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1991-12-19 第122回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月十九日(木曜日)    午後一時七分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十二月十八日     辞任         補欠選任      太田 淳夫君     常松 克安君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 小川 仁一君                 佐藤 三吾君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君     委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 森山 眞弓君                 穐山  篤君                 翫  正敏君                 喜岡  淳君                 久保田真苗君                 瀬谷 英行君                 竹村 泰子君                 谷畑  孝君                 田  英夫君                 渕上 貞雄君                 細谷 昭雄君                 常松 克安君                 中川 嘉美君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 磯村  修君                 猪木 寛至君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  篠崎 年子君        発  議  者  堂本 暁子君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        法 務 大 臣  田原  隆君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣  羽田  孜君        文 部 大 臣  鳩山 邦夫君        厚 生 大 臣  山下 徳夫君        農林水産大臣   田名部匡省君        通商産業大臣   渡部 恒三君        運 輸 大 臣  奥田 敬和君        郵 政 大 臣  渡辺 秀央君        労 働 大 臣  近藤 鉄雄君        建 設 大 臣  山崎  拓君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員  塩川正十郎君        会委員長)        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  岩崎 純三君        (総務庁長官)        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      伊江 朝雄君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)        国 務 大 臣        (経済企画庁長  野田  毅君        官)        国 務 大 臣        (科学技術庁長  谷川 寛三君        官)        国 務 大 臣  中村正三郎君        (環境庁長官)        国 務 大 臣  東家 嘉幸君        (国土庁長官)    政府委員        内閣官房長官  近藤 元次君        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣  有馬 龍夫君        官房外政審議室        長        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁装備局長  関   收君        環境庁長官官房  森  仁美君        長        国土庁防災局長  鹿島 尚武君        外務大臣官房長  佐藤 嘉恭君        外務大臣官房審  橋本  宏君        議官        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省北米局長  松浦晃一郎君        外務省経済局長  林  貞行君        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        大蔵大臣官房審  薄井 信明君        議官        大蔵省主計局次  田波 耕治君        長        大蔵省主計局次  涌井 洋治君        長        厚生大臣官房総  大西 孝夫君        務審議官        厚生省保健医療  寺松  尚君        局長        通商産業大臣官  渡辺  修君        房総務審議官        海上保安庁次長  小和田 統君        自治省行政局公  秋本 敏文君        務員部長        消防庁次長    渡辺  明君    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出、第百二十  二回国会衆議院送付) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出、第  百二十二回国会衆議院送付) ○国際平和協力活動等に関する法律案野田哲君  外四名発議)     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力活動等に関する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行いますへ  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 谷畑孝

    谷畑孝君 総理大臣外務大臣にお聞きしたいんですけれども、昨日、韓国盧泰愚大統領が、韓国核兵器は存在しない、こういうことを世界宣言したわけでありまして、私どもにとりましてもアジアの平和にとりましても非常に画期的なことだ、こういうことで歓迎すべきことである、このように思うわけであります。  そのことにつきまして、日本政府に対してそういう連絡といいましょうか、あるいはその事実だとか、そういうものがあったのかどうか、あるいはまた、そのことについて外務大臣総理大臣を含めてどのようにとらえておられるのか、少し意見をお伺いしたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 実はきのうの午後七時ごろ、そういう宣言を出したいという連絡がございました。まことに結構なことだということです。  韓国側としては、アメリカが言ったように、韓国からは十二月の半ばごろまでに核兵器は全部撤去するということはかねて言っておったわけですから、それが実行されたということを見届けた上で声明を出したものと考えておりますし、そうなりますと、北朝鮮の方に対して、核査察無条件受け入れと、再処理工場等のものがあればその撤去を要求するということだと存じます。
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま外務大臣がお答えをされましたように、高く評価をいたしますとともに、それが北側の迅速な対応に発展することを祈って、おります。
  6. 谷畑孝

    谷畑孝君 私も、朝鮮半島におきまして、もちろん北朝鮮を含めても、核の査察も含めて実施されることについても当然のことだろうと思いますし、同時に朝鮮半島において完全に核がなくなっていくことについては非常に歓迎すべきことだと、こういうことを再度申し上げるわけでありますが、問題は韓国の配備の核兵器日本に移転されたということは、そんなことはないと思いますけれども、その点についてひとつ確認をしておきたいということ。  それと、盧泰愚大統領韓国核兵器がないんだという宣言は、いわゆる地上における核兵器がないということでありますけれども、しかし核兵器というのは常に艦船に搭載されるということがありまして、しかもそれが寄港したりすることによって持ち込みと、こういうことにもなろうかと思います。とりわけそういうことにおきましては、横須賀の基地などにおきましては米空母などに常に核が搭載されておる、こういうことがよく言われるわけであります。そういうことについては、せっかく核がないということを宣言しておるわけでありますけれども、それが韓国に寄港すれば結局はやはり同じことじゃないか、こういうように思われますので、その点についてはどうなのか。  もう少し強いて言えば、日本非核原則という立場があるわけでありますから、せっかく盧泰愚大統領の立派な宣言であるわけでありますから、この際日本におきましても、日本基地における空母についても査察といいましょうか、核査察といいましょうか、そういうようなものを受けて、むしろ世界にそれを明らかにするということも一つのアジアの軍縮、あるいは核の脅威というものについて世界に明らかにできるんじゃないかな、そんなことを思うんですが、いかがなものでありましょうか。
  7. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生から核問題に関しまして幾つか御指摘ございましたので、一つ一つお答えしたいと思います。  最初に、韓国におきます核でございますが、アメリカがどういう形で撤去したか私ども存じませんが、日本との関係におきまして申し上げれば、先生案内のように、核の持ち込みは、艦船によるものも含めまして安保条約及び一連の関連取り決めのもとで事前協議の対象になっているわけでございます。アメリカは、従来から日本に対しまして関連取り決めを誠実に遵守するということを言っておりまして、私ども艦船によりますものを含めまして今回も核の持ち込みはなかったものと確信しておりまして、一切の疑いを持っておりませんので、その点に関しましてはぜひ御理解をいただきたいと思います。  それから、二番目に申し上げたいと思いますのは、先生が御指摘になりました日本におきます非核原則でございますけれども、これは先生御承知のように、まさに日本世界に先駆けまして非核原則国是として採用しておりまして、内外に明らかにしております。これは国際的に周知徹底されておりますので、私どもはまさにこれは非核原則国是として引き続き遵守してまいりたい、こう考えております。  以上でございます。
  8. 谷畑孝

    谷畑孝君 もう少しその点についてはお聞きしたいところでありますけれども、持ち時間に制約があるということで、本論に入ってまいりたいと思います。  実は、このPKO法案審議するに当たって、やはり自衛隊部隊ごと海を越えて、しかも平和維持軍に参加をする、こういうことの中で、どうしてもやはりこの平和維持軍というのは一体どういうものなのか、こういうことの実態といいましょうか、あるいはそれに対する基本的ないわゆる指針といいましょうか、そういうものを知ることによってより一層この審議の中身が深まっていく、こういうことで私、昨日外務省におきましてもSOP並びに訓練マニュアルを提出していただきたいということを申し上げたところでございます。そして、理事の皆さん協議の結果、努力をしていただきまして本当にありがとうございました。  きょうは、十時から私ども外務省の立ち合いの中で、この二つ資料につきまして、大事なところにおきましては外務省の方から通訳をしていただきながら実はきょうお聞きをしてきたところでございます。非常にありがたく思っておるわけであります。  しかし、正直な感想といたしましては、このSOPにしても四百ページを上回る、あるいは訓練マニュアルにつきましても非常に膨大な資料であるということでございます。私自身も英語が読めるわけでもございませんので、前に置かれましても、外務省通訳に一生懸命に耳を傾ける、しかもそれを速記をしていくということでありまして、テープも吹き込むこともできない。こういうことで、やはりこの国会が本当に審議をしていく国民の立法府、国権の最高機関だということでありますので、これ継続ということで時間が長くなってくるわけでありますから、ぜひひとつ、私の意見ですけれども、できましたら、政府立法機関にかかわる利害を伴わない第三者機関といいましょうか、軍事専門家といいましょうか、中立といいましょうか、そういう人たちによって二つ資料が翻訳されて、私どもが少しそういうところもガイダンスを受けたり、そういうことが非常 に大事じゃないかなということを感じながら二時間ばかり閲覧をさせてもらったところでございます。  それでは、SOP訓練マニュアルにつきまして質問に入りたいと思っています。  きょうヒアリングを聞きました中で、正直な話、新聞等とかあるいはこの間の国会議論の中でも、私は余りにも政府法案と違うじゃないかということで実は驚きと同時に大きな危惧を持っておったわけでありますけれども、しかし、きょうわずかな時間帯の中で政府の翻訳を聞きながらでも、これは本当に大変なことだな、まさしく日本PKO法案SOPあるいは訓練マニュアルが言っているところはもう全く油と水だ、こういうことを実は感じたところでございます。  ヒアリングをして書きつづったところを、少し間違うかもしれませんが、ひとつ読み上げてみたいと思います。  第一章の序論にこういうことを言っているわけです。「作戦は、その全ての分野について安保理に責任をもつ事務総長権限の下におかれる」、ここらも全然違うわけでございまして、「加盟国政府によって派遣される軍事要員は、作戦上の案件につき、事務総長指揮下におかれ、給与及び規律に関する事項について各国の権限下にとどまる。平和維持活動従事ずみ軍事要員は、作戦に関する事項に関しては自国政府当局からの命令を受け入れず、事務総長から命令を受ける国連軍司令官からのみ命令を受けるということが、平和維持活動基本原則である。この指揮系統が尊重されないならば、重大な作戦上および政治上の困難を引き起こしかねない」と、こういう趣旨がきょう言われたわけであります。厳密に言いますと、事務総長指揮というところは、外務省皆さんコマンドと、指揮とは言っていませんでした。コマンドと言ったわけでありますのでありますけれども、おおむねこういうことだと私どもは思います。  そこで、やはりこれは私ども矢田部委員の中でもこの指揮指図につきましては非常に詳しくやりとりをしたところでございますけれども、この指図指揮についてこれまでの答弁は、懲戒権を含むのが指揮であって、そして懲戒権のないものは指図だとして、国連指揮には従わない、日本部隊はあくまでも国際公務員でないのだから日本指揮に従うと言ってきたわけであります。  しかし、今私が読み上げましたように、SOPなり訓練マニュアルにおきましてはそういうことを否定しておる。こういうことでございますから、この点につきまして総理なりあるいは外務大臣なり防衛庁長官の方からもこの点についてはどうなのかということを明快にお答えいただきたいと思います。
  9. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはもう衆議院のときからいろいろ議論をされているところでございます。コマンドというのを指揮と訳した方がいいんじゃないか、なぜ指図にしたんだということについては、理由は、今懲戒権問題云々という話がありましたが、そういうようなことを含めまして、純粋完全な指揮でないというようにとって、それでコマンド指図としたんですが、これは作戦とか配置とかいろんな面について司令官指図をしたことに従うのは当たり前のことでして、右に行ってくれと言ったら左に打っちゃったとか、ともかく伏せると言ったのに、立ったとか、撃つんじゃないのに撃ったりされたら困るわけですから、だからそれは指図に従うと。  しかし、時々従わないこともそれはあるかもわからぬのですね。例えばデモ指揮者指図者なんて言葉は余り聞いたことないですから、デモ指揮者というのがあって、指揮官じゃありませんが、しかし時々それはそこから外れるような人もあるかもしらないが、別に懲戒権があるわけじゃない。(「ごまかしを言うんじゃないよ」と呼ぶ者あり)いやいや、それは正しい話をわかりやすく言っているだけですよ。だから、そういうようなことで指揮に従う、指図に従うというのはもうそれは当然のことだと、そう思っております。  しかしながら、あらかじめ参加するに当たりましては国連すり合わせをするわけですから、組がいことについての実施計画とか実施要領とかいうものをつくって、向こうの指揮系統とうまく合うようにこちらもすり合わせをするわけですから、そういうことにおいて大体保たれる。しかしながら、先ほどもお話があったように、いろんな任務遂行のための、発砲するかどうかというような問題になりますと、あらかじめそういうことがわかった任務、発砲を前提とするような任務が与えられる場合にはそういうところには行けないとお断りをすることもあると、そういうことを言っているわけであります。だから、従うと言っても、完全無欠指揮下に入るという意味ではないということです。
  10. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、外務大臣の方から非常にわかりやすく御説明をいただいたわけでございますが、多少この法案に則しまして御説明申し上げたいと存じますけれども、この指図の問題は、実施計画並びにそれに基づく実施要領におきまして定めることになっております。そして、御案内のように、法文を引用して恐縮でございますが、第八条の二項というところに、「実施要領の作成及び変更は」この業務に関しましては中断の場合を除きと書いてございます。中断はきょうの今の先生の御質問にございませんけれども、これは我が国が自主的に判断をして、業務中断、終了の問題でございますが、これを除きましては「事務総長又は派遣先国において事務総長権限を行使する者が行う指図」、これはいわゆるコマンドというものでございますが、これに「適合するように」すると。実施要領におきまして国連事務総長指図、つまり、これは今までの説明によりますとSOPの中の配置組織行動というようなものの大筋においてこれに合意をして、そして調整をする。  そして、自衛隊部隊として派遣する場合の指揮権につきましては、これは別途自衛隊法八条で私が現地の部隊指揮権を保有しております。これは各幕長を通じて行うことが自衛隊法に書かれてございます。この権限はそのとおり末端まで及ぶわけでございますが、ただしこの法律によりまして新しい任務としてつけ加えられたわけでございますので、この国連指図との調整を図った上で行うというものでございまして、あくまで指揮権は私、さらには総理大臣自衛隊を総括をいたしておりますから、そういう建前で貫かれておるわけでございます。
  11. 谷畑孝

    谷畑孝君 ここの点は率直に言ってわかりやすい、しかも理解をしやすい、そういうことでなければいかぬと思うんですよ。これが国民が一番疑問に感じていることだと思うんですね。  そこで防衛庁長官、率直に言って指揮権指図と、どっちがこれ強いんですか、正直な話。矛盾したところがあったときにはどっちがはっきり言って強いんですかね。
  12. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) お答え申し上げますが、いわゆる指揮権という場合は、これは人事とかあるいは懲戒とかその身分に関することまで指揮監督の広範な分野にわたって私ども指揮権と申しております。  この法律で「指図」といいますのは、コマンドは和訳いたしますと指揮権という言葉もあるいは使われることがあるかもしれませんけれども、今申しましたように、要するに配置とか組織とか行動面におけるそういう面のSOPへの適合といいますか、調整といいますか、そういうことが行われて、そして合一したものとして実施要領で一本になるわけでございますから、その範囲内における指揮権というものは貫かれておることを今申したわけでございます。  いわゆる指図というのは、完全な意味といいますか、懲戒人事その他万般にわたる上司としての権限、こういうものとちょっと若干趣を異にしておるがために指図とい言葉を使用させていただいて、そして国連の方との調整を図っておるということでございますから、おのずから指図とい うのは指揮権、いわゆる懲罰その他の問題まで含めた、すべてグローバルな上司権限というものとは若干制限的といっていいかどうかわかりませんが、要するに今申しましたように、この派遣された平和協力隊配置とか移動とか、そういう基本的な事項についての合意のもとに枠組みがつくられ、そしてそれが実施要領で確定され、それを実行するわけです。それで、あくまで防衛庁長官指揮権末端にまでその調整された範囲内で及ぶと、こういう関係になるかと存じます。
  13. 谷畑孝

    谷畑孝君 いや、私が言いたいのは、指揮権指図というのは一体どっちが強いのかと、こういうことの質問であったわけですね。  なぜそんなことを質問するかというと、過日ですか、ある新聞の論壇の中で、元防衛庁におられた幹部の方が書かれておりましたけれども、いやしくも軍というものは、その目的を達成するためには指揮系統というものはもう単純ではっきりする方がいいんだと。しかも、戦場というところは、もちろん、いやそれはPKFは戦場じゃないと言うかもわかりませんが、しかし現実的には七百名という人間が死んでおるわけですから、いずれにしたって死んでおりますし、あるいはまたコンゴみたいな状況もあるわけですから、そういうところにおいて一人一人の隊員が、非常に複雑に机上のプランの中で本当に外務大臣の苦肉の中でできたというような、そういう人たちがつくり上げたものを、現場へ行ってそれをすべて判断できるかと言ったら、これは私は本当に難しいことだと思うんですよ。正当防衛のことも考えなきゃならぬ、自然権のことも考えなきゃならぬ、あるいは国連指揮のことも考えなきゃならぬ、そんなことを一々これはできない。そういうことがあるがゆえにあの新聞の論壇の中で元防衛庁の幹部が単純であらなきゃならぬ、こういうことを私は言ったと思うんです。  だから、日本政府がPKFに参加をするかどうかというのは日本政府の判断でございますね。それと同時に、撤収するかどうかも日本の判断だと思います。これはもちろん事前通告をして、そして撤収をする。しかし、その判断が終わって撤収するまでの期間はどうなのかということでありまして、この期間は、SOP訓練マニュアルにおきましては、これはもう平和維持軍のいわゆる国連事務総長指揮権というのは最大のものである。これに従ってもらわない限りは困るんだということはもう随所に出てくるわけでしょう。きょう二時間の中においても、それがたくさんのところにおいて触れられて書かれてある。  こういうことでありますから、そんなところに私ども自衛隊なりあるいはこのいわゆる平和維持軍組織する、この隊の中でその指揮権を持ったままでそんなことが可能なのかどうかということに私は非常に疑問を感ずるんです。どうなんですか、防衛庁長官
  14. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) お答え申し上げます。  SOPとの関係でございますが、あるいは私が答弁するのは適当かどうかちょっと疑問に思いますけれども、しかし、SOPは、これは私の見る限りにおきましては一つの根幹をなす問題といたしまして一つは業務中断という問題がございますね、今御指摘の。これは我が国の自主的な判断によって行い得るように、これは国連も承知しておると外務省の方からの答弁でございます。もう一つの例外は武器使用についてでございますけれども、これもSOPにおきましては類型的に任務遂行の場合に武器使用がよろしいと。もう一つは、自然権的な生命、身体が脅かされているときに正当防衛的な意味でこれを使用することはできるということがSOP、に書かれております。  しかし、我が国のこの法律におきましては、前者を排除し、そして後者の、二十四条にございますけれども、まさに正当防衛の場合にのみ武器使用を認めるということでございまして、SOPが、私の感じでは、これが相互の条約みたいな拘束を完全に受けるというものではございませんで、事前にこれが、SOPは標準行動規範と訳されておりますけれども、あくまで標準でございます。したがいまして、その限りにおいて我が国の立場から必要な限度においてこれに参画するわけでございますから、今二例を申し上げましたけれども、そのような関係になっておるわけでございます。  したがいまして、先生きょうごらんいただきましたSOP、これがもう絶対的だというような考え方のもとにこの法案が組み立てられているものでもない。しかし、大筋においてはこれは国連平和維持活動でございますから、過去の経験その他が累積されたものというように理解をいたしておりますから、そういうことがあってよろしいのではないか、私はこう思います。
  15. 谷畑孝

    谷畑孝君 長官、今のお話を聞いておりまして、SOPなり訓練マニュアルが標準的なものではない、絶対的なものでない。これはやはり長い間米ソの冷戦構造の中で、そして世界の紛争を何とかして解決したい、こういうことで中立の国が中心になって、そして平和維持軍が創設されて世界の平和に貢献をしてきた、こういうことなんですね。しかも、世界のどこの国に対しても侵略したことがないということの中で信頼を得てやってきたんでね。過去二十七回ですか、PKOの創設されたのは。しかし、それでもこれ悲しいかな犠牲者を出しておるわけでしょう。しかも、コンゴだとかさまざまなところにおいては事実戦闘まで起こってしまった。そういうさまざまの教訓の中で生まれたわけですね。  防衛庁長官、どうですか。これ、国連憲章に書かれていないでしょう、平和維持軍については。そうでしょう。書かれていないということは、過去のそういう経過の中ででき上がったいわゆる文書というものは、これはやはり憲法に匹敵するんじゃないですか。憲法というよりも、平和維持軍を規定する、平和維持軍の私は憲法であると思うんです。ぜひひとつ今の、これ標準ではない、絶対的なものではないというのは僕は撤回すべきだと思いますよ。失礼ですよ、これは余りに。
  16. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) お答え申し上げます。  私の率直な感じを申し上げたわけで、この法案を貫く建前というものを私なりに申し上げたわけでございますが、SOPは決して恣意的なものでも何でもございません。これは、過去の国連の二十数回に及ぶその出動の結果蓄積された経験的なものでございまして、なおかつ事務総長がこれについて関与をされておられるということも十分承知いたしておりますけれども、しかし、私が先ほど申しましたように、中断の問題でございますとかあるいは武器使用について、事前に国連の方に外務省の方から御照会なすって了解もいただいておる、こういう性質のものだということを申し上げたわけでございます。  なお、このSOPの正確な位置づけその他については外務省の方から御答弁いただいた方が適当かと存じます。
  17. 谷畑孝

    谷畑孝君 この件については、前回、矢田部委員の方からも、とりわけ懲戒権とかそういう問題につきましては、消防隊員の隣村の応援の話だとかそういうことによって違うんだと、そんなことはあくまでも詭弁であるということで、もうそれ以上本当に言及するまでもなく皆様方が理解したことだと私は思うんですね。  そこで、いずれにしても、国連平和維持軍はどういう権威に基づいて平和を維持するんですか。例えば戦闘が起こっている、そこに割って入って、しかもその中で配置をして、そして平和を維持するわけでしょう。この一番のかなめのところは一体何ですか、そこの大事なポイントは何ですか、防衛庁長官
  18. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) お答え申し上げます。  私への質問ということでございますので、あるいは外務省の方から御答弁いただいた方が適当かもしれませんし、野村室長の方から答弁いただいた方が適当かもしれませんけれども、これはあくまで紛争が終結をしておる、つまり当事国において停戦の合意があるということがまず前提でございます。したがって、紛争状況のもとで自衛隊派遣するわけではございません。紛争の停止についての当事国の同意がまずございます。そしてまた、我が国に国連の要請がございまして、国連の要請を受けるか受けないかは我が国の自主的判断でございます。そして、それを受けて行く場合には、受け入れ国の我が国の平和協力隊が行くことについての同意が必要でございます。  そういう条件のもとで、いわゆる五条件と言われるのは、その他に中断の問題でございますとか武器使用の問題とかいろいろございますけれども、そういうことを条件にいたしまして派遣するものでございますから、決して先生のおっしゃるようなその点、必ずしもこの法案の構成ではないということを申し上げざるを得ないと思うんです。あくまでそういう条件のもとで行くわけですから、紛争状況の中でそこへ割り入って我が自衛隊が武力集団として行くというようなことでは決してございません。  したがって、その意味では我が自衛隊は三条によって直接侵略、間接侵略に対する任務はきちっとしておりますけれども、これは武力集団としてのやはり我が国の自衛のためにきちっとしてやります。しかし、海外に出るこの平和協力業務はあくまで武器使用を前提としない平和協力業務でございまして、武器使用というのはあくまで自己の生命、身体を守るためというように限定的に私どもは考えておるわけでございます。そしてまた、平和協力業務の定義にございますようにいろいろの問題が十数項目掲げられておりますけれども、必ずしも割り入ることだけが問題ではございません。  先般来いろいろ御議論ございますように、非常に平和的な人道的な問題を含めてその紛争後の処理の貢献をするということでございますので、その点は御理解いただかなくちゃ仕方ないと思います。
  19. 谷畑孝

    谷畑孝君 いや、全く理解ができないんです。また、了承もできないんです。  僕は時間も五分しかないんで、一々余り反論できないんですけれども、一つは、同意とか合意を得ているから、まず紛争のない、そういういわばタンポポが咲いてふわっとした、そこでピクニックで弁当を広げて食べようかなという雰囲気では決してないんですよ。やっぱり自衛隊という軍がそこに行くわけですから、しかも今までの過去の例からいいましても、この同意なり合意が崩れていく。しかも、国連平和維持軍における合意というものは、言いかえれば、割とすべての関係国の同意をきちっととるというところまではいかずに、そこに入っていくことに対する合意だとかというところで少し緩目の合意ということもありますから、そういうところにおいてどうしてもまた勃発をしていくということが常にあり得ることなんです。だから、まずそういう前提に立たなきゃならぬと思うんです。  それと、そういうことも含めて、タンポポの話じゃないですけれども、きょう閲覧と外務省の翻訳の中で教えてもらったことでありますけれども、例えばこんなことも書かれてあるんです。核、生物・化学兵器というところもありまして、「訓練に含めることが重要である。訓練について時間の制約があれば、化学戦に対応する訓練を含めることが緊要である」、こう言っているんです。これは化学兵器のことだとかあるいはミサイルの問題だとか、そんなことまでも緊急で大事なことになる、そういう訓練をしなきゃならぬということを書いてあるんですから、私は決して、そんなに平和なところへ行くんだからという、こんなことは前提にならぬと思うんです。そこの認識をまずきちっと私は合わせなきゃならぬ、こういうことが一つです。  それと二つ目は、国連平和維持軍がどういう力によって平和を維持するのかといったら、これはやっぱり事務総長指揮権に基づいて、派遣国がそこにきちっとやはりピラミッドのように一致をして、そしてその力の中で、もしも相手がしかけてくれば、任務遂行上における防衛という形の中で武力の行使ができるということにおいて平和を維持できるわけなんです。ここが一番この平和維持軍任務の大切なところなんです。ここにおいて、私ども自衛隊がいわゆる正当防衛だとかあるいは緊急避難だとか、こういうことで、そのところではもう中断して停止するんだということなんです。だから、そういうことであればPKFには日本は参加をすべきでないんです。すればもうまさしく世界から足を引っ張られるようになるんです。そこがやはりここの持っている問題ではないかと私は思うんです。  その点についてもう一度ひとつ、どうなんですか。いわゆるそういう権威でこそ平和を維持できるんだということを私は申し上げたい。それと、化学兵器のことも言いました。決して安全なことではないんだということを申し上げたいと思います。
  20. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 事実関係の問題がございますので、私の方からちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども先生が言及された平和維持隊等の活動におきますところの生物・化学兵器、核の問題につきましては、これは訓練ガイドラインの中でその表現があるわけですが、国連PKO部隊は、これまで核兵器あるいは生物兵器使用の環境で任務を遂行せざるを得ないような困難に陥ったことはない、ただ、過去に化学兵器の使われた環境で任務を遂行しなければならないことがあったので、各国が今後要員を訓練する場合には、そういう防護という点を念頭に置いて訓練をした方がいいのではないかという趣旨の記述があるわけでございまして、まさにこういうものを使用して戦闘するということではもちろんないことは先生御承知のとおりで、これはあくまでもそういうときの防護というものの知識を訓練しておいた方がいいということでございます。  それから、平和維持隊の基本的な考え方は何かという点については、私は、先ほどの防衛庁長官の御答弁のとおりでございまして、基本的に平和維持隊というのは戦うための軍隊ではないという点は、先生もいろいろな書類をまさにきょうもお読みになられて御理解されたところであるというふうに考えております。  最後に、SOPそれから訓練ガイドラインの中の「指揮」の問題について先ほどから言及しておられますけれども政府が累次衆議院でも当院でも御説明申し上げましたとおり、国連がつくりました一番新しい書類でございますね、派遣国と国連との間の派遣取り決めのひな形、これはことしの五月に作成されたものですが、その中に七項、八項というものがありまして、国連コマンドについて明確に書いてございます。何度も政府が御説明申し上げてきておりますとおり、日本政府としてはこの七項、八項の考え方に異存はないということを申し上げてきておるとおりでございまして、基本的にSOPで言っている「指揮」その他の問題とは矛盾を持っておらないということを最後に確認させていただきたいというふうに思います。
  21. 谷畑孝

    谷畑孝君 もう残念ながら時間が来てしまったんですが、いずれにしましても、私は、やはり国連平和維持軍が長い間の歴史で築き上げてきたSOP訓練マニュアル、そういうところをやっぱり忠実に守りながら、そしてそういうこととのすり合わせが大事だ。そういう意味では、この法案自身は全くそれを否定しておる、こういうことでございまして、私は、直ちに継続云々よりも廃案にすべきだということを申し上げると同時に、昨日、法制局長官に、とりわけ私的集団においては鉄砲を撃ってもいい、こういう発言の中で、そのことについてもう少し本当は論及をしたかったんです。  しかも、時間がもう過ぎましたので、答えは要りませんから私の方で一、二申し上げて終わっておきますけれども、一つは、この間、法制局長官は憲法解釈においていろいろと変遷をしておられる。いわゆる任務遂行上における正当防衛もあるということも、今までは言っていなかったにもかかわらず、そういうことを発言されました。その私的な集団ということは、憲法ではいけるけれど も、この法案では謙抑的にやっておるのだと。しかし、これは憲法解釈をどんどん天井を高く上げてしまっておることは事実です。そういう形のは一体どうなのか。  しかも、正当防衛自身が一つの制限がないという状況の中で、どこまで広がっていくのかという不安がさらに深まってきておる、こういうことを思いますので、私は、この問題につきましても留保しながら、またの機会にぜひひとつ議論をしたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  本当にありがとうございました。
  22. 立木洋

    ○立木洋君 国連文書の問題について、質問に入る前に一言申し上げておきたいと思うんです。  SOP、いわゆる標準作戦規定なる国連で作成された文書というのは、これは加盟国の利用に供するという決定に基づいて作成された文書であります。それが立法府は持たないで、まさにその問題を審議するところへ提出をされないということは不当にして、これはあり得ないことなんです。これは、政府は、国連が提出してはいけないというふうに言っているからと言いますけれども国連のこの問題に関する文書あるいは決議、議事録、一切提出してはならないなどというふうな文言は毛頭ありません。これは、日本政府がこの提出を妨げておるというふうに言わざるを得ない。ですから、私たちはあくまでこの文書の国会に対する提出を求めるということを最初に厳しく指摘しておきたいと思うんです。  さて、昨年の十一月に自民党と公明党と民社党の三党の合意で、自衛隊とは別個の平和維持活動協力する組織をつくることというふうにされていました。自民党もそのときには自衛隊を直接参加させるということはあきらめて、それを引っ込めたというのがこういう形の文書になっていたわけですね。公明党も、人的貢献については自衛隊はだめだというのが結論だというふうに明確に指摘をされていたわけです。  ですから、自衛隊が将来参加するだとか、そういうふうなものは一切考えていない、こういうふうにされていたのに、政府が出したこの法案は、自衛隊平和協力隊組織するといっても、まさに自衛隊そのものが出されてきている。これは一体どうしてそういうふうになったのか、まず明確にしていただきたいと思います。総理
  23. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) その当時からいきさつにタッチしておった審議官がおりますから、経過ですから、説明させます。
  24. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  確かに先生指摘のとおり、三党合意におきましては「自衛隊とは別個に」という表現になっておるわけでございますけれども、その後の詳細な検討の過程におきまして、やはりこの法案にございますPKOあるいは人道的な国際救援活動を適切かつ迅速に実施するためには、自衛隊が長年にわたって蓄積してきました技能、経験あるいは組織的な機能を活用することが適切であり必要である、そういう結論に至ったわけでございまして、それを踏まえてこの法案を作成しております。  なお、法案では、先生案内のとおり、国際平和協力本部という常設の組織総理府に設けることにいたしておりまして、その本部におきましてこの国際平和協力隊を一方では組織するとともに、必要に応じまして平和協力隊員の身分をあわせ有します自衛隊員により構成されます自衛隊部隊等の参加を得ましてPKO活動等に協力する体制をとっておる次第でございます。
  25. 立木洋

    ○立木洋君 まさにそういうふうな詭弁を使って、自分がかつて述べてきたことを平気で覆しでしまっておる。この問題については後でまた言及しますけれども、そういうことは納得できないということも述べておきたいと思うんです。  このPKO法案によって自衛隊が海外に派遣される場合に、地域的な制限はあるんですか。
  26. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  PKO活動につきましては、先生案内のとおり、国連の安保理あるいは総会で決議されて構成されるわけでございますので、そのことにつきましてこの法案の仕組みといたしましては特に地域的な限定はないというふうに理解していただきたいと思います。
  27. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、国連の要請があって条件が整うならば自衛隊世界じゅうどこにでも行けるということになるわけですよね。これはまさに重大な問題だということも指摘しておきたい。  大体、一九八九年あるいは一九九〇年、このときまで政府国連に要請していた文書、私は何回か、何回というか幾つか見ましたけれども、その中では、すべてPKO活動について日本政府が要求してきたのは、文民によって提供される役務の拡大、これを最も主張していた。それが湾岸戦争の後にがらっと変わってしまった。そうじゃないですか。
  28. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 文民の活動につきましては、昨今の国連におきますPKO特別委員会におきましても、日本は文民の活用につきまして積極的な発言を行ってきているというのが私たちの考え方でございます。
  29. 立木洋

    ○立木洋君 うそを言ったらいけないよ、あなた。ことしになって、これはフィンランドがPKOについていわゆる文民活動の強化というのを提案しているのに極めて難色を示したのは日本じゃないですか。あなた、いちゃもん、そういうことをつけておいて、今度軍隊を送るようにする。これだってこれまで言ってきたことを平気で踏みにじってしまうということになるわけです。  一体、なぜこういうふうな変化が起こったのか、宮澤総理に私はお聞きしたいんですがね。あなたは中央公論の九月号で、湾岸戦争の際にアメリカが「日本はどうして自衛隊を出さないのかと、ずいぶんきつく日本に言ってきました」と述べています。どういうことをどういう人が言ってきたのか、まず事実について述べてください。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカがという意味は、私はアメリカ政府のだれかがといった意味で申したことはございません。
  31. 立木洋

    ○立木洋君 全くあなたおかしな言い方をするんですね。湾岸戦争の際にアメリカが「日本はどうして自衛隊を出さないのかと、ずいぶんきつく日本に言ってきました」。これはだれが考えてもあなた、こういう事実を知らなかったら言えることじゃないんですよ。だったら一体だれが言ってきたんですか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは前後をごらんくださるとわかりますように、日本が石油をあそこから一番買っているのに、アメリカは軍を、みんなが動員されて行くのに日本は何も来ないじゃないか、日本には自衛隊があるんだろうということはアメリカの人が随分当時申したものでございます。政府の人が言ったという意味ではございませんよ、そういうことを言っておるんです。
  33. 立木洋

    ○立木洋君 それなら私が言っておきましょう。これについてはアマコスト駐日大使も言いましたし、それからクエール副大統領も言いましたし、パウエル統合参謀本部議長も述べたし、イーグルバーガー国務次官も述べたし、たくさんの人が全部述べているんです。これは全部新聞で報道されている。あなたはそういうことを認めることが嫌なために一般化、抽象化した答弁をなさるんですか。こういうことをあなたは新聞でごらんになっているんじゃないですか。違いますか。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当時私は政府におりませんでしたし、そういう人たちが正式に日本にそういうことを言ってきたということを私は別に聞いておりません。
  35. 立木洋

    ○立木洋君 新聞だってあなたごらんになっているからおわかりでしょう。あなた自身ここで、「アメリカのかなりの人が」と言っているんですよ。だから、あなた自身が自分で耳にしていなかったならば、「アメリカのかなりの人が」と言った根拠が一体どこにあるんですか。いいかげんなごまかし言ったらだめですよ、あなた。総理にもなったんだからちゃんとして責任ある答弁してくださいよ。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカ政府日本 政府に言ってきたということとアメリカの人がいろんな意味でそういう意見を自分で言っているということとは、これは分けて考えなければなりません。
  37. 立木洋

    ○立木洋君 こういうまともに答弁されない首相というのは余り私は今までお会いしたことがない、もう十何人か総理質問いたしましたけれどもね。ここで御本人が「アメリカのかなりの人が」言っていると述べたんだから、どういう人があなたに言ったんですかと聞いたら、根拠を全く示さないでそういうふうな答弁をする。  私は、じゃ言葉をかえますけれども、今まで日方とアメリカの間でグローバルなパートナーシップというふうなことが言われましたが、グローバルなパートナーシップとこのPKO法案とはどんな関係があるんですか。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国には我が国の憲法がありますから、憲法の許すことはできますが、憲法の許さないことはできない。グローバルなパートナーシップというのはいろんなことがあるであろうと思いますけれども、我が国は憲法の規定に基づいてのみそれを行い得るということです。
  39. 立木洋

    ○立木洋君 栗山さんが、前に外務次官をされておった方が文書で出されているんですけれども、「「平和と安全」のための日米協力は、単に安保体制の枠内にとどまるものでない」と明確に述べているのね。そして、「PKO協力法案が成立すれば、この分野での日本の責任分担は、さらに前進することになる。「平和と安全」のための日米のパートナーシップの一環である」と、こういうふうに明確に述べているのね。  ですから、PKO協力法案が日米パートナーシップの強化のためであるということは明確に前外務次官は述べているんですが、あなたはこの見解については賛成ですか反対ですか。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その見解を全部読ませていただきませんと、二、三行読んで賛成か反対かとおっしゃっても私は困るのですけれども、私なりに申せば、日本がこの法案によりまして、法律になりましたら国連協力するということは、これは日本にとっても大事なことだし、日米間にも悪い影響があるはずはない。ただ、それは日本の憲法の許す範囲で行われる、この法律はそういう法律案である、こう考えているわけです。
  41. 立木洋

    ○立木洋君 これはアメリカが積極的に要請して、アジアの諸国はこれ反対しているんですよ、中国でも韓国でもこういう軍事的な協力をしてもらっては困ると。まさにアメリカの強力な要求に基づいてこのPKO法案がつくられた。そして、PKO法案ができなくなると、今回通過できなくなると来年一月の七日に来るブッシュ大統領に手土産がなくなるからこれは大変だといって慌てたのは皆さん方じゃないですか。そうでしょう。そして、国際貢献税を出すかどうするかといって大騒ぎをされた。これはもう毎日、新聞に書かれているからだれにだってわかるんですよ。アメリカに言われたらこういう軍事的な派遣をやらなければならない。三党合意がありながらも平気で踏みにじった。そして、このPKO法案の問題についても、もともとは、文民で協力するからその範囲を拡大してくださいと日本政府国連に繰り返し要求していた。ところが、そんなもの全部ひっくり返してしまった。なぜか。アメリカの積極的な要請ですよ。  そこで、ことしの十一月の十三日にアメリカのピカリング国連大使がアメリカの上院外交委員会で議会証言をしているんです。これは冷戦後の情勢のもとでのアメリカ国連政策というのを述べたわけです。  その内容の主な点を言いますと、冷戦後の国際的な紛争について国連安保理の決定がどのような権限を与えるかがかぎとなる。しかし、国連指揮権に拘束されずに武力の行使の権限が与えられるようアメリカとしては求めるというのが一つの柱になっています。もう一つは、紛争が起こる前に、それを防止するために国連部隊の兵力展開を検討して、他国の内政問題に関し外部から確実に保障を与えること、そういうことまで求めるというふうな内容になっているわけですね。  つまり、国連の名を使いつつ、国連の機構に拘束されない戦争を遂行する可能性を探求しているという点で極めて注目される見解です。議会の証言として行っています。これに対して日本政府はどういうふうな認識をお持ちなのか、お答えをいただきたい。
  42. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、まず今の御質問にお答え申し上げる前に、文民の活動につきます日本政府の態度ですけれども、ことしの五月の国連PKO特別委員会におきましても、国連代表部のここに出席した我が代表は、PKOにおきますところの文民の活用が日本の関心事項であり、この点についての討議がこの委員会で引き続き行われていくことを期待しておりますという発言をはっきりといたしておりまして、この文民の活用につきましての日本政府の態度が何か急に昨今変わったということは、少なくとも私たちはそういうふうに思っておりませんので、念のためつけ加えさせていただきたいと思います。  ただいまのピカリング大使の議会における演説でございますけれども、これはまず大使は、世界の平和と安定の確保のために、冷戦後の国連あるいは安保理というものをいかに再活性させるかという視点に立ちまして、基本的には個人的見解という形で表明したものと私は理解いたしておりまして、またこの演説を私二、三度読ませていただきましたけれども、この演説だけでは意味の必ずしもよくわからない点もございますし、いずれにしても、アメリカ政府の方針として打ち出したものでもありませんし、このような場で日本政府としてあれこれコメントすることは必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えております。
  43. 立木洋

    ○立木洋君 お読みになっていないですか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員が申し上げたとおりと思います。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 さっきのPKOの文民の問題、これは全くトーンが違います。私は時間がないから読み上げませんが、あなたの言っているのは、まさに問題が提起されているというだけであって、積極的に拡大してほしいという提起はなされていません。  この問題については、このピカリングの証言というのは、ことし四月のブッシュ大統領の、いわゆるこれまでの国際紛争が以前の冷戦当時と大きく変わってきた、その転換を求めるということを踏まえた内容のものです。非常にこれは重要な問題であり、今後国連に対してどういう態度をとるかというPKOの問題が問題にされるときに、こういう重要な問題に対して、当然アメリカとの関係が主軸だというふうに主張をされているんですから、見てしかるべきだ。  しかも、今の問題について重視をしないだとかあなたは言いましたけれども、ここで述べられている点について言いますと、去年の十一月二十九日の国連安保理決議六七八、これに対して日本政府は支持したわけですね。まさにこの国連の安保理決議六七八は何かといいますと、これは国連指揮権の拘束なしに武力を行使することができる白紙委任を受けたわけです、多国籍軍が。この点についてピカリング氏は、六七八決議は理想的定式に近いものだと述べているじゃないですか。そのときに日本政府はこれを支持したじゃないですか。支持した同じ内容が今提起されているんです。  日本政府がそれにコメントできないなんという言い分は、あなた、通用しないんですよ。既に海部さんが支持すると国会の中で明確に述べているじゃないですか。そういうことを今後やりたいというのがアメリカが提起している内容じゃないですか。どうしてそれに対してコメントができないんです、総理。――時間がないんだよ、丹波さん。
  46. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 申しわけありません。一言で終わります。  六七八につきましては過去に起こった現象でご ざいまして、これはどういう事態で何が起こったかはっきりしておるわけですが、ピカリング大使は将来のいろんな構想、国連の平和的な解決の行動も含めてのいろんな構想を述べておるわけでして、具体的な状況、具体的なプロポーザル、提案がなければコメントはなかなか難しいということを申し上げている次第でございます。
  47. 立木洋

    ○立木洋君 もうあなたは出てこなくて結構ですから。最後に総理に聞かないと、もう時間がない。あと二分ですよ。  この問題についてはもうはっきりと海部さんが述べているんです。イラクに対する武力行使というものが容認される決議がなされました、その六七八についてどうなんですかと。それに対して、今回の湾岸危機に関しては、平和回復のための国連の安保理の決議というもの、それは日本は基本的に支持しておりますと。そして、現実に一月の十七日に武力が行使された。このときにも支持を表明したんです。  そういうことをこの六七八というのは想定して、将来国連に対してどういう政策をとるかというのは、国連指揮権の拘束を受けないであらゆる手段、武力行使まで行えるような手段を持つということ、これが理想的な定式だとアメリカは言っているじゃないですか。それに対して日本政府が、かつて支持したのは具体的な条件が云々だったというような言い分では通らない。  こういう国連の対策に対するアメリカの見解に対して、総理、最後に一言あって私はしかるべきだろうと思いますけれども、見解を述べていただきたい。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっとよくわからなくなっているんですけれども、そのアメリカ国連大使がどこかで何か言ったということを私は一々論評する必要はないと思います。
  49. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がないから答弁は求めませんけれどもPKO法案の問題に関してあなた方は、責任を持って国会審議してほしい、それで日本の国際的な貢献になるんだと言っているならば、その根拠をやっぱり明確にしなければならない。  この問題に関してはこれまでくるくるくるくると態度を変えてきたけれども、結局はアメリカに追随して、日米安保条約は限られた制限があるので、こういうPKO法案国連の名を冠し世界じゅうどこにでも自衛隊が出動できるような、そういう形でアメリカに対する貢献の役割を果たそうとしているのがこの内容じゃないですか。  私は、そういう意味で、日本国憲法までじゅうりんしてこういうふうな不当な法案を通そうとするやり方には断固として反対し、あくまで廃案を求めるということを強く要求して、私の質問を終わります。
  50. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  51. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こしてください。     ―――――――――――――
  52. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これより一般質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 お互いに大分疲れてきました。もう少しですから、よろしくお願いします。  ところが、もうあと一日、やれやれという場面に来ているんですけれども、ここでまた外務省首脳の発言というのがございまして、これをちょっとまず質問させていただきたいんです。これは、自衛隊派遣は現行法で可能という新聞の報道ですから、真意を伺いたいと思うんです。  それによりますと、今回のPKO法案がこの国会で成立しなくても、カンボジア難民を自衛隊の輸送車両によって帰還させることは法的に可能というふうなことをその首脳が発言されまして、「要は政府にやる気があるかどうかだ」、こういう注がついております。その理由として、湾岸戦争のとき、ヨルダン滞留の避難民を本国まで輸送するために自衛隊の輸送機使用が検討されたということ、それから自衛隊の掃海艇がクウエート沖の公海上で機雷処理に当たり領海にも入ったということなんです。  これは、湾岸危機のときに政府自衛隊のC130輸送機を使ってイラク、クウエートの避難民を輸送しようとした。そのため、平成三年一月二十九日、湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令というのをつくったわけです。これは「当分の間」としたんですけれども、平成三年七月二十三日をもって廃止になっています。ところが、この法案では、平和協力業務ということで恒久的な業務としてこれを可能にしようとしているわけですね。このときに特例政令をつくったという理由、なぜ「当分の間」というふうに限ったのでしょうか。
  54. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) だれですかね、その外務省首脳というのは。外務省首脳というその書いた人に聞いてもらいたいんですが。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは名前が挙がっていない発言ですけれども、なかなか勇ましいことをおっしゃる。この際恒久的にこのPKO法案でこういうことをやろうとしたんだけれども、その当時でも自衛隊の恒久的な業務とはしてなかったんですね。  この特例政令については、世上非常に批判があったということは御記憶だと思うんです。それで私は、それではこういうことは、今回この法案が今すぐこの国会で成立しない場合に、こういう特例政令を設けてそういうことをやるというようなことは二度とありませんねということを伺いたいんです。
  56. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 外務省首脳二人おりますから、一人は渡辺大臣、一人は外務次官。外務次官はそういうことを言わないから渡辺大臣ではないか。そうだと思います、私も。それは総裁選挙のころいろいろ言っておったことも含めまして、反省も込めて言っておるわけです。  私は、自衛隊の輸送機を速やかに飛ばして難民の輸送をやるべきだということを海部総理に助言もしました。それから、速やかに掃海艇を出して機雷を拾って国際貢献をすべきだということも進言を強くいたしました。間違いありません。私はそれはやってできると思ったんですが、なかなかぐずぐずしておりまして、そして戦争が始まってから今度政令を改正して、それで自衛隊の輸送機を飛ばそうとしたわけですね。それで、倉から引っ張り出して整備しているうちに戦争が終わってしまった。結局出せないで終わってしまった。したがって、この政令は臨時的につくったものだから戦争が終わったからやめる。これが歴史的経過、そのとおりでございます。  掃海艇の問題も、これは防衛庁自衛隊法からは読めるということで、そこにサウジ等からの要請もあり出動をして、それで派遣をされて、まあ出動でも派遣でも同じようなものですよ、実際にあそこに行って、そして機雷を三十四発拾った。それで、これは大変な世界的な評価を受けたということは事実でございます。  こういうようないろんな点から見て、確かに自衛隊平和維持活動あるいは平和を確保する活動、危険物を除去する活動等に出ていただくことは、大変これは世界のためにもなるし国民のためにもなる。自衛隊にとっては大変御苦労なことでありますが、私はそう思っておるわけでございます。  今後そういうことを政令でやるかどうかということについては、それは法律が通らない場合においてそういう事態が起きるか起きないかという問題でございますから、今予断を持ってそれにどうこうということを申し上げることはできません。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 それは大臣、事態によって法律にすべきところを政令で、やっぱりこれといえども軍隊なんですから、そういうものを海外に出すということについてはきちんと議会制民主主義のルールにのってやっていく。私はそういう御答弁を期待しているんです。  ちゃんとやるんだったらちゃんと法律をつくって、土俵の上でやろうじゃありませんか。いかが ですか。
  58. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは防衛庁長官から聞いてもらった方がいいと思いますが、それは法律がきちっと何の疑いも何もなくて派遣できるようにするのが一番望ましいと、そう思っております。
  59. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ちょっと補足させていただきますが、二つの事柄を今先生指摘だと思います。  特例政令でございますが、これは自衛隊法の百条の五がございまして、これに基づくものというこどでございますから、これは法律根拠がございまして限定的に決めたもので、発動はございませんでした。  もう一つ、機雷の除去等は、これは自衛隊法に現在明確に規定がございます。九十九条というのがございまして、海上自衛隊は海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこの処理を行うということが本来的な任務として掲げられております。したがいまして、これに基づきまして我が国のペルシャ湾における航行の安全その他を考慮して出動したものでございます。
  60. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは法律上非常に疑義があります。三条に「自衛隊任務」ということで、それはペルシャ湾まで行くなどという、そんなことはとんでもないことなんですね。それを何もしないでただ出していくということは許されないことです。  それから、難民輸送の仲なんですけれども、これは私、六十一年に内閣委員会で質問したことがあるんですね。そのとき国賓等の輸送が百条の五で加わったんです。そのときに「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」ということの解釈につきまして、これは法制局から、国賓、内閣総理大臣という例示、列挙とおよそかけ離れたものは予定していないという、そういう答弁を得ているわけです。これは自衛隊法施行令百二十六条の十六、「国賓等の範囲」にも難民輸送は入っていない。  ですから、こういうことはきちんきちんとやるのであれば、その都度ちゃんと法律によって直すという、こういう手続を踏んでいただきませんと、私たちこの際本当に不安でならないわけです。これはもう法治国とは言えないような状況になります。どうかその点もう一度御答弁をお願いいたします。
  61. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御指摘のとおりでございまして、ただいま御指摘の点は、法的根拠を設け政令によりまして、臨時政令、期限つきの政令でございました。  それから、機雷掃海は九十九条という法的根拠に基づいておりますので、今後こうした問題は、新しい任務でございますれば法令的な根拠を必ず明確にすべきことは当然だと存じます。
  62. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひそのようにお願いします。  それでは、やっと本題なんですが、まず実施要領なんです。結局この法案のかなめになっているのがこの実施要領なんですね。ところが、この実施要領は閣議にもかからないし、もちろん国会に御提出になる気は全くない、こういうところに我が憲法の命運が辛くもかかっているという、そういう状態なのでございます。  それで、私は資料を幾つか要求しまして、実施要領日本が独自に書くべきこと二点、これを伺ったんです。そのお答えはいただいているんですが、非常に簡単なので、ぜひもう一回、その実施要領日本が独自に書くべき要点、それを説明していただきたいと思います。
  63. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  お渡しいたしました資料では、「いわゆる五原則との関係上、我が国として独自に実施要領に盛り込むべき事項としては以下のようなものが考えられる」としまして、二つ書きました。一つは、「法案第六条十項各号に掲げる場合に行うべき業務中断に関する事項」、二つ目は、「武器の使用は、法案第二十四条の要件を満たす場合に限られること」、そういうことで、御指摘のとおり簡単に書かせていただいたわけでございます。  最初の中断のことにつきましては、これは法案の仕組みといたしましても、第一、第二、第三、いわゆるPKO活動の前提が崩れるようなそういう重要な事態についての記載でございまして、したがいまして業務中断すべき場合のできる限りの類型化と申しますか具体化、あるいはこういった状況が生じたときにとるべき措置、例えばそういった状況が生じ、業務中断を行った場合には直ちに本部長内閣総理大臣でございますが、に報告をすべきこと。それから、そういう状況でございますので、当然ほかの場所に移動ということもあるわけでございまして、つまり移動といった所要の措置をとるべきこと。それから、先ほど申しましたように、基本方針の第一から第三原則までがいずれ満たされなくなることが予期し得るそういう状況では、常に国連司令官との連絡調整というものを特に密にすべきこと。あるいは本部長への報告とか、あるいは場合によっては意見具申、そういったものをできる限り緊密に行うべきこと。そういった点を現場において部隊長が混乱を生じないようにきちんと書いておくということが必要であろうと思っております。  次に、武器の使用に関しましては、あらかじめ警告と申しますか、それを行うべきこと、あるいはほかにとるべき手段のない場合に、最後の手段といたしまして必要最小限度の範囲で使用し、使用後報告すること等、手続的な規則についての国連の規則を踏まえた武器使用の基準等が実施要領には記載されてしかるべきであろう、そういうふうに考えておる次第でございます。
  64. 久保田真苗

    久保田真苗君 今おっしゃった武器使用の問題は、先ほどから長官からも出ています自己及び現場にいる隊員の生命、身体を防護するための武器使用、それから任務を遂行するための武器使用、二種類お分けになって、そしてその後の方は日本はやらないんだと言っていらっしゃるわけですけれども、それも実施要領にそういうことははっきり書かれるわけですね。
  65. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘になりました二十四条でございますが、これは法案そのものに、武器使用、特に自己または自己とともに現場に所在する他の隊員の生命または身体を防衛するため必要最小限度云々のきちんとした規定がございますので、まさにこの法案第二十四条に書いてあること、それにのっとって隊員が行動するということでございますので、その点につきましてはあえて実施要領に記載するまでもなく、法案二十四条でその法律にのっとって隊員が行動する、そういう関係になろうかと存じます。
  66. 久保田真苗

    久保田真苗君 法案二十四条には確かにそう書いてあります。それが政府の憲法解釈の立場であるというふうに理解しておりますのですけれども、あれは非常にわかりにくい。なぜならば、自己の生命及び隊員の生命を防護するということは職務上の武器使用なんです。ところが、二十四条の四項の方はそうではない。それにかぶせて「急迫不正ノ」というさらに条件をつけてはいるけれども、しかしそれはそれ自体が職務上の武器使用にはなっていない。そこのところを本当にこれはわかるように書かなければならないと思うんです。まさにここが原因なんですよ。  政府自身の解釈によって憲法が破られるか破られないかというのはまさにここにあるので、これが破られるとなったらこれは責任問題だと私は思うんです。長官、いかがですか。
  67. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、二十四条の三項とそれから四項に関するお尋ねであろうかと存じます。  三項は、もう御案内のように、部隊として参加する場合の自衛官の武器使用について規定がございます。その場合にはやむを得ない必要性がある相当の理由があり、合理的に必要と判断される限度で自己または隊員の生命、身体を防衛することができると書いてございますね。四項には、その場合、人に危害を加えてはならないという点について、まさに発砲して相手に危害を加えるということが刑法三十六条あるいは三十七条の要件に該 当する場合を除いてはできませんよということを書いてございますから、概念的に申しますと、三項の方が危害を加えない武器使用というものが観念上あり得るわけでございますね。  そういうことまで否定しているものではございませんが、人に危害を加えるような場合はまさに正当防衛、緊急避難の場合にのみ相手に発砲できるんですよということを規定しておるわけでございまして、先生指摘のように、多少の概念の包括的なずれはございますけれども、あくまでも人に危害を加えて本来殺傷するということは、これは正当防衛、緊急避難の場合に限定されている、こういうことを明確に規定しているものと了解しております。
  68. 久保田真苗

    久保田真苗君 これを実施要領の中に明確になるようにお書きになるかということなんです。あの法律だけでは全くあいまいです。
  69. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 自衛隊部隊として出る場合には、先生御承知のように、これは直ちに出るというわけにはまいりませんで、あらゆるPKOの実態、それから武器使用の実態等々につきまして訓練と教育を重ねまして、そしてこの法律の趣旨に沿うように派遣するということは当然でございますから、これが実施要領に反映されるということは私は当然だと存じます。
  70. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、もう一つ資料要求したんです。それは指揮系統を図解してくださいとお願いしたんです。それは、第一が本部長指揮、第二が防衛庁長官指揮、第三が国連事務総長及びその軍司令官指揮なんですね。これは自衛隊部隊に係る指揮のことでございます。ところが、それはいただけなかった。お返事は、図解をすると誤解を招くおそれがあると、こういうことなんですね。私は誤解を恐れればこそ図解でお願いしたのに、どうして図解にすると混乱が起こるんですか、誤解を生ずるんでしょうか。御返事をお願いします。
  71. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  何分複雑な関係でできておるものでございますので、私ども実は御質問にお答えする形で口頭で答弁させていただければという趣旨でございまして、それでなおかつ御理解いただけない場合には適宜さらに検討を重ねた上で対応させていただきたいと、そういうように思っております。
  72. 久保田真苗

    久保田真苗君 何とも意味不明の御答弁なんですが、苦肉の策だということなんでしょう。  私、それでいろんな図を見たんです。一つは、ノルディック・スタンバイ・フォースという非常にわかりいい資料がございまして、それはすべて地図が入ったり、指揮系統の図が入ったり、そういうふうになっているんですね。それで見ますと、このスタンバイ・フォースの方は国連事務総長、フォースコマンダー、そして各国の提供する派遣軍の司令官、そういうものがすっと実線で入っています。それで、こちらにはUNブランチというのが政府の中にありまして、事務所がありまして、そこからはこういうふうに破線が出ていますんです。下の方でこういうふうになっている。その破線の説明は、それは国内事務、後方の何というんですか、コンタクト、後方事務というふうに書いてあるわけですね。それが本当に普通の姿だと思うんですね。  私、けしからぬというよりも、本当は総理も、国連事務総長のもとに、そしてフォースコマンダーのもとに我が国の要員、それはもう文民だって同じなんですけれども、そういうものをすっと入れられたらどんなにいいだろうとお思いなんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  73. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 野村審議官。(「総理大臣じゃないか」と呼ぶ者あり)一応事務当局からお話を受けて、後総理に答弁させますから。
  74. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先ほど先生の方から図解との関係で御指摘がございましたので、私この機会に、特に御指摘のございましたまず本部長とそれから防衛庁長官との関係、あるいは現地のフォースコマンダーとの関係等につきまして御説明させていただきたいと田^います。  まず、本部長防衛庁長官関係でございますけれども防衛庁長官は、自衛隊部隊等を協力業務に従事させるに当たりまして、閣議決定されます実施計画とともに本部長が定めます先ほど先生指摘実施要領に従うということになっております。第九条第四項でございます。また、その第五項におきましては、個々の自衛隊員も実施要領に従って業務に従事するということになっております。まさに自衛隊員としての活動でございますが、防衛庁長官指揮のもとで実施要領に従って国際平和協力業務を行う、これが一点でございます。  他方、自衛隊員はあわせて協力隊員の身分を併有いたしております。(「聞いてないぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  75. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 質問について簡潔に答えてください。
  76. 野村一成

    政府委員野村一成君) その協力隊員といたしましては、この実施要領は、先ほど先生かなめと申されました。まさにそのとおりでございまして、適切な変更のための業務のニーズの把握といった点につきまして事務を行うことになっておりまして、本部長はこれを踏まえて実施要領を適宜変更していくと、そういう仕組みになっておるわけでございます。  要するに、自衛隊部隊等による協力業務の実施自体は防衛庁長官にゆだねておりますけれども、他方、本部長実施要領という形で的確かつ円滑な業務の実施を確保するというのがこの法案の仕組みでございます。したがいまして、これは、やはり参加いたします自衛隊員、国家公務員、我が国の公務員としてのPKO業務に従事することでございまして、そこから生じている我が国の指揮の系統でございます。  他方、国連コマンドとの関係について御説明申し上げます。
  77. 久保田真苗

    久保田真苗君 もうわかりましたから、やめていただけますか。今の御答弁だったら、さっき長官から伺ってわかっているんです。
  78. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 簡単に願います。
  79. 野村一成

    政府委員野村一成君) 我が国の指揮監督関係についてでございますが、実は御指摘国連のモデル協定七項にございますように、我が国の参加しております要員は……(「委員長、やめさせてください」「いつまでやっておるんだ、あなたは」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、聴取不能)
  80. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) よろしい、もうそれで。簡単でよろしい。
  81. 久保田真苗

    久保田真苗君 わかりました。繰り返しになりますから、私の質問時間をとらないでください。
  82. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) それじゃ、答弁はよろしいから席にお戻りください。  ただいまの質疑について総理大臣の御答弁をお願いします。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は過日、十二月の六日でございますか、政府見解で申し上げておりますので、それをごらんいただければ御理解いただけると思うんですが、つまり法案の八条二項に言う国連指図は、これは国連コマンド意味しているわけであって、その国連コマンドの内容は、法案の枠内で実施要領を介して我が国の要員によってそのとおり実施されると、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  84. 久保田真苗

    久保田真苗君 結局、私考えますと、どうしてもこれは指揮系統が二元的になるんですね。あるいは三元的になるかもしれないんです。  どういうことかといいますと、安全保障理事会の決議で任務を受けたPKO事務総長、フォースコマンダーの指揮、それを受けるんですが、それは政府見解によりますと指揮マイナス処分権だから指図だと、こういうことになっております。そして、防衛庁長官指揮監督権は、そうすると逆に言いますと、防衛庁長官指揮マイナス国連コマンドイコール身分上の問題ということになりはしませんか。そうじゃないんですか。
  85. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御答弁申し上げます が、先ほど野村室長のおっしゃられた点は、正確に申そうとして随分時間をとりました。  実は、私の方でちょっと申し上げたいのは、今、先生指摘のいろいろ精密な議論です。大変傾聴に値します。  自衛隊は、部隊として参加する場合と個人として参加する場合、法律上はこれを分けでございます。それは、部隊等としての場合の指揮の問題と、それから個人単位で、いわば停戦監視団が通常でございましょう、これは少人数で参りますから、個人参加という範疇に入ります。その場合の指揮権とはおのずから違いまして、まず後者の個人単位の場合で申しますと、これは内閣総理大臣実施計画に従いまして実施要領を策定して現地の任務につくわけでございます。  詳しいことは申しませんが、法四条三号によりましていろいろ平和協力業務の効果の測定分析やあるいは情報の収集、あるいは派遣国の国連職員との連絡等々を実施要領で定めて、これは本部長たる内閣総理大臣指揮に従います。個人単位の場合ですね。そしてまた、部隊等として参加する場合も、今申しました任務と同時に、今の法三条で類型化されておりますPKFの行動、それからそれ以後の十数項目にわたる項目が任務として遂行されるわけでございます。この場合は、部隊として行く場合も法四条三号のいわゆる今申しましたような効果の測定分析とかそういうもろもろの業務はもちろんできます。その場合は、指揮系統はもちろん観念的に内閣総理大臣にございます。しかし、大半は、自衛隊部隊として行く場合は、実施要領によりまして防衛庁長官指揮が最後の末端まで行くわけでございますが、その場合、先生の御指摘のように、この法律によりまして国連指図に適合するようにすゐということが書かれて、今コマンド意味が問題にされておるわけでございます。  そして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、そのコマンド意味というのは、まさに防衛庁の、我々が自衛隊に対する総合指揮権、これと全く同義語ではございませんで、配置とか運用とか、そういう基本的な事柄についての国連指図、これと適合するように実施要領を定めまして、それに基づいて行動するわけでございますから、あくまで部隊等としての行動の場合は指揮権がその限りにおいて調整されたものとして実施されるということを申しておるわけでございまして、決して別のものではございません。  別のものだと考えますと、先生指摘のように、二元化しているとか、あるいは三元化しているという御指摘になろうかと存じますが、私どもは決してそれを一つの、いわば国内における直接侵略に対する指揮権と海外におけるこの平和業務における指揮権、これはおのずから限定されたものになると通俗的に言っていいとも私は感じます。つまり、いろいろの面で限定されるという意味で、国連SOPとの調整の問題等々がございますから、あくまで国連の要請に基づいてやるわけですから、そこの調整があり得るのは当然だと思います。そういう意味では一体的なものです。それを二つに分けて考えるかどうかという観念の問題がございますけれども、私どもはあくまで一つの指揮系統であるというように感じております。
  86. 久保田真苗

    久保田真苗君 懇切に御説明いただいたんですが、要するに結論的に言いますとこういうことなんですね。防衛庁長官指揮監督権は指揮権マイナスコマンドで、そして実際には、事務総長の持っている配置組織行動、指令に係るもの、それを差し引いたものなんですよ、向こうにいる間は。ただし二点留保していることがある、御存じのように。二点留保していることについてはそこに事務総長のその権利を食いかいているわけですね、その部分でね。そして本部長指揮は、これは自衛隊部隊と海上保安庁の職員についてはそれは実際にはなくて、個人の隊員、そして四条二項三号による調査それから連絡等そういう隊員を指揮される、こういう実に複雑なことになっていまして、私も非常に何とわかりにくい法律だろうと思います。そして結論的には、指揮が衝突したとき、つまりフォースコマンダーと防衛庁長官指揮が衝突する、そのときには日本側が優先する、こういうことになっていますね、今までの御答弁では。  そういたしますと、私が思いますのは、受け入れ国はどうなんだろうと思うんです。受け入れ国の場合にこれを日本との間に、要するに武装した軍隊が他国の領土の上へ上がるわけですから、そして一定期間そこに駐留するわけですから、そういうものについての協定が必要だと思うんですよ。それは日本は相手国と結ぶのかどうか、もしそうでないとすればその法的な根拠は何なのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  87. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 後段の方から御説明申し上げたいと思います。  いわゆる法的根拠につきましては、受け入れ国が自国の領域に主権を持っているわけでございますので、受け入れ国の同意が必要である。一般国際法のもとで持っている主権のもとで同意を与える、これが外国軍隊の駐留の根拠ということになると思います。  それから、PKO活動あるいは人道的な国際救援活動につきまして、我が国あるいはほかの派遣国が自衛隊あるいは軍隊を派遣するという場合の受け入れ国との関係でございますけれども、これは二つあると存じます。  一つは、PKOの場合は国連PKOでございますから、国連が受け入れ国との間でいわゆるPKO活動に従事する平和維持隊その他の地位に関する協定というのをつくる。その形式はいろいろあると思いますが、国連と受け入れ国が取り決めるということでございます。  他方、派遣国の側は、派遣国が国連との間でその派遣に関する何らかの枠組みを設定するということでございまして、各国から派遣される軍隊の地位は、この派遣取り決めを通じまして国連が受け入れ国と取り決めたいわゆる特権免除というものを享受するという二つの枠組みが従来考えられております。
  88. 久保田真苗

    久保田真苗君 つまり、国連と受け入れ国との協定、国連派遣国との協定、国連がそこで一切の責任を負っているんだと思うんですね。そういう国連が一切の負わなければならないその責任を、ある主権国が行ってそこで指揮をとるというのは、それは間違っていることなんじゃないんでしょうか。
  89. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、申しわけありません。何度も同じようなことを御説明することになりますけれども先生もお手持ちだと思いますが、国連派遣国との間の協定案というのがことし発効されておりますけれども、この中でPKO活動につきまして国連側は、先ほどまさに先生そこのところをお読みになられたわけですが、「配置組織行動及び指令について完全な権限を有する」、こういう表現がございます。私たち日本政府といたしましてPKOに参加していく場合に、この七項で言っておりますところに何ら異存はないということを申し上げてきておるとおりでございまして、こういうオペレーションの問題に関します限りは国連コマンドに服するということを申し上げてきているつもりでございます。
  90. 久保田真苗

    久保田真苗君 七項、八項については御異議がないんだそうですけれども、それは間違っているんじゃないんですか。その配置組織行動、指令、それについて完全な権限を有するのであれば、なぜ日本がそこに武器使用と中断の問題についてそういう出身国の指示を入れるという余地があるんですか。もし国連事務総長権限が完全なものならば、そういう食いかきはないはずじゃないんですか。
  91. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  中断とか撤退ということが起こりますのは、このPKFの前提条件が崩れた場合に各国もそういうことを行っている。したがって、日本もそういう中断、撤収ということが可能であるかといったのに対して、国連側は問題はないと、まさにそれはこの前提が崩れた場合であるということで、P KFが完全に機能していない、そういう状況に起こることでございます。  それから、武器の問題につきましては何度もこれも御説明申し上げておりますけれども、一定の状況のときに参加国の要員が武器を使っていいという、英語で言うところのメイビーあるいはキャンビーということでございまして、使わなければならないということを言っておるのではございませんで、そういう意味ではまさに参加各国がメイビー、使ってよろしいと、その中での判断をすることでございますので、ここで何か、この七項、八項に抵触するということがそこで起こるというふうに私どもは考えておらない次第でございます。
  92. 久保田真苗

    久保田真苗君 局長は、今までにも中断の例は幾らもあるんだと、キプロスの例をお挙げになっておりますね。それから武器の使用につきましても、任務のための武器使用、それは状況によっては限りなく自己の生命、身体を防護するためのものに近づいていくんだというようなことをおっしゃるんです。私、申しわけないんですけれども、それは非常に無責任な発言だと思うんです。なぜならば、中断したのは安保理から与えられた任務をやむを得ずして中断しなければならなかったというその結果なんですよ。ところが、日本はそうではない。初めから中断するということを決めているわけでしょう。それならなぜそういう任務につくんですか。  それから、武器の使用についてもそうです。それは、日本はそこまで任務のためには武器使用ということが許されていないんだ、それは職務にないんだと。確かに、PKFは別に武器使用を目的とするものじゃございません。抑制されたものです。ですけれども、武力行使は目的ではないけれども、最終的には部署を守るため、任務を全うするために最終的には使わなければならないということはその任務の中にあるわけでしょう。それを私は、そこの初めと終わりの違い、そのことを言いたいんです。日本はそのどちらも自衛官に与えていないんです。それなのにそのような任務につかせようとしている。イからヘまでずっと国連協力業務の軍事面の仕事を見れば、私はこれは非常に難しいなと思わざるを得ないんですね。その点、どうですか。
  93. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 私の過去の説明言葉の足りないところがありましたら申しわけございませんけれども中断とか撤収という事態が起こりますのは、日本政府のいわゆる五原則の最初で言っておりますところの紛争当事者間で停戦の合意が成立していること、二番目として同意の問題が挙がっております、三番目の問題として中立の原則を挙げておりますが、このような状況、このような原則が崩れた場合といいますのは、まさにPKFが存立するその基本的前提が崩れた場合でして、過去のそういうときの参加各国の例で見まするといろんな国が任務中断しておる。したがいまして、日本としてもそのような場合に中断ができるんではないかと国連説明して、国連もそうでしょうということを言っているわけでございまして、決して無責任なことを申し上げたつもりではございません。説明が足りなければ申しわけないところでございますけれども、そういう趣旨でございます。  武器の使用につきましては、先ほども申し上げましたけれども、いわゆる自衛とは次の二つの場合を含む。A、生命の危険、生命を防衛するとき。Bとして、任務の遂行が実力により妨げられ、それに抵抗する場合。それでBのケースの場合、すべてがいずれAに転じるであろうということを申し上げたつもりは一度もございません。中にはそういうケースもあろうということを申し上げたわけです。  いずれにいたしましても、Bのケースに当たって参加各国が武器を使用しなければならないというような考え方に立ってPKFの編成がなされ、活動がなされているわけではないということは、この問題に大変御造詣の深い先生、よく御承知のところであろうかと存じております。
  94. 久保田真苗

    久保田真苗君 武器を使わなければならないなんてだれも言っていないんですよ。でも、最終的には使わなければならない場合がある。それが平和維持軍に与えられている任務の中に含まれるわけですよ。限りなく浸透される、部署を奪われる、武装解除をされる、検問所を突破される、そういうときにはそうしなければならないこともあるという、最も最終的な手段として、目的ではないけれども手段としてあり得るんですよ。でも、日本はそれを認めていないんです。認めていないんだから、その任務につかすなんてこと自体が自衛官に対して非常に過酷なことじゃないんですか、これは。だれしも人間は撃ちたくない。そして自衛隊の隊長は撃てと言うことはできない、それぞれ本人が個人の判断でやる、こういうことになっているんでしょう。それを正当防衛に近いんだからといって、正当防衛でやるような仕事じゃないんです。もともと軍務なんです、これは。私はそこのことを言っているんです。  結果が同じならいいじゃないかじゃないんです。スタートがどうかということを言わなければならない。これは法律ですから、スタートのところでどういう任務が与えられているかということがすべてじゃないんですか。防衛庁長官、どうぞお願いします。
  95. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御答弁申し上げます。  一例を申し上げますと、第三条の平和協力業務の中に、例えば武器の搬入搬出の有無の検査または確認と、今先生も引用されましたね。検問を突破していくという場合には、私は我が自衛隊で数人の方がPKOの現実を見てきたことの報告を受けておりますが、その場合は、発砲したりなんか強制力をもってやらないようですね、それだけ通過させてしまう。しかし、どのくらい通過したかということは報告するようです。そういうことが外国の今のPKOの実態でもあるようでございますね。したがって、あくまでその通過を阻止せよということの命令であれば、先生おっしゃるように、それを強制力をもって排除するということはこれは当然あるかもしれませんが、今のPKO任務というものはそういうものでございまして、まさに非強制、強制力を使わない平和的な手段であるということがその例によっても私は感じました。これは外国の現にやっている例でございます。  そういうことでございますから、一般論として、そういう業務が直ちにトラブルが起きたときに武器使用に至るんだということはいかがなものかということを、私はその自衛隊の報告を承りまして本当に感じた次第でございますから、その点だけはちょっと申し上げさせていただきます。
  96. 久保田真苗

    久保田真苗君 いかがなものかというのはこちらが伺いたいんですよ。武器使用に至らないこともあるということはこの場合の例にならないんですよ。武器使用に至ることもあり得るということの方が正しい例なんです。それを至らないかもしれないというような、そういう結果的な、僥幸的なことを言っていただいたんじゃ、これは困るんです。  外務省に伺います。  そうしますと、七項、八項はそれでもうこのままやるというお考えなんだと思います。九項はどうなんですか。九項はこれは直さなくちゃいけませんね。そして何かこれはこのとおりにいっていただいちゃ困るわけですよね。九項はどういうことかといいますと、後ろのところだけ読みますと、「その任務の遂行に当たって国際連合外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならず、また」日本政府と、こう入るんでしょうね、日本国「政府もそのような指示をそれらの者に対して与えてはならない」、ここはどういうふうに処理されるんでしょうか。
  97. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  ここの今先生が読まれたところは、PKO活動の国際的な性格というものを確保するための考え方が盛り込まれた規定でございまして、一番肝心なことは、国連の側から見て、参加してくる各国がばらばらな行動をされてはたまらぬ、それでは 行動ができないということで、そういうばらばらな行動になるような指示を本国政府に求めてもらっては困るという意味でございます。  日本法案の立て方は、累次、政府から御説明申し上げてきておりますとおり、この七項の考え方には従いましょうと、それで、そういうことに従い得るように実施要領をつくった場合、これが七項に適合するように常に配慮し、そういう作成の仕方をしていくということで、私たちは結果的にこの九項で言わんとしていることも日本としては守っていくことになる、そういうことまでもこの九項が排除しているというふうには考えておらない次第でございます。
  98. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、それじゃ実施要領はそのように書かれるわけですよ、実施要領は。それは現地でのSOP、フォースコマンダーの出す指図と違うものをここに入れるわけなんですね。しかも、日本国憲法の問題がそこに本当に辛くかかっているという、こういう状態なんですよ。私は、これは事務的な文書だとか、細かいことだとかと言ってお許しするわけにいかないと思うんです。  そういうことを考えますと、いろいろ理屈を言って、明らかに日本政府もそのような指示をそれらのものに与えてはならない。どう見たってこれは指示を与えているわけじゃないですか。そうしたらば、もしどうしてもそういうことだということならば、それは少なくとも国連側あるいは他の国から派遣されてくるそういうところの責任者にはその立場は明らかにされなければならない。なぜならば、これだったらみんな、普通一般の平和維持軍と同じものだと、だれだって思いますよ。  御存じのように、国連は文書のやかたでございますから、口頭なんてことは、こんなものは第三者に対抗力がないんです。ぜひともはっきりと私は文書でいただきたいと言っているんですけれども、この文書は、これから国連と話し合うんだ、具体的な文言は交渉事だから今は言えないと、こういうお答えなんですよ。これじゃ幾ら何でも無責任過ぎます、この国会は。条約を国連との間に結び、かつ国連は受け入れ国に対して責任を負う。それなのに、こっちはこれで済ませておいて、そして実施要領の方には入れる、だから防衛庁長官指揮をとるんだ、これじゃ人をたぶらかすも甚だしいじゃありませんか。  私は、こんな欺瞞に満ちた法案審議を本当にやりたくないです。きちんとお答えください。この九項ばとう処理されるんですか。
  99. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この九項で書いてございます、いかなる他の当局からも指示を求めてはならないというこの指示でございますけれども、私どもは、国連コマンドに反するような内容の指示、そういうのをやってはならないというふうに解しております。  そのコマンドとの関係、まさに先生に繰り返し御説明申し上げておりますとおり、国連コマンドの内容は、この法案の枠内で実施要領を介して、我が国の要員によりそのとおりに実施されるわけでございますので、したがいまして、国連との間でこの第九項との関係におきましても特に問題があるというふうには理解しておりません。
  100. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、例えばこの派遣協定の中に補足協定というのがありますね、「補足取極」という条項が。そういうところに書くとか、私は幾ら何でもこれが全部このままで、そして事務総長指揮日本国憲法という政府の解釈によるところの非常に大きい二つの問題点、その二つの問題点に対して何も関係者が知らないというのでは、それこそ無責任だと私は思うんです。何らかの形でそれは書かれなければならないことだと思うんです。  翫議員から、国連と特別な協定を、そういう意味任務遂行の妨害に対して武器使用をやらない、武力行使をやらない、そういうことをやっている国があるかどうかという質問に対して、知らないということなんですけれども、それだったらば、日本が初めて憲法の中から出てくるそういう問題を、国連と特別の協定あるいは補足の協定、あるいはこの文言を訂正するというような形ですべきじゃありませんか。
  101. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) PKOへの要員の派遣に当たりまして、我が国と国連との間でどのような枠組みを設定するかにつきましては、一般的にPKOに参加する取り決めというものではございませんで、この点御案内のとおりでございますけれども、どのような地域で、どのような紛争に関して、どのようなPKO活動に参加するかというような具体的な状況でございますとか、また国連側との協議の推移いかんによるものでございますので、現時点ではどのような取り決めをつくるかということを確定的に申し上げられないのは大変残念でございます。  いずれにしましても、政府といたしましては、この法案の成立後、速やかにこの法案に基づく我が国のPKOへの要員派遣につきまして国連事務局との間で話し合いをするつもりでおります。御審議をいただいているこの法案の成立の後に、PKOへの要員派遣に当たっての我が国と国連との間の枠組みの設定に関しましては、御案内のモデル取り決め、あるいはこれまでの各国の実行と申しますか、プラクティス、そして当然この法案が重要な要素として検討されるわけでございます。  いずれにいたしましても、この法案の成立後、要員の派遣はこの法案に基づいて行われるものでございますので、国連その間の枠組みの設定に当たりましても、この法案を中心として我が国の関係の国内法令の枠内での派遣になるということが確保されるように政府としては対処してまいりたいと存じております。  なお、これも御案内の点でございますけれども、このモデル派遣取り決めは、最近国連事務局でまとめられたものでございまして、この取りまとめに当たりましては、これまでのいろいろな具体的な取り決めを参考にしたようでございますが、ただ、このモデル協定そのもの、これのとおりの取り決めがこれまでつくられたということはない次第でございます。
  102. 久保田真苗

    久保田真苗君 モデル取り決めは、PKOは一つ一つ顔が違いますから、現地でのSOPは、そしてモデル取り決めは、あるいは内容的に多少違うのかもしれませんけれども、しかし国連が要求しているのはこのことなんですよ。事務総長のオーソリティーとコマンドなんです。そして、出身国からの指示を出してはならない。これは国連の中立性、そして公平性、そういった上からしてすべての国連の文書に共通していることなんですよ。  それをどういうふうに国連とお話し合いをなさったのか知らないけれども、私は、この法案と、だれが指揮者かという問題と、それからいろいろな指示が当然与えられるということ、このことは本当に国連のグールディング次長でも何でも、きちんと直接国会でお話をし合わなきゃならないことだと思うんです。ただ口頭でお話しになったということを私どもにここの答弁で聞かせていくなんて、これは時間のむだですわね。ですから、今後これを続けるのであれば、それはぜひとももう冒頭にやっていただかなきゃならないことだと思います。  私は、いろいろと勉強してみたんです。それは、中東のUNTSOやUNDOFにも行ってみたし、スウェーデンの待機軍訓練所にも行って、もちろんいろいろと資料ももらってきました。私は、そういうものとかSOPとか、具体的なことをずっと考えていきますと、非常に難しいと思うんです。  それで、質問に出してあったんですけれども、フォース・モーバイル・リザーブというUNIFILの特別機動隊、それの説明をちょっとしてください。短く、簡単にお願いします。
  103. 丹波實

    政府委員(丹波實君) これはけさ方閲覧申し上げた書類の中にも出てくる表現でございますけれども、UNIFILにおきましては、歩兵部隊とは別に、各国から提供される要員によりまして フォース・モーバイル・リザーブ、まあ機動予備グループとでも呼ぶんでしょうか、そういうものを編成しまして、緊急時には機動的に各地に支援のため出動できる態勢を整えているということでございます。私たちは、この活動のすべてを把握しているわけではございませんけれども、そういう予備のためのリザーブが参加各国によってつくられている、そういうことを言っているんだなというふうに理解いたしております。
  104. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは、初めは参加各国の部隊から募って、こういうものを臨時につくっていったそうですね。しかし、今この移動特別機動隊というのができて、トラブルのあるところへすぐ直行していくという、そういう機動性を獲得したんです。  でも、私思うんですけれども、こういうものに日本は参加してくれと言われても参加できませんね。できませんね、防衛庁長官。いかがですか。
  105. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 我々が承知いたしております、先生も御承知の幾つかのPKFのうち、そういうものがこういう名前で存在しているのは一つでございまして、そういうものがないところもあるようでございますが、いずれにいたしましても、どういう活動をするのか、この書類だけでは私たちちょっとよくわかりませんので、その内容をやはりもう少し詳細に把握しませんと、日本としてこういうものに自発的に参加できるのかどうか、この場でお答え申し上げることはちょっと難しいんではないかということで、ぜひ御理解いただきたいというふうに考えます。
  106. 久保田真苗

    久保田真苗君 お答えは難しいかもしれないけれども、もっとたくさんあるんですよ。それは、フォース・モーバイル・リザーブの指揮官、そういうところへ行く方は、多分今の場合は外国人になるでしょうね。そういう方の指揮日本の真なり将校なりが受けられるかという問題なんです。向こうはノーマルな形で来ます。こちらは、二点のリザーべーションの上で参加、それはできないことです。逆に言えは、日本の人がそういうものの指揮をする立場に立てるかといったら、それは立てませんわね。撃てと言えないんだし、それから束ねるにしても、外国の人はここまでやらなきゃいけないと思っているのと、そこで食い違いますよね。私、一々お返事は要らないけれども、これはできないものの一つですよ。  それから、まだたくさんあるんですよ、できないのは。要するに、拠点を守るという仕事は難しいんです。拠点は指揮官が守れということであれば、そこは極力守らなければならない。もちろん武力は最終的ですけれども、守らなければならないそういうポジションというのがありますね。それは常駐されるものなんです。そういうところに日本自衛隊は行かれない。  それから、そのほかにもございますね。例えば、いわゆる歩兵部隊なんですけれども、五百人とか七百人とかといった歩兵部隊ですよ。この歩兵部隊に幾つかのライフル隊というのが、二つとか五つとかできます。それは中隊ができるわけですね。それはいつも独立して動けるようにしておきなさい、つまり一つの中隊をトラブルが起こったところへ急派するというような、それは武力を使うか使わないかはそのときはわかりません。でも、ライフル隊ですからね。そういうライフル隊が要請を受けて、他国の軍隊の陥っているトラブルのところへ駆けつけられるかといったら、これもできませんね。  それから、軍司令部の基地の警備、これも各平和維持軍から募ってくるものなんです。それはそういうふうに書いてあるんですよ。そして、そこの軍司令部、軍司令官のいる一番中心の基地、そこに日本の将校や兵隊が常駐できるかといったら、これもできませんわね。そこは絶対に守らなきゃならないでしょうね。監視所や検問所についても、ほぼ同じことが言えるんです。  さっき難民の防護の件が出たんですが、例えばそういうふうに考えできますと、医療隊も難しい。なぜなら、患者やけが人、そういう人を防護するのは恐らく医療隊の任務に入ると思うんですね。それは自分のところの隊員ならいいですわね。だけど、そうじゃない人も、医療隊はロジスティックスでいろんなところに奉仕することになるわけです。そういう場合に、それを防護するのは任務としてはないんですよ。ないんです。避難民の輸送、いい、必要な仕事だと思いますよ。だけど、襲われるということはありますよね。そうなったときに、極端な例かもわからないけれども、それはもう外国人に決まっているんですね。決まっています。そして平和維持隊の人たちでもないわけです。そういう任務日本が本当にこの状態でつけるのかどうか。そうしたら私は、やっぱりつかせるのは自衛官には気の毒だなと、これはそう思いますよ。だって、撃てと言えないんですものね。そういうことなんですよ。  それから、それじゃ後方支援ならできるかというんです。後方支援は、第一線、第二線、そのくらいの……(発言する者多し)でも、理屈は理屈ですからね。そういうところへ行ったときに、後方支援、これは私もゴラン高原で見ましたけれども、完全に一カ所にいるんです、平和維持軍とその後方支援は。フィンランドの部隊に対してカナダが後方支援をして、それはもう立派なものですよ。だけど、一体でいるわけですよ。そういう外国の部隊と一体でいるということは、やっぱりこの留保をつける以上はなかなか私は難しいと思うんです。そういうことを考えますと、部署を守るのがだめ、いろんな人を守るというのも難しい、それから後方支援も難しい、もちろん支援に駆けつけるというような機動隊は難しいと、こうなって何でもかんでも断ってなきゃならないというのが実情じゃないか。  これはお考え直しになった方が本当によろしいんじゃないんでしょうか。防衛庁長官、どうですか。
  107. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先生が現地のPKOの活動をごらんになっての経験に基づくものではございますけれども、私ども実際にどのようなケースの場合に我が自衛隊派遣できるかどうかということは、これは要請の内容にもよりますし、また私どもは準備をいたしまして可能なケースがいろいろ考えられるわけでございますから、その中で、この法律に基づく限定の中でできる限りの努力をしていきたいというのが私は法の趣旨だと存じます。したがいまして、今先生の御指摘の点、一々何もできないのではないかというようにも聞こえますけれども、私は決してそうではないと存じます。  したがいまして、この法律の要件、これはやはり守らなくちゃならない二条件でございます。そういう二条件を付した上で、そしてその条件が満たされない、よしんば事前にこれは調査したりいろいろ必要でございましょう。そして、それが満たされない場合は、やっぱりこの法律に従って撤収をするというようなことも大前提に考えておるわけでございますから、可能な限りの平和協力をやっていく、こういう点については何ら変わるところはないと存じます。
  108. 久保田真苗

    久保田真苗君 やれる部面というのをお考えになるのは結構なんですがね。  私どもの方でも、軍事監視団、軍事監視員まではよかろうという意見もあったんです。でも、それで研究してみますと、将来のことは知りませんが、今の状態では、軍事監視員と平和維持軍は絶対別のものとは言い切れないんですね。それはミックスして行動することも多いわけです。その場合、全員が武器を持たないということならよろしいでしょう。全員が武器を持つという、そういうことが間々あるわけです。それは状況によって。そういうふうに考えますと、どれ一つとって、これなら割り切れるというのもなかなかないんですね。黒であるか灰色であるか、どっちかなんです。  カンボジアヘ出ていく軍事監視団は、この間、田議員が言われましたけれども、これは武器を持つということのようです。今後、平和維持軍はどういうふうになっていくのか。今までより強い平 和維持軍になるだろうというそういう見方と、もう一つの見方で平和維持軍が出ている所はキプロスとゴランとレバノンだと、それは二十七年、十七年、十三年と全部焦げついている。そして結局、二百人の軍事監視員で守れないものは二千人の平和維持軍でも守れないんだという、そういうことを言う人もいます。私はどっちに向くのかわかりません。強い方に向くのかもしれません。  そういう点につきまして、まことに恐縮なんですが、総理は、今後のPKOのあり方といいますか、これからどういうふうになっていきそうかというような、そういう御所見がございますでしょうか。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから御質問を承り、また答弁を聞いておりました。  久保田委員も御理解のとおり、我々としては我々の憲法に十分な配慮をいたさなければなりませんので、したがいまして、この法律案に規定しておりますところは、確かにモデルが想定しているところ、あるいは各国がやっておるところとは幾つかの点が違っております。  委員の御指摘は、そういうふうに違った建前でこの行動をやることはむしろ隊員の安全を非常に脅かすのではないかという御配慮が一つ。それから、しかしそうであるとすれば、この平和維持協力活動ができるケースというのは実は非常に少ないのではないか。あるいはまた、政治的に考えた場合にはむしろそれはしない方がいいという場合が多いのではないか。そういったようなことについての御指摘であったと私は承っております。  しかし、しばしば防衛庁長官がお答えをいたしましたとおり、それでもなお我が国に参加をしてほしいということを国連から言われ、また関係の当事国あるいは周辺国からも言われたときには、我々は政治的にそれが役に立つと。もともとこの平和維持活動は、御承知のように、国連の権威と説得によるものであって、本来武力を用いる、武器を用いるということは変則の事態でございますから、そうでないような事態には我々はやっぱり役に立つことがあるのではないか、全部の場合とは申し上げませんがというのが防衛庁長官のお答えであって、私はそれはやはりそういうふうに考えでいいのではないか。  実は、最後のお尋ねは私にちょっとわかりかねることでありました。今後のPKOというものが今までよりもっともっと危ない仕事になるのか、あるいは易しい仕事になるのか、どう思うかということは私に判断をいたしかねることでございます。  しかし、例えばカンボジアの場合、仮に本当に停戦というものが実現をいたした場合に、その最初の方の部分には武装解除であるとかかなり危険な部分があるかもしれないという感じがいたします。しかし、難民をもとへ帰すとか、地雷の除去はどうでございましょうか、その辺から、あと行政活動、選挙監視等々は、これはそこまでまいりましたら恐らくそんなに危険なことではないのであろうと。ですから、段階にもよるのじゃないかと存じますけど、総体的に、一般にPKOというものは今度難しくなるかならないかということば私には実は判断をいたしかねます。  ただ、申し上げたいことは、本当にそれでも国連から期待をされ、関係者からみんなどうぞと言われたときに、我々がよく考えて、この法律が許す許さないもそうでございますけれども、なお政治的判断でそれが賢明かどうかと考えまして、よかろうという場合はやっぱり私どもはそれに備えておきたいというふうに考えておるところでございます。
  110. 久保田真苗

    久保田真苗君 憲法を守るというその御姿勢、本当に結構なことだと思います。そうであるならば、私はやっぱりこの答えはただ一つだと思うんですね。  それはどういうことかといいますと、そのような任務のために武器を使うことを最終的には期待されている職業には、その種類の業務にはつかない、これあるのみだと思うんです。政府法案は大変苦肉の策なんです。それは御苦労はよくわかるんですよ。だけれども、残念ながら整理の仕方が間違っているんじゃないかと私思うんです。  それは、こういうふうにめためたにみんな全面的に軍事面に出られることにしておいて、それを欲張っておいて、そしてその任務に含まれるであろう最終的な手段というものはこっちの法律で与えてないんですね。私は、その整理をやめて、こちらは憲法を守る二点、これはなければいけません。いけませんけれども、この任務にそうした任務上最終的に期待される武力の行使というものを含まない仕事、それだけに出るべきだと思うんです。その分野は非常に広く、大きい。そして、日本はその面でパイオニになれるんじゃないか、そういうことを私はこれからちょっと社会党の方にも質問しましてそれをやってまいりますけれども、まず総理は、そういう整理の仕方もあるなとはお思いになりませんか。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今おっしゃいましたことは私よくわかって伺っていたんですが、武力の行使とおっしゃいましたが、そう言われましたか。
  112. 久保田真苗

    久保田真苗君 はい、そう言いました。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、そこを武器の使用というふうに申したい。と申しますのは、そういう御整理はわかりましたけれども、それでも従事している人にはやっぱり正当防衛の立場だけは与えてやりたい、そういうふうに私は思って伺っておりました。そういう整理ならばできるということです。
  114. 久保田真苗

    久保田真苗君 この法案では、文民に至るまで小型武器の貸与ということになっていますので、私でも行けばピストルを撃つかもわからない、そういう立場でございますから、これは慎重にならざるを得ないんです。現に、公務員の方がたくさん請願に見えますけれども、我々はこういうところへ無理やりに武器を持って行かされるんだ、しかも自衛隊と一緒に。こういうことは嫌だと、それは非常に大きい声でございますよ、やっぱり。近ごろ請願がいっぱい来ますので。  それで、私は社会党に質問します。  社会党に伺いたいのは、社会党案は非軍事・民生・文民という分野での貢献という太い三本柱を通していまして、積極的な人的貢献を目指しているんですけれども、その実施の主体となるのが平和協力機構という機構を設置するという一種の設置法になっているわけですね。その機構についてどういうこと、役割ができるのか、そこを少し聞かしてください。
  115. 篠崎年子

    委員以外の議員(篠崎年子君) 久保田委員に御答弁申し上げます。  ただいまお尋ねがありましたように、我が国は平和憲法を持っております。それで世界協力に対しましてパイオニア的な役割を果たすということが一番大事ではないだろうか。そこで、社会党が考えておりますのは、先ほどからお話がありますように、非軍事・民生・文民ということでございます。そういう気持ちを込めまして国際平和協力機構というものをつくろうといたしております。  この国際平和協力機構の第一は、常設の機関であるということでございます。第二には、要員については常に一定の人数を確保し、国連等の国際機関の要請に即応して、医療、建設、通信、輸送その他広範なPKO活動及び人道的救援活動ができもように組織的訓練を行うということでございます。そして、そのような専門家チームも派遣できる体制を整備しよう、そういう気持ちでこの法案をつくっております。  以上でございます。
  116. 久保田真苗

    久保田真苗君 国際協力のあり方の問題なんですけれども、確かにそれは自衛隊は自活できますね、自活の団体でしょう。だけれども、そういう意味からいいますと、国連でも、難民高等弁務官事務所の人たちは文民だけれども自活ができるような訓練を受け、そのようにしているわけです。ですから、文民を使って訓練をするということによって、私は、これに役立つ技術を持っている人たちをたくさん常設の機関として、すぐに肝に合 う機関としてそれだけのものを日本が持てないものだろうかと思うんです。  もう一度、社会党に伺いますけれども、社会党の法案はどうしてこの仕事を外務省の所管にしているのか、伺いたいと思います。
  117. 篠崎年子

    委員以外の議員(篠崎年子君) お答えいたします。  外務省の所管といたしましたのは、JICAを初めとして外務省所管のもとで国際協力については一定の専門的な蓄積がありますので、この点を考慮いたしました。例えば青年協力隊活動等もございますので、そのような意味合いでございます。
  118. 久保田真苗

    久保田真苗君 それじゃ、ちょっと大蔵大臣に質問をさせていただきたいんです。  これは、まず先に外務大臣に伺う方がよろしいんですけれども、今度の国連総会で、日本の提案でECが協力して武器移転に関する報告制度、登録制度というものが採択されました。これは総会の冒頭で、前の外務大臣が演説の中で非常に大きく宣伝しまして、そしてこれができれば日本は応分の協力をと、もう少し大きく言ってもいいと思ったんですけれども、応分の協力をすると言っているんですね。せっかくこういういい制度があるので、私は何とか外務大臣にそれらしい財政的な援助を頑張っていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
  119. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 過去の経過でございますが、御指摘のような平和保障のための基金につきましては、資金の使途ですね、使途、目的それから規模、財源、こういうようなことについてまだはっきりいたしておりません。国連が行う安全保障のための活動でありますから、これは速やかにそれが実行できる程度の資金規模を常に用意しておくということは理想ではございますが、現実にはなかなか難しい。しかし、そういう制度はあった方がいい。  御承知のとおり、我が国内でも何か突発事故が起きたときに多少の余裕を持っておった方がいいじゃないかというようなことで、新聞に出ているような国際貢献税とか国際貢献のための何か基金という話が出たんですが、結局は財源との裏腹ですから、財源の方は賛成できないということになれば絵にかいたもちになっちゃいましてなかなか難しい、実際は。ですから、もう少し様子を見ないと、日本だけ請け合ってやるわけにもまいりませんので、そういう方向で将来国連が一致するように、これは忘れないで、小さく産んで大きく育てるという方法もありますから、そういう方向でイニシアチブをとっていきたいと思っております。
  120. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは、日本が京都の軍縮会議で国連を招いて、その席でさんざん討議をして、そしてそのあげく日本が持ち出して演説をした、そういういわく因縁のあるものなんですね。たまたま今いらっしゃるのは、日本から行っている事務次長ですけれども、別にそうだからという意味じゃなく、非常に熱心にこの登録制度、武器移転をできるだけ自粛させていくというその目的、それがなければ湾岸はまた起こります、そういうことでやっている。そのためにはたくさんの途上国に協力してもらわなきゃならない。そういう仕事のために資金を一生懸命獲得しようとしているわけです。ですから私、それがもうここ二年ぐらいもたっているお話なのに、防衛費やODAはざばざばと入るのに、どうしてこんなわずかな、七億円くらいのものだと思いますよ、実態として。登録制度をやって、そしてそれを軍縮の会議で方々に、アジアやアフリカやそういうところへ持ち込んでいくという、そういう国連の仕事なんです。  私は、今国際貢献税が云々と言われていますけれども、それはいきなり出てきたことで反発もございますが、私が申し上げているのはそうではなくて、国連の中に基金をつくったらいいじゃないか。それはそんな一兆三千億円だなんて巨額なものじゃないんです。五億、十億円、そういう単位のものです。それにもう少し今度はPKOの方にもお金を出すというようなことで、日本は随分出していますけれども、特に軍縮の問題には、提案者なんだからもっとこれはやってほしいな、そういうことなんです。  それで、大蔵大臣にお願いしたいと思いますのは、大蔵省の官僚の方は非常に誇りが高こうございまして、絶対に修正は受け付けない。それは末代までの恥辱だと思っていらっしゃるらしいんです。だけれど、このように国際変動のある社会ではやっぱり国会で、社会党もシャドーキャビネットで頑張っているところなんですから、ぜひそういったいい提案があったらば予算の修正にやぶさかでないと、柔軟にそれを考えていただいて、何も大蔵省が基金をプールして持つ、それだけじゃなくて国連にも渡していく、そういう方向でひとつ考えていただけないかなと思います。  そうでございませんと、余りにもアンバラなんですね。どれくらい苦労してもこの平和のお金というのは外務省国連じゃなかなか集まらない、そういう問題がございます。それは要するに、経済にすぐに直結しないからと、そういう事情があるんですが、私、ぜひ国際貢献税とかなんとか出てきたそのことから、それは方向を変えてそっちに持っていった方がいいんじゃないかと思いますので、大蔵大臣にひとつ柔軟な対応をお願いしたいと思います。
  121. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 今のお話のございました国連の負担でございますけれども、私ども日本は、国際的には実は相当大きな負担をしておるというのが現状であるということでございます。そういう中で、日本はともかく平和をつくり出そうということについては積極的にやっていこう、また、国連中心の外交を進めるという考え方のもとに、そういうものが今日まで組まれてきたというふうに私は承知いたしております。  なお、今お話のございましたのが具体的にどう出ているのか、ちょっと私もつまびらかにしないので大変恐縮でございますけれども、いずれにしましても、そういった問題についてまた外務省とも話し合っていきたいというふうに思っております。なお、修正というのは一切行わないというお話でございますけれども、予算というのはまさに歳入と歳出というぎりぎり折衝の中で詰めてきておるというのが現状でありますし、この予算編成するに当たりましても社会党さん初め各党の皆様方、代表の方々、特にこの間はシャドーキャビネットの方もお見えいただきまして、幾つかの御要請というものも実は承っております。ですから、私どもはそういった皆様方のお話をただ聞き捨てにしているということじゃございませんで、お話を伺いながら、この中で生かせるものというのは私どもの中でも吸収しながら予算というものは編成されているというふうに考えておるところであります。
  122. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほど私がお答えしたように、既にこれはもう設立されて、日本も金は出しているんです。だからどういうふうなことか、事務的にちょっと説明させます。
  123. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほど先生がおっしゃった、まず通常兵器の登録制度の絡みで前外務大臣国連総会でも申し上げましたけれども先生がお触れになっておられるのは、まさに登録制度が開始された場合にデータを国連が集めなければならない。そういうデータベースを充実するために日本としては協力してまいりたいということを申し上げたわけで、この点を先生はおっしゃっておられると思います。先生のおっしゃっておられるとおりでございまして、この点まさに日本は応分の協力が行えるよう努力しておるわけでございます。  それから、御承知のとおり、PKOの財政につきましては国連の、もし通常予算で賄われる場合には、これは国連本部の予算が回るわけですし、特別分担金につきましては、日本の場合は通常予算と同じように現在のところ一一・三八%を支払っておる。それに加えて自発的拠出金も出していることは御承知のとおりで、さらにそれに加え まして平和維持活動強化基金というものを国連に設けまして、これまで平成元年度予算で二百五十万ドル、平成二年度予算で二百五十万ドル、それから平成三年度予算では一千万ドルを予算計上しておるということも先生御承知のとおりだと思います。  今後とも努力してまいりたいと思いますので、ぜひよろしく御理解方お願い申し上げます。
  124. 久保田真苗

    久保田真苗君 今の法案に戻りまして、これは結局自衛隊だの、それから各関係省庁だの、志願してくる人だのを一応入れることになっているんですが、私ども一つ気になりますのは、随分長くなるということもあり得るということなんです。そしてまた、今回、国会承認について二年も手を縛られるというようなとんでもない修正案を衆議院から送ってきたんですけれども、そういう期間を予想しておいでなのかどうか。  そして、そういう場合に、私一遍現場を見ましたときに、一つはオーストリアの平和維持軍なんですが、ゴランから、ホーストリアですから比較的距離は近い、それをやっぱり時々家族のもとに帰すというそのことについて政府が、国連は出しませんから、オーストリア自身が手当を出してそういうことをやらせる。また、非常に景色のいいところへ家族を呼び寄せていく、そういう手当てをしている。また、フィンランドは将校なんかでは、長い人は家族を連れてそこに住まわしているというような、そういう配慮もあるんです。日本の場合はそういう配慮は考えられるんでしょうか、どうなんでしょうか。
  125. 野村一成

    政府委員野村一成君) ただいま御指摘の点、特に外国の例というのも参考にして考えていかなければならない点であろうかと思います。これまでの例におきましても、PKO派遣される要員は比較的短期間の半年から一年という間で交代を行っているわけでございまして、今後現実に業務に従事する場合には、特定の個人の派遣が長期にわたるのはやっぱり避けるべきではないか、そういった配慮をしていく必要があろうかと思います。  また、家族との交流につきましても外国の例も参考にする必要がございますけれども、要員に関する情報の提供とか、基本的には御家族に安心して留守を預かっていただけるような配慮を十分になしていくべきであろうというふうに考えておる次第でございます。
  126. 久保田真苗

    久保田真苗君 情報の提供とか、そういうこともいいんですけれども、それは人間に変わらないと思うんですね。やっぱり随分大変な土地へ行く場合もあるわけなんです。  それで、真珠湾五十周年だというのでいろいろと問題が出てきますね。やっぱり過去のことを反省の材料にして、そういうことにならないような手を打つということは必要だと思うんです。  それは、例の従軍慰安婦の問題なんですが、何も日本の中だけじゃなくて、ビルマからも慰安所の問題が出てきた、フィリピンからも出てきた。その当時、日本軍の中で非常にそういう女性の凌辱というようなことが起こって、その結果そういうことをやったというような、そういう資料が余りにもここのところどっと出てきたんです。官房長官も近ごろやっと大分こっちに関心を持っていただいているようなんですけれども、これはどういうふうにお進めいただくかお決めいただいたでしょうか、調査をするとかそういうことを。その後まだ決まっていないんでしょうか。
  127. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 久保田先生お尋ねの点は、多分、政府は調査をしなきゃならぬと言っているが、その調査をする体制をいかに決めたかということでないかなと思いますが、十二日に内閣官房で石原官房副長官が主宰いたしまして、資料が集められるだろうと推定されます関係六省庁、具体的に言いますと外務省と文部省と厚生省と労働省と警察庁と防衛庁でございますが、その担当の人間が副長官のもとに集まりまして、これからどういう調査体制を、さらなる調査体制をどう持っていくかということを討議いたして、また今各省庁で検討しておるところでございます。
  128. 久保田真苗

    久保田真苗君 ひとつ、韓国でも核が取り去られだというような、なかなか抜く手を見せぬやり方をいたしますので、ぜひお急ぎいただきたいと思います。  私、何でこんなことを持ち出したかというと、こんなことは古いことだとは言えないんですよね。古いことだとは言えない。最近、もしかして新聞等でお気づきかもしれないんですけれども、エイズ予防のポスターというのがございまして、そのエイズ予防のポスターを見て女性議員が大変憤慨しまして厚生省へ申し入れに行ったということがあるんです。私は、やっぱりこのアジアの近隣諸国の問題を考えますと、こういうことは心配だなと。こういうポスターなんです。(資料を示す)  これは堂本議員、この間厚生省へおいでになったかと思うんですけれども、ひとつこういう経過と皆さん意見をちょっと御紹介いただけますか。
  129. 堂本暁子

    委員以外の議員(堂本暁子君) お答えいたします。  もう笑っていらっしゃるんですけれども、次元の低い話にしたくないと思います。例えばノルウェーなんかでしたら、総理大臣も女性、そして閣僚の半分が女性、そしてここに座っていらっしゃる方の四〇%が女性のような国だったら、恐らく今のようなそういう笑い声は私は出ないと存じます。私も、きょうこの話が出ますときに、そういう次元で、笑いが出るような次元でこの話はしたくない。今、久保田さんもおっしゃいましたように、朝鮮の強制連行された慰安婦の問題と全く私は共通していると思うんです。  これは、ぜひしっかり報道の方にも見ていただきたいのです。男性がパスポートを持っているこの写真は、日本は売春防止法がございますけれども、外国の女性については、これは途上国に対しての大変差別であるということで、男性からも女性からも余りにこれはひどいということの訴えがあって、私たちも現物を見て、「いってらっしゃい。エイズに気をつけて」、こういう言葉で、余りにもひどいということで、パスポートを持った男性のポスター、これは国際的な差別、それからもちろん性の差別でございます。そしてさらに、エイズの患者さんに対しての差別であるということで、これを取り下げていただきたいというお願いに参りました。そして、内容としてはむしろそうではなくて医療対策の早期の確立をお願いしたいと。  しかし、それに対して、きょうは厚生大臣がおられないのは大変残念でございますけれども、厚生大臣から何か特に文書が回ったかどうか存じませんが、それぞれの自治体で、大体二十一の都道府県で、例えば北海道、長野、大阪、千葉、神奈川、山口、福岡、熊本、長崎、佐賀などという都道府県ですが、これはもう一切張らないということの決定がなされました。  しかし、この中にある意識と申しますか、こういうポスターができて、少なくとも全国にも配られているわけで、それをごらんになって、企画して配られるということが、久保田議員が今ずっとるるおっしゃったことの構造の中で、私たちは意識をもう一度考えなければいけない。単にPKOで貢献するということ、しかしそれを担う一人一人の意識がどういうものかということを改めて考えております。
  130. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。  総理、女性は一つ余分のことを心配しなきゃならないんです、いつでも。こんなことは本当に私失礼なことだと思うんですけれども、でもこれは明らかに、パスポートを持ってどこかへ買春に行くというそれなんですよ。「いってらっしゃい。エイズに気をつけて」、これは奥さんの言葉なんでしょうか、それともこのエイズ予防財団の理事長さんの言葉なんでしょうか。こういうものがいいポスターだと、人目を引くポスターだと思われる。でも、フィリピンで何が起こっていますでしょうか。結局、この間も労働大臣がフィリピンから見えて、もう日本には若い女性は出稼ぎに行 かせない。向こうもやせ我慢ですけれども、そんなことまで決めるというような状態でございます。やっぱり私、これは日本の風土だろう、それはこれからも続くだろう、そういうことを思うわけです。  でございますから、私、何もオーストリアやフィンランドの例を引くまでもなく、そういうところに何カ月、何年というふうに人を派遣していくときには、政府は当然そういう人たちの家族とのなるたけ密な接触を考えなければならない。そういうことを考えていただきませんと、終戦直後、基地の周りはいろんな特飲街がいっぱいだというような、ああいうことが当たり前だというふうに思わないでいただきたい、こう思うわけでございます。日本では売春は禁止されているので、こういうものは外国へ行ってしまえばあとは野となれ山となれというような、これは問題だと思います。  別にお返事はしていただかないでも結構なんですけれども、もし御感想があればお聞かせいただきたいと思います。
  131. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) それじゃ、久保田委員、厚生省から局長が来ておりますが、先に答弁させていただいてよろしゅうございますか。
  132. 寺松尚

    政府委員寺松尚君) お答えいたします。  エイズ対策というのは非常に重要な問題でございまして、今世界で四十二万人にも患者がなっておる、それで何百万という方々が感染をしておるというような実情でございまして、WHOを初め世界を挙げてエイズの防止に努めておるところでございます。  我が国におきましては、現在、私どもは六十二年の二月に関係閣僚会議で御決定いただきましたエイズ問題総合対策大綱というものに基づきましてエイズの予防対策を進めておるところでございます。  今、先生指摘のポスターの件に関してでございますけれども、最初触れさせていただきましたように、最近エイズの問題が非常に脚光を浴びておりますが、我が国におきましても異性間の性的接触、通常のセックスによります感染の増加でございますとかあるいは海外で感染する事例が非常にふえております。そこで、そういうようなエイズの状況を踏まえまして、私どもは一層この対策を進めなきゃいかぬ、こういうことに考えておるわけでございます。  そして、今先生指摘のような趣旨でこのポスターをつくったわけではございませんで、先ほども申し上げましたように、エイズを何とか防止したい、こういうことで私どもの所管しております財団法人でありますエイズ予防財団が作製したものでございます。これは、世界エイズデーというのが御承知のように十二月一日でございますが、一斉にキャンペーンをやろうということで出したわけでございます。
  133. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、これはエイズ財団の問題かと思っていたんですけれども、厚生省も御承知でおやりになったみたいですね。そういうことになりますと、これは政府の機関でして、売春防止法というのが日本にあるわけでございまして、そういうものを無視したような、これはとても公務員にとっては許されないポスターですよ。こんなのはもうやらないと、全部これは回収していただきたいんですよ。どうなんですか。
  134. 寺松尚

    政府委員寺松尚君) お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、私どもの趣旨は、そういうふうにエイズを予防するということが目的でこの財団をつくり、財団がやりました事業でございます。このエイズのポスターが出ましてマスコミに非常に取り上げられまして、その中でいろいろ賛否両論いろんな御意見をいただきました。その後、予防財団の受けております電話等の照会も五割増しから二倍ぐらい毎日増しております。そういうふうに非常に御関心が高くなっておるということがございますので、私どもはいろいろの御意見を承りながら、国民各層の御協力理解のもとにこのエイズ予防対策を進めてまいりたい、このように考えております。
  135. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ちょっと局長、今の委員の御指摘は、このポスターをいかに処理するかということが大事なポイントなんだから、責任を持ってそのことの処理を説明してください。
  136. 寺松尚

    政府委員寺松尚君) 今、私ども都道府県等に予防財団から送っておるわけでございますが、いろいろ各県でお取り扱いが違います。そこら辺でいろいろ私どもも都道府県と御相談しながら考えてまいりたい、このように思っております。
  137. 久保田真苗

    久保田真苗君 公の立場を利用して法律にもとるようなことを、ポスターを出して女性を侮辱する、私これはまた問題にしなきゃいけませんですね。もう一日も早い回収をお願いいたします。  総理、私、やっぱり政治的にもそれから法律の上からいっても、これは公的なポスターとしてはまことにふさわしくないものだと思うんです。いいじゃないかということではないと思うんですね。私、こういうポスターが二度とつくられないようにぜひ総理のお力も拝借したいと思うんですが、いかがでしょうか。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) エイズ予防財団がまじめな意図を持ってつくったポスターには違いないと思いますけれども、今、久保田委員がおっしゃいますように、それがまた別の極めてシリアスな問題を起こしておるとすれば、果たして全体としてそこをどう判断すべきか、御発言の趣旨はよく厚生大臣にも私からお伝えいたします。
  139. 久保田真苗

    久保田真苗君 一日も早い御処置をお願いいたします。  国際協力のあり方について、あと少しの時間になってしまいました。そんなに日本は人的貢献がこういういろんな要素を含んだ法律を一遍に出さなければ何にもできないのかということなんですね。実際問題として法律がなくてもできることもたくさんございます。それから、個別の法律によってやることのできるものもございます。そういうあらゆる可能性を探っていただきたいと思うんですが、その中でみんなの合意のあるところは、何といっても自衛隊はこの際やめていただいて、文官、文民の常設機構、大きいものである必要はないけれども、そういうものをつくっていくのが一番安定するということで社会党の方からお願いしたんですが、幾つか私も申し上げたいと思うんです。  それは例えば、ドイツの例になるんですが、ドイツの場合はナミビアと中央アメリカPKOに、シビリアンというのはいろんな職種があると思うんですが、相当数のシビリアンを送っているんです。ナミビアの場合は、車、フォルクスワーゲンを百六十台、そしてそれに整備士も伴いまして、何百人単位の選挙監視や警察やそういった人たちが行っている。もちうん日本も選挙監視を出しました。ですけれども、これはフォルクスワーゲンなんかを出すということは、日本が今車でもっていろいろな経済摩擦もあるというとき、やはりこういう形の貢献ができないものだろうか。湾岸の多国籍軍には四輪駆動車八百台をばあんと海上で輸送したわけでございますから、国連に対してこういった日本の車を提供することは恐らくできるんじゃないか。  それで、聞いてみました。国連は入札なんじゃないかと。入札だけれども、それは一定の分担金を満たした後は品物で寄附していただくというのが最もありがたいことなんだ、特に日本のような国はそうなんだと。これは九月のPKOのシンポジウムで、国連のフィールド・オペレーション・ディビジョンのディレクターの方が特に会場で発言して、現物で、インカインドで御寄附いただけるというのがすぐに間に合ってありがたいんだがということを言っておられたという発言もございました。  また、私どもも去年、国連議連で、二階堂さんが会長のあれでございますけれども、やはり去年の段階でグールディンクさんにお会いしました。そのときに、非常に文民の提供ということに好意的でございまして、例えば西サハラは、医療は文民で担当できる。それから事務総長は、もちろん財政面は期待されるのも当たり前でしょうけれど も、文民の面で活躍できる国として重要視をしていますと。ですから、そういう面へぜひということで、今私が申し上げたナミビアのドイツの貢献のほかに、ナミビアではスイスの医療チームが、これは退役の軍医さんが主だと思いますけれども、そういう方を活用した。それは、軍人であるよりは、政治的な配慮から文民が歓迎される場面であったということでございます。ですから、文民の活用というのも大いにあるわけでして、PKOにとって文民は本当に枝葉なんだという考えは私は間違っているんじゃないかというふうに思うわけです。  また、スウェーデンに行きましたときに、待機軍の方で、UNIFILはスウェーデンは後方支援を担当しているのでございますけれども平和維持軍を出すのに比べて後方支援は、車三百五十台、五十三種類、そういった車の調達、部品の補給、修理というものを含む小国にとっては大変困難な仕事なんだというお話も聞きました。そして、車はほとんどすべて老朽化しているという実情でございます。  また、ナミビアも、車と通信設備、それからとりあえずの宿泊施設、それが一番困ったというお話も聞いておるわけでございます。  私は、日本はやる気であれば非常にやれる最も幅の広い産業と技術を持った国だと思いますので、政府におかれましてもぜひ文民のユニットをどこかにつくっていただくということをお願いしたいと思うんです。  本当のことを言いますと、PKFは提供国が多いわけです。軍事監視員も提供国は多い。それは、軍人は有事に備えて大体すべてが待機軍だからです。出しやすい。出しやすいけれども、受ける方にとっては受けやすくない場面もかなりございます。そういう意味で、一九四八年にスタートしたPKOが、これだけ四十年もたって、そして今さら平和維持軍に出すということがそんなに先。進国として立派な、胸を張って自慢できることなのかどうか。そういうことを考えますと、やっぱりコスト高になる文民のいろいろな面の技術者ということを中心に考えていただきたい、こう思うわけです。これはどなたに伺ったらいいんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
  140. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 事務的に。先生が今おっしゃった基本的な流れはおっしゃるとおりかもしれませんが、他方におきましてPKO全体を見ますと、文民による活用の分野はもちろん重要でございます。しかしながら、やはり括弧づきの軍人、各国の軍人さんが行っている分野も非常に重要でございまして、まさにそうであればこそ、今先生がおっしゃったドイツとかスイスもこれから立法をして、それを通じてまさにPKFの分野でも貢献していこうという、そういうことをしようとしておるわけでございますので、そういう意味でやはり両面ではないかというふうに考えてこの法律をお出ししておるというのが政府の考え方でございます。
  141. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 特別つけ加えることはございません。
  142. 久保田真苗

    久保田真苗君 ただ、自衛隊を出していくということにつきましては、私は国民合意がないと思うんです。そして、これを受け入れる国際社会にとってもまた、必ずしもたやすく歓迎できない面もあるんじゃないか。そういうところへ無理無理に出ていくということについて、私はやはりそれは国民合意を待つ、そういうふうにしていただきたいものだ、こう思うわけです。  もう一つ、カンボジアなんですけれども、これは、私は一例として申し上げるんですが、カンボジアの先遣隊でUNAMICというのがございます。二、三百人が出ていっているというものなんですけれども、こういうものを見ますといろいろな面の必要があるわけでございまして、もしかしたらこういうものはもう要らなくなって、つまり要求が満たされているのかもしれませんのですけれども、これから先も長いことでございますし、やっぱり後方支援は文民が担当しており、そしていろいろな意味でいろいろなニードがあるわけでございます。  それで見ますと、例えばいろんな必要な品物なんかを書き出しているわけですが、これは日本はもうカンボジアの分の拠出金はお出しになったのでございましたでしょうか。
  143. 丹波實

    政府委員(丹波實君) カンボジアにつきましては、先生よく御承知のとおり、二つの活動が問題になるわけです。一つは、既に設立されたカンボジア先遣隊、それから今後、来春にかけて展開されていくであろうUNTACでございます。後者についてはまだ設立されておらないわけでございますが、以上の二つのいずれにつきましても、総会は財政面の決議はまだいたしておりません。したがいまして、日本政府としてまだ割り当てが来ておりませんので支払ってはございません。
  144. 久保田真苗

    久保田真苗君 UNAMICについては幾つかの国がいろいろな形で既に拠出をしております。そういう意味で、これはボランタリーなもので、自発的にやれるものなんですから、何も分担金を言ってくるまでじっと待っていることはないと思うんです。もしやる気があるのであれば、この法案がこの国会で成立しないなどということで何にもしないということではなくて、例えばここにUNAMICにとって必要な、まあ一番先遣隊ですから大したことはないけれども、セダンが十八台、四輪駆動車二十七台、ミニバスが八台、アンビュランスが二台、トラックが七台、トレーラー車が七台、フォークリフトが二台というふうに必要なものをこうやって書き出してきているわけですね。  こういうものを予算措置で政府調達をして出す。これは例ですよ、例ですから、これはもう満たされたかもしれません。だけれども、そういうことはできないんでございましょうか。外務大臣、そういう考え方はできないものなんでしょうか。
  145. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 事実関係でございますので。  恐らくUNAMICの場合には、調査団の経費を出した国は既にあろうかと思います。このようなPKO活動の場合、日本は出し渋って行動しているつもりは決してございませんで、先ほど申し上げましたような平和維持活動支援強化基金というものを国連の中につくりまして、例えば最近のケースですとUNIKOMですね。UNIKOMが設立されたときは、日本は恐らくどの国よりも早くその基金の中から百万ドルを立ち上がり経費として出しておるという例もあるわけでございます。  それから、先ほど先生、何度かいろんな活動との関連で物資面における協力のことをおっしゃっておられますが、財政法との絡みでやはり物資供与というのは法律的な根拠が必要でございまして、そういう意味で今お出し申し上げておる法律の中では物資供与ができるような仕組みも中に入れておるというふうなことになっておるわけでございます。
  146. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしたら、この前、多国籍軍に八百台も車が出ていったのは、あれはどういう根拠なんでございますか。
  147. 丹波實

    政府委員(丹波實君) もし、私の記憶に誤りがありましたら訂正させていただきますけれども、私の記憶では、日本政府がGCCというところの各国がつくった基金の中に資金供与を行いまして、その中から関係各国が物資の買い付けを行ったという形で、そういう間接的な方法がとられておるということでございます。日本の直接的な支援というのはGCCに対する支出であるというふうに理解いたしております。
  148. 久保田真苗

    久保田真苗君 いろいろな予算措置でともかく九十億ドルなんというのはぽんと出るんですね。それで、本当にこういう形での寄与、それから例えばこれに自動車整備士がついていったっていいわけでしょう。そういう人たちは民間にもたくさんいるし、自治体にもたくさんいるし、国の機関にもたくさんいるわけです。そういう人たちに車についていっていただくように少しずつやっていったらどうなんでしょうね。そういうやり方は できないんでしょうかね。
  149. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは、カンボジアは必ずしも治安がよくないですからね。だから、募集したからすぐ民間の人がどんどん出てくるというようなことに実際はなかなかならぬと思うんですね。しかし、行きたいという人もそれはおるでしょう。  それからもう一つは、先生がおっしゃったように、仕事が遅いとか言われることが時々あります。法律上の不備もございます。あの八百台の車は、本当に素早くやったと褒められておるんですが、あれは業界を指導しまして、まあ売るわけですから、実際買い手が決まらないうちに各自動車会社が協力をして積み込んで、船で走っているうちにだれと契約するか後から考えたみたいな話だった、確かに。私はよく知っていますから。だから、ああいうような臨機応変の措置がとれるのは民間であって、国の場合は、いろいろな湾岸のものはぽんと出ると、こうおっしゃいましたが、ぽんどころじゃなくて、これは国会皆さんに大変御審議をいただいてやっとこさ間に合って三月末に補正予算が通過したということなんですね。  だから、やはりもっと機動的にできることを少し考えておくということは必要じゃないかと。そういう意味で国際協力の基金みたいなものがあったらいいということが今回出たのも事実でございます。しかし、余りに唐突だというようなこともありまして、一応今回はうまくいかなかったわけですが、そのうち御協力を得て考えたいと。――いや、今、関連した話ですから、そのように思っております。
  150. 久保田真苗

    久保田真苗君 欲張り過ぎると何でもだめになるということだと思うんです。  最後に、この問題について、これは武装した自衛隊を海外に出すということなんです。これはPKOだけじゃなくて、むしろ、人道的救援の面では事務総長の定める武器の上限もない、こういう法案で本当に政府だけの判断でPKOごとに出していくということは私は間違っていると思う。総理は盛んに、これは国連の権威と説得によるとおっしゃるし、また個々に、一つ一つ出していくときには高度の政治的判断が必要だとおっしゃっているんですね。ですけれども、私は、それは高度の政治的判断であるとともに、その政治的判断はやっぱり国民がするという、そのことが今最も必要なときじゃないかと思うんです。  私、憲法の前文など引いてみたいと思うんです。それは、日本国民国会を通じて行動し、そして再び政府の行為によって戦争の惨禍を引き起こすことのないようにする、こういう出だしになっていますね、憲法は。してみますと、皆様が閣僚席にお座りになって、いいえ、国会の承認は要らないんだ要らないんだとおっしゃるということは、まことに失礼ではございますけれども、結局、容疑者が、調書はおれが書く、判決文もおれが書くんだ、黙っていらっしゃいというのと同じなんじゃないんでしょうか。  私は、この平和と軍事の問題については、まさに憲法の言っている権力というものはどうしても容疑者になる、そのお立場をしっかりと踏まえていただいて、ぜひ――国会もまた無責任だと思うんですよ、国会も。国民を代表するのは国会なのに、こんな大事なことについて、その権利を放棄し、国民に対する義務を放棄しちゃって、そしてこれは自分の派閥がこうなんだからこうするんだというようなことでは、私は国民への責任は全然果たせないと思うんです。やっぱりこれは、シビリアンコントロールだというけれども、この軍隊がどうなるかという問題はまさに憲法の問題で、そしてそれはポピュラーコントロールでなければならないと思うんですね。  でございますから、これには国民合意が必要であり、国民合意を最も直接あらわすべき義務を負ったものはこの国会であるということをどの党の方も考えていただきたいし、政府の保証はこの場合は何の担保にもならないということをしっかりと考えていただいて、このことが成就しない限り、そしてまた、憲法が守られるようなそういう任務日本が選んでやらない限り、これは最も国連の権威を傷つけ、自衛官を憲法破りの非常につらい立場に追い込み、そして国民を裏切る、そういう法案だと私は思うんです。ぜひ整理し直していただいて、この整理の仕方でなく、任務を整理するということにおいて出直していただきたいと強く要望しておきます。
  151. 永野茂門

    ○永野茂門君 最初に、総理に御質問いたします。  多言を要しないことでありますけれども世界各国は今やあらゆる面で深く相互に依存し合っております。軍事面を見ますと、兵器の性能、効果、そして影響する範囲は一地域ではなくなっております。大変に広範囲にわたります。世界は、すべてとは言いませんけれども、多くの重要な問題が世界的な解決を要する、対応を要するということになってきております。  特に、安全と平和を維持する、あるいはまた戦争を防止し抑止するということは、一国ではもちろん難しく、また多数国による同盟関係においてもこれを十分に達成することはできないのでありまして、今やまさに集団安全保障、特に国連のそれに、つまり国連の平和維持能力に依存するようになってきつつあります。米国も湾岸危機以降その傾向を強め、世界はますますその平和の維持について国連に依存する傾向を持ってきております。資源小国であります我が国は、その生存と発展を世界の平和と安定に強く依存していることは明白であります。一局地の事象といえども、我が安全保障に重大な影響を及ぼしてきております。  こういう意味で、我が国がPKOに参加することは国連の一員としての当然の責任の遂行であり、そしてまた大国としての当然の役割分担であります。そして、正義のために危険を分かち合いながら、かっこれを克服しながら、苦楽をともにして世界の平和に貢献するということは、我が国が孤立することなく名誉ある地位を占めるのに極めて重要であります。もしこの道を誤るならば、つまり危険を分かち合い、そしてこれを克服することをやめるならば、大変にひきょうな者として世界から孤立することは間違いありません。  このような意味において、総理はこの我が国のPKO参加について、あるいはPKO法案を成立させてそれを準備することについて、国際に対する我が国の貢献あるいはまた我が国の安全保障等についての意義をいかに意義づけられるか、御所見をお伺いしたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 所信表明演説でも申し上げましたとおり、新しい世界の平和秩序が構築せられるに当たって、国連の役割に期待するところは非常に大でございます。また、我々が湾岸戦争の際に体験をいたしましたように、国連安保理事会が事態の処理に当たる場合、我々として何もしないわけにはいかないという国民的な関心があり、財政的な貢献を大いにいたしましたが、それだけでは足りない、やはり人的貢献もという声が高こうございました。  しかし、我が国には憲法でできないことがございますのできないことはできないことでございますが、できる範囲ではできることは最大限にいたさなければならない、それが国連に対する我々の本当にまじめな協力の方法であろう。そういう見地から、国連平和維持活動に対して、憲法で許されることをこの法案を御成立いただいて道を開きたい、こう考えておるところでございます。
  153. 永野茂門

    ○永野茂門君 次に、防衛庁長官に承ります。  以上のような重大な意義を持ち、そして、したがいましてこれは自衛隊の重要な任務になってくると思いますが、自衛隊法上これをいかに取り扱うか、現在百条で取り扱っておりますが、それについて承りたいと思います。
  154. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御案内のように、自衛隊法三条におきましては、本来的な任務といたしまして、直接侵略及び間接侵略に対しまして我が国を防衛することを主たる任務として、必要に応じて公共の秩序の維持に当たる、このように自衛 隊の本来の任務を規定してございます。  一方、今総理からも御発言がございましたように、このPKO、国際平和協力業務につくということは、大変これは重要なことでございます。しかしながら、これに参加するに当たりましては、自衛隊が長年にわたりまして蓄積してまいりました技能、経験、組織的な機能の活用を図るということでございます。また一方、このことは、国連の要請に基づきまして我が国の判断で国際的な平和協力業務をやるという点等もございますので、私どもとしては、本来的な自衛隊法三条の改正を要しないということで、第八章に規定されておる業務と同様な位置づけを行ったものでございます。  今申しましたように、PKO活動への参加は、これからの新しい時代の大変重要な任務であるということはもう間違いないことでございますけれども、こうした点がございますので、いずれにいたしましても、自衛隊法の三条を改正いたしまして自衛隊の存立目的を変えるかどうかといったこと、つまり変更を行うためには、我が国における自衛隊の位置づけの問題、あるいは我が国における自衛隊とは一体何なのかということについて、防衛庁あるいは政府内部はもとより、国民的な議論を経た上で行うことが適当である、このように考えておりまして、今直ちに三条に規定するということは適当でないと考えております。
  155. 永野茂門

    ○永野茂門君 十分御検討をお願いしたいと思います。  次に、我が国自衛隊PKO参加についてのアジア諸国その他の反応と我が国の対応について、外務省ないしは外務大臣にお伺いいたします。  我が国のPKO特にPKFの参加につきましては、アジア諸国が懸念しているという報道がほとんどでありますけれども、一体これは真実でありましょうか。そして、どういうように我々は考えたらいいのか承ります。
  156. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはたびたび御質問のあるところでございますが、為政者としては、私もことしの三月、東南アジア、中国その他の首脳部と会っていろいろお聞きしましたが、当時は中身がよくわかってないということもありまして、これはセンシティブな話ですがとかデリケートなことですがというようなまくら言葉を必ずつけたことは事実。しかし、話してみますと、よくわかりましたと言う国が大部分です、それは。慎重にお願いしますと言った国もございます。しかし、安保理の関係もございますし、国連からの要請がなければもちろんやりませんし、ですから心配ないじゃないですかということも私は申し上げたわけです。  したがって、一応、どこの国でも年配者の中に誤解を持っている人が多少いるということはこれは事実でございますが、これに対して、それは困るというようなことを聞いたことは私はありません。
  157. 永野茂門

    ○永野茂門君 先般来日いたしましたアナン・タイ首相あるいは外務大臣アーサー氏は一体何と言っていらっしゃったでしょうか。また、広く国際的に我が国のPKOへの参加の期待は高いのではないかと私は思っておりますが、アジア以外の国の反応について承りたいと思います。
  158. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) アーサーさんも、それは大変結構なことだと。私はあえて聞いてみたんですよ。その当事国だけでなくて周辺国から反対があれば、我々は派遣するかどうか、国連から言われましてもそれは検討材料にするんですと。だから、我々は大歓迎ですから日本も大いに尽くしてくださいということでございました。  その他の国というと、あとはそれについて当然だと言わんばかりの国が多いというように私は考えております。
  159. 永野茂門

    ○永野茂門君 PKOへの参加というものは、いずれにしろ、法案にも示されておりますように、国連の要請が必要でありますし、また当事国ないしは当事者の同意も必要であります。そしてまた、中立的立場を通すということになっておりますので、そういう歯どめがかかっている以上、外に出したからといって、自衛隊を将来戦争の目的を持って外に出すというようなことにつながることは絶対にあり得ない、こう私は思いますし、その点は十分に近隣諸国を初め世界に対して説得ができる、理解を得られると思います。  この際、また、我が国の防衛力の性格につきましても同時に世界、特に近隣諸国に対しては説明をし、納得をさせておく必要がある。と申しますのは、御承知のように、我が国の防衛力を構成する力というものは全く専守防衛的な方でありまして、大量破壊兵器は持っておりません。爆撃機も持っておりません。空母も持っておりません。ミサイルも百五十キロ程度しか飛びません。それからさらに、外に出ていった場合に、輸送力として戦力を長く維持するための航空機も持っておりませんし、船舶も持っておりません。こういうことにつきまして十分な理解を得ることによって、誤解は、簡単にとは言いませんけれども、だんだん解けていくと思います。これをぜひ政府の方にお願いしておきたいと思います。  次は、武器使用についてお伺いいたします。  PKFは、停戦が行われて、そしてまた兵力引き離しも概成しておるという状況で、その状況を監視し、そしてまた国連の権威と説得によってその状態を安定化し、平和を確定させるということが任務であるということは、政府が今まで何度も答弁しておるところであります。特に強制力をもってやるものではないということであります。したがいまして、私のところにも子供たちを再び戦場に送りたくないという訴えがたくさん来ておりますけれども、そういう人たちに対してもぜひ理解をしていただかなきゃいけないわけでありますけれども、まさにPKOが行くところは戦場ではないのでありまして、全く平和が回復しているところであります。ただし、危険は存在する、こういうことでありまして、そのあたりについてよく徹底をしなければならないと思います。  そこで、任務の遂行の仕方がどういう遂行の仕方であろうかということを停戦監視団あるいは平和維持軍について考えますと、これはかつての言葉で言いますと陣中勤務という概念に属する、つまり歩哨でありますとか監視哨でありますとか、あるいは巡察でありますとか斥候でありますとか、そういうようなもので今言いましたような任務を達成するのでありまして、陣地にへばりついて敵に対して防御戦闘を行うとか、決してそういうことをやるような形で任務を遂行するものではないわけであります。  したがいまして、こういうような任務遂行をやる部隊というものは、たとえそれがこういう平和維持軍の中の仕事ではなくて戦場においてやる場合においても、これは先に武器を使うとかあるいは何かあったらすぐ武器を使うとか、そういうことは厳に禁じているような勤務内容であります。というのは、そういうことをやるとみずからの任務の遂行が難しくなるし、そしてまたむだに損害を得る、こういうことになるから、こういう種類の仕事をする場合においてはなるべく武器は使わないんだ。もちろん威力偵察ということはあります。この場合は武器を使うわけでありますが、敵はいないのでありますし、また敵を求めるものでもありませんので、威力偵察の必要なんというのは全くないのでありまして、武器は使わないというのが原則であります。  したがって、武器を使うというのはどういうときに出てくるかというと、これはまさに自己の身体あるいは生命が危険になったときでありまして、任務の遂行を実力をもって妨害された場合にどうするかということにつきましては後ほど述べますが、一般原則としてそういう対応である、こういうように見なければなりません。  そういう意味において、武器使用というものはもちろんあり得るし、それからまた危険もあり得る。しかし、武器使用しなきゃいけない、敵がおるんだと、皆さんの話を聞いていると敵がいるということを前提にしておりますが、我々が行く場合、PKOが行く場合には紛争当事者も敵ではないわけでありまして、敵にしたという状態では、 既にこれは第一項の停戦が維持できなくなって停戦が破れるときでありまして、そういう意味において武器使用というものはそんなにあるものではない。本当に極めて希有な状況であるんだ。こういうように思いますが、どういうように規定されますか、外務省ないしは準備室。
  160. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 去る九月になりますけれども、東京でPKOについてのセミナーが開かれたときに、ブライアン・アークハートという方、この方は一九七四年から八六年まで国連の事務次長をいたしておりまして、担当はまさにPKO、ミスターPKOとも言われるくらいの専門家の方ですが、この方がこのゼミの期間に東京で日本の主要紙とインタビューをいたしております。その中で彼は、まさに先生今おっしゃいましたけれども平和維持軍は非暴力、非強制の敵なき兵士だからこそ偉大な力を発揮する、戦う平和維持軍は決して役に立たないということを言っております。まさに先生のおっしゃったとおりでございます。  したがいまして、過去のPKFに参加しました各国の対応を調べてみましたけれども、全部ではございませんが、二、三例を挙げさせていただきますと、例えばオーストリアは十八年間にわたりましてこのPKOに参加しましたけれども、発砲した事例は皆無であるということを説明しております。それから、フィンランドもこれまで人をねらって実弾を発射したことは一度もない。それから、イタリアについてもポーランドについても同じような回答が返ってきております。それはやはり先生が今おっしゃったPKFの本質から来ている、それが現実にこういうふうにあらわれてきているんではないかというふうに私たちも受けとっておる次第でございます。
  161. 永野茂門

    ○永野茂門君 今のことは非常に重要なことでありまして、相手から射撃されたらすぐ撃ち返す、相手から攻撃を受けたらすぐそれに対して防御戦闘を行うというのは、これはPKOではあってはいけないことであります。相手がいかなる相手であるか、どのような武器を持っておるか、どういう種類であるかという確認をするまでは、もちろん命が危なくなった場合は別でありますけれども、発砲すべきではありません。  特に注意を喚起しておきたいことは、こちらが持っているのは機関銃以下です。相手がバズーカを持ってき、あるいは対戦車砲を持ってき、あるいは戦車を持ってき、あるいは火砲を持ってくる、こんなものと戦うのはばかであります。こういうことは絶対にやっちゃいけない。したがって、わずか機関銃以下しか持っていかない。通常、斥候だとか、そういうものはそういうことでありますが、こういうものは戦わないのが原則であります。このことをぜひ皆さんに御理解をお願いしたいと思いますし、国民皆さんにぜひそういうことを御理解を得るようにしていただきたいと思うわけであります。  次は、指揮権コマンドあるいは指図中断、撤退ということについて承りたいと思います。  中断の判断基準は、第一に停戦合意が破れる、第二に我が国の参加への同意が取り消される、第三に平和維持隊が中立の立場を保て得なくなる、こういうようなことでありますが、これは極めて明瞭な事実ですね。こういうことについて、現地指揮官同士が意見が違うというようなことはあり得ない。これは、そういう事態になったということは極めて明瞭である。また、それを国連事務総長と本部長ないしは政府間の調整の形に上げたとしても、これはもうまさに疑いのない事実として起こるわけであります。  したがいまして、我が国は最終的に撤退をし、あるいは中断をし、終了を宣言するといいますか、そういうようなことはできるということになっております。確かに、最終的にそれは主権国としての問題でありまして、しかし現実の問題としては、恐らく全く意見は一致して、特別にそこで他の派遣隊に、つまり国連平和維持隊全体に迷惑をかけたり、それがまた不名誉なことになるというようなことはあり得ないと私は見ます。  そしてその上に、これは当然事前に十分そういうことについて国連調整をし、取り決めが行われる。そしてまた、それは十分な文書の形で取り決めが行われると思うわけでありますが、これについてどういうように考えておられますか、お伺いします。
  162. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  業務中断につきまして、国連との間で緊密な連絡をとりつつ行われるものであるという点についての先生の御指摘、全くそのとおりでございます。したがいまして、現実の問題といたしまして両者の間で、何と申しますか、食い違いが生ずるというようなことは想定しがたいというふうに考えられておるわけでございますが、仮に万一にもそういう食い違いがあればということで、この法案で八条の二項にのっとりまして、そういう場合には我が国の判断が優先し、部隊実施要領に従って業務中断し得るというふうになっておるわけでございます。  この辺の点につきまして、国連との間での緊密な連絡の上に業務中断するという我が国の方針につきましては国連側にも説明いたし、了解を得ているところでございます。
  163. 永野茂門

    ○永野茂門君 ここでもぜひ御理解を願い、そしてまた国民皆さんにも理解をしていただかなきゃいけないことが一つあります。  それは、紛争当事者が攻撃してくるという場合には、これは恐らく大変に真面目な攻撃でかかってくる。その場合にこちらが真面目な対応をしようと思ったならば、これは本当に紛争になってしまい、紛争に巻き込まれることになります。先ほどから申し上げておりますように、真面目な戦闘に巻き込まれてはいけないのでありまして、それは戦闘の原則に反するのであります。したがって、そういうことはやっちゃいけないし、あり得ない。あり得ないように訓練をしておかなきゃいけない。そしてまた、指揮官同士は十分にそれを調整しておかなければいけない。徹底をしておかなければいけない。それが研修センターで行われることであるし、訓練センターで行われることであると思います。  次に、予備調査あるいは研修、準備訓練についてお伺いいたします。  PKOにつきましては、派遣地域の地文あるいは人文その他の要素につきまして十分な事前調査の必要があります。携行する武器、車両、通信機その他の装備について、特殊な仕様が要るとか、あるいは特殊な性能上の要求があるとか、そういうことにつきましては生活物資についてまた同じでありまして、例えば耐寒性をどうするかとか耐暑性をどうするかとか耐湿性をどうするとか、あるいはまた対住民の特別な考慮はどういうことなのかとか、あるいは健康維持でありますとか風土病対策はどう考えなきゃいけないのかと、例を挙げればもうたくさんありますけれども、そういうこと万般にわたって十分な調査をして、そして出ていかなければならないわけであります。  そういうようなことについて、仮に法案が成立した後においてどういう手順でそういう調査を行いますか、お伺いいたします。
  164. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 自衛隊派遣につきましては、今先生おっしゃるように、いろいろの諸条件をよく事前に調査し、そして周到な準備をやらなければならぬことでございます。しかし、これはやっぱり時間もある程度要することではございますが、徹底的に私どもは訓練をしていきませんと、今先生おっしゃったような点の諸準備に欠けていきなり参加するというようなことであっては任務の達成もできませんし、また隊員が安心してこれに従事するということも不可能でございますから、この教育訓練等につきましては本当に細心の注意を払ってやってまいりたいと思います。  同時に、現在はどういうことをやっているかといいますと、諸外国の実情の調査等のために隊員も派遣いたしまして実情を調査したりしておりますけれども、今後におきましては、この基幹となる要員などを北欧のPKOのセンター、学校等に 派遣をいたしまして勉強させて、そしてそこで十分な諸外国の経験、知識を修得し、その人たちを教官として集合教育等を実施して隊員の一層の認識を深めたい、こう思っております。  また、集合教育の場合に、今先生おっしゃったようないろいろの問題がございます。第一に外国語。これは英語が国際語でございましょう。こういうこともぜひ必要ですから、私どもはこれはもうぜひやらなくちゃならぬことだと思っております。  それから、この法案がなかなかPRされていないとか、いろいろ言われますけれども、何よりも平和維持活動の沿革とか平和維持隊の役割、平和的な役割、決して武装集団を派遣するものではないという点の今先生指摘のような役割、それからまた国際平和協力業務の実際の実務がどう行われるべきかとか、あるいは御指摘派遣地における気候風土や習慣、あるいは風土病、健康管理の問題の御指摘も今ございましたが、こういった万般の問題について十分な調査と研究をした上で、そしてもう十分に任務が達成できるような体制のもとに、隊員が安心して、しかも家族もまた安心して派遣できるような状況をつくり上げた上で参加させなければならない、このように考えております。
  165. 永野茂門

    ○永野茂門君 派遣されます自衛隊員は、海外で実任務につくのは初めてであります。国連指揮官コマンドのもと、一糸乱れずPKOの共同活動、敵は存在しないけれども危険を伴うという勤務は特に未経験であります。通常の軍事要素、つまり自衛隊で通常訓練しておる要素の上に、素養の上に、通常のものではわからないPKO任務の特異性を理解して、特別な思慮を要する錬成された能力が必要であると思います。法案が成立しましたならば、こういうことに御留意の上、しっかりと訓練をして派遣していただくようにお願いしておきます。  さて次は、段階的派遣の考慮についてお伺いいたします。  今申し上げましたように、派遣は初めてでありますし、訓練にも時間を必要とします。失敗は許されません。可能ならば、比較的に慣熟しやすく、そして訓練期間も短い、これも比較的ですけれども、非武装の任務であるものから始めて逐次高度な任務派遣へと移行していくのが好ましいと考えられます。  例えば、初回は停戦監視団への幹部参加、あるいはそれにさらに、最近よくカンボジアを例に挙げて問題にされておりますけれども、地雷処理隊等の派遣に随行させるといいますか、ともに行うというようなことから始めたらどうかというように考えておりますが、これについてどういう構想をお持ちでございましょうか、伺います。
  166. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 三条にいろいろな業務が規定されております。私どもは、具体的ケースに応じてこの要請に基づき判断して派遣するわけでございますから、これらのイからずっと掲げられております十数項目にわたる業務を一遍に何もかも全部すべてやるということでは決してございません。今先生が御指摘のように、我が国が参加する、そしてその期間、規模、装備等々は我が国の判断が十分働く余地がございますから、今先生のおっしゃられた、段階的と言っていいかどうかわかりませんけれども、その必要性に応じて我が国が判断し、そして的確にその任務を果たし、その蓄積の上にさらに有効な任務が遂行できるようになれば、よりいいかなと私も感じますび
  167. 永野茂門

    ○永野茂門君 次に、派遣隊の隊員ないしは要員の処遇などについて二点ばかりお伺いしたいと思います。  新鮮な任務意識を持った状態を維持ずみ、そしてまた現地事情に精通させる、かつPKO任務にも慣熟していくということが必要であり、非常に練度の高い状態を維持しなければこの任務は遂行できません。特に、現地で任務を実施しながら学習していく、みずから訓練していくということは極めて大事でありますけれども、同時に、先ほどの御質問にありましたものとは違う意味においても人権上の考慮を必要といたします。  したがいまして、隊員あるいはまた部隊の交代についてどういうようなことを今検討されておりますか。これは適切な交代要領を検討していただかないといけないと思いますが、いかがでしょうか。
  168. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ただいままだ法案審議中でございますので具体的にいろいろ申し上げる段階ではございませんけれども法案に掲げられている限りは、平和協力手当の支給でございますとか、あるいは公務員における災害補償の手厚い保護でありますとか、そういうことは当然な、ことでございます。  また、我々といたしましては、過日ペルシャ湾における派遣の際もそうでございましたが、より一層の賞しゅつその他の問題等々、あとう限りやはりそういう地域で重要な任務を果たしていただくわけでございますので、これらはまた処遇についてきちっとした体制をつくるように努力していかなければならないと存じますが、いずれにしても、法案を成立させていただき、そして同時にその問題も解決していきたい、このように存じております。
  169. 永野茂門

    ○永野茂門君 交代要領等の検討につきましては。
  170. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これは、過般自衛隊の現地視察の報告等を承りましても、これは長期にわたる場合がございますから、やはりどうも半年くらいで交代をさせることが多いようでございますね。したがいまして、私ども、これは具体的なケースによって判断をしなくちゃなりませんけれども、長期に大変な緊張状況における勤務の場面もございましょう。そういうことですから、交代をするというようなことは十分考えていかなければいけない、このように存じております。
  171. 永野茂門

    ○永野茂門君 一点だけ、もとに戻りますが、武器使用のことでお伺いいたします。  国連のティピカルなSOPの例では、ここで何度も論議されましたように、PKFが武器使用するのは、第一には生命防護の目的、第二は任務遂行妨害排除というようになっております。ところが、さらに詳しく調べますと、任務遂行妨害排除のために武器を使用する場合においては、これも何度か政府の方から説明がありましたけれども、まず説得しなさい、二番目に警告しなさい、それでも言うことを聞かない場合に武器を使用してもよろしい、こういうことになっております。  全般的な原則につきましては、先ほど質問したとおりでありまして、なるべく使わないというのが当然の姿でありますし、いわんや実力をもって妨害するというような場合には大変に強い戦力を持ってきているはずでありまして、一般的には戦わないのが原則であります。いずれにせよ、説得をし、警告をしという手順を経るということと考え合わせますと、一〇〇%一致するかどうかというのはいろいろ疑問がありますけれども、まずほとんどの場合、生命、身体の防護のための武器使用と重なってくる、こういうように私は見ますが、どういうように考えておられますか。  また、本件につきましては、国連側と十分な調整が行われ、恐らく枠組みをつくった段階においては、その点につきましても文書をもって確認される、こういうように考えます。したがいまして、現地指揮官はそういうことを十分考慮しながら、百に一つの確率ぐらいで差が出るかもしれませんので、その点は確認しておく必要があると思いますが、これについてどうお考えでしょうか。
  172. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  従来から御説明申し上げてきておるところでございますが、第二番目の実力妨害排除のための武器使用につきましては、先生が今おっしゃられたような説得その他のプロセスを経ていく過程で、いわゆるAのケースに転じる場合もあるのではないか川それが全部だとは私たちは認識しておりませんけれども、量的に示すことは難しいわけですが、Aの場合に転じる場合もあるのではないか。したがいまして、そういうことを考えますと、いわゆるBのケースについては武器を使用しないと いうことであっても、私たちといたしましては、そういう参加の形態であっても、ほかの国と一緒になって十分機能し得るのではないかということを国連側に言ったのに対して、国連側は、なるほどそれはそうかもしれない、こういう答えであったということを御説明申し上げてきておる次第でございます。  ちなみに、全部ではございませんが、今までPKFに参加してきました関係各国光調べてみましたけれども、純粋にBのケースで武器を使ったということはなかなか思い出せないという回答も返ってきております。だからといって、Bのケースで武器を使った例はないということまでは私はここで申し上げることはいたしませんけれども、Bのケースも、いろんなプロセスを通じればAのケースに案外転じているケースもあるのではないかということを従来申し上げてきている次第でございます。
  173. 永野茂門

    ○永野茂門君 総括として、総理二つお伺いいたします。  最初の問題は、派遣される隊要員の立場、特に自衛隊員の立場に立ってぜひ確認をさせていただきたいと思いますが、派遣された隊員ないし要員は、現地指揮官といいますか、指揮官を含めて実施計画及び実施要領に従い、これはもちろん途中で仮に変更があった場合には、その変更に従って整々淡々と任務を遂行すればよろしい。そうすれば、コマンド、この法律で言う指図を着実に実行することになるし、武器の使用も業務中断も、派遣の終了、撤退も国連との連絡調整を踏まえて本PKO法案にも正しく整合していくとして堂々と業務を実行することができる、こういうように考えてよろしいか、お伺いいたします。
  174. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、我が国から派遣された要員は本部長が作成いたします実施要領に従い国際平和協力業務を行うこととなりますが、実施要領は、ただいま仰せられましたように、この法案の枠内で国連指図に適合するように作成されることになっております。法案第八条二項で、そのような実施要領に従いましていわゆる五原則と合致した形で国連コマンドのもとに国際平和協力業務を実施することとなります。また、武器の使用、業務中断派遣の終了などを含むいわゆる五原則を堅持しつつ我が国がPKOに参加することは、国連にとりまして特に問題はないということは既に確認をいたしておるところでございます。  したがいまして、我が国から派遣されました要員は、本法案に基づいて国際平和協力業務を実施することにより、国連平和維持活動への協力を通じて一層効果的に国際的貢献をなし得るものと御指摘のように考えております。
  175. 永野茂門

    ○永野茂門君 総理にお願いする二番目は、この法案が成立しPKO派遣することができるようになることは、日本にとっても世界にとっても極めて重要であり望ましいことであり、したがって、世界から期待されておるところでありますが、本法案の成立についての総理の決意を改めてお伺いしたいと思います。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘の点は、昨年湾岸危機がございましたときに国民の非常に多くの人が感じた点であったのでございますけれども、何と申しますか、のど元過ぎれば熱さを忘れるということわざもございまして、ややそういう記憶が薄れつつございます。しかし、我々がこのように国連平和維持活動協力をするということは、国際協調のもとに恒久の平和を希求する我々の憲法の基本的な理念に合致すると存じます。我が国が国際貢献を積極的に果たすためのこのような国内体制の整備を図ってまいりますためにも、ぜひこの法律案を速やかに成立をお認めいただきたいと念願をいたしておりまして、各党また国民の皆様の十分な御理解をいただきたいと存じております。
  177. 永野茂門

    ○永野茂門君 ぜひ国民皆さんの御理解を得て、これが成立することを願います。  以上で終わります。  ありがとうございました。
  178. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、明二十日午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会      ―――――・―――――