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中村会計検査院長 平成元年度
決算検査報告につきまして、その概要を御
説明いたします。
会計検査院は、
平成二年十月十二日、
内閣から
平成元年度歳入歳出
決算の送付を受け、その
検査を終えて、
平成元年度
決算検査報告とともに、
平成二年十二月十四日、
内閣に回付いたしました。
平成元年度の
一般会計決算額は、歳入六十七兆二千四百七十八億二千二百五十八万余円、歳出六十五兆八千五百八十九億三千八百七十五万余円でありまして、前
年度に比べますと、歳入において二兆六千四百四億四千二百三万余円、歳出において四兆三千八百七十八億七千六百三十七万余円の増加になっており、各特別会計の
決算額の合計額は、歳入百七十五兆三千三百九億九千九百三十四万余円、歳出百五十二兆八千十六億四千二百四十四万余円でありまして、前
年度に比べますと、歳入において二兆八千二百九十四億六千七百五十一万余円、歳出において五兆三千九十四億一千四百六十三万余円の増加になっております。
また、国税収納金整理資金は、収納済額五十七兆七千六百六十七億八千二百三十二万余円、歳入組入額五十五兆四千九百二十四億八千九百六十三万余円であります。
政府関係機関の
平成元年度の
決算額の総計は、収入五兆九千四百五十九億二千二百四十二万余円、
支出五兆四百二十二億二千四百二十三万余円でありまして、前
年度に比べますと、収入において八千百七十二億四千九百九十六万余円の増加、
支出において百九十九億九千二百四十一万余円の減少になっております。
平成元年度の歳入、歳出等に関し、
会計検査院が、国、
政府関係機関、国の出資団体等の
検査対象機関について
検査した実績を申し上げますと、書面
検査は、
計算書二十三万三千余冊及び証拠書類六千九百六十五万九千余枚について行い、また、実地
検査は、
検査対象機関の官署、事務所等三万八千九百余カ所のうち、その九・二%に当たる三千六百余カ所について実施いたしました。そして、
検査の進行に伴い、関係者に対して九百余事項の
質問を発しております。
このようにして
検査いたしました結果、
検査報告に掲記した法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた事項等について、その概要を御
説明いたします。
まず、法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた事項について申し上げます。
法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた事項として
検査報告に掲記いたしましたものは、合計百九十二件であります。
このうち、収入に関するものは、五件、二十三億七千七百八十一万余円でありまして、その内訳は、租税の徴収額に過不足があったものが一件、十四億五千十五万余円、保険料の徴収額に過不足があったものが三件、九億七百五十三万余円、職員の不正
行為により損害を生じたものが一件、二千十二万余円、また、
支出に関するものは、百五十七件、七十六億六百七十四万余円でありまして、その内訳は、
予算経理に関するものとして、架空の名目等により支払った旅費を別途に経理していたものが一件、四百九万余円、工事に関するものとして、予定価格の積算が適切でなかったり、設計が適切でなかったり、監督及び
検査が適切でなかったものが四件、四千九百九万余円、物件に関するものとして、土地を不当に処分して利益を得ていたものが一件、二千百十七万余円、保険給付に関するものとして、保険給付金の支給が適正でなかったものが七件、四億四百十八万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが七十八件、六十三億七千四十五万余円、貸付金に関するものとして、貸付金の経理が適切でなかったものが八件、三億九千百四十五万余円、職員の不正
行為により損害を生じたものが一件、一千八百七十九万余円、その他、医療費の支払いが適正でなかったものが五十七件、三億四千七百四十九万余円であります。
以上の収入、
支出に関するもののほか、レーダー等の部品から採取した銀くずや、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等について、職員の不正
行為による損害を生じたものが三十件、二億八千三百九十二万余円ありまして、これらの合計は、百九十二件、百二億六千八百四十八万余円となっております。これを前
年度の百六十六件、四十八億四千百二十七万余円と比べますと、件数において二十六件の増加、
金額において五十四億二千七百二十一万余円の増加となっております。
次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御
説明いたします。
平成二年中におきまして、
会計検査院法第三十四条の
規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは七件、同法第三十四条の
規定により是正改善の処置を要求し及び同法第三十六条の
規定により改善の意見を表示いたしましたものは一件、また、同法第三十六条の
規定により改善の意見を表示いたしましたものは二件、改善の処置を要求いたしましたものは一件であります。
このうち、
会計検査院法第三十四条の
規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは、法務省の宅地建物取引業を営む者が現金で供託した営業保証金のうち時効完成したものを歳入として徴収するための処理に関するもの、文部省の医学部附属病院特殊救急部が行った救命救急医療に係る診療報酬の請求に関するもの、国立大学医学部附属病院等の診療棟、病棟等の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算に関するもの、厚生省の医師看護婦等が標準人員に対して著しく不足している病院等の把握に関するもの、建設省の住宅新築資金等貸付事業における宅地取得資金の貸付けに関するもの、中小企業信用保険公庫の機械類信用保険の回収金の公庫納付に関するもの、東
日本旅客鉄道株式会社の私鉄等の定期乗車券の委託販売に係る手数料の収受に関するものであります。
会計検査院法第三十四条の
規定により是正改善の処置を要求し及び同法第三十六条の
規定により改善の意見を表示いたしましたものは、厚生省の母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付事業の運営に関するものであります。
また、
会計検査院法第三十六条の
規定により改善の意見を表示いたしましたものは、文部省の高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業に関するもの、農林水産省の国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地に関するものであり、
会計検査院法第三十六条の
規定により改善の処置を要求いたしましたものは、労働省の労働者災害補償保険の診療費の算定に関するものであります。
次に、本院の
指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御
説明いたします。
これは、
検査の過程におきまして、
会計検査院法第三十四条又は第三十六条の
規定により意見を表示し又は処置を要求すべく
質問を発するなどして検討をしておりましたところ、当局において、本院の
指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものでありまして、
検査報告に掲記いたしましたものは十七件であります。
すなわち、
総理府の廃棄物処理設備の運転等の作業請負契約における労務費の積算に関するもの、農林水産省の輸入麦の買入
経費に関するもの、素材生産請負事業における労務費の積算に関するもの、運輸省の岸壁築造工事等における揚土費の積算に関するもの、住宅騒音防止工事に用いるアルミサッシの仕様に関するもの、労働省の雇用保険の地域雇用特別奨励金の支給に関するもの、自治省の衛星通信用無線通信設備の電力増幅管の交換方法に関するもの、
日本道路公団の橋りょう床版上の舗装の設計に関するもの、阪神高速道路公団の高架橋建設工事に
使用する鉄筋の加工組立費の積算に関するもの、住宅・都市整備公団の住宅等建築工事における鉄筋の加工組立費の積算に関するもの、電源開発株式会社の定期点検工事等に係る現場従業員の人件費等の積算に関するもの、
日本電信電話株式会社の交換機遠隔保守システムの機器構成に関するもの、パーソナルコンピュータ等のプリンタで
使用するリボンカセットのリサイクルに関するもの、公衆電話委託手数料の支払いに関するもの、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社の自動車線の委託駅における乗車券類の発売に関するものであります。
以上をもって概要の
説明を終わります。
会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係
各省庁などに対して、適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し上げましたような事例がありますので、関係
各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう望んでいる次第であります。
次に、
平成元年度国有財産
検査報告につきまして、その概要を御
説明いたします。
会計検査院は、
平成二年十月十九日、
内閣から「
平成元
年度国有財産増減及び現在額総
計算書」及び「
平成元
年度国有財産無償貸付状況総
計算書」の送付を受け、その
検査を終えて、
平成元年度国有財産
検査報告とともに、
平成二年十二月十四日、
内閣に回付いたしました。
昭和六十三
年度末の国有財産現在額は、五十二兆八千百二十九億八千三百九十二万余円でありましたが、元
年度中の増が三兆九千六百六十七億四千五百四十六万余円、同
年度中の減が八千五百二十一億七千二百五十六万余円ありましたので、差し引き元
年度末の現在額は五十五兆九千二百七十五億五千六百八十三万余円になり、前
年度に比べますと、三兆一千百四十五億七千二百九十万余円の増加になっております。
また、国有財産の無償貸付状況につきましては、六十三
年度末には、八千四百六十八億四千四百九十五万余円でありましたが、元
年度中の増が一千二百三十五億三千二百四十八万余円、同
年度中の減が一千百五十二億三千百八十七万余円ありましたので、差し引き八十三億六十一万余円の増加を見まして、元
年度末の無償貸付財産の
総額は八千五百五十一億四千五百五十六万余円になっております。
検査の結果、「
平成元
年度国有財産増減及び現在額総
計算書」及び「
平成元
年度国有財産無償貸付状況総
計算書」に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、
平成元年度
決算検査報告に掲記いたしましたものは、「法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた事項」といたしましては、
総理府の屋外燃料タンク補修工事の施行に当たり、鋼板の材料費、工場加工費等の積算が適切でなかったため、契約額が割高になっているものの一件であり、また、「本院の
指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」といたしましては、
総理府の廃棄物処理設備の運転等の作業の請負契約における労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたものの一件でございます。
以上をもって概要の
説明を終わります。