相当強くウエートを占めておるわけでありますから、これは公約というものではありませんけれども、しかし全体のいろいろな問題についてこれを一つの目標に掲げておることは事実でありますから、そういう中で私どもはこの目標も何とか達成していきたいというふうに考えておるところであります。
  21. 早川勝

    ○早川委員 今大臣から経済の認識を披瀝されたわけです。  経済企画庁が来ていると思うのですが、最近の月例の経済報告が出ているわけですけれども、それらを踏まえて、個人消費のサイドからどういった特徴があるのか、今の大臣の答弁を補強していただきたいと思います。
  22. 筑紫勝麿

    ○筑紫説明員 お答え申し上げます。  実体経済全体の動きにつきましては先ほど大蔵大臣の方から御答弁がございました。ただいまの御質問は特に個人消費についてのお尋ねでございますけれども、五月の月例経済報告、これは五月の二十九日に決定されておりますけれども、これで、個人消費につきましては「個人消費は基調として堅調に推移しているものの、このところ伸びは鈍化している。」こういうふうな表現がとられております。  この「基調として堅調に推移している」ということでございますけれども、これは先ほど大蔵大臣の方から御答弁もございましたように、何といいましても所得が順調に伸びておるということ、それから物価が安定しておるということで、これらを総合勘案しますと堅調に推移しておるということが言えようかと思います。  ただ、「このところ伸びは鈍化している。」ということにつきましては、例えば百貨店販売でございますとか、それから乗用車の新車販売が前年比で若干マイナスになっておるというようなところが勘案されてこのような表現になっておるということでございます。しかし、個人消費全体につきましては、これは物だけではございませんで、いわゆるサービスも含まれるわけでございます。大体物とサービスが半々というふうに考えられようかと思うのですが、このサービスの中で、例えば旅行等につきましては非常に堅調に伸びております。したがいまして、物は若干数量的には鈍化しているということかもしれませんが、サービスがその分を十分カバーしておりまして、先ほど申し上げましたように、全体として、基調として堅調に推移しておる、こういう状況であろうかと思います。
  23. 早川勝

    ○早川委員 これからの経済政策を考えるときに、今の状況をどう表現したらいいのかなといろいろ言われているわけですね。新型不況だとか、成層圏不況だとか、そこはかと不安の漂う不況だとか、いろいろ言われているのですが、大臣は、いわゆる不況と認識されているのか。だとすれば、どういったとらえ方をすればいいのか。もしお持ちでしたら、伺いたいと思います。
  24. 羽田孜

    羽田国務大臣 今度の景気、ちょうどそのバブルというものの後であるということでありますけれども、やはりバブルというのは、私どもは、ちょっと今になってみますと、確かに相当すごい勢いで伸びたんだなということを思うぐらいに、ともかく、例えば設備投資なんかにいたしましても、一時期は二十数%とか一七、八%などということが三年間ぐらい続いたということであります。ということになれば、一応これは、相当高い数字で自動車が売れました、あるいは住宅の建設戸数なんかも数年前に比べますともう圧倒的な高さに伸びたわけですから、これはどこかでしぼむということはあり得るわけですね。それが、割合とこの落差というのが大きかったということがみんなに何か不況感というものを非常に大きくしてしまったという事実はあろうと私どもは思っております。  それからバブルのいい影響といいますか、これを受けたところ、例えば地価がうんと上がったというようなところですとか、そういった東京ですとか大阪、あるいはそこに比較的近いところ、こういったところが、やはりバブルが崩壊したことによって不況感というものは非常に大きく広がったというふうに思っております。ですから、地方が案外今度の場合に強いということもあろうと思っております。  しかし、この高いところで相当設備投資をしたわけでありますから、どうしてもそのストックの調整をしなければいけないということで、この現実というのは相当避けて通れないものであろうということを考えなければいけないと思うのです。ですから、相当高いところを目標にしながら設備をしてしまったんですから、全体の在庫の調整と同時にストックそのものの調整というものもなければならないということであろうと思っておりまして、そこらあたりが今までの不況のときと違う。そして、特に失業者が町にあふれているということじゃない、むしろ人手不足であるという状況でありますし、物価も比較的安定している。しかも賃金も着実に上がっておるということでありますから、過去のものとは違うであろうと思っております。  しかし、そのストック調整というのはなかなか気骨が折れるといいますか、企業もやはり産業構造の改革までしなければいけないということでありましょうから、その辺に今度の不況、いわゆる不況と言われるものの対応というのは非常に難しいなということを改めて私は感じておりまして、私どもとしては、やはりきめの細かい対策というものが望まれるのであろうというふうに考えております。
  25. 早川勝

    ○早川委員 いわゆる新しい型の不況と言ってもいいかと思うのですけれども、そういった意味で政策的には大変難しいということも言われたわけですが、いわゆる公共事業の前倒しをやって、そして当然下期、年度後半というのは何らかの対策を講じなければいけないということは明らかなわけです。そしてまた、先ほどもちょっと言いましたけれども、サミットが行われまして日本への負担あるいは期待が寄せられるんじゃないかと思います。そういったことで、政府のいわゆる補正予算の問題と来年度の概算要求のシーリングの問題を今月末には示さなければいけない、こういうことが伝えられているわけですけれども、そのあたりの段取りについてまずお聞きしたいと思います。
  26. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましては、先般の緊急経済対策を決定し、その着実な実施を図っておるというところでございまして、また、それと軌を一にしまして公定歩合の第四次引き下げが行われたところでございます。こういった措置、とってきた財政金融両面からの諸施策、それと我が国経済のインフレなき持続可能な経済成長への円滑な移行、こういったものに資するであろうというふうに私どもは考えておりまして、また、先ほども申し上げましたように、建設業を初めといたしまして労働力需給が引き締まりの基調にある。こういうことを考えましたときに、これ以上の追加措置というものは今考えるべきじゃないというふうに私どもは思っております。  また、平成五年度の予算で具体的にどのような概算要求基準を設けるのかということでございますけれども、引き続いて厳しい財政事情にある、これが現実でありますから、そういったことを踏まえまして、今後私どもといたしましても検討してまいりたいというふうに考えておるところであります。
  27. 早川勝

    ○早川委員 今直接具体的にということは、別に支出を、比率を高めろとかそういうことじゃないと思うんですね。ただ、非常に公共事業に依存している地域からすれば、もっと明示してほしい、下期の、そして年度間を通じての、そういった意味での補正予算の要求がありますし、それ以上にサミットの関係で言わざるを得ないんじゃないかなという感じを持つんですけれども、その点はいかがですか。
  28. 羽田孜

    羽田国務大臣 今公共事業というお話があったんですけれども、地方の方はみんな割合と景気というのは安定しておるという現状でありますし、また、地方の方は有効求人倍率なんかもむしろ高いところも実はあるということでございますから、かつてのように公共事業だけに期待するという空気でないということ。それと、公共事業を前倒しして前金をお支払いする、それによって新しい需要というのは起こってくるわけですね。こういった効果の発現というものを見るということはやはり私どもは大事であろうと思います。ということになりますと、上期で前倒ししたから後ろがなくなってしまうのじゃなくて、むしろ後ろの方は新しい民間のいろいろな動きが出てくる可能性というものがあろうと思っております。  それともう一つは、サミットでという実は御指摘があること。サミットというのはやはりそれぞれのお互いの信頼する国々が集まりまして自由濶達に議論する場所でありますから、実はいろいろな議論が出ようと思っております。しかし、今までG7で議論になりましたときにも、基本に流れるのは、やはり世界的な資金需要もあることである、成長は確保しましょうね、これが一つ、合意であります。それともう一つは、やはりインフレにしてはいけませんよということであります。ですから、日本の場合にもバブルは確かにはじけたということでありますけれども、またいわゆる労働力なんかもタイトであるというようなときに、ひょっとするとインフレにしてしまうというおそれがあろうと思っております。それともう一つは、財政赤字というものは克服しなければいけませんよというのが我々G7での話し合いのときの一つの基本であったということを考えたときに、今、日本の国の状況というのは、決して財政はそんなに甘いものじゃないということを考えましたときに、そのあたりを私どもとしてはきちんといろいろな議論に対しては話していくべきであろうというふうに考えております。いずれにしましても、今追加的なことを考えるときではないということについては御理解をいただきたいと思。います。
  29. 早川勝

    ○早川委員 先ほどの経企庁の説明、個人消費は、堅調だが伸びが鈍化しているということが紹介されたのです。四月の月例報告も同じ表現が使われているんですね。つまり、個人消費は変わらない。もう春闘も終わっているわけですから。じゃ来月以降一体どういった期待が持てるのかという、難しいかもしれませんけれども、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  30. 筑紫勝麿

    ○筑紫説明員 お答え申し上げます。  先生最後におっしゃいましたように、来月以降のことについて見通すというのはなかなか難しい面があるのですが、数字を幾つか御披露申し上げましてお答えにかえさせていただきたいと思うのです。  個人消費の見通しを私どもつくりました際に、これは昨年の十二月でございますが、雇用者所得につきましては見通しとして六%程度の伸びを見込んでおります。その中身といたしまして、一人当たりの所得が四%ぐらい伸びるだろう。それからまた、労働力人口の伸びというのがございまして、こちらの方も現在二%程度で伸びております。所得が一人当たり四%で伸び労働者が二%伸びておりますので、全体として雇用者所得は六%伸びるだろうというような考え方をしておるわけでございます。  それからもう一つ、物価につきましては、経済見通しで、四年度でございますけれども二・三%の伸びを見込んでおりまして、これが足元どういう状況であるかと申し上げますと、これは五月の東京都区部の速報でございますけれども、対前年度比二・四%の増加率ということで物価も非常に安定してきておるということで、所得が順調に伸びて物価が安定しておるということで、基調として個人消費は安定して堅調に伸びるだろうというふうに見通しておるわけでございます。  先ほど先生の方から、今回の景気局面非常に難しいものがあるとおっしゃいまして、私ども、今回の景気局面につきましていわば人手不足下の調整というような考え方をいろいろな機会に申し上げておるわけでございますが、これは日本経済全体の中で新しい動きでございまして、通常不況ということになりますとどうしても失業ということになってくるわけでございますが、例えば生産活動が非常に停滞しておる中での人手不足という状況がございまして、これが消費にどういうふうに響いてくるかというふうに申し上げますと、人手不足による雇用の確保、そして所得の伸びでこれが消費に響いていく、プラスの方向に働いていくということでございまして、所得の面から見ますと個人消費というのは今後とも堅調に伸びることが期待されるのではないかということでございます。
  31. 早川勝

    ○早川委員 という表現がまた来月も出るんじゃないかな、堅調だけれども鈍化というような表現がとられるんじゃないかと思いますけれども。聞かなくても結論はわかっているような話が大臣から出そうなんですけれども、そういった個人消費の問題を考えたときに、そして財政事情が大変だということもよくわかるのですけれども、これからの補正予算絡みの中で多分所得税減税、減税の定義というのは大変難しいわけですけれども、いわゆる今の負担よりは若干緩和するという意味で減税といいますと、そういった要求が出てくるんじゃないかと思うのですけれども、出てきた場合にどういう対応をされるのか、今の時点でおわかりでしたらお伺いしたいと思います。
  32. 羽田孜

    羽田国務大臣 所得税減税につきましてはこの委員会審議を通じましても多くの方から実はお話がございました。ただ、私ども考えますのは、まず減税という、所得税減税と考えましたときに、我が国の所得税というのは諸外国に比べまして高いところにあるのかということを考えますと、課税最低限にいたしましても税率にいたしましても、一家当たりの所得税あるいは住民税、こういったものを支払う現状数字で見てみましても、非常に低いところに、大変いいところにあるわけですね。ですから、私どもといたしましては現在、六十一年、六十二年にとった措置によって中堅所得層、こういった人たちは割合と重税感というものから脱皮することができたのじゃなかろうかというふうに判断しておりまして、今所得税の減税をやるということは、私は考えるべきじゃないだろうというふうに思っております。また、減税をやるために、これは私どもといたしましては今度の予算の中で例の自動車税につきましての六%を四・五にしましたけれども、これをお願いをしておるということでありますし、法人特別税についてもこれは御無理をお願いをいたしておるというようなことがございまして、そういう中で今どうして所得税減税なんだねという御議論が実は出てこようと思っております。いずれにいたしましても、財源の面からも今やり得るときじゃないのじゃないのかなと思っております。  それで、実際に可・処分所得をこうやって見ていきましたときに、やはりベースアップがある程度あったということ、物価が安定しているということを考えますと、私どもは、いわゆる国民の一人当たりの可処分所得というものは着実に確保されているであろうというふうに考えたときに、今所得減税をやる環境にないということを申し上げたいと思うわけです。
  33. 早川勝

    ○早川委員 負担が国際的な水準で高いとかそういう問題ではなくて、先ほども聞きましたけれども個人消費の問題を大きい要素として政策的に考えなければいけないのじゃないか、そういう時期が訪れるのじゃないかなというふうに思っております。  それで、概算要求のシーリングの問題なんですけれども、最近七年間の枠の設け方、これは主計局で多分わかると思いますけれども、いわゆる臨時行政調査会が答申したわけで、非常に抑制的な予算編成をやりなさい、こういう方針を基本的に出しているわけですけれども、最近の、ここ七、八年におけるシーリングのいわゆる性格、仕分けというのですか、そういうことがおわかりですか。もしすぐ答弁できるのでしたら、どういうシーリングの設定をしたか答えてください。
  34. 小村武

    ○小村政府委員 概算要求基準につきましては、かつては大変高い率を設定しておりましたが、いわゆるゼロシーリング、マイナスシーリングが始まったのは御指摘の臨調答申があった後でございまして、五十八年からマイナスシーリングということでほぼ十カ年こういうものを続けてまいりました。この間、各省庁において施策の優先順位を決めていただきまして、さらにそれを私どもが念査をさせていただく、こういう手法をもちまして、かつての社会保障制度改革、そういった面について大変機能を発揮したということでありまして、私どもはこの方式について、かつて内なる改革と竹下元大蔵大臣もおっしゃいましたが、こういった各省の協力をもって予算編成に臨みたい。その一つの有力な方式だと心得ております。
  35. 早川勝

    ○早川委員 七年間のシーリングの設け方を比べてみますと、例えば昭和六十一年のときには経常部門をマイナス一〇%、削ったわけですね。同時に投資部門を五%マイナスにした。六十三年度、一年飛ぶわけですけれども、そこで若干景気の問題が入ってきまして変わるわけですね。経常部門は従来どおりマイナス一〇%です。ところが、投資部門はゼロにするわけです。前年度と同額だということをしまして、これを三年間続けるわけです。三年間というより、その基本は今日まで続くわけですから、昭和六十三年、一九八八年度からですから、五年間続いたわけです。経常部門はマイナス一〇%、投資部門は基本的にはゼロにしまして、ただ今年度と昨年度だけは御存じのように生活重点投資枠二千億、ことしはまた二千億足して四千億に上増しした、こういうシーリングの設定をしたわけですけれども、来年度はどんなシーリングを考えておられますか。
  36. 小村武

    ○小村政府委員 御指摘のように、経常部門マイナス一〇%というのはこのところずっと続けております。投資的経費につきましては、平成三年度に新たに生活関連重点化枠、さらに四年度においては御指摘のように公共投資充実臨時特別措置二千億の追加、それに生活関連枠ということで措置を講じてまいりました。  ただ、昨今の税収状況、財政状況を申し上げますと、大変厳しい状況でございます。こういう全体的に財政状況が極めて厳しい中で新たに来年度のシーリングを設定するわけでございますから、やはり私どもとしては厳しい線を維持せざるを得ないというふうに心得ております。
  37. 早川勝

    ○早川委員 先ほど大臣も言われたように、今は新型不況だというよりも、新しい経済構造への転換期を迎えているのじゃないかと思います。そういった中で、シーリングは今までと同じような方向でいいのかどうかということを問われるのじゃないかと思いますので、ぜひ新しい発想をしていかなければいけない時期じゃないかと思いますので、検討をお願いしたいな、こう思っております。  それで、金融制度の問題について質問させていただきますが、今回の改正を、業態相互参入だとかあるいは業務の参入等々もあるわけですけれども、一言で言いますと、単刀直入に言いますと、証券と銀行と両者を対比して考えてみますと、とりわけ都銀、銀行というのは都銀を念頭に置くわけですけれども、どうも都銀のための、銀行のための改正、そちらにメリット、比重が結果としてかかるのじゃないかなと思うわけですが、そういった認識でよろしいですか。
  38. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の制度改革相互参入業態別子会社方式を主体として行われゐことになっておりまして、これは競争条件の公平性の観点からすぐれた方式であろうということでこれの採用に踏み切ったわけであります。また、銀行の証券子会社業務範囲から株式に係るブローカー業務は当分の間除くことを法案の附則において規定しておるとともに、中小証券会社経営にも配慮したものであるということでございます。  このように、今回の制度改革法案におきましては、各金融機関あるいは証券会社に対しまして経済金融環境の変化に弾力的に対応し得るように、競争条件の公平性を確保しながらそのいずれもが競争機会拡大することが可能となるように配慮しておるところでございまして、私どもとしてはこれが順調に進んでくれるものであろうというふうに考えております。
  39. 早川勝

    ○早川委員 仕組みとしては、制度そのものとしてはやはり証券の方がハンディを負います、したがって実際に対等に、イコールにするために例えばブローカー業務を当分の間認めないだとかそういった若干の措置を講じている、こういうふうに理解してよろしいですか。
  40. 土田正顕

    土田政府委員 ただいまの御指摘の点はブローカー業務についてでございますが、それは銀行と証券との間の相互参入を円滑に行うための当面の措置ということで位置づけられると思います。  ただ、率直に申しますと、金融・証券各業態の中の問題は、これはよく御案内のように、決して都市銀行だけが金融界を代表するというふうにはなっておりませんので、大きな銀行でありましても都市銀行のほかに長期信用銀行もあり、信託銀行もあり、さらにこのほかに都市銀行に次くぐらいの大きさを持った地方銀行から比較的小さな地方銀行に至るまでのいわゆる地方銀行グループがあり、さらにそのほかに協同組織金融機関が何種類にも分かれておるという非常に多面的な構造をとっておるわけでございまして、そのような構造を所与のものといたしまして、その上でなるべく円滑に改革を進めたい、そういうことでいろいろと工夫を凝らしており、業態別子会社方式はその工夫の中の一つにすぎないということを申し上げておきたいと存じます。
  41. 早川勝

    ○早川委員 銀行と証券、どっちが強いのかなと考えますと、どうも銀行の方が強いんじゃないかな、支配力、経済力等々を含めまして強いのではないかと思うのですけれども、それ自体を聞いたらいかがかと思うのですが、例えば今までもいろいろな、ここの場でもそうですけれども、強調されているわけですが、指摘されているわけですが、銀行が非常に大量の株式保有をしている、あるいは人材派遣の面でも事業会社に対しても、比べると銀行の方がはるかに強い、こういった指摘があるわけです。そしてまた、何よりも強力な銀行が今持っている力の強さは何ではかればいいのかなということを考えてみたわけですけれども、預金量だとかこういうことはあるのですが、今の時代では特に情報の管理能力じゃないかなということも言われております。そういったことで考えてみますと、銀行というのは支配力が非常に強いんじゃないかと思うのですけれども、こういった認識をしてよろしいですか。
  42. 土田正顕

    土田政府委員 難しい問題を含むお尋ねでございますが、銀行なり金融族というものと証券会社とを比べますと、端的に申しましてその数の面、それから金融機関の場合は例えば預金量、証券会社の場合は預金量に匹敵すべき数字はございませんが、例えば保護預かりと申しますか、顧客から預かっておる証券の量というものもございましょうが、いずれにいたしましても金融対証券という切り口で考えます場合には、それは金融族の方が数も量も多いということは現実でございます。ただ、これは別に日本に限ったことではございません。  それから、株式、人材派遣云々というようなお話もございますが、結局は、これは御指摘にもございましたが、情報の管理能力というのは一つの重要な切り口であろうと思うわけでございます。ただ、そこのところで立ち入って申しますと、これは御案内のように、どちらかといえば直接金融というのは資金の出し手と取り手がございますが、この出し手と取り手が直接につながる、それでその資金の取り手についての情報をそのままの形で資金の出し手に提供する、これがいわば直接金融の典型的な姿でございます。これに対して間接金融というのは、資金の出し手と取り手の間に資金の仲介者である金融機関というのが入りまして、そこで金融機関はいわば資金の取り手についての情報を自己の責任で管理し、それでいろいろなリスクなどを考えた上で、自己の責任で資金の出し手から預かった資金を運用する、資金の出し手には資金の取り手に関する生の情報は直接は伝わらない、これがそもそも間接金融の仕組みでございますから、やはり情報を管理するという意味では、これは金融機関のいわば営業の本質でございますので、そのような情報管理がすぐれておることをもって証券会社との間に単純に計数に基づいた比較をするということはいかがなものかと思います。要は、それぞれの業態の仕事のしぷりの違いということであろうと思うわけでございます。  このたびりいろいろな改革案の組み立てにつきましては、これも既に出たことでございますが、業態別子会社方式を主体とするというところで一つの工夫をいたしましたし、それから協同組織金融機関を含めて地域金融機関に非常に大きないわば業務範囲拡大を認めておる、これもある意味では銀行それから地域金融機関、なかんずく協同組織金融機関との間のバランスを崩さないようにするための配慮であるというような点も申し添えておきたいと存じます。
  43. 早川勝

    ○早川委員 大阪の公聴会に出席したのですが、そのときに、財界の方の陳述の中に、新規参入に今回は子会社方式ということで、ある面で今まで以上に銀行の支配力を強めるのじゃないかということで、銀行の支配力を弱める担保がほしいのだといったことを述べられたと記憶しているわけですが、こういった危惧に対して、あるいは要望に対して、今回はどんな措置が講じられておりますか。
  44. 土田正顕

    土田政府委員 今のお尋ねは、いわゆる銀行に対する経済力の集中というような幅の広い御議論ではなくて、どちらかといえば銀行が証券子会社によって証券の世界に入っていくときの弊害防止というようなお話であろうかと思います。それはいろいろと、証券取引法が中心であり金融業法の方にもいろいろ工夫をしてございますが、弊害防止措置を設けておるわけでございます。  それからさらに、金融側は例えばいろいろ強力であるから証券子会社をつくれる、証券側はそれに対しまして強力なものは少ないから金融子会社をつくれないというような問題意識で御指摘になるのであれば、それはやはりそれぞれの業者の、金融機関証券会社経営戦略、経営判断の問題であって、すべての銀行が頭から証券子会社を持つことを想定してはおらないというようなことであり、それからそもそも、あえて一歩を進めて申しますと、今度の制度改革利用者のために行うものである、それがポイントであるというふうに考えますので、利用者のためにいわば適正な競争が行われ、それからサービスが広がるというフレームを提供する、それを実際にどう動かすかは個別のその営業をやっております金融機関証券会社経営戦略、経営判断の問題であるというようなことも申せるのではないかと考えております。
  45. 早川勝

    ○早川委員 先ほど、直接金融と間接金融のことを言われたわけですけれども、事業会社、企業にとりましては、銀行との関係でいえば直接金融でいいわけですけれども、今度証券の方にも銀行子会社証券会社をっくれるわけですね。そうすると、事業会社にとっては、直接金融と間接金融で分かれていたわけですけれども、今回は、銀行証券会社もつくれるわけですから、そこにつながってきてしまうおそれがあるのじゃないかということなんですね。つまり、今までは証券会社と事業会社、それから銀行企業、こうつながり、両手で右手と左手に分かれていたと思うのですけれども、これが子会社を通じて、つくられますと、銀行を介してそこへつながっていくのじゃないか、そういう意味で事業家はさらに銀行の支配力が強まるという危惧を表明されたと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  46. 土田正顕

    土田政府委員 その点は、近年の推移を考えると両様に言えるのではないかと思われますが、企業側という観点から見ますならば、近年いわゆる金融の証券化という現象が起こりまして、昔のような金融機関という仲介者を通じて資金の調達、運用を組み合わせるというような分野がウエートとしては低下し、資金の取り手すなわち企業が資金の出し手から直接に資金を調達して、資金仲介者のマージンを削減できる、そういういわば直接金融志向が目立っておるところでございます。さらに、情報通信手段の発達によりまして、そういう資金の出し手、取り手双方にとってのいわば情報不足による不確実性が軽減されておるということもございまして、日本のみならず世界各地において一段と金融の証券化は前進を見ております。これは一面では、言葉は悪いかもしれませんが、間接金融の提供者であります銀行の地盤沈下につながる傾向でございます。  他方、銀行が証券子会社をつくった場合には、その証券子会社を経由ないしは親と子の間に情報の交錯があって、そこでまた企業はつかまるのではないかという御懸念もそれは別の面で出てこようかと思いますが、まさにそのような親子の間の好ましからぬ情報の連携を遮断するということでいわゆるファイアウォールが組み立てられるものであるというふうに私は理解をしております。
  47. 早川勝

    ○早川委員 それにもある意味でかかわるわけですけれども、今度私募債の問題が整備されたわけです。私募債と公募債の関係を簡単に、それにかかわる証券と銀行の違いというもの、そして前回までと違って今回どういう改正が行われたのかということをちょっと話してください。
  48. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今回証券取引法の改正案の中には、私募の整備というのが含まれております。現在の証券取引法では、不特定かつ多数の投資家に有価証券の勧誘を行いますと、これは公募に該当いたしまして、有価証券届出書などのいわゆるディスクロージャー、情報開示が要求されるわけでございます。現在の運用では、この不特定かつ多数というのを五十名程度という運用をしているわけでございますが、今回の法改正によってこれを法令上五十名ということを明確にするとともに、あわせまして、機関投資家というのが非常に成長してまいっております。そういう機関投資家は、いわば有価証券投資の専門的知識経験を有するプロのような存在であるというふうに考えられるわけでございます。そういう機関投資家だけを相手にして有価証券の発行が行われるという場合にまで情報提供義務が必要かどうかという観点で議論をされたわけでございますが、その結果、機関投資家だけを相手として行う場合にはディスクロージャーの義務を課す必要がないということになったわけでございます。それを受けまして、そういったものを新たに私募ということで概念を整備したわけでございます。したがいまして、私募は、一つは五十人未満の非常に少人数に発行される場合、これは従来からそうでございます。あわせて、機関投資家向けに発行されるという二つの概念が私募に含まれることになったわけでございます。  現在もう既に私募というのがかなり行われております。これは五十名に満たないものに対して発行されるということで私募が行われておるわけでございまして、その中には機関投資家を相手として行われるものもございますし、あるいはそれ以外の個人投資家を相手として行われるものもございます。そういったような形の私募は非常に活発になっておりまして、最近はかなりの発行額に上っております。これは現在、主として銀行等の金融機関がそのあっせん行為を行っております。そういうような実態を踏まえまして、今回の法改正におきましても、今申し上げたような私募の概念の整備に合わせまして、金融機関の本体に従来どおり私募取り扱いを認めるということにしたわけでございます。  ただ、現在の場合には私募というのは証取法の適用が全くないような発行形態でございますので、仮に少人数に発行された後多人数に転売をされましても、これは法律では防ぎようがないということになっていたわけでございますが、今回法整備をするのに合わせまして、仮に機関投資家だけに発行された場合には機関投資家以外に転売されることを禁止するということを法律で明確にいたしまして、私募というものについての位置づけをはっきりさしたわけでございます。したがいまして、確かに機関投資家を相手にする私募という新たな概念が、これは五十人という人数制限なしに導入されるわけでございますけれども、転売規制というものがはっきりと法令上明確にされまして、そういったことを通じて、私募は一面では非常に機動的な資金調達手段ではありますけれども、転売規制によって流通性がない、非常に小さいということで、コストが公募の場合に比べて高くなるというこtが考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、この私募につきましては、先ほど申し上げましたように現在は金融機関が主としてこのあっせんを行っておりますが、こういうふうに新たに証券取引法上の整備をいたしまして、銀行のみならず証券会社証券業務としてきちんと行えるという位置づけをしたわけでございまして、これによって証券会社私募を大いに、機関投資家あるいは発行体のニーズに応じてそういう資金調達手段を利用させるということになろうかと思います。競争条件という意味では、基本的には銀行と証券の私募取り扱いについてはできるだけ競争条件を同じようにするように持っていきたいというように考えております。
  49. 早川勝

    ○早川委員 事前にその数字のことまでは伝えていなかったので難しいかと思うのですけれども、一般事業債についての公募と非公募の発行の推移みたいな数字はすぐおわかりになりますか。つまり、局長の答弁の中で私募が非常にふえてきている、ウエートがそちらにかかっているという表現をされたわけですけれども、もし数字がおわかりでしたら教えていただきたい。
  50. 松野允彦

    松野(允)政府委員 国内におきます公募債と私募債の数字が今手元にございます。例えば平成元年度から申し上げますと、国内公募債が七千二百九十億円発行されておりまして、そのほかに私募債が三千四百三億円ということで、ほぼ半分ぐらいの数字でございます。それから平成二年度が、公募債が二兆六百六十億円、私募債が八千五百二十六億円という数字平成三年度になりますと、公募債が二兆四千二百六十七億円、それに対しまして私募債が一兆六千五百十億円ということで、非常に私募債が急増しているということが言えると思います。
  51. 早川勝

    ○早川委員 事業債だけ見ますと、今と同じ期間、元年から言われたんですが、公募は六十億で非公募が三千七百億円ぐらいとか、あるいは平成二年度は公募された分が三百六十億で非公募の方が約八千六百億、八千五百八十七億という数字が出ます。それから三年度が、公募が五千五百十七億で非公募が一兆六千五百四十七億、こんな数字が出てしまうのです。いずれにしろ私募の方が非常に。多いわけですね。そういったことで、確かにディスクロージャーの手続が免除されたりあるいはコストだとか手続の負担が軽減される、そういう傾向が強い、利用しやすいという面があるわけですが、反面、昨年の六月の証取審の「証券取引に係る基本的制度の在り方について」という中には、逆にそれを危惧するような表現があるわけですね。私募の方にシフトしていって公募市場が中心から外れていくということは余り望ましくないなというような表現があるわけですけれども、今回の私募銀行は本来業務に付随する業務として以前から取り扱ってきたわけですけれども、今回はそれなりに証券も対等にという表現、指摘されたわけです。昨年の六月のこういった審議会の中で懸念されていた問題というのは今回は克服される、そういった方向に踏み出したというふうに理解してよろしいですか。
  52. 松野允彦

    松野(允)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の私募と申しますのは証取法の外て証券業務でもないという位置づけになっておりまして、そういった意味では証取法の適用対象にしてきちんと証券業務として位置づけをし、かつ転売規制も法令上できちんとするということでございますので、その限りにおいては公募、私募どちらも、証券会社も、これは後は経営の姿勢の問題になってまいるわけでございますけれども、できるだけ競争条件が公平になるように工夫をしているわけでございます。  しかし、確かに証取審報告書にありますように、証券市場ということを考えますと、公募市場が基本になるのが望ましいということは言うまでもないことでございます。と申しますのは、公募市場というのはいかなる種類の投資家もそこに自由に参加をでき、しかもそこで自由な競争で価格が形成をされ、その価格に基づいて資金配分が行われるということでございますので、そういう基本的な公募市場の役割から考えますと、公募市場が中心になり、それに基づいて私募の条件が決定されるというような形になっていくのが望ましいというふうに考えるわけでございます。  公募市場の活性化につきましては、もう一つ商法等々のいわゆる社債関係法律の問題がございます。社債の発行限度の問題あるいは従来からの受託制度というものの見直しというような問題が今並行して議論をされているわけでございます。私どもも公募市場の活性化については、今申し上げたような商法を初めとする社債関係の法整備の問題、さらには商品の多様化、期間の多様化あるいは手数料の引き下げというようなことで公募市場をできるだけ活性化していく必要があるということは十分認識をしておりますし、今申し上げたように基本的には公募市場が拡大し、それとバランスのとれた形で私募市場も拡大していくというふうに持っていくことが必要だし、そのためのいろいろな法律上の手当であるいは運用上の手当てというものをしていく必要があるというふうに考えております。
  53. 早川勝

    ○早川委員 これは大蔵省だと思うのですが、海外産業金融調査団を出されて、アメリカとかイギリスだとか調査されていると思いますが、その中に私募市場についてということでアメリカの例、数字が出ております。企業による証券の新規発行に占める私募の割合というので、八六年は二〇・七%、八九年は三七・三%、つまりアメリカでは私募の方にウエートがかかってくるわけですね。そういうことを考えてみますと、企業にとっては私募の方がいいということと、反面、今本来の市場のあり方としては公募市場の発展こそが基本だという表現があるわけです。ただ、アメリカのこの結果を拝見しても、どうも私募の方にウエートがどんどん上がっていくのじゃないかという感じを持つわけですけれども、そういったのは杞憂で終わるのかどうかということを伺いたいと思います。  それから、私募についても、今回は政府が規制をしたということなのですけれども、アメリカの同じ報告書によりますと、二年間は転売禁止をしているのだということも書かれているわけですけれども、それらを考えまして、今回の政府法案の規制というのをちょっと紹介していただきたいと思います。
  54. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今アメリカの事例を御指摘いただきました。確かにアメリカでは近年私募債のウエートが少しずつふえております。これは、一つには機関投資家がアメリカでは日本よりも非常に発達しているという事情がございます。そういったような情勢を受けて、アメリカにおきましては機関投資家だけの市場というものについてある程度SECなども、その市場というもので資金調達が行われるよう、行われやすくするというような方向の政策をとっているということは事実でございます。私どもは、アメリカほどの機関投資家の成長というのはまだ日本にはないというふうに考えるわけでございますけれども機関投資家の成長というのはある意味では時代の大きな流れでございまして、その中でどういうふうに公募市場と私募市場のバランスをとっていくか、機関投資家も必ずしも私募市場だけに参加するというわけではございません。これは公募市場に当然参加するというのが普通の姿だろうと思うわけでございまして、そういったことからいいますと、機関投資家に対するいろいろな運用の自由化というようなものも一方では必要になるし、先ほど申し上げた公募市場の活性化策というものもいろいろ考えていかなければならないという感じがするわけでございます。  アメリカでは、確かに転売禁止というものが行われております。私どもが今法律改正案としてお出ししております転売規制といいますのは、機関投資家向けの私募の場合には機関投資家の間だけの転売を認めるというような形にしておりまして、機関投資家の外に出ることを禁止するというようなことにしております。そういったことによって、私募証券がいわばディスクロージャーのしり抜け的に一般投資家に出ていくというのを防ぐということでございまして、これはいわば投資家保護のためのディスクロージャー制度を守るために必要な転売規制であるというふうに考えるわけでございます。しかし、それ以外に公募市場と私募市場のバランスが余りにも崩れるということになるのは非常に好ましくないわけでございまして、別の観点からそういう公募市場の活性化を図るとともに、バランスが余り崩れないような運用というものも必要だろうというふうに考えるわけでございます。アメリカの例なども参考にしながら、バランスが余ワ崩れないように、つまり公募市場が基本となってそのもとでバランスをとりながら私募市場が発展していくように、運用上いろいろと工夫をしていく必要があるのじゃないかというふうに考えております。
  55. 早川勝

    ○早川委員 大型の私募の発行はすべて銀行が今まではやっていた、受託会社は銀行だったわけですけれども、これが形の上では証券も可能ですよということになっても、なかなかそうはいかないのじゃないかというふうに考えているわけです。そしてまた、今アメリカの動向と、結果的には機関投資家が成長すればするほど私募の方に志向すると思うのですね。そちらを求めていく傾向があるのじゃないかと思いますね。そういったことを考えてみますと、先ほどのディスクロージャーのしり抜けの問題だけではなくて、まさに公募市場という本体のところにウエートを置けば、規制のあり方もアメリカの例も含めまして考えていく必要があるんじゃないかなと思っております。  そこで、ディスクロージャーの問題なんですけれども、きのうの館参考人、教授の、五十六年の銀行法の改正に当たっての警告を紹介させていただいたわけですけれども、例えば、ディスクロージャーの面で修正をして後退をしたということによって、後年非常に大きなツケを払うことになるだろうということを警告をした、これは徳田元銀行局長お話の中に出てきているわけですけれども、こういうことがなければ、あるいはそういった五十六年の改正のときにディスクロージャーをきちんとやっておれば、先ほども議論のありました不良貸し付けの残高の問題等々がきちんと出されていたんじゃないか、今日までこういった事態に銀行が手をかすことはなかったんじゃないかなというふうに読み解くわけですけれども、これは大臣あるいは銀行局長でも結構ですけれども、こういった指摘をどういうふうに今日の段階、もう十二年も前になりますけれども、受けとめられておりますか。
  56. 土田正顕

    土田政府委員 十二年前というお話でございますから、それはいわゆる証券取引法上の有価証券報告書、届出書によるディスクロージャーの話ではなくて、この銀行法の中の説明書類の縦覧というような規定であろうというふうに今考えたわけでございますが、ここは、十二年前に私ども事務当局が金融制度調査会の議論を踏まえましてつくりました原案では、このディスクロージャー、各銀行のいわば営業内容の説明書類をつくらなければならない、罰則は特になかったかと思いますが、いわば義務規定であった。それから、そこの記載事項というのは大蔵省令で定めるというふうに、記載事項を指定しておる、そういうような規定をっくろうとしたわけでございます。しかし、それは当時非常にいろいろな議論を呼びまして、法律案として国会に御提出申し上げたものは、義務規定ではなくて訓示規定とする、それから大蔵省令で記載事項を定めるというようなことではないというような内容でございまして、それにつきまして国会の御承認をいただいた次第でありました。  そのときに、なぜ義務規定ではなくて訓示規定にしたかという理由でございますけれども、そこは、記載事項を一々決めてそれを義務づけるというようなことでは、むしろその義務づけられた記載事項の範囲にその開示の内容というものがとどまってしまう、それよりもむしろ必要的記載事項というものを法令で定めることなく各銀行創意工夫にゆだねる、それがかえって私企業としての金融機関に重大な責任を負わしめて、創意工夫を凝らし合うというようなプラス面が働くというふうに期待したということであったかと思います。  その後、実はやはり十何年たっておりますうちに、最初のころは記載事項を。一々申し合わせるということはしないようにしようということでスタートしたはずであったのでございますけれども、やはり多年この制度を運用しておりますうちに、銀行界でいわば最低水準の必要記載事項というようなものを申し合わせるというふうに現実にはなっております。かつ、その項目は年々前向きに増加しておる、ディスクロージャーのいわば必要的範囲というものがどんどん拡大しておるということにはなっておりますが、例えば先般来御議論がありましたような不良資産なり不良債権の問題につきましては、これは理論的、実務的になお研究すべき余地が多々あるために、本年はそういう意味での銀行界の意向がそろうには至らなかったわけでございます。ただし、法律の制定のときの考え方でありますところの各銀行の自発的な創意工夫を促すという趣旨は変わっておりませんので、そのような必要的記載事項にあえて限ることなく、銀行の自主性、銀行経営判断が許しますならばそのほかにいろいろと開示項目をつけ加えるということは各銀行の判断でできることでございますし、また、事実そういう努力をしておる銀行の例も見られるわけであります。そのようなことから考えまして、この昭和五十六年以来の運用の状況はまずまずではなかろうかというふうに私どもは考えております。
  57. 早川勝

    ○早川委員 そういったことで訓示規定にとどめ、そして反面で金融機関の自主性にゆだねた、そしてそれが今日まで非常に前進をしてきたという局長の答弁ございましたけれども、そういったことを考えますと、いわゆる全銀協、きのうも会長が参考人として出席されたわけですけれども不良債権の情報開示問題でやろうとしたんだけれども一年先送りだという事態が起きた、それは大蔵省がとめたからだといった新聞の記事もありますし、雑誌にもそういうことが載っているわけですが、こういったことを考えますとどうも釈然としないわけですけれども、そのあたりをどう考えられているか。それだけでは仕方のないことですので、このディスクロージャー問題について、あわせてこれからの取り組みの来年度に向けての段取りを紹介いただきたいと思います。
  58. 土田正顕

    土田政府委員 大蔵省が圧力をかけたというような事実はないということを毎々申し上げておるわけでございますが、実はこれは、全銀協の中での議論の場といたしまして経理専門委員会拡大委員会でいろいろと議論をしたという実績はあるようでございます。しかしそれはメンバーの間の意見がいませんでした。やはり金融秩序にも影響があると考えられる問題でもありますし、それからある程度の準備期間が必要だという議論も理解できるし、この「理解できる」というのは協会長が記者会見で言っておる言葉でございますが、そういう議論も理解できるし、実務的にも、担保の再評価を行い、より正確なものを開示したいとの意見もあり、この三月期に全銀協傘下の各行一斉にということは難しいということに相なったわけであります。  私どもは基本的にこのディスクロージャーの前進を期したいと考えておりますが、そのためにはいろいろと専門的な立場からの検討も必要である、この不良債権問題もその一つであるというふうに考えておりますので、これは金融制度調査会の中に作業部会を設けまして、理論的にも実務的にも十分実用にたえるような仕組みを工夫していただきたいというふうに考えております。  なお、この作業部会は第一回会合を六月五日に開催する予定でございます。また、当面、検討のテーマといたしましては、利用者におかりやすいディスクロージャーのあり方などを予定したいと考えております。  今後、このような作業部会の研究の成果も踏まえまして、ディスクロージャーについて一層の前進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  59. 早川勝

    ○早川委員 きのうの館先生のお話でもあったわけですけれども、今回の制度改革の大きな柱はディスクロージャーだと言われたですね。ところが、今の局長の答弁を伺いますと、六月五日が作業部会の第一回だ、そこからスタートして具体的な中身、どういう開示項目にするのかということを整理していくんだ、こう言われたわけですけれども、こういった本体である法案審議するときに、やはりこういったものこそ必要じゃないかと思うのですね。どういった項目を今度は開示するんだ、ディスクローズしていくんだということがあって初めて市場の透明性だとか公正性が確保されるというふうに私などは考えるわけですけれども、この作業部会を含めましていつごろそういった作業が進んでそれなりの結論が得られるのか、ある面でいえばそれまで待っていてもいいのじゃないかという感じがしないでもないのですけれども、その点いかがですか。
  60. 土田正顕

    土田政府委員 実は不良債権情報に限って御説明をいたしましたところそのようなお疑いを招いたと思うのでございますが、全銀協におけるこのディスクロージャーの内容というものは年々発展をしておりまして、現にこの三月期決算に関する全銀協のいわば統一開示項目は、従前の、前年度の六十一項目に実質七項目を加えて六十八項目となるというように着実に前進を見ておるわけでございます。ただ、その中の一つの議論として、不良債権の定義や担保評価の方法等実務面の詰めが間に合わなかったということで、いわゆる不良債権情報の開示は間に合わなかったものでございます。  この不良債権情報関係につきましては、基本的な方針としては全銀協では平成五年三月期から開示するということを考えておるようでございますし、私どもの方の金融制度調査会作業部会も、これは最終報告になりますか中間報告になりますかそこはわかりませんが、本件につきましてはそれに間に合うように結論を得るということを期待しておるわけでございます。
  61. 早川勝

    ○早川委員 三菱銀行が八九年九月にニューヨークの取引所に上場した場合に、いわゆるSECの基準、それに基づいて公表した、ディスクローズしたということがあるわけですけれども、こういったことを考えてみますと、これからの作業部会で議論されていく中で、そしてまた今日まで、今六十八項目ということを言われたわけですけれども、このSECが期待しているようなそういった内容まで大蔵省として考えられて、そしてまたそういった方向を求めていく考えがあるのかどうか、伺いたいと思います。
  62. 土田正顕

    土田政府委員 議論が錯綜いたしましてやや御説明しにくい面もございますが、SECの問題につきましては、それに対応するものは銀行法ではございませんで、やはり証券取引法上の有価証券報告書、届出書系統の項目であろうというふうに考えております。  なお、このSEC基準とこの全銀協の統一開示基準とをいわばできる限り比較対照いたしますと、確かにこのSEC基準にまだ達していない部分もございます。その辺が今後の毎年の検討課題になろうかと思うわけでございます。  ただ、一つ申し上げておきたいと思いますのは、銀行法にありますような規定によって自発的に開示を促すということであるにもせよ、金融機関の特殊性としてその業務内容の積極的な開示を説明書類の縦覧という形で促しておるという国は、私の知るところでは日本以外にはなさそうでございます。どちらかといえば、アメリカもそうでございますしそれからヨーロッパ諸国もそうでございますが、会社法系統の規定によって開示内容を定めておるというのが通例であり、我が国では証券取引法の規定がそれに当たるというふうに考えられるわけでございます。  なお、この十二年前の銀行法上のディスクロージャーの規定を考えつくに当たりまして当時非常に参考といたしましたものは、バンク・オブ・アメリカがディスクロージャーコードをつくるというようなことがございました。これが金融制度調査会でもいろいろ議論になっておったわけでございます。ただ、このディスクロージャーコードなるものは、バンク・オブ・アメリカが外部からの照会があった場合にこの部分までは開示できる、開示してよいというようなことを部内的に定めたいわば銀行の内規でございまして、そこに書いてある開示できるものをすべて一つ資料にまとめてバンク・オブ・アメリカが当時開示しておったということではなかったようでございます。その点に比べれば、銀行法上に特別の規定を設けまして、それによって統一開示項目を含めて自発的な開示を促しておるというのは各国に例を見ない前向きな制度になっておるというように私は考えております。
  63. 早川勝

    ○早川委員 これとの絡みで、格付を専門機関の代表者が話されているのを見ますと、これからの日本が、金融機関銀行がディスクローズする中身の一つは、銀行業務、特に日本の場合そうだと思うのですが、例えば日銀との取引条件等の公表も考えるべきじゃないか、考えるのが望ましいといった指摘がございます。そういったことを考えますと、今回のこのディスクローズ、そして何をディスクローズして、我が国金融機関のディスクロージャーというのはこういうものだというのが、新しい子会社方式を含めましてつくられるわけですので、それとのまさに二本の柱じゃないかと思います。  そういった意味で、ある意味で前向きなディスクローズというのを考えていかなければいけないのじゃないかと思いますが、改めて大蔵省としてこれだけはぜひやりたいな、ディスクローズしたいな、そういった前向きな項目がございましたら出していただきたいと思います。
  64. 土田正顕

    土田政府委員 ディスクロージャーに前向きであるという一般的な態度を繰り返し申し上げておりますが、当面具体的には話題になっております不良債権情報とか子会社に関する情報とか、そういうようなものが課題として考えられると思います。  ただ、ここで別の面につきましてちょっと御説明させていただきますと、やはり銀行金融機関として信用秩序の一翼を担うものでございますから、これは銀行法の説明書類の縦覧を規定いたします第二十一条に明文で書かれておりますように、「ただしこということでただし書きがございまして、「信用秩序を損なうおそれのある事項、預金者その他の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び銀行業務の遂行上不当な不利益を与えるおそれのある事項並びにその記載のため過大な費財の負担を要する事項については、この限りでない。」というふうに規定されておるわけでございます。その事項が具体的に何を指すかということは、これはやはり運用を積み重ねることによってだんだんと範囲を絞っていくということしかないと思いますけれども金融機関にはそのような一面があるということ。また、例えば銀行法の第二十三条で、商法に規定がございます株主の帳簿閲覧権を「銀行の会計の帳簿及び書類については、適用しない。」というふうに規定しておりまして、これもやはり信用秩序ないしはその個別の取引者の秘密を害するというようなおそれに備えて特別に設けられた規定であるというふうに私どもは理解しておりまして、その銀行の営業内容のディスクローズには、ただいま申し上げたような別の一面からの制約もあるという点は申し添えさせていただきたいと存じます。
  65. 早川勝

    ○早川委員 今の局長の答弁を伺っていますと、いみじくも引用されているのですが、アメリカはディスクロージャーが三〇年代に本格的に確立された。こういった中で、ディスクロージャーというのは何かということを非常に的確に表現しているわけですが、すべてを太陽の光に照らし、市場に決めさせるというのがアメリカの考え方です。それに対して、やはり我が国においては、古くから言われているのですが、よらしむべし、知らしむべからずという、極めて対照的だというふうにとらえているわけですけれども、結局は、どういった内容にしていくのかということにつきまして、今局長がいろいろな条件を置かれたわけですね。まさに運用のところでこれからもやっていくということを言われていたと思いますが、余り進歩がないのじゃないかなという印象を持ちます。今回の改正というのは、国際化だとかあるいは市場競争云々、こう言われている。そういった反面、やはりまだまだ残っている残滓があるという印象を持ったことを指摘させていただきたいと思います。  最後になりますけれども、ぜひ大臣に伺いたいのですが、これからの社会を考えますと、時間短縮の問題が非常に重要になってきております。この委員会でも再三指摘されていると思いますが、サービス残業の問題だとか、あるいは過労死の問題等々が指摘されていると思います。  労働省が委託調査をした資料を見ますと、昨年の一月でありますけれども、所定外労働の社内的計画があるのかどうかという調査項目があります。この場合の金融業は、係長等の調査になっているわけですけれども、一カ月の所定外労働の計画がある。つまり、その日その日にやるのではなくて、初めから所定外労働が決められている。それぐらい仕事をしなければいけないということを意味していると思うのですけれども、それだけ労働時間短縮の問題ではおくれているのじゃないかという感じを持ちます。  そしてまた一所定外労働時間に対する支払い状況というのを見ますと、百二十二人の金融業の働く人の回答なんですけれども、残業手当等が完全に支払われているというのは五八・二%だ、こういう数字なんですね。それ以外の人は、一部は支払われている、あるいは全然支払われていない、こういうことがあります。  それから、休みですね。代休取得状況を見ますと、同じ百二十二人の人が、必ず取っているというのは三六・一%ですから、三人に一人は必ず取っているけれども、三人に二人は取っているとか取らないとか、そういう形になるわけですね。  こういったことを考えてみますと、労働時間短縮のこういった時代の趨勢、そしていろいろな雑誌を含めまして、非常に過労死、長時間、時間があるようなないような、いわゆる労働時間自主申告制というのですか、そういったシステムでもってサービス残業もある、その温床になっているという指摘もございます。  それからもう一点は、社会党を含めまして、野党共同でいわゆるパート労働者のための法案を出しているわけですね。パートで仕事をしている人も対等に扱うべきだ。パートタイム労働者が非常に急増して、約八百万とかあるいは平成二年現在七百二十二万、既にこういった数字が出ているわけですけれども金融業界銀行におきましても女性のパートで働いている人が非常に多い。ある面で、そういった人で支えられているということも仄聞いたしております。  そういったことを考えてみますと、トータルとしての労働時間の短縮、サービス労働をなくす、そして女性パート労働者に対する労働条件の改善、こういったことが必要だし、緊急に迫られていると思いますけれども、最後に、大臣のそれに取り組む姿勢を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  66. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘のございました時間短縮あるいはサービス残業の問題につきましては、全国銀行協会連合会、ここにおきまして、労働行政当局の御指導ですとか、あるいはこの国会の御論議を踏まえまして、その改善について検討しておるというふうに承知をいたしております。  また、今御指摘がありました中で、一部の個別銀行では、自主調査に基づきまして、時同外賃金の不払い分について追加支給を行うなど、各金融機関の自主的判断により適切な対応をしているものというふうに承知をいたしておるところであります。  しかし、いずれにいたしましても、労働行政にかかわる問題でございますけれども、私どもといたしましても、金融機関というのはやはり公共性の高い免許法人であるということでございまして、その営業活動におきましても、やはり社会的な批判というものを受けることのないように留意するということは重要なことであろうと思っておりますし、また各種法令などの遵守、これは特段に努力をしてもらうことが必要であろうというふうに考えまして、私どもも今後そういった点を念頭に置きながら指導をしてまいりたいということを申し上げたいと思います。
  67. 早川勝

    ○早川委員 終わります。
  68. 太田誠一

    太田委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  69. 太田誠一

    太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡辺嘉藏君。
  70. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 金融制度改正の十六法の法案審議に初めて入らせていただくわけですが、持ち時間が一時間半ですので、ひとつ効率よく、それこそ効率よくやらせていただきますので、政府側も御協力いただきたいと存じます。  大蔵大臣にまず聞きますが、金融界では今、七五三という言葉がはやっておると言われておりますが、御承知ですか。
  71. 羽田孜

    羽田国務大臣 この間にバブルの崩壊によって含み益というものが逆に減ってしまった、そういった中で、たしか、それぞれが回復していくのに、銀行あるいはノンバンクそして証券、こういったものが七年、五年、三年ということであろうというふうに思っております。
  72. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 さすが大蔵大臣で、よく御存じだと思うのですが、昨日の朝日新聞で、興銀の常務をやっていらっしゃって今経済評論家の久水宏之先生がそのことを言っていらっしゃるのです。「業績が回復するまで、ノンバンクで七年、銀行五年、証券は三年かかるという意味だ。銀行は本来、「母」のようなものだと思う。表舞台には出ず、主役である製造業やサービスなどの企業をはぐくむというのが主な役目だろう。それなのに、バブル時代には、自分がチャンピオンになってしまった。ひたすら量的拡大を進め、利益を増やした。しかし、バブルの崩壊で、今、そのしっぺ返しを受けている。」中略いたしますが、「これからは、ひたすら競争するという時代ではないのでは。限られた資源をどう配分するか、という視点が大事だ。大銀行と、中小金融機関が、それぞれの特徴を生かしながら、「すみ分け」を考えていく時代だ」こういうふうに見ていらっしゃるが、まさに私もこれを前から言っておるとおりで、同感のつもりで今読み上げた次第です。  そこで、まず第一に、日銀さんもきょう来ていただきましてありがとうございました。日銀さん初め大蔵省に聞かせていただきますが、今不況は深刻にじりじり進行しておるわけでございます。倒産件数におきましても、金額、件数ともに増加いたしまして、この四月の倒産件数は前月比一二三%増で千二百三十九件、それから金額で一六四%増、九千七百六十六億円となっております。不況回復のために、克服のためにも、公定歩合は昨年の七月一日より六%から四回引き下げて現在三・七五%になっておるわけですが、これによって、大蔵省資料によりますると、都銀、地銀、第二地銀、信金それぞれ六・四、六・五、七・一、七・二と下がってきたのだ、こういうふうにおっしゃっていますけれども日銀としては公定歩合を引き下げられることによって貸出金利がどれだけ下がったとお思いですか。
  73. 福井俊彦

    福井参考人 お答え申し上げます。  金利の低下の状況につきまして、いつの時点から金利が下がったか、時点のとり方によって数字はいろいろ異なりますが、公定歩合との関係で今お尋ねがございましたので、最初に公定歩合の引き下げが行われました昨年の七月一日、その時点以来最近時点までの銀行貸出金利の低下幅というとらえ方をさせていただきますと、一番最近時点で計数が判明しておりますのはことしの三月でございます。昨年の七月一日以来ことしの三月末までの比較でいきますと、全国銀行の新規貸し出しの約定平均金利は、短期の貸し出しだけで見ますと一・八四四%ポイントの低下でございます。絶対水準は七・九五〇%から六・一〇六%に下がっております。それから、長期の貸し出しだけでとりますと、下げ幅が一・五一六%ポイント、水準では七・八〇一%から六・二八五%に下がっております。長短合わせました全体としての約定平均金利の下がり幅がこの間一・七六%ポイントでございまして、これも御参考までに絶対水準で申し上げますと、七・九一七%から六・一五七%に下がっているわけでございます。  三月末までの計数を申し上げましたので、この間の公定歩合の通算引き下げ幅は一・五%でございます。その後、四月冒頭の引き下げがあったわけで、市中の貸出金利も四月以降さらに急速に下がっているというのが現状でございます。  なお、もう一つ参考までに申し上げますと、三月までの公定歩合引き下げ幅が一・五%、今申し上げましたとおり銀行貸出金利の低下幅が一・七六%でありますので、公定歩合の下げ幅以上に今回は銀行貸出金利がこの間下がっているということでございます。これは過去の金融緩和局面では見られなかったことでございます。これは、金利の自由化が進みまして市場金利の低下が急速に進む、したがいまして、公定歩合の引き下げ幅以上に貸出金利が下がりやすくなっているということが実績としても出ておりまして、金融緩和の効果がそれだけ上がりやすくなっているということでございます。
  74. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今、景気の回復その他についてはある程度底をつき始めてこれから上がるのではないかと言われておりますが、私が知る限りにおいては、深刻な不況はこれから来る。そして、私が関係しておる幾多の中小企業、下請企業は、まさに、受注量が半減した、あるいは八割減になったというような深刻な事態が起きておるのが実情なんです。  こういうふうな意味合いで、金利がこのように下がった下がったと今おっしゃいますが、下がったのは、長プラは余り下がらずに、短期プライムレートとコールが下がっておる。これが顕著なんです。このことは、私が昨年一月からの統計を見ましても、あるいは七月からの統計を眺めてみましても、これが異常に下がったのです。要するに、短期プライムレートとコールレートが非常に下がっている。それからCDも下がった。三カ月物の定期です。こういうようなことが、貸出金利が本当に下がっただろうか。実感はないのです。なぜか。私が計算いたしましていろいろな角度からこれを分析してみたわけなんですが、下がった下がったというものの、これは下がったのではなくて、この一月から三月までの分についてはコールが下がったりCDが下がったりあるいはまた短期プライムレートが下がったことによって、むしろ銀行業務純益に反映したのではないか、むしろここへはね返ったのではないか、こういうふうに私の分析は出たのでございます。  ちなみに、今それぞれの銀行の業績純利益を調べてみますると、既に御案内だと思いますが、住友銀行が二千九百九十五億円の業績純益で一三%前年対比増、以下三和が二九%増、富士が二七%増、第一勧銀が四一%増、三菱が三一・七%増、さくらが九六・五%と倍に近く膨れ上がっておるというのが業績純益の実情なんです。このような景況の中でこういう純益が出たのは、昨年の十二月から下がってきておる公定歩合の引き下げがここに凝縮して金融機関を救済したがごとき結果が反映したのではないか、こういうふうに考えられますが、どうですか。
  75. 福井俊彦

    福井参考人 お答え申し上げます。  まず、金融機関の業績の前に金利の低下状況について一言だけコメントを追加させていただきますが、ただいま委員の御指摘で、長期プライムレートはことしになりまして一-三月の間には余り変化がないじゃないかという御指摘でございます。実は先ほども申し上げましたとおり、今回の金融緩和局面では、市場金利が短期も長期もともに金融の緩和の先行きを先取りいたしまして先行して下がる、そういう形をとってまいりましたので、長期の市場金利は昨年の末までに相当急速に低下をいたしました。したがいまして、長期プライムレートもそれまでの時点にかなり大幅に低下したという事実を一つ御報告させていただきたいと思います。したがいまして、私どもの認識では、銀行貸出金利は短期プライムレート、長期プライムレート、さらにそれを含んだ全体としての貸出約定平均金利、短期、長期ともに先ほど申し上げましたとおりかなり大幅に下がっているという認識でございます。  それから、ただいまお尋ねの金融機関の業績との関連、これと金融緩和政策との関連というお尋ねでございますけれども、確かに委員指摘のとおり、金融機関平成三年度の業務純益は、ただいま個々の銀行ごとに御説明なさいましたけれども、都銀全体をくるめて見ますと前年比業務純益が三一・五%の増益というふうな形になっております用地方銀行でも同様でございまして、二四・八%の増益というふうに記録していることは事実でございます。ただ、その背景は、個々の銀行ごとに多少事情はもちろん異なるわけでございますけれども、全体を通じて観察できるところは、全体としてそれなりに量的増大の効果があったということが一つは言えると思いますし、それに加えまして資金ディーリング益など国際業務部門の収支が好調であったということでこれら業務純益の増加はかなりの部分説明ができるということでございます。  ただ、御指摘のとおり、今回の金融緩和局面におきましては、銀行の調達金利が下がる、それも先ほど申し上げましたとおり金利の低下局面におきましては市場金利が先駆けて下がる、これは自由金利の時代の最大の特徴でございます。したがいまして、調達金利が先行的に低下するという姿が出るわけでございまして、これが金融機関にとって多少の循環的な局面という位置づけにおいて収益効果をもたらしたということは事実であろうと思います。しかし、これは先行き、金利の上昇局面におきましては逆に、今度は市場金利が先行して上がる、逆の影響金融機関の収益に出てくる筋合いものでございまして、こうした側面からの収益の増加というのは循環的、経過的な性格のものだという性格づけで御理解いただく必要があるというふうに思います。  それで、金融政策上の金利引き下げ措置と申しますのは、その効果金融機関その他経済のあらゆる主体に影響を及ぼしまして、結果としてインフレなき持続的な成長軌道に経済全体を誘導していくというところにねらいを置いておるわけでございまして、金融界等特定の業界を利するというふうな趣旨で行っているものでないことは改めて申すまでもないところでございます。
  76. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 計数的にそういうふうに把握していらっしゃることは、私はもう少し現場中小零細の、六五%の付加価値を上げておるこういう中小企業実態から少し離れておるんじゃないか。なぜか。金利が自由化した、だから大口預金の金利も下げますよ、そのかわり貸し出しも下げますよ、これは大企業では通じるけれども中小企業では通じないのですよ。そして、中小企業は六五%の日本経済の付加価値を上げておるということ、このことを御理解いただくと、私が現場で接しておる深刻な貸し渋りの状態と、金利が下がっておらない実情と、そして仕事が落ち込んでおる実情、これが御理解いただけるのじゃないか。公定歩合が下がったところを上の方が先取りしていった、銀行が先取りしていった、私はそういうふうに認識をしておりますので、そこで三つ目にこのことはぜひお聞きしたいわけです。  私は、今の状態で、深刻なこれからの後半期に向かっていくこの景気の回復は、消費も落ち込んでおりますからなかなかできないのではないか。だから、これがためには少なくとも三・七五をもう〇・七五下げて三%くらいに思い切ってして、今経済のいわゆるSFリセッション、複合不況と言われておりますね、これは金融資産を含めたストックとフローの部分と両方合わせた不況がダブルで来ておるんだ、こういう実態から見ても、私はこの際公定歩合をもう一度思い切って下げて、そして景気の回復の底支えをまずすることと、これが完全に中小企業のところまできちっと貸出金利が低下していくように、これは日銀大蔵省も指導、監視をしていただく必要があるのじゃないか、こう思うのですが、この点について二つお尋ねをしたいと思っております。
  77. 福井俊彦

    福井参考人 貸出金利の低下状況につきまして一言だけ追加的に御報告をさせていただきます。  ただいま銀行貸出金利は、今回は金利自由化を背景として公定歩合の引き下げ幅以上に低下してきているし、現在も低下しつつあるということを御報告申し上げましたけれども、加えまして中小企業に対する銀行貸出金利でございますが、これも、例えば都市銀行貸出金利それから地方銀行それから第二地銀協加盟の銀行あるいは信用金庫といったところの貸出金利の低下の状況を比較してみますと、過去の緩和局面で都市銀行の低下幅に対して大体どれくらいの感じで、そうした中小企業金融を旨とする金融機関の金利の低下状況はどうであったか、実績はございますが、その実績対比との関係で見ますと、今回は都市銀行に対しましてそうした中小企業向け貸し出しのウエートの高い金融機関の金利の低下幅というものは、過去の実績以上に下がっていることも事実でございます。そのことをまず御報告いたします。  お尋ねの主題でございます金融政策の当面の運営でございます。  景気の現状は、ただいま委員から御説明を賜りましたとおり中小企業の業況を含めまして、足元の国内の景気の状況というのは、全体として、現在ただいまは在庫調整の動きが本格化して生産抑制基調が相当強まっている、企業マインドも慎重化しておりまして先行きの展開をまだ模索中ということでございますので、今は調整局面が確かに最も厳しい時期にあるやというふうな状況であることは否めないと思います。  それから、この先を見ましても、そうした個々の企業状況をうかがったりあるいはマクロ的な観察をいたしましても、製造業の設備投資が減少傾向にある。それから、消費の面でも耐久消費財の需要が、過去数年間非常に大きく伸びた後だけに、ちょっと、一服状態にあるというふうなことから在庫過剰感も強い。そういう意味では、景気の調整局面がなおしばらく続かざるを得ない、そういう厳しい見方を前提とせざるを得ない状況でございます。  しかし、そうかと申しまして、お先全く真っ暗かと悲観的にばかり物事を見るべきかというと、必ずしもそうではなくて、幾ばくか先行きの展望につながり得る要素はやはりある。個人消費を見ましても、あるいは非製造業の設備投資の動向、あるいは住宅投資の動き、あるいは公共事業執行の状況、特に地方公共団体の単独事業がこのところかなり活発に行われている等々の状況、こうした状況をあわせ考えますと、むしろ現在のように企業が厳しい生産抑制基調を続けていけば今後在庫調整が次第に進捗していく、そしていずれ在庫調整一巡のめどがついてくれば経済が底を打つ展望につながっていく、そういう展望も可能だというふうに言えるわけでございます。  これまでかなり金利は低いところに下がってまいりましたので、その金利低下の効果、それに加えまして先般政府におかれてとられました一連の措置、これらの効果もそうした局面でより強くその力をあらわしてくることが期待できるわけでございますので、私どもとしては、当面そうした措置効果をしっかりと見守っていく、その姿勢が肝要ではないかというふうに考えているところでございます。
  78. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 先ほど地銀を初め信用金庫その他が前の局面のときょりは非常に下がっておる、こういうふうにおっしゃいましたが、これは昨晩も担当者の方と夜遅くまでやったのですよ。これは十二年前のあの第二次オイルショックのときの後の問題なのです。あの後なのです。昭和五十五年なのですよ。十二年前のことなのです。あのときの原油の価格とレートの問題、そういうような問題を関連して考えたときに、今度の下がり幅は、私は決して異常に下がったというようなことは考えておらない。だから、そういうような意味合いで、慎重に今の状況を眺めて、こういうふうにおっしゃるけれども、そんなものは眺めておるうちに行き詰まってしまう危険の方がまだ多分にある、私はこういうふうに考えますので、これは大変押し問答になりますのでこの程度で、私は零細な企業家あるいはまたそこで働く勤労者の立場、そういうものをこの機会日銀にお伝えをしておきますので、ひとつ今後の政策決定にぜひ参考にしていただきたい、こう思う次第であります。  引き続いて、この金制十六法の問題で、銀行が今度は証券に参入できるという問題が、この子会社その他を通じて垣根を低くするということで出てきたわけです。この中で幾多、ユニバーサルバンクの利点を挙げておられるわけですが、むしろこのユニバーサルバンクの実態は、先ほど久水先生のあの論文を借用するまでもなく、日本の土壌として、日本銀行のあり方としては私は好ましいとは思っておりません。  西ドイツの大手建設会社でありますBM社が、メーンバンクがWest・LBであったわけですが、この建設会社のBM社の経営が悪化しておるということをメーンバンクは知った。その場合には追加融資をするのではなくて、この不良貸し付けを避けるために六千二百五十万マルクの新株を発行いたしまして、そしてこれを投資家に売った。それがために七九年にはこのBM社は倒産をした。投資家は損して預金者は保護された。御案内だと思いますが、これは一つのケースなのです。  こういうようなことは一体であるから起きたわけですが、この反面、しからば子会社にしたらそういうことを防げるのかどうか。ファイアウォールについてはもう何回も論議をされておりますのでこれ以上私も今の席では深く言いませんけれども子会社であったところで親会社から出向したりしておる者が当然親の気持ちを反映するのは、これは心の中ではじくじたるものがあっても、これは人情としてやむを得ないのではないか。防ぎようがないと私は思うのですね。こういうような意味合いで、この子会社方式をとって、幾ら十一項目のこの審議会の規制、法的には三項目打ち込まれたけれども、これの効果は私は疑問に思っておるのですが、この点、間違いありませんか。
  79. 松野允彦

    松野(允)政府委員 確かに御指摘のように、今回の場合は親子関係ということになるわけでございまして、親子関係の親と子の関係を利用したいろいろな取引が行われますと、これは今例示として挙げていただきましたような弊害も起こり得るわけでございます。アメリカの場合にもそういうようなことが起こったということでございます。そういうことにかんがみまして、いろいろな弊害防止措置を用意しております。法律には御指摘のように三つ書いてございます。あと、証取審報告で示されております残りの八項目については原則として省令で規定をしたいというふうに我々は思っているわけでございます。  そういうようなことによって、ともかく弊害防止措置法律あるいは政省令で明定をする。さらにそれにつきましては、これは証取法上はあくまでも証券市場におきます取引の公正を確保するための弊害防止措置であるという位置づけでございますので、これは今度新しくできます監視委員会が監視、検査をするということになります。しかも、その検査の結果、もし違反が見つかれば、証取法に基づいて是正命令が出されるなり、あるいは行政処分が行われるということになるわけでございます。  そういったことを考えますと、確かに御指摘のように親子ということでどうもいろいろ暗黙の問題が起こり得るのじゃないかということでございますが、証券取引の市場でそういうようなことが行われますと検査の端緒というようなものもやはり何らかの形で明らかになるというようなことが、公開市場でございますから、かなりそういう意味での牽制効果というのは相当働くというふうに考えるわけでございまして、私どもとしては、やはり今申し上げたような仕組みで弊害防止措置を用意することによって新規の参入を促進し、証券市場の活性化を図るということが必要であるというふうに考えているわけでございます。
  80. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 現在、証券会社に対して銀行がどの程度支配しておるかということにつきましては、これはもう今さら私が申し上げるまでもございません。この点につきましては、系列の銀行を含めまして主なところだけを拾ってみたわけですが、明光証券の住友系で占めておる株式は四二・三%、会長、社長以下八人を住友銀行等から送り込んでおる。あるいはまた丸万証券については、東海銀行が二一・六%、会長、社長以下八人をまた送り込んでおる。大東証券、これは富士銀行系ですが三六・九%を占めておる、社長ほか六名を送り込んでおる。あるいはまた、そのほか丸和証券、興銀系で二六%。山文証券が埼玉銀行系で四〇%、その他、これは数え上げれば切りがないのです。要するに三〇%も四〇%もその系列で押さえておる。銀行は五%ラインがありますので、それ以上出しておりませんが、その関係の系列がみんな出しておれば、そんなことは一緒のことなんです。  あるいはまた銀行と証券の力関係を眺めてみると、今日の保有株数に対する比較を見ましても、銀行が現在、都銀、長銀、信託銀行等を合わせて株式を五百六十二億株保有しておる。証券会社は、これは大手四社しか拾ってありませんけれども、八億しか保有しておらない。あるいはまた証券企業への役員の派遣を見ましても、銀行は千二十人、大手証券では十七人、こういうふうにあらゆる面で大きな格差が生じておることは御承知のとおりなんです。昨年の三月の申告状況を見ますると、上位十二社の申告状況の中で銀行が住友銀行を初め六社、そして野村証券が一社、こういうふうな実情なんですね。こういうところから考えましても、今日の銀行が証券を支配し、と同時に証券そのものをも手中におさめておるような実情なんです。あわせて、そのほかの企業銀行と証券がどのように役員を派遣し、資本を持っておるか、これもまた格段の差があるのです、もう一々挙げておられませんが。  こういうことを見ますると、この際また新しく制度、道を開いて、金融機関に証券子会社をつくったり、相互参入をさせる、これ以上のことをすると文字どおり寡占金融機関による日本株式会社ができてしまうのではないか。私はこれは決して好ましくないと考えるわけですが、この点どうですか。
  81. 土田正顕

    土田政府委員 銀行と証券との地盤がそろっていないのではないかという御指摘でございますが、やや話をさかのぼって恐縮でございますが、今回の制度改革のねらいは、いろいろございます中の最も大きなねらいは、利用者の利便ということであろうかと思われます。そのために適正な競争を促進するには、どういう観点からか相互乗り入れを図る必要がある、これが今度の制度改革の骨子でございます。ただし、そのときに気をつけなければいけない点として、一つは、やはり競争条件の公平性といいますか平等性というか、そこに気をつけなければならない。その観点から生み出した方式がいわゆる業態別子会社方式というものでございます。  それからもう一つ観点は、いろいろな意味での弊害の防止ということであろうかと思われます。その弊害の防止ということを論じますときに、委員の御指摘のポイントは、一つには個別の証券取引についての弊害の防止であって、これがいわばファイアウォールその他の仕組みに関するものであろうと思われます。それからもう一つは、いわば銀行なるものが持っておりますところの総合的な力、経済の中における支配力、そういう議論もあろうかと思われます。そこにつきましては、これも何回もこの委員会で御議論があったところでありますけれども、私どもと申しますか、むしろ公正取引委員会が例えば毎年我が国の六大企業集団の動向を計量的にもフォローしておりまして、それで従来に比べて、例えば都市銀行の他のメンバー企業の株式についての平均持ち株率とか他の企業への役員派遣状況、役員派遣比率とか、それからその企業集団メンバー企業の借入金の中での同じ企業集団の中の金融機関、代表的な都市銀行などがおると思いますが、それからの借入金の割合、すなわち借入金依存率とか、今度は逆に銀行貸出金総額に占める同一企業集団内のメンバー企業への貸出金の割合、すなわち貸出金依存率とか、そのようなものを定量的にフォローしておるものというふうに私どもは承知をしております。それで、以上申しました四点につきまして、いずれも最近においてこれらの比率が著しく上昇しておるというようなことはないというふうに、私ども公正取引委員会資料からも理解しておるわけでございます。これにつきまして、もちろんいろいろな御意見はございますけれども金融制度調査会の平成二年の中間報告などを見ましても、「まとめ」のところに、「銀行企業との関係は、最近においては、相互に独立性を保っている、いわゆるイコール・パートナーの関係に近くなっていることから、これを「企業支配」と呼ぶことは必ずしも適切ではないとの意見か多かった。」というような指摘もございます。ここのところはいろいろ我が国経済構造、企業構造との関連で議論のあるところでありますけれども、少なくとも私ども公正取引委員会が問題意識を持って恒常的にこの辺の動向を把握しておるものだというふうに理解をしておるわけでございます。  なお、戻りますが、個別の取引行為における弊害の防止については、このたび証券取引法及び金融業法においてそれぞれ規定を設けておるところでございます。
  82. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私もその公正取引委員会のことしの六大グループの調査結果を見てみたのです。すると、下がったような数字がずっと並んでいる。ところが、私が今言っておるのは、証券界についてはむしろ逆に今度はふえておるのです。いいですか、銀行から証券へ行っておるものは、役員も株もふえておる、このことを見逃してはならぬということを私は言っておる。そういうときに、証券の子会社の参入ということが、これはより強い支配体制に入ってくるのではないか。そうすると、間接金融と直接金融銀行が一本で押さえる、こういう市場は決して好ましくない。特に、証券における正常な価格形成の場としての任務もあるわけなのですから、これに銀行が参入するということは果たしていががなものか。  特に、この調査会が昨年の六月の報告書を答申したわけですが、ことしの一月のものを見てみましても、こういうことを述べておるわけです。金融制度改革を実施し、競争を促進し、利用者のニーズに合った多様な金融商品の提供を可能にすることにより、利用者利便の向上を図るとともに、金融効率化を通じて国民経済全体の効率化といった、間接的にまた消費者に利便を与えるのだ、こういうことを言っておりますが、そもそもこれをつくった初めは昭和六十年のあのスタートからこれを審議に入ったのです。あのスタート時代は、言うまでもなくバブルがいよいよスタート進行という最盛期の間にこれのいろいろな論議が大分費やされて、去年の六月に答申が出た。それからまた、一連の金融・証券不祥事によって低下した金融機関や証券市場に対する国民の信頼を回復するためには、金融・証券市場における競争を促進することが求められている、これがまたことし付言されて出てきた。この考え方は誤っておる。金融自由化によってメリットもあったけれども、むしろ、そのデメリットの方が多かった。そして、その結果、金融・証券のあの不祥事が起きてきたのだ。やってはいけないというにせの定期預金をつくるようなことで何千億という金が流れたのです。このことはどこから出てきたのか。この暴走的ないわゆるバブルは、自由と効率化、業績拡大と収益第一主義、金もうけ本位なのです。こんなもの、幾ら株価が上がったところで、くぎ一本、家一軒建つものではない。ところが、そういう方向へ走った。今度、この答申を見ておると、こういう不祥事を解消するのは自由化であり効率化だ、冗談じゃない。先ほど申し上げたように、今こそ慎重にこの自由化の成り行きを見きわめる、このことが一番大事なことなのです。今いたずらにここで、もっと自由化してやろう――しからば、この前の証券補てんの問題でも、二千数百万と言われる大衆投資家の補てんがありましたか。あったのは、大企業と大口投資家だけじゃないですか。どうしてありましたか。いつの場合でも、大衆投資家を初めとして、そういう人々が犠牲になった上で不祥事が起きてくる、そういうところへの偏った手当てが行われておる。こういうことから見て、バブル経済の落とし子のようなこういう答申、これに基づく金融十六法の改正は誤っておる。この際、これをもう一遍見直して、出し直すぐらいの勇気が政府になければならぬのじゃないか。特に大蔵省になければならぬと私は思う。なぜかといえば、この責任の一端は大蔵省にもあるからなのです。こういうように思うのですが、この点、考え方が間違っておりませんか。どうですか。
  83. 土田正顕

    土田政府委員 非常に大きな問題点でございますが、今仰せられましたことは、一つには自由化というもの、もう一つは、いわばバブル経済の消長というもの、この二つを総合した御意見であろうと拝聴したわけでございます。  この金融制度の議論というのは、確かに、御指摘のように昭和六十年ごろから本格化したものでございますけれども、これは、いわば中長期的な観点に立った議論でございまして、その背景に日米円・ドル委員会報告書ないしは行革審の答申とかというようなものがあり、それで、広い意味での金融自由化、円の国際化というものを推し進めるために我が国金融制度をどのように持っていったらいいかという、いわば中長期的な観点からの御議論がございまして、それが何年もの長い間審議され、それから、平成三年六月に具体案として答申なり報告がまとめられたということであったかと思います。そのときに、方々、そのころからバブル経済が終わりに近づきいろいろな問題が出たわけでございますが、その問題をとらえまして、金融制度調査会の場合には、ここでさらに審議を継続いたしまして、「金融システムの安定性・信頼性の確保について」というビジョンをまとめたということであったかと思います。  その際に打ち出しました一つ考え方は、金融システムの安定性を害するようなこのような事件が起こった一つの原因は、適正な競争が十分でなかったということがある。もう一つの原因は、これは申すまでもありませんが、各金融機関が業容の拡大に気をとられ過ぎて足元の内部管理事務その他をおろそかにしたことがある、こういう二点の指摘に要約されると思うのでございます。  その前者の、適正な競争を促進するということで最終的な答えとして私どもが取りまとめましたのは、競争促進のための制度改革の実施という改革案、それを具体的に枠組みをしまして、ただいま御説明を申し上げているわけでございます。  それからもう一つの、個別金融機関における内部管理事務その他の刷新ということにつきましては、これはすぐれて業界の個別の自主的に取り組むべき問題でございますが、私どもも鋭意いろいろ指導に力を尽くしましたほか、今回の改革案におきましても、健全経営を維持するためのいろいろな仕組み、例えば自己資本比率その他の経営諸比率の根拠を法律に求めるその他の、いわば健全経営担保するための規定を入れておるわけでございます。  そこで、この自由化の論点とバブルの論点との接点でございますが、この辺でもう一遍立ちどまって成り行きを見るべきではないかという御議論も確かにあると思いますけれども、これにつきまして、自由化というのは整合的に各分野にわたって手際よく進めていかないと、例えば預金金利の自由化のみを推し進めてほかの方をくぎづけにするというようなことでは、しょせん自由化は進まないし、かえって弊害もあるというようなことは実はあるかと思うのでございます。先ほど御披露いたしました「金融システムの安定性・信頼性の確保について」という報告の中でもこのような記述がございまして、すなわち「現行の縦割りの金融制度の下では、金融機関利用者のニーズに的確に応えられない、あるいは金融機関としての機能や潜在的な能力を十分に活かし得ないといった状況となっている。」その次でございますが、「今回の金融不祥事の原因として、金融機関が限られた分野で歪んだ競争を行わざるを得なくなるにつれて、現行の業務分野規制に対する必要性にも疑問が抱かれ、その結果、規制・監視の目をかいくぐって業務を行うようになるなど、金融機関のルール尊重に対する意識が希薄になったことがあるのではないかと考えられる。」というように論じまして、「適正な競争を促進することは、金融システムが安定的で国民の信頼に応えるものとなるための重要な前提である。」という提言もいただいておるわけでございます。  自由化の展開は中長期的な問題でございますが、それとこの当面のバブルの後始末という課題とを結びつけまして、適正な競争を促進するための骨組みをつくり上げることがこの際重要であると私どもは考えているものでございます。
  84. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 文書の読み上げは少なくしていただきたいと思います。これは私も読んで、間違っておると思ったのです。なぜか。先ほどからくどく申し上げた。すなわち、自由な競争をする場合には力関係なんです。五千ccのものは強い、五百ccの車は弱い、そんなことは当たり前のことなんです。そうすると、先ほどから何回もくどく申し上げたところの金融機関証券会社、その他の企業、その他の力関係を眺めたときには、今の金融支配体制というのは絶対的なものがある。そんなものは何とも抜きがたいものがあるのです。この力関係を無視したものはあり得ない。だから、必要なセーブもするとおっしゃるけれども、では、これから二、三、しからば金融機関がどういうことをやったかということについて、不祥事件はまだ十分明らかにされておらないというような観点から、私は一つ一つ聞いていきます。  そういうような意味で、自由競争をさせることで不祥事がなくなるのだということはかえって間違っておる、こういう観点から、先日、富士銀行に来てもらいまして、冨士銀行から私はいろいろな話を聞いたのです。その中身の一つは、昨年、架空定期預金の不正事件が富士銀行で発生いたしましたが、その後どうなっておりますかということを聞いたのでございます。この赤坂支店における二千五百七十億の不正融資事件、これはノンバンク十三社を通じて中村元赤坂支店長が架空定期預金証書をつくって行いましたので、これは銀行としての使用者責任を認めて二千五百七十億を十三社に支払い、その上で融資先を調べ、その担保を徴したので、欠損となるのは二百億であります、こういうふうに富士銀行の責任者が参りまして私に説明をしていきました。昨年の八月の事件以後、大蔵省は当然検査、指導、監視をされたと思いますが、事実はこのとおりですか。
  85. 土田正顕

    土田政府委員 赤坂支店等三支店の偽造預金事件にかかわる事故金額は、当時は二千六百十四億円というふうに聞いておりましたが、ただいま御指摘になりましたように、二千五百七十億円を十三社に支払った。それでそのときに、事件発生時におきましては担保等の徴求により回収不能額は二百億円と見込んでいたということはそのとおりでございました。
  86. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 違うよ。後で検査をされたが、今の説明のとおりですかということを聞いておるのですが、どうなんですか。  第一、二百億でしたという説明だというようなことは、局長、おかしいじゃないか。ここに、去年の証券不祥事のときの特別委員会に出した資料には二百五十億と書いてあるじゃないですか。二百億というようなことをそのまま真に受けてオウム返しにおっしゃるというようなことは不見識じゃないですか。ここに二百五十億と書いてあるじゃないですか。どうなんですか。
  87. 土田正顕

    土田政府委員 二百五十億と二百億との数字の違いについての御質問でございます。  二百五十億というのは、当時のいわば被害見込み額、つまり、とりあえずの告訴額であった。しか鳥これは赤坂支店のみについての金額であったかと思います。ただいま二百億円と申しましたのは、その時点よりも若干後に担保等の徴求による回収不能の見込み額としてその銀行が持っておった見解でございます。
  88. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 不正融資をするために証券を偽造してまで行わなければ融資が受けられない方々が、後から担保を徴求したら二百億になりました、こういう検査をしたのですか。この点をまず聞きます。  それと同時に、その後の検査をされまして、私の調べによりますと、一千億を有税対象にして償却をしておる、こういうことが明らかなんですが、この点はどうなんですか。
  89. 土田正顕

    土田政府委員 一つは、二百億円云々については、これは検査ではございませんで、私ども行政側が報告を受けておるところでございます。  それから、次に償却でございますが、富士銀行ではこの三月期決算時において、関連貸出先の経営状況担保実態などを検討の上、一千億円弱の償却を行っております。  なお、検査についてのお尋ねでございますが、検査は昨年十月二日を基準日として行っております。
  90. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 検査されれば当然この中身はわかっておったはずですね。そうすると、この一千億を償却したということ、これは有税で、税金対象で償却しておるということですが、ここでお聞きしたいのですけれども、富士銀行のこの三月の決算で経常利益千六百二十二億と出ておりますが、これは一千億を償却した後の金額で、当期利益三百二億円というのは、その償却後、税を差し引いた残りであると理解していいのですか。
  91. 土田正顕

    土田政府委員 第一点の一千億は有税償却であったかということでございますが、端数はございますが、約一千億円、これは有税償却であります。経常利益、当期利益を算出するにつきまして、この部分は、つまり償却部分は損失として計上され、いわば経常利益を圧縮する方向に働いておるということ、それから最終的な当期利益は法人税等を差し引いた残りの金額として公表されておること、これも御指摘のとおりであります。
  92. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 そうすると、私はおかしいと思うのですね、株主に対しても、あるいはまた社会的な公共性のある銀行が一千億も有税償却をした、これは非常に不可解な出来事だということ。  時間がありませんので次に進んでいきますが、しからば、この二千五百七十億をノンバンク十三社に配ったというのですが、この表は、オリックスを初め、レディセゾン、コスモ信用組合、シャープ、昭和リー又等、ここに十三社あるのですが、この十三社が対象ですね。
  93. 土田正顕

    土田政府委員 有税償却をしたこと自体につきましては、過日、この大蔵委員会で御審議がございまして、そのときに私どもは、有税償却を含めて積極的に前広に不良債権の償却に取り組むよう促したいというような御説明を申し上げたこともございます。この有税償却はその一環でございます。  それから、十三社というお話がございましたが、十三社のほかに、対象としては金融機関二社がございます。
  94. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 しからば、今度一千億は丸晶興産の赤城明関係者、この関係の中から一千億を有税償却した、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  95. 土田正顕

    土田政府委員 償却事務につきましては、検査と関係なく私どもの方の行政の一環として処理しておるところでございますが、償却の内容、個別の内容につきましては、特定企業に対する個別具体的な問題になりますので、御説明は差し控えさせていただきたいと存じます。
  96. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 いつの場合でも、いざとなると守秘義務と銀行の自己保身でこういうものは出てこない。こういう不透明がそのまま残っていくのが今の大蔵省実態金融界の実態じゃないですか。  それじゃ今度聞きますが、千五百七十億残っておる、これはまともな融資なのですか、不良債権なのですか、どっちです。
  97. 土田正顕

    土田政府委員 先ほど申しましたとおり、赤坂支店等三支店の偽造預金事件にかかわる事故金額、二千六百十四億円でございまして、今回有税により一千億円弱の貸出金償却を行い、残りが約千五百億ございます。これにつきましては、担保の処分等を含めその回収に努力中であるというふうに報告を受けております。
  98. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私は、先ほど、十三ノンバンクのほかに二社の銀行があるとおっしゃったのですが、二社の銀行があるならこの二社の銀行も明らかにしていただきたい。これが一つ。  いま一つは、千五百七十億、これは今回収に努力しておる。先ほども申し上げたように、にせの預金証書をつくらなければ借り入れができなかったノンバンク銀行を相手にして、そういう融資先が、後から担保を何番にくっつけたか知らぬけれども、今私も調査しておりますが、五番、六番、八番につけたのか知らぬけれども、そんなものにくっつけて担保価値があると思いますか。バブルの時代で百万円の土地が七十万か六十五万に下がった今日、その裏づけをそのときにとらずに、今どきとった担保担保価値があると思いますか。そんなもの、明らかに不良債権です。不良債権で、明らかにするならこの千五百七十億も、一千億有税で償却したというのだから、それならこれも明らかにすべきじゃないですか。そうでなければ、先ほどから何回も申し上げたように、相手は。既に検察庁に逮捕されておるわけですが、そういう人の財産が果たしてまともに生きておるのかどうか、運営できておるのかどうか甚だいかがわしいのですが、私は明らかにこれが不良債権なんだ、こう思うのですが、どうですか。
  99. 土田正顕

    土田政府委員 これまでいろいろ報道その他委員会でも議論されましたとおり、富士銀行は事件の発覚後、事故に係る金額を貸出金などに切りかえ、その際に極力その保全のための担保保証の取りつけに努力をしたものでございます。その際の担保保証につきましては、例えばその後若干担保価値が値下がりをしたとかいうような状況の悪化がございまして、見直しをいたしまして、その中から今回回収に懸念があるという額について有税償却をしたわけでございますが、なお、現時点での取引先の経営状況担保実態から見まして、残る約千五百億円につきましてはその回収になお努力すべき段階であるというふうに考えておるという旨の説明を受けております。
  100. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 この事件と前後して発生したのが大阪の府民信組なんです。これから大阪府信と言いますが、この不当融資と不当債権問題なんですが、イトマンの伊藤元常務と許永中の合作による不正融資で大阪府信が行き詰まった状態の中で、富士銀行は数百億円の資金の支援と行員十一名、融資部長を含めて富士から出向させた、そして昨年の五月二十九日に再建案を総会に提示した。それによりますると、許永中、伊藤らに関連する不良融資九百五十億円は分離する、それから南野理事長の新千里ビルと富士銀行は共同で出資をして新千里興産を設立して、富士銀行支援による資金援助のもと債権回収に当たる、こういう再建案を提示して総会は終わったわけなんですが、しからば、この債権回収が確実に進んでおるのかどうか。そして、富士銀行は大阪府信から肩がわりした金額と、それに新千里ビルヘの融資、新千里興産への融資等々を合わせると、私の計算によると千三百億となると思うのですが、これについてはどうなっておりますか。
  101. 土田正顕

    土田政府委員 次は、大阪府民信用組合の再建についてでございますが、これは、当時の再建計画によりまして大阪府民信用組合に対する再建支援総額は、御指摘にもありましたが、千三百億円でございます。このうち、富士銀行の支援額は特・定大口債権の分離会社、これは一社でございますが、それに対して約九百億円、それから大阪府民信用組合に対する金融支援といたしまして二百億円、合計約一千百億円であるというふうに聞いております。
  102. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 しからば、この九百億円と府民信組への二百億円は、今度の決算上損金ですか、それとも資産に計上してあるのですか。
  103. 土田正顕

    土田政府委員 三月期の決算で償却されました約一千億円のうちには、ただいま申し上げました中の特定大口債権の分離会社に対する九百億円の支援額の一部分が含まれております。ただ、特定先に対する具体的な金額の答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  104. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 この九百億円の大部分は、今問題のイトマン関連の伊藤・許永中事件なんです。そんなもの返ってくるはずがない。と同時に、先ほど申し上げた赤坂支店のあの二千五百七十億の不正融資、両者合わせれば、二千五百七十億と千三百億合わせれば三千八百億円という巨大な金がおかしいのですよ。とすると、先ほど一千億だけは有税償却をされた、今のこの九百億を含めて一千億だとおっしゃった。そうすると、千五百億とその残りの部分の二百億を合わせると千七百七十億になるわけですが、これも危ない。あるいはまた、九百億の残りの部分も入れれば二千億を超えるのですが、この部分も償却対象ではないのですか。もしこれを償却すれば、三百二億の当期利益は消滅するのですが、どういうことになるのですか。
  105. 土田正顕

    土田政府委員 ちょっとひとつ御説明を繰り返しますが、九百億円全部が償却されたわけではございませんで、その中の一部が含まれておるというふうに申し上げたわけでございます。  それから、償却すべきではないかというようなお話でございますけれども、これはやはり債権現状判断によるということであろうかと思います。実を申しますと、今度有税償却をいたしましたのも、まだ法人税基本通達によるところの無税償却ができるような客観的な条件が整っていない、したがいまして無税償却はできない状況でございますが、その内容を見まして、税金を負担しても、この際、実質的に貸し倒れ処理することが相当であると認めたものについて踏み込んで有税償却をしたということでございます。  なお、そのほかの金額につきましては、実質的に見ましてもそのような貸し倒れ処理することが相当であるという状況には達していないということでございますので、もちろん今後の見込みがどのようになるかということはその回収の努力及び成果のいかんによるところもございますが、現段階では償却することは早過ぎるというか、適当でないという判断に立ったものと思われます。  有税償却につきましては、私どもは原則として個別の金融機関の申し出を受け入れるというような形でございますので、無税償却の場合と違いまして、積極的に償却を個別に指導するというようなことはいたしておりません。
  106. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それは、口ではそうおっしゃるけれども、実際には指導していらっしゃる。指導せずに銀行だってどうやっていいやらわからぬのが実情じゃないかと思うのです。  ここに大阪府信の再建についての発表文がありますが、これに必要な資金は富士銀行において融資する、あるいはまた富士銀行と新千里ビルグループが共同出資で新千里興産をつくって回収に向かう。回収できましたか。この四日後にこの責任者をやる南野理事長が逮捕されておるのです。回収は進みましたか、どうですか。  先ほどの一千億については、有税償却したのは、税法上にいわゆるいろんな無税扱いをするときの条件がありますから、その条件に適合しないとおっしゃいますが、私の調べた範囲内においては、これは少なくとも債権償却引当金勘定には該当すると私はにらんでおるのです。とすると、半分は税金は助かるんです。二分の一償却すればいいんです。と同時に、こういう中身が不安定だということは、これは何らかの手段で明らかにすることはいいのです。そうすれば、法人税法での申告上のあの別表を書くときにこれを直せばいいのです。  私は、そういうことをなぜやらずに、こういう有税で一千億やってしまったか、そしてあと残りは、私は、こんなものもうあがんに決まっておる――あかんに決まっておるということは訂正いたしますけれども、非常に危険性のある不良債権であるという確信を持っておるのです。もしこれがひっかからなかったというなら、後でまたいつかの審議で答弁してもらってもいいのですが、本当にこれがここに書いてあるように回収しておるのかどうか、あるいはまた、百億だけは富士銀行が償却したということも私は聞いておるのですが、この点はどうなんですか。富士銀行が償却したというのです。大阪府信の問題です。
  107. 土田正顕

    土田政府委員 いわゆる二分の一無税というやり方も確かにございますが、それも法人税基本通達に適合する条件である必要がございます。ごく概略として申しますと、形式基準にょりまして破産なり和議開始なりの申し立てがあったかどうか、これが重要でございますが、現在のところそのような申し立てはございませんので、形式基準に該当しないわけでございます。  それから、この有税償却は、具体的には百億円程度のものを償却したというような話も耳にしておりますが、私どもまだ正確にその状況を現在把握しておりません。
  108. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 もう正確に把握していらっしゃるけれどもおしゃべりにならない、これが大蔵省であり、いつもの銀行の、私がいつも言う守秘義務と自己保身なんです。まだそのほかにもいろいろあるのですが、時間がないので次に飛びます。  では、日本抵当証券会社というのがありますが、この社長の牧口徳幸さんという方は富士銀行から派遣されているのですが、そうですか。
  109. 土田正顕

    土田政府委員 御指名の社長は、富士銀行の役員をやっておった人物でございます。
  110. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 この日本抵当証券は、八九年三月末の融資額が二千七百二十五億円、九〇年三月四千七百八十六億円に倍増、九一年三月八千二百三十八億円とこれまた倍増しておる。ことしの三月一兆円を超えたと言われておる。これは富士銀行が出しておると言われておるのですが、ノンバンクが事業縮小の今日にここだけが、抵当証券業法に基づいてつくっておるこの会社、六十二年にこれらの規制措置法律化したのですが、こういうことが今まだどんどん進んでおるのです。これはどういうことなんですか。
  111. 土田正顕

    土田政府委員 ただいま融資残高についての御指摘がございましたが、九〇年三月、九一年三月は大体御指摘のとおりであると私ども理解しております。ことしの三月は御指摘ほどの伸びはしていなかったというふうに理解をしております。  ただ、いずれにいたしましても、平成元年度、二年度非常に高い伸びが続いたわけでございますが、これはノンバンクの中でもいわゆる抵当証券会社でございまして、抵当証券業務につきましては、一般的に業界全体ともほぼこの日本抵当証券と大差ない伸び率を本年三月期でも示しておるところでございます。この抵当証券業務は、次第に一般に普及いたしまして、中小企業者及び個人事業者の資金需要と相まって、業界全体としてそこそこの伸びを示したものであろうというふうに見られるのでありまして、この会社のみが突出しているわけではございません。
  112. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私もほかを調べてみたのですが、こういう突出はここだけなんです。いいですか。そして、この富士銀行の資金が流れ込んで、これが不良債権一つの飛ばしの場になっておるのじゃないかとさえ言われておるのです。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕 これは、これからの調査で明らかにしていきますけれども、こういう事実と、いま一つは、そのほかにもまだ証券における山種証券の問題、コスモ証券の問題、興銀の問題、野村の問題、いろいろあるわけですが、時間がありませんので飛ばしますけれども、こういうことがまだ不解明のまま、不透明のままこの金融制度によってまた自由化をやろうじゃないか、こんなことは私は非常に危険があって、そんなことに軽々に賛同することはちゅうちょせざるを得ないので、あくまでこの金制十六法、慎重審議をすべきであるという考え方は変わらぬわけなんです。  それとあわせて、今度の中でぜひ二点だけ聞いておきたいことは、今度の金制法によって新しい商品が、コマーシャルペーパーその他、CARDSあるいはまた住宅ローン、そういう新しい中間商品をつくります。また、できてくるそれの対応をします。これの有価証券化によって証券扱いします。こういうことになってくるわけですが、私は、昨年の自己破算がカードローン等を中心にして二万四千件あったということで非常にショックを受けておるんですね。こういう不安定ないろいろな要素を抱えながら、またもやこういうカードローン等を一つの材料にした新しい証券を発売をするということ。住宅ローン、住金も危ない。危ないというより不安な要素があると言われておるときに、こういうような新商品をどんどんつくる、そういうことを投資家はそれほど望んでおるだろうか。  私がある人に、あなたはワラントをやったことあるがと言ったら、いや、ワラントはやらなかった。なぜか。信用取引は今までの経験でやってきたけれども、ワラントは難しいのと、怖い。長年やってきた、三十何年やっていらっしゃった方でさえ敬遠したのです。それに新しいこういうものをどんどん導入するということがいいのかどうか。  先日も、テレビに出ましたけれども、松下電器がこういう縮小の時代だからということで、三百種類持っていた冷蔵庫のパターンを二百種類に圧縮することにした。むしろ商品を減らしておる。商品というよりパターンを減らしておる、これが実情なんです。こういうようなときに、こういう新商品をどんどんつくるということについての問題点。  それから、いま一つついでに聞いておきます。そういう新しい商品ができれば、その商品はいいのかどうか、発売元はいいのかどうか、こういうことが一般の投資家にはわからないんです。カードは発売した、買ってみた、そのカードを発売したところが消えてしまった、パンクしてしまったということはないとは言えない。こういうことは非常に危険である。それがためにアメリカなどでは、もう言うまでもありませんが、格付機関というものが長い歴史と信用を持っておるのです。この格付機関は、アメリカにおいてはスタンダード・プアズだとかムーディズだとか、いろいろなものが独立して自主的に中立に機関連営をして、そして大衆投資家その他消費者の期待にこたえておるわけなんです。日本の格付機関は三社あるわけですが、日本格付研究所、日本インベスターズサービス、それから日本社債研究所、この一番後に申し上げたのは日経の直系の会社ですから、これは別に考えていいのじゃないか。そうすると、日本インベスターズと日本格付研究所は、興銀、日債銀、都銀、地銀、それから生保、信託、日長銀、東銀などの金融機関がそれぞれ出資して、それぞれが役員を送ってつくっておる。金融機関がこんなものをつくって、まあ言いようは悪いのですが、競輪、競馬における予想屋のように格付をやってそれを材料にする。いろいろなデータを求めようと思ったところで、こういうような、この格付機関に対する今の銀行のいわゆるひもつきの状態で、そして開示制度が十分でない自本の土壌で、こういうものをどんどんと洪水のごとくまた流し込むということは、売り出すということは甚だ危険であり、むしろ慎重を期さなければいけないのじゃないか、私はこう思うのです。この二点お願いいたします。
  113. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今回、証券取引法を改正いたしまして有価証券の定義を見直すということにいたしましたのは、確かに御指摘のように、いろいろな金融の証券化に伴って出てまいります新商品というものに対応するためでございます。もう既に日本でもコマーシャルペーパーが出ておりますし、あるいはアメリカから日本に持ち込んできておりますのがCARDS、これはアメリカの金融機関がカードローンを証券化したものでございます。それから、国内でも住宅ローン債権が証券化されて、一部の機関投資家の間で取引が行われているわけでございます。こういったようないわゆる金融の証券化というものは、我々抑えようとしても抑えられるものではないわけでございます。むしろ、今のように証券取引法の適用外のところでこういうような新商品がどんどんできていくということに我々非常に問題意識を持っているわけでございまして、今回の改正によってそういう商品を証取法上の有価証券として位置づけまして、御指摘にありましたようなディスクロージャー、つまり十分な情報提供を行うということが必要ではないかというふうに考えているわけでございます。特に、証券化に伴って出てまいります新商品というのは、いわゆる資産金融型証券と言われております一定の資産を裏づけにして発行されるという商品でございますので、そのディスクロージャーに当たりましては、その裏づけとなっている資産というものが一体どういうものでどういう内容のものかというような点について、かなり細かいディスクロージャーを要求する必要があるというふうに思うわけでございまして、そういう点を通じて、その裏づけとなっている資産のリスク度といいますか、リスクがどの程度あるかというようなことを含めて開示をするということが必要だと考えております。  それから第二点の、そういうようなものを発行する発行者の信用の問題がございます。これは一つには、今申し上げたように、ディスクロージャーによって開示されます情報をどこまで詳しくし、それで投資家が判断できるようにするかということに加えまして、今まさに御指摘のございましたように、そういう情報を専門的な立場で分析するいわゆる格付機関というものが必要でございます。格付機関は、日本の国内の会社としては三社ございます。確かに出資関係銀行などが出資をしているものが多いわけでございますけれども、しかし、この格付機関の中立性あるいは公正性というものはいわば格付機関の一番重要なポイントでございまして、そういったことから、各格付機関に対しましても、私ども従来から独立性、中立性というものを高めていくようにいろいろと指導をしております。例えば格付の決定に当たりまして、各社とも格付委員会という合議制による格付決定をしております。そういうことで、できるだけいろいろな判断を交えて格付を行う。あるいは大事につきましても、外部の有識者を入れたような委員会をつくって人事を行うとか、資本面については出資関係があるわけでございますが、いろいろな点で格付機関各社が独立性を高めようというふうに努力をしております。やはり格付機関のつけます格付というものが一番外に出る指標でございまして、それが適正な格付ができなければ、市場で評価をされるわけでございますので、今のような格付機関の独立性あるいは公共性を高める努力というものにあわせて、私どももできるだけ格付機関を何とかいろいろな面で強化して、一般投資家が非常に複雑な情報を判断しなくても、それを専門家が判断することによって投資判断ができるように持っていくのが望ましいというふうに思っているわけでございます。
  114. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 時間がありませんので以下剤りますが、最後に一つだけ、労働金庫その他の問題についてちょっと聞きたいのです。  労働金庫が昨年の決算で二百四億円の税引き前の利益を出したわけなんですが、その利益のうちの五十九億円は事業外の株その他の利益、それから六十三億円の不動産処分等の利益、合わせて百二十億のものが入っておるわけなんですね。ですから、もしそういうものを二百四億円から引きますと、八十三億円しかないんです。これが実情なんです。バブルも崩壊し、株の利益、不動産処分その他が問題になっておる今日、労働金庫もそうです、信用組合もそうなんです、それぞれの分野、地域においで特性を生かさせてやる、こういう立場からは、今の労働金庫の四九%の預貸率、ちょっと今上がったとおっしゃっておるけれども、労働金庫の分野であるところまで都市銀行は、サラリーマンに三十万、五十万の庶民金融までやっておるんです。労働金庫の分野にどんどん入ってきておる。しかし、労働金庫は昨年の十二月、政令で福利厚生施設だとかあるいはまた生協には出してもいいということになりましたけれども、そんなことではいけない。むしろ時間短縮に必要ないわゆる設備改善資金だとかその他には貸し出ししてもいいような枠を広げてやらなければいけない。信用組合においてもしかり。そして農協等についても私はそういうことを考えておるわけですが、これはぜひひとつ大臣も一考いただいて、労働金庫の事業分野を拡張する、あるいはまた信用組合その他における事業分野も拡張してやる。と同時に、先ほど申し上げたように、いたずらに相互参入して、そして垣根を低くして、自由競争の名のもとに寡占、独占の金融体制をつくるよりは、先ほどの久水先生もすみ分けとおっしゃったが、私はむしろある程度分割して、地域、業域、職種に合わせたそういう機関を、公正な競争によって、適正な競争によって健全に運営させることが一番必要なんではないか、こういうような意味合いで、最後に今のことも含めて、それぞれの関係者とともに大臣のこれに対しての御所見を承りたい。そういうような意味で、私はもっとこれは慎重審議をする必要がある、こういうふうに考えておりますので、その点を付言しまして質問をいたします。
  115. 土田正顕

    土田政府委員 大臣の御説明の前に、多少この事実関係を申し上げます。  まず第一点は、この中小企業向け融資拡大についてでございますが、これは御指摘のとおり、昨年十二月の労働金庫法施行令の改正におきまして、総貸し出しの二割の範囲内で会員以外の者に対する貸し出しか認められておりますが、その中から労働者に対する福利厚生資金に限りこれを認めたところでございます。実は、これを一般の収益事業のためというように拡大いたしますことは、労働金庫法上のその目的に照らしまして、若干根本的な検討を要する部分があると存じます。その点がいわゆる中小企業者その他の自主的な組織であります信用組合などと違っておるところでございます。その限りでは労働金庫は専門性のある金融機関であるというふうに位置づけられておると言うことができると思います。  それから、そこに例えば労働組合の組合員その他勤労者に対する個人融資なら個人融資という面につきまして、労働金庫が行います活動都市銀行その他の金融機関が行います活動が競合するということは、これは現実に起きておるかと思いますが、これを差しとめて一般の銀行が勤労者に融資をすることを制限するというわけにはさすがにまいらないわけでございまして、そこのところはやはりこの個人向け貸し出しにおいて相互乗り入れ的な現象が必然的に進むということは、この世の中の流れであろうと思うわけであります。  ただし、一言申し添えますと、このたび各業態を通じましてその業務範囲を広げ、ある意味では相互乗り入れ部分を非常にふやすわけでございますが、それはそれぞれの金融機関なり、例えば証券会社も含めてそれぞれの金融業者がみんな同じようになるということを予定し、それを期待しているということでは全くございません。やはり同じような業務範囲の中であっても、自分の金融機関に向く地盤、客層それから能力、それを総合勘案いたしまして基本戦略を立ててそれぞれ営業する。その結果、制度的ではないかもしれませんが、自然に実態的にすみ分けができるということも何ら妨げるわけではないのでございます。むしろ諸外国あたりを見てまいりますと、法律上はそのステータスに何ら違いはないにかかわらず、やはりそこでおのずからなるすみ分けをしてきたというような国も多々あるわけでございまして、私どもは今度の改革によってすべての金融機関を全く個性のない同じようなものにするというようなことを意図しておるものではございません。
  116. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま渡辺委員の方から一連の問題等につきまして御指摘がありました。確かにバブルのときのあれというのは改めて異常な動きであったなということは思わざるを得ないということであります。そういう中で内部管理というものが、怠ったといいますか、徹底しなかったというところにやはり問題があろうと思います。しかし、そういう中でも間違いなく一つの時の大きな流れ、これは国際化の問題、ただの流れというだけで済む問題じゃありませんけれども、しかし実際にボーダーレスという中で、金融も完全に国際化が進んでおるということでございます。また、いろいろな証券化が進んでおるということでありまして、それぞれの金融機関のニーズ、こういったものにこたえていくことが必要であろうということで、今局長の方からもお答え申し上げましたように専門制ですとかあるいは分業制、今先生の方からすみ分けというお話があったわけですけれども、こういった特性を生かしながらも、やはりそれぞれの金融機関あるいは証券、そういった皆さん方がみずからの特性を生かしながら、その中でやはり新しい道を探っていくということが非常に重要なことであろうというふうに考えておるところでございまして、ぜひともこの法案を一日も早く通過させていただきたいということを重ねてお願い申し上げたいと思います。
  117. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 終わります。
  118. 太田誠一

    太田委員長 宮地正介君。
  119. 宮地正介

    ○宮地委員 最初に大蔵大臣に少し基本的な問題から伺ってまいりたいと思います。  今回の金融制度改革また証券制度改革につきまして、まずその基本となる答申と今回の制度改革法案、この関係について、大蔵大臣金融制度調査会あるいは証券取引審議会、この答申を尊重するに当たって、答申それ自体に対してどのような見解を持っておられるか、まず伺っておきたいと思います。
  120. 土田正顕

    土田政府委員 まず金融制度調査関係で御説明申し上げます。  金融制度調査会は昭和六十年九月以来約六年の歳月をかけまして金融制度の研究を行ってまいり、その間随時中間的な報告を取りまとめてまいったところでございますが、昨年六月に「新しい金融制度について」といういわば審議結果の取りまとめの答申を提出いたしました。さらにその後、御高承のような各種の金融システムの安定性、信頼性を疑問視するような事件が起こり、改めて金融機関経営のあり方が問われますとともに、金融システムの安定性、信頼性の回復が急務になったという認識で、本年一月に「金融システムの安定性・信頼性の確保について」という報告を取りまとめたところでございます。  この二つが今回の私ども銀行関係の各種の法律改正案の骨子になっておりますが、さらにそのほかに若干各業態、殊に協同組織金融機関系統にその例が多いのでございますけれども、その業態の個別の問題点について検討いたしまして、改正を要するという点を拾い上げて総合的に今回の法律案を編集いたしました。  そのような次第でございますので、基本的にはこの金融制度調査会の意見に即した内容になっておるというふうに考えております。
  121. 松野允彦

    松野(允)政府委員 証券取引審議会の報告書について申し上げますと、証券取引審議会は昨年の夏まで三年ほど議論をいたしました。その結果が出ました昨年の六月に出されました報告書の基本的なポイントは二つございまして、一つ金融の証券化あるいは機関投資家の成長発展に伴って、それに対応いたしまして証券市場の機能を強化するということが一つのポイントでございました。それからそれの一環として、有価証券の定義の整備とかあるいは公募、私募の定義の整備が出てきたわけでございます。  それからもう一つの点は競争の促進でございまして、特にその当時は発行市場における競争が不足していたというような指摘がなされておりまして、その競争を促進するために発行市場を中心にして参入を認めていくべきだというような結論が出ております。  その後、いわゆる一連の証券問題の中で、やはり競争が不足しているという指摘、それから証券市場におけるルールが不明確だとか、あるいは監視がきちっと行われていないとか自主規制機能も十分でないとかいうようないろいろな御議論がございまして、そういったものを踏まえまして、証取審では再び昨年の末からことしの一月にかけまして議論をしていただぎまして、その中で適正な競争の促進ということについてのレポートをまとめていただきました。それの適正な競争の促進という中に、株式の売買の手数料の自由化の問題、それから先ほど申し上げました競争促進、これは六月までの議論を引き継いでさらに競争促進する必要性が高まったというような指摘になっているわけでございまして、そういったことから申し上げますと、今回のこの御提出しております改正案は基本的に証取審のこの二つのレポートの線に沿ったものであるというふうに私どもは考えております。
  122. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま内局長からお答え申し上げたとおりであります。
  123. 宮地正介

    ○宮地委員 両局長とも、基本的に沿ったものとなっておるというのが結論であろうかと思います。その基本的に沿ったものであるというのが、国民から見ますと非常にこの答申に比べて後退した法律になっているのではないか、このように目に映っている嫌いが随所にあるわけでございます。  そこで、私は具体的に何点か指摘をしながら質問をさせていただきたいと思います。  まず、金融制度調査会は、昨年来の金融の不祥事の再発防止、この問題について、「行政の透明性の向上等」こういうことで具体的に通達の見直しについて、「行政当局において、通達等の見直しか行われているが、見直しに当たっては、金融機関における自己責任原則の浸透と自主性尊重の観点から不要となった通達等は速やかに廃止するとともに、存続が必要な通達等についても一層の簡素化・明瞭化を図っていく必要がある。」このように一月二十九日の金融制度調査会では答申をしているわけでございます。  具体的に、今回のこの法案化に当たりまして、この通達の見直しに当たって、まず法令化した通達はどのくらいなのか、政省令にゆだねるものはどのくらいなのか、実際に通達としてそのまま現存して残すのはどのくらいなのか、この際通達を廃止したのはどのくらいなのか、この辺を明確にしていただきたいと思います。
  124. 土田正顕

    土田政府委員 銀行関係の通達は、証券市場というようなものを扱うということではございませんので、証券取引関係の通達と多少趣を異にすることはございますけれども、ただいま御指摘になりましたようなそういう考え方も踏まえまして簡素合理化を図ることとしております。  一つは、この中の重要なものについて法令の位置づけを与えるということにつきましては、今回御提案申し上げております中で、例えば自己資本比率規制その他健全経営のための指標を法令に根拠を持ったものにするというのが一つの非常に大きなポイントでございます。さらに、これは親子会社が登場するということもございますが、大口信用供与規制の根拠そのものは従来も法律にございましたが、さらにそれの関係の法令の規定を整備するというようなことも大きな変化であると考えております。  さらに、そのような整理のほかに、この通達の簡素合理化を目的といたしまして、ことしの四月一日付で、これは各種金融業界に共通の預金業務関係、防犯対策関係のものなど百三十一本を五十三本に整理をいたしました。さらに、四月三十日付で普通銀行関係のもの百九十二本を四十三本に整理をいたしました。それからさらに、この普通銀行関係以外につきましては、実はただいま御提案申し上げております法律案が成立いたしますと大幅な内容改正を伴うことになりますため、その際所要の見直しを行う所存でございます。
  125. 宮地正介

    ○宮地委員 今いろいろお話がありましたが、法令化するもの、通達としてそのまま残すもの、あるいは廃止するもの、このいわゆるセレクトしていく基準というのはどういうふうに考えてつくられたのか、どういう基準に基づいてそうしたセレクトをされたのか、その点について伺いたいと思います。
  126. 土田正顕

    土田政府委員 主として通達の見直しにつきましての基準となります考え方を申し述べますと、この基本的な考え方といたしましては、やはり近年の通達等の発出によりまして重複部分の生じているものとか、時間の経過によって意義を喪失しているものとか、個別金融機関の判断にゆだねるべきもの、これらにつきましては廃止統合をするというのが一つございます。  それから、銀行法なら銀行法で基本通達がございますが、基本通達以外のものでそのときどきの必要上個別に出してまいりました通達が随分ございますが、その中で業務運営上の基本事項とか統一経理基準とか経営諸比率基準、業務報告などのものは、極力基本通達へ盛り込んで簡素化を図るということを考えた次第でございます。その他存続すべきものについても、できる限り内容を種類ごとに統合したいということで作業いたしました。  具体的にはいろいろケースがございますが、個別に入り込みますことは省略させていただきますが、一本化を図ったもの、それから統合を図ったもの、それから趣旨の徹底済みにより廃止をしたもの、それから陳腐化により廃止をしたものその他がございまして、個別に何本ということはちょっと省略させていただきますが、全体といたしまして、先ほど申しましたように大幅な本数整理をしたところでございます。
  127. 宮地正介

    ○宮地委員 行政の透明性ということですから、国民が見える形ではやはり法律にできるだけ明記をされるということが、国民から見た場合には非常に透明性としてわかりやすいわけですね。そういう意味で、通達は全体で何本ぐらいあったのか。そのうち、国民の一番わかりやすい法律として今回法案に明記されたのは何本ぐらいなのか。まず、ここのところを教えてください。
  128. 土田正顕

    土田政府委員 実は、最初に証券取引関係の通達とはやや趣を異にするところがあるというふうに申し上げた点についてでございますが、銀行関係の通達は金融機関に対しまして個別に経理基準とか、それから業務報告の様式などを通知するというものが大半でございまして、その限りでは、いわゆる一般国民に余り関係がないものが本数としては圧倒的に多うございます。それから、かつ、法令では共通の規定になっておりましてもその相手の業界ごとに、例えば大型の銀行と小型の信用金庫とを同じように規律する、さらには、同じような様式で報告をとるということは実際上適当でない、そのようなものもございますので、一つの法令に基礎を置くものでありましても通達が各業界ごとに異なって出される、そういうようなものが通例でございます。  そのようなことでございますので、私どもといたしましては、最も重要なものは法令に根拠を置くということにいたしまして、その例といたしましては、先ほど申しましたような経営健全性を確保するためのいろいろな基準、その根拠を法律に置き、さらにその内容を省令その他で明らかにするというふうにいたしまして、さらに、この運用上の報告その他については通達にまつべきところが多い、これはいわば金融行政の一つの必要な道具であるというふうに考えておるわけでございます。  さらに、大口融資規制についても全くそういうことでございまして、大口融資、大口信用供与規制の根拠は法律にございますし、それから、それの適用の仕方の骨組みにつきましては政省令に出ておるわけですが、それのさらに具体的な計算方法などは各業界ごとに計算が違ってくるというようなことは、これは避けられませんので、結局、業界ごとに通達が出てくるというような構成に相なっております。  そのようなことでございますので、ただいまこれまでの作業で申し上げましたのは、先ほど申したような共通事項とそれから銀行関係のみでございまして、そのほかのものにつきましては、なおこの法律の施行までに間に合うように、一斉に改正条文を対照しながら見直しをいたしたい、そういう作業の途中でございますので、明確にまだ本数の見込みを立てるには至っておりません。
  129. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにいたしましても、やはり行政の透明性の向上というこの答申の基本精神に立って、今後とも大蔵省としても国民からわかりやすい法令化あるいは法律化、できるだけそうした面について明快に対応していただきたいと思うのですね。通達行政というのはなかなかこれは国民から見てわかりにくい、政省令においてもなかなかわかりにくい、これが実態であろうと思うわけでございます。  大臣、今局長からいろいろありましたが、証券についても同じでございます。通達行政というものに対する国民の不信というのは、今回の金融・証券の不祥事件の中の非常に大きなポイントであったわけでございますので、この際、できるだけ透明性を高める意味においても、根幹をなす重要事項においては法律化をしていく、やむを得ないものは政省令にゆだねる、こういう姿勢で取り組んでいただきたいと思いますが、所見を伺っておきたいと思います。
  130. 羽田孜

    羽田国務大臣 もう基本的には今御指摘があったとおりでありまして、やはりできるだけ国民にわかるものということで、通達ということよりは法律化していくということで、今証券局の方も銀行局の方もそのために努めております。  ただ、御案内のとおり非常に時代が大きく動く、そして細かい問題で、今そこで措置しなければならぬというような中で通達というものがあったわけです。これが余りにもふえていってしまうということはやはり問題があろうと思って、よくその辺を私どもも認識しながら対応していきたいというふうに思っております。
  131. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、今度は証券取引審議会の答申の中の、有価証券の定義の仕方の問題ですね。包括条項について今回なぜ政令にゆだねたのか、この点について説明いただきたいと思います。
  132. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように有価証券の定義につきましては、証券取引審議会の報告書におきまして、包括条項を設けることが必要であるというふうに一応報告をいただいております。  ただ、その報告におきましても、具体的な規定に当たっては法技術的に規定の仕方を考えていく必要があろうということになっておりますが、今回、有価証券の定義を整備する際にいろいろと検討したわけでございますが、基本的には証券取引審議会の報告書にありますように、投資契約であって流通性のあるものは幅広く証券取引法の適用の対象にするということにしております。  ただ、包括条項につきましては、この法案の作成の過程におきまして、証券取引法が適用になります有価証券ということになりますと、その有価証券が多数の投資家に発行されるという場合には当然有価証券届出書、つまりディスクロージャーということが義務づけられるわけでございます。もしそういうことをしないで発行いたしますと、これはディスクロージャー違反ということで、証取法の罰則が適用になるということになります。さらにまた、そういう有価証券を取り次ぎ、売買いたしますと、これは証券業になりますので、証券業の免許を持たないでそういう営業を行いますと、これは無免許営業で、これも罰則の適用になるわけでございます。  そういうような観点で考えますと、証取法上の有価証券であるかどうかということが一般の人によくわからなければならない。つまり、罰則が適用になるかならないかということになるわけですから、明瞭でなければならないというようなことでございまして、そういう観点からいいますと、余り一般的な包括条項を規定するということは困難であるというふうなことになったわけでございます。  しかし、今回の改正法におきましては、政令指定の基準が明確に書いてあります。したがいまして、従来と違いまして、そういう基準を明確にすることによって、政令指定というものを機動的に行うようにできるということになったというふうに思うわけでございます。
  133. 宮地正介

    ○宮地委員 証券局長のおっしゃるように政令にゆだねたのであれば、証取法の二条一項九号、これも政令ですね、これで対応できたのじゃないですか。政令というのは閣議決定で決めるわけです。要するに、農林水産省とか通産省とか建設省とか各省の利害がいろいろ絡んで、包括条項は難しかったというのは、実際はそこが原因じゃないですか。どうですか。
  134. 松野允彦

    松野(允)政府委員 確かに現行の証券取引法二条一項九号にも政令指定の規定はございます。しかし、これは余りにも抽象的な規定でございまして、何ら基準が明確にされてないというような点がございまして、これで政令指定を行うことは実際にはなかなか難しいということで、政令指定をされたものはないわけでございます。先ほど申し上げましたように、今回の場合には政令指定の基準を明確にしたわけでございまして、そういったことから、証取審の報告書で議論がされておりましたような、投資性があるもの、あるいは投資家の間を転々流通するもの、これは、証券取引法というのは流通の円滑化というものを一つの目的に掲げておりますので、そういったものについては政令指定するということがはっきりと基準として打ち出されております。したがいまして、今のこの極めて抽象的な政令指定の条項ではなくて、より機動的に政令指定ができる、あるいは、こういう性格のものであれば政令指定がなされるというような、いわゆる予見可能性といいますか、そういったものが高まったということが言えると思います。
  135. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに流通性の高いものは政令にゆだねる、こういうのが入りましたから、今局長のおっしゃるように、より具体的に一歩前進はしたと思うのですね。しかし、「包括条項を設けることが必要である。」答申は非常に厳しい答申だったわけですね、「必要である」と。これはやはり答申の精神から見れば後退して見えるわけですね。それはやはり各省の縦割り行政の弊害といいますか、縄張り意識といいますか、そういうものから今回の証取法の法律の中の規制に盛り込むことが難しかった。大蔵省は相当苦労されたのではないかと、私はむしろ大変に同情しているわけです。証券局長は、ディスクロージャーの違反の罰則の問題等取り上げましたけれども、現実は縦割り行政の中で苦労されたのではないのかな、私はこういうむしろ同情的立場であります。具体的にリース債権とか不動産ファンドとか、こういうのはそうすると除外されるのでしょうか。
  136. 松野允彦

    松野(允)政府委員 現在考えられておりますリース債権は、投資家間での流通性がないわけでございまして、私どもは、そういうものは投資家と発行者との関係だということで、先ほど申し上げましたように、あえて転々流通する証券を対象としております証券取引法の適用対象にしなくていいのではないかという考え方を持っているわけでございます。
  137. 宮地正介

    ○宮地委員 今回は一歩前進の形で証取法の第二条一項に入れましたけれども、今後、法運用の中で、この答申の精神に沿って近い将来包括的条項を設置していく努力をされる御決意があるのかどうか、この点は確認しておきたいと思います。
  138. 松野允彦

    松野(允)政府委員 私どもとしては、先ほど申し上げましたように、少なくとも投資家の間を転々流通する証券であって証取法を適用するのが適当である、証取法を適用するということは、いわゆるディスクロージャー、情報を投資家に提供するということと、不公正な取引を規制するという二つの投資家保護の枠組みがあるわけでございまして、そういったものを適用することが適当であるというものについては機動的に政令指定をしていくということを考えているわけでございまして、先ほど申し上げましたような罰則、罪刑法定主義というような関係からいきますと、包括条項を設けるということはかなり難しいということは御理解をいただかなければならないと思います。
  139. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに、構成要件という立場から見れば証券局長のおっしゃるとおりだと思います。しかし、答申の精神というものもやはり重要な、基本的な姿勢でございますから、構成要件をっぺるのが難しいから包括条項はなかなかできないのだと、今から余り否定的な見解を述べておりますと、この精神に反した形で終わってしまうのではないか。きょうのところは、今後の努力を強く要請しておきたいと思うわけでございます。  続いて、「新規参入に伴う問題への対応」のいわゆるファイアウォール、弊害防止措置、これについても答申ではたしか十一項目にわたります内容になっていると思うわけでございます。私が今回出てまいりました法律との関係でいろいろ調べてみますと、この十一項目に対して具体的に法律として出てきたのは五項目ではないか、こう確認しておりますが、間違いないでしょうか。
  140. 松野允彦

    松野(允)政府委員 証券取引審議会の報告書では、弊害防止措置といたしまして二カ所に書いてございます。一カ所は、一般的な新規参入に伴う弊害防止措置というところでございまして、これはたしか十項目潟げでございます。それからもう一項目、これは、銀行子会社の参入に伴う弊害防止措置ということで「銀行がその影響力を及ぼすことができるような企業が発行する証券を、証券子会社が引き受けること」という一項目が追加されておりまして、全部で十一項目でございます。  十一項目のうち法律に規定したのはどれだ。これは数え方の問題でございますが、このうち法律に書きましたのは、役員などの兼任の規制、親子間における有利な取引の規制、親子間におけるいわゆる信用供与との抱き合わせ販売の規制という三つのものを規定しているわけでございまして、報告書に規定されている残りのものにつきましてはできるだけ省令で規定していきたいと考えているわけでございます。数の数え方はいろいろございますが、私どもとしては、報告書に書いてある十一項目のものはすべて何らかの形で弊害防止措置として規定をしていきたいというふうに考えております。
  141. 宮地正介

    ○宮地委員 すべて何らかの形で弊害防止措置を法令化あるいは法律化してまいりたい、これは非常に大事な答弁であろうと思っております。  そこで少し確認しておきたいと思うのですが、今局長がおっしゃいました最初の「新規参入に伴う問題への対応」の弊害防止措置、これは二十三ページから二十五ページに入っているわけでございます。その中の(イ)の「主として新規参入者の経営の独立性、健全性を確保する観点からこということで、(a)の「親会社のリスクが証券子会社に及ぶこと」、これは証取法五十条の二の一号、ここに入ったのではないか、こう考えておりますが、間違いないでしょうか。
  142. 松野允彦

    松野(允)政府委員 私どもの解釈といいますか考え方は、この証券取引委員会の報告書の二十四ページにございます今御指摘がありましたのは(イ)の(a)だと思いますが、「リスクが証券子会社に及ぶこと」、これは直接法律には規定をしておりません。これは、省令段階でどういうふうなことを書くかということを今検討中でございますが、我々が法律に規定をいたしましたのは、その二十四ページの下の方でございますが、(ニ)の(a)「証券子会社と親会社との間で、証券子会社に有利な条件で取引を行うこと」、これが法律に規定をされているわけでございます。
  143. 宮地正介

    ○宮地委員 そうすると、今私が申し上げた「親会社のリスクが証券子会社に及ぶこと」、これは省令で今後行っていく。  (b)の「証券子会社経営が特定の者との取引に過度に依存すること」、これも省令でやる考えでしょうか。
  144. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今の「過度に依存すること」についての規制につきましても、例えばアメリカの場合には御存じのように収入制限というようなものを設けております。そういったようなものを設けるかどうかということで、これも省令に書ければ書きたいということで検討をしております。
  145. 宮地正介

    ○宮地委員 では次に、「(ロ)主として利益相反を防止する観点からこここの「(a)経営不振に陥った企業への親会社の債権の回収に充てるために当該企業が発行する証券を、証券子会社が引受け、販売すること」、これは省令でしょうか。  さらに(b)の「親会社が発行する証券を証券子会社が引き受けること」、これは今回証取法の五十条の二の三号、この省令にゆだねる、ここに入ってくるのかどうか、この点についていかがでしょう。
  146. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘の(ロ)の(a)と(b)でございますが、(ロ)の(a)につきましては、いわゆる証券の発行によって調達したお金、資金がどういうふうになるか。これは、アメリカでは開示をするということを義務づけているようでございますけれども、そういうようなことも参考にしながら、これも省令で規定できれば規定したいということで、今検討を進めております。  それから、同じく「(b) 親会社が発行する証券を証券子会社が引き受けること」、これにつきましても、やはりその御指摘のありました五十条の二の三号の省令という中に規定ができれば規定したい。具体的なその表現なり概念の検討というのは要るわけでございますけれども、そういうような方向で検討をしております。
  147. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、「(ハ)主として市場仲介者間の公正な競争を確保するという観点から、(a) 証券子会社業務を支援するため親会社が証券子会社の取引の相手方に特に有利な条件で取引すること等、親会社が発行会社、投資者に直接の影響力を行使すること」、これは省令でいくというふうに理解してよろしいかどうか。  それから、次の(b)の「証券子会社の親会社が資金の貸付けを行う者である場合には、証券子会社からの証券の購入を条件として、親会社から顧客に信用を供与すること」、これは証取法五十条の二の二号、この対応として今回しておる、こう理解していいかどうか。
  148. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今御指摘の(ハ)の(a)でございます。「特に有利な条件で取引すること等」「直接の影響力を行使すること」、これにつきましても省令で規定をしたいということで検討しております。  それから(b)は、御指摘のように今法律に書いてあることでございます。
  149. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、(ニ)の「その他の措置としてこれは先ほど局長から(a)の「証券子会社と親会社との間で、証券子会社に有利な条件で取引を行うこと」、これは証取法五十条の二の一号、こういう確認ですから、これで間違いないと思っております。  (b)の「証券子会社が引き受けた証券を、引受後一定期間内において親会社が購入すること」、これは省令でいくのかどうか。  さらに、「(c) 発行会社、投資者等に関する非公開情報を親会社から証券子会社に伝達すること」、これは省令でいくのかどうか。  それから最後の(d)は、「取締役等を兼任し、あるいは、店舗を共用すること」、これは証取法四十二条の二と四十二条の三、これに入った、こういうふうに理解しておりますが、間違いないかどうか。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
  150. 松野允彦

    松野(允)政府委員 (ニ)の(a)は先ほど申し上げましたように法律に書きました。  それから、(b)は、これも省令で規定する方向で検討しております。  それから、(c)につきましても、同じように省令で規定したいと思っております。  それから、(d)は今御指摘法律で規定をしたということでございます。
  151. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に十一項目目ですね。局長が先ほど読まれた「親銀行がその影響力を及ぼすことができるような企業が発行する証券を、証券子会社が引き受けることを規制する必要がある。」、これはどういう取り扱いになるのでしょうか。
  152. 松野允彦

    松野(允)政府委員 これが実は一番難しい問題でございまして、いわゆるメーンバンクというふうなものを考えているわけでございますけれども企業に対して影響力を及ぼし得る特別な地位というようなものをはっきりと示すような具体的な基準というようなものを見つけることはなかなか難しいといいますか、幾つか見つけることはできるわけでございますが、それをもって直ちにすべてだということが言えるかどうかというような問題もございまして、これについて一体どういうふうな要因、ファクター、あるいは基準といいますか、そういったものができるかということを今鋭意検討をしているわけでございまして、これについて省令で規定ができるかどうかという点も含みまして、今検討中だというふうに御理解いただきたいと思います。  ただし、いずれにいたしましても、これは報告書でこういうふうに規制する必要があるというふうにはっきりと指摘がされているわけでございますので、私どもとしては何らかの形でこれを規制したい。それは例えば省令でできない場合には証券会社のといいますか、銀行の証券子会社業務のやり方というようなものを規制する、いわゆる業務方法書というようなものを、これも法律上の認可の対象になっているわけでございますが、そういったようなもので規制する、あるいは場合によっては証券業協会の自主ルールというようなもので規制ができるかどうかというようなこともあるわけでございまして、いろいろな具体的な中身の検討とあわせて規制の方式についてもさらに検討をしていきたいというふうに思っております。
  153. 宮地正介

    ○宮地委員 これはやはりメーンバンクの定義づけで苦労されている、こう理解してよろしいのでしょうか。
  154. 松野允彦

    松野(允)政府委員 簡単に申し上げるとそういうことでございます。
  155. 宮地正介

    ○宮地委員 昨日も参考人の質疑の中で、日本証券業協会の渡辺会長は、特に今回の都市銀行などの証券子会社の参入問題等で、ファイアウォールの中で、特にクロスマーケティングの禁止の問題とか人事ノーリターンルールの問題、それから今のメーンバンク規制、この実効性の上がる措置を何とかしてくれないか、こういう強い要請を含めた陳述があったのですが、この点については大蔵省は今回どういうふうに検討されているのか。
  156. 松野允彦

    松野(允)政府委員 メーンバンクの問題に加えまして、いわゆるノーリターンルール、これは、銀行をやめて証券子会社に来た人が、さらに証券子会社をやめた後また銀行に戻るといいますか、そういう問題でございます。  これにつきましては非常に難しい問題がございます。やはり、一回やめて証券会社に来て、証券会社を退職してまた銀行に行くという場合を一切禁止できるかといいますと、そこはなかなか、職業選択の自由などの関係もございまして、一律に禁止できるかというのは非常に難しい問題だろうと率直に思います。これもしかし、業界、市場関係者、今御指摘のようにいろいろと関心を持っているわけでございますので、市場関係者の意見も聞きながら、弊害が防止できるようなことは必要でございますので、それを何らかの形で、今申し上げたような難しい問題と調和がとれるのかどうかという点をあわせて検討したいと思っております。  それから、クロスマーケティングでございますが、これは明らかに我々としては、規制をするといいますか、好ましくないと考えております。クロスマーケティングというのは、一番典型的なのは、銀行銀行員が行って証券の業務をやる、勧誘行為をする、あるいは証券の営業マンが行って預金の勧誘行為をする、こういうようなことでございますので、これはいわば一人が証券業務銀行業務と両方やっているようなことになるわけでございまして、それはやはり弊害防止措置というものを設ける趣旨からいいましても好ましくないというふうに考えるわけでございまして、それは何らかの形でやはり規制をする必要があるというふうに考えております。
  157. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに今の人事ノーリターンルール、これはやはり組合との話し合いといいますか、労使の協定との問題もあろうかと思いますし、非常に難しい問題だと思うのですね。そう簡単に、犬や猫を移動するようにいくわけじゃないのですから、それなりに苦労もあろうかと思いますが、ただ、厳正な公正な競争、こういう立場から見るとやはり業界としてはぜひ、こういう中で大蔵省も相当苦労しているんじゃないかということで、やはり人事のノーリターンルールの作成については当然組合対策も考えての苦労と理解しておりますが、組合問題についてはどういうふうに今考えておりますか。
  158. 松野允彦

    松野(允)政府委員 実は、率直に申し上げましてまだそこまで検討が進んでおりません。もちろん御指摘のような組合問題もあろうかと思いますが、私どもの方はやはり証券市場における取引を公正に行うことができるかどうかという観点からこの弊害防止措置というものを考えておりますし、あわせて競争条件の公平さというようなものも考慮しなければいけないというふうに思っているわけでございます。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、証券関係者あるいは市場関係者というものはこれに対してかなり強い関心を持っております。そういう市場関係者の意見も考えながら、念頭に置きながら、このルールについて、何らかのことができるのかどうかということも含めて検討をしていきたいというふうに思っております。
  159. 宮地正介

    ○宮地委員 弊害防止措置については、十一項目すべてが何らかの形で法律あるいは省令にゆだねるということで、それなりに大蔵省が御苦労されていることは私は多としたいと思います。しかし、アメリカはファイアウォールについては二十八項目にわたる措置があるわけですね。今回、日本が初めてこうした思い切った金融・証券制度改革ということで、十一項目、答申に沿っては忠実に御努力されているな、私はこういう感触を持っております。今後、この運用次第ではさらに改善も当然出てくると思う。そういう点で、アメリカの二十八項目のいわゆる弊害防止措置というものを参考にしながら、さらに今後の推移を見ながら漸進的にこの防止措置の改善に努める用意があるかどうか、この点について確認しておきたいと思います。
  160. 松野允彦

    松野(允)政府委員 実は、証券取引審議会で弊害防止措置について議論が行われましたときには、アメリカでいわゆるFRBがつくっております二十八項目のファイアウォールを皆さん念頭に置きながら議論をされたわけでございます。私ども考え方としては、アメリカの二十八項目は、証券取引審議会で書かれております十一項目の中にほとんど入っております。入ってないものといいますと、アメリカ固有のものがございます。アメリカの場合には御存じのように持ち株会社システムでございまして、持ち株会社と、その子供会社である銀行あるいは証券と、両方とも子会社の形でぶら下がっているわけでございまして、そういう組織的な違いというものに起因するファイアウォールがございます。あるいは、アメリカの場合は証券会社が免許制ではございません。そういう手続的な規定がございます。それからもう一つは、アメリカの二十八項目のファイアウォールは、実はこれは日本観点とちょっと違いますのは、むしろ銀行健全性を守るという点に重点が置いてございます。これはFRBがつくったということで、当然そうでございます。証取法上のファイアウォールというものは、むしろ証券市場の公正な取引を担保する、確保するという点に重点があるわけでございます。したがいまして、二十八項目のうち、今申し上げたアメリカの固有のもの、あるいは手続規定のようなもの、さらに銀行健全性から置かれているもの、そういったものを除きますと、証取審の報告書にあります十一項目にほぼ吸収されるといいますか、そういう形になります。  しかしいずれにいたしましても、このファイアウォールは、証券市場の状況、あるいはそこにおきます銀行の証券子会社の営業の状況というようなものを見ながら、やはり絶えず見直していく必要があろうかと思うわけでございまして、もちろん見直しには強化する部分もあれば緩和する部分もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても見直しをやっていく必要があるというふうに考えて、したがいまして、やはり省令で弾力的に、市場の状況あるいは営業の状況に応じて変えられるというものをある程度省令で規定するという考え方をとっておるわけでございます。
  161. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ、今後の運用、また時代の推移を見ながら、適宜、あくまでも利用者の便、預金者の便、そうした国民的な立場対応をお願いしたいと思います。  もう一点、この答申、証取審の中で、銀行による株式のブローカー業務への参入について、「当分の間は認めないこととする措置を講ずることが適当であるこういういわゆる答申をしているわけでございますが、今回、附則の十九条二項によりまして、銀行による証券会社の買収の場合には株式ブローカー業務がそのまま引き続き認められる余地が残される、こういうことになっているわけですが、これはどういう理由からこうなったのか。
  162. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、証券取引審議会の報告書では、銀行の証券子会社に対して株式ブローカー業務を認めない、認めるべきでないという指摘があるわけでございます。私どもは、今度の制度改正は、証券市場におきます大きなねらいは新規参入でございますから、新規に証券子会社を設立して参入するというのがあくまでも原則というふうに考えているわけでございます。  ただ、銀行法の方で、銀行が証券子会社を持てるという規定が入ったわけでございます。持てるということは、もちろん新規設立もできますけれども、買収もできるという、理論的にはそういう可能性が生じたわけでございます。そういうものに対応いたしまして、買収の場合には、今申し上げた株式ブローカー業務を新規の場合に認めないということのしり抜けを防止するために十九条二項を置いたわけでございまして、十九条二項はよく破綻証券会社のためだ、こういうふうに解釈される場合が多いわけでございますけれども、私ども考え方としては、基本的には十九条一項の新規設立の場合に禁止しているものを買収で脱法的にブローカー業務を持たれるのは困るということで二項を置いたわけでございます。したがいまして、基本的に新規参入というのが今度の制度見直しの大前提である、それによる競争促進効果が証券市場改革一つの大きな柱でございますので、既存の証券会社の買収によってブローカー免許を持つ、あるいは新規参入ではないというのは、我々としては基本的に今回の制度改正の線に沿ったものではないという考え方を持っております。したがいまして、既存の証券会社銀行が買収するというものを、そういう政策のもとでは認めることが難しいのではないかという考え方を持っているわけでございます。
  163. 宮地正介

    ○宮地委員 これが今後、余り言葉はよくないのですが、利用されるというか悪用される、こういうおそれも十分にあると思うのです。今回のこうした金融制度改革、証券制度改革によって、中小証券会社はある意味では大変に恐々としていると思うのです、最終的には銀行にやられてしまうのではないかと。今の日本国民銀行に対する信頼、証券会社に対する信頼等を見ておりますと、おかしくなってきた場合は、大体、銀行なり証券会社というのは合併なり再編という形で大蔵省が救済しているというのが実態だと思うのです。ですから、新規参入の形の証券子会社をつくると、これは株式のブローカー業務についてはできない、しかし、倒産しそうな危ない中小証券会社を買収したときには株式のブローカー業務が引き続きできる、こうなりますと、むしろそういった方向にシフトする可能性も私は十分考えられるわけでございますが、その点についての歯どめといいますか、対応についてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  164. 松野允彦

    松野(允)政府委員 確かに、これから新規参入も含めまして市場の自由化が進むわけでございますので、いろいろ競争が激化してくるということは当然予想されるわけでございます。ただ、競争が激化した中で、特に中小証券がその競争の激化によって非常に影響を受けて経営が破綻し倒産に瀕するということかといいますと、必ずしもそうではないのではないかというふうに私どもは考えます。中小証券といいますのは、むしろ地元に密着して非常にきめ細かい投資家サービスを行っているわけでございまして、個人投資家を確実に把握している証券会社が多いわけでございます。そういうことからいいますと、株式のブローカー業務が新規参入の証券会社に認められないということであれば十分対応できるわけでございますし、また、その過程において、今度の制度改革でいろいろな経営選択の幅が広がるわけでございます。そういったものの中で経営努力をしていけば、十分、中小証券会社だからといって大証券に比べて厳しい経営環境に陥るということは一概に言えないというふうに考えるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、そういったようなケースにおいてどうするかということになれば、これはあえて金融機関が救済するというだけを考える必要はないわけでございますけれども金融機関が救済する場合だってあり得るということは、それは確かだろうと思うわけです。その場合に、一体それじゃ現に行っている株式のブローカー業務をどうするかという問題になるわけでございまして、これは基本的には投資家というものをどういうふうに考えるのか、つまり、倒産しそうな証券会社にブローカー業務で注文をやっておる投資家をどこまで、どういう形で保護できるかという問題、そういうような問題と、その証券会社が置かれている地域なり営業基盤なり、そういうものに関係してくるわけでございまして、基本的には新設の場合にブロー力ー業務を禁止しておるわけですから、できるだけその趣旨を生かしてブローカー業務が円滑にどこかに移転できればそういう問題はないわけでございますけれども、そういう点、いろいろ考えながらケース・バイ・ケースで対応せざるを得ないというふうに考えます。  ただ、先ほど申し上げましたように、中小証券だからといって参入によって直ちに経営不安に陥る、あるいは経営の選択が非常に行き詰まってしまうというようなことはむしろないのではないか。やはりそこは経営努力ということもありますし、地域密着度というものもあるわけでございますので、その辺は、我々も中小証券に対してはそういう指導を十分していって、こういう競争促進、競争の激化という環境の中で十分やっていくように、あるいは投資家保護にもとらないような営業ができるようにしていくふうな努力を要請していきたいというふうに思っているわけでございます。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 宮地正介

    ○宮地委員 この十九条一項においては、今お話しのように、新規参入についてのいわゆる株式ブローカー業務は禁止されるわけでございますが、CBとかワラント債などのいわゆるエクイティー商品等についてもぜひ同じ取り扱いをしてもらいたいというのが昨日の渡辺会長の陳述でございました。この点については大蔵省は今どういうふうに検討されておるか。
  166. 松野允彦

    松野(允)政府委員 このCB、転換社債あるいは新株引受権付社債、ワラント債のブローカー業務の問題でございます。株式のブローカー業務と違いまして、こういうブローカー業務については法律上は参入を認めないということの規定は置いておりません。これは、一つには、中小証券の経営の主軸というほどの業務にはなっていない。これはかなりウエートの小さい業務でございます。それから、やはり債券であるということが一つ言えると思います。しかし、いずれにいたしましても、こういうものも、中小証券がこれからの営業を拡大していく、あるいは営業を多様化していく一つの大きな商品であるということも間違いない事実でございまして、そういったことをいろいろ考え合わせながら、これにつきましても、今御指摘のございました証券界なり市場関係者、市場の参加者、いろいろな意見を聞きながら今後検討していく必要があるというふうに考えております。
  167. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、時間が参りましたので最後に大臣に伺いたいのですが、今回の金融制度改革、証券制度改革については、我が党は一歩前進という立場からこの法律には賛成をしようと今考えております。しかし、これが結果として弱肉強食になってはならない。競争の原理が働いて公正なルールまた利用者の利便、これは非常に私は結構なことだと思います。しかし、弱肉強食のような形で中小証券会社等が切り捨てになってはならない。この辺の今後の行政のあり方というのが非常に大事であろう、こう思っておりますが、大臣、この点についての御見解を伺っておきたいと思います。
  168. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまの御指摘にありましたように、今回のこの法律というのはまさに利用者の利便、こういったものをあれすると同時に、利用者の皆さん方がいろいろな金融というものを使えるといいますか、そういった素地をつくろうということが一番の基本であります。しかし、今御指摘がありましたように、それによって弱肉強食というようなことになって中小のところが切り捨てられていくということがあってはならぬということ、これは私たちも肝に銘じていかなければいけないと思いますし、また中小の皆様方、やはり地方なんかでもニーズというのは非常に幅広くなってきておる、そういう意味ではその人たちにもこたえていかなきゃいかぬということでありますから、その点は今局長の方からもいろいろとお話がありましたけれども地縁性なんというのは十分活用できるはずでありますし、また小さなところであるから小回りがきくという利点もあるということであります。そういったものを助長していくようにいろいろな面から私たちも見守り、指導していかなければならぬというふうに考えております。
  169. 宮地正介

    ○宮地委員 どうもありがとうございました。
  170. 太田誠一

    太田委員長 日笠勝之君。
  171. 日笠勝之

    ○日笠委員 金融制度改革法案もいよいよ大詰めになっておりまして、ひょっとすると私も最後の質問になるかもしれませんので、ひとつ大蔵省の担当の皆さんの明確な御答弁をいただきたいと思います。と申しますのは、この衆議院の段階で、困った、わからないというようなことで、参議院に行った途端に明確な答弁を出すということがないように、今までも過去にそういう例があるわけでございますから、きょうは明確な答弁をお聞きして、この法案がすりガラスから少しは透明なガラスになって利用者が全体像がわかりかけた、こういうようなものにしていかなければ審議をした意味がございませんので、その点まずよろしくお願いしま丈  昨日の参考人質疑の中で全銀協の若井会長が、個人的には三菱銀行の頭取さんですので、今度の金融制度改革法案にのっとって子会社方式で参入をするということでのシミュレーションはやられましたかと聞きましたら、シミュレーションはやりましたけれどもはっきりしない点が多いので中断しておりますと言っておりました。この審議も中断させないように、明確な答弁を重ねてお願いします。  私もきょうで三回質疑をするわけですし、同僚委員の皆さんの質問を聞籔りますと、どうしてもまだ明確にわからないのがファイアウオール、弊害防止措置でございます。結果的にどういうふうにされるのだろうかということできょうは明確な回答を用意していただいているところでございますから、ペンディングになっている部分を一つずつ細かくお聞きをしたいと思います。  弊害防止措置、ファイアウォールは、もう採決寸前のこの法案審議でございますので、透明性ということが大事ですね。一つ新聞の報道に出ておりましたので御参考までに申しますと、日米構造問題協議で指摘されておった日本の板ガラス、建築用板ガラス、これにアメリカのメーカーが参入したい、しかし日本の建設省の建築用の板ガラスの認定基準がわからないということでもめておりましたが、建設省はこの認定基準を明文化する、そしてそれにのっとってアメリカのメーカーは製品の認定を受けていきたい。こういうふうに、明文化をしないと、この法案そのものが国際化なんて言っていてもファイアウォールが全然明文化されていない、わからないということでは国際化に逆行ずみわけでございますから、三度重ねて明確な答弁をお願いしたいと思います。  まず一つ具体的にお伺いしますが、この前から私が盛んに言っております銀行が証券子会社をつくる場合の名前、名称、これはどこまで容認されるのか。今までの局長の答弁を聞きますと、個別具体的な名前を出しては悪いのですが、さくら銀行が証券子会社をつくるなら、さくら証券というのは容認できる、こういうふうにとりました。しかし、銀と証がつくような名称は、これは困ったことであるということで、明確な答弁が出ていませんね。例えば都市銀行でいえば拓殖銀行が拓銀証券であるとか、住友銀行が住銀証券であるとか、名称の中に銀と証という名前が両方つくような場合は、明確にこれは認めるのですか、認めないのですか。
  172. 松野允彦

    松野(允)政府委員 これはこの前も申し上げたと思いますが、外国の銀行日本に進出して証券支店を持っております。この場合には既に銀というものがついたものがございます。例えばドイツ銀証券東京支店というような名称を認めております。外国の銀行の場合にはそういう例が既にあるわけでございますけれども日本の国内の銀行の証券子会社に対して、例えばそれじゃ同じように何とか銀証券という名称を認めるかどうかということでございますが、これはやはり外国の銀行と国内の銀行と全く同じだというふうにはなかなか考えにくいのではないか。証券会社の独立性という観点から申し上げますと、よりによって何銀証券というような言葉を使う必要が果たしてあるのかどうかというようなこともあろうかと思うわけでございまして、基本的には我々としては、これは余り認めたくないというふうに考えております。ただ、どうしてもこういうものを使わなければいけないという事情でもあれば別ですけれども、基本的には、大体わざわざ銀という言葉を使わなくても済むのではないかという考え方でいるわけでございます。
  173. 日笠勝之

    ○日笠委員 その場合の社章、マークですね。これは親会社のマークは認めますか。
  174. 松野允彦

    松野(允)政府委員 社章といいますか、ロゴと言っておりますが、これは実はアメリカでは認めております。ですからそこは非常に難しいところでございまして、今ここで絶対認めないというお答えをする用意はございません、率直に申し上げて。これはやはりそのロゴがどの程度の銀行との一体性というものを誤認させるかということによるわけでございまして、一律に基準を引くということはなかなか難しいのではないかと思います。
  175. 日笠勝之

    ○日笠委員 時間がありませんので、次に店舗共用ですが、これは具体的には申請があった場合、その店舗に行って現認をして確認をするとか、設計図とか見取り図で確認をするとか、そして店舗共用はしていないということで認めるのですか。
  176. 松野允彦

    松野(允)政府委員 店舗につきましては、認めるときには当然設計図なりそういう図面を見て、それが添付書類になっております。現認するかどうか、これは検査の際には当然現場に行く、まあすべての支店なり店舗に一回の検査で行くというわけではございませんけれども、検査で現場に行くということが、一定の周期ではありますけれども考えられるわけであります。
  177. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、店舗の場合は設計図なり見取り図を見て決める、認める場合もある、こういうことですね。  それからディーリングルームの共用ですね。これはどうなりますか。
  178. 松野允彦

    松野(允)政府委員 ディーリングルームについても、これはたしかこの前払お答え申し上げたと思いますが、やはり我々としてはディーリングルームというのは、いわゆるディーリングというのは営業、一つの自己売買業務でございます。そういうものを行っているところを共用するということになれば、これは銀行と証券が営業を一体として行っているということになるというふうに考。えられるわけでございます。そういうことからいいますと、同じルームの中でやりますからもちろん情報も飛び交うわけでございまして、情報遮断ということもできないということでございますので、ディーリングルームの共用というのは適当でないというふうに考えます。
  179. 日笠勝之

    ○日笠委員 なぜ確認したかというと、昨日の全銀協の会長は、有効な資源を活用する方向でこのファイアウォールも考えてもらいたい、そういうふうな要請があったので聞いてみたわけですね。  それからコンピューターの共同利用も、情報遮断ということで認める場合もある、こういうことでしたね。ところが、実際に銀行に行っている人に聞きますと、コンピューターの共同利用、情報は遮断をする、ロックをかけるというのですか、パスワード等で、それはできるそうですが、システム課だとか運用課だとかコンピューター課というのは、そのコンピューターを動かす要員というのがいるわけですね。この人たちは、銀行なら銀行の職員である。しかし、証券子会社のコンピューター共同利用で、情報は遮断しているけれども動かすことについて、これはコスト的に考えれば恐らく共有でやると思うのですが、こういうバックシステムの運用についての共有というのはどうなりますか。
  180. 松野允彦

    松野(允)政府委員 これにつきましては、基本的には今御指摘のありましたようにいわゆるロックといいますか、情報が共有できない、共同で利用できないという形のシステムといいますか、プログラムといいますか、そういったものがちゃんと整備されておれば、そのコンピューターを実際に動かす人間がどちらの人間がということは直接関係ないというふうに思います。
  181. 日笠勝之

    ○日笠委員 ただ、ロックを設計するプログラマーがおるわけですから、それをよく注意しないと勝手に外したり勝手にロックしたりということも可能なわけなのですね。  それから共同工作といいましょうか、共同訪問ですね。親銀行の営業マンと証券子会社の営業マンが一緒に営業に行く、これはどうなりますか。
  182. 松野允彦

    松野(允)政府委員 これにつきましても、私ども考え方としては、やはり一緒に、銀行の行員、銀行マンと証券会社の営業マンが一緒にある特定の取引先を訪問するということになりますと、それはどうしても銀行の信用力を背景にして証券業務を行っているというふうに誤解をされることが、そういうおそれが非常に強いというふうに考えざるを得ないわけでございます。たまたまある顧客が銀行と証券と両方の営業マンから話を聞きたいとしても、何も必ずしも同時である必要はないわけでございます。よりによって同時に行くというのは、今申し上げたように銀行の信用力を背景に投資勧誘が行われるおそれが強いというふうにどうしても考えるわけでございまして、基本的にはこれは非常に問題があるというふうに考えております。
  183. 日笠勝之

    ○日笠委員 きょうはだんだん明確になってきましたね。  それでは、親銀行融資先企業の引受主幹事会社には子会社証券会社はなれますか。
  184. 松野允彦

    松野(允)政府委員 これはいわゆるメーンバンクという問題に関係してくるわけでございまして、単なる融資先というだけですともう膨大な企業対象になってしまいます。やはり規銀行がどの程度の影響力をその企業に対して持つかということが一つのポイントになるわけでございます。そういった意味では、このメーンバンクというものをどういう要件、要素で判断するかということにやはり帰結をするわけでございます。単に融資先だけで禁止をするというわけにはいかないと思いますが、影響力をはかる一つの尺度として融資量というものも当然考えに入れることは必要だろうと思います。
  185. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、融資量で主幹事会社になれるかなれないかということが選別できるわけですが、シンジケート団には加われますか。主幹事ではなくて、引き受けをするシンジケート団の一員には、その融資量がどうあれなれますか。
  186. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今私どもが検討しておりますのは、やはり引受主幹事となる場合について考えておりまして、引受シ団に入っていわば引き受けたものを販売するといいますか、募集するということについては特に問題がないというふうに考えております。
  187. 日笠勝之

    ○日笠委員 先日のあの質問で、エコノミスト、昨年の七月十五日の臨時増刊号を引き合いに出しまして御質問いたしました。もう一度そのところをお聞きいたしますのでお答えいただきたいと思います。  これは、申し上げましたように当時の自民党の金融問題調査会会長、現労働大臣の近藤鉄雄さんのインタビュー記事なんですが、「例えば、山形銀行の支店内にA証券のデスクがあって、A証券のセキュリティー・レディースがいる。そこにA証券の山形支店から一週間に一日主任さんが回ってきて相談にのってくれる。金融商品について実質的なワン・ストップ・ショッピングサービスが受けられる。  こういう発想をもっと推し進めてもいいのではないかと、私は考える。」与党の調査会会長がそう言っていますが、こういうことができますか。
  188. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今の御指摘記事は、そういうふうなことができればいいというような御意見だというふうに私は受け取ったわけでございますが、やはり私ども今までの検討の中では、それは特に銀行の証券子会社が参入をしてくるという段階においてそこまで認めるということになりますと、これは銀行の中で営業をやっているということになるわけでございますので、それはやはり適当ではないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  189. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうしますと、この弊害防止措置、ファイアウォールの、今言ったようなことを――もっとたくさんあると思うのですね。実は私たち公明党も製造物の欠陥による損害の賠償に関する法律案、俗に言う製造物責任法という法律を議員立法で五月二十七日に衆議院に提出をして今法務委員会に付託されております。これは民法七百九条の特別立法でございまして、大変に難航しました。二年がかりでやっとつくりました、それもたった十三条ですけれども。恐らく六年がかりでこの金融制度調査会で議論されて、その間も外国にも行かれたり、何十人、何百人という方々のヒアリングもされたり、また業界団体の代表の方の委員の中でちょうちょうはっしのやりとりがあって、そういうファイアウォールについても一つ一つ議論されてきたのだと思うのですね。私どももわずか十三条の製造物責任法におきましても、こう聞かれたらこう答えるという数センチの想定問答をつくっているわけです。恐らく大蔵省の方にはあると思うのですね。なかったらうそでしょう、六年かかってやったのに。ですから、このファイアウォールの運用基準を、何か採決も近いと聞いておりますので、こういうものを早く出していただかないと、不透明なすりガラスのままで参議院に送って、参議院は野党が強いですから、出さなければ審議をしないなんということになってどんどん答弁していくということがあれば、これはやはり衆議院のこけんにもかかわることでございますが、こういう運用基準、出されますか。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  190. 松野允彦

    松野(允)政府委員 弊害防止措置につきましては、実はその法律に書きましたものあるいは先ほどちょっと別の委員にお答えいたしましたが、省令に書こうと思っているものというようなもの、さらに、どうも自主ルール、協会のルールにした方が適当ではないかというようなもの、さらには証券子会社業務方法というもののルールとして規定をしてもらわざるを得ないというようなもの、いろいろなものが考えられるわけでございまして、しかも内容につきましても、私どももちろん、さきにはお答え申し上げておりますように、基本的にはどうだとか原則としてどうだとかいうような者ピ方まではございますけれども、完全にすべてを検討し尽くしたわけではございません。もちろん国会の御論議もございますし、あるいは市場関係者、証券業界のいろいろな意見もあるわけでございまして、そういうものを勘案しながら、具体的にその省令に書くときにどういうふうなものまで省令に書くか、あるいは自主ルールではどうかとか業務方法書ではどうだというようなこと、になろうかと思うわけでございまして、そういった意味では比較的固まっているものとそうでないものといろいろとございます。  弊害防止措置といいましても、これは我々が頭の中で考えるだけでは済まないものもございます。市場関係者がやはりもう少し考えていって、こういうものもあるというようなものが出てくるというようなこともあるわけでございます。証券取引審議会の報告書にはそういう基本的なものが列挙されておりまして、その基本的なものの具体的中身については、今御議論がございましたように、いろいろといろいろなバリエーションがあり得るわけでございまして、現在比較的明らかになっておりますのは今まで大体お答えを申し上げてきているというふうに考えるわけでございますが、全貌というものはなかなか、これはやはり市場関係者の意見を聞きながら、具体的に法律が実施されるまでの間に政省令として、省令あるいは自主ルールとして固めていくという作業にならざるを得ないということを御理解いただきたいと思うわけです。
  191. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、この衆議院の審議段階までに、アバウトでも結構です、法令化するもの、自主ルールにするもの、業務指標ですかにするもの、それは出ますか。
  192. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今も申し上げましたように、その証券取引審議会の報告書に出ております十一項目、これの扱いについては大体私ども考えをまとめているわけですが、その十一項目の中のさらに具体的な内容ということになりますと、これは検討中のものがかなりございますので、明確な形でお示しするということはまだなかなか難しいというふうに考えます。
  193. 日笠勝之

    ○日笠委員 押し問答しても時間がかかりますので、私はぜひ出していただきたいなと思いますね。要望しておきます。  それから、そのファイアウォールにつきまして、公取さん来ていただいていますか。このファイアウォールについては先ほどの議論をお聞きになったと思いますが、すりガラスの程度でまだ明確に、はっきりしないということで、これから参入をしようとする企業は、一体どうなっているんだろう、先ほど申し上げましたある銀行は、シミュレーションしたけれども、わからないから途中でもう中断しておるというような、これは経済的には大変大きなロスだと思うのですね。そこで、公取として、このファイアウォールについての独禁法政策上からの基本的な考え方というようなものを出されるような御用意はございますか。
  194. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 経営健全性の確保とかあるいは利益相反の防止という事柄については、これは当然のことながら銀行法あるいは証券取引法の分野で的確な対応がされるものと私ども考えておりますが、その点は別として、公正取引委員会としても、いわば公正な競争を確保するという観点から独占禁止法での対応が必要になってくると思っております。すなわち、公正な競争を阻害するおそれのあるような行為が今回のこの制度改革によって具体的に発生するとするならば、これは独占禁止法によって的確に対応し、規制すべきものは規制していかなければならない、かように考えているわけであります。この点について、先へ行ってのことでありますが、もし必要があれば独占禁止法の考え方などを外部の方々にわかりやすいような格好でお示しするといったことも考えていかなければならないと思っております。
  195. 日笠勝之

    ○日笠委員 ぜひひとつ公取さんの方も透明な行政ということで、基本的な考え方について要請等がございますれば、明確に公取としての立場を示していただければと思います。  それから、公取さんにもう一つお伺いするんですが、先日のこの審議の中でいわゆる独禁法十一条の金融会社の持ち株五%制限がございますが、この五%というのは、例えばの話ですが、銀行親会社、証券子会社両方で五%、こういうように私たち理解しておったんですが、一部の方から、いやそうじゃないんじゃないか、持ち株比率によって違ってくるんじゃないか。例えば親会社が一%、子会社が出資率、株式の五〇パー超でございますが、ややっこしいですから五〇パーとしますね、五〇パーの場合、まあ親子の関係があるとしてその場合は残り四%持てるんですが、支配力が半分の五〇パーだから八%まで、トータル九%まで持てるんだ。すなわち、子会社の持ち株比率によってその辺は変わってくる、こう言う人もいらっしゃるのですが、公取さんのこの独禁法十一条、まあ十七条の脱法行為もありますが、それらを踏まえて、私が言ったような意見はどうなんでしょうか。
  196. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 今回の業態別子会社が場合によっては一〇〇%子会社の場合もあれば、少なくとも五〇%超の子会社であるということから、言ってみれば実質的に支配関係に立つ子会社ができ上がるわけであります。それから、今回のこの制度改革がこういう業態別子会社ということによって相互に参入し合うという意味合いのものでもあるということをあわせ考えますと、ある企業の株式を親会社が持ち、またその企業の株式を子会社も持つといった場合には、これは両方合わせて五%であるというのが十一条の趣旨でもあり、また御指摘のように、十一条の脱法を禁止した十七条の規定からいっても、合わせて五%であるというように考えるのが独占禁止法の解釈でございます。
  197. 日笠勝之

    ○日笠委員 じゃあ公取さん、結構でございます。ありがとうございました。  次いで、これも今もってまだ明確になっておりませんので確認をしたいと思いますが、信託業務範囲でございます。  まず、本体で信託業務を行う場合でございますが、先日札幌の公聴会へ行きまして陳述人から、ぜひひとつ、本体で信託業務をやる場合、「公益信託、土地信託等」という字がついておりますが、この「等」という字をもうちょっと拡大してもらって遺言信託の一部はぜひ認めてもらいたい、こういう要請がありました。いよいよ大詰めですからこの「公益信託、土地信託等」の「等」の中にそういうものは入るのか入らないのか、いかがですか。
  198. 土田正顕

    土田政府委員 信託業務を行う場合の基本形は業態別子会社であります。ただ、地域金融機関の場合には、一つには、「地域住民等の金融に対するニーズの充足及び地域開発の支援のために必要であり、かつ、本体でその業務を営んでも金融秩序の維持の観点からみて実質的に問題がない業務」という処方せんを金融制度調査会でいただいております。具体的には、はっきり申し上げられるのは土地信託、公益信託でございます。そのほかに「等」という文字もございますので、これをどう考えるかでありますが、さらにこの辺は地域のニーズなどを把握した上で当面の業務範囲の細部について確定をしてまいりたいと思います。  遺言信託とはどのような信託であるかというのは、我が国で必ずしも普及しているわけでもありませんので、もう少し勉強をさせていただきたいと存じます。
  199. 日笠勝之

    ○日笠委員 いや、ですからもういよいよ大詰めになってきたので、その「等」とは何ぞやということを明確にしていただきたいわけなんですね。  それじゃ子会社方式で、信託子会社をつくった場合、これも「貸付信託、年金信託等の金銭の信託等の一部を除く」とありますね。この初めの「等」と後ろの「等」はどこまで拡大解釈できるのでしょうか。
  200. 土田正顕

    土田政府委員 現段階でなかなか明確にお示しできないのは残念でございますが、先ほどの答弁を補足いたしますが、遺言信託というのは、これはなかなか微妙な取り扱いだと思いますのは、ある意味では遺言の執行みたいな話になりますので、弁護士との関係はどうかというような問題を一度考えてみなければいけません。そのように信託会社の業務が多面的でありますだけに、そのそれぞれの関係の業界というのが金融証券業界の外にいろいろございますので、それとの関係を慎重に考えなければいけないという要素もございます。これも今この段階でにわかに限界をはっきり御説明できない理由の一つでございます。  実は、信託銀行子会社につきましては、これは過日も委員のお尋ねに対しまして御説明をできる限り申し上げましたので、これ以上その説明を繰り返しませんけれども、ただ一つ申し上げたいと存じますのは、これは基本的には競争条件の公平性ということが実は信託サービスを子会社に切り離した非常に大きな理由になっております。この競争条件というのは実はAとBとの相対関係で決められるわけでございまして、信託側の条件とそれからそのカウンターパートの方の条件とがどのようにすり合うかというようなことは、やはり成り行きを多少見た上で行政当局としての判断を下す必要があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。そのようなことでありますので、この認める方の「等」ないしは除く方の「等」の「等」というものをなかなかはっきりとは今の段階では申し上げにくいわけでございます。  それからさらに、除く方の業務で「不動産売買・貸借の媒介に係る業務」、これを除くというようなことは、これは割合はっきり申し上げておりますが、これも現在既に信託銀行なり、信託業務を行っておりますものはこういう業務を実際にやっておりますけれども、この業務の担い手がさらにふえるということは、やはりこれは金融・証券の外の不動産業界との関係で非常に慎重な取り扱いを要しますので、私どもは、むしろここは金融制度調査会の答申に従い、もう初めからあっさりと「不動産売買・貸借の媒介に係る業務を除く」というふうに割り切りたいと考えております。
  201. 日笠勝之

    ○日笠委員 「等」ということでいろいろな御答弁をいただきましたけれども、とうとう明確な答弁がなくてまことに残念でございます。しかし、恣意的に、何かそのときになってみなければわからないというのは、これは一番困るんですね。先ほどから何遍も繰り返しておりますが、シミュレーションをしたって途中で中断せざるを得ない、こういうふうなことでは明確にならないわけでございますから、これはぜひひとつ早急に煮詰めていただきたいことを要望して、次にいかなきゃいけません。時間がありません。  というのは、次に、信託業務範囲信託業務にかかわる代理店制というのでしょうか、代理制が可能でございますね。この代理店というのでしょうか、これにはどこまでの信託業務を認められるのか。それはどうなっていますか。
  202. 土田正顕

    土田政府委員 信託業務の代理を認めていいであろうというふうに考えますゆえんは、専門知識や体制などが十分整備されていない地域金融機関金融機関経営効率化及び利用者利便の向上を図るために活用することを期待しておるからでございます。そこで、法律なり運用上の枠取りといたしましては、代理になじまない業務を除いて基本的にはすべての業務とすることが適当であると考えております。ここで代理になじまない業務というのは、例えば先ほどから申しております他法令により制約のある業務、例えば不動産仲介業務などでございます。  ただ、一つ申しますが、この代理に出す出さないということは、代理に出す者、これはすなわち信託業者であります。代理を受ける者、これは他業者でありまして、その出す者と受ける者との両方が合意した範囲内においてしかその代理というものは実際上は機能いたしません。そういうことでございますが、当局側の枠取りといたしましては、代理になじまない業務を除いて基本的にはすべての業務とするということが適当であると考えております。
  203. 日笠勝之

    ○日笠委員 それじゃ、条文の逐条解釈をちょっとやりたいと思います。  銀行法の一部改正のところの十六条の二でございますね。これは「証券会社等の株式の所有」というところでございまして、「銀行は、証券取引法第二条第九項に規定する証券会社又は金融機関信託業務の兼営等に関する法律により同法第一条第一項に規定する」ここからですね、「信託業務を営む銀行その他の銀行大蔵省令で定めるものに限る。)こうありますが、この大蔵省令で定めるその他の銀行とはどういう銀行ですか。
  204. 土田正顕

    土田政府委員 現在省令において規定することを予定しておりますのは、預金保険法上の破綻金融機関に該当する銀行、このようなものを考えております。
  205. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、銀行銀行子会社を買収というのですか、設立というのでしょうか、できるということですね。
  206. 土田正顕

    土田政府委員 破綻金融機関に該当する銀行に関する限り、そのようなことを考えております。
  207. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから十六条の三「子会社との間の取引等」のところでございますが、「銀行は、その子会社等」「又は顧客との間で、次に掲げる取引又は行為をしてはならない。」いろいろ書いておりますが、「ただし、当該取引又は行為をすることにつき公益上必要がある場合において、大蔵大臣の承認を受けたときは、この限りでない。」とありますが、「公益上必要」とはどういうことを想定されているのでしょうか。
  208. 土田正顕

    土田政府委員 このただし書きの前の十六条の三そのものの規定の趣旨は、詳しくは立ち入りませんけれども、例えば親銀行が通常の条件よりも低利で子会社融資する、すなわち、いわゆるアームズ、レングス・ルールによらない融資をするというようなことによりまして起こり得る弊害を防止するということを考えておるわけでございますが、それについてはただし書きで例外を予想しております。このただし書き、すなわち一定の弊害防止措置の適用の除外につきまして、具体的にいかなる場合に承認を出すかにつきましては、やや機微な問題もございますので、個々のケースごとに慎重に判断してまいりたいと存じます。  ただ、仮定の問題として、例えばということで申しますと、信託銀行子会社経営状況が著しく悪化しているなどの状況が生じたとした場合、子会社経営再建のために親銀行が通常の条件よりも低利で子会社融資などを行うことが、状況によっては預金者保護、金融秩序維持等の観点から必要と認められるような場合が考えられますが、いずれにいたしましても、実際には個々のケースごとに慎重に判断をしてまいりたいと考えております。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  209. 日笠勝之

    ○日笠委員 今度は十四条の二、「経営健全性の確保」でございます。「大蔵大臣は、銀行業務の健全な運営に資するため、銀行がその保有する、資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかその他経営健全性を判断するための基準を定めることができる。」いわゆる健全性の確保を法律に盛り込んだということですね。ここに「基準を定める」とありますが、これは政省令とは書いておりませんから、何で定めるのでしょうか。どういう内容なんでしょうか。
  210. 土田正顕

    土田政府委員 基準を何で定めるかというお尋ねでございます。恐らく法形式についてのお尋ねであるかと思いますが、具体的には通達以外の形、告示を考えております。
  211. 日笠勝之

    ○日笠委員 だから、内容はどうなんですか。
  212. 土田正顕

    土田政府委員 内容については、現在はこれは、通達で規定されておりますけれども、自己資本比率規制その他の経営諸比率規制を考えておりまして、これを、金融情勢の推移や金融機関経営内容に応じて弾力的に対応できるように定めたいと考えております。
  213. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、例えばBIS規制の八%、国内の場合は四%とか、そういう具体的な数字を挙げて基準を告示されるのでしょうか。
  214. 土田正顕

    土田政府委員 そのように考えております。
  215. 日笠勝之

    ○日笠委員 そのほか信金法、労金法、協同組合法、言いませんけれども、ほかの金融機関健全性をうたっておりますが、全部同じ大臣告示でやられるのですか。そうすると、例えば労金法だと労働大臣告示、協同組合法ですと農水大臣商工中金ですと通産大臣の告示ということでしょうか。
  216. 土田正顕

    土田政府委員 業態により内容が変わることは当然あり得ると思いますが、やはり告示でこの内容を示したい。その場合には、ただいまお示しになりましたような機関はそれぞれの大臣大蔵大臣との共管になっておりますので、いわゆる共同告示の形をとるのではないかと考えます。
  217. 日笠勝之

    ○日笠委員 健全性法律に盛り込んだということについては評価いたしますが、罰則といいましょうかペナルティーといいましょうか、ただ頑張ってやりなさいよと言うだけで、目に見える形でのペナルティーといいましょうか、一生懸命努力しても何らメリットもないというようなことになるのです。  それで、どうなんでしょうか。もちろん、健全性を法文化して大臣告示で基準も設けた。それがクリアされると、子会社をつくって参入する場合、当然それは基準にもなるとか、この前もちょっと言いましたように、預金保険機構なんかは、健全性がきちっとクリアされておれば保険料率を下げてもいいのではないか。アメリカは考えているそうですけれども。この前局長は、料率のパーセントが向こうは高くて日本は低いから余り関係ないみたいにつれないことを言っていましたけれども健全性できちっとクリアすれば、基準どおりやれば何かメリットがある、これは努力目標であって、これだけじゃ、やはり健全性ということは一番大事な銀行の信用、秩序、安定のメルクマールですからね。例えば三年超の定期なんかでもこの基準をきちっとクリアしてないと認めがたいとか、金融債の発行の場合、これは長信銀でしょうけれども、もちろんこれがクリアされてないとちょっとストップしましょうとか、そういうふうな、あめとむちじゃございませんけれども、何か考えておられますか。
  218. 土田正顕

    土田政府委員 お尋ねの問題は、実はかなり基本的な問題を含むわけでございます。  実は銀行法の場合、罰則規定はございますが、この罰則規定の対象には、例えば検査拒否とか書類の虚偽記載とか、そのようなものが規定されておるにとどまっておりまして、経営のしぶりについて、その内容的な問題が妥当でないから直に罰則というふうな構成はとっておりません。これはやはり個々の金融機関ごとに非常に経営内容には幅がありますので、それにつきましていきなり機械的にいわゆる一般的な罰則を適用するということは適当でないという理由に基づくものと思います。  そのかわりにと申しますか、一つの矯正措置、是正措置といたしましては、銀行法で、例えば第二十六条に業務の停止などを命ずることができるという大蔵大臣の命令を定めた規定がございます。それから、そのような命令や処分に違反したとき云々という場合になりますと、さらに一段進んで業務の停止とか取締役の解任とか、甚しき場合には免許の取り消しもできるという規定はあるわけでございますが、この業務の停止ないしは免許の取り消し等を通じまして、具体的な問題とされる行為に対して機械的に適応するのではなく、やはり状況をよく見まして、他に方法がないようなときの最終的な手段として運用する、やはり金融秩序というものを考えます上からはそのような態度が必要なのではないかと私どもは考えてまいったところでございます。  そこで、今度は逆に、そういう機械的な罰則はないとして、何か褒美はないかというお尋ねでございますが、実はこれは、片一方で健全経営というものが非常に幅のある概念であり、しかもその健全性というものは画一的な健全性というよりもむしろ、銀行法の運用に当たって、「業務の運営についての自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。」と書いてあるようなところから見ましても、簡単に申しますと、どの程度健全性を達成しておるか、点は何点であるかということを定量的にはなかなか把握しにくいというか、よほど慎重に考えなければそういうランクづけを軽々にとるべきでないと思うわけでございます。  その他難しい問題がございますので、健全経営を維持するのが銀行法上の要請であるということは紛れもないことでありますが、その健全経営のしぶりについて一義的に、合格とか落第とかいうことを機械的な基準で決めつけることはなかなか難しいのではないかと考えております。  なお、預金保険の料率について刻みを設けるかどうかということは、過日御説明申し上げましたが、今後いろいろと、仮に預金保険料率をアメリカのように大幅に引き上げるというようなことでもあれば、そのくらいの細工を考えるべきかもしれないが、現在のような低い料率であればまだ刻みを考える必要はないというふうに私どもは思っております。
  219. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  220. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君。
  221. 正森成二

    ○正森委員 今度の制度改革では連合審査が行われるという話がございましたが、結局行われないことになりました。そのかわり各委員会委員が場合によれば差しかえでお聞きになるということでございますので、きょうは私が他の省庁の方にも若干来ていただいて、今度の制度改革との関連性について伺わせていただきたいと思います。  中小企業庁、来ていただいておりますか。――それでは伺いますが、中小企業庁は平成二年の四月に「中小企業金融懇談会中間報告」というのをまとめておられると思います。またその裏づけの一つだと思いますが、「中小企業を巡る金融環境現状と課題について」という調査をここ二、三年、毎年行われていると理解しております。この調査の目的をまず述べてください。
  222. 桑原茂樹

    ○桑原政府委員 御指摘中小企業金融懇談会でございますけれども、これは平成元年に当時の中・小企業庁計画部長の私的な研究会として発足したものでございます。その目的は、金融制度自由化というような動きが全体としてあったものでございますから、そうした金融自由化というものが中小企業に対していかなる影響を及ぼすか、または及ぼそうとしているかというようなものを中小企業の側から見て研究するというのが目的でございました。  また、「中小企業を巡る金融環境現状と課題について」という調査でございますが、アンケート調査を三回ほどやらしていただきましたけれども、これもそうした研究をするための一つ資料としてやったものでございます。
  223. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いますが、その調査の中からどういう特徴が浮かび上がっているかという面について若干伺いたいと思います。例えば、資金調達の点で中小企業銀行借り入れの依存度の高さ、低さ、あるいは難易等、いろいろあると思いますが、簡潔にその特徴を述べてください。
  224. 桑原茂樹

    ○桑原政府委員 報告書におきましては、金融自由化というものが中小企業に与える影響についていろいろな可能性を指摘しております。その可能性につきましては、中小企業にとって利点となるものというものも幾つかございますし、あるいは懸念がされるものというようなポイントも幾つかあるわけでございます。  利点としては、金融機関競争するということによりましてサービスがよくなる、あるいは金融商品がいろいろ多様化しまして中小企業の資金運用もメリットがあるのではないかというようなことが指摘されております。また、懸念される点といたしましては、金融機関の方でいろいろ選別融資をするというようなことが出るのではないか、あるいは中小企業に対して金利が上昇するような危険があるのではないか、あるいは金利がいろいろな形で変動いたしますので、固定金利を好む中小企業にとってはやりにくくなるのではないかというような、いろいろな点が指摘されているわけでございます。
  225. 正森成二

    ○正森委員 今概括的にお答えになりましたが、「金融環境現状と課題について」というのを見ますと、これまでとは異なった側面があらわれてきているという指摘がございます。それで、DIというのですか、一年前に比べてどういうように好転したか、あるいは悪化したかというような指数もあるようですが、それらの点について述べてください。
  226. 桑原茂樹

    ○桑原政府委員 例えば本年二月に発表いたしました「中小企業を巡る金融環境現状と課題について」というのがございますけれども、これによりますと、一年前に比べまして、金融機関の貸出態度につきましては、厳しくなったとするものの比率が緩くなったとするものの比率を上回るというような点もございます。この辺につきましては、この調査をしました昨年の秋でございますけれども金融をめぐるいろいろな出来事がございまして、金融機関の法人に対する貸出態度が慎重になったという時期でもありましたので、必ずしも金融自由化というものでこういうことに直接影響が出たのかどうかはっきりしないところもございますが、アンケート調査の結果としては今申し上げたようなことになっております。
  227. 正森成二

    ○正森委員 私から、いただいた資料に基づいて幾つか申し上げますと、「いくつかの懸念」という中では「借入金利の上昇」、「融資面での差別化」あるいは金利の自由化に基づいて「資金計画の不安定化」とか、あるいは「地域間格差の持続」とか、そういう点が挙げられているようであります。  それからまた、今言われました借入状況を見ますと、例えばここに表が幾つか出ているようですが、借入状況について見ますと、「長期固定金利借入」という点では、例えば都市銀行などは一番ひどくて、「借入が難しくなった」が四〇%で、「借入が容易になった」が三・二%、その差がDIというそうですが、マイナスの三六・八という非常に高い数値を示しております。同様なことは第二地方銀行でも言われておりまして、DI指数が三四・一というようになっているはずであります。  あるいはまた「最近の金融機関からの借入状況」の(貸出態度)という部分を見ますと、例えば都市銀行はDI指標が二一・七というように非常に貸出態度が厳しくなったというのが出ておりまして、多少でも好転したというのは、信用金庫政府中小企業金融機関がごくわずか一ポイントぐらいよくなったにすぎないというような調査結果になったと思いますが、いかがですか。
  228. 桑原茂樹

    ○桑原政府委員 昨年の秋にアンケート調査をしましてことし二月に発表した影響調査によりますと、御指摘のような結果になっております。
  229. 正森成二

    ○正森委員 念のために伺いますが、皆さんの調査によりますと、参考として欧米調査もしているようであります。欧米も金融自由化を行ったのですが、アメリカ等においては、今日本にあらわれている状況と同じことが多少タイムラグを早めて起こっているのではないですか。
  230. 桑原茂樹

    ○桑原政府委員 この研究会をやりましたときに、金融自由化のいわば先進国たるアメリカの事情というものも調べたわけでございます。もちろんアメリカと日本とは制度、事情その他大きく変わりますので、アメリカの事情がそのまま日本に当てはまるというわけではないわけではございましょうけれども、一応参考として当時調べたわけでございまして、その結果によりますと、これはアメリカの例でございますけれども、確かに、金融自由化によりまして、中小企業の資金調達というものにも好影響を及ぼすという意見もございましたけれども、一方、長期借り入れについて、固定金利による借り入れというのが非常に難しくなるというような問題点、あるいは、金融自由化によりましていろいろな意味で金融機関中小金融機関のリスクが高まっておるので、金融機関は負担増を中小企業に転嫁せざるを得ないという点もあるのではないかというような問題点も当時指掛されたわけでございます。
  231. 正森成二

    ○正森委員 そこで、大腐省に伺いたいと思いますが、今度の制度改革で、大蔵省は専ら今中小企業庁が言いましたメリットの点だけ、利用者の利便が増進する、あるいは新しい金融商品がふえるとか、あるいは競争が行われるのでそれが外用者に利便をもたらすとかいうような面だけを指摘しております。しかし、同じ政府の一員である中小企業庁がここ三年ほど系統的に調査したところでは、私も拝見しましたが、毎年毎年の数字は多少変動しておりますが、基本的には中小企業関係では、証券市場から資金を調達するということも困難で依然として間接金融に頼るというように答えているのが大部分でありますし、そして、金融自由化あるいは金利の自由化が行われたが中小企業は逆に借入金利が上昇したとか、あるいは、BIS規制の影響どもあるのかもしれませんが、貸出態度が厳しくなったという答えの方が圧倒的に多いという面が出ているわけであります。  こういう点を考えると、今度の制度改革をバラ色一色に描くということはできないんではないでしょうか。中小企業という面を考えると、しかも我が国において中小企業の占める比率というのは圧倒的に多いわけですから、そういう点も考慮する必要があるんじゃないかと思いますが、大蔵省あるいは大蔵大臣はいかが思われますか。
  232. 土田正顕

    土田政府委員 御指摘の点は大変大切なポイントをついておられると思います。  金融自由化は、やはり背景としては国際化の進展、それから証券化の進展、さらには機械化の進展という、どちらかといえば世界の大勢に即応する大きなかじ取りとしては間違っておらないと申しますか、不可避的な方向であるという感じを持ってはおりますが、これは金融機関を取り巻くリスクの増大をもたらすものであり、それからまた、金融サービスを利用する者にとってもさまざまな影響を与えるものでございます。それで、私どもは基本的にはこの金融自由化を促進するという立場に立っておりますけれども、その際に、いろいろ御指摘のありますような点にも十分配慮しながら、できる限り秩序正しく、混乱の起きないように金融自由化を進めたいということで、年来やってまいったわけであります。  例えばアメリカの方でも同じことが早目に起こっておるというアンケート調査があったようでございますけれども、私どもは、金融自由化がアメリカの金融市場に何をもたらしたかということも観察いたしまして、例えば一部に大きな話題になりました中小金融機関の混乱というようなものを避けるということで、環境整備に努めてまいっておるわけでございます。それからまた、固定金利はなかなか、固定金利の長期貸し出しを手に入れるのは難しくなったということでございますが、それは実は、昔のように金利の変動が小幅であるときは長期固定金利による金融というものは非常にそれなりに値打ちがあったものでございますけれども、近ごろ、金融自由化に伴いまして、金利は非常に大きく上下に変動をいたします。そのときに、その読みを誤りまして固定金利で長期借り入れをいたしますと、むしろ借り入れ側が大きなリスクを負担するようになるわけでございます。また、貸し手の方もその反対側のリスクを負担するわけでございますので、そのような観点から、同じ長期であっても、固定金利によらない、いわば変動金利貸し出しというものが広がっておるというようなものもやはりその自由化一つの側面であり、これはまた、それなりにリスク対策として意味を持つものと思っております。  このように、いろいろなリスクの増大をもたらすのは事実でございますけれども、やはり金融機関側からすれば経営の裁量の範囲拡大につながりますし、それから、ユーザーと申しますか、金融サービスの利用者観点からすればさまざまな多様なサービスを今までよりもより多くの経営者金融業者から探し求めることができるというようなことでございますので、全体としては金融機能の一層の円滑化につながるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、殊に中小企業につきまして、いろいろな資金調達の分野において種々御指摘がありますことも事実でございますので、私どもは、長期的にはこの中小企業向け貸し出し分野において競争が促され金融円滑化がもたらされるものと考えますが、その金融の局面局面に応じて、しかるべき配慮は忘れてはならないというふうに考えております。
  233. 正森成二

    ○正森委員 そこで、しかるべき配慮のうちの一つといいますか、あるいはそれより大きな意味を持つかもしれませんが、政府系の金融機関の果たす役割というのは非常に大きくなると思うのですね、中小企業金融公庫とか、あるいは国民金融公庫等であります。  同じように、中小企業庁が「中小企業を巡る金融環境現状と課題」ということで調査をしておりますが、その平成四年二月二十七日に発表されたもので、「政府系三機関の有利点」というアンケート調査をしております。それを見ますと、連続三年調査をしておりますが、ことしの調査結果を見ますと、「政府系三機関の有利点」というので相当比率の大きいものを挙げてみますと、中小企業はこう言っているのですね。「預金協力の負担がない」、こう述べた人が四三%もあります。つまり、民間の場合は、借り出しても、協力預金といって歩積み両建てといいますか、そういうことで実質金利が高くなるわけですが、政府金融機関はそれがない。それから「固定金利が利用できる」が三九・五%、それから「金利が安い」、これが五二・五%。「長期借入ができる」というのが四一・〇%。それから「景気変動時も貸出態度不変」というのが一八・七%。これは、都銀その他が貸出態度が悪くなった、つまりDIがマイナスになったというのが非常に大きいのに比べると、政府系ではこういう高い評価を得ているわけであります。  そこで、私は、ことしのたしか予算委員会の分科会でも質問したのであるいは御記憶にあるかと思いますが、国民金融公庫等の役割をやはり考えていかなければならないということで、もちろん資金運用部から資金を回すということも大事でございますし、それから、輸銀、開銀がいろいろ自己資本比率をさまざまの理由で高めているわけですね。ところが、国民金融公庫は、最近は多少改善されましたが、政府出資金も非常に限られておるということから、いわゆる自己資本、つまり無利子で使える金というのが非常に少ないということから、貸出先に対して非常に厳しい取り立てを行っているというような面を指摘したことがあったと思います。今、現に金融自由化の中で、中小企業庁の調査では今言いましたようなアンケート結果があらわれておりますので、政府系三金融機関の役割はいよいよ大きいと思うのですね。  私が今申し述べましたような点について、大蔵大臣の、特に閣僚としての御意見、政治的な御意見を特に承っておきたいと思います。
  234. 羽田孜

    羽田国務大臣 国民金融公庫等の政府金融機関、ここは、一般の金融機関から資金の調達、融通を受けることが困難である、そういう方々に対しまして必要な資金を供給することを目的としておりまして、昨年の暮れの補正予算ですとかあるいは今度の四年度の予算、こういったところでも、中小企業者に対する円滑な資金供給ということのために相当配慮されたものであるというふうに考えております。  その意味で、今後とも国民金融公庫等を通じました中小企業者に対する金融円滑化及び貸付原資、これの確保につきましては、遣切に配慮していきたいというふうに考えまして、今御指摘のような問題について、我々はやはりおこたえをするように努力をしていきたいというふうに思っております。
  235. 正森成二

    ○正森委員 労働省来ておられますか。――労働省に伺いたいと思います。  労働省はサービス残業解滑のために昨年からいろいろ調査されておりますが、特に金融業界に対して労働基準法違反あるいはサービス残業が行われているということで調査をされまして、特に東京労働基準局は三月二十五日に東京銀行協会や東京都信用金庫協会というようなところに対して「金融機関における労働時間等の適正管理について」ということで、口頭で要請もされているはずであります。  新聞紙上を見ますと、例えば東京の労働基準局は相当広い範囲調査をされまして、そして立入調査を、都銀あるいは地銀、信用金庫など十二金融機関の八十の本支店に調査をされたというように新聞に出ております。そのうち地銀や信用金庫では、サービス残業、つまり残業したのに残業に相当する賃金が支払われていないということは認めているようでありますが、都銀については、やはりサービス残業といいますか、残業したにもかかわらず賃金を払われていないという違反があったのかどうか、その点をお答え願いたいと思います。
  236. 山中秀樹

    ○山中説明員 先生御指摘のように、平成三年に東京労働基準局では金融機関十二行、延べ八十店に対して監督指導を実施いたしました。そのうち都市銀行等は六行四十六店について、労働基準法違反等の違反があるかどうかということを調査いたしました。そのうち先生御指摘の労働基準法三十七条に関して違反があったということは、十二店あったということでございます。
  237. 正森成二

    ○正森委員 今ちょっと十分聞き取れなかったのですが、いわゆる都銀と言われる中にも、残業したにもかかわらず賃金を払われていないという労基法違反の事実があった、こういうことですか。
  238. 山中秀樹

    ○山中説明員 そのとおりでございます。
  239. 正森成二

    ○正森委員 銀行局長、ところがその当時の新聞を見ますと、例えば一月二十九日の朝日新聞を見ますと、例えば富士銀行は「十店に調査があったが、労働安全衛生法違反の指摘だけ」、こう言っております。あるいは三菱銀行は「本店に調査があったが、労基法違反の指摘はなかった」、それから第一勧銀は「十一店で調査があったが、時間外不払いの事実はない」、協和埼玉は「九店の調査で、労基法違反はない」、東京銀行は「八店だが、サービス残業の指摘はない」、いずれもないない、こう言っておりまして、こうなると、都銀は一店もサービス残業あるいは残業代不払いなどはないということになりかねないわけであります。明らかにこの今大蔵委員会で言われた労働省の、都銀にもございましたというのとは違うわけなんですね。  それで、今度の制度改革によりますと、銀行はユニバーサルバンクだとかあるいはユニバーサルバンキングだとかいって何でもできる、世界の銀行に匹敵するというように言いまして、三菱銀行の頭取で銀行協会の会長でもある若井さんなども参考人として非常に積極的な意見を言われました。ところが、事そういう業務を行っている行員については、ユニバーサルどころか日本国内での法規も守っておらないというようなことであれば、これはすこぶる問題である。そういうようにユニバーサルバンキングなんて、あるいはユニバーサルバンクなんて言うなら、ユニバーサルな世界で通用する労働条件を自分のところで一生懸命に働いて利益を生み出している行員に対して保障し、その法規を遵守するのは当たり前じゃないですか。  今まで私がこういう点について質問しましたら、大蔵省の態度は決まって、それは労働省サイドの問題であるとかあるいは労使の問題であるということで、銀行局の責任といいますか、あるいはなさなければならないことについて極めて消極的な態度でありました。これは許されないのじゃないですか。ユニバーサルバンクだとかバンキングだとか言うなら、労働条件についても、公共性の原則等から法規違反は許されないという態度について、一般の指導責任が銀行局あるいは大蔵省にもあるのじゃないですか。その点の答弁をお願いしたいと思います。
  240. 土田正顕

    土田政府委員 個別の都市銀行がこの取材にどのように対応したかについてはつまびらかでございませんが、私どもはやはりこのサービス残業の問題はあったというふうに認識を持っております。確かに、ユニバーサルバンクのお話があったわけでございますが、そのような業務のいわば表舞台を支える執務環境に問題がなかったか、その点については私どもも関心を持っておるところでございまして、例えば、昨年の三月ごろでありましたか、予算委員会の分科会で御指摘がございましたときに、これはその当時私申し上げたのでございますが、「基本的な行政としましては労働行政のお仕事でありましょうが、ただいまいろいろ御指摘がありましたような事実をよく承りまして、今後考えてまいりたいと思います。」というふうに申し上げました。  実は都市銀行は、多少立ち入って申しますと、例えば昭和五十年、二十年前ぐらいに比べますと、預金量などは大体四倍ぐらいになっておるかと思います。その間に職員数はむしろ一、二割方減っていったのでございます。そういうような体制のしわがどこかに寄っているのではないかということもやはり考えなければならないと思いますが、ただ、先般来この労働行政当局の指導、それから国会の御議論などを踏まえまして、全国銀行協会連合会の改善方の検討に加え、個別の銀行も、私どもの見るところでは、熱意を持ってこのサービス超勤を含むいわゆる広い意味での時短問題に取り組んでおるというふうに聞いております。私ども、これは行政の分野としましては基本的にはやはり個別労使間の問題であり、また労働行政に係る問題でありますけれども、私どもとしましても、金融機関が公共性の高い免許法人であるということにかんがみまして、各種法令等の遵守に特段の努力を払うよう、今後とも指導してまいりたいと考えております。
  241. 正森成二

    ○正森委員 これで質問を終わりますが、銀行局長大臣、ここに朝日新聞の二月一日の夕刊があります。これは「お父さんを休ませて」「拝啓、日本の社長さま」、こういう題で、「銀行員の妻」となっております。相当長いのでそれの要旨の一部を読みますと、「日ごろ主人がお世話になっております。思い余って筆をとらせていただきました。 主人は勤続十七年余、支店長クラスヘの昇進を控えて、夢中になって働いております。」こう言って、いかによく働いているかと言った上で、「若いころに比べ体力が落ちているせいか、おふろに入る気力もなく、翌朝シャワーを浴びて出かけることもあります。子供たちは、平日はほとんど主人の顔を見ることはありません。」こう言って、「支店時代は「銀行が忙しいのは、現金を扱うから、いつも忙しくして出来心を起こさないようにするためだ」などと、わけのわからないことを申しておりました。」これは私が言っているのじゃないんです。銀行員の妻が言っているのです。「最近は金融機関の不祥事とともに、長時間労働への批判が高まってこ云々と書いてあって、「実際は、かえって行内外のお付き合いが増えているようです。 先日、手当のつかない「サービス残業」問題で、東京労働基準局が銀行に立ち入り調査をしたとの新聞記事を読みました。主人によると、人件費の枠や組合との協定があるので、夜九時五十分以降は残業をしても残業をしたことにしないのだと申します。「サービス残業はない」と抗弁する銀行の談話を読んで、ただ働きを強いられてきた主人たちがかわいそうなだけでなく、夫の帰宅を待ち続けてきた私ども家族もむなしい気分に襲われました。」こういう内容なんですね。  こういうことを一流銀行の妻に書かせるようなことのないように、やはり主管は労働省ですが、銀行局も考えていただきたいということを申し上げて、時間でございますので質問を終わらせていただきます。
  242. 太田誠一

    太田委員長 中野寛成君。
  243. 中野寛成

    ○中野委員 証券各社は五月十五日、一九九二年三月期決算を発表いたしました。大手四社では山一が六四年以来の経常赤字になったのを初めといたしまして、準大手十六社のうち十二社が経常赤字となっております。また、同二十八日、都市銀行十一行も決算を発表いたしまして、経常利益は全体で前年度比一四%城となっております。各社は抜本的な経営体質の強化を迫られているわけでありますが、不振がさらに続きますと、救済合併などによる業界再編の可能性も出てこようかと思います。  相互乗り入れを柱としたこの改正案競争促進を一つの目的としているのでありますが、こういう不況が続きますと、余り制度改正効果を発揮しないということになるのではないだろうか。逆に考えますと、こういうときだからこそ、改正をしても過熱しないで、落ちついて軟着陸できるグッドタイミングだと見る見方もできるかもしれません。いずれにいたしましても、不祥事再発防止、そしてまた金融機関に対する検査・監視体制の強化というふうなものがなければ法改正の意味はないわけでありますが、本法によって、どちらかといえば追い込まれる方の証券につきましては、証券取引等監視委員会の創設など、ある程度抜本的な対策が講じられました。しかし、本法によってある意味では有利になると見られます銀行などに対する検査・監視体制というのは逆にまだまだ不十分なのではないか、こういうふうにも思うのでありますが、いかがお考えでしょうか。
  244. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的には不特定多数を対象とします証券取引と、相対であります銀行金融、ここの差があろうと思っておりますけれども、いずれにいたしましても今回の制度改革というのは、有効かつ適正な競争の促進、これによりまして証券市場に対する信頼の回復を図るとともに、我が国金融資本市場効率化ですとかあるいは活性化を通じてその健全な発展に資するものである。その意味で、私どもとしては早くこれを実施していきたいというふうに考えておるわけでございます。もし、これがまたおくれるということになりますと、金融機関ですとかあるいは証券会社経営の選択の幅が広がらないということ、今後の金融環境の変化に弾力的に対応することができなくなりますと、その経営にとって大きなマイナスでございまして、金融秩序ですとかあるいは証券市場に悪影響を与えるおそれがあろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても、私どもは、この制度改革というのは中長期的な観点から国民経済の健全な発展に資するものであろうというふうに考えながら、この法律を今御審議いただいておるということを御理解をいただきたいと思います。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  245. 中野寛成

    ○中野委員 そこで、今回は業態別子会社方式を採用したわけであります。この金融制度の見直しに当たりまして五つの方式が示されて、その中で今回のような選択がされたわけであります。制限つきとはいえ、相互参入銀行、証券に新しい人材や発想を取り入れることができるようになったという意味では前進だと思いますが、どちらかといいますと、EC諸国を中心にいたしまして世界の趨勢はユニバーサルバンクもしくはユニバーサルバンク方式、バンキングということが言えるだろうと思うのです。  そしてまた、確かにそれは利用者立場から見れば、一つ銀行が普通銀行業務長期信用銀行業務信託業務証券業務などすべての金融証券業務を行う方式が便利ではあります。しかし、なぜ政府当局が業態別子会社方式をあえてとったのかという説明につきましては、必ずしもまだ十分納得できる説明がないように思えてならないのであります。うがった見方かもしれませんが、結局のところ、過去に銀行と証券が分離されて存在し、また大蔵省の中でも銀行局と証券局がある。その銀行局と証券局がある大蔵省にとって、部局統廃合などをする、いわゆる行政改革を進めるという気持ちやエネルギーがないからかという気が、説明不足であればそういううがった見方もしたくなるわけであります。  いっそのこと、先に銀行局と証券局が相互参入したらどうかいなという気持ちさえ持つのでございますが、今回の改正の本質というのは一体何なのか。将来はユニバーサルバンキングという考え方を取り入れていくそのプロセスなのか、いやそうではない、これが日本の終局的な選択なのだということなのか、行政の都合で制度改正を十分やれなかったのではないのかという疑問にどう答えるかということについてお尋ねいたします。
  246. 羽田孜

    羽田国務大臣 各金融業態間の垣根を低くすることによりまして、金融資本市場における有効かつ適正な競争を促進して市場の効率化ですとか活性化を図るということで、より多様で良質な金融商品・サービスを利用者に提供することが可能であろうということでございます。このような目的を達成するための手段といたしましては幾つかの手段があるということが言われておりますけれども、その中で特に、今御指摘のユニバーサルバンク制度、あるいは業態別子会社方式が考えられるところでございますけれども、やはり金融秩序の維持ということ、あるいは預金者保護、それから利益相反といったことに対しますところの弊害防止、こういうものを考えましたときにば、今回の制度改革におきまして私ども業態別子会社というものを採用したところでございまして、今御指摘があったわけでありますけれども銀行局あるいは証券局、この二つをそれぞれ守って残しておく、そういったことでなくて、むしろ利用者の利便、それともう一つは、大きなものが小さなものを食い込んでしまうというような問題、こういうことなんかを念頭に置きながら、私どもとしては日本として今とるのはこれが一番よろしかろうということで、確信を持ちながらこの方式を取り入れだということを御理解いただきたいと思います。
  247. 中野寛成

    ○中野委員 もちろん、EC・ヨーロッパ方式とアメリカ・カナダ方式と、こう大別できるかもしれませんし、そしてまた日本の方式。将来の展望としてこの金融証券業界の動き、傾向、そして日本の行政のあるべき方向というものについて、今回のこれはプロセスなのか最終的な決断なのか。将来の展望と今後のあり方についての御見解があればお聞かせいただきたい。
  248. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の制度改革は、金融制度調査会及び証券取引審議会、ここにおきまして六年にわたって論議をされたのを踏まえながら、中長期的な視点に立ったものであるというふうに考えておりまして、金融界あるいは証券会社を取り巻く環境というものは今後大きく変化することでもございまして、将来において再び金融ですとか証券制度の見直しが必要になる可能性、これは私どもも否定するものではございません。しかし、現時点におきましては、将来を展望した最善の内容のものであろうというふうに考えておることを申し上げさせていただきたいと思います。
  249. 中野寛成

    ○中野委員 聞くだけやぼだったかもしれません。今これがベストだと大蔵大臣としてお答えにならざるを得ない。だが、本当はもっと長期的な展望に立って、私は今回のこれが決してベストだというふうに思わない。現段階において選ばれた一つの選択であろうという気がするわけでありまして、抜本的な検討というのは今後ともなお一層検討されなければいけないだろうと思うのであります。まあしかし、それは深追いをいたしませんが。  さてそこで、しかし、今回の金融制度日本金融制度改革としては大変大きな改革であることは否めない事実だと思いますが、その運用状況を今後厳しく見守っていく必要はあるであろうと思うのであります。特に、本来の競争促進、利用者利便性獲得、確保などに沿うものとなったか、あるいは小口利用者また零細金融機関が何らかの被害をこうむらなかったか等々、法律施行後にフォローアップしていくことが多くあるであろうと思いますし、また政省令にゆだねられている部分というものが余りにも多いということも言えるだろうと思います。  きのう、各業界の御代表の方々にお越しいただいて参考意見をお聞かせいただきましたが、その政省令にゆだねられておって、まだ未確定の部分が多いものですから、ああしてほしい、こうしてほしい、きのうはどちらかというと随分注文をお並べになったという印象がむしろ強かった。それほど未確定の部分があると言っていいのではないだろうかと思うのであります。  そういう意味では、今後の運用状況、また政省令をどうお決めになるかということ等も含めまして法律を見直す道を確立しておくべきではないかという気がするのであります。「当分の間」などという文言もございますし、当分の間というのが三十年、四十年続く例は日本にも間々あることでございますが、しかし随分いいかげんな法律制度だということに見られてもしょうがない。そこで、消費税とか地価税、また今参議院で議論をされておりますPKO法案につきましても、見直し規定を入れた、または入れるケースというのはあるのでございますが、今回の場合にも、例えば三年後の見直しというふうな規定を入れるということなど、単に常に見守っていけばいいではなくて、今回のこの法改正の精神からいってむしろその見直し規定を明確にしておくということは、ある意味では関係者にとっても一つの安心感もしくは緊張感というものを与えることにつながっていくのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
  250. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに御指摘の点は私も理解できないことはないわけでございますけれども、やはりこれから新しくスタートするというところでございます。そして私ども政省令をつくるに当たりましても、この国会での御論議あるいは参考人の方の御意見もございましたし、またいろいろな市場関係者からも意見を聴取しておるところでございまして、そういったものをもとにしながら、この法の目的とするところ、これをもし政省令にゆだねる場合にもそういったことに特に注意しながら進めていかなければならぬだろうというふうに思っております。  ただ、もちろん私は変なふうにこだわったりあるいはかたくなであるということはよろしくない、できるだけいろいろな問題に対してフレキシブルであるということは必要であろうと思っておりますけれども、やはりこれだけ大きな改革でありますから、例えば三年で見直しますよというようなことになりますと、非常に不安定なものになってしまうであろうというふうに考えておりまして、今御意見があったことは私ども念頭に置いて進めていきたいと思いますけれども、その見直し規定を今置くということについては、よろしゅうございましょうということを申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  251. 中野寛成

    ○中野委員 それでは、施行までのプロセスについてお聞かせをいただきたいと思いますが、今日まで常に審議会でも長年の御議論をいただいております。同時にしかし、ここで法案ができた、そしてまた国会で法案が成立するということになりました場合に、政省令の作成に向かって既に作業は進んでおるのであろうとは思いますが、それなりに関係業界の意見聴取も必要でしょうし、また利害がそれぞれ相反するということで、議論がまだまだ積み重ねられなければいけない部分もあるであろうという気がするわけでありますけれども、今後の施行の時期、そしてそれまでの作業についてどういうお考えをお持ちですか。
  252. 土田正顕

    土田政府委員 この法律案をお認めいただきました後、それの公布、さらにはその後にその施行という段取りになります。施行は公布の日から起算して一年以内の政令で定める日というふうにこの金融制度改革法案はなっておるわけでございますが、その施行に間に合うべく政省令の作業を進めてまいることは当然でございます。そのときには、まずこの国会での御議論を踏まえ、さらに事務的にいろいろとかねてから宿題として残しておりました問題を詰めまして、その過程で業界とのしかるべき意見交換も項目によってはあることと思います。そのような作業がかなり大がかりな作業になりますけれども、それをまとめましてこの円滑な実施を期したいというふうに考えております。
  253. 中野寛成

    ○中野委員 大改革でありますだけに、十分にそして慎重に、しかもオープンに今後の論議を重ねていただきたいというふうに御要望申し上げておきたいと思います。  さて、若干本論と離れますが、ノンバンクの分離行政についてお尋ねをいたします。  例えば学校、予備校は文部省、塾は通産省と所管がありまして、私も文教委員会当時びっくりしたのですが、ノンバンクにつきましては本来の業務については通産省所管、貸金業の部分は大蔵省所管となっているわけですね。ノンバンク行政の立ちおくれというのは、このような分離行政、いわゆる大蔵、通産の縄張り争いというふうなものも一つの原因になっているのではないか。本法の改正の経緯もまた一つのそういう部分がございました。こういうことは業界にとっても実にややこしいのではないか、こうも思うのでございます。各省庁間の相違、その相互参入はあるのかもしれませんけれども、しかしむしろこのようなややこしい制度というのはできるだけ整理をしていくことが大事ではないかと思うのであります。  本当は大蔵、通産両省に聞くべきでしょうが、とりあえずきょうは大蔵省にお尋ねをいたします。     〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
  254. 土田正顕

    土田政府委員 昨今ノンバンク問題として御議論をいただいておる問題でございますが、基本的には法律の位置づけとしては、貸金業の規制等に関する法律の体系の枠内で、いわば大蔵省融資業務について、業務について所管をしているところでございます。  御存じのように、ノンバンクというのは、金融業や証券業一般と違いまして、兼業なりなんなりの営業の組み合わせは自由でございまして、したがって、融資業務以外のいろいろな業務を自由に営むことができます。そのいろいろな業務につきましてそれぞれに監督官庁があれば、その業務についてしかるべき指導監督を受けるということでございまして、このように一つ企業体に対しまして複数の監督官庁が関与するということは、世間に例もございますし、これは合理的な理由に基づくものであろうと思います。  ところで、貸金業規制法そのものにつきまして、これが大蔵省の所管であるということは確立した概念でございますが、実は、昭和五十八年に貸金業規制法が議員立法によって制定されましたときに想定しておったのは、どちらかと申せば、率直に申しますと、営業規模の小さな消費者金融を行うようなそういう業者を主流としてとらえておったわけでございます。ところが、昨今問題となっておりますノンバンクというのは、事業者向け貸し付けを中心にいたしまして、どちらかといえば大口の貸し出しを行う、そして、数は少ないのでございますが、職員から店舗数から非常に大がかりなスタッフを持ち、それから、動員する資金量も多額に上るというものでございます。  このような存在は昔は余り目にとまりませんで、ここ数年ににわかに目についた、こういう感じでございましたので、これに対する行政の対応が若干追いつかなかったということはあろうかと思います。しかし、そのようなノンバンクの果たしております機能は、昔からございますような比較的小規模な貸し金業者とは違いまして、やはり金融システムの安定及び健全な発展を図る上で見逃し得ない質、量を備えたものであるということでございますので、今後は、これについて鋭意大蔵省としても、金融システムの安定との兼ね合いにおいてノンバンク融資業務実態把握などについて真剣に取り組んでいくつもりでございます。  そのように、これは一つの会社の中の貸金業という業務融資業務という業務について私ども行政としてお預かりをしておるというつもりでございますので、いわゆるノンバンク業界と申しますか、その会社全体に対して他と競合しながらいろいろと指導したりなんかしていくというような観点を持っておるということでは必ずしもございませんし、また、役所同士の権限争いというような観点でこの問題を取り扱っているというつもりはございません。
  255. 中野寛成

    ○中野委員 ただ、ノンバンクの健全経営といいますか、そのことについてはよほど注意をしていきませんと、ますます問題が肥大化をしていくというふうに考えるわけでございまして、私が申し上げました単なる分離行政の弊害ということだけではなくて、基本的に大蔵省のなお一層の努力を要請をしておきたいと思います。  次に、せっかくですから資産課税の適正化についてお尋ねをいたします。  株価が下がりますと、株式譲渡益課税の適正化などについては何となく発言しにくくなるのでございますが、あえてこの機会に取り上げておきたいと思います。既に与野党間では、両院合同協議会その他において、納税者番号制度の導入、総合課税体制の確立の方向で合意はできていると、私も担当者としてそう考えております。しかも、税法では、平成四年度秋以降にこの見直しをすることになっております。総合課税はよく増税と一緒にして考える向きもあるのでありますが、全くカテゴリーが異なるものだと考えておりまして、これを進めたからといって株式市場などに悪い影響をもたらすとは私は思っておりません。  さて、厚生年金や国民年金などばらばらにつくられている年金番号について、社会保険庁が一本化の方針を固めたと聞いているわけでございます。そういたしますと、私はこれらを利用しない手はないという気もするのでありますが、納税者番号制度についてこれから前向きに検討される場合、年金番号活用という方向で政府も検討されるというふうに考えてよろしいのかどうか。この納税者番号制度、また、総合課税体制の確立に向かっての作業状況を含めて御説明をいただきたいと思います。
  256. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 お答え申し上げます。  納税者番号制度の問題につきましては、政府税制調査会の中に納税者番号等の検討小委員会というものが、そういう検討の場が設けられておりまして、実は、本日もつい先刻まで審議が行われておりました。  そうした中で、ただいま中野先生御指摘の納税者番号制度の方式について、例えば年金番号の活用というような方向はどのように議論されておるのかということのお尋ねかと存じますけれども昭和六十三年十二月の税制調査会の納税者番号制度検討小委員会の報告というのがございますけれども、その中に、社会保障等国民に受益を伴う行政分野で利用されております番号を利用しますアメリカ型といいますか、アメリカ方式と、もう一つ、全国民に強制的に統一した番号を付与いたしまして、税務も含みます各行政分野で幅広くこれを利用します北欧方式、この二つの方式のいずれかが適当であるというふうに整理されておりまして、それを今受け継ぐ形で論議が進んでおるわけでございますけれども、一方、政府部内におきましても、関係省庁の実務者レベルから成りますところの税務等行政分野における共通番号制度に関する関係省庁連絡検討会議というものが設置されておりまして、ここで同様に、アメリカ方式、北欧方式の両方式の検討を含めた技術的、専門的な検討を今行っておるところでございます。  そういう意味におきましては、先生今御指摘の年金番号活用といったような、つまり、国民に受益を伴うような行政分野で利用されております番号を利用する方式も検討の一つの重要なブランチに入っておるということではございますが、今の時点政府といたしまして、付番方式につきまして何かさらに具体的な方針を固めたということではございませんし、まさに今審議を見守っておるということでございます。
  257. 中野寛成

    ○中野委員 ぜひ積極的な御審議の進捗を期待をいたしたいと思います。  さて、時間がほとんどありませんが、あと二つだけお尋ねをいたします。  法案提出の土壇場で、銀行による証券会社の救済合併で株式ブローカー業務が認められることと相なりました。銀行の証券子会社に株式ブローカーを禁止した規定の抜け穴になるとの批判もあるわけでありますが、どういうふうにお答えになられますか。  あわせまして、証券子会社の最低資本金でありますが、たびたび指摘はされておりますが、私も、銀行の証券子会社の資本金が百億円以上になるという見込みの中で、銀行法では銀行の最低資本金は十億円となっている、銀行より証券会社の方が高いというのも不自然に思いますし、また、既存の証券会社でも資本金三十億円程度のところがいっぱいある、こう聞いております。結局、実際に参入できるのは大きなところだけになるということかな、こう思うのでありまして、競争促進とか新規参入促進とかということが果たして促進されるんだろうか。  いずれにいたしましても、今回の法改正によって大きいところが得する、強いところがますます強くなるという弱肉強食の結果を招かないように、本来の法律の趣旨がきちっと生かされるようにというふうに願いながらお尋ねをするのでありますが、この辺の心配はありませんか。
  258. 松野允彦

    松野(允)政府委員 最初のこの附則十九条二項の問題でございます。これは、先ほども御答弁申し上げましたが、今回の法改正案におきまして、今度は銀行が証券子会社を保有することができるということになったわけでございまして、それに対応いたしまして証取法としては、子会社を新たにつくって証券会社証券業務に参入する場合については、ブローカー業務の免許を与えないということにしたわけでございます。しかし、一方で既存の証券会社を買収するということが理論的には可能なわけでございます。これは銀行が証券子会社を持てるという規定が入りました関係で、新規設立と買収と両方が読めることになったものですから、そういう関係で買収というものが理論的には可能だ、それに対応いたしまして、十九条二項の方でその場合にはブローカー免許を取り消すことができる、表現はちょっと違いますが、そういうような趣旨の規定を入れたわけでございます。これは、私ども考え方は、あくまでも新規設立の場合に認めないということのしり抜けを防止するための一つの規定であるというふうに位置づけているわけでございまして、救済合併のために認めたという積極的な意味合いというふうには考えていないわけでございます。もちろん、実際に救済というような問題が起こり得ることは考えられるわけでございますが、それはやはり、今申し上げた新設の場合のブローカーを認めないという趣旨の抜け穴となるようなことのないように運用しなければいけないというふうに思っているわけでございます。  それから、資本金の問題でございます。これは、現在証券会社につきましては、その証券会社が所在します地域あるいは業務内容あるいは取引所の会員か非会員かということで、最低資本金が二千万円から三十億円まで段階がございます。それにつきまして、これは四十三年の免許制以降変わっていないということで、証券取引審議会におきまして、やはり証券市場の拡大、あるいは証券会社業務規模も拡大した、物価水準も上昇したというようなことで最低資本金を見直す必要があるということで、三倍程度に引き上げるのはどうかというような報告をいただいているわけでございます。これは政令で定めることになっておりますので、現在私ども検討しているわけでございますが、今申し上げましたように、証券会社の最低資本金は現在でも業態あるいは地域によって二千万から三十億までのばらつきがございます。したがいまして、どこでどういう業務を行うかということによって、必ずしも百億、三十億を三倍にして百億というような数字が出ておりますけれども、そういうような水準までなくても十分証券子会社として参入できるということにはなるわけでございまして、ここはどういう地域にどういう業務内容で入ってくるかということは、各証券子会社をつくる際の経営判断になろうかというふうに思うわけでございまして、御指摘のように、例えば百億なければ絶対入れないというようなことにはなっていないわけでございます。
  259. 中野寛成

    ○中野委員 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
  260. 太田誠一

    太田委員長 菅直人君。
  261. 菅直人

    ○菅委員 金融制度改革の大きな法案審議でありますけれども、まず、金融制度調査会がことしの一月に出したフォローアップ会合の答申で、昨年来の金融不祥事に対して、金融システムの安定性、信頼性の確保のための幾つかの項目を提示をしているわけですけれども、その中で、ディスクロージャーの推進ということがかなり大きなウエートで提示されているわけです。しかし、最近の銀行のいろいろな不良資産の状況などのディスクロージャーについては、必ずしもそれが進展しているというふうには見受けられないわけですが、こういった指摘を受けて、今後特に銀行の不良資産の問題などをどういう形でいつからディスクロージャー、公表していく考えなのか、まずその点をお尋ねしておきたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  262. 土田正顕

    土田政府委員 御指摘のとおり、ことしの一月に金融制度調査会がまとめました報告の中では、このディスクロージャーの一層の推進をうたっておるところでございます。このディスクロージャーと申しますのは、金融機関企業内容をみずから開示して、株主や利用者たる国民の支持と理解を得ることを通じてその行動や財務内容などを規正する効果を有する、こういう位置づけでございます。  このディスクロージャーにつきましては、銀行を例にとりますと、かねがね二つの方向でその拡充に努めてまいったわけでございますが、その一つは、証券取引法の体系にございますような有価証券報告書、届出書系統の開示項目の拡充整備でございます。もう一つの方向は、これは我が国特有の法制でありますけれども銀行法ならば銀行法にこのディスクロージャーの関係の規定がございまして、一つの訓示規定ではございますが、自発的な経営内容の開示を促すというような規定が昭和五十六年以来入っております。  この後者について御説明いたしますと、逐次開示項目の拡充が行われており、本年三月の決算をめぐる開示項目も、また何がしかの拡大を見ました。ただ、昨今これのみが話題になっておるわけでございますが、昨今指摘されておりますのは、いわゆる不良資産、不良債権、これについてどのようにディスクローズするのかという話題でございます。  これにつきましては、ことしの三月期をめぐる問題の処理といたしましては、金融界にもいろいろな議論があり、結論を得なかったわけでございますが、来年の三月期から、この不良債権のディスクロージャーについて実現を見たいというふうに期待をしておりまして、これを理論的ないし実務的に補強するために、金融制度調査会でも作業部会を設けまして、第一回会合がこの六月五日からでございますが、専門家による研究をお願いすることにしております。この研究の成果を得て、来年の三月期の決算から、このいわば不良債権関係の項目の開示が始まるということを期待しております。
  263. 菅直人

    ○菅委員 大臣、このフォローアップ会合の答申の中で、こういう表現があるのですね。「一部には金融機関業務運営の改善を見届けるまでの間、金融制度改革の実施は見送るべきではないかとの意見もあるがこしかし、その後は、やはり今やるべきだというふうになっているわけです。その前提として、まさに今局長が答弁をされましたけれども、従来、この昨年来のいろいろな金融不祥裏の問題はそれはそれとしてきちんと対応する人だ、それはそれとしてきちんと信頼回復なりそういう方向で対応するんだ、だからこの金融制度改革は従来の長い議論を踏まえて行うべきというふうにこのフォローアップの文書は述べているわけです。しかし、今の話を聞くと、その大きな柱であるディスクロージャー自身が内容的にはことしは結論が得られなかった、だから来年に向かって作業部会をつくったところなんだ。そうすると、若干自己矛盾じゃないですか。つまり、昨年来の証券不祥事のことはそれはそれとしてきちんと対応ができるあるいはできたから、大改正である、大改革であるこの問題も当初の予定どおりやっていこうということであるならまだ理解できるわけですが、その問題と今度の改正問題というのは非常にかかわりが大きいわけですけれども、そういうものが必ずしもめどがついていない、あるいは実施がまだはっきりしていない中で今回の改正が行われる。そういう意味では、まさにここでみずから指摘といいましょうか、意見紹介がしてあるように、こういった改善を見届けるまで大改正は少し様子を見るべきではないか、こういう意見が有力になっても仕方がないと思いますが、これはぜひ大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
  264. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かにそういう御指摘もあろうかと思いますけれども、やはりもう既に金利そのものの自由化というのは始まっておるということ、それから国際化というのも大変な速いスピードで進んできておるという状況でございますので、私どもやはり今度のこの法律だけは一日も早い方がいいんじゃないのかというふうに思っております。特にこの間の不祥事の原因というのは、やはり適正な競争が欠如されておったということ、あるいは金融機関が自己責任意識ですとかあるいは内部管理、こういったものが不十分であったろうというふうに思います。ですから、今度のように垣根を低くしてお互いが競争するということになると、おのずとそこに緊張感というものが生まれてくるであろうということを考えましたときに、それとまたもう一つは、利用者のいろいろなニーズにこたえていくという意味でも今やるべきではなかろうかというふうに思っております。  ただいま局長の方からもお答えをした中にもございましたけれども、この中におきますところのディスクロージャーの規定、これにつきましては、既に幾つかの問題についてはこれは拡充されてきておるということでございますし、またこれから今議論していただいておる中にも新たに盛り込まなきゃならぬ問題もあると思いますけれども制度そのものの改善だけは私は今やらしていただきたいということをお願いをしたいわけであります。
  265. 菅直人

    ○菅委員 この問題は常に、何といいましょうか、業界指導的な立場で物を考えるか、マーケットの方から物を考えるかといういつも基本に戻るわけですが、ディスクロージャーの問題はやはりそういう観点から、何といいますか、その問題どこの改正が、いわば制度改革が行われたけれどもディスクロージャーの問題は相も変わらず恣意的な形でしか発表されないということがないように特に指摘をしておきたいと思います。  今大臣の方から、いわゆる適正な競争こそが逆に言えば不祥事などを招いたような体質を改善することにもなる、あるいは今回の改正はいわゆる利用者の利便とかそういうことが図られるんだという考えが提示をされております。その考えの基本は、私もまさに理解ができる内容だと思っております。しかし、そういう利用者の利便とか競争の促進ということを図るための中心的な課題が、今回の制度改正のように、銀行による証券子会社の設立を認めて参入するということが今回の法律のかなり中心的な課題になっているように理解されますが、何かそのことに非常に偏っている。もう少し別の面での実は競争の促進とか利用者の利便の問題もまだまだあり得ることをいわばやらないでおいてといいましょうか、その不十分なまま銀行の参入ということに中心的な課題を置いたということが、やや、何といいますか偏重しているように思うわけです。  若干基本的な問題に戻りますけれども、例えば証券に対する免許制度、これはさきの法案でもいろいろ議論になりましたけれども証券業務を、かっては届け出であったと聞いておりますが、また免許制にある時期に戻して、今回いわゆる証券取引委員会ができるわけですけれども、そういうことを踏まえて免許制というものをもう一度届け出制なりに戻してそういうところからの競争の促進ということを図っていく、こういう考えについて大臣はどのようにお考えですか。
  266. 羽田孜

    羽田国務大臣 垣根を低くする、あるいは競争の適正ということからいったときに、むしろ免許より届け出の方がよろしいだろうという御意見だと思うわけでありますけれども、私は一つの御意見であろうと思っておりますけれども、確かにこの金融あるいは証券というものが及ぼす影響というものは非常に大きいということから考えましたときに、やはり財政的に一体どうなのかということ、あるいはそういったものを経営していく経験とかそういったものはどうなのか、こういったものをまだ深くチェックする必要があるんじゃなかろうかというふうに考えますときに、私どもは今回はやはり免許でいくべきであろうというふうに考えております。
  267. 菅直人

    ○菅委員 もう一点、多少細かい問題になりますが、投資顧問会社が投資信託を、何といいますか、投信を行うことを子会社方式で認められているというふうに理解しておりますが、例えばこういう場合も、現在ではその投資顧問会社が投信を組んで販売しようと思うと、証券の外務員以外は販売が認められない。直販はできるにしても、親会社の販売とか他のところに依頼をするという場合には、証券の外務員のみが認められているというふうに聞いております。例えばこういう投資顧問会社はまだ日本でも生まれて間もないわけですけれども、そういうところがこれまでのようなブローカー業を中心とした証券会社とはやや異なる立場、いわゆる投資家の立場に立って投信というものを開発していくということの道をもっと開く意味でも、そういった限定をある程度外していくという方向も考えられると思いますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  268. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、今回この投資信託業務への参入を投資顧問会社に認めることにしたわけでございます。これは、投資顧問会社といいますのは、文字どおり投資助言を行っているわけでございまして、投資信託の運用というものと非常に似ているという問題、それから既に外国の業者の参入を認めたわけでございますが、外国の業者の場合には本国で投資顧問業務を行っている会社が日本子会社をつくり、投資信託業務に参入するというような形で進出をしてきております。そういったようなことを考えまして、国内業者についても投資顧問会社の投資信託会社を子会社として設立することを認めたわけでございます。投資信託の販売そのものにつきましては、御指摘のように証券会社が販売をする、投資信託会社の直接販売というのはこれはできるわけでございますが、大部分は証券会社が販売をするわけでございます。  今回この銀行の証券子会社、あるいは私ども証取法の立場から見ますと、必ずしも銀行子会社だけを前提としているわけではなくて、それ以外の業態の会社からの証券子会社の参入というものも予定してきております。そういう広く証券子会社という形で参入をすることによりまして、例えば投資信託についても、今申し上げた投資顧問会社がつくった子会社である投資信託会社の投資信託商品を新たに入ってきた証券子会社が販売するというようなことも考えられるわけでございまして、投資信託会社というのはいわば投資信託のメーカーでございます。これは商品をつくる方でございまして、つくる者と売る者というものが、現在まではかなり証券会社主導的な形のものが強かったわけでございます。これは投資信託というのが、そもそもの生い立ちから証券会社自身が行っていた業務だということがありますのでそういうことでございますが、もう今やそういうメーカーと販売者との関係というものをもう少し断ち切っていって、いい投資信託はだれでも証券会社が売れる、おるいは広く投資家がアクセスできるというような方向に持っていく必要があるということで、こういうような投資信託会社への参入を認め、かつあわせて証券子会社の参入というものも考えれば、投資信託というものがよりいろいろな商品ができ、いろいろな証券会社で販売されるということになるというふうに期待をしているわけでございます。
  269. 菅直人

    ○菅委員 今の問題の解説は、私にとっても非常にわかりやすかったわけですね。つまりは、投信というものはいわば製造に当たる、物をつくる、システムをつくることに当たる、それを販売するのはまだ別の業務だ。従来は証券会社がその両方をやっていたから、ややもすれば自分の証券会社のブローカー業務にプラスになるような商品を出していたのではないかという、少なくともそれを買う投資家からすれば、そういう不信感というか、そういうものもあって、特に今回のような証券不祥事が重なりますと、それが一段と強くなっているわけです。  今局長の方でもそういうところまで分析なりをされているわけですが、そうするとその販売を証券会社だけに認めるということの枠を外す可能性というのがあり得るのかどうか。これは銀行あるいは他の、保険等いろいろな業態があると思いますが、それがないとすると、逆に、やはり販売力の強い既存の大手証券会社が販売の方で独占体制がそのまま維持されるということにもなりかねないというよりは、そういう側面が強いと思いますが、そういう販売の方も枠を広げる可能性というのがあるのかどうかをお尋ねしておきたいと思うのです。
  270. 松野允彦

    松野(允)政府委員 この投資信託といいますのは、確かに証券投資に個人投資家が入ってくる場合の一つの大きな商品、入り口の商品に当たるわけでございましで、そういう意味では、証券投資の非常に重要な商品であるというふうに位置づけができるわけでございます。重要な商品だという位置づけということは、今御指摘ありましたように、もっと広く販売網を広げたほうがいいではないかというような御意見にもなるわけでございますけれども、他方では、今あります証券会社がこれから本当に証券市場を個人投資家の資産形成の場として立て直そうというふうな、つくり上げていこうという努力をする場合の一つの大きな主要な商品でもあるわけでございます。  そういう意味からいいますと、現在の私ども考え方というのは、やはりさっき申し上げたように証券会社への参入を認めるということ、あわせて既存の証券会社、特に中小証券会社がこの証券市場に個人投資家を取り戻すという努力をするというためには、やはり証券会社による販売というものを続けていくことによって投資信託というものを個人投資家に健全に販売するというような機会を与えることがどうしても必要ではないかというように考えるわけでございまして、将来の問題ということになりますとそれはいろいろと御意見が出てくると思いますが、少なくとも現在の時点において、証券市場に個人投資家を取り戻す、信頼を取り戻すという一つの大きな戦略的な商品でありますので、そういう意味では証券会社を通ずる販売というものを維持しながら、その中で証券会社の努力にまちたいというのが私どもの今の考え方でございます。
  271. 菅直人

    ○菅委員 大臣、今の話を聞かれて何となくやはり歯切れが悪いと思うのですよね。一方では自由競争を大いに認めることが不祥事なんか招かないんだ、いろいろな選択の幅を広げて、最終的には投資家のリスクは投資家自身が覚悟するわけですが、そのときにいろいろな投信なりいろいろな商品を選択できるようにするということが今回の改正のある意味での大きな柱だと一方で言われながら、一方では証券会社自身に投信というものの販売を限定をする。しかも、先ほど来のいろいろな議論を聞いておりましても、証券子会社で参入したところがすぐに大々的な販売を行うという体制がとれるかといえば、親会社は基本的にはそれをやっちゃいけないわけですから、実際上そう簡単にはとれないというふうに、現実はそうなると思うんですね。  そうすると、結局は先ほど言いましたような既存の大手証券会社のその分野に対する独占体制というのは実質的には維持をされる。結局は大手証券会社自身がつくった投信以外の投信が本当にマーケットに、何といいましょうか、適正な形で、有効な形でといいましょうか、自由な競争条件のもとで、公平な競争条件のもとで果たしてもたらされるのか。明らかに今の局長の答弁は内容的には相矛盾しているように思うわけですが、いかがですか。
  272. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに先ほどから申し上げておりますように、やはり垣根を低くして自由なということがこの本旨でありますけれども、初めから確かに完全なものあるいは理想のもの、そこに行くことというのはなかなか難しいであろうというふうに考えております。しかし、中小の皆様方も、やはりその地域の中に一つ地縁性を持っているとか、あるいは一つの組織の中にそういった特性を生かすということによって有利性があるということでございまして、決して大手だけが利益を得るものではないんじゃないのかなというように私は思っているところを申し上げ、今お話がありましたこと等は、私どもやはりこれからこれを進めていくに当たっても念頭に置きながら対応していきたいというふうに考えます。
  273. 菅直人

    ○菅委員 今申し上げたところ、検討をさらにしていきたいということですからきょうはこの程度にしますけれども、先ほど言いましたように販売というものが占めるこの分野におけるウエートというのは非常に大きいわけですから、そういうものも門戸開放しない限りは実際上の競争というものはなかなか実現をしないということを重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、これはかなりもう議論があったように理解をしておりますけれども銀行の証券子会社の設立を認めるという、この考え方が今回の法律の柱になっているわけですが、これもそうせざるを得なかったという説明はある意味では理解できるのです。つまりは独禁法関係で持ち株会社が持てないとかいうことで、兼営というものを認めないかわりに直接の子会社を設けることを認めるということは、こうせざるを得なかったという説明としてはある程度理解できるのですが、じゃ、例えば本来の銀行経営がこれによって大きく揺らぐような危険性が起きることがないのかとか、あるいはファイアウォールの問題になりますけれども、いわゆる銀行影響力でもってある種の資本市場がゆがめられるようなことがないのか、こういうことをやはり危倶をせざるを得ないと思うのです。  これは大臣でも局長でも結構ですが、基本構造として五〇%を超える株式を持つということは、例えば子会社が何らかの形で大きな負債を抱えた場合、その最終的な責任は親会社である銀行がかぶるというふうに理解するのが自然だと思いますが、そういう認識でいいのでしょうか。
  274. 土田正顕

    土田政府委員 今回の改正で基本的にその子会社方式を相互参入の方式として選択をいたしました理由に幾つかございますが、その中の一つに、預金者保護の観点から、証券業務に伴う子会社のリスクが銀行に波及するのを遮断する上で別組織を利用することが有効であるという判断があると存じます。それでそのほかに、ただいまのファイアウォールその他、これは経営健全性という話もございますが、さらに取引の公正を担保するためというようなことであろうかと思います。いずれにいたしましても、もちろん親子会社でございますから、子会社経営の結果というものが親会社に及ぶということはある程度避けられないのでございます。しかし、それが別組織であるということによりまして、子会社経営内容実態的に把握することが便利でありますし、それから、株式の持ち分の比率その他によりましては子会社の行動の責任が全部そのまま親会社に及ぶということがない場合も考えられるところでございます。  なお、当然のことながら、証券子会社を持つことにつきましては、親の銀行がそれにふさわしい財産的基礎、業務遂行能力を有しているかどうかを勘案いたしまして、本体の銀行業務の健全な遂行に支障を及ぼすおそれのない場合について、この場合は銀行法上の認可でございますが、認可をしていく考え方でございます。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  275. 菅直人

    ○菅委員 別組織という何か別の委員会でも問題になっているような表現が出てまいりましたが、子会社というのは、法人としては別組織であることはもちろんですけれども、今銀行局長が言われたその預金者保護のためにそういうリスクを遮断するのだ、そのために子会社方式にしたのだという表現ですが、そこが本当に遮断できるのかという疑問を申し上げているわけです。  ただ子会社だったから遮断するといっても、例えば必ずしも五〇%超ではないようなノンバンクの負債を、ある種親会社の銀行が今後どう処理をするかというような問題も今現実の問題になっております。また、証券の場合もいろいろ不祥事が重なりましたから、飛ばしの問題とかで巨額の賠償責任を負ったような証券会社も現実に出てきているわけです。そういう中にあって、子会社にしたから遮断されるという論理がどこで成り立つのか。情報とかなんとかが若干ここできちんと整理されるという部分はあるかもしれないけれども、逆に言えば、銀行にそういう十分な資産があって、あるところについて子会社方式で参入を認めるということは、ある意味で裏返して言えば、そういうリスクにたえられる銀行には認めようというふうにも当然受けとめられるわけでありまして、これが遮断ということになぜ論理的になるのか。そこをもう少し具体的といいましょうか、理論的といいましょうか、説明をいただきたいと思います。
  276. 土田正顕

    土田政府委員 別会社にすることによりまして、その経営内容の把握に便利であり、かつ、ある程度危険の分散にもなるという手法としましては、例えば世間によくありますが、一プロジェクト一会社というふうに、プロジェクトごとに別会社をつくるという手法はよくございます。そのような手法でもうかがわれるようなところではないかと存じます。  それで、ノンバンクの問題についてのいわば比較論としての言及がございましたけれども、現在、確かにこのノンバンクの中のあるものは、その設立の経緯その他からいきまして銀行と深い人的ないしは資金的なつながりがあるということでございますので、そのノンバンク経営不振に陥りましたときに、その親と目される銀行がその再建策に乗り出すというようなことも世上見られておるところでございますが、これはまたいろいろな動機がございまして、一つには債権回収を確実にするためであり、もう一つ金融システムヘの混乱を防止するというためでございます。ただ、そのような場合に、そのノンバンクのいわば経営の結果を全部銀行がしょわなければならないようになっているということではございませんので、基本的にはそのノンバンク経営問題はそのノンバンク自身の問題であるということではないかと思います。  なお、私が申しておりますのは、子会社方式を選択すればそれで自動的にあらゆる問題が解決されるということでは決してございませんので、子会社方式を選択した理由の一つとして、そのような銀行の健全経営を守るということができやすい、そういう考慮があったということを申し上げております。もちろん、やや繰り返しになりますが、その母体になりますところの銀行が能力、体力その他からいきまして健全経営影響を与えることがなく子会社をつくれるということが子会社認可の条件でございます。
  277. 菅直人

    ○菅委員 これも、今の局長の答弁、それなりの答弁とは思いますけれども、最後にまさに局長みずから言われたように、子会社にすれば大丈夫と言っているわけじゃないのだ、子会社という手法を含めていろいろとそういうリスクの遮断等を考えるのだということになるわけです。  そこで、そうすると、この証券子会社が親会社との関係でどういう業務ができ、どういう業務が行えないかということになってくるわけです。先ほども他の委員が、一つ一つ個別的な事例を挙げながらその業務範囲を質疑の中で明確化しようという努力をされていたわけですが、どうもある見方によれば、相変わらずそういうところを明確化しない、あるいは後には政令、省令等に出てくるのかもしれませんが、大蔵省の一種の裁量の範囲の中に置いておいて、相変わらず行政指導のような形でそれを小出しにしていくといいましょうか、この間の銀行不祥事、証券不祥事でも言われた、もっと透明性のあるあり方ではなくて、いつもの大蔵省の裁量という中での行政指導というあり方にまた個々の問題がまつということになるのではないか。これは多くの人がそういうふうに見ていると思うわけです。  そういう点について、もしそうでないということが明確に言えるならば、いつごろまでにどういう詳しさでもってそういった証券子会社がやれること、やれないことを明確にするつもりなのか。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  278. 松野允彦

    松野(允)政府委員 この証券、銀行銀行だけに限りませんが、証券子会社業務範囲につきましては、法律上は御存じのように株式のブローカー業務以外はやれる、認めるということになっているわけでございます。それじゃ、具体的に業務範囲をどうするかということでございますが、一般的に申し上げると、それはやはり市場の状況とか中小証券の経営状況などを考えなければいけないわけでございますけれども、今御指摘にありましたように、透明性ということも非常に重要なことでございます。したがいまして、例えば投資信託業について先ほど御指摘がございましたように、免許の運用基準のようなものを出したわけでございますから、この法律制度改正法の施行に合わせてやはり免許の運用基準というようなものをできる限り明らかにしていくということが必要だというふうに考えております。
  279. 菅直人

    ○菅委員 時間ですのでこれで終わりますけれども、今のような問題、もう少し透明性という言葉を大事にして今後もこの問題に対応していただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。
  280. 太田誠一

    太田委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  281. 堀昌雄

    ○堀委員 宮澤総理大臣とはこの国会で三回目の質疑をさせていただくという、私もこれまで大変長く議会におりますけれども、総理と三回も質疑をさせていただくのは今回が初めてでございます。  きょうは、これが今国会での私の最後の質問となりますので、この前大蔵大臣でいらしたときに一回取り上げたことがございますけれども、実はここにこういうパンフレットをお配りをしております。これはもう実はいろいろな場所で論議をいたしてきておりますけれども、この論議に関係がございますので、きょうはひとつ、これまでの日本の憲法でございました大日本帝国憲法というのを皆さんのお手元に配らせていただきました。と申しますのは、現在の憲法というのは、その前にあった憲法、大日本帝国憲法が廃止をされてそうして新しく日本国憲法が日本の憲法となったのでありますので、そこでこの大日本帝国憲法というものの性格を一遍皆さんに申し上げたいと思って実はお配りをいたしました。  「第一章天皇」でございまして、「第一条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」、こうございます。そうして「第四条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依り之ヲ行フ」「第五条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ」「第六条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス」、こうなっておりまして、要するにこれは天皇を頂点とするところの行政権が絶対的な権力を確保するために実はできておるのでありますが、ではこの憲法がどうしてできたかということを、実はこの「政治改革」のパンフレットの方で私は説明をいたしておるのでございます。  この二ページのところをごらんいただきますと、「帝国憲法と現行憲法の比較」というところで   大隈重信がイギリス的な議院内閣制・政党政治を内容とする憲法を制定すべきこと、また速やかに議会を開設すべきことを強く主張するに至ったので、岩倉具視を指導者とする政府は、大隈一派を政府から追放するとともに、明治十四年十月十二日の勅諭によって、明治二十三年を期して議会を開設すること、それまでに「立国の体」に従う憲法を制定することを明らかにした。これを「明治十四年の政変」という。ここに明治政府の憲法制定の基本方針は定まり、明治十五年、伊藤博文が憲法調査のためヨーロッパ、主としてドイツに派遣された。すなわち、伊藤は、民間の自由民権論者は「英米仏の自由過激論者の著述のみを金科玉条のごとく誤信し殆ど国家を傾けんとする」ものであるとし、「君権赫々」たる当時のプロシャ憲法を模範とすることが、「人権不墜の大眼目」を達成し、わが国情に最もよく合致するものと考えたのである。 「日本国憲法概説 佐藤功著」よりの引用であります。  歴史的に既に大隈重信さんたちが英米仏の民主的な憲法及び議会の制度を導入しようとしていたのに対して、御承知のように普仏戦争に勝利をいたしましてベルサイユ宮殿で戴冠式を行ったというこのプロシャの憲法がいいというのが伊藤博文、岩倉具視さんたちの考えでございました。それがさっきも申しました明治憲法のそもそもの由来でございます。  そうして、この明治憲法の中で特にちょっと私が申し上げておきたいと思いますことは、「帝国議会」というところで、「第三十八条 両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得」、こういうふうに第三十八条はなっておりますけれども、この帝国憲法の当時に議員立法というものが提案された例は一例もございません。すべてが要するに行政権による政府提案であったということでございます。それから第五十四条でありますけれども、「国務大臣政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得」、こう書いてございます。要するに行政権絶対優位の中で、政治家である大臣だけでは到底議論ができない、そこで憲法の中に現在の政府委員という制度が実は明記をされているわけであります。そうしてこの「政治改革」の方でも書いておりますけれども、実は現在の法案提出の状態は依然として閣法が主でございまして、このパンフレットの六ページのところに「内閣の法律案提出の現状」というのを書いておりますが、ここで「私が議員となった昭和三十三年から現在まで」現在というのは一九九一年のことでありますが、「内閣提出法案は四千二百九十一件、衆議院提出法案千六百四十九件、参議院提出法案六百七件でありますが、内閣提出はその八五%が成立し、衆議院提出は二五・六%、参議院提出はわずかに三十五件五・一%にしかすぎません。内閣提出法案は八九%、議員提出法案は一〇%の成立状態です。法案提出の現在のありかたは、まさに旧憲法時代と大差のない状態です。」こういうふうに実は書いておりますけれども、内閣が法律を出すものですから、私たちは、単に野党である私たちだけではなくて、与党である自民党も政府と論議をしなければならない。政府案が提案される前には与党が承認をしているわけですね。与党が承認をしたその案を与党の皆さんが政府と論議をするというのは、論理的にも大変、何といいますか、正常な姿ではないのではないか、私はこういう感じがいたします。ですから、少なくとも国会というものが今の日本国憲法が定めておるような形で運用されるようにするためにはどうすればいいのだろうかということでございますけれども、この日本国憲法は第四十一条で、これはもう皆さん十分御承知のことでございますけれども「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」こうなっておるわけであります。この「唯一の立法機関」という意味は、実は東京大学御出身の憲法学者の皆さんは、大体東京大学法学部出身あるいは経済学部出身の方が官僚組織のほとんどを占めておる。最近新聞で見ますと、大蔵省の採用については東京大学という問題について少し考えたらどうかというようなことが新聞で伝えられておるぐらいに、実は東京大学の出身者が多いものですから、そこで、議院内閣制だから内閣が法律を出すことは今の憲法四十一条とそごをしない、こういう意見でありますけれども、佐々木惣一さんとか田畑忍先生とかという、出身は東京大学でありますけれども京都大学の法学部の教授をしておられた皆さんは、私と同じ考えでございます。要するに、憲法四十一条というのは、最初の立法から始まって、それを国会に提出し、議員同士が議論をして、その上で国会が決める、これが憲法四十一条の本来の考え方だというふうに実は学説でもなっておるわけでございます。  私はその件について、現行憲法の七十二条を申し上げますと、内閣総理大臣の職務として「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出しここう書いてございまして、法律案を国会に提出しとは、実は憲法に書いてございません。「一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」そして、その今の「議案」の中身というのが第七十三条の内閣の職務の中で、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。 二 外交関係を処理ずみこと。」三番、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」これが私は重要な議案の一つだ、こう思うのであります。さらに、四番目「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」五番目「予算を作成して国会に提出すること。」この二つが、七十二条で「議案」というふうに書きました中身が実はこの七十三条の三と五の二つである、こういうふうに私は認識をしておるわけでございます。  そこで、そういう認識に立つならば、当然議員立法でございますから、議員が出した法案を議員同士で論議をするということで初めてアメリカなりフランスなりイギリスなり、要するに大隈重信が考えたこれらの民主主義国家の国会のあり方と同じ形になるのではないのか、こういうふうに私は判断しているわけでございます。  そこで、宮澤総理にもこの前申し上げましたけれども、きょうは幸いにして新しい建物でございまして、今の大蔵委員会、第一委員室をよく使いますけれども、この第一委員室は、この写真の中で私は御紹介をしておるのでありますけれども、戦前と同じままの、大日本帝国憲法のときの第一委員室の仕様と何も変わっておりません。変わっておるのは、私たち議員の座るいすが変わりました。あれは当初は、私どもが入ってきましたときは、政府委員が座っているのと同じ平たいいすだったのです。しかし、それでは余り議員が気の毒だということで、衆議院の事務局があの小さなひじつきのいすに変えてくれた歴史的な経過がございます。しかし、依然として内閣の閣僚は大きないすに座って、私どもは小学校の生徒のように机を並べて向かい合っておるというのは、あの第一委員室は戦前の大日本帝国憲法そのままであります。  さらに、今の本会議の議場をひとつごらんください。あれも大日本帝国憲法のときの、行政優位でありますから、要するに内閣は高い壇のひな壇の上に座って、国権の最高機関が下の壇にいる。尾崎行雄さんは、憲法が成立をしましたときに衆議院の事務総長に対して、憲法が新しくなったのだからあの壇を下げろと言われたそうでありますけれども、当時は予算がないのでそれができなかった、こういう経緯があるわけでございます。  ですから、まず第一に、すべて内容は形式がかなり規定をするということがあるわけでございますが、まず総理、宮澤総理が総理におなりになっているうちに、日本国憲法の定めるように、ひとつ本会議のあり方あるいは第一委員室のあり方を改めていただくわけにはいかないか。私はこれまでこういう問題をほかの総理大臣にはいたしておりませんけれども、宮澤総理というのは、私も長年御一緒しておりますけれども、極めて合理的に、そうして非常に正確に物事を御判断いただく政治家だというふうに私は確信をしておりますので、この宮澤総理のときに変えていただきたい。  そこで、私は本会議の議場のひな壇はあれでいいのでありますが、この前羽田大蔵大臣と一諸にフランスの本会議を傍聴いたしました、そのときは羽田さんはまだ大蔵大臣ではございませんが。そうしますと、フランス議会の本会議では閣僚が一番前の席に総理を含め、当時のクレッソンさんを初め、私の親しいルイ・メルマーズ農林大臣と一番前の席に座っておられまして、そこにマイクロホンが立っているのです。それから各議席の中に、ちょうどあの自民党の若い方が議長と言って提案をされるマイクが立っておりますけれども、ああいうのが通路、通路に立っておりまして、おのおの総理に対して水曜日の午後三時から五時までは定例的に本会議における一般質問があるということのようでございます。それで、羽田さんと御一緒に上から見ておりましすと、皆さんが立って質問しますと、総理や農林大臣が立って今度はそのそばにあるマイクを通じて議員の皆さんの方に答えておる。ですから、今衆議院は一番後ろに閣僚は座っておられますけれども、これは前へ出ていく。時間がむだですし、フランス式に一番前の議席にずらっと座っていただければもうひな壇の上へ上がる必要はないのであります。そうすれば、皆さんも議員でありますから、今後ろの席に座っておられるわけでありますから、一番前の席へ座っていただいて、そして演壇がせっかくあるのですから、演壇を使ってこちらも質問に立つ。答弁はまた演壇に上がってやうていただいて、何もマイクでやる必要はないと思うのであります。そういう少なくとも大日本帝国憲法から日本国憲法へ、ひとつ宮澤総理大臣のときに形式的にも新しいステップを踏んでいただきたい。  さらに、予算委員会政府が提案でありますから、これは憲法七十三条で規定しておりますように政府が予算案を提案しますから、政府と議員が対応するのは当然でありますが、あのいすだけは我々のいすと同じようにしてほしい。何も大きないすに閣僚が座る意味はないと思いますので、いすを直すことと、要するに今のひな壇に並ぶのを一番前の議席に座っていただくということで大日本帝国憲法から日本国憲法ヘテークオフするということになると思うのでございますが、総理、いかがでございましょうか。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 堀委員には長年にわたり御親交をいただくとともに、御教示にあずかることも大変多うございまして、しかしきょうはまた思いもかけぬことのお尋ねがごいざいまして、私として用意のないことをうっかりお返事を申し上げるべきではありませんし、たまたま今行政の責任者をしておりますので、立法府と行政府との関係について私がうかつに物を申してはいけないし、限界がいろいろあろうと思っております。  そういう心構えで今お話を伺っておりましたけれども、確かに伊藤さんが憲法調査に行かれますときにプロイセンを選ばれて、そしてプロイセンのいろいろひな形が一番我が国の当時の天皇制のもとでの憲法に合うと判断をされたということを歴史で学んでおります。それが戦前の我が国帝国憲法であり、帝国議会であった、そのとおりであると思います。そして、憲法が改まりましたので、その運営というものもしたがっているいろそれなりに異なってしかるべきであううというのがただいまの御指摘の主たる部分であったと思います。  それは、何と申しますか、今法律の提出にいたしましてもいわゆる閣法というものが圧倒的に多うございまして、衆法とか参法とかは大変少のうございますし、当時の政府委員は、今の政府委員の任命は議長の承認を得て行うということになっておりますけれども、明治憲法では政府委員の任免には議院は関与しておりませんで、そして先ほど言われましたような五十四条のような規定があった。こういうことは少しずつ実際には現在の憲法と違っておりますけれども、議員同士が議論をする、話をして物を決めていくという、それこそパーラメントでございますから話すということであろうと思いますが、そういう対話という形はやはり我が国の場合には非常に少ないというか、止っておらないことは事実だと思います。それは本来立法府でお決めになられるべきことであって、そういうふうになってきていないということは確かに諸外国と異なっておる、そういう意味では旧憲法のもとでの運営がかなり伝統的に受け継がれておるのではないかとおっしゃいますことは、私も承るとそういうことであるということに思い当たるところが幾つかございますが、これはしかし行政府の者がこれ以上申し上げるべきことではないだろう。  ただ、堀委員が言われましたように、先ほど委員会のしつらえでありますとか、あるいは本会議のつくり方、居は心を移すとも申しますから、こういうところをやはり変えていくことが大事だとおっしゃいますれば、私はそのおっしゃっていらっしゃることに深い意味があろうと存じます。ただ、それにつきましては、やはり立法府においてここのところはこういうふうにあるべきだというお示しかありまして、それを予算化するなり具体化するというのが行政の側の務めでございますから、そのような具体的な御指摘が立法府からいろいろ御検討の結果出てまいりますれば、それに対して行政府は十分に謙虚にその御意見を承らなければならない。確かに、部屋のしつらえがどうであるとか、あるいは議場のつくりがどうであるとかいうことは何でもないことのようでございまして、やはりいろいろな運営がかなりそれによって影響されるということは事実でございますから、院におかれまして、今の憲法のもとであるべき院の姿からいえばかくかくの点ではそれなりの予算を支出して改めるべきであるということであれば、行政府としてはそれに対しては謙虚にこれを承らなければならない、そういう思いでただいまお話を承りました。
  283. 堀昌雄

    ○堀委員 羽田大蔵大臣大蔵大臣になられる前には自民党の選挙制度の特別委員をしておられました。私は、公職選挙の特別委員会で当時の委員長に、大体この選挙制度の問題というのは議員の我々の身分に関するもので、それを自治省がつくって、自治省の大臣とか役人と我々が議論するなどということはとんでもない話だから、ひとつ議員同士でやりましょう、どなたでも手を挙げて、一人五分ずつで、委員長が適切に指示をして、そして議員同士で論議をしましょうということを提案して、公職選挙の委員会では皆さんと論議をすることができるようになりました。私は羽田さんとも御一緒にそういうことに参加してまいりまして、羽田さんもテレビなどで、実は公職選挙の委員会ではこういうふうにやっていると御紹介になっていることを拝見しておりますが、私が非常に驚きましたのは、自民党の若い皆さんから、いや、堀先生、いいことをしてくれた、我々これまで国会に出てきてただ座っておるだけだった、しかし今度は手を挙げて当たればちゃんと皆さんと議論をし発言ができる、ようやく国会に出た気分がするようになったといって、自民党の若い皆さんに大変喜んでいただきました。私は、少なくとも、ここはこういう仕掛けになっておりますけれども、上の十七委員室、十八委員室は、衆議院の方はもうちゃんと先を見越してラウンドテーブルに実はなっているわけでございまして、私の関係しておる大蔵委員会金融委員会も挙手方式でどなたでも発言できるようにお願いをしておるわけであります。  ですから、私、これは宮澤総理に申し上げるということもありますが、自民党総裁宮澤喜一さんということで、やはりひとつ、自民党の皆さんもそういう議員同士のディスカッションになることについては私は大変賛成していられると思うのです。どうでしょう、今ここにいらっしゃる自民党の皆さん、私の提案について反対の方があったら手を挙げてください。――一人もありません。皆さん賛成のようであります。ですから、これはまさに議員として、私たちはここで一時間十七分にわたってこうやって物が言えますけれども、自民党の皆さんは今度でもこの長い時間の中で三十分でしたか、もっと自民党の皆さんが私たちと議論ができるようにしてほしいというのが私たちの願いなんですね。要するに官僚の、事務当局の人と議論をする気など私は毛頭ないのです。これは、説明を求めるというためには、やはり専門家でありますから、その専門家の意見を聞くことが大事でありますけれども、論議は少なくとも議員である閣僚の皆さんと論議をする、これを私の大蔵委員会における法案審議一つの大きな要素として今日まで主張してまいっておりますので、どうかひとつ、これは単に私がというのではなくて、国会議員として三十一年余りここに携わっておりまして、何としてもこの国会を、少なくとも今の西欧諸国と同じような議員同士の論議の中で物が決定するという、現行憲法の定めるとおりに、私は何とか自分が議員であるうちにそれが実行できることを期待しておりますので、どうかひとつ総裁であります宮澤総理も、羽田さんはもうそれをちゃんとこの方がいいとおっしゃっておる大蔵大臣でもありますので、皆さんの御協力で何亡かひとつ今のような慣行を、既に設備はできているわけでありますから、一日も早くやることが極めて重要だというふうに私は考えております。  そこで、その次に問題がありますのは、実はそういうディスカッションをする場合に、私どもは今の制度では金帰火来ということで、金曜日に選挙区に帰って、そして火曜日の朝帰ってくる。私は一年生に当選いたしました一九五八年に、私たちのグループの先輩で、亡くなりましたが、横山利秋さんがそのとき最高点で当選いたしました。そこで、私どものグループの幹部が、おい、今度の一年生はひとつ横山君にどうしたら間違いなく再選できるか話を聞け、こういうことになりまして、横山代議士の話を聞きました。そのとき横山代議士が、簡単なことだ、金曜日の夜行に乗っておれば名古屋へ帰る、そうして月曜の夜行に乗って東京へ帰ってくる、その間は選挙区をしっかりやれば間違いなく当選できる、それを私どもは、これが金帰火来というのだな、こうわかったのであります。私はずぼら者ですから、余り金帰火来をやりません。やりませんけれども、幸いにして、実はこうやって十一回も当選させていただきましたのは、私どもの選挙区が要するに阪神間というインテリサラリーマンがたくさんいる地域でございまして、そのために、今の制度は個人に対する投票になっているものですから、私を支持してくださる方が一定の範囲あるものですから、この前七十歳を超えまして、党は七十歳定年制ということで、私は党に公認をされなくなりました。しかし、私どもの選挙区では、当時土井さんが委員長でございまして、土井さんが、今度は社会党の党勢を広げるために一名しか出していないところは二名出しなさい、二名しか出していないところは三名出しなさい、候補者をたくさん出そう、こういうことを土井さんの指示で党が決定いたしました。そこで、私どもの選挙区で、特に土井さんの西宮地域の皆さんも、それでは堀さんを定年制でやめさせて、土井さん、あなたが一人になって、よそは二人出せ、三人出せ、言い出しっぺの委員長は一人で選挙するのですか、堀さんやめさせたら、あとはあなたと一緒に選挙して当選できる自信のある、者がいますか、こういうことになりまして、私の二区という、西宮という土井さんの選挙区、地域割りを含めて皆さんがともかく堀さんもう一遍やれ、県本部の方ももう一遍やれ、とうとう党本部は仕方がなく、皆さんをやめていただいているものですから、それなら無所属推薦ならどうか、こういうことでございますから、無所属でも結構です、社会党と名前がついていれば間違いなく当選できますということで十一回目の選挙をやりまして、実は当選をしてまいりました。ですから、この選挙制度というのは、要するに有権者と個人のつながりになっているわけですね。  私ども国際会議に、羽田さんも御一緒していますし、いろいろなところで国際会議によく出ますが、よその国で十回当選とか十一回当選なんという人は、今の政党本位の国にはないのですね。いずれもせいぜいで五回か六回が限度で、そこで適当に政党が候補者を入れかえてちゃんと体制を整える。幸い私は、この個人本位の選挙制度のおかげで三十一年半も在職できましたけれども、しかしこの制度は、私は今後の問題にとって大変日本の政治の、政治家の勉強する時間を与えませんから、要するに選挙区を歩いていなければ当選できないなんてことでは政治家は勉強できません。結局官僚の皆さんに依存する以外にない。  現在アメリカの大使をしておられる、前のECの日本の大使をしておられましたファンアフトさん、私はEC議員会議の仕事もしておりますし、党の日欧委員会委員長もしておりますので、ちょいちょい夕食を御一緒いたしました。そのときファンアフトさんが、堀さん、大変失礼だけれども日本の政治のことについて聞いていいですかとおっしゃいますから、どうぞ何でもお聞きくださいと申しましたら、私はオランダで実は内閣を組織して四年間総理大臣を務めました。最初に内閣をつくるときに、この行政についてならこの人、これならこの人というのを決めて、四年間安心をしてこの皆さんと一緒に任期を全うしました。日本に来て驚いたのは、日本大臣はほとんど一年ごとに交代しますね。一年ごとに大臣が交代してその省の仕事がわかっているのでしょうか。こういうお尋ねでございました。ですから、私は率直に、その省出身の、官僚出身の方であるならばわかっていると思います。農林大臣を農林省出身の官僚の方がやっていられればこれはわかっています。しかし、その省出身の方でない方が、古い方は別として新しく大臣になられたら、それはちょっとなかなか難しいのじゃないかと思います。ですから、あなたがテレビを見られるときに、紙に書いているのを読んでいるのは、物事を知らない、役人の書いた紙を読んでいるんだというふうに理解をしていただければ物事が少し具体的になると思うというお答えをしたことがございます。  これはやはり、今の選挙制度で金帰火来なんていうことをやっていて、勉強したくてもなかなか勉強できないというようなこと、自民党は最近は族議員とか言われる方が、専門家がおられますから、大分情勢は変わっていると思いますけれども、やはり選挙制度を変えることは大変重要だ、私はこう考えております。  そこで、ちょっと選挙制度のことはここの問題ではありませんけれども、大変重要な政治の話でありますから、自民党の中で私の大変親しくしている、この前の小選挙区並立制に反対をしていられる方に、どうしてあなたは自民党なのにあれに反対されましたかと伺いましたら、それは、本来選挙というものは有権者がすべて選ぶということであるべきだけれども、我々の場合は、候補者になる段階で政党が小選挙区の候補者を決める。比例代表の方も順番を政党が決める。だから、政党に都合のいい候補者は大変有利だけれども、自民党の場合は五派閥連合のような政党のようでございますから、そうすると、今の主導権を持っておるところの人は大変いいけれども、そうでないところの者はまず国民に選ばれる前に自分の中の党の役人から排除されてしまう、それでは選挙法としての意味がないから、堀さんが言っている小選挙区併用制も同じですよ、反対だ、こういうお話でございました。私も公職選挙の委員を三十年からやっておりますが、初めて私は、なるほど、その方のおっしゃるとおり、すべてが有権者が選べるシステムにしない限り、政党が恣意的に、それは恣意的といってもある程度はやむを得ないんでありますけれども、比例の順位を決めたり、あるいは小選挙区の候補者を決めるということについてはやはり問題はあるなと考えまして、完全な比例代表で、ブロック制で二票制で、要するに有権者が政党も投票するし、ブロックに各党候補者が出て、その候補者の名前を投票するという新しい方式を実は今党内に提案をしておりますけれども、何とかやはり民主的に選ばれた、この憲法に書いております国民の代表が、この国会で国民の代表としてふさわしい論議を尽くして立法ができるということにいたしたい。  政治改革の問題、今宮澤内閣にとりましても重要な課題だと考えておりますし、ここには私の同僚で佐藤君が我が党で一生懸命やっておりますけれども、どうかひとつそういう、大変長々と申しましたが、日本の政治のあり方を基本的に変えるためには、みんなで知恵を出し合って努力をしなければ、私は黙って座っていてはできないと思いますので、総理、いかがでございましょう、感想だけを伺いたいと思います。
  284. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 まず、先ほどからお話のございます国会のあり方、つまり議員同士の間で対話があり議論があって、立法府の機能を果たしていくということにつきまして、政党の関係者としてというお話がございました。実は、私どもの自民党の今の政治改革の基本になっておりますのは、平成元年の政治改革の大綱という決定でございますが、この中で、今、堀委員の言われました問題につきまして、「委員会の独自性・自主性が発揮される国会運営をつらぬく。」、「議員同士の自主的討議の促進・充実と政府委員制度の根本的な見直し」、「議員立法の促進」、「与党議員の発言機会の増加」等々と、ちょうど堀委員の言われましたような問題意識を実は私どもの政治改革の大綱でも指摘をいたしておりまして、ただいま言われますことは、ただ堀議員のお考えにとどまらず、私どもの党内の政治改革の大綱でも、実は「審議の充実と国会運営について」というところでかなり具体的にそういうところに踏み込んでおりますので、決して問題意識は堀委員にとどまらないということをつけ加えさせていただきたいと思います。  それから、選挙制度の問題についてお話がございました。これは、私は今度は一人の議員として申し上げるこ上でございますけれども、確かに金帰火来ということも、同僚を見ておりますと大変なこと、努力であるとは思いますけれども、しかしそれはやはり国会活動という観点から見れば、選挙運動の方にどうしてもかなりの時間をとられるということでございますから、これは昔そういうことはあったように思いません。戦後の、それこそ横山さんの話がありましたが、戦後にそういうことになったんだと思いますけれども、全体としまして議員というものがもう少し自由な立場を、持ち、自由な時間を持ち、議員同士で国政を考える、また、それが可能なような選挙民とのつながり、選挙制度というようなものが本当に望ましい、今のありさまというのは決して理想的なありさまとは思えないということは、私、一人の議員といたしましてはお話を承っておりまして共感するところが多々ございましたことを申し上げます。
  285. 堀昌雄

    ○堀委員 自民党の政治改革大綱にも今お話しのように、私の考えと同じものが組み込まれておるということであるならば、私は大変心強いことだと思いますので、どうかひとつ野党の皆さんも、自民党がそうなっているのなら力を合わせて一日も早くそういう政治改革が行われるように努力をしてまいりたい、かように存じます。どうもありがとうございました。  そこで、憲法に触れておりますので、ちょっと私が納得のできない問題が一つございます。その納得のできない問題と申しますのも憲法に関することでございますが、日本国憲法第二十七条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。 児童は、これを酷使してはならない。」第二十八条勤労者の団結権、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」こういうふうに憲法二十七条、二十八条に書いてございます。  私は、これまで実は当委員会で、きょうこれから問題にいたしますような問題を取り上げたことはないのでございますが、お手元に「郵便局員の申し立て殺到」「処分に異議あり」という平成三年、一九九一年十一月九日付の神戸新聞と、あわせて「厳重取扱注意」という印刷物をお配りいたしました。「厳重取扱注意」というのは、あて先が「普通郵便局長殿」、事務連絡 平成二年十二月二十六日、件名「超過勤務命令拒否者に対する措置について 事務連絡平成二年十二月二十一日関連」、発信「近畿郵政局 人事部 人事課長」、こういうふうになっている。「厳重取扱注意」ということは内部文書でありますから、私どもの手に渡るとは予想しておられなかったのでございましょうが、たまたま私の地元であります尼崎市の尼崎郵便局、尼崎北郵便局で最近起こっておる問題の中で、これはいかにもと思うものがございます。  それは、一番下に「3 留意事項」というのが書いてございますところの上に、ちょっと私が横線を入れました。その留意事項の上の①、②、③の②のところでありますけれども、「正当な事由がなく、発令した超勤時間数を下回ってしか受命しない。(例 業務上の必要から四H発令のところ、三Hしか受命しない場合は、拒否として処理し三Hへの発令替えは行わないこと。)」。郵便局は御承知のように年末年始は大変繁忙でありますから、そういういろいろな取り決めをするのはわかります。わかりますけれども、四時間超過勤務をやってくれ、八時間の仕事の後四時間でありますが、それを、きょうは自分は都合で一時間早く三時間で超過勤務を終わりたいのでひとつお願いします、こう言ったら、そんなものは認められない、四時間やらなければやったことと認めないといって処分をする。これは、私が今読み上げました憲法第二十七条、二十八条の勤労者の権利、団体交渉権を全然認めていない。こんな、民間の会社では一切行われないようなことが実は郵政省の中で現実に行われている。  処分がもう続々と出ているものですから、ここに「処分に異議あり」「人事院公平委も処理に大わらわ」「昨年受理分の七割」は郵便局員の申し立て、「判定待ち一年以上」「特に多い兵庫県下 当局「ルール」」、こういうことで、これは後でお読みいただければわかりますけれども、いかようにも日本国憲法が保障しておる労働者の権利が――私は郵政所管の電電公社のお世話をずっといたしておりまして、電電公社の民営化その他についてもいろいろと努力をして今日になっておるのでありますけれども、電電公社は同じ郵政所管であっても労働組合は一つしかないのです。電電公社の幹部は、労働組合を二つ以上つくるなんということは大変な労務管理になるので、労働組合は一つであることが最も望ましい。ですから電電公社の当時でも、あそこには第二組合というのは、三、四十人の第二組合があるだけで、あと三十万近いものが一つの組合として組織をされておったわけでありまして、同じ郵政所管でも実は今の郵政省の方は第一組合、第二組合という形があって、いろいろと問題が多いわけでありますね。  私は、今憲法の話をしてまいりましたその延長線で、少なくとも一般の民間で考えられないようなことが国の労務管理の中で行われるなどということはゆゆしきことだ、こう考えて、三十二年間このような問題を取り上げたことはないのですけれども、きょうはあえて、郵政省の将来のために何とかこういう不当な処分は撤回するように総理から御指示をいただきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  286. 谷公士

    ○谷(公)政府委員 事実関係についてちょっとお答えさせていただきたいと思います。  先生御理解いただいておりますとおり、郵政事業は特に年末は大繁忙でございまして、平常の四倍ぐらいの郵便物をさばいております。このために、非常勤職員の雇用はもちろんでございますけれども、いわゆる常勤職員、本務者の超過勤務ということも絶対に必要でございまして、この点につきましては労働組合も大変理解をしていただいておりまして、四時間の労働基準法三十六条の協定を結んでいただいておるというのが全国的な実態でございます。  その中で、業務上の必要から四時間の超勤を命令いたしました際に、もちろん御本人に事情があって三時間しかできないということであれば、その内容によりまして三時間ということになるわけでございますけれども、中には、どうしても理由をおっしゃらない、あるいは私どもとして理解できる理由ではないという事例がたまにはあるわけでございまして、そういう場合にはやはり協約の範囲内で適法に命ぜられました四時間の中で、一部とはいえ業務命令に従わないという部分がございますので、その一時間については命令違反であるという趣旨でございます。  ただ、これにつきましては、今申し上げましたような疎明といいますか、事情を聞きますほかに、何度も注意その他をいたしておりまして、超過勤務拒否だけで懲戒処分に至った例というのは私の承知しております限りでは一件だけでございまして、ほとんどは指導、矯正の措置でございます注意とか訓告ということでやっておる実態でございます。
  287. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうはこの場所ではありませんから、これ以上この論議はいたしませんけれども、私がここでやる以上、あとの資料はきっちりそろえて、関係者からお話を聞き、これまでも郵便局長に何回も指示をしてやってきてなおかつこういうことがあるから、幾ら言っても聞かないのなら、私も公式に国民の代表として、議員としての権利に基づいてこの委員会で公表して、そうしてきょう郵政大臣出席を求めましたけれども、御都合が悪くて御出席ができないので、そこで総理にかわって実はお願いをしておるわけであります。  要するに、今の話のように、事情を聞いて三時間でもやむを得ないと思ったら認めるなんということは現実に行われていないということを確認して私はここで話をしているわけでありまして、今の人事部長がどれだけ末端の今の郵便局における実態を知っておるか。日を改めてまた一遍やってもいいんですけれども、私は三十二年間こういう取り上げ方をしたことはないのです。その私が取り上げるということは、十分それは跡づけする資料やその他の関係者の証言、これまでの私の指導、いろいろなことの集積の上に、余りにも目に余るので本日この問題を取り上げているわけでございます。私はもう御答弁は要りませんが、ひとつ郵政大臣に十分検討するようにお話をいただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  288. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 常に御発言が非常に慎重であられる堀委員お話でございますので、この御発言は郵政大臣に私から伝えまして、事実関係について調査をしてもらい、またその御報告も申し上げますが、是正すべきことがあればまた是正をしてもらわなければならないと思いますので、承知いたしました。
  289. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも総理、ありがとうございました。  それでは、本題に入ります。これから二十七分でございますが、まず最初に、アメリカの現在の金融機関実情について、銀行局長の方から報告をいただきたいと思います。
  290. 土田正顕

    土田政府委員 米国における金融機関経営現状についてのお尋ねでございます。米国の商業銀行は、一九八八年ごろ、いわゆる三つのLという言葉に代表されますような経営困難に陥る状況が見られましたが、その後、収益状況を見ますと、金利低下や累積債務国向け不良資産の減少を背景にいたしまして、大手行も含め増益となった銀行が増加しつつあるというように見ております。高水準にあります不動産向け不良資産や景気回復のおくれ、これが依然収益低迷要因として響いている面もございますが、全体としては改善傾向にあるものと見ております。  それから、米国の金融機関を論じますときに常に話題になりますのが貯蓄貸付組合でございます。これにつきましても、一九八八年から九〇年ぐらいにかけまして経営危機の問題が取りざたされたところでございましたが、その後八九年に金融機関改革再建執行法が成立いたしまして、そのスキームに基づき、巨額の財政資金の投入などによる整理、救済策が講じられてきております。  最近の業界全体の収益状況は、金利低下や破綻したSLの整理進捗を背景に、八六年以来五年ぶりに黒字に転換し、明るさを取り戻しつつあるように見られるという報道を聞いております。
  291. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、今ようやく回復してきたというそこを聞いているのじゃないのです。一九八〇年代のアメリカの金融市場は、今や狂乱の十年として総括されつつあるということでして、確実に残ったものは五千億ドルに上るSアンドL救済のための連邦政府の財政負担とも言われている。この十年にアメリカでは一千八十六の銀行が倒産した。これは一九三四年から八〇年までの倒産件数の二倍に当たる。そうして、鳴り物入りの金融制度改革法案、昨年の秋、実は不成立に終わって、成立したものは結局連邦預金保険制度改革、それから銀行に対する規制強化、外銀に対する規制強化業務規制の緩和、これらのもののみが昨年の十二月十九日にブッシュ大統領の署名で発効した、こういう現状を私はお尋ねするつもりでしたが、土田局長の方はいい面ばかりを御答弁されたわけであります。  私はなぜこのことを伺っているかといいますと、今アメリカの証券業は実は大変な好調なのです。証券局長、答えてもらおうかな。現在のアメリカの証券は、今のアメリカの株価に象徴されるように実は大変な好調でございまして、米国証券大手八社の純利益の推移というのをちょっと申し上げますと、メリル・リンチは、一九八五年には二億二千四百万ドルの実は純利益でありましたものが、八九年にはマイナス二億一千三百万ドルの赤字になるというような時期でありましたが、九一年は六億九千六百万ドルの黒字、ソロモンが五億七百万ドルの黒字、ずっと見まして、八社の合計が二十四億八千二百万ドルということで、実はアメリカの証券会社は大変調子がいいわけであります。ところが、銀行の方は、今のSアンドLの問題もありましたし、不動産の不況の問題あるいは例の買収に関するいろいろな関係で非常に低迷しておって、ようやくここにきて正常に戻りつつある、こういうところで向こうで出された法律は、要するに今の預金保険機構に関するものと監督規制の強化の問題が法律として米議会を通っているのですわ。  ところが、日本の場合は、実は金融制度調査会や証券取引審議会が答申をいたしましたのは、一九九一年六月に答申を両方しておりますけれども、しかし、その後で証券、銀行の不祥事が猛烈に出てきたことは皆さん御承知のとおりであります。ところが、アメリカと違って日本の場合は、こんなに大変なことが起きているにもかかわらず、答申の趣旨がほとんど盛り込まれた法案が実は今私どもの手元に提案されているわけであります。私は、アメリカの議会はいろいろな問題、グラス・スティーガル法の問題その他いろいろありましたけれども、今のアメリカの環境を考えて、これはアメリカの議会が決めたことなのですね。今私が申し上げました預金保険機構と規制強化、外銀規制という問題はアメリカの議会が決めたことなのです。日本の場合は、ともかくも今法案が提出をされて、法案がそのまま進んでいきますと、要するに一九九四年の六月から、法律ができて一年後施行だから、九四年の六月になるということになっているわけですね。いや、九三年の六月。どうも平成で言わずに西暦を使うことは大変あれですが、後で読む人は長いスパンにわたっているものは西暦を使わないと時間の概念がわかりにくいものですから、大変失礼いたしました。  そこで、私は今の証券・金融の状態というのはただならぬものがあると考えているわけであります。なぜかと言えば、今度の証券会社の決算は、野村だけは辛うじて前年比プラスのようでありますが、ほとんどがマイナス決算。その中で、銀行証券会社というのがありますね。ちょうど今から二十年くらい前の証券の不況時に銀行が資金を協力しましたから、勧業角丸とか菱光証券とか泉証券とか、いろいろと銀行証券会社というのが既にあるのです。既に銀行証券会社というものがある上に、まだ、要するに銀行が一〇〇%出資をする証券の子会社をつくる、こういうことが今提案をされているわけですね。株価は今一万八千円ぎりぎりのところで動いている。一時の二分の一ですね。高いときの二分の一まで下がっている。こういう情勢の中で、今の日本政府というのは随分アメリカのやっていることと違うことをやるのだな、こういう感じがしてならないのです。  そうして、国際化が非常に問題だということでありますけれども、実は私はこの間欧州を視察してまいりました。欧州は、これはユニバーサルバンキングと言っておりますけれども、私の見ているところでは、一体証券業務がまともに行われている欧州の国というのはどこだろう、イギリスだけじゃないでしょうかね。ドイツは、ともかくドイッチェバンクを中心に銀行がもう絶対的な力を持って処理をしていますし、パリも、私は大いにフランスの関係者に、要するに日本が進出してくるから十分ひとつちゃんと受け入れてくださいと言っても、そうなかなかあそこの資本市場が動いている様子はありません。ベレゴボワさんという、これはエリートでないただき上げの大蔵大臣が一九八四年にベレゴボワ改革という立派な金融改革を行っているのですけれども、なかなかまだあそこも資本市場の問題というのはそうなっていない。  こういう状態の中でどうしてこんなに今の改革を急ぐのか、どうも私、そこがよくわかりません。ちょっとこれに、どなたでも結構です、答えていただきたい。
  292. 土田正顕

    土田政府委員 長いお尋ねでございますので、簡単に申し上げます。  まず第一に、アメリカの制度改革についてでございますが、御承知のとおり財務省は当机銀行の証券・保険業務参入や州際業務の撤廃などを含む包括的な金融制度改革法案の成立を期しておりましたが、その後州際業務の緩和等をめぐって銀行の足並みが乱れたこと、それから保険その他について強力な反対があったということで、殊に下院のエネルギー・商業委員会を中心にむしろ厳格なファイアウォールを課そうという動きがあり、それに対しまして銀行委員会も入りまして妥協案をっくったのでございますが、この議案は一たん下院本会議で否決されました。それを受けて、急遠いわゆるナロービルと称する規制強化が目立つような法案が議決され、成立を見たわけでございます。その詳細は省略をさせていただきます。  ところで、日本と米国の場合とで比べますと、三点違うように私は思いますので、その事情を申し述べたいと思います。  アメリカにおきましては、かなり実行上銀行は、主としてFRB、連邦準備制度の方のレギュレーションの運用によりまして、限られてはおりますが証券業務をできるようになっております。その点が日本とかなり違いまして、日本の場合にはどうしても今回お願いしておりますような法律案が必要でございます。  それから第二に、米国ではこのいわゆる妥協案につきまして銀行業界みずからが反対をいたしました。それは規制色が強いので嫌気が差したというようなことであったかと思います。日本の場合には、これは競争の促進ということで、今度むしろ規制は規制としまして、健全経営を維持しつつも、競争の促進を目標としているわけでございます。  それから第三に、アメリカの場合には何よりも財政上の事情もありまして、預金保険制度強化などが急務であったわけでございます。しかし、これは例えば預金保険の料率、先般来この委員会で御議論いただいておりますが、アメリカの預金保険の料率は〇・二三%であり、今度〇・二五%に引き上げられるという話もございます。これに対して日本の預金保険の料率は〇・〇二一%でございまして、アメリカほど預金保険制度がいわば困難に直面しているという事情はございません。その点も日本とアメリカが違うようなところではないかと思います。  そこで、日本はこの日本の比較的落ちついた状況のもとに、中長期的な観点から昨年六月、金融制度調査会、証券取引審議会でそれぞれ答申、報告をまとめたわけでございますが、その後御指摘のように不祥事が起こりました。これにつきましてさらに金融制度調査会、証券取引審議会が議論をまとめまして、その結論といたしまして、競争の促進、これを不祥事に対する根本的な対応策としまして打ち出したわけでございます。この競争促進のための制度改革の実施ということで、これを私どもは当面の急務であるということで御審議をお願いしております。なお同時に、経営健全性の確保を図るためということで、若干それぞれの規定の整備をしておるわけでございます。  最後に、銀行は確かに系列証券会社を持っておりますが、これはかって国債の大量発行以来いわゆる金融の証券化がこの日本でも本格的に起こりましたので、いわばそれに対処しまして、親密先を獲得するというようなことで大手銀行はそれぞれ系列証券会社を持つようになりました。それは、しかし例えば人材を訓練する、その他の役に立ったというようなことはございますけれども、しょせんこの系列証券会社というのは銀行と御縁のある証券会社というような程度の存在でございまして、銀行とのつながりの深さはさまざまでございます。  このたび御審議をお願いしておりますのは、むしろ相互参入の基本的なスキームといたしまして、子会社としての証券会社を保有する、これにょりまして、広い意味では業務の多角化を図り、多様で良質な金融商品・サービスを顧客に提供することができる、こういうゆえんの提案を申し上げております。  いずれにいたしましても、全体として制度改革の論議は中長期的な議論を踏まえて行われなければならないわけでございますが、昨年以来のいわゆる不祥事件への対応も十分念頭に置いて組み立てられておる案ではないかと私どもは勝手ながら考えておるわけでございます。
  293. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が少しなくなりましたので、ちょっとひとつ、今の問題が、少し全体が落ちついて、新しく参入をしても問題が起こらないということが確認できるまで今の参入の問題を少し施行を延ばしたらどうかというふうに実は私は考えているわけであります。ですから、そういう意味では金融資本市場が必ずしも安定していない現状でありますから、相互参入を図るための業態別子会社の設立については、このような環境の変化を見きわめる必要があるので、少なくとも今の考えでいきますと法律が施行されて一年たてば参入、こういう考え方に立っているのでありましょうが、私はさらに少しこの施行について状況を見きわめるためには、少なくとも今からいえば二年、今が平成四年でありますから平成六年の六月以降にその情勢を十分に勘案をして、そうして新しい業態別子会社による相互参入を考えたらどうか。  この中で、特に一言信託銀行について申しておきますと、アメリカから信託銀行が九行日本に進出をいたしました。日本大蔵省は大変厳しい条件をつけて、その結果として九行にライセンスを与えているのでありますが、私が見た資料では、ちょうど三年くらい前の報告だと思いますけれども、ようやく九行の信託銀行が、日本信託銀行全体の資産としては五十分の一になってきたけれども、経常利益としては五百分の一しか経常利益がないというデータを私は見ておりまして、今もし都市銀行が信託に参入をするようなことが起これは、厳しいライセンスを与えて日本で許可をしたアメリカの信託銀行、アメリカは登録制ですから手を挙げればともかくできるのですけれども日本は極めて厳しい条件をつけてライセンスを与えたものが経営が成り立たないようなことを日本の当局が行うということでは、日米関係に重要な金融摩擦が起こることは避けられない、こう私は考えているわけでありまして、そういう意味で経過期間を置き、特に今の米国の信託銀行の状態にも配意しながらいろいろな参入を考える必要がある、こう考えるのでありますが、大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  294. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  金融資本市場におきます競争を促進するため、業態別子会社、こういったものによりまして相互参入を図ること、これは先ほど局長からお答え申し上げましたとおりでございまして、その必要性というものがあろうと思っております。  しかしながら、制度改革の進め方につきましては、ただいまも御指摘がございましたとおり、現下の金融資本市場、この状況をさらに悪化させることがないよう十分留意しながら進めていかなければならないということは、言うまでもないというふうに思っております。  業態別子会社の設立の時期ですとかあるいはテンポ、こういったものにつきましては、今後の経済情勢、あるいは銀行証券会社などの営業状況、こういったものを踏まえつつ適切に対処する必要があろうというふうに考えております。  また、一時期の過度の参入、これによりまして市場の混乱をもたらすことのないようにも、あわせて配慮をしていくべきであろうというふうに考えております。  なお、銀行証券会社業態別子会社を設立する具体的な時期につきましては、参入段階におきます競争条件の公平性の確保等の観点から、業態別子会社を設立する親会社の店舗数等の格差ですとか、あるいは親会社が営む業務業態別子会社が営む業務との間における親近性なども考慮していくことが適当であろうと思っております。  なお、御指摘のございました外銀の信託についてでございますけれども、あの皆さん方が対日進出の主たる目的でございます年金信託を、信託銀行子会社の当初の業務範囲、これから除外されておりまして、外銀信託に対しましては、必要な配慮というものを私ども行っておるというふうに考えております。
  295. 堀昌雄

    ○堀委員 参入の時期についてちょっと不明確な点がありますので、重ねてお尋ねをしておきますけれども、要するに、当初予定したよりも一年程度延長することによって全体を見きわめることにしていただきたい、こういう私の意見でございますが、それについての明確な答弁をひとつちょうだいして、私の質問を終わります。
  296. 羽田孜

    羽田国務大臣 今数字をあれだということでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、一時期の過度の参入、これによって市場の混乱をもたらすことのないよう、私ども配慮していきたいというふうに考えております。
  297. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、少なくともこの法案の成立のために誠意を持ってお尋ねをしているのでありますから、そのところを十分体していただかないと、私も政治家としてちょっと責任を負いかねますので、もう一回、時期についてはおおむねそこらを見当にしていただかないことには、これはちょっと、私はこのまま質疑をやめるわけにはいきません。  総理、いろいろな政党そのものの事情がありまして、私はこの審議の円滑な運営のために努力をしているのでございますので、その点もひとつ御了承をいただいて、要するに、この法案が成立のできる道筋をひとつお立てをいただきたい、こう思うのであります。
  298. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 よく大蔵大臣とも御相談をいたします。
  299. 堀昌雄

    ○堀委員 結果として私の申し上げているようになりさえすればいいのでありまして、ここで言葉のやりとりを求めるわけではありませんけれども、少なくとも私どもが政治家として、一つ法案の成立について、政治家が政治生命をかけておるということも十分ひとつ御認識をいただきたいと思いまして、私の質問を終わります。
  300. 太田誠一

    太田委員長 日笠勝之君。
  301. 日笠勝之

    ○日笠委員 私からは、所得減税につきまして、ぜひこれは実現すべきであるということで、まず強く要請をしたいと思います。  理由はいろいろございます。私、予算委員会のメンバーでもございますから、予算委員会でも申し上げました。現在もたついている消費、消費低迷とも言っておりますけれども、その景気下支えをする消費を拡大するためにも効果はあろうと思いますし、また昭和六十三年以来、物価は八・九%上昇しておりますが、この間の所得減税はありませんので、実質増税というふうにもなっておると思います。また、やはり企業優遇の税制から生活者優遇の税制に是正するためにも必要であろうと思いますし、またパート問題の是正の一助にもなるかと思います。  そこで、私は、ぜひひとつこれは補正予算で所得減税を強く要望をしておきたいと思いますが、新聞報道によりますと、総理は昨日、金丸副総理とお会いになりまして、いわゆる補正予算についていろいろ会談をされた、こういうふうに聞いておりますが、所得減税のことはいかがでございましたか。
  302. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 実はまだ大蔵大臣とも御相談もしていないのでございますけれども、日笠委員が御承知のとおり、一つは財源的に非常に苦しいことになっておりまして、所得減税となりますと相当大きな財源を必要といたしますけれども、この経済状態が好転をいたしましても、なかなか今年度中の税収にというわけにもまいりません。そういう問題が一つございます。  それからもう一つは、先年の税制改正がかなり抜本的なものでございまして。御承知のように課税最低限、これは随分、先進国の中では一番高いところになっておりますし、また最初の最低税率は低い、税率の刻みも累進の刻みもかなり緩やかになっておるという、相当思い切った改正をいたしたこともございまして、本来なら税金というのは低い方がいいということは、私は政治の基本だとは思っておりますものの、どうも今の財政状況の中で、お話ではございますけれども、具体的になかなか踏み切れるものだろうかどうだろうか。難しい問題じゃないかというのが、実は私自身の感じでおるわけでございます。
  303. 日笠勝之

    ○日笠委員 これからどのように景気が上昇していくかもわかりませんが、ぜひひとつ、財源の問題は確かに、企業優遇税制を生活者優先の税制に変えることによって生み出すこともできますし、それから課税最低限は高いとおっしゃいましたけれども、先日の経企庁の調査によりますと、諸外国に比べて内外価格差、物価が、食料品に至っては日本が一・七倍も高い。そういう物価の高い日本の国から見れば、課税最低限がよその国よりは高いからというわけにいきませんですね、実質の可処分所得を諸外国と比較して。そういうようなことも言えますし、ぜひひとつ補正予算では、当然公共事業が主体にはなると思いますが、減税も総理の頭の中にひとつ入れておいていただきたい、かように思います。  その中で、パート問題でございますが、予算委員会でこの点についてもいろいろと質疑をさせていただきました。そのときに、野党が予算修正を要求いたしまして、自民党とそのことについて話し合いしたところ、自由民党からの回答、平成四年三月十二日の回答がございますね。パート問題ですよ。その中に、パート問題というのは、雇用問題だとかいろいろ各般の問題があるので、「政府関係省庁において然るべき検討の場の設置等を行うこととします」、このように自民党から回答が出ておりますが、これは当然、総理・総裁でございますから御存じだと思いますけれども、今現在このパート問題につきましてどのような検討の場が設置され、どのような検討が行われているか、お答えをいただきたいと思います。
  304. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 予算につきましての四党の共同修正のお話がございましたときの経緯は、私もよく記憶をいたしております。既に配偶者特別控除を創設いたしましたり、いろいろいたしまして、これは税制の問題と申しますよりは、いろいろな配偶者の手当等の給与体系の問題、あるいは社会保障負担の問題、企業経理の問題等々、かなりいろいろな要素を含んでいる問題であるというふうに考えております。それであのとき申しましたように、これはだんだん高齢化社会へも移ってまいりますし、人手不足もございます。いろいろなことを考えなければならないなということでそういうお約束をいたしておりまして、関係省庁の中で検討いたさなければならない、これはお約束になっておると思っています。  ただ、現実には、国会がずっと御審議が続いていまして、なかなか各省庁の中でひとつここから始めようという、どう申しますか、タイミングがうまくとれませんで、ただこれは、現在そういうことは、これはお約束でございますので忘れることは決していたしませんし、忘れることはできませんので、準備を進めまして検討を始めたいと思っております。
  305. 日笠勝之

    ○日笠委員 PKOで何かと頭の中も錯綜されていると思いますが、公党間の約束事でございますし、あれから三カ月もたっておりますから、ひとつこれは総理、督励をして早く検討の場を設けて、補正予算なり、また来年度の予算に間に合うように検討を強く要望しておきます。  さて、きょうは私、予算委員会でも総理の前で質問しておきましたあの例の、カード地獄とかカード破産とかいう問題をことしの予算委員会で取り上げました。そのことでございますが、昨日ですか、総務庁の行政監察局の「消費者保護に関する行政監察結果に基づく勧告」ということで、通産省もございますが、きょうは大蔵委員会ですから、大蔵省にも勧告が出ておりますね。この背景というのを簡単に説明いたしますと、現在カードの発行枚数は一億八千万枚である。九〇年度、平成二年の新規の販売信用の供与額が二十六兆円。同じく新規の消費者金融の供与額が四十兆円。合わせて六十六兆円、一年間、新規です。国民一人当たり五十五万円でございます。こういうことで、最近は多重債務による破産申し立てがふえておりまして、平成三年度は二万三千四百九十一件。例の五十八年、五十九年のサラ金のあのときの破産申し立てと肩を並べる、こういうことでございまして、それも二十代の若者に多い。近年それも増加傾向にあるということでございます。  昨日最高裁の方で、本年一月から四月までの月別の自己破産の申し立て件数を調べてもらいました。一月が全国で二千二百五十八件、二月が三千八十件、三月が三千六百八十七件。この調子でいきますと、毎月が大体三千件以上でしょうから、まあ四万件前後の、倍増ぐらいのことしの破産申し立て件数になるのではないか。一説によりますと、破産予備軍が五十万人とも百万人とも言われております。これは今や大きな社会問題になっているわけですね。  そこで、まず総理に今申し上げたことから御感想をお聞きしたいのですが、このカード症候群であるとかカード地獄、カード破産、若者が特に多いわけでございますが、総理は、シンプルライフなんというようなことをよくおっしゃっておられますけれども、このカード破産についての御感想、御所見があればまずお伺いいたします。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは当事者、御当人にとって大変な問題でありますけれども、同時に、せっかく健全に発展しかけております消費者信用というものを芽を摘んでしまうということになりかねませんので、そういう点でも大切な問題だと思っております。結局、銀行もあり消費者金融会社もありあるいはクレジット会社等もある、そういう与信の側の、何と申しますか慎重さ、あるいは顧客に対する管理と申しますのでしょうか、対応と申しますのでしょうか、その問題と、それから信用情報機関というものがございますので、これはプライバシーとの微妙な問題がございますけれども、やはりそういうものも積極的に利用していく、そういうことが大事な問題であると、日笠委員がかつて言われましたことを記憶しておりますけれども、やはりそういう問題として、御本人方のことはもちろんでございますけれども、与信の側にやはりいろいろこれから気をつけてもらわなければならない問題がある。そのためには各省庁間でよく協力しながらやってまいらなければならぬと思っております。
  307. 日笠勝之

    ○日笠委員 そこで大蔵大臣、勧告には、いわゆるホワイト情報ですね、ブラック情報でない、いわゆる借り入れの状況等がわかるホワイト情報の相互交換であるとか、業者への立入検査を強化せよとか、利用限度の基準を支払い能力に応じて細かく設定せよとか、こういう勧告が出ておりますが、大蔵省は、これは行政監察局からの勧告ですから、厳しく、重く受けとめなければいかぬと思いますが、どのような対応をされるおつもりか、お聞きしたいと思います。
  308. 羽田孜

    羽田国務大臣 もう今総理の方からお答えがありましたように、やはり今の状況というのは非常に難しい大変厄介な状況になっている、まさに社会問題になっていこうと思っております。私どもといたしましては、多重債務者問題につながります過剰なカード利用を未然に防ぐためにも、総務庁の報告も踏まえつつ、関係省庁と協力しまして、クレジットカード会社に対しましてより一層適切な顧客調査と、あるいは顧客管理、これの徹底を求めていきますと同時に、引き続きプライバシー保護に配慮いたした信用情報機関の積極的な利用というものを指導してまいりたいというふうに考えております。
  309. 日笠勝之

    ○日笠委員 そのプライバシー保護でございますが、問題は、どのような情報が利用され、本人に開示をしているかということが大事ですね。自分の知らないところでどんどん自分の情報が利用されているというのは気持ちの悪いものですね。そういう意味では、この点について、プライバシー保護を想定した何かお考えがあるのかどうか。また、ブラック情報、こういうものを本人に通知をしなければ、いつの間にか自分が多重債務者でブラック情報に載っておる、しかし全然自分には覚えがない、こういうこともあるわけですが、そういう点を踏まえて、大蔵省とすればそのプライバシー保護に観点を置いた対策を何かお考えでしょうか。
  310. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさにプライバシー保護というのは、これはもう重要な観点でございまして、私どももその点は十分注意しなければいかぬと思っております。信用情報機関にどのような情報が登録され、またその情報がどのように利用されているかという点も、プライバシー保護の観点からこれも今御指摘のように重要な問題であろうと思っております。信用情報機関の登録情報につきましては、これまでも本人からの請求があれば開示しておるとうところでございすけれども、登録情報の利用状況につきましても、御指摘を踏まえながら関係省庁と十分協議をしながら、本人に積極的に開示するよう、信用情報機関並びにその会員を指導してまいりたいというふうに考えております。  さらに、万一にも症滞等の事故の情報が誤って登録されることがないように、信用情報機関がいわゆる事故情報を登録する場合には、本人に対しまして直接その旨を通知し、また確認に努めるよう、信用情報機関というものを我々は指導していかなければいかぬだろうというふうに考えております。
  311. 日笠勝之

    ○日笠委員 プライバシーに配慮した情報提供であり、また情報の交換を、これはきちっと押さえていかなければ大変な問題になりますので、ぜひ強く要請しておきます。  そこで、最近はクレジット系の会社は、与信限度額を三十万から二十万とか、五十万のところは三十万とか、だんだん利用限度額を下げつつあるんですが、どうも銀行系のローンはそれがまだ行き届いていないんじゃないかという傾向がございます。と申しますのも、これは「貸金業者の業務運営に関する基本事項」というのがございますね。昭和五十八年九月三十日のものでございますが、この中に「過剰貸付けの防止」という項目がございます。その中に。全文は省略して問題のところだけちょっと読み上げますと、「無担保、無保証貸し付ける場合の目処は、当面、当該資金需要者に対する一業者当たりの貸付けの金額について五十万円、又は、当該資金需要者の年収額の一〇%に相当する金額とする。」ちょっとこれは与信額が高いんじゃないでしょうか。先ほどのクレジット系はどんどんどんどん下げて事故を防いでいこう。この通達はまだ生きているわけですね。これは銀行局長通達だと思うんですが、局長、これは改正をするとかいうようなことはお考えでしょうか。
  312. 土田正顕

    土田政府委員 「貸金業者の業務運営に関する基本事項について」という昭和五十八年の通達がございまして、その中には御指摘のような内容がございます。その点についての改正をする気はないかというお尋ねでございますので、今後さらに考えてまいりたいとは思いますが、実は昨日の総務庁の行政監察の結果などを見ますと、当面優先的に検討をすべきではないかというその勧告内容は、むしろこの立入検査について、その与信業務に関する検査が十分ではなく、与信業務の適正化を図る観点から貸し金業者等に対する立入検査等の指導監督の強化が必要であるというようなことで、具体的にはその信用情報機関の利用状況を確認する、ないしは前回の指摘事項をフォローするというような非常に実務的な、かつ大切な指摘がございますので、私どもはその点も考えてまいりたいのと、もう一つは、この信用情報機関への加入率、加入というのは貸し金業者の会員の加入率でございますが、加入率が必ずしも高くない、まずその辺からこの事態の改善を考えてはどうかというような勧告もございますので、このような点も考えてまいりたいと思います。そのようないわば実務上の事務運営体制を強化いたしまして、その際に、さらにこの規定の内容について改めるべき点があればその改めることについても検討をしてまいりたいと存じます。
  313. 日笠勝之

    ○日笠委員 行政監察局の勧告は微に入り細に入り、立入検査だけでも延々と書いていますね。すっかり多重債務になりまして、これが累増して四万件だ、五万件だ、予備軍が何十万人だということがないように、貸し手責任ということもあるわけですから、この点をきちっと押さえておいていただきたいと思います。  時間もたちましたので、総理、最後に一問お伺いしたいと思います。  先ほど堀大先輩が、国会の答弁席のお話とか委員会お話、されましたね。確かにそのとおりだと思います。しかし、どちらかというともうスクラップ・アンド・ビルドで、首都機能を移転するなら、新しい国会はぜひひとつそういうふうに、堀先生の御意見を十分取り入れた民主的な国会にしてもいいんじゃないかと思うのですが、現在、首都機能移転問題に関する懇談会が中間取りまとめを行いまして、衆議院にも特別委員会ができまして、基本法をつくろうという各党でのお話し合いが進んでおるようでございます。そういうふうな、国会、いわゆる立法府、行政府の中枢的なものを移転する、こういう首都機能移転でございますが、その陰に隠れて忘れかけられているんじゃないかと心配しておりますのが、昭和六十三年七月十九日、「国の行政機関等の移転について」という閣議決定がございますね。これは閣議決定でございますから当然継続性があり、当然これを推進しておる、総理、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  314. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 首都機能の問題はそれといたしまして、国の行政機関の移転につきましては平成元年八月に取りまとめをいたしましたが、その後順調に予定どおり進行いたしておりまして、また、新しいものにつきまして今年度中に移転計画の策定も新たに行うというようなことで、概して順調に進行いたしております。
  315. 日笠勝之

    ○日笠委員 総理、それは別表一と二のことじゃないかと思うんですね。別表三というのがございまして、これも積極的に移転を前提として検討するようにということになっておりますね。これは大蔵委員会ですから大蔵省にかかわる法人を申し上げますと、国民金融公庫、日本開発銀行日本輸出入銀行というのがございますね。それから、大蔵省と各省庁との共管の金融機関は大変たくさんございます。読み上げるだけで時間がかかりますから、とにかくきょうは大蔵省所管のこの三つの政府金融機関、これはどうなんでしょうか。総理がおっしゃったように順調に進んでいるようにとても私思えませんね。いろいろ聞きますと、今年度、平成四年度、調査費も何もついてない、ゼロだそうですよ、これは。そこで、やはり別表三も、これは移転を前提に検討するとなっておるわけですし、大蔵省所管もたくさんございますので、これは総理を初め大蔵大臣もやはり閣議決定で決まった国の行政機関の移転のことで、一極集中を廃止するとかああいうときに大議論の上にこう決まったわけですから、これは総理はお気の毒ですから所管の大蔵大臣、別表三、これについてどのような御決意で取り組まれるのですか。
  316. 羽田孜

    羽田国務大臣 別表三には、今御指摘ありましたように、大蔵省所管の国民金融公庫あるいは日本開発銀行日本輸出入銀行その他の政府関係金融機関、これが含まれておりまして、大蔵省としましても関係省庁と連絡をとりながら検討をしておるところでございます。ただ、これらの機関は政策機関でございまして、かつ金融機関であるという特殊な性格を有するということがあります。業務地域が全国一円にわたるということがありましたり、あるいは業務遂行上、金融センターである東京に本店を置くことが望ましいという指摘ですとか、また政策官庁との緊密な連絡が必要であるということ、そんな事情があるということでございまして、本店を地方に移転させることには困難な問題が多いというふうに考えられますけれども、もう今御指摘のように閣議決定の趣旨、これを踏まえながら国民公庫あるいは輸銀、開銀としてどのように対応が可能か、我々としても引き続き検討を続けていきたいというふうに考えております。
  317. 日笠勝之

    ○日笠委員 この問題は平成三年四月に橋本大蔵大臣に同じことを言ったんです。そうすると橋本大蔵大臣は、その閣議決定の場に私はいませんでした、だから、いたら金融機関は外して議論したであろうと思っておりますと、こういう答弁なんですが、まさか羽田大蔵大臣は、同じ竹下派でございましょうけれども、閣議決定をしたことでございますし、当然これは、行政機関の移転というのは大事なことですから、別表三のことについては今後も誠実に真剣に検討する、そのときの大臣じゃなかったから知らないとかいうようなことはないと思いますが、最後にもう一度決意を聞いて終わります。
  318. 羽田孜

    羽田国務大臣 いずれにしましても、ただこれはうやむやにしているということは許されることじゃないと思います。ですから、私どもの方としても本当に率直に、真剣に検討いたしまして、一つの結論というものを出していきたいというふうに思っております。
  319. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  320. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君。
  321. 正森成二

    ○正森委員 最初に、総理がお見えになりましたので、失礼でございますが、一九五四年に第十九国会の参議院で行われました「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」について一言だけ伺いたいと思います。  この決議は、御承知のようにこう言っております。   本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。   右決議する。 こうなっております。  そして、提案理由を説明されたのは鶴見祐輔議員でありますが、長いものを一部要約して申しますと、「自衛隊は、飽くまでも日本の国内秩序を守るためのものであって、日本の平和を守ることによって東洋の平和維持に貢献し、かくしてより高度なる人類的大社会的組織の完成を期待しつつ一つの過渡的役割を果さんとするものであります。それは決して国際戦争に使用さるべき性質のものではありません。」中略「自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であって、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。故に我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮屈であっても、不便であっても、憲法第九条の存する限り、この制限は破ってはならないのであり、ます。」さらに最後に「条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいっても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。」こう言っております。  そして、当時の担当国務大臣の木村篤太郎氏は、「申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持っていないのであります。従いまして、只今の決議の趣旨は、十分これを尊重する所存であります。」こう言っております。  御承知と思いますが、この決議は一名の反対を除いて全参議院議員によって承認されたものであります。そして、私の承知しておりますところでは、総理はこのとき参議院に在籍され、御決議に賛成されたと漏れ承っております。しかも、現在両院において、このとき参議院に在籍された方で国会議員の籍を持っておられるのはただ宮澤総理一人であるというようにこれも承知しております。先般、数日前に参議院で質問があったようでありますが、そのときのことを拝見いたしますと、法制局長官がお答えになり総理直接の御見解は承ることができなかったやに聞いております。きょうはいい機会でございますので、法案質問に入ります前に総理のお気持ちを一言伺っておきたいと思います。
  322. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 この決議は私も記憶をいたしております。ただいまのお尋ねも、また現に今御議論になっておりますのも、恐らく現在のいわゆるPKO法案との関連においてであろうと思いますが、この決議をその法案との関係でどのように解釈すべきかということは、これは有権的には参議院のなされるべきことであって、私どもが勝手に申すということは、終局的には私どもができることではない、参議院の院の解釈だと思いますけれども、私の思っておりますことは、今、正森委員がそのときの鶴見祐輔議員の提案理由を御紹介になりました。この鶴見さんの言っておられることは、私の考えでは、およそ戦争は自衛のためならいいというようなことを言ってきたが、自衛の名において外国へ軍隊を出して、そうしてそれも自衛だというようなことではもうとめどもないではないか、過去においてそういう間違いをやったばかりであるから、今後、結局外国に軍隊を出すということはもういけないんだ、それはやめようではないかというのが、ただいま御朗読になりました「自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であって、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。」と言っておられるように、このとき提案者も、また賛成した者も、軍隊をいわゆる武力行使のために国外に出すということはこれは許されないという、私はそういう決議だとこれを考えております。  したがって、「海外に出動」という言葉を使ってあるのはそういうことだと思っておりまして、自衛隊がそうでない目的のために、例えば過去におきましても、南極探検に行ったこともございます。それから湾岸戦争の後、掃海のために行ったこともございますが、これらは武力行使のために明らかに行ったのではないということがはっきりしておりますから、それは恐らく参議院決議に抵触するものではない。PKOもまさに平和目的のために、これは武力行使に行くわけではございませんので、同様ではないかと思いますと、私はそういうふうに実は考えております。
  323. 正森成二

    ○正森委員 私は見解を異にしておりますが、時間も迫ってまいりましたので、この点はここで終わりたいと思います。  もう一問だけ伺わせていただきます。先日も質問したのですが、公定歩合の問題であります。  公定歩合が引き下げされたのですけれども、それに絡んで、例えば四月二日のある新聞には都市銀行調査部がこう指摘しております。「第四次利下げ前でも公定歩合から消費者物価上昇率を差し引いた”実質ベース”の公定歩合は約一・八%で、これはもう超金融緩和期の水準です」また「経済企画庁は「公定歩合が四%以下になると地価にとっては黄信号」」こう言っております。といいますのは、公定歩合二・五%になりましたときには消費者物価がゼロ%の時期であります。それが今現在では二・一ないし二・三でございますから、非常に金融が緩和されているということであります。  そしてそれに絡んで、主婦の中には、「私たち年金生活者は利下げには大反対です。なけなしの貯金を大事に大事に使っているのに利息の目減りを先頭に立って奨励する自民党には絶対投票しません。」などという投書も新聞に載っております。「家計の犠牲で企業救済」という大きな見出しをつけて、「利下げは企業の借金の一部を一般の預貯金者が肩がわりをする構造である。」こういう意見もございます。  そこで、詳しくは申しませんけれども政府も四月に総合的な景気対策を行ったばかりでございますし、一部の政治家の間には公定歩合が下げ足りないとか、あるいはさらにもう一段下げるべきだという意見がございますが、私は、これらの景気対策の結果を待つべきであって今そういうことを言ったり行ったりする段階ではない、こう思っておりますが、総理の御見解を一言承って、質問を終わらせていただきます。
  324. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 我が国経済もここまで参りますと、やはり国民の中に、貯金によって生活をしておられる人、あるいは年金に大きく依存しておられる人、そういう方々がかなりふえてきておりますし、高齢化社会になるとますます私はそうなっていくであろう。そういうことはやはり考えておかなければならない問題で、今後金利のことを考えますときには、ただ下げればいいというわけにはいかないということは大切に考えるべきことだと思っております。  今の我が国の公定歩合について、これは政府がかれこれ申すことではございませんけれども、私の承知しております限り、中央銀行においてもこれを今変更しようということは日程には上っておらないのではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、今の問題は、今後高齢化社会になるに従いましてますます注意を払わなければならない問題だと考えます。
  325. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  326. 太田誠一

    太田委員長 中野寛成君。
  327. 中野寛成

    ○中野委員 私に割り当てられた時間はわずか七分です。大日本帝国憲法から説き起こせませんので、端的にお尋ねをいたします。  金融・証券に関する法案審議でありますが、その基礎をなすのは経済財政問題でありますので、三点まとめてお尋ねをいたします。  まず、補正予算編成についてであります。自民党は五月二十七日、政調正副会長・部会長合同会議を開き、追加的な景気対策として、秋に三ないし五兆円規模の大型補正予算編成を政府に要求する方針を決めた、こう聞くわけであります。しかし、残念ながら大蔵当局の方はかなり動きが鈍いと聞くのでありますが、いずれにいたしましても、これらの政治判断は最高責任者としての総理の決断にかかっていると思います。この春に講じた措置効果を見てからなどという形式的な御答弁ではなくて、総理の政治判断に基づく見通しを含めての御答弁をお願いしたいと思います。  質問その二。増税構想についてであります。連日のように増税がマスコミをにぎわしております。国際貢献税、環境税、あげくの果てにはごみ税。すなわち、歳入欠陥、とにかく増税を、何か口実はないか、それなら国際貢献だ、環境だ、ごみだ、こういう感じがしてならぬのでございますが、一方で行政改革は全くおざなりであります。安易な増税はやらない、まず行財政改革をやる、これまた総理の最高責任者としての決断にかかっていると思います。この点についてお尋ねをいたします。  質問その三。新経済計画の目標についてであります。政府は新しい経済五カ年計画、年度の期間中の実質経済成長率を三・五%にすると聞いております。また経済審議会も、東京などで平均年収の五倍の住宅取得、九六年度千八百時間労働などの目標を示して新経済五カ年計画の骨格をつくっていると聞きます。生活大国づくりという大きなスローガンを掲げられた総理でありますが、これらのことについて、単に絵にかいたもちではなくて、文字どおりそれを実現するという強力なリーダーシップと決断が必要であると思います。そのことについて総理の御決意をお伺いいたします。
  328. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 予算の補正のことでございますけれども、まだ大蔵大臣と一切御相談をいたしておりません。ただ、申し上げられますことは、あれだけ大きな前倒しをいたしました。これは景気の状況にかんがみてでございますから、中央も地方もできるだけこの前倒しの趣旨に沿って公共事業を早く消化してもらいたい、そのことが今急務であると思います。そのときに、消化をしてしまったら、あと後半に仕事がなくなるのではないかということは御心配御無用ですということはその都度申し上げでございます。私は、今の状況から見まして、今度の緊急経済対策というのはかなり浸透して有効に働くと思っております。したがって、そういう意味では、お言葉ではございますが、ただいまその結果を見守ってまいりたいと思っておりますが、もとより前倒しをしたということは上半期にこれをできるだけ消化してほしいということであって、そのときに下半期が空になってしまうという御心配はしていただかなくて結構だ、そういうふうに思っております。そういうことが必要であれば、そのための財源はまた大蔵大臣と御相談しながらつくってまいらなければならないと思っております。その点はお任せいただいても何とかやっていけるつもりでございます。  それから増税のことでございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、本当は政治というものは税をなるべく高くしないということが大事なことなんだろうと私は思っておりますので、一般的に今言われておりますような幾つかの税金につきまして、基本的には、何か新しい需要があるから新しい税をすぐ考えようということには私自身は抵抗を感じる方でございます。したがって、できるだけ安易な増税はやらないようにとおっしゃいますことは私は同感でございます。  それから最後の問題は、今度の長期経済計画をつくりますときに、労働時間にしろ住宅建設にしろ、なるべく消費者といいますか個人の方から見て、つまり何年分の月給でならば住宅に手が届く、あるいはどのぐらいの、千八百時間なら千八百時間をどういうふうにやっていくんだ、そういう、マクロの話としてではなくて、計画を読む人が自分の問題として考えられるような目標設定をしてほしいということをお願いしてありまして、それがただいま申し上げましたような目標の設定の仕方になっておるわけでありますけれども、いろいろ多くの問題を含みますものですから、全体の成長のフレームをどういうふうにしたらこの計画がはまるかということは関係者が非常に苦労をしておられるようでありまして、先般も御連絡がありまして、大体三カ二分の一程度の実質成長を考えたいということでございましたので、それでしたら大体のフレームとしていろいろな問題がうまくその中へ入るということでございましたし、我が国のこれからの目標として余り無理のないところではないかと、私はその話を聞いて考えております。ただ、どういたしましても内需に中心を置いて、そして外需の方はやはり幾らかマイナスになるような経済運営をいたす必要があると思いますので、この三カ二分の一もその差し引きのような形での三カ二分の一にしていただければと思っておるところでございます。
  329. 中野寛成

    ○中野委員 かのゲーテの言葉に、どの内閣でも新聞紙上に発表する意見は一向におもしろくない、政治の力は実行することであって演説することではないからであると、大変な名文句がございまして、総理も先ほど来三点についてお答えをいただいたことは、単に消極論をおっしゃった、例えば増税は意に染まないと言われたということだけではなくて、例えば前倒しをした後は御心配御無用、下半期もちゃんとやります、必要とあらば財源も探します、ということは補正予算しかしょうがないのですが、ということなど、すべてにわたって総理としての決断を明確に示唆されたもの、こう受けとめさせていただきたいと思います。  時間が参りましたので、終わります。
  330. 太田誠一

    太田委員長 次回は、明三日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時八分散会