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針生雄吉君 ありがとうございました。
私などの身の回りにおきましても、中間
管理職者にしてみれば
企業内で責任を追及されたくないとか、事業主であれば安全
管理の評価が下がって指名入札の資格を失ってしまうからとか、いろいろ理由があるようでございますが、せっかく御説明いただきましたけれ
ども、私は何も
企業責任を追及しろとか、
労働省の
指導に力が入っていないとかということを申し上げたいというのではありませんで、こういった労災隠しと呼ばれる慣例的な現象を通じて、私は現代
社会にはびこっている
社会的な病理現象といいますか、
社会活動を営んでいく上においていろいろな考え方があるということを言いたかったのでございます。
人間の生命活動にはいろいろな側面があるわけでございますので、
社会正義、法秩序を守るために頑張るという人もいらっしゃれば、自由主義
経済下で大いに金もうけに励もうという人もいて結構だと思いますし、またこういう弱者救済のための
制度を悪用してうまくやっていらっしゃる方もいるようでございまして、そういういろいろな生命活動に伴う現象というものがあるけれ
ども、やはり労災隠しというものに象徴的に見られる、一般論としていえば
企業優先、
経済優先、お金優先という考え方、また別の点からいえば生命軽視、
人間軽視というそういう意識はやっぱり考え直さなければならない。各方面で言われている
人間中心、生命の尊厳という考え方に立つように
努力すべきであるということを主張したいと思うだけでございます。
その立場から
労使を問わず、また
指導監督の立場にある行政側におきましても根本的な意識の変革、つまり
人間中心、生命の尊厳、
国民のためにという視点で御
努力をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。
さて、いわゆる過労死をめぐる問題は数多くあるわけでございますけれ
ども、きょうは認定ということに的を絞ってお尋ねしたいと思います。
昭和六十二年の十月に脳血管疾患及び虚血性心疾患に関する業務上外の認定基準の改定が行われたわけでございますが、
労働省からいただいた手元のデータを見ますと、いわゆる過労死の認定件数というもの、これは過労死としての請求件数が出てこないこともあって一概には言えないのでありますけれ
ども、認定件数だけをフォローしてみますと、昭和六十二年度は二十一件でありました。基準改定後の六十三年、
平成元年、
平成二年度にはそれぞれ二十九件、三十件、三十三件とふえてはおりますけれ
ども、それほど認定件数が増加しているわけではないわけであります。
これはいろいろその間の複雑なファクターがあるとは思いますけれ
ども、一面からいえば基礎疾患である脳血管疾患とか虚血性心疾患が予防
対策、治療方法が
改善され、前進したとはいえ、年間二十八万人程度の亡くなる方がおられるわけでありますので、全体的にはむしろ増加の傾向にあると考えていいと思うのですが、その中においておりふえていないということは、やはり六十二年度に
改正されました認定基準ではまだ不十分ではないかという主張もむべなるかなと思われる点もあるのではないかと思います。
平成二年にスタートして五年間勉強したいという、そういう構想で勉強中ということもあると思いますけれ
ども、過重負荷のかかった期間の再
検討な
ども含めて、認定基準の再見直しをするお考えはないか、早急に
検討をするお考えはないかどうか、その点お尋ねをしたいと思います。