○
安彦参考人 弁護士の
安彦和子と申します。
きょう、この場にお呼びいただきましたことにつきまして、
先生方に厚くお礼申し上げます。
今までのお二人の
先生方は、それぞれの
企業を代表されていらっしゃいますが、私の方は、一
弁護士としての
立場で
意見を申させていただきます。
弁護士の場合は、
日本弁護士連合会というのがございまして、その
消費者問題対策委員会というのがありまして、その
委員でございますけれども、
手続上、私がいろいろな
消費者問題に取り組んでいるというようなことできょうここに参らせていただきました。
まず、この本
法律案制定につきましては、
制定自体につきましては大変いい
法律ではないかと思うのです。結局は、この
リース産業それから
クレジット産業に対しまして、どうやら低
コストで
自己資金調達ができるということで
自主性が高まりますし、私としては大変いいかなと思いますので、
制定自体につきましては
意見は述べさせていただかないということで、制定された以後にこれをどう適用しようかという適用上について
意見を述べさせていただきます。
これからの
意見は、
消費者トラブルから見ますと、
リーストラブルということにつきましては、余り今のところは数ないのです。
クレジットに関しましては、
国民生活センターの統計によりますと、大体四件に一件がこの
クレジットにかかわる
トラブルであるということですから、これから申し上げますのは、
クレジット関係を
中心とした考えであるというふうに御理解いただきたいと思います。
時間の
関係上、いろいろ御
意見を申し上げたいのですが、三点に絞って
お話をさせていただきます。
まず第一点は、この
法律によりまして、
リース企業それから
クレジット企業の方で
利益があると聞いております。それは、今申し上げましたように、低
コストで
資金を調達できるということですから、この
利益を
企業にとどめないで、
消費者の方にもその
利益の一端を還元していただきたいと思うのです。といいますのは、私はいろいろな
消費者問題を取り扱っておりましていつも痛感させられることは、
企業優先、
企業の
利益あるいは
企業に重点を置いた考えで、
消費者の
利益というものが大変軽視されているのではないであろうか。アメリカにいち早く
消費者主権という言葉が確立されましたけれども、日本においては言葉ばかりが走っておりまして、現実に適用するということになりますと、
消費者主権というのがいかにむなしいかということを体験してまいっております。そこで、この
法律で
利益がもしあるならば、それをどうぞ
消費者の方に還元していただいて、
リース料の引き下げそれから
クレジットの手数料の引き下げというところに結びつけていただきたいと思います。
それから第二点なんですけれども、
特定債権等の
譲渡をされた場合に、一体、原
債務者である
リース利用者、
クレジット利用者の
立場がどうなるのであろうかということが、あとひとつ明確にされていないのではなかろうかと思うのです。その原
債務者に対する債権の取り立ては、譲り受け人から従来の
リース企業者あるいは
クレジット企業者に委託をするということですから、債権の取り立てについては第六条でどうやら規定がなされている。それに反しまして、
消費者側が権利を行使する相手については、ひとつはっきりしていないんじゃないか。例えば、割賦
販売法に
消費者の権利としてクーリングオフという権利があります。これは、ある一定期間であれば
契約を無条件で解除できるという規定であります。それからもう
一つは、
クレジット契約で
商品を購入した場合に
商品を
販売した会社にクレームがつけられる場合、これを抗弁権といいますが、物に瑕疵があったりあるいは会社が倒産したときにそういうような抗弁を
クレジット会社にも主張しまして、それ以降の
クレジット代金を中止することができる権利を言うのですが、本件で債権が
譲渡された場合に、クーリングオフあるいは抗弁権を
クレジット会社に主張するときに、一体どちらをすればいいのでしょうかということがまだひとつはっきりしてないということであります。
この抗弁権の行使その他の権利行使のときに一番支障を来すかなと思うのは、裁判を起こすときに
消費者側が原告になる場合です。
例えば卑近の例をとりますと、ある
販売会社が詐欺的手口でレジャー
会員権を売りまくったのです。それで多額の金を集めまして、すぐ倒産いたしました。レジャー
会員権は紙くずに終わりましたので、購入者の
消費者が
クレジット会社に対しまして、この代金は
払いたくないと言ったところが、それは
関係ないということで盛んに督促状が送られてきました。そこで、
消費者の方は音を上げまして、かなりの数の
消費者が私のところに、何とかならないかということで依頼があったわけです。そこで裁判をいたしまして、
クレジット会社を被告にして、
債務不存在確認の訴えという訴訟を起こしました。
このときは相手の
クレジット会社がはっきりしているからよろしいのですが、一体、こういう訴訟を起こすときに、この
特定債権等を
譲渡した場合にどうなるのであろうかということにつきましては、この
法律の運用上、
譲渡にかかわらず、
消費者側、最終的な、原
債務者に不
利益をこうむらないように運営していただきたい、これが第二点であります。
それから第三点、これは
青柳先生から随分
お話がありまして、
業界としてもかなり多重
債務の改善に力点を置かれているように伺いまして、私も大変好ましいと思っておりますが、
一つ私の方から、この多重
債務にまつわる問題について、やはり
消費者問題を取り扱っている
弁護士の
立場からも、多重
債務についてどういう
問題点があるのかということについて
お話しさせていただきます。
第三点としては、
クレジットに関する
消費者トラブルが、先ほど私が申し上げましたように、
消費者トラブルの約四件に一件が
クレジットに関するものである。そして、その内容を見ますと、大別いたしますと、多重
債務が
一つ、それからもう
一つは、悪質な
販売業者と
業務提携をしていることについての
トラブルなのです。
それでまず、過剰な貸し付け、これに対して、特に近時問題になっているのは
若年層の多重
債務です。先ほど、
消費者側の
啓発、教育などということを
青柳先生もおっしゃっておりましたとおりに、私も多重
債務の原因をよくよく考えてみますと、大きく分けて、
消費者側の責任はどこにあるのか、それから業者側の責任はどこにあるのかということを考えたときに、
消費者側はどうやら、支
払い困難になるところまでは
消費者の責任じゃないかなと思う。というのは、私のところに何十件もありますが、なぜあなたは支
払いもできないようなカードを
発行して使用したのかとお聞きしますと、ほとんどの方が、何とかなる、その何とかなるというのが非常に無
計画なところもあるのですね。それから今度、払えなくなったときにどうするかというと、業者の方から払えという盛んな責め立てがありますので、後半はどうやら業者から責められて、払うために他の業者に行く、そのときに、多重
債務であるということを知りつつ貸す業者がたくさんいる、こういうことなんですね。
債務の内容を見ますと、極端な話、当初の三分の一弱を自分のために、後半の七〇%強を支
払いのためにさらに借りたというケースがあります。最低でも三分の一程度しか使っていない、あと三分の二は払うためにというようなのが一般的傾向であります。
そういうような傾向だとか多重
債務それから悪質な
販売業者との
業務提携についてはたくさん申し上げたいことがありますけれども、時間の
関係上、とにかくこの二つの
分野で
トラブルが大変多発しているということを肝に銘じて、今後何とかそれを改良してもらえないだろうか。本件について、この
法律が立法された後に
資金がどんどん流れてきたときに、こういうような
トラブルを絶対に拡大させていただきたくない。それに加えまして、従来の
トラブルを逆に予防するように御努力いただきたいと思うのです。
私は、基本的な
立場としまして、
消費者側に加勢するということではなくて、行政と
国会議員の
先生方それから
業界の
先生方とともに協力をしなければ決していい社会にはならないだろうと思っているのです。反発する、お互いにののしり合うというのではなくて、みずから反省すべきことは反省する、教育するところは教育する。お互いが反省し合い、協力し合ってこそいい社会ができるだろうと思うのです。そういう
立場に立って、今後も微力ながら頑張ってまいりたいと思うのです。
以上申しまして、私の
意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)