○網岡委員 そこで、今御答弁がありましたが、もう少し私、薬剤師が今日業務としてやっている
内容について、この際
厚生省に考え方をお聞きしたいし、現状というものを正確に
理解をしていただきたいという
意味で、
質問をさせていただきたいと思うのでございます。
今日、薬物
医療は技術的にも
多様化し、高度化しています。一方、医薬品の副作用は
社会的にも今日までしばしば問題になったところでございますが、医薬品の安全性の
確保というものが重要な
課題となっておるところでございます。したがいまして、薬剤師といたしましては、より一層質の高い薬物
医療を行うために、医薬品の安全性に関する情報や新しい薬物療法技術に関する情報を得ながら、高度な技術をもって対応しておるところでございます。
私が判断をいたしておるところでは、一般的な
認識というものは、現在の薬剤師の業務というものは、今まで一般的に言われている調剤ということが薬剤師の仕事の大半だ、こういうふうに
認識されている節が非常に多いわけでございます。ところが、実際は最近の薬剤業務というのはそういう単純なものではなくて、以下、若干具体的な問題を述べながら私は
質問をさせていただきますけれ
ども、まず現在の薬剤師の業務の実態を言いますと、調剤の業務というものは大体午前中で消化をいたしまして、
病院薬剤師業務の大体四五%ぐらいでございます。昼からの時間になりますと、薬剤師は一斉に、例えば試験検査業務とか注射薬取扱業務とか医薬品情報管理業務とか、あるいは薬歴管理業務とか入院
患者に対する服薬指導業務とかいったような業務に入っていくのでございまして、一日じゅうの薬剤師業務の仕事の大半、半分以上はそういうところで実は仕事をやっているというのが今日の現状でございます。
どれくらいの
内容の技術を持ってそういうような仕事をやっているのかということについて具体的に少し申し上げるわけでございますが、例えば医薬品の血中濃度のモニタリングという作業がございます。これは、正確に医薬品の使用量というものを測定いたしまして、そして、治療をやっていく場合により効率的にやっていく作業の
一つでございます。これがやられることによって
医療というものがかなり大きく前進したと言われておりますが、例えば具体的に申し上げますと、テオフィリンという気管支ぜんそくに有効な医薬品がございます。
血中のテオフィリン濃度を一定に保たないと効果がございません。また一方、治療に用いる量とそのテオフィリンが持っている中毒の症状を起こす中毒量というものの範囲が非常に接近しているわけでございます。したがいまして、少しでも治療量、
患者に使っていく治療の量がオーバーいたしますとテオフィリン中毒を来すおそれがあるという、これは操作の
状況いかんによっては大変問題が起きるような、綱渡りのような
状況でやらなければいかぬものなんでございますが、このため、この医薬品の使用に当たっては、有効治療量の範囲を決めるために、血液中のテオフィリン濃度をはかりながら投薬する必要があるわけでございます。
病院薬局におきましては、投薬中の
患者から採血された血液中のテオフィリン濃度を測定し、有効治療量の範囲に薬物がおさまっているかどうかを解析し、医師の治療投薬などに役立てているわけでございます。このような業務はTDMと言われまして、今の治療の中では非常に有効な役割を果たしているわけでございますが、単にテオフィリンだけではなくて、ジギタリス製剤、抗てんかん剤、アミノ配糖体系抗生物質、免疫抑制剤、抗不整脈剤など、かなりの領域にわたってこの薬剤投与が行われておるわけでございます。
このことによりまして利益として出てきております問題は、まず
一つは、薬が二重、三重に併用されていくことがチェックによって減少した。そして、
患者の服薬
状況の
向上が行われた。第三には、当然のことですが、副作用が減少した。第四は、入院期間が短縮した。
医療費全体が節約された。こういうような大きな成果を、薬剤師のこの血中濃度モニタリングの作業によって、
病院経営に対して大きく貢献いたしているところでございます。
それからもう
一つは、IVHという中心静脈栄養輸液の調製という作業がございます。そしてもう
一つは、
病院の中で市販で売られていない薬を製剤していく院内製剤業務というものがあるわけでございます。
まずIVHでいきますと、がん末期の
患者等食事を摂取できない
患者に対して、高カロリー輸液、これはIVHのことですが、これの投与が極めて重要な治療法として一般化してきているのであります。このIVH調製には無菌的操作を必要とし、高度な作業管理が必要とされているのであります。また、栄養不良は免疫機能の
低下、化学療法に対する反応の
低下、創傷
部分の治癒の遅延などを引き起こしまして、その結果、入院期間の延長とか罹病率が高くなってきたとか、結果においては死亡率の増加の原因になるおそれがあると言われているのでございます。このために、IVH調製業務というのは近年において
病院薬局の重要な業務の
一つとなりまして、そういう危険な
状況を正確な科学的な判断に基づいて、IVHの薬剤業務
を遂行することによって大きな成果を上げております。
一方、院内製剤の問題でいきますと、心臓手術を行っていきます場合には、まず心臓をとめる必要がございます。したがって、心臓を一たん停止させるわけでございます。それをやりますと、心臓の中に血液が普通健康の場合にはあるのですが、その心臓の血液がとまってしまいますと、これまた心臓に対して非常に大きな弊害をもたらすことになりますから、この心臓を保護する薬品をつくっていかなければならないわけでございます。ところが、これらは非常に
需要が少ないものですから、率直に言って製薬会社がつくっておりません。
したがって、この心停止液、心保護液を院内製剤という形でつくっていくわけでございますが、これらにつきましても、こういう薬剤業務を図っていきますためには、やはり医薬品に対するすべての
知識、そして高度な技術をもって院内製剤に対応していきませんと、
一つ間違えば、心臓がとまった状態における手術でございますから、人命にかかわる非常に大きな問題でございます。しかし、今
病院活動においては、こういうことを日常茶飯事のような形で、薬剤師が積極的な病棟活動の中で消化し、そして対応しておるというのが実態でございます。こういうような非常に高度な技術を発揮して薬剤師が貢献をしているわけでございます。
まあ、
説明をしておりますと長くなりますので、病棟の薬剤師業務、それから麻薬等の管理、これは
厚生省がよく御存じのとおりでございますが、麻薬管理というのは、
日本は世界一と言って誇ってもいいぐらいの麻薬の管理を実はやっているわけでございます。
病院における薬剤管理は、まさにその主役は薬剤師でございまして、今日の
状況をつくっているのは、この院内における薬剤師の業務の成果でもあるというふうに思っているわけでございますが、これらの業務をずっとやっているわけでございます。
今御
説明を申し上げましたような業務をやりながら、しかもその業務は、調剤という業務は午前中に終わって、午後の段階でそれをやっているという
状況が
病院の現場においては薬剤師の仕事として現出をしているわけでございます。こういう質の高い業務というものを
厚生省あるいは人事院というところは一体どのように評価をなさっているのか。冒頭第一問で
質問いたしましたように、学歴による設定、そして技術によるレベルの問題などから考えて、冒頭申し上げましたような薬剤師の給与の実態というものが、この現実に合った給与の待遇がされているかどうかということについてお尋ねを申し上げたい。これは人事院、
厚生省ともにお答えをいただきたいと思います。