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1991-11-15 第122回国会 参議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月十五日(金曜日)    午前九時二分開会     ―――――――――――――   委員氏名     委員長         中村 太郎君     理 事         井上 吉夫君     理 事         倉田 寛之君     理 事         斎藤 文夫君     理 事         梶原 敬義君     理 事         久保  亘君     理 事         佐藤 三吾君     理 事         太田 淳夫君     理 事         吉岡 吉典君                 井上 章平君                 石井 道子君                 石原健太郎君                 遠藤  要君                 大島 友治君                 合馬  敬君                 片山虎之助君                 北  修二君                 斎藤栄三郎君                 須藤良太郎君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 高木 正明君                 谷川 寛三君                 西田 吉宏君                 野末 陳平君                 平井 卓志君                 國弘 正雄君                 小林  正君                 櫻井 規順君                 清水 澄子君                 種田  誠君                 細谷 昭雄君                 前畑 幸子君                 村沢  牧君                 森  暢子君                 吉田 達男君                 片上 公人君                 白浜 一良君                 中西 珠子君                 上田耕一郎君                 乾  晴美君                 高井 和伸君                 寺崎 昭久君                 橋本孝一郎君                 下村  泰君     ―――――――――――――    委員の異動  十一月五日     辞任         補欠選任      片山虎之助君     斎藤 十朗君  十一月十二日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     吉川 芳男君      斎藤 文夫君     鹿熊 安正君      谷川 寛三君     前田 勲男君  十一月十三日     辞任         補欠選任      高木 正明君     斎藤 文夫君      下村  泰君     西川  潔君  十一月十四日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     星野 朋市君      平井 卓志君     真島 一男君      櫻井 規順君     三重野栄子君      吉田 達男君     庄司  中君      片上 公人君     針生 雄吉君      白浜 一良君     常松 克安君      上田耕一郎君     諫山  博君      橋本孝一郎君     勝木 健司君  十一月十五日     辞任         補欠選任      種田  誠君     北村 哲男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         中村 太郎君     理 事                 井上 吉夫君                 鹿熊 安正君                 前田 勲男君                 吉川 芳男君                 梶原 敬義君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 太田 淳夫君                 吉岡 吉典君     委 員                 井上 章平君                 石井 道子君                 石原健太郎君                 遠藤  要君                 大島 友治君                 合馬  敬君                 北  修二君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 須藤良太郎君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 西田 吉宏君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 北村 哲男君                 國弘 正雄君                 小林  正君                 清水 澄子君                 庄司  中君                 種田  誠君                 細谷 昭雄君                 前畑 幸子君                 三重野栄子君                 村沢  牧君                 森  暢子君                 常松 克安君                 中西 珠子君                 針生 雄吉君                 諫山  博君                 乾  晴美君                 高井 和伸君                 勝木 健司君                 寺崎 昭久君                 西川  潔君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        法 務 大 臣  田原  隆君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣  羽田  孜君        文 部 大 臣  鳩山 邦夫君        厚 生 大 臣  山下 徳夫君        農林水産大臣   田名部匡省君        通商産業大臣   渡部 恒三君        運 輸 大 臣  奥田 敬和君        郵 政 大 臣  渡辺 秀央君        労 働 大 臣  近藤 鉄雄君        建 設 大 臣  山崎  拓君        自 治 大 臣        国 務 大 臣  塩川正十郎君        (国家公安委員        会委員長)        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  岩崎 純三君        (総務庁長官)        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      伊江 朝雄君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)        国 務 大 臣        (経済企画庁長  野田  毅君        官)        国 務 大 臣        (科学技術庁長  谷川 寛三君        官)        国 務 大 臣  中村正三郎君        (環境庁長官)        国 務 大 臣  東屋 嘉幸君        (国土庁長官)    政府委員        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        総務庁長官官房  八木 俊道君        総務庁人事局長  山田 馨司君        総務庁行政管理  増島 俊之君        局長        総務庁行政監察  鈴木 昭雄君        局長        防衛庁参事官   内田 勝久君        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        防衛施設庁総務  竹下  昭君        部長        防衛施設庁労務  荻野 貴一君        部長        経済企画庁調整  吉冨  勝君        局長        経済企画庁国民  加藤  雅君        生活局長        経済企画庁物価  長瀬 要石君        局長        経済企画庁総合  冨金原俊二君        計画局長        経済企画庁調査  小林  惇君        局長        科学技術庁研究  井田 勝久君        開発局長        環境庁長官官房  森  仁美君        長        環境庁企画調整  八木橋惇夫君        局長        環境庁水質保全  眞鍋 武紀君        局長        国土庁長官官房  藤原 良一君        長        国土庁土地局長  鎭西 迪雄君        国土庁大都市圏  西谷  剛君        整備局長        国土庁防災局長  鹿島 尚武君        法務省刑事局長  井嶋 一友君        外務大臣官房長  佐藤 嘉恭君        外務省アジア局  竹中 繁雄君        長事務代理        外務省北米局長  松浦晃一郎君        外務省中南米局  瀬木 博基君        長        外務省欧亜局長  兵藤 長雄君        外務省経済局長  林  貞行君        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        大蔵大臣官房総  日高 壮平君        務審議官        大蔵省主計局長  斎藤 次郎君        大蔵省主税局長  濱本 英輔君        大蔵省関税局長  吉田 道弘君        大蔵省理財局長  寺村 信行君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        大蔵省国際金融  江沢 雄一君        局長        国税庁次長    冨沢  宏君        文部大臣官房長  野崎  弘君        文部省生涯学習  内田 弘保君        局長        文部省初等中等  坂元 弘直君        教育局長        文部省教育助成  遠山 敦子君        局長        文化庁次長    吉田  茂君        厚生大臣官房総  大西 孝夫君        務審議官        厚生大臣官房老  岡光 序治君        人保健福祉部長        厚生省保健医療  寺松  尚君        局長        厚生省薬務局長  川崎 幸雄君        農林水産大臣官  馬場久萬男君        農林水産大臣官  今藤 洋海君        房審議官        農林水産省経済  川合 淳二君        局長        農林水産省食品  武智 敏夫君        流通局長        食糧庁長官    京谷 昭夫君        林野庁長官    小澤 普照君        通商産業大臣官  榎元 宏明君        房審議官        通商産業省通商  岡松壯三郎君        政策局長        通商産業省貿易  高島  章君        局長        中小企業庁長官  南学 政明君        運輸大臣官房長  豊田  実君        運輸省運輸政策  大塚 秀夫君        局長        運輸省航空局長  松尾 道彦君        海上保安庁次長  小和田 統君        気象庁長官    立平 良三君        郵政大臣官房長  木下 昌浩君        郵政大臣官房経  山口 憲美君        理部長        郵政省貯金局長  松野 春樹君        労働大臣官房長  齋藤 邦彦君        労働省労働基準  佐藤 勝美君        局長        建設大臣官房長  望月 薫雄君        建設省都市局長  市川 一朗君        建設省河川局長  近藤  徹君        建設省道路局長  廠井 治芳君        建設省住宅局長  立石  真君        自治大臣官房総  滝   実君        務審議官        自治大臣官房審  石川 嘉延君        議官        自治省行政局長  紀内 隆宏君        自治省行政局公  秋本 敏文君        務員部長        自治省行政局選  吉田 弘正君        挙部長        自治省財政局長  湯浅 利夫君        自治省税務局長  杉原 正純君        消防庁次長    渡辺  明君    事務局側        常任委員会専門  宮下 忠安君        員    参考人        日本銀行総裁  吉本  宏君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国政調査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査     ―――――――――――――
  2. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  現在理事が三名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事鹿熊安正君、前田勲男言及び吉川芳男君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、予算執行状況に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、予算執行状況に関する調査についての理事会決定事項について御報告いたします。  質疑は、本日一日間とし、総括質疑方式とすること、質疑割り当て時間の総計は百四十一分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党及び日本社会党護憲共同それぞれ四十九分、公明党・国民会議十五分、日本共産党連合参議院及び民社党・スポーツ・国民連合それぞれ八分、参院クラブ四分とすること、質疑順位についてはお手元に配付いたしておりますとおりとすること、以上でございます。  ただいま御報告いたしました理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  8. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日の委員会日本銀行総裁吉本宏君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  10. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 予算執行状況に関する調査を議題といたします。  この際、一言申し上げます。  宮澤内閣発足後初の参議院予算委員会開会でありますので、委員長から大臣及び政府委員各位にあらかじめ申し上げます。  御承知のとおり、当委員会表示時間は質疑者質疑のみの時間であり、これに答弁を加えた質疑の所要時間は表示時間のおおむね三倍とみなして日程を組んでおります。したがいまして、答弁者各位は簡潔かつ明瞭に御答弁をお願いいたします。  それでは、これより質疑を行います。佐藤三吾君。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 皆さん、おはようございます。  総理選任されまして、心から祝意を表します。宮澤さんが総理に就任されて最初の国会でございます。したがって、総理政治姿勢政治信条について伺いたいと思います。  まず、現在の日本国憲法、この憲法に対する認識についてお伺いしたいと思います。  今回の総裁選挙に出る前までは、第二次大戦の苦い体験から、戦後の世界の軍事経済の諸条件を熟慮して正しい選択をした憲法だというのがたしか総理の考え方であったと思うんですが、いかがですか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりに存じております。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 若干わかりにくい答弁をするのかなと、こう思っておりましたが、極めて率直でございまして、そこで重ねてお伺いしますが、これまで国会で積み重ねてきた憲法論議憲法解釈、これについては変更の要があるとは考えない、こういうことでございますね。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 逐一の例を今全部存じませんけれども、基本的にはこの憲法というものは大切なものだと考えております。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 最近の新聞報道を見ますと、あなたが総裁選の立候補に当たって小沢さんの口頭試問を受けてから若干変わったというのが常識なんですが、これは総理自身、今申し上げたように、一切変わっておりませんということをはっきり国民の方にお答えなさった方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の所信に変わりはございません。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 所信に変わりないということでございます。  あなたが師と仰いでおりました吉田、池田両元総理、これが保守本流の基礎を築いた。そして、このお二人の身近に総理は仕えて、政治基本を軽装備、経済重視と判断され、これまで継承することが保守党の使命であり、これを守る者こそ保守本流であるということで長い政治歴をお歩きになったと国民皆さんが見ておるわけでございますが、間違いございませんか。  反対に、日本沈空母論を提唱して戦後政治の総決算を政治のスローガンにした中曽根政治、これは保守亜流で、軍事力重視の力による政治態様、こういうふうにあったと思うのでありますが、当時の宮澤さんは戦後政治の継承を唱えたはずですが、これも間違いございませんか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 余り短絡的に色分けを私はいたすつもりは実はございませんが、戦後、吉田首相初め代々の内閣がとってまいりました方針が今日の我が国の繁栄と平和に大きく貢献をしたということは、私はそのとおりに考えております。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 であるとするならば、今、憲法に対する議論が非常にございますけれども、あなたは現行憲法については守っていくという立場を堅持なさっていくというふうに理解してよろしいですか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりでございます。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、PKO論議国会一つの焦点になっておりますが、国際貢献のあり方についてお尋ねをしておきたいと思うんです。  国際貢献につきまして我々も否定するものではございません。ただ問題は、初めから自衛隊を何が何でも海外に出すんだというような論法、もしくは後藤田さんがおっしゃっておるように、国際貢献がいつの間にか軍事貢献になってはたまらない、こういうところに私は国民皆さんが心配なさっておる部分があるんじゃないか。そして、そのことが国会論議一つの結論として衝突をしておるというふうに思うんです。  あなたは、資金援助は立派な国際貢献だと、湾岸戦争拠出金米国議会自民党タカ派過小評価論に対して反論なさったことがございますが、これは今でも変わりございませんか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 湾岸危機に際して、我が国国民に増税までお願いいたしまして資金協力をいたしましたが、これは極めて立派なことであったし、量的にも大きなものであったと考えております。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。この問題についてはまだ後で触れてまいります。  そこで、総理にお伺いしたいのでございますが、政治倫理綱領、これが我が国議会政治の中で占める位置づけ並びにその遵守程度につきまして、総理のお考えをまずお聞きしたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政治倫理の確立は、我が国における民主主義政治基本であると考えております。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 基本であるという御回答のようでございますが、私は海部内閣と今度の宮澤内閣の最大の違いはここら辺にあるんじゃないかという感じがしてならぬわけです。総理自身リクルート汚染にかかわりを持っておる、これは公知の事実でございますが、このためかもしれませんけれども、自民党の三役を見ますと、総務会長ロッキード事件で起訴され、見方によっては犯行を認めて上告を取り下げた人であり、政調会長リクルート事件で名前の挙がった人です。さらに、最高顧問就任宮澤総裁が要請した竹下中曽根両元総理リクルート事件の主役と言っていい人たちだと思うんですね。  政治倫理にもとることをやった人たちを全面解禁した理由は一体何なのか。そして、宮澤総理自身も同罪だから、自分だけ総理総裁では恥ずかしいということなのか。それとも、皆で渡れば怖くない式で傍若無人の振る舞いをやる、こういう意味なのか。ここがさっきの答弁とどうもちぐはぐな感じがしてならぬのですが、いかがでしょうか。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私自身の不行き届きにつきましては、本会議でも反省をし、おわびを申し上げたところでございますが、一生同じ過ちを繰り返しませんように心を戒めておるところでございます。その点は私の同僚、先輩方々も同じ心境でおられると存じます。  衆議院選挙がその後に行われまして選挙民から信任を受付だということは、恐らく選挙民のもう一度同じ過ちを繰り返さないように心を改めてしっかりやれという、そういう意思表示であったと受けとめておるところでございます。したがいまして、今御指摘になられたような方々もそのような信任を受けて、反省をなされつつただいまのお仕事をなさっておられるわけでありまして、そういう方々の識見あるいは経験、才能等が最大限に発揮されるように適材適所で御活躍を願うということは、私はしかるべきことと存じております。
  27. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、総理のお話を聞いておりますと、生涯を通じて戒心すべきことと、こういうことでまことしやかに聞こえるんですが、その裏腹にロッキードリクルート汚染議員総理総裁立場で解禁のお墨つきを出す、このことは私は許されることではない、こう思うんです。宮澤さん、あなたの第一任務は私はこれであったのじゃないかという気がしてならぬのですが、いかがでしょうか。  それから、海部総理を退陣させていったYKKという包囲網がございましたね。この包囲網についても、ひとつ山崎さん、こういうことだったのか、あわせて御回答いただきたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それらの方々反省をせられ、また選挙によって信任を受けられたということに私は考えております。
  29. 山崎拓

    国務大臣(山崎拓君) YKKが海部続投について反対したという、そのいわれは何かという御質問だと思います。  我々は、海部前総理の続投について、もちろん阻止する力などはございませんでしたが、異を唱えだということは事実でございます。その理由を申し上げますが、その前に誤解のないように申し上げておきますけれども、海部前総理に対しましては個人的には非常に敬愛の念を持っている次第でございます。大変に政治的な情熱をお持ちでございますし、またイメージとしてすばらしいイメージをお持ちで、我が党の危機を救った大功労者である、そのように敬意を表している次第でございます。  ただ、私どもが海部前総理のいわゆる続投に異を唱えましたのは、自由民主党の総裁の任期が到来したということが最大の理由でございます。我が党が大変なピンチにありましたときにいわゆるリリーフ役といたしまして登板をされたわけでございますが、九回裏のツーダウン、フルベースのピンチをしのがれると同時に、もう一試合完投されたというところまでお務めいただいたわけでございますから、この機会に本格的実力エースに御登板いただくのが筋ではないか、そのように考えました次第でございます。  ああいうピンチにならなければ、例えば現総理におなりになりました宮澤先生、あるいは副総理になられました渡辺先生、あるいは当時御存命でございました安倍先生等、豊富な経験、キャリアをお持ちになった方が、この世界史的な転機に当たりましてその能力を国家国民のために発揮していただくということが我々の望むところでございまして、そういう意味でひとつ本格投手の登板を我々は期待するということをYKKといたしまして標榜いたしました次第でございます。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう一人のYKKが見えておりませんから、また後ほどお聞きしたいと思います。  本格投手もよろしいわけでございますが、だからといってロッキードリクルート汚染議員が無罪釈放というか、かようになっていいというものではございません。私は、そういう意味で、今総理答弁を聞きながら何かうつろなような感じがしてならぬのですが、あなたの経歴なり政治歴から見て、良心の痛みというのは何ら感じませんか。それとも総理にしてもらえばなりふり構わぬ、こういうお気持ちなのか、いずれですか。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、同じ過ちを繰り返しませんよう一生心を戒めてまいる考えでございます。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは、角度を変えて総理自身のことでお伺いしておきたいと思います。  総理は、竹下内閣で副総理・大蔵大臣の要職についておりまして、そのときリクルート未公開株譲渡の問題が起きたわけでございますが、特に問題であったのはこの参議院の予算委員会で約束したいわゆる三点セット、これが今まで提出をサボってまいったわけですが、昨日やっと提出の御決意をなさったようでございまして、これは参議院としても、この委員会でのことでもございますから、いつ御提出になりますか。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、当時税制特別委員会であったかと存じます、そういう点についてのお話がございまして、私としてできる限りの努力をいたしますが、十分でない点もございますというお答えを申し上げたままに実は御指摘のようになっておりました。それで、今国会におきまして昨日もお尋ねがございました。  私といたしましては、本会議で申し上げましたように、御審議の推移によりまして最善の努力を申し上げるとお約束をいたしておりますので、プライバシーの問題であるとかあるいは多少時間がかかる、いろんな問題がございますけれども、本委員会においてお決めになられますれば、またそのような段取りによりまして、自分といたしましては最大限の努力をさせていただきたい、こういう考えております。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これはひとつ委員長にもお願いしなきゃならぬのですが、今お答えのとおりですから、この取り扱いについては、日時をきちっと決めて理事会でひとつ協議をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょう。
  35. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 後刻、理事会において協議をいたします。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 総理は提出をなさるということで御回答いただきましたが、これは総理だけの問題じゃございませんで、お隣の渡辺総理、それから渡辺郵政大臣、今お着きになりました加藤官房長官、三名についてどういうお考えですか。
  37. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まことにリクルート事件というのは残念な事件でございまして、我々も深く反省をして二度とこのようなことが起こらないように気をつけていかなきゃならぬと自粛自戒をしておるところでございます。
  38. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) いわゆるリクルート未公開株の売買の問題につきましては軽率な行為であったと反省いたしております。今後とも自戒しながら、また倫理の問題は自分の問題として考えていきたいと思っております。
  39. 渡辺秀央

    国務大臣渡辺秀央君) この問題は、私も大きな荷物としてこれからの政治活動の中にしっかりと心に受けとめて、国民の信託にこたえ、今後このような問題が起こらないように自重自戒してまいりたいと思って深く反省をいたしているところでございます。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 全然答えてないですよ。私が言ったのは、総理のそういう自戒の上に立って三点セットをいつ出してくれますかと、こう聞いておるわけです、今三人の方に。三点セットをいつ出してくれるんですかと聞いておるわけですから、お三人に答弁になってない。
  41. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 三点セットというのは、なにでしょうか、売買契約書とそれから入金の証拠ですか、支払いの何か証拠と。これは私自身じゃございませんので、たまたま実業家、小なりといえども実業家である私の長男が買ったということで、一年後に私は聞きました。本人から聞いて、そのとおりだよという話で、朝日新聞から問い合わせがあって一番先に事実関係を認めたことであります。したがって、そういう御要望については、何とか協力してもらうように話はいたします。
  42. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私のリクルート未公開株の売買の件につきましては、あの事件が起きたときに申し上げたんですけれども、先輩たる江副氏の御好意を受けて政治資金として使わせていただきましたと。それで、私の本名でやっております。  そういう意味で、特に今おっしゃるような書類をその後ずっと準備することもしておりませんでしたので、また技術的にできるかどうかこれから検討してみますけれども、いずれにしても委員長の御指示に従っていきたい、こう思っております。
  43. 渡辺秀央

    国務大臣渡辺秀央君) 今、官房長官が申されましたよしうに、私も委員長の仰せに従って理事会のお申しつけのようにいたしたいと思っております。
  44. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 確認しておきたいんですが、渡辺さんは長男に協力を要請してというお話でございましたし、それから加藤さんは委員長の指示に従ってと、それから渡辺郵政大臣の方も同じようなことですが、委員長の指示に従ってこの委員会に提出するということで確認してよろしいですね。
  45. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) ちょっと何せ古い話でございますし、いわゆる全部一つ一つのことを丹念にファイルしておくだけの能力のない事務所でございますし、それから政治資金として使わせていただきましたということは従来から申し上げているところでございます。本人の私の名義でございます。そういうわけで、三点セットの用意をする必要があるのかなというような気もございましたので、またプライバシーのことでもありますので、用意はしておりませんでした。  委員長の御指示があれば最大限の努力をしてみますけれども、これからあっちこっちひっくり返してということになろうかと思います。最大限の努力はいたしますが、その中で一つ二つそろわないものもある場合もあるかもしれません。どういう点でどの資料が何を証明するために一番必要なのか。私は、政治資金に使わせていただきましたということは事件が起きたとき当初申し上げたんですけれども、その点からまたいろいろ御相談申し上げたいと思います。最大限の努力をいたします。
  46. 渡辺秀央

    国務大臣渡辺秀央君) 私も、委員長からこの書類を出しなさいという御指示がありましたらそのようにさせていただきます。  私は、結果として私の名前で行為を行っておりますので、書類はできるだけ整えられ得るであろうと思いますが、まさに全部百点満点とれるかどうかは正直申し上げてわかりません。しかし、最大限の努力を誠心誠意させていただきたいと思っております。
  47. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほどお答えしたとおりでございます。
  48. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなた、長男を説得して協力させるという努力をするというさっきの回答だったんですが、私が言ったのは、委員長の方に指示があれば提出しますという確認で受け取ってよろしいですかと、こういうことを聞いておるわけですから。
  49. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは、長男といえども人格は別ですから、別世帯、実業もやっておりますから、親の言うことを一〇〇%聞くかどうかはわかりません。残念ながら女房とせがれがなかなか言うことを聞かない。ですから、私は極力話をしてみます。みますけれども、確約はできません。できることとできないことがございますから。だけれども、できるだけ努力をして委員長の御指示に沿うように話してみます。
  50. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは私はやっぱり納得できませんね。きちっとしたけじめをつけてほしいですね。
  51. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  52. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 速記を始めて。  佐藤君に申し上げます。  ただいま御質問のことにつきましては、それぞれの大臣から御答弁がありました。このことを踏まえて、後刻理事会において協議をして、委員長としては適切な指示を出したいと思いますので、質問を続行していただきます。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 よろしくひとつお願いします。  私は、総理自身が三点セットを提出するという決意をなさったということは、言いかえれば、この問題に対してまさに先ほどから三名の方々のおっしゃるように、まことに残念なことで一日も早くこれをぬぐい去っていかなきゃならぬという、そういうこととの関連ですから、三名の皆さんが余り抵抗なさるとは思っていなかったんですね。率直に言って、素直に提出していただける、こう思っておったんですが、よろしくひとつ委員長の指示に基づいてお願いします。  そこで総理、きのうの衆議院の予算委員会であなたが最後にお答えになりました山花質問に対する五千万を受け取っておったという御答弁がございましたが、私の調査ではそのほかに、大体同じ時期、三月二十三日の宏池会三十周年記念パーティー券として五千万と、こうあったように記憶しておるんですが、いかがでしょう。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その件は、昨日山花委員からそういうお話がございましたのですけれども、実は宏池会の方の関係は私によくわかりませんので、よく存じませんと申し上げたところでございます。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 会長である宮澤総理が私よく存じませんでは困るんですが、これは確かに私の記憶ではそうだと思うので、ぜひひとつ確認を急いでやってほしいと思います。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 努力をいたしてみます。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私、質問の冒頭に政治倫理綱領の位置づけをただしました。総理は、ロッキードリクルート事件汚染議員が選挙の洗礼を受けたことによって復権の理由にしておりますが、政治倫理綱領のどこにそう書いてあるのか。また、倫理綱領でそう解釈できるとしたら、根拠となる文章はどこにあるのか教えていただきたいと思います。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) と申しますよりも、先ほど申し上げましたように、御本人方がおのおのに反省をせられ、また選挙民信任を受けて出てこられたということをもって、私はその方々が十分な活躍をされることは当然のことであろうと考えます。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、あなたそこでお聞きになったと思うけれども、三名の御答弁の実態から、あれが反省の姿ですか。私は、もっと素直になってほしいと思うんです。そこら辺があるから、私は、あなたが選挙による復権と言うことについてはどうも疑問でならぬ。倫理綱領のどこにあるのか、そこをひとつ教えてもらいたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どこにあるとおっしゃいますよりは、有権者に選ばれた人が国政に参画するというのは憲法の根本の精神でございます。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうも総理答弁はよくわからないんですが、政治倫理綱領の四項では、「政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにする」と、こう定めておるわけですね。宮澤総理はもちろんのこと、いわゆるロッキードリクルート事件にかかわる復活諸君、だれもこの規定を守っていないんじゃないか、こう私は思うんですけれども、いかがでしょう。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、おのおのの方がおのおのにおいて反省をされておるというふうに考えております。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 渡辺さん、加藤さん、郵政大臣、どうですか、守っていますか。
  64. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私も、本当にあの事件は残念な事件であるということで、先ほど言ったように、再びこういうような事件が起きないようにしなければならないということを肝に銘じております。
  65. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 政治的には前回の選挙で一応のけじめはついているというふうに思っておりますけれども、しかし、政治家個人の倫理の問題としては今後ともずっと自戒の念を持って考えていきたいと思います。そして、あの事件がなぜあれだけ大きくなったのかということを、自分らとしてはそこをもっともっとずっと考え続けていかなきゃならぬ、こう思っております。
  66. 渡辺秀央

    国務大臣渡辺秀央君) 私は、あの当時正直にすべてを申し上げました。しかも、選挙のときも率直に有権者、選挙民皆さんにおわびを申し上げて、おかげさまで信任を得たと思っております。  しかし、先ほど来申し上げておりますように、倫理に対する私の今回の過ちあるいは不注意は、とにもかくにも政治家活動をやり、これからもこの荷物はしょい続けていき、そして責任を果たし信頼にこたえていかなきゃならないと申し上げたとおりでございまして、自重自戒いたしておるところでございます。
  67. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 言葉の中ではいろいろ出ておりますが、率直に言って私は、どうもやっぱり総理以下、政治倫理綱領の問題についてまだまだ遺憾な点があるんじゃないかというような感じがしてなりません。しかし、これだけに時間をとっておるわけにもまいりませんので、総理、ぜひひとつ政治倫理問題について、あなたがおっしゃったように自重自戒をしていくということを実践してほしい、そのことを要請して次に移ってまいりたいと思います。  PKOの問題に入らせていただきますが、総理は、昭和二十九年六月二日、参議院本会議において「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」が可決されたときの参議院における議員の数少ない一人ですね一そのときの状況について一番よく知っておる方でございますが、この画期的な決議の採択、どのような御所見をお持ちなのか、率直な御意見をお聞かせください。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当時のことを記憶いたしております。自衛隊が誕生いたしました際に、いやしくも海外派兵というようなことがあってはならないという院の御決議であったように存じております。
  69. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 当然この決議は遵守されると思いますが、そう理解してよろしいですか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会の御決議でございますから、政府はこれを尊重するのは当然のことと存じます。
  71. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、昨年の平和協力法案、廃案になりましたが、また、今出されておる法案を見ますと、この決議に反するものがございます。それに対してさきの国会では、政府の答弁を見ますと、決議をした当時と現在では状況が違うということですね。この決議は、武力行使を伴わない平和協力業務に協力隊として自衛隊が出ていくことまで想定したものではないと、こういう見解を示して自衛隊の出動が可能であるとの論拠を求めておりました。こんな勝手な見解は許されないと思うし、勝手な理屈さえ政府がつければ何でもできることになる、私はこういう気がしてならぬわけでございますが、国会の意思は尊重すべきだと思うんですけれども、いかがでしょう。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もとより国会の御意思は尊重いたさなければなりません。決議の有権的な御解釈は参議院がお持ちのことはもちろんでございますけれども、私は、自衛隊が海外において武力行使をするというようなことはこれはあってはならない、それが御決議の趣旨であると思っております。
  73. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうなりますと、今出ておる法案、これは私は明らかにこの決議に反することになる。この決議の趣旨というものは、当時おったわけですからあなたが一番よく御存じだと思うんですが、専守防衛ということをきちんと位置づけた決議でもあると思うんですね、四十五年十月に発表されたいわゆる中曽根防衛白書、この中でこの言葉は出てきたわけですが、二十九年当時もこの考えのもとにあったことは私は間違いないんじゃないかと思うんです。  自衛隊の出動そのものは、武力行使を伴うかどうかによって異なるのでなくて、武装集団としての自衛隊の出動全般を指したものであって、きばを抜けばよろしいというものではないんではないか。昔も今も専守防衛の考えのもとで自衛隊は国土防衛に徹する、ここにこの決議の趣旨があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 決議の有権的な解釈は参議院がお持ちでございますので、私は、当時参議院議員ではございましたけれども、今そういう立場にございませんので、それをどうこう私から申し上げるべきことでないと存じますが、自衛隊が海外に出ますということは間々あることでございます。恐らく海外で武力行使をすることは許さない、そういう御趣旨であろう。遠洋航海であるとかあるいは南極の探査であるとか、そういうことを禁じられる御趣旨ではないのではないかと存じておりますけれども、有権的にはこれは参議院の御解釈によることでございます。
  75. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、参議院の決議の解釈についてはこれは参議院がやる、総理答弁のとおりだと思いますが、これは有権解釈をするまでもなく、専守防衛であるとか武装集団としての海外出動ができないということについては明確だと思うんですね。しかし、どうしてもその問題について皆さんの方で有権解釈を求めるとすれば、これは参議院の方で協議してもらわなきゃならぬと思いますが、その場合にはその決議に従いますか。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 院の御決議は常に尊重しなければならないものと思います。
  77. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 専守防衛については変わりましたか。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 変わりはないと存じます。
  79. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 専守防衛は変わりない、そして有権解釈については参議院の解釈に従いますと、こういうことでございますから、確認しておきたいと思います。  そこで、昨年、湾岸危機我が国の役割をめぐって国論が二分をしました。それは、先ほど申し上げたように初めに自衛隊派遣ありきと、こういう極めて短絡的、歪曲した間違った問題提起が国民に無用の混乱を起こして廃案になったと私は思うんですが、平和憲法を誇りとしてその精神のもとで存在理由さえ問われていた自衛隊が、いつの間にか海外に公然と出ていく。その一方で、我が国の真の国際貢献は何かという、問い続けなきゃならない作業は忘れ去られたのか、目をつぶって通り過ぎようとしておるのか。  いずれにしましても、私はこのことは非常に重要なことだと思うんです。総理が今なすべきことは、こうした反省に立って国際貢献の範囲と、総理が考える新平和秩序の青写真、これを示すときに来ておるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の湾岸危機の際の国内における議論についてお触れになられましたが、私の感じておりますことは、我が国としては大きな財政的な貢献をした、しかしそれだけでは不十分ではないか、金だけで事を済ますと言われることは我々として本意でないという強い御議論が国内にあって、やはり汗も流さなければならないであろうという、そういういわば多数意見があったと存じます。その反対に、血を流してはならないという多数意見もあったように存じます。  したがいまして、してならないことをはっきりさせることは大事でございますが、同時に、それならばでき得ることは最大限にしなければならないというのが大体の私はコンセンサスであったと思いますので、それがPKOの法案になってまいった。あるいは多少系列的には違いますが、掃海艇が公海等々の掃海に向かったというようなことであったと存じます。  この法案は、自衛隊が海外で武力を使うものでは全くございません。非強制的な、国連の権威と説得によって平和維持活動をいたすものでございますので、そういう意味での私は国論を反映したものであろうというふうに考えております。
  81. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうしますと、ことしの七月二十二日のあなたの講演の中で、日本憲法の範囲内で許されたことをしっかりやるべきで、それ以上のことをすれば米国は喜ぶというのは卑しい考えだ、日本憲法上海外に兵隊は出せないことははっきりしている、こう述べられたんですが、いかがでしょう。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 概してそういうことを申しております。  つまり、憲法を変えるとかいうことによって海外で日本が武力行動をするということは、これは恐らく日本国民の総意ではございませんし、また、例えば米国なら米国がそれを非常に歓迎するかといえば、私は疑問があると思います。
  83. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この問題についてはこれから国会で議論をしていきますから、その際また議論を詰めてまいりたいと思いますが、今言ったあなたの意見と法案とは大分違いますよ。そこら辺をひとつ整合性を含めて今後私も詰めてまいります。  そこで、私どもとしては、我が党は既に国際貢献基本方針というものを、非軍事、民生、文民によるべきであるということを強く主張しておりまして、この原則を踏まえてPKOなり国際緊急援助双方の常設の組織を設置して、国連を初めとする国際機関の援助、援助を必要とする諸国の要請に機敏にこたえるべく具体的な提案を行ってきておるわけでございます。この点については政府にも再々申し入れておるわけでございますけれども、総理はなぜこの提案について受けようとしないんですか。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は就任早々でございますので、具体的に提案を検討させていただくいとまがただいままでにございませんでした。よく検討させていただきます。
  85. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間があればいろいろ申し上げたいんですが、時間がございませんから。  世界のどの国も平和憲法を持つ我が国に対して自衛隊の派遣を求めてはいないと私は思うんです。まして日本軍の侵略の経験のある各国から見ると、既に厳しい批判の声が上がっておるわけでございまして、国民の間にもなぜ自衛隊でなければならないのかというのが一層高まっておると思いますし、世論調査の結果もそれを示しております。  私は、国論を二分した中で自衛隊の皆さんが派遣されるということも、本人たちにとっても不愉快なことであると思いますから、この際ひとつぜひ、これから審議をしてまいりますけれども、あなたが福島かどこかの記者会見で申しておったように、この法案については世論も政党間にも違いがある、したがって、十分ひとつ国会で議論をして、譲るべき点は譲っていかなきゃならぬと思う、こういう立場を強調なさっておると私は記憶しておるんですが、その精神については変わりございませんね。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私自身は政府提案を最善と存じておりますけれども、前国会でも御議論がございました結果、今国会に継続審議になっておる、そういう状況の中で国会で活発な御議論が行われておることと存じております。
  87. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 次は、経済問題について二、三お願いしたいと思います。  バブル経済、株と土地の値上がりで水膨れして大衆に被害と不公平をもたらした経済運営のことでございます。バブル経済が破綻したと言われるがいこのバブルの種まきをしたのは竹下内閣で大蔵大臣であった当時の宮澤さんじゃなかったかと思うんですが、この経済運営の反省についてはどのようにとっていますか。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一九八五年の九月にプラザ合意がございまして、佐藤委員もよく御記憶のように、それから円の急激な上昇が始まりました。当時二百四十二円でございました円がその年末にはわずか三月で二百円というような急上昇をし、なおそれはさらに続いていったわけでございますので、我が国経済界はこれにどのように対処していくかという、ほとんどいわば色を失うような実情でございました。多少の対策を立てましても、またその見ているところですぐ円が上がっていくというようなことを繰り返し繰り返しやってまいりました。我が国としては経験したことのない未曽有の経済的な危機に陥ったわけでございます。  それに対応いたしますために、そこから生じます雇用の不安というものも非常に大きいものでございましたので、政府は大幅な緊急経済対策をいたしました。それによりまして、公共事業を中心とする内需の振興を図ったわけでございます。同時にまた、毎日毎日円が上がづそいくということについて、政府としては当然のことながら国民生活を考えまして防戦をいたしました。膨大ないわばドル買いをいたしたわけでございます。それによりまして円の急上昇を防ぐ、それによってしか仁相当大きな購買力が市場に流れることになった。これは急速な円高を防ぐということの反面に必然的に起き沈現象であったと存じます。  そのようなことで、ともかく一年余りで国民的なショックというものはまずまず解消をいたし、そしてそれが最近に至るまでの史上最も長い景気の持続となったわけでございますけれども、その反面におきまして御指摘のように過剰購買力が非常に大きく造成されまして、それが株式に向かい土地に向かい、いわゆるバブル現象となった、そういう経緯であったと存じます。そういう意味では、プラザ合意に始まる未曾有の円高という、そういう事態に国民生活と日本経済が耐えていく過程におきまして生じた現象である。今から考えますと、もっともっと早い時期に一方においてそのような過剰購買力を吸収することはできなかったのかという御批判は甘んじて受けなければなりませんが、事態を回顧いたしますと以上のようなことであったと存じます。
  89. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 経済政策の転換は、タイミングと同時にバランスある政策選定、これが必要だと私は思うんで、さっき総理は当時を思い起こしながらお話をいただきましたが、しかし金融面でめちゃくちゃな刺激をすれば経済がゆがみを起こすのは当たり前で、バブル経済になるのは当然じゃないかと思うんです。今後の運営についてどういうふうに御認識ですか。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今後と言われますのは、ただいまから、これからと。  正直申しまして、長く続きました経済成長のいわば成長のテンポがかなり目に見えて落ち始めておるということを感じておりました。ただ、他方で、有効求人倍率等に見ますように雇用の不安というものは生じていない、ほば完全雇用に近い状態が続いている、物価もさして上がるわけではないという、いわばリセッションというような状況になっていくとは思わないのでございますけれども、テンポがかなり落ちておりますことは、家計にも影響を与えますし、企業家、殊に設備投資意欲にはマイナスの影響がございます。そういう状況であると判断をいたしておりました。  その中で、金融当局が昨日、公定歩合の引き下げを行われましたことは、内需の持続的、継続的な成長を促す、家計、企業家に与えるやや暗い心理を払拭しようという御努力として時宜にかなったものであると判断をいたしております。
  91. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 宮澤さんの資産倍増論、これについてお伺いしておきたいと思います。  あなたは資産倍増論ということをかなり強訴なさっておるわけでございますが、これは率直に言ってバブルの二の舞になるんじゃないかという感じがするんです。また、インフレ経済ということになるような感じもしますけれども、いかがでしょう。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、資産という言葉が多少誤解を生んだかと思うのでございますけれども、本意といたしましたところは、社会資本というつもりであったのでございます。ただ、住宅というものがございますので、住宅は厳密な意味では社会資本と言えないかもしれませんので資産と申しましたけれども、社会資本を充実したい。  と申しますのは、これだけの輸出をして外国に嫌がられて、ウサギ小屋に住んでいるんではないかという批判を受けることは残念ながら事実でございますので、所得水準は高いけれども決して豊かな生活環境にない我が国をどうか生活環境の豊かな国にしたい、そういう気持ちで従来数年間それを唱えてまいりました。また、日米間のいわゆる構造協議におきましても結局公共投資十カ年計画というようなものが国際的な公約にもなりまして、政府としてはその充実、達成を図らなければならないということは、そういう意味での社会資本充実につながっていくそのものであろうと思っております。  ただ、言われましたように、資産という言葉が、個人資産と言えばそれは住宅もございますけれども株もある、土地もあるということから、そういうふうに受け取られた面があったといたしましたら、それは実は私の本意ではなかったわけでございます。
  93. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 資産倍増という言葉はあるんですけれども、内容に見えるものはございません。見えないんです。  この前提条件は、名目経済成長率が七・五%となっておるわけですね。しかし、イザナギ景気を超えたと言われる今回の景気でも、七・五は成長しておりません。七・五をどうしたらやれるのか。金融緩和で経済をあおれば、七・五になってもバブルになるかインフレになる。物価安定と経済成長が両立てきないと国民大衆はたまったものではない。こういう感じがするんですが、いかがでしょう。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実際に起こりましたところを検証いたしてみますと、七年ほど前でございますが、私が考えておりました資産の倍増というのは、実績としてはほぼその線に来ております。  と申しますのは、名目的には確かに七・五という数字にはならなかったのでございますけれども、実質的には四・八、五・七というかなり高い成長になりました。これは、一つはやはり思ったよりデフレーターが大きくならなかった、実質値が高かったということと存じます。それにはまた円そのものの価値が上がったということもあったと存じますので、これまでのところは大体私の考えておりましたラインにほぼ社会資本がきております。  これから後でございますが、これから後はいわゆる公共投資十カ年計画によって年率六%程度の投資が行われるわけでございますので、それで大体、まあ欧米までとは言えないかもしれませんが、余り遜色ないところに十カ年でいけるんではないかと考えております。
  95. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 労働力の不足というのはかなり深刻になっておりますね。それから、流通や交通問題にしましても原材料の資材調達のネック、こういった点を見て、果たしてあなたがおっしゃるように可能なのかどうなのか、ここら辺はいかがでしょう。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 必要でございましたら専門家の助けをかりなければなりませんが、労働力有効求人倍率の高さというものは多少成長のテンポが落ちましても変わっておりません。それは、雇用に不安がない、不安がないと申しますか、実態的には超過勤務が減るとかパートタイムの方が少し減るとか、恐らくそういうことが本当は起こっておるのではないかと思いますが、まずまずしかし雇用不安というようなことでない。これは喜ぶべきことでございますが、反面、中小企業を中心に依然として雇用の逼迫があるということでございます。さりとて、外国からたくさんの単純労働者を迎え入れることには問題がある。そういう中で、私は、これは今までのところそれに対応する省力投資という形でいわゆる設備投資が行われてきておると思いますので、それは今後も必要なことだちうと思います。  同時に、おっしゃいますように、交通とか流通とかいうものからくる障害は相当ございまして、これは先ほど申しましたような公共投資の社会資本整備計画で処理をしていく問題であろうと考えるのでございます。
  97. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは次に、資産倍増の政策を推進する資金、これはどう調達するのか。建設国債でも発行なさるわけですか、それとも民活利用でやりますか。民活論も中曽根内閣で失敗の経験がございますが、どんな手法で資金を集めるのか、また資産倍増に係る全体の資金目途というか、何兆円ぐらいになるのか、いかがでしょうか。
  98. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 資金不足等についてどのように対応するのかということでありますけれども、いずれにしましても、平成四年度の予算編成をするに当たりまして私どもは、先ほど総理の方からもお答えがあったと思いますけれども、税収なんかは非常に厳しくなってきておるというのが現状であります。しかし、そういう中にありまして総理所信表明、また現在もお話しになりましたように、やっぱり生活大国あるいは社会資本の充実をしていかなければいけないということでございますから、そういう中でおのずと歳出というものを全体によく見きわめていく必要があるんじゃないか、そこがまず第一のところであろうというふうに思っております。  ただ、そういうときによく公債等についてもお話がございます。公債につきましては、百六十八兆円という残があるというのが現状でありますから、特に特例公債等についての発行というのは厳に慎まなきゃならないだろう。非常に難しいところでありますけれども、そういうためり張りをつけながらやっていきたいということを申し上げたいと思います。
  99. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、羽田さんからせっかく答弁をもらったんですが、私はそのことを聞いておるんじゃないんです。資産倍増という政策を推進するための資金調達はどうするんだろうと、建設国債の発行もあるでしょう、倍増するということも。そういうことでお聞きしたわけですね。全体の規模は何兆円ぐらいをめどにしておるのか、どういうふうにして集めるのか、ここら辺をひとつ総理からお聞きしたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) むしろ政府の公共投資十カ年計画ということでお答えをさせていただくのがよろしいと思いますが、四百三十兆でございます。これは大体年率六%の計画を実行していかなければなりません。それで、もとよりかなりの部分は建設国債で賄うことになろうと存じます。また、財投も使わせていただかなければなりませんし、従来NTTの売上代金を利用しております第三セクターに関するものも、一部は公共投資十カ年計画の内容になるわけでございます。  なお、具体的に平成四年度の予算編成に際しましては、従来の生活関連の枠二千億のほかに、公共投資充実の緊急措置のための二千億をもう一つ別途に設けまして、これは国際的公約にもなってまいりましたので、それを達成してまいりたいと思っております。
  101. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 宮澤政権のキャッチフレーズでお聞きしたんですが、どうもやっぱりまだまとまってないような感じがしますので、当面の問題について、経済運営で総理にお聞きしておきたいと思います。  五十八カ月という時間的には戦後最長と言われる景気の実態ですね。昨年暮れないし今年春の景気の転換点から、好況から不況に変わったと多くの民間エコノミストが判断をしておるんですが、総理はどう見ていますか。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これも専門家からお答えすべきことであるかもしれませんし、統計的にはまだ十分実証されておりませんけれども、恐らくことしの四-六月期というところではかなり経済のテンポが弱まってきておったと判断をいたします。七-九のことはまだ出ておりませんけれども、余り高い成長があったようには思われませんので、一-三であるか四-六であるか、そのあたりからテンポが弱まってまいったのではないか。私も十分知識がございませんけれども、大局的にはそんな感じでございます。
  103. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 経企庁、最近の景気動向指数並びに次の項目を説明していただきたいと思います。  設備投資の手控え、個人消費の障り、自動車販売不振、デパート売り上げ停滞とか住宅建設、企業収益。いかがでしょう。
  104. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 住宅建設につきましては、今、大体年百三十万戸ペースになっております。それから、自動車の新規登録の方でありますが、これは多少減少ぎみでございますけれども、この秋ごろからまた回復をする兆しかあるのではないかと見ております。それから、百貨店。あるいはチェーンストアの販売の方でありますが、まだ最新の実績は出ておりませんけれども、比較的値の高いものの売り上げが鈍化しておりまして、かなり堅実な消費というものが行われておるというふうに判断をいたしております。  総理からもお話がありましたけれども、雇用の情勢がいわゆる超完全雇用という姿から、ややまだ人手不足ながらも超人手不足という状態からは緩和しつつある。いわゆる完全雇用という水準は今日なお強い情勢にあるというふうに判断をいたしております。  そこで、先ほどの御質問で総理からも概略御説明がございましたけれども、そのように住宅建設あるいは自動車あるいは最近の耐久消費財にやや元気がない……。
  105. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 設備投資。
  106. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) こういった情勢はございますが、この設備投資の数字もこのところ中小企業あるいは基礎産業などにおいて元気が少し弱まってきておることは事実でございます。  しかし、基調的に見れば、合理化あるいは省力化投資あるいは新商品開発とか研究開発への投資意欲がまだまだ非常に堅調である。そういう意味では趨勢的には底がたいものがあるというふうに判断をいたしておりまして、総じて見れば、景気判断、いろんな角度からの見方があろうかと思いますけれども、基本的には拡大のテンポはかなり減速はしてきておりますけれども、景気の水準ということからいえばいわゆる持続可能な安定成長への経路に今ランディングしつつある、そういう環境ではないか。  ただ、中小企業やあるいは一部の業種によってはかなり警戒感が強まってきておりますし、そういった企業家やらあるいは消費者の心理に与える影響ということもこれは非常に大事なことでありますから、そういった角度の中からきのう日銀で公定歩合の引き下げが行われた、こういうふうに見ております。したがって、今後金利水準がさらに低下することが予想できますので、そういったことをも念頭に置きますと、大体本年度の当初の見通しの経済成長の水準は努力をして達成できるのではないかというふうに判断いたしております。  しかし、いずれにしても、これからきめの細かい機動的な経済運営ということに気を配っていかなければならぬ状況にあるというふうに考えております。
  107. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 経企庁長官のお話を聞いていると、景気の陰りの中でまだまだというお話のようでございますが、大蔵大臣、昨日公定歩合を引き下げましたね。これで十分なのかどうなのか。私は、景気が落ち込んでから金を使っても効果はないと思うもんですから心配なんですが、この点、景気判断というか、いかがでしょう。
  108. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) ただいま経企庁長官の方からも細かくお話があったわけでありますけれども、いずれにしましても、現在の状況というのは今までのような非常に高度な伸びというものはないわけでありますし、また陰りが見えている一面というものもありますけれども、やはり幾つかの分野におきましてまだ底がたいものがあろうということであります。  ただ、やはり企業家マインドですとか、あるいは住宅を建てようというようなお考えを持つ方、新しい車に買いかえようという方々、この消費者のマインドにも多少不況感といいますか、そんなものも漂ってきておるという中における公定歩合の引き下げであるということでございまして、私はその面で、そういったマインドを支えるもの、これの方向を出すことができたんじゃないのかというふうに思っております。
  109. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうも日銀副総裁、長らくお待たせしました。  日銀総裁はきょうは御病気のようでございますけれども、多忙の結果だと思いますからどうぞひとつ御養生をお願いしたいと思います。  現在の景気動向をどう判断なさっておるのか。バブル経済反省とその後遺症に苦しんでおると思うんですが、あわせて金融偏重の経済政策は断固拒否するのが日銀総裁の職員だと思うのでありますけれども、決意のほどを聞いておきたいと思います。
  110. 吉本宏

    参考人吉本宏君) お答えを申し上げます。  現在の景気情勢の判断でございますが、国内景気は引き続き緩やかな減速過程にございます。製品需給の引き締まり感もひところに比べて緩和をしてきているわけであります。また、先行きに対する不透明感もございまして、企業マインドがかなり慎重化してきているという面もございます。こういう点もございまして、私どもとしては、市場金利の動向あるいは為替相場の現状、物価の現状、そういったものを総合判断いたしまして、今回公定歩合の引き下げをやらせていただいたわけであります。  国内経済の動向について若干敷衍をいたしますと、最近の景気拡大のテンポの鈍化は、これはやや速過ぎる成長のスピードをよりバランスのとれた成長に移行させる、こういういわばプロセスの段階であるというふうに考えておるわけであります。五年間にわたって五%を超える成長を続けてきたのを三%台の成長に移行させるということになりますと、やはり若干の落差がございます。そういった落差がいわば企業マインドの障りというものにあらわれているんではないかというふうに思っております。  ただ、全体として設備投資あるいは個人消費を中心とする景気の基調はなお底がたい、したがって、急に景気が腰折れをするというようなことはないというふうに判断しているわけであります。  今回、公定歩合の引き下げをいたしましたが、それ以前に既に市場金利はかなり下がってきております。現在、金融機関の資金調達は規制金利が三割、市場金利、市場調達が七割、こういう状態でございまして、市場金利が既に下がっているという段階ではむしろもう既にそういう金利の低下が実現しているわけでありまして、私どもとしては今後も公定歩合の引き下げの推移を十分に見守って、なお適切な処置をとっていきたい、このように考えております。
  111. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 前任者の澄田総裁ですね、あの方も先ごろ認めておられましたが、マネーサプライの二けた増をそのまま放置して、しかも異常低金利を長期固定化したことについて日銀の責任は大きい、バブル経済の戦犯ものだ、こういう意味の番言をなさっております。マネーサプライは名目経済成長率を目途にとよく言われるんですけれども、最近の数字は逆に低過ぎるんじゃないか、そういう危険信号が出ておると言われておるんですけれども、いかがでしょう。
  112. 吉本宏

    参考人吉本宏君) お答えをいたします。  確かに、現在マネーサプライはかなり低位にございます。二%台ということでございまして、伸び率としてはかなり低いということが言えようかと思います。これはやはり金融機関の貸し出しか余り伸びないということが原因である。それ、とあわせまして、いわゆる郵貯等への資金シフトもございまして、マネーサプライの伸び率が低下をしておるということでございます。ただ、いわゆるマネーの水準といたしましては、これはなおかなり高いものがございます。言うなれば金融緩和期に滞留した資金がなお残っておりまして、いわゆる企業の手元資金等はかなり水準が高い、こう見ておりますので、このマネーサプライの現状から見て直ちにいわゆるクレジットクランチとか資金の逼迫とかそういうことにはなっていない、このように判断をいたしております。
  113. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 日銀総裁に適時適切な金融政策、そうして特に政府に対する中央銀行としての金融のかじ取りでのリーダーシップを発揮して、再びバブル経済の愚を犯さない、こういうことを注文しておきたいと思います。何分にも宮澤総理はバブルの生みの親という経過がございますから、よろしくひとつ。
  114. 吉本宏

    参考人吉本宏君) 先ほどのバブルの発生について、私の方からも一言だけ申し上げさせていただきます。  先ほど総理の御答弁のとおりでございますが、当時、プラザ合意の以降でございますが、我が国にとって経済政策の最大の目標はやはり内需主導型の経済成長を実現して、それによって対外不均衡の是正を図る、こういうところにあったかと思うのであります。前川レポートも六十一年の四月に出されまして、こういう方針、対外不均衡の是正を何としても構造改革によって実現しょう、こういうことでございました。円高不況等によって、対策として金融緩和策がとられた。その結果、いわゆる副作用としてバブルが発生したということは私どもも深く反省をいたしておりまして、今後も十分注意をしてまいりたい、このように考えております。
  115. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 日銀副総裁、結構です。  国際経済の絡みで、ひとつガット・ウルグアイ・ラウンドの米の自由化の問題についてお聞きしておきたいと思うんですが、農水大臣、この問題について政府の態度を含めて御報告をお願いします。
  116. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) お答えをいたします。  我が国の米につきましては、御案内のように、三〇%の減反を農家の皆さんにお願いいたしておるところであります。また、東京、大阪を除く道府県あるいは市町村議会でも九〇%、こうしたところで市場開放の反対決議をなされております。そういうこと等も考えて、米及び水田稲作の格別の重要性にかんがみまして、国会決議等の趣旨を体し、国内産で自給するとの基本的な方針のもとで対処をいたしてまいりたい、こう考えております。
  117. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この問題については、ドンケル氏に直接会って要請した村沢委員から関連質問がございます。
  118. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 関連質疑を許します。村沢牧君。
  119. 村沢牧

    村沢牧君 佐藤議員の質問に関連をいたしまして、単刀直入に伺ってまいります。  国会は、三たびにわたって米の市場開放はしてはならない、すなわち米の輸入自由化は反対であるとの決議を行っております。総理は、この国会決議をどのように受けとめていますか。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま農水大臣からもお話がございましたように、国内産で自給することを基本の方針とするという御決議と伺っております。
  121. 村沢牧

    村沢牧君 決議はそうですけれども、政府としては国会決議を尊重して決議の趣旨に合ったような政策を展開しなければならない、そのことをやってもらえますか。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もとより、国会の御決議の趣旨を尊重いたしてまいります。
  123. 村沢牧

    村沢牧君 尊重することは当然ですけれども、尊重してその国会決議の趣旨に合ったような政策を展開していただけますね。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府の施策に当たりましては、国会の御決議の趣旨を尊重していくということでございます。
  125. 村沢牧

    村沢牧君 農林水産大臣は、米の自由化はできないという先ほど答弁がありました。ウルグアイ・ラウンドが最終段階を迎えた今日、なぜ自由化はできない、それから関税化も受け入れることができない、そのことについて見解を伺いたいと思うんです。
  126. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) かねてからガット・ウルグアイ・ラウンドの農業交渉における日本の提案でありますが、農業の特殊性、これは米だけではなくて、いわゆる食糧安全保障、あるいは国土、環境の保全等、農業の果たしている多様な役割というものにかんがみて、農業保護の撤廃は受け入れられないということを主張しているわけであります。しかも、この五、六年の間最も自由化を日本は先行いたしてまいりました。また、基礎的食糧については、食糧安全保障の観点あるいは所要の国内生産水準を維持していかなければならない、そのために必要な国境調整措置、これを講じていこうということも主張の一つであります。国境調整措置については一番少ない品目になっておるわけであります。  理由につきましてはいろいろあります。ありますが、特に主要穀物の輸入割合というのは、小麦、大麦で八五から八六%海外に依存しているわけであります。大豆、トウモロコシは九八から九九%、わずかに米だけが〇・五%という状況であります。国民の主食である米、これが自由化につながるようなことでは、現在の日本の置かれている農業の立場というものを考えると何としてもこれは認めがたい、こういうことで主張をいたしておるわけであります。
  127. 村沢牧

    村沢牧君 関税化はもとより、部分開放にも応ずることができないことは歴代農林水産大臣が言明してきたところであります。田名部農相はどのように考えていますか。
  128. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) どのような提案がなされるかというのが私ども定かでない中で、いろんな仮定の話というのは申し上げるべきでないと思うのでありますが、いずれにいたしましても、出されたものによっては食管法の改正という問題が出てくるかもわかりません。そうした場合に、先ほど総理もお答えのとおり、国会で決議をされているものと極端に相反する提案がなされても、決議をされた先生方がこの法案を受け入れられるかどうかといういろんな問題があります。  したがいまして、どのような形であるかということがわからぬ状況の中で、余り仮定の話で申し上げることはいかがかと思いますが、いずれにしても大変に困難な問題である、このように認識をいたしております。
  129. 村沢牧

    村沢牧君 私は出されてくるであろうドンケル・ペーパーについて聞いているんじゃないんです。今までの農水大臣は部分開放にも応ずることはできない、部分開放もできないと、こういう答弁をしているんです。あなたはどういうふうに考えますか。
  130. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 部分開放といえども自由化につながる形、あるいは国内のいろんな問題を抱えて、このことはなかなか受けがたい問題である、こう認識いたしております。
  131. 村沢牧

    村沢牧君 総理、本院は昭和五十九年の第百一国会で、米については「国内生産による完全自給の方針を堅持すること」、こういう決議をいたしております。また六十三年、第百十三国会では、完全自給の方針を堅持して、米の自由化は反対であるという決議をしているんです。「完全自給」という文言を本院が使っていることは部分開放、ミニマムアクセスも認めないということであります。この国会決議を尊重していただけますね。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府が施策におきまして国会の御決議を尊重いたしますことは、先ほども申し上げましたが当然のことでございます。
  133. 村沢牧

    村沢牧君 米の部分開放を言う政治家もありますけれども、しかし本院は完全自給の決議をしているんです。したがって、米問題の重要性にかんがみまして、また国会決議の経緯からしてこれは一内閣の命運より重い、国会決議に反するような政策をとった場合には政府はその政治的責任を負わなければならない、私はそう思います。どうですか。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会の御決議を行政の上で尊重しますことはもう当然のことでございます。
  135. 村沢牧

    村沢牧君 総理所信表明、そして昨日までの国会答弁を聞いておりましても、米についての方針が明瞭でありません。歴代総理は、食糧安全保障や米の重要性を主張して、米は国会決議を踏まえ、今後とも国内生産で自給するという基本方針で対処すると述べています。宮澤総理は、これまでの基本方針のもとにと述べているにすぎなくて、食糧安保も国会決議も国内自給にも触れておらない。ここで改めて明快に所信を表明してください。
  136. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会の御決議を尊重することは当然でございますし、また具体的には、先ほど農林水産大臣がお答えをされたとおりでございます。
  137. 村沢牧

    村沢牧君 歴代総理答弁といささかも変わりはありませんね、その気持ちにおいて。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどからるるお答えを申しましたのが私の考えでございます。
  139. 村沢牧

    村沢牧君 私は、昨年十二月、ウルグアイ・ラウンドの最終閣僚会議に社会党の国会議員六人を含めまして全国の農民や労働者、消費者の代表百三十名の団長としてブリュッセルへ行って政府の代表団を督励し、またガット事務局にも要請してまいりました。つい先日、先月の二十九日には、党の代表としてジュネーブヘ行きまして、ドンケル事務局長日本立場を要請もしてきました。また、フランスやドイツの農業省の代表とも会ってまいりました。こうした行動を通じまして、私は今何が問題になっているのか、何が対立しているかよく承知をしているんです。  そこで、総理は欧米の譲歩に見合った譲歩を行うという趣旨の発言をしていますが、欧米が何を譲歩したら日本は対応するんですか、具体的に示してください。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、ウルグアイ・ラウンド、は米ばかりでなく、農業ばかりでなく非常に広範なラウンドでございますので、しかもこれは多角的交渉でございますから、各国がおのおの自分のいわば妥結に向けていわゆるコンセッションをしていくということで成り立つわけでございます。そういう意味で我が国もアメリカ、ECと並んでこのラウンドの妥結に努力をしなければならない、そういう意味のことを考えておりますので、ただいま具体的に広範な交渉についてどこがどうということを私つままびらかではございませんし、またこの段階で申し上げるべきことでもないかもしれないと思います。
  141. 村沢牧

    村沢牧君 私は、ウルグアイ・ラウンド交渉の十五の分野について聞いているんじゃない。農業分野について今何が対立をしておるのか、どこが問題になるか、そこをどういうふうに譲歩したら日本も対応していくのか、そのことを聞くんです。
  142. 川合淳二

    政府委員(川合淳二君) 農業交渉におきましては、御承知のように三つの分野がございます。一つは国内支持、国境措置、輸出競争でございます。  このうち国内支持につきましては、御承知のように、削減の対象とする政策をどうするかということでございます。国境措置につきましては、先ほど来御説明がございましたように、基礎的食糧等の問題を日本は提案しておりますが、米国はすべての非関税措置を関税化するというような問題を提起しているところでございます。なお、輸出競争につきましては、この交渉の最大の問題というふうに認識しております。我が国は段階的削減を通じ最終的に撤廃すべきという主張をしておりますが、各国、特に米国、ECの間で隔たりのある問題でございます。  以上でございます。
  143. 村沢牧

    村沢牧君 近藤前農水大臣は、アメリカとECの対立している視点と我が国が主張している視点とは違っている、だからアメリカ、ECの妥協があったからといって日本が譲歩するという考え方は持っておりませんと国会ではっきり述べています。田名部農水大臣の見解を聞きたい。
  144. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 前大臣のお答えになっておることはつまびらかではありませんが、我が国としては、当初からこの基礎的な食糧や特に十一条二項。に該当する品目についての適切な数量制限の必要性を主張しており、いずれにしても、基本線は守り抜いていかなければならない、このように考えております。大体前大臣と同じような考え方であると私は思っております。
  145. 村沢牧

    村沢牧君 前大臣はそのように述べておりまして、それが政府の方針だと思うんです。  そこで、総理、相手の出方を見てそれに見合うように譲歩するんではなくて、我が国我が国の主張があるんです、先ほど答弁があったように。ガットは貿易のルールをつくるところです。我が国はいかなるルールをガットの中でつくっていこうとするのか、そのことを堂々と主張して実現するのが総理立場ではないんですか。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのことに異論はございません。私の申そうとしましたのは、多角的な交渉というのは、いわばおのおのの主権国が相寄りまして、その間で一つの共通のルールをつくろうという場でございますから、そういう意味で主権国の間の話し合いがあり譲り合いがある、それは原則論のことを申しておるわけでございます。そういう中で一つの共通の国際的なルールができる、それが多角的な交渉の意味でございますので、そこもひとつ頭に置かなければならないということを申しておりますので、主権国が自分の意思に反して過剰な譲歩をするというようなことが求められておるわけではございません。
  147. 村沢牧

    村沢牧君 外務大臣や大蔵大臣にもお聞きをしたいと思いましたが、時間もありませんのでお聞きをいたしません。ただ、外務大臣もかつて農林水産大臣をやりまして、私もこうした輸入問題についての論戦もいたしました。また、外務大臣のいろいろな決意も聞いております。羽田大蔵大臣に至っては、まさにその中心となって取り組んできた。したがって、米の自由化あるいは関税化に反対であるということに私は受けとめております。  その他の閣僚の皆さん方で米の自由化や関税化に賛成の方がいらっしゃったら、ここでひとつ発言してもらいたいというふうに思うんです。――どなたも発言がないようでありますから、そこで宮澤内閣の統一見解として、ああだこうだわからないことを言うんでなくて、統一見解として米問題についての態度を示してもらいたいと思うんです。総理、いかがですか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから農水大臣並びに私がお答えいたしておりますことが私の内閣の統一見解でございます。
  149. 村沢牧

    村沢牧君 私の質問時間も終わりますから、最後に申し上げます。  米の自由化あるいは関税化反対、あるいはミニマムアクセスも反対ということは、農民、農業団体だけでなくて、労働者団体も消費者団体も反対なんです。国民の世論調査にもその結果があらわれている。全国の自治体の九割も反対しているんです。ですから総理は、毅然たる態度をとって、相手が譲ればこっちも譲る、そんな態度ではいけないと思うんですよ。我が国立場を堂々と主張して、我が国の将来の方針を誤らないように総理として今後とも臨むべきである。  日本社会党は、もちろん自由化も関税化もミニマムアクセスも反対であります。米の自由化を阻止してこれからの新しい日本農業をつくっていこう、その政策をつくっていこうということで来年の通常国会にも法案を提出いたします。どうか日本の農業を守るために、食糧を守るために、総理の決意をもう一度お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御趣旨のほどはよく承りました。先ほどから申し上げているとおりでございます。
  151. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 総務庁長官、自治大臣、大蔵大臣にお尋ねしておきたいと思います。  今、日本国の勤労者の中で新しい賃金になっていないのは公務員だけです。人事院勧告が出されたときにも臨時国会開会中でございましたけれども、その際にもできない。いっこれを閣議決定して処理をするのか。地方公務員のこともございますし、この問題についてきっかりここでひとつ答弁をいただきたいと思います。  同時に、公務員の育児休業法も残っておるわけです。地方の条例化等のこともございますから、これもひとつあわせて御答弁いただきたいと思います。
  152. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 今お話しの人事院勧告の問題でございますが、人事院の勧告制度は労働権を制約するその代償措置でございまして、人事院勧告につきましては従来から最大限に尊重いたしてまいりましたし、これからもそうした姿勢で取り組んでまいりたいと考えております。  過去の経緯からいたしましてもその実績を上げておるところでございますが、今、国政万般にわたって検討を加え、政府といたしましては調整のさなかにございまして、勧告に対する給与改定をどうするかについてはいまだ結論が出ておりません。したがいまして、いつ閣議において決定されるのか定かではございませんけれども、決定の暁には、総務庁関係部局挙げて全力投球包いたし、夜を徹しましても、今先生御指摘のございましたように、地方公務員の給与改定も国家公務員に当然準拠するわけでございますので、それらを踏まえつつ最大限の努力をいたしてまいりたい、このように考えております。  第二の育児休業制度の問題でございますが、民間準拠、こうした考え方に立ちまして、さきの育児休業法の制定に合わせまして国家公務員の育児休業の問題等についても全力を挙げて取り組み、その環境を整えてまいりたいと思っております。そのための国会提出法案の作成作業に今取り組んでおるところでございまして、今国会中に何としても成案を見たい、かように考えております。提出の暁には先生方の迅速な法制定に向けましての御協力をこの機会にお願い申し上げまして、答弁にかえさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
  153. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 人勧の取り扱いにつきましては、先ほど社会党の久保議員を初めとする皆様からも実は御要請のあったところでございます。  ただ、先ほど景気あるいは現在の経済状況等を御一緒にお話ししましたように、厳しい状況にあるということでございます。しかし、私どもも人勧の持っているところの意義というものは尊重していかなければならないという立場にあります。その意味で、今後追加財政需要の動向ですとかあるいは税収の動向等も見きわめなければなりませんけれども、従来から差額の年内支給をしてきたという経緯、こういった実績も念頭に置きまして早期に結論を出すように努めてまいりたい、このことを申し上げたいと思います。
  154. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 両大臣がお答えになりましたそのとおりでございまして、地方公務員の給与改定並びに育児休暇の制定等につきましても国家公務員に準拠してできるだけ早くやっていきたいと思っております。  なお、民間との調整もございますし、その作業も現在急いでおるところでございます。社会党さん初め各党からも強い要請を受けておりますので、それにこたえてできるだけ早くやりたいと思っております。
  155. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 総理、この人勧の処理は、今国会の日程から見ますとどうしても閣議決定は十九日を過ごしたら間に合わなくなる、こう思うんです。これはひとつ総理、決断をしなきゃならぬときに来ておると思うんですが、お答えをいただきたいと思います。  同時に、総務庁長官に、聞き漏らしたんですが、人勧の中にある週休二日制ですね、これはどのように処理なさるのか、あわせてひとつ。
  156. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 完全週休二日制の問題につきましては、去る八月七日に人事院から勧告をいただいております。平成四年度のできるだけ早い時期に行うことと、このように求めておるところでございます。  国家公務員の完全週休二日制の問題等につきましては、勤労時間の改善の問題、また先生からお話ございましたとおり、労働時間の短縮、それの及ぼす影響等々を考えますると大変大切な問題であろう、このように考えております。  したがいまして、週休二日制・閉庁問題関係閣僚会議を開催いたしまして、その取り扱いにつきまして検討に入ったところでございます。交代制職員の職場にございます問題等について試行いたしたところでございますが、十七省庁につきましては試行が終わっております。文部省、厚生省、この二省については今試行中でございまして、これらの結論を待ちまして、できるだけ早い機会に国家公務員の完全週休二日制の問題に取り組んでいきたいと思っておるわけでございますが、いっこの法案を提出するか、もう少し時間がかかるのではなかろうか。精いっぱい努力をいたしまして、国家公務員の方々の勤務条件の改善、生活の向上等々にも努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 方針を決定いたしますのはこれからでございますが、御指摘の日程のこともよく存じております。頭に入れておきます。
  158. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ひとつ総務庁長官、週休二日制も人勧の一つですから、今国会に間に合うように準備をしておいてほしいと思います。  そこで、災害の問題についてお尋ねします。  今年はまさに台風銀座、とりわけ十九号の被害は日本列島で甚大でございまして、被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。  テレビではその被災の模様として青森のリンゴがよく出てまいるわけでございますし、大変だと思いますが、九州の林業も深刻でございます。被害の概要、被害額、それに対する救援、復旧の措置はどうなっておるのか。これは国土庁ですか、よろしく。
  159. 鹿島尚武

    政府委員(鹿島尚武君) 九月十二日から九月二十八日までのわずか十七日間ではありますけれども、台風十七、十八、十九と三つの台風が相次いで日本列島に上陸または接近をいたしまして、停滞しておりました秋雨前線と相まって各地に大きな被害を及ぼしたわけでございます。とりわけ台風十九号は、今先生仰せのとおり、昭和二十九年の洞爺丸台風を上回る勢力で九州北部に上陸をいたしまして、記録的な暴風雨により九州地方から東北地方にわたりまして人的被害、住家の被害はもちろんリンゴ等の農作物、林業関係、水産関係等に甚大な被害を及ぼしたわけでございます。  これら一連の台風による被害の状況でございますが、消防庁の調べによりますと、一般被害として、死者行方不明者八十一名、住家の全半壊約一万四千棟、床上床下浸水約七万一千棟等となっております。  被害額につきましては、現在それぞれの担当におきまして調査をいたしてございますけれども、十一月一日現在におきまして各省庁取りまとめたところを若干申し上げてみますと、建設省関係の公共土木施設で約千八百億、運輸省関係の港湾施設で約二百億、文部省関係の公立学校施設、文化財等で約百八十億等の被害に及んでございます。  それからまた、今回の災害では強風等によりまして最も大きな被害をこうむりました農作物等の被害でございます。農林水産省の調べによりますと、これが約四千億に上っております。林産物等の被害では約千四百八十億、水産物等の被害で約二百九十億、公共土木施設等の被害約千四百二十億、合わせまして農林水産関係の被害総額は約七千百九十億となっております。  政府におきましては、つとに災害関係各省連絡会というものを開催いたしまして、これらの相次ぐ災害に対しまして適切に対処するよう今日まで申し合わせをいたし、対応をいたしてきたところでございます。また、各地から御指摘のございました、私どもの所管で申し上げますと、激甚災害の指定につきまして、今朝閣議で御決定もちょうだいしたところでございます。現在、着々とそれぞれの御担当におきまして復旧の作業が進められているというふうに理解をいたしております。
  160. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は先日、最大の林業被災地である大分県の日田、玖珠を駆け回ったわけでございますが、梶原議員からお示ししますパネルのような状況でございます。このパネルのように、三十年、五十年の杉やヒノキが全滅しているわけです。復旧作業も、これは素人ではなかなか扱えない、専門技術員でなきゃならぬけれども、それがもう決定的に不足しておる。大災害で途方に暮れておるのが実態でございまして、下手をすると二次災害が起こる、こういう状況にございまして、今後これを整理して植林をしてもこれから先三十年、五十年たたなきゃ物にならない。  こういうことを考えますと、きょう激甚災害の指定をいただいたことはありがたいんですが、これでは対応できない、こういうのが私が見た実感でございまして、特例措置か特別立法をする以外にないんじゃないか、こういう感じがしておるんですけれども、農水大臣並びに総理のひとつ御見解をいただきたいと思います。
  161. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 今回の台風被害でありますが、大分県、福岡県、熊本県、その他全国にわたっておりますが、この地域が非常に大きな被害を受けたわけでありまして、特に林業関係の被害は森林被害を中心に二千億を超える甚大なものであります。  特別立法のことはそれとして、私ども農林水産省としては、森林被害については、けさほどの閣議で御決定いただきました激甚災害法に基づいて何としても早期の復旧をいたしたいということと、大量に発生しております被害木の処理を、高性能の機械を導入して被害木の利用の促進にも充てたい、あるいは森林国営保険及び森林共済について被害の迅速な確定及び保険金等の早期の支払い、あるいは林地荒廃については災害関連緊急治山事業等の実施によって早期に復旧を図っていきたい、あるいは被害を受けた林業者に対する金融、税制措置の適切な実施等を行いまして、諸対策を迅速かつ的確に推進してまいる所存であります。
  162. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 関係大臣の御意見をよく承ってみたいと思います。
  163. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 総理、そういう優等生のような答弁じゃなくて、今見せたパネルを見てどういう判断をなさっているか。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、農水大臣の御答弁も伺っておりましたので、それでそういうことを申し上げております。
  165. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 総理、きょういただきませんけれども、今申し上げたようにこの災害は尋常な災害しやございませんから、そこら辺ひとつ肝に銘じて対応を急いでほしいということだけつけ加えておきます。  そこで、長良川河口ぜきの問題について御質問申し上げますが、まず建設省。  長良川河口ぜきをめぐる反対のうねりは、国内ではもちろんでございますが、今や国際的にも大合唱となっておるような感じがしております。河口ぜきの建設は千五百億の巨費が投じられい平成二年度末で工事費が二百九十億、用地並びに補償費が二百八十八億など七百四十一億円が使われている。補償の算定基準、そうしてだれに、どのような団体に補償されたのかが極めて不明でございます。この点について建設省の答弁を願います。
  166. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) お尋ねの件は、長良川河口ぜきにかかわる補償関係の御質問だと承っております。  長良川河口ぜきは、全国でも最も大きなゼロメーター地帯であるこの地域の治水の安全上から、しゅんせつをし、潮どめ機能を持つ河口ぜきとして建設することとして昭和四十三年に閣議決定され、現在に至っておるわけでございます。  この地域の長良川に関係する者としては、漁業組合を中心として二十二組合、二万四千名の方が直接の利害関係者でございますので、この方たちとの漁業補償の関係についてのお話し合いが約二十年間かかってきたわけでございます。現在、お話がございますように、二十二組合のうち既に十九組合と補償交渉が妥結しております。なお、残る三組合に、ついても近々妥結する予定としております。  そのほか、この地域の治水の安全度等にかかわる補償工事として用地補償等を見積もったものでございます。なお、千五百億円の見積もりは昭和六十年時点でございまして、当時大体この総事業費の二〇%台と把握しておりますが、その後の物価上昇等もございますので、またいずれかの機会にそれぞれ積算してまいりたいと考えております。
  167. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今私が聞いたのは、補償されておるんだけれども、補償の算定基準、だれに、どの団体に補償されたのか、これが不明であるから求めたわけでございますから、そこをきちっと答弁してください。
  168. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) 補償の基準でございますが、これは政府が決定しております昭和三十七年六月二十九日閣議決定によります公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づいて積算しております。  なお、漁業の関係者でございますが一先ほど言いました二十二組合でございますが、既に十九組合妥結したと申し上げました。一応お名前を申し上げさせていただきますと、三重県関係では、木曽岬村、伊曽島、大島、城南、赤須賀、川越、富洲原、富田、長島町楠、長島漁業生産、桑北、三重県養鰻、それから岐阜県関係でございますが、郡上、長良川中央、板取川上流、美山町、津保川、長良川下流、西濃水産、以上十九組合でございます。
  169. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 個人は。
  170. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) 残念ながら、個人についてはただいま手元に資料がございません。大部分はこの漁業補償関係でございます。
  171. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 長良川周辺の漁業補償に要した額はどれだけなんですか。それから利根川や芦田川の河口ぜきはどうであったのか。芦田川は補償がなかったとも聞いておるんですが、いかがですか。
  172. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) 突然の質問でございますので正確にはお答えしがたいと思いますが、漁業補償関係についてはただいま申し上げた組合についての補償でございます。  それから芦田川につきましては、芦田川建設着工当時に漁業権を持った組合がございませんでしたので、漁業権を持った組合にのみ補償しております。  したがいまして、いろいろニュース等で流れておるものがございますが、漁業権を持った方には、先ほど言いました閣議決定に基づいて補償交渉をし、補償金を払っております。
  173. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 岐阜県長良川漁業対策協議会では、受け取った補償金八十億円が分配方式が決まらずに宙に浮いているというが、どうなんですか。
  174. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) お話の件は、新聞等で報道されております先ほどの岐阜県九組合中の長良川漁業対策協議会に所属する七組合の関係だと存じますが、長良川漁業対策協議会については、この七組合の代表者から成る協議会の方たちと私どもは補償交渉をいたしまして、平成二年三月に補償交渉が妥結し、支払いをしたものでございます。  新聞等の報道でも、この補償の分配についていろいろ御意見があると聞いておりますが、私どもは私どもの補償基準の考え方で補償したものでございますが、その考え方とおり分配するかどうかについて関係者で今意見調整をしているんではないかと推察する次第でございます。
  175. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 国税庁、税法上の取り扱いとしてはどうなっていますか。
  176. 冨沢宏

    政府委員(冨沢宏君) 一般論でお答えさせていただきますが、組合が補償金を受け取りましてそれをまだ分配しておらないという状況でございますと、三カ年の間はそれを仮受金ということで処理いたしまして、言ってみれば税法上の処理を一時ストップしておく。その間に分配がされますと、それが漁業権の対価であるかあるいは収益に対する補償であるかで違ってくるわけでございますが、それに応じまして適切な課税をする、そういうことでございます。
  177. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 法務省は、この補償をめぐるいろいろなうわさがございますが、刑事事件として立件すべき不審な点は聞いておりませんか。
  178. 井嶋一友

    政府委員井嶋一友君) お答えをいたします。  ただいま初めて伺った議論でございますけれども、検察がどのような情報を持っておるか、どのような関心を持っておるかということにつきましては、特別な報告は得ておりません。
  179. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 総務庁は、河川行政に関する行政監察をやったことがございますか。  ここに中部地方建設局発行の塩害被害の掲載されたパンフが出ておるわけですが、この二十九ページを見ますとこういう写真が出ておるわけですね。ここにあるとおりに、これは建設省の資料ですよ、塩害を受けている田んぼとして六十一年三月となっておる。六十一年三月にもう稲穂が実っておるわけです、こういう図。それから、塩害の実態が明らかでもない。それで決め手、決定的なことは、二つ出ておるこういう写真に対して、その当時のを見ると、実際行ってみるとここに家があるんです、ちゃんと。この家がないんです、これには。  こういうことがやられておることについて行政監察局、ひとつぜひ監察の結果があれば、御報告いただきたいと思います。
  180. 鈴木昭雄

    政府委員(鈴木昭雄君) 平成二年、昨年九月に水資源の開発・利用に関する行政監察結果に基づく勧告を行っておりますが、最近ではいわゆる川に関するものはこれでございます。  なお、御指摘のような問題については、この中では特に触れておりません。
  181. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 やりますか。
  182. 鈴木昭雄

    政府委員(鈴木昭雄君) まさに今建設省が地域の住民の方々等の御理解を得つついろいろ事業を進めておられるところと伺っておりますので、まず当面建設省の対応を見守ってまいりたいと思っておりまして、監察をする考えはございません。
  183. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 実はきょう、こういう問題がございましたから、私の方としては、長島町でこの運動にかかわっておる大森さんを参考人として要請したのでございます。大森さんはきょう来ていただいておるわけですけれども、結果的には、理事会の意見が整わず、こういう委員長裁断でもってここに、皆さんのところに御報告できなかったわけですが、私は長良川の河口ぜきの資料だけは配らせてもらいました。  河口ぜきは、四十三年閣議決定当時は三重、愛知の重化学工業、これに対する利水、長島町の風水害、塩害等の治水、こういうのが目的で決定されたと思うんです。しかし、今ではハイテク産業に転換しましたから水の需要についてはもう必要なくなってきた、これは建設省も御承知のとおりです。利水についてはなくなったわけです。塩害は、事実上あるのなら被害があるはずなんだけれども、これもない。そうして、三月に稲穂が実っておるような写真を張っておる、こういう状況ですから、これは論外。逆に治水の面から河口ぜきは危険な工作物になっているのではないか、こういうことで心配されておるわけですけれども、これは建設大臣、いかがですか。
  184. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) 大臣がお答えになる前に事務的に御説明させていただきたいと思います。  この長良川河口ぜきは昭和四十三年に閣議決定いたしましたが、その中には、河道をしゅんせつすることによって塩害を防除するとともに中部圏の発展に寄与するための水資源を開発する、そのような趣旨のものが閣議決定されておりまして、現在までもその閣議決定どおりでございます。  なお、治水上の問題につきましては、古くからのお話をして申しわけないのでございますが、この地域は全国でも有数のゼロメーター地帯であり、輪中によって治水の運命共同体として地域の住民が水との闘いの中で暮らしてきた地域でございます。明治以降の近代の発展に伴って、地域の発展に応じた治水の安全度を確保するために、明治初年にオランダ技師が参りまして流域一貫の治水計画を立て、その後現在まで治水事業が営々と積み重ねられておるわけでございます。  その中で、昭和三十四年、三十五年、三十六年と連年の大きな水害によって破堤を伴う大被害をこうむったのを契機に、従来の計画高水流量四千五百トンを七千五百トンに計画を改定したわけでございますが、流下能力を約八割増しとするために、この長良川下流部を大規模にしゅんせつすることによって流下能力をふやそうとしたわけでございます。この大規模しゅんせつによって、従前、現在でも大体河口から十五キロ地点に塩分が遡上しているわけでございますが、その倍の約三十キロぐらい上流まで塩水が遡上するおそれがございます。  この件につきましては、利根川におきましては終戦後利根川の河道を大規模しゅんせつしてまいりましたが、その結果、昭和三十三年の渇水の年には利根川下流の千葉県、茨城県の約三万ヘクタールに及ぶ地域に大きな塩害をもたらすと同時に、また地域住民の飲料水等に大きな影響を与え、例えば歯医者の器械が使えなくなると力、豆腐が固まらないとか、お茶がまずいとか、おふろに入ってもしっかりきれいな感じにならないとか、地域住民の生活にいろいろ大きな影響を与えました結果、利根川河口ぜきを建設することとしたわけでございまして、その先例を私ども教訓といたしまして、長良川におきましては、大規模しゅんせつに先立ってまず河口ぜきを建設することによって潮どめ機能を確保すもこととしたものでございます。  なお、この潮どめぜきでございますが、全国直轄百九水系中野に五十三ございまして、それらのせきと機能的には何ら異なるところがないわけでございます。せっかく建設したせきでございますので、そのせきの上流に確保されました淡水を、今後も我が国の大都市圏として発展を予想されている中部圏の発展のための水資源として確保することといたしまして、現在に至っているわけでございます。  なお、水が余っているとおっしゃっておりますが、まだたしか六施設だったと思いますが……
  185. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 簡潔に願います。
  186. 近藤徹

    政府委員近藤徹君) 現在この地域で確定しております水資源開発施設は、フルプランで決定されたもののうちまだ二つしか確定していないという状況でございまして、大体二年に一回ぐらい渇水を経験しているという状況でございますので、私どもとしては中部圏発展のために水資源は最重要な課題と考えております。  なお、塩害が発生していないというお話でございますが、長島町では確かに今塩害は余り見られておりません。  なお、先ほどの御指摘の写真でございますが、これは長島町の町役場から提供を受けたものでございまして、そのとき撮影者の記憶違い等があったのだと思いますので、その点については訂正させていただきます。  なお、現在塩害はほとんど発生していない状況ではございますが、これは農林省所管の濃尾用水事業によりまして、上流で一億五千万トンの岩屋ダムを建設し、木曽川本川に木曽川大ぜきを建設することによってその用水を確保して、現在、長島町の水は全部上流ダム水源に依存することによって何とか塩害が防がれているという状況でございますが、それでも時々発生しているというのが現状であることを申し添えさせていただきます。
  187. 山崎拓

    国務大臣(山崎拓君) お答えいたします。  ただいま河川局長がるる申し上げたとおりでございます。本事業は、水害の危険に脅かされている長良川下流沿川住民六十七万人の生命、財産を守るため不可欠な施設であると同時に、中部圏発展のために必要な水資源もあわせて確保するという目的のために、今日まで先生御指摘のとおり多年にわたりまして、国民の血税を使うことでございますから、建設行政が責任を持って推進してまいりましたし、今後とも責任を持って推進してまいりたいと存じます。  なお、環境問題等には十分の配慮を怠らないことは当然でございます。
  188. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 最後に、総理、この問題については日本自然保護協会、日本野鳥の会、各種関係の団体が反対声明を出しているわけですけれども、今度WWFの世界自然保護基金日本委員会ですか、ここも工事を中断して環境調査をすべきだという見解も公表しておるわけですね。これについて、総理として決断をする時期に来ておるような感じがしますので、御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま建設大臣がお答えになられたとおりと思いますが、私としてもなお各方面の御意見を承っておきます。
  190. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で佐藤君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  191. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、前田勲男君の質疑を行います。前田君。
  192. 前田勲男

    前田勲男君 宮澤内閣の発足の国会で開かれました当予算委員会で、政府・与党を代表して質問の機会をお与えいただきまして大変光栄に存じております。  総理は、戦後初めて参議院の御出身の総理でいらっしゃいまして、私ども大変親しく、うれしくお迎えをしておることを最初に申し上げておきたいと思います。  そこで、きょう今ここへ御出席になりまして、参議院の御出身の総理としてどんな感慨をお持ちか、また参議院についてどんな認識、期待を持っておられるか、お伺いをいたします。  また、今日までの内閣におきましては、例えば池田内閣におかれては「寛容と忍耐」、田中内閣では「決断と実行」、中曽根内閣では「戦後政治の総決算」、竹下内閣では「ふるさと創生」と、大変国民にわかりやすいキャッチフレーズがございました。宮澤内閣では、そういうわかりやすいキャッチフレーズ、何とおとらえになっておるか、まず最初に性格という意味からも伺っておきたいと思います。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつて十二年間本院に御厄介になりまして、多数の同僚、先輩から御親切な御教示を受けました。中には前田委員の御尊父もおられたわけでございます。深く感謝を申し上げております。当時から良識の府として本院が機能してこられましたが、今日ますますその機能を高めておられることに心から敬意を表しております。  キャッチフレーズというのがどうも私は余り得手でございませんで、いろいろに考えておりますけれども、実はだんだん仕事をやってまいります中から、きっと世の中でいろいろな御批判あるいは御評価を受けるであろう。その中から何か自然に生まれればと思って心がけておるところでございます。
  194. 前田勲男

    前田勲男君 それでは伺ってまいりますが、一九九〇年代、二十一世紀を迎える最後の十年であります。国内的、国際的に大きな変化が予想され、また現実に起こっております。しかも、その変化は百年に一度あるかないか、歴史的な変化の中にあるわけでありますが、この変化の中で内外にやはり新しい秩序を構築して、二十一世紀の次の世代に我々は引き継がなきゃならない、そうした責務を今日の政治家は担っている、かように思っております。  当然、政治経済あらゆる分野でこれまでの制度ですとか慣行、あるいはいろいろな手法に至るまで改革が迫られていることになっております。今この時代の要請に即応して時期を失わない果敢な行動が不可欠であろうと思っております。  振り返ってみますと、第二次大戦、戦後ほぼ半世紀で我が国は世界で第二番目と言われる経済大国になってまいったわけであります。この問振り返りますと、いろいろ批判が世界的にもありますが、物、金中心の発展でなかったか。また、一国平和主義と一国繁栄主義というのが心の底にあったのではないか。変化の時代に我々官民挙げて国民。一人一人がやはり反省というものも含めた出発点を求めておるのではないか、こんな気がいたしておりますけれども、総理の御所見はいかがでございましょうか。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第二次大戦後の敗戦からのことを回顧してみますと、我々は世界から援助を受けて生き延びてまいったわけでございます。そういうあたりから、とにかく自分たちだけが平和に繁栄していけばいいという、長いこと国民がそう考えてまいりました。各国に多少の援助はし始めておりましたものの、先ほど前田委員が  一国平和主義と言われましたが、そういう意味では、自分たちの生活、自分たちの繁栄ということが我々の主たると申しますか、国民の大半の関心であったと申してもよろしいのだと思います。それについてはいろいろな反省の意見がございましたけれども、やはり直接の動機は一昨年のベルリンの壁の崩壊以来の大きな世界の激動であり、またさらに昨年の湾岸危機に際して我々が世界から求められているものについての国民的な議論であったと考えます。  そういう意味で、世界も大きく変化をしつつありますが、その中でまた我が国が大変大きな変化をしつつありまして、世界の変化の大きなものの中で我が国が影響力を及ぼさないものはほとんどないのではないかというようなことになってまいっております。このことを御指摘のように国民的な意識に高めますとともに、またその責任を遂行いたしますためには、従来考えられておったような制度とか考え方、いろいろにこれは改めていかなければならない。御指摘になりましたことはまことにそのとおりであると考えております。
  196. 前田勲男

    前田勲男君 次に、国際化時代への対応と貢献について伺ってまいります。  冷戦後の時代は新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まり、こう位置づけられておりますけれども、今後とも世界におきましては紛争、対立というのはまだまだ残るものと認識をいたしますが、米ソの特に核兵器の大幅削減への取り組み、特に広島出身の総理、何年も訴え続けられてこられました。それが世界的にも理解され、またその機運が高まり実現されていると評価もいたしておるところであります。  そこで、総理の年来の政治理念と伺っております軽装備、経済重視、この方針をいま一度考えてみますと、まさに今日の国際情勢の変化を先取り、して取り組まれてきたのではないか、そんな評価を私はいたしております。殊に超大国の中のソ連の崩壊というの但、共産主義のもとに人権を無視して、そして国の生産力を無視し軍事大国をねらい過ぎた結果だ、かように受けとめておりますけれども、今日、世界の平和が軍事力の均衡の上に維持されていること、これは否定できない事実でありますが、やはりその中においてもでき得る限りこの軍備というものを低レベルに抑え込んでいかなきゃならない。軍縮推進が国際化時代への我が国の果たす役割の大きな課題の一つだ、かように位置づけております。  我が国が世界の新しい秩序の構築に当たりまして、経済重視の理念をなお生かしていただいて、軍縮で不要となりました宮を平和の配当として世界に、特に世界の南に生かして使っていただきたい、これが我が国貢献の大きな柱じゃないか、こう理解をいたしておりますが、御見解はいかがでございましょうか。
  197. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 軍縮が世界の大きな流れとなりましたことはまことに慶賀すべきことでありますし、また、御指摘のように、我が国はたまたまそういうことを過去何十年実践して今日の繁栄を築いた国でございますので、いわばよき手本であったとも申すことができるかもしれません。  御指摘のように、このような軍縮の流れを定着させること、そうしてそれによって開放されます大きな資金と資源とを有効に人類の建設的な目的のために使わなければならない。その平和の配当の最大の受益者は南の国でなければならないというのは、私もたまたま同じことを衆議院の本会議で申し上げましたが、まことに同感でございます。我が国はそういう運動の先頭に立って実践をいたしたいと思います。
  198. 前田勲男

    前田勲男君 そこで、国連の機能について伺いたいんですが、軍縮の努力をすることはもちろん当然といたしまして、なお今月も起こっております地域紛争あるいは局地戦、これに対してはやはり国連の平和維持機能というものを格段に強化する方向について探るべきであるし、我が国はその方向で全力で取り組んでいかなきゃならない、かように思っております。  湾岸危機の教訓でも示されたように、イラクの侵略に対する国連中心の平定というのは、これから二十一世紀に向けて国際秩序のモデルになるんではないか、そんな気がいたしております。この際、特に重要なことは、我が国が一国平和主義の殻の中に閉じこもって、世界の危機に対しまして見て見ぬふりをするというような批判を世界からされるようなことがあってはならない。湾岸危機の際に日本国民の一人としても大変寂しい、悲しい思いをしたことがあります。  そこで、軍事バランスを下げる努力をすると同時に、よく言われておりますような物、金に加えまして人のいわゆる三拍子、三点セットではありませんが、三拍子そろった国連協力、強化策が日本の大事な責務であり、また日本国民が世論としてコンセンサスを得たところであります。  そこで、提出されておりますPKO法案の審議にあわせまして総理のお考えを伺いたいと存じますし、また、国連に関して申せば敵国条項、これはもう日本人にとって耐えられないものでございまして、どのような努力をこの削除についてされておられるのか、あるいはできれば見通し、いつごろ我々の期待にこたえていただけるのか、外務大臣からお伺いをいたします。
  199. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 国連の問題については、今お述べになったことに全く同感でございます。  顧みると、第二次大戦の末期に国連が結成をされまして、それで再びもう戦争はやるまいという誓いができたわけです。しかし、今言われたように、局地的な争いというものは必ずあるに決まっておる。そういうときには、国際的な集団安全保障というか、そういうことで国連軍をこしらえて対応しようという理想を掲げたわけでございますが、米ソの対立というものがあって、そういうものは実際できなかった。しかし、それから四十数年たって、あのような事態で米ソの間で大幅軍縮というような流れができてきた。大変いいことだと私は思います。大いにこれは日本として進めていかなければならない。しかし、残念ながら、やはり局部的な争いがあることは事実でございまして、国連軍は出せなかったが、多国籍軍がイラクのフセインの横暴な侵略を排斥して、正義をそこに確立した、このとおりだと思います。  我々日本といたしましては、憲法がございますから、憲法の範囲内でしか協力はできませんが、せめてPKO活動というようなものについてはできるという結論に達して、今皆さんのお手元に法案を提出して御審議をいただこうということであります。  なお、国連の敵国条項の問題でございますが、これも御趣旨のとおりでございます。私といたしましては、もう既に日本が入る前にできた条項ですから、日本が平和国家として国連に加入した現在は死文化しておると言っても差し支えない。しかし、目ざわりであることは間違いないのですね。これはやはり削除してもらう努力は今後も続けたい。  ただ、これは国連憲章の改正になりますから、非常にたくさんの国の支持を得なきゃならぬというようなこともあって、手続的に厄介な問題ではございます。
  200. 前田勲男

    前田勲男君 敵国条項の削除につきましては、なおひとつよろしく徹尽力のほどお願い申し上げる次第であります。  続きまして、政治改革についてお伺いをいたしますが、政治改革三法案は、信なくば立たず、リクルート反省に立ちまして金のかからない政治を目指して、我が党は三年以上の長きにわたりまして検討してまいりました。  選挙制度の改正、政治資金の改正、公的助成の三本柱から成っておりますが、現在の衆議院の中選挙区制度は、六十余年を経過して既に制度疲労、金属疲労も出ております。金属疲労というのは金という意味ではございませんが、中選挙区制というのは、どうしても個人中心の選挙になっておるわけでございまして、我々の身の回り、まさにサービス合戦、利益誘導型と言われても仕方がないのかなと。選挙区対策のために後援会組織を培養していかなきゃならない。こうした問題点を踏まえまして我が党は、政党中心、政策本位の選挙制度に改めなければならない、それでなければまた今日の激変する風際情勢に機敏な対応ができない、そのための政治体制をつくり上げていかなきゃならない、かように考えておるわけでございまして、先般提案をいたしましたというような経過でありますが、審議未了となっておるわけであります。  そこで、政治改革の火を消してはならないという国民の声ということで与野党協議が行われておるわけであります。今後この与野党協議の方向を見るということになっておりますが、今日まで、自民党の案でございます小選挙区比例代表並立制に対しまして野党の皆様方の対応、それぞれ党のお考えはまちまちであります。ここで共通認識を得ることはなかなか素人考えでも難しいという気がしてなりません。  いずれにしても、私も自民党の一員として全国各地、御意見を聞いて回った一人でありますが、国民皆さん立場から見れば、一票の格差の違憲状態をなくすだけでは、こんなものは政治改革とは全く言えないんだ、国民の信頼を回復して、国民の期待にこたえられるような抜本的なひとつ政治改革をしてもらいたい。そのためには、言われているように選挙制度の改革をどうしてもしてもらいたい。各党協議のベースとなるのは当然私は小選挙区比例代表並立制と、こう受けとめておりますが、そう考えてよろしゅうございましょうか。  また、おおむね一年をめどに具体的な結論が出るように念願をしておる、こう総理はおっしゃっておりますが、総理政治改革の御決意と、また各党協議とは申せ、総理並びに自治大臣、どのような御努力をいただくのか、この辺を伺いたいと存じます。  また、この改革の中の一票の重みの関係でございますが、特に人口が減少しておる過疎県と申しますか地方におきまして、その選挙区における有権者の共通の心配がございます。これは、寂れていく地方の地域代表である衆議院議員が減らされるということに対して、ますます過疎地が衰退するんじゃないか、こういう心配が極めて国民の間、地方には強いということでございまして、いろいろ配慮はされておりますが、こうした現象に対しま。して、なおどんな配慮をされるのか、あわせてお伺いをいたしておきます。
  201. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 前田さんにお答えいたしますが、いろんな問題を総合的に聞いていただきましたので私の方も答えやすいと思っております。  まず最初に申し上げたいことは、一票の格差の是正というものが政治改革にならないんではないか、それも重要な事項ではあるけれども、それのみでは政治改革にならないんではないかと。おっしゃるとおりでございまして、政治改革には先ごろ政府提案いたしましたように三つの重要な点が相関連しておりますので、我々といたしましては、各党間で御協議いただくに際してそういう相関連したものを一つにして検討していただき、そして審議していただくのには順序があると思います、一遍にできませんから。したがって、その順序に従って協議をしていただいて合意を得られるということは当然でございましょうが、政治改革というものがこれだけのものであるということを国民皆さんにわかりやすく言っていただくことが必要だ。  そのためには、総理が言っておりますように、まず国民政治になじんでいただく、政治をわかりやすくするということと、そして同時に、政治自身がクリーンな姿勢で政治に取り組んでいって、要するに政治自身が信頼される政治家になっていくように、それが政治改革なんだ。そのためには、選挙区制度もありましょうし、政党の問題もありましょうし、あるいは選挙の取り締まり尊いろんなものが関連する、こういうことであろうと思いますので、一票の格差の是正だけでは政治改革ではない、おっしゃるとおりでございます。  それからもう一つ、与野党合議をしておいでになっておる最中でございますし、この問題はまさに政治そのものの問題でございますし、議会において決定していただくことでございます。したがいまして、過日政府が出しました案、あれは審議未了の状態のままで廃案になっておりますが、これを大いに参考にしていただいて、といいますことは、あれは選挙制度審議会という第三者の知恵をおかりしてまとめた案でございますので、十分に参考にしていただいて速やかに与野党間で合意をしていただきたい。その合意を受けまして政府として法律案を出したい、こう思っております。  それから、最後のお尋ねの中の一件でございますが、過疎地域に対してどうするんだ、ただ人口割だけではえこひいきが起こるんではないかという考えでございます。確かに日本の国とそれから諸外国とは若干違う。要するに、日本は狭い国土の中に多くの人間が住んでおって、しかも一言語一民族、こういう状態できた日本でございますから、したがいましてお互いが平等に均衡ある発展をしていただかなきゃならぬ。そういう点を配慮いたしまして、かねての政府案では、各府県にとにかく議席一つずつをお渡しじよう、その上で人口割をしよう、そして比例代表制を入れよう、こういう案でございますので、私は非常によく配慮された案であると思っておりますので、この点もぜひお酌み取りいただいて各党間で御協議をお願いいたしたい、こう思っております。
  202. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 前田君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  203. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題とし、休憩前に引き続き、前田勲男君の質疑を行います。前田君。
  204. 前田勲男

    前田勲男君 午前に引き続きお伺いをしてまいります。  総理所信表明の中でも行財政改革を大きな柱として取り上げられておりました。大変評価をいたしております。  そこで、総務庁長官にお伺いをいたしますが、総理が常々目標とされております公正な社会、品格ある国家を築き上げていく上で、行政改革がどのような位置づけになるのか、どう推進されるのか、また二次答申をいただくということになっておるようでありますが、この行革審の答申にどのようなことを御期待されているのか。また、岩崎総務庁長官の就任の記者会見を伺っておりまして、行財政改革は単に効率を求めるだけではなくて、国民の生活を重視した、国民の気持ちの上に立った行政に転換していくんだ、また国際社会に対応できるような行政に対応していくんだと、大変心強いことをおっしゃっておられます。  行革も、組織改革あるいは定員削減だけでは、これは行革に値しない。具体的に、長官がどのようにこの行革をお進めになるのかお気持ちをお伺いし、また地方分権という言葉、大変古くて新しいというよりも、もう古くから言われている言葉でありますが、この地方分権についてもどのようなお取り組みをされるか、お伺いをいたします。
  205. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 行政改革は、臨調発足以来相当な効果を上げつつあるところでございます。ただ、規制緩和の問題や権限委譲の問題につきましてはこれからも強力に推進をいたしてまいらなければなりませんし、その他多くの課題がございますので、万般にわたって全力をもってその推進に当たっていきたいと考えております。  今後の課題といたしましては、先ほども委員触れておられましたとおり、国民生活重視型への行政の転換、それから国際社会に十分対応できる行政改革、この二点を挙げることができようかと思います。さらに加えて、行政手続法制の統一的整備、これらの問題に今行革審は年末答申に向けて鋭意審議を進めておるところと承っております。なお宮澤総理も、先進国として誇れるような潤いに満ちた生活大国づくりと国際社会における我が国の役割、責任の積極的分担を強調されておりまして、この二つのテーマは宮澤内閣の重要な課題であると認識をいたしております。  そこで、先ほど申し上げました今後の課題の二つの件についてでございますが、行革審といたしましては、国民生活重視型の行政改革につきましては一極集中を是正いたし、地方の自主性、活力性、こういったものを検討いたしておるところでございます。また、国際化対応への行政改革といたしましては、地球環境保全に対する行政のあり方、外国人労働者問題、学術研究及び教育などの国際化の問題、そしてODAの実施体制のあり方、こうした四項目について、さらに行政手続につきましては、行政手続法要綱案を含む答申を提出いたすため、今検討が進められておると承知をいたしております。私どもといたしましては、それぞれの課題がより抜本的に、具体的に提言されますることを期待いたしておるところでございます。それを受けまして全力投球をもって当たっていきたいと考えております。  第二の問題につきましては、行政改革は国民生活万般にわたって進めていかなければならない問題でございますけれども、豊かさの中でゆとりや安らぎを求めていこうとするそうした国民の価値観に対応していかなければならぬだろうし、申し上げましたとおり、世界の中の日本として国際化に対応できる、その行政改革にも当然のこととしてこれから取り組んでまいらなければならぬと思います。  政府は、これまで臨調・行革審の答申に沿いまして、三公社の民営化の問題、行政機構の再編、整理合理化、定員の大幅な縮減のほか、規制緩和の推進、権限委譲等国と地方を通じた改革、公的年金制度を初めとする各般の制度改革など、行政全般にわたりまして改革を推進してまいったところでございます。  国民生活重視型の行政と国際化対応への行政、この実現は、今後とも行政改革を進める上で重要な問題であると理解をいたしております。現在、先ほど申し上げましたように、こうした問題について行革審としては鋭意審議をいたしておるところでございますので、その答申を受けましてこれからも行政改革を推進いたしてまいるわけでございますが、冒頭に委員からお話しのあった定員や組織の改革ばかりではなしに、行政全般について積極的に取り組んでまいる所存でございます。  第三の問題につきましては、多様で自主的な地域社会の実現を目指しまして地方分権を推進することは行政改革の重要課題の一つであると認識いたしております。政府は、従来から臨調・行革審の答申に沿いまして、国から地方への権限委譲、国の関与、必置規制の緩和等を進めてまいったところでございます。平成元年十二月には、国と地方の関係等に関する広範な改革方策の実施方針といたしまして、改革推進要綱を閣議決定いたし、その推進に努めておるところでございます。さきの通常国会におきましても、権限委譲等に関する一括法案を提出いたし、その成立を見ておるところでございます。今後とも、国と地方とを通ずる行政改革に積極的に取り組んで国民皆さん方の期待にこたえてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  206. 前田勲男

    前田勲男君 ありがとうございました。  まさに国民本位、国民のことをお考えいただいた宮澤内閣の姿勢を伺って、安心をいたしております。  さて、外交問題について若干お伺いをいたしますが、まず日米問題であります。  日米両国の関係のきずなの大事さということは、もうこれは申すまでもありません。また、日本の、日米のみならず、世界に対する関係というのは大きな意味と責任を持つものであり、二十一世紀のみならず、二十二世紀、三世紀までも大事なことだと受けとめております。  そこで総理総裁選挙の際に私もパンフレットをいただきました。書いてございましたが、ことしは太平洋戦争開戦から五十年目に当たり、日米が感情的な対立に走りやすい微妙な時期を迎えている。日本にとって米国は一番親しい国であり、また一番大切な国である。日本とアメリカが友好を深めていくことは、単に日米両国の安定と繁栄だけでなく、アジアの安定と繁栄、世界の安定と繁栄のために不可欠な条件である。これからも日米両国が力を合わせ、お互い率直な意見の交換をし、両国のきずなを確たるものとして、日米パートナーシップにとどまることなく、グローバルな点で責任を共有することが大切である、このように述べておられまして、私も全く同感でございますが、ここでもう一度日米関係の大切さ、重要さにつきまして総理の御意見を伺います。
  207. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御紹介をいただいたところに尽きておりますけれども、やはり一番大切なことは、両国が基本的に価値観を同じくしているということであると存じます。その価値観を同じにしていることの上に安全保障関係が成り立ち、あるいは大きな人的、物的な交流が構築されておるというふうに考えます。したがいまして、いろいろな紛争がありましたときも率直に意見を言い合うということができる仲である、そう考えております。しかし、今や我が国経済大国になりましたために、両国の間の関係、相互の関係だけでなく、両国が共同して世界に対する責任を果たさなければならない分野がふえてまいりました。  したがって、両国の対話はお互いの関係についての対話であるばかりでなく、一緒に世界に対してなすべきことは何かということについての対話がさらにふえてくる、そういう関係であると考えております。
  208. 前田勲男

    前田勲男君 先般、今月の十日から十二日までアメリカのベーカー国務長官がおいでになっておられました。そこで、総理また渡辺外務大臣初めたくさんの我が国要人と会談をされたわけであります。こうした会談をたびたびやっていただくということ、間断のない意見の交換というのは大変大事なことであると思っておりますが、特にブッシュ大統領の我が国訪問が延期をされておりまして、今回のベーカー国務長官我が国においでになった意味というものは大変大きな意味があったのではないか、私はこんな気がいたしております。  そこで、ベーカー国務長官と、日米二国間関係、また国際情勢全般あるいはアメリカのアジア戦略につきまして、さらに今後、先を展望して日米の取り組むべき姿勢など、どんな意見交換が行われましたか。また、その意見交換についての評価を外務大臣にお伺いをいたします。
  209. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま総理大臣から、日米の同盟関係というものが非常に重要であるし、今後とも引き続き大切にしていかなければならぬというお話がございました。  ブッシュ大統領は、内部事情によって延期をされるということであります。  長官との間におきましては、今までどおりに我々は日米関係を大切にし、それを基軸にした上で世界の外交を展開していきたいということの確認でございます。  あとは、当面するAPECの問題、これにつきましては、我々としては、アメリカを排除するようなことはやりません、アメリカと日本との間を引き裂くような行動には加担はできませんが、APECはアメリカも入れた非常にいい今後のアジアの発展のための会議でありますから、これはお互い協力し合ってまいりましょうと。  朝鮮半島の問題につきましては、特に北朝鮮との国交正常化について米側は大変な関心を持っておりましたので、経過の概要と今後の方針等について話し合いをいたしました。  また、カンボジア和平は、日本でも今までもバックアップしてまいりましたが、国連の協力によってこれが片づくことになったのは大変結構なことですというようなこと。ベトナム問題については多少意見の違いもございますが、アメリカも近くベトナムとの正常化はステップ・バイ・ステップでやっていきたいというようなお話がありました。  中国の問題につきましては、これはアメリカとの関係において人権問題などでいろいろ難しい問題があるというお話もございました。しかしながら、ベーカーの訪中によって中国との話し合いを進め、中米関係というものが悪化をしないようにぜひしていきたい、日本のバックアップも頼むというようなことでありました。  それから、中東問題についてはベーカー長官の方から今までの御苦労話をいろいろ聞きましたし、我々としても、八回も中東を訪問されて、アラブ、イスラエルの直接交渉というところまでこぎつけられたその御努力に賛意を表し感謝を申し上げた次第でございます。  それから、対ソ支援の問題について日本立場を説明いたしました。  また、ウルグアイ・ラウンドの問題につきましては、これはぜひともひとつ日本の協力によって成功させるように持っていきたいので御協力を願いたいというようなことでありました。  なお、ウルグアイ・ラウンドをめぐるAPECの会議がその後で行われたわけでございますが、それにおきましても、ウルグアイ・ラウンドに関するソウル宣言というようなことも環太平洋の諸国によって満場一致採択をされたというような状況でございます。
  210. 前田勲男

    前田勲男君 ありがとうございました。  続きまして、ベーカー長官日本においでになりました際のスピーチを私もテレビで拝見いたしたのでありますが、その御発言の中で、我が国、アメリカの共有する価値観、特に自由と民主主義、人権の尊重ということをおっしゃっておられました。よく世間では、日本の外交は金は見えるが顔が見えない、日本の顔がよく見えない、こういう批判もないわけではございません。当たっているかどうかは別であります。  そこで、外交の座標軸をゼロスタートということにいたしますと、やはりこれは平和ということが第一で、その次が経済、そして人権外交の重視ということを日本も一歩進んで考えてみるべきではないか。そのほかに環境問題等があると思っておりまして、これは世界各国共通の認識でございます人権の尊重、特に今日では難民問題あるいは民族間の問題、男女問題、最近ではセクハラなども騒がれておりますし、スー・チー女史の問題等いろいろ提起をされておるわけでありますが、こうした人権に対するまさに人類共通の基本であります日本の考え方というものをもう少し世界にアピールすることが日本人を理解させることになる、日本の顔を見せることになる、日本の心を見せることになるのではないか、そんな気がしてならないわけでございます。  こういうことによって、日米のみならず、世界でのお互いの共通の基盤というものをつくっていくという意味では、人権外交というのももう少し位置づけていただきたいな、こんな気がいたしておりますし、東洋あるいは西欧の歴史による人権に対する意識の多少の違いというのもこれまたあるわけでございまして、こうしたことも話し合われることが今は一番大事であろうと思っております。  こうした人権問題につきましては、人権規約条約の批准をどう促進するかとか、国際的な人権分野での国連活動を日本がどうバックアップするか、人権外交の促進を図っていく上でやはり努力する必要がいま一つあるのではないか、こう思っておりますし、またこの問題につきましては、我が国の政府の中においても、こうしたことを総合的、専門的にもう少し御検討をいただく場が置かれてはいかがかなと、そういう必要も私は感じておるわけでございます。  また、環境問題は、地球規模の問題でございまして、対策は一日も早くしなければならない。地球環境サミットの対応を含めまして、お取り組みについて総理また外務大臣のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
  211. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 全く仰せのとおりで、余りつけ加えることはないと存じます。  日本政府としては、特に人権問題、人権外交ということも大切にいたしております。つい最近では、ユーゴスラビアでの武力による介入がありましたが、いち早く政府の外務大臣談話も発表いたしまして、そういうような国民を武力で圧迫するようなことはやめてくれという反応をいたしておりますし、ソ連のクーデターのときも同じょうなことをやっております。  日本の問題について、天安門事件後の中国との関係が日本がいいというようなことで、人権問題に日本が少し鈍いんじゃないかというようなことを指摘する国際世論もございます。ございますが、決して我々は天安門事件を容認しているものではございませんし、そういうようなことは非難をし、今後そういうことのないようにということは言っておるわけであります。ただ、中国とは別な関係もございますので、日中関係を悪化させるというようなこともできません。なかなか難しい場面もございます。  今、委員がおっしゃいましたように、ある国の指導者に言わせると、先進国と開発途上国と全く同じ生活水準、文化水準、人権水準にすることは夢であり理想であるが、五十年前の日本はどうだったか、何十年前のどこそこの国はどうだったか、やはりそこには歴史の流れがあって、平和と統一と団結と衣食住を賄うということが何よりも優先をするというようなことを言うところもございますが、その意味は我々わからないわけではありません。ありませんけれども、先進国日本としては、人権問題についてはもっと過敏に対応していく所存でございます。
  212. 前田勲男

    前田勲男君 続きまして、アジア外交について、も伺ってまいりますが、APECのお話、先ほど外務大臣からお伺いをいたしました。北朝鮮の問題あるいはこのAPECに関しましてEAECがいろいろ議論をされておりますが、我が国はEAECについてどうお考えか、お伺いをいたします。  続きまして、同じアジアの一国でございますカンボジア和平でございますが、きのういよいよシアヌーク殿下が大歓迎のうちにプノンペンに入られました。これにつきましては我が国の努力というのが大変評価をされておると思っております。こうした観点から、国連活動に対して全面協力という意味からもこのPKO法案を早く成立させていただきたい、こう願っております。特にカンボジアのPKOにつきましては、平和維持、停戦監視のみならず、特に行政的な助言、あるいは難民、医療、通信回線、道路網と大変多分野にわたった期待がされておると思いますが、カンボジアにおけるPKO協力についてどのようなおつもりでおられるか、お伺いいたします。
  213. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まだPKO法案が御審議中であるものでから、具体的にカンボジアに対するPKO活動をどうこうするという具体策は持っておりません。
  214. 前田勲男

    前田勲男君 次に、ソ連の問題についてお伺いいたします。  私も、ことしの夏に東欧――ブルガリア、ハンガリーやチェコなどを回ってまいりましたが、市場経済移行というのはそこでも大変難しい。ましてソ連においてはなおはるかに難しいのではないかという予想が簡単にできるわけでありますが、ソ連に対して二十億ドルの経済支援を御決定いただいておりますが、市場経済化、経済復興に向けてどのようにこれを役立たせるのか、また、そうしたためのノーハウをどんな形でソ連に提供するのか、外務大臣にお伺いいたします。
  215. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 日ソは今まで本当に近くて遠い国であったことも事実でございます。我々としては、一日も早く北方四島の問題を解決し、平和条約を結び、大いに協力し合ういい関係をつくりたいと念願をいたしております。しかし、この北方四島問題が一切解決しない限り、日ソ間はお互いに、片方では四島は自分のものだと言うし、日本もこれは日本国有の領土であるということをいつまでも言っても平行線で解決しない。そういうようなことで、ゴルバチョフ大統領の来日、あるいはソ連の政変等によって北方四島の解決をしなければならないということは既に認められておるし、またそのやり方等につきましてもいろいろ新しい兆しか出つつあるということも事実でございます。  一方、日本は人道町な立場から食料とか医療の支援、あるいは技術のノーハウ等はできるだけ協力をいたしまして、そしてせっかくの今までのよい兆しをどんどん伸ばしていって、それで友好裏のうちに問題を解決していきたいということで鋭意いろんな面で努力をしておる次第でございます。
  216. 前田勲男

    前田勲男君 ただいまの御答弁の中にも、北方四島返還の問題の熱意ある御答弁をいただきましたが、なお一層ひとつ御努力のほどお願い申し上げます。  さて、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉についてお伺いをいたしますが、そもそもガットという条約は、二次大戦前に列強の資源や経済、権益の拡大を求めて、いわゆる列国の対立、摩擦からあの悲惨な戦争に発展したわけでありまして、この反省の上に立って、平和かつ国際協調の精神に立脚して貿易、通商、また世界各国の経済発展を図るためにちょうど一九四八年に発効した国際条約でございます。国連とともに、またIMFとともに、再び人類が悲惨な戦争を起こしてはならないという反省の上にできた条約機構であります。  また、日本もこのガット体制の最大の受益国として今日の発展を迎えておる、これも間違いのない事実でありまして、ガットの精神はお互い互譲の精神でいくということだと思っておりますが、ただ互譲の精神といいますと、譲るのみというような錯覚に陥ってはいけません。お互いの立場に立って相手の立場も理解して、そして努力をしていくどいうことだと思っておりますが、国際貢献、品格ある国づくりという総理のお考えの中に、このガットの精神、ガットそのものをどう位置づけておられますか、お伺いをいたします。  また、今農業分野を除く分野での取りまとめは進んでいると伺っておりますが、順調にいっておりますかどうか、問題があればお教えをいただきたいと存じます。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ガットは、御承知のように、戦後のいわゆるブレトンウッズ体制の一つをなす大事な、当初は先進国間でございましたが、機構として発足をいたしました。  私自身で申しますと、一九六〇年代の早くからかかわり合いましたが、当初はやはり関税障壁をお互いに低くするということで、ケネディラウンドの主たる部分はそうでございました。それも、物に関することが多うございました。しかし、そのうちに関税障壁がかなり低くなりまして、今度は非関税という、御承知のような、これはその国の文化とか社会に大きく関係することでございますが、非関税障壁についての問題が非常に大きくなりましたし、また物ばかりでなくサービスとかその他の財産権の方に広がりつつあるわけでございます。そして、現在残りましたウルグアイ・ラウンドというのが、いわば従来の何回かのラウンドで残りました一番中心になる、従来難しいので手を触れたがらなかった各国の問題が残った、それが今度のウルグアイ・ラウンドの特色であろうと存じます。  我々は農業のことをよく議論いたしますが、御承知のように、農業以外にも十幾つの分野にわたりましておのおの交渉が進められておるわけでございますので、これでまず当分、各国の間でし残した仕事というのが一応これが一つの最終に近い段階になるのではないか。それはただし、今度の交渉でいわゆる大きなパッケージができた場合でございます。各国が少し時間をかけましても大変に大きな合意に達しましたらそうなりますが、あるいは小さな合意であるかもしれません。いずれにしても、先進国間で、今は先進国ばかりじゃございませんが、やはりこういう場で協調して世界貿易の、あるいは貿易ばかりでもございませんが、世界の経済的な行き来の拡大を図る、そういう場であると考えております。
  218. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は何度かサミットなどの世界のリーダーの会合に出席しておりますが、その中でこういう会話があったんです。我々と同じょうに発展途上国の生活水準や教育水準や、あるいは医療の水準を我々だけの援助によって引き上げてやる、こういうことができますかと、これは言うべくして不可能であろう。ということになれば、この南北問題の解決というものは、発展途上国の自助努力によってやってもらう以外にはない。そのためには、我々はノーハウ、資金、そういうものの協力をして後は働いてもらうんだ。  もう一つは、彼らのつくったものを、我々は自分たちの技術指導でつくらせるんですから、そういうようなものをどんどん市場を開放して買ってやるんだ。そして、途上国に立派な職業を与えて、産業を興させて、それによって大きくしてやる。援助だけで生活水準を上げるわけにいかないんだ。これの一つが今度の多国間の貿易促進のためのウルグアイ・ラウンド交渉である、私はそのように思っておるのであります。  したがって、どの国もウルグアイ・ラウンドの成功をということで、反対する国はないんですね。全部が賛成なんです。しかし、個々の問題になってまいりますといろんなことを言い出すわけであります。十一月までにひとつまとめようと、みんなが百点を求めてそういうことを言っていれば、これは恐らく成功しない。成功しないというようなことで、もうお互いが保護主義が強くなって排他的になると、日本などは一番被害を受ける国になりかねない、私はそう思っておるわけであります。  したがいまして、まず個々の部分の問題よりも先に、将来の日本の繁栄を持続するためにはどういうことがいいのかということについてのやっぱり政府と国会の意見の一致を見るということが一番根本問題ではないか。その中で私は、交渉事でありますから、自分の意見だけを言っておったのでは、どこの国もそう言うわけですからまとまるわけがないんです、これは。お互いに相手がある以上は、お互いに譲るべきものは譲り合って、それぞれのことでもう最大公約数でグルーピングする以外にない。私は、ラウンドの会議の中でも個別にいろいろ会って、もう百点満点を皆さんとろうとしてもそれはだめですよ、オール・オア・ナッシングだと。それよりも合格点でまとめることがいいんじゃないですかと、合格点で。どこまでが合格点か人によって違うでしょうが、みんな譲り合うんですから、みんな百点をとれないんだから。だから合格点で何とかまとめるように持っていくしかないんじゃないかと、私はそう思っておるのであります。
  219. 前田勲男

    前田勲男君 ガットは先進国の、あるいは日本の繁栄のみならず発展途上国の地球的規模で貢献を果たす、こういう役割もあるというようなお話、また、合格点をとれるような努力をする、こう承っております。  その合格点をぜひとっていただきたいというお願いをいたしますが、我が国の農家、特に米作農家の心配というのは今極度な状態に立ち至っております。特に、新聞報道等でございますので確認は私もいたしておりませんが、米国、ECが大変歩み寄りをしておる、日本の主張が何らまだ反映しない形の中で年内に早期決着が図られる、ドンケル・ペーパーが出されて、その中で米の完全な自由化につながる例外品目なき関税化が盛り込まれる可能性が強い、新聞にもこう出ております。また、日本が孤立するのではないかという報道、あるいはもう既に孤立しておるのではないかという危惧すら報道だけ見ておりますといたしております。  しかし、アメリカがとっておりますようなウェーバー、ECの可変課徴金制度、こうした保護政策というのは多数抱えておりますし、CNNニュースなどを見ても、ヨーロッパの農家の怒りというものも我が目で確認をできておりまして、今正確にどういう現状なのか、まず現状をお伺いいたしまして、米について、食糧自給率が我が国は極めて低い中に、食生活またあるいは農村の地域経済、環境保全、こうした観点の重要性から国内産で自給するという基本方針で対処していただきたい、関税化はすべきでない、こう考えておるところでございまして、この行方につきまして、また関税化はしないという観点につきまして御見解を伺いたいと思います。
  220. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 個々の品目について私は申し上げません。申し上げませんが、知的所有権の問題とかサービスの分野とか、その他の問題ではある程度進展が見られておるわけでございます。農業の問題についても、今言ったようなヨーロッパの輸出補助金、アメリカのウェーバー、あるいはヨーロッパの可変課徴金等、また日本の輸入制限されている品目等の問題について幅広い意見が行われておるわけでありますが、目下交渉中であります。  しかしながら、交渉の衝に当たる者としては、全く何もないというのではこれは交渉ができません。できませんが、これは全くだめだが、ここはこの程度というのであれば交渉ができるでしょう。ほかは交渉が進んじゃって日本だけが取り残されるというような事態になれば、決してこれはプラスな状況にはならない。私は、国全体の利益、将来の日本経済繁栄、そういうものも全部考えた中で、そして農業がちゃんと生きられる道を一緒に考えていく必要がある、そういうように思っておる次第であります。
  221. 前田勲男

    前田勲男君 再度確認をいたしておきますが、アメリカとECの今交渉が進んでおるという報道、そして日本はその蚊帳の外にある、ドンケル・ぺーパーがまとまるやもしれぬ、この報道について非常に心配をいたしております農家の気持ちに成りかわって、農水大臣にそのような実態を本当に認識されておるかだけ伺っておきます。
  222. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) お答えをさせていただきます。  御心配のアメリカ、ECのこの歩み寄りというのはしばしば報道で流されるわけでありますが、ウルグアイ・ラウンドの交渉につきましては、十一月の七日、貿易交渉委員会が開催されまして、各交渉分野の現状評価等の報告がなされたわけであります。この中で、農業に関しては解決すべき問題がいまだ残っている旨が示されたところでありまして、なお先般アメリカ・EC首脳会談が行われ、その宣言において農業の分野では幾らかの前進をしたとされていますが、他方、この残された相違点を埋めることは簡単でないと言われているわけであります。  ウルグアイ・ラウンド交渉については今後精力的に行われるものと見込まれますが、日本としての立場、再三申し上げておりますように、世界最大の純輸入国でありまして、随分この自由化に向けて今日までも努力をいたしております。米の問題の議論というのは、今総理、外務大臣からもお話がありましたように、もっともっと幅広い観点で議論される点も残っておる。例えば開発途上国の人口がどんどんふえていっているし、これからもいく。そういう中で食糧というものは人口とどういうかかわりを持つかという判断もひとつしなければならぬ。そういうことを考えますと、可能な限り自国で自給できるものはやっぱりその体制というものをとっておきませんと、開発途上国も先進国のお世話になる、先進国である日本も食糧は外国に全部お世話になるということで一体いいのだろうか。さまざまな議論があると思うんです。  一方、国内的に見ましても、高齢化がどんどん進んで、大体地方の農家は今お年寄り夫婦で農業をやっているという実態になっている。あるいは、一方では人口の出生率というのが一・五三、これだと人手不足はもちろんでありますが、担い手も不足をしてくるという中で一体どうするか、さまざまな問題をそれぞれの国が抱えておるんですね。しかも、私どもの日本というのは、カロリーベースで見ますと、全世界の中でも百六十四カ国中百四十五位というまことに低い国であります。もちろん、日本の下の百四十六位以下の国というのは、合計しても人口が四千百万人程度でありますから、一億二千万の日本というものはどういう方式でいかなきゃならぬのかということも御理解をいただきたい。  そのほかに、世界最大の先ほど申し上げた純輸入国、これは輸入から輸出を引いた金額で出すわけでありますけれども、それを見ましても二百八十億ドル、これは世界一位であります。二番目がソ連の百七十四億ドル、西ドイツが百三十五億ドル、イタリーの百二十六億ドル、イギリスの九十億ドル、ですから私どもは米については自由化につながるような関税化というものはどうしても避けたい、こういうことでガット・ウルグアイ・ラウンドの方で日本の主張というものを明確にしておるわけであります。どうぞその辺のところの御理解もいただきたいと思います。
  223. 前田勲男

    前田勲男君 ぜひ今の強い御決意を変わらないで進めていただきたいと存じます。  農水大臣にお立ちをいただきましたついでで恐縮でございますが、先般の台風被害の関係についてお伺いをいたします。  十九号を初めとした台風による多くの被害者にお見舞いを申し上げるわけでありますが、その被害額が七千億を超えて、昨今なかったような最大の被害でございました。天災融資法、激甚指定等御決定をいただいたとけさ伺っておりますけれども、ぜひその速やかな事務処理、対応というものをお願いいたしておきます。  また、これらはあくまでも緊急、応急措置でございまして、特に今回の被害は、リンゴ、ミカン、カキ等一年でできるような果樹じゃございません。数年あるいは十年以上かかる作物であります。また、林業におきましては四十年、五十年といった関係から、やはり短期的な対策、応急対策ではなくて、長期的な営農、営林が安心してできていくような長期対策、これを早急に考えていただきたいと思っておるわけであります。  また、台風被害によりまして、昨今、私も買い物が趣味でありますが、野菜不足の観点から値段が大変上がってきておるのを実感いたしております。毎日食べております重要な食品、栄養源である野菜の高騰というのは台所また国民生活に大きな影響を与えておりまして、殊にこれから年末年始を控えまして、どこの御家庭でも大変心配をしておられると思いますが、どのような対策また見通してございましょうか。
  224. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 台風の被害でありますが、天災融資法の発動あるいは激甚災害法の適用がきょうの閣議で決定をされました。十一月の十九日に公布、施行されることになっております。今後、被災農林漁業者に対して一日も早く融資がされるように県並びに関係機関を指導していきたい、こう思っておるところであります。農地・農業用施設や被災森林等について、早期復旧も可能な限り迅速に対処してまいりたいと思います。  果樹被害への長期的対応につきましては、被災果樹の管理等に関する技術指導に努めているところであり、これらの結果を踏まえて今後とも、果樹農業の振興に資する観点に立って検討をいたしてまいりたいと思いますし、この農林漁業者の経営再建等に万全を期してまいりたいと思います。中長期的な展望ということでもありますが、当面急ぐものに手をつけさせていただいて順次その対応もとってまいりたい、こう考えております。  野菜の方でありますが、長雨、日照不足、台風もございましたが大変な被害であります。ホウレンソウ、ネギ等の青物類を中心に市場への入荷数量が減少いたしておりまして、総じて高値で推移をいたしておるところであります。農林水産省としては、今後の野菜の安定供給を確保し価格を安定させるために生産出荷団体による出荷の前倒し、これはキャベツ、大根でありますが、そのほかに野菜供給安定基金による緊急輸入、これは御案内のように台湾産のキャベツ、あるいは契約野菜の市場放出、これはキャベツ、白菜、そうしたものの出荷確保対策、あるいは卸売市場関係者に集荷の努力を要請いたしたり、小売店に対する協力の要請もいたしております。一方、病害虫の防除等の技術指導の徹底を図ったり、園芸施設資材の確保、生産対策を内容とする野菜の供給確保対策を実施しているところであります。  今後の野菜の価格でありますが、白菜、ネギ等、台風などによる主産地のダメージが非常に大きかった品目については年明けまで影響が残る可能性がございます。また、キャベツ、レタス、キュウリ、こういう主産地が台風などの影響の少なかった地方にだんだん移ってまいりますので、総じて見れば現在の水準よりも落ちついてくるものと見込まれます。今後とも価格の動向を注視し、機動的に対策を講じてまいる所存であります。  いずれにしても大変な被害で、農家の皆さんにはお見舞いを申し上げると同時に、万全の対策をとってまいりますことを申し上げてお答えにさせていただきます。
  225. 前田勲男

    前田勲男君 続きまして、我が国の景気の情勢についてお伺いをいたします。  午前中も質疑がございましたが、昨今、個人消費、設備投資、住宅投資あるいは車の販売高、在庫の増加、こうした数字は明らかに出ておるわけでありますが、政府の方は底がたいというような御表現をとられておるところであります。しかし、私ども実感としてはまさに国内景気の足取りは非常に重いな、特に地方におきましてその気配が濃厚でありますし、また中小企業におきましても業績の悪化している、低下している感というのは深刻なものが出てまいってきておると私は認識をいたし、また実感を持っておるわけであります。  そこで、公定歩合引き下げをしていただいたわけでありますけれども、しかしどうもこの公定歩合も織り込み済みのような感じすら実はいたしておりまして、今後さらに財政の追加ということを積極的に対策としてお考えをいただく時期が地方や中小企業には少なくとも来ておる、こんな気がいたします。財政の追加になりますと、やはり早くしていただければそのボリュームは少なくて済む。けがも軽いうちに手当てをすれば早く治り、また薬代もかからぬ、こういうことでございますから、どうかひとつ景気対策について格段の配慮をいただきますようにお願いをし、また御所見を伺う次第であります。
  226. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 御指摘ございましたように、いろんな指標をとってみますとかなりばらつきがございます。特に住宅投資であるとか、あるいは自動車の売れ行きであるとか、あるいは企業の収益の問題、在庫の問題、生産の指数、弱気な指標も出ておることもございます。しかし、一方では雇用者数の伸び、そしてそれに支えられます消費というものが基本的にはかなり堅調な姿で推移をいたしておるということもございます。  そういうもろもろのことを考えてみますと、確かにばらつきはありますものの、全体としては拡大のテンポが緩やかに減速をしてきておる。これはむしろ過去における経済の成長のスピードがかなり高かった。したがって、そのことを念頭に置きますとかなり減速感が強いわけでありますが、いわば物価の安定、インフレなき持続的な成長可能な路線ということに徐々にシフトしていくんだ、そういう過程としてとらえているということで我々は認識をいたしておるわけであります一  今後の問題につきましても、例えば雇用者数の堅調な伸び、あるいは昨日も公定歩合の引き下げが行われたわけでありますが、それに先立って市場金利の低下がずっと見られております。昨日の公定歩合の引き下げもそれに対してさらに好影響をもたらしていくことだろうと考えることもできますし、また、今財政面からの景気対策についてお話もありましたけれども、少なくとも政府としては、今世紀中のいわゆる四百三十兆、生活大国を目指し、そしてまた対外関係をも配慮して、これからいわば経済運営として基盤的に非常に大事なそういう公共投資というものが下支えをしていく、かなり長期にわたってそういう姿を当然考えておるわけであります。  したがって、ここで現実の現場感覚からいくと、中小企業においてかなり厳しい人手不足感がやや緩和してきたかな、こういう感じだと思うんですが、今ここで追加的な何らか公共事業をやるとかいうようなことになりますと、かえってまた労働力需給を逼迫させていく、あるいは建設資材の高騰につながっていく、そういうようなことをも考えることができるわけで、基本的には内需拡大を基調とする安定的な経済運営ということがこれから長期的な視点で行われるべきでありまして、基本的に財政の面から今直ちに景気対策をしなければならぬという環境ではないのではないか、このように考えておる次第であります。  いずれにしても、かなり一線の企業家あるいは消費者の心理として懸念を抱いておられる方々も多いわけでありまして、公定歩合の引き下げもそういうような角度から行われたものだと理解をいたしております。これから年末にかけまして、特に御指摘のありました中小企業を中心としてきめ細かな機動的な配慮をしていかなければならぬ、これはまことに御指摘のとおりだと考えております。
  227. 前田勲男

    前田勲男君 続きまして、生活大国の中で一極集中の問題について伺ってまいります。  建設省の住宅宅地供給目標として、今後十年間に七百万戸の住宅建設、これを示されておるわけでありますが、こうしたことは、憂いであれば結構なんですが、東京一極集中あるいは三大都市圏への集中がむしろ加速するのではないかという実は心配をいたしております。三百三十万戸、一千万人もの供給をされるということでございますので、多極分散政策と若干矛盾がないかという心配をいたしておりますが、お教えをいただきたいと思います。  また、地方におきましても、全国で十八県ほどが県の数にして人口が減少しておるようでありますが、こうした県の中にも県内の一極集中というのが起こっております。大体見てまいりますと、その中で特に政治行政機能分野を有する、早く言えば県庁所在地というのが近いんでしょうが、ここへ一極集中して、他方そうでないところは人口が減少しておるという実態がございます。こうした意味から、やはり国、地方レベルの分野での二面の一極集中、これをどう解消するか考えていかなければなりませんので、地方における県レベルの、例えば行政の分散でございますとか、産業誘致のみならず、こうした地方の行政機能というものもあわせて整備をしていかなければならないという気がいたしております。  どうか、そうした観点から、生活大国にふさわしい日本の国土づくりということについての御意見を建設大臣からお伺いいたします。
  228. 山崎拓

    国務大臣(山崎拓君) お答えいたします。  私、建設大臣を拝命いたしまして建設行政について負託の大きさを感じているわけでございますが、多岐にわたっておりますけれども、大別いたしますと、一つは、ただいまお話がございました宮澤政権の目指す真に豊かさを実感できる生活大国づくりということが一つでございます。それからもう一つは、四百三十兆円に上ります公共投資基本計画の遂行の中心的な役割を果たさなければならないということでございます。それからもう一点は、多極分散型の均衡ある国土発展を図っていくということだと思っております。そういう基本的な目標を持ちましてこれから建設行政を取り進めていく決意でございますので、御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと存じます。  そこで、具体的に御指摘のございました、大都市地域の住宅宅地供給目標七百四万戸を掲げているが、これが一極集中を加速することにはならないかという御心配でございます。  この点につきましては、この計画は、大都市法に基づく供給基本方針といたしまして策定されたものでございまして、今後十年間の住宅宅地の供給に関する基本的な事項を定めたものでございます。一極集中を助長することがないように、多極分散型国土の形成を目標とするいわゆる四全総を踏まえて策定されたものでございますから、人口分散型のフレームの中でこれが策定されているということでございますので、御懸念のないようにこの計画は地方圏における地域の活性化も十分配慮しながら取り進めてまいりたいということでございます。  次の御指摘の点は、地方拠点都市の重点整備をどのように考えているか、これが二次的な一極集中の弊害を招かないかという御指摘ではないかと受けとめました。  これは、私自身が九州福岡の出身でございまして、なるほど御指摘のような点はあるのではないか、そのような感想も持ちました次第でございますが、まず第一に、地方拠点都市をつくりまして地方に人口吸引力を持たせるということは非常に重要なことではないかと思います。そのことが新しい一極集中を招かないように、当該都市の育成が周辺の市町村を含めた地域全体の成長を支えるという考え方に基づいて取り進めてまいりたいと思いますし、また、地方拠点都市以外の市町村につきましても、ナショナルミニマムを確保する。例えば下水道は、未着手の市町村のほとんどが人口五万未満でございますが、千九百もあるという実態もございまして、生活大国を目指しまして社会資本整備を強力に進めるという、その中で地方対策を十分に行ってまいりたいと存じます。
  229. 前田勲男

    前田勲男君 APECからお帰りをいただきました渡部通産大臣にお伺いをいたします。  大変御苦労さまでございました。APECについては先ほど外務大臣からも伺っておりますので、別の観点でお伺いをいたします。  生活大国を実現していくために、今日まで日本政治、産業政策そのものも生産サイドに立ってきた仕組みであるとよく言われております。しかし、これからの時代は需要者、消費者を重視した体系に転換をしていかなきゃならない、こう言われておるところであります。生産重視型から消費重視型への転換を進めなきゃならない。国民のまさに要求であり、また外国からも指摘をされておるところでもあります。果たしてそれじゃこれをどのように実現していくのか、具体的にどう取り組むのか、どういうイメージを描いたらいいのかというのはなかなか難しいと思っております。  そこで、消費者重視の政策、消費者サイドに立った行政の仕組み、行政というものをどのようにお考えになっておるか、お伺いをいたします。
  230. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 前田委員に御答弁を申し上げる前に、委員長初め委員皆さんにお礼と感謝を申し上げさせていただきたいと思います。  大変重要な予算委員会の中、APECに出席をお許しいただきまして、極めて重要な会合で、各国の日本に対する要望、また我が国立場等を主張してこの会議を成功のうちに終わらせることができましたことを心から御礼を申し上げます。  今、前田委員からお尋ねのありましたとおり、まさに戦後日本経済は急速な進展を遂げておるにもかかわらず、何か国民としては、経済は豊かになった豊かになった、こう言うけれども、おれたちの毎日の暮らしはそんなに豊かになってないんじゃないか、こういう実感があることは私ども承知しており、まさに宮澤内閣の生活大国というこのスローガンが、この国民のニーズにこたえていこうとする決意のあらわれであろうと感じております。  私どもは具体的に、これは内外価格差の是正、公的規制や取引慣行の見直し、それから消費者教育、啓発と情報の提供、年間千八百労働時間の達成などに積極的に取り組み、また、我が国の産業、企業においては、内外経済環境の変化や国民の価値観、ニーズの変化を踏まえて、単に国際競争力のある強い産業を目指すのではなくて、生活者、消費者の立場をより重視した産業を目指して積極的に対応してまいりたいと存じます。
  231. 前田勲男

    前田勲男君 通産大臣から御答弁をいただきましたが、この行政、通産省の仕組みの中もすべて業種別によって局が分かれておる。まさに生産者側の行政機構になっておるわけでございまして、これについてもう御答弁を求めませんが、今後お考えをいただいてまいれたらとお願いいたしておきます。  さて、国土の均衡ある発展、これはもう当然のことでありますが、道路網の整備につきましてお伺いをいたします。  地域振興活性化、一極集中の是正は道路に尽きると言っても過言ではございませんが、高規格幹線道路から市町村道に至るまでの道路の整備、これが極めて重要であります。地域住民の政治に対する、あるいは生活に対する要望ということになると、常に地方ではトップになるということであります。  そこで、豊かな国民生活の実現をするためにも、高規格幹線道路一万四千キロ構想を早く実現していただきたいという願いがまずございました。どのようにお進めをいただくか。また、この高規格幹線道路と一体となって機能する地域の幹線道路を今後どのようにお進めをいただくか。  また、全国各地域で最近たくさんのプロジェクトを計画され、また推進されておる最中でございまして、このプロジェクトにも道路というものは密接な関係を持っておるわけでございます。こうした観点から、高齢化社会を迎え、社会の活力の心配をされる前に、道路整備の緊急な要求があると理解をいたしております。  また、昨今、地方道の国道昇格について非常に全国各地から熱心な陳情があるわけでありますが、五万キロの枠を見直していただきたいという願いを持っておりますし、その時期でないかと思っております。ぜひひとつ均衡ある国土の発展という観点からも、半島や山村、道路網の整備のおくれた地域の道路網の整備についての御決意、お取り組みを建設大臣にお伺いいたします。
  232. 山崎拓

    国務大臣(山崎拓君) お答えいたします。  一万四千キロ高規格幹線道路の早期完成が必要であるという御指摘でございますが、そのとおりだと存じます。多極分散型国土の形成、地域社会の振興と活性化の推進を通じまして、先ほど来申し上げておりますような生活大国、豊かな国民生活の実現を図るために努力をしてまいりたいと思っているわけでございます。  この高規格幹線道路の整備につきましては、御案内と存じますが、現在五千三百八十六キロメートル供用した段階でございます。二十一世紀初頭までに御指摘の一万四千キロメートル全線の完成を図ることといたしまして、その途次になりますが、西、暦二〇〇〇年、平成十二年までにおおむね九千キロメートルを目途に、第十次道路整備五カ年計画最終年度であります平成四年度、来年度でございますが、おおむね六千キロメートルの供用を図るべく、その整備を積極的に推進いたしておるところでございます。  次に、その際、地方の振興、活性化を促進し、均衡ある国土構造の形成を図るべしという御指摘がございました。これまた、そのとおりでございまして、ただいま申し上げました高規格幹線道路網の整備とあわせまして、これらと一体となった質の高い幹線道路網を整備することによりまして、地域の交流基盤を整備し、各地域における疲興計画、ただいま先生のお話のありました振興計画の支援を進めてまいりたい。そして、都市や地域の連係によりまして自立した広域的な交流圏を形成してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。  次に、地方道の国道昇格の問題について御質問がございました。五万キロメートルの国道の枠を見直すべき時期に来ているのではないかという御指摘でございます。  現在の道路網長期構想は、基本的には昭和四十二年、今から申しますと実に二十四年前にできました第五次道路整備五カ年計画策定時に提案されたものでございまして、一般国道の長期的な整備目標を五万キロメートルに定めているのでございます。その後、我が国のGNPは三倍になっておりますし、自動車保有台数は五倍になっております。車社会の進展は著しく、車はまさに生活の足となっているのでございます。特に地方の生活は車に全面的に依存している状況でございます。  一般国道は幹線道路の約十分の二の延長でございまして、全交通量の約三分の一を担っております。今後とも国道の役割はますます増大していくということは間違いありません。このような状況のもとで魅力ある地域づくりを目指しまして、国道網の規模拡大と整備促進に対して、先生のおっしゃるとおり、強い期待がありますことを十分に認識いたしております。  そこで、建設省といたしましては、このような社会経済の変化や国土政策上の要請を踏まえまして、道路審議会にも諮りながら、将来の国道網の規模や質について検討を進めてまいりたい。先生の御意向を十分体しまして検討を前向きに進めていく、そういうふうに申し上げておきたいと存じます。
  233. 前田勲男

    前田勲男君 ありがとうございます。ぜひよろしくひとつお願いを申し上げます。  続きまして、均衡ある国土の発展の観点から一例として伺いますが、その中に関西国際空港等の建設の問題もございます。一期工事をできるだけ早くお願いしたいということはこれは当然のことといたしまして、特に現在の一期工事の計画は滑走路一本でございまして、事故また横風等の強い場合、二十四時間空港として日本では一つの国際空港となるわけであります観点から考えますと、非常に不安感がございます。  また、今アジアの各地で、世界のハブ空港を目指して、韓国、香港、シンガポール、たくさんの拡張計画、空港計画がございまして、関西国際空港も国際ハブ・スーパー空港として、あるいはアジアの拠点にならなければならない、こんなつもりで取り組んでおるわけでもございまして、そういう観点からすると、全体構想をぜひ進めていただきたい、確定していただきたい。  十五日の産経新聞を見ますと、その前段でございますボーリング調査、なかなか反応は厳しいというようなことも報道されておりますが、ぜひひとつ全体構想の実現に向かいまして、運輸大臣、格別な御配慮、また御答弁は結構でございますが、総理大臣、大蔵大臣の御協力もお願いをする次第であります。
  234. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 簡潔に答弁させていただきます。  全体構想につきましては、さきの航空審議会の中間取りまとめの趣旨を体しまして積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  今御指摘になったような、ボーリング調査が云々というお話でございましたけれども、現在大蔵省と折衝を行っております。大変対応は厳しい情勢であることは率直に言いますけれども、平成四年度予算において何としてもこのボーリング調査費を獲得したいという形で、まさに二十一世紀に向けた拠点空港として整備を図ってまいります。
  235. 前田勲男

    前田勲男君 続きまして、総理のおっしゃる品格ある国ということでございますが、ただいままでの御論議を通じて大変私どもも理解をしてまいりました。  そこで、品格のある国といいますと、国際的な使命、貢献しなければならない責任、こうしたものは当然として、やはり文化や学術の薫り、芸術の薫りの高い国でなきゃならぬ、こう思います。我が国の文化、芸術の振興をぜひひとつ文部大臣にお願いをいたして、要望だけいたしておきます。時間がちょっとございませんので、せっかくでございますが申しわけありません。  続きまして、最近我が国の中で奉仕の精神、奉仕活動、ボランティアということが非常に叫ばれておりまして、住みよい人間社会をつくるためにボランティア活動というのが脚光を浴びてきております。これは、地域社会の形成に大いに寄与してくれることでもありますし、今後ふえてまいります余暇の活用にとって大きな部分を占めることにもなるのではないかと思います。また、ボランティアに参加をされた皆さんのお話を聞くと、この参加が自己を高めて、またみずからの生きがいをも高める、こうした評価もいただいておるところでございまして、なかなか今後の我が国にとって大事なことではないかという気がいたします。一時に、人口の急激な移動や、また家庭そのものが核家族化をいたしておりますし、生活の変化によって、東京砂漠などという言葉もございますが、地縁、血縁とは離れて孤立した人生、孤立した生活、孤独な人生を送っておられる方もたくさんあられる。また、ときに悲惨な例を新聞にも見るようなこともございますが、人々の生活が個々ばらばらになってしまって社会的な連帯というものが薄い状態で行われますことは、日本人の心から潤いやゆとりを奪うばかりでありますし、これからの高齢化社会に向けての福祉、また青少年問題など社会問題を引き起こすことにもなりかねない。こんな観点から、ボランティア活動に対する期待というのはますます大きなものがあろうと思っております。  そこで、このボランティアに対するこうした環境から、参加をしたいという希望者も大変ふえてきておることも事実でございますが、さて参加をするとどこへ行っていいかわからない、何からしていいかわからない、こうした条件整備というのも整っておらないという声もあります。  ニューヨークタイムズでございましたか、二十一世紀はボランティアリズムによって開かれるという特集号がございました。ボランティア活動は、崩れていきそうなそういう危険のある共同社会、日本人の連帯感というものを再構築し、また世界的にも再構築して人間性に根差した温かい社会をつくる、そうしたかぎの一つであろうと思っておりますし、欧米先進国では重要な社会的な位置を占めておる、これはもう御承知のとおりでございます。  そこで、総理にお伺いいたしますが、こうした日本のボランティア活動に対してどういう評価、位置づけをされていくのか、またどのように政府としてサポートをしていただけるか。また、文部大臣に伺いますが、青少年の教育の場にこれからも何らかの形でこうした手法を導入していっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。  また、思い起こしますとちょうど二年ほど前ですが、カリフォルニアの大地震がございました。この救難、復旧にボランティア活動がなければどうなったろうかというような、このボランティア活動に対して大変評価をされた経過があることも御承知のとおりでございまして、こうしたボランティアに対する取り組み、環境整備をどうお考えになるかお伺いをいたします。総理並びに文部大臣、そして自民党のボランティア研究会の会長もなさっております羽田大蔵大臣にあわせてお伺いいたします。
  236. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘になりましたカリフォルニアの地震の際でもそうでございましたし、我が国でも消防団のようなものがございますので、ボランティア活動は高齢者のためだけのものではむしろないのでございますけれども、しかしお尋ねの中心はやはりそうであったと思います。  そういう意味では、ボランティア活動は、ただ社会が禅益するばかりでなく、活動に従事せられる人の生きがいでもあり、また健康でもあるわけでございます。今後高齢化社会になる、しかし高齢者が元気でいらっしゃるということが当然期待され、また予期されますので、ボランティア活動のための、厳格な意味ではありませんが、しかし技術指導でありますとか、それからそういう方々を受け入れるための条件、そういうものを整備することによって社会も禅益いたしますし、ボランティアの方々も禅益をされる、そういうふうな施策が大事と存じます。
  237. 鳩山邦夫

    国務大臣(鳩山邦夫君) 先ほどの文化のお話は答弁不要ということではありますけれども、前田先生におかれては、超党派百五十名から成る国会映画議員連盟の事務局長として御活躍の由でございまして、文化に対する造詣が大変深いとまことに御高名でございますから、どうぞ今後ともに文化、芸術等に御支援をいただければありがたいと思います。  ボランティアの問題につきましては幾つかの側面があろうかと思いますが、一つは小中高等学校におけるボランティア教育という観点がございまして、これは主として道徳や特別活動を中心に指導しておりますが、新しい学習指導要領ができ上がっておりまして、小中高で平成四、五、六と実施をしていきますが、新しい学習指導要領では、いわゆる社会奉仕の精神を涵養するという観点で内容の一層の充実を図ったところでございまして、ここに学習指導要領を読み上げることはできませんからお渡しをいたしますが、小中高すべての学習指導要領の中でボランティアあるいは奉仕ということの重要性を列記してあるわけでございます。  また、奉仕等体験学習研究推進校というのもございまして、例えば香川県の多度津町立四箇小学校では地域のひとり暮らしの御老人との触れ合い活動をやっておるとか、いろいろな成果が上がっておりますので、また資料がありますのでお届けいたします。  もう一つは、小中高の生徒という観点ではなくて、いわゆる我々が申し上げている生涯学習という観点で、青少年がどういうボランティア活動をするかという問題がございまして、これも大変重要なことで、文部省では生涯学習ボランティア活動総合推進事業というものを設定いたしまして、ちなみに平成三年度は五千二百万円の予算でございまして、これもボランティアバンクヘ登録をするとか、そういういろいろな事業が含まれております。  なお、世の中にはボーイスカウト、ガールスカウトを初めとして、数多くの社会教育団体がございまして、そうした団体もまた奉仕活動、ボランティア活動にまことに熱心でございますので、そうした団体を育成することも重要な柱の一つだと考えております。
  238. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 今、私の名前も挙げていだだいたんですけれども、前田議員が大変この問題に熱心で、またみんなをリードしていただいておりますことに対して、心から敬意を表したいと思います。  今お話がございましたように、やはり社会というものはお互いが助け合うあるいは手を差し伸べるということが大切でありまして、また今この領域もただ福祉というだけでなくて、教育の面ですとかあるいはいろんな技術をお互いにかし合うというような面ですとか、また海外ですとかいろいろな分野に発展しておりまして、私ども聞きますと、およそ二千万人ぐらいの方がこれに参加されておるということでありますけれども、いずれにしましても、こういったものがさらに啓発されること、そして今お話がありましたように、やはりどうしてもリーダーですとかそういった皆さん方の研修、そういったものも非常に重要であろうと思っておりますので、今後とも私どもとしても本当に活動できるような場がつくれるようなためにひとつ努力をしてまいりたい、かように思っております。  ありがとうございます。
  239. 前田勲男

    前田勲男君 大変心強いお話を伺いまして、ありがとうございます。また、財政の方もよろしくお願い申し上げます州  こうしたお考えのもとでございますが、若干このボランティアについて現状を申し上げて、もう一度認識を新たにしていただきたいと思います。  先ごろ、南米のペルーで日本の青年海外協力隊の隊員が反政府ゲリラの襲撃に遭いまして、残念ながら亡くなられておりまして、大変痛ましい事故が発生をいたしました。現地に残っていた隊員また家族の帰国はもう既に行われておるわけでありますが、この亡くなられました青年協力隊の隊員の方に対して国は一体何をしたかということになると、私の知る範囲でもほとんど何もしていないというのが実は現実であります。この現実を踏まえて、このボランティアに対する国の取り組みというものを、青年協力隊のペルーで亡くなられた隊員の命をむだにしないためにも、ひとつ政府挙げてお取り組みをいただくことを望むものであります。こうしたことで国際貢献、品格ある国づくりということも世界の中で理解をされていくのではないかなという気がいたしておりますので、あえて申し上げた次第であります。  もうそろそろ予定の時間も参りましたが、二十一世紀に向けましてこうした百年に一度あるかないかという世界史的な変化の中で、日本がどのような責任を持ち、どのような役割分担を明確にしていかなきゃならないか、今質疑をもってお示しをいただいたと私は思っております。この質疑に示されました崇高な我が国の目標の実現に向けまして、なお一層総理初め皆様方に御尽力を賜りますようにお願いを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  240. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で前田君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  241. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、太田淳夫君の質疑を行います。太田君。
  242. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理、最近の世論調査の結果が出ておるわけでございますが、宮澤内閣が発足したときにこの世論調査が行われました。これを見ますと、やはり総理リクルート事件との関連、関与のことは約六四%の人が問題である、こういうように意見表明をされているわけです。  最初に、この結果につきまして総理はどのようにお考えでしょうか。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、私自身が本会議でも申し上げましたように、深く反省をいたしておる出来事でございます。そして、こういう間違いを二度と起こしませんよう一生心を戒めてまいるつもりでございますが、国民においてもそのことについてのそういう御批判を当然のことながら持っておられる。私がそのような決心を今後どのように実現していくかをごらんになっておられるであろうと思います。
  244. 太田淳夫

    太田淳夫君 官房長官はちょっと今お見えになりませんけれども、先ほど資料提出につきまして、もう何年も経過しているのでというようなお答えがございました。しかし、この世論調査に示されておりますように、リクルート事件というものはやはり国民政治に対する不信感というものを大きくこれは助長したわけでございます。今この結果にあらわれておりますように、もうぬぐい切ることのできないような大きな不信がその当時には巻き起こったわけでございます。  ところが、今回の内閣あるいは自民党の役員につきまして、先刻も同僚委員からもいろいろと指摘がございましたように、リクルートあるいはロッキード事件の関係者の方々が主要なポストにつかれておるわけでございますが、やはりこれに対しましても国民の多くの皆さんは、宮澤総理は果たして政治改革やあるいは政治倫理の確立に真剣に取り組むことができるんだろうか、こういう不信を持ってみえると思います。その点にどのようにお答えになりますか。
  245. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような方々が過去の御自分の不行き届きに対して私と同じように反省の気持ちを述べておられます。そして、去る二月の総選挙において信任を得てこられる。恐らくこれは有権者において、もう一度過ちを犯さないように改めて努力せよという御意思と受け取っておるのでございますが、そういう前提に立ちまして、長い間の経験を持ち識見を持たれ、また能力を持っておられる方々が、おのおの適材が適所につかれるということは私は大切なことであると考えてまいったわけでございます。
  246. 太田淳夫

    太田淳夫君 私が今質問しましたのは、政治改革やあるいは政治倫理の確立に果たして宮澤総理が真剣に本腰を入れて取り組むことができるだろうか、そういう疑問を国民皆さん方は持ってみえるけれども、それにどうお答えになるかということです。
  247. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこで、これは一人一人の政治倫理の問題を申し上げましたが、もとよりそのような政治倫理が保たれますような制度、保たれにくいような制度、いろいろございますので、制度の改革も必要であると考えたわけでございまして、それが先般、政治倫理政治資金また選挙区等々に関しまする政治改革について、国会に三法案を提出して御審議をお願いいたして廃案になりましたので、衆議院におきまして各党の協議が行われるようになったという、こういう経緯でございます。
  248. 太田淳夫

    太田淳夫君 真剣に取り組むかどうかということは、あなたが政治生命をかけて、例えば海部前総理政治改革に政治生命をかけると言ってそのとおりのような結果になってしまったわけですが、宮澤総理の一年をめどとおっしゃるのは、そのように政治生命をかけてあなたがおやりになるようなあれがあるのかどうかということ。議会の経過を聞いているわけではありません。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これも所信表明で申し上げたところでございますが、海部前首相が情熱を燃やされたその後を受け継ぎまして真摯な気持ちを持ってこの政治改革を、しかもできるだけ早い時期に実現をさせていただくように努力いたしたいということは過般所信表明でも申し上げましたが、内政における第一の緊急の課題と存じております。
  250. 太田淳夫

    太田淳夫君 どうも余りぴんときませんけれども、午前中問題になりましたあのリクルート事件の三点セットのとき、宮澤総理はこういうことをおっしゃっておりました。リクルート三点セットの提出については、一つは将来にわたっての先例となる。あるいは二番目はプライバシーの問題があります。三点目は自由経済の問題があるので検討させていただきたいということをおっしゃっておみえになって辞職されたわけですね。今回、提出を一応決意されたということは、この三点について総理としてはもうクリアされたと、こうお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和六十三年にそのようなお答えを申し上げたところでございます。プライバシーの問題でありますとかあるいは自由経済の問題でございますとか、確かに問題は今日も私はあると存じますけれども、そのとき十分でございませんでした資料のうち多少整ったものがございますので、実は先ほど申し上げましたように、この委員会におかれまして適当と思われる方法をお指図くだされば最善を尽くして努力をいたしますと、このように申し上げましたのもそういったような意味合いでお願いを申し上げたわけでございます。
  252. 太田淳夫

    太田淳夫君 先ほど同僚委員の質問で、委員長がいろいろと後で裁定をしてくださるということでございますので、委員長にこの点についてはお任せをしておきたいと思います。  それでは次に、外交の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。  総理、国際関係についてお伺いしたいと思うんですけれども、総理はよく品格のある国家ということをおっしゃいます。国際的にはやるべきことをきちんとやるということだと思います。これはPKOももちろんその一つでございますけれども、軍縮への貢献、あるいは相手国へのODAの実施、あるいはさきの世界大戦における反省と不戦の誓い、そういうことによって近隣諸国との信頼関係を強化するとか、あるいは国際災害救援の実施をする。いろんな方途はあると思いますが、総理が描かれている国際貢献、国際協力というのはどういうことでしょうか。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国は戦後、国際的には援助を受ける国というところから出発したわけでございますけれども、その後国力が回復をいたしまして、やがて援助を与える国になりました。また、我が国軍事力で国際平和に貢献ができないということもございまして、いわゆる経済援助ということが我々の国際貢献であるということは、国民の間に余り抵抗がなく受け入れられてまいったと思います。  しかし、そのようなことが、一昨年のベルリンの壁以来の世界の激変、昨年の湾岸戦争によって我々が求められた財政支援のほかに、なお汗を流さなければならないのではないかという国民的な意識の高まりがございまして、それが御審議をいただくことになりましたPKO法案になっておりますわけでございますが、そのような物質的ばかりでなく人的な面においても、殊に国連を中心にして平和に向かおうとしております世界の平和秩序の構築のために、これは南北問題も含めまして貢献をすることが我が国に与えられた今や責務であるというふうに認識いたします。
  254. 太田淳夫

    太田淳夫君 きょう報道された国連の非公開文書、これが記事に大きく出ておりました。この非公開文書の意味あるいは性格、これはどういうもの、ですか。
  255. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  本日、一部の新聞におきまして報道されましたこの文書でございますけれども、PKO活動におきましては国連の司令官は、PKO要員の行動、活動の規範といたしまして標準行動規範あるいは服務規律、英語でスタンダード・オペレーティング・プロシージャーズ、略してSOPと呼ばれておりますが、国連司令官はそういうSOPというものをつくることになっております。国連は最近、多くのこのSOPの共通点をまとめまして、ひな形でございますか、モデルとしてのSOPというものを作成いたしました。本日報道されましたのは、このモデルとしてのSOPでございます。
  256. 太田淳夫

    太田淳夫君 これは報道によりますと、国連から各国のPKO担当者に対して配付をされているということでございます。もちろん外務省にも来ていると思いますが、国会に提出できるでしょうね。
  257. 丹波實

    政府委員(丹波實君) この書類につきましては、外務省としても入手いたしております。本年十月の時点で、念のため外務省から国連当局に対しまして、日本国会から資料要求があった場合に提出してよろしいか問い合わせいたしましたところ、国連側から、本件文書は専門的、技術的な国連の内部文書であるので、日本国会に提出されることは差し控えていただきたいという回答が来ております。
  258. 太田淳夫

    太田淳夫君 これからPKO法案について国会でもいろいろと審議が始まろうとしているところでございます。私たち公明党もこのPKO法案につきましては賛成という立場でおりますけれども、かつて自衛隊を公明党が合憲と認めました。あるいは原子力の平和利用の点から原子力発電所、これも認めてまいりました。今回のPKOの問題についても、私たち公明党としましてはそのとき以上のいろんな論議というものを党内でやってまいりました。これは並み大抵のことではございません。    〔委員長退席、理事前田勲男君着席〕 日本の私たちの同僚あるいは後輩の人たちを一人ともそういうような戦場と思われるようなところに派遣するようなことは、これは私たちは賛成するわけにはまいりませんから、相当党内でも論議してきたわけです。  この報道を見てまいりますと、武器の使用につきましては、私たちが一応合意点に達してきつつありますところのPKO協力法案に比べますと、この国連の規則というのは相当な広範囲まで使用することが認められているわけですね。ですから、従来の政府の説明と食い違うところがあるんじゃないか。そうなりますと、これは大変な問題になります。私たちは、今申し上げましたような過程を経ながらこの問題については相当論議をして、国際貢献のためには、平和貢献のためには公明党としては賛成していこうと、今そこまで来ているわけでございます。  我々の願いとしても、これは国連がそういうようなことを言ったとしても、政府としてこれにきちんと話をして国会に提出をすべきじゃないか、こう思いますが、どうですか。その点の武器の使用の範囲についての食い違いがあるのかないのか、国会に提出をすべきだということ、どうでしょうか。
  259. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 申しわけありません。事実関係の問題がございますので、私から答弁させていただきたいと存じます。  国連の文書それからPKO活動の過去の慣行を通じて、次のようなことが申し上げられるということを従来から御説明申し上げてきております。  それは、PKFに参加する場合には要員は武器を携行することができます。しかし、その国連の文書または慣行によりますと、その武器は自衛のためにのみしか使用はできない。その自衛には次の二つのことが含まれる。一つは、要員の生命を防護するとき。二つ目は、国連平和維持隊としての任務が実力により阻止されるのに抵抗する場合。しかし、日本の場合、このPKFに参加していって第二番目のケースで武器を使用するという場合には、これは憲法上の問題に触れるおそれがあるであろう。あるかもしれない。したがって、日本としては第二番目のケースについては武器は使用しないということをいわゆる五原則の第五番目の原則として掲げておりまして、それも法案化されております。  そういう形で日本としてはこのPKFに参加する。そういう意味では国連の文書と違いがあるのは当然のことでございまして、まさに私たちは日本憲法という観点からそういう違いをつくって入っていくということでございます。
  260. 太田淳夫

    太田淳夫君 後段は。
  261. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 今、国連局長から説明したとおり、つけ加えることはございません。
  262. 太田淳夫

    太田淳夫君 資料を出すかどうか。
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、国連局長が話を二つに分けましたものですから、おわかりにくかったんだと思いますけれども、国連はそういう文書を出してきた。しかし、我が国はその二つのうちの後段は受けられない。したがって、受けられないという立場を国連に明らかにした上で我が国は要請があれば協力をすると、こういうことで私は理解をいたしております。
  264. 太田淳夫

    太田淳夫君 もう一つ、後段の部分は。後段の部分、最後、文書の方。
  265. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生の御質問がSOPの文書の国会への提出ということでございましたならば、先ほど申し上げましたとおり、国連事務当局に問い合わせましたところ、それは差し控えてもらいたいという回答が来ておりますので、私たちと今後の国連事務当局との協力関係ということを考えればぜひそれは御理解いただきたいというふうに考えます。よろしくお願いします。  概要につきましてはその範囲内でできるだけの御説明は申し上げますので、書類としてお出しすることにつきましては御容赦いただきたいと思います。
  266. 太田淳夫

    太田淳夫君 じゃ外務大臣、もう一遍答弁してください。
  267. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはもう形式だけの話でありまして、中身は今説明したとおりで、国連の扱いには任務の遂行にも使用できると書いてある。あるけれども、我々は憲法の範囲内でやるんだから、今皆さんの手元に出したような条文でその部分は削ってあります、自分の防衛のためのみと限定してありますということを言っているわけです。だから、国連との約束があるからと。中身はもうわかっている話ですからね、中身は今のとおりですから。だから、形式でなくて実体がそうなので、日本の方は法律でそこを縛ってしまったということでございます。
  268. 太田淳夫

    太田淳夫君 ですから、この文書については、これだけ報道されますと、やはりその存在をめぐって国会でもいろんな論議が今まで繰り返されてきている。わけですね。我々は我々なりの努力をしてきたんだから、政府としてももう一度努力をしなさいよということを私は申し上げているんですよ。どうですか。
  269. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは国際的な約束ですから、中身は私が説明したとおりですから、お見せしたってそれはいいと思うんですよ。しかし、正式に出しましたということをすると公の問題になるから、それは説明をいたしますということです。
  270. 太田淳夫

    太田淳夫君 局長からの答弁もあり、総理からもあるいは外相からも今答弁がありましたけれども、再度確認します。  そういうような文書があるにかかわらず、我が国のPKF参加の基本方針に基づくこのPKO協力については、国連との関係で問題はないと。再度答弁願います。
  271. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これも事情を国連に話をして、満杯の協力はできない、こちらの法律の範囲だけしかできません、それでも結構ですということで法案を提出したという経過であります。
  272. 太田淳夫

    太田淳夫君 後の部分についてはPKO委員会でまたいろいろと論議をしたいと思います。  次に、日ソ協力の問題でございますが、ソビエトのエリツィン大統領が十四日に北方領土に関して声明を発表しておりますけれども、どういう内容でしょうか。
  273. 兵藤長雄

    政府委員(兵藤長雄君) 報道されておりますエリツィン大統領の文書は、北方四島の住民にあてられた書簡という形をとっているようでございます。  この書簡は、北方四島の住民その他からエリツィン大統領に多数のいろいろな書簡が寄せられたことに対するエリツィン大統領の公開書簡であろうかと推察するわけでございますが、その中でエリツィン大統領は、過去の政治から踏襲されてきた問題の解決策を探求することにつき無条件の義務を我々ロシア人は負っている、この平和条約締結への主要な障害となっているのはロシア・日本間の国境画定問題である、この問題をできるだけ早く法と正義という立場から解決していきたいという立場を表明されたものというふうに理解をいたしております。
  274. 太田淳夫

    太田淳夫君 その声明の中で、北方領土問題についての解決に当たってロシアは正義と人道主義のもとに行動する云々のお話がございましたと聞いております。  具体的な解決策というのは明らかにされていないわけでございますが、最終的には今までお話をされていたような五段階解決論には触れずに、近く返還を含めた何らかの具体的な提案を行う前ぶれではないか、こういうように思われるような発言であったと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  275. 兵藤長雄

    政府委員(兵藤長雄君) ソ連邦、あるいは今日では自由主権共和国連邦というふうにしばしば呼ばれておりますが、政府との今までのいろいろな連絡の範囲内では、そういう提案が近くなされるということは私どもは承知いたしておりません。  ただ、ルキン特使がエリツィン大統領の特使として近々訪日される、そのときに宮澤総理大臣あての書簡を託すという話は聞いております。しかし、この任務もエリツィン大統領が十月の二十八日に内外に明らかにいたしました経済改革を中心といたしました抜本的な諸改革の説明ということが主任務であるというふうに承知をいたしております。
  276. 太田淳夫

    太田淳夫君 外務大臣、この日ソ問題についてはもう何回も御答弁されていると思いますが、国際協力の中でやはり対ソ連というのはこれは非常に大きな意味が今あるわけです。  簡単に申し上げますと、我が国の人道的な立場からの支援というもの、これは隣国として当然のことだと思いますけれども、さらにグローバルな視点に立って、また友好関係を深める意味からもより以上の支援の拡大があってしかるべきだと思いますが、その点どうお考えでしょうか。
  277. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これも私が衆議院の本会議で説明をしたんですが、政経不可分ということで今でも変ってはおりません。おりませんが、問題は、全くかたくなに政経不可分だからもう一歩も譲らぬよ、解決するまでは援助は一切だめという見方もございます。ございますが、しかしながらソ連の方の態度も変わり、例えばエリツィン氏の訪日、それによって領土問題は解決済みと言っておったものが未解決で残っているというように変わりましたね。それからまた、今言ったように多少ずつ変化が出ております。  したがって、日本としてもただ一億ドルということでなくて、この間発表したように人道的な面も含めまして二十五億ドル、これは保険と両方合わせての話ですが、そういうものは用意をいたしましょうと。そこで、これは魚心あれば水心だと私が言ったんですが、わかりやすく言ったんですが、文句を言った人もありまして、どういう表現がいいかと言ったら、拡大均衡の友好増進だと。同じようなことではないかと私は思っておるんですが、お互いに友好増進を拡大して、それでこのすき間を少しずつ詰めていこうと、両方から。そういうようなことで、それはそれとしてやらせていただく。  ただ、大型支援とかそういう問題になると、また二つの別な問題があります。一つは、正常化できていないという問題があります。もう一つは、向こうが受け入れ態勢が整っていないという大きな問題がありますから、大型の金融支援ということは考えてはおりません。
  278. 太田淳夫

    太田淳夫君 次に、ウルグアイ・ラウンドでございますけれども、同僚からも再三これは質問がございました。我が党としましても何としても関税化だけは阻止したい、こういう考えでおりますけれども、この交渉が最終的な局面に来ていることは、これはどなたも御承知と思いますが、政府としては、どういう姿勢というよりも、もう米一粒たりとも入れないんだという態度はあくまでも保持していくんでしょうか、どうでしょうか。
  279. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) お答えをいたしますが、一粒たりともという御発言でありますが、今盛んに交渉いたしておる段階であります。再三申し上げておりますように、現状では日本立場というものを申し上げて御理解いただけるように努力をいたしておる、こういうことでございます。
  280. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理としては、これは多くの前提とかあるいは条件があると思いますけれども、関税化やむを得ないという選択、これもあり得るとお考えでしょうか。
  281. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、農水大臣がお答えを申し上げたようなラインで私は考えるべきだと思います。
  282. 太田淳夫

    太田淳夫君 これは、関税化受け入れということは国会決議との関連もありますし、政治責任、こういう問題もあるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  283. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに、国会の御決議が国内産で自給することを基本とするということでございますので、そういうことは大切に考えていかなければならないと思います。
  284. 太田淳夫

    太田淳夫君 改めて聞きますけれども、総理としては、条件闘争ということは日本政府の態度としてはおり得ない、こうお考えでしょうか。
  285. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 条件闘争ということの意味合いがよくわかりかねますけれども、交渉でございますから、おのおのいわゆる交渉をいたさなければなりませんけれども、その際における我々の立場というものにはおのずから基本方針というようなものがある、そういうふうに思っております。
  286. 太田淳夫

    太田淳夫君 今、アメリカとECでは事態の打開のためにいろいろと交渉を進めてみえる。先ほどからのいろんなお話ですと、日本日本としての立場をいろいろと鮮明に主張しているということでございましたが、ドンケル・ペーパーが出てから交渉がされるんだという意見もあるし、ドンケル・ぺーパーが出たときにはもう既に最終段階なんだという意見もいろいろあるわけです。  私は、今までいろいろと折衝をされてきたと思いますけれども、最終段階になって、いろいろと努力したけれども、一生懸命やったけれども、結局だめだった。あのオレンジあるいは牛肉と同じょうに、一生懸命努力したけれどもだめだったんだ。結局そのツケはだれに回っていくかといえば、農家の皆さんであり、国民皆さん方になるわけですね。そういうような最終的なツケは農家や国民皆さん方に回すようなことがあってはならない、こう思っているわけです。  ですから、アメリカやECが今真剣になっていろんな問題について地球的に動いている中で、やはり日本政府としてもあくまでもかたくなな態度でなくて、国境的に多少でも広げて、農業の将来あるいは国民皆さん方の生活に資するような方途を考えるべきではないかという意見も最近は随分起こっているわけですね。その点についてどうお考えでしょうか、総理
  287. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 交渉は確かに非常に難しい段階に入っておりますけれども、太田委員が今言われましたことはよく私どもにわかります。おっしゃいますようないろいろなケースをお考えになりましての合意のあるお言葉は十分私ども大事に考えさせていただきます。
  288. 太田淳夫

    太田淳夫君 私が心配しますのは、やはり日本は年内には政治的な判断、決断を迫られるような場面が起きるんじゃないかということを心配しているわけです。  と申しますのは、ブッシュ大統領の訪日が中止になったことは、これは議会対策であります。議会におけるいろんな反論も出るでしょう。あるいは宮澤総理も訪米ということをお考えになっていらっしゃるんじゃないかと思います。あるいは年頭教書の問題もあります。やはり大きなことは、来年は大統領選挙でございますから、日本として年内には政治的な決断、どういうような方向になるか、そういうような事態が来るんじゃないかと思うんですが、総理としてはどのようにお考えですか。
  289. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日米間の関係は極めて大切でございますけれども、私は、この問題は日米間の問題ではなくて、ガットという場の多角交渉の問題であるというふうに認識をいたしております。
  290. 前田勲男

    理事前田勲男君) 関連質疑を許します。針生雄吉君。
  291. 針生雄吉

    針生雄吉君 最近、アメリカのプロパスケッドボールのスタープレーヤーのアービン・ジョンソン選手がエイズウイルスに感染していたと報ぜられて話題となりましたが、彼のような感染者は全世界で四千万人にも上り、発病したエイズ患者数は全世界で少なくとも四十二万人に達しているということであります。我が国でも、本年八月未現在の累計で感染者が三百二十三名、患者数百十三、死亡五十七でありまして、増加の傾向にあるわけであります。  このようなエイズの大流行に直面して我が国はどう対応すべきか、総理にお尋ねをいたします。
  292. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) ことしの八月末における実際の数字は、今御指摘がありましたよりもさらにまた多くなっておると思いますが、それはそれといたしまして、私どもは今後この問題については、非常にこれは国全体の問題として、ただ一つの病気ではなくて、日本の将来がどうなるかというように極めて深刻に受けとめて対処をしてまいりたいと思っております。
  293. 針生雄吉

    針生雄吉君 総理からも一言エイズ問題に対しての御所見をお伺いしたいと思います。
  294. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 既に昭和六十二年に関係閣僚の対策会議を開いて決定いたしましたが、基本的には、この病気についての正しい知識の普及、次に感染源の把握、また国際協力及び研究の推進等、総合的な対策を進めております。
  295. 針生雄吉

    針生雄吉君 国際的にも、感染、発病のいろいろな研究であるとか、予防、治療などエイズ根絶に向けて我が国においても優秀な人材を育てて研究業績を上げて、性教育の面であるとかあるいは公衆衛生の面であるとか、そういう面での人材を育成して世界のために貢献するというのも我が国国際貢献の大きな柱であろうと考えるものであります。この点も鋭意推進をしていただきたいと思います。  時間の関係できょうは詳しくは触れられませんけれども、血友病の治療のために血液製剤を投与された方がエイズウイルスのキャリアになって、そして発病の恐怖におののいているという、そういういわゆる血液製剤による感染者が千五百二十九名報告されておるわけであります。これらの感染者にもエイズと判定された患者さんと同じく特別手当を出してほしいという切実な要望が出されておりますけれども、この問題につきましてはまた時間を改めてお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  296. 太田淳夫

    太田淳夫君 経済、財政問題、いろいろと問題は残っておりますが、次回に延ばしたいと思います。
  297. 前田勲男

    理事前田勲男君) 以上で太田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  298. 前田勲男

    理事前田勲男君) 次に、吉岡吉典君の質疑を行います。吉岡君。
  299. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 リクルート疑惑の解明は、今国会に課せられた非常に重大な課題であります。この問題については、我が党も要求し続けております三点セットが出たのを受けて突っ込んだ質問を行わせてもらうことにして、このことを明らかにした上で本日の質問に入りたいと思います。  ことしは日本が中国侵略を開始してから六十周年、真珠湾攻撃から五十周年という年であり、日本がこの過去に犯した侵略戦争の誤りを根本的に反省することによって世界の信頼を回復する、そういう年にしなければならないと思います。  ところが、総理は、我が党の不破委員長日本が世界とアジアに対して行った戦争は侵略戦争と認めるかどうかという質問に対して、侵略的事実だという言葉でしか答えられなかった。侵略戦争であったと明確に答弁できるかどうか、お答え願います。
  300. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国が過去において、戦争を通じて近隣諸国等の国民に対し重大な損害を与えたのは事実であります。かかる我が国の過去の行為について、侵略的事実を否定することはできないと考えております。
  301. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理は、侵略戦争であったということはおっしゃらない。侵略的事実と侵略戦争ということをどういうふうに区別なさっているか知りませんけれども。  そこでお伺いします。イラクのフセインがクウエートに行った武力戦争は、あれは侵略戦争ですか、侵略的事実ですか。
  302. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 事柄をよく存じませんし、そのような専門的知識を持ち合わせませんので、正確な答えはできません。
  303. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 国連憲章に関しますことでございますので、私の方から御答弁申し上げます。  御承知のとおり、イラクのクウエート侵攻が起こりましたときに安保理事会が決議六百六十号をもちましてこの事態を検討したわけでございますが、その結果、これも御承知のとおりでございますが、国連憲章第七章のもとで、具体的には三十九条というところで、「安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び第四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する」という権限を持っているわけでございます。この権限に基づきまして安全保障理事会はこの事態を検討いたしました。  その結果、六百六十号という決議をもちましてこのイラクの行為、このイラクによるクウエートに対する侵入、たしかインベージョンという言葉を英語では使っていたと記憶しておりますが、を非難し、そのような事態を早く終了させ、昨年の八月二日以前の状態に戻るようにという決定をした次第でございます。
  304. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 宮澤総理、あなたは国際派だとか知性派だとか言われてきました。その総理がイラクのあれを侵略戦争だと言えない、そういうことで政治家が務まりますか。もう一度答えてください。
  305. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま専門家がお答えをいたしたとおりと思います。
  306. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 あなたの言葉で言いなさい。
  307. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員がお答えしたとおりであります。
  308. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 こういうことさえあいまいにしたい総理、これに日本政治、任せられませんよ。  それじゃ、もう一つ聞きます。これは歴史の判定が出ている問題です。ヒトラーがやったことは侵略戦争ですか、どうですか。
  309. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう御質問に常識で答えることは易しいことでございますのですが、国会での問答でございますから、専門家からお答えをいたします。
  310. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 先ほどの私の答弁、決議に沿いまして若干補足させていただきたいと存じます。  先ほど申しましたイラクの問題に関します決議第六百六十号におきましては、先ほどもちょっと触れましたが、安全保障理事会は「国連憲章第三十九条及び四十条の下に行動し」としまして、その冒頭におきまして「イラクのクウエート侵攻を非難する」、そしてその後で無条件撤退その他を決定したわけでございます軌ここで第一項の文言でございますけれども、私今確かめてみましたら、英語の原文におきましては、イラクのインベージョンを非難するという文言になっております。  それから、過去の事例でございますけれども、これはもう先生御承知のとおり、いわゆる侵略の定義、侵略とはいかなるものであるかということは、国際法学の歴史とともにある大変長い難しい問題でございます。戦前におきましても、この侵略の定義を決めようということで何回となく国際的な会議が行われました。その結果、非常に難しいということで結論が出なかったわけでございます。戦後に至りまして、これも御承知のとおり、一九四五年のサンフランシスコ会議におきましてこの国連憲章の案文を協議いたしましたときにも、この侵略の定義を憲章に置いてはどうかというような考えもあったわけでございます。しかしながら、結果的には、この会議の可能性と憲章の目的を超えるのではないかということで、このような定義は設けられなかったということが歴史上ございます。  戦後、国連のもとにおきまして、一九五七年ごろからでございますけれども、十数年かかりましていわゆる侵略の定義というものをまた取り上げたことがございます。今回は安全保障理事会の権限行使の一つの指針、ガイドラインとして、いわゆる侵略の定義というものが一九七四年に採択されたものでございます。この定義の中身につきましては時間がかかりますので省略させていただきますが、そのように侵略の定義というものは大変難しい問題でございます。  ただ、ドイツの行為につきましては、これも御案内のとおり、ニュルンベルク戦争裁判というものがありまして、そこでいわゆる戦争犯罪あるいは平和に対する罪というような考え方が出てきたわけでございまして、そのような考え方に従って裁判が行われたわけでございます。また、東京裁判におきましてもそのような考え方があったわけでございます。ただ、そのような平和に対する罪。というような考え方につきましては、いろいろ例えば罪刑法定主義というような立場等から異論もございましたけれども、歴史上はそのようなことがあった。また、東京裁判につきましては、我が国は平和条約においてその結果を受け入れだというのが経過でございます。
  311. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 侵略の定義を私は聞いたわけではありませんが、ヒトラーの侵略戦争、日本の軍国主義の侵略戦争、これはもう歴史の判定が出たものです。それが侵略戦争だと言えない。その上に、あのフセインのつい最近大問題になった侵略戦争が侵略戦争だと明言できない総理だということになれば、世界じゅうが日本に誕生した総理というのは大変な総理大臣だと、そう思いますよ。それでいいんですか、富澤総理。    〔理事前田勲男君退席、委員長着席〕
  312. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いえいえ、それらのことを常識的に侵略だと言うことは易しいことでございます。私もその常識をあえて排除しようと言っているわけではないのですが、国会における御質問であり、お答えでございますから、侵略戦争かといえば侵略とは何かという定義から申し上げなければならないでしょう。それはやむを得ぬことではございませんか。それを政府委員が申し上げたわけです。
  313. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そういう侵略戦争だということを歴代内閣は言わないできたんです。あなたも言わないできた。国会で何年問題になってきていますか、これが。それが言えないんです。そこが問題です。  そういうことで、日本があの侵略戦争に反省していると、そういうふうに世界が受け取りますか。総理日本は十分な反省をしたと、そうあなたは言う自信がありますか。
  314. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 本年も、当時の海部総理大臣がシンガポールにおかれましてそういう反省を公にしておられます。
  315. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 海部前総理に、私はこの委員会でことしの四月同じ質問をしました。そのときにも侵略戦争だとは認めませんでした。侵略戦争だと認めない日本に対して、いまだに世界は戦争に対する反省が足らない国だと、こう言っています。海部総理の演説で、世界はもう過去を忘れ、許したと、そうおっしゃるんですか。はっきり言ってください。
  316. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一九九一年五月三日、海部総理は、ASEAN諸国訪問時のシンガポールにおける演説において、我が国の過去について反省をいたしておられます。これは公の席でなされた声明でございますので、各国がよく知っておられるところでございます。
  317. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 日本がその演説をやったかやらなかったかでなくて、戦後、誠意を持って過去の侵略戦争に反省を示してきた、そういうふうに責任を持って言えるかどうかということを聞いています。
  318. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう反省を持ちましたからこそ、このような憲法をつくり、軍事大国になることを排し、そして世界の人々のためにいろいろな援助に我々が一生懸命努力をしている、そういうふうに私は思っております。
  319. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 それでは聞きましょう。  戦後の国会論争を振り返ってみますと、A級戦犯を初めとするあの軍事裁判で裁かれた戦争犯罪人は、あれは犯罪人ではなくて愛国者だという論議さえ本会議で堂々と行われております。あなたは戦争犯罪人を愛国者だと思いますか、どうですか。はっきりしてください。
  320. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点も正確には政府委員が御答弁をすべき部分があると思いますけれども、いわゆる東京裁判というものについて、我が国はサンフランシスコの講和会議においてそれを認める立場をとったと記憶しております。
  321. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 愛国者かどうかを聞いているんです。質問に答えてください。愛国者かどうか。
  322. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その方々自身は自分は国を愛しておったと考えておられたかもしれません。
  323. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今の答弁も世界じゅうは驚いて聞くでしょう。そういう答弁だからいつまでたっても日本の戦争責任が問題になります。  最近、オランダの女王がやってこられたときにも問題になった。天皇の東南アジア訪問の際も問題になりました。外務省、この際の発言について、日本の侵略によって被害を受けたことに関する発言が行われております。報告してもらいたいと思います。
  324. 兵藤長雄

    政府委員(兵藤長雄君) 先月、オランダの国王ベアトリックス女王陛下が御来日の際に、十月二十二日でございましたが、天皇皇后両陛下主催の公式晩さん会が開かれました。その席におきましてベアトリックス女王がごあいさつをされましたが、その中の一部に要旨次のような御発言がございました。   不幸なことに第二次大戦の出来事により両国の国民の間に深い溝が生じました。数多くのオランダ国民が太平洋における戦争の犠牲になりました。その中には軍隊の一員として巻き込まれた者もいましたが、十万人以上の民間人もまた何年もの間抑留されました。これはお国では余り知られていない歴史の一章です。多数の我が国同胞が戦争で命を失いました。帰国できた者にとっても、その経験は生涯、傷跡として残っています。その結果、これらの人々はたとえ時が過ぎても、今なお痛みや苦しみに悩まされております。 こういう趣旨の一節がございました。  アジアにつきましては、アジア局審議官の方からお答えいたさせます。
  325. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) お答えいたします。  インドネシアにつきましては、先般天皇皇后両陛下がインドネシアを訪問された折に、歓迎晩さん会におけるあいさつの中で、スハルト大統領よつ以下のような言葉がございました。   過去を思い浮かべて幾分感情的になることは  少なくはありません。しかし、見識を持って過  去の歴史を振り返ると、新たな精神、新たな目  的を持って未来を築くための新しい発想と力が  もたらされます。  議員の御指摘の点は、この発言の部分を指すものだと思います。  以上でございます。
  326. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 このように問題になり続けています。しかも、オランダの女王は、貴国ではこのことは余り知られていないということまでつけ加えて言っているわけです。日本は過去の侵略戦争の責任を忘れているということを言っているわけです。そういうことを言われる状態、これで日本は世界の信頼を回復できますか。日本が名誉ある地位を占める出発点は、こういう侵略戦争に対する明確な反省であり、あの戦争が侵略戦争であったということを認めることだと思いませんか。  総理、もう一度答弁を求めます。
  327. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我々が太平洋その他の地域においてその人たちに耐えがたい苦痛を与えたということについて、我々はそれを反省いたしておることはもう間違いございません。そして、その反省の上に立って、いわば過去の反省をし、そしてこれからの世界の平和、人々のためにどのようにして働くかということを我々は一生懸命今日までやってまいっておると思います。
  328. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今のような抽象的な言葉では世界は許さないということを指摘して、次の質問に入ります。  米の輸入自由化問題です。  これは日本国民が、今、日本政府がどういう態度をとるか注目しているところです。米の輸入自由化が与える影響が非常に大きい問題だからです。  どういう影響をもし自由化になれば与えるか、農水大臣、お答え願います。
  329. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 自由化になればどういう影響を受けるかという仮定の話でありますのでお答えしにくいわけでありますが、我が国の場合は農業に」かかわらず第一次産業は地方が非常に多いわけであります。したがって、地方経済に与える影響というものは大変なものだと考えております。
  330. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 それじゃだめです。農水省事務当局にも答えさせてください。事務当局、あなたが持っている資料で答えてください。
  331. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 米につきまして、仮に自由化されればどういう影響があるかということでございますが、ただいま大臣が申し上げましたように、仮定の問題でございますので私ども具体的な検討はしておりません。  一般的に申し上げられますことは、米は我が国農業の基幹作物でございまして、またこれに関連する産業もたくさんございます。したがいまして、農業生産及び地域経済上極めて大きなウエートを占めているこの稲作に自由化によって大きな影響があるとしますれば、それによりまして米生産にとどまらず関連する産業の所得の減少等、地域経済及び国民経済に大きな影響を及ぼすものと考えております。
  332. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そのことが中心でありませんから総理に一言端的にお答え願いたいのですが、あなたは記者会見でも、それからきのうの衆議院の予算委員会でも、アメリカ、EC、日本がともに譲り合わなくちゃいかぬ、譲歩し合わなくちゃいかぬと語っておられます。この譲歩の中に自由化は入るのかどうなのか。
  333. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 譲歩という言葉は、誤解がございませんように申し上げますけれども、関税関係の交渉は常にお互いに関税率を下げるとかいうことをやるわけでございますから、そういう意味で譲与という言葉を実は使っております。他意はございません。いわゆる米の完全自由化というようなことが我が国として今譲与の中に考えられているかといえば、私はそうは思いません。
  334. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は思いませんじゃないんですよ。あなた自身が語った言葉だから、あなたも言うその譲る中身の中に、自由化はたとえ部分自由化であろうと一切ないと断言できますか。
  335. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会の御決議がございますから、それを尊重してまいる必要があると思っています。
  336. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今、国会決議ということが出ました。これまでの論議でも、従来の所信表明と違ってきちっとした形で国会決議を尊重するということがあいまいであるということが論議になりましたが、あなたは部分自由化に反対する決議も含めて国会決議を貫くということがはっきり言えますか。
  337. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国産による自給を基本とするという国会決議の御趣旨と考えております。
  338. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国会決議について、私の聞き間違いでなければ、参照させてもらうという言葉もあったと思いますが、参考資料にするという程度ではなくて、これを貫くということですか、その点もう一度。
  339. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会の御決議の趣旨を基本とするということでございます。
  340. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理答弁というのは何にもまともに答えない。それが宮澤流の知性なのかもしれませんが、そういう論議をしている余裕はありません。  消費税の問題で一言お伺いします。  あなたは、消費税の税率アップをあなたの内閣ではやらないと断言できるかどうかということについてもあいまいにしています。もう一度私もお伺いします。
  341. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 消費税は、ことしの十月に各党側協議によって成りました改正を実施したばかりでございますので、これを定着させることが今大事なことだと思います。そもそも、この三%の税率を変えるというようなことは、これは国民の御理解がなければできることではありません。私はそういうことを安易に考えておりません。
  342. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 その答弁が疑惑を呼んでいるわけですよ。前海部総理ははっきりと私の内閣では税率アップしないと、こういうふうに言い切っています。あなたもこれも同じように、私の内閣では少なくとも税率アップをしないと言えるのかどうなのか、それを変更するのか変更しないのかということになるわけですが、どうです。
  343. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はそういうことを今考えておりません。
  344. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 海部内閣と同じように、私の内閣ではやらないと言えるか言えないか、言えないなら言えないと言ってください。
  345. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) もうこれは総理からも何回か国会でもお答えしてあるわけでございますけれども、他の税と同様に、これは国会の議決を要するということでございますし、また結局のところ、今後の財政需要の動向ですとか税制全体としての負担のあり方等を踏まえまして、そのときどきの経済社会情勢、こういったものを見詰めながらやっていかなければならないということであります。  いずれにしましても、国民の御理解なしでこれは安易に税率というものはどうこうすぐできるというものじゃないということを申し上げておきたいと思います。
  346. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国会国会で決めます。  問題は、今自民党首脳が税率アップ論を盛んにやっている。そういうときに、あなたが少なくとも我が内閣ではやらないと断言しないことが今国民の間で非常に大きな不安を与えているわけです。調査によっても七割が消費税の廃止ないし見直しを求めている。そのときに、消費税の廃止じゃなくて税率アップが論議になっている。それを我が内閣はやらない、こういうことを言い切れない。その総理答弁をテレビで聞いている国民は、この人の頭の中には将来の税率アップ構想があるなととるであろうということを私は申し上げて、時間が来ましたから終わらせていただきます。
  347. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で吉岡君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  348. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、高井和伸君の質疑を行います。高井君。
  349. 高井和伸

    高井和伸君 連合参議院高井和伸でございます。連合参議院を代表いたしまして、この国会がPKO国会と言われているそのPKO法案についてお尋ねいたします。  連合参議院の議員五名がPKO先進国のスウェーデン、オーストリアヘ行ってまいりました。そして、キプロスの現場で国連平和維持軍の実際を見てまいりました。そういった現場を見てきたとき、私の考えるところは、国民が割れてPKO隊を海外に送ってはいけない、これが一つの結論でございます。  そこで、総理、せんだって朝日新聞の十一月十日付に出ました世論調査の結果、まず、自衛隊参加五八%が反対、賛成が三三%。ある意味じゃ、ざっとで言うとダブルスコアで反対が多い。さらに、憲法上問題があるが五九%、問題はないが二七%、これも大体ダブルスコアで懸念を示しておられます。こういった国民世論が分かれたままPKO隊といいますか、これを海外に派兵することについて、この世論調査を含めて総理のお考えをお尋ねいたします。
  350. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、特定の世論調査について論評することは避けたいと存じますけれども、かなり高度の難しい問題でございますから、設問の方法にもよるであろうと思います。あるいは、場合によりましては私どもの国民に対する御説明がまだまだ足りないのかもしれません。  しかし、PKOというのは、これは一切の武力を用いない非強制、いわば国連の権威と説得による平和維持行動でございますから、それに我が国が参加するということは何にも問題がない、憲法のもとにおきまして心配するような事態はないと私は考えております。
  351. 高井和伸

    高井和伸君 参議院の本会議における同僚議員の質問に対しまして、総理は外国の反応もおおむね良好だと、こういうふうに抽象的に御回答なさいました。  そこで質問いたしますが、総理がそういう反応を受けた相手方の国、そしてどなたがどのようにおっしゃったのか、これをひとつ御回答願いたいと思います。
  352. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 問題は、日本と戦争をやったことのある国が一番こういうものについては神経質であるということは事実でございます。  私は、大臣になる前からもASEAN諸国の首脳者と会ってまいりました。しかしながら、よく説明をいたしますと、それはまあやむを得ないことでしょうという国もあれば、それは大いにやるべきだという国もありました。ただ、その中で、日本だけが独自でそういうことはやらないでください、国連とともにとか、あるいはアメリカと一緒にとかというようなことを言っているところが多かったのが事実でございす。  また、中国、韓国につきましては、これは歴史的な問題もあって微妙な感情もございまして、海外派遣については慎重にお願いしますということでありますから、慎重の上にも慎重にやらせていただきますということでございます。
  353. 高井和伸

    高井和伸君 私の質問に直接的な回答じゃございませんでしたけれども、大体政府のお考えはわかりました。特にスウェーデン、オーストリアヘ行きますと、国論が一致しております。マスコミも野党もみんな一致しております。  そういうときに、総理にお尋ねしたいんですが、今度のPKO法案、三党合意によってできてきております。この法案をつくる前提で、前段階で三党合意に参加しなかった政党への働きかけ、私たち連合参議院が考えます国論が一致したPKO隊にするという線からいきますと、やはり全政党が賛成できるPKO法案でなければいけない、こういうふうに考える。そういう視点から、総理の三党合意に参加しなかった政党への働きかけ、どういうものがあったのか、今からあるのかないのか、そういった点をお尋ねいたします。
  354. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 過去の経緯の説明でございますので、私の方から御説明させていただきます。  昨年十一月に三党合意ができまして以来、本年五月、三党の方から政府に対しまして、この合意を踏まえまして、一つのたたき台となるような中間報告と申しますか、それを作成する要請がございました。これを受けまして政府の方が、本年八月の初めでございますけれども、三党に対しまして基本的な考え方を書いてございます中間報告をお示しした次第でございます。その際、中間報告の内容につきまして、三党以外の政党を初め、各方面に対しましても適宜御説明の機会を持った次第でございまして、貴重な御意見を承った、そういう経緯がございます。
  355. 高井和伸

    高井和伸君 私のお尋ねしているのは、事務的なレベルじゃなくて政治的なレベルでどうお考えなのか。ある意味では国論が割れたままPKO隊を海外に送り出そう、こういう政府の姿勢、先ほどの所信表明においても同じようなことを総理の言葉で聞きました。こういった割れたまま出すということに対する総理の御所見をお尋ねしているわけでございます。
  356. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この三党合意は、沿革的には、昨年の湾岸危機の際に行われました各党の御協議の後を受けたそういう沿革があったのであろうと思います。  したがいまして、そういうことで話が進められたものと思いますけれども、ただいま野村審議官が申し上げましたように、ある程度の成案を得ましたときに各党各会派にそれをお示しし、御意見も承った、こういうことでございますので、決してそこから排除を申し上げたとかなんとかという  ことではございません。昨年来の経緯に基づきまして三党が中巨に話をいたした、こういうことであったろうと思います。その結果を政府案にまとめまして国会において御審議をいただく、そういう経緯になっておるわけでございます。
  357. 高井和伸

    高井和伸君 今後はどうですか、今後の働きかけは。
  358. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もとより、これから現実に御審議をいただく段階になりますと、政府・与党が中心になりまして、各党各会派に対しまして御意見を伺い、あるいは御賛同をお願いするというような働きかけは当然にいたさなければならないことだと思います。
  359. 高井和伸

    高井和伸君 それでは、先ほどテーマになりました非公開文書の中のPKO標準運用字続ガイドラインに載っています一つの言葉が気になります。「最大の支援重大器(二一〇ミリ迫撃砲)」、こういうような言葉が出ております。今度のPKO法案によれば、こういった火器を使うことがあるんでしょうか。
  360. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) これまでの各国が参加しておりますPKF活動におきます武器の実態でございますけれども、これはけん銃、小銃、機関銃、装甲車がほとんどでございまして、中に今御指摘の迫撃砲ないし対戦車火砲といったものまで使われた例があるということではございます。  しかしながら、私どもとしては、法案の中に明定はいたしておりませんけれども、我々の参加する趣旨からおのずから制約もございますし、国連事務総長との協議の上、必要に応じまして実施計画の中で決めていくわけでございます。その際に、過去の例からいたしまして、先ほど申しました小銃、けん銃、機関銃、それから装甲車程度までで十分任務を果たし得るというふうに考えているところでございます。
  361. 高井和伸

    高井和伸君 そうすると、今は使うことはないというふうに聞きますが、さらに今のお話ですと機関銃までという言葉が出てきました。これ以上のものはないんでしょうか、そこを確認させていただきます。
  362. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 繰り返しになりますけれども、けん銃、小銃、機関銃、それから装甲車を全体として常に武器と呼ぶべきかどうかはちょっと議論のあるところかもしれませんが、装甲車も場合により使っておるということが各国の実情でございますので、我が国もその程度で十分任務が果たし得るであろうということを申し上げているわけでございます。
  363. 高井和伸

    高井和伸君 私ども、三党合意におきます別組織ということが合意事項の一つでございました。この別組織が今度の法案の中で私生かされていない、約束が守られていない、公党の約束が守られていない、こう理解しております。なぜそのようになったのか御回答を願います。
  364. 野村一成

    政府委員(野村一成君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、昨年の三党合意におきましては自衛隊とは別組織というふうに記されておりました。その後、政府といたしましていろんな角度から検討いたしましたわけでございますが、PKOにつきましてもあるいは人道的な国際救援活動につきましても、自衛隊が長年にわたって蓄積してまいりました技能、経験あるいは組織的な機能を活用することがこういった業務を実効性たらしめるためには必要である、適当であるというふうに判断するに至った次第でございまして、今回の法案におきましては、国際平和協力本部と申します常設の組織を総理府に設けることにいたしております。  その際、国連等から個々に業務に対する要請がございましたときに、これを受けまして日本政府として協力するという決定を行う都度、その本部におきまして国際平和協力隊というのを組織することになっております。また、国連等の要請の内容に応じまして、必要に応じて国際平和協力隊員の身分をあわせ有しております自衛隊員により構成されております自衛隊の部隊等の参加を得まして、国際平和維持活動等に協力する体制をとることとしております。  そういったのが法案の趣旨でございます。
  365. 高井和伸

    高井和伸君 要するに、自衛隊そのものを使うという理由についての説明でしかなかったわけでございますけれども、それでは総理、自衛隊そのものをやはり国際平和維持部隊だとか協力隊だとかという名称にすっかり変えて、自衛隊じゃなくてなぜ出せないんでしょうか。これは先ほどの世論調査にもありました憲法上疑義があるというところにリンクしてくるわけでございます。せっかくの三党合意が生かされていない、こういった現象について総理の御所見はいかがでございましょうか。
  366. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平和協力活動にもたくさんあると思いますけれども、選挙の監視とか行政は別といたしまして、その最初の方の段階であります文字どおり停戦状態が維持される、そして平和が回復されるという状況におきましては、かなりの専門的な知識が必要でございましょうし、また何といいますか、一人一人でなく一種の隊としての秩序維持というようなものも必要であろうと思われます。そういう意味では、私は、そういう訓練を受けておます自衛隊がやはり一番そういう仕事を効率的に遂行するのに適しているだろう、これを排除して新しい何かをつくるということは実際上言うべくして行いがたいことであろうと存じますので、平和目的さえしっかりしておりましたら、自衛隊の諸君に事実その仕事に平和協力隊として、グループとして当たってもらうことが私は適当なのではないかと思います。
  367. 高井和伸

    高井和伸君 総理の今の御答弁、さして異議があるわけじゃありません。やはり自衛隊の持っておられます軍事的な知識、こういったものがなかったら現場ではやれないという実感を持ってまいりました。しかし、先ほども質問しましたように、東南アジア、近隣諸国の懸念というものもございます。別組織で送ればそういう懸念ももっと減ってくるんじゃないか、これが連合参議院の考えでございます。  したがいまして、自衛隊のそういった経験が必要だから自衛隊をそのまま持っていかなきゃいけないということに私はならない、多過ぎると思うわけです。そのことにつきましてこれ以上のことは言いませんが、そういう実感を持って帰ってきております。そういう意味で、私は先ほどから強く別組織ということを主張し、そのような組織であることが、国民がもっと賛成して海外に送り出せるPKO隊になるんじゃないかと確信しているわけでございます。  続きまして、それでは、私の行ってまいりましたスウェーデン、オーストリアにおける国連平和維持軍、PKO隊の編成状況、具体的にはどのようになっているのかお尋ねします。
  368. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  スウェーデンの例でございますけれども、二千名を上限といたします待機軍制度というものをとってございまして、基本的には全体の九三%ぐらいが兵役を終えた青年、青年が主ですが、の方々がふだんは契約しておるという状況で、いざというときに出てくるという形をとっております。  オーストリアの場合には、国防省の中にやはり国防軍から応募した青年たちの登録ということが行われておりまして、オーストリアの場合には千名ぐらいの要員が通常登録されているというようなシステムになってございます。
  369. 高井和伸

    高井和伸君 もう少し詳しくお尋ねしますが、そういったメンバーをどうやって登録させるのでしょうか。
  370. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 御承知のとおり、北欧のフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークは大体同じ制度をとっておりまして、待機軍制度と呼ばれておりますけれども、将校、下士官は基本的に現役、それから予備役からの応募者から選抜いたしました登録名簿を有しておりまして、通常の場合には普通の職業についております。しかし、国連から要望が来て、いざ出かけるという場合にはそういう青年たちが集まるようなシステムがとられておりまして、出発の前に三週間とか四週間そういう必要な訓練を、北欧各国がそれぞれ分担して訓練所を持っておりますけれども、そういうところで訓練をして出すということになってございます。  オーストリアの場合には、国防軍の中にそういう応募者というもののリストを設けておりまして、そういうものから国連の要請を受けて出すというシステムになってございます。
  371. 高井和伸

    高井和伸君 総理、今のお話の中で余りはっきりしなかったんですが、応募者によって基本的に構成されているということが私聞き出したかった点なんでございます。それが、今のこのPKO法案によりますと、自衛隊そのものを命令によって海外に行きなさいと、これに集中しているわけです。それだけ国民的基盤が弱い。国民から吸い上げてない。単に内閣あるいは政府と自衛隊だけのやりとりで海外にやってしまう。そういう足腰の弱いPKO隊をおつくりになろうとしておられる。非常に懸念している点でございます。  私、キプロスヘ行ってきました。ここで見ましたところは、北側の電力を南側が使う。さらに南側の水源地の水を北側が使うということで、そういった民生部門において、戦火間もないところでいろんな民生のことをかなりやらなきゃいけない。復興、援助というような言葉にもなろうかと思います。ある意味じゃ今の停戦監視というのは、一時的な平和である停戦状態を維持するだけなんですね。  さらに、その先の真の平和をつくる、ピースメーキングというような言葉がございますが、そこへ日本の力を注いだ方がいいんじゃないか。既存の仕組みだけでのPKOという停戦監視、それが中心だけのものに、軍事的なものになぜそんなに力まなきゃいけないのか。私も力んでおりますけれども、そういったところの状況に日本の方向を持っていけないか。    〔委員長退席、理事井上吉夫君着席〕 そうすれば私は国論が一致する、そのように確信しているわけでございます。  私ども連合参議院、非常に各党の政策がばらついて困っております。何とか政府の力によっても一致したPKO隊を世界に出せるように、今後総理の胸の中で大きな夢を描いていただいて、幅の広い国民に腰が据わった、国民みんなが賛成するPKO隊にしていただける努力をこれからしていただけないでしょうか。  最後に、総理の御所見を伺って、私の質問を終わります。
  372. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のことはよくわかりますが、それだけではございませんで、無論もっと普通の意味での平和活動もシビリアンに適するような活動もいたすわけでございますが、今のお尋ねを私承っておりまして感じますことは、仮にそれがいいと申すのではございませんが、昔の我が国のように徴兵制というものがあって、在郷軍人というものがあって、その人たちがあるときに点呼のようなものを受けて、そうして火器の使用もある程度知っている、そういう蓄積がございましたら比較的ボランティアというものが私は募りやすいのであろうと思います。  北欧の国々はそういう背景をやっぱり持っておりますものですから、それができるんであろうと思います。我が国にはそれがないものでございますから、よしあしはともかく、やるとすればやはり自衛隊に頼るということになってまいっておるのではないかと思います。
  373. 高井和伸

    高井和伸君 終わります。
  374. 井上吉夫

    理事井上吉夫君) 以上で高井君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  375. 井上吉夫

    理事井上吉夫君) 次に、勝木健司君の質疑を行います。勝木君。
  376. 勝木健司

    勝木健司君 総理にお伺いをいたしたいと思います。  宮澤総理はこの所信表明演説で、国民一人一人が生活の豊かさを真に実感しながら多様な人生設計ができるような社会の実現を目指したいとして、いわゆる生活大国への道を経済政策の目標に置いておられるわけであります。しかしながら、この生活大国はどのような方法で、どのような内容で実現をしていくのかということについての具体的な手だてが明らかにされておりません。総理が目指すこの生活大国についての具体的なビジョンを国民の前に明らかにしていただきたいというふうに思っておるところでありますが、よろしくお願いします。
  377. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、その対象となります社会資本の具体的なものでございますけれども、下水道、都市公園、廃棄物処理施設、住宅宅地の整備など、交通、通信、国土保全、農林漁業等々の公共投資の中で、国民生活の質の向上に結びつくもの、対象としてはそういうものを考えておりますが、やはり一番中心になりますのは、それは国の公共投資でございますし、今となりましてはいわゆる十カ年計画でございますけれども、それに限りません。地方もございますし、いわゆる第三セクターによるものもございまして、それから住宅につきましては、これは公共投資というよりはかなりが民間自身の投資になるわけでございますけれども、そういうものを総合して充実したいというふうに考えております。
  378. 勝木健司

    勝木健司君 公共投資基本計画についてお伺いいたしたいと思います。  十年間で四百三十兆円の公共投資を実施するということでありますが、これについてもどのような社会資本が生活関連の範疇に入るのか必ずしも明確ではありません。今年度予算でも、設定されております二千億円の生活関連重点化枠に各省庁から一兆円を超すような予算要求が殺到したように、理屈次第ではかなり幅の広い範囲のものがこの生活関連社会資本になってしまうわけであります。総理の言われる生活大国への道で目指そうとする生活関連社会資本の充実とは具体的にどのようなものを想定されておるのか、お伺いをしたいというふうに思います。
  379. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) ただいま総理から申されましたように、まず、生活に直結しやすい下水道であったりあるいは都市公園であったり、そのようなことが先ほど例示をされたわけでございます。ただ、生活大国という中には社会資本の整備ということのみならず、あるいは労働時間の短縮の問題であったり、あるいは通勤地獄の緩和の問題であったり、さまざまなものをその中に含めて表現をしておられる、こう承っておるわけでございます。  その中で、社会資本関係につきましては、これから十年間の公共投資四百三十兆、そういう中で着実に推進していける。ただ、その財源の手当てにつきましては、もちろん毎年毎年の予算編成の過程の中で、建設国債を活用したり地方債を活用したり、あるいは財政投融資、時には民間の資金、そういったものを組み合わせながら資金調達を整えていくという形になっていこうかと思います。ただ、現在長期的な形での資金の割り振りというものを決めておるというわけではございません。
  380. 勝木健司

    勝木健司君 そこで問題となりますのは、将来にわたってこの生活関連重視が貫かれるという保証がないわけでありまして、向こう十年間で六〇%程度高める目標は確かに掲げてあるわけでありますが、この目標達成に九二年度以降、生活関連の特別枠を大幅に増額するなど、各省庁の既得権益を打ち破るような大胆な予算編成というものが必要じゃないかと思うわけでありますけれども、これに対する総理の決意をお伺いしたいというふうに思います。
  381. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これにつきましては、事実問題といたしまして日米間に四百三十兆円といういわば公約ができたわけでございまして、年率六%程度の伸びを確保しなければならないわけでございますが、具体的には平成四年度の予算編成につきまして、従来の生活関連の二千億のほかに、公共投資充実のための緊急措置二千億円を別枠で考えようとたしか財政当局はしておるわけでございます。そのほかに、道路とか河川とかいわゆる五カ年計画というような長期計画がございますので、そういうことからも実現が担保されるようになっております。
  382. 勝木健司

    勝木健司君 財政再建との関係についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  総理所信表明演説では、「再び特例公債を発行しないことを基本として」ということで述べておられるわけでありますが、赤字国債の発行はやらないということで約束をしていただきたいというふうに思うわけであります。  バブル経済崩壊あるいは景気の減速によりまして巨額の税収不足が予想されておる、そして建設国債の追加発行を余儀なくされておる現状の中でありますけれども、この財政再建の旗ということをおろすことなく公共事業費を大幅にふやしていくことが果たして可能なのかどうか、お伺いをしたいというふうに思います。
  383. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 私どもは、ただいま総理からもお答えございましたように、生活関連、これはこれからもきちんとしていかなければならないというふうに思っておりますけれども、今お話のございましたように、そういったものを進めるために赤字公債をほかの方で発行するということについては、これはもう厳に慎まなければならないことであろうというふうに思っております。いずれにしても、百六十八兆円に上ります公債残高、これを累増させるということは私たちは慎みながら進めていかなければいけないということを申し上げておきます。    〔理事井上吉夫君退席、委員長着席〕
  384. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私もやはり大蔵大臣の言われるように考えますので、殊に二〇〇〇年を越えていきますと高齢化社会になりますから、後代に大きな負担を残してはならないと思っております。かと申しまして、公共投資、社会資本の充実をいたさなければなりませんので、やはりそれなりに優先度の低い支出を削っていくという工夫も大事であると思います。
  385. 勝木健司

    勝木健司君 次に、土地政策との関係でお伺いをいたしたいと思います。  この四百三十兆円の公共投資の中身については土地購入代金も含めておられるということでありますので、これは大蔵省は約二割が用地費であると説明をしておられますが、こういうことでは、バブルで上がった地価を前提にいたしますと、生活大国をつくり上げることはとてもできないのじゃないかというふうに懸念されるわけであります。社会資本の整備を兼ねながら二十一世紀に生活大国を目指すためには、地価の引き下げというものが重要になってくるというふうに思うわけでありますが、土地政策についてもお伺いをいたしておきたいというふうに思います。
  386. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 御指摘のとおりでございまして、やはり地価をどうしても抑えなければいけないということで総量規制というものをずっと続けてきております。この規制についても、今時に外すようにというようなお声も方々で実はあるわけでありますけれども、大阪あたりは大分下がっておるようでありますし、また東京も少し下がっておりますけれども、地方にあっては実はまだ下がっていないという実態もございます。そういう面でこれからも十分注意しながら努めていきたいと思っております。
  387. 勝木健司

    勝木健司君 税収の大幅な落ち込みが予想される中で、先ほどもありましたように、消費税率の引き上げというものが取りざたされておるわけであります。  私たち民社党も、この消費税創設の論議の際には、税率アップに歯どめをかけていこうということで、国有地の売却あるいはNTT株の売却等でもっと大蔵省が汗を流すべきだ、努力をすべきだということで要求した経緯がございます。昭和六十三年の十一月十六日でしたか、自民、民社両党で、行財政改革を強力に推進していく、そして消費税率については極力その維持を図るよう努めるという合意をいたしておるわけであります。行革が不十分な現段階でこういう大衆増税というものをするということは、私たちは反対であります。  そこで、宮澤総理は衆参の本会議でも、引き上げについては私の念頭にはない、国民の理解なしの安易な変更は考えていないと答弁しておられるわけでありますが、竹下、宇野、海部などの歴代の総理は、国会答弁で明確に、私の内閣在任中は税率を上げないというふうに答弁しておられるわけでありますから、宮澤総理においても、税率を上げないということを、変更をしないということを言明していただきたいと思うわけであります。
  388. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) この問題につきましては、再三私どもの方からもお答えを申し上げておりますけれども、いずれにしましても、議員立法でこの改正案が本年の十月から実施されておるという現状であります。  政府といたしましては、まずこれを円滑に進めていくということが今私たちに求められていることであろうと思っておりまして、今、消費税についての税率を上げるとかどうこうするということについては念頭にないということを申し上げておきたいと思います。
  389. 勝木健司

    勝木健司君 湾岸協力のための財源確保策としての法人税あるいは石油税の臨時増税とか、あるいは自動車の消費税割り増し税率の六%を延長するというような方針も伝えられておるわけであります。これらの措置は今年度限りの暫定措置ということで、来年度以降も継続するとすれば明らかにこれは増税でありまして、公約違反以外の何物でもないというふうに私どもは思います。  当時の大蔵大臣としての宮澤さんは、この自動車にかかわる消費税の税率を、一律三%の原則にもかかわらず、平成四年の三月三十一日までは三年限りということで六%としたわけでありますので、今総理になってこのときの約束を翻せば、やはり政治家にあるまじき行動だというふうに思うわけでありますし、また、湾岸増税についても前の内閣の約束というものをほごにするということで、これも言語道断じゃないかと思うわけであります。  そういった意味で、この自動車税の消費税率の六%、また湾岸の法人税、石油税増税は延長しないということを、本会議でも同僚議員が質問しましたけれどもはっきりいたしておりませんので、約束をしていただきたいというふうに思います。
  390. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その二つの税がそういう経緯ででき上がったことはよく知っております。御指摘のとおりでございます。  そこで、御質問でございますけれども、今財政当局に聞きますと、明年度の税制改正をどうするかということにつきましてまだ税制調査会等々の御意見も伺っていないということで、作業が全く始まっていないと申しておりますので、今お答えを申し上げるだけの準備ができておらない。どちらと申すのではなくて、事実がそういうことのようでございますので、それで本会議でもそのとおりのことを申し上げたわけでございます。
  391. 勝木健司

    勝木健司君 一たん決めたことはきちっとやった上で、けじめをつけた上で新たな提案をされるのにはやぶさかではありませんけれども、ずるずると財政改革もやらずに増税の道を歩むということはいかがなものかということで、私は約束をしていただきたいと言っておるわけであります。  行政改革についてお伺いをいたしたいと思います。  昭和五十六年の第二臨調がスタートして以来、第一次行革審あるいは第三次行革審まで、時の内閣におきまして一貫して主要課題として位置づけられてきたわけでありますけれども、宮澤内閣は行革に対していかなる基本理念をお持ちなのか、また行革の対象とすべき課題は何なのか、あるいはどのように実施されていくのかということが具体的に明らかにされておらないように思います。先日の所信を聞く限りにおいては、多くの国民も、総理の行革に対する姿勢はこれまでの歴代の総理の中で最も後ろ向きじゃないかというふうに感じられるわけでありますので、行革後退への不安を覚えておるわけであります。  私は、今こそこうした歳出の徹底した見直しと、増税なき財政再建といった行財政改革の基本理念に立ち返る絶好機だというふうに考えるわけであります。そういった意味での宮澤総理の行革に対する基本理念、あるいはどういうことを実施しようとしているのか、お伺いをしておきたいというふうに思います。
  392. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 行財政改革ということで申し上げますならば、財政改革の基本は財政再建、これに尽きます。  行政改革の方は、大きな柱は二つ。一つは、中央から地方へということでございます。これは一極集中排除ということにもつながりますし、国と地方との行財政の再配分ということにもつながります。もう一つの柱は、官から民へということである。それは、いわゆるデレギュレーション、いろんな意味での統制、規制を排除して、そして民間の活力を活用する、こういうことであると思います。
  393. 勝木健司

    勝木健司君 我が国国民が、経済大国でありながら、総理の言われます生活の豊かさを実感できないものの一つに内外価格差があるわけであります。  そこで、許認可行政について、海外でもわかりづらいというような批判を浴びているわけでありますので、前年に比べても百四十件もどんどん許認可件数がふえておる。ほっておきますと、既得権である許認可事項がどんどんふえこそすれ減ることはなかろうというふうに思うわけでありますので、やはり許認可行政の見直しとか行政の簡素化というものが必要不可欠だというふうに思うわけであります。これについてもどういう考え方を持っておられるのかお伺いしたいということと、そしてまた一方では、貿易収支が予想以上の経常黒字を出しておるということでありますから、やはり内外価格差を是正するという意味でも、輸入促進という手法もひとつぜひとも必要じゃないかと思うわけであります。  そういった意味で、海外でブランド商品を買いあさるというようなことは、総理のおっしゃるような品格のある国とはとても言えないわけであります。そういった意味で、いろんな施策は打たれておりますけれども、やはり輸入の入り口のところに問題がありはしないかということで検査、審査の組織の充実とか、そういう業務の迅速化あるいは手続の透明化など、輸入促進のためのさらなる条件整備ということも求められてくるわけでありますけれども、それぞれ御回答をいただきたいというふうに思います。
  394. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 許認可事項は、先ほど行財政改革で私がデレギュレーションと軒しました、まさにそれに当たります。十分進捗をいたしておりませんから、さらに催促をし、勉強をする必要がございます。  内外価格差は、経済企画庁、通産省等で非常に熱心に今までその解消に努めておられるところでございます。お入り用でありましたら、事務当局が御説明申し上げます。
  395. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 内外価格差問題につきましては、消費者重視の観点から、既に政府・与党内外価格差対策推進本部というものをつくりまして取り組んでおるところでございます。  これまでの同本部の決定に基づく内外価格差対策の実施状況を見ますと、内外価格差調査の拡充、大規模小売店法、独占禁止法の改正、輸入促進対策などが推進されておりますし、また各種の公共料金の引き下げ、消費者との懇談会など消費者への情報提供も引き続き行われているなど、内外価格差対策の着実な実施が図られているところでございます。  また、御指摘の公的規制の緩和につきましては、昭和六十三年十二月に閣議決定されました規制緩和推進要綱を踏まえ、着実に実施しているところでございます。  今後とも、消費者本位、国民生活重視の観点からこの問題に一層努力を傾けてまいりたいと思います。
  396. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 委員御指摘のとおり、減少ぎみだった黒字が今年になってふえてきておることを大変心配しておりまして、通産省としては、輸入の拡大を通じた対外不均衡の是正を図るため、製品輸入促進税制、関税の引き下げ、輸入拡大予算及び政策金融の拡充強化、また、ついせんだっては民間企業に対して輸入拡大の要請等をいたしたところでありますが、なお一層努力を重ねてまいりたいと存じます。
  397. 勝木健司

    勝木健司君 終わります。
  398. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で勝木君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  399. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 次に、西川潔君の質疑を行います。西川君。
  400. 西川潔

    西川潔君 短い時間ですが、私で最後でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。  今回も私は、お年寄りのこと、高齢化社会についてお伺いしたいと思います。  日ごろお年寄りの現場を回らせていただきまして、せんだっても奈良の壷坂寺の慈母園というところへ参りまして、目の見えないお年寄りの皆さん方のお話をいろいろお伺いし、勉強してまいりましたが、政府といたしまして、ホームヘルパーの問題、そしてこれからお年寄りの皆さん方に老後をどういうふうにしてあげれば幸せな生活が送られるかということをお伺いしますと、医療と年金と住環境であるということでございます。  そういった中で、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、また最近は介護支援センター、訪問看護制度など、たくさんのことをやっていただいておるんです。その中で私は、やはり国民一体となってやらなければいけないと思うんですけれども、予算要求を見てみますと、平成四年度ですが、ケア実習・普及センター、こう書いてあるんですが、まず、これはどういうものであるかということをお伺いしたいと思います。
  401. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 具体的に申し上げますと、都道府県に拠点となるようなセンターを設置いたしまして、地域住民に対しまして老人の介護の意識啓発であるとか介護の知識、技術の実習を行う、それと同時に福祉機器とか介護機器を展示いたしまして相談であるとか指導に当たろう、こういう趣旨でございまして、御指摘ございましたように、高齢社会というのは国民全体で支える、そういう考え方を広く国民に御理解をいただき、御協力をいただくための拠点にいたしたい、そういう考え方で要求をしたいと思っておるものでございます。
  402. 西川潔

    西川潔君 ただいま部長にお伺いしたんですけれども、本当に行政や保健、医療、福祉、そういう専門家だけに高齢化社会のことをお任せするんではなしに、私はいつもお話をさせていただくのですが、国の行政、地方行政、そしてまた地域の支え合いだと本当に思います。お年寄りだけの問題ではなしに、我々若い人たちの問題でもあると思います。こうして私が安心してここで質問できるのも、私は、双方の親ともう二十四年生活をしておりますが、これは元気で家内と仲よくやってくれるからということだと認識いたしております。  そういう意味で、このケア実習・普及センターを地域の方々と一緒に高齢化社会に向かってぜひおつくりいただきたい、こういうふうに思うんですけれども、厚生大臣、いかがでしょう。
  403. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) そのように私も決意をいたしております。
  404. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございます。実はお金のこともお願いしたかったのですけれども、大臣の御決意、ありがとうございます。  予算書を見ますと、国の六十兆円も七十兆円もという予算からいえば二億そこそこですので、わずかといえばわずかなお金ではございますが、こういうところをつくっていただきますと、本当に地域のお年寄りの方々国民が一丸となって将来の高齢化福祉に喜びと希望が持てると思います。  大蔵大臣、言いただけないでしょうか。
  405. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) お気持ちはよくわかります。また、厚生大臣とよく話したいと思います。
  406. 西川潔

    西川潔君 よく話をして、後でいい答えをいただけるものなんでしょうか。ひとつよろしくお願いいたします。  地域が一緒になってやらなければいけないということで、ここで私は一つ紹介をさせていただきたいことがあるんです。大阪の住之江区というところでございますが、こちらでは大腸がんの検診をいたしております。これは例えば検便の容器を町内の皆さんの手で各家庭へお届けするんです。そして商店街や市場、そういうところにも容器が置いてあるんですが、その検便を耳鼻科、眼科、全医療機関で受け付けてくれるわけです。こうした取り組みによりまして、地域では随分と長生きをしておられる、そしてまた地域の方々が大変助かっているということでございます。  こういうことを踏まえまして、総理大臣、ひとつ地域でこういうことを取り組んでいただくということで御答弁いただけないでしょうか。
  407. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 地域という問題でございますけれども、お年寄りが仮に寝たきりになられましても、やむを得なければ特養ホームになりますけれども、おうちの方の負担にならないように何とかしてホームヘルパーなんかをふやして地域に置いてさしあげたいし、今のような問題もコミュニティーでやっていただくことがやはり私は本当だと思いますので、国なり地方団体がそれをお助けしながら、なるべく地域でやっていただくということが福祉行政が一番手が届くのだろうと思っております。
  408. 西川潔

    西川潔君 ひとつよろしくお願いをいたします。  私は、お年寄りの皆さん方、そしてまたサラリーマンの方、お父さんやお母さんの前で講演をさせていただきまして、最後にいつも聞くんですが、高福祉高負担、中福祉中負担、小福祉小負担、日本ではどれが一番いいと思われますかと、こうお伺いいたしますと、皆さんのお答えは、総理大臣、何だとお思いですか。
  409. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まじめにお答えだったら、やはり高福祉高負担と言われると思います。
  410. 西川潔

    西川潔君 それが、皆さん小福祉小負担とおっしゃるんです。そして、僕はまじめに福祉をやらせていただきまして、皆さんなぜそういうことをおっしゃるんですかと。スウェーデンのようになってもらいたいと皆さんおっしゃるんですけれども、そうすると七〇%以上の税の負担をしなければいけないんですよ、それは私たちは嫌ですと、こうおっしゃるんです。じゃ中福祉中負担はどうですと言ったら、それもなあと。じゃ小福祉小負担でいいですかと言うと、かなりの手が挙がります。それはどうしてですかとお伺いをしますと、皆さん方がおっしゃるのは、税金を少々出してもいいんだけれども、政治家の皆さん方がどう使うか不安である、こういうふうにおっしゃるのです。  宮澤内閣のスタートに際しまして、どうぞこういういい制度をおつくりいただききまして、高い税金を納めても将来安心して高齢化を迎えられるようなお働きを皆さん方ひとつよろしくお願いいたします。  これで終わります。  ありがとうございました。
  411. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で西川君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。     ―――――――――――――
  412. 中村太郎

    委員長中村太郎君) この際、午前の佐藤委員の資料要求について一言、申し上げます。  総理に対する要求資料については、衆議院に提出と同時に参議院予算委員長に御提出願います。また、渡辺外務大臣渡辺郵政大臣及び加藤内閣官房長官に対する要求資料については、一次回の参議院予算委員会開会までに予算委員長に提出できるよう御努力願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会