○滝井義高君
林委員長先生以下特別
委員会の諸先生方が、一地方自治体の市長に二
法案に対する
意見を述べる機会を与えていただきましたことに大変感銘をいたし、心からお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
私は、今五人の公述人の方が述べられましたように、この二
法案というのは、これからの
日本が二十一世紀に進むターニングポイントに立っておると思います。
自衛隊の
歴史的な経過をごらんいただきましても、吉田
内閣総理大臣は、自衛の軍隊といえどもそれはつくってはいかぬ、自己増殖を図ってどうにもならぬようになると言っておりましたけれども、朝鮮
戦争を契機として警察予備隊になりました。警察予備隊が保安隊になり、保安隊が御存じのように
自衛隊になりました。初めできたときはサナギでございました。サナギが青虫になり、青虫がチョウチョウになってしまったわけです。これは
石川先生も最前申されておりましたが、
PKOもいろいろ変わっております。私も全く事前の予防的な
PKO活動について
一つの危惧を持っておりましたが、その点については
石川先生がお述べくださいました。
そこで、こういう重大な段階に至っておるので、私は、
政府・与党はこの際思い切って、
憲法を改正するという党是をお持ちでございますから、
憲法改正を
国会に出して、三分の二をとって、そして
国民投票をやってみることがまず一番大事な
一つだと思います。もしそれが
政府ができないというならば、
国会を解散して、この
法案を、
国民に信を問うべきものだと思います。それもできないというなら、今土井公述人が述べられましたように、やはり
国会承認というものをつけることは最低の
条件だと思います。これは防衛出動にしても治安出動にしても、今土井公述人も述べられましたけれども、緊急の場合は事後の処理でできるわけです。だから私は、これはやはりどうしても
国会承認を入れる。そして、どうしても
政府が機動的にやらなきゃならぬというなら、事後の案文を入れたらいいのです。そのくらいの寛容と忍耐がなければこんな大事な
法案を私
たちは認めることができないのです。これがまず大前提です。
そこで、もう少し具体的に言いますと、今
日本に平和の仕組みが、少なくとも
国民的合意を得ている平和の仕組みが五つあります。
一つは専守防衛です。
自衛隊賛成とか
反対とかという
立場じゃなくて、
国民的合意がおぼろげに浮かんでおる五つ、まず専守防衛です。領海、領空、領域の
範囲内で
自衛隊を使っていこう、外には出しません。二番目は、GNPの一%の枠の中で防衛費を組みます。これは近ごろ揺れております。三番目は非核
三原則です。四番目はシビリアンコントロールです。五番目は
武器の輸出の禁止です。この五つです。この五つを、私は今度のこの
PKO協力法案が出てから少し
反省をしてみました。
まず専守防衛です。専守防衛ということを私が言ったら、ある人が、滝井君、それはおまえ
認識不足だと言いました。どういうところが
認識不足か。
日本は専守防衛という仮面をかぶっておるけれども、実際は戦後四十有余年の長きにわたって日米安保条約でアメリカが駐留しているじゃないか。その駐留したアメリカ軍は強大な攻撃力を持っている。だからおまえの方の専守防衛は虚像であると言われました。これは外国人にもそう言う人がおります。
だからこの際、もう既にエネミレスの
時代になりました。我々が防衛力を強化しておったソ連も中国も、竹のカーテンも鉄のカーテンの内ももう見えるようになったわけです。そこで私
たちは、この専守防衛というものを本格的な専守防衛にしていくためには安保条約を見直す必要があるのです。安保条約を見直す思い切りのよさをしないと、四十年も一国が占領されて、そして基地があってその基地に守られておると、子供
たちが独立自衛の精神がなくなっちゃうのです。我々地方自治体にあっても、子供
たちがそんな精神がなくなる、他人依存になってしまうのです。国家が他人に依存をするなら
国民は必ず依存的になっちゃうのです。これが
一つ大きな問題です。したがって私
たちは、そういう
意味においてまず専守防衛と日米安保条約、そして基地、この問題を再検討する時期が来た。
もう
一つは、一%の枠内です。もう敵が見えなくなったのですから。ソ連もああいう状態になり、中国だって韓国だってそんなのないわけです。それなら一%をどうして見直さないか。まず我々が、
国際貢献をする前に国内のこれを見直す必要がある。
それから、後で触れますけれども、シビリアンコントロールは当然せなきゃならぬ、こうなるわけです。それであと、
武器その他は後で触れます。こういう平和の五つの仕組みというものをまさに見直すときが来た、こう思うわけです。ぜひこれはひとつ勇断を持って、政治というのは先見性と決断が大事です。そして、
総理はやはりボタをかぶることが大事です。ボタをかぶってもらわないといかぬ。そういう
意味で、平和国家をつくろうとすればそういうことから始めて、次に貢献の問題が出てくると私は思っております。
そこで、私
たちが大変わからないのは、今お話のありました
石川先生の
意見と全く同じですけれども、この
指揮権というのが、
内閣総理大臣から
防衛庁長官、
現地、そして
国連の事務総長から
現地の司令官、隊へ、この二重になっているわけですよ。これは
法律の専門家はそうかもしれぬけれども、二重になっておる。ということは何を
意味するかというと、既に
憲法の前文と九条が、
日本が
海外にいろいろなことをやろうとする場合に、それがもはや手かせ足かせになっているわけです。
だから、もし政権与党がそれをやりたいというなら、私が最初に言うように
憲法を改正しないと、九条と前文はもう限界が来てしまった。これ以上やれば、チョウチョウはまた昔と同じような侵略を繰り返していく。最前も
石川先生が述べられましたが、
アジア諸国に対する
歴史的な責任というものが何もない。我々は原爆を受けた。原爆を受けたから被害者意識が非常に強くて、中国、その他東南
アジアに侵略をした加害者意識が非常に薄いのです。ここにこの
法案があらわれてきているわけです。もう少し私
たちは加害者として意識をする必要がある。小学校の生徒や何かにそれを教える必要がある。ところが、韓国や中国から文句が出ると教科書を変えていく。そういう主体性のなさというのが実に私
たち地方自治体から見て情けないのです。もう少しそういう点の
戦争責任を明確にするようにこれからして、そしてやるなら
PKOはこういう姿でやりますということにしてもらわなきゃならぬと思います。
それから、もう
一つ私が言いたいことは、
指揮権とともに、何と申しますか、
武器の
使用ですね。この
武器の
使用も非常にわかりにくいのです。それは、私
たちが十人で隊をくくって巡回をしております。攻撃を受けました。一番先に出ておった滝井義高が戦死した。そうしたら、あとの九人は一緒に
武器を使うことはこれは当然ですよ。それを、滝井義高が使ったからほかの者は使わぬ、あるいはそれは使ってもいいことになる。そうしたら、そのときは司令官が命令せなければどうにもならない。命令ができなければ烏合の衆です。しかもそれを国際的に各国がばらばらに勝手なことをやるなら、
PKOに
参加した軍隊は烏合の衆になっちゃって収拾がつかなくなりますね。そんな子供でもわかるようなことを
法案にどうして書かなきゃならぬのかというのは、
憲法九条と前文に、もはやいかんともしがたい状態だから、一枚の紙を二枚に割るような状態です。一枚の紙を二枚に割ることは非常に不可能です。そういうことをおやりになっているということです。
それから、
法案をずっと読んできました。読んできて大変わからないところがあるのです。それは、この中に政令にゆだねるところが十あります、十カ所。そうすると、我々公述人は、どういうところが政令にゆだねられるのか、その政令にゆだねる
内容は何もわからないのです。かつて私
たちが健康保険法を審議したことがあるのです。そうしたら厚生省は、その健康保険法の精神を政令で全部変えちゃったのです。政令を全部詳細に書くことによって本法を骨抜きにすることができる。可能なんです、それは。それは、あの法制局の頭のいい、一枚の紙を二枚にはいでやるような
方々ですから、わけないのです。
法律というものは、
国会が審議して、
国会を通したら、何々は政令で定める、政令で定めるとみんな政令で書きかえてしまう。こういうことは法治国家として大変よくないことです。これが
一つ。
もう
一つ言わなきゃならぬのが
国連の平和
協力業務です。この業務が十六あります。十六業務があるうち、それは
自衛隊しかできないというのがイからヘ、ここは
自衛隊しかできないのです。イからヘまでは
自衛隊だけしかできないのです。こんなものは訓練すればだれだってできるわけです。何で
自衛隊だけしかできないような
法案にするのかということです。それじゃ一体
自衛隊というのは、何カ月、どういう
内容の訓練をしたら
PKOに
参加できる資格のある
自衛隊になるか。そんなことは何もわからないのです、この
法案を見たら。もし
自衛隊にできるなら私だってできるはずだ、訓練を受ければ。それをなぜイからヘまでだけは
自衛隊でなきゃならぬと言うか。
しかもその上に、十二条ですか、そのところをごらんいただきますと、今度は十六項目全部とそれに類するものは
自衛隊がやれることになっておるのです。そうすると、もしA省から職員を出すことになったときに、私の省は定員上出すことができませんと断られた。民間も行き手がいなかった。そうしたら全部
自衛隊が十六項目やれることになるのです、これは。そう読めるのです。そうなると、この
PKO協力法案は全部
自衛隊でやっちゃうということになるのです。そうなると、もうまさに
海外出兵です。
こういう、素人が読んでみてそれがわからないようなものがいっぱいある。だから、こういう公聴会をやるときは、
国会で審議した、この政令にゆだねる、ここはこういうことをゆだねますということを同時に文書をつけて私
たちに公述させていただきたい、それが結論です。
そこで、我々がこれから
国際貢献をやる場合に、どういうことで
国際貢献をやるかということが問題でございます。
まず、
自衛隊を外に出すことばかりを考えて、
自衛隊を活用することを考えて、あの大東亜
戦争の貴重な生命と財産の犠牲の上に立った
日本国
憲法を国際的に活用するという視点が欠けているんですよ。だから、最前
木村さんも言われたように、九条というのがどこにも出てこないわけです。だから、そういうことをまず私はきちっと位置づけてもらいたい。
そして、我々がこれから
国際貢献をすることは何かというと、まず第一に、
湾岸戦争で私
たちが経験したものは何かというと、イランとかイラクのようなああいうところにいっぱい近代的な
武器を売っているということです。
武器の輸出が多いということです。この
武器の輸出を、原爆の経験を受け、
戦争の加害者でもありまた被害者でもある
日本がそれを規制する必要があるわけです。それで、御存じのように、最近
日本は
武器の移転を規制しようという提案をしました。これは私は時宜を得たる
国際貢献だと思います。これを本格的にやる。ところが残念ながら、
日本は
世界で一番とは言わないが二番目に
武器を輸入している国なんですよ。自分はしこたま
武器を輸入しておって、そして他の東南
アジアやら中近東の諸国に、
武器を輸入しなさんな。しかも、
武器を輸出しているのは常任五大国でしょう。こういうところに向かって
日本が明確な
発言をすることによって
日本の
価値が上がってくる。いわゆる弱い国々の
協力を得ることができるわけです。そういうところが全然欠落をしておってこれが出てくる。
二番目は、今私
たちが直面している問題は何かというと、東欧及びソ連の脱共産主義のプロセスです。この脱共産のプロセスの中であの東欧やソ連に本格的な民主主義の定着と
経済の自由、安定ができるかどうかということは、これはそういうことをやった
歴史的な前例がないんですよ。そういう
歴史的な前例のないときに私はこれをやるべきだ。まだ幾つもありますが、大きいこういう二つの問題について
日本の外交が本格的に乗り出していったら非常に高めると思っております。
そこで結論は、この
法案のままでは
国会を通すべきでない、もう一遍
政府は考え直して、
憲法のあの力を発揮するために新しい
法律をつくるべきだ。そして
自衛隊は、最前申しますように、五つの平和の仕組みの中でアメリカやアメリカ軍の駐留によって、あるいは日米安保によって
日本の専守防衛ができておるんだから、
自衛隊を専守防衛に専念させる体系にもう一遍つくりかえるべきだ、こういう二つが私の結論です。
以上です。