○馬場委員 まず大臣にお伺いしたいと思うのですけれ
ども、きょうは水俣病の総合
対策事業についてお尋ねしたいと思います。
中公審の答申によりまして、水俣病が今非常に混乱しているわけですから、これを解決したい、そういうことでこの事業を始められるわけでございますけれ
ども、この事業がうまくいきますと水俣病の解決に非常に資すると私は思いますが、この事業を患者とか住民とかの納得なしに行いますと、この事業そのものがかえって水俣病の解決を混乱させてしまう、そういうことになりはしないか、こういうことを今心配をしておるわけでございます。
大臣も御承知と思いますけれ
ども、水俣病の問題は、まず昭和四十六年に
環境庁の事務次官の通達で判断
基準をそこに置いて認定審査をやってきたわけですね。ところがチッソがその補償金の支払いができなくなってきた。こういう中で県債を出して、そしてその県債を熊本県がチッソに貸して、熊本県の県債についての補償は国が見ましょう、こういうような形で、県債で救済することが始まったわけです。ちょうどそのときに、昭和五十二年に、こんなにたくさん水俣病が認定されたらどれだけの支払いになるか、どれだけの県債になるかわからぬじゃないか、少し認定の判断
基準を厳しくすべきでないか、そして認定者を少なくしなければ大変だ、そういうような動きが実はあったわけです。ここで何回も質問しましたけれ
ども、五十二年の判断
基準というのはそういう
意味で四十六年の判断
基準を厳しくしてなるべく患者を出さないようにする、そういう意図があるのじゃないかというようなことを私はここでは何回も質問したわけです。
やはり水俣病を解決する
ためには、厳しくして切り捨てるということでは全然解決になりませんよ。
基準はそのままにしておいて、例えば劇症型で千六百万から千八百万の補償金が出る。ところがもう今劇症型が少なくなったから、例えば判断
基準はそのままにしておいて、一千万だとか八百万だとか千二百万だとか五百万だとか、そういう補償協定というのを
現実に合わせて少し少なくして、その財政負担にこたえないのだったらそういう話を持ちかけてはどうか。私も立会人でございますし、熊本県知事の沢田さんも立会人、
環境庁長官も補償協定の立会人でございますから、継続性からいって
環境庁長官も、水俣市民代表の日吉フミコさんというのも立会人ですが、そうすると、認定
基準は全然変えません、しかし支払い能力について補償協定の見直しといいますか、そういうことを
相談してはどうかというようなことも考えたわけでございますけれ
ども、五十二年判断
基準について切り捨てじゃないのだ、四十六年と変わらないのだということで強行したわけですね。それが今日、そこで切り捨てられたという
人たちが、何千人という
人たちが裁判をやったり自主交渉をやって、今日の混乱の原因がそこにきておるわけでございます。
そこで大臣、今度の総合
対策がそれと同じように切り捨てになるというようなことに患者にとられ、住民がとった場合は、また同じような混乱がここから増してくるわけでございますから、そういう
意味で、非常にいろいろ混乱したときにはまず原点に返って物事を判断するというのが常でございますが、ここでもう言わぬでもわかっていることですけれ
ども、大臣に対しまして、公健法でこれは救済しておるわけでございますが、公健法の「目的」として「健康被害に係る被害者等の迅速かつ公正な
保護及び健康の確保を図ることを目的とする。」この公健法でもって認定、救済をやっているわけでございます。
私は、国会で二十年近くこの問題を取り上げてきておるわけで、歴代の
環境庁長官にこのことについて尋ねてきておるわけでございますが、歴代の
環境庁長官は、公健法の第一条の「目的」、これを具体的に行政として執行する場合に、結論からいいますと、一人でも公害患者が見落とされることのないように、全部が公正に救われるようにとの趣旨で公健法を運用していきます、こういう
答弁を皆なさっているわけでございます。特にまた、水俣病に関しましては、有機水銀に多少でも関係のある者は広く救済するという態度で運用をしていきます、こういう
答弁を歴代長官からいただいておるわけでございますが、中村長官も歴代長官と同様の態度で公健法の運用、特に水俣病問題の救済に取り組まれる決意でございますかどうか、原則的なことをまず聞いておきたいと思います。