○山田
委員 最初に私は、当
委員会におきまして提案をされ、そしてまた一定の審議にかかりました社会党の提案に係る
国際平和協力活動等に関する
法律案につきまして、
発言を申し上げたいと思っております。
きょうの当
委員会の審議の運びというのは、社会党の方々に御
答弁をいただくことのできない、そういう運営でございますが、私の趣旨といたしますところは、せっかく御
提出になられました政府案に対する対抗
法案という重要な位置づけでありますので、私もまじめに真剣に拝見をさせていただいた、その上で、おおよそ特に三点ほどぜひお伺いをしたいなという点がございますので、当
委員会では無理でありますが、いずれ機会を見つけて、こういう考え方なんだということをお示しいただければ大変参考になり、ありがたいことだ、こういう
立場から
発言をするものでございます。
まず、一点目でございますが、
法案の第一条関連、二条にも係ります。第一条の「目的」というところで、「国際連合が行う決議に基づいて行われる国際連合平和維持
活動(武力による威嚇又は武力の行使を伴う
活動を除く。)」こういう規定になっております。したがいまして、
PKOそのものである。括弧書きで、武力による威嚇または武力の行使を伴う
活動を除いている。
そうなりますと、PKF本体は、これは参加をしない、できないというお
立場だと思っております。それから、停戦監視団の本体も、これは参加しない、できないというお
立場でまとめられていると理解をいたしております。ただしかし、このPKFそれから停戦監視団のロジスティック、すなわち後方支援
活動は、この一条の「目的」を見る限りはこれはできるというふうに読めるわけでございます。
そうなりますと、二条の「基本原則」のところに、この
活動をするに当たっての基本原則が三つ書かれておるわけです。
関係国の受け入れの
同意、内政不干渉、紛争に対し中立的な
立場を維持する、この三点のみでございまして、停戦の合意があるということを前提としていない、それが書かれていないわけでございます。規定がないわけですね。
そうなりますと、私が疑問に思います点でございますが、そういう停戦の合意ということを前提に置かずに、規定をせずに、紛争地域にそれではこの
協力隊というものを出させるんですか、出かけさせるのか、それは果たして危険ではないんですか、こういう疑問を私は率直に持つわけでございます。
しかも、仮に紛争が武力紛争として顕在化をしたとき、あるいはまた停戦の合意があるというのは大前提だとしておかなかったともしすれば、その当然と思われておる停戦の合意というのが崩れた場合に、この社会党の対抗
法案で言う「国際平和
協力隊」というのは一体どうするのか。撤収の規定がない、中断の規定がない。このところをぜひお聞かせをいただきたい。いずれかの機会にということになりますが、どうなのかという点が
一つでございます。
それから、今の点に関して言えば、「紛争に対し中立的な
立場を維持すること。」という条文が入っているわけでございますから、紛争というものは十分念頭に置かれている。紛争も武力紛争や武力を伴わない紛争、いろいろなレベルがあるんだろうとは思いますが、いずれにしても「紛争」という
言葉がここで使われておるということも踏まえて、停戦の合意について「基本原則」でうたわれておらない点、それから万が一そのような、レアケースだと我々も思いますけれども、そういう不穏な状態になったときに我が国の
協力隊は撤収できるのかできないのかということが、全く規定がないですから不明確です。非常にそれは危険なことではないのか。また、
言葉はいかがかと思いますが、無責任なことにはなりませんかということを第一点
指摘をしたいと思います。
それから二点目、三条の「定義」のところでございますが、この「定義」を見ますと、「国際の平和及び安全の維持のための
活動」ということで具体的にイからルまで挙げられておるわけでございます。実際問題として、このイからルまでの
活動というのは
PKO、非軍事の
PKO、それから国際的な人道的な
立場からの救援
活動に係る
活動内容でございまして、私がいずれお
答えをいただければと思います二点目は、こういう
活動が現実に
法案の中に挙げられておりますけれども、この実施の可能性が果たしてこの
法案全体のフレームワークからあるいは中身から見て担保されているのか、非常にこの点があいまいである、不明である、また非常に
心配である。
特に、それは人材をどう確保するのか、どう確保できるのか、あるいはまた、これらの
活動を実施するに当たって必要な資材、器材、資器材というものをどのように調達をし、どのような形でこれを使うのかという点がこの
法律案を見る限りにおきましては具体的に明らかにされていない、これが二点目であります。
具体的にいま少し申し上げますと、ハのところに「医療
活動(防疫
活動を含む。)」この「医療
活動」というのは、まさに
一つには
PKOの関連で
国連から医療
活動を要請される場合があります。それから、
PKOとは別に立てられておられます人道的な国際的援助
活動、この分野でも
国連の要請ということがあった場合に対応する、こういう立て方になっておるわけでございますから、そうすると、一名、二名、三名のお医者さんが医療かばんを持って一週間とか三週間とか行って帰ってくるという話ではないわけです。最低でも、その
PKOが仮に
国連の要請を受けて出ていくということになれば、それはその
活動を展開する地域の気象条件とかいろいろなそういう条件によりまして、三カ月とか六カ月とか、あるいは八カ月とか一年とか、そういうサイクルでもって
PKOというのは実施をされる。したがいまして、医療かばんを持って何人かが短期間出かけて帰ってくる、そういうようなものではない。そういう
法律の立て方になっておる。
そうなると、現実問題として考えて、開業医の
皆さん、そういうお医者さんが、じゃ半年、一年という形で病院、医院を閉めて行くことができるのか、基本的にきつい、厳しいだろうと思います。あるいはまた、国公立大学の病院等のお医者さんあるいは看護婦さんということで編成しようとしても、これはなかなか病院のローテーションの
関係がある。看護婦さんはもう看護婦さん不足ということで深刻な状況にある。
しかも、
PKO関連の、あるいはこの
法案で示されておる国際的な、人道的な救援
活動ということになると、これは要するに期間が半年とか一年とかのローテーションのほかに、医療チームとして、例えばそれは百五十人とか二百人とか、そういう規模の話になるわけでございまして、その点からいきまして。先ほど二点目に申し上げました、特に人材の確保等この
法案で規定されておる
活動の実効性といいますか、実施の可能性を担保するものになっているかどうか、ぜひまたこれもお聞かせをいただきたい、このように思います。
それから、いま
一つは、ハの次がニで、「被災者の捜索若しくは救出又は帰還の援助」、この「帰還の援助」は輸送をどのようにするのか、難民の輸送にしても、本国への送還にしても、当然輸送の手段がこれは必要になります。
以下、ホにつきましても、食糧、衣料、医薬品等の生活関連物資の配布といいましても、それはやはりどこからどこまでという形の輸送という、船舶によるあるいは航空機によるというこの手段が必然的に必要になるのであろう。あるいはまた、被災者収容のための施設とか、それから紛争によって被害を受けた施設あるいは生活上必要なものの整備、復旧のための措置とか、紛争によって被害を受けた自然環境復旧のための措置とか、これらはいずれも民生援助と言うことができると思うのですけれども、これらすべてひっくるめまして、そういう
活動をしていこうということは私も大賛成でありますが、じゃ実際に食器材、物資をどうやって輸送するのかという点がこの
法案を見る限りは明確ではありませんので、その辺もひとつ御
説明をいずれいただけるものと思っているわけでございます。
きょう
答弁席に出ていただけるということであれば今
答弁が出るわけでございますが、きょうはそういう趣旨の
委員会運営ではないようでございますので。
三点目でございます。五条
関係、これらの平和
協力活動の実施計画を定めるわけでありますが、その実施計画を定めたときに国会の承認を受けなければならない、これは義務づけられておるわけでございます。実は、八九年の十一月、ナミビアの独立支援のために
PKOが
派遣されまして、我が国は、二十数名と
承知しておりますが、選挙監視団に参加をした実績がございます。それから、ニカラグアの選挙監視団に六名、これも当然選挙監視団ですから
PKOの
活動に参加をいたしておるわけでございます。今後もこのような数大規模の
PKOの参加という、こういう
国連からの要請はしばしば多く行われる可能性がある。
そうなってまいりますと、これらをすべてその都度国会の承認に係らしめるということになるわけでありまして、そうなった場合に行政権への過度な介入ということになりはしないか、国益あるいは
国民の利益を損なうことになるおそれが出てくるんではないか、こういうふうに私は率直に感じておりますので、あした以降できるだけ早い機会にお示しをいただけれはこれは大変結構なことでありまして、私は、この三点につきまして御
指摘を申し上げておきますので、ぜひひとつよろしくまたお
答えをいただきたい、このように思う次第でございます。
以上、しっかりと社会党提案に係る対抗
法案を読ませていただき、勉強させていただきました。その中で特段に三点ほど疑問点を感じましたので、
指摘をさせていただいた次第でございます。
それでは、次の
発言に移りたいと思います。
まず、この特別
委員会における審議がずっとなされ、積み重ねられてきたわけでございますが、いろいろな
立場からいろいろな御意見、また
質問、審議がなされてきた。それをずっと総括的に振り返ってみて、何点かやはり際立って審議が集中した、争点と言っていいのでしょうか、そういう箇所が、部分が浮き彫りにされてきております。
私は、まず前半、総論的に私の
発言を申し上げ、また総理初め政府側の御
答弁をいただき、後半部分におきまして、この
法案の中身に即したといいますか各論的な部分で私の意見を申し上げ、また政府側から御
答弁いただきたい、こんなふうに考えております。
まず、議論が集中した根っこのところには、
憲法九条あるいは
憲法の前文に照らして我が国が
PKOに参加をするということの正当性あるいは妥当性ありやなしやというところが
一つあるわけでございます。と同時に、従来のこの
憲法九条を中心にして構成されてきたといいますか出てまいりました我が国の平和諸原則、このことを含めて、従来の政府の
憲法解釈とこの我が国の
PKO参加についての整合性というものが大きな根っこの部分の議論の焦点の
一つであっただろう。
私は、
憲法九条は、もう申し上げるまでもありませんけれども、国際紛争解決の手段としては国権の発動たる戦争、武力による威嚇、武力の行使を永久に放棄しているわけでございます。ですから、このことと
PKOに我が国が参加するということがどういう
関係になるのかということが一番根っこ、ベースにある部分であろう、こう思います。
そうしますと、私どもが申し上げて
法案に反映をされておる参加五原則の例えば第一項目目、停戦の合意が
PKOが出ていくための大前提であるというこの一点から考えてみても、
憲法九条で禁止をしておるのは、まず国際紛争解決の手段としてという、ここが
一つあります。
PKO、PKFにしても同じでございますが、これは停戦の合意があって、大前提があって、ということは停戦の合意があるということによって国際紛争というものが一応終結をしている、終了している、その後に出かけていくのが
PKOの本質でありますから、この部分における要するに
憲法違反だという議論にはならないわけでございます。
もともと国際紛争を解決するために出ていくものではない、破壊された平和というものを回復をする、すなわち停戦が合意された、その回復された平和というものをどうやって維持をしていくか、
国連の権威と説得で、あるいは
国連の
PKOの存在によって維持をしていこう、再燃することがないようにという趣旨からいけば、九条の国際紛争解決の手段としてというところには、これは抵触をすることはないんだ。
それから、「国権の発動たる戦争」、国と国のいわゆる紛争の一環としての武力による戦闘行為、こういうものが戦争だとすれば、それは
PKOの、PKFのそのものとは全く違う次元の話であります。
それから、禁止をされておる「武力による威嚇」ということに当たるかどうかと言えば、もう言うまでもありません。
PKO、PKFというのは、武力を持って、そして
派遣された国々、地域の人々を威嚇をするために行くわけではありません。これは回復された平和を維持するために行く、そういう任務を帯びた、それが
PKOの本質であるということからして、これも当たりません。じゃ、「武力の行使」かということになれば、これは要するに自己の生命を防御するために武器を持っていく、その防御のために必要最小限で武器を使用する、正当防衛とか緊急避難的に。ということは、そういう意味の武器使用がイコール武力行使でないことは、何人もこれは認められるところでございます。
そういうふうに私は考えていきましたときに、いろいろな角度がまだあります、各論のところでも触れたいと思いますが、基本的に根っこの大もとの部分では、
PKOへ我が国が参加するということと
憲法九条とはこれはぶつかるものではないのだ、
憲法九条に違反するものではないというところはまず押さえておかなければならないと私は思うわけであります。
それから、いわゆる従来の政府の
憲法解釈との整合性が果たしてありやなしやということにつきましては、極めて大事な問題でありますから、私は先国会の総括質疑のときに、工藤法制
局長官ともその点は時間をかけてやりとりをさせていただきました。それを今改めて確認をしてみたいと思うのですけれども、私どもがなぜそこの
憲法解釈との整合性を重大視をしたかといいますと、実は昨年の、
廃案になりました平和
協力法案のときの審議のやりとり、我が党の市川書記長と工藤法制
局長官、当時の海部総理とのやりとりが残っております。
それは、いわゆる五十五年の
鈴木内閣における
答弁書、これが基本的にまず基準になる文書であって、政府の
解釈あるいは統一見解であって、例えばこういう話がなされたわけですね。
仮に集団的自衛権というものを認めたいという勢力があって、そして集団的自衛権を認めようと決意をしたときには、それは
憲法そのものを改正しなければ、
憲法改正という重い手続を経なければ、そのことを確定させることはできないのだ、そういう
憲法解釈というのは極めて重要だよ、こういう
一つ確認がありまして、そして、いわゆる
国連軍がその任務・目的に武力行使などを伴う場合であれば我が国の
自衛隊は参加できないという、こういう五十五年
答弁書の
一つの内容があって、したがって、我が国の
自衛隊が武力行使をしないのだと決めて参加しようとしても、専らいわゆる
国連軍の任務・性格、武力行使を伴うという性格であれば、それはできないのだというところが実は確認をされておったわけでありますから、特段に、今回の
PKO、PKFへの
自衛隊参加とその辺の
憲法解釈との整合性はどうなのか、私どもも勉強をさせていただいたわけでございます。
それで、いろいろと先般、長官と議論をしたわけでありますが、要するに前提を二つ設けた。要するに五十五年
答弁書に、今改めて振り返ってみても明らかでございますが、一般的にいってという形でこの記述がなされている、
答弁書は。ですから、それが個々具体的なケースにまで及んだ
答弁書でないことは、その構成から見ても明らかなわけでありますけれども、せっかく昨年精緻な、重厚な議論がなされたところでありますので、私は重要部分だと認識をいたしたわけでございます。
二つの前提条件というのは、私の理解では、まずこの
法案の中に停戦の合意がある、そして受け入れの
同意がある、それは中立性を保っていなければならないという、いわゆる参加三原則がまず規定をされ、そしてさらにその三原則のいずれか
一つでも崩れたら、それはまさに我が国の
協力隊あるいは維持隊は、PKFは任務を、業務を中断をする、そしてすぐに回復をしないという、そういう状況のときには
派遣の終了にまで至るのだ、この撤収の規定が置かれた。
それから、武器の使用というのはセルフディフェンス、自己の生命、身体防御のために限定をされた。この撤収とセルフディフェンスの武器使用というのが
法律に書かれた。この
法律に書かれたということは、昨年の議論と重ね合わせてみれば、我が国は絶対に武力行使をやらないんだと、このように幾ら決めたとしても、それは任務・目的が武力行使を伴うというような、いわゆる
国連軍であればそれでもだめなんだということになるわけですから、そこでもう
一つの条件、三原則が法制化された。停戦の合意、受け入れ
同意、申立てあるということが前提として置かれているがゆえに、それは従来の政府の
憲法解釈とは矛盾をしないのだ、整合性があるのだ、こういうことで長官や総理や政府側の考え方を確認をさしていただいたわけでございます。
その点につきまして、総理、今るる私申し上げましたけれども、御見解がございましたら、ひとつお示しをいただきたい。