○平野清君 特定事項
調査に関する海外派遣の概要を御
報告いたします。
欧州地域における科学技術及び
エネルギー問題の実情等について
調査するため、
産業・
資源エネルギーに関する
調査会長
田英夫議員を団長として、三上隆雄議員、中野鉄造議員、
神谷信之助議員、
古川太三郎議員、足立良平議員と私平野の七名で、去る六月九日から二十二日まで十四日間にわたり
イギリス、スウェーデン、
ドイツ及びフランスの四カ国における
エネルギー担当の
関係省庁並びに核融合研究所、高速増殖炉、褐炭火力発電所の視察等
関係施設を含めて十三カ所を訪問し、積極的に
関係者との
意見交換を行いました。以下、その概要を訪問順に
報告いたします。
最初に、
イギリスにおける
エネルギー事情等について申し上げます。
イギリスの
エネルギー政策の
基本目標は、
石油、
石炭、天然ガス、原子力等
供給源の多様化を推進し、長期的な
エネルギー資源の確保とコストダウンを強力に追求することとしております。
具体的には、市場原理に基づいた経済効率性を実現するため、従来の国営公社の形態により運営されていたガス事業は八六年、
電力事業は九〇年にそれぞれ民営化されております。
また、北海油田の
生産開始に伴い八〇年以降
石油の純輸出国となっておりましたが、九〇年代半ば以降の
生産量の減少見通しに対応した自給体制の
維持と探鉱開発の推進、同時に北海天然ガスの次
世紀における
生産量の確保、自給率一〇〇%の
石炭産業の競争力強化を
目標とした九二年の民営化及び再生可能
エネルギーの研究開発のほか、
産業部門等の省エネ対策の推進が
課題とされております。
なお、
電力需給
バランス確保のための料金変動システム確立の
必要性、
石炭公社と中央発電会社間との
供給契約期限の継続時における
輸入炭への変更の可能性及び付加価値の高い
石炭供給確保の
必要性などについて
エネルギー省及び
石炭公社
関係者からそれぞれ
説明を受け、討議を行いました。
次に、カラム核融合研究所に設置されております欧州原子力共同体、いわゆるユーラトムにおけるトカマク型のプラズマ物理の核融合試験装置(JET)は、現在までプラズマ密度一立法センチメートル当たり三十七兆個、閉じ込め時間一・一秒、プラズマ二・五億度を実現し、七MAの大電流実験による不純物除去の研究等を行っておりますが、将来の見通しとしましては、重水素とトリチウムの混合割合を変化させることにより十二MWの核融合を実現したいとのことでありました。
以上のほか、ロンドン
石油取引所及び旧ドック跡地の大規模な再開発事業を行っているロンドン・ドックランドを視察いたしました。大変勉強になりました。
第二に、スウェーデンにおける
エネルギー事情について申し上げます。
スウェーデンの
エネルギー政策の
基本は、
石油依存度の低減、省エネの推進、環境
政策と調和した
エネルギーシステムの開発、
国内資源による新エネ技術の開発
促進、特に
電力の利用効率化を
目標としております。
ちなみに、九〇年現在の
電力供給源別の構成比率は、原発四五・三%、大力四六・九%のみで大部分を占め、八九年の最終消費需要別では、
産業用、暖房用合わせて六五%のシェアとなっております。
また、八〇年の「二〇一〇年までに十二基の原発全廃」、八八年の「九五年及び九六年各一基の原発廃棄」の国会決議に対応した社民、自由、中央三党の合意による環境保全と安定的
供給確保の両立を目指した新
エネルギー法案が本年二月に提出され可決されたとのことであります。これにより九五年及び九六年各一基の原発廃棄は、事実上棚上げされるとのことであります。極めて注目すべき見直したと思います。
なお、電気事業者に対する二〇〇〇年までのSO2削減、NOx工減少等の規制は、長期的には原発廃止の可能性、短期的には国際
関係等への対応が
課題であり、また、新
エネルギー源確保の見通しとしましては、長期的には原発不要を前提として水力を
エネルギー源の基盤とし、風力・バイオ発電、不足分を天然ガスにより補完することを予定している旨
エネルギー庁
関係者からそれぞれ
説明され、活発な
意見を交換いたしました。
また、ストックホルム熱
供給施設におきましては、
電力生産量の過剰傾向を反映して、ごみ燃焼による
エネルギー生産量は、年間二〇万トンにすぎないが、独立住宅用熱
供給はヒートポンプ稼働、汚水処理発電などにより地域暖房三万戸の需要に対応しているとのことでありました。
第三に、
ドイツにおける
エネルギー事情について申し上げます。
東西
ドイツ統一に伴う
エネルギー政策は、市場経済原理に基づき、
エネルギー供給の安定化を目指し、省力的・合理的かつ環境保全的
計画の立案について合意されております。
具体的には、全
ドイツエネルギー構想として、旧東
ドイツを含めた
政策の統合、
国内資源としての
石炭産業を放棄しないこと、原子力発電の
役割を今後十年間に
検討すること、さらに環境問題に適切に対応することであります。
このため、国営企業の民営化、
石炭に対する環境対策費の集中投資、ソ連型原発の撤去と旧西
ドイツの原発に係る安全基準への適合及び二〇〇〇年におけるCO2排出量削減等の
措置が急がれております。
なお、九〇年における統一
ドイツの一次
エネルギー消費割合は、
石油三五・八%、
石炭一五・五%、褐炭二一・一%、原子力一五・五%、天然ガス一五・六%、水力二・〇%であり、このうち旧西
ドイツでは
石油田〇・九%、旧東
ドイツでは褐炭六八・六%の構成となっております。
また、旧西
ドイツの
石炭政策のあり方に関し、九〇年三月に
石炭委員会、いわゆるMikat
委員会における「
世紀契約」終了後の
電力用
国内炭引き取り問題に関する提言等が行われております。
ちなみに、八九年には、
電力用炭の残存期間引き取り量を年間四千九十万トンとし、
電力業界の増加コス十分をコールペニヒにより補てんずるとともに、同様に「製鉄契約」における引き取り量を二千八百七十万トンとし、
政府が輸入・
国内炭の
生産コスト差を
石炭産業に対して補助を行っております。
私
どもが今回訪問いたしました旧東
ドイツのクリンゲンブルク褐炭火力発電所におきましては、従来、
電力源として過度に褐炭に依存した結果、SO2等の排出による大気汚染等が深刻化しており、これと対照的に西
ドイツRWE
電力会社は、公害法の規制強化に対応した公害防除装置によりNOx等を減少させるとともに、
石炭の液化・ガス化技術の開発に努めているとのことでありました。
何はともあれ、旧東
ドイツと旧西
ドイツのあらゆる面での格差は私たちの想像をはるかに超えるものだということを知りました。特に、統一
ドイツの
エネルギー長期対策は相当困難な
課題を持っております。しかし反面、それが達成された場合、ECはもちろん世界の
エネルギー問題に大きな影響を与えると思います。この点十分に注目し続けることを痛感した次第であります。
最後ですが、第四にフランスにおける
エネルギー事情について申し上げます。
八一年十月に策定された
エネルギー自立国家
計画を
基本方針とし、
エネルギー消費の削減及び自給率の向上、省エネ・
石油代替エネ投資の
促進、国産
エネルギー開発の推進及び
エネルギー供給源の多様化に努めておりますが、その特徴は原子力利用の大幅増加により
石油消費量を削減したことであります。
この結果、八八年における発電源別構成比率に占める原子力のシェアは実に七〇・三%に達しており、また九〇年における
電力輸出量は四十六TWHの
実績を示しておりますが、八七年には
エネルギーの
供給過剰の傾向に対応した原子炉建設の発注ペースを修正しております。
また、
政府が高レベル放射性廃棄物処理の候補地を決定する場合、地域住民との対話を義務づける等を内容とした高レベル放射性廃棄物処理法案が国会に提出されたこと、ラアーグにおける外国の放射性廃棄物処理に関し、議論の必要があること及び
国内の省エネとの調和を考慮しつつ積極的に欧州並びに周辺諸国に対し
電力を輸出する旨、
国民議会・
生産交易
委員会の
関係者から
説明を受けました。
次に、実証炉としての高速増殖炉(FBR)スーパーフェニックスⅠについては、フランス、
ドイツ及びイタリア等の出資会社NERSAによりクレイマルビルに建設され、八六年一月の運転開始以降に使用済み燃料貯蔵タンクからのナトリウム漏れ、一次冷却材ナトリウムのトラブルが発生し、現在まで運転を停止して浄化作業を行っているとのことであります。
また、次期商業用高速増殖炉SPⅡにつきましては、PWRとの発電コスト差など経済性の理由から見送りを決定し、EC五カ国における欧州統合炉(EFR)に関する設計・研究を行っております。
さて最後に、
我が国と欧州は国土面積、人工、立地条件あるいは
資源埋蔵量等若干類似している点もありますが、視察した欧州四カ国では、
基本的には
国内資源の開発と保護、
石油依存度の低減、代替
エネルギーの開発と効率化、環境問題及び原発の安全性重視への対応として粘り強い模索と努力が続けられております。
我が国といたしましても、このため、
エネルギー、科学技術両
分野における
国際協力を一層推進することの
必要性を痛感いたしました。
なお、現在、
エネルギー問題は昨年の中東湾岸危機の発生を契機として改めて再認識されたことでもあり、欧州
エネルギー構想等に対するIEAの
役割、あるいはロンドン・サミットにおける重要なテーマになるなど、国際的視野から考えるべき内容であろうかと存じます。
かかる見地から、今回の視察は時宜に適し極めて有意義であったと自負するものであります。
以上、御
報告いたします。