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1991-12-03 第122回国会 衆議院 環境委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月三日(火曜日)     午前十時八分開議 出席委員   委員長 小杉  隆君    理事 青木 正久君 理事 塩谷  立君    理事 鈴木 恒夫君 理事 高橋 一郎君    理事 細田 博之君 理事 斉藤 一雄君    理事 馬場  昇君       臼井日出男君    小澤  潔君       北村 直人君    武村 正義君       岩垂寿喜男君    岡崎トミ子君       竹内  猛君    時崎 雄司君       長谷百合子君    東  順治君       寺前  巖君    中井  洽君  出席国務大臣         国 務 大 臣 中村正三郎君         (環境庁長官)  出席政府委員         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁企画調整 柳沢健一郎君         局環境保健部長         環境庁自然保護 伊藤 卓雄君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         環境庁水質保全 眞鍋 武紀君         局長  委員外出席者         防衛施設庁総務 太田 洋次君         部施設調査官         防衛施設庁施設 吉田 厳彦君         部連絡調整官         外務省北米局地 原田 親仁君         位協定課長         外務省経済協力 小島 誠二君         局調査計画課長         外務省国際連合 花角 和男君         局経済課長         厚生省生活衛生 織田  肇君         局食品保健課長         通商産業省基礎         産業局基礎化学 作田 頴治君         品課長         環境委員会調査 西川 義昌君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 十二月三日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     中井  洽君  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 十一月二十五日  水俣病被害者早期抜本的救済に関する請願  (日野市朗紹介)(第一六号)  同(池端清一紹介)(第七二号)  同(岡崎トミ子紹介)(第七三号)  同(筒井信隆紹介)(第七四号)  同(日野市朗紹介)(第七五号)  同(吉田正雄紹介)(第七六号)  同(池端清一紹介)(第一五二号)  同外一件(石橋大吉紹介)(第一五三号)  同(岡崎トミ子紹介)(第一五四号)  同(田中昭一紹介)(第一五五号)  同(竹村幸雄紹介)(第一五六号) 同月二十九日  水俣病被害者早期抜本的救済に関する請願  (池端清一紹介)(第一七一号)  同外一件(岡崎トミ子紹介)(第一七二号)  同(田中昭一紹介)(第一七三号)  同(竹村幸雄紹介)(第一七四号)  同(筒井信隆紹介)(第一七五号)  同外一件(日野市朗紹介)(第一七六号)  同(吉田正雄紹介)(第一七七号)  同(池端清一紹介)(第二二〇号)  同外一件(石橋大吉紹介)(第二二一号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二二二号)  同(関山信之紹介)(第二二三号)  同(田中昭一紹介)(第二二四号)  同(竹村幸雄紹介)(第二二五号)  同(日野市朗紹介)(第二二六号)  同(吉田正雄紹介)(第二二七号)  同(池端清一紹介)(第二六六号)  同(石橋大吉紹介)(第二六七号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二六八号)  同(竹村幸雄紹介)(第二六九号)  同(日野市朗紹介)(第二七〇号)  同(吉田正雄紹介)(第二七一号)  同(池端清一紹介)(第四〇三号)  同(岡崎トミ子紹介)(第四〇四号)  同(竹村幸雄紹介)(第四〇五号)  同(筒井信隆紹介)(第四〇六号)  同(日野市朗紹介)(第四〇七号)  同(吉田正雄紹介)(第四〇八号)  同(池端清一紹介)(第四二九号)  同(竹村幸雄紹介)(第四三〇号)  同(筒井信隆紹介)(第四三一号)  同(田中昭一紹介)(第四七七号)  同(竹村幸雄紹介)(第四七八号)  同外一件(吉田正雄紹介)(第四七九号)  同(関山信之紹介)(第六〇四号)  同(田中昭一紹介)(第六〇五号)  水俣病問題早期徹底解決のための裁判所和解勧  告の国による即時受諾和解交渉国会による  促進に関する請願菅直人紹介)(第二一九  号)  同(田中昭一紹介)(第四八〇号)  同(馬場昇紹介)(第四八一号)  同(山花貞夫紹介)(第四八二号) 十二月二日  水俣病被害者早期抜本的救済に関する請願  (関山信之紹介)(第六四八号)  同(石橋大吉紹介)(第七〇八号)  同(田中昭一紹介)(第七〇九号)  水俣病問題早期徹底解決のための裁判所和解勧  告の国による即時受諾和解交渉国会による  促進に関する請願田中昭一紹介)(第七一  〇  号) 同月三日  水俣病被害者早期抜本的救済に関する請願  (筒井信隆紹介)(第八六一号)  同(目黒吉之助紹介)(第八六二号)  同(石橋大吉紹介)(第一〇六七号)  同外一件(関山信之紹介)(第一〇六八号)  同(筒井信隆紹介)(第一〇六九号)  水俣病問題早期徹底解決のための裁判所和解勧  告の国による即時受諾和解交渉国会による  促進に関する請願江田五月紹介)(第八六  三号)  同(菅直人紹介)(第八六四号)  同(外口玉子紹介)(第八六五号)  同(馬場昇紹介)(第八六六号)  同(江田五月紹介)(第一〇七〇号)  同(菅直人紹介)(第一〇七一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 小杉隆

    小杉委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田博之君。
  3. 細田博之

    細田委員 このたびは、中村環境庁長官、御就任おめでとうございます。  私ども、従来、同志として御指導を仰いでいるわけでございますが、特に明年は国連環境開発会議UNCEDも開かれるわけでございますし、現在、日本の社会におきまして最も重要な問題の一つ環境問題だと承知しております。最初質問であり、また大臣衆議院における初めての委員会での答弁でもございますから、できるだけ時間を差し上げながら、思いのたけといいますか、所信表明的なお考えをできるだけ具体的におっしゃっていただきたいと思いますので、問いの方はざっとまとめて申し上げますので、その中で特に御関心の深いあるいは御意向の強い問題についてお話しいただきたいと思います。  まず、来年の国連環境開発会議UNCEDでございますが、大臣としてはどのような基本的な方針で臨むおつもりか、具体的におっしゃっていただきたいと思います。そのときに、日本立場は、それぞれ大きく主張の食い違いもあるというように聞いておるわけでございます。炭酸ガス排出量の規制の問題についても、あるいはオゾンの問題、森林その他の資源の保全問題等各国の利害はいろいろ対立することと存じますけれども、その中で、我が国世界のいわば環境のリーダーとしてどのようなイニシアチブをとっていかれるおつもりかということが第一点でございます。  第二は、二十六日に中央公害対策審議会から、今後の水俣病対策あり方について答申がありました。今後具体的にどのように取り組んでいかれるつもりなのか。新聞などには、これから来年度中に実施するというようなことがございますけれども、どのような手順とどのような具体的内容において本問題に対処しようと考えていらっしゃるかということでございます。  また、私の選挙区も島根県で、中海・宍道湖という大変大きな湖沼を抱えているわけでございますけれども湖沼中小河川等生活排水による水質汚濁問題についても基本的なお考えについてお答えいただければと思うわけでございます。  その他、時間の関係もございますので多少簡単な質問にかえたいと思いますけれども流し網漁などについても大きな流れがございました。個別の、いわば自然保護野生動植物保護という面でもいろいろな問題がございます。また、バーゼル条約関係でも、国際的に日本体制を整備していかなければならないということでございますが、それぞれの問題につきまして環境庁としての基本的なお考えをまずお伺いいたしたい、と思います。  そこで、若干具体的にやや補足していただきたい問題があれば、また担当局長お答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  4. 中村正三郎

    中村国務大臣 お答えいたします。  今、細田委員御指摘のように、環境問題、極めて緊急な、なお重大な問題となってきております。特に、来年のいわゆるUNCED地球サミットに向けまして、やはり有限の地球だとか開発の限界だとか、そういうことが国民の中にも非常に意識が高まってきている時期だと思うわけであります。そのときに、地球サミットを迎えるに当たって我が国はどういうふうに考えていくかということでございました。  まさに、今環境問題というのは、実は私も、馬場委員があそこにいらっしゃいますが、十年ぐらい前から環境委員会理事をやっておったことがございます。御一緒に、馬場委員にもいろいろな教えを受けながらやってきたのでございますけれども、そのころは、出てきた公害をつかまえるんだ、そして悪いことをするやつを成敗するんだというような感じが強かったと思うんですね。そういう中で、何か体制対反体制で、悪い者は成敗するというような感じのものが、私が環境庁長官を拝命いたしまして今感じますことは、全く変わってきた。やはり我々人類生存のために基本的な問題である地球環境保全ということを考えて、それからすべてのものを考え起こしていかなければいけないという時代に入ってきたということであります。  そういうときに、まず一つは、このUNCEDへ向けて我が国として万全の積極的な取り組みをしていかなければいけないということだと思います。この地球サミットにおける重要なことといたしまして、気候変動枠組み条約生物学的多様性保存条約への署名とか森林保護、利用、そういったことの一般原則への合意とか、人と国家の行動原則を定めた地球憲章を採択しようとか、二十一世紀へ向けての具体的な行動であるアジェンダ21、これは今準備会議等で一生懸命やっておりますが、そういったものを決めていこう。  そういったものを実効あらしめるために、いわゆる資金をどうするか、そして技術をどうするかというようなことであります。環境上健全な技術移転をする、そのメカニズムをつくらなければいけない。また、よく今サスティナブルデベロプメントという言葉が出てまいりますが、こうしたことをやるのに、国連におけるUNEPの国際機関の強化というものも必要でございましょうし、そうして資金移転メカニズムというものもつくっていかなければいけない。大変これは大きな問題だと思うのですね。短い私の経験ですが、今まで外国の方の情報を得たり、外国の方がいらっしゃっていろいろお話ししていく中で感じますことは、これはまさに大変なことだということでございます。まず先進国同士意見調整しなければいけない。それで、先進国意見調整をした上でまた発展途上国方たち意見調整をしなければいけないということでありますが、こうした中で、やはり私どもは今までかつてない大変な公害経験し、それをある程度克服してきた日本国民でありますから、そうした経験もとにしたいろいろな蓄積してきた技術、こういったものをもって貢献もしていかなければいけないと思いますし、また、これは非常に難しい、いろいろなこれからの検討を要することでありますけれども世界最大貿易黒字国であり、世界生産額の一五%を生産しようという国でありますから、それなりのいろいろな貢献をしていかなければいけない。こういうことに関しまして最大限努力を払ってまいりたいと思っております。  しかしながら、実はきょう、きのうでございますかな、OECDのUNCEDへ向けての閣僚会議が開かれているわけでございますが、私、国会がこういうような事情になりましたので行けませんでした。でありますから、今政務次官に行ってもらっているわけでありますが、こういった行けなかったことは極めて残念だと思いますが、政務次官に行っていただき、そこでいろいろな討議がなされ、その結果をまたお聞きして積極的な対応をしてまいりたいと思っているわけであります。  その他、議員は今非常に多様なことを御質問されたのでございますが、これらの解決しなければならない問題の中には、オゾン層のことも言われましたし、地球温暖化の話もされました。こうしたことがこの会議の主要な議題になっていくと思いますが、要は、やはりこの会議で国際的な合意が得られて一つ枠組みがつくられないと一つの大きなチャンスを逸することになりますので、このUNCED会議が成功しますように最大限努力を払ってまいりたいと考えている次第でございます。
  5. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 大臣からUNCEDに向けまして我が国の取り組み、方針につきまして概略申し上げたところでございますが、若干議員お触れになりました細部にわたって補足説明をさせていただきます。  まず最初に、地球温暖化対策分野でございますが、これにつきましては、現在までに気候変動枠組み条約交渉会議という格好で三回開催されてきております。その中で、分野によりましては検討が進展するなど一応の成果が得られつつあるわけでございますが、一方では各国主張が明らかになってきた、それをこれからどう調整していくかという段階に差しかかってきているのではないかというぐあいに申し上げた方が現在の状況をより的確に表現することになろうかと思います。  まず、二酸化炭素排出抑制目標設定に関してでございますが、我が国EC等は、先進国二酸化炭素排出量を二〇〇〇年以降おおむね一九九〇年レベルで安定化すべきであるというほぼ同様の趣旨の主張を行っておるわけでございますが、それに対して、米国は具体的な目標設定には慎重な態度を示しておりまして、我が国EC米国との見解には依然として隔たりがあるという状況が現段階であるわけでございます。先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、先進国間での意見調整を行う必要があるということは、この辺にあろうかと思います。  またさらに、途上国におきましては、地球温暖化の主たる責任は一先進国にあるという考え方から、途上国には温暖化対策実施を行う義務はなく、先進国から資金なり技術なりの提供がある場合にのみその対策実施すればよいのだという強い主張がございまして、これに対し先進国は、やはり地球の問題なんで、先進国途上国もそれぞれ一定の対策実施する必要があるのだというぐあいに主張しているところでございます。  またさらに、財政支援メカニズムにつきまして、途上国は、先進国の拠出による新たなかつ追加的な基金の創設というものを主張しているわけでございますが、多くの先進国におきましては、既存のメカニズム最大限利用する、また活用するというような格好で対処すべきであるというような主張をしております。  さらに技術移転につきましては、途上国が、特恵的かつ非商業的な条件技術移転をしてほしいということを求めているのに対しまして、先進国は、技術移転重要性は確かにあるというぐあいに認識しておるわけですけれども政府は民間の技術というものを管理する立場にございませんものですから、公平で有利な条件ではあるけれども商業ベース技術移転を行わざるを得ないというような主張を行っているところでございます。  こういったように、条約成立につきましてはまだ多くの重要課題が抱えられている状況にあるということ、また明年六月の国連環境開発会議までに残された時間はあと半年余りということになっておりますので、条約の採択に向けて私どもは今後ともより一層の努力を行うことが必要であり、環境庁といたしましては、関係省庁関係機関と十分な連携をとりつつ、この十二月からまたさらにジュネーブで第四回の交渉会議が開かれるわけでございますが、引き続き各国との対話を深めながら、どうか実効ある条約が策定されるようにということで全力を尽くしてまいりたい、大臣の御指導もとに私ども一丸となって努力をしてまいる所存でございます。  もう一つお触れになりました森林保全分野についての問題でございますが、現在、熱帯林の減少は、FAOの調べによりますと、千七百万ヘクタール年間減少しているという状況にございまして、緊急に対策を要する課題であり、また、熱帯林保全対策を効果的に進めるためには開発途上国先進国協調して取り組むことが必要な問題であるというぐあいに考えられるわけであります。  そこで、森林に関する交渉につきましてはどういう状況にあるかということなんですが、開発に果たす森林役割を重視いたしまして、森林保全対策開発阻害要因になるではないかということを懸念します開発途上国が一方でございますのに対し、地球環境問題との関係森林が果たす役割を重視し、地球サミットにおいて森林条約というものを採択すべきではないかという米国ECとの対立が激しくて、この年の初めごろには対話設定すらできない状況にあったわけでございます。我が国といたしましては、こういった状況から、諸国間における橋渡しをする必要があるということを努力いたしまして、本年三月の第二回地球サミット準備会合におきまして、私どもの国から、森林憲章といったものをつくったらどうかというようなことを御提案申し上げまして、その結果ようやく、地球サミットにおきましては、少なくとも法的拘束力のない原則、また声明を含んだような世界的なコンセンサスを合意しようではないかというようなことに決まったところでございます。  さらに、ことしの八月に開かれました第三回の地球サミット準備会合におきましては、どういった原理原則をつくろうかということにつきまして、それぞれの主張を盛り込んで一覧表にしたような格好の原案が作成され、それをもとにして精力的な交渉を行おうということで、現在その努力が続けられている最中でございます。この問題につきましても、環境庁といたしましては、今後の地球サミットに向けて関係省庁外務省林野庁等連携しながら、何とか中身のある、内容を持った国際的合意づくりができますようにということで引き続き貢献してまいろうというぐあいに考えておるところでございます。
  6. 細田博之

    細田委員 私、野党との協調ということを重んじて、三十分には終える、二十分で済ませるということを言っておりますから、簡単にお答えいただきたいのでございますが、まずUNCEDのCO2問題です。  日本の歴史を考えますと、絶えず環境庁はより厳しい基準を要求し、あるいは産業界は絶えず緩い基準を要求するということで、国内でいろいろな問題があったわけでございますが、仕上がってみると、我が国環境がどんどんよくなりますし、あるいは目標もクリアされた。硫黄酸化物、NOxあるいは水質関係の指標もそうなったということもございます。したがって環境庁としても、将来の日本のことも考えた上で、特にCO2問題などについては国際的協調も大いに働きかけていただきたいと思うわけでございます。  それから、先ほど質問の中でお答えのない水俣病対策中心としまして大臣から御答弁願いまして、質問を終わりたいと思います。     〔委員長退席高橋委員長代理着席
  7. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほど答弁漏れがございまして、御答弁申し上げます。  水俣病我が国公害問題の原点であり、今日においても環境行政の極めて重要なものと認識をしております。国としては、公害健康被害補償等に関する法律に基づきまして水俣病患者の迅速かつ公正な救済に努めてまいりましたが、今後とも国、県一体となった水俣病患者認定業務推進に努めることを中心として水俣病対策推進を図ってまいる所存でございます。  また、水俣病早期解決を図るために、御案内のとおり総合的な対策について先日、中公審から「今後の水俣病対策あり方について」という御答申をいただきました。この答申は、水俣病解決に向けてのまことに貴重な御提言をいただいたと認識しておりまして、この提言に基づく総合的な対策平成四年度から実施すべく所要作業を進めているところでございます。環境庁といたしましては、従来の水俣病認定業務推進に加え、今後の新たな対策実施により水俣病問題の早期解決が図られるよう最大限努力を払ってまいりたいと存じております。
  8. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今大臣が申されました水俣病対策審議会答申でございますけれども、講ずるべき対策といたしましてこの答申の中では次のような提言がなされているわけでございます。すなわち、第一は健康管理事業実施でございます。この事業は、水俣病が発生した地域におきましてさまざまな程度でのメチル水銀の暴露を受けた可能性がある住民に適切な健康管理を行うことにより、健康上の不安の解消を図るとともに、こういうような方々の長期的な健康状態解明に資するための事業、こういうふうに位置づけられているわけでございます。  それから、第二は医療事業でございます。この事業は、水俣病が発生した地域におきまして、水俣病とは診断されないけれども四肢末端感覚障害を有する者の医療を確保することによりまして、原因解明及び健康管理を行いまして、地域における健康上の問題の軽減、解消を図る、そういう事業とされているわけでございます。  これらの対策はいずれも重要な対策ということで、関係省庁それから関係地方公共団体と十分に連携を図りつつ具体的な事業内容検討いたしまして、予算要求等所要作業に取り組んで、来年度から実施ができるように鋭意努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  9. 細田博之

    細田委員 どうもありがとうございました。
  10. 高橋一郎

    高橋委員長代理 以上で細田博之君の質問は終わりました。  続いて、馬場昇君。
  11. 馬場昇

    馬場委員 先ほど長官おっしゃいましたように、十年ぐらい前にこの委員会でお互いに理事として机を並べたことを今思い出しておるわけでございます。とともに、一九八一年、昭和五十六年、長官衆議院欧州各国環境保全状況視察団としてヨーロッパをずっと一緒に視察して歩いたのを今思い出しておるわけでございまして、きょうは水俣病問題を中心質問いたしたいと思います。  大臣先ほども言われましたように、水俣病問題は我が国公害問題の原点である、こういうぐあいに認識されておるわけでございますが、まさに水俣病問題は世界公害原点、こう言われておるわけでございます。  そこで、私はまず、なぜ水俣病世界公害原点と言うのか、こういうことについて大臣認識をお伺いしたいと思うんです。  何といっても、私みたいな大きい体の漁民の人が一日六、七十回けいれんして、跳び上がるようにけいれんするわけですね。まさに猫踊り病という言葉もついたわけですけれども、そういう狂い死にをした。胎児性患者は生まれながらにして目も見えない、口もきけない、耳も聞こえない、そして、生けるしかばねという言葉があったんですけれども、お母さんが食事をやるのに、重湯を流し込まなければ入っていかないわけですから、一時間ぐらいかかるわけです、湯飲み一杯ぐらいというのに。そういう悲惨な健康被害、そしてまた環境破壊というのも物すごいものがあるわけでございまして、そういう健康被害とか環境破壊の悲惨さというもの、そして全く底が知れない、深さ、広さがわからない、こういうまさに世界に類例のない水汚染公害である、こういうことから世界公害原点だと言われておるわけでございます。  いま一つの側面から見ますと、水俣病問題が起こってからこれは三十五年、三十六年じゃないんですよ。半世紀以上かかっているんです。私は、地元に生まれ、地元に育ったからよく知っているんですけれども、半世紀に及んでもまだ病像というものが、国民が納得するような病像も被害の全体像というのもまだわかっていないんです。こういうこともまさに異例なものだ。そういうこともやはり世界公害原点という、こういう厳しさが言われるゆえんじゃないかと思うんです。  さらにあの当時を考えてみますと、日本の産業というのが、まさに政治そのものが産業優先、企業優先であって、そのことが公害を許した。そして今度、公害を許しておりながら、その公害の原因を究明をする、救済をするというのに対して、産業優先の政治が、あるいは企業がそれを妨害をした、こういう歴史が続いてきたわけでございます。  これは長官、十分御承知かどうか知りませんけれども、いま一つ水俣病があると現地では言われているんです。もう一つ水俣病がある。それは何かというと、社会的水俣病だと言われておるわけでございます。  例えば、この水俣病の歴史を見ますと、患者が発生してからでも、まさにチッソと行政は患者を分断するために全力を挙げたんです。そして患者を分断して、差別をやったんです。そうして、要求をする闘いに対して物すごい弾圧をやりました。そして、今度は患者と市民を分断させたわけですよ。そうして水俣市、あの地域にまさに対立と抗争といういま一つの社会的水俣病、こういうものをつくり上げた、これも私は異常なことだと思うわけです。  そして、患者側からとってみますと、最初は奇病といって、隔離されてそのまま葬り去られたという例もたくさんあるわけです。結婚の差別もありました。就職の差別もあったんです。地域差別もあって、水俣という地域は、地域が差別されて、経済的にも社会的にもずっ破壊されてきてしまった。  こういう社会的水俣病というのがありまして、水俣病をずっと考えた場合に、まさに水俣病に流れておるのは差別の構造ですよ。人を人と思わない人間差別があります。地域の苦しみを理解しないという地域差別があるんです。こういうのが、もう一つの社会的水俣病と言われておるものが現にまだ存在しているんです。  ある新聞の社説で書いてございました。この水俣病が水俣湾でなしに東京湾で起こったらどうだろう、水俣病じゃなしに東京病だったらどうなったんだろうか。まさに政治も行政も産業界も、南九州のあのへんぴなところの出来事として、本当に被害を見なかったんです。そういう地方べっ視の態度がある、こういうことを新聞の社説でも言っておるわけでございます。  今いろいろなことを申し上げましたけれども、やはり私は、今この世界公害原点水俣病を聞い続けるのは、問わなげ机ばならぬのは、先ほど長官も言われましたように、人類生存の基盤である地球全体がおかしいという状況に来ておるわけですから、そういうときにはこの公害原点水俣病を今また厳しく問わなければならぬ、こういうことだと思うわけでございますし、事実、発展途上国に第二、第三――第二は新潟ですが、第四、第五、第六の水俣病が発生しつつあるという現状もあらわれておるわけでございますから、この世界公害原点水俣病というのを今問わなければならぬということを思うのですけれども、こういうことについて、大臣水俣病に対する認識というものを答えていただきたい。  先ほど答弁を聞いておりますと非常に長いわけですから、きょうはもうイエスかノーぐらいの程度で短くひとつ皆さんも答弁していただきたいということを委員長にお願いしながら、大臣認識を伺います。
  12. 中村正三郎

    中村国務大臣 まさに今馬場委員御指摘のように、高度成長期における初期に発生した大変深刻な公害問題であり、今その公害としてのもう一つの側面があるということをお伺いして、また認識を新たにしているような次第でございます。これは私ども、当時テレビ、新聞等で拝見しまして、環境庁長官ならずともあのような悲惨な状態、悲惨な公害を起こしたということは、こんなことは二度とあってはならぬという感を非常に強くしているわけでありまして、環境庁といたしましても、今後このようなことがないように最大の努力をしていかなければいけない問題ということは、当然でありますが、考えているようなわけであります。  そして、今馬場委員御指摘のように、約十年前に御一緒外国を回りました。そのときも、馬場委員が熱心に各国で水銀の危険を説いておられたのを、私、今思い起こすんでございます。ある国へ行って、重金属等の汚水処理場で、ありませんかと言ったら、水銀が入っているという認識さえもなかった。また、石炭を燃したってそれにも水銀が入っているよということを説かれても、それに対する認識もなかった。こうした国を発展させなければいけないというところで、どこか忘れられたそういうものを非常に馬場委員が熱心に警鐘を鳴らしておられるのを目にいたしまして、こういうことをやはり我が国としてもやっていかなければいけない側面だろうなということを感じさせていただいていたのを今思い起こしております。  また、水銀に関するいろいろなことが南米でもいろいろ起こっているというようなことを新聞報道等として見ますが、まさに世界において二度とこういうことを起こしてはいけないということで取り組んでまいりたいと感じているわけでございます。
  13. 馬場昇

    馬場委員 通産省来ていますか。――来ていますな。これは通産省に質問するんですけれども大臣も聞いていただきたいんです。  一九三二年、昭和七年です。新日本窒素と言っておりましたが、あのアセトアルデヒドの生産を始めたのは昭和七年です。そのとき二百十トンで生産を始めておるわけでございますが、昭和十年代にもう既に魚介類に異変が起こっているのです。昭和十六年、太平洋戦争が始まったときにもう人間の被害が出たという記録もあります。昭和二十年代になりましたら、水俣湾周辺の魚介類が腐って悪臭を放ち始めております。海藻は枯れ葉のように浮いていたのが昭和二十年代ですよ。魚は弱って浮いてきている。それから、カラスなんかが魚を食うものですから、もう飛べなくて落ちてきておる。ネコが狂死するというのは昭和二十年代に起こっておるのですよ。このことは漁民が一番知っていますから、工場廃液が原因だということでもって工場に補償要求を出している。そして熊本県に対して、排水がおかしいから調べてくれという要請書を出して、昭和二十七年に三好という水産課の技師が調査に行って、これは排水がおかしい、排水を調査しなければならぬという復命書を出している。全部そんなものは握りつぶされてきているのですね。  後でわかったのですが、昭和二十八年、今水俣病患者の第一号というのは昭和二十八年に発生した人を言っておるわけでございます。何と公式発見が三十一年でしょう。その前二十年ぐらいにもう海の異変、魚の異変、生物の異変があったのです。漁民はそれを訴えておったんだけれども、全然行政が取り上げなかった。そして三十一年を今公式発見されたという。今春間言われておりますのは、公式発見から三十六年もたった、まだ解決しておらぬと言うけれども、さかのぼりますと半世紀以上です、この問題が出てきておるのは。そして、公式発見されてから水銀が原因だと原因をはっきり。させるまで、九年かかっているのです。公害病と認定したのはそれから十二年後ですよ。そしてアセトアルデヒドの生産を禁止して垂れ流しをやめたのは、公式発見から何と十二年後ですよ。こういう経過を実は持っておるわけでございます。これについて、私は現地だからよく知っているのですけれども、当時この原因というのは、やはり今環境庁が責任を問われておる、あるいは水質の問題で厚生省だとか農水省だとかいろいろ責任が問われて被告にもなっているのですが、私は、一番被告であるべきものは日本産業界、それを指導する通産省がこの問題の一番元凶だというぐあいに実は考えているわけでございます。当時の産業優先、企業優先の姿勢というのは、当時を振り返ってみますと、昭和三十二年ごろはちょうど神武景気と言われておったし、三十六年ごろが岩戸景気と言って、政府も今や戦後ではないと言って産業優先政策をずっととってきた。そのころはもう完全に環境問題は片隅に追いやられておって、だから昭和三十年から四十年ごろに全国に公害問題が発生しておるわけでございまして、アセトアルデヒド、水俣だけとってみましても、公式発見されたときの昭和三十一年は一万五千九百十九トン生産しておるのですよ。ところが、公式発見された後三、四年たって三十五年にはピークになりまして、何と四万五千一百四十四トン。公式発見されてから四年たった三十五年にはピークですよ。そして四十三年まで流し続けてきた。こういうことがあるわけでございます。  私は、せんじ詰めて言えば、原因発生とか拡大とか救済、こういう問題についての国の政治、通産行政の責任は非常に大きいと思うのですが、これについて通産省はどういう考えを持っておられますかを聞きたい。
  14. 作田頴治

    ○作田説明員 お答えいたします。  産業政策は、個々の企業に対してではなくて、ある産業全般についての総合的見地の観点からなされる政策でございまして、当時の産業政策が個々の企業に対しては特段の法的な強制力等は持たないものであったというふうに認識しております。  また、特定の製品を生産したり、増産したりあるいは減産したりといった経営判断はあくまでも企業自身がその需給の状況等を判断した上で行うものでございますので、チッソの場合も、そもそもこれは同社の経営判断ではないかというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、当省といたしましては、当時チッソ水俣工場に対しましてアセトアルデヒドの増産を指導したりというような事実もございませんし、また、当時の石油化学工業に関します産業政策が水俣病を発生、拡大させたというふうには考えられないのではないか、かように思っておるわけでございます。
  15. 馬場昇

    馬場委員 議論すると時間がないのですけれども、全然認識不十分。言えばもうたくさんあるのですけれども、例えば化学工業会というのがあったでしょう。これは通産省が指導するのですね。原因究明のときにわざわざそこから大学の学者の先生を出して、水俣に行って、チッソの排水が原因ではないということを宣言して、これは戦争中に爆弾をあの不知火海に、水俣湾に落としたこの爆弾説だというのを言ったのは通産省が指導しておる化学工業会でしょう。その次はアミン説というのを言いました。そしてもう一つは、化学工業会なんか、いやこれは農業説だ、全然排水を調べもしないでそういうことを、原因は別だ別だと言ったのは通産省の指導じゃないですか。そんなこと、たくさんありますけれども、時間がないので、その反省がなしには水俣病の解決というものはないと私ははっきり申し上げておきたいと思います。  私が言いたいのは、通産省なんか予算はある、大分削って、済みませんでした、水俣病の解決のために予算を使ってくださいと。環境庁は予算も非常に少ない、通産省なんか予算が多い、削って持ってこい、そのくらいの責任はありますよ。  それから、長官にお聞きしたいのですけれども、全然責任がないというようなことを言っていますが、実は歴代の環境庁長官は今言ったようなことと全然違う責任の発言をしております。例えば、大石環境庁長官は二十年前の国連人間環境会議に行かれて、「「水俣病」と呼ばれる有機水銀中毒事件は」「原因の究明がおくれたこと、政府を含め関係者による対策が手ぬるかったこと等により多数の悲惨な犠牲者を出しました。さらに阿賀野川流域でも同じような水銀中毒による死者、患者の発生を見るに至りました。早期に十分な救助の手をさしのべ得なかったことに政府は責任を痛感いたしております」こういうことを二十年前の国連人間環境会議で言われました。昭和四十八年四月六日にこの委員会で当時の三木環境庁長官は「責任について深く反省する」、こういうことを言われました。昭和五十二年五月二十六日に石原環境庁長官は「加害者という立場に立っておったのじゃないか、そういうような真剣な反省というものが非常に必要ではないか、」「不作為に終わったということの責任は、私は十分感じておる次第でございます。」こういうことを言っているのです。そして「間接的なつまり加害と言われても仕方のないケースもあったと私は思わざるを得ません。」これを石原環境庁長官は言っておる。昭和五十三年に山田環境庁長官は、「いろいろわれわれの中にそういう足りなかった点、その点については、十分その点での責任」を痛感しております。昭和六十年に石本環境庁長官は、「もとをただしましても、そういうものの経過を考えましても、責任はあるというふうに私も思います。」それから、昭和六十二年に稲村環境庁長官は、「行政としての責任はもちろん感じております。」それから、昨年の六月に北川環境庁長官は、「早く対応しておれば少数の被害で済んだのではないか、全くそのとおりだと思います。」こういうぐあいに、不作為の責任というものも含めて、みんな責任を考えておられるわけですが、各大臣が言ったこの責任というものについて、中村長官も全くそのように考えておられるのかどうか、そのことについてお尋ねします。
  16. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は拝命してまだ時間も短いわけでありますけれども、今馬場委員のいろいろな先ほどからのお話等をお聞きいたしまして、これからいろいろ勉強してまいりたいと思っております。  法律的に言えば、その当時予見できなかったとか法制度がなかったとかいうことになるのだと思いますが、法律理論は別にいたしまして、私は、国全体として考えた場合、なぜこういうことが起こったのかと真剣に考え、決して起こってはいけないことが起こったのだ、それをこれからどうしていくのだという観点を私どもは一生懸命やっていきたいと思っているわけでありますが、今歴代の環境庁長官のいろいろな御発言がございましたけれども、それなりのいろいろな御見識で発言されていると思います。私もまた、馬場委員からもいろいろお教えをいただきまして勉強してまいりたいと考えております。
  17. 馬場昇

    馬場委員 この前の愛知長官もこの責任問題になりますと、裁判を非常に気にして、役人の人が言わせないのか知りませんけれども、政治家としての良心の発露というものがだんだん鈍くなってきている。そのことが、水俣病に対する対策というのはこれでいいんだろうかということを最近また感じておりますので、またこの点についてはゆっくりお話をさせていただきたいと思います。  そこで、先ごろ十一月の二十六日に中公審水俣病の総合対策について答申をしたわけでございますが、まず長官はそれをどう受けとめておられるかということを聞きたいわけです。今と関連しておるわけでございますけれども、時間がございませんので絞って聞きます。  まずこの答申を見て、答申の六項の、最後の「終わりに」というところを読んでみますと、水俣病発生当初、迅速にその原因を確定できなかった、公害問題への認識が十分でなかった、結果として当時の環境保健行政等が国民の期待に十分こたえられず、そのことが今日の水俣病問題が残されている要因となっていることも事実である、こういうこ上を中公審答申の終わりに書いてあるわけでございます。この中公審は、やはり今、国の責任というものを認めたという立場でこのような答申をしておるんじゃないかと思うわけでございます。そういう点について、先ほど各歴代長官の発言も言ったわけですけれども、この行政の責任と反省ということについて、再びこの答申の文言に沿って、大臣どう考えておられるか、お答えいただきたいと思います。
  18. 中村正三郎

    中村国務大臣 答申内容につきましては、極めて重要な、貴重な御答申をいただいたということで重要に受けとめております。  ただ、この答申の大筋のところというのは、いわゆる裁判だとか国の法的責任というような問題を論じたものではなくて、これからどういうふうにしていけばいいかということを御答申いただいたというふうに認識しております。現在訴訟で論議されているような問題については具体的に触れたものではなくて、やはりこれからどうしていけばいいかということを論じられた大変貴重な答申だと思いまして、私どもは、これに沿いまして平成四年度からの対策ということで、委員も御存じのとおり万全の策を講じていきたいと存じておる次第でございます。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 馬場昇

    馬場委員 温故知新という言葉がございます。古きを勉強して、たずねて、新しいものを創造する。私は、この答申の最後の読み方をちょっと長官は間違っておられるんじゃないかと思うんですよ。やはり過去の責任とか反省なしに将来の対策というのは出てこないわけでしょう。私は、やはりこういう末尾のような反省をして、そして新しいことをやってくれと、こういう答申内容と読んでおるんですけれども、どうもそういう読み方をしておられないというのは、私はちょっと、もう少し研究してもらいたい、こういうぐあいに思います。  そこで、過去の反省がないというんだったら非常に心配な点があるわけです。これは部長でもいいんですが、長官が答えていただけばなおいいんですけれども。  水俣病の健康上の問題について、この答申を実行すれば決着がつくと、あるいはつけられると思っておられるのか、その辺についての所信を聞きたい。
  20. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 先ほど大臣が申されたことに尽きるわけでございますけれども、この答申におきましては、水俣病の原因究明までに時間を要し、結果として当時の環境保健行政等が国民の期待にこたえられず、そのことが今日の水俣病問題が残されている一要因となっているということについて述べられているわけでございまして、これにより国に法的な責任があるというふうに判断を示されたものではないと考えているわけでございます。この答申に沿って環境保健問題についての対策を実行することによりまして、前々から提起されておりますこの水俣病問題の基本になっております健康問題、これについての問題の軽減、解消といったようなことが図られ、水俣病問題の解決にとって非常に大きな役割を果たすことができるのではないかというふうに考えているところでございます。
  21. 馬場昇

    馬場委員 大切なことですから、ちょっと念を押して聞いておきたいのですけれども、これは新聞で読みますと、長官もこの答申は全面解決への第一歩だというようなことをおっしゃっておられるわけでございまして、だからこれを第一歩として水俣病問題の解決へ向けて最大限努力を払っていきたい、こういうことを発表しておられるわけでございますが、柳沢さん、私が聞いておるのは、この答申を実行すると水俣病の問題の中での健康の問題はこれで幕引きをするのか、いやいや、まだたくさん健康問題があります、ただしこれは、この中に書いてあるものを実行するのはその第一歩でございます。まだたくさん健康上の問題も残っているのですよと、そういう認識なのか、これをやったらもう健康上の問題はおしまいになる、そういう認識なのか、どっちですか。
  22. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 これをもって幕引きを図ろうとするのかということに関しては、この水俣病問題が環境保健上の問題だけに限定されるものではないというふうに認識しているわけでございます。ただし、今日の水俣病問題の中で環境保健の問題が中核をなすと考えられますので、中公審におきましてその解決のために地域の健康上の問題の軽減、解消を図るための政策について御審議、御答申をいただいたわけでございますので、これをもって健康問題の軽減、解消に向けて努力をいたしたい、こういうふうに考えているところでございます。
  23. 馬場昇

    馬場委員 はっきり聞いてもらいたいのは、水俣病の健康上の問題は、これを実行するとこれでもうおしまいだと思っているのか、いやいや、健康上の問題はまだほかにたくさんあります、ただこれは第一歩で、これをやると解決のために大分資しますけれども全部じゃありませんと、どっちかということです。
  24. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 これをもって幕引きというような言葉であらわされるような意味のことは考えておるわけではございませんで、健康問題の解決のために非常に大きな成果が上がるのではないかという期待を持って努力をいたしたいと思っております。
  25. 馬場昇

    馬場委員 次に、中公審環境庁は何を諮問したかということをちょっと整理しておきたいと思うのです。  諮問されました文言は「今後の水俣病対策あり方について、貴審議会の意見を求める。」ということで、その説明の中に「棄却処分を受けた者の一部が、処分を不服として行政不服審査や行政訴訟を提起している。さらに、国及び県をも相手取って、水俣病にり患したとして」「国家賠償請求訴訟も多数提起されている。このような社会的紛争の長期化や当事者の高齢化等もあり、水俣病問題は社会問題ともなっている。」こういうことが資料の中に書いてあるわけでございますが、この諮問に、今言ったような社会問題を解決するという方策を検討して出してくれ、こういうことをお願いされておったのですか。
  26. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 中公審へ諮問したわけでございますけれども、この諮問は「今後の水俣病対策あり方について、貴審議会の意見を求める。」というふうにされているわけでございます。具体的には諮問についての説明の中で「水俣病に係る環境保健上の問題の解決が喫緊の課題となっていることから、今後の水俣病対策あり方について意見を求める」として、環境保健上の施策につきましての意見を求めているということになるわけでございます。
  27. 馬場昇

    馬場委員 環境保健上の問題というものの中に、いろいろ今不服審査なんかやっていますね、損害賠償請求やっていますね、こういうのも環境保健上の問題に入るのですか、入らないのですか。
  28. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 認定業務促進というようなことは、環境保健問題の一つに相当するというふうに考えているわけでございます。
  29. 馬場昇

    馬場委員 もう一つ聞きますが、諮問に、公健法の枠内にとらわれず抜本的な施策を検討してください、こういう諮問をされましたか。
  30. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 その諮問を申し上げるときの背景といたしまして、この水俣病問題の解決のために必ずしも公健法の枠にとらわれることなく、幅広く御検討いただきたいということでお願いしたところでございます。
  31. 馬場昇

    馬場委員 これは前の愛知長官も、平成四年度から総合対策実施するということで、不退転の決意で取り組んでまいりたい、現行の法律にとらわれず議論をしていただいて、出た結論に対しては全面的に推進する決意でございます。こういうことを言っておられます。新長官も同じだろうと思うのです。  そこで、この答申の中に、健康保健上の問題と関連するわけですけれども、「その他の課題」というのが答申に出ております。「水俣病に関する調査研究」について、メチル水銀の健康影響に関してなお未解明の部分が残されているため、調査研究の一層の推進メチル水銀の暴露を受けた者の長期的な健康状況の経過を把握する、諸外国の水銀汚染問題にかかわる国際協力に貢献をする、そういうようなことが書いてあります。それからもう一つに、「水俣病認定患者に係る対策検討」ということで、認定患者の高齢化に伴う健康状態の悪化の懸念、認定患者も高齢化して非常に健康状態が悪化しておるというものの懸念をどうするか。胎児性患者もだんだん年をとって、お父さん、お母さんが亡くなっていっているのです。胎児性患者だけ残される、どうなるだろうという問題もあります。そしてまた、胎児性患者のお父さん、お母さんがもう年寄られて、患者の介護もできない、こういう問題。本人の就業の機会なんかも、こういう問題があるわけで、「その他の課題」ということでこういうことを中公審は言っておるわけでございます。  そこで、健康管理事業について、四肢末端感覚障害を有する者への医療事業のほかに、今私が言いましたこの二つのような課題を、まだほかにたくさん課題はあると思いますけれども水俣病の総合対策をあなた方は諮問したのですから、四肢末端感覚障害のある人だけの重点の答申になっているのですけれども、やはりここでこれを行政だけでさばくのじゃなしに、さっき言った二点なんかを含めて特別立法をして、この中公審答申に書いてあるすべてのことを含めて、それ以外の総合対策を含めて特別立法をする必要があるのじゃないか、特別立法をしてこの答申を実行すべきではないか、こういうぐあいに私は考えるのです。これは大臣にもお聞きしたいのですが、最初は部長でもいいから、どうですか。
  32. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今先生が御指摘になりましたこの答申にも出ております患者さんの問題につきましては、今後関係地方公共団体等ともよく御相談いたしまして、鋭意検討をしなければならない重要な課題であるというふうに認識しているところでございます。  それから、この答申に基づいて法律として実施すべきではないかというお話がございました。環境庁といたしましては、今般いただきました答申で示されました新たに講じるべき政策につきまして具体的内容を現在検討中で、必要な作業に取り組んでいるわけでございます。新たに事業実施するための立法措置の必要性につきましても十分検討してまいる所存でございますけれども、一般的に言えば、国民の権利を制限し、または義務を課するような、そういう仕組み等を設けない限り、必ずしも法律の根拠を要しないというふうにされているところでございます。いずれにせよ、今後十分研究、検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  33. 馬場昇

    馬場委員 特別立法についてはまだ後で質問をしたいと思いますが、これは大臣、長い歴史もあって水俣病の問題にはもうあらゆる問題が、先ほど私が言いました社会的水俣病まで含めますとたくさんの問題があるわけでございます。そしてこれは何も環境庁だけではなしに、今言った通産もあれば農水もあれば厚生もある、あらゆる官庁に、あるいは地方財政も本当にこのことによって地域の経済も悪いし、そういう点から。いうと自治省もあればといって、結局水俣病関係閣僚会議というのがあるわけでございます。  そこで、この答申というのは水俣病解決のためのもうほんの一部分にしかすぎないと私は思うのです。事実、熊本県がことし意見書を議会でつくって、そして知事と議長名で要望書を議会と政府に出しておるわけでございます。その中でも、三点ありますけれども水俣病問題の早期解決のための諸施策の推進、この中には患者救済だけでいつでも、あの判断基準はやはりおかしいんだ、四十六年通達に五十三年通達を戻さにゃいかぬという問題、認定審査会のあり方というのもどうも理解できないという問題、それから総合調査なんか広さ、深さを全然調査していないじゃないかという問題。さらに大切なことは、さっきもちょっと言いましたけれども、患者さんは補償金をくれというのじゃなしにもとの体に戻してくれというのが本当のねらいですが、その治療研究体制というのもまだ十分にできていない、そういう医療の治療体制をつくれという問題、それから患者の生活もあるし患者の福祉の問題もあるわけでございます。  かつて私の教え子の木下レイ子というのが、今患者ですが、これの娘さんが小学校四年生のときに、眞由美ちゃんというのですけれども、田中総理大臣に手紙を出したのです。その内容は、お金は要りません、お母さんの体をもとの体に戻すように世界じゅうの偉い学者、お医者さんを集めて治す研究をしてくれという手紙を出しまして、田中総理ももう直ちに返事を出して、やりますというようなことをやったことがあるのですが、そういう治療の問題なんかがあります。  それから、例えばまた環境復元の問題とか、そしていろいろありますし、今行われている早期和解の問題等もあるわけでございます。とにかくこの中公審答申というものはもうほんの一部と思うのですが、私はもうここで、やはり環境庁長官が窓口あるいはリーダーシップをとって関係閣僚会議で、県債問題なんかもいっぱいあるわけですから、ひとつ水俣病の問題を総合的に、全面解決という言葉あるいは完全解決という言葉がございますけれども、そういうためにはあとどういうことを政府全体としてすべきかということを検討してもらいたいと思うのですが、それについて大臣、各大臣なんかと話し合ってそういうことを検討する気はないかどうか、ちょっと決意を聞いておきたいと思います。
  34. 中村正三郎

    中村国務大臣 馬場委員最初に御指摘されましたように、この水俣病問題というのは健康保健上以外のいろいろ多くの問題を社会的に提起されたということでございます。先ほども申されましたように、水俣という地域自体のイメージの問題、結婚の問題とかいろいろなことでも大変な問題が起こったということを伺っております。  そして、今御指摘になりました県からの三点でございますが、第一の水俣病早期解決のための施策の推進地域における健康不安解消の施策の推進、これ等については今度の中公審答申にも盛られておりますし、これは私ども本当に一生懸命これに従って進めてまいらなければならないと思っております。その他のいろいろな幅の広い問題につきましては、委員も御指摘のとおり関係閣僚会議、これは環境庁だけではできないことでありますから、そういうところでもって連携を図って対処をしてまいらなきゃならないと思っております。その中心となって環境庁は一生懸命各省の力を結集して問題の解決に向けて努力していかなきゃならないというふうに認識をしております。
  35. 馬場昇

    馬場委員 答申についてあと一つ二つ申し上げたいので、あとそれから具体的なことも聞きたいのですけれども、この中公審答申で新たに講ずる健康管理事業ですね、そして今からの適用者というのは、これは公健法上の水俣病患者かどうかということを念のために聞いておきたいと思います。  それから、グレーゾーン層という言葉がよく出るのですが、ここで今度中公審救済対策を講ずる人たちは、メチル水銀汚染の被害者とは認めるが水俣病であることは否定する、こういうぐあいにおっしゃっておるようですけれども、そのとおりなのか。  そこで、この答申には全然書いていないのですけれども、やはり中公審では、認定基準が昭和四十六年では、感覚障害のこのグレーゾーン層で今度認めるという人は四十六年通達では水俣病と認めておったわけですよね。それで五十三年通達でこれが厳しくなったわけでございますけれども、そういう点でやはり中公審で判断条件を見直す必要はないと書いてあるようでございますが、私は見直すべきだと思うし、審査会のあり方というのもやはりいろいろな問題があるわけでございますが、こういうもののあり方を含めながらもこのグレーゾーン層というものの認識というのをまずお聞きしておきたいと思います。  さらにもう一つ、これに医療手当を出すわけですけれども、これはPPPの、公害上の大原則としてきたPPPの原則というのは、この医療手当を出すということとの関係はどうなっているのか。
  36. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今先生がおっしゃいましたいわゆるグレーゾーンの問題でございます。  まず公健法では、これは水俣病患者の迅速かつ公正な保護を行う、そういう観点で汚染原因者の民事責任を踏まえた損害の補償を行っているわけでございまして、一方、今回の答申に示されました四肢の感覚障害を有する者への対策、これは四肢の感覚障害のみでは水俣病であると判断することは医学的には無理があるというふうにされているわけでございまして、このようなものはみずからが水俣病考えることには無理からぬ理由があることから適切な対応を行う必要が認められるため、今回の答申のように地域住民の健康上の問題の解消、軽減を図る観点からの対策を行うべきであるというふうにされているわけでございます。したがいまして、今回の医療事業の対象となる四肢の感覚障害を有する者、これは公健法の対象にはならないものでございまして、公害による健康被害というふうに位置づけられたものではないというふうに理解しているわけでございます。  それから、さらにPPPの原則についてお触れになったわけでございますけれども、このPPPは公害防止対策の費用負担に関しまして提唱された考え方でありまして、環境復元、汚染防止といったような事業につきましては、その適用によって汚染原因者から拠出を求めることが適当である、こういうふうにされているわけでございます。今回の対策のうち医療事業に関しましては、四肢末端感覚障害を有する者に対しまして、行政として汚染原因者の損害賠償責任を踏まえた対応を行うことは適当でないと答申で述べられているわけでございます。こういうようなことから、今回の施策は、汚染原因者に負担を負わせることは適当ではないというふうに受けとめているところでございます。  なお、認定審査会について、その認定審査会の判断条件等が非常に厳し過ぎるというお話がございましたけれども、先生も御案内のとおりに昭和五十一二年以降、水俣病である、あるいは水俣病の疑いがあるといって認定されるのではなくて、その水俣病可能性が否定し切れないというようなことでもって現実に患者さんとして認定されているわけでございまして、それほど非常に認定基準はもうぎりぎり、これ以上緩めたらほかの疾患と区別ができなくなる、そういう範囲でもってやっているということにつきましても御理解いただきたいというふうに考えるわけでございます。
  37. 馬場昇

    馬場委員 ただいまの認定の判断基準と、四十六年通達から五十三年で環境庁の通達をかえって厳しくした、そこから先ほど言いましたような今日の社会的問題が起こっているんですよね。その辺を解決しなければ本当の意味の水俣病の健康保健上の問題も解決をしないということを申し上げておきたいと思います。  そこで、中公審答申内容について、新たに講ずべき施策の内容について具体的にお聞きしますけれども、この新たに講ずべき事業健康管理事業医療事業ですね、この二つが出ておりますけれども、これは大蔵省とこういう事業をするということは確約がとれておるのか。現在、大蔵省とどの程度の折衝を予算上やっておられるのか聞かせてください。
  38. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今回の答申におきましては、水俣病問題の現状を踏まえまして、講じるべき対策として健康管理事業医療事業実施中心として、その基本的な考え方を審議会から御提示いただいたわけでございます。これを受けまして環境庁といたしましては、このような答申の基本的考え方に基づきまして、具体的な事業内容検討作業、これを現在行っているわけでございます。  今後、大蔵省はもとより関係省庁関係地方公共団体とも十分連携を図りつつ、これらの細部の詰めを急いで、来年度からの事業実施に向けて鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 大蔵省は、こういう事業をするのにもうあなた方のこういうことをしたいというのに賛成をしているのか、賛成をしていないのか。この事業は熊本県や新潟県にさせるわけですから、熊本県や新潟県は、この事業をするのに私たちが実施主体としてやってよろしゅうございます。そう言っているのかどうかということを聞いているのです。
  40. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今後、そういった関係省庁あるいは関係地方公共団体と十分連携を図りつつ詰めを急いでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  41. 馬場昇

    馬場委員 現在、大蔵省や熊本県や鹿児島県は、こういう事業をするのに賛成とも反対とも言っていない、今からだという答弁ですが、そういうことでは話にならぬと思うのです、後でまた聞きますけれども。  次に、この答申でやる健康管理事業医療事業と現在やっております治療研究事業関係はどうなるのですか、特別医療事業との関係はどうなるのですか。
  42. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 この答申で示された医療事業と現在既に実施しております治療研究事業あるいは特別医療事業との関係についてのお尋ねでございます。  このうち、治療研究事業は、水俣病の認定処分が長期にわたることがあることにかんがみまして、一定の申請者の病状の変化を把握するために医療費の一部を助成するというものでございます。一方、特別医療事業は……(馬場委員関係があるかないか、どうするんだということだけ、中身は知っているんだから」と呼ぶ)こういうように現在実施しております事業は、公害医療研究という考え方に入ろうかと思います。それからさらに、公健法の認定業務を補完する性格を有する事業であるという点におきまして、今回答申で御提言いただいた医療事業とは趣旨を異にする、そういうふうに考えられるわけでございます。いずれにせよ、今後これらの事業との関係につきましても十分整理しまして、適切な対処を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  43. 馬場昇

    馬場委員 趣旨を異にするというと、今度やりますところの健康管理事業医療事業、今度は今度でまたやる、前の治療研究事業と特別医療事業はまた別にやっていく。三本立てにやるのですか。少なくとも今度やる事業に前の事業は吸収できるのじゃないですか、それはどうですか。
  44. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 御指摘のように吸収できるべきものは吸収し、この制度をより効率的に運営できるように十分整理いたしまして、適切な対処を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  45. 馬場昇

    馬場委員 全部、検討します、適切など言って、もうあなた、予算の内示は十二月二十二日ごろやるんじゃないの。もうあとわずかじゃないですか。そういうときに、熊本県も新潟県もよくわからぬとか鹿児島県もよくわからぬというようなことでは話になりません。もう少しいってからそこのところも言いますけれども。  結局、特別医療事業は熊本県はやっていますけれども新潟県はやっておりませんね。この特別医療事業は今度新しくやるときには新潟県にも適用しますか。
  46. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 特別医療事業の新潟県に対する適用については御指摘のとおりでございまして、現在実施していないところでございます。新しい答申で示された事業を新潟県で実施するかどうかということにつきましては、審議会答申地域特性についても十分配慮するようにということも述べられておりますし、今回出ました審議会の趣旨を十分に尊重し、関係地方公共団体検討して実施するかしないかということにつきまして決めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  47. 馬場昇

    馬場委員 全部、検討するとかなんとかということです、全部言ってしまってから最後にまた聞きますけれども。今特別医療事業を受けている人は、それがまた認定申請をしますと特別医療事業から除外していますね。今度の事業は、棄却されなかった人、新しい人でもこの事業を適用することになっておるわけですが、また、棄却された人でも再申請をする権利を持っているわけです。こういう新しい事業をするときに、再申請の権利だとかあるいは新しく認定申請をする権利だとか、こういうものを奪ってはならないと私は思っておるのですけれども、これに対する考え方。  それからもう一つ、疫学上の居住歴と地域、これもまた、言うと検討中とおっしゃるのですが、熊本県の場合は、水俣市、芦北郡の三町、それから出水市、出水郡の一つの町、御所浦町、七市町村を地域指定するんだ、四十三年以前に住んでおった人だということがちゃんと伝わっているのですけれども、こういうことはそう考えているのか。  それから、今度やる事業を申請するのには、本人が申請して例えば医療機関の診断書をつけて出すというぐあいになっておりますが、それをどういうぐあいに審査するのかというような問題ですね。  それから、療養手当が出ているが、療養手当の額はどのくらいか。私は、療養手当というのは通院とかなんとかに費用を補償するわけですから、これは物価スライドにすべきだ、こういうぐあいに考えておるわけですけれども、そういう点について答えてください。
  48. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 先生からいろいろ具体的に、この答申に基づいて事業実施するに際しての要件につきましてのお尋ねでございますけれども先ほどお答えしているとおり、現在、この答申を去る二十六日にいただいた直後でございまして、今後関係省庁、地方公共団体と詰めねばならない問題でございます。  例えば、御指摘のような医療事業と、現在の特別医療事業でやっておりますように、いわばかけ持ちの問題、特別医療事業と認定申請というようにかけ持ちの問題がございます。これにつきましても、水俣病対策全体の体系とそれから今回の事業関係等を考慮しつつ関係地方公共団体とも相談しつつ判断していくというふうに考えておりまして、きょう現在それについてはっきり決めたということではないわけでございます。  それから、同様に、居住要件、それをどういうふうにするかという問題につきまして、これは答申でもうたっておりますように、昭和四十三年ということに関しては問題のない居住要件になろうかと思いますけれども、それ以外の具体的な居住要件等につきましては今後詰めていかなければならない具体的な問題であるというふうに考えているわけでございます。  それから、療養手当の額、これにつきましても、答申には述べられていないわけでございますけれども、それをどういうふうにするのかということにつきましても、受療に伴う所要経費の状況でありますとかあるいは他制度における類似給付との整合等々さまざまな要素を総合的に考慮して今後判断していかなければならない問題であるというふうに考えているところでございます。
  49. 馬場昇

    馬場委員 いつまでに決めるかということは後ではっきり言ってください。  それから、言っておきますが、療養手当、これは通院なんかに要する費用ということでこれを出すわけですから、例えば御所浦というところがありますが、そこから病院に来るとしますと、船に乗って来るのですよ。そこで、体が悪いからタクシーに乗るのですよ。一日がかりですから、昼食も食わなきゃいかぬ。今、一日行きますと、大体四千円から五千円かかるのですよ。そういうのを積み上げてこの療養手当というのは決めなきゃならぬと私は思うのですね。ところが、今公健法でそういう療養手当があって、二万円だとかなんとか言われますけれども、やはり療養手当というのは積み上げてやるべきだ、だから額も相当ふやさなきやならぬということを言っておきます。そういう経費ですから、当然物価スライド制をつくっていかなきゃならぬということも申し上げておきたいと思います。  それから、本人が申請するわけですけれども、それはやはり指定した医療機関の診断を尊重して、第二審査会とか第三審査会なんかつくるような煩雑なことはしちゃいかぬというぐあいに実は思うわけでございます。そして、やはり新潟にはきちんと適用するということでございますし、それから、適用を受ける人でも再申請もしてもよろしい、あるいは初めて認定申請をしてもよろしい、公健法上やってよろしい、こういうことをしないと、申請権を奪うような制度にしてはならない、こういうことを申し上げておきますが、今私が言ったことについて、いつまで結論を出すのか、療養手当の額を含めて、いつごろ結論を出すのか、言ってください。
  50. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 いつまでにということの御質問でございますけれども、鋭意検討を進めまして、できるだけ早くに結論を出したいというふうに考。えております。
  51. 馬場昇

    馬場委員 できるだけ早くといったって、予算が、療養手当なんかは予算で大蔵省と決まるわけですから、二十二日には内示するというんだから、その前にはもう決まるということは当然のことですよね。そのほかのことも、例えば療養手当の額はこれだけだとか、こういうことをするんだからやっぱりということを決めて交渉しなきゃいけないわけでしょう。こっちの言うた意見をぜひ中身に入れてやっていただきたいと思います。  それから次に、今裁判で和解が進んでおるわけでございますけれども、この中公審の議論の中でこの和解の問題が議論されたかどうか、まずそれを聞きたい。
  52. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今回の答申では、水俣病問題の中心を占めます、それからまた、現在最も対応が急がれている環境保健上の問題に迅速に対応するために、特にこの問題につきまして審議をお願いしていたわけでございます。  訴訟上の問題は審議の対象とはされていないわけでございます。
  53. 馬場昇

    馬場委員 答申の資料の中にみんな書いてあるでしょう。例えば、今賠償の訴えが行われておるとか、行政訴訟も行われておるとか、行政不服審査もあっておる、そういうことについて社会問題化しておるということは資料の中に書いてあったじゃないですか。ある委員から聞きますと、和解の話も出た、議論したということも聞いておるわけです。  そこで、その中身について言いますけれども、この答申の末尾のところに、今回の提案が水俣病問題の早期解決に資することを期待すると書いてありますが、これは和解をやりなさいというような中公審の意向ではないんですか。
  54. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 この和解の問題でございますけれども、国は入っておりませんこの和解協議の状況等につきまして、中公審におきまして、環境庁からその知り得た範囲でもっていろいろ審議会に対しまして御説明をしたということはございます。  それから、ただし、訴訟上の問題はこの審議の対象外として、行政措置として何が必要であるかを中心に審議されたわけでございます。したがいまして、今回の答申も和解とは切り離し、行政上の措置といたし宣してその実現を政府に求めたというふうに受けとめているわけでございます。  それから、今御指摘の答申の部分の記述でございますけれども、今回の答申の対応が実施されることによりまして、現在の水俣病問題の中核をなし、訴訟等の紛争の背景ともなっているこの地域の健康上の問題の解消につながり、ひいては水俣病問題全体の解決に大きく資するということを期待したものでございまして、訴訟上の対応について提言されたものではないというふうに理解しているところでございます。
  55. 馬場昇

    馬場委員 この答申が出ましてから、被害者の団体とか弁護団の方々が声明を出されて、水俣病和解交渉を今やっておるのに、この答申は非常に弾みをつけるような意味で期待をするんだ、あるいはこの答申和解交渉によい影響を与えてもらいたいんだ、こういう期待した気持ちがいっぱいあるわけです。声明にも出しておられるわけですが、こういう点について環境庁はどういう考え方を持っておられますか。
  56. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 この和解の問題、さっきも申し上げましたように、国は和解協議に参加しておりませんで、和解協議の経過でありますとか、あるいは各当事者の主張の具体的な内容につきましては十分には承知してないわけでございますけれども、今回の答申により提示されました行政施策の実施が、今後、和解協議の行方に何らかの影響を及ぼすのかどうかということにつきましては何とも申しあげることはできないわけでございます。  で、環境庁といたしましては、あくまでも行政施策として対策の実現に向けて最大限努力を払ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  57. 馬場昇

    馬場委員 そう言うけれども、例えばこの療養費、療養手当を出す対象者ですね。あなた方、この答申によりますと、「四肢末端感覚障害を有する者」、こうなっておるわけですね。そして、これは福岡高等裁判所が和解の所見で出しております司法救済対象者、すなわち和解救済上の水俣病と言っておられるわけですが、これと一致しておりますね。あなた方の救済する人と、司法救済上の水俣病救済対象者、司法判断が全く一致しておるわけですが、これについてどういう考えを持っているのか。これは環境庁長官に聞きますけれども、やはりこの際、中公審答申が出たということで、国も和解のテーブルに着いちゃどうかと、着くべきであるかと思うのですが、これについて大臣からお話も答弁もいただきたい。
  58. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 先般、福岡高裁の所見に述べられてございます和解救済上の水俣病についてのことであろうかと存じますけれども、これは、国は現に和解協議には参加しておりませんので、その正確な趣旨というものは承知してないわけでございます。したがいまして、答申の趣旨との比較を行うということは困難であるというふうに考えます。  いずれにいたしましても、答申に示されました医学的な見解を踏まえれば、この福岡高裁が述べておられるようなものを水俣病と呼ぶことは適当ではないというふうに考えるところでございます。  それからなお、こういう答申が出た、これを踏まえて和解協議に応じるべきではないかという御趣旨だと思いますけれども、これにつきましても、今回の中公審答申、これは行政施策として講じるべき対策が示されたものでございまして、和解の問題とは切り離して考えるべきものであるというふうに理解しているわけでございます。  一方、現在行われております和解協議、これは国が当事者として法的責任を問われている損害賠償請求訴訟に関するものでございまして、本件訴訟の争点は行政のあり方の根幹にかかわる問題でございまして、裁判所の公正な判決をいただいて対処すべきものというふうに考えているところから、和解に応じることは困難であるというふうに考えるわけでございます。
  59. 馬場昇

    馬場委員 そうしたら、和解には応じない、そして公正な裁判の判断をいただきたい、こういうことをおっしゃっているわけですけれども、じゃ、どこの裁判所の判決をいただきたいと思っているのですか。今、福岡高裁とか東京地裁とかいろいろありますね。例えば裁判所の判断を仰ぎたいというのは、どこの裁判所の判断を――全部出るまで待っているというのですか。  またもう一つは、例えば東京地裁が、来春なら来春、判決を出すとする。判決をお願いしたいとあなた方は言っているのだから、出す。そのときに、熊本地裁と同じようにあなた方が全部敗訴した、そういうときに、またこれを控訴する。そういうことになりますと、次の、あなた方を言う裁判所の公正な判断を待ちたいというのは最高裁まで行かなきゃできぬ。生きているうちに救済をという国民の世論がある。そういう中で、現時点では裁判所の判決を待ちたいと言っておったのだが、例えば東京地裁の判決を得たときに、それを控訴するのかしないのか。控訴はしないとそこで言うならば、そこでまた判断というのは出てくるんじゃないかと思うのだけれども、控訴すると言ったら、裁判所の判決を得て判断したいというのに合わない。東京地裁で判決が出たときに、控訴しますか、しませんか。
  60. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 国におきましては、これまで本件訴訟の争点が行政のあり方の根幹にかかわるものであるということから、裁判所の公正な判決をいただいた上で判断していきたいというふうに再再申し上げてきたわけでございます。こういう趣旨におきまして、公正な判決が速やかに出されることを期待するわけでございまして、具体的にどこの裁判所からの判決を待っているということではございません。  なお、正式に判決言い渡しの期日が指定されたものではございませんので具体的な期日を申し上げることばできませんけれども、これまでに東京地裁それから新潟地裁におきましては既に結審していることは御案内のとおりでございます。  なお、判決が出た際の対応でございますけれども、いただいた判決を十分に検討した上で、関係省庁とも相談しつつ適切に対処すべきものであるというふうに考えているわけでございます。
  61. 馬場昇

    馬場委員 これは大臣質問しますけれども、今の答弁を聞いておったら、本当に社会的問題になっているというような水俣病、半世紀以上続いてきた水俣病を真剣に取り組んで解決しようという意欲を感じない。私は、この水俣病を解決せずして今度地球サミット大臣行かれたって、二十年前に大石長官も行っているわけです、患者も行っているわけです、世界公害原点だからみんな世界の人は知っているのですよ。水俣病も解決せずして地球サミットに行ったって、だれも発言は信用しないし、世界環境をリードするような行動大臣はとれないと私は思うのですよ。  そういう意味において、例えば元長官の、私がここで議論して、三木元環境庁長官が初めてでございましたが、あのとき患者が自主交渉で、東京駅の東京ビルの四階にチッソの本社があるのですよ、あそこの前に二年間座り込んで、ハンストもしました。鉄格子を張って、もうどうにもならぬ。そういうときに補償協定をつくったのですよ。このときには、三木長官とその当時の梅本事務次官、城戸官房長、物すごくこの補償協定、これは言うならば和解契約書ですよ、患者とチッソの和解契約書。和解契約書をつくるのに、私は一緒に闘ったから知っていますけれども、しょっちゅう連絡をとって、私の部屋にも梅本さんも来る、城戸さんも来る、患者さんも来る。前線のような格好になって、あそこで煮詰めて、そして、三木さんが立会人、私も立会人になって、あの補償協定書、言葉をかえて言えは和解契約書ができ上がったのです。  だから私は、やはり環境庁は、そのときの三木さんがやったように、梅本さんや城戸さんがやったように、今の環境庁はこの問題を解決するために、一緒になって和解契約書をあのときつくったのですから、そういうような行動を、解決をリードするような行動というのを起こしてはどうですか。
  62. 中村正三郎

    中村国務大臣 いろいろ馬場委員から御指摘をいただきまして、深くいろいろ考えてまいりたいと思いますが、今御指摘になりました和解は、民事上の和解の問題とは違う、いわゆる国が当事者となって責任を問われている裁判なわけでございます。そういたしますとやはり、先ほど申し上げましたように、予見できなかったとか法制度がなかったとかいろいろなことで、国の行政としての立場がございますので、そういうことになりますと、早く、国に責任がどういうふうにあるのかということを、結論を司法の場で出していただきたいという話になるわけでございますが、そういたしますと、司法の裁判が非常に日本では長くかかるということがございます。しかしながら私ども、半分立法府、半分行政府のような立場でありますので、司法の場についてこれをどうのこうのという論評ができない立場にございます。  そこで、やはり私どもといたしましては、中公審答申を受けて、どういうことができるのか、最大限努力を払ってまいらなければいけないと思っているわけであります。先ほど再三の馬場委員の指摘にございましたように、二十二日に予算の内示ということでありますから、それに向けて、馬場委員の御指摘なども頭に入れながら最大限努力をして、御理解をいただけるようにやってまいりたい、そのように考えているわけでございます。
  63. 馬場昇

    馬場委員 かつて中曽根内閣のときに、臨時行政改革調査会というのができました。臨調行革路線と言って我々は反対いたしました。また、文教もやっておりますけれども、臨時教育改革審議会、臨教審が法律でできて、改革をやっていったのですね。ちょうど私はそのとき、こういうのは余り要らぬ、水俣病について水俣病問題対策審議会というのを法律でつくれ、この審議会をつくって、そこで、世界公害原点水俣病について総合的に解決する案をそこから出しなさい、全面解決の方途を出せという、そういう水俣病問題対策審議会というのをつくりなさいということを提案いたしましたが、これが実現していないわけでございます。  そこできょう、これはやはり何としても、地球サミットがそこにあるわけですから、そこに行く前に、大臣、少なくとも私は、水俣病問題サミットというのをあなたがリードして水俣で開きなさいということを言いたいわけでございます。そこで、やはり水俣病問題で、国とかあるいは県とか水俣市、市町村とかあそこの議会とか、あるいは地元出身の国会議員も入ってもいいと思いますよ、それから学者とかいろいろな科学者とか、そして少なくとも中心は患者とか地域住民、そういうものによって水俣病サミットというようなものを水俣で開いて、全面完全解決するためにどうするか、そういうようなものを環境庁長官が呼びかけて実行する、そういうことぐらいして、本当に水俣病世界公害原点はこうやって解決するんです、具体的内容は今やっておりますということでもいいですから、それを持って行かれてはどうかということ。だから、水俣病問題のサミットを水俣で環境庁長官がリードして開いていただきたい。ちょうど成田でも、この間、シンポジウムがあったじゃないですか。そういうことを含めて、どうですか。
  64. 中村正三郎

    中村国務大臣 こうした問題の解決のためには国や県が一体となって働くことも必要でございますし、患者の意見を聞くということもこれは重要なことでございましょう。でありますから、患者の意見を聞く機会というのもあるようでございますけれども、私はやはり、今後どのような体制でこの問題に取り組んでいくかというのは、先生御指摘のような方法も一つではあるとは思いますけれども、十分検討はさせていただきますけれども、当面はやはり地方自治体の方、地元の自治体の方と一層の緊密な連絡をとりながら対処していくことが重要だと存じております。
  65. 馬場昇

    馬場委員 やはりこれは地方自治体だけじゃないのです。水俣病を解決するのは、水俣の人の心を、特に患者の心を知らなければ水俣病解決にならないのです。そういう意味で、この水俣病サミットというのは急に出しましたから大臣まだ検討されておらないと思いますけれども、このことを検討するということと、その前に水俣に行って心を知りたいという、水俣に長官行ってください。この二つを答弁を得て、質問を終わりたいと思います。
  66. 中村正三郎

    中村国務大臣 お二つの御指摘について、慎重に検討をさせていただきます。
  67. 馬場昇

    馬場委員 終わります。
  68. 小杉隆

  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 少し順序が変わりまして申しわけございません。できるだけ早く質問を終わりたいというふうに思いますが、本会議関係を配慮しながら質問をさせていただきたいと思います。  最初に、中村環境庁長官にお願いがございます。いい時期に環境庁長官におなりになったというふうに受けとめていただきたいと思うのです。という意味は、もうUNCEDのことは言うまでもございませんが、今や人間の生活にとって環境問題というものをおろそかにすることはできない、最優先の課題だというふうにさえ思うわけでありまして、どうかひとつ勇気を持って、今馬場さんの御質問もございましたけれども、アセスメントなどを含めて環境行政全体を環境庁の歴史を踏まえて振り返って、そしてまさに勇気を持って環境行政を進めていただきたい、私はこのことを心からお願いしたいと思います。後世に名の残るような長官として頑張っていただきたいということを最初に激励をしておきたいというふうに思います。  そこで、最初UNCEDに対する政府の取り組みについて少し質問をしてまいりたいと思いますが、答弁は簡単で結構ですから、イエス、ノーというやりとりをさせていただきたいと思います。政府として、例えば首相や環境庁長官がこれに御出席になるおつもりですか。
  70. 中村正三郎

    中村国務大臣 もう御案内のとおり、この会議は極めて重要な会議でありますから、出席するつもりでございます。総理もそういう答弁をされておられますが、ことし、一月召集ということが決まりまして、その会期内にあるということになりますので、UNCEDの準備会のOEC閣僚会議にもこれで行けなかったということを踏まえまして、よく各党の、議会の御理解が得られるように努力してまいりたいと思いますので、どうか委員におかれましてもよろしくお願いを申し上げたいと思います。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 出席することだけに意味があるわけじゃないのでして、問題は日本が何を主張し、何を国際的な一つの取り決めとして成功させていくかということにもかかわりがあると思いますので、どうぞその点は総理を初めとする日本政府の姿勢として御配慮を願いたいというふうに思います。  そこで、これは長くなってしまってまずいので、CO2削減の問題や森林保護などについての日本政府のスタンスをちょっとお聞かせいただきたいと思います。できるだけ短くて結構です、おおむね承知していますので。
  72. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 それでは簡単にお答え申し上げます。  地球温暖化問題につきまして、現在まで気候変動枠組み条約交渉というのが三回行われておるわけでございますが、正直なところ言って、先進国間また先進国と後進国との間の国際的な合意がまだできていないというのが現状でございます。ただ、これからの地球保全上の問題を考えます場合に、国際的な合意をつくるということが非常に重要である、そのためには先進国がこれからの地球保全のために一つ役割を果たしていくということが重要であるというぐあいに私ども考えております。  そこで私どもは、具体的には一九九〇年レベルで二〇〇〇年後にCO2の排出を安定化させるということを国際的に、先進国との間ではそれを一つのコミットメントをしようじゃないかということを主張しているわけでございますが、そういうようなことをやることによって後進国をも含めた国際的な取り組みができるのではなかろうかというぐあいに考えている次第でございまして、ぜひとも国際的な取り決めができるようにということで、関係各省また関係各国とこれから濃密な交渉を続けてまいりたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうことを言うと大変失礼ですが、八木橋さん、後進国はやめておいた方がいい。ですよ。途上国の協力もいただかなければならぬというふうに思っております。  それから南北の対立が、きのうのあれはど一。」でしたか、サミット十一カ国というのが開かれています。それから、その前の北京の会議がございます。やはり南北問題は大変深刻だと思うのですが、これに対して、一つ資金の問題が非常に大きいと思うのです。日本のその負担のいわば腹づもりとでもいいましょうか、あるいはその財源措置をどんなふうに考えていらっしゃるか、まだ考えていらっしゃらないのならそれで結構ですが、どんなことをお考えなのかということを、これはファンド全体の中で日本がどんなふうな役割を果たすかというようなことも含めて、もし御検討が進んでいるならば御答弁をいただきたいと思います。
  74. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 まず、先ほどお答えの中で不適切な表現がございました。後進国ではございませんで、開発途上国でございますので、謹んで訂正させていただきたいというぐあいに考えます。  それから第二に、ただいま御質問にございました地球環境保全資金協力についての問題でございますが、この問題につきまして、今までの準備過程で開発途上国側からは、持続可能な開発に向けた資金協力や技術移転に対する強い要求が出されていることは御承知のところでございます。また、地球サミットでの合意事項を着実に実施し、二十一世紀に向けて地球環境保全していくためには、開発途上国に対して適切な国際的な資金供給メカニズムをつくって地球環境問題というものを解決していくことが私どもとして重要であるというぐあいに考えているわけでございます。  この問題に関しましては、竹下元総理に対するストロングUNCED事務局長の要請がございまして、地球環境資金に対する賢人会議とも言うべきものが来年四月に東京で開催されるということが予定されているところでございまして、この会議そのものは政府間のものではございませんけれども、私ども日本政府といたしましても、こういった会議には側面的から御協力申し上げながら、また、これからの準備過程での検討を通じまして、先進各国それから発展途上国とが協調して資金供給メカニズムというものが確立されるように私どもは積極的に貢献していきたいというぐあいに考えております。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それ以上聞いても前へ進まないと思いますけれども、次に続きます。  WWF、世界自然保護基金、それからUNEP、国連環境計画あるいはIUCN、国際自然保護連合が御存じのように「かけがえのない地球を大切に」という共同作業の結果を発表されました。世界じゅうで同時に発表されたわけですが、これは環境庁はごらんになっていらっしゃると思うし、これについてお尋ねをしておきたいと思うのです。  ちょうど一九八〇年に、たしか地球環境保全戦略だと思いますが、として発表されたわけです。これはワールド・コンサベーション・ストラテジーでございまして、それを受けて各国が、これについてナショナルなコンサベーション・ストラテジーを五十の国がまとめて発表しています。そして取り組みを進めています。日本はその中に入っていません。  そこで、今度は恐らくこれを受けてというわけにはいきませんと思いますけれども地球サミットでこれらが非常に重要な貴重な基礎になるだろうと思いますが、日本はそれをどう受けとめるつもりなのかということを、これは長官、もしお答えがいただければ御答弁をいただきたいと思います。
  76. 中村正三郎

    中村国務大臣 今御指摘のWWF、UNEP等から「かけがえのない地球を大切に」という報告書が出ているということを伺い、その内容についても大まかなところは伺っておりますが、全部を詳細に拝見したわけではありませんけれども、先生御指摘のように地球サミットでいろいろなものを論議していく上で大変重要な参考になると思われるわけであります。地球サミットでアジェンダ21、どういう項目になるか今詰めているようでありまして、これはUNCEDまでに詰めなければいけないわけですが、そういうものを策定する上においても極めて重要な示唆を与えるものだと存じております。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 示唆を与えるということと同時に、その五十カ国の中に入る、入らない、どうして入らなかったかというようなことをここで問うつもりはございません。  ただ、今回は特別の意味を持っていると思うのです、例えば地球憲章あるいは環境憲章というようなもの、それからアジェンダ21を受けた国内的なさまざまな手だてというものが保障されていかなければいけない。実はそれがこの中にも書いてあるわけですが、その点は環境憲章みたいなものをお考えいただくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  78. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘のようにこの報告書は、二十一世紀にかけて人類が持続可能な生活様式を実現するためになすべき新しい行動の分析や計画を示した現実的な手引書と言えるような内容のものになっているわけでございます。そこで、これから地球サミットでの採択を目指して地球憲章、アジェンダ21の議論が進められているところでございますが、私どもは、これらの議論を進める上におきましてこの報告書は非常に参考になるものというぐあいに考えておるところでございます。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 参考にするだけでなくて、これを受けて日本が具体的に対応することができるようにするためには、まあ環境憲章とでもいいましょうか、そういうものも非常に必要だなというふうに私は思いますので、その点は強調しておきたいというふうに思います。  それからWWFインターナショナルのチャールズ・ド・ヘイズという人がこの中に書いてある言葉、これはこの本のことについて触れている言葉なのですけれども、「地球の資源はすでに枯渇している。人々はその生活態度、行動様式を変えなければならない。持続可能な生活様式を達成するためには、個人、地域の市民団体、共同体、職場団体、国家――すべての行動が必要である。政府行動はいうまでもなく必要ではあるが、国民の支持なしには成功はおぼつかない」ということを強調されておられる。  そこでお尋ねをしますが、例えば教育現場で子供たちに対しての教育をどうするのか、あるいは自治体における具体的な戦略をどうするのか。私は、実は非核都市宣言というようなものが日本じゅうに広がったという経験を持っておりますが、環境宣言都市あるいは環境都市宣言とでもいいましょうか、そういう自治体から盛り上がる運動というものが今や非常に必要な時期を迎えているなというふうに思っています。そういう意味では自治体の取り組み、あるいはNGOを初めとする市民運動との連帯というふうなものがやはり最低限必要だ。この間経団連が一つのモラルみたいな形のものを発表されましたけれども、企業もバルディーズの原則じゃないけれどもそれぞれ役割を果たそうとしている。世界じゅうがそういう目標に向かって一歩一歩前進していかなければならぬと思いますが、これを受けて各省庁全部集まっていただいて、サミットの後ということになるのかもしれませんが、できれば前に各省庁が集まっていただいて、この会議にどういう形で臨むのかということの最終的な意思確認をお願いしたいと私は思いますが、言うまでもないことでございますけれども、そういう御準備はございますか。
  80. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘のように、環境問題は地域に密着した問題が多いということで、地域と密着したような格好での環境問題を考えるということは非常に大事なことでございますので、私どもは従来から地域環境保全計画また環境教育を考え問題等々におきまして、いろいろ関係各省と御相談をしながらやってきたわけでございます。これからの環境問題を考えるに当たりましてどういう取り組みをしていくか、地域を、地方公共団体を巻き込んでどういった格好でこれからこういう問題に取り組んでいこうか、先生のただいまの御指摘も含めて私ども検討してまいりたいというぐあいに考えます。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき馬場さんからも言われましたが、環境庁の歴史を振り返り、そしてUNCEDのことを考えてみると、やはり日本はアセスメントなどを含めて、これは実はこの中にもしっかり位置づけてあるのですが、そういう問題をかって環境庁が法案を出したこともあるわけですから、それらを参考にしながら、エンドレスじゃなくてある種の目標を決めてこれらの問題について検討を始めるというところまではいきませんでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。
  82. 中村正三郎

    中村国務大臣 岩垂委員環境委員会理事をやっておられましたとき、私も御一緒させていただきまして、アセスメント法案が廃案になったときの理事でありますので当時の状況はよく存じております。あのときは、アセスメントはやらなければいけないけれども、こういった法制をつくった場合にどういうことが起こるんだということが、大変いろいろなことが、御懸念を持つ議員がいらっしゃいまして、この法律が通るかどうかがおぼつかないということでああいうことになりました。御案内のとおり、その後閣議決定のアセスメントということで行っております。もうアセスメントが必要であるということは論をまたないわけであり、これが地方自治体におけるいろいろな条例によるアセスメント等と相まって的確に行われてきつつある現状だと思います。これを有効的確にやるようにしていくことを進めていって、そういったものを見ていく上でまたいろいろな考えをしていかなければいけないと思います。  先ほど馬場委員の御質問お答え申し上げましたように、環境に対する取り組みが非常に変わってきた。地球規模という問題から発して、もうこれは他人事ではない、大変差し迫った問題であるという中で、環境行政そのもののあり方が従来と変わってくる。そういう中で、公害基本法でありますか、こうした環境行政の基本をなす法律体系についても、どういうことがいいのかということを検討していかなければならない時期に入っていると思うわけでございます。そして、このUNCEDの議論も受けて、これからの環境行政がどうあるべきかということを踏まえて、大きな法体系の全体の検討の中でアセスメント法案についても考えていかなければいけないと思っております。  ただ、私ちょっと昔のことを思い起こしまして、今の閣議決定のアセスメントを見てまいりますと、私見でございますけども、この閣議決定のアセスメントの内容を当面多少充実させたらいいのじゃないかというような思いも持っているわけでありますが、この法制化については、全体を考える中でもって将来の課題として考えていくべき問題と考えております。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 中村さんになぜ聞いたかというと、そこのところなんですよ。後の方の答弁は私は蛇足だと思うが、あのときに大変御苦労いただいたわけです。あなたが走り回っている姿を本当に私は見ています。それだけに残念だったと思っていらっしゃると思う。それだけに政府の今の、ある種の要綱とでもいいましょうか、行政ではなくて法律できちんとしていく。どこまで届くかは別ですよ。ルールとして、制度としてそれをきちんとしておかなければいけないだろうというふうに思いますので、全体を見直すプロセスの中で十分検討しますということをぜひ御配慮いただきたい。よろしゅうございますね。  これは、アースデーのスローガンじゃないけれども、「シンク・グローバリー、アクト・ローカリー」という言葉が今や日本国民の合い言葉になってきています。地球的に考えながら、本当に足元から行動していくということが必要だと思うのですね。そこで、遠慮しないで環境庁はやはり環境省にしてほしいと私ども提案をしているのですが、そのくらいの気持ちで頑張っていただけますか。
  84. 中村正三郎

    中村国務大臣 大変ありがたい御指摘をいただきました。今のUNCEDへ向けての環境への関心の高まりということもございますけれども、将来の環境行政ということがすべての生活、産業の基盤をなすものになってまいると思いますので、それに取り組む環境庁の行政機能の強化をしていかな付ればいけないというふうに感じております。  ただ、今私ども調整官庁として総理から付与された権限によりましていろいろな官庁の調整を行います。そうしたことが、私ども一つの役所として、省としてやった場合にどういうふうな整合性を持つのか。そういうことについても内々検討してくれということをお願いしているわけでございます。  いずれにいたしましても、象徴的な意味からいっても、私は、組織体制の強化という中の一つだと省への昇格は思いますので、前向きに取り組んでまいりたい思っておりますので、どうか御支援を賜りたいと思います。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この間、外務省が外交活動の強化についてという諮問委員会をつくって発表しました。国民に対するアピールはそれなりの意味を持っていると私は思うのです。だから、ああいう作業を、これは環境庁内部でできることなんですから、やはり検討していく。もちろん中公審なんかもあるけれども、そうでなくて、制度の問題ですから、周りからいろいろ言ってもらった方がいいと思う。  というのは、大変立派な局長さんなりあるいは部長さんなりがおられるのですけれども、農林水産省からお見えになって二年たったらお帰りになる、厚生省からお見えになって二年たったらお帰りになる、早ければ一年だ。それで、非常に熱心にやっていらっしゃることについては私は敬意を表するから、それがまるっきり悪いと言うつもりはない。ただ、もうぼつぼつプロパーの人たちも育ってきているわけですし、また同時に、環境庁の中で自分の仕事を生きがいを感じながらきちんとやっていくという人たちもたくさんおられるわけですから、そういう渡り鳥的な、言葉が大変悪くて、適当塗言葉がないものですから失礼ですけれども、そうではなくて、やはり環境庁環境庁として、きちんとした役所として、今きちんとしてないと言うつもりはないけれども考えていただきたい。  そういう外側からいろいろな問題点も指摘していただけるような委員会といいましょうか機関をつくった方がいいのじゃないかというふうに思いますが、長いおつき合いでございますものですから、その点を御提案というか御意見を申し上げたいと思いますが、大臣いかがですか。
  86. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員の御指摘には私も同感でございます。やはり、調整官庁としてやってまいります上で、いろいろな官庁から人事の交流があるということは、これはまた一つ意味のあることだと思いますが、プロパーで育ってこられた方が今だんだん課長さんたちになっておられるということを伺っておりますので、そういう方の活躍の場というのがどんどん出てくるべきであろうというふうに存じでおります。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは私の地元なんですけれども、川崎が、環境憲法というような呼び方をしている新聞もございまして、環境基本条例というものを制定することになりまして、今議会で議論をしています。この中には、環境権の理念を明らかにしまして、その権利を保障するためにアセスメントを初めとする具体的な仕組みを条例の中で位置づけようというふうにしています。  環境庁のなさろうとしている方向と全く共通でもございますが、その点について、環境庁はこの条例の案について御検討なすったことはございますか。
  88. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘の、川崎市による環境基本条例案でございますが、これは取り寄せて勉強させていただいております。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 勉強していただいて、どんなふうに受けとめておられますか。御判断をお聞かせいただきたいと思います。
  90. 中村正三郎

    中村国務大臣 従来から川崎市は、こういう問題に対して取り組みが非常に意欲的であるというふうに伺っております。今回の川崎市の環境基本条例案は、市の環境政策について、理念、基本原則等を包括的に定め、環境基本計画を作成するとともに、施策の立案段階から環境配慮を徹底するための環境調査実施するなど、意欲的な取り組みであると評価をいたしております。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 地方自治体がそういう形で、盛り上がっていく形で全国に広がっていく、そして、私が先ほど申し上げましたように、環境都市宣言みたいなものが本当に全国の自治体で進められていく。もちろんある種のガイドラインが要ると思いますから、それは専門家の検討を待たなければなりませんけれども、そういうものをクリアしながら国民運動として環境運動を位置づけていく、環境を守る運動を位置づけていく、こういうことがとても必要だと思うのです。川崎は少し私もかかわりがあるものですから、やや先駆的なという意味になっていくのかもしれませんが、政府としても積極的にこれをバックアップしていただきたいいこのことをぜひお願いをしたいと思います。もう一遍、海の向こうから声をいただきたいと思います。海の向こうではなくて、東京湾の向こう側だから……。
  92. 中村正三郎

    中村国務大臣 実は川崎市、特にこういう取り組みが積極的であるというお話をしたのですが、前環境庁長官も鉄鋼業に勤めておられまして、川崎にその会社がございます。私が勤めておりました会社も川崎に工場がございました。そうして、こうした条例に従って大きな環境汚染防止施設をつくったよということを聞きまして、前環境庁長官と、長官になられる前ですが、一緒に川崎市を視察に行ったことがございます。  委員がおっしゃられますとおり、先ほどこちらの政府委員からもお答えいたしましたように、地方の取り組みというのは極めて必要であり、地方に密着し、人の生活に密着した環境問題でありますから、こうした取り組みが進められるということは、先ほど申し上げましたように評価申し上げると同時に、国としても、こういったことを尊重し、よく連携を保って環境行政に当たってまいりたいと思っております。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は、これは質問通告したわけじゃないのですけれども、その後、例の製紙工場のダイオキシンだとか、あるいはWWFの問題になってくるワシントン条約の違反事項だとか、随分いろいろなことがここのところ新聞に出ておりまして、例えば、特にダイオキシンなどは国民生活にとって大変深刻な問題をはらんでいるわけでございまして、私の方の同僚議員が今まで勉強してきた問題でもございますけれども、例のバイガイのTBTの汚染の問題などもここのところへ来でいろいろ取りざたされています、堂本さんが大変熱心に取り組んでこられたのですが。こういうことに対して環境庁が、基準内なら問題ないというふうな対応だけではやはりどうもちょっと不十分ではないか。こういう問題を一体どういう形で――僕は、不安をなくしていくために努力をするんだというような対応がどうしても必要な感じがするのです。  そうしたら、製紙業界が集まってできるだけ少なくするための検討を始めるというふうなことが新聞の記事に出ていましたが、やはり、そういう問題が明らかになったところできちんと、不安は要りません、しかし、こういうふうにいたしていきたいと思う、業界を指導していきたいと思う、あるいは削減をしていきたいと思うというようなことをおっしゃることはできないのだろうか。これは、答弁となたになるのか、流れ弾で大変恐縮ですが、企画調整局長答弁をいただきたいと思います。
  94. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども先ほど、紙パルプ工場等からのダイオキシンによる環境汚染防止対策検討するために関係省庁が共同して調査実施したその結果については報告をしたところでございます。  先生の御質問は、その報告の内容ではなしに、そこから先どうするのかという御質問だと理解するわけでございますが、私どもといたしましては、先生、報告の内容につきましては一言で要約していただきましたので、それについて敷衍することはやめまして、今後の対応ということで申し上げますれば、本報告書を踏まえまして、私どもは、関係各省それから地方公共団体と密接な連携をとりながら、一つは、紙パルプの製造業者に対しまして、ダイオキシンの低減のための対策の強化充実を指導し、また、それとともに、その進捗状況を把握するというようなことをやってまいりたいということ、それから第二に、現在の調査方法は非常に金のかかる方法でございますので、簡易で迅速なダイオキシンの測定方法を開発する必要があるのではないかという点、それから第三点といたしましては、やはりダイオキシン対策に対する研究につきましてはまだ取っかかったばかりでございますので、そういった研究をさらに推進していく必要がある、私どもとしては、この三点を今後強化充実していく必要があるのではないかというぐあいに考えているところでございます。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 八木橋さん、技術的に非常に難しいという面もあるけれども、川崎なんか、ごみの焼却場の煙突の付近にテレメーターをつけまして、そしてダイオキシンの発生状況というのをきちんと調べるシステムをつけました。だから、そういうふうにやろうと思えばできるわけですので、これはやはりPPPの原則じゃないけれども、製紙工場がきちんとそういうことについて誠意を持って、周辺の市民に対して影響を及ぼすことなんですから、やらせてほしいものだなというふうに思います。よろしゅうございますね。  それでは、ちょっときょうは地元のことを少し質問をさせていただきたいと思います。  防衛施設庁さんお見えでしょうか。――ちょっと遠いな。ちょっとそこのところをお借りしてそこへかけてください。  最初にごみのことを質問します。  横須賀市長から横浜の防衛施設局長平成三年の十月四日に「横須賀海軍施設におけるごみ処理について」の要請が行われています。この申し入れ事項は、一つ一つを私、読みません。そして、十一月の二十日に横浜の防衛施設局長から横須賀市長に対して回答が行われています。  私は、この回答文を拝見いたしまして、まあ従来もそういう傾向がなきにしもあらずでございましたが、まるっきり木で鼻をくくったような回答なんですね。それはアメリカのお答えだからしょうがないと言われればそれまでかもしれませんが、少なくても防衛施設庁というのはその中に立って市民の不安というものにこたえていくという責任も担保されなきゃならぬと私は思うのです。そういう意味で、再質問というふうな姿勢があるようですけれども一つは長坂の埋立地へ受け入れている燃えないごみを最近組成分析をした結果、プラスチック以外の可燃物の混入率が五〇%を超えていると。この問題についてお答えになったのは、「今後ともごみの分別がなされるよう徹底したい。」と。「今後とも」というのは今まできちんとやってきたのか、五〇%も混入をしているという状態というもので分別がされたというふうにお考えなのかどうか。  それから、市は、大気汚染防止のために月報で毎月記録を要請しているの。だが、米軍の方は今度は年二回と言うのですね。年二回というのでは、これはいささか不親切であり怠慢ではないかと言わざるを得ない。  三つ目は、これはもう言うまでもない、論外です。塩化水素がゼロppm。私も専門家に聞きましたけれども、こんなことはあり得ないというふうに言っています。  それから「4について」ということなんですけれども、周辺住民が、今言ったダイオキシン類の分析調査とその公表について町内会から公表するようにということが求められているわけだが、これについての答えは、「米側としては、今後、日本政府調整しつつ対応したい。」ということなんですが、この答弁あるいは回答で十分だとお考えになっていらっしゃるかどうか、まずお尋ねをしたいと思います。
  96. 吉田厳彦

    吉田説明員 御説明します。  本件は、基本的には横須賀市と米軍との間で調整すべき事項であると考えますが、このような問題についても当庁としましては、従来から米軍との間に立ちましで誠意を持ってできる限りの協力をしてきたところであります。本件につきましても誠意を持って対応してきたところであります。  先ほども申されましたように、十月四日、横浜施設局長の方に市長から分別の徹底ということの要請がありまして、二十四日に米軍の方に申し入れ、米軍の回答を踏まえて横須賀市の方には十一月二十日に回答をしたところでございます。  いずれにしましても当庁としましては、米軍との間に立ちまして誠意を持ってできる限りの協力をしていきたいというふうに考えております。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 聞いているのは、そういうことを聞いているのじゃない。そんなことは当たり前の話だ。ここに出ている回答で十分だとあなたはお考えになるかということ、防衛施設庁はお考えになるかということを聞いているのです。
  98. 吉田厳彦

    吉田説明員 回答の中身につきまして御説明いたします。  プラスチックの搬入の問題でございますけれども、これは、米軍は今後ごみの分別がなされるように徹底したいというふうに言っておりますので、当庁としましても今後分別の徹底が図られるものというふうに理解しております。  それから、排出ガスの計測記録の問題でございますけれども、従来、年一回市の要請に基づきまして提示しているところでありますが、厚生省の指導によれば、処・理能力が一日当たり二百トン未満の施設の場合は年二回以上というふうになっていることから、米側としましても、当該施設の処理能力、一日当たり四十六トンから見まして、年二回程度を目途として今後調整しつつ対応していきたいというふうに回答しております。これにつきましては、横須賀市の方とも話しまして、理解を得ているところでございます。  それから、塩化水素の問題でございますが、米軍の説明によれば、塩化水素につきましては酸素二一%換算値ということで計測したもので、実測値が定量下限値以下であったため ゼロppmという表示をしたものでありまして、このことにつきましても、横須賀市の方と話しまして、理解を得ているところでございます。  いずれにしましても、当庁としましては、米軍との間に立ちまして誠意を持ってできる限りの協力をしていきたいというふうに考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今まで分別が十分に行われていなかったこと、このことはお認めになりますね。
  100. 吉田厳彦

    吉田説明員 当庁としましては、市の行われました調査結果についてコメントする立場にはございませんので、要請のありました分別の徹底については、その旨米軍の方に申し入れたところでございます。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 中に立って誠意を持って努力なすったとすれば、やはりそういうことがあったということであるとすれば、やはりあなた方もきちんと調査をしなきゃいかぬ、聞かにゃいかぬ、役所に対して。それで五〇%だったとすれば、守られていないというふうにあなたは受けとめられるでしょう、どうです。
  102. 吉田厳彦

    吉田説明員 繰り返して申し上げますけれども調査結果につきまして私どもコメントする立場にございませんので、ということでお許し賜りたいと思います。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 防衛施設庁は何のためにあるのですか。今言ったように、米軍と市民との間に立って誠意を持って努力する、やはり市民の不安に対してこたえるというのがあなたの責任じゃないですか。日本の役所でしょう。  それで、しかも五〇%というのは相当な数量ですよ。それがきちんと分別されていない、十分に分別されていない、そういう認識をあなたお持ちになりませんか。私はそれを聞いているのですよ。あなたの判断、防衛施設庁の判断をお聞かせください。これで結構だと、今まで分別されていたと思いますか。
  104. 吉田厳彦

    吉田説明員 何度も繰り返して申し上げますけれども調査結果につきまして私の方でコメントする立場にございません。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 「米側としては、今後ともごみの分別がなされるよう徹底したい。」と。「今後とも」なんです、いいですか。だから、私が聞いているのは、今までの分別が十分であったという認識をあなたはお持ちになっていらっしゃるのかどうか。その上で対応がいろいろあるわけです。五〇%という事実をお認めになったとすれば、これはまずいぞ、やはりきちんと約束どおりしてくれ、こう言うのが筋じゃないですか。何でコメントできないのですか。御答弁いただきます。
  106. 吉田厳彦

    吉田説明員 繰り返してまた申し上げますけれども調査結果につきまして、私どもコメントする立場にございません。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 五〇%というのは市がちゃんと調べたものなんですよね。それで、議会で問題になり、市が当局として皆さんのところに要請をしているわけです。皆さんはその要請を受けてアメリカときちんとやらにゃいかぬ。ところが、アメリカとやるときにあなた方が、コメントする立場にありませんと、分別されているのかされていないのかわからない状況でアメリカさんに言ったって、それは相手の方がやっていますよと言われればそれまでじゃないですか。だから私は、五〇%という数量は分別されない、完全な形では分別されていませんよ、そういう認識はあなたもお持ちになっていただきたい、その上でアメリカに対してきちんと物を言ってほしいということを言いたかったわけです。それならいいですね。
  108. 吉田厳彦

    吉田説明員 調査結果についてコメントをすることはできませんけれども、米軍に対しまして分別の徹底の要請がありましたことを強く言っておりますし、いずれにしましても、米軍との間に立ちましてできるだけのことをいたしたいというふうに考えております。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうもこれは話にならぬな。コメントする立場にないと言われたって困るんだよ。あなた方、では一体どういう立場で米軍と交渉するのですか。言ってきたよ、だから頼むよ、これですか。それじゃ市民の立場というのはたまったものじゃないよ。だから、もうそういう議論を長いことやっていくつもりもありませんけれども、アメリカ側にきちんと言っていただきたい、もう一遍。いいですね。  それからもう一つ、その年二回は厚生省で云々というのがあるけれども、あなた御存じのように、横須賀の方としては、民生常任委員会の議論の中で、大気汚染防止のために月報の形で求めるべきであるという意見があって、そして申し入れているわけです。だからできるだけ、それは毎月ということを言うつもりはありません、しかしできるだけ、年二回でございますよと、こっぱではなをかんだ。ような形の答弁じゃなくて、最大限努力をしてみますという御答弁が何でいただけないのですか。吉田さん、もう一遍答弁してください。
  110. 吉田厳彦

    吉田説明員 何度も繰り返すようでございますが、回数のことにつきましても、これから当庁としましては、米軍との間に立ちまして、誠意を持ってできるだけの協力をするということでやらせていただきたいと思います。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは分別のことも同じですね。
  112. 吉田厳彦

    吉田説明員 はい、分別のことにつきましても、米軍との間に立ちまして誠意を持ってできるだけの協力をしたいと考えております。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき塩化水素の話がありました。酸素二一%換算数値だ、こういうふうに言っていますが、それであってもゼロということはあり得ないのです。私もそれなりに勉強させていただきました。その点は吉田さんは御勉強になりましたか。
  114. 吉田厳彦

    吉田説明員 塩化水素の表示につきましては、酸素二一%換算値で計測するというふうに聞いております。実測値が定量以下でございますとゼロ表示ということで、資料にはゼロppmというふうに表示したというふうに承知しております。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 じゃ、ゼロということじゃないということですね。わかりました。  時間がなくなってしまいましたから、私、この回答というのを何回か見るのですけれども、もうちょっと何とかならないかな、本当に、という感じがするので、その回答の文章の表現、それからその誠意の程度などを含めて、ぜひ一層の御努力をいただきたいというふうに思います。  最後になりましたけれども、もう時間がありませんからそれでやめますが、泊湾の公有水面埋め立てと関連して、外務省位協定課長さん、地位協定の例の合意議事録の中で、掘削とか埋め立てとかというものがありますよね。これは領土に関する問題ですね。そういうものを米軍が存在をするという理由づけの中で認められていいものかどうか、それは一遍ちょっと検討をしてほしいというふうに私は思うのです。その点は考えたことはありますか。
  116. 原田親仁

    ○原田説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘の点につきましては、米軍が横須賀海軍施設内の水域において、艦船の航行及び接岸を確保するためにしゅんせつを行い、しゅんせつ土砂を泊浦湾に投棄した件と思われますけれども、本件のように、米軍が米軍の施設、区域内において水域のしゅんせつを行うこと及び同じゅんせつにより発生する土砂を同施設内で処理することは、地位協定上、施設、区域内における米軍の管理権の行使として認められるものと考えております。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 七万平米、許可なしに公有水面埋立法の原則から外れて埋められたのです。埋めたことは、確かに日米地位協定の合意文書の中に埋め立ても含むということになっている。しかしそれじゃ、七万平米、もっと広い面積を埋め立てて、これは日本の領土になることだから、結構な話だというわけにはいかぬ。なぜかといえば、削ることも含まれるわけです。そういう意味では、私は、地位協定上の扱いは一遍検討いただきたい、これは主権の問題ですから。だから、樹答弁は要りません。要りませんが、ぜひその点は、一般的な意味でお考えいただかないようにお願いをしたいというふうに思っています。  それで、これをどのように今後アメリカ軍は使おうとしているかということについてお尋ねをしたいし、それから、基地の中に家族住宅百四十二戸というものを建てかえると言っています。九階高層アパートが二棟、二階建てが六戸ということなんですが、これは、思いやり予算の予算額やあるいは建設場所、工事の状況などについて、これは施設庁かな、御答弁をいただきたいというふうに思います。
  118. 太田洋次

    ○太田説明員 御説明申し上げます。  横須賀の海軍施設における平成三年度の家族住宅に関連してでございますけれども、これは、現在あります古い家族住宅の改築といたしまして、予算額といたしまして五十二億七千万円、それから、六十九戸の建設工事の着手を計画しております。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 場所は。
  120. 太田洋次

    ○太田説明員 それから場所でございますけれども、現在、先ほど申し上げました古い家族住宅がございまして、その跡に建てかえを実施いたす計画で、そのようにやっております。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に、時間が少しありますから、もう途中のははしょりますが、池子のことについてやはり申し上げなきゃなりません。ここに、ちょっとポスターですからなんですけれども、緑のど真ん中が全く白く削られました。きのうの神奈川新聞にも一面トップで、飛行機で写したその面が出ています。本当に痛ましいです。歴史をたどれば、五千年というような歴史の、人間の住んでいる、生きてきたその歴史が遺跡のような形で残っているし、生態系は、ここは本当に昭和に入ってからほとんど人が入っていませんので、原生のままという状態があります。それがまさにブルドーザーでどんどん削られているわけですが、私は、やはり国際情勢がこれだけ大きな変化を見ているときなのですから、でき上がったときにはもうその必要性も、なくなるとは言いませんけれども、非常に小さいものになっていくだろうということが目に見えている状況もとで、工事をぜひやめていただきたい、中止をいただきたい、凍結をいただきたい、このことを申し上げたいと思うのですが、実はシロウリガイのシンポジウムを開くことになっています。このシロウリガイのシンポジウムに防衛施設庁から代表が参加いただけるかどうか、いただけないかどうか、その点をお尋ねをして、質問を終わりたいと思いますが、その点について質問通告をしてございますので、御答弁をいただきたいと思います。
  122. 太田洋次

    ○太田説明員 御説明申し上げます。  このシロウリガイにつきましては、私ども、この家族住宅を建設する上で県の環境アセスメントの手続の中で御指摘がございまして、その結果、外の地質学それから古生物学の専門家の先生方の調査も含めまして、既に平成二年三月と十二月にその調査と研究の結果が報告書として取りまとめてあります。  そこで、その中では、このシロウリガイは私どもの今住宅を建設している施設区域内とその外の逗子市、横須賀にも露頭しているところ、この地層一帯にございますけれども、この施設区域内だけについて申し上げますと、一カ所につきましてはどうしてもそこを造成する必要がございますので、それについては記録保存等やることで新たに専門の先生方にお願いしまして、その指導を受けながら実施しております。それから、そのほか、緑の地域としてそのまま残すところにもございます。これについては大まかに言いまして二カ所ございますけれども、これはそのまま現存で保存することで、やはり先生の指導を受けましてそういうふうなことで実施しておりまして、シンポジウムについては防衛施設庁にはそういう御案内状が来てないのでございますけれども、そういうことで私どもは先生方の指導を受けながら適切な保存を考えておりまして、その点については、シンポジウムについてはつまびらかでございませんけれども、今のところこれに参加する考えはございません。
  123. 小杉隆

    小杉委員長 時間です。
  124. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間ですからやめますが、国際的なシンポジウムになっていますので、ぜひ関心を持っていただいて、今まで判断をしてきたことと加えながら、しかし、こういう新しい知見も参考にしながら考えていただきたいということをお用いを申し上げておきたいと思います。  以上で終わります。
  125. 小杉隆

    小杉委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十九分開議
  126. 高橋一郎

    高橋委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斉藤一雄君。
  127. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ことしは環境庁が生まれてちょうど二十周年を迎えたわけですが、私の印象を率直に言わせてもらえば、常に建設、開発追従の環境行政であった。また、国の縦割り行政の弊害も絡んで、環境庁の権限が余りにも弱かったと思う。さらに、環境庁予算がわずか五百三十八億円では全く問題にならぬと思うが、新しく環境庁長官になられました中村長官はどのような反省と決意をお持ちか、まずお伺いしておきたいと思います。
  128. 中村正三郎

    中村国務大臣 思い起こしますと、この環境庁ができましてから二十周年ということでありますけれども、当時佐藤内閣の時代に、いわゆる公害国会公害というものが大変深刻になって、そのとき環境庁を発足させようということになった。先生がおっしゃるとおり、二十年たったわけであります。  その当時、山中貞則先生が初代長官として非常に努力をされてこの庁をつくられ、そして環境行政に取り組んできたという歴史がございます。しかしながら、先生が今おっしゃいますように、率直に考えましてやはり日本の国も戦後の皆無に帰したところからの経済成長を遂げてきた過程上にありますから、ともすれば開発の声が大きかった面は、率直に認めてあるかと思うわけでございます。  しかし私は、そのころを顧みまして、やはり悪いものを出すのをつかまえて悪い人を成敗するんだというような環境に対するとらえ方、これも必要であったと思いますし、それなりの効果を上げてきたと思うわけでありますけれども、今は状況が全く変わってきたと思うわけでございます。すなわち、その一つ一つ、例えば空気の汚染だとか水質の汚濁だとか、これを改善することは必要でありますけれども、それ以上に、やはり我々の地球が有限である、開発の限界もある、そこでサスティナブルデベロップメントというような考えが出てきた。そこで、この差し迫っており、しかも永遠の課題である環境問題について、地球環境という点から考えて、我々の生活なり経済社会なりを組み立てていかなければならないという時代に入ったと思います。確かに先生が今仰せられましたような過去におけるいろいろな開発優先という中で過ごしてきたことを。教訓といたしまして、これからはやはり持続可能な開発ということに向けて、考えを向けていかなきゃならない時代だと思うわけであります。  そこで、来年のUNCEDがあるわけでありますが、それを契機として、私どもも、先ほど午前中にも御答弁させていただきましたように、やはりこういう環境が変わった中で、環境庁の組織、体制の強化というのが必要であろう、それに向けて理解を得て、なお一層の努力をして、環境行政が充実したものになるということについて最大限努力をしてまいろうと思っているようなわけでございます。
  129. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 新しく長官になられたことでもありますので、ひとつ新しい環境行政を進めていく、国民の期待に十分こたえていくということで、今後とも取り組んでほしいということを申し上げておきます。  政府開発援助は、一般会計ベースで約九千億円、事業費ベースで約一兆五千億円にもなっているが、最近援助のあり方が問題となっている。これまでの援助は、その事業の立案決定が事実上、日本の企業や途上国政府高官によって行われているため、地域住民の基本的権利が侵害され、あるいは自然や環境が破壊されている例が多い。こうした援助のあり方についてどのように考えているか。
  130. 中村正三郎

    中村国務大臣 ODAのあり方自体については、環境庁としてはそれを所管する役所でないわけでございますので、これをどうお答えするかということはちょっとなかなか難しいわけでありますけれども、先生仰せのように、ODAをせっかくやったのにそれがODAを受けた国のためにならないということであっては大変なわけでありまして、それは政府の一員としてよく心していかなければならない問題だと思います。  我が庁といたしましては、このODAを実施するに当たってその国の環境を害さないようにということをやはり関係の省庁とともに考え、また、適切な相手の政府に対することができるならいろいろやってまいるということだと思いますが、関連いたしまして、事務当局から答えさせていただきたいと思います。
  131. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ODAに対する環境配慮につきましては、政府一体となってこの問題に取り組む必要があるということから、地球環境保全関係閣僚会議というものが設けられておりますので、その場におきまして申し合わせを行いまして、ODA実施に際しての環境配慮を強化することといたしているところでございます。  そこで、これを踏まえまして、援助の実施機関でございます国際協力事業団、また海外経済協力基金では、環境配慮のガイドラインを策定し、また体制を強化するといったようなことを進めつつございまして、ODA案件の決定に当たってこういったガイドラインによる審査、また環境への影響調査等行いまして、ODAに関する環境配慮の徹底を図っていこうということをやっているところでございます。  私どもといたしましては、ただいま大臣から申し上げましたように、関係機関連携をとりつつ、ODAの実施に伴いまして環境等への配慮が一層適切に行われますよう、環境庁としても十分努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  132. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 フィリピンの地域総合開発プロジェクト、カラバールソン計画で、住民の強制立ち退きや発電所の大気汚染による健康被害が今日大問題となっているが、これについてどう対処しているか。また、このような環境破壊と公害輸出は直ちにやめるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  133. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  我が国政府開発援助すなわちODA、これを実施するに際しまして相手国の環境を破壊しないということに十分配慮していくということにつきましては、私どももその重要性について十分承知しておるわけでございまして、先般も、ロンドン・サミット、ことしの七月でございますけれども、このロンドン・サミットの折に新環境ODA政策というものを発表いたしまして、その一つの柱といたしまして、環境インパクト調査の充実でございますとかあるいは分野別ガイドラインの作成、こういったものを通じまして援助案件の実施に際しまして環境配慮を一層強化するという方針を打ち出したわけでございます。したがいまして、こういった基本的な方針に従いまして、援助の実施官庁におきまして種々のガイドラインをつくっておるところでございます。  それで、お尋ねのフィリピンにおきますカラバールソン地域総合開発計画でございますけれども、これはマニラの南部にございますカラバールソン地域、これはカビテ州、ラグナ州、バタンガス州、リサール州、ケソン州、これを総合してカラバールソン地域というわけでございますけれども、ここにおきまして、工業と農業、都市部と農村部のバランスのとれた、環境に健全で持続可能な地域開発、こういうものを提唱するマスタープラン、これがカラバールソン地域総合開発計画でございます。これは技術協力の実施機関でございますJICAが開発調査として実施をいたしまして、つい最近レポートが完成したところでございます。  それで、今申し上げましたマスタープランの最終報告書におきましては、カラバールソン地域での自然、社会環境問題への対処の重要性認識し、住民強制立ち退き問題、発電所の大気汚染問題の、解決を勧告しているわけでございます。  私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、政府開発援助の実施に際しまして環境配慮というものの重要性を十分認識しておるところでございまして、今後とも、先ほど来申し上げましたような一般的な政策、さらには実施機関のガイドライン、さらには実施体制を十分強化いたしまして、途上国におきますODAを実施するに際しまして環境の破壊が生じないよう、十分配慮をしていくつもりでございます。
  134. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 関連して、今大気汚染による健康被害が出ているという点を指摘したのですが、この実態あるいは立ち退きの件数、おわかりでしたら御報告いただきたい。
  135. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  先ほど私が申し上げました報告書には、大気汚染の状況でございますとかあるいは立ち退きを勧告される住民の人数とか、そういうものは書いてございません。それから、私、手元に具体的なデータを持ってきておりません。  ただ、私が申し上げたいと思いましたのは、その報告書の中では、住民の立ち退き問題というもの、あるいは大気汚染の問題、こういうものに十分留意をした上で計画を進めるべきであるという勧告を行っておるわけでございます。
  136. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 答弁が非常に抽象的で、そういう実態をつかんでいないように思うので、後ほどでいいですから、ただいまの実態について報告をしていただきたいということを要望しておきます。
  137. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  先ほどの報告書は、実はもう既に公表がされておりまして、この報告書をお届けすることも含めまして、具体的な事実関係を御説明をさせていただきたいと思います。
  138. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今後のODAのあり方として、少なくとも地域住民の同意、情報公開と環境アセスメント、国会で案件の承認を求めるべきだと思いますが、いかがですか。  また、基本的にはODA基本法の制定がどうしても必要ではないかと思いますが、どうお考えでしょうか。
  139. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  私どもは、今後ODAを通じまして国際社会への貢献を一層推進していくためには、ODA実施の一連の過程におきましてできるだけその透明性を高めまして、我が国国民の皆様方の理解と支持を得ることが極めて重要であるというふうに考えております。  政府といたしましては、このような観点から、従来からODAの実施に関しまして情報公開に意を用いてきたところでございますけれども、相手国の事情に対する妥当な配慮、考慮、第三者間の契約上の守秘義務も慎重に取り扱う必要があること、こういった諸般の事情に適切に配慮をしながら、改善の方向で引き続き検討を進めているところでございます。  なお、具体的な援助の実施に当たりまして、それぞれ個別に相手国ときめ細かい交渉を行うことにより、地域住民を含めた相手国の理解を得つつ、毎年国会で御承認いただく予算の範囲内で、私どもといたしましては、ODAを決定し実施していきたいと考えております。  この場合、援助の供与対象国、金額、予定案件等の詳細につきましてあらかじめ国会の御承認を求めるということになりますと、先方に予断を与え、我が国交渉上の立場を弱くする、こういった問題も生ずるわけでございますし、また相手国との信頼関係を損なうというおそれもございますので、私どもといたしましては、国会の事前の承認をいただくということは必ずしも適当ではないのではないかと考えているわけでございます。  こういった観点から、私どもは、ほとんどすべての援助国と同様に、我が国においても、国会で御承認いただいた予算の範囲内で、政府が行政権に基づき外交交渉の一環として具体的な援助案件について交渉し決定するという、従来より行ってさている方法が適当ではないかと考えているわけでございます。  それから、お尋ねのODA基本法でございますけれども、私どもといたしましては、相互依存と人道的考慮という私どもの経済協力の基本的な考え方、こういうものを踏まえまして、ODAをより充実していくためには、第四次中期目標もとで、評価活動でございますとか援助実施体制の充実、こういったものに鋭意努力するとともに、例えば膨大な軍事支出を……(斉藤(一)委員「簡単でいいよ、質問に答えるだけでいい」と呼ぶ)  したがいまして、私どもは、我が国の経済協力の実施体制というのは全体として順調に機能しているというふうに考えております。経済協力の一層の効果的、効率的実施のためには、現行の関係法令等の枠内で運用の改善を図りまして、今後とも相手国の経済の持続的発展に役立つような援助、相手国の国民に直接辞益するような援助、こういうものを重視いたしまして、心のこもった協力実施に努めてまいりたいと考えております。
  140. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 時間がありませんので、今後ともこの問題は質問していきたいと思います。  次に、最近環境庁環境税研究会なるものを発足させたと聞いているが、その目的、性格はどういうものか。また、OECDの環境基金構想についてどう考えているか、お尋ねいたします。
  141. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  地球環境保全のためには、従来の公害に対する規制から進んで、経済社会活動そのものを環境保全型のものに変革していくということが環境行政課題になってきているところでございまして、そういう観点から、OECD等におきましては環境保全に関する政策手段の一つといたしまして、環境税といったような経済的手段そのものを活用していったらどうかという議論が行われているところでございます。  そういう国際的な動向を踏まえる場合、また、我が国におきまして環境問題に適切に対応するためには、やはりこういった経済手段についても調査検討を進めておく必要があるという視点から、環境税というものにつきまして学識者に学問的な研究、主としてこれは環境問題、経済政策の観点、税制上の視点といった観点から御議論を願うことになるわけですが、そういったことを目的に、環境調査センターという財団法人があるわけですが、そこに研究会を設けていただいて勉強していただくということにしたわけでございます。もちろん、私どももそれに加わって勉強してまいりたいと思っているわけでございます。  そういたしまして、日程にお触れになったわけですが、ただいま研究会を発足させたばかりでございまして、これからの議論の深さ、また幅というものがこれから決定されてくることになりますので、今のところ、いつまでというめどはついているわけではございません。  それからもう一つ、OECDにおける環境基金構想というものについてどう考えるかということでございます。  私どもも、そういった新聞報道があったということは承知しております。ただ、そこでの新聞記事にもございましたが、九月のOECDのこの会議には、我が環境庁からも人を派遣して一緒に議論をするということをやったわけでございますが、そこでこの基金構想が検討されたという事実はございません。  ただ、環境保全のための施策を実施するために今後どういったふうに、資金を確保していくということは重要なことでございますので、UNCED準備会合等におきましてもこれから真剣に議論されることになろうかと思いますし、私どもも、これは国際的に検討していくべき課題であるというぐあいに考えております。
  142. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 次に、地方公共団体が環境保護の面から、ゴルフ場などの開発を抑制したり調整したりするため条例や指導要綱をつくっているが、これにどう対応しているか。
  143. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘のように、地方公共団体におきましては、ゴルフ場の立地や建設に対しまして、開発凍結とか県土面積に占めるゴルフ場面積の割合を設定するといったようないわゆる総量規制でございますとか、また条例、要綱等に基づく環境影響評価をやっている、さらには、個々のゴルフ場の事業者との環境保全協定を結んだりするというような動きをとっているところでございます。  こういった開発凍結とか総量規制等につきましては、それぞれの地域の置かれております自然的条件でございますとか、社会的条件でございますとか、そういうものが一律ではございませんで、さまざまでございます。そういうことから、各地方公共団体におきまして、それぞれ地域の実情を踏まえながら適切に対処していただくことが適当であるというぐあいに、基本的に私ども考えているわけでございます。  ただい環境庁といたしましては、そういった地方公共団体の取り組み状況環境面からそれぞれ指導したり助言していくということは必要だというふうに考えておりまして、それぞれの取り組み状況を私どもは把握するということをやる一方、地方公共団体に対する情報提供や指導助言というものをやろうとし、また、やっているところでございます。
  144. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今ゴルフ場で使用している除草剤、殺虫剤、殺菌剤による排水中の農薬成分の規制を、環境庁の暫定指導指針値のさらに十分の一としてやっているということでございますが、こういう点について考えますと、国の暫定指針値そのものが低過ぎるのではないか、問題があるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  145. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ゴルフ場の農薬問題につきましては、昨年五月以来関係省庁間で協議をいたしまして、ゴルフ場の農薬の適正使用につきましては農林水産省、ゴルフ場からの排水の監視指導につきましては環境庁、それから水道水源の安全確保につきましては厚生省、こういう役割分担のもと指導が行われているところでございます。  環境庁といたしましては、昨年五月にゴルフ場の農薬暫定指導指針を決めまして、人の健康を保護する観点から、二十一農薬につきまして指針値を設定をして指導しておるところでございます。さらに、本年七月からはこれを改正いたしまして、対象農薬を三十農薬というふうにしたわけでございます。  御指摘の暫定指針値でございますが、これは人の健康を保護する観点から、一般的な条件もとでは、ゴルフ場の排水口においてこの値を上回らなければ下流の取水地点において厚生省の定めております暫定の水質目標を上回ることがないというふうなことで設定をしたものでございまして、妥当なものと考えておるわけでございます。  御指摘のように、兵庫県におきましては上乗せの基準をつくっておるわけでございます。これは我々が承知しておるところでは、ゴルフ場が集中をいたします河川、一定の河川につきましては、新設するゴルフ場については我々の示しました基準値の十分の一というふうな基準をつくっておるわけでございます。これにつきましては、我々が示しました指針の中でも都道府県の状況、ゴルフ場の立地条件なりあるいは下流の利水状況といいますか、水道水源があるかどうかというふうなこと等を踏まえまして、我々が示しました指針値にかわるものとして、より厳しい値を決める、こういうふうなことについても指導をしておるわけでございまして、こういう我々の指導通達に基づきまして兵庫県がこういうものを決めておるということでございます。  そういうことで、今後ともゴルフ場の農薬使用につきましては適正に指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  146. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 最近ゴルフ場の職員や周辺の住民、ゴルファー等が農薬中毒にかかっているということが新聞でも報道され、大きな問題だと思うのですけれども環境庁はこうした実態をどの程度把握しているのか。
  147. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘の問題でございますが、全国保険医団体連合会が会員の保険医に対しまして受診者の症状と農薬中毒の関係につきましてアンケート調査を行ったということは承知しておるわけでございます。  その調査実施や結果の評価に当たりまして、医学上あみいは統計学上の考察を含めてどのような具体的な検討が行われたかということについては十分承知してないわけでございますが、農薬使用に際しまして、使用者等の健康の保護や周辺の生活環境保全に十分配慮するよう注意喚起がなされたものと受けとめておるわけでございます。  この問題につきましては、農薬の使用者に対する安全性の確保という問題については、農林水産省と厚生省におきまして危被害防止運動等を通じて指導が行われているところでございます。さらに、ゴルフ場の従業者に対しましては、労働省におきまして労働安全衛生の観点からガイドラインがつくられまして指導が行われているわけでございます。  環境庁といたしましては、このような調査結果も踏まえまして、農薬による危被害等の防止につきまして今後とも関係省庁と一体となりまして取り組んでまいりたいと思っておるわけでございます。
  148. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 リゾート開発、ゴルフ場の造成も含めてですが、環境庁環境行政の面で一体どういう権限と責任を持っているのか。私は、ゴルフ場問題等々、開発の実態を見てまいりますと、どうしてもリゾート法そのものに問題があるのではないか、そういう点は環境庁としても意見を述べてこのリゾート法を改正する必要がありはしないかと思いますが、いかがでしょうか。
  149. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘の総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法でございますが、この法律におきましては、主務大臣が各都道府県の総合保養地域の整備に関する基本構想、いわゆるリゾート構想と申しておりますが、これを承認する際には環境庁長官に協議しなければならないというぐあいになっているところでございます。  そこで、環境庁におきましては、この協議を受けた際には環境保全の観点から審査をした上、必要に応じまして、国立、国定公園の保護と適正な公園利用の確保、また、公共用水域の汚濁の防止、環境アセスメントの実施など、環境保全に十分な配慮がなされるように意見を付しているところでございます。さらに、関係地方公共団体に対しましても、このような環境保全上の配慮が確保されるように必要な指導助言に努めているところでもございます。  また、リゾート法による地域であるとないとにかかわらず、国立公園内におきましては、各種施設を設置する際には自然公園法に基づいて環境庁長官または都道府県知事の許可等を受けなければならないというぐあいにされているところでございまして、特にゴルフ場に関しましては、四十九年より国立、国定公園内の特別地域では許可しないということとされているところでございますし、普通地域におきましても、平成二年六月に指導指針を策定いたしまして規制を強化したところでございます。  環境庁といたしましては、リゾート法の直接所管官庁ではございませんが、こういった対応を通じまして環境保全が十分に図られるように適切に対応してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  150. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 閣議決定の環境アセスメント制度では、計画段階から重要な節目での情報が公開されておりません。この点についてどう考えているか。  また、代替案の検討が義務づけられていないという点はアセスメントの本来の趣旨に反しているのではないかと思いますが、いかがですか。
  151. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘のように、閣議決定による環境アセスメントは事業実施段階において実施されるというものでございますので、おっしゃられるように、計画案におきまして代替案の検討を含めて行われるいわゆる計画アセスメントとは異なって、それなりの限界があるということも事実でございます。  ただ、この計画アセスメントを考えます際には、計画の熟度に応じましていろいろな段階考えられまして、それに応じまして、抽象的な計画段階に応じて実効ある環境アセスメントを行うということは困難が伴うという、計画の熟度の問題とアセスの制度の問題との関係があろうかと思います。  そうはいうものの、開発事業のより早い段階から十分な環境配慮を行うということは環境保全上これは望ましいことでございますし、また、現在も港湾計画等具体性の高い計画につきましては、私ども計画段階から環境アセスメントを行っているところでございます。  さらに、国等が策定する土地利用基本計画や各種開発計画の策定に際しましても、環境庁に御相談いただきまして環境保全面からのチェックを行っており、計画段階においても環境配慮がなされるよう私どもは配慮をしているところでございます。  さらに、きょうの午前中にも御議論がございましたように、地方公共団体におきましては例えば環境管理計画等を策定しまして、開発計画の策定、実施に当たって環境配慮事項をあらかじめ明らかにするというような対応がなされているところもございます。  私どもは、以上に行われております取り組みというものが適切に行われるよう努めていきますとともに、計画段階における環境配慮のあり方というものにつきましても、先ほども申し上げたような問題点があることも事実でございますが、さらに十分検討、勉強を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  152. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 環境庁長官意見を述べる場合には、「当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて、その意見に配意して審査等を行うこと。」とされております。これでは単に許認可決定の考慮資料というふうに一般に批判を受けておりますけれども、そういうことになってしまうのではないかと思います。この点についての御見解をお伺いしたい。
  153. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生おっしゃられるように、環境庁長官意見を許認可等の手続に反映させる場合においても、当該免許等に係る法律によって認められた裁量の範囲内で反映されるという仕組みになっていることは事実でございます。  ただ、それは、それぞれの法律がその免許権者の権限と責任において行うという建前があることから、法律上そうせざるを得ないという制約もあるわけでございます。  ただ、そうは言うものの、環境庁長官意見は、主務大垣の求めに応じまして環境所管大臣として環境保全の見地から述べるものでございますし、その述べた意見というものを私どもは公表いたしているところでございます。そこで、実質的には相当な重みを持って、許認可権者等に取り扱われているというぐあいに承知しております。
  154. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 建設省の所管事業に係る「環境影響評価の実施について」では、環境庁長官意見が述べられているときは「その意見に留意し、適正な配慮をして実施する」ことになっております。  ここで言う「適正な配慮をして実施する」という意味は、具体的にはどういうことになるんでしょうか。
  155. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 建設省の事務次官通知でございますので、私がちょっと責任を持ってお答えするのには必ずしもふさわしくないと思いますが、先ほど申し上げましたように、免許等を行う者というものは法律上は自分のその固有の責任と権限でもって免許等を行っているということから、環境庁長官意見につきましては、免許等を行う者がそれに配慮して審査を行うという構成をとらざるを得なかったのではなかろうかというぐあいに考えるわけでございます。  しかし、この私どもが出します環境庁長官意見というのは環境問題を所管する大臣としての重みを持った意見でございますので、それは当然重みを持って適切に、適正に配慮されるということを意味しているというぐあいに理解しております。
  156. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 どの程度重みを持っているかということが実際は問題になるわけですが、長良川の河口ぜき設置に伴う水質や自然環境への影響に関しては、環境庁と建設省との間で「追加的な調査検討についての了解事項」があり、公表の時期。を平成三年度末としております。  その間、当然工事を一時中止をして、環境アセスの結果を踏まえて工事に対処するということが、今お話がありました環境庁長官意見が重いということにつながるのではないかと思いますが、この点、環境庁長官いかがでしょう。
  157. 中村正三郎

    中村国務大臣 長良川河口堰の問題は、これは私どもはやはり地元の要望も強い治水事業であり、利水事業であろうというふうに考えているわけであります。そしてこれは、ちょっとその着工した時限を私今失念いたしましたけれども、四十三年に閣議決定をされて、既に建設省において工事が進められているものでございます。  これに対しまして十分な環境に対する配慮をしてくれということは、極めて良好な環境保全されている地域でありますから、私ども環境行政立場から建設省に申し入れ、そして建設省もその我々の意見をもって追加的調査をやっていただくということでありますが、やはり地元の要望、また何年かに一度起こってくる洪水によって害を受けるという方もいらっしゃるわけでありますし、また、上流におけるいわゆる利水の関係で地下水をくみ上げて地盤沈下ということもあるというようなことも聞いておりますので、やはり十分な環境調査をやって進めていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  158. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ですから、先ほどの建設省の「環境影響評価の実施について」、環境庁長官意見が述べられているときは、「その意見に留意し、適正な配慮をして実施する」。これは日本語として読みますと、「適正な配慮をして実施する」ということなわけですよ。  ですから、河口ぜきの問題についても、それこそ長官意見だけでなくて建設省との間で了解事項がされたということは、余計そのことが担保されたものである。にもかかわらず、建設省がこの環境アセスの結果が出る前に工事に着手するということは、先ほど来の環境庁長官意見に重みがあるとか、あるいは建設省の方針からいっても、これはどうしても納得できないわけです。この点について、長官の率直な御所見をお伺いしたい。
  159. 中村正三郎

    中村国務大臣 昭和四十三年度に閣議決定がされ、既に始まっているわけでありますが、そのころの時代においてはいわゆるアセスメントとかそういったものが、考え方がなかなか定着していなかった時期だと思うわけでございます。  その後、環境上の問題への懸念が高まってきたという特別な事情があるわけでありまして、その事情を踏まえて、昨年の十二月十八日に「環境庁長官の見解」というのを明らかにして、その見解に沿って、長良川の環境保全のためにとり得る最善の措置が講ぜられるように努力をしていただいているわけでありまして、この工事を進めるか進められないかということは、これは建設省において判断されることだと思っております。
  160. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 地元では、河口ぜき建設について住民投票で賛否を問う条例制定が年明けの議会で審議されるというふうに聞いておりますけれども、ただいまの追加的な調査検討とあわせますと、どうしてもその間は工事の一時中止が当然ではないか、こういう気がしますが、いま一度御答弁をお願いします。
  161. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のように、地元岐阜市におきまして、住民投票の賛否を問う条例の制定の動きがあるということは我々も承知しておるわけでございます。  ただ、この問題につきましては、先ほど長官から御答弁申し上げておりますように、地元におきまして建設促進の強い要望があるわけでございますし、また一方では、自然環境や水質等の環境に及ぼす影響についていろいろな懸念が表明されておるというふうなことで、追加的な調査を現在鋭意やっておるところでございます。そういうふうなことで、建設省と一緒になりまして、水質でございますとか魚類への影響、こういうものについてできるだけ早く調査実施し、環境庁としては、とり得る最善の環境保全措置がとられるように努力をしてまいるということでございます。  しかしながら、やはり人命にかかわります治水事業あり方等の問題もあるわけでございますので、これは所管の官庁において判断すべき問題であるというふうに考えておるところでございます。
  162. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ですから、最終的には建設省の御判断にということで、そういうところに、先ほど来の環境庁長官意見の重みというものが言葉だけに終わってしまっているということを証明しているわけですよ。ですから、先ほど長官から答弁もいただいておりますから、今後とも、文字どおり長官意見が各省庁に重みを持って受け入れられて、そして十分な環境アセスメントを実施した上で少なくとも計画を進めていく、事業を進めていくということに、ぜひ新長官もとで新しいルールというものを築いていただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、渡良瀬遊水池の問題で一、二お聞きしたいのですが、これまでは環境アセスメントが全くといっていいくらい実施されていないというふうに、私はこの間現地へ行って聞いてきたわけでありますけれども、そういう事実についてお認めになっておりますか。
  163. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 渡良瀬川の遊水池につきまして、閣議決定によるところの環境アセスメントが行われていないということは事実でございます。
  164. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 少なくとも、第二貯水池の計画であるとかゴルフ場の建設であるとかということが次から次に進められておりますので、このままほっておきますと、あの大自然、環境がますます破壊されてしまうということになります。したがって、総合的な環境アセスメントを早急に実施するように強く要望しておきたいというふうに思います。  それから、御承知のように、この渡良瀬遊水池は水鳥の生息地としても重要な湿地を形成しているわけでありますので、住民からもラムサール条約の登録湿地に指定してもらいたいという要望が出ておりまして、私も全く賛成なわけですが、長官はどのようにお考えでしょう。
  165. 伊藤卓雄

    ○伊藤(卓)政府委員 お答えいたします。  渡良瀬遊水池は、先生御指摘のように、現在は水鳥等湿地性の動植物の生息地となっているところでございますけれども、実はこれまで我が国におきましてラムサール条約の登録湿地になっております四カ所、これとはタイプが異なっておりまして、条約に登録するほどの国際的な重要性を有しているかどうか、この判断にはいろいろ検討すべき点が多いだろうと思っております。  御案内と思いますけれども、ラムサール条約、正式には、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約ということでございまして、我が国のこれまでの登録湿地、四カ所既にございますけれども、これはすべて国設の鳥獣保護区の特別保護地区などに指定されておりまして、条約が要求するところの国内法による担保の措置がなされておるわけでございますが、この渡良瀬遊水池は各種の開発計画が進行しておりまして、この条約に基づく登録湿地として保全するために必要な新たな規制の設定というのはなかなか難しかろうというふうに考えております。  このような事情から、私どもといたしましては、当面この遊水池を条約の登録湿地とすることについては考えておらないところでございます。
  166. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ぜひ再検討をしていただきたいということを申し上げておきます。  最後に、今問題になっております日本の国際貢献、社会党はきょうの本会議でも明確に反対をしたわけでありますが、憲法違反の自衛隊を海外に派遣をする、日本の軍隊を海外に出兵させるというような法案は、いかなる理屈、理由があろうとこれはあってはならないことだというのが私ども認識でありますが、さてそこで、環境行政の面で地球環境保全ということを常々強調されている環境庁ですが、これまでの間、環境庁として、環境行政の面でどのような国際貢献をされてきたのかということを御説明いただきたいと思います。
  167. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘のように、我が国環境対策におきまして、かつて厳しい公害経験し、それを克服してきた経験を持っているわけでございます。  こうした豊富な経験と、そこで発揮されましたすぐれた技術、人材があるということでございますので、これを生かして地球環境問題の解決に向けまして積極的に取り組むということが我が国にふさわしい国際貢献あり方ではないかということから、我々は積極的な取り組みを行っているところでございまして、例を挙げろということでございますので、さきの湾岸戦争の際には、原油の大量流出、クウエートの油井の炎上に伴う環境破壊への対応といたしまして、戦闘行為が終了いたしました後に、外務省と協力しながら、サウジアラビア、クウエート等に対しまして海洋汚染、大気汚染予測の専門家、またさらに健康医療の専門家、さらには野生生物の救出チームといった人々を派遣したところでございます。  また、地球環境への貢献我が国の国際貢献への重要な柱であるという認識先ほど申し上げたところでございますが、そういう見地から、来年ブラジルで開催を予定している地球サミットの成功に向けて積極的な貢献を図るために、地球温暖化防止等の国際的枠組みつくり、条約づくりの作業が現在行われているわけでございますが、こういったところにも人員を積極的に参加させまして、これらの議論に取り組んでいるところでございますし、また、アジア・太平洋地域における環境問題に対する提言を行うために、この七月にはアジア・太平洋環境会議というものを東京で開催いたしまして、これらの地域からの提言を行う上での重要な役割を果たすという動きをとったところでございます。  さらに、これは国連に対する協力でございますが、途上国への技術移転推進するためにUNEPの国際環境技術センターというものを日本において設置するため、これは九二年を予定しておりますが、そういうことを目指して現在準備中というようなことをやっております。
  168. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 以上で私の質問を終わります。
  169. 高橋一郎

    高橋委員長代理 東順治君。
  170. 東順治

    ○東(順)委員 私は、水俣病の問題につきまして、中公審答申内容につきまして基本的なところをお伺いしたいというふうに思います。  この答申内容が全体的に住民サイドという視点から水俣病認識している、このように思っております。この水俣病発生当時、メチル水銀の暴露量を把握するための調査が十分ではなかった、あるいは、水俣病問題が解決されない現状は遺憾である、こういった趣旨の記述があるわけでございますけれども、とれは初めて行政の責任というものを批判しているのだろうということで、二足の評価ができるのではなかろうか、このように思うわけでございます。行政の負の歴史といいますか、そういったものを一部、確かに認めつつ、この答申内容である、こういうように思うわけでございます。これはまた逆に言えば、これまで一切の行政責任というものを否認している国にとって、非常に厳しい内容ではなかろうか。  しかし、ここで率直に基本的なことをお伺いしたいのですが、この問題が今日まで長引いでいる背景として、その根源的な責任として、保健環境行政というよりも当時の高度経済成長というものを優先させた行政の責任というものがまず根源的にあるのではなかろうか、このことをまず確認をしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  171. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 水俣病の、いわば根源的な原因ということでございますけれども、戦後の我が国の高度経済成長の過程におきまして、公害防止に関する制度あるいは技術が十分でなかったことなどから、水俣病を初めとする公害による深刻な健康被害が発生したということは事実でございまして、大変遺憾なことであるというふうに考えておるところでございます。  政府におきましては、こういうような経験を踏まえまして、公害防止のために排出規制等の制度でありますとか、あるいは監視、測定体制の整備でありますとか、健康被害者の救済等を進めてきたということであろうかと存じます。
  172. 東順治

    ○東(順)委員 根源的な責任はそこにある、こういうことだと思います。  それで、この答申の中に、結果として環境保健行政が国民の期待にこたえ切れず、今日の水俣病問題の一因になった。あるいは、発生当初の原因究明に迅速に対応しなかったことが長期化につながった。こういう行政の責任というものの指摘があるわけでございますが、その上で環境庁としての基本的な姿勢ということで、今後の環境行政というものをどのようにリードするのかということも含めまして、今回の答申というものは環境庁にとりまして最終的なものとするのか、あるいはまたスタートとしてこれをとらえてこの問題に取り組むのか、この辺のところはいかがでしょうか。
  173. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今回の答申は、環境保健の問題を中心に御答申いただいたわけでございますので、環境庁といたしましては、この御答申に盛り込まれた精神に沿って政策を立案いたしまして、この水俣病問題の解決のために大きな前進を見るべく、努力をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  174. 東順治

    ○東(順)委員 大臣に重ねてお伺いしたいのですけれども、今後の環境行政というものを考えていったときに、今の問題ですね、この水俣病、今回の答申というものを今後の環境行政にとって、むしろ水俣病の最終決着に向けてのスタートとしていく、こういう考え方で大臣も御認識なさっておられるのかどうか、お伺いさせていただきたいと思います。
  175. 中村正三郎

    中村国務大臣 まさに、水俣病問題が我が国公害行政の原点であるということだと思います。  今部長からお答えもしましたように、当時は、こうした環境に対する、公害に対する認識というものは極めて低いうちに高度成長期に入った。私も当時、学校を出まして製鉄会社に勤めておりました。そこで、製鉄会社をやめましてから、私、中小企業をいろいろ経営したことがあるのでございますが、その当時はメッキをやっておりましたが、メッキ工場の人が鼻の奥にメッキのガスで粘膜に穴があいてしまうのですね。その穴があくことが職人としての勲章であるということが言われたほどのやはり意識の低い時代であった。しかし、これが水俣のああした大変な公害が起こったということで、これは国民にとって大変なことだということで、今私ども、あのころテレビを見、新聞の報道を聞いたことを思い起こすのですが、悲惨なことが起こるということで、まさにこれが環境問題、公害問題の原点になったと思うわけであります。  その後、それに対する対策環境庁として一生懸命やってきたわけでございますが、その中でもって、けさほども御議論ございましたように、国の立場としての、国の責任を問われる裁判ということが起こってきた。それに対する国の立場というものはあるわけでありまして、その裁判の結果が出てこない。それを早くきちっと裁判の結果を出していただきたいというのが私たちの望みでありますが、やはり日本における裁判の現状というもので、時間が長引くというようなことがございます。そこで、やはりこの中公審答申ということを踏まえて、私どもはこの被害を受けた方たち救済に最善を尽くしていかなければいけないということだと思います。  これが出発点がどうかというような御疑問でございました。けれども、私どもは、過去我々がたどってきたことすべてを反省の材料として、教訓として、やはり目的は環境保全し、国民の生活を守ることでありますから、そういうものに向かって最善の努力を尽くしてまいりたいと考えております。     〔高橋委員長代理退席、鈴木(恒)委員長     代理着席〕
  176. 東順治

    ○東(順)委員 私も北九州市に居住しておりまして、当時、昭和四十年前後、この公害問題が洞海湾というところを中心に起こりまして、八幡製鉄所なんかの公害問題だったのですけれども、これはやはり今おっしゃったように、生産に次ぐ生産、産業優先、こういう基本的なそういう方向性であったものですから、洞海湾というものもこれは大変に汚れて、逆に点そのものがどんどん死んでいくというような悲惨な状況があって、そしてこれではいかぬということで住民運動が起こったりいろいろなことをしながら、最終的にきれいな海みたいなものが何とか取り戻せた、そういう体験を持っておるわけでございますけれども、この間、今日に至るまでそういう国の根本的な行政的な責任、そういったことがやはり根底にある、このように私も痛感いたします。  例えば、東京訴訟最終弁論集というものをちょっと私読ませていただいたのですが、この中で、昭和三十二年八月、熊本県が水俣湾の漁獲を禁止する旨の知事告示を出す方針を決定したのです。つまり、食品衛生法四条二号を適用したい、こういう意思表示をしたときに、厚生省は昭和三十二年九月十一日、熊本県のこの照会に対して、水俣湾内特定地域の魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、食品衛生法四条二号を適用することはできない、このように回答して、四条二号の適用をさせなかったというようなことなどが歴史の中であるわけです。  こういったことがもしあのときに適用されておれば、このような被害が今日まで長引いたりあるいは広がったりということはなかったであろうというような、こういう文章も読んだりするにつけまして、やはり今後本当に環境保全という行政の姿勢というものを第一義にしながら事に当たっていかなければ、こういう悲惨な事件、状況というものを絶対に今後はつくり出しちゃいけない、このように思うわけでございます。  大臣も、大変重要な時期に大臣に御就任なさいまして大変だろうと思いますけれども、明年UNCED等も控えて、ぜひこの基本の姿勢の中から今後対処していただき、ますように、重ねてお願いを申し上げたいと思います。
  177. 中村正三郎

    中村国務大臣 まだ就任させていただいてから日も短いわけでございますが、委員の御指摘も十分踏まえ、先ほども申し上げましたとおり、すべての過去に起こったそういうことを教訓として、反省の材料として当たってまいりたいと思っております。
  178. 東順治

    ○東(順)委員 そこで、今回の答申では、水銀汚染地域に一定期間住んで、手足の感覚に障害のある人に対する医療費の自己負担分あるいは通院費等の医療手当の支給、住民に対する健康調査、こういったことがこの答申の具体的な柱になっておるわけでございますけれども、このPPP、いわゆる汚染者負担の原則ということから緊急避難的に一たんちょっと離れて、そしていわゆるボーダーライン層、こう言われる水俣病の人たちを一括救済していこうという現実的なところを選択されているひこれは確かに現実的には一歩前進であろうと思います。  しかし、その奥にもっと大事な問題が実はやはりあるのではなかろうか。ボーダーライン層、こう言われる人たちが水俣病であるかどうかといういわば根源的判断をあいまいにしたままの救済策に結果としてなっているのではなかろうか。したがって、そのために認定制度の改革ということにはこの答申案は触れてないわけでございます。  先ほども言いましたように、行政の責任を一部、負の責任といいますかそういうものを認めて、せっかく従来よりも一歩踏み込んでいるということは事実なんですけれども、一番肝心の認定制度の改革、このことに対する提言というものがない。しかし、考えてみたときに、水俣病問題が今日まで長引いてきた一番大きな原因、主因というものはこの認定制度にあったわけでございまして、ここに提言がないということは半面大変残念である。これでは水俣病の完全解決ということにはまだまだほど遠いのではなかろうか、こういうように思うわけでございますが、この辺いかがでしょうか。
  179. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 中公審の専門委員会におきましては、現行の認定制度の前提となっております医学的事項を含めまして検討が行われたわけでございます。その結果、これは昭和六十年でございますけれども環境庁の医学専門家会議の結論に変更が必要となるような新しい知見は得られていない、そういう結論に達したわけでございます。  公健法に基づく認定業務につきましては、今後とも現行の判断基準によって行うていくことが適当であるというふうに考えておるところでございまして、答申において御指摘いただきましたように、判断に必要な資料に一層努力すること等により、その認定業務促進を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  なお、この認定の問題でございますけれども、御案内とは存じますけれども、現在、この認定の判断基準というものは、もうこれ以上緩めたら他の疾患と区別がつかないぐらいのところまでの判断でもって患者であるか患者でないかの認定をしているわけでございます。水俣病であるとかあるいは水俣病の疑いがあるというようなそういう人は昭和五十三年以降出ておりませんで、水俣病可能性が否定し切れない、そういうような人まで患者として認定しているのだということにつきまして御理解いただきたいと存じます。
  180. 東順治

    ○東(順)委員 非常にその辺が……(「じゃ何のために中公審やっているんだ、今」と呼ぶ者あり)本当にそういうふうに私も思います。  だから、これはやはり国民の目にどのように映るかということだと思います。今話が出ましたように、医学的な概念に基づく救済ではないから別段国が責任をとったわけではない、しかし気の毒だから、国には責任はないけれどもお金は差し上げましょう、そして何とかそういう救済の道を開いたという形をとりましょうというような、こういうふうに映ることが、私は今後のことを考えましても非常に危険なことだろうというふうに思うわけです。  やはり制度の改革というところにもう一歩踏み込んでそこから物を見直さなければ、もう何かそこで一本びっと線を引いちゃって、もうこれから先は一切ありませんよ、もうアンタッチャブルですよ、こういう感じで対応している限りにおいては、この世界が注目している水俣病という問題、公害原点言葉だけがどんどん飛び交っているけれども、じゃ、現実にこれに悩み苦しみ長い間さいなまれてきた、そしてまた歳月とともに次々と老いさらばえて亡くなっていかれるそういう皆さん方、悲惨な状況というものを日本が、世界が見ておるわけですから、この辺について環境庁として、だからこそ踏み込んで、ここまでもう一度提言を求めていくんだというようなそういう姿勢というものが必要じゃなかろうか、こういうように私強く思うのですけれども、どうでしょうか、再度その辺のところ。
  181. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 患者であるか患者でないかということについての考え方は先ほど述べたとおりでございますけれども、この審議会の答申でも述べておられるとおり、現実にこのメチル水銀を摂取したということで本人が水俣病であるというふうに思っている、そういう人が非常に多い。そういったいわば健康不安を持っている方々に対して、今回、審議会の方から新しい環境保健上の施策の必要性が打ち出されたわけでございますので、環境庁といたしましても、この方針、この精神にのっとって至急に関係省庁関係地方公共団体と詰めまして、明年度からの施策を実施してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  182. 東順治

    ○東(順)委員 それから、公健法の改正というものをにらんでの立法化による恒久的な救済という道も見送られているわけですけれども、この点に関してやはり後退している、そういう感を否めないわけですが、これほどうでしょう。
  183. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 中公審におきましては、今後の水俣病対策あり方につきまして、現行制度の枠内にとどまらず広く検討が行われたわけでございます。その結果、中公審委員全員の合意によりましてこの答申が取りまとめられたものでございます。  御指摘の立法化につきましては、答申に示された対策をどのような形で実現すべきかという問題として、政府部内で検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  184. 東順治

    ○東(順)委員 それでは、具体的な新たな対策というものについて伺いたいと思います。  「健康管理事業」ということと「医療事業」、こうございますけれども、この「事業内容」の医療手当で、「通院に要する費用等の療養に係る諸雑費として定額」、このようにありますけれども、まずこの「通院に要する費用等」の「等」というもの、それからまた諸経費というもの、これは具体的にどういう内容になるのでしょうか。その辺を伺いたいと思います。
  185. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 医療事業では、対象者につきまして「必要な医療を確保するため、療養費及び療養手当の支給を行う」こととしているわけでございます。このうち療養手当につきましては「通院に要する費用等の療養に係る諸雑費」とされているわけでございまして、これは対象者が特定症候に関連して安んじて医療を受けることができるよう、医療を受ける際に必要となる諸経費の負担を低減するという趣旨の給付であると理解しているところでございます。  この場合の受療に伴う諸経費を網羅的にお示しすることは困難でございますけれども答申にも例示されている通院の際の交通費が最も典型的な例であろうかと思います。もちろんこのほかにも、例えば入院時の日用品の購入経費等々がこの範疇に入るものであるというふうに考えているわけでございます。
  186. 東順治

    ○東(順)委員 そこで、この「定額」ということなんですけれども、この定額の基準ですね、一応の考え方というものがあると思いますが、それはどうですか。
  187. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 この療養手当の給付額の水準についてでございますけれども、受療に伴います平均的な経費負担を軽減するという手当の趣旨に沿いまして、今後具体的に検討してまいりたいというふうに考えておりまして、受療に伴う所要経費の状況でありますとか他制度における類似給付との整合等、さまざまな要素を総合的に考慮して判断してまいりたいというふうに考えております。
  188. 東順治

    ○東(順)委員 もう少し具体的にお示しいただけませんか。もう予算内示が十二月二十二日というような話も午前中ございましたし、患者の皆さんとしてはこの辺がどうなるんだろうかということがやはり一番気になるところだろうというふうに思うわけでございます。  例えば、もう年をとられて、ほとんど通院はタクシーで通院している、そういう人たちも大変多いというふうに伺っております。あるいは家族で複数でかかっていらっしゃる、そういう御家族もあるのじゃなかろうか。あるいはまた船で通っていらっしゃるというようなことで、交通費一つとっても二万とか三万とかそういう額がかかっているというふうにも伺っておりますけれども、その辺で具体的にどのように検討されているのか、その検討段階でも結構でございます。そういったところをぜひ具体的に示していただきたい。  それから、やはりこの給付については当然物価スライドというような考え方で考えられておられるのかどうか、その辺もあわせてお願いします。
  189. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 私ども答申を去る十一月二十六日にちょうだいしたばかりでございますので、今仰せの点等につきまして関係省庁あるいは実際に事業を行います関係地方公共団体と至急に詰めまして、その際には、先ほど申し上げましたようないろいろの要素を総合的に考慮するということになろうかと思いますけれども、来年度からこの事業実施できるように鋭意努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  190. 東順治

    ○東(順)委員 それじゃ、今私が指摘しました、一般の乗り合いバスだとかそういう一般交通じゃなくて、タクシーだとかそういうお金のかかる交通機関を使っている、そういう状況の人だとか、あるいは物価スライドの考え方だとか、こういったことも検討一つの材料として御検討いただけますか。
  191. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 先生からこの場で大変貴重な御意見をいただいたということで、今後の総合的なこの額の決定の際に考慮してまいりたいというふうに考えているところでございます。(東(順)委員「大体いつごろまで」と呼ぶ)明年度からの実施に間に合うべく、できるだけ早くにその辺の問題につきまして明らかにしてまいりたいというふうに考えております。
  192. 東順治

    ○東(順)委員 ぜひ、具体的な実情というものをよくお調べになって、その実情に即したそういう検討をくれぐれもよろしくお願いをしたいと思います。  それから、この水俣病裁判で原告側が一時金の支給、それから医療費、それから年金の継続的給付保障といった経済的救済の三本柱というもので言われておるようでございますけれども、この答申の中にあります医療手当というものは、原告側が求めていらっしゃる継続的給付というものになり得るのでしょうか、どうでしょうか。
  193. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 原告が、一時金、医療費、継続給付の三本柱を主張している、こういうお話でございますけれども、国はこの和解協議に参加しておりませんで、原告のそのような主張の位置づけや具体的内容につきましては承知していないというところでございます。  今回の答申の療養手当は、あくまでも地域住民の健康上の問題に対応するための行政施策として実施するものでございまして、原告を対象とした和解における条件とは基本的に性格を異にしておりまして、比較することは適当でないというふうに考えているところでございます。
  194. 東順治

    ○東(順)委員 それから、この答申が、先ほども話が出ました、これまでの認定基準というのが医学的に間違いない、こういうふうにしながらも、いわゆるグレーゾーンの人たちということで有機水銀の摂取の可能性が否定できないといわれるそういう人たちの存在を初めて認めた。つまり、この認定患者以外の存在を認めたということは、私たちから見て、今も話がちょっとあったのですが、結局裁判所の和解勧告で使われた和解救済上の水俣病ということと意味を実質的には同じくするのではなかろうか、このように見えるのですが、これはどうですか。
  195. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 今回の答申では、四肢末端感覚障害を有する者への対応の必要性が示されているわけでございます。この趣旨は、四肢末端感覚障害のみでは、水俣病であると判断することは医学的には無理があるとしておりまして、認定患者以外の者について新たに公害健康被害者として認めた、そういう趣旨ではございません。  しかしながら、みずからが水俣病ではないかと考えることに無理からぬ理由があるわけでございまして、この問題の解決が強い社会的な要請になっていることから、年齢層が高い、そういうことも考慮いたしまして、地域住民の健康上の問題の解消あるいは軽減を図る観点から、適切な対策を行う必要があるとされているものでございます。  なお、先生御指摘の福岡高裁の所見にございます和解救済上の水俣病につきましては、先ほども申し上げましたけれども、国は和解協議に参加しておらず、その趣旨は承知していないところでございますけれども、いずれにせよ、このようなものを水俣病と呼ぶことは適当ではないというふうに考えております。
  196. 東順治

    ○東(順)委員 それでは長官にお伺いしたいのですが、先月の二十三日でしたか、熊本で水俣病問題全国実行委員会というのが開催されて、ここで初代環境庁長官でもありました大石元環境庁長官が、命を守るという環境行政の理想がある時期から変質してしまったのではないかというような、そういう趣旨のあいさつをされたと伺いました。環境庁長官としてこういう発言をどのように思われるかということを伺いたいのですが、つまり、何となく代々の環境庁長官の前向きな答弁がだんだんトーンダウンしてきているのではなかろうか、そういう思いをいたすわけでございます。この点につきまして、長官、いかがでしょうか。
  197. 中村正三郎

    中村国務大臣 今御指摘のことは、新聞報道でそういうことがあったということを承っておりますが、大石長官がどういう御趣旨で発言されたかも、それは個人の発言でございますからわからないわけでありまして、私も今拝命したばかりでありますけれども環境庁発足以来一貫して公害健康被害者の救済ということに一生懸命当たってきたわけでございまして、これからもそういう姿勢で頑張っていかなければならないと存じております。  蛇足で御無礼かもしれませんが、私二代目代議士で、大石長官はうちの父などの友人でございましたので、お目にかかる。ことがあったらばどういう御趣旨か教わってまいりたいと思っております。
  198. 東順治

    ○東(順)委員 やはりこういう公害問題というものは、私は基本的に疑わしきは救済すべしというものが、そういう基本姿勢というものになっていなければならないものだろう、このように思うわけです。  今、これはもう本当に単なる公害問題というよりも人権問題というところに入っているというふうに私は思います。特に水俣というところは、人類の私たちの未来にとりましても大変に大切な地球環境保全という問題を、塗炭の苦しみの中で、大きな大きな犠牲の中で身をもって体験してこられた方がたくさんいらっしゃる。いわば日本の、そしてまた、世界環境の聖地というものにしていくのが今の私たちの務めではなかろうかというふうに思うわけでございます。  明年は歴史的なUNCEDも開かれるわけでございまして、例えば大臣大臣は、これから環境庁長官という方はずっとかわっていかれるあるいは各省庁の役人の方もかわっていかれる。だけれども、患者の皆さんにとっては水俣病というこの病気、公害病というものは決してバトンタッチできないもので、やはりそういう状況の中で歳月とともに年老いて亡くなっていかれるわけでございまして、この水俣病というのは人道上の人権問題というそういう領域にもう入っている問題だというふうに私は思うわけでございます。  今回の答申で、この提案が「水俣病をめぐる種々の問題の早期解決に資することを強く期待する。」こういうふうにあるわけで、それはいよいよ政治的な解決というものが望まれる段階に入ったというふうに私は受け取らさせてもらいました。そういう意味で、ぜひもう一歩踏み込んで和解のテーブルに何とか着けないものだろうか、このように思うわけでございます。先ほど議論の中で、水俣の人たちの心という表現がございましたけれども、私、全く同感です。そういう政治的な良心の上からの大き存深い意義のある決断というものをなさって、そして和解のテーブルに着いてUNCEDに行かれるというようなことが、これはまた大変それ自体大きな意味があるのではなかろうかというふうに思うわけでございますけれども大臣、この辺の御所見をよろしくお願いいたします。
  199. 中村正三郎

    中村国務大臣 先生の仰せになることは一々心にしみるわけでありまして、この被害を受けられた方にとってはこれは一生を台なしにされた、またその地域の方々にとっては、けさほども馬場委員の方から御指摘ありましたけれども、その地域全体の問題としてまさにありとあらゆる問題を引き起こしているということであります。  でありますからこそ、二度と起こしてはいけないということは本当に深く深く感じるわけでありますけれども、この裁判ということに関して申しますと、これは国が当事者として法的責任を問われている損害賠償請求訴訟でございます。そういうことを考えますと、当時原因物質がなかなか予見できなかったとか、法的制度がなかったということで、この訴訟自体について言えば、行政の立場とすれば早く司法の判断を下していただきたいということを申し上げざるを得ないわけでございまして、現在そうした判決を待っている状態でございますので、これは和解に応じるということはなかなか困難か七存じます。  そういう中でございますからこそ、私どもといたしましては、中公審答申を受けた中で、先ほどから議論ありますように二十二日が予算の内示でありますから、それに向かって委員の御指摘等も頭に入れながら最善の努力を払ってまいりたい、そういうことでやらしていただきたいと存じております。
  200. 東順治

    ○東(順)委員 それでは、地球環境の問題につきまして質問させていただきたいというふうに思います。  このサミットに向かって準備会議というものを初め、各種の準備が進められているところでございますけれども途上国への資金供与問題等の財源をめぐりまして、各国間の主張の隔たりというものが大変まだまだ大きいわけでございます。国際合意ということにはまだ大変ほど遠い状態だというふうに伺っておりますけれども、現在アメリカあるいはヨーロッパ、発展途上国等の対応及び準備の現段階における進捗状況というものについて御説明いただきたいというふうに思います。     〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘のように、世界各国における議論の中で、いわゆる開発途上国側の議論、また先進国側の議論、いろいろございまして、まだ意見の一致が見られておらないというのが現状であろうかと思います。  準備状況はどうなっているかということでございますので申し上げますと、地球サミットのこれまでの準備会合というのは三回行われております。そういう中で、開発途上国からは、御指摘のように資金協力や技術移転に対する強い要求が出されているということでございまして、開発途上国側の意見を集約する会議といたしましては、本年六月に北京で開発途上国環境大臣会議というものが開催されて、北京宣言というものがまとめられたところでございまして、そこにおいて途上国側の主張が明らかにされているところでございます。また、来年四月にはマレーシアのクアラルンプールでこの途上国会議のフォローアップ会議が開かれる、そういう予定があるということも私どもは承知しているところでございます。  一方、先進国側の方の取り組みはどうかということでございますが、これまでの三回にわたる準備会議等における取り組み状況を見ますと、午前中にもお答えしたんですが、地球温暖化対策につきまして米国の消極的な対応が見られる一方、ドイツやECなど、地球サミットヘの積極的な貢献をすべきであるという主張もある状況にございますし、さらには北欧諸国等では、開発途上国主張にある程度の理解を示すというところもあるわけでございます。  こういった中で、先進国側としては、これも午前中大臣から答弁申し上げたところでございますが、十二月の二、三とただいまやっている最中でございますが、OEC環境大臣会議というものが開かれておりまして、先進国側でできるだけ合意を、どういう対応をしようかということでOECDとしての貢献策を明らかにしようではないかということで、会合が設けられているところでございます。また、これも午前中答弁申し上げましたが、資金問題に関しては、四月に、竹下元総理に対するストロング・UNCED事務局長の要請に基づきまして、東京におきましてそのための会合が開かれるということもある段階でございます。  また、ブルントラント委員会の後継としての会議が四月にロンドンで行われるということも予定されているところでございます。  このように、もろもろの会議を通じまして合意を図るべく着々と準備を進めているところでございまして、UNCEDの準備会合としては、これから三月から四月にかけまして約五週間にわたっての会合が開かれるわけでございますが、今までのところは、それぞれの主張が出そろって一覧表になったという段階でございますので、これから合意に向けて精力的な活動が行われる、また、行わなければならないというぐあいに承知しているわけでございます。  こういった状況の中で、我が国先進国の一員であるという立場も踏まえて、先進国の中での合意を取りつけるということも必要でございますし、また、アジアの一員ということで、多くの開発途上国を抱えておりますアジアに位置しているというようなことから、南北の橋渡しとしての役割も期待されておるというふうにも考えております。私どもは、そういうような日本立場から、UNCEDはどうしても成功させなければならないという見地に立って積極的に貢献してまいりたいと考えているところでございます。  準備状況について、御説明申し上げました。
  202. 東順治

    ○東(順)委員 一覧表がようやく出そろった、大変うまい表現を使われたと思います。そういう状況で、これからどのように先進国の中での合意を取りつけるか、あるいはまた南北の橋渡しになるかという日本役割というのがいよいよクローズアップされてくる、こういう状況だというふうに伺いました。  そこで、大臣、こういう途上国側の強い主張と、先進国側のそれに対する難色というような状況がある。そういう中で、この私たちの日本役割というのは、非常に重要な役割というものを担わざるを得ないということですが、どういう立場でどのような主張をこれからするべきであろうか、どのようにお考えでしょうか。
  203. 中村正三郎

    中村国務大臣 今局長から答弁させましたように、メニューが出そろってきたという段階でありまして、まだどういうことが問題でありどういう行動を起こすべきかということが深くは絞り切れないわけでありますが、幾つかの問題がはっきりしてきていると思います。  一つは、PPPの原則ということがございまして、それに対して発展途上国においては、おまえたちは今までこれだけ開発を進めてきて、我々はこれから開発するんだという開発の権利の主張もございます。そうした中で開発途上国が、やはりこれまで公害を出し、今出している量においても先進国の方が多いんだから先進国においていろいろないわゆる出費の手当てをしなければできないよというような話があろうかと思います。これに対しましては、このいろいろなメニューの中で、たしかコモン・バット・ディファレンシエイディドとかなんか、そんな表現になっていた、多分委員もごらんになったと思うのですが、共通であるけれども少し差異のある責任はあるんだよというようなことでやっていかなければいけないものであろう。そういうことを申すにつけましても、やはり私どもといたしましては先進国の中の協調というものをしていかなければいけない。  そこで、よく言われることでありますけれども、例えばCO2のガス、いわゆるグリーンハウズガスと言われる温暖化ガスの問題につきましてもなかなか先進国の歩調が合わない。特に、まだはっきりしたものが出てきてないということでもありましょうけれども、アメリカにおいてはコンプリヘンシブアプローチということで、ガス総体の量というものを問題にするんで、個々のCO2についてどうのという日本のような決め方はまだしてくださらないわけでございます。  そうした先進国の間の歩調を合わせる努力をして、なおかつ、今も答弁させましたように、私ども、アジアの国とは非常に親しい関係にあるわけでありますし、アジアの占める大きさというのが発展途上国の中で非常に大きいわけでありますから、そうしたものの橋渡しをしていくということが一つあろうかと思います。  それから、資金の問題でありますが、さはさりながらやはり発展途上国というのは資金も不足しているだろうし技術も不足しているということでございますから、今いろいろ話題になっておりますけれども国連のストロングさんから要請を受けまして、来年の四月に竹下登元総理がスポンサーをして東京であの賢人会議を開いて、どのような資金のやり方があるかということを検討する、こんなところが相当大きな役目を果たしていくのじゃないか。そこに対しまして環境庁といたしましてもいろいろな連携を保ち、働いていくことがあるのじゃないかというようなこと、いろいろなことが考えられます。  それから、技術の移転をどのようにしていくかということであります。これについてもメニューの中でいろいろなことが述べられております。その中で、大変困難なことが多いわけでありますけれども日本としては今度のこのUNCEDの機会を逃すと、世界環境の面で大変なところに突っ込んでいきそうだというような時期でございますので、最善を尽くしてこの会議の成功に向けて努力をしてまいりたいと存じております。
  204. 東順治

    ○東(順)委員 確かに、国際貢献というのは言葉では簡単ですけれども、いざ現実となると大変やはり困難な難しい山を幾つも越えなければいけないことだろうと思います。やはり日本世界に、国際貢献をしていくんだぞというはっきりとした意思め表示、そしてそれを裏づける具体的な貢献内容というものを示すことにおいては絶好のチャンスがこのUNCEDだ、これはもう当然そのように思うわけで、いろいろな意味で、日本はこれからどうするんだ、世界に対してどうするんだということが多方面から注目されているさなかであるだけに、どうか金だけの貢献に終わったということにならないようにぜひ御努力をお願いしたいというふうに思います。やはり日本ならでは、日本じゃなきゃこれはできなかったなというものが後々の印象あるいは歴史の中に刻まれますように、本当に重大なときに大臣御就任なさいまして、当然環境庁だけの仕事ではないわけでございますが、どうかその責任官庁としてくれぐれも最善の御努力をよろしくお願いしたいと思います。  それからまた、地球温暖化防止のための気候変動枠組み条約の素案というのが出ておるわけですけれども、これによりますと、開発途上国向けの財政支援策として国際気候基金の創設というものが求められているわけでございますけれども、この基金に対してどのような貢献考えられているのかも明らかにしていただきたいというふうに思います。これほどなたでしょうか、環境庁
  205. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど申し上げましたように、気候変動枠組み条約の素案の中に気候基金といったようなものが盛り込まれておるわけでございますが、この素案そのものの性格は各国が出した意見を並べるというような性格のものでございますので、これにつきましては開発途上国が貧困の克服や経済発展などのプライオリティーを有しており、温暖化対策実施のため途上国への資金的支援が重要であるというようなことから盛り込まれたものでございます。  私どもとしては、そういった事柄の重要性については十分認識しているわけでございますが、途上国支援につきましては、その対象となる事業の範囲とか、必要な資金の規模とか、既存の制度の関係ども十分に検討していく必要があるわけでございますし、またさらに申し上げますならば、この国際協力というものを、気候変動というようなものとまた森林保全といったようなもの、そういった個々的に考えていくべきなのか、またすべてを総体として考えていくべきなのかということに関する問題もあるわけでございます。  今、先進国側でおおよその合意を見ておりますものは、その細部についての議論はいろいろございますが、資金的支援のメカニズムにつきましては、世銀等におきまして地球環境ファシリティーというようなものや、また二国間協力など、既存の制度がいろいろあるわけでございまして、まずこういった制度を最大限に活用し、それを前提にして考えてみようじゃないかというようなところで議論が終わっているわけでございますが、これから各国間でどういう議論を進展させていこうかということは、先ほど私が申し上げましたこれからの準備状況等において大いに議論していくべき課題であるというぐあいに考えております。
  206. 東順治

    ○東(順)委員 すべてこれからだ、こういうことですね。  それから、我が党はかねがね、このサミットの開催を契機として現在の環境庁をぜひ環境省に昇格させるべきであるということを主張しておるわけでございます。それから、平成二年度比で平成七年度をめどとして地球環境保全対策予算の倍増というものをすべきである、このように主張しておるわけでございます。やはりUNCEDがどんどん近づいてきて、最近いろいろなところから、環境庁の仕事あるいは機能、人員も予算も含めてこれはぜひ拡充させるべきであるという声がだんだん高まってきておる状況だというふうに思います。やはり日本が大きな発言力を持つために、片より省をバックにして大臣が出ていかれた方がはるかに存在感があるわけでございまして、同時に日本の国際貢献ということ一に対する意欲、そういったものをはっきりと象徴的に明示できる、そういうことだというふうに私は思うわけですね。そういう意味で、地球環境保全のリーダーシップというものを日本はこれからどんどん発揮していくぞということを世界に宣言するという意味で、ぜひともこの環境省という昇格、ここを早急に実現すべきであろう、そのように私は思うのです。  それで、大臣の大きなお仕事として、この辺に対する主張、要望、ほかの省庁との関係等あるわけでございますが、これは何とかできないものかということで、本当にそう思うわけでございますが、どうでしょうか大臣、御自分の心境とか御自分の希望とか要望ということにとどまらず、具体的にどうしたらそこまで到達できるのかということを、率直なところをちょっとどのようにお考えになっていらっしゃるのか。
  207. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員御指摘のように、環境庁長官を拝命いたしましてからいろいろ見てまいりますと、現実はなかなか厳しいなということがございます。  例えば本局、大気局の一年間の予算が、私聞きましたら十五億程度、大変少ないものだなと、これは直観的に感じるわけでありまして、中を分析したわけではございません。そして総合調整官庁でございますから、この間地球のいろいろな環境を測定してくれる仕事をやっておられます科学技術庁の方においでいただいて、話を伺ったのです。で、一つ衛星を上げると、この衛星のお値段、お幾らですかと言ったら、八百億と言うのですね。ところが我が庁の予算は、御案内のとおり五百数十億であります。これも少ないなと思いますし、今御指摘のとおり、これから大きな問題に取り組んでいかなければいけない、しかも、すべての産業だとか人間の生活自体というのが環境というものから考えを発していかなければ地球が成り行かない。これからの子孫に安全な地球を送っていくためにも、大変大きな仕事になってきたわけであります。そういう中で今の組織体制、これを強化しなければいけないということは切実に考えているところでございます。  ただ、環境庁の省への昇格ということになりますと、私ども総合調整官庁として総理から受けた権限によりまして調整を行うわけでありますから、みずからの一つの仕事を持って省としてやることとの考え方の整合性はどうなんだというようなことも出てきますので、そういった法律的、技術的なことは少し検討してくれということで、私的に庁の方にお願いをしているようなところであります。しかし、この組織体制の強化をやるという上で、私はやはり省への昇格というのはその一つの大きな要素だと思います。  また、委員御指摘のように象徴としての省ということを考えますと、アメリカにおいても、この問EPAの次官がお見えになって話を聞いたのですが、ディレクターゼネラルである環境庁を向こうの省に昇格しようということで、上院だけが法律が通った、そしてうまくいけばこのまますっと行けるかもしれないというお話をされておられました。やはり日本世界環境について貢献をしていこうという意欲を示す上からも、象徴的にも私は前向きに検討するべきことだと思っております。  ただ、最後に委員も御指摘になられましたように、これは国全体の行政組織のあり方を変えるという大きな問題でありますから、どうすればできるか、さて、そこになると非常に難しい問題があろうかと思います。行革審等のお考えもございましょうし、そしてやはり私、議会の御意向というものが大変重要な役目をなすのではないかと思いますので、どうか御支援を賜りたいとお願いを申し上げます。
  208. 東順治

    ○東(順)委員 これはもう本当に、御支援は前々から送っているわけでございまして、また環境庁の皆さんの切なる願望でもあるだろうというふうに思いますから、どうか命がけでひとつ取り組んでいただきたいというように思うわけでございます。  今、大臣おっしゃるように、地球環境というものを大前提として物事を考えるという、そういう状況にいや応なしに来ておるわけですからね。それと同時に、日本は平和というものを志向する、世界貢献する大変な国家であるというものを見せるためにも、そういう仕事をしていくぞという意気込みを見せるためにも、これはぜひとも何とかやり遂げるべきである、こういうふうに思うわけでございます。  最後に、外務省、来られてますでしょうか。先進国開発途上国等の各国の利害調整など、こういう複雑な問題に対しまして今後より的確な対応を可能とするために、国連環境計画、これを地球環境保全理事会というようなものに昇格をさせる、そして各国間の調整、監視、勧告等を行えるように日本が進言し、リードできないものか、このように考えるのですが、これはいかがでしょうか。
  209. 小杉隆

    小杉委員長 外務省国連局花角経済課長。  時間が来ておりますので、簡潔に願います。
  210. 花角和男

    ○花角説明員 先生御指摘の点は、国連内に環境問題に関しまして包括的に対処することができる強力な体制を形成することが重要であるとの御趣旨と理解しております。  既に国連におきましては、環境に関します諸活動を総合調整いたしますUNEP、国連環境計画がその任務を遂行しているところでございまして、我が国も同機関を従来より積極的に支援いたしております。  また、来年六月に、地球環境保全の問題を包括的に取り扱う環境開発に関する国連会議が開催される予定でございまして、この会議におきまして、UNEPの強化等につきまして議論される見込みでございます。我が国としましては、この会議の成功に向けまして今後とも積極的に協力してまいる所存でございます。
  211. 東順治

    ○東(順)委員 ありがとうございました。では、終わります。
  212. 小杉隆

    小杉委員長 寺前巖君。
  213. 寺前巖

    ○寺前委員 十一月二十六日に、中央公害対策審議会環境保健部会の「今後の水俣病対策あり方について」という答申が出ましたので、きょうはそれをめぐって聞きたいと思います。  そこで、まず第一に、先ほどから聞いておってどうも気になることがある。環境庁の諸君たちが、従来の延長線上で依然としてこの仕事につくのかどうかという問題です。  今度の答申を見せていただいて、私自身が感じたことがあります。この答申については、四肢末端感覚障害が広範に存在することを認めるという立場が描かれているように見えるのです。それにもかかわらず、この健康障害を何で水俣病であると認めないのだろうか、ちょっとひっかかっているのです。私は、だからそういう意味では、確かに前進的な答申ではあるが、ちょっとひっかかる。  第二に、行政責任の存在を是認しながらも、現在裁判所で進められている和解交渉に国が応ずべきであるという勧告をなぜしないのだろうか。確かに前進的な表明をしながらも、最後ずばりと問題を提起しない。その点では、国の責任の履行を迫り切れないという弱点を感じます。しかし、答申の最後に「種々の問題の早期解決に資することを強く期待する。」と、言いたいけれども言えない気持ちを吐露しているという内容を感ずる点では、従来に見られない大切な態度表明だなという感じを私は受けたものです。     〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕  さて、そこで、今度の中央公害対策審議会環境保健部会が答申を出すに当たって、環境庁自身がその原案なるものを関係者にお配りになったようです。これは新聞に出ています。また、関係者からも私は聞きました。  その内容を見ると、明らかに違いがある。メチル水銀の摂取と感覚障害との関係はないという立場に立った、そういう環境庁の職員の原案。ところが、出てきたものは、そうじゃない明確な方向を打ち出してきている。百八十度違う態度がそこには出てきています。国民が健康な生活を営むのは行政上の責務なので国民の健康保持のための対策を立てるという内容の問題が、表明ではころっとそこは変わってしまっています。確かに、積極的な態度表明に今度の答申では変わってきている。  そこで、大臣に聞きますけれども環境庁の職員が出したと言われる原案を見ていると、明らかに立場が違う表明をしてきているのだから、明らかに態度変更を示している内容、それを尊重するという態度をとられるのか、いや、私のところは何という答申が書かれても従来どおりの態度ですというふうに言われるのか、そこのところはどういうふうにしますか。
  214. 鈴木恒夫

    ○鈴木(恒)委員長代理 柳沢環境保健部長。
  215. 寺前巖

    ○寺前委員 あなた、いつ大臣になった。私は大臣に聞いているのに、ちょっと越権と違いますか。
  216. 中村正三郎

    中村国務大臣 環境庁の原案がどうのこうのというお話のところは私存じませんので、それは論評を差し控えさせていただきたいと思いますが、この答申は尊重してまいりたいと思います。
  217. 柳沢健一郎

    柳沢政府委員 私ども今回の中公審答申をいただくに当たりましては、中公審の事務局として委員の先生方の手となり足となる、そういう作業はさせていただいたわけでございます。しかし、いやしくも事務局の範囲を逸脱するようなことは一切なかったというふうにここでもって断言させていただきたいと思います。
  218. 寺前巖

    ○寺前委員 逸脱することはなかった、だけれども原案的なものは書かせてもらいました、それは否定できないのでしょう。これは関係者から、私ちゃんと文書まで持っているのです。うそやというのだったら、文書見せましょうか、ここにあるから。新聞も書いておる、この間どこかの新聞にも。ちゃんと、「報告書目次(案) Ⅰはじめに Ⅱ水俣病問題の経過 Ⅲ水俣病に関する医学的知見 Ⅳ問題の現状と評価 V今後の対策の方向について Ⅵ新たに講ずべき対策のあらまし Ⅶその他の課題について Ⅷ終わりに」こうずっと書いてある。全部読ませてもらった。なかなかよく従来の見解を整理したものだ。  しかし、審議会の先生方、これではやれませんという態度を表明されたことは事実なんだから、私は最後に大臣にそれを聞きますから、大臣、今から考えておいてください。この答申をもらった以上は、違うところの態度を表明されたことは素直に受けて立たなければならぬという立場をおとりになるということを最後に答えてほしいから、問題を先に提起しておきます。  そこで、私は、この中央公害審議会の答申なるもの、これに基づいて順次聞かしてほしいと思います。  今日のような問題が生じてきた理由の一つとして、水俣病発生当初、迅速にその原因を確定できず、原因解明までに時間を要したことを答申は挙げています。まさしくこれは環境行政の責任だと、はっきりこの言葉じりから私は感ずることができました。水俣病原因解明までに時間がかかったというのは、チッソと行政が一体上なって原因解明をわざとおくらせ、これを妨害した、こういうふうに見るのが妥当である。  そこで、厚生省にお伺いいたします。  水俣病の原因に関する諮問を厚生省の食品衛生調査会に対して行っていますね。食品衛生調査会水俣食中毒部会はいつどのような答申を出されたのか、御説明いただきたいと思います。
  219. 織田肇

    ○織田説明員 昭和三十四年十一月十二日付で食品衛生調査会が答申をしておりまして、これの内容を申しますと、「水俣病は水俣湾及びその周辺に棲息する魚介類を多量に摂食することによっておこる主として中枢神経系統の障害される中毒性疾患であり、その主因をなすものはある種の有機水銀化合物である。」というものでございます。
  220. 寺前巖

    ○寺前委員 何かむにゃむにゃ言ってましたけれども水俣病は魚介類を多量に摂取すること」によって起こるんだと書いてある。慢性中毒性疾患であって「その主因をなすものはある種の有機水銀化合物である。」これは三十四年の十一月十二日にそういう答申が出ているわけでしょう。  ところが、明くる日、十一月十三日には突然解散を命じてしまうという事態が生まれていますけれども、それはどういうことなんですか。
  221. 織田肇

    ○織田説明員 同部会の解散は、答申によりましてその目的を達したとしてなされたものでございます。すなわち、水俣食中毒部会のような食品衛生調査会の特別部会は、運用規程に基づきますと、臨時に必要な場合に設置することとされておりまして、その目的が達成されれば解散するものであり、本件におきましても、先ほど申しましたように、水俣食中毒部会が食品衛生調査会に報告書を提出し、それを受けまして食品衛生調査会から厚生大臣答申がなされたことから解散したものであります。
  222. 寺前巖

    ○寺前委員 ところが、これは関係する委員長さんが単に言うただけじゃなくして、後々、「メチル水銀化合物の種類、水俣工場内における生成過程を追跡調査解明すべき部分を残している」ということをちゃんと言っているのですね。当時通産省はチッソなどアセチレン系有機合成化学工業に対し、手厚い保護育成政策を講じておりました。それで、チッソが水俣病を発生させた加害企業であることを通産省は隠ぺいしようとしていたのではないでしょうか。  そこで、厚生省にお伺いします。食品衛生調査会水俣食中毒部会が解散される直前、すなわち十一月の十日ですよ、通産省軽工業局長から厚生省公衆衛生局長あてに「水俣病対策について」という文書が出されていたと思うのです。それで、その文書には、水俣病の「原因といわれている魚介類中の有毒物質を有機水銀化合物と考えるには、なお多くの疑点があり、従って、一概に水俣病の原因を新日本窒素肥料株式会社水俣工場の排水に帰せしめることはできない」と記載があると聞いているのですが、それは事実でしょうか。     〔鈴木(恒)委員長代理退席、細田委員長     代理着席〕
  223. 織田肇

    ○織田説明員 その文書の内容は、申し上げますと、「当省としてはこ当省、通産省のことでございますが、「現在までのところその原因といわれている魚介類中の有毒物質を有機水銀化合物と考えるには、なお多くの疑点があり、従って、一概に水俣病の原因を新日本窒素肥料株式会社水俣工場の排水に帰せしめることはできないと考えているがことありまして、その後、「既に同工場に対し、口頭をもって、(イ)直接不知火海に放出していた排水路を廃止するとともに、排水処理施設の完備を急がしめ、(ロ)原因究明等の調査について十分に協力するよう指示しであったが、更に上記の点について、あらためて文書をもって、新日本窒素肥料株式会社社長あてに尽力方通牒を発した。」このようにございます。
  224. 寺前巖

    ○寺前委員 ですから、厚生省に対して通産省は隠ぺいの役割を担えと言わんばかりのことを提起していた。  ここに、昭和六十二年三月三十日に熊本地裁で言い渡された水俣病第三次訴訟判決があります。その判決を見ますと、次のようなことが書かれているのです。「通産省の右主張に引きずられたのか厚生大臣は、メチル水銀化合物の種類、水俣工場内における生成過程を追跡調査解明すべき部分を残している食衛調水俣食中毒特別部会を、納得しうる合理的な理由を示さないまま名答申を受けた翌日電撃的に解散を命じ、右調査解明を一頓挫させて妨害する結果を招来させた」、こう書いてある。行政が原因解明を妨害していたということが判決の中に出てくるのですから、これは大変な問題です。それで、その結果、行政は水俣病の発生拡大を防ぐ適切な措置を講じない。  そこで厚生省にお聞きいたします。水俣病公害病と認定したのはいつなんでしょう。
  225. 織田肇

    ○織田説明員 いわゆる政府統一見解でございまして、これは昭和四十三年九月二十六日でございます。
  226. 寺前巖

    ○寺前委員 とすると、三十四年十一月からですから、九年もたっているということになるわけです。この間どれだけの水俣病患者が拡大していったのでしょうか、放置されたままになっているのですから。  環境庁長官にお伺いしたいと思うのです。中公審答申は「当時の環境保健行政等が国民の期待に十分にこたえられず、そのことが今日の水俣病問題が残されている一要因となっている」、こう書いてあるのです。だから、従来の延長線上で物を見てもらっては困るのですよ。そう書かれているのです、当時の環境保健行政がちゃんとやるべきことをやっていれば今日のようなひどい事態にはならなかったはずだと。現在の環境保健行政の最高責任者として長官は、過去の行政は国民の期待にこたえる役割を担っていたと見られるのか、この答申がここまで書かれたのだから、これは見直さなけりゃならぬなとお考えになるのか、いずれをおとりになりますか。
  227. 中村正三郎

    中村国務大臣 水俣病発生からの経緯の中において、いろいろな今お話がございました。私は、当時の状況というものが、今回の答申の中にもありますように、当時の公害に対する知識の不足でありますとか科学的知見、分析技術等が不十分であった、こういうようなこともあって水俣病が発生し、結果としてこうなってきたわけでありますけれども、私は、結果として今なおこういう問題が残っていることは残念であり、極めて遺憾なことだと思いますが、当時のそうした公害に対するいろいろな状況があったのだというふうに伺っているところでございます。  そして、答申については、先ほども申し上げましたように、その答申の趣旨を尊重してこれから最大の努力をしてまいりたいと存じております」
  228. 寺前巖

    ○寺前委員 もう一度読ましてもらいます。「当時の環境保健行政等が国民の期待に十分にこたえられず、そのことが今日の水俣病問題が残されている一要因となっている」、これはかみしめていただきたいと私は思うのです。  裁判の記録にもいろいろなのがあります。ちょっと一つ紹介しますと、こういうのがあります。  「原告らは訴える。「そのしびれは、昔と今ではどっちが強いんですか。」「今のほうが強いです。」「だんだん強くなってきたとお聞きしてよろしいんでしょうか。」「そうです。」「しびれというのは、ときどきしびれるんでしょうか。それとも、いつもしびれているんですか。」「いつもしびれています。」「そうすると、今ここで訊問をしているときにも、しびれているんですか。」「はい、しびれています。」」これは川崎久雄さんという方がお述べになった調書の中から出てきます。  「全身にひびくような何とも言いようのない感じのしびれがあり、寝ても起きても気になって、心の安まるひまがありません」中村トミエさんという方が言っております。  「このように原告らは、手足等のしびれが発現して以来、今まで何年、何十年と、絶え間なく、そして年々歳々増悪していく症状に苦しめられ続け、更に治癒することなく一生苦しめられ続けていくのである。そして、原告らの多くが、あるいは指圧や鐵灸院に通い、あるいは高価な磁石入りのふとんやマッサージ機を購入して、ただ一時しのぎの気安めにすぎないことを知りながら、この苦痛からの解放を求めているのである。」裁判の記録の中にこういうのが出てきます。私は、本当に胸を締められる思いがいたします。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  私は、改めて大臣が、この答申の持っている積極面、そういう立場に立たざるを得なくなってきた、この気持ちの立場にしっかりと立っていただくことを心から期待をするものです。  そして、答申はこう書いています。「水俣病をめぐる問題が解決されないまま長期にわたっていることは甚だ遺憾である。行政が健康上の問題について行う対策によって水俣病をめぐるすべての問題を解決できるわけではない」としつつ、「今回提案した対策実施されることによって」「水俣病をめぐる種々の問題の早期解決に資することを強く期待する。」これがすべてじゃない、だけれども、これが早期解決に資することを強く期待するんだ、この心情は、私は大事だと思うのです。  十一月二十七日付の熊日新聞によりますと、中公審水俣病問題専門委員長の井形さんは、今読み上げた答申の部分を引用されながらこう言っています。この表現に「われわれの切実な気持ちが表れていることを理解してほしいと願っている。」と述べているのです。おわかりいただけるでしょう。本当に延長線上にこの答申を出したんじゃないということをおっしゃっているわけなんです。  他方答申は、行政対策の限界と対比して裁判のことにも触れています。「民事訴訟の場においては、裁判官が、」「必ずしも自然科学的に厳密な因果関係が認められなくとも法的因果関係を認定してもよいとされている。」裁判官は、別個の事例について法的判断を加えつつ法的因果関係を認定することができると述べています。こう書いてあるのです。現在の裁判所での和解協議による解決方法を容認する姿勢をここに示されていると私は思うのです。  そこで、長官にお伺いいたします。  先ほどの中央公害審議会委員の切実な気持ちを長官はどこまでも理解をしていただき、訴訟上の原告の救済を抜きにした水俣病問題の解決はあり得ないという立場に立って、答申の面からも、行政対策は裁判所における和解協議による解決を前提にしなければ無意味なものになるというふうに立場をとられるべきではないだろうか。これまでの長官は、この和解勧告が各地でなされてきている、それに対して、県もあるいは会社の方も和解勧告に応ずるという姿勢をとってきたけれども一つ国だけがその土俵の上に乗ろうと今日までしてきませんでした。これまでの裁判所の勧告拒否の態度をこの際に見直すという立場をとられるべきではないのでしょうか、今までのことがわからなければ、直ちに検討してその態度を表明されるべきではないでしょうか、お伺いしたいと思います。
  229. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほどから御答弁申し上げておりますように、水俣病発生当時と現在とは極めて異なるわけでありまして、当時の公害問題に対する事実認識、あらゆるものが不十分であった、また、公害に対する科学的知見や予見や分析技術も発達していなかった、そういう中では、私は、行政はそれなりに最大の努力を払ってきたものというふうに信じております。  そういう中で、今和解の問題でありますが、これは再三言われることでございますけれども、行政の立場といたしましては、責任の所在について、今裁判の一方の当事者となっているわけでございまして、その裁判において司法の判断を下していただきたいというふうに考えております。当時の法制度の問題、予見性の問題、いろいろなことからして、私はやはり司法の立場の判断を待つということで、国から和解に応じるということは難しいと考えております。
  230. 寺前巖

    ○寺前委員 あなたの答弁は矛盾しています。この答申を尊重すると言いながら、この答申は過去の行政に対する批判をやっているではありませんか。それにもかかわらず、行政の今までやってきたことを信じているとは何事です。片一方で尊重すると言いながら、片一方で信ずるというような矛盾したことを言っていて、大臣としての責任を果たすことはできません。私は、冷静にもう一度答申を読んでいただいて、整理をしていただいて、今、きょう答弁はなくてもよろしい、真剣にもう一度考え直してほしいと思うのです。  一言つけ加えます。先ほどの食品衛生調査会水俣食中毒特別部会が解散させられたことについて、会長は、その年の十一月三十日、ですから解放されてしばらくたった後です、こういうふうに述べています。「名答申直後に解散させられたことは、水俣工場の非協力な態度によって有機水銀の種類、発生源等についていまだ解明されていない中途段階であることから非常に残念である」。関係した人が残念だと言って、九年間延ばされてきた、この間に広がった、この事実一つとってみても、行政の責任はもっと強く感じて当たり前だと私は思う。  私は、大臣が新しくおつきになっただけに、感情はこの程度にして、きょうの質問を終わらしていただきます。
  231. 小杉隆

    小杉委員長 御苦労さまでした。  次回は、来る六日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時八分散会