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参考人(西岡秀三君)
環境庁の
国立環境研究所におります西岡でございます。
お手元にレジュメも行っているかと思いますが、私は、本日、
地球環境問題につきまして、
日本がいかなる形で
世界に貢献できるかと、特に私の専門が科学
研究面でございますので、その辺に重点を置いて話をさせていただこうかと思っております。
私は、先ほど自分で紹介いたしましたように、筑波にございます
環境庁の
国立環境研究所というところに昨年、
地球環境研究センターというものができまして、その役目というのは
研究の支援だとか、それから
地球環境の観測、モニタリングと言われておりますこと及び
研究のまとめということを担当しております。それから、この二年間、
地球温暖化に関しまして、
世界的な
地球温暖化の問題が果たして科学的に正しいかどうかといったことを検討するために、IPCC、気候変動に関する政府間パネルという作業会が設けられたわけですけれ
ども、それに第二作業部会、これは温暖化の
影響はいかなるものであるかということを検討する会でございますけれ
ども、そこの一部の分科会の議長として報告書をまとめる作業をしてまいりました。そういうバックグラウンドの中で私が感じたことを
お話しさせていただきたいと思っております。
地球環境問題の基本的な本質といいますのは、非常に顕著な二つの問題があると。
一つは、世の中全体にツケ回しかもうきかなくなったということでございます。今まで急激な
人口の
伸び、それから産業とか
エネルギー利用をどんどんふやしていったということは、ほかにフロンティアといいましょうか、向こう側に資源があるということを利用しましてどんどんそれを進めていったわけですけれ
ども、どうもそれが
環境の面からもうツケ回しかきかなくなったと。実際問題として、
日本はこの
環境問題に関しまして非常に努力したおかげで非常にきれいになりました。これは
世界と比べても引けをとるものではございません。ですけれ
ども、
日本がきれいになったからといって、
日本の汚い企業をよそへ持っていったからこの問題は解決だというわけにいかなくなったのが
地球環境問題かと思われます。
それから二つ目の問題は、
地球環境の問題というのは不可逆なものであるという認識を持っていただきたいということです。有名な
物理学者なんですけれ
ども、ロジャー・ルベールという人が一九五七年に、今、人類は二度と繰り返せない大きな実験を
地球を舞台にやっているということを言いました。これは温暖化の問題ですね。これは一回こっきりの実験であると。もう一度繰り返そうと思ってももうそのころは
人間自身が死に絶えているかもしれないといったことでございます。そういうわけで不可逆性であること、ツケ回しかきかない。こと、この二つを踏まえまして、この
地球環境の問題というのは長期的に取り組む必要があります。
我々IPCCの中で、常に百年ということを言っております。百年という先を見通して今何をしなきゃいけないか、しかも、じゃ百年後にやればいいのかといいますと、それはとんでもない間違いでございまして、その解決までに非常に時間がかかるということを認識していただきたいと。
一例を挙げますと、
酸性雨の問題は既に一九五八年ぐらいから
ヨーロッパではある一部の人が認識して、これは大変な問題になると言っておったわけです。ところが、現在、一九九三年に
ヨーロッパ全体が硫黄酸化物を三〇%減らそうと、一九九三年にその条約が発効するわけですけれ
ども、それまでの間、既にもう二十五年たっております。私たち百年先の話を言っておりますけれ
ども、二十五年ぐらいはあっという間に過ぎてしまうと。この温暖化の例につきましても、十九世紀のおしまいに既にこの温暖化の問題はあるよということをアルレニウスという方が指摘しておられますし、一九四〇年ごろには、四〇年のちょっと前ですけれ
ども、カレンダーという学者が、
人間が今のように
化石燃料をどんどん使っていったら
地球は暖かくなってしまうよということを警告しております。それから一、九五八年ごろ、キーリングという人がハワイではかり始めて三十五年、ようやくデータが出て、これは大変だという問題がわかる。それまでにもう半世紀近くはたっておるわけです。
この前、私
どもの
研究所に、前英国首相のサッチャーさんがお見えになりまして、私は
地球環境の問題を
お話したわけですけれ
ども、そのときに質問をなさいまして、一体どれくらいになったら、あと何年たったらこの
地球が本当に暖まっているかということがわかるんでしょうかと。その
答えは、私がIPCCのレポートに書いているんですけれ
ども、十年たっても実はわからない。果たしてこれが人為的に暖まったのか、自然の暖まりなのかわからないと。そういうことが書いてございまして、サッチャー前首相は、私が非常に心配しているのは、そういう科学の進歩に
人間の行動の方が速過ぎて追いついていけない、だから科学が幾ら頑張っても間に合わないんじゃないかということを私におっしゃいました。そういうことで、この問題というのは非常に科学自身に期待する。こともありますけれ
ども、今何かの手を打つということが非常に大切かと思われます。
この長期的視野ということにつきましては、今あちこちのところで短期的な、例えばGNPを伸はさなきゃいけないとか、いろんなことがございますけれ
ども、まさに
地球環境の問題に関しましては私は長期的な視野が必要であるというぐあいに思います。
私は、あと残りを二つの課題について
お話をしたいと思います。
一つは、
日本はどういう形で国際貢献をしなきゃいけないか、またできるであろうかということでございます。
日本が
地球環境問題に関して十分な国際貢献をしなきゃいけないという
理由につきまして私は四つあると思っております。
一つは、
経済基盤を
世界の
生態系に負っている。
日本のGNPは
世界の一七%といった数字がありますし、OECDの二一%といった数字もありますが、いずれにしましても、
経済活動の中で我々はいろんな形で
世界の
生態系に負っている。我々は最近グローバルコモンズ、
世界の共通財産という言い方をしますけれ
ども、それは
大気であり海であり、それから
森林であるわけです。そういうものを我々は言ってみればただで利用しておるわけです。
例えば、じゃどういう関係があるのかといいますと、一番いい例が何といいましても炭酸ガスの排出量でございますね。最近の計算では、
日本は
世界じゅうの炭酸ガスの排出量の五%程度を占めている。
人口が六十億人のうちの一・二億人としますと二%近いでしょうか。それに比べまして二酸化炭素の排出の方は五%近いということですから、これは過度に利用している。それに対する
コストを支払う必要があるだろうと思われます。例えば、自動車を輸出してお金をもうけるにしましても、それは自動車が向こう側で
大気を汚染しておるわけです。それに対して通常の取引以上のお金を払う必要がある、これが第一でございます。
第二の貢献の
理由といいますのは、私はIPCCの第二部会、先ほど申し上げました
影響の部会に属しておりまして、
地球環境が変動したらどういう
生態系の問題があるかということを報告したわけでございますけれ
ども、例えば
農業生産は何とかかつかつにやっていけなくはない、そういう結果になっています。例えば、炭酸ガスが二倍になって温度が非常に上がったときに、
農業生産はかつかつにやっていけるかもしれない。ですけれ
ども、このモデルの中に入っていない嵐の話だとか干ばつの話だとか、そういうものを考慮すると非常に危険な
状況がある。
また、自然
生態系とか林業につきましては、南の方からどんどんどんどんと木が枯れていき、そして北の方に上がっていこうにも自然植生の歩みの速度というのはせいぜい一年間に数百メートルしか上がっていかないわけですね。それに対して、この気候帯の変動というのは一年間に約十キロの速さで進んでいく。東京から鹿児島の間は五百キロぐらいの緯度の差がございますけれ
ども、五十年ぐらいになると東京と鹿児島が入れかわっていくということになるんだけれ
ども、一方木が移っていくスピードというのはせいぜい数百メートルぐらいしかいかないといいますから、植生が大きく変わってくる。
日本は、農林水産物の輸入は非常に大きいものがございまして、例えば
農業生産物につきましては、オリジナルカロリーで考えて三〇%しか自給できていないという
状況でございます。
天然ゴムの
世界じゅうの貿易量の一七%を占めておるとか、それからそばとか、エビとか、皆さんがお考えになっただけでも多くのものを輸入しておるわけです。こういうことに対して、
生態系が危機に瀕している
状況、もしも危機に瀕するような
状況に陥りますと
日本への
影響は確実でございます。そういう面で自国の安全の面から予防的な、また保険的な
コスト、お金の支払いもしくは何かの形の
コストを支払う必要があるかと思われます。
それから三番目が、
外交の切り札として
環境に関する十分な力、見識、知識を持つ必要がある。今現在、二酸化炭素抑制のことで
世界じゅうが
会議を開いておりますけれ
ども、こういう中でその抑制をどういうぐあいにしていくかということが非関税障壁の問題であったり、それから国際競争力に関連する問題であったり、政治的なリーダーシップをだれがとるかといった問題に関係してきております、それから、特に南北の調整の問題、これは先進国の方からいいますと、もう南の方の
人口ふやしてくれるな、
エネルギーをそんなに使ってくれるなということでございますが、南の方からはこれは北の方からの押さえ込みであるというぐあいに言っておりまして、そういう
環境問題が
世界の
外交の中の切り札として使われている
状況でございます。
それから、先ほ
ども申し上げました
環境影響が厳しくなりますと、
環境難民の問題が問題になってくる。
日本は難民の問題に対しては非常に弱いところがございまして、こういう面から見て
地球環境問題に関する
発言力を強めておく必要があるだろう、これが三番目でございます。
そして最後に、これはきのうきょうの話ではございませんが、リーダーシップをとる必要があるだろう。それは、
日本はこのように
経済的な頂点に上り詰めようとしておりますけれ
ども、そういう国は今まで歴史上、知らず知らずのうちに頂点に上り詰めて、必ず何か残して衰退していくといいましょうか、次のところがそれをオーバーウェルムするという形になっております。イギリスは産業革命をやりましたし、
米国は大量
生産の文明を残した。
いろいろございますが、それじゃ
日本に今何ができるだろうかということを考えますと、
地球環境の問題に取り組むということは国民がだれも否定しない。かつ
世界じゅうのすべてが歓迎する絶好の外題といいましょうか、題目といいましょうか、テーマであるかと思われます。そういう
意味で、
地球環境問題に対してリーダーシップをとるということは、歴史的に見ても非常に重要なことではないかと考えております。
以上、四つの
理由から、私
どもは国際的に貢献する必要があるだろうと私は考えております。
次の疑問は、
日本は果たして十分の国際貢献をしておるかということかと思われます。
貢献の仕方というのは、金を出すか汗を出すかもしくは知恵を出すかということでございますから、まず援助資金等の問題、それから国際
活動にどれだけ人を出しているか、三番目に科学
技術の問題でどれだけ貢献しているかということがあるかと思われます。
例えば、援助の面では、お金の多寡だけを見ますと十分の負担をしていると私は考えます。例えば
環境分野の一年間の援助の額ですけれ
ども、
日本は六百三十億円、これは一九八八年ごろの平均でございますけれ
ども、それに対して
米国は三百八十二億円ですから、
米国よりも数段の貢献をしているということは言えるかと。西ドイツが三百三十九億円でございます。それから、八九年から九〇年の間に三千億円の
環境援助をしようということで進んでおりますが、既にもう二年間でそれを達成するという
状況にございます。しかしながら、お金の多寡だけでは問題があります。
現在、多くの援助といいますのは御承知のとおり相手国の申請に基づいて援助をするわけでございます。これは
日本がやたらな口を出さないという面では非常にいい
政策ではございますが、とかく途上国は
環境の問題を一番最後にするということがありますから、いつまでたっても
環境の課題が上がってこない。ですから、これに対応するには援助の中でからっと援助の枠を設けて、そこに優先的な、向こうからのイニシアチブでの資金導入を図るという必要があるかと思われます。
それから、援助の問題で、私は非常に長期的な話をしておりますけれ
ども、非常に問題でありますのは、現在の援助の対象というのは、現在の西欧の大量消費、大量
生産文明を持ち込むための援助である場合が非常に多いということです。すなわち、まず最初に道路をつくる。道路をつくれば次は自動車を売り込める。自動車をつくれば当然そこでガソリンを使用することになり、汚染物質を出すといった形になります。もちろん、これが途上国の
方々の福祉のためであることは認めます。しかしながら、今例えばIPCCのレポートなどを見てもわかるように、二〇二五年といいますから、私
どもから既に一世代は変わっておりますけれ
ども、その時点になりますと途上国の
エネルギー使用の方が多くなります。そういう
状況でどんどんどんどんとこれを進めていったら
地球がもっわけはございません。
現在は、
世界平均の炭酸ガスの一人
当たり刀排出量というのは、
世界平均が一でございまして、
日本が二、中国は〇・五ぐらいですね。それから
アメリカは五・〇ぐらいですから、もし
アメリカ型の文明が途上国の中に全部入り込んだら大変なことになるということは明快でございます。ですから、こういった形の援助をどんどん続けていくのが果たしていいんであろうかということについても考慮していく必要があるかと思っております。現在、いろんな温暖化の枠組み交渉の中で新たな援助の資金の要求が途上国を中心に出ております。これは、ニュー・アンド・アディショナル・ファンドすなわち新しくて、そして付加的な資金が欲しい、現在我々はそういう資金をやっていないかというと、
世界銀行を通じたりUNEPへの拠出金を通じたりやっておりますけれ
ども、今の援助に倍する援助は多分必要になってくると思います。こういう面から、
経済的な面で非常に優位に立っております
日本が大いに貢献する必要があるかと思います。これが援助の問題です。
それから二つ目が、汗の問題すなわち人の問題でございますけれ
ども、残念ながらこれはまだ十分ではございません。私
どもよく国際機関へ行きますけれ
ども、その中で
日本人がどれだけ貢献しているかというと、御承知のとおり出資金がGNPに比べますと非常に少ないということがございます。もっともっと大使館にも
環境アタッシェといったものを置いて、今
環境をめぐる
外交問題はどうなっているかということに対する情報を集めなきゃいけませんが、
環境庁からワシントンに出ているのはたった一人で、例えばいろいろな産業
政策についてはジェトロがこういう情報収集に非常に寄与しておるわけですけれ
ども、それくらいのネットワークをつくっていく必要があるだろう。また、それぞれの、言ってみればロビーイングのようなものをする必要があるのではないかと思われます。
それから、
環境教育とか成人教育の重要性については余り言うこともないかと思いますが、一番大切なのは
地球規模の
環境問題につきまして長期総合的な
政策を立てる、デザインする能力がどこにあるだろうかということでございます。現在、現業を主とする今の
政策では、先ほど申し上げました援助の問題を考えていただければわかると思うんですけれ
ども、長期的に見て必ずしも正しい方向に行っているとは限りません。ですから、人類的な見地から百年をターゲットとしたような長期的なビジョンをだれがっくるかということは非常な緊急の問題かと思われます。この問題をどこでどの省庁が担当するのか知りませんが、省庁的な話じゃないかもしれません。この能力を育てるということは、外国と比較しますと非常に問題があります。きょうも、午前中NGOの話があったと思いますが、
米国のNGOはこういう
政策を立てて自分たちで
調査して、それを打って出る材料にしているわけです。
日本は残念ながらそういう力を持ったところは非常に少ない、もしくはない生言わざるを得ないと思います。
それから、貢献の仕方としまして知恵の問題、知恵の問題では
日本の公害
技術についてはその先駆性については言うまでもございません。一例を挙げますと、
日本には千八百とか言われている脱一硫
施設が
米国でも二百程度、欧州も二百程度ということですから、ああいう
酸性雨の問題が生じるのは言ってみれば当然でございます。我々は、それを苦しい、まあ苦しくはなかったのかもしれませんが、
経済成長の中で何とかやってきたわけですから、そういうノーハウもしくは制度的な問題をトランスファーするということも非常な貢献かと思われます。ただし、先ほど申し上げましたように私
どもの大量
生産、大量消費のやり方というのがいつまで続くものかということについては考えなきゃいけないし、我々の
技術がそれ以外のこれはオールタナティブテクノロジーだとか、もう
一つの道だとかよく言われますけれ
ども、自然に優しいエコロジカルな生活に果たして寄与するものであるかということについては十分考える必要があるかと思います。
残りの時間、私は自分自身が科学
研究面で仕事をしておりますので、果たして科学の
研究面でどういう
状況かということについて簡単に
お話をしたいと思っております。
地球環境の問題に関しましては、科学
研究がキーでございます。私は、その昔アインシュタインが原爆に関して
発言したと同じように、それが非常に政治的な
意味を持っていたように、
地球環境の問題に関しましては
科学者がもう少し躍り出る必要があるかと思っております。お手元に私の論文がございますけれ
ども、この二十年の間にようやく人工衛星から見た
地球の姿がわかり、オゾンホールが発見され、それからスーパーコンピューターを利用した百年後の天気予報がわかりといった
状況でございまして、先ほどのサッチャーさんの話じゃございませんけれ
ども、IPCCのレポートを見てもまだまだわからないところが多いと。また、わからないから何もしないということではもちろんございませんけれ
ども、さらに不確実性を少なくするために科学
研究をやっていかなきゃいけないかと思われます。じゃ今までどおりの科学
研究をやっていっていいのかということがあります。
科学といいますのは、基本的に個人の好奇心をいかに満足させるか、もしくは人類の好奇心をいかに満足させるかということから始まっているわけで、言ってみれば野方図にほっておいた方が科学は進歩するわけです。しかしながら、
地球環境の問題といいますのはそういう問題ではありません。この十年、二十年の間に科学を結集して取り組まねばならない問題でございます。ですから、好奇心だけでやることではなくて、十分それをマネージし
一つの方向に持っていく必要があるかと思います。
三番目に、科学
研究の中で考えなきゃいけないのは、きょうも私はここに来ておりますように、
政策の問題と科学の問題というのは非常に密接な関係がある。その中でだれが科学の問題をわかりやすく
政策決定者もしくは民衆にといいましょうか一般の方に
お話ができるのかと、そういった役目も非常に重要になってくると思います。
お手元に小さな表がありますが、私は、IPCCのレポーートの中で、これは
一つの報告書でございますが、
世界じゅうからレポートを取り寄せまして、それでこういう
結論になっているということを書いたわけですけれ
ども、果たして
日本人の論文がどれだけあるかという数字をそこに述べております。そういうワーキンググループⅠといいますのは、温暖化というのが果たして本当かどうかということを検討する部会でございます。
ここにありますように、
一つの報告書に対して報告を担当した人は
世界じゅうで三十五人おります。
日本人はそのうち一人です。ただし真鍋淑郎先生とおっしゃる
アメリカのNOAAにいらっしゃる先生が非常な活躍をしておりまして、その先生を入れれば二名ということになります。それから報告への貢献者、これはこういうデータがあり、これはこういうことを間違っているからこう書いたらいいんじゃないかという、そういう助言をした人が二百八十人、
日本人は九人でございます。それから報告評価者、そのできた報告書をレビューするんですね。ピュアレビューといって、これは本当に正しいかどうか、そういうことをやった人が二百四十一人いますが、
日本人は九人。それから、一番大切な、一体全体このレポートの中にどれだけ
日本のレポートが引用されたかという点でございますけれ
ども、私が数えたところ千二百の論文がございますが、残念ながら
日本の論文は八編でございます。六人の人が八編の論文を出している。どうしてこういう
状況になったのかということが次の問題でございます。
いずれにしましても、科学的知見に対する貢献は非常に貧しいと言わざるを得ないということでございます。また、こういった作業は必ずしもその論文があるとかないとかいう話だけでなく、
日本の論文が
日本語で書かれているとか、それから、国際的な
科学者の社会で顔がきいているとかきいていないとか、リーダーシップをとって割りつけをする立場にいるとかいないとか、いろんなことがきいてきております。そういうわけで、私
どもの
地球環境に関する
研究はまだ国際化しておらないと。
現在、温暖化の問題に関する
研究というのは
米国で七〇%されていると言われているわけです。その
米国は御承知のように科学的な解明が済むまでは政治的な手は打つべきではないということを言っているという
状況が、これはひょっとすると彼らはさらに何かのデータを持っているのかもしれませんし、彼らはそういう力を持っていながら、持っているから
外交的に強く動けるというところもあるかと思います。そういう面で科学
研究が政治に非常に関係してきているということかと思われます。
その基盤は果たしてどうなのかということで次の表がございまして、言ってみれば金と基盤がどうなっているかということでございますが、
米国と比較しますと、
地球環境に関する
研究費は私は十分の一と推定しております。GNP
当たりにしましても六分の一ということで、金のかけ方は非常に悪いと。これは、
科学者はいつも金が足りない足りないと言うとサッチャー前首相も言っておりまして、私もその例から漏れないわけでございますけれ
ども、そういうところがございます。
それから、
研究施設を見ましても、きのうの新聞によると、横田基地に
アメリカからDC8、NASAの飛行機が飛入できて
日本のあたりの上空を観測するわけですけれ
ども、そういう飛行機が
アメリカに四十機あります。しかしながら、
日本は非常に小さな飛行機が二機しかない、そういう
状況でございますので観測をしようにもしょうがない。
それから、データベース。これは情報の独占と関連するものでございますけれ
ども、今、
米国は衛星データに関しまして
世界じゅうのデータをそこに集めるといったプロジェクトをやっております。我々が心配しておりますのは、こういうことによって情報の独占が起こらないかということでございますけれ
ども、一残念ながら
日本はこういうことに対するリーダーシップをとる力はございません。相当時間のかかる問題でございます。
最後に、私は、
地球環境の問題解決に向けて今後科学
研究はどう変わらなきゃいけないかということについて
幾つかのポイントを挙げております。時間もございませんので、そのポイントだけを挙げたいと思っております。
一つは、先ほどから申し上げておりますように、この問題解決に向かっていろんなオーガナイズする必要があるということでございます。これは現在、教育もしくは
研究自身が、タコつぼ
研究と言われているように、非常にパーシャルなところでしっかりやるということが
科学者の評価のポイントでございますけれ
ども、それがこつこつと集めたデータ、観測のようなデータでございますけれ
ども、こういうのは非常に地味で、
研究者の社会ではそういうことはなるべくやらないようにやらないようにと逃げておるわけです。
地球環境の問題は何もわかっておらないわけです。私はこれから御質問で、わかっているかわからないかということをいろいろ聞かれるかもしれませんけれ
ども、大半のことについてわからないという言い方しかできないのがほとんどです。そういうわけですから、観測のようなことについては地道な観測をどんどん続けなきゃいけない。そういうことに対する航空機であるとか、それから現地へ行って
調査をする体制――私
どもはいつもくだらぬことで文句を言うわけですけれ
ども、外国旅費が絶対的に足りません。フィールドの
研究、例えばマレーシアヘ行って
森林の
研究をしようにも現在は非常にわずかな外国旅費しかつかない。外国旅費といえば大体外遊であるというのが財政当局の見方でございますけれ
ども、今どきそんなことをやっている人はおりません。そういうわけで、フィールド
研究に対応できないような
状況が見られることもございます。
それから、人材の育成は、先ほど申し上げましたように、タコつぼ
研究じゃなくて総合的に物を見る
研究をやってもらいたいと思います。
それから、
一つ重要なことでございますけれ
ども、先ほどのODAを
研究部門にもう少し使えないかと。これは
研究なんかはODAの中で一番最後に回されるわけですけれ
ども、地道に一歩一歩百年の計をやっていくためにはこういった
研究が非常に大切だと思われます。そういうわけで、
幾つかの科学
研究につきましてのボトルネックはございますけれ
ども、これはまた質問の中で
答えたいと思っております。
私の陳述をこれで終わらせていただきますが、私の話のまとめをさせていただきますと、
日本は
地球環境に対する積極的な国際貢献をするべき立場にあり、かつできる
状況にもある。金とか
技術の面では相当の貢献はしておるけれ
ども、これにも相当の質的変化が必要である。それから三番目に、科学
研究の面では、今までの
研究と大分違った方向づけをしていかなければならない。私
どもはこれを分散型の巨大
システム科学として、いろんな人がいろいろな結果を持ち寄ってようやく
地球の姿がわかるという
状況でございますので、それをマネージしたり、それからいろんな人に号令をかけたりリーダーシップをとっていくという形の体制づくりが必要である。再度繰り返しますけれ
ども、
地球環境の問題での貢献は
日本の歴史的使命であるかと思われます。
以上でございます。