○堀
委員 私も同じように、
総裁からそこまで伺う気はないのでありますけれ
ども、要するに、今
アメリカの金利は大変下がってまいりまして、実質金利はほとんどゼロに近いということになっておるわけでございますね。
実は今もう一つ、これはニューヨーク・タイムズの一九九二年の一月二十九日の
記事をちょっと御参考に差し上げているのでありますが、この図で見ていただいて大体見当がつくと思うのでありますけれ
ども、この図は、実は線を引いてございますところがこれのコメントになっているわけでございますけれ
ども、要するに、SP五〇〇を消費者物価の上昇率で割り算をいたしました、そういう倍率を見てみますと、実はここに書いてございます六八年の十一月のピークになったところが三・〇六で、実はレシオが三倍を超えておる。そうして、最近の九一年の十二月にまた同じようにレシオが三倍を超えて三・〇二になっておる。その中間でいろいろと上がったり下がったりずっと出ておるわけでありますけれ
ども、このニューヨーク・タイムズの
記事を読んでみますと、やはりこれは非常に、何と申しますか、やや
アメリカの
株価というものが、
アメリカの
経済実体、全体としての
アメリカ経済の力に比して、要するに少し過剰
投資と申しますか、少し資金が流れ込み過ぎて異常な
株価になっている、少し危険水域なのではないかな、こんなふうな感じがいたします。
私は、この
アメリカの
株価の問題を申しておりますのは、かつてニューヨークで大恐慌が起きましたときの類似点が少しあるわけでございますけれ
ども、その一つは、
株価の異常な高進、高くなったということが一つでございますし、それから債権国におけるハイパワードマネーの供給の不足が一つあるのではないか。この当時、同じ問題でありますけれ
ども。それから、債権国における資本輸出の急減。一九二八年後期の米国と今日の
日本というのは非常に共通部分があるのではないか。こういうふうな問題の中に、ちょっと非常に気になる問題があるものでございますから、そこのところが——今、
日本のことはさておいて
アメリカの話ばかりしているわけでございますけれ
ども、やはり
アメリカに何かが起こることは必ず
日本にまた影響を起こす。
ちょうどこの前、ブラックマンデーの日に、私たまたまニューヨークにおりました。その週の前にワシントンで実はいろいろな
関係者に話を聞いておりまして、そうしてその金曜日、ブラックマンデーは月曜日でございますが、金曜日にニューヨークに参りまして、そうして金融・証券の幹部の方に来ていただいて、今のニューヨークの
状態はどうですかというふうにお尋ねをいたしました。そうしたら、銀行、証券の方、両方とも、きょうはちょうど魔の金曜日でございまして、プログラムディーリングの重なる日で、本来三カ月に一遍、この金曜日には下がるというのが魔の金曜日という名前のついた日であるようでございますが、きょうはそれほどに下がっておりません、こういう話でありましたから、それでは落ちついているのだな、こう思って、実は月曜日の朝、午前九時過ぎに、チェース・マンハッタンのバイスチェアマンのところを訪ねました。そうしましたら、そのチェアマンが私に、堀さん、今隣のニューヨーク
取引所でクラッシュが起きている、これは一体どこまで下がるかわからない、こういう
お話で、大変びっくりいたしまして、そんなことが突如として起こるのかなという感じでございましたけれ
ども、そのときに、その方が私に、堀さん、ニューヨークでこれだけ
下げれば東京も
下げるでしょう、どうなりますか、こういうお尋ねがございました。
そこで、私は突然のお尋ねでございましたけれ
ども、確かにニューヨークが
下げれば
日本も
下げます、しかしニューヨークと
日本の違いは、
日本の
取引は一定の
株価が下がりますと、そこで、値幅制限という制度でその日の
取引はそこでおしまい、あとは明日にという
取引制限が行われます。これは下がるときもそうでありますけれ
ども、上がったときにも一定以上上がったときにはここでストップ、こういうふうにブレーキがかかる仕組みがありますから、恐らくそこでとまるのだろうと思いますので、
アメリカのような、何も歯どめがなくてどんどん下がるということにはならないと思います。二番目は、今大変暴落しておりますけれ
ども、この前NTTの株を
政府が売り出しまして、これが大変好況で、実は多数のNTTの株主は大変利益を得られ。たわけであります。最高が三百万円を超えるくらいのことになったわけでありまして、まだ当時はそういう情勢でございましたから、
日本の株式に関心を持っておる者は、株は安いときに買えば必ずもうかるという確信を持っている人がかなり多いと思います。
日本の個人は貯蓄を十分持っていますから、恐らく暴落をしてきたら、個人がどっと買いに出て、これでかなり下支えをするのではないかと思います。三つ目は、
日本経済のパフォーマンスは大変良好でございまして、まだ三%以上の実質的な成長を続けておりますから、その面からもそんなには下がらないと思います。こういう話をいたしました。
それで、
日本に帰って調べてみましたところが、私の申したように、個人の株主が殺到して、伝票整理が明くる日までかかった、こういうようなことでございまして、
日本におけるブラックマンデーというのは、確かに下がりましたけれ
ども、
アメリカに比べれば軽微に終わった、こういう経過であったわけでございますけれ
ども、どうもそういう点で、今の
日本の
取引の仕方というものは、どなたが考えられたかわかりませんけれ
ども、なかなかリーズナブルなルールができているなということをこのときに私は痛感したのであります。
この、いつ何が起こるかわからないというのが寒際に
アメリカにおける問題でございまして、せっかく金曜日に来て
関係者に聞いて、いや、いつもよりは落ちついていますと言われたら、月曜日にクラッシュが来る、こういうことでございます。
そこで、私がちょっとさっき申し上げましたニューヨークの
株価の大恐慌と今回の問題を見てみますと、我々
日本がハイパワードマネーの供給を少し緩めてできるようにするとか、また債権国における資本輸出が急減をしておるという問題もありますが、いろいろな事情があってそうなっていることはわかりますけれ
ども、どうも
日本がここらで、今は私は
公定歩合の話をしているのではありませんが、マネーサプライが、こう見ておりますと、どうも少し下がり過ぎてきているのではないだろうか。
そしてもう一つちょっと問題がありますのは、実は、
日本銀行でお出しになった九一年の個人貯蓄の問題でございますけれ
ども、民間の方は大変減ってきておりますけれ
ども、郵貯が昨年の十−十二月には大変急増をいたしまして、前年同期比で二二・五%もふえて、これは八九年の十月−十二月期以来八期ぶりに、増加額が前年を上回ったというようなことが報道されておるわけでありまして、この今のM2プラスCDというのをマネーサプライと、こう見ているわけでありますけれ
ども、ちょっとこの郵貯というものが、
アメリカにはこういうものがないのですが、これが非常に大きな資金をどっと持っていく。
日本銀行も広義マネーサプライということでは、これをこう考えていらっしゃるのでしょうが、こことの
関係におけるマネーサプライの問題というのは少し検討が必要なのではないかという気がいたすのでありますが、この点を含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
〔
委員長退席、持永
委員長代理着席〕