○辻(第)
委員 我々の懸念が十分解消されるように、御
努力をいただきたいとお願いをします。
次に移りますが、
運輸省にお尋ねをいたします。
今、労働者の最も大きい課題の
一つは時間短縮であり、週四十時間、週休二日制などの労働条件の改善ではないかと思います。交通・運輸の分野では、長時間過密労働の問題が大きな課題であります。私は、タクシーそれからトラック、観光バスの労働者の長時間過密労働や労働条件の改善、交通安全の問題をこれまで取り上げてきたことがありましたけれ
ども、きょうは一般バスの
運転者の問題でお尋ねをいたします。
一般バス
事業というのは、その公共性も含めて、一年三百六十五日の仕事でございます。しかも、早朝から深夜にわたり、大変苦労をいただいております。また、地域や乗客にいろいろな要望もあり、その
対応も大変だと思っております。そ
ういう
状況の中で、運転手さんは大型の車両にたくさんのお客さんを乗せて、しかも大体ワンマンカーだと思うのですが、誘導なしにダイヤどおりの運行が求められておるということでございます。もちろん都市では渋滞の問題もあろうと思いますし、あるいは気象の変化、
道路状況の問題、いろいろな難しい問題もあろうと思います。そういう点で、肉体的にも精神的にも非常に、肉体も神経も使われる、そういう仕事の内容だと思うわけでございます。しかも最近は人手不足という
状況もあって、長時間過密の労働が広がっているのではないか、こういうふうに認識をいたしております。
そういう
状況の中で、道交法では第四章「
運転者及び使用者の義務」の第六十六条で、過労、病気など、「正常な運転ができないおそれがある
状態で車両等を運転してはならない。」とし、また運輸規則の二十一条で、過労防止を考慮した勤務時間を定めなければならない、「疾病、疲労、(中略)その他の理由により安全な運転をすることができないおそれがある
運転者を
事業用
自動車に乗務させてはならない。」「疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ、交替するための
運転者を配置しておかなければならない。」このように過労防止における
事業者の責務を明確に義務づけております。また、労働安全衛生法では第三条で、
事業者は労働者の安全と健康を確保する責務を明らかにしております。
しかし、現実はなかなか
事業者の責務が遵守されていないのではないか、労働基準法や
自動車運転手の労務改善基準の最大拘束時間もなかなか守られていないのではないか、こういうふうに考えております。そういう中で、次に述べますような深刻な
事態が起こっているわけであります。言うなら、運転手が長時間過密な労働の中で突然亡くなられる、いわゆる過労死という
状況が起こっているということであります。私はこれから三例申し上げますが、一例は、労働条件のことを私も詳しく調べておらないので、ちょっと過労死かどうかということはわからぬのですけれ
ども。
一例は、近鉄バスの八尾の営業所であります。大臣の地元にありますが、ここのAさんという四十九歳の運転手さんは、ことしの一月三日の十四時三分、勤務時間中に亡くなりました。
関係者の証言によりますと、Aさんは十二月三十一日の十時に出勤をし、二十二時十分に退出をされている、一月一日は五時に出勤し、二十二時に退出をされている、一月二日は五時に出勤し、十九時に退出をされている、三日は五時半に出勤をし、十三時に容体が悪化をし、そして十四時三分に亡くなっておられる、こういうことであります。
亡くなられる日の前三日間は、案は四十三時間十分の拘束時間となっておるわけでございます。協定の約一・六倍の拘束時間と聞いています。しかも、亡くなられた当日の早朝、Aさんは持病のぜんそく発作があるのだけれ
ども、正月で人手がないので呼吸困難を押して乗務をされた、そして亡くなられる前、八尾駅で下車をされたときにはもう立てない、壁にしがみついて肩で息をされていた、こういうことであります。
なお、Aさんの奥さんは当日十時に会社に電話をされて、夫が早朝ぜんそくの発作を起こしているので交代要員を配置してほしい、このように依頼をされておったわけでありますが、どうも交代の人がなかったようでありまして、奥さんが電話をされた四時間後亡くなっておられるわけであります。こういう事例ですね。
そしてもう
一つは、私の地元の奈良交通の運転手さん、四十三歳でありますが、この方はことしの一月二十五日午前六時二十分、営業所の宿直室で亡くなっておられたわけです。この方は繁忙線区を抱えております生駒営業所勤務で、亡くなられる前日の一月二十四日二十三時過ぎまで勤務をして、宿直室で休まれた。翌朝午前五時二十分の勤務時間になっても起きてこられないので、同僚の方が起こしに行かれるともう亡くなっていたということであります。もちろん救命救急
センターへ送られたけれ
ども、もう亡くなっておられたということでございます。業務上必要な仮眠中の死亡ということでございます。
この日以前も早朝から夜遅い勤務が続いておって、
関係者の証言では、三晩は家に帰っておられないというふうなことでございます。また、協定で残業は七十五時間になっているけれ
ども、実際は百五十時間くらいしておられたのではないか、こういうことでございます。この方の日ごろの健康
状態は至って良好で、たまに風邪で休まれる、そういう程度だったということでございます。この二人は本当に長時間過密の労働の中で亡くなられたということだと思うのです。
もう一例は、青森県の下北交通バス、これは三月二十日の朝日新聞に載っていたのですが、三月十六日午前七時五十分ごろ、青森県下北郡大畑町の国道二百七十九号線を約十五人の客を乗せて走行中の路線バスの運転手四十六歳が突然
意識不明、下車後間もなく亡くなられた。運転手さんの異常に気づいた乗客がブレーキをかけて
事故には至らなかったものの、もし乗客が気づかなかったら、あるいは
自動車の扱いがわからなかったらがけから転落をして大
事故になっていただろう、こういうことでございます。
この方のことについては、長時間過密労働云々ということは私はちょっとわからぬのですけれ
ども、こういうことが起こっておるわけでございます。まだ中年の若い方がかけがえのない命を失われたわけでございまして、大体勤務時間中に亡くなられておるわけです。もしこれが
乗車中であればどうなったのかな、本当に交通安全上もゆゆしい問題だと思うのです。
こういう深刻な問題だけではなしに、過労という
状態が交通安全の上では大変な問題だということはもう言うまでもないことだと思うのですね。こういう一般バスの運転手さんの長時間過密労働、それは時期にもよりますし、その地域にもよりますし、私は都市部と農村部とか地方とはちょっといろいろ条件が違うかもわからぬと思うのですが、こういうことが今日の人手不足の中で起こっておるのではないか、そういうふうに思うのです。
運輸省はこの問題をどのようにとらえておられるのか、それからこういうことを何としてもなくしていかなければならない、そのために具体的にどういうふうに
対応をされるのか、お尋ねをしたいわけであります。
運輸省も第一線の例えば陸運支局なんかに行きますと、本当にこういうところに直接タッチをされている方というのは極めて少人数なんですね。言えば仕事はもう無限にあるのです。私はもう何回もそういう職場に行って
お話をし、なにしておるのですが、そういう難しさもあります。労働基準監督署も人手不足でなかなか難しい問題もあろうかと思いますけれ
ども、やはりこの問題はゆるがせにできない問題でありますので、
運輸省としては十二分の
対応をとっていただきたいと思うのですが、御答弁をいただきたいと思います。