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1991-12-06 第122回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月六日(金曜日)    午前十一時二十八分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十二月五日     辞任         補欠選任      広中和歌子君     針生 雄吉君  十二月六日     辞任         補欠選任      後藤 正夫君     須藤良太郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。    委員長          下条進一郎君    理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 佐藤 三吾君                 谷畑  孝君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君    委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 野村 五男君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 森山 眞弓君                 穐山  篤君                 翫  正敏君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 久保田真苗君                 瀬谷 英行君                 竹村 泰子君                 田  英夫君                 渕上 貞雄君                 細谷 昭雄君                 太田 淳夫君                 中川 嘉美君                 針生 雄吉君                 立木  洋君                 磯村  修君                 猪木 寛至君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  篠崎 年子君        発  議  者  堂本 暁子君        発  議  者  角田 義一君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        法 務 大 臣  田原  隆君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣  羽田  孜君        文 部 大 臣  鳩山 邦夫君        厚 生 大 臣  山下 徳夫君        農林水産大臣   田名部匡省君        通商産業大臣   渡部 恒三君        運 輸 大 臣  奥田 敬和君        郵 政 大 臣  渡辺 秀央君        労 働 大 臣  近藤 鉄雄君        建 設 大 臣  山崎  拓君        自 治 大 臣        国 務 大 臣  塩川正十郎君        (国家公安委員        委員長)        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  岩崎 純三君        (総務庁長官)        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      伊江 朝雄君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)        国務 大 臣        (経済企画庁長  野田  毅君        官)        国 務 大 臣        (科学技術庁長  谷川 寛三君        官)        国 務 大 臣  中村正三郎君        (環境庁長官)        国 務 大 臣  東家 嘉幸君        (国土庁長官)    政府委員        内閣官房長官  近藤 元次君        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        防衛庁参事官   内田 勝久君        防衛庁参事官   金森 仁作君        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        防衛庁装備局長  関   收君        防衛施設庁総務  竹下  昭君        部長        外務大臣官房長  佐藤 嘉恭君        外務大臣官房審  橋本  宏君        議官        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省北米局長  松浦晃一郎君        外務省中南米局  瀬木 博基君        長        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        外務省情報調査  佐藤 行雄君        局長        大蔵省主計局次  田波 耕治君        長        大蔵省主税局長  濱本 英輔君        文部大臣官房長  野崎  弘君        文部省生涯学習  内田 弘保君        局長        文部省初等中等  坂元 弘直君        教育局長        厚生大臣官房総  大西 孝夫君        務審議官        運輸大臣官房総        務審議官     土坂 泰敏君        兼貨物流通本部        長        海上保安庁次長  小和田 統君        自治省行政局公  秋本 敏文君        務員部長        消防庁次長    渡辺  明君    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○特別委員長辞任及び補欠選任の件 ○理事補欠選任の件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出、第百二十  二回国会衆議院送付) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出、第  百二十二回国会衆議院送付) ○国際平和協力活動等に関する法律案野田哲君  外四名発議)     ―――――――――――――    〔理事岡野裕委員長席に着く〕
  2. 岡野裕

    理事岡野裕君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  後藤委員長から委員長辞任申し出がございましたので、私、岡野裕暫時委員長の職務を行います。  委員長辞任の件についてお諮りいたします。  後藤委員長から、文書をもって、都合により委員長辞任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡野裕

    理事岡野裕君) 御異議ないと認めます。よって、辞任を許可することに決定いたしました。  これより委員長補欠選任を行います。  つきましては、選任の方法はいかがいたしましょうか。
  4. 矢田部理

    矢田部理君 委員長選任は、主宰者指名に一任することの動議提出いたします。
  5. 岡野裕

    理事岡野裕君) ただいまの矢田部君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 岡野裕

    理事岡野裕君) 御異議ないと認めます。  それでは、委員長下条進一郎君を指名いたします。(拍手)     ―――――――――――――    〔下条進一郎委員長席に着く〕
  7. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) この際、一言ごあいさつを申し上げます。  ただいま委員各位の御推挙によりまして委員長の重責を担うことになりました下条進一郎でございます。  微力ではございますが、委員各位の御指導、御協力を賜りまして、厳正かつ公平無私、円満に委員会の運営を行ってまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  8. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事藤井孝男君を指名いたします。     ―――――――――――――
  10. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力活動等に関する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 田英夫

    田英夫君 私は、質問に入ります前に、委員長のお許しをいただいて御紹介をしたい方があります。  きょう、来日中のフィリピンタニャーダ上院議員が傍聴に来ておられますので、どうぞ皆さん拍手でお迎えをいただきたいと思います。(拍手)  ありがとうございました。  実は、タニャーダ上院議員は、フィリピンで去る三日に日本のこのPKO法案反対する決議案上院提出され、その足でおととい来日をされ、きのうはアジア太平洋平和と軍縮のシンポジウムに出席をされたわけでありますが、きょう私は、主としてこのPKO法案に対するアジア諸国反応を取り上げたいと思います。  その意味で、かつて日本軍侵略を受けた代表的な国の一つであるフィリピン議員の、つまり国民皆さん気持ちを代表する立場にあるタニャーダ上院議員参考人として出席をいただくということをお願いしたのでありますが、残念ながら理事会において自民党の皆さん反対で実現いたしませんでした。  そこで、フィリピン国民皆さんの声を代表されるタニャーダ上院議員のお気持ちを既に私がお聞きしておりますので、最初にタニャーダさんが一昨日、記者会見で述べられた部分を簡単にまとめたものを朗読したいと思います。   フィリピン人々の憂慮の念をあらわすため  に決議案を出した。去る十二月三日上院提出  をした。もし日本PKO法案が可決される  と、日本政策に基本的な変化が生ずると思  う。つまり平和主義から軍国主義に変わってし  まうのではないかと思う。日本軍事大国に  なってしまうのではないかと第二次世界大戦の  経験からフィリピン人々は心配しているの  だ。   日本憲法第九条をよく知っている。今回P  KO法案が可決されると、次は第九条を改正す  るのではないかと憂慮している。それはアジア  の不安定につながるし、日本は本来文民によっ  てアジア国々を支援してほしい。   最近、多くのアジア国会議員あるいは政府  の人々などが日本軍国主義復活を心配してい  る。私は、この人々と手を携えて、一つの運動  としてこれに参加をしていきたい。   このPKO法案世界の流れに逆らってい  る。日本軍事予算は今や世界第三位になっ  た。アメリカの第七艦隊よりも多くの爆撃機を  日本は持っている。日本はなぜ世界軍縮、平  和の方向に向かっているときにそれに逆らうよ  うな政策をとるのか、問題だ。アメリカの要求  に対してノーと言える日本になってほしい。   今回、私が提出したPKO法案反対決議案  は必ず上院で可決される。  これが一昨日、タニャーダ上院議員日本人の記者団に対して会見の席で述べられた話の要約であります。  そこで、きょうはアジア諸国反応を取り上げていきたいと思います。  まず、堂本議員に伺いたいと思いますが、御承知の限りで結構ですから、アジア諸国のそうした動きを知っている限り御紹介いただきたいと思います。
  12. 堂本暁子

    委員以外の議員堂本暁子君) 社会党護憲共同法案発議者堂本暁子です。  まず、中国の問題から御報告したいと思いますが、私は、教科書問題が起こりましたとき、侵略か進攻かというときに、ちょうど北京でその当時は記者として取材に当たっておりました。中国の方は当時大変寡黙で、マイクを差し出してもほとんど答えていただけなかったんですが、この問題だけに関しては、父は日本軍に殺されたとか、私の家も焼かれましたとか、南京から逃れてくる間に途中で大勢の人が死にましたと、畑で働いているおじいさんとか、それから孫の守りをしているおばあさんとか通行人の人、そして若者までが、実は私の祖父母から聞いたのですがというよ うなことで、口々に訴えました。私は、戦場になった国というのは記憶にだけではなく、かくも今もそういった侵略歴史がしみついているのだということを改めてそのときに認識いたしました。  私たちが今平和のための貢献を考えますときに、一番アジアで念頭に置かなければいけないのは、アジア国々指導者ではなく、こういった大勢大衆だと思います。  次に、フィリピンのレイテ島でございます。激戦地になったところです。四年前になりますが、意識調査をいたしました。そのときに、日本の印象という項目を設けました。そこで、もちろん経済大国ですとか技術といったようなものもございました。しかし同時に、そこに述べられていたのは侵略という言葉であり、このときも大変驚きました。  そして、つい最近になりますけれども新聞がございます。これは一つは香港の新聞です。サウスチャイナ・モーニング・ポストという新聞ですけれども、この新聞に書いてあるところがやはりこういうふうに日本が見られているということの一つのあかしたと存じますが、六十年前に日本アジア太平洋侵略した目的アジア太平洋の資源を確保することにあった。今日、日本は平和的な経済侵略によってこの目的を達成することができた。よって現在、日本軍事化目的は、その経済的な関心、そして投資をいかに守るかにある。これは新聞記事の内容です。私たちの土地が日本占領下に置かれた間、親の苦しみを、そして日本侵略の残虐な歴史を繰り返さないためにも、私たちは、アジア若者日本軍国主義を許すわけにはいかない。したがって、去年のようにPKO法案を倒そうとしている日本人たちを支援していくようなことが書いてございます。これは私が言っているのではなくて、新聞記事がこういうような報道をしているということです。  短くいたしますが、これは韓国新聞、十一月十八日のものでございます。京郷新聞というのでしょうか、PKO法案は要するに日本の正規の軍隊である自衛隊海外派遣することができるようにした法案だというふうに報じております。  このように、アジアの危惧というのは、いろいろな形で今大衆の中にやはり根づいているというふうに私は思います。
  13. 田英夫

    田英夫君 今の話を聞かれ、また先ほどのタニャーダ上院議員の発言、やじがありましたが、私が申し上げた「爆撃機」というのは駆逐艦です、艦隊ですから。  それで、宮澤総理、今の話を聞かれてどういう御心境か、伺っておきたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国及び我が国民が過去におきまして、アジア太平洋を初めとする関係地域方々に多大な苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚いたしております。二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないことを我が国民は決意しておりますし、そうした考え方に従いまして戦後一貫して、平和国家としての道を歩むとともに、国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献をしてまいったところでございます。それによりまして我々が過去に御迷惑をかけた方々に対する我々の新しい平和と繁栄への貢献のあかしといたしたいと我々は考えてきたわけでございます。  我が国経済大国になりまして、この激変の世界の中にあって我が国影響を与えないで済むようなことは、ほとんど一つもないようないわば大きな力を持つようになりましたが、なかんずく昨年の湾岸戦争におきまして、米ソの冷戦の解消ということもございまして、国際連合がこの事態の前面に出て処理に当たったということは我が国民に対して非常に大きな感銘と影響を与えました。すなわち、我々としては、我々の憲法が考えていた国連というものが世界の本当の平和の中心になる、そういう状況が今現実になろうとしているということについて、そういう世界の中で日本国民は果たしてこのまま何もそれに貢献しなくてもいいのであろうかということが広く国内に議論をせられ、また海外からもそういう批判が出てまいりました。  その結果、我々としては、税を起こしまして財政的な貢献をいたしましたが、それだけでは不十分である。もとよりあの場合、多国籍軍に我々が参加をするということはこれはできないことでございますけれども、何か我々のできる範囲でやはり人的な貢献をしなければならない。それは平和の道を歩いてきた我々のこの新しい世界平和秩序への、構築されようとする平和秩序への貢献であるというふうに多くの国民が考えられるようになりました。殊に、その間、我が自衛隊湾岸地方の機雷の掃海に当たったこともございまして、国民の間に我々がなし得る貢献ということについての意識は非常に高まってまいったと思います。  このたび御審議を願っておりますいわゆるPKO法案国連平和維持活動に対する我々の貢献に関する法案は、このような我々に与えられました憲法の制約の中で、しかも、我々が国連世界平和維持に何ができるかということを考え、そうして、この法案によってそれを実現しようとするものでございます。  ただいま堂本議員さんからも諸国反応についてお話がございましたが、この法案そのもの国内において十分に理解されていないうらみもございます。それはやはり、問題点が当然のことながら強く指摘をせられますので、この国連平和維持活動についての我々の参加というものは、本来非武力的なものであり、本来非強制的なものであって、国連説得と権威によって行われる、その活動に我々もいわば武器使用を最小限にとどめ、むしろ説得努力、中立的な努力によってそれをしよう、これこそはまさしく我々の憲法が定めておる国際平和への貢献であるということについて必ずしも海外においてそのような御認識がない。これは国内においても十分でございませんから無理からぬことでございますけれども、そういう意味では我々の真意はそういうところにある。むしろ、日本国民がこれから世界平和のために国連中心に積極的にこのような貢献をするということを、この法案はその道を示し、その道を開こうとしておるものであります。  タニャーダ議員におかれましては、幸い我が国を御訪問されました。どうぞ我々のこの法案審議を通じまして、私どもの意のあるところを御理解願った上で御帰国なされるならば幸せと存じます。
  15. 田英夫

    田英夫君 今、宮澤さんのお話を伺っていても、総理はわかっておられないなあと思わざるを得ません。つまり、過去のあの誤った侵略戦争、そして朝鮮半島に対する三十六年に及ぶ不当な植民地支配ということに対する謝罪の念というか、反省の念、これが根本になければならないと思います。この点については後でさらに申し上げます。  今の総理お話を伺っていて、自衛隊を出すということに対する過去の戦争侵略植民地支配との絡みの中で、アジア皆さんかどう思っておられるかということに対する認識が足りない、これが一つ根本にあると言わざるを得ないと思います。  そこで、野田議員にお尋ねをいたしますが、社会党が提案をされたPKO法案自衛隊を全く排除している。この点が政府案根本的に違う点でありますが、もちろん憲法第九条との絡みの中で考えられたということは当然でありますが、もう一つアジアのことを考えられたのではないかと思いますが、発議者野田議員のそのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  16. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) ただいま田議員から御質問になりましたことについてお答えをいたします。  私ども社会党護憲共同として、今回、非軍事民生文民原則による国際貢献のための法律案提出いたしましたのは、二つの基本的な考え方を持っているからであります。  まず一つは、自衛隊が発足して三十七年であります。その前身の警察予備隊保安隊の期間を入れると四十一年になります。この四十一年の間 に、当初七万五千人で発足したものが、今は定員ではちょうど四倍の三十万になっています。そして、その装備予算額世界で有数と言われるまでに大きくなっているわけであります。このように年々肥大化することに対する私ども懸念に対して、政府国会審議の中では繰り返し専守防衛のためのものだ、このように説明をし続けてきたわけであります。その専守防衛のためと政府が説明したものが、今や参議院の決議までも無視をして海外派遣されようとしていることであります。政府憲法解釈がこじつけにこじつけを重ねてこうなってきたものであります。もしこの法律が成立をした場合には、次に懸念をされるのは、今度は海外での自衛隊活動範囲あるいは武器使用拡大解釈であります。私どもは、このような形でなし崩しに憲法第九条が失われることを恐れ、非軍事民生文民、この原則に徹した貢献策を提案したものであります。  第二点は、日本アジアにおける関係についてでありますけれども、まず私どもが考えていかなければならないのは、国民大衆レベルでの近隣諸国との友好関係をつくることが今一番重要なことであると考えているからであります。政府は、近隣諸国政府首脳と接触をして理解を求めようとしておりますけれどもアジアの各地の日本大使館に対する抗議の行動があることは、依然として国民大衆レベルに強い不信感があることを示しています。かつての侵略の痛みは、日本からの経済援助だけで払拭できるものではありません。平和国家日本として、国民大衆レベルでの友好関係を築くことに我々は実を示すことが真の友好の道であると考えているからであります。  以上、お答えをいたします。
  17. 田英夫

    田英夫君 これから順次各国の具体的な反応に触れながら質問をしたいと思いますが、先ほど堂本議員も言われましたが、隣国の韓国反応、実は私は韓国に多くの友人を持っておりますが、その人たちと話し合ってみると、今韓国では政府も与党も野党も、いわゆる在野勢力学生諸君もみんなこぞってこのPKO法案による自衛隊海外派遣反対をしている。あの激しい行動をする学生諸君が今回は静かじゃないかということを私も率直に申しましたら、いや、みんな反対しているから、その意味では韓国内は一致しているんだ、そのうちに、もし可決されるというようなことがあったら、学生諸君日本大使館にデモをするというようなことは起こるかもしれない、こういうことを言っておりました。先ほど堂本議員も取り上げられた京郷新聞という新聞は、韓国ではいわば保守的な新聞一つとして著名であります。先日の衆議院の委員会での強行採決について、「社会党が肉弾阻止する中 強行」と、こういう見出しかついている。  そこで、その保守的な新聞の解説者が、つまり論説委員が解説をしている部分に韓国皆さん気持ちが率直に出ていると思いますので、一、二紹介をいたしますが、今回のPKO法案を通じて、日本の安保・防衛論争の上でタブーとされたものが壊されつつある。この間の論争では、今までは徴兵制、核武装、海外派兵を三大タブーとみなしてきたが、PKO法案の成立はそのタブーの一角を大きく壊しつつある。自衛隊海外派遣韓国の保守的な新聞はこのように取り上げています。  さらに、中国反応は、これはもう皆さんも御存じのとおりでありますが、先日も公明党の石田委員長に対して中国の首脳は、自衛隊海外派遣は非常に敏感な問題だから慎重に扱ってほしいということで、公明党の石田委員長の理解をしてほしいという発言に対して、いわばノーと、こういう発言があったのは御存じのとおりです。江沢民総書記その他幹部の皆さんも同様の発言を繰り返している。しかし、なぜかさすがに指導者皆さんは余り決定的なといいますか、はっきりと表現をしておられませんので、私は十月末に北京に行きまして、徐敦信外務次官と時間をかけて話し合いました。彼は駐日公使もしたことがありますから日本語も達者ですし、御存じの方が多いと思いますが、その三時間に及ぶ話の中でPKOの問題に触れましたら、私の日本語では間違うといけませんからこの部分だけは中国語で話させてくださいと言って、さまざまな問題に触れて意見を交換しました。結論からいえば、中国自衛隊海外派遣されることに反対でありますと明快に申しております。そして、もし日本自衛隊を特にアジアに出すようなことになれば、日本アジアの中で大変不利な立場になるでしょう。私は内政干渉をするつもりはありませんが、古い友人として申し上げます。つまり、私に対して申し上げます。こういうことを言って、日本はその経済力、技術力によって世界貢献をしてほしい、これが中国の基本的な考え方です。こういうことを言っております。  まさに、本音がこれだというふうに私は思いました。今の韓国中国のことを御紹介いたしましたが、外務大臣、このことについてどう思われますか。
  18. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 日本のかつての軍隊がアジアにおいて多大の人的、物的被害を与えたという過去がございますから、大変神経質であるということは、私は考えられることだと存じます。しかしながら、日本自衛隊の性格というようなことについてまだおわかりにならない方もございますし、今回の法案の内容を日本国民すらよくまだわからないということでこれ議論をしているわけです。ですから、これの議論を深めることによって、なるほどということがわかっていただければいいわけです。  当然に、これは国連の要請がなきゃやらぬわけですから、国連の中で常任理事国が一つでも反対をするという場合にはやらぬわけですから、最初から出動はあり得ない。それからもう一つは、問い合わせをしますから、当事国が賛成するというか、来てもらって結構ですよと、同意をしなければ、それはもう要りませんと言えば行かないわけです。だからもう実際、アジアの中で今どこに行くということを決めているわけではもちろんありませんが、それは来てくださいというような状況でなければ行かないんですよ。それから、仮に特定の国がぜひ来てくださいと言っても、アジアにおける場合は、そのすぐ周辺の国が絶対反対だというようなことを政府が言うような状態のときは、当然にそういうことを参考にして政府は慎重に取り扱うわけでありますから、私は、御心配は要らないと。  それから中身の問題が、難民の救済とか食糧の輸送とか通信とか運搬とか、そういうものもお手伝いします、そういうことなんでありまして、中身を正しく知ってもらうということが非常に大事だと私は思っております。
  19. 田英夫

    田英夫君 外務大臣の言われたことは、実は私も、要請されなければ行かないんだからというところではそうだろうと思います。つまり、アジアの国は日本自衛隊は来てほしくない、派遣反対だということでありますから、例えばカンボジアで言えば、当事者であるカンボジアの人たち日本から自衛隊が行こうとしてもお断りいたしますと。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)そんなことないと、そういう声があるけれども、私は去る十月にカンボジアの指導者に会ってきました。直接会って話を聞いた人のことを聞かないで、そんなことはないというやじはしない方がいいですよ。  日本は食糧、医療、通信、交通、選挙監視など民生安定の部分で協力をしてほしい。十三年に及ぶ戦争のためにカンボジアは大変苦しい状態になっている。その中でカンボジアもまた過去に日本の軍隊の靴が踏みにじった。そういう我々の国土のことを考えると、カンボジアの国民は今や事実上の軍隊である日本自衛隊に来てもらおうとは思わない。これがカンボジアのリーダーの話です。そして今、日本から次々に民間の人たちがそうした実情を見ようとしてプノンペンへ行こうとしていることは御存じのとおりであります。  後でカンボジアの問題については集中的にお尋ねをしたいと思いますけれども、私はこうしたこ とをずっと見できますと、一番根源にあるのは、先ほどの総理のお言葉、残念ながら過去の戦争の責任、植民地支配の責任、これに対する反省と謝罪という点で極めて不十分である、こう言わざるを得ないと思います。そして、その根源は一体どこにあるんだろうか、こう常に考えているのでありますが、それは過去のそうした日本の誤りに対して、戦争を知らない若い世代に、戦後生まれの人たちに正しい歴史の教育をしてこなかったからではないかと思わざるを得ないのです。  皆さん既に教科書問題というのは御存じのとおりです。自民党の何人かの方の発言がアジア人たちの心を逆なでにしたあの事件です。そういう中で、私もあの花岡事件というのに関係をいたしました。閣僚は皆さん御存じだと思いますが、一人一人御存じですかと聞くのは失礼ですからお聞きはいたしませんけれども、終戦の年の六月三十日、中国から強制連行で連れてこられた人たちおよそ千人が、余りに過酷な人権無視の重労働に反発をして決起して六百数十人が殺されたという秋田県大館での事件であります。今、その生き残った人たちが見つかったので、毎年数人ずつお呼びをして慰霊祭に参加をしていただいています。これには自民党の中でも何人かの方が協力をしておられますけれども、こうした正しい歴史教育が日本では行われていない。  こういう例もありました。昨年の夏のことです。韓国の高校生が二十人ほど修学旅行という形で日本に来て、あの長野県の松代を見学したんですね。年配の方は御存じでしょう。松代といえば大本営を移すために朝鮮の人たちを強制連行で連れてきて穴を掘った。そのために多くの朝鮮の人たちが死んでいった。極めて過酷な労働を強いたのであります。しかも、その強制連行は昭和十七年、一九四二年、東条内閣が閣議決定によって決めたことですね。まさに日本政府の責任ですよ。そして多くの人たちが死んでいった。韓国ではこのことを高校、中学の歴史の中でもきちんと教えておりますから、韓国の高校生はそれを知っていた。そして、日本に来て松代に行ったのであります。その後東京に来て、その二十人の高校生が私に口々にいろいろ訴えた中でこういうことがありました。  松代の近くの日本の高校生と交流をした。その交流自体は大変いいことだった。気持ちがよかった。しかし、話しているうちに、松代の近くの長野県の高校生が松代のその歴史を知らないということに気がついて本当にがっかりしましたと口々に言っておりましたが――よく聞きなさいよ、肝に銘じて。それは日本の教育が松代のようなことを教えていないからじゃないですか。韓国の人は、韓国の高校生は知っていて、松代近くの高校生がどうして知らないんですか。  文部大臣、いかがですか。
  20. 鳩山邦夫

    国務大臣(鳩山邦夫君) 松代という地域でどういう教育がなされているか、授業がなされているかは私は存じ上げておりませんが、しかしながら、先生御承知のとおり、昭和五十七年ごろにいろいろ教科書の問題があって、官房長官談話あるいは文部大臣談話を出して、教科書の検定基準まで変えて国際協調、国際理解を取り入れようということで、例えば学校図書の社会科、政府は多くの朝鮮の人々中国人々を強制的に日本に連れてきて炭鉱などで激しい労働につかせることがありましたというような教科書の記述も確かにそういうとき以来入るようになったわけでありますし、今回の新しい学習指導要領の改訂においても、そのような国際理解や国際協調という観点で教科書をつくるように指導をいたしておるところでございます。  先生のおっしゃる趣旨は私わからないではありませんが、ただ歴史というものは非常に帰納的な学問であって、例えば二次方程式ax2+bx+c=〇を解けといえばx=-b±√(b2-4ac)/2a以外はない。これは世界どこでも同じ教育方法をとることが可能だろうと思うんですが、やはりそれぞれの国にはそれぞれの国の固有の歴史というのがあって、アメリカはUSヒストリーを教える、中国中国史を教える、韓国の方は韓国のことを教える、日本日本歴史を教えるということで、日本歴史について現在の教科書の制度というものは、歴史だけではありませんが、民間の方に自由に記述をしていただいて、学習指導要領に準拠しているかどうかということで検定をするという、この仕組みは国定教科書よりも私ははるかにすぐれたものではないだろうかと思っております。  なお、近・現代史というのを教えていないという批判がしばしばあるんですが、ここに高校の山川出版の教科書がございますが、三百六十ページの日本史の教科書で大体四割が近・現代史でございます。例えば、足利尊氏というのがこの三百六十ページの教科書で初めの百ページ目ぐらいに出てくるわけですから、それから考えますと、いわゆる近・現代史の分量が非常に多いということを御理解いただけると思うわけでございます。  先生の御質問の趣旨はわかりますが、教科書はかなりいいものができているとお考えをいただきたいと思いますし、二十二世紀とか二十三世紀の日本歴史の教科書があったとすれば、その二十二、三世紀の歴史の教科書の近・現代史の部分に、二十世紀の前半には近隣アジア諸国に迷惑をかけたこともあったけれども、二十世紀の後半に我が国はPKOへの積極的な参加をするといういい決定をして、それで国際貢献がなされるようになって日本は尊敬されるようになったというような記述が将来教科書に書かれるといいなあと考えております。
  21. 田英夫

    田英夫君 今の鳩山文部大臣のお話を聞いていて、私は大変危惧をいたします。鳩山文部大臣のおじいさんですか、かつての鳩山文部大臣のそのころから以降、日本が次第に軍国主義への道を強めていった、そういうことを今聞きながら想起いたしました。そうならなければいいなと、今の文部大臣である鳩山邦夫さんがそういうお考えを持っておられていいのかなと、私は先輩として危惧をいたします。  そういう意味で、宮澤総理も私よりやや先輩でありますが、渡辺外務大臣は私と同年だと思います。そうしたこの辺の世代は今反省しなくちゃいかぬのじゃないでしょうか。戦争が終わって敗戦ぼけであったことは事実でしょう。私も自分の家庭で子供たち戦争のことを語るのは何となくおっくうであったことも事実です。そうしたいわゆる戦争体験世代が、戦後の教育の中できちんと自分たちの体験を反省しながら、これから若い人たちにその戦争の反省をきっちりと教育するという体制をとらなかった。これは我々いわば大正世代の、明治を含めてですが、反省をしなければならない点ではないか。今若い、まさにこの閣僚の中でも一番お若いであろう鳩山さんのお話を聞きながら改めてその感を深くいたします。こういうままでいいだろうか。(「いいよ」と呼ぶ者あり)そういうことで、今のやじのような気持ちでいるから日本がだめなんじゃないですか。  宮澤さん、いかがですか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこは大変私は難しいところだと思います。  かってそういう戦争を私も経験した時代の人間でございますから、いろいろなことを見たり聞いたりもしておりました。そういうことについてのいわば苦しみを受けられた国々、そういう国々人々から寄せられておる批判、あるいは我々に対する何といいますか、ある場合には憎悪でもあろうと思います。それは十分に理解ができますから、先ほど申しましたような反省を国としてもいたしておるわけでございますし、また先ほど文部大臣の言われました教科書問題、学習指導要領等々を変えてまいりました。その官房長官談話を出しましたのは実は私自身でございますので、その辺のこともよくわかっております。それはまさに語り継ぎ継ぎしていかなければならない、繰り返してはならない我々の体験でございます。  と同時に、そういう時代からほぼ五十年がたって、そして我々がこういう言ってみれば豊かな国になった。そういう豊かな国になって、殊に国連 というようなものが世界の平和の中心になろうとしているときに、我々は何にもしなくていいのか。金を出せばそれでいいのか。過去において苦い経験をいたしましたから、それを繰り返してはならないということは、これは断じて忘れてならないことでございますけれども、かといって国連中心になってこれから世界の平和が構築されようとするときに、我々は金さえ出せばいいのか、それで済むのかというところは、やはりこれから日本を背負っていかなければならない若い世代にとっては非常に大事な問題なのであろうと私は思います。  一国平和主義というような短絡したことを私は言おうとは思いませんけれども、しかし日本が自分だけ豊かであるということについて、ここまで豊かになりますと、これから日本を背負っていく世代の人々がやはり世界への貢献というものを考えるようになることは私は自然なことであろう。これが今こういう形で私ども貢献に道を開く、それは人的になし得ることはこういうことであるということを御審議願っておるのであって、そのこと自身は過去のそういう経験を我々が忘れるとかあるいは否定するとかいうことと全く違うことだと思います。
  23. 田英夫

    田英夫君 今、総理がおっしゃいましたけれども社会党案、さっき野田議員が説明をされましたが、根本的に違うところというのは自衛隊を入れるか入れないかという問題です。社会党案も人的貢献をしないと言っているのではありません。むしろ、その根幹は文民による人的貢献アジア人たちが、先ほど幾つか紹介をいたしましたが、中国もカンボジアも韓国もみんおそうですよ。日本はその経済力と技術力を生かして人的な貢献をそういう意味文民によってやってもらいたい。まさに社会党案はそれとぴったり合っている。政府案自衛隊を加えたことによってアジア人たちに猛反発を受けているということをお考えいただきたい。  その根本にあるのは、先ほどから繰り返して申し上げているように、正しい教育が行われてこなかったからではないか。鳩山文部大臣だけを取り上げるつもりはありませんけれども、今自民党の中でいわゆる小沢調査会があって、報道されるところでは、やがてそれは国連軍とか多国籍軍への自衛隊参加ということまでつながるのではないか、そうすべきだという方向へ小沢調査会は行こうとしているのではないかと報道されている。そういう小沢さんもまた戦後に教育を受けられた若い世代ですよ。  宮澤さんが総理大臣をやり、渡辺さんが外務大臣をやっておられる間に、その世代の人たちが反省を込めて、日本が本当に平和な正しい方向へ行くように、ぜひともこのPKO法案を引っ込めて、そして改めて考え直して日本を本当に正しい方向へ行くようにしていただきたい、こう申し上げざるを得ません。  次に、全く別のことですが、先ほど申し上げたカンボジアの問題とPKOとを考えてみたいと思います。  政府は、今和平が成るうとしているカンボジアに対して、もしこのPKO法案が成立したならば、まず自衛隊を送るところはカンボジアだということがよく言われますが、これは事実でしょうか。どなたでも結構です。
  24. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そういうことは決まっておりません。先ほどおっしゃったように、好まれないところへこちらが押しかけていくという筋合いのものではございませんから。ただ、一番大事なところですから、そういう点で喜ばれるところに行くということで、カンボジアの問題はまだ決まっておりません。まだ法案も決まっていないし、向こうからそういうような要請があるかどうかもわかりませんので、白紙であります。
  25. 田英夫

    田英夫君 防衛庁長官に伺いますが、新聞の報道によりますと、既に防衛庁はこの法案が成立したときのことを考えて、訓練のためにスウェーデンの北欧待機軍の訓練所に二十人の自衛官を送るとか、いろいろカンボジア派遣に備えて準備をしておられるということが言われておりますが、これは事実でしょうか。
  26. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 当法案がこの国会で審議されております上で、私どもといたしましては、これが実施の段階におきまして重要な任務を帯びるわけでございますので、したがいまして英語訓練その他、これはPKOだけの訓練ではございませんけれども、日米の関係その他を考慮いたしますと大変重要な事柄でございますから、そういう点にはより力を入れてやっております。しかし、今先生のおっしゃられたように、北欧等におきまして二十人の要員を派遣するとかなんとかいうような交渉等は一切いたしておりません。
  27. 田英夫

    田英夫君 私は、実はカンボジアに四回ほど行ったことがあります。それもプノンペンではなくて戦場に行ったのでありますが、最初に行きましたときは、まさに大砲の音が聞こえてくるようなところに行きました。そのときは自民党の方も一人一緒で、私と二人で行ったんですが、宮澤さんの方の宏池会の方で、大臣も二回やっておられますから、お名前は申し上げませんが、幹部の方と言っていいでしょう。ですから、その方はカンボジアの実態を私同様に御存じです。  これは防衛庁長官にむしろ警告を込めて申し上げたいんですけれども、私どもは、バンコクから車で徹夜で走りましていつ国境を越えたかわからないような状態の中で、ジープに乗りかえ、さらにそのジープも登れなくなった山を徒歩で行きました。高原のようなところでカンボジア三派の幹部に会ったわけであります。  そういう体験からしますと、つまり山を登っていくときは人が一人通れるほどの道がジャングルの中についている。この道から絶対に外れないでください、ああいうものがありますよと案内のカンボジアの人が言ってくれたんですが、それはいわゆるゲリラ兵器です。人が一人すぽっと落ちるような二、三メートルの深さのその下から、竹を鋭くとがらせたものが十本ぐらい出ている。それからジャングルの上を見ると、太さ直径一メートル近い、長さ五、六メートルの倒木にやはり同じように竹をとがらしたものが埋めてある。それがつるでつるされていて、そのつるが下に来てそれを草の中に隠してありますが、それをけっ飛ばすとその大きな木が落ちてくる、十人ぐらいが死ぬんだと言っていました。  こういうゲリラ兵器、かつてベトナムがアメリカ軍に対して使ったそうしたゲリラ兵器、それが今皮肉にもカンボジアによって設置されて、侵攻したベトナム軍がそれによってやられている。こうい状態を目の前で見ました。  もし自衛隊がカンボジアへ派遣されて、地雷を撤去するということをよく言われますが、もちろん地雷を撤去することも仕事の一つになるかもしれません。しかし、カンボジアの地雷は自衛隊が想定をしている近代的な地雷だけではない、たくさんの種類。プラスチック製の地雷などはあの地雷探知器でやっても発見できない。こういうことです。そういうこともぜひ現地の様子を想定してお考えいただかないと、さあPKO法案ができたからいよいよカンボジアだと、こういうことにはならない。このことを申し上げておきたい。  また、今回既にカンボジア先遣隊、UNAMICと呼ばれておりますが、先遣隊が二百六十八人プノンペンの現地へ行っております。そして、その司令はフランスの人ですが、この人は記者会見で、停戦監視団であるけれども武装をする、カンボジアでは武装をします、こう言っております。したがって、PKFと停戦監視団との区別というのは実は国連の規定上そんなに定かではないわけです、何も国連の憲章で決まっているわけじゃありませんから。だから、PKFはいけないけれども、武装をしていない停戦監視団ならいいじゃないかというような議論がよくありますけれども、これは全くの間違いであります。今回のカンボジアは武装をするということを司令が既に表明している。このことも考慮の一つに入れなければならないでしょう。  きのうから矢田部委員が申し上げたような、あ あした武装をした場合のさまざまなトラブルが、指揮命令系統が二つに重なっているというようなことを含めて、そういう状態の中でカンボジアに行けばすぐにそうした混乱が起こるおそれがある。おまけに政治的にも四派の間は、御存じのとおり、いまだに完全に和平が気持ちの上でまで成立しているわけではありませんから、さあできたからカンボジアへということは絶対にあってはならないと思いますが、防衛庁長官、いかがですか。
  28. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生が現地に行かれましての御経験を交えての御指摘でございまして、私も大変これを慎重に拝聴させていただきました。  私どもは、自衛隊がこの平和任務につくに際しましても、事前の訓練、準備、これはもう本当に必要だと存じます。そして、その任務を達成するための訓練あるいは学習でございますが、同時に隊員の安全を中心にいたしまして安心して行ける状況の準備、これも重要なことだと存じます。そういったいろいろな点を考慮いたしまして、今外務大臣からも御答弁ございましたように、カンボジアに対して要請があるかないか、これからの話でございますが、私の見るところでもかなり複雑な様相を呈した地域であるということは認識いたしておりますので、十分先生の御指摘を参考にしながら、今後そういう具体的な要請があればこれに対応してまいりたい、このように思っております。
  29. 田英夫

    田英夫君 時間が参りましたが、総理大臣に、過去のあの侵略戦争、そして不当な植民地支配ということの反省を込めて、アジアへの配慮を十二分にしていただきたいということを重ねて要請して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  30. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  31. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  32. 矢田部理

    矢田部理君 昨日に引き続き質疑を行いたいと思います。  まず、工藤法制局長官にたださなければなりません。  昨日、法制局長官は、現地において一般の場合にはそう簡単に武器使用してはならない、何か紛争があっても生命、身体が脅かされたときのみであると、しかしその場合でも、部隊として対応したり指揮を受けたりして撃ってはならないというのが従前の答弁でありました。ところが、どうでしょうか。山賊、匪賊に対しては違うというのであります。山賊、匪賊とは何でしょうか。山賊、匪賊ならば、指揮をしても、部隊として対応しても、武力を行使してもいいということなのでありましょうか。武力行使容認の発言ではありませんか。これがまず第一の問題点。  それから二番目に、山賊、匪賊という言葉はどういうことでしょうか。私たちはこの言葉を笑って済まされないのであります。この山賊、匪賊という言葉は、かつての日本侵略歴史に深くかかわっているからであります。かつて、戦前戦中でありますが、その言葉は本来盗賊などという意味を超えて日本の統治や支配に反対する武装勢力、日本侵略に抵抗する武装勢力を指していた時代がありました。この歴史的な言葉の意味を私たちは思い出さざるを得ないのであります。かつて朝鮮や中国東北地方に展開した朝鮮人や中国人の解放勢力を、あるときには満州共産匪と呼び、さらには共匪と呼ぶなどして、その掃討作戦をやると称して出張っていったのであります。こういう抵抗勢力や武装勢力を山賊、匪賊として扱って、このような武力行使が可能だと言ったのが実はきのうの法制局長官の答弁なのであります。  PKO、いろんなところに展開をしますが、最近の平和維持活動の非常に大きな特徴は内戦型の紛争、これにかかわっていく。そうすると、正規軍とそうでないゲリラとか言われたり、それから不正規軍と言われましょうか、そういう言葉で表現をされたりしているのでありますが、これらが長官の言う山賊、匪賊のたぐいなどという扱いを受けて、これなら撃ってもよいと、武力を行使してもよいというのが言うならば法制局長官の答弁なのでありまして、この種の答弁を私たちは許すことができません。憲法の立場からも、この法律の建前からものりを越えたものであります。まして、この匪賊、山賊の扱いでやれるという言い方は、国際的にも大問題を呼ぶはずであります。  その発言の重み、あなたの立場、私はやめてしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。罷免に値する重大な発言だと受けとめますが、いかがでしょうか。法制局長官の答弁をまず求めます。
  33. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  まず、昨日の答弁におきまして私が申し上げた用語、山賊、匪賊というふうな言葉につきまして、今委員御指摘がございました。そういう意味を含めて申し上げたわけでは決してございませんが、ただ、そういうふうな誤解を生ずるおそれがあるとすれば私としてはこれは訂正させていただきます。  私の言わんといたしましたところは、私的な集団といいますか、私的な集団ないし個人と、こういう意味で申し上げたわけで、それをそういう表現を用いましたのは不適当であるということで、そこは訂正させていただきます。  それから、もう一点でございますが、これは昨日も私はお断りして申し上げたと思いますが、いわゆる憲法上どうかとこういうお尋ね、それと法案とのお尋ねがございました。憲法の理念としてのというときには、いわゆる国際紛争に当たらないようなものと国際紛争に当たるようなものと、こういう区別が必要であろうし、それから法案の二十四条の場合には謙抑的に、状況によって当たるかもしれないというふうなことがあるとすればそこは謙抑的に控えるべきだと、そういう意味で二十四条が構成されている、かように申し上げたわけでございます。
  34. 矢田部理

    矢田部理君 私的な集団というのを山賊、匪賊と言うと。山賊、匪賊は私的な集団かもしれません。しかし、これは同義語ではないでしょう。今の弁解は全然説明になりませんよ。何ですか、山賊とは。匪賊とはどういうものを想定しているんですか、現代社会において。あなた、指摘してください。
  35. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 言葉が不適当でございましたら、私は、その部分はただいま申し上げましたように私的な集団というふうなことで申し上げてもよろしいし、あるいは何といいますか、泥棒といいますか、そういうことで個人的な、私的なという意味で申し上げたつもりでございます。
  36. 矢田部理

    矢田部理君 レバノンで平和維持活動がずっと行われてきました。パレスチナの武装勢力はあなたの言う山賊ですか、匪賊ですか、私的な集団ですか。どういう性質の集団でしょうか。
  37. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 私は、理念の整理として申し上げましたので、実はそのレバノンのケースという具体のケースについて私が知識を持っているわけではございません。
  38. 矢田部理

    矢田部理君 PLOのメンバーは、かつてイスラエルからはテロリストと称されて、レバノンのUNIFILの組織をつくるときにも、紛争当事者が相手と言われているのに当事者に加えられませんでした。停戦は、紛争当事者の停戦が本法律案でも前提となっているのでありますが、PLOの代表はこれに参加できませんでした。全部の紛争当事者が参加できているのじゃありません。  そこに、まず実は停戦の幾つかの問題点もあるので、後でこれは議論をいたしますけれども、こういう人たちを不正規軍とかゲリラとか反体制武装勢力とかということで特異の扱いをしてはならないというのが、国と国との関係の停戦ではなく て、法文上も紛争当事者の停戦とか同意とかということに実は発展をしてきているのであります。これから外してしまうということが国際的には随分あったのでありまして、ましてそこで出発点から問題があるのでありますけれども、今度は現場の対応におきまして、これは武器使用で厳格に枠づけをするけれども、相手によっては撃ってもいい、武力行使をしてもいいと言ったのがきのうの法制局長官なのであります。  これは大変な発言、重大な発言で、今程度の弁解で容認できるものではありません。もう一回明確な答弁を求めます。宮澤内閣がこの法案を論議するのに当たってこんな態度の法制局長官を許していいのかどうかも問題だと思います。
  39. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 工藤内閣法制局長官、わかるように答弁してください。
  40. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 昨日お答え申し上げた中にございますが、いわゆる憲法上の禁止されているこの理念の話と、それから法案二十四条で構成されておりますいわゆるそういう構成の話と、この二つをぜひ御理解いただきたいと思うのですと、こういうことを申し上げて、私は、武力行使に当たるようなこと、これは違憲になる、したがって、そういう意味法案上ではそのようなことは組み込めない、こういうふうにお答えを申し上げました。  そういうことの流れといいますか、そういうことの前提としてと申し上げますか、そういう意味で先ほど申し上げましたような、用語が不適当ででざいましたら私は訂正いたしますが、そういう私的な集団のときのそれをいわゆる武力の行使という定義と当てはめれば、国際的な武力紛争という評価に当たらないようなものは、それは憲法上の理念としては武力の行使と評価されないであろう。それに対して、今回の法案二十四条におきましては、それをさらに広げてといいますか、抑制的に構成している、かように申し上げているところでございます。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 もう同じことを繰り返すのはしたくないのでありますが、一般の正規軍だとか軍隊に対しては日本武器使用は個々の人々の責任と判断でしか対処できない。しかし、相手が匪賊や山賊ならば部隊としても対応できる、指揮官が指揮をしてもいいと、別な取り扱いをしたのです。相手によって人権や命に差別をつける発言でもあるわけでありまして、今の発言は納得できません。
  42. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 私が先ほど申し上げておりますのは、憲法の理念としてのことで申し上げたわけで、決してそういうものを撃つことが人道的にいいとか悪いとか、そういう価値判断をそこに入れているわけではございませんで、むしろそういう意味での武力の行使の概念を御説明申し上げた、こういうことでございます。
  43. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  44. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。  法制局長官の御説明になお疑問点が残っておりますので、質疑者の疑問点をより徹底した説明で解明していただきたいと思います。
  45. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  まず、昨日の答弁におきまして山賊、匪賊というような表現を使いましたことは不適当でございました。したがいまして、そこの部分はいわゆる私的な集団、個人に当たるもの、こういうふうに訂正させていただきたいと存じます。  それから、その次にいわゆる憲法のお尋ねがございました。それから法案二十四条のお尋ねがございました。  私は、法律的な観点から、決して人道的とかなんとかいうふうなことで申し上げているつもりではないということがまず第一点でございます。  それから、第二点といたしましては、憲法として武力の行使に当たるというのは何かと、こういうことで、従来お出ししております「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、これを武力行使と呼んでいるわけでございますが、そういう意味で武力の行使に当たる概念は何か、そういうことから、しかしそうではあっても、現実の運用として非常に難しい問題もある、これは昨日も申し上げたところでございます。  そういう意味で、法案二十四条におきましては、三項だけであえて申し上げれば、自衛官が行う、そして自衛官等の生命、身体の防護、このためにのみ用いる、こういう形で武器使用を規定した、こういうことでございます。
  46. 矢田部理

    矢田部理君 一度言った言葉は重いのでありまして、訂正をすれば終わりというわけにはまいりません。まして侮辱的な発言であり差別的な発言であり、歴史的に問題のある発言でありますから、私は結構ですと言うわけにはまいりません。あわせて、私的な集団だとか言葉を言いかえましても、相手方によって武器使用が違うということになれば、これまた大変な問題なのでありまして、法制局長官の言動は依然として罷免に値する言動である。この責任の追及をやめるわけにはまいりませんので、引き続き追及することといたしまして、今のところは次のテーマに移ります。  外務大臣、今PKOの実例として幾つかの実態などがいろんな書物、資料等に出ておりますが、代表的なのはレバノン、それからキプロス、コンゴ、UNIKOMなどの例が典型例として挙げられております。このPKO法案が通りますと、まあ通しませんけれども、仮に通ることになりますと、どこのケースなら参加でき、どこのケースなら参加できないか挙げられますか。
  47. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 通さないと言われると実は私もお答えのしょうがないんです。通してもらうという前提でお答えいたしますが、個々の過去のいろんなケース、事実関係のことでありますから、事務当局からお答えさせます。
  48. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  まず、今先生が挙げられたようなPKFに国連から日本がもし仮に参加してほしいという要請が来た場合、政府としては、調査団を出したり、いろんな実態を調査して、それからいろんな状況を考えて国連とも話し合い、そういう上で参加するかしないかを本部長を頭にして決定するわけでございますので、単に抽象的に今のようなPKFを挙げられても、この場で参加するしないということを申し上げることが難しいことは、これは先生御理解いただけると思います。  私たちは、この法案もまだ成立しておりませんので、文書的にあるいは調査し、国連の話を聞いたというそういう意味では一定の把握はしていますけれども、現実に日本参加する上に必要な情報その他は、やはり例えば現地に調査団、そういったものを出して、そういった調査を行ってからでなければ決め得ないということは先生御理解いただけるんではないかというふうに考えます。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 先ほどからUNIFIL、レバノンの例を申し上げておりますが、日本ではPLOの組織を認め、かつ代表を認めておりますが、これはもう明白な紛争当事者だった。ところが、停戦の合意には参加させられませんでした、参加しませんでした。この法律にいう停戦の合意という条件に当たりますか。これでも我が国はこの法律で出せますか、そこを明確にしてください。
  50. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生もこれはお持ちと思いますけれども、「ブルーヘルメット」その他国連の文書で私たちが承知いたしておりますのでは、一九七八年三月二十八日、アラファト議長は停戦の要請を受け入れたという記載がございます。したがいまして、PLOは事実上ここでは紛争当事者と扱われてそのように、例えばPKO受け入れの同意についても、アラファト議長はアースキン司令官との会談におきましてUNIFILと協力するということを言っておるということが、「ブルーヘルメット」の百四十五ページにも書かれております。そういう意味で、紛争当事者としてこの同意、それから停戦の合意という当事者になっておると考えておりますが、もしその点が そういうことでないんであれば、それは、仮定の問題としてそういう要請があった場合に、この法案に照らして入るか入らないかを決める、そういうことになろうかと思います。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 これは、当初の段階、設立当時はそうならなかったんです。後刻、経過的にそういう道を歩むことになりますけれども、問題は、紛争当事者という定義がありますが、私が申し上げたいのは、さっき匪賊とか何か言いましたけれども、いろんな武装勢力があったり内戦模様のときに、一体だれが紛争当事者なのか、だれがそうでないのか、どのレベルの合意があれば停戦があったと見るのか等々が非常にあいまいなのであります。その点を私は申し上げたい。その例の一つとして、例えばPLOのような団体もかつてはそういう扱いを受けなかったということを指摘しておきたいのであります。  もう一つ、中立の問題に関して申しましょう。  今度のイラク・クウエートでUNIKOMというのができました。ここには日本の場合、参加可能でしょうか。
  52. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  今のその同意という点につきまして国連事務総長の報告によりますと、四月八日、九日にイラクとクウエートがそれぞれUNIKOMの受け入れに同意している、自分に通報してきたということを事務総長が申しております。そういう意味では、そういう条件は満たされているというふうに考えております。  ただ一点、衆議院の段階でも申し上げましたけれども国連の事務当局の説明によりますと、後日たとえイラクがこの受け入れの取り消しということを言ってきても、UNIKOMはちょっと従来の伝統的な監視団と違うので、安保理としては居続けるつもりである、こういう説明をいたしております。したがいまして、仮定の問題として日本がこれに参加しておってイラクが受け入れの同意を取り消してきたという場合には、この法案に従いまして、日本としてはやはりそれ以上参加し続けることは難しくなるのではないかというふうに考えます。
  53. 矢田部理

    矢田部理君 二つ問題があります。  戦争という状況がありましたからイラクは不承不承同意という形はとりました。押しつけられた形の同意なものですから非常にこれが不安定だった。これをどう見きわめるのかが第一点の問題です。  それから、この法律は中立性の原則、偏ることなくという。これはキプロスなどの場合にも偏り方、偏ることなくということが非常に微妙であり難しいのでありますが、例えばイラク・クウエートのUNIKOMの例をとってみましても、停戦監視に武装部隊も行ったのでありますが、アメリカ、イギリス、フランス、いわば多国籍軍を形成した戦争の一方の当事国が監視団の中心になる。これが中立と言えますか。こういう問題を実は全部はらんでいるのであります。  特に、最近は内戦型の課題で、それが国際的な性格を帯びておると、そこに入るという場合には、停戦であれ合意であれ同意であれ、非常に微妙なあるいは複雑な問題をはらんでおる。停戦になったから撃ち方やめて四海波静かになったなどという内容では必ずしもない。いろんな武装勢力が方々におって、どれを当事者にするかどれを当事者にしないか、国連が認めた原則と一緒なのか一緒でないのかなとなども含めて物すごく議論すべきことが多いのでありますが、きょうは時間がないから若干の典型例を幾つか挙げて申し上げましたけれども、これは大変な問題をはらんでいるということだけを指摘しておきたいと思います。  そこで、次のテーマでありますが、国連の指揮権を私ども日本の指揮権がどうしてもやはり衝突する。きのういろいろな議論をしました。きょう統一見解なるものを出されましたが、つい二十分ほど前に出されたばかりでありますからこれを子細に検討はいたしておりませんけれども、随分いろんな問題を答弁自身にはらんでおります。したがって、これは本格的にさらなる議論をしなければならぬと思っておりますけれども、いまだにきのうの宮澤さんの答弁ともきょうの答弁書は違います。答弁書を子細に検討して改めて本格的な論戦をしなければならないと考えております。  例えば、我が国の法令では、違反行為に対し懲戒権等何らかの強制手段を伴うのが指揮監督の通例だと言っております、きょうの答弁書によりますとですよ。しかし、これは一般行政職に当てはまる概念でありまして、きのうも幾つか指摘をした。時間がないからはしょって申し上げましたけれども、消防だとか、それから災害救助だとか検察、警察だとか、あるいは各国の軍隊、これはむしろ指揮監督権と処分権を分離している方が通例なのでありまして、こういうごまかしの答弁をやっちゃいかぬのであります。などなどを含めまして、ちょっと見ただけでも多くの指摘点がありますが、あと四分しか時間がありませんからその指摘にとどめ、今後本格的にこれは問題にしなきゃならぬということを申し上げて、次の問題を大急ぎで指摘しておきたいと思います。  これは、きのう、国連のPKOに対する方針と我が国の対応の仕方に随分乖離がある、衆議院レベルでいろんな議論が出ましたし、矛盾がはっきりしました。乖離の重立ったものは、指揮権の有無、二番目には武力の行使と武器使用とのかかわりに関する開きであります。そして、三番目には業務の中断その他にもあろうと思いますが、一番大きな開きはそこにあろうと思うのであります。  これから日本が本格的にPKO活動に乗り出していくということでありますなら、この国連との違いをどうやって調整するのか、はっきりさせるのかということをしなければこの法律は基盤が固まりません。その点で、我が国の基本方針に関する国連への説明等についてという文書が外務省から出されました。非常に不十分です。中間報告の段階で国連に報告したと言っております。だから、第一にはこの中間報告をここに出していただきたい。  それから二番目には、五原則を説明したと言われておりますけれども、この五原則のうち、例えば部隊の撤収の問題につきましては、業務の中断が明確に説明されたとはなっておりません。一番大きな問題は、業務の中断について我が国は独自にやれるということなんであります。勝手に撤収、撤収というか仕事をやめることができる。こういうことを勝手にされては困るというのが国連の立場なのでありまして、この点についても不明確であります。等々、SOPをめぐるさまざまな違いや食い違いが出てきていることも事実でありますから、本来ならば、本格的に審議をやるとするならば、私は、国連のデクエヤル事務総長なりグールディング事務次長なりにここへ来ていただいて、きちっと国連との関係を明確にしていく必要がある。あるいは国連に調査団を出して、国会は立法府でありますから、立法上の責任を国連との関係で明確に果たす必要があるというようなことも考えますけれども、その前提としてSOPその他の文書を緊急に出していただきたいと思います。  その他申し上げたいことがありますが、あと一分であります。野田さんに最後に伺っておきたいと思います。  きのう、きょうの論議、まだ駆け出しのほんのちょっぴりであります。私が準備したのも三分の一か四分の一程度しかまだ質問をいたしておりません。しかし、政府と私ども社会党が出した法案との間には非常に大きな特徴点の開きがあり、政府側の矛盾が非常に明らかになったというふうに私は思いますが、最後に野田さんの方から、きのう、きょうの論議を聞かれて、どういうふうな受けとめ方をされたか、簡単にお話しをいただければと思います。
  54. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 非軍事民生文民、こういう立場の法案提出した当事者といたしまして、昨日来の論議をお聞きしておりまして、二つ重要な問題を感じているわけであります。  まず一つは、私も陸軍の下級将校として現地の 弾の下の体験をいたしました。それはまさにパニック状態であります。そのパニック状態になるような時点で、指揮命令系統が不明確で、そうして武器使用することの適否が非常に不明確で、そしてもし間違った場合には国家の庇護から外されてしまう、こういうことで一体実態に即した活動ができるのだろうか、こういう危惧を非常に強く感じます。だからこそ、私どもの非軍事民生文民、このことの正しさを実感いたしました。  それから、二つ目に非常に強く矛盾を感じていることは、今まで二十三回の国連からのPKOの活動、この中で民生分野、文民による活動が数多くあったにもかかわらず、日本は人的な貢献を全くやっておりません。やっているのは選挙監視について二十数名の要員を派遣しているだけであります。日本と同様の立場にある西ドイツの例を調べてみますと、幾つかやはり非軍事分野での参加をやっているわけであります。日本は財政的に援助をしているだけであります。人的な貢献は全くやっておりません。今まで、日本民生分野の活動範囲があったにもかかわらず、なぜそれをやらなかったのか、この点が私は非常に不思議に思えてならないところであります。  以上、お答えいたします。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 終わります。
  56. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私は、きょうは公明党を代表させていただきまして、この法案に対して審議をさせてもらうものでございます。  私自身、衆議院からの論議を聞いておりまして、この前のあの採決の混乱を見ておりまして非常に残念だと思いましたし、それ以上に、ああいうことでPKOまたPKFというものの本質が国民に対して見誤られるならば本当に悲しい事態だなと、そう思いました。  まず、総理国際貢献のあり方をお尋ねしたいわけでございます。  最近の新聞論調を見ておりましたら、国際貢献はPKOだけかとか、また、自衛隊派遣の問題しか国会は論議していない、これは異常だというような論調も実際にございました。我が国国際社会に果たさなくちゃいけない役割というのはその問題だけじゃなくて、貧困の問題もあれば環境の問題もあれば難民の問題もある。確かにいろんな問題があることは事実です。そして、我が国がその問題に対してきちんとできているかといえば、ODAを含めて政府が完全にやっているかといえば、私は問題点は数多くあると思うんです。  しかし、その一方で私が感じでならないのは、PKO、PKFというのはノーベル賞もとったし、ある意味では地道に平和活動をやっている。そのPKOたった一つ参加することだけにこれだけ論議を尽くさなくちゃいけないというところが日本の難しさなのかなとも痛感している。一人でございます。  私自身は、湾岸戦争後の中東にも行ってまいりました。夏にはカンボジアにも行ってまいりました。その中で、そういう人たちに聞いて一番私が感じたことは何か。日本というのは平和なときには結構いろんなことをやってくれる、そう現地の人たちはおっしゃいました。しかし、いざ紛争が始まり、紛争が終わってその国が立ち直ろうとしているとき日本は何をしてくれるのか、ほとんどやっていない、そういう話もございました。私が一番ショックを受けたのは、日本というのは自分たちの国が本当に苦しんでいるときに急に手を放すんですね、ぽろっとそんなことを言われたらやっぱりショックを受けました。  そういう体験を受けた上で私自身は、平和憲法を守りつつ我が国は何ができるか。我が国は平和憲法を持っているわけですから、紛争そのものに携わることはできない、それに人的貢献をすることはできないと思いますのでも私は、停戦になった後、そういうときに日本が本当にできないのか、平和憲法内でぎりぎりどこまで努力できるかということは必死に検討していいんじゃないか、そう思ってこの法案を真剣に検討してまいりました。私自身は、平和憲法のぎりぎりの範囲内であるならば、たとえ危険と背中合わせであってもこれから日本はやっていかなくちゃいけない分野がふえてくる、そう思っております。  総理御自身、御自分の体験の中から、これからの日本国際貢献のあり方というのはどうしたらいいのか、どうお感じになっているかをまず冒頭お聞きしたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 世界経済大国一つになりました我が国として、国際貢献はまさに極めて広い分野においてなされなければならないと思います。ただいま御指摘のように、貧困もございますし、難民の問題もございます。また、地球の環境の問題もございます。それらを、政府の場合にはODAその他の方法がございますけれども、あるいはJICA等々でも民間の方々もボランティアとして大変に活躍をしていただいておる。  そういう問題がたくさんございますが、ただいまおっしゃいましたように、その中で、どこかに紛争があってその紛争がともかく停戦になった。それから後は非常に再建は苦しいわけでございまして、いわば国民は家を奪われ、恐らく自分の仕事と申しますか生業を奪われ、その中でもう一遍生きていかなきゃならないという状況は非常に苦しい状況でございますが、そのときに日本は何にもしてくれないという、確かにおっしゃったような批判を何度か受けました。それは、本来紛争というものは弾の撃ち合いでございますから、日本としてはその弾の撃ち合いのような事態にはなくべく近づくべきでないと申しますか、そういう考え方をずっとしてまいりましたものですから、そういうことにはなるべくいわばかかわらない、それがいいのじゃないかというような気持ちでまいったと思います。  しかし、実際には、そういう砲火がやみました後が一番苦しいのでございますから、そういうときに国連の要請があり、そして当事者の国々の合意があり、また周辺の同意があり、公平に中立的に、力を用いずに役に立つということでありましたら、これはやはり日本も役に立たなきゃならない、そういうことを従来から言われておりました。何となく今までそういう話には遠ざかっていた方がいいというところから、やれることはやらなきゃいかぬというところでこの法律を御審議いただいておるということでございます。
  58. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私も、この法案についてはそういう思いをいたしておるわけです。ただ、ずっとこの法案審議を聞いておりまして感じますのは、要するに日本としてどこまでやるのか、何をやっちゃいけないのかということが論議の中でなかなかかみ合わずにわかりにくくなってしまっているということだと思っているんです。  総理御自身、衆議院の本会議で国際貢献のあり方に触れておっしゃっています。湾岸危機を通じて、我々のなすべきこととなしてはならないことについて国内で幅広い論議があった、憲法のもとでできることには限界がある、その反面、できることを最大限やることで、なしてはならないことを明確にする、こういうコンセンサスが今生まれつつある、総理はそうおっしゃいました。  では、総理のお考えになっているなしてはならないことというのは一体何なのか。はっきり国民の前でおっしゃっていただきたいと思います。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 湾岸戦争が戦われましたときに、どうして多国籍軍日本は関与できないのか。何となれば、これは国連の安保理事会決議を十幾つも重ねて、そしてそれの履行をしているのであって、米軍というようなものではない文字どおり多国籍軍である。それに日本がなぜ参与できないのかということは、国内でも多少議論がございましたし、いわんや海外からは非常に我々の不作為として批判を受けた点もあったわけでございます。  しかし、私どもがあのときやってはいけないと考えましたのは、海外における武力行使ということは我が国はしてはならない、そういうふうに考えましたし、今もそういうふうに考えております。
  60. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、今のお話でしたら、多国籍軍というのは一応形としては平和を回復するためということで出てまいりました。国際的にはそういうことで認知もされたわけです。ただ、我が国としては、この多国籍軍、今後どうなるかわかりませんけれども、いわゆる武力行使を伴うものには参加しない。総理としても、これはなしてはならないことだとお感じになっているのか。また聞いておきたいのは、何回も繰り返しておっしゃっているかもしれませんが、この法案で多国籍軍方には出ることはできないんだということをはっきり答弁いただきたい。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国が国として海外において武力行使をすることはできないと私は考えております。それは、本来我が国憲法九条の考え方がそういうことであると私は考えております。したがいまして、この法律にはそういうことが別に書いてございませんけれども、それは本来憲法によって許されていること許されていないことが明白であると考えておるわけでございます。
  62. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私たち公明党は、前回政府提出されました国連平和協力法案ですか、これについては明確に反対もいたしました。前回の法案についてはやはり多国籍軍への協力ができるということが明白であった。これには平和憲法を犯すおそれがあるから賛成することはできないということで廃案にも追い込んだわけでございます。しかし、今回のこのPKO、PKFということの本質というのは多国籍軍とは全く違う、私自身はそう感じております。強制力のない平和維持のとうとい活動でもあります。  テレビでございましたか、PKFの活動の特集がありました。私もじっくり見させていただきました。その中に、フィジーの部隊がたしかこのPKFに出ていってある地域を担当してやるんですね。それを見ておりましたら、フィジーの兵士たちが異国の地に行って何をするかというと、彼らが受け持った地域というのはもともと二万人ぐらい村民がいたそうです、その町の地域に。ところが、紛争によってわずか五百人になっていた。フィジー部隊が入っていく。その中でパトロールをし、住民の民生安定を手伝って、結果的に十三年間たって、PKFが長く続いていることの評価は別として、十三年たった今どうなっているか。一万人の住民が戻ってきた、そういう事実がある。しかもこの村には医者が一人もいない。本来はフィジーの部隊のための医者が一人いる。この医者が何をしているかというと、住民のために医療をする。道路の補修もすれば施設の補修もする。  PKFの活動というのは、それはぎりぎりの場面も出るかもしれません。しかし、その本質は何か、それを私は国民皆さんにも本当に理解していただきたいと思っているわけです。  ですから、私たちは、この法案ができるときに政府にもいろいろ要望いたしました。平和憲法のぎりぎりのもとでどうやればできるかというようなことも検討してまいりました。国際貢献のためにはやはりそこまで、PKFまで踏み込まざるを得ないのでないかというのが私たちの結論でもありました。しかし、ずっと最近の論議を聞いておりましたら、一部の方たちは、この法案政府のねらいは何かといったら自衛隊海外派兵だとおっしゃるわけですよね。政府としてはどういうねらいでこの法案を出したつもりだったのか。私たち国際貢献だと思っています。ところが、そういう批判を浴びているわけですから、きちんと答えてください。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先刻の私のお答えを一部訂正させていただきます。  この法案につきまして、憲法と同様な規定を実は設けております。第二条の二項は、「国際平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」、この規定は、念のため憲法と同じ考え方をここに盛り込んでおるわけでございます。  それで、今木庭委員の御指摘になられましたように、この国連平和維持活動というものは本来砲火がやんだところから始めるわけでございますから、これに武力を用いるようでは、これはもう本来の目的に沿わないわけでございまして、武力を用いずに説得力と国連の権威と公平性と非強制でどうやって平和を確立していくかということが目的でございますから、本来、武力の行使というものとは最も縁の遠いものでなければならないはずでございます。  ただ、それについて私ども自衛隊派遣が必要であろうと考えましたのは、とは申しても、今木庭委員の言われましたように非常にこれは難しい仕事でございます。そうでございましょう、きのうまで砲弾が飛んでおったのでございますから。難しい仕事でございますし、相当苦労の多い仕事でございますし、またかねてからの専門的知識と訓練と組織力がなければなかなかよその土地へ行ってできるものではございません。突然人を集めて行ってくれと言ってやれるようなことでございませんので、いろいろ考えまして、自衛隊協力を得ることが大事だというふうに考えたわけでございます。  確かに、先ほどおっしゃいましたように、マスメディアでもそうでございますけれども国連平和維持活動、PKOの法案というと何か自衛隊が初めて海外へ行って弾を撃つような、そういったような印象を恐らくたくさんの国民が持っておられるかもしれないのは、そういうことになってはいけないというところに非常に御議論が集中しておりますものですから、またそうなってはならないということのいろいろ安全措置をこの法案の中に盛り込んでおるものでございますから、つまりそれについての御議論が中心になりまして、本来的な部分というのが、まあいわば皆様おわかりであるので御議論にならないのかもしれませんけれども、恐らく、国民の側からごらんになりますと、何か大変に物騒な法律案なのかという印象を持たれる点があれば、私はそういうことではないかと思っております。
  64. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、総理もおっしゃっておりましたけれども国民皆さん国会審議を聞いていてどういう感じを持っていらっしゃるかといえば、やっぱり何か戦場へ行って撃ち合って、殺し合っているというのがPKOとかPKFだというようなイメージがどうしても出ておるのも事実なんです。  私のところにこの法案反対するはがきが何十枚と来ました。何十枚と来た中で、その文面を読ましていただいたら、戦場へ自衛隊を送るな、こういうトーンのものが多いんですよ。少なくとも論議の前提として、このPKOとかPKFというものが何なのかということに対しては、政府はもうちょっときちっとした形で国民皆さんにわかるようにやる形が、まだまだ努力が足りないし、今まで一体政府は何してきたかと思いますよ。今皆さんに誤解を実際与えているわけですよ。これからどうやってこういう誤解を解くんですか。その辺をきちんとしていただきたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたことにさらに加えて申し上げますならば、まず第一に国連から要請がなければならないわけでございますが、その前提といたしまして、その紛争当事国から、もう砲火が済んだのでひとつ来てくれ、和平の合意がありますから来てくれということ、それからその周辺の国々からもどうぞ来てほしいということ、そうして任務そのものが公平に中立的に行われる、そういうことが一つずつ確保されまして、しかもその上で我が国がそこに行くことが適当かどうか。それは先ほど午前中にもお話がありました、直接隣の国でなくても、その周辺の地域で何となくそれはどうかなと思われることだってあるわけでございますから、そういう条件が全部そろって、何とかひとつ助けてほしい、手をかしてほしいというときに、我々が主体的に、それじゃその平和の確立、民生の安定のためにお役に立ちましょうか、それまでおっしゃいますならばと。  しかし、それでもさらに念を入れまして、お し、もし何かあったときに正当防衛以外には武器を使ってはならない、それから、和平がもうできたと思ったが何かの都合でその様子が変わっちゃったというときは、もともとこの仕事ができない状況なんでございますから、そういうときには我々の判断でそれはやはり中断をして撤収しなければならないといったような幾つかの用心を、用心の上にも用心を重ねましてこの法案をつくらせていただきたいわけです。  さて、この法案ができましたときも、先ほど申しましたように、みんなからぜひと言われ、国連からぜひと言われ、その上で我々がそれは皆さんのお役に立つと思ったらば出させてもらう、こういう建前になっておるわけでございます。
  66. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 総理がおっしゃるように、この法案の枠組みなり、確かにそういう歯どめができておるわけです。ですから賛成したわけです。ただ、私が言いたいのは、先日の参議院の予算委員会でしたか、総理御自身が、国民に対する説明がまだ足りないかもしれないとおっしゃっておるんです。そう本当にお感じになっているなら――確かに政府のつくったパンフレットも見ました。何か、二十万部刷られだそうですね。でも、そういうだけじゃだめなんじゃないかなと思うんです。  きょうはマスコミの皆さんも来られていますけれども、マスコミの皆さんは疑問点として、指揮の問題、武器使用の問題、こういうのに問題点がある、国会の論議を聞きながらどうもわからないとおっしゃっている。それなら、私たちに説明するのも大事だけれども、世論をつくられるマスコミの皆さん総理御自身がそういう場をつくられたらどうですか。就任のとき記者会見するだけじゃなくて、自分自身が出ていってやるぐらいの努力、汗を流しているんだと、これがなかったら国民もそれは理解できませんよ。そういう努力をするつもりがあるかどうかを聞きたいのです。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国内には、自衛隊そのものが違憲だと考えておられる方々がかなり実はおられる。そうしますと、それが出発点であれば、自衛隊が関与いたしますいかなる法案も違憲だということにならざるを得ません。そこはしかし、国民の多くの方は常識的にも自衛隊というものの意味、合憲性というのは私は認めていただいていると思うのでございます。ただ、そうではあっても、その自衛隊が今度海外に出かけるんだということになりますと、これは今までほかの用務で行ったことはございますけれども、初めてのことでございますから、国民のお立場としてそれは随分の、今までの考え方とは一つ変わっていくのかなと思われることは、私は最初の第一印象としてはお悪いであろうと思うのでございます。  それでございますからこそ、このように国会の御議論等を通じてこの法案の中身を国民にも一つ一つ知っていただく。それは、最初に一種の驚きと申しますか、何か第一印象ではちょっと今までと違うのかなと思われることは、私は無理でないと思いますので、先ほどのパンフレットもそうでございますけれども、一番大事なのはやはりこういう国会の御議論を通じ、御審議を通じて国民に理解をしていただきたい。あらゆる機会を通じて私どもはまた努力を続けていこうと思っております。
  68. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本当に、今そういう国民への理解の問題をずっとやりましたけれども、要するに前提がきちんとしてなけりゃ、さっきおっしゃいました自衛隊についての考え方が違う方たちもいらっしゃる、そういう問題もあるでしょうけれども、少なくとも私はこの審議を通じて、こういうPKOとかPKFの本質が、我が国民と海外人たちが実感していることとが全く違ってしまうようなことだけにはぜひしたくないと思っていますし、そういう意味できちんとしていただきたいということを要望しておきます。  先ほど総理からもなぜ自衛隊参加させなくちゃいけないかというお話がありました。私たち自身も、実はPKO、PKFというのにどう取り組むかというときに一番悩んだのは、この自衛隊参加の問題でございました。  先ほど社会党発議者の方たちからは、最近のPKOは民生部門もいっぱいあるし、それで十分じゃないかとお話がございましたけれども、私たち自身は、このPKO、PKFという問題を含んで考えたときに、本格的に取り組むには日本でだれがいるか。さっき総理もおっしゃいました。やはり訓練を積んで、そういうところに行ったときに自活できる人たち、これは自衛隊しかない、そう思います。ただ、さっきおっしゃったように、自衛隊を初めて武器を持った形で出すという形になるわけですから、そういう意味じゃどう歯どめをつけるか、憲法の中で、ということを随分議論もいたしました。  その中で、私たちの党は、今言えば政府の五原則ですよね、これについては、政府から最初、法案に織り込まなくても閣議決定でいいじゃないかという話も実はありました。でも、私たちはこの五原則についてはぜひとも法律の中に織り込んでいただきたい、それが最大の歯どめになるということで御要望もいたし、実際この法案の中には五原則が織り込まれているわけです。  五原則のことを言うまでもないんですけれども、一応言うならば、停戦の合意という基本がある、各国の合意がある、同意がある、しかも申立てある、これが崩れればやはり撤収する、しかも武器使用については隊員の生命を守るだけに使う、これができたからこそ私たち自衛隊の活用も必要であると判断して、今こうして論議をさせていただいているわけでもございます。  しかし、事PKFに関してはいつまでたっても憲法に違反しているとしっかりおっしゃる方が一部いらしゃるわけですから、これも総理の口から憲法とこの五原則関係は一体どうなのかということをはっきり皆さんにわかるように御説明をしていただきたいと思います。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから申し上げていることでございますけれども、これは我が国海外で武力を行使するということとは全く何にも関係のないことでございます。むしろ、海外で生まれました平和の兆しというものを本当に平和の建設、復興にまで国連が手伝うのを我々も手伝いたい、しかもそれは、我々が進み出てということではなく、招かれまして、ぜひと言われて、我々もお役に立つならばと、そういう選択はこちら側にあるわけでございまして、招かれないものが出ていくということは絶対にこれはおっしゃいます五原則であり得ないことであります。  しかも、そういう五原則の最後に、御指摘になりました二つの原則というのは、なおその上に我々自身が万一のことがあってはいけませんから、行動に抑制を加えておるということで、いわば国連中心になります世界の平和の増進、国連協力という我が憲法のそういう精神に私は沿ったものであるというふうに考えておるものでございます。
  70. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ここでちょっと聞いておきたいのが、PKFというのはこれまで二十三編成されたわけですけれども、基本原則は非強制であるということ、停戦の合意がある、こういう基本線をずっと守ってまいっているんですが、先ほども御論議あっていましたけれども、最近は、PKFと停戦監視団の区別がつかなくなってみたり、一緒になって合体の形もあるし、選挙監視団まで巻き込んだような形もあるし、形はさまざまに変化を遂げているわけでございます。  また、先ほどから論議になっている民生分野というのも確かに広がろうというような傾向は出てきております。またもう一つ、国会でも議論になりましたけれども、確かに国連の中で今このPKO、PKFというのを紛争予防に使おうという論議が起きていることも、これは間違いない事実なわけですよね。  こういうPKF、PKOが今後どんなふうに変化しようとしているのか、それに対して日本としてどういう認識を持っているのか、また日本としてはこのPKF、PKOというのをどういった方向に持っていけばいいと思っていらっしゃるのか、その辺についてお考えを聞かせていただきた いと思います。
  71. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生御指摘のとおりでございまして、PKOは四十三年間の歴史がございますけれども、先生も御承知のとおり、憲章上の明文の根拠というものは持っておりませんで、経験を積み重ねながら進化、発展してきたという側面があることは事実でございます。例えば、最近エルサルバドルの監視団で人権に関する検証のためにこういうPKOがつくられましたけれども、このような考え方は五年前には全然なかったことでございまして、それから今国連の中でこのPKOの監視対象として、例えば麻薬の問題あるいはテロの問題にこういうものを使ったらどうか、あるいは環境にも使えないかというさまざまな議論が行われていることは御指摘のとおりでございます。それから予防的なという側面も議論されていることは御承知のとおりでございます。  しかしながら、現在の段階では、国際社会あるいは国連の中におきまして、今最後に申し上げた種類のことにつきましてコンセンサスができているという段階には至っておりません。日本もこのPKO特別委員会のメンバーでございますので、今後議論に参加していきたいと思いますけれども、とりあえず日本としてPKOに参加する範囲というものは、お出ししてあるこの法案の中で考えていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  72. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 だから、これからいろんなPKOという形ができてくると思うんですよ。ただ、ここで衆議院から論議されているのは、形が変わっていけば、このPKOの法案に即さないで、ある意味では枠を超えていくこともあるんじゃないかというような論議もあるわけです。私としては、どんなPKO、PKFができようとも、原則というか出すときの基本は、やはりこの五原則というのが出すときの基本になるんだ、これが守られなければ日本としては参加しない、守られるなら参加する、これは当たり前のことだと思うんですけれども、その辺きちんと確認しておきたいんです。
  73. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  私の先ほどの答弁の一番末尾のところでその点を念頭に置いて申し上げたつもりでございますが、明確に再度申し上げます。  日本といたしましては、五原則が盛り込まれておりますこの法律の枠組みの中で、今後PKOに対応していくという考え方でございます。
  74. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そのことを確認した上で、ただこの法案を見たときに、法律の第三条一号でございましたか、見ておりましたらこの中に括弧書きがございました。括弧の中で何て書いてあるかというと、平和維持活動参加できるんですよ。参加できる中で、「(武力紛争が発生していない場合においては、当該活動が行われる地域の属する国の当該同意がある場合)」にこの平和維持活動参加できるとなっているわけなんです。そうなると、私たちは、いつもこのPKOを出すときの大原則は何かといったら、停戦の合意がなくちゃいけないということを大原則にしてきたわけです。ところが、括弧書きだけを見ると、何か原則がまず崩れているというような感じが見えてしまうわけです。これはどういう場合を想定してこの括弧書きをつくられたのか。  また、これまでのPKO活動の中で、こういうように武力が発生する前にということで出たケースがあるのか、御説明をいただきたいと思います。
  75. 野村一成

    政府委員野村一成君) 御説明申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、法案第三条第一号の定義の中に、武力紛争の発生していない場合についての言及がございます。このPKOの定義につきましては、過去四十三年の長いPKOの歴史の中で、目的・任務に武力の行使を伴ったようないわゆるコンゴ国連軍のような例外的なケースを除きまして、これは定義なものでございますので、できる限り網羅的にしたものでございます。  御指摘の括弧書きの部分、具体的には、過去にまさに武力紛争の発生していない状況で構成されたPKOがございました。五八年に、レバノンへの人員、武器その他の物資の非合法な侵入を防ぐために設立されましたUNOGILと申しますレバノン国連監視団のような活動がございました。これを先ほど申しました網羅的にするという見地からも、含めるために規定したものでございます。  したがいまして、先生御指摘のとおり、武力紛争が発生していないわけでございますので、第一原則とか第三原則については適用がない形にはなっておるわけでございますけれども、ただ基本的にそういう状況で構成されているPKOでございましても、もし先生御指摘の五原則に抵触するような状況、例えば武力紛争が発生するとかそういう状況が生じました場合には、直ちにこの法案にのっとりまして、基本的に我が国としてはこの法律にのっとった措置、すなわち中断ないし撤収その他の手順がとられるということになります。
  76. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 この問題ははっきり知りておきたいんです。というのは、我が党としては、この五原則というものが組み込まれたからこそ自衛隊について認めたわけです。ところが、その大前提の停戦の合意というものがない場合でも出ているというところには、非常にある意味ではどうなのかなという疑問も抱かざるを得ないところがあるわけです。  ただ、私が確認をしておきたいというか、要するにこの括弧書きについて非常に拡大解釈して言われているケースはどういうことかというと、紛争が起きる前だから停戦の合意は要らない、同意もこれだったら一方からとればいいと。そうなると結局、ある意味では、極論しておっしゃっている方は、この括弧書きで戦争参加できるみたいな話が実際にある論文を見ておりましたらございました。私は、先ほどおっしゃったみたいに、紛争が発生すれば撤収せざるを得ないと思うわけです。  ですから、この法律を読むときに、停戦の合意というものはないにしても、停戦の合意というものをどう読むかという問題ですね。要するに、紛争が発生すれば日本の部隊というのは撤収せざるを得ないんだという大原則があるんだということをきちんと言っておくことが必要だと思うんですけれども、その点改めてちょっと、どれをどう読めば紛争が起きれば日本は必ず帰ってくるんですよというふうになっているのか、きちんとしておいていただきたいと思います。
  77. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この法案第三条の一号で「紛争当事者」というのを定義してございまして、これはまさに「武力紛争の当事者」というふうになっております。その場合に、「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」、まさに第一原則が明示されておるわけでございますので、したがいまして武力紛争が発生したような状況ということになりますと、もろにこの第一原則、ここにはっきりと定義に書かれている状態に反する、そういうことに相なります。
  78. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、ずっと論議になっているもう一つの問題、この法案というのは、日本国際貢献のために平和憲法のぎりぎりの範囲内で何ができるかというのを明確にしたものだと私自身は確信をしておるわけです。しかし、平和憲法を守るために設けたこの五原則なんかがどう言われているかというと、国連がこれまでPKOに関して出した各文書と矛盾するという論議が衆議院段階から何回もなされているわけでございますのではこの文書とは何かというと、今よく出てくるのは、一つはモデル協定ですね、それからSOP、また訓練マニュアル、こういったものが挙げられて、これについてずっと論議が重ねられているわけであります。  ただ、この三つの文書というのは、どういった性格を持っている文書なのかというのがはっきりわかりにくい。例えば、法律のようにこの文書に従わなければだめなのか、それともこれは任意的なものなのか。この文書の持っている性格というのをはっきりしておくことが論議の前提として大事だと思うんです。この点について説明をいただきたい。
  79. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 三つの文書、SOP、標準行動規範、それから訓練マニュアル、それからいわゆる派遣国と国連とのモデル協定というのが論議の対象になっております。  まず、この訓練マニュアルあるいは訓練ガイドラインと申しますのは、国連平和維持活動に各国が参加する場合に、各国が自分の国の要員をどのように訓練したらいいかというための一つの教本と申しますかマニュアルと申しますか、そういうために国連がつくった手引のようなものでございます。  それから、標準行動規範と申しますのは、個々の平和維持活動が行われる場合に、国連の司令官がその平和維持活動活動あるいは行動、組織等につきまして、規範、規則といいますか、そういう種類の性格のものをつくるわけでございます。その司令官がそういうものをつくるための参考用に国連として一つの模範的な、標準的な書類としてこれをつくった、これがいわゆるSOP、標準行動規範のガイドライン、手引でございます。  それから三つ目は、モデル派遣協定案と申しますのは、国連派遣国との間で、派遣国が要員を派遣する場合にいろいろな事柄を盛った取り決めを結ぶそのひな形、その手引、そういったたぐいのものでございます。  そういう意味では、この三つの書類は、ひな形、手引といったたぐいの書類でございますので、それ自体が国連加盟国を拘束するというものではございませんで、あくまでも標準的なひな形を国連が最近つくった、そういう性格のものでございます。
  80. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、今聞いていると、これはあくまでモデルだとおっしゃるわけですよね、モデルだと。だから、結局こういうものを参考に、例えばモデル協定というのを見ながら日本が実際に参加するときはどうするかといえば、こうした文書を基本として、しかも国連と話し合って我が国独自の原則を書き込むことができる、そういう性格のものだというふうに判断しているということですか、答えてください。
  81. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  我が国がPKOに参加する場合、国連との間でいかなる枠組みあるいは取り決めと言っても差し支えないと思いますが、を設定するかということにつきましては、どのような地域でどのような国際平和協力業務に参加するかなどの具体的な状況でございますとか、また今先生もおっしゃいましたように、国連との協議というものが必要になってまいりますので、その推移いかんによるものでございますから、現時点で具体的にどのような取り決めなり枠組みができるかということは確定的には申し上げにくいのでございますけれども政府といたしましては、この法案の成立後、速やかにこの法案に基づく我が国のPKOへの要員派遣につきまして国連事務当局との間で話し合いを開始する考えでございます。その際に、先ほど御指摘ございましたように、例えばモデル派遣協定案でございますとか、あるいはこれまで各国が現実につくってまいりました国連との取り決めてございますとか、それから当然我が国法案というものが念頭に置かれるわけでございます。  いずれにいたしましても、この法案の成立後、要員の派遣はこの法案に基づいて行われるものである以上、国連との間で派遣のための枠組みを設定するに当たりましては、関係法令、なかんずくいわゆる五原則を盛り込んだこの法案の枠内の派遣となることが確保されるように政府といたしまして対処すべきことは当然であるというふうに考えております。
  82. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうであれば本当は矛盾がないということになってしまうんですけれども、しかし強制力がない文書だといっても、確かにこのモデル協定なりというのはPKOの過去の経験から間違いなく積み上げたものであるのも事実なんですね。いわば、法じゃなければ国際常識となっているようなものであるということだろうと私自身は思っているんです。ということは、やっぱりどれだけ整合性を持たせるかというのは、これは非常に大事なことだと思っているわけです。  例えば、モデル協定がずっと問題になりましたけれども、確かにモデル協定は指揮権について、PKFの配置、組織、行動、指令について実質的には現地に派遣された司令官が持つようなこともモデル協定を見れば書いてあるわけですよね。そうすると、やっぱり国民皆さんにとってみれば、我が国が途中で勝手に撤退することになったら国際常識に反しないかなということを感ずると思うんです。  では、実際に本当にこれまでの参加国の中で、一応国連としては取り決めしているわけですよ、しかしその国独自に撤退したケースというのがあったのかどうかというのをきちんと聞きたい。  また、もう一つ問題になっているのは武器使用の問題ですよね。武器は、国連はAタイプ、Bタイプ、二つ武器使用を認めている。Aタイプは要員の生命の保護のためだけだと。ところが、国連はもう一つ任務遂行を妨害するときにやむを得ず使用することができるということも言っている。こういう問題に対して日本は独自の制限を今から課そうというわけですから、じゃこれについても国際常識に本当に反しないのか。例えば、こんな問題についても全部各国をお調べになったかどうか知りませんけれども、ほかの国を見ればこういう条件をつけて参加している国もあるのかどうか、それもきちんとわかりやすく説明していただきたいと思います。
  83. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  先生幾つかの問題を御提起になっておられるわけでございますけれども、まずその前に、先ほど私、法的な拘束力はないと申し上げましたのは、あくまでもひな形それ自体という意味でございまして、日本がそのひな形その他を参考にして国連と取り決めを結ぶ場合、それは日本国連との間に当然権利義務関係的なものができるわけでございます。その点は、SOPについても現実につくったものはそういう規範力を持つことは、その点はもう当然のことでございまして、ひな形自体はないということでございますので、念のためあれしたいと思います。  まず、撤退の問題でございますけれども、PKOが成立する場合に一定の前提があるということはもう繰り返し御説明申し上げましたので触れませんけれども、そういう前提が崩れた場合に各国は、これまで私たちが調べたところでは、例えば一九七四年のサイプラスのケース、一九八二年のレバノンのケース、いろいろ国に当たって調べましたところ、任務を中断したという国があったわけでございます。そういうことを参考にいたしまして私たちはこの第四原則というものを立て、これを国連の事務当局に説明したのに対して、国連の事務当局は、そういう前提が崩れた場合に任務を中断し、さらにそれが長引く場合には撤退するという点については異論はないということを言っておるわけでございます。  ちなみに、ブライアン・アークハートという人物、彼は非常に長い間PKO担当の国連の事務局の事務次長をしておりまして、今はもうやめておられますけれども、去る九月、日本でゼミナールに参加するために来た際に日本の一主要紙とインタビューをしておりますけれども、九月十日付ですが、その中で、日本だけ撤退できるかと自分は在京中によく聞かれる。しかし、PKOで撤収するのは日常茶飯事である。撤収してもだれも後ろ指を宿さない。戦うために平和維持隊が存在しているわけではございませんということをはっきりインタビューで述べておるわけでございます。  それからもう一つ、先生の御質問になられた、日本のような一定の条件を付して国連のPKO活動参加した例はあるかという御質問でございますが、例えば本年スイスが今後平和維持隊に参加するに当たって四つの条件を付して参加するんだということを発表し、現在立法過程にあると承知いたしておりますが、その四つといいますのは、まず第一に紛争に関する国の同意があること、これは日本と同じところだと思います。それから第 二に、部隊の活動が中立的であること、これも日本と同じ。それから第三は、部隊は緊急事態における自己防衛の場合のみ武器使用することができること。それから第四番目として、上記三条件のいずれかが満たされない場合、状況が根本的に変わった場合またはスイスが紛争に巻き込まれる危険が生じた場合にはスイスが自国の部隊を撤退させることができることということでございまして、まさに撤退の点につきましてもスイスは触れておるわけでございまして、そういう意味で、日本が考えております五原則というのは国際的に出ていって決して恥をかくといったようなものではないと私たち考えてそういう原則をまとめたつもりでございます。
  84. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今もお話ありましたけれども国連に行っていろんなことを日本政府としては確認しましたというふうにおっしゃっているわけです。  これは八月十四日というふうに覚えておりますけれども、八月十四日、グールディング国連事務次長に対して日本は中間報告を持っていき、しかもこの五原則というものを示した上で話をなさったというふうになっているわけです。ただ、何を論議してきて、これとこれについてはきちんと確認したという一つの流れがよく見えてこないという気もいたしております。大事な問題ですから、やはり政府として国連とこの点この点について確認したと、それに対してグールディング事務次長はこういう面については少し懸念の念もあったよと、この点についてはこういう指摘があったよというのがはっきりわからなければいけないと思うんです。この点を少し詳しく、八月十四日、一体何があったのか、それを再現していただきたいと思うんです。
  85. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生にお答え申し上げます。  まず、国連に出張いたしましたのは国連局の河村審議官。八月十四日にニューヨークの国連本部におきまして、国連のグールディング事務次長と会談をいたしました。  その際、まず河村審議官の方から、日本は現在中間報告というものを出して、それに沿ってPKO参加のための立法ということを考えておりますと、武力による威嚇また武力の行使を禁じた我が国憲法九条を説明いたしました上で、我が国の平和維持隊参加に関するガイドラインとしてその基本方針というものを示したわけです。ちなみに、誤りのないように、この五原則につきましては英訳いたしましてその書類を手交したわけでございます。  基本方針の説明につきましては、まず、平和維持隊が、紛争当事者の間に停戦の合意が成立し、紛争当事者が平和維持隊の活動に同意していることを前提に、中立・非強制の立場で国連の権威と説得により任務を遂行するものであり、伝統的な意味での軍隊とは性格を異にするものであるという平和維持隊の基本的な性格についての日本政府認識を述べた上で、基本方針の各原則について説明いたしました。  特に重要な点として、第四原則の撤収の問題につきましては、第一原則から第三原則のいずれかが満たされないような状況が生じた場合には、国連平和維持隊の活動自体が継続する前提が崩れた場合であるので、このような場合、国連の司令官とも連絡をとりつつ状況によっては一時他に移動するといったような事態も考えており、さらに、第一原則から第三原則が満たされないような状況が短期間に回復されないような場合には、日本の部隊が第四原則に従って撤収することも可能であると認識しておりますが、いかがなものかという説明及び質問をしたのに対して、グールディング次長から、日本政府の方針として基本的前提が崩れたことを理由に撤収を決定する権利は当然有すると述べました。  また、当方から、日本としてはPKOに参加するに際して、過去のPKOの経験を通じて確立した通常の慣行に反するような形で行動することは意図しておりませんと。さらに、PKOについて確立している国連のコマンドのもとに置かれる旨述べたのに対しまして、先方は、日本側がこういうことを確認してくれたのは大変結構であるということを述べました。  最後に、武器使用の問題につきまして、日本側から、平和維持隊は関連の国連文書によれば自衛のため以外に武器使用は行わないということになっていると私たちは理解しているが、この点について日本といたしましては、要員の派遣に当たり武器使用は第五原則に述べられているとおり、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限ることとしたいと考えていますが、従来の平和維持隊の武器使用の実態にかんがみれば、このような方針のもとでも十分に任務を遂行することができると私たちは考えているという説明をいたしました。  これに対して、グールディング事務次長から、平和維持隊においては任務の遂行を実力で妨げられた場合にも武器使用ができることになっている旨の指摘がありました。これに対して当方から、従来の平和維持隊の武器使用の実態にかんがみれば、武器使用を要員の生命等の防護のために必要最小限に限ることとしても日本として十分任務を遂行できると私たちは考えているということを述べたわけであります。これに対して、先方も了解いたしまして、日本武器使用に関する第五原則国連にとっても問題はないということを述べたものでございます。  以上でございます。
  86. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 わかったんですけれども、最後のところ、日本側が武器使用のことについて生命を守るということだけでやりたいと、国連にはこうあるけれども日本としてはできると考えるということに対して、グールディングさんは了解と、そういう言葉を使ったんですか。それでも問題ない、大丈夫だ。何か言葉をきちんとちょっと聞かせてほしいんです、その部分だけ。それだけはっきりしておいてください。
  87. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 丹波局長、明確にするなら原語でどういう答えがあったか、はっきり答えたらどうですか。
  88. 丹波實

    政府委員(丹波實君) とっさの御質問でございますので、言葉自体はちょっと……。もしお時間をいただければ、後で正確にあれいたしますけれども。  日本側として、先生御承知のAタイプ、Bタイプという武器使用があるけれども日本としてはAタイプのときのみ武器使用します。しかし、従来の国連のPKFにおける実態ということを今申し上げましたが、その意味は、従来ここで御説明しておりますけれども、PKFの任務が実力により妨げられたという瞬間に鉄砲を撃っていいということを国連は言っておるわけではございませんで、まず説得しろと、それからいろいろ手だてを尽くしなさいと。そういう手だてを尽くしている過程であるいは向こうが鉄砲を本当に撃ちかかると、これはAにむしろ移っていく状態、そういうケースもあるであろう。いずれにしても非常に慎重な武器使用をしておる。  それから、各国に話を聞きますと、現実にBタイプで武器を使ったことがありますかという聞き方をしても、そういうケースがあったということはなかなか具体的な例としては出てきていないんですね。ですから、そういう実態にかんがみればというのはそういう意味でございます。そういう説明に対して先方は問題はないと、そういう基本的なやりとりがあったということでございます。
  89. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それが非常に大事なんですよ。問題ないと言っておいて、少なくともその時点では事務局がきちんととっておかなければ、だから今こんなふうに論議になってしまっているわけですよ。本当は文書あたりをとっておいてもらえばもっと論議せずに、ある意味ではクリアになっていた部分があると思うんですよ。  私自身は今言われたことについて一応了解をしておきますけれども、ただ、この問題をめぐって はよく報道なんかでも、国連関係者自体が日本法案では指揮の面とか撤退の面で問題があるみたいな報道が出てくるわけですよ。そういうものを見れば私たちとしては、政府がきちんととってきたはずなのに、何だこれはと思わざるを得ないところがあるわけですよ。  そういう意味では、これは外務大臣にぜひきちんとやっておいていただきたいと思っているんですけれども、今言った我が国の基本方針、この五原則ですよね、これを実際にこれからぜひ説明もいただきたいし、もし法案が通れば、私たちはぜひ通したいと思っていますけれども国連へぜひ説明に行っていただきたい。それより何より大事なのは、実際にPKOを出すときに協定を結ばざるを得なくなるわけですから、その協定の中にきちんとこの五原則というものを織り込んでいく、日本としてはそういうことをやっていかなくちゃいけないと思うんですけれども、大臣、大丈夫ですね。
  90. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 失礼いたしました、その箇所がとっさに出てこなかったものですから。  先ほどのような武器使用考え方を説明したのに対してグールディング次長は、確かに貴官の指摘といいますか、説明のとおりであろうから、このような考えを日本がとるのであれば、日本側の言われるとおり任務は遂行されることとなり、国連にとっては問題はありません、そういう言い方をしたということでございます。  失礼いたしました。
  91. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 今、お尋ねのようなことにつきましては、どういう形で織り込むかは法案成立後の問題でございますが、応答の中で武器使用その他については十分にそれが守られるような形にしていきたいと思っております。
  92. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひその点は、きちんとしておかないとその矛盾の話がでるわけですから、きちんとできるという形にしていただきたいと思っております。  ここで、五原則の問題をずっと言ってまいりましたので、我が党はずっとこのシビリアンコントロールの問題で指摘をしておりますし、このことについて改めて総理から見解を求めておきたいと思います。私たちは、このシビリアンコントロールという問題について、シビリアンコントロールというのは、文民の軍人に対する優位をどう確保して、憲法九条、武力を使ってならないということをどう貫くかということだと思っております。  ただ、私たちが今非常に残念なのは、論議が単に国会承認か、国会報告かということに終始していることにやや疑問を感じているものでございます。もちろん、国会承認も私たちとしても大事なものだと思っております。しかし、私たち自身は、先ほどから何回も指摘しておりますけれども、この五原則法律に織り込み、これを国会できちんと採決で決めるということが一番大事なことだろうと思っておりますし、この前公述人の方でしたか、おっしゃっていましたけれども、五原則法制化というのは明らかな歯どめとして機能するだろうし、それに基づいた実施計画の報告によってシビリアンコントロールは確実に達成されるともおっしゃっておりました。  このシビリアンコントロールという問題、これと国会の関係、またこの法案について総理考え方を改めて聞いておきたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに御指摘がございましたように、いわゆる文民統制というのは最も大切にしなければならないことでございます。いろいろ御指摘がございまして、私どもも五原則というものを法案の中にきちんと取り込むことが、これがやはり一番文民統制の大事な部分であろうというふうに考えまして、そのようにさせていただきました。また、実施計画をつくりましたときにはこれを遅滞なく国会に御報告を申し上げる、国会がそれにつきましていろいろ御意見がおありになることも当然あり得るのでございまして、そうなりますと、次期にこれを改めるときに国会の御意向を反映することもできる、そういう仕組みにいたしてございます。  私どもとしては、当初、国連と取り決めを結びますときに、条件つきの取り決めではどうも国連の側でやはり非常に不安であろうということも考えまして、行政府限りの責任においてこの五原則等々をきちんと法案に盛り込みました上は処理させていただいてもよろしいのではないかという考えでおったわけでございますけれども、衆議院において、またそれにつきましていろいろ御意見がございまして、一部御修正になられて本院に送られたという経緯でございます。
  94. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つは、この承認問題で、シビリアンコントロールの問題で論点になっておりますのは、防衛出動、治安出動というのは、これは国会承認がある。なぜ今回のPKOの法案については国会承認しないのかという論議がございます。  ただ、私たちが感じておりますのは、防衛出動とか治安出動というのは、これは明らかに武力行使を容認しているものでありますし、またある意味では国民に向かって銃を向けることもあるかもしれないという自衛隊の使い方でありまして、これはもう当然国会承認するのは当たり前だというふうに感じているわけでございます。  ただ、このPKOというのは一体何なのか。確かに武器を持った自衛隊海外へ出すという大事な問題がございます。ただ、この防衛出動や治安出動と同じように、武力行使と同じようにとらえられたらたまらないという気が私はしているわけでございます。そういう意味で、私は、このPKOというのは防衛出動、治安出動とは全く本質が違うと思っているんですけれども、こういうことがよく論議されるわけですから、この点についても政府の見解をきちんと聞いておきたいと思います。
  95. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいま議論がございますように、このPKOにおける平和的貢献は、まさに我が国の自主的判断、つまり国連の要請等に基づきまして行くか行かないかを我が国が決めます。また、そして任務を遂行する場合には、自衛隊の本来業務に支障のない限りやるということで、あとう限りこれからの国際社会における重要な業務でございますから、これらは私ども防衛庁の任務として大変大切なものだとは存じております。  一方、自衛隊法三条には、御案内のように、主たる任務といたしまして直接侵略及び間接侵略、そして必要に応じて公共の秩序維持のための出動が本来任務として規定されております。これは我が国の存立にとって極めて重大なことでございますし、またこれは我が国専守防衛我が国を守るための本来的なまさに任務でございます。間接侵略も同じでございます。また、命令による公共秩序の維持のための出動、これも同じでございますしかるところ、こうした任務は、本来的な国内専守防衛の建前に立った任務でございまして、今回のものは、冒頭申しましたように、それは本来的なこうした我が国を守るという任務とはおのずから性質を異にいたしておることは最初申し上げたとおりでございます。  したがいまして、今回の自衛隊活動は、あくまでもこうした目的我が国自衛隊の知識や経験とか組織力あるいは機動力、こういうものを活用することが最もこの国際貢献に適切かつ有効に対応し得るという判断からいたしたものでございまして、これを百条のその規定として書きました。雑則という分類ではございますが、任務は非常に重大でございます。私が申しましたような点がございますものですから、三条には本来任務として規定しておりません。  しかし、これからの問題といたしまして、国連におけるこういう活動がさらにいろいろの変化を遂げてくることは間違いございません。そうした場合においては、この自衛隊のあり方自体が問われることになりますから、広範な国民的な議論を経て、そしてその際には検討すべき課題であろうかとは存じておりますが、ただいまのところ三条の規定は考えておりません。  以上です。
  96. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今から少し論議してお聞きしたいのは、PKO、特にPKFに自衛隊が本当にやるようになったら一体どんな形で出ていくんだろうかなというようなことであります。国民皆さんは、この問題についてどうお感じになっているかというと、私も言われましたけれども、この法案が通ったら、すぐ思い浮かべていらっしゃるのは多国籍軍なんですよね。だから、陸海空軍五十万ぐらいがわっと行くんじゃない、違いますよ、PKFというのは平和維持のために各国が努力してやる活動なんですよと。でもいっぱい行くんでしょう、そんなことない、上限も決めています、二千人ですよと。いや、二千人も多いんじゃないか。一応日本自衛隊というのは十五万以上いるんですけれども、その中のごく一部の方に国際貢献のためにお願いするんですよ。そういう説明も一生懸命するんです。  ただ、私がここで一つ聞きたいのは、国際緊急援助隊の方については、自衛隊がどんな形で出ていくのかというユニットをこの前バングラデシュのサイクロン災害の例をとって出されました。大体こんな感じで自衛隊派遣するんですよというのを出されました。このPKFというのはさまざまな形が実際にございます。なかなかどのことをやるかによって人数が違ってくると思うんですけれども、防衛庁自身としては、大体一回出すときにどれくらいの人員規模を考えていらっしゃるのか、それをまず教えていただきたいと思います。
  97. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 本法律案に基づきます自衛隊の部隊等が平和維持隊に参加する場合には、具体的な規模等の点について今触れられましたけれども、これは国連の要請内容あるいはその時点における我が方の状況等によって異なるものでございまして、一概に直ちにここで申し上げるわけにはまいりません。総数として、これは自衛隊ばかりではございませんが、二千人というのは今お話しのとおり法律ではっきり明定をいたしておるところでございます。
  98. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そう答えられても結構なんです。結構なんですけれども、私がここで何でこんなことをわざわざ言っているかというと、要するに国民に見えないわけですよ、どんな形で出ていくのと、自衛隊が。ケースによって違いますよ、それは。私もよくわかりますのでも、例えば待機の問題もあるわけです。二千人そのまま出してしまったら、例えば交代の問題も出たりしたら困るわけです。それなら防衛庁として一挙に千人出すんですか。そんなケースも起こり得るんですか。一挙に千人とか二千人出すことがあるんですか。だから、そういうのはきちんと国民に見えるように答えないとわからないでしょう。二千人ばっと行くんですか。答えてください。
  99. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、先生のおっしゃるとおり、二千人を一度に出すというようなことではございません。通常の場合、各国のPKOの部隊等を見ましても、大体多い場合で四、五百人というように私は承知しておりますから、我が国の場合も一度に千人以上も二千人近くも出すということはこれは想定されないところでございます。
  100. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 こういう問題を言うのも、このPKF、PKOに日本が出ていくときにどんな姿なのかなということは、これは法案が通らなくちゃだめなんですけれども国民にとってはやはりどういうのが出ていくんだろうという関心は高いと思うんです。そういう意味じゃそういう規模の問題もありますし、例えば各国の例を見ましたらどうなっているかというと、それぞれの軍の特徴がありますから、輸送業務を担当するという国は、どちらかというと空軍とかそれから海軍を出すケースもあります。また、カナダあたりは中核となるのは、いつもライフル部隊というのを中核に置いておりまして、これが実質のそういう仕事をしに行くわけです。  私たちもこの法案を点検させてもらいましたけれども、この法案を見る限り、中心になるのは多分日本の中で言えば陸上自衛隊方々にこういった業務をお願いするしかないのかなというふうに感ずるわけです。ただ、そうはいうけれども、陸上自衛隊といえば何かというと、戦車もあるわけですから、そういうのも考えられるのかと思う人もいるわけです。ですから、今規模の問題を聞きました。今度は、日本がもし参加するようなケースになったら、大体どういう陸上自衛隊なのか、いろいろありますよね。普通科連隊あたりが中心になるのかなともちょっと思うんですけれども、どういったものを考えていらっしゃるのか。それはケースが違うと、そうおっしゃると思いますけれども、その辺も明らかにできる限り国民皆さんに教えていただきたいと思うんです。
  101. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 畠山防衛局長
  102. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 大体、今先生のおっしゃるとおり……
  103. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 防衛庁長官、私は指名しておりませんから。(「委員長の言ったとおりにしなさいよ」と呼ぶ者あり)今、向こうを指名したから。畠山局長
  104. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 今、御質問にございました陸上自衛隊、これが主になることは間違いございませんが、そのうちでどういった種類のものが、どういった部隊が対象になるかという点でございます。  御質問の中にもございましたように、要請された任務内容いかんによって決まることでございますが、通常はいわゆるお話にもございました普通科、そういったものが主体になるというふうに思っておりまして、戦車部隊みたいなものは全く派遣することを考えていないということでございます。
  105. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 こういうことを言ってきたのも、これも言われたことですけれども自衛隊の部隊が出ていくというので、私自身何と言われたかというと、どこかに駐屯する日本のある部隊がある日突然政府の命令によってどんと送り出される、それがこの法案なんでしょうと。そういうことを言う人がいるわけですよ、実際に。でも、この法案を読む限り、どうなっているかというと、そんなことは僕はでき得ないはずだ、だって、私たち自衛隊そのものとして出すんじゃない。これは一たん平和協力隊員として、隊員として来てもらわなくちゃいけないわけです。ある意味では別個のところに来てもらわなくちゃいけないというシステムになっている。しかも、どういう法律の構成になっているかというと、必ず参加する場合は研修が要ると言っているわけです。  ですから、これから自衛隊の問題になっていったときに、防衛庁長官でも結構です、ぜひお話ししていただきたいのは、結局出るまでにどういう手続をとるのかということです、自衛隊が。ある日突然出ていくことはあり得ない。一応研修もしなくちゃいけないと思います。その上で、例えばいろんなところにいろんな能力を持った自衛隊の方がいらっしゃるでしょう。その中から、さっきおっしゃっていました英語力のある人かもしれない。そういう人たちをこうやってあるところに集めてきて研修をきちんとする。研修した上でこのPKFには参加できるんだということをきちんとお話ししていただきたい。  何でこれを言うかというと、もう一つ言っておきますけれども、結局自衛隊員が参加する意思の問題なんですよね。要するにこの自衛隊員の意思をどれだけきちんと把握し、それは中には全然参加したくないという方もいらっしゃるかもしれません。そんな意思をどうやって確認するか。そのこともあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  106. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 法十五条によりまして「研修を受けなければならない」ということに一般論として規定されております。特に自衛隊を部隊として出す場合につきましては、これは先生おっしゃるとおり大変いろいろの諸準備が必要でございますけれども、なかんずく諸外国の例等をよく研究した上で、そしてまた研修をする。その研修内容については一々申し上げません。さっき英語教育のことを言いましたが、そればかりではござ いません。この平和協力隊員の任務あるいは機能あるいは派遣先国における実情等々、あらゆる問題をよく研究し、そして隊員に知悉していただかなければなりません。  同時に、後半に先生がおっしゃられました隊員の意識あるいは同意等々、行っていいかどうか、意向を十分尊重せよということでございますが、これは自衛隊としては平素個々の隊員の資質あるいはそういった問題については深い関心を持っております。そして希望等もよく承りながらやっておりますが、この平和業務につきましてはより一層隊員のそうした意見ないしそういう意向というようなものをよく承った上で、そしてその適性に合致した人を送り出す、こういうことであろうかと存じます。
  107. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、防衛庁長官もおっしゃったとおり、この研修という問題は私は非常に重い問題だと思っております。このPKO法案の中で、研修が十五条に一行しか触れられてなかったことは、私は賛成する側としても非常に残念であります。もう少し具体的な形で詰めてもいただきたかった。  結局、何で研修が大事かというと、自衛隊員というのは日ごろどんな訓練をされているかというと、これは銃を撃つ訓練であります。戦うための訓練をしているのが自衛隊なんです、防衛のためですからね。ただ、PKFというのは何かというと、戦わない軍隊でしょう。敵のない軍隊なんでしょう。(「建前なんだ」と呼ぶ者あり)建前とおっしゃいましたけれども、私はそうは思っておりません。そういうものだからこそ日本がやらなくちゃいけないと私は思っております。ですから、自衛隊員を出すにしても、一番大事なのはこの研修の問題で、いかにそういう人たちが我慢できるか。銃を撃たないための研修をどうするかということは非常に大事になってくるわけです。  そういう意味では、さっき防衛庁長官、研修内容については詳しく申しませんと言いましたけれども、でき上がっているなら、どんな研修をやるつもりなのか教えていただければ私はありがたいと思いますね。そうすれば国民皆さんも、これは自衛隊そのものを出すわけじゃないんですから、答えられるだけは答えてください。
  108. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この法律案が通ります場合におきましては、研修が非常に重要なことであるというのは先生御指摘のとおりでございます。  そうなる場合には、私どもといたしましては、現実に自衛隊が今このPKFを派遣されている地域に先般一応の調査のために数人を派遣もいたしておりますけれども、この法律が施行されるようになりますと、例えば基幹となる要員を北欧のPKO学校等に派遣して勉強させ、そしてその派遣された隊員が帰ってまいりますと、集合教育を行う教官としてまたこれをやっていくというようなこともあるいは必要になろうかと、こう思っております。  その場合の集合教育の内容等につきましては、これはもちろん語学、これは一般的に必要でございます。そして、国連平和維持活動の沿革と、それからまた平和維持隊の役割、これについてもはっきり認識をしていただかなければなりません。また、我が国で出動する場合のこの法案に予定されております国際平和協力業務の実務の内容についても、これは教えなければなりません。また、先ほどちょっと触れましたが、派遣先国の気象、気候条件、風俗、習慣等々も必要でございます。また、国によっては風土病その他もございますでしょう。そういった健康管理の問題等も含めて、これは隊員の安全にしてしかもこの使命を達成するためでございますから、あらゆる配慮をしてこの研修をやってまいりたい、このように思っているところでございます。
  109. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 この研修の問題は、単に自衛隊だけの問題ではございません。参加していただく方、いろんな方にお願いして、このPKOには幅広い分野で参加していただかなくちゃいけないということになってまいります。そういった意味では、十五条における「研修」という一言しか書いてないんですけれども、このことは私が先ほどから言っているように極めて大事ですし、これを担当するのは、自衛隊自衛隊として訓練が別にやられるわけですけれども、そのほかにまとまった形でまた訓練をやらなくちゃいけないというシステムになっております。  この法十五条における研修というものはどういう形でやられるおつもりなのか、御答弁をいただきたいと思います。
  110. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま先生、十五条が非常に短いというふうに御指摘がございましたですけれども、私どもとしましては、非常に短いですけれども内容を込めているところでございまして、基本的には、この法案をぜひ御承認いただきまして発足するという段階になりますと、まず真っ先に恒常的な機関として事務局がつくられるわけです。その事務局の中で、十五条に書いてございますけれども、「本部長の定めるところにより」決めるということでございます。したがいまして、本部長が真っ先に着手しないといけないのは、現実の研修プログラムをどういうふうにつくっていくかということでございます。  ただいま防衛庁長官から御指摘のございました、いろんな研修でカバーすべき側面というのがございます。この法案によりますと、関係行政機関の協力というのが原則一つになっております。いろんな行政機関の中には既存の研修センターも個別にあろうかと思います。現実に存在しておりますあらゆるリソーシズを使いまして、十五条は短いですけれども、研修計画に内容を持たせるようにいたしたいと思っております。
  111. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃいましたけれども総理、研修センター的なものもとおっしゃっていました。やはり研修をやる上では、もちろんいろんな研修プログラムを立てると同時に、一つその核となるセンターみたいなものが当然このPKOを出すに当たり必要になってくると思うんです。ある意味ではその核となる、そこでどういう研修をしているかということが見える、国民にとってもそういう場をぜひ公開した方がいいんじゃないですか、研修センターをつくって。日本の研修センターですね、そんなものをつくることが、研修をやる上で、国民皆さんにも見えるようになるし、また訓練をするときも核になるものができるし、そういう意味ではセンター的なものというのが日本の場合も必要になってくるんじゃないでしょうか。  お金のかかる話ですから、総理としてやられる気があるかどうか聞いておきたいと思います。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 研修ということは、私もこれは非常に大事なことだと考えております。いざ現地へ行きましたときに、本当にその平和協力の実を上げられるかどうかというのはもう一にここにかかってくると思いますので、重点を注ぎたいと思っておりますが、具体的にどういうことを考えておりますか、所管大臣から申し上げます。
  113. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 総理からの御指示でございますけれども、先ほど申し上げたとおりでございまして、今それ以上のことを申し上げる段階にはございませんが、先生の指摘された重要性に基づきまして今後対応してまいるつもりでございます。
  114. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私は、もうこのことについてはもっと積極的な発言をぜひいただきたいし、これはほかの党からも指摘があっておりましたけれども、この問題についてながなか国民の理解がまだできていない、アジア皆さんからも理解がなかなかできていないという指摘も事実あるわけです。できれば、本当は研修センターをつくるならば我が国だけではなくて、例えばいろんな国の方々、PKOに関して韓国も今非常に関心を持っているという話も聞いております。そういう話がございました。そういう意味では、いろんな国の方々日本の研修センターに来て、このPKO、PKFというものに、ある意味では国際貢献とい うものにアジア挙げて取り組んでいけるというような体制を日本がつくれるならば、私はすごいことだなと思います。  そういった意味では、このセンターという問題、ぜひ検討へ踏み込んでいただきたいと思うんですが、言いかがでしょうか。
  115. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それに関連して一言申し上げさせていただきますが、私の方の法律では、研修の委託を受けることが自衛隊法で規定されておりますから、私の方といたしましては、この講師の派遣、あるいは委託を受けますならば、あらゆる持てる組織を利用いたしまして、活用いたしまして十分な研修をやって、自衛隊の部隊としての隊員のみならず、この平和協力隊の隊員の研修にも相努めてまいることが必要であればやってまいりたいと思っております。
  116. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、防衛庁長官に答えていただきましたから、この研修に含めてもう一つ聞いておきますけれども、先ほど防衛庁長官から、これからどんな形でやるかというと、一応核となる者を訓練センターへ出そう、北欧の訓練センターへ出してみよう、その方たち日本へ帰ってきて教育をするんだ、しかも内容は多岐にわたりますよというお話がありました。ある人たちはこう言います。この法案が通った途端に自衛隊が外へ飛んでいくんだと。これは防衛庁長官、研修されるわけでしょう。 一生懸命。そういう決意なんでしょう。そうしたら、これだけをきちんと仕上げようと思えば少なくとも一年はかかりますよ、これだけやるなら。日本はそういう無謀なことをやるんじゃないんだと、そのことをぜひわかりやすくはっきり言っておいてほしいんです。一年以上かかりますね。答えてください。
  117. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生、今御指摘のように、私ども、任務が自衛隊に付与された場合におきましては要員の選定もやらなくちゃなりません。そして、ただいま申し上げましたような要員に対する適切な教育訓練の実施もいたさなければなりません。そしてまた、自衛隊として部隊としての行動でございますから、この細部基準等の研究等も、これは十分にこの措置を検討し定めなければなりません。したがって、ある程度まとまった単位で任務を遂行するというようなことになりますと、これは私は一概に期間を何年くらいということを申し上げられませんけれども、今先生のおっしゃられたように、部隊としてある程度の単位で行くというようなことになれば、一年程度あるいはかかるのかもしれないなと。これは確定的な期間ではございません、いろいろの想定がございますから。しかし、おっしゃるように、一年程度といった相当の期間を要すると考えられます。  そういうことでございますけれども、現在はPKFの活動の実態等を把握して、そしてあとう限り早目に準備もしていくということも必要かと、このような感じでやっております。
  118. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう時間がほとんどなくなりました。最後というか、カンボジア問題に関連して私もぜひお聞きしておきたいんです。  先日、ポル・ポト派のキュー・サムファン議長がけがをされたということで、私たち夏に行ったときにキュー・サムファン議長にも直接お会いしましたが、このカンボジア問題、和平ということになったけれども、なかなか難しいなということも感じておりました。  先日、先遣隊がカンボジアに入りまして、テレビでも報道されておりました。地道に地元の人たちとの交流を、カンボジアの住民との交流を広げているという絵が出ておりました。そこに日本人が一緒に映っていまして、それは何かというと、最近観光客がふえているというんですね。オーストラリアとフランスからPKFの先遣隊がカンボジアに入っている、日本からは観光客が入っている、その図式を見たとき、私は考えさせられる思いに正直なりました。  先ほど防衛庁長官がおっしゃったみたいに、私は、カンボジアに直接この和平の問題で日本がわっと行くことは難しいと思っております。私たち自身もこの法案を何のために通すかといえば、カンボジアのために通すんじゃない、国連貢献できる枠組みをまずつくりたいと思ったからこそこの法案をやっているわけです。  そういう意味では、総理にぜひお願いもしたいんですけれども国民の理解を得、アジア各国に理解を得るためにも、この法案が通ったとしても、できるだけ無理のない方法で国民の理解を得つつ、今後この法案についてPKF、PKOを出すときには取り組んでいくんだと、私はそう思っております。  それに対する決意を伺って、終わりたいと思います。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは非常に大切な問題を御指摘になったと伺っております。  先ほどから申し上げましたが、本当に我々の貢献というものが関係国はもちろん周辺国にもみんな心から歓迎されるということでありませんと、我々の世界平和に貢献したいという志はかえって実を結ばないことになるわけでございますから、十分に政治情勢も判断しながら慎重に対処いたすつもりでございます。
  120. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 私は、まず質問に入ります前に、これまでの衆議院からの審議の経過を聞いてまいりまして、これが全く法案の体をなさない大変な矛盾を含んでいる法案だと言うにとどまらないで、これが憲法違反の極めて重大な問題だということを最初に述べなければならないと思うんです。  宮澤首相も御承知のように、現地で武力で任務を妨害するという事態が起こったときに実力で抵抗する、これは武力の行使になるからそういうことはいたしません、そういう場合には撤退します、中断しますと。ところが、きのうの答弁を聞いていますと、そういうふうな問題では全くなくて、そういう場合でも全部武力行使になって全部憲法違反になる、そういうふうには必ずしも言えないというふうな答弁がありました。また、武器使用する場合にはあくまで個人であるというふうなこともこれまで言ってまいりましたが、しかし集団でやったからといって直ちにそれが問題になるものではないという答弁も昨日聞きました。  こういうふうに考えできますと、いわゆる政府の判断、答弁によってくるくると変わって、実際には武力行使が行われる、そういう憲法違反の内容を持っているものだと指摘せざるを得ないと私は思うんです。  そういう点で、この問題についてまず基本的な点を宮澤首相にお尋ねしておきたいと思うんですが、日本憲法によって国際問題には軍事的に関与してならない、軍事協力はできないということになっているわけですが、この点についての首相のお考えはいかがでしょうか。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の言葉を使わせていただきますならば、武力の行使をすることはできない、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 今まで政府の答弁というのは、軍事面でということを明確に述べておりました。竹下元首相が一九八八年五月四日、ロンドンの国際会議で明確に述べたのは、我が国は平和を国是としており、憲法上も軍事面の国際協力は行い得ないことは御承知のところでございますと。私は、この問題、その直後、竹下さんに質問したんです、外務委員会で。明確に軍事、ミリタリーと述べられました。  武力の行使というのは非常に狭いんです。武力の行使以外にも軍事の問題というのはたくさんあるんです。軍人が関与し、軍隊が関与し、武器を提供する、これ全部軍事なんです。こういう問題で行い得ないというのが日本憲法の精神ではないでしょうか。どうでしょうか。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうもそうおっしゃるんじゃないかと思って先ほどのように申し上げたわけで、そういうことをおっしゃいますと、バングラデシュで災害がございましたときに自衛隊が助けに行く、これも軍事でございますか。どうも私どもはそういう意味には軍事という言葉を使わないんだろうと思います。それで私が誤解を避け まして武力行使と申し上げているわけです。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 それは私は大変な詭弁だと思うんですよ。軍事というのを国際的に考えてみてもこれは明白な言葉であって、武力行使にだけ限定するというのは、つまり今回の場合には憲法に違反するということを避けたいという意思がありありになっているからそういう表現の仕方をされたんだろうと思うんです。  それでは、言葉をかえて聞きますけれども軍事面で国際問題に関与してよろしい、協力してよろしいというのは憲法のどういうような精神から引き出せるんでしょうか。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 必要があれば法制局長官からお答えを願いますが、御審議中の法律軍事ということに私は関係ないと思います。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 自衛隊に国際協力という問題で求められているのは、国連の平和協力維持軍、これに参加が求められているのは自衛隊軍事機能なんです。ほかの機能じゃないんです。この軍事機能を一般人は持ってないからこそ自衛隊に依拠して、自衛隊でなければならないと言ってPKFに出しているんです。そういうことになるわけでしょう。そうすると、軍事機能を求めている、その軍事機能で国際的に貢献してよろしいというのは、まさに憲法のどういう精神に基づいて、軍事機能で日本貢献しなければならないという規定が憲法にあるのか、当然問われなければならない。  首相が言われたんですから、長官、いかがでしょうか。
  128. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  ただいま委員は、軍事面で、あるいは軍事機能を用いてと、こういうふうなお言葉をお使いになりました。実は私、その軍事面でとかあるいは軍事機能、こういうふうなことを正確にとらえているかどうかはっきりいたしませんが、いずれにいたしましても、我が国憲法は、その前文におきまして平和主義、国際協調主義をうたっております。あるいは戦争の放棄を第九条で、武力の行使はしてはならない、こういうことで書いてございます。そういう規範は憲法上明確であろうと思います。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 憲法前文の平和主義といいますか、いわゆる平和原則、これは具体的に言えば憲法前文のどういうような条項として述べられているものでしょうか、長官
  130. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 憲法前文におきましてはその第二文、ここが中心になろうかと存じますが、読んでみますと、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」、こういうのがまず一つございます。その次に、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてみる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」。さらに、「われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」、これがいわゆる平和主義中心だろうと思います。  それに続きまして第三文で、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」、これが通常国際協調主義と言われていることで、平和主義と国際協調主義、そういうことだろうと存じます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 今お読みになったところから、自衛隊、いわゆる国際法上見ればこれは明確な軍隊ですが、この軍隊が国際問題に関与するというのが憲法上の平和主義の精神からどうして出てくるんでしょうか。その内容をお示しいただきたい。
  132. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 前文におきまして今のような表現を用いておりますと同時に、第九条におきまして、もうこれは委員十分御承知のとおり、いわゆる「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は」、こういうことで、それぞれ前と後ろについてございますが、「永久にこれを放棄する」、こういうことになっております。  これで、我が国といたしましては自衛権、これはここの中で放棄しているものではないということで、自衛権は現に持っているんだ、その我が国の自衛権を行使するものとしての実力組織である自衛隊は合憲である、こういう関係になろうかと存じます。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 質問したことにお答えいただきたいんです。  あなたは今、すべての戦争が放棄されたわけじゃないと言うけれども、それは少数の意見なんですよ。すべての戦争を放棄しているというのは、これは明確なんです。仮に、自衛権を認めて自衛隊の存在を容認している政府の立場であっても、これを外国に出して国際的な問題で軍事的に関与していいなんというふうな問題をその憲法の精神から引き出すところはどこもないんですよ。  大体、日本憲法がつくられたことというのは、もう皆さん御承知だろうと思うんです。これまでも議論されてきた。大変な被害をアジア日本国民に与えてきた。あの侵略戦争国民の意思を無視して、そして政府の意思によってそれが実行された。これの深い反省の上に立って、そういうような専制的な政治ではだめだ、国民に主権がなければならないということを宣言して、すべての戦争を放棄するといってつくられたのが憲法の制定の精神じゃないですか。そうして決められたのが平和主義なんです。  ここで述べられている「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」というのは何か。これは政治道徳の法則、普遍的な、すべての国民、すべての国が従わなければならない普遍的な道理に基づくべきだということが強調されているんです。日本憲法の精神がこれでつくられたのは何か。まさに、言うなれば、「他国を無視してはならない」というのは、軍隊を崇拝し戦争を賛美して、他国を犠牲に導くような侵略戦争のやってきた行為を厳しく戒めているのがこの精神じゃないですか。  そういう状況を全く無視して、自衛隊という外国から見たられっきとした軍隊を、しかも武装をして外国にまで行って関与する。憲法のどこからその精神が引き出せるんですか。明確にしてください。
  134. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) ただいま委員は、平和主義というところから、海外自衛隊が出ていくこと、これは軍事面で、あるいは軍事的にとおっしゃいますが、私どもの今回の法案をもって申し上げるならば、これは軍事面の協力あるいは軍事的な活動、こういうふうな認識はいたしておりません。あくまでも国連の要請に基づきまして、国連の精神である非強制、権威と説得でその地域の紛争が終了したときにその平和を維持していく、おういうことでございますので、自衛隊がいわゆる軍事面の行動をしに行く、こういうこととは認識しておりません。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 長官、とんでもない詭弁です。確かに平和維持軍の活動というのは平和を維持するため、それが目的だということは国連の文書にも書いています。これは私たちはそのとおりだと思います。しかし、問題は、その中の軍事部門という構成部門が文民の部門と別に明確に規定されているんです。そこに参加するのは各国の軍隊だけなんです、加盟国の。そして、自衛隊しかそこに参加できないということになったんでしょう、この法案で。  自衛隊がそこに参加する。そして、そこで行う活動、その内容については委任される任務、これはすべて軍事活動であり軍事任務である。訓練マニュアルに書いてあるじゃないですか。SOPだって、あれは軍隊そのものの行動が標準規定として出されている内容です。軍隊ですよ、まさに。これを軍事でないなんて言ったら国際的な笑い物ですよ。目的が平和を維持するということだ から、何の手段でもいいということじゃないんです。軍事目的であろうとも平和的な手段であり得るし、平和目的をしようとも軍事という行動があり得るわけです。国連の憲章にだってそういう区別ぐらい明確にされているじゃないですか。まさに、軍事で関与してはならないというのは、日本国の憲法軍事に関する規定がないということが明確な証拠じゃないですか。  どこに軍事の規定があるんですか、憲法上。明らかにしてください、首相。軍事の規定がないのはどうしてですか。
  136. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 恐縮でございますが、委員のおっしゃられる軍事ということの意味、これを私どもが議論いたしますときは、どうも定義してかからなければならないかとも思うのでございます。そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたように、我が国は自衛権を有している、我が国がいわゆる自衛の三条件がある場合には個別的自衛権の発動もまた許される、こういう前提に私どもは立っておりますし、また、そういう意味におきまして自衛隊は、定義のいかんによりましょうけれども、いわゆる外国に海外派兵、派兵でございます、武力行使の目的をもってというふうなことが許されないことは、これは総理も今までも明確に申し上げているところでございます。  軍事面で、あるいは軍事としてというふうなところにおきまして、私はどうも委員の御説明に納得できないところがありますし、そういう意味で、私は軍事という形でこの憲法の上に規定がないのはまた当然なのかなということを考えております。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 問題は、武装して、そしてPKFに参加するわけでしょう。自衛隊というのは軍隊なんです、国際法上は。これは日本政府がどのように言おうとも、国際法上は軍隊なんです。そして、武装していくんです。武装をした軍隊が行動をとる、これが軍事じゃなくて何ですか。国際法上明確じゃないですか。これは長官、初歩的な問題ですよ、国際法上の。だから、今まで政府は、軍隊と言っているのを全部否定してきたんじゃないですか。軍という言葉だって変えて隊にする。全部そんなことでごまかしをやって、そして日本が軍隊で関与することができるというふうなことをやるというのはとんでもないことですよ。  今まで参議院の決議の問題に関して何回か問題になりました。一九五四年、ここにこういうふうに述べられているんです、この決議をしたときの趣旨説明の中で。  我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場  合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、  先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮屈であっても、不便であっても、憲法第九 条の存する限り、この制限は破ってはならないのであります。明白じゃないですか。これは参議 院で海外出動を禁じたときに述べられた趣旨の内容ですよ。どうですか、首相。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのは昭和二十九年の参議院の決議のときのお話であったと思いますけれども、私ども海外において武力を行使してはならないということをずっと守ってまいりましたし、参議院の御決議の言われることもそういうことを戒められたのであろうと。これは有権的には当院のお決めになられることでございますけれども、私どもはそういうふうに考えてまいったところでございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 結局ここには、海外に出動しないということでなければならない、海外に出てはならないと言っているんですよ。明確なんです。それから、「如何なる場合においても」と言っているんです、「如何なる場合においても」と。それで、一度限界を越えると、際限なく遠い外国まで行くことになる。「先般の太平洋戦争の経験で明白であります」。これを誇大妄想だとか、あるいはそんなに誇大して考えることは大変なことだ、おかしいというふうな言い方は通らないんです、これは日本の国会で行われた決議の内容なんですから。  総理、だめです、今の答弁じゃ。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもはそういうふうに考えて今日までやってまいったわけでございます。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 日本国の憲法というのは、大臣初め国家公務員、国会議員ももちろんですが、すべて守らなければならない最高規範なんです。そのような規範に反するような法案がここに出されているんです。  この憲法の前文というのは大変な前文であって、これはただ単なる公布文じゃないんです。ここには、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」と。この前文に違反したら明確な憲法違反なんですよ。憲法のどこに軍隊が出ていいなんというようなことが書いてあるんですか。その根拠が明確にならない限り、これが憲法違反だということははっきりしているんです。いかがですか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その軍隊が出るという部分がどうも何を指しておられるのか、私どもには理解ができないと、こう申し上げているわけです。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 自衛隊が出るんです。軍隊が出るというのは、ここに明確に、自衛とは海外に出動しないということでなければならない、自衛隊海外出動は許さないという参議院の決議。明確じゃないですか。
  144. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 幾つかのお尋ねがございました。  一つは、憲法の前文の趣旨といいますか、そういうものでございますが、憲法の前文と申しますのは、一般に言われておりますのは、憲法制定の由来なり目的なりあるいは制定者の決意、こういうものを宣言したものであるということで、もちろん委員今仰せられましたように、公布文といったようなものでは決してございません。そういう意味で、制定の由来なり目的なり決意なり、こういうものを述べたということだろうと思います。  ただ、一点そこにつけ加えておきたいと存じますのは、この前文自体が、それ自体がいわゆる国家の行為を拘束するとか、あるいはその合憲性、判断の基準となるという具体的な規範性、これを持っているわけではない、むしろ個々の具体的な規範性というものであれば各条の条文である、こういうふうに通説は言っております。そういう意味で一言お答え申し上げたいと存じます。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 確かに前文では、制定の由来、この憲法の制定の出発点、これを明確にされています。ところが、もちろん憲法の基本原理を示すものがこの前文である。ですから、各条項の規定について、その意味だとか解釈の基準はこの前文から出てきているんです。前文と不可分のものなんです。前文を無視して、前文の精神に反して、そして九条だけに反さなければ問題ないなんというふうな、そういう意味の前文で一は全くないんです。この問題は私は絶対に承服することができない。今度の法案というのは、まさにこの憲法の精神に真っ向から反するものだということだけは明確に申し述べておきたいと思うんです。  そこで、言葉をかえて言いますけれども、先般来いろいろ問題になってきましたが、日本武器の輸出、これは憲法上許されないものとされてきたんです。ところが、大量の武器を持った自衛隊が外国に行くのは、これは憲法上許されるんでしょうか。武器の輸出は憲法上だめだと言うんです。武器を持って自衛隊が外国に行くのは許されるんでしょうか。
  146. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいま先生が武器輸出三原則についてお触れになりましたが、これは御案内のように、佐藤総理武器輸出三原則、これを政策として提起されました。そしてその後、三木内閣におきまして、さらに制限的にこれを運用する趣旨の改正が行われたことは御案内のとおりでございます。  しかるところ、今議論になっておりますのは、 自衛隊武器を携行する、つまりこれは大型武器とかそういう戦うための武器ではございませんが、言うまでもなく、自衛隊員の生命、身体が侵された場合に正当防衛的な意味でそれを守るというための武器の携行でございますけれども、これはあくまで外国政府に渡すとか売り渡すとか、そういう問題ではございませんので、これは武器輸出三原則とは関係ございません、
  147. 立木洋

    ○立木洋君 自分が使うんですよ。
  148. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 自分が使うんです。自衛隊員が自分の生命、身体を守るために携行をするものでございまして、武器輸出三原則とは関係ないと私は思います。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 これはかって法制局が明確に述べたのは、「わが国の憲法平和主義を理念としているということにかんがみますと、当然のことながら、武器輸出三原則憲法平和主義の精神にのっとったものであるというふうに考えております」。憲法平和主義の精神なんです。だから、この精神を尊重するならば武器の輸出は慎まなければならない、行ってはだめなんだというのが憲法の精神から出てくる考え方なんです。ところが、武器を持っていくんです、今度は。そして、武器を持っていって、場合によってはそれを使うんです、海外に持っていって。それはどうして憲法上許されるんですか、平和主義の。(「正当防衛だよ」と呼ぶ者あり)正当防衛の問題は後で聞きますから、ちょっとしばらく待っていてください。  一方では、武器を外国に持っていってはならない、外国に渡してはならない、海外に出してはならないと。それを、自衛隊が外国に武器を持っていく、そういう軍事的な役割を果たすということがなぜ憲法上認められるんですか。
  150. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  ただいま委員が引用されました法制局のかつての答弁といいますのは、たしか昭和五十六年の法制局長官答弁だろうと存じます。その中に確かに、「わが国の憲法平和主義を理念としているということにかんがみますと、当然のことながら、武器輸出三原則憲法平和主義の精神にのっとったものであるというふうに考えております」、こういうふうにお答えしてありますが、その少し前のところをごらんいただきますと、「いわゆる武器輸出三原則は、武器の輸出によって国際紛争などを助長することを回避して、外国貿易及び国民経済の健全な発達を図るという目的をもって」、いわゆる貿管令の「運用基準として定められたものであるというふうに理解しております」という部分もございます。一方、憲法九条二項は、我が国自体のいわゆる戦力の保持を禁止している。そういう意味では、武器輸出三原則憲法九条が直接規定するものではない。こういう趣旨のところが、これは五十六年でございますが、さらにそれを前へさかのぼれば、昭和四十二年にもそういう議論があったと存じます。  ところで、ただいまの委員お話は、こういった今の輸出三原則というのが武器の輸出によって国際紛争などを助長することを回避する、こういうところから出たものであるとすれば、今回の平和維持隊が武器を持っている、持っていて、使用の条件等非常に厳しいものが課せられておりますが、そういうものとはおのずから区別して考えられますし、また平和の維持のためと、こういうことでございます。特に今委員の御指摘のような問題はなかろう、かように思います。
  151. 立木洋

    ○立木洋君 今の問題についても同様、私は絶対に憲法に対する正当な解釈とは言えない。それどころか、大変な詭弁である。  私は、この問題について、今度のこの法案については憲法上との関係から見てかなり無理しているところがあると自民党のある幹部が言われたという報道も見ましたけれども、まさに良識ある人が憲法を前文ともによく読んで、そしてこの法案の武装した自衛隊が外国に軍事的に関与するということが、この憲法で、戦争にかかわっではならない、すべての戦争を放棄する、そして戦力まで保持しないということを決めた憲法の精神から見るならば、どこから憲法上許されるなんというような結論が出てくるのか。絶対に出てこないということは、良識ある、良心がある人々がこの憲法を読むならば、明確に出てくる結論だということを私ははっきり申し上げておきたいと思うんです。そういう意味において、この今回の法案憲法に反する重大な法案だということであります。  次に、武力の行使の問題、先ほど正当防衛の問題が何か要求されたようですから、その問題についても質問いたしておきましょう。  今までの問題でいろいろ問題にされてきましたけれども武器使用の問題について、これは個人であればいいかのように言います。個人の生命が脅かされた事態になれば武器使用していい、これは正当防衛だというふうな形でそれが正当化されているように言います。しかし、私は、今度の法案における武器使用の問題というのは、こういう主張の仕方というものは根本的に成り立たないものだということをはっきり述べたいと思うんです。  第一、出動していってPKFに参加するのは自衛隊なんです。自衛隊というのは、今までも指摘されてきましたように、武器を使うという訓練を受けている軍隊です、国際法上は。そして、まさに使用することのできる武器を携行していくことができることがちゃんと明記されているんです。そして、その使用も二十四条三項に明記されております。携行してよろしい、場合によっては使ってもよろしいということになっているんです。そういう自衛隊なんです。そういう自衛隊がPKFに参加するんです。そして、参加するのは国の任務という命令によって行くわけです。勝手に自分が好きで行くのではないんです。そして、まさにそこで行う業務は国から与えられた業務、国連から与えられた業務に従事するんです。まさにこれは軍事活動なんです。  そういう軍事活動の中で生じた武器使用というのは、国際法上これはすべて武力の行使なんです。これを武器使用と武力の行使が全く相入れない頂上で切り離されているかのように主張するのは全くのナンセンスなんです。  問題は、一般の人々が道路で暴行を受けて、それに対して大変だといって正当防衛でそこら辺にあった石をつかんで相手に殴りかかった、これは正当防衛でしょう。しかし、それは一一般の私人の行為としての正当防衛の問題であって、軍隊というのは違うんです。自衛隊というのは違うんです。業務が与えられてそこで行う。業務中に行われる武器使用というのは武力の行使なんです。いかがでしょうか。
  152. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 国際法の側面につきまして、私の方からお答え申し上げたいと存じます。  国際法上、軍隊による武器使用という特別な概念や定義があるわけではございませんけれども、軍隊による武器使用が直ちに国際法上問題となる武力の行使に当たるというものではないと考えます。逆に、それでは軍隊以外の国家機関が武器使用したということであれば、常にそのような武力の行使に当たらないのかといえば、やはりそのようなことはないだろうと思います。結局、軍隊による武器使用意味いかんというものは、そのような言葉が使われております具体的な文脈の中で解釈するほかないだろうと存じます。  いずれにいたしましても、例えばPKFに参加した各国の加盟国の軍隊がその要員の生命の防護のために必要最小限の武器使用するということは、国際法上問題となる武力の行使には当たらないというふうに考えております。
  153. 立木洋

    ○立木洋君 国連では、この平和維持軍というのは武力の行使というものを認めているんですよ。何も国際法上武力の行使が問題になっているんじゃないんです。日本憲法上問題になっているから、政府はごまかすために限りなく武器使用ということで歯どめをしたかのように主張しているんじゃないですか。  大体、武力の行使と武器使用ということを区 別するなんというようなことはないんです。問題は、軍隊が業務中に行う武器使用なんですから、これは事実証拠としては確かに武器を使うんだから武器使用という言葉があり得るでしょう。しかし、軍隊が業務中に行う武器使用というのは武力の行使なんです、たとえ自分の生命の危険があろうとも。それに対して、どういう形であろうと武器が使われるというのは武器使用なんです。国際法上そういう区別がありますか。ないんですよ。  SOPだって、「武力はその意思を強制するため物理的手段を行使することである」と明確にされているんです。国連のモデル協定の中に書いてありますが、この平和維持活動は、「軍人の行動に適用される一般的な国際条約の原則及び精神を、遵守し、尊重する」ということが書いてあります。軍人の行動に適用される一般的国際条約の原則、これを守らないとならないということがモデル協定に書いてあります。この軍人の行動に適用される一般的な国際条約、ハーグの陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約の中では、国がその軍隊を組成する人員の一切の行為について責任を負うと明確になっているんです。つまり、言葉をかえて言えば、国が軍隊を組成して、それが行う人員の行動一切責任を負う。権限内であろうと権限外であろうと、業務中に私的な行為をとろうとも、国の責任なんです、それは。  この点について条約局長が先般言いました。「国家機関として行動した場合に、その行為が国家に帰属するということであれば国家による武力行使ということになるわけでございます」。明確じゃないですか。国際法上規定された軍人に関する法規、これは尊重することになっているんです。そこでは明確に、軍人がとった行動、権限外であろうと権限内であろうと、国が責任を負わなくちゃいけないんです。国家の機関として行う行動なんです。そうしたら、その個人がとった行動が、正当防衛であろうと何であろうと、武力の行使じゃないですか。
  154. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま私の過去の答弁に触れられましたので、私の方からお答え申し上げます。  恐らく、先生がお引きになりました答弁は、昨年の国連平和協力法の審議、衆議院でございますけれども、の際の私の答弁だろうと思います。    〔委員長退席、理事岡野裕君着席〕 この答弁は、当時の法案の中におきまして、いわゆる平和協力隊員の護身のための小型武器の貸与等を定めた国連平和協力法案第二十七条というのがございましたが、その文脈の中におきまして、この二十七条において想定されている小型武器使用は、平和協九隊員が護身のため個人的資格で行うものであって、国際法上国家に帰属する行為ではないというものでございますので、そもそも武力行使を原則的に禁止している国際法との関係で問題とならないという、いわば国際法上の考え方を述べたものでございます。国家機関が国家機関として行動する場合に武器使用すれば、常に武力の行使になるということを述べたものではございません。
  155. 立木洋

    ○立木洋君 だめです。答弁になっていません。答弁を正確にしていただきたい、私の質問したことについて。
  156. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 私は、先ほど来、国際法におきましても武器使用が常に武力の行使になるというものではないということを申し上げているわけでございます。  そして、先ほどお引きになりました私の答弁につきましては、これは昨年の法案の中で小型武器使用に関する規定がございまして、その関連で、あの規定は隊員の個人の護身のための武器使用ということでございましたので、いわゆる武力の行使というものには当たらないということを申し上げたものでございます。
  157. 立木洋

    ○立木洋君 だから、柳井さんが今、自分がかつて行った答弁の釈明をしているだけなんですよ。私の言っているのは違うんです。軍隊として国から任務が与えられている。そして、外国に行って業務をして、武器を使うことも任されているという状況で武器を使うんですよ。これは単なる武器使用じゃないんです。それは武器を使うんですから武器使用という言葉はありますよ。だけど、それはまさに武力の行使なんですよ、軍隊としての業務中の国家の委任を受けた中から起こってくる行為なんですから。そういうのが武器使用で武力の行使でないなんと言ったら、国際法上ナンセンスですよ、そんなの。  そういうことから考えて言うならば、軍人に関する一般的な国際法上の原則に従う、それを尊重するとなっているんでしょう。私はハーグ条約に関する規定まで出して、だから国家の機関として行っている行為なんだから、これは武力の行使なんですよ。そういうことを言わないといけない、答弁しないと。あなたの言っているのは自分の釈明だけじゃないですか。  答えられる人がいたら答えてください。渡辺さん、お笑いになるんだったらちょっと答えてくださいよ。
  158. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 国際法に関しての重ねての御指摘でございますので、いま一度答弁させていただきます。  確かにモデル協定案の中には、PKOは「軍人の行動に適用される一般的な国際条約の原則及び精神を、遵守し」云々というような規定がございます。その意味するところは、結局このPKO、PKFを含むわけでございますが、ここに参加するのは加盟国の軍隊でございますから、加盟国の軍隊はそのような性格を失うものではないわけでございます。したがいまして、国際的な活動の中で、例えばジュネーブ四条約というのがここにも挙がっておりますけれども、いわゆる人道的な規定がいろいろあるわけでございますが、その中には軍隊に適用される規定もあるわけでございまして、そのような規則には従うということを言っているわけでございます。  ただ他方、それでは軍隊が行う武器使用はすべて武力の行使がという点でございますけれども、それはそうではなくて……
  159. 立木洋

    ○立木洋君 業務中。任務の間。国家から与えられた任務中。業務のときに。政府委員(柳井俊二君) はい、業務中ということでございます。  国際法の中で一番基本的なものは、この関連で言いますれば国連憲章ということになると思いますが、御承知のとおり、国連憲章第二条の四項では、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を」「慎まなければならない」。長くなりますので途中若干飛ばしましたけれども、そういう趣旨の規定を置いているわけでございます。PKOが護身のために武器使用するということは、それはこの国際連合憲章で禁じているような武力の行使ではないということは、これは明確に言えると思います。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 全然答弁になっていないですね。  国際法上、軍隊として認定されているのです、自衛隊というのは。その軍隊が国家の任務を受けて外国に行って活動するんです。そして、任務中にそれが起こるんです。これを正当防衛の、軍隊と何か無関係の、ただ単なる武器使用だというのは全くのごまかしなんですよ。これはどんなことを見たって国際法的にそんなことを書いているところはないですよ。真剣に考えてください。武力の行使なんですよ、明確に。軍隊の任務を受けて行って、その業務中に武器を使うんですから、それを武器使用だなんて言ってごまかして、正当防衛だと、そうして使って、もしかそれが三十六条か三十七条に該当しなかったら殺人者になるじゃないですか。  そんなことまでかけて、何か憲法をごまかしてそういうことはあり得ないんだと言ったって、いろいろ答弁を聞いてみると武力の行使があり得るじゃないですか、全部。限りなく一に近くなると言っているじゃないですか。そういうふうなやり方で、この根本武器使用に関する、武力の行使に関する基本問題をあいまいにするような法案は絶対に私は許すことができないということもこ の点で述べておきたいと思うんです。  時間がなくなりましたが、全くこんな短い時間で審議をやっておったってこの法案の本質を明確にすることができないから、もっと私は徹底して審議をやることをこの際改めて要求しておきます。  国連の文書について、SOPだとか訓練マニュアル、これは何回要求しても結局政府国連が壁になっているかのような主張をして、ついに提出をしなかった。私はとんでもないことだと思うんです。政府自身が平和維持活動参加させてほしいといって法案提出されたんです。そうしたら、平和維持活動というのはどういう活動なのか、そういう文書が、今までの経験、蓄積の上に立って国連でつくられている文書があるんです。その前にどういうふうな訓練をやればいいかということも書かれている。そういうものを提出して、皆さん十分に御審議ください、これが平和維持活動なんですといって提出するのが私は政府の当然の責任だと思う。それを、国連が出してはならないと言っていると。  国連の文書を私は読みました。「一九八九年十二月八日の国連四十四回総会の決議四十九のパラグラフ十二により、総会は事務総長がPKOの標準行動規範の作業を完成させ、加盟国の利用に供するよう希望を表明した」。SOPを加盟国が利用してくださいと、そういうふうになるように事務総長頼みますよと言って総会で決めているじゃないですか。そして、グールディング氏がこの問題について述べたのは、これも国連平和維持活動の標準作戦規定の報告A/45/602、これの議事録です。この中では、「この文書は、現状で三百五十ページ位になるものである」というふうなことを述べながら、「このような量の文書であるため、翻訳したり総会に対しての報告として配布したりしないが、軍事顧問事務所において交渉可能とする」、こういうふうに述べられている。  時間がなくなりましたから、最後に言いますが、国連の立場というのは、絶対秘密で出してはならないという立場じゃないんです。去年の四十五回の議題によりますと、これも明確になっておりますが、昨年十二月十一日に出した決議七十五の文書によりますと、こう書いてある。「加盟国及び関心を有する団体間で平和維持活動についてのセミナーや意見交換が国連事務局の事務官も参加して行われたことを歓迎」すると、意見交換して平和維持活動の内容を知ってもらうというふうに努力したことを歓迎する。そして続けて、「適切な場合事務局と相談し、地域的、国際的なセミナーを開催することを奨励」すると、加盟国だけではないんです。関心を有する団体においてもそういうことを積極的に国連としてはやって知ってもらいたい、そして自発的に参加してもらうようにしたいと言っているのが国連の精神じゃないですか。それを、国連が出さないというふうに言っているだとかなんとか言って、これは全くのとんでもないごまかしですよ。  私は聞きました、直接特別政治部に。名前は言わないでくれって言うから言いませんが。ところが、明確にしたのは、この文書を出してはならないとは一言も言いません。一言も言ってないんです。日本国内において論争問題になっているからコメントできないと言ったんです。論争問題とは何ですか。政府が出さないと言っている、国会は出せと言っている、それが論争問題だからコメントできないと言っているんですよ。政府が出せと言えば出せることになるんです。
  161. 岡野裕

    理事岡野裕君) 立木君、時間であります。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 ですから私は、この問題については最大の問題がある、大変な問題がある、憲法違反だと。まず、何としてでもこの国連の文書を直ちに出すということを強く要求したいんですが、その点についての総理の回答を求めて、質問を終わります。(「時間だ」と呼ぶ者あり)時間であっても回答を求めぬとだめだ。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 衆議院でも御要請がありまして再度努力をいたしました。その後も努力をいたしておりますけれども、御承知のような事情で国連としてはこれを公にすることはできないという立場でございました。御審議の便に資するために何かの形で御閲覧をいただくということは可能であるかもしれないがと、こういう答えでございます。    〔理事岡野裕君退席、委員長着席〕
  164. 磯村修

    ○磯村修君 PKO法案という大変我が国にとって重要な法案審議しているわけなんですけれども、私は、ごく常識的な立場から政府の考えをお伺いしてまいりたい、このように思います。  この国際協力というのは、昨今国連中心として紛争の平和解決、大変国連の責任というものも重くなってまいりました。我が国国連中心主義と申しましょうか、そういう立場に立った平和協力というのは大変重要な性格のものであると認識しております。  そこで、先日払、本会議の代表質問総理にお伺いしました。一つには、国連平和維持活動自衛隊参加しなければ、なぜ我が国国際貢献にならないのか。いわば今回のPKO法案審議の中では、平和協力自衛隊という、こういう印象を強く国民皆さんに与えてしまっている、そのためになかなか平和協力の意義というものが理解しにくくなっている、そういう点からお伺いしたわけなんですけれども総理はその質問に対しまして、汗をかかない、苦労のあるところを避けるのはよろしくない、こういう趣旨の御答弁をなさいました。  であるならば、自衛隊派遣しなければ汗にならないのか。我々が汗をかいて国際協力していくという場合、法案の第三条のイからヘの業務を除いたいわば非軍事の面での協力によってこそ我が日本にふさわしい汗なんだ、こういうふうに私常識的に考えるんですけれども、なぜ自衛隊を行かせなければ平和協力の汗にならないのか、その辺をまず総理にお伺いしたいと思うんです。
  165. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 自衛隊参加をするということが大変に御議論の中心になりましたので、国連平和維持活動自衛隊というような短絡したとらえ方になってしまって非常に残念ではないかという本会議の御指摘は、私も確かにそういう嫌いはございますということを申し上げたところでございますが、逆に申しましたら、今磯村委員の言われますようないわゆる民生部門でございますか、これはどちらかといえば自衛隊を煩わせずにできる、できやすい部門である。しかし、その法案の三条で申せば、イからヘまでのところはこれはいわば一般の市民には非常になじみにくい難しい部門でございます。  私ども考えますのは、一般の市民の皆さんやいろんな方にひとつ民生部門の協力をお願いしますと言ったときに、それなら国の公務員はまず率先してどうしてやらないのという、そういう疑問があの湾岸戦争のときにございました。それはしかし、国の公務員でもやってはならないことがございます。ただしかし、やってもいいことがある、できることがある。それは民間の方ではやっぱり難しいんだなというのが例えばイからヘあたりでございますので、そこは自衛隊が経験もありますし組織力もございますから、訓練もございますのでやってもらってはどうかなと。  もとより、これは平和維持活動でございますから武力とかなんとかということに全く関係がない。むしろ平和の増進の部門でございますので、憲法上も全く疑義がございませんから、このような五原則のもとにそれを自衛隊にやってもらうということはやはり日本としてのベストを尽くすことになるのではないか、こう考えたわけなんでございますけれども、御指摘のようにその部分が非常にクローズアップされまして、国連平和維持活動というのは大変に何か物騒なものなんじゃないかというような受け取られ方をした嫌いがございまして、これはこのような御審議を通じまして国民によくよく御理解いただきたいと思っているところでございます。
  166. 磯村修

    ○磯村修君 私、三条のイからヘまで、これはもう少しよく国民の合意を得て考えていくべき問題 ではないか。つまり、自衛隊を外に出すということはやはりこれは憲法論議を引きずっているわけですから、先ほど来いろんな方からいろんな憲法論議が出ております。そういう国民にわかりにくい憲法論議というものを引きずっているわけですね、自衛隊派遣するということは。大変憲法という重要な意味を含んでいるんですね。そういうものをすっきりした上に立ってやはり自衛隊というものを考えるべきじゃないか、派遣ということを考えるべきじゃないか。なぜ今ここでもってそうした国民の合意がよく得られていない状況の中で、理屈に理屈を重ねて、国民によくわからない状況のなかでもって自衛隊を出さなければならないのかというところが常識的に考えてもよくわからないというのが率直な僕は国民気持ちだろうと思います。  そういう意味合いにおいて、やはり今平和を求めている平和国家日本の選択すべき分野というものは幾つもあると思うんですね、民生・非軍事面で。国民が喜んで、多くの国民の本当に合意が得られて、そして多くの人たち参加して、そうした分野でもって貢献できる仕事というものが非常に今広がっていると思うんです。そうした方面のことに真剣に取り組んで対応していくためにはこうやろうというシステムを確立しようとする努力をなぜしないのか、その辺私は大きな疑問を持っているわけなんです。  自衛隊派遣ということ、これを考えるということよりかも、そうした平和の社会をつくっていく発展的な意味合いを持っている民生面での協力というものをもう少し考えるべきである。いわば私に言わせれば、そうした分野での平和協力の実績とか成果というものを見た上で、そして国民世論というものが自衛隊というものを考え始める、そうしたときでも遅くはないんじゃないか。なぜ今急がなければならないのか。もう一度、総理、その辺をわかりやすく説明してください。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 自衛隊というものがいろいろなものを引きずっているという御指摘は、私どもは、自衛隊というものは国民の多くの受け入れるところとなって、無論違憲というようなことを考えたことはございません。が、恐らく今言われました意味は、そういうふうに言う向きもある、そこでと言われたのかもしれないと思いますけれども、私ども自衛隊というものをそういうふうにかつて考えたことはございませんし、国民もまたそれは、今恐らく大変に多くの国民自衛隊というものを肯定的に考えておられる、疑いがないと思います。  そこで、国連から求められている平和維持活動の中で、いわゆる市民の方々、普通の、何と申しますか、うまい言葉がございませんから仮にまあシビリアンとでも申し上げますでしょうか、ではやっぱり難しい。そういう専門的な知識なり訓練なり組織がない。その部分をそれなら日本はもうやらずに済ますかということかと思いますけれども、現実に起こりましたことは、湾岸のときの多国籍軍というものに我々は参加することができない、これははっきりできないし、いたしませんでしたが、それにすらいろいろな批判があった。しかし、これはもう批判をする方が日本憲法をよく知らないでなさっているというふうに私は思っておりますけれども。ですから、それはできないことである。  しかし、できることというのがやはりあるだろう。いわゆる民生のところまでいかないうちに、いろいろ苦労ではあるけれども、あるんじゃないのか。それはなるほど、しかしシビリアンでは無理だなという部分を自衛隊にお願いじょう。そうでありませんと、この部分はもう我が国はやらずに済ますかという選択になろうかと思いますけれども、やはりその部分は一番大事な部分でございますから、決して楽な部門でもございませんが、そこまでは我が国貢献をした方がいいんではないかというのが私どもの判断であったわけでございます。
  168. 磯村修

    ○磯村修君 私どもの連合参議院も、このPKO法案ということについて外国の方々はどういうふうに受けとめているのかということを聞きました。これは、北欧に参りまして、スウェーデンの方、いろんな方に聞きました。政府関係者あるいはマスコミの関係者、御紹介申し上げますと、スウェーデンの外務省のエルミエールという国連担当の次官補、この方と懇談したことがございます。その方もやはり今の日本の状況というものをよく理解しておりました。そうした中で、やはり物事には段階があるんだ、まずできることからやるということがいわば必要なんだ。そして、今自衛隊海外派遣させるということにつきましても、今は日本国内でもって憲法論議を呼んでいるということを十分承知した上で、今の段階では日本皆さんはPKFに参加することはいろんな問題が生じましょうからそれ以外のことから経験したらいかがですか、こういうお話も聞きました。そしてまた、新聞社の論説委員方々からもお話を聞いたんですが、やはり同じ趣旨のことを言われているんですね。  やはり、今日本でこの問題を論じ合っている中身というものは大変無理がある、こういうふうに受け取っているんですよ、外国の方も。外国の方でさえも今外から日本を眺めていてそうした受け取り方をしているんです。余り無理をなさらぬ方がいいんじゃないですかということなんです、言ってみれば。そういう意味合いにおいても、やはり私は段階的に物事を考えていく必要があるのじゃないかと思うんですね。余り国論が分かれていて、いわば一軒の家を建てるのに十分に整地しないところに一軒の家を建てたとする。安心してそこに住めない。建物を建てるには整地をよくしてからでないと危険な建物になってしまう。そういういろんなことを考えてみても、やはり今できることから始めて、そして将来を展望しても遅くないんだというふうに私は考えるわけでございます。  どうか総理も、そういう意味合いにおいて、この法案自衛隊海外派遣ということは大変問題を含んでいるわけですから、その辺のことは慎重に考えて、これからのPKOということをもう少しほかの面で考えていくようにぜひ国民指導してほしい、こういうふうに私は素朴な気持ちからお願いしたいと思うんです。  北欧諸国では、今のPKOに参加するまでの段階、今の姿にするまでに十年かかっているというんです。一遍に兵隊を出しているわけじゃないんです。医療の面から避難民の救済から、いろんな経験を積みながら現在の姿になってPKOという協力をしているんですね。そういう意味合いから考えますと、大変我が国のやり方というのはそうした経験が浅い中から、全くない中からばんと一足飛びにジャンプしようとしている。そこに国民のわからない論理が働くわけなんです。  そういう意味合いにおいて、ぜひ日本の国ができるところから経験をしていく、これが本当の汗になる国際協力になっていくんだと。その歴史をつくることによって国民から支持される国際協力というものが生ずるんだということをぜひ念頭に置いてほしいんです。  防衛庁長官にお尋ねします。  このPKOで自衛隊派遣された場合、どういう姿になるんだろうかということを私どもキプロスに見ました。聞くところによりますと、防衛庁もキプロスに行って現地を見ているそうでございますけれども、どういう活動状況を視察してきたのか、長官はどんな報告を受けているのか、お伺いします。
  169. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、防衛庁といたしましては、PKO活動の実態調査ということでキプロスあるいはシリア、イスラエル等に参りました。そして、大体人数といたしましては、自衛官六人、部員一人、計七人ということで派遣をいたしましてこの実態調査をやったわけで、九月七日から九月二十日までの約二週間調査チームを派遣したわけでございます。  調査結果の詳細につきましてはこれは防衛局長の方から答弁させますが、私が報告を受けた感想 といたしましては、専門家が実際に現場でPKO活動の実態を視察するということはこれは非常に有意義なことでございます。そして、防衛庁としては、PKO活動に対する明確な認識を持つということがぜひ必要でございますし、そして、今後PKO活動を実施するための体制はどうなるのか、教育はどうすればいいのか、訓練はどうすればいいのかというような内容を検討していく上で非常に役立ち、かつ有益なものであったと私は考えております。  今後、PKO活動への参加は、私ども防衛庁、自衛隊にとって全く新しい業務でございますから、これを適切に実施していくために実施したものでございますが、今後といえどもよくその実態を把握すべく調査をしてまいりたい、このように思います。  詳細は防衛局長から答弁させます。
  170. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 今、大臣から概略御報告申し上げましたように、今回、調査団はシリア、イスラエル間のゴラン高原におきますいわゆる国連兵力引き離し監視隊、それからキプロス島におきます国連キプロス平和維持隊、それから中東の国連休戦監視機構、この三つを訪問してまいったわけでございますが、それぞれ現地の平和維持隊等の部隊運用、後方支援その他の各種支援機能に関しまして調査を実施したわけでございます。  その概要をさらに敷衍して申し上げますと、まず武器使用に関してでございますが、武器は、一般に自己または他の要員の生命、身体の防護のため使用できるものとされているわけですが、現地では、当事国のゲリラ、住民に万一死傷者が出た場合の報復の可能性というものや、発砲による事態のさらにエスカレーションといいますか、拡大を考慮して現実の武器使用には極めて慎重であるということが強調されて報告を受けたところであります。したがって、武器使用の実例について質問をいたしましたところ、各国の部隊長は、いずれも自分の勤務期間内におきましては任務中に武器使用したことはないという返答でございました。  なお、保有武器に関しましては、歩兵部隊としては、けん銃、小銃、機関銃及び装甲車等を保有しておりまして、兵たん部隊はけん銃、小銃を保有しておりますほか、一部の部隊は機関銃を保有しているということでございました。  それから、監視等の一般的要領につきましては、兵力引き離し地域または緩衝地帯及びその周辺地域におきます軍、住民等の状況把握及び違反防止のため当該地域を各大隊で区分して、検問、監視及び巡察ということを実施していたところであります。  また、違反に対する処置といたしましては、現地で説得するということとともに、上級部隊に報告して、さらに違反行為が行われたときには司令官から抗議するということでございました。  後方支援に関しましては、各平和維持隊によって相違はあるものの、基本的に、糧食、水、燃料、車両の補給、平和維持司令部と派遣国部隊との通信等最小限の支援は国連の費用で兵たん部隊及び国連フィールドオペレーション部が担当いたしまして、武器派遣国部隊内の通信、一部の車両、医療、調理、入浴等々、特定の糧食等も含めまして、それは派遣国みずからが費用を負担し、かつ補給を行っていたということでございます。  教育訓練に関しましては、各国とも本国において基本的教育を受けた上で現地においてさらに慣熟訓練を行っているということでございました。  概略以上でございます。
  171. 磯村修

    ○磯村修君 私が一つ肝心なことをお伺いしたかったのは、御承知の方も多いと思うんですけれども、この現地は大変砂漠地帯と申しましょうか、弾痕が本当に残っている住宅もあるいはほかの建物もいっぱいございます。大体延長百五十キロぐらいの停戦ライン、短いところでは数メートルで銃口を向けたままにらみ合っているんです。  そうしたところに仮に自衛隊派遣されて活動している場合、一たん有事の場合、先ほど来指揮権の問題もいろいろ出ておりますが、そうした混乱状態になったときに果たして冷静な自己の判断によって自己防衛のために武器を使うなんということができるか。恐らく、即その場合には武力行使へとつながっていく危険性を私は現地で感じたんです。そうしたことを考慮しながらこうした平和維持活動というものを考えていかないととんでもない過ちを犯す結果になるということでありまして、防衛庁の方がそうした現場を見てどんな実感を持ったのかということを伺いたかったんです。長官、いかがですか。
  172. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私も報告をお伺いいたしましたが、そういう点についての言及はございませんでした。しかし、今先生おっしゃるように、非常に混乱状況になるとか、武力行使につながるというようなおそれという御指摘もございましたけれども、私は、やっぱりこの法の建前からして武器使用については個人の判断をあくまで主体にするということでございまして、そういう混乱状況がもしもあるとすれば、これは今まで議論がございましたように、一時中断あるいは撤収ということが法的に我が国の自主的判断で行われるわけでございますので、そのような体制であることだけ申し添えておきます。  なお、もしも私の聞かない範囲内で防衛局長が聞いておるならば、防衛局長の方から答弁させていただきます。
  173. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) まさに御質問にもございましたように、今回の調査は、制度を調べるというよりも、もし法案が通った場合に実際に現地で作業を行う、任務を行うという者の、自衛官の体で感ずる実態といったものを知ってくるというのが目的でございました。  その意味で、一つは、先ほど申し上げましたように、武器使用について自衛官及びついていった部員は一様に、これは極めて抑制的に武器使用を行っているということを実感して帰ってきた、これは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、これはちょっと余計なことかもしれませんけれども国連の指揮等との関係でございますが、これは制度としてどうなっているかということは詳細に調べたわけではございません。ただ、実感としてはこれは非常に調整に近い。つまり、事前段階で両当事者で話し合った結果、それを指揮という形で、指揮というか指図というか指令というか知りませんが、そういう形で示す。そういうことで調整という形で話し合いを基本としているということを実感として帰ってきたというところが私の印象には残っている点でございます。
  174. 磯村修

    ○磯村修君 この平和維持活動参加する場合、退職自衛官というふうなことも考えられやしないかというふうな問題もあるんですけれども、その退職自衛官の問題につきまして私どもの同僚の井上議員が関連質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
  175. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 関連質疑を許します。井上哲夫君。
  176. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 私は、関連で退職自衛官のことについてお尋ねをしたいと思いますが、どういうことを考えてお尋ねをするかということのお話をまず申し上げます。  先ほど磯村議員総理質問をしたわけですが、どうも現職の自衛隊、しかも部隊を出して、国際貢献という形でPKOに参加をしていく。よほど出おくれたので、急いで急いで、追い抜き追い越していなかきゃいかぬという感じが私どもから見るとどうしても消えない。どうしてそんなに急がなきゃならないのかという角度でお話を伺うと、今総理お答えいただいたわけですが、国の公務員がまず率先をしなければ国民はついてきてくれない、あるいは仕事の内容が極めて専門的ですこぶる軍事に関連性が強いから自衛隊海外に出しても憲法上の武力行使の制約に触れないという考えで出せるから出ていってもらうんだ、こういう御説明を聞いても、なお納得がいかないところがあるわけであります。  聞きますれば、現職の自衛官でないといけないのか。これは国連の方が軍人扱いをするから、あ るいは軍人でないと困るからというようなことも承っております。あるいは総理がおっしゃいましたように、専門的な知識、技能、経験、さらに組織的など。しかし、きのう、きょうの議論を聞いておりまして一番思うことは、日本が専門的知識もあるいは技能も組織力の最優秀の自衛隊の部隊が、世界のPKOの派遣地へ行って目立って目立って目立つということが本当にいいのだろうか、むしろ目立たぬように目立たぬようにやらないと心配、懸念、不安、きょうも田議員アジア諸国からの懸念お話をされましたが、そういうふうなことを考えますと、やっぱり国民懸念、不安を解消し、アジア国々日本に対する心配を払拭するためには現職自衛官をやめたらどうだろうか。じゃ退職自衛官で、退職自衛官でも武力行使のそういうところに巻き込まれるおそれのあるところはひとまず慎んだ方がいいのじゃないか、こういうふうな考えが出てくるわけであります。  そこでお尋ねは、なぜ現職自衛官でないといけないのか。思い起こせば、私どもは参議院だけの会派でございますが、昨年の十一月には三党合意という形で、むしろ別組織でやるんだとか、あるいは今磯村議員が申しましたが、北欧の方では志願者を主体、主軸にしてやっている、いわゆる退職軍人のもう一回志願してきた人たちをトレーニングして出すというふうなことも聞いておりますので、我が国において現時点で軍人扱いあるいは退職自衛官ではどこがネックになっているのか、あるいはネックになってないのか、その点をまずお尋ねいたします。
  177. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 本法案におきましては、部隊としての自衛隊派遣は、これは現職を主体、現職でやることになりますが、ただ退職自衛官がそれではこのPKOに参加する道がないかといえば、これは隊員として応募をしていただきまして参加する道は開かれております。しかし、その場合はあくまでこの法律の構成上、自衛隊の部隊等としての行動ではございません。一般の方々と同様に、募集の中から適格者があればこれを採用していただくということでございます。  なお、お触れになりませんでしたけれども、私ども予備自衛官の活用等も考えましたが、予備自衛官はあくまで防衛出動等の場合の準備の予備的な措置でございまして、これを直ちに組織の中に入れるというわけにはまいりません。  そういう仕分けになっておりますけれども、これはなぜかといいますと、総理が先ほど申し上げたように、今まで個人個人の参加だけで十分な国際貢献ができない、しかしこれからの国際社会をにらめば貢献をしなければいけない、そして組織力あるいは経験とか機能とかそういうことに着目した場合に、自衛隊を活用することが一番適切であろうと。しかも、国内の防衛任務とは全く違う、国際的な海外における国連の管理下で我が国の自主的な判断でやる業務でございますから、この機能に着目してやるということによって国際連合の平和業務に効果的に、そして効率的に参加できるという見地から自衛隊のこの派遣を考えたものでございまして、これはぜひとも御理解をいただかなくちゃならぬ、このように思います。
  178. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 退職自衛官だと国連の方が受け入れてくれないのかどうかについては、ちょっとお答えがいただけなかったと思っておりますが、現実に我が国の自衛官の場合には二年あるいは三年の任期明けの自衛官が相当数、定年退職される自衛官も含めると昨年度で二万三千八百人ですか、そんなにいる。そういうふうに退職自衛官はたくさんいるわけでありまして、ただ外国へ行って立派な成績を上げるためには、例えば優秀な自衛隊員を、命令という言葉はおかしいですが、君行きたまえと言って行かせる、そして立派な成績を上げてほしいと。これは実は海外の目から見るとやはり心配の種が残るんじゃないでしょうか。  確かに掃海艇が立派なことをやられました。しかし、今日本の国が、自衛隊員が即出ていくというよりも、国民の志願の人をあらゆる努力で募って、しかし専門的な知識を要するならその部分だけはさらに努力を重ねて募って、そして最初から大きな成績は上げることがなくてもスタートをする。次第に国民も、PKOの業務の中身もあるいはその果たす役割も、さらに国際的に大きな信頼を得る効果も理解をしてくれば、その段階で拡大をしていくといいますか、もっと大きな貢献を果たしていく、それが普通のやり方ではないか。しかも、命令で行くよりも国民の志願で行って、そして背中に声援を受けて行った方が実ははるかにいいわけでございまして、そのことを考えますと、現実に現職の自衛官でないといけないということは、部隊として束ねる面で困るからということなんでしょうか。
  179. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生の今御質問の中で二点だけちょっと申し上げたいんですが、一つは任期制の自衛官の人材がかなりおるのではないかという御指摘でございます。これはあるいは数字にわたりますから詳細であれば事務当局から答弁させていただきますけれども、この方々もやっぱり自衛隊に残るということであれば幹部自衛官への登用の道も開かれておるわけでございますが、これは民間等に就職も、今非常に労働需給も逼迫しておりますし、就職を私はしておると思います。そういう意味で、にわかにその予備軍みたいな格好でおるという存在ではないということがまず一つ考えられます。  それからもう一点は、何か目立ちたがってやる必要はないのではないかと言いますけれども、これは自衛隊が初めてこれから平和業務に従事するわけでございますから、私どもとしてはこの法律を本当に効果的にしっかりとしたスタンスで執行するためには、やっぱり優秀な隊員でこの新しい試みに対しての理解をきちっと持つということが重要でございますから、私ども先ほど来ほかの議員の方にも申し上げましたけれども、立派な素質を持ち、理解力のある方、そしてこれが防衛出動等の場合と全く違う局面であるということもよく理解した方々を私は出す必要があると考えておりますので、その点はちょっと目立ちたがりとかそういうことではございませんので御理解をいただきたい。  それから最後に、志願制でどうかということでございますが、これによって本当に今私どもが意図しておるような国際貢献が果たしてできるかどうかという点は、これは先ほど総理もお触れになりました。実際に、じゃ募集したところが民間の人たちが非常に少なかったというようなこともあり得るわけです。あるいはそういう可能性を否定できません。そういう場合にやっぱり組織としての訓練を受けた自衛隊、しかもこれは武力行使をやるわけではございませんから、徹底した訓練のもとに、この法律に基づく所与を満たす方々を出していくことが国の政策としても妥当ではないかと私どもは考えてこのように措置しているわけでございます。
  180. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 もう一点同じことをお尋ねいたすわけでございますが、PKOの中でも兵力引き離し等のいわゆる歩兵大隊が業務につく部分、まあ今PKF。一方では停戦監視員、かなり位の高い将校クラスの軍人が主に当たっている停戦監視員の二種類にまず分けられるとして、その停戦監視員には例えば退職自衛官を派遣するということは本当は可能ではないか。  なぜかといいますと、停戦監視員の場合は十名を割るぐらいの参加、あるいは二十名、三十名と小人数になります。しかも、日本がPKOの中で民生に限らずやはり顔を出さなきゃいかぬというなら、そこに出ていってもらう。しかも、それは考えようによっては、停戦監視員でありますから、現実に退職自衛官がいないとすれば、変な話ですが、在外公館に駐在武官と呼ばれる人が行っていますね。三十三人あるいは毎年三十四人ぐらいの方が在外公館に駐在武官で防衛庁から出てみえる。その人たちお話を聞くと、まず退職をして、そして外務省の職員になられて、そして在外公館に赴いてからまた防衛庁の任務を帯びる、そしていわば外交宮の一員としてやってみえるわけです。  だから、現実に今軍事的なというところをどうしても避けたいということがありますから、停戦監視員だけまず参加して、あとは文民民生の方で一生懸命やりながらじっくり考えて道を探っていく、こういう考え方にはお立ちになることはできないんでしょうか。
  181. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 停戦監視員の方は、今先生御指摘のように、これは現職の自衛官をもってやる建前にしておりますけれども、これはいわば高級将校といいますか、将校だと思います。そして、その人数は今先生おっしゃられたように、大変規模の少ないものでございます。これは、私が先ほどの調査団の報告の中でも確かめましたが、実際の停戦監視に行く場合は、これは二人とか三人、まあ二人くらいが多いようでございますが、停戦監視をいたします。しかし、それだけにその個々人の判断、そういうものが非常に高度な判断を要する場面もあるでございましょう。各国とも将校をもって充てております。  そういう点では、先生おっしゃるように、形式的にはそういう話があるいは考えられるかもしれませんが、駐在武官の話に言及されましたが、私が先生にこれを申し上げるのも失礼なことなんですけれども、駐在武官は、武官としての任務がございます。そして、この停戦監視もある一定の長期にわたる期間停戦監視をやる必要がございますから、この人たちが兼ねるというわけにはまいりません。しかし、あるいは武官等の経験者がこちらに帰ってまいりまして、国際感覚もありますし、そういう方が、場合によりますと要望の条件等もございますけれども、それは派遣することを否定できるものではないと思いますが、現実に今の武官の状況のままでこれを活用するということはちょっとできないかと存じます。  なお、先生がおっしゃられる点は、こうした点を踏まえて、こういうものをまず最初にやるべきではないかという御指摘でございますね。これにつきましては、先ほど来るる申し上げているとおりでございまして、この法律案の建前、それからまた、たびたび総理、私も申し上げておりますこの法律の建前に従って国際貢献、平和的な貢献でございますから、あとう限りこれをきちっとやっていくという体制で臨んでおる次第でございます。
  182. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 私の持ち時間が大変少ないものですから、また別の機会にこの問題をお尋ねしたいと思います。  同僚の磯村議員が一点だけ尋ねることを残しているようなので、関連質問としては以上で終わらさせていただきます。
  183. 磯村修

    ○磯村修君 五原則の問題なんですけれども、先ほど国連局長が要員を派遣するための枠組みの中で五原則を確保できるように対処していくというふうに御答弁ございましたね。  この場合、一つ。確かめておきたいんですけれども、仮に、国連のPKOに参加する場合に国連と協定を日本は結ぶわけですね。その場合にその協定書の中に、国連側のコマンドに適合するような日本側で作成する実施要領に従って、日本側の指揮に従って要員は活動するというふうなこととか、あるいは何か有事の場合国連側のコマンドに反して業務を中断するとか、あるいは日本派遣されても自己防衛のための武器しか使いませんよというふうな、こういう原則を協定の中に明記するんでしょうか。その辺ちょっと確かめておきたいんですが。
  184. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  PKOへの要員派遣に当たりましては、御指摘のとおり、何らかの枠組みあるいは取り決めというようなものをつくるわけでございますが、どのような地域のどのようなPKOに参加するかというような具体的な内容でございますとか、あるいは状況、さらには国連側との協議の推移いかんによってこのような枠組みの内容、形式等が決まってくるわけでございます。したがいまして、現時点で確定的なことを申し上げるのは困難ではございますけれども政府といたしましては、本法案の成立後できるだけ速やかに、本法案に基づく我が国のPKOへの要員の派遣につきまして国連事務局と話し合いを始めるつもりでおります。そのような機会にこの法案の詳細な内容を説明するつもりでございます。  いずれにいたしましても、この法案の成立後の要員の派遣は、この法案に基づいて行われるわけでございますから、国連との間で派遣のための枠組みを設定するに当たりましては、関係法令、なかんずくいわゆる五原則を盛り込んだこの法案の枠内の派遣になるということが確保されるように政府としては対処すべきことは当然であると考えております。ただ、さきにも申し上げましたように、具体的な案件を離れまして、どのように取り決めの中に書いていくかということにつきましては、この時点ではちょっと明確に申し上げにくいということでございます。  ただ、いずれにいたしましても、我が国のいわゆる五原則につきましては、国連との関係で問題がないということはことしの八月に国連側に確認済みでございまして、この点につきましては先ほど国連局長から詳しく答弁したとおりでございます。
  185. 磯村修

    ○磯村修君 時間が来ましたので、終わります。
  186. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表いたしまして、質問を行いたいと思います。その前に、総理、お疲れじゃないですか、大丈夫ですか。ひとつお元気で。  今回の法律案につきまして衆参両院で論議が交わされ、幾つかの問題点がはっきりしてきたと思います。そこで私は、持ち時間が大変短いものですから、それを有意義に使うために、論議の重複をできるだけ避けまして、問題の核心について質問をさせていただきたいと思います。  さて、衆参両院を通して、また昨日、きょうと国会の流れを見ておりますと、議論がどうしてもかみ合わないというふうに私は思えるんですが、その最大の問題は、やっぱりPKO法案日本の進路にかかわる重大な内容を持ち、憲法問題に抵触するおそれがあるにもかかわらず政府はそこに踏み込んだ発言をせず、そこを逃げて通っているような気がいたします。日本国民の八割近い人が今回の問題において拙速な論議によって法案を可決させることに反対していることを政府皆さんは真摯に受けとめてもらいたいと思うんです。私があえて申すまでもありませんが、日本は民主主義国家として、そしてまた議会制民主主義を持っているわけですが、国会議員である我々にとって最も重要なことは、国民の声を国会にどのように反映させるかということが常に問われていると思います。  総理は、海部前内閣を軽量内閣と批判して、みずからこそが本格派内閣と自任して総裁選に打って出られました。その本格派内閣である宮澤政権が発足したとき、国民は五七%という高い支持率で期待をあらわしたわけです。しかし、昨日の世論調査によりますと三一%という支持率まで落ち込んできました。この数字にあらわれた期待から失望という国民の思いを総理はどのように受けとめておられますか、その質問、ひとつお願いいたします。
  187. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まだ発足いたしましてわずか一月程度でございます。いろいろふなれでございますけれども、一生懸命努力をいたしまして国民の御期待にこたえたいと考えております。
  188. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 もう一点、民主主義の原点である国民の声を総理はどのように受けとめられているか。非常に簡単なというか単純な質問で申しわけないんですが、民主主義の原点についてもう一つお聞かせください。
  189. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、国民国民のための国民による政治というふうに考えております。
  190. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 そこで、これまでに私に寄せられた多くの意見あるいは疑問と、けさ私がラジオの番組に登場いたしまして、これは毎週登場するわけなんですが、この番組で今国会のPKO法案をどう思うか質問を出しまして、ぜひ私に国民の声を聞かせてくださいということで呼びかけました ら大変な反響がありまして、ちょっと持ってまいりました。まだまだたくさんあるんですが、その一部をこちらにお持ちしました。わずか一時間ぐらいの間にこんなに多く入ってまいりまして、やはり本法案はそれだけ国民意識が高いんだと私は思うわけなんです。  その中の国民の声を生に総理にお伝えしたいと思いますが、ちょっと読み上げます。   強行採決で決定したという生徒会にも劣るや  り方は民主主義に反すると思います。自衛隊を  派遣する以上、国会の承認を得るのは当然で  しょう。PKO参加は現状では仕方がないと思  います。国連に出て日本国だけ違う行動をとる  ことが果たしてできるでしょうか。 という質問がありました。  それからもう一つ、これは退役自衛官の人なんですが、   私自身、自衛隊の落下傘部隊に四年半いまし  た。国家予算の三%を超えている防衛費。日本  の軍事力は確実に増大していると実感していま  す。PKOというと聞こえはよいけれど、結局  は派兵なのです。もし海外で自己防衛のために  でも、発砲など受ければ、やられたらやり返す  でしょう。私の立場ならそうなると思います。  徐々に戦争へ近づく原因を海外につくることに  なるのです。やはりこんな不安をつくらないよ  う、この法案は抑えるべきだと思います。  もう一つありますが、   私はPKO法案に基本的には賛成です。しか  し、今回の自民党のやり方はひどい。国民が納  得するまでもっと話を詰め、時間をかけてから  でないといけないと思います。ですから、今回  はぜひ猪木さんのパワーで廃案にしてくださ  い。もう一度仕切り直しというふうにしてくだ  さい。ということであります。   今のPKO法案はむちゃくちゃで反対です。  やはり法改正をして、自衛隊員の身分を保障し  て、国連の一員として救済に協力するのでした  らよいと思います。   議員への答弁は政府のごまかしはかり、答弁  を聞いていてがっかりします。国連局長と防衛  庁長官の言う乙とは全く違っているし、宮澤さ  んだって以前は反対の立場をとっていた人で  しょう。こんな状態で自衛隊員が行くのではか  わいそう。いっそ政治家の息子をかわりに連れ  ていけばと言いたいですよ。こんないいかげん  なことを通してはいけないと思います。  ほかにもありますが、こういうような国民のダイレクトの声を私はきょう国会にお持ちしましたので、今の国民の声についてひとつ総理に御意見をいただきたいと思います。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国としては初めてのことでございますので、国民の側におかれてもまだ十分この法律案の趣旨とするところをのみ込んでおられないというところはあろうと思います。国会における御審議を通じ、また私どもその他の方法によりましても、国民にこの法案が何を意図しているのか、御心配をいただくような性格のものでないということをわかっていただく努力を続けなければならないと思っております。
  192. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 あと二通あるので、ちょっと読ましてもらいますが、   PKOには賛成ですが、PKO法案の中の細  かい内容には少し疑問があります。それはPK  O法案の条文の中で武器等の使用というように  等という言葉がよく出てきます。等という表現  はあいまいで、幾らでも内容を拡大でき、歯ど  めが効かなくなると思います。その点を猪木さ  んに国会で聞いてほしいと思います。 ということなんですが、もう一つ、   この間の期末試験の社会の問題で、PKOに  ついてどう思うかっていう問題が出たんだけ  ど、漠然としてどう答えてよいかわかんなかっ  たので、わからないと答えたらバツでした。 というようなことが来ておりますが、法制局にひとつお聞きしたいと思います。
  193. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) ただいま委員お尋ねの武器等というふうな等があってわからないと、こういうお話でございましたが、私どももそういう意味で等というのを無限定に使うことは、これは法令一般でございますが、何もこの法案でなくて、法令一般の審査をいたしますときにそれは極力避けるようにしてございます。  したがいまして、等とありますときにはその当該部分であるいは何々等と使っておりましても、それをもう少し前の条文までたどっていただきますと、幾つかのものを書きまして、絶えずそれを繰り返すのでは非常に今度はまたわかりにくいというときに、それをある部分で、私ども定義と呼んでおりますが、以下何々等という、こういうふうな使い方はするわけでございます。これは、条文のわかりやすさと条文の簡潔さ、この両方を私どもは絶えず工夫しているつもりでございますが、そういうふうに御理解いただけたらと存じます。
  194. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 私も、今聞いていて何となくわかったようなわからないような気がいたしますが、とにかくこの国会の答弁はわかりにくいことが多過ぎると思います。同僚議員はいかがでしょうか、みんなわかりますか。私も、国会の議論はあくまでも国民の声を反映し、国民にわかる言葉で行うべきだと思います。マスコミに、かみ合わないと言われるPKO法案においても、言葉のごまかしてはなく、本当に国民にわかる言葉で答弁をしていただきたいと思います。  そこで、私もわかりやすい言葉でPKOについて質問を続けたいと思います。  私は、日本におけるシビリアンコントロールとは、国権の最高機関たる国会が自衛隊行動をチェックするということであり、国会承認こそが最大のシビリアンコントロールであると思います。海外における国会承認の例として、PKOの前身とも言える北欧国連待機軍は五つの原則をもって組織されています。その中で、国連事務総長から要請があった場合でも自動的に応じることはなく、各国が独自の情勢判断をした上で、国民の理解と支持が得られて後初めて実施されるとしています。国会の事前承認はシビリアンコントロールをとる我が国においては当然のことと考えますが、改めて国会承認について政府の見解をただしたいと思います。
  195. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  国会承認につきましては、既に総理の方から繰り返し強調、述べさせていただいているところでございます。特に、シビリアンコントロールとの関係につきましてはいささかもこれをおろそかにしてはならないというふうに考えておる次第でございます。  国会承認問題につきましては、自衛隊の部隊参加の場合も含めまして、やはり国連事務総長の要請に機動的に対処をしないといけないという面がございまして、また国連との関係からいたしましても、参加そのものが条件つきとなるといったような不安定な状態は避けたいといった点がございます。したがいまして、政府案におきましては、政府の判断で参加を決定はいたしますけれども、したがってそのことについて国会承認は求めることはしないものの、実際の実施の内容でございます実施計画を決定したときには、特に遅滞なく国会に報告することとしております。そういった点がるる御説明申し上げている点でございます。  なお、衆議院におきましては、こういった政府案考え方を御理解いただいた上で、自衛隊の部隊等が二年を超えてこれを継続するような場合には、継続することの妥当性について国会の判断を求める、そういうことによりまして、より慎重な手続とすることが適当であるという趣旨の修正がなされたものというふうに承知いたしております。
  196. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 次に、今日、日本は平和ぼけと言われておりますが、総理御自身の平和に関する定義というものをお伺いしたいと思います。
  197. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平和というものを定義せよということで、大変難しいお尋ねですけれど も、平和というのは、ただ戦争でないという状態ではなくて、我々この世の中においては、やっぱりそれはある程度満足できる生活ができ、そして世界全体も、いわゆる難民問題であるとか環境問題であるとか南北問題であるとかいろいろの問題がございますが、それが徐々に解決をしていく、そういう全体的な状況でなければならないと思います。
  198. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 日本の中では、戦争がないことが平和であるという観念が一般的だと思いますが、私も世界を回りまして、外国においては、戦争がないことは当然なんですが、それだけではなく、今総理が言われたような、まさに貧困、飢餓、テロあるいは災害、疫病なども含めていろいろな問題が一つ一つ解決されて、国民が安定した生活が保障されて初めて平和が訪れるのではないかと私は聞いたことがあります。  そこで、私も政治の場に出て二年過ぎたわけなんですが、この間に私は二十数カ国を訪れて、国際社会の中で日本が果たし得る役割は何であるかということは自分なりに考えたわけなんです。  昨年八月二日の湾岸戦争、イラクがクウエートに侵攻して始まった湾岸危機、まだ皆さんの御記憶の中に新しいと思います。湾岸戦争は、米ソの冷戦構造が崩壊した直後に起きた、ポスト冷戦の地域紛争を世界がどのように回避するかということが問われたケースだと思うんですが、イラク対多国籍軍という構造は必ずしも国連のリーダーシップによるものではなく、残念なことにことしの一月十七日に戦争の火ぶたが切られてしまいました。  私は、昨年の九月十八日に初めてイラクに行って以来、十月、十一月、そして多国籍軍の空爆の下をくぐり抜けながら二月二十日にバグダッドに参りまして、都合四回訪れました。最初のときは、私は出発の前夜、妻と水杯を交わして出ていったことを思い出します。そのときの私の率直な気持ちを申し上げると、戦争を回避するために一体何ができるんだろうか、それを知るためには命がけでぷつかっていかなければ道は開けないという思いでした。  バグダッドに着いてみますと、世界各国の国会議員や平和団体の皆さんが、それぞれ戦争回避の方策のためにあらゆるチャンネルを駆使してイラク政府と交渉しておりました。ところが、そのとき日本政府は何を行っていたのでしょうか。国会では国連平和協力法の審議に没頭し、戦争回避のためのリーダーシップという国際的に重要なポジションをみずから無にしてしまったんです。このことは、イラクに行ってみて初めて、日本が平和のために重要なポジションにあるということを知りました。イラク政府日本政府に仲裁に入ってほしいという信号を送り続けていたわけですが、しかし当時は、フセインは悪だという情報に覆われまして、とても非戦による平和などという論議は通りませんでした。  私は湾岸戦争の中で多くを学びました。日本には日本の論理があるように、アラブにはアラブの論理、イラクの論理、それぞれの論理があるということです。戦争を回避するために一方の論理だけで物を見るということは大変危険で、情報の偏りが必ずあると思います。さらに、ポスト冷戦の世界の新しい枠組みは今まさに始まったばかりで、模索の分野であると思います。二十一世紀に向けて世界平和をどのように達成したらよいのか、このことに最大の英知を今結集すべきではないでしょうか。湾岸戦争の空爆の下、一体何人の人が命を落としていったか。事実、私も空爆の下をくぐりながらバグダッドに眠れぬ夜を過ごしまして、その恐怖の体験をいたしました。戦争は絶対に悪です。よい戦争も悪い戦争もありません。  かつて、チャップリンが映画「殺人狂時代」の中で言いました、社会で一人殺せば殺人罪で裁かれるが、戦争で百人殺せば英雄になると。湾岸戦争では日本の企業の人たちも人質となり、日本に残された家族は眠れぬ夜を過ごしました。  私は、日本がリーダーシップをとって戦争のない世界の秩序をつくるために、私なりにいろんなことを考えた中で、既に同僚議員からも出ておりますが、日本型PKOとでも言いましょうか、日本独自の発想のもとに国際貢献のあり方を考えてほしいと思います。  そこで、もう一つ私自身が体験したことをちょっと述べさせてもらいますが、今、PKOであれどのような国際貢献であっても、生命の危険は常につきまとうということを認識してもらわなければならないと思います。  総理は、国境なき医師団の活動を御存じでしょうか。彼らはボランティアにもかかわらず、勇気ある医師活動に従事し、不慮の死を遂げることも少なくないと聞きます。それに比べ、政府が提案するPKO法案においては、危険な地域には行かない、あるいは危なくなれば撤退するなどと隊員の活動を規定していますが、総理はこんな中途半端な平和貢献日本がリーダーシップをとれるとお思いでしょうか。  私は昨年、アマゾンに参りまして、アマゾンに駐留する軍隊と大変厳しい自然環境の中で二週間生活をともにしました。アマゾンの中にはコカインの秘密工場、犯罪者の越境、そういうような非常に一般にまだ知らされていないことがたくさんあるわけですが、いつ敵が出てくるかわからない、そういう中で彼らが一生懸命任務を行っている姿を見てまいりました。政府は、つじつま合わせにとらわれず、真の国際貢献ということには危険が伴うということを国民にぜひ知ってもらう必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  199. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この法律案の内容とするところは、私は生易しいものではないと思っております。我が国憲法との関連上、この平和維持活動に従事する人たち国連のSOPに比べますとややかたきを強いているような点もございますが、これはやはり、副本は日本憲法の枠内でしなければならないのだということの必然的な結果、あるいはそのためのいろいろな用心でございます。決して易しい仕事をお願いするというふうには私どもも考えておりません。
  200. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 そのアマゾンと関係するわけですが、来年ブラジルにおいて世界環境会議が行われます。  今度は外務大臣にちょっとお聞きしたいと思いますが、ブラジルに大臣は大変力を注がれておりまして、日伯議員連盟の会長ということで、今ブラジルが抱えているいろんな問題、これはPKOとちょっとそれるかもしれませんが、これからのPKOのあり方というものはもっともっと幅広い活動になっていくという先ほど大臣のお話もあったと思うんです。そういう中でやはり一番大きな問題は、アマゾンの森林をどうやって保護するか、アマゾンの自然環境保護、こういう問題について、今ブラジルは財政的に大変困っております、お金だけではありませんが。その環境会議をいかにして成功させるかということに、これからまた二十年後になってしまいますが、そういう重要な会議について、大臣自身、ブラジル政府に特別なお考えはあるか、ちょっとお聞かせください。
  201. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 明年の六月、ブラジルで世界の環境会議があることはよく知っております。日本政府といたしましても、できるだけその環境会議が成功するようにいろんな面で協力をしていきたい、かように考えております。
  202. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 私も、先ほどから、きょう一日待たされまして、リングに上がるような気分で、ようし、きょうはやってやろうと思って構えていたんですが、余りにもこの国会がだらだら始まるものですから、やる気がだんだん抜けてきてしまいまして、質問もばらばらになってしまいました。  まず、今皆さん御存じのとおりバブルがはじけまして、今までお金が余っていたから、どうぞ日本は金持ちですから金を出してくださいということで世界からいろんな貢献を頼まれているわけです。しかし、聞きますところ、数兆円の税収不足ということが報道されております。その中で、本 当にこれから景気が後退していったときに、来年、再来年、見通しはまだわかりませんが、本当にお金が少なくなったときに、今言うように、今までお金が余っていたときの発想で金だけ出せばいいというようなことではなく、人も出さなきゃいけない。そうすると、これから日本の経済が本当に後退したときに、私は今言っているような世界貢献が本当にできるんだろうかという気がいたします。  そこで、大蔵大臣に、ひとつ来年に向けて経済見通しをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  203. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) 税収につきましては、実は補正をお願いすることになっておりますけれども、今年度、三年度の見込みでは二兆八千億ほど減収するということが、今計算上、出されております。また、そういったものをずっと引っ張ってまいりますと、平成四年度の税収もなかなか厳しいことであろうというふうに考えております。  ただ、今御指摘のございました経済協力等につきましては、この厳しい中にありましても、今日までも日本としては努めてまいったつもりでございます。特にODAにつきましては、今、アメリカに次いで日本は二番目ということになっておりまして、私どもは、この支援の仕方あるいは内容、そういったものを精査しながらも、きちんと対応していく必要があろうというふうに思っております。  ただ、支援というのは、今ちょっとお話がございましたけれども、お金という面だけでない面もあろうと思っております。また、猪木議員もたしか南米の方でも大変御苦労をいただき、御協力をされたようでありますけれども、国がする支援、このほかに民間のする支援というものもあろうかと思っております。また、民間の支援の場合には借りたものを返すということがない、そこに投資をする、そこにまた雇用の場所をつくるとか、あるいは例えば日本に蓄えられた技術というものを移転することもできるというような意味で、相当大きな役割も果たしていくであろうというふうに思っております。  今御指摘のございましたようなことで、私ども財政当局としてはこれからも努めてまいりますけれども、それにあわせてやっぱり民間の支援というようなものもこれから進めていく必要があろうかと思っております。
  204. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 総理にお伺いいたします。  もう既に総理も御存じだと思うんですが、敵国条項というのがありますが、先日、私はIPUという会議に招かれまして行ってまいりました。場所は南米のチリだったんですが、私はチリで行われたその会議の中で敵国条項について発言をしたわけなんです。この条項については、第二次世界大戦の末期に米国を初めとする連合諸国によって起草され、採択されたものである。その当時の状況を反映して、いわゆる五大国に拒否権をもって安保理常任理事国などの特権的な地位を与え、きょうに至っています。  そういうような条項なんですが、総理が今国連中心主義ということを言われる、その中で私自身一つちょっと納得いかない点は、国連というのはまだまだ成熟したものではない、これから冷戦構造がとれて初めて今機能をし始めたという段階で、我々もそれに大いに参加しなければならないと思うんですが、これから本当の国連というものを構築していき、その機能を発揮してもらうということだと思うんです。ですから、その中心主義というものに対してちょっと私はひっかかるものがあります。  その中で、今言った敵国条項というものがいまだ存在しているということは、この間会議で発言をした中で、世界百何十カ国の議員が集まっているわけなんですが、全くそんな条項があったのは知らなかったということなんです。国連憲章の中に平等の立場でということが強調されているように、我々も、かつては敵国であったかもしれないけれども、今は国連のメンバーとして、そしてドイツと同様、一番国連協力を、財政的なものかもしれませんが、してきたと思います。それがいまだこういう形で条項が残っているということは、甚だ私は遺憾というか、一日も早く削除すべきではないか。これはもう既に外務省にも問い合わせであります。再三政府の方もやられているということは聞いておりますが、特に国連中心主義をうたわれる総理としてこれをどうお考えになるか、ひとつお聞かせください。
  205. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連がここに来まして非常に大きな役割を担うに至ったわけでございますけれども、それにしましては、今の国連憲章あるいは国連全体のあり方というものは、加盟国が百六十六になりました今としましては、だれが考えてもこのままではいかぬということはわかっておるほど改正の必要が高こうございまして、この敵国条項などはもうまことにだれも今そのとおりのことを思っている人はいないはずでございますけれども、これを直すとすれば全体を直さなきゃならないという、そういう大きな問題の方にみんなの頭がいっているほど、実は国連というものはあっちこっちを大変直しませんとこの大きな役目を背負っていくのはなかなか難しいであろうというふうに思っておるところでございます。
  206. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 そうすると、先ほども申し上げたとおり、国連中心主義で我々はやっていくという総理の言葉とこの矛盾について何かお答えをいただいていない気がするんです。国民は多分こういう敵国条項があるなんということを知っている人は大変少ないんじゃないかと思います、私自身もこれは議員になって初めて知ったことなものですから。しかし、やはりこれは、今日本がこれから本当に国際的なリーダーシップをとっていくというのであれば、決して常任理事国になるということではなくて、もっともっと日本の立場で国連に対して物を言うべきではないかなという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まことに同感でございます。こんな簡単なことが直らないほど全体が、今国連が担わなきゃならない役割からいえば実は古くなっていると申しますか、時代おくれになっておるとやっぱり考えますから、我が国が一生懸命、それはみんな一緒になりまして国連というものを本当にみんなの国連に、大きな仕事にたえていくものにしなければならないと思います。財政の問題も実はそうだろうと思います。
  208. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 もう一つ国連というのは大国の言いなりになっているわけではないという先日の御発言がありました。  そこで、もう一回お聞きしますが、やはりどうもひっかかる。この敵国条項はともかくとしても、国連というのは、総理が言われる中心主義、絶対的だというトーンで私は聞こえてくるんですが、先ほど私も申し上げましたが、まだまだ未成熟であるという気がいたします。今回の湾岸戦争はやはりそういう意味の未成熟の中から一つの新しい流れとして起きた部分だと思うんです。政治にかかわってみて私はいろんなことを知るようになりましたが、やはり大国主義というものが国連を牛耳ってきた、いまだ五大常任理事国というのが拒否権という力を振るっているわけですから。この五大常任理事国、将来これでいいのかどうか、総理、ひとつお聞かせください。
  209. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 湾岸危機につきましては、先ほどから伺っておりますと、猪木委員とちょっと私は所見が違っておるかもしれませんけれども、しかし米ソの冷戦後の状態の中で安保理事会が初めて機能してあれだけ大きな仕事をしたというふうに私は思っておるわけでございます。しかし、おっしゃいますように、今度の出来事は比較的わかりやすい出来事であったので、いろんなことがあれほど、わかりやすくと言ってはいけませんかもしれませんが、起こってくるとは限らない。  そういう意味では、これからの国連の仕事の重さを考えますと、まさに安保理常任理事国制度でありますとか、あるいは経済社会理事会でありますとか、事務総長の権限でありますとか、もうたくさんのことを実は改めていかなきゃならないのだろうと思っております。
  210. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 今回のPKO法案に戻りますが、先ほど大変失礼なことを申し上げたかもしれませんが、やはり率直な国民の声をぜひ総理に聞いていただきたい、それからまた国民からダイレクトの声ということで、今回の法案に関する部分では大変賛成だと、あるい改憲して自衛隊の身分をはっきりしろという問題もあったと思います。そういうことで防衛庁長官にちょっとお伺いいたします。  仮に今回法案が通ったとして、自衛隊派遣が成ったときにそれに対する予算というんでしょうか、当然我々が何かを起こすときには先の部分まで考えた上でこのくらいのお金がかかるだろうということを考えて計画を立てるわけですが、その点について防衛庁長官、どういうお考えであるのか、お聞かせください。
  211. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) お答え申し上げます。  ただいま審議中の法案が成立いたしまして、国連の要請がございました際に、自衛隊が要件に合致すれば派遣されるわけでございますが、これにつきましては二通りございます。一つは部隊として派遣される場合、それからもう一つは個人として派遣される場合もございます。  私どもは、部隊として派遣される場合は、あくまでも防衛庁長官の指揮監督権が直接及びましてやります。したがって、その支出の経費はこれは当該業務にかかわる、これは防衛庁のこの法律によって与えられた任務の遂行でございますから、あくまで防衛関係費から支出されることになります。  そしてまた、個人として行かれる場合は、これは本部長である総理大臣、本部長の指揮下に直接入るケースがございます。この場合の基本給、給与等の基礎的人件費は防衛関係費から支出されますけれども、この法案にも規定されておりますように、平和協力手当の支給が規定されておりますが、こういった問題とか、あるいはその他運営経費等々、これは総理府の予算から出されるという仕分けになっております。  したがいまして、建前はそういうことでございますが、今先生御指摘のように、それじゃ来年どの程度いわゆるそういう経費が必要なのかということにつきましては、これは全く予測できないことでございますので、私どもは当初の予算にももちろん要求してありません。そして、実際にそういうことが必要になった場合は既定予算の中で可能かどうか、既定予算の中でできなければまた大蔵大臣と協議をいたしまして所要の措置をとる、こういうことになっております。
  212. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 例えば概略このくらいというのはどうでしょうか。
  213. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これはあくまで要請によってやるわけで、その規模等が全く今想定できないわけでございますので、何とも申し上げかねるわけで、先ほどその原則を申し上げたわけでございまして、この点はお許しをいただきたいと思います。
  214. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 最後に、この夏にJICAの職員が三人殺されるという不幸な事件がありました。私は、ちょうどその直後にペルーへ行ってまいりましたが、空港に着いたらすぐ防弾チョッキを着てくれという、非常に危険なというかそういう中で、えらいところに来てしまったなという気がしたんですが、しかし入ってみたらまあまあそういうことはなかったんです。  今、フジモリ大統領が、本当に最悪の、これ以上もう下がることがないというような状況の中で、最初は日系人として初めて大統領になったということで、何かお祭りのようにフジモリさんフジモリさんということで持ち上げたんですか、その後さっぱり。しかし私は、南米全体あるいは世界を見たときに、今日本人がどういう人種なのかというのがわかっていない、何となく金もうけがうまい日本人というようなイメージ、その中でペルーの再建を果たす、これは大変日本人にとって大きなプラスになるんじゃないかという気がいたします。そういうことで私は、いろいろ反対者もありましたが、現地を訪れまして大統領と会見をさせてもらいました。  それで、三時間四十八分という通しの演説をぶち上げまして、国会にいろんな反対派がありましたが、それを抑え込んで、自分が命がけでとにかくこの再建に闘っているという姿を見せておりましたが、本当に危険を顧みずその闘っている姿。そして、その翌日にカハマルカという、これはインカの皇帝が殺されたところなんですが、その地を訪れまして、農民の中に全く無防備で飛び込んでいって一人一人握手をして、そして今私はこういうつもりで一生懸命頑張っているということを訴え、農民一人一人から本当にかたい握手をもらいながら拍手をもらっている姿を見ました。我々、政治家として見習い、そして今日本として真剣にこの国際貢献に立ち向かってもらいたい。そういうわけで、痛みを感じるというか、そういう貢献というのは本当に痛みがあるし、危険が伴うんだ、ペルー一つ見ても。  これからPKOの本当に役割というのはもっともっと幅が広くなっていくと思いますが、最後に、ドイツのワイツゼッカー大統領ですか、グリーンヘルメットという、環境保全あるいはテロを含めてそういうようなPKOをつくったらどうかという提唱がありますが、総理日本としてもぜひ独自のPKO、これを慌てることなくもう一回練り直しても遅くはないのではないか。そして、国民の本当の理解を得られて、ぜひ民意の反映した法案通過ということにしていただきたいと思います。  そういうことで、時間が来ました。ありがとうございました。
  215. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、持ち時間も短うございますので、言葉を整理し、そして宮澤総理大臣の衆議院における三回のこの問題の論議を主として拾い上げて質問いたしたいと思います。  まず、相当時間かけてこのPKOの問題が論じられておりますが、国民憲法に違反する自衛隊海外にまで出すことにははっきりノーと言っておると断言したいのであります。宮澤総理は、この現実をまず直視しなければなりません。  それにしても、これまで行われてきた政府の答弁は、何ともわかりにくいのであります。自衛隊海外派兵は違憲だと言っていたのに、戦闘になりそうになれば撤収するから合憲だと言い、武力の行使を武器使用と殊さら区別し、国連事務総長の指揮は指図であると言いかえたり、こういったその場その場で国民あるいは人々を、まあだますと言えば失礼ですけれども、とにかくそういったその場限りの抜け穴を通ってまいっております。こんな言葉の遊びに類するようなことをせずに、もっと簡単明快に国民に説明し、自衛隊海外出動の是非を問うべきであります。  そうした観点から、私は、あえてごく単純素朴な疑問の幾つかをお尋ねしたいと思います。  その第一は、なぜ自衛隊でなければ国際貢献に値しないのかということです。  日本国内では違憲の存在と言われ、アジア諸国からは、先ほど来お話がありましたとおり、旧日本軍と二重写しになって警戒感を持たれておる自衛隊を、国民的合意もないままにPKOとして、また国際緊急援助隊として海外に出そうとするのでしょうか。ただ単に自衛隊の技術、能力などを活用することがねらいであるなら、それは余りにも安易なことではないでしょうか。また、PKFの要員は軍人でなければならないというなら、日本はそのようなものへの参加はできないときっぱり国際社会に明言すればいいではないでしょうか。それをどうして自衛隊にこだわるのですか。国民が納得のいく明快な答弁を宮澤総理に求めたいんです。  と同時に、この点で社会党案は非常に明確です。平和憲法の枠組みの中で、日本としてできることはやるできないことはやらないという一本の筋が通っております。発議者は、自衛隊を除くこととした理由、また日本国際貢献のあるべき姿をどう考えておられるのか、社会党さんにお尋ねいたします。  以上、まず総理
  216. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 自衛隊そのものが違憲であるというお立場であれば、この法律はもとより違憲ということになってしまうわけでございますけれども、私どもはそういう見解をとっておりませんことはもう何度も申し上げたところでございます。  それで、紛争が終わりました直後のその人々というのは住むに家なく食うに食ない状態でございますから、そのときにこの人たちを救うということはやっぱり人道的に一番大事なことであろうと存じます。本当に、関係者から頼まれ国連から依頼されれば、それは何とか我々も協力したい。ただ、その際、法律案のイからヘまでの部分はなかなかいわゆるシビリアンではやりにくいことでございますので、自衛隊の持っておる組織力、知識等々を活用することがこの地域の人たちの役に立つ、こう考えておるわけでございます。
  217. 角田義一

    委員以外の議員(角田義一君) 先生の御質問お答え申し上げたいと思います。  私どもが今回の法案自衛隊とは別の組織、機構をつくる、なぜか、こういうお尋ねであると思いますけれども、御案内のとおり、日本の国が国として存立をしていくためには当然基本理念というものがなければなりません。私どもはそれを日本憲法に求めております。  今回の世界情勢をどう見るかということについてはいろいろ御議論があろうかと思いますが、まさに私ども日本憲法の精神というものを高揚する、そういう積極的な行動を起こすことが今求められておるときに来ているというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、政府案のように自衛隊を部隊ごと海外に出すことが国威の高揚になるというようなお考えがあるとすれば、これは大変な間違いであり、私は国家百年の計のことを考えますと、政府案が強行されるということを非常に憂えるものでございます。  自衛隊は、いかなることがあってもやはり海外に出してはならないのでございます。特にアジア方々の御心配あるいは懸念というものを考えますと、アジアの中で我々が孤立をせずに生きていくためには、どうしても自衛隊とは別個の平和協力機構というものをつくって、我々は自衛隊とは無縁の存在で国際貢献をしていくんだということを内外に鮮明にすることが今日必要であるというふうに私どもは考えておるところでございます。  私どもは、国際貢献の基本は、やはり憲法の精神を生かしまして、日本の技術力あるいは経済力というものを活用して、そして軍縮あるいは世界の環境保全さらには人権、こういう分野に日本はこれからますます貢献をしていくべきだ、こういうふうに考えておるところでございます。
  218. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、我が国国際貢献として、金だけでなく人も出し汗もかくべきだという空気が湾岸戦争への日本の対応のまずさを契機に強くなってきたことは確かです。アメリカ国内に高まった日本非難が対日圧力となっているのであります。そのことは、アメリカによる新しい世界秩序づくりの一つの役割を経済大国日本に担わせようとするアメリカの本音がもっとあるということを見抜かなければなりません。アメリカ貢献するよう求めていることも確かであると思います。  しかし、私は皆さんに考えていただきたいことがございます。それは、私は沖縄県選出の議員であるということです。その沖縄は、どれだけアメリカ協力させられ、貢献してきたか、このことを考えてほしいということです。  やがてまた十二月八日が来ます。ことしは太平洋戦争開始五十周年と言われております。この侵略戦争の結果、沖縄は日本で唯一の地上戦となり、多数の県民が犠牲となりました。あまつさえ、戦後は長くアメリカ支配のもとに置かれて、県民の自由は抑圧され、今日に至るまで、在日米軍基地の七五%が沖縄に集中し、沖縄本島について言えば、その約二〇%が米軍基地によって占拠され、これがため日本復帰二十年がたとうとしておるにもかかわりませず、県民の十分な産業振興、経済発展はいまだ妨げられてきておる現状であります。この五十年間、そして今も沖縄県民は基地と隣り合わせに生活をさせられ、湾岸戦争のときは沖縄駐留の米軍が中東に派遣され、補給基地あるいは中継基地として最大限に活用されたのであります。  しかも、日本政府は、この米軍駐留のために莫大な経費を負担しているのではありませんか。いわゆるあの思いやり予算であります。我が国アメリカに対してこれだけのことをしているのです。沖縄から見れば、沖縄県民の我慢と犠牲の上に日本は立派な対米貢献すなわち国際貢献をしているのです。この上何をしなければいけないのでしょうか。ましてや、憲法違反の自衛隊海外に出してまでアメリカの御機嫌をとる必要は毛頭ありません。これが沖縄県民の率直な感情であります。  総理は、こうした沖縄の現実をぜひ一度現地を訪れてつぶさに見ていただいて、考えを改めるべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  219. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 沖縄の方々戦争中になめられた辛酸は申すに及ばないことでありますし、戦後今日まで日本の安全は実は沖縄の方々の御苦労の上に成り立っている、私はそれを非常に恩義に感じております。我々としてもそれに報いるところがなければならない。  実は先日、アメリカのパウエル統幕議長が来られました。翌日沖縄に行かれるということであったので、私はその感じをそのまま申し上げました。パウエル議長も、それは自分はよくわかっています。常に自分が気にとめておるところだということを言っておられましたが、それが私の偽らざる気持ちでございます。沖縄のために何なりと役に立つことはいたしたい、また一度現地にも行かせていただきたいと思っております。
  220. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いろいろと反論と申しますか、希望もありますけれども、時間の都合上、問題提示だけで進めたいと思います。  もう一つの素朴な質問は、たしか、いわゆる三党合意では、日本のPKOは自衛隊とは別組織にするとなっていたはずであります。ところが、どうしてでしょうか、PKOには自衛隊参加するというのがこのPKO法案であります。国民はどうなっているのであるかさっぱりわかりません。政府は、常設の国際平和協力本部を組織するから自衛隊とは別組織だと言っているようですが、こんな理屈にもならない理屈が通るわけがありません。PKOの中心自衛隊となる以上、それはどこから見ても自衛隊と同じ組織であることぐらいは子供でもわかるはずです。なぜ時間をかけてでも政府自衛隊に依存しない、自衛隊とは別の組織をつくろうとしないのですか。お尋ねします。  なお、この点では、社会党案の国際平和協力機構の創設は示唆に富んでおると思います。どのようなことを描いておられるのか、あわせて構想をお示し願いたいと思います。
  221. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 三党合意に一度そういう段階があったことはそうでございますけれども、その後、皆さんがお考えになっておられまして、これだけの難しい仕事をいわゆるボランティアで突然やれと言っても、それは無理なことである。また別にそういうものをつくるとすれば、それは相当大きな、こういう行政改革の時代に別のものを持たなけり山ならない。むしろ、公務員である自衛隊のそういう専門的な知識をどうして排除しなければならないのか、それを使うことが本来なのではないかという、そういう経緯であったというふうに私は存じております。
  222. 角田義一

    委員以外の議員(角田義一君) 先生の御質問お答え申し上げたいと思います。  先ほど先生が御質問の中で、自衛隊を使うことが便利であるというような形でもしも自衛隊を活用するのであれば、それは大変な間違いである、こういうお説を述べられましたが、私も全く同感でございます。これはやはり効率であるとか、あるいは能率であるとか便利であるとかという問題ではございません。国の基本にかかわる問題だというふうに私は思っておるわけでございます。私どもは、国際平和協力機構というのは、これ は外務大臣が統括をいたします特殊法人でございますが、政府出資によりまして約五百億円程度のものは出資をしてもらわなければならないというふうに存じております。プロパーの職員とすれば、約三百人ぐらいの職員を当初置かなければならないというふうに思っておりますが、退職自衛官の方がこういう崇高な使命に従事したいということであれば、我々は心から歓迎もするところでございますし、その国際平和協力機構の何といっても最大の業務は、平和協力隊の派遣、そして訓練センターの設置、運営、さらにはボランティアの登録、そして海外にいわば機材のストックの基地を設けるというようなことが主な内容になろうかと存じております。  以上でございます。
  223. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 軍事専門家の話によりますと、人類の歴史の足跡で兵器を持って使わなかった事実はないと私は聞いております。ということは、持つことは使うことなりということなんです。このことを軍事専門家が述べておられるのでありますが、このことについて防衛庁長官、いかがでしょう。
  224. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) そういうことはございません。お答え申し上げますが、持つことが使用を必ずするということではございません。
  225. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そのくらいのことは聞かぬでもわかっております。私が聞いたのは、この事実は人類の歴史の証言ですよ。戦争の足跡をひもといて、武器を持って使わなかった事実はないという証言なんです。そのことをあなたは認めますか認めませんか、もう一遍。
  226. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生は歴史的な事実に言及されておられますが、私は、それは使われたこともございますし使われない場合もあった、このように承知いたします。
  227. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いや、私があえてこのことを端的に申し上げたのは、結局武器を持って自衛隊が国外に行くということは、使うなと決めたとしても必ず使わなければいけない、この事実が歴史の足跡にあるということを知るならば、これをもって参考にしなければいけないということなんです。よろしゅうございますか。何かありましたらどうぞ。
  228. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生のおっしゃる趣旨はよくわかりますが、自衛隊が今回この協力業務のために武器をいわば装備一つとして持ってまいりますけれども、これはあくまでも、たびたび申し上げておりますように、またこの法案がはっきり規定いたしておりますように、自分の生命、身体等が脅かされる場合にのみこれを使用するということを厳重に条件づけておりますので、決してそれが他の目的に使われるようなことはない、このように私は考えますし、そのようにしなければならないと思っております。
  229. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五十八分散会