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1991-11-26 第122回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十六日(火曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 林  義郎君    理事 大島 理森君 理事 金子原二郎君    理事 北川 正恭君 理事 中川 昭一君    理事 船田  元君 理事 与謝野 馨君    理事 石橋 大吉君 理事 上原 康助君    理事 串原 義直君 理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    愛野興一郎君       井出 正一君    伊吹 文明君       石川 要三君    上草 義輝君       衛藤 晟一君    小澤  潔君       岡田 克也君    木村 義雄君      久野統一郎君    小宮山重四郎君       鈴木 宗男君    武部  勤君       戸塚 進也君    中谷  元君       二階 俊博君    福田 康夫君       星野 行男君    増子 輝彦君       町村 信孝君    松浦  昭君       光武  顕君    秋葉 忠利君       伊東 秀子君    小澤 克介君       緒方 克陽君    岡田 利春君       沖田 正人君    五島 正規君       沢藤礼次郎君    松原 脩雄君       元信  堯君    山中 邦紀君       東  祥三君    遠藤 乙彦君       山口那津男君    渡部 一郎君       東中 光雄君    古堅 実吉君       和田 一仁君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 鳩山 邦夫君         運 輸 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   塩川正十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 宮下 創平君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       有馬 龍夫君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第二         部長      秋山  收君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         防衛庁参事官  金森 仁作君         防衛庁長官官房         長       村田 直昭君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         文部省初等中等         教育局長    坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         文部省体育局長 逸見 博昌君         文化庁次長   吉田  茂君         運輸大臣官房総         務審議官    土坂 泰敏君         海上保安庁長官 宮本 春樹君         海上保安庁次長 小和田 統君         海上保安庁警備         救難監     土方  浩君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君  委員外出席者         国際平和協力等         に関する特別委         員会調査室長  石田 俊昭君     ————————————— 委員の異動 十一月二十六日  辞任         補欠選任   斉藤斗志二君     久野統一郎君   西田  司君     戸塚 進也君   三原 朝彦君     星野 行男君   沢藤礼次郎君     沖田 正人君   小沢 和秋君     古堅 実吉君   高木 義明君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     斉藤斗志二君   戸塚 進也君     愛野興一郎君   星野 行男君     木村 義雄君   沖田 正人君     沢藤礼次郎君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     西田  司君   木村 義雄君     三原 朝彦君 同日  理事北川正恭君同日理事辞任につき、その補欠  として中川昭一君が理事に当選した。     ————————————— 十一月二十五日  国際平和協力活動等に関する法律案伊藤茂君外四名提出衆法第一号) 同日  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案成立反対に関する請願上原康助紹介)(第四号)  同(長谷百合子紹介)(第五号)  同(伊東秀子紹介)(第一七号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一一五号)  同(長谷百合子紹介)(第一五九号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案廃案等に関する請願長谷百合子紹介)(第六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一六〇号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案廃案に関する請願上原康助紹介)(第七号)  同(伊東秀子紹介)(第一八号)  同(長谷百合子紹介)(第一九号)  同(児玉健次紹介)(第一六一号)  同(寺前巖紹介)(第一六二号)  同(不破哲三紹介)(第一六三号)  海外派兵新規立法反対に関する請願東中光雄紹介)(第一五八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案内閣提出、第百二十一回国会閣法第五号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出、第百二十一回国会閣法第六号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 林委員長(林義郎)

    林委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事北川正恭君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 林委員長(林義郎)

    林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 林委員長(林義郎)

    林委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事中川昭一君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 林委員長(林義郎)

    林委員長 第百二十一回国会内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  この際、昨二十五日、両案審査のため福岡県及び宮城県に委員派遣いたしましたので、派遣委員から報告を求めます。第一班金子原二郎君。
  6. 金子(原)委員(金子原二郎)

    金子(原)委員 第一班、福岡班派遣委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、林義郎委員長団長として、上原康助君、衛藤晟一君、秋葉忠利君、緒方克陽君、山口那津男君、高木義明君と私、金子原二郎の八名で、現地において、委員三原朝彦君、小沢和秋君、楢崎弥之助君が参加されました。また、このほか、麻生太郎議員太田誠一議員古賀一成議員中西績介議員松本龍議員東順治議員現地において出席されました。  会議は、ホテル福岡ガーデンパレスにおいて開催し、現地各界意見陳述者方々から、現在本委員会審査中の国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案について意見を聴取し、これに対して各委員より熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、福岡経済同友会代表幹事大屋麗之助君、主婦木村京子君、京都大学法学部教授香西茂君、九州大学法学部教授石川捷治君、福岡友愛会議事務局長土井良泰君、田川市長滝井義高君の六名でありました。  その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、両案に賛成立場からの意見としては、国連を中心とした平和秩序維持は必要であり、国連の要請によるPKO参加は停戦の維持等が目的で、憲法が禁止している武力行使ではないこと、湾岸戦争永世中立国スイスにおいてもPKO参加が検討されている、PKO活動我が国憲法平和理念と同じであり、積極的に参加すべきであるが、カンボジアにおけるPKO参加は急ぐことなく無理のない方法で段階的に進めること、経済的に発展した我が国はそれにふさわしい国際貢献を行うべきであること、法案には賛成であるが、シビリアンコントロールの立場及びPKO国際情勢の変化に応じて変質する可能性があることから、派遣の都度国会承認が必要であることなどが挙げられました。  このほか、北欧諸国が行っているような協力体制アジア諸国との間でつくり上げていくことの必要性我が国PKO参加に関し、派遣される側の立場を十分に考慮に入れた行動等についての意見が表明されました。  また、両案に反対立場からの意見としては、PKO法案内容憲法九条に集約されている日本の戦後の平和主義を空洞化する危険をはらんでいること、PKF指揮権国連我が国との二重構造になっており、国権の発動たる武力行使危険性があること、自衛隊海外派遣には憲法改正か解散して国民の信を問うべきであるが、それができないのであれば国会承認は最低限必要であること、政令委任事項が多く、行政府判断法律内容が変質されるおそれがあること等が挙げられました。  このほか、法案では、紛争予防のためのPKO参加が可能であり、自衛隊派遣範囲が拡大する可能性があること、非軍事分野における国際貢献必要性等意見が表明されました。  次いで、各委員から、陳述者に対し、PKOへの自衛隊参加に対する国民の支持と理解、女性の立場から見たPKO参加への考え、武力行使についての政府憲法解釈整合性アジア諸国に対する我が国の過去の侵略行為についての政府の対応のあり方国会審議における政府資料提出に対する姿勢、「指揮」と「指図」に関する政府の定義のあいまいさ、スイスPKO参加を検討している背景、国会承認必要性に対する所見等について質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。  以上が第一班の概要でありますが、会議内容速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、速記録ができましたら、本委員会会議録参考として掲載されますようにお取り計らいをお願いいたします。  今回の会議開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきましたことを深く感謝を申し上げ、御報告を終わります。
  7. 林委員長(林義郎)

    林委員長 次に、第二班与謝野馨君。
  8. 与謝野委員(与謝野馨)

    与謝野委員 第二班、仙台班派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。派遣委員は、大島理森君、中川昭一君、石橋大吉君、増子輝彦君、沢藤礼次郎君、山中邦紀君、遠藤乙彦君、東中光雄君と私、与謝野馨の九名でありました。また、このほか、戸田菊雄議員現地において出席されました。  会議は、仙台ホテルにおいて開催し、現地各界意見陳述者方々から、現在本委員会審査中の国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案について意見を聴取し、これに対して各委員より熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、仙台経済同友会代表幹事藤崎三郎助君、主婦佐藤瑩子君宮城ユネスコ協会連盟会長藤原五郎君、弁護士馬場亨君、元国連大使松下電器産業常任顧問菊池清明君、弁護士山田忠行君の六名でありました。  その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、両案に賛成立場からの意見としては、世界の平和及び発展のために我が国経済力を十分に発揮することが世界に対する責務であり、国連の一員としてその能力を尽くすことが期待されていること、PKO活動としての自衛隊海外派遣軍事行動と異なり、国連の枠内での活動であり、憲法に抵触しないこと、ユネスコ活動と同じく、PKO世界平和維持、推進のために活動しており、経済技術面協力だけでなく人を出し汗をかくべきであること、我が国PKO活動に対する資金的、物的貢献は国際的に評価されているが、人的貢献には訓練された自衛隊員派遣する必要があること等が挙げられました。  このほか、新時代に対応する国家的政策としてPKO法案を考えるべきであること、国連PKO標準行動規範による任務遂行妨害排除のための武器使用は、PKO法案参加基本原則が明記されているので問題はないこと等の意見が表明されました。  また、両案に反対立場からの意見としては、PKO参加する自衛隊員武器使用武力紛争の一環としての戦闘行為であり、武力行使集団的自衛権行使につながること、武力紛争発生前からの参加が可能であり、政府の言う参加原則は歯どめとして意味を持たないこと、現在の我が国技術経済力からすれば他にできることは幾らでもあること等が挙げられました。  このほか、自衛隊装備範囲について何らの限定もなく重装備も可能であること、派遣拒否は懲戒の対象となり、その意思に反して派遣を強制することは憲法の禁止している苦役に当たること等の意見が表明されました。  次いで、各委員から、陳述者に対し、今後の国際的貢献に対する我が国立場役割人的協力が必要であるとするユネスコ活動から得た教訓及び国連役割重要性武力行使が伴わないPKO活動自衛隊参加する意義、一市民の立場から見たPKO法案理解度自衛隊とは別の組織による貢献策あり方、過去の戦争反省なしで武装集団である自衛隊海外派遣することへの危惧、PKFの本質と国連軍、多国籍軍との相違についての認識武器使用自然権的権利とする考え方、国連PKO標準行動規範にある任務遂行妨害排除のための武力行使、重機関銃迫撃砲使用が刑法の正当防衛としての該当性等について質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。  以上が第二班の概要でありますが、会議内容速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、速記録ができましたら、本委員会会議録参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。  今回の会議開催につきましては、地元の御関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く謝意を表し、御報告を終わります。
  9. 林委員長(林義郎)

    林委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。  お諮りいたします。  ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議記録が後ほどでき次第、本日の会議録参考掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 林委員長(林義郎)

    林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔会議記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  11. 林委員長(林義郎)

    林委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。沢藤礼次郎君。
  12. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 沢藤でございます。  一時間四十分の時間をいただきまして質問をさせていただきますが、テーマは一つだけであります。それは日本歴史国際貢献あり方ということでございます。したがって、日本がたどってきた歴史あるいは背負ってきたいろんな歴史、それを厳密に反省、点検しながら現在の姿を見つめ、将来に向けての国際貢献はどうあるべきかということに絞って質問申し上げたいと思います。  内容の性質上、ややもすれば歴史に関する判断歴史観、物事の価値に関する判断価値観というものに多く触れることになると思いますので、できるだけ客観性を持たせるために幾つかの文献、資料等を引用させていただきましたので御理解を賜りたいと思います。  まず初めに、総理にお伺いしますが、ドイツの大統領ワイツゼッカーの有名な演説があるわけであります。いずれこれもきょうの質問の中で何回か触れるわけでありますが、その中に、過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になりますという言葉があります。この言葉は私はまことに適切な指摘だと思うのであります。したがって、過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になる、ましてや将来を見通すことは不可能であると思うわけです。したがいまして、歴史認識の違いが国と国との間に存在しますと、どうしても信頼関係が損なわれてまいります。  こういった観点から、私たちにとっては歴史の忠実な検討、検証が必要であり、他の国との共通理解共通認識を深めるということが極めて重要だと思いますが、基本的な問題で恐縮ですけれども、このことについての総理御所感を賜っておきたいと思います。
  13. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 ワイツゼッカー大統領のそのような御発言は私もよく存じておりますし、またワイツゼッカーというお人のお人柄を反映しておる御発言であって、極めて同感でございます。我が国としても、過去における行為が多くの人々に多大の苦痛と損害を与えた、そういう事実を深く反省をし、二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないということを決意をいたしておるところでございます。ワイツゼッカー大統領のこのような発言には深く同感をいたします。
  14. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 次に、きょうの質疑のキーワードとも申すべきものが一つ準備してあるわけです。それは、地理歴史の母であるということであります。これも引用させていただきますが、私たち青春時代によく読んだ和辻哲郎の「風土」という名著があります。その中で、今申し上げたことに関して次のような表現をしているわけであります。日本の置かれている地理的な条件、これはユーラシア大陸のそばに、東端日本列島が所在している。反対側には漠々たる太平洋が存在している。こういった中で、激しい気象条件にもまれながら日本列島は存在しているんだということと、その風土の中で日本の特性、特徴といえば夏の多い雨、多雨、多湿、冬の少量の湿気と寒気、寒さ、そして大雪だというふうに指摘をいたしまして、この大雪と大雨の二重の現象において日本モンスーン地域中最も特殊な風土を持っている。それは熱帯的、寒帯的の二重性格と呼ぶことができるというふうに指摘をしまして、さらにその影響を受けまして、日本人の気性といいますか、精神的な風土といいますか、これについては、日本国民的な性格はしめやかな激情、戦闘的な恬淡というふうな指摘をしているのです。  このことについて御感想をいただくつもりはございません。ただ、私がお伺いしたいのは、日本地理、つまり日本ユーラシア大陸東端にあり、アジア大陸、朝鮮半島に隣接している、接している列島であるということと、そこからくる風土性気象とか気候とか地質、地形、景観も含めました風土性、この日本の占める位置と風土性、これから日本のいろんな生産、稲をつくるとか、生産であるとかあるいは食生活であるとか生活様式であるとか、あるいは広い意味文化が生まれている。つまり、お聞きしたい点は、地理から生み出された文化、その時代時代文化の積み重ねが歴史であるという認識をともにしたいわけですが、いかがでしょうか。
  15. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 人間は地球上に生まれた一つの生物でございますから、当然にその風土を受けて育つといいますか、むしろ風土の中に育つと申し上げた方がいいぐらい、ただいま和辻さんを引用して御指摘のことは事実であるというふうに思います。
  16. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 先に進みます。  どなたかが日本は不沈空母だとおっしゃったことがありますが、空母というのは動くわけで、これはあちこち行くのじゃなくて、私はやはり日本列島は昔からここにあるんだという認識の上に次の質問を進めたいと思います。  次は、お聞きしたい点は、日本文化の成り立ちとアジア近隣との関係についてであります。  人類の発生二百万年前までさかのぼることはできませんけれども、日本文化を論ずる場合に、縄文時代からということになると思いますが、この問題について私は、前の東北大学の教授をなさっておりました歴史の先生で、今盛岡大学の学長をしておられます高橋富雄という方がおられるのですが、その方からお話をお聞きしたときに、日本歴史縄文からずっと眺めてみた場合に、独自のその地域に生まれた文化というのは縄文だけだ、弥生以降の文化というのはほとんど一〇〇%外国、特にアジア近隣から受けているものだ、こういう指摘をなさっていました。  そこで、次に私がちょっと読み上げてみますので、これについての御感想をお聞きしたいのですが、これは弥生時代以降の日本の広い意味文化にかかわるいろいろな事象について挙げてみたわけですが、中国大陸あるいは半島から影響を受けたもの、これを挙げてみます。  稲、麦、大豆、ヒエ、アワ、キビ、南京豆、インゲンマメ、ソバ、サツマイモ、大根、キュウリ、ナス、ネギ、ゴボウ、レンコン、コンニャク、ショウガ、白菜。それから動物にいきますと、コイ、豚、豚はこれは明治に入ってからのようでありますが。それから鶏、梅、アンズ、スイカ、桃、ブドウ、リンゴの中の和リンゴ、ミカン、ビワ、豆腐、納豆、うどん、牛乳、梅干し、砂糖、みそ、しょうゆ、きんとん、やかん、これは家具、道具ですね。やかん、きゅうす、茶わん、まんじゅう、ようかん、せんべい、かりん糖、ハチみつ、お茶、絹と養蚕、木綿、かすり、紗、絽、うちわ、傘、おしろい、ほお紅、化粧水、かみそり。住まいの方では、書院、かわら、仏教寺院、ふろ、これは蒸しぶろであります。びょうぶ、のれん、あんか、湯たんぽ、灯籠、ろうそく、かまど、石けん、灰の塊ですね、はさみ、風鈴、そろばん、漢方医学稲荷信仰、えと、手相、暦、端午の節句、七夕、中元、岩田帯、硬貨、開珎ですね、通貨、それから税制度、毛筆、漢字漢字はこれはすごく大きな意味を持っていると思うのです。日本の字は漢字です。仮名は、これはいわゆる仮の字でありますから。そのほか紙、学校制度、大学、印刷術、茶の湯、琴、囲碁、将棋、マージャン、尺貫法、こう続くわけですが、これを見ますと、日本文化というのは、少なくとも明治のころまでの文化というのは、ほとんど中国大陸半島から来ているんだということの実感を持つわけですが、これについて総理、今挙げたことについての御感想あったらお聞かせ願いたいと思います。
  17. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 余り詳しいことは存じませんけれども、今おっしゃいましたことは、我々の今日持っております日常感覚にまさに合っておるのではないか。御指摘のように感じます。
  18. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 さて、幕末から明治にかけまして、日本は大きな選択をしました。それは脱亜入欧と言われております。アジアを脱して欧米に入る、脱亜入欧、これは日本歴史にとって非常に大きな変換期を意味するわけであります。ある本では、これは果敢な選択だというふうな指摘をしております。日本はその脱亜入欧において、大変多くの文明、文化を吸収しましたし、欧米文化から滋養、栄養たっぷりのものをいただいたということはもちろん否定できません。ただ、脱亜入欧を総括、反省する場合に、やはりプラス面だけではないという感じがするわけであります。  これについて、脱亜入欧を、非常に乱暴な質問で恐縮ですが、脱亜入欧という選択を総括した場合、総理はどういう御感想をお持ちだろうかということをお聞きしたいと思います。
  19. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 当時、脱亜入欧ということがしきりに言われました。そのことの強調したい、強調しようとしていた点は、新しい欧米の文化を取り入れるという、そういう点を強調するために、それに脱亜という言葉がついておったのだと思います。また、実際ややそれに近いことが行われましたけれども、しかしその後、大まかに申して百年の間に、脱亜というようなことは本来できないことである、冒頭に言われましたように、和辻さんの言われるように、我々はそういう風土の中に育っておりますから、そこから抜け出るということは本来できないことであって、したがって、入欧という意味で西欧の文化を取り入れた結果はいろんなことになっておりますけれども、だからといって脱亜であるかといえば、今になって回顧いたしますと、なかなかそうは言えないだろう、むしろそれは入欧ということを強調するための表現であったかというふうに感じております。
  20. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 私の方から若干視点といいますか、指摘をしたいのですが、プラス面はもう特に申し上げる必要はないと思うのですが、マイナス面、あるいはこういう点は学んでほしかった、こういう点は学んでほしくなかったという点を幾つか挙げてみますので、これについての御批判なり、所感があればお聞かせ願いたいと思います。  まず、学んでほしかったが十分学ばなかったという点は、やはり人権思想があるんじゃないかと思います。それから、合理主義、民主主義というふうな西欧文化の基礎になっているものが、十分日本は脱亜入欧の中で学び取れなかったという気がします。  と同時に、学んでほしくなかった、影響されてほしくなかったと思う点は、大国意識であります。列強の仲間入り、列強という言葉がしきりに使われた時代であります。軍事大国化であります。徴兵制もヨーロッパから学んだわけであります。それを、明治政府は、富国強兵というスローガンを掲げました。そしてもう一つは、植民地政策であります。他の地に、他の国に、他の土地に入っていって、その土地を手に入れる、その国の人民を力で抑圧する、つまりアジア植民地化政策というものがそこから生まれてきたというマイナスの点があるんじゃないか。この点についてのお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  21. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 その前にペルリの来航等のことがございまして、我が国が外に向かって門戸を開かなければならないという、いわば先進国からの圧力のようなものがあって、それに対応して我が国もいわゆる不平等条約を改定するとかいうような命題を持って、そしていわゆる列強に対して我が国立場を主張しようとした、それらが、先ほど言われました大国意識であり、あるいは徴兵制であり、あるいは植民地政策であった、当時富国強兵と言われた考え方であったと思います。  それは確かにその後にいろいろな弊害を生むに至るわけでございますけれども、当時我々の先輩が考えたことは、そのような国際的変化の中で、日本の独立性とアイデンティティーをいわば確立しよう、そういう努力であったであろう、そのことが後に意図せざる結果になることは御指摘のとおりでございますけれども、そう考えております。
  22. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 その延長線上で問題にしたいのは、戦争を起こす、あるいは植民地政策を展開する場合に大きな力になるのは、一方では軍備の増強、軍拡でありますけれども、もう一方では、非常にそれを支える、いわば戦争心理というものが、近代、現代の戦争の大きな力、支えになっているという事実は見逃せないと思うわけであります。  日本アジア近隣に対して、韓国併合を一つの大きなスタートとしながら、昭和の二十年間、主に半島の人、あるいは大陸、あるいは東南アジアに対して侵略を行ったという事実があります。そのときのいわゆる戦争心理をかき立てたものにはたくさんあります。軍歌もあります。特に教育、教科書の影響は非常に大きかったと思います。  そういったことについて、これはある新聞の記事を引用するわけですが、ニューズウイーク誌の東京支局長のビル・パウエル氏が指摘しているのですが、「戦争当時の歴史を正直に教育の場で教えてきたドイツと、日本は大きく異なる」ということを指摘しております。「日本の一般的な見方は、戦争は自然災害のようなもので、どちらが良いとか悪いとかはなく、ただ犠牲者がいるというだけだ」「こうした意識が、アジア諸国に懸念を抱かせ、日本の対外イメージを損なうことになると警告している。」この警告は、私は傾聴に値すると思います。  日本がそのアジア侵略のエネルギー、戦争心理をかき立てるときに使われたスローガン、あるいは軍歌、その中で象徴的なことに、これは大臣も御記憶にあられると思いますが、皇威発揚、天皇の力ですね、皇威発揚、八紘一宇、一つの家なんだ、特に東洋に関してはそれを呼びかけました。大東亜共栄圏、こういった美化されたスローガン、あるいは教科書によって、私は皇国少年と言われる年代でありますけれども、徹底的に皇国史観、八紘一宇の精神を教え込まれました。その中に、一つ例を挙げて総理質問したいのですけれども、この戦争心理の形成に果たした教育その他の役割は恐ろしいと思うんだけれども、これについてはどう考えるかということと、非常に象徴的な歌が一つありました。愛国行進曲であります。  総理は、今二つお聞きをしました、戦争心理の形成に果たす教育あるいはいろんな宣伝の重大さということについてどうお考えか、愛国行進曲を御記憶なさっているか、この二つであります。
  23. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 愛国行進曲を記憶しております。  それから、先ほど申しましたことの延長でありますけれども、当時の我が国の指導者としては、列強に対抗して我が国一つのその仲間入りをするために、いわばいろいろな政策あるいは教育等を用いて、その人たちの意識では国威の発揚と申しますか、富国強兵と申しますか、そういう目標に向かって国民をいわば動員をする、そういう政策がとられたというふうに思います。
  24. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 本当は別な質問をしたいのですけれども、失礼に当たると思いますので私の方から申し上げますが、三番までありました、愛国行進曲。何番御存じかということを質問したかったのですが、これは遠慮いたします。なぜこれにこだわるかといいますと、先ころフィリピンに帰国されたイメルダ夫人が、テレビのインタビューの中で、正確に愛国行進曲の一番を始めから終わりまで歌われたんです。総理、これ、歌、どうですか、一番。
  25. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 イメルダさんは歌手としてもなかなか才能のあるお方で、私もそれは伺ったことがございます。私はちょっと、きちんと記憶しておりますかどうか、確かでございません。
  26. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 私は歌手か歌手じゃないかの問題じゃないと思うのです。イメルダ夫人は多分私と同年代の、その当時は非常に感受性の強い少女だったと思うのです。そのフィリピンの少女が今、あれから数十年たった今も愛国行進曲を正確に覚えているということ。私は、三番まで正確に覚えています。この宮澤総理が歌詞を御存じないということとイメルダ夫人との違い、宮澤総理と私との違い、これはどこからくるかということを考えてみたんですが、一つは、やはり征服した者と征服されている国の立場の違いが一つはあると私は思う。それから、宮澤総理と私の違いは、三番まで覚えている私との違いは、もう本当に私どもは徹底的に思想的に純真な少年としてたたき込まれた、この違いだろうと思うのです。このことについて、どうですか。つまり、あなたとイメルダ夫人の違い、あなたと私の違い、これをどう解釈されますか。
  27. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 そうでございますね、イメルダ夫人は確かに、これを覚えられたときはフィリピンが、短い時間ですけれども我が国の占領下にあった、そういうことときっと無関係ではいらっしゃらなかっただろうと。はっきりわかりませんけれども、年代的にそういうことになるかなというふうに思います。はっきりわかりませんけれども。  それから、後段のことはそうでございましょう。沢藤委員と私との多少の年齢差がございますから、今のようなこの教育について、全く、その中で育たれたと申しますか、そうおっしゃいますお立場と、私のように多少そこから少し、半分ぐらいはその前にいたということと違いがあろうと思います。
  28. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 ちょうど中間におられると思いますが、外務大臣いかがですか。覚えておられますか。
  29. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 あれは「勝って来るぞと勇ましく」、あれがそれで始まるんでしたかね。
  30. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 違います。
  31. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 違う、「見よ東海の空あけて」か。ああ、初めのころはよく知っていますが、私はのどが悪いんで余り音楽は得意じゃなかったものですから、全部は覚えておりませんが、歌詞といいますか、「見よ東海の空あけて」というのは有名な唱歌ですから、よく知ってはいます。
  32. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 韓国に対する併合というのは、私は、日本アジア近隣に対して植民地政策を展開した大きな出来事だったと思うのです。  そこで、韓国併合というのをどう総括、反省するかということなんですが、これは私の方からも触れておきますけれども、例えば韓国におきましては植民地支配が行われた。一九一〇年に併合されたわけでありますが、これについて教科書がある。これは、「韓国民は非常に日本と力を合わせることを望んでいる。韓国併合をすごくいいことだと喜んでいる。」という表現があります。これを絡めて、戦時中における、あるいは戦時中までの日本における歴史教育の反省といいますか、点検といいますか、文部大臣から一言お聞きしたいのですが。
  33. 鳩山国務大臣(鳩山邦夫)

    ○鳩山国務大臣 申しわけありませんが、先ほどからの先生の御質問あるいは総理の答弁、大変興味深く聞かせていただいておりましたが、私自身は戦後の生まれなものですから、いわゆる戦中、戦前の推移、事柄の成り行きというものは、それこそまず教科書で勉強したりあるいは話を聞いたり、そうしたことで勉強していく立場でございまして、先生がお尋ねの件は戦前の歴史教育ということでございますか。
  34. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 戦中も含めて。
  35. 鳩山国務大臣(鳩山邦夫)

    ○鳩山国務大臣 戦中を含めて。まあそれは先ほど総理からも御答弁がありましたように、先生御指摘のとおり、地理歴史の母である、地球という大きな惑星全体がいわゆる列強の世界分割という、帝国主義列強の世界分割という表現もなされますが、そういう時代を経過していく中で、我が国もまた明治維新を迎えて、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という歩みがあったわけでございまして、国全体がそういう強い国になって、それこそ脱亜入欧という言葉も使われましたが、国全体が強くなって、世界に伍してやっていこうという一つの大きな空気の中で教育も行われておったというふうには承っております。
  36. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 韓国併合、その後の植民地政策というものについての認識がかなり薄い意識であるというふうな感じをどうしても免れません。  これは、事例を若干挙げますと、例えば一九一〇年の八月二十二日に韓国併合した後に日本が行ったことはいろいろあります。土地調査令というものをやって、土地をかなり取り上げた、あるいは大企業がそれを取得したという事実があります。鉱業令というのがあります。地下資源も日本は押さえたわけであります。そして、独立を求めて蜂起した三・一人民蜂起の場合でも、七千五百余名も虐殺したという記述もあるわけであります。  特に、今に至るまで尾を引いているのは強制連行だと思うのです。働き盛りの男子、幼い少年少女まで、人夫のあっせん、職業紹介という名目で日本に連れてきた、その労働力の供給、これは後ほど、その後になりますと官あっせんという名目で白昼公然と連れ去られるという現象がありました。そして一般男子に対する徴用令あるいは女子挺身隊に対する徴用というふうなことを含めまして、こういった日本の軍事施設や軍需工場、鉱山など危険な場所で働いた、使われた人数というのは、日本の側の発表では七十二万四千余名というふうに発表されていると言われております。しかし、歴史学者たちは優にこれは百五十万名を超えているんじゃないかという指摘をしております。徴兵という名目で東南アジア、南洋諸島、サハリンまで連行した。そして現地で捕虜収容所の監督に当たって、戦後戦犯に問われて死刑に、あるいは無期懲役にという刑を受けた人もいる。  しかし、その後平和になった後で、あなたたち日本人じゃないんだということでいろいろな形での冷たいあしらいといいますか、併合当時は、同じ臣民だ、同じ天皇の赤子だと言って駆り立てたその人たちに対して戦後が非常に冷たいということ、これはやはり反省していかなければならないと思うのですが、これについての御所見を、御所感を賜りたいと思います。
  37. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 韓国併合についてのお尋ねでありましたけれども、これについては政府として、朝鮮半島地域のすべての人々に対して、過去の一時期我が国行為によって耐えがたい苦しみ、悲しみを体験させたことについて反省と遺憾の意を表明しているところでございます。この述べるところは、まことにおっしゃいますように非常に広範でございます。今言われました幾つかの事例について今日幾らか明らかになっておるものもございますし、事の性質上必ずしも具体的に明らかになっていないこともございますけれども、たくさんの人々が関係をして耐えがたい苦しみを味わわれたということは疑いのないところでございまして、それについて我々は深く遺憾の意を表さなければならないと思います。
  38. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 遺憾の意あるいは謝罪という言葉だけでは本当の意味反省、謝罪にはならないわけで、これは後でドイツの例を引きますけれども、ドイツの場合はきちっと、首相なり大統領の公式の場における演説その他によって態度をきちんと表明している。そして十数カ国に対する戦後補償もきちんとやっている。自国民に対する、軍人、民間を問わずに補償もしているということとか、あるいは教科書につきましてはきちんと歴史を、共通理解を深めようということで、その当時敵国であった国と連携をとりながら教科書の事実の調査、あるいはできるだけ同じような一つ歴史観というものに近づこうという努力をしている。そういうドイツの努力があればこそ、私はドイツがECの中で、あるいは欧米の中で非常に大きな信頼関係を得ることができたと思うんです。  ところが、ということで、私はあえて昨年おいでになった廬泰愚大統領の国会における演説を引用させていただきたいんですけれども、これは、私どもあそこでお聞きしまして非常に胸にぐさっときたお言葉が幾つかあります。  その中で、小学校に入ったばかりの韓国の児童が、学校で日本式の名前ではなくて自分の名前を使うとむち打たれる、母親から教わった自分の国の言葉を使ってはむち打たれる、こういった痛みを皆様は理解できないと思われますという訴えをなさった。これは、大変大きな指摘だと思うんです。そして、別な部分では、「フランス人、ドイツ人、イギリス人がひとつのヨーロッパ人となっているのは、かれらが真実の力で過去の過ちをすっかり洗い流し新たな歴史の創造に共に乗り出すことができたからなのです。」というふうに言っている。  しかし一方で、日本に対してはどう言っているか。注意深く聞かないとすぐ聞き流しそうなことなのですけれども、こういう言葉があるわけであります。「戦後四十五年が過ぎ、世界大戦を経験したヨーロッパ諸国がひとつの共同体を築きあげている現時点まで、われわれ両国民」、日韓ということでしょうか、両国民は不幸だった過去に対する認識と感情を整理できずにいます。整理できていないと言っているんです。過ぎた時代のしこりが両国関係の障害となっているということを言っているんです。  そして、「お願いしたいことは、」という言葉の次に、「過去の歴史によって日本に居住することになった七十万の在日韓国人の問題です。」これは朝鮮も同じだと思うのですけれども、「かれらが親しい隣人として何の不便もなくこの国で暮らすことができるとき、両国民は韓日友好を胸に感じとることができるでしょう。」これは裏を返せば、在日韓国人は隣人として不便もなくこの国で暮らしてはいない、両国民は今韓日友好を胸に感じとってはいないということを指摘しているんです。  このことについて私たちは深刻に反省し、次どうしたらいいかという問題に突き当たるわけですが、教育の問題を先にちょっとお聞きしましたので、外務大臣、今の問題についてどうお考えですか。
  39. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 過去にいろいろな御迷惑をかけたり痛みを与えたりという歴史があったことは私は否定できない、そのように思って、これは深く反省をして、今後こういうようなことの二度と起こらないように、未来に向かって一緒になって新しい未来をつくっていこうということで日韓両国はスタートをしておるわけであります。  確かに、人間というのは恩は忘れるが恨みは忘れないというのは一般的な属性であります。我々も恩になったことはもう忘れちゃう、恨みは覚えている。一般の話ですよ。ですから、我々は何も恩を与えるようなことはやっておりませんよ。おりませんが、しかし、恨みを与えることをやったことは確かです。したがって、そういうようなことについて、我々が考えている以上に苦しみを与えられた方が忘れ切れないということは、私はそうだろうなという感じがしておるわけであります。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  40. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 よくわかりません。真情が伝わってまいりません。恩とか、あなたの感じ方の違いということをおっしゃりたいようですけれども、外交、国と国との間柄で、こっちはこうだ、ああ向こうは向こうとして感じがあるだろうということでは済まされないと思うのですよ。そのギャップを埋めるのが外交じゃないですか。しかもその主観を、主観の違いがあるんだということをもし言われるならば、しかし、その違いがあるという現実は客観的な事実としてあるわけですよ。これに対して、じゃ外務大臣は、今後韓国、朝鮮に向かってこれのギャップあるいは意識の差、それを感情的なものも含めてどう解消なさるのかということをお聞きしたい。
  41. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 それは、過去の過ちを率直に認めて、そしておわびをするところはおわびをし、あとは態度で示すと申しましょうか、何らかの形で、真心だけではわからぬわけですから、だからいろいろな目に見える形で今後協力し合っていくということではないか。ただ口で言うだけでもだめなことですから、やはり目に見えることを、今までもできるだけのことはやってきたつもりでございますが、今後とも未来に向かってひとつ一緒にやってやろうということを態度で幾つも示していくということの積み重ね以外にはないんじゃないか、そう思っております。
  42. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 私は、今の御答弁の中に、今後の日本アジア近隣に対する外交の基本的な問題あるいは戦争の責任の一つのとり方とか、あるいは本当の意味国際貢献はどうあるべきかということを示唆するお言葉だというふうに受けとめておきます。口だけではだめだ、おわびしただけでもだめだ、態度に示さなきゃならないということですね。これは後ほど、戦後賠償の問題とか、あるいは教科書の問題とかいろいろな具体的な問題で再度触れますので、今のお言葉をひとつお忘れなくお願いしたいと思います。  時間の関係上、予定しておりました質問一つ飛ばさせていただきます。  私の言いたかった一つは、中国に対する一つの侵略の事実の象徴的な問題として南京における大虐殺の問題があるわけであります。この認識をどう持っておられるかということを一つだけお聞きして、この問題については後でまた別な角度から触れたいと思うのですが、総理の所属しておられる政党の中には、南京事件、南京大虐殺というのは架空だった、なかったんだという発言をなさった人がおられます。しかし、その後、例えばドイツの外交官の文書が出てきた、これは公の文書ですよね、ヒトラーに報告している。その中には、はっきりそれが示されている。二度三度読めないくらい残酷な描写もある。それから、ある外国人の牧師が撮られたフィルムもある。こういうことになりますと、これはなかったことだとか、それは忘れてもいいことだとか、いやそれはやはり被害者と加害者の意識のずれだとかということでは済まされないと思うのですが、南京大虐殺と言われるあの事件についての総理の御認識を一言承っておきたいと思います。
  43. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 正確な記録あるいは内容は別といたしまして、そういうふうに伝えられた事実があったもの、それは極めて遺憾なことであったと私は思っています。
  44. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 遺憾なことだったということ、あるいは謝罪に近い心境というものをどのようにあらわすかということについては、後で一括してお聞きしたいと思います。  次に進みますが、戦後平和憲法の果たしてきた役割ということについて一つお聞きしたいわけです。  それは、もちろん御存じのアーノルド・トインビーが三回にわたって来日をされています。それでたしか二回目のころだったと記憶しますが、インタビューその他の記事の中で、トインビーは大変な親日家でいらっしゃいまして、歴史家としてはスケールの大きい、十年、二十年単位の物事じゃなくて百年、百数十年単位で見られる歴史家でありますが、その方に関して次のような記事があるわけです。当時日中関係が非常に険悪だった、特別の数人の人が辛うじて行き来していた時代があるわけですけれども「日中間が長く隔てられていながら、ついに今日」つまり平和友好条約を結ぶという日なわけですが、「ついに今日を迎えることのできた別の「功労者」は、日本の平和憲法であろう。」と言っているのです。そして、——失礼しました、日中関係の険悪の時期に来日されたということですから、今のは私の事実誤認でございましたので、平和友好条約締結前の話というふうに訂正させていただきます。  その日中間が険悪の時期に来日されたトインビーは、日中友好の将来展望を辛うじてつなぎ、保証をしているのは、中国側から見れば日本の平和憲法だ、平和憲法があるからこそ険悪な中でも将来展望をつないでいるんだ、こういう指摘をしているのです。その貴重な財産を日本人はもっと大事にしなきゃいけないんじゃないかという警告をしている。そして、あの日中平和友好条約が締結された、そしてその第六項ですね、その中に、「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」という表現があります。これは明らかに日本国の平和憲法に一致する条項であります、項目であります。このトインビーの指摘と日中平和友好条約の第六項についての所見、所感を承りたいと思います。  総理大臣、お願いします。
  45. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 今おっしゃいましたのは日中共同声明の第六項、条約ではなくて、共同声明でよろしゅうございますね。わかりました。  そこで、我が国明治以来の大志といいますか、いわゆる大陸政策というものの経緯並びにその結果をトインビー氏は歴史家として論評せられて、そして日中共同声明の第六項に言う主権及び領土保全の相互尊重、不可侵等々、そして平和友好関係を確立することに合意するというこのことを評価せられたものというふうに思います。
  46. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 私の質問には十分答えていただけなかったことを大変残念に思いますが、時間の関係上次に進ませていただきます。  アジア近隣が今まで申し上げましたように日本文化の生みの親だということはお認めいただきました。日本文化を生んでいただいた。そのアジアに対して脱亜入欧ということで、最終的には韓国併合以降、昭和で言えば二十年間、アジアに対しては、生みの親に対していわばやいばを向けてきたということになるわけであります。そのことをアジア近隣は忘れてはいないんです。忘れていないということを我々が気がつかなきゃいけない。過ぎたことは過ぎたんだ、それはもう数十年前だと言う人もいます。  しかし、それでは国交は成り立ちません。その中で辛うじて日本に対する信頼をつなぎとめてきた、それは平和憲法だ。日本は、あんな大変な苦労、苦しみを我々受けたんだけれども、絶対にやらないと言っている、鉄砲を持ってまた再びこっちに来るとか海外に出るということはしないと言っている。事実平和憲法が制定されてから五年間、警察予備隊という苦しい名目で生まれるまでの五年間は全然なかったわけでしょう、予備隊も軍隊も。つまりそれは、日本はあの憲法の条文どおり軍隊を持たないんだということの一つのあかし、証拠なわけですよ。その後のいろんな形の解釈、改憲がどんどん出てきたという経過については、これは私が今これから繰り返すまでもないと思うのですね。そういった中でアジア近隣日本に対する信頼を辛うじてつなぎとめてきた平和憲法自衛隊は出てこないんだ。  そういう中で、去年、ことしと日本政府自衛隊海外に出すということに執念を燃やしているとしか感じ取ることのできないような法案を出してきた。このことについてアジア近隣はどう思っているかということを、これは日本人の、あるいは与党の人の感覚ではなくて、アジア近隣立場で感じ取らなきゃならないと思うのです。  一々挙げませんけれども、去年とことしPKOと国際平和協力法が出てきたときに、アジア近隣は決してこれを歓迎はしていません。「過去に不幸な経験をしているわれわれとしては日本国連平和維持活動参加と関連した、武力行使可能性がある自衛隊海外派遣の動きには憂慮せざるを得ない」、これは韓国の外務省の見解ですよ。「かつての日本の軍国主義者が中国に大きな害を与えたことを日本の青年に理解させてほしい」、まずそれをやってくれ、これは中国共産党総書記の言葉であります。ことしになってからの言葉ですよ、去年と違うなんということは言わせません。去年はもっと厳しいことを言われているのです。きのうも公聴会で出ましたけれども、「武装平和維持軍に日本参加させることは、アル中患者に、ウイスキー入りチョコレートを与えるようなものだ」、これはシンガポールの元首相リー首相の発言です。  信頼していないんですよ。心配しているんですよ。あなた方の言う国際貢献という「国際」、国際協力という「国際」はどちらを向いているか、あなた方の視野にはどこの国が入っているかということを本当は聞きたい。ここにおられる大臣、国際、国際協力という言葉を聞いて連想する国の名前を三つ挙げてほしいと言われたら、どう答えられるか。恐らく第一番目はアメリカが出てくるだろう、一々お聞きするのは失礼ですからやめますけれども。その中に、三つ挙げた中でアジア近隣が入っているかどうか、それをちょっとお聞きしたい。総理、どうですか。
  47. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 国際という言葉で私は地球ということを感じますものですから、その中のどこという感じは先には出てきません。
  48. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 外務大臣はどうですか。同じ質問です。
  49. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 それは文字どおり国際でございますから、アジアに限定したわけでなくて、全世界的というように考えるべきだと存じます。
  50. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 正直といいますか、胸の中を本当に打ち明けていただいたかどうか、残念ながら私には全幅的な信頼を置くわけにはまいりません。  この国際貢献という場合の国際のとらえ方、これは今申し上げた、一つは視野をどっちに向けるかということがあると思うのです。もう一つは、これからの国際化社会においてはナショナリズムとどう対比させるかという問題もあるのです、このことは後で触れますが。  さて、そのアジア近隣のどの国が日本自衛隊海外派遣を歓迎し、要望しているか、その事実を示していただきたい。外務大臣、お願いします。
  51. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 特にアジアの中でも、日本が過去において迷惑をかけたり、被害を及ぼしたりという諸国が、当初自衛隊派遣ということについて神経質といいますか、そういう感じを持っておったことは事実です。  私も外務大臣になる前に、ことしの三月ですか……(沢藤委員「直截に答えてください、賛成している国の名前を挙げてください」と呼ぶ)それは、今言ったように、どの国、いずれの国もそれは我々が考えている以上にセンシティブに考えておったということは事実なんです、どの国といわずですね。しかしながら、内容をよく説明いたしまして、それは勝手に日本が出ていくわけではありません、国連の要請に基づいてです、それから紛争当事者があった場合にその紛争当事国の両方から同意が得られた場合です、これは中立的な活動を行うのです、武力行使を目的とするものではありませんというようなことを逐一説明をいたしますと、やはりそういうことならばそれはいいでしょうということや、まあ当然なことですということもありますが、やり方については十分に慎重にやってほしいという国もございます。いろいろ一々私はどの国がどうということを申し上げることは差し控えますが、それが一般的な印象だと私は思っております。
  52. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 これは私らがPKO法案を審議する一つの大きなポイントなんですよ。国際貢献をするという名前で肝心のアジア近隣に不安と不信を与えたんじゃ、これは逆じゃないですか、国際化時代に対して。今、大臣は、いいという国、当然という国というふうなことをおっしゃいました。特定して国の名前を教えてください。
  53. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 それは、特定して私が申し上げないと言っているのです。また、その年齢差にもよるようですね、聞いてみますと。やはり御年配の方の方が戦争体験がありますから、若い世代の方よりもそういう点を心配する向きがやや多いということも事実であります。しかしながら、それはいけませんということは言われておりません。やはり、まあ仕方のないことであるし、日本立場ということも理解しておりますから、そういう点は我々は国際社会の一員として、他の国もみんな、かなり多くの国が国際貢献をしているということも知っておりますから、だからそれは決して拒否的であるとか、それによって非常に心配をかけているとかいうようなことは私はないと思います。
  54. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 非常に私の見解とはかけ離れています。  総理大臣にお聞きしたいのですが、今の質問、もう一度ボールを投げ返してみたいのですが、PKO法案、去年の国際協力法案、これとことしと相次いで出してきた、こういった中でやはりポイントになるのは平和憲法とのかかわり合い、そして何よりも国際的なつながりの中で、さっきは総理も脱亜入欧の場面でアジアに対する一つの考えを示されたアジア近隣を大切にするということをおっしゃった。態度でも示さなきゃならないということを外務大臣もおっしゃっているわけです。その態度というのはPKO法案ですか。私は、PKO法案はそういうアジア近隣の十分なる理解賛成がなければ、これは撤回すべきだと思うのです。しかし、今お聞きしても、どの国、どの国がこの法案賛成しておる、自衛隊が出てくるのを歓迎しているという国は聞き取れないんですね。  もう一度お聞きします。  どの国が、国際貢献という名のもとに自衛隊海外に出すことに賛成です、どうぞおやりください、私ども歓迎しますと言っているアジア近隣の国があったら、お示しください。
  55. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 それは、こうではないかと思います。ただいまのお尋ねは、何か日本自衛隊というものがよそへ出ていく、そのことをアジアの各国は歓迎するかという、そういうお尋ねとして問題を提起しておられますけれども、私どもはこれを国連平和維持活動日本が貢献するかどうかという問題としてとらえておるわけでございます。  したがって、問われるべき問題は、アジア各国が国連のそのような平和維持活動賛成であるかどうか、こういうふうに私は問題は問われるべきであろうと考えていまして、その点について、私はアジアの国が消極的あるいは反対をしているとは思わない。むしろ沢藤委員の言われますことは、ですから、その国連の要請を受けて行くんだぞ、もちろん当該国の同意は必要でございますが、そこのところを間違えるなよ、こういうふうに政府におっしゃっているものと私は受け取ります。それは大事な点であると思いますが、その点はこの法案によく具体化されていると私は考えています。
  56. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 私がお聞きしていることに答えてくださってないんですよ。私は、自衛隊海外派遣賛成している国、特にアジア近隣、特に先ほど触れました大変大きな我々が反省しなきゃならない韓国併合以来の韓国、朝鮮、それから中国、少なくともこの地域に対してどういう同意を求め、どういう同意を得ているのか、国名を挙げてお示し願いたいということを申し上げているのです。答えてください。
  57. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 これは今特定の国に出すことを目的にして言っているわけじゃないのですから、今後の問題として、国連の要請があって、それで紛争を再発させないというためにPKOのようなものが必要だ、そういうようなときに、また紛争当事国、当事国がそれは要りません、日本は要りませんと言えばそれはもちろん行かないわけでございまして、こちらから押しかけていくわけじゃないのでございますから、だからそれはそのときになってみないとわからないことであって、来てもらいたくないというところへは行かないわけですから、そのことをまず念頭に置かなきゃならぬ。憲法の精神からいっても、私はこれは精神に合致している、そのように思っておるわけです。
  58. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 今お聞きした範囲では、結局例えば韓国、朝鮮民主主義人民共和国あるいは中国と、最も日本とかかわり合いの深かった国が自衛隊海外派遣PKO法案賛成しているというお答えは聞き取れません。つまり、同意を得てないわけですよ。  私がこれにこだわるのは、まあ縄文からさかのぼって、さっきも触れたんですけれども、アジア近隣のおかげで私たちは存在している。そしてまた二十一世紀も、これは米ソ対立の構造が変わった後一体どういうふうな世界の展開になるだろうかという場合に、私は極端に言うならば東西の東が消えた段階で西というものも消える、そういった中でアメリカ一国覇権時代といいますか、二十世紀というものは大きく二十一世紀には変わっていくだろう。そこに出てくるのは、いわゆる本当の意味の国際化時代ですね。それはただ単に英語が堪能な人をつくるとかあるいは交流をするとかということだけじゃない。特にブロックごとにこれから経済が発達し、文化というものの交流が発達していくだろう。その先駆となっているのはECあるいはEEAということで、ヨーロッパにその兆しはもう出ているわけですね。つい先ごろのテレビでは、アメリカもやや戻ったんでしょうか、カナダ、アメリカそしてメキシコとの間に一つ経済圏をつくるという動きが出てきている。  私は、日本がよって立つそういったブロックなりエリアということを考えた場合に、これはやはりアジアあるいは東アジアあるいは環日本海という時代が来るだろうと思うんです。それらの国々と経済協力あるいは技術協力、そして資源をあるいは労働力を、技術力を、資金力を出し合ってこの地域のエリアの開発をやっていこう、経済協力をする、これが二十一世紀に向けてのいわば国際協力一つの大きな方向だと思うんですね。その当の相手であるアジア近隣が今不信と不安の目で見ている中でなぜ今PKOなのか。アジアを振り切ってまでやらなきゃならない理由というのは何でしょうか、総理
  59. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 アジア反対しているわけじゃありませんからね。だから、例えばカンボジアの停戦が行われたということになって、そしてこれがもう本当に署名したとおりに定着するかどうかという心配はやはりあるわけですよ。しかし、アジアの人たちも、特にASEAN地区でも、カンボジアで停戦が成立したならばそれが固定化をして本当にSNCができて、それで暫定政府ができて選挙が行われて中立の民主国家が誕生するということは、アジアの人たちもみんな反対する人はだれもないんですから、ぜひそうしたいと思っているんですから、その過程において停戦監視とかいろいろな問題が出た場合に、それは困るという人はないんですよ、そういう国は。それはやはり平和裏に民主国家が生まれることをみんな希望している。そういう一環として国連や当事者から依頼があった場合は日本も何らかの協力ができればいいな、そう思っているだけです。(発言する者あり)
  60. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 私はこちらへ質問していますから、そっちの方は無視しますけれども、きのうの公聴会でもあるいはいろいろな世論を見ましても、やはり一番心配している、国民の心配は、一体憲法はどうなるのだろうかという点と、アジア近隣賛成していないじゃないか、こういう二つの点にかなり集約されているわけですよ。私たちは、やはりこれをクリアしない限りはこのPKO法案というのは進めるべきじゃないという態度、どうしてもこれは譲るわけにはいかないという気持ちは私の心境であります。  このことはこれからまた続きますが、質問事項がまだありますので、次に進ませていただきます。  戦後処理という言葉があります。戦争責任を果たすという言葉があります。このことについては、さっき大臣、答弁の中で、言葉だけではだめだよ、態度に示さなければだめだ、そのとおりだと思うのです。  そこで、私は、ドイツの場合と対比しながら総理大臣にお聞きしたいのですが、さっき引用しました一九八五年五月八日、ドイツ降伏四十周年、連邦議会においてワイツゼッカー大統領が演説をなさった。大変大きな反響を呼んだ、国内外から。そして、これがドイツの態度なんだという信頼が寄せられた。その直後に、あのイスラエルにワイツゼッカー大統領は迎え入れられて訪問しているのです。これは、きちんとそれを表明したということのあらわれだと思うのですね。  そこで、謝罪ということの本当の意味は一体何だろうか。これは、ワイツゼッカーの演説の中でこういうふうな言い方をしているのです。心から反省し謝るということは言葉ではない、これは外務大臣おっしゃったとおりなんです。みずからの内部で心に刻むことだ。口先だけじゃないよ、心に刻むことだ。心に刻むというのは、ある出来事がみずからの内面の一部となるよう、誠実かつ純粋に思い浮かべることだ。内面でそれを確実に自分のものにする、そしてそれを次の段階として態度にあらわすというのが本当の意味の謝罪だと言っているのです。  そして、ワイツゼッカー大統領は、次のような人たちをその対象として挙げているのですね。強制収容所で命を奪われた六百万人のユダヤ人。戦いに苦しんだすべての民族、特にソ連、ポーランド。兵士として倒れた同胞。空襲で命を失った同胞。シィンティ、ロマの人たち。殺された同性愛の人たちにも思いをいたしているのですね。殺された精神病患者。宗教、政治上の信念で死ななければならなかった人々。銃殺された人々。ドイツに占領されたすべての国のレジスタンスの犠牲者。ここまで思いをいたし、心に刻んでいるわけです。謝罪をしているわけです。  総理は、今の私の挙げた事項に対応できる、日本総理大臣として心に刻む、思い浮かべるその対象として浮かばれる、浮かんでくる人たちというのはどういう人たちでしょうか。
  61. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 ワイツゼッカーさんが言われました第一は、やはり何といっても人種差別に関するものであるわけです。それはヒトラー以来のことについて言っておられるわけで、それだけではございません、いろいろなことを言っておられますが、私は、我が国の場合とドイツの場合を今対比することを、余り適当な機会だと思いませんので深入りをいたすつもりはございません。我々には我々が大変に迷惑をかけ苦痛を与えた人々がおられるわけですから、それは我々として反省すべきことであるとだけ申し上げておきます。
  62. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 だから、日本としてはどういう方々を対象とし思い浮かべるのですかと聞いているのです。
  63. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 それは先ほどから御質問にありますような、どこの段階から考えますか、やはり明治の途中からの大陸政策あたりからを考えればよろしいかと思いますが、その犠牲になられた、それから、その結果として我々が苦痛を与えた方々戦争が終わりますまでの間。そう考えるべきかと思います。
  64. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 ワイツゼッカーの演説については、全部お読みいただいた上での質問だったつもりなんで、もっと具体的に総理の心情と申しますか、あるいは思いを刻む、心に刻む対象が聞けると思ったのです。  例えば、先ほどちょっと触れました強制連行された人々、労働力として、慰安婦として。あるいは広島、長崎も含むでしょう。ソ連抑留者も含むでしょう。満蒙開拓義勇軍もあるでしょう。戦争孤児もあるでしょう。在日朝鮮人の問題もあります。思想犯、政治犯、南京大虐殺、沖縄県民、捕虜、いろいろな形が出てくるはずですね。そういったところから、例えば戦後の一つの大きな問題としていわゆる戦後補償の問題があるので、ひとつ指摘をしておきたいのです。  どうもドイツの例を引くのですが、これはやはり必然性もあるわけです。敗戦国であるが、他の国土あるいは民族に多大の危害を与えたということでは全く共通しているのですね。そのドイツが軍人と民間人とに差をつけない援護、連邦援護法において戦後処理をしている。ユダヤ人ないしは新生イスラエル国家に対する措置も行っている、ルクセンブルク協定。そしてその後、これは統一ドイツの後もずっと続くわけでありますけれども、十二カ国とナチス犠牲者のための補償協定を締結している。一般に包括協定と呼ばれている。ルクセンブルク、ノルウェー、デンマーク、ギリシャ、オランダ、フランス、ベルギー、イタリア、スイス、オーストリア、イギリス、スウェーデン。そして、これらの補償に要する金額は七兆円にも及ぶというふうな記述があるわけです。  これと対比した場合、日本はああだこうだ、ああだこうだ言いながら、この補償に対して踏み込んでいないんじゃないかという指摘が今出てきているわけでしょう。訴訟も出てきている。そしていろいろな形から、もう間もなく亡くなられるであろう高齢者の人が、今のうちでなければ言えない、とてもじゃないが苦しくて、自分のことを明かせないという慰安婦の方の声も今出てきている。これに対してどうこたえるかということを、これは哲学としてお聞きしたい。どうですか。
  65. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 戦後日本も焼け野が原になって、非常に苦しい財政事情にあったことも事実であります。しかし、賠償責任という問題がありますから、歴代政府は誠意を持ってそれぞれの国々と交渉をして合意を得て、それで賠償を払うところは払う、また賠償を放棄されたところはそれもございます。いろいろございます。いろいろございますが、個人個人と日本政府が交渉をするということはできません。できませんので、それは相手国政府の責任において決着をするというような取り決めのところもあります。したがって、個別個別の問題を言い出しますといろいろございますので、政府としては政府間交渉で妥結した中で一応そういう問題は解決が済んだという解釈をとってきておるわけであります。多い、少ないの問題はいろいろ議論がございましょう。ございましょうが、一方的に日本が押しつけたわけではなくて、両方でのいろいろなたび重なる協議の結果、それぞれ妥結をしてきたというこの現実も認めていただかなければならぬと存じます。
  66. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 部分的な補償の実行、あるいは外交文書による、これはもう補償は求めるんだ、求めないんだというふうな合意というふうなものはあったかもしれません。しかし、ドイツのように最近はナチス強制労働に対する、ポーランドに対する補償金の協定も結ばれたというふうな、覚書が交わされたということもあります。徹底して反省をし、口先だけじゃない、行動に移す、そういうことを着々実行しているドイツ。教科書の問題もさっき触れました。こういった違いが、繰り返すようですけれども、盧泰愚大統領の言葉をかりれば、フランス、ドイツ、イギリスは本当に過去の過ちをはっきりと洗い直ししながら一緒にやっているんだ、それに引きかえ日本は、植民地としての韓国、植民地であった韓国の大統領が、我々両国民は不幸だった過去に対する認識と感情を整理できずにいると言っている。過ぎた時代のしこりが両国関係発展の障害になっていると言うのです。つまり十分じゃないということでしょう。こっちはやったやった、もう決まっているんだと言っても、肝心の相手がそう思わなかったら、これは全然意味をなさないわけですよ。そういう認識について私はすごく、さっきからお聞きしていますと悲しいと思います。  これについては、補償の問題とさらには別な問題を含めて、最後にもう一度お聞きをしたいと思います。  一つは、田邊我が党の委員長が代表質問でも指摘しましたけれども、いつの区切りを求めるかは別です。私は個人的には、大戦が終わった五十年というのが三、四年後に来るわけですが、これをずっと、日露あるいは韓国併合を含めた、あるいは満州事変あるいは日中の戦争、そしてまた全面的な第二次世界大戦を全部総括した中で五十周年なら五十周年を区切って、ワイツゼッカーは四十周年だったわけですけれども、そういう国を代表する首相として、中国の方に言わせれば、日本を代表する人と言えば本当は私らは天皇だと思っている、天皇の訪中をお待ちしているんだ、お言葉を聞きたいんだということを言っている。  私は、きょうはここで天皇についてのいろいろな質問は用意しておりません、準備しておりませんが、しかし、少なくとも日本の国としてのワイツゼッカーの演説に匹敵するような首相の演説、表明というのは聞けないものか。そしてそれを裏打ちする幾つかの問題、教科書問題についてはこうした共同の点検をする、賠償については今提起をされている、提訴をされているものを含めて戦後補償については徹底的に応じていくということも含めた、総理大臣としての一国を代表する演説が欲しい、あるいは国会の決議があって当然である。そのことを越えないで、アジア近隣の険しい目に背いてPKOを押し通そうとする。これは私は日本のとるべき道、二十一世紀のあるべき協力関係を展望した場合にとるべき道じゃないと思うのです。  そのことについて、再度、総理、お考えいただけませんか。総理の、ワイツゼッカーのようにとは言いませんけれども、総理としての演説、国会決議、国会決議については、これは私の言及するところではありませんという意味の、非常に私から見ればそっけのない御答弁があったのですけれども、それでいいのでしょうか。この二つを含めて総理、お答え願いたいと思います。
  67. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 この問題についての政府認識は、私がこの委員会で先日来しばしば申し上げているとおりで明らかであると存じますが、また海部前総理大臣は今年シンガポールにおいてそれを演説の中で海外に向けても述べられたわけでございます。  それから、この具体的な補償措置等々のことも御指摘がありまして、それはしかし、先ほど外務大臣が言われましたように、我々の先輩たちがサンフランシスコ講和会議であるとかあるいはその結果生まれました各国との賠償協定であるとか、あるいは日韓の基本条約であるとか日中の国交正常化についての声明であるとかいろいろな形で非常な、それはそれなりに苦労をしながら法的に処理をしてこられた問題でありまして、沢藤委員の言われますお気持ちは私は決してわからないのではないのですが、我が国としては苦労をしながら相手国とそういう形で一つ一つ法的な処理をしてきたということも御理解を願いたいと思うのであります。
  68. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 ここではっきりしてきたことは、PKO提出なさっている政府のお考え、それを進めようとしておられる総理を初め閣僚の方々アジア近隣については心配りができていない、ないということ、これは残念ながら認めざるを得ません。これは国民に対してこの審議を通して明らかにしていかなきゃならないと思っております。そしてまた、平和憲法の問題につきましても、さっきトインビーの言を引用しながら申し上げたのですが、これについても、平和憲法、つまり海外派遣するべきじゃないということについても、今の政府総理はそういう考えには立っていないということもはっきりしたわけです。非常に国民はがっかりし、また心配するだろうと思いますよ。これからもいずれ、まだ審議は終わっていませんから、いずれここ一週間くらい徹底的に審議をし、論議をしたらいい、こう思っております。  時間が来ていますので、私は一つ先ほど触れようと思ったことで、戦後の責任ということですね。これはある人が、知らない世代に責任ないぞというふうなことをおっしゃる人もいるのですけれども、私はひとつ考えていただきたいと思うのだが、南京に私、三年前に参りました。南京にいわゆる南京大虐殺の記念館がございます。正式の名前は別にありますけれども、便宜上虐殺記念館というふうに申し上げておきます。ここでは、これは架空だ何だと言う人の言を吹っ飛ばすような事実がたくさんあります。骸骨、骨もありますし、それから生首をぶら下げて記念撮影をしている日本軍人の写真、全裸の女の方、そのそばでやはり記念撮影している日本の兵隊、穴に生き埋めされている青年の写真、後手に縛られて軍刀で試し切りされている、これはフィルムです、写真じゃありません。いやでもそういった事実が突きつけられるわけです。しつこいとかなんとかと言う人もいるかもしれません。しかし、それは中国の認識がそうなんです。忘れろと言っても、そう簡単に忘れられるものじゃないわけですね。  そして、私が一番胸にショックを受けたのは、その映画が終わって館内が明るくなります。そうしますと、当然のことながら中国の方がたくさん近くにおられるわけです。正直言って面を上げることは非常に困難でした。日本人だということがわかりますからね。もっともっとそれを痛切に感じた人がいるのです。それは、その記念館の一番最後のコーナーに修学旅行で来た日本の高校生の手記が展示されておりました。その一つの例をちょっと読み上げてみます。  私は人間です。物事を考えます。でも、人を殺すことを考えるのなら人間でいたくありません。少しの力があります。でも、その力が人の命を奪うのならそれも要りません。悲しいことです。南京にやいばを向けたのも、そのやいばに力を加えたのも、私たちを子孫とする同じ日本人だったということ。  これが悲しいと言っているのです。私は高校教師をした経験もありますから、本当に涙なしにはこれを見ることができなかった。この子供たちに、私は悲しい、私たちを子孫とする同じ日本人がやったということ、そう言わせた大人の責任は一体どうなるんでしょうね。私はそういうことを考えました。  そしてもう一つ、二重に私は済まないと思った。そのように純粋な青年が恐らく人生の中で価値観が変わるくらいの大きな衝撃を受けただろうと思う。そのことを日本人があらかじめ教えなかったということ、教育でも、親も。そして、当の危害を加えた国の、被害を受けた側から初めて知らされたということ、このときの高校生の衝撃は、私はすごく大きかったと思いますよ。ワイツゼッカーは、その当時生まれてなかった子供たち、それは責任を問うことはできない、しかし我々大人は大変な遺産を彼らに与えた、これはドイツ民族の罪だ、こういうことを言っているのです。ですから私は、高校生を責めるとか何かじゃなくて、らち外に置くということじゃなくて、その高校生の悲しみ、このことについてこたえていかなければならないと思う。  私たちは他の人の立場に立って物事を考えるということが、私は人間にとってすごく大事なことだと思うのです。おれはおれだ、ああそれは高校生の感傷だろう、それは殺された方の、被害を受けた側の中国の人の感じだろう、こういうことで済ませるというのは私は人間としては非常に恥ずかしい存在だと思う。自分以外の者の立場に立って物を考える力、これがなかったら私は政治はできないと思うのです。  そういった中で、総理、あなたのお子さんじゃない、お孫さんぐらいの年齢だと思うのですけれども、この日本の高校生、こうして、悲しいことです、やいばを向けた、力を加えた者が私たちを子孫とする同じ日本人だったことが悲しい、そう言わせたその高校生の前に、総理、もし自分のお孫さんだったらどう語りかけますか、それをお聞かせください。
  69. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 まことに残念で、遺憾なことであったと思います。
  70. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 その高校生、青年を前にして、まことに残念だった、これで済むあるいは済ませる、そういう一つの、何というのでしょうかな、人間としての哲学、価値観をお持ちの方が日本総理、そしてまたPKOを提案なさっているということの重大さをアジアの人々はどう見るだろうか。今総理は私に対してお答えをしたと思うのですけれども、私の質問は青年にお答えを願いたいと思う。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  そしてまた、私は、青年を通してアジア近隣にどうあなたが伝えるか、訴えるかということ、こういうことなんですよ。この委員会の場だけの問題じゃないのです。そういうことについて非常に寂しい。日本の政治、それを支えている人々の価値観、哲学、他の国との、当事国との間の意識のギャップを非常に軽く見て、それに思いをいたそうとする努力がない。それをどのようにしてギャップを埋めていくかという具体的な展開もないままに、一つPKO法案を押し通そうとする。しかし、それにはいろいろな疑問がまといついているわけですよ。なぜそれを振り払って今なのか、この疑問は国民はどうしても払拭できないと思います。このことは強く指摘をしておきたいと思います。  五十九分までという連絡がありましたので、若干先に進ませていただきます。このフォローにつきましては、同僚、先輩の委員からきょう、あす、あさってと、徹底して追及をしていただきたいと思っております。  軍縮ということについてちょっと考えてみたいのです。  自衛隊を削減するチャンスあるいは軍縮を進めるチャンスが、今本当のチャンスじゃないかということですね、客観的に見ても。これはどなたも気がついていることだと思うのです。かつてのワシントン、ロンドン条約の場合の軍縮は、いかに相手の国の軍備を、頭を抑えるかということの軍縮だった。しかし、これからの軍縮はそうじゃないですね。人類がいかに生存するか、そしてグローバルな、地球上のある意味での平和。戦争ではないが平和でもないという事態がたくさんあるわけでしょう。環境問題もありますし、南北問題もありますし、餓死している子供たちもいる。そういったものに対して、いかに国際間の協調でそれに対処するか、その一環としてこれからの軍縮は論じ合わなければならない。かつてのロンドン条約、ワシントン条約のころの軍縮とは違うと私は思う。そして、核時代の軍縮は主に米ソとの間のやりとりで進められてきたのですけれども、そういったことの一つの流れの中で東西対立が消えた。そして二十一世紀を間もなく迎えようとしている。この時期の軍縮というのは非常に大きな意味を持っていると思うのですね。  このことについてはどうでしょうか。どなたでも結構です。軍縮の持っている今日的な意味ということ。
  71. 渡辺(美)国務大臣(渡辺美智雄)

    ○渡辺(美)国務大臣 私が答弁するのが適切かどうかわかりませんが——疑問がありますか。じゃ、やめておきましょう。
  72. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 じゃ、総理お願いします。
  73. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 それは以前にもお答えを申し上げましたし、また所信表明でも申し上げましたとおり、いわゆる冷戦の終結によって我々は新しい平和の国際秩序を構築する時代に入った、こう考えていることを申し上げました。そして、軍縮ということがいわゆる平和の配当となって、我々自身にはもちろんですけれども、最大の受益者はやはり南北問題に悩む南の人々であるべきであろう、そういう見方をしております。
  74. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 今後の二十一世紀に向けての国際協調、それに向けての国際貢献の基調は、これは平和的なもの、繁栄を目指すものでなければならないということを私は強調しておきたいと思います。  フランスの政治家でもあり実業家でもあるジャン・モネという人が、いかにして平和を構築するかということを考えて出してきた答えが、ヨーロッパを経済的に統合することだという結論に達したわけであります。ヨーロッパを破壊したのはいわば国家主義、ナショナリズムだった、そのナショナリズムに対する処方せんとして、国家を超えたあり方を展望した、歴史の教訓を何世代にもわたって定着させるためには、その制度、EC的な制度しかないという結論に達したということは私は大変すばらしい考え方だと思うのです。これを日本はたどっていきたいと思うのです。  再びトインビーの「歴史の研究」を引用させていただきますが、戦争と平和には一定の周期があるという説はたくさんの学者が出しています。それは今まで五十年説もあれば百年説もあるわけですけれども、それは一つ戦争でもって消耗された経済力あるいはその気力みたいなのが回復するまでの時間がかかるというふうなことと、戦争に直接タッチした世代が子供までは伝える、子供にまでは戦争体験を伝えて戦争抑止の方向にそれは働きかける、しかし、孫の代になるとそれが薄らいでくる。つまり、世代交代の中で一つ戦争サイクルがあるという説があるわけです。  これは多くの示唆を含んでいると思う。教育の大切さそして歴史教育の重要さ、こういうことを示唆していると思うのですが、文部大臣、いかがですか。
  75. 鳩山国務大臣(鳩山邦夫)

    ○鳩山国務大臣 歴史教育が大切であることは言うまでもないことでございまして、今まで教育でどういう子供をつくるかという観点を考えた場合に、たくましい子供、そして弱い者を味方するようなやさしい心を持った子供、これは教育の二つの大目標であろうと思いますが、このような国際化社会にあっては、いわゆる国際協調とか国際理解とかそういう観点を教育にも大いに取り入れて、国際性のある子供をつくっていかなければならない。そのためには、歴史教育につきましても、昭和五十七年ごろにいろいろ国際的な摩擦等ありましたが、官房長官談話が出てそれを受けて教科書の基準についても改定をいたしまして、また今回の学習指導要領につきましても従来よりもさらに国際理解あるいは国際協調という観点を取り入れて、教科書も書いていただくようにお願いをいたしているところでございます。  なお、高校では、先ほど先生が地理歴史の母であるとおっしゃいましたが、高校の社会科を地歴科と公民科に分けたというのもそのような重要な観点を含んでいると思っております。
  76. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 軍縮について締めくくりの質問を申し上げたいと思うのですが、先ほど申し上げました、軍縮というのは平和な状況、繁栄する世界をつくっていくために非常に大きな力を持っているわけであります。ある本に書いてありますが、トライデント潜水艦一隻で十五億ドルする。これは世界じゅうの子供に予防接種して一年間百万人の生命を救うに必要な経費に該当するという資料があります。つまり、トライデント潜水艦一隻で一年間百万人の子供の生命を救えるということであります。イージス艦は幾らでしょう。恐らくトライデント潜水艦の半分くらいでしょう。それを二隻あるいは一隻分縮少することによって私たちは本当の意味国際貢献ができる。  そこで、先ほど申し上げましたこれからの二十一世紀を展望した場合に、東西対立が解消して新しい協調の時代、しかもブロックごとの経済協力が主体になるような時代が来るだろうということを申し上げました。これに向けて今が軍縮の時期である、そう思います。時間が来ましたからトインビーの例は省略しますけれども、トインビーは大体百十五年周期でもって全面戦争と小康期、治まっている時期、補完戦争、全面平和というのが大体百十五年周期で来るという説を今まで五百年の歴史に当てはめて言っております。今まさに全面平和の時期に入っていると思うのです。こういった時期に平和憲法を持っている日本がなすべき第一の仕事は、軍縮を呼びかけること、みずからも軍縮の一歩を踏み出すことだと思うのです。  そこで、総理防衛庁長官にお聞きしますが、これから二十一世紀に向けて国際貢献という大きな枠の中での方向性として、軍縮に向けて歩むか、軍拡の道を歩むか。これは装備を新しくするというのも一種の軍拡ですから、答えは二つに一つ、軍拡を目指すか軍縮を目指すか、そのことをきちんとお答え願いたい。
  77. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 我が国は、軍事大国にならないということで世界の模範になっている国でございます。東西の冷戦が終わったということで、いよいよ世界の軍縮について我々は先頭に立って、我々過去にやってきましたことをさらに発展をさせていくべきだと思います。
  78. 沢藤委員(沢藤礼次郎)

    沢藤委員 さっき冒頭にちょっと御紹介しました歴史学者の方と一時間ほどお話しする機会があったのですが、やはり歴史というのは広い視野、長いサイクルで見なければ事の本質が見えませんよということを指摘されました。それは、トインビーの五十年、百年周期、トインビーは百年と言ってもいいと思いますが、そういうサイクルで見なければ歴史を見誤るという指摘なわけです。  私は湾岸戦争は小さい事件だったとは言いません。しかし、これから何世紀に向けての、来世紀に向けての長い百年単位の出来事だったとは歴史的には思いません。むしろそれよりも東西対立が解けた、なくなったという、この東西対立の枠組みが消えたということこそ、五十年、百年単位の平和を展望し、我々の進むべき道を展望する大きな尺度だと思うのです。三年、五年の湾岸戦争、百年単位の歴史観というものと比べた場合に、急ぐべきではない、ここはやはり慎重にやるべきだ。  そして、これを論ずる前に、法案を出す前にやるべき仕事がたくさんある。それはアジア近隣との理解を深めることだ。平和憲法とのかかわり合いをきちんとすることだ。そして経済協力の体制をつくっていくことだ。環日本時代もあります。そして、これは文部大臣に後で文教委員会でやりますけれども、国際貢献の中の土台になる技術、学術のレベルが果たして日本大丈夫か。そういったことを含めて、やはりPKO法案は今強行すべきではないということを申し上げて、一言総理の御答弁をお聞きして終わりたいと思います。
  79. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 私の観点は、そういういよいよ軍縮、平和の時代が来る、それを我々は本当に期待しますが、その中心はやはり国連であってほしい、その国連に我々は貢献をしたい、こういうことでございます。
  80. 林委員長(林義郎)

    林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時六分開議
  81. 林委員長(林義郎)

    林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。五島正規君。
  82. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 私は、国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案質問をまずさせていただきたいと思います。  今回、フィリピンの台風被害によりまして、JICAの方から医師二名、看護婦二名、それから外務省の職員二名がレイテ島に派遣されたというふうに報道されておりますが、どのような目的で、どのような活動をするために、この人員が派遣されたのか、お伺いしたいと思います。
  83. 川上政府委員(川上隆朗)

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  フィリピンの台風に対するチームの派遣についてのお尋ねでございますが、十一月十一日に国際医療チームを派遣したわけでございますが、これは御案内のとおり、五日フィリピン中部地域を襲いました台風による大規模な被害に関連しまして、フィリピンの政府が九日、我が国に対しまして医療保健関係の緊急援助要員の派遣要請というものを行ったわけでございます。これにこたえまして、被災地において被災民に対する医療活動を行うという目的で派遣したわけでございますが、既に二十三日に全員帰国をいたしております。  御質問派遣員数、目的等についてでございますけれども、派遣員数に関しましては、フィリピン政府から要請があった時点では被災地の状況がまだ不明であったということもございまして、とりあえず緊急のニーズというものに対応するという目的で、そのための構成人員ということで今御指摘のような人数を派遣したという経緯がございます。  もし、さらに必要があれば追加的な派遣を検討することといたしておったわけでございますが、この追加派遣についての要請は、フィリピン政府現地でいろいろ協議いたしました結果、特になく、むしろ今後水質検査、上水道の専門家といったようなものを派遣してほしいというような要請がございましたので、そのような専門家を十七日にレイテ島のオルモック市に派遣したという経緯がございます。  ちなみに今回は、今申しましたレイテ島オルモック市内に拠点を置きまして医療活動を展開したわけでございますが、合計約六百名の患者を診断したという報告を受けております。
  84. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 今回の改正案によりますと、こうした国際緊急援助隊に関して自衛隊を使っていく、あるいはその輸送のために自衛隊を使うということになっているわけでございますが、この法案が審議されました六十二年の八月二十五日でございますが、参議院の速記録を見てみますと、政府は、その時点において、現在の時点におきまして、日本がいろいろな自然災害あるいは人為災害に対してとってきたような対応は自衛隊協力なくしてもやれる、そういう体制が一応できておるということから、自衛隊協力必要なしということで、この法律を提案している、また、現在でも二十四時間以内にそうした救援隊を派遣できる能力を持っている、さらには、経験から判断して、組織的に大量の者を派遣する、自衛隊を使わなくてもそれが十分対応可能である、そうした判断に立ってこの法案をつくった、これは過去二、三年のケースを見てそのように判断したんだ。これは例のメキシコの大地震あるいは太平洋におけるサイクロンによる被害が非常に出てきた後の状況でございますが、このように当時の倉成外務大臣はおっしゃっておられたわけでございます。  今回この国際緊急援助隊自衛隊参加する、あるいはその自衛隊がそれに必要な機材を海外に輸送する任務に当たるようになったその具体的な根拠、六十二年の八月から今日までの間、具体的に自衛隊がそこに参加しなければどのような問題が起こったのか、その点について具体的にお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、金子(原)委員長代理着席〕
  85. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  国際緊急援助隊法の参議院における審議を踏まえての御議論でございますけれども、自衛隊参加しないで今まで御承知のように救援活動に従事してまいりました。しかし、例えば今先生のおっしゃられましたように、バングラデシュにおけるサイクロン等々いろいろ大規模な災害等がございますけれども、日本はそういう災害等に対しても人道的な見地からこれにあとう限り協力していこうということがこれからの国際社会で求められていることだと存じます。  そして一方、自衛隊はそういった面で、平素民生協力その他を通じまして大変訓練をいたしております。その経験、能力、組織力等々、これは大いに活用して、そうした面で大いに、これはまさに平和的な業務への参加でございますから、これらを充実して、そして国際的貢献を果たすことが我が国のこれからの将来にとって大変重要なことであるという認識のもとに、今回このような自衛隊参加を規定したものでございます。
  86. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 自衛隊がそのような能力を持っているかどうかという問題ではなくて、六十二年八月二十五日の時点で、公明党の黒柳議員の質問に対して、その時点において、自衛隊を使わなくてもそのような能力を我が国は持っている、できる、そして二十四時間以内にそういう緊急部隊を派遣できるんだ、しかもメキシコの大地震を含めて、そうした経験の中から、自衛隊を使わなくてもいいというふうに言っておられたわけですね。  その後、大きな災害としては、自然災害を挙げるとしますと、バングラの災害があるわけでございますが、しかし、その場合にも、バングラでのサイクロンによる災害、大きいのがございました。六十年に一度という災害が起こっていました。そうしますと、六十二年に国会で当時の外務大臣がおっしゃったそのときの判断を変えなければいけない最大の理由は何かということをお伺いしているわけです。
  87. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 基本的に、今先生おっしゃいました六十二年における議論、その延長線上にあることは当然でございます。自衛隊の平和協力ということで今回お願いしているわけでございまして、先ほど先生の御質問の中に、六十二年以降具体的なケースとしてどのようなものがあるかという御下問に対しては、私ちょっと返事をいたしませんでございました。具体的なケースでございますから、外務省の方から答弁していただきます。
  88. 川上政府委員(川上隆朗)

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  具体的なケースでございますけれども、大きなケースといたしましては、最近の方から申し上げますと、先ほどもお話が出ましたバングラデシュのサイクロンのケースでございます。これは今年の五月でございますが、御案内のとおり十数万人の死者が出たという大変な自然災害だったわけでございます。そのほか、昨年はフィリピンの地震、これは御記憶と思いますけれども、非常に大きな規模の地震でございまして、これに対しまして我が国は総計四十二名の緊急援助チームを派遣いたしております。それから、その前に起こりましたイランの地震、これもたしか死者四万幾らというような大変な災害だったわけでございますが、これに対しましては救助チーム十六名、医療チーム八名、計二十四名の緊急援助隊を派遣しているという実績もございます。  こういうようないろいろなケースを通じまして、我が国が緊急援助体制をさらに整備して国際貢献の実を上げるということが基本的に大事なんではないかという認識が生まれたわけでございます。当時の認識でございますと、自衛隊につきましては、御質問もございまして、倉成大臣から、これは将来の課題にしたい、これからの運用の実績を見ながら考えてまいりたいといったような答弁をなされた経緯もございますが、今申し上げましたようなそういう実績を踏まえまして、今回は、前から御答弁申し上げておりますように、自衛隊の能力を特に大規模に展開する、さらには自己完結的と申しますか、自給自足体制のもとに自衛隊活動するといったようなこと、さらに輸送態勢についてこの能力を増すといったような、大きく分けまして三つぐらいのカテゴリーで考えまして自衛隊の能力を活用することが緊急援助体制を充実させたものにするためにぜひ必要であるというふうに判断した次第でございます。
  89. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 近年にも災害が世界各地で起こっていることについてはよく承知しているわけでございますが、この六十二年八月の国会審議の時点におきましても、倉成大臣自身がおっしゃっておりますが、百六十年来のインドの大干ばつあるいは六十年来の大洪水がバングラデシュで起こるというふうな自然災害の後でございました。その時点において、日本は二十四時間以内に救援救助部隊を派遣する能力は自衛隊を使わなくてもあるんだというふうに大臣はおっしゃっているわけですね。しかし、その後の経過を見てみますと、例えば東京消防庁を初めとして、先日のバングラの洪水に対しては大変な救援隊の皆さん方の御努力がありました。しかし、本当に日本は最大限の努力をしてやってきたのか。あるいは倉成大臣が言われたように、二十四時間以内にそういう緊急援助を派遣できる能力があると言いながらやってきたのかということを考えた場合に、そうではなかったじゃないか。  そこで、なぜ今、その六十二年のときに自衛隊を使わなくてもできると言ったのを今回自衛隊にその能力を依存するという形になったのか、それはどういうふうな具体的な事件を経験して、その反省からこう変えないといけないということになったのか、それを具体的にお伺いをしているわけで、お答え願いたいと思います。
  90. 川上政府委員(川上隆朗)

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、今回の主たる改正の理由は、大規模に救助部隊を投入するといったような点、それから自衛隊が持っております、先ほど申しましたが自給自足的な、例えばテントを張りまして、当然災害のときには相手に依存することができなくなるわけでございますので、みずからの力でもって救助活動に携わることができるといったような能力、それから輸送でございます。そういう点の今までの経験にかんがみまして、やはりそういう点が欠けていたのではないだろうかという反省に立っているわけでございます。  この点は、もちろん緊急援助活動は、基本的には中心は、当然のことながら被災国自身がやる活動をほかの国が補完するという性格を持つものでございますので、どこまでやるかということについては、当然その応援する国の方が決めればいいことではあるわけでございますが、こういう体制をさらに充実させるということが国際貢献の実を上げることになるのではないかというふうに我々は判断している次第でございます。
  91. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 この点につきましては後ほど改めて質問することにいたしまして、次に進みます。  この国際緊急救援部隊に参加する自衛隊員武器は持たない、携帯しないということになっているわけでございますが、その輸送に当たる飛行機であるとかあるいは車両であるとか等々そうしたものについての武器、あるいは船舶に搭載されているその武器、そうしたものはつけたままなのか、外していくのか。また、そうした輸送に従事する船舶等は、例えば飛行機の場合軍用機、あるいは船舶の場合は軍輸送船、あるいはそれに対して護送船をつけるといったようなことになるのかどうか、その点についてはどうなのか、お伺いしたいと思います。
  92. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 自衛隊が人道的な国際救援活動参加するに際しましても、法律の建前といたしまして武器を保有することになっております。これは人道的な国際援助活動といえども紛争によりまして生じた被害の復旧等を対象といたしておりまして、一般隊員の参加する地域に比べて、場合によりますと現地の治安状況等が悪い場合も想定されます。そういうことのために自衛隊武器携行等が必要であるからということでこれを携行することになっております。  一方、先生のおっしゃられました補給艦あるいは輸送艦を使っての問題でございます。  事実関係だけをちょっと簡単に申しますと、我が国が輸送のために使い得る海上自衛隊の船舶としては輸送艦と補給艦がございます。  輸送艦の方は、御案内のように主要性能として幾つかございますけれども、これは詳細であれば防衛局長から答弁いたさせますが、各種の、二千トンクラスあるいは千四、五百トンクラスあるいは五、六百トンクラスというように分かれておりますが、それぞれ、例えば二千トンクラスの「みうら」におきましては、これは三インチ砲一と四十ミリ機関砲一を搭載をいたしております。また、「あつみ」、中くらいのものにつきましては四十ミリ機関砲二基、二つを備えております。そしてまた、一番小さいのは二十ミリ機関砲等を一基持っております。他方、補給艦につきましては、これはその補給艦の機能、性格から申しまして小兵器は搭載してございません。  したがいまして、今お尋ねの点は、輸送艦、補給艦等を輸送のために使うあるいは平和協力業務の付随業務としてあるいは輸送のために使うという場合に武器を搭載したまま行くのかどうかという点でございますけれども、これは国際平和協力業務というものがあくまでそういう武器使用は目的といたしませんけれども、これは輸送艦あるいは補給艦等について具備されておるものでございまして、これをあえて外していくというようなことは今のところ考えておりません。それは海上における、公海上における武器防護のための武器使用という問題が自衛隊法九十五条に書かれておりますが、そういった観点等もございましてこれは取り外さないで参りますけれども、あくまでしかしこれは、これを使用することが目的ではございません。  私どもは、この平和維持活動というものがあくまで平和を目的としたものでございまして、武器使用は二十四条で、たびたびお話し申し上げておりますように非常に限定的にやっておる……(五島委員国際緊急援助隊の話ですよ」と呼ぶ)失礼しました、ちょっと混線しました。援助隊の方も同じく武器を外さないで参ります。
  93. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 これは大変な話でございまして、緊急援助隊の活動について自衛隊武器は外さないで行く。本来こういう国際的な緊急援助活動について、その緊急援助を行われる地域の治安の維持というのはその国の主権すなわち相手国の主権のもとで行われるというのが原則だと思うわけですね。そこに武器を持ったまま、兵器を持ったまま、いかに目的が緊急救援活動のためであろうとも行くということについて、そのようなことが果たして可能なのかどうか。そのような状態で相手国が受け入れることができるのかどうか。  今までであれば少なくても二十四時間以内に、メキシコの大地震ぐらいの地震であれば緊急部隊を自衛隊を使わなくても出せると言った。今回法律を改定して、そして自衛隊を使う。そして自衛隊で自己完結的な能力を持たしていく。救援活動で自己完結的な能力を持たないといけないということは、これはもう常識です。だけれども、それを自衛隊に依存して武器も持たしたままそこでやらすのだ、これじゃ国際緊急救援活動と、いわゆる国連平和維持活動として挙げられている人道的な活動というものとの区別がつかないじゃないですか。同じ行為じゃないですか。どうなっているのですか。
  94. 川上政府委員(川上隆朗)

    ○川上政府委員 まず、緊急援助隊を派遣するに当たりまして、従来から、武器使用しなければ人員の生命等の安全が確保できないほど治安の悪い国にはこれは派遣しないということは方針として堅持しておりまして、この点につきましてはもう何回もお答え申し上げたとおりでございます。  今回の改正によりまして自衛隊派遣することになるわけでございますが、自衛隊がこれに参加することになってもこの点は何ら変わらないということも何度もお答え申し上げております。なぜなれば、自衛隊参加するのはより危険な事態に対処するために参加してもらうためではなくて、先ほど申し上げたような理由から参加していただくということであるということでございます。  このような事情を踏まえまして、本法案国会提出に先立ちまして、被災国内で国際緊急援助活動またはこれに係る輸送を行う人員の生命等の防護のために、当該国内において武器を携行することはないという閣議決定を行った経緯がございます。こういう意味において、自衛隊がこの目的で被災国内で武器を携行することはない。  ついては、今先生お尋ねの輸送手段のことについてでございますが、自衛隊が、国際緊急援助隊の人員及び輸送でございますけれども輸送を行うに当たりいかなる輸送手段を使うかということは、輸送の規模、態様、我が国からの距離等によって左右される、当然左右されるわけでございますので一概には申し上げられませんけれども、例えば航空自衛隊の有するC130といったようなものや海上自衛隊の輸送艦、補給艦といったようなものが考えられるわけでございますが、これらの輸送手段の武装につきましては、C130、輸送機でございますけれども、これはそもそも武器装備してないというふうに理解しておりますし、自衛隊の艦船の方については装備されている武器についてあえて取り外すことはしないというふうに私ども承知いたしております。
  95. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 おかしいでしょう。相手国の中においては自衛隊武器を携帯しない、飛行機については武器はない、しかし艦船については武器を装着したまま行く。領海の中に入るわけでしょう。どうなんですか。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 畠山政府委員(畠山蕃)

    ○畠山政府委員 通常、海上自衛隊が艦艇を運航いたします場合、そこに装備されております武器はそのままで運航するというのが一般の原則でございます。これは例えば通常の訓練の場合におきましてもあるいは災害派遣の場合におきましても、さらには遠洋航海といったようなことにおきましても、すべて自然体のままで運用するというのがならわしでございまして、そのことが武器使用するということを前提としていないことはそういった例からも明らかであろうと思います。  それからなお、領海内についてというお話がございました。これは私の方から答弁申し上げるのが適切かどうかわかりませんが、相手国の同意というのですか、領海内に入ることについての同意といいますか了解を得ればこれが可能であるということで、特に問題はそこにはないということでございます。
  97. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 この点につきましても大変問題もありますので後ほど改めて質問することにいたしまして、この車両等々の運搬もあるかと思うわけですが、車両についての武器はどうなんです。例えば装甲車両を持っていかないといけない地域、地震などの後には当然あり得る、可能性はあり得るわけですが、そうした場合に装甲車両等についている兵器はどのようにされるのですか。
  98. 畠山政府委員(畠山蕃)

    ○畠山政府委員 武器を、先ほど外務省の方からお答え申し上げましたように、緊急援助隊の場合に閣議決定で、被災国内で国際緊急援助活動またはこれに係る輸送等を行う人員の生命、身体の防護のために当該国内において武器を携行することはしないということでございます。したがいまして、装甲車はこれを武器として用いるということは考えられないわけでございます。したがいまして、これを車両という形で用いるという場合に、当然持っていくときには、仮に持っていくことが必要であるとすれば、恐らく運用としてそれを外して持っていくということになろうかと思います。
  99. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 具体的に、なぜここで自衛隊を出さないといけないのか。少なくとも六十二年の八月において、本来できないことをできないと言って、この緊急救援隊法案ですか、これを通したのか。それともその後、そうした本来できることをやらずにサボっていたまま今回自衛隊を使う、自衛隊を出すということでこのように言っておられるのか、非常に疑問のあるところでございます。  この点は人道的救援活動とも非常に関連いたしますので、あわせて質問したいと思うわけでございますが、今回のフィリピンのレイテでのサイクロンに対する被害についても、事前に医師等々の調査団を派遣して実態を調査して、そして相手国の政府との間においてどういう救援活動が必要かということを検討して救援活動をするというふうにおっしゃっています。恐らく、どういう形の救援活動であろうとも、そこの災害の状況、どういう救援ができるのか、治安の状況等々が理解されないままに人を派遣するということはあり得ないと思うわけですが、この人道的救援活動としてもし自衛隊海外に出ていくとした場合、いわゆる緊急であったとしても、これまでこの法案国会での承認が必要かどうかということで、そのような時間的余裕がないという御返事があったわけでございますが、十分にそうした問題については調査団を派遣し、そして何が必要かという調査をする、その中において、国会での審議する期間があるわけでございますから、この人道的な救援活動についても国会承認を求める気はないのかどうか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  100. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  人道的な国際救援活動と今の国会承認との関係の御質問でございましたが、基本的にはやはり救援活動そのものに対しまして機動的に対応する必要があるとか、あるいは我が国参加そのものが条件つきになる等の不安定性は避けなければならないといった、これは総理の方から繰り返し御答弁のございます論点でございますけれども、そういった点はPKOと同様に人道的な国際救援活動派遣についても当てはまるのではないかと考えております。  特に、先ほど先生の機動性の見地から若干言及がございましたけれども、やはり被災民の救援という点に着目いたしますと、直接人命にかかわる等非常に緊急を要する場合も多いのではないかというふうに考えておりまして、そういった点が基本的にPKOと同じく国会承認という形でなく対応する必要があろうかと考えておるわけでございます。
  101. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 フィリピンの災害、台風、自然災害に際してどういうふうな状況になっているかということは、既にいろいろなニュースがあった。しかし、それでも具体的に有効な救援活動をするためには、現実に医療関係者派遣して、そしてその中でどのような救援が必要であるかということを調査し、その上で相手国の政府と話し合いをして救援活動を決めると言っておられる。まして、こういう紛争やそういうことによって起こった災害の場合、一体どのような救援活動が必要なのか、例えば水はどうなのか、あるいはテントはどうなのか、食糧はどうなのか、輸送はどうなのか、それらすべてについて事前の調査なしに自衛隊派遣されて、それで自己完結にやれるというものではありません。そんなことはわかり切っている。そうするならば、今の御説明のように、緊急性の問題によって国会での承認を求めれないという理由は全くないと考えるわけでございます。ましてこの人道的救援活動については自衛隊は、先ほどの、間違えられてお答えになられたわけですが防衛庁長官のお話によりましても、自衛隊員武器を携帯する、武器を持ったまま外国へ行くわけでございます。そうなりますと、当然その救援活動について国会での承認を求められない理由はないし、また求めなければならないというふうに考えるわけです。  一つ具体的にお伺いします。前の国会においても私質問したわけでございますが、先ほどイランの大地震の問題が出ました。イランの大地震が起こった、そして自己完結的な救援活動が必要であるということでもって自衛隊がそれに対して、自己完結的なですよ、ということは水の確保、あるいは災害復旧、あるいは通信、あるいは輸送、さらにそれに医療、食糧、そうしたものを自己完結的にイランの中において活動するために、それを輸送し、それに従事する人員を送っていく、機材を送っていくということになった場合、どういう輸送手段を考えておられるわけですか、お伺いします。
  102. 畠山政府委員(畠山蕃)

    ○畠山政府委員 ただいま具体的な場所としてイランとおっしゃったと思いますが、イランに対してどのような輸送手段が確保できるかということですと、これはまた別途検討をさしていただかないといかぬと思います。しかしながら、我々は一般的な意味におきまして、例えばバングラデシュ、ちょっと場所は違いますが、バングラデシュのサイクロンを想定いたしまして、これにどの程度の輸送が可能か、その場合の手段といたしましては、航空機としては先ほど大臣からも申し上げましたようにC130、それから船といたしましては輸送艦、補給艦といったものが考えられるわけでございます。それが遠くなれば当然C130の航続距離との関係から途中の中継地が多くなるということはございますが、基本的にはその輸送形態において差はないというふうに思います。
  103. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 前回の質問でも申し上げたわけですが、そのC130のようないわゆるコミューター輸送機において、先ほどお答えになりましたような救援活動における自己完結能力を持たした形での輸送は不可能である。勢いそこでは船舶による輸送というものを中心に考えざるを得ない。しかし、現在自衛隊がお持ちの輸送艦において、もしサウジないしはそうしたイランの大地震といったような、先ほど例に出されましたから私も言ったわけでございますが、を想定した場合に、どれぐらいの日にちがかかるのですか。
  104. 畠山政府委員(畠山蕃)

    ○畠山政府委員 恐縮でございますが、サウジのあたりですとどのぐらい船でかかるかというのは正確なお答えができないと思いますが、バングラデシュの場合で一応シミュレーションして試算をいたしておりますところによると、大体二週間以上三週間までの間ということでございます。掃海艇がこの間ペルシャ湾に行ったときの足の速さより若干速いと思いますが、三十日を若干下回る程度かなというのが、現段階で私、突然御質問を伺って頭に浮かぶ数字でございます。
  105. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 九月の三日、これは朝日新聞でございますが、政府は九月二日に公明党に対して、この国際緊急援助隊、これは援助隊の方です、においてどの程度の後援ができるかという内容を示したということが新聞に載っております。それによりますと、輸送機C130七機とそれからヘリを十機、それから給水施設等々というふうになっているわけですが、ヘリを十機持っていくということになりますとC130には到底積めない。C130七機の中には当然積めないわけでございますし、これだけのものを仮にバングラであったとしても持っていくとすれば船舶を使わざるを得ない。船舶を使ったとしてもヘリが果たして十機載るかどうかという問題もあると思います。  そうしますと、勢いこの法案が通りますと、この前、前池田防衛庁長官は、そういうことは全くさらさら考えていないとおっしゃったけれども、この法案が通りますと、そうした国際的な緊急援助というものを前提とした大型輸送手段が必要であるというふうになってくるんじゃないですか。事実、これまた十月の十八日の新聞でございますが、防衛庁の内部において担当者の間で、現有の輸送手段では能力に限界があるので輸送手段の大型化を求める意見が出始めたというふうにも報道されています。  こうなりますと、大型の輸送手段を、あるいはヘリ搭載の大型の輸送艦あるいは大型の輸送機といったようなものを装備していくということにこの法案がなっていくとするならば、自衛隊の専守防衛としてのそうした自衛隊装備、これまで守られている、それがこの点で崩れてくる。自衛隊の手において、直接自衛隊の部隊の任務としてこの活動に従事するということになってくると、自衛隊がこれまで守ってきた専守防衛というそういう枠が装備の面から崩れてしまうということになると思うわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  106. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 あくまでも日本自衛隊日本の防衛を主任務にいたしております。したがいまして、国際緊急援助隊法あるいはPKO法でも同じでございますが、防衛庁のその許す限度といいますか、防衛上必要な差し支えない限度においてこれを派遣するということでございますから、これ自体のために自衛隊が大規模なものを保有しようという考えはございません。
  107. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 自衛隊が許し得る限度というのは、現在の能力と考えていいわけでございますね。
  108. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 さようでございます。
  109. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 そういたしますと、この法案は大変矛盾があるということになります。  現在、自衛隊が持っている輸送能力の枠の中においていわゆる人道的な救援活動あるいは国際緊急援助活動を行っていこうということになりますと、資材や人員を派遣するのであれば、むしろ民間の輸送機、大型輸送機等々をチャーターするなりなんなりしてやる方がはるかに緊急に間に合い、はるかに大量に輸送できるということになってきます。そうしますと、自衛隊を使わないといけないということの根拠、そこが崩れてくるわけですが、どうなんですか。
  110. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 そのような活動自衛隊が専属的に従事するということをここで述べておるわけではございませんで、一般的な民間協力その他も国際緊急援助隊の場合にお願いをして、そのような形で最も効率的な国際協力ができる体制は何かということを追求していくことであろうと存じます。
  111. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 それは、日本世界から期待されているそういう救援活動あるいは人道的な救援活動にどのような形で具体的に最大限の努力ができるかという視点ではなくて、自衛隊がそれに対してどのように参加できるかという視点での御論議じゃないですか。今、日本世界から求められているのは、そうしたアジアなりあるいは世界諸国から、もし大きな災害あるいは戦争や紛争による大きな被害が出た場合、どのように人道的な救援活動をしてくれるか。そのためには、先ほど外務省の方もおっしゃいましたように自己完結的なそういう機能が必要だ、それはそのとおりだと思います。しかし、それが自衛隊の手に任されても自衛隊はできない。そうであれば、自衛隊をそこに参加させることが問題ではなくて、まさに自衛隊とは別にそうした機能を、まさにそういうことを整備することによって日本国際貢献していく、そのことが今求められているんではないですか。総理、どうでしょうか。
  112. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  人道的な国際救援活動につきましては、例えばPKF自衛隊の部隊参加を想定しているといった、そういった意味におきまして自衛隊の部隊のみに限られた業務ではございません。これはもう先生御案内のとおり、自衛隊のみならず、関係行政機関あるいは地方公務員あるいはこの法案にのっとりまして採用させていただく一般の方々、そういった方々にも開かれた人道的な国際救援活動でございます。  ただ自衛隊につきましては、先ほど国際緊急援助隊に関連して答弁ございましたですけれども、やはり自衛隊の部隊等の有する技能、経験、組織的な能力を活用する場合もあり得るというふうに考えておるわけでございまして、総合的に具体的にどういうふうなニーズと申しますかが国際機関あるいは国際連合等からあるかによって個別に判断しているわけでございまして、そういった非常に幾つかの参加の、協力の態様があるという中で最も適当な協力の方法を考えていく、そういうことになろうかと思います。
  113. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 本来やらなければいけないことを、それをどのように強化していくかという議論でこの人道的な救援活動あるいは国際緊急援助活動について論議されるのではなくて、ただ自衛隊をそこに使うかどうかという議論でこの問題が論議されているところに、非常に国民から見ても不信の目を向けられている、問題があると思います。また、これまで日本が国際社会の中において十分に尊敬されないという大きな理由があったというふうに考えます。  先週の御答弁の中で、この人道的な救援活動の具体的な事例として、たしか国連局長はクルド難民の救援活動がこれの対象に入るというふうにお話しになったわけでございますが、そうでございますか。
  114. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  クルド難民のケースにつきましても、基本的にはこの法案に基づきまして、つまりまず経緯から申しますと、九一年四月五日に安保理決議六八八というのが出ておりますし、同じく四月十四日には国連事務総長執行代行アガ・カーンによる要請がございます。そういった決議ないし要請に基づきまして、また、紛争当事者間の停戦の合意及び受け入れ国の同意等、この法案三条二号に定める要件が満たされて初めて実施可能となるわけでございまして、御指摘のクルド難民の救援につきましては、今申しましたような基本的な要件が満たされているという状況において、協力隊の派遣を含めて私どものこの法案に基づく協力が可能になってくる、そういうふうに考えております。
  115. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 この第三条ですね、一と二と三とあるわけでございますが、これは「定義」となっているわけですね。そうしますと、クルド難民の現在の救援活動をやられているわけでございますが、これは、この定義に従って「人道的な国際救援活動」であるのかどうか、どうなんですか。
  116. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま私がいろいろ要件を申し上げましたうちに、特にクルド難民の場合、イラク国内のクルド難民の救援というのがございます。その点につきましては、このイラクの同意取りつけが可能であったか否かといった点につきまして我が国として具体的に検討した事実がないので何とも申し上げられないわけでございますけれども、仮にイラクの同意、受け入れ国の同意がないとしますれば、この法案に基づく協力ができないということに相なります。
  117. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 これは非常にこの法律の基本的なものなんですが、第三条は用語の定義ではなくて、日本がそれに参加する際のそういう状況を定義したもの、そういうふうに考えていいわけですね。今の野村政府委員の御説明ですとそのようになります。  そうなってきますと、この法案によりますと、例えば「国際連合平和維持活動」の部分についても、武力紛争発生していない場合においても参加できるということになっております。これについての御説明は、たしかレバノン暫定維持軍の派遣という歴史的事実もあるから、そうしたものを含めて総括的にこの第三条は書かれたものであって、必ずしも日本がそれに参加するということではないという御説明があったわけですが、きょうの御説明では、日本参加する場合の条件がこの第三条で書かれているというふうにおっしゃるわけですが、一体どっちなんですか。
  118. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今第三条の定義ということで御指摘がございました。これは、この法律に基づいて我が国協力を行っていく場合におきまして、まず具体的には「国際連合平和維持活動」それから「人道的な国際救援活動」に対して協力を行っていくわけでございますけれども、そういう、この法律に基づく協力を行う、法律の適用上、我が国として「国際連合平和維持活動」という場合にはこういう定義に合致するもの、あるいは「人道的な国際救援活動」という場合にはこの定義に合致するものというふうにとらえておるわけでございます。したがいまして、それがまず、我が国がこの法律の適用上と申しますか法律に基づいて協力する場合の実態でございます「国際連合平和維持活動」あるいは「人道的な国際救援活動」という場合の内容でございまして、それをさらに我が国が行う場合に具体的にどういうふうになるかということが、この第三条三号以下具体的に「国際平和協力業務」ということで規定しておる、そういう仕組みになっております。
  119. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 非常に話がおかしくなっておりますので、少し話題を変えまして、もう一度お伺いしておきます。  具体的にこの第三条の第一号「国際連合平和維持活動」、これにつきまして、この前のお答えでは、レバノン暫定軍から現在までのPKO活動をすべて検討して、こういうふうな内容で定義づけを行ったというふうにお答えになりましたね。間違いないですね。そうしますと、現在イラク・クウェート監視団、いわゆるUNIKOMというものが配置されております。このUNIKOMはPKFではないんですね。それとも、UNIKOMもPKFとしてこの第一号の中に含まれるんですか。
  120. 丹波政府委員(丹波實)

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  UNIKOMはイラク・クウェート監視団ということで、平和維持隊と監視団のどちらかに分けるとすれば、恐らく国連は監視団の方に分けると思います。私たちもそう思っております。
  121. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 このUNIKOMは、御承知のようにイラクの合意がなくて設置されてますね。イラクの合意がもしとれたとするならばそれはいつか、明確にしてください。
  122. 丹波政府委員(丹波實)

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  ことしの四月の九日に、事務総長が安保理に対しまして、このUNIKOMに関する報告書を出しております。その中で、四月の八日に自分つまり事務総長に対して、イラクの代表がこのUNIKOMの設置に同意するということを通報してきましたという一節がそのレポートの中にございますので、私たちはそのレポートから、イラクは同意を通告したというふうに承知いたしております。
  123. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 前国会におきまして、このUNIKOMにつきまして、UNIKOMはいわゆる中立性の原則というものがこれまでのPKOと違うという話がございました。また、UNIKOMに参加できるかどうかということについても明確な御返事をもらえなかったわけですが、もし仮にこの法案が通った場合、ああしたUNIKOMのような形でのPKOに対して日本参加できるんですか。
  124. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  まず、PKOへの参加の要件と申しましては、先生御案内のとおり、その活動法案、先ほど申しましたけれども三条第一号の定義を満たしているかということがまずございます。それからさらに、法案第六条一項第一号でございますか、この我が国参加についての同意があるか否か、これを判断するという点がございます。そういった法案の定めてございます幾つかの要件がございますわけでございますが、御指摘のUNIKOMのケースにつきましては、まさに紛争当事者間の停戦の合意があり、そしてUNIKOMの派遣に関してイラクを含みます紛争当事者が受け入れに同意しているという状況のもとに派遣されたPKOということでございまして、したがいまして要件としては現状では満たしているというふうに考えます。  他方、国連側は、このUNIKOMの設立の経緯にかんがみまして、将来この同意をイラクが取り消すようなことがあったとしましても、安保理が必要と認める限りUNIKOMはイラク・クウェート間に存続する、そういう説明を行っていると承知いたしておりまして、もし将来、紛争当事国のイラクがこのUNIKOMの受け入れの同意を撤回した、それにもかかわらずPKO活動が継続されるといった場合におきましては、まさにこの法案第三条の第一号の規定から、我が国はもはやこれに参加することはできない、そういう状況になろうかと考えております。
  125. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 UNIKOMは、この結成当初からいわゆるその紛争に対する中立的立場というものは失われた監視団であった、これははっきりしています。いわゆる多国籍軍として、国連安保理の決議というものに従って多国籍軍参加したその諸国によってつくられた軍隊である以上、これはそういう意味では中立的立場というものは最初からなかったわけです。言いかえれば、このUNIKOMというのはまさにイラク・クウェートの中において多国籍軍の軍事力をバックにした、紛争を抑止する抑止力として極めてそれが強く出たいわゆる国連の維持活動だろうと思います。  前の国会でも私も申しましたけれども、私はこうしたUNIKOM型の国連平和維持活動というものは今後あり得ないことはない。一般論として言うならばそれは必要かもしれない。問題は、そういうふうな形にPKOが変わってきている中で日本自衛隊がそれに参加する場合に、日本憲法との関係あるいはこの法案との関係はどうなっていくのかということを前回お伺いしたわけですね。海部総理から明快なお答えがもらえなかったわけですが、その点について再度お伺いしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  126. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  今さらこの法律の構成の基本的な枠組み、基本論を私申し上げるつもりはございませんが、いろいろ諸種の条件のもとに自衛隊派遣されるわけでございまして、私どもはその限りにおいて、この法律の仕組みそれから法律の精神、そういうものに沿って任務を果たしてまいらなければならないと思っております。
  127. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 このUNIKOMと同じような形で論ずることができるのがやはりクルドの難民の問題だというふうに思います。UNIKOMには現在では参加できる、しかしクルドについてはどうかなという御返事でございますが、このクルドの難民に対する国連の六八八決議というのは、これはまさにイラクの中においてクルドの難民の安全が脅かされているということで、クルド難民に対する保護を訴えた決議でございます。採択された決議でございます。したがいまして、これの決議はイラク政府に対する要求ということを明確にした決議でございます。  したがいまして、このクルドの決議というものは、米軍を中心としたクルド難民救援活動という既成事実をイラク政府が物理的に排除できないということでもって是認している現状だというふうに考えられるわけでございますが、じゃ現在、クルド難民に対して国連の安保理決議に基づいてアメリカが行っているこの活動に対して、もしアメリカから日本に対してそれへの支援を求められた場合に、この第三条第三号のヌ以下の行為について求められた場合、日本政府はそれに対して、少なくともこの法案においては参加せざるを得ないんではないですか、どうなんですか。
  128. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今、たしか先生、アメリカからというふうに御指摘がございましたけれども、この法案、先生御案内のとおり人道的な国際救援活動につきましては、国際連合あるいは国際機関の要請に基づいてでございますので、一国の要請ということはございません。  いずれにいたしましても、私先ほど来から御説明申し上げておりますが、この法案に基づく要件ががっちりと満たされてなければ我が国協力できない仕組みになっております。したがいまして、先ほどのイラク国内のクルド難民の救援につきましては、やはりポイントとなりますのはイラクの同意取りつけということであろうかと思います。恐らく先生もそういうことを念頭に置かれての御質問かと存じますけれども、その点につきましては我が国として具体的にどうであったかという検討した事実がございませんので、何とも言えないわけでございます。  いずれにいたしましても、我が国の方としまして、イラクの同意があるということが確認されなければ協力隊の派遣ということはできないことになります。
  129. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 この法案によりますと、国連のしかるべき機関の決議、これは安保理の決議がございました。その決議に基づいて、「国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国によって実施されるもの」がこの人道的な国際救援活動である、こうなっている。そうすると、現在米軍が行っているそういう活動は人道的な国際救援活動に入れざるを得ない。それに対して支援を求められた場合どうするかという話でございます。  その場合に、今、野村さんおっしゃったように、紛争当事国の了承、合意がないために日本はそれに参加できないのだ、イラクがそれに対して積極的に受け入れない限りはこうした活動はできないのだ。こうなってきますと、紛争後はほとんどできない。逆に、湾岸戦争の場合のサウジやあるいは湾岸諸国、そういうふうな国が紛争が起こる前の段階において受け入れた場合は、逆に紛争前に難民等々が発生した場合に派遣できるということになってしまう。これはすべてそうした現実に起こっている大きな被害に対して対応できない。  何が一番大きな問題か。これは自衛隊というものを使うからだ。現実に、日本からもクルドの難民のところにはNGOを通じて、あるいはさまざまなボランティア団体が行っていること、御承知のとおりです。また、世界的にもそうした多くの民間のボランティア団体がクルド難民に救援の手を差し伸べていっている。まさにそういう活動をしていくことが本当に人道的な活動として必要なんじゃないですか。自衛隊にすべて依存するということになってしまった場合に、現実にクルドにおいてその救援が必要になっている、難民の中において、いろいろな各国の努力があるわけですが、今あそこにおいても非常に厳しい時期を迎えるわけで、難民に対して具体的な形で救援が一番必要なときだ。この法律があって、自衛隊によっていわゆる人道的な国際救援活動を行うのだということになっている以上は、逆に必要なところに必要な救援活動ができないことになってしまっているわけですよ。これじゃ人道的な国際救援活動をできなくする法案じゃないですか。どうですか。
  130. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生、イラク国内のクルド難民のケースについて、特に受け入れ国の同意に縛られれば実態問題として協力するケースの度合いというのは限られてくるのではないかという御指摘だったかと思いますけれども、基本的には、自衛隊の部隊であろうとあるいはそれでない我が国の要員による協力活動でございましょうとも、やはり人道的なこういった活動につきましても、その受け入れ国の、主権国の同意というのが私は基本であろうかと思います。それがあって初めて人道的な国際救援活動に従事することができる、そういう仕組みがこの法案のとっている考え方でございます。
  131. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 もう一つ例を出してみたいと思うのですが、湾岸戦争が起こった際に、ヨルダンに多数の難民が出てまいりました。そしてその難民の帰国支援のために政府は、自民党はC130を飛ばしたいということで、たしか山口敏夫議員でしたか、ヨルダンに行かれて、ヨルダン政府に対してこれの受け入れを求められたという経緯があったというように記憶しております。  確かにヨルダン難民の支援については、IOM、国際移住機構等を通じて世界各国に対して支援要請があった。これは特定の政府に対して支援要請があったということではなくて、民間団体すべてに対してそれについての支援協力要請があった、それは事実でございます。それに基づいて、日本の国内においても民間の人々が救援機を飛ばす、輸送機を飛ばすためのカンパをしたり、あるいは世界各地において、あるいは世界各国の政府が飛行機をチャーターしたりして救援活動をやってまいりました。日本もそれに対して金を出したり、あるいは直接JALを飛ばしたりして支援活動をしてまいりました。  しかしその中において、紛争が発生した時点においてC130を飛ばしたいという話があったときに、ヨルダン政府は最初は非常に抵抗がございました。御承知のとおりです。そして事実、そのことに対してあのヨルダンの中において、パレスチナの人たちがヨルダンの国家の中で六割以上を占めているわけですが、その人たちとヨルダンの王室との間においてひびが入りかけたという事実がございました。  日本政府が、もしそうした被災民等が入ってきた国に対して、その国が中立的立場を維持するがためにそうした自衛隊の受け入れということについては拒否したいという気持ちがあったとしても、現実にあのヨルダンの事件においては、その相手国の中立の維持そのものをも危うくするような圧力をかけて、そして受け入れさせよう、実際上は行かなかったわけですが、そういうふうなことがあった。  もし自衛隊がそこに、たとえ人道的な国際救援活動ということであれ自衛隊派遣する、救援活動として派遣する、それについて受け入れろという圧力が起こらない保証はない。起こった場合に、もしそうなった場合に、その紛争の隣接国、通常、難民が流れてきているのは隣接国でしょうが、隣接国の中立性すらが危うくなってしまう、そういうことが起こらない保証は全くないじゃないですか。その点についてはどのようにお考えですか。
  132. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  この人道的救援活動を行うに当たりましては、今御指摘のような受け入れを無理強いするとか、そういったことはあってはならないことであろうかと思います。基本的には、この人道的救援活動はまさに額面どおり人道的な活動でございまして、そういう中立性といったことの以前の問題であろうと思っております。いろいろな要素を勘案する必要がございますけれども、額面どおり受け入れられるような、そういう態様のものでなければならないというふうに考えております。
  133. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 現実に、今年の当初に起こった事件、起こった行為、そういうふうなことが、この法律ができて、バックに自衛隊がそのまま参加するのだということを盛ったままやるとするならば、あえて日本が純粋に人道的な救援という善意からの行為であったとしても非常に問題が大きくなるではないかということを質問しているわけで、そういうふうなことに対する歯どめというものは全くないではないかということなんですね。これは本当にやはり大国日本の横暴としか言いようのない、そういう結果になってしまうと思いますよ。  いま一つPKOの問題に入りましたのでPKO全体の問題についてお伺いしたいと思うわけですが、これまでさんざん言われてまいりました。フォースコマンダーが、派遣された自衛隊の組織や配置や行動や指令の権限を有しているということについてはお認めになった。しかし、それは指図であって指揮ではないというお話もございました。  私は、こうした国連のフォースコマンダーが持っているこの権限、この権限に自衛隊指揮官が服さないということはあり得るのかどうか、自衛隊指揮官がフォースコマンダーの持っている組織、配置、行動、指令の権限を無視するということはあり得るのか、それはあり得ないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  134. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  我が国からPKO参加いたします自衛隊の部隊は、本部長が作成いたします実施要領に従いまして平和協力業務を行うこととなるわけでございますが、実施要領は、平和維持隊への参加に当たっての基本方針、いわゆる五原則を盛り込みましたこの法案の枠の中で国連の指図に適合するように作成されることになっております。まさに法案第八条二項が定めているところでございます。したがいまして、自衛隊の部隊の指揮官もいわゆる五原則に合致した形で国連のフォースコマンダーのコマンドのもとに置かれることとなろうかと思います。  なお、国連のフォースコマンダーのコマンドというのは、これはもう繰り返し御答弁させていただいておりますとおり、懲戒権等の強制手続を伴わない権限でございまして、通常国内法であります指揮または指揮監督とは性格を異にしておるわけでございます。
  135. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 もっと具体的に、フォースコマンダーから出される指令に対しては従わないことがあり得るのかどうか、それはどうですか。行動指令……。
  136. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今、指令と言われたのが、私は実態について必ずしもつまびらかにしないわけでございますけれども、要するにフォースコマンダーの持っております、例えばモデル協定第七項、八項に書いてございます権限と申しますのは、私先ほど申しましたコマンドということで称される権限でございまして、それについては、まさにそれに適合する形で実施要領をつくる、その実施要領に従って我が国の部隊が行動する、そういう関係になるわけでございます。
  137. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 もしフォースコマンダーから任務の妨害排除を指令された場合、自衛隊はそれに従うのでしょうか、また、任務の妨害排除のために武器使用を要請された場合に、自衛隊指揮官はそれに従わないということはあり得るのでしょうか。
  138. 丹波政府委員(丹波實)

    ○丹波政府委員 PKF活動の実体にかかわります問題でございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。  PKF参加する各国の部隊は武器を携行することができる、その武器はセルフディフェンス、自衛のためのみに使用することができるという書き方が国連の文書であり、かつ国連の慣行だと思うのです。  その場合に、セルフディフェンスというのは次の二つを含むという書き方が普通の書き方でございまして、一つは、生命を防衛する場合、それから二つ目は、今先生がおっしゃった、任務が実力により抵抗された場合、それに抵抗する場合に武器使用することができるということでございまして、そういう場合に国連平和維持隊のコマンダーが武器を使えということを命じるケースはちょっと私たち考えられないのです。いろいろな国に聞いてみましたけれども、まさにそういう場合に司令官がそういう命令を下すということは余りないということなので、ちょっと現実に考えられないのです。  以上です。
  139. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 PKFがセルフディフェンスなものである、当たり前なんですね。PKFの方がどこか敵を見つけて攻撃を加えることがない軍隊である、そんなことはよく承知していますよ。  したがって、PKFが、そういう問題になってくる場合、例えばゲリラであるとかあるいは停戦の合意の崩壊であるとかというふうなことが問題になってくる、あるいはある集団によるところのはね上がり行動ということも問題になってくるでしょう。そうした場合に、フォースコマンダーが任務の遂行、任務の妨害排除というものを指令——指令という言葉が嫌なら、それは指図でもいいですよ、指図してくることは当然あり得る。その指図の中には、先ほどおっしゃったように武器使用も含む、そういう任務の妨害に対する排除というのは、これはまさに自衛の範囲の中に入っているわけですね。だから、最も強い立場でもって任務の遂行をしろ、あるいは任務の妨害を排除しろというふうな指令が仮にフォースコマンダーから出た場合、自衛隊指揮官はそれに従わないという権利を持っているかどうかということを聞いているわけです。
  140. 野村政府委員(野村一成)

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど国連局長の方から、フォースコマンダーの方から現実に武器使用につきましてそういった指図と申しますかというのが出てくるのは通常考えられないということをお答え申し上げました。ただ、もうそういう事態が通常考えられないということは私そのとおりだと思いますが、それであってもなおかつ万が一そういったことが起こったという場合には、我が国の要員はその指図には従うことができないというのがこの法案の仕組みでございます。
  141. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 自衛隊はこのフォースコマンダーの指揮に従うことができない、これがこの法律である、まあそういうふうにおっしゃったわけです。そうしますと、そういうPKF、そのフォースであるその最もゆえんであるぎりぎりのところ、そのぎりぎりのところにおいては日本国連の基本的な方針に従えないということになっていると、これは日本がこのPKFに入ること自身が間違いだということにはなりませんか。PKFが、全体として考えた場合に、そうした場合に国連の平和活動の維持をするために、自衛のために、その任務の妨害を排除する武器使用があり得るということ、これは世界平和全体にとって考えた場合当然なことだと思います。  けれども、そのことに対して日本はそこには入っていけない。これは日本憲法を初めとするそうしたものから入っていけない。ということであれば、日本PKFには参加できない、参加できないけれども世界平和のために国連のこういうPKF活動について日本ができる機能をもって支援していく、これが国際貢献ではないでしょうか。総理、どうお考えですか。
  142. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 それはもうせんだってから何度も御議論のあったところであって、行動を維持するために武器使用ができるということになりますれば、それは我が国憲法の定めるところに抵触する事態に極めてなりやすい、したがってその部分はやはり我々としてはなしてはいけない、こういうことを政府委員がお答えを申し上げているわけでございます。  それができないがゆえに全部の国連平和維持活動に我々が参加できないというようなことは、いかにも、いかにもそれは権衡を外れたことであって、参加をいたします、しかしその部分はできません、例外的にそういうことがあればそれは残念だが我々としては遠慮をさせていただかなければならないということであると思います。
  143. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 当然のことでございまして、私はPKFに、特にPKFがフォースである、そのぎりぎりのところにおいて日本参加できない、だから国連が行うところの平和維持活動すべてから日本参加しなくていいんだなんというようなことは言っていない。日本参加できる部分はたくさんございます。また、今までやれていなかった部分についても、もっともっとやらないといけない。しかし、少なくても日本憲法上の問題からいって、このPKFというフォースを想定せざるを得ない最後のところにおいては参加できないんであるから、PKFには参加できないんではないか、その分、そうした日本は、自国は参加できないがPKF活動を含む国連活動国連平和維持活動全般に対する貢献策を具体的に考えるべきではないか、そのように考えて、総理のお考えはどうかというふうにお伺いしているんですけれども。
  144. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 それはよくわかった上でお答えをしているつもりなんでございますけれども、部隊としての行動を維持するために武器を使うということはいわゆる武力行使に極めて陥りやすい状況でございますから、そこは何としても避けておきたい、疑わしきはやはり欠いておきたい、それだけのことでございまして、それ以外のことについては十分我々は国連平和維持活動に貢献をいたしたい。たったその部分だけのためにこの法案全部が目的とするところは不必要である、あるいは有害であるというふうには私どもには考えられない。
  145. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 これは、もし日本がこの法案をもってPKF参加していくということになりますと、世界の各国からは非常な非難を浴びると思うのです。PKF参加するということは、その力を使わざるを得ない、その状況においてはその力を使う、その合意のもとにおいて派遣する。ところが、その力を使わざるを得ないという状況になった場合はそれは参加しないんだと、そうであればPKFには実は政府は、PKFには参加できないんだ、せいぜい停戦監視までしか参加できないんだろう、だけれどもPKFというものに参加しないと言うと都合が悪いから、だからPKFには参加すると言って、実際PKFの機能が必要になったときは何とかごまかして引き揚げてしまおう、そういうふうな法案じゃないか、そういうふうに受け取られて仕方がないと思いますよ。
  146. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 ちょっと法文に則して申し上げますと、先生がいわゆるPKFと言われるのは、もう御承知のとおり、三条の三の平和協力業務の中で自衛隊がイからへまで、つまりこの六項目にわたりましてPKF活動が列挙してございます。したがいまして、これをごらんいただけばわかりますように、すべて限界的な場合に武器使用があり得るという前提のものばかりでもないわけでございまして、私どもは、武器使用の行われるような限界的なことは十分考えて検討しなければなりませんけれども、しかし、それがゆえに、ここで第三号のイからへまでに列記されている、これはPKFの業務でございます。これが否定されるというものではございません。私どもは今申した議論は慎重に受けとめますけれども、しかし同時に、それ以外の、このイからへまでの業務の中には多くの日本が国際的に貢献しなければならないPKF活動があることは、私が申し上げるまでもないところでございますが、念のために申し上げたわけでございます。
  147. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 私は、この国際連合平和維持活動あるいは国際救援救助活動、これらはいずれも冷戦崩壊後の世界にとって非常に重要な仕事だと思っています。そういう意味において、また自衛隊という組織の中にありますさまざまな技術集団、能力、そういうものを有効に使うということについても、それはそれなりに理解するものです。  しかしながら、この法案というのはそういう目的ではなくて、PKOの問題につきましても、PKF参加すると言いながら現実にそのPKFが必要な状況では日本憲法のもとにおいてそれは参加できない。これは恐らく宮澤総理も我が社会党も同じことを考えていると思う。ただ、それを外に向かってあたかもPKFにも参加するという形でごまかすか、まさに憲法があるからできないんだから、できるものを十分にやっていこうというふうに考えるのか、その違いである。  また、国際救援活動にいたしましても、まさに自己完結的な救援活動を持たないといけない、そのことについて異議を挟む者はだれもいない。そうであれば、その自己完結的なそういう機能を緊急に派遣できるような、そういうふうな組織をどうしてもつくっていくのか。現在自衛隊装備されているその装備内容、それをふやさない、輸送の手段もふやさない、それでなぜできますか。できないということははっきりしているじゃないですか。防衛庁の内部ですらそういうふうな問題が出ている。それを、もし自衛隊を拡大してやっていくとすれば、専守防衛という基本的な問題にかかわってくる。そうすれば、そうなればおのずから、自衛隊という組織においてそれを機能するのではなくて、まさに自衛隊の持っているそうした機能、技術、そういうものを十分に利用できることにも配慮しつつ、自衛隊では違った形で日本ができ得る最大限の貢献をしていく、これが今国際貢献の最も求められているものじゃないのでしょうか。  私は、今まで日本がこれだけ世界各国に対していろいろな援助をしてきた、しかしその割には世界から日本が十分に評価されていない。そのことの中には、やはり憲法をいわゆる解釈改憲でやってきたと同じような、そういう一連のことが国際政治の中においても国際社会の中においてもあった、そのことが一つは不信を呼んでいるというふうに考えるわけです。そういう意味で、この法案がもし実施されるとするならば日本はますます不信の目でもって見られるというふうに考えます。  最後にもう一度、国際緊急援助隊に戻ります。  先ほど、フィリピンのレイテに四名の医療関係者派遣されて状況を見てきた、そしてフィリピン政府と話したまま、今回はこれ以上の援助は必要がないという結論になったという話を聞きました。今フィリピンの中においては、さまざまな問題で日本に対しての感情というのは非常に複雑なものがむしろ高まっている状況にございます。その状況の中で、もし仮に自衛隊が、自衛官によってこのレイテの災害に対して、自己完結能力を持っている、そういうふうな機材を送って行くということになった場合、果たしてフィリピンの国民はもろ手を挙げて歓迎してくれるのか。私はそうではないと思います。まさに今回やられているように、医療関係者によって事前調査をし、現地政府とも十分打ち合わせをし、その上で何が必要なのかということを綿密に調査した上で、日本として向こうの政府から求められたものを誠実に日本としてできる限りの援助をしていく、そういうこれまでのやり方をやっていくことの方が、はるかにフィリピンの国民から日本人が尊敬され、また日本に対しての好感度が高まってくるということになるんじゃないでしょうか。それをどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  148. 宮下国務大臣(宮下創平)

    ○宮下国務大臣 国際緊急援助隊法の趣旨に基づきまして自衛隊派遣するということでございまして、もちろん憲法の許す範囲内でのことでございます。そして、いわば人道的な見地に立って、この国際的な本当に困っている国々に対して日本が応分の貢献をしていく。しかもその場合に、今お話のございましたように、自衛隊が規模においても、また組織力その他においても、いろいろな面ですぐれた能力を持っておるわけでございますから、これを武力行使ということでは絶対ないわけでございますから、平和目的のために世界に貢献していくということは、これは私は、自衛隊としてこれから国際社会において果たすべき大きな機能ではないか、そして堂々と自信を持って平和国家としての建前のもとに自衛隊の業務を遂行していかなければならないものだ、このように存じております。
  149. 五島委員(五島正規)

    ○五島委員 最後に、総理にお伺いします。  総理は、かつて、今後の世界政治の中において、国際公務員によるこうした平和の維持というものについて述べておられました。それなりに私も非常に感銘したわけでございます。現在の冷戦後の世界の状況というものは、考えてみますと、まさに多国籍軍によっての、いわゆる集団自衛権によっての平和の力による維持という形で進んでいくのか、それとも、国連というものの機能を強めていき、そして現在国連PKOに従事する文民がなっていますように、武装部隊についてもその活動に従事していただく、国際公務員としてそうした行動に当たらせていくという方向をたどっていくべきか、どのようにお考えか。  私は、日本は、そうした国権というものが国の一つの象徴である軍隊というものを各国が出していく、非常にそういうデリケートで危険な状況を避けて、まさに今後のPKO活動全体が国際公務員化という方向によって維持されるべきであるし、その方向に向けて日本政府は最大限の努力をすべきであるというふうに考えるものでございますが、総理の御所信をお伺いします。
  150. 宮澤内閣総理大臣(宮澤喜一)

    宮澤内閣総理大臣 昨年の湾岸危機におけるイラクに対する対応は、確かに国連安保理事会が前面に出てその中心になりましたけれども、しかし、構成された軍隊は多国籍軍であって、これは国連軍と呼ぶわけにはいかないものであった、御指摘のとおりであると思います。  いずれかの時期に将来、国連というものが本当に世界の国々のみんなの公平な利益代表になって、そして国際公務員をもって、少数でもよろしゅうございますから、国連という立場世界の平和を維持する、そういう力を持ってくれることはやはり我々の理想である、いつの日にかそういうことになって、国際公務員がそういう役割をしてもらいたいものだということを、私も念願をいたしておるところでございます。
  151. 林委員長(林義郎)

    林委員長 次に、緒方克陽君。
  152. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 今度の国会の中で法案が審議をされておりますけれども、海上保安庁の任務がかなりあるわけでありますが、その中身についてはほとんど質疑がされておりませんので、この際、確認をするという意味で、まず最初にその点についてできるだけ簡潔にお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、国際平和協力業務のうちで海上保安庁が行う業務は、第三条第三号に定めるトからタまでの業務及び「政令で定める業務」ということになっておりますけれども、この「政令で定める業務」として考えられるものはどんなものがあるかということが一つと、その中で海上保安庁が行う業務としてはどんなものがあるかということについて、できるだけ簡潔で結構ですけれども示していただきたいと思います。
  153. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 ただいまお尋ねの「政令で定める業務」と申しますのは、将来国連から法案の第三条第一号の枠の中で許容される新しい業務について実施の要請がありました場合に、それが同条の第三号イからタに類するものであればこれを政令で定めようというものでございまして、現在のところ具体的な業務が想定されているわけではないと承知しております。もし将来定められた場合には、その中で、海上保安庁の船舶あるいは航空機を用いて行うことが適当なもののうち実施計画に定められたものを行うことになります。
  154. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 具体的に、しかし今検討されておるものがあるんじゃないですか。
  155. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 一応現時点で海上保安庁が行うことが考えられる業務は、各号列挙の中にそれぞれ含まれていると思いますので、政令で想定しているものは、特に保安庁としては今のところございません。
  156. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 政令の中では特に定めるものがないというような御返事でした。  次に、輸送の委託の問題についてお尋ねをいたします。  法案の第二十条で言う、海上保安庁長官に対する委託で言う「被災民の輸送又は物品の輸送」というのはどこからどこまでを指すのかということで、わかりやすくちょっと例を出して示していただきたいと思います。
  157. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 ただいまの二十条で定められております「輸送の委託」につきましては、二十条の条文の中にもございますように、「派遣先国の国内の地域間」それから「一の派遣先国と隣接する他の派遣先国との間で行われる被災民の輸送又は物品の輸送」これは除くということになっておりますので、言いかえますと、我が国派遣先国の間、それから我が国と第三国の間、それからもう一つ派遣先国と第三国との間の輸送ということにとりあえずはなろうかと思います。例えば、東南アジアのA国に派遣するということを想定いたしますと、A国と日本との間、あるいはA国と第三国、例えばカナダ、アメリカといったような国との間、それから我が国とアメリカ、カナダ等の間の輸送、そういうことになろうかと思います。
  158. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 次に、海上保安官が所持できる武器の問題についてお尋ねをいたしますが、海上保安官の所持できる武器は政令によって小型武器というふうにされているわけでありますが、海上保安庁法の第十九条によります所持できる武器との関連は一体どういうふうになるのか、その辺を御回答していただきたいと思います。
  159. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 法案の二十四条第二項で海上保安官が使用することができることとされております小型武器と申しますのは、先生もただいま御指摘のような海上保安庁法第十九条の規定に基づいて海上保安官が携帯を認められている武器のうち法案第二十二条の「政令で定める種類の小型武器」のことでございまして、すなわち協力隊本部が保有し一般隊員に貸与する小型武器と同じ種類の小型武器、そういうものとして実施計画に装備として定められたもののことでございます。
  160. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 私が質問いたしましたのは、海上保安庁法十九条により所持できる武器との関連ということですから、十九条とはどういう関連になるのかということで、具体的に答えてください。
  161. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 失礼いたしました。  海上保安庁法十九条では、「海上保安官及び海上保安官補は、その職務を行うため、武器を携帯することができる。」とされております。そのような庁法に基づいて携帯を許されている武器の中でこの法律使用が認められておりますのは、一般隊員と同じ小型武器、政令では小銃、けん銃を定める予定というふうに私ども聞いておりますけれども、それと同じ種類の小型武器ということになるわけでございます。
  162. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 それでは次に、海上保安庁の整備の現状についてお尋ねをしたいと思います。  海上保安庁は、我が国の周辺の海上における人命あるいは財産の保護、治安維持のためにその組織、人員あるいは整備の増強を図っているということになっているわけでありますが、現在の巡視船艇あるいは航空機の整備の状況については十分であるというふうに考えておられるのかどうか。
  163. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 海上保安庁が従来から海上で人命、財産の保護あるいは治安の維持等の業務を実施してきているわけでございますけれども、このような当庁の業務に必要な船艇、航空機につきましては、十二分とは言いがたい面もございますけれども、一応最小限のものは何とか整備していると考えております。  ただ、近年、国の内外におきまして経済情勢その他いろいろな変化もございます。新しい海上保安業務に対するニーズもございますので、そのような国民からの要請を、十分それにこたえることができますように、今後とも船艇、航空機の質の向上等を図っていきたいと考えております。
  164. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 十二分とは言えないが最小限整備されているのではないかというような答弁でありましたけれども、そういう中で今回法律が通りまして派遣されるということになりますと、いろいろ問題が出てくると思うのですが、海上保安庁としては、そういう場合に派遣の対象として、国際協力業務のための対象となる船舶及び航空機はどういうものを考えていらっしゃるか、示してもらいたいと思います。
  165. 土方政府委員(土方浩)

    ○土方政府委員 お答えいたします。  国際平和協力業務のためどのような船舶または航空機を派遣するかについては、国際平和協力部長からの要請の内容性格等によってその都度決定することになりますが、通常の場合、海上保安庁の保有する船舶及び航空機の中でも、ヘリコプター搭載型巡視船並びにジェット飛行機、これはファルコン900という型式の飛行機でありますが、あるいはYS11A型機、飛行機を派遣することが多くなるものと考えております。
  166. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 今ファルコンとYSというふうに言われましたが、船舶については、ちょっと僕は聞き漏らしたかどうか知りませんが、船舶についてはどうなんですか。
  167. 土方政府委員(土方浩)

    ○土方政府委員 お答えします。  ヘリコプター搭載型巡視船であります。
  168. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 そのヘリコプター搭載型巡視船というのは何隻あるんですか、今海上保安庁には。
  169. 土方政府委員(土方浩)

    ○土方政府委員 十隻であります。
  170. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 そこで、現在の海上保安庁の船舶あるいは航空機の整備の現状についてまたお尋ねしたいわけでありますが、実は私、ここに海上保安庁がPRのために発行したパンフレットがあるわけであります。年式で言うと、これが一九八九年版ですね。それから、これが一九九〇年版ということで、保安庁はやはり九〇年ということを使ってありますけれども、平成じゃなくて。そして、これが一九九一年の五月作製ということになっておりますが、その中で、いつも七ページに、八九年版でも、九〇年版でも、要整備、要するに飛行機が足りない、船舶が足りないということで、具体的にこの二年間は図表で示して、必要なところは白の枠で書いてあって、満たされたところはちゃんと色が塗ってあるわけでありますが、そういうものを調べてみますと、一九八九年と九〇年のパンフレットには要整備のヘリコプター搭載型巡視船は三隻不足をしているということが一つと、それから大型ジェット機、これはファルコンですか、ファルコン900ということになっておりまして、一機不足をしているということになっております。  ところが、九一年のパンフレットにはもうこの図表がなくなっているわけですね。ということは、八九年と九〇年に要望したやつが九〇年には実現したからそういう図表はなくなったということでしょうか。
  171. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 ただいまお尋ねの点は、要求が通ったからパンフレットからなくなったというわけではございませんで、今先生御指摘になりましたパンフレットに載っておりますものは、保安庁の内部で巡視船艇、航空機による業務執行体制を将来的にどういう目標でもって整備するかということでつくったものでございます。海上保安庁の広域哨戒体制の整備といったものを基本にいたしましてつくったものでございまして、昨年できましたので一九九一年のパンフレットにその体制概念図というものが紹介されているわけでございまして、今後はそれを整備の目標にしていくということに部内ではしているわけでございますけれども、御質問の八九年版あるいは九〇年版のパンフレットとの差異につきましては、簡単に申し上げますと、ヘリコプター搭載型巡視船の隻数、全部で十三隻、現在十隻でございますのであと三隻という目標……(緒方委員質問に答えてくださいよ、質問に」と呼ぶ)それは、ですから今後長期的に整備の目標としていきたいということでございます。現在はまだその目標は達成されておりません。
  172. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 三年間にわたって整備の要求をしているけれどもそれが実現をしていないというのが海上保安庁の現状で、そういう中で今回PKO派遣ということになればいろいろ僕は問題が出てくるんじゃないかという意味で、実際にそういう現状をしっかり海上保安庁としては確認をしてもらいたいという意味質問したのと、質問の趣旨は、三年目にして整備されていないのに図表が削られてしまっているというのは、これは何か特別な意味があるんですか。
  173. 小和田政府委員(小和田統)

    ○小和田政府委員 削ったことについては特段の意味はございませんで、先ほど申し上げましたように、昨年部内のそういう整備目標をつくりましたので、新しい九一年版ではそれを御紹介しているというだけのことでございます。  それから、先ほど私がちょっと説明が不足だったかと思いますが、予算要求はして三年間続けているのに認められていないということではございませんで、毎年毎年の代替建造の枠の中で性能の向上を図っていく、そういう考え方に基づいて長期的に整備を進めていきたいというふうに考えております。
  174. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 要するに、公にした、それは内部と言うけれども、僕らだって持っているし、これは海上保安庁の業務を全国の皆さんに知ってもらいたいんでしょう。そういう中に出ているやつを削ったということだから、海上保安庁としてはもう十分だというふうになっているんじゃないか、もうそういうふうな認識で見られるからそこが問題じゃないかということで具体的に指摘をしているわけですから、そういうことです。  それで同時に、海上保安庁の持っております船舶の耐用年数とそれから自衛艦の耐用年数が違っておりまして、レクチャーの中で聞いたところでは、二十五年と二十年ですか年限を決めているけれども、北の方の海で使われたやつは南の方に回す、氷もないからということでだましだまし船を使っているというような話があって、非常に整備がおくれているという現状だということをレクチャーのときには聞いたのです。  そこで具体的にお尋ねしますけれども、巡視船と巡視艇の耐用年限についてはどういうふうに、それぞれ何年になっていますかということと、それからこの耐用年限を超えて使用されているものがある。これは年限という言葉は具体的には海上保安庁の場合には書いてないようですけれども、一応二十五年とか二十年ということで建造のときに決めてあるようですが、それを超えて使っている船が何隻あって、最高何年年限を超えていますかということについてお答えをいただきたいと思います。
  175. 土方政府委員(土方浩)

    ○土方政府委員 お答えします。  船舶は一般的に年数が経過しますと物理的に劣化いたしまして、それとともに船体を維持するのに非常に不経済になります。そういうことで通常、商船におきましては耐用年数が税法上も定められております。当庁の船艇につきましては、その運航の状態が海難救助等、一般船舶に比べまして非常に厳しい状況にあります。本来の用途に耐え得るよう、定期的な法定の検査のほか、日常から当庁独自の整備を行いまして、必要に応じて所要の修理を実施しているところであります。  しかしながら、使用年数が長期になりますと性能の低下によりまして業務に支障を来すようになり、あるいは修理に要する経費が増加するので、船体の腐食に関する知識、経験、知見を踏まえまして、鋼製の巡視船につきましては、鋼でできております巡視船につきましては二十五年、巡視艇及び軽合金の巡視船につきましては二十年の運航を目途に設計、建造をしているところであります。  なお、これら年数に達しました船舶すべてが直ちに使用できないというものではございません。個々の船艇につきまして、専門的な知識を有する職員がその老朽度をチェックしまして、それと同時に、自然条件の過酷な海域を担当する部署に配属されている船を静穏な海域を担当する部署に配属がえするというような形をとりまして、その能力に応じた配備に心がけているところであります。  耐用年数を超過して運用している巡視船艇は、平成三年度、本年度末でありますが、巡視船十一隻、巡視艇三十九隻の計五十隻であります。このうち最も長く超過しておりますのが、第六管区、呉海上保安部に所属しております巡視船「こじま」でありまして、現在超過三年になっておりますが、これの代替船を建造中であります。平成五年の三月には就役の予定であります。  このように、船舶につきましては、専門的な知識を有する者が船の老朽度をチェックいたしまして所要の修理等を実施することによって当該船舶の安全を確保するとともに、効率的な業務執行体制の確保に努めているところであります。
  176. 林委員長(林義郎)

    林委員長 上原康助君から発言を求められておりますので、これを許します。上原康助君。
  177. 上原委員(上原康助)

    上原委員 議事進行について委員長に提案をいたします。  本日の本会議終了後の理事会で明日以降の日程について協議をいたしましたが、各党間の意見一致を見ることができませんでした。一応午後の日程は予定どおり進めながら、午後二時三十分ころまでに明日以降の日程について自民党筆頭理事の方から提示をすることで、午後の審議に不承ながら社会党は協力をいたしました。二時四十分ごろ与党理事の方から、あす以降の日程の提示がございました。あす午後質疑を打ち切って採決をしたいとの日程となっております。  我が党は、まだ十分解明されていない諸課題が多いこと、二十二日、昨日と中央、地方公聴会を持ったばかりであるので、さらにきょう以降三、四日程度の審議を続行すべきであるということを強く主張をいたしてまいりました。したがって、先ほど提示をされた与党からの日程には賛同いたしかねますので、直ちに理事会を開いて明日以降の日程について協議することを提案をいたします。  以上です。
  178. 林委員長(林義郎)

    林委員長 速記はとめてください。     〔速記中止〕
  179. 林委員長(林義郎)

    林委員長 速記を起こしてください。  理事会を開かせていただきたいと思います。  暫時このままで御待機を、恐縮でございますがお願いを申し上げたいと思います。  お待たせいたしました。理事会におきまして協議を重ねましたが、質疑続行について協議が調いませんので、次回は、明二十七日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十八分散会      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員福岡県における意見聴取に    関する記録 一、期日    平成三年十一月二十五日(月) 二、場所    ホテル福岡ガーデンパレス 三、意見を聴取した問題    国際連合平和維持活動等に対する協力に関    する法律案(第百二十一回国会内閣提出    )及び国際緊急援助隊派遣に関する法律    の一部を改正する法律案(第百二十一回国    会、内閣提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 林  義郎君       衛藤 晟一君    金子原二郎君       秋葉 忠利君    上原 康助君       緒方 克陽君    山口那津男君       高木 義明君  (2) 現地参加委員       三原 朝彦君    小沢 和秋君       楢崎弥之助君  (3) 現地参加議員       麻生 太郎君    太田 誠一君       古賀 一成君    中西 績介君       松本  龍君    東  順治君  (4) 政府出席者         内閣官房内閣外         政審議室長   有馬 龍夫君         内閣官房国際平         和協力の法体制         整備準備室次長 三井 康有君         内閣官房国際平         和協力の法体制         整備準備室内閣         審議官     滝澤  進君         内閣総理大臣官         房総務課調査官 遠藤新太郎君         防衛庁防衛審議         官       粟  威之君         外務大臣官房審         議官      河村 武和君         外務省経済協力         局技術協力課長 横田  淳君  (5) 意見陳述者         福岡経済同友会         代表幹事    大屋麗之助君         主     婦 木村 京子君         京都大学法学部         教授      香西  茂君         九州大学法学部         教授      石川 捷治君         福岡県友愛会議         事務局長    土井 良泰君         田 川 市 長 滝井 義高君  (6) その他の出席者         国際平和協力等         に関する特別委         員会調査室長  石田 俊昭君      ————◇—————     午前十時開議
  180. 林座長(林義郎)

    ○林座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院国際平和協力等に関する特別委員会派遣委員団長の林義郎でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案審査を行っているところでございます。当委員会といたしましては、両法案審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者の皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党の金子原二郎君、衛藤晟一君、日本社会党・護憲共同の上原康助君、秋葉忠利君、緒方克陽君、公明党・国民会議山口那津男君、民社党の高木義明君、並びに現地参加委員として、自由民主党の三原朝彦君、日本共産党の小沢和秋君、進歩民主連合の楢崎弥之助君、以上でございます。  なお、現地参加議員として、麻生太郎君、太田誠一君、古賀一成君、中西績介君、松本龍君が出席されております。  次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  福岡経済同友会代表幹事大屋麗之助君、主婦木村京子君、京都大学法学部教授香西茂君、九州大学法学部教授石川捷治君、福岡友愛会議事務局長土井良泰君、田川市長滝井義高君、以上の方々でございます。  それでは、大屋麗之助君から御意見をお願いいたします。
  181. 大屋麗之助君(大屋麗之助)

    ○大屋麗之助君 私が大屋麗之助でございます。  私は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案並びに国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案賛成立場から発言をさせていただきます。  初めにお断りいたしておきますが、同友会の代表幹事ということで出席いたしましたが、同友会はもともと企業経営者が個人の資格で加入している任意の団体でございます。そういうわけで、私が今から申し上げることは私の個人の意見である、そういうことでございます。お断りを申し上げておきます。  日本は、敗戦後、領土を四島に限られ、平和憲法と日米安全保障条約のもと、国民のたゆまざる努力が実り、世界のGNPの一割を占めるまでに発展してまいりました。資源に乏しい我が国は、六億トンの原材料を輸入し、これを加工し、六千万トンの製品を輸出いたしております。世論調査によりますと、国民の望むところは、平和で豊かな日本が今後ともさらに発展していくことであります。資源を持たない我が国が発展していくためには、世界の平和と自由貿易体制は必須の条件であり、これを欠いては豊かな国民生活は維持できないのであります。そのためには、日米安全保障体制を引き続き強化することが基本であり、世界平和の維持が重要であろうと考えます。  また、ここ九州はアジアとは地勢的に近く、九州各県は特にアジアとの友好に心がけています。日本国全体としても、世界に対する役割としてはアジアを重視すべきであると考えます。このことが世界平和への寄与につながるものと確信いたしております。  さて、世界の潮流は東西対立から東西協調へ大きく変わってまいりました。平和志向が世界的に高まっておりますから、かつて我々が経験したような大戦争が起こる可能性は極めて小さくなったと思いますが、反面、民族意識の高揚を反映して民族紛争が多発する傾向が見られます。こうした民族紛争は、往々にして世界平和を大きく攪乱するおそれがあり、また、世界の資源情勢等を通じて世界経済、ひいては各国の国民生活に重大な混乱を招くおそれもありますから、国連を中心とした秩序維持、平和維持活動重要性は今後とも軽減されることはないものと考えております。  幸い世界情勢が東西対立から協調融和へ大きく変わってまいりましたことによって、国連平和維持活動への期待が高まり、また実効性の高まりが見られる今日、こうした活動をますます定着、発展させることは極めて重要なことで、我が国としてもこれに積極的に協力すべきであろうと考えます。我々は、世界の中での我が国の地位の向上、我が国に対する国際的な期待の高まりに思いをいたし、国際貢献に向かってできる限りの努力をすることだと思います。国連を通じて日本が力を尽くすことが国際貢献になるものと確信いたしております。  経済大国と言われる日本は、国連や開発途上国に対する資金援助等を通じて世界平和のために貢献してきました。これは、戦争を放棄した我が国経済国としての特質であり、今後も続けられる必要があります。そして世界の期待にこたえていかなければならないと思います。しかし、幾ら日本経済的に豊かであるといっても、おのずから限界があるのではないでしょうか。百七十兆円の国債残高を抱える我が国としては、財政運営は今後とも一層厳しいものがあると思います。湾岸危機の際は法人税と石油税の上乗せでした。今後はどうするのか。国民に新たな税負担を求めるのか、それとも緊急避難的に取りやすいところから取っていくのか。現状ではそうならざるを得ないわけであります。  平和維持活動我が国協力する場合、ややもすれば経済的貢献を一枚看板にして、人的貢献の道が余り積極的に模索されなかったのではないかと思います。これからは、人的貢献でも一歩踏み出して積極的な役割分担を目指そうとするのが今回のPKO協力法案であり、国際緊急援助隊法の改正ではないかと思います。  湾岸戦争の際、多国籍軍の兵士が戦っているのをテレビで見ながら痛感したことは、我が国の七〇%の石油を供給する地域の紛争を、費用の分担だけで、終始ただ座して見ているだけという、何か申しわけない思いでした。そのような中、我が国の掃海艇が困難な作業に大変な苦労を重ねながら大きな成果を上げたことにまことに感激いたしました。世論調査から見ても、多くの国民の支持と共感を得たものであります。経済的貢献と人的貢献、バランスのとれた役割分担を考える時期に来ているのではないかと思います。このような時期にPKO法案が審議されていることは、まことに時宜を得たものと思うのであります。  国連平和維持活動であれ、国際緊急援助活動であれ、一般公務員や民間人による被災民救済や行政事務の監視などは何ら問題はないわけですから、今までも派遣されてきましたし、今後も積極的に派遣すべきものであろうと思います。ただ、新聞やテレビを見ていつも感じることですが、欧米諸国に比べて我が国の場合は、派遣のタイミングがいかにも遅く、規模も小さいという印象を否めません。このような意味で、PKO法案はこの分野での国際貢献を促進することになると考えますので、まことに結構だと思います。  私は、法律の専門家でもありませんし、憲法を深く勉強したこともございません。憲法論争については専門家の先生方が議論されているところでありますので、次に述べますことは法律には素人の意見ということになると思います。  今大きく問題となっているのは、停戦の維持、監視等に従事するための自衛隊派遣でありますが、私は、自衛隊海外派遣がすべて憲法に違反するものではないと考えます。湾岸危機を例にとれば、多国籍軍参加して相手と戦火を交えることであれば、これは、いかに国連の要請に基づく平和回復の活動であっても、明らかに武力行使であり、憲法に抵触するものだと思います。しかし、PKOへの参加は、停戦成立後の停戦の維持、監視などが目的であり、しかも国連の要請に基づく派遣ですから、憲法が禁じている武力行使とは根本的に違うのではないかと考えています。仮に停戦の維持、監視活動の中で若干のトラブルが発生しても、国際社会は決して我が国武力行使したとは受け取らないと思います。国連平和維持活動ではスウェーデンやフィジーが長い経験を持ち、トラブルから犠牲も出しているように聞いていますが、これらの国に対する非難は聞いたことがありません。こうした活動すら拒否することは、国際社会から見れば我が国が責任逃れをしているとしか映らないと思います。私は、PKO協力法案憲法の枠内であり、国際緊急援助活動に対する自衛隊参加についても同様であると考えます。  自衛隊海外派遣については内外に懸念を表明する向きもありますが、今回は、憲法の精神に沿って、国連の行動規範より一段と厳しい我が国独自の参加原則が明示されています。これによって大きな紛争に巻き込まれるおそれ、すなわち憲法で禁じられている武力行使に巻き込まれるおそれはなくなったものと考えます。  また、今日の我が国は、かつて周辺諸国に迷惑をかけた時代とは、政治制度、議会の力量、さらに国民世論の基調も大きく変わっており、今や暴走するおそれのない、全く安定した民主主義国家であると思っています。その意味で、私は、自衛隊に対する文民コントロールは平素から十分に機能していると考えており、その上、参加原則が守られるならば、国連平和維持活動あるいは国際援助活動に対しては自衛隊派遣しても問題はないと考えます。したがって、事前に国会承認を受ける必要も必ずしもないのではないか、それよりも迅速な対応を重視すべきではないかと考えるものであります。  さらに一言つけ加えさせていただきます。新聞、テレビ等で指揮、指図などの議論を耳にいたしますが、派遣される隊員は厳しい訓練を受け、規律に基づいて行動する人々であります。掃海艇が立派に任務を果たしたと同様に、法の趣旨を遵守し、必ず正しく任務を全うするものと確信いたしております。もっと我々は自衛隊に信頼をおいていいのではないかと考えております。  終わります。
  182. 林座長(林義郎)

    ○林座長 ありがとうございました。  この際、現地参加議員の東順治君が出席されましたので、御紹介いたします。  次に、木村京子君にお願いいたします。
  183. 木村京子君(木村京子)

    木村京子君 木村と申します。私は、国連平和協力法案反対する立場発言をさせていただきたいと思っています。  なぜなら、この法案というのは、私も全体読ましていただきましたけれども、その中で繰り返し語られている国際平和だとか国際の平和と安全の維持だとか、あるいは人道的な活動、難民救済というふうな言葉とは裏腹の、大変大きな危険な問題をはらんだ法案だと思うからです。憲法第九条に要約される日本の戦後五十年をかけた平和主義を守る動きがその根本から空洞化され、葬り去られようとする、そういう内容を持ったものだと思うからです。  私は、戦争の放棄と非武装を明確に示した第九条の平和主義に徹し、さらに、憲法の前文でうたわれています「全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」ということを心から願い求める立場に立つ一人として、以下の発言をさせていただきたいと思っています。  私は、ほかの公述人の方と違いまして、どなたが見てもわかるような組織とかあるいは学識経験者ということではありません。主婦という肩書でここに参りました。ということで、少し私の自己紹介といいますか、公述人としての立場を補強する発言を先にさせていただきます。  私の父は、ちょうど壮年期に戦争に長く行ってまいりました。私の母は長崎の被爆者です。戦後生まれた私は、とにかく二度と戦争を繰り返さない、そのために頑張っていくことが本当に絶対的な価値を持つんだということをさまざまな形で教えられ、学び、考え、行動してきた、そういう戦後の世代の一人の人間です。しかし、今自衛隊が平和の名目で海外に出ていくという、そういうがけっ縁にまるでつま先立ちさせられたような気持ちで、かつて私が両親たちに、なぜあなた方は戦争反対できなかったのかというふうに追及したことがあるのですが、そのような追及が、また子供たち、次の世代から私たちに向けられているということをも含めて、大変重い責任があるというふうに思っています。  昨年の国連平和協力法というのが廃案になりました。これは、国会の中での野党の皆さんの粘り強い反対運動だけではなくて、本当に広範な人々のさまざまな活動が反映して廃案に追い込まれたということは、どなたも否定できないと思います。たくさんの女性たち、子供たち、労働組合の人たち、あるいはかつて日本の皇軍兵士として戦った人たち、あるいは沖縄議会を初めとする各地の地方議会の決議などが、市民の、国民の反戦平和の意思としてこの法案廃案に追い込んだというふうに思っています。  そういう動きの一つとして、私は湾岸戦争後に、福岡市近郊のある自治体の人権講座の講師に呼ばれました。この講座のテーマは湾岸戦争についてです。本当に短い期間だったのですけれども、国連の持つ意味、あるいは今新しい時代戦争の持つ意味、それからその中での日本の果たした役割日本がどうしたら世界の平和のために的確で本質的な協力ができるのかということについて、本当にまじめに考えていこうとする人たちがたくさんいるのです。そこでは、本当に若い人たちから中年の女性まで、戦争と平和についてとても深い考えを持っておられることを知りました。その中の一人の女性の発言を御紹介します。  それはまだ若いお母さんなんですけれども、あのテレビを通して伝えられた戦争、あれほどハイテク化された報道というのは、一方で全く管理された報道ということが言えると思うのですけれども、あのような戦争の伝え方は決して本当ではない、ああいうものを子供たちに見せると本当の戦争の姿が伝えられないということで、子供たちにあのテレビ報道は見せなかったとおっしゃいました。市民は本当に賢明です。それぞれの場でこの戦争の問題にしっかり向き合おうとしていることを、ぜひきょう来られた委員の皆さんに訴えたいというふうに思っています。  その上で、私は、新聞やあるいは衆議院の方から送っていただきました国連平和協力等に関する法案の中身や、あるいはそれに関する提案理由説明の文章を私なりに一生懸命読んでみたわけです。  まず感じたことの第一点は、やはり国連中心主義ということが繰り返されています。しかし、平和の維持、平和を守り育てるための国連活動というのは、決してこのいわゆるPKOという活動だけではありません。もっと世界の人たちが、先ほど日本憲法前文の中でも言いましたように、対等に平等に、飢えることなく、恐怖にさらされることなく生きていくための、例えば具体的には人権を守るものであったり、さまざまな行動があります。例えば、仮に紛争が起こったとしても、そこで繰り返し繰り返し、さまざまな形での話し合いの努力はなされるべきです。国連にはそのような機能がまだまだあるわけです。それをこの法案の中では、いわゆる起こった紛争の単なる事後処理的な、暫定的な、限定的な活動でしかないPKO活動に集約することによって、それこそが国連が行う平和維持のための活動そのものである、その全体であるというような主張をなさっていることに対して、大変憤りといいますか、問題があるということを感じました。  紛争を事前に抑え、発生要因を減らし、そしてそれを緩和していく方法は幾らでもあります。まず、そのような世界の紛争の状況、それに本当に日本の豊かさとかあるいは私たち自身の平和がその発生要因につながってないだろうかということも含めて、ぜひ、今本当に世界平和のためにできる全体的なことについて考えていただきたいと思います。そして、かつて戦争で侵略的な行為を行ってきた日本が、もう一度、なぜ国際平和に向き合っていくかということのもっと全般的な声明を、アジアを含めた世界に対してなしていくべきだと思います。そういうことがまずなされるべきであって、このPKOという形での審議だけで国際平和の問題を語っていくことにまず反対をしたいと思います。  次に、既に委員会の中での審議もなされているわけですけれども、どうしても見過ごせない幾つかの問題があるわけです。そのことについて、私がこの送っていただいた資料などを見まして思うことは、これだけ大きな平和にかかわる問題であるにもかかわらず、一言も憲法九条との関係についてこの法律案は触れられていないということです。自衛隊が違憲であるか合憲であるかについてはさまざまな意見があります。ましてや、その自衛隊海外に出ていくということについては、さらなるさまざまな論議が必要であるにもかかわらず、それが非常におざなりにされてひとり歩きをしているという感じがいたします。  そのようなごまかしがすべてのやりとりの中に反映してまして、例えば武力行使と言わずに武器使用と言うとか、あるいはPKOすらも、これは明らかに軍隊なわけですけれども、維持隊というふうな言葉に言いかえるとか、さまざまな言葉のすりかえ、あるいは指揮を指図と言いかえるとか、それについての国連日本政府のそごについてもなかなかきちんとした説明がなされない。あるいは、シビリアンコントロールのかなめともいえる国会承認などの点についても、非常にこれは無視されているわけです。また、この法律の中では、武器範囲とかあるいはさまざまな内容がすべて政府の閣議の計画あるいは政令によってなされるというふうな、そういう中身になっています。ここには明らかに国民無視あるいは議会無視の姿勢が貫かれているわけです。  また、さまざまなやりとりの中でも、やはり自衛隊がその現場において組織的な軍事行動に出る可能性やあるいは集団的な自衛権を行使するような可能性を決して否定し切れないということ、そのようなあやふやな法案であるということは、既に、この法案提出しておられる自民党の中の議員の中にも、そのあやふやさあるいは危なっかしさについて指摘があるとおりだというふうに思っています。また、PKO原則と言われる中立、同意、合意の中のこの中立の原則一つをとっても、日本はアメリカと軍事同盟を持っているわけですから、果たして本当に中立という立場を維持できるでしょうか。このような憲法九条との関係に触れないこのPKO法案の論議というのは、おのずとこのようなあやふやさ、そしてごまかし、すりかえを持たざるを得ないというのが今の国会審議のような気がいたしております。  また、このような法案の非常に大きな問題を、公聴会ということで私どもの意見を聞いていただく機会をつくっていただいたわけなんですけれども、先ほど言いましたように、もっと国民のさまざまな立場意見をぜひ真剣に受けとめていただきまして、くれぐれも強行採決というような形で力でもって、論理抜きの力でもって押し切ることがないように、ぜひお願いをしたいと思っています。  デタント以降、対話と相互理解によってさまざまな問題を解決していこうという努力を、感動的な努力を示したのが九〇年代でした。私たちは、武力は何も解決しないどころか、人を殺し、環境を破壊し、そして何よりも紛争そのものの問題を複雑にしてさらに先送りしていくだけでしかないということを、すべての戦争、あるいは今世紀に起こったすべての戦争を通して既に十二分に教えられているというふうに思っています。湾岸戦争もしかりです。力が正義である、平和を武力でつくり出す、武力行使する、紛争の解決としては戦争が必要だということを、アメリカを初めとする多国籍軍が新しい対話の時代にもかかわらず起こしてしまいました。  私たちの新しい平和が、今危機にさらされていると思います。世界が平和と戦争の間で大きな振り子を振っているというふうに思っています。私たち日本に住む者は、日本の市民は、もう一度憲法九条の絶対平和主義に立って、それを踏み締めることが一番国際平和の役に立つことだということ、憲法九条の具体的な中身としてより豊かな非武装中立の中身を展開していくことが一番国際平和に貢献する道だということを、もう一度確かめたいと思っています。  これは同時に、私たち市民一人一人の問題であると思います。私たち一人一人が戦争反対する権利と義務があるということをもう一度とらえ直して、今、国会で行われている審議の中に繰り返し繰り返し一人の市民の声を反映させていきたいと思います。私たちは昨年、九州から五万人の反対の署名をお届けしました。国会議員の皆様のポストに一つ一つほうり込んでまいりました。ことしになってもPKO法案反対する声明を皆様のポストに届けてまいりました。どうぞ委員の皆様、この声をあなた方を支えている市民の声として聞いていただきたいと思っています。  以上です。
  184. 林座長(林義郎)

    ○林座長 ありがとうございました。  次に、香西茂君にお願いいたします。
  185. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 香西でございます。本日、この公聴会にお招きいただきましたことを大変光栄に思うものでございます。  私は、国連平和維持活動というものを学問研究対象として研究してきた者といたしまして、我が国PKOへの参加を可能にするような法案国会提出されたということに、ある種の感慨を覚えるわけでございます。と同時に、今日マスコミなどで取り上げられている取り上げられ方、そういうものを見ておりますと、平和維持活動という理念、まあこれは中立・非強制という、そういう強制行動に対する対立概念として出てきたPKOというものが、かなりイメージからかけ離れたような形で取り上げられている。例えば、戦闘そのものを目的とした活動であるかのようにとらえられているというふうに見えまして、これが甚だ残念であり、この理解が一般国民にはいまだしというふうな感じを持っているわけでございます。  私の憲法に対する立場は、憲法擁護の立場でありまして、いわゆる改憲論者ではございません。したがいまして、先ほどの湾岸戦争のときの多国籍軍などに対しては私は大変厳しい立場をとったわけでございまして、我が国がそれに参加するというようなことには憲法上できないし、また、すべきでないというふうな立場をとったわけでございます。それに対しまして、それのゆえにと言っていいかもしれませんけれども、一方PKOに対しては、平和憲法の理念と共通のものでありますから、むしろ平和憲法を持つがゆえに日本は積極的にPKO参加するという、いわば発想の転換を図るべきであるというふうな考えを持つわけでございます。  我が国PKOへの協力を考える際に参考になりますのは、スイスであります。スイスは今回の法案づくりに密接に深くかかわった国であるということからだけではございませんで、このスイス永世中立国の地位がまさに憲法九条の規定と符合すると考えるからであります。永世中立国の義務というのは、これは国際法上の義務ということになりますが、同時にスイスについては二世紀にわたる政策、国是としてこういう政策がとられてきたわけですが、その永世中立国の義務というのは、まず第一に、他国間の戦争に中立で臨まなければならない、それに加わらないという、そういう義務であります。これは一般によく知られている義務であります。それと同時に強調しなければならないのは、第二の義務として、スイスは、みずから他国に向かって戦争をしかけたり、あるいは他国に武力行使してはならないという、そういう義務であります。それから第三に、軍隊は中立を守るために保有するということが認められるわけでございますが、これは専守防衛のためであって、他国を侵略したりする、そういう目的のものではないということであります。  こういった義務を課せられたスイスが、それじゃなぜPKOについては非常に熱心で、これに全面的に参加協力をしようと考えているのか。そのことに私は関心を持ったものでありますから、この夏にスイス政府当局の方にその点をただしてみたわけでございます。それによりますと、スイスというのは、一方では、中立のゆえに強制行動、たとえ国連の強制行動であってもそれに参加することはできない、ましてや、多国籍軍のようなものに参加することはできない、それだけに、他方において、PKOについてはこれは中立・非暴力の原理に基づくものであって、スイス立場、国是と合致するということでありまして、そこでむしろ、強制行動のようなものには参加しないかわりに、それに対するいわば対案として、PKOについてはこれに積極的に参加することによって、スイスは平和愛好国である、国際社会の名誉ある貢献者である、決して国際的な責任を免れようとするそういうひきょうな国ではないんだということを世界にアピールしたいんだ、そのために、PKOについてこれまでも積極的に全面的に協力するという姿勢で臨もうというふうな回答が返ってまいりました。そういうことで、スイスはまず資金援助から始めまして、次に機材の面での、ロジスティックな面での援助、さらには衛生隊員などに参加する、軍事監視員を派遣する、そしてことしになりましてからは、いわゆるPKFと呼ばれるものにも参加するということに踏み切ることになりまして、そのための法案の準備にかかっているわけであります。  ところで、そういうわけで、スイスがこのたびPKF参加するというようなことになるに当たっては、スイスの地位と立場が問題になるわけでありますが、この点につきましては、スイスは、PKOへの参加ということは基本的にスイスの中立国の義務やその政策、国是と合致するものであって、矛盾することはないという立場をとっているわけであります。ただ、具体的な場合につきましては、いろいろ問題が起こる可能性がなきにしもあらず。そこで、そのような可能性を避けるために、スイスは幾つかの参加のための条件を掲げたわけであります。  その第一は、スイス参加することについて、すべての紛争当事者の同意が得られなければならないということ。二番目に、紛争当事者に対してPKOは厳正中立性を保たなければならないということ。三番目に、武器使用は、それは緊急やむを得ない、いわゆる正当防衛のためにのみ使用することができるということ。そして四番目に、もし以上のような条件が満たされないときには、また事情の根本的な変化が生じたときには、またスイスが紛争に巻き込まれる危険が生じたときには、スイスは撤退をする。このような条件をつけて参加するというふうな方針を打ち出したわけであります。我が国の今回の法案が、このスイスの方式をモデルとしまして、いわゆる五条件として取り入れられたということは、皆様御承知のとおりであります。  これは大きな意味を持っているわけでありまして、もし、例えばある国、当事者が日本参加反対だと言えば、幾ら日本参加したくてもそれはできないということになってくるわけでありますし、さらに、ある一部の人が考えているような、この法案をいわばてこにして、もっとさらに、強制行動のための国連軍とか多国籍軍などにも参加の道を、その第一歩であるというふうな考え方を持つ人に対しては、この条件はそのような可能性を封じるという意味において非常に大きな意味があると思います。  もっとも、理想としましては、私は、スイスのように、このPKOへの参加の方式を先ほど申したような段階方式でもって、つまり国民の意識や理解が得られる度合いと並行するような形で段階的に進めていくのが最も望ましいというふうに考えておりました。しかし、いろいろな人の意見を聞いてみますと、我が国ではいろいろな特殊な事情がございまして、そのような段階方式と申しますか、積み重ね方式と申しますか、そういうふうな数年ごとに新しい法律をどんどんつくっていくというようなことは極めて困難であるというふうに言われまして、それもまあやむを得ないかもしれない。ですから、PKOというものに対して、それのみに限定して、それに対する協力のための法的枠組みをまずつくっていくという、そういうのも次善の策としてやむを得ないというふうに考えるわけであります。  問題は、法案が成立した暁のことであります。つまり、その実施はできるだけ無理のないような方法で、それこそ段階的な方法で進めていっていただきたい。何が何でもカンボジアまでにというふうなスローガンを掲げてこの法律をつくるとすれば誤りでありますし、これは望ましくないということであります。要は、つまり日本国連のためにどのような形で貢献すれば一番うまく貢献できるか、そういうような体制を国連の側にこの法案によって示すということでありまして、それに対して国連がどのような形で貢献してほしいというふうに決める、これは国連の側でありまして、我が国が決めることではないわけであります。  最後になりましたけれども、この法案ではいわゆる自衛隊員等の協力隊員の研修ということが極めて簡単に書かれているにすぎません。実はこの点が一番重要な点なのでありますので、そういう意味で非常に残念だと思うわけでございます。例えば、自衛隊を部隊そのものとして派遣するわけではなくて、その協力隊本部に組み入れて編成がえもしなければならない、しかも、隊員の意思も問わなければならない、そのために十分な訓練を積まなければならないというようなことのためには、いわば待機体制のようなものを組んでいくには、これは非常な時間がかかるわけであります。その点に関する論議はどうも国会では十分になされていないんではないか、そういう感がするわけであります。  いずれにしましても、こういう点の審議をもっと進めていただきまして、今後、例えばアジアの諸国もPKOへの参加には非常に熱心でありますから、そういう国々といわば協力体制をとる。例えば、北欧諸国などにあるような訓練センターというようなものも、アジアの諸国と共同するような形で協力体制をとっていけば、要らぬ不信感とかそういったようなものをぬぐえるのではないかと考える次第でございます。  これをもって終わりとさせていただきます。
  186. 林座長(林義郎)

    ○林座長 ありがとうございました。  次に、石川捷治君にお願いいたします。
  187. 石川捷治君(石川捷治)

    石川捷治君 石川でございます。発言の機会を与えられましたことを厚く感謝申し上げます。  私は、政治史の研究者として、福岡に生活する市民として、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案、それと国際緊急援助隊派遣法改正案に対しまして、反対立場から意見を述べたいと思います。  私がそのように考えます第一の理由は、国民、世論の多数が本法案に必ずしも賛成あるいは理解を示していないということであります。  各種の調査がございますが、例えば、朝日新聞の十一月十日付の調査によれば、自衛隊PKF平和維持軍への参加について、反対五八%、賛成三三%、憲法上問題ありと答えた人五九%でございます。また、同紙の十八日付の全国の憲法学者へのアンケートでは、回答者の八割がPKFへの自衛隊参加を違憲としております。また、今月二十三日、佐賀市で開かれました日本平和学会九州地区研究集会では、出席したほとんどの会員研究者から本法案への危惧の念が表明されたのであります。  このように見てきますと、これからの日本の進路を決める上で非常に重要なこの法案につきまして、少なくとも国民的コンセンサスができ上がっていると言える状態ではございません。むしろ、国民の中に不安が高まっています。このような中で法案が成立するとすれば、私は将来に禍根を残すことになると考えます。  第二点は、略称で申しますが、PKO法案の前提となるべき歴史認識国際貢献との関係でございます。歴史を踏まえた上での国際貢献でなければなりません。我が国戦争責任は、かつて戦争参加したという程度のものではありません。第二次大戦をとりましても、ヒトラーのドイツより八年も早く、一九三一年、昭和六年、中国に侵略を開始し、ヒトラー敗北後も三カ月以上にわたってさらに侵略行動を続けました。その意味では、現代史において世界最大、最悪の侵略国家の一つであったわけであります。しかも現在、その明確な反省も償いもまだ十分なされていません。  国際貢献はぜひとも必要ですし、これまで少な過ぎたとさえ言えます。しかし、それは世界の多くの人々から喜ばれる分野のものでなければならないのは当然のことです。特に、日本は重い過去を背負っていますので、隣人から少しでも危険視されるような分野は避けなければならないと思います。  本法案について、韓国政府の憂慮の念を初め、中国やアジアのかつての被侵略国から懸念と不安の声が上がっていることを、もっと深刻に受けとめるべきだと考えます。例えば、現在ドイツがポーランドその他にとっている姿勢は見習う必要があると思います。かつて朝鮮、中国への玄関口であった福岡に住む者として、そのことを強調したいと考えるものです。憲法第九条の存在はもちろんですが、それがあるからというだけでなく、私たち戦争責任と平和国家としての戦後のあり方を踏まえた国際貢献でなければならないと考えます。ですから、国際貢献は非軍事的分野に限られる必要があります。  国際貢献の根本に、二十一世紀を先取りした憲法第九条の不戦と非武装の理念が据えられ、日本がそれにふさわしい平和国家となり、国際的平和への強力なイニシアチブ、核廃絶を含む軍縮の推進、第三世界における飢餓や貧困の問題、地球環境破壊の問題、そして人権、難民の問題への取り組みなどが世界の人々から喜ばれる貢献であると思います。例えば環境問題などでは、日本はやるべきことをやらないというだけではなくて、東南アジアなどでは、やってはいけないこと、例えば公害輸出であるとか森林の破壊などを平気でやっているわけでありまして、これらをやめさせまして、日本経済力や科学技術力を生かした国際貢献が必要と考えます。アメリカと西欧への貢献ではなくして、南の世界、とりわけアジアへ向けた国際貢献、それも国家レベルだけでなく、民衆の視点を入れた貢献が必要だと私は考えます。  第三の点は、法案内容についてであります。さまざまな疑問点がございますが、二点だけ述べさせていただきます。  まず第一点は、PKF指揮権についてであります。マスコミでも指摘されていますように、国連サイドから見れば自衛隊はコマンドに従っているし、日本側から見れば指揮の根本は日本政府が握っているという全くの二重構造になっております。  国連の広報センター発行の日本語の広報誌、これはコピーですが、これの十月発行の号に、「PKO人材派遣国と国連のモデル協定」としまして、国連文書のAの四十六、百八十五というものの概要紹介されています。それには「事務総長が各国の派遣する要員を含め平和維持活動の展開、組織、指揮等の全権を握る。」この原文の方の英語テキストではフルオーソリティーというふうになっておりますが、ともかく全権を握る。「現場では、この権限は事務総長特別代表や軍事司令官によって代行される。」また、次の項目、英文では九となっているところでは、「国連平和維持活動は純粋に国際的なものであり、派遣される要員は国連の利益だけを考えて行動する。」「その行動について国連以外のいかなる権威からも指示を求めてはならないし、派遣国自体もそのような指示を与えてはならない。」というふうに指揮権限の所在と性格は明確であります。  今月の二十日に出された政府の統一見解のように、国連の意思を離れて国家単位で行動するということがもし可能であるというならば、そもそもPKOの中立性が保障できませんし、PKOへの参加の趣旨そのものが意味を失ってしまうのではないかと考えます。また、日本が独自の判断で行動できるのであれば、撤退の場合のみが今出ておりますけれども、撤退の場合のみならず、独自の判断で戦う場合もあり得るわけでありまして、これは、国権の発動としての戦争武力行使に当たると考えられます。  次に、第四点でございますが、いわゆる事前PKOの問題についてです。  法案の第三条第一項に、武力紛争発生していない段階でも、国連の決議があればPKOとして派遣、派兵、派兵とは使っていませんが、派遣することができるとなっております。私は、実はPKOがどんどん変化している点に非常に心配を持っているわけです。あるいは、そこに注意しなければならないと考えます。つまり、過去のいわば仲裁型の国連平和維持活動という基本が崩れてきている。湾岸戦争後のイラク・クウェート停戦監視団を見ましても、中立性の原則や同意原則は崩されているわけであります。  そういうことで、特に湾岸戦争後は国連自体にも変化がございます。ワルシャワ条約機構の解体によって軍事ブロック間の対立がなくなり、国連中心の安全保障体制が機能しやすくなった、これは事実でございますが、その反面、ソ連の崩壊で、その安全保障体制をアメリカを中心とする北側あるいは西側の大国が牛耳りやすくなっているというのも事実であります。例えば、湾岸戦争前の一連の決議もあるいはそれに当たるのではないかと思います。さらに予想されますのは、世界の三極、米欧日にとりまして都合の悪いところの、例えばでありますが、石油などの資源を脅かす第三世界の紛争が発生しそうなときに、国連の安全保障体制という名目のもとに国連武力介入を決めることが現実には起こり得るのではないかと思います。  そういうことを考えますと、この事前PKOは、自衛隊海外出動の幅を大きく広げるものでありまして、かつ、武力紛争発生した場合、真正面から銃火を浴び、泥沼の流血戦とさえなる可能性を秘めております。また、これは、前提の条件武力紛争発生前でございますので明確なものがありませんけれども、今日の民族紛争の複雑な形から見ますと、派遣先国の承認があればいいというようなことでは、まさに非常に危険ではないかと思います。  私は、自衛隊自身がそもそも違憲だととらえておりますが、それが海外に出ていくことで二重の違憲状態になるのではないかと考えます。一度本法案海外派兵へのチャンネルを開くとなりますと歯どめがなくなりまして、平和国家の基本が崩れる。アリの一穴とかいう表現がありますけれども、モグラ穴のようになる危険性さえあると考えます。満州事変六十周年、そして真珠湾攻撃五十周年のことし、一九九一年が、この法案が通ることによって新たなる戦前へのターニングポイントであったというようなことを後世の歴史家から記されることのないように、私は、PKO法案廃案派遣法改正反対を強く主張したいと思います。  以上をもちまして私の意見を終わります。ありがとうございました。
  188. 林座長(林義郎)

    ○林座長 ありがとうございました。  次に、土井良泰君にお願いいたします。
  189. 土井良泰君(土井良泰)

    ○土井良泰君 土井でございます。  私の立場は労働組合の団体の組織でございますが、本日は、公聴会に当たりまして、個人的な見解も含め率直に意見を述べさせていただきたいというふうに考えております。  まず初めに、本日の公聴会開催に当たって率直に感じましたことは、我々今、日本に住んでおりまして、自由と民主主義ということが本当に大切であるな、こういう場を与えていただくこと自体が大変貴重である。世界の国々を見てみますと、言論が封じられたり、あるいはこういう国の重要施策についての意見を述べる機会が制限をされるということが多々あるわけでありますが、こういう場で意見を述べさせていただくことに対して、本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。特に、衆議院並びに行政の関係各位に敬意を表したいというふうに考えておるところであります。  さて、本法案につきましての見解でありますが、基本的には条件つき賛成であります。その背景についてただいまから申し述べたいというふうに思います。  現在の日本に求められているものは、完成された独立国として、憲法の前文に盛られている国際協調主義の精神をいかに具現化するかという問題と、それへの基本認識であろうというふうに思います。国際社会の大変革と、それに伴う我が国の地位を考えるとき、終戦時におけるアジアの小国から今こそ脱皮しなければならないことは、国民大多数が認識をされておるところであります。換言すれば、我が国は、多種多様な価値観に基づく複雑な国際社会において、寛容の精神と主体的行動及びそれに伴う責任が求められていると思います。  我が国に対する世界の期待は、世界の平和と繁栄のために、日本がその国力にふさわしい人的、資金的支援を今後どのように遂行するかにかかっているというふうに思います。戦後しばらくは日本の顔を過去に向け、外に対してはできる限り控え目にしておればよかった、またそうすべきであったというふうに考えます。何といっても恭順の意を内外に強くあらわすべきであったというふうに考えます。  しかし、そのころと現在の国情の違いがございます。憲法施行一九四七年当時、国民生産は一兆三千九十億円、貿易収支は二億六千六百万ドルの赤字でございました。一九七九年、東京サミットが開催をされました十二年前、国民生産は二百二十一兆八千四百二十億円、三十二年間で二百倍を超えるに至ったわけであります。また、貿易収支は十八億四千五百万ドルの黒字であります。昨年でありますが、国民生産は四百二十九兆二百八十億円、七九年の二倍になっておるわけであります。貿易収支は六百三十八億五千六百万ドル黒字となりまして、この十一年間で三十五倍にも膨れ上がったわけであります。国民生産世界の一五%を占め、貿易量は世界の一〇%に迫っております。もちろん私ども、戦争復興のために日本の労働者は額に汗をし、そして生産性の向上を中心に、労使協力しながら今日の繁栄を築いたものと自負をいたしておるものであります。  このように押しも押されぬ経済大国となった今日、我が国の行動が注目されるようになったのは当然であります。世界の自由度を調査しているフリーダムハウスによりますと、現在、世界には専制、圧迫と偏狭、恐怖と欠乏、それらの世界の人口五十三億のうち自由な国に生存している人は二十億であります。あとは部分的自由、さらには不自由と言われる国々が十四億、十七億。世界の六〇%以上の人々が体制批判などまともに言えぬ状況に置かれているというふうに考えます。これは人権問題等もあろうかと思いますが、世界百八十九カ国中、先進工業国は二十一カ国にすぎない。開発おくれと言われておる、文盲率を含めましても四十二カ国、先進諸国の倍の数であります。このような状況の中で一国のみの繁栄は許されず、自国のことのみに専念してはならないというふうに思うわけであります。  大変卑近な例でありますが、自分の住んでいます町内に火事が発生をした、自分は仕事で忙しいから火事の応援には行けないということで世間が通るかどうか。これは大変卑近な例で申しわけないわけでありますが、そういう人間として、あるいは世界の中の日本の主体性というものを考えながら、慎重にこの問題については対応すべきであろうというふうに考えるわけであります。  以上、国際貢献必要性について述べてまいりましたが、PKO法案憲法九条との関係であります。  PKO法案につきましては、基本的には国際平和維持活動という理解をいたしておりますので、国連活動の中で平和強制活動、つまりPMOとは異なり、PMOも国連軍活動の中に入っておるわけでありますが、PKOという少なくとも平和を維持しそれを推進するという基本的な考え方に立っておるわけであります。このような考え方に立って、平和維持軍、停戦監視団、選挙監視団等々、活動の分野は今後も見直しが進められていくことというふうに判断をするところであります。これらの状況の中で、憲法の前文にありますけれども、国際貢献をしていく、あるいは国際社会の中でその主体性を発揮するという内容の表現がございます。これらについては、今後憲法九条のみに限定をした考え方ではなく、広く憲法制定当時の基本的な理念に立って今後の対応を考えるべきであろうというふうに考えるわけであります。  特に、PKFにつきましては、国連の元事務総長でありましたハマーショルド氏の、PKOは軍隊のする仕事ではない、しかし軍隊でなければならないという見解がございます。これらの見解について、今世界が求めてこようとしているそういう内容については十分吟味をしていく必要があろうかと思います。そういう意味で、今回五原則なり三原則というものが、この法案提示に当たりまして基本的な考え方が述べられておるところでありますが、これは国連の基本方針でもありますし、先ほど御意見が公述人から述べられましたけれども、スイスにおける考え方等が、見解として出されておるものとほぼ似通っておるというふうに判断をいたしておるところであります。  特に、今後のこのPKFについて考えますならば、世界で今日二つのパターンがあるということは承知のところであります。北欧型の特徴としましては、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、これら四カ国は少なくとも待機軍として創設をし、その役割PKFに限って対応をしておるというふうに理解をいたしております。一方、カナダの取り扱いでありますが、正規軍の一部隊をPKOに指定をし、必要な教育訓練を行い、三年ごとにローテーションを組みながら、三百人の枠の範囲で人を動かしていく、こういう考え方に立っておるというふうに聞きます。  日本の場合は、まさに自衛隊の皆さんが海外派遣をされるということになろうかと思います。そういう意味では、派遣をするという法律の理念に立って考えるということも大切でありますが、基本的には、冒頭に述べましたとおりに条件つき賛成でありますから、派遣をされる側の意見というものを十分考慮に入れて検討をすべきであろうというふうに考えます。  特に、これらの問題につきましては、先ほど来意見が述べられておりますけれども、日本独自ということではなく、むしろ今日までの戦前戦後の歴史の経過を踏むときに、アジアの諸国の皆さんに大変御迷惑をかけた歴史的経過があるわけですから、これらの問題については十分合意形成を図っていくということが日本の国としても大切であろうというふうに考えるわけであります。そういう意味で、アジアを中心にした先ほどの案でありますが、PKFの訓練センター等をつくりながら、それぞれの地域から世界の平和を守り、推進していくというそういう役割を、日本が財政的にも、あるいは機構的にもその役割を果たしていくというような、その役割を考えていくべきではなかろうかというふうに考えるところであります。  当面する課題について見解を述べさせていただきましたが、最後に要望を申し上げます。  これらの問題については、国民各界各層の意見の多種多様な見解が述べられておるところでありますが、大きく分けて反対賛成ということであろうと思います。これらの国の基本政策を決める際に特にお願いしたいことは、政治改革も同様でありますが、日本の国の展望を将来どうしていくのかということについて、まず明確な方針を国会内で御論議をいただくことが必要ではなかろうかな、そして、それらに向けて具体的な段階をどう進めていくのかということについて、広く国民に合意を得られる施策と努力が必要であろうというふうに思います。これらに向けまして、国会、それぞれ衆参の議員の皆さん、あるいは行政の皆さんについても汗を流していただきますことを、厚かましいお願いでありますが、特にお願いをする次第であります。  また、PKOにつきましては、国際平和維持活動でありますので、内容的には、単に自衛隊というPKFに限らず、日本の財政、貿易、さらには日本の産業の置かれている立場を考えながら、広く文民も含めてその役割を果たしていく、そういう幅広い国際貢献あり方というものを模索すべきであろうというふうに考えるところであります。これらについても、世論はどちらかというと自衛隊派遣か否かということで論議が集中をしておるところでありますが、もっと幅広く、国際的にも、人権でありますとかあるいは飢餓でありますとか、あるいはそれぞれの立場で、家庭の幸せということも身近にあろうかと思いますが、それらを集約する政治の役割とは一体何なのか、これらについて基本的な御論議と方向性をお示しいただくことを切に期待をするものであります。  以上、るる申し上げましたが、最後に私は、民社党のシビリアンコントロールについての見解について、全く賛成という立場で見解を述べさせていただきたいというふうに思います。  今日の日本歴史というのは、敗戦をし、そして今日の日本経済成長があるわけでありますが、二度とあのような武力行使をなしてはならないというふうに考えるわけであります。そういう意味では、最大のシビリアンコントロールは国会承認ということになろうかと思います。国権の最高機関たる国会自衛隊の行動をチェックすることであり、内局統制、官僚統制のことを指すのではないというふうに考えるわけであります。特にPKO活動内容につきましては、今後状況が相当変化をしてくるということが考えられます。個々の活動ごとに国会がチェックをし、参加の可否を判断する必要があろうかと思います。  PKOは、国連憲章に明確な規定があるわけでなく、そのときどきの国際情勢から生じた平和維持の必要に対応して発展してきたものであって、活動の態様もさまざまであります。特に、今日まで起こってまいりました時間的な猶予ということにつきましても、それぞれの立場で過去の例をPKOの状況等について見てまいりますと、派遣要請があって派遣するまでの間にオーストリアは二週間の集結、編成期間を置いております。また、先般のイラク・クウェートの監視団は、四月六日の設置決議から五月六日の展開の終了まで一カ月かかっております。国会報告は可能であり、国会承認はできないというのは詭弁であります。一般的に、国会承認PKO活動の迅速性を阻害するとは考えられません。場合によっては事後の承認の場合もあり得ることを付して、この点について民社党の考え方に賛同する者としての見解を述べておきたいというふうに思います。  以上、大変雑駁でありましたが、本問題についての見解を述べさせていただきました。ありがとうございました。
  190. 林座長(林義郎)

    ○林座長 ありがとうございました。  次に、滝井義高君にお願いいたします。
  191. 滝井義高君(滝井義高)

    ○滝井義高君 林委員長先生以下特別委員会の諸先生方が、一地方自治体の市長に二法案に対する意見を述べる機会を与えていただきましたことに大変感銘をいたし、心からお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。  私は、今五人の公述人の方が述べられましたように、この二法案というのは、これからの日本が二十一世紀に進むターニングポイントに立っておると思います。自衛隊歴史的な経過をごらんいただきましても、吉田内閣総理大臣は、自衛の軍隊といえどもそれはつくってはいかぬ、自己増殖を図ってどうにもならぬようになると言っておりましたけれども、朝鮮戦争を契機として警察予備隊になりました。警察予備隊が保安隊になり、保安隊が御存じのように自衛隊になりました。初めできたときはサナギでございました。サナギが青虫になり、青虫がチョウチョウになってしまったわけです。これは石川先生も最前申されておりましたが、PKOもいろいろ変わっております。私も全く事前の予防的なPKO活動について一つの危惧を持っておりましたが、その点については石川先生がお述べくださいました。  そこで、こういう重大な段階に至っておるので、私は、政府・与党はこの際思い切って、憲法を改正するという党是をお持ちでございますから、憲法改正国会に出して、三分の二をとって、そして国民投票をやってみることがまず一番大事な一つだと思います。もしそれが政府ができないというならば、国会を解散して、この法案を、国民に信を問うべきものだと思います。それもできないというなら、今土井公述人が述べられましたように、やはり国会承認というものをつけることは最低の条件だと思います。これは防衛出動にしても治安出動にしても、今土井公述人も述べられましたけれども、緊急の場合は事後の処理でできるわけです。だから私は、これはやはりどうしても国会承認を入れる。そして、どうしても政府が機動的にやらなきゃならぬというなら、事後の案文を入れたらいいのです。そのくらいの寛容と忍耐がなければこんな大事な法案を私たちは認めることができないのです。これがまず大前提です。  そこで、もう少し具体的に言いますと、今日本に平和の仕組みが、少なくとも国民的合意を得ている平和の仕組みが五つあります。一つは専守防衛です。自衛隊賛成とか反対とかという立場じゃなくて、国民的合意がおぼろげに浮かんでおる五つ、まず専守防衛です。領海、領空、領域の範囲内で自衛隊を使っていこう、外には出しません。二番目は、GNPの一%の枠の中で防衛費を組みます。これは近ごろ揺れております。三番目は非核三原則です。四番目はシビリアンコントロールです。五番目は武器の輸出の禁止です。この五つです。この五つを、私は今度のこのPKO協力法案が出てから少し反省をしてみました。  まず専守防衛です。専守防衛ということを私が言ったら、ある人が、滝井君、それはおまえ認識不足だと言いました。どういうところが認識不足か。日本は専守防衛という仮面をかぶっておるけれども、実際は戦後四十有余年の長きにわたって日米安保条約でアメリカが駐留しているじゃないか。その駐留したアメリカ軍は強大な攻撃力を持っている。だからおまえの方の専守防衛は虚像であると言われました。これは外国人にもそう言う人がおります。  だからこの際、もう既にエネミレスの時代になりました。我々が防衛力を強化しておったソ連も中国も、竹のカーテンも鉄のカーテンの内ももう見えるようになったわけです。そこで私たちは、この専守防衛というものを本格的な専守防衛にしていくためには安保条約を見直す必要があるのです。安保条約を見直す思い切りのよさをしないと、四十年も一国が占領されて、そして基地があってその基地に守られておると、子供たちが独立自衛の精神がなくなっちゃうのです。我々地方自治体にあっても、子供たちがそんな精神がなくなる、他人依存になってしまうのです。国家が他人に依存をするなら国民は必ず依存的になっちゃうのです。これが一つ大きな問題です。したがって私たちは、そういう意味においてまず専守防衛と日米安保条約、そして基地、この問題を再検討する時期が来た。  もう一つは、一%の枠内です。もう敵が見えなくなったのですから。ソ連もああいう状態になり、中国だって韓国だってそんなのないわけです。それなら一%をどうして見直さないか。まず我々が、国際貢献をする前に国内のこれを見直す必要がある。  それから、後で触れますけれども、シビリアンコントロールは当然せなきゃならぬ、こうなるわけです。それであと、武器その他は後で触れます。こういう平和の五つの仕組みというものをまさに見直すときが来た、こう思うわけです。ぜひこれはひとつ勇断を持って、政治というのは先見性と決断が大事です。そして、総理はやはりボタをかぶることが大事です。ボタをかぶってもらわないといかぬ。そういう意味で、平和国家をつくろうとすればそういうことから始めて、次に貢献の問題が出てくると私は思っております。  そこで、私たちが大変わからないのは、今お話のありました石川先生の意見と全く同じですけれども、この指揮権というのが、内閣総理大臣から防衛庁長官現地、そして国連の事務総長から現地の司令官、隊へ、この二重になっているわけですよ。これは法律の専門家はそうかもしれぬけれども、二重になっておる。ということは何を意味するかというと、既に憲法の前文と九条が、日本海外にいろいろなことをやろうとする場合に、それがもはや手かせ足かせになっているわけです。  だから、もし政権与党がそれをやりたいというなら、私が最初に言うように憲法を改正しないと、九条と前文はもう限界が来てしまった。これ以上やれば、チョウチョウはまた昔と同じような侵略を繰り返していく。最前も石川先生が述べられましたが、アジア諸国に対する歴史的な責任というものが何もない。我々は原爆を受けた。原爆を受けたから被害者意識が非常に強くて、中国、その他東南アジアに侵略をした加害者意識が非常に薄いのです。ここにこの法案があらわれてきているわけです。もう少し私たちは加害者として意識をする必要がある。小学校の生徒や何かにそれを教える必要がある。ところが、韓国や中国から文句が出ると教科書を変えていく。そういう主体性のなさというのが実に私たち地方自治体から見て情けないのです。もう少しそういう点の戦争責任を明確にするようにこれからして、そしてやるならPKOはこういう姿でやりますということにしてもらわなきゃならぬと思います。  それから、もう一つ私が言いたいことは、指揮権とともに、何と申しますか、武器使用ですね。この武器使用も非常にわかりにくいのです。それは、私たちが十人で隊をくくって巡回をしております。攻撃を受けました。一番先に出ておった滝井義高が戦死した。そうしたら、あとの九人は一緒に武器を使うことはこれは当然ですよ。それを、滝井義高が使ったからほかの者は使わぬ、あるいはそれは使ってもいいことになる。そうしたら、そのときは司令官が命令せなければどうにもならない。命令ができなければ烏合の衆です。しかもそれを国際的に各国がばらばらに勝手なことをやるなら、PKO参加した軍隊は烏合の衆になっちゃって収拾がつかなくなりますね。そんな子供でもわかるようなことを法案にどうして書かなきゃならぬのかというのは、憲法九条と前文に、もはやいかんともしがたい状態だから、一枚の紙を二枚に割るような状態です。一枚の紙を二枚に割ることは非常に不可能です。そういうことをおやりになっているということです。  それから、法案をずっと読んできました。読んできて大変わからないところがあるのです。それは、この中に政令にゆだねるところが十あります、十カ所。そうすると、我々公述人は、どういうところが政令にゆだねられるのか、その政令にゆだねる内容は何もわからないのです。かつて私たちが健康保険法を審議したことがあるのです。そうしたら厚生省は、その健康保険法の精神を政令で全部変えちゃったのです。政令を全部詳細に書くことによって本法を骨抜きにすることができる。可能なんです、それは。それは、あの法制局の頭のいい、一枚の紙を二枚にはいでやるような方々ですから、わけないのです。法律というものは、国会が審議して、国会を通したら、何々は政令で定める、政令で定めるとみんな政令で書きかえてしまう。こういうことは法治国家として大変よくないことです。これが一つ。  もう一つ言わなきゃならぬのが国連の平和協力業務です。この業務が十六あります。十六業務があるうち、それは自衛隊しかできないというのがイからヘ、ここは自衛隊しかできないのです。イからヘまでは自衛隊だけしかできないのです。こんなものは訓練すればだれだってできるわけです。何で自衛隊だけしかできないような法案にするのかということです。それじゃ一体自衛隊というのは、何カ月、どういう内容の訓練をしたらPKO参加できる資格のある自衛隊になるか。そんなことは何もわからないのです、この法案を見たら。もし自衛隊にできるなら私だってできるはずだ、訓練を受ければ。それをなぜイからヘまでだけは自衛隊でなきゃならぬと言うか。  しかもその上に、十二条ですか、そのところをごらんいただきますと、今度は十六項目全部とそれに類するものは自衛隊がやれることになっておるのです。そうすると、もしA省から職員を出すことになったときに、私の省は定員上出すことができませんと断られた。民間も行き手がいなかった。そうしたら全部自衛隊が十六項目やれることになるのです、これは。そう読めるのです。そうなると、このPKO協力法案は全部自衛隊でやっちゃうということになるのです。そうなると、もうまさに海外出兵です。  こういう、素人が読んでみてそれがわからないようなものがいっぱいある。だから、こういう公聴会をやるときは、国会で審議した、この政令にゆだねる、ここはこういうことをゆだねますということを同時に文書をつけて私たちに公述させていただきたい、それが結論です。  そこで、我々がこれから国際貢献をやる場合に、どういうことで国際貢献をやるかということが問題でございます。  まず、自衛隊を外に出すことばかりを考えて、自衛隊を活用することを考えて、あの大東亜戦争の貴重な生命と財産の犠牲の上に立った日本憲法を国際的に活用するという視点が欠けているんですよ。だから、最前木村さんも言われたように、九条というのがどこにも出てこないわけです。だから、そういうことをまず私はきちっと位置づけてもらいたい。  そして、我々がこれから国際貢献をすることは何かというと、まず第一に、湾岸戦争で私たちが経験したものは何かというと、イランとかイラクのようなああいうところにいっぱい近代的な武器を売っているということです。武器の輸出が多いということです。この武器の輸出を、原爆の経験を受け、戦争の加害者でもありまた被害者でもある日本がそれを規制する必要があるわけです。それで、御存じのように、最近日本武器の移転を規制しようという提案をしました。これは私は時宜を得たる国際貢献だと思います。これを本格的にやる。ところが残念ながら、日本世界で一番とは言わないが二番目に武器を輸入している国なんですよ。自分はしこたま武器を輸入しておって、そして他の東南アジアやら中近東の諸国に、武器を輸入しなさんな。しかも、武器を輸出しているのは常任五大国でしょう。こういうところに向かって日本が明確な発言をすることによって日本価値が上がってくる。いわゆる弱い国々の協力を得ることができるわけです。そういうところが全然欠落をしておってこれが出てくる。  二番目は、今私たちが直面している問題は何かというと、東欧及びソ連の脱共産主義のプロセスです。この脱共産のプロセスの中であの東欧やソ連に本格的な民主主義の定着と経済の自由、安定ができるかどうかということは、これはそういうことをやった歴史的な前例がないんですよ。そういう歴史的な前例のないときに私はこれをやるべきだ。まだ幾つもありますが、大きいこういう二つの問題について日本の外交が本格的に乗り出していったら非常に高めると思っております。  そこで結論は、この法案のままでは国会を通すべきでない、もう一遍政府は考え直して、憲法のあの力を発揮するために新しい法律をつくるべきだ。そして自衛隊は、最前申しますように、五つの平和の仕組みの中でアメリカやアメリカ軍の駐留によって、あるいは日米安保によって日本の専守防衛ができておるんだから、自衛隊を専守防衛に専念させる体系にもう一遍つくりかえるべきだ、こういう二つが私の結論です。  以上です。
  192. 林座長(林義郎)

    ○林座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  193. 林座長(林義郎)

    ○林座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。
  194. 三原委員(三原朝彦)

    三原委員 諸先生方、本当にありがとうございました。  私は、三つの点に分けて質問をさせていただきたいと思うのです。私も昨年と今回の、国連平和協力法案、国際平和協力法案委員会委員として出席しておったわけですけれども、まず一つ目は、これは大屋先生もるる述べられたことなんでありますけれども、私はこう思うのです。  戦後四十六年、我が国はそれこそ灰じんの中から今日の繁栄を築き上げてきた。これにはもちろん、再び平和国家、繁栄する国家をつくろうという国民一人一人の自助の努力が根底にあることは当然であります。しかしながら、他面、他国の協力、特に米国あたりの協力援助があったればこそ今日の自由経済のもとで各国と貿易もできる、その結果が我が国の今日の繁栄をもたらしたということは、もう皆さん理解いただけるし、また賛成していただけると思うところであります。これを我が国認識して、我が国が安定してきた、経済的にも余裕ができてきた二十年以上前から、これから頑張っていこうとする発展途上国に対して少しずつであっても経済的援助を提供してきたわけであります。今日ではその額がもう一兆五千億円にもなろうかというような状況に来ておるわけです。特に一昨年あたりは、驚くなかれ、開発途上国への我が国の援助はとうとう米国を追い抜いて世界で一番になったこともあったというような状況であります。しかし、昨年はまた二番になったのですけれども、そういう状況でもあります。  この説明でも皆さん方は御承知いただけると思うのですけれども、我が国世界に対する物の貢献といいますか、それは少なくとも諸外国からは賛意を持って迎えられるし、またそれを大いに胸を張って我が国が言える立場にあると私は確信するところであります。  ところが、昨年、湾岸戦争におきまして我が国の期待が無残にも打ち砕かれた。あの折、私どもは総額百三十億ドルにも余る資金援助といいますか、物的貢献、財政的貢献をしたわけでありますけれども、評価がそう芳しくなかった。それで我々が考えるところは、その問題点は那辺にあるかということになったときに、国際的な平和、秩序維持に国民の血税をもって物的貢献したにもかかわらず、世界では、その反面で人的な貢献、そういうものが欠如しておったんだということを批判の的にされたと思うわけであります。  陳述者の先生方の中でどなたか、火事場での一件を比喩的に申された方がおられましたけれども、私もよく皆さんに湾岸戦争での我が国の行動に対して比喩を使うわけであります。それは、例えば町内で火事が起こった。本来なら、みずからも消防団の一員として現場に急行し、危険を冒してでも鎮火に協力しなければならない。ところが、町内でも離れたところが火元だったものですから、直接自分の家に被害がない。かつて消防ポンプを買う折にお金も出しておった。人の何倍もそのときに寄附しておった。鎮火でもすれば火事見舞いにでも行ってお慰めしよう。そのときにまた人の何倍も要求されるかもわからぬが、それも仕方あるまい。だれかほかの人に行ってもらって、今回はちょっと自分は出るのをよそう。こんな行動を町内でとるような人がいたとしたら、私は、幾ら考えても尊敬される存在になり得ないと思うわけであります。こういう人がいたとしたならば、逆に今度はみずからの家に災難が降りかかったようなときにはどういう結果になるだろうか。私は、他からの協力は得られないということを率直に認めなければならないであろうと思うわけであります。  もう言わずもがなでありますけれども、我が国憲法には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」、こうなっていまして、また続けて、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」我々国民がそのことを念頭に置いて生活をやっておるわけであるならば、可能な限りの国際貢献は絶対に必要であると私は思う次第であります。一億二千万の人口を擁し、世界経済の一割五分を生産し、また、一人当たりのGNPではもうアメリカも追い越して世界で三本の指に入ろうかというような繁栄を謳歌する我が国において、物的貢献のみでは国際社会での役割は他国を満足せしめるものではないと私は思うし、また、それは余りにも自己中心的なことになるのではないかと思う次第であります。それから考えると、私は、絶対にこのPKOへの参加、今度の新しい法律は、皆さんの御理解をいただいて通さねばならないと思っておるところであります。  それにつけても、今香西先生から本当に意義深い御意見を賜って、スイスのひそみに倣って、我々もこの法案を通して、この法案のもとで国際貢献をしなければならないと思うところでありますが、先生は、段階的にやるべきであったとお述べになりました。私もその面は、確かに先生が言われることもとは思うのでありますけれども、これだけ世界で軍事面を除いて影響力を持つ日本、特に経済的に影響力を持つ日本においては、スイスが今までやってきたようなこと、他の国々、ヨーロッパの諸国あたりでもやってきたことを学んでいけば、短期間にでも私どもは協力できるんじゃないかという気がするのです。デンマークにしてもスウェーデンにしても、ノルウェーやフィンランド、ああいう国あたりに行ってその経験を習えば、より早い機会に我が国国連のもとで協力できるんじゃないかと私は思いますし、また、国連PKO活動を始めたときからそれに携わっておって、先年国連を引かれたアークハートさんという方の回顧録みたいなものがございまして、それを読んでおっても、経験を積んできたものから我々は大いに学んで、日本は他のPKO参加しておる国々と協力をしてやれると思うのです。  もうちょっとそこのところ、どうでしょう。他のところから習えば、段階も即刻にできるんじゃないかという気がするのですが。
  195. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 お答えいたします。  私は、先ほど、段階方式でいった方がいいんではないかと。これは、申しましたように、我が国のような実情では、スイスなんかと違って、三年置きごとに一つ一つ新しい法律をつくって積み上げていくというのはなかなか難しいだろうということがわかるわけです。ですから、こういうPKOに限って全面的な協力というその法的枠組みをつくって、その実施については段階的に進めるべきである。というのは、つまり、先ほども私が申しましたように、まだ国民PKOというものの本質を理解していない、誤解が非常に多い。ですから、そういうものを解くには若干時間がかかる。そういう観点から、少し段階を追って進めた方がいいのではないか。  それともう一つは、先ほど自衛隊のことを申しましたけれども、こういう人たちを今までの任務とは全く違う、百八十度違うような——こういう人たちはとにかく戦闘を目的として訓練している人でありますけれども、実は、PKOというのは、いかにして戦争をしないか、戦闘をいかにしてやらないかということに九九%の努力を払う、そういう組織なんであります。ですから、そこに参加しようとするのには百八十度の頭の転換を必要とするわけです。ですから、そういうことも含めて準備をするには数年はかかるであろうというふうに私は考えるものですから、そういったことを申し上げた次第でございます。
  196. 三原委員(三原朝彦)

    三原委員 この前、同僚の議員の人がイラクとサウジアラビアの停戦ラインに視察に行かれました。あそこは停戦監視団で将官の人ばかりがいるところだったそうでありますが、帰ってこられての報告の話なんかを聞いておりますと、行っている人たちはみんな、確かにみずからを自制するということもありますけれども、それ以外に人間的に知性と教養を持っていないと、各国の人が一緒に集まってテントの中で一週間近く停戦監視をして、それで次とかわってまたということで、やっていけぬと言われておったのです。それから考えても、そういう面でも私どもは、この法案が通る状況になれば、現場も見てきて、いかなる人材を、世界平和のために貢献してもらうような人材を出すかということはやれるのじゃないかと私は思っているような次第であります。  今、一つ目が政治的問題だったわけですが、次に今度は法律論。  陳述者の先生方何人かお述べになりましたけれども、今回の国会での審議の中で、国連が設置する平和維持隊への自衛隊参加に関して、この活動の一部を、よく新聞でも取り上げられておりますが、武力行使、そして憲法九条との問題で取り上げられておるところであります。これは、私は思うのですが、法案は絶対に憲法に反することのない枠の中でつくられておるということであります。特に、我々が知るところは、五原則というのがありまして、これをもとにして、自衛隊派遣のときには五原則のもとでやりますと、はっきりとなっているわけであります。  それと、これは本当に私の個人的な意見でもありますけれども、我が国憲法というのは、明文化されている、俗に言う硬性憲法。その解釈といっても、公布されてもう四十年有余がたって、今日一言一句全く変化のないというのは、社会の変化を全く無視した解釈論になるのじゃないかと私は思うわけであります。まして、硬性憲法と言われているからこそ、解釈にはある程度の柔軟性みたいなものがあって、そして正しい解釈に向かうというふうに私は考えるわけであります。滝井先生あたりはすきっとした感じの物の言い方もされているようでありますけれども、私は、その面まで踏み込んでいくことに対しては、まだまだ大いに勉強しなければいかぬなという気も持っておるわけであります。  三つ目は、我が国国民の心理的、感情的な問題といいますか、そのことです。  つまり、これもやはり陳述者の先生方が何人かおっしゃったのですけれども、近隣諸国に対して侵略したという歴史を持っておる、それは率直に私自身はそのとおりだと思うわけであります。これに対して、逆に、侵略された側から見ると、何か日本一つ国際的に新たな展開をしようとすると、それに対して疑念を投げかけるというのも、やった側とやられた側から考えると、物の見方、考え方というのが違ってくるのも、まあそうでもあろうなという気もするわけです。今回のこの国際平和協力のための平和維持隊への自衛隊参加に関しても、そういう面が他国の批判の中に見られるのも当然かなとは思うわけでもあります。  しかし、冷静に考えてみても、かつての、それこそ帝国陸海軍と現在の自衛隊とは、実力集団であることには変わりがありませんけれども、それを除けば似て非なるものであると私は明確に申し上げたいわけであります。シビリアンコントロールというのが徹底しておることは御承知でしょうし、我々国民一人一人も定着した民主主義のもとで批判的な行動ができるようになっておるし、また、そういう教育も、特に私は戦後生まれでありますが、批判的な教育を受けてきておるわけであります。国民理解、支持なしにはもちろん自衛隊は動けない。  よく今度の法案に対して、アリの一穴論というので、自衛隊海外派遣を危惧して、この派遣がついにはいつか来た道、つまり、かつての戦争の繰り返しというようなことを、荒唐無稽な考えを言われるような方もおられるようですけれども、私はこの意見には全くくみしないわけであります。  なぜなら、自衛隊派遣はこちらが、我々が行くと言うわけじゃなくて、国連の要請に基づいて、では、ということであります。まずそれがある。そのことは、つまり、我が国の国権の発動をするわけでも何でもない。国際社会の中で、国連の一員としてその役割を果たす上で、国連が求めれば、では我々も考えてみましょう、協力させてもらいましょうかという態度なのであります。また、その下には、よく言われる五原則もちゃんと我々はつくっておるわけであります。また、私が思いますに、自衛隊員の一人一人、現に行くかもしれない彼らも、今日では、みずからがまずは隊員である以前に日本国民の一人であるという意識を持っておると確信するところであります。  実は、先日、ペルシャ湾地域で活躍してきた掃海艇部隊が帰国しまして、私も出迎えに行ったのでありますが、そのときの帰国歓迎会で二十代のペルシャ湾に行った若者たちとじかに話をする機会を得たわけであります。彼らは異口同音に、率直に苦労話もしましたし、また十分な責任感も持っておるけれども、人間的だなあと思ったのは、これからもできることなら、自国から離れているようなところへ行って、あんな暑いところで命をかけてするのは私は好みません、しかしながら、最終的に国民の皆さんが行けと言われるなら私たちはそれは行きますよということを言っておった。  それにつけても、湾岸戦争のときあたりでも、例のCNNのテレビが現場で武装した米兵あたりに質問して、どうですかと言うと、いや、早く妻や子供が待つ国に帰りたいよというようなことをテレビで率直に言う、ああいうのを見ても、私は、全くいつか来た道論あたりがあるはずもないというふうな気もしたわけであります。ですから、今の自衛隊の隊員諸兄に対しても、大いに人間臭さを感じて帰ってきたような次第であります。ですから、こういうような隊員諸兄が平和維持隊員として出ていくようになったときでも、何度も申し上げますけれども、国連の要請のもとで、明らかに国民多数の支持があればこそオペレーションが可能だと私は思っておるところであります。  それから考えると、私は何度も申しますが、いつか来た道論というのは全くの危惧にすぎないと思いますけれども、きょうは、かつてのそういう戦争経験もしていらっしゃる、体験もなさった大屋先生がいらっしゃいますので、その点のところを少し、体験を通してでもお話しいただければと思う次第であります。
  197. 大屋麗之助君(大屋麗之助)

    ○大屋麗之助君 三原先生の御高説を伺いまして同感しているところが多いわけでありますけれども、もと来た道に返るかというような最後の点のところのお話でございますけれども、戦後我々がやってきたのは、現在の憲法のもとで、しかし、それでいても現実は東西対立して、そして冷戦構造であった。この中で、現実に日本が生きていくためには、やはり結果としては自衛力を持って専守防衛をしなければならぬ、そのために安全保障条約を米国との間にやって、やったからこそできたというのが先ほどの趣旨でございます。  その間この四十五年は、私も先ほどからも申しましたけれども、シビリアンコントロール、こう言われている言葉日本ほど徹底的に行われている国はなくて、自衛隊ということで考えてみましても、実際によく訓練されて、そして国を守るためにやっておられるし、海外に行こうなどと思って自衛隊に入っておられる、また、海外に国益を果たすために日本武力行使をやろうと思って自衛隊におられる方はないわけでありまして、そういう自衛隊になっているわけであります。ところが、国民の一般的に見る目は、評価は、外国が自国の軍隊を見る目とは全く違って非常に低い評価であると思っている点では、災害があったときの復旧だけのときに限って評価されているという点に近いんじゃないかと私は思ったわけであります。  そういう中で、先ほどの掃海艇のお話、実際の状態を見まして、これは成果だったと思って感激しているわけでありまして、私は、現行憲法をはっきり専守防衛に限ってやるということで、戦争を放棄しているということを堅持していけば、もと来た道に行くことはないと確信しております。
  198. 三原委員(三原朝彦)

    三原委員 貴重な御意見、陳述をしていただきました先生方、どうもありがとうございました。  終わります。
  199. 林座長(林義郎)

    ○林座長 次に、上原康助君。
  200. 上原委員(上原康助)

    上原委員 私は社会党の上原でございます。  きょうは大変お忙しい御日程を割いてくださって、大屋意見陳述者を初め六名の先生方がそれぞれのお立場で貴重な御意見を開陳されたことに、まず心からお礼を申し上げたいと存じます。  そこで、時間があればそれぞれの意見陳述者にお尋ねすることが、より本法案を慎重かつ濃密度に審議をしていく上で大切だと思うのですが、わずかな時間ですから、木村さん、石川先生、滝井さんにそれぞれお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、木村さんの方にお尋ねいたしますが、女性の立場から、また母親という立場から、最近のこのPKOあるいは国際貢献をめぐってつま先で立たされた感を深くしている、憲法平和主義が踏みにじられてどんどん自衛隊海外派遣をしていく、しかも、昨年の平和協力法案の場合は多くの国民世論が盛り上がって廃案になったんだが今回は事情が違うという、危惧の意見の開陳がございました。大変心を打たれる面がありました。もう少し女性のお立場から、このPKO、特にPKFについての参加危険性を補強をしていただければと思います。
  201. 木村京子君(木村京子)

    木村京子君 私は、もちろんごらんのとおり女性ですし、例えば湾岸戦争のアメリカ軍の亡くなった兵士の平均年齢が二十一歳ということでしたが、私の息子はちょうどその年齢です。  日本では、決して海外派兵の問題というのは昨年の国連平和協力法からだけではなくて、戦後一貫して、例えば日韓条約のときとかあるいはベトナム戦争のときも含めて、たびたび海外派兵のさまざまな企てがなされていると聞いています。それと一緒に自衛隊がどんどんと軍拡をしていく。いわば日本の戦後の軍拡の歴史海外派兵の動きというのは、潜行はしていましたけれども、かなり重なっているという印象を持っているわけです。  しかし、昨年あたりからこういう形で、非常に露骨にといいますか、平和の名前を持って法案が出されてくるという事態の中で、うちの子供も戦争に連れていかれる、あるいは私たち国民の名前を持った軍隊が、再び何か平和という名でさまざまな危険の可能性を持った、危険というのは、武力行使するという危険性を持った自衛隊海外に出ていくような中身を持った、非常にわかりにくいこの法案ができるということ、それが私たち国民の名前によってなされるということについて、私は本当に深い憤りを持っています。  女性というのは、確かに子供を産み、育て、はぐくんでいく性として非常に平和的な側面を持っているわけですけれども、しかし残念ながら、かつての戦争の中ではそういう女性たちが、子供たちを、若者を、あるいは夫を戦場に押し出していって、泣きながらでも、しかしそれで銃後を支えたという非常に苦い経験を持っているわけです。私は戦後生まれではありますけれども、女性の一人として、そういう役割を負わされた女性たちの悔しさとかさまざまな思いをできたら引き受けていきたいと思います。女性の立場というのはそういうあたりです。  それと、やはり私は、国民投票という仕組みがもし日本にあれば、先ほど朝日新聞の世論の御紹介石川先生からありましたけれども、もっともっと国民一人一人がこのことについて真剣に論議をする機会はあると思います。国民理解されてないとか、誤解されているとか、そういう御意見もありましたけれども、私たちは本当の、例えばこのことについてまだまだ論議をする機会とか、あるいはさまざまなこれについての具体的な論議をする場面を保証されてはいないわけですね。理解しない国民の方が非常に愚かであるかのような言われ方は不当だというふうに思っています。こういう公聴会というのはもっと開かれたものかなと思っていたのですけれども、まだまだ十分ではなくて、もっと論議をする機会をふやしていただくことがまず大前提でありまして、その上で、さまざまなPKOが負ってきた歴史だとか、日本の戦前戦後を貫く歴史の問題とか、この平和と戦争にかかわる日本とそして世界の問題すべてについて問題点を洗いざらい出していく、そういう力を私たちはやはり持っていると思うわけです。その機会にしていただきたいというふうに思っています。  アジアではまだまとまった形で、政府単位で反対の声とかいうのは出ていませんけれども、新聞になかなか載る機会はありませんけれども、さまざまな立場の学生や市民の人たちが今回のPKO法案について危惧の念を述べているということもぜひ注目しないといけないというふうに思っています。しかし私は、アジアの人たちの口をかりるまでもなく、まず私たち自身の問題として、このような非常に問題のある法律は何としてもストップをさせたい。  それから、先ほど国際緊急援助隊法についてはちょっと触れませんでしたけれども、これも非常に人員とか内容があいまいです。悪くすると、多国籍軍の後方支援部隊、さまざまな民生的な場面で多国籍軍のようなものの後方支援部隊にもなりかねないという側面も感じられます。あわせて、私はこの二つの法案反対だという意見を述べさせていただきます。
  202. 上原委員(上原康助)

    上原委員 大変ありがとうございました。  次に、石川先生にお尋ねいたしますが、御専門のお立場から憲法との関係武力行使武器使用指揮権問題等々、非常に参考になりました。  そこで一点、武力行使武器使用、集団自衛権の件についてですが、政府は、憲法解釈整合性を何とかつじつま合わせしようということで、武器使用武力行使を分けたり、個々ばらばらで個人の判断武器使用をするとかいろいろ言っているわけですが、軍事的というか純軍事論からしてもこれはもう非常に無理があるし、結局は、本来武力行使を任務・目的としてはもちろんPKF活動はやらないのは私も理解しますが、しかし、国際紛争がおさまったとはいえ、その再発の可能性があるから行くわけで、そういう意味では武力行使に発展する危険性があるわけです。軍隊として、組織として武器を持って行くわけですから、結果的には集団自衛権の行使になる、こう私たちは見て、反対立場を強くしているわけですが、この件についてもう少し補強していただきたいということと、いま一つは、非軍事分野の面でも国際貢献策はたくさんあるんじゃないか。社会党は非軍事、文民、民生ということで対案も出しておるわけですが、この二点について、時間が限られていますので少し簡潔にお願いしたいと思います。
  203. 石川捷治君(石川捷治)

    石川捷治君 ただいま上原委員からお尋ねがありました点ですが、私も今委員が述べられた点に全く賛成でありまして、これは武器使用だから武力行使に当たらない、つまり自己保存のための自然的権利は人間だからあるんだ、個々の隊員の判断武器使用は行うので、組織としての武器使用はしないんだという畠山防衛局長の御回答とか、あるいは池田前防衛庁長官の、上官の判断のもとでいわば個々の隊員の持つ権限を束ねる形で武器使用することがあるという御説明、よく読んでみるわけですけれども、それだから憲法第九条一項で禁止された武力行使には当たらないというふうに言って、果たしてこれがごく普通の考え方で通用するかどうかということは僕はまずあると思うのです。  そして、それはなぜこういうふうに武器使用と、それから例えば国連の方は、私これは現物を見たわけじゃございませんので、新聞報道による限りでありますが、PKOの作戦規定、SOPガイドラインというものによりますと、非武装の監視団を除いて、すべてのPKO要員は武力行使に関する同一の政策に従わなければならない、武力は、国連要員への直接の攻撃もしくは要員の生命への脅威に対抗して、または全般的に国連の安全が脅威にさらされている場合に、自衛のためだけに行使できる。この自衛のためということでありますが、全般的に国連の安全が脅威にさらされている場合とかいうようなことは具体的にどういうことであるのかということになりますと、単に私人が、例えばアメリカでは銃の所有が許されているところがあるわけですけれども、その私人が正当防衛のために使うというのと同じなんだというのが先ほどの武器使用ということの説明に使われていますけれども、武装組織が集団として出ていっているわけですから、これは単なる市民社会の中で武器をたまたま持っている人が自分の身の危険のために何かを使ったというのとは全く違います。  そうしますと、先ほど御指摘のように、憲法が明確に禁止しております、そして国連自身はそういうことは集団自衛権ということでとっているわけでありますけれども、みずからの責任で日本は集団自衛権は制限しているわけでありますので、私はこの武器使用武力行使に当たらないという議論そのものの中にまやかしがあると思いますし、そのことは集団自衛権に触れるところが出てくる、そういうことだろうと思うのです。第一点はそういうことです。  非軍事的な貢献につきましては、これはいろいろな形であり得ると思うのですけれども、僕は、まず非軍事という場合、そして国連憲章あるいは国連中心という場合に、国連が憲章で目指しておるものはどういうものかといいますと、むしろ軍事同盟の解消であるとか、あるいはそれぞれの軍事同盟みたいな形でまとまって何か安全保障を図るという、そういう考え方に反する、そういうことではいけないんだということ、国連憲章あるいは国連中心という立場はそういうことでありますので、まさに日本憲法は二十一世紀をむしろ先取りして、そして国連憲章と並んで同じような道を目指していると私は思いますので、日本が本当に国連中心で、そして何らかの形で貢献できるとすれば、この非軍事しかないわけであります。  非軍事でも、特に日本ができるのは、アジアの一員でありますから、特に南北問題、南の貧困であるとか飢餓であるとか、そういうものに日本経済力そして教育力、文化力というものを一体どんな形で使っていくのか。それも、単に国家レベルだけじゃなくて、もう少し民衆レベルにどういう力が及んでいくのかというようなことを考えながら、日本憲法を本当に生かすという、そして世界原則にむしろしていくという、そういう立場日本の非軍事的な国際貢献というのは考えられると思うのであります。  以上です。
  204. 上原委員(上原康助)

    上原委員 ありがとうございました。もう私の持ち時間がなくなりましたので、緒方委員に譲ります。  滝井先生、済みませんでした。
  205. 林座長(林義郎)

    ○林座長 緒方克陽君。
  206. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 意見陳述者の方、本当にきょうは御苦労さまでございます。  滝井先生にまずお尋ねをしたいと思いますが、先ほど、このPKO法案と特にアジアの近隣諸国の問題で、過去日本が行ってきた大変な犯罪行為についていろいろお話をされて、教育の問題も十分されていないという話をされてきたわけでありますが、特に九州では炭鉱もありまして、朝鮮人やあるいは中国人がたくさん強制連行されて、そして強制労働、そしてたくさんの方が亡くなっていったということがあるわけでありまして、こういう問題で私ども国会でもいろいろ取り上げてまいりました。  そういう段階で、韓国の大統領からの要求もあったのですけれども、強制連行者の名簿などを出してくれということに対して、昨年ですか、八万名程度の名簿が出たのですけれども、よく調べてみますと、これは、労働省の課長が県の職安課長のところに通達を出したというようなことでありまして、口先では、アジアの近隣諸国のことをしっかり考えなきゃならぬ、あるいは名簿なども出すべきものは出さなきゃならぬ、努力しますと言っていますが、実際はそんな程度のことしかやっていない。ましてや従軍慰安婦の問題は、特高月報ということなどに公式にいろいろ統計的にも出ているのですが、そういうものは認めないというような政府の態度でありまして、何遍も言いますように、口先で言っていることと実際やっていることは全く裏腹で、アジアの近隣の人たちを考えるというような行動をしていないというふうに私は思えるわけです。  特に炭鉱などがありまして具体的に実態を承知されている滝井先生の方から、その辺の問題点と政府の対応についてどういうふうにお考えでありますか、できればお答えいただきたいと思います。
  207. 滝井義高君(滝井義高)

    ○滝井義高君 ゴルバチョフが日本にやってくるときに、まずシベリアの犠牲者のお墓に参って、そしてそれから日本に来て、長崎でロシア人の墓に参った。日本の政治家が中国に行くときに、南京の犠牲者のお墓に参って、そして北京に行ったなんということは聞かないですね。外国人は宗教心があついかどうかはともかく、やはりそういうところにも我々の国のヒューマニズムに対する一つの大きな欠陥があるような感じがします。  私も炭鉱の医者をやったことがあるのですが、そのときに、昭和十六年でございましたが、やはり日本の労働力が、若い人が軍隊にとられて不足をいたしましたから、韓国から、慶尚南道、慶尚北道等から連れてきて、そして随分働いていただいた経験を持っております。別に私が強制労働をやったわけでもないし、いじめたわけではないけれども、戦争が終わりまして、最近になりましてから、無縁仏を捜そう、こういう運動が起こりまして、それぞれお寺に参りまして韓国人の無縁仏はないかということでしまして、一応骨を見つけまして、その骨を寄せようじゃないかというので、これは市民運動を起こしまして、日本の炭鉱犠牲者と韓国、北朝鮮の犠牲者の碑を建てようということで、南北一緒に建てようと言いましたが、どうも南と北との意見の調整ができずに、南だけで立派な碑を建てました。それからおくれて日本人の碑を建てたわけです。そういう形で罪の償いはしなければいかぬということになっておりますが、最近になりましてから、強制連行の名簿がどこかにないかということでいろいろお話がございました。しかし、実際にその当時の名簿を我々も探しておりますけれども、残念ながらまとまった名簿を我々の田川地区で我々行政が見つけることはできませんでした。しかし、そういう碑をつくって、そしてそれを永久に弔おうということはいたしております。  以上です。
  208. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 どうもありがとうございました。  それで、次に、石川先生にお尋ねをしたいと思います。それは、国会への資料の提出問題といいますか、そういうことについてです。  現在、いろいろ解釈をめぐっても議論があっておりますけれども、資料問題が一つの大きな焦点になっておりまして、SOPであるとかあるいは訓練マニュアル、そういうことの国会への提出を強く要求されてきたわけです。その理由は、先ほども言われましたように、そのSOPで言っていること、訓練マニュアルで言っていることと政府が言っていることが全然食い違っている。そういう意味で、それが公式に明らかにならないと国会議論ができないではないかということでいろいろ要求をされまして、先ほど質問されました社会党の上原議員の強い要求で、きょうようやくそれが閲覧という形で分厚い書類が出されるというようなことでありますけれども、それも委員一人につき何十分というような、そんなことで要するに資料を出したんだということについては非常に問題があるのじゃないか。国会は国権の最高機関として十分に審議をしなければならぬと思うのですが、そういう閲覧なんという、しかも短時間でこういうものをやるというようなやり方については非常に問題があるというふうに私は思うのですが、その辺について先生の御見解をお尋ねしたいと思います。
  209. 石川捷治君(石川捷治)

    石川捷治君 私は、国会にあらゆる資料を当然出した上で十分議論を詰めるべき、重要性から見ましても絶対にそうしなければいけないと思うのであります。閲覧という形で、諸先生の御努力でそれは実現したようではありますが、ただ、その資料というのは、別に秘密にしなければならないような性質のものでないと伺っていますし、私が考えましてもそうなんですね。それを参考にしてつくったんだから当然出すべきであって、それを出さないなどというのは、国権の最高機関であるということをないがしろにするもの以外の何物でもないと思います。  以上です。
  210. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 どうもありがとうございました。  それで、これからその問題が国会活動の中での大きな問題点になっていくと思いますが、私たちもそういうふうに考えておりまして、正式に資料として出して、そしてどこが違うじゃないかということで議論をしないと、問題が不明確なままに法律だけが通るということは日本国にとって大変なことだというふうに思っておるところです。  時間がありませんので、あと一つだけ、石川先生にお尋ねをしたいと思います。  先生は法学部の教授として活躍されているわけですが、用語の問題についてお尋ねしたいのですけれども、PKFが出しますコマンド、指揮と指図の問題であります。  我が党の議員が、これは国会図書館か、ちょっと場所ははっきりしませんけれども、そこにすべての法律の用語がコンピューターに入っているわけですけれども、そこで打ち出して、例えば指図という言葉はどういう法律に何十項目出ているのだということを調べてみましたところ、結局、民法上の法律用語としてしか出ていなかったということがはっきりしまして、随分議論になったのです。ところが、この民法の用語を突然、今回の政府PKO法案では、懲戒権が日本側にあるのだからというただ一点で、きょうの新聞あたりを見ますとそれも間違いだというようなことが報道されておりますけれども、仮にそういう懲戒権ということを一つの理由としたとしても問題があるわけでありまして、そういう言葉を使ってこういう重要な法律体系の中に入れ込みながらやるという方法については、世間常識ではないのではないかというふうに私は思うのですけれども、そこらについてはどんなものでございましょうか。
  211. 石川捷治君(石川捷治)

    石川捷治君 私も、法学部の教員とは申しましても政治学の方が専門でございまして、法解釈は専門といたしておりませんので、全く素人として聞いていただければと思うのですが、指揮と指図、そのまま国会での議論を拝見いたしますと、懲戒権がない、つまり、要員に対する懲戒権を伴う強制がないからこれは指揮ではなくて指図なんだと。指図というのは確かに法律用語としてございますけれども、しかし、考えてみますれば、そこに行っておるPKOの要員というのは自分の国の身分をきっちり持って行っておるわけで、国連の職員に全員なるわけではありませんので、当然国連が懲戒権などあろうはずがないわけであって、そういうものがあるかないかによって、それがないから指図であって指揮でないんだというようなことは、これはごく常識的に考えましても、あり得ないと思うのです。
  212. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 ありがとうございました。  あともう一分だけですけれども、木村先生にちょっとお尋ねしたいと思うのです。  私、国会委員会参加しておりまして、皆さんもテレビで見られていると思うのですが、国会では、これは黒でしょうか白でしょうかという問いに対して、これはおいしくないですというような感じの政府答弁がありまして、私は非常にいらいらしているのですけれども、国民立場からそんな感じは持っていらっしゃいませんでしょうか。
  213. 木村京子君(木村京子)

    木村京子君 私も、いろいろなことは勉強不足なんですけれども、時折国会中継などを見ることがあります。できればテレビのこっちで見ている私たちの声が何らかの形で同時的に、国会の議場とは言わないまでも、事務局あたりに届くとどんなにいいかというふうに、本当に私たちはテレビの前でいろいろなことを言っているわけなんです、けれども、さっき言いましたように、この論議も含めて、遊びをしているのではないか。それは本当に皆さんいろいろ御努力なさっているのでしょうけれども、言葉が全然かみ合っていないし、しかも論議自体がすりかえだという論理構成もありますけれども、言葉自体、そのことを言うために何か例えを、さっき火事の問題をおっしゃいましたけれども、決してPKO法の問題は火事の問題ではないわけですね、隣近所の火事の問題では決してありません。なのに火事の問題で例えてしまう。そういう例えが先行して、事の本質がはぐらかされていくというような論議は、はっきり言って、そう言うとよくないかもしれませんけれども、余り子供たちにも見せたくないな、そういう思いがしています。国会の論議がもっと私たちにわかりやすく、そして本当にもっときちんとした論議をすれば、今かかっているような時間ではなく、短い時間でも本質的な論議はできるのではないかという思いがしておりますので、ぜひそこをよろしくお願いします。
  214. 緒方委員(緒方克陽)

    緒方委員 ありがとうございました。  時間が来ましたので、これで終わります。
  215. 林座長(林義郎)

    ○林座長 次に、山口那津男君。
  216. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 公述人の皆様、お忙しいところをきょうは貴重な御意見を承りまして、本当にありがとうございました。  私の方から、時間の許す限り、簡潔にお伺いしてまいりたいと思います。初めに大屋先生、今回の法案では、PKOあるいは人道的国際救援活動さらに国際緊急援助隊活動の拡大というものが法案に示されておるわけでありますが、これらの人的貢献分野以外に、もっと多面的な角度から今後どのような人的貢献の分野が議論されるべきか、お考えがありましたらお伺いいたします。
  217. 大屋麗之助君(大屋麗之助)

    ○大屋麗之助君 国連活動というのは非常に広い範囲にわたっておると思うわけであります。格別に今、東西冷戦の後ですから、この構造の中で今の秩序の維持だとか平和維持活動というような面が非常にクローズアップされているということですが、もっと、先ほども話が出てきておりましたけれども、病気の問題だとか、汚染の問題、公害の問題だとか、それから地球の資源の問題だとか、東西というより今度は南北の問題、こういう問題について、科学的なものにかかわるもの、それから物の考え方、倫理、人権の問題、こういう広範な仕事をしているわけで、案外表面に出てきていないものがあるわけであります。  それぞれに我が国も随分とやっていたわけでしょうけれども、何せ国連そのものの中での我々の地位というのは、従来は敵性国家であったわけでありますし、現在では非常に有力なあれになっておりますけれども、だんだんと自分の国のことだけではなくて貢献しなければならぬということになったのは、ここ十年の経済成長と一緒に相関連しておるところでございますので、ギャップができて、貢献の度合いが少ないということでございますので、科学的な分野も医学的な分野も含めて、あるいは農業その他、それからもう一つ経済の問題ですね、そういう問題もあるわけでありますが、もう一つ国連以外の場合で、二国間の問題だとか、それから地域との問題という点では、もっと別な側面で国際貢献すべき問題を持っている、こういうふうに思っております。
  218. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 続いて大屋先生に伺います。  今回の法案では、シビリアンコントロールのあり方という点で、基本的には五原則を法定する、つまり法律の中にビルトインするということと国会報告、この二つの制度の組み合わせで確保をしている、こういう考え方であろうと思いますが、この国会報告については、報告を受けて国会がどう対応するかということが法案の審議ではほとんど議論されておりません。それは、政府側に質問するわけでありますから、行政権に国会の対応を質問しても十分な回答が出ないことは当然なんでありますが、ここで先生に、国会報告を受けて、これが単なる紙での報告に終わるのか、それとも、それを受けて国会で十分な審議をする、場合によっては、政府の決定が不都合なものであれば政府の政治的責任を追及するあるいは計画の変更を迫る、こういう多様な国会の対応のあり方が可能であるはずでありますが、この国会報告を受けての国会の対応について先生が望まれる点をお伺いしたいと思います。
  219. 大屋麗之助君(大屋麗之助)

    ○大屋麗之助君 私は、これが今度の形で行われた場合には、速やかに報告という形で国会に上げられ、国会ではやはりそれに対して即応して、スピーディーにこれをよく審議して政府との間のレスポンスをすべきであろうし、政府は、その際に非常に硬直した姿勢でおやりになるということは、今後の政府の、今度はいわゆる国内の支持の問題にかかわってくるわけでありますから、私は慎重にやはりこれに対しては、それでもやらなきゃならぬときにはやられるでしょうけれども、それは、その次には必ず国民のいわゆる内閣支持に対して反映するものだと思います。そういうことで進んでいくんじゃないかと思います。しかし、決して機械的に、もうこういう法案が通ったんだからということで遮断されることではなくて、できるだけ多数の国民といいますか、政党の支持がされるように進めていかれるのであると期待しております。
  220. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 ありがとうございました。  続いて、香西先生にお伺いいたします。  先生はスイスにおける議論を紹介されましたけれども、このスイス永世中立国として国際的な評価を既に確立しているのではないかと一般に思われておったわけであります。特に国際機関を誘致し、また国際赤十字の本部もスイスにあることからして、あえてここでPKOについてスイスがなぜ今参加しなければならないのか、この点の背景というものがいま一つわかりにくいわけであります。我が党ではスイスに議員を派遣しまして、その議論の背景を少しく聞いておるところでありますが、先生の御認識からこの議論の背景というものについてお伺いできればと思います。
  221. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 スイス参加の背景につきましては、例えばPKO全般について、つまりPKFをも含む参加についてなぜ積極的になったのかということは、私、先ほどるる御説明申し上げたと思うわけでして、とにかく永世中立国であるがために軍事的な強制行動には参加できない、しかし、自分らは決してそれによって国際的な責任を果たさないというような形で非難されるような国ではないんだということを、逆にいわば逆提案というような形で、このPKOというものに積極的に参加することによってその平和の意思というものあるいは国際的な貢献の意思というものを内外にあらわそうという決意のあらわれであろうと思います。
  222. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 スイスでは国内法として参加条件というものを決めようとしておるんだろうというふうに伺いましたけれども、三原則とか五原則とか言われているものについて、国連の慣行的なものが既にあるわけでありますが、なお参加に当たって国内法でその条件を法定するということが、法的にといいますか、あるいは政治的にどのような意味があるのか、このスイスにおけるそういう考え方についてお話を賜れればと思います。
  223. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 ただいまの御質問は、先ほど来問題になっておりますところの例のガイドラインというものについてだろうと思います。  これにつきましては、先ほどからいろいろ出すか出さないかというようなことで御議論があるわけでございますけれども、私自身としては、そういうものの内容を見たことはございませんし、そういうものを入手する意思もございません。また、国連の事務当局がそういうものを見せたがらないという気持ちはわかるわけです。  と申しますのは、これは公式の文書ではないからです。事務局にはこのようなものを、有権的なものをつくる権限はないわけです。このようなものをつくる権限がある機関といえば、それは国連総会のもとで平和維持活動特別委員会というものがありまして、それがこういうガイドラインをつくる作業をやる中心の機関であります。ですから、そういうものを抜きにして事務局が勝手にそんなガイドラインのようなものを、まさに今委員会がやろうとしているときに事務局が勝手にそんなものをつくれば越権行為でありまして、そういうものは認められないわけでございます。しかし、事務局ができることといえば、それは一つの資料として、過去の今まで採用されてきましたガイドラインの諸原則などを、こういうものがあるからという形で集大成するようなものとしてそれをつくって、しかるべき先ほどのPKO委員会などに提出するというようなことの資料ならば、これは理解できるわけでございます。  そういった観点からこれを見てまいりますと、私は内容を見たことがないわけで、朝日新聞にたまたまPKOガイドライン、武力行使の要旨というものが載っています。これに基づいて内容を見てみますと、大体これまで採用されてきました武力行使を、どういう場合に行使できるかというのを一応踏んだ形で、敷衍した形で出していると思われるわけです。  御承知のように、このガイドラインで一番問題になりましたのは、特に自衛権の、自衛の行使範囲ですね。これはキプロスのときにウ・タント事務総長がつくって出したものでありまして、このときの覚書というものでかなり詳しく、具体的にこういう場合に武器行使することができるというようなことが書かれているわけです。これは、コンゴの苦い経験にかんがみて、自衛権というものをどうしてはっきりとした形で枠づけをするか、限界づけるかという必要性から非常に詳しい規定が出てきたわけでありまして、例えば、指揮官の命令に基づいて配備している拠点から撤退するように武力をもって強制するというような行為とか、兵員を武力によって武装解除する企ての場合とか、それから武力による国連の構内の侵犯とか逮捕とか、そういうようなことを武力によってやろうとする場合とか、それからもう一つ指揮官の命令に基づく兵員の任務遂行を武力によって阻止しようとする場合、こういうようなことをずらっと挙げているわけです。そして、しかしこれは余りにも長いものですから、その後の例えばUNEFII以降のときには、これを束ねると言ったら怒られるかもしれませんけれども、もっと要約するような形で出てきたのが、つまり上官の命令によって、安保理事会のマンデートのもとで行われている任務の遂行を武力によって阻止する、そういう企てに対してなされる抵抗も含むというような形で出しているわけです。  ただし、そこで注意しなければならないのは、その次に続いて、軍は、紛争当事者が安全保障理事会の決議に従うために必要なあらゆる措置をとるという前提のもとで活動が行われるんだということを言っている点を無視できないと思います。これをあわせて読めば、ここで言っているのは、何か最近AタイプとかBタイプとかいうようなことが言われているらしいですけれども、これがそういうAタイプ、Bタイプというような言葉が入っているのかどうかも知りませんけれども、もしそういう二種のものがあるとしても、私は、これは特別のものを言って非常に範囲を広げたというようなものではないと思います。といいますのは、第一に、武力によってそういう任務の遂行を阻止しようとしているということでありますから、これも身の危険を感じた者が正当防衛の権利を行使することになるわけでありまして、それを二つのタイプに分けるというのは大体おかしいというふうに私は解釈するのですが、これは私の個人的な解釈でありますから間違っているかもしれません。  しかし、とにかく日本法律では一つの、Aのタイプのものだけ、つまりみずからの身を守る、そういったケースしか武器を使ってはならないということになっているわけでございますけれども、それがこれと先ほどのと意味が違うというようなことで、一致がないじゃないかというふうに議論があるのですけれども、しかし私、先ほどの点でBタイプというのも、普通は、紛争当事者が安保理事会の決議に従ってあらゆる必要な措置をとるということでありますから、本来そういうことでPKFが攻撃の対象になるというようなことはあり得ないわけなんです。  しかし、あり得ないことは全くないわけでして、例えば誤解によるとかそれから指揮権の乱れとか、そういうようなことのためにハプニングが起こるかもしれない。しかし、その場合に国連がどういうふうな対応をするかと申しますと、それは、司令官は当事国の軍司令官に向かってすぐに抗議を申し込んで、そして善処を求める、そういったようなことをやるわけでありまして、そのために平素から国連軍の司令官は、常にその紛争当事者の双方に向かってあらゆるレベルで話し合いをし、連絡をとりながら行動している、そういう状況のもとでありますから、このようなことは余り起こり得ないわけであります。  しかし、正当防衛の権利は行使しなければならない、そういうことでありますけれども、もし今のようにAタイプだけに限られているとして、日本に問題が起こるじゃないか、指揮系統が国連のとは違うじゃないかということがあった場合には、しかしそれぞれの国はそれぞれの態度をとることができるのでして、例えば先ほど御質問のあったスイスでありますけれども、スイスも、四条件のうちの一つとして武器使用は自己の防衛のためにしか使ってはならないと言っているわけでありまして、もし日本がそういうことができないではないかということならば、スイスについても同じ問題が起こってくるわけです。  ですから、それぞれの国がそういうことをやることは、参加をする際の協定ですね、覚書というものを事務総長と交わしますけれども、その中でちゃんとあらかじめ条件をつけておれば、逃げて帰るのはけしからぬとか、そういうふうなことには決してならないわけでありまして、そういうような形で問題はないんじゃないかというふうに考えております。
  224. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 それから、スイスPKFを仮に出すとしました場合、議会がどのような関与をするかという点についての現在の議論をお聞かせいただきたいと思うのです。
  225. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 スイスは今法案の検討中でありまして、まだ法案を議会に出しているという段階じゃございませんので、その点がどういうふうになるかということは私は存じません。
  226. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 各国の議会の関与のあり方についての立法例というのを先生の本等で拝見しますと、PKFを出すに当たって国会承認、議会の承認を要するという制度例は極めて少ないように思われますが、これの背景となっている考え方について一般的なお考えがあればお伺いしたいと思います。
  227. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 ただいまの御質問、ちょっと聞き漏らしたのですが、とにかく承認を必要としない国が多いじゃないかということでございますか。  これは、それぞれの国によってかなり事情が違うわけでして、日本のようにこういう問題になれば国を挙げてすったもんだの大騒ぎになるというような国と外交政策について意見が大体一致を見ているような国とではかなり違うわけです。それで、例えばコンセンサスが得られているような国は非常に早く済みますし、そうでないような国については何十日かかるかわからないというようなことになるわけでありまして、だから、そういうほかの国の例をどうこうということで一般的な答えが出しにくいのじゃないかという印象を持っております。
  228. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 土井先生にお伺いいたしますが、国会承認が必要である、こういうお立場であろうと思いますが、承認制度を設けた場合に国会報告とどこが違ってくるかといいますと、私の考えでありますが、まさに承認をした場合には、これは報告で終わるよりはより積極的な国家意思の統一といいますかが図られる、より正当化されるという一面があると思います。また、不承認となれば、これはその意味政府側の答弁等によれば不安定な制度になってしまう、こういう欠陥が指摘されるわけであります。  制度ではなくて実際の日本における状況を考えてみますと、与党側がこの法案について不承認ということは普通考えられないわけであります。また、自衛隊憲法違反だと考える政党にとっては、これも承認ということは考えられないわけであります。ですから、制度の成立を前提にしまして、その内容政府の政策判断の当否を是々非々で判断できる立場の政党というのは実際には限られているだろうと思うんですね。そういう状況を踏まえた上で、この承認制度と報告制度、この比較についてどのようにお考えになられるか、御意見を賜りたいと思います。
  229. 土井良泰君(土井良泰)

    ○土井良泰君 お答えというよりも、私は国会にはおりませんので、いわゆる国民という立場で基本的に今の御質問に対してお答えを申し上げたいと思います。  先ほど来から論議をされておりますように、日本の置かれておる今日までの歴史的経過と現状については、考え方が、PKOにしてもPKFにしても、PKOは大部分合意が得られるというふうには理解をしておるところでありますが、いわゆるPKFについてこれだけの意見が違うことが現実である。そういう場合に、少なくとも、シビリアンコントロールということを盛んに申し上げておるわけですが、過去の例からいいますと、第二次大戦の折を含めて大変軍部が中心になって政治を動かしてきた、この歴史的な経過というのは大きく反省を、国の内外を含めて指摘をされておるところではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  それから、もう一つの要件といたしましては、今御質問にありましたが、いろいろな国のPKFに対する参加の仕方というのがあろうかと思います。それは、それぞれの国の置かれておる事情によって一つの基本方針を持って対応するということが基本であろうかと思いますが、それにつけても、やはりこれらの問題については、国の基本政策である、特にこれからスタートを、初めて海外自衛隊派遣するというような事柄でありますので、そういうことについて、国際情勢も含めてどう変わっていくのかというのが大変流動的でありますので、個々のケースについてやはり国会承認を求めていくということが、時間はかかっても——それはわかります、現実に。衆議院は、与党を含めて公明党さんあるいは民社党さんも一部条件づきで賛成だ、数の論理で整理をされるわけですが、参議院ではそうならない。宮澤総理の先般の答弁もそういうことを意味して、現実的には、政治的には不可能だという見解があったかと思いますけれども、そうではなくて、やはり必要なものについてはきっちり国民合意をとって、そしてスタートをしていくということが今の段階では必要ではないだろうか。そういうものが国民の全体の合意として、なるほどこういうケースで進められるなというものがある程度認められるようになれば、それはやはりその段階で判断をしていくというのが望ましいかというふうに考えております。  以上、端的に申し上げました。
  230. 山口(那)委員(山口那津男)

    ○山口(那)委員 大変ありがとうございました。  終わります。
  231. 林座長(林義郎)

    ○林座長 次に、高木義明君。
  232. 高木委員(高木義明)

    高木委員 高木義明でございます。  陳述人の皆さん方には、大変お忙しい中でございましょうけれども、今承りまして、それぞれ大変貴重な御意見を受けました。私たちも十分に参考にさしていただきたいと思います。心からお礼を申し上げます。  まず、大屋先生にお伺いをいたします。また、同趣旨のお尋ねを香西先生にもお尋ねをします。  実は、お尋ねする前に、質問をする者の立場として簡単にスタンスを明確にしておきたいわけでありますが、私どもは、PKO活動については憲法の精神に合致をしておる、その協力については世界の要請にこたえる第一歩だ。このように考えております。私も、この五月に党の訪米団の一員としまして国連本部に赴きまして、デクエヤル事務総長を初め関係者方々と懇談をする機会を得ました。まさにPKO国連の権威を旗印に国際平和の確立に寄与するものだ、こういうことを感じたわけであります。そういう意味で、基本的には指揮権については国連にゆだねられるべきものである、そのことがむしろ国際レベルに合致したものではないか、このように思っております。また、私たち自衛隊を認めておりますし、いわゆるPKO活動参加をする主体である自衛隊の皆さん方が、平和回復のためにその任務に自信を持って十分に当たられるような、そういう環境整備も欠かせない、このように考えております。そういうこともありまして、ぜひこの法案の早期成立を目指しておりますが、今、我が国の今日までの歴史あるいは国民感情等々を十分に考えますと、やはりシビリアンコントロールを何としても念頭に置かざるを得ない、国会の最重要機関という役割に照らして、歯どめとして国会承認は必要である、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、先ほども議論が出ましたけれども、今日の国会情勢、ねじれ国会であります。したがって、このねじれ国会の中で、国会審議に時間がかかるから国会承認はだめだという議論が一部にありますが、この点について、先生いかがお考えでございましょうか。
  233. 大屋麗之助君(大屋麗之助)

    ○大屋麗之助君 先生のスタンスにつきましてはよく承知をいたしておるところでございまして、敬意を表したいと思います。  国会審議の時間ということでございますけれども、国会での審議は非常に慎重に、最近ではよくおやりになっていると私は思っているわけであります。以前については必ずしもそうではなくて随分審議がされなかったということがございましたけれども、最近の問題ではそう思ってはいないわけであります。  しかし、PKOのこういう問題にいたしましても、今問題になっている点、論議されている点は、やはり非常に細かい点、それは非常に大事な点だというところにお互いの立場があるんでしょうけれども、そういう点が非常に強く毎日毎日浮かび上がってまいりまして審議を進められていく。これは裁判と同じく、全く正確に進めていくためにはそうだろうと敬意を表するわけでありますけれども、しかし、やはり世の中の仕事というものは、私どものビジネスと政治とはまた違うと言われましても、これは、世界の情勢、そういうものは随分と動いていっているわけですから、時間的に制約が出る面が随分出てくるだろうと思うわけであります。  そういう点からいきますと、私は、国会の一般的な問題では、時間よりは事のあれを正確にといいますか、間違わないように判断することが大切だということ、そちらにウエートが本当に置かれていて、まあまずここのところはここでスタートして、それからもしぐあいが悪ければ次の段階でひとつ修正してさらに改善していくのだ、これは会社の仕事はさようでございますが、およそ方向が間違ってなければそれでひとつここはいこうか、こういうことになっていくんだと思います。そういう点で考え方でのギャップが少しあると私は思っております。
  234. 高木委員(高木義明)

    高木委員 香西先生、私の先ほどのお尋ねでございますが、先生としてはいかにお考えになられておりましょうか。
  235. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 この問題は、確かに理想としては国会承認があれば私はいいと思います。と申しますのは、国連からの要請があった場合でも、一体日本の側としてはこのPKOに対してどういうふうな態度で臨んだらいいのか、そういうようなことをそれぞれの角度から判断して、それではお引き受けしましょう、あるいはお断りしますというふうなことを決めるわけでございますから、慎重審議ということは必要であろうと思います。  ただ、先ほども申しましたように、じゃ国会にかけた、その結果がもう延々と何カ月も続いてというようなことになれば、一体何のための審議であったのかというようなことになって、やはり時間の問題も考えなければならない。そうなってきますと、いろいろな折衷案的なものもそれはあり得るわけでして、私は日本のことはよくわかりませんけれども、例えば国によっては国会の中の一部の委員会がその審議の際に意見を言うというような形で参加するとか、そういうような国もありますし、それから事後承認というようなことも、カナダなんかはそういうようでございますけれども、そういうようなことも考えられるわけです。  それで、どういうふうな形でやれば一番日本にとって望ましいのかという問題でございますけれども、私は、この点はなかなか難しい問題であるということで余り深く考えたことはないわけでございます。
  236. 高木委員(高木義明)

    高木委員 香西先生はお話の中で、国連としても各国の事情を十分承知をしておる、そしてそれぞれの国の対応についてはあらかじめ条件をつけておけば、それはこの活動についての十分な機能を果たせるのではないか、こういうお話でございました。そういう意味で、私は国会承認という条件も、国連立場からしてみてもそれはそれで十分尊重されるのではないかと思っておりますが、その点いかがでしょうか。
  237. 香西茂君(香西茂)

    ○香西茂君 日本がそういう国会承認が必要であるというふうな条件をつけてそれに国連が文句を言うようなことは、そういう筋合いもありませんし、そういうことはないだろうと確信しております。
  238. 高木委員(高木義明)

    高木委員 土井先生にお尋ねをいたします。  実は、我が国戦後四十六年の歴史を振り返ってみましても、かなり国際情勢が揺れ動いた中で地域紛争もございました。そういう中で、たびたび日本戦争に巻き込まれるのではないかという議論もあったことは事実でございますが、現実に我が国戦争に巻き込まれてなかった、平和を維持できた。これは国民の良識でありますし、国会の良識だと私は思っております。先ほども、国会審議に時間がかかるから国会承認ではどうもならない、こういう気持ちもわからないではありませんけれども、しかし今日の情勢、しかも湾岸危機を踏まえた我が国国際貢献に対する国民世論も今高まっておりますので、その辺は賢明な判断がなされるのではないか、私はこのように思っております。そういう意味で、土井さんのお考え方を改めてお聞きをしておきたいと思います。
  239. 土井良泰君(土井良泰)

    ○土井良泰君 先ほど来高木委員の方からおっしゃっている点については、全く同感でございます。  特にこの際申し上げておきたいと思いますのは、現在PKOの審議がなされておるわけでありますが、ODA問題について新行革審が今いろいろな形で論議されている。とりあえずの形でODAはスタートした。昨年の段階ではGNP比〇・三一という状況なんですが、世界にそれなりの役割を果たしてきている。そこでもう一度見直しをして、諮問機関を持ちながら論議をし、そして国の経済的な役割というのは一体どうすべきなのかということを論議されている、こんな状況にあります。  経済問題というのは世界の各国あるいは地域によって随分違うと思いますが、特に自衛隊派遣の問題については、何度も申し上げて恐縮ですが、やはり国民感情なりあるいはアジア地域のそれぞれの国の方々の過去の日本に対する不信なり不満というものもあるわけですから、日本が現在の憲法を是として、そして個々のケースで、世界のそれぞれの地域における平和を維持していく、あるいは推進していくという立場からは、衆議院の本会議をやるかどうかは別ですが、少なくとも民主主義に立った立場でそういう国会承認を得ていくという機能というものは明確に持っておくことがスタートの段階では必要ではないだろうか。そういうものが国民の信頼として、ああ、これなら大丈夫だなと。別に行政当局を疑うとかそういうことではないわけですが、過去にいろいろな形でオーバーランをしかかった時期もあったわけでありますから、そういう点についてはまさに国会のシビリアンコントロールというものが今本当の意味で必要ではなかろうかな、こんな感じを持っておりますし、そういう意味でぜひ広く皆様方に御了解をいただく。  そして、時間がかかるということについての心配もあろうかと思いますが、これも、それぞれ行政なり立法というお立場でもっと有機的にやっていただく。それから、民間でありますならば、非常事態のときには夜を徹して論議をしたりあるいは仕事をすることもあるわけです、労働基準法違反になってはいけませんが。国会の審議についても、そういう有効な時間の活用の仕方も議会としてもっと御検討いただくことが必要ではなかろうか。これもつけ加えて意見として申し上げておきます。
  240. 高木委員(高木義明)

    高木委員 時間も来ましたので、これで終わります。
  241. 林座長(林義郎)

    ○林座長 これにて委員よりの質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、両法案審査に資するところ極めて大なるものがあると信じます。厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして深甚なる謝意を表する次第でございます。  それでは、これにて散会いたします。     午後一時二分散会      ————◇—————    派遣委員宮城県における意見聴取に    関する記録 一、期日    平成三年十一月二十五日(月) 二、場所    仙台ホテル 三、意見を聴取した問題    国際連合平和維持活動等に対する協力に関    する法律案(第百二十一回国会内閣提出    )及び国際緊急援助隊派遣に関する法律    の一部を改正する法律案(第百二十一回国    会、内閣提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 与謝野 馨君       大島 理森君    中川 昭一君       増子 輝彦君    石橋 大吉君       沢藤礼次郎君    山中 邦紀君       遠藤 乙彦君    東中 光雄君  (2) 現地参加議員       戸田 菊雄君  (3) 政府出席者         内閣審議官   野村 一成君         内閣官房国際平         和協力の法体制         整備準備室次長 西村 六善君         防衛庁長官官房         防衛審議官   鈴木 正孝君         外務大臣官房審         議官      橋本  宏君  (4) 意見陳述者         仙台経済同友会         代表幹事    藤崎三郎助君         主     婦 佐藤 瑩子君         宮城ユネスコ         協会連盟会長  藤原 五郎君         弁  護  士 馬場  亨君         元国連大使・松         下電器産業常任         顧問      菊地 清明君         弁  護  士 山田 忠行君      ————◇—————     午前十時開議
  242. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院国際平和協力等に関する特別委員会派遣委員団長与謝野馨でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案審査を行っているところでございます。当委員会といたしましては、法案審査に当たり、国民各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたく心からお願いを申し上げます。  まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者の皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党の大島理森君、中川昭一君、増子輝彦君、日本社会党・護憲共同の石橋大吉君、沢藤礼次郎君、山中邦紀君、公明党・国民会議遠藤乙彦君、日本共産党の東中光雄君、以上でございます。  なお、現地参加議員として、日本社会党・護憲共同の戸田菊雄君が出席されております。  次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  仙台経済同友会代表幹事藤崎三郎助君、主婦佐藤瑩子君宮城ユネスコ協会連盟会長藤原五郎君、弁護士馬場亨君、元国連大使・松下電器産業常任顧問菊地清明君、弁護士山田忠行君、以上の方々でございます。  それでは、藤崎三郎助君から御意見をお願いいたします。
  243. 藤崎三郎助君(藤崎三郎助)

    ○藤崎三郎助君 それでは、座長のお許しを得まして意見を申し上げます。  私は、今回、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案が御審議をされておるわけでございますが、この法案に基本的に賛成でございます。  以下、私の意見を申し上げます。  我々の憲法は、その前文の後段におきまして、次のように規定をいたしております。   日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。   われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。   日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 と規定されておりまして、これはもう御承知のとおりであります。したがって、我々の理念というものはここに記載されておりまして、この理念が、戦後四十数年、日本国の安泰にとってその支えとなってきたことも事実でございます。  それで、今回PKOとして論議されているこの法案につきましては、第二次大戦後の恒久的平和を招来し、これを維持するための最良の組織として国際連合が誕生してまいってもう四十年たったわけでありますが、この国際連合の目的と存在に疑いを挟む余地は全くございません。しかし、その機能が、特に戦争の脅威をなくし、世界平和を実際に推進することに明らかに力があったかと申せば、第二次大戦終結の前より芽生えておりました、いわば米ソ二大国を代表とするその対立という大きな流れが年とともに明らかになるにつれまして、国連加盟の諸国も米ソ二大陣営に分裂して、ますます国連の機能そのものも不活発になる方向に作用してまいったのでございます。  簡単に申しますと、米ソ二大超大国のあらゆる対立抗争が国家間のみならず国内の政治的抗争にも作用し、そのために、国連として世界平和を維持し促進せんとする機能は、著しく制限されてきたのであります。しかしながら、社会主義国、特に一方の旗頭であったソビエト連邦内の体制の急速な変換ということは、国連活動の根本を揺るがす妨害というものを徹底的に排除するに至り、昨年よりの国連機能の回復は、その本来の姿を十分に取り戻すに至ったと考えられます。  我が国経済的発展と充実は、世界の平和と発展のためにその応分の力を十分に発揮するのが世界に対する責務であるということは、前段の憲法前文の理念に見るまでもなく、当然と考えねばならぬ時代でございまして、もし二大超大国の対立の時代であれば、自由経済圏にある我が国は当然反対陣営とは対立する立場にあり、国際紛争の解決のための国連活動に直接参加することは幾多の問題を生じたでありましょうし、現実にかかる行動は不可能であったでありましょう。まさに現時点こそ、国連結成以来初めて到来した理想的環境と申してもよろしいでございましょう。しかし、かかるときといえども、湾岸戦争のごとき、また一部国の国内紛争のごとき武力を用いる紛争がなくなるということは期待できない。かかるときこそ国連自体の明快な決定と活動が要求されて、国連の一員たる日本国として、その能力を十分に尽くすべきことが期待されております。  既に技術的論点を離れ、戦後四十年にして初めて到来した新時代に対応する国家的政策として、この法案を考えるべきであろうと思います。日本憲法は高い理念に裏打ちされた貴重な存在であって、この法案によってその価値が云々されるべきものとはいささかも我々は考えておりません。この法案に基づく行動、すなわち平和維持隊への参加に当たっては、その基本方針の中で、第一に、紛争当事国の間で停戦の合意が成立していること、二、当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が、当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国参加に同意していること、三は、当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく中立的な立場を厳守することとされておりまして、上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国からの参加部隊は撤収することができるとなっておるわけであります。  国際間または一つの国内における紛争は、依然として一九四八年以来四十年間も存在してきたものであり、平和維持活動は、これらの武器を使った抗争といったものを解決しようとする関係者の努力を国際社会全体が助けるものであります。これが国連平和維持活動というものの基本的な意義でありましょう。大きな国も小さな国も、そのために懸命の努力を尽くしてまいったと思います。そうして、世界平和に大きな貢献をしてきたのでございまして、国連のこのPKO活動は、一九八八年にノーベル平和賞を得ているものであります。この活動参加し得ない理由が国内的理由によるのみであるとするならば、日本国の存在そのものが異常なこととなり、また、世界平和のためにその責務を果たさないことは、まことに残念なことでございます。よろしく世界の流れに目を開くべきであると存じます。  ほかの国におきましても、例えばアメリカのブルッキングス研究所の方が、エドワード・リンカーン氏でありますが、   PKOとして自衛隊海外へ送ることは普通の意味での軍事行動とは違う。   国連という厳格な枠にはめられた小さなステップであり、憲法九条改正につながると警戒する理由は見当たらない。国連が認めた活動参加するという、責任ある決定といってよい。   日本はむしろ、アジアの一部諸国がなぜ懸念を示しているかを考えるべきだ。原因の一つは人道的な国際活動における日本の「不在」にあると思う。 と指摘しております。  今や、日本国は、真の国際化の流れの中で、自身の存在を世界的に高める方式を決定していくべきであろうと考えます。  以上でございます。
  244. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 ありがとうございました。  発言者でございますが、どうぞ最初から最後まで御着席のまま御発言をしていただきたいと存じます。  次に、佐藤瑩子君にお願いをいたします。
  245. 佐藤瑩子君(佐藤瑩子)

    佐藤瑩子君 このたびは意見陳述の機会をいただきまして、大変うれしく存じております。  ここ仙台は、民間ユネスコ発祥の地でございます。一九四六年、国連専門機関の一つとしてユネスコが設立され、その精神を受けて、仙台在住のお医者様でいらっしゃる岩本先生が世界で初めての民間ユネスコを提唱されたということを御存じでいらっしゃいますでしょうか。  ユネスコ憲章の冒頭「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」という言葉は、私たちに限りない平和への希求とその実現への勇気を持たせてくれました。残念なことに、一九八四年アメリカが脱退、その後、日本の責任は大変重くなっております。さまざまな問題を抱えながらも、今、平和への貢献は、この精神を生かし、日本憲法の崇高な理想に向かって歩みたいものと思っております。  また、中国の文学者であり大思想家である魯迅は、仙台の医学専門学校に二年間遊学されました。そのよしみで、現在でも日史友好のかけ橋として仙台の人々の敬愛の的になっております。また、インドの革命家ビハリ・ボース氏の亡命を助けて手厚く保護をされた相馬黒光さんも仙台の出身でいらっしゃいます。近くは姉妹都市ミンスクの、チェルノブイリ原発被害の子供たちに温かい救援の手を官民挙げて差し伸べております。古くは支倉常長のローマ派遣など、仙台は国際的な交流に積極的にかかわってまいりました。  その仙台の地で、日本の命運を左右するかもしれないPKO協力法案の公聴会が開かれることは、まことに意義深いことと存じます。  ここで、本題に入らせていただきます。  私は、この法案反対立場でお話をさせていただきたいと思います。  昨年十一月、国連平和協力法案廃案になったにもかかわらず、またもや同じ趣旨の法案提出されたことに、私は素朴な驚きを感じております。何ゆえのこの慌ただしい審議なのでしょうか。東西の対立は解消し、世界は軍縮の方向に向かっており、たくさんの国々が新しいあすに向かって産みの苦しみを味わっているとき、私たち日本人が何をしなければならないかを真剣に考え、実行に移さなければならないと思います。しかし、そのなすべきことが自衛隊PKO、特にPKFへの参加であることは、到底認めることができません。  私は、次の三点からPKO協力法案並びに関連法案反対いたします。  第一点は、私のようなごく普通の市井の人間にとって、この法案は非常にわからないところが多過ぎるということです。第二点は、二次大戦の後始末もできないうちに自衛隊武器を携帯させて海外に出すなど、いまだに回復していないアジアの人々の信頼をまた一気に失うことになるのではないかと大変深い危惧の念を持っております。第三点は、ほかになすべきことがたくさんあるのではないかということです。  まず第一点でございますけれども、私のようなごく普通の市井の人間にとって大変わからないところが多い。ふなれな者が細かい字句にこだわることは避けたいと思いますが、まず、何よりもその前提として許しがたいのは、自衛隊自身が憲法違反ではないかということを私はずっと考えてまいりました。一九五〇年警察予備隊として発足した軍隊は、保安隊、自衛隊と名を変え、今や本年度予算四兆三千八百六十億円、陸海空兵員のみで二十七万余、事務系を合わせると三十万人余でございます。装備も、専守防衛としては過剰とも思えるものに膨れ上がっております。それを国際協力の美名のもとに海外派遣するなど、とても容認できるものではありません。まして、小型とはいえ武器を持ち、その使用判断の主体は個人であるとか、戦争状態に戻ったら独自の判断で撤退してよいとか、国会へは報告のみでよく承認は必要ないとか、現在盛んに国会で論議されておりますが、素人目にもあり得るはずがないようなことが議論されているということに大変疑問を感じます。余りにも無理があるのではないでしょうか。  第二点として、戦後の後始末もできないうちに軍隊を海外派遣するのは、非常に心ないしわざと言わざるを得ません。例えば、サハリンにおける強制連行した朝鮮人の帰国問題とその補償、台湾現地人の戦時補償、中国残留孤児の救済、シベリア邦人抑留者の遺骨収集など重い課題が山積していて、いまだ手つかずのことさえございます。それらの解決もつかないうちに再び自衛隊海外派遣するということは、四十六年前の教訓が何ら生かされていなかったことになると思うのです。アジアの人々の信頼を回復するには、平和憲法を遵守し、絶対に武力に訴えることのない紛争解決の道をつくり上げることだと思います。  第三点、ほかになすべきことがあるのではないかということです。絶対に武力に訴えることのない紛争解決の道とはどういう道を言うのか。多分非常に難しい道であると思います。しかし、難しいからといって避けてはならないということです。戦争は、大部分が差別と貧困と飢餓がもたらす不幸な結果であって、結果がまた原因を生み、悲惨な結果をもたらすという悪循環であります。そこには、ほとんどの場合、先進国と言われる国々の利己的な介入がその原因をつくっていると言われます。湾岸戦争しかりです。  湾岸戦争では、多国籍軍という変則な軍隊が大挙して参加、もとの紛争そのものの結果を覆い尽くすほどの膨大な破壊がもたらされました。そこに日本の軍隊が出向かなかったからといって、何を非難されることがありましょう。十五万人とも二十万人とも言われるイラク人を殺し、二千人の兵士を砂漠に生き埋めにするのが平和維持活動であるならば、日本が拠出した九十億ドルというそのお金は、実に恥ずべき行為と言わざるを得ません。紛争の原因を除くことこそ肝要であって、即自衛隊派遣という短絡的な考え方をぜひ改めていただきたいと切に望みます。  以上の三点から、本法案に強く反対をいたします。  では、紛争の原因を除くために、あるいは和平到来のために何をなすべきかを私たちは考えなければならないと思います。一つは将来に向かって、二つは目下の紛争に対して何をなすべきか。  まず最初の一つ目、遠い将来に向かってあるいは近い将来に向かって、長期の国家的な援助対策を策定していただきたいのです。  今私たちは、本当にささやかながら、非政府レベルでのさまざまな救援活動にかかわっております。例えば、南アフリカの子供たちへの教育資金の援助、イラクの子供たちへのミルクや医療品の援助、チェルノブイリ事故の救援、東チモール、バングラデシュ、エチオピアへの救援などなど、民衆への生活援助があります。また、アジアの人々と連帯して、消費者の権利を確立するためにともに歩むシステムづくりをしている人々もおります。特に、ここ数年は地球規模の自然破壊が進んでおり、それが先進国の大量生産、大量消費の結果もたらされた第二の戦禍ともいうべきものであることがわかってまいりました。教育の普及、性差別の撤廃は、悲惨な生活から立ち上がるための大きな力になります。また、古い文化を持った国との交流は、相互の理解を深めることに大変役に立ちます。現在の日本技術経済力とをもってすれば、できることは本当にたくさんあると思うのです。  また二つ目は、今現在起きている紛争をどうするかということです。すなわち、日本におけるPKOあり方として、自衛隊とは別の組織の平和協力隊を募集することを提案します。隊員は武器は持たず、かわりにその赴くところの地域言葉や習慣、宗教などに精通すること、医療、農業、工業、その他生活技術を身につけて、一定期間の離職と復職の保障をするというシステムづくりにすぐ取りかかっていただきたいと思います。また、世界に向かって核兵器の廃止を訴え、武器の輸出を禁止して、紛争地域に一日も早く平和がよみがえるためのあらゆる方策をとってほしいと思うのです。  心に平和のとりでを築き、豊かさも苦しみも互いに分かち合って、大国主義ではなく、小国であっても平和憲法のもと誇り高く生きてこそ、世界の信頼を得ることができるのではないかと思います。  ここに述べました意見は、私の数人の友人から託された意見も入っておりますので、よろしく御検討いただきたいと思います。  これで終わらせていただきます。
  246. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 どうもありがとうございました。  次に、藤原五郎君にお願いを申し上げます。
  247. 藤原五郎君(藤原五郎)

    ○藤原五郎君 藤原五郎でございます。  これから私の意見を申し上げますが、その前に佐藤瑩子さんからユネスコの発祥の由来がありました。これは、仙台は民間ユネスコ発祥の地として非常に有名だからでございます。私は、宮城県仙台のユネスコ協会の会長として、そしてまた宮城県のユネスコ協会連盟の会長として、本PKO及びPKF法律案賛成するという意味におきまして、これからユネスコの発祥とさらに同じく国際連合の機関でありますPKOの由来をともどもに対比しつつ、結論を出したいと思うのでございます。  その前に、きょうの新聞を見ますと、けさ早くから日本の第二次大戦の原因でありました真珠湾攻撃の記事が大きく出ておりました。これは両国の国民の世論を書いたものでございます。  私ごとで恐縮ですが、たまたま関連上申し上げますと、私は大正十一年生まれで、やがて古希を迎えます。この十一年の年の私の前後の人たちは、ほとんど第二次世界大戦にかかわってまいりました。私の後輩も、そして友人も先輩も、あたら命を第二次大戦に落としたのでございます。私は、幸か不幸か命を長らえてここまで生きてまいりました。そして自分の生活、言うならばサラリーマンとしての定年を迎えた後、何とかして社会から、そしてこの世界から平和を守っていきたい、何とかしてお役に立ちたい、かように考えましてユネスコ運動に身を挺したのでございます。  そして現在は、ささやかながら国際識字年運動、言うならば世界から読み書きできない人々をなくそう、あるいは少しでも多くの人たちと国際交流を深めて、そして八方へ外交をして、資源のない日本が仲よくして、次代を担う人々に幸せをつくってやろう、このような信念で私はユネスコ活動に専念してまいりました。そして現在、宮城県仙台には約六百名の留学生がおりますが、その支援活動の先頭に立っていささかなりともお役に立ちたい、かように考えてまいりました。  さらに、ヨーロッパ、アフリカ、本年度はアメリカ方面に出まして、少しでも民間のサイドから日米の摩擦を和らげようということで、各地を回ってまいりました。本年は、サンフランシスコ市長から国際交流の協力彰もちょうだいしてまいったのでございます。昨年度はモロッコへ参りまして、モロッコという国のカサブランカ市に「仙台」という公園が生まれました。そこに、この仙台のケヤキの苗木を植樹することを運動してまいりました。そして、そのみずからの体験から、PKOそしてユネスコの存在について申し上げなければならないと思うのでございます。  御案内のとおり、ユネスコも、そしてまたPKO国連の専門機関でございます。一九四五年に国際連合が結成されておりますが、これは第二次世界大戦の反省から結成されたものでありまして、その専門機関の一つとしてユネスコが生まれています。ユネスコは、国際連合、ユナイテッドネーションズのUN、そして教育、文化、科学の頭文字であることは御案内のとおりでございます。その目的は、不戦を誓う「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」有名なユネスコ憲章の一節でございます。  このユネスコ憲章が制定されました一九四六年は、日本国は敗戦直後で極めて混乱のさなかでございました。連合軍に占領され、そして戦争犯罪人の東京裁判等が実施されておりました。この疲弊した飢餓、混乱した世相の中におきまして、平和国家、文化国家に生まれ変わりたいという強い念願が日本の北、みちのくのこの仙台から知識人によって生まれたのでございます。  その運動、民間ユネスコ活動は燎原の火のごとく日本各地に広がりました。そして一九四九年には、その熱意が連合国に認められまして、GHQにユネスコ代表部が設置されましたことは御案内のとおりでございます。さらにその年、衆参両院におきましては、ユネスコ運動に関する決議がまさに満場一致で採択されておるのでございます。  このように正しい歩みをそのまま受け取って、そして正しく発言をする、このことが大切ではなかろうか、本当に仙台の民間ユネスコはこのようにして生まれてまいりました。先ほど御発言なさいました藤崎三郎助さんは、その大先輩の一人でもございます。日本国のユネスコ加盟は一九五一年、その後、一九五六年には国連の正式加盟が承認されておるのでございます。言うならば、仙台にまかれた一粒の種子から、今や民間ユネスコ活動として九十八カ国、約四千の協会が生まれております。  一方、PKOを見ますと、PKOは国際平和維持活動として、一九四八年に国連休戦監視機構として初めて派遣されておるのでございます。そして本年、一九九一年の六月現在までに、約七十カ国、五十万以上の方々が二十三回にわたる派遣によって国際平和維持活動に御活動をなさっております。そしてその活動の功績が認められまして、一九八八年にはノーベル平和賞を受賞しておるのでございます。  歴史をひもといてみますと御案内のとおりで、私は、ユネスコ活動は主として民間サイドから、そしてPKO政府間レベルによって活動しておるように思うのでございます。しかしながら、民間ユネスコのすばらしい世界的な発展、九十八カ国、四千の協会の活動、こういうようなことはございますが、PKOは、残念ながら、現在日本におきましては本日の公聴会のごとく法案を審議中であり、まことに遅きに失しておるのではなかろうか、かように考えるのでございます。金を出しても汗を流さない、このように世界から批判されても仕方がないんではなかろうか、かように考えるのでございます。  光陰矢のごとし、もう既に敗戦から四十数年が経過いたしました。敗戦国日本は、今や経済大国に大きく成長いたしました。日本国の繁栄の基礎は世界が平和であること、それゆえに自国だけのことで済まされないのではなかろうか、もう地球レベルで問題を考えるべきでございます。東西の冷戦は解消いたしました。対立からグローバルな協力へと大きく動いております。世界じゅうで協力と協調のうねりは高まり、我が日本も、経済面、資金、技術等の役割を果たしつつあるのでございますが、さらに世界から信頼される日本として、人を出し、汗を流し、お互いに助け合うユネスコの心でなければならない、私はかように考えるのでございます。  二十一世紀に向け、平和と安全の新しい秩序が模索される中、国際秩序のパートナーシップの構築が求められ、また国際連合の機能と権威を高めることにより平和を確立することが強く求められておる今日でございます。私は、我が国憲法を踏まえ、武力による威嚇または武力行使をしないことを前提に、PKO及びPKF協力法案制定に賛成するものでございます。  以上でございます。
  248. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 ありがとうございました。  次に、馬場亨君にお願いいたします。
  249. 馬場亨君(馬場亨)

    ○馬場亨君 馬場でございます。  それでは、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  本法案は、自衛隊海外派遣して武力行使を行わせるものであり、また、集団的自衛権を発動するものであって、憲法九条に違反し、また、日本国がなすべき国際貢献の方法をとるものではない、そのような理由から、反対立場から意見を述べさせていただきます。  本法案の問題点は多岐にわたりますけれども、時間の関係上、特に以下の点を指摘させていただきます。  本法案は、国連平和維持活動協力するための国際平和協力業務等を行おうとするものでありますけれども、その業務の中では、国連平和維持軍への参加が最大の眼目であると考えます。そして、この国連平和維持軍には自衛隊が部隊として参加することになっております。  この際自衛隊がなす装備については、法文上は何ら限定がなく、実施計画の定めるところによるというものになっているだけであります。ところで、本法案二十四条三項によりますと、自衛官は武器使用を認められております。本法案は、二条二項で「武力による威嚇又は武力行使に当たるものであってはならない。」と規定しており、また二十四条四項は、小型武器または武器使用は、刑法三十六条、三十七条の場合を除いては人に危害を加えてはならないと述べております。  しかしながら、子細に検討するならば、これらの規定は相矛盾し、理解のできないものとなっております。すなわち、武器使用を認めながらそれが武器行使に当たらないということは、現実には考えられないところであり、また、刑法に言う正当防衛、緊急避難に当たる場合には人に危害を加えてもいいというふうになっておりますけれども、これも現実の状況においては、そういった正当防衛ないしは緊急避難というふうな観念を成立させる余地があるかどうかということは非常に疑問であります。また、武器使用は、政府見解を基礎にして考えますと、必然的に集団的自衛権の発動を承認する結果になるというふうに考えます。  すなわち、そもそも平和維持軍が活動をするのは、常に非戦闘状態が崩れる危険性を内包し、それが十分に予測される地域であります。その意味では、完全な法秩序が成立していない地域であります。このような地域武力攻撃や戦闘行為が再開され、平和維持軍もその対象とされ、もしくは巻き込まれた場合、そういった攻撃行為に対して、通常の市民生活の場で考えられるような意味での違法侵害ということを考えることは非常に難しいものであります。そのような危険が予想されるからこそ、平和維持軍が駐留しているという状況があると考えます。  すなわち、国際紛争を解決する手段として相手方は戦闘行為をしかけるのであり、また、それに応戦するとするならばそれもやはり戦闘行為とならざるを得ない。そういう意味では、刑法が想定しているような市民社会の法理の働くべき場面ではないのではないだろうか、私はこのように考えます。したがって、これに対する防衛行為戦闘行為であり、隊員の武器使用日本国が国連平和維持軍に派遣した隊員の行動である以上、市民生活上の単なる個人の行動というふうにみなすことは御都合主義としか言いようがないのではないでしょうか。隊員の武器使用は、直ちに我が国の人的、物的な組織体による武力紛争の一環としての戦闘行為というふうに考えるべきであり、武力行使となるのであります。したがって、人に危害を加えた場合も正当防衛や緊急避難として違法性が阻却されるかどうかの問題ではなくて、むしろ戦闘行為としての合法性ができるか否かの問題であり、それはまさに憲法に直結してくるところの問題であると思います。このように、二十四条四項というのは一見限定しているようではあるけれども、それは余り意味のない規定になっているのではないかというふうに考えます。  さらに政府は、他国の隊員に関する場合であっても、実態上、自己等の生命等防衛のため、その範囲内で武器使用が行われることもあり得るとしております。だとすると、これは、外国軍隊のために日本の領域外において自衛隊が組織的な武器使用、つまり武力行使を行うものである、このようなものであり、不可避的に憲法九条が禁止している集団的自衛権行使するものとなってしまうのであります。  以上の点からいって、本法案は、修辞法によって、つまりレトリックによって海外での武力行使の目的を隠ぺいし、あまつさえ、いかなる意味においても憲法九条に違反するものであると考えられている集団的自衛権行使を容認するものであって、許されないものであると考えます。  ところで、本法案は、国際平和への貢献、協力を目的としております。しかし、本法案も、日本国の国家としての国際平和への貢献を目的とするものである以上、憲法の精神、制約を離れて行動することはできないと考えます。  日本憲法は、その前文で、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べ、憲法九条によって、国際紛争を解決する手段としての戦争武力による威嚇、武力行使を放棄し、その目的を達するためにいかなる軍隊も保持しないものと決断したものであります。このように、日本憲法日本国に軍備を持つことを禁じている以上、日本国がなす国際協力は非軍事の方法で行わなければなりません。非軍事の方法のみに制約されているものと解されます。  このことは重要な意味があると考えます。日本の過去の歴史を忘れない者にとっては、まことに明白なことだと思います。  すなわち、日本明治以降、西欧列強に経済的、軍事的に追いつくために富国強兵政策をとり、海外資源収奪のための海外侵略と軍国主義の道をひた走ってきました。そして、ついには第二次世界大戦においてアジアの諸国に重大な惨禍を残して敗北したのであります。  第二次大戦の大日本帝国のスローガンを思い起こす必要があります。その目的は、植民地の獲得と石油等資源の確保にあったのであり、掲げられたのは「五族協和、八紘一宇」「大東亜共栄圏」というものでありました。第二次大戦後、日本経済復興を遂げ、今日、対外資産は三千億ドルを超えて経済大国化し、海外権益は莫大なものとなっております。ことし四月のペルシャ湾への自衛隊掃海艇派遣が、国民生活、ひいては国の存立のために必要不可欠な原油の相当部分をペルシャ湾岸地域からの輸入に依存しているということを主要な理由の一つとして挙げてなされたことを思い出す必要があります。現在日本国が国際社会に対してどのような興味を示しているかが、このことによってよくわかると思います。すなわち、過去が教訓を垂れる現実がここにあるのではないでしょうか。  このような文脈に、本法案国際貢献の意図するところを見抜くかぎがあります。なぜ海外での武力行使を合法化したいのか。本法案の意図する国際貢献とは、日本海外権益の武力による防衛への突破口をあけることであるというふうに考えざるを得ません。すなわち、本法案国際貢献とは、言ってみれば「大東亜共栄圏」をさらに世界規模に拡大してあらわれた亡霊のように思われてならないのであります。これは日本の進むべき道ではないと考えます。  国際紛争は、各国民、民族の経済的エゴイズムによって起こされてきました。近代の戦争は、その規模を破滅的なものとしてきました。これは、裏返せば経済生活の浪費的膨張と関係していると考えます。物質的豊かさのみを追い求めてきた近代の惨禍であると考えます。このような反省に立つならば、真の、そして誠実な国際貢献とは、他国の資源を収奪せず、富が公平に循環し分配される方法であり、地球環境を破壊しない文化的な方法でなければならないと考えます。世界に自国の武力の認知を求めるような方法であってはなりません。そのことを日本憲法日本国と日本国民に求め、日本国を平和国家であるべく制約しているのであります。  法の規制に従って行動する国家を法治国家といいます。国は法に従い、法と国家は憲法に従う、これが法治国家であります。明治以降の国家的上昇志向意識をいまだ引きずり、大国としての自己顕示欲とさらなる経済的拡張欲を満たすために法意識を欠落させて、憲法を無視し空洞化する行動が国際貢献の美名に隠れて公然と主張され容認されるような国家は、法の支配のもとにある国もしくは法治国家とは言い得ないのではないかというふうに考えます。日本国が法治国家であることを証明するためにも、このような憲法違反の法律が成立することがあってはならないと考えます。  以上で私の意見陳述を終わります。
  250. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 ありがとうございました。  次に、菊地清明君にお願いいたします。
  251. 菊地清明君(菊地清明)

    ○菊地清明君 菊地清明でございます。  私は当地仙台の出身で、先ほどの藤原さんと同年でございます。  私は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に関し、賛成立場から意見を申し述べます。若干技術論を含めて申し上げます。  一、私の了解するところによれば、今回の国連平和維持活動等に対する協力に関する法律案、以下便宜上PKO法案と申しますが、前回廃案となった国際連合平和協力法案に関する国会審議の状況及びその世論の動向にかんがみ、今回の法案は、我が国の平和協力の対象を国連PKOに限定し、さらに国際緊急援助隊派遣に関する法律の改正等によって、国際緊急援助隊派遣に当たって自衛隊の部隊等を派遣することを認めております。この点において、前回の法案が多国籍軍、いわゆるPKOとは異なる多国籍軍に対する協力も認めておったのに対して、一つの違いであります。  また、国連PKOに対する協力に当たっては、いわゆる停戦監視団に対して国際平和協力隊、以下協力隊と申しますが、これを派遣するのみならず、平和維持隊本体にも参加する道を開きました。この点は、我が国の平和協力範囲を広げるものとして私が同感できるところでございます。  ここでちょっと注釈的に申し上げますと、PKOというのはPKF等を含む総称でございまして、PKOPKFというふうな言い方は正確ではありません。それから、もちろんこのPKOというのは多国籍軍とも違いますし、いわゆる国連憲章四十三条に言う国連軍とも異なっております。  二、私は、国連におりまして、かねがね我が国国連PKOに対して行った資金面及び資材面における協力に対する国連内部における極めて高い評価についてはよく承知しております。この面における我が国の貢献の最大なるものは、国連PKO特別分担金に対する我が国の任意拠出金でありまして、その額はアメリカに次いで二番目でございます。さらに、個々のPKOに対して任意拠出、特にいわゆる立ち上がり基金に対して相当額の拠出をいたしております。  これらの我が国の任意拠出が現地の各国の部隊司令官によっても高く評価されていることは、昨年二月初め、私が外務省の委嘱を受けてシリアのゴラン高原、イスラエル、レバノン暫定国連軍、キプロス島における現地平和維持軍の活動状況をつぶさに視察いたしましたときに、実際に見聞いたしたところでございます。  三、このように、PKOに対する我が国の金及び物による貢献は確かに国際的に評価されているのですが、冷戦終了後の今日、ますますその活動を必要とされている国連PKOに対する我が国の貢献は、それだけで果たして十分でありましょうか。  ここで、人による貢献という場合には二つございます。それは、軍人、我が国の場合は自衛隊員ですが、それとシビリアン、非軍人とがあります。シビリアンの派遣については、我が国は既に、国連アフガニスタン・パキスタン仲介ミッションやイラン・イラク軍事監視団に対する政務官の派遣、ニカラグアやナミビアに対する選挙監視員の派遣等によって実績を上げております。ただ、これらの活動はいわゆる本来の意味PKO活動ではありません。伝統的なPKO、つまり平和維持隊や停戦監視団に対して派遣する要員は、事の性質上、軍人ないしは軍人としての訓練を受けた人でなければならないということがあり、現に各国とも軍隊を派遣しております。そこで今回の法案は、自衛隊員総理大臣のもとにおける国際平和協力本部に配属し、協力隊員として派遣することを可能ならしめようとするものであります。  四、自衛隊員を平和協力隊員という形にしろ海外派遣することに関しましては、たとえ武力行使を目的としない場合でも、過去の国会決議、例えば昭和二十九年の参議院決議、自衛隊海外出動を為さざることに関する決議等があります。また、憲法上の問題がないとしても、自衛隊海外派遣自衛隊法上も防衛庁設置法上もこれに関する規定がないということで、現在までPKOに対して自衛隊員派遣する、直接間接派遣するということはございませんでした。しかし、湾岸戦争以来次第に国民の意識の間でも明確になったことは、本来のPKOに対する要員は軍人でなければならないこと、またPKOのメンバーは武力行使をそもそも認められておりません。そもそもPKO派遣されるのは、紛争当事国の間で既に停戦が成立した後のことであります。したがいまして、原則として武力行使の必要がないという状況のところへ派遣されるものであります。  ただ、ここで問題になったのは、平和維持隊の場合は小型火器の携行を認められておりますので、これを自己または他の隊員、他の隊員というのは外国の隊員ではございません、日本の同僚の隊員の生命または身体を防衛する場合、この場合はよいのですが、それ以外の場合、例えば国連のSOP、標準活動手続で認められている、国連部隊に対する攻撃やPKO活動に対する実力による障害があった場合、それを排除するのに武力行使を認められるかどうかということであります。  この問題を解決するため、日本政府はいわゆる五原則、正式の名称は平和維持隊への参加に当たっての基本方針なるものを定め、この原則が守られないような状況に陥った場合には我が協力隊員は業務の中断を許されるし、それが長期化するような場合には協力隊は撤退することも自由であります。この点は、私もよく承知しておりますPKOの父と言われるブライアン・アークハートという前国連事務次長も確認しております。  なお、自衛隊員協力隊員として派遣する場合に、その実施計画の事前及び事後の国会に対する報告のほかに、国会承認を求めることによってシビリアンコントロールを確保すべしという議論がなされております。この点に関しましては、私は、三権分立の見地からいってもその必要はないと思います。また、私が必ずしも納得できませんのは、シビリアンコントロールという言葉が、何か国会承認と同義語として用いられ、かつ論じられていることであります。  以上によって見ますれば、PKOに対する協力隊員の派遣に関する憲法上、法律上の問題はすべてクリアされたものと考えております。  五、次に、自衛隊員が国際平和協力隊員として海外に出ていくことに関し、アジア諸国国民の感情問題を考慮すべしと言う人があります。しかしこれは、反対論者の、ためにする議論としか言いようがありません。私の国連における経験その他からいいまして、そう申し上げられます。あるいは中国や韓国の人々の発言を引用されるかもしれません。しかし、中国は、既にエルサレムにあります休戦監視団に人を派遣しておりますし、今回のイラク・クウェートに関するPKO、つまりUNIKOMと称するのですが、それに対して既に軍人を派遣しておりますし、韓国は、今回国連の正式加盟国になりましたので、いずれPKO参加することも考えないわけではございません。そういうことになりますと、自分がやるのはいいが日本がやるのはいけないということは言えないでありましょう。中国の場合、私の承知する限り、中国外交の最大の原則は内政不干渉であります。この原則は、この場合も適用してもらいたいものです。  六、最後に、今回の法律が成立すれば、今後日本はじゃんじゃん国連平和維持隊や停戦監視団に自衛隊を出すのかということですが、私は必ずしもそうではないと思います。いつでもPKOに対して人を出せるように国内の法律体制を整えておくことは、絶対に必要でございます。しかし、現実に派遣する場合には、日本に最も適したPKO、また、本来のPKOに出すか、それとも選挙監視にシビリアン、文民を出すか等々の問題は、そのときどきに応じて判断をすべきだと思います。  また、我々が絶対に忘れてならないことは、今後日本PKO協力する場合、日本が最も得意とし、また国際社会からも最も評価される分野で行うべきであると思います。その分野とは、過去においても、また将来においても、日本の資金的協力や物資協力であるということであります。今度この法案が成立した場合、人を出せるようになるのであるからもう資金面は減らしてもよかろうなどということになったら、せっかく国際平和協力の幅を広げようと願っている日本国民に対する国際評価は、下がることはあっても上がることはないでありましょう。  以上をもって、私の意見陳述を終わります。
  252. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 ありがとうございました。  次に、山田忠行君にお願いをいたします。
  253. 山田忠行君(山田忠行)

    山田忠行君 私は、今、ある女性が詠んだ   徴兵は 命かけても はばむべし   母 祖母 女(おみな) 牢に満つるとも という短歌を思い出しております。今、国会で審議され、本公聴会で意見を求められている国連平和維持活動協力法案は、それ自体憲法に違反する自衛隊海外派遣を意図するという点で二重の憲法違反を犯すものであり、徴兵制や国家総動員体制の再現につながりかねない危険性を持つと考えるからであります。この法案を成立させ、自衛隊海外派遣を許すことは、平和憲法の終わりの始まりになりかねないと危惧するからであります。  これまで政府は、自衛隊の任務は我が国の防衛のためのものに限られており、自衛のための戦力の保持は認められるはずであると強弁してまいりました。そして、自衛のための戦力の程度やその行使範囲を次々と拡大してきたことは、よく知られたことであります。  しかし、こうした政府でさえ、これまで自衛隊海外に部隊として出動し、武力行使を行うことは憲法上許されないとしてきたことは、公知の事実であります。現に昨年、国連平和協力法の審議において、首相や法制局長官などが、国連平和維持軍への自衛隊参加憲法上問題があると発言してきたことは、記憶に新しいところであります。  法案の具体的内容について申し上げます。  政府は、武器使用の制限、合意、同意、中立、撤収の五原則があるから、憲法の禁止する「武力行使」にはならないとしております。その誤りについては、二十二日の公聴会で山内、森両教授などが詳しく指摘しておられますので、私は幾つかに絞って意見を述べさせていただきます。  一つは、自衛隊海外派遣が、停戦監視団や平和維持軍、PKFへの参加に限られていないということであります。  法案第三条第三号は、実に十六種類もの平和協力業務を規定しており、そのすべてに自衛隊派遣が可能とされています。しかも、同号レは、政府判断で幾らでも拡大解釈が可能なように、「政令で定める業務」についてまで自衛隊派遣できるようになっています。この法案は、PKO法案という略称では賄えないほどの広い範囲自衛隊海外派遣を可能とするものになっているのであります。  二つ目は、武力紛争発生前の自衛隊派遣、すなわち、事前PKOへの参加が可能であるということです。  法案第三条第一号は、武力紛争発生していない場合においては、紛争当事者全部の同意や合意がなくとも、平和維持軍等を受け入れる国の同意さえあれば国際連合平和維持活動とされることになっています。しかも、武力紛争発生前ならば対立する国同士は紛争当事者とは言えませんから、「いずれの紛争当事者にも偏ることなく」という中立の原則意味を持たないことになります。国会における審議でも、政府は、停戦の合意がない武力紛争発生以前にも法案の規定に従って参加する、また、当事者間の同意がなくても国連事務総長の要請があればPKO参加の検討の対象になるなどと答えております。これを湾岸戦争の場合に即して考えてみれば、イラクによるクウェート侵略の後、サウジアラビアへの侵略の拡大を防ぐためとして、サウジアラビアに展開される多国籍軍自衛隊参加しイラク軍と対峙するということも、国際連合事務総長の要請さえあれば可能であったということであります。  事前PKOは、いつ武力紛争が起こるかわからない地域への派遣であります。一たん武力紛争発生すれば、流血の事態も避けがたいことになります。停戦の合意も紛争当事国の同意も要らない事前PKOを認めるなら、政府の言う五原則は、歯どめとして何の意味も持たなくなります。  第三に、法案は、自衛隊自衛隊員ばかりでなく、広く国民をその意思に反して危険な武力紛争地などに動員するものです。  法案第十二条によれば、本部長、首相が「協力隊が行うものを実施するため必要な技術、能力等を有する職員」の派遣を各省の長に要請することができ、この要請に基づき派遣された国家公務員は、平和協力隊員に任用され、国際平和協力業務に従事することになっております。そして政府は、こ、の命令は職務命令であって拒否できないと答弁しておりますから、この派遣を拒否することは、免職を含む懲戒の対象となります。  地方自治体職員や民間労働者も安全ではありません。  法案第二十六条は、役務の提供などについて地方公共団体や民間企業などに協力を求めることができるとしています。私は、これをもとにして企業などから派遣の業務命令が出た場合でも、労働者はそれを拒否できるし、拒否を理由とする解雇等の処分は無効だと考えます。しかし、他に例のないほどの長時間、過密労働を強いられ、過労死が国際語になるような現在の我が国の労働者の状態や、長期の単身赴任を合法と見る判決が横行する司法の現状などを見るとき、実際には多くの労働者がその意思に反して派遣に応じさせられてしまうことを恐れます。  こうして、医師、看護婦などはもちろん、船員、航空、トラック労働者、通信労働者、土木建築労働者などなど多くの国民が、戦場あるいは紛争地、紛争が予想される地域に動員されることになります。しかも、法案第二十三条は、ピストル、小銃等の小型武器での武装を余儀なくされる事態まで想定しているのであります。医師などがピストルを与えられても、一体どうやってその身を守るというのでしょうか。なれぬ手に武器を握らされ、身を守るどころか、かえって命を落とす可能性の方が大きいのではないでしょうか。無事帰国しても、自分がしなければならなかったことを思い悩む人生になるのではないでしょうか。人間的な精神を踏みにじり、生命を危険にさらすことを国民に強制する法案は、「その意に反する苦役」を強いるものとして、その点でも憲法違反であると思うものであります。  この間、特に湾岸戦争発生後の事態や国会での審議を見ていて疑問に思っていることが三つあります。  一つは、政府が、何がなんでも自衛隊海外に出したがっており、そのためにはなりふり構わない態度であるということです。  本来国賓等の輸送のための自衛隊法第百条の五について、特別の政令をつくり避難民輸送のために自衛隊機を中東に派遣しようとしたり、第二次大戦のとき多数敷設された日本近海の機雷を除去するための掃海業務について定めた自衛隊法第九十九条を拡大解釈しての、掃海部隊のペルシャ湾派遣はその一例であります。いずれも、憲法はもちろん自衛隊法への適合性さえ論議を尽くさず、十分な国民的合意を得ないまま強行されました。広島の弁護士などがチャーターしたヨルダン航空によるイエメン人難民の輸送は、避難民輸送には自衛隊機は必要なく民間機で十分できることを証明し、特別政令は一度も発動されることなく効力を失いました。掃海部隊の派遣には、アジアの各国から深刻な危惧の声が上がりました。それにもかかわらず、それらを何ら反省することなく、さきに国民の強い反対廃案となった国連平和協力法をより改悪した形で再提出した政府の態度に、強い憤りを感ずるものであります。  二つには、政府の秘密主義とも言える対応であります。  法案の重要な特徴の一つは、いろいろな定義や要件が書かれてはいますが、多くの場合、国連の取り決め、行動と連動して解釈されることになっていることです。つまり、法案の大事なところが白地になっており、この空白の部分は、国連平和維持軍の実際の取り決めや運用を見なければならない仕組みになっております。そして、マスコミなどで、国連の作戦規定、SOPガイドラインは、国連要員の命への脅威にとどまらず、国連全般の安全が脅威に直面した場合や任務の遂行に対する妨害がある場合にも武力行使を認めている、国連に対して適切な事前通告なしに要員を撤収してはならないと定めていると報じているにもかかわらず、政府は、PKO訓練マニュアル、作戦規定・SOPガイドラインなどの文書を国会にさえ提出することを拒んでいます。  三つ目は、本法案が意図的な誤訳や詭弁から成り立っているのではないかということです。平和維持軍を平和維持隊としたり、武力行使武器使用と言いかえてみたり、市民間の防衛行為などを対象とした正当防衛の法理を軍隊の戦闘行為に無理やり適用しようとしていることなどであります。この法案作成には内閣法制局など多数の法律家が関与しているものと思われますが、このようなことを恥ずかしげもなく行う彼らや政府に対し、同じ法律家として激しい憤りを禁じ得ません。こうした政府の態度に、国民を真実を知らせないまま有無を言わさず侵略と国民犠牲の十五年戦争に駆り立てていった戦前の政府と共通のものを感じるのは、私だけではないと考えます。  かつてシンガポールのリー首相は、自衛隊海外派遣を認めることはアルコール中毒患者にウイスキーボンボンを与えるようなものであると言いました。今回の法案提出について韓国の外相が、PKOへの自衛隊派遣武力行使可能性を内包しており、隣接するアジア各国の憂慮を勘案して慎重に対処することを期待すると発言しています。多くのアジアの国々は、過去の日本による侵略を決して忘れてはいないし、許していません。この法案は、そのアジアを初め世界の各地へ再び日本の軍隊を派遣しようとするのにほかならないものであります。  かつて日本の侵略に苦しめられた世界の人々に信頼されるためには、世界に誇るべき平和憲法を持つ国としての貢献、平和的な国際貢献こそが今日本に求められています。日本がその経済力を活用して災害や貧困に苦しむ人々を援助し、温暖化、砂漠化、オゾン層の破壊などの地球的規模の問題解決に力を尽くすこと、戦争や紛争を起こさないための外交的イニシアチブを発揮することこそが求められているのだと思います。  憲法第九十九条は、国会議員などに特別の憲法擁護、尊重の義務を規定しています。議員各位がその義務にふさわしい役割を果たされること、すなわち、本法案憲法適合性を厳格に審査されてその義務を果たされることを心から期待して、私の陳述を終わります。
  254. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 どうもありがとうございました。  以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  255. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。質疑、答弁は、これを着席のまま行います。増子輝彦君。
  256. 増子委員(増子輝彦)

    増子委員 自由民主党の増子輝彦でございます。  本日は、六名の意見陳述者の皆様方においでいただきまして、本当にありがとうございました。限られた時間でございますので、できるだけ皆様方に意見の開陳をお願いしたく、質問を申し上げたいと思います。  戦後四十六年たちました。本当に日本は、世界の中で重要な立場を占める国になってまいりました。それは、多くの先輩の皆様方あるいは国民が一丸となって、英知を結集して、平和を願い、平和をつくる努力をしながら、日本人のすぐれた技術力やあるいは努力によって今日の繁栄が築かれてきたと思っております。日本が国際的な立場の中でどのような方向に進むべきか、どのような国際的な貢献をするか、今これが大きく問われている大事な時期であろうと私は認識をいたしております。  さきの湾岸戦争で、実は日本世界でも一番多くの経済支援をしたわけでございますが、世界各国のそれぞれの国の認識の中で、日本は本当に国際的な貢献を十分に果たしているんだろうか、そういう疑問も呈されていることは大変残念でございます。しかし、一部の国々の認識不足もございましょうが、日本が今そういう評価を受けているということは、世界一の経済大国になった、世界一の経済繁栄をする国になった、お金だけを出せばいいのかというような御批判は私どもも謙虚に受けとめなければならないと認識をいたしているところでございます。  多くのあの忌まわしい大戦を経験した方々のお考えをお聞きしますと、本当に戦争というのはいけない、戦後四十数年たった今日、この平和をどうしても持続して、さらなる努力をしていかなければなりませんよという多くの先輩の声があるわけであります。そういう中で、今後日本がどういう方向に進むべきか、特にきょうおいでの方の中でも、日本の戦後の経済復興のために大変努力をされ、そして地方経済の中にあって地域格差を是正しながらその経済の伸展のために努力をされてまいりました藤崎さんにお伺いをいたしたいと思いますが、今日の日本のあるべき国際的な貢献という観点から、あるいは経済繁栄を今日までするに至ったその努力の過程の中で、日本はどういう立場に進むべきか、またどのような国際的な役割を果たすべきか、御意見をお伺いいたしたいと思います。
  257. 藤崎三郎助君(藤崎三郎助)

    ○藤崎三郎助君 先ほど私が意見として陳述いたしましたのは、時間の制約もございますし非常に簡単でございましたので、意を尽くさない点が多々あったと思いますけれども、今、増子先生の御質問の中に、日本世界第二位の経済大国になって、そのいわゆるエネルギーと申しますか活力というのは、恐らく世界最大級のものになっていると思います。たまたま我々は余り知らされていなかったんでありますが、今の菊地先生が国連の大使をなすっていらっしゃったのですけれども、例えば日本が国際連合が行っております文化活動にはかなりの資金を出しているということは、後で伺ったんであります。我々日本国民としては、どういうことにどれだけ使ったということは十分知らされていないんでありますけれども、我々もそれで日本の国際活動というのは金銭的には相当やっておった、それは今の湾岸戦争のお話をまつまでもなくある程度理解はいたしておりましたけれども、日本が発展するに至った大きな理由の一つは、国際関係が少なくとも日本に関しては安定しておったということでございましょう。日本の周辺が国際間の治安が非常に悪ければ、日本経済活動は恐らく相当重大な打撃を受けていたものと思います。  先ほど、湾岸戦争日本の海上自衛隊が出て機雷を除去したことについていろいろ御発言もあったんでありますが、日本の近海において機雷が敷設されてそれを除去するのと、ペルシャ湾まで行って機雷を除去することとの間に本質的な違いがない。なぜ違いがないというふうに私は解するかと申しますと、これは、石油の産出地でありますアラビア湾、あの辺というものは、世界的なエネルギー源の輸送のためにたくさんのタンカーが入っておるわけでありまして、これは日本のエネルギー源を確保するために必要であることももちろんでありますけれども、それは、日本の国のすぐ周りに機雷を設置された場合と全く同じであります。それは、あそこからしか日本に石油を運んでくるということは現在ではないでありましょう。あるいは北米にも油田はありますし、それからそのほかにも、インドネシアにもあるかもしれませんが、恐らく船を通して来る場合の通路というものは一定されておるわけであります。ですから、日本のすぐ周りの機雷を撤去することは構わないけれども、あちらは何か、いわゆる侵略行為に近いというようなことは全くないのでありまして、機雷原の撤去ということはどこも同じだろうと思います。  そういう意味において、私はこの前の自衛隊の機雷の撤去に対する派遣がスムーズに、円滑に、かつ事故もなくいったということは、これはまことに日本として大慶至極でありまして、日本海外活動としてその実力とその能力というものを出すならば、私はこういう方面にも当然日本の力を出していくべきではないかと思います。  ということは、今の世界関係というものは、何一つその国だけで決定することはできない。例えば、今このPKO法案内容についていろいろ詳しいお話がございましたが、その技術的な問題はともかくとして、国際的に紛争が起こった場合、その紛争の起こった当事国はもちろんでありますが、その影響を受けるのは、世界影響を受けるわけでございます。そして、その紛争の起こる場所というのは、特別な限定された利害のあるところは別でありますけれども、もしそうでなければ、世界的に利害のあるところに紛争の起こる可能性は幾らもあるわけであります。その一つの例が湾岸戦争でありまして、恐らくあれはそういうところのねらいがあってあの紛争が起こったと思います。  湾岸戦争日本参加する、しないというお話があったのですが、日本は当然あんなものに参加する必要もないのでありまして、それは当事国において解決さるべき問題であって、しかも、その解決の方法が、いろいろ御意見もありましたけれども、私はあれが、今回国連の機能が回復したということを申し上げた大きな理由であります。  あれが従来であれば、常任理事会における拒否権の発動によって、恐らく、ソビエトか中国かわかりませんが、あそこに対する国連軍的ないわゆる多国籍軍派遣というものは、これはアメリカ一国だけが無理やりやれば別でありますが、それはできなかったでありましょう。となれば、これはイラクの大統領のねらいのとおりでありまして、そして、これは何かといえば、結局世界の石油価格のコントロールをイラクが独占することに近いことになる。これは邪推ではございませんで、恐らくそういうことがねらいであったろう。そうでなければ、ああいうことをイラクがやるわけがないのであります。  だから、そういうことを考えましても、いわば微妙なところにおいてどういうことが起こるかということは、ソビエトの力が弱り、それから、それに伴ってアメリカも国際的な軍事活動ができないであろうという想定のもとにあのことが起こったということは、ある意味においては私は正しい見方ではないかと思う。ですから、国連が今回、あの常任理事会においてイラク非難の決議、イラクを非難することがいいとかなんとかではなくて、国連としての意思が決定できたということは、国連が始まって以来のことであろうと思います。朝鮮戦争のときに国連軍というのが設定されましたが、あのときはソビエトが欠席をして国連に対してボイコットをしたということが大きな決定の原因でありまして、それは要するに両超大国の利害の対立の方式のいかんによってそうなっただけの話でありまして、私から言わせれば、あれは本来的な国連の機能を果たしていなかったということが言えると思うのであります。  ですから、今度初めてそういうことになったんでありまして、我々はこの事態を十分認識しなければならぬ。それは憲法の条文とかその他たくさんございましょうが、それを四十何年も同じ解釈で同じ考えでもって、しかも日本国民相互の間における不信感を持ってこれを解釈していくということはできない。政府を信用せず、そして日本の行政を信用せず、そしてそれはすべて拡張解釈されるという、これは私の考えからいけばまさにちょっと神経衰弱的な考えであろうと思うのでありまして、日本はそこまできゅうきゅうとして世界の反響に畏怖するだけの必要はもうなくなっているんじゃないか。その証拠に、今もお話ございましたように、国連の中においても日本の評判というのは決して悪くないでありましょう。  ただ、さっきも私の意見の陳述の中に申し上げましたけれども、なぜ日本の行動が常に周りのアジアで危惧の念を持って見られるかというと、日常において日本活動を、いわゆる災害復旧とか災難の起こった場合にそれの復旧とか援助をするということをしていない、わかるところの援助をしていないということでございまして、例えばバングラデシュですか、あそこの大水害のときに日本がもし、これは自衛隊でも何でもいいのでありますが、相当な人を派遣して援助活動をすぐする。それから、フィリピンのピナツボ火山のときのあの大災害、これはアメリカ軍の基地もありましたからアメリカがやってもいいのでありましょうが、もし日本がそこに、ある組織された人を派遣してこれをやる場合に、私はもうそれが日本海外侵略の前駆であるなどということはだれも言う人はなくなってくるだろうと思うのであります。それを日本がしていないために、そういう危惧の念が海外の新聞論調あるいは個人的な見解ということで出てくるのでありまして、そういうことは今後だんだんとなくなるという世界的状況の中で、日本はもう少しそういう積極活動をすべきである。  このPKO関連法案でございますが、それはいろいろ法理的には、私は法律家じゃございませんからわかりませんが、細かいところを審議すればいろいろございましょう。しかし、そういうものは直すべきであって、直していけばこれは立派なものになると思いますし、そこで私は、国際的な協力をこういう形で国外においても日本が組織的活動で示すという必要がもう時期的にあるので、こういうことをすることが今後日本世界に尽くす道の一つではないか、かように考えておるわけでございます。  今まで日本はたまたまの幸運、そういうことに恵まれて経済にのみ専念をしてまいったということでありますけれども、既に日本の使うエネルギー源、このことを一つ考えましても、これから大事な問題が幾らも出てくるだろう。そのときにやはり国際的な評価あるいは国際的な利害というものを日本は十分考えていかなければならないのであって、こっちまではやるけれどもこっちまではできませんというようなことでは、世界における大国の一つとしての日本の存在が非常に云々される状況が出てくるであろうと私どもは思います。今は経済問題だけに日本の非難ということが出てまいりますが、これがほかの面においても、社会的な面あるいはいろいろな我々の想像外の点において日本が非難されるようなことになることを我々は危惧いたします。
  258. 増子委員(増子輝彦)

    増子委員 ありがとうございました。  まさしく経済支援ということだけではないものが必要だということが今理解されましたけれども、藤原先生にちょっとお伺いをいたしたいと思いますが、PKO武力行使のためではなくて、停戦後の平和維持をするんだということが前提でございます。戦争をしに行くとか武力行使をするんだという、そういう前提ではなくて、やはりこれは本質はもう平和維持活動でございますから、そういう中で、長くユネスコを今までやってこられた、特に仙台は民間ユネスコの発祥の地として大変私ども敬意を表しますし、また各国からいろいろな賞も受けられている。そういう経験を通しまして、藤原先生、日本がいわゆるユネスコPKO、いわばこれは国連への協力の車の両輪のようなお話を先ほどされたと理解をいたしておりますが、この件につきまして、国連の機能というものが今後国際平和のためにどのような役割を果たすことになるのか、あるいは人の面での協力がいかに重要かということをこのユネスコ活動を通しながら、ひとつ具体的に説明をしていただければ大変ありがたいと思います。
  259. 藤原五郎君(藤原五郎)

    ○藤原五郎君 先生から今お話がございましたように、先ほどは私、今回提案されましたPKO法案及びその関連法案で、PKFの問題について、さらにユネスコとのかかわり、言うならば共存するということが非常に重要な役割を果たすんだという意味のことを申し上げたのでございます。  さらに、これをもう少し砕いてまいりますと、世界湾岸戦争を契機といたしまして、国連の果たすべき役割、言うならば国連中心主義というような方向に移行しているのではなかろうか、かように考えるのでございます。特に、この湾岸戦争において各国の果たした役割というものは、既に諸先生からお話がございましたように、我が国におきましては九十億ドルという非常に大きな貢献をしました。そしてまた、国連の費用におきましても、アメリカに次ぐ大きな費用を出しております。それからPKOの、国連平和維持活動の費用もアメリカに次いでおりますが、ユネスコは、先ほどお話がございましたように、我が国世界第一位の拠出をいたしておるのでございます。しかし、他の国から必ずしもそのように評価されておらない。これは先ほど来私が申し上げましたように、日本は金を出しても血を流さない、汗を流さない、人を出さないというようなことの批判につながるのじゃなかろうかというふうに考えるのでございます。  もう日本経済大国に大きく成長いたしました。かつて日本が厳しい時代に、各国から非常に大きな援助をいただきました。俳優の杉良太郎先生は、国際識字年のユネスコ活動でよくこういうことを言っております。自分は俳優として活動しているが、少しでもユネスコ活動あるいは国際識字年の活動の御協力をしたいと思うので、勉強してみたら、周恩来首相が終戦直後、スプーン一杯の食糧を日本人にささげようじゃないか、こういう意味の運動をなさった。言うならば敵国中国として何年もじゅうりんしてきた中国からそのようなことが生まれてきた。それで、しかも日本人はそういうことを果たして思っているだろうか。今こそ経済大国になった日本世界に恩返しをすべき時期ではなかろうか。  まさに日本国内は飽食の時代というふうに言われております。しかしながら、今なおアフリカ、あるいは戦争が生まれますと、難民などの、かかわりのない、大きな犠牲者が生まれてまいります。そして、そういうものをなくすようにするのがユネスコ活動であり、PKO活動ではなかろうか、かように考えるのでございます。  したがいまして、ちょっとした紛争の中にも早目に入って、そして戦争を拡大しない、あるいは戦争が起きたら極力小さいうちにそれを消しとめるというような非常に大きな役割がある、かように考えるのでございます。  さらに、医療機関等によって、疫病が蔓延しないように、あるいは環境問題、そういう問題からもどんどん積極果敢に貢献するのがもう既に日本の、日本人としての責任ではなかろうか、かように考えるのでございます。  以上でございます。
  260. 増子委員(増子輝彦)

    増子委員 次に、菊地先生にお伺いをいたしたいと思います。  長い間国連大使として御活躍をされてまいりました。先ほど、国連の中で、日本もお金、物の貢献については大変評価をされているというような話も伺いました。  今回のこのPKO関連法案でございますが、これは、あくまでも自衛隊参加するのは軍事力集団として参加をするのではないという点がちょっと世間の方で誤解されている部分があるのではないかというように心配するわけでありますが、これはあくまでも平和の回復、維持に重要な役割を果たすということが強調されなければならないと思います。  そういう中で、武力でなくて、国連という普遍的機関の道義的重みで解決をしていくという中で、この自衛隊参加するということの意義、そしてまた武力行使をするものではない、先ほどシビリアンの問題をいろいろお話をされましたが、あくまでも平和時の中で軍事力集団として参加をするのではないというところの観点から、先生の今日までの国連における活動の中で、もう一度この辺をわかりやすく御説明をいただければ大変ありがたいと思います。
  261. 菊地清明君(菊地清明)

    ○菊地清明君 自衛隊PKO参加するという場合も、自衛隊がそのままストレートに参加するわけではないわけですね。あくまでも平和協力隊員として参加するわけです。ですから、軍事力集団として参加するわけではないことは当然であります。それから、もちろんPKOというものは、そもそもは武力行使は禁じられているわけです。原則禁止なんです。その点は幾ら強調しても強調をし過ぎることはないと思うのですけれども。  ただ、しからばなぜ軍人だということになるのですが、これについては、第二代目の国連事務総長にダグ・ハマーショルドという人がいますが、この人はいわばPKOに関するいろいろな準則を詳細に決めた事務総長ですけれども、彼はPKOのことを、PKOは軍隊の仕事ではないとはっきり言っている。しかし、軍隊だけができる仕事であるということを言いました。これは大変PKO性格を描写するのに言い得て妙だと思うのですけれども、軍事行動ではない、しかし、これをやるためには軍事的な知識、経験が必要だ、ですから軍人だけができる仕事であるということを言っています。  それは、先ほど来話もありましたけれども、何といってもPKOというのは、二つの当事国が、紛争当事国が戦争した後に、停戦が成立した後に派遣されるわけですから、ちょっと生々しく言えば、まだ硝煙が冷めやらぬというようなところですので、どうしても軍事的な知識のある人の方が、停戦監視なり、兵力の撤退の監視なり、紛争の再発の防止とか、そういうものに対しては非常に適している。  それから、では、なぜ武器を携行するかということになりますと、これはつまり抑止力といいますか、抑止力として持っているわけでありまして、これは何も使うために携行するわけではない。一つは、本当に急迫の危険に対して自己防衛をするという場合と、もう一つは、やはりそういうものを持っていることによって抑止力があるということです。  それから、もう一つ問題になり得ると思うのは、停戦が成立した後だから、いわゆる武力攻撃といいますか、実力をもってする攻撃が平和協力隊員に加えられるということはないではないかということがよく言われるわけです。それはそのとおりなんですね。両紛争当事国が停戦に合意しているわけですから、そこの間に割って入るPKOに対して武力をもって攻撃するというようなことは原則としてないわけなんです。ただ一つ、レバノンなんかで起きた問題は、紛争当事国の軍隊ではなくて、国内のゲリラみたいなもの、これがちょっと暴発しましてPKOの隊員に対して危害を加えるとかいうような危険性はあり得るわけです。ですから、考えられる自己防衛のための武器使用というのは、ほとんどそういうときしかあり得ないのですね。本当にその紛争当事国がPKOの隊員に対して攻撃を加えるという状況になるのは、もう停戦協定が破られたということですから、そのときは、法案に書いてありますように、「業務の中断」なり「撤退」なりができるということだと思います。ですから、PKOというのは武力行使は禁じられているんだということは、これは記憶するに値すると思います。
  262. 増子委員(増子輝彦)

    増子委員 ありがとうございます。  あたかも今回のこのPKOに関して、特にPKFをめぐっては、軍事行動がとられるという前提で議論がなされているということが大変残念なことでございますが、今までのPKF歴史的なものをひもときますと、軍事行動を目的とするものでないということはこれは当然でありまして、既に七十カ国、五十万人以上の方々がここに参加をしているという話、先ほど藤原先生の方からもユネスコと対比しながら話がございました。例えばオーストラリアの例をとりますと、十八年間一発も発砲したことがない。あるいはフィンランドにおいては、これまで人員をねらって実弾を発射したことがない。あるいはイタリアにおいては、武器使用したことはない。ポーランドにおいても、一度も戦火を交えたことはない。デンマークにおいても、人員をねらって実弾を発射したことはない。これはずっと今までの歴史が証明しているわけであります。こういう中で、自衛隊参加は当然であろうというふうに私は思うわけでありますが、このような平和維持活動のために自衛隊が出ていく、これはやはり組織力と装備あるいは施設、自分で自分を維持し、自力だけで人々の救助を行える能力がなければならないということは、これは当然なことでございます。  そういう意味で藤原先生にお尋ねを申し上げたいと思いますが、この自衛隊PKOPKFに対する参加という形の中で、これは当然、先ほどのやはりユネスコPKOは平和の両輪だという観点から、この自衛隊参加についてのお考えを、ただいま私が申し上げたような観点も含めながらひとつ御意見をお伺いできればありがたいと思います。
  263. 藤原五郎君(藤原五郎)

    ○藤原五郎君 御指名でありますので、お答え申し上げます。  まずPKOの関連法案の中におきますPKF、言うならば自衛隊参加はという意味でございますが、私は先ほど自己紹介の中に申し上げましたように、第二次世界大戦で最も体験した中の一人であります。これは戦争のさなかにおいてまともに、本当にもう生死を越えてまいりました。多くの人々が山に海に、そして散っていったのが今も目の当たり、まぶたに浮かんでまいります。そして、平和を維持するために自衛隊参加するとあたかも戦争に行くごとく考えるのでありますが、これは自衛隊以外に私はとてもできないのではないか。  はっきり言いますと、それでは一般の人たちを募集して、どのような形で募集していくのだろうか。まず募集することも、そしてまた仮に行っても、教育も組織もできておりませんから、現実的にはその協力体制もできない。それよりも、やはり日本国民の血税によって養成され、血税と言うと大変自衛隊に失礼ですけれども、血税によって運用され、そして育成され訓練された自衛隊をそのまま使うということは、これは日本にとっては、日本国民にとっては非常にいいことではないかと思います。  ただし、抑止力の問題でございますが、憲法上の制約もございますので、もちろん武器を持っていく、抑止力程度の自己防衛上の、言うならばけん銃とかあるいは自動小銃程度の抑止力、自己防衛上の武器の携行はやむを得ないと思うのですが、攻撃的武器を持っていくというと非常に誤解を招くし、また一つの紛争に入る可能性もなきにしもあらずというようなことで、自衛隊参加には問題はございませんけれども、今申し上げましたように、武器使用については、これは携行することはできない、このように解釈しております。
  264. 増子委員(増子輝彦)

    増子委員 ありがとうございました。  終わります。
  265. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 次に、山中邦紀君。
  266. 山中(邦)委員(山中邦紀)

    山中(邦)委員 公述人には大変御苦労さまでございます。私、山中邦紀でございます。お隣の岩手一区から出てまいっている者でございます。  ただいままでいろいろ拝聴いたしておりまして、恐らく国民の世論の中で、国際貢献あるいは世界的な視野に立った平和主義の積極的な推進、これについては異論はないのであろうというふうに思っております。ただ、それをどういう方法でどういう立場で実現するか、そこが問題であろう。憲法は前文だけで成り立っているわけではないわけでありまして、本文とも一つの体系をなしているわけでありまして、やはり法の支配というのは非常に重視をすべきものではないか。国会承認につきましても、シビリアンコントロールはいろいろなレベルの問題があろうかとは思いますが、我が国憲法が軍隊の保持について触れていない、むしろ禁止をし、全然その統制問題に触れていないということにかんがみますれば、やはりこの法案を仮に生かすとしても、国会承認というのはそういう事態にかんがみましては必要不可欠のものと私は思っております。  それで、佐藤公述人にまず数点お尋ねをしたいというふうに思います。  一つは、この法案を検討されるについて、お話を聞いておりますと、何人かの友人の方ともともに検討されたように思うのですね。そうして、話の最初の部分で、わからないところが多過ぎる、こういうお話でございました。これは憲法との関連とか、この法案が考えている仕組み、そのあり方、存在理由についてのお話と思いますけれども、こういう大事な法案、これは公述人が一介の市井の普通の人という立場でということで意見をお述べになりましたけれども、この法案に関する限りはプロも素人もないわけでありまして、むしろ一般市民の方々が積極的に討議に参加をして方向を決めるべきものだ、私はそう思います。そういう意味で、お知り合いの皆さん、この法文をお読みになって、どうでしょう、簡単に理解がいったという感想を皆さんお持ちになったでしょうか。
  267. 佐藤瑩子君(佐藤瑩子)

    佐藤瑩子君 実は衆議院の方から資料をいただきまして、ちゃんと冊子になったものをいただいたのですけれども、私はあれを読むときに大変苦労をいたしまして、前を見たり後ろを見たりさんざんしましたものですから、やはりこっちの方がいいなと思いまして、これは朝日新聞からコピーをしたものでございます。これだと一遍に見ることができます。あっちに行ったりこっちに行ったりという、こういう形でございますね。  何がわかりにくかったかというと、一つは、私がそれほど法律というものに精通していないということはあります。それからもう一つは、何かありましたときにいつもそれをかぶるのは普通の人であるということでございます。ですから、私たちがこれを読んでもわからないからというわけにはまいりません。  それで、この「総則」のところを見ますと、非常にいいことが書いてございます。これだけを見て、ああ大体いいんだ、これはいいんだというふうにまず大体の人は思うと思うのです。ところが、ずっと読み進んでいきますと、やはりわからないところがたくさん出てまいります。それは、国会の議論の中でも随分もまれておりましたのでここであえてなぞるということはいたしませんけれども、やはり私なりに感じたことをちょっと述べたいと思います。  一つは、法文自体が、悪文と言っては大変恐縮ですけれども、わかりにくいです。これは素人だからわかりにくいというばかりではなくて、ほかの法律と比べてもわかりにくいのではないかなというふうに思います。一番最初の大事な「定義」の部分でさえ、いろいろなものが錯綜しておりまして、どれが一番大事なものかということがわかりにくいということですね。はっきり言えばややこしいということです。その中でも、特にここの「定義」の中にあります、例えば「国際連合の統括の下に行われる活動」であると書いてありまして、おとといあたりの朝日新聞にも、コマンド、国連のコマンドに入るというふうに書いてございました。そうすると、下の方にまいりまして、ここの本部、協力本部のところでございますね、そこには「本部の事務を総括し、」と書いてあって、これは、「統括」と「総括」はどう違うのかとか、そういうことで、非常に素朴ですけれども、これは本当に大事なことだと思います。
  268. 山中(邦)委員(山中邦紀)

    山中(邦)委員 法文の意味がいかようにもとれる、あるいは判然としないということは、これは法律論とすれば違憲立法審査の基準の中の意味不明のために無効だ、こういう議論にも直結しかねないと私は思うのです。そこまでいかなくても、これほど大事な法案について一読わかるような文章が出ていない。また、いろいろな疑問点、例えば指揮の話が今まで出ておりますけれども、これは政府の説明は個人が武器使用するのであって上官が指揮しないというのであれば、法文にきちっとそれを書けばよろしい。武器使用について部隊の上官は指揮命令あるいは指図をしないというふうに書けばいいのですけれども、それがそういうふうになっていないというのは大変問題であろうというふうに思うわけであります。  時間のこともありますので、あと二つ申し上げますので、ひとつ短時間におっしゃっていただきたいと思うのです。  お話の中で、御自身あるいは友人の方が南アフリカの子供たちの教育資金援助など、いろいろな意味で民間レベルの国際協力を推進しておられるように思うのです。そうして、お説は、長期的な国の援助対策の策定を求めておられる。しかし、国がこういう民間レベルの援助について情報の提供とかいうような点で十分やっておるのかということ、これをお尋ねをしたい。現段階でもっともっとやることがあるのではないか。  これともう一つ自衛隊とは別組織ということ、自衛隊とは別組織でPKOの組織をつくらなければいかぬということ、これはどういう点に重点を置いてお考えですか。軍隊の知識、経験が必要というお説もございました。二点についてお聞かせ願いたいと思います。
  269. 佐藤瑩子君(佐藤瑩子)

    佐藤瑩子君 最初の質問でございますけれども、これは私の本当にささやかなかかわりということでございますので、ここであえて皆様に御披露するようなものでもございません。ただ、私が小さな市民運動をやっておりますと、いろいろのお呼びかけがございます。そこは本当にもうクモの糸のように細い網がたくさんに張りめぐらされて、国際的な交流というのは見えない底流のところでたくさんございます。ただ、国家という大きなものが一揺るぎ動きますとそれが全部切れてしまうという、それは大変私にとっては悲しいことです。  例えば南アフリカの問題でございますけれども、今南アフリカは差別撤廃、差別の法律についてすべて撤廃いたしまして平等にということでございますが、かなり混乱をしております。その中で子供たちが教育を受けられない、これは国家百年の大計と申しますけれども、本当に教育が受けられないということは次の国を建てるということができないということです。ANCという政治団体がございまして、マンデラさんという方は大変有名な方でございます。その方が日本に来て援助を求められたというようなこともありまして、日本からもこの南アフリカに対して子供たちの里親というものが今盛んに募集されております。こういうものに日本人もかなり応募しているのではないかと思います。数的にはわかりませんけれども、かなり応募しているのではないか。それから、イラクの子供たちに対する救援の手というのも、細いけれども確実に今求められ、またこちらからも差し伸べられております。そのほかサラワクの、これは例えば貧困の問題とはちょっと違いますけれども、でも、これも一つの貧困の種ですが、サラワク・キャンペーンといいまして、サラワクの森林がだめになっていくという、それも日本全国にこのサラワク・キャンペーンが展開されておりまして、森林を守ろう、日本の資源は大事に使おう、そういう運動が起こっております。  そのほかさまざまなものがありますけれども、それは底流としてあるのであって、なかなか出てまいりません。現地にもたくさんの方が行っていらっしゃいます。それについて何らかのやはり国家的な救援を考えていただきたい、これはもう十分に検討した上で考えていただきたいということです。それから、一般のそういうボランティアの人たち意見というのに絶えず耳を傾けていただきたいということです。  それから、次の点でございますけれども、別の組織という形はとても使い物にならないとか、自衛隊技術とかそういう訓練とかいうものが大変役に立つという、私の両方の方々から大変力強い推進のお言葉がございましたものですから、私は何と申し上げたらいいかちょっとわかりかねますけれども、ある意味では理想かもしれません。けれども、それはやはりそのように目指していただきたいという私の願望でございます。自衛隊という形で行くべきではないというふうに思います。  例えば、これは友達の話ですけれども、消防隊、消防署の中にレスキュー隊というのがある。これは救助のための訓練をしている隊員であるから、こういう方々に、いわば常時は普通の活動をしていただいて、非常時には呼びかけるという形で出てもらえないだろうか。それについては、もちろんさまざまの保障とか特別の訓練とか、そういうものはございます。けれども、あくまでも民間からの協力あるいは民間から出るという形のものをつくれないであろうか。  そのほかにもさまざまの形があると思います。例えば青年海外協力隊ですね、そういう形のもの、そういう形で、現地の教育とか民生に対して私たちができることはもっとたくさんあるのではないか。単にほかの、例えばこの間テレビで中央公聴会のときに、レバノンにいらっしゃった代議士さんの方が言っていらっしゃいましたね。平和維持軍がいて、さまざまの国の国旗が並んでいた、その中に日本の国旗がなかったのは大変寂しいとおっしゃったのですね。私は、その中に日本の国旗がなかったことを誇らしく思っていただきたいと思うのです。全く別の面で日本はいろいろの貢献をしています。それがただ国家レベルに上がってこないために見えないだけだというふうに思っていただけないでしょうか。  大体そのようなことでございます。
  270. 山中(邦)委員(山中邦紀)

    山中(邦)委員 ありがとうございました。  馬場公述人に一問お聞きをしたいと思います。  武器使用に関する二十四条の御議論をしていただきました。第三項は、自衛官が自己または他の隊員の生命、身体を防衛するためにやむを得ない必要があると認める相当な理由がある場合に、合理的に必要と判断される限度で武器使用する。第四項は、正当防衛、緊急避難の規定であります。それで、これを政府の方では、ともに自然権的な権利だ、こういうお話でございます。PKOPKF参加する自衛隊武力行使をしない、こういうことを言わんとする余りに、携行武器使用は、これは自然権的な権利である、まあ非常に言葉は過ぎるかもしれませんが、個人が自分で適当にやる仕事だ、こういうことでございます。  ところが、第三項につきまして、これを法令行為である、あるいは業務上正当な行為である、公務中の行為である、こういう説明でございます。刑法上使われる用語でありまして、社会生活上の地位に基づいて反復継続的になされる行為、例えば、死刑執行を職務とする人の場合には殺人罪が適用されないような感じのことでありましょう。私は、ここに非常な常識を脱した議論があるのではないか。この法案全体を見て、武器使用が自然権的な権利だというような議論は立つでしょうか。
  271. 馬場亨君(馬場亨)

    ○馬場亨君 武器使用が自然権的な権利であるというのは、これは国会の中で渡辺外務大臣が苦肉の策というふうな表現を用い、その直後に表現をちょっと変えられましたけれども、まさにこれもそういった表現の一つではないかというふうに思われます。  まず、そういった急迫不正の侵害等ないしはそれに類する、まあこの三項の場合はもうちょっと要件が緩いわけですけれども、そういったものに類する攻撃に備える、ないしは反撃するものとして武器使用というものが自然権的な権利として認められるということであるならば、それはまさに自然権的な権利なわけですから、日本の国内においても市民が武器を携行してもいいということにならざるを得ないのではないかというふうに思います。ところが日本の中においては、これは現実には御存じのとおり銃砲等の法令によって、市民が任意に、届け出もなく武器等を持つこと自体が禁じられているわけですね。つまり、その携行すること自体と使用ということを結びつけて直ちにそういった説明をするということは、法理的にはかなり無理なものがあるだろうというふうに思います。  それで、国内法的には、武器使用ということについては限定的に、例えば自衛隊法であるとか警職法の中に規定があるようですし、そしてまた人に危害を加えるような場合、これは正当防衛ないしは緊急避難が成立するような場合だけに限るんだという限定があるようですけれども、現実にはそういった武器使用がなされるという段階においては非常に判断が、国内において例えば警察官等が武器使用する場合においても非常に判断が困難な、流動的な状況の中で使用がされているというのが現実であります。  そういうことから考えますと、先ほども陳述の中で申し上げましたように、もちろんPKO活動武力行使を目的とするものではないというのはそのとおりであります。しかし、そういったことを予期し、準備をしておかなければならないといいますか、そういった状況の地域に出ていくことを前提としているものでありまして、したがって、そういった中で正当防衛ができるかどうかというふうな判断を、しかも政府の答弁によりますと個々の隊員がするというふうな、ないしは、まあその辺のお答えがなかなかつらいところがあるのか、上官が束ねるというふうな表現もあるようですけれども、そのような表現をしなければならないことに、まさに正当防衛という観念でこれらを説明できない、むしろそういった戦闘が起こる可能性があり、現に戦闘が起こった場合には、それに戦地における一つの行動論理を持って行動しなければならないというところにおいては、この正当防衛の論理で合法化を図るというふうなことはできないだろうと考えます。  また、業務行為等という御質問でございましたけれども、この点につきましては、まさにこれはPKFの業務の中にどういったものが入ってくるかということと密接に関連してくるだろうと思います。  PKO標準運用手続ガイドラインというものの要旨で新聞に発表されたものが私の手元にございます。もちろんこれは武力行使はどういった場合に行わなければならないかということを規定しておりますけれども、これは国連要員への直接的攻撃とか、ないしは国連全般の安全が脅威に直面した場合に、自衛のためだけに使用できるというふうになっているわけですが、少なくともそのときには使用をしなければならない。そうすると、隊員及び部隊は事務総長の指揮下、そして現地指揮官の指揮下にあるわけですから、しかも武力行使に関しては完全に統一的な方法で行わなければならないという手続ガイドラインになっておりますので、そういった中で行動をしようとするならば、まさに法令・業務行為としてそういった武力行使を行うというところにつながっていくだろうと考えざるを得ないというふうに思っております。
  272. 山中(邦)委員(山中邦紀)

    山中(邦)委員 ありがとうございました。
  273. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 石橋大吉君。
  274. 石橋(大)委員(石橋大吉)

    石橋(大)委員 社会党二人合わせて三十分ですから、あとわずかの時間しかありませんが、まあお見受けしたところ、藤崎さんと藤原さんと菊地さんの三人がいわば戦争体験があるんじゃないか、こういう感じがしますので、私は主としてこのお三人の方にちょっとお伺いしたいと思います。時間がありませんので、ごく簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。  その前に、社会党の立場ですけれども、どうも先ほどから話を聞いていると、戦争に行くんだ、戦争に行くんだと、こういう議論ばかりしているんじゃないか、こういうふうな御発言もありますが、私たちも決して戦争に行くんだとは思っていない、国連平和維持活動参加するんだ、そういうふうに思っている。しかし、武器を持って武装集団としての自衛隊参加をする、事と次第によっては命にかかわる、そういうことが一つ。  それから、去年の国連平和協力委員会のときの政府説明では、とにかく平和維持参加武力行使にかかわるから参加できない、こう言ってきたのを、今度は御承知のように武器使用武力行使を分けて、個人の生命を防護するための武器使用憲法違反ではない、こういう新解釈を打ち出して平和維持軍に参加しようとしているわけですから、当然ここが大きな争点になることは避けられませんから、そういう意味で議論としてはそこに非常に大きなエネルギーが注がれていますけれども、決して戦争に行くという立場で議論はしていない、こういうことは誤解があっちゃいけませんから申し上げておきたい、こう思っております。  それからもう一つは、私たち国際貢献は非常に重要だと思っています。この点では政府・自民党も与野党全部一致していると思います。ただ、その国際貢献あり方について、自衛隊派遣をして軍事中心でいくか、非軍事的な方法でいくか、この辺に違いがありまして、私たちは、非軍事的な方向での国際貢献をやはり考えるべきだ。特に東西冷戦が終わって、これからの世界というものは南北問題が中心に移行する。そこでは人口増加、環境破壊、そういうことが非常に深刻な問題になりますから、そういうことにもっと日本は貢献をする、そういう立場での国際貢献を中心に考えるべきだ、こういうのが社会党の立場でありますから、ぜひひとつこの点は誤解のないように、まず最初にお願いをしておきたいと思います。  そこで、質問に入りますが、戦争体験を持っておられる三人の方に聞きたい。  私は、一番危険なのは、あの戦争についての深刻な反省国民的にもしていないし政治的にもしていない、こういう中で平和維持活動といえども軍隊が出ることについて非常に心配をしているわけです。それは、御承知だと思いますが、ことしはパールハーバー五十年が盛んに言われていますけれども、パールハーバーの前に柳条溝事件六十年なんですよね。あの満州事変からシナ事変、日中戦争にかけて政府の言うことを無視して軍が、関東軍が暴走する。関東軍なら関東軍の中では、今度は軍の中央指導に従わないで参謀が暴走する。こういうような状況に対してどう歯どめをかけるかということをしっかり考えていかないと、私は幾ら平和維持活動といえども、そういう国民的な反省としっかりした歯どめの議論を抜きにして軍を出すことについては、非常に心配をしているし、歴史の過ちをもう一遍繰り返す、こういうふうに思っているのですが、その点、戦争体験のある皆さんとしてはどういうふうにお考えか、ちょっと伺いたいですな。簡単にひとつお願いします。
  275. 藤崎三郎助君(藤崎三郎助)

    ○藤崎三郎助君 おっしゃるところはごもっともだと思います。私は一九一七年の生まれですから、大正六年。それで戦争は全部よく知っております。私は体の関係で兵役自体には参加いたしませんで、東京にずっとおりました。したがって、東京の大空襲は全部知っております。特に戦争は、戦闘行為の場合においては軍隊同士の戦いでありますが、あの非戦闘員に対する無差別爆撃というものを十分経験しておりまして、我々としてこういうことがあってはならぬと思っておるわけでございますが、ただいまのお話の中にありました日本の軍のいわゆる下克上と申しますか、現地が中央の指令に従わないということ、これは日本の軍政自体の中にあった。現在は憲法も変わりましたし、日本に軍隊というものは本来ないのです。今の自衛隊は軍隊であるかもしれません。組織的には軍隊でありますが、私どもはそれほどの軍隊だとは思っておりません。したがって、その自衛隊のごく一部が、しかも十個師団とか二十個師団が行くというのではなしに、その中の一部が平和協力隊として行くということです。
  276. 石橋(大)委員(石橋大吉)

    石橋(大)委員 ちょっと恐れ入りますが、時間がありませんので、あと二人の方に聞きたいと思います。
  277. 藤崎三郎助君(藤崎三郎助)

    ○藤崎三郎助君 はい。そういうわけでございますから、私はその御心配は今度の自衛隊に関してはない、かように思っております。
  278. 石橋(大)委員(石橋大吉)

    石橋(大)委員 時間がありませんので、一言ずつにしてください。
  279. 藤原五郎君(藤原五郎)

    ○藤原五郎君 私は、第二次大戦、みずから戦争に自分の意思に反して入りました。そして学徒動員として、現在東北大学の教養学部に一部残っておりますが、ここの予備士官学校を卒業して、第一線の小隊長としてみずから指揮をとった体験を持っております。  結論的には、当時、言うなら統帥権は大元帥陛下のもとにあった。したがいまして、今のような統帥権あるいは軍備では本当の戦う軍隊ではない、戦略的にもあるいはいろいろな面からいきましても、日本は単なる防衛にすぎない、私はこのように考えております。したがいまして、今度自衛隊が行くということについては、いささかも懸念を持つものではありません。  以上です。
  280. 石橋(大)委員(石橋大吉)

    石橋(大)委員 申しわけないですが、簡単にひとつお願いします。
  281. 菊地清明君(菊地清明)

    ○菊地清明君 お話しのPKOが、殊に平和維持隊が武装集団であるとか軍事中心であるというふうには私自身は思いません。むしろ非武装ないしは軽武装でありまして、それから、軍事中心ではなくて平和中心であります。  それからもう一つは、戦争に対する反省がないというお話ですけれども、私は世界じゅうをいろいろ回っています。ドイツにも在勤したことがありますが、ドイツ人はよく反省した、それから日本人は反省していないというふうなことを言われます。反省を示すというのはどういうことなのか、どういう行動をすれば反省したことになるのかというのは、私自身非常に疑問に思っています。  それで、戦後の例えば初等教育なんかを見ますと、皆さん方はもうとっくに御承知のとおり、殊に小学校教育では、あの戦争が悪い戦争であった、侵略戦争であったということは小学校の先生方によってもう嫌というくらい教えられているわけですから、これで反省がないというのは私自身としては受け取れません。  それから、統帥権とかなんとかいう問題はもうありませんので、そういう問題は今後は起こらないと思います。むしろ私個人としては、自衛隊の地位がもう余りにも低い、自衛隊に対する国民の支持が得られないということに対して気の毒に思っているくらいのものです。
  282. 石橋(大)委員(石橋大吉)

    石橋(大)委員 もう余り時間がありませんが、本当はこの問題はかなり具体的な認識の問題をめぐって議論をしなきゃならぬことです。まあ、これは国会でやることにしまして、もう二、三分ありますので、もう一つだけお聞きしたいのです。  戦争もそうですし、軍が作戦行動を起こすときには、決して初めからでかいことをやらないわけですよ。大体は非常に小さいことから始まるわけですよ。例えばあの第二次世界大戦、太平洋戦争に突入する昭和十六年の九月五日、開戦決定をした御前会議の前の日、天皇が陸軍参謀総長の杉山元に対して、一体これで戦争を始めたらどれくらいで戦争が終わるか、こう聞いた。そうしたら杉山参謀総長は、三カ月くらいで終わる、こう言ったわけですね。これは有名な話ですよ。そうしたら天皇は、おまえはシナ事変が始まったときに二カ月で終わると言ったじゃないか、もう四年も五年もかかっている、こう言って陸軍参謀総長をしかっているわけですね。しかし、だから開戦に反対したかというと、そうではなかった、認めたわけです。  そういう意味で、小さいことであっても、こういう本当に深刻な歴史的な経験を持っていますから、そういうことを踏まえた議論をしないと日本の将来を誤る、こういうふうに私は思っております。もう時間がありませんから、もしあったら一言ずつお願いします。
  283. 藤崎三郎助君(藤崎三郎助)

    ○藤崎三郎助君 我々の年代は少なくとも戦争を経験しておりますから、我々の年代の認識は、今のお三方と同じように戦争には絶対反対であるし、しかも今度の自衛隊は昔の軍隊とは違って非常に組織的にも小さいし、それから装備的にも軍隊としての機能を果たせるかどうかというふうにさえ思っておりますので、いわば日本の自衛のためのものであると思っていますから、心配はないと思います。
  284. 石橋(大)委員(石橋大吉)

    石橋(大)委員 時間が来ましたから、終わります。
  285. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 次に、遠藤乙彦君。
  286. 遠藤(乙)委員(遠藤乙彦)

    遠藤(乙)委員 私は、公明党・国民会議遠藤でございます。陳述される先生方におかれましては、御多忙の中を御出席いただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  時間が限られておりますので、端的に質問に入らせていただきたいと思いますが、現在、PKOが大変大きな、国論を分裂するような議論となっておりますけれども、一つ言えることは、このPKOという問題が、先ほどもどなたかおっしゃっておりましたが、非常にわかりにくい問題であるということ、さらにそれに加えて情報不足ということが極めて大きな要因としてあるかと思います。特に、PKOなんという言葉は、ほとんどの方は初めて聞いたわけですし、似たような言葉としてPTAとかTKOだとか、あるいはPLOとか、いろいろな言葉がはんらんをしておりまして、よくわからないというのが率直なところかと思います。  そこで、やはり私、率直に申し上げまして、私どももこのPKOの問題を議論したときに、当初の段階では、停戦監視まではいいだろう、だけれどもPKF、これはちょっと武力行使可能性があるのではなかろうかということで慎重な態度をしておりました。ところが、率直に徹底的に勉強して実態を調査して真実を明らかにする中で、もう一度態度を考えようということで、ことしの五月ぐらいから三カ月間にわたりまして徹底的な勉強をし、また現地に調査団を派遣し、国連関係者からも意見を十分に聞きました。  勉強すればするほど、実態をわかればわかるほど、このPKO、特にPKFは大変すばらしい着想である、これは大変平和主義、人道主義に立つものであって、まさにこれこそ我が国憲法の精神に合致するものであって、今までの我が国の観念的な平和主義からさらに一歩を進めて、行動的な平和主義、実際に我が国が汗を流して平和のために頑張る、そのためには非常に重要なものであるという認識に到達をいたしまして、現在におきましては非常に強い信念のもとにPKO参加ということを我々は進めているわけでございます。  そこで、まず菊地先生にお聞きしたいと思います。  先生は、国連大使として長年活躍をされ、またPKOの現場にも精通されておられる専門家という立場でぜひ御意見をお聞きしたいわけですけれども、現在多数の国民の方あるいはマスコミの方、政治家も含めて、PKOの本質についてまだよくわからない、あるいは懸念、憶測、不安があるわけでございまして、PKO参加すること自体が多国籍軍国連軍あるいは軍隊もどきのものに参加していくと同列に考えておられる方が多数いるかと思います。したがいまして、多くの方々から、例えば女性の方からも、夫を戦場に送りたくない、息子を戦場に送りたくない、またいつか来た道を行くのではないか、こういった懸念が非常に強く寄せられていることは事実でございます。私ども、それを日々強く感じておる次第でございます。  そこで、ぜひ菊地先生の方から、PKO、特にPKFの本質というものが、果たして多国籍軍国連軍やあるいは軍隊もどきのようなものであるのか、あるいはPKF参加をしていくことが戦闘に巻き込まれる、あるいはまた戦争に巻き込まれる、憲法の精神に反する事態に立ち至るものであるかどうか、ここら辺につきまして、専門家のお立場から実態に即して御説明をいただければと思います。
  287. 菊地清明君(菊地清明)

    ○菊地清明君 PKOというのはピース・キーピング・オペレーション、平和維持活動ということでして、この中にはいろいろな種類のものがあるので、非常にいろいろな人がいろいろな定義で使うものですから、若干議論の混乱が起こると思うのですけれども、本来のPKO、古典的なPKOというのは、平和維持軍と停戦監視団、それから第三番目にそれのミックスした形、これが伝統的な平和維持活動なわけです。  それに対して最近のPKOと言われているのには、従来の古典的なPKOと違う、例えば選挙監視だとか、それから実際今度カンボジアなんかで起きるのは、行政・統治機能そのものをやろうということになっています。それから、難民救済とか人道援助とかそういうものがあります。これはいわゆる新型のPKOでありまして、普通、我々専門家の間では本来のPKOとは区別して使っております。  PKOとは何かというのが非常にわかりにくいというのですけれども、これは実は我々日本人だけにとってわかりにくいのじゃなくて、先ほどちょっとお話ししましたPKOの父と言われるブライアン・アークハートさん自身も、どこの国へ行ってもPKOとは何だ、非常にわかりにくいと言われているそうです。  ちょっと申し上げたいのは、PKOというのと対置する概念を申し上げるとわかりやすいと思うのですが、PKO、ピースキーピングに対置する概念はピースメーキングなんです。ですから、ピースメーキングとピースキーピングとを区別して考えませんと非常に混乱が起こる。本当に簡単に言いますと、ピースメーキングの方は戦争の防止、それから戦争が始まったらそれをとめるというかなり軍事的な色彩の多いもの、これをPMOと言っていいのですが、PKOというのはあくまでも紛争が終わって停戦協定が成立した後に行くものですから、その点が非常に違う。  それから、国連憲章の関係ですけれども、PKOというのは国連憲章の第何条のどこにあるんだということを言われると、これはちょっと困ります。というのは、そういうのは憲章そのものにはないからです。憲章にあるのは国連軍というのだけであります。ところがこの国連軍は、いかんせん米ソの対立で今になっても成立しておりません。  それから、多国籍軍というのは、これは国連関係ないと言ってはいけないのですが、通常言われる国連軍というのは、組織する段階から国連の安全保障理事会の決議でできるのが国連軍です。それから、PKO国連憲章の規定にはないと言いましたけれども、そのときどきの国連の安全保障理事会の決議でもってできるのがこのPKOです。そういう意味ではPKO国連憲章と関係がある。多国籍軍というのは、編成そのものについては国連とは関係なく編成できるわけです。今度の湾岸戦争の場合も、国連の決議がなくて既にアメリカあたりは多国籍軍を出しているわけです。  そういう意味で、今回の法案はいろいろな概念のものがありますけれども、PKO、一々安全保障理事会の決議でもって初めてできるPKOに対してだけ協力するということであります。ただ、PKFの場合の御質問がありましたけれども、PKFというと何となく軍事的色彩が強いように思われるのは、これは過去のPKFに、一九六〇年のときのコンゴ紛争というのがありました。あのときは非常に例外的なケースでありまして、国連の決議でもって武力行使を認めたわけです。これは例外中の例外です。ですから、もし日本が今後PKFにも参加するというような場合には、いわゆるコンゴ型のPKFに対しては参加できないし、参加すべきではないというのが私の考えです。  それから、現地の視察で私が一番感じたことは、私はゴラン高原とか全部行きましたけれども、決してこれは生易しい仕事ではない、生易しいことじゃないというのは、殊にゴラン高原のような非常に荒涼たるところで、私が行ったときはちょうど冬でしたけれども、非常に寒いところで、二人ずつ将校がペアになって停戦監視をしているわけです。これは決して易しいことではなくして、本当に世界の平和のために相当個人的な犠牲、苦労を重ねてやっているのであって、何か戦争に行くんだというような感じとは全く違うものであることを申し上げたいと思います。
  288. 遠藤(乙)委員(遠藤乙彦)

    遠藤(乙)委員 ありがとうございました。  それでは、反対論の方がお三方いらっしゃいますので御質問したいと思うのですが、PKOの本質は今菊地先生の御説明されたようなものであると私も理解をしております。特にPKOPKFは、その系譜からしていわゆる大国の思惑とは全く別であって、そもそも平和主義、中立主義の強い北欧、カナダ等が主体となり、あるいは国連の良心と言われるようなハマーショルド事務総長あるいはピアソン元カナダ外相等、こういった方々が、大国の思惑にがんじがらめに縛られた国連の制約のもとで、いかにして具体的に平和のために国連が貢献できるかということを真剣に考え抜いて、悩み抜いて、試行錯誤しながらつくり上げたのがこのPKOであって、武力行使によらず、国連を象徴する存在と説得を通じて、紛争地域の感情を鎮静化し、かつ、平和を維持し、停戦合意が成った状況から本格的な平和ができるまでの産婆役を務める、大変人道主義、平和主義に基づくものであって、そういったことが評価をされて一九八八年、ノーベル平和賞に輝いているものであると思います。  そういった意味で、このPKO自体は、その性質に着目をすると、いわゆる軍事的なものではなくて、むしろ例えて言えばナイチンゲールの戦場における傷病兵の救済活動あるいは国際赤十字社の活動、さらには難民救済活動等に類する行為であって、その非常に崇高な任務というものをやはり我が国民も理解をすべきではないかと思う次第でございます。  もう一つは、だれのためにやるんだという観点なんですけれども、その点がちょっと議論が忘れられているような気がいたします。だれのためにかといえば、それはあくまでも紛争地域の住民のためにやるのが第一義の目的でございます。紛争地域において再び紛争が勃発をして住民が悲惨な地上戦闘に巻き込まれないように、また住民が安心して生活できるように、それこそがこのPKFPKOの目的であって、紛争地域の住民にとっては大変ありがたい存在であるわけでございます。そういった意味で、このPKFを否定することは、紛争地域の住民を紛争の再発のなすがままに任せよう、そういうことと同じことに類するわけであって、むしろ非常に平和主義、人道主義に反することではないかと私は思う次第でございます。  そういった私自身の考え方に立った上で、反対のお三方にお聞きしたいわけでございますけれども、皆様方個人としてはこのPKFPKOというものをどう評価されているのか、否定的な評価をされるのか、あるいは肯定的な評価をされているのか、日本憲法の精神から見てそれは非常に合致しているかあるいはそうでないのか。そこら辺につきまして、皆様個人としてどういう評価をされているか、簡潔にお聞きしたいと思います。その賛否と、それから簡単な論拠をお述べいただければと思います。  まず佐藤さんからお願いしたいと思います。
  289. 佐藤瑩子君(佐藤瑩子)

    佐藤瑩子君 PKOというのはPKFも含まれるというふうにお話がさっきございました。確かにそうだと思います。PKOという考え方自体、それは私もこの一番最初に出ている趣旨としてはいいと思います。けれども、国連の組織の中でたくさんの国々が入って、そして大きな組織の中でされるということ自体の中にあっても、やはりまだ日本の国が非武装で何とか平和を守っていこうという、そういう意思を持っている人たちがたくさんいます。ですから、そのためにはPKFという考え方、武器を持って出るという考え方に対しては日本はなじまない。憲法もありますし、武器を持たなくてもすることはたくさんあるのではないかというところにこだわっているわけです。  それからもう一つは、紛争が起きたところに行くという考え方だけが先行しますけれども、紛争が起きないようにする、そのためにはさっき菊地さんからお話がございましたピースメーキングという考え方をもっと先に進ませて、軍隊が行って紛争が起こりそうなところを鎮圧するのではなくて、起きないような方策をとるということです。さっき私がお話ししましたような、民生とか教育とかそれから性差別の問題とか、そういうものに民衆レベルでかかわっていく、そういうことを言ったのであって、PKOそのものの精神を否定するということではないのです。ただ、武器を持つ、軍隊が出るということに対して、私たちは強い反対の意思をあらわしているということです。
  290. 遠藤(乙)委員(遠藤乙彦)

    遠藤(乙)委員 続いて、馬場先生にお願いします。
  291. 馬場亨君(馬場亨)

    ○馬場亨君 PKO活動の精神ということに関しましては、今佐藤先生の方からもありましたように、私もその精神自体を否定するものではありません。  ただ、PKFということは、先ほど来議論になっていますけれども、やはり本来の目的は武力行使を目的とするものではないにしても、それが状況次第によっては武力行使に発展していく、それに日本が巻き込まれていくということがあるわけですね。そのことは、やはりこれは日本がそこに単なる個人がボランティアとして行くのではなくて、一つ法案を成立させて国家の意思として隊員を派遣するということになるわけですから、これは当然日本が戦後に成立させた憲法の精神の制約というものを受けざるを得ない。つまり日本が、前文において国際協力、協調ということを憲法は言っておりますけれども、その協調の方法として日本国は非軍事的な方法によって協力をするんだ、そういった足かせ手かせを自分自身の行動にはめたものであるというふうに考えざるを得ないと思います。  また、特に去年、ことしにかけて冷戦構造というのが崩れてきた、大きく変化をしたという状況があるわけですけれども、そういう中でこそ日本はまさに非軍事的な方法で国際貢献ができる、これから日本の本領を発揮できるところであろうというふうに考えます。  したがって、PKOないしはPKFの目的そのものが現在の平和を目指すという状況に合致しているということのみをもって、これに日本国家も直ちに賛同していいということになるのではなくて、やはり日本の国家としての行動の仕方が憲法の中に書かれている。その憲法に従って今後世界に対して、言ってみれば非軍事的なさまざまな方法がございますけれども、その方法によって平和を達成していくんだという、むしろ世界に向かってモデルを示すべき時期が今こそあるのではないか。このような意味においても、このPKF参加することになる法案には私は反対をしているわけです。
  292. 遠藤(乙)委員(遠藤乙彦)

    遠藤(乙)委員 それでは、山田先生にお願いします。
  293. 山田忠行君(山田忠行)

    山田忠行君 まずPKFというのは、実態からいっても国連のいろいろな関係文書からいっても、明らかに軍事組織だということだと思います。例えば、PKO訓練マニュアルでは、軍隊を平和維持軍に参加させる国に対して、軍隊を提供する国に対して、兵器訓練、野戦を含む戦闘訓練をしてそれらに精通するということを求めております。また、過去に化学戦争下で活動することを余儀なくされたことがあるので、訓練でも核、生物兵器、化学兵器の戦争の要素がカバーされることから、そういった訓練をしておけということまで要求しているわけであります。  実際問題としても、武力衝突を繰り返して多数の死傷者を出していることは先生も御承知のとおりであります。むしろ、先ほど菊地さんがおっしゃったように、国連憲章にない、そのときどきの決議によって行われているということは、そのときどきの政治情勢とか大国の思惑とかに左右されるということでありまして、コンゴだけではなくてレバノン紛争でも多数の、一九七九年一月から八一年六月までの二年半の間に、何と二千百九十九件の衝突が繰り返されているというふうに言われているほど繰り返されてきたということでございます。  このような明らかな軍事組織、そして意図するところではないとはいえ軍事衝突を繰り返すようなところに平和憲法を持つ日本自衛隊参加できないということは明らかであろう。例えばスウェーデンとかカナダとか、そういったところが参加し、国連待機軍を持っているというようなことをもって、だから日本もという議論もありますが、私はそれはそれぞれの国の国民の意識とか憲法の問題だと思いますし、何よりもそれらの多くは中立国でありまして、侵略したことがないという、そういう公正な歴史を持っているということであります。もう一つは、いずれも軍事大国でないということであります。侵略した歴史を持つ、そして世界第三位と言われている軍事力を持つ日本国連平和維持軍に参加するということとは全然別の問題だというふうに考えます。
  294. 遠藤(乙)委員(遠藤乙彦)

    遠藤(乙)委員 時間が終了いたしましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  295. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 次に、東中光雄君。
  296. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 日本共産党の東中光雄でございます。  国連大使を経験されたことのある菊地公述人にまずお伺いしたいのですが、先ほど菊地さんは、この法案平和維持軍の本体に参加することができるようになった、これが一つの特徴だという趣旨で言われました。しかし、平和維持軍、PKF武力行使は認められていない、原則禁止だというふうに言われましたね。原則禁止だと言われたと同時に、武力行使は禁止されるとも言われているのですが、ちょっと意味が違うと思うのです。そしてその部隊、参加する自衛隊の部隊は、小型武器の携行を認められているだけだという趣旨のことを言われたように思うのですが、これはちょっと違うのではないかというふうに私は思います。  それでお伺いしたいのですが、自衛隊の部隊等としてPKF本体に参加をする、これは協力ではなくて参加そのものであります。そして後方支援関係で、例えば工兵とかあるいは航空隊とかヘリコプター隊あるいは輸送部隊とかいったものもこの法律によって参加するということになるわけです。本体参加の部隊は武力行使をしないのが原則だということは言えると思うのですけれども、先ほどもちょっと言われました国連のSOPガイドライン、国連平和維持軍の作戦規定ガイドライン、これは昨年の十月十日に国連総長報告でつくられたものですね、だから菊地さんが国連におられたころにはなかったものだと思うのですけれども、そういうガイドラインによりますと、武器使用ではなくて、武力行使をする場合、国連平和維持軍が武力行使する場合を随分書いていますね。自衛のためにということでありますけれども、その自衛の中にはこういうものを含むんだ、任務遂行のためだ、陣地に対する攻撃があった場合はそれに対して武力行使をするというふうになっているのですね。  これは、国連事務総長の指定した国連平和維持軍の軍司令官の指揮のもとにそういう行動をやる、武力行使をやるということになっておると思うのですが、それに参加した日本自衛隊はその指揮に従ってやるのかやらないのか。政府は、やる部分もあるしやらない部分もある、こういう答弁をしているのです。国連平和維持軍は武力行使を目的にしていないけれども、武力紛争をやっている当事者から武力攻撃を受けた場合は、それに対して武力行使をやる、任務遂行のためにやるということになっておると思うのですが、SOPのガイドラインの内容を含めましてそういうことがないとおっしゃるのか、そのとおりだとおっしゃるのか、どうでしょう。
  297. 菊地清明君(菊地清明)

    ○菊地清明君 今のSOP、標準作戦手続、行動手続といいますか、これは幾つかあるようです。一番基本的なのは一九七三年の第四次中東戦争の後にできたのが標準的なものですけれども、その後いろいろ追加があることはそのとおりだと思います。  それで、端的にお答えしますと、そういうSOPとかマニュアルに書いてあることは、そういう場合にその程度の武器使用することをオーソライズする、オーソライズされる、許されるということでありまして、これを絶対使えということではないのですね。命令ではないのです。ですから、軍司令官の指揮下にあるといいますけれども、それが現地で急迫不正の脅威があるという場合に、それを必ず使わなければいけないとか、必ずそういったSG、事務総長の許したる程度の装備を使わなければいけないということではないわけです。  ですから、これは従来の経緯を申しますと、PKOを出したある国が、やはりあの程度の装備では不十分だというふうなことがあって、国連の中にPKO担当の事務局がありますけれども、そういうところにもっと大きなものを使わせてもらいたいというようなことがありまして、それに対してそういうものを使ってもよろしいということを言ってあるのでして、日本のように非常に制限的に使おうという国に対しては、それをぜひ使えというようなことではないので、そこにはもう何ら矛盾はありません。  それから、おっしゃる意味は、小型火器としてSG、事務総長が許容する範囲のその装備ということに何か二種類あることはそのとおりです。それからもう一つは、さっき航空隊とかなんとかいうことをおっしゃいましたけれども、PKFの本体は歩兵なんです。歩兵以外にないのです。それからもちろん海軍も空軍もないわけです。それで航空隊とかなんとかいうのは輸送、ロジスティックスの面、後方支援の中にもちろん飛行機もありますし、ヘリコプターもあります。ですけれども、それは空軍ではないわけです。ましてや海軍というのもない。ただ海軍につきましては、これはソ連が非常におもしろいことを言っていまして、PKOに海軍をつくるべきではないか、殊に湾岸戦争のときにペルシャ湾がああいうオペレーションの中心になったものですから、ソ連がむしろPKOのネーバルフリート、国連の海軍部隊をつくるべきだというようなことを言ったことがあります。  それからもう一つ最後に、武力攻撃とか武力衝突が起こるというようなことをおっしゃいますけれども、これはちょっと想定できないのですね。停戦協定があった後にじか行かないわけですから、そこに武力衝突とか武力攻撃とかいうのはちょっと考えられない。ただ考えられるのは、レバノンの場合なんかは、あれはゲリラがPKOの各国が出ているバラックスという兵営に攻撃をしかけるわけです。これは、何といいますか、紛争当事国の代理人としてやっているという面は確かにあります。それはありますけれども、紛争当事国そのものではない。したがって、いわゆる紛争当事国の軍事衝突の再発ということではないことを御注意願いたいと思います。
  298. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 まさに再発でないので、再発しそうになって、紛争当事国ではなくて「紛争当事者」と法律はなっていますね、だから内戦型の事態でPKFを出した場合には、それに対する攻撃が、現実にレバノンの場合は、先ほど山田公述人のお話の中にもありましたが、「ブルーヘルメット」という国連の正式文書で七九年の一月から二年半の間に二千百九十九回トラブルがあった。その中身は、向こうが攻めてきて応戦したという言葉も使っています。パトロールに行くとそこで待ち伏せをやられるのでそれに対する応戦は大変だという趣旨のことまで書いてある。そういう戦闘行為があるのですよ。戦闘行為があるから、そういうことが起こった場合に自衛隊はそれには参加しないんだ、政府は今そういう説明をしているのですよ。起こらないとは言えない。だから海部首相が去年の十月段階で、PKFは、国連平和維持軍は、そのころは維持軍と言っておりましたが、平和維持軍は武力行使を伴うことがあるのでこれには参加できないんだということを、法制局長官も含めて答弁していたわけであります。ですから、それが平和維持隊と名前を変えたからといって実体が変わるわけでもない、私たちはそう思っております。  それから、この法案自身の中にも、小型兵器は平和維持隊の隊員の携行を許されるもの、それから部隊として参加する自衛隊PKF参加の部隊は、これは事務総長が認める限度内においてということで、中身は機関銃も入る、迫撃砲も入る。この間の答弁で、迫撃砲はあっても照明弾を撃つのだからいいというようなことの政府答弁がありましたけれども、照明弾を撃って迫撃砲を使う。照明弾と実弾と使い分けて、照明弾ならいいということにはならないと思うのですが、要するにそういうものをやる場合にそういうものを使用する、これを国連文書では全部武力行使と書いています。ユース・オブ・フォースあるいはユース・オブ・アームド・フォース、これは国連憲章でも全部その言葉武力行使というふうに使っているのです。ところが、日本法律案は「武器使用」というふうに書いています。そして、日本法律案がそうなったに伴って、国連文書の中にユース・オブ・フォースと書いてある文を、訳文を出すときに外務省は全部武器使用というふうに訳文を、日本文を変えました。本当のレトリックですよ。こういうことまでやって、そして言っているのです。  山田公述人が先ほどの公述の中で、武力行使武器使用と言いかえたり、軍隊の戦闘行為正当防衛の法理を適用するなどというのは全く許されない、同じ法律家として激しい憤りを禁じ得ませんと言われました。私も法律家の一人として、全くこれはひどいものだと思っていますが、山田公述人に、重機関銃迫撃砲で刑法三十六条、三十七条の正当防衛や緊急避難ということが行い得るものか、そういう点のごまかしぶり、法理論上どうお考えになるか、見解を求めたいと思います。
  299. 山田忠行君(山田忠行)

    山田忠行君 先生御指摘のように、刑法三十六条の規定は、戦闘行為における武器使用などというのを考えてつくったものではないわけですね。基本的には市民間の防衛行為、例えばある人がやくざから攻撃を受けたとかそういったときに、みずからまたは近くの他人を防衛するために反撃するということを認めたという規定でありまして、軍隊が攻撃してきた、攻撃された側の軍隊がそれに応戦行為をする、それを一人一人の兵士の正当防衛行為に分解して考えるなどということを予想はしていませんし、実際には不可能だ、刑法が予想する事態ではないというふうに考えます。  少し具体的にお話しさせていただきますと、刑法の正当防衛の要件は、御承知のとおり、急迫不正の侵害に対して自己または他人の権利の防衛のために「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」というふうにされていますが、その要件の一つである例えば不正な侵害、要するに違法な侵害ということでありますけれども、PKFを攻撃するある国の軍隊の行為が、その国の法律に照らして違法かどうかということ一つをとっても簡単ではないわけですね。その軍隊とその兵士にとっては国法上の義務ということも少なくないわけでありまして、それが違法だというふうに言えるかどうかということも非常に複雑な問題をはらむであろう。  もっと複雑なのは、やむを得ない反撃なのかどうかということであります。使用する武器迫撃砲まで含むわけですから、迫撃砲の射程というのは四千メーターです。そういう武器で攻撃するということになると、相手方の被害者は、直接攻撃している兵士だけではなくて補給に当たっている住民、さらにはまだ退避していない住民など、だれになるかわからない、そういうものをやむ得ない反撃だと言えるかどうかということが問題であります。  もう一つ奇妙なのは、個々の自衛隊員判断正当防衛かどうか判断するというのは実際ではあり得ないだろう。例えば重機関銃は二人ないし三人で操作するのですね。迫撃砲に至っては六人で操作する。武装勢力の攻撃を受けて、何が正当防衛か、一人一人の判断が違ったらどうするんだ、照準をつける人は正当防衛だと考えるけれども、弾を込める人はそうは考えない、そんなことがあり得るだろうか、そういうことはあり得ないだろう。したがって、正当防衛などということは、そういう法理は使えない、まさに武力行使をするかしないか、そういう問題だろうというふうに思います。
  300. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 ありがとうございました。
  301. 与謝野座長(与謝野馨)

    与謝野座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、法案審査に資するところ極めて大なるものがあると信じております。厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係御各位に対しまして心より感謝を申し上げ、御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後零時五十六分散会