○正森
委員 まだまだ聞きたいと思いますが、時間がございませんので次の点に移ります。
それは、この間から宮澤
総理の発言の中で、
アメリカの
労働者は勤労観に欠けるとかなんとかいうことを言ったとか言わないとかいうので
アメリカで大分問題になりました。報道によりますと、ゲッパートという民主党の下院院内総務というのは「
日本の人種差別主義の表れで、無知だ」とかあるいはリーグル上院銀行住宅都市
委員長も「米
労働者への中傷であり、憤りを感じる」というようなことを言いまして、あたかも宮澤
総理が
アメリカの
労働者が勤労意欲に欠けると言うたかのようにとって全部批判をしております。
しかし、これは全く事実の誤解ではないですかね。私も非常に関心を持ちましたので、
平成四年二月三日の
予算委員会の議事録をとってみましたが、宮澤
総理はそういうことは言っていないんですね。私どもはリクルートとか共和では宮澤内閣あるいは
総理自身の金権腐敗体質を批判しておりますけれども、しかし事実に基づかない
アメリカの批判というのは我が国の国益からいっても黙視することはできない。例えば宮澤
総理はこう言っているんですね。「確かに今
アメリカに欠けておりますものといいますか、この十何年、ここに至ったゆえんを見ていきますと、物をつくるというか、価値を生むということについての解釈が非常にルースになったと申しますか、それはマネーマーケットでも価値を生むには違いないだろうとか、そういう額に汗をして
一つ物を創造していくという、そういう勤労の倫理でございますか、そういうものがいろいろなことに関係があったと思います。」中略しますが、「マネーマーケットが進みまして、今度はジャンクボンドというものになりました。ジャンクボンドというようなものは、これは本当にあ合
意味で言葉が示すように危険なものでございますし、LBO、レバレッジド・バイアウトなんというのも、全く自分で手金を持たずに人のものを買収して、その結果、利子が払えなくて倒産してしまうという、だれが考えても長続きがしないことをここ十年余りやってきた。私は、その辺のところに働く倫理観というのが欠けているのじゃないかということをずうっと思ってまいりました。」中略「やはり額に汗をして価値をつくり上げていくということが大事なことだ。」云々、こういう内容ですね。ですから、これは全体として
アメリカの経済のあり方、
アメリカの経営者のあり方を批判しているのであって、
アメリカの
労働者を全く批判していないのですね。それに対して
アメリカがこういうことを言っている。
それで、こういう
アメリカの言いがかりと言えるようなものはやはりきちんと反撃していかなければならないと思うのですね。ここに持ってきましたのは龍谷大学教授の奥村さんの「企業買収」という書物ですけれども、その中で
アメリカの学者が
アメリカ自身のこういう風潮を批判しているのですね。時間がもうございませんので、もうちょっとあればいろいろ外用できるのですが、もう終了いたしますというのを持ってきましたからあれですけれども、
一つだけ引用しますと、こう言っているのです。「LBOを行って買収が成功したあとの企業はどうなるのだろうか。まず資産の売却によって企業の規模が縮小し、従業員の数も減る。「フォーチュン」(一九八九年一月二日号)によると、たとえば一九八六年にキャンポーが買収したアライド・ストアーズは買収
金額が三五億八三〇〇万ドルであったが、買収後のアライド・ストアーズの資産売却は二二億ドルに達しており、その結果、従業員の数は六万一八〇〇人から二万七〇〇〇人に激減している。」云々というように書きまして、だから企業を借金づけにして財務体質を悪化させるのだ、こういうことを言っている。
さらにまたもう
一つだけ、これで引用をやめますが、ハーバード大学のロバート・ライシュという人がこの問題を非常に深く研究しているのです。そしてライシュは、現在の合併、買収が
アメリカ企業の生産性に害を与えるとして次のような四つの点を挙げている。
引用すれば長くなりますから要約しますが、「(1)近視眼的な経営 会社が乗っ取られることをおそれ、そして巨額の借入金の返済に追われるために、経営者は
短期的な利益に重点を置いて経営をし、長期的な投資をしない。」こういう点に問題がある。二番は「人材の浪費」、「会社を買収したり、また資産を売却するというような財務的な操作のために有能な人材が浪費される。その結果、生産部門からペーパー部門への頭脳流出が起る。」云々ということを言っております。第三は「借金漬け」で、「乗取り、その防衛、あるいは自社株買戻しなどすべて借入金で行われるから、会社は「借金漬け」となり、金利負担が大幅に増えている。」云々、こう言っているのです。第四番目は「不信」で、「リストラクチュアリングは結局のところゼロサム・ゲームであり、だれかが儲ければ他はそれだけ損をする。パイを大きくするために生産に従事するよりも、パイの分捕りの方が儲かるということになれば人々の間に不信が増大する。そうなれば共通の
目的に向かって人々が協力するということはできなくなり、
アメリカの生産性は低下する。」
これは
日本の学者が言っているんじゃないんですよ。
アメリカのこの問題を深く研究した学者が言っているのです。そういうことを勉強もせずに、
アメリカの下院
議員や上院
議員が見当外れの批判をするなどというのは、これは
議会人としてもってのほかじゃないですか。大蔵
大臣はどう思われますか。