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佐藤(観)委員 たとえ形式であれ、おたくに届けを出して発行されているものでありますから、なかなかそれは言いにくい
立場でもあることはわかりますが、三和総合研究所
調査部研究員の植木鉄也さんという方が一定の前提を置いて計算をされております。株主の資本利益率というものから見た過剰調達というものを研究していらっしゃる。わけでありますけれ
ども、これが発行されたものが全部
設備投資に使われたとしてという前提、それから利益を生み出すまでのタイムラグ、つまり
設備投資をされてもすぐ利益につながるわけじゃありませんから、そのタイムラグを四年というふうに見て、それから今後の経常利益が八〇年代の平均の年二・六%という前提にして計算をしてみますと、二十七兆円という
エクイティーファイナンスが過剰だったではないかという計算をされています。
二十七兆円というのは、先ほど申しました八七年、八八年、八九年という
エクイティーファイナンスが華やかなりしころの合計が五十五兆五千億でありますから、いわばその半分、一番盛んだったころの半分が過剰な調達だったのではないかという計算をされておるわけであります。非常に貴重な計算だと私は思うわけでありますが、問題は、先ほど前の方の質問にもございましたが、このツケというものがこれから回ってくるわけです。本来ならこれをどう
証券局が重大に
考えて、どう見ているかというのを聞きたいところでありますけれ
ども、時間がありませんので、問題の重要性だけを
指摘をして、私の
一つの提案をしたいのであります。
言うまでもなく、現在発行
市場というものは事実上
機能しなくなっておるという大変いびつな情勢になっておるわけでありまして、
株価が低迷をしている。その根底には、何といってもこれだけ異常に発行された株というものが売り圧力になっていることは言うまでもないわけでありますし、先ほど出ましたように、新たにこれが、ワラントも行使されない、転換社債も転換されないということになりますと、償還
資金というものが当然のことながら必要になってくるわけでありまして、九三年のピークが九兆七千億円、約十兆円近い新たな
資金が必要なのではないかという計算がされております。
それから、この借りかえによります金利負担増が三年間で六千二百三十六億円という、これは全国の上場
会社の経常利益の三・二%という重い負担になってくるという計算もされておるわけであります。当然、先ほど
お話があったように、外貨建てが随分ありますから、スイス・フラン等が一番多いわけでありますが、これは今のように円高の場合には為替差益が出てまいりますけれ
ども、しかし事によってはリスクが出てくる可能性というリスクを
企業が負うことになるわけであります。
もう
一つ、細かいけれ
ども重要なのでありますが、プットオプションつきのスイス・フラン建ての転換社債がございますね。これが、ある期間が来たら割り増しで期間前に償還をしなければならないという、プットオプションがついていますから、そういう
意味では恐らく、これがみんな早目に回収してくださいということになりますから、九百五十億円の余分な負担がふえるというのが懸念されておるわけであります。
これは、今のように
株価が右下がりで下がったという場合でありますけれ
ども、上がっても、実はこの大量の
エクイティーファイナンスのツケというのが出てくるわけであります。潜在資本というものが顕在化してくるわけでありますから、この二十七兆円と言われます過剰な
エクイティーファイナンスが
株価にして約三百二億円、上場
株式数の八・八%という計算になってまいりますから、当然新たな配当コストというものが出てくるわけですね。これが当然ふえてくる。そして株主資本
配当率も九〇年度並みの二%というものを維持しなければならぬといいますと、八千億円という新たな、
企業がこれだけもうけを出さなければいかぬということで、配当金が負担になる。八千億円というのは九〇年度の配当総額の二七%、四分の一以上という大変な金額になるわけであります。
そこで、今局長が言いましたように、今度証券業協会が「
有価証券の引受けに関する規則(公正慣習規則第十四号)」というので、引受
会社が自主的な判断と責任でしなさいよという非常に重い――その
意味では評価をするわけでありますが、「引受業務の適正な運営、
投資者の保護、資本
市場の健全な発展」ということで、特に重要なことは、この第十四号の第三条、「引受けの審査」「協会員は、引受けを行うに当たっては、当該発行
会社が将来にわたって
投資者の期待に応えられるか否か」つまり転換社債、ワラントなどが転換できるか、行使できるか、そういった
投資者の期待にこたえられるか否か。「及び当該発行が資本
市場における
資金調達としてふさわしいか否か」つまり量的にどうかということの
観点から、当該
会社の「財務状態・
経営成績、
株式等の発行数量・発行額、
株価等の動向、過去に発行された
株式等の
状況、調達する
資金の使途こ本当に
設備投資に使われるのかどうかというような、「調達する
資金の使途、利益配分
状況」配当性向等と思いますが、「利益配分に関する
考え方等について厳正に審査」をしなさいということで、後の方には、配当性向が一株当たり五円以上あるいは直前の事業年度における一株当たりの税引き後経常利益が十円以上なければいかぬとか、それから数量につきましても、発行
株式数の一五%とか、時価転換社債、新株引受権つき社債の場合は二〇%を超えてはならないというような数量的な目安がついておるわけでございます。
いずれにしろ、これはいわば発行体と協議をします引受
証券会社がしっかりしなさいよということに尽きるわけですね。確かに私もそうだと思うのです。
しかし、重要なことは、引受
証券会社の場合には、そこで手数料をいただくという発行
会社との利益共同体的な、表現は正しいかどうかわかりませんが、
機能を持っているわけですね。当然証券業協会の中でそれだけ厳しく審査をしたかどうか、後で
余りにも過剰だったんじゃないかという場合には、証券業協会の規則に違反をしたということで罰則を受けるわけでありますけれ
ども、
一つ私は欠けている
観点というのは、確かにその
部分部分で発行体と引受
証券会社とが一体になって本当に
市場の
状況やらあるいはその発行体
自体がそれだけの健全な
企業かどうかということを十分審査をする、その
部分でそれだけの責任、自覚を持ってやってもらうというその
部分は正しいけれ
ども、一体
市場自体が命どれだけ飽和
状況にあるかというのは、それを十分審査をしなさいということは、今読み上げましたように書いてはあるけれ
ども、引受
証券会社自体がそれだけ本当に全部掌握をして、そして全部その責任を持ってやることができるだろうかということについて私は大変疑問を持っております。だからといって局長が言いましたように、全部そこで発行
市場というものを
行政の枠をかけて、いわば免許制というか、要するに何月はこれだけしか発行してはいけませんよということは、これは統制
経済的で本来あるべきではないと私も
考えるわけであります。
そこで、何かそういったものがビルトインスタビライザーのような、異常なものになった場合にはいろいろな
意味で圧力がかかる、例えば先物
市場が異常な活況になった場合には保証金を上げるというようなことをやって冷やす役目になっておるわけでありますが、今後のためにも、この
エクイティーファイナンスこれ
自体は決して悪いことじゃないけれ
ども、このような発行
市場を事実上
機能麻痺をさせたような
状況、そして今後の
証券市場、
金融市場を
考えますと、大きな禍根を残した、これだけの事態を迎えてしまった
一つのこの結果というものを、奇貨とするという表現をすると怒られるかもしれませんけれ
ども、単なる
証券会社にそれだけの重荷を背負わせるだけではなくて、証券業協会がいいのかどこがいいのかわかりませんが、もう少し自動安定調整装置のようなものを、例えばクーポンの率でやるのが本当にできるかどうか、私もまだ今研究中なのでありますけれ
ども、何かそういう
機能というものを、これだけの事態を迎えたら次の糧にするために
考えるべきではないか。
今申しましたようなこの公正慣習規則第十四号というものでやらなかったのは全部
証券会社が悪いのだと言うだけで、
証券会社の置かれている発行体との
関係におきます、そして手数料をいただくという弱い
立場にある
証券会社だけにすべて責任を負わして、本当の
意味で、私は別に
証券会社の肩を持つという
意味じゃなくて、本当にこの大変な事態を招いた
状況を次には起こさせないということはできるだろうかどうだろうかということについては、十分今後研究する必要があるのではないかというふうにつくづく感ずるわけでございますが、いかがでございますか。