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1991-11-12 第122回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月十二日(火曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成三年十一月十二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり      ―――――・―――――
  2. 長田裕二

    議長長田裕二君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  渕上貞雄君から海外旅行のため八日間の請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長田裕二

    議長長田裕二君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ―――――・―――――
  4. 長田裕二

    議長長田裕二君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る八日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。浜本万三君。    〔浜本万三君登壇、拍手
  5. 浜本万三

    浜本万三君 質問に入ります前に、二つほど申し上げたいことがあります。  一つは、私は総理と同じ県の出身でございまするし、地域も同じでございますので、宮澤さんのこのたびの自民党総裁就任並びに総理就任に対しまして心からお祝いを申し上げたいと思います。(拍手)  二つ目は、きょう、大臣席に重要な閣僚が二人欠席をしております。これは、宮澤内閣への初めての代表質問でございますので、私はまことに残念に思います。今後このようなことがないように、総理に厳重に申し入れておきたいと思います。  それでは、質問に入ります。  私は、日本社会党護憲共同を代表して、宮澤総理大臣所信表明に対し質問をいたします。  まず、宮澤総理政治姿勢について伺います。  宮澤内閣に対しては、経済外交両面に強い久々の本格的な内閣誕生であると、その政策運営期待を寄せる声がある反面、国民の大多数は、一体全体、今回の海部内閣から宮澤内閣への自民党内の政権交代がどうして起こったのか、全くわかっておりません。そもそも、議会制民主主義のもとでの政権交代は、衆議院を解散して国民に信を問うか、時の内閣が行き詰まって総辞職するかのいずれかであります。本来、政権交代衆議院の解散で決着すべきであります。今回の政権交代では、国民に信を問うべき課題は何であったのでしょうか。宮澤内閣海部内閣の何をどう変えようとするのですか。国民はこの点をまず第一に知りたいのであります。御説明願いたいと思います。  こうした意味不明の自民党内の政権たらい回しは弊害のみで、国民不在密室政治などと批判されております。信頼される、品格のある国家を目指すという宮澤総理は、この政治の現状をどう認識しているのか承りたいと思います。  国民はまた、今回の政権交代において、我が国政治が、首相官邸に加え自民党最大派閥によって動かされていることを現実に知らされました。こうした政治の二重の権力構造宮澤内閣になっても改められず、総裁選挙の結果から見ても派閥の合従連衡が変わらないことは明白でございます。権力の二重構造は、政策運営責任所在が不明確になるばかりでなく、政治決断実行を難しくすること必定と言わなければなりません。宮澤総理は、私は決断すると再三公約されたわけですが、本当に実行できる条件があるのか、国民はこの点に強い疑問を抱いております。国民が納得できる御答弁をお願いいたします。  宮澤内閣の当面する課題は、政治改革を初め米の輸入自由化問題など、難問が山積しております。一つ一つ対応は、戦後政治転換点となる重要な意味を持っています。官僚任せでは解決いたしません。しかも、具体的な実行は血の出る痛みの伴う問題ばかりであります。宮澤総理はこれを承知で決断の意思を表明されたと思いますが、どう乗り切るつもりか、お示し願いたいと思います。  あなたは一九八七年の「二十一世紀国家の建設」という政策提言で、自由と公正の旗のもとに、従来までの政策パラダイムを全面的に転換しなければならないと言っておられます。自由と公正は、言うべくして両立が困難であります。例えば、証券・金融不祥事の不公正や、地価高騰で一生働いても住む家も持てない、こうした不公正を具体的にどう改めるおつもりなのか。また、政策基本理念転換とは一体何を指しておられるのか、明確に御答弁願いたいと思います。  宮澤総理政治倫理確立でただしたいと思います。  宮澤自民党総裁誕生を待ち構えていたように、党三役や最高顧問にロッキード・リクルート事件汚染議員が続々と就任されました。政治倫理綱領には、疑惑を持たれた場合みずから真摯な態度疑惑を解明し、責任を明らかにすると決められています。党の要職についた方と宮澤総理御自身も、この倫理綱領に違反してはおりませんか。それとも倫理無視政治総理はやろうというのでありますか、御答弁願いたいと思います。  次に、政治改革についてであります。  政治改革海部内閣政治生命をかけてやり抜くと言いながら、海部内閣は静かに退陣をいたしました。宮澤総理総裁選で、一年をめどに合意を得たいと言われました。そこで、伺いますが、それは選挙制度改正だけを指しているのか、政治資金規制政治倫理を加えた三点セットで行おうとしているのか、いずれなのでありましょうか、お伺いをいたします。一年で決着というなら、選挙制度の改正だけは切り離さないと、まとまらないことは自明ではないのですか。あえて選挙制度にこだわるとすれば、憲法違反現行制度での衆議院議員選挙を繰り返すことになりますが、総理の本当の腹の内を率直に示していただきたいと思います。  そもそも、政治改革リクルート事件の反省を出発点とすべきであります。それを海部総理が小選挙区制にすりかえたことが誤りなのであります。宮澤総理、あなたの仕事は、この間違いをもとに戻すことから再出発をすべきであります。私たちは、倫理法の制定、現行選挙区での定数是正政治資金透明度を高めるための規正法改正を提示しています。これが国民世論なのであります。手順を誤っては、宮澤内閣の二年の任期中でも解決いたしません。手順を戻す決断をこの場でしかと御答弁願いたいと思います。  政治改革国会改革でもあります。国会審議活性化を通じ、名実ともに言論の府としての役割を果たせるようにすることは、議席を持つ我々の責務であります。内閣提出法案参議院先議案件をふやすことももちろん必要でありますが、議員立法をふやすための条件を整備することがより重要なのであります。これには、国会自身の努力は言うに及ばず、内閣協力が不可欠であります。国会への資料提供特別立法をつくり情報の公開が行えるようにしないと、幾ら口政治改革を唱えても前進いたしません。憲法第四十一条を実践し、真の議会政治を樹立するためには、情報内閣独占を改め、国会内閣がともに日本の進路について公平に論議できる基礎をつくることが肝要だと思いますが、宮澤総理総裁の御所見を承りたいと存じます。  次に、経済財政、税制問題で伺います。  まず最初に、現在の景気動向でありますが、昨年秋を境に景気の潮の流れはピークを過ぎ、明らかに下降局面に入っていると言わざるを得ません。企業収益のみならず、景気リード役であった設備投資は落ち込み、個人消費にもかつての勢いは見られません。  しかし、政府見解は今なお、イザナギ景気の五十七カ月を超え、拡大を続けていると楽観的な見方をしておるものがございますが、民間のどの調査機関を見ても、そのような見方をしているところはほとんどありません。ここで景気の判断を誤れば、今回の景気は、上昇局面公定歩合引き下げというアクセルを吹かし、下降局面でブレーキを踏むという過ちを犯すことになります。これでは景気判断を間違えた政策不況などのそしりを免れません。総理景気現状判断政策について、明確な御答弁を願いたいと思います。  また、バブル経済下で、銀行・証券不祥事に代表される企業倫理の欠如、利益中心金万能主義が横行したことはゆゆしい事態であります。国際化時代を迎え、世界に共通する市場競争のルールを確立し、企業倫理と利益の社会還元の精神を実践する規範をつくるべきと考えますが、総理の御所見伺います。  財政問題に移ります。  景気下降局面に入ったことによって、これまでの大幅た税の自然増収は消え、一転して財政は大幅な税収不足が不可避となり、今年度、既に数兆円単位の税収不足が確実な情勢ですが、政府税収見通し補正予算についての見解を伺っておきたいと思います。  また、政府は既に四年度予算査定段階に入っておりますが、一般歳出が三年度予算に比べ二兆円近くも膨れ上がった各省庁の概算要求をそのまま認めることは到底不可能でありましょう。四年度概算要求を、政府はこれからどの分野でどの程度まで削減されるお考えか。今こそ福祉国民生活重点を置き、思い切って東西冷戦終結対応した軍縮予算を編成すべきと考えますが、いかがでございましょうか。  また、景気下降局面にある中で、かつてのような緊縮予算を目指すのか、それとも、この際建設国債削減を中止し、逆にその積極的活用を図るのか。積極財政論者と言われる宮澤総理財政運営方針と、四年度予算のどこに重点を置こうとされているのか、総理の御見解を求めたいと思います。  宮澤総理は、昭和六十二年の自民党総裁選の折、国民資産倍増計画を提唱されました。それは、宮澤総理の師と言われる故池田元総理所得倍増計画を連想させる極めて耳ざわりのよいキャッチフレーズではありますが、一歩踏み込んでそれをどう実現するのかという具体的政策になりますと、ほとんど政策らしい手段や方策が見えてこないのであります。総理は、積極財政論者の立場から財政の活用を説かれておりましたが、必要な財源はどのようにして調達するお考えか。また、日米構造協議で合意した今後十年間に支出される四百三十兆円で、総理が提唱される国民資産は倍増するのですか。また、生活大国をつくることができるのですか。明確な御答弁を願いたいと思います。  税制問題について伺います。  バブル経済下での地価及び株価の異常な高騰という資産インフレは、それを持つ者と持たざる者との間に耐えがたいほどの格差を生み、土地を持たない一般サラリーマンにとっては一生、家も持てたいという新たな階層社会の出現すら起こしかねない状況をつくり出しましたが、バブル経済か去った今も、国民の間の格差は何ら解消されていないのであります。来年度から実施される地価税が、この格差解消や公平の確立にどの程度の効果を上げることができるのか、国民は大きな関心を寄せております。  問題は、地価税評価基準引き上げに合わせて相続税評価基準引き上げが既に決まっておりますが、これに関連して相続税減税検討課題として浮上している点であります。私の考え方では、相続税減税は、資産配分機能を通じた平等社会構築理念に逆行するものであると思います。格差解消期待できないと考えますが、それでも相続税減税を行うお考えかどうか、総理のしかとした答弁を求めたいと思います。  また、一方では、税収の落ち込みが確実になるにつれ、消費税率引き上げ乗用車消費税六%の据え置きが取りざたされておりますが、こうした措置はこれまでの議論の経緯からして認められるものではありません。もしこのようなことを行うとすれば、宮澤内閣に対する国民の信頼は全く得られなくなることは明らかであります。消費税税率引き上げは絶対に行わないと、国民に明確に御答弁を願いたいと思います。  加えて、消費税に関しては、先月の下旬、自民党が一方的に税制改革協議会協議を事実上打ち切りましたことは、見直し努力を放棄したもので、甚だ遺憾と言わざるを得ません。特に、飲食料品の課税については、我が党としても喫緊の課題考え、この見直し協力を惜しむものではありません。消費税見直し宮澤内閣としてどう取り組むお考えか、お伺いをいたします。  次に、ガットウルグアイ・ラウンド農業交渉について伺います。  米の開放問題でドンケルガット事務局長案が十一月中にも提示され、米の完全自由化意味する例外品目なき関税化が盛り込まれる可能性が強いと報じられております。国内産米で自給する国会決議の尊重を歴代内閣は繰り返し答弁してまいりましたが、米国とECの対応、予想されるドンケル案によっては、日本は極めて苦境に立つことになります。  国際派を自任する宮澤総理は、総裁選びでも米の開放へ向けた方向転換に含みのある発言をされており、関係者は、国内の食糧、農業を犠牲にしながら外交優先の路線を歩くのではないかと不安に駆られておるのであります。自民党内では米の開放への方向転換のにおいを濃くされておるようでありますが、我が党は絶対に反対であります。政府は、これまでの方針を堅持して国会決議を尊重し、食糧安全保障を守るためにも毅然たる態度をとるべきであります。総理の御決意を伺っておきたいと思います。  次に、台風被害対策について伺います。  本年は台風の上陸が多発し近年にない被害が発生しており、被害者の方には心からお見舞い申し上げたいと存じます。  台風による被害総額政府調査で一兆一千億円と史上第二位の被害額に上っており、青森のリンゴなどの果樹農家や、風による倒木、塩害などの山村への被害、米や生鮮野菜等被害のほか、カキの養殖など水産業者被害も深刻であります。政府は、災害対策本部を設置し、金融、共済等の支援の実施を指導しておるようでありますが、天災融資法の発動や激甚災害法の適用を速やかに実施するとともに、被災農家が今後継続して営農活動ができるよう、きめ細かな生業対策を講ずることは当然であります。さらに、厳島神社等の多くの文化財被害も見落とせません。これら災害対策復旧対策補正予算を今すぐ提出すべきであります。総理並びに農林水産大臣国土庁長官から御答弁を求めます。  次に、高齢者問題について伺います。  出生率が低下し、高齢化のスピードが加速しており、二十一世紀には高齢者世紀に突入いたします。これに対し、我が国高齢者対策は、今世紀末までのゴールドプランしかなく、二十一世紀まで生きる人々に不安を与えております。まず、総理は、高齢化率二五%を超える社会高齢者がどのように生きていくのかを示していただきたいと思います。  戦後四十六年経過いたしましたが、今日の繁栄をもたらしたのは、ほかならぬ今の高齢者と、これから高齢者になる人々であります。これらの人々に不安を与えるようでは、政治はないに等しいと思います。財政事情深刻化が予想されている折、福祉切り捨て高齢者切り捨てが始まるのではないか、二重、三重の不安を訴える声が高まっておるのであります。宮澤総理福祉に対する方針を明確にしていただきたいと思うのであります。  次に、部落問題について伺います。  同和対策の基本である同対審答申から二十五年も経過しておる今日、なお約一千カ所の部落が未指定のまま放置されており、指定されておる四千六百三カ所にあっても、全日本国和対策協議会調査によっても、地対財特法成立時の残事業量はその六割程度にしか進捗していないと言われています。同和地区高校進学率では全国平均との格差が六から七%、大学進学では全国水準の五〇%程度という状況にあります。戸籍謄本等請求書横流し事件パケット通信による差別事件の発生など、生活、教育、結婚、就職など万般にわたって今なお多くの課題が存在しておるのであります。  地域改善対策協議会において、近く意見具申なるものが出されることになっています。これまで政府が再三にわたって答弁されておりますように、地対協の結論を尊重されることはもちろんのこと、部落差別の根絶のために取り組まれることを強く望みたいと思います。加えて、この問題は長い歴史的経過を伴う複雑な社会問題であるだけに、この際、政府部落差別の実態を正確に把握され、根本的かつ総合的に対処されることを強く求めたいと思います。  次に、宮澤総理が目指す外交について伺います。  豊かな外交経験世界に通用する国際派、これが宮澤総理の評価のようであります。最近のあなたの著書「戦後政治の証言」にも述べられているように、戦後から今日に至るまで、あなたは日本外交をごく近い距離から、時には直接の当事者として関与してこられました。それだけに、今の日本にとって何が問題であり何を改めるべきかについては、他のだれよりもよく承知されておるはずであります。今、一国の指導者となられて、総理は、国民に確かな外交の青写真を示し、かじ取りをしていかなければなりません。まず、外交に取り組む理念方針を明確かつ率直にお願いをしたいと思います。  今、国民の大きな関心一つは、宮澤総理我が国国際貢献策について、最終的にどのような答えを出すかということであります。  冷戦構造が崩壊し、総理みずからが言われるように、何世紀に一度という世界史的な変革期にあって、我が国もまた、新しい国際秩序構築にどのように参画していくのか、それが厳しく問われておると思います。こうした状況の中で、海部政権は、平和憲法第九条という日本世界に誇り得る崇高な原則をねじ曲げてまで、国連平和維持活動への自衛隊派遣を強行する法案を提出したのであります。  宮澤総理、私は、あなたがこの選択を何のためらいもなく受け入れることができることは到底信じられなかったのであります。これまで総理は、事あるたびに非戦の思想を強調し、過去の過ちを繰り返してはならないと訴え、自衛隊を海外に出せないことははっきりしているという趣旨を述べられておるからであります。  また、先日の中央紙世論調査でも、PKOへの自衛隊派遣反対憲法上問題とする者が六〇%にも上っておることを考えますと、今こそ総理は、あらゆる困難を排除して、憲法第九条の擁護と平和主義理念を信念を持って貫き、PKO協力法案は直ちに白紙撤回すべきであります。そして、指摘されたように、世界我が国に最も期待する財政的貢献を厚くし、同時に、汗も流す貢献として、非軍事、民生、文民の枠組みを堅持した平和国家日本にふさわしい人的貢献のシステムを、広く国民のコンセンサスを得てづくり上げることであります。多くの国民は、そうすることを宮澤総理期待していると私は確信いたします。総理の賢明なる御答弁を求めたいと思います。  ところで、ヨーロッパに始まった脱冷戦と新しい国際秩序構築動きは、今やグローバルなものとなりました。アジアでは、朝鮮半島の両国がともに国連に加盟し、カンボジア和平現実のものとなりつつあります。中東でも、アラブとイスラエルが初めて和平のテーブルに着きました。こうした動き総理はどのように見ておられますか。また、我が国はどのような貢献が可能であり、それをどう実行していかれるおつもりか、お尋ねをしておきたいと思います。  こうした動きと連動して、アジア太平洋地域における平和秩序構築に向けた関心が高まっております。我が国地域の一員として、その地位と能力にふさわしい最大限の役割を果たすことは一申すまでもありません。その際、かねて我が党が主張しておりますアジア太平洋安保会議といった信頼醸成のための機構を設置し、外相定期会議の開催を呼びかけ、あるいは、政治経済、文化、環境等広範な分野にわたる官民の交流を推進するため、我が国がそのための場所、人、資金などを提供したらいかがでしょうか。総理の御見解を賜りたいと思います。  我が国にとって特に重要な問題は、日ソ関係北方領土の問題及び朝鮮民主主義人民共和国との関係正常化問題であります。脱冷戦後の世界にいまだに残る冷戦の遺物、その二つとも我が国にかかわり、地域安定化阻害要因となっておるとすれば、何としても早急に解決しなければなりません。日朝交渉は、核査察李恩恵の問題などがあって、はかばかしい進展が見られていませんが、大事なことは、原則は主張しつつも、より大きな目標に向かって事態を打開する外交努力を重ねることであります。総理の御認識を伺っておきたいど思います。  他方、北方領土返還期待がこのところ大いに高まっております。かつて宮澤総理は、ソ連北方領土を返すときはそれがソ連にとって何らかの意味で得になるときであり、そのような状況日本がいかにしてつくり上げるかが問題解決のかぎであると記されていました。また、最近は、北方領土の現居住者の不安を解消する必要性を指摘されましたが、領土返還を実現する上で今何が最も必要なこととお考えでしょうか、お答え願いたいと思います。  また、ソ連に対して本格的な金融支援を行う用意があるかどうか、どのようにすればそれはより効果的なものになり得るのか、あわせてお尋ねをいたしたいと思います。  総理、あなたの所信に核廃絶決意が述べられていなかったことについて、地元有力紙コラム欄で、広島はがっかりしたと報じられています。そこで、核軍縮について総理にお伺いをいたしたいと思います。  米ソ両国軍縮交渉は、これまでに中距離核戦力欧州通常戦力戦略核兵器で成果を生み、さらに今回、戦術核兵器大幅削減を表明いたしました。本格的な核軍縮時代の到来と評価できますが、総理の御所見を伺っておきたいと思います。  核軍縮をさらに進め、核を廃絶することは人類の悲願であり、その実現は唯一の被爆国日本の使命でもあります。そこで、広島市長は先ごろ国連軍縮会議広島開催を訴え、国連から前向きの回答を得ておりますが、これを実現し、世界に向かって核廃絶宣言をすれば、それが米ソ両国に与えるインパクトは非常に大きいものがあると思います。核軍縮への総理決意と、広島軍縮会議開催についての御見解を承りたいと思います。  米ソ核軍縮の進展は、アメリカの核の傘を前提にした我が国防衛政策の抜本的な見直しをも迫るものであります。  防衛庁は、アメリカ核抑止力に変わりはないと言います。しかし、これまで本格的に取り上げることのなかった海の軍縮に道が開かれ、在韓米軍戦術核兵器の撤去が伝えられ、加えて極東ソ連軍現実的脅威が減少していることを考えれば、当然我が国も、現行の中期防衛力整備計画見直し防衛費削減自衛隊再編縮小などに着手すべきではありませんか。そうすることによって、韓国政府が表明したような、日本防衛力攻撃的性格に変貌しておるといった不安を取り除くことができるのであります。また、こうして生まれた平和の配当は、貧困、地球環境など、人類に対する新たな脅威に振り向けることが可能となります。総理の御答弁を求めたいと思います。  さて、宮澤総理日米関係を重視する日米関係基軸論者であると承知しますが、このたびの直前になってのブッシュ大統領来日延期は一体どうしたことなんでしょうか。アメリカの対日姿勢総理は疑問を感じませんか。しかも、米国議会ではスーパー三〇一条の復活の動きがあり、米国国民の間では、日本経済的脅威とする感情が対ソ脅威感を上回ると言われております。総理は対等、平等な日米関係構築を目指すとのことでありますが、可能でありましょうか、お答えを願いたいと思います。  また、戦後一貫して我が国安全保障を基礎づけてきた日米安保体制は、今、地球的視野からの見直しを迫られております。新たな時代に対応した安全保障体制を形成することが今の日本の直面する最大の課題であると言っても過言ではありません。これからの日米関係をいかに再構築するのか、新内閣責任は極めて重大であります。総理考え方伺いたいと思います。  ことしは真珠湾攻撃から五十年に当たります。しかし、同時に、それはアジアに対する侵略戦争の開始から六十年でもあります。そして、今日アジア人々は、世代が交代したにもかかわらず、日本戦争責任をいまだ厳しく問い続けております。この現実に我々は目を閉ざしてはなりません。真剣にこれを受けとめ、改めてこの機会に戦争の反省と不戦の誓いを明確にし、近隣諸国の理解と信頼を得る行動をしなければならないと思います。  ドイツが心がけたように、国民の一人一人が過去の歴史を深く心に刻み、絶えざる反省とそれを具現化する行動をとることによって初めてそれは可能となるのであります。こうした見地から、我が党は戦争責任に関する国会決議を検討しております。政府としても、この機会に何らかの行動をとるべきであると思いますが、総理の御見解伺います。  ODAについてでありますが、我が党は早くから、ODA基本法を制定し、ODA実施の公開性と透明性の確保、援助行政の一元化などの措置を講じるよう訴え、具体的に国際開発協力基本法の提出を検討しております。この際、改めて、経済協力に対する基本方針と我が党の考え方に対する総理の御見解をお述べいただきたいと思います。  近年大きな高まりを見せておる地球環境問題は、今人類が直面する最大の課題であります。地球の温暖化、熱帯雨林の破壊など、どの問題をとってもそれは地球的規模の取り組みなしに解決することはできません。来年六月には、ブラジルで地球環境サミットが開かれます。総理はこれにみずから出席されて、地球環境問題に対する明確な指針を持って我が国責任を明らかにされたらいかがでしょうか。特に、その際、我が国への批判が強い熱帯雨林の破壊について、例えば伐採の防止計画を示し、植林などのための日本版環境マーシャル・プランといったものの創設を提案することも考えてみるべきであります。総理の前向きな御答弁期待するものであります。  以上をもちまして、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 冒頭にまことに御丁寧なお言葉を賜りまして、恐縮をいたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日の本会議に二閣僚が海外出張のため欠席をいたしましたことにつきまして御指摘がございました。実は、韓国のソウルにおきましてAPECめ関係閣僚会議が開かれておりまして、アジア各国から外務大臣、貿易大臣、また米国から国務長官等々の出席がございまして、我が国にとりましてもアジア各国にとりましても非常に大事な会議考えまして外務大臣と通産大臣が出張をいたしましたわけでございますが、たまたま本院における代表質問の第一日になりまして、御不便をおかけいたしましたことを申しわけなく思っております。そのような事情でございますので、どうぞ御理解を賜りたいと存じます。  浜本国対委員長から、政権交代に際しての私の心構えとでもいうべきものについてお尋ねがございました。  所信表明でも申し上げたことでございますが、国際社会がただいま新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりを迎え、激変をしつつございます。また、それに関して我が国最大限の貢献が求められるような時代になりました。また、国内におきましては、国民の間の連帯感あるいは安定感の基盤とならなければならない公正な社会の形成、また国民の一人一人が生活の豊かさを実感できる生活大国とでも申しますような国づくりが時代の要請になっておると思います。私は、このような新しい時代の要請に受け身でなく積極的に対応して、国民の御理解と信頼にこたえてまいりたいと考えておるわけでございます。  また、海部内閣政治改革に心血を注がれましたが、私といたしましてもその志を継ぎまして真摯に取り組んでまいりたいと思っております。  このたびの政権交代がいわゆる衆議院解散を経ずに行われたということにつきまして、私どもの自由民主党の中で、政権政党といたしまして総裁の公選が開かれた形で行われました。私は総裁に選出されまして、過般、首班の御指名を受けたわけでございますが、これも議会制政党民主主義のルールにのっとったものであると考えておりまして、国民はこのことは多分御理解をしていただけるものと考えております。  次に、政治改革についてお尋ねがございました。  政治改革の実現は、現下の緊急課題でございますし、また時代の要請であると考えております。事柄の性格上、各政党の消長にもかかわります。また、議員個々人の身分にかかわる問題を含んでおりますので、政治家としていろいろな痛みを伴うことは避けがたいとは考えますが、改革実現に向けまして全力を挙げて真摯に取り組む決意でございます。各党各会派の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。  公正な社会ということとの関連において、証券あるいは土地問題について例証土してお触れになりましたが、御指摘がございましたので、その点にまずお答えを申し上げておきます。  政府といたしまして、さきの行革審の答申及び国会決議証券金融不祥事件に関してございました。それを尊重いたしまして、証券金融市場の透明性、公正性の向上及び信頼確保に向けて全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。  それから、いわゆる地価の問題につきましては、地価高騰の結果、国民の住宅取得が困難になる、あるいは資産格差の拡大による不公平感の増大等々、我が国社会に深刻な影響を与えていることは御指摘のとおりでありまして、私もこの問題を社会の公正の欠如という形でとらえております。このような事態に対処いたしますために、土地取引規制、土地関連融資の規制、あるいは土地税制の見直し、住宅宅地供給の促進等々、各般の施策を実施しつつございます。まだまだ十分ではございませんが、多少の成果が見えてきておりまして、引き続き強化をしてまいろうと思っております。  次に、政治倫理綱領に関しましてお尋ねがございました。  私自身、いわゆるリクルート事件につきまして、自分の不行き届きから国民の皆様に御迷惑をおかけしたことは、政治家として深く反省をいたしております。同じ誤りを繰り返さないように、今後の政治活動を通じまして一生戒心を怠らない決意でございます。なお、これにつきまして、今後の国会での御論議につきましては、私として最善の努力をしておこたえをしてまいる考えでございます。政治的には、過般の選挙におきまして、心を新たにもう一度努力せよという有権者の信任を得たものと受けとめております。  なお、私の同僚各位も、このことにつきましては同じような心境、戒心をしておられるものと信じております。政治的に信任を受けてきておられますので、高い見識と有能な才能を持っておられるこの人々が所を得て活躍されることは極めて大切なことであるというふうに考えておるところでございます。  それから、選挙制度改正につきまして、一年をめどにというのはどういう意味であるかというお尋ねがございました。  政治改革基本には、もとより政治倫理確立がございます。また、あわせて制度面においても、金のかからない、政治活動や政策を中心とした選挙が実現できるような仕組みとすることが必要でございます。  そこで、政治改革協議会におきまして各党間の御協議に当たりましては、先般の国会で廃案となりました政府提出の三法案をたたき台にしていただきまして、現行制度をめぐるさまざまな問題を抜本的に解決し得るような具体的な結論を、おおむね一年を目途に出していただけるように念願いたしておるわけでございます。政治改革実現のための方策につきましては、既に政治改革協議会において御協議が進められておりますので、その手順等も含めまして各党間で御協議を尽くしていただき、実りある合意を得ていただきますように期待をいたしております。  次に、議員立法との関連でお尋ねがございましたが、議員立法をふやすということにつきましての条件整備の問題、これはもとより国会におきまして一義的には御検討をせられるべき事柄であると考えますが、政府といたしましても、行政に対する国民信頼を確保するという観点から、行政改革大綱等に基づきまして、閣議決定によりまして行政情報の公開を推進してまいりました。今後ともそのような努力を続けていく考えでございます。  経済政策についてお尋ねがございました。  御指摘のように、経済現状につきましては、住宅建設が低迷しているなど拡大のテンポは確かに減速しつつあるという御認識は、私も同じ考えを持っております。他方で、有効求人倍率等はさして影響を受けておりませんので、いわば完全雇用はほぼ維持されつつある、インフレなき持続可能な成長に移行する過程にあるであろうと思われます。しかしながら、その間の変化というものはやはり国民生活にも企業にも微妙な影響を与えるものでございますので、この際の経済の運営については極めて注意をいたさなければならないと思います。適切かつ機動的な経済運営に努めまして、内需を中心とした持続的な成長に努めてまいらなければならないと思っております。  金融の問題につきましても御指摘がございました。  私の見るところでは、この経済現状につきましては金融当局も余り違った認識は持っておらないように考えておりまして、従来から長短金利の低目誘導などについて継続した努力が行われております。基本的な認識を一にすると考えておりますので、今後の処置につきましては、なおしばらく金融当局の判断に任せておいてよろしいのではないかと考えておるところでございます。  次に、経済の国際化につきまして、市場競争の国際的なルールということについて御指摘がございまして、私はまさに御指摘のとおりであろうと思います。  我が国経済が国際的な標準から見て公正かつ自由な競争のもとに行われているということは、今回いろいろな事件で国際的にも問題視されたところでございますから、十分に注意をしなければならないところであると存じております。なおまた、企業倫理につきましても、企業の行動が国の内外においてさまざまな面に多大な影響を及ぼすようになっておりますので、社会に対する責任感を強く自覚して行動してもらいますことは、公正な市場経済の維持ばかりでなく、社会の健全な発展のためにも必要なことでございます。この上とも企業の自覚を強く期待いたしておるところでございます。  次に、財政につきまして、平成四年度予算の関連でのお尋ねがございました。  我が国財政は、なお巨額の公債残高を抱えております。そして、現状について申しますならば、かつて税収の増加をもたらしましたような経済的なもろもろの要因が先ほども御指摘のように流れを変えてきておりまして、現時点での税収状況も低調でございます。見通しはなかなか厳しいと考えなければなりません。しかしながら、やがて我が国高齢化社会を迎えることになりますので、その際、現在特例公債などを発行いたしまして将来への負担を残すことは避けなければならないと考えております。したがいまして、まず、あらゆる分野において優先度の低い歳出の見直し、節減合理化に取り組んでいくことが第一に必要であるというふうに考えております。  それから、いわゆる国民資産倍増についてお尋ねがございましたが、私も長いことこのことを唱道してまいりました。  先般、公共投資基本計画が策定をせられました。生活関連分野の充実に重点を置いて着実な実施が行われつつございます。それはいわゆる四百三十兆円の問題でございますが、我が国社会資本はやはりたお立ちおくれております部門が多うございますので、二十一世紀に向けまして、国民生活の質の向上、多極分散の促進など長期的な発展の基礎固めを行いますために、一九八一年から九〇年度までの十年間の実績を大幅に拡大いたしまして、九一年から二〇〇〇年までの十年間の公共投資の総額を四百三十兆円とする計画が昨年六月に策定されたところでございます。  この計画に沿って公共投資をいたしてまいりますと、我が国社会資本の整備の水準はかなり充実いたすものと考えております。欧米先進国を超えるというところまではまいらないかと存じますが、それほど遜色のない水準に近づき得るものと考えておるところでございます。  次に、相続税につきまして、相続税減税をするのかというお尋ねがございました。  先般の土地税制を改革いたしましたときに、土地を持っておるということが税金上いろいろに有利であるということが広く信じられるに至りましたので、そういうことがあってはならないということから、土地の相続税評価の基準の適正化を平成四年から行うこととしたわけでございます。そういたしますと、税率を据え置いておきますと相続税の負担が非常にいびつになってまいりますので、その調整を行う必要があると考えておるわけでございます。もちろん、その際に、御指摘のように相続税資産再配分の社会的な機能を持っておりますので、このことが損なわれませんように、御指摘のように十分に留意をしてまいりたいと考えております。  次に、消費税につきまして、消費税率引き上げをどう考えるかというお尋ねであったわけでございます。  先般の両院合同協議会におきまして、消費税改正が行われました。この改正を定着させたい、それが目下最も重要な問題だと考えております。したがいまして、三%の税率を今どうこうするということは私の念頭にはございません。消費税の税率の問題は、そのときどきの経済社会条件のもとで国民が選択をする事柄でございますから、国民の御理解なしに安易に税率の変更を行うことは考えておりません。  なお、消費税につきましては、先般の両院合同協議会において議員立法改正が行われました。十月から実施されておりますが、飲食料品の問題につきましては本年十月を目途に協議を続けるとなされておりましたが、十月二十三日の同協議会において、各党会派の意見の隔たりが大きく一致は見られたかったというふうに承知をいたしております。  いずれにいたしましても、立法府における御議論の経緯、結果を踏まえながら、先般行われました法改正を円滑に定着させてまいりたいと存じております。  ウルグアイ・ラウンドにつきましてお尋ねがございました。  これは所信表明で申し上げましたとおり、現在最終段階を迎えております。我が用としては、他の主要国とともに、この交渉が年内に成功裏に終結するよう努力を継続いたしております。農業につきましては、各国ともそれぞれ困難な問題を抱えております。我が国の米につきまして、これまでの基本方針のもとに、相互の協力による解決に向けて最大限の努力を傾注してまいる考えでございます。  台風災害につきまして、補正予算との関連の御質問がございました。  先般、全国各地に台風によります大きな災害がございました。謹んでお見舞いを申し上げます。  その関連で、補正予算のことでございますが、補正予算の対象を考えてまいりますと、これから人事院勧告をどう取り扱うかという問題、あるいはいろいろな義務的経費、それに御指摘の災害復旧事業費等たくさんの追加需要がございまして、また歳入面では逆に、先ほども申し上げましたように税収の動向が必ずしもよくないという問題がございまして、歳出歳入面でもう少しいろいろな判断材料をそろえましてから決心をいたしたい。今の段階で補正予算の内容について確たることを申し上げることができない状況でございますが、しかし、いずれにいたしましても、この災害につきましては、天災融資法の発動あるいは激甚災害法の適用には御指摘のとおり十分に配意をいたしますとともに、災害復旧事業につきまして、予算執行状況等を見つつ適切に対処をしてまいりたいと思っております。  次に、高齢化社会が本格化するということにつきまして御指摘がございました。  国民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者になるという時代が、二十一世紀になりますと間もなくやってまいります。その際、すべての国民が健康で生きがいを持ち安心して生涯を過ごす、そういう明るい活力に満ちた長寿福祉社会をどうやって築くかということが大問題でございます。高齢者はすべて豊富な人生体験を持ち、また技能を持っておられる方が多いわけでございますので、そういう方々が社会活動に参加できるような機会の提供、環境の整備を図ってまいらなければならないと思います。それが生きがいを持たれるということであろうと思うのであります。  高齢者福祉につきましては、高齢者保健福祉推進十カ年戦略、いわゆるゴールドプランがございますが、この着実な推進を図りまして、高齢者ができる限り御自分の住みたれた家庭あるいは地域の中で暮らしていただけるように、そのためにはホームヘルパーでありますとかあるいは在宅福祉、デイサービスなどが拡充されなければなりません。また、万一在宅での生活が困難な場合には、適切な施設、例えば特別養護老人ホームというような整備を進めるなど、一層の施策の充実に努めてまいりたいと考えております。  部落差別の実態についてでございますが、政府は、昭和四十四年以来三たびにわたる特別措置法に基づきまして各種事業を推進してまいりました。差別の実態につきましても、従来から適宜把握に努めてまいりました。現行法が失効いたします平成四年四月以降の方策につきましては、地域改善対策協議会において一般対策への円滑な移行について御審議を願っております。その意見を尊重して検討してまいりたいと考えております。  次に、外交につきましてお尋ねがございました。  激動のさなかにあります国際社会の中で、我が国は、これから国際秩序の根本にかかわりますほとんどすべての問題に大きな影響を与える、そのような国となってまいりました。また、我が国に対する国際社会期待も高まっております。  このような中で、我が国としてはみずからが追求する理念を明確にし、世界期待にこたえていかなければならないと思いますが、私は、その理念は、内政におけると同じく、平和、自由、繁栄であろうと考えております。そういう理念の上に、新しい世界平和の秩序を構築していく上で、我が国建設的な役割を担っていくことが大事でございます。平和憲法のもとに、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならないこと、また、他の先進民主主義諸国との協調のもとに、経済力、技術力などを活用して、政治経済両面にわたって国際社会において積極的な役割を果たしていく、これが基本方針でございます。  そこで、PKOの問題について御指摘があったわけでございますが、昨年の湾岸危機に際しまして、国民の間には、我が国がどのような貢献をすべきか、あるいはどういうことをしてはならないかということについて幅広い御議論がございました。そして、財政的貢献だけでは十分でない、何か汗を流さなければ、人的貢献を行わなければならないだろうという御議論がいろいろに行われました。  その結果、憲法のもとで、できないことはできない、これは明確にしなければならない、しかし同時にその反面、できることは最大限に行おう、こういうコンセンサスが生まれたものと私は考えております。PKO法案はこのような考え方に基づくものでありまして、国際協調のもとに恒久の平和を希求するというのは我が国憲法基本理念でございます。そういう基本理念に合致するものとしてPKO法案国会に御提出いたしました。御審議を仰いでおるところでございます。  また、国連におきまして、いわゆるUNTACの機構が間もなくカンボジアの再建をするかと存じますが、その場合にも我が国が何か適切な役割を果たしますためにもこの法案をできるだけ早く成立させていただきたい、撤回をすることは考えておりません。  次に、アジア太平洋地域での信頼醸成機構、何かそういう仕組みは考えられたいかという非常に示唆に富むお尋ねがあったわけでございます。  現在、アジア太平洋地域においては地域の平和と安定に好ましい動きがいろいろに展開いたしておりますけれども、依然として未解決の政治的対立や紛争がございまして、地域全体としてのアジア太平洋安保会議、ヨーロッパにございますようなそういう機構を設立して包括的に討議を行おうという政治的な環境は、残念ながらまだ整っておりません。大切なこととは思いますが、現在それだけの客観的な条件がまだ欠けておるということであろうかと思います。  我が国としては、この地域が非常に多様的である、また複雑であることを考えまして、二国間同士の関係を強化するとともに、例えばASEANの拡大外相会議でありますとか、APECの会議でありますとか、そういう協議の場を活用しながら、地域の平和と繁栄に我が国としてもできる限りの努力をしていく、そういうことがよろしいのではないかと思っております。  また、この地域の本当の活力、というのはいわゆる経済でございますが、それが民間部門の活発な活動によって、開放的な、開かれた自由貿易体制のもとに、この地域の活力に寄与するということが最も大事なことであろうというふうに存じます。我が国としてもそのように努力をいたさなければならないと思います。  日朝間の国交の正常化につきまして、これは我が国にとりましては、戦後の日朝間の不正常な関係を正すという側面と、朝鮮半島全体の平和と安定に資するというそういう国際的な側面と、二つの面を持っておりまして、いずれも極めて重要なことでございますので、我が国といたしまして、今後とも、関係国との緊密な連絡を図りながら、この正常化交渉には誠意を持って臨んでいく方針でございます。  なお、北方領土につきましてお尋ねがございましたが、現在のような新しい世界平和の秩序を構築すべき時代に、日ソという、あるいは日ロという場合もございますけれども、その間に平和条約の締結を見ていないということは極めて不自然なことでございます。したがって、北方領土問題を解決して速やかに平和条約を締結することが、客観的に見ましても急がれることであろうと思います。  北方領土問題につきましては、本年四月にゴルバチョフ大統領が来日されたときに、御承知のように共同声明が発出されました。また、八月の政変以降、ロシア共和国及び連邦おのおのの指導部から、北方領土問題を法と正義の立場に立って早急に解決すべきであるという発言がなされております。環境としてはようやく今熟し始めていると考えておりますが、政府といたしまして、ソ連邦及びロシア共和国中央との真剣な交渉、また極東を含むソ連邦及びロシア共和国の世論が問題を正確に理解されるための努力等々、一日も早く北方四島の返還を実現するために全力を傾注しなければならないと思っております。  なお、現在これらの島々に居住しておられるソ連人の住民が抱いておられる将来に対するいろいろな不安に対しましては、我が国といたしましても誠意と温かい気持ちを持って対処していくことが必要であろう。何といっても直接に関係のある方々にとって、変化というものはどういうものであれ不安でございますから、それがそうでないということに対しての我々の努力を、誠意と温かい気持ちでもって対処していくことが大事であろうと思います。  ソ連に対して本格的な金融支援をどう考えるかということでございますが、これにつきましては先般バンコクで行われましたG7等々でもいろいろ御議論がございました。とりあえず我が国としていわゆる二十五億ドル、これは人道的支援、貿易経済活動円滑化のための支援、一部技術的支援を含むものでございますが、それを十月の初めに発表いたしました。これを着実に実行いたしてまいりますが、いわゆる金融支援、これは相当金額の大きな、かつ将来長期にわたるものであろうと存じますが、ソ連におきましてただいまのところ本格的な経済プランというものが策定されておりません。また、いわんやその実施体制も整っていないという状況でございますので、金融支援が効果的に行われ得ない状況である。  したがいまして、バンコクの会議の結果、G7並びに国際機関の専門家が先般モスクワを訪問いたしまして、シラーエフ氏以下と将来の問題について協議を始めたところでございますが、そのような状況の整備を待ちましてこの問題は考えるということがサミット諸国の共通の認識と考えております。  それから、核軍縮時代につきまして、これは先般も所信表明で申しました。世界動きが非常に早うございまして、核兵器につきまして我が国が何十年も唱え続けてきたことが世界的に理解され始めているものというふうに考えておりまして、今後とも均衡のとれた核の削減が段階的に行われますように、米ソ両国努力期待をいたしております。  我が国は唯一の被爆国でございますので、核兵器の究極的な廃絶は、特に我が国にとりまして重要な目標でございます。今後とも、核兵器国による一層の核軍縮への努力期待いたしますとともに、我が国といたしましても従来から、国連等の場を通じて、核実験禁止、核不拡散等々についての努力をいたしてまいりました。御指摘のように、もし我が国においてさらに国連軍縮会議が開かれる場合、過去三回開かれておりますが、本邦開催国連により決定されます場合には、従来と同様、政府は積極的にこれに協力をいたしてまいる考えでございます。  軍縮の流れとの関連で、防衛費の問題について御指摘がございました。  今日の国際情勢が、東西冷戦の終えんによって、またソ連における新国家体制への模索、米ソの核軍縮提案だと、世界の平和と安定への流れが強くなっておることはまことに喜ばしいことでございます。我が国としては、このような情勢を踏まえながら引き続き、日米安保体制を堅持するとともに、自分自身は適切な、いわば防衛計画の大綱に基づく基盤的防衛力構想に従いまして従来の努力を続けてまいりたいと存じております。  今後の日米関係について御指摘がございましたが、日米関係で最も重要なことは、両国基本的な価値観を共有しておるというところでございます。その上に安保体制あるいは緊密な経済関係が築かれておる。そういう両国の二国間の関係、さらには両国が共同して地球的な規模によるいろいろな責任を遂行しなければならない、そういう相互間の関係と世界に対する協力関係を持っておると思います。両国合わせまして世界のGNPの四〇%を持っておるわけでございますから、この両国世界に対する責任もまた大変に大きいものでございます。  御指摘のように、このたび予定されておりましたブッシュ大統領の訪日が延期されるということが発表されましたことはまことに残念なことでございます。ただ、日米間には四六時中、間断のない幅広い対話と接触が、民間も、また政府も通じまして行われておりますので、両国間の意思の疎通にはもとより、相互理解にも全く支障はございません。大統領が早期に訪日されるように希望し期待をいたしておりまして、昨日アメリカのベーカー国務長官と会談いたしました際にも、私からそのような希望を表明いたしておきました。  次に、我が国のいわゆる戦争責任について政府はどのように考えるかというお尋ねがございました。  我が国我が国民は、我々の過去における行為がアジア太平洋地域を初めとする多くの人々に多大な苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚いたしております。二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないことを決心いたしておりますが、このような考えに立脚して、戦後一貫して平和国家としての道を歩むとともに、国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献をいたしてまいりました。ただいま大切なことは、このような心構えを持ちまして今までのような努力をさらに強化していくことである。それによりまして国際社会の尊敬と信頼を得ることが大切であると考えております。  ODAにつきまして、それとの関連で申しますならば、開発途上国の経済発展、貧困と飢餓の救済、あるいは国民生活の向上への貢献等を目的にしてODAを実施しております。我が国は、今世界第一、年によりまして第二になることもございますが、の援助国でございます。ますますこの努力は拡大をしていかなければならないと思います。  なお、ODAにつきましては国会にできるだけ詳細に御報告をいたしてまいりました。相手国の立場というようなものが時としてございますが、それを配慮しながらできるだけ国会に御報告を申してまいりましたが、これからもそうさせていただきたいと考えております。  地球環境サミットにつきましてお尋ねがございました。  これは今からいよいよ重大な問題になってまいります。来年六月に、ブラジルで環境と開発に関します国連会議が開かれます。これは、御指摘の熱帯雨林の破壊問題も含めまして、極めて重要な問題を討議することになります。私といたしましても、政治日程の許す限り、出席を前向きに検討いたしたいと思っております。特に、熱帯雨林の破壊に制しては、関係個及び関係国際機関とも協調しつつ積極的に取り組んでまいりました。森林の保全、さらに管理につきまして協力を重視いたしております。私どもとしては、環境サミットに向けて、森林保全のための国際的な合意づくりを含めまして積極的に貢献いたしてまいりたいと存じます。  残余の御質問につきましては関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手
  7. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 多くの問題につきまして総理の方からほとんどお答えになられたわけでありますけれども、基本的な問題だけお答えを申し上げておきたいと思っております。  まず、税収の見通しと補正予算の編成について見解はいかんということでございますけれども、三年度の税収動向につきましては、株式や土地取引の低迷が見られまして、企業の収益もこれまでよりも総じて減少していることなどがございます。また、これまで増収をもたらしてきました経済的な諸要因というのが流れを変えてきておるということがございまして、このことから、現時点での収納状況についても低調であるということを申し上げざるを得たいと思っております。  そういう中におきます補正予算につきまして、人事院勧告の取り扱い、あるいは義務的な経費や、ことしは多発いたしております災害復旧事業費等の追加財政需要等の動向、これを十分見きわめなければいけないということ、その上で、歳入面で税収の動向など、これがどの程度税収があるのか、これも見きわめる必要があろうと思っております。しかしながら、これらの事情につきましてまだ判断材料がそろっておらないということで、現時点で補正予算について確たることを申し上げることはお許しをいただきたいと思っております。  それから、四年度概算要求につきまして、どの分野でどの程度まで削減する方針なのかということでありますけれども、先ほど総理からもお答えがございましたように、公債の残高というものが非常に大きくなっておるということがございますし、また収納状況も非常に低いという状況にもございます。そういう中で、私どもは、やはり今総理からもお話がありましたように、高齢化社会を迎えるという中に公債残高というものを累増させるということは、これは慎まなければいけないであろうということであろうと思っております。しかし、真に必要な財政需要につきましては適切に対応しつつ、まずあらゆる分野におきまして既存の制度と施策の不断の見直しというものを行う必要があり、節度ある合理化、これに取り組んでいく必要があろうと思っております。  ただし、総理所信でもお話がありましたように、生活大国を目指すというお考え方、これは基本にしていかたければいけないであろうと思っております。  なお、防衛関係費につきましても、極めて厳しい財政事情もございますけれども、最近における国際情勢の動向、特に核軍備の縮小を初めとした最近の緊張緩和の動き我が国安全保障に及ぼす影響、こういったものを十分勘案しながら編成を行っていく必要があろうということを申し上げておきたいと思っております。  なお、緊縮予算を目指すのか、それとも建設国債削減を中止してその積極的活用を図るのかという点でございますけれども、今後の財政運営につきましては、先ほども申し上げましたように、やはり高齢化社会というものをもうすぐそこに迎えるということでありますから、これに負担を残すということはよろしくないであろうということを基本考えたから、やはり財政というものを緊縮していくということが必要であろうというふうに考えておること、これだけを申し上げておきたいと存じます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣田名部匡省君登壇、拍手
  8. 田名部匡省

    国務大臣(田名部匡省君) 浜本議員の御質問にお答えをいたします。  総理が既にお答えになったところでありますが、我が国の米につきましては、米及び水田稲作の格別の重要性にかんがみまして、国会決議の趣旨を体し、国内産で自給するとのこれまでの基本方針のもとで対処しているところであります。今後ともこの考えに沿って努力をいたす所存であります。  次に、災害対策に関するお尋ねについてお答えをいたしますが、今回の相次ぐ台風によりまして、農林漁業関係では現在までに総額七千二百億という甚大な被害が発生いたしております。今回の災害の状況にかんがみ、農林水産省災害対策本部を設置するとともに、これまでに現地調査、既にお貸しをいたしております貸付金の償還条件の緩和、あるいは農業共済金の早期支払い、技術指導、就労確保についての指導等を講じております。さらに、天災融資法の発動あるいは激甚災害の指定について、現在精力的に手続を進めておるところであります。今後とも被害の実情に応じてきめ細かな救済、復旧措置を講じてまいる所存であります。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣東家嘉幸君登壇、拍手
  9. 東家嘉幸

    国務大臣(東家嘉幸君) 今次の台風災害に関連し、激甚災害法を速やかに適用すべきではないかという御質問にお答え申し上げます。  まず、台風十九号等による災害により亡くなられた方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げるとともに、被害者の方々に心よりお見舞い申し上げる次第でございます。  特に、今回の災害では農産物等に相当大きな被害が発生していることから、私どもといたしましてもこの事態を大変憂慮しているところであり、激甚災害の指定はその指定基準により災害の被害状況に応じて行うものでございまして、現在、その早期指定について精力的に手続を進めているところでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  10. 長田裕二

    議長長田裕二君) 北修二君。    〔北修二君登壇、拍手
  11. 北修二

    ○北修二君 私は、自由民主党を代表して、当面する重要課題について、宮澤内閣総理大臣及び関係閣僚に若干の質問をいたします。  質問に入る前に一言申し上げます。  本年九月以降、我が国を襲った一連の台風により、多数の死傷者を含む全国規模の大きな災害の発生を見ました。中でも、農業関係の被害額は七千億円を超え、過去十五年で最大被害とたっております。被災されました皆様には衷心よりお見舞いを申し上げます。  政府におかれては、速やかにその復旧と事後の救済に万全を期するとともに、一刻も早い天災融資法の発動、激甚災害法の適用を強く要請いたします。  また、ペルシャ湾で機雷処理作業を終え、このたび帰国された海上自衛隊掃海艇部隊の諸君には、炎熱のもと生命の危険を顧みずよく任務を全うされたことに対して深く感謝をいたすものであります。  さて、自由民主党百七十五万党員参加による総裁選挙により宮澤喜一総裁が選出され、内閣総理大臣に指名されました。総理が申されるごとく、今、世界情勢はフランス革命以来の歴史的な転換期を迎えています。今ほど厳しいときはないだけに、新しい日本の夜明けにふさわしい品格のある国づくりのための力量ある政権の誕生に、期待を込めて拍手を送るものであります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕  今、世界は、四十有余年、米ソによる東西の冷戦が終結、東欧における民主化、市場経済への移行、東西ドイツの統一の一方で、湾岸戦争の勃発、多国籍軍による鎮圧、ソ連における保守派のクーデターの失敗、共産党の解体、連邦制の崩壊という予測せざる重大な事件がメジロ押しの状況にあります。そうした中にあって、我が国は、平和主義のもと、自由主義国家として発展を続けています。  一方、国内的には、政治改革PKOバブル経済の崩壊、税収不足、米の輸入自由化圧力など懸案の難問が山積しており、こうした内政と外交の施策が一体化した中で、我が国は国際国家として、世界人類の平和と繁栄のために進んで国際的な役割を担い名誉ある地位を占めるには、これまでの日本人の意識の改革を行い、各般の制度に大きくメスを入れねばなりません。  一九六一年一月二十日、ケネディ大統領はその就任演説において、国が諸君のために何をなし得るかを問いたまうな、諸君が国のために何をなし得るかを問いたまえと申して、凶弾に倒れた。まさに政治家にとって含蓄ある言葉であります。政治が今やらねばならないことは、たとえ国民に不人気な政策であっても痛みが伴うものであっても避けることなく、国民にその事態をよく説明し理解をいただき、かたい決意のもと、これをやり抜かねばなりません。これが為政者の要請であります。どうか宮澤総理の豊かな経験を、公正の理念で、世界の中の日本役割を果たし、豊かさが実感できる社会生活大国の実現に向かっていただきたい。総理が描く政治理念及び政権担当の決意を披瀝願いたいのであります。  次に、政治改革について伺います。  政治改革法案は、我が自由民主党が過去三カ年、全党的な取り組みの中でようやく取りまとめたものであります。昭和六十三年十二月、党則八十四条の総裁直轄機関として政治改革委員会を発足させ、平成元年五月、政治改革大綱を党議決定、これをもとに、広く、党内の意見はもちろんのこと各界各層や、地方公聴会を開催、全国くまなく意見を聴取、また内閣の審議会への諮問、その答申を踏まえて国会へ提出、衆議院会議における趣旨説明に対する異例とも言える三日間連続の審議や、特別委員会における三十時間に近い討議が行われております。いわば海部総理総裁内閣の命運をかけたものであります。  また、協議の舞台は衆議院における政党間協議にゆだねられていますが、各党の選挙制度改革に対する考え方は大きく異なっております。今後、各党の真剣にして熱心な協議により合意を見出すことを心より期待いたすものであります。総理は、与野党協議機関において一年を目途に合意が得られるよう最善の努力を払う旨主張されていますが、まず、これに取り組む決意を伺っておきたいのであります。  政治改革は、選挙制度の改革に尽きるものではないことは言うまでもありません。政界に深甚な影響を与えたリクルート事件は、もともと政治家の政治倫理の問題であり、国民の代表としての政治家にはより厳しい倫理の実践が要請されるのも当然と思います。総理政治倫理確立についていかにお考えでありましょうか。  政治改革で重要なことは、まず金のかからない選挙政治を行うことであります。しかし、現実は、政策活動や政治活動にある程度の金はかかります。問題は、かかる政治資金の透明性を高めるとともに、政治に対する国民信頼の回復のために、個人中心の資金調達から政党本位の政治資金に改めることであります。また、政党に対する公的助成は、政党本位の選挙活動を行うのでありますから、公費で負担を願うことは当然であると思うのであります。これにより、過酷と言われる金集めから政治家が解放されることとなり、政策づくりに集中でき、議会活動が活発になろうと思われます。  これら政治資金改正と公的助成は、あくまでも選挙制度の改革と三位一体であります。この点、総理はいかにお考えでありましょうか、御所見を承りたい。  次に、国際貢献について伺います。  さきにも述べましたように、世界情勢は激動を続け、先が見えません。第二次世界大戦後の国際社会を規定してきた東西冷戦は終結、米ソ関係は、欧州通常戦力交渉や戦略兵器削減交渉の合意、さらには最近の両国に指ける大幅な核兵器の削減提案に見られるように、対話と協調を基調とする関係へ大きく変化しております。他方、国際社会は、国家や民族の間の対立や紛争を初めとして、依然として多くの問題を抱えております。  この歴史的な転機にある現在にあってこそ、世界政治経済運営を担う者の責任は重いものがあります。平和で安定した二十一世紀を子孫に残すためには、湾岸危機の際にも見られたように、国連を中心とする国際協調のもとで、新しい国際秩序構築を他人事として傍観するのではなく、そのための国際的努力に、みずから犠牲を払ってでも積極的に参加していくべきではないでしょうか。この激動する世界における日本役割はいかにあるべきか、総理のお考え伺いたい。  さて、湾岸危機という国際秩序に対する重大な挑戦を国連を中心とした国際社会による断固たる行動によって克服した世界は、歴史の大きな転換点に差しかかっていると言って過言でありません。このような中で、公正で安定した新しい国際秩序構築のために国連が果たし得る役割に対する期待は、いまだかつてないほど高まってきているのであります。今日まで安保理は、拒否権の行使によりその機能を十分に果たし得ない状況が続いたわけですが、米ソ関係の大幅な改善により、安保理が国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を負うという安保理に本来求められている重大な任務を果たすための素地が出現したと考えられます。  我が国は、先般、第四十六回国連総会における安保理非常任理事国選挙において、アジアグループの統一候補として、有効投票総数百六十一票のうち百五十八票という圧倒的多数を得て当選しましたが、かかる事実を見ても、我が国が国際の平和と安全の維持の分野で積極的な役割を果たすことに対する世界各国の支持と期待が強く感じられます。我が国としては、このような国際社会期待にこたえ、国際の平和と安全の維持のために負うべき重責を具体的かつ目に見える形で遂行することが求められているということを改めて指摘したいと思います。  かかる視点から、安保理の非常任理事国としての重要な立場にかんがみ、我が国として国連の機能強化のためにどのように取り組むか、総理所信をお示し願いたいのであります。  PKO協力法案は、前国会衆議院において継続審議となっております。申すまでもなく、国連平和維持活動は、世界各地の紛争の平和的解決を助けるため、中立、非強制の立場で国連の権威と説得により任務を遂行するもので、一九四八年以来、世界の多くの国の参加を得て国際の平和と安全の維持のため多大な貢献をしているものであります。また、人道的活動に従事する国連機関及びその他の国際機関は、人道的任務を達成するため世界各地において重要な活動を行い、国際社会評価を得ています。  先般の湾岸危機は、我が国として世界の平和と安全といった問題にいかに貢献すべきかを真剣に議論する契機となりましたが、国民各層の幅広い議論を通じ、我が国として世界平和のために、資金、物資面のみならず、人的側面においても積極的な役割を果たす必要があるとの点で共通の認識が深められたと考えます。国連中心主義を外交政策の重要な柱の一つとしている我が国にとって、国連の活動の中でますます重要性を高めつつある国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動に対する積極的な協力を行うことは、国際協調のもとに恒久の平和を希求する我が国憲法平和主義理念にも合致するものであります。  我が国は、国連安保理非常任理事国として世界の平和と安全の維持に対する責任を付与されたことを自覚し、その国際的地位と責任にふさわしい役割を国際社会において果たすためにも、PKO協力法案を一刻も早く成立させ、国内体制を整備すべきと考えます。PKO協力法案成立に向けての総理決意お尋ねいたします。  続いて、外交問題に入ります。  現在の日米関係は、安保体制と緊密な相互依存関係の上に、基本的に強固かつ健全であります。また、このような良好な二国間関係の上に、日米が世界全体の平和と繁栄の維持促進に向けて協力する日米のグローバルパートナーシップは、アジア・太平洋における政策協調、対ソ支援、東欧、中南米における民主化支援、軍備管理・軍縮等の面で着実に成果を上げていると考えます。しかし、日米両国の報道においては、日米のこのような積極的な側面は必ずしも取り上げられることなく、むしろ米国における対日批判や日本における嫌米感ばかり取りざたされているというのが実情ではないでしょうか。  ポスト冷戦時代における新たな国際秩序構築に向けて日米の一層の協力関係が求められている今、私は、十一月末に予定されていたブッシュ大統領訪日は、日米間にいささかなり上もわだかまりが存在するとすればそれを払拭するとともに、良好な日米二国間関係をさらに増進し、その上に日米グローバルパートナーシップを飛躍的に拡大していくための絶好の機会であると考えていましたが、これが直前になって延期されたことはまことに残念であります。  こうした状況の中で、今後の日米関係をどのように発展させていくべきかについて総理のお考えをお聞きいたしたい。  また、日米関係の中核をなす日米の安保体制は、日米両国のみならず、アジア太平洋地域全体の平和と安定に大いに寄与してきており、冷戦後の国際社会においてもいささかもその役割を減じるものではありません。こうした中で我が国は、新たな在日米軍駐留経費特別協定を締結し在日米軍経費のさらなる負担を図るなど日米安保体制の円滑な運用のために努力してきていますが、引き続き、日米安保体制を堅持し、その信頼性の向上のため一層の努力を払っていくべきと考えますが、この点について総理のお考えを承りたい。  ソ連情勢は、八月の政変以降今日まで急激な変化を見せており、真に国民的レベルからの自由と民主主義、市場経済への移行に向けて本格的な改革のプロセスが開始されたと言えます。このようなソ連の改革の動きに対しては、我が国としても、ソ連が先進民主主義諸国と、自由と民主主義、市場経済という共通の価値観を有する真の建設的パートナーとしての役割を国際社会においても演じ得るよう積極的に協力していくことは当然であり、我が国としてソ連における真の改革に対して全面的な支援と連帯の意思を示すことが重要であります。  このような観点に立ち、政府は去る十月八日に二十五億ドルを目途とする対ソ支援策を発表しましたが、我が国としましては、現在の混乱したソ連経済の立て直しと市場経済への円滑な移行のため、金融財政制度、流通等の分野でのノーハウ提供等の技術的支援は積極的に進めていくべきであります。また、深刻な食糧、医療品不足が伝えられる中で厳冬を迎えつつあるソ連国民に対して、人道的観点からの緊急援助を適時に実施することが必要であります。総理は、今後の我が国の対ソ支援をいかに進めていくお考えでありましょうか。我が国の対ソ外交にとって最重要課題は、北方領土問題であります。この九月には、エリツィン・ロシア共和国大統領の親書を携えてハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行か訪日し、法と正義に基づく領土問題の早期解決というロシア共和国指導部の考えが示されたのに続きまして、十月には中山前外務大臣が訪ソし、ソ連邦及びロシア共和国の両指導部より、領土問題の早期解決のため交渉を促進することに対する意欲が示されております。このようなソ連側の変化の中で、北方領土早期返還に対する我が国国民期待も高まっているのが現状でありますが、北方領土問題解決の早期実現のため、政府としての今後の対応をお伺いいたしたいと思います。  今日、アジア地域にあっては、カンボジアの包括和平の合意、南北両朝鮮の国連加盟等に見られるごとく、この地域の安定にとり好ましい動きがある一方で、まだ多くの紛争、対立が残り、過渡期に特有の混乱が起こる可能性もなしとしません。いずれにしても、アジア地域にも確実に大きな変化の波が押し寄せております。政府はこの地域の情勢をどのように認識し、平和と繁栄に貢献する所存でありましょうか。  また、先般、カンボジアに関するパリ会談が開催され、和平協定署名が行われ、十三年に及ぶカンボジア紛争に終止符が打たれました。これまで我が国としても、カンボジアに関する東京会議開催等、和平達成のためさまざまな努力を行ってきたことは私も承知しており、日本外交における目に見える政治役割を果たした好例と受けとめております。今後は、この和平合意を真に実効あるものとするためには、国際社会が一致協力してカンボジアにおける国連の平和維持活動及びカンボジアの復旧、復興に積極的に協力することが不可欠であり、我が国の果たすべき役割に対する期待は極めて大きいと考えますが、政府としていかなる方針で取り組まれるか、お伺いいたします。  さて、焦眉の課題はウルグアイ・ラウンド交渉における米の市場開放であります。  これまで米国と欧州共同体は農産物の輸出補助金をめぐって激しく対立していましたが、最近になって歩み寄りを見せており、年内の合意を求めてこの月内にはドンケル事務局長が包括的合意案を提示し、その中で、非関税障壁をすべて関税に置きかえる、例外なき関税化が盛り込まれるのではないかとの報道がなされております。多角的自由貿易体制下で経済的繁栄を享受し、ここまでの発展を遂げることのできた我が国にとって、このラウンドの成功は極めて重要であると認識しております。  今次ラウンドにおいては、その経緯からしまして、輸出補助金について輸入国も満足するようなきちっとした削減や廃止の約束が不可欠であります。その上で、各国の農業保護の問題について解決が図られたければなりません。米国のウエーバーやECの可変課徴金など、各国とも形を変え少なからず自国の農業保護政策をとっておりますし、引き続きとっていくものと思われます。  このような中にあって、米の問題については、我が国食糧輸入大国であること、我が国には厳然たる過去三度の国会決議があること、また米のような基礎的食糧食糧安保の上からも今後とも国内産で自給するとの基本方針で対処すべきであり、関税化すべきでない。この点について総理決意伺います。  次に、経済財政問題についてお伺いします。  昭和六十一年十月から始まった今回の大型景気が戦後最長記録を超える中で、さきに経済企画庁は、我が国経済は緩やかに減速しながらも引き続き拡大していると現状を把握しています。しかし、私が見る市場経済の実感としては、さきの七月一日における四年五カ月ぶりの公定歩合の引き下げも景気減速の局面打開とはなっておりません。個別の需要項目から見ても、乗用車販売の低迷を初めとして、住宅の建設減少、民間設備投資の鈍化、鉄鋼等素材の在庫増による鉱工業生産の伸びはマイナスを示すなど、景気の減速がはっきりしてきており、今回の景気はこの四-六月がピークで、転換点を過ぎたと思います。  もとより金融政策は、国内の経済景気、物価だけでなく、海外経済環境等を総合的に勘案、判断して決めるべきもので、慎重であることは当然でありますが、最近の通貨供給量の伸びめ鈍化、企業金融、産業界の実態を考慮するならば、インフレのない長期の景気持続を図るためにはさらなる公定歩合の引き下げは急務と考えます。政府景気の動向をとう把握しているのか、さらに、公定歩合の引き下げを含む内需拡大策をどう講ずる方針なのか、見解をお伺いいたします。  これとの関連で、総量規制の問題でありますが、元来この規制は、土地価格の異常な高騰を阻止するため二年前にとられたいわば非常措置、緊急避難でありまして、これらの措置により大都市圏においては地価の動向は、昨年秋以降、横ばいもしくは下落の傾向を示し、それなりの成果があらわれています。  今日、不動産業に対する金融機関の貸出総額規制の影響によって、業界は高金利の負担で資金繰りが苦しくなっているほか、住宅戸数の減少、特に貸し家の着工戸数の減少や、首都圏を中心として住宅売買契約が大きく低下しています。こうした状況のもと、これ以上常態化した総量規制が続くならば、優良な住宅宅地の供給の確保や大規模再開発による土地の高度利用は極めて困難となります。大蔵省では、この規制については、この年末を目途に一定の条件のもとに解除する方針であるやに伝えられていますが、具体的にどのような方針であるか、確認いたしたいのであります。  さて、我が国の貿易黒字は、昭和六十一年の八百二十六億ドルをピークとして、昨年は五百二十四億ドルにと着実に減少傾向を示しています。だが、本年に入って再び黒字拡大が定着しております。このままでは平成三年は五年ぶりに前年を大幅に上回り、八百億ドルに迫ることは必至であります。地域的には、アメリカに対する黒字を減らしていますが、ECやアジアに対する黒字が急速に増大しています。黒字の原因は、我が国バブル経済崩壊による輸入力の減退や、高度経済成長を続けるアジア諸国とドイツ統一によるEC市場の購買力増加等がありますが、いずれにしても、このままでは米国を初め関係諸国の保護主義を刺激しかねません。政府としては、この貿易黒字の拡大傾向を具体的にどう抑えるのか、そのための対応策を承りたい。  社会資本の整備については、日米構造協議を受けて、総額四百三十兆円の公共投資基本計画がスタートしています。我が国経済力が生み出す投資余力を、整備が立ちおくれている社会資本整備に振り向けることは当然であります。二十一世紀における高齢化社会の到来を思うとき、社会資本整備の充実は急務と考えます。我が国世界一の資産国でありながら生活レベルの面においてそれを実感できないのは、社会資本が貧弱であるからであります。幸い政府においては、本年度の生活関連重点化枠二千億円に続いて、明年度、公共投資充実臨時特別措置二千億円の別枠を設けることを決定されておりますことは、社会資本整備に寄与するものとして大いに期待が持てます。ここに、その趣旨と、実施に当たっての基準をどう考えているのか、示されたいのであります。  さて、平成四年度予算は、従来どおり、経常的経費の原則マイナス一〇%の厳しい基準の中で概算要求を決定されております。内容的には、さきに申したように、社会資本の整備に新たな工夫が加えられている一方で、不可避的にふえていく人件費や年金、経済協力費等の例外項目の概算要求額が一兆九千二百億円にも達しております。今年度を三千五百億円も上回って、一段と財政圧迫の要因となっております。バブル経済がはじけて税収の大幅ダウンが予想される中で、これから始まる四年度の予算編成に対しどのような基本的姿勢で臨まれるか、政府答弁をお願いします。  続いて、先般明らかになった証券金融不祥事に関する質問をいたします。  今回の一連の証券不祥事によって、我が国証券市場に対する内外の信頼が大きく損なわれました。また、一部の金融機関における金融不祥事は、金融機関に対する国民信頼を損なうことになりました。今回の一連の不祥事に関しては、先般の臨時国会において、真相の究明、再発防止のための方策について精力的な審議が行われ、対応策の第一弾として、損失補てんの禁止等を内容とする証券取引法等の改正が成立したところであります。また、大手証券会社四社においては、先般、営業活動の自主的な停止等が指示されたところであります。  我が国証券市場は、企業の資金調達における証券化の進展とともにその重要性を高めてきており、特に近年は急速な拡大、国際化を遂げ、日本経済のみならず世界経済全体に対する効率的な資金配分機能期待されています。一方、金融機関は、その業務の公共性から、社会責任を自覚した業務運営を行うことが強く求められています。  このような観点からも、不祥事の再発を防止し、一日も早く、我が国証券市場、金融機関に対する内外の信頼の回復に向けて全力を挙げて取り組む必要があります。具体的には、証券市場への新規参入の促進、免許基準の具体化、明確化、株式等の委託手数料の自由化、通達全般の見直し、自主規制機関の機能の充実強化、証券市場等に対する検査・監視機構のあり方等について早急に検討を進める必要があると考えます。こうした再発防止策についてどのように考え、どのように実現していくのか、以上、総理及び大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。  以上で質問を終えますが、総理所信表明に強調されたごとく、新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりに当たり、日本の進路を内外に示し、これが実現を目指す宮澤政権に対し国民は強い期待を持っております。私は今、宮澤内閣に対し、政治理念とその決意政治改革、国際貢献外交問題等について多くの所見を申し述べましたが、これらに対する総理並びに関係閣僚の明快なる答弁を求めて、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 本論に先立ちまして、先般の台風による災害についてお話がございました。  災害を受けられました向きに対しましては心からお見舞いを申し上げますとともに、この災害につきましての復旧並びに事後の救済に関しましては万全を期す覚悟でございます。御指摘のように、天災融資法の発動、それから激甚災害法の適用につきましては十分に配慮をいたしてまいる覚悟でございます。  先般の所信表明にも申し上げましたが、国際社会はただいま冷戦時代を抜け出して、新しい世界平和の秩序を構築する時代を迎えていると考えております。我が国は、この中にありまして、憲法基本理念である国際協調主義のもとに最大限の貢献をいたさなければならないと思います。  また、このような世界の激変はある意味で自由主義と市場経済の勝利でございますが、その我々の市場経済の中にも、いろいろなひずみやゆがみが起きていることも否定できないところであります。額に汗している人々が取り残されていると感じることのないような、公正な社会を実現しなければなりません。また、国民の一人一人が生活が真に豊かであると実感できるような活力に満ちた生活大国をつくりたいと考えております。  政治改革や、行政の消費者や一般投資家重視への姿勢の転換等々、こうした時代の要請でございまして、私はこのような基本認識を持って、我が国が国際社会において国民が誇りを感じることができるような品格のある国となるように国政に取り組む決意でございます。  次に、政治改革の問題でございますが、政治改革の実現は現下の緊急課題であり、また時代の要請と考えております。政府としては、政治改革協議会における各党間の御協議に際し、政府としてなし得る協力についてはもとより最善を尽くす覚悟でありますし、この問題に真摯に取り組む決意でございます。各党各会派の御理解と御協力をお願い申し上げます。政治に対する国民信頼を確固としたものとし、その負託にこたえていくために、一人一人の政治家が高いモラルのもとにみずから厳しく律する姿勢を徹底し、政治倫理確立することが根本であることはもとよりであります。あわせて、制度面におきましても、金のかからない政治活動、あるいは政策を中心とした選挙が実現できるような仕組みにすることが必要であり、海部総理の志を継いで、私としても真摯にこの問題に取り組んでまいります。  その際、いわゆる三位一体でございますが、政治改革のためには、政治倫理確立と同時に制度面においても、金のかからない政治活動、政策を中心とした選挙が実現できるような仕組みが必要でありまして、政治資金政治活動を賄うものである以上、政治資金のあり方は選挙政治のあり方と密接な関連を有しますところから、選挙制度の改革と政治資金制度の改革を一体として実現するために、さきの国会に三法案を提出したところでございます。これらの法案は廃案となりましたが、今後の政治改革協議会における協議におきまして、この三法案をたたき台として各党間で十分御論議を尽くしていただき、実りのある合意が得られますように期待をいたしているところでございます。  次に、激動する世界における我が国役割についてお尋ねがございましたが、国際社会が対話と協調により新しい秩序を模索する中で、我が国は、今やこれからの国際秩序の根本にかかわるすべての問題に大きな影響を与える存在となっておりまして、御指摘のように、新しい世界平和の秩序を構築していくために、いわば財政面のみでなく人的な面におきましても積極的に貢献していくこと、これが国際社会における我が国役割であると認識をいたしております。  このため、我が国としては、他の先進民主主義諸国と協力しながら、国連の平和維持活動に対する積極的な協力国連そのものの機能強化、軍備管理・軍縮の促進、地域紛争の解決への協力などを通じる世界の平和と安定に貢献をいたさなければなりません。もとより、自由、民主主義といった基本的な価値観を確保するためめ国際的努力ベの積極的な参画は必要でございます。また、開発途上国に対する支援及び地球環境の保全、難民問題を初めとする人類共通の問題が多数ございます。さらには、差し迫りましたウルグアイ・ラウンド交渉の成功に向けた努力を初めとする世界経済への貢献も我々に求められているところでございます。  このような中で、国連の機能強化について、先般非常任理事国となりました我が国がどのように取り組むかという点についてお尋ねがございました。  国連は、創立されて以来、平和と安全の確保という目標実現に向かって努力をいたしてまいりましたけれども、第二次大戦直後の東西対立という国際社会の図式の中で、残念ながら十分に機能してきたとは申せない、これは否定できないところでございます。しかしながら、御指摘のように、湾岸危機などで示されましたごとく、冷戦の終えんという新しい世界平和構築の中で国連役割が大きくなり、またその活性さが期待されることになりました。  我が国は、長いこと国連中心の外交を続けてまいりましたが、このたび安保理の非常任理事国に選ばれました。これによりまして、一層積極的な国連活動を展開しなければならないと思っております、今般の国連総会におきましても、通常兵器移転の国連報告制度の創設などを我が国は主導権をとって提案いたしました。また、今後とも、国連平和維持活動への協力はもとより、国連の機能強化に積極的に取り組んでまいりたいと思います。  正直申しまして、国連そのものがこの何年かで急に大きな役割を与えられ、また期待されるに至っておるわけでございますが、国連が真にその大きな任務にこたえる組織になるためには、国連そのものが全部の加盟国のいわば公平な代弁者であるという信頼を確保しなければならないと思います。何かのときに強国の代弁者であるというようなふうに思われるようなことがあっては、全加盟国の真の代弁者という信頼を獲得することはできないわけでございますので、そういうことにつきましては常に国連自身考えていかなければならないことであるし、また、その一人の大事なメンバーである我が国としてもその点は常に考えておかなければなりません。  そのためには、国連の仕組みそのものにも幾つか改革をしなければならないことが実はあるであろうと思います。これらは実は非常に複雑なたくさんの問題を含んでおりますので、すぐにできるというわけにはまいりませんけれども、しかし、いろいろ改革をする余地があるということは常に考え努力をしなければならないと考えております。  PKO法案の問題でございますけれども、そのような国連の平和維持活動あるいは人道的な国際救援活動に参加することは、従来から国連中心主義を外交政策一つとし、また憲法の精神としている我が国にとりまして極めて重要でございます。そのような国際協調は、恒久の平和を希求する我が国憲法理念にも合致するものである、憲法がそれを求めておるというふうに私は考えております。そういう意味からも、このたび国会で御審議中のPKO法案を、速やかに御審議の上、成立をお願いいたしたいと存じております。  カンボジアにおきましてやがて国連の平和維持活動が始まるであろうと予測され、期待されるところでございますが、その問題につきましても我が国貢献が求められるということは十分に考え得ることでございまして、そのためにも速やかにこの法案を成立させていただきたいと存じておるところであります。  日米関係について、今後いかにあるべきかというお尋ねがございましたが、日米関係で最も大切なことは、我々が基本的な価値観を共有しているということでございます。その上に立って安保体制もあり、経済関係もあり、その他これだけ大きな両国の行き来があるわけでございます。また、その上に立って、両国が地球的規模での共同の責任を果たさなければならないという問題もあるわけでございます。我が国としては、日米間に時として派生する個別の問題について常に率直に話し合うことが、価値観を同じくする両国の一番いい解決の方法であると信じてまいりました。また、今後ともそうするつもりであります。  ブッシュ大統領の訪日がこの際延期になりましたことは残念なことでありますが、日米間には常に、民たると官たるとを問わず四六時中、間断のない対話が繰り返されております。間断のない接触が行われておりますから、大統領の訪日が一時延期になりましても、それによって両国間の意思の疎通が欠けるというようなことは全く心配をいたしておりません。大統領が早期に訪日されることを期待いたしておりますし、昨日ベーカー国務長官が来訪せられましたので、その節、私からもその希望をお伝えいたしたところでございます。  日米安保体制は、このような両国の価値観を共有する上に立ちまして、そうして国際情勢が変動する中で両国の協調と協力という意味で、ますます重要性を持っております。世界情勢の中には依然として不透明、不安定な部分がございます。日米関係の基礎をたす強固なきずなであり、また我が国を含むアジア・太平洋の平和と安定にとっても不可欠な枠組みと心得ております。この体制の意義と重要性な今日いささかも変化がたい。政府としてこの条約を堅持し、その円滑な運用のために努力をいたす決心であります。  対ソ支援についてお尋ねがございました。  我が国としては、ソ連が市場経済と民主主義に立脚して新しい世界秩序の建設的な担い手となることを期待し、また、そのような努力に対して適切な支援を進めていく考えでございます。十月八日に我が国が、人道的な支援、貿易経済活動円滑化のための支援及び技術的支援から成ります総額二十五億ドルを目途とする支援策を決定いたしましたが、これを着実に実行いたしてまいります。  北方領土の問題について申し上げますならば、このような新しい世界平和秩序構築の始まりの中で、我が国並びにソ連あるいはロシアといういわば二つの大国の間に平和条約の締結を見ていないということは極めて不自然なことであります。したがって、北方領土問題を解決して平和条約を速やかに締結いたさなければなりません。  本年の四月にゴルバチョフ大統領が来日されましたときに、御記憶のように、日ソ共同声明が出されました。また、八月の政変の後、ロシア共和国及びソ連邦両方の指導者から、北方領土問題を法と正義の立場に立って早期に解決すべきであるということについての発言がございました。政府としては、このような状況のもとに一日も早く北方四島の返還を実現するために全力を傾注いたします。  また、それと同時に、直接にこの返還に関係をされますこれらの島々に現に居住しておられるソ連の方々、ソ連人住民、とかく変化というものは不安を伴うものでございますから、将来に対する不安はない、そういうことを誠意と温かい気持ちを持って我々が対処していくことがこの問題の解決に極めて大事なことであると考えておりまして、政府といたしましてもそのような努力をいたしますが、これはよその国のことに関しますので外交がなし得ることに限界がございますので、いろいろその方面において影響力を持っておられます北政審会長におかれましても、いろいろな民間のルート等も使われまして、この問題についてのいわば我が国の立場の解明についてひとつお力添えをお願いいたしたいと存じます。  次に、アジア地域の情勢の認識でございますが、国際社会がこのような歴史的変革期にございます中で、アジア太平洋地域におきましてもカンボジアの包括和平が一応の合意を見ました。また、中越関係も正常化をしつつございます。南北両朝鮮は国連加盟をいたしました。朝鮮半島における緊張緩和も、少しではありますが前の方に向かって動いておるように思われます。また、モンゴル、ネパール等に民主化の進展が見られます。また、この地域は東アジアを中心に経済面でも目覚ましい発展を示しておりますので、そういう意味でこれら地域の安定化に寄与をいたしております。  他方、しかし依然として不安定要因、片づいていない要因といたしましては、例えば北方領土の問題がございますし、またビルマの問題もございます。カシミールの問題もあろうかと思います。我が国としては、アジア地域の一員として、この地域の平和と繁栄のために好ましい動きが定着いたしますように、従来にも増しましてきめの細かいアジア外交を展開していくことが緊要であると考えております。  我が国カンボジア和平に対する対処方針でございますが、この和平合意の成立につきましては我が国も長いこと協力をいたしてまいりました。今後は、いわば暫定期間における国連カンボジア暫定機構UNTACが中心になりましてこの活動が具体化をいたしてまいります。その具体化の中で我が国がどのような貢献と参画を求められるか、ただいま具体的ではございませんけれども、いろいろな意味で人的、資金的な貢献をすることが恐らく当然に求められるであろうと考えます。そういう意味からも、実はPKOの法律ができるだけ早く成立することをお願いいたしたいのでございますけれども、そのような我が国役割は当然我々として予想をしておかなければならないと存じております。  それから、ウルグアイ・ラウンドの問題でございますが、所信表明で申し上げましたとおり、現在最終段階を迎えておりまして、我が国としても他の主要国とともに、年内妥結に導けますよう努力をいたしておるところでございます。  農業につきましては、各国ともそれぞれ具体的な難しい問題を抱えておりまして、先ほど御指摘をされましたように、例えばECにおける可変課徴金はその一つであります。また、アメリカが果たしてあれだけのたくさんのウエーバーを本当にいわば返上するのであろうか、放棄するのであろうかというようなことも大問題でございます。しかも、いわゆる関税化等々の議論のほかに、一番貿易を阻害していると思われる輸出補助金の問題がございます。これは、いわゆる関税化とは別の、ある意味ではもっと大きな問題である等々、いろいろだ問題がございます。我が国は、これまでの基本方針のもとに、相互の協力による解決に向けて最大限の努力を傾注してまいる考えでございます。  景気見方でございますが、確かにここに来まして拡大テンポが遅くなっておることは事実でございます。住宅建設の減少など具体的な現象を御指摘になりましたが、それは私はそのとおりである。ただ他方で、いわゆる有効求人倍率等々に見られますように、雇用そのものに不安が起こっているというわけではなく、依然として完全雇用に近い状態が続きながら、いわばインフレを起こさないで中期的にどのような成長経路に入っていくかというのが今の問題であろうと思いますが、しかし、成長テンポが落ちるということはやはり家計にも企業にも大きな影響を及ぼしますので、そのことを無視しているわけにはまいりません。今後とも、引き続き物価の安定を図ることを基礎にしながら、内外の経済動向を注視して、適切、機動的な経済運営に努める、内需を中心に持続的な成長に努めることが大切と思います。  このような見方につきましては、金融当局も既に何度か長短期金利の低目誘導の努力を続けておりまして、そういうことから判断いたしましても、金融当局が違った情勢判断を持っておるとは私は考えておりません。私どもとほぼ同じような考え方をいたしておると思いますので、いわゆる金融措置、金利政策等につきましてはしばらく金融当局の判断にゆだねたいと考えているところでございます。  次に、貿易黒字が拡大していることへの御懸念を御披瀝になりました。まことにこれはおっしゃいますとおりであります。  政府の見通しをかなり上回る貿易収支の黒字が実現するというふうにただいまのところ見通されておるわけでございますけれども、理由としましては、先ほど言われましたように、昨年はいわゆる資産効果がございまして、絵画であるとか外国の自動車であるとか高級品が随分売れておりましたが、そういう輸入が大変に減っております。また、円高になりましていわゆるJカーブ効果がドルベースの輸出価格を引っ張り上げている、あるいはドイツが東西の統一によりまして思わない需要がそこから出てきている、東南アジア経済も好調でございますから、それが我が国からの輸出になっている等々、いろいろなことがございます。ございますが、そう申したところで、結局しかし黒字が非常に大きくなってきたという事実に変わりがございませんので、これはいろいろに注意をしていかなければならない問題だと思います。  我々としては、やはり輸入の拡大の努力を続ける。あるいは、かなりの企業がいわば現地生産というものに入っていっております。そういう変化も留意すべきでございますし、また、いわゆる構造調整でありますとか、基本的には内需中心の成長を続ける、そういういろいろな施策を総合しながら対外経済関係の円滑な形成に努めていかなければならない。御指摘のとおり、この貿易黒字の増大というものは、これから来年にかけまして我が国の対外経済問題としてはかなり注意をしなければならない問題であるというふうに考えております。  証券金融につきましては、大蔵大臣からも御説明があろうと思いますが、昨年来の一連の問題は、我が国証券市場、金融機関に対する内外の信頼を大きく損なう問題であって、まことに遺憾でございます。さきの臨時国会において損失補てんの禁止等を内容とする証券取引法の改正を行うとともに、金融機関の内部管理体制の総点検を行うなどの対応策を講じたところでございます。さきの行革審の答申及び国会決議最大限に尊重いたしまして、引き続き、証券金融市場の透明性、公正性の向上及び信頼回復に向けまして全力を挙げる所存でございます。  残余の問題は大蔵大臣からお答えを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣班田孜君登壇、拍手
  13. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) まず、総量規制についてでございますけれども、昨年四月の総量規制導入後、金融機関の不動産業向けの貸し出しの伸び、これは総量の貸出残高に対しまして不動産向けの貸し出しというものが大幅に低下してきておるということが言えると思っております。特に最近ではその効果は着実に進んでおるというふうに見ております。さらに、地価につきましても、大都市圏、特に大阪等を中心にいたしまして地価の鎮静化が見られております。しかし、地方におきましては実はまだ二けた台で高くなっておるというところがございます。  そういう意味で、まだ予断を許さないのではないかというふうに思っておるところでございます。大蔵省といたしましては、こうした状況も踏まえまして、総量規制についていましばらくその効果の浸透ぐあいを見きわめることが重要であろうというふうに思っております。  ただ、地価問題に対処するためには、基本的には都市計画ですとかあるいは国土計画等によって対処すべきでございまして、土地政策におきましては金融面あるいは税制面の措置は必ずしも主役ではないというふうに考えております。その意味で、総量規制は臨時、異例の措置でありまして、いつまでも続けるという性質のものではないであろうという判断もいたしております。今後の取り扱いにつきましては、国土庁がまた再び把握をするように努めております直近の地価動向あるいは金融経済情勢、また金融機関の融資動向、土地政策全般の推進状況、こういったものを総合的に判断しながら適時適切に対応していかなければいけないものであろうと思っております。  なお、公共投資のいわゆる臨時の問題でございますけれども、公共投資基本計画、これを着実に実施を図る、そのために来年度二千億円の範囲内で要求をしようとしておるところでございます。したがって、今後の予算編成過程におきましては、公共投資基本計画における公共投資の着実な増加に寄与する観点から、各省庁から提出された要求内容につきまして十分審査し、また調整をしてまいらなければいけないというふうに考えております。  なお、税収の大幅減が予想される中における四年度の編成ということでありますけれども、先ほどもお答えを申し上げましたように、収納状況が非常に厳しいという状況、それと百六十八兆円に上るような公債の残高があるという状況でございまして、やはり私たちは、基本的には公債依存度というものを引き下げると同時に、まず歳出の削減合理化、これに厳しくもやっぱり取り組んでいかなければならないであろうというふうに考えております。  なお、一連の金融あるいは証券の不祥事の問題につきまして、今総理からもお答えをされましたように、証券取引法をさきの臨時国会で通していただいたわけでありますけれども、そのほか、野村証券の東急電鉄株式に係る一連の行為等につきまして是正命令を発出するとともに、平成三年三月期にも損失補てんを行っていた大手証券会社四社に対しまして自主的な営業活動の停止を要請したところでございます。大蔵省といたしましては、御指摘の点を踏まえまして、引き続き証券市場の正常化に向けまして、これまで国会において申し上げてきた証券会社、証券市場をめぐりますところの五項目の問題、特にルールの明確化、ルール違反者に対する処罰、検査・監視体制、自己責任原則、業界行政のあり方、これの一つ一つに私たちも真剣に取り組んで実を上げていきたいというふうに思っております。  一方、金融不祥事につきましては、この反省を踏まえまして、先般、金融機関の内部管理体制等の総点検、また行政の透明化と検査体制の充実などを内容とする金融システムに対する信頼回復のためのもろもろの措置を発表したところでございますけれども、引き続きその実施に全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。  また、今回の一連の不祥事で損なわれた証券市場や金融市場に対する信頼を回復するためにも、証券金融市場における有効で適切な競争を促進していくことが重要でございまして、前国会におきます諸決議ですとかあるいは行革審の答申等の趣旨を踏まえまして、金融制度改革を着実に進めてまいりたいと思っております。  なお、検査・監視体制の問題につきましては、さきの答申を最大限に尊重するとの基本的な考え方のもとに、各方面の御意見も伺い一ながら、検査・監視体制の見直しの具体的な検討作業を広範な視点から進めてまいらなければいけないと思っております。  いずれにしましても、自由主義経済にとりまして大変重要な基本であります金融あるいは証券の市場、これの内外の信頼を取り戻すために私ども全力をささげてまいりますことを申し上げたいと存じます。  以上であります。(拍手
  14. 小山一平

    ○副議長(小山一平君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 小山一平

    ○副議長(小山一平君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十一分散会      ―――――・―――――