○
吉田(正)
委員 時間の
関係もありますから、憲法論議に余り深く入ってここで論議をする気はございません。ただ、今
長官は、経過については大体そうだろう、しかし独立国家として
自衛隊は、こうおっしゃったのですけれ
ども、ただ、これは主体的に
日本が
自衛隊、つまり保安隊とか警察予備隊をつくったのではない。
これはもう皆さんごらんになっていると思うのですけれ
ども、在日米軍の
軍事顧問団の幕僚長をやっておったフランク・コワルスキーという方が書かれた「
日本再軍備 私は
日本を再武装した」というのがありまして、これは有名な本なんですよ。もしごらんになっておられなかったら一回読んでいただけたらと思うのですけれ
ども、このように書いてあるのですね。「私個人としては、あの恐ろしい戦争のあと、大きな希望と期待をもって生まれかわった民主主義国
日本が、
国際情勢のためやむを得ないとはいえ、みずからその理想主義的憲法を踏みにじり、国民がきっぱりと放棄した
戦力を再建せねばならなくなったのは悲しいことであった。」こういうことで、これは彼はずっとかかわってきているのですね。平和憲法がつくられた、にもかかわらず再軍備せざるを得なくなった、それは
日本への
アメリカの占領政策によって押しつけられたものだとずっと一貫して書いておるのです。これは歴史的にも非常に価値の高い、証拠として非常に資料性のある内容なんですね。何か機会があったら一回ごらんいただきたいと思います。
それから憲法の解釈ですね。先ほど
長官は、党の立場が違うので憲法解釈が違うんじゃないかなどちらっとおっしゃったと思うのです。私は実はこの問題である
程度時間を割きたいと思ったのですが、きょうは
所信表明に対する
質問でありますからいずれまた機会を得て。私は従来の国会の憲法論議も聞いてきたのですが、もうちょっと物足りない
部分がありまして本当はきょうはせっかくの機会ですから突っ込んでと思ったのですが、時間的にもそうはいきませんので省略をいたします。
これはもう
長官、釈迦に物を申すようなものなんですけれ
ども、憲法制定議会というのはちょうど帝国議会最後の議会であって、これが今の新憲法の制憲議会にもなったわけです。当時の
吉田総理の立法趣旨説明というのは余りにも有名なのでして、これも
長官に申し上げるというよりも国民の皆さんに改めて聞いていただきた、いということで申し上げるのですけれ
ども、この第九十帝国議会の衆議院本
会議で
吉田首相が第九条の立法趣旨について次のように述べております。これはあらゆるところで引用されておって非常に有名なんですけれ
ども、このように述べているのですね。「戦争放棄ニ関スル本案ノ規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居リマセヌガ、第九条第二項二於テ一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ放棄シタモノデアリマス、」これは一九四六年六月二十六日の本
会議で言っているわけです。さらにこのようにも述べておるわけですね。「戦争放棄二関スル憲法草案ノ条項二於キマシテ、国家正当
防衛権二体ル戦争ハ正当ナリトセラル・ヤウデアルガ、私ハ斯クノ如キコトヲ認ムルコトガ有害デアルト思フノデアリマス、近年ノ戦争ハ多クハ国家
防衛権ノ名二於テ行ハレタルコトバ顕著ナル事実デアリマス、敬二正当
防衛権ヲ認ムルコトガ偶”戦争ヲ誘発スル所以デアルト思フノデアリマス、」このように趣旨説明で述べておるわけですね。
しかし、その後の憲法論議は、その解釈が
世界情勢とかいろいろな
情勢に左右され、影響を受けながら変転をしてきたということも
長官御存じのとおりであります。きょうは時間がありませんから、いずれにしても当初の憲法九条についての趣旨説明は、提案された真意が
吉田総理によってここに明確に述べられておるということだけは私
どもやはりきちんと踏まえておく必要があるのではないかというふうに思っているわけです。
そこで、憲法論議はそれぐらいにいたしましてお尋ねをしたいと思うのですけれ
ども、
長官の
所信表明の中ではアジア・
極東情勢、旧
ソ連情勢等について随分いろいろ述べてあるのです。要するに不安定であるとか、いろいろなそういう不安定要因等を随分述べておいでになりますが、そういう
情勢に対応して、それでは
日本がこれから本当に新秩序創建に向けての
日本の役割というものをどのように憲法に沿って、あるいは平和国家
日本の立場から積極的に貢献をしていくのか、つくり出していくのかという点についてはどうも余り触れられていないんじゃないかなという感じがするわけです。これは現在日米安保体制がありますから、そういう点で余り
アメリカを追い越して、あるいは先駆けてそういうことはなかなか
日本としては言えないということもわかるわけです。
そこでお尋ねをいたしますけれ
ども、今現に日米安保条約下の
日本であるわけですから、
米国と旧
ソ連、いわゆる十一カ国から成る独立国家共同体、
CISの
関係は冷戦の終結前と後でどのような
変化があるというふうに分析をされておりましょうか、また両国はお互いをパートナーと位置づけておるのかどうか、
アメリカ側はどのように
CISを見ておるのか、ということです。これは
日本側として
アメリカが
CISをどのように評価をし認識をしているのかという、今度は
日本側の
防衛庁の観測といいますかその認識というものをお聞きをしたいと思っておるわけです。新聞報道等によれば
アメリカの大統領を初めとして
国防長官、国務
長官等高官は、もう既に今日の
ソ連は
アメリカにとって
脅威ではない、むしろパートナーシップという立場での
関係にあるのじゃないかという趣旨のことを至るところで発言をされておるわけです。そういう点で
日本として、今の
CISと
アメリカとの
関係がどのようになっているのか、その認識、評価をお聞かせ願いたいと思います。