○岡野裕君
総理から
お話をいただきまして、感銘深く拝聴をしていたところでございます。
本当に
日本はいろいろなお国の皆さんから手を差し伸べていただいて、今やGNPは
世界の一四%を占める、一人当たりの国民所得でも二万二千ドル、アメリカを抜いたのではないかというようなことであります。そういうようになったのであれば、外国の皆さんから手を差し伸べていただいたんだ、もう御恩返しをする時期だ、こんなふうに思うわけであります。
ただしかし、国民の皆さんの中には、そんなに金持ちになったの、さっぱりその実感が伴わないよ、いや、ペブルビーチも
日本が買った、あるいはロックフェラーの建物も買った、ゴールドコーストも
日本だと、いろいろ言われるけれ
ども、それは企業のことだよ、私
たちはどうも豊かだなんていう実感は全然感じられないというような声が間々あることも事実だろう、こう思うわけであります。もちろん、これらの皆さん、若い皆さんが多い。若い皆さんは大きく物を
考える、したがってそうだと思うのであります。
例えば、ちょっと前の写真を見てみるとどうかなと思うのであります。私が写真を見ようということになりますと、まあ三十年ぐらい昔の写真も、あの黄色くなっちゃったようなセピア色の写真があります。私は、きょうここにおいでであります渡部恒三先生の福島県、官房
長官加藤先生の山形県、東北で若いころを過ごしたわけでありますが、その昭和三十年ごろの写真を見てみますと、がたがたした戸をあけます、中へ入ります、そうすると土間であります。そこには、へっついであります、かまどであります。というようなことで、よっこらしょということで座敷に上がるならば、その座敷は古畳であります。あっちこっちささくれ立ったりなんぞしています。真ん中にちゃぶ台があります。田名部農水大臣の津軽塗じゃありません。会津塗でもありません。もう古ぼけ
たちゃぶ台。丸い小さなちゃぶ台。それを取り囲んでいる家族の皆さん。着ている姿は、これはやっぱりだぶだぶの着膨れをしたような、ださいといいますか、そういうような服装です。それで食べている物は一汁一菜。今の皆さんじゃ何のことかわからないと思いますが、そんな写真があるわけです。
だけれ
ども今日は、私の田舎なんかでも、ぎしぎしの引き戸じゃない、ドアをあげれば土間はありません。へっついどころじゃありません、ちゃんとしたびかぴか光ったステンレスのキッチンセットといいますか、というようなものであります。よっこらしょという座敷、和室もありますが、洋室もあるというようなことになりました。三点セットのきれいなソファーもある。周りには電蓄、電蓄じゃありません、ステレオ、大型のテレビ、いろいろなものがある。すき間風が吹いて寒かったふろ場、そんなものじゃないというようなことであります。
今、三十年前と今とを比べました。同じ
日本の中で比べたわけでありますが、外国と比べてどうだろう。このごろは、若い諸君も
海外にどんどん旅行に出られる。
海外渡航者一千万人を超えたのであると。行かれますと、これはやはりグルメということで、非常に立派な物を食べると同時にブランド物をどんどん買い込んでこられるということになりますと、古写真と比べるんじゃない、外国の国々と比べても我々は豊かだなと。ハワイにはアメリカ本土の皆さんも行きます、
日本の皆さんも大勢行きますけれ
ども、一人一人がどのくらい買い物をするか。アメリカの本土から来る皆さんの五倍ぐらいのお金を出して立派な物を買うというようなことであります。もっと、アフリカだとかああいうところへ行きますならば、これは飢餓もある、
難民もあるというようなことであります。というようなことからしますと、やっぱり豊かだなということを、今
お話をしたようなことをネタにしてかみしめていただければわかるのではないか、こう思うわけであります。
そういう
意味合いで、お金がちゃんとたまってきた、そういうことで家もできた、服装も立派になった。周りの皆さんから見ても、あれは紳士だな、淑女だな、こう思われる方が、なったにもかかわらず、しこしこと自分だけでへそくりをため込んでいる、自分だけうまい物を食べているというようなことでは社会の皆さんかどう見るだろうか。そういうふうになるならば、やっぱりボランティアをするんだと。社会のもろもろの
要請にこたえて我々も出ていくんだというようなことがあって初めて周りの皆さんからも立派なお方だと、こう思われるのじゃないかと思います。
私は自分の卑近な周りの例を言いましたけれ
ども、今、
日本は
国際社会における
日本であります。
国連の非常任理事国にもなったということであります。そうだとすれば、いろいろお世話になった恩返しをせにゃいかぬということと同時に、そうではない、やはり
日本がこれだけの大きな力を持つようになった、かつてアメリカがくしゃみをすれはこっちが風邪を引くと言っておったのが、このごろは、
日本がくしゃみをするといろいろだと言われているわけであります。
そういう
意味合いで、恩返しのほかに、我々が持っているその地位、外国の皆さんから見られているその姿、これをみずから自覚して、その自覚に基づいて我々は国際場裏の中で何をかやらねばいかぬ、そういうような現状にあるのではないかと思いますが、
総理、申しわけありませんが、もう一遍いかがでございましょうか。