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馬場委員 先ほど長官おっしゃいましたように、十年ぐらい前にこの
委員会でお互いに
理事として机を並べたことを今思い出しておるわけでございます。とともに、一九八一年、昭和五十六年、
長官と
衆議院欧州各国環境保全状況視察団としてヨーロッパをずっと
一緒に視察して歩いたのを今思い出しておるわけでございまして、きょうは
水俣病問題を
中心に
質問いたしたいと思います。
大臣も
先ほども言われましたように、
水俣病問題は
我が国の
公害問題の
原点である、こういうぐあいに
認識されておるわけでございますが、まさに
水俣病問題は
世界の
公害の
原点、こう言われておるわけでございます。
そこで、私はまず、なぜ
水俣病を
世界の
公害の
原点と言うのか、こういうことについて
大臣の
認識をお伺いしたいと思うんです。
何といっても、私みたいな大きい体の漁民の人が一日六、七十回けいれんして、跳び上がるようにけいれんするわけですね。まさに
猫踊り病という
言葉もついたわけですけれ
ども、そういう
狂い死にをした。
胎児性患者は生まれながらにして目も見えない、口もきけない、耳も聞こえない、そして、生けるしかばねという
言葉があったんですけれ
ども、お母さんが食事をやるのに、重湯を流し込まなければ入っていかないわけですから、一時間ぐらいかかるわけです、湯飲み一杯ぐらいというのに。そういう悲惨な健康被害、そしてまた
環境破壊というのも物すごいものがあるわけでございまして、そういう健康被害とか
環境破壊の悲惨さというもの、そして全く底が知れない、深さ、広さがわからない、こういうまさに
世界に類例のない水汚染
公害である、こういうことから
世界の
公害の
原点だと言われておるわけでございます。
いま
一つの側面から見ますと、
水俣病問題が起こってからこれは三十五年、三十六年じゃないんですよ。半世紀以上かかっているんです。私は、地元に生まれ、地元に育ったからよく知っているんですけれ
ども、半世紀に及んでもまだ病像というものが、
国民が納得するような病像も被害の全体像というのもまだわかっていないんです。こういうこともまさに異例なものだ。そういうこともやはり
世界の
公害の
原点という、こういう厳しさが言われるゆえんじゃないかと思うんです。
さらにあの当時を
考えてみますと、
日本の産業というのが、まさに政治そのものが産業優先、企業優先であって、そのことが
公害を許した。そして今度、
公害を許しておりながら、その
公害の原因を究明をする、
救済をするというのに対して、産業優先の政治が、あるいは企業がそれを妨害をした、こういう歴史が続いてきたわけでございます。
これは
長官、十分御承知かどうか知りませんけれ
ども、いま
一つの
水俣病があると現地では言われているんです。もう
一つの
水俣病がある。それは何かというと、社会的
水俣病だと言われておるわけでございます。
例えば、この
水俣病の歴史を見ますと、患者が発生してからでも、まさにチッソと行政は患者を分断するために全力を挙げたんです。そして患者を分断して、差別をやったんです。そうして、要求をする闘いに対して物すごい弾圧をやりました。そして、今度は患者と市民を分断させたわけですよ。そうして水俣市、あの
地域にまさに対立と抗争といういま
一つの社会的
水俣病、こういうものをつくり上げた、これも私は異常なことだと思うわけです。
そして、患者側からとってみますと、
最初は奇病といって、隔離されてそのまま葬り去られたという例もたくさんあるわけです。結婚の差別もありました。就職の差別もあったんです。
地域差別もあって、水俣という
地域は、
地域が差別されて、経済的にも社会的にもずっ破壊されてきてしまった。
こういう社会的
水俣病というのがありまして、
水俣病をずっと
考えた場合に、まさに
水俣病に流れておるのは差別の構造ですよ。人を人と思わない人間差別があります。
地域の苦しみを理解しないという
地域差別があるんです。こういうのが、もう
一つの社会的
水俣病と言われておるものが現にまだ存在しているんです。
ある新聞の社説で書いてございました。この
水俣病が水俣湾でなしに東京湾で起こったらどうだろう、
水俣病じゃなしに東京病だったらどうなったんだろうか。まさに政治も行政も
産業界も、南九州のあのへんぴなところの出来事として、本当に被害を見なかったんです。そういう地方べっ視の態度がある、こういうことを新聞の社説でも言っておるわけでございます。
今いろいろなことを申し上げましたけれ
ども、やはり私は、今この
世界の
公害の
原点水俣病を聞い続けるのは、問わなげ机ばならぬのは、
先ほど長官も言われましたように、
人類生存の基盤である
地球全体がおかしいという
状況に来ておるわけですから、そういうときにはこの
公害の
原点水俣病を今また厳しく問わなければならぬ、こういうことだと思うわけでございますし、事実、
発展途上国に第二、第三――第二は新潟ですが、第四、第五、第六の
水俣病が発生しつつあるという現状もあらわれておるわけでございますから、この
世界の
公害の
原点水俣病というのを今問わなければならぬということを思うのですけれ
ども、こういうことについて、
大臣の
水俣病に対する
認識というものを答えていただきたい。
先ほど答弁を聞いておりますと非常に長いわけですから、きょうはもうイエスかノーぐらいの程度で短くひとつ皆さんも
答弁していただきたいということを
委員長にお願いしながら、
大臣の
認識を伺います。