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1992-04-22 第123回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月二十二日(水曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 麻生 太郎君    理事 新井 将敬君 理事 鈴木 宗男君    理事 浜野  剛君 理事 福田 康夫君    理事 宮里 松正君 理事 上原 康助君    理事 土井たか子君 理事 遠藤 乙彦君       小渕 恵三君    唐沢俊二郎君       鯨岡 兵輔君    古賀 一成君       中村喜四郎君    長勢 甚遠君       松浦  昭君    宮路 和明君       山口 敏夫君    五十嵐広三君       井上 一成君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    川島  實君       藤田 高敏君    神崎 武法君       玉城 栄一君    古堅 実吉君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      津守  滋君         外務大臣官房審         議官      畠中  篤君         外務大臣官房文         化交流部長   木村 崇之君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省中南米局         長       寺田 輝介君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君  委員外出席者         内閣官房内閣外         政審議室内閣審         議官      木村 政之君         防衛施設庁総務         部総務課長   伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  板垣 靖雄君         防衛施設庁建設         部設備課長   石橋 真澄君         防衛施設庁労務         部労務厚生課長 上瀧  守君         沖縄開発庁総務         局参事官    鈴木 佑治君         外務大臣官房審         議官      須藤 隆也君         厚生省援護局援         護課長     戸谷 好秀君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       望月 晴文君         運輸省航空局監         理部国際航空課         長       羽生 次郎君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   見学 信敬君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ――――――――――――― 委員異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     宮路 和明君 同日  辞任         補欠選任   宮路 和明君     石原慎太郎君     ――――――――――――― 四月二十一日  世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条  約の締結について承認を求めるの件(条約第八  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税回避及び脱税防止のための日本  国とルクセンブルグ大公国との間の条約締結  について承認を求めるの件(条約第五号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国ノールウェー王国  との間の条約締結について承認を求めるの件  (条約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国政府オランダ王国政府との間の条  約を改正する議定書締結について承認を求め  るの件(条約第七号)  アジア太平洋郵便連合一般規則及びアジア=  太平洋郵便条約締結について承認を求めるの  件(条約第四号)(参議院送付)  千九百六十八年二月二十三日の議定書によって  改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷  証券に関するある規則の統一のための国際条約  を改正する議定書締結について承認を求める  の件(条約第一〇号)(参議院送付)  世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条  約の締結について承認を求めるの件(条約第八  号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 麻生太郎

    麻生委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ルクセンブルグ大公国との間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府オランダ王国政府との間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  各件に対する質疑は、去る四月十七日に終了いたしております。  これより各件に対する討論に入ります。  討論申し出がありますので、これを許します。古堅実吉君。
  3. 古堅実吉

    古堅委員 日本共産党を代表して、租税条約三件についての反対討論を行います。  反対の理由の第一は、国内で活動する以上の高利潤を獲得する海外進出企業に対して適正に課税すべきでありますが、本件租税条約は、国内と同様大企業優遇税制を保証するものであるという点であります。  第二に、二重課税排除は、国外投資の障壁の一つを除去することになり、資本海外進出に対する税制面からの民主的規制を困難にするということになる点であります。  第三に、短期滞在者、芸能人、学生などに対する二重課税排除という点はありますが、主として資本金百億円以上の大企業利益に貢献している外国税額控除制度を盛り込んでいるように、条約の本質は大企業利益を擁護するものであるというふうに考えるからであります。  反対する基本点は以上であります。  これで討論を終わります。
  4. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  5. 麻生太郎

    麻生委員長 まず、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ルクセンブルグ大公国との間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 麻生太郎

    麻生委員長 起立多数。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  7. 麻生太郎

    麻生委員長 起立多数。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府オランダ王国政府との間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 麻生太郎

    麻生委員長 起立多数。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 麻生太郎

    麻生委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  10. 麻生太郎

    麻生委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として海外経済協力基金理事見学信敬君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 麻生太郎

    麻生委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  12. 麻生太郎

    麻生委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  13. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外務大臣にお尋ねするわけですけれども、十八日の講演の中で、北方領土返還交渉に関連して、ロシアが四島に対する日本主権を認めれば必ずしも四島一括返還にこだわらず、一時的にロシア施政権を容認する考えを示したそうですが、これまで政府は四島の一括返還、言いかえれば四島同時返還で突き進んできたわけでありますけれども、この発言は方針の転換を意味するのかどうか、その真意をお尋ねしたいと思います。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 決して四島の即時返還一括返還を放棄したものではございません。  ただ、我々といたしましては、四島が一括して返ってこなければいつまでたっても平和条約は結ばないということで四十五年これはやってきているわけですから、また平行線でつながっていくわけであります。したがいまして我々といたしましては、政経不可分という原則はございますが、しかしながら向こうでも政権もかわり、今まで五六年の共同宣言は既にその効力を失ってしまったと言われておったものを、法と正義に従って今後交渉しようという新しい言い方をエリツィン政権は言ってきたわけであります。  したがいまして、その法と正義に従って、北方四島が日本の固有の領土である、日本主権があるということを認めるならば、それは返還の時期とか対応の仕方、条件、これについては、もうあしたから全部出ていけ、これはこっちのものだ、こういうようなことは現実的ではない。したがって、それらについてはやはり現実的に対応をする、こういうことが大事ではないか、そういうようなことで五六年の共同宣言というものにも一遍立ち戻る。  しかし、それだけではこれは昭和三十一年に戻っただけでさっぱり進歩がなかったということでありますから、さらにそれにつけ加えて他の二島、つまり択捉、国後についてもいろいろと、その主権はもちろんこちらのものだということをはっきりさせるということにすれば、人口の多いところについては、やはり立ち退きの条件とか返還のやり方とかその他についてはある程度年限を限って交渉をするということはあり得る、こういうような意味で言ったわけで、従来の方針を変えたわけではありません。
  15. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私が心配するのは、ロシア側に、日本は四島一括返還を断念したのではないか、こう短絡的に受けとめられることが一番これは怖いわけですね。何といってもこの四島一括返還ということには変わりはないわけでありますから、その点を私は危惧するわけなんです。さらにまた、この二島の棚上げ論なんかにつながっていくとますます交渉は厄介なことになる、こう思うのですね。  私は、今回の大臣一つの提案は日本側にとっての切り札でなかったかなという気もするのです。こういったことを今から言うというのはいかがなものかなという感じがしたものですから質問するのですけれども、この点、もう一度大臣にお尋ねしたいと思います。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それはもう四島一括返還は四十五年来言ってきているわけですから、全然前に進まない、こういうようなことであって、やはり歩み寄りということが非常に現実的対応でございますので、その返還の時期、条件等については、返還期日がはっきりすればそれは柔軟に対応する、そういうことを言っておるわけであります。
  17. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外交交渉は、これは相手があるわけでありますから、やはり時には柔軟な姿勢も必要かと思います。ただここで私は、楽観論は許されない、こう思っております。この点やはり厳しく対応しなくてはいけない、こう思っておるものですから、そこで今大臣真意をお尋ねしたわけでありますけれども、この点を十分踏まえて、これからもこの北方問題には当たっていただきたいと思います。  そこで大臣、この連休大臣ロシアに行かれるわけですけれどもエリツィン大統領との会談は決まったのでしょうか。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今ごらんのとおり、ロシアの国会が大もめにもめて、やっときのう終結をしたということで、組閣その他いろいろな内閣異動、いろいろなこともあるかもしれません。したがいまして、まだ日取りが実は決まっておりません。しかし、コズイレフ外相との会談は、これは最初から、日本に来た、それで向こうへ私が行く、こういう約束になっておりますから。エリツィンとの面会の期日はまだ決まっておりません。
  19. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ロシア訪問する際、大臣に私は対処方針をお聞きしたいのですけれども、この際、先ほども質問しましたけれども、一時施政権容認問題等交渉の中で打ち出すのでしょうか。
  20. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そういうのは向こう出方でございまして、いろいろこの間議論をしておって、意見相違点があるわけですから、それに対して向こうがどういう回答をするかというところから始まるわけで、具体的にどういうふうな場面になるか、今こういった場合はこう、こういった場合はこうということは考えておりますが、予告編で出すわけにはいかないわけであります。
  21. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私がなぜ今聞いたかというと、大臣が既に十八日に講演でおっしゃっている。言って表へ出た以上、私はこれは日本の主張として、あるいは日本のカードとして当然持ち出しても不思議ではないと思っているのです。しまっておいたものならば今の大臣答弁で結構ですけれども、もう言ってしまった以上、相手出方を見てからと言ったのでは、逆に私は相手に足元を見られると思うのです。この点どうでしょうか。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは一つの例なんです。例。要するに、全島を返すということが決まっても、だから、あと半年になるか一年になるか、では、その間の行政はだれがやるのですかと。返すということに決まったら、もうあしたから全部、すぐ日本人が入って、今までのロシアの役人を全部追い出しちゃって、あしたからすぐスイッチと、そういうことは現実にできないのですね、そういうことを口で言ってみたところで。  したがって、決まってからある月数の間に少しずつ、実際に行政を施しているわけですから、それを要するに引き継がなければならぬわけですから、多少の日にちはかかるということであって、それぐらいのことは、それは向こうがそういうことになれば、そういう具体論に入るということは当然のことです。
  23. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 とにかく大臣大臣は五月の連休ロシア訪問する、また九月の中旬にはエリツィン大統領日本に来られるわけですから、一つの大きな山場を迎えているこの領土交渉ではないかと思っています。私は、大臣政治手腕あるいは大臣の腹といいますか気合いにもこの交渉は期待をしたい、こう思っているのです。  そこで、この領土交渉モスクワばかりを攻めても、今現地の声というのも極めて重くなってきておりますし、大事でないかと思っております。そこで、モスクワモスクワヘの対処としまして、四島に対するアプローチはどんなふうに考えておるか、あるいはサハリン州に対する、知事なり議会の議長に対する接触等はこれからどういうふうに考えていくのか、お尋ねしたいと思います。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは当然そのようなことだろうと思います。やはり四島に三万人からの人が住んでおりますから、それがもう絶対反対だと言うと、その声というものはサハリン州に及ぶだろうし、サハリン州の声はロシア全土に及ぶ、そういうことになりますね。  したがって、まず正しい情報を彼らに与えなければならないということなので、そこにはお互いの理解を深める必要がある。その一環として、要するにビザなし交流というものをすぐに開始をしよう。北方四島からは十八人とか九人とか言っておりますが、それらが北海道に来て、それから根室、釧路ですか、あの辺から札幌付近まで一週間程度の日数で視察をしたり、旧島民と対話をしたり、そういうことをやる。こちらからもその次に、今度は北方四島を訪れて、向こう実態をいろいろと見てくるというようなことで、交流を重ねて不安をなくすというようなことから、両面的にやる必要があるんじゃないか。  そしてまた、正しい情報というものを与える必要があるので、これはコズイレフ外相が来たときに話がついているのですが、お互い外務省が過去の記録等に基づいた客観的な歴史的な事実、こういうようなもののパンフレットをロシア語でつくって皆さんにも提示したり、情報が知らされていなければわからぬわけですから、だから正しい情報を提供し、今後の自分たちの生活とか身分について恐怖感とか不安感を与えないということが何よりも大事ですから、その両面でやってまいりたいと考えています。
  25. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで、今大臣からビザなし渡航の話が出たのですけれども、たまたまきょう四島から初の日本訪問団が来られるわけですね。根室に入るわけなんです。  今回ロシアから来る人たちへの費用日本側が持つのですけれども、二回目以降はどのように考えているのでしょうか。島の経済状況からいっても、向こうの人が自前で来るのはなかなか大変でないかと私は思っているのです。ですから、一回目は日本側が持つ、これは結構なんですけれども、二回目以降はどういうふうな配慮をするのか、お尋ねしたいと思います。
  26. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 今御指摘のようにきょう北方四島の住民の方々の第一団が到着されるわけでございますけれども、このビザなし交流枠組みを話し合いました政府間交渉におきましては、相互交流でございますので、当然費用はそれぞれが持って実施するという了解のもとで枠組みをつくったわけでございます。  しかしながら、実際に実施の段階に話を進めてまいりますと、鈴木先生指摘のように、向こう側には何といっても外貨がないという問題が出てまいりまして、少なくとも第一回目は北海道にいろいろ御尽力をいただいてかなりの部分、やってまいります鉛その他は向こう費用でございますけれども、こちらに参りましてからはこちらの御招待という形をとらざるを得なかったということでございます。  これから先どうするのかということでございますが、恐らくそういう問題があるいはまた出てくるのかもしれません。第二回目の交渉の際に、政府側北海道庁側とこの問題を十分相談をしながら対処させていただきたいというふうに考えております。
  27. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ということは、局長さん、二回目以降もそれなりに日本側費用負担考え対応していくというふうに受けとめていいのでしょうか。先ほどの大臣答弁からするならば、交流が大事である、特に不安感をなくさなければいけないというお話もありました。それを受けて今の局長答弁を聞くならば、二回目以降も日本側が何がしか負担はしていくというふうに受けとめていいのかどうか。
  28. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 交流原則はあくまでも相互訪問でそれぞれの自己負担ということでございますが、万が一向こうがどうしても外貨がないから出せないというような事態になる場合には、やはり同様の、交流を深めることが大事だという大義名分にさかのぼりまして考えなければならないかなというふうに考えております。
  29. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 こういったことは単発ではいけない、間断なく交流をしていくことが大事だ、そういった意味でも私は日本の方で前向きに対応してやるべきだと思いますけれども、その確認だけしておきたいのですが、よろしいですか。
  30. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 第二回目以降の具体的な交渉をいたしました際に向こうから、どうしても費用がない、何とかしてもらえないかという要請がありました場合には、今お答え申し上げましたように前向きに、何とか交流を進めるという大局的な見地から対処してまいりたいというふうに考えております。
  31. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで、ロシア側はそれで結構なのですけれども、今度は日本の旧島民であります。日本の旧島民が墓参に行くときは自己負担であります。交通の便がないから足だけは政府なり道庁が確保するわけなのですけれども、五月に行くときも、足は確保するけれどもあとは旧島民方々自己負担で行かれるわけですね。私はこれでは片手落ちではないかと思うのです。  旧島民人たちが、自分たちの土地でありますから、そこへ行くときは国がきちっと対応してあげる、これが私は筋ではないかと思うのです。しか外交関係によって、旧島民皆さん方は戦争ということによって島を追われたわけでありますから、これに対しては国が責任を持つ、当たり前のことではないかと私は思うのですけれども、この点はどうでしょうか。
  32. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 日本から出かけられます場合の費用負担の問題は外務省の範囲を超える問題でもございます。私ども実態をもう少し伺いまして、もし問題があれば関係各官庁あるいは北海道等といろいろ御協議をさせていただきたいというふうに考えております。
  33. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 この旧島民渡航費用等につきましては、来年度予算では何がしか予算をとるべきではないかと私は思っているのですね。  この点、大臣いかがお考えでしょうか。これは大臣政治力に頼って、大蔵大臣経験者ということも生かしながら、私は六月の概算要求、さらには八月のシーリングに向けてもう既に今から動かないと間に合わないと思うのですが、どうでしょうか。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 まあロシアの方は、人道的支援といって、食事にも困る、医療にも困るということなので、六十五億円を今回も支出をするということに決めた、そして実行をしているわけです。日本の場合はそういう状況ではない。しかし、今あなたのおっしゃったような理屈も一つあるでしょう。そういうものも踏まえましてひとつ検討いたします。
  35. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ぜひとも十分な検討をしていただきたい、予算要求はしてほしい、こう思っております。  そこで、局長にお尋ねしますけれども、旧島民が行く、またロシア側からも来る、結構ですけれども返還運動関係者だとか旧島民のみならず、日本から報道関係者もたくさん行ってもらって向こうの現場を見る、あるいはまた日本のことをきちっと向こうの人に知らせる、こういうことも大事なんです。報道陣が行くことについてはどんな考え方を持っておりますか。
  36. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 この交流計画の趣旨にかんがみまして、まさに仰せのとおり、実態日本の国民の皆様に広く知っていただくという観点からも報道陣向こうに行っていただくということも交流計画の中で話し合われ、またその対象者として含められているわけでございます。したがいまして、私どもも早い段階で一回、報道陣方々を主とした訪問団の四島訪問ということを考えたいと思っておりますし、そういう計画を今検討中でございます。
  37. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ぜひとも早急にその計画をコンクリートしてほしいな、こう思っております。  大臣、七月にはミュンヘンサミットがありますけれども、過去ヒューストンのサミット、昨年のロンドン・サミットと、この北方領土問題は議長サマリーに入ってきました。私は、今度のミュンヘンサミットでも領土返還運動について議長サマリーに入れるべきだ、先進諸国の同意も得ながらまだ国際世論喚起等もいただくべきだ、こう思っておりますけれども、この点、大臣いかがでしょうか。今回のサミットでも議長サマリーに入れるべく日本政府考えておるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  38. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 サミットの議題もまだ固まっておりませんから断定的なことは申し上げられませんが、できればそういう方向で努力をしたいと思います。
  39. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私は、ヒューストン・サミットでこの北方領土問題が議長サマリーに入ってから、海外のマスコミ等の扱いが違うと思うのですね。そうして、こういう問題があったのかと改めて知ったような人もたくさんおりましたから、この点はぜひとも今回もミュンヘンサミット議長サマリーに入れるべく外務省としては努力をしてほしい。今大臣からその方向でいきたいという話を聞きましたから、それを信じておりますので、この点、くれぐれもよろしくお願いをしたいと思います。  あと大臣ロシアの問題を考えるとき、従来の支援の問題でありますけれども、政経不可分との関係がやはり出てまいりますね。一方では踏み込まざるを得ないのではないか、いや、もう既に踏み込んでいるのではないかという声もありますけれども、この点、どういうふうにお考えでしょうか。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 政経不可分は政経不可分なんです。しかし、これをうんと厳格にきちっとやれば、歩み寄りというのは一切なしということで四十五年間と同じ、それでも困る。したがって、我々はサミットで、ロシアという国が崩壊をして、共産主義よさようなら、民主主義を実行しよう、それから経済体制も一刻も早く自由経済にしよう、我々西側と同じ共通の価値観を持ちましょう、それから核兵器その他について、軍縮も大幅に進めましょうという現指導部の考え方は、今までよりもはるかに全世界の平和と繁栄に寄与するものだと考えておりますから、そこで西側がみんなでロシア、旧連邦ですね、ロシア共同体、こういうようなものの経済面からの救済もしよう。  その一つとしては、IMFによるルーブル安定資金をつくろう、あるいはまたロシア及びその他の独立国の経済の運営がうまくいくように、財政支援を行おうという話が来ておる。  しかし、我々は政経不可分ですからそういうようなおつき合いはできませんと言った方がいいのか、それとも、我々は特殊事情があるけれどもサミットのみんなの国がそうしようと言うのだから、それはそれなりに国際機関を通しての分はおつき合いいたしましょうという姿勢を示した方がいいかと考えたわけです。  その結果は、倍の大幅協力ということは、既に二十五億ドルの資金、また保険の信用供与については日本も認めているわけですね。だけれども、それ以上もっと大きな数字の個々のプロジェクト支援というようなことについては、それは平和条約ができなければできないという姿勢は変わっていないわけです。  ですから、政経不可分ではあるけれども、全く厳格な、世界の自由陣営とも共同歩調をとらない、日本独自のやり方をやるということでなくて、先ほども議長サマリーに入れてもらったらどうかというようなお話まであるわけですから、それは協調するところは協調して、そしてやはり北方四島を早く解決した方がいいよ、そして日本からももっと全面的な支援が得られる体制をつくった方がロシア全体としていいのじゃないかというようなことを言ってもらう方向の方がいいだろうという考えで我々は進みたい、そう思って、均衡拡大方式といいますか、歩み寄りというか、そういうことでやろうとしておるわけであります。
  41. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 拡大均衡の考え方で私も結構かと思いますけれども、やはり原則原則として守ることも大事でありますけれども、この点私は、やはり臨機応変に対応していくべきではないか、あるいは国際世論の動向、あるいは関係国の動きも見るべきではないか、こう思います。  時間がないものですから、大臣、ことしは日中国交回復二十周年の節目の年であります。私は、日中関係がよりきずなが深くなるために、天皇陛下の訪中というものを日本としては考えるべきでないかと思うのでありますけれども、現段階における大臣の、天皇の訪中問題についてはいかがでありましょうか。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 本年は、日中国交正常化二十周年という大変記念すべきときであります。この記念すべきときに、両陛下の御訪中を実現し、日中友好関係をさらに前進させたいという中国からのたび重なる御要請がございます。  我々は、やはりもうここで一線を画して、新しい時代に、ひとつ後ろ向きの話だけでなくて前向きの話で取り組みましょう、そして絶対に御迷惑をかけることもしないし、条件もつけないし、必ず熱烈歓迎されると思いますということを自信を持って中国政府は言っておることでございますから、これはそういうことを踏まえて、政府といたしましては、目下真剣に検討をしている最中である。  いずれにせよ、本件の実現のためには、我が国の国内のより一層幅広い御支持、御理解、これが欲しいな、そう思っておるわけでありまして、そういうような御理解を得るような努力もあわせてやっていきたいと考えています。
  43. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大変慎重な答弁ですけれども大臣としましては、やはり天皇陛下にはこの際行ってもらったら日中関係のより友好発展のためになるのではないか、こういう考えであるというふうに受けとめてよろしいでしょうか。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは今言ったように、国内の幅広い御支持が得られるというならば、それにこしたことはないと思っております。
  45. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 最後に大臣、ペルーのフジモリ大統領が今回非常措置をとられたのでありますけれども、この非常措置についてどう考えるか、同時に我が国としてどう対応するのか、こちら側から民主主義の何かプログラムなり、要求等もしておるのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
  46. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ある一種のクーデターですな、フジモリさんのとられた行動につきまして、早速現地の大使を派遣したり、さらにまたこちらから手紙も持たしてやりました。  趣旨は、簡単に中身を言いますと、要するに、我々日本国民はフジモリ大統領が来日されて、みんなで非常に喜んで大歓迎をし、そして今後本当に民主的な立派な政府をつくってもらいたい、国民の支持も絶大にあるようですし、我々も支援をいたしますということで、既に円借その他、人道的な経済的な問題も含めて借款の供与もしたわけでありますし、今後もするつもりであります。しかし、突如としてこのような事態になったことはまことに遺憾にたえません。どういう事情があるかは知りませんが、一日も早く民主主義を取り戻して、国民に問うて、国民の全面的な支持を得られ、国際社会からも認められるようなことをやってください、我々は強く強く期待いたしますというような趣旨の手紙も出して、また大使にも言って直接面談もしてもらったわけです。  そういうことで、今夜、きょうの午前十時四十五分、あと五分くらい過ぎますと、フジモリ大統領は、今言ったようなことも踏まえまして、独自の判断で民主化へのスケジュールについて重要な発表を間もなくされるというように聞いております。
  47. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今フジモリ大統領が五分後ですか、民主化へ向けての何か発表があるという話を聞きましたけれども、せっかくの日系大統領の誕生でありますから、今後ともペルーに対する支援もお願いしたい、こう思います。  同時に、実力外務大臣のまさに出番でありますから、この北方領土問題につきましては、ぜひとも大臣のもとで一歩も二歩も前進させてもらいたい、そうすれば必ず総理総裁の道も開けてくると思いますので、期待を込めながら質問を終わります。
  48. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ちょっと今、直接手紙と言ったのですが、手紙でなく、そういう手紙を大使にやって、そういう趣旨を口頭でメッセージとして伝えたというふうに訂正しておきます。
  49. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 わかりました。  五分後にフジモリ大統領が声明を発表することは間違いないのですね。――終わります。
  50. 麻生太郎

    麻生委員長 藤田高敏君。
  51. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 今自民党の鈴木代議士から、当面しておる重要な問題について質問がありました。私もできるだけそういうものとの関連において、なかんずく日ロのこれからの外交交渉、わけても北方領土返還の問題を中心に質問をいたしたいと思います。  その前に、今ペルーのフジモリ大統領の何か重大声明が発表されるようなことを聞きましたが、これは私の質問中、大変重大な発表であれば、ぜひそれはこの委員会で報告をしてもらいたいと思います。  さて、北方領土返還の問題でありますが、渡辺外務大臣の十八日の、あのような領土返還に対する対応の変化ともいうべき問題発言につきまして、非常に関心を呼んでおるところでありますが、私は基本的な問題としてまずお尋ねをいたしたいのは、北方領土返還のキーワードは、今日まで、政経不可分であり、二つには均衡拡大であり、三つには四島一括返還であった、このように認識をしてきたわけでありますが、その基本的な認識について誤りはないかどうかお尋ねをいたしたいと思います。
  52. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはもう原則的には政経は不可分です。しかし、今言ったように、国際的な問題とか人道的な問題で、そういうふうに厳しい態度でだけやっておったのでは、平行線でもう四十五年やっておるわけですから、だからそれについては、まあ人道的問題や何かは例外ですよ、それから国際的な、みんなで協力しようというときには、日本は決まらないのだからその仲間に入りませんと言うわけにはいきませんねというようなことで、それは少し緩んだのかと言われれば、緩んだというわけではないが、その方が国際環境で協力してもらうのにいいのではないかという判断をしたということなのであります。  それから、北方四島は我が国固有の領土でありますから、まず、その四島について、これは日本の固有の領土であることを法と正義に従って認めてほしい。日本のものであると認められれば、現在は不法占拠、あれは不法占拠と我々は言っているわけですから、不法占拠という言葉もどうするかという問題でございますし、不法な行政権を行使しているということでございますが、日本のものであることを、主権を認めれば、直ちに不法な者は去れというようなことを言ってみても現実性がないから、その返還の仕方や住民の取り扱いはどうするか。  それは全部引き揚げるのか、それとも、いたい人にはいてもらうことをするのか、事業は今までどおりできるのか、どういうふうな順序で、それでは実際にこちらに行政も含めて全部、主権だけでなくて、現実の引き渡しをやるのかということ等については、これは話し合いでいきましょう、その話し合いの中の一つの方法としてはこういうのもあるかということに触れただけでありまして、やはり四島一括、日本主権ということを認めてもらうということは全く不動のものであります。
  53. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 聞いておりますと、気持ちとしてはわからぬことはないのですけれども、大変回りくどい、わかったようなわからぬような答弁だと思うのですよ。  この政経不可分の問題は、渡辺外務大臣の言葉をかりて言えば、領土返還がなければ、四島の返還がなければ本格的な経済援助はやらない、こういうふうに我々はこの政経不可分というものを理解してきたわけですね。私は後ほど触れたいと思いますけれども、いわゆるIMFの二百四十億ドルの支援、これはこれだけにとどまることなく、さらにふえていくと思うのですよ。だから、今大臣が言った、今日までの人道上の援助二十五億ドルであるとか、あるいは六十五億円であるとか、そういう援助については我々は政経不可分のこの原則に反しておるとは思っておりません、私どもの認識としても。  問題は、これからの大型の本来的な経済援助ということが、当面しておるミュンヘンサミットでも問題になってくる。そういうものとの関連で考えれば、今大臣は政経不可分というものは緩んではないのだと言うけれども、もう現実に緩んでおる、これはやはり正直にそういうふうに対応しなければならなくなってきたということを答弁されることの方が、国民に対しても素直な理解を求めることができるのではないか、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  54. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 政経不可分原則のそもそもよって立つ基本的な考え方は、先生も御存じのとおりでございますが、平和条約がないということは基本的に政治的に安定した基礎を欠いている。そういう状況の中で、特に直接間接に国民の皆様に負担を伴うような大規模ないろいろな形の援助、資金援助あるいは経済協力というものは、これはできないというのが基本的な考え方であることは御承知のとおりでございます。  しかるところ、従来より、ブレジネフ政権下、あの厳しい状況下におきましても、しかしその基本的な考え方に立ちつつも、具体的なケースにつきましては、いわゆるボーダーラインと申しますか灰色ゾーンといいますか、そういう中に入ってくるケースがある、それにつきましては従来からケース・バイ・ケースで検討してまいったとおりでございます。  シベリア開発におきますいろいろな資源の開発、天然資源、天然ガスあるいはネリュングリの原料炭の開発といったようなかなり大きなプロジェクトに踏み切ったという経緯もあったわけでございます。  そういうことでずっと来ているわけでございますが、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、その考え方を貫いていけばおのずから政経不可分の大きなところは整理できる、整理はできますが、しかしあくまでも具体的なケース、ケース・バイ・ケースで判断していかなければならない問題というのはたくさんございます。  そういう意味ではこれからも具体的な状況を踏まえて判断していく、そこに柔軟性を十分に発揮していきたいというのが先ほど申した大臣の御答弁であったということでございます。
  55. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は二年前の衆議院予算委員会において、この政経不可分の問題と拡大均衡の問題について触れたわけですが、私自身はこの拡大均衡論者でありまして、今言われたような考え方については賛意を表しておる一人です。  問題は、後ほど触れますけれども、いよいよロシア、CISの支援については、従来我々がシベリア開発に協力をしてきたとかあるいはその他の経済支援をしてきたというものとは、これは相当その規模において、内容においても違ってくるんじゃないかという点からいけば、さっきの大臣の御答弁ではありませんけれども原則を尊重しながらも実質的には緩んでいくんだ、緩んでいかざるを得ないんだということを率直に認めることの方が私はより現実的な外交ではないか、こう思うわけです。  そこで、私は、そのことはその程度にいたしまして、この四島一括返還の問題が、先ほどから議論になっておりますように二島返還、そして残りの二島については一定期間、一時期施政権を認めよう、こういう大臣のせんだっての講演でありますけれども、私はこの問題について基本的に、それでは四島返還が二島返還というふうに変わるということは、これは重大な政策変更だ、キーワードの一つ条件である四島一括返還というものは二島返還に変わったんだ、これは重大な政策変更だと思うわけでありますが、そういう認識を持っていいかどうか。  そういう認識に立つとすれば、これはどこかの高等学校の講演でお話をするような、そういう問題ではなくて、閣議決定をするとか重要なこういった委員会においてお互いの議論の中で重言をされることであって、いささかこれは勇み足といいますか、軽率のそしりを免れないと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  56. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは例の取り方がまずかったと言えばまずかったのか知りませんが、しかしわかりやすく言っただけのことで、同じようなことは今までも言っているのですよ。  結局、一括そろって直ちに返還即時返還といってもそれで進まないわけですから、これは四十五年間。それじゃまた四十五年間これから交渉していくのか、そんなことでなくて、向こうも変わってきているわけですから。ともかく法と正義で認めようということでロシア内部でも論調等もあって、この共同宣言を、あれはもう効果がなくなったとか、既にチャンスを逸したとか、理論的根拠はないというようなことまでが言われるようになってきておるので、まずはそれを認める、そういうことが大事ですね。  ということになると、それだけでは昭和三十一年と同じですから、前進がなければなりません。したがって、全島の返還期日というものははっきりさせる。その前にちゃんと四島は固有の領土である、日本主権の及ぶところなんだということをはっきりさせる。どういうような方法をとるかは別としても、基本的にはそういう意味です、私の言っているのは。  だから、それには柔軟に対応しましょうということを繰り返し繰り返しこれまで言っているわけです、国会でも何ででも。ですから、その形態の一部分として例示的に言えば、あしたからもうすぐ税務署を張りつけ、警察も全部入れかえ、何もどうだというわけにもいかぬでしょう、現実は。だから、はっきりした年限の中で徐々に入れかえをしていく、行政権とかいうものを入れかえをしていく、こういうようなことを意味して言ったものであります。御批判はこれはもうやむを得ないことだろうと存じます。
  57. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 外交交渉ですから、私は、結果として大臣が言われたように四島一括返還でありましても、それが二島返還プラス残りの二島については施政権の容認ということもあり得るかもわからぬと思うのです。  しかし、これはこれからの外交日程として渡辺外務大臣がこの月末にロシアに行かれる、あるいはエリツィン大統領が九月には訪日の予定だ、こういう中で、具体的に外交交渉で、いわば日本側の意思として提案されるべき最後の切り札だと私は思うのです。場合によればロシア側がそのことを考えておるかもわからぬ、そこを最後の落としどころに考えるかもわからぬ。そういう手の中というか、そういう切り札を最初にぽんと出したのでは、今後のロシアとの領土返還に対する交渉をより難しくするようなことになる心配はないかどうか。  この際二つ三つ続けてお尋ねをいたしますが、せんだってコズイレフ外務大臣日本に来たときにこのようなことを内々話をしておるのかどうか、これが二つ目。それと、月末に訪ソされる予定のようでありますが、そのときにこの二島返還論というものを正式な日本側の意思として議題に供するのかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  58. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは二島返還論じゃありませんよ。先ほどから言っている四島返還ですよ。四島返還ですが、手順についてはいろいろ柔軟に対応するということを言っておるわけであります。いろいろ何時間も話しているのですから、いろいろな話を、意見は交換をしておって、我々はそれに対する答えをもらわなければならない、そういう段階に来ておるわけでございます。  ですから、決して今までの対応の仕方について一切触れないとかどうとかこうとか、話の中身をそれこそ全部お話はできません。できませんが、我々としては、柔軟な対応の方法について検討しますということは、当然にそれは言っております。
  59. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そうすると、もちろんこの四島返還について、四島は我が国固有の領土であるという主権の確認の上に立ってそういう領土返還の方式、態様について言われておることですけれども、あそこまで明確に大臣が二島返還、そして二島については施政権容認ということになれば、今後の外交交渉を含めてその線で妥結の見通しがかなりある、こういう確信の上に立って御発言になられたかどうか、お尋ねしたいと思います。
  60. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはもう交渉事でございますから、その四島一括、四島一括ということをもちろん言ってはおりますが、それじゃ具体的に対応はどうするのですかというやりとりがあるのは当たり前ですね、これは。  住民についてもどうするのだという問題も、それは何も言わないで、ただ四島一括即時返還、四島一括即時返還とシュプレヒコールやっておったって全然前へ進まない話なので、それはいろいろな話はある、こういうことであって、これは決して我々は楽観をしているわけでも何でもないし、ソ連の中にはもう絶対反対だ、返還反対北方島民の中でもそういう声が非常に強い、これも事実でございます。  そういうものを和らげて不安感を除去するということをやっていかねばならないのであって、島民があしたから路頭に迷うのかということになれば、もう絶対反対に決まっているのですよ。この前に共同宣言が出たときにも、既にあのときだけで歯舞、色丹あたりの人たちが移住するとか大騒ぎになったということですから、そういう騒ぎをなるべく起こさないということが大事じゃないのかと私は考えております。
  61. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 現在四島で生活をしておるロシアの住民、そういった人に対して返還後の生活の保障の問題、あるいはいうところの永住権の問題等々について安心感を与えるような、そして領土返還が可能になりやすいような手だてをすることについては、これは何もだれも問題にしてないわけですね。当然のことだと思うわけですよ。  私は、今言っておるように、これだけ明確に対国民向けにあるいは対ロシア向けにアドバルーンを上げたわけですから、これは外務大臣の月末の訪ソのときには、もう正式な議案として出さなくとも、提案として出さなくとも、これは内外に鮮明にしたことですから、これ以上後へ引けないと思うのですね。そういう意味合いにおいて、話し合いの重要な議題として提示するかどうかということを聞いておるわけであります。  そこで、私は、訪ソに限定してちょっとお尋ねをしたいのですけれども、物の順序としては、前後八回にわたって平和条約の作業グループの中で、いわゆる歴史的な経過、領土返還に関する歴史的な経過、法律的な問題の整理に当たろうということで両国の大方の合意を見ておると聞いております。そういう点からいけば、一八五五年の日露通好条約、あるいは一八七五年の千島樺太の交換条約、あるいは問題になっております一九五六年の鳩山総理が行かれたときの日ソ共同宣言、こういったものをロシア側が確実に認めるかどうかという作業を詰めていくことが先決ではないか、そういうだめの詰んだ外交交渉の上に大臣が御発言になられたようなことを発表することが私はまともな外交のあり方じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  62. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 平和条約作業グループに関連するお尋ねでございますので、私から御答弁させていただきますが、まさに今先生御指摘になりましたように、ソ連との間の平和条約作業グループにおきましては、法律論のほかにその前段でございます歴史的ないろいろな事実関係に関します双方の考え方についての議論を相当いたしましたし、法律論の分野に入りましてからは、一八五五年の今御指摘の通好条約に始まりまして、今お挙げになったいろいろな条約のほかにもいろいろな関連した多国間条約、あるいはいろいろな戦後の処理方針といったものまでも含めました細かい議論をやってまいったわけでございます。  その議論を二月十日に開かれました日ロの間の平和条約作業グループにおいてもう一回総括をいたしまして、相手がかわったわけでございますので総括をいたしまして、その今までの八回にわたった非常に詳細にわたります法律論を踏まえて、これから日ロ間での平和条約締結交渉、これは外相レベルでございますが、これをやっていこうということで、三月の下旬に渡辺外務大臣とコズイレフ外務大臣との間でまさにその第一回の締結交渉が行われたということでございます。
  63. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 その最終的な詰めができるのはいつごろの見通しでしょうか。  それと、今も質問しましたが、今度渡辺外相が訪ソするに当たって、一九五六年のこの日ソ共同宣言にかかわる問題について、その後一九六〇年、日米安保条約の改定を機に、いうところの当時のソ連外務大臣のいわゆる対日覚書ですね。これは一九五六年の日ソ共同宣言領土条項というものを無効にする覚書ですけれども、こういうものは破棄することが当然だと思うのですけれども、そういう交渉もやられる予定でしょうか。
  64. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 今先生御指摘のいろいろな法的な文書の詰めということでございますが、先ほど大臣からも御報告申し上げましたように、八回にわたって議論してまいりましたいろいろな法的条約資料につきましては、このほど日ロ間で合意をいたしまして、両国外務省共編の資料集をつくろうというところまで来たわけでございまして、それは、とりもなおさず両方がこれからいろいろな法律論を展開させるための、国民の皆様方も含めました基礎となるそういう資料をお互いに整理しようということで、その整理がついたということがあるわけでございます。  そういう整理の上にさらに議論を続けるわけでございますが、その中で、今御指摘の一九五六年の共同宣言につきまして申し上げれば、まず最初に問題になりましたのは、ソ連邦からロシア連邦への引き継ぎの際の条約、諸協定の引き継ぎの中で最も基本的な文書でございます日ソ共同宣言も明確に引き継ぐ、こういう建言を得たということは既に御報告しているとおりでございますけれども、今先生の御指摘の問題は、その中の第九項が六〇年覚書によって無効になったという御指摘であろうかと思います。  その問題につきましては、まさにロシア側といいますか、旧ソ連側でございますけれども、ソ連側は六〇年の覚書を日本側に突きつけることによって、実質上、事実上あの九項を無効にしたとずっと考えてきたことは事実であろうかと思います。  しかしながら、あの六〇年安保の改定のときに出されましたあの覚書というものは、御承知のとおり日米安保条約を否定し、アメリカ軍の基地が日本にあるということを否定するという立場から出されたものでございますけれども、その後いろいろな情勢の変化の中で、ゴルバチョフ大統領が昨年訪日される前でございましたけれども、既に当時のソビエト政府は日米安保条約というものを容認するという立場に変化をしているわけでございます。ロシア連邦政府になりましてからも、日ソ平和条約締結の問題と日米安保条約というものは十分に両立していける、そういう姿勢を打ち出しているわけでございます。  しかしながら、具体的に今ロシア連邦の中におきましては、第九項を復活させるということが直ちに歯舞群島、色丹島を返還するという形で政治問題化しておりますために、ゴルバチョフ大統領が参りましたときにも、そこの政治的な確認が行い得ないという状態であったことは御承知のとおりでございますけれども、その状態は今日も続いているということであろうかと思います。
  65. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そうすると、現在の段階では、この一九六〇年のグロムイコ書簡、覚書、これはもう現状のままだ、今までどおりだ、こういう認識になるわけですね。
  66. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 先ほどちょっと御答弁申し上げましたように、実態におきまして、あの六〇年の対日覚書というのは外国軍の基地が存在する限り引き渡しを履行できないということでございましたが、今やロシア連邦は日米安全保障条約を容認し、外国軍の基地、つまり米軍の基地があるということを容認するという立場に立っているわけでございますから、実態的な、この前提となりました事態は大きく変わっているというふうに認識をいたしております。  それを今度は、形式的な問題といたしましてこれを破棄させるとか、無効宣言をさせるとかいうことは、理論的には考えられるかと思いますけれども、そういうことを求めることが現時点で我が方として得策かどうか、あるいは向こうのメンツその他もあると思いますので、どう処理するかということはよく慎重に考えなければならない問題である。要は、五六年を含めました諸条約、つまり法と正義大臣の強調されます法と正義に立った解決への糸口が一日も早く出てくるということ、これを主眼にして対処すべきであろうというふうに考えております。
  67. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 答弁を聞いておりますと、今日の段階ではいわゆるロシアは日米安保条約を認める、こういう立場に立っている。この一九六〇年のグロムイコ書簡、覚書は安保条約を否定するという前提ですから、安保条約を認めるということになれば、今言い回しはなかなか巧妙でありますけれども、実質的には、実態的には変化をしておるということは、この覚書は死語になった、こういうふうに政治的には解釈できると思いますが、どうでしょうか。
  68. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 私どもはさように認識をいたしております。
  69. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 わかりました。一つ非常に明確になりました。私は、そういう意味では、これからの日ロの外交交渉の中で、一つとげがのいたというように理解をいたします。  そういう前提に立って、ソ連の側から、法と正義、それに基づいた行動、そういう外交交渉ということですから、先ほどの作業グループの、一八五五年あるいは一八七五年、そういった条約の確認の上に立って、領土返還、これは四島返還が一括できれば一番ベターですし、万々一の場合には外務大臣がおっしゃっておるようなことになるかもわかりませんけれども、ぜひこの月末の外務大臣の訪ソ、エリツィン大統領の訪日、この時期に何としてもこれはもう決着をつけるようにせっかくの御努力を願いたい。  私は、もう大変これを素人でわかりませんが、一九五六年のあの鳩山総理の共同宣言が発表されたときも当時社会党の鈴木茂三郎委員長が、共同宣言をつくってきて当時自民党の中にも相当な反対があった、しかし批准行為をするようなときにもし自民党の内部が反対するのであれば社会党は挙げて賛成に回る、こういう激励もしながらいわばソ連の決断を求めてきた。  あるいは一九七二年の日中国交正常化のときも田中総理の強力な指導性のもとに日中国交正常化が実現した。  また、後ほどこれも日中関係で触れたいと思うのですが、その当時、今日問題になっておる中国の民間賠償と称する賠償の問題についても、日中共同声明のたしか五項であったと思いますが、周恩来総理のいわば英断によって戦争賠償はこれを放棄する。これはやはり私は、そのときそのときの指導者のすぐれた政治決断だったと思うのですね。  そういう面からいっても、この時期を外せば北方領土返還の時期というものはさらにずれるのではないか、私はこう思いますので、さらなるひとつ外務大臣の御努力を要請したいと思います。  そこで、少し演説になりましたが、いま一つの問題は政経不可分に関するIMF二百四十億ドルの支援の問題でありますが、これはいつどこで、日本政府の意思も十分踏まえて決まったものでしょうか。
  70. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 いわゆる二百四十億ドル、内訳は先ほど大臣が申しました為替安定基金と国際収支の不足をどうやって西側として支援するかという二つの部分に分かれるわけでございますけれども、いずれのお話もいわゆるG7として最終的に合意し決定したということは今日までございません。  この背景になりますのは、国際金融のハイレベルの専門家あるいはサミットを準備いたしますいわゆる高級レベルの担当者たちの間で、当然ミュンヘンサミットに向けて対日支援あるいは対CIS支援というものが大きな課題になる。その中で、やはり通貨の安定というものが経済再建の基軸にならなければならない。だとすれば西側として何ができるかという議論から、一つは為替安定化基金という話が当然のことながら出て、その規模は一体どのぐらいであろうかという議論が専門家のレベルで専門的な見地から行われた。ポーランドの例あるいはその他いろいろ議論していくうちに大体相当規模は六十億ドル程度であろうかという議論がこれは煮詰まってきていたというふうに承知をいたしております。  それから国際収支の不足でございますけれども、これは今日御承知のようにロシア連邦の経済あるいはCISそれぞれの経済は大変に混乱をいたしている。したがって、統計というものもかなりまた混乱をしている。そういう状況下の中でいろいろな推測、見積もりをいたすわけでございますけれども、いろいろな見積もりを専門家がいたしたところ、どうもロシア連邦だけで一九九二年、本年度の国際収支の不足が大体百十から百二十億ドルぐらいになるのではないかという議論が出た。しかし、これはほかのCISの国々を除外した数字でございます。したがって、ロシア連邦ということを考えましてもそのほかにいろいろ不足の要因も出てくるだろうということで、それに五十億ドルとか六十億ドルとか上乗せする数字を考えなければいけないだろうという議論が一方であった。それが百八十億ドルという数字の背景である。  そういう議論をしていた段階でブッシュ大統領のああいう形の発表が行われたわけでございます。ブッシュ大統領の発表も、注意深く読みますとそういうことが決定されたという発表ではございませんので、そういう支援構想に米国としては積極的に参加していくという意図を表明されたものというふうに私どもは理解をいたしております。
  71. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 理解をしておるんではなくて、G7の有力なメンバーである日本が何だかブッシュさんのメッセージ一本で、そしてコールさんが同時刻に同じように発表して、日本外務省か大蔵省が慌てて翌日にワシントンへ飛ぶ、こういう形でこの種の問題が取り扱われでいいのかどうか。  ロシア領土返還北方四島の返還の問題に関連をしてあえて言えば、一番冒頭に申し上げたようにこれは政経不可分という問題に直接かかわる重大な問題ですね。その問題がこういう形で一種の抜き打ち的に発表されるようなことは、私はあってはならぬ。これは日本外交そのものが非常に軽視をされておる、日本の存在自身が非常に軽視されておる一つのケースじゃないかと私は思うのですが、そのあたりについての見解はどうでしょうか。  それといま一つは、時間の関係もありますので集約して申し上げますが、先ほども答弁がありましたように百八十億ドルの今予定されておる援助額は、さらにふえることはあっても減ることはないだろう。一説によれば七百億ドルから千五百億ドルぐらい、一年間にですよ、ソ連の本格的な、ソ連ソ連と言って申しわけないですがロシアですね、ロシアの経済再建をやるためにはそれぐらいのお金が要るんじゃないかということになってくれば、これはアメリカも財政的には今非常に弱っておる、金持ちであったドイツもドイツ統一後の東欧諸国の援助でそう思うように金が回らない、勢いの赴くところは日本がこれから先のロシアのこういった経済援助について相当中心にならなきゃならぬ、これは今日もう国際的な常識になってきておると思うんですね。そういう問題について今御答弁のあったような対応の仕方で、果たして日本の責任というものは果たすことができるのかどうか。  それといま一つの問題は、ここで先ほども申し上げたように政経不可分というのは、やはりこういう現実に直面しできますとこの原則は死語になってきたんじゃないか。緩んできたところじゃない、死語になってきたんじゃないか。  そういう点についても情勢の変化に沿って率直に日本外交のあり方というものを、原則というものを修正すべきときには修正をする、この必要があるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  72. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 ただいま二百四十億ドルの問題につきまして日本が若干つんぼ桟敷にされて取り残されたという趣旨の御指摘がございましたけれども、この問題につきましては、実はそういう立場に置かれましたのは日本だけではございません。他のフランスほかイギリスあるいはカナダ等の諸国も、このブッシュ大統領の発表というものにはそれなりに驚きを表明したわけでございます。  私の理解いたすところによれば、このブッシュ大統領の発表というものは、ちょうどたまたま人民代議員大会がロシアにおいて開かれる直前であった、エリツィン大統領はこの人民代議員大会の乗り切りの前でいろいろ困難な立場に置かれたというような状況でございますとか、米国内の政治情勢とかいうものもあってああいう形の発表になったというふうに私どもは理解をいたしております。  にもかかわらず、しかし対ロシア連邦支援につきましては、G7の協調というものが何にも増して必要であるということは先生の御指摘のとおりであると存じますので、私どもは引き続きより緊密な協議というものを強調しているところでございます。今までの協議におきましても、専門家レベルでございますけれども、私どもの政経不可分の原則北方領土問題の存在ということはきちんと主張し続けてまいっております。  政経不可分の原則が死語になったのではないかという御指摘でございますけれども、私は、日本政府方針は全く変わっていない、死語になったという事実は全くないというふうに申し上げてよろしいかと思います。  政経不可分の原則というものは、これは大臣からも繰り返し御答弁がございましたけれども、また私が先ほど御答弁申し上げましたが、基本的なよって立つ考え方というものは何ら変わっていない。ただし、いろいろな時代の状況に応じましていろいろな環境が変わってまいります。それに応じて、大臣が強調された柔軟な姿勢でその現実現実にどう対処するかという点についてはケース・バイ・ケースで検討しなければならないということはあろうかと思いますけれども、政経不可分の原則というものはいささかも看板をおろしているという事実はないということを申し上げたいと存じます。
  73. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 外務省の見解は見解として理解をいたしました。  ただ、二百四十億ドルの経済支援ではありませんが、フランスがカナダがイギリスが同じような取り扱いを受けたのだから日本も蚊帳の外に置かれてもやむを得なかったのだというような言い方は、これはやはり役人らしい、大変失礼な言い分ですけれども、横着な答弁だと私は思うのですよ。日本はこの二百四十億ドルからさらにふえていく場合に、経済援助をやる中心にならなければいかぬのでしょう。そういう国がこういう重大な発表をやることについて枠外に置かれるなんということは許されないと思うのです。  そういうことについて、アメリカに対してでもドイツに対しても、例えば今度のミュンヘンサミットあたりでは日本の立場というものを明確に表明すべきだと私は思うのです。このことを強く要請をしておきたいと思います。大臣、その点どうでしょうか。
  74. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 このことは、私はじかに交渉しておったわけじゃありませんが、話題としては出たと聞いています。しかし、そういうように会議全体で決まるには至らなかったという報告しか受けておりません。
  75. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これはそっけない答弁ですが、これ以上この問題で言い合ってみてもどうかと思いますので終わりますけれども、私は、ロシアに対する経済支援は大いに結構、これは世界のこれからの安全保障の問題を含めまして、安定した国として早く立ち直ってほしいという点について大いに賛成であります。  ただ問題は、これは外務大臣であったかどなたであったか言われておることが報道されておるのですけれども、他国からこういう大変な経済支援を受けながら、今のロシアが新しい航空母艦をつくったり、あるいは原潜をつくったり、軍事費を増大することではないにしても、軍事力を強化するようなそういう方面に金を使っておる。そういうことであれば、この間のODAの支援ではありませんが、外務省が四つの原則をたしかつくられたですね。軍事費の関係、武器輸出入の関係、核兵器、その国の民主化の進捗の度合いというようなものを一つの物差しとしてODAの援助をやろう、私はこれは大変適切な歯どめだと思うのですね。そういう一定のきちっとした歯どめのある経済援助をロシアに対してもやるべきじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  76. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 御指摘の点は渡辺外務大臣もしばしば強調されている点でございますし、私どもロシア連邦との話し合いでまさにそのことをずっと強調し続けてまいっております。  また、それとの関連で民需転換と申しますか、防衛力をつくる膨大な軍産共同体と呼ばれております部分、これをどんどん民営、民需に転換していくということについても積極的に支援したいというふうに伝えているわけでございます。
  77. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 北方領土返還に関する問題はこの程度で終わりまして、日中関係についてお尋ねをしたいと思います。  私は、最近の日中関係については、率直に申し上げて、日本外交の主体性というものを発揮しながら推移してきておると思います。例の天安門事件がありまして以来、一時、経済問題につきましてもあのような国際的な制約もありましたが、一九九〇年のヒューストン・サミット以来、渡辺外務大臣の一月の訪中に至るまで、第三次円借款の凍結解除の問題を含めまして努力されてきておる対応の仕方については、私は一定の評価をいたしておる一人であります。そういう前提に立って幾つか質問をしたいわけであります。  これも、先ほどの鈴木代議士の質問とも関連をいたしまして、順不同でありますがそのものずばりでお尋ねをするのですけれども、天皇の訪中の問題です。  これは、前後六回ないし七回、中国の方から正式な要請があり、つい先日の江沢民総書記の訪日の際に、これまた重ねて要請があった。少なくとも江沢民総書記は中国のいわばトップの指導者であります。そういう指導者からこういう形で要請のあったことに対して、もちろん天皇の政治的利用についてはこれは一切だめでありますけれども、外交上の問題として、中国の最高責任者から、しかも日中国交正常化二十年という記念すべき年に当たって、訪日されたときのいわばメーンになるような呼びかけがあったことに対して、これは何らかの形で日本政府としてはノーかイエスかの返事をやらなければ、宙ぶらりんの形で推移することは許されないのじゃないかと私は思うのですが、この点、あえてひとつお尋ねをしておきたいと思います。例えば秋口だったら秋口までに返事を、どういう形の返事になるのか、そういう見通しも含めて、わかっていればお答えをいただきたいと思います。
  78. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 先ほどの繰り返しになりますから申しませんが、ぜひとも訪中を歓迎しますという丁重なお言葉があったことは事実でございますし、それに対して、真剣に検討いたしますというお答えをしたのも事実でございます。やはり天皇陛下が御訪中をされるというからには、挙げて中国においても日本においても非常に祝福されるような雰囲気の中で訪中されることが一番望ましいわけでございまして、そういうような環境をつくみために目下努力をしておる最中であります。
  79. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は率直に申し上げて、渡辺外務大臣がことしの一月に中国を訪問されたときに、かれこれこれは前向きの形でこのお話があったんじゃないかと推察をするわけです。そうでなければ日本がオーケーの回答をするだろうという、そういうなにがなければ、私は、この間江沢民総書記が来たときに、この問題をああいう形で表には出さなかっただろうと思うのですが、その点はやはりあいまいな形ではなくて、やはりきちっと外交的にも非礼にならないような対応をすることが大切じゃないかと思うのですが、重ねてお尋ねをしておきたいと思います。
  80. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私が一月に行ったときには、尖閣の問題とかいろんな問題が全然表に出てこなかった時代でございます。そういうようなことがあって、リアクションがあって、それに対する正しい理解を得るためには時間がかかる、こういうようなことでございまして、これについて環境をつくるために目下いろいろ努力をしておって、いずれにせよ御返事はしなければならないことでありますから、それは鋭意検討中であるということ以上のお答えをすることは、今のところできません。
  81. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これは、私の方からこの問題についてこれ以上意見を申し上げることは差し控えたいと思います。  そこで、今尖閣列島の問題が出ましたが、これまた記念すべき二十周年の今日、こういった問題が中国の全人代の中で出てくる、あるいは民間賠償という形で、これまた日本的に言えば議員立法の形で中国の全人代で問題になる。こういう背景というものはどういったところに政治的な問題点としてあるのだろうか。ちょっとすると靖国、ちょっとすると教科書問題、ちょっとすると光華寮問題等々出てくるのも、私は同じところに根があるんじゃないか、こう思うわけであります。  せっかく二十年前にああいうすばらしい無賠償の原則で日中国交正常化が図れた、この原点にいま一度我々は思いをいたして、今後の日中友好を拡大していかなきゃならぬのじゃないかと思うわけでありますが、それであればあるだけに、ことしになってこういう問題が大きく、俗に言う民衆の中から出てくるというのはどういうことだろうか。そこらについて、外務省あるいは外務大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  82. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 御記憶のように、七二年に周恩来総理が、日中間において小異を残しつつ、しかし日中友好の大同につくべきであるという政治的な判断をされたわけでございますけれども、私は、その言葉こそが、今そのとき以上に重みを持っておるというような気がしてなりません。  そこで、尖閣島の問題についての背景が那辺にありやというお尋ねでございましたけれども、尖閣の問題につきましては、私どもの理解は、中国側の説明もそうでございますけれども、先生も御案内のように、中国は現在近代化ということでいろんな方面で努力をしているわけです。近代化の努力の中に、一つ大事な要素として法的な面での国内法の整備という問題がございまして、今日までいろいろな関係法令の整備をやってきておりまして、たまたま二十周年に当たったわけでございますけれども、中国側の領海法の整備が整いまして、そこでこの尖閣諸島を、この中に中国側の領土として書き込んだということだというふうに理解しております仁  当時、日本の新聞にも、中国側の国内の権力闘争の結果ではないかとか、あるいは対日強硬派の主張が通ったのではないかというような観測もございましたけれども、私どもはそのような文脈では、この問題は、今回の中国側の措置はとらえておりません。もちろんこれは日本側の立場と相入れないものでございますから、直ちに抗議をし、また是正方を求めたわけでございます。  御案内のように、今回の措置につきましては、尖閣のみならず、南沙群島につきましても東南アジア領土権を争っておりますが、これについても中国側の領土という記載の仕方になっておりまして、これについてはマレーシア等がこれまた抗議をしておるということでございます。  民間賠償のお話がございましたけれども、実はこれも今回始まったことではございません。この種の話は正常化以来ずっと折に触れてあったことでございまして、ことしも同じような動きが出てきたということが一つでございます。  他方、どういうふうに理解しますかといいますと、要するに全人代がございまして、そこに二千数百人の代議員の方がおられるわけでございますけれども、そのうちの三十人の署名を集めれば、去年も同じようなことがあったと記憶いたしますけれども、少なくとも日本の国会で申します請願の対象にはなり得るということで、これまた年々、毎年請願として出てくるものは数千件あるんだそうでございます。そのうちの一つであったというふうに理解いたしております。  いずれにいたしましても、先ほど先生もお触れになりましたように、国と国との間ではこの種のことは、七二年の共同声明で発出の、戦争にかかわる日中間の請求権の問題は存在しないということでございまして、こういう認識につきましては、日本はもとより中国側も高いレベルで改めて確認しておるということでございます。
  83. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 尖閣列島の問題についてはそれぞれの立場でその領有権を主張するということでありますが、この問題をめぐってぎくしゃくすることは、日中両国にとって決してプラスでない、これはやはり高い政治的なレベルで、かつての鄧小平さんが一九七八年でしたか、日本に来られたときに、日本流に言えば棚上げ、日中両国が、この地域の共同開発を通じて共通、共同の利益を上げるような知恵を出してはどうかということで今日まで来ておるわけですし、せんだっての江沢民総書記が来たときも、大体それに準じたような見解の表明があったと思いますので、私は、ぜひその線で日本の側もこの問題についてはいわば対応することが一番賢明ではないか、こう思うわけでありますが、見解をあえてお聞きしたいと思います。  それといま一つは、民間賠償の問題ですね。これはきょうは時間がありませんので、国交正常化以来の有償、無償あるいは技術援助あるいはエネルギー援助等々、日本が中国に対して本当に日中の友好というこの一点に心を置いて、中国の心をはかりながら、中国が賠償を放棄した、この賠償を放棄したことに日本がこたえていく、これは経済問題だけではありませんが、やはりこたえていくという対応が十分なされておるのかどうかという点については、私は私なりの、この二十年間の調べでは、十分ではないと思うのですね、十分ではない。  さればこそ、鄧小平さんは、ある日本の政党の代表との会見の中で、日本は中国に対しては非常に借りの多い国であるということを数年前に言っておるのですね。やはり周恩来総理がああいう英断をもってこの賠償を放棄したというのは、これは日華条約以来の経過が御承知のようにありますけれども、そのことは触れません。  私は、やはりこの際、この二十年を期していま少し中国のそういった賠償問題が起こってくる社会的な背景というようなところへ心を向けて、この問題に対しても対処していく必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  84. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 尖閣の問題がこの大切な日中関係の大局に影響を及ぼすことがあってはならないということは、総理もそのように申されておりますし、私どももそのとおりだと思います。  先般の江沢民総書記との会談におきましても、総理は日本側の立場を説明されつつ、これが日中関係の大局に影響を及ぼすべからず、そのために中国側の理解を得たい、協力を得たいということを申しておられました。中国側は今先生がお述べになりましたようなことを述べておりましたが、しかしながら、あえて私どもの厳格な法的な立場を申し上げれば、これは国会等でも累次申し上げておりますように、尖閣列島は歴史的、国際法的に見ても日本領土ではあるわけでございますから、棚上げということにはなじまないのであろうと思っております。  中国に精いっぱいの協力をせよということでございましたが、これも御案内のとおりでございますけれども、特に鄧小平氏の近代化路線というのが七八年以降に出てきて以来、それに協力する形で、日本政府はもとより、官民挙げて中国側のそういった近代化への努力に精いっぱいの協力、支援をしてきておると思います。  中国側が近代化路線以降、毛沢東時代とさま変わりいたしまして、外国政府からODAの支援を受けるようになりましたけれども、ただいまのところ、中国が二国間ベースで先進国から受け取っておるODAのうち、六割を超える部分は日本からのODAでございますから、実は大変大きなものでございます。日本の側から見ましても、中国は受け取り方として、インドネシアあるいはフィリピンと並ぶこの種のODAの大きな被供与国でございまして、そういった姿勢、そういった日本の施策については、中国側も大変高く評価しておるわけでございます。そのような気持ちの表明は、先般の江沢民総書記の来日の折にも、総理に直接そのようなお話がございました。
  85. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 全人代に出てまいりました言うところの民間賠償の問題ですね。これは私は、あってはならぬことですけれども、これからだんだんと日本も中国も世代が若返ってくる。そういう中で、これは感情的な問題を含めてでありますが、あれだけ中日戦争で多くの犠牲を受けた中国が全然賠償もとらなかった。しかし、古い話でいえば、かつて日清戦争で遼東半島が、その賠償としてということで領土までとられた。ところが、一九七二年の国交正常化では無賠償で国交正常化がなされた。日本はもっともっと賠償に匹敵するような経済援助、なかんずく無償経済援助、こういうものについて、そういう気持ちを持っておる人が中国の一般の国民の中にこれからもふえてくるのじゃないかと思うのですね。  ところが、日本の方も世代がかわってまいりますと、二十年、三十年前、百五十年前にやったことは我々の責任でないというようなことになってまいりますと、日中関係考え方の上で必ずしもいい結果にはならないと私は思うわけです。そういう将来のことも考えますと、ここで対中政策といいますか、経済援助の問題についてもいま少し特色のある対応の仕方をやってみてはどうだろうか。  その一つは、せっかく二十周年という歴史的な年を迎えておるわけですから、例の第三次円借款の問題が約一年半か二年近く凍結に近い形で推移しました。そういったことも考え合わせ、日本経済の景気の立て直しに公共事業の前倒しをやるようなこともあるわけでありますが、こういうおくれを取り返すという意味において第三次円借款の前倒しというようなことを考えて、経済援助に対する積極的な姿勢を見せてはどうだろうか。  そして、時間の関係もありますので私の方から二つ三つ提案をしたいと思うわけでありますが、この二十年に当たって、日中間の大きな事業として将来残るようなものを少し考えてみてはどうなんだろう。  その一つは、東京から西安に向けて直行便、そして西安から中央アジア、例えばギリシャでもトルコでもいいですが、そういった中継地点を求めてヨーロッパ、パリあたりに出ていく、そういう新しい国際航路を新設してはどうか。  と申しますのは、余り細かくは申し上げられませんが、私は毎年一回ないし二回、中国を訪問しておる一人であります。西安は西の都ではありませんけれども、今非常に都市が整備をされてきて、観光都市としてもその条件を整備しつつあります。また日本人の側も、観光的なものを含めてこの西安あたりに渡航をしたいという希望者も非常にふえております。こういう条件の中で、私は新しい航空路の新設ということは現実的にやってもいいのではないか。  少しく調べてみますと、私が言っておるようなそのものずばりのコースではないけれども、少しく運輸省の方においても検討をされづつあるやに聞いておるわけであります。そのあたりの経緯をひとつお聞かせいただきたいのと、私が今言ったようなルートの設定について、ぜひ記念事業としてスタートをする、そういうイニシアチブを日本政府が中国に対しても提起していくということがあってもいいのじゃないかと思うのですが、これは大臣の所見を含めてお答えをいただきたいと思います。
  86. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 西安と東京といっても成田はいっぱいですから、西安と名古屋というようなことになるのかもしれませんが、我が国としても非常に関心を持っておりますので、藤田委員の御意見を踏まえて対処してまいりたいと考えます。
  87. 羽生次郎

    ○羽生説明員 お答えいたします。  ただいま外務大臣もおっしゃっておりましたように、西安につきましては、確かに観光資源も豊富でございますので、西安と日本の都市との間での航空路といいますか、航空の直接的な往来ができるように、確かに成田等は難しゅうございますが、そういったことを積極的に考えてまいりたいと思いまして、日中の航空当局間の協議の場において中国側と協議してまいりたいと存じます。  それから、先生今御指摘ございました、西安の上を通って中央アジア、欧州まで延長してはどうかという御質問でございますが、確かに今ヨーロッパヘ行くルートは、北回りはアンカレッジ経由がほとんどなくなりましてシベリア経由一本でございますが、中近東やあるいはヨーロッパの南へ行くには、先生の御指摘のとおり中国の中を通りまして中央アジアを抜けていくルートというのは極めて有効だと思われます。  しかしながらこのルートにつきましては、中国のみならず旧ソビエト、CIS諸国の各共和国の中も飛んでいかなければなりませんので、いろいろ関係諸国も多うございます。我々といたしましては、そういった諸国の理解を得て、こういったルートができるように今後いろいろな国と話してまいりたいと思っております。  また安全性の問題につきましても、ここはかなり高地でございますし、代替の飛行場があるかどうかという問題もございますので、これについては国連の専門機関でございますICAO、国際民間航空機関などとも相談をしながら解決を図ってまいりたい、かように考えております。
  88. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私が提起しましたことについては、大臣も具体的にそういう方向に沿って検討をしよう、取り組んでいこう、また運輸省の方もかれこれそういった方向で、これは有力な新設航路として検討に値する、また具体的な調査あるいは検討も進めておる、こういうことでございますので、ぜひこれは日中国交正常化二十周年の記念すべき事業としていま少し声を大にして中国側にも呼びかけてほしい、私はこのことを要望しておきたいと思います。  それで、なお細かいようなことでありますが、日中国交正常化二十周年の記念行事としては、友好諸団体、これは民間も含めて非常に多彩な記念行事が計画されております。私は、そういうものの中にぜひ以下二つのことを政府としてもやってもらいたいと思うわけであります。  一つは、名前はどういうものであっても結構なんですけれども、日中友好親善交流基金制度、これは現在、亡くなられた安倍元外相が中心になられまして日米親善交流基金制度というものがありますが、約五百億円程度の規模でそういった基金をぜひ日中関係にもつくってもらう。一遍に五百億ということでなくても、例えば初年度が五十億円とかそういう形で五年がかりでやるとか十年がかりでやってもいいですから、そういう制度をつくってほしい、こう思うわけです。  このことについては、外務省から質問の取材に来ましたので、私の持っておる資料を外務省の方に渡して、中身は言わないけれども質問したときにはそういうものだということをぜひ答弁者の方に段取りしておいてもらいたい、こう言っておりますからあえて申し上げませんが、そういう基金制度をつくってもらいたい、これが一つ。  いま一つは、この間外務大臣が一月に北京に行きましたときに中国の側からも、環境保全センターに対して日本が無償援助をやって、そういうセンターが具体的に条件整備をやっておるということで感謝をされた記事が出ておりました。我々が中国へ行きましても、朝、北京のホテルてはい煙のにおいで目が覚めるぐらい、中国に対しては大変失礼かもわかりませんが非常に空気が汚れているわけですね。ですから、ブラジルにおけることしの地球サミットではありませんけれども、今や環境保全の問題は世界的な問題ですし、特に中国の環境をよくしなければ一衣帯水の日本に直接的な被害も及ぶわけでございまして、そういう点ではいろいろ工業面の施設の改善等を通じて環境保全をやると同時に、植林政策、緑の政策、私も調べてみますと、これは今、鳥取大学の名誉教授の遠山先生という方が中心になって、黄河の上流地域、あそこの砂漠に大変大規模な植林をやっていこう、そしてこの黄河の流域あたりにあるいは北京の中に緑の森をつくろうというようなボランティアの運動が始まっておるようであります。  これはポプラの木やその他の木を植林しましても、経費の面では本当にささいなものだと思うのですね。このボランティアの計画では百五十万本とかあるいは二百万本とかいう苗木の植樹を中心にそういう計画が進んでおるようであります。そういうものに日本政府も少しく一枚かんだ形で、中国の治山治水対策を含めて緑化政策に協力すべきじゃないかと思うのですが、そのあたりについての御意見もぜひこの機会に聞かしてほしいと思います。
  89. 木村政之

    木村政府委員 先生御指摘のとおり、私どもも中国との文化交流、相互理解の推進ということは特に重要であるというふうに認識しておりまして、今度の日中国交二十周年ということに関しましても、国際交流基金を通じる主催助成事業で民間の協力を支援しているもの、また江沢民総書記が来日の際には宮澤総理より、トルファン郊外の交何故城の修復ということについて、日本政府がユネスコに持っております信託基金を通じて百万ドルまでの御支援をするということをお伝えしております。また中国側からはさらに九十三カ所の遺跡について調査をしてほしいというような要望もあり、前向きに検討しておるところでございます。  全体といたしますと中国との文化交流というものは、先ほど申しましたように私ども非常に重視しているということでございますので、世界全体に占める割合といたしましても米国に次いで二位になっております。また、政府開発援助にかかわる文化協力、文化無償等を含めますと年によっては一位というような状況でございます。  今後ともこの分野についての推進をさらに深めていきたいと思いますが、全体としては中国との重要性ということを十分認識したものになっているのではないかと思います。例えば在日留学生の半数は中国人であります。また中国からの青年招聘の数は毎年三百五十名、それから小中高校の教員は百七十名本年はお呼びしております。短期の招聘だけでなく長期の招聘というプログラムも本年から始めさせていただくことになりました。  今後とも、先生のおっしゃるような御示唆をも含めて中国との間の文化交流、相互理解の促進のために新しい方策をさらに検討してまいりたいと思っております。
  90. 川上隆朗

    ○川上政府委員 先生の御質問の第二点、中国の環境政策と我が方のかかわり合いにつきましてでございますが、中国の国内におきまして、砂漠化の防止等のために、植林によって緑化政策を積極的に推進しているということにつきましては我々もよく承知いたしております。特に、民間ベースでの協力が行われているという状況にあるわけでございますが、これはもちろん我々政府といたしましても歓迎するところでございます。  先生御案内のとおり、環境分野の援助というものは、一般的にもちろん政府といたしまして大変重視しておるわけでございますが、中国に対しましても、従来より開発調査等で上海の大気汚染等の分野もやりましたし、先ほど御指摘の日中環境保全センターの設立について、これを支援するということも予定いたしておるわけでございます。  我が国といたしまして、日中関係において環境問題というのが非常に重要だという認識のもとに、政府として今後いかなる協力ができるか、これは全般的な我々の経済協力を進める枠内で、先方の要請も十分踏まえながら先方と話し合ってまいりたいと思っております。技術協力等可能な措置を検討してまいりたいというふうに考えます。
  91. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 最後に一つお尋ねをしておきたいのは、日朝国交正常化交渉の問題です。  これはもう時間がありませんので一括して質問したいと思いますが、日朝交渉は順調に進んでいるという認識に立たれているのかどうか。私は少しテンポが遅いような気がするわけであります。  私は、やはり日朝交渉の基本は、過去三十六年間の植民地支配、あの長い戦争の期間を通して、朝鮮人民に耐えがたい苦痛を与えてきた、そういう反省の上に立って、誠意を持って早急に国交の正常化を図らなければならないと思っておりますが、大臣の基本的な考え方をお聞かせいただきたいと同時に、事のよしあしを超えて、日朝交渉が少しく手間取ってまいりました理由には、朝鮮民主主義人民共和国が国連に加盟すること、あるいは南北の対話を促進すること、いま一つは核査察の受け入れを容認すること、こういう三つの条件を特に日本政府の側から強く出していったものですから、こういう問題、こういう条件の解消を通じて日朝国交の正常化を促進するということで、いわば竹下内閣のときには前提条件なしにやるとまで国会で答弁しておるわけでありますが、そのことのよしあしを超えて、現実にはそういう三つの条件というものは今日の段階では大体クリアされた。  今日の段階では大方クリアされたということになれば、国交正常化の交渉を妨げる条件がなくなってきたわけですし、かたがた、朝鮮の言い分としては、特に核の問題については、その批准については必要なすべての書類と資料は提出する、すべての核物質と核施設を査察のために開放して、核拡散防止条約の義務を誠実に履行する、そして朝鮮は核兵器をつくる意思もなければ能力もない、ここまではっきり国際社会に対して態度表明をしているわけですから、こういう前提に立って、日本政府としては日朝の国交正常化に向けて、本来の基本問題であるとか経済問題、こういう問題を中心に正常化の成功のために一層の努力を図るべきじゃないかと思うわけでありますが、一括して大臣の御答弁を煩わしたいと思います。
  92. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 あるいは大臣から後ほど基本的なお考えについて御説明があろうかと思いますが、日朝交渉がテンポがおく札でおるのじゃないかということでございましたけれども、何分四十五年以上の空白期間の後に、正常化という大変重大なところへ向けての話し合いが始まったということでございますから、それぞれ基本的な問題について向こう考え方も十分伺い、こちらの考え方も十分申し上げなければいけない。相互理解が必要なわけでございまして、そこを時間をかけて誠実にやっておるという段階だと思います。  竹下元総理が無条件でということをおっしゃったというお話でございましたけれども、あのとき私どもが念頭に置いておりましたのは、ただいま米国が北京でやっておりますような大使館レベルの対話、こういうものを無条件で始めようではないかということでございました。  とにかく対話のルートを無条件で早く開きたいということでございましたが、その後状況が変わりまして、正常化をやろうということでございますから、これはおのずから日本におきましても、正常化をなし遂げるためには、基本的な立場、原則というのがありますから、それを横に置いて無条件で進むわけにはいかないということは御理解いただけると思います。  他方、核の問題につきましては、お話がございましたように、私はいい方向に一つ一つ状況は進んできておると思います。しかしながら、他方、国際社会のこの面で北朝鮮に向けられた目は依然として厳しいところが残っておりまして、確かに北朝鮮側の対応にもまだまだ不透明な部分が残っております。したがいまして、私どもは、そこがクリアになれば、そこのトンネルを抜ければ、私は北朝鮮との正常化交渉をより前に進めるよい環境が生まれてくるというふうに思っております。  いずれにいたしましても、重要な交渉でございますから、何回も国会等でお話しいたしておりますけれども日本政府としても真剣に誠実に取り組んでおるということでございます。
  93. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 経過につきましては、谷野局長から説明したとおりでございます。  それらの諸条件が一刻も早く解決されることが望ましいし、せっかく批准をされたのですから、IAEAの査察を受けて、天下晴れてそういうものがないということを示される日の一日も早からんことを望んでおります。
  94. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 最後に、私一言申し上げておきたいのですが、やはり北もこういう長い時間的な経過の中で国連の一員になったわけですから、冷戦時代のような不信感を持って国交正常化の交渉に当たるのではなくて、私は相互信頼ということで、信頼性を持ってこの交渉の促進に当たってほしい。これはもう冒頭申し上げましたように、日本があれだけの植民地支配をやった、この罪償いというものを基本に据えて、私は、日本の側がより誠実に対応すべき外交交渉であろうと思いますので、この点あえて私の所見を申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  95. 麻生太郎

    麻生委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  96. 麻生太郎

    麻生委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。五十嵐広三君。
  97. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最初に北方領土の問題をお伺いしたいと思うのです。  ちょうどきようはビザなし交流の第一陣で北方四島側から、もう着いたか着かないかのころじゃないかと思いますが、大変画期的な日であろうと思います。  まずお伺いしたいのは、ことしは二月に日ロ平和条約作業グループの初会合があった。あるいは三月にはコズイレフ・ロシア外相の来日があって、両国の外相会談等が行われたわけであります。今月に入ってロシア連邦の人民代議員大会でロシア外務省北方領土問題についての報告書を提出をした。報道によりますと、かなり妥協的なアプローチが必要だ、柔軟な対応を議会に求めるというような訴えが報告されたと伝えられているわけであります。  こういうふうに、ことしに入りましてからさまざまな動きがソ連側にもあるようでありますが、ソ連側の北方領土問題に関する公式の態度、最近における公式な見解というものはどういうものであるか、改めてお教えをいただきたいと思います。
  98. 津守滋

    ○津守政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のございましたように、三月にコズイレフ外務大臣が来日いたしまして渡辺大臣との間で定期協議を行ったわけでございますが、その際先方コズイレフ大臣よりこの領土問題について大要次のような発言がございました。  まず第一点は、この問題は法と正義に基づいて解決すべきである。そして最も合理的な解決方法を見出すべきである。第二点は、ソ連を継承した国家としてロシア連邦は、これまでソ連が結んできました国際約束の権利と義務を一九五六年の日ソ共同声明を含めてすべて引き継ぐ、これが第二点でございます。それから、こういった基本的な立場を表明すると同時に、この問題についてはロシア国内情勢から種々問題がある、こういう補足的な発言がございました。
  99. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いろいろな動きはありますし、殊に周辺からさまざまな発言、情報等も我々も伺う機会が多いわけで、今またゴルバチョフ前大統領がおいでになっておられて、いろいろな御発言も自由な立場でまたなさっておられるわけであります。さまざまな周辺の動きを見ると、動き出したような感じもするのでありますが、しかし公式な見解という意味からいうと、二月の作業グループにおいてもあるいはコズイレフ外相がおいでになったときの今お話がございました内容につきましても、そう変わりがないのかなという感じもするのであります。  しかし、そうではなくて去年のゴルバチョフ当時の大統領がおいでになったあの当時とはこういうぐあいに違ったという点があれば、御指摘をいただきたい。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 去年ゴルバチョフ大統領が来たとき、要するにはっきりわからなかったわけです。私が、大臣でないのですが、去年の五月訪ソをしてゴルバチョフ大統領と会ったときに、あなたはソ連国会においてこの北方四島の問題に関連して一九五六年の共同宣言は既にそのチャンスを失ったということを演説をされたということを聞きました、まことに五六年の共同宣言の確認が行われなかったのは残念ですと言ったところが、私は二枚舌は使っていないということを言われたわけです。  ということは結局、二枚舌は使っていないということは日本でも別なことは言っていないという意味でしょう。つまり共同宣言はもう既にチャンスを失って無効なものだと言わんばかりだったわけですね。ところが、新政権になってからは、今審議官が言ったように、そういうような合法的な条約を認めよう、法と正義に基づいてというところまでだんだん変わってきているということは事実であります。
  101. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、我が国の方の対応でありますが、ここに来て我が国の対応もかなり積極的な動きが出たように国民からも見えてきたというふうに感ずるわけであります。四月十八日における外務大臣の地元の講演主権返還が明らかであれば施政権は一時ロシア側に与えてもいいというような内容の御発言があった。翌十九日、宮澤総理は、これはまたそれを受けるがごとく、潮どきであろう、今が潮どきだという御発言もあった。引き続いて加藤官房長官は、いわばこれらを政府として公式に追認するような御発言もあった。  全体として、政府側北方領土問題交渉に対する姿勢というようなものが、かなり積極的に動きが出てきたというふうに実は見受けているのでありますが、この辺のところについて、ひとつ大臣から率直なお言葉をいただければありがたいと思います。
  102. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 御承知のとおり、北方四島一括即時返還というのが今までの主張であります。しかし、それで四十五年かかってさっぱり進まないということであっては困るわけでありまして、やはり現実的な対応をしていかなければならない。我々はどこまでも北方四島は一括返還、この姿勢は変わっておりません。  問題は、どういうようにして返還をするかという返還のやり方については、主権が認められればそれは御相談に応じますというような考え方なのでございます。  この間の発言は、特にそういうことを具体的に相手方に提案したというわけではなくて、ただ、我が国の中で北方四島即時一括返還というのが定着しておりますから、もうそれで全部やれと言われましてもなかなか動かないのが現実の姿でありますので、多少その間に国内世論の問題、向こうでも世論と言っているのですから、こっちも世論があるわけですから、余り期待過剰で、即時一括四島返還で引き渡しということは、そう一回や五回の会談ですぐできちゃうと思われても困るわけです、実際は。  したがって、柔軟な対応の仕方について、例えばというような、ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、例えばもうあしたから向こうの役所に全部帰っちまえというようなわけにもなかなか現実はいかぬだろう。したがって、ある年限を、それは半年になるのか一年になるのかわかりませんが、現実的なやり方をひとつしていく必要があるんじゃないかという意味を込めて言ったのであります。
  103. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは三月にコズイレフさんが来られたときも同様の趣旨は大臣からは提案してあるわけですね。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは冒頭に私が言ったように、提案をしているということではありません。冒頭に申し上げましたね。しかしながら、いろいろな応答はもちろんございます。それは柔軟に対応をいたしたいということは言ってあります。
  105. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 全体の、殊にCISに対する国際的な支援というようなものをめぐる世界全体の流れ、動きというようなものからいうと、私は北方領土の問題というのはやや、宮澤総理の発言じゃないけれども、潮どきといいますか、今が潮どきというのはそう長期、ことしか潮どきとかいうようなことよりは、もうちょっと短い感じで、総理の今が潮どきという言葉を私なんか受けとめているんでありますが、やはりこの間来のG7の合意としてのCIS支援構想というような状況を見てみますと、どうも領土問題というものがどこかに置いておかれちゃって、政経不可分とは言いながら、全体の流れは、経済支援の方はどんどん進んでいく。日本はどうもちょっと相変わらず主体的な動きがとれないで、受け身の格好で後をついていくというような印象を受けるわけであります。  四月一日のG7についてもアメリカとドイツ両国首脳が一方的に明らかにしていく。どうも我が国政府は、いわば頭越しに発表されたという印象も強い。ある新聞や雑誌では、これでは相変わらず日本は自動支払い機じゃないかなんという、これは我々としても残念な腹の立つ表現ではありますが、そういう表現も見えていた。湾岸戦争の折にも同様のことが言われたわけでありますが、今回の場合ももう少し主体的な領土問題に対する活動というものが私はまさに必要になってきている、潮どきだという感じがするのです。そうでなければ、どうもせっかくのてこが余りきかないという感じがしてならないんであります。  この支援についてちょっとお伺いしますが、大蔵省の保田事務次官が、報道によりますと、四月三日の記者会見で、これまでの議論では百二十億ドルのはずだった。こう申しまして、不快感を表明したということもある。率直に言って、このG7の合意なるものは合意であったのかどうなのか、あるいは大蔵、外務両省の考え方というのはそごがないのかどうか、あるいは各国の分担比率なんというのは決まっているのかどうなのか、これは新聞ではさまざまな書き方がありますが、この辺のひとつ率直なところを、御意見を伺いたいというふうに思います。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはもう本当アバウトな話でありまして、要は詰まってないということが本当のことなのですよ。  私が聞いているのは、G7の中で何といいますか、次官級会議で、財務官等の会議では、もし支援するとすればロシアロシア共和国だけをやるのなら百二十億ドル、それからCISまで全部含めてロシアがもし債務継承とか一切やるのなら百七十億だろう、これくらいの金目があるいは必要かもしらぬという話は出たということですが、はっきりと実はそういう取り決めもあったというふうには聞いてない。  実際は、それが百八十億ドルプラス、二百四十億ドルという発表をいたしましたが、六十億ドルの方はかねて話がないわけではなくて、これはIMFから貸し付けをするということですから、IMFがやるわけですから。ただ、日本もIMFに入っておりますから、IMFに金を貸してくれないか、分担に応じてという話はあるでしょうから、私は、それをお引き受けすることは外務省も大蔵省も異論のないところであります。  残りの百八十億ドルについては、何と何をどう詰めるんだと今聞かれたって私はわからない、だれもわからないじゃないですか。信用供与も入るんだといえば、もう日本は終わっちゃってるんですから。日本は信用供与まで含めると二十六・五億ドルあるわけですから。だから、その中で、ただ消化されていないんだから、それが使われていないんだから。それで、もうその中でも余りが出るという話ですね。  どこをどう詰めるのかはこれからの話なんですよ。ですから、いろいろ新聞によってまちまち書くと言うけれども、それは書くはずですね。はっきりした固まったものがないわけですから。だから、ひとつその程度に思っていただくほかない。大枠の話で、これからどう詰めるかはこれからの話なんですよ。
  107. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、今のお話にしては、アメリカだとかあるいはドイツ、ドイツの場合にはこれはもう合意という表現を使っているんですね。そういうことというのは、我が国としては黙っていられないことになるんじゃないでしょうかね。  おととしのヒューストン・サミットの経済宣言、ここでは、北方領土に関するソ連との紛争の平和的解決が日本政府にとって有する重要性に留意すると明記された。それから去年のロンドン・サミット、これは議長声明ですが、北方領土問題の解決を含め、日ソ関係の完全正常化が国際協力に大きく寄与するという発表になっている。  これはそれなりに海部さんらがいろいろ御苦労になってこういう表現になったんだろうというふうに思うのですが、しかし、一体こういう経過というのはどうなっているんだ。サミットでせっかくそれぞれ御苦労になられ、またその成果についても、お帰りになられて力説をなさっていたんだが、しかし、にもかかわらず頭越しでどんどん進んでいく。我が国としては政経不可分と言いながら、領土問題というのはどこかに置いたまま走っていってしまっている。  七月にはミュンヘンサミットがあって、これはしか議長国がドイツ。どういうことになるのか知りませんが、当面、今月末に首相はドイツ及びフランスに行かれる、あるいは一方で外務大臣ロシアに行かれるということなんであります。  それらを通じて、私はどっちかというと、このおととし、去年のサミット来の経過からいうと、こういう状況になっているというのは日本外交の一つの失点だろうと言ってもいいのではないかと思うのですが、まあ難しい問題には違いないが、ここでロシア訪問を前にして、こういう状況の中での一つの局面転回をどう図っていこうとするのか、その外務大臣の御見解、方針のようなものをお伺いさせていただきたいと思います。
  108. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは相手のあることだし、国際社会の協力も取りつけなければならないし、それは日本だけで、手のひらを返すように自由自在になるものじゃないんですよ。四十五年間動かなかったんですから、四十五年間。だから、それを動かしていくためにはどうするかということで、みんなが知恵を集めてやらなきゃならぬ。  我々は、北方四島一括即時返還、もう政経不可分、一切ソ連とは没交渉、こういうようなことだけ言っておったのでは、これは全然前へ進むわけがない。だから、我々といたしましては、たまたま政権が変わって、そこでアメリカ、自由陣営にとっては、もう核兵器もだんだん減らそう、それから自由化もやろう、それで過渡期でえらい苦しんでいる。食糧が足らない、医療が足らないということになって、それじゃ、これはともかく、思想も同じくするようになったんだし、軍縮にも一層の協力を求めていく、こういうような点から、ここでみんなでまた後戻りになって、ソ連の中でも反エリツィンというのが、いっぱい保守派がいるわけですから、引きずりおろして、そして自分たちがもっと強い政治をやろうというグループがいるわけですから、その方に民衆が打っちゃったんでは、せっかく新しい新秩序がまた逆戻りになっちゃう。だから、この際はいろいろあろうが、みんなでひとつソ連に最少限度のバックアップをしようという提案ですから、それはできません、我々は独自な行動をやらしていただきます、そういうことは言えないんですよ、これは。  そしてもう一つは、サミットの国々も、今までの議長サマリーにあったように、日ソの関係が早く正常化して、それで全面的に日本が出られることは、ソ連のためのみならず、ひいては世界のためにもなりますよということを言ってくれているわけですから、言いそびれている国もありますよ、それは。しかしながら、そういうことをはっきり言ってくれておる国もあるわけですから、そういう国はみんな一緒になって、ソ連に対してはその方がいいですよと言ってもらった方がいいに決まっておるのですよ、それは。日本だけで一人で言うよりも。  だから、そういう意味での国際協力というものはそれはいたします。しかしながら、それはいたすにしても、今度はバイの、日本とソ連との間、バイで二十五億ドルというような金融支援を発表してありますが、これは人道上の問題、プロジェクトが一つありますけれども。だけれども、これの大型プロジェクトというようなものも、いっぱい彼らは今まで言ってきているわけですよ。  そういうことについては国家間の条約がないので、例えば今度は投資保護協定をつくるにしても何をするにしても、今度は課税の二重防止をやるにしても何にしても、基本条約がなけれは実際は民間は出ていかないのです、幾ら言ってみたところで。ですから、そのためには基本条約をまず結びましょう。結ぶための邪魔になっているのはこれですと、こういうふうに二つに分けましてこれで話を詰めていくほかない。  すると、彼らはそれは、もう理屈は大体わかるんですよ。法と正義ですからわかるんだけれども、最後に言うことは、世論があるんだ世論が、議会があるんですよと。この世論をどうしてほぐしていくか議会をどうしていくか、これは時間がかかるんですと。いつまでたったってだめですから、何らかのことを言っていかなければならぬ。そのためには交流をうんとやったりいろんなことをやりながら、宣伝をしたりPRをやったりほぐしていかなきゃならぬわけでしょう。それに今取りかかっているというところですから、急速に一遍にぱたっと変わる変わるというようにとらえても、これはちょっと安易過ぎると私は思います。  一つ一つ確実に積み上げて、それできちっとなるべく早いうちに決着に持っていきたい、そう思っておるわけであります。
  109. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 政経不可分というのは我が政府の大原則なわけではありますが、ぜひこの際、北方領土についてもそれはもちろん精力を傾注して努力すべきだが、今のお話の節々にもあったように、対ロ支援についてもこれは本当にこの際腰を入れて取り組んでいかなければならぬ時期だというふうに思うのです。そのことこそがまた北方領土の解決にもつながっていく。そこの画期的な一つの我が国政府の政策の発展的展開といいますか、そういうようなものを期待したいというふうに思うのです。  この間、三月の初めですか、アメリカのニクソン元大統領が、ロシア支援の目的は善意でなくて西側の根本的な利益だ、こう述べているわけであります。悪化するロシア状況を無視するということで米国と西側が今まで獲得した冷戦の勝利を不意に奪われて敗北に直面する危険を今冒している、こういうふうに言いながら、ルーブルの安定化資金であるとかさまざまな協力についてのアピールをしている。  ブッシュ大統領も大分話が変わってきて、かなり積極的に転換をしてきている。CISの民主革命がもし失敗して我々が払うべき犠牲というものを考えると、今我々が対応しなければならぬ支援額というものは比較できないほどの程度のものだ、こういうふうに述べてきているわけであります。  それは殊に隣国にある我が国として実感としてこういう点もよくわかるのでありますが、こういうニクソン元大統領なりブッシュ大統領の発言、考え方、これについて渡辺外務大臣はどういうふうにお聞きとめになられますか。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それはそれなりに一つの見識だと私は思います。  よく我々に言う人があるのですが、日本は何だ、あんなちっちゃな島にいつまでもこだわっておって、それによって日本の経済がどうこうということじゃないじゃないか、ドイツを見なさい、ドイツはどんどん協力してやっておるじゃないかと言う人もあります。  しかしそれは間違いです。ドイツはソ連に攻め込んで一千何百万人かの人を殺害した。そういうことをやった国でありまして、その国が今度はとられた領土を国の三分の一も、人口においても、それを返してもらった。それから国内の三十何万かの駐留軍もソ連に引き揚げていくというようなことである。我々は逆に中立条約を破られて、今までの条約を無視されて、それで勝手に攻め込んできて、日本人を六十万人も拉致して、そして六万人も飢えと寒さで殺されたというか死んだというかそういう目に遭って、ごめんなさい一つあるわけじゃないので、立場が全く違うのですよ。  だから、それはドイツがやったから日本もと言われましても事情が全く違うんだということを、よくあっちこっちで私は説いて歩いているわけですよ。だんだんわかってきたのですよ、立場が違うんですからということは。やはり言うべきことは言って、私はロシア自身にも、首脳部にも言っているのですよ、全くここで言っていることと同じことを。ドイツとは全く違うのですよと。  だから、そういうことを理解してもらわなければならぬから、しか皆さんが要するに法と正義に基づいてやろうというのですから、ならば我々もいろいろ言い分はあるが法と正義に基づいてひとつやってみましょうというのが、今の段階なんです。  だから、ニクソンさんも共和党の先輩大統領でもございますから、それにブッシュさんが影響を受けたか受けないか、そんなことは私わかりません。わかりませんが、同じ党であるということだけは確かでしょう。
  111. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 やや時間が半分以上たちましたので、次のテーマに入りたいと思います。  この間来、ここ数日、新聞等に出たり、あるいはきのうも参議院の方で質問があったようでありますが、ジャカルタ・フェア・プロジェクトと外務大臣とのかかわりについての報道があった、この点について若干御質問申し上げたいというふうに思います。  時間の関係がありますので、順を追ってお聞きすると一番いいのですがなかなかそうもいきませんので、時間を省略する意味からも、ここに「ジャカルタ開発株式会社JDC NEWS」、会社が発行しているニュースでありますが、これがあります。ここにややこのプロジェクトの性格等が書かれておりますので、恐縮ですがこれちょっと、委員長とそれから大臣、それから両方の理事に。  時間を短縮する意味でちょっと読ませていただきます。上から四行目のところからでありますが、   このプロジェクトは、一九八七年ウイヨゴ前駐日大使がジャカルタ特別市知事に就任され、日本インドネシア協会(会長渡辺美智雄先生)に相談を持ち込まれたのが端緒で、同協会はジヤカルタ・フェア事業構想案を立案して、翌八八年五月ウイヨゴ知事に提案致しました。   ウイヨゴ知事は既に提出されている各国の提案とともに日イ協会案をスハルト大統領に報告され、大統領は「両国民間企業の協力による合弁会社が建設、運営する」日イ協会案を採択され、同年九月ウイヨゴ知事が来日し、渡辺日イ協会長との間で基本覚書に調印されたのであります。   日イ協会は、基本覚書を実行するため財界有志の方々に準備会社の設立をお願いし、八九年四月ジャカルタ開発株式会社(JDC)が設立されました。   当社の実務体制は、出資各社から幹部社員の出向を求め、日本興業銀行にコォーディネーターを依頼して、F/Sの実施、増資および融資の申請、合弁会社の設立、貸付契約等の作業に約一ケ年を要しましたが、幸にも海外経済協力基金(OECF)の出資(四億二〇〇〇万円)と融資(一二五億円内三〇%民間銀行協調融資)が認められました。 ざっと言って以上のようなことがこのニュースの第一号「発刊にあたって」というところで述べられております。     〔委員長退席、新井委員長代理着席〕  そうして、下の方の五、六行でありますが、今やっているのは第一期計画なわけでありますが、   第一期計画として国際会議場を含む常設展示館、国際展示館、インドネシア展示館、イベントホール、レストラン・ビルおよび場内インフラ等で総工費一七二億円を投入し、一九九二年六月の開業を予定しております。   JITCは、第二、第三期計画として国際、国内展示館の拡張、オフィスビル、ホテル等の付帯施設の建設も予定しており、ジャカルタ・フェアの建設は未来都市の起爆剤として、云々というふうに書いてございます。  参考人としておいでいただいている海外経済協力基金の見学さんにお聞きしますが、時間がないので長い答弁は要らないのです、そのために今読んだのですから。大体今のようなことであるかどうか、違っておる点がありましたら言っていただきたいと思います。
  112. 見学信敬

    見学参考人 ただいまお読みいただきました資料を持っていないものですから、拝聴した限りでお答えしますと、おおむね合っているものだと思っております。
  113. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これはここで私は読んでみて、そういうものかなというふうに思ったのは、インドネシア協会の会長である現渡辺外相が、当時はそうでないわけでありますが、ここに記載されておりますように、基本覚書についての調印の一方の当事者になっているというのはちょっとわからないのですよ。これはこういうものなのかな、見学さん。
  114. 見学信敬

    見学参考人 お聞きした限りだったものですから、そこの部分、実際にそういう合意調印が行われたということは私は存じ上げておりません。
  115. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは大体ここに書いてあるとおりなんですよ。  要するにそういう構想で、見本市を移転しよう、こちらに小さな見本市場があるが、インドネシアが大きくなって、それで大きな晴海ぐらいの見本市場をつくりたい、そういう構想がありまして、それで、その構想に対して協会として応援してくれませんか、ですから、それはもうできるだけ応援をしてあげます、そういうことです。覚書というのはそういうことです、協会として応援してあげますよと。
  116. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 見学さん、そういうことはないんじゃないかと言ったですな。しかし、私のところにジャカルタ開発の目論見書があるのですよ。これは社内のものですね。こうなっているんですね。  「同年九月」同年というのですから一九八八年ですね、「九月ウイヨゴ知事が来日されい渡辺美智雄日本インドネシア協会々長との間でジャカルタ・フェア開発の基本覚書の調印が行かれ、爾来事務局により本事業の」云々、こうなっておるんですね。やっているんじゃないですか。お話違うんでないですか。
  117. 見学信敬

    見学参考人 先ほど御答弁申し上げましたのは、そういう事実がなかったと言ったのではなくて、私は承知をしておりませんということでございます。
  118. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それじゃ当人……。
  119. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 先ほど答弁したとおりでありまして、協力していただきたい、協力してあげます。これは日本とインドネシアのこの間のいろいろな友好関係を促進したり、いろいろな刊行物を発行したり、いろいろ取りまとめてやっておるわけです、協会で。  ところが、これは民活ですから、参加者をたくさん集めなければならぬわけです。お金が集まらなければできませんから、そのために投資会社をつくるんです、投資会社を。まずそこからスタートですから、向こうも投資会社、こっちも投資会社をつくって、合弁企業をつくるわけですから、金を出すんですが、これは公共性の高い事業で収益性が低いのです。したがって、なかなか参加しませんよ、普通言ったって。だから、かなり強力に協会として、メンバーいっぱいいますから、そこへ頼んで出資してもらうように応援しましょうという分を含めて応援しますという覚書です。     〔新井委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 このプロジェクトの基本覚書に渡辺さんは会長という立場で調印に当たったということは、確認ができたわけです。  きのう参議院の方のお答えで、このプロジェクトというのは利益を目的にしたものでないんだというようなお答えがあったようでありますが、そうですか。
  121. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは民間がやるのですから、最初から損じますというのでは、入る人だれもいませんよ、それは。当たり前のことです。  ところが、普通はこういうものは、東京の市場でも何でも、東京都なりそれから国なりがつくって提供する、そして使わせるというんですが、向こうにお金がないから民活でやりたい。だから、ペイすればいいわけです、ペイすれば。だから、その見本市だけでは合わないので、そのわきに貸し事務所とかホテルとかそういうものを一緒につくって、何とかペイするようにしたいという構想は最初からあるわけです。
  122. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、この見積書によりますと、初年度における収支計算予想、税引き後利益で七億五百万円の利益を見積もっているんですな。――いや、書いてありますよ、これは。違うと言ったってそうなんですから。平成二年四月ですよ、ジャカルタ開発株式会社の増資目論見書です。そうなんですよ。これは御認識ないとすれば、こういうような会社の内容であるということを改めて御認識しておいていただきたい。いや、そのことが悪いとかいいとかじゃなくて、話が違うから。  見学さん、おたくは助成したり融資したりしているわけですから、こういう収支なんかの状況についてはもちろん把握した上でやっているんだろうと思いますが、いかがですか。
  123. 見学信敬

    見学参考人 当然審査の段階で収益予想等は審査の対象にさせていただいております。その収益予想その他も含めて審査の対象にしております。
  124. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いや、僕の言うのは、今言う見積書で僕が今読んだようなことについて、ほら、大臣はちょっと否定なされたから、そうじゃないよということを申し上げているんですが、私の言うことに違いがありますか。おたくは融資している責任者ですからね。
  125. 見学信敬

    見学参考人 会社サイドから、増資をする際に、いろいろな会社から増資していただくために目論見書をつくったわけでございまして、そのときに、損がない、何とかペイするものであるという観点から資料を当然つくられておりまして、その中には、プラスになるという収益予想が立てられていたことは事実だと思います。先生の御指摘のとおりだと思います。
  126. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかも、この企業は、これは初年度ですからね。これはこれから第二期、第三期で、あそこはとにかく飛行場の跡を広大なところを買って、そのうちの一部を今度のプロジェクトに使っているのですから、あとはこれは読めば時間がかかるものだからちょっとあれですが、これからがすごいんですね、これからの開発が。膨大な事業になるわけですね。ですから、そういう点からいいまして、利益がないとか何だとかなんていう仕掛けのものではないわけでありますので、その点も申し上げておきたいと思うのです。  そこで、あの新聞報道で問題になっておりましたのは、これらの事業推進の中心になっておられたお方が、これはお名前を言ってもいいでしょうね。そうですね、これはその道の人はよく知っているわけだし、またなかなかインドネシアに通じて、またお役にも立っているお方だというふうにも我々も聞くことも多いのでありますが、丸目さんですね。  この丸目さんは、今のジャカルタ開発の役員をしておられる。そうして非常に積極的に今度の、いわば仕掛け全体をしていかれて、まさに推進力であったというのふうにどなたも言っているのでありますが、この丸目さんが、渡辺外務大臣の私設秘書であるとか、あるいは渡辺事務所のスタッフであるとか、こういうような報道がなされているのでありますが、そういう事実はありますか。
  127. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 いろいろ混同しておるのですよ、先生は。  このジャカルタ開発株式会社というのは出資会社ですから、これは事業はしていないのです、全然。ただ金を出資するだけですから、集めて手伝うだけですから、だから社長一人、重役はみんな無報酬の会社です、これは。だから、その中の一員であることは間違いありません。谷口さんが一時期やったことがあります。亡くなりまして、今はOECFをやめた方がなっておりますが、問題はこの会社じゃないのです。両方で会社をつくって、合弁企業をやるんです。この合弁会社が実際の仕事をインドネシアの管理のもとにやっているわけです。  そこで、話はまた別になりますが、その谷口さんという方が非常にインドネシア通で、議連なんかの事務局長をやっていただいたり、いろいろお手伝いをしてもらって、非常に長い、何十年間インドネシアとつき合いがありますから、プロモーターでやったのはこの谷口さんなんです。この人が大体八割、九割方固めたんです、谷口さんという方が。  ところが、その方が突如として亡くなってしまったわけです。七十八歳だったと思いますが。そこで一時期に、出資している会社の、要するに谷口さんの別な個人会社の、彼がその個人会社の代表者になったことがあって、それで谷口さんに入れかわってジャカルタ開発の役員をやっている、これは事実です。  この方は、谷口さんの友達なんです。兄弟でも何でもない、友達で、それでいろいろ手伝ってもらって、それで私のところの秘書でもなければ、特別な雇用関係一切ありません。事務所の職員でもありません。彼は彼なりに小さな仕事を幾つかやっておりますから、たまたまそういう出入りは非常にあった。それから、カンボジアの問題なんかについてもいろいろお手伝いをいただいた、これは事実でございます。
  128. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっとこれを配ってください。これは柿澤外務政務次官と外務省アジア局南東アジア第二課長の林さんとそして丸目さんと、三人が、ことしの一月の十四日から十六日までインドネシアをごあいさつ回りでしょうか、行かれた。そのときに、現地でたくさんの方にごあいさつに配られた名刺の写してあります。  明確にここにありますように、「Mitsuo Marume STAFF OF WATANABE OFFICE」、下の方には議員会館の事務所、国会の住所などが記載されている。これは私は、スタッフであればスタッフであるというふうにお答えいただいていいのではないかというふうにも思うのですが、大臣いかがですか。
  129. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 だから、どうとられようと、私がお金を出して雇った人じゃないということ、これははっきりしているわけです。それはボランティアのお手伝いをたくさんやってもらった、そういう意味では部分部分でスタッフと言えばスタッフでしょう。特にカンボジア和平の問題などは日本は国交がないわけですから、そういうときにしょっちゅう出入りをして、そしていろいろな話をして、それはいろいろなことがいっぱいあるのです。そういうようなことをやるときに名刺をつくったものと考えられます。
  130. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 スタッフとお認めになられたわけですね。  時間がありませんし、土井先生に二分か三分でも残せというお話でありましたから、きょうのところはこの辺で切り上げたいというふうに思いますが、大臣、私はちょっと思うのですが、現職の外務大臣がODAの対象の特定国の協会会長、インドネシア協会の会長というような職にあられるというのはいかがなものかなというふうに思うのです。それは、有力な議員がいろいろな協会の会長になるということは、それはそれ自体否定されるべきものでもない、まあ民間がなっているというケースの方が多いようではありますが。そうは思いますが、しかし、少なくとも外務大臣に御在任の折には、やはり外れていた方がいいのではないかな、こう思うが、いかがですか。
  131. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私、いろいろな会長をやっていますが、代行を置くのですよ。実際は協会長といったって、一年に一回総会に出るぐらいですから、名誉、名前だけで、ずっと前にやっておった東さんというファーイーストオイルトレーディング株式会社の社長をやった人が実際は全部取り仕切っているのです。私は一年に一回ぐらい総会に出る、事実そのとおりでございますから、だから、実際は名前だけと見てもらえば結構であります。登記簿まで抹消しろと言えば、それはもう、そういうふうな御意見が多ければそれはやめても結構ですが、やめないでくれとみんも言うでしょうが、やめても結構です。やめても結構ですよ。だから、それは何も弊害はないのじゃないか。日本とインドネシアの関係をよくしようということでございますので、できれば協会の、要するにもう会長で事務代理というものをつくりましょう。――失礼しました。もうちゃんと就任したときに職務代行を置いてあるそうです。だから心配ないそうです。
  132. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 以上で終えたいと思いますが、インドネシアというのは我が国にとっても非常に有力な友好国でありますから、そういう意味での積極的な友好は進めながら、しかし、公正で長続きのする関係でありますようにお願い申し上げたいと思います。  土井先生、残りわずかで申しわけありません。
  133. 麻生太郎

  134. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣に、在外大使館、領事館の領事部門の質的強化を求めたいと思うのでございます。  実はどういうことかといいますと、日本から海外に旅行する人たちの数が激増しておりますが、その旅行をしている人が行った先で交通事故に遭うとか不慮の災害に遭ったときに当てにするのは、やはり大使館、領事館なんですね。  最近、私の知人がヨーロッパのある大都市で不幸にして交通事故に遭いまして、重傷を負ったんです。入院をしたらしいということを交通旅行社の方から両親に連絡があって、心配でたまらない、どういうふうなことかというのはもう一つはっきりしないから、申しわけないけれども問いただしをしていただけまいかという依頼が私の方に参りました。  外務省に事情について聞きましたところ、全然これは連絡が現地から入ってないのです。もう入院しておりまして、かなりの重症なものですから、こういうのは連絡が必ず行っているはずだと思うのですが、つまり、領事事務について報告を徹底させていただきたいということが今度実感としてございますので、こういう例は一つ、二つじゃなかろうと思います。これからのことを考えると申し上げる意味が大変に私はあると思って、きょうは大臣に特にこういうことを申し上げて御努力を求めたいと思うのでございます。
  135. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは聞きました。聞いたところが、一流企業に勤めているお嬢さん、三十何歳の方ですが、その企業の方で全部面倒見ると言ったものですから、ついうっかり領事部の方が本省へ連絡しなかったそうです。ですから、こういうことのないように、きちっと連絡をさせるように今後いたします。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  137. 麻生太郎

    麻生委員長 遠藤乙彦君。
  138. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 まず、中国情勢に関してお聞きします。  去る四月六日から十日まで、江沢民総書記が来日をされたわけでございます。本年がちょうど日中国交二十周年に当たる佳節であり、またこの機会に、二十一世紀へ向けた建設的な日中関係を築く上で重要な出発点であるという大きな意味を持った訪問であったとは思いますが、他方、いろいろな問題点も残されたやに感じております。  そこで、まず大臣に、今回の江沢民総書記の訪日の総括的評価をお伺いしたいと思います。
  139. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私は、日中関係国際情勢について日中両方の首脳者がざっくばらんな意見を交換をして、多くの点で意見が一致をしたということで、大変私は実りあるものであったというように評価をいたします。
  140. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 具体的な問題点で幾つかすれ違いとか問題点が残ったんだと思うのですが、一つは人権問題だと思います。  宮澤総理から江沢民総書記に対して、中国の人権問題の改善について一層の努力を求めたことに対して、江沢民総書記の方は、人権問題は内政平淡である、人権問題と二国間関係を結び付けるのは反対だということで、両首脳の主張は平行線をたどったと理解をしております。  そこで、まずお聞きしたいことは、政府として、中国における天安門事件以来の政治・思想面での抑圧政策、これは改善されつつあると考えているのか、この点につきましてまずお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、宮里委員長代理着席〕
  141. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  人権の問題は、私どもも機会あるごとに私どもの率直な気持ちを中国の指導者に伝えてきておるわけでございますが、欧米の方々から言わしめればまだまだ彼らの期待するレベルでないということでありましょうし、そういうことにつきましては私どもも同じような気持ちは持ちますものの、改善されてきておるかというお尋ねであるとすれば、それは中国側もこの面ではかなりの努力を払ってきていると思います。  遠藤先生も御存じのように、政治犯の釈放も逐一行われておりますし、中国がこの面で何もしていないということではないと思います。それから、この問題について諸外国と対話も真剣に行っております。その面での中国の姿勢もそれはそれで評価されるべきだと思います。
  142. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 中国側は人権問題を国内問題として、我が国もこの論理に理解を示す向きもあるわけでございます。他方、やはり人権というものは普遍的な側面もあるわけでございまして、単に国内問題として片づけるわけにはいかないと私は思うわけでございまして、この問題に関する政府考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  143. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 まさに仰せのように、人権の問題といいますのは、人類にとりましていわば普遍的な価値を有する問題でございますし、世界の平和と安定の基礎にあるべきものだというのが私どもの、日本政府考え方でございまして、したがって、一国内の問題を超える問題だ、国際社会全体としてこの問題に取り組んでいかなければならないということでございまして、そのような日本政府考え方というものは、中国側に対しても累次伝えてきておるところでございますし、同じような努力は江沢民総書記が見えたときにも、宮澤総理もこの問題を先方との会談で取り上げられたということでございます。
  144. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 やはりこの人権問題、特に欧米諸国は大変これは意識が高いわけでございまして、まだまだ我が国の対応というのは欧米から見ると不十分という点があるのではないかと思います。したがいまして、欧米諸国は、今後我が国が中国の人権問題にどういう立場をとるか大変注意深く見守っているわけでございまして、ぜひ我が国政府としてもしかるべき対応をきちっと示していただきたいと思うわけでございます。  そこで、政府としまして今後中国の人権問題に対してどのように対応していくつもりなのか、その見解、態度を御説明いただきたいと思います。
  145. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいま御説明したつもりですが、私どももいろいろな中国側との対話の機会、協議の機会がございます。事務レベル、大臣のレベル、総理のレベル、そのようないろいろなレベルにおきまして、この問題についての先ほど申し上げたような立場から日本政府考え方を静かにきちんと伝えていきたい、こう思います。
  146. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、今回江沢民総書記が天皇陛下の中国訪問を要請をされたわけです。これは私の記憶する限り七回目であると記憶しておりますが、他方日本側は、引き続き真剣に検討すると回答して決着を先送りしたわけでございます。  これにつきましては、先ほど大臣からも御説明があったわけでございますけれども、中国側がこれほどまでにいわば天皇陛下の招請に対して強い熱意を燃やすのは何ゆえか、その背景につきましてどう考えておられるか、政府側の見解を伺いたいと思います。
  147. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先般の江沢民総書記の東京における共同記者会見がございましたけれども、その席におきまして記者の質問に答えて総書記はこのように述べました。すなわち、天皇陛下の御訪中の要請の目的は、日中両国の国民の友情をさらに深めたいというそういう気持ちから出たものであるということでございまして、そのように素直に私も受け取りたいと思います。
  148. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ことしは日中国交正常化二十周年という記念すべき年でございまして、中国側は大変強く本年中の陛下の訪中を期待しているわけでございます。やはりこれ以上回答を引き延ばすと二十周年における訪中というタイミングを失してしまうのではないかということも危倶されるわけでございまして、政府はいつどのような状況になったら決断するのか、この点につきまして御回答をお願いします。
  149. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 これはいつまでも検討を延ばすわけにはまいりません。ことしじゅうということでありますれば、いずれ早い機会に結論を出さなければいけないと思いますけれども、先ほど大臣がるる御説明になりましたように、ただいまのところは政府の側において真剣に検討を続けさせていただいておるということでございます。
  150. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 せっかくのこの二十周年という佳節の時期を失しないようにぜひひとつ決断をお願いをしたいと要望しておきます。  続いて、PKOの協力問題でございますけれども、今般江沢民総書記の発言として、PKOは中国にとり敏感な問題である、慎重に対処してほしい、これは従来のラインで発言をしたわけですが、他方、中曽根元首相とか首相経験者との会談の中では災害救助などに限定した自衛隊の海外派遣に一定の理解を示すといった発言があったわけで、いわば今回発言に揺れが見られたという印象があります。  そこで、政府として、今回の江沢民総書記のこういった一連の発言の揺れについてどのように解釈をしておられるか、見解をお聞かせ願いたいと思います。
  151. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 江沢民総書記の述べられたところは、これは記者会見でもはっきり述べておられましたけれども、要するに、自衛隊の海外派兵は慎重に対処してほしい、これが友人としての気持ちであるということでございました。  他方、これは国会でるる御説明もしておるところでございますけれども、PKOに対する協力というのはいかなる意味におきましても海外派兵という文脈ではとらえるべきものではございません。そういう立場は引き続き、中国はわかっておられると思いますけれども、理解が足りないのであればそれは理解を深める努力をいたさなければいけないと思います。
  152. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の御質問の趣旨は、日本側政府の態度はもちろん決まっておるわけでございますけれども、中国側においてこの発言の揺れが見られる、それに対して中国政府側の態度として何か変化があったのか、あるのか否か、そこら辺につきましてもう一度お聞きしたいと思います。
  153. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 そのときどきの日本側からの質問のポイントに応じまして、質問の重点の置き方によりましてそれぞれの先方の反応があったのだと思いますけれども、江沢民氏の述べておりましたいわばキーワードを申し上げるとすれば、先ほどのようなことであったと思います。
  154. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 大臣の発言として報道されておるところによりますと、江沢民総書記がカンボジア支援につきまして平和維持活動と戦後復興の二つの側面を立て分けて指摘をして、日本は戦後復興の方をやってもらえばいいと述べていたことを明らかにしたということを大臣が述べておられたやに伺っております。  そういった場合に、我が国の支援が戦後復興のみに限定された場合、中国としては満足するかもしれませんけれども、およそ国際社会の理解は得られるものではないと思うわけでございますけれども、これにつきまして大臣、どうお考えでしょうか。
  155. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 中国は、持論として日本の自衛隊の海外派遣には慎重にということをずっと言っているわけですよ。したがって、それはいけないとかそういうことは一つも言いません。  二つありますね、戦後復興という分野で日本はうんと活躍できる分野があるんじゃありませんかという程度のことを言ったことは事実でございます。ただ、戦後復興に、もちろんお金の面だけという点もそれはあるのでしょうが、しかしそこに行く過程の、要するに条件整備、環境整備、そういうような点についても通信とか運搬とか輸送とか医療とかいっぱいありますから、そういう面でも日本としては活躍できるようにした方がいいというのが私の気持ちであります。
  156. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて尖閣諸島問題なのですが、この二月二十五日に中国が領海法を公布しまして、我が国固有の領土である尖閣諸島を中国領土として明記したわけでございます。  この問題につきまして江沢民総書記は、一九七八年に鄧小平さんが表明をしたいわゆる棚上げ論、この立場、主張は不変である、日本政府には冷静に対処してほしいと述べたやに聞いております。  日中国交正常化二十周年を迎えまして、中国側としては天皇陛下の訪中を要請をしており、中国側からは難題を出さないと言いながら、なぜこの時期にこういった問題を持ち出していわば我が国の国民感情を逆なでするような行動に出たのであろうか、ちょっと奇異に思う点があるわけでございますが、この点につきまして政府の見解をお伺いしたいと思います。
  157. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  この点は午前中も御質疑がありましてお答えしたところでございますけれども、中国は今近代化という大きな事業に取り組んでおりまして、その中の大きな仕事として国内法の整備というのがございます。逐次これをやってきておるわけでございますけれども、今この時点になりまして、要するに領海法に関する法整備が整ったということで日程的にこれが出てきたということだと思います。  逆に申し上げれば、日中二十周年ということは中国側においても十分承知しておるところでございましょうけれども、何か日本側に反日的な分子、強硬派、保守派が日本だけをねらい撃ちにしてこういう立法措置を二十周年というこの時期に出してきたというふうには私ども考えておりません。事務的な準備が整ってこれを出してきたというふうに思います。  いずれにいたしましても、これは大変遺憾な措置でございまして、私どもはこれに対して直ちに強く抗議をし、彼らがとった措置の是正方を求めました。
  158. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一つ中国側で気になる動きとしまして、日中戦争に絡む民間賠償を日本側に求める動きが出てきておるわけでございます。  これにつきまして江沢民総書記としては、日中戦争はかつて中国人民に深い災難をもたらした。双方、特に日本側が問題を厳粛に受けとめ、相互の話し合いを通じて適切な解決を図ってこそ両国の友好関係に有利ではないかと述べているというふうに承知をしております。  そこで、いわば政府間ベースでは賠償を放棄しました日中共同声明で解決済みとしております中国側でございますけれども、民間での対日請求の動きを容認をして、戦争被害を客観的に見て存続している問題としている背景を政府はどのように見ておられるか、御説明をお願いします。     〔宮里委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 これは、過般の日本と中国との間の不幸な過去というものが大きな背景としてあることは先生も御承知のとおりでございます。  ただ、先生が仰せになりましたように、国と国との関係では、正常化の折に、この種の戦争にかかわる賠償請求権というのは、周恩来、時の総理の英断によって中国側がこれを放棄するという形で決着したということでございます。ただ、この種の中国側の民間の一部の方々の動きというのは正常化以来折に触れてあったわけでございます。  しかし、あえて申し上げれば、中国政府の立場というのは、七二年の重い両国の約束がありますからそれには一々取り合わないということであろうかと思います。
  160. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 なぜこの時期に日中戦争を蒸し返す動きがにわかに高まったかということにつきまして、我が国の一部にはその考え方として、中国が日本にこの問題を通じてブラフをかけることで第四次円借款など対日交渉を有利に運びたいという思惑もあるのではないか、こういった見方もあるやに承知をしております。こういった見方につきまして政府としてはどうとらえておられますでしょうか。
  161. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私は決してそのようには考えません。  先ほど申し上げましたように、中国政府の立場というのは、七二年の共同声明を発出した時点において、この種の戦争にかかわる賠償請求は放棄するということをかたく両国の約束事として約束したわけでありますから、その立場は中国政府、中央の指導者は非常に重いものとして受けとめておるわけでございますから、この種のことで今ブラフということをおっしゃいましたけれども、そのような気持ちは中国の中央の指導部には一切ないと思います。
  162. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて朝鮮半島に関連した質問でございますが、一つは、韓国のMBCテレビが、最近天皇陛下の暗殺をテーマにしたドラマを放映しまして、その中に実写フィルムを組み合わせた陛下への発砲シーンがあったわけでございます。大変遺憾なことだと思いますけれども、まずこの事実関係につきまして御説明をいただきたいと思います。
  163. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 事実関係といたしましては、四月六日の夜放映されましたMBCという韓国文化放送ドラマの中で、今上陛下の即位のVTRと組み合わせた形で、韓国人の主人公があたかも、それを見た側が受け取りました印象は、天皇陛下の車列に発砲するということを連想させるようなシーンがあったわけでございます。
  164. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ドラマとはいいながら、陛下の暗殺シーン、発砲シーンを放映することは、国民感情を著しく傷つけかねないわけでございまして、政府はこの問題に関しまして韓国側にどういう抗議を行ったのか、御説明をいただきたいと思います。
  165. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私どもは、これは大変重大なことというふうに受けとめました。  そこで直ちに、ソウルにおきましては大使が外務部の、日本でいえば外務省でございますが次官に会いまして、ドラマの中ということではあれ、我が国の象徴である、日本国民の統合の象徴であられる陛下の暗殺を企てるというようなことを連想させる不当なシーンが、そういった公共的な性格を帯びた放送機関で放映されたということはまことに遺憾なことである。未来志向と韓国の方はおっしゃいますけれども、そういう韓国側の考え方と著しくかけ離れたものではないかということで、事後のことについて善処方を求めた次第であります。MBC側も、そういった日本側の申し入れを受けて、どういうふうにこれから対応いたしますか、検討中ということであります。  同じような気持ちは、東京におきましても、私から在京大使館の公使に強く申し伝えました。
  166. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 聞くところによりますと、韓国のMBCテレビ側は、これはあくまでフィクションであって問題はないというふうに釈明をしているようでございます。しかし、実写フィルムを組み合わせた陛下への発砲シーンというのは、今の過去をめぐる謝罪問題などで日本の対韓感情が揺れているときであるだけに、日本の国民感情をいたく刺激することになりかねないわけでございます。  また、この番組は連続ドラマでもありまして、これからもこういったシーンがある可能性があるわけでございまして、韓国側にぜひ一層の自粛を要請する必要があるんだと思いますけれども政府のの考えはいかがでございましょうか。
  167. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 確かにいろいろ最近難しい問題が韓国との間でございます。そういう状況の中で、このようなシーンが公共の放送番組の中で放映されたというのは大変遺憾なことでございます。  韓国側に対してとりました措置は先ほど御説明いたしましたが、とりあえず先方の反応は、第一回目の放送のようなシーン、陛下に関するシーン、これは今後そういうことはないということを申しております。
  168. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、北朝鮮の核査察問題についてお伺いをします。  朝鮮民主主義人民共和国は、四月九日最高人民会議におきまして、ことし一月末に国際原子力機関との間で調印したいわゆる保障措置協定の批准案件を承認したわけでございます。国際原子力機関は十日、朝鮮民主主義人民共和国との間の保障措置協定が同日発効したと発表しております。  そこで、まずお伺いをしますが、朝鮮民主主義人民共和国は国際原子力機関による核査察につきまして寧辺地区の核関連施設三カ所の査察を受け入れることを表明しておりますけれども、査察の時期は具体的にいつごろになるのか、教えていただければと思います。
  169. 須藤隆也

    ○須藤説明員 先生おっしゃいましたとおり、北朝鮮はIAEAの保障措置協定を去る十日に発効させたところでございます。  IAEAの協定の規定によりますと、協定発効後の月末の日から三十日以内、すなわち五月の末までに冒頭報告といいましてIAEAの保障措置の対象となります核物質の申告をしていただくということになっておりまして、その冒頭報告を受けてからさらにIAEAが、この報告を検認するための特別査察が実施されることになっておりまして、さらにそのような手続きを経てから協定発効後九十日以内という、努力目標でございますが、九十日以内に補助取り決めが発効しまして通常査察が実施できるようになるということでございまして、特定査察ということでは六月にも可能であるというようなことを北朝鮮の方は言っているようでございますが、通常査察ということになりますと補助取り決めができた後ということになると思います。
  170. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 北朝鮮としては核再処理施設の存在につきましては全面的に否定をしております。他方、米国は衛星写真などを通じて核再処理施設の存在を強く確信しているところで、主張は真っ向から分かれているわけでございます。他方、我が国として北朝鮮の核再処理施設の存在につきまして、我が国自身としてはどういう見解を持っておられるのか、この点についてお聞きをしたいと思います。
  171. 須藤隆也

    ○須藤説明員 先生御発言のとおり、北朝鮮は非核化共同宣言で再処理施設等の補充を放棄しておりますし、また同国内におきます再処理施設の存在を否定しております。他方、米国には再処理施設の完成は間近いとの見方が有力でございます。  したがいまして、この点は今後のIAEAの査察あるいは南北の相互査察等を通じて事態が明らかになることを期待しておりますが、いずれにせよ重要なことは、北朝鮮がIAEAの査察の受け入れあるいは非核化共同宣言の実施によって一日も早く国際社会の懸念を払拭することが大事であるというふうに考えておりまして、我が国としては今後とも日朝交渉あるいはIAEA等の場で引き続きこの点を北朝鮮に求めていく考えでございます。
  172. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一点注目すべき点だと思うのですが、北朝鮮が核再処理施設の存在につきましては否定をしておりますものの、核燃料サイクルの研究は行うと言っているわけです。しかし、核再処理の研究は北朝鮮の原発の稼働状況から見て必要かどうか疑問でございまして、またこの時期に来て北朝鮮が核燃料サイクルの研究は行うと言い始めた点は非常に注目すべき点だと思うのですが、この点に関する政府の見解をお聞きしたいと思います。
  173. 須藤隆也

    ○須藤説明員 御指摘のとおり、北朝鮮が核の再処理施設は存在しないと言いながら核燃料サイクルの研究は行うということを初めて発言したということは、政府としても非常に注目しております。  これがどういう意味を持つのか、今後北朝鮮側の説明を聞きあるいはIAEAの査察等を通じて詳細な点を究明していく必要があると考えてはおりますが、いずれにしましても、先ほども申し上げましたとおり、重要なことは、北朝鮮が早期かつ無条件にIAEAの査察を完全に受け入れて、さらに南北の非核化共同宣言の内容を着実に実施して、核兵器開発に対する国際社会の懸念を一刻も早く払拭していただくことだと思います。
  174. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間が限られておりますので、あとCISにつきまして若干質問させていただきます。  大臣が今月の二十九日からCIS諸国を訪問すると聞いておりますけれども、CISのどの共和国を訪問されるつもりなのか、またロシア以外のCISの国々に対してどういう外交政策をこれから考えておられるのか、この点につきまして二言お伺いをしたいと思います。
  175. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 渡辺外務大臣は、国会の御許可を得まして二十九日からロシア連邦を訪問し、コズイレフ外務大臣との間で二回目の平和条約締結交渉エリツィン大統領との会談、こんなことを予定しておりますけれども、その限られた範囲内でもしすべての事務的な日程が詰まりますれば、日程的な制約がございますので今回は中央アジアのうちの多くて二共和国を御訪問いただくということで、なお事務的な日程を鋭意調整中でございます。
  176. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 以上で終わります。
  177. 麻生太郎

    麻生委員長 玉城栄一君。
  178. 玉城栄一

    ○玉城委員 私はペルー国の情勢についてお伺いをいたしたいと思いますが、この件は午前中の御質疑でもありましたが、ペルー国、日系邦人の方々がたくさんいらっしゃる国でありますので、政情不安というものは非常に重大な関心を持つわけであります。  午前中のお答えの際に、あれは十時半ごろですかね、あと五分ぐらいしてフジモリ大統領の重大な声明といいますか、あるのでというお話がありましたが、その件もお聞きになっておられましたら、その要旨をあわせて御報告いただきたいと思います。
  179. 寺田輝介

    ○寺田政府委員 お答え申し上げます。  現地時間二十一日午後十時、これは日本時間になりますと本日の正午でございますが、約三十分間にわたりまして、フジモリ大統領はテレビを通じまして四段階から成りますところの民主体制復帰タイムテーブルを発表いたしました。内容をかいつまんで申し上げます。  まず第一段階の措置といたしまして、本年の七月五日にこれまで政府がとった主要な措置、立法府、司法府関連でございますが、このとった措置の是非を問う国民投票を実施するということ、これが第一段階の措置でございます。  続きまして、同じく本年八月三十一日に憲法修正案を発表する、それによって国民レベルでの検討を開始する、これが第二段階でございます。  続きまして、第三段階の措置といたしまして、本年の十一月八日、たまたま十一月八日には統一地方選挙が実施されることになっておりますが、この地方選挙実施の機会に今回の憲法修正案についての国民投票を実施する、これが第三段階でございます。  続きまして、明年になりますが、九三年の二月二十八日に国民議会選挙を実施する、その結果九三年四月五日に新国会が開会される、こういう民主体制復帰のタイムテーブルが発表されたわけでございます。
  180. 玉城栄一

    ○玉城委員 今のフジモリ大統領の発表について、四段階にわたっての御報告がございましたけれども、それに対して我が国政府としてどういう評価をされているのか、同時にいわゆるこれまで日本とペルーの間の経済援助と申しますか、これについての方針はどういうふうになっていくのか、その点をあわせてお伺いいたします。
  181. 寺田輝介

    ○寺田政府委員 それでは、私より冒頭、今回の措置に関します評価について申し述べたいと思います。  私どもといたしましては、フジモリ大統領の国家再建努力というのは高く評価し、支援を行ってきたということは先生御案内のとおりでございます。しかし、せっかく民主主義の定着に努力をされてきたフジモリ大統領が先般現行憲法を停止した、そういう措置をとったことについてはやはり残念に思ったわけでございます。  そういう中にありまして、先ほど申し上げましたように今般フジモリ大統領は民主体制復帰のための四段階にわたる計画を発表されたわけでございますが、私どもとしましては、こうした民主体制復帰のための計画というのはやはりペルーにおける民主体制回復に向けての重要な一歩である、このように受けとめておるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この計画に基づきまして事態が正常化されるということ、同時に二十日より米州機構からミッションが派遣されており、目下与野党の政党関係者との話が進んでおりますので、やはりそういった米州機構ミッションの結果も見る必要があるのではないかということで、今後の事態の推移につきましては十分注意深く見守っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  182. 川上隆朗

    ○川上政府委員 ペルーに対する経済協力の観点でございますが、今中南米局長からも御説明がありましたように、我々といたしましては今回の一連の、特にきょう発表になりました措置というのが、正常化に向けて、回復に向けての重要な一歩であるという認識でございますけれども、それに基づきまして、ペルー政府が示したその正常化に向けた計画の具体的な進捗状況や、さらにその今まさに訪問しておりますOASのミッションとペルー側との話し合い、こういうものの内容等にも留意しながら状況の推移を見きわめていきたい、見きわめつつ経済協力については検討してまいりたいという姿勢でございます。
  183. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国とペルー国と約束しましたね、経済開発援助、これはそのままされるということ、そのように理解してよろしいでしょうか。
  184. 川上隆朗

    ○川上政府委員 現在の時点では、今申しましたような認識に基づきまして事態の推移を見守る。したがいまして、経済協力の約束について今の時点でとめるといったような措置はとらないというふうに御理解いただきたいと思います。
  185. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほども申し上げましたとおり、日本とペルー国との関係というものは非常に大事でありますので、ぜひ良好な関係を維持発展をさせていただきたい、このように思います。  それから次に、これは大臣にお伺いいたしますが、沖縄県が本土に復帰しましてちょうど二十周年、さっきの日中国交正常化、もう二十年でありますけれども、そういう意味におきまして、沖縄が返還されて二十周年ということで、総理大臣も式典委員長ですか、式典を主催されますし、天皇陛下、皇后も御出席される、またアメリカの方からも副大統領あるいはその他要人がいらっしゃるということでもありますので、一言大臣の沖縄返還、我が国に返還されて二十周年の総合的な評価をぜひひとついただきたいわけです。よろしくお願いします。
  186. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 アメリカとの間で戦争をやって、そして戦闘の結果占領された地域ではありますが、アメリカであるから沖縄を核抜き本土並みで返還するということになりまして、二十周年を迎えて感慨深いものがございます。もしこれがソ連であったならば本当にすんなり早く返ってきただろうかということを考えたときに、全く感慨深かった。  その後の沖縄は立ちおくれておりましたが、特別立法もいたしまして、それなりに国を挙げて、高額補助率等で沖縄の再建復興に努力をしてまいりました。その結果、我々も何年かに一遍参りますが、行くたびに沖縄が発展してきておることは大変喜ばしい限りである。やはり返還が早かったということは日米友好を重視する米国の姿勢のあらわれであったと考えます。そのために、今回も米国からクエール副大統領を初め当時の関係者の方々日本に参って一緒に喜んでもらえるものと存じます。  なお、基地の縮小整理につきましても、返還二十周年ということを念頭に置きまして、我々としては今後努力してまいりたいと考えております。
  187. 玉城栄一

    ○玉城委員 沖縄県が復帰しまして、これからやるべき問題がまだたくさん残っているわけでありまして、そういう意味で、五月十五日には地元において約二千名の内外の方々を招いての式典も行われるわけであります。これは外務大臣出席されますか。
  188. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 五月十五日には東京と沖縄と両方で式典が行われることになっておりまして、沖縄県で行われる式典には沖縄開発庁長官が内閣を代表してお出になると私は伺っております。我々も事務的にはお呼ばれをいたしておりますので、それなりに人を出したいと思っております。
  189. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この機会にちょっとお伺いをしておきたい問題は、第二次大戦、悲劇の沖縄戦、それと並行いたしまして例の慰安婦ですか、慰安所の問題も沖縄に存在していたことは報道等によって明らかであるわけです。  今まで朝鮮の方々のいわゆる慰安婦の問題が大きな外交問題、政治問題になっておりますけれども、こういう国内の慰安婦の問題も存在していたことは事実としてあるわけです。ですから、この二十周年、二十年という機会に、戦後処理の問題の一つとして、あるいは人権問題、人道問題として、沖縄県内においてこういう問題は明らかにした方がいい、そしてきちっと責任、あるいは補償が必要ならば補償の問題もすべきであるという意見も相当高まっておるわけです。  政府として、沖縄戦、並行してそういう慰安婦の問題が存在していた、そのことを調査をしていらっしゃるやに聞いておりますけれども、その点をひとつお伺いいたします。
  190. 木村政之

    木村説明員 現在政府におきまして、いわゆる朝鮮半島出身の従軍慰安婦問題の実態調査を進めております。今継続中でございます。  これまで発見されました資料の中から、沖縄県の関係におきましては、防衛庁の資料の中に真部山、首里、伊江島、渡久地、桑江、仲間、この六カ所に慰安所があったという記述がございます。それから、文部省で発見されました資料の中に浦添市の仲間地区とか安波茶地区、西原地区に慰安所が存在したという記述もございます。  こういう記述はございますけれども、沖縄にどの程度の慰安婦がいたかということにつきましては、現在の資料からは把握しかねる状況でございます。
  191. 玉城栄一

    ○玉城委員 今のお答えの中から、十数カ所に慰安所があった。慰安所といいますと、朝鮮の方々の問題が今報道されていますけれども、その慰安婦の方々というのはどういう出身の方々でいらっしゃったのですか。
  192. 木村政之

    木村説明員 文部省で発見されました資料の中に、朝鮮人慰安婦それから沖縄人慰安婦という記述はございますけれども、その数が何人とかいうことはわからない状況でございます。
  193. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはずっと今調査をしていらっしゃるわけですね。これは大臣、こういう皆さん方調査というのはいつごろわかるのですか。
  194. 木村政之

    木村説明員 現在調査努力中でございますが、韓国におきましてはもう独自に調査を進めておりまして、これが六月、七月くらいの段階で終了する。私どもも鋭意調査を進めまして、それよりも早い段階には終了して公表をいたしたいと思っております。
  195. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほど朝鮮の方々、沖縄というお話もありました。これは沖縄の人に限らず、こういう慰安所には本土、いわゆる内地から来たというケースもいろいろ考えられるわけですね。  ですから、国内のこういう慰安婦の問題についても、これは今後大きな、補償の問題をどうするのかというような問題が必ず出てくると思うのですね。今の朝鮮の関係のもの、それから中国とか台湾とか、あるいはフィリピンもあったのでしょうかね、そういう外国の方々、同時に国内のこういう問題が出てくると思うのですが、そういう場合に政府とされては、この国内の問題について、補償問題といいますか、そういうものはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  196. 木村政之

    木村説明員 これら従軍慰安婦の方々に対する償いの問題、これは調査が今続行中でございますので、まだその段階ではございませんけれども、さきの予算委員会におきまして、外務大臣それから官房長官、何らかの償いを検討しなければならないという御発言もございますので、その後の段階でそういう話も出てくるかなという、そんな状況だと思っております。
  197. 玉城栄一

    ○玉城委員 だから大臣、やはり本当に戦争というものをやってはいけないと改めて感ずるわけですが、そういうものが沖縄戦と並行して存在していた、いわゆる人権問題といいますか人道問題といいますか。ですから、これはもうほおかぶりするわけにはいかないと思うのです。そこで実際にあった。それに対してどうするということは、政府としては、やはり何らかの責任ある対応をしていかなくてはこれは物笑いになると思うのですが、大臣としてはどうお考えでしょうか。
  198. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 海外における慰安所問題については、何らかの慰霊というか、慰留というか、償いというか、何らかの形の反省の色合いを込めたことを考えたいと思っております。
  199. 玉城栄一

    ○玉城委員 今大臣は海外ということをおっしゃっておりますけれども、さっきも申し上げましたように、国内にもこういう問題は存在していたわけですから、国内方々についてもやはり相応の対応というものは必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  200. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 沖縄は激戦地であったということは事実でございますので、どういうようなこと、調査結果を見た上で考えたいと存じます。
  201. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう沖縄県が本土復帰して二十年ということでありますが、とかくこういう問題、沖縄戦、沖縄の戦争、欠落していた感じがするわけです。二十年ということで、戦後処理の大きな、一つの大事な問題として、やはりこれはきちっと対応して、みんなが納得いくような形でこの問題はぜひ解決をしていただきたいと思います。  それともう一つ。この沖縄戦に絡みまして、これは八重山地域でありますけれども、八重山地域から西表に、いわゆるマラリア有病地帯に強制的にたくさんの住民の方々が移された、マラリア有病地帯ですから当然マラリアにかかる、そのために三千名余の方々が亡くなった。これは、波照間という島がありますけれども、その波照間出身の方々が主でありますけれども、この三千名の亡くなった方々について当然政府は何らかの補償をすべきだ、そういう世論が今非常に高まっておるわけです。  ちょっと厚生省の方にお伺いしますけれども、この実態については当然厚生省もある程度報告を受けていらっしゃると思いますが、どういうふうにその実態を認識され、またどういう方法をされようとしているのか、お伺いいたします。
  202. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 お答えいたします。  どういうふうに実態等をとらえているかということでございます。私ども所管しております戦傷病者戦没者遺族等援護法、こういう法律の適用関係ということで私ども考えさせていただいておるわけでございますが、御案内のとおり、この法律は、軍人軍属等、国との間にいわゆる雇用関係にあった者が、戦争、公務に従事している、こういう間に亡くなられたり障害の状態になったりという方につきまして、遺族年金、障害年金等を支給するということになっておるわけでございます。  そこで、御指摘の事例でございます。いろいろ資料をいただいて、それぞれ私ども見させていただいているわけでございますが、これは一般論でございますけれども、やはりこういう条件に該当するというふうに理解するわけにはまいらぬというふうに考えておりまして、私どもとして、このような方々に援護法を適用するということはできないというふうに考えております。  以上でございます。
  203. 玉城栄一

    ○玉城委員 援護法関係の法律の適用ということは、軍人さんとか軍属とか、沖縄は戦争地域ということで民間人の方々にも適用されている面もありますけれども、今、できないというお話です。  沖縄開発庁ですか、沖縄開発庁が何かこの問題にかかわって今やっていらっしゃるように伺っておりますけれども、どうでしょうか。お願いします。
  204. 鈴木佑治

    鈴木説明員 先生御質問の八重山地域のマラリア問題につきましては、戦後四十数年経過しておりまして、沖縄県が二回にわたって調査を行っていますが、当時の状況あるいは遺族の実態等、明らかになってないというのが実情でございます。  この問題につきまして、先般、関係省庁の連絡会議を設置することにいたしまして、その中で、今後沖縄県がさらに調査を進めるならば、非常に難しい問題でありますが、その結果を踏まえて意見交換等を行ってまいりたいというふうに考えております。
  205. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、やはり大臣、副総理大臣でもいらっしゃるから、一言。  いわゆるこのマラリアの問題も、援護法の適用は無理だというお話です。沖縄開発庁でいろいろ調べているということでありますが、三千名の方々があの第二次大戦で、ちょびちょびでなくて、ある一定の期間で亡くなったわけですから、これはやはり何らかの戦争に伴う犠牲ととらえることは当然だと思うのですね。  だから、そういう方々の問題について、やはり復帰二十周年でもありますので、きのう総理大臣に、沖特委員会で、これも復帰処理の問題について、厚生年金の本土との格差是正をぜひやってくれと申し出たところ、総理は、やはり何らかのことをやらぬといかぬだろうという答えがありました。年全体系そのものはどうにも崩すわけにはいかぬけれども、それと別にやはりそういうことを考えますということは断言しておられた。今のマラリアの問題も、そういう法律ができないというのであれば、やはり何らかの手というものを考える必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  206. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは、どこで線引きをするかという問題でして、非常に難しい問題がいっぱいあるんですよ。日本国内でも、軍人恩給と欠格者の問題とか。要するに、公務員と学校の先生や役場の吏員は年金通算が成っているが、会社の職員とか農家とかは年金通算は全く成ってないとか、それはいっぱい出てくるので、非常に難しい問題だ、実際は。したがって、マラリアの問題もそれと似たようなところがあるのかもしれませんが、私は、関係省の意見を聞いて、よく研究をしてみたいと存じます。
  207. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も参りましたので、研究も結構ですけれども、やはりこういう復帰二十周年としての大きな区切りでありますので、厚生年金もそうですが、ぜひマラリアの犠牲者の方々に対して、政府として、やはり当然補償すべき問題は補償していただきたいということを要望して、質問を終わります。
  208. 麻生太郎

  209. 古堅実吉

    古堅委員 在日米軍のPCB問題についてお尋ねしたいと思います。  全国の米軍基地に日本が提供した変圧器、それはどのくらいで、そのうちPCB入りがどれくらいと推定されるか、最初にお答えください。
  210. 石橋真澄

    ○石橋説明員 お答えいたします。  在日米軍基地関係におきまして、提供施設整備で実施しました変圧器数は約三千基と承知しております。  そのうち、岩国基地におきまして米側から交換要請のありました変圧器は十三基でございまして、その十三基にPCBが含まれていることが確認されました。
  211. 古堅実吉

    古堅委員 余り要領を得ない。御返事なんですが、全国に提供されている変圧器は三千ぐらいだ、そのうちPCB入りがどのくらいと推定されるかというふうなことを尋ねているのです、わからないならわからないでいいのですが。そういうことにかかわる実態調査するつもりがあるのかどうか、ひとつお答えください。  それから、岩国基地に提供した変圧器は全体で幾らなのか、そのうち今おっしゃった十三基がPCB入りだというふうにわかったということなのか。その他の十三基以外のものはPCB入りではないということなのか、あるいは調べてみないとわからぬということなのか。そこらあたりまで答えてください。
  212. 石橋真澄

    ○石橋説明員 お答えいたします。  平成四年三月五日に開催された日米合同委員会環境分科委員会において米側から、岩国基地において提供施設整備で設置した変圧器の中に一部PCBが含まれたものがあり、これを交換するようにとの要請があった。このため当庁は、設置後の維持管理過程でのPCBの混入の可能性も含め事実関係等について調査した結果、米側指摘の十三基について、濃度の差はあるものの、いずれもPCBが混入していることが明らかになりました。  なお、他の米軍基地については、現在までのところ米側からそのような指摘はございません。
  213. 古堅実吉

    古堅委員 どうも質問に要領よく答えていただけないですね。  この十三基というのは、日本側から提供されたものだというようなことなんですけれども、いつごろ製造されたものなのか。それと、PCBが入っておるということがわかったというのだが、どの程度のPCBが入っておるということなのか。そこらあたり説明してください。
  214. 石橋真澄

    ○石橋説明員 お答えいたします。  変圧器の製造年の大半が六十一年、六十二年でございます。  PCB濃度につきましては、最低が六・二、最高が三〇・六ppmでございまして、平均一四・九ppmでございました。
  215. 古堅実吉

    古堅委員 昭和六十一年といいますと一九八六年。六十一年、六十二年に製造された変圧器にPCBが入っておって、それが平均一四・九ppm、最高は三〇・六ppmという今の御説明です。そういうものが現に使われてきたということ自体が極めて重大な問題だというふうに申さねばならぬと思うのです。  御存じのとおり、一九七二年、昭和四十七年、国会がPCBの追放決議を行いました。一九七四年、昭和四十九年、製造を禁止する法律ができた。そしてその二年後の一九七六年、昭和五十一年、そういうPCB入りの器具を設置してはいかぬという法律までできた、そういう経過があるのです。  その後につくられた変圧器、日本が提供したものとして米軍が使ってきておったものにPCB入りの変圧器があったということは、法に反してPCB入りの変圧器がつくられておったということを意味しますか。それを日本政府は米軍側基地の方に提供したということなんですか。
  216. 伊藤康成

    伊藤説明員 お答え申し上げます。  私ども調査の結果では、先ほど設備課長からも御答弁申し上げましたが、その変圧器が米軍の方に納入された以後においてPCBが入る可能性はなかったというふうに考えております。したがいまして、製造過程というか納入される以前においてPCBが入っていたのであろうというふうに私どもとしては思っておりますが、それ以上のことは私どもの役所の範囲では調べようがない、こういうことでございます。
  217. 古堅実吉

    古堅委員 調べようがないはずはない。そういう変圧器はどこでつくられたのかということは調べたらすぐわかるじゃないですか。
  218. 伊藤康成

    伊藤説明員 ちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、メーカーについては当然わかっております。私どももメーカーにも事情を照会しておるわけでございますが、メーカーの方からは自分たちの製造過程では入るはずがないというような回答を受けている次第でございます。  ただ、先ほど設備課長が答弁したかと思いますが、今この十三基につきましてはメーカー側が交換をするという申し出を受けておりますので、近々交換をしていただけるものというふうに思っております。
  219. 古堅実吉

    古堅委員 そこまでのことはやったようなんですけれどもしかしいずれにしてもそのままは許されない問題だと思うのです。  法律で禁止されたその後につくられた変圧器、日本政府側が提供したものがPCB入りで、それが使われてきたという事態がわかった。政府一つです。米軍基地と関係する政府の省庁がそのことをわかった以上、法律に反してそういう変圧器がつくられた疑いがあるというのであれば、横の連携をとってその問題についての調査をともにしっかりやって責任の所在を明らかにするということが、政府にとって当然のことではありませんか。事はPCBにかかわる問題です。そういうことをやっておるのですか。
  220. 伊藤康成

    伊藤説明員 私どもとしても当然関係省庁とも連絡をいたしておりますが、先ほど申し上げましたようにメーカーはそのように申しておりますし、さらに、当然油の中に入っておるわけでございますけれども、油は電機メーカーではなくて油メーカーから買っておるわけでございまして、どこの会社の油を使っていたかという特定ができない、こういうようなところが現状でございます。
  221. 古堅実吉

    古堅委員 いずれにしても通産省とのかかわりも出ると思うのですけれども関係省庁と連絡をとり合ってその問題についてさらに調査をし、事の真相を明らかにするというおつもりはありますか。そういうことはやるつもりはないのですか。
  222. 伊藤康成

    伊藤説明員 先ほど申し上げましたように関係省庁には十分連絡をし、おっしゃられるような原因がさらにわかるものであれば私どもも教えていただきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  223. 古堅実吉

    古堅委員 このPCBが入ったとわかった変圧器については、日本の側が引き取ってそれを処理しましょうということになるのでしょう、そうしようとしておるのでしょう。どういう責任において政府がそれを引き取って、そういう処理をするということになるのですか。
  224. 伊藤康成

    伊藤説明員 この十三基につきましてはメーカーが交換をする、こういうふうに申しておりますので、メーカーの方にお引き取りをいただく、そして新しい変圧器を設置していただく、こういうことになっております。
  225. 古堅実吉

    古堅委員 それでは前へ進みます。  嘉手納、岩国、それ以外の基地にPCB入りの変圧器がないかどうか。ないとは言えない、そういう状況だと思うのですね。政府は、全国の米軍基地との関係でPCB入りの変圧器について調査をするよう米側には要求をしておりますか。
  226. 板垣ただ雄

    ○板垣説明員 お答え申し上げます。  要請しております。
  227. 古堅実吉

    古堅委員 アメリカは、その調査をして日本政府への回答をすると言っておりますか。それが一つ。さらに、質問を先に進めます。  沖縄現地の新聞が大きく報道し続けておりますけれども、沖縄、嘉手納基地におけるPCB汚染に関する問題です。それに関して、現地の全駐労空軍支部や全駐労県本部が大変重要な問題について明らかにしています。  それによりますというと、嘉手納基地内で働く日本人従業員は、かつてPCB使用の変圧器オイルを素手で、何の防具もなしにその変圧器に手を突っ込むなどして作業をさせられた。さらに、今回の嘉手納基地内におけるPCB汚染土壌との関係ですけれども、その汚染土壌の処理作業についても、手袋や保護服を何ら着用させられることなしにその作業に従事させられた。PCBオイルが基地内のマンホールや溝などに流されたことが一回ならず数回に及んだ、そういうことなどを明らかにしています。  もしそういうことが事実だったとすれば、事は重大です。政府はそれを掌握しているのですか。
  228. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 私の承知していることをお答えいたします。  この前もこの場で御報告いたしましたけれども、まず汚染除去に日本人従業員が従事していたかどうかということにつきましては、米軍は、かつては日本人を使っていないということを言っておりました。ただ、ただいま御指摘のような新聞記事もございましたものですから、今やっております環境分科委員会で、その点について事実関係を照会いたしております。それから、それ以外の問題についても、この間以来分科委員会を開催いたしまして照会をいたしております。私どもはまだ回答を得ておりませんが、今御指摘の点はほとんどアメリカに照会はいたしております。  我々といたしましては、新聞関係で出ました話については、その都度、分科委員会がない場合におきましても、補足的に連絡をして照会をするということにいたしております。
  229. 古堅実吉

    古堅委員 米側は、今の合同委員会における事実関係を明らかにしろということについては、調査し報告するということを約束しておりますか。
  230. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答えいたします。  調査は約束いたしておりますので、当然わかり次第報告があると思っております。
  231. 古堅実吉

    古堅委員 政府として、日本人従業員からも、そういう報道されているような重大な問題にかかわって積極的に調査をするなどして、米側の言い分との食い違いなどについても、日本政府の独自の立場から問題を明らかにするということがこの際大事ではないか。特に米側が、そういうことはなかった、日本人従業員を使ったことはないということを言い切っているということであれば、問題はさらに重大です。そういうことをされるつもりはございませんか。  こういうアメリカが積極的に問題を明らかにしようとしていない現段階で、基地従業員などに積極的にみずから進んで調査をするなどということをしないというと、真相は明らかにされません。やるべきです。
  232. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答えいたします。  我々といたしましては、環境問題につきまして環境分科委員会というものを設置いたしまして、ここで管理者としての立場の米軍に対する照会ということをやっておりますので、まず米側から管理者としての責任のある答えを求めるのが先だと思っております。それから先のことは、その結果を見て庚係当局の間で料断されるものと思っております。
  233. 古堅実吉

    古堅委員 それでは、この問題に関していま一歩突っ込んでお聞きしておきたいと思うのですが、報道されているような、何の手袋、保護服などを着用もさせないままに、PCBオイルなどを扱わせられたとか、そういう作業に従事させられ、関係者が不安を抱くようなことが実際上調査の上であったということになった場合には、全駐労が地元で特別の健康診断などをやれというふうなことにこたえて、そこまできちっとやるおつもりがありますか。
  234. 上瀧守

    上瀧説明員 お答えいたします。  ただいま外務省の方から御答弁ありましたように、今現在事実関係をその点を含めまして調査中でございます。我々といたしましては、そういう調査結果などを踏まえまして適切な対処をしてまいりたいと思っております。
  235. 古堅実吉

    古堅委員 先ほど来側の否定ということがありましたが、嘉手納基地内において、オイルをマンホールや溝に流したというふうなことが一回ならずあったというふうなことなども、これが本当に事実であったとすれば、極めて重大なことと言わねばならないのですね。そういうことにかかわっても、事の真相を明らかにするためにそのような発言をしている日本人従業員が実際におるわけですから、そういう日本人従業員から、直接にタッチした人々からそういうものを聞き取るというふうなことなどを通じて、事の真相を明らかにするおつもりがありますか。
  236. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、事の重要性にかんがみまして、我々は慎重に事態を明らかにしたいと思っているわけでございます。  そういう意味で、従来からございます環境分科委員会にこの問題を諮りまして、その場を通じて専門家の意見も入れて、事実の照会をし、解明を図っていこうと思っているところであります。アメリカ側もこれまでのところ、大変協力的な対応を示しておりますので、まずこの場を通じて事態を明らかにしていくことが第一だろうと思っております。その結果につきまして、その先どうするかということは、その結果を見きわめながら判断してまいりたいと思っております。
  237. 古堅実吉

    古堅委員 あなた方が何回も何回も、アメリカ側は協力的だというふうに言われるのですけれども、この問題が最初に現地新聞で大きく報道されたのは一月三十一日ですよ。二月、三月を経て四月になっています。それでも、事実関係をお聞きすれば、もうほとんど答えられないというのが現状でありませんか。それにもかかわらず大変協力的だなどとか言うのは、アメリカ側に立ってアメリカ側を擁護するための言い分としか言いようがない。とんでもない話です。  嘉手納基地におけるPCB汚染土壌の除去作業というのは、一九八六年から始まって六回に及ぶというふうに言われています。変圧器何基からどのくらいの量が漏れて、今日までそういう作業が続いているのか、そこらあたりの事情を御説明ください。
  238. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 私が承知しておりますところでは、PCBの入った油が漏れたというケースは、八六年の十一月二十五日に発見された一件だと承知しております。
  239. 古堅実吉

    古堅委員 質問にはみんな答えてください。どのくらいの量が流れたのですか。
  240. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 量が流れた後、先ほど来先生も御指摘のとおり、六回にわたっての掘削作業が行われておりまして、その都度掘削した泥はアメリカ側に持って帰っておりますので、全体としてどれだけの量が出たかということはつかみ切れない状況でございます。
  241. 古堅実吉

    古堅委員 あなた方が聞いてないのか、アメリカ側が答えてないのか。どのくらいのPCB入りの変圧器がそういう事態にあったというふうなことがわかれば、正確に幾らということは言えないにしても、どのくらいの量ということは言えるではありませんか。なぜ答えませんか。もう一度お答えください。
  242. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 先生の御指摘のとおり、具体的な量を聞けば、具体的な変圧器の本来の量を聞けばわかると思いますが、私、ただいま手元に資料を持っておりませんので、わかっておりません。  ただ、先ほど申し上げましたのは、どれくらいのものが流れたかということでございますので、アメリカ側にもちろんその点は聞いておりますが、何回にわたってかの分析の結果でございますので、最終的に量がどれくらいかということはわかりかねるということでございます。
  243. 古堅実吉

    古堅委員 一基のPCBオイルというのは、どのくら、いの量ですか。
  244. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 PCBが入っている変圧器はいろいろ容量も異なるようでありますが、私は専門的にはその点のことは承知しておりませんが、一つ聞いておりますのは、防衛施設庁が提供しております変圧器の一つの型は約五十リットルが入っているということは承知いたしております。
  245. 古堅実吉

    古堅委員 これは防衛施設庁が提供した変圧器ではないのでしょう。アメリカ製の変圧器ではありませんか。変圧器が特定されれば、どのくらい入っているかということくらいは基礎的なものとしてわかっていなくてはいかぬはずなのですよ。なぜ隠そうとするのですか。
  246. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 先ほど申し上げましたように、先生のおっしゃるとおり、具体的な変圧器がわかれば量がわかるのは当然だと思います。私が申し上げましたのは、この場に私は資料を持っておりませんので、具体的にどの変圧器かがわからないということを申し上げたわけであります。
  247. 古堅実吉

    古堅委員 これは質問に対して答弁する側としては許されない態度ですよ。PCB汚染問題について質問するということをちゃんと言っている。しかも、一番基礎にかかわる問題じゃないですか。それを今資料持ってませんと言って、知らぬ存ぜぬという形で逃げようとすることは、わからないということじゃなしに隠そうということでしかないんじゃないですか。そんな常識的なことは。ごまかしも甚だしい。許せない。  これまで六回にわたる作業が続いたというのですけれども、除去された土壌はどのくらいの量ですか。何か新聞報道などを読みますというと、現地には約五百個ぐらいのドラム缶がその土壌を詰められて野積みにされているという報道もございます。
  248. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 私は正確な量はただいま承知しておりませんが、結果がわかりましたら御報告いたします。
  249. 古堅実吉

    古堅委員 全くとんでもない話です。アメリカは協力的だなどということを言いながら、そういうことにかかわることさえも答えられない。それじゃ、この作業はいつごろまでに終わるというのですか。外務省側のこれまでの説明では、三月までに終わるというふうな説明も聞かされてまいりました。どこまで来ておるんですか。いつまでに終わるんですか。
  250. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  三月の末から最後の掘削作業が始まっているということは承知しておりますが、最終的に終わりますのは、掘削した後さらに分析をして、これ以上掘る必要がないというところが判明するまで判断できないと聞いておりますので、最終的にどれくらいのところで終わるかということはこの場では申し上げることはできません。  ただ、今回の作業で最後までやり通して、最後の掘削作業とするということは承知しております。
  251. 古堅実吉

    古堅委員 今度掘削してその後に調査をしてPCB汚染がなお残っている、それでその調査にどのくらいかかるか、そういうことなども考えて、いつごろまでなどというふうなことも皆さんとして受けとめておくというのが当たり前の話でありませんか。日米合同委員会を開いてまで問題にしなくてはいかぬという事態が起きているというのに。  その現場は、どのくらいの広さにわたって、深さどのくらいの深さまで掘り起こされているということなんですか。
  252. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 どの程度の深さのものを掘っているか、私は承知しておりません。  それから、先ほどおっしゃられました点でございますが、結局少し掘ってはきちっと量を調べながら、検査をしながら掘り進めているというふうに概略的には聞いておりますので、そういう意味で、完全に終わるのがいつということの見当がつかないということであります。ただ、それだけ、逆に私の立場として、今この段階で推測で、この辺までに終わるだろうということだけはちょっと申し上げるのは避けたいと思います。
  253. 古堅実吉

    古堅委員 現場は雨ざらしにされておるんですか。
  254. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 承知しておりません。
  255. 古堅実吉

    古堅委員 雨ざらしにされているというふうに推測もできます。そうしますというと、雨が降るたびにその雨水とともにPCBも浸透していく。際限ない方向まで年がたつに連れて、いきます。六カ年もかかっていますよ、六カ年も。そういうことでいいんですか。その程度のかかわり方でいいんですか。  次の合同委員会でPCB問題を問題にする委員会はいつごろ予定されますか。
  256. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 合同委員会の環境分科委員会でございますが、次の会合は二十四日、あさって開く予定でおります。
  257. 古堅実吉

    古堅委員 最後に大臣に、大事なことですからお聞きしたいと思うのですが、二月の当委員会で、この問題での米軍基地立入調査について質問をいたしましたら、必要な場合には当然立ち入りして調査をするなどということを進めていきたいということをおっしゃられました。  今お聞きのとおり、これまで米軍が問題を明らかにするという積極的な態度をとっているというふうに思えませんし、政府の側のその問題についての突っ込んだ態度というのも極めて許せない程度のものだというふうに思います。そういうことではだれも納得しないのですよ。  ですから、次の委員会でこの問題が納得のいくほどに明らかにされるというふうに思えませんし、委員会において真相が十分に明らかにされない場合には、当然のことながら基地に立ち入っての調査まで含めて考えるということへの政治的な判断が、これだけ三カ月近くも来ておるのですから、そういう判断があってもいいのじゃないかと思います。大臣、いかがお考えですか。大臣にお聞きしておるのです。
  258. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 その前に……。先般大臣からもこの場でお答えいたしましたし、私も指示を受けておりますことは、分科委員会の場を通じて事態の究明を図り、必要とあらば環境庁の専門官も含めた、現場の人も含めて現場を見てみるということで、そういう方針で我々は臨んでおりますが、まだ分科委員会の場で事態の究明を急いでいる段階でございますので、立ち入りをどうするかという問題はこの次の問題として考えたいと思っております。
  259. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今答弁があったように、今話し合いをしていますから、しばらくお待ちください。
  260. 古堅実吉

    古堅委員 時間が過ぎましたので終わりますが、最後に一言。  この問題は国民の健康にかかわる重大な問題ですし、PCBがあれだけ重大な健康を害する、環境を汚染するものであるというふうに法律でも禁止された、そういういきさつのあることにかかわる問題ですから、これだけ時間をかけて思うようにいっていない以上、ぜひ早目に政治的な判断もされて基地に立ち入る、あるいは従業員からも積極的に聞き取る、そういうことなどを含めて真相を明らかにし、必要な対処もしていただくように強く要望を申し上げて、終わらせていただきます。
  261. 麻生太郎

    麻生委員長 宮里松正君。
  262. 宮里松正

    ○宮里委員 私は、最近日中間で問題になってまいりました尖閣列島の問題に絞って、渡辺外務大臣並びに外務省当局にお尋ねをいたします。  近年、中国側は尖閣諸島に関する日本領土権を否定いたしまして、尖閣諸島は中国古来の領土であり、国際法上も疑いのないところである、こんなことを言ってまいりました。これに対して我が国から抗議をいたしますと、このことは今の我々ではうまく処理できないから次の世代まで棚上げにしておこう、こういったことを言ってまいりました。  ところが、ことしの二月二十五日、第七期全国人民代表大会常務委員会第二十四回会議において中国の領海法なるものを制定をし、即日公布をしたわけでありますが、その第二条には、中華人民共和国の陸地領土は中華人民共和国の大陸及びその沿海諸島、台湾及び魚釣島を含むその附属各島云々と規定をしまして、法律上これを明らかにしたわけであります。我が国から考えますと、これは極めて遺憾なことでございます。  さきに大臣はそのことについては直ちに外交ルートを通して抗議を行い、しかるべき措置をとったということが伝えられました。このことが新聞を通して報道されますと、沖縄現地では大層関心を呼びまして、直ちに沖縄県知事名で政府に外交上しかるべき措置をとってほしいという要請がございましたし、県議会は決議をいたしまして同様な要請をしてきました。自民党沖縄県連も同様な決議をもって要請をしてまいりました。地元の沖縄タイムス及び琉球新報もこれを大きく報道いたしまして、県民の関心の高さを示しております。  私は、このことが報道されました日の午前十一時ごろ、具体的には二月二十七日でございますが、外務省渡辺外務大臣並びに柿澤外務政務次官を訪ねまして、直ちに外交上厳重な抗議を行うなどしかるべき措置をとってほしいということを要請をしておきました。  これから順次質問してまいりますが、このことにつきまして政府は今どのように考えられ、中国のとったこの異常な措置に対しましてどのような措置をとられたか、簡単に御説明を願いたいと思います。
  263. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 去る二月二十五日、中国が領海及び接続水域に関する法律を公布いたしましたので、我が方は直ちに同月二十六日北京において、また同二十七日東京において小和田事務次官より楊振亜在京中国大使に抗議を行いました。三月十六日に行われた日中外交当局間協議におきましても再度抗議を行ってまいりました。また、さらに宮澤総理よりも、さきに来日した江沢民総書記に対して善処を求めたのであります。  御指摘のとおり、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところでありますから、現に我が国はこれを有効に支配をしておるのであります。
  264. 宮里松正

    ○宮里委員 大臣答弁のように、尖閣諸島が我が国固有の領土であり、歴史的にも国際法上も全く疑いを入れないところであることは、我が国の側から見れば明々白々であります。念のために若干事実関係指摘いたしまして確認をしておきたいというふうに思います。  沖縄で廃藩置県が行われましたのが明治十二年であります。尖閣諸島に対する領有意思の表明はそのころから段取りが始まっているわけであります。実地調査などを行いまして、そして沖縄県当局から当時の政府に要請をいたしまして、日本領土に編入をいたしましたのが、編入する旨の閣議決定をいたしましたのが、たしか明治二十八年のはずであります。  翌明治二十九年には沖縄県庁がそれを沖縄県の八重山群島の中に編入をいたしました。国土標識の標ですか、柱ですか、こういうものを設置いたしましたり、諸般の措置を講じたはずであります。そのとき日本政府がとりました領土権取得の原因は、国際法上有効な無主物先占を理由にしたものだと考えます。そのとおり間違いないでしょうか。
  265. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、結論から申しますと、まさしく国際法上は無主物先占という法理によりまして我が国がこの尖閣諸島を我が国の領土として編入したということでございます。  ただいまお触れになりましたけれども、当時標識を立てるという要請が県の方からございまして、それに対して明治政府は非常に慎重に、これが果たして無主の土地であるかどうかということを十年ほどかかって調べました結果、ここに外国の支配は及んでいないということを確認した上で、先ほど仰せられましたように明治二十八年に閣議決定を行ったということでございます。
  266. 宮里松正

    ○宮里委員 その後、尖閣諸島の我が国の領土権につきましては幾つかの国際法上の事実が出てまいりました。  明治二十七、八年の日清戦争の結果、明治二十八年に下関条約締結されました。台湾は日本に割譲されまして、そのときに尖閣諸島は台湾の附属島にはなっていなかったはずであります。  それから、昭和二十年、第二次世界大戦が終わりまして、台湾はポツダム宣言の条項等によりまして中国へ返還をされました。そのときにも尖閣諸島は台湾の附属島として中国へ返されたわけではありません。  昭和二十七年、連合国と対日平和条約締結をされまして、同条約三条によりまして、アメリカに沖縄に対する施政権が与えられました。アメリカはそれを受けて、その前でございますが、最初は占領中でございますが、昭和二十五年、軍政府布令二三号と、対日平和条約が発効いたし良した後の昭和二十八年に民政府布告二七号、同じく民政府布令六八号等によりまして、アメリカの施政権の対象区域として尖閣諸島が明確になっているわけであります。  どういう形になっているかといいますと、その一例を示しますと、一九五二年二月二十九日付米民政府布令六八号、琉球政府章典と題するものでありますが、第一条には、「琉球政府の政治的及び地理的管轄区域は、左記境界内の諸島、小島、環礁及び領海とする。」として、「北緯二八度東経一二四度四〇分の点を起点として北緯二四度東経一二二度北緯二四度東経一三三度北緯二七度東経一三一度五〇分北緯二七度東経一二八度一八分北緯二八度東経一二八度一八分の点を経て起点に至る。」となっています。  これはまさに沖縄県の全域を示すものであります。東は南北両大東諸島から西は尖閣諸島及び与那国に至るこの線であります。アメリカもこれを日本領土として、日本から与えられた施政権の対象区域として施政権返還されるまでずっとここを管理しておったわけであります。  そしてまた、その後、この地域の一部は米軍が射爆場として使いましたから、そしてそこは古賀さんという人の個人所有地でございましたから、地代も支払いをされてまいりました。米軍施政権下では米軍管理のもとに実効支配がずっと継続をされてきたわけであります。  戦前は、古賀さんという人がそこにかつおぶし工場をつくりましたが、あるいはそれに関連いたしました海産物の加工工場ができまして、多いときには百名前後の人が住んでおったようでありますが、戦争中この人たちは全部いなくなりまして、その後は無人の島になりました。復帰後は、第十一管区海上保安庁がずっとその海域をパトロールしておりまして、我が国の実効支配はずっと明治からこの方続いてきているわけであります。  そして、昭和四十七年、日米間の交渉によりまして沖縄施政権日本に返されましたときに、この返還協定の中でも、ここは日本返還すべき沖縄の区域であるというふうに明確に示されているわけであります。支配の仕方は、先ほど私がこれを読み上げましたように、緯度と起点を結んでその地域が示されているわけであります。  このように考えてまいりますと、歴史的にも国際法上も日本領土であることは全く疑いの入れないところ、また何人もこれに対してこれまで異議を唱えたことがなかったはずであります。中国側も一九七〇年ごろに初めでそんなことを、領土権を主張してきたわけでありまして、その前には何らの異議もなかったはずであります。何ゆえに今ごろになってそんなことを言ってきたのか、私はその意図はよくわかりません。外務省はどのようにお考えでございますか、お答えを願いたいと思います。
  267. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまるるお話がございましたところは、私どもも事実としてそのように理解いたしております。  そこで、なぜ中国がということでございますが、まず中国、より正確に言えば中華人民共和国政府が尖閣諸島についての領有権を主張し始めたのが七一年の十二月でございます。その前に、先生御存じのとおりでございますが、当時の中華民国政府、台湾当局が主張し始めたのが七一年の六月でございまして、その後、六カ月置きまして中国、中華人民共和国政府が主張し始めたのが同じ年の十二月でございます。  よく言われますのは、その前にエカフェのこの地域についての調査がございまして、どうやら海底に豊富な石油資源が眠っておるぞというのがエカフェの報告の趣旨でございました。そんなことが契機になったのかなというのが今一般的に言われておるところでございます。  先ほどのお尋ねが、このたびの中国の措置をどう考えるかということになりますれば、そういう御趣旨でありますれば、これは先ほど来も御説明いたしましたように、中国は近代化ということで諸般の国内の法的な整備をいたしておりまして、その一環でようやく領海法の整備もし得る状況になったということで、そこに尖閣列島を中国の領土であると書き込んだということだと思います。
  268. 宮里松正

    ○宮里委員 中国側の主張にはかなり根の深いものがあるのじゃないかということを私はひそかに感じるのであります。  明治十二年、沖縄での廃藩置県が行われました後、一時期、当時の清朝政府から沖縄全域の領土権をめぐって日本政府に苦情が来たことがありました。  それから、明治二十年代の前半に、たまたまアメリカの前の大統領グラント将軍が世界漫遊の途につきまして、日本に来る前に中国に行きまして、中国政府の要請を受けて沖縄の領土権の問題につきまして日本政府と中国政府との間を仲介したことがございました。日光会談などで当時の外務卿井上馨あるいは伊藤博文、明治の元勲たちと会いまして、細かいところまで記憶しておりませんが、仲介をいたしました。沖縄本島から北の方は日本へ帰属させる、宮古、八重山は中国に帰属させる、こういう調停案が出ました。そして、その後天津でその調停案が調印されようとしたことがございました。ところが、たまたま中国の外務大臣が清朝政府から不信任を受けましていなくなりまして、これは調印されずに済みました。  その後、明治二十七、八年の日清戦争で、中国から台湾を日本が割譲を受けましたので、この問題はさたやみになった。たしか対日平和条約締結された後、その解説を兼ねた日本の国際法学会で発行いたしました「沖縄の法的地位」と題する本の中に、その記事がたしかあるはずであります。外務省、そのことを御存じでございましょうか。そして、中国政府の主張にはそんなようなことまで言っているのであろうか。つまり、古来中国の領土であるということをしきりに繰り返しているところから見ますと、そのようなことも考えているのかいなと思います。  国際法上根拠にならないことは私は明らかだと思いますが、その点いかがでございましょうか。
  269. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘のございました国際法学会編の「沖縄の地位」という文書につきましては、私どもも読ませていただいております。  その中で、ただいま先生からお話ございましたように、沖縄県の設置の後に、当時の清国と我が国との間で琉球全体についての帰属の問題ということが争われた時期がございまして、その過程で一時グラント前大統領が調停の努力をしたということも記述されております。  最終的には、これも御指摘のとおりでございまして、この分割案というようなものは一時ございましたけれども、また一時ある種の条約案がつくられたということはございますが、結局最終的な合意には至らず、そしてその後日清戦争が起こりまして、下関講和条約というものが結ばれたわけでございます。この下関条約の中では、沖縄の問題は全く触れられておりませんで、台湾の割譲等の規定がございます。このころに至りまして清国側も琉球に対する要求というものはしなくなったというふうに承知しております。  今回の中国側の主張の背景にそこまでの歴史的なものがあったのかどうか、その辺は承知しておりませんけれども、直接には、先ほどアジア局長が御答弁申し上げたとおりであううと思います。
  270. 宮里松正

    ○宮里委員 領土問題というのは、その都度対応を甘くいたしますと後々まで尾を引くことがあります。今回中国のとったこの異常な措置に対しまして、外務省は素早く対応され、中国側に恐らく後々まで口実らしいものを与えなかったという点で、私は適切な措置をとっていただいたものと、こう考えます。今後ともこの問題、フォローされまして、中国側がアクションを起こすたびに飽きずに、粘り強く、これは事実関係といいますか、法的な展開というものは明らかにしていただきたい、こう思います。  時間がございませんので、次の問題に移ります。  実は、中国が尖閣諸島の領土権を主張するに至った背景には、先ほど局長の説明がありましたように、尖閣諸島は中国大陸棚の上に乗っかっているのですね。そして、その中国大陸棚には大量の石油資源が内蔵している、こう言われております。  実は、沖縄が復帰いたします前、大見謝恒寿君という人が、もう亡くなりましたが、今たしかその息子さんがその地位を承継しているはずであります。この尖閣諸島の海底油田の鉱業権の出願がございました。復帰直前に、当時私は琉球政府の副主席をしておりましたが、鉱業権の採掘権を琉球政府として付与していただきたいと強い要請がございました。  ところが、これは中国大陸棚の下の話でございますから、尖閣諸島が日本領土であることは疑いを入れないところでありますけれども、その底を流れております石油資源の採掘ということになってまいりますと、中国との間の何らかの形の協定などを結んで共同開発などをしない限りやれるものじゃなかろう、勝手なことをすると、これは国際紛争の種になりかねない、こう考えて、最終的な鉱業権は与えずにそのままの形で政府に引き継ぎました。私が承知しておりますところでは、これはたしか沖縄総合事務局の通産局の方でその資料を保管しているはずでありますが、それはどうなっておりますか。
  271. 望月晴文

    ○望月説明員 お答え申し上げます。  個々の出願の取り扱いにつきましては、お答えすることは必ずしも適当ではございませんけれども、沖縄復帰に伴う沖縄の鉱業法に基づく鉱業権及び鉱業権設定の出願につきましては、復帰に伴う通産省関係法令の適用の特別措置に関する政令によりまして現行の我が国の鉱業法に引き継がれたところでございます。
  272. 宮里松正

    ○宮里委員 そこで恐らく、出願されております鉱業権を実施するということにつきましては、日本政府と中国政府との間で海底油田の開発計画なりあるいは協定なりというものを結んでやらないとできないことだというふうに思います。そのことについて、外務省、どのようにお考えでございましょうか。
  273. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 尖閣につきましては、その領有権の問題に関しましては先ほど先生から大変詳しく御指摘がございましたとおりでございますが、それとは別に、大陸棚の境界をどうするかという問題があるわけでございます。  これに関しましては、国際法上必ずしも単一の境界画定の方法があるというわけではございません。基本的には合意によって決めなければいけないわけでございますが、大別いたしますと、いわゆる中間線で切るという考え方、あるいは大陸棚は自然の延長であるということで、大陸が海に張り出していったものでございますから自然の延長というような考え方もございます。個々の大陸棚の構造、地形等を考えまして、関係国で合意するというのが現状であると思います。  御指摘のとおり、この大陸棚の資源がどちらに属するかということにつきましては、そのような境界の画定、あるいはこれまでの世界の先例を見ますと共同開発というようなこともあるわけでございます。  日韓間では、一部につきましては境界の画定を行いまして、また一部につきましては共同開発区域というものを合意しているわけでございます。  日中間におきましては、まずは先ほど来御指摘の尖閣諸島の領有権の問題というのが中国側から提起されているという状況もございますので、今のところすぐ大陸棚の境界画定の交渉を行うという状況にはちょっとないのではないかというふうにとりあえずは考えております。考え方としては先ほど申し上げたとおりでございます。
  274. 宮里松正

    ○宮里委員 時間がございませんので、最後に要望だけ申し上げておきます。  今お答えのように、大陸棚の上に乗っかっているのが尖閣諸島でございます。大陸棚の下の海底資源の開発ということになりますと、領土の範囲をどこで境界を引くか、特に大陸棚条例との関係でもかなり難しい問題がある。いわんやそれが領土権について意見のあるところの大陸である以上、それを定めることは非常に難しかろう、こう思います。しかし、これは大事なことでありますからそう急いでもやれませんが、これからもひとつしっかりと見守っていただいて、対応をしっかりしていただきたい。私も一時期それにかかわった者といたしまして心からお願いをしておきたい、こう思います。  ありがとうございました。      ――――◇―――――
  275. 麻生太郎

    麻生委員長 次に、アジア太平洋郵便連合一般規則及びアジア太平洋郵便条約締結について承認を求めるの件、千九百六十八年二月二十三日の議定書によって改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件及び世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条約締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより各件について政府より提案理由の説明を聴取いたします。渡辺外務大臣。     ―――――――――――――  アジア太平洋郵便連合一般規則及びアジア=   太平洋郵便条約締結について承認を求める   の件  千九百六十八年二月二十三日の議定書によって   改正された千九百二十四年八月二十五日の船   荷証券に関するある規則の統一のための国際   条約を改正する議定書締結について承認を   求めるの件  世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条   約の締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  276. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ただいま議題となりましたアジア太平洋郵便連合一般規則及びアジア太平洋郵便条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  アジア太平洋郵便連合一般規則は、アジア=太平洋郵便連合憲章の適用及び同連合の運営を確保するための規則を定め、また、アジア太平洋郵便条約は、同連合の加盟国の間の国際郵便業務について規定しているもので、同連合の加盟国にとって締結が義務づけられているものであります。  この一般規則及び条約は、平成二年十二月六日、ニュージーランドのロトルアにおいて、アジア=太平洋郵便連合の運営及び同連合の加盟国の間の国際郵便業務に関する事項について若干の改正を行った上で現行の一般規則及び条約にかわるものとして作成されたものであります。  我が国がこの一般規則及び条約締結することは、アジア=太平洋郵便連合の加盟国として引き続き活動する上で必要であると認められます。  よって、ここに、この一般規則及び条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百六十八年二月二十三日の議定書によって改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この議定書は、昭和五十四年十二月にブラッセルで開催された第十三回海事法外交会議において作成されたものであります。  この議定書は、一九二四年に作成され、一九六八年に改正された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約に定める運送人の責任限度についてさらに変更を加えて同条約を適用すること等について定めるものであります。  我が国がこの議定書締結することは、最近の国際海上物品運送の実情に応じた船荷証券に関する規則の統一に寄与する見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  最後に、世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和四十七年十一月にパリで開催された国際連合教育科学文化機関の第十七回総会において採択されたものであります。  この条約は、文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存することが重要であるとの観点から、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的としており、世界遺産委員会の設置、その任務、国際的援助の条件及び態様等について規定しております。  我が国がこの条約締結することは、世界文化遺産及び自然遺産保護の分野における国際協力に寄与する見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  277. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会      ――――◇―――――