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1991-12-05 第122回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月五日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          後藤 正夫君    理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 下条進一郎君                 田村 秀昭君                 佐藤 三吾君                 谷畑  孝君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君    委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 藤井 孝男君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 森山 眞弓君                 穐山  篤君                 翫  正敏君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 久保田真苗君                 瀬谷 英行君                 竹村 泰子君                 田  英夫君                 渕上 貞雄君                 細谷 昭雄君                 太田 淳夫君                 中川 嘉美君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 磯村  修君                 猪木 寛至君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  篠崎 年子君        発  議  者  堂本 暁子君        発  議  者  角田 義一君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        法 務 大 臣  田原  隆君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣  羽田  孜君        文 部 大 臣  鳩山 邦夫君        厚 生 大 臣  山下 徳夫君        農林水産大臣   田名部匡省君        通商産業大臣   渡部 恒三君        運 輸 大 臣  奥田 敬和君        郵 政 大 臣  渡辺 秀央君        労 働 大 臣  近藤 鉄雄君        建 設 大 臣  山崎  拓君        自 治 大 臣        国 務 大 臣  塩川正十郎君        (国家公安委員        会委員長)        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  岩崎 純三君        (総務長官)         国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      伊江 朝雄君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)        国 務 大 臣        (経済企画庁長  野田  毅君        官)        国 務 大 臣        (科学技術庁長  谷川 寛三君        官)        国 務 大 臣  中村正三郎君        (環境庁長官)        国 務 大 臣  東家 嘉幸君        (国土庁長官)    政府委員        内閣官房長官  近藤 元次君        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        防衛庁参事官   内田 勝久君        防衛庁参事官   金森 仁作君        防衛庁長官官房  村田 直昭君        庁        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        防衛庁装備局長  関   收君        防衛施設庁労務  荻野 貴一君        部長        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省中近東ア  小原  武君        フリカ局長        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        外務省情報調査  佐藤 行雄君        局長        厚生大臣官房総  大西 孝夫君        務審議官        運輸大臣官房総        務審議官     土坂 泰敏君        兼貨物流通本部        長        海上保安庁次長  小和田 統君        自治省行政局公  秋本 敏文君        務員部長        消防庁長官    浅野大三郎君        消防庁次長    渡辺  明君    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出、第百二十  二回国会衆議院送付) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出、第  百二十二回国会衆議院送付) ○国際平和協力活動等に関する法律案野田哲君  外四名発議)     —————————————
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力活動等に関する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  三案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 矢田部理

    矢田部理君 宮澤総理にまず伺いたいと思いますが、今国会で最大の課題と言われておりますPKO法案審議に当たって、衆議院の終末の段階で大変遺憾な事態が発生いたしました。委員会で異例の強行採決、これはもう議会制民主主義基本にもかかわる問題でありますが、これについて宮澤総理はどんな受けとめ方をされておりますか。あれは国会でやったことであるからといって、御自分では馬耳東風といいますか、無縁のような言葉まで発せられたと伝えられておりますが、議会に対する宮澤総理考え方がここに端的にあらわれているような感じもいたしておりますので、冒頭、釈明をいただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 衆議院特別委員会におきまして、各党とも終始熱心に御審議をいただきました。また、政府といたしましても全力を尽くしまして、最善を尽くしまして、お答えすべきはお答えをいたしたのでございましたけれども、御指摘のような事態が起こりまして大変残念でございます。  ただ、各党お話し合いがございまして、その後に事態を平穏のうちに収拾をせられましたことは結構なことであったと敬意を表するところでございます。
  5. 矢田部理

    矢田部理君 強行採決をして、異常な事態が続いたわけです。議会総体がその結果機能を停止するというような重大な事態を迎えたのに対して、あれは国会のことですと、人ごどのようなことを言われておったという話も伝えられておるんですが、あなたの認識はそういうことですかと、こう聞いているんです。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのことは本会議でも申し上げましたので繰り返しませんでしたけれども各党で御熱心な皆さんが全力を尽くされた、しかしああいうことになった、政府としても全力を尽くしたということを立ち話で廊下で記者諸君にいたしました。立ち話でございましたので徹底をいたさなかった嫌いがございますけれども、その際に、政府がこの事態にどういう責任をしょうかということでございましたから、政府としては全力をもって御質疑お答えをしてまいったつもりである。ただ、委員会における事のお運びは、これは国会のことであるから、三権分立の立場からいえばあれこれ申すべきことではないと思う、こういうことを申しましたのがやや不徹底に伝わったということでございます。
  7. 矢田部理

    矢田部理君 本論に入っていきたいと思います。  今度政府の提出したPKO法案なるものは、平和維持活動に名をかりた自衛隊海外出動法である、派遣法であるというふうに私たち考えておりますが、この政府法案に対して、社会党としても野田さんを中心に独自の対案を出されました。この政府案に対して社会党として、また提案者としてどういうお考えに立っておられるのか、社会党案野田さんたちが提出された法案中身等に触れながら御説明をいただきたいと思います。
  8. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 私たち提案をいたしました国際平和活動に関する法律案は、まず第一は、政府案と一番性格の違う点は、非軍事民生文民を基調として積極的に国際的な平和活動推進していこうとするものであります。  そして、その第一は、国際平和協力活動基本原則として、協力活動の範囲について非軍事民生文民、この立場を明確にしていることであります。そして、自衛隊海外派兵武力行使武器の携帯を明確に否定をしているものであります。二つ目には、自衛隊とは別個の組織として、国連平和維持活動及び人道的救援活動を行うための組織として国際平和協力機構を創設して、国連等からの要請にこたえようとするものであります。第三には、国際平和維持活動及び人道的な国際救援活動を行うために国際平和協力隊派遣しようとするものであります。  これが、私ども提案をした法案の骨子と政府案との基本的に異なっている点についてでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 今のお話を伺いますと、引き続き説明をいただきたいと思いますが、非軍事文民民生という三原則を立てて、しかも常設の組織を置くという考え方は、今日の国際社会のどのような要請にこたえようとしているのか。日本国際協力あり方考えるについては非常に重要な問題点でありますので、その点を敷衍して説明いただきたいと思います。
  10. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 矢田部議員も御承知のとおり、今日の国際情勢は、東西の対立という構図が大きく変わりまして、今一番世界の重要な課題は南北問題、これが一番重要な課題と言われております。  そのような状態の中で、私どもとしては、今一番国際的な救援を求められている課題として飢餓、貧困、災害、難民、そして自然環境、このような人道と共生の立場からの救援が求められていると考えているところであります。軍事の力による解決やあるいは問題の抑止ではなくて、武器を持たない人々のつながりによる救援、展望を開いていく、このことが何よりも重要な課題であると考えているところであります。  特に、私ども日本は、平和憲法を持ち、その憲法のもとでの最大限なし得る国際的な貢献、このことを一番重点的に考えていかなければならないと思います。そのためには今私ども日本は、軍事力を国際的に提供して、これによる活動よりも平和的な立場に立った文民による民生的な分野での貢献策、このことを最重点に考えるのが日本のとるべき道である、このように考えております。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 宮澤総理にも同じ質問を申し上げたいのでありますが、宮澤さんはかつて日本国憲法の特徴に触れながら、軍事的には日本貢献ができない、非軍事的な貢献中心にこれから国際政治に対応していくべきだ。例えば、「美しい日本への挑戦」などで語っておられるわけでありますが、野田さんからも今お話があったような認識考え方についてはどうお考えでしょうか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国は、憲法によりまして軍事大国にならないことを決心いたしておりますし、また憲法九条もございまして、国権の発動としての武力行使をすることは海外においてできないという、これはもう確固としたことでございます。そういう意味では、アメリカのようにあるいはかってのソ連のように、軍事力を持って世界に影響を及ぼすということは本来的に我が国はできない立場である。しかし、世界の平和を願うということにおいて人後に落ちるものではございませんから、それ以外の方法において貢献するのが本筋である。こういうことは物の考え方として、恐らく国民の多くの方が考えておられることと思います。  このたびの法案との関連でのお尋ねであろうかと存じますけれども、この点は、このたびの法案は、こういう世界の新しい冷戦後の時代になって、国連がいよいよ重要な役割をしなければならない。その国連平和維持活動という非強制・中立、力を用いない、軍事力でない説得国連の権威による平和維持活動に対して我が国も大いに協力をするということは、これは我が憲法基本考え方と一致するものである、こういう認識でございます。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 今のような宮澤総理説明とその変節中身については後刻厳しく指摘をしていかなければならないと思います。  引き続き野田さんに伺っておきたいのは、一部の議論の中に、PKOの中でも例えば停戦監視団ならいいではないか、あるいは国連なら自衛隊を出してもいいのではないかというような議論があるやに聞いておるのでありますが、この点についてはどのように考えておられるでしょうか。
  14. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 今、矢田部議員から御指摘のあった点につきまして、私ども停戦監視団がどのような性格を持っているものか、そしてその構成員はどのような立場の人が国連から求められているのか、こういう点について検討をいたしました。  まず第一は、平和維持軍停戦監視団との間の境といいますか、境界が非常に今までの事例に照らしてみるとわかりにくい点がある。例えば平和維持軍停戦活動参加をして、その延長線上においてその中から何人かの各国の将校が選ばれて停戦監視団構成する、こういうケースが幾つかあるわけでございます。そういう点から私どもとしては、これはやはり職業軍人構成によって行われている停戦監視活動であるから、日本としてはこれには参加できないのではないか、こういう見解を持っているところであります。  もう一つは、戦時国際法によりまして、職業軍人といいますか、軍人でなければ戦時国際法の適用を受けがたい、こういうような内容になっていると承知をいたしておりますので、そういう点からも、今日本がこれに自衛隊参加させるべきでない、こういう見解に立っているわけでございます。私どもとしては、そういう点から軍事的な活動停戦監視団も含めて軍事的な分野での平和の貢献というものは日本立場としてはやるべきでない、そういう点からも文民民生、この点について一層強く推進をしていく、この立場が今一番日本憲法の理念に照らしても、国際的な要請からいっても合致しているのではないか、そのように考えているところです。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 発議者の一人であります堂本さんにちょっとお尋ねいたしますが、衆議院の一連の議論で、政府国連考え方の違いがかなり明白になってきました。その中身をただそうというようなこととあわせて、日本国際貢献について国際社会なり国連はどんなことを求めているのか等々についてもお調べになってきたと伺っておりますが、かいつまんで内容を御紹介いただきたいと思います。
  16. 堂本暁子

    委員以外の議員堂本暁子君) お答えいたします。  先月、国連本部を訪れ、PKO責任者を初め十人の担当官に会うことができました。その発言の中で最も大事だと思ったことを御報告したいと思います。  日本憲法の制約、そして歴史的な事情あるいは判断から、国連PKO参加させることができないとすれば、それは国連事務総長を初め国際社会はそれを理解し、了解するだろうというものでございます。どこの加盟国PKO参加することは義務づけられていませんということも言われました。また同時に、社会党考えております法案説明もさせていただきましたが、文民貢献できる領域は多々ある、非常に大きくありますということも明快なお答えをいただきました。  新しい世界状況のもとで、安保理が決定したいわゆるブルーヘルメットだけが今求められているのではない。例えば、貧困そして難民が平和な生活を脅かす一つの大きな要因になっております。そういったところで活躍するホワイトヘルメット、あるいは今環境の破壊も多く進んでいますが、そういった環境保全のために活躍するグリーンヘルメット、そういった社会経済委員会で決定される平和維持活動もこれからは大変に大きくなるだろうということでございました。こういった領域こそ日本が最も実力を発揮できる領域であり、貢献できる領域なのではないかというお答えでございました。
  17. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、宮澤総理日本のこれからとるべき態度について、今、野田さんからも、それから堂本さんからも国際社会要請などを受けた考え方が示されましたが、もともと総理自身も、軍事的な貢献よりも日本の得意な分野貢献することの方が意味もあるし役にも立つ、経済中心貢献論などを出された時期もございました。いずれにしても非軍事的な貢献中心にやろうというお考えのように伺っておったのでありますが、どうも最近の総理の言動、とりわけ総理総裁の座が近づくにつれて一歩一歩と変節をしていったのではないかという気がしてならないのであります。  例えば、PKO法案についてもかつては、御承知のように、今出している法案中心はPKF、平和維持軍参画をすることであります。これに日本武装部隊を本格的に出動させていくということが中心になっているのでありますが、この平和維持軍というものについても、あれは武力紛争に巻き込まれるおそれがある、危ない。だから、せいぜい参画ができても、その後方支援ぐらいが精いっぱいではないかというようなことをたしかことしの五月ごろには語っておられる。にもかかわらず先ほどのような答弁で、どこで変わったんですか。まず伺っておきましょう。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは多分、国連平和維持活動というものについての御見解が私の考えておりますことと違うのだと思います。  きのうも本会議で申し上げたところでございますけれども国連平和維持活動は、いわゆる撃ち方やめという状態になりました後、その不安定な状況国連平和維持隊が恒久的な平和に導くという、それが最初の部分でございますので、ここで武力行使したのでは何のために撃ち方やめをしたのかわからないのでございますから、武力行使しない、そうして説得国連の信用によって平和を恒久的なものにする、本来そういう性格を持ったものでございます。それは、昨日も本会議でどなたかの御質問の中にキプロス島の例を挙げておられました。武器を持たない、武力を使わないことがやっぱり一番大事なことだというのがこの本来の部分でございます。  そういう意味で、これは、我が国平和憲法を持ち、平和国家であるということと少しも矛盾しないのみならず、これから世界平和のために大きな役割を担うであろう国連のそういう活動参加することは、これはもう湾岸危機のときにあれだけ国内に議論があって、人的貢献もしなければならないということは随分御議論になったわけでございますから、私は、それから出てまいる我が国としてのなすべきことであろう。もとより、それ以外のただいまお話もございましたたくさんの平和活動あるいは世界環境等々、我が国がしなければならないことはたくさんございますけれども、これもまたその一つであるというふうに考えておるわけであります。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 人的貢献は何も自衛隊中心にすることはないのでありまして、文民による組織をつくって、社会党提案をしているように本格的に国際的な展開をする、これこそが平和憲法のもとでとるべき日本の道だと私は考えています。  あなたも少なくともそう考えておられた節がある。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)静かにしなさい。平和維持軍への参加について、武力行使の心配が出てくる、その場合に直接戦闘に巻き込まれることになるなど問題点も多い、だから平和維持軍の本隊に参加することは問題だと、あなた言っておったのがことしの五月ですよ。湾岸戦争があってから後ですよ。先ほどのような説明とは質が違うじゃありませんか。  総裁になるに当たって、小沢さんに呼びつけられてお会いしたそうでありますが、そのころを境に、小沢さんの考え方に同調をし、大きくあなたは変節をしたんじゃありませんか。PKO法案についても、批判的な態度を変えて、その推進を約束させられたんじゃありませんか。この点はいかがですか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 湾岸戦争のときに私が申しましたのは、矢田部委員のおっしゃっているそのことと違いまして、いわゆる多国籍軍我が国参加するかどうかという問題であったわけです。これは平和維持軍と違うことでございます。多国籍軍我が国参加をすることは私はできないと思うと、こう言っておったし、今でもそう思っておるところでございます。  一方で、今度は平和維持活動となりますと、これも私は明確に言っておるわけでございますけれども、これはかなり専門的な訓練組織力を必要とするのであるから、突然ボランティアを集めてもそれは私は役に立つとは思えない、むしろ自衛隊のようなものでないといけないということは去年の段階で私は言っておるわけです。
  21. 矢田部理

    矢田部理君 小沢さんを中心とする自民党の調査会があります。国連協力あり方などを議論して総裁答申をするための調査会のようでありますが、その調査会原案といいますか、内部で取りまとめつつある文書でしょうか、これが報道されたところによりますと、今度のPKO法案自衛隊海外展開の第一歩だ、いずれ国連軍だとか、今総理否定をされた多国籍軍参加を目指すのである、その憲法論をきちっとしたい、こういう趣旨答申が出されようとしている。あるいはもう既に届いているのかもしれません。  多国籍軍への参加国連軍への参加、今の憲法のもとでできると思われますか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる小沢調査会検討は、まだもちろん最終にもなっておりませんし、原案というものもできていない。原案と称するものが一遍報道されましたので確かめましたけれども、そういうものもないそうでございます。  ただ、これは私どもの党の中の調査会でございますから、いろいろな可能性を検討されることがいい、そういうことにむしろふたをしておくことはいけないのでございますから、自由に議論をされ、自由に検討をされることがいいと私は申し上げてございますけれども、それは一つのことでございます。  次に、昨年の湾岸戦争のときのような多国籍軍我が国参加できるかどうかというお尋ねであれば、私はできないと思います。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 国連軍への参加はいかがでしょうか。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、国連軍というものが存在いたしませんので、御定義をいただきませんとお答えのしようがありません。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 確かに、国連憲章で国連軍の規定はございますが、いまだ正規の国連軍はできておりません。だから、私にかく定義しろと言っても定義はできないのでありますが、あの憲章に言う国連軍、これについてはどう考えられますかと、こういうことです。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 憲章の規定は必ずしも明らかでございませ人けれども、どういう状況の中で国連と特別協定を結ぶというようなことが書いてございますし、その特別協定というものがまたどういうものであるか明確でございません。  いずれにいたしましても、かつてできたことがありませんし、具体的に議論されたこともございませんので、そういう状況で、仮定の問題としては、これは矢田部委員もおわかりいただきますように、明確なお答えができないような気がいたします。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 どうも何か国連軍になると少し多国籍軍とは違って避けているように見えますが、それはそれとして、武力行使を少なくとも国連軍は肯定をいたしております。そういう肯定をする内容を持った国連軍への参加総理としてはどう考えるかということを詰めて聞きたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 大切な問題でございますから重ねて申し上げますが、国連軍というものがどういうものであるのか、どういう特別協定を結ぶのかというようなことがわかりません段階ではお答えをすることができないと思います。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 何回も法制局や歴代の内閣が答えておりますよ、武力行使内容とするような、肯定する国連軍への参加憲法上できないと。この考え方を踏襲するのですか、しないのですか。
  30. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 工藤法制局長官。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 いや、宮澤さんに聞いているんですよ。  ちょっと委員長、私が指名しない人を呼び出さないでください。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 法制局長官からお答えいたします。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 今は法制局の解釈を聞くんじゃないんです。宮澤総理の政治家としての認識、物の考え方を私は今聞いておるのであります。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かねて法制局長官の見解云々とおっしゃいますから、まずそれをお聞きいただきたい、こう申しております。
  35. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  ただいま委員お尋ねのいわゆる国連憲章に基づきます国連軍と申しますか、それにつきましては、私、昨年の十月でございますが、お答えしておりますところで、それをかいつまんで申し上げますと、まず我が国の従来の憲法解釈、これは、自衛隊は決して違憲ではない。しかし、そういうものから出てまいりますいわゆる武力行使の目的を持った海外派兵、こういったものにつきましては一般に自衛のための必要最小限度を超えるから、そういう意味では憲法上許されない。あるいは集団的自衛権のお話、そういうことを申し上げました上で、従来憲法九条の解釈につきましては、種々の解釈あるいは適用、こういった問題につきましての積み上げがまず国内的にございます。こういうことを申し上げました。  それからその次に、一方で国連憲章上の国連軍、これにつきまして今総理からもお答えございましたように、国連憲章の七章に基づく国連軍、これはまだ設置されたことがないわけでございますし、この設置につきましては国連憲章におきましても特別協定を結ぶ、こういうふうなことも規定されております。さらに、この特別協定がいかなる内容になるかまだ判然としない、こういうことを申し上げた上で、今こういう問題を考えてまいりますと、現段階でそれを明確に申し上げるわけにはまいらない、かように申し上げたわけでございまして、できないとかできるというふうな形で明確に割り切ったお答えを申し上げているわけではございません。
  36. 矢田部理

    矢田部理君 国連軍中身がわからないから明確な答えはできないということは、それはそうでしょう。私が申し上げているのは、国連は平和解決とか紛争の平和処理ということを基本にはしております。また、非常に大きな理念として掲げておりますが、同時に、国際紛争を解決するために他の手段がないときには、日本国憲法と違いまして武力で処理をする、解決をするという道も否定していないのであります。  そこで、そのための国連軍の創設、それはいろんな特別協定とかなんかはありますけれども、そういう国連軍、つまり武力行使を容認する内容とする国連軍の行動があったような場合に、そういう国連軍についてあなたは参加をすることを認めますか認めませんかというふうに総理に伺っているんです。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま法制局長官がお答えいたしましたことは、たまたま私が先ほどお答えしたことと全く同じでございます。私もそう思っております。
  38. 矢田部理

    矢田部理君 要するに、武力行使否定していないでしょう、国連憲章は、あるいは国連軍は。それはどうですか。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連憲章の詳しいことでございましたら、それは政府委員が申し上げるべきだと思いますけれども国連軍というものが存在をしていないのですし、特別協定というものがどういうものかわかりませんから、実体のないものをいい悪いと言うことができないということが先ほどから申し上げていることの真実でございます。
  40. 矢田部理

    矢田部理君 今、何か実体に即して答えてくれと言っているんじゃないんですよ。国連憲章は国連軍の創設を想定しています。その国連軍をつくるに当たっては特別協定その他が介在しなければなりませんから、それはそのとおりですが、その国連軍について国連憲章は、軍隊でありますから武力行使否定していない。したがって、この特別協定等で武力行使を容認し認めるような国連軍が結成をされた場合に、あなたはそれに参画することの当否についてどう考えますかと聞いている。設問をよく聞いて答えてください。まだ国連軍がないから答えられないというんじゃなくて、武力行使とのかかわりで私は伺っているのであります。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連憲章の解釈のようでございますから、それは政府委員から申し上げます。
  42. 矢田部理

    矢田部理君 いや、いいです。  渡辺さんにもちょっと伺っておきましょうか。渡辺さんも……
  43. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 柳井条約局長
  44. 矢田部理

    矢田部理君 いや、いいんです。あなたなんかに聞いてないよ。総理に聞いているんだ、総理に。聞いてない。ちょっとお待ちください。
  45. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 御指名いただきましたので……
  46. 矢田部理

    矢田部理君 委員長、議事の整理をお願いしたいのは、総理認識を聞いているのが基本でありますから、総理以外の、法律解釈や国連憲章の解釈について聞きたいときにはその人を指名して聞きます。役人は余計なところへ出てこないようにしてください。今後の審議もそういうことを基本に仕切ってほしいと思います。
  47. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 私の方から手短に御答弁させていただきます。
  48. 矢田部理

    矢田部理君 いや、いいです。
  49. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  50. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記を起こして。  柳井条約局長、答弁願います。
  51. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 総理、外務大臣から御答弁あると思いますが、私の方から手短に御答弁を差し上げたいと思います。  矢田部先生もよく御承知のとおり、国連憲章におきましては、国際の平和の維持のために大きく分けまして二つの方法が規定されているわけでございます。第一はいわゆる平和的解決でございまして、これは交渉とか調停その他でございます。もう一つはいわゆる強制的な解決でございまして、平和的な解決が不幸にして功を奏しなかった、そして侵略があった、あるいは平和が破壊されたという場合には、この憲章上の考えでは、国連軍というものを創設いたしまして、それによってそういう侵略を実力をもって排除する、そういう考え方でございます。  ただ、現実の問題といたしましては、まだ国連軍は創設されていない、こういうことでございます。
  52. 矢田部理

    矢田部理君 そんな程度のことは知った上で、政治家としての所見、物の考え方を伺っているんですから、委員長、自分の頭をよく整理されて、私の質問に適切に指示していただきたい。あわせて、この政治的な論議のときに役人がちょこちょこ出てきて、事務的なことだとか技術的なことだといって前段で質問を遮るようなことをやめてほしい。その仕切りを委員長に厳重に申し入れておきたいと思います。  そこで、渡辺さんもしばしばその種の発言をされておる。総裁選に臨むに当たって、国連軍自衛隊参加を認めるべきだ、憲法上問題があるとすればもっともっとやっぱり議論してしかるべきだということも言うのでありますが、あなたはやっぱり国連軍、これは武力行使、強制措置ということを否定しない軍隊というふうに想定をされている、構想をされているということでありますが、それについてどうお考えでしょうか。
  53. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 自民党の総裁選挙のときはいろいろ言ったかもしれませんが、これは、自民党の総裁すなわち総理大臣とは限りませんから、自民党の総裁になったら必ず総理大臣になるという考えでは私はありません。それは国会というものがあるんですから、自民党の総裁になっても、自民党の一部が割れるとかなんかで野党が多数派をとれば、総裁にはなれても総理にはなれないということもありますので、総裁選挙で言ったことすなわち外務大臣の公約というわけではございませんので、あしからず御了承願います。
  54. 矢田部理

    矢田部理君 どうも宮澤さんも渡辺さんも総裁選のときは大分やり合ったようですが、ここへ来ると歯切れが悪いというか、抑えるのは、あの抑え方はわかりますけれども、どうして逃げるんですか。  武力行使否定しない、強制的な実力行動も容認している国連軍、憲章上はあるんです。国連軍に対する自衛隊参加考えるときには、ここが一番のポイントなんです。これについて政治的な所信を求められたら、中身がわからないから答えられませんじゃ国際政治に乗り出せますか。そういう事態がいつ来ないとも限らぬときに、日本政府はどういう対応をするんですか。渡辺さんなら、そこはわしはこう思うと、きちっと答えてみたらどうですか。
  55. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私も宮澤内閣に入閣することになって、それを認めているわけですから、宮澤総理と別なことを言うわけにはいかないわけですよ。  ただ、こういう議論としては、議論ですよ、議論としては私はあると思います。もともと国連ができないきさつを考えると、第二次大戦でもうみんな戦争は嫌になった、だからもうここで二度と戦争はやるまいという考え一つあるんですね。米ソも全部もう嫌ですから。ではどうするか。しかし、イラクのフセインみたいな人があらわれないとは限らない。そのときにどうするかということになれば、理想として、そのときはみんな金と兵隊を持ち寄ってそういうような無法者は押さえつけようというあれは発想ではなかったか。その前には国際司法裁判所その他いろんな平和的手続をまずやった上で、それでもだめならばということで決められたんだろうと、私はそう思っているんです、一政治家として。  しかし、現実にはやはり米ソの対立というものがあって、朝鮮戦争も起きれば、ベトナム戦争も起きれば、キューバの革命も起きれば、アンゴラも起きればというようなことになって、拒否権という問題もあるから現実は安保理はまとまらない。したがって、そういうものは今までできなかったということですね。  ところが、世の中大きく変わりまして、もうソ連も御承知のとおり。核兵器の縮小ということでは米ソがどんどん歩み寄って、なくす方向に向かって進んでいる。進行形ですよ、これ。これは理想的だと私は思うんですね。
  56. 矢田部理

    矢田部理君 手短に。
  57. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 短くね。ちょっと時間がかかるものですから、じゃ第一弾はこの程度で。
  58. 矢田部理

    矢田部理君 結論を言わないで下がっちゃだめでしょう。
  59. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 結論を言う前にやはり前提を言わないと、その結論だけを言われても私は困るわけですから。  だから、その米ソの問題が非常に近づいて、将来どんどん軍備が縮小されると非常に私はいいことじゃないかと。そういうふうな仲になったときに、じゃだれが世界の警察官になるんだということの事態ができれば、私は、国連軍の問題というものは国連の中で改めて世界平和という問題が出たときにまともな議論として取り上げられる時代は必ず来る、まだその段階ではない、だから国連軍について今加盟オーケーとかどうとかいうことを申し上げる段階ではありませんということであります。
  60. 矢田部理

    矢田部理君 将来の政治論をどういうふうにつくっていくかと言っているんじゃなくて、今の憲法ということを踏まえなきゃだめでしょう。  この憲法は、やっぱり武力行使武力による威嚇というのを禁止しているわけです。そういう立場から見れば、国連軍であっても参加できないのではないかというのが一般的な議論ですよ、常識ですよ。かつて政府もそういうことを言ってきた。どうして今逃げなきゃならぬのですか。そして小沢調査会は、どこまで固まったかは知りませんが、このPKO法案を足場にして、いずれ国連軍とか多国籍軍、これを追求したいという方向づけをしているのであります。  小沢さんを恐れているわけじゃないでしょうが、どうしてこういう重要な政治課題憲法上の問題について、もうちょっと明確に答えられないんですか。日本の指導者がやっぱりそこはきちっと語ってしかるべきだ。それがないから、海部さんをもたもたしていると言って宮澤さんは海部さんの政治を批判しておったけれども、いろんな問題が発生したときに、世界的な動きが激しくなったときに対応ができないんじゃありませんか。定規がないから、きちっとしたこの解釈、考え方が固まっていないから、だからそのことを問うているのでありまして、総理にもう一回、国連軍の先ほどの問題について伺っておきたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連軍というものは存在しませんし、特別協定というものもどういうものかわからないということをるる申し上げておるわけですが、どうでしょうか、それならばこういうふうにお答えすればいかがでしょうか。  いわゆる海外派兵というものは、一般的に言えば、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することというふうに考えますが、そういう海外派兵我が国にとっては一般的に自衛のための必要最小限度を超えるものでありますので、憲法上許されないものと考えます。
  62. 矢田部理

    矢田部理君 さらにその言葉を続ければ、したがって国連軍といえども我が国参加できませんということになりませんか。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお答え申し上げましたとおりであります。
  64. 矢田部理

    矢田部理君 どうもやっぱり気持ちの奥の方がかいま見られたような気がしてならないんです。つまり、国連軍参加することを否定できないんですよ。従来の解釈の大きな変更になる可能性がある。これは非常に重要な問題ですから、ひとつ私は質問をこの点は留保しておきたいと思います。  そこで、余り総論を長くやっていると本論に入る時間がなくなりますが、もう一つ聞いておきたいことは、私、本会議でも申し上げましたが、ちょうどことしはパールハーバー五十年、日中戦争六十年という非常に節目の年に当たりますけれども、どうも日本がアジアに進出をしたり国際協力をしたりするに当たっていつでも問題になりますが、戦後責任基本的に果たされていない、明確なけじめがついていないということであります。この戦後責任について、総理及び外務大臣はどんなふうにお考えになっておりますか。
  65. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) よくこれはパールハーバー五十周年ということでクローズアップをされて、大きな節目だと思います。私は、ちょうど開戦のときに中学五年生でありました。その当時は一方的な新聞しかもちろんありません。日本では勝った勝ったの大騒ぎでした。それから年を経て、結果を顧みて、いかに無謀な戦争をしかけてしまったか、まことに残念至極だと。そして、アメリカを含むアジアの諸国に大きな人的、物的損害を与えたことについては、これは深く反省をし、そういうようなことを二度と再び起こさないような決意で、そういうようないろんな新しい国際新秩序をつくるということについて我々は真剣に取り組んでいかなければならない、さように思っております。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま外務大臣からお答えをしたとおりでございますけれども我が国は、過去において我が国の行為がアジアあるいは太平洋を初めとする関係地域の人々に多大な苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚しております。そして、二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないことを決意しておる。そして、したがって戦後一貫して平和国家の道を歩み、国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献すべく努力をしてまいりましたが、今後もそういう努力を続けるべきであると考えております。
  67. 矢田部理

    矢田部理君 戦後責任はもう果たし終えた、けじめがついているというお考えでしょうか、総理は。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平和に対する貢献は永遠のものと考えております。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 具体的に申しましょう。  戦後責任の処理の中でどうしても大きくまだ残っておりますのが、先般の本会議でも申し上げましたが、強制連行です。百万を超える人、朝鮮や中国の人たちを戦争中に強制連行して強制労働に服させました。従軍慰安婦の問題もあります。この種の問題、非常に人道的な課題、人権上の問題でありますが、日本政府はいまだにこれにけじめ、決着はつけられていない。ドイツやアメリカでさえもというと失礼でありますが、アメリカもカナダも全部その補償に踏み切っているんです。これについて総理はどうお考えでしょうか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる国家総動員法によって徴用を受けた人々、その中で韓国関連の方々については調査をするということで、そういう関連の方の、たしか九万人でございましたかと思いますが、調査をいたし、なお続けているところでございますが、法律的に申しますと、我々の先輩がサンフランシスコの講和条約を初め講和条約の結果として幾つかの国との間には賠償協定を結ばれました。また、その他いわゆる日中の国交正常化であるとか、日韓の共同声明であるとか、そういういろいろな方法におきまして、我が国の負っておりました賠償等々の法律上の処理は一応できておる。一つ朝鮮民主主義人民共和国との間の問題は残っておりますけれども、その他の国との間の法律的な処理は一応できておるというふうに考えております。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 先般も本会議で答弁を伺いましたが、どうも総理は問題の本質をつかんでおられない。  国家間の関係としては、日韓条約といいましょうか、一連の請求権協定などで一応けじめ、決着がついたというふうに制度的には言われております。そのことと、現に強制連行を受けた人々、直接の被害者と日本国政府、あるいは場合によっては日本の企業も含めてでありますが、との関係はいまだに清算をされていないというのがこの問題の基本なのであります。  それをどう処理するかということで、例えばドイツはポーランドに対して基金制度を設ける、アメリカはブッシュ大統領が二万ドルずつ戦争中の日本人抑留者に支払う、こういう処理をして解決に進んでいるわけです、非常におくればせでありますが。そのことに日本政府もその事実や制度を認めて踏み込むべきではないかというのが私の主張なんですが、いかがでしょう。
  72. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは国際社会にいろいろな例があるかもしれません。また、個人的、人情的には同情するものも多々あるということも事実でしょう。しかし、我々としては、平和条約を結ぶ、そして国家間の正常化を図るという段階で個々のいろんな問題にそれぞれ政府が対応するということは、言うべくしてこれは非常に不可能に近い。そういうことであるので、一応賠償その他、請求ですか、あるいは賠償を払った国もありますが、そういう中で全部含まれているという解釈をとってきておるわけであります。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 その解釈は間違っています。これも政府見解とも違う。  国家間では、日韓交渉とか日中交渉もそうでありますが、なかなかそういう個別の被害者の積み上げで具体的積み上げをしてまとめるのは難しいということで、日韓などでは、つかみでまとまったお金を差し上げて一応国家レベルでは処理をした経緯があります。しかし、個人と国家との関係はそれで終わったわけではない。わかりますか。個人の請求権を国内法的な意味で消滅をさせたものではない。  例えば日韓請求権協定。日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄はしたけれども、個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない。したがって、請求権が残っているというのが日本政府立場なんです。それはお認めになりますか。
  74. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは十分法律的な問題ですから、事務当局から説明させます。
  75. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 政府間で今までいろいろな取り決めをしておりますけれども、そのいわゆる請求権の放棄の意味するところは外交保護権の放棄であるという点につきましては、先生仰せのとおりであります。したがいまして、例えば韓国政府が韓国の国民の請求権につきまして政府として我が国政府に問題を持ち出すということはできない、こういうことでございます。  ただ、個人の請求権が国内法的な意味で消滅していないということも仰せのとおりでございます。
  76. 矢田部理

    矢田部理君 渡辺さん、そういうことで個人の請求権は消滅していないんです。その個人から請求があったとき、現にあるわけですね。それぞれの国であるわけです。オランダでも、中国からも、あるいは朝鮮の人々にもこういう問題がずっと底流にある。底流だけではなくて、具体的にやっぱり行動として起きている。  私は、なぜこのことを言うかというと、やっぱりこれから日本国際協力を本格的にやるためには、もう一度半世紀近くもたった今日いまだに解決をされていない諸課題についてきちっとけじめをつけて、そこから国際貢献だとか協力だとかをするべきだという立場から申し上げているのでありまして、そういう請求権が残っている以上、それを政治的に解決する。アメリカもドイツもみんな最近になって、最近ここずっとやってきているんです。(「抑留者」と呼ぶ者あり)抑留者も請求したらいいです。  こういうことを処理していくことが、ただ謝罪とか気持ちとかというだけでなくてもっと実質的に大事だということを申し上げて、この宮澤内閣、渡辺外務大臣、ぜひこれは踏み切ってほしいと思うんですが、いかがでしょうか。少なくとも重要な検討課題にのせる、渡辺外交の重要なポイントにするというふうにしたらどうでしょうか。
  77. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは国際法上その他国益にも関する問題でもあります。一応政府間の条約を結んで、政府間では要求がないということになれば、他国の国民に随分被害を与えていますから、日本は中国であろうと何であろうと、今度はそういうような個人の請求を日本政府がじゃ全部受けて立つのかと、莫大な国民の負担になってくるわけであります。  したがって、そういうこととの絡みもございますので、ソ連抑留者等についても、それは勝手に向こうが抑留したんだから、こちらからは、その抑留者はソ連政府に向かって請求をするかということの理屈もあるんでしょう。しかしながら、これはまだ条約をつくってありませんからどういうふうになっていくかわかりませんが、我々は国内の問題については、それはできるだけ抑留者とかなんかに対してお気の毒だということで、何らかの慰労の措置は講じております。しかし、同じ国内でも戦災者もあれば爆撃によって死んだ人もあるし、そういう人に対して国は一々補償も見舞いも出してないんですよ、現実は。  戦争というのは、そういうようなことでまことに嘆かわしいことでありますが、どこまで広げていくのか、どこでとめられるのか、そういうようなものも含めまして、これは今までの慣例、国益、国の負担、総合的に考えなければならない問題ではないかと思います。
  78. 矢田部理

    矢田部理君 総合的に考えるのはいいんですが、渡辺さんね、みんなどこの国も頭を痛めているんですよ。一人一人に払うのはいかがかという国もある。しかし、アメリカのように一人二万ドルずつ払った国もある。それから、ポーランドについては基金というのを設けて、この基金の運用で処理できないかということで基金で処理をした国もある。それから、年金制度の適用をもう少し拡大する方向で処理ができないかと考えたドイツの国内の法律など、補償法があるわけです。そこをやっぱり検討をしてみる、一回これは自分でやってみる、難しいことは私ども承知していますよ、ということで踏み込めませんかと聞いている。
  79. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この問題は、もうかねていろいろ議論が出たことでありますから、ある程度の検討の結果は出ているんじゃないかと思うので、事務当局、ちょっと答えてください。
  80. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 条約上の処理につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、ただ我が国が賠償あるいは請求権の処理に関連して支払いましたものを相手側でどのように国民に分配するかということは、それぞれ韓国なりあるいはその他の条約の相手国の国内的な処理に任されたわけでございます。  したがいまして、我が国との関係で政府間でいわゆる請求権の放棄をやったと申しましても、一切処理をしなかったということではございませんで、例えば韓国の場合では無償三億ドル、有償二億ドルだったと記憶しておりますけれども、これを請求権、経済協力という形で支払った、そして恐らくその一部が関係の個人にも韓国側で支払われたというふうに記憶しております。また、ほかの国につきましてもそのような関係だったわけでございます。  しからば、そういうような処理をした上で、なおかつ日本の占領中あるいは戦争中に大変に苦労をされた方々がおられるわけでございますから、その方々の個人個人に対して政策的にどのような補償をすべきかどうか、そういう点につきましてはちょっと私の所管ではございませんので、その点は差し控えさせていただきたいと思いますが、法律的な関係あるいは条約上の関係につきましては以上申し上げたとおりでございます。
  81. 矢田部理

    矢田部理君 事務の人が説明する問題じゃないんですよ。説明はともかくとして、やっぱり政治的に問題を受けとめて処理をする姿勢を明確にすべきだ。  労働省が今、朝鮮の人たちの名簿を集めているでしょう。この集まりぐあい、集めた結果これからどう処理するのか。労働省、どうですか。
  82. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) お答えをいたします。  労働省におきましては、今御指摘の朝鮮人徴用者名簿の調査につきましては、昨年五月二十五日の日韓外相会議の際に、韓国側からいわゆる朝鮮人徴用者等の名簿の入手について協力要請がございました。これを受けまして日本政府としては、労働省を中心に、労働省本省、都道府県、公共職業安定所、関係する部局等について調査をいたしまして、現在九万人分の名簿を確認してございますが、これを保有者の了解を得て韓国政府に提出したところでございます。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 そんなことはわかっているんです。これから先、集めるためにどうするのか、集めた名簿をただ向こうに渡すだけで終わりなのか。そうじゃないんでしょう。これについてお金を出すかどうかというのもまたいろいろあるんですよ。日本に強制連行されたまま戻ってこない、生死すら明らかにならないからお葬式も出せない、日本で埋まっているお骨を一体どういうふうにするかとか等々も含めて、全体的な補償というか広い意味での補償というか、そういう問題にやっぱり積極的に取り組んでいく、そしてまた、具体的な補償の問題も検討していくという姿勢こそが必要なんですが、最後に総理に、まとめてどうでしょうか、この問題についての扱いは。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 矢田部委員も御承知のように、戦後長いことかかりまして、そういう各国との間の法的な処理を実はいたしたところでございます。  先ほど外務大臣も言われましたように、これは国内にもいろんな問題がございますので、そういうことをやはり総合的に考えませんとなかなか難しい問題があるんじゃないかと思います。
  85. 矢田部理

    矢田部理君 難しい問題だという認識の上に言うんですよ。難しい問題だというお答えをいただいても問いと答えにならないのでありまして、一度やっぱり検討してみる、宮澤内閣でこれから国際政治をやるに当たって重要な一つのテーマとして検討に入る、相談をしてみるというぐらいの答弁はできませんか。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど労働大臣からお答えがございましたように、被徴用者についてはその事実関係を調査いたしまして名簿をつくりつつあるというふうな、そういう努力はいろいろにいたしております。
  87. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは人道的立場とか、そういうようなところから見れば大きな問題があることは事実なんですよ。事実なんだけれども、やはり補償とかそういう問題になってきますと、すなわちイコール国民の税負担という話に直接結びつくわけですから、そうなりますと、現にインドネシアでも、日本軍に採用されて何年か使われておった、二年か三年か知りませんが、そういう人たちが、月給ももらえないで軍票をもらったら軍票がただになっちゃったとか、中国なんかでもたくさんあるわけですよ、実際は。だからそういうような、中国などは賠償まで放棄してくれているという中になりますと、これはそこまで取り上げていけば、人道上は理想的かもしらぬが、なかなかこれはもう収拾のつかないような大きな問題になってくるということで、やはり政府間で取り決めれば、その政府の中で処理してもらいたいと。  したがって、インドネシアなどは大使館に押しかけてくるんですが、これはもう解決済みですということで、実際個人的に言えば気の毒だと思うのがありますが、日本の全体の国益も考えなきゃならない。国民がそいつを認めて、それは、税はうんと多くなってもいいと、国際貢献だから洗いざらい拾って、そういうものは個人的にみんなやったらいいという気なら別ですよ。  しかし、そこは政府としてはまことにお気の毒ではあるけれども、どこかで線を引かざるを得ないというのが実際の、現況の苦しんでいる、苦悩の姿だということも御理解をいただきたいんです。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 個々の話よりも、早く法案に入りたいんですが、どこの国も苦しんでいるんですよ。どこの国もやっていないわけじゃなくて、現にやっているんです。そして、請求権という個人の権利は依然として消滅をしておりませんという政府の答弁にもずっとなっているわけでしょう。  そうだとすれば、大変だとか税負担が容易でないとかと言うだけでは説明にならないわけです。経済大国だとかそれに見合った国際貢献だとか、そういうことを言う以上、その原点とも言うべきことについて、きちっとした清算をする。難しいけれども一定のけじめをつけるということをしないと、いつまでも、例えばアジアの政府レベルが今度この問題についてどう反応しているかというのは後でやりますけれども、民衆レベルは物すごい不信感を持っていますよ。大変な懸念を表明しておりますよ、このPKOに基づく自衛隊派遣。その底流には、やっぱりそういう問題のけじめ、決着がついていない、そこにあることが大事なんです。  総理、もう一回、難しい、回答できませんということじゃなくて、考えてみるぐらいのことは言えませんか。考え一つにもなりませんか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘になっていらっしゃいますことはよくわかっておるわけでございますけれども、そういうことの中で我々がいろいろ御迷惑をかけた、それもそのとおりでありますから、いろいろな条約あるいは法的な処理、賠償請求権等々で相手の国と苦労しながらここまでやってきたわけでございます。  これでもう何もかも一切罪障は消滅いたしましたなんという考え方をしているわけではありませんで、済まないことをしたということはわかっておるわけでございますけれども、先ほどから外務大臣もるる言っておられますように、そういう問題を全面的に取り上げましたら、これは日本国民の税負担にもなりかねないことでございますから、ある意味で国と国との話し合いがついたところでひとつ了解をしてもらえないかというのが気持ちでございます。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 そういう了解はしないということからこの問題が発生しているのでありまして、自衛隊海外出動などを考えるなら、それより先にやるべきことがあるじゃないかというのがアジアの声なのであります。したがって、この点の質問も少し留保をしておきたいと思っております。  そこで、問題の今度の法律でありますが、先ほどから指摘をしておりますように、初めに自衛隊ありきなんです。PKO総体ではなくて、野田さんからも指摘がありましたように、PKFなのであります。人道的な支援活動文民分野にまで自衛隊が公然と乗り出していくという、文字どおりの自衛隊派遣法であります。  これは憲法九条に違反することはもとよりでありますが、従来政府がとってきた態度、これにも明確に反します。自衛隊をつくったときの任務規定として自衛隊法三条がありますが、自衛隊の主たる任務は我が国を防衛することにあると。海外展開することは一切しないと。(発言する者多し)
  91. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 静粛にお願いいたします。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっととめてください。私質問……(発言する者多し)
  93. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 静粛にお願いいたします。御静粛に願います。  矢田部君、質問があれば続けてください。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 これだけ騒然としているんですから。
  95. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 静粛に願います。
  96. 矢田部理

    矢田部理君 ということから、自衛隊そのものがもう大変な問題点をこのPKO法案については持っているわけでありますが、どうですか、これは従来の政府方針と違いませんか。武装部隊が出ていく、自衛隊が部隊として海外展開をする、しかもPKF、平和維持軍武力行使否定していないのであります。  だから、宮澤総理も以前、総理総裁になる前のころには、どうもやっぱり武力行使のおそれがある、これにかかわる可能性が強いと、そう言っていたじゃありませんか。法制局長官だってそう答えておった。ところが、今度は小ざかしい理屈をつけて、若干の前提条件を置いて、それなら大丈夫だと。本質が変わるわけじゃないのでありまして、その点、総理から答弁を求めます。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、国連平和維持活動基本は、非強制であり申立てあり、いわば力を用いずに国連の権威と説得により平和を確立するということでございますので、そういうふうに私は考えておりません。
  98. 矢田部理

    矢田部理君 平和維持ですから、平和を求める目的で行くことは私もわかりますよ。しかし、現場はいろんな条件、五条件とか何かありますが、随分いろんな紛争やトラブルが起こっているわけですね。武装部隊の出動もあるわけです。多くの犠牲者、七百人を超える犠牲者も出ております。そして国連は、後で議論しますけれども、単なる正当防衛的な武器の使用、武力行使だけではなくて、自衛のためにその幅も少しく広げて武力行使が可能だと言っている。  ということになりますと、武力行使を伴うようなことは間々多い。その可能性を秘めた平和維持軍には参加が難しいと言っておったのが従来の政府見解たつ。たんでしょう。なぜ変わるんですか。どうして変えなきゃならぬのですか。やっぱり自衛隊が大きく羽ばたこう、海外に出かけていこうということがもともとの発想の基本にあるからじゃありませんか。どうやったら出かけていけるか、どうやったら憲法を小細工してうまくかいくぐれるかと、そういうことを中心考えたのがこの法律じゃありませんか。(「牽強付会だ」と呼ぶ者あり)言葉をわかっているの、あんた、牽強付会って。  今のような宮澤さんの説明は全然説得力ありませんよ。法制局長官、どうですか、今度お聞きしましょう。
  99. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  従来、政府平和維持隊的なものにつきましての見解といたしまして、昭和五十五年の稲葉議員に対する答弁書がございます。  稲葉議員に対する答弁書におきまして、いわゆる平和維持活動のために編成されたものについて、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないけれども、その目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは許されない、かようにお答えしているところでございます。  この政府見解趣旨でございますけれども平和維持軍——当時、平和維持軍と言っておりましたが、平和維持隊の目的・任務が武力行使を伴うような場合には、通常これに参加した我が国自身が武力行使をすることが予想される、あるいは仮に我が国自身が武力行使をしなくても、他の参加国が武力行使をすることによって我が国としても参加を通じましてそれと一体化すると評価される、したがって、みずから武力行使を行うと同じような評価を受けるおそれがある、かようなことから申し上げていたところでございます。  それで、ただいま委員の御質問でございますが、私どもといたしましては、そのような評価を受けない姿、こういうことを考えてまいりますと、まずみずから武力行使しない、あるいは他の平和維持隊の行動と一体化することによって武力行使という評価を受けない、こういうことが中心の問題になるわけでございます。  したがいまして、今回の、今委員もおっしゃいましたいわゆる五原則、こういうものによりまして、紛争が起これは当然の、まず三つの前提を置きました。もう繰り返しませんが、同意、合意、中立、こういう三つの条件を置き、さらにそれが崩れるようなときにはそういう平和維持活動はやめる、撤収するということでございますし、さらに武力につきましては、今自衛と、あるいは多少範囲が広がってというふうな御指摘がございましたが、我が国の要員の生命、身体の防護、武器の使用はそういうものに限る、こういう前提を置きましたわけでございますから、そういう意味におきまして先ほどのような御懸念は解消するもの、こういうふうに考えたわけでございます。
  100. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、もともとの、あるいは現に行われているPKFに条件抜きで参加をするということは憲法上問題がある、憲法の規定に抵触をするという考え方にまず立つのでしょうか。
  101. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  憲法上違反するのかという御質問ですが、憲法上問題になりますのは武力行使、こういうことでございますから、武力行使に当たるようなことをすればもちろん問題でございます。  したがいまして、武力行使に当たる当たらない、それは一般的な形で申し上げるよりは、むしろ具体的にこういう条件を設定すればならない、あるいはこういうふうなおそれがあればそれはむしろ差し控えるというのが態度だろうと思います。
  102. 矢田部理

    矢田部理君 国連の関係文書によれば、日本の言う武器の使用を超えて自衛のためなら武力行使ができる。そして自衛というのは、後でこれは詳細な議論をしますけれども、みずからを守るだけではなくて任務遂行を実力で妨害されたような場合にこれを排除することも含むと広くとるべきだ、こういう制度のもとで武力行使が行われる、容認をされておるということですが、これを前提とした場合に日本憲法とのかかわりはどう考えますか。
  103. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) ただいま申し上げましたように、武力行使が問題になるわけでございます。そういう意味で、今おっしゃられました任務の達成を実力をもって阻止するような企て、これに対して武器の使用をするというこれがすべて武力行使に当たるとは私どもの方も思っておりません。いろんな形態があり得るだろうと思います。  そういう中で、場合によってはそういうおそれもあるかなというふうなことが出てまいりました場合、それはやはり問題となり得ることでございますから、そういう部分について差し控える、むしろ謙抑的にかなり大幅に差し控えているというのが私ども考え方でございます。
  104. 矢田部理

    矢田部理君 一つ一つの条件がいかにまやかしであるかということは後でまた逐一やりますけれども、もう一つやっぱり聞いておきたいのは、まさかのときに自分の命や近くにいる同僚の生命、身体を守るためには武器の使用ができるが、ばらばらにしかできない。それを指揮したり部隊としてやったり組織的にやったりすることはだめだと。そういう後段の組織としてやったり部隊としてやったりすると、これは憲法上問題があるという考え方でしょうか。
  105. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 法案の二十四条におきましては、もう委員承知のとおり、二十四条の三項だけあえて申し上げれば、「自衛官は」と、こういう形で書いてございます。そういう意味で、自衛官の武器使用という形で構成してあります。  それで、今のお尋ねでございますが、集団的に行えばもうそれだけで問題か、こうおっしゃられますが、それは形態いかんによるわけでございまして、常にそれが集団になったから、例えば生命、身体を防衛するためにやむを得ない必要がある、そういうふうなとき集団であったから直ちに問題である、かようなことにはならないかと存じます。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 部隊として行くわけでしょう。そうすると、部隊として武器を使用する、それは部隊の人たちの生命、身体を守るためであってもこれはいいんですか。端的に答えてください。
  107. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 憲法の九条におきましては武力行使が禁止されているわけでございます。一方、法案の二十四条におきましては武器の使用を考えておりまして、その武器の使用をこういう形で構成しているわけでございます。  したがって、以前に出しました「武器の使用と武力行使の関係」におきましても、武力行使という概念、それに当たればもちろん問題でございます。そういう意味で私は、個々の実態に応じて判断すべき部分があるだろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 ですから私は、個々の事例じゃなくて、一々現場に行った自衛官が個々の事例を見て、これは憲法違反か違反でないかなどと考えているいとまはないんですよ。基準を示さなきゃならぬのでしょう。一人一人が鉄砲を撃ったり、身体を守るためにやることは——これは後で議論しますよ、これは前段の議論ですから。いいが、指揮をされちゃいかぬ、指揮しちゃならぬ。個々ばらばらにやりなさいと言うんでしょう。それを組織的にやったり部隊としてやったりすることはまずいからそう言うんでしょう。そうじゃないですか。
  109. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) これは、武力行使につきまして、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいう、かようにかって申し上げたところでございます。そういう意味で、これに当たるようなことであればもちろん問題でございます。  したがいまして、それに当たるようなケースにならないように、先ほどの武器の使用を正当防衛に限るというふうなことを申し上げたのも、それを大幅に下げました点で謙抑的に構成した、こういうふうなことでございます。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 全然だめですよ、こんな答えでは。  一緒に行った隊の司令官か責任者が、危なくなったから撃てと言ってはいかぬのでしょう。つまり、指揮命令権を行使してはならぬのでしょう。そういう指揮命令を行使するのは、憲法上問題があるから指揮命令を行使してはならぬと言っているんでしょう。その点はどうですか。
  111. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 私が先ほどから申し上げておりますのは、指揮命令をした、撃てと言った場合にはすべて問題かということでございますから、決してすべて問題であるというふうに申し上げているわけではない、こういうことでございます。
  112. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、撃てと指揮命令をしてもよろしいということですか。
  113. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 静粛に願います。
  114. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) そこは、全く仮定の問題を申し上げるのはいかがかと思いますが、例えば相手方によりましては、山賊、匪賊のたぐいのときに何かありましても、それは指揮したからといって決して問題になるわけではないだろうと思うんです。武力行使になるわけではないだろうと思います。  ただ、相手がどんな人であるかわからないという状態におきましては、相手を見きわめて、使う使わない、指揮をするしないというふうなことはとてもできません。そういう意味で、謙抑的に下がって、むしろ自衛官の生命、身体の防護というところで線を引いた、こういうことでございます。
  115. 矢田部理

    矢田部理君 全然違いますよ、それは。個々ばらばらにしか対応できない、指揮や命令をしてはならぬと言っていたのでしょう、今まで衆議院説明は。せいぜい消極的に束ねるという程度であると。今度は、指揮命令もいいわけですね、山賊、匪賊なんという言い方は失礼な話だけれども武装部隊が攻撃をかけてきたとか侵入してきた場合に、これに部隊として対応する、場合によっては鉄砲を撃つ、これはいいんですか。
  116. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 後ほど防衛庁長官からもお答えがあると存じますが、いわゆる憲法上の禁止されているものの理念の話と、それから法案二十四条で構成されておりますいわゆる構成要件と申しますか、そういう構成の話と、この二つをぜひ御理解いただきたいと思うんです。  私が申し上げましたのは、武力行使に当たるようなこと、これは違憲になる。したがいまして、そういうことは法案上およそ組み込めないわけでございます。そういうことを考えました上で、二十四条で個々に自衛官が行う、そういう意味でこの規定上個々の、個々のといいますか、自衛官がこういうことで使用することができるというふうに構成した。したがって、この二十四条の三項におきます話と、先ほどの憲法上の理念の話、この二つはぜひ御理解いただきたいと思います。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 何を言っているのですかね。じゃ、こう聞きましょう。  これは後の本格的な議論に残したいと思っておったんですが、国連の諸規則、諸方針は、任務遂行か実力で妨害された場合には、それを武力で反撃することもいいと言っていることは認めますね。その武力で反撃した行為は、日本憲法からは許されない、こういう立場に立ちますか。
  118. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  任務を実力をもって妨害する企てに対して実力で対抗する、こういうお尋ねでございます。それでは、それが全部武力行使になって全部憲法違反か、こういうことには必ずしもならないだろうと思います。そういうことでございます。
  119. 矢田部理

    矢田部理君 全部なるか全部ならないかを聞いているのではなくて、基本はなるかならないかを聞いているんですよ。そんな、全部なるとかならないとか。もう一回答えなさい。
  120. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 先ほども申し上げました繰り返しになりますが、まず第一に、平和維持隊というのは中立あるいは非強制、こういうふうなことでございます。そういうふうな段階におきまして今のような形のものがあり得る。あり得た場合に、それじゃ全く武力行使に当たることはないのかとおっしゃられれば、あるいはあるかもしれない。とすれば、そういう意味で、そこの部分を押さえるということは、事実そう考えるべきことではなかろうかと存じます。
  121. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 委員の皆様、静粛にしていただくようにお願いをいたします。
  122. 矢田部理

    矢田部理君 議論というのは、全部ないとか、ないとは言えないとか、あるいは一部あるかもしらぬという議論ではなくて、中心はやはりそこの制度としてはそういう制度になるわけだから、その制度を憲法上容認するかしないかということを議論として立てなければ、あなたこそ、まともな議論にならないんだな。少しずつ外して逃げまくる議論なんだ。いずれにしても、ここは後で本格的にやりますから。  そこで、今度のPKO法案というのは、自衛隊を全面的に出そうと。ガラス細工と言いましたが、非常に無理な議論をこねて、幾つかの前提を置いて、その前提どおり進めば憲法違反にならないと。現場的に言えば極めてはかばかしい法律論を立てている。そして、これから先は細かい議論になりますから後にしますが、今までの自衛隊法だって、そんなことは言わなかった。国の防衛のためにつくろうと言った自衛隊。外には絶対に出さないと言ってきたんです。宮澤さんも、総裁選の最中でしたか、大分前でしたか、PKOでどうしても自衛隊を出すというのであれば、やはり法律の改正が必要だ、自衛隊基本的な任務規定である三条の改正が必要だと言っていたのじゃありませんか。その点はどうでしょうか。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その最後のところだけ違いまして、法律を改正することが必要だということは申しました。
  124. 矢田部理

    矢田部理君 やっぱりそういう頭ですか。確かに今度の法律も百条改正の方でやっているんですね。自衛隊基本的な任務というのは、さっき申しましたとおりですが、私どもは反対ですが、どうしても自衛隊に本格的な新しい任務を付与するということであるならば、やっぱり三条に真っ正面に取り組むべきではありませんか。百条の規定の延長線上で、南極に行くとか運動会に出かけていくとかいう線上の問題ではないのじゃありませんか。  戦後、一貫してとってきた自衛隊海外派兵に反対する立場を大きく変更して、いろんな名目は立てたり条件はつけたりしますが、初めて本格的にこれから自衛隊海外に出していこう、場合によっては、その先に国連軍があったり多国籍軍が位置づけられるかもしらぬと、大きな安全保障政策や外交政策の転換点に立っているわけです。それをこそくなといいますか、百条以下の法律で扱うなどという性質のものではないのじゃありませんか。雑則ですよ。三条の任務規定、これは基本的な任務規定です。自衛隊にそういう基本的な任務を与えるのと違うんですか、これは。  なぜそうなったかというと、これは一つ私の推測も交えて言えば、基本的な任務規定にかかわる防衛出動であるとか治安出動については国会承認が必要なんです。どうしても三条の規定の改正に持っていくと、国会承認の方に連動するかもしらぬ。恐れて百条以下の雑則で決めたのじゃありませんか。明白に三条に違反する、自衛隊基本的な任務、方針に違反する内容なんです、これは。どう思いますか。
  125. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 自衛隊の本来の任務は、三条に直接侵略、間接侵略、公共の秩序維持ということで決められているのは今御指摘のとおりでございます。しかしながら、今回お願いしております法案におきましては、百条の七ということで自衛隊の任務として規定してございます。  なるほど、八章でございますから雑則ということでもございましょう。しかし、これは任務として与えられておりますから、自衛隊法上の任務が与えられたわけで、これを我々は厳粛な任務として受けとめてこれを遂行していくわけでございますが、どこに違いがあるかと申しますと、この防衛出動あるいは治安出動等は我が国に対して重大な影響のある問題でございますし、国民の権利義務にも大変影響のあることでございまして、我が国としては、これはもう選択の余地はないわけですね。出動する、そして我が国の自由と安全と平和を守るということです。  今回のPKOにつきましては、これは国連要請に基づきまして、しかも国連の決議その他手続を経た上で、なおかつ我が国が自主的に判断をして、そして我が国法律に基づく五条件その他厳格な規制がございますが、この要件に合致する場合にのみ我が国がこれに支援をいたすわけでございまして、この点は本来の三条にいう任務と異なると存じます。しかし、自衛隊の正確な任務であることは間違いありません。
  126. 矢田部理

    矢田部理君 説明説得性がないんですよ。自衛隊海外に出るというのはそう軽いものじゃないんですよ。  防衛出動だとか治安出動も大変ですよ。それは日本国民も大変でありますが、自衛隊がアジア諸国に出かけていくということになれば、アジアの民衆やその地域の人たちにとっても、かねての戦争のこともある、それから環境や人権や暮らしのこともある。大変な受けとめ方で、その人たちの人権は軽視されてもいいというものじゃないんです。そう軽く、そういうものは日本人の人権に、三条は大変だからやるけれども、百条以下は人権は適当でいいんだという位置づけそのものがやっぱり問題なんだ。自衛隊だって行くとすれば、これは平和活動のために行くんだと言いますが、紛争地帯に行くわけですから、随分多くの人たちが血を流しています。七百人の人たちが死んでいます。物すごい不安定なところ、レバノンを見ましても、コンゴはもとよりでありますけれども、そう簡単に軽く物を考えるべき性質のものじゃないと私は思っているんです。  そこでもう一つ、私は参議院の決議との関係を申し上げなければなりません。  自衛隊法ができました。そして、今の自衛隊法の三条という任務規定を置きました。自衛隊法には相当な反対があった。反対はありましたが——宮澤さんもそのときおられた。自衛隊法ができた以上、反対派も賛成派もこぞって決めたのは、自衛隊海外に出すことだけはやめましょう、この日本の国土を守る、日本を守るということだけにきっちり枠をはめましょう、そののりを越えることをしないという誓いをしたのが実はこの参議院決議なんです。自衛隊法の三条の任務規定とこの決議は一対のものとして、その後の日本の平和政策なり安全保障政策をあるいは自衛隊政策を仕切ってきたんです。この決議はその意味でやはり重いんです。この重さについて、当時宮澤総理も参議院におられて参画をしたわけでありますが、どんなふうに受けとめておられますか。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和二十九年の本院における決議のお話でございますけれども、私ども海外派兵というのは、先ほども申し上げましたけれども武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することというふうに考えております。  そのような意味で、昭和二十九年の本院の御決議がそういうことを排除されたものではないと私ども考えておるところでございますけれども、もとより、本来この御決議をなされました本院の有権的な御解釈によるものでございます。私どもは実はそう考えております。
  128. 矢田部理

    矢田部理君 この決議は、今の宮澤さんのような弁解も一般的には予測して言っているんです。なかなかすばらしい文章といいますか、中身なんです。さわりだけあれしてみますと、「我が国が再び、戦前のごとき武装国家となる危険」、それから「自衛隊出発の初めに当り、その内容と使途を慎重に検討して」おかなければならない。したがって、そういう立場からいえば、「我が国土を守るという具体的な場合に限る」、国土を守ることに限るということをはっきりここでさせよう、自衛隊法についてですね。そして、特に宮澤さんの答弁との兼ね合いで言えば、憲法が拡張解釈されることは危険だ、いろんな名目をつけて海外に出かけていきたがる、その危険を一掃するために、一切海外に出動しないというのを国民の総意として決めようではないか、こういう誓いをしたのが実はこの決議なんです。  ですから、ずっと長い文章ですからいろいろありますが、昔は、自衛のためといったとか、アジアの共栄とか平和のために出かけていった。そういう名目をつけることはやめさせよう、抑えよう。平和維持だって、武力との関係で決して武力否定されていないんです。だからこそいろんな小細工をしなきゃならぬ、条件をつけなければならぬことになったのでありまして、そのことを考えますと、当時この決議に参画をされた宮澤さん、あなた心が痛みませんか。この決議をもう一回読んで、その深い意味のあるところを考えてみませんか。この決議に真正面から衝突をするような、この決議を全面的に否定するような海外展開法、これが今度のPKO法案ですよ。もう一度答弁を求めます。
  129. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの御決議の背景は、私思いますのに、いわゆる憲法九条で軍事大国にならない、戦争というものは過去において、矢田部委員も今おっしゃいましたが、正義のためであるとかいろんな美名のもとに戦争というものはなされてきたのだが、そういうことはもう二度と繰り返してはならない、こういう御趣旨でああいう御決議があったのであろうと、私は当時を回想して考えております。  したがいまして、いわゆる戦争をするためにもとより国連平和維持活動協力するわけではございませんので、そういうことを排除するという御意図の決議ではなかったのだろうと私は考えておりますけれども、これは本院の有権的な御解釈にゆだねなければならないところであるとは存じています。
  130. 矢田部理

    矢田部理君 このPKO法案に対するアジアの反応もやはりしかと受けとめてほしいと思うんです。中国は、いろんな説得説明に行っても断じてイエスと言いません。韓国それから朝鮮民主主義人民共和国もそうでありますが、非常に強い反対を示しております。フィリピンでは、ここに御紹介をいたしますが、一昨日上院に、このPKO法案に批判をし、自衛隊海外展開に重大な懸念、憂慮を表明するという決議案が上程をされました。これはいずれ可決をされる見込みです。シンガポールも同様です。  私は、ここにフィリピン国会第五回通常国会で上院に出された決議の写しを持っておりますけれども、それは政府レベルのものだけではないんです。どちらかというと、政府レベルは日本からODAなどで経済援助をもらったり協力を受けたりしているものですから本心を言わない。遠慮がちに物を言っている。民衆レベルではもっともっと強い怒りや不安の声があります。それが底流にずっとあるんです。こういうアジアの人々の批判や不安や憂慮や懸念に対してどうお考えですか。
  131. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、殊に中国、韓国は我が国の過去の行動から被害を受けておられますから、我が国がこの際、国連平和活動協力しようというその意図そのものをいかぬというのではない、それはそれでよくわかることであるから、どうぞいろいろなこともあるので気をつけてしてほしい、こういう気持ちはしばしば寄せられておりまして、それは私どももこの法律が成りました際、これを施行いたします、実行いたしますときには十分心してしなければならないことと思っております。
  132. 矢田部理

    矢田部理君 上院に出された決議の内容は、上院議会は、日本国会で現在審議されている国連平和維持活動協力法案がアジア・太平洋地域を平和、自由、中立地帯にしたいというASEAN諸国民の努力に反しているとの意見を表明するということを中身とするものでありますが、この立場から、この願望に沿って我々は憂慮の意思を表明する、こう結んであります。  どうも大使館筋が動いて、何とか賛成してくれ、反対しないでくれと回っているそうでありますが、にもかかわらず上院がこういう決議をしようとして既に正式に提案をされているということはやはり重く見るべきだと思うんです。どんな条件があるとか、こういう原則があるとかいう説明では説明し切れない内容になっているということを心すべきだと思うんです。その点で、参議院の決議の意味も勝手に解釈をして、この決議とは関係がない、大丈夫だという扱いは私は賛成できません。院としても、この決議の持つ重みをきちっと位置づけなければならぬと考えております。従来からこの決議の問題は問題に供されてきましたが、これほど真っ正面からこの参議院決議に衝突をする法案は初めてであります。  その点で、委員長、院としてもこの扱いをきちっと考えていただきたい。参議院としてもこれを黙って見過ごすわけにはまいらぬというふうに考えております。いかがでしょうか。
  133. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまの御発言については、理事会において協議をすることにいたします。
  134. 矢田部理

    矢田部理君 この扱いと今の委員長発言については、午後、もう少し考えた上で、私から申し上げたいと思います。
  135. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  136. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 私は、午前中の最後の質疑で、今回出した政府PKO法案自衛隊の本格的な海外出動を求めるもので、かつて一九五四年に本院が決議をした「自衛隊海外出動を為さざることに関する決議」に反するものだと、本院にとってもこの問題は重大な問題なので、このまま結構ですと言うわけにはまいらぬということを申し上げましたところ、委員長から、理事会でその扱いについては協議をしますというお話がございました。その後、理事会等々はどういうふうに運ばれるつもりか、まず委員長見解を伺いたいと思います。
  138. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 本日の議事を終了した後に行うということにいたしたいと思います。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 午前中の最後に私は申し上げたのでありますから、私の質問が終わってから扱いを決めますなどということでは了解できません。
  140. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記をとめて。    〔午後一時四分速記中止〕    〔午後一時十八分速記開始〕
  141. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記を起こしてください。  この件につきましては、理事会で後刻協議することとし、明日の委員会において質問ができるよう理事会で設定をいたします。  質疑を続けます。
  142. 矢田部理

    矢田部理君 今度の法案で非常に大きな問題になっておりますのは、午前中も一部議論をしましたが、武力行使にかからしめることになるかどうかということが重要なポイントの一つであります。日本政府は、武力行使はだめでも武器の使用ならよろしい、妙な言葉の発明をしましてこの法案説明に当たっておりますが、この問題を本格的に議論していきたいと思います。  そこで、日本国憲法は当然のことながら武力行使武力による威嚇を禁じておりますが、国連の諸文書はこの点、平和維持軍についてどんな規定をしているか。衆議院でも問題になっておりますPKOのための標準運用ガイドライン、略してSOPということで議論されておりますが、などを含めてちょっと御説明をいただきたい。
  143. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生にお答え申し上げます。  まさに先生が御引用になられました過去のSOPあるいは標準SOP、あるいは先生も御承知と思いますが、かつてのウ・タント事務総長がキプロスの平和維持隊について書きましたエードメモワール、そういった全体を総合いたしまして簡単に申し上げますと、PKFに参加いたします各国の部隊は武器を携行することができる。ただ、この武器はセルフディフェンス、自衛のためのみに使用が許される。その自衛とは次の二つを含むというのが大まかに申し上げた書き方でございまして、A、Bと分けて考えますと、A、要員の生命を防護するため。B、PKFの任務が実力により阻止された場合これに抵抗するため。このようなときに武器の使用が許されるというのが過去のいろんな文書及び慣行上の規定、規定と申しますか、そういう体系になってございます。
  144. 矢田部理

    矢田部理君 今、二つの類型を示されました。そのうち、日本自衛隊PKO法案で出動して、こちらは可能だがこちらはだめというような基準を示していただきたい。特に、任務遂行を力で妨げる試みに対する抵抗を含むというふうになっておるわけでありますが、四つばかり例示をされておりまして、直接攻撃に対する自衛、国連要員の生命への脅威、国連の安全が脅かされた場合、三つ述べております、これはSOPであります。そしてこの国連の安全が脅かされた場合も二つに分かれまして、国連の陣地及びその周辺へ紛争当事者の一方が他方に対抗するため力で侵入を試みる場合、それからもう一つは、国連の部隊に対する力による武装解除の試み、非常に具体的に例示、列挙しておるわけであります。このうちPKO法案で、自衛隊ができるものできないものを仕分けして答弁をいただきたいと思います。
  145. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 私が今手元に持っておりますのは、一九六四年のウ・タント事務総長のエードメモワール、これは公表された書類でございますが、まさに先生が挙げられたと同様など申しますか、類似したケースが幾つか挙がっております。しかし、問題は、この日本法案日本として武器が使用できるのは、法案二十四条の場合ということに限られておることは先生御承知のとおりでございます。
  146. 矢田部理

    矢田部理君 その二十四条から見て、このうちどれができ、どれができないかを示しなさいと言っている。
  147. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 私から答弁申し上げるのは適当かどうかあれでございますが、二十四条におきましては、「前条第一項の規定により小型武器の貸与を受け、派遣先国において国際平和協力業務に従事する隊員は、自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない」ときに武器の使用が認められるということで、まさにいろんな状況の発展の中で他の隊員の生命及び自己の生命を防衛するために武器の使用が認められる、こういうことでございます。
  148. 矢田部理

    矢田部理君 丹波さん、そう余りかわさずに、具体的に私が述べた、これとこれはだめだ、これは可能だとはっきり言ったらいいじゃありませんか。それとも日本法律ではこれは全部できないということになりますか。
  149. 丹波實

    政府委員(丹波實君) それでは、先生が挙げられたその例と全く一致したものかどうかは別といたしまして、例えばこのエードメモワールには、武器を用いた攻撃を受けた平和維持隊の監視所、施設及び車両の防衛、この場合に武器の使用が許されると、こう書いてございますが、国連の文書あるいは過去の慣行によりますと、そういう何と申しますか、PKFの任務が実力により妨げられたその瞬間にズドンと発射してよろしいというふうにはなっておりませんで、まず説得しなさい、それからまず空砲を撃ちなさいという、いろんな手続を全部尽くせということが書いてあるわけです。その過程でと申しますか、それにもかかわらず、結局向こうがいよいよ発射する。それはまさにこっちの生命が危なくなる状況でございまして、そういう状況であるならばそれは二十四条の適用になる条件でございまして、単に抽象的に任務が妨げられた、だからズドンと、そういうことでございません。  ですから、先生が挙げられたそのイ、ロ、ハ、ニというものを一つずつ抽象的にとって、イの場合はイエス、ロの場合はノーと言うことはなかなか申し上げにくい。それは具体的な状況の発展によってこちらの生命が危なくなるかどうかが判断の基準だというふうに私たち考えております。  以上でございます。
  150. 矢田部理

    矢田部理君 個々の自衛隊の人が行くんですよ。現場に行って、国連が示した幾つかの基準がある。国連は、この場は鉄砲を撃てる、自衛のための武力行使が可能だという基準を示しているときに、この基準のものはだめですよと。それはいろいろありますよ。日本の正当防衛だって、急迫不正の侵害だとか、必要やむを得ざるときとか、相当なる判断をするとか、いろんな手続や条件設定はありますよ。しかし、そういうもろもろのことを考えつつも、幾つかの項目を挙げているんですから、これはできますよ、これはできませんよということを示してやらなきゃ現場は混乱するだけですよ。その程度のことははっきりしませんか。そんないろんな周りの話をしてごまかそうとしてもだめですよ。
  151. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 申しわけありません。先ほど申し上げましたように、国連は先ほどのようなAとBとのケースの場合に武器の使用が認められるということでございまして、そういう場合に武器を使えと言っているわけでは決してございませんで、Bのケースでいろいろなケースを先生が挙げられました。  私、先ほど御説明申し上げましたように、判断の基準は、こちらの生命が危なくなっているかどうかということが判断の基準でございます。
  152. 矢田部理

    矢田部理君 そんなこと何回も聞かなくたってわかっていますよ。その上で、この基準のうちできないもの、できるものを挙げなさい。Aはできるんでしょうか。それからBはだめなんでしょうか。そこをまずはっきりしなさい。
  153. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほど申し上げましたA、Bと分けた場合のBのケースでありましても、こちらが説得をし、空砲を撃ち、その他いろいろな手だてを尽くしている途中で向こうが鉄砲でいよいよ発射しそうになったと。それはまさにこっちの生命が危なくなった場合でございますので、そういう場合にはこれは何と申しますか、Aに転じつつあるケースあるいはAに転じてしまったケース、その場合にはこの法案第二十四条により個々の自衛官は武器の使用を許される、こういうことになろうかと思います。
  154. 矢田部理

    矢田部理君 全く納得できません。
  155. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 答弁者にお願いいたします。質問者の質問趣旨にはっきり答えられるようにお願いをいたします。
  156. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 私の言葉に足りないところがありましたら申しわけございません。もう一度御説明申し上げたいと思います。  国連の各種文書あるいは過去の慣行によりますと、PKFに参加する場合には武器を携行することが認められております。その武器がいかなる場合に使用できるかということを規定いたしております。それによりますと、これらの武器はセルフディフェンス、自衛の場合にのみ使用を許される。その自衛とは次の二つを含むというのが一般的な考え方で、A、自己の生命を防衛するため、B、PKFの任務が実力により阻止され、これに抵抗する場合。日本がPKFに参加するに当たりまして、けさほどの法制局長官の御答弁にもございましたけれども、Bのケースについて、一般的に日本武器を使用するということについては憲法議論があり得ると。したがって、Bについては、一般論としては、Bのケースということだけでは武器の使用はしない。しかしながら、Bのケースでございましても、説得、空砲を撃つ、そういうことで手続を尽くしている途中でこちらの生命が危なくなってしまった。これはこちらの生命を防護するために武器を使用するケースに当たるであろうということを申し上げたつもりでございます。
  157. 矢田部理

    矢田部理君 結局、Aの場合しかだめなんですよ。そして、Bの場合でもAになってきたと。Aの要件に当たる場合には、これはAの方の範疇に入るんであって、Bの方でやれるということではないんだから、そこをあなたは正確に言わないから、すりかえたりごまかしたりするから混線するんです、議論が。  そこでもう一回、午前中の議論とつながるわけでありますが、今のPKO法案では個々の隊員が自己の責任七判断で対応するしかない。憲法上、直ちに違反するかどうかは別として、部隊として対応したり、組織として対応したり、上官が指揮をして対応することは今の法律ではできない。これは確認できるんですね。
  158. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この法律に基づきまして私どもが平和協力業務を実施する場合の武器使用に関してでございますが、このまず前提は、平和的な目的のためでございますから、私ども武器使用を前提としておりません。ただし、限界的な場合には、今お話のございますように、二十四条三項によりまして、自己の生命または身体に危害が加えられるというときには、これに対していわば正当防衛、緊急避難的な意味武器の使用ができるということを規定しておるわけでございまして、ただいま議論にありましたように、この任務遂行は組織としてやります。しかし、武器の使用につきましては個々の自衛官の判断によって行うということがはっきりと明定されておるわけでございます。
  159. 矢田部理

    矢田部理君 その前段の話を聞いているんです。だから、部隊としてやったり、組織としてやったり、上官が指示をしてやったりすることはできないんですねと、こう聞いている。そこだけイエスかノーか、答えてください。
  160. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) そのように理解しております。
  161. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、今度経過的に伺う。  丹波さんは物知りだからいろいろ言われたが、SOPでも武力行使に至るまでの幾つかの段階があるわけですね。今言われたように、武装攻撃的なものがあった。まず第一には調停的な、何か話し合いとか、それから説得をしなさいと。そしてさらには、今度は警告に移りなさい、警告をしなさいと。その警告も最初は口頭でやりなさい。やがてピストルを撃ってもよろしい、銃を撃ってもよろしい。しかし、それは空に向かって撃つんですよ等々の手順、手続を経た上で、実効的な発砲、ねらい撃ちと言われているようでありますが、ができると、こういうんです。  そうすると、日本自衛隊は、隊として、組織としてどの段階までかかわれるんですか、かかわらないんですか。それはどういうふうに仕切りますか。
  162. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) いろいろの想定がございますけれども、今先生の御指摘になったのは、任務遂行上いろいろ危害が加えられる状況になった、それに対しまして、直ちに発砲するのではなく、空砲を撃ったりいろいろな威嚇をやる、そしてなおかつそれでも危害が及んだときに武器使用に及ぶと。こういうプロセスは私はあり得ると思います。  しかし、その判断はあくまでも自分の生命、身体に対する危害の防止でございまして、これはたびたび申しておりますように、刑法三十六条、三十七条の要件に該当するようなそういう状況のもとにのみ、個人の責任において武器使用を認めておるのがこの法案趣旨でございますから、あくまで私どもはこの趣旨に沿ってやっていきたい。つまり、治安出動とかあるいは国内における防衛出動等の場合は、当然武力行使をして、この目的で我が国を守らなければなりませんけれども、この業務は海外における、外国における国連要請に基づいた平和協力でございまして、武器使用が一般的に行われるような議論ではございません。これはあくまで……
  163. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと長過ぎるから簡単にしてください。
  164. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) あくまで平和目的のためにやるわけでございますので、武器使用は限界的な場合にのみあり得ると。その限界的なことを申し上げているわけで、これはあくまで自衛官の個人の判断でやらせるという建前になっております。
  165. 矢田部理

    矢田部理君 私が申し上げているのは、個人でできるのはわかっているんですよ、武器の使用は。自分の身体か、わきにいる同僚の生命に影響がある場合しかできない。  問題は、じゃ、部隊としてはどの程度までなら対応できるのか。武装勢力が押しかけてきたとか何か紛争が起こったときに、身に危険が迫ったときはそれは鉄砲撃てますよ。しかし、国連が言っておりますのは、いろんなケースがありますが、一応基準化しているわけですね、いろんなことを。最初は口頭でやりなさい、説得しなさい、その次は空砲を撃ちなさいと。いいですか。そこで私は、個人でどこまでから撃てるかとかやれるかということじゃなくて、日本組織として行った部隊、武装部隊はどこまでこのランクの中では対応できるのかと聞いている。長官がわからないようじゃ隊員はどうにもならぬと思う。
  166. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 具体的にいろいろなケースを想定しておられるような感じがいたすわけでございますけれども、建前はあくまで、繰り返すようで恐縮でございますけれども、私どもは、この法の建前からいいますと先ほど申し上げたとおりで、法二十四条に該当する場合にのみ行われるわけでございまして、国連のSOPその他におきましての類型化について先ほど先生お尋ねでございますが、この類型の中にはいろいろのケースがあり得ると思いますね。しかし確かなことは、この法案の二十四条で、自己の生命、身体を守る場合にのみ個人が判断をしてやるということが明定されているということをたびたび繰り返して申し上げているわけであります。
  167. 矢田部理

    矢田部理君 私は個人がどこまでできるかを言っているんじゃない、部隊として行くわけですからね。  端的に聞きましょう。いろんなランクのうち、空に向けておどかしの発砲をすることは、部隊としてはできるんですか、できないんですか。
  168. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これはケースとして、そういう差し迫った場合に直ちに武器使用をやることが当面の判断として合理的でない場合もございます。その場合は空砲等をもって、その手段によって、これは敵に危害を加えるわけではございません。つまり、二十四条の正当防衛その他の場合でなければ危害を加えちゃいかぬという規定がございますが、それに該当するわけではありませんから、その場合にはそういう威嚇その他の行動が行われ、そしてその後の経過によって二十四条の武器使用と、こういうことになるだろうと思います。
  169. 矢田部理

    矢田部理君 これはやっぱり大分問題は進んできたんですね。部隊として、組織としておどかしや空に向けた発砲はいいと、こういうことですね。
  170. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) たびたび申しておりますように、この平和協力業務はあくまで平和的なために行うわけで、武器使用を前提といたしておりません。しかし、今想定されるような状況がよしんばあった場合の限界的なケースについて御議論であろうかと存じますが、そのような場合は今おっしゃったようなこともケースとしてあり得るだろう、こう申し上げておるわけです。
  171. 矢田部理

    矢田部理君 これはやっぱりかなり重大な発言なんですね。  私は個人的な趣味でいろんなケースを想定してやっているんじゃないんですよ。国連が出したSOPというマニュアルがそういう幾つかの事例の場合に、国連軍として、平和維持軍としてどうするかということを指示した文書に基づいて聞いているわけです。その場合に、場合によっては空砲も撃てる、おどかしの弾も出せるということまで言うのであれば、これはもう大変なことなんであります。  もう一つ聞きます。同じSOPでは、武力紛争が再発をした場合に、PKF、つまり平和維持部隊はその間に割って入ることがある。いいですか。当然そこは戦闘地域に入ることになる、戦闘に巻き込まれることになる。このPKFの部隊が攻撃を受けることも十分に考えられるのですが、このような身をもっての武装、紛争の鎮静あるいは兵力の引き離しを日本は引き受けるのですか、引き受けないのですか。
  172. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 当問題は制度の仕組みでございますから、担当官の室長の方から答弁させていただきます。
  173. 矢田部理

    矢田部理君 国連は物すごくいろんな経験を蓄積して、ケーススタディーなどもやりながら、こういう場今いろんな原則なり標準のガイドラインをつくっているわけです。それに見合って自衛隊はどこまでやれるのかやれないのか。とりわけ最高指揮官が明確にその方針を持っていなければ、それは事務方で言ってくださいじゃちょっと説明にならぬのじゃありませんか。
  174. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) SOPに必ずしも全体として拘束を受けるというものでないというように私は理解しております。  その例としては、ただいま国連局長が御答弁申し上げておりますように、例としてA、Bのケースがあり、我が国としてはAのケースのみに武器使用が認められておる、そしてBの場合には武器使用はいたさないということを事前に国連に了解を得ているということでございますので、このように必ず国連のSOPが我が国自衛隊に全部全面的に、拘束的にかぶさってくるといいますか、拘束を受けるということはないということはもう明瞭だと思います。
  175. 矢田部理

    矢田部理君 だから、そんなことはわかっているんです。国連の了解を得ているかどうか、また本格的な議論は後でやります。  武力紛争が再発した場合に、それをやめさせるために間に割って入るという行動が想定されているんです、このSOPに。そのとき日本自衛隊は出動するのかしないのか、危ないところは断るのか、ここを聞いているんです。
  176. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の割って入るという言葉がございましたけれども、そういう状況と申しますのは、私ども認識ではまさにこの法案にございます第一、第二、第三、合意、同意あるいは中立、そういった基本的なPKO活動のよって立つ前提が崩れている状態というふうに認識いたします。したがいまして、そういう場合にはこの法にのっとりまして中断という手続が八条に定められております。また、そういった状態が短期間にまとまらない場合には、収拾されない場合には、国連事務総長に適当な通告を与えることによりまして部隊の派遣そのものを終了させる、そういう仕組みになってございます。
  177. 矢田部理

    矢田部理君 今のケースは割って入らないと言うんですね。いっぱいケースがこのSOPには出ているんです。  例えば、部隊として配置された、任せられた施設に攻撃があった、武装集団が入ってきたと。そこで、説得したが相手は帰らない。そこで、施設を占拠されたときには相手に明け渡すんですか、それとも何らかの手段、方法で守るんですか。それはどうですか。
  178. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) あくまで平和的な手段によって私どもはこの任務を遂行するわけでございまして、そして二十四条に該当するような事態になった場合は武器使用をいたしますけれども、そうでない場合はこれは一時中断、つまり我が国組織として武力行使を目的としておりませんから、したがって中断といいますと、具体的に言いますとその場から一時退避をさせるというような状況判断があろうかと思いますし、現実にはそういう行動をとるだろうと思います。そして、その上でそれが永続するような場合でありますと撤収といいますか、終結をするというような手順になっております。
  179. 矢田部理

    矢田部理君 もう一点、いっぱいありますが余りこればかりやっていると時間がなくなりますから。  例えばこのSOPを見ますと、日本の部隊なら部隊が武器で威嚇された、あるいは包囲をされて武装解除を要求された。そこでどうしても武器を提供しろと言われたら日本は武装解除に応じることになるんですね。
  180. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、具体的ケースによりませんとなかなか一概に申し上げられないわけでございますが、一言で言えばそういうことでございますが、想定されたいろいろのケースの場合に、それじゃ武器をそのまま即刻渡すか渡さないかというのはそのときの状況判断によりますね。平穏なうちに話がつけばよろしいし、どうしても強制的な強制力によって危害が加えられるというような状況になりますれば、またあるいは二十四条の要件に該当するような状況に立ち至るかもしれません。そうなれば二十四条の規定によって武器使用を行う、こういうことであろうかと存じます。
  181. 矢田部理

    矢田部理君 私は、別に武器使用論者じゃないんですよ、武力行使論者じゃ全くないんであります。  ただ、国連が幾つも設定しているケーススタディーといいますか、この種項目にほとんどこたえられない。自分がやられそうになったとき鉄砲を撃てる。物すごい平和なところへ行くんだ、停戦したところへ行くんだと言いますが、レバノンを見たってコンゴを見たって、それはキプロスでもあるときはそうですけれども、非常に紛争地域にある。ここへ行くわけですから、一たん合意はできたけれども、あと停戦の当事者はだれかという問題もありますが、完全に全部が合意しているとは限らぬのです、国連状況を見ておりますと。  渡辺外務大臣、これで自衛隊は役に立ちますか。
  182. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 自衛隊の現場のお話でございますから、防衛庁長官に聞いてください。
  183. 矢田部理

    矢田部理君 渡辺外務大臣がPKO法案に対してどの程度認識しているかということをちょっと一言聞いただけですから、外務大臣。
  184. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほど内閣の審議官が言ったように、あらかじめ任務の遂行で武器使用をしなければならないというようなことがわかっているような場合は、それはその部署には参加をしないということでありますし、それから部隊を組んでどうしても前面を説得しても突破してくるというような場合は、それはそいつを見逃す、そういう実例も幾つかあるようでありますから、やはりそれはこちらとしては急迫、自分が殺されるという差し迫った状態でない場合は武器は使用しない。  ということになりますと、それは確かにそれじゃ使えないじゃないかという反論が、まだ出てこないがあるんだろうと思いますけれども、それはやむを得ないことでありまして、日本憲法の制約がありますので、そういうところを選んで日本日本なりに活躍をする。  それから、この自衛隊の問題は、そこにも書いてあるように、それは輸送だとかいろんなことを自衛隊もできますと、民間もできますが自衛隊もできますという道を開いてあるわけですから、これは使い物にならぬという話じゃないんであって、たくさんの活動分野が極めて自己完結的にできる、そういう点で非常に便利だということは言えると思うんです。
  185. 矢田部理

    矢田部理君 そういう分野は何も自衛隊でなくてもいいんですよ。自衛隊を出した意味というのは、こういうやっぱり武力紛争的なものが再燃をしたり、非常に難しいところで処理をするためにこのPKFというのがあるのでありまして、そしてまた、そういう事案というのは私たちが数えただけでも随分方々で起こっている。七百人以上の人が亡くなっている。大変なことなんですよ。それを憲法の制約がある、それは幾らか意識しているんでしょう。それをうまくくぐろうとして幾つかの条件を設定して出かけていくものだから、現場の自衛隊、頭、まあ頭の話はしませんが、自衛隊はどうしていいかわからぬ。非常に混乱を引き出すような、広げるような内容にこれはなっているんじゃありませんか。もともと無理な自衛隊を出したことにその根本があるということを私は言いたい。  次の問題に移りましょうか。  自衛隊はどんな武器を持っていくのかということでありますが、一般の隊員には小型武器だと。自衛隊以外の人が行くのも小型武器を渡すらしい。これもどんなものでしょうかね。警察官は幾らか小型武器を持っている、海上保安庁も持っていますが。そうでないとこか役所の人が行くのも今度は小型武器武器訓練をしたり持ったりして出かけていくというのもいかがなことかと思いますが、そこは答えていただかなくて結構。  問題は、自衛隊が部隊として参加する場合、国連総長からの要請があればその要請に基づいてどんな武器でも持っていける。これはもう完全な武装部隊の出動がここでは想定をされるし、法制的にはそれを許容しているということになるのでありますが、これは防衛庁長官に聞きましょうか。いかがでしょうか。
  186. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 自衛隊がこの任務につきます場合は、内閣総理大臣の定める実施計画に従って行うことになります。そして、その実施計画はいろいろの、基本方針でございますとか、国際平和協力業務の種類、内容、あるいは協力隊の規模とか構成とか装備について定めることになっておりますが、お尋ねばこの装備についてであります。  この装備につきましては第六条に実施計画が決められておりますが、この第四項に、今私が申し上げました実施計画の内容になる装備については、武力による威嚇、武力行使の禁止の第二条の要件に合致し、なおかつ平和維持的な活動の要件に合致する、こういう趣旨に照らしましてこれを実施する必要な範囲内で決めるわけでございますが、この場合におきまして重要な点は、今御指摘のように、国際連合平和維持活動のために実施する国際平和協力業務でございますから、この装備は事務総長が必要と認める限度で定めることになっております。
  187. 矢田部理

    矢田部理君 制度はわかっている。中身を聞いているんだ。
  188. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) したがって、今先生の御指摘のように、小型武器とか小型兵器とかいう限定になっていないのは、法文上そのとおりでございます。しかし、実際のPKOの今までの事例に徴しますと、けん銃、小銃、機関銃、あるいは場合によりまして兵員を輸送するため、これは輸送するためでございますが、装甲車等が一般的には使われておりまして、これを超えるようなものはケースとしてはないわけではございませんが、一般的にそれで足りるというように考えておりますが、これはあくまで実施計画でその装備を決めることになっております。
  189. 矢田部理

    矢田部理君 つまり、国連事務総長要請があれば、それに適合するようにつくることになる。いいですか。制度論は余り説明しなくとも勉強済みですから、端的に答えてください。  それじゃ、迫撃砲、機関砲、対戦車砲、これはバズーカですね、それから対戦車ミサイル、スティンガーという対空ミサイル、これは持てますか。
  190. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 装備につきまして、今私が実際の例を引用いたしまして大体その辺だろうということでございますが、ケースによりますとそういう迫撃砲等も持参している場合もございます。
  191. 矢田部理

    矢田部理君 わかりました。  そこで、問題は迫撃砲などの言ってみれば小型火器ではなくて重装備、重大器といいますかね、重大器。これはSOPによれば軍司令官が管理することになっている。いいですか、軍司令官が管理する。そして、必要で使えというときには軍司令官が指示することになる。指揮することになる。そうすると、当然のことながら、迫撃砲を持っていって軍司令官の管理下に置かれる。それが解除し、指揮をして初めてそれが使えるということになれば、これは軍司令官の指揮下に置かれることになりはしませんか。指揮を受けることにならざるを得ないことになりませんか。そういうことも肯認、肯定をするんでしょうか。
  192. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この件につきましては事実関係の問題もございますし、私どもは今申しましたとおりの想定で大体、装甲車程度まではと考えておりますが、今先生御指摘のように、重大器についての国連の司令官の命令に従うかどうかという点につきましては、SOPに関することでございますし、武器の問題でございますから、私の方の局長ないし室長の方から答弁させていただきます。
  193. 矢田部理

    矢田部理君 答弁は結構でございます。  どこを問題にしているかというと、日本自衛隊は自分の身を守るためにしか原則的に使えない。したがって、自分の身を守るための迫撃砲なんという論理はないんですよ。ところが一方では、国連事務総長要請があれば、あなたも認められたように、迫撃砲も持っていける。何のために持っていくんですか。自分の身を守るため、そして部隊を守ったり他の軍隊を守ったりすることはできないとも言っているんでしょう。そして、その迫撃砲は指揮官の管理下にある。指揮官が必要だから撃てということで、いわゆるその管理が解かれたり指揮がなけれはこれは使えない。法律そのものがこういう構成がおかしい。これはだめですよということを言いたい。
  194. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 迫撃砲の点に言及されましたが、これは私どもとしては今考えてはおらないところでございますが、例があると申しましたのは、これは私の聞き及んでいる限りにおきましては、照明弾のかわりに迫撃砲を使って夜間における監視その他をきちっとやるというように使われておるということも聞いておりますが、この点は事実関係でありますから、局長の方から答弁させます。
  195. 矢田部理

    矢田部理君 いや、説明は要らない。要りません。  次の質問に入ります。  しかじかかようなほどに、国連が目指している方向、確立した原則とこのPKO法案との間には大きな乖離がある、武器の使用だけでも。  そこで、今度は正当防衛論の問題に移りたいと思うんです。  その前に、法二十四条で武器の使用というのが可能になっておりますね。この法文を見ますと、自分と近くにいる自分の同僚、つまり自衛隊員でなきゃなりませんね、がやられたとき、やられそうになったときは武器の使用ができるが、新聞社の方々おられるが、ジャーナリストがそこで従軍しておった、これがやられそうになっても使えない。住民や外国の軍隊が一緒にいてもそれはやっちゃいかぬという規定ですよね、これは。そうでしょう。それはお認めになりますか。
  196. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 法文上は、自衛隊を部隊として派遣する場合は御承知のように二十四条の三項でございますが、一項はこれは一般的な隊員の問題でございます。三項の場合は、御指摘のように、法文上は「国際平和協力業務に従事する自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくは隊員の」、これは必ずしも自衛隊員でない場合もございますね、隊員であればよろしい。「隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」「武器を使用することができる」、こういうことになっております。
  197. 矢田部理

    矢田部理君 それを知っているから、私は、ほかの人、外国の軍隊や住民やマスコミの人やいろんな人がいても、それがやられそうになっても弾は撃てませんというのがポイントの一つ。  もう一つは、今度は正当防衛という立場から見ますと、弾を撃てるのは、急迫不正の侵害で自分がやられるときだけ撃てるんですね。あるいは近くにいた隊員の人たちがやられるときだけ撃てる。ところが、刑法上の正当防衛というのは守れる対象はもっと広いんです。自己または他人の権利の防衛なんです。他人というのは何も外国人と日本人を区別していないんです、刑法は。これは外国人と日本人、日本人の中でも隊員と隊員でない人を区別している。いいですか。こんな議論がありますか、立て方がありますか。撃っていいということじゃないんですよ。  それから、正当防衛は権利の防衛でありますから、人がやられたときだけでなくて、こちらが持っていた食糧やいろんな武器なんぞを貯蔵しているところが襲われたときもこれはやれない。侵入して占拠されたときも、身体、生命に関係がない限りは動けない。こういう出動を予定しているんですよ、これは。いいですか。そして、自分がやられているときだけは撃ってもいいが、間違って撃ったらこれは正当防衛違反ですからね、当然日本の刑法で処罰をされる。それから、自分の命がやられないのに、危なくないのに撃ってしまった、二十四条の最初の方はそれは広いのでありますから。そして、これも過剰防衛だとか誤想防衛だとか、この範囲を超えているということで処罰をされる、こういう仕掛けになっているのがこの法律ですよ。それでもいいんですか。——いやいや、本部長がどう考えるかを聞いているんだ。あなたに聞いているんじゃないんだ。
  198. 後藤正夫

  199. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと待ってくださいよ。私は大臣に……。
  200. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 大臣に対する答弁を求められておりますが、私からちょっと申し上げて、あと補足的に室長の方からさせていただきますけれども、この二十四条の武器使用は、先ほど読みましたように、条件がございます。しかし、四項で書いてありますことは、そういう武器使用の場合に際しても、刑法三十六条、三十七条の規定に該当する場合を除いては人に危害を加えてはならないということでございまして、あくまでこの平和協力隊が刑法の三十六条、三十七条を基点として認めておるものではないわけですから、そこはずれといいますか、対象領域が異なっております。  先生御指摘のように、確かに正当防衛その他はもっと広いでしょう、対象範囲が。しかし、ここで言われているのは、派遣された自衛隊員の生命または身体の危害に対してのみこれを認めておる、しかしその場合には、三十六条あるいは三十七条の規定に該当する場合にのみ危害を与えてもこれは仕方ないことだと、こういうことを規定しているわけでございます。
  201. 矢田部理

    矢田部理君 そんなことはわかった上で申し上げているのでありますが、いずれにしましても、外国軍隊と共同行動をとる、場合によっては任務の分担をするときに、外国の軍隊は国連のSOPに従って任務遂行が妨害されても前に出ていける。うちの方は出ていけない。外国の軍隊がやられてもこれを助けに行けない。助けちゃならぬ。向こうが攻め込んで、向こうかというか、だれかが攻め込んできてもそれは黙っていなきゃならぬ。いいですか。  そして、もっと比喩的に言えば、自分の生命、身体が危なくなったときに上官は部隊として対応できない。上官はこれを撃てとか何とかと指揮できない。その段階で、日本から出かけていくときには国連要請だとか国家の名誉だとか誇りだとかといって送られていった人たちが、現場で紛争が起こってやられそうになったときには国家は逃亡してしまう、一人一人がばらばらに自分の責任と判断で対応しなさい。その判断が正当防衛に当たらずに人を殺してしまったり傷つけてしまったりすれば、これは当然殺人罪だとか傷害罪という処罰をするために国家がその段階でまた出張ってくる。こういうめちゃくちゃな法律なんです、この法律は。  小沢さんだってと言うと失礼になりますが、小沢一郎さんが武力行使だの武器の使用だのというわけのわからぬ議論をしてやることは反対だと、ごう言っている。指摘されるまでもなく本当にひどい法律なんです。到底批判に耐え得る法律じゃありません。  特に自衛隊員の方々は、場合によっては命をかけて行くわけでしょう。こんな重要な、政策的にも国際政治にかかわるについても重要ですが、一人一人にとってみたならば、自分の生命、身体にもかかわるような大事な問題について、やられるときはばらばらに判断しなさいと、指揮官は横を向いている。国家は全部逃げちゃう。そして、どこか地球の果てかどうかは知りませんが、そこに置き去りにされる、自分の判断で守れと。これがこの法律ですよ。  やっぱり宮澤さん、もう一回撤回して出直す必要があるんじゃありませんか。こんな国際貢献がありますか。
  202. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 総理お答えの前に私から申し上げておきますが、これは私、言うまでもないというように、先生におしかりを受けるかもしれませんけれども、この平和協力隊はあくまで武器使用を原則とする業務ではございません。そして、過去の事例におきましても、武器使用の例というのは非常に少のうございます。  確かに、七百三十五人亡くなっておるという事実も私ども承知しておりますが、これは言っていいことかどうかわかりませんが、あらゆる場合にそういうケースが非常に多いんだというような印象を与えてはいけませんので私はあえて申し上げますと、この二十三回ないし四回の出動で延べ五十万人この業務に参画しておるわけですね。その中で七百三十五ということで、決して人命は軽いものではございませんから私どもはこれを深刻に受けとめてはおりますが、あくまで我が国がやる平和協力隊というのは武器使用を前提といたしませんで、また多くの場合そのような実例になっておりまして、限界的な場合の武器使用についての今御議論だと私ども承知しております。  したがって、自衛隊派遣された場合には、あらゆる国内の治安出動あるいは防衛出動の場合はまさに武器使用をもって我が国を守らなくちゃなりませんけれども武力行使をやらなくちゃなりませんけれども、この海外における本法案に基づく協力業務はあくまで平和的なものでございます。  今、法律案審議でございますから、限界的なことについて議論されるのは当然でございましょう。しかし、これはあくまで限界的なものであります。私ども議論議論を重ねた末、憲法との整合性その他を考えて、そして国際貢献があとう限りできる道を選択したのが本法案でございますから、どうぞその点を御理解いただきたいと存じます。
  203. 矢田部理

    矢田部理君 どう思われますか、総理
  204. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま防衛庁長官が申し上げたとおりでございます。
  205. 矢田部理

    矢田部理君 これは後で本格的にまとめて答弁を求めなければなりませんが、その国連が立てた方針、SOPなどで確立した原則、それから現場でいろんなトラブルがあった場合にどういう方針や基準、考え方で臨むか、大きく日本の対応は距離があるわけです。もともと憲法上無理なものを出すからそういう距離をつくらざるを得ないことは当然ですが、出していけないものをごまかしでやるためにより無理が重なるわけです。ガラス細工か粘土細工になってしまう。  そこで、ところが国連は、どんな文書を読んでも、統一の行動、統一の指揮で国連の差配下で動いてほしい、国連の基準に従って対応してほしいというのが国連のやっぱり一貫した文書の流れですよ。この自衛隊のさまざまな行動について、武器の使用について国連ときっちり話ができているんでしょうか。
  206. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 例えば今先生が統一という言葉でおっしゃられたので、恐らくいわゆる国連のコマンド、指図のことを念頭に置いての御質問と思いますけれども、先生も御承知のとおりの、最近国連が出しました派遣国と国連との間のひな型の協定の第七項に、国際連合のコマンドというものにつきまして、要するに国連は「配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する」という記載がございます。  私たちがPKFに参加していくに当たって、このような国連のコマンドのもとに置かれるという点は、この国会ではっきり申し上げてきておるとおりでございまして、この点につきまして国連との間に考え方の違いは何らございません。
  207. 矢田部理

    矢田部理君 いつ、だれとだれとの間でどういうことが論議の対象になり、そしてそれについて国連は明確に文書その他の方式でそのことをきちっと認めたのでしょうか。国連がこれだけ幾つかのものを、ハマーショルド報告以降出しておって、一貫して指揮権の問題については、後でこれは本格的な議論をしますが、指揮と統制については書いておる、基準を示しておる。その一貫して、あるいは確立して出された国連原則、これを排除するためには、少なくとも明確な文書による回答がなければ、そうですかと安心するわけにいかない。当たり前の話じゃありませんか。どうもそこが決してはっきりしていない。話がついている、国連にも申し上げている、理解を得ているという程度の抽象的な話ではだめなのでありまして、明確な文書回答、国連基本方針の排除の文書が必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  208. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  このモデル協定と申しますのは、国連の過去四十三年間のPKO活動を通じて得られた慣行化されたと申しますか、そういった考え方を持ったものでございまして、この第七項につきましては日本政府としては異存はございません。したがいまして、そこは非常に明確になっておると私たち考えております。
  209. 矢田部理

    矢田部理君 私がこれまで議論してきましたのは、国連武力行使です、自衛の範囲が違います、こちらは自分と近場の仲間の生命、身体の防衛しかできない、こういう大きなギャップがあるわけでしょう。それが同じ隊で平和維持軍参加をする。何か問題があったときにこちらは下がらざるを得ない。そういうことで他の平和維持軍が安心して、あるいは日本を信用して一緒の隊列を組めますか。組めないんですよ。危なくて一緒にいられないんです、何かあったときに。  しかし、それでもなおかついられるというのであれば、現場における信用や混乱の問題はもう一つ議論を大きくしていかなければなりません。少なくとも国連から文書で、さっき言ったように幾つかの何かケースがありますね。そういうものはやらなくてよろしい、日本立場を認めるという明示の文書がやはり必要なのであります。そういう文書をもらっていますか。
  210. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほど防衛庁長官もちょっと申し上げたことでございますけれども矢田部先生の御議論を聞いておりますと、PKFについては武力行使あるいはそういった衝突が非常に日常茶飯事だというように聞こえますけれども、ちょっと御説明させていただきたいんです。過去の死者のことについておっしゃいましたけれども、申しわけありません、一例、二例だけ挙げさせていただきたいと思います。  例えば、フィンランドはこれまでPKO、PKFに参加いたしまして三十六名の人間が死んでおりますけれども活動中に亡くなられたのは五名でございまして、あと三十一名は例えば交通事故とか病気とか、そういうことで亡くなっておる。そういう者が全部入って七百何名という数字でございますので、そこのところは要するにそういうふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、今の御質問につきましては、先ほどから御説明申し上げておりますとおり、国連が最近このようなモデル、ひな形協定というものを出して、日本が将来こういうPKFに参加する場合に国連と何らかの取り決めも結ぶ、その中にこの種の規定を考えて入れていくということになりますので、そのときにそれははっきりするわけでございますが、基本的に、先ほど申し上げましたとおり、この七項の考え方日本政府として現在この時点で何ら異存はございませんということを申し上げておる次第でございます。
  211. 矢田部理

    矢田部理君 日本は国際展開国際協力に当たって汗を流さなきゃならない、それは大事などころです。私たちも、そのために文民組織をつくっていこうというのであります。これは血を流すかもしれない。何も日常茶飯事などとまでは言っておりません。しかし、やはり危険なところに行くのだから慎重にこれは議論しなきゃならぬのです。それを冷やかしみたいな話をしてもらっちゃ困るのであります。  人間の命や血にとって大変大事な問題だからこそ、我々真剣に問題を立てたり議論をしているのでありまして、そして今丹波さんが言ったように、どこかで具体化したときに協定を結ぶ際にその条件を入れればいいんだということでは、今天下を分けたような大きな議論になっているわけでしょう。そして、衆議院議論ではっきりしたのは、国連の方針と日本政府考え方PKO法案の立て方は大きな乖離がある。それを今度どこかで具体的な例が出たときに協定を結ぶ際に調整すればいいんだなどということで容易に考えてもらっては困るのであります。国連にやはり明確にこの問題の答弁を求める、政府がやるべきですよ。  そして、幾つかの典型例について私は申し上げました。それはSOPというものを初めガイドライン等々に全部それが細かく出ている。これを政府は手持ちで持っておりながら明らかにしない。これも明確に公表すべきだ。そして、徹底的にやっぱりここは論議をして、日本の政策の大きな転換点なのでありまして、過ちなきを期したいというのが私たちの心持ちなのでありまして、そこは誤解のないようにしてほしいと思います。  そこで、指揮の問題に移ります。  我が国参加する平和維持軍につきまして国連に指揮権があるのか、それとも日本に指揮権が残っているのか、あるのかということについて、衆議院で随分争いになりました。私の整理でよければ、国連は一貫して国連にあると言っているんですね、指揮権は。それに対して日本側は、処分権が日本側に留保されているのであるから、懲戒とか処罰ですね、指揮権は依然として日本にあるんだという立て方になっているように思われるのですが、そういう整理でよろしゅうございますか。
  212. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  派遣国により提供されます要員は、PKO派遣される問も派遣国の公務員としてこれを行うことになるわけでございまして、この間国連のコマンドのもとに置かれるわけでございます。  ただ、先生は今国連の指揮権という言葉を使われましたけれども、私あえて国連のコマンドと申し上げておりますのは、これまでのいろんなPKF活動の慣行あるいはPKOに要員を提供している国と国連との間のいろいろな取り決めを踏まえまして、本年五月に作成、公表されましたいわゆるモデル協定というのがございまして、その第七項、八項にも反映されておりますとおり、国連のコマンドと申しますのは、派遣された要員あるいは部隊の配置等に関する権限でございまして、懲戒処分等の身分に関する権限は引き続き派遣する国の側が有する、そういうことでございます。
  213. 矢田部理

    矢田部理君 だから、日本に指揮権というか指揮命令権が、指揮監督権と言ってもいいと思いますが、あるんだという御主張ですかと、こう聞いている。
  214. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま申しました懲戒処分等、身分に関する権限は、これは派遣国が有するわけでございまして、そのとおりでございます。
  215. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、指揮権のメルクマールといいますか、基本部分は懲戒権のあるなしということにかかっているというふうに伺っていいでしょうか。
  216. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  私、最初の部分派遣国の公務員として国際平和、PKO活動に従事するというふうに申し上げました。この法案の立て方といたしましても、基本的には我が国から派遣されます自衛隊の部隊につきましては、閣議で決定されます実施計画あるいは本部長が定めます実施要領に基づきまして国際平和協力業務を行うわけでございますが、その際に、業務の面に着目いたしますと、防衛庁長官の指揮のもとで平和協力業務を行うわけでございまして、そういった国内法の立て方をいたしておるわけでございます。
  217. 矢田部理

    矢田部理君 立て方や何か聞いているんじゃない。もう少し明快に答えなさい。指揮監督権のメルクマールは処分権かと、そう伺っていいかと、こう聞いているんです。
  218. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  先生のそのメルクマールという言葉の意味が必ずしも私正しく理解できるかどうかあれでございますけれども、指揮監督という場合に、先ほどちょっと七項を読み上げましたけれども組織、行動、配置、そういったことに対する権限、これも一つのメルクマールでございますし、身分に対する処分権限、こういうことも一つのメルクマールであろうかと思います。
  219. 矢田部理

    矢田部理君 指揮権とか指揮監督権というのは、別に処分権がないからといって直ちに指揮監督権がなくなるというものではないでしょう。それはどうですか。
  220. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  我が国の国内法の立て方でございますけれども、一般に指揮または指揮監督と申します場合には、職務上の上司が下僚たる所属職員に対しまして職務上の命令をすること、または上級官庁が下級官庁に対しまして所掌事務につきまして指示または命令することを意味しておりまして、その違反行為に対して懲戒権等何らかの強制手段が伴うのが通例でございまして、そういった指揮または指揮監督の実態を私先ほど指揮と申しましたときに説明申し上げたつもりでございます。
  221. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、指揮監督と懲戒権とか処分権は不可分のものですか。懲戒権、処分権がない指揮監督権というのはないという言い方になりますか、なりませんか。
  222. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  私、指揮ないしは指揮監督と申します場合に、違反行為に対しまして懲戒権等何らかの強制手段を伴うのが通例であるというふうに申し上げました。
  223. 矢田部理

    矢田部理君 通例であることはわかったが、その次を聞いているんだ。それは不可分のものであって、それが外れると指揮監督権はないということになるのか、それがなくとも指揮監督権というのはあり得るのか、そこを聞いているんです。
  224. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  私、国内法のすべての体系で指揮または指揮監督ということを掌握しているわけじゃございませんけれども基本的には、私先ほど申しましたとおり、懲戒権等何らかの強制手段を伴うのが通例であるということでございます。  ただ、私、指揮または指揮監督というものについてこの法案との関連で御説明申し上げさせていただきたいのでございますけれども、それはやはり指図という言葉を国連のコマンドについては使っておるわけでございます。これは、まさに先ほどモデル協定で申し上げました国連のコマンドというのは、今私申し上げましたような指揮ないし指揮監督とは一致しないと、そういう趣旨で申し上げているわけでございます。
  225. 矢田部理

    矢田部理君 衆議院のやつを私なりに整理しますと、若干の要素はほかに入りますが、指揮監督権マイナス処分権イコール指図、こういう図式になるんです。単純化すればです、渡辺さんのようにわかりやすく言えばです。  そこで、処分権があるのが通例だと言うが、通例でしょうか。  消防庁、消防職員が隣の町に頼まれて行ったときの指揮権がどこにありますか。国土庁、災害対策基本法の発動で、災害対策のためにある県の職員が隣の県に手伝いに行ったときの指揮権はどこにありますか、処分権はどこが持ちますか。
  226. 浅野大三郎

    政府委員(浅野大三郎君) 消防職員につきましては、これは消防長でございますね、これが指揮監督をいたします。同時に懲戒等もその消防長が行うということに相なります。
  227. 矢田部理

    矢田部理君 では、正確に言いましょう。自治体消防です、自治体にある消防ですね。私が言ったのは、A村の消防夫が隣の村が火事だというので隣の村の村長さんから頼まれてお手伝いに行った、そのときの指揮監督はどこにありますかと聞いているんです。  検察庁に聞いてもいいですよ。いいですか、検察官は捜査の際に司法警察員を指揮監督することができることになっている。処分権はどこにありますか、その命令に従わなかったときの。  防衛庁にも聞きましょうか。例えば、韓国に派遣をされた国連軍。指揮監督権と懲戒権はどこが持っていますか。一斉に答えてみてください、どちらが通例だとか基本だとかということになるのか。この種の法律は幾らでもありますよ。
  228. 浅野大三郎

    政府委員(浅野大三郎君) 先ほど申しましたように、つまり自治体消防の消防機関の長である消防長でございますね、これがそこの消防職員を指揮監督し、また懲戒権等も持っておるわけでございますが、これがほかの市町村に応援要請を受けて行ったというような場合には、これは消防組織法の二十四条の四でございますが、これは、「応援を受けた市町村の長の指揮の下に行動する」、こういう規定を設けております。
  229. 矢田部理

    矢田部理君 隣の村の応援を受けた村長さんが指揮監督するんですよ。しかし、処分権は向こうに移らないですよ。もともと勤めておった町村の消防長が、問題があったら処分権を持っている。  災害対策だって同じですよ。ある県から別の県に応援に行った応援先の知事さんの指揮監督を受ける、しかし処分権はもとの勤め先の知事が持っている。  全部そういう体裁になっているのであって、処分権がないから国連の指揮監督ではなくてあれは指図だと。渡辺さん、指図なんという言葉は余りないんですよ、世の中に。あれは民事上の取引用語なんです。行政上の用語とか国際法上の用語じゃないんですよ。国連軍は明確に処分権は所属国が持っておるんです。朝鮮の国連軍、まああれは余りまともな国連軍じゃありませんが。しかし、指揮監督権はアメリカにあると安全保障理事会がはっきり決めているんです。NATOだって同じですよ、NATOの司令官が指揮監督権を持っている。これは幾つも、国際的にも事例がいっぱいあります。しかし、処分権は当該国が持っている、当たり前のことじゃありませんか。  だから、処分権がないから、宮澤さん、大分衆議院で開き直って、国際公務員じゃないからなぜそこに指揮監督権がありますかと言われたが、あなたの理解は全然間違っていますよ。国際公務員じゃありませんよ、国連軍だって。消防署の人が隣の村に応援に行ったからといって隣の村の公務員になるわけじゃないんですよ。しかし、やっぱりこの指揮監督という命令系統はそういう重要な問題、消防だとか災害だとか軍事だとかいうところは一本通っていなければ統一行動、統一指揮、統一対処ができないということからこの議論は出てきているのでありまして、日本のこの法律の立て方は間違っているし、宮澤さんの答弁も大間違いです。  だから、指図などというわけのわからぬ、指図証券だの何か本人が代理人に何とか指図するなんというあれは株式だの取引用語です、私法上の用語ですよ。法律学辞典見たってどこにも出てきやせぬ。私もそういう言葉は勉強したこともないぐらい。そんないいかげんを言葉を使ってこの問題をごまかしちゃいけませんよ。  問題は、なぜそういうことになっているのか。指揮監督権が国連にあるということになると、後でも議論をしますけれども、これも大変な議論があるわけですが、国連の方針に反することが非常に難しい。例えば、さっきの武力行使でもそうです。国連は任務遂行のための武力行使も可能だ、我が国はできないと。そこで、国連には指揮権がないんだ指揮権がないんだと言うわけです。  特に、もう少し演説をすると、業務の中断なんという規定がある。危なくなったら逃げるということになっている。逃げるのかやめるのか中断がわかりませんけれども、この中身も詰めなければなりません。これほどこの国にもないんです。撤退というのは  参加というのは最初から行くときだから指揮権の発動がありますね。全部任務が終わったりなんかして撤退も、これもまた指揮権として留保されているんですが。業務執行中のさなかに日本独自の判断で勝手に仕事やめられたんじゃたまったものじゃない。そこで指揮ということあるいは指揮命令系統をそこで認めてしまう、それができないもので、苦肉の策で、これは渡辺さんの用語でしたね、苦肉の策でこんないいかげんな法律つくったんです。宮澤さん、そして政府、この指揮権と指図という問題は明白に間違いですから、これはやっぱり撤回すべきである、そしてこの法案を組み直すべきだというふうに思いますが、前提としてこの用語法やそれをもとにしてつくったあれこれの答弁については全部撤回してしかるべきと私は思います。  まずは、用語の撤回を求めます。
  230. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、実は衆議院でも何度も御議論になりましたので、私よくその間の事情を存じておりますし、今の矢田部委員のおっしゃいましたこと、私、別に間違いだと思ってお答えしているのではないのでございますが、こういうことだったのでございますね。  結局、おっしゃいます指揮監督のいわゆる指揮権と、それから国連のSOPなどにございますコマンドという言葉と、それからこの法律にもう一つ指図という言葉が使ってございます。そういう三つの言葉がございますものですから、それをめぐっていろいろ御議論があったわけでございますが、まず第一に、この維持活動派遣される要員は国際公務員ではございません、我が国の公務員でございますから、そういう意味我が国に指揮監督権があるということは、これは当然だとおっしゃいますし、そのとおりでございます。  ところが、その次の問題は、先ほど政府委員が申し上げましたように、その要員がその部隊の組織、配備、移動については国連事務総長またはその代理官のコマンドのもとに入る。それはあたかも矢田部委員が先ほど自治体消防が隣の村に行ったときに、作業については隣の村の村長でございますか何でございますか、指揮を受けるだろうとおっしゃいました、そういう作業そのもの、行動そのものはまさにそこの指揮を受ける、それはいわばこれがコマンドと言われるものでございますね。ですから、行った部隊はその組織なり配備なり行動なりについては、まさに国連のコマンドを受ける。それは隣の村の村長の指揮を受けるのと同じことでございます。そういうふうにこの中に書いてございます。  そこで、その間をつなぎますために、その実施要領を書きますときに、その実施要領はコマンドにちゃんと服するようなふうに、その指図に服するようなふうに実施要領を書かなければならないと書いてありますのは、そこの間を調整するために言ったわけでございます。ですから、三つの言葉がございますものですから、おのおのをやや頭の中で混同が起こってはいけませんのでそういうふうに書き分けてある、そういうことでございます。  ですから、先ほどから御引例になりました、自治体消防が隣に行って隣の村長の、町長の指揮を受けるだろうとおっしゃるのはまさにそうでございます。それはまさにコマンド、つまり組織、配備、行動については指図を受ける、そのとおりでございます。それが法律にそんなふうに書いてございます。
  231. 矢田部理

    矢田部理君 宮澤総理、あなたは衆議院で、国際公務員でもないのがどうして国連の指揮を受けるんですかと、こう言ったでしょう。何回も言ったでしょう一隣の村の公務員でもない者がどうして隣の村の指揮を受けるんですか。同じことじゃありませんか。  連合軍をつくったり、まあ日本とアメリカとの関係は必ずしもそうではありませんがね、NATOとかそれから朝鮮に出るときの国連軍をつくったりするときには、どこが指揮監督の中枢になるかということは非常に大事なんですよ。これはまあそれに準じて恐らく消防だとか災害なんかもやっぱり縦の指揮命令系統の一貫性というものを重視してるんだと私は思っているんです。そのときには身分はもともとの出身の国や所属の行政機関に残しておっても、また最終的な処分権は残しておっても、出かけていくことを通してそのときから向こうの指揮、そこを承諾したときから、このPKOで言えば国連の指揮下に入るんです。そう今までも言ってきたんですよ、ことしの防衛白書だってそう書いてあります、国連の指揮を受けると。だれも混乱なんかしていませんよ。指図なんという言葉を出してくるから混乱するのでありまして、そういうことで軍とか、統一的な行動、対処を必要とする問題は全部そうなっている。  ここで行政学の講義をするつもりはありませんが、メーヤーというドイツの有名な行政法学者が指揮の内容を全部言っていますよ。処分もそのごく一部なんでありまして、この指揮というのは非常にいろんな概念なんですね。そのうちの一部がないからといって、どうして指図などという新語を発明しなきゃならなかったんでしょうか。これがもともとおかしいんですよ。ごまかしをやろう、憲法もすり抜けよう、派兵と派遣を区別し、武力行使武器の使用を分ける。そして、今度は平和維持軍を、最初政府から来たのは維持軍になっておったのに、今度は文書がなかなか来ないと思っていたら、全部それを隊に直すために大変行政官庁は時間をかけている。翻訳文書も何も持ってきやしない。そういうごまかしとでたらめをやりながらこの法律をつくってきた。だから、その象徴が指図なんです。これは私は断固として撤回してもらうように要求します。
  232. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おわかりいただいたようでございますのでくどくは申しませんが、まさに矢田部委員がおっしゃいましたように、指揮ということはいろんな概念があるとさっきおっしゃいました。そのとおりだと思うんですね。  それで、国連のコマンドに入るというのは、行動をするときに組織、配備、行動については、いわゆるオペレーションについてはコマンドに入りますと。そのとおりなんでございますね。ところが、私が、国際公務員じゃございません、国の公務員ですから指揮監督権は国にございますと申しました意味は、一番基本的な典型的な指揮の概念、つまり指揮に従わないときには懲戒ができるとか処罰ができるとかいう担保がついている、それを本来指揮監督権と申すのでございますから、本来的には。そういう意味では国連の指揮監督ではない、それは国の指揮監督でございますと、こう言ったわけでございます。
  233. 矢田部理

    矢田部理君 全然違いますよ。  行政法の講義をする、講義というわけでもないが、改めて申し上げますが、この指揮というのは最終決定権、最後決定権だというふうに言われております。その最後決定をするに当たってはいろんな段階があります。例えば報告、査察、助言、指示、承認、再審査、撤回、命令、罷免、任今、代執行等々内容は多岐にわたるんです。そのうちの一つが欠けたからといって、指揮の本体がなくなって、別の言葉に置きかえなきゃ説明できないような体を崩すことはないのであります。最終的な決定権を指揮と言っているんであって、この平和維持軍の諸行動について、諸活動について最終的な決定権は国連にあるんです。安全保障理事会が任命した事務総長またはその人が指定をした現場の、現場というか、軍の司令官にあるわけです。そこはきちっと通っているのであります。ですから、これが行政法の基本の常識ですよ。  改めて撤回を求めます。全然問題にならぬ。
  234. 野村一成

    政府委員野村一成君) 先ほど指揮ないし指揮監督の実態につきましては総理より御答弁ございましたとおりでございます。  ただ、この法案の仕組みからいたしますと、まさにこの国連のコマンドという言葉との混乱を、用語との混乱を避ける意味で使ったわけでございまして、例えばこの実態に着目いたしまして、国連のコマンドの実態に着目いたしまして間違った理解をされては困るわけでございます。法案を。その意味で使っておるわけでございまして、例えばこの法案の第五条二項におきましては、本部長は、「所部の職員を指揮監督する」、あるいは第十二条五項におきましては、「本部長の指揮監督の下に」、そういうふうに「指揮監督」という言葉を用いでございます。そういうこの法案で用いられております指揮の用語との混同を避けるという意味がございまして、国連のコマンドの実態に着目いたしまして、私どもこの法案ではまさに指揮ないし指揮監督という言葉では適切な表現ではないと。  じゃ、しからばどういう表現があるかということでいろいろ考えました。法令用語探索も行いました。その意味で、まさに上下関係あるいは命令服従の関係を内在しておらない、そういう用語例から探しました。一般的にそういう用語例の中から最も適当であるという言葉で指図を選んだわけでございまして、したがいまして、私どもこの言葉が、この法案の用語例といたしまして国連のコマンドというのを実態に着目して使う場合には最も適切な表現であるというふうに考えておる次第でございます。
  235. 矢田部理

    矢田部理君 日本政府は処分権については残していますよ、権限を。しかし、国連軍にあるいは平和維持軍参画をしたというときから、指揮監督権はその作戦とか、さっき総理が言われたオペレーション等々については、作戦については向こうに指揮監督権が移るんです、コマンドですからね。指揮監督は向こうに移って日本の指揮監督権はなくなるんです、その問題に関する限り。  ところが、日本の法制は、日本のそこにも指揮監督権、総理大臣や防衛庁長官の指揮監督権を残している。そういうことがあっては困りますよということで国連文書は再三にわたって指揮命令系統を統一してきている。国連の命令にのみ従って、自国や出身国の命令に従ってもらっちゃ困ると、こういう建前になっておるんですよ。ところが、日本の今度の法律の建前、立て方は、日本総理大臣、つまり本部長防衛庁長官にこの指揮命令権等をやっぱりそこでも残しておる。こんなことで国連協力ができるかということが私どもの立て方の非常に大きな問題点になっておりまして、これはだめですよ。こういうつくり方、立て方の今度の法案はやっぱり欠陥法案なんですよ、いいか悪いかは別にして。
  236. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 途中まではそのとおりで、最後のところはそうじゃないんで、そのコマンドに入るときは、それは日本が何か言ったらとてもできませんから、それは全部国連のコマンドの下に入るわけですよ。それはおっしゃるとおりなんです。ですから、そこを担保するために我々が実施要領を国連のコマンドに合うように書きます、そういうふうにこの法律が書いてあるわけなんです。  ですから、国連がコマンドを混乱しないようにちゃんと書いてあるわけです。決してそこへ日本が何か余計なコマンドをごたごたするようなことをしてはならぬというために、適合するように指図をしなければならないと、こういうふうに書いてあるわけです。
  237. 矢田部理

    矢田部理君 そこで問題になるのが、日本政府の方針と国連の方針が一致していればいいですよ。武力行使武器の使用、いいですか、その指揮権の所在、さらには業務中断、物すごく矛盾しているわけです。現場においてはその矛盾がさらに拡大する。こういう適合するように書くというのは、その矛盾をきっちりやっぱり国連との間に詰めなけれはこの矛盾は解消できないんですよ。だから、ここは指図じゃないんですよ。指図というのは、それは調整的なニュアンスの言葉ですよ、どちらかといえば、あなたも言っているように、上下関係とか、強いものと弱いものと言っちゃなんですがね、そういう関係じゃない。  その点で問題の立て方や受けとめ方が、宮澤さん、これは基本的に違う。やっぱり最も基礎的な問題ですから、ここは全部立て直してほしい、これは強く要請しておきます。
  238. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もうほとんどおっしゃることも私の申し上げることもくっついてきたんで、それで最後のところをこの法律がどうしておるか。どうしておるかと申しますと、実施要領の作成及び変更は、「事務総長又は派遣先国において事務総長の権限を行使する者が行う指図に適合するように行うものとする」、そういうふうにつくるんだと、実施要領を。そうしなきゃならぬということが法律に書いてあって、そこで両方が矛盾なく行われるようになっておるんです。
  239. 矢田部理

    矢田部理君 余り関係が違っていなければそれは適合論でいいんですよ。基本原則にかかわる部分に相当の開きがあるわけです。業務の中断なんて決めている国ありますか。  ここは、業務の中断というのは、いいですか、指揮命令権をこちらに残していなければできないんですよ。それから、主権をそこで留保しようとしているわけです。それから、武器の使用についても国連の方針に従わない、憲法上。ガラス細工のような理屈をつくって武器の使用ということにしてしまいました。その誤りの根源の一つにその問題があるのであって、そこはやっぱり撤回してもらわなきゃだめです。
  240. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、事実関係の問題について、例えば……
  241. 矢田部理

    矢田部理君 事実関係は要らないよ。事実の問題じゃない、概念の理解の問題だよ。
  242. 丹波實

    政府委員(丹波實君) いえ、非常に重要な事実関係でございますのでちょっと説明させていただきたいと思います。過去……
  243. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 静粛に願います。
  244. 矢田部理

    矢田部理君 委員長も勝手に指名しないでください。頼みもしない、求めもしないものを、委員長、指揮することないですよ。
  245. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 委員長から御指名をいただきましたので……
  246. 矢田部理

    矢田部理君 全然聞く必要ありませんよ。
  247. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 説明中静粛にお願いいたします。
  248. 丹波實

    政府委員(丹波實君) この法案を立法する過程におきまして外務省といたしまして、これまで平和維持隊参加してきた多くの国の幾つかを選びまして聞きました。要するに、前提が崩れた場合にどのような行動をとったかという点でございますけれども、例えば、一九七四年サイプラスでクーデターが起こった際にトルコの軍隊がサイプラスに攻め込んできたことは、先生御承知のとおり、これはまさにPKFの前提が崩れた場合と私たち了解しておりますけれども、このときに、例えば参加しておりました英国の部隊は持ち場にとどまりましたけれども、侵入者に対して何らの行動もとらなかった、オーストリアの部隊はトルコ軍に対して口頭で移動の停止を申し入れましたが、武器の使用は行わず任務を中断した、それからデンマーク部隊は何らの措置をとることなくニコシアの本部に撤退した、こういうことでございます。  それからもう一つ国連レバノン暫定隊についても同じ事件がありましたけれども、時間の関係で省略いたしますけれども、前提がこのように崩れた場合に、参加各国が任務を中断した例はあるのでございます。  そういうことでございますので、私たちもそういう場合には中断ができるということで国連説明いたしまして、国連もそういう場合には確かにそうでしょうということであったということでございます。
  249. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  250. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記を起こしてください。  宮澤内閣総理大臣
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 委員長からの御指名がございましたので。  それで、さっきの指揮監督とコマンドと指図に当たります部分は、ともかく委員のおっしゃっていることも私にわかりましたし、私の申し上げることもおわかりいただいたというふうに思いますが、その次に仰せられました、しかしながらこの法律の立て方にはいろいろ国連のSOPとは違っているところがあって、例えばその一つはその行動を中断するというようなことである、もう一つ武器の使用の場合である、こういうお話がございました。それは実はそのとおりでございます。そのとおりでございますのは、我が国がこのような憲法を持っておりますものですから、いわばほかの国にはできても、我が国憲法上避けた方がいいという幾つかのケースがあるものでございますから、それをこの法律に書いてあるわけでございますが、それにつきましては国連のSOPが一応想定しております標準モデルとは違いますから、国連の担当の次長にわざわざ、ことしの八月でございましたか、我々の五原則というものを説明いたしまして、それでよろしゅうございますかということで、それでよろしいというお返事があったわけでございます。  この点は、もともと我々が我々の意思で自発的に協力するのでございますから、困ったときには国連はそれは要らないと言うでございましょうし、いいときにはそれでもお願いする、これは当然のことでございますので、国連の了解を得てこういう建前をとっております。これはほかの国のケースあるいはモデルとは違いますけれども我が国がこういう憲法を持っておりますところからくるところのものでございますので、御理解をお願いいたしたいと思います。
  252. 矢田部理

    矢田部理君 全く了解ができません。  衆議院の議事録を見てますと、指揮権は日本にある、指図しか国連はできないという前提で全部答弁、議論がなされています。ですから、大もとが違ってくれば、基本の理解が違ってくれば、当然その大もとから変えなきゃならない。全部答弁を見直してごらんなさい。私もこれを議論するまでには随分眺めてきたんです。全部指図ということを前提に、指揮権は日本に、国連平和維持軍参加してもあるということを前提に各閣僚も政府委員も答弁してきているのでありまして、これは二本立ての指揮権になりますよ、そうしたら。こんな二本立て興行はだめですよ。  ですから、これはきっちり、やっぱりもう一回政府はこの問題を整理して答弁し直さなきゃ、私は次の質問に入れませんよ。
  253. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記をとめて。    〔午後二時五十九分速記中止〕    〔午後三時四十一分速記開始〕
  254. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記を起こしてください。  委員はそのままこの場にお残りいただきまして、十分間休憩をいたします。    午後三時四十一分休憩      —————・—————    午後四時四十二分開会
  255. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  本委員会の議事を続行いたします。  今まで理事会において協議をいたしました結果について申し上げます。  コマンド、指揮、指図に関する答弁については、衆議院段階の答弁と本日の答弁並びに法律条文との関係を政府によって整理をして、文書によって見解を速やかに明らかにしていただくこととします。  以上、御報告申し上げます。  矢田部君の質疑は明六日続行をしていただくことにいたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  256. 岡野裕

    ○岡野裕君 自由民主党の岡野裕でございます。  きょう、あす、私どもの会派は四時間という時間をいただいております。先輩議員森山眞弓先生ともども、この法律内容の解明、そしてその必要性について明らかにしてまいりたい、こう思っているところであります。ちょうどテレビも入っております。国民の皆様にもじっくりと見ていただいて、わかった、やっぱりこの法律は立派だ、何が何でも通さなければいけないな、こう思っていただこう、こう存じているところであります。  私は、矢田部先生とは違いまして法律の専門家ではさらさらありません。また、テレビを見ている皆さんも専門家ではない。今どきの時間でありますと家庭の奥様方がごらんではないかな、こう思うわけであります。したがいまして、私は、なるべくわかりやすい初歩的な、そういう素朴な質問を申し上げようと。それぞれ御先輩あるいは御専門でありますところの総理初め閣僚、各大臣におきましては、まことに失礼なお尋ねの仕方になろうかと思うのでございますが、ぜひ御寛恕を賜りまして、私の次元まで下げていただいて、はっきりした御答弁を賜ればまことに幸せでございます。よろしくお願いをいたします。  さて、我が日本は、戦後の灰じんと荒廃の中から再出発をいたしました。きょうの住まいはどうしようか、あすの米はどうして確保しようかというようなことで、自分のことしか考えるゆとりがなかったあの当時であります。国そのものもまた同じような状況にあったのではないか、こう思うわけであります。しかしながら、以来四十六年、おかげさまで今日経済大国だとよその国々からも言われるような発展をしてまいりました。じゃ、どうしてここまで経済的にも大きくなり得たか。これはやはりこの四十六年におきますところの我々の先人の孜々営々とした御努力、そうして我々国民の勤勉な国民性というようなものがあった、こう思うわけであります。  ただしかし、今私は我々の先達の努力だ、今の皆さんの勤勉さだと言いましたけれども、果たしてそれだけだろうか、いや、そうではないのではないか、こう思うのであります。もう大分前、あの戦後間もなくのことを思い浮かべますと、当初ガリオア・エロア資金というのがありました。あれで私どもはどうやら飢餓から脱出し、日本の産業の復興が端緒についたのではないかな、こう思っているところでございます。  下って三十年代、四十年代になりましょうか、我が国基本的なインフラの構築形成期だと思うわけでありますが、そのときには、今はもう何ということなく利用しておりますところのあの新幹線、首都高速、黒四ダムあるいは、愛知用水、これらはすべて世銀借款によってできてきた。あの新幹線、ちょうどつい最近でありますか、全額の償還が終わった、こんなふうに聞いているところであります。  日本はその当時から貿易立国と言っていたわけでございますが、おかげさまで世界の自由貿易体制というものがありました。小資源国我が国であります。原料を買って、そうしてまた加工生産品をつくってそれを外国に売るというようなことから始まったわけでありますが、幸いにして順調に進み、長いこと収支も赤字でありましたが、四十年代の後半からは黒字が定着をしてきた。二回にわたる石油ショックのあのときを除いては黒字になってまいった。最近は黒字過ぎて困るというような声まで出てまいった、そんなわけであります。  そういうようなことで、我々が一人で努力をしたわけじゃない。やっぱり世界の親しい国々の皆さんから手を差し伸べていただいた。お互いに協調し、協力をし、そして今日の日本があるのではないかな、こう思っておるところであります。  宮澤総理は、サンフランシスコ条約調印のみぎりもアメリカにいらっしゃったわけであります。総理は、戦後の日本の経済発展、我々が歩んできたその歴史を御自身の眼でごらんになってこられた、こう思うわけであります。いかがでございましょうか、この辺につきまして御所見を賜りますならば幸せでございます。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 間もなく真珠湾の、第二次大戦が始まりまして五十年を迎えようといたしておりますが、岡野委員が言われますように、その後敗戦になりましてからでも四十六年、振り返りますと、瓦れきから立ち上がりまして、今日の我が国の姿は恐らく何人も想像しなかったような変化でございます。そして、そのことは、御指摘のように我々の先輩、また我々自身が一生懸命勤勉に働いて、国を興そう、再起しようという努力をしたからではございますし、またその間、政治の選択も大筋を誤らなかったということもあったであろうと存じますが、ただいま御指摘のように、まことにたくさんの国々あるいはいろいろの制度から恩恵を受けたということも忘れてはならないことでございます。  先ほどガリオア・エロアというお話がございました。私自身もそういう行政に関係をいたした者として考えますと、やはりそれによって我々が飢餓を救われた、また日本の経済復興の一助にもなった。これはアメリカからの好意でございましたけれども、そういうこともございました。また、世銀からも随分借款をいたしまして、先ほど御指摘のようないろいろな社会生活の基盤をこの借款によってっくることもできたわけでございます。そしてまた、仰せのように、戦後かなり長いこと続いてまいりました自由貿易体制、あるいはもう少し広く申しますならば、ブレトンウッズからの体制によって、我が国は勤勉でありましたがゆえに一番その受益者でもあったということも確かでございます。  このような今日の我々を思うにつけ、また五十年前を回顧するにつけまして、今日我々がこのようにあることについて我々自身が誇りを持ちますとともに、また我々のために援助を惜しまなかった善意の世界の人々に対して感謝の気持ちを禁じ得ないところでございます。
  258. 岡野裕

    ○岡野裕君 総理からお話をいただきまして、感銘深く拝聴をしていたところでございます。  本当に日本はいろいろなお国の皆さんから手を差し伸べていただいて、今やGNPは世界の一四%を占める、一人当たりの国民所得でも二万二千ドル、アメリカを抜いたのではないかというようなことであります。そういうようになったのであれば、外国の皆さんから手を差し伸べていただいたんだ、もう御恩返しをする時期だ、こんなふうに思うわけであります。  ただしかし、国民の皆さんの中には、そんなに金持ちになったの、さっぱりその実感が伴わないよ、いや、ペブルビーチも日本が買った、あるいはロックフェラーの建物も買った、ゴールドコーストも日本だと、いろいろ言われるけれども、それは企業のことだよ、私たちはどうも豊かだなんていう実感は全然感じられないというような声が間々あることも事実だろう、こう思うわけであります。もちろん、これらの皆さん、若い皆さんが多い。若い皆さんは大きく物を考える、したがってそうだと思うのであります。  例えば、ちょっと前の写真を見てみるとどうかなと思うのであります。私が写真を見ようということになりますと、まあ三十年ぐらい昔の写真も、あの黄色くなっちゃったようなセピア色の写真があります。私は、きょうここにおいでであります渡部恒三先生の福島県、官房長官加藤先生の山形県、東北で若いころを過ごしたわけでありますが、その昭和三十年ごろの写真を見てみますと、がたがたした戸をあけます、中へ入ります、そうすると土間であります。そこには、へっついであります、かまどであります。というようなことで、よっこらしょということで座敷に上がるならば、その座敷は古畳であります。あっちこっちささくれ立ったりなんぞしています。真ん中にちゃぶ台があります。田名部農水大臣の津軽塗じゃありません。会津塗でもありません。もう古ぼけたちゃぶ台。丸い小さなちゃぶ台。それを取り囲んでいる家族の皆さん。着ている姿は、これはやっぱりだぶだぶの着膨れをしたような、ださいといいますか、そういうような服装です。それで食べている物は一汁一菜。今の皆さんじゃ何のことかわからないと思いますが、そんな写真があるわけです。  だけれども今日は、私の田舎なんかでも、ぎしぎしの引き戸じゃない、ドアをあげれば土間はありません。へっついどころじゃありません、ちゃんとしたびかぴか光ったステンレスのキッチンセットといいますか、というようなものであります。よっこらしょという座敷、和室もありますが、洋室もあるというようなことになりました。三点セットのきれいなソファーもある。周りには電蓄、電蓄じゃありません、ステレオ、大型のテレビ、いろいろなものがある。すき間風が吹いて寒かったふろ場、そんなものじゃないというようなことであります。  今、三十年前と今とを比べました。同じ日本の中で比べたわけでありますが、外国と比べてどうだろう。このごろは、若い諸君も海外にどんどん旅行に出られる。海外渡航者一千万人を超えたのであると。行かれますと、これはやはりグルメということで、非常に立派な物を食べると同時にブランド物をどんどん買い込んでこられるということになりますと、古写真と比べるんじゃない、外国の国々と比べても我々は豊かだなと。ハワイにはアメリカ本土の皆さんも行きます、日本の皆さんも大勢行きますけれども、一人一人がどのくらい買い物をするか。アメリカの本土から来る皆さんの五倍ぐらいのお金を出して立派な物を買うというようなことであります。もっと、アフリカだとかああいうところへ行きますならば、これは飢餓もある、難民もあるというようなことであります。というようなことからしますと、やっぱり豊かだなということを、今お話をしたようなことをネタにしてかみしめていただければわかるのではないか、こう思うわけであります。  そういう意味合いで、お金がちゃんとたまってきた、そういうことで家もできた、服装も立派になった。周りの皆さんから見ても、あれは紳士だな、淑女だな、こう思われる方が、なったにもかかわらず、しこしこと自分だけでへそくりをため込んでいる、自分だけうまい物を食べているというようなことでは社会の皆さんかどう見るだろうか。そういうふうになるならば、やっぱりボランティアをするんだと。社会のもろもろの要請にこたえて我々も出ていくんだというようなことがあって初めて周りの皆さんからも立派なお方だと、こう思われるのじゃないかと思います。  私は自分の卑近な周りの例を言いましたけれども、今、日本国際社会における日本であります。国連の非常任理事国にもなったということであります。そうだとすれば、いろいろお世話になった恩返しをせにゃいかぬということと同時に、そうではない、やはり日本がこれだけの大きな力を持つようになった、かつてアメリカがくしゃみをすれはこっちが風邪を引くと言っておったのが、このごろは、日本がくしゃみをするといろいろだと言われているわけであります。  そういう意味合いで、恩返しのほかに、我々が持っているその地位、外国の皆さんから見られているその姿、これをみずから自覚して、その自覚に基づいて我々は国際場裏の中で何をかやらねばいかぬ、そういうような現状にあるのではないかと思いますが、総理、申しわけありませんが、もう一遍いかがでございましょうか。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま、現代の生活をいろいろに御描写をされまして、豊かになったということをるるお述べになりました。また、今の若い人は案外それを当然のこととして気がついていないかもしれないともおっしゃいました。確かに、お互い貧乏な時代を知っております者の方がかえって今の豊かさがわかっておるのかもしれません。それほどしかし若い人は豊かになりました。  私は、かって先輩から、もう一昔前でございますけれども、こういうことを聞きました。我々は親の時代から貧乏であったので貧乏に処する道徳というものは習ってきた。貧しくても人に分から与えなければならない、人の物を盗んではならない。しかし、これから日本人が本当に豊かになったときに、豊かに処する道徳はどういうものであるかということは、実は全く習っていなかった。これをこれから日本人が身につけるということはやはり非常に大事なことであろうという先輩の言葉を、これはもう一昔前でございますが、このごろしきりに思い出します。  今、岡野委員の言われましたことも、まさに我々が豊かになったについては、我々の隣人にどのような責任があるのか、また、今日豊かになったことについてどのように恩返しを社会に対してしたらいいのかということがまさしく今我々が考えなければならない問題であるし、そこを誤りますと、我々が豊かであること自身がかえって世界からむしろ敵意をもって見られる、あるいは侮べつの念をもって見られる、そういうことになりかねないというふうに感じております。
  260. 岡野裕

    ○岡野裕君 今、私がお話を申し上げたような中身については、一国繁栄主義ではいけない、あるいは一国平和主義ではいけないというようなことを言われております。我々は、なるほど自分の国だけ平和であればいいでは通らない実感を持っております。  我々は戦後四十数年、おかげさまで日米安保体制その他のこともいろいろあったのでございましょう、どうやら外国から攻められるというようなことがなくして終わりました。北方四島云々の問題がありますが、あれはまあ戦前の問題であります。  そういう意味で戦後は全然そういうことがなかった。平和でいいな平和でいいなでありますが、しかし、例えて言うと、第四次中東戦争でありましょうか。あのときにサウジのヤマニ石油相が、いや、こういうような国には石油は売らないよ、制限をするよと言った途端に、我々一般家庭の奥様がトイレットペーパーを買い集めに歩いたということであります。  あるいはイラン・イラク戦争、あるいは今回の湾岸でもそうでございますけれども、やはり我々、総輸入量の中で四〇%ぐらいが石油であります。石油が途絶えるということになりますと、我々の私的な生活も、それから日本経済、産業の基盤もおかしくなってしまう。だから、日本だけ平和でいいんじゃない、世界全体が平和であらなければならないな、こう思うわけであります。  しかも、自由貿易体制というお話をいたしたわけでありますが、やはり資源小国だということで、東南アジア、ASEAN等から原料を買って、加工して云々であります。そうすると、東南アジアの皆さんにも資金というものが渡ります。そうすると、東南アジアの皆さんもそれによりまして、言いますならば経済が発展をする、国民の皆さんの生活レベルも上がってくる。新しいもっといいものを買おうということになります。そういう新しいものをまたつくって売れるようになるということはいいことだし、同時にまた、かつては縦の関係の貿易だったやつが並行的な貿易になるというような意味合いでも、我々日本が一人だけ栄えるんじゃない、日本だけが経済的に発展をするんじゃない、やはり広く多くの国々とお互いにともに手を携え合って全体の発展を図る。  ECはどうだ。アメリカ、あるいはカナダ、メキシコというのはまた一体であります。我々はアジアの一員であります。そうだとするならば、このアジアの皆さんと、言いますならばともに栄えていく。これが一国平和じゃいけないよ、一国繁栄ではいけないよということだと、こう思うのであります。  外務大臣は、最近考えましても随分東南アジアの方にも御出張でございますが、そういう意味合いで、この辺につきまして、渡辺外務大臣、いかがでございましょうか。
  261. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 御説のとおりだと存じます。  今や自由貿易体制のもとでは、世界の経済はつながっております。みんな資源のある国、ない国、資源もいろいろ、石油の国もあれば石炭の国もいろいろあって、日本のような資源のない国ではありますが、しかしいろんな技術の知識とか人的資源とかそういうものがございまして、まさに日本の繁栄というものは、これらの資源国との間で貿易がうまくいっていると。  しかも、だからといって、資源国がただ資源を出すだけでは日本の生産物を今度は買うことはできませんから、その国をもっと豊かにして、お互いが共存共栄といいますか、相互依存というか、そういう形で世界の経済は手をとっていかなければみんなが豊かにはならない。みんなが豊かになることこそまさに世界経済全体が豊かになることだと、さように考え、全くお説のとおりでございます。
  262. 岡野裕

    ○岡野裕君 やはり我々は何かをやらねばならない。要するに恩返し、それから自覚に立って何かやらねばならないということについてお答えをいただいたわけでありますが、しからば何をやるかという問題があります。  我々日本の得意わざは、やっぱり経済支援であり、技術援助だと思うのであります。そういう意味合いで、過ぐる湾岸、最初四十億ドル、そうして九十億ドル加え全部で百三十億ドル、国民の皆様に増税の御負担もお願いするというようなことをして、あの資金援助というものをやったわけであります。あるいは国連の分担金というようなものも、我々は一一、二%というような相当のシェアというものを持っているというような意味合いでは資金的には大きな協力をしているわけであります。  あの湾岸戦争の百三十億、遅いじゃないか、数字が小さいではないかということでありますが、あのときだって、当該国のサウジだとかクウエートに匹敵するような額でありますし、次に続いてはドイツ、これは我々と比べますと私どもの方がずっと兄貴格の額だと、こう思っているわけであります。  おまけにODAがあります。もう昭和二十九年から始まりました。最初は賠償という形で始まったのではありますけれども、あのインドネシアあるいはフィリピンにODAが端緒的に生まれましてから、はやこれも三十五年を経過をいたしました。今日のODAは、まあ九十億ドルというようなことで、去年はアメリカをオーバーしたが、今回はどうもアメリカに抜かれた。いずれともあれ、アメリカと同等の額という、言いますならばODAの一大供出国になっているわけであります。  そのODAもいろんなことを言われております。ODAの先進国、とかく言われているのは、出すには出しておられるけれども、どうも旧植民地向けというようなことがあるのではないかとか、あるいはこういう国こういう国ということで、集中的で何か戦略的な感じも感じられないわけではないというようなことを言われております。一体にまあ先進国の場合には、人道主義、博愛主義というのがあります。だから、ひとつお金を出せばいい、後はどうでもという先の見通しがなかなかついておらないなんぞという活字も私は読んだわけであります。  そこへいきますと、日本はどうでありましょう。やっぱり供出を申し上げたその先の国が立派に自立できるようにというようなことを基本理念として持っていると思うのであります。その結果、韓国、台湾等は、もうあそこまで大きく発展をされました。むしろASEAN諸国等について韓国、台湾が投資をしようというようなふうになってまいりましたし、我々がODAの中心としておりましたASEAN諸国も各年度年度、対前年比で七%ぐらいの経済成長率だというような意味合いで、もう十年もするとASEAN全体ではECを抜くのではないかと、こういうように言われております。  私どもは、我々が自立に役立っためにというODAの基本姿勢というものが顕著に実ったモデルがアジアNIESであり、ASEAN諸国ではないかなと。GNP対比でいくと目的の三%にはなっていないじゃないか、あるいは無償が少なくて有償ばっかりじゃないかというような言われ方もあることは事実でありますが、私は、やはり我々は胸を張って物を言っていい時期ではないかなと。  大蔵大臣もそこにおいででありますけれども、ODA、これからも一生懸命頑張っていただきたいと思ったら、一、二日前の新聞でありましょうか、今度はそれは五%ぐらいに抑えにゃいかぬ、五年間で五百億ドルというようなことで我々はやってみたが、その最終年度になったら、どうもぐあいが悪い数字だというのを、大蔵大臣の御意向がどうかは存じませんけど、新聞で見ました。  私は郵便局の出身でございます。今通信部会長でございます。ボランティア貯金ということで、ノンガバメントの方で一生懸命お願いをしましたら、よしきたということで、ボランティア貯金がいっぱい出てきました。  ODAがこのぐらいだと、それじゃ我々もその上にと思っていたのに、ODAがこう下がっちゃったんじゃ、どうも我々の気持ちと違うわけでありますね。まあ歳入が足らないのでありましょう、今私は通信部会長としては電波利用料なんぞということでいろいろ努力をしているところで、どうも端っこへずれちゃったわけでありますが、外務大臣、いかがでございましょうか。やっぱり我々ODAのやり方はよかった、これからも大いに進めていこう、こんな私は気持ちでございますが、御所見を賜れますならば。
  263. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、日本としてはできるだけのことをやってきたと思います。  最初は、やっぱり最貧国というような本当に人道上の援助というものから始まったところもございますし、ある程度力をつけたところに対して資金援助、技術援助、そういうようなことをやりまして、自助努力、自分で働いてもらう資金と技術、そういうものを与える、そういうことによってODAというもの、政府の開発援助が相乗効果をあらわすということは事実でございます。それによってASEANの国もかなり日本のハイテク企業までたくさん行っている。タイランドなんというのはえらいたくさんの、マレーシアもそうですし、シンガポールもそうですし、インドネシアにも最近は行っています。そういうことでそれらの国の国民所得が大きく伸びて生活が豊かになっていくということばうれしいことだと私は考えております。  確かに、援助の中身等については、まだお金を貸すという、いわゆる有償といいますかそういうようなものが多過ぎるんじゃないかとか、ただで差し上げるという無償の部分が少ないんじゃないかとか、いろいろ批判はございますが、ただ限りある予算の中でやることでございますので、相手の希望等も聞きながらできるだけお役に立つ方法をやろうということで、政府としては各省庁と相談をして工夫しながらやっておるわけでございます。今後もできるだけの御協力はしてまいりたいと考えます。
  264. 岡野裕

    ○岡野裕君 有償無償の問題はいろいろあろうと思っております。無償で差し上げてしまう、後はわからぬよりは、有償、したがって長期ではあるけれどもその間に努力をして返そうというような意味合いでは、私は必ずしも無償無償とよその国から言われているほど自分自身が心配をしているわけではありません。ありがとうございました。  というようなことで、ODAだとか湾岸だとか、経済的な協力、支援をしているつもりではありますが、じゃこれで十分か、百点満点か、こう言うと、そうでもないというような声があれやこれやあるようであります。  あの湾岸紛争がそうでございました。クウエート解放というようなことで多国籍軍が現地へ行きました。日本国憲法がありますので多国籍軍に加わって大砲を撃つ、ミサイルだというようなわけには絶対いきませんが、しかし憲法との関係でせめて後方支援というようなことを考えたい。例えば、まず医療班を派遣しました。第一班、第二班であります。だがその後、どうも余りそれがはかばかしくいかなかった。それじゃやっぱり物資を輸送しようか、難民が大勢おいでになる、それはアジアの諸国から行っている方々もおいでになる、これをJAL、ANAに頼んで運んでいただこう、あるいは船舶会社の社長さんにというようなことをやったわけでありますが、これまた御存じのとおりのことになりました。それじゃC130だ、小牧の飛行場からどうだということでありました。  そういうような意味合いで、やるつもりだったけれども外国からはどうもという感じになった、これは否めないような感じも私はいたしております。だから、即席にC130だJALだANAだというのではだめだ、この際ひとつそういうものに常に構えておくためにというのが昨年十一月、あの国連平和協力法案だ、こう思うのでありますけれども、これまた廃案になったことはまことに遺憾だ、こう思っているわけであります。しかし、何かをやらねばいけません。  私の東北あたりでも、山崩れ、洪水があります。そういうときは消防団だけでは足りないので、町の、村の、そういう男手の若い衆みんな行きます。そして、もっこを担ぎます、土のうを積んで堤防からはんらんしないようにいたします。しかしながら、御家庭御家庭の中にはお母さんとお嬢さんだけしかいないというところがあります。じゃそれは何もしないか、お金だけでも出すか、それで終わるか、そうじゃありません。やっぱり皆さんが行くならば炊き出しをいたします。そして握り飯をつくって、あるいは熱いお茶を沸かして、皆さん御苦労さん、雨にぬれて風邪を引かぬようにしてくれよ、どうぞこのお茶を飲んでくれというようなことをやってこの社会というものは成り立っている、こう思うのであります。  先ほどお話をしたあの湾岸という場合にも、戦闘行為に参加をした国十二カ国、そして後方支援という国が二十四カ国あるわけであります。同じ敗戦国のイタリア、これも戦闘機を出した、撃墜された、捕虜になった、その顔がテレビに出た。あるいは、同じように敵国条項の一つでありますところの今ドイツになっているそのドイツも、NATO以上に行ってはならない、それじゃというのでトルコのところへ戦闘機を十八機並べた、三百何十人を配置したということもあります。韓国だって百五十四人の医師団を出したというようなことも聞いております。  そういう意味合いでは、後方支援、戦闘行為に参加した、いろいろあると思うのですが、あの三十六カ国の中には結構小さい国もあるのじゃないかな、こう思うのでありますが、これは丹波さんでしょうか、国連局長、いかがでしょうか。どんな国々があの多国籍軍後方支援等に出ていたのでありましょうか。
  265. 小原武

    政府委員(小原武君) お答え申し上げます。  湾岸危機に際しまして、いわゆる多国籍軍に二十九カ国が参加したわけでございまして、全世界にまたがっているわけでありますが、お尋ねの小さい国といいますと、一定の定義がございませんので、私なりに理解申し上げまして人口の少ない国という側面からとらえてお答え申し上げますと、人口約五百万以下の国としまして、中近東諸国の中からはクウエート、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、バハレーンなどがございますし、欧州からはノルウェー、デンマーク、それから大洋州からニュージーランドなどがございます。  また、これを一千万人以下というところまで拡大して考えますと、アフリカからセネガル、ニジェールというようなところ、欧州からはベルギーなどというところが加わるところでございます。
  266. 岡野裕

    ○岡野裕君 私が小さい国と言いましたのは間違いでございました。決して富める国だと言われておらない、経済的に大きな国だと言われておらないという意味合いで小さい国と申したのでありますが、ニジェールがあるというお話がありました。あれ多分コスタリカあたりも中米から行っていたんじゃないか。我々アジアの中でもパキスタンあるいはバングラデシュが行っていたのではないか。バングラデシュということになるとサイクロンであります。ああいう国であります。しかも、当該バングラデシュ国家予算の一年分の二〇%近くが我が日本からいくODAによって賄われているという国々、そういう国々まで後方支援というようなことで行っていたというようなことからいたしますと、我々日本は外国から百点満点だと言われないというのもむべなるかなという気がしないでもありません。  幸いにして、湾岸紛争は終わりました。そのときに、解放されたクウエートがアメリカの非常に有名な新聞に、湾岸ではお世話になったという感謝の広告をいたしました。今言ったような国々がずっと並んでおりました。一生懸命探しましたが、ジャパン、ニッポンというのはなくて、非常に肩身が狭い思いをしたわけであります。あれは湾岸戦争でありました。  しかしながら、終わりましたら今度は国連PKOがUNIKOMというようなことで行っております。これは停戦監視団であります。クウエート・イラク国境、イラクの方に十キロ、そしてクウエートの方に五キロ、合わせて十五キロ、これで線を引きまして、真ん中は緩衝地帯だよという中で、またおかしくならないようにということで各国からいろいろな国が出ております。中には、中国があります、ソ連があります、さっき言ったバングラまであるんじゃなかったかなという気がするわけでありますが、このUNIKOM、どのくらいの国が——もう一度言います、経済的に必ずしも恵まれておらないと言われているような国々がどの程度入っているのか、ちょっと教えていただけるとありがたい。やっぱり丹波さんでありますか、お願いいたします。
  267. 丹波實

    政府委員(丹波實君) UNIKOMでございますけれども、全体で安保理常任理事国五カ国を含めまして三十三カ国、監視員を送っておりますけれども、その中で、いわゆる経済的なと申しますか、小さな国と申しますか、バングラデシュあるいはフィジー、それからタイ、マレーシア、パキスタン、シンガポール、これがアジアでございますけれども、そのほかフィンランド、ガーナそれからハンガリー、ウルグアイ、セネガル、そういったような国が参加しておるわけでございます。
  268. 岡野裕

    ○岡野裕君 私、一年二カ月外務委員長をやらせていただいたのでありますが、私も存じ上げないような国の名前も入っていたようであります。セネガルが入っていましたね。ホンジュラスが入っていますかどうでしょうか。一人当たり国民所得で三百ドル以下、日本からするならば向こうの皆さんが七十人集まって我々日本の一人に当たるぐらいの国々まで入っていた、そんな感じがするわけであります。  いずれともあれ、さっきお話をした洪水なんて嫌であります。紛争ももうない方がいいんです。戦争なんて真っ平御免であります。そういう意味合いで言いますならば、世界は冷戦構造が終えんをした、こう言われております、ああよかったな、これで世界には本当の平和が来るか、こう思ったのでありますが、あに図らんや、やはり宗教対立てありましょうか、あるいは民族間の問題でありましょうか、南北関係なんということもあるのでありましょう。地域紛争がかえって冷戦構造の終えんとともに多発をしている。湾岸がそうでありましょう。今、ユーゴがあります。カンボジアはおかげさまでどうやらうまくいきそうであります。  しかし、まだアフリカはあちこちあるのではないかなというような中で、国連の機能がおかげさまで確立されてきた。ビートーだ拒否権だでなかなか意見がうまくいかなかった。しかしながら、国連が、今度の湾岸等を見ましても非常にはっきり機能を発揮できるようになったと思うのであります。先般、ロンドン・サミットでも、平和維持のための国連の機能を強化しようじゃないかというような宣言まで出ているわけであります。我々日本といたしましては、国連中心の平和主義でいこうというような意味合いからしますと、いい雰囲気になってきた、まだまだ我々活躍をする場面が出てきたのだな、こう思うのであります。  実は、こういった意味合いでの人的貢献は、あの掃海艇があると思うのであります。いろいろ、遅かったじゃないかと言われたのでありますけれども、おかげさまで三十六、その機雷を、最初の間の機雷は処理するのは易しいけれども、我々の自衛艦が行ったときには非常に難しいのしか残っておりませんでした。しかし、日本の技術が立派だ、経験が豊富だというようなことでありましょうか、非常に大きな成果を上げた。私は、あの落合峻司令から、復命といいますか、無事に帰還をいたしましたという報告を受けました。本当に落ちつき払った報告でありました。しかも、炎天四十度以上の中で努力をされてきた。見事な面魂でありました。本当に感服をいたしました。  私は呉まで行きませんでしたけれども、呉の港には掃海艇が帰ってきた、テレビで見たその乗組員の皆さんも、一仕事やり遂げたというような気持ちが顔にありありと見えたように私は拝見して自信を持ったのでありますが、いかがでありましょうか、この掃海艇は成功したのだと思いますが、政府の皆さんはどんなお考えでございましょうか。
  269. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 岡野先生、今るる述べられましたとおり、この四月に海上自衛隊の掃海艇がペルシャ湾の機雷掃海のために派遣されました。そして、三カ月に及ぶああいう過酷な条件のもとで無事に任務を果たして十月の終わりに帰ってきたわけでございます。  これは、つまり石油資源をあのペルシャ湾に大きく依存をいたしております、そういうことで、我が国の船舶航行の安全という見地が主たるものでございましたけれども、しかし同時に、あの湾岸戦争によって被害を受けた国々の復興にも大いに役立ったということでございまして、この行為は、先生が今高く評価されましたように、人道的な、国際的な有力な貢献策一つであるというように私も高く評価をいたしております。そして、この間において自衛隊員が厳正な規律のもとで責任感旺盛にこの任務を全うされたということは、私は大変すばらしいことであったと思います。  そういう意味で、岡野さんの述べられた気持ちは、恐らく国会議員の多くの方々が、自民党の議員ばかりではございません、評価をされているのではないか、そして国民世論の中でも高く評価されているのではないか。そればかりではございません。私はチェイニーさんにも会いました、いろいろな方に会いましたけれども、この日本の人道的、平和的な国際貢献策を高く評価しておりました。私は、これからの国際社会でこういう平和的な貢献をしていくことが何より大切だな、こう思っております。今回提出いたしておりますPK ○法案あるいは国際緊急援助隊法案は、まさにこの趣旨に基づくものでございます。先生、ありがとうございました。
  270. 岡野裕

    ○岡野裕君 私と全く同じ御意見をお述べいただきまして本当にありがとうございました。  きょうのこの雰囲気は、あの乗り組み自衛官の奥さんもテレビを通じて見ているかもしれない、こう思うのであります。宮下先生から御苦労だと、こう言っていただきましたのは、本当にうれしい限りであります。国際的にも評価をいただいたのだなというような意味合いでは、人的貢献の第一歩の掃海艇は大きな成果で、まず我々は自信が持てた、こう思うのであります。  そういう意味合いでは、ひとつ我々として、これからの人的貢献、いろいろありましょう。しかし、憲法との絡みでできる貢献とできない貢献というものがあろうと思います。よそも行ったからおれも行く、頼まれたからおれも行くというようなことではなくて、さっきお話をいたしました、国際的な中で日本が占める地位という自負に基づいての人的国際貢献、これをやろうというような意味合いで、今度二つの法律、これが提案をされていると思うのでありますが、ぜひひとつ、これに臨む総理の御決意、これを拝聴できますならば幸せでございます。
  271. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどお話がございました湾岸危機の際に、我が国は確かに新しい税金までお願いをいたしまして、湾岸直接の国を除きますと最大の財政的な貢献をいたしたわけでございますけれども、それにもかかわらず、国民の間にこれだけでいいのであろうかという議論が非常に高まりましたし、また、当たっておると否とにかかわらず、外国からも一体日本は金だけなのかというような批評がありまして、それについてもかなり国民が敏感に反応したという事実がございました。  そこで、ただいま岡野委員が言われますように、しかしどう考えても我が国武力を外国に出すということはできない国でございますから、それは我々はできないんだということをはっきり外国に言う。外国の町の人たちはそういうことまでは存じませんものですから、なかなかすぐに素直にそれが受け取れないようなところもございましたけれども、これはやはりはっきり言うことは言わなければならない。しかし、その反面、それならば何ができるのかということは、またこれをはっきりさせませんと、ただ無責任に何にもできませんということでは相済まぬなというのが世論であったと思うのでございます。  そういうことから、殊に先ほどお話しになられました掃海艇の成功ということもございまして、やはり我々は許されていることは最大限やって汗を流さなければならないんだなということから、世論の高まりがありまして(この法案の御審議を願うようになった、こういうことで、御説のとおりでございます。
  272. 岡野裕

    ○岡野裕君 総理から、この二法案についてぜひ通すという力強いお言葉をちょうだいいたしました。ありがとうございました。私もその気持ちでおるわけであります。  人的貢献は必要だと、みんなから言われるからじゃないと。昔の言葉でありますけれども、当為だと。ミュッセンじゃない、ゾルレンだというような意味合いで対処をする、こういうことだと思うのでありますが、この法律についてはやはりいろいろの不安あるいは懸念みたいなものを持っておられる皆さんもないわけではない、こう聞いているわけであります。  一つには、我々は、政府のPRが足らぬというか下手くそだなというようにも思うわけでありますが、私もテレビ等で何遍かPKOの紹介を見ました。最初に出てくるテレビの画面はやはりミサイルが飛ぶんです。ごうごうと地響きを立てて戦車が行くんです。ヘリコプターも出るんです。それから重武装の兵士が隊を組んで濶歩している。あれを見ると、日本から行くPKOも戦場に、戦闘に行くのじゃないかなという懸念を持たれるのも、ああそうかもしれないな、こう思うのであります。  私は余り勉強しておりませんけれどもPKOというのは三つある、こう言われているんです。いろいろ勉強させていただいているんです、政府の御答弁もいただいて。そういう意味合いで三つあると聞いております。一つ停戦監視団、もう一つはPKF、私が読んだパンフレットでは訳して兵力引き離し、それから三つ目が選挙監視あるいは行政事務のお手伝いというようなものの、三つぐらいに概念が分かれて解説をしているのであります。  しかし、兵力の引き離し、これはこれだけ読みますと、ああ戦争をやっている、戦争はけんかじゃないけれども、けんかをやっている、その間に割って入って、言うならばぽかぽかっと両方を殴りつけ、その結果両方が戦意を喪失して、もうけんかはやあめたというようなふうに兵力引き離しと言われると思うのかもしらぬと思うのであります。が、我々は、言いますならば国連の権威と説得というようなもので行くのであって、ぽかぽかっとして強制的に仲直りをさせるというものではないのではないか、こう思うのであります。  いろいろな解説があるわけで、ある評論を読んでおりましたら、PKOというのはこういうものだというのですけれども、この平和維持活動というのは、武力を使った抗争を関係者が何とか解決しようということでその努力を国際社会が助けるものだ、武力紛争という熱を鎮静させる努力だと。戦争を続けてきた国がもうそろそろやめるべきだと思っても、相手に対する不信感が強いためおいそれと矛をおさめるわけにはいかない。そういうときには中立的な国が双方の中に割って入ってくれれば、敵に出し抜かれて不利な立場に立つこともないという気持ちができるのではないでしょうか。こういう状態に持っていく、紛争を解決するためにこのPKFは必要なのですと。  こうなると、やはりやっている真っ最中に入っていくと。国連平和維持というのは、平和の回復じゃない、維持だ、こう思うのでありますが、いろんなところにいろんなものがばらまかれておりますので、外務省としても、あるいはこれは野村さんのところでありましょうか、ひとつ言っていただきたい。お互いに紛争している国が、当事者が、もう戦争はやめたよという停戦の合意があって、それを確認して国連PKOというものが出ていくのだ、私はそういう理解をしているのですが、間違っているでしょうか。いろんなパンフレット等を見ると、ついそう思っちゃうんです。そうであるのかそうでないのか、ひとつ専門的なお立場から解説をいただけるとありがたい。
  273. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  国連とのかかわりでは、私は次のような三つに分けて御説明することができるのではないかと思っております。  一つは、紛争そのものをいかに発生させないか、これはまさに平和的にいろいろ話し合いをする云々。それから、紛争が発生したときに強制的に国連が介入していくという問題、これは国連軍の問題ですが、けさほどから御議論もございましたけれども、これは現在まだまだできていない。三つ目は、紛争があって、それが終わった。しかし、その紛争は終わったけれども、達成された平和というものを国連が来て見守ってもらいたいと、そういう活動。この三番目がPKOあるいはPKF活動でございまして、そういう意味では紛争はもう終わっておるわけです。平和は達成されたわけです。しかし、その平和を見守ってもらいたいということなんですね。  それから、先ほどから兵力引き離しという言葉がございますけれども国連の書類をよくよく読みますと、これはPKFが行ったら既にA国とB国の間で兵力はもう引き離されておりまして、国連はそれを監視に行くんです。ですから、よく読みますとモニターという言葉が書いてあるわけです。兵力引き離しをモニターするために行くわけでして、兵力を引き離すために行くわけではない。そこにも私はいろんな方に誤解があるんではないかというふうに考えます。  いずれにいたしましても、PKO、PKF活動というのは紛争が終わった後で活動する、そういうたぐいのものでございます。
  274. 岡野裕

    ○岡野裕君 機能の中には予防的な目的というものも入っているんだというお話を拝聴しましたが、とにかく停戦の合意、停戦をそのまま維持しようというようなことで、はっきり両当事者の合意ができてから行くんだ、もめているときじゃない、終わっちゃってから行くんだということだけははっきりさせていただいた、こう思うわけであります。  実は、これもまた新聞でありますが、ユーゴあるいはカンボジアにひとつ国連PKO派遣したらどうだ。いや、カンボジアの場合にはもう先遣隊ということでUNTACというようなものができるというふうに聞いています。これがまた取りざたされまして、いや、日本がその昔、五十年前には占領していた、そんなようなところへ行くのがいいことなのかどうだろうかというような声もあるようであります。カンボジアに行くにせよ行かぬにせよ、行くとなったら行けるような体制ができておらなければ行くにも行けぬという意味合いで今度の法律もあるのだな、こう思っているわけでありますが、いずれともあれ、カンボジアその他に行くのも、日本が、よし行くぞ、よし行ってやろうということで勝手に行くのではないのではないか。  私はよく知りませんけれども、当該国が、ユーゴならユーゴが、カンボジアならカンボジアが、ぜひ国連PKO来てくれ、あるいは来ていただいて結構だ、こういう同意を前提として行くのだ。国連PKOで各国部隊を編成して行く場合には、その中の国はこれこれだよ、そうしてその中に日本も入っているんだよ、それてもいいか、はい結構です、来てください、じゃお越しをいただいて結構です、こういう同意があって初めて行くんだ、こう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  275. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは、こちらから押しかけるわけじゃありませんから、国連に頼まれて、カンボジアならカンボジアの中で各派まとまって政府をつくるわけですから、そういう人たちが、どうぞ結構です、言うなら来てくださいみたいなものですよ。そういう合意の中で行くんだということ。  それから、何か自衛隊参画するときな臭いような話ばかりしていますが、自衛隊のこの法案の業務というのは人道的なものを初めたくさんのことをやるんですから、例えば地雷が放置されている、ボランティアの民間人を使うわけにいかぬでしょう。それから要するに、捕虜の交換に当たってのそいつの援助をするとか、停戦の監視の問題もあるでしょうし、あるいは医療活動とか避難民の捜索とか救出とか、それの援助をしようとか、それから食糧援助や何かの輸送とか通信とか建設とか、いろんなことについても、それは民間でやってできるものもありますよ。しかしながら、非常にまとまって通信と輸送と一緒になってくっついていくということになれば、よくその問題点がわかるでしょう。だから、そういうところにも自衛隊が活用できますというか、お手伝いできます、非常に幅広い法律案だということをよく知ってもらわなきゃならぬと思います。
  276. 岡野裕

    ○岡野裕君 今、自衛隊が行かなければできない仕事もある、また通信もあるのだというので、私、通信部会長としてはまことにありがたいわけでありますけれども、いずれともあれ、来てくれあるいは来ていただいて結構だという同意があって行くのである、そうだと思います。武器の撤収だとか捕虜の交換なんということが、もう戦争が終わっちゃって紛争もきれいに鎮静化をしているというところで行くわけですが、今お話をしたようなそういうこともあるとすれば、自衛官みたいなものが行かなければいけない場面があるなど納得をいたしました。  その次は、これで合意がある、それから同意に基づいて行くのだということがわかったわけでありますが、法律の条文の中には、僕はどこだったか忘れましたけれども、中立だというのがあったように、一方に偏らないようにしなければいかぬというのがあったようであります。停戦したけれども、お互いに身びいきでやります。だから、中立的な国連PKOが行っても、どうも向こうの方に肩入れしているようにしか思えないというようなことがあると思うのであります。そういう意味合いでは、我々はどっちも肩入れをしないというようなことがはっきりしておらないとぐあいが悪い。  コンゴのPKOがありました。コンゴからベルギー軍が撤退をするのを見届けようということで国連PKOは出ましたけれども、コンゴの中のカタンガ州が、いやいやコンゴの中でおれはひとつまた独立をするのだというようなことがあって、PKOとしてはやはりコンゴの肩を持った、それでカタンガ軍の方からいろいろ言われたというようにも聞いているわけであります。  というようなことになると、さっき国際貢献ができることもあるできないこともあると言いましたが、行けるものもある行けないものもあるという意味合いで、中立という観点についてはどんなふうになっているのでありましょうか。よろしくお願いをいたします。
  277. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、コンゴの場合には特に内乱の絡みがございまして、中立の原則を破って活動した例外的なPKOのケースだと思います。  そこで、この法案の中におきましては、PKO活動の定義を明確にいたしておりまして、先ほど来御指摘のございましたように、武力紛争のある場合につきましては停戦の合意、それからその受け入れ国、PKOそのものが行われることにつきましてのその当事国の同意、また日本の場合は日本がそこに参加することについての同意、そういう原則をはっきりと書いてございます。  また、今御指摘の中立の原則につきましても、定義におきましては、「いずれの紛争当事者にも偏ることなく実施されるもの」であるというふうに明確に書いてございます。
  278. 岡野裕

    ○岡野裕君 そうであらねばならぬ、こう思っております。  やはり平和の回復じゃなくて維持だ。言いますならば、戦わない部隊だ、あるいは敵のない部隊だ、非強制だというようなことをよく聞くわけでありますが、なれはこそ、あれは昭和二十三年でありましょうか、一九四八年以来の歴史があって、ノーベル平和賞も出たのだ。申し立てなければあのノーベル平和賞なんというものは来っこないと思うのであります。ただ、火は消えた、だけど焼けぼっくいに火だ、焼けぼっくいがもう一度燃え上がるというようなこともあると思うのであります。  これもどこかの民放のテレビだったと思うのでありますけれども、あのUNIFILの例が映っていました。あのUNIFILはイスラエルから、言いますならば同意、合意があったにもかかわらず、レバノンに対してイスラエルが侵攻をした。そのときに、私どもがいい国だと思っている理想のフィジーからPKOに行っていたわけでありますね。そのフィジーの部隊は、どんどんとイスラエルの戦車が行くのを全然抵抗しない、押しとどめないでずっと見過ごした。いや、看過した、見過ごしたじゃない。過ぎていく戦車の台数は何両何両と勘定していた、あるいはその兵隊さんの数というものも何ぼだということを冷静に観察し、それの克明な報告書というものを国連に出していた、こう聞くわけであります。なるほど、平和の使いなのだな、こう思うのであります。  そういうような意味合いで、いろいろな事象というものがある。その場合に我々は、あの憲法のもとにつくられている今度の国連平和法だというようなことで、こういう場合になったならば、平和維持活動PKO活動というものの業務の中断をする、あるいは中断をして様子を見たけれども、どうも長く続きそうだという場合には業務の終了をする、撤収をするんだというようなふうに聞いているわけであります。こういうようなことは非常に勇気が要るといいますか、逃げて帰ってくるわけではない、むしろ応戦をする方が勇気がない証拠だと思うのでありますが、ひとつぜひこの辺はしっかりした態度を貫いていただきたい。  そもそもUNIFILみたいな例はあるんでしょうか。そして、中断だとか撤収だとかいう例はどうでありましょう。多いか少ないかはともあれ、その辺の御紹介をいただければ、こう思います。
  279. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 過去のPKFの歴史の中で、私たちもちろん全部を把握しているわけでは必ずしもございませんけれども、いわゆる前提というものが崩れて武力的な紛争に発展しかかった例あるいは発展した例というものが典型的には二つあると言われております。    〔委員長退席、理事下条進一郎君着席〕  一つは、一九七四年にサイプラスの平和維持隊に対しましてトルコ軍が北から攻めてきたときに各国がどのような対応をとったかといろいろ調べましたけれども、例えばオーストリア部隊はトルコ軍に対しまして口頭で移動の停止を申し入れたけれども、しかし武器は使わず、何ら抵抗はしなかった。それから、デンマークの部隊は何らの措置をとることもなくニコシアの本部に撤退したというふうに聞いております。  それから、今御引用になられた一九八二年のレバノンのケースですが、イスラエルが侵攻してきた、これに対してフィジーとアイルランドの部隊は基地内に戻り何らの対抗行動もとらなかったというふうに聞いております。それから、ノルウェー、オランダ部隊は、道路上に車両とか障害物を置いて侵入阻止を一応試みはしたけれども武器を使用してイスラエル軍に対抗することはしなかったというふうに聞いております。  そういう意味で、このような平和維持隊の前提が崩れた場合の各国の対応といいますのは、それに武器を持って抵抗するということではなくて、今先生は看過という言葉を使われましたけれども、まさに戦わない、戦わないでこれは前提が崩れたから任務を一応中断しようということで対応してきているというのが私たちが調べた過去の例としてはあるわけでございます。
  280. 岡野裕

    ○岡野裕君 それならば、我が国PKOとして派遣をされる皆さんが丸腰で行くのか、多少の武器を持っていくのかというような問題があります。そういう意味合いからしますとい武器使用と武力行使なんてことがいろいろこんがらがってくる皆さんもないわけではないと思うのでありますが、やはりPKOは未開の土地に行く場合もあると思います。    〔理事下条進一郎君退席、委員長着席〕先般のように、まことに残念でありますが、ペルーで非常に平和的な一般の仕事をしていた方が御不幸になったというようなことがあるとすれば、未開の土地に行く多少のその準備もしなければいけないのではないかなと思います。そういう意味合いで、武器あるいは武力武器の使用、武力行使、この辺ははっきり区別がついているのだと思うのです。  私は素人であります。しかしながら、装備の方の装甲車、あの装甲車は雲仙・普賢岳で随分活躍したなあ、こう思うのでありますが、武器というのは、ここにピストルがある、ここに小銃がある。それを使う場合にも、ドンと一発撃ってそれで終わりということだと思うのです。だけれども武力行使ということになりますと、今言ったような武器のほかにもっともっと大きな力を発揮する武器みたいなものがあって、それらの武器という物的なものと、それを使う人的なものとが総合化され、一体化され、そうして継続をされる、戦闘行為になる、これをもって武力行使と言うのであって、今私が言いましたような武器の使用というものは全然違うのじゃないのか。  本当に平和安寧の模範国だ、治安では文句なしたと言われている日本でも、お巡りさんはけん銃を持っているわけであります。犯人を撃つためではありません。持っていることによって犯人に襲われない。万が一撃たなきゃならぬ場合にも空に撃つんだというようなことがいろいろあるとするならば、我々は未開の土地に行くのにある程度の武器を持っていくのが(「ペルーは未開の土地じゃないよ、そんな失礼な言い方して」と呼ぶ者あり)ペルーを未開の土地だと申し上げたつもりはありませんが、そういうふうにとられましたら申しわけありません。日本は一生懸命ペルーの開発、ペルーの経済のために努力をしているわけであります。  要するに、戦いは終わったけれどもそういうところに行く。小さな武器だと思うのでありますが、どういう武器なのか、武器の使用と武力行使はどう違うのか。いずれともあれ、相手は戦争をやっていた国ですかも、戦車もあり、ミサイルもあると思う。そういうところに我々はピストルや機関銃しか持っていかないということであれば、向こうから撃たれて抵抗するのはやめた方がいいから中断だということがあると思うのでありますが、素人であります、武器の使用、武力行使につきまして御答弁をいただければありがたいと思います。
  281. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。    〔委員長退席、理事下条進一郎君着席〕  このPKOにおきまして、武器の携行か必要であるということにつきましての御指摘、先生の御指摘のとおりだと思います。  それで、この法案におきましては、法案の二十四条におきまして、要員の生命または身体の防衛のために必要最小限のものに限って武器の使用を限定いたしておるわけでございます。基本的には、こういった要員の生命あるいは身体の防衛というのは、いわばみずから自己保存のための自然権的な権利ともいうべきものであるというふうに認識しておりまして、そのために必要最小限のものとして法案の二十四条に規定をしております武器の使用は、憲法第九条で禁止されております武力行使に当たるものではないということでございます。  この点につきましては、衆議院におきまして九月二十七日でございますが、政府統一見解としてはっきりと御説明申し上げた経緯がございます。
  282. 岡野裕

    ○岡野裕君 先ほど矢田部委員からも武器の使用、武力行使、いろいろなお話が出ているわけでありますけれども武器を使用するというのはこういうような場合であり、その武器はこの程度のものだというお話をいただきましたが、やはり今お話をしたような雰囲気の中でPKOの仕事を務めるとするならば、武器はどういうときに撃っていいのかというような点について、これは細かな訓練というものを十分徹底させる必要がある、こう思うのであります。  一体、武器の使用というものはPKO世界的な歴史の中でどのぐらいあるのか。私が聞いているのは、オーストリアはもう二十年も参画しているけれども、いまだ一発のピストルも撃ったことがないとかというのを小耳に挟んでおります。武器が実際に使用されたというような例は一体どの程度あるのでありましょうか。
  283. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 武器が使用されたケースを必ずしも数えておりませんので、数字的に申し上げることは難しいわけですが、全く使用されたことがないということは、それはないと思います。やはり状況によって、例えば国連の「ブルーヘルメット」を読みましても、例えば百五十六ページだったと思いますけれども、PKF側がやむなく応戦せざるを得なかったという例示がされておりますけれども、そういうケースがあることは事実でございます。そういう中で、残念ながら死傷者が出たことも客観的な事実だと思います。  他方において、しかし、そういうことが日常茶飯事かといいますと、むしろそれはそうでない側に属するのではないかというのが過去のPKFの歴史が示しておるところでございまして、先生も今おっしゃったように、例えばオーストリアは十八年間にわたりましてこういう活動に携わってきておりますけれども、一度も発砲したことがないと言っております。  それから、先ほどから先生がUNIFILに例をとってお話をしておられます。実はフィンランドはこのUNIFILに参加しておりますけれども、小銃によりまして警告射撃をしたことはあるけれども、実弾を人に向けて撃ったことはないと言っております。それから、イタリアにつきましても、実際に武器使用を行ったケースはない。それから、ポーランドも、こういういろんなことに参加してきたけれども、一度も銃火を交えたことはないということでございまして、現実に武器が使用されるというのは、どちらかといえば少ないケースの方に属するのではないかというのが私たちの持っている印象でございます。
  284. 岡野裕

    ○岡野裕君 一発も撃ったことがない、また人に向かって撃ったこともない、長い経験がある国でも、そういうようなことが多いということを伺いまして、我々は、PKOというのは本当に法律に書かれてあるような歴史というものを持っているのだな、その輝けるPKOの歴史の中に我々も参画をする、ああ本当にいいな、こう安心をしたわけであります。  まだ私、質問を非常に準備しているわけでありますが、全体のテンポがおくれております。きょうの私の質疑はこれをもって終わります。あしたまたお世話さまになりますが、委員長、よろしくお願いをしたいと存じます。
  285. 下条進一郎

    ○理事(下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、明六日午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会      —————・—————