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1992-02-27 第123回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年二月二十七日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 太田 誠一君    理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君    理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    江口 一雄君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       亀井 善之君    河村 建夫君       久野統一郎君    小林 興起君       左藤  恵君    関谷 勝嗣君       戸塚 進也君    林  大幹君       山下 元利君    池田 元久君       佐藤 観樹君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    仙谷 由人君       富塚 三夫君    中村 正男君       堀  昌雄君    東  祥三君       宮地 正介君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   冨沢  宏君         国税庁課税部長 坂本 導聰君         国税庁調査査察         部長      根本 貞夫君  委員外出席者         総務庁行政管理         局調査官    関  有一君         経済企画庁調整         局産業経済課長 堀   一君         経済企画庁物価         局物価政策課長 藤村 英樹君         経済企画庁調査         局内国調査第一         課長      小島 祥一君         環境庁企画調整         局企画調整課長 長谷川正榮君         法務省民事局参         事官      大谷 禎男君         労働大臣官房政         策調査部長   椎谷  正君         建設省建設経済         局調査課長   澤井 英一君         自治省財政局地         方債課長    嶋津  昭君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ――――――――――――― 二月二十七日  共済年金改善に関する請願古賀正浩紹介)  (第一五九号)  同(原田昇左右紹介)(第一六〇号)  同(真鍋光広紹介)(第一六一号)  同(森田一紹介)(第一六二号)  同(池田行彦紹介)(第一八四号)  同(石井一紹介)(第一八五号)  同外二十七件(衛藤晟一紹介)(第一八六  号)  同(岡島正之紹介)(第一八七号)  同外三件(木村守男紹介)(第一八八号)  同外六件(小坂憲次紹介)(第一八九号)  同(小林興起紹介)(第一九〇号)  同(武藤嘉文紹介)(第一九一号)  同(林大幹君紹介)(第一九二号)  同(平沼赳夫紹介)(第一九三号)  同(村山富市紹介)(第一九四号)  同(金子一義紹介)(第二二五号)  同(亀井静香紹介)(第二二六号)  同(津島雄二紹介)(第二二七号)  同(林大幹君紹介)(第二二八号)  同(平田辰一郎紹介)(第二二九号)  同外二件(三原朝彦紹介)(第二三〇号)  同外一件(佐藤守良紹介)(第二四三号)  同(竹下登紹介)(第二四四号)  同(戸井田三郎紹介)(第二四五号)  同(林大幹君紹介)(第二四六号)  同(原健三郎紹介)(第二四七号)  同(原田憲紹介)(第二四八号)  同(粟屋敏信紹介)(第二六一号)  同(尾身幸次紹介)(第二六二号)  同(粟屋敏信紹介)(第二七〇号)  同外一件(江口一雄紹介)(第二七一号)  同外二十二件(梶山静六紹介)(第二七二  号)  同(亀井静香紹介)(第二七三号)  同(畑英次郎紹介)(第二七四号)  同(藤井裕久紹介)(第二七五号)  同(粟屋敏信紹介)(第二八一号)  同(衛藤征士郎紹介)(第二八二号)  同外五件(越智伊平紹介)(第二八三号)  同(亀井静香紹介)(第二八四号)  同(栗原祐幸紹介)(第二八五号)  同(左藤恵紹介)(第二八六号)  同(中山成彬紹介)(第二八七号)  同(二階俊博紹介)(第二八八号)  同(橋本龍太郎紹介)(第二八九号)  同(粟屋敏信紹介)(第二九五号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第二九六号)  同(衛藤征士郎紹介)(第二九七号)  同(亀井静香紹介)(第二九八号)  同(塩谷立紹介)(第二九九号)  同(二階俊博紹介)(第三〇〇号)  同(長谷川峻紹介)(第三〇一号)  同(三塚博紹介)(第三〇二号)  同(水野清紹介)(第三〇三号)  電波によるたばこ宣伝の廃止に関する請願  (上原康助紹介)(第一六三号)  同(大野由利子紹介)(第一六四号)  同(江田五月紹介)(第二六三号)  同(外口玉子紹介)(第二七六号)  課税最低限度額大幅引き上げ等に関する請願  (三浦久紹介)(第一八三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  法人特別税法案内閣提出第四号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)      ――――◇―――――
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案法人特別税法案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、来る三月四日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田誠一

    太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
  4. 太田誠一

    太田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅直人君。
  5. 菅直人

    菅委員 きょうは、特に土地税制に関連をして幾つか土地政策について、短い時間ですが、お尋ねをさせていただきたいと思います。  近年、きょうの報道によっても東京圏地価もかなり下落の、低下の傾向を示しているということで、これは基本的には金融税制のこの間いろいろと努力をしたことが効果を上げたのではないか、このように考えておりまして、大変喜ばしいことだというふうに思っております。それに加えて、これからは都市計画、いわゆる土地利用計画ということが非常に重要になると思われますけれども、この新しい局面において、これからの政策のあり方、私は大変重要な局面に来ているのではないかということで、議論を少し進めさせてもらいたいと思います。  大蔵大臣御存じかもしれませんが、ことしから新しい生産緑地法施行になりまして、今三大都市圏のいわゆる農地を持っている地主さんというか農家は大変大きな変化にさらされているわけです。東京の場合を見ても、生産緑地指定を受ける土地というのは現在のところ多くて五割ぐらいだろう、今努力が進んでおりますからあるいはもうちょっと超えるかもしれませんが、どちらにしろ、五割近くは逆に言えば生産緑地指定を受けない土地が出るわけです。そうすれば固定資産税宅地並みになりますし、相続税宅地と同様になる。私はこのこと自体は政策としては正しい方向だと思っております。しかし、そのことによって土地が大量に供給されたときに、地価の一層の下落といったようないい効果も出る一方で、扱いを間違えますとその土地乱開発になる、あるいはその土地開発されることによって緑地の減少を招くといったようなことも予想されて、またそれを理由にする反対といったような反対運動が展開されるといったことも、かつての宅地並み課税議論のときと同じようなことになりかねないという心配も一方でいたしております。  そこで大臣お尋ねをしたいというか、ひとつこの考え方についての見解を伺いたいのは、私は、せっかく生まれた地価税税収を、基本的には自治体土地を買い上げる資金に大幅に振り向けるべきではないか。特にこのことは、保有税というものが土地を持っている人からその持っている資産に応じて入ってくる税収だ。その税収土地を買い上げる資金に使うということは、いわば土地を持っている人からもらったお金土地を買うわけですから、緩やかな意味での土地の、何といいましょうか、少しずつ出してもらう、個人個別企業が持っている土地を公のものに少しずつ出してもらうという効果、つまり土地の再配分効果があると思うわけです。そういった意味で、地価税税収土地対策に使うということで、いろいろと大蔵省あるいは予算の中でも配慮がされているようには聞いておりますけれども、私はその点では、自治体土地を買い上げる資金に振り向けることが最も似つかわしい、地価税税収を使うのにふさわしい目的ではないか、このように考えているわけですが、この点についての大蔵大臣見解を伺いたいと思います。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに、今昔さんから御指摘のございました点につきましては、一つの御提案であるというふうに考えられております。ただ、用地取得時点におきまして具体的な公共事業用地に供されることが明確でないといった一般的な公有地拡大についてまで財源措置を講ずるということになりますと、土地政策上あるいは国及び地方公共団体等が直接土地需給関係に関与することが必ずしも望ましいものであるかどうか疑問があるという点、これを考えたときに、私どもとしては慎重にならざるを得ないのじゃないかなと思っております。  ただし、今度の措置にいたしましても、特定公共用地等を取得する金融制度の創設を初め公共用地先行取得、こういった点については、私どもとしても配慮すべき点は配慮しておると考えております。
  7. 菅直人

    菅委員 大臣、もちろん内部でいろいろ議論された結果の答弁だと思うのですが、もうちょっと広い観点で見ると、これから二十一世紀に向かって、高齢化社会を含めて、すべての国内の施策のネックになってきたことが土地問題であったと言っても言い過ぎではないと思うのです。ですから、今までのように、例えばこの土地はこういうものに使うから補助金をよこせとか、この土地はこの道路の拡幅に使うからある程度費用をよこせというようなやり方ももちろんあってもいいと思うのですが、今回のように生産緑地で大量の土地が実際に出てくるわけです。これは物すごい量です。一般的に言えば、何万ヘクタールという量が出てくるわけです。そうすると、市長さんとか市議会から言うと、細かい都市計画を立てるには少なくとも数年間はかかる、だからとりあえず、ある程度財政が許せば、目的はまだ細かいところははっきりしないけれども、とにかく間違いなくいろいろな目的で必要になるのだからとりあえず買っておきたい、あるいは買っておいてもらいたいという市民要求というのは大変強いわけです。そういう意味で、目的がはっきりしないものまで買う資金を手当てするのは慎重にならざるを得ないというこれまでの大蔵省的な考え方は、まさに地方分権の時代からいって、基本のところで少し考え直す時期に来ているのではないかということをとりあえず申し上げておきたいと思います。  そこで公有地拡大に関して、きょうは建設省自治省に来ていただいておりますが、建設省の方から、今年度の予算にかかわる新規の施策で取り上げられている問題、あるいは自治体土地を買い上げるときに使える制度について、ごく簡単でいいですから説明をしてみてください。
  8. 澤井英一

    澤井説明員 御指摘制度は、来年度予算特定公共用地等先行取得資金融資制度ということで創設させていただこうと考えているものでございます。内容的には、特に大規模な事業用地代替地、これを計画的、長期的な観点から先行取得していくということで、国の一般会計資金財投資金、さらにこれらと同額の地方財政資金、これを加えて土地開発公社融資をして、そこで先行取得をしていただこう、こういう制度でございます。
  9. 菅直人

    菅委員 その制度で、直轄でかつ公団という限定が入っているわけですね。ということは、これは例えば今私から申し上げたような、自治体がある程度用意をするために、将来のために買いたいなんというときには、直轄事業でもない、公団事業でもなければ使えないということになるわけです。  地価税使途の中にこの項目を入れられているわけですが、金額も直接入っておるお金は十億円というふうに聞いておりますけれども、これは建設省に聞けばいいのか大蔵省に聞けばいいのかわかりませんが、もうちょっとこの使途直轄とか公団に限らないで、先ほど私が申し上げたようにもっと一般的な、自治体土地先行取得できるような目的拡大をすることが必要ではないかと思いますが、どうですか。
  10. 澤井英一

    澤井説明員 現在公共事業を進めていきます上で、土地のストックが非常に下がっておる、それから各地域代替地要求が高まっております。こういった緊急の状況に対応するためにも、ぜひ先ほど申し上げましたような方向で活用していきたい。  なお、あわせまして、公共用地対策ということで、来年度に先買い法制度拡充ですとか代替地情報をプールして有効に活用するとか、いろいろなことをあわせて総合的に進めていきたいと考えておるところでございます。
  11. 菅直人

    菅委員 私が言ったことには直接答えてないわけですが、時間がないので自治省の方にもお伺いしておきます。自治省には公共用地先行取得等事業債というものがあって、昨年かなり条件が緩和をされたということで、その点は私も評価をしているわけですが、地価税収をこの事業債利子補給などに使うやり方がないのかということでいろいろと自治省の担当の皆さんとも議論をさせてもらったわけですけれども自治省としてそういった、この制度をさらに自治体にとって使いやすいように、利子補給財源地価税収などとも関連させてつくっていくということについての見解を伺いたいと思います。
  12. 嶋津昭

    嶋津説明員 お答えいたします。  公共用地先行取得制度改正を昨年度行いましたが、これは今先生御指摘のように生産緑地法改正等がありまして、都市内における農地取得等ができるような状況にあるということも念頭に置いた制度改正をしたわけでございます。先ほどお触れになりましたように、先行要件を今まで五年以内に公共用地として使わなくてはいけないものに限定しておりましたものを十年以内にするとか、あるいは基本構想段階でも取得できるというような弾力化をしたわけでございます。  そういう手段、公共用地先行取得債は、今ほど大蔵大臣から御答弁ありましたように資金措置でございます。実際にその後公園になりその他の道路等になれば、当然補助事業として国の資金も入ってくるわけでございます。そのつなぎ資金につきましては私ども地方団体がそれぞれの資金手当てをしまして用地取得する道を開くということでいいのじゃないか。それ以外の方策といたしましては、平成三年度と平成四年度におきまして土地開発基金拡充をいたしました。平成三年度五千億、平成四年度も五千億地方財政計画積み増し交付税措置を講じたわけでございますので、大部分、そのうちの五分の四を市町村に向けております。そういう土地開発基金によりまして用地取得を先行的に行うこともできますし、あるいは代替地を取得することもできます。あるいは、今ほど建設省調整課長がお答えになりましたような特定用地取得のための資金土地開発公社に貸し出すということもできるわけでございまして、その場合には利子は生じないわけでございますから、そういういろいろな方途を活用いたしまして、重大な課題でございます公共施設種地なり代替地を確保していくという方策に対処したいと考えております。
  13. 菅直人

    菅委員 大蔵大臣、私は率直に言って、これは大蔵省の責任の範囲を超えているかもしれませんが、どうも建設省自治省も、自治体の実態の中で市議会なり町議会なり、あるいは東京でいえば区議会なりでどういう議論が起きているかということにやや鈍感な感じがするわけです。  さっきも言いましたように、ことし新生産緑地法施行になると、一般的に言っても、例えば東京圏でいえば市街化区域内農地の半数がいわゆる指定を受けないということになると、どういうことになるか。今年度から少なくとも固定資産税宅地並みになります。二、三年は農業が続けられていても、とても農業収入ではそれは払い切れないということがはっきりしできますから、まずは多分私は駐車場になると思います。駐車場がふえることは決して悪いことではないですが、その後は中層ぐらいのアパートをどんどん建てていくことになると思うのです。その前にきちんとした都市計画が、例えば地区計画とかがちゃんとなされた上でそれが進めばいいですけれども、必ずしもそれが期待がそう簡単にできないとなると、相変わらずの細い道の両側にどんどんワンルームマンションやそういうものが建ってきて、あるいは林がどんどん切られていく。こういう現象が出てくれば、必ず地方自治体からは、何だ、まさにこの税制はおかしかったんじゃないか、この農地課税はおかしいんじゃないかという、かって出たような議論にもう一回舞い戻る可能性は大変高いというふうに私は逆に心配をしておるわけなんです。  そういう点で、先ほど言いましたように税制の次には都市計画が発動しなければいけないわけですが、都市計画というのはある種の私権をきちっと制限することになりますから、その間に、つまり自分ではつくらないけれども買い上げてくれるなら買い上げて、市の方で、県の方でやってほしいという形というものがかなり大量にこの数年の間に出てくる。既にもう譲渡益課税のいわゆる軽減措置で、つまり自治体に売る方が安くなるという軽減措置で買い上げを要請している件数は現在でももうべらぼうにふえているわけです。ですから、そういう激変状況に対してどう対応するかということがまさにことし、来年、問われていると思うのですね。  この地価税収がことしは〇・二で来年〇・三で、さらに拡大される見通しなわけですが、この税収を本来の公約であります土地政策目的に使うという中に、今申し上げたような議論を踏まえてぜひ積極的に活用していただきたいと思うのですが、大蔵大臣大臣としての、政治家としての見解をぜひ伺わせてもらいたいと思います。
  14. 小村武

    小村政府委員 御指摘の点は、地方の事情に最も通じ住民に最も近い存在である地方公共団体が、都市対策等について、その開発そのものについて各種のアイデアを出していただく、こういうことで都市開発資金あるいは公共用地先行取得事業債、先ほど自治省から御説明のありました土地開発基金ども今年度五千億の積み増しをしていただいたということでございますが、こうした中で、直轄事業あるいは公団事業においてそうした制度がなかったということで、先ほど建設省が御説明申し上げました特定公共用地等先行取得資金融資制度というのを本年度つくったわけでございます。  こうした制度と相まって、私ども特定公共事業といった観点からの取得措置については今後とも充実をさせていかなければならないと考えておりますが、一般的に国あるいは地方公共団体土地の取引に参入するという点については、先ほど大臣がお答え申し上げたとおり問題があろうかと思います。  以上でございます。
  15. 羽田孜

    羽田国務大臣 菅さんとはこの問題については大分昔からいろいろとお話ししてまいったわけでありますけれども、しかし今度こういう制度を取り入れることによりまして、今御指摘のとおり新しいものが生まれてくるということは事実であろうと思っております。そして、我々は今生活大国というものをつくらなければいけない、これは宮澤総理がどうこうというだけでなくて、国民全体の一つの願いであろうと思っております。そして、今度このものが適用されるのは三大都市圏であるということ、しかもこの三大都市圏というのは過密の、いわゆる集中のところで問題が起こってきているということであって、そういうものも含めて将来この周辺の地域を一体どうしていくのかということ、これの将来像というものを早急に打ち立てていく必要があろうと思っております。  そういう中で税制が一体どういう対応をするのかということ、これは私ども慎重に考えなければいかぬということでありますけれども、そういった将来像に対してどう対応するのかということをまじめに今見詰めていくときであろうということは申し上げることができると思います。
  16. 菅直人

    菅委員 これに関連して、少し緑の問題に移っていきたいと思うのです。  一般的にいっても、大臣、例えば緑地を残そうとか緑をもっと多くしようという議論は、一見だれもが反対しないというか賛成をするのです。しかし、いざとなると、例えば東京の中を見ても、本当に大量の緑が残っている土地はどこかといえば、ほとんどが国有地都有地であって、とても個人が持っている土地でたくさんの緑を残しているところは少ないわけです。なぜかといえば、これは当たり前のことであって、ビルにすれば一坪当たり例えば五十万円の収入がある。駐車場にしたって一坪当たり年間二十万円の収入があるところを、木を生やしたり竹やぶにしておけば税金は取られるけれども収入はない。つまりは、収益還元からいえば緑地というのは土地的な意味収益還元はほとんどゼロに近いわけですから、それを私有地の形で残そうと思っても、一時的には残せても永久的には残せないというのが現実だと私は思うのです。そういう点で、私は、緑を残そうと思えば、あるいはつくろうと思えば、先ほど来申し上げておるように公有地という形をとることが原則だと思っております。  しかし同時に、もう時間がないので一、二点指摘にとどめておきますけれども、現在行われている新しい生産緑地法においても従来からの農地政策においても、いわゆる農地についての猶予免除という措置があることは大臣も御承知だと思います。今回強化されて、生産緑地指定を受け、かつ終身営農、その代は一生営農を続けるということを約束した場合は相続税猶予され、そして最終的にはほぼゼロのような形で免除されるわけです。しかし、この規定には樹林とか竹やぶとかは従来から入っていないのです。ですから、例えば私の地元であります三多摩などでまず開発をされるのはそういう林なのです。「武蔵野」なんという本がありますけれども、まさに武蔵野の林がまず切られてきたのがこの歴史なのです。  そこで、ではこういう林も同じような制度でかぶせることができないんだろうか。都市計画の中で、私ども少し勉強してみましたら、都市緑地保全法とか首都圏近郊緑地保全法とかという制度の中で、緑地をある程度の条件の中で都市計画決定をすることがありますのできればこういう都市計画決定された保全すべき土地の中で、終身緑地保全、つまり私の一生の間は緑地から変えませんということを約束した人には、農地の場合と同じように相続税猶予免除を同じような意味で考える可能性はないのだろうか、このことの検討をお願いしたいと思っておりますが、見解をお伺いしたいと思います。
  17. 濱本英輔

    濱本政府委員 お答え申し上げます。  財産課税でございます相続税におきましては、やはり取得しました財産価値そのものに対して負担を求めるということでございますので、すべての財産を平等に扱うことがどうしても課税の根本原則としてゆるがせにできない点でございます。したがいまして、この納税猶予議論というのは従来からたびたび行われてきたことでございますけれども農業政策観点からとられていた措置につきましても今回縮減されるというのは、そういう方向を示唆している一つの出来事であろうというふうに思うわけでございます。私どもとしましては、この納税猶予の特例が例えば国や地方公共団体に貸し付けられておりますようなすべての公共用地に適用される、例えば都市公園の用地に適用される、時々そういう議論もあるわけでございますが、そういうことになりました場合に、結局どこまでも区切りが定められないままに相続税の形骸化が生じてくる。相続税自体に非常にわかりにくい部分が持ち込まれてくるということに対しては、どうしても神経質にならざるを得ないという事情が一つございます。  ただ、菅先生の御指摘の点というのはよくわかるような気がいたします。真に保全すべき緑地とそのために制定された都市緑地保全対策というものの位置づけが明確になってきました場合に、それを持っておる人が対応できる道というのはどういうことがあり得るかを考えてみますと、一つは、今のお話からそれるかもしれませんが、地方公共団体にそれを買い取ってもらうという方法もあるかもしれません。しかし、やはりそれは自分で持っていたい。持っていたいということは財産的価値を自分の支配下に置いておきたいということでございますから、そこはどうしても課税ということと結びついてくるのでございますけれども、その場合もその対策というものの位置づけがしっかりしてきました場合には、評価上かなり十分しんしゃくができるのではないか。これでは先生の御指摘に対する十分なお答えにはなっていないかもしれませんが、まずその道をきちんとさせるべきではないかという気がいたします。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  18. 菅直人

    菅委員 では、検討をお願いして、時間ですので質問を終わります。
  19. 中川昭一

    ○中川委員長代理 次に、仙谷由人君。
  20. 仙谷由人

    仙谷委員 昨日に続きまして質問をさせていただきます。  きょうはまず、昨日来株式市況の問題といいますか、株価が低迷し、売買高が極端に落ち込んでいるというような状況の中で、この対策、日本の今までのいわゆる会社至上主義と言われるような構造が問題ではないかという議論が同僚議員からも多々問題提起されておるわけでございますが、日本の企業の非常に低い配当、この問題についてお伺いをいたしたいと思います。  その前提として、これは政治改革の問題とも絡むわけでございますが、使途不明金の問題を少々議論をさせていただきたいと思います。  まず、この使途不明金という用語、概念があるわけでございますが、これは企業会計上どういう意味を持つのでございましょうか。まず法務省、だれか来ていらっしゃいましたらお答えをいただきたいと存じます。
  21. 大谷禎男

    ○大谷説明員 お答え申し上げます。  商法及びその附属法令の計算書類規則上は、使途不明金という特定の言葉があるわけではございません。これが生じた場合に商法上どういうふうに処理されるかと申し上げますと、これは損益計算書におきまして営業費用のうち一般管理費ないし販売費の中において、多くの場合交際費というような費目で処理されるのが一般であろうかと思われます。
  22. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、企業会計上は使途不明金という科目はもちろんない。つまり、他の勘定科目で処理されておるけれども、要するにそれがどうも疑わしいといいますか、証拠上確認できない、そういうものを使途不明金と呼んでおるのだ、こういうことでよろしゅうございますか。
  23. 大谷禎男

    ○大谷説明員 恐らくそういう処理がされているのだろうと考えております。
  24. 仙谷由人

    仙谷委員 それではこの使途不明金、国税当局の方は、よくいわゆる使途不明金という言葉が新聞紙上等々でも出てまいるわけでございますし、通常この委員会の中でも言葉としてはしばしば出てくるわけでございますが、何を指して使途不明金と呼び、国税の方はどういう取り扱いをしておるのか、まずそれだけお答えを願いたいと思います。
  25. 根本貞夫

    ○根本政府委員 お答え申し上げます。  我が国税当局の方の解釈でございますけれども使途不明金とは、法人が経費として支出しているもののうち、その支出がされているかどうかの確証がないもの、あるいは支出されていることが確認できる場合でも支出先が明らかでないものをいいまして、このため、その経費性を否定して、支出法人において全額課税することとしているところでございます。
  26. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは国税当局に、この使途不明金が金額的にどういう状況になっているか、御説明をいただきたいと存じます。
  27. 根本貞夫

    ○根本政府委員 国税局の調査課が所管しております資本金一億円以上の法人、これは三万二千四十法人あるわけでございますけれども平成二事務年度におきまして実地調査を行った法人、四千九百八十三件について、国税庁として把握しております使途不明金の状況を申し上げますと、まず使途不明金把握法人数五百八十五法人、使途不明金総額四百七十六億円となっております。  また、この使途不明金総額四百七十六億円を業種別に見ますと、建設業が三百五億円、製造業が六十三億円、卸売業が三十一億円、小売業が二億円、その他七十五億円となっているところでございます。なお、建設業の使途不明金把握法人数は約二百社となっているところでございます。  それから、この使途不明金の総額四百七十六億円のうち、実地調査によりましてその使途が判明いたしましたものは百六億円でございます。その判明割合は二二%となっております。また、使途判明分の内容を見ますと、リベート、手数料が二十八億円、交際費が五十七億円、その他が二十一億円となっているところでございます。  以上でございます。
  28. 仙谷由人

    仙谷委員 今、建設業者のうち、使途不明金が出てきた企業が二百社であるという御説明がございました。これは調査対象の建設業の会社のうちの大体どれくらいのパーセンテージに当たるのかという点と、もう少し説明をいただきたいのは、使途が判明した部分の説明を今いただきましたですね。使途が判明しておるのに使途不明金とはこれ。いかにという話でございますが、どういうことになるのか、その点を御説明いただきたいと思います。
  29. 根本貞夫

    ○根本政府委員 実地調査を行いました法人が四千九百八十三件あるわけでございますけれども、そのうちの建設業は約一二%の六百件くらいでございます。
  30. 仙谷由人

    仙谷委員 その使途不明金の内訳がわかった分ですね、内訳がわかれば使途不明金にならないんじゃないかと思うわけですけれども
  31. 根本貞夫

    ○根本政府委員 後半の部分の、使途が判明した場合でございますけれども、我が方といたしましては、実質所得者に課税するという原則に即しまして、その者に課税しているところでございます。  一方、支出法人についてでございますけれども、その支出金の実態がリベートや手数料などのように損金性のあるものにつきましては損金の額に算入されますけれども、交際費や寄附金に該当するものである場合には、一定の限度額を超える部分の金額は損金に算入されないということになっているところでございます。
  32. 仙谷由人

    仙谷委員 今リベート、手数料、交際費の話が出てきたわけですが、そのほかどういう勘定科目のところに使途不明金というのは潜っておるのが多いのでしょうか。
  33. 根本貞夫

    ○根本政府委員 使途不明金はさまざまな科目で支出されているようでございますけれども、これを特に計数として我が方としては取りまとめていないわけでございます。  ただ、一部のサンプルから例示として申し上げますと、例えば建設業につきましては、外注費や労務費を架空計上して捻出した資金使途不明金に充てている例が多いというものが認められます。製造業につきましては人件費や会議費、卸売業につきましては支払い手数料や仕入れ等の科目を利用しているものが多いということでございます。     〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
  34. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと話題がそれますが、企業交際費が、今年度といいますか平成二年会計年度というのでしょうか、この分につきまして最高の五兆六千億円が企業交際費として計上されておるという新聞報道がございます。使う方もくたくたというふうに書いてある新聞もあるわけでございますが、この企業交際費と、先ほど御説明をいただいた使途不明金というのはどういう関係になるのでしょうか。
  35. 根本貞夫

    ○根本政府委員 使途不明金と交際費との関係でございますけれども使途不明金といいますのは、先ほどの定義のとおり、あくまで使途がはっきりしてないものでございます。片っ方、交際費というのは、相手先がはっきりしているものでございまして、したがいまして、これにつきましては一定額以上のものは損金不算入ということでございます。
  36. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと法務省の方にお伺いいたしたいわけでございますが、この使途不明金、私どもの感覚から見ると相当多額の金額が、要するに一たん企業の財産になったお金といいますか、資産がどこに行ったのかわけがわからなくて消えていっておる、こういう話だと思うのですね。これは企業会計上こういうことが許されるのかどうなのかということなんですが、法務省、いかがでございますか。
  37. 大谷禎男

    ○大谷説明員 お答え申し上げます。  企業の会計行動は非常に膨大な範囲にわたるものでございますから、一部においてどうしても支出の根拠が判明しないという分野が生ずることはやむを得ないものと思われます。したがって、そういう事実が生じた場合に、そういうものを使途不明金というような形で処理するということはある程度やむを得ないものと思われますけれども、元来会社の会計事実というものは明確な根拠に基づいて処理されるべきものであるというふうに思われますし、またそれについては法令、定款というような行動の基準もあるわけでございますから、その支出の根拠が説明できないようなものが相当のスケールで生ずるということは、少なくとも商法上は好ましくないものと考えております。
  38. 仙谷由人

    仙谷委員 なぜこの問題をこういうふうに提起しているかといいますと、実は昨年の夏ごろからテレビの放映時間が一番長い番組が、大林雅子さんか雅美さんか知りませんけれども、こういう女性がおりまして、シキボウの会長とどうのこうのという話があったわけであります。そのときにたまたまテレビを見ておりましたら、シキボウの会長がその女性に送った手紙の中で、要するにマンションも買い与える、車もどうのとか、それからラジオの番組もシキボウ提供で出すというふうな、そんなことが書かれておるというのですね。どうも個人のポケットマネーでそこまでできる収入がシキボウの会長というのはあるのかないのか私わかりませんが、多分今の税制上では無理だろう。これは企業交際費あるいは使途不明金で落としておるのではないかということを感じたわけでございます。  そうするうちに、今度は例の共和の使途不明金二十二億円という話でございます。その次が佐川急便事件の、これは使途不明金という処理になるのかどうなのかわかりませんが、要するに保証料と称するものがキックバックされた、あるいはリベートが返ってきた、やみの部分に潜ったお金がどうも政界にまかれたのではないだろうか、あるいは暴力団に配られたのではないだろうか、こんな話になっておるわけでございます。それで、その反対の方には当然のことながら、企業のそういう収益をなぜ利益として株主に配当しないのか、あるいは労働者に分配しないのかという問題があるのだろうと思いますけれども、この仕組みがやはり日本の今の会社至上主義といいますか、会社を毒しているというふうに考えておるからでございます。大変な多額のお金でございます。  そこで大蔵大臣に、抽象的でも結構でございますので、この使途不明金、こういう金額が今出てきておる。あるいは企業交際費というものが五兆円を突破する。大体、今の上場会社の配当が四兆円ぐらいだというふうに言われておりますので、はるかに超える金額が交際費に消えている。こういう状況について、御感想といいますか、どこをどうしたらいいのか、特に政治と金の問題も含めてどんな御意見をお持ちなのか、御所見を賜りたいと思います。
  39. 羽田孜

    羽田国務大臣 今、交際費が大変膨大なものであるということ、あるいは使途不明金が大変な大きなものがあるという御指摘、これはもうまさに御指摘のとおり。どうも株主への配当ですとか勤労者に対する分配ですとか、あるいはきのう、企業の経営者の所得というものをもっと上げたっていいのではないかというお話が実はありました。そういったことに本来大きく使われるものであろうということを感じますし、また税の分野からいきましたときには、やはりこういったものを解明しながらきちんと課税をしていくということが当然のことであろうというふうに考えております。
  40. 仙谷由人

    仙谷委員 使途不明金が発生するのをより少なくさせる方法というのは、何か国税当局としてはこういうことだとおありになるのでしょうか。あるいは証券局になるのかもわかりませんけれども、企業財務の問題としては、こうすればこの種のものが減るはずだという対策はおありになるのでしょうか。その辺を御両所からお伺いをいたしたいと存じます。
  41. 根本貞夫

    ○根本政府委員 私ども国税当局といたしましては、常に真実の所得者に課税するということを目的としておりますので、使途不明金は課税上問題があるということで考えております。  したがいまして、私どもといたしましては、今後も引き続き調査に当たりましては使途不明金の使途の解明、すなわち真実の所得者の把握に一層の努力を払っていく方針でございます。しかしながら、税務調査は任意調査を基本としておりますので、使途の解明には限界があることも事実でございまして、どうしても使途が不明の場合には経費として認めないこととして、全額課税するという取り扱いをやっているところでございます。  さらには、調査により把握いたしました使途不明金につきましては、その支出の過程におきまして仮装あるいは隠ぺいなどの悪質な行為がある場合が一般的でございますので、これらにつきましては重加算税を課しているのが通常でございます。
  42. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 お尋ねの趣旨は公認会計士による監査の問題だろうと思うわけです。  確かに、公認会計士による監査は企業の取引が正しく財務諸表に適正に表示されるということを担保する制度でございまして、そういう観点から申し上げますと、御指摘のような使途不明金のようなものがあるということは公認会計士の監査上やや問題があるのではないか、不十分ではないかという問題もあるわけでございます。ただ、公認会計士による監査は、企業の取引すべてについての監査を一応するわけでございますけれども、どうしても重要性の原則というようなもので、かなり抽出、サンプル検査にならざるを得ないという点があるわけでございます。  しかし、公認会計士の監査に期待されておりますいろいろな社会的な使命といいますかニーズというものを考えまして、現在私ども、公認会計士監査の監査基準あるいは手続という問題についてそういう社会的なニーズに対応できるような見直しをやっている最中でございまして、できるだけ公認会計士監査においてもそういうものが把握できるような監査が行われるような基準をつくっていきたいと思っております。
  43. 仙谷由人

    仙谷委員 今、公認会計士の話が証券局長からもされたわけでございますが、この使途不明金問題を我々が報道に接する、あるいは昨年の証券会社の補てん問題も見ますと、ちょっと会社制度を勉強した者であれば、株式会社というのは監査役がまずいるのじゃないか、監査役は何しているんだ、その次には公認会計士も大企業にはちゃんとついている、監査法人がついている、この人たちは一体何をしてきたんだ、こういう反応といいますか話になるわけでございます。私も、監査役と公認会計士あるいは監査法人の存在理由が果たしてあるのかなと思わざるを得ないわけでございます。  日本の株式会社の監査の制度の中にどこに欠陥があるのか、あるいはこの程度のことは諸外国でもしばしば起こることで、制度上問題にしてもしょうがないのだという話なのか、その辺、まず法務省、お答えをちょうだいできればと思います。
  44. 大谷禎男

    ○大谷説明員 お答え申し上げます。  大変難しい御質問をいただきましてお答えに窮する面がないわけではないのでございますけれども、先生御案内のとおり、戦後大企業をめぐる不祥事が幾つか続きました。例えば、古くは山陽特殊鋼事件、それからまた航空機疑惑事件というようなものがあったわけでございます。その都度、商法上の監査の問題について何らかの手を打つべきではないかというような御指摘をいただきまして、昭和四十九年におきましては会計監査人の監査が商法に導入された。さらには、五十六年にも大幅に監査役あるいは会計監査人の権限を強化するための改正が行われております。  このような現在の商法上の監査のシステムというものをざっと整理してごらんいただきますと、専門家の先生でも恐らくびっくりなさるぐらい、こんなに監査の部門には権限が与えられているのかというふうにびっくりなさるのではないかと思います。そこで私どもとしては、現在の監査制度が本当にうまく機能すれば、相当程度に企業の健全な活動を確保することができるのではないかというように思っております。したがって、今度の一連の不祥事の原因が一体どこにあるのかということについて、人の運用を含めた十分な検証をすべきであると思いますし、また、逆に言えば非常にいい教材であるという見方もできようかと思います。  ただ、一つ私が申し上げることができると思いますのは、そういう非常に精緻な手厚い制度のもとでなおシステムがうまく機能しないということがあるといたしますと、一つは、現在の現実の会社の中で置かれている監査役の位置あるいは公認会計士にもたらされる監査情報、こういうものの質の問題がやはりあるのではないか。さらには、会計事実を認識した場合に、どこまで会社の経営陣に対して監査役ないし会計監査人がチェックのための行動を起こすことができるのか。そういう情報に対する接近の度合い、さらには発言力の問題、そういう点において、あるいは商法上の制度としてもさらに考えるべき点があるのではないかというような感想を持っております。  十分なお答えになりませんでしたけれども、とりあえずこんなところが私の考えでございます。
  45. 仙谷由人

    仙谷委員 制度は立派な制度があるんだけれども機能してないというお答えでございました。昨日私が提起した飯田教授の言によると、まさに企業の自己規律の問題なのかなという感じがいたしました。そうだとすると、それは多分市場の中で、マーケットの中でみずからの責任に降りかかってくる話でありまして、企業が、要するにすべてなれ合いの、内輪の監査、あるいは質の高い情報を公認会計士に与えない、公認会計士の方もそれを徴求しない、求めないというところでどうもすべてが窒息状況になってきて、それが今の株式市場に反映しておるんではないか、そんな感じすらするわけでございます。  したがいまして、この問題はしょせんはそういうマーケットの話だとすれば、我々政治の部面で余り手出しをすべき問題じゃないのかもわかりませんけれども、事はまたもう一遍問題が返ってきまして、そうなのかな、今大谷参事官が言われた制度がうまく機能するように我々に何ができるのかな、こういうことを考えなければいけない。  一つは、従来から言われておりますように、監査役を第三者、つまり社外監査役の導入ということを真剣に考えたらどうだろうかというのが一つの提起になろうかと思います。  もう一つは、先ほど松野局長ちょっとおっしゃいましたけれども、何か昨年の十二月の二十六日に、企業会計審議会で新しい監査基準と監査実施準則というのをつくられて、局長のところを通じて大蔵大臣提出、公表されておる。その新しい監査基準というのは、役職者による不正行為の発生、これにどう会計士が対応するかという問題意識のもとにつくられでおるというふうに物の本で読むわけでございますが、その点について簡単に、まず法務省の方からその社外監査役の問題、これについての問題意識と、それと証券局の方は、その新しい監査基準、監査実施準則というものがどういう問題意識のもとにつくられておるのかということを簡単にお述べいただきたいと存じます。
  46. 大谷禎男

    ○大谷説明員 お答え申し上げます。  社外監査役の制度につきましては、過去、昭和五十六年改正の際にも議論されたことがございました。その当時は、人材の確保が難しいのではないかというような指摘がありまして先送りされた経緯がございます。しかし、最近のこういう事情を踏まえて、もう一度社外監査役の制度基本的に検討すべきではないかという御指摘を各方面からいただいております。そういう御指摘をいただきまして、私どもも法制審議会にお願いいたしまして、現在法制審において真剣にこの問題を検討していただいております。  これは、要するに会社の経営陣に対する発言力の強化、独立性の確保という点で大変すぐれた要素があるというふうに考えておりますけれども、反面弱点もないわけではない。時間の関係もありますが、簡単に申し上げますと、一つは、社外の者であるからどうしても情報源から遠いという本質的な欠陥がある。それから第二は、会社と縁が薄いということから会社の運命に対する共感に乏しい。それが経営陣に対する発言力、発言に対するインセンティブに欠ける面がないわけではない。こういう欠陥があります。したがって、今申し上げたような点について十分フォローするという制度を設ける必要がある。そういうことを含めて、この制度が立法として可能かどうかという点について現在真剣に検討いただいているという状況でございます。
  47. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど少し触れさせていただきましたが、平成先年の三月からいわゆる監査基準等の見直し作業を進めてきたわけでございます。  その趣旨といいますか背景といたしましては、やはり監査基準が全面的に改訂されましたのは昭和四十年代でございまして、それから相当日時がたって、企業規模もその間拡大し、かつ企業の経営活動の内容が非常に複雑化し多様化している、さらに国際化をしている、そういったような状況を踏まえまして、監査基準等についての国際的な観点、さらには御指摘にありました不正に対する適切な措置というような観点が非常に重要だという問題意識を持って検討を進めたわけでございます。その結果、昨年の十二月に報告書が出され、現在その報告書をもとにして私ども所要の省令改正などを準備しているわけでございます。  報告書の要点をかいつまんで申し上げますと、特に不正に対する適切な対応ということから、監査人が十分な監査証拠、監査事実を裏づけする証拠を入手することが必要であるということが非常に強調されておりますし、また、「重要な虚偽記載を看過してはならない」、これはもう当然のことでございますけれども、そういうようなことが指摘されております。  そういった観点から、監査に当たりましてその監査書類をつくります経営者の側から確認書をとるということを提案を受けております。その確認書には、その財務諸表の作成責任が経営者にあるということ、それから監査の実施に当たって必要なすべての書類を監査人に提供したというようなことを経営者が確認をするというようなことによって会計監査人が十分な監査情報に接近できるといいますか、アクセスできるということを確保したいということを内容としておりまして、現在この内容につきまして具体化をし、できるだけ早いタイミングで実施に移したいというふうに思っております。
  48. 仙谷由人

    仙谷委員 私も余り企業会計は詳しくないんでございますが、企業会計原則はまず一番最初に、「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」というのが書かれておるわけでございます。ところが、ややもするとどうもそうではない企業が上場会社にもあるという残念な結果になっておるのであります。そういうことで、この問題は多分中期的に、にもかかわらずそれほどもたもたできないで、日本の企業が、先ほどの大谷参事官の言葉で言うと、制度にふさわしく機能するような監査がなされて企業会計が真実の報告がなされる、そしてそれがいわば株価にも反映し、ということにならなければならないのだろうなというふうに思いますので、ひとつ証券局、それから法務省の方、精力的に作業を進めるような方向に持っていっていただきたいと存じます。  次に、株式市況の問題でございますが、私も余り詳しくはないわけでございますが、今の株価が非常に低い、冷え込んでいるというのが一般的な理解のようであります。一つは、ただ数字を見ますと、いわゆるバブルというふうに言われた時期の直前の株価というのは実は日経平均で八千八百円ぐらいなんですね。五十九年に一万五百六十円。六十年、このときから例えば東京地価がどんどん上がってくるわけですが、六十年でも一万二千五百六十五円。六十一年で一万六千四百一円。六十二年になって二万三千二百四十八円。六十三年が二万七千三十八円。元年が三万四千五十八円。十二月二十九日に三万八千九百十五円をつけるわけであります。その間東京地価が、六十年が一二・五%、六十一年が四八・二%、六十二年が六一・一%というふうに上昇した、こういう相関関係にあるわけですね。だから今の株価、二万一千円、二千円の株価を、地価のバブルが消し飛んで、そしてある種の、調整局面という言葉を使われておりますけれども、入ってくると、果たして高いのか安いのか判断がそれほど簡単につきかねる問題ではないか。つまり、三万八千円、三万九千円に比べたら半分近いわけですから非常に安くなったという感じがするわけでございますが、もともと日本の企業の株価というのはそんな株価を持ち得る力はなかったという評価もできるのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  今、株式市場対策として自民党の方でもいろいろお考えになっておるようでございますが、この種の、公定歩合を引き下げる、あるいは有取税をなくすることを検討してはどうか、こんな話が、効果があるかないかですね。あるいはそういうことを株式市場対策としておやりになるおつもりがあるのかないのか、その点を大蔵大臣にお伺いをしたいと存じます。
  49. 羽田孜

    羽田国務大臣 この数字につきまして私どもがどうこうコメントすることは差し控えたいと思っております。ただ、配当性向の問題につきましては、これはやはり諸外国と比較いたしましても日本の場合に投資家に対する配慮というのが不足しているのではないのかということは、これは各界からも指摘されるところでございますし、今申し上げた他国との比較からいってもやはり低いというようなことで、これはこれから考えていただかなければならない問題であろうと思っております。  また、税の問題につきまして、これは全体的にことしの秋ですか、こういった中で議論するということでございまして、今どうこうということは申し上げられないと思っております。  金利等につきましても、これは金利に対する考え方はありますけれども、しかし実際にこのところ長短のプライムレートが下がってきておるという現実でありますし、またそのように銀行、いわゆる貸し出しをする銀行等と日銀ともいろいろな話し合いをしてきておりまして、このところ相当下がってきておるという現実が実はあるということであろうと思っておりますので、今マル公についてどうこうするということについて私どもがどうこうまたコメントする立場でもないというふうに思っております。
  50. 仙谷由人

    仙谷委員 私も株式市場については素人でございますので大きい口をたたけないわけですが、振り返ってみますと、例の八七年ブラックマンデーというのがあって、そして八八年の初頭に、これはいつも大蔵省は否定なさるのでございますが、簿価分離、要するに株式評価についての低価主義の採用を延期する。一月六日に発表をされたことになっておって、公認会計士協会が発表したことになっておるようですが、それでまた株が右肩上がりになっていってそして八九年、九〇年を迎える。こういう過去の経過を考えてみますと、どうも余り小手先の、公定歩合を〇・五下げたら何とかなるんじゃないかとか、そんなことは考えない方がいいのではないだろうか。そろそろじっくり、マーケットはマーケットにある種任せて、先ほどから問題になっております日本の企業の配当の問題あるいは分配の問題あるいは先ほどから法務省からも指摘されておるような監査の問題、こういう問題に中期的に手をつけるということの方がむしろ今の時点で重要なのではないか、そんなふうに考えておるわけでございますが、その点大蔵大臣あるいは証券局長、いかがでございましょうか。
  51. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、私どもも、現在株式市場が低迷している、それに対して小手先の手段でこの低迷を脱することができるというふうにも思っておりませんし、またそれが適切であるとも思っておりません。やはり現在の低迷の原因の中には株式市場の構造にかかわる問題があるわけでございます。その中の一番大きなといいますか第一のポイントは、やはり昨年来、最近も出ております証券業者を取り巻くいろいろな問題が生じ、それが株式市場に対する一般投資家の信頼を失わせる、個人投資家が株式市場から離れていっているという現実があるわけでございまして、こういった点については、一つは証券会社の営業姿勢を適正化するということは必要でございます。従来のような古い営業方法ではなくて、やはり合理的な分析に基づいた投資勧誘方法というようなものをきちんと確立していくということが何よりも必要だろう。あわせまして、これは証取法の改正をお願いするところでございますけれども、検査・監視体制の強化とか、あるいは自主規制機関の機能の強化、さらには競争の促進というようなことでこういう問題に対応し、証券市場に対する、特に株式市場に対する投資家の信頼を回復していくということが必要だろう。  さらにあわせまして、株式保有魅力といいますか、投資魅力を高めていくということが必要でございます。この点は先ほど御指摘いただきました配当政策の問題になっていくわけでございますけれども、やはり発行会社に対して利益のうち適正な割合を株主に配当として支払うというようなこと。これは欧米諸国に比べて配当性向が非常に低いわけでございまして、やはり株式市場が企業の資金調達の場として十分機能するためには発行会社としてもそれ相当の責任を持っていただく必要があるわけでございまして、そういうような株式市場のいわば構造的な問題の改善というものがどうしても必要で、こういったものは確かに改善するにはかなり時間がかかるかもしれませんが、目先の問題よりはそういった構造改善あるいは株式投資魅力の向上というような問題を通じて株式市場が活性化していくということにならないと、本当の株式市場の回復ということは期待できないというふうに考えておるわけでございます。
  52. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどは時系列的に六十年ごろからずっと追われながら水準についてこのぐらいなのかなという感じがございました。ただ私どもといたしますと、アメリカ、ニューヨークの株式市場等の動き等を見ておりましても、やはりファンダメンタルズは日本の企業の方がずっと強いということを見たときに、やはり今の価格とか扱い高というのはちょっと異常だなという感じは率直にいたしております。  ただ問題は、今局長の方からもお話ししましたように、やはり一番の問題はああいう不祥事を起こしてしまったということ、そして何かいろんなことをやられるのじゃないか、積極的な投資をお誘いする、こういったものに対してまた何か指摘されるのじゃないかということで、少し萎縮し過ぎてしまっているという面があるだろうと思っております。また、それと同時に投資家の方も、特に個人投資家の場合には、投資した、それが暴落によって大変な穴をあけてしまった、そういうことで、それこそ奥様なんかの場合に御主人から怒られてしまうとか、あるいは社会的にも何か指弾をされてしまって、株式に投資することが悪いことみたいになってしまっておるというものもあるのじゃなかろうかなと思っております。これはやはり、どちらかというと日本の市場の場合に投機の方が何か盛んになってしまって、本当の意味での投資という観点から離れてしまったという一面があるだろう、そういう面で株式市場に対する信頼とかあるいは株式に投資をするということに対する信頼というものが世の中から失われてしまっているというところに問題があろうと思っておりまして、今御指摘がございましたように、やはりこの信頼を取り戻すための私どもとして行政でやること、あるいは証券取引所また証券協会、こういったところが自主的なルールをつくっていくというこの二面からきちんとした一つのルールをあれして、勧誘する人たちも堂々とできるように、そしてまた参加する人たちも白い目で見られないような体制をつくっていくということが一番大事なことであろうというふうに思っております。
  53. 仙谷由人

    仙谷委員 今もお答えをいただいたわけでございますが、結局配当性向の話がずっと出ておるわけです。ただ配当性向というのは、あるエコノミストによりますと、今年度の三月期の決算が終わると配当性向がぐっと上がるだろう、なぜならば企業の収益が落ちるからだ、そういう関係になっておるわけで、株式の問題からいえば日本の株式のいわゆる配当利回りというふうな、今〇・六九とか〇・六七とか言われておりますけれども、この〇・七%程度の配当利回りが他の金融商品に比べて非常に低いというところにも大問題があるのですね。アメリカは何か三%ぐらいの配当利回りがあるというふうに言われておりますので、当然のことながらそういうことでお金が動くということになるんでしょうけれども、どうも日本の場合配当利回りが低い。もしアメリカ程度の配当をやろうとすれば利益を全部つぎ込んでもその配当にならないというところに、実は日本の会社の企業会計といいますか、財務が落ち込んでしまっておるという問題が出てきておるわけでございます。  そこで考えてみますと、どうも日本の会社の資産内容が、特に上場一部の会社と言われておるようなところは含み益が余りにも多いのではないだろうか。つまり、私が持っておる資料で言いますと、土地の含み益だけでも五百六十八兆円という、これが土地の含み益だと言われております。現在はもう少し株の方は含み益が落ち込んでおるというふうに思いますけれども、それでもこれも五百兆円ぐらいのオーダーであるのではないかというふうに言われておりました。つまり、昨年の末ぐらいまではそういう議論であったわけであります。  要するに会社に留保ばかりされて株主にも配当されないというところ、それからきのうからの議論ですと経営者に対する報酬の問題、労働者に対する分配の問題というのが続くわけですが、ここがやはり大問題。つまり、もとへ戻りますと、企業会計上の資産評価の方法が余りにも会社を保護し守る、会社を倒産させない、会社に粉飾決算をさせないという方向に強く流れ過ぎて、結局個人に還元されずに会社に留保されて、それが今度は会社間の持ち合いというふうな格好になって身動きがとれなくなっておるということではないだろうかなという感じがいたすわけでございます。  そこで私どもの考えておりますのは、堀先生がいつもおっしゃるわけですが、先ほどから問題になっている監査の問題としては社外監査、それから株式についてももうそろそろ、全く意味があるのかないのかわからない五十円という額面、五百円という額面、やめたらどうだろうか、こういうことでございます。つまり、企業経営者は一割配当しているから立派なものだ、安定配当しているんだというふうなことをどうもお考えになっておるようでございまして、現に営業報告書等にはそういうことを堂々と書いてある。ところがそこの会社の株式は時価は二千円であるということでございますので、何を言っているんだという話になるのだろうと思いますね。やはりそこのところを考えていかなければいけないと思うわけでございます。この無額面株式化の問題。  それから、企業会計上一挙に全部含み益を出せと言っても、これはまた大蔵省の税金取りの陰謀だなんという話になりますので、そこのところをどうやってうまく考えるかということでございますが、そろそろ時価主義の方向へ動かすということをお考えになったらどうかと思うのですが、まず証券局長、それから法務省の方、お答えをいただきたいと思います。
  54. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 企業会計原則でございますが、これでは現在は資産の価額は原則として所得価額を基礎として計上するという原価主義をとっているわけでございます。これは検証が可能であるというような問題、あるいは実際にそれ以外の、例えば時価という場合にどれだけの公正かつ客観的な基準が引けるかというような問題があるわけでございまして、この資産についての原価主義というのは、我が国ではもちろん商法、税法を通じてとられておりますし、外国におきましてもこの企業会計原則の資産計上の方法としては一般的にこれが採用されて公正妥当な方法だということになっているわけでございます。そういったことから申し上げますと、企業会計原則そのものについて直ちに時価主義をとるというのは率直に申し上げて難しい問題だというふうに考えるわけでございます。  ただ、それではいわゆる含み益というようなものをどこまで表示すべきかというこれは別の問題としてあるわけでございます。資産のうちの比較的時価が把握できます有価証券につきましては、既に一部時価がはっきりしているものは時価を表示するということを求めておりますし、また時価が必ずしもはっきりしないいろいろたくさん各種のものがございます債券につきましても検討を進めてまいりまして、本年の三月決算期から原則として含み益を開示するということで、有価証券についての含み益の開示というのは大体手当てができるというふうに考えております。  ただ、問題は土地でございまして、土地につきましては、先ほど申し上げましたように、時価というものの算定方法というものが非常に確立をしていないという問題があるわけでございます。そういったことで、補完的な手段にはなりますけれども、現在私どもとしては、その企業が持っております土地については、所在地、面積あるいは取得価額というものを一覧表として有価証券報告書に添付して出すということを要請しているわけでございまして、それを通じて投資家あるいは一般の社会に、どの程度の土地を企業が持っていて、それがどういう計算をすればどの程度の含み益があるかという計算ができる基礎としての材料は提供しているというふうに考えているわけでございます。
  55. 大谷禎男

    ○大谷説明員 まず取得原価主義と時価主義との関係につきましては、基本的な問題点は、今証券局長の方からお答え申し上げたとおりでございますので、重ねて申し上げることは省略させていただきます。  法務省といたしましても、この問題については企業会計上の大きな問題として関係各界とも意見調整しながら検討を進めていきたいと考えております。  それから、二番目の額面株式の問題でございますが、戦後無額面株式が導入されまして、現在では会社は無額面株式のみを発行することもできるということになっております。そういうようなことも考えますと、株式の制度を額面株式から無額面株式に一本化するということについて、少なくとも理論上の障害はないというふうに考えておりまして、あとは立法政策の問題だろうと思われます。かつて先生の御提言のような方向での改正議論されたことはございましたけれども、依然として会社の関係者、これは会社サイドのみならず、株主の側にも額面株式というものに対する愛着が非常に強いという心理的な背景がありまして、まだそういう改正をするということまで至っていないというのが現状でございますけれども、この問題は株式の根本問題として引き続き法制審議会においても検討が続けられるものと考えております。
  56. 仙谷由人

    仙谷委員 今後ともこの無額面の問題、それから、証券局長が御答弁されましたけれども、要するに資産内容のディスクローズからもう一歩進んで、企業のキャピタルゲインをどうやって株主とか経営者あるいは労働者に分配するのかという問題だと思いますので、要するに内部留保が非常にたまっても、それで設備投資に回しても設備投資の方がオーバーになってしまうという状況にどうも今来ているんじゃないかという感じもするものですから、分配の問題をもう少し本格的に、資産の分配の問題を真剣に考えなければいけないんじゃないだろうかということでございます。そういう意味では、昨日も議論しました地価税というのは、仕組みとしてはなかなかよくできた仕組みになるのかもわからないということを申し上げて、時間がございませんのでもう一点だけ、次に移ります。  環境庁、来ていらっしゃると思いますが、今の環境に対する税の問題ですね。あるいは負荷の問題、負担の問題といいますか、これについて昨年の一月にOECDの閣僚会議というものがあったやに聞いておりますし、ことしは地球環境サミット、きょうの新聞を見ますと、渡部通産大臣はECのエネルギー税の問題で、ECと産油国ですか、これに板挟みになって右往左往というふうな記事が出ておったわけでございますが、現時点での国際傾向、何といいますか特にCO2課税の問題、どういうふうに動いているのかということをお伺いいたしたいと思うのです。  そしてまた、大蔵省主税局の方には、この点についての今の検討段階の到達点みたいなことをお話しいただければと思います。
  57. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  環境税について最近議論されるようになりました背景には、環境政策の手段として排出の規制等を中心とする施策に加え、経済活動全体に環境保全の観点を広く織り込むための経済的手段の活用が課題となってきているという事情があると思います。  国際的動向といたしましては、フィンランド、スウェーデン及びノルウェーといった北欧諸国やオランダでは、燃料に含まれる炭素分に着目した税制を設けております。また、御指摘ありましたECでは、燃料中の炭素分と熱量に半々に着目した税制の導入を検討していると聞いております。こうした中でOECDでは、本年末までのスケジュールで環境税の利用についてタスクフォースを設け真剣な検討を行っているところであります。  環境庁といたしましては、環境保全型社会の形成に向け、規制や助成を含めて幅広い対策を講じていくことが必要であると考えておりまして、その一環として環境税についても調査検討を行っているところであります。今後OECD等における国際的な検討の進捗状況を踏まえつつ、十分検討してまいりたいと考えております。
  58. 濱本英輔

    濱本政府委員 お答え申し上げます。  環境税の問題というのがしばしば新聞等にも出てまいっておりますけれども、私ども、環境税の問題というのはまさに環境対策の中の一つの問題であるというふうに認識しておりまして、環境対策というものが国際的にどのように論じられていくかということに対して関心を持っております。  今仙谷先生は到達点について述べるという御指摘でございますけれども、そういう状況でございまして、現在その具体的な到達点について御報告できる状況にはまだ立ち至っておりませんけれども、非常に大切な問題だとしまして私どもも今年度以降熱心に取り組んでいきたいと思っております。
  59. 仙谷由人

    仙谷委員 この問題、開発途上国といいますか、途上国の問題を考えれば我々も真剣に取り組まなければいけない課題だと思うんです。で、そのときにことしの国際貢献税のような、また大蔵省が増税だけをするというふうな、こういう印象にならないように、一つ目的税的なイシューを持つかどうかということもありましょうし、幅広い議論を集めてぜひこの大事な課題がもみくちゃにならないようにお願いをいたしたい、こういうことを申し上げて質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  60. 太田誠一

    太田委員長 東洋三君。
  61. 東祥三

    ○東(祥)委員 公明党の東洋三でございます。  まず初めに大蔵大臣に、今一つの大きな曲がり角に来ている、そこで日本の将来のありようを探り求めようとするときに生活大国という概念が出てきております。初めにあくまでも素人、そしてまた素朴な疑問が幾つかありますので、その生活大国とその税体系のありようといいますか、そういう視点から質問さしていただきたいと思います。  宮澤総理がさきの施政方針演説で生活大国、その具体的なイメージを六つの項目に分けて述べられましたけれども大蔵大臣としてはその生活大国というふうに言った場合どのようなイメージをお持ちなのか、この点についてまず御見解を伺いたいと思います。
  62. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに日本の国、このところバブルがはねたということがよく言われますけれども、企業その他が非常に大きくあるいは底力というものも持つようになったということ、これは事実でございますし、まさに経済大国だなということが本当によその国からも日本に対してそういう指摘があるところであります。  ただ、それでは国民生活というものを見たときに、いろいろな面で、間違いなく所得というものもふえましたし、あるいは日常生活なんかも割合と活発に行えるようになったという面、これは評価すべき面だろうと思っておりますけれども、例えば通勤なんというものを一つ考えても、大変な時間をかけておるということ、あるいは、住宅の面積、一人一人の住む住まいの面積なんというものを考えたときにも、やはりまだ相当低いというのが現実であるということ、また、下水道ですとか、いわゆる社会資本といいますか、こういったものなんかについても、欧米諸国等に比べますとまだ低い面があるということが言えるだろうと思っております。  そういうことで、我々が目指す生活大国というのは、そういう面がきちんと整備されると同時に、やはり生活をエンジョイするというようなもの、あるいは生活の中に潤いがあるというもの、こういうものをこれから求めていく必要があるんじゃなかろうかというふうに考えております。
  63. 東祥三

    ○東(祥)委員 まだ生活大国という大きな概念だけで、その生活大国を実現するための構成要素といいますか、ブレークダウンされた諸目的、そういったものに関してもまだまだ議論の余地があるんだと思います。総理が言われた六項目というのも極めて重要なものであろうというふうに私自身も思うんですが、大蔵省の視点から考えた場合、こういった生活大国、まだ茫漠としたものでございますけれども、こういうものを追求していくに当たって、これまでの税体系そのものでいいのかどうなのか、この辺についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  64. 濱本英輔

    濱本政府委員 ただいま具体的に御指摘がございました生活大国、総理施政方針演説で述べられております生活大国の六項目の指針に関しまして考えてみるわけでございますけれども、いずれも、だれしも心の中に抱いておりますイメージというものに結びついている課題でございまして、そういった意味におきましては、自然にいろいろな論議がそういった六つの項目のそれぞれに向かって進められてきている、税制においてもそうではないかという気がいたします。  もう少し具体的に、一つ一つにつきまして簡単に申し上げてみたいと思うのでございますが、まず、住宅等の社会資本の整備に関連いたしまして見ましても、住宅対策について、例えば、現在御審議をいただいております今回の改正法案の中にございます住宅取得促進税制の延長、あるいは、特定の優良な貸付住宅に対する新しい割り増し償却制度の配慮といったようなものが考えられますし、より基盤的な問題と言うべきかと存じますけれども土地対策の問題につきましては、地価税の問題、それから、先年御議論をいただき、実施に移されたばかりの土地譲渡益課税等の制度におきまして、公共用地の確保にも配慮がなされている、そういったこともこれにかかわってこようかと思います。  労働時間の短縮の問題につきましても、中小企業の職場環境の改善につきましての対応がございますし、それから、高齢者、障害者対策というくくりで見ましても、所得税におきます各種の控除でございますとか、社会福祉事業に対する例えば消費税の非課税措置、それから、今度の改正法案に載っております看護婦対策としまして、看護業務の省力化に資する配慮、そういったものもこれに数えられようかと存じます。  国土の均衡ある発展という項目について見ましても、多極分散法や種々の地域振興立法に対応した措置などが検討されておりますし、また、既成市街地から地方へ事務所や工場を移転する場合の措置につきましても配慮されております。  教育、文化、スポーツの振興につきましても、寄附金税制におきます特定公益増進法人制度の活用などによりまして税制上の対応が図られようとしております。  そういったことを申し上げるべきかと存じます。
  65. 東祥三

    ○東(祥)委員 生活大国実現のために、税制の配慮といいますか、そういうものをお考えになって大蔵省がもう進み出している、そういうふうに考えていらっしゃるということを私の方は受け取ります。  もう既に大蔵大臣指摘してくださっていることですが、一つは、生活大国における日本人としての実感がなかなかない、その一つの例として住宅問題というのがあるのではないのか。このことについてはもう既に御指摘されているわけですけれども、今現在何が起こっているのか。  特に首都圏を中心にして、例えば私の住んでいるところは首都圏内、都内でございますので、異常な土地の価格の高騰によりまして、そこに生まれ育った人が結婚する、そこに住み続けたいと思うのですけれども現実には家賃が余りにも高くなってしまっている。他方、何とかして自分の家を持ちたいと思うのだけれども現実には余りにも家の価格が高過ぎる、したがって、将来の設計を考えた場合、もう家は持てない、ローンづけになるのは嫌だ。何とかして、安い住宅、質のよい住宅を探そうと思うのだけれども、自分が生まれ育ったところではそういうものを見つけることができない、したがって遠くに離れていかなければならない。こういうことが頻発しているわけです。こういう、要約すればある意味でもう家は持つことはできない、賃貸住宅に住み続ける以外にない、そういう若い青年層の方々がどんどんふえてきているという大きな問題がある。  例えば、総務庁統計局の住宅統計調査によりますと、「京浜大都市圏における借家率の割合」というのが、昭和五十三年度五〇%、全国平均では三九%ですが、昭和五十八年度四六%、昭和六十三年度、昭和五十三年度から十年たった時点でも四六%、ほとんど比率は動いていないわけです。そうしますと、持ち家の場合は、先ほど局長の方からお話ありましたとおり、ある意味税制の視点から優遇税制措置というのがとられているんじゃないのか。例えば住宅金融公庫の低利金利の融資だとか住宅取得促進税措置があります。しかし、現実は、約半分の世帯が家を持てず高い家賃を払っているという現実に対して、ある意味で公平を図るために、一定の所得水準の所得だとか、あるいはまた新婚、高齢者の転居などに対して、国による家賃控除制度の導入というのが今こそ考えられなければならないんじゃないのか、このように考える次第です。  この点については、一昨日の本会議においても質問させていただきましたけれども、改めて大蔵大臣にお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  66. 羽田孜

    羽田国務大臣 今、持ち家とそれから借り家ですか、これの比率についてお話があったわけでありますけれども、確かに、世代がかわるごとにうちを住みかえていくとか、あるいは居住の空間をさらに子供がふえたときには大きくするとか、また年をとったら小さくするというようなことがあるから、ただ持ち家だけがいいということじゃなくて、むしろ借り家をうまく使っていくということ、これもまた、やはり私ども考えなければならない問題であろうというふうに思っております。  今先生の御指摘は、持ち家の場合には特別な配慮がある、税制上も配慮があるじゃないか、家賃を払う場合にはどうもないんじゃないのかという御指摘でございまして、これは我々も、これからこの問題についても検討していかなければならぬ問題であろうと思っておりますけれども、ただ、非常に高い高級なものについてもやはり同等にこれは扱われるというようなことになったときに、税の公平が保てるのかなという点からもまたいろいろと考えてみなきゃいけないのかなということを申し上げざるを得ないということだけ申し上げておきます。
  67. 東祥三

    ○東(祥)委員 家賃控除制度に対して余り積極的になれないという最大の理由は一体何なんでしょうか。
  68. 濱本英輔

    濱本政府委員 従来から御議論のあるところでございまして、重ねての御答弁になるような部分もございますのでお許しを賜りたいと存じますが、まず私どもの認識としまして、基本的に家賃というのは食費それから衣服費と並びます典型的な生計費であるというふうに認識します。このような生計費についてまで個別に配慮するということになりますと、どこでその区切りをつけるかということが困難になりまして、結局人的控除というものをどうとらえていいか、税の根幹にかかわってくる問題がそこにあるというふうに思っておるわけでございます。諸外国でも家賃控除の例はございません。見当たりません。  それから、大臣も御指摘になっておられたのですけれども、高額な家賃を支払っている者がより高額なメリットを受ける、それに対してあるところで線を引けばいいじゃないかというお考えがあるかと思いますが、逆に税金が払えない、納税額のない低所得者層は、幾らどう対応しようと思ってもこの方策によっては恩典は及び得ないということがございます。  それから、基本的な問題としまして、東先生もそうでございますけれども、貸し家が供給される、より多く供給されるということがこの問題に対しましては必要であろうかと思うわけでございますけれども、この政策、家賃控除という政策によってそれが果たしてできるであろうか。これはいろいろな予見があろうかと思いますけれども、場合によりましては借家需要が刺激されまして結局家賃が値上がりするというおそれがございます。その点先ほどの住宅取得控除制度の場合には、家を建てるということがどうしてもその措置に伴いますから、供給サイドのファクターというものがそこに付随するわけでございますけれども、家賃控除の場合にはその関連が違ってくる。そういう意味では、むしろ積極的に貸し家を建てる制度、そのことによってこの問題に取り組むということが政策としては先ではないか、先に考えられるべきことではないかというふうにかねてより認識しまして、今回の措置におきましても、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、一番そういうものを必要としております三大都市圏の、しかも特定の優良な貸し家住宅につきまして、五年間七〇%という割り増し償却を認めたらどうかという措置改正法案に盛り込んでおるわけでございます。  そのほかに、先生のおっしゃっておられます問題に対処しまずに、今動きかけております政策としましては、これは歳出サイドの話でございますけれども、民間の賃貸住宅建てかえ促進の家賃対策補助というものが広がってきております。そういった政策の方が、政策目的に対してより近い距離にあるという認識を持っております。
  69. 東祥三

    ○東(祥)委員 今の御答弁は供給サイドから見た場合確かにそうなのかなと、そういうふうに思えるのですが、ただ家賃控除制度に積極的になれない一つの大きな理由は、家賃というものを生計費の一部というふうにとらえている、もう一つは、また諸外国においては家賃控除制度というものが導入されていない、基本的にはこの二点なんだろうというふうに思います。  この第一番目の点ですが、家賃というのは生計費の一部である、この考え方はそれで正しいと思われるのでしょうか。もし正しいと思われるならば、その根拠は一体何なのか。つまり、生計費の一部ということは、食費あるいは被服費と同様なものとしてとらえている、だから生計費の一部である、そういうお考えになられるのだろうと思いますが、現実に例えば首都圏において住んでいる、十年前の家賃、そしてまた十年後の家賃、こういうものをすべて調べた上で、そしてお考えになっているのかどうなのか、生計費の一部であると言われる根拠はどこにあるのか、そこをちょっとお示しいただきたいと思うのです。
  70. 濱本英輔

    濱本政府委員 あるいは私がお答え申し上げておりますことが先生のお尋ねいただいております趣旨とかみ合っていないのかもしれませんけれども、生活を営みますためにかかります諸掛かり、これを生計費と認識いたしますと、食う寝るところに住むところ、こう申しますが、やはり食べること、着ること、住むこと、これを生計費というふうに認識すること自体それほど私は抵抗がないのでございます。恐縮でございますけれども、意の足りませんところをもう一つお尋ねをいただけないかと存じます。
  71. 東祥三

    ○東(祥)委員 私の質問が不明確なのかもわかりませんが、私が言いたいのは、食費あるいは被服費と同様に家賃を生計費の一部だと考えられる、ただそのときに、全生計費に占める割合というものがそれぞれにおいて大きな変化をしているのではないのか。例えば十年前において食費、被服費と、そして住居費、その他というものが生計費の構成要素だとしますと、家賃という部分が生計費の中に招いて占める割合が突出してきているのではないのか。突出してきているものがあるとするならば、それはただ単に今までと同じような考え方でいていいのかどうなのか、これが私の質問の要点でございます。
  72. 濱本英輔

    濱本政府委員 失礼いたしました。生計費というのはわかったけれども、その中の構成比としまして、ある生計費が突出してくる状況が起こった、それに対して税制上対応することを考えるべきではないかというお尋ねかと理解いたしました。  これは、所得税というものを私どもが理解いたしますときに、所得を生じますためのコストというものは当然控除されるわけでございますけれども、その上において、基礎的にその生活を営むための一定の控除額というものがどの国においても想定されます。そういう基礎的な控除という概念、これはとらえ方はなかなか難しいとは思いますけれども、その中に一般的な基礎的な生計に対応する部分というものが込められているという説明がよくなされております。そういう構造で走っていくわけでございますけれども、その上で少々その所得を費消します場合の使途としまして、例えば終戦直後のような状況であれば、これは当然食費にウエートがかかったと思います、エンゲル係数が非常に高かった時代がございました。そういう場合に、その非常に突出した項目に対して何らか所得税制上の対応をすべきかという議論というのが、今私の手元に残っておるものでは余り見受けられません。  つまり、所得税全体のレベルをどうするかという議論はございました。基礎控除をどうするかという議論もございました。そういうものの中で考えられたということはあろうかと思いますけれども一つ一つの生計の費目ごとに、この費目が突出するのでそれに対して何らかの税制上の特別な手当てを工夫すべきだという議論は、私の理解がそういうことでよろしければ、今までの所得税の議論に余りなじんでいないというふうに思っております。
  73. 東祥三

    ○東(祥)委員 これからはどうですか。
  74. 濱本英輔

    濱本政府委員 例えば昨日の本委員会の論議にもございましたけれども、教育費が非常にかかる、教育費がかかる層があるという御議論がかつてございました。そういうことに対応いたしまして、教育費控除というものを考えられないかということを仰せいただいた記憶もございます。それも議論全体としましては、今のように生活の諸掛かりというものの中でどれをどのような形でつかまえていくかという議論になりまして、個別にそういう費目ごとで取り上げるのではなくて、何か別の一般的な対応で乗り越えるべきだという結論に達したと思います。そういう考え方は今も変わっておりませんで、今の時点におきまして今後を見渡しまずに、所得税の仕組みというものをそういう意味で変える余地というのは私は非常に少ないと思います。
  75. 東祥三

    ○東(祥)委員 先ほど御指摘になりましたファミリー向け優良賃貸住宅建設促進、つまり供給面の方から今直面している住宅問題に関して基本的に解決策の方向を見出していこうとする、それは極めてよいことなんだろうと私は思います、中長期的に見た場合。今私が論じているのは、現実に今起こっている問題である。それが年々深刻化してきている。そこで、私の一番初めの質問に戻りますけれども生活大国、この具体的なイメージの第一番目として住宅環境の諸整備ということを総理大臣は言われているわけです。五〇%ぐらいの人々が賃貸住宅に住んでいる。しかし、現実にそこに住み続けることが、家賃価格が高いがゆえにそこに入れないという状況が起こってきている。そういう視点から考えた場合、家賃控除制度というものを何とかしていろいろな方法を探りながら導入していくべきなのではないのか。ところが局長は、これは今までやったこともない、また今日までの税制論議においては基本的になじまないということなわけですけれども、この点に関してどうも私はまだまだ納得できないわけでございますが、どうぞ大蔵大臣、いかがお考えでしょうか。
  76. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど局長からもお話ししましたとおり、今また御指摘がございましたとおり、確かに住宅というものが一つの大きな課題になっておることも事実であろうと思っております。  実は、私は個人的によく議論したときにも話しておったのですけれども、新聞の記者さんなんかともよく話しているのですけれども、今の時代で一番問題は何か。やはりサラリーマンにとって住宅じゃないのか。どうも何十平米というところに子供が二人、三人というのでは、これはゆとりとか豊かさなんというものはないだろう。そのためには、できるだけ住みやすい環境というものを、そして面的な空間というものをもう少し提供することが必要なんだろう。その意味では、政策として今一番大きなものは、高齢化の問題とあわせて一番大きな政策、特に若い人たちに対する政策というのは、住宅の提供、しかも広く安いものだろう。この安いものといったときに一体どういうふうに考えるのかという議論をしたわけでありますけれども、税でやるということが果たして本当にいいのかということ、むしろ企業によって住宅に対してある程度助成をするとか、そういうやり方なんかもしておるというのが現実にあるわけでございます。ですから、そういうあたりもいろいろなところから考えなければならぬ問題であって、いずれにしましても、私たちも勉強はしてみるということだけは申し上げたいと思いますけれども、どういうやり方があるのかということについて、私どもは税だけじゃなくて幅広いところも持っておりますから、いろいろな角度から勉強してみたいと思っております。
  77. 東祥三

    ○東(祥)委員 今大臣の前向きな御答弁があったのですけれども、ただ具体的に即それを実施させるのはなかなか難しい面が多々ある。例えば国際比較によりますと、一人当たりの床面積に対してのデータが建設省住宅局から出ておりますけれども、例えばアメリカ六十一・八平米、イギリスでは三十五・二平米、フランスでは三十・七平米、旧西ドイツでは三十七・二平米、日本は何と二十五平米です。四人家族であると百平方メートル。ただ、これは全国平均ですから、百平方メートルの家に住んでいる人がもしいるとすれば、都内においては大きいところに住んでおる、こういう状況でございます。  そういう視点から考えますと、ファミリー向けの優良賃貸住宅促進、供給面からどんどんやっていただきたい。しかし、他方においては私は、繰り返すようですけれども、元凶は多分土地価格にあるのだろうと思うのですが、これだけ家賃が高騰してきている、しかしその実際のデータというのも各地域ごとにはどうもないみたいでございます。どうもアバウトで議論をしているというそしりを免れないものがあるわけですが、東京都内に住んでいる一人としては、周りにそういう人々がたくさんいるという視点から今お話をさせていただいているわけですが、実際のところ家賃価格はめちゃくちゃに高い。そして、それによって家計を極めて圧迫してきている。ある人間は可処分所得の三〇%ぐらい家賃につき込まなければならない、こういう人たちもいらっしゃいます。私の周りにいる人では二〇%以上の人たちが大半でございます。  そういう視点から考えますと、家賃を食費や被服費と同様生計費の一部というふうにお考えになっているのはそれはそれでいいのですけれども、現実には昭和六十三年度の税制改正以来基礎控除の部分というのは全然変わってないわけです。そういった意味からしますと、その間家賃はずっと上がり続けているという状況を踏まえますと、家賃控除あるいは税制になじまないとするならば家賃補助あるいは手当という形で政策的な形でこれは何とかして取り組んでいただかなければならない問題じゃないのか、このように思うのですが、もう一度大蔵大臣、お願いいたします。
  78. 濱本英輔

    濱本政府委員 重ねてのお尋ねでございますが、今のお話の中にございましたように、この問題の基本にはやはり土地の問題があると思います。土地問題に対する対応が進み、少しずつ地価はいい形になりつつあるという気がいたします。そういう意味で、東先生が御指摘になっていらっしゃる問題に向けての私ども努力というものは静かに少しずつ前進しているような気がいたすわけでございます。  先ほどから私御答弁を申し上げておりまして思いますのは、先生がおっしゃっていることに対しまして、つまり家賃が大変な負担になっておる、貸し家の供給ということも含めまして住宅の供給というのが非常に大きな問題になっているんだぞということを言っていただいておりますのに対しまして、私のお答えは何となくそれに刃向かうような感じのお答えになっているようについ自分で思えたのでございますが、それは全くそういうことではなくて、住宅の必要性ということを私どもが十分認識しているんだということを申し上げなければならないというふうに思いました。  その場合に、所得税、特に先生のおっしゃいます家賃控除という手段というものがその問題を解決するのに一番望ましい方法であろうかということになりますと、それにはいろいろ大きな副作用が伴いますということを申し上げておるわけでございまして、その副作用が大き過ぎるという気がするわけでございます。  ただ、今のお話の中にございました、所得税全体としておまえは考えているのならば、その所得税全体としてもこのところだんだん勤労者の家庭にとっては税金の圧迫といいますか、インパクトが大きくなってきているのではないかという御指摘かと思いますけれども、これにつきましては、昨日もたびたび御議論ございましたように、先年の大きな抜本改革というものが非常に大きな所得税減税を可能にしてくれた、その効果というものに今まだすがっておるという状況だと思いますし、その効果というものはお示しできる状態にあるという気がいたします。そういう中で何とか地価が安定し、それから先ほど申し上げましたような貸し家政策あるいは歳出面からのいろいろな対応、そういうものが全体として組み合わさりまして、住宅の問題につきまして先行き何か明るいめどというものが見えてくることを我々も熱心に考えていきたい、そのことを申させていただきたいと存じます。
  79. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございます。大蔵大臣も言われましたとおり、今まさに直面している大きな問題は、高齢化社会に対してどのように取り組んでいくのか、他方今我々が住んでいるこの住環境をどのように整備するのか、とりわけ住宅問題に対して積極的に果敢に取り組んでいただきたい、このように思います。  次に移りますが、これも生活大国税制との関連という視点の一つの例として、パート減税に関して質問させていただきます。  私がここで言っているパート減税というのは、次の意味で申し上げております。現在、給与所得控除六十五万円と基礎控除三十五万円とを合わせた百万円の非課税限度額が主としてパート労働者層に減税化効果を及ぼすことから、所得税減税の中でも特に非課税限度額の引き上げを指して一般的にパート減税というふうに使っております。私が言うパート減税というのはこの意味で使っておりますので、まず初めによろしくお願いいたします。  まず第一に、現在主婦を中心とするパートタイマーがこの十年間でほぼ倍憎いたしております。一方、パート労働者を必要とする状況は求人四に対して求職一、需給は極めて逼迫している、それが現状でございます。今後またパートタイマーというのが増加傾向にあり、また企業にとっても不可欠なものになっている状況です。労働省の基本的な労働政策としては、正社員とパートの併存を志向されているようでございます。労働力の安定的供給といった点からも、パート労働について国が働きやすい環境をつくるための後押しをする必要があるのではないのか、まずこの点について大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  80. 羽田孜

    羽田国務大臣 パート減税についてはいろいろな議論が実はあったわけでございますけれども、御案内のとおり、いわゆるパート問題ということで、パートでお勤めの方が一定の限度以上の所得を得たときに御主人とのあれが、所得がマイナスになってしまうといういわゆるパート問題というのがあったと思いますけれども、これはもう既に解消されたということが言えるのじゃなかろうかと思っております。  ただ、私どもといたしまして、いわゆる非課税限度額ですとかあるいはパートの皆さん方に対する特別控除の問題ですとか、こういったものを進めることによりまして、今では奥さんが働いていない家庭が三百十九万円というものに対して三百六十四万二千円というところまでいっておるということでありまして、私どもとしては税制面では最大限の配慮をしたのかなというふうに思っております。そして、百万円を超えるような収入を得ている方ということになりますと、パートの方としても税をやはり納めていただくということについて、独立した相応の負担をしていただくということが必要なのじゃないのかなというふうに考えておるところでございます。
  81. 東祥三

    ○東(祥)委員 大蔵大臣は頭の回転が物すごく早いので先にいってくれてしまっているのですが、一つ一つ進んでいきたいと思います。  まず、私が質問させていただいたのは、パート労働者を必要とする状況というのは求人四に対して求職一、そういう状況である、今後もパートタイマー増加傾向にある、これが現状認識でございます。この視点から考えますと、労働力の安定的供給といった点から、パート労働について国が働きやすい環境をバックアップする必要があるのではないのか、この点について大蔵大臣のまず御見解を伺いたい、このように質問させていただきました。
  82. 羽田孜

    羽田国務大臣 この問題は、税の問題というよりは労働政策上どうしていくのかというような幅広い観点から考えていかなければならない問題なのかなと率直に思います。
  83. 東祥三

    ○東(祥)委員 次のような調査があります。パート労働者のうち三人に一人がどうも百万円を一つの目安として就労調整をされている。大臣の答弁の中にも御指摘がありましたけれども、パート労働者にとって非課税限度額が仕事をする場合の一つの目安になってしまっている。昨年九月に実施された労働省の調査でも、女子パートタイマーの三人に一人が年収百万円を超えないように就労を調整してしまっている、こういう現実が一方においてあります。もう一方においては、雇用者側というのは実はパート労働者の非課税限度額の引き上げに積極的です。雇用者はパート労働者の給与を上げたいのですけれども、給与を上げると非課税限度額との兼ね合いでパート労働者が就労調整を行ってしまいますので、逆に給与を上げてしまうと労働時間を減らしてしまうという矛盾に遭遇しております。経済団体なども非課税限度額の引き上げを要請しておりますけれども、そういう視点から考えますと、非課税限度額、現在においては百万円でございますが、この百万円がパート就労の阻害要因になっているのではないかと私は思うのですが、この点については大蔵大臣、いかがですか。
  84. 濱本英輔

    濱本政府委員 きのうもたしか民社党の中井先生でいらっしゃいましたか、同じようなお尋ねをいただきました。かつて長いこと少しずつレベルは動いておりましたけれども、ある給与レベルまでまいりますと、それを超えた賃金をパートの方が手にされた途端に、世帯全体としては御主人の方の控除がきかなくなりまして減ってしまうという逆転問題、これはくどいようでございますけれども、この問題の所在が浸透いたしておりまして、何かにつけある一定額以上の収入を得る場合にはそこで勤めをやめてしまうということが言われ、そういったパートの主婦の方々の間で言われてきたということを聞いております。  それに対しまして、何度も国会での御議論をいただきました上で特別控除制度というものを導入していただいた。その上は、あるレベル以上働いたときにそれによって実際に世帯に実損をこうむるという状態は少なくとも解消しておりまして、働けば働くほどたくさん手取りは残るはずでございます。  ところが、実際問題としまして今起こっております問題は、家族手当を支給する勤め先あるいは健康保険の適用基準、そういったものにつきましても一種の所得限度がございまして、それを超えますと、例えば家族手当の支給を受けられなくなるといたしますと、世帯収入としては実損をこうむるケースというのはあり得るのかもしれません。そういったことが何となく今も言われておりまして、それは税のせいであるというふうにも聞こえてくるわけでございますけれども、少なくとも逆転現象が生ずるということについて言っておられるとしましたら、それは税のせいではなく、税では手の届かない問題になっているという面があるように思うわけでございます。  しかし、きのうの御議論、中井先生からの御指摘は、もしそうだとすればそのことをみんなにわかってもらわなければいかぬじゃないか、それについての誤解があるのではないか、あるいは私が申し上げている以外にもっと別の事実があるのかもしれません。この問題につきましては、きのうもいい御提案をいただいたというふうに申させていただいたのでございますけれども、先ほど大臣からの御答弁にもございましたように、一大蔵省の問題ということではなくて、労働政策の責任を持っておられます労働省とよく話をいたしまして、そういったことを広くわかっていただくように努力したいと思っております。労働省にもそういう認識がおありになることは確認できておりますので、そういう意味でもし誤解があるとすればまずそれを解きたいというのが、私まず申し上げておきたいことでございます。
  85. 東祥三

    ○東(祥)委員 おっしゃるとおり、税制改正あるいは改善によってこの問題がそれのみで解決できるとは私は思っておりません。労働政策全般にわたる種々の角度から論じていかなければならないのだろうというふうに私も思っております。  ただ、今ここで論じているのは、あくまでも税制という角度から、もしパート労働というものを国として、つまり大蔵省として、大蔵大臣としてバックアップしていこうとするならば、一つのネックとしてこういう問題がありますよということを私は明示させていただいているわけです。特に、パート労働の就労調整というそういうかかわり合いで、一つは現在の非課税限度額が百万円であるということで大きなネックになっているのじゃないのか。局長が今言われた点というのは、まさにパート収入が百万円を超えてしまうとその家計全体にインパクトを与える。  それは基本的には三つあるのだろうというふうに私も理解しております。一つは、年収百万円を超えて働けば妻本人に対しても課税がかかる、これが第一点。第二番目としては、夫の会社から支給される家族手当、配偶者手当が、妻の収入が非、課税限度額百万円を超えるとなくなる会社が多いわけです。そして第三番目としては、健康保険料が妻の自己負担となる。この点については後でまた申し上げますが、健康保険料が妻の自己負担となる額というのは妻の収入が百二十万円を超えた場合です。この三つのものを通じて、非課税限度額百万円を超えると家庭に対してインパクトを与えてしまう。したがって私の推論は、就労調整のネックがまさに非課税限度額百万円、ここにあるんではないのかというふうに申し上げているのです。これに対してどうですか。
  86. 濱本英輔

    濱本政府委員 ただいまの御意見、よくわかりましたのですが、東先生おっしゃいますように三つある。一つは非課税限度、もう一つは健康保険上の要件、もう一つは家族手当支給上の要件。その三つのものが、例えば今のお話を伺っておりまして思いますのは、税制上の非課税限度がすべての基準を支配している、つまり税制上の基準が変わらなければあとの二つの基準は変えられない、したがってそのインパクトの根源は税制にありというふうにお示しをいただいているのかなというふうに伺ったのでございますが、実はそれは三つは三つそれぞれ独立の制度でございまして、別に税制があとめ二つの基準を支配しなければならない必然性というのはないわけでございます。現に、ただいまのお話にもございましたように、健康保険法の被扶養者の限度というのは百二十万円になっております。それから国家公務員の場合でございますが、公務員の共済組合法上の被扶養者あるいは給与法上の扶養家族の、扶養親族の所得限度というのはそれぞれ百二十万円にこの平成四年度からは改められるということになります。したがって、その三つのものは常に同じように、同じ歩調で歩いていくということでなくて、ばらばらでいいと思います。  それに対しまして、またちょっと先に進んでしまうのかもしれませんけれども、それだったら税制上の、所得税法上の限度も一歩前進させたらどうだというお話であるとしましたら、これはまた別のお答えを申し上げなければならないと思います。
  87. 東祥三

    ○東(祥)委員 ちょっと視点を変えます。  給与所得者にとって名目賃金が上昇する、そして所得が伸びても課税最低限というものが引き上げられないとすると、物価上昇分だけ実質的な増税になるんではないのか。平成元年に給与所得の最低控除率の引き上げが行われました。その後平成一年から三年までの物価上昇率九・三%分というのは基本的に実質の増税になるんではないのか、このように私は思っているのですが、この点については私の理解はいかがなものでしょうか。
  88. 濱本英輔

    濱本政府委員 仰せのとおり、賃金が上昇しまして名目的な手取りがふえるにいたしましても、物価が上昇しますとその分だけ減殺されるわけでございますから、残った手取りの所得というものにかかる税金というものが負担率としてどのようになっていくかということは、確かに先生の御指摘のとおりこういった問題を考えるときに気になる点でございますけれども、それは、平成元年、二年と近年一年ごとにそれぞれ賃金は上昇しておりますし、その傍らで物価も上がっておりますから、その数字を当てはめて計算してみましたときに、平成元年に比べて平成四年の方が賃金は上がっている、物価が上がるからその分は減殺されるけれども手取りは上がっている、しかし税負担も累進構造ですから上がる、最終的に税引き後の手取りがどうなるかというと、それは手取り額としましては恐らく上がっているだろうと思います。ただしかし、その賃金に対します税負担の比率ということで見ていただく必要があると思います。  その場合に何と比べるかということでございますけれども、さっきもちょっとお話がございましたように、抜本改革前の数字、抜本改革前の負担率というもので見ていただくということかと思いますが、例えば収入五百万円のサラリーマンの階層で標準的なケースで計算してみますと、抜本改革前の負担率というのは所得税、住民税合わせて七・九%、約八%弱の負担率であったと思います。それが、その同じ階層がその後平成元年、平成二年、三年、四年と参りまして、賃金は上がる、その間物価が上昇しますからその分だけは実質的な所得は減殺されますけれども、それに合わせて所得税を払う、その払った税金に対して可処分所得の額でそれを割った負担率としては約五%強、五・数%というふうに推計されます。したがいまして、負担率としましては同じ階層が平成元年以前に負っていた負担率に対してこの大きな改正効果というのはまだ生きていて、負担率としてはより低くなっているということが確認できるのじゃないかと思います。ほかの所得階層について計算いたしましても恐らく大体そういう感じになっているのじゃないかと思います。
  89. 東祥三

    ○東(祥)委員 税負担率という、そういう側面から過去と比べればいわばいい方向に向かっているという御指摘はそれなりに理解できるわけですが、問題は、サラリーマンの経費というのは他の経費と違って実額控除ではなく概算的な控除のため、勤務にかかわっている費用の物価上昇分を給与所得控除へ転嫁することが困難であるという事実があります。平成元年の控除額引き上げ以後の税負担がふえた分についてどうしても軽減する必要があるんではないのか。さらにまた、住民税の所得割、均等割の非課税限度額と生活扶助額、そしてまた生活保護基準額というものは、何というんですか、並行しておりますので、毎年三%程度というのを引き上げているわけです。こういった視点から考えますと、国税においても一〇%程度の引き上げというのは当然なんじゃないのか、これが私の視点なんですけれども、この点についていかがですか。
  90. 濱本英輔

    濱本政府委員 今のお話は、例えば課税最低限が年々の物価上昇率にスライドして上がっていけば年々の物価の動きに対して税が中立的であられる、そういうことを制度的に担保すべきではないかというお話かと思いますが、これは例のインデクセーションの議論だと思います。  これは、要するに税制というものを自動的に物価の動きに変動させていくような仕掛けをつくるということになるわけでございますが、これについて従来から言われております議論というのは、所得を計算いたしますときはいろいろなファクターがございます。そういうファクター全体について、あるいは税のほかの万般の仕組み全体について、本当はインデクセーションをもし導入するとすれば体系的に導入されないと、ある部分だけは物価に比例すもけれども他の部分は物価に比例しないということであれば、所得計算というものは非常に不完全なものになるというわけでございます。  そんな難しい話になりませんでも、例えば従量税で課税をしておる税目というのが幾つかございますけれども、物価が上がれば負担率は同じように上がっていかなければいけない。それじゃすべての従量税についてインデクセーションを導入すべきかというような議論が非常にシンプルな議論としてはあり得ると思います。これにつきましては賛否両論あろうかと思いますけれども、これまで政府の税制調査会などで御議論をいただきますと出てまいりますのは、それをやると物価というものが社会生活の中に組み込まれてしまう、そうなったときにどういうことが起こるかということに対して問題を投げかけておられますし、結局、そうかといって、それでは所得税の減税を逡巡するということを言わんとしているわけじゃなくて、やはり長い時の流れの中で適正なタイミングで所得税の減税を図ることが必要である、そのタイミングの選び方が大事なわけであって、自動的に毎年軽減されていくという装置がベストではないという今までの御議論になっております。
  91. 東祥三

    ○東(祥)委員 議論が非常に難しくなってきてしまいましたので、もう一度簡略した形に戻したいと思うのですが、前回の改正以降、三年間で平均給与というのは一四・二%伸びております。しかし、消費税分あるいは地価、家賃の高騰などを考えると、手取りの伸びというものは極めてわずかになっている。給与の伸びに比べて非課税限度額が引き上げられていないため、一番最初に申し上げましたとおり、実質的な増税感をサラリーマンの方々が持っている。現在パートの平均年収というのは、昨年の九月の労働省調査では百二十一万円というふうに出ております。こういった意味で、これに見合った非課税限度額の設定が当然なのではないのか。サラリーマン、中低所得者に対して今日まで重税感を味わわせたままではないのか。したがって、現在の百万円の非課税限度額を少なくとも百二十万円ぐらいまで上げたらどうなのか、この点についていかがですか。
  92. 濱本英輔

    濱本政府委員 再び話題をパートに戻していただいたわけでございますけれども、先ほどの議論の続きになりますが、健康保険あるいは家族手当の所得限度額を動かすということとあわせて、税制についてもその限度額を動かしてはどうかということを述べておられるのかと存じますけれども、なぜ今の百万円というのが一つの区切りである、限度であるということを申し上げているか。これは細かく申し上げますと今の給与所得体系の説明を申し上げなければならないのでありますけれども、それは必要があれば申し上げますが、そのことをちょっとおきまして一つだけ申し上げてみたいことは、結局、何ゆえパート世帯の負担だけを軽減するのかということでございます。つまり、国民が必要としております歳出需要というものが変わらないといたしますと、パート世帯の負担が変わりました分は単身世帯、片働きの世帯、フルタイムの共働きの世帯が負担するということになります。ところが、今現在においてすら、パート世帯、フルタイムの共働き世帯あるいは片働き世帯を比較してみますと、パート世帯の処遇というものがより有利になっているのではないかというふうに感ぜられます。  例えば、具体的な数字で一つだけ申し上げてみますと、パート世帯の標準世帯でございますと、非課税限度額を今の百万円で計算いたしまして御主人と合わせて三百六十四万二千円までは税金がかかりませんが、片働きで見ますと三百十九万八千円で税金がかかります。それをさらにパート世帯を優遇していく。これは今片働き世帯と比較した数字でございますけれども、共働きの世帯と比較いたしました場合でも、フルタイムの共働き世帯の方が有利になっていないという気がいたします。つまり、私どもは公平の問題としてこの問題をどうお考えになるか、そこを一度お考えいただきたいという気がするわけでございます。
  93. 東祥三

    ○東(祥)委員 もう時間も三分しかありませんので、今は主として主婦のパート労働を念頭にした質問を行いましたけれども、この非課税限度額の引き上げの問題というのは、実はパート労働だけにとどまっていないわけです。特に、まさに大臣が一番初めに言われたとおり、高齢社会に向かってどうするのか。そういう面においては労働政策の問題もあります。高齢の労働者の確保の問題もあります。定年後の高齢者のパート労働の場合というのは、この主婦のパート労働よりも一層事態は深刻になっているのではないですか。さらにまた、内職などの家内労働者をやられている方々も実際はパート労働に準じた扱いになっているのではありませんか。したがって、今局長がおっしゃるとおり、なぜパート労働だけなのかということではなくて、このパート労働に絡む非課税限度額の引き上げというものは、こういう人々にかかわり合いを持っているがゆえに私は主張させていただいているわけです。  こういう視点に立ちまして、もう時間がありませんので、大蔵大臣、最後に決意発表をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  94. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かにこれはパートというだけではなくて、ほかの皆さんのこと、あるいは高齢者の皆さん方の働く場合の問題等も含んでということでありますけれども、いずれにいたしましても、我が国の場合には非課税の最低限というのは非常に高いところに設定されておる、先進国の中で最も高いところにあるということを考えましたときに、さあそれを引き上げていくことが果たして本当に税の公平になるのかなということを改めて考えざるを得ないということであります。お答えになったか、あれでございますけれども
  95. 東祥三

    ○東(祥)委員 極めて残念な答えで、消極的な答えで残念でございますが、また時を改めてやらさせていただきたいと思います。百二十万円ではなくて本来百五十万円ですので。どうも本日はありがとうございました。
  96. 太田誠一

    太田委員長 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  97. 太田誠一

    太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。富塚三夫君。
  98. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、まず最初に日本銀行の金融政策の問題についてお尋ねいたしたいと思うのですが、バブルの発生そして崩壊、政府と日本銀行のその対策、何が問題で責任の所在は一体どういうことなのかということについて、まずお尋ねをいたしたいと思います。  御案内のように、バブルの発生によって持てる者と持たざる者との間に大きな資産格差ができたことは周知のとおりであります。また、この段階に来てバブルの崩壊に伴う不況によって、バブルによって痛手をこうむった弱い人が再びつらい目に遭う状況になっていると思います。バブルの発生の根源が紛れもなく日本銀行の金融政策の失敗にあったのではないかというのが衆目の一致するところですが、今回の不況もまた、景気のソフトランディングに失敗したという点で日本銀行の金融政策の失敗と見られているのですが、この点について、日銀にきのう頼んでおったのですけれども、いなければ大蔵大臣、お願いします。どのように考えられているか。
  99. 日高壮平

    ○日高政府委員 まことに申しわけございません、日銀当局来ておりませんので、かわりに答弁させていただきます。  御指摘のように、昭和六十年九月のプラザ合意以降急速に円高が進んだということで、いわゆる内外挙げて円高不況に対応するために適切な財政金融政策をとるべきではないかという御議論があったことは先生も御指摘のとおりでございますが、その過程におきまして、いわゆる土地とかあるいは株式等資産価格の上昇がいろいろな形で起こってきた、そういうことは否めないだろうと思っております。特に、財政金融政策を円高不況対策のためにとりましたけれども、その過程におきまして、当然のことながら金融緩和ということが行われ、それに応じて潤沢な資金供給がいわゆる土地取引、株式取引に回っていった。その中で、今から思えば投機的な動きが非常に大きく行われたということは極めて残念なことであろうと思っておりますけれども、私どもとしても、今回そういうことがないように十分気をつけていかなければいけないだろうと考えておるわけでございます。
  100. 富塚三夫

    ○富塚委員 バブルのぜい肉を切り落とすつもりが骨まで切ってしまったんじゃないか、そういう意見が非常に最近多いように思います。  つまり、一九八五年九月のプラザ合意で、政府は日本の膨大な貿易黒字を減らすために円高誘導するとともに、あわせて積極的な内需拡大政策をとってきました。また、日本銀行は思い切った低金利政策とマネーサプライの増加政策をとってきたことも事実です。このとき公定歩合を二・五%まで引き下げた超金融緩和政策自体は、日本が貿易黒字をため込み過ぎて世界の孤児になることを回避するためにも、また内需振興によって国民生活向上という目的のためにも必要な政策であったことは間違いないと思います。しかし、この超金融緩和政策をいつまでもとり続けたことがバブル経済の根源となったと思います。すなわち金融緩和政策の転換のタイミングのおくれがバブル経済を引き起こし、異常な土地高、株高を招いた原因と見られているのではないかと思います。当初の金融政策の意図は正しかったが、政策転換のタイミングが少なくとも一年か一年半おくれたんじゃないかというふうに見られているのですが、どうでしょうか。
  101. 日高壮平

    ○日高政府委員 先ほども申し上げましたように、超金融緩和の状況のもとで、土地なり株式なりに対する投機的な取引が非常に行われたのは極めて遺憾であろうと思います。そういうものがいわゆるバブルと言われたゆえんであったろうとは思いますけれども、今御指摘になりましたその金融緩和の状況がおくれたのではないかという御指摘については、私ども正直申し上げれば、今から振り返ればそういう面で若干おくれがあったのかもしれないという点は、私どもも全く否定できないということではございますけれども、あの当時におきましては、円高不況が完全に克服されるために必要だったのではないかというふうに思っているわけでございます。  したがいまして、私どもとしてはこれから、今回もいろいろな御議論がございますけれども、二度とああいうことのないように適時適切な金融政策というものを志向していかなければならないだろうというふうに思っているわけでございます。
  102. 富塚三夫

    ○富塚委員 これは、日銀の責任者で、当時副総裁として次の総裁候補として目されていた、実質的な政策責任者であった三重野総裁の責任が私は非常に重大なんじゃないか、こう思っている一人です。どうですか大蔵大臣、感想。当時の責任者じゃなかったんですけれども
  103. 羽田孜

    羽田国務大臣 私ども、当時外から見る立場にあったわけでありますけれども、今審議官の方からお答えを申し上げておりましたように、確かにプラザ合意の後、円が相当高くなってしまうということに対する恐怖感といいますか、そして実際にそういったものも相当影響があったということは事実だろうと思っております。  そういう中でとられたものについて、先生は今別に否定するものじゃないというお考えで、むしろその切りかえがまずかったのじゃないのかということだろうと思っております。ただ、私ども考えますときに、この何というのですか、あのときの、結果として土地が相当高騰してしまったということ、あるいは株式が上がったということは、結果として低金利政策というものが相当影響したということも事実であろうと思います。ただ、それだけでなくて、当時はやはり経済活動もだんだん活発になってきておったということ、それから日本の社会経済というものは相当有望なものであるということを国際的にも認められたということで、ここにいろいろな企業が日本に上陸してきたということは、例えばIBMですとかその他のところが上陸してくる。これに伴って多少過度な見積もりをしたのじゃないかと思うのですけれども、いろいろな地上げと言われるような人たちが相当ばっこしたというようなこと、これがまたあおった。もちろん、この資金というものが低利であったということはやはりあったと思うのですけれども、そういう需要というものがあったというようなことで、なかなかそのあたりのあれがただ金融政策にあったのかということになると、これは私たちだれの責任をということはなかなか難しいなというふうに思っております。それだけに、今審議官からもお話がありましたように、今後のこういった問題に対する対応というものはやはり冷静に沈着に判断すると同時に、適切な判断、そして機動的に動かす、下げるときは下げるけれども上げるときは上げていくという機動的なものも要求されるのかなということ、特に今景気が減速が広がっておるという判断の中で、さあ今度もし何か措置をするとしたときに、インフレというものをまた呼び起こすのじゃなかろうかとか、あるいはまたバブルをつくり出してしまうのじゃないのか、こういった点は十分やはり考えながら対応していかなければいけないだろうというふうに思っております。
  104. 富塚三夫

    ○富塚委員 今度は超金利引き締め政策を二年二カ月もとり続けてきた。戦後最も長い期間じゃないかと見られているわけですが、これが現在の不況を招いた大きな原因になっているのじゃないか。すなわち、八九年九月以降九〇年八月まで、遅きに失したとはいえ公定歩合は二・五%から六%まで五次にわたって引き上げられました。この金融引き締め政策は、異常な土地高、株高を是正するため、すなわちバブルつぶし、またインフレ防止のために必要な政策であったとも思います。しかし、金融引き締め政策も、九一年七月に公定歩合が五・五%に引き下げられるまで二年二カ月の戦後最も長い期間、この超金利引き締め政策が今日の不況を招いた。またタイミングを全く失ってしまっているんじゃないか、こう見られているわけですけれども、バブルのぜい肉を落とそうと思って結局骨まで切ってしまうんじゃないかという見方が、ちまたに非常にそういう声があるのですが、この責任はだれがとるのか、日本銀行は一体どう考えているのかということの問題について、この不況を招いた大きな原因になっている引き締め政策の問題についてどうお考えでしょうか。
  105. 羽田孜

    羽田国務大臣 現在の状況が不況という言い方が果たしていいのかというところにまた一つあれがあると思うのですけれども、私どもといたしましては、現在の状況というのはまだ有効求人倍率なんかも高いという状況にありますし、あるいは物価も割合と安定しておるということがあります。そういう中で、個人の確かにぜいたくな需要というものは減ってきておりますけれども、しかし日用雑貨ですとかそういったものを中心にしながら、消費というのはまだ堅調であろうというふうに思っておりますし、それから住宅なんかも、確かにマンションなんかがなかなか売れていないということがあるようですけれども、良質なものについては多少高くてもこのごろ売れ出してきておるということですとか、あるいは持ち家ですとかあるいは貸し家ですとか、こういったものの建築着工の申請等を見ておりましても、少し上向きになってきておるというような状況があるところでございまして、私どもはそういった面からいくと、まだ不況というよりは減速が広がっているなという認識にあるということだろうと思っております。  それから、ここのところ三次にわたりまして、昨年公定歩合を引き下げてきたということ、あるいは十二月三十日なんというあの日にやったということも、割合と業況というものを見ながら機動的にやっておるということで、ある程度評価されてもいいのじゃないかなという思いが実はあります。  それから、公定歩合が三・五%のときでしたか、そのころに比べても、長短期のプライムレート等については割合と今低いところに誘導されておるというようなことでございまして、いろいろな人たちの話を聞きますと、今このぐらいだったら設備投資等進めることについては企業としても耐えられるのじゃないのかということなんかも言われておるということがございまして、景気がどうなのかという判断と、もう一つは今の貸出金利というものは一体どういう状況にあるのかということを判断したときに、今責任を問うというようなあれじゃないというふうに私は実は理解しておることを申し上げます。
  106. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、金融政策の転換のタイミングという問題について、日本銀行または政府がどう判断するかという問題は国民経済にとって非常に大事な問題である。きょうの、またきのうの発表によりますと、日銀総裁の会見は、景気の調整局面はしばらく続くと言って、公定歩合を下げる考えはない。一方、通産省は、景気の後退は一段と強く出ている、こういう問題が出ているわけですね。三重野総裁は、昨年十二月三十日に公定歩合四・五%に引き下げた後は、景気は底がたいとか、あるいはせいぜい景気は調整過程にあるとか、公定歩合の引き下げの効果を見守っているとか、相変わらず楽観論を言っていて、依然としてその姿勢が変わってない。ところが、通産省やあるいは経済の実態を見ると、民間のエコノミストの皆さんたちも早く公定歩合を下げていかなければいけないということを盛んに力説されているわけです。  まさにこの景気の現状をどう見るかということの問題ですけれども、NHKや日経新聞の企業アンケートなどでも見る限り、景気をソフトランディングさせることは完全に失敗したんじゃないか、こう見られているわけです。このことによって、一般の庶民が泣かされる、あるいは企業が泣かされるといったのではたまったものじゃないということなんですけれども、もっと積極的に民間エコノミストの意見を謙虚に聞くなり、あるいは政府とじっくりと相談をして早目早目に金融政策の転換を考えていくというふうなぐあいにできないのでしょうか。その点が民間のエコノミストの皆さんたちなどの考えと全く違っておって、何か裸の王様みたいに一人で頑張っている三重野さんみたいに見受けられるのですが、どうなんでしょう。
  107. 羽田孜

    羽田国務大臣 業況の判断というのは本当に大変これは難しいのだと思うのですけれども、民間のいろいろな、私も新聞切り抜いたり、あるいは雑誌、ダイジェストとかいろいろなものを見ておりますけれども、やはりこの判断に二通りあるようですね。確かに不動産ですとか、あるいは不動産が動かないということなんかあって建設なんかの関係でやはり厳しいということがありましょうし、あるいは自動車につきましても輸出もなかなか厳しくあるようでありますけれども、しかし国内で一時物すごい、過熱的と言われるくらいの売れ行きというものがあった。それがここのところ落ち込んでいる。しかし、数年前に比べると決して低いところにないということなんですけれども、しかし相当高い生産体制を組んでしまっておりますから、どうしても部品ですとかそういったものが在庫に積み重なっておるということを考えますと、やはり鉱工業生産なんかにも影響を与えておるということは言えると思うのです。  しかし、先ほど申し上げましたように、物価が安定しているという中で、多少賃金もあれである。そういう中で、消費が割合と堅調にあるということを言いますと、やはり底がたいという見方もあるのかなと思っております。ただ、今御指摘のとおり、通産省の方の中からももうそろそろいいんじゃないかという声が実は出てきておるということでありまして、そのあたりをまだもうちょっと、インフレ懸念あるいはバブルをまたつくってしまうのじゃないかという懸念が片っ方である、片っ方では必要だよ、この綱引きを日銀は冷静に見きわめながら対応していくということが大事であろうと思っておりますし、私ども財政当局、金融当局にあっても、そういったあたりをよくこうやって精査しながら、しかし、今おっしゃるとおり、あるときには機動的にやらなければいかぬよという面も、私たち腹の中に置いて対応していく必要があろうというふうに思っております。  ただ、余りにも、今おかしいよおかしいよと一部の声が余り強く出てしまうと、いわゆる底打ち感というものがないということで、むしろ逆に活発な経済活動を阻害してしまう面があるんだということ、このあたりもそれぞれの立場にある者は気をつけなければいけないんじゃないのかなというふうに思っております。
  108. 富塚三夫

    ○富塚委員 聞くところによると、田中内閣の列島改造政策による過剰流動性のときも、三重野さんは何か佐々木総裁のもとで実質的に金融政策を担当をしておった方らしいですね。そうすると、何かあの人に振り回されて、これはほとんどの銀行の中堅マンの人たちはこぞって皆そういう私と同じような考え方を言っているわけです。だから、やはり通貨や物価の番人としての日銀という独立した機関であっても、もっと謙虚に多くの人の意見を聞く、そして、基本的に公定歩合問題などもそういった経済全般の状況から判断できるようにしていかないと、きょうのこの新聞を見ても、日銀総裁は、しばらく在庫調整も、これはうまくいっている。通産省の調査では、在庫調整は夏以降まで延びそうだ、大変だ。こんなことをやっておったら、今この不況からどう脱出するかという我々の政治の課題やあるいは政府の課題が一体どうなっていくのかという点で、まあある銀行の有力な幹部に言わせると、三重野さんは万死に値するぐらいの罪を犯している、こう言っていますけれども個人的にどうこう言うつもりはありませんが、もっと金融政策のそういったタイミングの転換のとり方の問題などについて謙虚に民間エコノミストの代表などの意見を聞いて対処していくように、ひとつぜひお願いをしておきたいというふうに思います。  さて、政府の景気のてこ入れ政策の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  ことしの景気のこれからの問題、活路はすべて政治絡みの問題だと俗に言われています。このバンガードというある雑誌の討論会でも、野村総研の徳田さんや三菱の牧野さんや、あるいは経済評論家の長谷川さんもこぞって、政治絡みだ、こう言っているわけです。政治絡みなら政府の責任、政府の判断ということの問題になるんじゃないかと思うんですが、そういう観点からちょっと質問をさせていただきたいと思います。  経企庁が月例の経済報告を二十五日にまとめた。初めて日本の景気後退宣言をされた。八六年十二月に始まった大型景気に公式に終止符を打った。そして、景気が後退局面に入るのは、八五年七月から八六年十一月の円高不況より五年ぶりと言われておって、人手不足下の新型不況の様相を見せているなどと言われています。有効求人倍率も、労働需給の面では昨年の十二月段階で一・三倍、つまり求人者数が求職者数を上回っているという状況です。一般企業や国民は昨年末から不況の局面を実感しているのに、なぜ政府の判断が今ごろこんなふうな形になって出てきたのかということについて、経企庁にひとつお話を承りたいと思います。
  109. 小島祥一

    ○小島説明員 お答えいたします。  二月の月例経済報告では、景気の現状を判断いたしまして、「我が国経済は、景気の減速感が広まっており、インフレなき持続可能な成長経路に移行する調整過程にある。」このように判断をしております。拡大の文字というものが消えたことから景気後退局面との解釈が報道されておりますが、月例経済報告では、毎月経済情勢の変化に応じまして最善の分析をして、政策判断に資するように努力してきております。二月の月例経済報告におきましては、我が国経済が調整過程にあるという認識は先月と同様でございますけれども、さらに新たな性旧勢のデータといたしまして、企業の業況判断、減速感が広まっているということとか、設備投資の伸びが鈍化している、在庫調整それから生産調整が行われているということから、二月の現状判断といたしまして、景気の減速感が広まっているという認識を新たにつけ加えたものでございます。
  110. 富塚三夫

    ○富塚委員 通産省は早くから不況局面のてこ入れについていろいろ検討されていたと聞いています。しかし、この月例経済報告で日本の景気後退宣言をしたという、いわゆる閣議の中でもいろいろ意見があったことが伝えられております。何か大蔵省は、九二年度予算成立に向けて、早目に景気後退の宣言をされたのでは景気のてこ入れ型予算を組まなければならない、それでは困る、予算のてこ入れ組み替えをしたくない。経企庁は、何か統計で数字が出てくるのが遅かったから。通産省は、早く不況局面のてこ入れをやれ。大蔵省は何か予算のいわゆるあり方だけを考えて、そういった政府内部がばらばらになっているということは一体どういうことなんですか。これは大蔵大臣、町議なんかの議論もいろいろあったようですけれども、どのようにお考えでしょう。
  111. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど申し上げましたように、業況判断につきましては冷静にしなければならぬということでありますけれども、しかし、やはり政府としてそれぞれの関係の部局があるわけでございますから、特に経済企画庁あるいは通産省そして私ども大蔵省、またあるときには日銀、この四者というものがよく十分連絡をとりながら、分析し、そして対応していくということは、私は重要なことであろうというふうに思っております。しかし、お互いに、やはり綱引きというのはこれは非常に大事なことであって、片一方だけで判断したものですっと走っていってしまうということは非常に危険なことであろうと思っておりますから、私は、この綱引きは大事であろう。しかし、そのためには常にやはり連絡をとっている、これは今でも実はやらしていただいておることであります。  そして、今、どうも大蔵省が景気のてこ入れに対しては及び腰であった、あるいは、そういったことで財政出動をさせられることに対して懸念したのではないかという御指摘があったわけですけれども、これはいろいろなところで御説明してまいっておりますけれども、私ども、やはり予算、今度の平成三年度の税収納不足という状況、ああいうものをやはり踏まえながら、平成四年というのは景気というのは一応減退していくんだろうなということを念頭に置きながら、やはり景気に配慮して対応してきたということは率直に申し上げることができると思っております。そういったことの中で、特に公共事業に対しましてのいわゆる実施機関につきまして財政融資なんかでも一〇・八%見るとか、あるいは地方の単独事業についても一一・五%の伸びを見せるとか、そして、私ども一般会計の一般歳出における公共事業関係費につきましても五・三%の伸びを見せるとか、割合と景気に配慮したものであるということは、それは昨年の十二月の時点でそのことを念頭に置きながら対応してきたということを、ぜひひとつ御理解をいただきたいというふうに存じます。
  112. 富塚三夫

    ○富塚委員 宮澤総理の指導力がいろいろ問われていると巷間言われているわけです。しかし、総理は動くにも動けないんじゃないか。一言で言うなら、積極的な景気刺激策に転じることのできない理論的な柱を立て、基礎を立てて総理にぶつけているのではないか、経企庁がそうやっているのではないかとか、つまり総理が乗り出して景気の刺激策に転換をさせようとやろうとしてもできない。政治絡みといっても、まさに政治のリーダーシップが発揮されていない、される環境にないといったことが問題なのではないかと言われているのですけれども、閣内でこういう不況の局面の問題をどこまで議論されて、やはり基本的な方向あるいは具体的な方向を打ち出していくという点でまだまだすれ違って十分に一定の方向が出せないでいるのではないかと思うのですが、金融政策の転換の課題と相まって、やはりそこの問題について、どうでしょうね、これからの先の問題について、うまく宮澤さんがリーダーシップを発揮してやっていけるような状況になるのかどうなのか。どうでしょう、大蔵大臣
  113. 羽田孜

    羽田国務大臣 閣議ですとかあるいは政府・与党の首脳会議ですとか、そういった場面におきまして、それぞれ我々と率直な意見を交換しているところであります。そして、総理は、やはりこの状況というものを本当に冷静に判断して対応してほしいねというお話でございまして、特に予算が編成され終わった閣議におきましても、この財投においてここまで見たということは、これは大変よかったということ、それから地方の単独事業というものが割合と積極的に行える、これは大変いいことです、このことについては積極的に皆さんも国民の皆さんによく説明してほしいなんというお話なんかもあったところでございまして、私どもは、総理が生活大国に、あるいは社会資本をきちんと充実すべきであろう、あるいは今日の状況というものをきちんと判断しなさい、そういうことを基本にしながら、今まさにリーダーシップのもとに私どももこういったものを編成したということであって、その点はぜひ理解してあげてほしいなということをこの機会にも申し上げておきたいと存じます。
  114. 富塚三夫

    ○富塚委員 余分なことかもしれませんけれども、アメリカのブッシュ大統領はこのところ支持率が五〇%を割ったと伝えられ、七四%が経済政策に不満を持っている、こう言われている。もちろんアメリカは、個人も国も借金づけであるし、経済政策の転換はなかなか容易でない、打つ手がないとも言われている。しかし、日本は違う。国も財政も赤字ではなく、企業も個人もまあまあ貯金を持ったり、借金づけにはややほど遠い。しかし、不況に入ってきたという局面をどう回復させるかということの物の見方、甘いのではないか、対応の仕方にもっと積極性を持つ必要があるんではないか。数字だけの実態で議論しているから、三重野総裁みたいなのんきな考え方になっているんじゃないかと私は思うのです。  そこで、景気のてこ入れのあり方の問題なんですが、公定歩合の四次の引き下げを急ぐべきであるというふうに私は考えますけれども、多くの民間エコノミストの皆さんもそう言っているように思われますが、どうでしょう、大蔵大臣
  115. 羽田孜

    羽田国務大臣 こういったものに対する対応というのが遅いんじゃないかというお話でありますけれども、例えば先ほどもちょっと申し上げましたように、第三次の公定歩合を下げましたのが御用納めが終わった十二月三十日でありました。この対応というのは、これは今までの常識といいますか、今までの普通の考え方の中から生まれてこなかったということであろうと思って、このやった措置に対しては大方の方々が、やはり非常に素早く、素早くと言うより意表性をついてやったということで、むしろこの効果というのは大きがつたのじゃないかということであります。  そして、この三次の公定歩合を引き下げたというもの、これをやはり貸出金利等実質金利に一体どう反映させていくのかということで、これを今見守っておるということでありまして、先ほどもちょっと申し上げましたように、今のレベルというのは、かつて公定歩合を三・五%にしたときに比べても実質の貸出金利というのは実は下がっておる、実質の貸出金利と同時に長短のプライムレートというのは下がっておるということからいいまして、私どもは今まだこの状況というものをきちんと見きわめていくということが大事なんじゃないのかなというふうに思っております。
  116. 富塚三夫

    ○富塚委員 いずれにしても、その公定歩合の四次の引き下げの問題は、政府も積極的に問題点を明らかにしてここはやっていくべきだ。何か日銀の総裁が言っているように、しばらく在庫調整の模様を見ようなんて言って、しばらくは景気の局面を見詰めたいなどと言っている判断ではだめなんではないか。まさにこの不況の局面が克服できないというふうに私は思います。それが一つです。  それから、もちろん新しい予算、新年度予算、早く与野党の合意を見て執行しなければならぬ、これは当然だと思いますが、公共事業の上期の前倒しの問題、あるいは補正予算を早目に準備をする、つまり系統立った対策を立てていくということについてもう少し大事な配慮があっていいのではないか。  公定歩合の問題それから公共事業の上期の前倒し、また補正をどう組み立てていくのかという問題などの、系統立った対策を立てることに欠けているという問題についてどのようにお考えになっていますか。公共事業の前倒し問題なども含めてお答えをいただきたい。
  117. 羽田孜

    羽田国務大臣 第一段目の問題は、先ほどから申し上げておりますように、やはりよく状況を見ながらこの金融政策というのを行っていくということで、実際に今いわゆる金利というものは自由化されてきておるということがございますから、かつてのような公定歩合だけがということでないのであって、やはり公定歩合が今こういう状況であるけれども実質に貸し出しか一体どうなっているか、あるいはオーバーナイトの率が一体どうなっているのか、こういったところをきちんと見きわめる、あるいはそういったものは本当にみんなが使いやすいものにしていくという努力というものが大事だろうというふうに思っておりますので、そういった点につきましては私どももこれからも今御指摘のあった点なんかをよく念頭に置きながらいろいろとお話し合いをしていきたいと思っております。  それから今第二点の、予算につきまして、これはまず先ほど申し上げたようなものを私ども配慮した予算である、景気に対して配慮した予算であるということでございまして、今先生のような今日の景気の状況、御判断である以上、何とかこれをひとつ一日も早く通していただきたいということがまずお願いしたいことでありまして、また第二点の、これを前倒しにするということについては、まず何といってもこれを通すということが非常に大事なことでございまして、そういう中にあって私たちがこの執行についてどう適切に対応していくかということは、これは念頭に置きながら対応したいと思います。  ただ、補正予算につきまして、まだこの四年度め予算が通らないときに補正予算云々するということは、私たちとしてははばからなきゃならぬ問題であろうというふうに思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  118. 富塚三夫

    ○富塚委員 政府のこの政策発動をおくらせますと、いわゆる調整局面が深刻化することは間違いない、これは基本的に認識が一致できると思いますね。私は重ねて言いますけれども、どのような政策発動をするのかという問題について、やはり系統立った対策を次々に打っていくという姿勢がないと、何かばらばらという印象を受けていると、国民はやはり政治絡みに期待をして、宮澤総理のイニシアチブに期待をしている、本格政権の宮澤さんに期待をするんだと言ってみても、何か各省庁がばらばらになっているような形ではだめなんじゃないかという点で、重ねて系統立った対策をきちっと立ててもらうように要望しておきたいというふうに思います。  次の問題は、豊かさ、ゆとりを実感できるような経済政策という問題についていろいろお尋ねをいたしたいと思います。  世界は、一部の地域に民族紛争を残しつつも、平和共存へ向けて新しい秩序形成の時代に入ったと言われています。ここ一、二年、世界じゅう、二十世紀を新たな世紀に変貌しようとする様相がはっきりしてきましたし、ソ連邦の崩壊あるいは昨年末の独立国家共同体の発足、そしてEC諸国における始動準備もほぼ完了して通貨統合への道筋も明らかになり、政治統合もイギリスが軟化してうまくいくのではないかと見られていますし、また朝鮮半島の統一も時間の問題と見られている。世界は、やはり冷戦構造の崩壊とともに軍縮によって生活の向上ないしは生活の質を向上させようという共存の時代に入った。しかし一方では、経済大国となった日本が、国際貢献度や貿易摩擦に象徴される日本のエゴについてやり玉に上がっていることも事実だと思うのです。特に、長時間労働、低い労働分配率、欧米諸国から一種の社会ダンピングではないかとみなされて、低い労働分配率あるいは高い資本の分配率、高い投資率、速い技術進歩は抜け駆けの成長であるのではないかと欧米からも反発を買っています。  世界最大の債権国、最大の黒字国となった日本が本当に地球化社会時代の到来に認識が欠如しているのではないか、こう言われているのでありますが、いわゆる基本的な認識ですけれども、私は、軍縮によって防衛費を削って国民生活の向上、質の向上に向けていくという基本的な政治のスタンスに立つべきではないかという点が、どうも政府の予算案を見るとわかりにくい、はっきりしていないと思うのですけれども、何かきのう予算委員会の公聴会に、自民党さんの推薦した先生もそのようなことを述べられたと新聞に報道されておりますが、この基本的なスタンスの問題について、大蔵大臣どうお考えですか。
  119. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘もありましたように、確かにソ連が崩壊した、あるいは東欧においても国名まで、党名まで変えるというようなこと、またソ連邦はまさに国といいますか共同体の名前を変えるというようなこと、これはやはり非常に大きな変化である。私たちがこの変化というものを本当に確実なものにしていくために国際的な協力をしていく必要があろうというふうに思っております。  そういう中で、軍縮というものがヨーロッパにおいてもあるいはアメリカにおいても叫ばれるようになり、またそういったものを国民生活の方に変えていくという方向、これは私は一つ方向であろうと思うし、また正しい方向であるし、また日本としてもそういう世界をつくり出していくということが何といったって大事なことであって、日本としても当然そういうことであろうと思っております。  ただ、やはり事軍備費といいますか、そういったものが基本的に異なるのは、アメリカの場合には、どちらかというと日本みたいに専守防衛という形じゃない。むしろ、世界の警察国家であるというぐらいの一つの責任を感じながら相当国防費に大きなものを負担してくださっておったということはあろうと思いますし、また、間違いなく核、戦略核等につきましてもこれを縮減していこうという方向が、きちんとかつてのソ連ですとかアメリカとの間の中で話し合われてきておるということですから、その辺では大幅にこれを削減することが可能だということであろうと思っております。  それから、間違いなく、東欧の場合ですとかにいたしましても、あるいはかつてのソ連におきましても、今まであそこにあった、例えば東ドイツに配備されておって、そのほかめ国に配備されておった人たちが引き揚げた、それに対してNATO諸国なんかも、これに対する対応というのは割合としやすいという一面があるのじゃなかろうかと思っておりますし、当然ソ連邦としてもそういった人たちを今新たに、今度新しく独立した国の中で保持するといっても、全体を保持することは難しいということで、これを削減していこうということはできる環境にあろうと思っております。  ただ、日本の場合には、これは極東の場合にはまだそんな大きな変化というものが出てきておるということではないということでありますし、もともと私どもの大綱あるいは中期防というものも非常に抑制的なものになっておったということがあります。しかし、そういう中にあっても、私たちもこの世界の大きな流れというものだけは認識して対応しなければいけないということで、今度の場合にもどちらかというと隊員の糧食費ですとかあるいは隊舎ですとか、こういったところに配慮をされておるということでありまして、正面の装備というものについてはむしろ後退させておるということが言えるんじゃなかろうかということであります。  もっとドラマチカルにやれというような話も実はあることも私どもよく承知しておりますし、また、そういうことができればなと思う一面はあるわけでありますけれども、まあ安全保障の問題というものは、ただ、まだ今のこの時点で日本がそんなに大きく後退させるということが、ドラマチカルにやるということはなかなか難しいということであろうと思っております。しかし、私どもはこれからも全体の流れを見詰めながら、今先生が御指摘のあった方向というものは何とかひとつ探り出して、そういうものを国民生活の質の向上というもの、こういったものに振り向けていく、その努力というものは常にしていかなければならないということを私ども頭に置いておきたいと思っております。
  120. 富塚三夫

    ○富塚委員 けさのある新聞のコラム欄に、私の選挙区に湯河原温泉があって、湯河原町があって、来月地方議会の選挙をやるのですが、そこにフィンランド出身のツルネンさんという、日本国籍になって十三年たって、その人が立つので今まさに大きな話題になっているんです。しかし彼の言っているのは、普通の日本人でありたいとともに地球人でありたいということを盛んに言って、今若者たちに共感を呼んでいるのが実情なんですね。  私は、どうも国の予算編成を見ても、各省庁の予算要求の上限のバランスを考えたり、もちろん総枠は収入と支出の関係ですからそれは大事ですけれども、もっと大きなこういう地球の流れ、世界の流れ、軍縮の流れに沿った一つ予算編成をして政策をつくり出していくということがないと、これはいつまでたっても日本はだめなんじゃないか、私はそう思います。大蔵省も大変だと思います。主計局長さんも各省から要求したのを削ってとか、何か大臣が強くてとったとか、官僚の人たちがとってきたという問題じゃない、大きな柱は、まさにそういう新しい世界の秩序、つまり軍縮によって平和の共存を満たしていって、生活の質を高めるための予算づくり、政策づくりをしていくという点にもっと積極的に目を向けるべきだ、こういうふうに私は思っています。  そこで、実は皆さんも御存じのように、この春闘を前にして労働分配率論争が盛んに行われています。ソニーの盛田会長が、二月のある雑誌に発表したことを契機に、いろいろ問題提起がされています。  盛田さんの説によると、日本企業はこれまで利益分を研究開発や生産設備等へ再投資あるいは内部留保に振り向け、競争力を向上させてきた。このことは企業の体質強化には役立ってきたが、反面、利益を従業員や株主、地域社会へ還元していくという側面が陰に隠れてしまった嫌いがある。その結果、日本企業の従業員の労働時間や給与水準は欧米とは随分と格差が広がってしまった。今後はこうした諸点に十分考慮をして、適正なマージンを付加しつつ製品の価格決定をしなければならないと述べていまして、自動車のモデルチェンジを四年から五年サイクルに延長することによって自動車産業労働者の労働時間を減らしたらどうか、また資源を大切に使って自然環境にも優しく接していこう、その実現のために必要な製品の値上げをしようと呼びかけている。そうすることで、欧米との整合性を持っ競争ルールが確立して、対日不信感を払拭することになるだろう。グローバルな課題解決のために日米欧の緊密な協力関係を築いて、そのことがひいては豊かな日本の創造にも結びつく、そのことを日本の経営者はもっと認識すべきである。経営者として勇気を出していかなければならない。まさに、時宜に対応した考え方であり、労働界はもちろんのこと、学界、ジャーナリズムなどで極めて常識的な発言であると評価をされています。  さて、私は前段で申し上げました新しい世界の秩序形成の時代、いわゆる平和の共存の時代、そして軍備を縮小して、生活の質を高める問題に目を向けていこう、国際的な対応を大事にしようということから考えると、まさにこのソニーの会長の発言は時宜にかなった発言であると思いますけれども大蔵大臣はどのようにこの会長の提言について感想をお持ちですか。
  121. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど湯河原の選挙についてもお話があったわけでありますけれども、まさにその候補者の言われているという一面だけを今お聞きしたわけですけれども、私どももやはりこの時代というのは、ボーダーレスというようなことさえ言われるようになってきておりますし、また富める国がまだ貧困である国に対しての配慮というものもしなければならないということ、これはもう当然やらなければならない。かつてはまさに人類の夢みたいなものであったわけですけれども、しかし、我々の一つの理想としてそれを追っていく時代がやってきているなということを、改めて今先生のお話をお聞きしながら痛感をした次第であります。  そして、今お話のございました日本型経営というのは危ないという盛田さんの提言というものも、基本的には労働時間の短縮、給与水準の引き上げ、あるいは欧米並みの配当性向の確保、下請企業との対等の関係、地域社会貢献、あるいは環境保護、省資源対策ということで、まさにこういうものが一つの――じゃヨーロッパの国の経営が全部そうかというと、いろいろなところに問題点があると私ども思っておりますけれども、しかしそういうものを見詰めながら、それに幾つかのものを補足して、盛田さんが新しい時代の経営はこうあるべきじゃないかということを提示されたということでございまして、私も基本的には、こういう考え方を持ちながらの経営戦略というものが今求められているのかなということを改めて感じております。
  122. 富塚三夫

    ○富塚委員 経企庁はどういうふうに評価されますか。
  123. 堀一

    ○堀説明員 御説明申し上げます。  盛田論文そのものについてどうこうというふうに申し上げるのもちょっと不適当かと思いますが、特に労働分配率あるいは労働時間のことについてどう考えているかということで御説明させていただきたいと思います。  まず第一に、労働分配率のほかり方というのがございます。これは幾つかの計算方法がございますけれども、一番一般的な、国民所得に占める雇用者所得の割合、こういう見方をいたしますと、これの場合には、就業者数に占める雇用者数の比率、いわゆる雇用者比率が上がりますと、これによってこれの影響が出るわけでございますけれども、これで見ますと、近年はおおむね横ばいで動いております。しかし、このような要素、雇用者比率の変化という要素を除くためにちょっとほかの計算方法をとりますと、幾つかの方法がございますので一概には言えませんが、若干低下ぎみに動いております。また、そのような手法をもちまして欧米諸国との比較をいたしますと、日本の方が低い数字が出ております。  労働分配率につきましては、市場における自由な経済活動の結果として決まるものでございますので、またどういう視点から見るかで評価が異なるということもございますので、その水準について一定の評価を政府が下すということは適当ではございませんが、しかし経済成長の成果を賃金や労働時間等に適切に配分するということは、豊かな国民生活の実現とか内需主導型経済成長の持続という観点から重要なことでございますので、今後とも労使の自主的な話し合いによって適切な成果配分が行われるようにということを期待しております。  また、特に労働時間につきましては、豊かでゆとりある生活大国の実現にも資するということのみならず、また内需主導型の持続的な経済成長という観点からも重要と認識いたしております。「世界とともに生きる日本」におきましても、労働時間短縮を積極的に位置づけておるというぐあいでございます。ただ、現在のところ、平成三年の総労働時間、暦年でございますが、二千十六時間ということで、計画で言いました千八百時間程度というところに比べますとまだ高い水準にございますし、なお一層の努力が必要な段階というふうに考えております。
  124. 富塚三夫

    ○富塚委員 近藤労働大臣は、ことしの春、これに賛成するような見解を述べられているわけです。賃金は独立変数とする発想、すなわち国民経済から見た賃金、労働条件の大きな役割、最大の内需たる個人消費を重視する発想ということで、企業の、産業の論理に対して勤労者の生活の論理を対峙させて、国民経済的な視野で考えていくべきじゃないかと、従来の労働省の姿勢などからすれば二歩も三歩も大きく踏み出して評価されているように思うのですが、労働省はどうお考えでしょうか。
  125. 椎谷正

    椎谷説明員 確かに近藤労働大臣は、賃金と言ったというのは余り私も記憶ございませんが、少なくとも労働時間に関しては、労働時間を独立変数にして物事を考えていきたいということは言われたと思います。  ただ、大臣の申し上げているのは、現在中長期的に見れば労働力不足だ、労働力不足基調であれば、従来は例えば産業あるいは企業の活動によっていわは従属変数として雇用需要が生まれ、その中で賃金なり労働時間が決まってきたけれども、これからは中長期的に見れば労働力がむしろ貴重な存在になるのだ、貴重な存在ということをいわば独立変数という表現で言ったわけでございまして、そういう中で労働条件を向上させていく、むしろ労働力を大切に使っていくという観点から物事を見ていったらどうだろうかということだと思います。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕  盛田発言といいますか、盛田論文につきましては、確かに、いわば経済力が世界一に近いようなそういう強い国になった割に、勤労者を初めとする国民の生活がそれほど豊かさを感じられない、そこに問題があるのではないか、その問題を振り返って考えた場合に、これまでの企業の行動というものにどういう点が問題であったのかということを、いわば御自分の経験なりに照らして、これからの企業行動がどうあったらいいのかという理念をお示しになったのだと思います。そういう意味、では、これをきっかけに企業行動のあり方なりについて御議論が行われるということは有意義なことではないかというふうに思っております。
  126. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、できれば本当は近藤労働大臣に、あるいは野田経企庁長官にも聞いてみたいと思って、きょうは各委員会があってとても出席できないということなので、改めてまた労働大臣に聞く機会をつくってみたいと思いますけれども基本的に発想の転換をしていくということがないとだめなんじゃないか。羽田さんはポスト宮澤の候補の一人にも挙がっているわけです。ぜひそういう発想の転換をしていくという、最大のチャンスといいますか、その時期に来ていることだけは十分認識していただきたいと思います。  この盛田さんの発言に対して日経連の永野会長は、日本の賃金水準は世界でも最高の水準にある、従業員への行き過ぎた分配は日本経済の成長力を損ねる。また、経団連の平岩会長は、盛田さんは中長期的な視点からの発言で、永野さんの今次春闘に対する短期的な視点とは次元が違う。しかし、多くの主要企業の経営者の間でも賛否両論に分かれて、労働分配率の高低だけをとらえて両氏の優劣を論ずることはできないとコメントをしている方も三〇%前後あると聞いています。また、日商会頭の石川さんは、生活の豊かさは労働分配率だけで論じられない、物価水準や所得税の税率なども含めて広く検討されるべきだ。  私は、日経連は相変わらず万年一日のごとく生産性基準原理を振りかざしてこの春闘に臨もうとしているんだと思います。実質賃金の向上ということに余り目を向けないで、賃金の上昇は生産性向上の範囲内で、定期昇給の二%程度でやりたい。春闘の歴史などをずっと見ますと、賃金か雇用か、物価か賃金がなんという、賃金を抑制するだけの論理が先に出されてずっと今日まで来ているのですけれども、この日経連の考え方、これは日経連としていかにして賃金抑制をするかというねらいだと思うのです。  こういったいわゆるソニー会長の提言を受けてもっと積極的に労働分配率の分野を考えてやろうというのと、こういった日経連の主張というものは、万年一日のごとくこう言っているわけですけれども、そこらの問題点について、今度は政府は労使間の問題だと任せておくような時期ではない。私が前段から申し上げている一つの流れからすれば、政府が積極的にそれを支持して対応しなければならない時期に来ていると思うのですが、労働省はどうお考えですか。
  127. 椎谷正

    椎谷説明員 労働分配率に関しましては、先ほど企画庁の方が申し上げましたけれども、実は労働分配率といいますのは、私どもの理解では、いろいろな企業の経済活動が行われ、その結果としていわば事後的にわかるというものでございまして、極端な話を申し上げますと、ここ一、二年は先ほど申し上げましたような数字からすれば労働分配率が上がっておりますけれども、それは例えば雇用者数が相対的に伸びるということでも分配率は上がるわけでございますので、それだけで判断するのはいかがかとは思っております。  ただ、今お話しの賃金の問題につきましては、やはり例えば日経連は確かに生産性基準原理を申し上げるし、かっ実質賃金を上げる方法というのは名目賃金を上げるだけではなくて物価を下げればいいんだという言い方をされる一方で、労働組合の方はやはり名目賃金が上がらなければ賃金水準は上がらないんだ、こういういわば渦中にあるわけでございまして、現在はお互いに話を詰めているという段階かと思いますので、そういう中で私どもがいわば個別の労使の賃金問題についての話し合いの中に割って入るというのは適当ではないだろうというふうに思っております。
  128. 富塚三夫

    ○富塚委員 賃金の比較が、為替レートの比較では差は少ないことは事実ですよ。しかし、実質の財、サービス購入の力を示す購買力平価基準換算で言うと、賃金水準は日本は大きく下回っている。日本の一時間当たりの賃金は旧西ドイツの六六%で、またアメリカの六二%である。つまり為替レートの比較、どちらかというと名目賃金、そこのところはお認めになりますか。労働省、どうですか。
  129. 椎谷正

    椎谷説明員 賃金の比較そのものが、各国の統計の中身ですとかあるいは調査の性格なり定義なりによりまして厳密な比較は大変困難でございますけれども、お話のように、例えば製造業の生産労働者一時間当たりの賃金というので比較しますと、為替レートでは賃金水準は日本はドイツを下回っております。ただ、欧米主要国とは同程度でございます。購買力平価で換算をして比較しますと、おっしゃるとおり我が国の賃金水準は欧米主要国は下回っていると思います。
  130. 富塚三夫

    ○富塚委員 もう一つ、大型景気を持続してきた八七年度から九〇年度までの四年間で賃金の改善状況は、一時金を含めた現金給与総額、名目で一三%、つまり物価上昇率を引いた実質では五。三%にすぎない。企業の経常利益はこの四年間で六七%急増した。これは大蔵省の法人企業統計季報の中で明らかにされている。  GNPの伸びと賃金、労働時間の改善と比較すると、八〇年から九〇年の十年間でGNPは実質で四・三%の伸びに対して、就労者一人当たりのGNPの実質は三%である。賃金総額では年平均一・七%、労働時間短縮率は〇・三%の伸びにとどまっている。つまり実質賃金が非常に伸びが低いということについては、どうでしょう、経企庁、労働省、お認めになりますか。
  131. 椎谷正

    椎谷説明員 ここ数年間の実質賃金の上昇率が私今手元にございませんけれども、恐らくお話のとおりだと思います。  そこで、先ほど来お話が出ておりますとおり、日本の経済力が強くなってきた割には実質賃金が、伸びてないわけではありませんけれども、その伸び方が経済力がついてきた割には伸びていないということで、労働時間の問題も含め、現在ゆとりある豊かな暮らしをどうやって実現していこうかということで頑張っていることになると思います。特に労働時間につきましては、先ほど私申し上げませんでしたけれども、賃金と並んでいわば個別企業が具体的に労使の話し合いで決めていくものではございますけれども、労働時間に関しましては私ども制度的にいろいろ整備を進めているところでございます。千八百時間という問題はございますけれども、さらに一層努力は続けてまいりたいというふうに思っております。
  132. 堀一

    ○堀説明員 御説明申し上げます。  数字につきましては労働省さんと同じ数字を持っておるわけでございますが、雇用者所得で見ますと、一人当たり雇用者所得がここ数年四%台の伸びということになっております。それから労働時間につきましては、十年という長いタームで見ますとほとんど減少ではございませんが、この数年ということに限定いたしますと年間三十時間程度、例えば昨年が前年に比べて三十六時間減少、それから元年に比べ二年が三十六時間減少というぐあいに、最近のところではある程度の減少が見られております。
  133. 富塚三夫

    ○富塚委員 やはり政府、所管の省は、こういう時期に来ると明確な統計の数字というものをはっきりさせていかなければいけないと思うのです。労働分配率の問題にしてもいわゆる賃金、実質賃金の比較の問題にしても名目賃金の比較の問題にしても、明確に出していく必要があると思うのですね。そのことにとかく従来は労働省もちゅうちょして、日経連の顔ばかり見ていて、何かこう、やらないみたいな感じがあったように私は見ているのですが、やはり国際比較の問題はもっと正確にきちっと政府の見解を出していくべきなのじゃないかと私は思います。  そうすると、その点はぜひ要望したいことと、もう一つは労働時間短縮についてもどうでしょう。現実の状況は百七十時間ないし五百時間前後の年間総労働時間の開きがある。かなり長時間労働になっているという問題についてどうですか、労働省。
  134. 椎谷正

    椎谷説明員 労働時間につきましては、先ほど御指摘のとおり、長い間で見ますと特に昭和五十年代が停滞をしていたということでございます。そういうこともございまして、私どもも、これは法律の枠組みをひとつ変えてみようかということで、昭和六十二年に労働基準法の改正を行いまして、六十三年の四月から改正労働基準法を実施し始めたわけでございます。六十三年以降は、今企画庁の方からお話のございましたように、毎年二十時間ないし三十時間の割合で減ってきておりまして、平成三年、暦年で二千十六時間というところまで来ております。  ただ、お話のとおり、年間総労働時間を千八百時間程度に向けてできる限り短縮しようという現在の目標の達成は確かに厳しいものがございます。決意を新たにして一層の努力をしたいと思いますが、基本的には私どもは三つのことを挙げてございまして、一つは完全週休二日制を徹底してもらおう。二つ目は、年次有給休暇が現在は与えられているものの約半分しか使われていない、これを何とか使っていただこう。三点目は、今お話のございましたとおり、所定外労働時間といいますのが、好況期であったということもございまして年間百八十時間を超えるという水準でございまして、これを何とか減らしてまいりたいというふうに思っております。ただ、これも先ほど来御議論のございます企業の実態からしますと、競争が非常に激しいということと、特に中小企業の場合には、大企業も含めてかもしれませんが、横並び意識が強いということで、個々の企業ではなかなかやりにくい面があるということでございまして、特に中小企業の場合には、人手は確保したいし、労働時間は短くしなければいけないというはざまにございまして悩みも大きいということで、中小企業の労働時間の短縮を特に進めるために、実はさまざまな予算制度上の措置もとっておるわけでございますが、改めまして、そうした労働時間の短縮のための環境を整備するために、現在、業種、地域ごとに労使が労働時間の短縮に向けて自主的に努力をしていくという場合に援助をする、そういう法律案を準備をしております。それを今国会に提出をしようということで、現在検討をしているところでございます。  また、その基本的な法律でございます労働基準法でございますが、原則は四十時間ではございますけれども、現在は法定過労働時間は四十四時間、これを早く四十時間まで持っていかなければいけない。そのほかいろいろな問題が現在出されております。そういうものも含めまして、現在中央労働基準審議会という労働大臣の諮問機関がございますが、そこで労働時間法制全般について検討をお願いしているところでございまして、検討が終わり次第速やかにそれに基づきます措置をとってまいりたいというふうに思っております。
  135. 富塚三夫

    ○富塚委員 いずれにしても、労働分配率の中身をやはりきちっと数値で公表をしていくということであってほしい。実質賃金を含めて労働時間短縮問題などをやはり明確に打ち出してもらいたい。どうも労働省も弱腰になって、何ですか、日経連から言われたら時短法も骨抜きになってしまったみたいなことを言われていますので、やはりこういう新しい流れの局面に際してしっかりやっていただきたい、こういうふうにお願いをしておきます。  物価水準も、経企庁の八九年発表の物価レポートによると、東京の生計費の物価水準を一〇〇とするとニューヨークが七二・八、ハンブルクが六八、最近物価は落ちついているとはいっても欧米に比べてまだまだ高い、こういうふうに我々は思っています。また所得税率も、サラリーマンの負担率が高いことも事実であります。加えて、社会保障給付や住宅事情あるいは社会資本整備水準なども立ちおくれていることは事実なんです。  そこで、いよいよこの春の賃金あるいは労働時間など労働条件の問題を決着つける春闘が始まるのですが、連合あるいは金属産業労働者は八%台の賃上げを要求して、労働時間も年間総労働時間千八百時間を目指すということで、これはぜひ大蔵大臣、労働大臣もおればいいんですけれども、お願いしたいのは、宮澤総理生活大国を目指してゆとりと豊かさが実感できるような政治をやりたい、こう所信表明で述べられているわけですよね。せっかくこういう盛田さんの提起もあって、国際的にもそういう流れを受けて、そして今そういった春闘が始まろうとしているんですが、従来はとかく、賃金や労働条件問題は労使間交渉で決着をすべきで、政府は一切干渉しないんだなどとずっと言ってきているわけです。しかし、やはり豊かさとゆとりが実感できる生活大国に政府が積極的に政策誘導、対応していくということになれば、その問題は従来とは違って政府が積極的にこの春闘に対処していくべきだと私は思うんですが、なかなか答えにくい問題かもしれませんけれども大蔵大臣どうでしょう。
  136. 羽田孜

    羽田国務大臣 この問題につきましては、総理としては生活大国という中で新しい視点からということをうたいとげておるわけでございます。また、経営者の側の中にありましても、新しい時代の中でということで経団連の副会長をお務めになっている方が一つ方向を打ち出していらっしゃるということであります。そういう中にあって、今度の春闘は単に賃上げという部分だけじゃなくて労働時間の短縮の部分、こういったものも大きなテーマになっておるということでありまして、そういう大きな方向というものを打ち出していくことでありましょうけれども、個々の問題について政府が今関与するというのは、むしろ私は悪い慣行をつくっちゃうんじゃないのかなというふうに思っております。
  137. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、冒頭に申し上げた景気の回復を進めるための政策的な展開という問題とやはり国際化社会になったという自覚、新しい世界の秩序形成の流れを受けての日本の役割という点からいうと、従来そういった点でタブー視されていた問題についてもっと積極的に政府が取り上げて対処する、あるいは議会でも国民の間でもそういう方向に向けて努力をするということについてぜひ要望しておきたいというふうに思います。  最後に、不公平税制の是正の問題についてちょっとお尋ねをいたします。  政府は今回、みなし法人課税ほか四項目の整理合理化を提案されていますが、評価をされてよい問題だと思います。八九年末の政府税調の答申でも、この特別措置の問題は積極的に見直していくべきであるという提起をされておるのですが、これから先なんですけれども、例えば土地税制は一応実施されることになりましたけれども、まだまだ内容は不十分である。これをこれから、大企業の土地投機抑制や一極集中、地方分散を進めるということの観点などから土地税制のあり方はまた検討していかなければならぬと思うのです。医師税制とか宗教法人など公益法人の課税の適正化とかあるいはキャピタルゲイン課税強化とか利子配当課税の見直しとか、聞くところによりますと来年は利子配当課税を検討するということなども何か出ておりますけれども、一体基本となっている不公平税制の是正の課題、項目についてどのような道筋でこれから是正をされていこうと考えられているのかについてお尋ねをします。
  138. 濱本英輔

    濱本政府委員 税体系を守っていきます上で一番大事なことが公平の確保でございますから、不公平税制というものが仮にあるといたしますと、それを是正するということはすべてに先立って考えなければならないことの一つだ、常にそのように認識しておりまして、今後もそのような考えで臨ませていただきたいと思っております。  今先生からお話ございましたように、平成四年度におきましてもみなし法人課税、赤字法人の問題、それから一般的な企業関係の租税特別措置の整理合理化あるいは国際課税での対応等、この観点からの見直しを進めておるところでございますけれども、これによりまして、例えば先年与野党協議の席で幾つか話題になりました不公平税制と称されるもののかなりのものに手が加わったという感じがいたしております。  ただいま、将来にわたってどうかというお話でございましたけれども、この与野党協議の席で話題になりましたもので現実に検討の時点まで示されておりますものとして残っておりますものには、お話ございました医師税制の問題というのがございまして、六十三年十月の協議の場で与党からの御回答には、四、五年をめどに結論を得ることとしたいという考え方が示されているというふうに承っておりまして、そのような検討のスケジュールというものを忘れてはいけないと思っております。ほかに企業関係の税制でございます数多くの租税特別措置、これにつきましては、当然のことでございますけれども、連年見直しを続けてまいりましたごとく今後も見直しを続けていかなければならないと思います。  社会経済の情勢が動いていきますにつれまして、今までございました税体系が、今まで公平と受け取られていた側面が不公平なものに映ってくるということがあり得ることでございますので、今までの税制が公平なものであったからといって気を緩めないで取り組んでいきたいと思っております。
  139. 富塚三夫

    ○富塚委員 やはり国民の前に、政府としてどういう不公平な税制が現在存在するのかという問題、もちろん政治的な状況とかいろいろなことの判断でありますが、やはり目安というか手順というか、そういうものを立てて議論をしていくというか、国民に示していくというふうな作風があってもいいのではないか。なかなか周囲の環境が許さないこともわからないわけではないですけれども、そういう点でもっと積極的に問題点を明らかにすることがいいのではないかというふうに思います。  それから、何人かの議員が質問したと思いますけれども、湾岸の臨時増税をまたそのまま残していくという問題、石油税あるいは自動車消費税の問題なども、これは公約して一年限りとしたらそれでやはりやめるのが筋ではないのか、国民を欺くことになりはしないかという点で多くの批判が出ているわけですけれども、これはどういう――やらざるを得ないという政府の態度だけなんでしょうけれども、国民に対してどういうふうに説明をされるのかという点についお尋ねします。
  140. 濱本英輔

    濱本政府委員 前段の御指摘でございます政府としてできれば公平、不公平の目安のようなものを語って、それに基づいて対応していくべきではないか、いくことが望ましいというお話かと存じますけれども、率直に申しまして、何が公平であって何が不公平であるかということを語ることは非常に難しいことだというふうに自覚をしております。ただ、いろいろな場面で、多くの論議の中から、これは不公平ではないかと御指摘があるもの、そういうものには耳を十分に傾けていき、政府みずから自分の問題として考え続けていかなければならない、いわばそのような態度でございます。  例えば、よく言われます不公平是正の例示としまして、企業関係の税制で、いろんな引当金制度の見直しの問題などもございますけれども、昨日も御論議ございましたのですけれども、引当金制度それ自体は私どもは不公平税制とは思っておりません。そういったものが実情にそぐわない状況が生ずれば、それは問題だというふうに思っておるわけでございまして、なかなかこの不公平税制のとらえ方自体が非常に難しいという感じを強く持っております。しかし、だからといってその問題をないがしろにするということでは決してないということは、繰り返しませんけれども、先ほど申し上げましたとおりでございます。  それからもう一つは、ただいまお話にございました増収措置として、法人臨時特別税あるいは普通乗用自動車の消費税につきまして臨時の特別な税率をお願いしておるという件でございますが、これは昨日の審議でも御指摘がございましたように、湾岸支援のために講ぜられました措置はこの際失効するものであるということを明確に申し上げなければならないと思います。湾岸支援という必要性というものに対応する法人臨時特別税であり石油臨時特別税でございましたし、それから普通乗用自動車の消費税六%の経過措置は、消費税導入時に論議されて行われてきたものでございます。それらが失効し、今回新しい必要というものに向かいます措置としまして、法人特別税、それから普通乗用自動車の消費税につきましては、新たに四・五%の税率でお願いをしたいと存ずるものでございます。なぜか。これも繰り返し申し上げていることでございますけれども、いかにも厳しい財政事情がございまして、ここでこの財政事情に対して一つのきちんとしたけじめをつけてまいりませんことには、結局は現代の国民が現代の国政からのサービス需要というものに対して支払わなければならない負担というものを他人、つまり後代の人たちにゆだねることになってはいけないというふうに判断され、長い時間を通しての公平というものを我々は守っていかなければならない立場にあると考えるわけでございまして、そういう意味合いと、お願いするにいたしましてもお願いの仕方を考えなければならない、必要最小限のものでなければならない、そういう観点から、現在の負担の状況等にさまざまな考え得るいろいろな要素を勘案いたしましてこれをお願いする、これにかわる方法がないと考えてお願いした次第でございます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 富塚三夫

    ○富塚委員 国民に約束したことは守っていく、そういうことがないと、税負担の問題などはとりわけ国民に支持されなければスムーズにいかないのですから、私はそういう点で注文をしておきたい、こう思います。  時間が参りましたので、大蔵大臣、私はやはり世界一の長寿国になって、定年退職してから二十五年、三十年生きられる時代になった。働いていると同じ時間が生きられる。ゲートボールをやっておられる方、いろいろなこと、それぞれの自分め生きがいを追求するために地域では皆頑張っておられる人が多いわけですね。そうすると、もっと日本の予算、日本の政策の問題も、やはり年金とか医療とか福祉政策を充実していく、すぐ高負担に結びつけるのではなくて、政策の重点をそこに置く、そして具体的なサイクルを考えながら予算政策の実現をしていくという作風にならないと、各省庁の毎年の概算要求が出て、ここを削ってここを足して、そんなことをやっていたのでは、経済大国日本にふさわしい、いわゆる今の国際化時代にふさわしい、日本が信頼される国にはなっていかないのではないかと思っています。  化学兵器ができて核兵器ができても、がんでどんどん死んでいく人がたくさんいるのですよね。なぜそれが治療できないのか、一般の人の素朴な質問ですよ。なぜ国の政策でがん退治ができないのか、あの病気は別なんだで済まされる問題ではない。  だから、そこのところを、やはり今こそ発想の転換をしていく時期に来たのだから、羽田大蔵大臣、次のポスト宮澤の有力な候補にも目されている一人なんですから、大いにひとつそのことに意を注いで頑張っていただきたいことを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  142. 太田誠一

  143. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 最後でありますが、よろしくひとつお願いをいたします。また、質問が多分に重複するかと思いますが、よろしく御答弁のほどお願いしたいと思います。  来年度の予算編成に当たりましては、本年度二兆八千億円の税収不足が見込まれるということ、さらにはまた、新年度の予算編成に当たっては、概算要求等を満たしていくためには六兆円程度の財源が足りないとか、いろいろ前段で財源不足の話が国民の耳にも大分たこができるほど聞かされた中で七十二兆円ほどの予算が編成をされた、こういうことになるわけでありますが、それがただいまもお話ありました湾岸税制を引き継ぐがごとき新税がつくられたわけであります。  極めて単純な質問をしたいと思いますが、今度の約二兆八千億円の税収不足という問題は、新年度のみならず五年度以降も影響をもたらす、こういうような文面が政府関係の書面の中にも出てくるし、また、昨年暮れのいわゆる二兆八千億の税収不足の問題の出たときのいわゆる財政展望等の問題についても、ここ一、二年ではこの影響克服は終わらない、こういう話もあったわけです。五年度以降にもその影響が及ぶということになりますと、今度の新税、つまり法人特別税が適用期限は二年、こういうことに期限を定められたことについては、従来臨時的な措置については二年というのが通常慣行であるみたいなことで言われておるわけでありますけれども、慣行ということでこの新税が二年ということになったのかどうか、そこのところをまずお尋ねをしたいと思います。
  144. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘がございましたように、少なくともこの四年の現況というものが五年にやはり尾を引いていくんじゃないのかということ、これがまず一つでございますし、また、過去におきましては、これは慣行ということではございませんけれども、やはり税制の安定性というようなこと、こういったことを考えたときに、今までおおむね二年ということでこういうものがなされてきたということが申し上げることができると思います。
  145. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 それで政府、政府と言わず首相も、あるいはまた大蔵大臣もそうですが、大臣すべてが、先ほどもお話がありましたけれども、豊かさを実感できる生活大国、これを実現したい、あるいぼまた国内経済については内需の拡大をやって持続的な成長を図る、そういう中で財政の再建をやりたい、こういうことに言葉が継がれているわけでありますけれども、ただいまも質疑があったのですけれども、政府・自民党関係は税問題、財源問題について、口を開けば、広く薄くとか、資産、所得、消費の均衡の上にとか、あるいは直接税と間接税のバランスをとってとか、大体その三つくらいに集約される言葉で税の問題を国民の皆さんに説明をしているということでありますけれども、少なくともバブル経済がはじけて今日のような経済状況のもとで税収不足が見込まれる、こういう段階では、やはり個人と法人の水準の関係とか、あるいはまた所得税あるいはこれから課題になるであろう利子配当所得等の課税の問題、さらには、残っておりますけれども消費税の問題、そして何か日本の国民負担率は、税収が落ち込めば当然負担率が下がるわけでありますが、下がったような統計数字が示されておりますが、決して喜ぶべきことではないのでありまして、税外負担という問題もあるわけでありますから、そういう問題をやはり総合的に議論をすべき時期ではないのか、実はこういうふうに思うわけであります。それは先ほど来から議論が行われておりますから、私はこの際質問としての答弁は省略をいたします。  ところで、その法人特別税の二・五%ということでありますが、これは基本税率と言わせていただきますが、三七・五%の変更あるいはまた従来の現存する法人税の中での税率の設定ということではなくて、改めて二年間の特別税としなければならないという根拠は何なのか。というのは、課税対象というのは足切りの部分について三百万から四百万に変更したといったような問題はございますけれども、課税対象が同一であるわけです。しかもその財源については、特定財源ではなくてこれは一般財源であるということになれば、改めてその特別税という税を起こさなければならないという、財源がないという意味ではよくわかりますけれども、いわゆる制度上の問題として改めて特別税を起こさなければならないということはおかしいのではないか、こういうふうに思うのであります。そのことについての御見解と、さらにはこういう制度にすれば、つまり現在提案されている制度にすれば、地方交付税等の配分の対象、つまり国税三法という対象からは除外をされるということになるのかな、こういうふうに思うわけでありますが、その面も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  146. 濱本英輔

    濱本政府委員 仰せのごとくでございまして、今回は先ほど来申し上げておりますように、必要最小限のものをお願いしたかったわけでございます。したがいまして、仮に法人税率を臨時的に引き上げさせていただくということにいたしますと、当然のことといたしまして、法人税額に連動しております法人住民税も自動的に増税になるわけでございます。その公さらに負担が増加いたします。そんなこともございまして、法人税に限定し、かつ地方との関係も、これはこの際、国の財政需要としてぎりぎりのものという位置づけをいたしまして、今仰せのように措置させていただいたわけでございます。しかも今までの法人臨時特別税とはまた別個のお願いでございまして、新しい法律に、当然のことでございますけれども、入れかえてお願いをしておるわけでございます。
  147. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 それで、ことしの秋にということが言われておりますが、九三年度の税制改正の柱の中に金融資産課税関係が問題になる、しかもそれはいわゆる所得とか消費とか資産というそれぞれに対する課税のバランスをとるための税制改革の一環として、しかもこれは過去からの課題としても引き継がれているわけです。そういう意味では、一環として考えられておるということになりますと、二年間の特別措置が行われて、しかもことしの秋には再来年度になりますかの税制問題を議論するということになりますと、私はやはり、景気が落ち込んで税収が上がらないということで慌てて税制を設けて、ことしの秋にはまた来年のためにいわゆる三つの課税対象のバランスをとる議論が行われて、そしてあと二年たったらまたこの税制がなくなっていくというぐあいで、しかも景気の低迷の中で二兆八千億の税収の落ち込みは五年以降も影響を及ぼす、こういうことになりますと、何か状況税制改革に取り組む時期とが全然整合性がないのではないかというふうに思うのですけれども、再度御見解を伺いたいと思います。
  148. 濱本英輔

    濱本政府委員 ただいまのお尋ねに対してお答えいたします前に、先生今利子課税の問題にお触れいただきましたけれども、先ほどの富塚先生のお尋ねの最後に不公平税制の是正の今後のスケジュールのようなものを語れとおっしゃいましたとき、わざわざ利子課税について御示唆をいただいておりましたのにかかわらず、私申し落としてしまいました。それも来年以降のスケジュールに入っておるということは忘れておりません。今の佐藤先生のお尋ねにもございましたように、この秋には利子課税の見直しを予定しなければなりません。  景気の変動と税制改正のタイミングというものがばらばらではないか、どういう規則性を持って、考え方を持ってやっているのかが一向にわからないというお尋ね、御指摘としてはまことによくわかるわけでございますけれども、景気の動きというのはとどめようがないものでございます。  そういう大きな流れに対してどういうタイミングで税制改正をやっていけばいいかということになるわけでございますけれども、二つございまして、一つは、例えば不公平税制を見直すということにつきましては、ある時期の御議論で将来に向けて何と何と何をどういうタイミングでやっていったらいいかという御議論がございまして、そういう御議論は非常に大事な御議論だと受けとめておりまして、それに向けていろいろな議論を準備していく、相当長い期間をかけて執行の状況を見、かつ議論に備えていくという意味で時間が設けられたものだと思っておりまして、そういう気持ちで進んでおります。  それからもう一つ財源不足に対応する措置でございまして、それはそのときそのときで起こってくるものでございますから、起こってきましたときに判断する、しかも、判断いたします場合でも必要最小限お願いするという立場をとっておるわけでございます。最小限と申します意味は、額的に必要なぎりぎりのものという意味一つございますとともに、レンジといたしましても見通し得るぎりぎりのところ、例えば先ほど来何度も御指摘ございます平成六年度以降のお話がございますけれども、六年度以降どのように展開していくかということを見定めることが非常に困難でございます。そのようなことから、今お願いしております臨時的な措置も四年度、五年度でお願いをしたいというふうにしているわけでございます。
  149. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 六年度以降の見通しの予測が困難だというのはよくわかるのですが、財政展望についてはそういう話ももう昨年の秋からありますので、御指摘を申し上げたわけです。  次に、今お話のありました不公平税制というか不公平な税といいますか、そういうことにかかわって若干お尋ねをしたいと思うのです。  政府税調の答申の中で、先ほど来もお話がありましたけれども、「みなし法人課税制度等」の項の中で、「このほか、課税の適正・公平の観点から、赤字法人課税その他の諸問題が指摘されている」ことから云々、こういう答申のくだりがございます。こういうくだりがあるのですけれども、今度の是正の中で、赤字法人の二年間の還付停止といいますか、この措置がとられようとしているわけでありますけれども、実際問題として赤字法人という、赤字であるかどうかということの企業会計上の内容についての認定はなかなか難しい企業もあるのではないか、こんなふうに実は思うわけであります。私は、二年の臨時的な措置ではなくて、いろいろ悩みがあるようなことは、検討経過の中で報道されておりますけれども、これは抜本的に見直しをすべきではないか。二年間だけ停止をするという財源措置ではなくて、抜本的な見直しをすべきではないかと思いますが、見解を伺いたいと思います。
  150. 濱本英輔

    濱本政府委員 お答え申し上げます。  先般の社会党の堀先生からの御指摘も同じような御指摘でございまして、赤字法人課税の問題につきまして抜本的に見直す必要があるのではないか。私どもはこの問題を数年前から政府税制調査会で御議論いただいてまいりまして、今日に至りますまでの問題の整理といたしましては、基本的に、赤字法人に向かいますのに所得課税という世界でいきます限りは、所得なきどころ課税なしということになりますので限界がある。それではそういう角度ではなくて、もう少し外形標準的なものに着目して負担をお願いしてはどうかという考え方考え方としてはあり得よう。その問題に対しましては、既に地方税として住民税の均等割でございますとか固定資産税の納付が行われている、これとの関連をどう考えるかというような論議がございます。さらに、今佐藤先生からもございましたけれども、赤字法人と言われているものには、制度的な対応の前に、まずその企業自体がどのような状態で赤字を出しているのか、その実態をきちっと究明する、つまり税務調査の充実によって対応していく面があるのではないかという指摘もあるところでございます。  そういう論議を今しょっておるわけでございますが、今回この状況で二年間の措置として欠損金の繰り戻し還付制度の停止をお願いするということにいたしておりますが、これをもって赤字法人課税の問題がけりがついたというふうに私ども申し上げているわけではございません。いい方法が見つかるかどうか、これは自信がございませんけれども、引さ続き検討させていただきたいと思っております。
  151. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 不公平税制については先ほど来から何回もありますからもう内容に触れませんが、その中で話題になった一つにいわゆる引当金の問題がございます。これを不公平税制と見るか、状況に応じて不公平な税になっていると見るかという議論が先ほど答弁がありましたけれども、その考え方は別にいたしまして、よく俎上にのせられるのが引当金であります。そこで、今度の税の是正の問題とはちょっと離れますが、お尋ねをしたいと思います。  銀行局の年報を拝見いたしまして、「銀行の検査」の項の「都市銀行」のくだりをちょっと見ますと、現在起こっております一連の不祥事事件、これをそのままここに固有名詞を当てはめれば、そのものずばり何か事件を示しているような感じの表現の検査報告がこの年報に載っております。  例えば、「債務者を過信し、実態把握不十分なまま容易に他行肩代りを行ったことから、多額の損失が発生しているもの」とか「債務者の資金使途等の実態把握を怠り、関連会社への無計画な土地取得資金流用を看過したことから、当該土地開発の長期遅延等により資金の固定化の発生を招いているものなどが認められている。」という検査指摘が載っているわけであります。  そういう検査指摘が実はあるのでありますが、この一連の事件、例えば共和であるとか東京佐川急便とか、こういうことでいろいろ載っておりまして、都市銀行等幾つかの金融機関がおおよそ三千億円の東京佐川に対する融資をやっている、こういうような記事が載っているわけであります。しかも、この佐川急便の再建問題については、企業合併をやる中で、そしてその上がるであろう利益の中から債務を償却していく、そのためには取引金融機関がいろいろ支援策をやろうではないか、こんなような記事が載っているわけでありますけれども、現在の事件の発展状況からいきますと、佐川急便自体が従来の業績ペースで行くとは考えられない。ということになれば、企業信用の変化という問題も考えられるのではないか。  そういう状況の中で、都銀など主要な銀行が再建を支援するということでありますけれども、佐川急便等に対する都銀等の融資にかかわって、大蔵省として具体的に銀行の検査なり事情聴取なり、あるいは指導に入っているというような状況があるのかどうか、まずお尋ねをしたいと思います。
  152. 土田正顕

    ○土田政府委員 この佐川急便、具体的には東京佐川急便の問題でございますが、私どもといたしましても取引先金融機関から随時実情の聴取をしているところでございます。東京佐川急便への融資は、いずれにいたしましても相当数の銀行やノンバンクによって行われているというふうに理解をしております。  そこで、元来東京佐川急便なり佐川グループは、一般的には運輸業界の第二の大手であり、また収益力にすぐれた企業であるという評価を得ておったようでございます。ただ、今となってみますと、結果的には金融機関の審査なり事後管理に甘いところがあったということかもしれないと思っております。  ただし、これは新聞報道などによれば、また現在捜査当局が実情を解明中でありましょうが、一部に簿外の経理があったり、しかもそのことが佐川本社にもかなり後まで知られずに行われておったというようなこともございますので、必ずしも金融機関が通常必要とされる審査をしていなかったためであるとも言い切れない。ただ、いずれにいたしましても、金融環境が厳しい中で不良化の懸念のある資金供与を行ったのは残念なことでございます。  今後の問題でありますが、ただいま御指摘もございましたけれども、これは佐川急便から金融団に対しまして佐川急便グループ六社の合併、再建を前提とした金融支援を要請中であるというふうに聞いております。ただし、この合併につきましては運輸業者として監督官庁のいわば認可を得る必要がございますので、今そちらの方の申請をしておるところだというふうにも聞いております。  当局としましては、やはり経営不振に陥った企業に対する金融支援については、基本的には金融機関みずからの経営判断により対処すべきものであると考えているところでございます。
  153. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 払お尋ねしたのは、例えば私は二月十四日の新聞を参考に申し上げておりますが、住友、三和、富士以下九一年の九月現在で三千億円、こういう数字が載っておるわけでありますが、こういうことをやってきて大事件になっているということについて、つまり今後についてでなくて、こういう状況の中で融資を行ってきたという都銀等に対して事情の聴取なり検査なり何か指導といったようなものを行っているのか、こういうことを伺っているわけであります。
  154. 土田正顕

    ○土田政府委員 これは個別金融機関と特定企業の融資にかかわる事柄でございますので、余り立ち入ったコメントは差し控えたいと存じますが、主要取引銀行からはいろいろと事情聴取をしているところでございます。  ただ私ども観点は、先ほど申しましたけれども、やはり金融機関の融資については、もちろん公共性なり健全経営確保なりの観点を踏まえることは当然ではございますが、銀行みずからの経営判断において対応するのが基本であるというふうに考えておりまして、目下いろいろと今後の金融機関と佐川急便との関係について話し合いが行われているところでございますので、その動向を注視しているところでございます。  なお、この検査につきましては、これは具体的にいつどうこうということはお答えを差し控えさせていただきたいと存じますけれども、一般論とすれば、検査の実施時期につきましては、前回検査からの経過期間それから情報収集の度合いなどから見まして検査の緊急性を判断いたしまして、さらに当局の検査体制の状況をも総合勘案して決めておるということを御理解いただきたいと存じます。
  155. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 例えば、都銀十三行ということで直近のデータでもよろしいのでありますが、不良債権といいますかそういうものがどのぐちいありまして、あるいはまた貸倒引当金というのはどのぐらい引き当てを積み立てしているのか。元年の資料では、拝見をいたしますと、都銀では一兆八千八百億ほど引当金があるようでありますが、これは貸出残高に対しては千分の七・四ぐらいの数字になっているようであります。  これもまた報道で恐縮でありますけれども、「バブルの崩壊で、不動産関連融資を中心に不良債権が急増、大幅な引当金不足の問題が表面化している。」云々というような記事がございまして、「貸国債権の貸倒償却の基準を弾力化してほしいという声が金融機関から出始めた。」こういうことで、場合によっては信用問題にもなるのではないかなどというようなことの記事があるわけでございます。  都銀十三行一々は結構でありますが、まとめて平成二年、あるいはまた元年度でも結構でありますけれども、不良債権と言われるものはおおよそどのぐらいで、引当金の積み立て状況はどうなのかということについて、さらにはまた、申し上げました新聞の報道のようなことが現実に金融界から要望があるとすれば、どういう見解をお持ちか、お尋ねをしたいと思います。
  156. 土田正顕

    ○土田政府委員 まず貸倒引当金の残高から御説明申し上げます。  ただいま委員御指摘の数字は平成元年度ということでございましたが、直近の平成三年九月末の都銀、便宜十一行の貸倒引当金残高は、一兆九千七百二十八億円となっております。  なお、不良債権の額についてはいろいろマスコミ報道もございますけれども、私どもとしては現在その実態把握に努めておるところであり、いずれ年度決算のヒアリングなどもございますので、そういうときにさらに状況を把握していきたいと思っております。  ただし、これは具体的な数字の話にはなりませんけれども、一般的な状況をいたしましては、やはりバブル経済崩壊の過程におきまして、一部の業種の業績が悪化していることなどから、今後金融機関の不良債権が増加し、貸し倒れ負担も増加していくことが懸念されます。しかしながら、現在の金融機関の経営状況から見ますと、それぞれ収益力、資本力その他から見ましても、また含み益の存在からしましても、金融システム全体の問題になることはないと思っておりますが、我々はもちろんこの健全性を確保すべく引き続き注意してまいりたいと存じます。  そこで、お尋ねの償却との関連でございますが、金融機関の健全性を保持する観点から、考え方としましては、回収不能と認められる債権及び最終の回収に重大な懸念があり損失の発生が見込まれる債権につきましては、適時適切に償却するよう金融機関を従来から指導してまいっておるところでございます。その債権は、税との関係で申しますと、債権の償却は無税償却と有税償却の二通りがございます。無税償却の方は、これは一般の事業法人と同様に法人税の基本通達の償却基準に基づいて処理しているところでございます。そのほか無税償却の要件を満たすには至らないが損失の発生が見込まれる債権につきましても、これは経営の健全性の保持の観点から有税償却するように指導をしてまいっておるところでございます。  そこで、当面の情勢との関連で最後に申し添えますと、例えば本年度の決算に当たりましては、今後中長期的に経営環境が一層厳しくなることも踏まえまして、健全経営の確保の観点から、不良資産については前広に有税償却を含めて積極的に整理するように金融機関に努めてもらってはどうかと考えておるわけでございます。もちろんこれはそれぞれの金融機関の個別の業況により、また体力によることでございますので、一般論としてはなかなか申し上げかねるのでございますが、それぞれの銀行においてしかるべく自分の経営内容を勘案の上、なるべく前広に有税償却を含めて不良債権を整理してもらうよう私どもとしては期待をしておるところでございます。
  157. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 次に、行政手続法の制定あるいはまた俗に言われますところの納税者権利憲章といいますか、あるいは宣言とか俗にそう言われておりますが、そういったものに関連をいたしましてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、自動車消費税の四・五%でありますが、これも先ほどの関連でありますけれども、二年間ということであります。これは、自動車の税金を、本税の消費税の方ではなくて特別措置をするというのは、私は税の特別措置があるというのは、期間が二年間であろうが三年であろうが一年であろうが、そこには政策的な意味合いがあるから特別措置があるんだろう。例えば、産業政策上だとかあるいはまた公害対策上だとかあるいは道路行政のとか、どういう政策であるかは別にいたしまして、あるいはまた課税をされるそういう立場から見た場合の牽引措置とか、そういった意味でもろもろの政策が絡み合ってこの特別措置というのは行われるであろう、実は私は一般的にそう理解をしているわけでありますが、今度の自動車税の四・五は六から下げたからいいじゃないかというのではなくて、これもまた一般財源化しているわけであります。  こういう点を考えてまいりますと、私はこの措置については疑問を持つわけでありますが、見解を伺いたいと思います。
  158. 濱本英輔

    濱本政府委員 先ほども申し上げましたことでございますが、普通乗用自動車にかかります消費税、当初この六%の経過措置がとられましたのは、消費税創設時におきます諸事情に基づくものでございまして、今回の措置とは全く性格を異にするものであるということを申し上げておかなければならないと思います。今回の措置は、当面の厳しい財政事情に対応しますための新たな措置というふうに申し上げなければならないと存じます。  これらを受けとめます器といたしまして、これまでの六%につきましては、これは消費税創設時の事情ということで、その経過措置の中で受けとめられたものでございますから、消費税法附則で規定するということは御納得いただけようかと存じますけれども、御指摘の点は新たに受けとめる受けとめ方として、それをなぜ租税特別措置法にしてあるのかという点でございます。  租税特別措置法でございますけれども、これは例えば、一定の期間、一定の目的のための各個別法の特例、各個別法の特例を一定期間、一定目的のために措置していただく場合、その場合に、この租税特別措置法で受けさせていただくということが今まで行われておるわけでございまして、財源確保のために既存の税の臨時、時限の措置、増収措置というものも租税特別措置法で規定される例でございます。
  159. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 私は、租税特別措置はやはり政策的に必要な場合に臨時的に行われるということが望ましいというふうに思いますので、意見を申し上げておきます。  それから、消費税の話でございますが、経済企画庁関係者お見えいただいているかと思いますが、お尋ねをしたいと思いますけれども、昨年の十月にいわゆる非課税品目の項目の追加がございまして、実施をされているわけでありますが、民間家賃の軽減についてどういう状況にあるかということについて、経企庁はモニター選定などをいたしまして調査をしていると思いますが、その結果、状況について御報告をいただきたいと思います。
  160. 藤村英樹

    ○藤村説明員 家賃モニターの調査結果についてのお尋ねでございますが、先生御案内のように、私ども昨年秋の消費税改正に際しまして、全国の借家人の中から一千名ほどの家賃モニターを公募いたしまして、消費税非課税化の効果が家賃に適正に反映されているかどうかという点について調査を行ったところでございます。  この調査につきましては、昨年の十月と十二月の二回にわたって実施したものでございますが、まず十月の第一回調査におきましては、全体の約七四%、それから十二月の第二回、これは追跡調査を行ったわけでございますが、全体の約八五%のモニターにつきまして消費税非課税化の効果が家賃上反映されているという結果になっているわけでございます。今後さらに契約更改の到来に合わせまして家賃が調整されていくものも若干残っているかと思われますので、この家賃改定の動向につきましては、さらに引き続きまして十分な注意を払って監視してまいりたいというふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  161. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 そういう数字で効果があらわれているという、効果と言うべきかどうか、これは効果は一〇〇%出なければいけないわけでありますから、一〇〇%ではないというのは効果がまだ出ていないということだと思います。そのモニター調査の今の七四%ぐらいから八五%ぐらいにというお話でございますが、モニター調査の日本全体の民間家賃というものを見る場合に、データの信憑性、せっかく調査したことについて信憑性を言うのは大変申しわけないのでありますが、千名ですよね。それで一体どういう地域とかあるいはどういう家賃階層とか、そういうようなことについてはある程度この数字から類推的に全国的な状況に置きかえて判断することができるというようなデータだと言い切れないまでも、そういうデータとして伺っていいか、それともある程度部分的なものである、その点はそういうふうにということなのか、その辺ちょっと御答弁をいただきたい。
  162. 藤村英樹

    ○藤村説明員 家賃モニターにつきましては、先ほど申し上げましたように、私どもは物価行政の観点から消費税の非課税化というものの効果が円滑に実施されて転嫁されているかどうかというところを物価の立場からマクロ的に見ようということでございまして、モニターの数を幾らにするかというのは、全国的に公募するわけでございますけれども、これも何千人あるいは何万人にやっていいということでもございませんし、具体的に予算上の制約その他手続上等の制約もございますので、あえて全国四十七都道府県網羅的に、その土地の人口等勘案しながら比例配分して実態調査を行ったということでございますので、一応全国的に都道府県それぞれ人口等に応じて比例的に配分されているのじゃないかと思います。  また、借家人の年齢構成等につきましては、先ほど申し上げたような調査の目的からしまして、そういう詳細な設計にはしていなかったということでございます。
  163. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 そういうことで、非課税といっても税を上積みした分がまだ是正されていない。あるいはまた是正率も、三%ではなくて二・何%かである。これは結局ゼロ税率ではないということが結果としてそういう問題を生んでいるのだろう。あるいはまた家賃についても、家主の側としてはいろいろな経費の値上がりとかを込み込みにして物を言ってやっているということですから正確に三%が出ないというのは理解ができるわけでありますが、これは大蔵省お尋ねをしたいと思うのでありますが、要すれば非課税とはいいながら、三%まではいかないまでも、これは平均二・八%の引き下げ率でありますけれども、一〇〇%の実施率ではなくてまだ二〇%近くが未実施である、これからこれが減少していくのかどうかわかりませんけれども。そういう状況を見て、あるいはまた、うるさいから一たん秋分は下げるけれども次の家賃の改定期にはまたその秋分もひとつ込みにして上げてやろうという家主もあるかもしれませんけれども、問題は、こういう結果が出ているというのは消費税の持っ制度上の欠陥だ、こういうふうに私は実は思うわけでありますが、どういうふうにお考えか、お尋ねをしたいと思います。
  164. 濱本英輔

    濱本政府委員 消費税の仕組みからいたしまして、例えば家賃の場合でもその家賃に含まれております要素といたしまして、その貸家を建てた資材にかかっておりました消費税、あるいは借家人にその貸し家に入ってもらうについてかかりましたいろいろなサービス等に伴います消費税、そういったいわば必要な諸支出というものに附帯しております消費税というものはそのまま乗っかってきておりますので、今先生のおっしゃったように三%丸々下がるということではない。これは消費税論議のときに何度も繰り返された点でございますが、どこの国の付加価値税にいたしましても我々が考え得る仕組みといたしましてそういった形のものにならざるを得ない。これは消費税の欠陥ということでなくて、消費税の仕組みそのものが常に持たざるを得ない状況であると思っておるわけでございます。  ただ問題は、それを御理解いただくことでございますけれども、今回、昨年十月の消費税法改正に当たりまして、新しい改正内容を皆さんに聞いていただかなければならないということで業界のいろいろな団体等に働きかけまして説明会を行っていったわけでございます。説明会の結果といたしまして、先ほど経企庁の方からモニター調査の結果が報告になりましたけれども、これだけの方がきちんと実施していってくださっておるというその事実を伺いまして、国民の協力というか、きちんと改正を受けとめてくださっているということに対して本当にありがたいことだなと私は思います。  一遍に一〇〇%届いてないではないか、御指摘のとおりでございますが、前回調査十月、今回調査十二月とただいま御報告がございました。十月は実施の段階で、この段階がたしか七四%という御報告でございましたけれども、十二月にはこれが八五%に上がってきておるといたしますと、時間とともに今まで十分御認識をいただけてなかった先にも御認識がいただける状態になっているのかな、またそのように努力しなければならないのだなということを感じます。  以上でございます。
  165. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 いずれにしましても、素人といいますか庶民から考えれば、ああ非課税になるのか、それじゃ三%下がるのか、これが庶民の一般的な理解だろうと思います。しかし、そうならないのが消費税の仕組みでございますから、そこにもともと問題があるということでございますが、先ほど同僚議員からもありましたように、この税の問題につきましては、例えば使途不明金の問題が先ほどございました。あるいは五千数百億円という最悪の申告漏れが国税調査によってわかったとか、さまざまな税に対する問題が連日新聞等で報道されているというような状況がございます。  そこで、さらにことしの秋には何か納税者番号制の採用の問題についても検討しなければいかぬというような方向性の話が出ているわけでありますが、いずれにしましても、納税者が国に対して、あるいは地方に対して安心して税金を納めて、それが国民の福祉のために十分に役立っているという状況があれば、国民の皆さんは苦しくとも税を納めるということだろうと思いますが、さまざまな徴税過程で問題があるということであります。  そこで、大蔵省の協力団体であります例えば日本税理士会におきまして、新年度の予算編成に当たって、国税通則法関係の改正について、一般行政手続法制定の動きと並行して税務行政の執行に関する手続規定を整備されたいということで、我が国では統一性を欠いて法令に明定されていない、国民の適正な権利を擁護するためにも欧米並みのことをやりなさい、やってほしい、こういう要望が出されております。  それで、例えば国税通則法とか不服審査の関係の法律とか徴収法とか、こういうものを拝見をいたしましても、あるいはまた消費税を導入されるときの税制改革法の法の趣旨あるいは目的という規定を拝見いたしましても、納税者の権利を守るなどという言葉は一つも出てこないのですね。つまり、税務債権をどう確保するかということだけがこの法の目的の中に出てくる。こういうような状態が我が国の状態だろうというふうに思います。  とりわけ、サラリーマンといいますか勤労者で、その働いているところ以外には収入がないという方は、通常もう源泉徴収で税を取られて十二月に精算されておりますからわからないのでありますが、何かちょっと事ありますと、税務署から申告の用紙が送られてきて、その中にどういうふうに書いてあるか、申告をやらなければならない人という書き方をしているわけですね。これは、私は非常に納税者をばかにした話じゃないかと思うのです。確定申告をしなければならない人は次の一、二、三にある人、こういう書き方です。だから、サラリーマンは、給与所得者は確定申告をやらなくてもいい人というか、そういう案内はないですね。通常、職場に入れば税は、給与係か人事係か知りませんけれども、そこで差し引いて十二月に精算してくれるから、ああ税というのは特別徴収義務者が差し引いて納めるものである、したがって私はただその書類を受け取ればいい、源泉徴収票を受け取ればいいということに頭の中ででき上がってしまっていますね。そういうのが実際の税に対する国民の一般的な認識だろう、こう思います。  ところで、この所得税法二百四十二条、これは大臣見解を私はお伺いしたいと思うのですが、その中に職員の質問検査権みたいなものがありまして、それに対しては検査を拒んだり妨げたりしてはならない、こういうことがあったり、あるいは偽りの記載をした帳簿書類を提示した者、偽りのものは一つの犯罪みたいなものでありますから問題でありますが、なぜ私のところにその調査に来たのですか、何でそんなこと聞くのですか、今のところ答えられませんと、仮に押し問答になった場合には、一年以下の懲役または二十万円以下の罰金に処す、こういうふうになっているわけであります。  先ほど申し上げましたように、税関係の法律を見ても、国民あるいは納税者の権利をどう保護していくか、利益を守っていくかなどということはどこにも書いていない。しかし、取る方の法律には、ちょっとトラブルがあれば罰しますよ、こういうような規定になっているわけですね。  いろいろ伺いたいと思いますが、まず所得税法のこの規定というのはどんなふうな感想をお持ちか、大臣お尋ねをしたいと思います。
  166. 濱本英輔

    濱本政府委員 さしあたりまして、最後に御指摘がございました点でございますけれども、職員の質問に対しまして虚偽の答弁をした場合等につきましては、今仰せのような規定があろうかと存じますけれども、押し問答で直ちに罰則ということにはなっておりません。  我が国の法体系で、先ほどお話ございました納税者の側に立った規定というものが不備ではないかというお尋ねであったかと思いますけれども、税務の体系といたしましては、かなり克明に納税者側の権利をいわば守るといいますか、納税者側の権利というものをきちっと踏まえた規定がございますことも申し上げておかなければならないと存じます。
  167. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 私、押し問答と言いましたけれども、押し問答でなくてもいいのです。質問に答えなかったならば一年以下の懲役または二十万、こう書いてあるのですから、押し問答をやらなくても答えないだけでそうなるのですね、これは条文を率直にそのまま読みますと。これは結構でございます。こういうような条文であるということをまず私は御指摘を申し上げました上でお尋ねをしたいと思います。  今、行革審の答申等の関係もありまして、総務庁の方で行政手続法の制定をどうするかというような御検討をされていると思うのでありますが、報道等を拝見いたしますと、当初の要綱をつくる段階からかなり後退をして要綱案がまとまった。後退というのか、縮小されたというのか、そういうような報道もあるのでありますが、現状どうなっているのか、総務庁の方にお尋ねをしたいと思います。
  168. 関有一

    ○関説明員 お答え申し上げます。  行政手続法につきましては、昨年十一月に行革審の公正・透明な行政手続部会の報告、それから十二月に行革審の答申がございました。その中では、この行政手続法の性格にかんがみまして、一般法たる行政手続法をすべての行政分野に一律に適用していくことは必ずしも適当ではない、そういう考え方に基づきまして、本来の行政権の行使と見られないもの、あるいは行政庁との間で特別な規律の関係にあるもの、処分の性質上行政手続法の諸規定の適用になじまないもの、特定の行政分野において独自の手続体系が形成されているものにつきまして適用除外を考えたわけでございます。  先生お尋ねの、昨年七月に公表いたしました第一次案と比べた場合でございますが、以上申し上げましたような基本的な考え方につきましては変わるところはございませんでした。ただし、幾つかの事項が新たに加わったわけでございます。それらを具体的に申し上げますと、社会福祉施設への入所の手続、補助金等の交付の手続、選挙等の手続、換地処分の手続、社会保険料の賦課徴収の手続でございます。  しかし、要綱案で適用除外となっているものにつきましても、手続がなくてよいというふうなことではございませんで、それぞれの分野でそれぞれふさわしい手続が存在をするということもございます。それからまた、必要に応じて整備を図ることが考えられるわけでございます、その点につきましても、部会報告の一部であります「要綱案取りまとめの基本考え方」というところでは、これらの分野についても「必要な見直しか行われ、手続の一層の整備、充実が図られることが望まれる。」と述べているところでございます。
  169. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 大蔵省にとっては気分の悪いところだろうと思いますけれども、証券会社によるいわゆる損失補てんというような問題は、こうした大蔵省、こうしたというのは大蔵省の体質が余りよくないということが書いてあるわけでありますが、こうした体質が図らずも露呈した。法律の裏づけがないのに損失補てんの自粛などを求める通達を出して、それに従わなかったら行政指導だ、こういうことでやっているから。国民の利益を守るためには行政手続法をきちんと決めなきゃいかぬ、実はそういう論評もあるわけでありますけれども、今度の要綱案を拝見いたしますと、第二章、第三章、と言ってもあれですが、「申請に対する処分」ある、いは「不利益処分」等の条項については、これは例えば租税の賦課徴収に関する処分とか国税の滞納処分の問題とか立入検査、報告徴収その他云々というようなものは除外をするということに要綱ではなっているわけですね。一部には各省庁がそれぞれ働きかけをして三十数項目が対象外になった、こういうことでは依然士していわゆる行政指導という行政の側のうまみが残るんではないかという論評も実は載っているわけであります。  こういうことでありますけれども大蔵大臣は、先ほど私が申し上げましたように、税を徴収するに当たってのさまざまな法律には、納税者の権利を守るとか保障してやるとかいう条項はない。不服の申し立てができるという条文はありますけれども、そういうのがない。今度、手続法ができたら少し民主的に行われるようになるのかな、こういうふうに思いましたら、税関係は除外をする、こういうふうに実はなって、各省庁の働きかけが行革審に対してあった、こういうのが報道にあるんでありますが、それはともかくといたしまして、この手続法の制定に関して税関係も包括すべきではないかと私は思いますが、大蔵大臣、どういうふうに思いますか。  さらにまた、先進国ではいわゆる納税者の権利宣言とかあるいは権利憲章というようなものが決められて、例えばフランスでは付加価値税が決められる過程の中でのトラブルを最小限に抑えるための憲章が決められるとか、あるいはカナダにおいては税を節税ではなくて、ごまかしているのではないかというふうに思われるものがあるならば、そういうことの調査を求めることもできるという条項を入れるとか、それはアメリカでもイギリスでも、今先進国では、いわゆる納税者の権利宣言あるいは憲章といったようなものが制定をされている。しかし、我が国だけは手続法もおくれているし、そうした納税者の権利を保障するような宣言とか憲章といった類のものもない、こういうような現状について大臣、どういうふうにお考えですか。手続法の制定問題も含めて、大臣見解お尋ねしたいと思います。
  170. 濱本英輔

    濱本政府委員 事実の関係につきましては、私の方から恐縮でございますけれども、御説明申し上げておきたいと存じます。  二点ございまして、一つは、我が国の税体系の中には納税者の立場に立ってその権利を守るべき規定というものが置かれていないというふうに今お伺いをしたのでございますけれども、私どもの理解を申し上げますと、幾つも例がございますが、例えば納税者が申請をする申請の処理期間というものにつきましても、日本の場合、納税者が更正の請求なら更正の請求をいたしますと、例えば一定の期間、三カ月なら三カ月を経過いたしまして、なお当局から納税者側に対してちゃんとした答えがなされてないという場合には、直ちに還付加算金がそこからつく、つまりペナルティー的な還付加算金を当局側が課される、あるいは何か青色申告に対する更正でもよろしいのでございますけれども、そのような更正を当局側がしようといたしました場合にはその理由はきちんと付記しなければいけない。それから、納税の猶予が行われております。その取り消しをせんとしましたときには、猶予されている納税者側の弁明を聞かなければならない。もろもろの規定がそれぞれの法律にはめ込まれておるということでございます。これは非常に子細なことになりますのでその程度にとどめさせていただきますけれども、要するに今申し上げました更正決定の手続でございますとか不服審査の手続でございますとか、そういった一般的な共通的な規定につきましては、国税通則法という共通則に盛り込んでいただいているわけでございます。  それからまた、青色申告者に対する更正通知書の理由付記でございますとか、質問検査権の先ほどの行使でございますとか、そういうものは所得税の場合はどうか、価税の場合はどうかということに結局はなるものでございますから、それぞれの個別法を読んでいきますとその最後にどうなるということが書いてある。つまり、個別法に分けて書いてあるということでございまして、税の体系というのは一つの法律でつくるものではなくて、複数の法律全体として一つの体系をつくらせていただいているというふうに私どもは認識し、そのように理解を願いたいと思っておるわけでございます。  それから、後に御指摘がございました納税者憲章、宣言といったようなものがまとめられている。そういう国の事例があることは承知しておりますが、それにつきましてはOECDの報告書が出ておりまして、これに簡潔な記載が実はございます。このOECDの報告書によりますと、納税者憲章ないし宣言にまとめられております事例のほとんどの場合は、これらは納税者に認められている権利の拡大を図るものではないけれども、納税者に権利を周知し、政府による基本権の保護を再確認する有用な手段と考えられるといたしまして、その後に国々の事例が多少書いてございますが、ただしといたしまして、納税者憲章等を特に有しない国でも納税者の権利は同様に尊重されており、事実上これらの憲章等で規定されている権利と同様な権利を有していることは強調されるべきであるというふうに記載されておりまして、我が国などの場合にはそれに当たっているのかなという気がいたします。
  171. 羽田孜

    羽田国務大臣 今の御指摘の中には、統一的な行政手続の中に書き込むといいますか、適用する必要があるのじゃないのかという御指摘もあったわけでありますけれども、今局長の方からお話がございましたように、税体系の中で従前から納税者の権利保護というものを図っているということを申し上げることができると思います。  しかし、いずれにいたしましても、徴税ということに関しましては、信頼、あるいは税をあれされるということに対して何か国民の中には恐怖感といいますか、そんなものもあるということもあります。そういう意味で、徴税に当たる場合にはそういった立場というものを理解しながら対応していくというものが必要であろうと思っておりまして、実はこの前も、これは税関の問題の関係の皆さん方にお話ししたときにも、日本のお経の中に和顔愛語というのがありますけれども、慈しみのある顔といいますか、あるいは慈しみのある言葉、そういうもので語りかけながら本当の理解を得ながら徴税をしてほしいということを実はお話ししたことがございますけれども、そういうものを私たち常に腹の中に置きながら対応していきたいというふうに思っております。
  172. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、最後にちょっと申し上げさせていただきますけれども、個別法の中に入っているという認識でいるところに実は問題があるのだということですね。国民は個別法を読まなければ税がわからないというのでは困るので、憲章とか宣言というのは、実は国民があらかじめ税とはこういうものだということを知らしめられるような権利が保障されるということでなければいかぬということだろうと思うのです。  それから、今大臣がおっしゃいましたけれども、実は税務運営規定ですか、あれを見ますと、税務署は怖いものだというふうに国民の感情があるから、そこのところはないように対応するのが大切だなどという指導方針を書かなければいけないような税務行政であるということを十分考えていただいて、民主的な行政をやるようにお願いをいたしまして終わります。ありがとうございました。
  173. 太田誠一

    太田委員長 次回は、来る三月四日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四分散会