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宇野参考人 ただいま
お話しいただきました
関西経済連合会の
宇野でございます。
きょうは、大変貴重な時間に私の
意見を御聴取いただくということは、大変光栄に存じております。
そこで、私は三十分間
意見を申し述べさせていただきますけれ
ども、
順序として、
関西という
地方の
経済界の
立場から見て、本日脚討議いただく
国会等移転に関する問題に
関連した問題でございますから、
基本的に
東京一極集中という問題がこの
基本にございますから、この
一極集中の問題についてどういう
考え方を持っておるかということを申し上げまして、その
関連においてこの
集中是正策についてどういうことを
考えているかというふうな
順序で申し上げさせていただいて、なお、その
関西の、今私
どもが直面しておりますケースはこういうことがございますというふうなことを申し上げたいと思います。
そこで、
最初に、
東京一極集中問題の
基本認識でございますが、この
集中の
メカニズムという問題を私
どもしょっちゅう
考えるわけでございますが、これはもう
先生方先刻御
承知のとおりでございますが、明治維新以来、
日本の
国家は、
東京に
中央集権国家をつくって西欧に追いつくという
基本的な
考え方があって
基本的な仕組みがあったというふうに
考えております。
ところが、この
考え方がずっと尾を引いてまいりまして正本がここまで発展をしたわけでありますけれ
ども、さらに多少その経過を見てまいりますと、大
東亜戦争の始まる前の昭和十六年には、
日本の国力を結集するという形でいわゆる
総動員法というものが制定されたわけでありますけれ
ども、そのあたりから
東京の
中央集権というのは一段と強くなったというふうに
認識をしております。
さらにまた、戦後に入りまして、ここ十年ばかり前から世界的に
国際化、
情報化という波が非常に進んでまいりまして、その波がさらに
東京一極集中を加速したというふうに
考えておりますが、いずれにしてもそうした結果、
日本は今日の
経済大国に相なったわけでありますから、今の
集中の
メカニズムというものはそれなりに非常に働いた、なおまたこの
メカニズムは続いていくという
認識をしておるわけでございます。
ただ、ここで問題は、
先ほどから申し上げておりますような
メカニズムの中で、
一極に
集中することによるメリットが、どんどん追っかけられている過程で実は
デメリットが非常に出ているということは、また先刻御
承知のとおりでございます。私は、この
デメリットとして四つばかりの問題を意識に持っておるわけでありますが、
一つは、いわゆる
生活の
環境というものが
東京で非常に厳しい
状態に相なっておる。これはもう先刻御
承知のとおり、住宅あるいは地価というふうなところで、もう
考えられないような高い
生活費を出さなければ住めないという問題もございますし、あるいは公害の問題もございますし、あるいはエネルギーの問題、水の
問題等々
考えていって、
一言で言いますと、非常に豊かになっているけれ
ども非常にあやふやな不確かな豊かさであるというような
状態が
デメリットの中に入ってきておるというふうに思うことが
一つでございます。
もう
一つは、災害が起こったときに一体どうして対応するんだという問題が非常に深刻な問題に相なっておるというのが二番目の問題でございます。
それから三番目の問題は、これは数字には出てまいりませんけれ
ども、
日本の文化その他が、実は
東京一極集中をするために均一になってしまってくるのではないか。だから文化的に見て非常に薄っぺらな国にだんだんなってきているのではないかという問題が非常に深刻な問題として出てきているのではないか。
これが三番目でございますが、
最後は、そうした結果、やはり
東京に
集中しているために
東京と
地方の
格差が非常に強く開いてきた。とりわけ私
ども関西におる者にとっては、かつての
関西の
地位とかつての
東京の
地位との
比較感において、今や非常に
格差がついておるなというのを極めて実感をしておるというようなことでございます。これは、
日本国全体の
立場で見て、この
デメリットはほうっておけないなということでございます。
そこで、一体この
集中是正策というものをどうするかという問題でございますが、今申しましたような、
集中の
メカニズムは依然として働いておるよ、しかしながら
集中することによって起こっ
てくる
デメリットが非常に増大しているよという
基本認識の中で
考えられる
是正策というものは、やはり
東京に
集中し過ぎておる
機能をいかに分散するかという
考え方と、今度は分散した
地方をどのようにして育成するかという問題と、二つの
視点からこの
是正策を
考える必要があると思うのでございます。
そこで、
東京に
集中し過ぎている
機能を分けるという中に、かねてから
先生方が御討議いただいておる
国会等の
移転問題というのが出ておるわけでありますが、ここで私
どもの態度がちょっと
基本的に違う点がありますので多少敷衍して申し上げたいと思いますが、
先ほどから申し上げているような
日本の
中央集権国家体制を進めてきた結果起こったこの
体制というものの中で
集中を是正しようとしますと、根源に当たるところに、やはり
東京に
集中し過ぎている
権限とか
財源を
地方にいかに分けるかという問題が
基本にあるのではないか。つまり
一言で言えば、
地方に対する
分権という問題に踏み込まずして現象だけを追っかけても、これは解決しないのではないかということでございます。一時期、
遷都あるいは分都、展都、今でも陪都とか重都とかいろいろございますが、そういう問題よりも、もっと「目に見えない
遷都」という形での
地方分権という問題に踏み込まなければいかぬのではないかというのが
基本的な問題でございます。もちろん、そうは申しましても、
国会等の
移転という問題が極めてシンボリックに行われるということは、これは私
ども否定はいたしませんから、これはやっていただいたらよろしいのでありますが、
本当の
基本のところにそういう問題があるということを実は
認識をしておるということでございます。
そこで、では
地方の方に
分権をする場合、何を持っていくかということ、あるいはその中に
最後に残る
中央の
政府の
役割というものは何かというような問題を
考えていくに当たりまして、ここで問題はどういうことかというと、
三つばかりの問題があると思うのでありますが、
一つは、そもそも国のやる
役割と
地方のやる
役割とは何かという問題を一遍仕分けしてみる必要がある。つまり、国がやる
役割というのは、
本当の国の運営にかかわる
基幹の問題だけを国がやるべきである。具体的に言えば外交とか防衛とか、あるいは
基本的な国の根幹にわたる財政の問題、あるいは最近問題になっております
地球環境の問題というような極めて
基本の問題、これは国がやらなければならない。それ以外の
生活に密着した、あるいは
生活に
関連した問題はすべて
地方がやるということであるべきではないか。これが国と
地方の
役割の
分担であるべきではないかというふうに
考えるわけでございます。
そういうような国と
地方の
役割の
分担をはっきりさせるという問題と、それから
あとは、今一万件を超えると言われておりますところの許認可という問題、これをもっと規制緩和するという問題が別個にかねてかもあったわけでありますから、この規制の緩和をできるだけこの際進めるということも必要である。そこまでやりました上で、国に残すべき
権限、
財源、そして
あとは
地方に持っていく
権限、
財源ということになってまいりますと、
一つの
基準が決まるのではないかというふうに思うわけでございます。
そうして、今度は受ける
地方の問題でございますけれ
ども、
地方は今の三千四百
余りの
市町村、これがそのままでいいのか、あるいは四十七
府県があってそのままでいいのかということになりますと、これは、
受け皿としての
地方は
余りにも小さ過ぎるということでかねてから問題になっておるわけでございますから、やはりここで
受け皿をもっと
広域化するということが必要である。それから同時に、
地方は
地方なりに今の
国際化の波に乗って国際的につながる
地方づくりをする必要があるということも
考えなきゃいかぬというようなことで、
一言で申しますと、
地方の
受け皿ということについては、
国際化とそして
広域化という問題を
考えずしては、
地方は
分権されても
受け皿としては整備できていないというふうに
考えるわけでございます。
そこで、
関西経済連合会では、
地方の
受け皿として二様の
考え方を持っておるわけでございます。
一つは、将来の問題は別にして、当面できる範囲の
地方の
受け皿というのは、実は
府県の
連合体をつくるという
考え方でございます。それから同時に、それと相並行いたしまして、
市町村の
連合体をできるだけつくっていくという
考え方でございます。つまり、ここで言う
地方という場合には、現在の
府県レベルの
連合体と
市町村レベルの
連合体という二層に
分権をするという
考え方でございます。こういう
考え方をもとにいたしまして、
府県連合体あるいは
市町村連合体というものをこうしていただきたいという
提言は別個にかねてから出しておりまして、
関西地方を
中心にして皆さんと
お話をいたしておるということでございます。
その次に、さて、そうはいいながら問題なのは、今のようなことが
全国一様に一遍にできますかということであります。つまり、
府県で申しますと、
連合体があちこちにあってすぐに渡せるかということになると、
条件のそろっておるところとそろっていないところがいろいろありますから、できるところからやったらいいではないかということでございます。
市町村の
合併体、
連合体の場合もまたこれは同じでございます。たまたま私は第三次行革審に
委員の一人として参加しておりますが、いわゆる
パイロット制度というのも実はそういう
考え方がありますので、
条件のそろったところにそういうふうに特例を設けて、一遍
自治権をできるだけ渡すということをやったらいかがかということの
提言をいたしておりますが、関経連の方では、つとにこの問題を
提言をし続けておるわけでございます。
そういうことでございますが、冒頭申しましたように、
関西ではどういう問題がこういうことに絡んで起こっておるかということについてここで多少触れさせていただきたいと思うのですが、
関西は今総額で約三十五兆円強の
プロジェクトが進行しております。その中で、大きく分けまして
三つの
プロジェクトが
関西の中の
基幹になっておりますが、
一つは、
先生方にもお世話になっておりますが、
関西国際空港でございます。この方は今の問題とは必ずしもかかわっておらずに進行かできますが、問題はもう
一つの方の大きい
プロジェクトで、
関西文化学術研究都市という甚だ長い名前のいわゆる
学研都市を
建設しておるわけでありますが、この
都市は実は三
府県五市三町という
地方の
自治体のまたがった
地域に
開発をしておるわけであります。
中央の方は十六省庁が重なってやっておられる。したがって、この町を今
建設中でありますが、今までのルールのままでやってまいりますと、とても
建設がスムーズに進まないという悩みを抱えたわけでございます。
そこで私
どものとりました方法は、実はこの
建設を
推進するための
推進の母体として、
国土庁の御指示で
財団法人の
関西学研都市推進機構というのをつくりましたのですが、何さま
権限は私
どもにあるわけじゃありませんから、さらにこれを詰めてまいりまして、
議員立法で
関西学研都市の
建設特別法をつくっていただいたわけであります。したがって、現在はこの
特別法の
おかげで、
縦割りの
行政と
縦割りの
市町村あるいは
府県の区分を越えた
建設が進められておるということでございます。
同じようなことで、
関西のもう
一つの大きな
プロジェクトとして
大阪湾の
ベイエリアの
開発ということをやっております。この
地域は、
和歌山県から
大阪府、
兵庫県それから徳島県という
地域にまたがる
ベイの
周辺の大きな
地域の
開発でございますが、これまた
先ほど申しましたように
地方の
府県にまたがった道路、下水道、学校、その他すべての問題が進みませんので、やはりこれまた
推進機構をつくる必要があるということで、年内にでも
推進機構ができるところにまいりましたが、さらに、
学研都市と同じような形で
議員立法によって
ベイエリアの
建設のための
推進特別法をつくっていただきたいということの運動を今進めておるわけでございます。私がこういうことをいろ
いろ申し上げておるのは何かというと、
先ほど申しました
分権が
広域化した
地方に渡されておったら、こんな難しいことはしなくていいわけです。これはいわば
ウルトラCをやりながら
建設を進めておるということでありますが、このようなことをどうしてもやらなければいかぬということを切実に
地方の
経済人として感じておりますということを申し上げたいと思ったわけでございます。
以上のようなことで、
おかげさまで何とか
関西は
一つの将来像を描きながら進めるという
地域になってまいりましたので、私は、
先ほど申しました
地方の
受け皿づくりという形での
関西あるいは
近畿圏といいますか
府県連合体、そしてこの
地域にある
市町村の
合併をした形での
受け皿というものを、
全国に先駆けて
分権をしてもらう
地域に指定をしていただきたいというふうに
考えておりますので、
府県連合促進法ないしは
市町村連合促進法というふうな
法律づくりをこの際ひとつお
考えいただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思うわけでございます。
後になりましたが、そういうようなことで
一極集中の
是正策としてはやはり
分権ということが
基本になるべきであろう。それから同時に、
分権する以上はそうした
広域自治体と
地方の
国際化という問題を
考えた
地方づくりを
考える必要がある。そのためには何らかの促進する
法律をつくっていただかぬといかぬだろうというようなことでお願いいたしますけれ
ども、冒頭にも触れましたように、今申し上げたようなことと相並行してといいますか、あるいは先鞭をつけていただいて、
国会等の
移転を進めていただくことはぜひひとつこれはお願いをいたしたいと思います。
ただ、そのときに申し上げたいことが二つございます。
一つは、
先ほど申し上げましたように、国と
地方の
役割という問題を詰めてまいりますと、
考えられるところの
国会の
移転ないしは
国会に付随した
行政機関の
首都というのは極めて小さなものでいいはずだということでありますから、できるだけ小さなスマートな
都市あるいはスマートな
首都というものをつくることをひとつ目標にしていただきたいというふうに思います。
もう
一つの問題は、
政経を分離していただきたい。
国会の
移転は当然おやりになるわけでありますが、
国会に付随した
行政機関は、これはまた
移転をされるのは私は当然であると思います。そこで、アメリカで申しますならば、
ワシントンのような町が頭の中に描かれるわけでありますけれ
ども、
ワシントンのような町が私の
一つのイメージでありますが、要するに立法府と行
政府が
移転をしていただくということでひとつやっていただきたい、それに付随して
経済団体あるいは
経済界がそこにぞろぞろついていくようなことはやらぬでいただきたい、それをやったのでは、また再び
東京の二の舞になるのじゃないかというふうに思うわけでございます。
既にこの問題はいろいろ御検討いただいておるところと思いますけれ
ども、以上申しましたような、小さな
政府をつくる、そして
政経を分離する
町づくりという形を念頭に置かれました
国会等移転というものをやっていただきたいと思うのでありますが、それを進めるためにはやはり
基準法といいますか、
基本法が要るのだろうと思います。きのう、私は
山岸さんとも話したのですが、
基本法づくりが必要だという
山岸さんの話には全く私も同意でございますし、それを進めていかれるのは、実はこの
特別委員会の大きな
推進力があってできることだと思いますので、ぜひこれはひとつ推し進めていただきたい。かたがた、
特別委員会と
関連をいたしますかと思いますが、
先ほどお願いいたしましたような
府県の
連合あるいは
市町村の
連合というふうなものを促進するような
法律も、ひとつこの際御検討いただいて、
受け皿の方に対してもいろいろな御支持をいただきますと大変ありがたいと思うわけでございます。
多少時間を残しましたけれ
ども、このぐらいで私の
最初の話を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)