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1991-12-16 第122回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月十六日(月曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 浜田卓二郎君    理事 塩崎  潤君 理事 鈴木 俊一君    理事 田辺 広雄君 理事 星野 行男君    理事 与謝野 馨君 理事 小森 龍邦君    理事 鈴木喜久子君 理事 冬柴 鐵三君       愛知 和男君    石川 要三君       上草 義輝君    奥野 誠亮君       亀井 静香君    高橋 一郎君       武部  勤君    渡瀬 憲明君       小澤 克介君    清水  勇君       常松 裕志君    井上 義久君       中村  巖君    木島日出夫君       中野 寛成君    徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田原  隆君  出席政府委員         法務大臣官房長 則定  衛君         法務大臣官房司         法法制調査部長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省保護局長 古畑 恒雄君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         法務省入国管理         局長      高橋 雅二君  委員外出席者         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       荒賀 泰太君         労働省職業安定         局業務調整課長 吉免 光顯君         労働省職業能力         開発局海外協力         課長      南本 禎亮君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       大竹 邦実君         会計検査院事務         総局第二局司法         検査課長    西村 七夫君         最高裁判所事務         総局人事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局経理局長  仁田 陸郎君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         法務委員会調査         室長      小柳 泰治君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十六日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     上草 義輝君   熊谷  弘君     高橋 一郎君   坂本三十次君     渡瀬 憲明君   岡崎 宏美君     常松 裕志君   倉田 栄喜君     井上 義久君   大内 啓伍君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     奥野 誠亮君   高橋 一郎君     熊谷  弘君   渡瀬 憲明君     坂本三十次君   常松 裕志君     岡崎 宏美君   井上 義久君     倉田 栄喜君   中野 寛成君     大内 啓伍君     ――――――――――――― 十二月九日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇号)  裁判官育児休業に関する法律案内閣提出第  一三号) 同月十六日  夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改  正に関する請願児玉健次紹介)(第一二五  八号)  同(辻第一君紹介)(第一二八五号)  同(吉岡賢治紹介)(第一二八六号)  同外一件(日笠勝之紹介)(第一四一〇号)  同(東中光雄紹介)(第一四一一号)  同(宮地正介紹介)(第一六三四号)  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願児玉健次紹介)(第一二五九  号)  同(大畠章宏紹介)(第一二八七号)  同(辻第一君紹介)(第一二八八号)  同(長谷百合子紹介)(第一二八九号)  同(大出俊紹介)(第一四一二号)  同(還藤乙彦紹介)(第一六三五号)  夫婦別氏・別戸籍の選択を可能にする民法・戸  籍法改正に関する請願岡崎トミ子紹介)  (第一二六〇号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する請  願(倉田栄喜紹介)(第一四一三号)  非嫡出子差別を撤路する民法等改正に関する  請願岡崎宏美紹介)(第一四一四号)  同外四件(田中恒利岩紹介)(第一四一五号)  同(常松裕志紹介)(第一四一六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月五日  死刑廃止に関する陳情書  (第八号)  刑事施設法案等の反対に関する陳情書外二件  (第九号)  司法改革に関する陳情書  (第一〇号)  は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇号)  裁判官育児休業に関する法律案内閣提出第  一三号)      ――――◇―――――
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所泉人事局長仁田経理局長島田刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
  4. 浜田卓二郎

    浜田委員長 内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判官育児休業に関する法律案の各案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣。     ―――――――――――――  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する   法律案  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する   法律案  裁判官育児休業に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 田原隆

    田原国務大臣 まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。  政府においては、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会に一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても一般政府職員の例に準じてその給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員についてその俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じてこれらの報酬または俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与等に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与の改定は、一般政府職員の場合と同様に、平成三年四月一日にさかのぼってこれを行うことといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。  次に、裁判官育児休業に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  政府においては、最近における女性の社会進出家族形態変化等に伴い、育児と仕事の両立を図る施策への社会的関心が急速に高まり、育児休業制度の普及が進みつつある現状にかんがみ、一般職国家公務員等について育児休業制度を導入するため国家公務員育児休業等に関する法律案を提出しているところでありますが、裁判官についてもこれと同様の趣旨育児休業制度を導入する必要があります。  この法律案は、裁判官について育児休業制度を導入するための法整備をしようとするものでありまして、その要点を申し上げますと、第一は、一歳に満たない子を養育する裁判官は、最高裁判所承認を受けて、その子が一歳に達するまでの期間内において育児休業をすることができることとしております。その承認請求は、育児休業をしようとする期間の初日及び末日を明らかにして最高裁判所に対してするものとし、請求を受けた最高裁判所は、原則としてこれを承認しなければならないこととしております。なお、育児休業期間の延長の請求は、原則として一回に限り、これを認めることとしております。  第二は、育児休業の効果として、育児休業をしている裁判官は、裁判官としての身分を保有するが、報酬その他の給与を受けないこととしております。  第三は、当該育児休業に係る子が死亡した場合等一定の場合には、育児休業承認は失効することとするとともに、最高裁判所は、裁判官育児休業承認の取り消しを申し出た場合等一定の場合には、その承認を取り消すこととしております。第四は、裁判官は、育児休業理由として、不利益取り扱いを受けないことを明らかにしております。  第五は、退職手当に関する育児休業期間取り扱いについて、所要の規定を整備することとしております。  以上が、この法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木喜久子君。
  8. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 社会党の鈴木です。  まず、裁判官検察官報酬等また俸給等に関する法律の一部改正案について伺います。  裁判官の方の十五条、それから検察官の九条という規定がございます。この規定趣旨を簡単に御説明いただけますでしょうか。
  9. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 裁判官報酬法十五条におきましては、判事及び簡易裁判所判事報酬月額につきまして、いわゆる符号という措置を講じているわけでございます。検察官につきましても、九条におきまして、副検事俸給につきまして符号規定を設けているわけでございます。  この規定趣旨は、判事につきましては、一号の上に符号を設ける、簡易裁判所判事、副検事につきましても、一号の上に符号を設けるということでございますけれども、まず判事につきましては、判事一号と検事一号、これは同額になっているわけでございますけれども検察官よりも定年が二年長いというようなことを考慮いたしまして、特に経験の深い判事については一号よりも上の特別の給与を支給するのが相当であるという裁判官が存在するということから、この符号規定が設けられたというふうに承知しております。  また、簡易裁判所判事、副検事につきましては、それらの者の中には、その経歴等に照らしましてこの一号の額を超える額の報酬あるいは俸給をもって遇するのが適当であると認められる者がありますので、そういう優遇措置として特別の俸給額を支給することができるということにしたものでございます。そのように承知しております。
  10. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 いずれも、要するに裁判官でも一号よりももっと特に経験を積んでいる方がおられる、そういうことで非常に専門的にもっと優遇をすることが必要な場合には、一般公務員に比べますと非常に大きな額を支給するということになっている。そこの説明としては、ただ単に、裁判官の中に特というのがあって、よりももっと上にあるのだ、副検事についても同じだ、簡判の判事さんについても同じだ、そういうふうな御説明だけで、ほかの公務員とは違って特にこういう制度裁判官検察官にどうしてあるのかなということがちょっとわからなかったものですからお聞きしたのです。  こういう特別に裁判官検察官という司法に携わる人にこういった形で優遇措置をとっておられる、これは、司法の権威を守り国民信頼を守るためには私も必要なものではないかと思いますし、今回の報酬等に関する法律の一部を改正することについて決して異議を申したいわけではないのですが、ただ、裁判官検察官というのは特別な職務であるがゆえに、一面、何といいますか、非常に不利益と私たちなら思えるようなことがあるのではないか。特に裁判官検察官について時間外の勤務、例えば休日の出勤であるとか残業であるとか、または宅調といって御自宅でいろいろ裁判書の起案などをされることがあると思うのですけれども、こういったことについて手当というものが出ていないというふうに聞いているのです。それなんかはいかがなものでしょうか。例えば裁判官というのはなぜこういうものが出ないのだろうかというふうに思うのですけれども
  11. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、裁判官につきましては、超過勤務手当でございますとか休日給といったものは支給されないということになっております。これは、裁判官職務というものは必ずしも時間単位でとらえることができない。例えば令状事務でございますとか保全事務、そういったものにつきましては、休日でございましても必要に応じて処理をしなければならない、時間外においても処理をしなければならないという性質のものでございますために、時間単位勤務というものを捕捉することができないということから、時間単位で観念するそういった時間外の勤務に対する手当というものはこれを置かないということにしているわけでございますが、ただ、実質におきましては、従来から御説明申し上げておりますように、裁判官報酬の額というのは、一般行政職一般政府職員に比べまして相当優位な額ということで定められておりまして、その中には、そういった勤務特殊性を考慮して、いわゆる超過勤務手当といったような性質のものも織り込んだ上で報酬月額が定められているわけでございます。そういったものも含めて考えた上で、なおかつ裁判官報酬については一般政府職員よりも相当優位な状況を保っているわけでございます。  そういうことで、そういう手当が支給されないということによって特別に裁判官勤務が過酷な状況に置かれているというふうには、私どもとしては承知していないところでございます。  なお、今回、一般職国家公務員給与法の改正におきまして、管理職員特別勤務手当というものが新設されることとされておりますけれども、この制度が新設されますと、裁判官につきましてもこれに準ずる形でそういった特別の休日ロの出勤に対する手当が支給されるという運用になるものと承知しております。
  12. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 報酬は大変優位になっているから、だからその勤務特殊性でどこへ出ていくのもそれはその中に織り込み済みだというようなことになるのでしょうか。御答弁ではそうなると思うのですけれども、非常に合理的ではない形だと思うのです。例えば先ほどの令状でありますとか、そのほかいろいろな時間外があると思いますけれども、だからといって、そういうものを時間外勤務の時間給として考えることだって決して不可能ではないわけです。優位を保つというのは、もう少し違った、法曹に属する方々のいろいろな意味での、何といいますか、品格であるとか、または決して悪いことをしてはいけないものであるとか、そういうことのための担保ではないかと私などは思っていたのですけれども、ただ単に時間外勤務織り込み分であるというふうには私は考えられないし、そうであるとすると、その点とごちゃごちゃになって非常に合理的ではないのではないかと思います。  例えば出張した場合の旅費特別手当というような、日当みたいなものとか、そういうものはやはり出ないのでしょうか。
  13. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 裁判官に関しまして、事件の出張でございますとか、あるいは本庁から支部へてん補をする場合でございますとか、そういう場合には国家公務員旅費法によりまして、旅費あるいは日当等が支給されることになっております。
  14. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 そこでは日当というものが出るのですから、実際問題として休日に出るものというようなものもこれから考えていかれた方が、大いに予算もたくさん獲得されてやっていった方がいいのではないかと私は思います。  というのは、そういうことがないためなのでしょうかどうでしょうか、いわゆる水増し、または空出張ということについて、十一月三十日、十二月一日付の新聞等によっていろいろと裁判所の中のことが報道されました。平成二年度一年間で千六百件にも上って、千九百七十万円だという。それが水増し、いわゆる空出張というのでしょうか、そういうことであって、しかもその中には裁判官も約百人ほど含まれているんだ、そしてまたその次の新聞では、四地・家裁所長も入っているし、それから事務局長ども受け取った中に入っているんだ、こういうようなことが知らされているわけです。  千六百件で千九百七十万円ですから、平均しますと、一回で一万ちょっと、一万ちょっとのお金が多いか少ないか議論はありますけれども、しかし、そういうことで非常に不名誉な、裁判所の信用を傷つけるような形が、いわゆるこういった空出張ということで大きく宣伝をされているということにかんがみますと、この一万円という額でこういうことになってしまうというのは、私は裁判所に対して非常に残念な思いがしてならないわけです。  こういった形で、法を守るべき裁判所がその法を犯してといいますか、こういうことになっていくというこのこと自身、まずごまかすこと自体、これは絶対おかしい、不正行為であるけれども、法に対する信頼を大きく世間に失わせるという意味でも非常に大きな影響をもたらすことだと思うのですけれども、この点については最高裁としてはどうお考えでしょうか。
  15. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 裁判所におきます旅費経理に関しまして適正を欠く事実がありましたことは、まことに遺憾なことでございまして、申しわけないことと考えておるところでございます。裁判所といたしまして、会計検査院指摘を厳粛に受けとめておるところでございます。  御指摘を受けました金額につきましては、十一月末までに全額国庫に返納いたしまして、さきに、速やかに関係者の処分をする旨言明したところでございます。  裁判所に対して今まで寄せられました信頼を大きく裏切る結果になりましたことは、重ねて申しわけないことだと考えております。そういうことで、私どもとしましては、最高裁判所裁判官会議の命を受けまして、二度とかかる事態が生じないように厳正な予算執行を行うなど、職務執行に万全を期し、国民信頼を回復するよう努める旨の最高裁判所事務総長の通達を既に発出いたしまして、今後こういうことがないように内部監査充実等に努める所存でございます。
  16. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 刑事局長いらっしゃいますのでちょっと伺いたいのですけれども、これもいわゆる刑法上の問題になるんじゃないかと思うのです。横領とか背任とか詐欺とか、大きく言いますとそういう問題になると思いますけれども、この点だけまず伺っておきたいと思います。
  17. 井嶋一友

    井嶋政府委員 突然のお尋ねでございますが、構成要件というような形から見ればおっしゃるようなことになるのかもしれませんけれども委員御案内のとおり、犯罪というのは、それをやる気になって何かをやるということでありまして、形としてそういうことがあるということと違うんじゃないかと思います。いずれにいたしましても、事実関係を私はっきり知りませんし、またこれを判定するのも、言うなれば私どもでなくて捜査機関でございますから、余り深入りした御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  18. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 この問題については、厳密に言えばそういうことになるし、一人一人の金額、一回一回の金額は確かに一万円くらい、もしかしたら可罰的違法性がないかあるかという問題になるかもしれません。しかし、全部を合わせますと二千万円ぐらいのものになるわけですから、非常に大きな問題ではあるわけです。しかもそれが集団的になされたということになりますと、非常に大きな問題になってくるんじゃないかと思います。この点は先ほどの最高裁の御答弁もありましたように、これから先は絶対にこういうことのないように十分にやっていただきたいと思うのです。  しかし、どうして会計検査院でこれがわかってきたのか。なぜこれがばれるのか。普通ならば、行ってきましたよ、泊まるところを泊まらずに帰ってきましたよということでも、泊まりましたと言えばそれで済んでしまうのではないかというふうに思うのですけれども、その点、どうして会計検査院はわかったのでしょうか。
  19. 西村七夫

    西村会計検査院説明員 お答えいたします。  裁判所から毎月提出されてございます前渡資金出納計算書証拠書類というものがございます。そのうちの職員旅費請求書につきまして調べましたところ、近距離出張につきまして宿泊をとっている者がかなりございました。そこで、各裁判所に出向きましてその実態につき精査いたしたものでございます。
  20. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 聞くところによりますと、近距離というのは、東京を中心として考えた場合には千葉とか横浜とか宇都宮とか、そういうところだというふうにお聞きしています。そういう近距離が多いということでわかったということなんですが、これは本当にその個々人の懐に入ってしまったということなんでしょうか。それとも名目的にそういうことになって、例えば裁判所や何かでほかに使わなければならないことがあるときのものにプールをするというか、そういう形になっているのですか。いろいろな職員やら裁判官やら、そういう一人一人の懐に入ってしまったということなんでしょうか。
  21. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 どのように使われましたかについては個々には十分に把握はいたしておりませんけれども、緊急に帰庁しました際の特急の料金ですとかタクシー代でございますとか、あるいは旅行の雑費等に充てられたというのがほとんどでございまして、プールをして別途の用に供するというようなことはございません。
  22. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 しかも、これについてもう一つわからないのは、平成元年以前には本当にないのですか。要するに、平成二年だけ特にこういうことがあって、平成元年や昭和六十三年や六十年代とか、そういうところにはこういうことはなくて、平成二年だけ裁判所でこういうことが行われたということなんでしょうか。
  23. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 平成元年度以前につきましても多くの庁が会計検査院実地検査を受けておりますけれども旅費予算運用について検査院から指摘を受けたことはございません。また、平成元年以前の状況につきましても内部監査を実施しておりますが、その過程では不審な点は見当たりません。今回改めて調査をするということになりますと、日時の経過もございまして書類の整合が非常に難しいとか、あるいは職員が既に退職をしたり転勤をしたり尊いたしておりまして非常に困難な状況にございますが、可能な範囲で調べました限りでは、特に今のところ問題となる状況は見当たらないというように考えております。
  24. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 非常に不思議な気がしますね、平成二年だけあったということは。  これは会計検査院の方にも伺いたいのですけれども、先ほどの近距離出張で泊まるのが非常に多かったということで、どうしてだということから端緒があったということなんですけれども、そうすると、平成元年とかその前の年は、そういった帳簿や伝票等はそのときには検査されていなかったということなんでしょうか。
  25. 西村七夫

    西村会計検査院説明員 私ども毎年検査をやっておるわけでございますけれども平成二年につきまして特に旅費の検査を重点的にやったということが一つの理由でございます。
  26. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 わかりました。特に検査をしたから出てきたんだ、特に検査をしないときは出てこないんだというふうに私は今のお答えを伺います。そうしますと、これまでの間ということについても疑問をぬぐうことはなかなかできない問題だと思います。ですから、今後こういうことがないように、またこれは毎年検査していただかなければならないし、そうしていかなけれはこういった問題はなかなかなくなっていかないと思います。  また、これは裁判所に限ったことではなく、各省庁それぞれでやはり同じような問題を、前にも、もう十数年以前にもこういったことでもう二度と繰り返さないというような答弁があったと聞いておりますけれども、そういったことが他の各官庁でも行われているのかいないのか、その点についても、これからの会計検査院の肩にかかっているわけでございますから、しっかりとよく検査をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、これは伝票があって、確かに横浜じゃ通勤圏でおかしいじゃないかというようなことが出てくるのですけれども、全く行っていない空出張というのはどうやったら探ることができるのですか。これを会計検査院の方に一言伺いたいと思います。
  27. 西村七夫

    西村会計検査院説明員 私ども毎年検査をやっているわけでございますけれども、全く行っていない出張を見つけるのは非常に難しゅうございます。  と申しますのは、出張命令あるいは出勤簿その他につきましては必ず整備するものでございますので、そのようなことを発見することは、こう言ってはなんですけれども、不可能に近いと言った方がよろしいかと思います。
  28. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 わかりました。  ですから、そういう形のときはもう本当にお手上げたと思いますけれども、そこまでの疑惑を国民に持たせることのないように、これから先しっかりとしていっていただきたいと思います。  報酬が非常に多額に支払われるような、そしてそういうことで法のきちんとした信頼を守っていこうという、そういった形をとられている裁判所裁判官のところでこういうことが起こったということは、しかも一回の金額が一万円強だということで、私は何か非常に悲しくなってしまうような気分がいたします。これからぜひ汚名の挽回をしていただきたいと思います。  この点に関しまして、法務大臣、どう思われますか。
  29. 田原隆

    田原国務大臣 公務員一般の問題にも共通することでございますので、厳正に事務を進めていくようにしなければならない、そういうように考えます。
  30. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 何かちょっと頼りないお答え、ただ厳正に進めていく、当然ですけれども、もう少しこの問題に腰を入れて取りかかるという姿勢をはっきりと示していただきたいと思います。  時間の関係で次の問題に行きます。  裁判官育児休業法についての問題でございます。  国家公務員、また地方公務員の場合も、この育児休業法の適用ということで同時にいろいろと審議がされているところですけれども、この中で、裁判所裁判官の場合と比較しますと、幾つか国家公務員等の場合と違う部分が出てきます。これについて伺っていきたいんですけれども、まず、育児休業に伴う臨時的な任用ということがなされていない、これはどういうわけでございましょうか。
  31. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、一般国家公務員育児休業制度におきましては、育児休業をとった場合の対応として「臨時的任用を行うものとする。」という規定が用意されておりますけれども裁判官育児休業法においてはそのような規定を設けておりません。これは、裁判官は非常に強い身分保障がされておりまして、任期が十年とされており、その任期中は、裁判官弾劾法でございますとか裁判官分限法でございますとか、そういった手続によらなければ解任されないという強い身分保障がございます。したがいまして、裁判官を臨時に任用するということが不可能でございますので、そういう規定を置いておらないわけでございます。したがいまして、育児休業をとった後の職務につきましては、他の裁判官をもってこれを穴埋めしていただくという運用をお願いするほかないわけでございます。
  32. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 そうしますと、こういうものだから臨時というのがないんだというふうに言われますと、なかなか裁判官は休みにくいのじゃないかと思うのですね。もう一つ、育児休業の短縮というんですか、育児休業を自分の方からもう要らないというふうに言えば途中で取り消しの申し出ができるということが、これも裁判官だけに特別にあるわけですけれども、これと一緒にしますと、どうも、いろいろなところから補てんされてくる裁判官によってやられる、また、そっちのどこかの、回されてきた裁判所の向こう側の方は非常に手が足りなくて困っている、そういう状況が見えてくると、なかなか育児休業ということで休業をとりにくいんじゃないかというふうに思うんですけれども、この取り消しの申し出ということも裁判官だけに規定されているところですので、この点と相まって非常に問題の多いところじゃないかと思います。  もう一つ、部分休業に対する規定というものがありませんから、例えば午前中だけ休ませてほしいという言い方はできない。丸々一日それならば育児休業しちゃいなさいという形になっている。そこがまず一つあると思います。  取り消しの申し出ができるということ、部分休業がないということ、この点も裁判所特殊性ということで認められるとお考えでしょうか。
  33. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず取り消しの申し出でございますが、法案の五条二項の第一号といたしまして、育児休業をしている裁判官から承認の取り消しの申し出があった場合は、最高裁はその承認を取り消すものとするという規定を用意しております。  この規定を設けました趣旨は、裁判官の身分保障という趣旨にかんがみて、一たん期間を定めて育児休業をとりました場合にも、途中でその必要がなくなったあるいは勤務に復したいという希望を持った場合にはいつでも自由に職務に戻れるということを確保しよう、その方が適当であるという判断に基づいて導入した規定でございまして、決して、これによってできるだけ早く復職するように慫慂しようという趣旨でつくったものではないわけでございます。御指摘の、裁判官育児休業をとりにくいかどうか、あるいは一たんとっても一日も早く戻らなければならぬというような雰囲気になるかどうか、これは、この制度趣旨に対する裁判所あるいは裁判官一般の理解、それから育児休業を必要とする裁判官の意識、そういった問題、そういったことについては、この法律趣旨が十分に生かされるようなそういう雰囲気づくりの運用に努めていただきたいというふうに考えている次第でございます。  次に、部分休業の御指摘がございましたけれども、この部分休業制度、一日の勤務時間のうちの一時間とか二時間とか一定の時間を限って育児のための休業をとる、その間は時間割りで給与を減ずる、こういう制度一般職国家公務員育児休業制度については設けられているわけでございますが、御指摘のとおり裁判官についてはこの制度を設けておりません。  この理由は、先ほどちょっと触れましたように、裁判事務というものは、令状事務とか保全処分事務など緊急の事態には直ちに対応する必要があるというものもあります関係で、夜間等の一般勤務時間外におきましても対応することが要求される場合も少なくない、そういった特殊性を持っていもわけでございますので、裁判官については、その勤務を時間単位でとらえる、あるいは時間単位報酬というものを観念するということが困難でございます。そういうことから、先ほども指摘ありましたように、時間単位勤務というものをとらえる超過勤務手当というものは裁判官には支給されないということになっているわけでございます。  そういうことでございますので、勤務しない時間に対応して給与額を減額する、こういう部分休業の制度裁判官職務特殊性からくる勤務体制、報酬等の体系にはなじまないということから、最高裁事務当局とも御相談しました上、裁判官についてはこの制度は導入しないということにいたしたわけでございます。
  34. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それではお答えになってないような気がします。  というのは、事実上休みがとりづらいかどうか、またはとっても、またそれをどうしてもやはり取り消すと言わざるを得なくなるかどうかという、その判断をするというのは、裁判官特殊性特殊性というだけでは考えられないところじゃないかと思うのです。発想が逆から来ているような気がするのですね。やはり、子育てをする、育児のために必要な期間は男性も女性も育児のために休業することができるということを一番わかっていただきたいのは最高裁そのものであって、裁判官自体であるとか、そちらの自覚の問題ではないと思うのです。とって、そこで育児をするということが次の時代を担う子供たちのために必要なことだ、だからこそ男も女もそこでとれるんだということを裁判所自体がよくおわかりいただければ、この問題について裁判官特殊性だけを振り回してこういったことに弾力的に対応ができないということは、非常に私は心外であるというふうに思わざるを得ないのです。この点もよく運用に当たって、先ほどおっしゃいましたようにとりづらいか、やはり取り消しを申し出ざるを得なくなるかどうかという、このあたりの一個一個の裁判官の生活というものをもう少し考えていただいて御配慮をいただきたいというふうに思います。  こういった弾力的な対応ということの中にもう一つだけあるのですけれども、これも他の公務員と比較しますと、復職後の給与の調整という条項がないということになっているのですけれども、これも時間がないものですから簡単で結構でございますが、この点はいかがでしょうか。
  35. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 一般職国家公務員につきましては、御案内のとおり、一定期間良好に勤務したということをもって昇給の要件とするという規定があるわけでございます。いわゆる定期昇給と呼ばれるものでございます。そういう規定がありますために、育児休業期間をその昇給の場合の勤務期間の計算上どうするかという対応をすることが不可欠であるということからそのような規定が置かれているわけでございます。裁判官の場合には、一定期間勤務によって昇給するという規定あるいはそういう規則、そういったものがないわけでございますので、そういうことに対応する規定が必要でないということで規定を置いていないわけでございまして、あとは昇給については最高裁における運用ということにゆだねられているわけでございます。
  36. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 そうすると、最高裁の胸のうちでどういうふうにでも決まるということで、一定期間勤務しても機械的に上がっていかないんだからいいじゃないかということになると、裁判官の場合には、そこで育児休業をとったということによって、裁判所としてだから報酬の値上げということは全くしなくてもいいという判断もあり得るわけです。そうなると、他の国家公務員の場合に比べると非常に不利に扱われることになるんじゃないかと思いますけれども、一言、いかがですか。
  37. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この育児休業法の精神を十分に考慮されて、最高裁において適正な運用をされるものと確信しております。
  38. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 最高裁も今いらしておられますし、ぜひこの点については御配慮をきちんといただきたいと思います。育児休業法の趣旨というものを踏まえた上で、他の公務員や、その他の働く人たちと同じだけの、そうした不利益を受けない、育児休業法の利益というものを享受できるような形にしていただきたいというふうに切に思います。そしてまた、将来的に本法が改正されることが、一応三年後にまた見直しということでいろいろな点で改正をされてまいると思いますけれども、その点についてもやはり同様に、そこで不利益のあることのないようにお願いしたいと思います。  次の問題に移ります。  連日、ここのところ新聞紙上をにぎわしています共和という会社と阿部代議士という問題でございます。九日の予算委員会で社会党の山花委員の方から質問がされまして、そのとき法務省のお答えの中で、捜査の対象としての関心を大変持たれているということが明らかになってまいりました。その後の事件、九日までの間には、一億四千万円が要求された、そしてそれによって要求したうちの一億円が受け取られた、またその後で五千万円慌てて返した、そのあたりのところまでが九日の予算委員会で山花委員の質問のときまでに明らかに、新聞紙上ですけれども、そういうことで明らかになってきたものだと思いますけれども、それからまた報道はいろいろと、だれがどうしたという部分がたくさん報道されています。  その中で明らかになってきたことを全部見てみますと、新聞で見る限り、要するにこのことについて関係者の証言というのは、関係者の重言ですからわからないとしても、御本人のインタビュー、そこでの御本人の回答というものは、きっちりした、それは信憑性のあるものだと思います。その御本人の回答というものも出ているわけでございまして、それから判断をしていきますと、少なくとも政治資金規正法に違反することはもはや明らかではないかというふうに思うのですけれども、この点と、また捜査の開始云々については九日以降いろいうと進展があったのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  39. 井嶋一友

    井嶋政府委員 今委員いろいろ御指摘がございましたように、最近の報道によりますと、その真偽はともかくといたしまして、いろいろ共和をめぐる事実関係が具体的な事実を伴って報道されておるということでございまして、そういった意味におきまして、検察当局もこの報道については十分承知をしておると思っております。  御指摘のように、それに対して検察がどのような対応をしておるか、こういう御質問でございますけれども、検察が一般的に一つの事実についてどのような対応をするかということをこの場において申し上げることは、事柄の性質上いつも差し控えさせていただいておるわけでございますけれども、御指摘のような刑罰法令に触れるようなことがあれば、従来検察は適切に対応してきたわけでございますので、そういった意味で、私どもといたしましてはその対応を見守りたい、このように考えておるところでございます。
  40. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 刑罰法令に触れるようなことがあれば、それから、見守りたい、この点が私たちとしては非常に納得がいかない点でございます。例えば、これはもう刑罰法令には触れるのじゃないか。触れるようなことがあれば、というのは調べてみなければわからないとおっしゃるなら、それでも調べないのか。ここまでいろいろ出てきているのに調べないということはまずあり得ないと思うのです。ですから、あればというようなお答えがまず一つ非常に納得がいかないこと。  それからもう一つは、見守る。見守ってもらっているのでは困るのであって、これは何らかの手を打ってもらわなければいけないので、私たちはじっと見守りますけれども、警察や検察がここでじっと見守ってもらっても、それでは何にもならないのじゃないかというふうに思うのです。特にこれは政治に対する不信感を国民に招かせる問題ですから、これに迅速に対応していただくのが必要なことだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  41. 井嶋一友

    井嶋政府委員 委員既に御案内のとおりと思いますけれども、犯罪の捜査というのは、刑事訴訟法に基づいて適法に集められた証拠に基づいて認定をし、それに法律適用するという作業を行うわけでございまして、それはもう一定の機関に独占的に与えられているものでございます。そういった意味におきまして、私がこの場で、証拠関係も何もわからない状況において、おっしゃるような意味合いでお答えをすることができるのかどうかということは、お考えいただければおわかりいただけると思います。  それから、見守るということでございますけれども、これも、実は犯罪ありと思料した場合に捜査権を発動できるのは捜査機関だけでございまして、法務大臣の補佐をいたしております我々事務当局の者が適切に対応じるということを申し上げること自体やはりできないことでございまして、そういった意味で、行政当局といたしましては、検察、捜査当局の出方を見守るということ以外には申しようがない、こういうことでございます。
  42. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それでは自治省の方に伺いたいのですけれども、政治資金規正法というものの中では、政治団体、唯一一個しかないところに非常に多くのこういった資金が流れていったという事実がある、こういったことで、平成二年の収支会計には偽りがあったというそういった形について、自治省の方の検査というものは、聞くところによりますと、ただ単に計算上縦横の数字が合っていればそれだけでよくて、その中身にまで何も行き渡るわけではないのだというふうに聞いたのですけれども、そうなると、そこでは、自治省のやっている届け出というものについては全く意味をなさないのじゃないかど思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  43. 大竹邦実

    ○大竹説明員 お答え申し上げます。  自治省といたしましては、政治資金規正法上ただいまのような調査権を有するだけでございまして、個々具体的な事実関係調査する権限は与えられておりません。したがいまして、事実関係調査する立場にはございません。これは、法律上の規定といたしまして、行政庁が政治活動に対しまして不当な介入等になることを防ぐために設けられた規定だと理解しております。
  44. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 不当な介入はしてもらっては困ると思うのですけれどもへ、しかし、自治省でやっているそういった報告書の提出等がただ単に縦横の数字を合わせるだけであったならば、この問題は、たまたま共和という会社がほかの詐欺事件を引き起こして、そこでわかってきたからこういった問題が出てくるわけで、そうではなくて、正常な活動をしている会社でこういうことがもしあったとするならばこれは全然目に見えてこないわけだし、縦横の数字が合っているからということでは全く水面下になってしまう。これでは政治資金規正法というのがあったところで絵にかいたもちというか、何の機能もしてこないのじゃないかと私は思うのです。これをもっとガラス張りにするためには、やはりそこで何らかのチェック機能が働かなければいけないのではないかと思うのです。不当な介入はもちろんいけないけれども、正当な介入であるならばこれは必要なことではないか。この点は自治省の方ではどうお考えですか。
  45. 大竹邦実

    ○大竹説明員 政治資金規正法上の調査をめぐりましていろいろ御議論があることは承知してございますけれども、ただいま申し上げましたように、法律上このようになってございますので御理解を賜りたいと思います。
  46. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 こうした問題について、そこもわからない、例えば今言ったように何のために届け出るのか、そういうことが全くわからないときに、検察の方は見守っているということでは、これまたなかなか話が出てこないわけで、この点、検察はいろいろなお立場もあるし、現在お答えいただいた方がそこまでめ権限がないから検察の権限ですとおっしゃればそれまでのことだとは思います。しかし、こういった問題については、ただ単に見守るのではなくて、もう少し積極的な、そして国民の要求に合った形での迅速な捜査を行っていただきたいというふうに切に思うわけです。  そしてもう一つ、これも法の解釈の中で、マスコミとか検察の取り調べ等があって事実がいろいろとわかってきた場合なんですけれども、この場合には公選法上で当選無効ということもあり得るのでしょうね。その点、ちょっと自治省に伺いたいのですけれども
  47. 大竹邦実

    ○大竹説明員 自治省といたしましては、事実関係を承知してございませんので、答弁を差し控えさせていただきます。
  48. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 こういう問題が出てくると、どこの省も、何か差し控えたり、立場上言えなかったり、捜査め秘密があったりで、何も出てこないで非常にいら立ちを感ずるわけですけれども、この問題自身がそういったたまたまの事件の中から出てきたということが私には最も腹立たしいところで、何とかこういう問題も、水面下でなくてチェック機能を働かせるような形でこれからもお考えいただきたいと思うし、私の、そして国民の希望であると思います。  時間が来ましたので、ここで終わります。
  49. 浜田卓二郎

    浜田委員長 小森龍邦君。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  50. 小森龍邦

    ○小森委員 先ほどの鈴木委員との質疑応答での重複部分をなるべく避けさせていただいて質問をいたしたいと思います。  まず裁判官検察官、特に最高裁判所の長官と検事総長の問題でありますが、給料表全体を見ますと、今回の人事院勧告に基づくアップ率が、それぞれの地位におきまして相当な開きがございます。六・五というところもあればあるいは三・五くらいのところもございまして、私は、常識的に言うと、百五十万とか二百万とかの月給をもらっておるところが薄くて三十万とか四十万のところが少し高いというならこれはわかるのでありますが、そこが低くて二百万になんなんとするところが高いというのがどういう意味なのか、その辺よくわかりませんので、そこの物の考え方をちょっと簡単にお知らせいただきたいと思います。
  51. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 裁判官検察官報酬俸給につきましては、これは旧来からそうさせていただいているわけでありますけれども、いわゆる対応金額スライド方式という方式で、一般政府職員の例に準じて引き上げをするという方法をとっているわけでございます。今回、裁判官検察官報酬及び俸給の引き上げの率、これもそれぞれ対応する一般政府職員特別職国家公務員及び一般職国家公務員の引き上げ率に倣って引き上げているということで、御指摘のようなアップ率の違いというものが出てきているわけでございます。そのもとになります一般政府職員俸給月額の引き上げがどういう考え方に基づいてされたのかということは、私どもの所管外でございます。  御案内のとおり、一般職国家公務員給与引き上げは人事院勧告に基づくものでございますし、特別職国家公務員給与の引き上げは総務庁において、一般職給与の引き上げを参考にして行われたものでございまして、どういう考えに基づいてこういうことになっているのかということは、私どもの方からお答えしにくい問題でございますけれども、私どもの承知しているところを申し上げますと、一般職職員俸給の引き上げにつきましては、人事院勧告を完全に実施するという形でされているわけでございます。人事院勧告におきましては、行政職俸給表(一)、いわゆる行(一)でございますが、これにつきましては、民間給与の傾向等に照らして初任給及び若年層の職員の改善に重点を置く、あわせて本省庁の職員を念頭に置いて改善を行う必要があるというふうに言っておられますし、指定職俸給表につきましては、昨年に引き続き、行政職を若干上回る改善を行うものとし、民間企業の役員給与の実態に相応した適切な改善が図られるようさらに検討を進めるというふうに指摘されているところでございます。  また、内閣総理大臣等の特別職職員俸給の引き上げにつきましては、私ども承知しているところでは、特別職職員給与については、給与体系上の均衡を図るという観点に立って、一般職職員、特に指定職職員給与の改善状況を勘案して改定を行う、それから内閣総理大臣等の給与水準につきましては、昭和五十三年から五十七年までその財政事情等から改定が見送られたということから、過去に比べて相対的に低下しているという状況にある、そういった事情を考慮して、指定職最高号俸と同率の改定を行うことにしたのだ、こういうふうに承知しているところでございます。
  52. 小森龍邦

    ○小森委員 余り詳しい数字的議論は、他の問題もございますので、ちょっときょうこの場で私できませんけれども、これは指摘だけさせていただきたいと思います。  簡易裁判所の五というところ、正式にはどういう呼び方をするのか知りませんけれども、副検事の二、四十三万九千七百円のところが三・五%のアップで、金額からいくと一万五千六百円。最高裁長官は百九十八万五千円のところが六・五%上がりまして、十二万九千円上がる。つまりその上がった金額だけを率で計算してみますと、実に八・二倍を超える。では、もとの金額はどれぐらいの差があったのかというと四・五倍である。四・五倍のものが四・五倍の均衡を保つように上げるための是正をしたというならわかるけれども、それが八・何ぼも上がる。不公平なという言葉で、私らのところでは高いところへ土を盛るという言葉で言いますが、高いところへ土を盛ることになっておるのではないかと思いますので、これは私が疑問に思う根拠だということだけをきょうは申し上げておきたいと思います。  それから育児休業法の問題でありますが、第二条の三に、第二条の三だったと思いますが、原則として認めるけれども著しく困難な場合には育児休業を認められない、著しく困難な場合を除くほかというような意味のことが書いてありますが、著しく困難とはどういうことを想定されるか。私は、人間社会において子供を育てるということより大きい課題というものはないと思いますけれどもね。それを職場の事情によってどういう著しい困難な事情というものが想定されるか、この点をちょっと簡単にお答えいただきたいと思います。
  53. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、育児休業法案の二条三項におきまして、最高裁判所は、裁判官から請求があった場合には、当該請求をした裁判官の事務を処理するための措置を講ずることが著しく困難である場合を除いて承認しなければならないということにしているわけでございます。これは、この育児休業制度がその目的の一つとして裁判事務等の円滑な運営を図るという目的を持っている、そういうことの権衡を考慮いたしまして、その事務処理が著しく困難になるという事態を放置することはできないという考え方からこういう規定を置いているわけでございます。  この著しく困難かどうかという判断は、請求を受けた最高裁判所においてこの育児休業制度趣旨、それから事務の実情といったものを総合判断して判断されるものでございまして、私どもとして一概にどういう場合がということを申し上げにくい問題でございますけれども育児休業請求した裁判官の事務を処理するための措置としては、最高裁判所としては、所属裁判所内での裁判官の配置がえ、事件配点の変更、係属事件の配点がえ、そういった措置のみならず、全国的な規模の裁判官の異動をも考慮するというふうに伺っております。したがいまして、請求をする裁判官が十分な期間の余裕を置いて請求をするという運用がされます限り、この例外の場合に当たるといったような事態は一般的には余り考えられないのではないかというふうに考えているところであります。
  54. 小森龍邦

    ○小森委員 くれぐれも最高裁運用、ひとつ恣意にわならないように、客観的に権利が保障されるように計らっていただくことを強く要請をしておきたいと思います。  さて、次の問題は、先ほども鈴木委員の方からいろいろとお尋ねになっておられましたが、裁判所出張旅費をめぐる問題で、いろいろ新聞にも報道されました。そこで、これが国民の疑惑というか裁判所に対する信頼感を低からしめたということはもちろんのことでありますが、私の心配することは、新聞に出たこと、あるいは会計検査院が調べていただいたことにとどまっておるかどうかという問題であります。  そこで、先ほども少しばかり私は鈴木委員の質問に対してお答えになっておるのを聞いておりまして示唆を得ましたが、明確に近距離の場合などの出張旅費についてはおかしいじゃないかというようなことでわかるが、ほかのことはなかなかわかりにくい、こういう意味のお話がございました。それで、最高裁の方とすればもちろん厳格に、それからお調べになって通達も出されたそうでありますが、要するにもっともっと根の深いものを感じて、もっと根っこから解決しなきゃならぬことがおるのじゃないか、そんなお考えはないか。そういうような着眼点といいますか、そういうところにお気づきになっておられないかどうかということを私はお尋ねしたいのであります。  なぜかというと、例えば下級裁判所に対する上級裁判所ですね、地方裁判所に対して高等裁判所とかあるいは最高裁判所とか、そういうところからいろいろな方が地方に出張されて視察をされたときに、これは普通の会社ならそれはいろいろな会社の経費でもてなしをするのでありますが、裁判所ということになると、そういつもいつも自腹でやると、今のように下の方は月給が薄いのでありますから自腹では接待できないしということで、一般的にそういうところで金が要る、やりくりをしておるのではないかと私は思います。また、そういうことが耳に入るのです。そんなことがあるのかないのか、ここを端的にちょっと聞かせていただきたいと思います。
  55. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 委員指摘のとおり今回の事態が根の深い問題でありますかどうか、なお調査をしていかなきゃならないことだというように考えておりますけれども、事態を厳粛に受けとめていることは、これは私ども肝に銘じているところでございます。  ただ、旅費を浮かして別途経理をして、例えば上級庁からの視察のための懇談会費を捻出をする、別途経理でブールをする、こういう事態は今のところ私どもは承知をしていないところでございます。真に必要な懇談等の費用につきましては、別途会議費として認められている予算を示達をしているところでございます。
  56. 小森龍邦

    ○小森委員 実は私も、衆議院に出させていただいてから一回だけ、法務委員会の視察で沖縄の方へ参りました。それで、私も地方議会議員をやった経験もありますし、地方議会議員の場合には、自分のもらうべき金と大体使っておる金を後で事務局で精算してもらって、足りなければ幾らか補てんするし、余れば千円とか二千円とかいう端数は我々の方が受け取るということになるのでありますが、頭の中で計算しながら大体のところこういくのであります。それで、心配だからこの間もちょっと事務当局にどうなっているかなということで、一年も前のことだがどうなっているかなということで調べてもらって、大体委員が心配されることはないという意味のお話でございました。さりとて私は数字的に精査したわけではないのであります。やはり地元の裁判所とか検察庁とか、我々に対してそれなりの一つの対応をしてくれるわけであります。これが国会と裁判所とか、国会と検察庁とかという関係で地元の対応があるわけでありますが、上級裁判所と下級裁判所関係というようなことで行ったときに、そういうことがあってきちっとそれが精算できておるのかどうか、ここを私は言うのであります。  だから、これはその辺のところもはっきりしないと、例えば、きょうは最高裁の偉い人が来られたんじゃいって地元の料亭が、偉い人が来られたんだということは地元の料亭はわかるわけですからね。それで、いや何にもありません。本当に何にもないならいいですよ。けれども何かあって、しかし国民の一部にそんなことがあるということをちゃんといつも頭にインプットしながら言っておるということになったら、それは国会の議論も宙に浮いた、かすり傷みたいな議論をしたことになるわけですからね。だから、我々の方も今度は委員の視察などのときにはきちっとしなきゃいかぬと思うけれども裁判所の方もひとつきちっとやってもらわなきゃいかぬ。そのためにはやはり、今私が言うた根の深いものがあるのではないかというところを、もし根の深いところがあったらきちっと整理をしてかかってもらわなきゃいかぬ、こういうことを思うのです。どうですか、この点は。
  57. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 今回につきましては、旅費について検査院の御指摘を受けたわけでございますけれども委員指摘のとおり、予算の厳正な執行につきましてこれを契機に努力をしたい、そのように考えておる次第でございます。
  58. 小森龍邦

    ○小森委員 努力ではなくてきちっとすることをやってもらいたい。つまり、もう上級、下級の裁判所関係においでそういうことはきちっとしてもらいたい。努力をするなどというような、努力目標というようなものでは国民は承知しませんよ。だから私はきちっとしてもらいたいということを申し上げておるわけでありますから、お答えいただきたいと思います。
  59. 仁田陸郎

    仁田最高裁判所長官代理者 言葉は当たりませんでしたが、委員指摘のとおり、予算執行についてはきちっとしたいと考えております。
  60. 小森龍邦

    ○小森委員 じゃ、ひとつその点はよろしくお願いをしたいと思います。  それから、いろいろ裁判官の問題についてスキャンダラスなことが新聞に報道されております。これはまた別途、こういうことを議論する機会も法案との関係であろうかと思いますから、きょうは時間もありませんから素通りをいたしたいと思いますが、くれぐれもひとつ国民信頼にこたえられるようにかっちりやってもらいたい。裁判官に対してそういう不信感が生まれてきたり、あるいは検察官に対してそういう不信感が生まれてきたらもうこれは全然話にならぬことなんであります。どの事件を事件にしてどの事件を事件にせずに葬ったというようなことについても、国民はもうしっかりした目で見ていますからね。それは先ほど鈴木委員指摘をして、正しくきちっと厳格にやってもらいたいという意味のことであったのでありますが、事件を取り上げる取り上げないということでも、国民は不信感で見ておるところへもっていってまたスキャンダラスな話が出てきたら、いよいよそれは司法信頼というものは地に落ちてしまうわけであります。この点はまた別の機会とさせていただきたいと思います。  そこで、一つ具体的な事実を出しまして、かねてから私が言っておりますやはり人権にかかわることで質問をいたしたいと思います。  実は、元東京高裁部総括判事という経歴の持ち主なんでありますが、今どこへどういうふうに行っておられるのか、弁護士をしておられるのか知りませんけれども、私がこれを問うのは、この前も私ここへ出させていただいて冒頭に申し上げたのは、裁判官というものが果たして人権の感覚というものを持っておるのか、これは正直言いまして、人権擁護局長なんかの答弁というのはもう世間へ出たらへえと笑われるような答弁ばかりしているわけです。結局裁判官が本当に人権感覚を持ってもらわなかったらしっかりした判決を出してもらうことができない、こういうことを常に私は思うのでありますが、この人がこういうことを言っているのですね。一九八九年の十一月十五日の判例タイムズで実にけしからぬことを言っているのですね。  交通事故が最近多くて、むち打ちになったとかならぬとかというところで賠償問題が起きますわな、補償せよ、それは裁判になりますわな。そのことについてどういうことをこの人が判例タイムズの中に書いておるかというと、「この面でも、この頃の話聞くと、どうも非常に変わってきているのではないでしょうか。渡邊富雄教授の論文によると、むちうちは統計的に西高東低だそうですね。医師がそういう診断書書くことに帰するのですが、とにかく関西中国方面で非常に多いのです。例の同和問題と関数関係があるようだというようなことを聞いたこともあります。「取れる所から取れ」という具合らしいですね。」これがもとのその裁判官の言うたことなんですよ。もとの裁判官の。交通事故でむち打ちでもめごとが起きるという関数関係は関西、中国方面に多い。その関西、中国方面には同和地区が多い、だからこんなことになる、こういう意味のことを言っているんですね。  これは、以前裁判官の同和問題に対する学習ということで最高裁にお骨折りをいただいたこともあるわりでありますが、どうですか、こんな感覚で裁判をされたら相手が同和地区というだけで変な判断が出やしませんかね。いつも私ここで問題にするいわゆる自由心証主義との関係の問題ですが、変なことになりませんかね。こんなことがもし裁判の判断になるようだったら私は人ごとだと思いますが、裁判所側はどういうふうにこれをお考えでしょうか。
  61. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  ただいま委員が御指摘になられました論文の著者は八年ほど前に裁判所退職した人でございますし、話をいたしました民事判例実務研究会というのも私的な会合で、私どもは何も関与いたしておりません。したがって、私どもはコメントすべき立場にはないのでございますけれども、事柄の重大性にかんがみまして、あえて個人的見解を述べることをお許しいただきたいと思います。  この論文に書かれておりますことは非常に誤解を招きかねないことでございまして、大変遺憾に存じます。昨年小森委員から人権問題に対する研修の必要性、特にマイノリティーと言われる方々の持っている社会事情なり問題点を勉強すべきであるという御指摘をいただきました。早速私どもの方ではこの研究会を行っております。裁判所職員の研修機関といたしまして司法研修所、調査官研修所、書記官研修所というものがございますけれども、この三研修所で昨年から早速人権擁護についてという勉強会をいたしておるところでございます。また先日、総務庁主催の同和問題に関する職員研修会にもこの三研修所の教官など十数名を参加させております。これらの成果を踏まえまして人権問題に関する研修をさらに充実させていきたい、このように考えているところでございます。
  62. 小森龍邦

    ○小森委員 まあ退職をされておって、役所としてこれに対して全面的な構えでいろいろコメントをするということは難しいということはわかりますが、先ほどのような前向きな答弁をしていただきまして、ぜひひとつその前向きなことを進めていただくということをこの件については申し添えさしていただきたいと思います。  そこで、法務大臣も新しくなられたことですし、この前も私は可能な限り、我が国の人権状況というものがどういうふうなことになっておるかということ、とりわけ、つまり政府権力機構との関係、中でも法務省人権擁護局の関係ということについて憂慮すべき状況だということを私は立証かたがたこの前質問いたしました。自分で自分のことを宣伝するのもおかしいけれども、私は「慟哭する法務省人権擁護行政」という本を書いています。もう泣きじゃくっておる、むせび泣くというよりは慟哭しておるという意味のことを書いて関係方面に進呈をいたしておるのでありますが、そのことに関係してもう一つだけ申しますと、この前の法務委員会で、前の前の法務委員会で申し上げましたけれども、広島県で警察官が差別事件を起こした。それで、その差別事件はどういうものかというと、犯人を調べてみたら部落民であったというようなことを言っておるわけですね。それを県会議員がもみ消しに来た。広島県会も、そんなことを言われて、だれがもみ消したと言うのかといって反論すればよいが、まあ差別事件の問題だし、どういう気持ちなのか、何にもよう反論しないのですね。それから、最近はその部落問題を隠すためにあちこち籍を移動させておるのが多い、本籍を変えておる者が多い、こんなことも言っておるわけですね。それで、大体部落問題、部落問題と騒ぎ過ぎる、騒がなきゃ差別はなくなるのに騒ぐから差別がなくならぬのだというようなことをPTAの会合で言ったから、それは教育、研修の場だから取り上げないというのを言い分なんですよ。その人権擁護局あたりの言い分なんですよ。しかし我々がいろいろ言うから多少やりかけるのですけれども、パーンパーンとピンポンが鉄板に当たるようにはねつけられてようやらないわけなんですね。  そのことについて、県の警察本部のやることだからということで私は県公安委員長に会見を申し入れたのであります。部落解放同盟広島県連合会委員長、部落解放同盟中央本部書記長が我が部落差別の問題についてそういう会談を申し入れるのは当たり前のことであります。申し入れたのであります。会わないのであります。会う必要はありませんと言うのであります。それが県公安委員長。その県公安委員長たるや、実は元高松高等裁判所長官、広島高等裁判所長官なんであります。これもやめた人のことについて、しかもほかの職についておる人のことについてなかなかコメントは難しいでしょう。難しいけれども、現実は裁判官の認識はこの程度だということを最高裁は考えておいていただきたいと思うのです。  それで、同和対策審議会の答申は、司法のところを末尾の辺にどう書いてあるかというと、司法界といえども部落問題に対する偏見や予断、知識が足りないということについては決して国民一般的水準から比べて例外ではないと書いてあるのですよ。私は一度に何もかにも言ってもだめだから一度に言いませんけれども、彼ほどまた機会を得て次第に証明をしたいと思いますけれども、現実はこういうことなんであります。そして、お互い行政官同士ですから、それは今のようなことも総務庁とやりましたとかあるいは人権擁護局がどう言っているとかいうことも当然でしょう、当然ですけれども、その総務庁とその法務省の人権擁護局とが一体どういう水準なのかということを問題としなきゃいかぬのであります。  私は、むしろそれは水準は裁判所の方が高いと思いますよ。何の水準が高いかといったら、人権に対する水準が高いと思いますよ。行政の方は行政的都合というものがありますからね。そのときの都合がありますからね。政治的に判断する場合がありますからね。裁判所だってそれは政治的に判断する場合があると思いますけれども、しかしそれはやはり司法の独立という民間の目の光ところがありますから多少私はびりっとしておると思いますが、その裁判所において、裁判所上がりのこういう高級の裁判官でさえこの程度のことなんでありまして、それがまた法務省のだれやらに、だれやら講師に聞いたとかあるいは総務庁で会合を持ちましたとを言うたところで、だめですよ、そういうことは。  その総務庁が言うたりしたりしておることも、また機会がありますから逐次やりますけれども、明治の終わりから大正の初年にかけて日本に融和主義運動があったでしょう。おまえらも天皇の赤子じゃ言って頭だけはなでて、そして差別してきたでしょう。天皇の御陵のちいと上の方に部落がある言って、御陵を見おろすというのはけしからぬいうことでそこをただから二番目で取り上げてよそへ移転させたという例もあるでしょう、奈良では。だれやらが皇族が来るけえ言って、ここへみすばらしい部落があっちゃいかぬいって焼き打ちをかけた事件もあったでしょう、九州の方で。それがつまり権力、行政機関の今までやってきたことなんであります。その行政機関がやった、政治的にそのときそのときによって差別的な政策が増幅したり増幅しなかったりするものに相談をされるというよりは、私はこれは裁判所独自が勉強された方がいいと思いますよ。今までちゃんとしっかりした法律的な勉強をしてこられておる方の集団ですからね。そんなものは何もよその省庁に頼る必要はないと思うのです。むしろ今は問題は、それらの省庁と民間運動団体とがどれだけ厳しく渡り合っておるか、こういう状況にありますので、閣僚の一員の法務大臣もそれをよく聞いておいていただきたいと思いますよ。  そこで、ちょっと今度は総務庁にお尋ねします。  総務庁は総務庁なりの啓発の任務を持っております。裁判所からいえばもう退職なさった方ですけれども、総務庁からいえばこれは一般国民であります。一般国民の間でそういう判例タイムスの中に出ておるような論調が広がっていくということについては、啓発を進める立場にある総務庁としてはどういうお考えでしょうか。
  63. 荒賀泰太

    荒賀説明員 ただいまの具体的な事件について私詳細を承知しておりませんでございますが、ちょうど十二月十一日に、地域改善対策協議会から今後の地域改善についての意見具申が内閣総理大臣並びに関係各大臣に提出をされておるところでございます。その中では、特に「今後における施策の重点課題」としてこの啓発の重要性について触れておるところでございます。  具体的に申し上げますと、「同和問題が国民的課題であるという趣旨は、国民の一人ひとりが本問題に主体的に取り組むことによって初めてその最終的な解決が可能となるということであるが、現状では、必ずしも国民的課題として普遍化しているとはいえない。国際的に人権尊重思想が普及する中で、心理的差別の解消に向けて努力を重ねていくことが以前にも増して重要となっている。このため、改めて創意工夫を凝らして、啓発活動をより積極的に推進していくよう努めるべきである。」ということを言っておられるわけでございます。  私ども従来から、この啓発につきましては総務庁がその一翼を担うということで取り組んでまいったわけでございますが、この意見具申によりまして改めて創意工夫を凝らしてより積極的に推進すべきであるという御提言をいただいておりますので、そういった方向でさらに充実を図ってまいりたい、そのように考えておるところでございます。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 小森龍邦

    ○小森委員 抽象的に一層啓発を推進するということは、啓発という言葉を使う以前の明治末年、大正、昭和の初年、ついに皇国皇民運動といって大政翼賛会に部落解放運動が組み込まれていくそのときも、全部そういうことは言うたんであります。だけれども、今言われておる啓発が重要だということについては、私はそれよりは少し前進をしておると思う。思うけれども、抽象的な域を出なかったら、どんなにでもそのときそのときの政治的都合でどういうことが啓発なのかということが揺れ動くのであります。  だから、後ほどまた総務庁に対してはお尋ねしますが、この辺でちょっと人権擁護局長答弁を一つだけもらいたい。そのもらいたいというのは、これはどうですか、研究雑誌ですから、判例タイムスは研究のための雑誌ですからね、広島でPTAの会合で言うたといってPTAの会議が腹を立てて、その人を大分責めたんですけれども、いやあれは研究の場だからと言って手かげんをしていますね。ちょっと来なさいと言っても来てくれぬのですというぐらいのことですね。これは研究雑誌だから、あなたの方は何もしませんか。
  65. 篠田省二

    ○篠田政府委員 研究というのもいろいろな場面があろうかと思います。それで、同和問題に関する研修の場での発言という問題とただいま御指摘法律の専門誌に書かれたものとはまた趣を異にしておりますので、私どもといたしましてもなおどうすべきかについて検討してまいりたいと思います。
  66. 小森龍邦

    ○小森委員 一番無難なというか、何もせぬでもいいような答弁なんですね、あれは。  それで申し上げておきますけれども、広島の警察がやった事件については、あれは研究の場ですからということを再三私は聞きました、法務省からも、法務局からも。しかしながら、ある会社の同和問題の研修の場で幹部がやはり差別になるような発言をした分については、法務省はこれを整理しておるのです。つまり簡単に言うたら、弱いところは整理するが、多少腕っ節のある権力機構の方に対してはようやらない、こうなっているのですね。したがって、なかなかどうも信用が置けないのです。これをしかるべく検討すると言われるならば、またそれは検討の機会を待って私は忘れずに質問をしますから、ぜひひとつしっかりした検討をしてください。  荒賀室長にもう一度お尋ねしたいと思いますが、私が抽象的ではいけないと言ったのは、今回の地対協の意見具申が前よりはかなり進んだものになっているのはどういうことかというと、つまり、こういう問題というのは国民全体が参加をして、国民全体が知恵を出してやるというのでなければならぬ。しかるに、今から五年前に出発した啓発センターというのは、これは大蔵省から金が出て国費を使っておるのでありますが、それは要するにこの指つなげで、大体明治未年から昭和の初めごろにかけてまでの融和思想と同じような考えでやれるようなものばかりを指をつながせておるわけであります。だから我々は大反発したわけであります。  幸いに今日の我が国の歴史の成熟水準というものは、昔のような状況政府がいろいろな工作をしたからといったってそう簡単にはいかない、宗教界も参加しなかったし、企業も参加しなかったし、地方自治体もそんなもの参加できないと参加しなかったのであります。だから、今回啓発センターの問題について地対協はどういう指摘をしたかというと、これもまことに皮肉なものですよ、そんなものをつくることの発案をした地対協の委員はほとんどのメンバーはかわっていないのですけれども、そのかわっていない者が五年間の時間的経過によって考え方をころっと変えて、もう少し啓発センターが国民的規模で機能するようにやったらどうか、民間運動団体とも協調するようにしたらどうかと、ここまでになった。これは私は大転換だと思っていますよ。  だから、先ほどあなたが読み上げたようなことでなくて、そういうことになっておるという観点から、我が国の高等裁判所裁判官をしたような人でありますから相当のインテリでありますが、インテリがこんな考え方を持っておるということを考えて、啓発ということに対しては相当の決意を持って臨んでいただかなければいかぬ。この点について、荒賀室長、あなたは担当の総務庁の一番ポイントにあるポストですから、もう少し考え方を聞かせていただきたいと思います。
  67. 荒賀泰太

    荒賀説明員 先日提出をされました地対協の意見具申の中におきまして、ただいま御指摘の財団法人地域改善啓発センターについても指摘をされておるところでございます。「昭和六十二年に設立された財団法人地域改善啓発センターは、設立当初の目的を十分果たしているとはいえない状況にある。今後啓発活動の重要性が高まる中で、同センターの機能の拡充、組織の整備、財政基盤の確立等に努める必要がある。このため、地方公共団体や企業等に対しては主体的な参加を、民間運動団体には協力をそれぞれ求めるとともに、これら関係団体の協力が得られる方途を講じるなど同センターの活性化のための環境づくりを行うべきであり、関係者の一層の努力を期待するものである。」ということでございます。  このことは、センターの活性化に当たりましては、一方では地方公共団体、企業、民間運動団体には参加や協力を求めております一方、他方では、センターであるとか、あるいは私ども行政側に協力が得られるための方途を講ずべきであるということを御指摘をされ、関係者がそれぞれの立場で一層の努力をすることを求めているというふうに理解をいたしておるわけでございます。  せっかくの御指摘でございますし、私どもも啓発を推進する上で、この啓発センターの重要性を理解し、これからさらに活性化をしていくということで、この意見具申を尊重しつつ、センターの活性化に努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  68. 小森龍邦

    ○小森委員 ついこのことで時間をとってしまいましたが、つまり、国の方針がちょっと右へ振れるとかちょっと左へ振れるとかいうことによって物すごく差別というものは、哲学で言う認識論のところの言葉を使えば社会意識としての差別観念という言葉で言うのでありますが、ちょっとの振り子で、せっかく今まで予算を組んで積み上げてきて環境改善などをやっても、それが、それこそ仏をつくって魂を入れずという言葉が適当だと思いますけれども、魂を入れればよいものを、ちょこっちょこっと細工をしてがたがたっと崩していく。高等学校の奨学資金とか大学の奨学資金の問題についてもかなりよいところまでいきまして、大方よいところまでいっておるのに、今度は給付から貸与だと。それで、部落の娘さんが将来結婚して、嫁入り先へ二十年間その請求書が行く。だったら、そんなことをするなら娘っ子には高等学校行かすまい、大学行かすまいということになって、がたがたっと大学進学率が下がる。ちょっとのことを考えたらよかりそうなものだと思うのにやらないというような、これは文部省のことでありますけれども、ありますので、ひとつ慎重に事を構えてもらいたい。  現に、五年前に民間団体を排除しなさいという意味のことをやったから、今ごろ、三日おくれの古新聞で兵庫県は啓発センターを来年の三月に発足する準備を合しておるわけですけれども、民間団体排除、中央はみんなと協力せいということで、五年前から比べたらまたぐるっと方向を変えおる。混乱ばかりさせておるわけですね。  これは、ぜひひとつ新しい法務大臣、地対協は法的措置を含めてやりなさいというようなことを書いておるし、それから再三にわたって前の総務庁長官も総理大臣も意見具申を尊重すると言うたし、ついこの間の参議院の予算委員会か何かでも、出た後に尊重するということを総理大臣か総務庁長官か答えたようでありますので、いずれ閣議でもいろいろ問題になることと思いますが、ぜひきめ細かく、仏をつくって魂を入れる、そして四百年も続いた問題ですから、この辺でどうしても解決して前へ進まなければいかぬ、こういう決意でひとつやっていただきたいと思うのであります。  いろいろ問いたいことはありますけれども、もう時間が来ましたから、法務大臣の最後の熱意あふるるところをひとつ聞かしてもらって私は質問を終わりたいと思いますが、どうですか。
  69. 田原隆

    田原国務大臣 先ほど来の先生の熱意あるお言葉を拝聴しておりましたが、よくかみしめまして、熱意を持って対処してまいりたいと思います。
  70. 小森龍邦

    ○小森委員 終わります。
  71. 浜田卓二郎

    浜田委員長 冬柴鐵三君。
  72. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党・国民会議冬柴鐵三でございます。  きょうは短い時間でありますので、裁判官検察官報酬俸給法に関する改正法からお尋ねいたしますが、よく似た性格のあれですから重複して答弁はいただかなくても結構ですから、裁判官または検察官いずれかからお答えをいただきたい、このように思います。  まず、裁判官検察官につきましては、いずれにしましても調整手当というものが報酬以外に支給されているようでありまして、この計算は、報酬に扶養手当を加算した額というものを基準にしまして、支給地域の区分によって一定の割合を乗じてその額が得られるようでございます。その理解でいいのかどうか、まずお答えいただきたいわけですが、この調整手当の支給の根拠法令はどういうものなのか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  73. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員の御指摘はいわゆる勤務地域による調整手当かと存じますが、これは直接の根拠は一般職職員給与等に関する法律規定がございまして、十一条の三にその根拠があるわけでございます。これを受けまして、片や裁判官報酬法におきましては、報酬以外の給与特別職職員給与に関する法律あるいは一般職職員給与に関する法律規定に準じてそれぞれの裁判官の区分ごとに支給するということになっているわけでございます。そして、その具体的な内容は裁判官につきましては最高裁判所規則で定めるということになっておりまして、この規定に基づきます所要の最高裁判所規則がある、そういう形で支給がされるということになっております。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  74. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そこで、裁判官報酬法十条にも報酬とその他の給与というものが書き分けられているわけですけれども、その区別は要するに月額、毎月定額がきちっと払われるかどうかというものに尽きるのじゃないかと思うわけでありますので、そうなりますと、今の調整手当にしましてもあるいは初任給調整手当にしましても、これはむしろ報酬の性格があるのじゃないか。そういたしますと私は、なぜこう読み分けるかといいますと、憲法にも七十九条あるいは八十条あたりに報酬は在任中減額を受けないという保障がありますので、じゃ、その減額を受けない対象は報酬だけであってその他給与は含まないのかというと、やはりこれも減額をすべきではない、そういうふうに思うわけでありまして、ぜひ裁判官報酬法の中に手当の根拠につきましても決められるべきではないか、このように思っておるわけであります。  そこで二問目は、この法案の関係資料中の参考資料の中に「裁判官検察官報酬俸給月額改定対比表」というのをつけていただいておりますとともに、行政職(一)の俸給月額改定対比表も添えていただいております。  そこで、それぞれの増率、前年度に比較をしましてどれぐらい増加しているか、その率というものがそれぞれ示されているわけでありますが、一般職につきましてはこういう調整手当あるいは初任給調整手当というものは全然加算されてない部分での増率が計算されております。それに対比しまして、裁判官検察官につきましてもこの調整手当を含まない生の報酬額そのもので増率が対比されているわけですけれども、現実にはこういう調整手当も加算した増率がどうなっているのかというのが我々見たいところでありまして、この参考資料、必ずしも一般職裁判官との増率がこれできちっと対比されているように思えないわけであります。  急な質問でありますから、これは今後、こういう毎年出てくる改正法でありますから、関係資料等につきましても私が今述べたようなことも配慮しつつ対比をしていただきたい、このように思うわけでありますが、その点について一言御答弁をいただきたいと思います。
  75. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のような形でのアップ率の対比というのはしておりませんが、資料の五十ページの現行の月額表及び五十四ページ以降の改定後の給与月額表の形で金額の形ではそれを織り込んだ金額を示して、前年から比べてどのぐらい上がったかということが対比できるように工夫しているつもりでございますが、なお委員指摘のような形で対比をすることができるのかどうか、これは一般行政職公務員につきましては違った形で手当があるという問題もございますので、どういう方法があるのか考えてみたいと思っております。
  76. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、裁判官育児休業に関する法律案についてお尋ねをいたします。  まず、法四条には「育児休業をしている裁判官は、裁判官としての身分を保有するがこと、このように定められています。当然のことだと思うのですが、これは憲法八十条一項に言う任期十年にはこの期間は含まれるのですか。
  77. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 裁判官判事の任用資格でございますとか、あるいは特例判事補の任用資格でございますとか、あるいは簡易裁判所判事の任用資格、そういったところで在任期間が二正期間あることを要するという規定がございますが、「裁判官としての身分を保有する」と言う以上、その在任期間には含まれるという考え方でございます。
  78. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、その育児休業をしている裁判官というのは在任中である、こういう理解でいいですか。
  79. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 基本的にはそういうことでございます。
  80. 冬柴鐵三

    冬柴委員 憲法七十九条六項あるいは八十条二項には、例えば八十条二項には「下級裁判所裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中、これを減額することができない。」こういうふうに書かれているわけであります。まあ、当然のことだと思うのです。減額できないわけですから、もちろん減額よりももっと大きい概念である全然払わないということもいけませんよということがこの八十条二項から読み取れるわけですが、この休業法四条は、身分を保有するが、その育児休業期間報酬その他の給与は受けない、一切払わない、こういう構成になっていますね。これは、在任中であるのに報酬を一切払ってもらえないということは、この憲法の規定とはどういうふうに読んだらいいんですか。
  81. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 確かに憲法上、裁判官は在任中減額されないという規定がございまして、今回の育児休業期間中は報酬その他の給与を受けないという状態がこの規定に文理的に見れば抵触するかどうかという問題があるわけでございますけれども、まず結論から申しまして、私ども、実質的に見た場合に、今回の制度はこの憲法の趣旨に反するものではないというふうに考えているところでございます。  この憲法の規定趣旨は、裁判官が経済的な事情に左右されることなく職務に専念することができるということを確保することによって、裁判官の身分保障を具体化し、司法の独立を確保しようという趣旨に出るものでございますが、今回、民間の育児休業法におきましても、必ずしも給与を保障されない形での育児休業制度というものが導入され、そして一般国家公務員、地方公務員につきましても給与を支給しないという形での育児休業制度が導入されようとしているわけでございます。そういうものに合わせて、今回、裁判官にも同様の制度を導入する必要があるということから、この法律案を用意させていただいたわけでございます。そして、裁判官がこの育児休業制度は無給であるということを承知の上で自由な選択によってこの制度を利用するかどうかということが開かれているわけでございますので、ただいま申しましたような憲法の規定趣旨に反するものではないというふうに考えているところであります。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これを受けて、裁判所法の四十八条は、「裁判官はこいろいろと書かれていますが省略しますが、その意思に反して「報酬の減額をされることはない。」このよう化書かれているわけであります。したがいまして、その意思に基づいて減額をされることはあるけれども、支給を免除されることはない、全然払われないということは許されない、こういう解釈も成り立つわけなんですね。何かこう重箱の隅をつまようじでせせるような議論に聞こえるかもわかりませんけれども、大事なことなんです。先ほど司法法制部長がほかの職務一般職あるいは私企業についてのことを挙げられましたけれども、そういう職にはこういう特異な規定はないわけであって、裁判官の身分というものの保障が憲法に由来し、そして、それを反映してこのように相当厳格な規定を置いているということにかんがみますと、意思に基づいて減額は許されるけれども、全然払わない、免除までしてしまうという、そこまではこれは若干問題があるな、このように私は考えます、ここで議論をしても解決がつかないと思いますので、万一こういう変な訴訟が起こった場合、これは大変なことになってしまうと私は思います。  そこで次に、勤労者である夫の妻である裁判官、その夫の方が育児休業を別の法律でとっておれば、この裁判官、出産をした妻である裁判官育児休業承認請求はできないと二条一項では書かれていると思うのですが、そう理解して間違いないですか。
  83. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の点は、二条一項の「配偶者がこの法律により育児休業をしている場合その他最高裁判所規則で定める場合は、この限りでない。」という規定に基づきまして最高裁判所規則で定められる内容でございますが、この規定趣旨からして、御指摘のような場合も最高裁判所規則で定められて、結論として育児休業をとることができないということになろうと考えております。
  84. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そこで、労働法との関係てちょっと聞いておきたいのですけれども、労働基準法六十五条二項は「使用者は、産後八週間を経過しない女子を就業させてはならない。」それで、特に産後六週間については、医師が就業が支障がないというふうに認めた場合であっても働かしてはならない。これはもちろん強行規定だと解釈されているわけですけれども、夫が育児休業を別にとっている場合に、この産後六週間の裁判官はどうなるんですか。働くんですか。
  85. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 産前産後の休暇につきましては、一般職職員給与法及びそれに基づく人事院規則によって、当然に一定期間いわゆる特別休暇をとることができるということになっておりまして、裁判官の休暇もその例によるということになっておりますから、産後の休暇は、この育児休業制度の導入いかんにかかわらず当然にとれるということであります。
  86. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私もそのように考えますが、二人が同期間休むということがあり得るわけで、確認をさせていただいたわけであります。  同じように、労基法六十七条一項は、出産した女子につきまして、一日二回おのおの少なくとも三十分授乳時間を与えるということになっていまして、この時間中使用してはならない、こういうふうにも言われているわけですけれども、これほどうなんですか。それもやるんですか。
  87. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 突然の御質問でございますので、あるいは正確を欠いているかもしれませんが、裁判官について労働基準法がそのまま適用になるかどうかということはいろいろ議論のあるところでございます。これは、最高裁の方でどういう運用をしておられるかという問題であろうかと思っております。
  88. 冬柴鐵三

    冬柴委員 問題の所在だけ指摘しているわけでありまして、若干そういう問題はあると思います。  法自身の問題、解釈について伺っておきますが、法二条で育児休業裁判官がその一歳に満たない子を養育する場合に請求できる、こういうふうに書かれていて、配偶者が出産したとかいうだけではなく一歳に満たない子供を養子として養育する場合も含むというふうに思われるわけですけれども、それでいいんですか。
  89. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 そのとおりでございます。
  90. 冬柴鐵三

    冬柴委員 女性の裁判官は現在何名いられますか。そしてまた、昨年度裁判官自身が出産した人は何名になっておりますか。それからまた、固めて聞いておきますが、昨年度に裁判官自身またはその配偶者が出産した人は何人いられるか。そのうちその配偶者が有職の者であって、ほかの法律等で育児休業をとることができるというような場合、それは何名なのか、そういう資料があるのかどうか。たくさん挙げましたけれども、一歳未満の養育をした者がいるかどうかは調べであるかどうか知りませんが、要するに本法施行によって年間どれくらいの裁判官に対して、もし昨年にこの法が施行されていたとするならば、育児休業承認請求が何件ぐらい出たんだろうか、こういうことを知りたいわけでありまして、お答えいただきたいと思います。
  91. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  現在女性の裁判官は百五十五人でございまして、そのうち九十七人が結婚をいたしております。  それからこの女性の裁判官の出産でございますが、昨年女性裁判官で出産いたしました者は九人でございます。過去五年間の平均をとりますと、平均八人の女性裁判官が出産をいたしております。  この育児休業法ができましたときには何人ぐらいの育児休業をとる者が予想されるかという御質問でございますけれども、平均でまいりますと、最大八人とる可能性はございます。ただ、現在女子教職員等について育児休業制度というのはできておりますが、それの取得率を見ますと、七割というふうに聞いておりますので、七割といたしますと、六人ということになります。六人から八人程度の者がとることが予想されるわけでございます。
  92. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今の人事局長答弁は、出産した人しか請求しないというような意識で聞いていられるようですけれども法律は、配偶者が出産したら、夫である裁判官も休業請求できるわけでありまして、今後そういうドライな裁判官、ドライと言ったらおかしいですが、法律どおりに権利を行使される方もあるかもわかりません。その可能性も考えながら、人事の配置その他裁判事務が渋滞しないように考えていってほしい、このように思います。  次の問題に移ります。  法務大臣、私、法務委員会でお尋ねするのは初めてでありますので、法律扶助制度の拡充について伺っておきたいと思います。  狭義における法律扶助事業というのは貧困者のためにする訴訟援助を指しますけれども、この事業は決して救貧的または慈善的なものではなく、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と定める憲法第三十二条に由来する国の崇高な義務であると私は思います。このことは高辻元法務大臣以降、歴代の法務大臣に私はこのことをお尋ねして、そして明快な答弁をいただいて今日に至ったのであります。したがいまして、田原法務大臣からも私の押します法律扶助というものが憲法三十二条に由来する国の義務であるかどうか、この認識についてまずお尋ねをしておきたいと思います。
  93. 田原隆

    田原国務大臣 国民が裁判を受ける権利があるということは憲法で保障されておるわけであります。そして、これは重要な基本的人権の一つであると私は考えております。訴訟を起こしたり、また起こされたりしますと、相手方と争うために訴訟費用が要ったり弁護士費用が要ったりして、費用が相当かかるということも承知しております。法律扶助制度というのは、資力の乏しい人たちに対してこれらの費用を立てかえたり援助したりするなどの制度であって、極めて大切な、重要な制度であると認識しております。今後ともこの制度の安定、充実に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  94. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に力強い大臣の答弁をいただきまして、非常にうれしく思います。しかし私は、憲法三十二条はこの狭義の法律扶助、すなわち訴訟援助だけを指すものではないのではないか、訴訟と密接不可分の関係にあり、いわば裁判を受ける権利の延長線上にあると思われる国民に対する国の法的助言援助の制度、日本では無料法律相談事業という形でその一部分が行われているわけでありますが、少なくともこの保障も含めてとらえるべきである、憲法三十二条をそのように柔軟に読み込むべきだ、このように考えるわけであります。幸い左藤前法務大臣は二月二十日の当法務委員会でこれに対して積極的な、私の考え方を肯定する答弁をちょうだいしたわけであります。  なぜそういうふうに言うかといいますと、紛争というのは裁判の場だけで解決されるわけではありません。むしろ圧倒的多数の紛争は、裁判所外での示談、すなわち当事者間の話し合いの場で解決されているのが実情でございます。特に、我が国の国民性といいますか法文化といいますか、そういうものが、話し合いによって物を解決しよう、こういう考えてありますから、この示談の内容というものが正義にかなったものであるかないかということは非常に重要なことであると私は思うわけであります。そうであれば、紛争に巻き込まれたすべての人に、法律専門家による適切な法的助言が安心していつでもどこでも均質に、かつ手軽に与えられてこそ、ジャスティス・フォア・オール、我が国においてすべてについて正義が行き渡る。これはお金持ちだけではなく、貧しい人も弱い立場にある人も正義にかなった紛争の解決というものが得られる。これは国民大衆にとって利益であるばかりではなく、国家にとっても非常に大きな利益であり、また正義へのアクセスの保障につながるというふうに信ずるのであります。  そのような意味から、この無料法律相談についての法務省の取り組みというもの、これについてのお覚悟を、決意を法務大臣から重ねて伺っておきたい、このように思います。
  95. 田原隆

    田原国務大臣 私、法律の専門家ではございませんが、いろいろ勉強してみますと、確かにおっしゃるように法律扶助と人権的相談といいますか、そういう面とか家事相談とか有料の法律相談とか、いろいろなものがございますが、私は、やはり法務省としては法律相談の中で一番大事なのは、人権の面から考えていく無料法律相談であろうと思うのです。そういう意味では、制度は違っても、その趣旨、目的に異なる面があるわけでございますから違うわけですけれども、実質的には重なり合う面が相当あるわけでございますので、御指摘を踏まえて法律相談についても十分勉強してまいりたい。前大臣の御答弁も当然承知の上で答弁申し上げております。
  96. 冬柴鐵三

    冬柴委員 無料法律相談につきましても、これは訴訟の場における訴訟援助とともに法律扶助協会というところが四苦八苦しながら長年この無料法律相談をやっているわけでありますが、現在その財源は国からは出ていないわけでありまして、日本船舶振興会から受けるものを主たる財源として行っている。そういう実情も前回お尋ねいたしましたからここでは重ねては聞きませんけれども、こういうものに対して国がぜひ真剣に取り組んでいっていただきたい、重ねてお願いをいたしまして次の質問に移りたいと思います。  改正入管法が施行されて一年半が経過しようとしておりますが、多くの問題をはらみながらもこの法は定着しつつある、このように評価をするわけでありますが、今なお単純労働者受け入れについての内外の圧力は弱まっていないわけでありまして、この圧力というものが陰に陽に改正入管法の解釈や運用にも影響を与え続けていると思うわけでございます。  そこで、いろいろと問題があるように思われるわけですけれども、時間ももうあと十分ほどしかありませんので、二点についてだけ伺っておきたいと思います。  その一つは研修であります。研修を在留資格とすることは、入管法の改正の前後を通じて変わっておりません。そしてまた、研修を受ける時間全体の三分の二以下の時間で実務研修を受けることができることになっております。  この実務研修の実態でありますが、客観的に見た場合には就労とほとんど変わりがありません。そのようなことから、旧法時代と申しますか、研修に藉口した単純労働者の流入が行われたことは紛れもない事実であったと私は思うわけであります。しかし、改正入管法の施行に際して定められた省令によってこの要件を非常に厳しくされました。そしてまた、財団法人国際研修協力機構等も設立をされまして、技術移転の需要にこたえ得る研修機関の設置や研修生の配置が進められる等、研修が本来の実体を備えたものとなりつつあることは、私は高く評価をしたいと思うわけでございます。  この夏私は北海道まで参りまして、畜産、乳牛あるいはそれの種つけとかそういうものをやっていられるところが、モンゴルの方から来ていられる研修生を受け入れているところを二カ所ほど視察をさせていただいたわけでございます。非常に一生懸命働いておられまして、そのモンゴルの青年が言うのには、日本の畜産業はモンゴルに比べて非常に進んでいる、そして、種つけというのも非常に研修になったということで喜んでいました。ただ、一年しかその研修期間というのはないものですから、一年たったら帰ってしまうわけです。それでは年に一回の種つけの期間しかおれないので十分ではないんだ、せめてあと一年、二年置いていただければ我々としてももっと十分な技術を身につけて本国へ帰れるのだけれども、これを延ばしてほしい、そういうようなことをその青年は私に訴えていられました。それからまた、自分の友達にも日本の高度な技術を習得するために来たいという人がたくさんいるんだ、しかし人数が制限されて十分ではないということもおっしゃっていました。  このようなことにかんがみまして、私は二つのことを提案したいわけであります。  一つは、研修期限を、技能習得者に限らなければ拡大されてしまいますけれども、あるテストといいますかによって、研修した技能というもの在ある程度習得しているな、こういう評価をされる方についてはあと一年または二年延長をして、その期間はいわば労働者として労働法の保護を受けつつ研修した内容をもっと充実させて帰っていただく、そこまで研修を含めることはできないのかなということが一つでございます。  もう一つは、その最初の一年間の研修期間は研修生であって、客観的には労働者と変わらないようですけれども労働者ではありません。したがいまして、最賃法はもとより、労働法についても適用されない部分が多いと思うわけですが、いろいろ聞いて回ったけれども、私は決して研修生に対する手当が低い実態にあるとは思えないのです。しかし、ほかの学者から見ると、研修に名をかりて何か低廉に労働力を搾取しているんじゃないか、こういうようなことを外国から言われたり学者も言っている。こういうわけですから、私はその意味からも、労働省においてむしろ研修生の報奨基準といいますかガイドラインを定めて、これを守るように指導するということが必要じゃないかというふうに思うわけです。  その二点について、時間も余りないのですが、労働省からお答えをいただきたいと思います。
  97. 南本禎亮

    ○南本説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、外国人の研修生の受け入れという事業は、開発途上国におきます人材を育成する上で、そういう国際協力という観点できわめて有効なものでありまして、とりわけ我が国の産業現場で生きた技術、技能を習得する機会を与えるという意味で有効な手段であると考えております。  労働省といたしましても、そのような観点から、将来途上国の指導者になるような人のために、昭和四十七年からでございますが国際技能開発計画、というもの、あるいは平成元年からは途上国の中核的な技能労働者となる青年を対象にしまして、これも最大限一年九カ月のプログラムで行っております海外青年技能研修計画というものを実施しておりまして、一定の成果を上げてきているのではないかと思っております。  そこで、今御提案のございました点につきましては、今後の一つの大きな検討課題ではないかというふうに考えておりまして、関係省庁とも十分な連携をとりまして検討を進めてまいりたい、そのように考えております。
  98. 冬柴鐵三

    冬柴委員 もう一つ、定住者というカテゴリーの新設の評価と問題点でございます。  改正入管法は、法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して本邦に居住を認める者につき定住者という在留資格を新設されました。定住者は本邦に一定期間在留することができるという地位そのものを与えられていますから、その活動は一切制限をされないというところに特徴がございます。そういうことでこの定住者は、南米移民の二、三世で日本国籍を有しないいわゆる南米日系人等に定住者の地位が与えられることが大臣告示等に定められているわけでありまして、これを根拠としてブラジルからの新規入国者が爆発的な増加を示していることは周知のとおりでございます。  改正入管法施行の年の平成二年には八万人程度が来られた。そして、平成二年の十二月末日現在においてブラジルの在留者は五万六千四百二十九名にも達している。ブラジルにおける日系人の総数が百二十万人だということを照らしますと、これは約五%ぐらいにも相当するわけで、四%くらいですか、大変な数になっておりますし、また今後もふえ続ける可能性がありまして、我が国だけじゃなしに、送出国であるブラジルにも人手不足とか非常に大きな問題を引き起こしつつあるわけであります。  その要因は、要するに経済力の格差とか、あるいは送出国における猛烈なインフレとか高い失業率とかという事情もありますけれども、無視できない要因に、この改正入管法が彼らに定住者という地位を与えたところにあるわけであると思います。すなわち、定住者は就労について一切制限がありません。したがいまして、今まで違法を承知で背に腹をかえられずに雇用していた不法就労外国人の首を切ることによって、その代替として南米日系人を雇用するという事実が進んでいると認識するからであります。  そうすれば、私は、早急に政府によって、ブラジルあるいはペルー等の送出国と我が国との間で何らかの外交交渉を遂げて、この点について問題が起こらないようにあらかじめ手を打っておく必要があるんじゃないかということが一点。  それから、労働省は、公共職業安定所を介してのみこれらを就労させるようにして、労働条件や賃金について指導できる、搾取されない、そういうような法制度の整備を早急に講ずる必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  いろいろお尋ねしたいのですが、質疑時間も終了いたしましたので、労働省に、今私がお尋ねしたような問題意識とともに、これに対する前向きの施策を早急にとってほしいということについての御答弁と、法務大臣からこの問題についての所感を伺って、私の質疑を終わりたいと思います。
  99. 吉免光顯

    吉免説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、日系二世、三世に対して就労可能な在留資格が付与されますから、ブラジルあるいはペルー等からの南米日系人の出稼ぎが大変ふえているわけでございます。ただ、御指摘もありましたけれども、私どもの方でも、実際そ、ういった人たちの就労経路については非常に悪質なブローカーが介在するというようなこともあるようでございますし、そういう指摘が非常にたくさんされている状況でございます。  そういうことを考えまして、私どもとしては、悪質なブローカーから日系人を保護するということを念頭に置きまして、企業で適切な雇用管理を確保するということを目指して、ことしの八月に、公共職業安定所と財団法人の産業雇用安定センターが協力をいたしまして、東京上野に日系人雇用サービスセンターを開設いたしたところでございます。ここのところでは、全国の安定所を通じて日系人の受け入れを希望する求人情報の収集でありますとか、ポルトガル語等の通訳も配置いたしまして日系人に対する相談あるいは紹介、就労上のトラブルのいろいろな相談について対応させていただいております。こういう形で就労経路の適正化というものについてさらに適正化を図ってまいりたい、このように考えております。
  100. 田原隆

    田原国務大臣 ただいま仰せのような問題については、特に正確な情報をつかむことが大事だと思いますので、関係各省とも協議しながら、正確な情報をつかむことにまず重点を置いてまいりたいと思います。
  101. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。ありがとうございました。
  102. 浜田卓二郎

  103. 木島日出夫

    ○木島委員 裁判官育児休業に関する法律について、幾つかの点について質問したいと思います。  育児と仕事の両立を図るために今回育児休業制度を創設するということは、大賛成であります。むしろ遅きに失したのではないかとさえ思っております。本日は、この制度を実効あらしめる立場、絵にかいたもちにしないという立場から、幾つかの点について質問したいと思います。  最初に、育児休業請求権の法的性格についてお尋ねしますが、法第二条は、承認請求をする、そしてそれに対して最高裁判所承認という法形式を踏んでおります。ただ、第三項に「著しく困難である場合を除き、」最高裁判所承認しなければならないと書かれております。  この育児休業請求権は法的にはどういう権利か、形成権とか請求権とかいろいろありますが、どうお考えですか。
  104. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この制度は、この法案で定めております要件を満たす場合において、裁判官最高裁判所に対して育児休業承認請求することができるという権利を認めたものでございまして、その請求がされた場合には、最高裁は特段の事由がない限りその請求承認しなければならないということにしているわけでございます。
  105. 木島日出夫

    ○木島委員 先ほども質問されておりましたが、著しく困難な場合には認めないことができるという法構造になっているわけであります。どういう場合が著しく困難な場合かという質問に対して、一概にどういう場合か難しい、言いにくいとおっしゃられましたが、そこをはっきり言ってもらわないと非常にこの実効性についで問題が将来出てくるわけですね。特に裁判官の場合には、代替がきかない、臨時補充がきかないという性格のものでありますだけに、ちょっとそこを、どういう場合が想定されるのか答弁していただきたいと思うのです。
  106. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほども他の委員の御質問に御答弁したように、これは具体的に事案に応じて最高裁判所において判断される問題でございますので、私どもの方からこういう場合には当たるというふうに確定制に申し上げにくい問題でございますが、御指摘のように、裁判事務が具体的に滞るということになってはいけないわけでございますので、その代替の措置をとることができないような場合ということが考えられると思います。  したがいまして、例えば裁判官の数が極めて少ない裁判所において急にあしたから育児休業をとるという請求がされたような場合に、これはやはり「著しく困難である場合」に当たるのではなかろうかというふうに考えております。
  107. 木島日出夫

    ○木島委員 急に養子縁組をして育児が必要だという場合にはあしたからということもあり得るかと思うのですが、出産育児の場合は事前に産前産後の休暇というのが想定されるわけでありますから、きょうのあしたというのはほとんど考えられないわけですね。  先ほどの御答弁によりますと、育児休業請求された裁判官がいて穴があいた場合には、同じ裁判所の中だけではなくてよその裁判所からのてん補も考える、あるいは全国的な人事配置も考えて穴を埋めていきたいというふうにおっしゃっておりましたが、これは最高裁判所にこの法律ができたときの運用についてお聞きしたいのですが、そういう態勢で育児休業権を保障するための万全の態勢をとるという構えかどうか、御答弁願いたいと思います。
  108. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 今御指摘のとおり、急に申し出たような極端な場合を除きまして、通常の場合には育児休業をとっていただけるよう私どもとしては万全を期したいと思います。所属裁判所内での裁判官の配置がえでありますとか、事件の配点、それから本庁からの応援、こういった応援態勢を組むことによって全員にとっていただくよう運用してまいりたいと思いますし、また、その旨該当の裁判官にはPRをしてまいりたい、このように考えております。
  109. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、重ねてお聞きしますが、急に請求がなされた場合でなくてあらかじめ想定されていたような出産育児休業請求の場合などについて、裁判所としてはこの「著しく困難」で認められないというのはどんな場合を想定しているのか、あるいは考えられるでしょうか。
  110. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 この「著しく困難」という言葉は、これは一般公務員育児休業法案にも入っている言葉でございまして、それとの整合性を保ったために入れられたかと思いますけれども裁判所といたしましては、通常の出産でもってあらかじめ申し出ていただく場合につきましては、万全の態勢をとりますので通常は考えられない、とりにくいということは通常は考えられない、こういうふうに思っております。
  111. 木島日出夫

    ○木島委員 日本において裁判官はいずれも多数の事件を抱えて裁判業務に従事しているわけでありまして、休暇をとるということは必ず穴があくことは間違いないわけでありまして、その補てんということは必ず想定されるわけであります。  今御答弁にありましたように、めったに著しく困難ということが考えられないということであります。若干安心いたしましたが、ひとつ気楽に育児休業請求できる雰囲気をつくっていただきたい。人事配転などを考えるあるいは全国的な人事の配転をしてその裁判官の穴を埋めるということをやっていただくのは大変大事なことでありますが、そうしますと逆に育児休業請求する個々の裁判官から見ると、非常な精神的な負担になりかねないわけであります。自分が休むことによって裁判所の人事が、全体が動かされるということを考えますと、逆にそれが請求権を行使するのを阻害する精神的な要因になろうかと思いますので、これは運用の問題でありますが、ひとつ気楽に、後の裁判所の態勢など考えなくて当該裁判官請求できるような体制、雰囲気を裁判所にはつくっていただきたいと思います。  次に、この育児休業権を実効あらしめるために非常に大事なものは、やはり有給か無給がという休業期間中の給与の問題だ七思います。  民間の労働者に与えられる育児休業、それから国家公務員、地方公務員に与えられる育児休業、いずれも官民労働者からは有給の要求が非常に強いことは法務省、裁判所も御存じのとおりかと思います。  先ほど同僚委員から憲法とのかかわりが指摘をされておりました。私も、この法第四条で「育児休業期間報酬その他の給与を受けない。」ということをうたい込むことと、憲法七十九条の第六項、これは最高裁判所裁判官についての規定、八十条の第二項、下級裁判所裁判官に関する規定、「この報酬は、在任中、これを減額することができない。」という規定があるわけです。既に御答弁にありましたように、これは司法権の独立、その中核である裁判官の身分保障、また裁判官の身分保障の中で一番大事な給与俸給報酬について、いかなる理由があろうとも減額してはならないということを憲法が定めたものでありまして、大変重い憲法条項だと思うわけであります。  先ほど憲法に触れないのかという質問に対して、答弁の中で二つの理由を私はお聞きをいたしました。一つは、官民労働者とのバランス論、そしてもう一つは、自由な意思によって育児休業請求する、そういう理由で憲法問題はクリアできるという答弁だったようにお聞きしますが、官民労働者とのバランス論は通用しないわけですね、この憲法は。司法権の独立、裁判官の身分保障というほかの一般の民間労働者や官公労働者にはない憲法上の規定ですから、官民が無給だから裁判官も無給でいいという理屈は全然憲法上通らないわけですね。  もう一つは、自由な意思で請求するんだから無給でもいいではないかというふうに私聞こえたのですが、先ほど指摘裁判所法第四十八条、「裁判官は、公の弾劾による場合」または「心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合」、いわゆる分限ですね、「場合を除いては、その意思に反して、免官、転官、転所、職務の停止又は報酬の減額をされることはない。」という裁判所規定があります。この規定をどう解釈するかについて裁判所事務総局は、「裁判所法逐条解説」という本を出版されているのですが、その中の論述を読みますと、免官、転所、職務の停止については本人の意思に反してしてはならない、だから本人の意思に反しなければしてもいいというふうに読むが、報酬の減額は憲法上本人の意思に基づいても許されないと解されるから、本人の意思に反しない処分としては免官、転官、転所のみである、こうはっきり最高裁事務総局はうたっているわけですね。ですから、この憲法七十九条、八十条の解釈、裁判所法四十八条の解釈は、裁判所当局としては、もう本人の意思にかかわりなく報酬の減額をしてはならないんだというふうに解釈していたのではないかと思うのですね。  そこでもう一歩突っ込んで、それでも今回の育児休業期間中は報酬を与えないということが憲法に触れないということを説明していただきたい。
  112. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど御答弁申し上げたことと若干重複するかもしれませんが、今回の制度は、裁判官育児のために職務に従事しないという状態を合法的に可能とする、これによって裁判官の福祉の増進を図るということを一つの目的とする制度でございます。先ほど、民間の育児休業制度及び国家公務員育児休業制度においても無給だから裁判官も無給でいいという趣旨を申し上げたわけではございません。民間及び一般公務員について、そういう必ずしも給与が保障されないという形で育児休業制度化され、あるいはされようとしているということは、少なくとも現在のところは育児休業期間中は給与を支給しないという制度自体が不当なものではないというふうに一般に認識されているということではなかろうかというふうに考えているわけでございまして、そういう状況も一つの根拠としてこの制度が憲法の規定に抵触するものではないということを申し上げたつもりでございます。それだけを理由として申し上げたつもりではございません。  私どもが考えておりますところは、要するに、この憲法の規定趣旨が、裁判官職務に専念するということの差しさわりにならないようにして裁判官の身分保障を具体化し、司法の独立を確保するという趣旨から設けられた規定であって、そういう状態の中で裁判官が無給ということを承知の上で自由に選択をするという制度である、しかも、一たん育児休業に入りました後においても、その必要がなくなったあるいは有給状態であるところの職に復したいという場合には、いつでも申し出ることによって最高裁判所はその取り消しをするという制度になっておりまして、この育児休業状態に入るかどうか、そしてそこから離脱するかどうかということは、全く裁判官の自由意思にゆだねられているということでございます。  御指摘の、裁判官の意思によっても給与を減額されないという最高裁判所事務当局の編まれた解説の考え方、これは私どもも承知しておりますが、これはあくまでもこういった育児休業といった状態を念頭に置かない状況で書かれたものでございます。また、任意に裁判官の同意を得て給与を減額するということを一般的に広く認めるということになりますと、場合によっては周りの事実上の圧力によってそういう状態に裁判官が追い込まれるということもあり得ないわけではないわけでございますので、裁判官が同意すれば個々の裁判官について給与を減額してよいという制度を導入することは大いに問題があろうと思うわけでございますが、この育児休業制度に限って申しますれば、周りから慫慂されて育児休業に入るというようなことはおよそ考えがたいわけであります。そういう意味で、完全な自由な意思による育児休業制度の取得ということが確保される、制度そのものの性質としてそういうものであろうと思うわけでございまして、したがって、これが導入されれば一般に、同意があれば給与を減額してもいい、あるいは無給としてもいいということにつながるような性質のものではない。あくまでも今回導入する育児休業という場面に限ってこれは憲法の趣旨に抵触しないものであるというふうに考えているわけでございます。
  113. 木島日出夫

    ○木島委員 時間がありませんからそのくらいにとどめておきますが、将来の問題をお聞きします。  別途論議されておる国家公務員育児休業等に関する法律案の附則によりますと、女子教育職員それから看護婦、保母等の職員に対しては当分の間育児休業給を支給するという、これは既得権をこういう形で保障する仕組みになっているのですが、将来民間労働者あるいは官公労働者の中の要求が高まり、法制度としてもそちらの方の労働者が有給という制度がつくられた場合には、裁判官についても報酬を与えるという制度をつくるつもりがあるかどうか、一言お聞きしたい。
  114. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 一般公務員育児休業制度におきましては、民間の育児休業制度運用の実態を反映して、人事院の意見等を踏まえて適正に対応されるものであるというふうに考えております。もし、将来一般国家公務員について育児休業期間中に一定の給与あるいは手当を支給するということになりました場合には、裁判官報酬法第十条の規定趣旨にかんがみましても、裁判官についても同様の法的な措置を講ずる所存であります。
  115. 木島日出夫

    ○木島委員 第六条の不利益取り扱いの禁止について簡単にお尋ねをいたします。  第七条によりますと、退職手当に関しては、育児休業期間については二分の一カットするということになるようでありますが、在職期間が算定の根拠になるものでこの退職手当以外のものにどんなものがあるのか、まずお知らせください。
  116. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 急な御質問でございますので全体を把握しておりませんけれども、例えば先ほど御答弁申しましたように、判事の任命資格でございますとか、判事補の特権に関する特例法のいわゆる特例判事補の指定の資格でございますとか、あるいは簡易裁判所判事の任命資格とか、そういう場面で在任期間という概念が用いられております。
  117. 木島日出夫

    ○木島委員 一点だけ質問をして終わります。  育児休業期間中に報酬の号が上がるということは考えられると思うのですね。特に若い判事補の場合には、一年間休んでいるとその間に同僚の判事が二階級ぐらい号が上がるということも理屈の上ではあると思うのですが、そういう場合は差別しない、育児休業期間中といえども身分はほかの同僚の判事と同じように号を上げるというふうにこの第六条の不利益取り扱いをしないという条文を解釈してよろしいですか。それだけお聞きして終わります。
  118. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この六条の不利益取り扱いの禁止の規定趣旨の中には、当然に育児休業をとっても同期の裁判官と号俸の昇進について同じ取り扱いがされるということを直接規定したものではないというふうに理解しております。個々の裁判官にどういう号俸の報酬を支給するかということは、最高裁判所においてその地位に対する責任の度合いとかあるいは経験年数等を考慮して個別的に決定される問題でございまして、この不利益取り扱いを禁止する規定に基づいて例えば育児休業をしたことによって号俸を下げるとか、そういうことは認められませんけれども、同期と同様になるということが当然にこれに含まれているものではないというふうに考えております。  ただ、最高裁判所運用においては、この育児休業制度趣旨を十分に考慮に入れられてそういう昇給管理、判断をされるものであるというふうに考えております。
  119. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  120. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これにて三案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  121. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  122. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  123. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、裁判官育児休業に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  126. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時五十分散会      ――――◇―――――