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小澤(克)
委員 「指図」について、なぜ指揮としないで指図としたか。それは実態がそうだからだ。先ほど私、フィールドコマンダーと言いましたが、どうも間違いのようで、フォースコマンダーと言うようですが、訂正させていただきますが、フォースコマンダーの
役割というのは実質的にはコーディネーターなんだ、連絡調整役だ、
言葉の正確な意味におけるコマンダーではない、こういう御
理解のようです。したがって、
日本国の指揮権は、国側に属する指揮権は終始一貫
国連側に移譲されることはない、こういう御
理解でこの法案ができているようでございます。問題は、それがこれまでのつくられたPKFあるいは国際常識あるいはこのモデル協定等に合致しているかどうかなんです。
まず、モデル協定から申し上げましょう。モデル協定ではこうなっております。第五の「権限」のところの第七項、「〔参加国〕によって利用に供される人員は、〔国際連合平和維持
活動〕に
派遣される間、引き続き本国の役務に服するものであるが、」この訳は、これは仮訳でございますが、感心した訳ではありません。むしろ、引き続き「その国の公務員としての地位を保つが」という、これは
国連広報センターの訳でございますが、この方が適訳であろうかと思いますけれども、そのように
派遣元の国の公務員たる地位も確かに継続する。しかし、「
安全保障理事会の権限の下に
事務総長に付与された国際連合の指揮の下に置かれる。」これは外務省の仮訳でも、ここでは指図ではなくて「指揮」と書いてありますね。「指揮の下に置かれる。したがって、国際連合
事務総長は、〔参加国〕によって利用に供される人員を含む」、これは「人員」という訳は正確ではありません。「パーソネル」となっていますから総員、全部の人員という意味です。「を含む〔国際連合平和維持
活動〕の配置、組織、
行動及び指令について完全な権限を有する。」いいですか。「配置、組織、
行動及び指令について完全な権限を有する。同権限は、現地においては、
事務総長に対して責任を負う
派遣団の長によって行使される。」こうなっているわけですね。
なお、この翻訳はちょっとあいまいな点があります。原文を正確に、若干
言葉が重複することをいとわずに言いますと、こうなっているんですね。「参加国によって利用に供されたすべての要員の配置、組織、管理と指揮を含めて国際連合平和維持
活動の配置、組織、
行動及び指令について完全な権限を有する。」つまり、維持
活動についての完全な、配置、組織、
行動及び指令についての権限を有すると同時に、そこに含まれている参加国によって提供されたすべての要員の配置、組織、管理、指揮をすることができるんだ、こう明確に書いてあるわけです。そして「ただし、懲戒処分については
各国政府が責任を負う。」こうなっておるわけですね。懲戒についても、論理的にはこういうことになります。ある国がその主権に属する指揮命令権を
国連事務総長にゆだねた。すると、
国連事務総長の指揮命令権というのは、本来の、ゆだねた側の指揮命令権を代行していることになりますから、その
国連事務総長の指揮命令に従わなかったら、これは当然懲戒の問題が生じます。ただ、その懲戒権は
各国がみずから行うことになっている、これだけのことです。だから、懲戒権に裏づけられた指揮命令権なのです。懲戒権がないから指揮命令ではないという論理は成り立たないんですね。これが
国連のモデル協定の
立場です。
それから、この種のことはもうどれにも全部そう書いてあるわけですけれども、念のために言いましょう。
まず、ハマーショルド
事務総長の報告の「研究摘要」、これにまずその辺は明確になっております。第百六十八項、ここでは、「
国連の準軍事的
活動に使用される部隊の構成員は、当然、
国連に対して一定の義務を負うことになるが、その
内容は、
国連事務局の職員が
国連に対して負う公式の義務とは、同じではない。しかしながら、国際公務員に関する
国連規則の基本的部分は、この種の隊員にも適用され、」いいですか、
総理大臣。国際公務員ではないからとおっしゃいましたけれども、「国際公務員に関する
国連規則の基本的部分は、この種の隊員にも適用され、」と書いてあるんですよ。「特に
国連の目的に対する忠誠義務を負い、」こう明確に書いてあります。
それからキプロス
国連軍についての「規則」及び
事務総長の「覚え書」、これによりますと、「「覚え書」では、まず
国連軍が常に
国連の排他的指揮下に置かれること(第四項)、」「軍の全部隊は軍司令官の指揮下に置かれること(第六項)、」以上は「覚え書」でした。次に「規則」、この第六項では「
国連軍が
安全保障理事会の
決議に基づき設置された「
国連の下部機関である」」「
国連の下部機関である」というんですよ。そして「軍の構成員は……
国連軍に勤務中は
国連の権威の下にある国際職員であり、指揮系統を通じて
国連軍司令官の命令に服従する。」これがキプロス
国連軍における「規則」及び
事務総長「覚え書」です。
次にUNEF、
国連緊急軍、ここにおける
事務総長の「ガイドライン」報告書、ここでは、「〔
国連緊急〕軍は、
安全保障理事会の権威の下に、
事務総長に委ねられた、国際連合の指揮に服する。現地における指揮は、
安全保障理事会の同意を得て
事務総長が任命する司令官によってとられる。」このように明確になっております。
次にUNIFIL、レバノン
国連暫定軍、ここにおける「ガイドライン」報告書では——ちょっと今出できませんので、これは抜かします。
イラン・イラク軍事監視団、ここでは指揮統括について、これは、「UNIIMOGは、国際連合の統括の下に置かれ、
安保理事会の権威の下に、
事務総長に委ねられた
国連の統括指揮に服する。現地における指揮は、
安保理事会の同意を得て
事務総長が任命する軍事監視団長がとる。」このように明確になっている。そして京都大学の香西教授は、「このように、監視団の指揮系統は
安保理事会→
事務総長→軍事監視団長→監視員という平和維持軍のパターンを踏襲しており、軍司令官に代わって軍事監視団長が現地の指揮をとることになった。」こう記載されております。
そして、この香西教授は、ONUCですが、「ONUCは
国連の補助機関であり、その構成員は、本国の国軍に所属するとも、
国連に配属中は国際的性格をもち、指揮系統を通じてONUC司令部の命令に服従すること、隊員は
国連の目的と
利益のみを念頭に置いて
行動することが明記された。」
一般論として、「軍隊に対する管轄権については、
各国は、自国内にある待機軍とその構成員に対して」、これは北欧の待機軍についての一般的な記述であります。「構成員に対して排他的管轄権をもつが、
派遣後は、
国連の平和維持
活動の遂行につき、
各国の部隊は指揮系統を通じて
国連の指揮下に置かれるのであって、これはこの種の
国連軍や監視団の「国際的性格」からみて当然である。ただ、
各国派遣部隊内部における規律の問題については、部隊の指揮官に管轄権があることを
法律で規定する国があるが、これも、平和維持
活動の先例に従ったものである。」
さらにオーストリア
憲法。オーストリア
憲法では、「
派遣されたオーストリア部隊に対する使用の面での指揮権は、国際機構との協定があればこれに従い、協定のない場合には補充的にオーストリア政府に命令権を与えている。」
憲法で明定されております。これが実態なのです。どうして外務省だけが、コーディネーターであってコマンダーではないなどという奇妙なことをおっしゃるんでしょうか。