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1992-05-06 第123回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月六日(水曜日)     午後一時三十分開議 出席委員   委員長 麻生 太郎君    理事 新井 将敬君 理事 鈴木 宗男君    理事 浜野  剛君 理事 福田 康夫君    理事 宮里 松正君 理事 上原 康助君    理事 土井たか子君       石原慎太郎君    金子原二郎君       金子徳之介君    唐沢俊二郎君       鯨岡 兵輔君    長勢 甚遠君       松浦  昭君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    川島  實君       藤田 高敏君    玉城 栄一君       古堅 実吉君    和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房審         議官      川島  裕君         外務大臣官房審         議官      畠中  篤君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君  委員外出席者         防衛施設庁建設         部設備課長   石橋 真澄君         沖縄開発庁総務         局企画課長   牧  隆寿君         外務大臣官房審         議官      野村 一成君         外務大臣官房審         議官      小西 正樹君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    青柳 桂一君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ————————————— 委員の異動 五月六日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     金子徳之介君   山口 敏夫君     金子原二郎君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     山口 敏夫君   金子徳之介君     小渕 恵三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  アジア天平洋郵便連合一般規則及びアジア=  太平洋郵便条約締結について承認を求めるの  件(条約第四号)(参議院送付)  千九百六十八年二月二十三日の議定書によって  改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷  証券に関するある規則統一のための国際条約  を改正する議定書締結について承認を求める  の件(条約第一〇号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 麻生太郎

    麻生委員長 これより会議を開きます。  本日は連休明けにもかかわりませず、当委員会以外は委員会を開会しているところはないような状況でありますにもかかわらず開かせていただきましたところ、委員の方そろって御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員長といたしましてまず感謝申し上げます。  特に外務大臣、けさ午前八時二十分成田着にてロシア並び中央アジアから帰国早々という状況で、時差ぼけ等々何かとあるにもかかわりませず御出席をいただきましたことに対しましても、心から感謝を申し上げる次第であります。ありがとうございました。  それでは会議を開かせていただきます。  アジア太平洋郵便連合一般規則及びアジア太平洋郵便条約締結について承認を求めるの件及び千九百六十八年二月二十三日の議定書によって改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷証券に関するある規則統一のための国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  両件に対する質疑は、去る四月二十四日に終了いたしております。  これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、アジア太平洋郵便連合一般規則及びアジア太平洋郵便条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 麻生太郎

    麻生委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、千九百六十八年二月二十三日の議定書によって改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷証券に関するある規則統一のための国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 麻生太郎

    麻生委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 麻生太郎

    麻生委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  6. 麻生太郎

    麻生委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  7. 上原康助

    上原委員 先ほど麻生委員長の方からも御指摘がありましたが、きょうは連休明けで、特に渡辺外務大臣には旧ソ連邦を御訪問なさった直後だけにいろいろお疲れの向きもあろうかと思うのですが、きのうのきょうの話ですから、それだけにまたリアルで生々しい外相の御感想なり、私たちがお尋ねをしたい点がお聞きできるかと思っておりますので、御了解を賜りたいと思います。  そこで、最初に対ロシア関係について、支援問題を含めてお尋ねをいたしますが、今回連休を御利用なさって中央アジア並びロシア共和国を御訪問をして、エリツィン大統領を初め関係国の首脳ともお会いをなさったようでありますが、まず外相ロシア等訪問をなさった成果といいます か、その御感想をお聞かせ願いたいと存じます。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今回ロシア訪問をした主要な目的は、九月にエリツィン大統領日本にお迎えをするという話になっておりましたが、日時が確定をいたしておりませんでしたので、まずその日時を確定するということであります。それにつきましては、九月の十四日及び十五日に公式の会見等を行うということだけが決まりましたので、十三日においでになるか十六日にお帰りになるか、そこから先はまだ流動的でございます。  私は、エリツィン大統領になりましてから、直接エリツィン大統領に対して日本側のかねての言い分主張を率直に申し上げて御理解を得るというのが目的でございましたが、幸いに一時間ほど時間がとれまして、率直な意見交換をさしていただきました。これはいずれも九月の訪日を前にして、どのように動かしていくかということの下支えになるものと考えております。  もう一つは、キルギスタンカザフスタン両国を、中央アジア独立国の二カ国を訪問したわけでございますが、他にも国家承認をし外交関係を持つに至った国がございますが、時間の関係上とても全部寄ることができないという制約のもとで、日本に近いところからということで二カ国に絞ってきたわけでございます。  いずれも、日本に対しましては大変熱いまなざしを持って友好の促進を図ってまいりたい、ぜひとも日本訪問いたしたいというような希望を持ち、また、日本の経済的な援助またはいろいろな技術援助等をぜひしてほしいということでありました。特にカザフスタンとは、核不拡散条約に核を持たない国としてぜひとも参加をしてほしいという要望をいたしてまいりましたが、いろいろ話のすれ違いがございまして、その点はまだ決まらないということでございます。
  9. 上原康助

    上原委員 今お答えありましたのは、既に外相のモスクワにおける記者会見、あるいは、きょうは新聞等は休みですが、これまでの報道でほぼ出ておったことで、目新しいものがないのが少し気になるわけです。  そこで、具体的にこれからお尋ねをしていきますが、今回のロシア訪問というのは、もちろん中央アジアキルギスタンカザフスタン等もいろいろ友好関係樹立という目標もおありであったでしょうが、特に北方領土返還ということについてより確かなものを目指しておったんじゃないのか、これが国民の非常に注目をし、期待をしておった点だと思うのですね。  相前後して宮澤首相ドイツフランスを御訪問になって、そこでも北方領土返還についてのフランスドイツの側面的な協力というものを非常に主張しておられた。これも後ほど関連してお尋ねします。  そこで、今回のロシア訪問北方領土返還についての見通しは明るくなったという御認識なのか、あるいは領土問題についてはどういうお話し合いがあって、今後はこれが日ロ間でどう具体的に返還テーブルにのせていけるのかどうか、この点はいかがですか。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 御承知のとおり、北方領土問題というのは過去四十数年来にわたって対立をし動かないできたわけでございます。我々の方は四島一括即時返還ということを言ってまいりましたし、向こう側領土問題は解決済みと言って対立してきておるわけですから、それでは何年やっておっても少しも前に進まない。  たまたまロシア政権が交代いたしまして、北方四島については、エリツィン政権としては法と正義に基づいてお互い歩み寄り解決しよう。エリツィン大統領自身は、大統領になる以前から五段階返還論というものを提案をしておったわけであります。  それで我々といたしましても、ただ四島一括即時ということだけを言っておったのでは前に進まないのでございまして、やはり現実的な対応ということが必要でありますから、我が国の北方四島に及ぶ主権を認めれば返還の時期あるいは手続、条件、その他、住民問題等話し合いでやりましょう、住民が非常に不安感を持っておるということも聞いておりましたので、日本といたしましてはスターリンがやったような強制的に撤去させるようなことはいたしませんというようなことなど、いろいろと冷静に対処してまいりましょうというような話をしておるわけでございます。  これは感情的な問題にしてしまうと非常に難しい問題になってしまうので、静かに静かに、少しずつ世論を起こしながら、冷静に受けとめられるような形の話し合いを今後も継続していきましょうということで意見の一致を見たわけであります。
  11. 上原康助

    上原委員 どうも余り釈然としないのですが、そこで、ずばりお答えいただきたいのです。  今度の外相訪日エリツィン大統領が九月の中旬に来られる、日程が確定したことは外交のスケジュールとしてはっきりしただけのことであって、九月に来られるということは前々から決まっておったことなんです。  そうしますと、今度の外相訪ロ北方四島の返還問題は前進したのですかしなかったのですか、これまでの話よりは進んだものはあったのかなかったのか、そこはひとつはっきりさせてください。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 交渉事でありますから、一々言葉のやりとりを御紹介するわけにはまいりませんが、そろりそろりと前進をしておるということです。
  13. 上原康助

    上原委員 肝心なところになったらそういうふうにおっしゃったら困ります。それじゃ具体的にもう少しお尋ねしてみましょう。  そこで、今も外務大臣おっしゃったのですが、これまでは四島一括即時返還論だったわけです。拡大均衡とか、その後いろいろ理由はつけてきた。だが、ここは非常に大事な点なのでぜひ明らかにしていただきたいわけですが、この間も本委員会で与党の方の御質問にもありましたが、外務大臣は最近盛んに、北方四島に対する日本主権を認めれば返還の時期、態様は柔軟に応じる、こういう発言をなさっているわけですね。これは、四島一括返還論から段階的返還論に切りかえたものと見て差し支えないと思うのです。  一体この北方四島に対する日本主権を認めれば云々返還の時期とか態様は柔軟に応じる、国後択捉にいるロシア在住者生存権というか生活権というか、そういうものももちろん私は、外相のおっしゃっていること、考え方、それを全面的に否定しているわけじゃありません。だが、こういう外交案件閣議でいろいろ議論をして決められたのか、外務省の全体的な協議の中で決められたのかわからないで、にわかに何か外相の地元の講演会でぽつんと出て、それが日本北方四島返還のいわゆるカードのようになっているということは、いささか私は国民に疑問、疑念を与える面があると思うのです。  また、今おっしゃったように外交交渉ですからそれを一々表ざたにできないということも、我々素人だってその程度のことは常識論としてわかるわけですが、ここは閣議で了解されているのですか、どういう経緯を経てそういう返還論日本政府は切りかえたのか。重要な点なので、このことはぜひ明確にしておいていただきたいと思うのです。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは、四島一括即時返還ということをいつまで言っておっても前へは全然進まないという見通しのもとで私が、こういうものはいろいろな反応を見なければならぬわけですから、私の責任において、柔軟に——主権については四島一括ですよ、主権については。しかしながら、現実対応の仕方はやはり現実を踏まえた上で話をしていく以外にはない。大体そういうようなことで向こうどの内々の話ができれば改めて閣議その他にかけて決定をするということになるのが順序だろうとは思います。
  15. 上原康助

    上原委員 ですからそれは、外相がおっしゃったわけだから、そういう提案というか話し合いをしているわけですから、ロシア側はそれを一つのベースとしてこれからの返還交渉論というのをや るでしょうね。その考え方というのは政府全体の意思統一されたものと理解していいわけですか。それが一つと、そうしますと柔軟に対応するというその中身についても今度エリツィンさんとか向こうロシア外相と話し合ったのかどうか、あわせてお答えください。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは、どこまで話をしたか、どうしたかということを今の段階で明らかにすることはできません。いろいろな話があって、合意をされるということになれば手続上の問題は必要でしょうし、御承知のとおり、いろいろな条約を結ぶに当たってもいろいろな交渉事があって、署名がされても、その後で国会にかけて是か非かの御承認を受けるわけでございます。したがって、今のところは、今交渉の最中でございますので、改めてこれこれのものを提案し、向こうからこれがあってというような段階にまだ至っていない。いろいろな意見交換は行われているという段階であります。
  17. 上原康助

    上原委員 もう一点確かめておきましょう。  この四島に対する日本主権云々と一九五六年の日ソ共同宣言との関連性はどうなるんですか。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私はこういうことを言っているんですよ。  平和条約を結ぶということになれば、条約は守られなければならない。過去において残念ながらスターリン政権下中立条約が守られなかったという事実があるし、また、その延長線上において五六年に結ばれた日ソ共同宣言、これによって戦争状態は終結ということになったのでございますが、一九六〇年安保以降、その中に書かれたものの一部を否定するような行為がロシア側にあった。そのように自分の都合によって取り決め事がほごにされる、こういうことでは、これが本当の信頼関係は得られません。したがいまして、やはり両国間に平和裏に結ばれた条約はいずれも尊重される、その原点に返ることが一番重要だと思いますということを申し上げておるんです。  これにはやはり真っ正面からそれは間違いだとおっしゃる方は余り聞いておりません。余りですよ。ですから、そこらのところからはっきりした統一的な確認をし合うということで下打ち合わせが行われているということであります。
  19. 上原康助

    上原委員 まあ、少し整合性の面において気になるところがあるわけですが、五六年の共同宣言は、二島返還をして、平和条約締結して、さらに国後択捉については協議をしていく、簡単に言うとそういうことでしょう。  そうすると、今度の四島の段階返還論とのかかわりも、どこに軸足を置いて日本側平和条約締結ということに向けてやっていくのか。四島を一括返還という、即時無条件とまでは言わないにしても、大変強固に思ってやったのか。どこかで五六年の共同宣言も、それは守られにゃいかぬでしょう。それは日ソ間でやったものを今のロシアも継承していくというわけだから。だから、そこいらの点についてはもっと明確にした上でこれからの対日交渉と、いうものをやっていかないと、誤解を与える向きがないのかどうか、その点を、これは重要な点を含んでいると思いますので指摘をしておきたいと思うんですね。  そこで、もう一点確かめておきたいことは、エリツィン大統領のこの五段階返還論なんですが、今度の外相との会談においては、最初の二段階は既に経過したものと向こう理解をしている、そういう言い分をしているわけですね。いわゆる領土問題の存在を公式に認め合おう、宣言するということですかね。二番目に、四島を自由興業地帯とする。向こう側は五段階のうち二つは既にクリアしたものと理解をしているというか認識をしている。これについては日本側はどういう対応を、この返答なりあるいは見解でお話し合いなさったのですか。
  20. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 エリツィン大統領がかつて日本に来られましたときに提唱いたしました五段階解決論というものを、私ども日本政府としてこれを受け入れて交渉しているという事実はございません。  しかしながら、渡辺外務大臣が申されましたことは、当時、北方領土問題は存在しないという、以前のかたいソビエト、当時はソビエト政府立場でございましたけれども、立場の中で何か解決の糸口を見つけたいということからこういう案を考え出された、そのお志、方向というものは評価できるという議論をしてきたわけでございます。したがいまして、今回もこの第一段階、第二段階がこれで完了したとかしないとかいうような議論をしたわけではございません。
  21. 上原康助

    上原委員 まあ、まだ眠りが覚めないのかどうかわからぬけれども、ちょっとやはり外務大臣のおっしゃることも局長のおっしゃることも、これ、おかしいね。  エリツィンさんのその提案に基づいて交渉したことはないとおっしゃるけれども、さっき四島に主権を認める云々は、あなた、エリツィンさんのものを日本版に焼き直した考え方じゃないの。そこいらはもう少しきちっとした、領土返還交渉ですからね、これは。外務大臣、どういう御認識でこれはやるのか。私はその次の三段階のことも聞きます。そこはもう一遍はっきりさせてください。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 はっきりさして差し支えないものははっきりさしているんです。  これは、例はそっくりそのままじゃありませんが、与野党間の話し合いであっても、書記長幹事長会談をやる前に国対委員長会談をやって、中身が表に出ちゃったらだめになることもございますし、いろいろありますからね。これは多少似通ったものもあるのですよ。  今局長から説明があったように、五段階論というものは向こう側から言われているたたき台の一つだと私は思いますよ。向こうが言っているわけですから。その中で、この前ゴルバチョフ大統領日本に来たときには五六年の共同宣言確認までに至らなかったんです。そういう問題が一つある。しかしながら、領土問題が存在する。それまでは存在しないと言っておったんだが、ゴルバチョフさんは領土問題は未解決の問題として、平和条約締結に当たって未解決の問題として存在するということは言ってあるわけです。ですから、そういうようなことがここに書かれておるわけであります。  自由往来の問題も、完全自由往来ではないが、平等に旧島民と現島民とのビザなし交流というものも第一陣が終わって、二回、三回と継続してやろうということを言っておるわけです。また、明らかになったことは軍事基地問題、この問題について、これは一両年のうちにあそこは警備隊だけにして、その他の軍隊はこれを撤去するということが先方から示されたわけでございます。  そういうようなことでございますが、しかし、この案は非常に長いプロセスを持っておりますし、最終的な主権決定その他については何ら触れていない。次期の世代、こういうことではこれはのむことができないことでございますから、我々といたしましては、やはり主権存在を明らかにする方向目下交渉中だということを申し上げている次第でございます。
  23. 上原康助

    上原委員 私が一九五六年の共同宣言について先ほど触れたのも、これも大変重い意味があるからお尋ねしているわけで、昨年でしたが、当時のゴルバチョフ大統領おいでになったときもそれは確認をし得なかった。そうしますと、ロシアエリツィン大統領日ソ共同宣言については認めているのですか。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 正式なそういうところまではまだいっておりません。
  25. 上原康助

    上原委員 そういたしますと、残念ながらというか、いろいろ話し合いテーブルにはのっているけれども、さほど領土返還については、日ロ間で共通認識の上に立った返還交渉というか返還作業というものはいまだ確認を見ていない、確定されていない、こういう状況にあるというふうに理解していいのですか。
  26. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは、四十年間も動かな かったやつを動かしていくんですから、ただ一回の会談大統領とやって、すぐにそんなにさらさら決まるのであったら、難しいこと何もないのですよ。やはり向こうには向こうの事情がいっぱいありますし、こちらの主張もございますから、第一回の正式な会談日本立場をちゃんと説明をしたというのがまず第一段階なんです。続けて二回、三回とやっていくわけですから。だからそれは、見通しをつけて着々と静かに話をしていこうということです。
  27. 上原康助

    上原委員 それは、四十年間もできなかったことを一挙にできないのはわかりますよ。だが、潮どきとかいろいろ言ってきた割には、日本側領土返還についての基本的課題というのがほとんどまだロシア側に受け入れられていないような感がして、大変色倶を抱かざるを得ないわけです。  といいますのは、ロシアは今困難な状況にあり、領土問題の解決を迫られるのは国民感情としても難しいと、盛んに、控え目にとか静かにと言っている。これはエリツィン大統領がおっしゃったことですね、控え目に、静かに話し合っていきたい。  一方においては、対ロシア支援あるいはIMFへの加入問題を含めて、経済援助については非常にG7、G10なんかで先行しているわけですね。私はそれは子とする立場にありますけれども、やはり日本は、拡大均衡とか、領土問題が解決しないと対ソ支援についてもという、先進諸国とは異なった見解でやってきたはずなんです。その意味ではもっと、潮どきというならば、日本領土返還交渉についても対ソ経済支援とある面では相並行させた形で進めていくのが外交のテクニックだと私は思うのです。その関連性はどのように外相理解をなさっておりますか。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これもいろいろ実は議論のあるところなのであります。  政経不可分というのなら、一切ロシアとは没交渉で、領土交渉をして打開の後で結ぼうというのも一つ考え方でしょう。それを四十年間やってきたわけでしょう。しかし、現実としてはそれでは歩み寄りができないから、両方が、客観的な過去の歴史的事実、条約存在、そういうようなものをやはり広く認め合うということで、共同市場作成をやろうとか、それによるPRをしようとかという話を今進めておるところなのであります。  一方、ソ連邦は、共産主義体制が崩壊をして、全く価値観の違う、我々と同じような、自由主義で、民主主義で、市場原理で、人権尊重で、そういうような新しい国家をつくっていこうということでスタートいたしましても、今までの計画経済を今度は自由経済に移そうというのですから、そこの中では、価格の自由化等を行って何十倍にも値段が上がっちゃったとか、いろいろな困難がロシアの中にあることも事実。それによって不満がまた出てきて、またもとの共産主義体制や古い考えの人たちの勢力が強くなってしまったのでは、せっかく米ソの雪解け、冷戦がなくなって友好関係が樹立されようというときに来ているので、これをどちらにした方がいいかという話なんですよ。  そうすると、G7としても、我々としても、ロシアが逆戻りをするということは、世界の平和のためにも、また共通の価値観からいっても、もどのようなやり方に戻ることはいけない。したがって、現在の苦しい立場を切り抜けて、そしてロシアがちゃんとやっていけるように、ここを何とか支えてやらなければならぬという発想からロシア支援という問題が出てきておるわけでありますから、これは国際的な共同の仕事としてやろうというのがG7の空気でございます。  したがって、我が国といたしましても、我々には領土の未解決という特殊な問題があるが、国際的な協調体制にも日本が反対をするということがいいのか。それは、一緒になってやはり国際的にみんなが必要最小限度のことを人道的立場からやり、また、我々の仲間をふやすというのは語弊があるかはしりませんが、同じ価値観を持った国家ができ上がることは、いいと思うのか、悪いと思うのか、これは判断の問題であって、我々はやはり、ロシアの今のペレストロイカ、グラスノスチのような体制が定着することがいい、そう思っておるので、そういう面においては国際的な責任を果たしていくということに踏み切ったわけであります。
  29. 上原康助

    上原委員 私は別に旧ソ連への経済援助をやるなという立場で言っているわけじゃないのです。日本はそれに対して非常に慎重だったわけでしょう。ドイツフランスがG7とかサミットで主張しても、なかなか、アメリカも慎重、日本はアメリカと手を組んで慎重だった。領土の問題がある。だが、にわかにそれが急激に進んできた。それに引きかえ、領土問題というのは日ロ間の問題だということで取り残されていることはどうかということを指摘をしておる。  旧ソ連邦への経済援助については、いろいろたださなければいかない点もありますが、それが悪いと言っているわけじゃない。日本が慎重だった割には慎重だったアメリカでさえ、今率先してやろうとしているわけでしょう。その国際政治の動きについて、絶えず日本がおくれをとっている、とりつつあるということを私は指摘しておきたい。それ以上に、領土問題でおくれをとりはしないかということを懸念を申し上げているわけですよ。  そこで、エリツィンさんの五段階解決短縮論ですが、四島の非軍事化については日本側の御認識はどうなんですか。北方四島にいるソ連軍を国境警備隊だけを残して一両年中に全部撤去する、これは一つの朗報でしょう。そうしますと、ソ連が非軍事化することは今後の北方四島返還を、もちろん主権の問題は一番のポイントとして申し上げているわけですが、日本側もそういう認識に立ってやっていくつもりなのか、あるいは国境警備隊だけは残すというのだが、その規模はどのくらいなのか、そこいらについても中身はあったのかどうか、さらに、一両年というのだが、もっと早めることを日本側は要求しなかったのかどうか、お答えください。
  30. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは余り短兵急なことはやりません。国境警備隊、必要最小限度数千名ということになるのでしょうが、我々は、我が国の固有の領土から戦闘機やいろいろなものが撤去されるということは大変いいことであって、高く評価をいたしております。  また、我々もロシアに対しましては人道的な立場という点から二十六億ドルに及ぶところの信用供与を与えておることも事実でありまして、それはお互いに立場を尊重し、助け合いの中で友好関係が生まれていくことが一番いいと思っております。
  31. 上原康助

    上原委員 ですから、四島の非軍事化、返還になった場合も日本もそういった環境づくりということを念頭に置いておられるのかどうか、その点はお示しできますか、できないですか。
  32. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 今の御質問は、実際に四島が日本返還された後の我が国の四島に限っての軍事面での政策いかんという御質問であろうかと思います。  これは、返還をされた後の、大臣がいろいろ申し上げております返還交渉の具体的な内容ということに立ち入ることになりますので、現在ここで、交渉が始まった段階でそれ以上踏み込むことは御容赦願いたいと思います。
  33. 上原康助

    上原委員 それは当然といえば当然かもしれませんが、しかし、国際環境としては日本側もそういうスタンスというかアプローチの仕方じゃないとますます、相手のあることですから、そういうことだと思うのです。  そこで、この問題とも関連をするのですが、もう一点、今回の外相訪日で私なりに注目したい点は、いわゆる信頼醸成措置を旧ソ連邦とどうつくっていくかということだと思うのですね、特にロシアと。これは社会党というよりも、かねがね我々も、もっと信頼醸成措置をつくることにステップを速めたらどうかということを強調してま いりました。ついせんだっても、防衛庁との話し合いの中でも、防衛庁の首脳ともいろいろ話し合ってみたわけですが、今までは牛歩みたいな形で信頼醸成措置、日本の防衛担当者と旧ソ連邦の軍人たちと話すのは牛歩戦術だった、だが、これだけ国際情勢が動けば少しステップを速めてみたいという見解もあったわけです。  私はそのときにも申し上げたのですが、今外相がおっしゃったように、四十年間余り対話のあれもなくしてなかなかコミュニケーションが欠けているところに信頼関係はないわけです。脅威論だけで旧ソ連邦を見たところに、私は領土問題を含めて日本外交の非常な閉塞性があったと思うのです。それを打開していく上においても、この日ロ安保協議会というものは積極的に進めるべきだと私は思うのです。  今回、安全保障問題に対する日ロ間の政策企画協議を早急に開催して信頼醸成措置を図るということをコズイレフ外相外務大臣との会談で合意をなさった。これは結構なことで、今後具体的にこれをどう処理していかれようとするのか。ぜひ防衛庁を含めて広い意味の安全保障ということからおやりになったらいかがかと思うのですが、御見解を聞かしておいてください。
  34. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 今先生御指摘の、広い意味でのアジア・太平洋における安全保障問題を日ロ間で議論しようという話は、これは日ソ間、シェワルナゼ外務大臣の来訪時から始まったわけでございます。  第一回は既に行われたわけでございますが、その後、ソ連邦からロシア連邦への機構の改革があったりいたしましたために一時停滞いたしておりました。それを再開するということと、今回、渡辺外務大臣より、この中に制服と申しますか、こちらは防衛庁の関係者、先方は国防省の関係者を入れて、まさに軍事専門家も交えた形でこの問題の枠を広げていこうということを合意したわけでございます。まさに、そういう意味では信頼醸成に向けてのもう一歩前進というふうに考えてよろしいかと考えるわけでございます。
  35. 上原康助

    上原委員 外務大臣、これは単なる、もちろん作業は平和条約にしても作業グループというのがあるわけですから、防衛問題にしてもこの企画担当協議とか事務レベルというか、それぞれの審議官局長クラスが進めていくと思いますが、やはりこれは政治の話ですね、防衛庁長官ともいろいろ協議をなされなければいかぬ面もあると思うのです。外務大臣は、この対日というか日ロ安保協議あるいは広い意味アジア・太平洋における安全保障、特に旧ソ連邦全体もそうですが、ロシアとの信頼醸成措置を今後どのように確立して、そのテンポをどう具体的に進めていったらいいのか、御見解を聞かしておいていただきたいと思います。
  36. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 兵藤局長から今言ったように、四十年間も動かないわけですから一挙にというわけにはいかない。しかし、米ロ間において既に制服の交流もやっておるわけでございますので、我が国におきましても、ロシアはもう政権がかわってスターリン主義じゃないのですから、別な新しい考え方外交を展開しようというような方針を打ち出しておるわけですから、そういう方とならば今後ともそういうような、全言ったような安保問題も含めてひとつ交流を徐々に広げていこうという点で政府内は話を進めてまいりたいと考えております。
  37. 上原康助

    上原委員 お答えの中に四十年、四十年としょっちゅうおっしゃるものだから、何かあと四十年ぐらいたたぬとこういうことができないのかなという印象を受けるのだが、テンポを少し速めたらいかがでしょうか。  そこで、この問題とも関連しますが、宮澤首相の訪欧のときにも、冒頭でも私は触れましたけれども、フランスドイツ訪問なさって、いろいろ評価はあるようですが、きょうは北方領土問題を中心にお尋ねしていますからその点に限りますけれども、懸案の北方領土に対する一定の理解と協力を得ることができたと自己採点を首相初め周辺はやっていらっしゃるようだが、それはそれとして、せっかくの休日を御利用して行かれるのだから、一国の総理大臣ですから結構なことだと思うのだが、ただ、これと深くは関係しませんが、この連休中に自民党の幹事長やら大臣さんやら、いわゆる有力、実力者と思われる方々が世界各国に飛び散っていろいろな約束をしていますね、大盤振る舞いみたいな。一体外交の元締めはどこなのかなという錯覚、大変気になるんでね、こういう動きは。その点だけは我々の目に映る率直な感想として申し上げておきたいと思うのですね。  そこで、きょう官房長官をお呼びするかと思ったのですが、時間の都合もあるということでしたので遠慮したのですが、総理は盛んにCSCE、いわゆる全欧安保協力会議への参加というのかオブザーバーというのかを持ちかけたようなんですね、今回。この真意は何ですか。また、外務省としては、フランスドイツの、日本の全欧安保への参加については、正式メンバーなのかどうかまだよくわかりませんが、どういうふうに今後外交案件として進めようとしておられるのか、ぜひ明らかにしておいていただきたいと思います。
  38. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 欧州安全保障会議、CSCEがそもそも始まりましたのは、先生よく御承知のとおり東西の対立が極めて厳しいときでございました。今やこの東欧、ドイツ統一を中心といたします激変の中で、ヨーロッパの安全保障を中心といたしました構図が大きく変わろうとしている。そこで新しい安全保障も含めました国際秩序づくりというものが始まっているというふうに私どもは認識するわけでございますけれども、そうであるとすれば、かってウィリアムズバーグ・サミットにおきまして安全保障問題というものはもはやグローバル、全地球的な規模で検討されなければならないという合意があったことが想起されるわけでございますけれども、ヨーロッパが中心となって新しい国際秩序づくりといいますか、そういうものの模索が始まったというふうに私どもは認識するわけでございます。  そうであるとすれば、日本もこの欧州安全保障会議のそういう動きに無関心でいるわけにはいかないという認識に立つわけでございます。特に、この欧州安全保障会議に、今回渡辺外務大臣が歴訪をされました中央アジアの共和国も御承知のとおり独立国家として加盟を認められていっているわけでございまして、まさに範囲がそういう意味では中央アジアにも及んできているということであるわけでございます。  そこで、欧州安全保障会議と申しますのは、先生御承知のとおりきちんとした組織があるわけではない。規則その他があるわけでもない。やっとプラハ、チェコスロバキアに細々ながら事務局が置かれたという状況であるわけでございまして、したがいまして、このオブザーバーという資格なり組織なり規定があるわけでもございません。  したがいまして、私どもは特にオブザーバーとして入りたいとかいうことを申しているわけではございませんけれども、そういう意味日本と欧州安全保障会議との相互対話を深めてまいりたいということで、何か日本にいかなる意味でも関係のある、これは将来に向けての秩序づくりということも含めるわけでございますけれども、そういう場合には日本は事前に相談を受けたい、また日本関係があることについては日本も発言の機会を求めたい、そういうような枠組みと申しますか、これをオブザーバー制度と呼ぶかどうかは言葉の問題でございますけれども、そういう関係を築いていきたいというのが私どもの認識の根本でございます。  宮澤総理が今回行かれましたときにもそういう根本的な考え方を両首脳に説明されたというふうに承知いたしております。
  39. 上原康助

    上原委員 それはCSCEに日本が関心を持つことは当然でしょうね。ましていわんやソ連邦が解体をしてロシア共和国その他十四の共和国がこれに参加をするということになれば、これは欧州 安保協議というか全欧安保協議というか、そういう面では大変注目されるわけですから、日本側が関心を持ち必要に応じて物を申すことは、これはこれだけグローバル社会というか国際化の時代には当たり前といえば当たり前なんで、問題は、日本アジアなんですよね。総理は一方ではアジア外交を大変重視をするという、一方ではCSCEに入りたい。だから、どの新聞でしたかね、マスコミでもちょっと八方美人過ぎるんじゃないかという、これは宮澤さんじゃないですよ、日本外交がですよ、という皮肉った論説も目にとまりました。  だが、今回総理が御訪問なさったフランスにしても、ドイツは少しニュアンスが違うようですが、どうもフランス北方領土問題についてお手伝いできることがあればやりたいということは、旧対ソ支援経済援助日本にもぜひ、さっき言いました慎重論であった日本に一緒にやってもらいたい、G7あるいはG10で。したたか外交ですから、当然老練な大統領はその程度のことをお考えになると思われるのですね。  そういう意味で、日本のCSCE参加に対するフランスの姿勢はいま一つ明確ではないのじゃないのか、余り歓迎していないんじゃないかという見方もあるということを指摘しておきたいし、ドイツだって、これまで余りにも対米基軸を柱としてきた日本外交が対ヨーロッパ外交にどういうかかわり方をしていこうとしているのか青写真がまだはっきりしない、こういう非常に冷めたというのか冷淡な見方もあるやに聞いているわけですが、この点については外務大臣はどういうふうに評価しておられますか。
  40. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 ドイツにつきましては、ゲンシャー外務大臣が二月に来訪されたわけでございますけれども、このときに渡辺外務大臣との間で欧州安全保障会議の問題がかなり詳細に議論をされました。渡辺外務大臣からは、私が先ほど御説明申し上げたような基本的な考え方を申したわけでございますけれども、ゲンシャー外務大臣からは、その日本考え方について自分は十分に理解できるということで、そういう方向を支持したいという御発言があったわけでございます。  ドイツは、まさに統一を目指してひた走りに走り、統一された後それを固めることに全力投球してきたわけでございますけれども、ようやくこの統一という過程が不可逆的なものになったということで、このアジア・太平洋の方まで外交を見渡す余裕ができてきた、その結果、そういう具体的なあらわれとしてゲンシャー外務大臣が来られたかというふうに当時私どもは受け取ったわけでございます。
  41. 上原康助

    上原委員 CSCE問題とのかかわり、ヨーロッパとの日本外交という面ではまだまだ努力をしなければいかない背景なりいろいろな課題があるということを指摘をしておきたいと思います。  そこで、この件との関連での最後で、CSCEに御熱心になるよりもCSCA、アジア・太平洋の安全保障協議会というのか会議というのか、日本がイニシアチブをとれるところはとっていいと私は思うのですが、むしろアジアにおいてそういった安保協議を設立をして、日本の果たすべき国際的役割とかアジアの安定とか繁栄とか平和というものをより積極的に考えるのが、本来の日本外交の基軸というか国際貢献というか安全保障というか、そういう面で大事なことだと思うのですが、そのことには外務省も、政権政党である自民党も残念ながら大変不熱心ですね。  私はやはりソ連の問題、ロシアとの関係にしても、アジア全体を二十一世紀を含め展望していく場合には、日本の果たすべき国際的地位、役割というものでは、CSCEに行くよりもCSCAなりCSCAPというものをもっと積極的に日本が働きかけてやっていった方が国民の期待に沿うと思うのですが、その点について外務大臣、御見解あったらお聞かせしてください。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 いずれ時期が来ればそういうようなことをすることは私はいいと思いますが、自衛隊の存在そのものについてもいろいろなことを言う方もあり、日本が安全保障面で今の段階アジアで旗振りをするということにまではすぐ、PKOさえこれ騒ぎがあるわけでありますから、旗振りをすることについてはいかがなものか、目下考慮中であります。
  43. 上原康助

    上原委員 どうも外務大臣は極端論にすぐ話を持っていっては困りますよ、あなた。自衛隊の問題がありPKOがあればこそ、アジアにおいてそういった広い意味の安全保障というものをどう確立していくかということを、日本が旗振りするかどうかは別問題として、私も一応申し上げてお尋ねをしておるわけですが、あなたが総理大臣になってもそういうことはやろうとしませんか。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 当分総理大臣は考えておりませんので、今予見を持って申し上げるわけにはまいりませんが、いずれ日本は日米安保基軸ということで、韓国もやはり米韓安保条約を結んでおりますし、朝鮮半島がどうなるのか、中国の問題もあるし、価値観がかなり違う点もございまして、欧州のようにうまくまとまっていくかどうか、もう少し時間をかけなければなるまいと思っています。
  45. 上原康助

    上原委員 私はぜひ、そのアジアにおける安保会議というか協議会というか、それを設立をする方向で早目に日本は、二国間主軸外交だけじゃなくしてやっていった方がいいと思いますね。その点を申し上げておきます。  そこで今、日米安保という話が出ましたので話を移しますが、日米関係について次、若干お尋ねをいたします。  私は、この冷戦構造崩壊後の国際状況、環境を見てみますと、日米関係についても、盛んに四十年、四十年ということをおっしゃったが、ことしはパールハーバー五十年、平和憲法が施行されて四十五年、いろんな意味で節目ですよね。日米安保にしてももう一遍見直しをする時期に来ていると思うのですね。だが残念ながら、政府というか、外務省にしても防衛庁にしても、旧態依然の冷戦構造下における日米関係、日米安保、国際外交、その域から一歩も出ない。もう旧思考なんですよね、正直申し上げて。そこにこの安保論争なり自衛隊問題、そういった防衛政策ということで野党との共通性を見出そうとしてもなかなか見出しにくい土台、土壌というものがあると私は思う、やってみて。  この日米関係についてはどう認識して、今後改めるところはないのかどうか、まず外相の決意といいますか御見解を聞かしてください。
  46. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  日米関係がこれからの冷戦後の新しい世界で、総理の言葉を拝借すれば新しい平和秩序をつくっていく過程において大変大きな役割を果たさなければならない、この点については日本政府においても、またアメリカにおいても同じような考えだと私たちは理解しております。だからこそ先般ブッシュ大統領訪日された際に、今後の、まさに冷戦後の世界のための日米協力をうたうグローバルパートナーシップという、英語で恐縮でありますが、そういう概念のもとで一つの行動計画を作成したわけであります。そういう意味で、今はこれに則して新しい冷戦後の安定を図るために協力していくことが大事だろうと思っています。  なお、一言だけ申し上げますと、政治面での問題と安全保障面の問題というのは分けて考えざるを得ないというのが現状だろうと思います。確かに政治面では冷戦が終わり、ソ連の崩壊ということがございました。が、同時に、このことが直ちに新しい安定をもたらしたわけではございませんで、幾つかの多くの不安定要因も存在するわけであります。だからこそ政治面でこうした安定を一層高めるような外交をしていかなければならない。  日ソ関係についても同じだろうと思いますが、そういう枠の中で、他方で安全はきちっと守りつつそういう努力をしていく、そういうふうに今の段階では仕分けて、しかしその二つ、政治面での努力と安全保障面での対応ということを両立さし ていくということが大事であろうと思っています。
  47. 上原康助

    上原委員 そこで、安全保障と政治は分けて考えたいということですが、せんだってのブッシュ大統領訪日にしましても、結局国内事情で日程の変更なりいろいろあって、グローバルパートナーとかイコールパートナーとかいろいろ言われてきたけれども、考えてみると何か自動車のセールスマンに来たようなものだったですよね、ブッシュさんの訪日というのは。これが世界の先進国の、しかも経済大国の親分、長男、次男の関係がということは、だれしも首をかしげざるを得ない結果になっているわけで、そこは今の局長の御答弁というのは我々の認識とは全然違うという点を申し上げておきたいと思うのですね。  その前に、これは外務大臣にちょっと聞いておったら、今政治の話も出ましたので、ついせんだっての、いかにアメリカの今の政治なり安全保障、国防政策含めて破綻と言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんが行き詰まりにあるか、いわゆる冷戦下において軍拡競争を旧ソ連とやったがゆえに、経済にしても文化にしても、あるいは国民心理というかそういう面にしても、大変大きな改善、改革を暗さるを得ない難題を抱えていると私は思うのですよ。その背景は皆さんどうごらんになるのか、それが一つ。  これはぜひ外務大臣にお答えいただきたいのですが、私も言葉を選んで、公式の場ですから発言もせざるを得ないわけですが、四月二十九日、いわゆるロサンゼルス市で発生した黒人暴動についてどう見るかということなんですよね。いかにアメリカ社会というものが軍拡競争下で経済もいろいろな面で行き詰まって今日の状況にあるかということですが、外務大臣はこの暴動の背景、原因をどう見ておられるのか。  発端になったのは、指摘を申し上げるまでもないと思うのですが、私も、四人の白人警官が警棒等で交通違反を犯したという青年をいろいろ殴って重傷を負わせている場面をビデオで撮ってそれをテレビで流している場面を見ましたけれども、本当に胸が痛みましたね、ああいう状況というのは。  これがアメリカ社会の現在の一面であり、その背景にはやはりこれまでの日米外交あるいは安保とか軍拡とかそういう面と全く無関係のものではないと私たちは思うのですよね。その点は外務大臣はどういう御認識ですか。
  48. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。御指摘のとおり、よその国のことでございますので、我々も言葉を選んでお答えをさせていただきたいと思います。  現象的に申しますと、この間のロサンゼルスの出来事は、おっしゃるとおり昨年の三月に起きましたアフリカ系青年に対する警察の暴行事件に関する裁判所の判決がきっかけになったということは事実であります。  ただ、その背景につきましては、いろいろなさまざまなことがまざっていると思います。よその国のことでございますので、それに立ち入って私の考えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、アメリカは我が国と違いまして、その成り立ちがいろいろな国からの移民を入れてその中で一つの民主主義国家を築いていくという、それなりに苦しみもある経過を経て育っている国であります。そういう意味でありますので、今回の事件もそういう過程の中の一つという見方をすることができるかと思います。  だから、日米関係がどうかということにつきましては、私たちはあくまでアメリカとの間では自由とか民主主義とかそういったような共通の価値観、それを基礎にした関係を結んでいるわけでございまして、その点に関しては、今回の事件にもかかわらず、我々はアメリカのそういう国の目的とか、よって立つ理念ということについての敬意というものは持っているつもりであります。
  49. 上原康助

    上原委員 外務大臣、お答えにくいようですから、これ以上はあえて求めませんけれども、また余計なことをおっしゃって困っても困りますから、私の方も。  しかし、これまでもたびたび、例えば八六年の九月の中曽根元首相の発言とか、九〇年九月の梶山元法務大臣の発言とか、つい最近も偉い方々のいろいろな発言がありましたね。もちろん今度のこととこれは直接の関連性はないわけですが、盛んに戦後四十年、いろいろおっしゃっておりますが、半世紀近くたって、軍拡競争下でアメリカの経済や社会構造そのものがどれほど疲弊をしているのか、米国はやはり病める超大国であることは間違いないと思うのですね、これだけは。これはアメリカ自体が改革を余儀なくされる課題だと思うのです、第一義的には。だから、アメリカン・ドリームというのが失われつつあるということだけは言えると思うのですね。その反発を、反発というか日本バッシング等でやってもらっても困るのであります。  そこで、日米関係ということは総合的にこの時点で洗い直す必要があると私は思うのですね。これは、ハワード・ベーカー元上院議員がいろいろ論文を書いて、「日米関係の活性化 未来へ共通認識必要」という中で指摘している点があるのですが、「日本の新たな政策は、政治危機の発生か、米国の脅しや圧力によって立案されるのが一般的だ。」とずばり言っている。これは、この二、三行だけじゃない、随所にそういう指摘があるのです。これはハワード・ベーカー元上院議員だけの指摘じゃないのです。  そこで、お尋ねしたい点は、二月二十五日に一九九三会計年度国防報告書が発表されているわけですが、この中で、「米国の国益保護のため軍の前方展開や海外基地を維持・確保していく」と相変わらず述べていますね。「このために日欧韓などの安全保障条約に基づく同盟関係を充実させる」、こういう指摘がある。日本はこのことについてはどういう認識を持ち、対応していかれようとするのか。「駐留米軍経費の負担などで我が国の支援姿勢を高く評価している」という点も指摘をしているわけですが、在日米軍基地の返還促進への影響は、この九三会計年度国防報告書中身との関係ではないのかどうか。まずその点を基本的な点ですからお尋ねをしておきたいと思います。
  50. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。二点に絞ってお答えさせていただきたいと思います。  一つは、冒頭に触れられましたアメリカの同盟国との関係の重要性を日本立場から見たらどうかという点でありますが、我々はアメリカのアジア・太平洋地域の存在はこの地域の安定材料だと思っております。この点は我が国に限らない認識だろうと思っております。  また、先ほどちょっと触れましたけれども、政治的には冷戦の終えんということもございますけれども、安全保障という問題の課題がなくなったわけではございません。その意味で、我が国の憲法のもとにおける自衛力を補足するものとしての、そしてまた抑止力としての日米安保体制の重要性は今後とも変わらないと思っております。  第二に、在日米軍基地との関連でございますが、この間の国防報告では、一般的に今後のアメリカの中期的な兵力体制のことは触れております。その中で、仮に太平洋の、ここをちょっとそのまま読みますと、太平洋戦力の地上戦力部分については、継続的な前方展開は、韓国の縮小された一個陸軍師団それから西太平洋の縮小された一個海兵機動展開軍によって提供されるという表現がございます。この点の中で、海兵隊が縮小されるのではないかという点が若干うかがわれるわけでありますが、この点についてはまだ今後の問題として残されておると思います。  なお、これに先立ちまして、既に数年来始まっております十年計画による太平洋地域の米軍の縮小計画につきましては、九二年末までに二万五千だったと思いますが、兵力を減らすということばございますが、その次の段階の問題については今後発表されることになっております。したがいまして、それとの関係で在日米軍基地にどのような 影響が及ぶかは、今の段階ではわからないというのが正直なところでございます。
  51. 上原康助

    上原委員 ですから、そういう答弁は、何回も同じことをやっているわけです。これは旧ソ連邦が崩壊しない前の話、冷戦構造が終結しない前の話なんです。終結した後は、もっと新しい発想、視野があっていいのじゃないかというのが、私の絶えず指摘をしている点なんです。あなた方の話は、全部それの延長線上なんだ。  そこで、そういう面からは、積極的な基地の整理縮小問題は出てこないと私は思う。出てこない。これは日本側に大きな責任がある。アメリカは痛くもかゆくもないわけです。思いやり予算でどんどん面倒を見てあげているんだから。ベリーカンファダブルと彼らは言っているんだ、在日米軍基地というのは。パラダイスだ。それは税金払っている国民はたまったものじゃないですよ。もう少し日米関係を洗い直す。  そういう中で、例えば超過密首都圏の米軍遊休基地の問題とか、横田にしても横須賀にしても、あるいはその他、特に座間とか、もう全く遊休化しているものさえ、返還をするとかあるいは再検討するということは皆さんやっていない。これは地位協定上も問題なんだ。第二条の三項にはちゃんとそういうことも触れている。  だから、いかに日本政府が怠慢であるかということは、今日の沖縄基地を含めての日本の首都圏周辺のこの広大な遊休化している、パーティーとゴルフしかしないという、何が、あなた、日本の安全とあれに必要なの。しかもそれが、外相がおっしゃっているように、四十年も続いておる、四十年近くも。その点を私たちは洗い直して、これから具体的に返還テーブルにのせる、日本側から積極的に。これについてはどういう考えがあるのか、少しお答えください。
  52. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、米軍が不要な基地については返還してもらうというのが地位協定上の建前でもございますし、我々の考えでもございます。ただ、ただいまおっしゃられました遊休施設云々ということでございますけれども、確かに少しでも多くの基地を、あるいは施設、区域を返還してもらうべしという意見からすれば、そういう御意見も出てくるのかもしれません。ただ、このような軍事基地の性格上、本来平時において使われてなくても万が一の場合に使わなければならないという点についての一定のゆとりを持って基地の提供ということを行わざるを得ないのが、この問題の残念ながら基本的な性格でございます。  そういう意味で、我々としては、先生とは若干見方が異なるかもしれませんが、引き続きこの地域における米軍の存在が重要であるという認識から、必要な基地は提供をし続けるという考え方に立っているわけであります。  ただ、同時に、この間来御指摘のあります沖縄の基地の問題も含めまして、できる限りの整理縮小をするように、この間委員会で整理統合ではなくて整理縮小だと言われましたけれども、沖縄につきましては特に過密な状況であることは我々よく承知しておりますし、またことしは、この間来何回も先生から御指摘のとおり沖縄返還二十周年というときでございますので、何とか沖縄の基地の、県民の方々の御要望に沿える道はないかということで、アメリカとともに議論をしているところでございます。  とりあえずこの段階ではそれだけ申し上げておきます。
  53. 上原康助

    上原委員 いつも言葉は何かありそうで思わせぶりなことを言うんだが、ちっとも中身が伴わないんだ、外務省のやることは。私ももう二十年余りこういうことで聞いているが、本当にばかばかしくて嫌なんですよ。  そこで、これは我々も調査をしていますが、横田にしても厚木基地にしても座間基地、木更津、全くもうあなた、これは再検討を余儀なくされる段階が来ますよ。アメリカ側のいろいろな文書を見ましても、日本側から提案がないから我々はこの条約上使っている、協定上使っている、こう言っているわけで、ここはまとめて外務大臣、どうするのか。あなた当分は総理大臣に、なりたくはあるでしょうがなり得ないというような意味を言っておったが、この問題をまず解決せんといかぬですね。  そこで最後に、今沖縄基地についてはいろいろアメリカ側とやっている。きょうも余り色よいというか、具体的にどうするということはお答えにくいという状況のようですが、我々が具体的に指摘をした那覇軍港の件、県道百四号線を挟んだ実弾演習をやめなさいという点、読谷のパラシュート降下訓練をやめなさい、恩納村のゲリラ訓練施設、嘉手納マリーナとか、県民生活に必要である、振興開発に必要なものについては、全部一緒にとは言いたいけれども、できなければ、具体的にこの復帰二十周年においてはやってもらわなければ困る。  これについてはアメリカ側にはいろいろ提起をしているということですから、どういう段階になっているか。特に那覇軍港については、部分返還云々を米側から何か示唆かあったのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。  それとの関連で、読谷の返還跡地については、読谷村が策定をした跡利用計画を沖縄県が受けて、これを第三次振計の中に位置づけて跡利用計画を具体化をしていくという方法で今調整をされつつあると聞いているわけですが、この点については少なくとも、これだけ具体的な計画がつくられているわけだから、その点ぐらいは政府として、この復帰二十年の節目において僕はもう少し明確な方向というものを明らかにしていただきたいのですが、ひとつお答えいただきたい。
  54. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 二点具体的な問題がございましたので、お答えさせていただきます。  まず那覇の港の件でございますが、先ほど来の大臣のお言葉を借用して恐縮でございますけれども、まだいろいろ話し合っている最中でございますので、具体的にどういうことがあったとかないかとかいうことをお答えいたしますことは控えさせていただきたいと思います。  読谷の件につきましては、開発庁との問題もございますので、私のところだけではわかりかねることもございます。この点については、開発庁とも御指摘の点も含めて相談させていただきたいと思います。
  55. 上原康助

    上原委員 開発庁、いらしているでしょう、どうなっているのですか。
  56. 牧隆寿

    ○牧説明員 読谷飛行場の跡地利用計画について今後どのように調整されていくかという問題でございますが、沖縄県においては、御指摘のとおり読谷飛行場地域開発整備基本計画の案について取りまとめられまして、三月に各方面に要請されたところでございます。今後は沖縄県において各省庁と鋭意調整を進められると承知しておりまして、具体的には、第三次振計の現在沖縄県が検討しております案が固まってから調整に入ると聞いております。  いずれにしましても、沖縄開発庁としましては、本件の読谷飛行場の跡地については、振興開発上貴重な財産と考えられますので、沖振法の趣旨を踏まえながら、今後とも沖縄県及び関係省庁と十分連絡してまいりたいと考えております。
  57. 上原康助

    上原委員 時間ですから、これで終わりたいのですが、外務大臣、ちょうど時間に間に合いました。あなたがもうあと三十秒遅ければ遠慮しようかなと思っていたのです。  そこで、本会議あるいはとの間の委員会等でも、基地問題については鋭意県民の気持ちを体してやつていく、これは総理もおっしゃっているわけですね。復帰二十年というこの節目、五月の十五日までに何かでっかいあれをやれということは期待しても無理ですから、そこまでは何でしょうが、米軍専用基地の七五%が沖縄にあって、この連休中私は沖縄にいましたが大変うるさいですよ。そういうことについてはもう少し真剣になって考えてもらわなければいかぬですよ。今の段階で言えないにしても、政府はやはり少なくとも、 沖縄の基地のそれなりの整理縮小、具体的に県なり関係者から出しているものについては答えを出すように努力なさいますね。
  58. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今、鋭意、佐藤北米局長を中心にして交渉を継続中であります。
  59. 上原康助

    上原委員 終わります。
  60. 麻生太郎

  61. 土井たか子

    ○土井委員 渡辺外務大臣におかれましては、けさほど帰国なすったところで大変お疲れだろうと思うのです。本当に御苦労さまでした。お疲れのところ、しかしホットな問題ですから、これはやはり外務委員会質疑をするというのは大事な場面ということで、ひとつ率直なお答えをいただくこと雇まずお願い申し上げたいと思います。  先ほど上原康助議員からの御質問に対しての御答弁の中で北方領土問題に触れて、六〇年以降、五六年の日ソ共同宣言を取り消すような対応ソビエト側にあった、こんなことでは誠実な対応と言えない、原点に戻って交渉をする必要があるというふうなことをおっしゃったのです。  そこで外務大臣にちょっとお尋ねしたいのは、大臣自身の御認識で原点に戻ってとおっしゃる原点というのは、五六年の十月十九日の日ソ共同宣言を指しておっしゃっているのか、それとも大臣御自身が、渡辺外相見解とでも申しますか、渡辺外相方式とでも申しますか、北方領土問題について既におっしゃっているところの原点と言えば、一八五五年の恐らく日露通好条約であろうと私は思っているわけですが、いずれを原点というふうに大臣自身はお考えになるのでございますか。
  62. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 先ほども答弁をいたしましたが、日ソ、日露間で平和裏に結ばれた条約はその有効性について確認をしていただくことが重要だと思っております。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 今もおっしゃることは、それは原則だと思いますが、この場合、原点に戻ってとおっしゃっている問題からいたしますと、そうすると、一八五五年条約というのは無効になっておりませんから、そういう点からすると、ひとつそれを念頭に置いて交渉を進めようというふうに大臣御自身はお考えになっていらっしゃるわけですか、いかがでございますか。
  64. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 繰り返しになりますが、具体的には申し上げませんが、日ソ、日露間で正常に結ばれた条約は、これはやはりきちっと守ってもらうというのが原点だと思います。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 はっきり申し上げませんがとおっしゃいますが、外交交渉事というのは、事が進行中に種々の技術的な問題や個々の具体的な事柄について公の場所で触れて話題にすれば、それ自身が進展を阻害したり、また、うまく交渉していくことに対して道を阻むことがあり得るということは百も承知ですが、これは原則的な問題でして、交渉事についての技術的な問題では恐らくないと思います。  大臣御自身の御認識というのはどの辺にあるかというのは、やはり日本国を代表して外務大臣というのはこういうことに臨まれているわけですから、事としたら、四十年来と先ほど繰り返しおっしゃるように、非常に長期にわたる我々の主張なんです。これは国を挙げての問題じゃないでしょうか。したがって、これに対しては日本の国の意思としてこうなければならないというところが外務大臣御自身になければ、こういう問題に対してのお互いの交渉の基軸というものがないだろうと私は思うので、外務大臣御自身の基軸をどこに置かれているか。  これは大事な問題ですから、ひとつ原点に対して、原則という問題だけでお答えになってしまわれないで、事この問題に対してはこのように自分は思うというところを、やっぱり渡辺外務大臣だなというふうに思われるようなところをちょっとここで聞かせてください。お願いします。
  66. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは何遍言われても同じ答えなんですよ。幾つも条約がありますから、やはりそれは確認をされなければならないし、ただ、五六年の共同宣言は、まず確認をされただけでは五六年に戻るだけですから、そこに何か前進を我々は期待をするものであります。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 五六年のものはもう確認されているのですか、相互間で。——いや、それは技術的なことじゃないですよ、外務大臣大統領並びに外務大臣と話されているわけだから。渡辺外務大臣、いかがですか。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それを今やっているところなんであります。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 やっているところとおっしゃるのは、その問題についてやっていらっしゃるわけでありますから、相互間に五六年の共同宣言についてのお互い共通の認識を持ち合うということでなければこれはやはりやっているということにならないと思うので、少なくとも五六年の日ソ共同宣言ということをひとつ基軸にしようというふうなお互いの心得といいますか、そういうことに対しての、この問題に対する姿勢といいますか、そういうのがあった上での話ですね。いかがでありますか。
  70. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それはいずれ時期が来れば皆様の前に明らかにいたします。今そういう交渉をやっているというところであります。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 交渉をやっていらっしゃるということを今おっしゃいましたから、少なくとも五六年の日ソ共同宣言については、あれはソ連との共同宣言ですから、ロシア共和国との間でこれが継続されるというふうな意味も含めて、このことについての話し合いであろうかと私は認識をいたします。  そうすると、六〇年以降それを取り消すような対応があったということを先ほど外務大臣はおっしゃったのですが、具体的にはグロムイコ書簡などをやはり念頭に置いて外務大臣はおっしゃっているに違いないと私は思いますが、それについてイエス、ノーというのだけで結構ですからおっしゃってください。いかがでありますか。
  72. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 もう御賢察のとおりであります。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 このグロムイコ書簡については、現在はこれがお互いの交渉の障害になるとか、あるいはグロムイコ書簡自身はもう既に過去のものであるというふうなことについての話し合いが恐らく私は進展していると思うのでありますが、グロムイコ書簡ということについては、これをもう事実上は無効とかなかったとかいうふうないろいろな表現があると思うのです。意味を持たないものであるという趣旨の話し合いが具体的にあったように私は思いますが、いかがでございますか。
  74. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 一九五六年の共同宣言の有効性ということを論じます場合に、もう御存じのことでございますけれども、宣言そのもの、全体でございますね、条約の形式としての宣言そのものの継承の問題、有効性の問題、これはもう既にロシア連邦政府がはっきりと重要な条約一つとして継承するということを言っておるわけでございます。  今問題になっておりますのはその中の九項、これにつきましてグロムイコ書簡があるわけでございますけれども、その背景となりました実態につきましては、この間も御答弁を申し上げましたどおり、ロシア連邦政府認識は、日米安全保障条約というものを容認する、前提とするという認識に変わってきているわけでございます。そういたしますと、グロムイコ書簡の中に書いてありますことは外国の軍隊が駐留する限りということでございますから、この前提の認識が変わりつつあるということは、私どもロシア連邦政府関係者と認識は近づきつつあるというふうに思うわけでございます。  さて、それをどういうふうな形で解決しようとしていくかということにつきましては、外務大臣も申し上げましたように、いろいろな角度から今行われ、本格交渉が始まったわけでございますけれども、その中身に入るわけでございまして、これ以上ここで申し上げるということは差し控えさせていただきたいと存じます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 今の御答弁からすると、既にクロム イコ書簡は意味を持たなくなっているというのが現実の問題として動いていっていて、そしてそれに対してのお互い相互間の意思表示をしたことがまだ具体的な文章化されていないというか記録になっていないという段階だというふうに受けとめてよいと思いますが、外務大臣、そのとおりに私理解しておいてよろしいか。これは外務大臣からそのお答えをいただきたいと思います。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは先ほどもいろいろ言っているのですが、非常に静かにやろうということになっておりまして、大体御質問の趣旨はよくわかっているのですよ。ですから、そう問い詰めなくともおのずからおわかりだろうと私は思うのです。政府側からはどういうふうにしていくかということについては、御趣旨は十分体してやっておりますので、御了承を願いたいと存じます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 あうんの呼吸とか、それから時期に対して意のあるところは静かに、言わないで、しかし即刻やれることをばしっとやるとか、いろいろあると思うのですけれども、しかし外務大臣、これは四十年来の問題だったと繰り返しおっしゃるところに大変意味があるなど私は先ほど聞いていたわけです。それなりに、そうすると意のあるところというのは、お帰りになったときのホットな、それは話し合いの中でこうだったというふうなことについておっしゃるべきことというのは、やはり私はあると思うのですよ。今私がお尋ねしていることは、全体の交渉からしたらそんなに阻害するような要因ではないというふうに私は考えていますから、少なくとも私どもの心得事としてやはり考えておかなければならない今後の課題だろうと思います。  六月に作業部会が開かれるという予定だというのが伝えられておりますが、六月の作業部会までの間にそれではどういうふうな取り組みをお考えになっていらっしゃるのですか。やはり五六年の共同宣言から出発していくというふうな取り組みでいらっしゃるのかどうか。これはお心づもりはどうですか。
  78. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 今回渡辺外務大臣とコズイレフ外務大臣との間で一応のめどとして次回の平和条約作業グループを六月に開くという合意を見たわけでございますが、それまでの間、私どもは今回の渡辺外務大臣との一連の会談の結果を踏まえまして、それぞれ内部で検討すべき課題がございます。そういうものを検討しながら、事務レベルで外交ルートを通じまして、静かにこの作業グループに向かいましての準備が進められるというふうに私どもは考えております。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 さて、そのロシアでの現場での話ですからこれは外務大臣の御感想をひとつ承りたいなと思うので、事実問題について触れよというと、全言う時期じゃないの、やれ何だのとおっしゃるだろうと思うのですが、外務大臣御自身は国境線画定ということをやはり念頭に置かれて恐らくは一八五五年のあの取り決めについて意のあるところをはっきり、大臣のことですからおっしゃったに違いないと思うのですが、向こう側の反応というのはどうだったのでしょうか。どのようなそれに対しての反応だったのでしょうか。これは新聞とかテレビを通じてもその辺がもうひとつ伝わってきていないので、現場でお話しになった外務大臣の御感想をひとつ聞かせてくださいませんか。
  80. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 平和条約を結ぶのには領土が画定しなければ結べない。領土が画定すればおのずから国境線が画定する、そういう意味で言っておるわけであります。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 それは外務大臣の方がおっしゃったのでしょう。それに対しての向こうの受けとめ方というのは冷ややかでしたか、温かかったですか。反応としては乗り気だったですか、そっけなかったですか、いずれでございますか。
  82. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはもういろいろ見方によるでしょうが、いずれにいたしましてもロシア側話し合いを継続して、それでお互いが互譲の精神でともかく日ソの正常な関係をこしらえて平和条約を結ぶということで一層努力をしようというのですから、大体それでお察しかつくだろうと存じます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 大体禅問答のような形になってしまうので、こういうのはもうなかなかそういう修行を積んでいないとわかりにくい話になっていくわけですが、大体ずぶの素人でもわかるように、こういうことに対してはやはり鮮明な姿勢とか鮮明なそれに対しての認識というのを披瀝なさるということは非常に私は大事な問題だと思うのです。  さあ、そこで、平和条約締結するには北方領土解決しなければならぬ、今おっしゃったのですが、エリツィン大統領側は例の五段階解決論を展開されていますね。恐らくは五段階解決論ということを念頭に置いて向こう交渉テーブルに着いてお話をなすったに違いないと私は思います。  その四段階目に平和条約締結するとあるのですが、この場合、今外務大臣がおっしゃるような北方領土の問題が解決しないと締結できないという理解からすれば、その次の五段階目におっしゃっている、エリツィン大統領も言われている最終的解決を次の世代にゆだねるということはどういうふうに理解したらいいのでしょう。これは大臣自身はどういうふうにお考えになりますか。
  84. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはかねて、大統領になる以前に発表されたものでありまして、次の世代とか平和条約まで十五年とか、世の中が変わってしまったのですよ、これはエリツィンさんが大統領になる前の話ですから。ですから時代の変化に伴って、当然このとおりでなければという話じゃないのであって、これは一つ向こう主張を言っているというだけのことです。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 よくわからないのですが、向こう主張を言っているだけの話というふうに言われてしまうとこれもまたそういう御答弁になるかもしれませんが、今度はお話し合いの中で向こうは五段階解決論について短縮をしていくというふうな意思表示があったという趣が伝えられておりますが、五段階の中をどう短縮するというふうな認識を持って臨まれていると受けとめられましたか、外務大臣は。
  86. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それを今やっているのですよ、それを。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ、それをやっているとおっしゃるそれというところが具体的にわかりませんから、短縮されるのも何が何だかさっぱりわからないということにもなりかねないので、何をどう短縮しようというふうに考えられているかというあたりはいかがです。これはやはり言っていただかないと御答弁になっていないと私は思いますよ。
  88. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは今、いろいろ交渉事ですから、ある程度まとまった段階、そういうものができれば当然国会にかけてそこで賛成していただくという努力をするわけですから、そこまでは交渉事中身について現在の段階でどこがどうだこうだということは申し上げられない、そういうことを私は言っているのです。決めてしまったらそれで終わりというわけじゃありませんから、国会にかけるのですから。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 余り御答弁になっていないと思うのですがね。  先日の当外務委員会で私が外務大臣日ロの問題についての質問をいたしました。そのときに政経不可分の原則というのは変えられない、G7に行ってもサミットに行ってもこの立場というのは変えないということをきっぱり外務大臣は御答弁になりました。今度のエリツィン大統領との会談によって政経不可分の原則というのは変えられることになっているのか変えられないのか、いずれでございますか。  これは率直に言って、今度の会談ではどうも北方領土問題の土俵の上に上がっての話になっているかといったら、それはこれからでございますということであろうと思うのです。話し合いという のはこれからであって、土俵の上に上がっての話し合いにはまだなっていないということではないかと私は受けとめております。こういう状況の中でG7やサミットの場所でロシア支援を求められて、日本としたらどういうふうにこれに対して対応なさるかということと非常に関係してまいりますから、いかがでございますか。  もしG7やサミットの場所で、四島の主権問題というのが解決されていないから、政経不可分原則は撤回しないで、この原則で押し通さなければならない日本立場でございますと言われたときに、国際的に日本は孤立することにならないかどうか、この点、いかがです。
  90. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 政治というのは生きていますから、政経不可分という問題は、ロシア日本日本ドイツとは全く違うのですよ、これは。  ドイツロシアに攻め込んだ方、日本は攻め込まれた方なんですから、だから同じ協調というような問題の中でも差が出てくるのは当然のことなんです、実際は。そこで我々は、だからといって現在のエリツィン政権のやっている苦難の道について、国際社会においてこれを守っていった方が世界のためになるのか、内部混乱が起きちゃってまた旧共産党が、あるいは保守派が力を持って昔のような、そのものどおりにはならないまでも、力の政策の国になった方がいいのかということになりますと、これはやはり逆戻りさせてはいけないというのが大体同じ認識なんですよ、その点は。  ということになれば、それは国際社会において必要最小限度のものをここ一、二年ひとつ協力しようじゃないかという話がありまして、我々も国際社会の一員として責任を持っておるわけですから、日本領土問題が解決しない限りロシアがIMFに入るのも反対だ、いや、それはルーブル安定基金をつくるのも反対だ、何をするのも反対だというようなことを言っていた方がいいのかどうかという話なんですよ。  国際社会と協力し合って日本立場も支持してもらいながら、やはり国際社会の有力な一員として皆さんと協調できるものは協調した方がよいのではないかということで、我々は国際的協調という枠組みの中ではやっておりますが、今度はロシア日本ということになりますと、いろいろな問題が今後出てくるわけです。そういう問題については平和条約をつくらないと国家間のきちっとした土台ができないから、それをつくりましょうということで、これは別にやっておるわけです。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 この前の御答弁と大分趣が変わってきたことだけは確実だと思いますが、やがてわかるでしょう、今ここでの差し控えたいけれども、やがてわかるでしょうとおっしゃった。  最後にそれをお伺いしたいのですが、やがて、やがてとおっしゃるのは、この九月のエリツィン大統領日時には具体的にもうその問題について、ああ、あのときに渡辺外務大臣とのお話し合いでそうだったのかということがわかるというふうに思っておいていいんですか。それまでにわかるというふうに思っておいていいんですか。そんな近いときではない、もっと時間がかかるだろうと思わなければいけないのですか。いかがでございますか。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはなるべく早くやりたいと思っても相手のあることですからね。四十年もかかって動かなかったのだから、そんな半年や一年で全部が動いちゃうというようなことは、それは期待過剰ですよ。やはりちゃんとした方向をきちっとして土台をつくっていくというところから出発しなければならぬと思っています。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 あと私が一つどうしても外務大臣の御見解を承っておきたいのは、四月二十八日に最高裁判所で判決がございました。  旧日本領だった台湾の台湾在住の人たち、旧日本軍人軍属として従軍をした人について、もう多くの説明は大臣に不必要だと思いますけれども、戦病死をした人並びに遺族あるいは当時の軍人軍属の恩給に対しての取り扱い、すべてこれは日本人と取り扱いを異にいたしております。同じ日本人として戦地に駆り出されて命を落としたりあるいは傷ついたりしたのに、戦後国籍を失ったために戦傷病者遺族援護法や恩給法の適用を受けられない、これはだれが見たって不合理だと思うのでございます。  現在の国籍や現在住んでいる場所が問題なのではないので、被害を受けたとき、またそういう境遇にあったというそのときの客観的な条件というのがこれは問題だと思うのですね。したがって、今回の判決というのは、どうもこの私が申し上げた不合理だという点に対して十分こたえてはいただけなかったのですが、この棄却という判決の中で、しかし私たちからしたらこれは見なければならない点がございます。  それはどういう点かというと、日華平和条約日本と中華民国との間の平和条約、その中で「日本政府と中華民国政府との間の特別取極の主題とする。」ということを台湾住民日本国に対する請求権の処理として認めていたのでありますけれども、それにもかかわらず、御存じのとおり、日本国と中華人民共和国との間の国交正常化に伴って、この日華平和条約がその意義を失ってしまったわけであります。この協議はもはや行われなくなり、また、日本政府と中華人民共和国政府との間でもこの問題を協議する機会はつくられずに今日に至ってきたわけであります。全くこういうことに対して伝わっていないのですね。  そこで、この特別取極というのが締結できないことで今日になっておりまして、国籍条項が外され、特別取極は全くないという状況の中では、「法の下の平等の原則に反する差別となっていることは、率直に認めなければならない。」という園部裁判官の意見もこの中にあるわけであります。  総じて、この判決には、上告をした台湾在住の人たちが「ほぼ同様の境遇にある日本人と比較して著しい不利益を受けていることは明らかであり、しかも戦没戦傷の日から既に四〇年以上の歳月が経過しているのであるから、予測される外交上、財政上、法技術上の困難を超克して、早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待であること」これを、高等裁判所で付言したことをさらに最高裁でも繰り返し述べられているわけであります。「この種の問題の根本的な解決については、国政関与者の一層の努力に待つほかないことをこの機会にあらためて付言して置きたい。」ということが強調されているわけでございます。  さあ、そこで、外務大臣は去る三月五日に予算委員会で答弁をされているわけでございますけれども、そのときにずっと質問を聞いておられて、「もっともだなと思わないわけではない、しかし法律上のいきさつその他いろいろありますから、ここで今はっきりした返事は申し上げられない。」が、どうしてそういうようないきさつになったのかを含めて勉強させていただきますという御答弁をそのときになさっていらっしゃるの下す。  それと同時に、法律論争を幾らやっても決まらない、申しわけないという気持ちがあり、それを目に見える形で何かするのが政治がなという感じを受けているという御感想も述べられているわけでございますが、最高裁まで行って、そして棄却という判決を受けて、この台湾の元日本兵の人たちは国際法廷で争うということも悲壮な決意として持たれているようであります。  日本は国際人権規約を締結しておりますから、国連にこれが持ち込まれるということになると国際的な問題として大きな注目を浴びるでしょう。フランスのセネガルの例もございますけれども、日本の場合も、このセネガルの例をとって考えてみました場合、これはやはり国際人権規約のB規約の二十六条から考えてもおかしいということを恐らく国連としてはその決定として出されるであろうということも想像にかたくありません。  そういうことも含めて、今外務大臣として、この判決があったからじゃないんであって、やはり政治責任としてこういう問題に対して対応していくということは非常に私は大事だと思いますが、今法律にある国籍条項というのが、こういうことからすると今まで取り扱いの上では大きな大きな差を設け、そして台湾におられる旧日本兵なんかに対しては対応しないということで今日まで来ていたという実情についてもひとつ考えていただいて、ただいまの外務大臣のお考えを承りたいと思うのです。
  94. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは慰安婦問題のときの答弁かと存じます。  今言ったように、政治で決着をするといっても限界があるし、台湾の住民の戦没者遺族等に対しましては、八七年の九月に特別立法をつくりまして、議員立法で対処することになりました。そして、そのときに五百万円というような話もありました。ありましたけれども、いろいろな物価、人件費等を考え、財政事情も考慮した結果、一人二百万円ということで決めまして、九一年の十月現在既に二万七千九亘三十一件の裁定に対して二万七千七百六十五件に支給済み、したがって総支給額は約五百五十五億三千万円ということで、もう大半の支給が終わって、その中で百六十六件が、申請があったが却下をされたということでございます。したがって、これ以上のことはなかなか約束は難しいなという感じでございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 これは外務大臣そうお答えにをるであろうと私は思っていたとおりのお答えなんですが、旧日本領だった台湾から第二次大戦中は二十万人以上が日本軍人軍属として戦地に送られているのです。戦死された方は三万人以上、重度障害者になられた人三百人を上回るというふうにも厚生省の資料を見た限りでも出ているわけですが、ただしかし、現地には戦死戦傷証明がないために請求できない人が大勢おられるという話が事実としてあるわけでして、これは少なくともそういうことについて、誠意があるなら日本側から直接調査ということをやるべきではないかという声があることに対して、大臣、どうお考えになりますか。
  96. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまのようなお話もあるとすれば、現地に、私どものと申しますか、交流協会の台北の支部がございますので、そういうところを通じて、その種の先生の今御指摘の点の調査は可能であると思います。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 ということなんです、外務大臣。それは今までないですよ。そういうことをやっている、やらないという単にその姿かたちじゃなくて、やはり誠意があるかないか、そして道義とかいうことに対してどれほど誠実な姿勢で臨んでいるかという問題だろうと私は思う。外務大臣、どうお考えになりますか。——いや、これは外務大臣からお答えいただいて私は終わりますから。
  98. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答えいたします。  この件についての経緯はただいま土井先生からるる御説明のあったとおりでございます。  そこで、御記憶のように、社会党の諸先生のお力も得まして、ほぼ超党派の先生方のグループが政治の声を上げられて、そして先ほど大臣から御答弁いたしましたような一応の決着を台湾側と図ったわけでございます。もちろん、先ほど大臣が申し上げました五百万円があるいはただいま支給しておる二百万円かということになりますと、それは個々人のお立場で、少ないではないかという御議論もあろうかと思いますけれども、先ほど大臣が御答弁いたしましたように、政府としては精いっぱいの対応をしておるわけでございまして、そういうことで台湾側と一応決着が得られたものでございます。  ただ、適格者につきましては、もちろん、これからも申請を受けまして支払い続けていくということでございますから、その辺の日本政府当局の誠意は非常に確かなものがあると存じます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 今、誠意は確かなものがあるとお役人がおっしゃるわけですが、これはやはり相手側にそのことが伝わってなければ誠意というのは一方通行で、私は誠意を持ってやっています、やっていますと言ってみたって、それは通じてないということではないか。信義とか道義というのは、相手方がそれに対して本当に感ずるとか本当にそのように思うという状況でないと生きたものになってないだろうと私は思うのです。  戦後四十七年です。四十年以上たって、亡くなられる方はたくさんあるのですから、これからどんどん高齢化の現象はあるわけですから、そういつまでも時間がたつのを待っているという問題ではあるまい。  外務大臣、これは誠意を持って今までやってきたつもりだというお答えではありますけれども、今先ほど私が申し上げたことについて一言お答えいただいたら私は質問を終えたいと思います。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 戦争というのは大変な悲劇なことがあって、残虐なことがあったり、日本だってたくさんの無辜の人が死んでいる。あるいは中国大陸についても同じような問題があって、どこかで線を引かなければならない。残念ながらそれが現実の姿でございます。  したがって、国民が大多数が大増税でも何でもやってもやるべきだということになるのかどうか、非常に問題があるところでございますので、これは本当にお気の毒な方はお気の毒でございますが、どこかで線を引かなければならぬ。こういうような問題もありますから、それらの兼ね合いとの間で考えられるべきものだろう。  したがって、現段階においてはこちらの五百五十五億円という金額をお支払いして、正当な審査を経たわけですから、そういう点以上には私はここで答弁は進んですることはできないと存じます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣調査等々についてはできると思うのですよ、先ほども御答弁にあったとおりで。したがって、これはひとつ考えていただくようにお願いします。  終わります。
  102. 麻生太郎

    麻生委員長 玉城栄一君。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も北方四島返還問題について、持ち時間が二十分しかありませんので、ほかにも質問を予定しておりますので、その範囲でお伺いいたします。  外務大臣、大変御苦労さまでした。ロシアエリツィン大統領会談をされまして、きょう帰国されたように先ほど伺ったわけでありますが、大変お疲れのところ、本当に敬意を表するものであります。  ただ、このロシア側との会談について、みんな具体的な前進があるものと期待もしておったわけでありますが、きょうの先ほどからの御答弁を伺っている範囲では、何も前進といいますか、四十年も動かなかったとか、相手があることだから、これは交渉事だからとかいうふうな話で、我々聞いている側としては、何をおっしゃろうとしているのかさっぱりわからないということも事実であるわけであります。そういうことから、具体的なお答えは無理かもしれませんけれども、感想、感じ、印象、そういうものは当然受けられたわけでありますからお聞きしたいわけであります。  このたびの大統領との会談を通じて、ロシア国民返還反対という感情が背景にあることを念頭に置いてもロシア側の極めて控え目の意思表明については、大臣としてはどのように受けとめておられますか、お伺いいたします。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは何十年もの間我々のものだというふうに教え込まれておるわけですから、そういう人がおるのは仕方のないことです。  したがって、我々としてはやはりそういうような条約存在その他について広く知っていただくようなことをしていかなければなるまい。そういうようなことにおいて日ロ間で共同の客観的な今までのいきさつ等の資料を出し合って、そしてこれを公にしていく。それを隅々まで知らせるということは非常に困難なことでございましょうが、 できるだけ大多数の方がそれはもっともだというように持っていかないと、幾ら取り決めをしても議会が通らないという問題もありましょう。したがって、そういう困難を克服するための努力をお互いに忍耐強くやっていこうということなのであります。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、いよいよ次のポイントといいますか、九月にエリツィン大統領が来日されます。そのあたりかなという感じもするわけですが、先ほどの御答弁では、静かに前進しつつあるというような表現をしておられたわけでありますけれども、四島から軍隊を引き揚げます、あるいは五段階を短縮する、あるいは四島について主権を、この辺がきちっとかみ合わないと、九月にいらっしゃったにしても、会談を重ねても、これはまた今回のような結果に終わりかねないと思うの、ですが、この四島の我が国の主権向こう側はどういう表現をしているか、お伺いいたします。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それらのことについて共同資料を作成しましょうということですから、その中身を読んでもらえばわかるはずでありまして、それは国民が全部わかるかどうかわかりませんよ。だから、やはり反対運動、こういうものは政争の具に供されるのが一番困るのですよ。静かに、冷静に、ちゃんと、じゅんじゅんとお話をしながらまとめていくということが一番いい。したがって、短兵急なことをやっても結果がだめならだめなわけですから、静かに、そろりそろりという言葉をさっき使ったのだが、着実にというのがいいかもしれぬ、着実に一歩一歩積み重ねていくということです。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは事柄の性質上、やはりそういういろいろな形も当然伴ってくるとは思いますけれども、何としてでもこの問題を前進させていただきたいわけです。その責任者でいらっしゃるわけですから、ひとつ頑張っていただきたい。  先ほどの御答弁の中で、兵藤局長が五段階返還論の二つはクリアしたというような意味のお答えがありましたけれども、これはどういうふうに受けとめればよろしいですか。いわゆる五段階返還論ですね。
  108. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 私が先ほど申しましたのは、日本政府エリツィン大統領が提唱されましたこの五段階解決論という枠組みを受け入れて公的な会談交渉しているという事実はないということを申し上げたわけでございます。ただ、エリツィン大統領のそういう前向きの努力、あるいは当時、二年半前の先見性というものに対しては十分敬意を払うわけでございます。  したがいまして、この第一段階、第二段階でどういう議論があったとかここでどうだったかということは申し上げるような性格の議論ではないということを先ほど申したつもりでございます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 質問を変えさせていただきます。  この問題もこの委員会で何回も議論されてきましたけれども、PCBの件について、日米間で環境分科委員会で第一回の話し合いがされている。第二回の模様についてはまだ報告もされていないわけですけれども、その点についてぜひ内容を報告していただきたいと思います。
  110. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  去る四月二十四日に日米環境分科委員会というのを開催いたしまして、PCBについて日米間でいろいろやりとりを行った次第でございます。  嘉手納基地におけるPCBの漏れた件、これが我が方といたしまして大変憂慮を持っていたわけですけれども、これにつきまして米側から次のとおりの説明がございました。  それは、一九八六年に、米国へ搬出するために嘉手納基地内に保管されていた米国製変圧器一基が損傷して、約四十ガロンのPCBを含む絶縁液が漏出した。汚染された土壌の除去及び現場の回復作業が大変厳しい基準に基づいて行われており、これまで五回の掘削が行われた。それで、掘削した汚染土壌、これは五十五ガロンのドラム缶三百六十六本分というふうに米側は言っておりますが、これが米本土に一九九九年七月までに搬出される。そして現在六回目、最後の除去作業が行われておりまして、これが五月末には終了する予定ということでございます。掘削した汚染土壌はいずれこれまた米国に搬出される予定、こういうことでございました。  なお、汚染地域周辺の地下水については汚染のないことが確認されておるということでございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 それだけがすべてですか、第二回環境分科委員会での日米間のPCBについての話し合いというのは。
  112. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま嘉手納のPCBの漏出の件についてのみ申し上げたのですけれども、四月二十四日の会合全体のやりとりといたしましては、米側から、米軍にとって環境上の安全確保は最優先の事項であって、これからもさらに必要な情報を提供していくという立場の表明がございまして、それでPCBの変圧器全般について説明がございました。  これは、米軍基地にありますPCBの変圧器には、米軍が保有する米国製の変圧器、それから米軍が保有する、日本も含みますけれども外国製の変圧器、それから施設整備計画、いわゆるFIPによって提供された変圧器の三種類があるということで、最初の二つ、つまり米軍が保有する米国製及び外国製のものについては最終的に米国に撤去する計画である、それから日本政府がFIP計画によりまして提供したものについては日本側が撤去することをしてもらいたいということが向こうからありました。  日本側からは、最初の二つについて米国に撤去するという努力は評価して、それから日本政府が提供したものについては日本政府として交換しましょうということを申した次第でございます。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 日本政府交換する、それはどこですか。どこの変圧器を交換するということを日本政府は約束したわけですか、その合同委員会で。それで、その交換というのは終わったのですか。
  114. 川島裕

    川島政府委員 補足いたします。  施設整備計画で日本政府が提供したものについては日本政府交換いたしましょうということを、この四月二十四日の環境分科委員会で申した次第でございます。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、だから、どこにあるものを交換しようという話し合いをしたわけですか。
  116. 川島裕

    川島政府委員 申し上げます。  岩国の基地に日本側から提供いたしました変圧器の中にPCBが含まれているのがあるということでございますので、これについて日本側交換いたしましょうということを述べたのがこの二十四日の分科委員会でございますが、その後それに基づきましてこの十三基については四月二十七日までに全部交換を完了した、それ以外につきましては引き続き調査中ということでございます。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 岩国の米軍基地の十三基の交換は完了したというお話ですが、これは今度は防衛施設庁ですか、その岩国基地の中にあるPCB入りの変圧器を日本政府交換する際には、当然防衛施設庁が中に入ってそれを確認か何かやったと思うのですけれども、その辺はどういう作業をしたのであるか、お伺いします。
  118. 石橋真澄

    ○石橋説明員 お答えをいたします。  平成四年三月五日に開催された日米合同委員会環境分科委員会において、米側から、岩国基地において提供施設整備で設置した変圧器の中に一部PCBが含まれているものがあり、これを交換するようとの要請がありました。このため、設置後の維持管理過程でのPCBの混入可能性を含め事実関係等について調査した結果、米側指摘の十三基について濃度の差はあるもののいずれもPCBが混入していることが明らかになったので、当庁としてはこの事実を変圧器メーカーに通知したところ、同メーカーから当該変圧器を交換する旨の回答がございました。  なお、変圧器の交換は四月二十七日までにすべて完了したわけでございます。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 かねがねこの委員会でも申し上げて おりますけれども、PCBの問題は、これは有害物質、発がん性がある等重要な環境問題の一つです。だから、合同委員会で話し合う、これも当然必要ですが、やはり政府が何らかの形でそのことを確認すべきではないか、調査すべきではないかと何回も申し上げてきたわけです。今の点ではそういう確認をするという作業をしていらっしゃるわけなので、やはりこういうPCB問題については米軍基地内にあるものは、当然日本政府が今のような形で確認作業あるいは調査というものは今後すべきだと思います。その点はどうでしょうか、これ以外でも、今の交換以外でも。
  120. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  嘉手納の基地の汚染につきましてはまさに最後の作業が行われておりまして、これが五月末には終わるということでございます。  そこで、それ以外にも先生御指摘のとおりいろいろな問題はあるわけですけれども、全部結果が出てきた段階でさらにいろいろ問題になる点がありましたら、その場合には国が現場での調査ということも含めて対応はきちっと考えたいと思っております。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 既に防衛施設庁の方は先ほど確認という意味調査したということをお話しになっているのです。ぜひ外務省なり防衛施設庁あるいは県なりがこういう重要な問題というのは中に入って、米側の言っているとおりなのかどうかというものを確認していただかないと、先ほど沖縄の嘉手納基地については五月末までには全部完了するという話だけれども、そのとおりなのかどうかということはぜひやはり外務省あるいは何らかの政府機関が調査をする、確認するということは必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか、今のお話。
  122. 川島裕

    川島政府委員 従来から申し上げておりますとおり、今作業が、いろいろなデータの交換とか詳細を調べておりますので、それが終わりました時点でどういう必要があるかということを考えたいということでございます。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 通産省の方にお伺いしたいのですが、けさも、NHKのテレビだったと思いますけれども、今度は全体的に日本の国内におけるPCBの現在の保管の状況とか管理の状況はどういうふうになっているかということをテレビを見ながら感じたわけですが、これはやはり問題が問題だけに、通産省の方としてはその管理体制あるいは保管状況はどういうふうになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  124. 青柳桂一

    ○青柳説明員 お答え申し上げます。  使用済みPCB使用電気機器に関する法的な規制といたしましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、いわゆる廃掃法でございますが、廃掃法におきまして産業廃棄物として位置づけられておるわけでございます。それで事業者が一定の技術基準に従いましてその適正な保管、処理が義務づけられているところでございまして、都道府県知事が事業者への指導を行うこととなっておるわけでございます。  私ども通産省といたしましても、これを補完する形で、使用済みPCB使用電気機器につきましては昭和四十七年並びに五十一年に通産省の局長通達等を出しておるわけでございます。すなわち、その中で、適切な場所における保管あるいは管理責任者の選任、管理台帳の整備、それからPCB使用電気機器であることの表示につきせして事業者に要請を行ったところでございます。  また、あわせまして、PCB使用電気機器を自家用工作物として設置、保有しております事業者につきましては、各通産局への届け出を要請しておるところでございます。この届け出に基づきまして、通産省といたしましても、PCB使用電気機器台帳を整備いたしておりまして、各通産局におきまして定期的に事業者に対し使用、保管状況についての監視、指導を行っているところでございます。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは外務省に。  通産省の方はいろいろな国内法に基づいてそういう規制なりいろいろなことをやっているというお話ですが、米軍基地内についても当然そういうものが、いわゆる米国はその国の国内法に準じて当然やるという話をしているわけですから、当然そういうものもテーマにした話し合いというものは環境分科委員会ではされるべきだと思うのですね。いかがでしょうか。
  126. 川島裕

    川島政府委員 一般論で申しまして、外国の軍隊といえども接受国、この場合は日本国でございますけれども、の国内法令を尊重すべきことは当然でございまして、したがいまして、在日米軍が我が国のいろいろな法令を尊重して公共の安全や国民生活に妥当な配慮を払うということは大前提でございますし、そういう前提に立って環境分科委員会でもやりとりを進めておる次第でございます。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が来ましたので、終わります。
  128. 麻生太郎

    麻生委員長 古堅実吉君。
  129. 古堅実吉

    ○古堅委員 いわゆるPKO協力法案について質問いたします。  国連カンボジア暫定機構、すなわちUNTAC、その軍事部門は、要員の生命保護のためだけじゃなしに、任務遂行のためにも武器使用が認められておると思いますが、どうですか。
  130. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  従来から御説明申し上げてきておりますとおり、国連のPKF活動におきましては武器の携行が認められておるところでございます。国連の文書あるいは過去の慣行によりますと、この武器は自衛のための場合のみに使用を認められる、自衛とは次の二つの場合を含むということが書かれたり言われたりしておりまして、一つは生命の防護のため、二つ目はその任務を達成しようとしているときに実力によりそれを阻止された場合ということでございます。  UNTACにつきましても、PKFの部分で武器の使用の問題が起こりました場合にば、今申し上げたような考え方で武器の使用が許されるということになっておるものと承知いたしております。
  131. 古堅実吉

    ○古堅委員 カンボジアに関する国連事務総長報告では、軍事部門を構成するのは、軍本部、軍事監視団、歩兵部隊、工兵部隊、航空支援隊、通信部隊、医療部隊、混成軍事警察隊、兵たん大隊、海上部隊、このようになっております。この部隊の中で、武器を一切携帯しない部隊は何がありますか。
  132. 丹波實

    ○丹波政府委員 半ば推測も入りますけれども、先生も御承知のとおり、停戦監視というものが停戦監視要員によって行われる場合には、停戦監視要員は通常武器は携行しないということは御承知のとおりでございます。それを別にいたしますれば、先生が今読み上げられた歩兵部隊、工兵部隊、航空部隊、通信部隊、医療部隊といったようなものは、通常武器の携行が許されておるというぐあいに承知いたしております。
  133. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほど読み上げた十の部隊で構成される軍事部門、ありました停戦監視団、軍事監視団以外はみんな武器を携帯するということは確認できますか。
  134. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいま申し上げましたとおり、通常は停戦監視というものが将校の個人ベースの参加により行われるわけでございますが、その場合には原則として武器の携行は行っておりません。それ以外のいわゆるPKF活動あるいはその後方支援といったものにつきましては武器の携行が許される、こういうことでございます。
  135. 古堅実吉

    ○古堅委員 軍事部門を構成するこれら部隊は、外国軍隊の撤退、停戦その他の措置のために行動します。そのために武力行使を行う権限も与えられています。  政府はカンボジアPKO参加を強調されますけれども、外務大臣、その軍事部門のどの部隊に自衛隊を参加させようというのか、具体的に示してください。
  136. 丹波實

    ○丹波政府委員 おっしゃいますとおり、このUNTACの軍事部門は、事務総長の報告の中で詳細にその機能が述べられておりますけれども、停戦監視、軍隊の収容監視、それからカンボジア客 派軍の武装解除及び動員解除の監視、それから武器の管理、地雷の除去訓練等でございます。現在の国会に御審議をお願い申し上げております法案の仕組みがもし認められるのでありますならば、理論的にはこれらの活動に幅広く参加することができる仕組みになっておる次第でございます。  あくまでもその法案の建前の、理論面としてはそういうふうになっておるということを申し上げた次第でございます。
  137. 古堅実吉

    ○古堅委員 法案の審議に関連して、PKFの凍結がいろいろと取りざたされております。国連は、そもそもPKF、PKOの明確な区別をしておるのでしょうか。
  138. 丹波實

    ○丹波政府委員 いわゆるPKFと申しますのは、必ずしもその定義は国際的に確立したものはないと考えております。しかし、一般的にはその用語は次のように使われていると承知いたしております。  すなわち、一般に国連のこの種の活動はPKO、国連の平和維持活動と呼ばれておりますが、組織の見地からは三つに大きく分けられるのではないかと考えております。一つは、ピース・キーピング・フォース、いわゆる平和維持隊と呼ばれるもの、それからもう一つは、先ほどもちょっと触れましたミリタリーオブザーバー、停戦監視団、それから三つ目は、これらのもの、この一及び二とそれから選挙監視等の行政的な支援活動が組み合わさったもの、UNTACはこの三番目に当たるだろうと思います。それから、一昨々年のナミビアの国連の活動もやはりUNTACと同じような複合的な活動であったというふうに考えております。
  139. 古堅実吉

    ○古堅委員 今の答弁を前提にして重ねてお伺いしますけれども、今回のUNTACの軍事部門は、PKFとPKOを厳密に区別しておりますか。
  140. 丹波實

    ○丹波政府委員 その点は、言葉をどういうぐあいに使うかということにも関係するわけでございますけれども、例えば軍事部門を見た場合に、先生も先ほど読み上げられた歩兵部隊から始まって工兵部隊、通信部隊、それからいろいろな活動が挙がっておりますが、人によってはこの歩兵部隊の活動そのものをPKFと呼んでおられる方もございますし、あるいはもっと広く歩兵部隊、工兵部隊から始まって海上部隊まで、先生御承知のSG報告に載っておる、いわゆる軍の方がおやりになられる分野を広くPKF活動と呼ばれる方もおりますし、そこはどこを念頭に置いてそういう議論をされるかということによって違ってくるのではないかというふうに考えております。
  141. 古堅実吉

    ○古堅委員 ということは、客観的に言って、だれからもそうされているという形で厳密な区別がないということの説明だと思うのですね。政府のPKO法案は、PKFとPKOを厳密な区別をするというふうな形にはなっておりません。  ところで、第三条の三の規定のうち、PKFの任務と言われるものを特定するとすればどうなるのでしょうか。明示してください。
  142. 丹波實

    ○丹波政府委員 これもこの法案上、どこからどこまでがPKFかという御議論よりは、むしろ一つのお答えのよすがは、衆議院段階政府提案の法案が修正されたことは先生御承知のとおりですが、あのときに、派遣後二年たったときの国会承認ということで修正が問題になりましたけれども、これは自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務であって、第三条三号のイからへまでの活動というものがその二年後の国会承認の対象として修正されたわけですが、恐らくこれを提案された方は、そのいわゆるPKF活動としてこの活動を念頭に置いておられたのではないかというふうに私は推測いたしておる次第でございます。
  143. 古堅実吉

    ○古堅委員 第三条の三、ニの方に、「放棄された武器の収集、保管又は処分」というのがございます。これは当然のことながら、今おっしゃるような説明からするというとPKFに入るということになると思うのですが、そのとおりですか、確認してください。
  144. 丹波實

    ○丹波政府委員 ですから先生、先ほど申し上げましたとおり、いわゆるPKFといろんな方が言われますけれども、PKFというものについての国際法上と申しますか、法的な厳密な定義というのが必ずしもないわけでございまして、今先生が言われた「放棄された武器の収集、保管又は処分」、これは例えば地雷の処理というものが当たりますけれども、先ほどのUNTACのSG報告に照らしてこの問題を論じますと、歩兵部隊がこれを行うわけでございませんで、工兵部隊が行っておるわけです。したがいまして、歩兵部隊の活動がPKFだというふうにお考えになられる方から見れば、このニはそれには当たらない。しかしながら、先ほど申し上げた衆議院段階で修正の対象になったのが、少なくともこの日本の国会と申しますか、国会の御論議の中におけるPKFであるというふうにお考えになられるとすれば、それはこの中に入るという、そういうことになろうかというふうに思います。
  145. 古堅実吉

    ○古堅委員 それでは、いろいろ解釈の問題を問題にするのではなしに、政府としては法案でPKO、PKFというふうにして分けるとすれば、とことこがPKFになるんだと、どう考えておるのか、政府の考えに基づいて明示してください。
  146. 丹波實

    ○丹波政府委員 政府といたしましては、まさに先生、この三条三号をお読みになられるとおわかりいただけるのですけれども、PKF、PKOという分け方はしておりませんで、どういう任務を行うかという分け方をいたしておるわけでございます。  したがいまして、どこからどこまでがPKFか、確かに私たちこういう席上でもPKFという言葉を使っておりますけれども、この法案の立て方は、厳密に申しますと、その任務を順次挙げでいっている、そういう立て方になっておるわけでございます。
  147. 古堅実吉

    ○古堅委員 この法案の審議を通していろいろな修正発言もありますし、PKF凍結などという、そういう言い分も出てまいりました。ですからお尋ねしているわけです。歩兵部隊はもちろん、工兵部隊も通信隊なども、すべて任務遂行のための武器使用が許されたUNTAC、このUNTACの軍事部門を構成する軍事組織であります。PKF凍結というからには、こうした武器装備を有した部隊には一切参加しないという考えでもあられるのかどうか、その点も明確にしてください。
  148. 丹波實

    ○丹波政府委員 このいわゆるPKF凍結論と申しますのは、何と申しますか、国会の御論議の中で、あるいは政治の中の御論議の中から出てきておるお考えでございまして、事務的に私たちが詰めたものとして承っては今日までおらないわけでございます。したがいまして、今の法令に則してどこからどこまでが凍結だということを、政府の側からこういう御理解ですということを申し上げることはできない状況であることは御理解いただけるものと思います。しかしながら、他方、参議院の委員会におきまして、PKOの法案準備室の政府委員の方からお答えしたことがございますけれども、これも推測でありますけれどもということで答えがあったわけですが、衆議院段階で二年後の国会承認というものの対象になったのは、先ほど私が読み上げましたところの衆議院の修正の部分で、自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務であって、第三条第三号イからへまでに掲げるもの云々というところではないのかなという、あくまでもこれは政府側としては推測を申し上げるしかないという状況でございます。そういう答えがあったということだけ御紹介させていただきたいというふうに思います。
  149. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣が立たれませんが、大臣もその問題についていろいろ議会外でも発言しておられますし、議会内でのやりとりもしてこられたというふうに思います。今の質問に対して、大臣として、PKF凍結論のこの凍結というのは法案とのかかわりではどのように明示することができるか、御所見を承りたい。
  150. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは非常にいろいろな問題を含みますが、今局長から答弁したとおりでございます。
  151. 古堅実吉

    ○古堅委員 重ねて大臣にお伺いしますが、PKFの凍結という場合、法案第二十四条の武器の携帯条項の凍結ということについても、大臣としては許容範囲だというふうなお考えですか。
  152. 丹波實

    ○丹波政府委員 恐縮でございますけれども、先ほども御説明申し上げましたとおり、このPKF凍結論なるものは、国会の御論議の中からあるいは政治の中から出てきているお考えでございまして、現在政府の方からこれはこうだ、あれはああだというお答えができないという状況はぜひ御理解いただきたいというふうに考えます。
  153. 古堅実吉

    ○古堅委員 PKFの凍結問題については、既に大臣もそれなりの発言をしておられます。政府がそのPKFの凍結の問題を含めて修正について提起するとかいうふうなことについてお尋ねしているのではありません。言われているPKF凍結論に関連して、法第二十四条の武器携帯の凍結も許容範囲だというふうにその場合考えられますかと聞いておるのです。大臣、お答えください。
  154. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは、政府が出しているわけじゃありませんから、具体的な案を実は政府は用意はしていないのです。よく政治論としてはイからへまでのところがPKFに当たるんだろう、取り扱いをどうするかはそれは各党が話し合いで決めていけばいい話じゃなかろうかと思います。
  155. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りましたから終わりますけれども、以上のやりとりでもはっきりしておりますように、カンボジアヘのPKO問題を利用してこのPKO協力法案を早目に成立させようなどという動きも強まっておりまして、そのために凍結論その他がございますけれども、その内容でもはっきりしたように、いかなる形を装うにしろ、憲法に反して自衛隊を海外に派遣し、かつ、この自衛隊が、任務上許された武器の使用、武力の行使を伴うPKO関係にかかわらざるを得ないということはもう明確であります。  それはどう説明しても憲法上許されるものではありません。まさに憲法違反そのものであります。いかなる国民向けの、国民だましの言い分をもってしてもこのPKO協力法案、それを通すわけにはいかぬ、そういうことを厳しく指摘して、終わらしていただきます。
  156. 麻生太郎

    麻生委員長 和田一仁君。
  157. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今回、大臣は大変連休のわずかな時間を利用されてCIS、独立国家共同体ですかを歴訪されたということでございまして、けさお帰りになって、そしてすぐ委員会出席と、大変ハードなスケジュールで対応されておりますこと、本当御苦労さまだと存じますが、私が最後でございますので、しばらくおつき合いをいただきたいと思います。  私は、こういった短期間ではありながら大臣が今回CIS諸国をお訪ねになって、それぞれ大統領にお会いになったということは、大変意義もあり大事なことであった、こう認識をいたしております。私は、CISそのものの見通しについてもまだ定かではない、こういう見解を持っております。そういう意味からいっても、CISが将来どうなっていくかという展望を含めて、こういう国々に大臣が直接おいでになって、特に独立してから初めてというふうに伺っておりますが、非常に大事なことだったと思うわけでありまして、そういった大事なお仕事をしてこられたいろいろな感想も含めてお聞きしたい、こう思うわけでございます。  特に、キルギス、カザフをお訪ねになられた。これは私は、中央アジア諸国という国々とは従来ソ連邦を通しての交渉しかなくて、今回独立をして直接こういう格好で独自のパイプというか、直接のパイプをつくっていくということは非常に大事だ、こう考えておるのですが、そういうところへお訪ねいただいた中で、この二カ国だけを特にお選びになって、ほか、あそこは中央アジア五カ国と一口に言うのですが、お訪ねになれなかったのは心残りでもあろうと思うし、ここ二つをお選びになった理由が何かあるのか、そしてあとの国々がやはり同じような期待を持っているが、そういうところへの対応はどうなされるつもりか、まずその辺からお尋ねしたいと思います。
  158. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 実は、CIS全部の承認をし、外交関係を持った国を回りたいという希望は持っておりますが、時間的にそれができません。したがいまして、アジアの中でも日本に近い国、距離的にも近い国、こういうようなことで二国を限定をしたというのが真相であります。  また、CISがどうなっていくかということについては、これは実際のところはっきりわからない部分もございます。御承知のとおり、今でもルーブル通貨を使っておりますし、それから核兵器の問題にいたしましても、カザフスタンなどは我々が非核保有国としてぜひとも核不拡散条約に加盟してくださいというお話を申し上げましても、核はもともと存在をしているんだから私が好きで持ったわけではないんだ、撤去するといったってそう簡単に撤去はできない、加入してくれと言うのなら加入はいたしますと。じゃ核を持たないという形で加入するんですかと聞けば、それは現実に核があるんだから持たないといったつて現実にあるんだと。じゃそのボタンの問題についてどうかという話になりますと、それは拒否するためのボタンを必要なんだということを言ってみたりいたしまして、判然としないものがまだございます。ロシアなども大変頭を痛めておるところだということもよくわかりました。  いずれにいたしましても、キルギスの方は、我々はもう核は持っておりませんし、核抜きで参加をさせていただきたい、一方は、これは今言ったようなことなので、またもっと話を詰めていかなければならぬ。ただ一致していることは、ぜひとも日本という国と近づきたい、日本の技術援助、資金援助をやっていただいて、豊かな国にしてもらいたいということでは大変熱いまなざしを持っていることは事実であります。
  159. 和田一仁

    ○和田(一)委員 アカーエフ大統領は、お誘いがあれば、近日訪日したいというようなお話があったようですが、カザフスタンの方のナザルバーエフ大統領はやはりお誘いになりましたか、おいでになりますか。
  160. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは向こうから来たいという強い意思を持っておるのですが、しかし国家元首として、国賓として招待することは非常にこちらの方も用意が必要ですし、立て込んでおりますので、ちょっと当分の間はそれは御希望にかないません。しかしながら、非公式というかそういうふうな形であるならばそれは検討して、なるべく御希望に沿えるかどうかも含めまして前向きで検討しましょうということを言ってまいりました。
  161. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今大臣から、たまたま核の問題のお話を伺ったわけなのですが、アメリカと旧ソ連とのいわゆる核戦力の削減について、これは当事者であるソ連がなくなりまして、その後はこれはロシアが代表して交渉責任を負う、実現させる、こういうふうに私どもは理解をしておったのですが、コズイレフ外相外務大臣がお会いになったときに、カザフスタンそれからウクライナ、ベラルーシ、この三国をSTART調印国に加えるのだというお話があったというふうに報道されているのですね。  これはウクライナが嫌だと言っていた、ロシアに任せるわけにはいかないと言っていたことを踏まえながら、それではそれぞれSTARTに調印させようというふうに、これはロシアが譲歩して、妥協してきたと見てよろしいのかどうかですね。
  162. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そこらのところまでまだ判然としないものがあります。ロシアとしては核の統一的な管理、我々もそれを願っておるわけでございますから、カザフに対しては再三にわたって、あなたの意見には同意できませんから、ともかく核の統一的管理ということも強く訴えました。それで向こうは、それは統一軍が管理してい るのだから完全な統一的な管理下にあるのだということを言いながら、今言ったように核抜きで入るということは言わないのですね。  したがって、これがもっと、そんなことをやったからといってお金はたくさんかかるし、日本立場をいろいろ説明したり、今までの日本の発展過程を説明したりして説得にこれ努めてきたのですが、まだそれについて、それは日本の言うとおりだということにはなっていません。
  163. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この中央アジアをお訪ねになられて、日本の経済力、技術力、先進国としてのいろいろなノウハウ、こういうものについて非常に期待されたのではないかと私は思うのですね。  私どもも、そういうものに、これはまさに政経不可分の、何の関係もありませんから、対応していくべきだ、こう考えるのですが、しかしやはりそういう対象国として、例えばこういう国々を大臣はODAの対象国にというふうにお考えになって、OECDにもそういうお話をされるというふうに聞いておりますけれども、そういう方法は別にして、経済協力をするということになると核の問題がやはり相当、国民的な認識からいっても、強大な戦略核を持っている国に経済協力がという点があるので、これは大臣がしつこく進めてこられたようですが、これはこれから経済協力をしていこうという一つの大きな前提にあると私は思うので、このことをやはりもう少し認識していただくということが非常に大事だと思うのですが、どうでしょう。そういうことを踏まえて、これからおやりいただけますでしょうか。
  164. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 全く御説のとおりで、同じようなことを私も言ってきております。カザフスタンは今のとおりですが、キルギスタンなどは核は全く関係ないし、いずれにいたしましても、DACでその対象国にするかどうかを決めるという場合に我々は対象国にするようにこれを支持していきますよということも言ってあります。  それから、やはりあの地域は日本との外交関係を持っても、十カ国もモスクワの兼任ということをいつまでもするわけにはまいりませんので、これはアメリカなどは全部大使館をもう既に設置済みだ、トルコとかイランとかも何かほかに大使館を設置している、韓国もどこかに大使館を設置するというような中で、日本だけが財政上それはできないということも、これもいかがなものかということで、幾つかのグループに分けて大使館が設置できるように財政当局等とも今後話をしていきたいと考えています。
  165. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ロシアに行かれてエリツィン大統領ともお会いになられた、こういうことでございます。やはり最大の訪日の課題は領土問題、北方四島の領土問題ではなかったかと私は思うのですね。  このことについて、九月に大統領が来日されるという日程が固まったということは一つの目安として大変結構なことだ、こう思うわけなので、この九月来日をめどに、今お訪ねいただいた、エリツィンあるいは外務大臣、副大統領、たくさんの方とお会いになってこられたようですけれども、そういった方々とお話し合いを積み上げてきた、これが下ごしらえだと先ほど来おっしゃっていますね。その下ごしらえをこさえてこられた、それを踏まえてこれから条約の作業グループの会合もやる、そしてそれが外務大臣クラスの会談にまた上がってくる、そしてこの九月、お決めになってこられたエリツィン大統領の来日というところを一つのめどにお帰りになったんだろうと思うのですね。  それで、先ほど来のお話の中で、四十年来動かなかったものがやっと動き出したのだというお話、何回も伺いました。私は、確かにそういう状況の中で、一つの転機が来ているな、これは両国間のみならず世界のためにもこの話はできるだけ慎重に、しかし急いでやるべき課題だ、こう考えております。  それで、先ほど来の御質問の中で、しかしながら一体日本ロシアとの間の共通認識があって交渉していたのかという御質問もありました。私はあると思うのですね。今まではなかったかもしれないが、ここへ来て共通の認識が幾つかできたと私は思っております。  一つは、まず領土問題は存在する、今まではないと言っていたのが変わってきた。しかしながら、それを解決したいにも国内事情がある、これも日本はよくわかっている。ロシアの中の国内事情ですね、ロシア側にいろいろ国内事情があるということ、これも日本はわかっている、これは共通に認識していると思うのです。それから、新しいロシア、これを保守派の反対によってまたこういう領土問題を一つの政争の具にされて、それで火をつけてロシア国家体制が後戻りするようなことはさせてはならない、これは日本ロシアだけでなしに世界共通の認識だろう、こう思っておりますが、そういう認識もある。  それから向こう側から見れば、日本も四島一括即時返還というかつての主張は非常に硬直した姿勢であった、これはそのときには大変大事であり必要な日本主張であった、間違いのない主張であった、私はこう思います。しかし、交渉事の進む中で少し変わってきたな、向こうもそれを認めている、私はそういう共通の認識の中でこの北方領土の問題は解決されていくべきだ、こう思うのです。  そういう中で必要なものは、そういう共通認識がありながら日本ロシアとの間の信頼醸成措置、さっきから何回も言葉が出ていました、この信頼醸成措置というものが大事だと思うのです。これについて、ビザなし渡航というようなことが始まりましたけれども、こういうことについて具体的にこれから下ごしらえ、いろいろな交渉をやって九月をめどにどういうことをやっていったらいいとお考えか、その点についてお聞きしたいと思います。
  166. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 具体的にどういうこと、こういうことということを、もうおわかりでありましょうから、言うこともまたできませんね。考え方としては大体同じなんですよ。先生の考え、認識の仕方と我々というのは違っているはずがないのです。大体同じです。ですから、これはやっと動き出すというところにたどり着きつつあるということなので、何とか動かしていきたい。両方ともそう思っているわけですから、余り期待過剰になってもいけませんが、着実に一歩一歩現実を踏まえて前進をさせていくことが大事だと私は考えています。
  167. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この間、そのビザなし渡航のあれは第一回目なんでしょうか、四島在住のロシア市民が日本へ来られた。これは十九名の、人数もごく少人数であったようですが来られて、何日間か北海道を図られて帰ったわけですが、これはどういう効果があるとお考えか。あれはやっても意味がないとお考えか、私は非常に大事に見ているのです。これをお考えによっては私はもっと広めて拡大して、そして頻度も多くやるべきだ、こう考えておるのですが、先般のこのビザなし渡航についてのお考えを聞きたいと思います。
  168. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 十九名の初めての島民の皆様方が、北海道の皆様方や関係者の温かい歓迎を受けまして、少なくとも相互理解、相互信頼の構築ということでは大変に効果があったというふうに私どもは認識しております。  先生がおっしゃるように、信頼醸成というものがこの問題の解決一つの重要な柱になるということで、まさにそういう観点から始めたわけでございますけれども、そういう認識から、今月には今度は日本の方から旧島民関係者が行っていただく、それを踏まえまして、できれば六月に第二弾をお呼びするというような形でこの問題をさらに進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  先ほど御指摘をいただきました四島から正規軍を引き揚げるというエリツィン大統領渡辺大臣への意向伝達も、まさにその信頼醸成の構築ということから考えましても非常に意味がある。私どもはそういう観点からも、さっき御指摘がありました安全保障対話、その中からやがて制服同士が 率直に話し合うという交流につながっていく、こういうことも信頼醸成措置ということで非常に大事だろうというふうに考えております。
  169. 和田一仁

    ○和田(一)委員 わずか十九人の人が日本へ来られただけでも私は影響があると見ております。  というのは、在住している島民の皆さんが、日本という国は不法に領土だと主張し、返せと言っている、ばかなことを言っているんだという認識があれば、中央の政府が返したくても現場の住民が猛反対するということは、これは非常に交渉を難しくしていく。逆に現地の住民が非常に信頼が深まって、今まで我々が宣伝されていたのとは事情が違うんだ、返してもこうなるんだということが明らかになれば安心して来るし、むしろそういう声が中央にもはね返ってこういう交渉事の大きな推進力になる。こう考えておるので、ぜひ六月第二弾についても最大限の努力をしていただきたい、こう思うのですが、第一回目のビザなし渡航でおいでになったのは、これは政府が面倒を見たのですか、どこが面倒を見たのですか。
  170. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 当初の日ロ政府の了解では、お互いにそれぞれの費用負担で派遣をするという前提でございました。しかしながら、実際問題として旧島民の方々には外貨がない、外貨が非常に逼迫しているという状況がございまして、少なくとも向こうが船を出して根室までは来る、しかしその後の外貨がどうしてもないというお話がございましたので、今回は北海道の関係者の方々が善意の負担をして十九人の方々に滞在していただいたというのが実態でございました。
  171. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういう実態がおわかりになれば、私は何らかの知恵を働かしてもっと数をふやし、人もふやして来ていただいて、日本立場理解していただくというためには政府もやはり努力すべきだ、こう思うのですね。  渡航費用については相互自己負担ということで、日本の方は今度行く分はいいでしょう。しかし六月に来られる分については、どこかでお立てかえできるとかなんとかいう格好のものを工夫すべきだ。そのために、一回目に行った人の話を聞いた、行ってみたいと思っていても行けないというのを何とか解決する道を考えていただきたい。私はここであえて予算をつけろとまでは申しません。しかし、工夫すれば方法はある、こう思うのですが、いかがでしょう。
  172. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 今そのまさに先生がおっしゃった認識に立ちまして、どういう知恵があるかということを内部で検討しているところでございます。実はこの制度を始めましたときに政府の負担ということを考えたのでございますけれども、当初ロシア側は、やはり日本政府が全面的に出てきて日本政府が丸抱えということに対しては相当の抵抗感を示しておったという背景もございました。そういう問題もございますので、その辺の向こうの非常にセンシティブな面にも配慮しつつ、その範囲内で何ができるかということを今検討しているところでございます。
  173. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わりますけれども、同じ時期に総理大臣がフランスドイツをお訪ねになって、それぞれの大統領とこの領土問題についての理解を深めていただきました。  私は、日本領土問題というのは単なる境界線のいざこざではない、非常に大事な問題を含んでいる。これは暴力によって他国の領土を侵す、奪取するというような国際正義に反する事実によって今こういう現状ができているんだ、このことをきちっと世界じゅうの人に理解してもらうということは、これは外交の基本において非常に大事だ、こう思うわけです。  そういうことを踏まえて、総理は、この領土問題はスターリンのかすである、こういうような表現をされました。まさにそうだと思うのですね。私は、新生ロシアというものがかつてのスターリン時代のものでないのならば、この領土問題が総理の言うようにロシア外交の試金石であるというのは本当だと思うのです。  私は、ここでかつてのソビエトと違うロシアの国際正義に対する対応というものをぜひとも見たい、こう思っておるわけなので、そのことを踏まえて、これは日本の問題だけでなしにG7共通の課題としても取り上げたいという今日本政府の方針をぜひとも貫いて、一日も早く、そして、しかし事は大変ですから、さっき外務大臣がおっしゃっていましたけれども、ゆっくりゆっくりとおっしゃった。慌てずゆっくり、急いでやっていただきたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。これで終わらせていただきますが、どうぞ。
  174. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 区切りをつけながら、それは着実に進めたいと思います。
  175. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  176. 麻生太郎

    麻生委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会