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渡辺参考人 日本証券業協会の会長を務めております
渡辺でございます。
本日は、
制度改革のための
関係法案に関しまして
意見を申し述べるようにと、そういう
機会を与えていただきまして、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げます。
既に
先生方にも御心配をいただいておりますが、最近における
株式市場は大変厳しい状況で推移いたしておりまして、まことに憂慮されるところでございます。
こうした
市場低迷を反映いたしまして、
証券会社の収益状況は極めて厳しいものになっております。全国の一般の
証券会社二百六十社の本年三月期の決算状況を見ますと、受け入れ手数料収入は前年比三四%減、また売買等損益も前年比三二%減と、それぞれ大幅な減収となっております。経常損益は、前年までの黒字から一転して約二千五百十億円の赤字を計上し、当期損益も約四千八十億円の赤字と業績が大幅に落ち落ち込みました。この結果、本年三月期では、
国内証券会社二百十社中実に二割強の四十八社が無配会社、五割強の百十四社が減配会社という厳しい状況でございます。この点につきましては
先生方にぜひとも御認識をいただきたいと存じます。
それでは、今回の
改正法案につきまして私
どもの
意見を申し述べさせていただきます。
まず、証券界の
基本的な
考え方は、今回の
制度改革は昨年六月の証券
取引審議会が取りまとめました「証券
取引に係る
基本的
制度の在り方について」と題する報告書の
趣旨に沿って行われるべきであるというものでございます。今回のいわゆる
制度改革法案には、有価証券の定義の
整備、公募概念の
見直し、
私募の取り扱いの明確化、
銀行等の子会社
方式による
相互参入等の措置が盛り込まれております。これらは
基本的に昨年六月の証取審報告書の
趣旨に沿ったものと理解いたしております。したがいまして、私
どもは本
改正法案に反対するものではございません。政省令の概要につきましては大蔵省の方から
大蔵委員会の方へ示されたところでございますが、今後の行政の
運用方針につきましても明確にならなければ判定できないところであり、十分御
審議いただくようにお願い申し上げます。
次に、私
どもは、観念的には
相互参入が認められておりますが、実際上の
可能性を考慮いたしますと、
銀行が
証券子会社を設立、運営することに比べまして、
証券会社が
銀行子会社や
信託子会社を設立、運営することは極めて困難なことであると認識しております。だからといって
証券子会社の設立に反対するものではございませんが、このように証券界は実際上攻め込まれる
立場になることにつきまして御認識をいただき、今後、
証券子会社の
業務範囲をどうするか、必要な弊害防止措置をどう構築するか等につきまして十分御配慮いただくようにお願い申し上げます。
第三に、既に地方公聴会において証券界の代表が申し上げたことでございますが、証券界は
経営状況が極めて厳しい状況の中で
制度改革、
競争促進という急流の中に巻き込まれることになりました。この急流を乗り切るためには相当な努力を覚悟しなければなりませんが、特に中小
証券会社には、
証券会社の
銀行子会社設立の
可能性等の
改革内容は現実には遠い
世界の話でございまして、今回の
制度改革は、結局一部の大
銀行や大
証券会社の業容
拡大を容易にし、
金融・証券
分野における大小格差をさらに増幅することになるのじゃないかという懸念も強いわけでございます。
もちろん、今回の
改正法案では、
株式ブローカー
業務を当分の間
銀行等の
証券子会社には認めないことを明記される等配慮が行われておりますし、また証券界としても、いたずらに
現状に甘んずることなく、
自由化、
国際化、
証券化等の大きな流れの中で、
多様化する顧客
ニーズに積極的に
対応するよう全力を尽くさなければならないと考えております。したがいまして、私は、今回の
制度改革に反対するという
考え方ではございませんが、
制度改革は決して白地に絵をかくわけではありません。
改革の結果、しっかりした
経営を行っている
証券会社が立ち行かなくなるようなことはぜひとも避けていただきたいと思っているわけであります。この
意味で、新しい
証券会社の
新規参入のテンポ、
銀行等の
証券子会社に認められる
業務の
範囲、
銀行本体が取り扱える
証券化関連商品の
範囲等につきましては十分な配慮がなされる必要があり、これらの諸点について今後の行政
運用方針の明確化を含め、慎重な御
審議をお願い申し上げます。
以上、総論的に申し述べさせていただきましたが、次に、二、三具体的な点につきまして
意見を申し上げたいと存じます。
まず第一は、証券
取引法上の
規制の対象となる有価証券の
範囲、すなわち有価証券の定義の
整備についてであります。
御承知のとおり、近年の
金融の
証券化の流れは早晩
我が国におきましても強まることが予想されるものであり、
取引の公正性を確保し投資者
保護に資する
観点から、証券
取引法に基づく適切な
規制を及ぼすことが
市場のいわば
基本的なインフラ
整備として必要であり、それが今後、創意工夫に満ちた新
商品が活発に開発され、それら
証券化開運
商品の
市場が発達する
前提になると考えられます。このような
考え方に基づいて、昨年六月の証取審報告書において包括条項の採用が提言されたところでありますが、その後の大蔵省等の御
検討の結果、今回の
法案では、提言のような包括条項は取り入れられず、従来どおりの個別列挙のほかに、政省令により個別に有価証券を指定する
方式が採用されております。
証券界といたしましては、包括条項が導入されなかったことは甚だ残念でございますが、流通性のある
商品については証券
取引法に基づき
規制するという原財を確立していただき、新しい
証券化関連商品の政省令の指定については機動的、弾力的に行うという
運用方針を明確にしていただくようにお願いする次第であります。
もし、このような機動的な追加指定が円滑に行われなければ、そのことが創意工夫にとる新しい
証券化関連商品の導入を制約することになり、結果として
制度改革のねらいが実現しなくなることに留意する必要があると思います。
また、有価証券に指定できないものについても、実質的に見て
証券会社が取り扱うことが適当な
商品につきましては、
証券会社の
兼業承認を機動的に行うとともに、個別の業法等により
証券会社の
業務が
規制されることのないよう配慮をお願いいたしたいと存じます。
第二に、公募概念の
見直し、
私募の取り扱い等について申し上げます。
昨年六月の証取審報告では、発行者の
ニーズ、
資本市場の
国際化の進展等を踏まえ、
私募についての法
整備を進めることが提言され、それに基づき、今回の
法案において所要の法
整備が行われており、私
どももこれは必要な
改正であると考えております。しかし、同報告書に「公募
市場の有する価格形成機能や
資金配分機能を考えると、
資本市場の望ましい姿は、投資者が広く参加できる公募
市場が中心となっていることである。」とされておるように、私
どもは、公募、
私募の両
市場は調和のとれた姿で発展すべきであり、
私募についての法
整備が結果として
私募市場のみの肥大化を招き、公募
市場の機能発揮やその発展に悪影響を与えることのないよう、必要な法的措置等が適切に講じられることが絶対に必要な
前提条件であると考えます。
このため、具体的には、
私募の肥大化により公募
市場に悪影響を及ぼしたりディスクロージャー
制度が骨抜きになることがないよう、
私募の対象証券の限定、
私募証券取得者の限定、発行後または取得後一定
期間の転売
規制等につきまして明確に規定されることが必要であると存じます。
第三に、証券
業務への
新規参入問題についてであります。
証券界といたしましては、現在の免許制下におきましても
新規参入により適正な
競争が行われることが望ましいことと考えており、
証券市場の仲介者として適格性を有する者が
証券会社として証券
業務に
新規参入することに反対するものではございません。しかし、その
参入は、中小
証券会社の
立場にも配慮しつつ、当面、発行
市場を中心に漸進的、段階的に行われるべきであると考えます。また、適格性に関しましては、特定
企業や
企業グループのみに依存するような、いわゆる
機関店的な
証券会社は中立的な
市場の仲介者として問題であり、認めるべきではないと思います。
特に、
銀行の子会社
方式による証券
業務への
参入につきましては、これも昨年六月の証取審報告書に詳述されておりますように、
銀行が
企業に対し影響力を及ぼし得る特別な地位を有していることにかんがみ、
銀行の
証券子会社につきましては、
銀行により影響力が行使され、
市場に悪影響を及ぼすことのないよう、実効性のある弊害防止措置を
制度的に確立することが不可欠の
前提であります。
今回の
法案では、証取審報告を受けて、親子会社間における弊害防止措置として、一、取締役の兼職禁止、二、通常の条件と異なる条件での
市場取引の禁止及び三、信用供与に係る抱き合わせ
販売の禁止の三点が規定されておりますが、そのほかにも、証取審報告で提示されております弊害防止措置は、ぜひとも実効性のある形で措置していただくようにお願い申し上げます。さらに、証券
取引におけるクロスマーケティングの禁止や人事のノーリターンルール、メーンバンク
規制等につきましてもきめ細かな配慮をしていただく必要がありますし、また、親
銀行の影響力が
海外現地法人に及び、同様の弊害が生じないよう所要の措置を講ずることも必要であります。
銀行の
証券子会社に認められる
業務範囲につきましては、発行
市場を中心として漸進的、段階的に取り扱うべきものと考えられます。今回の
法案では、附則第十九条第一項において、当分の間
銀行等の
証券子会社には
株式ブローカー
業務を認めない旨が明記されておりますが、この制限はその
趣旨から見て、CB、ワラント等のいわゆるエクイティー
商品や株価指数先物
取引に関するブローカー
業務についても
運用上同様に取り扱っていただきたいと考えております。
最後に、諸
規制、諸慣行の
見直し、撤廃問題について申し上げます。
現在、法制
審議会商法部会において
社債法
改正問題について
検討が進められておりますが、証券界としては、長年にわたり、
社債発行限度の完全撤廃、受託会社の機能を
社債発行後の
社債の管理に純化すること等について要望を行ってきたところでございますが、この問題は、今回の
制度改革と密接不可分の
関係にありますので、昨年六月の証取審報告の
趣旨に沿い、
早期に実現が図られますようにお願い申し上げる次第であります。
また、
証券会社本体による外為
業務の許可
範囲の
拡大につきましては、これも長年の懸案のまま、まだ解決が見られません。この問題は決して新しい
業務を認めるという性格のものではありません。現在、
証券会社本体が外為法上の包括許可を受けておりますが、その後の証券
業務の高度化に伴いまして、引受
業務に伴って必要となるスワップ等に関連する外貨との交換等も可能になるよう、包括許可の
範囲を
拡大してほしいというものでありますので、今回の
制度改革を
機会に、その
早期実現が図られますよう
先生方にお願い申し上げる次第でございます。
さらに、
証券会社も
信託子会社を保有できるようになるわけでございます。特金とかファントラ等証券
業務に密接に関連する
信託業務につきましては、その
業務範囲として認めていただきたいと考えております。
以上をもちまして、私の
意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(
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