運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1991-12-19 第122回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月十九日(木曜日)    午後一時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         永田 良雄君     理 事                 鎌田 要人君                 北  修二君                 菅野 久光君                 三上 隆雄君                 井上 哲夫君     委 員                 青木 幹雄君                 熊谷太三郎君                 鈴木 貞敏君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 星野 朋市君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 谷本  巍君                 村沢  牧君                 猪熊 重二君                 刈田 貞子君                 林  紀子君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   田名部匡省君    政府委員        外務省経済局長  林  貞行君        農林水産大臣官  馬場久萬男君        房長        農林水産省経済  川合 淳二君        局長        農林水産省農蚕  上野 博史君        園芸局長        農林水産省畜産  赤保谷明正君        局長        農林水産省食品  武智 敏夫君        流通局長        食糧庁長官    京谷 昭夫君        水産庁長官    鶴岡 俊彦君    事務局側        常任委員会専門  片岡  光君        員    説明員        文部省教育助成  佐々木正峰君        局財務課長        厚生省生活衛生  伊藤蓮太郎君        局乳肉衛生課長     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)     —————————————
  2. 永田良雄

    委員長永田良雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産政策に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 谷本巍

    谷本巍君 ガットウルグアイ・ラウンドの問題についてお伺いをいたします。  御承知のように、ドンケル事務局長は十二月十八日までに七分野協議をまとめて、十二月二十日に大枠合意案を提示したいということで提起をしてまいりました。  新聞報道によりますまでもなく、サービスなどほとんどの分野合意づくりがおくれておるようであります。そしてまた、けさの日本経済新聞を見てみますと、フランスのクレッソン首相は、ドンケル提案は米国の言い分を支持しており、欧州の利益に全く配慮をしていないという批判をしながら、焦点の農業分野だけではなく、知的所有権紛争処理分野でも同提案には納得できないと語りながら、ドンケル提案を拒否するということを言明しておるようであります。  ガット状況はそういう状況になってきておるのでありますが、まず初めに伺いたいのは、これまでの日本新聞報道ですと、関税化中心農業問題についての論議が進められていると報道されてきておりますが、農業分野交渉最大争点は一体何であったのか、これについて日本政府はどういう態度で臨んできたか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  4. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) ウルグアイ・ラウンド農業交渉につきましては、御承知のように三分野にわたって議論が行われております。一つ国境措置、もう一つ国内支持、そして輸出補助金でございます。  御承知のようにウルグアイ・ラウンドの発足、特に農業問題が交渉の俎上に上げられた一番の理由は、八〇年代の過剰を基調とする競争の激化、それによります貿易秩序の乱れというものがあったと思います。そういう意味では、輸出補助金輸出競争をめぐる問題がこの交渉最大争点であったというふうに私どもは認識しております。
  5. 谷本巍

    谷本巍君 七分野合意案がすっきりした形で出そろうということは、今の事態では到底考えることができないという状況であります。したがいまして、農業分野で見てみましてもかなりドンケル事務局長自身判断によるものを入れなければ合意案ができないというふうになるだろうと想定されます。  そういう状況の中で新聞報道では、ドンケル事務局長裁定案という言葉が書いてあるのでありますが、私はこの言葉が非常に気になるのであります。裁定というのは、理非を超えて一つ判断で決定をするというような意味合いがあるからであります。これまでドンケル事務局長は、私はまとめ役だということを言ってまいりました。果たして事務局長裁定権なるものがあるのかどうなのか。仮に一定判断を示すとするならば、それはあくまでも一定判断としてあっせん案的な性格というものでしかないのではないかと思うのですが、農林水産省それから外務省、どのような見解であるか、伺いたいと思います。
  6. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 二十日に提示したいというふうにダンケル事務局長が十二月十一日の貿易交渉委員会発言したわけでございますが、そこの表現では、各国政府にはそれまでの間、政治的打開を図るための交渉を行う機会が与えられるが、それに失敗すれば各グループ議長独自の判断文書案に盛り込まざるを得ないというふうに言っております。  また、農業委員会でも、十八日まで交渉を行い、合意できない部分については、各交渉グループ議長独自の判断により補って最終文書案を提示することにしたいというふうに表現しておりますので、文字どおりそういうことをダンケルは考えているのではないかというふうに私ども受けとっております。
  7. 林貞行

    政府委員林貞行君) ただいま川合経済局長からお話しされましたのは、ダンケル事務局長が今月十一日の非公式な貿易交渉委員会発言したことによるわけでございますが、私どもも全く同様に考えております。ダンケル事務局長は、この中で、できるだけ皆さん交渉して合意文書というのをまとめることが望ましい、しかしどうしてもできないということであれば、各グループの議長の意見をも聞いて、自分としてこういう案ならどうかというのを出さざるを得ない、こういうことを言っているわけでございます。  もちろんダンケル事務局長も、あわせてこの十一日の貿易交渉委員会で言っておりますが、この十二月二十日の文書、それは交渉の終わりを意味するものではない、例えば、市場アクセスサービス交渉については来年も続けられることになろう、こういうことを言っております。
  8. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと、合意に至らなかった部分についてドンケル局長が示すという部分は、いわゆる私が言うあっせん案的性格のものであって、関係各国をそれによって縛りつけるという性格のものではない、こう受けとっておいてよろしいですか。
  9. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 文書が出されたときに、どういうその文書性格を表現するかということにかかってくると思いますが、私どもは今までの交渉熟度と申しますか、そういうものから見てこれがあっせん案と申しますか、それで終わりというような性格文書にはなり得ないのではないかというふうに考えております。
  10. 谷本巍

    谷本巍君 外務省はいかがですか。
  11. 林貞行

    政府委員林貞行君) 先ほど申し上げましたように、ダンケル事務局長が出してくる紙は、恐らく二つ性格二つの種類があると思います。一つは、各国合意したもの、そういうものは合意の確認というふうな形で出てくるんだと思います。もう一つは、合意ができないものについて、自分判断でこういうものだろう、これならできるはずだというダンケルとしての判断を出してくるわけでございます。  ダンケルは、この二十日に出してくる紙の性格について、先ほどの十一日の非公式な会合におきまして、最終合意に近いものとして各国でも最高レベルで検討してほしいということを言っております。これは裏から言えば、最終合意ではないということもダンケルは言っているというふうに解します。
  12. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと、いわゆる例外なき関税化問題というのは、言ってみるならばこれからだということになってくるわけであります。  申し上げるまでもなく、ドンケル局長が示してまいりましたものは、輸出補助金の方は削減でありますから、残すという考え方がそこに含まれておるわけであります。そして一方では、関税化だけは例外なしでいくんでありますというのでありますから、言うならば輸出大国に優しく、輸入国には厳しくというような一方的なものでしかありません。しかも、一方の方は残す、一方は完全な例外なしというのでありますから、論理的にもつじつまが合っていないというようなことになってくるわけでありますのでありますから、仮にドンケル局長が示すいわゆる合意案の中に例外なき関税化というのが盛り込まれた場合、政府はどう対応していくかということについて、大臣見解を承りたいのであります。  御承知のように、これまで既に衆参両院自由化反対決議もしてきておるわけでありますから、そうした点も踏まえて、従来の交渉姿勢を堅持し、これまで日本政府が行ってまいりました提案の実現に向けて努力し続けるかどうか、その点を伺いたいということであります。
  13. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 結論から申し上げますと、従来のとおりにこれは進めていく、こういうことであります。ダンケル事務局長は、今あっせん案合意案かというお話もありましたが、いずれにしても十二月二十日の貿易交渉委員会で提示をするという予告をいたしておるわけでありますが、本格的交渉が十分行われてきたかどうかというと、必ずしも私たちが見ている分では本格的に十分やったというふうには思えない。アメリカECでは話し合い水面下でいろいろやられたようでありますけれども、そのようなことを各国とやっているかどうかというと、そこまでいっていない。そういう合意テキスト案というものが仮に提示された場合、これをもとにその修正を含め、ガットの場で十分議論するべきだというふうに考えております。  従来から申し上げてまいりましたとおり、国会決議というものを十分尊重し、それを体して今後も粘り強く日本の主張というものを貫いていきたい、こう思っております。
  14. 谷本巍

    谷本巍君 次に伺いたいのは、今大臣お話の中にありましたアメリカEC水面下での話し合いの問題にかかわることであります。  アメリカECとがウルグアイ・ラウンドを成功させるために新たなルールづくりの問題について水面下話し合いを進めるというのは、これはあって悪いことじゃないのであります。二国間の話し合いでございます。ところが、十二月十二日のロンドンの経済紙であるフィナンシャル・タイムズを読んでみますとまことに異常な記事が出ております。それはアメリカEC秘密交渉の中で、EC小麦輸入量の具体的規制問題、この協議が両国で行われているということが報道されておるのであります。  この記事を読んでみますと、通常ECアメリカ交渉の中でEC譲歩されてほかで何かとろうというようなもののようにとれないこともないのでありますが、多角間でルールづくりをやっている話し合い中に、ルールづくりとは全然違う話が行われているというのは一体何を意味するのかということであります。これはかねてから言われてまいりましたような世界小麦市場分割支配、そういうことの一環なのではないかと判断をされる向きが非常に強いのであります。こうした記事が事実としますと、これは生産農家にしましても消費者にしましても、農業交渉とは一体何なのかという疑問を持って当然のことでありましょう。国民ガット交渉へのイメージも大きく変わるということになってくるのであります。  そもそも新ラウンドとは一体何だったのでありましょうか。繰り返し申し上げますが、それは農産物貿易の新しい公正なルールをつくるということだったわけであります。ところが、アメリカEC秘密交渉品目別貿易交渉をやり、そしてそれを他国に強引にのませようというようなやり方になってきているのではないか。こんな不合理なことはありますまい。  政府としましてはこういう事態にどう対処するのか、それからまた、こうしたことに類する強引な押し込みに対して毅然とした態度でやっていただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  15. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今お話がございましたアメリカEC間の協議は、私どもがいろいろな形で承知している限りにおきましても、十一月九日のハーグにおきます首脳会談以降いろいろなレベルで行われておりまして、最近でも七日、八日に農相会談が開かれ、昨日、きょうあたりにおきましても行われているというような報道がなされています。その間の主要な議題は、何と申しましても輸出補助金の問題でございます。これは先ほどお話しさせていただきましたけれども、やはりこの交渉の一番の問題でございます。その場合に両者間で問題になっておりますのが削減方法ということで、ECの方は予算額での削減を主張しているのに対しまして、アメリカ対象数量削減を主張しているわけでございます。そうしたことから考えますと、その間の削減方法について議論をするとすれば、もし数量についての議論が行われているとすれば、今御指摘になったフィナンシャル・タイムズのような折衝ということが考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、この交渉最大の問題は、先ほど来申し上げておりますように世界農産物貿易を歪曲化しております輸出補助金の問題でございますので、この問題の解決というものが一番重要であるという認識を私ども持っておりますので、この問題が二国間だけで解決されるということは決してあってはならないことだと思いますし、交渉多国間で行われているわけでございますから、これは例えばケアンズ・グループなどの開発途上国もこの二国間の話し合いについては非常に不満といいますか、不信感を持っているわけでございますので、こうした問題も当然多国間の場できちっと協議されるべき問題だというふうに考えております。
  16. 谷本巍

    谷本巍君 日本役割は、国際的に見ましても私は非常に重大だと思うんです。例外なき関税化というのが大勢だと新聞は伝えてきておりますけれども中身を分析してみれば、それは輸出国大勢がそうだということにしかすぎません。輸入国大勢はこれは反対であります。例外なき関税化反対というのが実に数えて二十カ国近くに及ぶという状況になってきているのがそれを示しておるところであります。輸出国の一方的論理で輸入国農業をつぶされてはたまったものではありません。でありますから、二十一世紀に向けての公正な農産物貿易ルールづくりを実現するということは、輸入国農業の問題も含めてのことでなければならぬということなのであります。  アメリカ提案のように、農産物は総自由化でいきます、そしてまた、支持費も大幅に削減していきますということをやりますとどういうことになってくるか。世界家族農業はあらかた滅んでいく。農業生産の主流に据えられるのが企業型農業になっていきます。アメリカにその典型を見るような持続性のない、いわゆる環境破壊型の農業になっていくおそれが多いということなのであります。  さらにまた、米の市場開放をやってみたらどういうことになってくるのか。多くの識者が研究成果を発表しているそれによりますと、日本自給率は三割以下になるであろうというのが大方の見方であります。そうなりますと、輸入する米の量は幾らなのか。七百万トン以上日本は輸入しなきゃならぬことになります。米の貿易市場に出回る量は一体どの程度あるのか。昨年の場合で見ますと、精米換算で一千百十万トンと聞いております。輸入国の数は幾つか。約百カ国であります。日本が米の市場開放をやっていきますと、米の国際価格を暴騰させるという状況になっていくでしょう。それは食糧の足りない国から横取りをするということになっていくのではないでしょうか。これ以上地球の森林をつぶして農地を造成するというのはもはや無理だと言われる時代になってきております。  そこで大臣に伺いたいのは、最大輸入国日本として果たすべき役割例外なき関税化の問題についての反対について各国共同歩調共同行動、これを組織化するために力を入れていただきたいということであります。既に私ども社会党も、今月に入りましてから、当初例外なき関税化反対をいたしました十三カ国を中心にいたしまして、大使館に向けて共同歩調共同行動を呼びかけてきておるところであります。遅まきながら、農林水産省が若干その点努力をされておるやに新聞紙上を通じて伺っておりますが、今後どのような戦略で努力をされるか、その点について見解を承りたいと思います。
  17. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 反対のそれぞれの国ともう数回にわたって会合も開いております。そのほかに、農水省関係部長審議官カナダでありますとかメキシコ、バングラデシュ、エジプト、チュニジア、こういうところに派遣をいたしまして働きかけをいたしておるところであります。また大使館各国大使に、あるいは各国担当大臣働きかけをいたしておるわけであります。さらに、これはもう既に新聞等で御承知おきだと存じますが、カナダスイス韓国等五カ国とともに連名でダンケル事務局長文書で提出をいたしておる。党の方の話でありますが、保利先生大河原先生、それぞれ現地に行っていただいて、各国を回った審議官部長、そういう人たち状況を把握しながら、これまた精力的にやっていただいているところであります。
  18. 谷本巍

    谷本巍君 さらにその努力を強めていただきたいということで、次に大臣並びに外務省に要請を申し上げたいことがあります。  といいますのは、単なる呼びかけだけでは例外なき関税化反対ということを貫き通すというのは、私は難しくなってきているように思われてならぬのです。御承知のように、各国ともそれぞれ複雑な事情を抱えております。反対している国でも、中身の違いがあったり強弱の度合いの違いもございます。結局との国にしましても帰するところは、ある分野譲歩をしても七分野トータルでもってどうなのかということでそれぞれの国の姿勢というのが決まっていくわけであります。  そこで伺いたいのは、例外なき関税化阻止のために政府は、別分野譲歩をしてでも共同歩調国などをふやしていく、そして共同行動を成功させるようにそこまで踏み込んだ努力をすることができないのかということであります。そこまで踏み込んだ外交交渉をしてこそ輸入国を守ることができる条件が整備されていくわけであります。そして食糧輸入大国日本、その国際貢献、それを果たすべきことからいっても、当然そうしたことまで踏み込んだ外交交渉まですべきではないのかと私は提言したいのでありますが、大臣並びに外務省所見を承りたい。
  19. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 各国それぞれ事情の違いはあります。主要な農産物というものの違いもあります。したがいまして、カナダ提案しているもの、スイス提案しているもの、それぞれありましたけれども、この分野はいろんな話し合いの中で一本化をしたい、あるいは日本のような米に関する、韓国等もそうでありますが、そういうところはそういうところでまた会合を持って、幾つかのグループに分かれながらも全体としては例外なしの関税化あるいは十一条二項(c)、それぞれの立場に立って運動いたしておるわけでありまして、さらに精力的にやっていただくようにいたしたい、こう思っております。
  20. 林貞行

    政府委員林貞行君) ウルグアイ・ラウンドと申しますのは、二十一世紀を通じての世界貿易秩序をつくるという意味において大変広範な問題を扱っているものでございます。それは先ほど先生の御指摘になったとおりでございます。今七つ分野ということになっておりますが、もともとは十五の分野ということで、七つ交渉グループに再編成されましたが、広い分野での交渉でございます。そういう意味において私ども貿易に大きく依存する我が国としてはこれは絶対に成功させなきゃいけないということでやっておりまして、そういう意味において先生の御指摘のように譲るべきところは譲って、全体として日本にとってもバランスのとれたものにしなきゃならない、そうすることによってほかの国と共同歩調をとれるところはとりたいということで努力しております。  先ほど先生の御指摘のとおり、関税化等反対といいましても国によって、例えば十一条二項(c)でやりたいとか加入議定書に書いてあるものを除きたいとか、それから食糧安全保障にかかわる問題を例外とすべきとか、いろいろその理由が違っております。しかしながら、先ほども農水省の方からもお答えいただきましたように、できるだけそういう大きな力を糾合する形で今後とも努力を続けていきたい、かように考えております。
  21. 谷本巍

    谷本巍君 せんだって六カ国でドンケル局長へ申し入れをやった。ところが、それまで加わる予定国が途中で脱落しておりますね。新聞報道によると、アメリカの圧力がかかったためではないかといったようなことなども報道されておるところでありますが、これからの正念場を迎えて非常に大事なところへ来ておるわけでありますから、今外務省からもお話がありましたような線で大臣も頑張っていただきたいということをさらに強くお願い申し上げておきたいと存じます。  次に伺いたいのは、去る十五日の日に渡辺外務大臣が宇都宮市で開かれた後援会の総会で講演をされた際に、これまで私ども政府側から御答弁をいただいたことと大分違った発言をされております。  これは十二月十六日の読売新聞の夕刊でございますが、「大詰めを迎えているコメの自由化について「五%、三%の(自由化による)補償なら微々たるものだが、国全体のことならばく大なことになる」と述べ、日本開放を拒否して対外関係を悪化させるより、農家への所得補償などの措置を講ずることで部分自由化した方が得策との判断を示した。」ということであります。  さらにまた、もう一つ続いて記事があるのでありまして、「講演後の記者会見でも、渡辺氏は、「何も譲らないというのが今までの方針だが、何も譲らないのでは話が進まない。これからが本音の交渉だ」と述べた。」、こう書いてあるのであります。  渡辺さんは外務大臣になられる以前にもこれと似たような御発言をなすった記憶が私どもございます。ともかくもウルグアイ・ラウンド正念場に差しかかってきたこのときに、日本外交を担当しておられる大臣がこれまでの政府方針と違ったことをお話しになったということは、国民皆さんからしますと政府方針が変わったと受けとられるでありましょう。この点に関して外務省方針が変わっているのか変わっていないのか。そしてまた、この大臣発言について外務省自身がどう考えておるのか。それからまた、閣僚の一人として農林水産大臣、閣議でこのことが問題になっておるのかどうか。問題にしなかったらしていただきたいのでありますが、そうした問題等について御所見をいただきたいのです。
  22. 林貞行

    政府委員林貞行君) 先ほど御指摘になられました渡辺外務大臣発言は、後援会における発言等報道されたものと承知しておりますが、渡辺外務大臣は、十六日に外務省で行われた記者懇談におきまして、記者からの御質問の形で、自分自分というのは大臣でございますが、自分が米の自由化容認発言したというように伝わっているがそのような発言はしていない、このままではいけないということを発言したまでで、自由化容認発言はしていないというふうに言っておられます。外務省としても、大臣発言はそのようなものとして受けとめております。大臣も含めまして外務省といたしまして、米については従来よりの政府の基本的方針のもとで対処してまいる所存でございます。
  23. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 新聞のことでしばしば御質問をいただきますが、そのとおり正確に伝わっているかどうか、しばしばお答えしてきたわけでありますけれども、私もテレビを実は見ておりました。本人の言葉がずっと入っているわけでないものですから、その中で自由化は絶対してはいけない、しかしということでいろいろの話があったようであります。ですから、閣議でこの辺問題になったかといえば、そういうこともありまして、自由化に賛成だというのでないわけでありますから、閣議ではもちろんこれが問題になるということはございませんでした。
  24. 谷本巍

    谷本巍君 肝心の外務大臣がそういう発言をなすっておるのに閣議でも問題にならないというのは、私にとっては極めて不思議なのであります。  さらにまた、今外務省当局のお話を伺いますと、渡辺外務大臣は十六日の記者会見で、新聞記事にあるようなことは発言していないと否定されながら、このままではいけない、こうおっしゃったということですね。このままではいけないというのはどういう意味なんでしょうか。
  25. 林貞行

    政府委員林貞行君) 外務大臣発言されたのは米の自由化容認ではないということで、他方、農産物の問題それから米の問題につきましては、従来からウルグアイ・ラウンドの中で各国の抱える困難な問題、アメリカのウエーバーとか、それからECの輸出課徴金とか、そういう問題とともに解決しなければならないということを政府方針として言っておるわけでございまして、そういう困難な問題の解決が残っているということを外務大臣が言われたものと承知いたしております。
  26. 谷本巍

    谷本巍君 今のお話ですけれども自由化容認ではない、こうおっしゃったと言うんですね。自由化は容認しないけれども一都市場開放ならよろしいという意味ですか。ここで言っているのは自由化論じゃありませんよ。一都市場開放論なんですよ、出ているのは。そうしますと、外務大臣はみずからの見解を否定したということにならないんじゃないんですか。
  27. 林貞行

    政府委員林貞行君) 先ほど実は私、午前中に外務大臣にお会いする機会がございまして伺いましたが、外務大臣自分見解は従来の政府方針と全く変わるところはないというふうに言っておられましたので、この旨御報告申し上げます。
  28. 谷本巍

    谷本巍君 従来の政府方針と全く変わりはないということをおっしゃっているわけですね。そうですね。
  29. 林貞行

    政府委員林貞行君) そのとおりでございます。
  30. 谷本巍

    谷本巍君 火のないところに煙は立たないというんですけれども、全く変わっていないというのならどうしてこういうものが出てくるのか私どもには全く理解ができぬのでありますが、時間がございませんので話を先に進めさせていただきたいと思います。  次に、ここで厚生省さんにお話を伺いたいと存じます。大臣それから外務省の方、また伺うことになりますからそのままでひとつお願いいたします。  動植物の輸入検疫制度の国際的標準化の問題であります。御承知のように日本世界最大食糧輸入国であります。輸入食料品の安全性というのがどうなのかということについて国民皆さんの関心は年々高まってきておるところであります。ところが、ウルグアイ・ラウンドでこの問題が交渉の俎上にのっておるのにもかかわらず情報がほとんど公開されていない。言ってみるならば、極端なる密室の中での協議というふうに私どもには映っていたし方ないのであります。  初めに伺いたいのは、この問題で何が争点であったか。そしてその争点について政府はどう対処してきたか。時間がございませんので簡単にひとつお答えいただきたいのです、伺いたいことはほかにいっぱいありますから。
  31. 伊藤蓮太郎

    説明員伊藤蓮太郎君) お答え申し上げます。  ウルグアイ・ラウンドにおいては、先生御高承のとおり、貿易障害の除去などいろいろの交渉が行われております。私どもの関係しております食品衛生の分野におきましても、国際基準に基づく各国の基準の調和、それから手続の透明性の確保、そういった問題などについて話し合いが行われているところであります。厚生省としましては、食品の安全確保を図る上で一番基本になりますのは科学的根拠に基づくということでございますので、これを前提として対処しているわけであります。  それで、国際基準に基づく調和についても、原則的にはその必要性は理解するところでありますが、各国日本はもちろんでありますが、食生活のパターンでありますとか、あるいは地理的状況でありますとか、それぞれの国の衛生水準でありますとか、そういうものが異なっておりますので、必要に応じて国際基準より厳しい措置をとることも認めるべきであるということを食品の安全確保の観点から積極的に主張しているわけでありまして、国際基準より厳しい措置をとることが認められるべきであるというこの主張については、米国、ECども行っているところであります。
  32. 谷本巍

    谷本巍君 輸出国の圧力で現在の検査基準が弱められるということはありませんか、どうなんですか。
  33. 伊藤蓮太郎

    説明員伊藤蓮太郎君) お答え申し上げます。  厚生省としましては、国民の食生活の安全確保、これを基本にしておりますので、圧力に屈するとかそのようなことはございません。
  34. 谷本巍

    谷本巍君 というお答えになりますと、ちょっとまた話が違ってくるのであります。  厚生省が組織しております食品衛生調査会の残留農薬部会と毒性部会の合同審議の結果、あの一覧表を私もせんだっていただきました。拝見いたしますと、三十四農薬の農産物中の残留基準案はこれまでの二十六農薬の設定基準とは大違いであります。例えばスミチオンの場合で見てみますと、米の場合は国際基準が一〇ppmということになっているが、従来どおり〇・二ppmというぐあいになっております。基準のなかった麦について基準をつくられましたね。これほどうしたことか一〇ppm、調べてみましたらいわゆる国際基準と同じ数字なんですよ。米に比べてみましたら何と五十倍。日本人が摂取する麦の量が米の五十分の一だというのなら話はつじつま合わぬこともないですよ。私はそういうことについてはまるで素人でありますが、そういう私ども素人が見てみましても、新設されたものというのがほとんどが国際基準か、それともアメリカの基準に近い。これは発がん防止剤なんかの場合はそうですね。これは偶然の一致でこうなったんですか。圧力がかかる前にこっちがひれ伏したというようなことになってくるんじゃないですか、どうなんですか。
  35. 伊藤蓮太郎

    説明員伊藤蓮太郎君) 重ねて申し上げますが、食品の安全確保を図る上で諸外国の圧力に屈することは決してありません。  農産物の残留農薬基準を設定するという場合は、その農薬の安全性に関する資料、例えば農薬の一日許容摂取量、動物実験をしまして全然動物に何の作用も起きていないという数量に対してさらに百倍の安全率を掛ける、そういうのを一日許容摂取量、ADIと言っておりますが、そういう安全性に関する資料とか諸外国の規制基準でありますとか、あるいは日本人の農産物の摂取量、こういうようなのをもとにしまして、日本人の食生活において安全性が確保できるADIの範囲内において基準を設定するということにしておるわけであります。  御指摘のスミチオン、それからマラチオンの米と小麦の基準値についても、日本人の米、小麦の摂取量を勘案しまして、さらには国際基準も参考にしまして設定したものでありまして、これらの農薬の農産物からの摂取量は先ほど申し上げました一日許容摂取量の範囲内におさまっておりまして、食品の安全確保の上からは十分問題ないものというふうに思っております。
  36. 谷本巍

    谷本巍君 今のお話を伺っておりましても、麦の方は米の五十倍まで許容基準構わぬという理由にはなりませんよ。玄人の皆さんはそれで納得するのかもしれませんが、まず国民皆さんは納得しないでしょうな。  そこで、もう一つ伺いたいと思うのは、もしも米が市場開放された場合という括弧つきの話になってきますけれども日本政府は麦についてスミチオンの残留基準は一〇ppmというぐあいに決めた。ところが米の方は〇・二ppm、従来どおりですね。アメリカがけしからぬと言ってきた場合、そしてガット提訴された場合に確実に勝てるという見込みはありますか、どうなんですか。
  37. 伊藤蓮太郎

    説明員伊藤蓮太郎君) 米とか幾つかの農産物につきましては、スミチオンとかマラチオンの基準が国際基準と異なっておるというのはあるわけですけれども、これは日本人の農産物の先ほど申し上げましたような摂取量、あるいは一番基本になりますADIとか、そういうものを勘案して設定されたものでありまして、当面変更するというような考えは持っておりません。
  38. 谷本巍

    谷本巍君 当面というのはどういうことですか。私が伺っているのは、仮にガットに提訴された場合に、ちゃんと〇・二ppmは守ることができますよという自信がおありなんですかと伺っている。そこを答えてください。
  39. 伊藤蓮太郎

    説明員伊藤蓮太郎君) お答え申し上げます。  最初に、先生指摘のありました食品衛生調査会の毒性部会、残留農薬部会、これは四十名の委員で構成されておりますが、その方々は病理学でありますとかがん学でありますとか、あるいは公衆衛生学でありますとか、そういう専門家の方々です。そこの毒性部会、残留農薬部会において科学的な根拠に基づいて決められたわけでして、そういう意味では私どもの方としてはADI、それから摂取量、そういうものを勘案して決めまして、そう簡単に変わるものではないというふうに思っております。
  40. 谷本巍

    谷本巍君 私が言っているのは、過去のいろんな例があってのことなんです。例えば、昭和五十年ごろでしたか、アメリカから輸入されたかんきつにOPPなどの薬剤が残留していて、あなた方は廃棄処分を命じたでしょう。そして、その後アメリカから圧力がかかって、瞬く間にその圧力に厚生省が屈して認めてしまったといったような実例が過去にあるから私申し上げておるんですよ。  私が言いたいのは、〇・二ppmの米の方は厳し過ぎるということを言っているんじゃありませんよ。それは日本人は米を常食としておるんですからかなり厳しいものでなきゃしょうがない。これを守るためには麦の方ももっときちっとしたものを出しておかなきゃ守りようがなくなっていくんじゃないかという心配から私は言っているんです。本当にガットに提訴されてアメリカに勝つ自信があるんですか。もう一度伺っておきます。
  41. 伊藤蓮太郎

    説明員伊藤蓮太郎君) 先ほど申し上げましたように、食品衛生調査会の専門家によって報告されたわけでして、その審議の中では、一日許容摂取量に基づくADI、外国の規制、それからそれぞれの食品の摂取量、そういったものなどを勘案して決められたものでありまして、当面そういうものを変えるというような状況にないと思います。
  42. 谷本巍

    谷本巍君 この話はもう時間がなくなってきておりますので、先にまた譲らせていただきます。厚生省、ありがとうございました。  次に、大臣外務省に伺いたいのでありますが、ブッシュさんが来月の七日に参ります。十二月二十日のいわゆるドンケル合意案なるものが出て、各国政府がどう対応するかというようなことで、言ってみれば山場の時期というような感じがいたさぬでもないのであります。  ところで、十二月十四日のワシントン・ポストによりますと、新ラウンドの農業以外の分野で反ダンピング措置などの交渉日本が有利な状況にあるということをワシントン・ポストは述べながら、対日貿易の黒字をふやしていくために日本に対するアメリカ議会の不満がかなり強まっていくのではないかというような記事が出ておりました。ブッシュさんが来られるときには自動車業界のビッグスリーの代表も伴って来ると伝えられております。  そこで、私確認をしておきたいと思いますのは、アメリカ側の対日貿易赤字批判をかわすために米で譲歩をするということはないでしょうねということなのであります。これまでこの問題については、日本政府アメリカに対して、二国間交渉はやりません、多国交渉でいきますということを言ってこられたわけでありまするから、その原則は変わらないのかどうか、大臣並びに外務省の考え方を伺いたいと思います。
  43. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) お話のとおりでありまして、二国間交渉はいたしませんということで、これまでもそれを貫いてまいりましたし、今度もそういうことでウルグアイ・ラウンドの中でこのことは交渉させていただきますということは明確にいたしたいと思いますが、いずれにしてもまだ正式の首脳会談のテーマというものが明確になっておりませんので、それ以上のことは申し上げられません。  ただ、他分野知的所有権でありますとかサービスでありますとか、いろんな問題がまだガットの場でも結論を得るに至っていないし、いろんなことでの話はあろうと思いますが、先生お話しのように対米黒字という、私はそもそもこの米問題で話が出たときに、一体アメリカは赤字を減らしたくて言っているのか、あるいは輸出補助金が余りにもふえてきた、農業の予算あるいは補助金、こうしたものは破格の数字になっている。もう日本と比べて問題にならぬほど大きいんです。そういうことをやりたいのか、いろいろ考えてみるんですが、対米の黒字を見ておってもことし五百億ドルぐらいになるのかな。今三百八十億ドルと言われておりますが、これを日本円にしてみると五兆五千億から六兆五千億ぐらいになる。  米全体で見ると輸出の中のたった二%なんですね。それだと赤字を解消するとかなんとかというのにはいささか的を射ていない議論でありまして、そんなこと等を考えてみますと、一体何なのかというのが私どももまだよくわかりませんので、どういうテーマで来るかということを見きわめて、それからどう対処するかということになろうと思いますが、いずれにしても米問題についてはウルグアイ・ラウンドの中で交渉をいたしたいということにいたしております。
  44. 林貞行

    政府委員林貞行君) 農水大臣も言われたことでございますが、ブッシュ大統領訪日の際の首脳会談のテーマというものは現在調整中でございまして、決まっておりません。いずれにいたしましても、米問題につきましては、従来から二国間交渉の問題ではない、これは各国が抱える困難な問題とともにウルグアイ・ラウンドの中で解決すべき問題であるというのが私どもの一貫した立場でございます。もしウルグアイ・ラウンドの問題が議論されればそういう観点からの話し合いになるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  45. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  これで終わりますが、最後に委員長にお願いを申し上げたいのであります。  御承知のように、今のやりとりをお聞きいただいておりましても、いよいよウルグアイ・ラウンド農業問題、最後の正念場というところに参りました。当委員会はこれまで、例えば平成二年の九月でありましたか、委員会として内閣総理大臣に申し入れを行い、さらにはまた四月の海部首相の訪米に際しては三月二十八日に委員会として申し入れを行い、さらには七月の五日だったでしょうか、サミットに出発される海部首相に対して本院の決議を守られるようお願いをしてまいりました。米問題いよいよ正念場というところにきておるわけでありますから、後ほど理事会に諮ってその実現方を要請申し上げて私の発言を終わりたいと存じます。委員長、よろしくお願いいたします。
  46. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 理事会において協議いたします。
  47. 一井淳治

    ○一井淳治君 引き続きましてウルグアイ・ラウンド農業交渉に関連して質問をさせていただきたいと思います。  我が国の米の重要性、そして稲をつくる水田の環境や国土保全に及ぼす重要な影響というものは今さら申すまでもないことでございます。そこで、現在アメリカ提案しております一律関税化、これはぜひとも阻止してまいらねばならない、これは共通の認識であるというふうに思いますけれども、いよいよ十二月二十日に最終文書案なるものが提示されようとしております。それに向けて農水省も、あるいは外務省政府も挙げていろいろと外交努力をされておるというふうに思いますけれども、どのような戦略を持って、どのような外交交渉を展開してきておられるのか、簡潔で結構でありますから御説明をまずお願いしたいと思います。
  48. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 最終段階に差しかかっているわけでございますが、私どもといたしましては、ともすれば輸出国の立場が表に出がちな交渉の中で輸入国の立場、特に輸入国としての立場を同じくする国と協調しながらいろいろな問題に向かっているわけでございます。特に、国境措置の問題につきましては、輸入国としての立場が受け入れられない限り現実的な対応ができないということで臨んでいるところでございます。
  49. 一井淳治

    ○一井淳治君 後ほども質問いたしますけれども外交交渉にはいろんな切り口があるというふうに思いますけれども日本輸入国の立場を主張されてさまざまな働きをなさっているということは農水省の方からも、あるいは新聞等でお伺いしているところでございますけれども、あわせて輸出国の中にもいろいろ矛盾があるようでありますから、そういったところにも遠慮なく外交交渉の手を差し伸べていただくようにとりあえずお願いをしておきたいというふうに思います。  ところで、新聞あるいはその他の報道、ニュースによりますと、日本も相当外交努力をしておりますし、また一律関税化に対しては十八カ国か、あるいは十九カ国の反対があるというふうなことも聞いております。また、数カ国ずつ幾つかのグループに分かれてこの関税化に対しては例外を認めるように、あるいは十一条二項の立場からいろんな申し出がガットの事務局に対してなされておるということを聞いておるわけでございますけれども、そういったふうないろんな運動の展開がある中で、いよいよ十二月二十日には関係者間の話し合いがつかないままに見切り発車の最終文書案が出されようとしておるわけでございますけれども、相当程度日本輸入国の立場が受け入れられるような形で最終文書案が出るのでしょうか。私はかなりの期待を持ちたいという希望を持っておるのでございますけれども、この最終文書案の内容については、関税化の問題につきましてはどのような予想をお持ちでございましょうか。
  50. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 御承知のように、これまでの作業ペーパー案あるいは農業テキスト案は、国境措置につきましては包括的な関税化ということが中心として記述されているわけでございます。そうした中で、私ども今御指摘がございましたような協調すべき国との連絡あるいは話し合いを強め、かつ先日は共同の声明をダンケルにも提出し、かつ三十六カ国会議でもその旨を表明したわけでございますが、この合意テキスト案の内容につきましては、そうした経緯の中でどういう形で出てくるか予断を許さないところであるというふうに考えております。
  51. 一井淳治

    ○一井淳治君 ところで、我が国のマスコミの報道でございますけれども、外国の高官が我が国の方に不利な発言をされるとこれは比較的容易にマスコミに報道されるとか、あるいは同じ日本政府関係者が発言をしても、我が国に厳しい発言をするとこれが容易にマスコミに取り上げられまして、農水省の方々を初めとして日本外交努力というものはほとんど新聞やマスコミに載らないという残念な傾向もあると言わざるを得ない状況があるというふうに思います。農水省としてのマスコミ対策というものをしっかりとやっていただかなくちゃならないというふうに思いますけれども、このあたりはいかがでございましょうか。
  52. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今お話がございましたように、外交交渉は国と国との交渉でございます。そういう意味で、私どもは及ばずながら国益を代表してと申しますか、踏まえて交渉に望んでいるわけでございますので、国内でのそうした支援というものが非常に大事だというふうに考えております。国民の皆様方に現状あるいは私どもの考え方、そして国益というものを正しく認識、理解していただくことが極めて重要だと思います。  私どももこうした観点に立ちまして、随時交渉状況あるいはそこで展開されました各国の意見、そして我が国の主張などをプレスリリースというような形で行いますとともに、マスコミ関係のそれぞれのポジションにおられる方にも解説をいたしましたり、また一般国民の皆様にもおわかりいただけるようにパンフレットとか広報誌あるいはテレビなどを通じて理解を求めるべく努力しているわけでございます。最近でも外務省などを通じまして在外公館から我が国の基本的立場を各国に理解してもらうというような活動も行っているわけでございますが、残念ながら十分にその成果が出ていると言えない状況にあることは御指摘のとおりでございます。  いずれにいたしましても、私どもも非常に大事な問題だと思いますので、積極的に取り組んでまいりたいと思いますので、今後ともよろしく御支援のほどをお願いしたいと思います。
  53. 一井淳治

    ○一井淳治君 農水省にも記者クラブがあると思います。そのあたりは恐らく日本の米問題についても十分な御理解をいただいておるんじゃなかろうかというふうに推察いたしますけれども、いろんなうわさがありまして、これも根も葉もないうわさとは思いますけれども、例えば外務省筋から流れているんだとか、自動車産業の人がどうのこうのとか、いろいろなことが言われております。やはり相当広範なマスコミ対策をお願いしないと、なかなか御理解がいただけないんじゃなかろうか。もちろん言論の自由ということも非常に大切でありまして、これも日本の活発な政治の前進というためにはもちろん必要であるわけでございます。しかし、正しい理解を国民にしていただくということも忘れてはならない、それ以上に重要なことであるというふうに思います。  そういったことで、より広範な、相当広範な、マスコミの方々に対して深い御理解をいただくような一層の努力をお願いしなくちゃならないというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  54. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) いよいよ大詰めに差しかかっているわけでございますので、私どももこれまで以上にあらゆる機会をとらえましてそうした働きかけあるいは理解を求める活動を強めてまいりたいと思っております。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕
  55. 一井淳治

    ○一井淳治君 ところで、全国紙でございますから、中央には十二月五日、そして地方には十二月六日の朝刊に載っておりますが、朝日新聞の、地方では一面トップに載っておりますけれども、「コメ開放全面拒否を転換 部分自由化軸に交渉 新ラウンドで政府」という記事が載ったわけでございます。これはこれまでの米の完全自由化拒否を目指す日本政府方針を転換して、そういうことで現地に交渉するように指示をしたという記事でございますけれども、まず最初に、そのような従来の政府方針を変えるようなことがあるのかどうか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  56. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 就任以来、一貫して私は同じ答えを皆さんにいたしてまいりました。これもマスコミの皆さんにも何ら変わることのない話をさせていただいてまいりました。同じ話というのは余り記事にならぬのかどうかわかりませんが、何もないことを勝手に書いているとは思いません、どうもいろんな方面からいろんな話を聞いて報道されておるんだろうと思います。しかし、今お話しのような転換をした、こういうことは全くございません。
  57. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは聞かずもがなのことでございますけれども、これに対して何か抗議をされるとか訂正記事を求めるとか、そういうふうな対応をしてくださっておるのでしょうか、どうでしょうか。  またもう一つは、これは要望ですけれども、非常に大事な時期でございますから、農水省内からそんな誤解が発生するようなことが決して起こらないように要望しておきたいと思います。
  58. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 十二月五月の朝日新聞の朝刊に中央で載りましたこの記事に関しましては、私から朝日新聞の編集局に対して、このような事実はないということをるる説明をいたしまして、訂正を申し入れたところであります。これにつきまして、朝日新聞からはこの記事にかかわったと思われる方が私のところにお見えになりまして、向こうの方からの見解が述べられましたけれども、どう考えてもこういう事実がないということを私の方からよく説明をしまして、納得をしていただいたわけであります。
  59. 一井淳治

    ○一井淳治君 そういう事実があったのであればもう少し詳しくお聞きしたいわけですが、どこの省庁からそういった情報を入手したということだったんでしょうか。
  60. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 私ども新聞社の方に取材源を明らかにしろということは申しておりません。しかし、農林水産省においてこういうことはなかったということを申し上げたわけであります。
  61. 一井淳治

    ○一井淳治君 それでは無責任だと思うんですよ。本当に真剣に日本の国にとって大事なことですから、一面トップでそんな誤報記事を出されて、そのくらいでなまやさしく対応しておったら、農水省はなめられてしまうと思うんです。というよりは、農水省は近く政策を変える予定だなというふうに彼らはとると思うんですよ、非常にうがった人間ですから。農水省の方は皆さん非常にまじめな方でいらっしゃいますけれども日本人みんながみんなまじめじゃないですから、外国人に対すると同じぐらいよほど厳しく当たって、今後そういったことがあった場合は本当に徹底的に対応していただきまして、もう新聞社やめてもらう、そして、そういった新聞社は農水省については取材拒否というくらい厳重にやってもらわないと、本当にこの問題はおさまらないというふうに思うんです。いかかでしょうか。
  62. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 先生仰せられますとおり、私どももこういう事実にないことを大きく書かれるということは大変迷惑をしておりまして、そのことについては常々機会をとらえまして新聞社の方に申し上げているわけであります。ただ、取材を拒否するとかそういうやり方は、逆に言うと広報の機会をみずから放棄することになるわけでございますから、私はそういうことはいかがかと考えておりまして、まあこれは外交交渉と同じでありますけれども、粘り強く当方の考え方を新聞社の方に理解していただくように努力しているつもりでございます。また、今後ともそういう方向でやってまいりたいと思っております。
  63. 一井淳治

    ○一井淳治君 外交交渉も大事ですけれども、国内交渉もそれ以上に何やかにや老獪な方法も必要だと思いますので、十分な対応をよろしくお願いしたいと思います。  それから、今後の交渉でございますけれども、最近の新聞記事などを見ますと、十九カ国あるいは十八カ国がこの一律関税化反対をしておるということでございます。また、きょうの新聞などを見ますと、フランスのクレッソン首相がドンケル合意原案については、これはアメリカを支持しているものだということで反対だということを表明して、これが公表されるという状況になっておるわけでございますけれども、そういったことで、関係諸国に対して一層外交交渉を強力に展開していただきまして、窮地を切り抜けていただきたいというふうにお願いをしたいわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  64. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) この包括関税化という考え方が作業ぺーパーあるいは農業テキスト案に出ているわけでございますが、これにつきまして反対の意向を十一月末の農業会合などで表明いたしました国が十四カ国ございました。その後、先ほど来お話が出ておりますように、いろいろな形で私ども働きかけを強めているわけでございますが、現在のところ二十カ国ばかり、この中には私どもが推測してこれに反対している方向ではないかという国も含まっておりますけれども、そういうものを含めて約二十カ国がそうした態度を示しています。  ただ、先ほどもこの点もお話が出ておりますが、それぞれの農業事情というものが異なりますものですから、この一律関税化あるいは包括的関税化の問題につきましても、その反対のポジションというのは少しずつ違うことはあろうかと思います。そうしたことを共通項で結ぶような努力、それは包括的関税化というのは反対だということだろうと思っております。  そうしたことで、ここのところそうした国々と一緒の行動をとりつつあるわけでございますが、残された時間は少ないわけでございますので、今後ともさらに一層連絡を密にして働きかけを強めてまいりたい。昨日なども現地ではそうした国々との連絡を緊密にとっているところでございます。
  65. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、アメリカ国内の世論や政治情勢でございます。これは私よりも農水省の方がお詳しいとは思いますけれどもアメリカ上院議員百名のうち六十二名がウェーバー条項について譲歩すべきでないという見解を表明しておるようでございます。また、マディガン農務長官もウエーバー条項の撤廃はあり得ないという発言を外に出しておりますし、上院の貿易委員長さんも三〇一条問題については弱体化させてはならないということで、輸入国の立場をこういった人たちは強調しておるようでございます。  今までの日米間の様子を見ますと、日本には近くアメリカ大統領もおいでになりますし、これまでヒルズ代表や国務長官も来られまして、アメリカから日本に対する非常に積極的な働きかけばあるわけですけれども、どうも日本からアメリカに対して、これも不当な内政の干渉になってはもちろんいけないわけですけれども、しかし本当に友好関係を深めるということで、日本の米の意味とか、あるいは日本の水田が日本の環境やあるいは国土保全にどのような意味を持っているかというふうな点の強力なPRが必要ではなかろうかというふうに思うわけでございます。遠慮なくアメリカ国内に対しても、もっともっと働きかけていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、その点いかがでございましょうか。
  66. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 米国の中でも、先ほどお話がございましたようにいろいろな動きがございます。アメリカ政府自身は、従来からウエーバーなどを含めましてすべての非関税措置関税化すべき旨を提案しておりまして、現在もこの立場は変更ないというふうに言っているわけでございます。しかしながら、十二月十日の米国の下院農業委員会の公聴会などでは、米国内の農業団体から、ウエーバーの廃止についての反対の声がそれぞれの作物の委員会あるいは農民団体などから出されているように、それぞれ米国内にも反対があることは御指摘のとおりでございます。  また、米国の上院議員の連名の書簡、あるいはつい最近でございますが、上院のベンツェン財政委員長の大統領への書簡などでもその点を強く触れているようなものもございまして、米国内でもいろいろな動きがあることは御指摘のとおりでございます。  私ども、米国大使館におります私どもの方から出ておりますアタッシェを含めまして、そうした団体あるいはその周辺の人々に日本の立場を十分理解してもらうように働きかけているところでもございますが、今後とも情報をとり、かつそうした人々とのお話し合いを強めていきたいと思っております。
  67. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、いよいよ明日出されるというダンケル最終文書案意味でございますけれどもダンケルさん自身の発言からしてもそうでございますし、きょうやあるいは最近の政府態度を見ますと最終合意案を見てから対応を考えるというふうなことも載っておりますけれども、この十二月二十日に出される最終文書案というものは交渉の余地があるものである、そのようにお聞きしてよろしいものでございましょうか。
  68. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) ダンケル事務局長は、貿易交渉委員会並びにその後の農業会合で二十日の日に最終文書案を提示したいということを言っているわけでございます。その文書案は、十八日まで交渉を行い、合意できない部分については各交渉グループの議長の独自の判断により補って出したい、こういうふうに言っているわけでございます。  ただ、昨日十八日までに私ども十分な交渉が行われているとは言いがたい状況にありますので、二十日に出す文書につきまして、それがほとんど修正を許さないような性格文書になるというふうには非常に考えにくい状況にあるのではないかと思っております。どういう性格づけをダンケルがするのか、十分まだわからないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そういう熱度がない中で出される文書でございますので、私どもは言うべきことは言い、修正を求めるべきところは修正を求めていかなければならないのではないかというふうに思っております。
  69. 一井淳治

    ○一井淳治君 そして、十七、十八日の交渉状況につきましては農水省からもお聞きをしておるわけでございますけれども新聞記事を見ますと、非常に反対が多いから強行裁定案しか方法がないんじゃないかという見解が有力になりつつあるということも言われておるようでございます。私どもは、仮に強行裁定案という形で出ても出なくても、どっちにしても同じように、包括関税化例外が認められれはこの上もないことでありますし、仮に包括関税化の条項が入るというふうになった場合でも、これまでの国会決議を尊重し、米の完全自給を守るというこれまでの基本方針を今後とも維持しながら交渉していただくということをお願いしたいし、そうする以外にないというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりについてはいかがでございましょうか。
  70. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) どんなものが出てくるのか、あるいはどんな性格のものかということの見きわめもいたさなければならぬと思いますが、いずれにしても案が示されて、決定案ではありませんので、私どもしばしば会合する場合には一任をとって、そして一任を受けて出すというのが普通会議の進め方でありますが、そういうことでもないわけでありますから、これが出たからそのとおりしなければならぬというものではない。今先生お話しのように、私どもには私どもの考えというものをさらに理解を求める、そうした進め方が今後もできるものだというふうに思っているわけであります。
  71. 一井淳治

    ○一井淳治君 そこで大臣に対しても強くお願いをしたいわけでございますけれども、間なしに国会も終わることでございますので、大臣にもぜひとも先頭に立って海外に積極的においでいただくとか、頑張っていただきたいというふうに思うわけでございます。  このウルグアイ・ラウンド農業交渉の本質論につきましては、大臣一つのお考えをお持ちであるというふうに思いますが、やはり輸出国の都合を一方的に輸入国に押しつけようとしているということに農業交渉については本質がおるように思うわけであります。これがウルグアイ・ラウンド農業交渉の終わり近くになって、まさにECアメリカ交渉の様子を皆さんが見ているというふうな状況の中でその点があらわになってきたというふうに思いますけれどもアメリカECとがこっそり相談をして輸出補助金を温存しながらこれを輸入国に押しつけてくる。輸入国の国内農業が、あるいは国内の環境や国土がどうなってもいいというふうな輸出国の押しつけというものは絶対に許されてはならないし、これはガットの公正の精神にも反するというふうに思うわけでございます。そういったことで、ぜひとも日本の国益を守ると同時に、国際貿易上の公正を追求するという立場に立たれまして、大臣にぜひとも、日本の国内でももちろんそうですし、外国にも積極的に出ていっていただきまして、この問題の解決のために最大限の御努力をお願いしたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  72. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) お話のようにルールというのは公正公平でなきゃいかぬわけでありまして、偏ったルールをつくって協議をしてもそれは協議になりません。したがって、そのルールをつくるための努力をしているんであって、何か事を決めるためにこれをしているのではないというふうに私ども思っておりますので、これからも努力をさせていただきます。しかし、そう言ってみても会議というのは、その国の国益を踏まえてそれぞれが都合のいいように主張をするという場面というのも多いと思うんです。  先ほど来からしばしばお話がありますように、輸出国の方の過剰農産物をどう処理するかということだけで議論をしてまいりますと、輸入国の立場というものとは相入れないものになるわけでありますから、そういうことで、これからもお申しつけのように、必要なときには私も出向いてまいりたいと思います。  一昨日も私の友人がアメリカから参りまして、農林省から英文のパンフレット、詳しく日本農業事情というものを書いたものがあります、これに基づいて説明をして持っていっていただきました。ぜひひとつ議長を初め国会の議員の皆さん方にあなたから日本の米の事情というものはどういう事情がということの説明を願いたい、私も特別に自分で持っている資料がありまして、それもコピーをいたしまして説明をいたしました。初めて聞くものですから、こんな事情になっているんですかということがよくわかって、たしかきょうお帰りになるはずでありますから、帰ったら早々にワシントンでそれぞれの国会議員に私から説明をします、こう言ってくれておる人もございます。  いずれにしても、お話のように全力を挙げて、私どもも国家、国益というものを十分考えながら交渉をいたさなければならぬ、そう思っております。
  73. 一井淳治

    ○一井淳治君 そして一月七日にはブッシュ大統領の訪日がございますけれども、そこでお米の問題がテーマになるということも言われているところでございます。その場におきましてもこれまでの大臣のお立場で御努力いただきたいと思いますし、また、日本の国内問題として国内の分裂ということがあったらいけないわけでございます。しかし、我々、少し公正公平に考えましてもお米の問題は日米間の主要な問題ではないんじゃなかろうか、自動車やその他の工業的な輸出の方がより大きな問題ではなかろうかというふうに思うわけで、大臣にはぜひとも農業を守るという立場で御努力をお願いしたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  74. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) ブッシュ大統領の訪日の件でありますが、どういうことを会談でテーマにしてやろうかということは決まっておりませんので、いずれそれを見たい、こう思っておりますが、従来から二国間ではやらないということで、今日までも二国間の交渉はいたしていないわけであります。ウルグアイ・ラウンドの中で他の国もいろんな困難な問題を抱えておりますので、そういうものの中でそれぞれ調整を図っていく。まあほどほどといいますか、あるいは一方に偏ったということのない形で世界の国々がまとまることができるならば、私たちは別にこれに逆らうものではありません。  ただ、農業に関する限りは、日本というのはもうカロリーベースでいつでも四八%、これはフランス、アメリカは一二八%であります。それに比べて日本のカロリーベースの四八というのはいかに低いか。これは公平にやっているわけではなくて、バランスもとれていないという感じがいたしておりますので、そういうことで、今後大統領がお見えのときには私どもの主張というものを展開していきたい、こう思っております。
  75. 一井淳治

    ○一井淳治君 大臣の一層の御努力を要望申し上げたいと存じます。  次に農協のあり方の問題について質問をさせていただきます。  現在、農協のあり方についてはいろいろと検討が進められておるということをお聞きいたしております。例えば営農指導につきましても、営農指導のあり方について有料にするとかどうとかいうふうなことが検討されておるようでございますけれども、より基本的には農協がだんだんと農業から離れつつある、農業以外の方に関心や基盤が移りつつあって、どうもそもそもの原点であり本体である農業が忘れられるんじゃないかという心配もあるわけで、あくまで農業に基盤があるんだということをお忘れなきようにお願いをいたしまして、営農指導ということも農協の業務の根幹として引き続き発展していくように御配慮賜りたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  76. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 農協をめぐる環境が私どもが法律を制定し、かつ運用してきた初期の段階とはかなり変わってきているという認識を持っているわけでございます。そうした環境の変化の中で、今後農協がどうあるべきかということは農協系統組織挙げてみずから検討をし、先ごろの農協大会でも基本的な方針を決めているわけでございますが、その中でやはり一番中心的に今後とも考えなければいけない問題がこの営農指導の問題だと思っております。農協が農協である一番のゆえんは農業者を基盤にした協同組合であるということでございますので、その農業者の活動を支援する協同組合でなければいけないということは一番の中心的な課題であろうかと思います。  ただ、農家の多様化とかいろいろな農村の変化ということからそれが一律になかなか行いにくくなっているという現状の中で、今後どういうふうに進めていくかということが一番大事な視点ではないかと思っております。例えば経済事業、販売事業とか、あるいは購買事業をとりましても、それは営農というものが中心にあって初めて成り立つ事業でございますので、そこを結びつけていく農協の役割は営農指導ということではなかろうかと思っております。  したがいまして、私どもが今検討を進めている中では、多様化した農家の中でどういうふうに営農指導を展開していくかという組織的な問題、あるいはこの営農指導を進めるための資金的な、あるいは財源的な確保の問題、それから各種試験場あるいは普及所などの外部の専門機関との連携の強化の問題。それから、当然のことながら販売事業などとの結びつきをどうやって強化していくかというような視点に立って、これは法律的な側面、それから実態的な側面、両方あろうかと思いますが、そうした点について検討し、その充実策を練ってまいりたいと思っているところでございます。
  77. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、最近、合併の問題が起こってまいりますと、内容の充実した農協とそうでない農協とがはっきりと分かれて見えるという状況になっておりますけれども、この農協の経営管理体制のあり方、もう少し具体的に言いますと、責任体制ということがはっきりすることと、もう一つは強力に事業が推進できるというこの二点が非常に大事ではなかろうかというふうに思うわけでございますけれども、そういった点も御考慮をいただかねばならないと思いますが、いかがでございましょうか。
  78. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今の状況からまいりますと、やはり農協合併というような形での事業基盤の強化ということが非常に重要になってくると思います。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕 そうした推進を行ってまいりますと、当然のことながら、従来の農協と違ったいろんな意味で非常に大きな組織になるわけでございますので、こうした組織の中の例えば執行機関でございます理事会あるいは監査の役割を果たす監事の機能といったものを初めとした経営の管理体制というものが非常に重要になってくると思います。  今までのような、組合員がみずから監視が行き届くと言うとちょっと語弊がございますが、そうした規模でなくなって、大きくなってまいりますれば、組織としてどういうふうにあるかということが非常に重要になってまいると思っております。金融の自由化その他、農協をめぐる情勢も非常に厳しさを増しておりますので、何よりも増してこの経営管理体制の強化という視点が重要だと思います。法律的な側面も含めまして、この点も私ども今回の検討の重要課題というふうに考えているところでございます。
  79. 一井淳治

    ○一井淳治君 それから、前々回にも質問いたしましたのでこの理由は申し上げませんけれども、農協が農地やあるいは土地所有のできる範囲を拡大することが非常に現在大切ではなかろうかと思いますが、その点、農協法の改正に当たっては十分に検討をお願いしたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  80. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 農地の所有あるいは農業経営という観点からの御指摘でございますが、現在の農業あるいは農村をめぐる状況と農協が農業経営あるいは農地とのかかわりという点でどういうふうにあるべきかというのは、これも大きな課題であります。地域によって非常に状況も違うということもございます。担い手の観点から見ましても、担い手が著しく少なくなって、例えば農協がそういうことを担わなければならないというような地域もあろうかと思います。  ただ一方で、農協はそもそも農業者を支援する団体でございますので、そういう農業者と競合することについての問題、あるいはリスク負担が余りにも大きいことに農協がたえられるかというような問題などもございます。  両面からの御意見もあり、かつ地域によって御意見も違う問題でございますので、その辺をよくお聞きし、私どもも検討をしてまいりたいと思っております。従来からの農地法など、ほかの制度との関連などの関係もございますので多角的な検討を要すると思っておりますが、非常に重要な問題だということで今取り組んでいるところでございます。
  81. 一井淳治

    ○一井淳治君 これも前々回に質問をさせてもらいましたのでこの理由は申し上げませんが、農協が農業を営み得るように農協法を改正してほしいという要望でございます。そんなことはする必要はないという農協もあるでしょうし、いろいろあると思います。しかし、やる気のある農協も相当数あるわけで、そういった農協がそういう道を選び得るような道が開けておった方がいいんじゃないかというふうに思うわけでございます。農協が農業を営み得るようにするという農協法の改正についても十分な検討をお願いしたいわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  82. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 農協が農業経営を行うことにつきましては、現在は委託というような方式を通じて、農協から見れば受託でございますが、そういう形で行うということができることになっているわけでございますが、やはり地域あるいはその置かれた環境によりまして農協がみずから行わないと担い手が十分でない地域も発生していることは承知しているところでございます。  したがいまして、そうした農協が実際にやらなければならないような地域につきましてどういう取り組み方がいいか。一方で先ほども申しましたけれども、組合員の事業と競合するという面もあります。それから、やはり農協というような組織体が農業経営を営むということにつきまして、従来からの農地法からくる観点というものも検討の一つの視点に入れなければいけないと思っております。  そうしたことで、一律にこういう問題を行うこととする必要があるかどうかということだけではなくて、地域的にそういう必要あるいはそうせざるを得ないような地域についてどうするかというようなことも含めまして、この問題も検討していかなければならないんではないかというふうに考えております。
  83. 一井淳治

    ○一井淳治君 いろいろ意見も出るでしょうし、理屈を言っておれば切りがないわけですけれども、脱皮ができるところは脱皮が可能なような道筋をぜひともつくっていただくように要望いたしておきます。  それから、同じく農協法の改正に関連してですが、現在例えば老人施設を、過疎地のあたりで、農協が若者が去った後で老人を施設に入れて老人の福祉を図ろうというようなことを考えましても、員外利用を非常に制限されておりまして、十分に公的な助成を確保しようにもできないというふうなことがございます。したがいまして、公共性の高いもの、あるいは地域活性化に直接貢献するというものにつきましては、少し員外利用を拡大していただいた方がいいんじゃなかろうかというふうに思いますが、その点いかがでございましょうか。
  84. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 高齢者対策と申しますか、老人福祉問題につきまして農協がどうかかわってくるかという問題は非常にある意味で深刻な問題だと思っております。農村の高齢化が進んでまいりますと当然行政のそうした問題に対する役割というのも非常に大きいわけでございますが、地域におきます農村社会の中心的な組織でもあります農協がこうした高齢者対策問題あるいは老人福祉問題に取り組まざるを得ないという状況も出てきているわけでございます。現実に、そうした形で既にかなり積極的に取り組んでいる農協もあるわけでございます。したがいまして、今言った員外利用というような問題は他の事業とやや異なる性格のものでもございますので、そうした福祉問題あるいは高齢者対策という視点からもう一度見直してみる必要があるのではないかと思っております。  ただ、一方でこうした事業は非常にリスクと申しますか負担を伴うものでございますので、農協経営にとりましてかなりの圧迫要因になることも事実でございますので、そうした点も一方で考慮におきながら、しかし地域社会における農協の存在ということを考えながらこの問題も検討していかなければいけない非常に重要な問題だというふうに思っております。
  85. 一井淳治

    ○一井淳治君 もう一つ農協の関係で合併助成でございますけれども、来年三月で期限が切れて延長の必要があるんじゃなかろうかというふうに思いますけれども、これは総合農協が対象になっておりまして、専門農協は合併助成法の対象になっていないという点で、次の延長には専門農協も入れていただいた方が現在の時勢に適合しているんじゃないかというふうに思います。  また、税法上の特例ですけれども、合併に伴うさまざまな税法上の特例だけじゃなくて、合併対策のために基金をつくるとか、いろいろ準備が進んでおるのではないかというふうに思いますけれども、そういった合併対策の施策についてもあわせて税法上の対策が必要ではなかろうかというふうに思いますが、そのあたりいかがでございましょうか。
  86. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 従来の合併助成法は、総合農協の合併に対する支援という視点で組み立てられております。今お話がございましたように、専門農協につきましても最近のこうした情勢から、合併を進めるべき必要というものは強まっているわけでございます。そうした観点から、関係者からこの合併助成法の対象として専門農協も含めるべきであるという御意見が寄せられて、真剣に議論がされているところでございます。また、税制問題の中で合併の阻害要因となっている、例えば固定化負債の存在、これを抱えている農協がなかなか合併が進まないというようなこともございます。そうしたものを除去するための何らかの方策について考えるべきである。また、それについての税制上の措置も講ずべきであるという要望あるいは御意見もございます。私どもそうしたものをそれぞれ踏まえまして、今後の問題、何とかこの合併促進法を継続かつ拡充していくという視点に立って現在検討を行っております。
  87. 一井淳治

    ○一井淳治君 必ず前向きの結論を出してくださいますよう要望いたしておきます。  次に飲用乳価対策でございますけれども、いわゆる指定生乳生産者団体が該当の都道府県内の生乳を一手で販売し、交渉ができるというシステムにはなっておるわけでございます。しかし現実には指定生乳生産者団体の権限が十分に発揮できない状況もございます。といいますのは、参加している下部の農協あるいは酪農民の方々が特定のメー力ーといろいろな事情がありまして各県単位で一体化できない、なかなか中央で一本での強力な交渉ができないという実態も、私の地元の県ではございませんけれども、あるように聞いております。そういった点で、現在形式的には、規則の面では無条件に指定生乳生産者団体に委任するというふうになっておるんですが、実態がそうはなっていないわけでありまして、そのあたりの調査なり、あるいは強めるための御指導を賜ることが飲用乳価対策にとって一つの重要な施策ではないかというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  88. 赤保谷明正

    政府委員赤保谷明正君) 指定生乳生産者団体の権限が十分発揮されるようなそういう指導をというようなことでございますが、飲用牛乳市場の安定を図る上で生乳の一元集荷多元販売機関でありますいわゆる指定団体、これによる生乳の需給調整機能、これが極めて重要でありまして、この機能が十分発揮されることが必要であると考えております。農協の飲用牛乳の安売り等の問題につきましても、いわゆる指定団体が飲用需要に応じた適正な配乳を行う、そういうように需給調整機能を適切に行うことによりまして対応がなされるべきであると思います。  このため、私ども農林水産省としましては、「飲用牛乳の流通取扱指針」というものを定めまして、これに基づいて指定生乳生産者団体による適正な集配乳の確保等生乳需給調整機能の整備等につきまして関係者を指導いたしているところでございます。また、いわゆる指定団体の行う生乳生産の動向、そういったものに関する調査の実施あるいはその運営体制の整備に対しまして助成を行っているところでございます。今後とも指定団体の機能が十分発揮できるように指導をしてまいりたいと考えております。
  89. 一井淳治

    ○一井淳治君 農水省がこれまでそういう施策をお持ちであったことは私も理解できるんですが、ただ、その施策をなさっておってもまだ十分でないということを最近の乳価交渉の中でだんだんと聞くものですから、そういった問題意識を新たにお持ちいただきまして、調査なりあるいは強力な指導をぜひともお願いしたいと思います。  それから、飲用乳価対策にとりましては、余乳処理施設がない地域については新しく設ける、既存の施設がある場合にはこの既存の施設を効率的に利用するということが非常に大切ではなかろうかということを痛感するわけでございます。この余乳処理施設の充実ということについてお考えをお伺いしたいと存じます。
  90. 赤保谷明正

    政府委員赤保谷明正君) 余剰乳の処理施設の問題でございますけれども、生乳生産につきましては、生乳の需要動向に即して計画生産の推進を図っているところでございますけれども、生乳の需要は、お天気だとか季節等によりまして変動が大きいために、時には余剰乳が発生することがありまして、その取り扱いによりましては飲用牛乳市場の混乱等を招来することもあるわけでございます。このために、余剰乳を効率的に処理をしまして、飲用牛乳市場の安定化等を推進するため農林水産省としましては、補助だとか融資によりまして余剰乳処理施設の設置を推進するとともに、指定団体から乳業工場への配乳の適正化、さらには、生乳販売の全国連再委託を通じた生乳の広域的な需給調整などを指導してきているところでございます。  今後とも、生乳の生産流通に関する情報の迅速な収集、分析、その提供、こういった体制の整備等を通じまして指定団体の需給調整機能を強化して余剰乳の発生を最小限に抑えるとともに、また、余剰乳処理施設の整備を図る等必要に応じて適正な指導、支援を行ってまいりたいと考えております。
  91. 一井淳治

    ○一井淳治君 あと時間がございませんので、三点ばかり要望して終わらせていただきたいと思います。  一つは、生乳の需給動向や価格についての全国的な情報システムをおつくりいただいた方がいいんじゃないかということでございます。といいますのは、現在各酪農団体ともいろいろ駆け引きをせなくちゃいけない、あるいは他県の要請もあるというので価格や需給動向についてはかなり秘密にしておるような状況がございますけれども、この秘密主義が、短期的にはいいのでしょうけれども、酪農民の地位の向上という長期的な立場から見ると、やはり弊害の方が大きいんじゃなかろうか。現在は大体一月程度で集計している、そして情報が公開されるようでございますけれども、需給の問題については毎日毎日まとめて、全国の余った乳がどの地域にどの程度あるかというふうな全国的な情報システムが必要じゃなかろうか、そういうふうに思うわけでございます。これは余乳処理施設の拡充という問題とも絡まっていると思いますけれども、その点の御配慮をひとつお願いしたいわけでございます。  もう一つは、量販店に対する御指導でございますけれども、いろいろと農水省の方で御配慮いただいていることは理解いたしておりますし、またこれは行き過ぎがあってもならないということもよくわかっておりますけれども、メーカーも酪農家も、そして消費者に対しても、将来とも新鮮でよい牛乳が安定的に供給されるように末端価格の問題から解決していかなくちゃならないわけでございまして、量販店に対する御指導を一層御配慮をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  それから、三つ目は酪農についての実態調査ですけれども、現在進行しておりますが、これを早くやらないと酪農の危機的な状況に対する適切な対応ができないんじゃないかと思います。そういったことで、現在進められております酪農に対する実態調査を少しでも早くやっていただきたいというお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  92. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 ウルグアイ・ラウンドもいよいよ大詰めに近づきまして、あしたはドンケルさんからいよいよ合意案が出される、こういう段階になってまいりました。  そこで、先ほどから同僚議員からいろいろの御質問があるわけでございますが、私は若干角度を変えてお伺いを申し上げたいと思う次第でございます。  伝えられておりますところの米の例外なき関税化ということが仮に実施をされた場合に、日本農業あるいは国民経済にどのような影響を及ぼすかということにつきまして、最近注目すべきレポートが出されておるところでございます。それは、御案内のとおり、東大の森島賢教授を中心とした米政策研究会のレポートでございます。  これによりますと、試算では短期的には我が国の米の生産量が現在の全生産量の約三六%の三百二十八万トンに激減するであろう。長期的にはさらにそれがわずか七十八万トンに激減するであろうということでございます。その結果は、国民経済的に見ても、国内雇用におきまして農業で九十四万一千人、サービス業で四十四万五千人、製造業で二十二万二千人、建設業で一万一千人などトータルで百六十三万一千人の雇用減を来す。さらに、これが国民経済的には十一兆四百六十四億円の減少を来すというものでございます。  当然ながら、米作あるいは農業生産に依存をしておる度合いの高い北海道なり東北、北陸あるいは中国、四国、九州、ほとんど、過疎地帯を含む全国土の半分以上のところでこのような現象が起こりますれば、地域経済は荒廃をし、過疎状態はいよいよ激化する、こういうことでございます。  反面、これが肝心のアメリカではどういう好結果をもたらすかということもこのレポートは試算をいたしております。雇用ではわずかに一万六千人がふえるだけであります。生産額では十二億三千万ドルがふえるだけでございます。きのうの円の相場が百二十八円でございますから、これで計算をしますと千五百七十四億円、日本で失うものが十一兆四百六十四億円。アメリカの得るものが千五百七十四億円、一対百であります。雇用において失うものが、日本においてはただいま申しました百六十三万人、アメリカにおいては一万六千人、まことに日本にとっては大きい損害、アメリカにとっても得るところは極めて少ない、こういう数字を見て私も改めてびっくりしておる次第でございますが、まずこの数字につきまして農水省の方でどのような評価をしておられるか、その点につきまして御感想、コメントがございましたら教えていただきたいと思います。
  93. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) ただいまお話のありましたいわゆる森島東大教授を初めとします十名ほどの学者の皆さんが試算をしたことにつきましては、今委員の述べられたとおりでございます。これは実はいろいろな前提、仮定というものが置かれた上での試算であるというふうに考えておりまして、例えば今後の価格、コスト、さらには外国産の米との品質の格差、あるいは価格が下がることによる国内の需要の変化等々についてどういう形で計算されたか内容が詳細わかっておりません。  したがいまして、事務的に言いますと、この試算そのものについての評価というものはなかなか難しいわけでございますが、一般的に申し上げますれば、米は我が国の農業の基幹作物である。またそれに関連する産業も、地域地域の地方の経済に大きなウエートを占めるということでございますので、その国内生産が関税化によって大幅に減少するということになれば、ただいまお触れになりましたような各方面で大きな影響があるだろうというふうに考えております。  また一方、アメリカにおきましては、米はいわばマイナークロップスでございます。経営規模も大きいアメリカの稲作経営から見ますと、確かに日本における影響等に対してプラスになる効果というのはそう大きなものじゃないだろうというふうに思う次第であります。
  94. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 私があえてこの数字を申し上げましたのは、米の自由化という問題が国際的な通商関係の中で、世界貿易量において米はわずか一千万トンそこそこというものの取り合いについてのお話が先ほど同僚議員からありました。私は、そういう問題とあわせて、アメリカが米の自由化によって得るという生産額で十二億三千万ドルの増加、その中の七億一千万ドル、すなわち五八%というものが精米業界を中心とする製造業の増加だというわけであります。  としますと、思い出しますのは、一九八六年に全米精米業協会が突如として米の自由化の問題をそれ以降二回にわたって通商代表部に提訴をした。これがそもそもウルグアイ・ラウンドにおいて米の問題が取り上げられる直接の動機であったわけであります。私の認識に間違いかなければ、こういうことを今さら言ってもしょうがないんですけれども、本来ウルグアイ・ラウンド農業問題が取り上げられたのは、アメリカECとの間の輸出補助金問題というものがそもそも主題として取り上げられたのが、日本のマスコミの報道等を見ておりますと、いつの間にかウルグアイ・ラウンドでの農業問題の主題というのは米ばかり。だから、米をやらないと、ウルグアイ・ラウンドをつぶしたのは日本日本はけしからぬ、日本世界で孤立をしますよ。国民皆さん、米を自由化しましょう、米を自由化しましょう、こういう大合唱でございます。  私は、国際間の経済関係、政治関係というのは冷厳きわまりないものであって、米をこのような形で思慮なく自由化するということがあったならば、日本農業は崩壊し、国民の主食というものの確保もおぼつかない。言い古されたことでございますけれども、こういうことをあえて強調したいという気持ちでございます。  そこで、もう一つこれに関連して申し上げたいと思いますのは、アメリカは一九六九年輸出管理法というものを持っておりますが、この法律は現在でも有効でありましょうか、どうかということであります。
  95. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 輸出管理法につきまして、ちょっと詳細を私把握しておりませんけれども部分的だとは思いますが、まだ有効な部分は残っているというふうに記憶しております。
  96. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 この法律の第三条で、アメリカの「議会は、以下の通り宣言する。」「希少資源の過剰流出から国内経済を保護し、外国需要によるインフレヘの重大な影響を緩和するために必要な場合に、産品の輸出を制限することが合衆国の政策である。」、こういう条文がございます。  これを受けまして、第七条(a)というところで、「この法律の第三条(2)(c)に定める政策を実施するため、大統領は、合衆国の管轄下にある物品もしくは合衆国の管轄下にある者が輸出する物品について輸出を禁止または削減することがでさる。」という条文がございます。  もしこの条項が生きており、仮にこの包括的な関税化というものができまして、ただいま私が申し上げましたような米の包括関税化によって自給率がかくも落ちるということになった場合に、ちょうど大豆の、昭和四十八年にアメリカが大豆の日本に対する輸出をとめました。湯豆腐が食えないということで大変大騒ぎをした思い出があるわけでありますが、それと同じことが今度はもっと物すごい規模で、この条項をもとにして仮に日本に対するアメリカの米の輸出をとめたという場合にはどういう事態になるか、こういう心配がございますので、あえてこの条文がまだ生きているのかどうかということを聞いた次第でございます。その点はいかがでございましょうか。
  97. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今の条文は、私が部分的と申しましたのは、記憶がはっきりしないのでございますが、その点についてガットの十一条の二項の規定にやはり同趣旨の規定がございます。輸出の禁止または制限が許される場合といたしまして、食糧その他輸出締約国にとって不可欠の産品の危機的な不足を防止するためという規定がございます。したがいまして、今のガットの規定では、今のような状況において輸出の禁止または制限をすることが許されているわけでございますので、そういう観点からそうした規定があってもおかしくないというふうに私は考えております。
  98. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 食糧を国際政治の場で政治の手段あるいは戦略物資として使うということは、これはもう当然考えられることでございまして、そういう観点からいたしましても、私どもはやはり国民のための基本的な食糧というものは守り抜かなければならない。それが子々孫々に至るまでの我々の現在並びに将来の国民に対する責務だと思う次第でございます。  これに関連をいたしまして、私は非常にアメリカが身勝手だと思いますのは、もちろんこれは合法的にガットで、ガット条項に基づいて各国の同意を得て成立したものであるそうでございますが、例のウエーバー条項、小麦、穀物、酪農品など十四品目についてその自由化の義務を免除されておる。これにつきましても、先ほど同僚議員から御質問がございましたように、アメリカでは例のゲッパートさんを初めとしてこれを廃止したら承知せぬぞということで大変激しい反対運動が起こっておるということも伺いますし、またこの食肉の輸入制限法、こういったものもなお持っておるわけでございまして、これも考えてみますと、日本に対しては牛肉の自由化を迫りながら、みずからは都合のいいときには牛肉の輸入をとめられるこういう輸入制限法を持っておる、こういったこと。あるいは先ほど質問が出ておりました輸出補助金、これについても全面的にやめる、これを全廃するという議論にはなっておらないように伺っておるのでございますが、この辺のウェーバー条項なりあるいは食肉の輸入制限法、こういったものを、アメリカ日本に米の自由化を迫りながら、みずからはこれらは堅持するつもりであるやにも伺うのでありますが、その辺の事情はおわかりでございましょうか、お答えをいただきたいと思います。
  99. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今お話がございましたように、アメリカはウエーバー条項によりまして十四品目につきます輸入制限を許容されているわけでございます。この根拠がアメリカの国内では農業調整法二十二条ということになっているわけでございますが、今回のガット交渉におきましては、こうしたウエーバーを含めてすべての非関税措置につきまして関税化するという提案をしており、これにつきましてはさきにヒルズ代表が訪日されましたときに大臣からもその点をただしたところ、そうした立場には変更ないというような話がありました。  しかし、一方で、先ほどもお話し申し上げましたが、下院の公聴会一の席上、農業団体は、関係農業団体でございますが、一斉にこれに反対している。あるいは上院議員六十数名にわたります連名の書簡、それから数日前でございますが、ベンツェン上院財政委員長がこれに関する書簡をブッシュ大統領にあてて出したというような事実がございます。したがいまして、米国国内におきましても、この問題は非常に困難な問題として存在するというふうに考えております。  私どもは、農業各国それぞれ特殊な環境の中で行われているものでございますので、そうした微妙など申しますかセンシティブなそういう農業があるということは、ある意味では当然ではないか、そうしたものをお互いに認め合うということも現実的対応ではないがというふうに考えているわけでございます。
  100. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 私は、この問題で特に大臣に御所見をお伺いしたいと思いますのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども日本は自由貿易の恩恵に一番多く浴しておる国ではないか、自由貿易の恩恵に浴しておりながら、事、米についてはあくまでも障壁を高くして入れないということであれば、ウルグアイ・ラウンドをつぶしたのは日本だ、したがって日本に対する風当たりが強くなる、世界の孤児になると。こういう一種の相手のブラフに乗っておるのか、あるいはみずからの過剰反応なのか、どうも解しかねる言説が行われておるわけでございます。今日本が地球上で最大食糧輸入国であり、先ほど大臣みずからお述べになられましたように、カロリー換算の自給率が四八%、穀物での自給率が三〇%。恐らく自由化制限品目、これはアメリカに比べ、ECに比べても一番少ないだろうと思うのであります。恐らく地球上で食糧の、あるいは農産物自由化が一番進んでおる国は日本であろうと思うわけであります。  こういう中で、先ほどから申しましたような、国民の生存の基礎である主食の供給を外国の手にゆだねてちっとも不安を覚えないかのごとき言説というこういう楽天的な国というのは恐らく地球上にないんじゃないか。古今東西、自主独立の国でみずからの国民に確保すべき主食の供給を外国の手にゆだねておる、こういう事例はなかったんじゃないかと思うんです。  そういう意味で米の自由化を、ただいま私が申しましたことのほかにもいろいろと理由づけがたくさんできると思うのでありますが、またそれをこれまでもおっしゃってきておられるわけでありますが、こういうことの議論の前提のもとに米の自由化を峻拒するということをやっても、決して日本世界の孤児になるいわれはない、また仮にもそういうことにおびえてすくむ必要はない。堂々と胸を張って、米の確保のために我々としては、やはり既定の線に沿っての包括関税化反対ということを貫くべきだと思いますが、この点につきましての大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
  101. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 今先生お話になりましたように、我が国は世界最大食糧輸入国である。これは輸入額から輸出額を引いた金額で見ても二百八十億ドル、三兆九千億輸入しているわけです。ですから、貿易というのは得意な分野、不得意な分野、それぞれの国にあるんです。それをみんな出し合って、全体でだめなものもあるけれどもいい分野では譲るというそういう公平な決め方をいたしませんと、何か六十一年ぐらいから我が国は随分日米間で貿易自由化をしてまいりました。多少の無理も聞いて、そしてここまで来たら今度は米も自由化、何もかも自由化だという話であります。  お話しのように、確かに日本も自由貿易の恩恵を受けました。受けたけれども日本の科学的な技術分野での成長の恩恵というものもまたそれぞれの国が受けてきているわけです。ですから、日本だけが受けてあとの国はさっぱり受けなかったというのは私は当たらないと思うんです。  そういうことで、日韓なんかの経済委員会に私もしばしば出席をするわけでありますけれども、要するにどんどん韓国の自動車が外国に売れる、しかし売れれば売れるほど部品を日本から買うものですから、日本に対しては赤字、他の国には黒字になるというそういうのはあります。じゃどうやってそうでなくするかという知恵を出し合うということは必要であっても、その恩恵は受けているわけです。  ですから、お話しのように、何となく農産物が余って、輸出補助金も大変な額を出して、そうして今になって何とかこれを減らしたいというその気持ちはわかりますけれども、そのために輸出側の利益に沿った議論ばかりをされますとなかなか議論というものは前へ進まない。輸入する方の受け入れが可能な、今申し上げたようなバランスのとれた解決を目指すということでなきゃいかぬと思うんです。それを全然考えずに、輸入国が受け入れが不可能な案というものだけを提出されて農業交渉合意に至らなかった、だから日本が悪いんだと。私はそうは思わない。むしろ、そういうむちゃな提案をする方に責任が全然なしとはしない、そう思うんです。ですから、合意というものは、双方の立場を理解し合いながら可能な分野でまとめていくということもまとめ方の一つだと思うんです。  アンドリーゼン氏がおいでになったときも、私は米問題の話をする、向こうは、ヨーロッパは米を日本に売るということはないものですから、それならば他の分野でいろいろ譲ったらどうかと言う。ですから、話をしておりますと、各国みんなばらばらの話をしているわけです。このばらばらをどうやってまとめるかというと、先ほど来申し上げているようなことでまとめていくということが私はこのウルグアイ・ラウンドでやる大事なところだ、こう理解をいたしております。
  102. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 ありがとうございました。  時間が残念ながらもうあとわずかでございますので、最後に一点、例のガットの十一条二項(c)の問題でございます。  これは端的に申しまして、この席でも何遍も払お尋ねをし、御要望申し上げておるわけでありますが、私の出身は鹿児島県であります。鹿児島県は、サツマイモという名前がございますように、古来、台風常襲地帯、最近は桜島の火山灰地帯で、サツマイモ、現地ではカライモと言っております。これは中国から来たからカライモと鹿児島では言うわけでありますが、このカライモしかできないところがいっぱいある。それを原料にいたしましてのでん粉をつくってようやく生計の資を立てておる、そういう農村が非常に多いわけであります。  そういうところにおきまして、例の十一条二項(c)を命綱にしながらでん粉あるいはカンショというものが細々と生きてきておるわけでありますが、この十一条二項(c)がおかしなことになりますというと、いよいよ息の根をとめられる、こういう問題がございます。  十一条二項(c)適用基準の明確化をめぐって日本韓国等のそれぞれの国で、日本政府の大変な御努力で、いろいろ御努力をなさっておられるようでございますが、これは時間の関係で質問を要望にかえさせていただきまして、この十一条二項(c)の確保、あるいはこの適用基準の明確化につきましても、志を同じくする諸外国と一緒になってひとつ貫徹をしていただきますように、日本政府としての御努力のほどを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  103. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 前回も申し上げましたが、我々公明党は、去年の六月から米の部分自由化ということを提言しております。きょうは、この米の部分自由化あるいは関税化による全面自由化というふうなことの論議の問題はさておいて、米の輸入自由化問題について国民がどう考えているのかという観点から質問したいと思います。  米の問題は、各委員が御指摘になりましたように、政府だけの問題ではない、国民全体にかかわる重大な影響を持つ政治課題である。ですから、マスコミ各社等もこの米の輸入自由化問題についてはいろいろ論評もするし、事実報道もするし、または世論調査等も実施しております。農水省国民がどう考えているかということについて当然に重大な関心を払っていると思いますので、お伺いします。  本年十二月六日、毎日新聞社が米の輸入自由化問題に関して世論調査の結果を発表しました。この世論調査の結果をお知らせください。
  104. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のことしの十二月に行いました毎日新聞社の世論調査の結果をかいつまんで申しますと、五つの区分で結果を公表しております。  米について自由化をすべきだという人が二〇%、一部なら輸入してもよいというのが三九%、輸入を認めるべきでないという人が二七%、わからないという人が一一%、無回答・その他が三%、こういう結果であったと承知をしております。
  105. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この毎日新聞は、ことしの十二月六日の発表ですけれども、去年の十二月にも同じような世論調査を行っています。このときの世論調査の結果とことしにおける世論調査の結果との変動について簡単に述べてください。
  106. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 比較をしますと、今申し上げました自由化すべきだという意見が一六から二〇に上がっております。それから、一部なら輸入してもよいというのが三六から三九になっている、輸入を認めるべきでないというのが三三から二七になっている、わからないが一三から一一になっておるというふうに承知をしております。
  107. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の毎日新聞の世論調査は長官がおっしゃったとおりの数字になっております。この毎日新聞が十二月六日に発表した後、本年十二月十一日、NHKでやはり同種の世論調査の結果を放送しておりますが、この調査結果の内容を簡単に説明してください。
  108. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 細かい調査方法は別としまして、結果だけ私ども承知をしておるところは、全面的に開放すべきだ、米をある程度開放するのはやむを得ない、一切開放すべきでない、わからない一この四区分でやっていると思いますが、全面開放が一一%、ある程度やむを得ない六四%、一切開放すべきでない一九%、わからない・無回答が六%と承知をしております。
  109. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ちょっと話がずれますが、同じNHKの世論調査では食管制度についても意見が集約されております。食管制度について、ちょっと話は違いますけれども、どんな調査結果になっておりますか。
  110. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) これも詳細な調査の前提を私は詳しく承知してない点がありますが、四つの区分で分類が示されております。廃止して自由にする三七%、改革が必要だが大枠は維持する三二%、維持する一六%、わからない・無回答が一五%というふうに承知をしております。
  111. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 NHKの調査結果が報道されたその翌日、本年十二月十二日、朝日新聞でもやはり米の自由化問題に関する世論調査の結果が掲載されております。その朝日新聞調査内容を簡略に説明してください。
  112. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) これも結果を四つの区分で表示をされていると思います。完全に輸入を自由化する一五%、数量を限定して輸入を認める五〇%、これまでどおり輸入は認めない三二%、その他・答えないというのが三%というふうに承知をしております。
  113. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 朝日新聞は、去年の五月にも同じ問題に関して世論調査を行っております。そのときの調査結果の内容とこの一年半の間における国民意識、国民世論の変化の動向について説明してください。
  114. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま申し上げました区分で比較をいたしますと、完全輸入自由化二一%が一五%に減少をしております。数量限定輸入が四四%から五〇%に増加、これまでどおり輸入は認めないは三〇%から三二%、その他・答えないが五%から三%になっておるというふうに承知をしております。
  115. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 長官には数字なんかいろいろ答えさせて申しわけないんですが、食糧庁としてもこういう数字を実際にどの程度ごらんになっているのかというふうな観点からお手数ですが数字を読んでいただいたんです。  大臣に伺いたいんです。今の三つの世論調査の結果、何も平均数字を出したからといって統計的にどれだけ正しいのか正しくないのか私は知りませんけれども、最近の十二月六日、十一日、十二日とこの三日間に発表された三つの世論調査の結果を単純算術平均すれば、完全自由化がいいという国民が一五%なんです。部分自由化がいいという国民が五一%。要するに完全自由化しなさいという意見と部分自由化はいいだろうという意見、こういう数値は国民の六六%に達しているんです。六六%の国民は全面的にか部分的にか米の輸入は自由化するべきだと、こういう意見なんです。この世論の動向に対して農水大臣はどのような所見をお持ちでしょうか。
  116. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) この動向につきましては私どもも随分注意を払っているつもりでありますが、この調査が一体どの程度の人に、どういう地域で調査をされたか、あるいは設問の仕方なんかをどう判断すべきかということを常々考えておるわけであります。  この市場開放問題に関する各種世論調査の結果につきましてはいろんな見方があると思いますが、何といっても、先般も某テレビに出させていただきましたが、なかなか私が申し上げたいことは聞いていただけない。何となく自由化の方に質問を運ぶわけであります。  ただ残念なのは、国民の多くの人たちがこの実態というものを余りよくわかっていらっしゃらないのではないだろうかと思うことが随分あるんです。例えば米の産出額、アメリカが千三百億円、農業全体のわずか〇・七%。日本の場合は三兆二千二百六十六億円、農業全体の二九%。あるいは米農家は、アメリカは一万二千戸、全農家の〇・六%。日本は三百二十万戸で全農家の七六%。いろんな数字があります。そういう中で一体自由化した場合にどういうことが起きていくのか、いろんなことをわかった上で質問していただければ若干また見方が変わってくるのではないだろうか。しかも前々から申し上げますように、トウモロコシ、小麦あるいは大豆、各国に相当依存しておるし生産調整もいたしておる、こういう理解をいただいた上で世論調査というものをしてほしいな、こう思っておるわけであります。  いずれにしても、これは国会決議もされておりますし、市町村、道府県、もうほとんどがこれに反対決議をいたしております。もしこれが相当世論と違うということになると、それぞれ市町村、県を代表する議会の皆さんが世論を把握してなくて決議をされたということにもなるのかな。あるいはこの国会での決議というものも、もし国民がもう大方が自由化だと今わかった上でのような結論を出すとすれば、国会での決議も取り消しの決議をしてもらわぬとならぬということにもなるのかなと。いろんなことを私なりにここ何ヵ月間か考えながら、しかし日本の立場というものはなかなか困難な立場にあるということで、国内産で自給するというのが日本にとっての基本的な考え方だということで努力をしているつもりであります。
  117. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の大臣お話は非常に重要な問題点を含んでいるんです。要するに国民が正確な知識、情報を得ていない、そういう国民の意識調査としての結果は価値がないというふうに露骨に言えばおっしゃっている。だとしたらそれは国民を愚弄するも甚だしい。  もう一度そこのところを明確に伺います。要するに国民が正確な情報を知らず、政治家はよく知っている、国民は極端に言えばばかだ、知らぬのだ、だからこういう調査結果が出たんだという趣旨だとしたら国民に対する侮辱である。どうお考えなんですか、はっきり言ってください。
  118. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 決して物がわからぬからと申し上げたつもりはありません。いろいろとそういうデータをおわかりの上でお答えをいただいているのかどうかというのが定かでないと、こう申し上げたのであって、決して国民を愚弄したり、ばかにしてそういうことをいたしていることは全然気持ちの上でありません。ただ、知識としてもしわかっていらっしゃらないとすれば、この出し方は設問の仕方によって変わってくるであろうということを申し上げたつもつであります。
  119. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 言葉の言い回しはそうですけれども、要するに六六%の国民国民の三分の二が部分自由化あるいは全面自由化、要するに自由化で結構だとこう言っている。ところが国民の言っているのは、やれ農家の問題だとか、あるいは日本の水田の単位面積の問題、いろんな問題を全然知らないから、そういう数値がわからぬから正当な答えが出てこない、こういうことだとしたら物の見方が余りにもへんぱである。六六%の国民が言っていることなんです。言っていないのは特定の利益団体であるとか、あるいはその意見に従っている人だけだと私は思うんです。  もし本当に大臣国民がどう考えているかを調べたいと言うのだったら、ちゃんと統計局があるんだから総理府でやったらいいじゃないですか。設問の仕方がどうだとか、どういう地域をやったのか、その辺の調査結果の公正性が信用できないとかおっしゃるんだったら政府がやってみたらいいじゃないですか。NHKにしろ朝日新聞、毎日新聞が特定の結論を誘導するためにやったことじゃなく、現時において国民が知り得ている情報をもとにしての判断だ。だからこの判断は正しいんです。  もしそういう国民が納得し知っている情報以外の情報があって、それで政策決定しているんだとしたら、そういう国民から遊離した密室の政治は民主主義と相反すると私は思う。政府で世論調査をやったらどうですか。
  120. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御質問にお答えすることになるかどうかわかりませんが、食糧の生産・供給のあり方について国民皆さん方がどうお考えなのかということについて平成二年の十月に総理府で実施をいたしました「食生活・農村の役割に関する世論調査」というのがございます。  いろんな設問があるわけでございますが、例えばこの中で、「外国産より高くても、少なくとも米などの基本食料については、生産コストを引き下げながら国内で作る方がよい」と答えた人が全体の四〇・五%ということで一番高くなっております。その後に、「外国産の方が安い食料については輸入する方がよい」と答えた人が一七%というふうな結果になっておりまして、やはり国内でできる米などの基本食糧は国内でつくる方がいいという人のウエートが一番高いというふうな調査結果も我々としては得ているわけでございます。
  121. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 もし総理府のやったその世論調査が正当だと言うんだとしたら、今の京谷長官のお話で、一七%の国民は安ければ外国産の方がいいと言っている。外国産の方がいいと言っているということは、外国からの輸入を認めろということじゃないですか。政府調査によっても輸入を認めろということと同じことじゃないですか。  先ほどちょっとお伺いしたNHKの食管制度についての調査結果ですけれども、食管制度についても、廃止して生産流通の自由化を図れという国民が三七%いるんです。三七%の人間が食管制度は不要だと言っているんです。改革して大枠を維持しろという人が三二%なんです。食管制度で政府の非常米みたいな形での管理は必要とかいろんな意見があるでしょうけれども、ともかく改革して大枠は維持してもいいという人が三二%なんです。全面廃止と改革必要という意見が六九%あるんです。今のままでいいという意見は一六%しかないんです。食管制度をにしきの御旗のようにおっしゃるけれども、食管制度の本質が何であるか、米の輸入自由化という問題の本質が何であるかということをちゃんと国民は見抜いているじゃないですか。米だけ一〇〇%自給をやって、小麦が一六%、大麦が一四%、大豆が六%なんという、こんな自給率では日本農業としてへんば過ぎるじゃないかということを国民は知っているじゃないですか。  いずれにせよ、この世論調査の結果についてもう少し農水省として考慮を払うべきだと思いますが、大臣見解はどうですか。
  122. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) その受けとめ方でありますから、どのようにすればいいのかは別として、いずれにしても、食管法の改正でも、あるいは自由化にするかどうかということも含めて国会の御意思で私どもこれに努力をしているわけであります。各党一致で、あのときは満場一致でお決めになったことを尊重して、これを体して私どもウルグアイ・ラウンド努力をしておる、こういうことでありますので、それ以上のことは、国会の方できちっとお決めいただければ、それをまた尊重してやるというのが当然私たちの立場であります。
  123. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 嫌みというか揚げ足取りを言うわけではありませんけれども、国会で食管法の改正をする必要はないんです。食管法十一条には、政府政府の裁量によって米の輸入を許可していいと書いてあるんです。国会が何もやらなくても、政府がもし必要と認めれば、相当性を認めれば要するに米を、麦を自由に輸入を許可できるんです。食管法を改正する必要はありません。食管法は輸入自由化の権限を政府に付与しているんです。  次の問題に移ります。野菜の問題について少々お伺いしておきます。  野菜の需要供給の数量と価格の公正確保というふうなことを企図して卸売市場法、食品流通構造改善促進法などが制定されています。  ところで、この市場法によれば、市場における価格形成は競りもしくは入札を原則とする、こういうことになっております。ところが実際には競り、入札でなくしていわゆる先取りというふうな問題が起きております。この先取りという問題を簡略に説明してください。
  124. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 先取りと申しますのは、いわゆる販売開始時刻が卸売市場にあるわけでございまして、例えば築地で言いますと水産は五時、青果は六時半というふうになっておりますが、そのあらかじめ決められた販売開始時刻以前に取引をするというのが先取りでございます。  これは、法律上は卸売市場法に書いてあるわけでございますけれども、出港予定船舶への引き渡しなど、いわゆる競り時間以前に緊急に荷物を移す必要がある場合というようなことで、一定の場合に限定されておりますけれども、そういった場合に行われておるものでございます。
  125. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ことしの七月三十一日の日本経済新聞によれば、東京都の犬田市場では先取りの分量を入荷数量の七〇%とする、こういうふうなことを決定したということが報道されています。私が過日視察に行ったある市場においても、青果の先取りは八〇%だ、もう大分前から八〇%であって、今後もこの比率を変える気はないというふうなことを言っておられる。  大田市場が七〇%か実際にどうなのか私は知りませんけれども農水省としては、市場における特に青果についての先取りの有無あるいはその入荷数量に対する比率について調査したことはありますか。あるとすればその数値はどうなっていますか。
  126. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 野菜全体といいますか、青果物全体をとってみますと、これもかなりたくさんの種類があるわけでございますが、大田市場の場合に平成二年度で二割弱でございます。それから築地で見ますと一割弱というような状態になっております。
  127. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなたそれ間違いないんですか。七〇%よりも上だったけれども今度は七〇%にするというふうに新聞報道にはなっているんだ、大田市場であなたの今言ったような一〇%だ、二〇%だなんという数字じゃない。私が行って聞いたところだって八〇%、大体どこの市場だって七、八〇%みんなやっていますよと、こういう話なんだ。あなたの数字と全然違うけれども、どういうことなんです。
  128. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 私が申しましたのは青果物全体の中に占める先取りのものでございまして、先生指摘の点は恐らく、野菜はたくさんございますので、特別のキャベツだとかレタスだとか一つ一つとりますとそういったような現象はあろうかと思いますが、私が申し上げましたのは全体の青果の流通の中に占める先取りの比率ということで言ったわけでございます。
  129. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 何で世の中で先取りということが問題になっているかあなた考えてみているの。ジャガイモだとかタマネギだとかそんなに腐るものじゃない問題は、先取りが幾らあろうとどうであろうと、価格形成の面においてはいろいろ問題はあるけれども、分量自体においてはそう問題はないんです。一般の青果、普通の野菜、これについての問題が新聞でも雑誌でもいろいろ報道されているんじゃないの。そこに問題点がある。それを何か青果全体に拡大して一割だからどうだとか、それは全然話が違うじゃないか。
  130. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) おっしゃるとおりといいますか、いわゆる競りが原則になっておるわけでございますけれども、最近スーパーですとか、あるいは外食ですとか、そういったいわゆる量販店のウエートが非常に高まってきております。量販店の方々が安定的な取引をしたいというようなこともございますし、それから、大都市の場合には非常に交通が混難いたしておりまして、朝運搬するには非常に不便だというようなこともございまして、なるべく夜間を利用して運びたいという ようなこともございまして先取りがふえておるわけでございます。  ではございますけれども、これが無秩序に行われますと、競り取引で公平かつ公正な価格形成をやるということが前提でございますので、これらに悪影響を及ぼすおそれがあるというふうに我々も心配いたしております。したがいまして、それぞれの市場ごとに条例なり規則を決めておるわけでございますけれども、それぞれの市場ごとに卸売業者あるいは仲卸、買参の方々、いわゆる利害関係者で取引委員会というのをつくっております。その取引委員会で、それぞれの市場の実態に合わせまして、例えば限度数量等を設けてやっておるわけでございます。我々もそういうラインで指導をいたしておりますし、それから、先生指摘のような問題等もございますので、現在私どもの中に取引問題検討会というものを設けまして、関係者に集まってもらってこれらについてのルールづくりをどうやるかということを現在鋭意検討いたしておるところでございます。
  131. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなたは私の質問に全然答えていないじゃないですか。私が言ったのは、青果全体みたいなところに数字を拡大して、それで一割しかない、二割しかないというふうなことじゃなくて、今消費者が本当に困っているキャベツだとか大根だとか、そういう生鮮野菜がどのくらい先取りされているのか、それがまさに問題なんだと。  あなたが言っているのは、消費者が何を望み、何に今困っているかという問題と全然ずれているじゃないか。私が行った市場でも八〇%、これはもうずっと昔からだと言っているんです。今後もこれを変える気はないし、どこの市場だって七割から八割はそういう青果は先取りされていると言っている。しかし、あなたは一割か二割と言っている。その辺のずれがあるじゃありませんかということを私は申し上げている。
  132. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 先ほどお答えしましたとおり、各市場ごとに限度を設けております。御承知のようなことで野菜の価格が非常に高かったというようなこともございまして、最近では少し落ちついてきておるわけでございますが、例えば大田についていいますと、現在野菜では五〇%という限度を設けております。
  133. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この先取りをするということは、せっかく市場をつくってそこに物が入り、そこで競り売りなり入札なりして公正な価格を形成するということが、八割の商品がそこをすっぼ抜けていっちゃっているんです。そうすると、市場法がせっかく言った競り売りもしくは入札という方法による価格の公正形成ということが全く実現されていない。こういう問題があるから、この先取りの問題については何らかの法規制をするべきじゃないかということで、法律は法律なりにちゃんと規制しているわけだ。  今あなたがおっしゃったように、船が出るので市場へ行って買うといったって、市場が開いていないから、その出る船に積んでいくキャベツを買うということだったらいいと法律に書いてある。ところが、今船が出るのでもなければ何でもない。スーパーマーケットが時間の関係上早く買いたい、何でもかんでも無制限にやっているじゃないですか。こんなものは法律、規則の趣旨を全く逸脱している。  それで、この前の谷本議員の質問に対して、政府はこれについてはほとんどノータッチで何も規制できません、市場開設者のさじかげんですというような答弁をしているけれども、そんなことはない。幾らでも農水大臣として先取りの分量を規制できるじゃないですか。その辺どうなんですか。
  134. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 先取りにつきましては、法律に基づきまして一定の場合に開設者が許可したときにできるようになっております。その一定の場合といいますのは、予約相対取引、これは省令で決めておるわけでございます。緊急出港船舶その他やむを得ない場合、それから出荷量が著しく多い場合ですとか、開設区域内あるいは開設区域の外への転送の場合でございますとか、そういったケースのときに先取りができるということでございます。その他やむを得ない場合といいますのは、これは東京都の条例の中で規定いたしております。それから先ほど言いましたそれぞれの取引委員会等の協議も得まして規則も定めておりまして、その規則の中で認められておるところでございます。
  135. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうじゃなくて、市場法があって、農水省の規則があって、その規則では船が出るときはしょうがないと書いてある。そして各市場開設者が業務規程というものを農水大臣に出して認可を受けることになっている。その業務規程を持ってきて先取りします、八割も先取りしますと。先取りしますということだけ書いてあるのをただめくら判で承知するから、八割になったのか七割になったのかわからぬじゃないですか。  持ってきたときに、業務規程において八割なんていうのはだめだ、せいぎり二割までだとか必要最小限度なんだということで、業務規程を認可するかせぬかの問題は農水大臣の権限じゃないですか。市場開設者が好き勝手にさじかげんができていいなんていうことにはなりゃせぬと私は思うんだけれども、あなたはできないと言うのかどうか知らぬが、いずれにせよ、そういうことで八割の商品が競り、入札にかからない場合に、その商品の価格構成の妥当性というのはどうやって見ることができるんですか。
  136. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 先取りの価格につきましては、これも各市場ごとに決められております実施要領等で具体的に定めております。したがいまして、価格の決め方は市場によってもちろん違うわけでございますけれども、一般的には、市場の商慣習を踏まえまして、出荷者側と買い受け側が双方納得のいく価格ということで、通常のケースの場合にはその先取りをする日の卸売価格の最高値というのが一般的には多く決められておるものでございます。
  137. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この「卸売市場法の解説」という本は、農林水産省食品流通局市場課というところで監修して出している本です。この中にその先取りについて何て書いてあるか。「先取りについては、全体としての需給実勢を反映した価格形成を阻害しないばかりでなく、先取りに比較して通常の販売が価格、品質、決済等の面で公平を欠くこととならないような基準を明らかにして運用する必要があろう。」と書いてある。  これはだれが書いたのか知らぬけれども、要するにそんな好き勝手なことをやったんじゃだめなんだ、基準を明確にしてやらなかったら価格、品質、決済等の面で公平を欠くことになってしまうと自分で書いているじゃないですか。  ところが、先取りの分量も全然制限せぬ。全都市場開設者の責任だ責任だと言って、せっかく市場法をつくって、公正な農産物、商品の流通、それから公正な価格形成という目的を農水省は全く実現していない。  大臣、この問題については、大臣もどこかごらんになったとかいうことなんで、最後に大臣所見を聞いて、もっといろいろ細かく聞こうと思ったんだけれども、あなたが変なことを言ったものだから、言っているうちに質問の方ができなくなっちゃったから、最後に大臣、せっかく視察されたそうで、いろいろ御意見があったらお伺いして終わりにします。
  138. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私も、市場の視察をいたしてまいりましていろんな話を伺いました。どういうことがいいのか。量販店でありますとかスーパーでありますとかだんだんふえてまいりまして、大量に欲しいという人もおる。そうかといって、それをどんどん際限なくやると、小規模のお店の人たちも、なくなるわけじゃありませんが困るという問題も出てくると思います。その辺のところはこの間いろいろ伺ってまいりました。改めてそういう検討委員会をつくってみんなが納得いくようなところでまとめて取引を願いたい、そう思っております。
  139. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 終わります。
  140. 林紀子

    ○林紀子君 ガットウルグアイ・ラウンドはいよいよ最終局面になりました。今一番重要なことは、政府国民に約束したこと、つまり三度の国会決議を体して米は国内産で完全に自給するというこれまでの基本方針を最後の最後まで堅持するかどうか、こういうことではないかと思います。大詰めを迎えた今、改めて大臣の決意をお聞きしたいと思います。  三点にわたってお聞きいたしますが、まず、二十日にドンケル事務局長から示される合意案、これは裁定案という形になるのではないかということが今までの論議の中で交わされましたけれども、ここに例外なき関税化ということが明示されても大臣の決意は変わらないと思いますが、いかがですか。
  141. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 先ほどもお答えしておるとおりでありまして、この裁定案というのは決定的な案ではありません。まとまらなければいろんな国の意見を伺った中で一つの方向をお示ししたい、こういうことであります。ですから、これが出たから従来の方針を変えるとかそういうことではなくて、今後とも粘り強く交渉をいたしていきたい、こう思っております。
  142. 林紀子

    ○林紀子君 この裁定案をもとにドンケル事務局長は、来年の一月一三日に非公式会合を再開して数週間で正式に終結させるということを言っているわけですけれども、今までもアメリカECというのがずっと詰めて話し合いをしてきた、そしてこの十三日から始まる会合アメリカEC譲歩した場合も、日本は、米は国内産で完全に自給するというこの決意は変わりませんね。
  143. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) アメリカEC合意をした場合と、こういうことでありますが、仮定の話でありまして、今盛んにそのための努力を代表団が一生懸命やっておりますから、いずれどういうことになっても、私どもは従来の考え方、国会決議、あるいは国内産で自給するという基本的な方針でこれからも努力をしていきたい、こう思っております。
  144. 林紀子

    ○林紀子君 それから、来年の一月七日にはアメリカのブッシュ大統領が来日いたします。そして、このときに東京宣言がまたは文書で米の輸入自由化、米の問題をここに書き入れるという圧力が今非常に強まっているということが報道されておりますが、ブッシュ大統領から米の市場開放、これが強く要請されても、日本の今までの立場、大臣の決意は変わらないと思いますが、いかがですか。
  145. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) ブッシュ大統領の訪日の際の首脳会議のテーマというのはまだ決まっておりません。どういうものをテーマにするか、これからのことでありますのでその内容が未確定な上での話でありますが、しかしいずれにしても二国間では問題にしない、取り上げない、ウルグアイ・ラウンドの中でこれを解決すべく努力する、こういうことを従来からやってきておりますので、そういうことで臨みたい、そう思っております。
  146. 林紀子

    ○林紀子君 次に、アメリカのカッツ次席通商代表は十日のアメリカの下院農業委員会で、アメリカECは農作物の最低輸入義務、ミニマムアクセスの水準について当初は国内消費の三%とすることで合意したと証言したというふうに報道されておりますけれども、この場合のこのミニマムアクセスという意味はどういう意味なのか。もしこれが米に当てはめられるようなことがあったらどういうことになるのか。この合意についてどういうような見解を持っているのかをお聞きしたいと思います。
  147. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今お話しのカッツ次席通商代表のお話は、下院におきます公聴会でのお話だろうと思います。  そこで、そのお話で私ども承知しておりますのは、交渉は目下微妙な段階にあり詳細は言えないが、ECとはなお深刻なギャップがあり、合意できるかどうか判断するのは時期尚早であるというようなことで、農業については次のような問題が残っているというふうに指摘して、その中で市場アクセス問題として、包括関税化についてEC及びケアンズと基本的に合意した。すなわち、関税化した後、関税相当量は一定の方式により削減。また、国内消費量に対し当初三%のミニマムアクセスを約束、その後これを拡大。ただし、関税化の詳細な方法、関税相当量の削減の幅、価格ベースのセーフガードの方法、現行アクセスの拡大については問題が残っているというふうに言っているわけでございます。  したがいまして、ここで言っているミニマムアクセスというのは、関税化を進める上でいわゆる一次関税に相当する部分の枠、数量枠を三%と言っているということだというふうに私ども承知しておりますが、必ずしもその詳細は把握しているわけではございません。  ただ、この公聴会につきましては、一方でそれぞれのウエーバー品目を持っております農民団体から関税化についての反対も証言されているというような、そういう公聴会の中での発言でございます。したがいまして、今の範囲での感想ということであれば、アメリカが従来から主張している範囲内のことについてアメリカECが歩み寄ったというふうにとるべきだと思いますが、なお問題も残っているということも同時に言っているというふうに承知しております。
  148. 林紀子

    ○林紀子君 このミニマムアクセスという言葉は、関税化された場合のミニマムアクセス、一次関税という意味でのミニマムアクセスという言葉で、今日本の国内では部分自由化という意味でのミニマムアクセスというような使われ方を普通しておりますが、それとは違っているということですね。
  149. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 日本国内で言われているミニマムアクセスというのも必ずしも一義的に言われているわけではございませんので、いろんな意味がありまして私ども必ずしもどういうことというふうに承知しているわけではございませんが、少なくともここで言っているのは、関税化の中の一次関税に相当する部分の輸入枠の問題であるというふうに理解しております。
  150. 林紀子

    ○林紀子君 それから、今お答えの中でお触れになりましたけれども、この同じ下院農業委員会でウエーバー業界の代表が証言をしたということも報じられておりますけれども、もうちょっと詳細にどういうような証言をしたのかということがわかりましたらお知らせいただきたいと思います。
  151. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 幾つかの団体が証言しているわけでございますが、米国の家族経営農民連合というのがございます。これは御承知の家族経営を主体とした連合体でございます。ここでは、ウエーバー品目は全国農民にとって深刻な問題であり、今後、全国で議員への働きかけを強めていく予定である。ガットは有害な輸出補助金問題の解決を図るべきであって、各国固有の国内農業政策にまで立ち入るべきでないというような言い方をしております。  それから、酪農生産団体でございますが、ここではやはり、農業調整法二十二条に基づく輸入制限は国内政策の実効性を維持する上で重要な役割を果たしている。関税化はこの機能を損なうこととなるということを主張しております。  それから、砂糖関係の連合体でございますが、ここは、ECが砂糖の補助金つき輸出量を削減しようとしていないにもかかわらず、米国政府はウエーバー品目を犠牲にして交渉を進めようとしている。これは問題であるという言い方をしております。  また、綿花委員会についても、同じように、ウエーバーに基づく綿花の輸入制限の撤廃は破滅的な輸入増を招くおそれがあるというような言い方をしております。  そんな意見が出されております。
  152. 林紀子

    ○林紀子君 このことを報じた朝日新聞は、「国際競争力の弱いこれらの業界の主張は、日本のコメ農家の言い分と驚くほど一致している。」ということを書いているわけですが、やはりそれぞれの農民の気持ちというのは、こういうことで自分たちが犠牲になるということは絶対に困るということだと思うわけです。  ガットでは、アメリカの代表はウエーバー条項を関税化する用意があるということを明らかにしておりますけれどもアメリカの議会の方では、今までもお話がありましたけれども、ウェーバー条項堅持を支持する上院議員の署名が六十名を超えている。また、先ほど来お話がありましたが、アメリカの上院で大変影響力のあるベンツェン上院財政委員長も、このウエーバーの対象となっている農家に配慮した合意を目指すようにということをブッシュ大統領あてに書簡を渡したということも言われているわけですし、また先ほどのカッツ通商次席代表も、ここの証言では、いいかげんな合意をするくらいなちしない方がいいとあなたは言ってきたがどうかという質問に対して、確かにそのとおりだと答えだということも、私も全部訳したわけではありませんけれども見せていただいたわけですが、こういうアメリカ議会の動きというものに対して農水省はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  153. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今お触れになったカッツ次席の発言にあらわれているように、アメリカ農業の中でも輸出志向型と申しますか、競争力のある業界と、今私申しましたどちらかというと競争力の弱い業界とがあって、その意見は相違するわけでございます。どちらかといえば、輸出補助金の問題に関心があり、輸出競争力のある業界につきましてはこのウルグアイ・ラウンドにおきまして成果を得べく主張し、かつそうした運動をしているわけでございます。一方で、ウェーバーの品目になっている業界はウエーバーの条項を何とか守りたいという主張、運動をしているわけでございます。  アメリカの立場としては、こうしたプラスそれからマイナス、あるいは賛成、反対の中で、全体としてプラスあるいは賛成が多い、そういうパッケージとしての合意を得たいというふうに努力しているわけでございまして、大臣のところヘヒルズ代表が来たときもそういう発言をしておりましたけれども、全体としてのパッケージとしてプラスがあれば、それはそれで議会が通るんだというようなことを言っておりましたので、アメリカとすればそういう方向を求めているのだろうと思っております。  ただ、今申しましたような、あるいは御指摘がありましたような業界にとっては、これは非常に重要な問題でございますので、そうした動きを議会に対しても強めているんだろうと思っております。
  154. 林紀子

    ○林紀子君 このガットウルグアイ・ラウンドの問題、最後にもう一度大臣にお聞きしたいのですが、先ほど来マスコミの問題がいろいろ出てまいりましたが、宮澤首相は、十四日、都内のホテルに官房長官と二名の官房副長官を呼んで米市場開放問題で日本としての譲歩案を急ぐことを確認したと報道されております。また通産大臣譲歩案を検討していると述べられております。大臣、官邸の方からこの譲歩案の検討を指示されているのでしょうか。
  155. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 御指摘のような指示を宮澤総理からは受けておりません。
  156. 林紀子

    ○林紀子君 先ほど御決意をお聞かせいただきましたが、最後の最後まで米の輸入自由化関税化反対、自給で賄うということで御奮聞いただきたいと思います。  次に、時間が余りありませんが、米飯給食の補助金について伺いたいと思います。  大蔵省は、来年度の予算編成に当たって米飯給食の国庫補助を廃止する方向だと報道されております。そしてその理由としては、既に実施している学校が全体の九八・三%に上っていることを挙げています。しかし、この数字は完全給食を実施している学校数に対する比率で、全学校数三万七千八百七十七校に対する比率にいたしますと、米飯給食を実施している学校は八三・九%、特に中学校では六五・九%にすぎません。こういう面から考えても農水省はこの米飯給食への国庫補助について、廃止、縮小などという方向ではなく、一層拡充すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  157. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) お話のございました米飯学校給食に対する助成の問題につきましては、平成四年度の予算編成のプロセス、現在進んでおるわけでございますが、この中で財政当局から財政負担軽減という観点も含めてその縮減合理化という問題提起を受けておることは事実でございます。私どもとしては、米飯学校給食の持っております米の市場確保、そしてまた長期的な視点に立って、米を含む日本型食生活の定着を図るために一定役割を果たしておるという判断をしておりまして、米飯による学校給食の意義というものを踏まえながら、財政当局の主張点も踏まえて効果的な措置を何とか確保すべく努力をしておるわけでございますが、現在までのところまだ結論を得るに至っておりません。これから予算編成が本格的に始まるわけでございますが、その中でもよくまた財政当局と協議を続けまして、所要の措置の確保に努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  158. 林紀子

    ○林紀子君 きのう出されました米価審議会におきましても、「米の消費拡大に一層努力すること。」ということと同時に、「学校給食に対する助成の問題については、その効果的あり方を踏まえ、適切に対処すること。」、こういうふうに附帯意見が付されているわけですし、ぜひこれは続けていただきたいと思うわけです。  そして最後に文部省にお伺いしたいと思いますけれども、来年度の予算から小中学校の事務職員、栄養職員の給与負担を廃止する方向で大蔵省は文部省と調整中ということも報道されております。義務教育費の国庫負担制度をあくまで堅持いたしまして、文部省が目標としております週三回の米飯給食、これから考えましても、まだ二・五回なわけですから、ぜひこの栄養職員ということも人員増加の方向で考えるべきではないかと思うわけで、この給与負担廃止ということにつきましては、ぜひそれを許さないという立場で御奮聞いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  159. 佐々木正峰

    説明員佐々木正峰君) 義務教育費国庫負担制度は、教職員の給与費の二分の一を国庫負担することにより義務教育の妥当な規模と内容を確保することを目的とするものでありますけれども、学校栄養職員は学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員でございます。その意味におきまして学校の基幹的職員でございますので、文部省といたしましては、今後とも国庫負担制度の対象として堅持してまいりたいと思っておりまして、目下財政当局とも折衝しておるところでございます。  なお、今後における教職員定数の改善につきましては、現在実態調査の結果なども踏まえて慎重に検討しておるところでございます。
  160. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 きょう私ももう一つの委員会の方で出たり入ったり、大変失礼をいたしました。  まず大臣にお尋ねをいたしたいと思うんですが、本当に年の瀬も迫ってきたわけでございますが、ガットウルグアイ・ラウンド交渉も大詰めに来ているというふうに言われております。恐らくきょう他の委員もこの点についてはお尋ねになっておりましたので重複することと思いますが、このときに至って米の自由化をめぐる例外なき関税化を受け入れることはできないというその判断をしてみえる根拠といいますか論拠をお聞かせ願いたい。  私も夏あるいは秋に少し海外に出させていただきまして、そうなると日本の在外公館の方と接します。外務省の方は、私の少ない体験ですが、海外でいろいろお話を聞きますと、もう米はやむを得ないな、日本世界の孤児になってはというようなことを盛んに言われるわけです。そうすると、私などは政府の一体性といいますか、あるいは外務省農水省とまるで正反対のことを言い続けておるということはこれは一体どうなんだろうか、こういうふうに素朴な疑問もわいてくるわけであります。そういう意味で、この期に及んでまた同じ質問をと思われるでしょうけれども、米の自由化に関して今お考えになっているその点をお尋ねいたしたいと思います。
  161. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) いろんな方がいろんな考え方でお話をされるんだろうと思うのでありますが、しかしこれが自由化になるということになるとその実態から見て極めて大きな影響を及ぼす。特にアメリカやケアンズ・グループが主張している関税化は最終的には輸入自由化につながるわけでありますから、そのときのことを想定いたしますと、日本の米作農家というのは壊滅的な打撃を受ける。その結果どうなっていくかという、いろいろ考えておるわけでありますが、そのことから関税化は受け入れられない。しかも、基礎的な食糧や生産制限を行っている農産物というのはわけてもそう思っております。したがって、これらの商品を含むすべての商品について関税化の対象とするという、いわゆる包括的関税化は受け入れられないという立場をとっているわけであります。
  162. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 もう一ついろいろ新聞に書かれていることで、読み方が私は足りないのだろうと思うんですが、ガット十一条二項(c)ですか、こういうものの明確化をしていけば米の自由化をとめることができる、いやできないというふうなことを言われておる記事も見るわけですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  163. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) もう既に報道もなされておりますが、日本を含む六カ国が共同で、国内で生産制限をしている品目について輸入制限を認めているこの十一条二項(c)の強化、あるいは明確化が必要だ、これに整合的な措置関税化例外とすべきであるということを表明したところであります。そのほかに、日本としては、基礎的な食糧についても例外とすべきだ、要するに米と乳製品とかでんぷんとかそれぞれあるわけでありますが、この二つを主張をいたしているわけです。
  164. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 次に、水産庁の方にお尋ねをしたいと思います。  私は、十月に例のPKO法案を前にしてその実態を見てこようということでスウェーデンやオーストリアあるいはサイプラスまで行ってきたわけでありますが、びっくり仰天をしたのは、ストックホルムあるいは経由地のコペンハーゲンでマグロの話を耳にするということに出くわしました。北欧の諸国の環境団体がマグロの問題を取り上げているということなんでしょうが、日本人はマグロの刺身を食べまくっている、このままいくととりまくり、あるいは買いまくりでマグロは日本人によって資源の枯渇に至るかもわからないし、あるいは環境保存の観点からも好ましくない状態になるだろう、したがって今からマグロについてそんなに食べてくれるなといいますか、あるいはマグロの資源の保存のために考えてくれということを日本に言わないといけないというような声が出ているんですよという話を聞きました。私がびっくりしたというのは、食生活というのは国民によっていろいろ違うわけでありますから、何と大げさなと思ったわけですが、一方では鯨の問題あるいはアカイカの流し網のモラトリアムの問題ということを考えてみますと、びっくりしているだけではこれはいけないのかなというふうなことを率直に思ったわけであります。  そして、帰ってきまして、最近になりましたらカツオ、マグロに関連してみえる方から、例えば私の地元の三重県の尾鷲はカツオ、マグロの漁船のたくさんあるところですが、マグロについて日本は何の制約もなしに業者が輸入するのを放置している。これは困ったことで、何らかの形でマグロの輸入規制に乗り出してほしいなんということを聞きまして、実際米の輸入の問題で今大騒ぎしているときにマグロの輸入規制かと思ったわけですが、話を聞いてみると実はいわばアウトロー的なマグロをとるところから輸入している。それの輸入量が急速に膨らんで、そのために逆に今度は、それだけではないでしょうけれども、何か沖合でとめて倉庫がわりに使われている冷凍船というんですか、超低温冷凍マグロ運搬船というんですか、これが沖合でとまったまま動かない。ひどいのは五十日あるいは六十日、最高は九十日にも及ぶというようなことで、そういう運搬船が沖合のいわゆる倉庫になっているというような問題を引き起こしているという。さらにそれが漁船員の雇用の改善をとめているといいますか、それに非常に差し支えがあるというような問題を聞きまして、一度今の問題をお尋ねしたいと思って、きょうはお尋ねをしたいと思うんです。  まず、台湾とか韓国からかなりのマグロの輸入がある、その輸入に対して規制というか抑制のためのそういう措置というのはとり得ることができるのかどうか、あるいは現に何らかの方法でとっているのかどうか、その点についてお尋ねいたします。
  165. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) マグロ類の輸入量は約二十万トン程度でございます。韓国から一九九〇年で申しますと五万六千トン、台湾から七万六千トン、それからその他というぐあいになっているわけでございます。  今御指摘のありました運搬船による輸入というのは、昨年の春ごろから、台湾とか韓国などからの輸入の増加に伴いまして、清水港を中心としまして滞船隻数が増加してきたわけでございます。ただ、昨年末には三十七隻が滞船し、船内在庫は三万四千トンを数えたわけでございますけれども、その後徐々に減少しておりまして、本年の十二月一日現在では十一隻の滞船で、その在庫は九千トンとなっております。  マグロの輸入につきましては、これは自由な取引が行われておるものでございますので、強権的にこれらを規制するということにはまいりませんけれども、水産庁といたしましても、従来から生産者、市場の関係者あるいは輸入業者の代表、さらに学識者から成る需給協議会を開催いたしまして、マグロ需給動向について意見を交換し、できるだけ秩序ある輸入をするような指導をやっておるわけでございます。  それからまた、韓国、台湾からのマグロ輸入につきましては、韓国につきましては政府間で対日輸出量について協議を行っておりますし、また台湾につきましては、政府間というわけにはまいりませんけれども、民間ベースで協議を行い、秩序ある輸入への取り組みということでやっておりますし、私どももそれを支援しておるわけでございます。  いずれにしましても、滞貨というのは今改善の方向に向かっていますけれども、今後ともその需給動向に注意しながら、こういう場の活用によりまして秩序ある輸入が行われるよう努めていきたいというふうに考えております。
  166. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 今のお話ですと、いわゆる超低温マグロの運搬船の滞船の問題は、今ではいっときに比べてむしろよい方向に向かっているんだというふうなお話ですが、そしてさらに輸入についても業界あるいは民間レベルの外国との折衝で、節度あるといいますか、そういう方向に向かっているというお話ですが、このマグロの過剰というのは値段の方に響いてこないんですね。どうも急激にマグロの値段が落ちた、あるいはトロの刺身が安く食べられるという話も聞かないわけでございます。流通の点はどうなんですか、それは何かやっぱり支障になるようなことがあるんでしょうか。
  167. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 流通自身について特段需給規模の増減が流通関係の流れを阻害しておるということもございません。ただ、マグロにつきましても、もう御案内のとおり、クロマグロからメバチとかキハダとかビンナガとかいろいろ種類がございまして、価格につきましても相当幅があるということで、高級なものは依然として高い状況でございますけれども、それ以外の中級魚といいますか、マグロの中で、そういうものについては比較的価格は下がってきておって、生産の段階では問題になっておる。それが小売まで直に反映していないうらみはありますけれども、価格自身そういう中低級物を中心としまして若干弱含みで推移しているというふうに理解しております。
  168. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 これは単なる相愛というか心配で終わればいいわけですが、それこそワシントン条約の中にマグロもなんていうことになりかねない。ますます遠洋漁業の幅が狭められているということなんですが、このマグロの問題についても、将来そういうおそれが出ないような対策といいますか、要望もありますが、その辺についてのお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 本年もアメリカの環境団体でありますオーデュボン協会が、例のワシントン条約の附属書に記載をしろというようなことで、アメリカ政府に要請をしたわけでございます。そういうこともありましたけれども、これは大西洋のマグロでございますけれども、大西洋のマグロがワシントン条約の対象となるような種として危険な状況にあるということではないわけでございます。  私ども、あらゆる手段を通じまして、アメリカ政府働きかけたわけでございます。アメリカ自身も大西洋の実態というのはそれなりにわかっていますので、アメリカ側としてはCITES、ワシントン条約への掲載ということは機構に通告しなかったわけでございますけれども、現在、スウェーデンの方が、アメリカの環境団体と連絡があったというふうに我々仄聞しておるわけでございますけれども、ワシントン条約に掲載すべきであるというふうな通告をいたしました。これからその場での議論が行われるわけでございます。  我々の姿勢といたしましては、北大西洋のマグロにつきましては、ICCATという組織があるわけでございます。その中で議論するのが至当ではないか。資源問題自身もそういう状況にはなっていないし、もし必要があれば、先ほどお話がありましたように、協定外の違う国からの漁獲輸入がふえている、そういうのであれば、そういう条約機構の中に加盟してもらって一緒の管理をしていくべきではないか。その際、輸入につきましても、どういう輸入についての取り上げ方があるのか、これはガットとの関係もあるわけでございますれども、そういう中で議論をしていくのが至当ではないかということで、カナダアメリカ等ICCATの加盟国との間ではそういうふうな理解の中での論議がこの間から行われておるわけでございます。  ワシントン条約への記載問題につきましても、そういうお互いの議論といいますか、そういう場での議論、それを踏まえてああいうところに記載する必要はないんではないかというようなことで、極力掲載しないような対応をしていきたいというふうに考えています。  ただ、公海の漁業が資源問題とか環境問題からいろんな制約をかぶってきていますし、またいろいろな点で指弾されるというようなことになりますと、こういうことにつきましてもなかなか苦しい立場にありますので、やっぱり漁業者自身につきましても節度ある漁業をやってもらうというようなことがまず第一かと思いますし、また北太平洋につきましては、そういう国際的な管理機構というものがないわけでございます。この間のICCATの場でカナダからそういうものをつくったらどうかというような提案もありますし、我々もそういうのを前から考えていましたので、北太平洋におきましてもそういう機構をつくって、マグロ漁業につきましては、そういう漁業に関する管理の中で対応していくというようなことで、ワシントン条約への掲載その他の問題には対応していきたいというふうに考えておるところでございます。
  170. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 ありがとうございました。
  171. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 きょうは、実は前半は私PKOの委員会七兼ねておりましたために失礼をいたしております。それで、前半もきっとウルグアイ・ラウンドの問題、米の自由化の問題でお尋ねがあったと察せられますが、後半お聞きしましてもそのとおりでありますのでも、念には念を入れよ、執念深くどいう言葉もありますとおりで、目的を達成するためにはさじを投げるわけにはいかない、こういう気持ちでお尋ねしたい。  第一点は、やっぱりウルグアイ・ラウンドの問題です。それが二十日にはたたき台としての結論が提示されるということもお聞きしておりますが、そのことはさておいて、これだけ委員の皆さんも回数を重ねて、それぞれの立場でお尋ねくださっておるところであります。私も重ねるようでありますが、先回の国会決議案あるいは生産団体の決議案、いろいろの形で自由化を阻止するという構えが繰り返されておるわけでありますが、そのことはそのまま農水大臣の決意に反映しておる、こう思うわけなんです。きょう私が最後でありますので、ひとつその決意のほどをまずお聞きしたいと思います。
  172. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 二十日に予定をされておりますガット事務局長の提示文書といいますかがどういうものかという、あるいはどういう性格のものかということは見きわめなければならないと思いますが、いずれにいたしましても、我が国の米につきましては、再三申し上げておりますように、米及び水田稲作の格別の重要性にかんがみて、国会決議等の趣旨を体し国内産で自給するとの基本的な方針のもとで、合しきりに代表団が懸命の努力をいたしておりますし、これからもそのようにいたしたい、こう思っております。
  173. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 一つ申し上げておきたいことは、ブッシュ大統領の来日に向けて、我々としてはそのことにきっと触れるだろう、こう予想されるわけですが、まだそのことに対して前ぶれがないというお話もありましたが、ただ一つ、ブッシュ大統領は政治生命をかけておるということを忘れてはいけないと思います。すなわち、米の問題の自由化を実現するか、それとも阻止されるかということは政治生命にかかわる、大統領選挙にかかわる重大な問題であるということをいつぞや聞いた覚えもございますが、そういう立場からすると、これはもうブッシュ大統領からすると命がけで、来日の暁には、総理を初めあらゆる場所であらゆる方に、執念深くそれこそ訴えるのではないか、こういうことが予想されますが、それに対する大臣の覚悟はいかがでしょうか。
  174. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) どういうことがテーマになるかわかりませんが、米だけが解決をすればブッシュ大統領の選挙が有利に展開するとは思えない。他の分野も相当あります。これがまた困難をきわめているわけでありまして、包括的にどの国も公平感、公正感というものが得られるような解決策というものを見出すべきだ、私はそう思いますけれども、ただ、訪日の際に米問題がもし仮に主要問題となれば、従来から二国間ではこれを問題にしないということをいたしてきておりますから、困難なこの問題とともにウルグアイ・ラウンドの中で解決すべく努力する。その際も、我が国にとって米の食生活あるいは農業というものは格別の重要性を有しているということを十分配慮した解決でなければならぬという立場でおるわけであります。まだ明確に何を議題にするかということがないものですから、間もなくそれが明確になれば、今申し上げたようなことをよくわかってもらうように努力をいたしたいと思っております。
  175. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 どうかひとつ最後の最後まで、今までの背景を十分御承知でありますので、それこそ不退転の決意を堅持していただいて、日本の農水大臣としてこの誇りある日本農業を守っていただきたいということを重ねてお願いを申し上げ、また御期待をいたす次第であります。よろしくお願いします。  次に、また沖縄の問題に触れたいと思うんですが、沖縄の基幹作目は申し上げるまでもなくサトウキビとパイナップルであるわけですが、サトウキビにつきましては据え置きという形で一応決着がついたような気がいたしますが、パイナップルについて今困っておりますことは、実はパイナップルには生食用パイナップル、加工用パイナップル、両方あるわけですが、最近、これは観光客とも関連があるわけでありますが、生パイン、いわゆる生食用のパインがぐんぐん売れまして非常に好評を博しております。その反面、加工用のパイナップルの量が減ってしまって、非常にアンバランスのために今困っておりますことは、加工用のパイナップルを守っていただくために条件があるわけですが、その加工用の数量に対して八〇%も足りなくなったためにいわゆる生食用の生パインにぐっと吸い込まれてしまっているんです。そのために、いわゆる補てん制度の対策があったわけですが、それがストップされた、こういうことで非常に困っておるのが現状なんです。  それで、その実情を十分御理解のことと思いますが、それに対する対応をどう考えておられるか、まずそのことをお聞きしたいと思います。
  176. 上野博史

    政府委員(上野博史君) ただいまの御質問について若干その原因的なところまでさかのぼってお話を申し上げますと、このところ沖縄のパイナップルの作付面積、生産面積がいろいろな、老齢化の問題等あるんだろうと思うのでございますが、減少傾向をたどってまいっているということが第一の原因としてあるんだろうというふうに思っております。これは、今申しましたように、労働力の問題それから他産業への就業の機会がふえる、あるいは農業の内部でも花だとか野菜だとか非常に収益のいい作物に移っている、あるいはサトウキビもより安定した収入の得られる方向に移っているというようなことがあって起こっているわけだろうとも思っております。それからまた、パイナップルにつきましても、生食用というのは加工原料用に向かいますものよりも値段がいいわけでございまして、農家にとってはその方がいいという環境条件があるわけでございます。  こういう中で加工原料用の仕向けが若干減ってまいっているというのは委員御指摘のとおりのようでございますけれども、これにつきましては、先般のパイナップル缶詰の自由化の際の対応といたしまして、当分の間の措置として価格安定の特別対策というものを御指摘のように講じてまいっているわけでございます。これは一定期間内に沖縄のパイナップル生産に競争力をつけていただくというそういう趣旨でやっておるわけでございまして、徐々に競争力をつけていただく。その間、必要な生産対策等を講じてまいるというようなことによってその実現を図ってまいるという趣旨のものでございまして、この当初の考え方に従って現在生産対策等あるいはパイナップル加工業の近代化等につきましても努力をしてまいっているということでございます。
  177. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今のお話に加えて要望したいことは、この価格補てん制度が昭和六十三年から実施されております。それが生パインがだんだん好調になったために価格補てん制度を適用するいわゆる加工パインが少ない。少ないということは、すなわちこの補てん制度を多く及ぼすということなんですね。ところが、その額がだんだん減ってますます困っておる。その減す額を減さないであげるわけにはいかぬか、こういう要望が強いんですが、それはいかがですか。
  178. 上野博史

    政府委員(上野博史君) 徐々にこういう経過的な対策から脱却をいたしまして、基本的に沖縄のパイナップル生産の競争力を高めるように持っていくというのが趣旨でございますので、こういう本来的な考え方に従いまして、先ほど申し上げましたような生産対策等の面あるいは生パイナップルがより有利であるということであるならばそういう面での生産の増強というようなことを図ってまいる、それからまたトータルとしてのパイナップルの生産面積の維持増大という面でも新しい品種を入れる等々の努力をして、極力ふやす方向に持ってまいりたいというふうに考えているわけでございまして、この特別の経過的な対策の問題につきましては、私ども影響をできるだけ小さくするという考え方に立ちながら、安定的に漸減を図ってまいって本来的な姿に戻してまいりたい、かように考えているところでございます。
  179. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 お願いですが、申し上げるまでもなく、沖縄は日本における亜熱帯地域の農業である、こういうところから他県では見られない特殊な果樹園芸があるわけなんです。こういった調査を総合的にもう一遍していただいて対応の措置を適当にやっていただくことが本当に沖縄が亜熱帯地域農業として発展する、こういうことになるわけでありますので、いま一度ひとつ実態を調査してもらって適当に対応してもらうことを重ねて要望いたしまして、私の時間ですので、これで質問を終わります。
  180. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  なお、先ほどの質疑の中で谷本君より要望のありました件につきましては、理事間で協議いたしました結果、本日委員会散会後、直接内閣総理大臣に申し入れを行うことになりました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会      —————・—————