○土井
委員 あと私が
一つどうしても
外務大臣の御
見解を承っておきたいのは、四月二十八日に最高裁判所で判決がございました。
旧
日本領だった台湾の台湾在住の人たち、旧
日本軍人軍属として従軍をした人について、もう多くの
説明は大臣に不必要だと思いますけれども、戦病死をした人並びに遺族あるいは当時の軍人軍属の恩給に対しての取り扱い、すべてこれは
日本人と取り扱いを異にいたしております。同じ
日本人として戦地に駆り出されて命を落としたりあるいは傷ついたりしたのに、戦後国籍を失ったために戦傷病者遺族援護法や恩給法の適用を受けられない、これはだれが見たって不合理だと思うのでございます。
現在の国籍や現在住んでいる場所が問題なのではないので、被害を受けたとき、またそういう境遇にあったというそのときの客観的な条件というのがこれは問題だと思うのですね。したがって、今回の判決というのは、どうもこの私が申し上げた不合理だという点に対して十分こたえてはいただけなかったのですが、この棄却という判決の中で、しかし私たちからしたらこれは見なければならない点がございます。
それはどういう点かというと、日華
平和条約、
日本と中華民国との間の
平和条約、その中で「
日本国
政府と中華民国
政府との間の特別取極の主題とする。」ということを台湾
住民の
日本国に対する請求権の処理として認めていたのでありますけれども、それにもかかわらず、御存じのとおり、
日本国と中華人民共和国との間の国交正常化に伴って、この日華
平和条約がその意義を失ってしまったわけであります。この
協議はもはや行われなくなり、また、
日本国
政府と中華人民共和国
政府との間でもこの問題を
協議する機会はつくられずに今日に至ってきたわけであります。全くこういうことに対して伝わっていないのですね。
そこで、この特別取極というのが
締結できないことで今日になっておりまして、国籍条項が外され、特別取極は全くないという
状況の中では、「法の下の平等の原則に反する差別となっていることは、率直に認めなければならない。」という園部裁判官の
意見もこの中にあるわけであります。
総じて、この判決には、上告をした台湾在住の人たちが「ほぼ同様の境遇にある
日本人と比較して著しい不利益を受けていることは明らかであり、しかも戦没戦傷の日から既に四〇年以上の歳月が経過しているのであるから、予測される
外交上、財政上、法技術上の困難を超克して、早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待であること」これを、高等裁判所で付言したことをさらに最高裁でも繰り返し述べられているわけであります。「この種の問題の根本的な
解決については、国政関与者の一層の努力に待つほかないことをこの機会にあらためて付言して置きたい。」ということが強調されているわけでございます。
さあ、そこで、
外務大臣は去る三月五日に予算
委員会で答弁をされているわけでございますけれども、そのときにずっと質問を聞いておられて、「もっともだなと思わないわけではない、しかし法律上のいきさつその他いろいろありますから、ここで今はっきりした返事は申し上げられない。」が、どうしてそういうようないきさつになったのかを含めて勉強させていただきますという御答弁をそのときになさっていらっしゃるの下す。
それと同時に、法律論争を幾らやっても決まらない、申しわけないという気持ちがあり、それを目に見える形で何かするのが政治がなという感じを受けているという御感想も述べられているわけでございますが、最高裁まで行って、そして棄却という判決を受けて、この台湾の元
日本兵の人たちは国際法廷で争うということも悲壮な決意として持たれているようであります。
日本は国際人権規約を
締結しておりますから、国連にこれが持ち込まれるということになると国際的な問題として大きな注目を浴びるでしょう。
フランスのセネガルの例もございますけれども、
日本の場合も、このセネガルの例をとって考えてみました場合、これはやはり国際人権規約のB規約の二十六条から考えてもおかしいということを恐らく国連としてはその
決定として出されるであろうということも想像にかたくありません。
そういうことも含めて、今
外務大臣として、この判決があったからじゃないんであって、やはり政治責任としてこういう問題に対して
対応していくということは非常に私は大事だと思いますが、今法律にある国籍条項というのが、こういうことからすると今まで取り扱いの上では大きな大きな差を設け、そして台湾におられる旧
日本兵なんかに対しては
対応しないということで今日まで来ていたという実情についてもひとつ考えていただいて、ただいまの
外務大臣のお考えを承りたいと思うのです。