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1991-12-18 第122回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月十八日(水曜日)    午前十時三十分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月七日     辞任         補欠選任      針生 雄吉君     広中和歌子君  十二月十七日     辞任         補欠選任      谷畑  孝君     菅野 久光君  十二月十八日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     谷畑  孝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 小川 仁一君                 佐藤 三吾君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君     委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 森山 眞弓君                 穐山  篤君                 翫  正敏君                 喜岡  淳君                 久保田真苗君                 瀬谷 英行君                 竹村 泰子君                 谷畑  孝君                 田  英夫君                 渕上 貞雄君                 細谷 昭雄君                 太田 淳夫君                 中川 嘉美君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 磯村  修君                 猪木 寛至君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  篠崎 年子君        発  議  者  堂本 暁子君        発  議  者  角田 義一君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        法 務 大 臣  田原  隆君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣  羽田  孜君        文 部 大 臣  鳩山 邦夫君        厚 生 大 臣  山下 徳夫君        農林水産大臣   田名部匡省君        通商産業大臣   渡部 恒三君        運 輸 大 臣  奥田 敬和君        郵 政 大 臣  渡辺 秀央君        労 働 大 臣  近藤 鉄雄君        建 設 大 臣  山崎  拓君        自 治 大 臣        国 務 大 臣  塩川正十郎君        (国家公安委員        会委員長)        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  岩崎 純三君        (総務庁長官)        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      伊江 朝雄君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)        国務大臣        (経済企画庁長  野田  毅君        官)        国務大臣        (科学技術庁長  谷川 寛三君        官)        国 務 大 臣  中村正三郎君        (環境庁長官)        国 務 大 臣  東家 嘉幸君        (国土庁長官)    政府委員        内閣官房長官  近藤 元次君        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁装備局長  関   收君        防衛施設庁長官  藤井 一夫君        防衛施設庁施設  大原 重言君        部長        環境庁長官官房  森  仁美君        長        国土庁防災局長  鹿島 尚武君        法務省刑事局長  井嶋 一友君        外務大臣官房長  佐藤 嘉恭君        外務大臣官房審  橋本  宏君        議官        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省北米局長  川島  裕君        事務代理        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        外務省情報調査  西村 六善君        局長事務代理        大蔵大臣官房審  石坂 匡身君        議官        大蔵省主計局次  涌井 洋治君        長        厚生大臣官房総  大西 孝夫君        務審議官        通商産業大臣官  内藤 正久君        房長        海上保安庁次長  小和田 統君        自治省行政局公  秋本 敏文君        務員部長        消防庁次長    渡辺  明君    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出、第百二十  二回国会衆議院送付) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出、第  百二十二回国会衆議院送付) ○国際平和協力活動等に関する法律案野田哲君  外四名発議)     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事小川仁一君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力活動等に関する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 谷畑孝

    谷畑孝君 まず最初に、大蔵大臣にお聞きをしたいと思います。  実は、この間新聞報道等によりまして、国際貢献資金貢献税ということで一兆三千億円の増税をする、こういうことを突如として新聞を通じて私ども知ったわけであります。その間、自民党税調なり三役なり、あるいは大蔵外務そしてまた総理を含めて協議してきた結果大きく変遷をしてきておる、こういうことであると思いますけれども、そのあたり経過について、大蔵大臣、知っている範囲でひとつお答えを願いたいと思います。
  6. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) この問題につきましては、新しい内閣が発足するに当たりまして総理所信表明の中でも、これからの日本の進むべき道といたしまして、国内にあっては生活大国を目指そう、そしてもう一つ、対外的には国際的な役割分担していかなければいけないということを二つの柱としてお立てになりました。  また、この間、ずっと昨年からことしに続いております湾岸戦争、また最近世界がやっぱりこの湾岸だけではなくて激動しておる、そういう中で、日本に対して実は協力を求めてきておるという事実があることはもう御案内のとおりであります。そういう中で、我が党といたしましても、国際貢献構想といいますか、こういったことが相当時間をかけながら議論をされておったところであります。そういう中で、十二月の十一日ですか、私どもの担当の者が党の方に招かれまして、党において今日の国際情勢あるいは我が国国際社会に占める地位、こういうものを踏まえて、ひとつ貢献のできる財源というものを求めたいという話が実はございました。  そして、今お話がございましたように、我々といたしましては、党からのこういった御下問に対して、財源的にどう対応したらいいのか、おおよそどの程度のものがよかろうかという中で申し上げましたのが今お話があった一兆三千億円というものでありまして、五千億円を資金として積んだらどうだろうかということ、それからあと八千億円は、現在ODAももう八千億を超えるものになってきておるということであります。今、私たちは、財政が非常に厳しいという中でこれを縮減していかなければいけないということでありますけれども、今の要請に対して、縮減することもなかなか難しいということで、一般会計の中に八千億円というもので合計一兆三千億というものがあれば、私たちはいろいろな国際的な要請に対して機動的に対応できるであろうというふうに思っております。  また、もう一言だけ申し上げますと、私も蔵相に就任いたしましてまだ一カ月とわずかでありますけれども、この間に私どものところを訪ねてこられた外国のお客様というのが三十人ぐらいになっております。もう大変な数の方でありまして、しかもその人たちが訴えることは、ただ表敬というよりは、今自分の地域を、自分の国を立て直すためにはどうしても日本協力がいただきたいという、何か肌で、体をもって語りかけるようなものがございます。ああ、やっぱり国際貢献というものに対して我々としてもこたえていかなければいけないのだなという思いを持ちながら対応してまいったということであります。
  7. 谷畑孝

    谷畑孝君 私は、一昨日、大阪で中小企業皆さんとのシンポジウムをしておりまして、それが終わってから各団体皆さんの要望ということで懇親会をやっておったんです。最近少し経済の、景気の不透明さということもあったりして、そういう状況の中で、湾岸戦争後のいわゆる九十億ドル支援ということの中で、石油等を含めて、法人税を含めて一部が増税されたわけでありますけれども、それが引き続いて国際貢献税という形の中で幅広く、いわゆる一兆三千億円といいますと、これは例の消費税で五兆円の形の中で相当大きく与野党が激突したということもあるわけでありまして、突如としてそういうものが出てくるということに対する非常な不安がある。そういうことで、過日の中小企業団体皆さんも、ぜひひとつ、景気の不透明なときなので、そのような納得のいかない、理解のできないそういう増税はやめてほしい、こういう話があったんです。  そこで、せっかく通産大臣もおられますので、そういう業界等を含めてこのことについては非常に心配をしておると思うんですが、その点についてひとつ通産大臣として意見がありましたらお願いしたいと思います。
  8. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま御指摘のありました石油臨時特別税、また法人臨時特別税については、今、政府税調党税調等で御審議をいただいておるところでありますけれども、これは委員指摘のように、昨年の湾岸危機という非常事態に対処するため、全くやむを得ず、ただし一年限りという隈時的、臨時的なものとして課せられた税でありますから、これは当然のことながら平成四年三月三十一日には終了するものと私は理解しております。
  9. 谷畑孝

    谷畑孝君 いずれにしても、これからは政府なりあるいは自民党税調を含めて、貢献資金という問題、それと基本的には八千億円の財源不足ということでもあるということですから、その点が一体どういうように経過していくのか、こういうことにあると思います。  そこで、宮澤総理に、この間の議論経過の中で、いわゆる官邸サイドとしてはこの点についてすぐれて一致をしているのか、それとも突然それを聞くような話になるのか、そのあたりのことを少しお聞きしたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 過般の所信表明でも申し上げたところでございますけれども、幸いにして冷戦後の時代の平和が来る。それを我々は大いに促進を期さなきゃいけないわけですが、そういう場面における我が国国際貢献の必要というのは非常に高まってまいりました。  昨年、湾岸戦争におきまして、我々が国連に対して財政的貢献をしたということは御承知のとお りでございますが、これからも国連役割が大きくなるであろう、したがって、これに対する我々のいろんな意味での貢献が大事である。その一つはただいま御審議願っております法案でもございますけれども財政的にもそうであり、国連がまずそうでございます。  それから、従来、国際貢献という形で我々はODAというものを御承知のようにやってまいりました。ところが、御承知のように、ODA適格受け入れ国というのは一人当たり国民所得が二千三百三十五ドルでございましたか、とにかく二千三百ドルぐらいの水準を一人当たり国民所得が超えますとODAの対象にならないという、そういう問題がございます。そういたしますと、これからの世界を考えてみますと、そういう発展途上国ばかりでない国にいろいろ我々が支援をしなければならないというケース、例えばソ連の場合もそうかもしれません、あるいは東欧諸国にもそういう国がございます。ですから、どうもODAだけではなかなかやっていけないという問題がございますことは御承知のとおりでございます。  それからもう一つ、こういう平和になってまいりますと、いわゆる地球的規模の問題あるいは宇宙的な問題というものも、これは主として先進国でございましょうけれども、共同でいろいろ探求しなきゃならない問題がございます。それは例えば環境問題なんかもその一つでございますけれども宇宙科学であるとかあるいは医療であるとか、そういったようなかなり基礎に関する部分について先進国として各国一緒になっていろいろしなきゃならない部分がある。これも今までの考えの中にはなかなが入ってきにくい国際貢献部分であろうと思います。  それらをすべて今後展望して、意味あることであると考えておるわけでございますので、そういうための財政的な準備というのはやはりいつかしておかなければならないということを湾岸危機のときにも痛感をいたしましたが、ただいま申しましたようなもっと幅広い、将来にわたっての我が国国際貢献の問題として考えていくことは大事なことであろう。したがって、問題の発想はそういうところから出たわけでございます。  それは、よく理解ができるし、大切なことでございますけれども、そういう問題と、この際、実はどの観点からも我が国財政は容易ではない今年度、先般税収の減額補正もしていただいたような状況である。来年度の財政も容易なことではないという状況、そういう中で、そういう新しい今我々が面しております国際的な貢献必要性と、それを国民理解していただいて、そのためにいろいろ支出をしてもらわなければならないそういう状況の中で、必ずしも今の財政国民負担、決して楽な状況ではない。そういう中からどういう答えが出せるかということを党の方、また私ども関係閣僚一緒に検討をしてまいった。  大体そういう経緯でございまして、今日の段階になりまして党の税制調査会が中心になりまして、この与えられた環境の中でどういうことが可能であるか、将来に向かってどういう展望を持つかということを今検討しているというのが大体の経緯でございます。
  11. 谷畑孝

    谷畑孝君 私思いますのは、せっかく湾岸戦争後、いわゆる協力法案、今回の法案も含めて衆議院でこれは三回議論をしてまいった。相当長い時間かかって議論をしてきておる。そういうことの中で、国民世論の中においても、やはり国際貢献をしなきゃならぬという機運も非常に急速に実は高まってきておるんじゃないか。例えば、郵便貯金の金利の何%をひとつボランティアにということになりますと、私どもの知っている多くの奥さん方貯金をしたと本当に誇らしげに語っておるということを聞いても、非常に私どももうれしく思うわけなんです。  ところが、国際貢献税ということで突如として自民党の三役さん等がやっていこうと。あるいはもう少しそのことを聞いていきますと、来年の正月にアメリカのブッシュ大統領が来日をする。PKO法案も今国会にはなかなか決着がつかない。継続ないし廃案だと。私も廃案と思っておるわけでありますが、こういう状況の中で、会談の中でのブッシュ大統領への土産というのか、そういう形の中で貢献税の問題が出てきた。こういうところに私は貢献あり方自身に何か冷や水をかけられたような実は感じがするわけであります。  もう少し言うならば、この一年近く議論をしてきて一番の大きな問題は、やはり自衛隊海外派遣する、これは日本憲法に抵触するわけでありまして、これがなければもっと早いこと国際に対する貢献をしていく法案が成立をしていて、しかもその法案作成過程の中で貢献税の問題も国民が納得すれば出そうじゃないかと、当然そういうようなプロセスがあってしかるべきだ。だから、湾岸戦争から後の協力法案も、これも自衛隊海外に出すという前提だったがために国民世論を二分してしまって、そして廃案になってしまった。今回もまた同じことをしておる。ここに私自身の怒りといいましょうか、少し納得できない問題がある、こういうことであるわけでございます。  そこで、実はこのPKO法案継続ということに決まってきたときに、さまざまの新聞の主張で、宮澤総理にとっての失点と、こういう記事がたくさんあったわけですけれども、考えれば、宮澤総理だからこそ、本格政権だからこそ、このPKO法案もむしろ国民立場に立って継続ないしは腹の底には廃案も含めて考えたんじゃないかということで、相当僕は高く評価をしておるわけでありまして、その点ひとつ宮澤総理、私の意見に対する所感をお願いしたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私にとっては思いも設けぬことでございまして、るる申し上げておりますように、やはり昨年の湾岸危機に際しまして、日本は何をしなければならないかということを随分外国からも議論がございましたけれども、これは外国がどう言おうと我々が考えることでございますが、議論があって財政的な貢献はした。しかし、それだけではやっぱり済まないのだろうなという国民的な議論があり、そうかといって、我が国憲法がございますから、できないことがある。それは外国にはっきりわかってもらっておかなきゃなりませんが、できないことがあるのならば、それならばできる範囲のことはやっぱり最大限人的貢献もしなければならぬのじゃないか、こういうのが私は大体の国民世論であったと思いますし、たまたま自衛隊掃海艇が機雷の除去に参りまして、これは多くの国民がよしとされたところであったと思うのでございますけれども、そういう意味において、我々の人的貢献というものをこういう法案でできる限度においてやはりすべきではないかというのが、これは私も真実そう思います。  そういたしませんと、日本海外武力行使をすることはできないという、そのことをはっきりさせておきますためには、それならば何がどこまでできるのかということもやっぱりはっきりしておく必要があるというふうに私は常に考えておりますものですから、この法案はぜひともひとつ実現をさせていただきたいと考えておるものでございます。
  13. 谷畑孝

    谷畑孝君 私、先ほど言いましたように、やはり国民世論なりあるいは憲法という立場から考えましても、即刻にしてまとまる法案というのは、自衛隊海外に出さなくて、日本経済大国、そして非軍事文民民生、こういう形の中での貢献の道がもっとあるんじゃないか、こういうことをさらに確信しておるわけでありまして、そういう立場の中で、まずそこから法案をつくり上げて、そしてならしていく中で貢献あり方がさらに奥が深くなっていくのではないか、そんなことを実は思っているわけであります。  そこで、私ども関係からいわゆる対抗案ということの中で発議をしておるわけでありますけれども野田議員の方からもう少しそういう点、私と総理とのやりとりの中から、貢献資金という問題も含めて少し意見をお伺いしたい、こういうように思います。
  14. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 私は、今日本国際貢献あり方について考える場合に一つ考えなければならないのは、国連憲章の中では依然として敵国条項というのが生きているということでありまして、五十三条、七十七条、百七条と三カ所も敵国条項が今日でも厳然として生きている。つまり、これは戦後四十六年を経過しても今なお日本やドイツ、イタリーなどは第二次世界大戦のときと同じ扱いを国連憲章の上では受けている、こういうことを示しているわけでありまして、以降日本が、今日国連分担金世界で二番目の分担をしている、あるいはまた経済援助についても、世界で二番目の経済援助を行っている。しかし、金だけ出してもなかなか免罪符をもらえない。政府もいろいろ関係各国に向けて国連憲章からの削除を求めているようでありますけれども、まだ依然として敵国条項が生きている。  それで私は、今度のここ一週間ばかりの国際貢献資金国際貢献税をめぐる政府自民党やりとりについても、やはり国際貢献の人的な法案がだめになったらまた金を出してという発想があるのじゃないかと思うんですが、私は、金さえ出せば国際的に日本立場が信頼を回復して敵国条項が削除されるということではないということを考えなければならないと思うのです。やはり日本が平和に徹して、国際的な貢献についてもいまだにアジア各国から懸念を持たれている武装した自衛隊は出さない、そして人的な貢献は非軍事民生文民、この原則に徹して進めていく、このことによって初めて国際的な貢献も、そして世界での日本国連の中における敵国条項の扱いなどについても正されていくんじゃないか、こういうふうに考えているところです。
  15. 谷畑孝

    谷畑孝君 どうもありがとうございました。  少し貢献税のところで時間をとりましたので、次にPKO法案の問題について入ってまいりたい、こういうように思います。  この委員会は、国際平和への貢献、こういう非常に崇高な課題を討議しているわけでありますけれども、しかしこの間の論議を通じまして私が思うことは、非常に重要な前提を欠いた議論がされているのではないかな、そんなことを思っているわけであります。私は、本会議におきまして宮澤総理に、総裁に立候補するに当たっての著書について代表質問の中で質問をさせてもらったわけでございます。それも私の今の発言にもかかわっておるところでございます。  また、過日私どもの矢田部委員との質問のやりとりの中で工藤法制局長官が、武器の使用と武力の行使のところで山賊、匪賊、そういう答弁が出てきたわけです。私は戦後生まれでして、山賊、匪賊というのは正直な話、知らなかったわけです。後で聞きまして、ああなるほどということで、後でまたそのところについて教科書を取り出したり本を見たりしてきたところなんですけれども、そういうような答弁が出てくるということなんです。それとまた、池田前防衛庁長官が、妥協して法案をつくれば奇形児を生み、将来大変なことになるというこの奇形児。私は障害者団体の問題だとかさまざまな取り組みの中でこの奇形児というものについては非常に心痛む言葉になるんですけれども、この法案作成過程において奇形児を生むんだと、こういうような発言がある。  一方では国際貢献という崇高なるものの論議をしながら、その前提としてそういう発言がされていく、こういうことについては私はやはり非常に重大な疑問があるのではないか、こういうことを実は思うわけであります。  それはどういうことかと申しますと、やはり日本アジアに対する侵略の歴史、その中でアジア諸国の民族を抑圧し、人権に対する重大な罪を犯してきたというこの事実、そうした歴史への認識が全く欠落をしている。そういうところからやっぱり出てきておるんじゃないか。単なる言葉の問題じゃなくて、その持っている意味はそういうことを意味しておるのではないか、そういうことを言わざるを得ないのではないか、このように思うわけであります。そういう認識を欠落させた中で、本当に日本国際貢献、平和貢献を語れるのかどうかというふうに私は思います。  そこで、国際平和の実現ということの中でなぜそんなことを再度くどくど私が語るのかといいますと、最近の国際紛争というのはやはり民族間の対立が非常に多いと思うんですね。  例えば、ソ連邦の崩壊ということもあるんです。私も過日モスクワを訪れたときに、ロシア共和国の中に少数民族の代表の国会議員さんがたくさんおられますが、そのときに、たまたま私どもの顔が一緒だということでブリヤートの自治区から来られた国会議員皆さんがぜひお話をしたいということで、もう本当に熱心に宿舎で朝昼晩と私ども会談を実は求められたわけであります。よくお話を聞いておりましたら、ロシア共和国の中でもアジアですね、こういう少数民族の国会議員団を含めてぜひ日本国会議員団との交流を持ちたいんだ、できたらそういうシンポジウムをしたいんだと、こういうことがその間二、三日、私ども朝夕会談を求められた中身だったわけなんですね。  と申しますのは、ソ連邦の崩壊に基づいて、ソ連邦の中においてもたくさんの少数民族がありますから、そこの問題というものは、これまた今後ロシア共和国だってまた将来そういう問題が大きく発生をするというのか、トラブっていくというのか、そういう危険性は僕はあると思うのです。  今日、そういうことを考えますと、国際貢献ということで結局私どもが避けて通れないのは、世界のさまざまの人種、そしてさまざまの民族、そういう人たち自分たちの歴史を持ち文化を持っている、そしてそれは我々とまた違うけれども、そこをお互いに認めながら共生じていくんだという、こういうヒューマニズム的なものがなければなかなか紛争というものの具体的な掘り下げと解決ができないんじゃないか。例えばユーゴだって、なぜああいうふうになっておるのかということは、よく深くそのあたりを洞察しないとなかなかわからない問題があると思いますね。その点について私は考えておるわけでありまして、その前提の中で、総理の発言なりあるいは工藤法制局長官のそういうような発言も、私はやはりいかがなものかと、そういうことを実は申し上げているわけであります。  そこで、本会議でも質問をしたわけでありますけれども総理、第三国人とかを含めての問題、そして私が今民族間における問題だとかそういうことの中でお話をしたわけでありますけれども、そのことについての基本的な認識で結構でございますから、お答えを願いたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的にはただいま御指摘になられましたとおりであると思っております。我が国が過去における行為によってアジア・太平洋を初めとする関係地域の人々に多大な苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚しておりますし、そういうことを繰り返さないことを決心いたしております。この点は谷畑委員の御指摘のとおりでございます。  それで、先般の法制局長官の発言は、長官自身がこの場で取り消しをされましたように、いわゆる私的団体の、何と申しますか、暴力と申しますか、そういうことを言おうとされたのですが、その言葉は非常にわかりにくいものですから、それをややわかりやすいような表現を用いられたことが誤解を生むということで、長官が取り消されました。その点は御了承をお願いいたしたいと思います。  それから、私自身につきましては、これは昭和二十五年でございます。二十五年ごろに大変に我が国の治安が乱れまして、当時第三国人という言葉が使われておりまして、それに警察がなかなか丸腰で手が出なく、その結果米軍に治安の維持を頼んでおったという状況につきましてこの本に書きましたのでございますけれども、読者から御指摘がありまして、第三国人というのは、これは差別用語であると。調べてみましたらそのとおりでございました。当時、実はこれ以外の言葉がな かったものでございますからそういうふうに使いましたが、今そういうことは許されることではありませんので、私の著書の第四版からこの点を改訂いたしました。第四版はもう出ておりますが、御指摘の点は削除をいたしました。おわびを申し上げます。  我が国のそういう問題についての認識につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。
  17. 谷畑孝

    谷畑孝君 その件については、少し、また後で意見交換なり議論を深めてまいりたい、このようにも思っておるわけでありますけれども、私が言いたいのは、国際貢献ということ、それと世界のこれからの紛争、さまざまな問題というのは、どうしてもやっぱりそういう民族間の対立というのがこれから大きな柱になってくるんじゃないか。だから、私どももやはり島国で生まれている関係上、どうしてもそういう点については弱いところが、これは私も含めてあるわけなんで、そこらの点の基本認識ということで実は質問をさせてもらったわけであります。  そこで、皆さん方、多くの先輩諸氏に対しましてこういう質問をするのも非常に愚問だとも思っているわけでありますが、国際貢献なりあるいは国際社会を語るにおいては、世界人権宣言というものが採択された、こういうことのやはり歴史的な意味というのは非常に大きいと私は実は思っておるわけであります。第二次世界大戦が終結をして、国際連合が組織をされて、そして一九四八年、国連の第三回総会でこの世界人権宣言が採択をされた。この宣言は、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」。ここでは、人権あるいは個人の尊厳という問題と平和という問題が不可分の問題である、こういうように宣言をしておると思うんですけれども、数多い国連決議の中でもこの決議が最初に行われた理由はそういうことだというふうに私は実は思っているわけであります。  そういうことの重要性と認識、これはもう世界通、国連通の宮澤総理は当然のことだと思いますけれども、そういう認識でいいでしょうか。ひとつこの点について、外務大臣。
  18. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そういう認識、そのとおりだと存じます。
  19. 谷畑孝

    谷畑孝君 この点についても、私ども発議者である堂本さんの方から、とりわけODAを含めて世界への貢献あり方とかいうことで世界を回っておられますし、その点を少し、意見がありましたらお聞きしたいと思います。
  20. 堂本暁子

    委員以外の議員(堂本暁子君) 社会党の平和協力活動等に関する法案発議者でございます堂本暁子です。  十二月八日にテレビを通して、日中戦争そして太平洋戦争のさまざまなフィルムがたくさん放送されました。余りに悲惨な映像を見て、思わず同じ日本人として、半世紀を経ても目を覆いたくなるようなシーンも多々ございました。戦争ほど人間の尊厳を損ない、そして人権が侵害されるものはないことを改めて再認識せざるを得ませんでした。特に、同じ女性としては、朝鮮半島から強制連行された従軍慰安婦の映像も大変に悲惨で、心痛むものでございました。戦後三年たって、一九四八年に国連総会で世界人権宣言が採択されたのは、そういう意味合いでも当然の帰結であったのではないかと改めて思った次第です。  地球上のすべての人間の権利として、人は生まれながらに自由で、かつその尊厳と権利が平等であるということ、これは余りにも当然なのですけれども、戦争という中でどれだけ大きな犠牲が強いられてきたことか。そして、先ほど総理は、そのことを自覚し、そして決心しているとおっしゃいました。恐らくすべての日本人はそうであろうと思いますけれども、その反省を私たちはきちんと表現し、そして行動にあらわし、精神的にも法律的にも物質的にもそのことを償っていくことについては怠ってきた部分が多かったのではないかということを改めて感じました。  一九八五年、ドイツのリヒャルト・フォン・ワイツゼッカー大統領の戦後四十年の演説は余りにも有名でございます。ゆうべももう一度読みましたけれども、有名な箇所ではないところに心打たれるところが多々ございました。  二、三短く読ませていただきたいんですけれども、  過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲  目となります。非人間的な行為を心に刻もうと  しない者は、またそうした危険に陥りやすいの  です。このことを今私は本当にもう一度自分自身にも言い聞かせたいと思いながら読みました。  さらに先日、文部大臣に対して、教育の中で日本はきちんと戦争のことを教えてないということの質問がありましたが、その点についてもワイツゼッカー大統領はこう述べています。   われわれ年長者は若者に対し、夢を実現する  義務は負っておりません。われわれの義務は誠  実さであります。そして、  ユートピア的な救済論に逃避したり一、道徳的に  傲慢不遜になったりすることなく、歴史の真実  を冷静かつ公平に見つめることができるよう、  若い人びとの助力をしたいと考えるのでありま  す。   人間は何をしかねないのか――これをわれわ  れは自らの歴史から学びますのでありますか  ら、われわれは今や別種の、よりよい人間に  なったなどと思い上がってはなりません。そして、   若い人たちは、たがいに敵対するのではか  く、たがいに手をとり合って生きていくことを  学んでいただきたい。   民主的に選ばれたわれわれ政治家にもこのこ  とを肝に銘じさせてくれる諸君であってほし  い。そして範を示してほしい。   自由を尊重しよう。   平和のために尽力しよう。   法を遵守しよう。   正義については内面の規範に従おう。と述べています。  これはやはり私は、人間の心の底からドイツ国民の声を大統領が述べた大変な名演説だと思います。ちょうど戦後五十年、総理にもぜひその自覚と決心を大きな声で述べていただきたかったという思いを、これを読んでいたしました。  PKOの責任者であるグールディンク氏に国連でお会いしたときに、国会の場で自分の言ったことは使わないでほしいとおっしゃったので、その信義は守りたいと思います。しかし、私が申し上げたことを言うことは許されると思います。  私が一番申し上げたことは、私どもは、平和のための貢献に何らちゅうちょしたいとは思っておりません、骨惜しみをしようとも思っておりません。なぜ今の政府法案に反対しているかといえば、それは憲法に違反するからです。そしてもう一つは、アジアにおける戦争の歴史を私たちは担っております。武装して出ていくことはこの歴史的な事情から大変難しいのですと、こういうことを申し上げました。  戦争によってのみ平和な生活が脅かされてはおりません。もっと、環境の破壊とか貧困とかによって今平和な生活が脅かされております。文民の非軍事民生の領域で貢献できることは多々あるとPKOの担当の方もおっしゃいました。まさにそういった人権の領域でこそ、日本思い切った、そして速やかな貢献をすべきだと今も信じてやみません。国際平和協力活動等に関する法律案はそういった趣旨と目的のもとにつくった法律案でございます。何千万ものアジアの人々の命を落とし、差別と虐殺が渦巻いた戦争の歴史を私ども日本人が持っている以上、ほかにどういう道を選ぶことができましょうか。一刻も早く合意を得てやはり貢献を実行したい、そういうふうに思っています。
  21. 谷畑孝

    谷畑孝君 非常に丁寧な御答弁で、本当にあり がとうございました。  もう一度話を戻しまして、宮澤総理、過日、この参議院でPKO特別委員会が一段落して、ちょうどその明くる明くる日は日曜日ということもありまして、パールハーバー五十年、そして柳条湖事件から六十年ということで各地で記念式典があったり、そういうようなシンポジウムがあったわけですけれども、私も地元の大阪に帰りまして幾つかのシンポジウムをずっと回ってまいりました。そのときに、多くの皆さんが実は語っておったわけでありますけれども、もちろんPKO法案が一番大きな話題になっています。  そのときに印象に残っておりますのは、在日韓国人の皆さんのシンポジウムにおける助言者といいましょうか、あるいはプロモーターといいましょうか、その発言というのが多くの皆さんに非常に強いものを訴えておりました。ちょうど従軍慰安婦さんの訴訟というものもありまして、そのことと関連しているということもあったわけであります。  そこで、その人が語ったのには、私どもは五十年でもない、六十年でもない、一九一〇年に日本が日韓併合ということ、韓国、朝鮮からいえば植民地とされてしまったんだ。だから、五十年とか六十年でなくて、本当にそういう意味では歴史が長いんだ、こういうことを実は語っていました。その中で、宮澤総理の第三国人の発言ということも少し触れられておったわけですけれども、その場合も、ただ単に言葉というだけじゃなくて、その言葉の持っている意味なんですね。  例えば、宮澤総理のこういう著書を見ておりますと、「それまで国内の治安は米軍と、丸腰にちかい日本の警察とがあたってきたのだが、第三国人の横暴などには手が出せず」云々と、こうなるんです。これは、一九二三年に関東大震災というものが起こりまして、大きな火事にもなり、多くの死者も出るということもありました。ちょうどそのときに在日韓国人がそれに乗じて暴動を起こす、こういうことが流言として言葉がさあっと走りまして、そういうことで当時の官憲なりあるいはいわゆる民間が組織した自警団といいましょうか、そういう人々によって約六千人の在日朝鮮人の皆さんが虐殺されたという歴史があるわけなんです。  これは、在日韓国人、朝鮮人の話をするに当たっては、必ずこれが一つの原点になるんです。これはもちろん民族に対する差別であり偏見であり、そういう治安を乱すということの事実ということを見るんじゃなくて、いわゆるうわさ、こういうことになるわけでありまして、特に第二次世界大戦が終わって、今総理がおっしゃった第三国人の問題もそういうことと軌を一にする発想になる。こういうことは在日韓国人、朝鮮人の皆さんにとってみたら、自分たちは侵略もされ植民地化もされ、それはやはり許せない、こういうことに実はなるのじゃないか、こう思うんです。  私自身も、実はこの問題につきましては、何も古くからかかわり知っているというわけじゃないんですけれども、たまたま私の大学時代の同級生が、幾ら大学を出ても勉強ができても、就職ができない、こういうことをお互いに語っておったことが、私にとってみたら初めての出会いといいましょうか、在日韓国人、朝鮮人問題の私自身にとって一つの契機になったことなんです。今その友達は、民闘連といいまして在日韓国人、朝鮮人の民主的なことを発展させるためのリーダーとして頑張っておるわけでありますけれども、その皆さんからいつも教えてもらっているわけなんです。  そこで、私もこの間、やっていることの中で幾つかの疑問を感じておるんですが、今から二十年前に住宅問題というのが一つ起こりました。それは、外国人については一切マンションだとかアパートを貸さない、こういうプラカードがつけられたり、そういうことが実は大阪で起こりまして、あるキリスト教徒の団体皆さんが、これは非常に大きな問題だと。大阪で生野、猪飼野というのは日本でも一番多く在日韓国人、朝鮮人の方が住んでおられるところなんですが、そういうことからいろいろと議論をしていきますと、公営住宅には在日韓国人、朝鮮人は当時入れない、実はそういうことがあったわけであります。  そういうことから、住宅入居の問題だとかあるいは就職、例えば郵便局にも外務員として入りたい、しかし入れない、こういうことがありまして、私どもは一生懸命にキリスト教の皆さんやそういう在日韓国人、朝鮮人の皆さん一緒になりまして郵便局もよく行きました。そういう中で外務員もようやく就職ができるようになってきたんです。そういう問題というのはたくさんあるわけなんですね。  過日、私どもの矢田部先生なりあるいは田先生の方からも戦後補償の問題ということで議論をされました。そして、確かにそれは国同士の話では決着はついておるということなんだけれども、しかし個人における請求権ということについては、これはまだ放置されておるんだ、こういうことでありました。そのとき、また外務大臣は、いやそれはもう財政の問題も皆さんに負担を願わなきゃならぬ問題で、これはもう大変な問題なんだと、こういうことも実はおっしゃいました。しかし、私が言いましたように、幾つかのそういう問題が大きな一つのネックになっておって、これがやはりアジアの多くの皆さん自衛隊海外派兵についても敏感に反応し、経済大国になった日本に対してもそういう反応が実はあるんだと。ここが非常に僕は大事な問題じゃないかと思うんです。  だから、ただ単に財政がこうだからということで木で鼻をくくったようなことでは、ごれはやっぱり解決できないんじゃないか。いつかはこの点をしっかりと見きわめて、私はこの国際貢献というところにいく必要があるんじゃないかと思うんです。  そこで、もう一度総理に、申しわけないんですが、第三国人というそういう言葉じゃなくて、さまざまな歴史を持ったそういう背景がそういう関東大震災のことも含めてあるのではないかということを私は思っておるわけでありまして、その点、しつこいようでございますけれども、ひとつ総理にお願いをいたしたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和二十五年というのは、我が国が敗戦しました後、まだかなり混乱をしている時代でございます。そのときに起こりましたことをここに叙述したのでございますけれども、それを今繰り返しますことは決して建設的な意味がないと思いますので、繰り返しをいたしません。  先ほども申しましたように、我が国が過去における行為によってアジア・太平洋を初めとする関係地域の方々に多大な苦痛と損害を与えたことは深く自覚をいたしておりますし、二度と繰り返さない決意をしておるというのが今日の我が国国民の一致した気持ちであると存じますし、政府もそう考えております。
  23. 谷畑孝

    谷畑孝君 ちょっと私自身としては納得しないわけですけれども、そういう言葉だけじゃなくて、歴史的な背景をやはり認識しながらとらえていただきたい、こういうことを再度申し上げておきたいと思います。  次に、もう一言外務大臣に。  先ほどの私へのお話の中で、国家間における戦後補償の問題について、国家間においては終わっておるんだ、しかし個人についての問題がある、しかしこれは財政上の問題は大変な負担を与える、こういうことを前回のときに外務大臣はおっしゃったわけでありますけれども、私はそういう問題も当然これはないとは言いません。それは当然大きな問題だと思います。しかし、それでも日本としてあるいは政治的な判断としてできる範囲の中だから、どのように前へ進んでいくかということが私どものこれからの国際貢献ということでは一つの通らなければならない、どうしても避けて通れない、そういうことじゃないかと思いますけれども、一言ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  24. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 戦争というものは非常に悲惨なことであって、こういうことを二度と繰り返してはいけないということは我々は心に誓っているわけです。  戦争の被害というものはどこの国でも大変な被害がある。しかし、それで国家間で平和条約といいますか講和条約を結ぶということになれば、何かでけじめをつけなきゃならぬということでございますから、そういう中にあって、いろんな紆余曲折があってそれぞれの国と講和条約が結ばれる。その相手国の中では、いろんな被害を受けた人は実際はたくさん私はいると思うんです。その人々と日本政府が個々に対応するということは、言うべくして不可能に近いわけであります。  したがいまして、一定の条件のもとで平和が回復いたしますと、それ以外の問題については、例えば韓国との日韓条約でも政府間においては、これはもう最終の決定ですということを取り決めているんです。個人の請求権問題について、それが裁判所に提訴されているということも承知をいたしております。これは裁判の結果を見なければならないということだろうと私は存じます。  国内においても、よく我々言われることは、軍人恩給の問題というのがあって、軍人が恩給をもらっている。おれは十年何カ月で恩給をもらわない、一年多ければもらって、一年足りない者は何でもらえないんだ、これは補償をしろとかという問題があります。というと、中にはまた東京の空爆等によって何万といったくさんの人が死んで、家を焼かれている。我々が戦争を起こしたわけじゃないんで、政府が起こしたんだからこれの補償をするべきじゃないかという議論のあることも事実でございます。  しかしながら、日本としては、決められたこと、軍人恩給のように戦前から約束事があったものについてはそれなりの約束を実行いたしておりますが、それ以外に広がっていくと、それは、国内の話を私はしているんですが、国外の問題も同じでありまして、結局旧植民地の問題について、政府間でもうこれで一応決着というものをこちらから拾い上げていって、それに個々に応ずるということは、これは人道的には非常にお気の毒なことはわかっておる、全部心の痛むことというのはわかっておりますが、これはどこかできちっと決まりをつけなきゃならぬわけですから、それについては応じられないということを言ってきておるわけでございます。
  25. 谷畑孝

    谷畑孝君 そういう木で鼻をくくったような答弁になってしまいますと、なかなかこれは進めない。全くこれは見解の相違で、やはりそこを、先ほどの経過の中でありますように、貢献ということは、まず通らなきゃならぬ道筋を通って貢献するということによってやはり多くの信頼が得られるのではないか。その信頼がまた日本の将来の経済活動あるいは文化活動、さまざまな活動において私は大いにプラスになっていくものだと、こういうふうに実は思っているわけであります。  いずれにしても、時間の関係がありますから、次のところに進めてまいりたいと思います。  法制局長官に一つお尋ねをしたいと思います。  過日の矢田部委員とのやりとりの中で、いわゆる山賊、匪賊という言葉が出てきたわけであります。いろいろな大臣に聞いたわけですが、法制局長官、もう一度とういうことなのか教えていただきたいと思います。私は戦後生まれでわからないことで、ひとつ教えていただきたいと思います。
  26. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  過日、十二月五日でございましたか、私がそのような言葉を使いまして、翌日、十二月六日に御指摘を受け、私はそこで訂正をさせていただきました。  使いました趣旨と申しますのは、先ほど総理からも御答弁ございましたように、いわゆる憲法で禁じられております武力の行使、それから武力の行使の概念というものにつきましてのお尋ねがございました際に、仮定の例ではありますけれどもという前提を置きまして申し上げたことでございまして、私は、私的な集団あるいは個人、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。その趣旨を御理解いただきたいと存じます。
  27. 谷畑孝

    谷畑孝君 いや長官、私が聞いているのは、山賊、匪賊というのはどういう意味なのか、あるいは自分はそういう考え方とか意味があるからこの言葉を――もちろん訂正されましたけれども、使ったことは事実なんで、これはもう速記を見たってわかるように使っているわけですね。そういう意味長官、ひとつお答えを願いたいと思います。答えてください。
  28. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 私が使いました趣旨と申しますのは先ほどお答えしたとおりでございまして、いわゆる武力の行使という概念につきましてのお尋ねがございました。そういう意味で、いわゆる私的な集団あるいは個人、こういうものに対しての問題については、従来の武力の行使、これが定義されておりますのは「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、こういうふうに定義されております。そういう意味での関連において申し上げたところでございました。  なお、山賊、匪賊の意味というのを辞書で必ずしも悉皆的に私は引いたわけではございませんが、それぞれの辞書に定義と申しますか、解説は書いてあるところでございます。
  29. 谷畑孝

    谷畑孝君 山賊、匪賊というのは、長官日本でしかこれは使われてない言葉でしょう。しかも、一定程度の期間の中で使われた言葉であると思うんですね。もう私ども、山賊、匪賊と言われてほんま正直な話知らなかったです。山賊というのは、よく歌に出てくるような、山に住んでいるああいう普通我々が思うイメージの山賊とか、匪賊というのはそれの親戚かいなと思うぐらいの程度で、正直な話ほんまに知らないわけなんですよね。  しかし、長官自身はそのことについてよく知っているがゆえにその表現の一つの方法としてそれを使ったわけであって、そのことについてもう少し私どもにわかるようにその言葉の定義を教えていただきたいと私は言っておるんです。私は一足す一で二を求めているのに、あなたは二足す二は四だと言っておるんです。このようなすれ違いの言葉を私は求めておるわけじゃないんです。長官、まじめにひとつ答えていただきたいと思います。
  30. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) ただいまお答え申し上げましたように、私は辞書を全部悉皆的に調べているわけではございませんが、そういう意味で一、二の例を申し上げますと、例えば広辞苑におきましては、山賊というのは「山中に根拠を構える盗賊」というふうにございます。あるいは匪賊というのは「徒党を組んで出没し、殺人・掠奪を事とする盗賊」というふうなことがございます。  私、この前も申し上げたところでございますが、いわゆる人道的な意味で、人権あるいは差別ということで決して申し上げたわけではございません。これは十二月六日にも申し上げているところでございます。
  31. 谷畑孝

    谷畑孝君 長官、それはちょっと、そんな答えでは少し失礼だと私は思うんですよ。先ほど言いましたように、私もその発言のやりとりが終わってからすぐ歴史の本を取りそろえて、それを調べたりいろいろしてまいりました。この山賊、匪賊というのは、やはり日本が満州に、中国に対する侵略をしていくに当たっての、そのときにおいて使われた言葉である。そういうときには山賊、匪賊という言葉は使われましたか。それをちょっと長官、どうですか、私が言っていることについては、使われたか使われてないかだけひとつお答えを願いたいと思います。
  32. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 工藤長官、戦後生まれの方によくわかるように説明してください。
  33. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  まず、私先ほど申し上げましたように、決して特別の意味を持たせましてここで申し上げたつもりはございません。そういう意味で、いわゆる先日の十二月五日の答弁におきまして、私は、「全 く仮定の問題を申し上げるのはいかがかと思いますが、例えば相手方によりましては」と、こういうふうなことで武力の行使に当たる場合当たらない場合、これを憲法の観点から御質問があったときにお答えをしたところでございまして、それを十二月六日に不適当を言葉であるという御指摘をいただきました。確かに、とりようによってはと申しますか、過去の時点におきましてそのような使われ方がなかったとは私も考えませんでしたので、そういうことで不適当であるという意味で訂正させていただいたわけでございます。  なお、辞典におきましてそのような観点のものを――引いた辞書は極めて少ないわけでございますが、例えば、先ほども申し上げました広辞苑とか類語辞典とかあるいは三省堂国語辞典とかいうふうなものを引いてまいりますと、そのようなといいますか、御指摘を受けたような戦前の使い方というのは出てまいりませんでした。
  34. 谷畑孝

    谷畑孝君 長官、言葉というのは、やっぱり山賊、匪賊というその言葉が、いろいろ矢田部委員とのやりとりの中で、使ってきた言葉の中で生きているがゆえに、その言葉を語れば皆ああとわかるという、生きているがゆえにその言葉を使うわけでしょう。その言葉を語ると、特に戦中を含めて青年時代を送られた皆さん方にとってみたら、ああこうだということがあるからこの言葉を使うんじゃないんですか。そこを長官自身はそらしてしまっているんですよ。  私は、この問題は非常に大事な意味を持っていると思うんですよ。このPKO議論に対しても非常に大事な意味を持っていると思うんですよ。なぜかといいますと、長官自身がもうこの問題については避けて答えないということについて、私も本当にこれ憤りを実は感じるわけなんですがね。  私がその歴史をひもときましたならば、先ほども言いましたように、柳条湖襲撃事件から六十年、こういうことであるということなんです。これは、一九三一年の南満州鉄道の奉天北方の柳条湖で日本の関東軍が線路に爆薬を仕掛け、鉄道を少し傷めて、そして関東軍はこれを中国側のしたことだとして侵略戦争を開始し、満州全体を占領していった、こういうことなのです。  そこで問題は、日本の軍隊が鉄砲を持ち、長靴を履いて海を渡って、そして関東軍という形の中で爆薬を仕掛けて、それを中国人が仕掛けたということでいわゆる攻撃をした。こういうことから侵略が実は始まっていったんですよ。これが六十年前ですね。長官、この柳条湖事件というのはどうですか、そういうことなんですか。
  35. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 柳条湖事件についての正確な史実と申しますか、それについては私正確にお答えする知識がございません。そういう意味ではお許しいただきたいと思います。
  36. 谷畑孝

    谷畑孝君 委員長、いずれにしても山賊、匪賊の問題についての言葉というのは、やはり自分なりに辞書を引かなくてもそれなりのイメージがあるからこの言葉を使うわけでして、しかもこれは武器の使用、そして武力の行使ということに伴ってくるときの発言ですから、しかもこれは憲法に許されておるんだということで、訂正をして私的集団と、こういうふうに言ったんです。しかし、その引用としてそういうことで使われているということにおいて、中国と日本との関係、私は歴史をもう一回ひもといてさかのぼらなきゃならない大事な問題だと思うので、委員長、ぜひきっちりと答えていただけるようにひとつ指示をしていただきたいと思います。そうでなかったら、私はこのままでは納得できません。
  37. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまの質問は、いろいろな角度からの疑義を提示しておられます。それらの問題についてより的確に、かつ詳細に御説明願います。
  38. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  まず、事の今回の経緯でございますが、十二月五日に矢田部委員から御質問をいただきました。それにおきまして、憲法上問題があるのか、それからPKO法案でどうなるのか、こういう一連の御質問の中でございまして、そういうときに、「例えば相手方によりましては、山賊、匪賊のたぐいのときに何かありましても」というふうなことで引用したわけでございます。これにつきましては、私は、いわゆる憲法におきます武力の行使、こういう観念につきまして我が国のいわゆる物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為、こういう観点から申し上げまして武器の使用がすべて憲法の禁止する武力の行使に当たらない、こういうお答えをしたわけでございますが、そういう観点におきまして、いわゆる私的な集団または個人という部分をそのような用語を用いて御説明したということでございまして、それにつきましては不適当であるということで十二月六日にこれを訂正させていただいたわけでございます。なお、その段階におきまして、決してそれが人道的な意味あるいは人権とか命の差別とか、そういうことで申し上げたわけではございません。  それからもう一点申し上げますと、PKO法案におきましては、いわゆるPKO、平和維持活動に対しましての協力というものにつきましては、決して武力の行使を目的として参るものではございませんし、法案の二十四条におきましても、自衛官がその要員の生命等の防護のためにのみ武器を使用できるということになっておりまして、委員指摘のようなそのようなものを、例えば撃っために海外に行くとかそういう任務がもちろんあるわけではございませんし、さらにまた、現地でおりますときも、あくまでも隊員の生命等の防護のためにのみ使用できる、こういうことでございますので、そういう意味で、私が申し上げた趣旨は全体としてそういうことでございます。
  39. 谷畑孝

    谷畑孝君 いや、長官、全く答えてないんですよ。  それで、いずれにしても、私ども発議者である角田議員の方から、私自身も戦争の経験もないので、その点について少し意見がありましたら答えていただきたいと思います。
  40. 角田義一

    委員以外の議員(角田義一君) 谷畑先生の御質問に答えたいと思います。  今、法制局長官が述べられておりますことについて、要するに、法制局長官は私的集団であれば部隊としての武器使用は許される、指揮もしてよい、これは憲法の禁ずる武力行使に当たらない、こういうふうに答弁をされておるわけでありますが、その義賊とか匪賊なんというえらい時代錯誤的な言葉はさておきまして、ここで言う私的集団というのは、今日的用語で言うならば恐らくゲリラあるいは非正規軍ということになろうかと思います。  そうなりますと、その集団が私的集団であるのかないのかというのはどういう基準でだれが一体判断をするのかという問題が当然起こるわけでありまして、しかも、平和維持軍が出ているというところは事態が非常に緊迫をしておるわけですよ。そうなりますと、例えば夜襲があるということも考えられるわけです、現場は。そのときに一体(「考えられない」と呼ぶ者あり)考えられないなんというめちゃくちゃなことを言っている人がいるが、とんでもない。現場はそういう緊迫をした情勢にある。そのときに、日本から行った自衛隊が私的集団であると認識をして発砲しても憲法上何の疑義も生じないということになるわけでしょう。それは大変な問題なんでありまして、要するに、こちら側の認識いかんによって憲法違反になったりならなかったりというような憲法解釈が許されるはずはないというふうに私は思っておるのであります。  なぜこういう無理な解釈を通そうとするか。これは要するに、平和維持軍というものの本質をちゃんと政府はわかっておりながら、これをごまかそうとするわけですよ。現に今までの憲法解釈では、平和維持軍には参加できない、憲法上疑義があると言ってきた。それは当然なんです。それは、いわば平和維持軍はいつもやはり武力を使わなきゃならぬ、そういう局面に直面をするのであります。そのときに日本自衛隊だけが業務を中 断するとかあるいは撤退するとかというような、いわば仁義なき中断とか仁義なき撤退なんということが許されるはずないんです。そういうものは国連自身が歓迎しないんですよ。そこに割って入って送ろうとするから、憲法違反をあえて犯してまで出そうとするから問題が起きるんです。  したがって、私が申し上げたいのは、国連が持っておるこの武力行使についての文書を見れば、いわば平和維持軍を出すということが日本憲法に明白に違反するということがはっきりするんです。だから、文書を出すべきだと我々は思っておりますし、先生もそうだと思うんです。  以上です。
  41. 谷畑孝

    谷畑孝君 どうもありがとうございました。  長官、いずれにしてもきっちりと山賊、匪賊という問題についても定義も教えていただけないし、しかも私的集団と、こういうことで承知をしておるわけなんですが、はっきり私、これだけは自分なりでまとめて、その私的集団の問題について今発言をしていきたいわけです。  先ほども言いましたように、六十年前に私どもの先輩である日本の軍隊が鉄砲を持ち、そして中国の大陸に侵略したこと、これは歴史として私はやはり認めなきゃならぬ事実だと思う。しかも、他の国に行って他の民族の皆さんをいわゆる侵略していくわけですから、だから当然そこにはトラブルが起こりますし、民族に対する、やはり祖国愛ということで、その中から抗日の私的集団の皆さんを含めて戦っていく。当然だと私は思うんですけれども、そういう人たちが大きくなりまして今日の中国の政府を現在担っておるということであります。だから、それを例に出しながら、しかもそれを鉄砲で撃ってもいいんだと、憲法は認めておるんだということを長官は言ったわけなんです。  私がここで言いたいのは、国際貢献を今これ語っておって、しかも日本は平和憲法をもって平和的に貢献するんだと。特に今、アジアの近隣諸国の懸念の問題について、一番今我々が神経を使い、しかも歴史的認識を持ってやらなきゃならぬ、そういう立場でこの法案憲法に抵触するかしないかという、護民官でしょう、まあ言うたら。違いますか、長官。あなたはそういうことをしっかりと守っていかなきゃならぬ。あなたは憲法を守っていかなきゃならぬ長官でしょう。その長官がそういう認識の中で山賊、匪賊を使ったのが私はけしからぬと。言葉じゃないんです。その歴史認識を私は今あなたに問題提起をしておるんです。しかもあなたはそれを答えてくれないということなんです。  その点、どうなんですか、長官、もう同じこと言うたって同じことしか答えてくれないんでは、本当はどうですか、もう一回やっていただけますか、そのあたりちゃんとひとつ。
  42. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) それでは、ただいまの谷畑委員の質問は、特に大きく分けますと、一つは、今の山賊、匪賊の問題の解釈あるいは歴史的背景等に対する認識の問題、それからもう一点は、その懸念される憲法上の問題についてそれが法的にどう解釈されるか、この二点でありますので、これをわかりやすく説明していただきたい。
  43. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  まず、山賊、匪賊ということの意味と申しますか、それにつきましては先ほどもお答えしたところでございますし、私自身、決して過去の、例えば戦前のと申しますか戦中のといいますか、そういったときのことを念頭に置いたわけではございませんで、一般に私的な集団、個人、こういう意味で申し上げたわけでございます。  それから第二に、憲法との関係あるいはPKO法案との関係でございますが、憲法の禁じております武力の行使、これにつきまして、いわゆる「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、こういうふうに申し上げまして、そうして武器の使用がすべて憲法の禁止する武力の行使には当たらない、こういう脈絡の中で申し上げたわけでございます。  それから、いわゆるPKO法案におきます二十四条との関係、これはぜひ区別して御理解いただきたいというふうに申し上げた上で、PKO法案の二十四条三項だけで申し上げれば、「自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくは隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要がある」、こういう場合に武器の使用ができるということでございまして、自衛隊の部隊が確かに部隊として出てまいりますし、必要最小限度の範囲で武器を持ってまいりますが、それがいわゆる戦前の侵略といったようなそういう任務を帯びて、あるいはそういうことを考えて出てまいりますわけでは決してございません。  PKO法案といいますのは、当然のこと、もう委員承知のとおり、いわゆる三条等で与えられた定義に従いまして出てまいりますわけでございます。その出ていった場合に、先ほど非常に危険なところだ、こういう御指摘もございましたが、そういうときに全く自己の生命等の防護のためにのみ武器を使える、そういう意味で、いわゆる憲法PKO法案との間には、この前はたしか謙抑的という言葉を三、四回使わせていただきましたが、いわゆる憲法九条に当たらないような形で、しかも謙抑的にそういう二十四条を構成した。  これが先日矢田部委員にお答えしたところの私の真意でございます。ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  44. 谷畑孝

    谷畑孝君 そうしたら長官、この私的集団とは一体何なんですか。これちょっと教えてください。ようわかりません。隊員がこれ憲法に違反しないと言ったんですよ、撃ってもいいと言ったんですよ。その点、私。的集団とは一体どういうことなのか、もう一回、武力行使をしてもいいというこの私的集団について教えてください。
  45. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 今までの議論やりとりの中で、やはりまだ委員の御質問の続きが、私的集団の性格並びに私的集団が本法律案とどういう関係になっているか、そこらの解明がまだわかりにくいという御質問だと、このように解釈いたしますので、その点を工藤法制局長官に御説明願いたい。
  46. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 繰り返しになりまして恐縮でございますが、私的集団と申しますのは、いわゆる憲法九条一項が武力の行使、これを禁じているわけでございますが、そういう意味におきまして、それの対象とならない、武力の行使というのは国際的な武力紛争の一環と、こういう形で申し上げております。したがいまして、そういう国内問題にとどまらないそういう紛争の相手方、そういうものでいわゆる公的なものでない、こういう複数の者たち、こういうことでございます。
  47. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 法制局長官、ただいまの私的集団の具体的な説明がやや欠ける面があるかと思います。要するにわかりやすく御説明願いたいと思います。
  48. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。一先日挙げました例が不適当でございますが、その次の日でございましたか、例えば泥棒の集団、泥棒と申しましたか、そういうふうなことでございまして、いわゆる公のものでない、こういう意味でございます。
  49. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  50. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。  午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  51. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案を議題といたします。  この際、工藤内閣法制局長官から発言を求められておりますので、これを許します。工藤内閣法制局長官
  52. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  先ほど午前中の御質問に対しまして、次のようにお答えしたいと存じます。  まず、憲法の話でございますが、憲法九条は武力の行使あるいは武力による威嚇を禁止しております。武力の行使は、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」をいう、ということでございます。その場合の紛争当事者に当たらないものとして私的な集団または個人という言葉を用いたわけでございます。  私的な集団という場合の例示としては、強盗団がその例であると考えられます。また、当該集団が地域なり住民を一定の範囲で支配している、あるいは支配を目指している、かような場合には私的集団とは言い得ない場合があろうと、かように考えます。  今のは憲法の話でございますが、他方、PKO法案におきましては、その二十四条におきまして、武器の使用の範囲を限定しておりますが、これは、身体、生命が危険にさらされた場合に、相手方が確定し得ないという事情、特殊な事情のあることを考慮いたしまして謙抑的に、自然権的権利と考えられる範囲に使用範囲を限定したものでございます。  したがいまして、PKO法案におきましては、私的な集団といったとらえ方を問題にする局面はないものと考えております。  以上でございます。
  53. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これより三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  54. 谷畑孝

    谷畑孝君 今の長官の回答については私自身納得をしかねるわけでございます。ぜひ理事会の協議を求めたい、このように思いますので、委員長、よろしくお願いします。
  55. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本件の取り扱いにつきましては、後刻協議をさせていただきます。
  56. 谷畑孝

    谷畑孝君 このことについては質問を留保して、次に進みたいと思います。  外務大臣にお尋ねいたします。  これは衆議院でも議論になってきたところでございますけれども、このPKO法案審議当たりましては、どうしてもやはり平和維持軍そのものを規定する一番大きな重要な資料でもございますSOPの資料の提出について、衆議院と同じく参議院におきましても理事会を通じて資料の提出を要求しておるところでございます。それがどのようになっておるか、少しお聞きをしたいと思います。
  57. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) SOPの資料の提出につきましては、国連との約束がございまして資料そのものは提出することはできません。しかしながら、その中身等についてはそれはお話をいたしますという同じ取り扱いにさせていただきたいと存じます。
  58. 谷畑孝

    谷畑孝君 PKFへの自衛隊の部隊ごとの参加ということでございますから、どうしても国連平和維持軍の実際の取り決めとかあるいは運用を見なければ審議がやはりできない、このように思うわけでございます。その点についてはどうでしょうか。もう一回大臣、ひとつお願いします。
  59. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは手続上の問題でございまして、国連との約束でそれは公の席に出さないということになっておるんですが、議員の中には、公然の秘密みたいなもので実際は中身をわかっている方もおるようで、(「新聞に載っている」と呼ぶ者あり)だから公然の秘密みたいなもので、(「だれでも知っている」と呼ぶ者あり)だれでも知っている、だれでもはどうか知りませんが、知っている人もあるかもしれません。ただ、国連との約束で公式には出さないという約束だから出さないと言っているだけであります。
  60. 谷畑孝

    谷畑孝君 国連の平和維持軍の、とりわけSOPだとかあるいは訓練マニュアルにつきましては、そこに書かれてあること、いわゆる国連の原則、それと日本政府立場自衛隊海外派兵するに当たっては指揮権を持ったままだだとか、あるいは武力行使と武器の使用、こういうことで区分しているんだとか、こういうことで非常に大きな差異がある。こういうことでございますから、どうしても議論を進めるに当たって、国会というのは国民の代表である私どもの立法機関である国会でございますから、最高機関でございますから、その最高機関に一番がなめになるSOPと訓練マニュアルの全資料を出していただけない、こういうことは全く私どもにとっては対等平等で議論をしていくというこの入り口にも立てない、このふうに思うんですが、どうですか。
  61. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そうはおっしゃらないで、衆議院の方でもちゃんとそれで審議ができたんでございますから、政府立場も考えて、どうぞひとつその点は、中身はもう大体わかっているわけですから、(「衆議院のまねをしろと言うのか」と呼ぶ者あり)まねしろというわけじゃないですよ。ないけれども、そういうことも御参考にしてひとつ御審議をお進めいただきたいということをお願いしている次第でございます。
  62. 谷畑孝

    谷畑孝君 先ほども言いましたように、指揮権の問題だとかあるいは日本憲法武力行使にかかわる問題、しかもそれが部隊ごとに平和維持軍に参加をするわけであります。しかも、PKFというものあるいはPKOというものが国連の憲章にこれ書かれていなくて、いわゆる米ソ冷戦構造の中で積み重ねてきたそういうものがこの基礎になるわけでありまして、しかもその基礎がSOPであったり訓練マニュアルということでありますから、政府は持っておりまして、審議をする国民の代表である私たち、この国会議論をする立法府の委員の我々が、全文を日本語に訳したものを私どもは見たこともないわけでございます。そんなことで対等平等でこれが議論ができるのか、こういうことでございまして、私は全く納得ができないわけでございます。
  63. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記をとめて。    〔午後一時四十分速記中止〕    〔午後一時五十七分速記開始〕
  64. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。  ただいまの件につきましては、理事会で協議いたしますので、二時三十分まで休憩いたします。    午後一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後三時二十一分開会
  65. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 谷畑孝

    谷畑孝君 私は、質疑を留保いたしまして、後刻質問したいと思います。
  67. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 谷畑君の残余の質疑については後刻行うことといたします。
  68. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 私は、専門的な法律論とか防衛技術論とは別の観点から、普通の国民が疑問に思っていることを中心に御質問したいと思います。  昨年の夏からことしの二月までの七カ月間、湾岸危機から湾岸戦争へと、あの期間は世界を震憾させたわけでございます。日本としても、石油ということもあり、大変深い関心、関係の深い地域でございますし、また日本人が多数人質に遭ったというようなこともありまして、大きな試練であったと思うのでございます。一年前の新聞を出してみますと、そのときの心配な気持ち、不安な状態がありありと思い出されるわけでございまして、改めて冷厳な国際情勢というものを思い知らされまして、日本人の国際的な認識を新たにした事件であったと思います。  あの灼熱の砂漠の中へ外国の青年たちが平和を何とか回復しようということで多数出かけていって苦労しているさまを見まして、日本の私たちも平和を維持するため、平和を守るために何かお手伝いはできないものかと考えたものでありました。そして、被災民の運送をしたり、またそのために自衛隊機を出せるような仕組みをつくりまし たり、増税までして百三十億ドルという拠出をしたり、できるだけの努力はしたのでございましたが、同時にしようと考えておりました法律の改正、新しい法律をつくって国連の平和活動に対して協力をしようということで国連平和協力法案というのが提案されたのでございましたが、これは廃案になりました。  それからわずか一カ年後、今議論されております国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案というのが改めて出されたわけでございますが、昨年廃案になった国連平和協力法案と今のこの法案とはどこが違うのかということをまずお聞きしたいと思います。
  69. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  今回の法案国連平和協力法案との相違点という御指摘でございます。大きく分けますと二点が違います。  一つは、今回の法案におきましては、国際連合のいわゆるPKO国連平和維持活動の一つでございます平和維持隊本体に対する協力を行い得ることとした点が一点でございます。また、昨年の国連平和協力法案に織り込まれていました国連決議の実効性を確保するための国際連合その他の国際機関または国連加盟国その他の国が行う活動に対する協力、いわゆる、本委員会でも指摘されておりますけれども、多国籍軍への協力というのは一切含めておりません。  その二点が大きな違いでございまして、他方、この機会にぜひ指摘させていただきたいのでございますけれども、前回の法案にはなくて今回特に新たに入れておる点として次のような点がございます。  まず、実施計画を閣議で決定いたします。その後、本部長協力業務の実施に必要な具体的な事項につき実施要領を定めまして、それに基づいて協力業務を行う。この実施要領と申しますのは、まさに本部長自衛隊の部隊も含めましてこの協力業務が円滑に行われるということを確保するために、私ども非常にこの法案の中でも重視している点でございます。  それから次に、いわゆる憲法との関係で五原則をはっきりと法文に盛り込んでいる点がございます。それから、これはシビリアンコントロールとの関係で御議論がございましたけれども国会への報告というのを第七条で書いてございます。また、この業務に従事する者の総数といたしまして二千人という枠を設けております。二千人を超えないということ。それから、これは国会でも非常に重要性が指摘されておる点でございますが、研修というのが非常に重要であるということで、前回の法案にはございませんでしたけれども、今回の法案におきましては独立の第十五条で研修に関する規定を設けておる。  おおむねそういった点を私は指摘させていただきたいと思っております。
  70. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 それでは、もし昨年のあのような事態が今また起こったとしたら、そしてこの法律ができていれば、去年とは違って日本は何か具体的にできたのでしょうか。
  71. 野村一成

    政府委員野村一成君) 私、先ほど指摘させていただきましたけれども、今回この法案が成立した場合でも、湾岸危機に際しまして、この法案に基づきましていわゆる多国籍軍への参加あるいはいわゆる後方支援活動というのは一切できません。  他方、人道的な国際救援活動といたしまして、国際機関の要請等を受けまして、紛争周辺国に流出いたしました大量の避難民に対しまして、受け入れ国の同意が前提でございますけれども、この法案に掲げられております。務といたしまして、医療活動とか救援活動あるいは被災民の故国への帰還のための輸送、そういった業務を機動的に行うことができたというふうに考えております。
  72. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 医療活動とか、毛布や食糧などを送ってそれを配布するというようなことは湾岸危機のときにもなさったと思うんです。大勢のお医者さんとか、そういう方々が出かけられて御苦労されたと記憶しておりますけれども、あのときはこの法律はなかったわけでございますが、どういう根拠でやっていただいたのでしょうか。
  73. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  クルド難民の際に緊急援助隊を派遣いたしましたが、緊急援助隊は基本的には自然災害あるいはガス爆発等の事故といったものを対象としているわけでございますが、法律の解釈といたしまして、直接の紛争から生じた被害ではない二次災害につきましては、まさにそれを放置すれば大きな災害に至るおそれがある、クルドの場合などはやはり非常に寒い山岳地帯で、放置すれば大量の病人が発生するといったような事態がございましたものですから、法律の解釈によりまして医療団を派遣するということを行ったわけでございます。
  74. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 国際緊急援助隊派遣法というのは、私が実は外務委員長をやらせていただいていたときに成立をいたしましたので、そのときの議論を多少覚えているのでございますが、今言われたように、自然災害に限る、そして自衛隊派遣は考えないというような原則があったと思うのです。  今のお話ですと、法律の解釈によって、二次的な災害であるから、自然災害ではないけれども派遣したのだというお話でございますが、そうしますと、あのようなことがまた起これは同じような解釈で、現在この法律がなくても派遣できるというふうに考えられるんでしょうか。
  75. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  御指摘の点につきましては、このたびPKO法案のもとで人道的な国際救援活動というものが案の中に入っておりまして、それにつきましては先ほども御説明がございましたが、活動の類型といたしましては、現在の緊急援助隊法第二条に規定しております救助活動、医療活動といったものと非常に類似しております。そこで、このたび法律を出すに当たりまして政府部内で議論をいたしまして、政策上の仕分けといたしまして、両案が成立した暁には、国際緊急援助活動は自然災害、ガス爆発等の事故等の人為災害のみを対象とするということにして、人道的な救援活動は国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのある紛争によって生ずる被害を対象とするというふうな仕分けをしたわけでございます。  したがいまして、先生お尋ねのクルドのようなケースにつきましては、これは紛争に起因する災害という認定が行われれば、法律の要件を満たしておれば、そういう形で派遣するということになろうと思います。
  76. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 私は、この法案の中で国連の平和維持隊に直接参加するという部分も大変重要だとは思いますが、もっとそれより大事なのは人道的な国際救援活動だと思うのです。この面で日本は今までささやかながらいろんな経験があるわけですし、もっと機動的な効率のいい救助活動ができるようになるというのであれば大変前向きないい法案だというふうに思うんです。  ここで改めて、この法案によりますと人道的な国際救援活動というのはどういうものなのか、その実施の仕組みはどういうふうに考えられているのか、また民間のボランティアの参加、あるいはそのボランティアの皆さんとの協力というようなことが考えられるのかというような点についてお聞きしたいと思います。
  77. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先ほど経済協力局長の方からも指摘がございましたけれども、私ども今御審議いただいております法案につきまして、いわゆるPKO法案と呼ばれておるわけでございますけれども、実は我が国のなすべき協力といたしまして二つの柱がございます。  一つは、いわゆるPKO国際連合平和維持活動でございますが、もう一つの重要視しておりますのがまさに先生御指摘の人道的な国際救援活動でございまして、特に武力紛争によって最も被害を受けるのは現地の住民であるというふうな認識が強うございます。したがいまして、PKOの業 務の一部として人道的な活動が行われる場合もございますけれども、やはりそれに加えまして、同様に人道的な国際救援活動、特に国際連合とか人道的救援活動に従事しております国際機関がそれを要請してくる場合、まさに国際社会が人道的な問題としてそれを何とかしないといけない、そういった場合についてもあわせて協力することといたしたいというのがこの法案の仕組みでございます。  したがいまして、今先生仕組みという御指摘がございましたけれども、どうもこの自衛隊の部隊というのも、これはまさに私ども繰り返し申し上げておりますように、自衛隊の経験、技能等をこの法案に基づく協力に活用するという意味におきまして重要視いたしておるわけでございますけれども、特に人道的な国際救援活動になりますと、それ以外の、先生今ボランティアというお言葉をお使いになりましたけれども、やはり防衛庁以外の関係行政機関、あるいはこの法案の十一条によりまして一般の民間の方々でぜひやってみたいという方々に参加いただく、あるいは地方公務員の皆様方にも参加していただく、そういう形でできるだけ幅広くこの国際救援活動への貢献というものを行っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、法案のぜひ御理解いただきたい点は仕組みとか要件でございまして、やはり私どもこの人道的な国際救援活動につきましては、この法案第三条二号できちんと定義いたしておるわけでございますが、四つばかりの要件が満たされる場合というふうに考えております。  一つは、国連総会、安保理あるいは経済社会理事会の決議、またこの別表に国際機関を列挙してございますけれども、そういった国際機関の要請に基づくということ、まさに国際社会要請があるということが一つでございます。さらに、これは定義にもございますけれども、紛争に起因する被災民の救援、または被害の復旧のための人道的な活動であるということ。それから三番目に受け入れ国の同意がございます。それからまた、その活動が行われる地域の属する国が紛争当事者であるという場合には、その紛争当事者同士の間で停戦の合意があるということでございます。四番目に、先ほど私申し上げましたけれども、やはりPKOの一環として人道的な活動が行われている場合もございますので、そういう国連PKOとして実施されるものではないということもこの法案に書いてございます。  以上、四つの要件に照らしまして該当するようなケースにつきましては、我が国としてもこの法案に基づき協力することが可能である、そういう仕組みにいたしてございます。
  78. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 国際社会の恩恵を受けて日本は今日まで繁栄してきたわけでございますから、世界のどこかで災害を受けたり困っている人がいるときには、今度は自分ができることを積極的に手を差し伸べて助けるというような国際的な救援活動というのには大いに力を入れるべきだと思うのでございます。その際に、かなり経験があり訓練もしっかり受けているはずの自衛隊皆さんが一定の数積極的にこれに参加して貢献してくださるということは、日本としての国際貢献だと、非常に目に見える形で多くの方に評価してもらえるんではないだろうかと思いますので、その点については私も賛成でございます。ぜひともそのような方向で実現されるように期待している次第でございます。  さて、総理にお伺いしたいんですけれども総理所信表明演説でもおっしゃっておりましたが、よく日本はアメリカと共通の価値観を持つパートナーであるというふうにおっしゃいます。そのときに総理がおっしゃいます共通の価値観というものの内容はどういうことを意味していられるのでしょうか。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日米両国の関係を一般に国民の間で議論されますときに、多くの方が、安全保障条約によって結ばれておるというようなこと、あるいは非常にたくさんの人の行き来、物の行き来、資本の行き来があって、いわば世界第一及び第二の経済大国の間の経済交流関係があるというようなことをしばしば言われます。それはおのおのそのとおりでございますけれども、もっともっと大切なことは、何でそういう関係ができ上がったかといえば、それは両国の間に共通の価値観があるからである、両国はこの共通の価値観を大切にしよう、そういう基本的な合意があってその上で安保条約関係ができている、私はそういうふうにあえて申すのでございますが、両方のただ利害脚係だけでございましたら必ずしも安全保障関係ができるとは限らない、お互いに守るべきもの、大切にすべきものが一緒であるというところに信頼関係が生まれると私は思っておるわけでございます。  そういう場合に何を共通の価働観と言うか。これはもうまことに平凡なことを申し上げますけれども、それは、やはり自由であるとかあるいは基本的人権であるとか民主主義の政治のあり方であるとか市場経済等々、我が国憲法が定めておりますような基本的な価値観と、アメリカ人が抱いている基本的なそのような価値観が共通であるというふうに考えております。
  80. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 今、総理がおっしゃいました自由とか民主主義とか市場経済とか、そのようなものは日米に限らず、また西側だけではなくて、最近はもう東も西もすべてがそのような価値観を求めて努力をしているわけでございますね。私は、共通の価値観というと、民主主義、自由経済、平和愛好というようなことだろうとは思ったのでございますけれども、今言ったような世の中の変化で、日本とアメリカだけが共通だというわけではなく、世界じゅうの共通の価値に今やなりつつあると思うのでございます。むしろ日本は、よその国から見ますと、共通の価値観と口では言うけれども、実際は彼らの思っている価値と違うものを価値としているのではないかと疑われているんではないかという気がするのでございます。  と申しますのは、例えば私の体験から申しますと、昨年来アメリカやイギリスやフランスなどへ行きまして講演を頼まれまして、日本の政治とか女性の地位とかあるいは国際情勢の解釈とか、そういうようなことをテーマに講演をしたり会議に参加したりいたしまして、そのときに聴衆から受ける質問やまた議論の内容から判断いたしますのに、どうもそういう国の人たちは、日本の思っている自由なら自由は彼らの思う自由と違うのではないかと思っているんじゃないか、そういう感じがしてなりません。ですから、今は余り共通の価値観ということを強調するのもどんなものかなという気がするのでございます。  例えば自由経済といいましても、アメリカは日本の言う自由経済自分たちの言う自由経済と違うんじゃないかというふうに疑っている節があるように思うのでございます。ヨーロッパでも同じだと思います。また、例えば女性の社会進出というようなことでよく質問をされ、講演もしろと言われて出かけるのでございますが、日本でも女性は最近各方面に大変進出して大いに活躍しておりますということをデータを挙げて説明するわけでございます。そうすると、まず大抵の国で聞かれる質問は、では日本では女性の閣僚は何人、ということになるのでございます。そうすると、私はまことに返事に困ります。世界百六十カ国ある中で、先進国はもちろん途上国も含め、東も西も南も北も女性の閣僚が一人もいないという国は大変珍しい今日でございます。ですから、そういう話をしますと、ああ、日本は民主主義と言うけれども、我々の国の民主主義と違うんだなというふうにまず思われてしまう。  そんないろんな経験から申しまして、どうも日本の言う価値観とほかの国が思っている価値観とは必ずしも共通じゃなく、むしろ違うところが最近際立ちつつあるんではないかというような心配をするのでございますが、総理はその点について、大変国際人として内外ともに知られている方でございますけれども、どんなふうにお考えでしょうか。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、前段の問題でございますけれども、いわゆる自由い民主、基本的人権、独立というような物差しで世界の多くの国をはかる危険を私は冒したいとは思いませんけれども、最近ソ連、東欧等に起こっております動きは確かにそういうものを志向しているように思われますし、またぜひそうあってほしいと思いますものの、これは本当にもう間違いなくそうだ、大丈夫だというところまでの少なくとも日月が経過しておりませんので、それはそういう希望を嘱しつつ、まだ同じ物差しではかることはいかがであろうかということを感じます。  それから、明らかにもう同じ物差しではかっても大丈夫だと思われる国々の中でも、いわば先進と後進がございます。我が国は、年月から見ましてもその中ではまだ後進に属するでございましょう、同じ物差しに合格することは確かですが。その点が一つと、それからもう一つ、そうは申しましても、やはりその物差しはかなり寛容と申しますか幅広く考えるべきものであって、その国その国でいろいろな伝統もございますし、国のでき方もございます。したがって、その内容というものが必ずしも同一であるとは限らない。それは本質的に同一になり得ない部分もあるかもしれませんし、成熟しないために同質になり得ないでいる、いやしかしやがて成熟していくであろうという部分と私は両方あるように思っております。  今、森山委員の言われましたことは私もしばしば聞くことでございますし、私自身が実はしばしば感じることでございますけれども、ここが実はこういう公の場でございますものですから、そういうことについて一つ一つどうもそのとおりでございますと日本総理大臣が申し上げることがいいのか悪いのかというような点も多少ございまして、願わくはこれは森山委員と私の私的な場でございますとこの議論はもっともっと深めることができるということに感じております。
  82. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 明確なお答えがいただけないのは甚だ残念でございますが、私が心配しております懸念を総理もお感じになっていらっしゃるということで、ぜひその懸念を少しでも解消してくださるようにこれから具体的な御努力をお願いしたいと存じます。  それから、平和主義といっても、それはどこの国でも平和を愛好しているわけでございますけれども、単に抽象的な言葉を並べるだけではだめで、やっぱり平和を確保し維持していくというための具体的な努力をしていかなければいけない。そして、それを世界人たちにちゃんと見てもらい、日本は確かにそのつもりで努力しているなということがわかってもらえるということも大変重要だと思うわけです。  ですから、その意味で、この法案世界共通の平和あるいは人道主義というような理想に向かって具体的な方策を可能にしようとする第一歩であるというふうに思いますので高く評価したいと思うのですが、ところが会期の残りが大分少なくなってまいりまして、成立はなかなか難しいのではないかという評論があちらこちらにございます。もしもその心配がそのとおりであるとすれば、日本人はあれだけの事件を経験してもまだ何にもしないのかというふうに言われるのではないか、そして国際貢献税なんという話もけさ出ておりましたけれども、やっぱりお金で解決しようとするのかというふうに見下げられるということも心配している次第でございます。  そこで、最初にお話し申し上げました国際緊急援助隊法の改正というのも今議題になっているわけですけれども、せめて、その困っている、苦しんでいる災害に遭った人たちに対する緊急援助隊の派遣、これをさらにもっと能率的に、また精力的にできるように国際緊急援助隊法の改正だけ切り離してやったらという説があるようでございます。日本人的貢献をしようとする決意を示すという意味では、これもまた一つ傾聴に値する意見ではないかと思うのでございますが、総理はどのようにお考えでしょうか。どうしても一括で両案を成立させるということをあくまでもお考えになっていらっしゃるのか、柔軟に対応し得るのではないかという説がありますが。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆるPKO法案につきましても、十分な御理解のもとに御質問をなさっていただいておりますので、なかなかお答えが難しいのでございますけれども、御案内のように、おのおのの法案はおのおの別の目的を持っておりまして、そのいずれも大切なものでございます。おのおのの法案法律となりましたときに、違った局面におきまして、あるいは同じ局面でおのおのの法律が発動することがあるかもしれません。我が国としていずれも大切な国際貢献をいだそうとする努力の道を開きたいとしておるものでございますので、な言葉ではございますが、どうぞ両法案がそろいまして成立いたしまして、我が国が両方の面で貢献ができますようにひとつお力添えをお願いいたしたいと存じます。
  84. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 終わります。
  85. 広中和歌子

    広中和歌子君 御質問させていただきます。  湾岸戦争のさなか、私は外国人たちに、なぜ日本湾岸戦争のときに参戦しなかったのかとたびたび聞かれました。そのとき私は、日本憲法の制約で参加できないということではなくて、それは事実なんですけれども憲法といえども国民の合意があれば改正することができるわけです。だから、そういうことではなくて、むしろ我々の中に憲法を守ろうとする気持ちが強いのだ、だから憲法改正などは論外なのだ、そのように説明してまいりました。国民の間に強い反戦気分があり、それは第二次大戦のときの深い反省からくるもので、その反戦思想ゆえに平和憲法を支持していきたいのだ、それは日本国民の気持ちなのだと訴えたのです。  しかし、一国の中で、戦争中に反戦主義者も参加できる分野があり、また参加する義務があるように、現在世界に紛争の火種が絶えない中で、不戦の誓いをしている日本でさえも何かできるはずでございます。平和を積極的につくっていく分野、それが国連を中心とするPKOだと理解し、私は公明党とともにこの法案を支持する立場に立ってきたわけでございます。  宮澤総理は、この法案をどのように受けとめられ、前臨時国会の後を受けてこの法案の成立にどのような努力をなさってきたのか、お伺いいたします。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 広中委員が言われますとおり、昨年湾岸戦争が起こりましたときに我が国があちこちから受けました批判、それよりももっと大事なことは、それを受けて我が国民がどうすべきかという国民的な議論をしたというところ、そうして財政的貢献だけでは十分ではない、許されることと許されないことがあるが、許される限りでの人的貢献もすべきであるという、大変に議論の高まりがございました。  私自身、またそういうふうに考えた一人でございます。そのとき私は、ごく最近まで政府におりませんでしたけれども、しかし、そのような努力を政府なり私どもの党でしていくことについては私は極めて積極的な一人でございました。そういう意味で、先般この仕事をお引き受けいたしましたときに、御審議になっておりますこの法案については全面的にひとつ御賛成をお願いいたしたいと両院におきましてお願いを申し上げる立場に立っておるわけでございます。
  87. 広中和歌子

    広中和歌子君 十二月七日と八日のNHKの世論調査によりますと、PKOそのものに賛成している方は六三%ございます。しかしながら、このPKO法案そのものになりますと、反対が二五%、賛成が三四%、残りはわからない、不安だ、無回答なのでございます。この反対の中には、もちろん憲法違反と受けとめている人が非常に多いわけで、それは全体として三三%あるわけですけれども意見を言わなかった無回答の方たちの中には、自衛隊丸ごと戦火の中に行くかのごとく、そういうふうに誤解をしている人もある。国民の間に非常に誤解があります。少なくとも正しい解釈が浸透していないような気がするのでございますけれども政府国民理解を得るため にどのような取り組みをなさり努力をなさったか。  停戦が合意され平和が戻ってきた、このかけがえのない平和をどう持続させるかということがこの分野への協力である、それがPKOであるといったような前向きのPRを、外務大臣にもお伺いしようと思ったんですけれども、いらっしゃいませんので総理でも結構でございますが、ともかく、例えばテレビのインタビューを通じてでも何でもよろしいんですけれども総理が、あるいは外務大臣が非常に積極的にこの法案に取り組まれたといったような動きが見えない。我々これを支持してきた公明党としては、何かはしごを外されたような、そのような気持ちがないわけでもないわけですけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それでは、私からお答えを申し上げます。  先ほど広中委員の言われましたように、確かにこの法案につきましての国民理解がまだまだ十分でないということは私もおっしゃるとおりであろうと思います。  よって来るところを考えますと、ただいま世論調査のことも言われましたが、そもそも自衛隊というものが違憲であるという議論、これは国民の中にも多くはないのでございますけれども、しかし根強く、多数ではないが一部にあるというそういう問題がございます。それから、そういうことはないであろうが、しかし自衛隊というものが海外にいかなる目的にせよ出るということについては、過去何十年国民は恐らくそういうことがあろうとは多分思っておられなかっただろう、ずっとそういう時代が続いてまいりましたので、そういうこともきっと戸惑いに私はなっておると思います。昨年のあの世論の盛り上がりは大変なものであったのですが、ある意味で申しますと、のど元過ぐればというようなこともございますので、それで済んでみるとさてというような部分がまた私はあるだろうと思います。  しかし、これはもう問題なく国際平和に、国連の平和維持活動に貢献するんだと、武力行使に行くんではないということをるるいろんな場でお尋ねがありまた御説明もしておりますけれども国民にとってはなぜ自衛隊が急に出かけるのかというそこに問題が集中いたしましたので、また国会の御質問も勢いそこに集中されましたので、どうもその点についての問題意識だけが強くなってしまった。私どもやはり国会のこういう御質問にお答えをする、衆議院でも参議院でもそれに大部分の時間を実は使ってまいりました。これが一番国民におわかりいただけるベストの方法である。そのほかにも、テレビ等の機会を通じまして一生懸命この法案についての説明を国民に申し上げておりますけれども、その点は長い間のそのような国民側の受け取り方がございましたものですから、まだまだ時間的に十分でなかったのかもしれない、そういう反省はいたしております。
  89. 広中和歌子

    広中和歌子君 我が国がこれまで進めてきた、そして今後とも大切な国際貢献というのは、おびただしい飢餓に苦しむ難民の救済、世界に広がる環境破壊の防止、十分な教育を受けられない何億人といる子供たちの救済だろうと思います。これらの重要な人道的課題に本腰を入れることこそ、日本が急がなければならない国際貢献だと思いますが、今回、さらにPKO法案を通して国連を中心とする国際貢献に踏み切った真の理由は何なのかということを伺いたいんです。  国際貢献の中で、日本は人を出さないという批判を受けていると言われますけれどもODAの一環として青年海外協力隊もございますし、またいろいろな海外の援助活動にも参加しております。この青年海外協力隊でございますけれども、人数も世界でアメリカのピースコーに次いで多いほどでございます。それなのに、国際貢献が高くないという批判があるとすれば、それは一体何なんだろうか、どうしてなんだろうかということを伺いたいんです。  つまり、国際社会の一部に日本が危険地域に人を出していないという批判があって、それにこたえる、つまり三Kと言うと語弊があるかもしれませんけれども、要するに人の嫌がる、危険であり、汚くて、きつい、そういう分野を分かち合うことが今日本に求められているのではないか。政府は、しっかりとそれを受けとめて国民にはっきりと説明していただく必要があるんじゃないか、そのフランクさが足りなかったんではないかなというような気がいたしますけれども外務大臣、いかがでしょうか。
  90. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 全く私はそのとおりだと思っております。  日本国際貢献してないわけじゃないのでございまして、予算の面等においては、例えばODAでもアメリカと同じぐらいの額、一、二を争う額を出しておりますし、今委員が御指摘になりましたような技術協力とか海外青年協力隊とか、また選挙監視団等も出しておりますし、この間は、国内に最初は大変な反発がありましたが、しかしながら政府の英断によって、おくればせとはいいながら掃海艇を出して機雷の除去に貢献した、こういうふうにやってはおるんです。おるんですけれども、一兆五千億から二兆円と言われるようなお金を出したにもかかわらず、その割合には国際的な評価はいまいち足りないという感じです。しかしながら、予算で十三億円程度の、言うならば千分の一ぐらいの費用で、これが非常に国際的には、いや日本もやっぱりちゃんとやるべきことをやってくれたというような高い評価を受けまして、最初にはうんと反対した人も、最後はけしからぬけしからぬと言う人はなくなっちゃったんですね、あれは。  あのこと一つを見てもわかるように、我々はもっと大きな観点からPRをすべきである、そのように思っておるんです。ノーベル平和賞を受ける平和活動をけしからぬけしからぬと言う人は、私は少ないような感じを受けているんですが、そういう点でのPR不足ということも私は大きな問題である、そう思っております。
  91. 広中和歌子

    広中和歌子君 防衛庁長官に御質問の通告はしておりませんけれども、お答えいただきたいんです。  PKOに参加する意義は、国連の指揮のもとに平和を創造することに協力するということともに、この三Kをシェアするということではないかと思うのでございますけれども、特にPKFに参加する自衛隊の方々に十分な認識があるかどうか、十分納得していただいているのかどうか、そしてまた、その参加者の中に女性も加わるのかどうかということもお伺いいたします。大臣になるだけではなくて、やはり女性も厳しい、つらいこともシェアする、そういう姿勢も大切ではないかと思います。
  92. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生のこのPKO法案に対する御理解、私は大変深く傾聴をいたしておりましたが、海外自衛隊派遣するということは、これはあくまで平和目的でございまして、国内における直接侵略あるいは間接侵略に対しまして、これはもう国を守るためでございますから組織的な武器使用その他をやるわけでございますが、今回のこの海外派遣する平和業務は、極端なことを言えば、武器を持っていかなくてもいいんだというくらいの認識で、私ども自衛隊の組織としての知識や経験やあるいは組織力というものを利用してこれに貢献しようということでございますから、あくまで平和的な機能、目的であると存じます。  そういった意味のPRが、今先生御指摘のように、国民の間になかなか浸透していかない。自衛隊が小火器でも持っていきますと、これはもう武力行使のためだというような、そういう限界的なケースが本院においても議論が行われております。これも法律論でございますから非常に必要なこととは存じますけれども、しかし、実際は平和の戦士としてこのPKF、PKOに参加するわけでございますので、この点は私は、国会の論議を通じて国民皆さん理解は深まったとは存じますけれども、なおこの点は強調していかなければ ならないと存じます。  武器の使用という問題は、確かに重要な問題でございます。この二十四条にも規定されております。しかし、これだけが、こういうことのみがケースとして非常に蓋然的にあり得るケースだという想定での御議論はいかがなものかなと、私は終始考えておりました。  そういうことでございまして、我が自衛隊が、本法案が成立いたしますならば、この目的に従いまして、国内の防衛、自衛隊法三条による任務とは全く別個の平和的な目的でございますから、別個な観点から自衛隊員に教育訓練をし、意識の問題としても、国際貢献に、平和目的のために行くんだという意識をはっきり持ってやることが私はぜひ必要だと存じます。そういう意味で、研修その他におきましても、この法案が成立いたしますならば、ヨーロッパ等におけるPKOの実態等もよく自衛隊員につぶさに見ていただいて、そしてそれを自衛隊員に教育していただく。そして、PKO、PKFの任務は何なのか、あるいは我が国派遣する目的は一体何なのかということを自衛隊員がきちっと自覚して出ていっていただきたいな、こう思っております。  なお、先生御指摘の女性の方の派遣の問題でございますが、これは法律によりまして平和協力業務という定義がございますけれども、その中にはPKFのほかに、自衛隊が部隊としてあるいは個人として行う業務としては医療あるいは難民救済の問題等々いろいろございます。女性の方でも、例えば医療協力をやった場合は、看護婦さんその他の随伴もあるいは必要であるでございましょう。そうした問題等もございますから、あくまで平和の戦士としての部隊の派遣でございますから、そういったこともケースによっては考えていって当然だと私は存じております。  以上でございます。
  93. 広中和歌子

    広中和歌子君 社会党に質問させていただきます。  PKOへの対案として独自の国際貢献策を出された貴党に対して、心から敬意を表したいと思います。  次に、以下質問させていただきたいわけですが、社会党案が国際緊急援助法に反対する理由をお伺いいたします。
  94. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 広中委員にお答えいたします。  今回の政府提出の改正案は、外国の災害に対しても自衛隊派遣することが中心になっています。私どもは今ここで自衛隊の合憲か違憲かという議論は別にいたしまして、自衛隊の任務は専守防衛、このことをずっと政府は今日まで言い続けてきているわけでありますし、自衛隊法の三条においてもそのことが明記されているわけでありまして、当初から自衛隊海外で活動することは想定をされておりません。  今回の場合のように、災害の派遣の場合にはいいではないか、あるいはPKFの場合にも武力の行使をしないという前提であればいいではないか、こういうふうに一つずつ口実を設けて例外をつくっていく、海外派遣の道を開いていく。これは一九五四年の自衛隊の発足に際しての本院の決議でもそのことを懸念して決議が行われた、こういうふうになっているわけでありまして、試みにその決議の趣旨説明をされている当時の改進党、後に自由民主党に合流されたわけでありますけれども、その改進党の鶴見祐輔議員が趣旨説明の中でどういうふうに述べているかといいますと、「我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになる」、こういうふうにその趣旨を述べておられるわけでありまして、私ども自衛隊海外派遣だけはいかなる理由があろうとも認めるわけにはいかない、これが憲法と参議院の決議に沿うものであるし、また、そのことはアジア各国の信頼を回復する方途である、このように考えています。
  95. 広中和歌子

    広中和歌子君 社会党案によりますと、以下の要請を受けた場合にはどのような対応をなさいますでしょうか。  ピナツボ火山、これはフィリピンの火山の救援活動、それからカンボジアの地雷撤去、クルド難民救援、これにどのように対応なさいますでしょうか。
  96. 村田誠醇

    委員以外の議員村田誠醇君) お答えいたします。  我が党が提案しておりますのは、国際における平和の維持活動と、それから人道的な国際の救援の活動について、国連からそういう要請が来た場合、我が国協力をする限度といいましょうか、範囲を我々は考えておるわけでございます。したがいまして、前提となりますのは、国際機関の決議あるいは要請があった場合にというのが前提でございます。したがいまして、我が国のその範囲内、これは政府案と我々が違うのは非軍事の分野で協力をするということが前提でございます。  したがいまして、先生が今お尋ねになりました三つのケースは、いずれも現行法の中で、もし仮にピナツボ火山の場合のようなケースでございましたら、国連要請がなくても我が国の独自の判断でできる部分もあるいはやろうと思えばできないことはない。ただ、これらの三つのケースで、仮に国連から要請があった場合には、その中で我が国ができる範囲というものを、今言いましたように非軍事民生の分野ということを私どもは強く主張しております。それが政府と違うところでございますが、その内容については、我が国の決めた範囲内で協力をするということがその前提となります。  したがいまして、一般論として火山災害等についてどういうことができるかといえば、土木工事とか住宅建設とか医療活動とか、そういうことについては十分に行うということについては社会党も主張しているところでございます。
  97. 広中和歌子

    広中和歌子君 そうすると、例えば地雷撤去というのはこれは民間人が足を飛ばされたりということで非常にゆゆしき問題なんでございますけれども、こうした分野は非軍事、つまり民間では対応できないということで御協力はできない、そういうことと理解してよろしゅうございますね。  そうすると、こうしたかなりプロフェッショナルなレスキューチームというのでしょうか、そういうのが必要な分野、それはもうよその国にお任せする、そういうことでよろしゅうございますか。
  98. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 地雷撤去というのはもう純軍事的な分野でございますから、それを私どもの方で派遣をしてやる、こういうことは考えておりません。  それで、私ども法案として提案をしておりますのは、政府案の三条に定めてある中の前半の部分軍事的分野、それを除く分野についてそれぞれ平和協力隊を派遣してやっていく、これが基本になっておりますので、軍事的分野を除いては広範な範囲で最大限の協力をしていく、こういうつもりでございます。    〔委員長退席、理事藤井孝男君着席〕
  99. 広中和歌子

    広中和歌子君 これはそれぞれ各党、各人違った考え方を持って当然なんでございますけれども、非軍事ということで自衛隊の参加を否定する理由でございますけれども憲法違反ということでそういうお考えでございますけれども、それ以外にもし何か理由があるとしたら何か、お伺いしたいと思います。
  100. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 憲法上の問題以外では、先ほど申し上げましたように、自衛隊の発足に当たって本院が決議をしている、このことでございます。
  101. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。また後ほど質問させていただきます。  PKO法案に戻りまして、先ほども申しましたように、世論調査でもPKOそのものについては日本貢献するべきだという考え方の人が六三%になっている。このPKO法案についてですけれども、中山前外務大臣は、国連その他海外に向け てこのPKO法案を公約している。いわば海外に向けてこういう形で日本貢献するのだというふうに約束をしていらっしゃるわけですけれども、聞くところによりますと、もうともかく会期切れで継続、それから先の運命ですね、この法案をどのように扱っていらっしゃる御決意なのか、お伺いいたします。
  102. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まだ会期もございますし、物理的抵抗がなければそれは成立することもあるわけですから、私はまだあきらめてはいない。まさに海外外国に対して国際公約的なことになっていることも事実でございます。  実際問題として、世界の八十カ国も参加をしてやっておった行為がもう平和維持活動そのものであって、憲法の精神からいっても全く差し支えない。この間の掃海艇でも同じことでして、あれは海上自衛隊が行ったんですが、イランの領海にも入って撤去をして、以来それはお褒めの言葉にあずかっているんです。国民がだれも反対しないです。最初はありましたよ。最初は随分、新聞なんか見ても反対論はいっぱいあった。しかし帰ってきたときにはえらい評価を受けているということも事実です。  私は、大臣になる前だったけれども自衛隊の輸送機を難民の避難や何かにいち早く手伝わせなさいということを内閣に助言した一人なんです。しかし、これは政令改正までやったがとうとう間に合わなかったという事実があって、ああいう既成事実があっても、結果を見れば国民は納得してもらえると私は思っておったんです。ですから、そういうように大局的に物を見れば、私はこの法案については国民理解が得られると思っております。
  103. 広中和歌子

    広中和歌子君 話題を変えさせていただいて、法案のちょっと中身に入りますが、法案七条に国会報告がございます。国会報告といいますけれども、だれに、いつ、どういう形で、事前と事後でございますけれども、どのように報告されるのか。そして、それを受けとめました国会議員が、五原則とはいいながらこれはちょっと問題があるんじゃないかと疑義を挟んだ場合には、どのような形で我々国会議員意見派遣に反映され得るのか、そのことについてお伺いいたします。
  104. 野村一成

    政府委員野村一成君) 法案七条の適用の関係でございますので、私の方からお答えさせていただきます。  国会報告につきましては、通常、内閣総理大臣が両院の議長に対しまして文書の形で行うというふうに承知いたしております。その報告についてさらに口頭で説明を行うかどうか等につきましては、報告の都度、国会の御判断に従いたいというふうに考えております。  その報告のタイミングでございますけれども、この法案七条にございますように、実施計画の決定または変更があったとき、あるいは実施計画に定めます。務が終了したとき、あるいは実施計画に定めます期間に係る変更があったとき遅滞なく行うということになってございまして、基本的には、閣議で決定が行われる、閣議に上がるという場合には国会報告の対象になるということでございます。  それで、その報告に基づきまして国会の方で御審議を行うという場合があろうかと思います。その場合に、政府としてそういった御審議の過程でまとまりました御意見を踏まえましてさらなる業務の実施に当たるということでございまして、必要に応じて実施計画を改めるような機会もあろうかというふうに考えております。
  105. 広中和歌子

    広中和歌子君 確かめさせていただきますけれども、反映されるんですね。そうすると、国会承認と国会報告とは事実上同じというふうに考えてよろしいですか。
  106. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  報告でございますので、いわゆる承認とは別でございます。  他方、国会での御審議の過程で御意見が表明されるということがあろうかと存じますので、そういった点は、当然、具体的な業務の実施の柱になるのは実施計画でございますけれども、そういった後のさらなる実施の場合にそれが反映されていくという機会もあろうかというふうに払お答え申し上げた次第でございます。
  107. 広中和歌子

    広中和歌子君 だから、あろうと思うというのはあるというふうに解釈してよろしいんですね。
  108. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは政治判断の問題ですから、だから国会が承認されないというような場合には、それは継続してやることはやめるということになるのが、通常、当然のことだろうと思いますよ。  それからもう一つは、国会の答弁の中でも今までも出ておりますが、報告をして、そのときに議会の意見も十分いろいろ聞くということですから、その中でなるほどというような問題があれば内閣は何か考えますよ、世論の動向その他を見ながらやっているんですから。みんな、内閣を持っておって国民から総スカンをされるようなことはやらないに決まっておるし、また、内閣もやめたくないのが普通だからね。  だから、やはりそれは政治判断の問題ですから、そのときの。選挙に負けるのも困る、そういうようなことも考えて、しかも最大限の国際貢献をやっていこうと、そのときの政治判断によって時の内閣総理大臣が決めることだと私は思います。
  109. 広中和歌子

    広中和歌子君 いや、その政治判断を御信頼申し上げていいかわからないというようなこともありましてこの法案への賛成が少ないんじゃないかなというような気がするわけでございます。  次に、具体的にカンボジア和平について、日本は停戦の前の段階からずっと積極的にかかわっていらした。そういうことで、この停戦した後のさまざまな形での協力に参加したいというお考えであるように私は受けとめておりますけれども、どのような形で日本はカンボジア支援にかかわっていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  110. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) カンボジアは、アジアの一端、一角にあるわけです。既に海部内閣のとき、去年の六月でしたか、東京にカンボジアの一派対三派の代表を海部さんが呼んで和平の調停の糸口をつくったことは事実。しかし、そのこと自体はうまく成功というわけにはいきませんでしたが、そこからスタートをして、そしていろんな紆余曲折を経た結果、一応四派の間の話し合いがついて、国連の勧告を受け入れて、そしてシアヌーク殿下を長とする最高国民評議会というものをもつくったわけであります。  そして、その中でさらに、国連の指導を受けるということで、国連のカンボジア先遣隊、通称UNAMICと言われるものが現地に入っております。ここでいろいろ今後どういうようにやるかというようなことが協議をされまして、それから選挙が続いて行われるようになりますが、その前に、彼らは停戦をお互いに発表しているんですが、本当に停戦したかどうかわからない。何万という人がおるわけですから、中にはもう〇・何%で絶対上司の命令に従わないという人があるかもわからない。  それからもう一つは、避難民がタイ国境に何十万人とおってそれが帰還をする。農作業に入るというようなことをやろうとしても、これも一万個とも二万個ともよく数はわかりませんが、膨大な地雷が埋められているというんですから、山の中をのそのそ歩けません、危なくて。したがって、それは地雷を埋めた方の人もおるわけですから、どの辺に埋めたのか聞いて、それは専門家が行ってそういうものを撤去してやらなきゃならぬとか、あるいは武装解除をやるというんですが、本当に武装解除するかしないかわかりませんから、見ていないとね。やはり見ているところで武装解除してもらったら、今度は武器は一カ所に集めるというんですから、集める間に途中でなくなっちゃっても困る。先ほど言ったように武器の泥棒だってあるかもしれませんしね。だから、そういうものの見張り番も必要だ。そういうようなことをいろいろ、時間がなくて申しわけないんですが、やることはいっぱいあるわけですよ。  そういうことで、協力できる分野、これはなかなか武器の管理とかそういうものに民間人といったって無理なんですよ、実際は。武器にもいろいろ危ない武器もありますからね。そういうことでどうしても自衛隊の分野というのはあるんです。
  111. 広中和歌子

    広中和歌子君 社会党の方にお伺いいたします。  本年十月二十四日、社会党のシャドーキャビネットと外務省との間でカンボジアの貢献策についてお話しになったと伺いました。この定期協議の中で、社会党としてはカンボジアにどのような形で協力していこうというアイデアをお持ちでいらっしゃるかをお伺いいたします。
  112. 堂本暁子

    委員以外の議員(堂本暁子君) まず、定期協議のことですけれども、ちょうどパリ協議会の後だったものですからその御報告を受けたところで、私どもの方から何か申し上げたということはございません。  それから、カンボジアについて何ができるかということですが、まさに今大臣がいろいろやることがあるとおっしゃった。私は、文民でもいろいろやることが山のようにあると思います。やらないと言っているのではなくて、あくまでもやるということですけれども、ちょうど先日外務大臣はメレマン・ドイツ経済相にお会いになった。そのときに、ドイツではPKFのために基本法を改正する用意があるというふうに言っています。やはり憲法というのは自由に読んではいけないものであって、基本法というものは国の基準になることですから、そのことはあくまでもきちんと守るということが大原則だと思います。  同時に、国連では段階的に参加することが大事だということもおっしゃっていました。そういうことからいいますと、汚いことは地雷だけではなくもっとほかにもいっぱい、家を建てることですとか、難民三十五万人を助けるということとか、幾らでもございます。そこのところで働くところはたくさんあると言われてまいりました。
  113. 広中和歌子

    広中和歌子君 時間がなくなったのでちょっと意見を言わせていただきたいのでございますけれども、ともかく私ども国際貢献をしようということで前向きにこのPKOを検討してまいったわけでございます。そして、与野党の意見の違い、また世論の持つ不信感、誤解、そのようなことのためにこの法案が今宮に浮きそうな形でございますけれども、何とか前向きな対応ができないか。  そこでお伺いいたしますけれども、先ほども森山先生が御質問になりましたように、まず国際緊急援助隊法、それを切り離して通していただくわけにはいかないか。それからまた、国民理解を完全に得られていないということもございますので、PKOの中でもPKFを切り離しましてまず与野党で話し合う、そういうテーブルについていただけないか、そのような意見を申し上げたいと思いますけれども外務大臣、いかがでございましょうか。
  114. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 一つの御提案だと思います。我々としては、できるだけ両方そろって成立をさせていただきたい、そう思っておるんです。一つの御提案として承っておきます。
  115. 広中和歌子

    広中和歌子君 総理、お願いいたします。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、外務大臣の言われたとおりでございますが、前段につきましては、実は先ほど森山委員にお答え申し上げました。
  117. 広中和歌子

    広中和歌子君 ありがとうございました。
  118. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 私、連合参議院に所属しておりまして、政党ではございませんが、私たち意見をもとにお尋ねをいたしたいと思います。  連合参議院は、PKOの参加による国際貢献については、既に代表質問でもお話をしましたが、あくまで当面は非軍事、非武装の立場でまさにPKO的な国際協力を積極的に推進すべし、こういう立場をとるものであります。具体的には、自衛隊とは別個の組織の協力隊にする、さらに協力隊の業務の中でもいわゆるPKFという業務は含ませない、そしてシビリアンコントロールを徹底するために国会の承認を条件とするというような骨子で考えております。  過日の本委員会の質問では政府、つまり大臣にいろいろお尋ねをいたしましたが、幸いにもといいますか、今国会においては参議院で社会党が対案を出されております。対案を出されているということに対しては私どもは大変敬意を表するものでありますが、この対案の中身についてやはり確かめさせていただきたいことが多うございます。ただ、私の持ち時間はわずか十九分でございますので、すべてを網羅することはできないとは思っておりますが、まず発議者の野田議員にお尋ねをしたいわけであります。  今回、社会党が対案を出されたということで、今、広中議員もおっしゃいましたが、もう少し国民合意の内容になる国際平和協力法案をつくって、そしてまさに国民の大方の応援を背に日本人たちPKO協力隊として海外に出てはどうか、こういう意見がありますが、まずその点についてどのようなお考えか、お尋ねをします。
  119. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 先ほど広中委員の最後の御提案も承っておりましたが、私どもとしては、井上委員からも今お話がありましたが、国民の合意が得られる国際貢献策を各党が協議をしてつくっていく、このことには賛成でありまして、もしそういう形で各党が合意を得るために協議をしようという場がございますならば、それには喜んで参加をいたしたい、このように考えております。
  120. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 そうしますと、必ずしも対案にほかの党があるいはグループが賛成をしない限りだめだというわけではないとお伺いをしたわけですが、では、昨年の十一月のいわゆる三党合意と言われております自民党、公明党、民社党さんの間でなされた合意の内容について、いかがでしょうか、どこが社会党の対案の中でも最も障害になるのか、あるいは障害にならないのか、お答えをいただきたいと思います。
  121. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 昨年の十一月八日の自民党、公明党、民社党の幹事長、書記長さん方で合意されたいわゆる三党合意、これは自衛隊とは別個の国連の平和維持活動に協力する組織をつくる、こういうふうになっておりましたので、私どもとしてはその趣旨が本当に名実ともに生かされていれば国民の合意は形成が可能であった、こういうふうに考えているところであります。  しかし、今回の政府案は、自衛隊はそっくりそのまま部隊として参加をすることになっておりますので、この三党合意とは質が変わってきている、こういうふうに受けとめているわけでございます。
  122. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 先ほど広中議員宮澤総理にお尋ねをされていましたが、私はむしろ発議者の野田議員に同じような質問をしたいと思うんです。  自衛隊の問題、違憲なのか、あるいは海外出動の制約があるのか、そしてそれはどのように受けとめるべきかについて、この社会党の対案をつくられた際には自衛隊は違憲であるという前提からおつくりになったのでありましょうか。
  123. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 私どもとしては、憲法第九条を文字どおり素直に読めば、自衛隊は違憲の存在である、このように受けとめております。そして、もう一つどもが前提として考えたのは参議院決議、これを前提にして今回の対案は考えているわけであります。  特に、自衛隊をPKFに利用することは、第一は、従来の政府見解によっても自衛隊は専守防衛のためのものであるということ。そして、先ほど申し上げましたように参議院決議が生きている。第三は、特にPKFの参加の場合には、憲法で否定をされた行動に勢い行きがかり上移っていく危険性が非常に強い、こういう点を今の政府案では見ているわけでございます。
  124. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 くどいようでございますが、シャドーキャビネットといいますか、社会党の影の内閣は先般、自衛隊といいますか防衛費については 伸び率がゼロですか、そして人員も陸上自衛隊は欠員があるのでそのまま、あと三千人を減らす、こういうふうなことを基本的な骨子とするシャドー内閣でのお考えを提示されたとお聞きしております。そうだとすると、やはり違憲から始まっているのか、あるいはそうでないのかが少しわからないので、くどいようでございますが、お尋ねをしたいと思います。
  125. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 私ども社会党の基本的な理念としては自衛隊は違憲だ、こういうふうに考えております。  そして、今シャドーキャビネットの今回の予算のつくり方についてお触れになりましたけれども、もし私どもが社会党やあるいは野党連合という形で政権を受け持つことになった場合には、現在自衛隊法によって存在をしている二十数万人、いわゆる負の遺産を引き継がなければならない、こういうことになるわけでございます。そういう場合には、これを一挙に違憲だからといって消してしまうわけにいかないわけでございますから、やはり軍縮、この方向に向かって段階的に解消していく、そういう立場で今回のシャドーキャビネットの考え方も出しているわけでございます。
  126. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 きょうは総括的質問で、お忙しい中、総理以下各大臣の出席をいただきながら御質問をぶつけないというのは大変失礼なんでございますが、私の持ち時間が少ないので、いましばらく対案の方の質問を続けさせていただきますことを御了承願いたいと思います。  その対案についてでございますが、先ほどもPKFは問題がある、これは私どももそのように受けとめております。しかし、自衛隊をそれじゃどのように活用するのか、その点についてどのようにお考えか、お尋ねいたします。
  127. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 自衛隊をそのままの姿で活用することは私どもは考えておりません。もし私ども法案を成立させていただくならば、国際平和協力機構、平和協力隊、これに自衛隊を削減して身分を移管して文民として活用していく、こういうふうに考えているわけです。
  128. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 またまたくどい質問いたしますが、文民として活用されるということでございます。    〔理事藤井孝男君退席、理事上杉光弘君着    席〕  そこで、兵力引き離し等のそういう国連平和維持軍ですが、PKF、そういうところに日本人が出ていくことには問題があるということは社会党さんのお考えとしてわかりましたが、じゃ、停戦監視団といいますか停戦監視員、これは俗には丸腰といいますか、武器を持たなくて行く。ただ、軍事的な専門の知識といいますかあるいは技能といいますか、そういうものは必要とされている。しかし、歩兵の一個大隊といいますか、三百、五百、そういう組織的な参加でもなくて、各国協力し合う人数で、いわば混成で停戦監視の業務をやっているというふうに聞いておりますので、この停戦監視員に派遣をするということについて、対案を出された社会党の方ではどのように受けとめてみえるのか、お尋ねをしたいと思います。
  129. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 御指摘の停戦監視団に自衛隊を活用することの問題につきましても、私どもとしても党内でいろいろ議論をしてまいりました。そして、今までのいろんな実例も調査をいたしました。  まず、私どもが今回そのことに自衛隊の能力を活用する立場をとっていないのは、一つは、確かに停戦監視団の要員も非武装ではございますけれども国連事務総長の任命によってその構成員になる人は現職の将校、これが対象になる、こういうふうに承知をしているわけであります。それからもう一つは、今までの事例の中でも、例えばイエメンの停戦監視団あるいはイラク・クウエートの今やっている停戦監視団のように、すべてあるいは一部が武装集団である場合、あるいはまた武器の使用を前提とし、認められて停戦監視団が構成をされている、こういう例もあるわけでございます。そういう点からもやはりこれは一つ軍事的な行為、こういうふうに判断をいたしまして、私どもとしてはそれに参加をする、そういう立場をとっていないわけでございます。
  130. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 また、これもくどい質問をいたしますが、私ども連合参議院は、キプロスといいますか、サイプラスを見てきました。停戦監視員というのは、私が見た限りでは確かに丸腰で、もちろん将校である。将校、現役の軍人でないといけないのかどうかは、きょうも理事会で問題になりましたモデル協定案の開示のこともありますが、現実に国連日本の事情を理解するならば、退職した自衛官なりあるいは休んだ自衛官なりならば、例えば停戦監視団として将校の力量と経験を認定すれば軍籍になくてもよろしいというような、その辺のことをむしろ社会党の対案を出される方は積極果敢に努力というか、その辺はくどいような質問なんですが、いかがでしょうか。
  131. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 停戦監視団にもいわゆる武官といいますか職業軍人の将校の場合と、それから政務官、こういう身分の人が参加をする例もあります。そういう点で、自衛隊を退職された方、そしてその分野に非常に能力を持っている方が文民という立場になって、もし国連の事務総長から任命の対象になるという場合、もう一つ問題になってくるのは、戦時国際法によってもし現地でトラブルに巻き込まれたときの身分の取り扱いがどうなるのか、そういう点等を解明されれば私どもとしても、私なりに今後検討はずべき課題だ、こういうふうに考えております。
  132. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 次に、もう時間が余りないのでございますが、参議院の自衛隊海外出動を為さざることに関する決議との関連で、例えば南極観測隊に協力すること、あるいはこれはこの間防衛庁長官にもお尋ねをしたんですが、まあ戦前の言葉で言う駐在武官として外交官的な業務のために自衛隊のいわゆる将校クラスの人が行っているわけですね、一年に三十数名は。  こういう問題についてはどのように受けとめてみえるのでしょうか。
  133. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 南極観測隊、これに自衛隊が参加する任務を決定された場合、当時私どもとしてはこれには反対をしているわけであります。それは、自衛隊を参加させなくても、当時、海上保安庁で任務は十分尽くされていたわけでございまして、殊さらに海上自衛隊等を参加させる必要はなかった、こういうふうに判断をいたしております。  もう一つは、先ほど申し上げましたように、参議院における決議、やはりこれを厳格に守っていくことが大事だ、こういうふうに考えて反対をしております。  それからもう一つ、駐在武官として外国に駐在している制度についてどういうふうに考えているか、こういうことでございます。駐在武官というのは、各国軍事情報を収集して、それを防衛庁に、あるいは必要な部署に提供している役割でありますけれども憲法上、国際紛争は軍事力によって解決する道はとらない、こういう立場をとっている限りは、駐在武官という制度は私どもとしては必要ない制度だ、こういうふうに考えております。
  134. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 あと一分しかありませんので、最後にお尋ねをしたいと思うんですが、先ほど広中議員もるる尋ねられておりましたので重複を避けますけれども、対案として出されています社会党の案で、協力隊員が国外に行った場合に、もちろんそれは非軍事民生文民ということでございますが、一体どこに泊まるのか、何をどのように食べることができるのか。さらに、のどが渇いて水を飲むといっても、現実は生水を飲んでおなかを壊すことにもなりかねない、あるいは病気になる。さらに、通信といいますか、連絡はどうするんだとか、そういう点で、いわゆる民生文民の非軍事協力隊員が現実にどのように思うように活動ができるという目安を持ってみえるのか、その点を最後の質問にさせていただきたいと思いま す。
  135. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) ただいまの御指摘の点でありますけれども、私どもとしては基本的には、提案をしております新たな機構を設置して、そこに必要な要員を、身分移管するなりあるいは新規に募集するなどして、必要な機材、これを用意してトレーニングしていく。こういうこととあわせて、現地の公館等を通じての現地調達、この二つの方法で可能である、こういうふうに考えております。
  136. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 ありがとうございました。  まことにお忙しいところを御列席の各大臣に質問をしませんでしたことをおわび申し上げます。次にはまたお尋ねをいたしますので、よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。
  137. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 総理は、所信表明演説の中で、国際社会は「何百年に一度という大きな変化が起こりつつある」、さらに「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まり」と述べられております。  私は宮澤総理の経歴を読ませていただきましたが、昭和十七年に大蔵省に入省され、昭和二十四年には大蔵大臣の秘書官、二十五年には通産大臣の秘書官を兼任され、そして二十六年にはサンフランシスコ講和会議に全権の随員として参加され、二十八年には参議院議員当選、四十二年に衆議院議員当選。そしてその後、経企庁長官通産大臣外務大臣、官房長官大蔵大臣、こういう要職を歴任されて今日に至っておられるわけです。言うならば、今の世界の大きな変化は戦後の一つの時代の終わりだというふうに私は思いますけれども、この戦後の一つの時代において、今日の日本を築き上げるについて常に重要な役割継続して果たしてこられた方だと思います。  その方がこのたび総理になられたわけで、時あたかも世界は何百年に一度という大転換期を迎えておるわけであります。恐らく宮澤総理としては非常に大きな感慨を持っておられると思いますけれども、まずこの点についての総理の感懐をお尋ねしたいと思います。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 田渕委員におかれましても戦前の経験をお持ちでいらっしゃると存じますけれども、私どもは第二次大戦の敗戦を自分でいろんな形で経験をした世代でございます。敗戦とともにこの憲法ができまして、一言で振り返りますならば、本当に軍事大国にならずに立派な国が先輩のお力によってできたということをやはり感謝いたしております。  と同時に、このような経済大国になりまして、戦後のいろいろな自由貿易、もっと基本的には価値観の問題でございますが、日米関係であるとかいろんなことから我が国はいろいろ恩恵を受けて大国になりましたについて、先般のような湾岸危機が起こりましたときに、ただ一方的に平和の受益者であっていいかどうかということを国民が考えられる、私自身もまた同様に考えるような境遇に育ってまいったと思っております。  たまたま時を同じくして、ベルリンの壁が落ちましてからもう二年余りでございますが、まさに米ソの冷戦というものが終わる何百年に一度という大きな時代に際会をして、共産主義が崩壊をする。願わくはそれらの国々が自由主義と自由市場経済に向かって進んでほしいと念願をいたしつつあるわけでございますが、そのような共産体制の崩壊というものは、私はやはり新しい平和秩序がこれから構築をされる時代の始まりであると考えたいと思います。  そして、そのために我々も努力すべきだと思っておりまして、それによりまして今まで膨大な軍備につき込まれておりました資金、資源が開放されて、平和の配当というものが、お互いばかりでなく、殊に南北問題に大きく配当が支払われるならば、我々の長い間の問題、南北問題というものの解決の端緒もそこに見られる。と同時にもう一つ、願わくは国連というものが新しい世界平和秩序の中心の建設者になってほしい。それについても我々は貢献をしなければならない。  長くなりまして申しわけありませんでしたが、一言で申し上げますならば、本当に瓦れきから立ち上がった我が国が、今世界に対していろんな貢献ができるような立場になった。そのような貢献を我々がやはり一生懸命することによって、戦後我々の先輩が築いた我々の国が世界の人々のためになっているという、そういう実践をいたさなければならないということを強く感じております。
  139. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そういう大きな情勢の変化の中で、このPKO法案審議も行われてきたわけであります。私は、このPKO法案審議を聞いておりまして感じたこと、並びに総理への注文を申し上げたいと思います。  まず第一点は、これからの新しい時代への理想というものをはっきり国民に示していただきたい、これが第一点です。  それから第二点は、もう少しこの法案自体の論理の組み立てを国民にわかりやすいものにしてもらいたい。つまり、指揮とか指図とか非常にわかりにくい、あるいは武器の使用とか武力行使とかこれも非常にわかりにくい。新しい時代に向かって日本がこれから進もうとするときに、なぜこんなわかりにくい法案をつくるのかという気がするわけです。なぜかというと、過ぎ去ろうとしておる時代の発想とか論理にどうつじつまを合わせようかということで苦労しておられる、苦肉の策として法案をつくられておる、こういう気がしてならないのであります。したがって、針の穴にラクダを通すような手法とか、ガラス細工というように言われるわけでありますけれども、私は、新しい時代の理想というものがはっきり国民理解できるなちば、もう少し明快な論理の組み立てでそういうことをつくれるのではないか、こういう気がいたします。  そこで私は、冷戦時代が終わろうとしておりますが、ヤルタ体制もいろいろ問題があったけれども、これは一つの時代としてはそれなりの役割を果たしてきたと思うんです。東西の対立の中で、武力の均衡によって大きな戦争は避けられてきた。これは理想的な形ではありません。しかし、一つの時代の役割を果たしてきた。それが今新しい時代に転換しようとしておるときに、これからの新しい国際秩序のあり方というのは少なくともヤルタ体制のときよりはもっと理想に近いものでなくてはならない。そういうあり方というのはどういうものが考えられるか、またそのための具体的な方策としては何が必要か、この点をお伺いしたいと思います。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段に御指摘になりましたことは大変に私どものためになる御忠告と承りました。したがって、決してそれについて弁解を申し上げようという気持ちでこれを申すのではございませんけれども、午前中もいろいろ御議論になりました国連のいわゆるSOPと言われるものとこの法案が目指しておりますところが、いろんな意味で、いろんな点で幾つか違っております。  それは一つには、やはり我々には我々の憲法というものがございますので、我々が国連の平和維持活動に協力するに当たって憲法に違反するような、あるいは憲法に違反する危険を生ずるような事態はできるだけ避けなければならないということを当然のことながら考えております。それがこの法案の中にいろんな形であらわれておるのでございますが、田渕委員の御観点からいえばそれがこの法案をわかりにくくしているということにも多少の関連があるかと存じます。これは決して弁解で申し上げるわけではございません。そういう角度のありますことを御了解いただきたいという意味でございます。  次のお尋ねでございますが、確かにヤルタ体制というものがなくなって、米ソの対立て世界が二つの陣営に分かれているということはある意味で簡単な時代であった。それがなくなったということは、おのおのの国がおのおのの国の選択をするということでございますから、それだけ選択は難しくなっておりますが、ただ、ここで申せること は、共産主義あるいは世界革命を考えていた主義が崩壊をしたということは、これはどの観点から考えても恐らくプラスでございます。  したがって、そういう平和の構築をどうやってやるかということになれば、それは恐らく今アメリカがいかなる意味でも世界唯一の大国であるかもしれません、ソ連がなくなりました後。しかし他方で、あちこちに民族主義が起きましたり、いろんな意味での地域的な利害関係もございます。    〔理事上杉光弘君退席、委員長着席〕 したがって、アメリカが世界の覇権を握るというような形でこの平和は増進されるべきではなくて、やはりそれも大事な力でございますけれども国連というようなものがあって、それが世界の人々、世界の国々の本当の利益の代表になる、そしてアメリカはリーダーでございますから、そのよき一員として世界各国の公平な利益というものを考えていく、福祉を考えていく。やはり私は、ヤルタ体制後の世界の平和の秩序というのはそのように考えていくべきではないか。それに対して我々がどのような貢献をすべきかということを考えていく。  一言だけつけ加えますならば、もとよりそれは余りに理想主義的という御批評があろうと思います。我が国自身は、アジアの国であるとかアメリカとの友好関係であるとか、そういうものを基本的な枠組みとして、なお自分の安全、繁栄を考えていくという要素を決して捨てていいとは思っておりません。そうは思っておりませんが、世界全体の構図としてはただいま申したように考えます。
  141. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、憲法の制約があるということはよく理解しておりますし、また憲法を変えなければならないとも思っておりません。しかし、むしろ憲法というよりも、国会での政府の答弁はそのときばったりで、行き当たりばったりのいろんな解釈をやってそのときどきをすり抜けてきた、そういうものの積み重ねでがんじがらめになっておるんじゃないかと思います。また、その中には時代によって矛盾したことも言われておる。だから私は、その点をやっぱり基本的に検討していくべきではないかと思います。  それから、今回の人的貢献あるいは自衛隊派遣は、日本がお金持になったからそろそろ世界に何か貢献しようというような次元の発想ではないのではないかと私は思うんです。といいますのは、日本は幸いにして戦後半世紀にわたって平和が保たれました。その中で経済的な繁栄も実現することができたわけですけれども、私はむしろこれは非常に幸運であったと思うんです。  日本が今まで平和を維持できた原因は何だとお考えになりますか。
  142. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはいろいろ原因があると思います。  一つは、日米安保体制というもとで、その保護のもとに置かれたということも平和が維持できたことでしょう。しかし、平和というのはただ単に戦争がないというだけじゃありませんから、豊かでなくてはならないということもありましょう。そこで、日本軍事には他国と比べて比較的少ない、GNPの一%程度の歳出で、あとは社会保障とかあるいは経済繁栄のためとか、そういうような財源の配分をやって日本の平和が保たれてきておると私は思っております。
  143. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私もやっぱり日米安保条約、ヤルタ体制の東西対立の中での日米安保条約というもので日本の平和が守られた、その役割は大きいと思います。それからまた、ある人は日本の平和憲法というものをその一つに挙げる方もおられます。  どちらも私は間違っておるとは思いませんけれども、しかしいずれにしても、それは日本の完全な平和ではないわけです。日米安保条約があると戦争に巻き込まれると言った人もおりますが、巻き込まれませんでした。しかし、これは幸運だったからです。もし米ソ戦わば、日本が巻き込まれることは間違いがないわけです。それから平和憲法にしても、憲法の理念は立派だけれども、あれで日本の安全が守られるとは思えない。国際社会憲法に言うような状態にまだ到達していないからであります。したがって、今までの日本の平和の維持というものは決して完全なものではなくて、むしろ幸運によって平和が続いてきたと見なければなりません。  そして、憲法の言う平和とは何かというと、これは憲法の第九条にも書いてありますが、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」、そして前文にも書いてあります「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと」努める。こういう考え方からするならば、やっぱり国際社会というものを正義と秩序が行われる社会にすることによって日本の安全を保つというのが私は憲法の言う理想的な平和だと思うんです。  それで、私は、そういう国際社会をつくるためにはどうすればいいかということを考えた場合に、平和の仕組みだけについて言うと、やはり各国軍事力というものはできるだけ抑制する、その反面、国連とか国際機関の平和維持機能というものを強化していく、そういうことが必要だと思うんです。国連憲章の第一章には国連の目的とか原則が書いてございますけれども国連のこの原則というのは、正義と秩序を基調とする国際平和の実現であります。これは日本憲法で言っていることと同じなんです。そして、その手段として武力による威嚇または武力の行使、個別国家のそういうものは慎むこと、それと同時に平和の維持のための有効な集団的措置をとって、そして国連のそういう行動にはあらゆる協力を行うことということが書いてあります。これが国連の正義と秩序を基調とする国際平和実現のための一つの仕組みなんです。  私は、その中で日本がそれ相応の役割を果たすということがむしろ日本憲法に言う理想的な平和に向かって一歩前進することだ、またこれから新しい時代をつくるというならば、やっぱり新しい時代に向かってのその理想というものを国民に示していかなくてはならない、それが私は政治のリーダーの仕事ではないかと思いますが、総理の御意見を伺いたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに、今言われましたことは憲法が制定されましたときに我々が期待し、そのゆえに憲法が前文にも本文にもそういうことを述べておったのでございますが、その後余りに長い時間そういう事態がございませんでしたために、国連というものを余り大事に考えないあちこちの風潮がございました。しかし、ここに来まして、いわゆる米ソの冷戦後の時代というものは、憲法が考えていたような時代に今本当に到達する可能性が大きく開けてきているというふうに私どもも考えまして、それを促進しなければならないと思います。
  145. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、憲法というものはただ単にそれを消極的に守るだけではいけないのではないか、憲法に示されている理念をどう実現していくか、どう世界に広げるかということが日本国民の使命だと思います。そういう観点に立ってこのPKOの活動についても考えなくてはならないし、またそういう論理の組み立てを国民にわかりやすく説明していただくことが大事ではないかと思います。  したがって、私は、PKO法案審議総理に向かって要請することは、先ほど言いましたように、まず第一は、新しい時代の理想を国民にはっきり示してもらいたい。第二は、国民にわかりやすい論理の組み立てをしてもらいたい。もう一つは、これは民社党が今まで主張してきたことですけれども、シビリアンコントロールを確立してもらいたい。国会承認ということも言っております。  我々はPKO法案については基本的には賛成でありますけれども、やはり国会承認というものをつけてもらいたい。本来なら、PKOの活動が正常に行われるならば必要のないことかもわかりません。しかし、日本一つの特殊な事情があっ て、海外自衛隊を武装して出すというのは初めてのことです。国民も心配があるでしょう。それをシビリアンコントロールでより確実にする。もう一つは、行く自衛隊自身がやっぱり国民の負託を受けて行くんだという認識を持ってもらう。そのためには国権の最高機関、世論の代表である国会が承認をするということは、彼らにそういう安心と勇気を与えると思うんですね。  それからもう一つは、外国に対する配慮、これにもいい効果を与えると思います。アジアの諸国に対しても、こういう歯どめをきちんとつけるということは、彼らに安心感を与えると思います。  したがって、私は、これは自民党でも賛成してくださる方が多いと思いますけれども、この法案に当たって考えていただけることではないかと思いますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このPKO法案の今の世界における、あるいは我が国世界における位置づけにつきましてじゅんじゅんとお話がございまして、まことに同感に存じます。私も所信表明でそのような位置づけをいたそうと努めましたが、ただいまのお話は十分に謹んで承りました。傾聴をいたしました。  それから、シビリアンコントロールにつきましてでございます。政府は、政府案として政府の考えを盛り込んだところでございましたけれども、これにつきまして立法府におかれましてそれぞれの御意見を持たれることは当然のことでございます。三権分立というのはそういうことであろうと存じます。立法府の御意見に対しましては、もとより最大限に尊重いたさなければならないと考えております。
  147. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  148. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 去る六日の質疑において、私は、沖縄県民の犠牲と我慢の上に日本は立派な国際貢献を果たしていると、こう指摘して、こうした沖縄の現実を見ていただくため、総理が沖縄を訪問されるよう要請いたしました。これに対して宮澤総理大臣は、「戦後今日まで日本の安全は実は沖縄の方々の御苦労の上に成り立っている、私はそれを非常に恩義に感じております。我々としてもそれに報いるところがなければならない」と述べられましたね。そしてさらに、「沖縄のために何なりと役に立つことはいたしたい、また一度現地にも行かせていただきたい」と申されました。  宮澤総理大臣に改めて要請いたします。ぜひ沖縄に一度来ていただきたい。そして、時は来年、本土復帰二十年目を迎える基地の島沖縄の現実をつぶさに見ていただき、日本がいかに貢献しているかということを目の当たり見ていただきたい。  総理、来年一月、国会が開かれる前に沖縄を訪問されることをお勧めいたしたいと思いますが、そのお気持ちがございますでしょうか、いかがでしょうか。
  149. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どものように戦前からきょうまで生きてまいりました者としますと、まさに喜屋武委員がおっしゃいましたようなことをそのとおり感じておりまして、先般申し上げましたそのことに全く偽りはございません。今でも深く恩義を感じております。そのことは、先般来日されましたアメリカのコリン・パウエル統幕議長にも率直にお話をしたところでございます。  したがいまして、ただいまおっしゃいましたような、沖縄を一度訪問しないかということについては、私は適当な時期を見てそうさせていただきたいと考えております。一月には少し外交日程がございますので、具体的な日取りを申し上げることができませんが、いつか必ずそういうことをさせていただきたいと思っております。
  150. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひ実現を期待いたします。  宮澤総理大臣は、参議院の質疑において、政府が提出したこのPKO協力法案について国民理解が十分得られていないことを率直に認められました。また総理は、国民の側からすると何か大変に物騒な法律案なのかという印象を持たれる点があるということもみずからお認めになりましたと私は理解いたしております。  政府が何とかして国会を通過させ、自衛隊海外派遣の突破口を開こうとしたこのPKO協力法案は、既に廃案となることが明らかのようであります。それは法案に対する国民の十分な理解が得られないからということでありましょう。それほど単純な理由によるものではございません。自衛隊海外派遣そのものを国民が拒否しているためであります。総理は、この国民の意思のあらわれを厳粛に受けとめるべきであります。そして、我が国国際貢献の真のあり方について、平和憲法にのっとった国民の総意を形成するよう今この時点から努力すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  151. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはやむを得ないことかもしれませんが、国会における御議論がこの法案のいわば問題点と考えられるようなところに集中をいたします。これはやむを得ないことかもしれませんが、そのために国民が、大体普通の場合にこの法案がどういう状況においてどう運営されるかということよりは、ごく極端な場合にこういう法律上の可能性がある、あるいは危険があるのではないかということ、それが、やむを得ないことですが話題になってしまいました結果、この法案そのものが、ごくごく通例に考えておるような事態についての理解が十分でないというのがこの審議経過、私が感じたことでございます。  したがいまして、私としては、これはわかっていただければ決して不安なことではない。我が国自衛隊が何か海外武力行使をするのではないかというようなことは、そうでないことは法案を読んでいただければもう一目瞭然なのでございますけれども、なかなか国民が、それは法案を読んでくださるということも無理なことでございますので、こうやって御議論の機会を重ねていただきまして、忍耐強く国民理解をいただいて、そうすれば必ずこれは賛成をしていただけると考えております。
  152. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 政治の主人公は主権在民であることをお忘れになってはいけません。先ほども委員から述べられましたが、私も含めて、日本の政治家は哲学を持て、特に歴代の総理大臣はこの哲学を堅持してもらいたい。この哲学の欠如から右往左往ということになるでありましょうが、このPKO協力法案でもそうですが、宮澤内閣国民の合意をもっと大事にすべきであります。国民の意思を無視したところに民主的な政治は決して決して実行できるものではございません。このことは宮澤総理が他のだれよりもよく知っておられるはずであります。  それにもかかわりませず、参議院の補正予算審議が終わった段階で、それを待っていたかのごとくに国際貢献税なるものを打ち出したのはどういうことでありましょうか、総理国会審議を避けて政府の思うままに事を進めようとするところに国民は政治不信を募らせるのであります。このような手法は、国民を全く無視した行為であり、決して許すことはできません。厳しく総理の反省を求めて、短い私の舌足らずの質問を終わりたいと思います。
  153. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる冷戦後の時代になりまして、たまたま我が国経済大国になりましたので、今後我が国がなさなければならない国際貢献は非常に大きくなってまいると思います。  その第一は、国連に対するものでございます。  その第二は、従来ODAという形でやってまいりました、これも国際貢献でございますが、ODAにつきましては、御承知のように、援助を受ける国の一人当たり国民所得、二千三百三十五ドルでございますか、そういう制約がございまして、例えば、これは例えばでございますが、今後ソ連に対してどういう援助をするかというような問題が出てまいりました場合には、当然のことながらこれはODAの問題ではございません。そのような新しい援助の問題が出てくる。  また、平和になりますと、地球規模的なあるいは宇宙的ないろいろな命題、例えば科学でありますとか医学でありますとか環境でありますとか、そういう問題について、先進国である我が国が大きな貢献をしなければならないといったような幾つかの国際貢献の必要が生じてまいります。  それについて、我々も財政的に備えるところがなければならないというのは、これは問題意識としては私はまさに正しい問題意識であろうと存じます。ただ、現在の我が国財政は、御承知のように、極めて難しい状態にございます。そういう中で、果たしてそのような問題にどのような着手がまずできるであろうかというようなことを私どもの党内の税制調査会等々において検討しておられ、また大蔵大臣を初め各大臣も検討しておられるというのがただいまの段階でございます。  御発言の趣旨は、十分注意をして承りました。
  154. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 暫時休憩いたします。    午後五時二十六分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕      ―――――・―――――