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1991-09-20 第121回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年九月二十日(金曜日)    午前十時十五分開会     ―――――――――――――    委員異動  九月六日     辞任        補欠選任      広中和歌子君     黒柳  明君  九月十九日     辞任        補欠選任      粟森  喬君     高井 和伸君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         中西 一郎君     理 事                 尾辻 秀久君                 下稲葉耕吉君                 赤桐  操君                 和田 教美君                 立木  洋君                 猪木 寛至君     委 員                 井上 吉夫君                 加藤 武徳君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 一井 淳治君                 翫  正敏君                 角田 義一君                 細谷 昭雄君                 三石 久江君                 矢田部 理君                 山口 哲夫君                 山田 健一君                 高井 和伸君    事務局側         第一特別調査室         長       下田 和夫君    参考人         ワールド・ウォ レスター・R         ッチ研究所所長 ・ブラウン君     (通訳 キャサリンスターリング君)     (通訳 吉国ゆり君)         国立環境研究所         地球環境研究セ         ンター総括研究         管理者     西岡 秀三君         朝日新聞編集委         員       竹内  謙君         津田塾大学教授 百瀬  宏君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査  (地球環境問題について)     ―――――――――――――
  2. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十九日、粟森喬君が委員辞任され、その補欠として高井和伸君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 中西一郎

    会長中西一郎君) 外交総合安全保障に関する調査を議題といたします。  本調査会は、「九〇年代の日本役割-環境安全保障あり方こをテーマとして調査を進めてきておりますが、本日はこのうち、地球環境問題について、参考人方々の御出席をいただき、御意見をお伺いし、質疑を行うことといたしております。  午前中は、参考人としてワールド・ウォッチ研究所所長レスター・R・ブラウン君に御出席をいただいております。  この際、参考人一言あいさつを申し上げます。  参考人におかれましては、二十二日までの短い滞在日程の中で講演活動などを精力的に進めておられなければならないとお聞きしておりますが、そのお忙しい日程を割いていただきまして本調査会に御出席を賜りました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、御造詣の深い地球環境問題について忌憚のない御意見をお伺いし、今後の調査参考にいたしたいと存じております。どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、ブラウン参考人から通訳時間を含めまして一時間程度御意見をお伺いいたします。その後、本来であれば委員一人一人が質疑をし議論を深めたいところではありますが、限られた時間の中でせっかくの機会を有効に生かすため、各会派の御了解を得て私の方で取りまとめ、調査会を代表して質疑を行うことといたしました。この質疑時間を一時間程度予定いたしております。  なお、通訳キャサリンスターリング君及び吉国ゆり君にお願いをいたしております。  御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、ブラウン参考人に御意見をお述べいただきます。
  4. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(キャサリンスターリング吉国ゆり通訳) 会長、どうもありがとうございます。  私といたしましては、本調査会発言をさせていただきますこの機会を得ましたことを大変に大きな喜びと存じている次第でございます。さて、ワールド・ウォッチ研究所と申しますのは非営利の研究のための一つの機関でございまして、ワシントンDCにその本部を置いております。国際的な理事会というものも持っておりまして、私どもの主な活動と申しますのは地球環境並びに環境関連の事柄につきまして研究をするというものでございます。  私どもの主な刊行物ですけれども、毎年出されます「地球白書」というものがございまして、これは日本でダイヤモンド社から日本語訳が出ております。また、本のシリーズも小学館の方から地球環境問題を題材にいたしまして出る予定となっております。また、二カ月に一回ではございますが、こちらのワールド・ウォッチ研究所日本支部の方から「ワールドウォッチ」という刊行物も出ております。  実は、今週は私にとりまして大変おもしろい一週間となっております。と申しますのも、週明け月曜日に、米国議会上下両院合同経済委員会で私は証言をする機会がございました。これは米国議会の中でも上院と下院が合同で開きます数少ない委員会一つということでございまして、その際には、私の方から国民会計制度というものを変えていく必要性について証言をしたわけでございます。  御案内のことと思いますが、日米とも会計制度の中には機械類償却というものは含まれるんですけれども天然の資本、例えば森林ですとか草地などは償却の対象にはなっておりません。ですから、こういうところを改めまして、もっと包括的な形でこういうものを現実的に加味できるようにしていくべきであるという認識がだんだんと高まってきております。そういうことで私はこの一週間を始めました。  本調査会のこの会議というのは、まさしく時宜を得たものであると私は考えております。と申しますのも、安全保障というものが再提起されているちょうどそのただ中にこの会議が開かれるということになったからであります。過去四十年間、国家の安全保障定義と申しますのはそのほとんどの国ではイデオロギー的な側面からとらえるというものでありました。しかし、冷戦も終えんいたしました中、この定義というのはだんだんと影が薄らいできたわけでございまして、だんだんと安全保障というのは環境生態面をも入れつつ定義をするべきであるというふうになってきております。  毎年、私ども地球白書の中でいわば地球身体検査というものをいたしまして、重要なサインというものを検査いたします。例えば、森林は毎年だんだんと減ってきておりますし、砂漠というものがふえてきております。また、作物をつくります土壌というのが地球上三分の一ほど減ってきているということ、そして成層圏のオゾン層というものもだんだんと破壊されてきているということが出てきております。また、温室効果ガスというものが大気中でその濃度がだんだんとふえてきておりますし、また、この地球上私どもがともに共有しております動植物の種の種類ですけれども、これも少なくなってきているのが見られるわけであります。また、すべての大陸酸性雨被害というものも見られております。さらに、大気汚染は数百もの都市では人間の健康に大変に危険な水準にまでなっているということがはっきりとしてきております。  そこで、こういうような状況趨勢として続いてしまったならば、覆すことができなければどういう状況になってしまうかということに関しまして、三つの例を挙げてお話を申し上げたいと思いまう。すなわち、このような趨勢が続いてしまうということになれば、人体に対しての健康面での影響も出てまいりますし、食糧生産という面にも悪影響が出てまいります。また、地球経済の動向というものに関しましても影響が出てくるということになるでありましょう。  まず、人間健康面にどういう影響が出ているかに関しましてお話をさせていただきたいと思います。  ソ連ですけれども、モスクワが出しました公式の統計によりますと、放射線関連被害を受けている人が三十万人ほどいるということで、チェルノブイリ事故というのはその一部でしかないということであります。また、ロサンゼルスですけれども、数千人の子供たちが十歳になるまでに恒久的な形で呼吸器が非常に悪影響を受けてしまう、損傷を受けてしまうということで、これは都市の空気を吸ってそういうことになってしまうということになっております。また、チェコスロバキアですけれども、一九七〇年からはがんになる率が六〇%ほどふえているということであります。また、アメリカ環境保護局が三月発表いたしました情報によりますと、オゾン層破壊されてきているということで、米国で向こう五十年間にわたっては皮膚がんによります死亡例がさらに二十万人ほどふえるのではないかということであります。そして、オーストラリアですが、もう皮膚がん流行病にまでなるぐらいの規模になってきているということであります。なぜならば、豪州というのは南極にありますオゾン層の穴、破壊されました穴のところに近いということで毎年その穴の影響を受けてしまうということで、紫外線の量がふえるという影響を受けているからであります。  環境破壊というのは、収穫時にもいろいろな影響を出してきておりまして、新しい作付ができます土壌というものが希少になってきているということ、そして新しい水源というものも農業利用のものが少なくなってきているということがあります。これは、環境破壊一つ趨勢というものが、先ほども触れましたけれども土壌浸食ですとか大気汚染、夏がより暑くなってきているというようなことで、食糧生産というものに影響を出してきているわけであります。一九五〇年から一九八四年の間を見てみますと、世界穀物生産高というのは毎年三%で増大いたしておりまして、これは世界人口の伸びを上回るものでありました。片や、一九八四年以降となりますと、食糧穀物生産というのは毎年一%未満というところにまで低くなってしまっておりまして、これは世界人口伸び率の二%を下回るものとなってしまっております。  先月、世銀の方から毎年出されます年次の世界開発報告というものが発表されておりまして、それによりますと、一九八〇年代を通しまして世界の四十カ国以上がその所得減という状況に直面しているということが記述されております。四十カ国以上となりますと人口八億人以上ということになるわけでありまして、その大半がアフリカラテンアメリカ諸国ということになっております。その中には世界でも最貧国というものも含まれておりまして、世界人口の六分の一を擁するというこられの国々には幾つかの共通点があるようであります。三つ共通点を挙げてみますと、まず第一に人口増加率が極めて速いということ、そして環境破壊が広範囲に見られているということ、そして三番目に対外債務に苦しんでいるということであります。このような三つ傾向というものが収れんをいたしまして、第三世界のこのような国々では大変に大きな問題となってきております。  このような環境破壊というものが、人類に大変に悪影響をもたらし得るという一つの考え方というのはもう既に仮設ではなくなってきておりまして、現実のものと化していると言えると思います。数百万人の人が健康面での悪影響にあえいでおりますし、世界多くの国での食糧の一人当たり生産というものも落ち始めております。そして、非常に大きな問題になってきており、所得が例えば八億人の人たちの場合はだんだんと減ってきているということもございます。ですから、既存経済システムというものが環境の面では非常にマイナスの影響をもたらしているという証拠はそろっているのではないかと思いますし、また、現在の人口増加率というものとあわせて考えますと、もうそれは維持できないものである、持続不可能なものであるということがはっきりとしていると思います。  そういう意味で、私どもがこの地球に望んでおります経済と、そして環境の未来ということに関しまして再考というものが必要になってきているのではないでしょうか。全地球的なこのような傾向をずっと見守っていらした方にとっては、経済的なこのようなシステム、今日存在するシステムはもはや機能しないということが明らかであると思います。  それでは、環境的に持続可能な全地球的な経済というのはどういうものであろうか、どんな見かけになるだろうかということについて、これからのお話の中で申し上げていきたいというふうに思います。そして、それを実現する上での日本の役割というようなことについても申し上げたいと思います。  ワールド・ウォッチ・インスティチュートにおきましては、過去二年間、同僚とともに、そのような環境的に持続可能な全地球的な経済はどういうふうなものかということに関して調査してまいりました。生態系の、エコロジーの原則を経済システムのデザインに適用しようという試みであります。人口政策はどうあるべきか、そして食糧生産はどのようにしていくか、そのような環境的に持続可能な経済の中でのエネルギーの確保はどうなるかということに関して考えてまいりました。  一九五〇年前に生まれた方々は、人口が二十五億であったものが現在二倍以上、五十億以上になったのを目の当たりになさったと思います。さらに、これから先を見通してみますと、人口が安定化するまでに七十億さらにふえるということが言われております。その影響はどうなるか、皆様御想像がつくことと思います。もはや問題は一家族が二人の子供を持つべきか否か、それ以上の子供を持つべきか否か、これは置きかえ出生率、今の人口を維持していくための置きかえ出生率ですが、一家族の問題ではなくて、地球という惑星が二人以上の子供を持つ家族を維持していけるかという問題になってきているわけであります。この答えは、この地球という惑星は、二名以上の子供を持つ家族は維持し切れないというのがその答えでございます。そういう意味で、各国レベルで一家族二人までという政策を維持する、奨励すべきだというふうに考えます。  農業に目を向けてみますと、土壌浸食の問題、それからもっと系統的に包括的に栄養素を循環させていく、リサイクルさせていく、再生させていくということを考えでいかなければなりません。また、害虫を規制していくために害虫駆除剤をもう少し考え直し、もっと包括的な統合的な害虫駆除、規制の方法を考えていかなければなりません。  最も大きな変化が見られるとすれば、それはエネルギーでありましょう。人口を安定化させていくためには、化石燃料の消費を減らしていかなければなりません。そうしたならば、地球経済を維持していくためにどのようなエネルギー源を使っていくかということが問題になります。可能性としては原子力エネルギー、それから太陽エネルギーでありましょう。私ども調査によりますと、核エネルギー原子力エネルギーは、長期的に見て維持することが可能ではない、存続し続けるものではないというふうに見ております。日本等は非常に多くのそれらに対する依存というものが見られますが、長期的に見てこれは続くものではないという結論に達しております。原子力に関しては、幾つかの調査を行っております。その経済的な側面安全性側面、それから兵器拡散の問題。数年前に原子力、その市場のテストという調査を行ったわけですが、政府の補助金、助成がなければこれは存続し得ないという結論に達したわけであります。  サッチャー首相が、この調査を、一年半前にまさにテストしたわけでありまして、イギリスにおきます電力会社民営化ということに際してこれを試してみたわけです。電力会社原子力発電以外のものについてはすべて売却可能であったわけです。原子力発電をしているものについてはだれ一人それを入札して買おうという人がなかったわけです。そこで、工夫して考えた結果、これをただで、無料で提供しようということをしてみたわけです。ところがだれもそれを買いたがらない。まず第一に、その核廃棄物の処理が非常に大変であろうということがその理由一つ。それからもう一つはそれを閉鎖していくことにまつわるコスト、これを負担したくないということが理由でありました。  さて、来月になりますとウクライナの物理学者のチュルネセンコという科学者がある統計を発表する予定でございますが、その研究の結果と申しますのはチェルノブイリ関係で一万人ぐらいの人が死んだのではないかということであります。これは放射能に対しての被曝で亡くなったということです。しかし、この死亡の数というのはまだまだ始まったばかりであり、これからふえていくというふうにも出てくる予定でございます。  私どもの感触ですけれども、もしまた、フランスであろうとも日本アメリカ世界のどこかで大きな原子力絡み事故があったならば、もうそれで世界における原子力発電というものは終わりになるのではないかど思っております。近年、世界各地での原子力発電に関しましていろいろ私ども調査をいたしましたし、また兵器拡散という問題に関しましても調査をいたしましたことで、その脅威はまさしく本当の脅威になっているということが言えると思います。この場でるるこのような点についてお話はできるんですけれども、むしろ私はそれよりも太陽エネルギーという一つの選択肢についてお話をさせていただきたいと思います。と申しますのも、太陽エネルギーこそがこれからの地球を考えるに当たって最も希望が持てるものと見ているからであります。  太陽エネルギーと申しますのは、さまざまな形態をとり得るものでありまして、水力である場合もありますし、風力、そして薪炭などを使う場合、さらにアルコール系エネルギー源、例えばサトウキビというものもありましょう、また農業廃棄物というものもありますし、太陽熱というものもあり、さらには太陽光、光の電池というものもございます。そこで、私はこの場では二つの形の太陽エネルギーについて御説明をさせていただきたいと思います。風力エネルギー太陽熱エネルギーであります。  今日、世界発電電力供給源といたしましてはその五分の一が水力発電という形態をとっております。しかし、当方から見ますと風力が持っております潜在性というものはそれをはるかに凌駕するものなのではないかと思われます、カリフォルニア州ではこの風力を使います発電施設幾つかございまして、その発電コストというのは一キロワットアワーに対しまして九セントということになっております。片や原子力発電になりますと、同じカリフォルニア州ではキロワットアワー当たり十二セントということ、そして石炭火力発電になりますとキロワットアワー当たり六セントとなっております。このカリフォルニア州では百万人以上の人がこの風力発電施設の方から発電を受けているということになっておりますが、カリフォルニアは全米で風力潜在能力ということから見ますと第十六位ということになります。あるアメリカ会社USウインドパワー社ですけれども資本市場の方から風力発電の投資のために五億ドルほど調達しております。  しかしながら、最も大きな潜在性と申します技術というのは、そしてこれは多分将来に向けましてのエネルギー経済という面から見ますと、世界一つの中心をなすその軌跡となるというふうに思われておりますのが太陽熱ということになります。これは反射鏡を使いまして太陽光を集めます。そして、その集光されましたものが液体を通して蒸気という形に転換させられます。カリフォルニア州では、最新の太陽熱発電施設というものは太陽光の二二%を電力に転換しております。しかも、コストキロワットアワー当たり八セントということになっておりまして、この技術によりましてその地域住民五十万人の電力必要量というものが満たされております。  こういうような形で、安価に太陽エネルギー電力に転換していけるということで、しかもそれを水素系燃料という形に転換ができるわけであります。大変にこれは胸躍るといいましょうか、エキサイティングな出来事になるのではないかと思います。この水素系燃料に転換していくということになりますと太陽光エネルギーというものを貯蔵することができます。また、非常に効率よく太陽エネルギーを運搬できるということにもなります。  世界人口密度が非常に高いところと申しますと、そのほとんどのところは太陽の光が非常に豊かに降り注ぐ地域に近接していると言えると思います。アメリカの場合ですと、南西部ということになります。またヨーロッパの場合ですと、例えばスペイン南部ですとか、アフリカの北の沿岸部ということになります。ソ連の場合ですとアジア地域にあります共和国ということで、インドになりますと北西地帯、これはほとんどが砂漠となっております。中国の場合は中部、そして北西地域ということになります。例えばアメリカの場合ですけれども、このような太陽熱発電施設というものを太陽の光が非常に豊かに降り注ぎます南西部州の方でつくりまして、それを直接的に、例えば電力という形で発電をする、それを送電をするということも考えられるでありましょう。人口密度の高いところにそのような形態で運ぶ、または水素系のものにいたしまして既存の、例えばテキサス州とオクラホマ州などを結んでおります天然ガスパイプラインというものを使いまして、このような形態で運んでいくということができるわけでありまして、この場合は人口密度の高い北東部の方にこれを運ぶことができます。  ヨーロッパの場合ですと、この太陽熱発電というものは、例えばスペイン南部にその施設をつくるということで、そこからヨーロッパ送電網というものに直接供給をし、そこからすべてのヨーロッパ諸国発電をするということもできるでありましょう。または代替案といたしましては、アフリカの北部の沿岸沿いの方からその電力を海水の地下のケーブルを使いまして地中海を渡り供給するということもできますし、または水素系形態にいたしましてそれを運ぶということもできるでありましょう。こういう場合ですと、既に既設の北アフリカ大陸ヨーロッパ諸国を結んでおります天然ガスパイプラインというものを使えばできるわけであります。水素系のものとなりますと、御存じのとおり、非常に容易に輸送用燃料に使うことができるわけであります。ですから、電力という形、または水素系のものという形態をとれば輸送から鉄鋼の生産に至るまで近代的な産業社会国々経済を賄っていけるだけのものは十分に供給できると思っております。  こういうような面で、大変に興奮を禁じ得ない部分と申しますのは、水素燃料となりますと、その副産物が水蒸気であるということで環境面での悪影響破壊というものはもたらさないということになるという点であります。従来型のものと比べればということでありまして、炭化水素などに比べても少ないわけです。そういうようなことで、太陽熱発電施設太陽光が非常に豊かに賦存しております地域の方に設けて、そして太陽エネルギーというものを電力に、例えば水素という形に転換していく、そうなりますと、日本はもっと世界エネルギー経済の面で以前に増して中心的な一つの役割を果たし得るという一つ機会があると考えております。石油の時代よりもということであります。  日本の場合は、石油の経済ということになりますと、中心的な役割という意味では十分に確立ができなかったのでありますが、太陽エネルギー水素という形で世界エネルギーという形態が確立したならば、もっと中心的な地位というものを占めもことができると思っております。しかし、現在の日本と申しますのは、その経済的な面と政治的な面でのギャップというものに直面しているのではないでしょうか。経済面での影響力対政治の面での影響力との間には開きがあるようであります。  現在、世界経済を見てみますと、日本経済というのは第二位の地位を占めております。そして、貿易という面では国際的には日本が非常に指導的な立場に立っておられます。世界の銀行ということを見ましても、日本の銀行が世界最大手十行を占めているということになっております。また、国際的な開発援助の流れということを見てみましても日本が第一位、また国際的な投資資本ということでも日本が第一位ということになっております。戦後の早い時期は別といたしましても、今日の日本ほど世界経済に支配的な立場を持つに至った国というのはないのではないでしょうか。片や、この経済力というものがまだ政治面でのリーダーシップ、指導力にはどうもなっていないようであります。本調査会も、もっと集中した形でこのような問題を取り上げていただきたいと考えております。  そこで、先ほども申し上げましたように、地球を対象にいたしまして、毎年いわば身体検査というものをするわけでありまして、そこでの予測というのは毎回状況が悪化してきているということであります。いつの日か、私どもといたしましても、この地球白書の中でもう少し明るい基調で記述ができればと考えているわけであります。すなわち、環境の劣化というものを覆すことができたということを書きたいと考えております。  そういうことを実現させるためには、どこかからリーダーシップというものが必要になるわけであります。そして、日本がそのリーダーシップを示すことができるのではないかと考えております。ワシントンは、もう既にこの地球環境面での指導力を発揮する能力というものはないと考えております。現在、必要とされておりますのは、国際的なリーダーシップで地球環境破壊というものに対応するということで、これは、ちょうど第二次世界大戦直後のリーダーシップ、地球の戦時中の破壊というものに対応してリーダーシップが必要であったと同じようなものであると考えております。当時は、米国がマーシャル・プランをもってこの戦時中の破壊というものを復興させるべくリーダーシップを示したわけであります。今や経済面での破壊というものを覆していくためのリーダーシップをだれかが名のりを上げていただかなければならないということで、いろいろ明らかな理由をもちまして、私はこのリーダーとなる候補者といたしまして日本を考えております。  さて、最後に一つ例を申し上げたいと思うわけですが、来年六月にリオデジャネイロで国連の環境と開発の会議がございます。向こう八、九カ月になるわけですが、何らかの今、環境に対する刺激、環境対策という中での刺激が必要とされております。今、決していろいろ順調に進んでいるわけではありません。  そこで、一つの提案をしたいというふうに思うわけですが、日本がここ十年の森林破壊という現象を改善していくための目標を掲げてはいかがでしょうか。これはすべてが賛成し得る一つの目標であると考えます。しかも、これは開発援助という形で何百億ではなくて何十億の規模でできる問題であります。第三世界に対していろいろな提案をさせるのもよいかと思います。この森林破壊の進行を逆行させるというためにどういう提案ができるかということを第三世界に問うてみるというのも一つの手段でありましょう。そういうことをもし達成できたならば、地球環境破壊、これを改善することができるのだという希望も見出すことができましょう。いわば日本版の環境マーシャル・プランであります。そういう意味でここにお座りの同僚の方々にぜひそれをやっていただきたいと申し上げたいと思います。そういう時期が来たというふうに思います。また、日本がその経済力と政治的な影響力の上でのギャップを埋めていくという上での役割を果たしていくという一つの例になるというふうに考えます。  会長、きょう参考人としてお話し申し上げられたことを大変感謝いたしております。大変光栄にも存じております。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  5. 中西一郎

    会長中西一郎君) 貴重な御意見を承ることができました。特に、大変大きなポールを投げられたような感じでございますが、ありがたくお聞きいたしまして、我々調査会のこれからの活動の有力な指針にさせていただきたい。ありがとうございました。  そこで、私たちも参考人と同様の考えで地球環境問題を取り扱っておるんですが、そのような立場から順次御質問をいたしたいと思います。  お話をお聞きして、新しい問題点も我々の頭の中に浮かび上がっているんですけれども、それはそれとして後日の問題にしまして、当面私どもが整理しました問題について御質問をさせていただきたいと思います。  まず、土の問題、水の問題、空気の問題、よくわかります。ところが、ここのところ人類生存のための基本的な要素がだんだん悪化してきているということも御指摘のとおりで、例えば熱帯林を保守するためには熱帯林の過伐を制限しようとする動きがあり、また、これは何かで読んだんですけれどもアメリカ穀物生産一ブッシェルについて五ブッシェルと書いてありました。だから一トンについて五トンと言ってもいいんでしょう、表土が失われているということを聞いたことがあります。  そういう問題いろいろあるんですが、自然システムが持つ復元能力を超えるような破壊はしない、そういう営みを我々は産業活動でも生活行動様式におきましても打ち立てていく必要があるのじゃないか。そういった意味では、知性のあり方、インテリジェンスのあり方ですけれども、この重大な問題に気づくということと、今いろいろ御提案がありましたが実行するということが問われていると思います。この知性のあり方の転換というような点についてベルリンの壁が崩壊したような何かを期待したいんですけれども、お考えがございましたらお伺いいたしたいのです。
  6. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(吉国ゆり通訳) 今おっしゃった問題は私も何度も考えたことのある問題であります。特に、地球白書の九二年版の最後の章を今書きつつあります。その中で考えていることであります。  社会的な変化をもたらすためには、二つのことが考えられましょう。一つは新しい情報が出てくる、もう一つは新しい経験を人々がするということであります。  新しい情報の一つの例としては、フロンガスの例があります。科学者がフロンガスのためにオゾン層破壊されていると言いました。その結果、紫外線の影響世界のいろいろな生物、人間を含む生物に悪影響が出てきていると言いました。そしてその結果、フロンガスの利用をだんだんに減らしていこうということが始まったわけであります。不思議なことにオゾン層をだれも見たことがない。オゾン層破壊はもちろんのこと見たことがない。それなのにこの新しい情報をもとに、この十年間に出てきた新しい情報で人々が行動をとろうとしたこの現象であります。  それでは、新しいその経験をもとに人々がある行動をとる例の方を一つ申し上げたい。今、新しい情報によって人々が行動をとる例を申し上げたんですが、今度は経験という方の例を申し上げたいというふうに思うわけです。多くの調査原子力発電についてなされました。そしてその中で、原子力に余り長期間依存するならばあるとき必ず事故があるだろう、そう述べた調査があるわけです。国の中には、この調査をもとに原子力発電に依存するのはやめようと決定した国があります。それから、国によってはチェルノブイリ事故、これを見た結果やめようと思った国があります。これも国によっては情報だけを根拠にやめようとした国、それから国によっては経験を目の当たりにして初めてやめようと思った国、二種類の国があるわけですが、その調査が述べたようにチェルノブイリ事故があったわけです。そしてこれからも、いつ起こるかわかりませんが、同じような事故が必ずやあるでしょう。
  7. 中西一郎

    会長中西一郎君) では、次の問題よろしいですか。  この二十年間の環境を守る闘いは敗北であったというようなことを参考人がおっしゃったことがあるんですが、各国政府また日本の政府の役割も御指摘のとおり大変大きい、よくわかります。  そこで、国連といいますか、国際的な機関でこういった問題にもう少し力を入れて対応できるようなことを期待し、また日本としてそれにできることはしてまいらなければならないと思うんですが、今ワシントンはどうだとおっしゃいましたが、ニューヨークの国連がこういったことをどう受けとめておられるか。我々としては国連に期待したいという気持ちがあるんですけれども、また国連に対して協力もしたいと思うんですが、そういう考え方はいかがでしょうか。
  8. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(キャサリンスターリング通訳) もし、国連の場で私がきょうのようにお話をさせていただくということであれば、私は同じような形でお話をしたのではないかと思っております。私はたまたま東京に参っているわけでして、日本国政府に対しましてもっと目立った形での指導力というものを発揮していただきたいということを御要請しているわけであります。  疑いもなく、我々が直面しております種類の問題ということにかんがみ、国際的な解決というものがもっと必要になってくると思います。これがフロンガスの漸次撤廃であろうとも、または地球環境の安定化のための合意であろうとも、または地球上の生物学的多様性というものを保持、保存していこうという目的のものであろうともということで、もう既に一国が一方的にできるというようなものではありません。そういう意味で、国連というのは大変に重要な役割を担うべきであると考えております。  二番目に、国連の平和維持面での役割というものが、もしさらに強化できれば大変に重要になってくると思います。  きょう午後、自衛隊の平和維持に関係いたします役割について強化をされるための論議というものがまた開かれるというふうに私は承知をしておりますが、もしこの国連の平和維持の役割というものが強化され、各国政府が非常に大きな形での現役の恒久部隊というものをもう持たなくてよいというふうに思うところまで強化ができれば、国連の役割ですが、たくさんの資源がその面から自由になりまして、この資源を使いまして過去数十年の間余りにも無視されてまいりました環境問題や社会問題というところに振り分けることができるのではないかと思っております。ですから、国連が世界で平和を維持するという意味で助けるということは極めて重要であると思っておりまして、なかんずく安全保障というものの再定義という意味では、国家間がみずからの国の優先事項というものを再考する、組みかえるという意味では非常に中心的な役割を果たし得るのではないでしょうか。  この点での私の意見をまとめさせていただきますと、次のようなことになります。  日本は、このような面で非常に大きなリーダーシップというものを示すべきであるということ。なぜならば、時間がもう余りないということがあるからです。環境破壊というものはより多くの地上の地域経済の衰退というものをもたらしてきておりまして、この二つが相乗効果的になってしまいますと本当に大きな危険というものが生まれてしまうわけであります。そういう意味で、日本に何かイニシアチブをとっていただき、決定的な形での指導力というものを発揮していただきたいと思うわけであります。ゆえに、私は日本が一方的に、例えば地球森林の伐採をとめるためのイニシアチブを推進していただきたいということを先ほど申したわけであります。  国連はその性格上、大きな形で、そして決定的な形で動くということはなかなか難しいものであります。例えば、おもしろいことに戦後のマーシャル・プランですが、あれは国連が推進したものではありませんでした。もし国連の動きを待っていたならば、マーシャル・プランというのはなかったでありましょう。ゆえに、日本がイニシアチブをとっていただき、私が先ほど申しました種類のものを発揮していただければ、非常に適切なものになるのではないかと思います。  もちろん、とは申しましても、国連の役割のさらなる強化というものは、皆が協力をし、望まなければならないことではありますが。
  9. 中西一郎

    会長中西一郎君) 時間の関係もありますので、余り多くの質問はできないんですが、一つ敬意を表しておきたいんです。それは、参考人環境安全保障、エンバイロンメンタルセキュリティーというような表現をなさっている。先ほど来のお話にも関連するんですが、大変重要な適切な表現であると我々はこれを大きく評価いたしております。  いささかとっぴかもしれませんが、自由と民主主義というのが勝利を得た。ソビエト・ロシアはああいうふうになっているということは言うまでもないことなんですが、その自由と民主主義という概念の中に、環境とか生態系とかいうものを組み込んだ新しい自由とか民主主義の概念というか、意味合いを打ち立てていくようなことが必要ではないかという、これはうなずいてくださっているからあえて申し上げているんですけれども、そういう気持ちがあるんですが、これについていかがでしょうか。
  10. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(吉国ゆり通訳) これも私が折に触れて自分でよく考えてみる問題であります。私はけさ環境に対するいろいろな脅威について申し上げました。気候の変化であるとか、土壌浸食であるとか、オゾン層破壊であるとか、種の多様性が失われる問題であるとかを申し上げたわけです。それに対して経済を再編成する、リストラクチャーするということを申し上げたわけです。  ただ、究極的に言うならば、これは人類の持つ、我々の持つ価値観の問題であります。自然のシステム、自然系に対して我々がどういう価値観を持っているか。そして、自然に我々の経済地球的な経済が依存しているわけで、こういう新しい価値観を持つならば、これは新しい政拍的な思想にもつながると言う人さえあります。環境論のことをこれは新しい宗教であると言う人もあります。そして、この宗教によって人類がお互いに結びつけられるのだと言う人もおります。どちらにせよ、これを信じなければ私ども環境安全保障ということを達成することはできないでありましょう。
  11. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまのお話とも関連するんですが、各国に経済計画とか経済政策の展開があるわけですが、その仕組みなんですけれども、GNPが主になっていく。そこで環境面でのマイナスの資産ですね、汚染も含めまして、マイナスの資産というのが経済計画の中に織り込まれていないような気がする。御著書の地球白書でも触れておられますが、生産というもの、商品のグッズ、よいものという意味でグッズの生産と、それからバッズの生産があると思うんですが、そのバランスシートというものを考えておる、そういう経済計画はまだどこの国にもない。OECDのどこかで研究なさっでいるという話は聞きますけれども、このことについてもし御見解があれば承りたい。
  12. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(キャサリンスターリング通訳) まさしく今の点というのが、今週の頭に私が合同の米議会の経済委員会の場で、その公聴会で話し合われた主題ということになったわけであります。  明らかに、既存の会計勘定制度というのではハンディがあるのではないでしょうか。すなわち、天然資本償却というものは取り入れられていないというのが問題であります。  例えば、アラスカの沖合いで油漏れが、油濁という問題が発生いたしましたとき、GNPは実際には上がってしまいました。なぜならば、油の流出の洗浄をする、クリーンアップをするということで大変に費用がかかったということで、これがGNPを押し上げる効果を持ってきたわけであります。  例えば、ある国がすべての木を伐採いたしましてそれを丸太なり、または紙パルプというために売ったといたしますと、国民勘定の中では非常に大きな成功例となりまして、経済成長を押し上げるということになるわけなんですけれども環境面から見ますと極めて大きな破壊という結果が生じるわけであります。ですから、もっと完全な形の経済の会計勘定システムというものが必要となっていると思います。経済学者が言いますところの外部性というものを加味できるようなものでなくてはなりません。  大気や水質の汚染や汚濁、また表土がなくなるという問題、森林の伐採、環境の気候の変化に対しての悪影響、また人体に対しての悪影響経済活動に対しての影響というものを考慮しなければなりません。そういうことを考慮しない限りは、進歩というものが何なのかということに関しまして誤った見方を持ってしまうのではないでしょうか。
  13. 中西一郎

    会長中西一郎君) もう二問ばかりお聞きしたいんですが、次にNGOの活動についてなんです。  日本の政府あるいは議会に対する御期待といいますか、御要望はよくわかったんですけれども日本の民間活動というものを見ていますと、何かほかの先進国に比べて比較的に見劣りがするというような感じを抱くんですけれども、第三者として、今、日本の政府に対する御期待はあったんですが、日本の中のNGO活動をもっと盛り上げていくためにも、御忠告で結構なんですが、何かありましたら伺いたいと思うんです。
  14. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(吉国ゆり通訳) アメリカの第二次世界大戦後の歴史を振り返って見ますと、幾つかの主要な社会運動というものがありました。その中の一つは人種差別をなくしていこう、また、女性に対するより平等な扱いをしよう、そして最も最近のものとしては近代的な環境に関するいろいろな運動がございます。リーダーシップが出てきた。それをリードしていたのは政府でもなければ教会でもない、また労働組合でもありません。これはNGO、非政府部門の一般の利益を代表する利益団体であります。これは歴史的にもアメリカがかなり長く、非常に大きな人数を抱えた利益団体というものがございます。五十万ほど抱えたものもございます。これが常にワシントンにロビイストを抱えておりまして、議会に対して、ないしは行政府に対して働きかけております。  日本はちょっと状況が異なっております。日本は単一民族であり、それから非常に長い間二つの圧倒的な支配力を持った部門を持っておりました。それは政府部門と企業であります。そして、そういう中でNGOはなかなか発達しなかった。また、環境グループ一つ見ても何百何千人という規模のグループはございません。  アメリカに目を向けるならば、国連の環境計画よりも大きな予算を抱えた利益団体がございます。ナショナル・ワイルドライブ・フェデレーション、これなどがそうであります。そして、その予算は九千二百万ドル。一方、国連の環境計画の方は四千六百万ドルでございます。そういう意味で、長い伝統としてこういう利益団体を抱えており、環境活動の中でも彼らが触媒的な働きをしてきた、そして国際的にも活動をしてきました。  日本のNGOはもっとずっと新しいものであります。そして、環境的なグループを見ましても数もアメリカに劣っておりますし、その抱えている資金、資源を見ても少ない、経験も少ない、政治的な影響力も少ないものでございます。  しかしながら、今回私はここ日本に参りまして、一つのエキサイティングな発展、進展であると見ておりますのは、こういうグループの数が非常にふえてきていること、ふえつつあること、また国内的にも国際的にも活発化しつつあることを見て非常にエキサイティングだというふうに思っております。七〇年代のこういう利益団体の数と今とを比較するなら数倍になっていると言えましょう。
  15. 中西一郎

    会長中西一郎君) 最後の一問なんですが、これにお答えいただいて、なお言い残されたようなことがございましたらつけ加えていただきまして、御退出の時間は参考人にお任せいたしますので、最後の質問に入らしていただきます。  総合的な戦略が必要だと、そうでないと環境問題は解決できない、それから日本役割についても御指摘がありました。  そこで、文明という、シビリゼーションという言葉があるんですけれども環境保全型文明というような一つの理念を打ち立てることはいかがかと。  それから、これはもう言うまでもないことなんですが、地球的規模での自然生態系の保全というものと、それから戦争と平和という意味における平和を両立させることがこれから必要なんではないか。  それと、今の環境保全型文明の中身なんですけれども、やっぱり新しいライフスタイルのようなものが要るんではなかろうか。私の言葉で言いますと、野生と文明をうまく両立させるようなライフスタイル、余り都市型に走り過ぎないとか、農山村でも文明は享受できるとか、そういうような野生と文明の両立というのは言えないだろうかと。  それから、先ほど申し上げましたが、環境面での汚染という負の資産、マイナスの資産を残さないような経済計画、経済政策、これは各国相当努力を要すると思いますが、何か一つのそういった経済計画のやり方の構築を検討していく必要があるんではなかろうか。  それともう一つは、お話がございました太陽光太陽熱水素の利用、いろいろお話がありました。化石燃料からの脱却ということに相当なエネルギーを注ぐ必要があるんではないか、日本でもやっていますが。  これは私個人の情報なんですけれども、ボストンで八月の上旬にエクストラオーディナリーサイエンス、IEEE、電気電子学会ですかの集まりがあった。その前にコロラドスプリングスで似たような集まりがあった。要するに、今までの物理学と違うような発想で新しいエネルギーを開発しようという動きがあるらしい、日本では余りないんですけれども、しかし何人がおられますが。そういうことも含めて、もしブラウンさんから情報を得られれば大変ありがたい。  以上、いろんなことを申し上げましたが、一応私の質問はそこまでといたします。
  16. レスター・R・ブラウン

    参考人レスター・R・ブラウン君)(キャサリンスターリング通訳) 私どもが直面しております問題というのは、やはり環境システムというものを見た場合、経済の面から見てももう。持続が不可能なものとなってきているということで、経済システムというものを環境的にも持続可能なものに変えていくということだと思うわけであります。しかしながら、そここで微調整をする、ほんのちょっとの調整だけで実現するものでは決してありません。ここで論じなければならないのは、やはり地球経済システム自体を抜本的に再編成していくということでありまして、これは決して容易なことではありません。全体的な変化ということを考えなければならないということで、どのような世代が直面いたしました挑戦と比べましてもこれは大変なことになるでありましょう。しかし、まさに私どもの世代が持続不可能な可能性の亡霊といいましょうか、悪夢というものを起こしてしまったわけでありますので、私どものこの世代で必要な調整というものをしていかなければならないと思います。次の世代を待つのであれば遅きに失してしまうということになるわけであります。  このような脈絡におきまして、ぜひとも私は、先ほど同様に日本に何がしかのイニシアチブをとっていただきたいと御要請したいと思います。そして、イニシアチブをとっていただき、私が先ほど申し上げました幾つかの点で確かにこういうような問題は覆すことができるんだということで世界に希望というものを与えていただきたいと考えております。  包括的な戦略が必要だという会長のお言葉、まさしく私も賛同するものでございます。しかし、この包括的な戦略の必要不可欠な一部となりますのが伐採を防止していくということであります。もし、日本がどこかでリーダーシップを示すということであれば、ぜひともこの分野で発揮していただきたいと思います。そして、発揮をする際には、再植林というのは、子孫に対しまして住める地球環境を残していくということになるのであれば、遅かれ早かれしなくてはならないことなんだということの認識を十分に持って安心してできるという分野だと思うんです。  会長、まさに私にとりまして今朝のこの機会をいただきましたこと大変名誉に存じている次第でございます。  ありがとうございました。(拍手)
  17. 中西一郎

    会長中西一郎君) ブラウン参考人に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じます。  一言ごあいさつを申し上げます。  ブラウン参考人には大変お忙しい中、大変な御無理をいただきまして貴重なお話をいただきました。本当にありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。これからますます御活躍をされますようにお祈りいたしましてごあいさつといたします。  本日の御出席、本当にありがとうございました。(拍手)  午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十分休憩     ―――――――――――――    午後一時二分開会
  18. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を再開いたします。  休憩前に引き続きまして、外交総合安全保障に関する調査を議題とし、地球環境問題について参考人方々の御意見をお伺いし、質疑を行います。  本日は、参考人として国立環境研究所地球環境研究センター総括研究管理官西岡秀三君、朝日新聞編集委員竹内謙君及び津田塾大学教授百瀬宏君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々におかれましては、お忙しい日程にもかかわらず本調査会に御出席を賜りましてまことにありがとうございます。  本調査会は、「九〇年代の日本役割-環境安全保障あり方こをテーマとして調査を進めておりますが、本日はこのうち、地球環境問題について忌憚のない御意見を伺い、今後の調査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず西岡参考人、竹内参考人、百瀬参考人の順序で、それぞれ三十分程度御意見をお伺いいたします。その後、午後五時ごろまで二時間三十分程度質疑を行いたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、西岡参考人に御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
  19. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) 環境庁の国立環境研究所におります西岡でございます。  お手元にレジュメも行っているかと思いますが、私は、本日、地球環境問題につきまして、日本がいかなる形で世界に貢献できるかと、特に私の専門が科学研究面でございますので、その辺に重点を置いて話をさせていただこうかと思っております。  私は、先ほど自分で紹介いたしましたように、筑波にございます環境庁の国立環境研究所というところに昨年、地球環境研究センターというものができまして、その役目というのは研究の支援だとか、それから地球環境の観測、モニタリングと言われておりますこと及び研究のまとめということを担当しております。それから、この二年間、地球温暖化に関しまして、世界的な地球温暖化の問題が果たして科学的に正しいかどうかといったことを検討するために、IPCC、気候変動に関する政府間パネルという作業会が設けられたわけですけれども、それに第二作業部会、これは温暖化の影響はいかなるものであるかということを検討する会でございますけれども、そこの一部の分科会の議長として報告書をまとめる作業をしてまいりました。そういうバックグラウンドの中で私が感じたことをお話しさせていただきたいと思っております。  地球環境問題の基本的な本質といいますのは、非常に顕著な二つの問題があると。  一つは、世の中全体にツケ回しかもうきかなくなったということでございます。今まで急激な人口伸び、それから産業とかエネルギー利用をどんどんふやしていったということは、ほかにフロンティアといいましょうか、向こう側に資源があるということを利用しましてどんどんそれを進めていったわけですけれども、どうもそれが環境の面からもうツケ回しかきかなくなったと。実際問題として、日本はこの環境問題に関しまして非常に努力したおかげで非常にきれいになりました。これは世界と比べても引けをとるものではございません。ですけれども日本がきれいになったからといって、日本の汚い企業をよそへ持っていったからこの問題は解決だというわけにいかなくなったのが地球環境問題かと思われます。  それから二つ目の問題は、地球環境の問題というのは不可逆なものであるという認識を持っていただきたいということです。有名な物理学者なんですけれども、ロジャー・ルベールという人が一九五七年に、今、人類は二度と繰り返せない大きな実験を地球を舞台にやっているということを言いました。これは温暖化の問題ですね。これは一回こっきりの実験であると。もう一度繰り返そうと思ってももうそのころは人間自身が死に絶えているかもしれないといったことでございます。そういうわけで不可逆性であること、ツケ回しかきかない。こと、この二つを踏まえまして、この地球環境の問題というのは長期的に取り組む必要があります。  我々IPCCの中で、常に百年ということを言っております。百年という先を見通して今何をしなきゃいけないか、しかも、じゃ百年後にやればいいのかといいますと、それはとんでもない間違いでございまして、その解決までに非常に時間がかかるということを認識していただきたいと。  一例を挙げますと、酸性雨の問題は既に一九五八年ぐらいからヨーロッパではある一部の人が認識して、これは大変な問題になると言っておったわけです。ところが、現在、一九九三年にヨーロッパ全体が硫黄酸化物を三〇%減らそうと、一九九三年にその条約が発効するわけですけれども、それまでの間、既にもう二十五年たっております。私たち百年先の話を言っておりますけれども、二十五年ぐらいはあっという間に過ぎてしまうと。この温暖化の例につきましても、十九世紀のおしまいに既にこの温暖化の問題はあるよということをアルレニウスという方が指摘しておられますし、一九四〇年ごろには、四〇年のちょっと前ですけれども、カレンダーという学者が、人間が今のように化石燃料をどんどん使っていったら地球は暖かくなってしまうよということを警告しております。それから一、九五八年ごろ、キーリングという人がハワイではかり始めて三十五年、ようやくデータが出て、これは大変だという問題がわかる。それまでにもう半世紀近くはたっておるわけです。  この前、私ども研究所に、前英国首相のサッチャーさんがお見えになりまして、私は地球環境の問題をお話したわけですけれども、そのときに質問をなさいまして、一体どれくらいになったら、あと何年たったらこの地球が本当に暖まっているかということがわかるんでしょうかと。その答えは、私がIPCCのレポートに書いているんですけれども、十年たっても実はわからない。果たしてこれが人為的に暖まったのか、自然の暖まりなのかわからないと。そういうことが書いてございまして、サッチャー前首相は、私が非常に心配しているのは、そういう科学の進歩に人間の行動の方が速過ぎて追いついていけない、だから科学が幾ら頑張っても間に合わないんじゃないかということを私におっしゃいました。そういうことで、この問題というのは非常に科学自身に期待する。こともありますけれども、今何かの手を打つということが非常に大切かと思われます。  この長期的視野ということにつきましては、今あちこちのところで短期的な、例えばGNPを伸はさなきゃいけないとか、いろんなことがございますけれども、まさに地球環境の問題に関しましては私は長期的な視野が必要であるというぐあいに思います。  私は、あと残りを二つの課題についてお話をしたいと思います。  一つは、日本はどういう形で国際貢献をしなきゃいけないか、またできるであろうかということでございます。日本地球環境問題に関して十分な国際貢献をしなきゃいけないという理由につきまして私は四つあると思っております。  一つは、経済基盤を世界生態系に負っている。日本のGNPは世界の一七%といった数字がありますし、OECDの二一%といった数字もありますが、いずれにしましても、経済活動の中で我々はいろんな形で世界生態系に負っている。我々は最近グローバルコモンズ、世界の共通財産という言い方をしますけれども、それは大気であり海であり、それから森林であるわけです。そういうものを我々は言ってみればただで利用しておるわけです。  例えば、じゃどういう関係があるのかといいますと、一番いい例が何といいましても炭酸ガスの排出量でございますね。最近の計算では、日本世界じゅうの炭酸ガスの排出量の五%程度を占めている。人口が六十億人のうちの一・二億人としますと二%近いでしょうか。それに比べまして二酸化炭素の排出の方は五%近いということですから、これは過度に利用している。それに対するコストを支払う必要があるだろうと思われます。例えば、自動車を輸出してお金をもうけるにしましても、それは自動車が向こう側で大気を汚染しておるわけです。それに対して通常の取引以上のお金を払う必要がある、これが第一でございます。  第二の貢献の理由といいますのは、私はIPCCの第二部会、先ほど申し上げました影響の部会に属しておりまして、地球環境が変動したらどういう生態系の問題があるかということを報告したわけでございますけれども、例えば農業生産は何とかかつかつにやっていけなくはない、そういう結果になっています。例えば、炭酸ガスが二倍になって温度が非常に上がったときに、農業生産はかつかつにやっていけるかもしれない。ですけれども、このモデルの中に入っていない嵐の話だとか干ばつの話だとか、そういうものを考慮すると非常に危険な状況がある。  また、自然生態系とか林業につきましては、南の方からどんどんどんどんと木が枯れていき、そして北の方に上がっていこうにも自然植生の歩みの速度というのはせいぜい一年間に数百メートルしか上がっていかないわけですね。それに対して、この気候帯の変動というのは一年間に約十キロの速さで進んでいく。東京から鹿児島の間は五百キロぐらいの緯度の差がございますけれども、五十年ぐらいになると東京と鹿児島が入れかわっていくということになるんだけれども、一方木が移っていくスピードというのはせいぜい数百メートルぐらいしかいかないといいますから、植生が大きく変わってくる。  日本は、農林水産物の輸入は非常に大きいものがございまして、例えば農業生産物につきましては、オリジナルカロリーで考えて三〇%しか自給できていないという状況でございます。天然ゴムの世界じゅうの貿易量の一七%を占めておるとか、それからそばとか、エビとか、皆さんがお考えになっただけでも多くのものを輸入しておるわけです。こういうことに対して、生態系が危機に瀕している状況、もしも危機に瀕するような状況に陥りますと日本への影響は確実でございます。そういう面で自国の安全の面から予防的な、また保険的なコスト、お金の支払いもしくは何かの形のコストを支払う必要があるかと思われます。  それから三番目が、外交の切り札として環境に関する十分な力、見識、知識を持つ必要がある。今現在、二酸化炭素抑制のことで世界じゅうが会議を開いておりますけれども、こういう中でその抑制をどういうぐあいにしていくかということが非関税障壁の問題であったり、それから国際競争力に関連する問題であったり、政治的なリーダーシップをだれがとるかといった問題に関係してきております、それから、特に南北の調整の問題、これは先進国の方からいいますと、もう南の方の人口ふやしてくれるな、エネルギーをそんなに使ってくれるなということでございますが、南の方からはこれは北の方からの押さえ込みであるというぐあいに言っておりまして、そういう環境問題が世界外交の中の切り札として使われている状況でございます。  それから、先ほども申し上げました環境影響が厳しくなりますと、環境難民の問題が問題になってくる。日本は難民の問題に対しては非常に弱いところがございまして、こういう面から見て地球環境問題に関する発言力を強めておく必要があるだろう、これが三番目でございます。  そして最後に、これはきのうきょうの話ではございませんが、リーダーシップをとる必要があるだろう。それは、日本はこのように経済的な頂点に上り詰めようとしておりますけれども、そういう国は今まで歴史上、知らず知らずのうちに頂点に上り詰めて、必ず何か残して衰退していくといいましょうか、次のところがそれをオーバーウェルムするという形になっております。イギリスは産業革命をやりましたし、米国は大量生産の文明を残した。  いろいろございますが、それじゃ日本に今何ができるだろうかということを考えますと、地球環境の問題に取り組むということは国民がだれも否定しない。かつ世界じゅうのすべてが歓迎する絶好の外題といいましょうか、題目といいましょうか、テーマであるかと思われます。そういう意味で、地球環境問題に対してリーダーシップをとるということは、歴史的に見ても非常に重要なことではないかと考えております。  以上、四つの理由から、私どもは国際的に貢献する必要があるだろうと私は考えております。  次の疑問は、日本は果たして十分の国際貢献をしておるかということかと思われます。  貢献の仕方というのは、金を出すか汗を出すかもしくは知恵を出すかということでございますから、まず援助資金等の問題、それから国際活動にどれだけ人を出しているか、三番目に科学技術の問題でどれだけ貢献しているかということがあるかと思われます。  例えば、援助の面では、お金の多寡だけを見ますと十分の負担をしていると私は考えます。例えば環境分野の一年間の援助の額ですけれども日本は六百三十億円、これは一九八八年ごろの平均でございますけれども、それに対して米国は三百八十二億円ですから、米国よりも数段の貢献をしているということは言えるかと。西ドイツが三百三十九億円でございます。それから、八九年から九〇年の間に三千億円の環境援助をしようということで進んでおりますが、既にもう二年間でそれを達成するという状況にございます。しかしながら、お金の多寡だけでは問題があります。  現在、多くの援助といいますのは御承知のとおり相手国の申請に基づいて援助をするわけでございます。これは日本がやたらな口を出さないという面では非常にいい政策ではございますが、とかく途上国は環境の問題を一番最後にするということがありますから、いつまでたっても環境の課題が上がってこない。ですから、これに対応するには援助の中でからっと援助の枠を設けて、そこに優先的な、向こうからのイニシアチブでの資金導入を図るという必要があるかと思われます。  それから、援助の問題で、私は非常に長期的な話をしておりますけれども、非常に問題でありますのは、現在の援助の対象というのは、現在の西欧の大量消費、大量生産文明を持ち込むための援助である場合が非常に多いということです。すなわち、まず最初に道路をつくる。道路をつくれば次は自動車を売り込める。自動車をつくれば当然そこでガソリンを使用することになり、汚染物質を出すといった形になります。もちろん、これが途上国の方々の福祉のためであることは認めます。しかしながら、今例えばIPCCのレポートなどを見てもわかるように、二〇二五年といいますから、私どもから既に一世代は変わっておりますけれども、その時点になりますと途上国のエネルギー使用の方が多くなります。そういう状況でどんどんどんどんとこれを進めていったら地球がもっわけはございません。  現在は、世界平均の炭酸ガスの一人当たり刀排出量というのは、世界平均が一でございまして、日本が二、中国は〇・五ぐらいですね。それからアメリカは五・〇ぐらいですから、もしアメリカ型の文明が途上国の中に全部入り込んだら大変なことになるということは明快でございます。ですから、こういった形の援助をどんどん続けていくのが果たしていいんであろうかということについても考慮していく必要があるかと思っております。現在、いろんな温暖化の枠組み交渉の中で新たな援助の資金の要求が途上国を中心に出ております。これは、ニュー・アンド・アディショナル・ファンドすなわち新しくて、そして付加的な資金が欲しい、現在我々はそういう資金をやっていないかというと、世界銀行を通じたりUNEPへの拠出金を通じたりやっておりますけれども、今の援助に倍する援助は多分必要になってくると思います。こういう面から、経済的な面で非常に優位に立っております日本が大いに貢献する必要があるかと思います。これが援助の問題です。  それから二つ目が、汗の問題すなわち人の問題でございますけれども、残念ながらこれはまだ十分ではございません。私どもよく国際機関へ行きますけれども、その中で日本人がどれだけ貢献しているかというと、御承知のとおり出資金がGNPに比べますと非常に少ないということがございます。もっともっと大使館にも環境アタッシェといったものを置いて、今環境をめぐる外交問題はどうなっているかということに対する情報を集めなきゃいけませんが、環境庁からワシントンに出ているのはたった一人で、例えばいろいろな産業政策についてはジェトロがこういう情報収集に非常に寄与しておるわけですけれども、それくらいのネットワークをつくっていく必要があるだろう。また、それぞれの、言ってみればロビーイングのようなものをする必要があるのではないかと思われます。  それから、環境教育とか成人教育の重要性については余り言うこともないかと思いますが、一番大切なのは地球規模の環境問題につきまして長期総合的な政策を立てる、デザインする能力がどこにあるだろうかということでございます。現在、現業を主とする今の政策では、先ほど申し上げました援助の問題を考えていただければわかると思うんですけれども、長期的に見て必ずしも正しい方向に行っているとは限りません。ですから、人類的な見地から百年をターゲットとしたような長期的なビジョンをだれがっくるかということは非常な緊急の問題かと思われます。この問題をどこでどの省庁が担当するのか知りませんが、省庁的な話じゃないかもしれません。この能力を育てるということは、外国と比較しますと非常に問題があります。きょうも、午前中NGOの話があったと思いますが、米国のNGOはこういう政策を立てて自分たちで調査して、それを打って出る材料にしているわけです。日本は残念ながらそういう力を持ったところは非常に少ない、もしくはない生言わざるを得ないと思います。  それから、貢献の仕方としまして知恵の問題、知恵の問題では日本の公害技術についてはその先駆性については言うまでもございません。一例を挙げますと、日本には千八百とか言われている脱一硫施設米国でも二百程度、欧州も二百程度ということですから、ああいう酸性雨の問題が生じるのは言ってみれば当然でございます。我々は、それを苦しい、まあ苦しくはなかったのかもしれませんが、経済成長の中で何とかやってきたわけですから、そういうノーハウもしくは制度的な問題をトランスファーするということも非常な貢献かと思われます。ただし、先ほど申し上げましたように私どもの大量生産、大量消費のやり方というのがいつまで続くものかということについては考えなきゃいけないし、我々の技術がそれ以外のこれはオールタナティブテクノロジーだとか、もう一つの道だとかよく言われますけれども、自然に優しいエコロジカルな生活に果たして寄与するものであるかということについては十分考える必要があるかと思います。  残りの時間、私は自分自身が科学研究面で仕事をしておりますので、果たして科学の研究面でどういう状況かということについて簡単にお話をしたいと思っております。  地球環境の問題に関しましては、科学研究がキーでございます。私は、その昔アインシュタインが原爆に関して発言したと同じように、それが非常に政治的な意味を持っていたように、地球環境の問題に関しましては科学者がもう少し躍り出る必要があるかと思っております。お手元に私の論文がございますけれども、この二十年の間にようやく人工衛星から見た地球の姿がわかり、オゾンホールが発見され、それからスーパーコンピューターを利用した百年後の天気予報がわかりといった状況でございまして、先ほどのサッチャーさんの話じゃございませんけれども、IPCCのレポートを見てもまだまだわからないところが多いと。また、わからないから何もしないということではもちろんございませんけれども、さらに不確実性を少なくするために科学研究をやっていかなきゃいけないかと思われます。じゃ今までどおりの科学研究をやっていっていいのかということがあります。  科学といいますのは、基本的に個人の好奇心をいかに満足させるか、もしくは人類の好奇心をいかに満足させるかということから始まっているわけで、言ってみれば野方図にほっておいた方が科学は進歩するわけです。しかしながら、地球環境の問題といいますのはそういう問題ではありません。この十年、二十年の間に科学を結集して取り組まねばならない問題でございます。ですから、好奇心だけでやることではなくて、十分それをマネージし一つの方向に持っていく必要があるかと思います。  三番目に、科学研究の中で考えなきゃいけないのは、きょうも私はここに来ておりますように、政策の問題と科学の問題というのは非常に密接な関係がある。その中でだれが科学の問題をわかりやすく政策決定者もしくは民衆にといいましょうか一般の方にお話ができるのかと、そういった役目も非常に重要になってくると思います。  お手元に小さな表がありますが、私は、IPCCのレポーートの中で、これは一つの報告書でございますが、世界じゅうからレポートを取り寄せまして、それでこういう結論になっているということを書いたわけですけれども、果たして日本人の論文がどれだけあるかという数字をそこに述べております。そういうワーキンググループⅠといいますのは、温暖化というのが果たして本当かどうかということを検討する部会でございます。  ここにありますように、一つの報告書に対して報告を担当した人は世界じゅうで三十五人おります。日本人はそのうち一人です。ただし真鍋淑郎先生とおっしゃるアメリカのNOAAにいらっしゃる先生が非常な活躍をしておりまして、その先生を入れれば二名ということになります。それから報告への貢献者、これはこういうデータがあり、これはこういうことを間違っているからこう書いたらいいんじゃないかという、そういう助言をした人が二百八十人、日本人は九人でございます。それから報告評価者、そのできた報告書をレビューするんですね。ピュアレビューといって、これは本当に正しいかどうか、そういうことをやった人が二百四十一人いますが、日本人は九人。それから、一番大切な、一体全体このレポートの中にどれだけ日本のレポートが引用されたかという点でございますけれども、私が数えたところ千二百の論文がございますが、残念ながら日本の論文は八編でございます。六人の人が八編の論文を出している。どうしてこういう状況になったのかということが次の問題でございます。  いずれにしましても、科学的知見に対する貢献は非常に貧しいと言わざるを得ないということでございます。また、こういった作業は必ずしもその論文があるとかないとかいう話だけでなく、日本の論文が日本語で書かれているとか、それから、国際的な科学者の社会で顔がきいているとかきいていないとか、リーダーシップをとって割りつけをする立場にいるとかいないとか、いろんなことがきいてきております。そういうわけで、私ども地球環境に関する研究はまだ国際化しておらないと。  現在、温暖化の問題に関する研究というのは米国で七〇%されていると言われているわけです。その米国は御承知のように科学的な解明が済むまでは政治的な手は打つべきではないということを言っているという状況が、これはひょっとすると彼らはさらに何かのデータを持っているのかもしれませんし、彼らはそういう力を持っていながら、持っているから外交的に強く動けるというところもあるかと思います。そういう面で科学研究が政治に非常に関係してきているということかと思われます。  その基盤は果たしてどうなのかということで次の表がございまして、言ってみれば金と基盤がどうなっているかということでございますが、米国と比較しますと、地球環境に関する研究費は私は十分の一と推定しております。GNP当たりにしましても六分の一ということで、金のかけ方は非常に悪いと。これは、科学者はいつも金が足りない足りないと言うとサッチャー前首相も言っておりまして、私もその例から漏れないわけでございますけれども、そういうところがございます。  それから、研究施設を見ましても、きのうの新聞によると、横田基地にアメリカからDC8、NASAの飛行機が飛入できて日本のあたりの上空を観測するわけですけれども、そういう飛行機がアメリカに四十機あります。しかしながら、日本は非常に小さな飛行機が二機しかない、そういう状況でございますので観測をしようにもしょうがない。  それから、データベース。これは情報の独占と関連するものでございますけれども、今、米国は衛星データに関しまして世界じゅうのデータをそこに集めるといったプロジェクトをやっております。我々が心配しておりますのは、こういうことによって情報の独占が起こらないかということでございますけれども、一残念ながら日本はこういうことに対するリーダーシップをとる力はございません。相当時間のかかる問題でございます。  最後に、私は、地球環境の問題解決に向けて今後科学研究はどう変わらなきゃいけないかということについて幾つかのポイントを挙げております。時間もございませんので、そのポイントだけを挙げたいと思っております。  一つは、先ほどから申し上げておりますように、この問題解決に向かっていろんなオーガナイズする必要があるということでございます。これは現在、教育もしくは研究自身が、タコつぼ研究と言われているように、非常にパーシャルなところでしっかりやるということが科学者の評価のポイントでございますけれども、それがこつこつと集めたデータ、観測のようなデータでございますけれども、こういうのは非常に地味で、研究者の社会ではそういうことはなるべくやらないようにやらないようにと逃げておるわけです。地球環境の問題は何もわかっておらないわけです。私はこれから御質問で、わかっているかわからないかということをいろいろ聞かれるかもしれませんけれども、大半のことについてわからないという言い方しかできないのがほとんどです。そういうわけですから、観測のようなことについては地道な観測をどんどん続けなきゃいけない。そういうことに対する航空機であるとか、それから現地へ行って調査をする体制――私どもはいつもくだらぬことで文句を言うわけですけれども、外国旅費が絶対的に足りません。フィールドの研究、例えばマレーシアヘ行って森林研究をしようにも現在は非常にわずかな外国旅費しかつかない。外国旅費といえば大体外遊であるというのが財政当局の見方でございますけれども、今どきそんなことをやっている人はおりません。そういうわけで、フィールド研究に対応できないような状況が見られることもございます。  それから、人材の育成は、先ほど申し上げましたように、タコつぼ研究じゃなくて総合的に物を見る研究をやってもらいたいと思います。  それから、一つ重要なことでございますけれども、先ほどのODAを研究部門にもう少し使えないかと。これは研究なんかはODAの中で一番最後に回されるわけですけれども、地道に一歩一歩百年の計をやっていくためにはこういった研究が非常に大切だと思われます。そういうわけで、幾つかの科学研究につきましてのボトルネックはございますけれども、これはまた質問の中で答えたいと思っております。  私の陳述をこれで終わらせていただきますが、私の話のまとめをさせていただきますと、日本地球環境に対する積極的な国際貢献をするべき立場にあり、かつできる状況にもある。金とか技術の面では相当の貢献はしておるけれども、これにも相当の質的変化が必要である。それから三番目に、科学研究の面では、今までの研究と大分違った方向づけをしていかなければならない。私どもはこれを分散型の巨大システム科学として、いろんな人がいろいろな結果を持ち寄ってようやく地球の姿がわかるという状況でございますので、それをマネージしたり、それからいろんな人に号令をかけたりリーダーシップをとっていくという形の体制づくりが必要である。再度繰り返しますけれども地球環境の問題での貢献は日本の歴史的使命であるかと思われます。  以上でございます。
  20. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、竹内参考人にお願いいたします。
  21. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 竹内でございます。  私は一介のジャーナリストであって、外交安全保障環境問題の専門家ではありません。ここでお話をする資格はないと思いますが、新聞に書いてあることについて意見を聞きたいという要請でありましたので、個人の資格で愚見を述べさせていただきます。  私が地球環境問題に関心を持ち、フォローし出したのは一九八九年一月です。地球環境問題が国際政治の表舞台に急浮上したときで、地球環境元年などと呼ばれた年です。  私は、朝日新聞で長く政治記者をやっておりましたが、政治記者をやめたということではありません。政治のテーマが移動したのに伴って私のカバーすべき分野を移動させたと考えております。それからまだ二年余りの短い経験です。その間、主として地球環境をめぐる国際政治はどう動いているかということをテーマに、節目になる国際会議は欠かさず取材してまいりました。せっかく高い旅費を使って出張する機会でありますので、なるべく行き帰りには関心のある現地を訪れ、地球環境をめぐる政治がどのような背景のもとに動いているのか、海外の事情を取材してまいりました。  地球環境をめぐる日本の対応について、海外と比較して幾つかの懸念を持っております。  三つのことを申し上げたいと思います。  一つは、科学技術を過信し過ぎてはいないかということです。二つ目は、NGO――ノン・ガバメシタル・オーガニゼーション、非政府組織を軽視してはいないか。三つ目は、政治的イニシアチブが欠落してはいないかということであります。  常一点の科学技術の過信について述べます。  地球環境問題といっても、さまざまな種類の問題が提起されていることは御承知のとおりです。中でも最大の難題と言われております地球温暖化を中心にしたいと思います。  通産省は、地球温暖化防止に地球再生計画を提示しています。対症療法的なアプローチでは省く、技術によるブレークスルーを基本として、長期的、総合的かつ世界的な取り組みにより、健全な経済成長との両立の確保を目指すことが肝要というのがその趣旨です。  どういう技術を開発するか、六項目に分けています。  一つ、科学的知見の早期充実。  二つ、世界的な省エネの推進。  三つ、クリーンエネルギーの大幅な導入。これは、太陽光電池、燃料電池、原子力などを挙げております。  四つ、革新的な環境技術の開発。これはCO2の固定化、第三世代フロン、生分解性プラスチックの開発、環境調和型生産プロセス技術、抜本的エネルギー利用効率向上技術などを挙げております。  五つ目は、CO2吸収源の拡大。植林、森林保全、海洋のCO2固定能力の強化、砂漠緑化。  六つ目、次世代を担う革新的エネルギー技術の開発。宇宙太陽発電技術、核融合技術。  この計画には計量的なことが書いてありませんから、どの技術にどれほどの効果を期待しているのかよくわかりませんが、概念図から判断する限りは、CO2の固定化など革新的な環境技術の開発や核融合、宇宙太陽電池といった次世代を担う革新的エネルギー技術の開発に大きな期待をかけております。つまり、巨大技術の開発で温暖化防止は突破できるという発想です。  通産省が地球再生計画を最初に持ち出したのは一九九〇年四月です。ちょうど米国政府が主催した地球規模の変動に関する科学的、経済研究についてのホワイトハウス会議が開かれ、この会議では、先進国がCO2の抑制を図った場合、世界経済に大きな影響が出るというシミュレーション結果を披露しました。二つとも米国からは褒められました。御存じのとおり、米国は、OECDの中ではトルコと二国だけ、いまだにCO2規制に何の約束もしない少数派の国です。米国を除いて、世界的な評価を得るには至っていません。  欧州を中心に世界的に沸き上がった地球環境の思想はそれほど悠長な話ではありません。手をこまねいていたら対策は一層難しくなる。直ちにできることから行動を始めようという予防措置を含めての発想です。これは、これまで地球破壊してきた経済論理の反省に基づいています。地球破壊してきたのは、まさに産業革命以来の工業化文明の過信にありました。人々の欲求を満たすための経済的拡大は過剰生産、過剰消費、過剰廃棄を生み出しました。それを支えた余りに急速な技術革新は、それが環境にどのような影響を与えるかの評価をあいまいにしたまま普及しました。そのツケが回ってきたのが今日の地球環境問題であると思います。  地球再生計画の問題点は、その反省点がないことです。本当にそんな技術を頼りにして大丈夫かという疑問です。技術が極めて不確実です。開発に巨大な経費を要します。新たな環境破壊可能性があります。例えばCO2の固定化といっても、深海や地下の高圧に逆らって輸送、注入する過程で膨大なエネルギーを使います。エネルギー消費に伴うCO2の排出を減らすのにエネルギーを大量消費しては、借金を返すために新たな借金をするのと同じことで、サラ金地獄に陥ってしまいます。日本は、一日一人当たり二十五キログラム、一年で一人当たり九トンのCO2を排出しています。この膨大な量を捨てれば、廃棄先で新たな環境破壊を起こさない保証はありません。生分解性プラスチックといっても、ばらばらになるだけで成分自体は分解しないそうです。夢のエネルギー源と言われた核融合はいまだに実現していません。原発は核融合が実現するまでのリリーフ役だったはずですが、先発、完投を強いられているのが現実です。そういうものを当てにしては、これまでの地球破壊の構造は改められません。  技術開発に期待しないというのではありません。大いに技術革新を図るべきでしょうが、その実用化は環境にとって十分に安全なものだと確認されてからすべきです。技術評価があいまいなままに使うから大きな負の遺産を背負い込んでし。まったのです。今やるべきは、安全な技術を、自然界から許容される範囲で、我々の生活と産業活動を修正する改革を進めようではないかということです。そのための政治、経済、社会のシステム改革こそが再優先の課題として求められているのです。  通産省がブレークスルー論を主張する主要な理由は、環境からの要請が経済成長に影響を与えはしないかという懸念です。しかし、こうした考えが間違っていることを我々は既に体験しています。一九七六年から七八年にかけて、日本はガソリン車の厳しい排ガス規制をしました。NOxを未規制時に比較して九〇%削減しようとするものです。自動車産業界は経済を冷やすと大変反発しました。実際はどうだったでしょうか。初年度七六年度の自動車生産額は対前年度比一七%も伸びました。七八年度からはさらに一層厳しい規制が始まりましたが、自動車生産台数は一貫して伸び続け、世界一の生産量を誇る自動車王国を築いたではありませんか。しかも、その車は世界一の低公害車です。  ここで肝心なことは、世界一の低公害車を生産する国になりながら、NOxの問題は解決できたかということです。何年たっても自動車排ガスが主たる原因で環境基準は達成できない状況にあります。  一九九〇年の排出ガス総量はおよそ五十五万トン、二十年前と同じレベルです。規制がなかったら百五十万トンが出ていたと推計されています。規制は六三%もの削減を果たす効果を上げました。それでもだめなのです。なぜなら車の台数を野放しにしてきたからです。低公害車という技術開発だけではこの課題は突破できないのです。自動車の使い方自体が規制されなければならない。こうした社会的な対策を経済的手段あるいは法的規制によってとらなければならないというのが今日問われているのです。  バラ色の未来はそれはそれで結構ですが、バラ色の未来はかえって今やらなければならない地道な努力の重要性から目を背けさせる点でマイナスの効果があります。日本にはブレークスルー論を結構信じる人が多い。日本技術大国として経済的に成功しました。日本経済の将来を考えれば当然行く末もその道しかないと考えたい。その点で、新しい巨大技術の開発は魅力あるビジョンです。環境問題なんてマイナーなことを言っていられるか。資本主義の世の中だ、何だって金をもうけなければ競争に負けてしまうというバブル経済は、リゾート開発という名で日本の自然を破壊してきました。通産省の発想は、経済がその目的を見失いがちになった今日の日本の体質を手玉にとった発想だと思います。むしろ政府は今、バラ色に隠された危険性を指摘すべき立場にあると思うのです。  このように言えば、地球再生計画には直ちにやるべきことも書いてあるとの抗議が聞こえそうですが、バラ色に包み隠してしまう官僚主義的な手法こそが問題なのです。役所というところは、少しでも予算がふえ、権限がふえ、外郭団体がふえることばかり考えている。地球環境は、こういう自己権益の擁護のみに走ってきた社会に反省を求めているのです。  通産省だけを批判しているわけではありません。証券スキャンダルに象徴されるように、どこの役所にも政界にも業界にも自分たちだけの権益にしがみつき、公共の利益を考えようとしない風潮が蔓延しています。あるいはマスコミにも国民全体にも共通するかもしれません。私は、こういう官僚主義的発想を資本主義のノーメンクラツーラと呼んでおります。ソ連共産党の特権階級が共産主義を哀れな末路に追い込んだと同様に、資本主義の官僚主義も人類の将来にとって大変危険な存在だと思います。  二番目の、NGOを軽視してはいないかという問題に移ります。  来年の地球サミットは、各国首脳を初め総勢一万五千人から二万人が参加すると言われています。政府関係者、国際機関関係者、報道陣は七千人といいますから、半分以上あるいは三分の二は民間の団体、いわゆるNGOの人々です。  ことし三月から四月に開かれた第二回UNCED準備会議でNGOの参加資格が決まりました。参加資格は、登録さえすればいい、会議での発言の資格も、関係があり、能力があればいいということになりました。つまりほとんど無制限、完全公開というわけです。  NGOばかり発言していたら会議なんてまとまらないのではないかと心配する人がいるのも当然のことでしょう。その種の疑問に、準備会議の議長を務めているシンガポールのベテラン外交官トミー・コーさんは答えました。この基準を各国政府に適用したらどうなるだろう。本当にうまいジョークを飛ばす人です。国連の会議は実にだらだらと非能率な議論を繰り広げる傾向があります。政府代表の官僚たちの能力の方がよほど問題だという皮肉が込められているのでしょう。  実は、このトミー・コー発言地球サミットの画期的な考え方が非常によくあらわれています。地球サミットに向けて各種の国際会議が開かれていますが、どこの国際会議に行ってもNGOがたくさん来ています。NGO同士で毎日ミーティングを開いて情報交換をし、作戦を練ります。そういう議論を踏まえて何人かの代表者が会議発言する。最近は正式に発言機会が与えられているのが普通です。そして、会議中といわず休憩時間、食事の時間、ありとあらゆる機会をつかまえてロビー活動をしています。専門的な知識も豊富だし、事の経緯もよく知っています。ですから、なかなか強力です。そういうNGOの活動会議の流れに少なからぬ影響を及ぼしていることは間違いありません。  なぜこれほどNGOが力を持つようになったか。地球環境に大変熱心なのはヨーロッパ、中でも北欧、オランダ、ドイツなど先進的な役割を果たしてきましたが、そういう国々を中心に政府の考えが変わってきたように思います。地球環境保全などという途方もない大きな仕事は、とても政府だけではできっこない、NGOの協力が不可欠だという考え方です。だから、政府とNGOの関係は、批判もするがお互いに協力もする持ちつ持たれつの関係になってきました。言葉は悪いですが、時には政府がNGOを使って外交をやっているなと感ずることすらあります。そういう関係ですから、当然両者の間の情報交換はかなり密なわけです。  持続可能な開発、サステーナブルデベロプメントが地球環境保全のキーワードになっていることは御承知のとおりです。ノルウェーのブルントラント首相を委員長とする世界の賢人会議環境と開発に関する世界委員会、WCEDが一九八七年、報告書「われら共有の未来」の中で提唱した概念です。将来の世代の欲求を損なうことのないように、資源、環境を保全しつつ、現代の世代の欲求をも満足させるような開発を進めるという考え方です。この概念で非常に重要な点は、これを達成する前提として、政策決定における市民参加を保証する政治体制の確立を強調していることです。情報公開、民主的手続に基づく意思決定、国際経済体制における公平性など、地球規模のデモクラシーを基本原則にしています。NGOが主役になりつつあるのもサステーナブルデベロプメントの概念を実践し出したことにほかなりません。市民による地球と人類のための新しい政治・経済秩序、国際秩序を目指した世界改革が提起されていると私は解釈しています。  残念なことに、日本のNGOは欧米に比べて極めて非力と言わざるを得ません。国際的なNGOから日本人はなぜ来ないのかと言われたことがあります。その人は日本のことをよく知っている人で、NGOミーティングに来ないから日本についての誤解が生じやすいのだと、ジャパンバッシングの一因がNGO不在にあると嘆いたのです。地球環境を守るためには、文化や宗教、民族の違いによる誤解や偏見を超えていかなければなりませんが、それはなかなか政府の力が及ばない領域です。市民同士の対話の中から理解を深め合うことが不可欠です。例えば、鯨の問題など日本政府が説明しても信用はできないという声を聞いたこともあります。国際世論や国際会議の流れをつくることに大きな力を持つNGOの対話の席に日本の民間人がいないことは、日本の政府にとっても大変不利なことなのです。  NGOが人材不足、資金不足に陥っている最大の原因は、官僚支配を強めようとする税制にあると思います。所管官庁の細かい指導と監督を受ける団体だけが公益法人や特定公益増進法人の名称をもらって優遇措置を受け、立派な公益に尽くしながら役所のコントロール下に入らない団体に対しては、個人の寄附さえも所得税の控除対象にならないようでは市民型社会は育ちようがありません。役所の外郭団体をNGOと称しても、国際的なNGO仲間との対話はできないでしょう。むしろ不信を買うのがおちです。行き過ぎた官主導の日本の政治本質を改めないと、この国際化時代に対応できそうにありません。何も地球環境問題についてだけではありません。すべての行政に共通する課題であることは、証券スキャンダルが暴露した日本の閉鎖的体質からも明らかなことです。その意味で、私は今、明治の近代化、戦後の民主化に匹敵する市民型社会化の政治改革を迫られているときだと思います。  三番目、政治的イニシアチブが欠落していないかという問題です。  ここ一、二年、日本でも地球環境に対する意識の高揚は目をみはるものがあります。全国各地で省エネ、リサイクル、自然保護など多様な運動が展開されるようになりました。政財界のリーダーの発言も大変積極的です。  海部首相は、社会経済活動を通じた地球への負荷を極力少なくし、国際的なリーダーシップをとっていく義務があるとの決意を表明しています。地球環境議員連盟会長の竹下元首相は、よく、かつて環境政策は反権力だったが、今や政治の本流になった。環境を語らずして政治家にあらずと言います。平岩経団連会長は、環境問題への取り組みがみずからの存在と活動に必須の要件であることを認識し、企業と地域住民、消費者が相互信頼のもとに共生する社会を目指すという立派な地球環境憲章をまとめました。  しかし、リーダーたちの発言と、現実の政策の間には大きな落差があります。私は、いまだに環境影響評価法、アセスメント法がないことが不思議でなりません。かつて政府提出の法案に猛反対した産業界が、今、企業と地域住民の共生を目指すというのに、共生のための基本法が国会に復活してこないのはなぜなのか。一方で、リゾート法が自然を破壊し、バブル経済の道具となった現実を見るとき、理解に苦しむのは私一人ではないはずです。  地球環境問題に最も熱心なのは欧州諸国ですが、幾つかの国を訪れて印象づけられるのは、政治的イニシアチブです。ドイツ政府は、一九九〇年十月、温暖化防止のためにCO2排出量を二〇〇五年までに一九八七年レベルに比べて二五%削減するという目標を閣議決定しました。世界で最も厳しい目標設定です。これは決して一朝一夕にしてできたわけではありません。政府をリードした連邦議会の三年にわたる強力なイニシアチブがありました。一九八七年、連邦議会は全会一致で議員と研究者各十一人による地球大気保護のための予防措置調査委員会、ベルント・シュミットバウアー委員長、キリスト教民主同盟の方です、を発足させました。研究所への研究委託、専門家を招いての公聴会、現地視察など膨大な勉強を重ねて九〇年に三冊の報告書をまとめました。その一冊にCO2排出削減策が書かれています。これがその報告書ですけれども、大変立派なものです。三〇%削減が可能との結論を導き出しています。政府は、この報告書をもとに各省庁協議の結果、五%の安全率を見て二五%削減の決定をした。わけです。  もう一つ重要なことは、対策の具体化を裏づける制度改革についても、同時に手当てしていることです。この中にはCO2削減のための多項目にわたる対策が書かれていますが、その柱の一つは、石炭、石油による大規模な発電所からの電力供給を少しでも減らし、送電ロスやCO2排出がない自然エネルギーを利用しての分散型供給体制をつくることです。連邦議会は、政府がCO2二五%削減の閣議決定をする数日前、再生可能エネルギー発電電力の公共電力網への供給法を可決しました。  水力風力太陽、廃棄物・汚泥ガスなどから発電される電力について電気会社に買い取りを義務づけ、その最低保証価格を規定した法律で、自然エネルギーの利用促進を図る上には欠かせない制度です。水力、廃棄物・汚泥ガス、農林業廃棄物ガスからの発電電力については、最終消費者への平均販売価格の少なくとも七五%が保証されています。風力太陽エネルギーからの発電電力については九〇%です。この法律も、連邦議会の強い意思で成立しました。ドイツ電気事業連合会は、保証額は自分たちが発電する原価や夜間電力、産業用販売価格より高い、少なくとも差額は政府が負担すべきだ、既に償却済みの古い水力発電にもこの買い取り価格が適用されるのは疑問だなどと強硬な反対陳情を繰り返しましたが、議会はより一層の強硬さでこの法律を成立させだそうです。  私は、昨年夏、ドイツのある小さな村の水車小屋を訪ねました。長年とまっていた村の六つの古い水車を動かして発電し、その電力電力会社に買い取らせる運動をしている人を取材しました。彼の仲間の電気自動車愛好家たちが、四、五十キロ離れた都市から愛車を連ねてこの水車小屋の給油スタンドならぬ電気スタンド、法的には認められていない給油ならぬ給電をする。それを新聞やテレビが報じる。つまり、電気自動車のためのスタンドをつくれ、自然エネルギー発電した電力を買い取れという制度改革のデモンストレーションをしているわけです。供給電力量はごくわずかかもしれませんが、脱化石燃料、脱原子力へ向けて社会を啓蒙する力はあります。また、そういう運動を政治に反映させようとする議会の姿勢も市民型社会の伝統に根差したものでしょう。  ドイツばかりではありません。北欧諸国、オランダ、スイスなど多くの国で政治的イニシアチブが今日の環境問題に対する先進性を培ってきた事例を聞いています。  米国は、CO2規制に反対しています。最大の排出国のこの消極姿勢は、条約づくりの大きな足かせになっていますが、議会はホワイトハウスとはかなり姿勢を異にしています。  ことし二月、ワシントンで気候変動に関する枠組み条約の第一回条約交渉会議が開かれました。米国政府は、コンプリヘンシブアプローチ、つまりCO2だけを取り上げるのでなく、すべての温室効果ガスを対象にすべきであるとの考えに立って、二〇〇〇年までに一九八七年レベルになると発言するにとどまりました。これは二〇〇〇年までに全廃の決まっているフロンを含めての話ですから、CO2については一五%もの増加を見込んでいる計算になります。参加した多くの国が、ホスト国を買って出た米国の変化を期待していただけに、大きな失望をしました。  そうした中で、上院のミッチェル民主党院内総務ら四十一人は、ブッシュ政権のこの行動計画を行動しない計画と非難、温室効果ガスの削減を求める決議案を提出しました。同じ日、米議会技術評価局は、政治的、経済的、法的な方法で二〇一五年までにCO2排出量を三五%削減できるとする報告書「段階的変化-温室効果ガス削減へのステップ」を発表しました。これがその本なんです。上下両院の六つの委員会の要請により、一九八八年から研究を重ねてきたものです。ワース上院議員ら四十八人は、CO2発生を低減させるための国家エネルギー政策を求めて国家エネルギー政策法案を提出しました。  私は、やがてこの議会からの圧力が、地球サミット前にはブッシュ大統領の態度を変化させる原動力になるであろうと予測しています。  さて、日本は、地球温暖化防止について、多くの先進国と同じに二〇〇〇年までに一九九〇年レベルに抑制すると表明していますが、これをどう達成するのかは不明です。分野別の目標数値もなければ、それを担保する制度もはっきりしません。自然エネルギーからの発電電力会社の配電網に送ることすら認めていません。配線をつないで、自家発電が足りないときに電力会社の電源に切りかえることがようやく許されるようになったばかりです。買い取り義務や価格保証制度からはほど遠い状況にあります。さまざまな温暖化防止対策の財源にするために炭素税を導入した国もありますが、日本は関係省庁が縄張り争いをしています。  このような社会改革を目指す新政策は、やはり国会のイニシアチブがないと実現がおくれてしまうのではないでしょうか。参議院環境特別委員会がことし四月二十四日に行った「日本企業の海外進出等における環境への配慮に関する決議」などは、国会のイニシアチブとして大いに評価されるべきです。こうした考え方が政策として具体化することが大切だと思います。  午前中、レスターブラウンさんも、安全保障の概念が冷戦後イデオロギーから環境に傾斜してきたということを言っておられましたが、ポスト冷戦の世界の大きな潮流は、軍事面から非軍事面での国際協力に向いています。地球環境が国際政治の表舞台に急浮上したのもそのあらわれの一つです。日本国憲法は、不幸にも誕生直後から冷戦に巻き込まれ、その精神を十分に生かすことができませんでしたが、ようやくその本旨を発揮する時代を迎えたと言えましょう。その意味で、地球環境面での国際貢献は、内外に表明した我が国の進むべき道を体現する格好のテーマであると思うのです。  石油供給をめぐるイラクと米国の主導権争いに端を発し、石油による環境破壊に終わった湾岸戦争も、世界に脱石油社会の緊急性を痛感させました。日本地球ファミリーの一員として平和貢献できる道がここに見出せるように思います。例えば、太陽エネルギーは、一時間で全世界の一年分のエネルギーを賄うほど膨大な恵みがあります。どこでも手に入ります。二酸化炭素や放射能を出しません。太陽の熱を暖房や給湯に利用するだけでなく、太陽の光を半導体を使って電気に変える太陽電池の技術開発も日進月歩の状況にあります。  レスターブラウンさんのワールド・ウォッチ研究所のデータによれば、太陽電池のコストは、一九八〇年に一キロワット時当たり三ドル三十九セントだったが、八八年には十分の一の三十セントになりました。二〇〇〇年には十セント、二〇三〇年には四セントになると推計している。新規の原発プラントは十二セントですから、もう数年で十分に対抗できるわけです。原発は膨大な国家の助成があるわけで、太陽電池に同様の助成をすれば、化石燃料原子力に取ってかわる時代はすぐそこにあるのです。いつまでも安い石油があるといって手をこまねいていたら地球が参ってしまいます。技術的にすぐれ、エネルギーの八割以上を海外に依存する日本こそが自然エネルギー実用化の牽引車にふさわしいと思います。開発した技術を貧困と環境破壊の悪循環に陥っている非産油途上国を中心とする開発途上国に提供すれば、環境破壊の悪評もある日本のODAは面目を一新するでしょう。  環境保全の論理は、社会の負の部分に目を向ける社会改革の論理です。官僚主義的な発想ではとても対応できません。政界、官界、経済界の癒着構造の中で、政治家が政策を官僚に依存していては改革は達成できないでしょう。経済大国の愛称をもらいながら、何のための経済なのかを見失った責任は政治にあると思います。先進的な国は既に地球益のためにという発想にまで至ったことを考えると、日本のデモクラシーは後進国と言われても仕方ありますまい。地球の危機はそのことを問いただしていると思うのです。  以上、私がスタリフライターとしてこれまで朝日新聞に書いたことに、その心を若干加えて御報告いたしました。
  22. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、百瀬参考人にお願いいたします。
  23. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) 百瀬でございます。  先ほど、西岡参考人から我が国の研究者は環境問題で貢献していないじゃないかという御指摘がございまして、大変に耳の痛い御指摘でございました。私などは国際関係とかあるいは国際政治の研究に携わっているわけでございますが、実は、我が国では国際政治の分野で環境問題を取り上げる、そういう試みがまだまだ非常にまれなわけでございます。  日本国際政治学会というのがございまして、我が国の国際政治学者が集まっている学会でございますけれども、これがことしの五月の大会で初めて国際政治と環境問題、そういうテーマの部会を設けたわけでございます。まして私などは、最近になりましてようやくこれはこれからの国際政治研究のテーマとして非常に重要な事柄であるということに気づきましたにすぎない者でございまして、大変にお恥ずかしい次第でございますけれども、私なりの研究上少しかかわりました部分につきましてお話を申し上げさせていただきたいと存じます。  それで、国際政治あるいは国際関係の問題として環境問題を取り上げるというときには、私は二つの視角が、取り上げ方があると思うわけでございます。  一つは、全地球的な視角ということでございまして、これは今までお二人の参考人お話に出てきました主なテーマだと思いますけれども、全くグローバルに熱帯雨林の問題とかいろいろある。それを取り上げていくときに、例えば国際連合というふうな普遍的な国際機構が後押しして、あるいはそういう場で取り上げられることが多いわけでございますね。その場合には、問題としては南北問題という形で出てきやすい。そして、それは確かに政治とかかわります。国際政治とかかわるんですけれども、その場合には南の諸国対北の諸国というふうな割と一般的な形で、諸国のグループ間の関係のような形で出てくる。したがって、割合と制度論あるいは規範論的な傾斜が強いかと思うのでございます。  実は、国際政治と環境問題のかかわり方という場合に、もう一つ視角と申しますかアプローチがあり得ると。それは地域的な問題として環境問題が出てくる、そういう場合でございます。そういう場合には関係諸国による取り組みが行われることになりますけれども、その場合には、グルーピングと申しますよりは関係するその一国一国の利害というものがそこに絡まってくる。そういう意味でまさに国際政治と環境問題が直接に絡み合う場になってくるのではないか、そういうふうに思われるわけでございます。  ところで、こういう地域的な環境問題の場合に、今申し上げましたように、その特色は地域の国際関係あるいは国際政治というものが直接に絡んでくることがあるわけでございますが、その場合に二つほどの問題点があるかと存じます。  その一つは、地域環境問題に対して対応する行為主体と申しますか、行為体、アクターと申しますか、そういうものとして何が考えられるかと申しますと、まずはその地域に存在している国家でございますね。国家というものがかかわる、そしてその利害がかかわるわけでございますが、しかし、そればかりではございません。それらの国家全体あるいはその一部の間にもし連携というものがつくられているとしますならば、具体例は後で申し上げますけれども、つまり、地域的な国際機構というものが存在するといたしますと、そういうものが絡まってくるということになります。  今申し上げたのは、国家よりも広い単位という意味でございますが、今度はそれとは逆に、国家よりも狭い単位で、いわば地方と言われているものがそこに絡んでくる。地域と申したときに、これも後に具体的に申し上げますけれども、国家が必ずしも丸ごとそこにかかわるとは限らない。国家の部分がそこの地域の中に含まれてくるということも往々にしてあるわけでございまして、それだけに国家の中の地域と申しますか、地方というものは非常な切実な利害関係を持ってそこに絡んでくる。  と申しますことは、要するに地域的な環境問題に対応するときには、国家と並んで地域的な国際機構、あるいは国家の中の諸地域あるいは地方というものがそこに行動するということになりまして、これは旧来の私たちの国際関係に対する観念というものが非常に伝統的な近代以来の観念で、国家と国家の集合体として国際関係がある、そういう観念に対して非常に新しい問題を突きつけてきている、そういうふうに思えるわけでございます。  それから、もう一つの問題点でございますけれども、先生方は総合的な安全保障を御研究、また取り組んでいらっしゃるというお話を伺いましたのですが、そういう総合的な安全保障という観点からしますと、御案内のように、一つは伝統的な意味での安全保障というもの、つまり軍事的な安全保障という面がございます。それからもう一つは、非軍事的な安全保障、これは経済でございますとか、あるいは経済も絡みますけれども資源の問題でございますとか、あるいはきょうまさに問題になっております環境汚染の問題とか、そういうことがあるのでございますが、そういう非軍事的なレベルでの安全保障問題、この二つがどのようにかかわり合うのか、そういう例をもこれは突き出して見せてくれるのではないだろうか、私はそういうふうな印象を持っております。したがいまして、地域環境問題というものを考えますときには、以上の二つの点から関心を持って考えてみるというといろいろと学ぶべき諸問題が出てくるのではないか、私はそういうふうに考えているわけでございます。  ところで、そのような地域的な環境問題と国際政治のかかわりということで少し具体的な事例に入らせていただきたいと存じます。  それは、レジュメの2のところに書いておきましたのですが、環バルト海地域、言いかえますと、バルト海周域の環境問題というのがまさにその非常に適切な事例ではないかというふうに私には思われます。  ちなみに、ノルウェーに平和研究所という研究所がございまして、これはPRIOというふうに名づけられて世界的に著名なのでございますが、そこから、安全保障に対する総合的なアプローチ、そういう表題でまさにこの環バルト海地域環境問題を論じた論集なども出ております。  それから、先生方のお手元にお配りいたしましたけさの読売新聞の記事、これはエストニアの例でございますけれども、たまたまでございましたがそれもこういう問題にかかわってきているわけでございます。  環バルト海地域環境問題ということでございます。まず、環バルト海地域というのは一体どういう範囲を指すのであろうかということでございますが、これもお手元に配られております地図、略図をごらんくださいますと、大体こういう地域がそこに含まれるであろうというわけでございます。  言いかえますと、比喩的な表現でございますけれども、環バルト海地域というものはいわば一つのエコシステムと申しますか、生態系として考えられる。生態系というのは、例えば一つ池ですとかあるいは湖があるといたします。そうしますと、その周辺に平野もございますし、株もございますし、雑木林もございますし、また深い森もある。そういうのが一つの単位、ユニットとなって、そこでいろいろな生物の生が営まれている、そういうことを一つ生態系と指すのかと思いますけれども、まさにバルト海地域というものもバルト海という内海を囲みます地域一つの利害の共同体というふうにつかまえるとこれは一つの考え方、アプローチといたしまして、つまり歴史の上でバルト海というのはいろいろな勢力のせめぎ合いの場である、そういうことが多かったわけでございますが、それをそうではなくて一つ生態系というふうに考えていったときにそこにいろいろな勢力が共存せざるを得ない、こういうことになってくるわけでございます。  この地域には、人口にして大体七千百万の人々が住んでいると言われ、六十の都市があるというふうに計算されております。北欧諸国の場合には大体そこへ入るのでございますけれども、バルト海の南側の方にまいりますとポーランドなどの場合には北の部分、それからドイツ、これはまだ両ドイツがあったころでございます。今は統一されてドイツでございますが、ドイツの北部、その主たるものは旧東独でございますが、そういうところがその地方として入ってくる。バルト三国は丸々入るわけでございます。  そういう環バルト海地域で、環境問題と関連してどういう問題が生じてきているかと申しますと、一つは資源問題でございます。代表的なことを申し上げますと、バルト海には古来ニシン、タラが豊富に存在した。ところが、第二次世界大戦後バルト海における漁業活動というものが非常に活発化してまいりまして、もちろんこの周辺地域から派遣される漁業活動でございます。そういたしますと、一九六〇年代ごろから資源が非常に減り出しているという心配がございます。そういう問題が一つあります。  それからもう一つは、もっとこれは深刻な問題でございますけれども、汚染問題というものが出てきた。かつてバルト海は清潔な海であるというふうに言われていたわけでございますけれども、これも一九六〇年代半ばごろからだんだんと、いやそうではなくてバルト海は大変に汚染されているんだということが言われるようになったわけでございます。ちょうどそのころから沿岸諸国の工業化のテンポが一段と速まりまして、そしていろいろな汚染物資を吐き出すようになった、そういう事実があるからでございますが、研究されているところによりますと、バルト海という内海は出口が一方にしかございません。北海の方へつながっている。九割方この湖の水が、海水が入れかわるのには二十五年かかるというふうに言われているほどでございます。  しかし、環境問題が深刻化してまいりましたバルト海地域につきまして、近年、環境保護の対策が進んできているという事実がございます。そして、この事実が実はバルト海地域に展開されます国際関係あるいは国際政治の動向と非常に絡み合っているということがございますので、その点を中心に申し上げようかと存じます。  ところで、環バルト海地域における環境保護の動きというものには、私は従来二段階があると存じます。そして、第二段階が現在進行中と申しますか、あるいは緒についたばかりというふうに言えるのではないかと思いますが、その第一段階というのは、バルト海周域の諸国によっていろいろな条約が結ばれまして、条約を通じての規制が行われるようになったということでございます。それではどういう条約が結ばれてきたのかと申しますと、ここに記してございますけれども三つの条約がございます。読み上げますと、バルト海および海峡の漁業・生物資源に関する条約、それから北欧環境保護条約、それからバルト海海洋環境条約というのでございますが、いずれも七〇年代に入りましてから締結されているわけでございます。  この条約が成立するには、バルト海地域の国際政治というものが非常に深くかかわっているわけでございます。まず、三つ並べましたうちの真ん中の北欧環境保護条約というのでございますが、これはいわゆる北欧諸国、アイスランドを除く北欧四カ国、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの間で結ばれたわけでございますが、これは大変に念の入った環境保護条約でございまして、例えばAという国が源になって垂れ流した公害が他のBという国の地域で害を与えたといたします。そうしますと、そのBという国に住んでいる住民が個人であっても、いきなりAという国の環境汚染源についてそこの地域の自治体なりあるいはAという国に対して直接訴え得る、そういう内容の条約でございまして、非常に国家間の風通しかよくなっている条約でございます。  ただ、こういう条約が結ばれるのも実は政治とかかわり合っているわけでございまして、御案内のように北欧諸国というものは非常に関係が親密でございまして、確かに安全保障体制につきましては制度的に異なった道は歩んできましたけれども、しかし、非軍事的な側面におきましては、これもちょっと経済は除きますけれども、ほかの点では、社会政策ですとかあるいは文化政策ですとか、あるいは交通、通信とかそういう点では非常に統合が進んできているわけでございます。それも、上から押しつけていくのではなくて、いわば下からと申しますか、必要に応じて大変に実用主義的に、プラグマティックに統合してきている。その統合を進めてきた機構というものが後で申し上げるノルディックカウンシル、北欧会議あるいは北欧理事会と呼ばれているものでございますけれども、そういうものがありまして初めてこういうことができたわけでございます。  ところが、残る二つの条約というものは、現在は東西対立と言われたものが解消してきている、ポスト冷戦、冷戦後ということが言われているわけでございますが、七〇年代初めごろには東西両陣営が対立していたわけでございます。そして、そこに中立主義国というものがある。そういう立場を果たした国々の間で結ばれた条約でございます。  バルト海および海峡の漁業・生物資源に関する条約の方は、フィンランド、それから当時の東ドイツ、ポーランド、スウェーデン、ソ連の間に結ばれております。それから、バルト海海洋環境条約と言われておりますものは、デンマーク、フィンランド、東ドイツ、西ドイツ、ポーランド、スウェーデン、ソ連、こういう国々の間に結ばれております。と申しますことは、この中には中立主義国も入っておりますし、ソ連、東欧圏の国も入っている。それからNATOに属している国も入っている。そういうことで、特に安全保障問題をめぐりまして立場を異にしている国々が一緒になってごういう条約を結んだわけでございます。そして、このバルト海海洋環境条約からはバルト海海洋環境の保護に関する委員会というものが発足をいたしまして、それがずっと定期的に会合を持って、バルト海の環境保護に動いてきているという事実がございます。  実は、こういう試みが必要なことは既に早くから、六〇年代から言われてきたわけでございますけれども、どうしても協定のようなものは成立いたしませんでした。なぜかと申しますと、東西対立というものがそこに反映しておりまして、特に東西ドイツというものがお互いに存在を認め合っていないということが大変な障害になりまして、アイデアは出てきたけれども結局その条約は成立しなかったということがずっとありまして、それを関係諸国が辛抱強く待っておりました。そして、一九七二年の十二月に、例の西ドイツのブラント外交、ブラント首相の東方外交というものが成功いたしまして、東西ドイツの間に基本条約というものが結ばれてお互いの存在を認め合うということになった。そうしますと、その成立を待っていたかのようにこれらの条約が次々に結ばれていったわけでございます。このあたりを見ますと、軍事的な面での対立が解消していくということがいかに非軍事面での深刻な問題のために救いになっていくかということがよくわかるわけでございます。  ところで、バルト海地域における環境保護と国際政治という問題になりますと、第二段階というのが既に始まっているように思われるわけでございます。これは、先ほど申し上げたような条約を通じての規制というだけではございませんで、もっと踏み込んで、言ってみますと地域的な協力と申しますか、もっとポジティブな積極的な協力が企てられるようになってきている、そういうことでございます。そして、これが積極化しますのが特に八〇年代の末以降のことでございます。  地域的協力と申しましても、その内容はどういうものかと申しますと、簡単に申し上げますと、北欧諸国ソ連、東欧諸国の手伝いをする、支援をする、そういう形で進んできているわけでございます。それはどういうことかと申しますと、ソ連や東欧諸国で引き起こされます環境汚染というものがいろいろな形でもって北欧諸国に及んでくる、そういう事実があるからでございまして、そこで北欧諸国ももう運命は一体である。もちろん、北欧諸国も垂れ流しはやっているわけでございます。フィンランドとかスウェーデンとか、そういうところの木材パルプの工業とかは汚染をやっているわけでございますけれども、しかしそれを克服するためのノーハウを開発してきているわけでございまして、簡単に申しますと、そういうものを提供していこうという動きでございますが、それには大ざっぱに二つのカテゴリーがあるように存じます。  一つは、先ほどちょっと触れました地域的な国際機構を通じての協力でございまして、これが先ほど申し上げた北欧会議あるいは北欧理事会、ノルディックカウンシルというものでございます。これは御案内のように、北欧諸国の国会議員代表によってつくられている機構でございますけれども、その機構は各国に対して法的には拘束力を持たないんですけれども、しかし、実質的にはそこで決議すればほかの所属している諸国が次々に採択していく。そういう形で非軍事面での北欧諸国の統合というものが進んできているということがございます。そういう国際機構を通じての協力というものと、もう一つは、個別のものがございます。  実は、こういう北欧諸国によるソ連、東欧諸国支援というものが活発化してまいりましたきっかけになりましたのは、何と実は、ゴルバチョフ書記長が一九八九年の十二月にフィンランドのヘルシンキを訪問しまして、大変興味深い提案をしたのでございます。それは何かと申しますと、ソ連北方の公害問題を解決するために北欧諸国は協力してほしい。その場合に、言い方が非常に興味深いんですけれども、まずソ連邦政府、モスクワとそれからノルディックカウンシルの北欧会議の代表が協議する。次いでソ連北方の諸共和国及び自治共和国と北欧会議の代表が協議をしてこの問題に取り組んではどうかと言ったわけでございます。  端的に申しますと、バルト三共和国を初めとする諸地域で自立の動きが非常に強まってきていたわけでございまして、このバルト三共和国の自立の動き、後に独立運動に発展いたしますが、これはもちろん一九三九年にソ連に併合されたから今度は独立を取り戻した。そういうふうに言われておりますけれども、もちろんそのことはあるわけでございますが、同時に、契機となっておりますものはまさに現代的な問題で、基地問題ですとかあるいは民族的なアイデンティティーの問題とかございますが、特に環境問題というのがあるわけでございます。  これはエストニアの例で、けさほどの読売新聞に記事がございましたけれども、エストニアの場合には、やはり一番深刻なのは燐灰石で、ソ連全体の農業に肥料用として貢献するはずの燐灰石の大量発掘をやられるということに対して、エストニアで、これでは全土の水が干上がってしまうということで抵抗が起きまして、そこから結局独立運動が発展してきたという経過がございます。  言ってみますならば、ゴルバチョフ書記長は先手を打ちまして、そしてモスクワ、ソ連邦政府と自治共和国が横並びをして北欧諸国と交渉するという場面をあえて設定するという、考えようによっては甚だ危ない提案をしまして先手を打とうとしたわけです。しかし、現実の方は、御案内のように独立運動の方がどんどん進んでしまいまして、その提案はもう忘れられてしまった。そして、北欧会議の方は、当初はゴルバチョフ提案を相手にしなかったのですけれども、その後、北欧会議が取り上げまして、何と皮肉にもバルト三国の独立の動きが強まっていく昨年の一九九〇年の春ごろから北欧会議が積極的にソ連、東欧諸国に対する環境問題での支援ということを考え出すというふうになったわけでございます。  それから、一国による支援ということでございますが、コピーがお配りされていると思いますけれども、ここでごらんのように、何か煙突のようなものがかいてありますのは空気汚染ですね。その次の滝のようなものがかいてありますのは水の汚染。その次の家のようなものがかいてありますのは投棄物、ごみ捨ての汚染。それから、下のは工業施設による汚染。こういうふうないろいろなものにわたりまして、ごらんのような地点を中心にしまして、例えばフィンランドがソ連に対する支援をやり出している、そういう例でございます。  最後に、現状と展望でございます。  先日の、ソ連の八月政変以降バルト三国の独立が実現したわけでございますが、これは私の見ますところ、ソ連邦の再編という問題、これも行きようによっては大変深刻な問題があるかもしれませんけれども、しかし、望まじき方向あるいはうまくいけばという方向としましては、むしろ環バルト海地域の協力がいよいよ進んでいく、そういうプラスの状況をつくり出しているのではないと存じます。バルト三国の場合には、とかく北欧諸国環境問題などでのいろいろな協力にしましても、その場での独立の主張というのが余りにも前面に出る、余りにもと申しますか、前面に出るよりいたし方なかったのだと思いますが、これからは実質的な環境汚染との取り組みがバルト三国も含めて行われていく。さらに、それにロシア連邦共和国のレニングラードとかあるいはカリーニングラードとか、そういうふうなものも北欧諸国あるいはバルト三国とともに参加していくことになるのではないかというふうに思われます。  最後に、私がこういう問題に関心を持ちますのは、実は環日本海の地域協力というのが進行しかかっております。日本海の場合にはまだバルトほどの深刻な汚染はないかもしれませんけれども、専らほかの面での、経済交流等の地域協力ではございましょうけれども、それにしましても酸性雨の問題等ちらほら姿をあちわしかけている。そういう意味ではこのバルト海地域における環境問題の取り組み、また国際政治と環境問題とのかかわり合いというものから私たちが学べる問題があるのではないかというふうに存じているわけでございます。  どうもありがとうございました。
  24. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見聴取は終わります。  しばらく速記をとめてください。    〔速記中止〕
  25. 中西一郎

    会長中西一郎君) 速記を起こしてください。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  26. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 西岡参考人にお伺いいたしたいと思います。  今日では、地球環境保全の重要性については世界の指導者や政策決定者が深く認識し、全地球的な行動に向かって踏み出そうといたしております。そういった折から、今月の六日から九日にかけてニューヨークの国連本部でワールド・サステーナブル・アグリーメント・アソシエーション、WSAAという世界永続農業協会の発会式が行われた。これはNGOでございますが、私も参加させていただきました。その折に我が国の国連大使にお目にかかって話し合いました。  その際、一九九二年にブラジルで国連環境開発会議が開催されますが、その席で行われる気候変動防止に関する枠組み条約や熱帯林・生物の多様性に関する条約の締結が予定されて、準備にブラジルヘ行ってきたばかりだというお話も伺って非常に啓発されたわけです。こういった地球環境問題が今、世界的な規模で大きく論議されて、世界的なそういう条約や枠組みが進められておりますが、その特色として、湾岸戦争で破壊された石油タンクや油井から石油が流出して湾内を汚染し、鳥や魚など多くの生物を死滅させたように、急激な変化で破壊された環境をもとの状態に戻すことはしばし不可能であり、非常に難しい問題があると考えられております。  すなわち、先ほど西岡参考人のおっしゃったように、環境には不可逆性があると考えられておりますが、またこの不可逆性の問題と同時に、もう一つの特徴として、環境破壊が認知されたとしても温暖化交渉の例やフロンガスの対策の例に見られますように、世界や社会のコンセンサスや合意を得て対策が講じられるまでにはかなりの時間がかかる、随分時間がかかっているわけです。こういった時間の中には、例えば極端な例で言えば植林による森林の再生といったような、むしろ自分の世代から子供の世代にまでかかるような問題も考えられるわけですが、こういった不可逆性とタイムラグといいますか、対策のおくれというもの、これをどうしたらいいか、具体的にこういった問題について御意見があったら伺いたいと思います。
  27. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) お答えします。  先ほど、私もおくれの問題を言いました。これは非常に重要な問題でございます。例えば温暖化の話にしますと、現在既に百年間の計測されたデータがございます。しかしながら、そのデータの中からはまだ本当に温暖化しているのかどうかという結論が得られない。なぜそうかといいますと、それは地球全体が非常に熱容量を持っているといいましょうか、ちょっとぐらい熱をかけたってなかなか暖まらないけれども、一たん暖まったら、それを冷やすのはものすごく難しいということがある。特に海がそういう力を持っております。ですから、現在でもそういう状況が果たしてあるのかについて問題があります。ですから、おくれの第一に物理的現象におくれがある。  二つ目は、認識におくれがあるということです。これは先ほど申し上げましたように、炭酸ガスをはかり始めて三十五年たって、ようやく、いよいよ問題だなということがわかる。これで三十五年かかりますね。それから合意を得るのに非常に時間がかかる、これは私どもIPCCと始めましたのは八八年ですから、九二年まで既に四年たっている。しかも、それでもって枠組み条約といって、全体的にこう行こうぜという話はするけれども、具体的にどういう手でやっていこうかというのはそれから先ですから、さらに十何年かかるだろうと言われております。  さて、今、おっしゃったように、じゃ手を打つと。木を植えます。木を植えたら普通は四十年とか言っておりますから、あっという間に百年ぐらいたってしまうということですから、おくれということはこの問題に対して非常に重要な問題です。  それから、おくれと不可逆ということが組み合わさりますと、私はよくこういうことを言っておるんです。霧が出ている箱根の夜の山道を、後ろに子供を乗っけてドライブしている、こういう状況で、向こうで何か赤い火がちらちらと見えた、さてあなたはどうしますかと。よくわからないから、もうちょっとわかるまで待とうぜと言って同じスピードで自動車を走らせますか。後ろに子供を抱えていたらそんなことはないんだ、これはもう一回こっきり、ここで間違えて事故でも起こして死んでしまったら、戻らない人生です、すなわち不可逆であるということですね。その直前にブレーキを踏んでもどうせ間に合わないということはありますから、だから、これに対する手としましては、できることをまずやっていくということが第一です。  今、いろんなことで科学的にも技術的にも進歩がまだ十分ではないから、ひょっとすると次の世代がそれを解決してくれるかもしれませんけれども、そのためには彼らにも時間を残してあげなきゃいかぬという意味で私は時間資源と言っておるんですが、今できることで手を打って時間の資源を確保してやろう、これが我々の世代の義務であるというぐあいに一つ思います。  もう一つ申し上げたいのは、そのおくれに対応する一つの手段は、すなわち予測です。十分な予測ができて、こうなればこうなるということができればそれに対する手が十分考えられるわけですけれども、その予測をするために、いささか我田引水になるかもしれませんが、例えば今、世界じゅうの百年間の天気予報をつくるモデルは世界じゅうで大体十あります。日本はそのうち一つは持っています。それはスーパーコンピューターを回してやるものですから一つの百年間の天気予報をするには千時間、一年間が大体八千時間ですから一つのコンピューターを八分の一使わないとできないんだけれども、現在の日本のスーパーコンピューターの使い方では二年に一回ぐらいしかそういう予測ができないという状況がある。こういう問題がありまして、予測の能力を高めることは非常に重要です。そのためにも現在の状況を観測し、それからモデルをつくり、それをランするといった一連の科学技術の発達が望まれると思います。  以上です。
  28. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 今お話を伺いまして、そういった予測の問題、特に長期的な視野による予測というものが非常に重要だということはわかるわけですが、それを世界のコンセンサスというか、社会的な合意に持っていくというか、そういうような形でないと実効ある解決とか対策というのはできないと思うんですが、そういったような社会の人々 に対する合意とかコンセンサスというものに具体的にどのような手法と努力が必要か、そういった面について伺いたいと思います。
  29. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) お答えします。  今の問題は、非常に重要な問題でございます。この問題は、先ほど竹内参考人から話がありましたように、例えば今アメリカは、炭酸ガスで二四%ぐらいとか二二%ぐらい、それぐらいの大手のところがテーブルに着かない限りは、一カ国だけが抜け駆けした、特に大手が抜け駆けしたんではこれは解決がつきません。私は、具体的にどうすればいいということをちょっとすぐには言いかねるところがございますけれども日本のように非常にある意味では中立的な、すなわちやることはやっていると。一番大切なことは、日本は公害行政における非常に模範的なところがございますので、そういう力を持った国がリーダーシップをとってテーブルの間を駆けめぐっていくというやり方が非常に必要だと思いますし、それから先ほどNGOの話もございましたけれども、我々が持っている力を、私は汗を出している人は非常に少ないと言いましたけれども、これは中央集権でできることじゃないという話も先ほど竹内参考人からあったとおりでございまして、NGOを大いに活用していくべきだと思います。
  30. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 この三十年間に、化学工業の発達によって地球環境問題が人々の、特に世界の人々の世界観というか、そういったものを大きく変えたと思いますが、日本においても社会の指導的な立場にある方々環境問題に対する意識というものは大きく変わってきたわけです。先進工業国の人たちが、これから追いついてこようとする発展途上国の人たちに自分たちのやってきたやり方は間違っておったと、だからこういった進み方をやるとさまざまな悲劇を生じるから、これは改めて、環境に優しい文明や優しいやり方を見つけていこうではないか、あなたたちも見つけてくれと、そういったようなことを言った場合、果たして途上国の方々が納得するかどうか、非常に疑問な点があるわけですが、そういったような点について一体どのようにしたらよいか、先進国の人間の立場であったならばどうなのか、お伺いしたいと思います。
  31. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) お答えします。  今と同じ問題を私たちは米国に対して言っておるわけです。すなわち、君たちは二倍以上の炭酸ガスを出しているけれども、もう少し減らしてくれないかと。その言い方は、私どもアメリカに対してはある程度正当であるというふうに考えているわけですね。それと同じことを途上国の人は我々にも言うわけですね。ですから、私はまず自分の身を律してからほかの者に言うべきだと思いますけれども、今そんなことは言っていられないということでございますので、まず自分自身の正当なコストを払うとか、それから自分自身の生活をもう少し省エネ、省環境的なものにしていくということを踏まえてあえて言う必要があると私は思います。  既にそういう動きが始まっている一例としまして、ロックフェラー財団がこの前、UNCEDの関係で世界じゅうにこういう例はないかということで私どもに問い合わせが来ておりますけれども、自然のエネルギーとか自然のバイオマスといったものを使いながらちゃんとサステーナブルに動いている小さな村、小さな集団はないだろうか、そういうものをどうやって拾い集めるかということで問い合わせが来ております。私、日本でそういうものがあるかと調べてみたんですけれども、残念ながらまだそういうものはない。ですけれども、そういうものを正本は率先して実践しながら、それを普及していくということをやって初めて信頼が得られるものではないかと思っております。
  32. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 地球環境問題の特色として分散化された巨大システム科学といったような理念が必要だと言われておりますけれども、具体的にある程度どのような問題か、またどうすればそうしたものが確立されていくか、そういった点についての参考人意見を伺いたいと思います。
  33. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) 分散型巨大科学に対応するものとして、私は集中型の、それから個別の科学といったことを言っておるわけです。ここにちょうど表を書いておきましたけれども、例えば人工衛星を上げる、これは非常に巨大科学です。しかしながら、そこに携わる人が一つの明快な目標をトップダウンでもって与えられて、それで一斉に走り出すというスタイルをとっています。そういう意味システム科学でもあります。しかしながら、今後地球環境問題で必要なのは、実は私どもの一番困っておりますのは、途上国におけるデータがないということですね。これは今までにも先進国だけでいろんなデータをとってやっていますけれども、途上国のデータがなければ、一体どこでどれだけ炭酸ガスが出ているのか、どこでどれだけの森林破壊が起こっているのかわからないという状況になっております。ですから、先進国の人が集まってロケットを打ち上げるといったものではないということなんです。それは地域的にもそういう広がりが必要です。  それから二つ目が、科学といったらもうみんなナチュラルサイエンスだけのことを考えますけれども、この問題を解決するためには、先ほどの国際政治の話も含めて社会科学の問題が非常にあります。それから、生物学、物理学、天文学の人もいれば地質学の人もいるといったあらゆる分野に散らばった知識を一カ所に集めなきゃいけない。そういう意味で、私どものセンターのセンター長で市川というのがおりますが、彼は、ジグソーパズルというのがございますね、子供たち一つ一つのかけらを持って集めて一つの絵ができる、そういったものを想定してくれと。途上国の人が一つのピースを持って集まる、それから生物学の人が集まる、政治家の人が集まる、こうやって絵をかいてみて初めて地球というものがわかったと。そういう意味で、大きな科学ではあるんだけれども、人類を救う大きな科学ではあるけれども、これは分散しておいて、それをシステム的に組み上げていくということが非常に大切であると。そういうことで、科学においても好奇心に任せてぼんぼんやるのじゃなくて、どうやってインテグレートしていくかということが大切であると。そういう本部が要るだろうと。  既にアメリカは、例えば中南米とアメリカを結、ぶ大研究所構想というのを先ほどの四月のホワイトハウス会議でぶち上げたんですけれども、それはいささか科学ばかり優先しているという欧州勢の反対に遭って、今のところは深く静かに潜行しているようです。ですけれども、手を打つと同時に、やはりそういった科学的なシステム化された研究所構想なりそういう中央集中的な討議の仕方も考えていかなきゃいけないということでございます。
  34. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 ありがとうございました。  続いて、竹内参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどのお話にもございましたが、来年六月にブラジルで、全世界の首脳が一堂に会する地球サミット、環境と開発に関する国連会議が開催されます。これに対して、海部首相は国際的なリーダーシップをとっていく必要があると述べておられますし、また、私もその一員ではございますが、地球環境議員連盟会長の竹下元首相も環境問題は今や政治の本流になったと言われております。まさにそのとおりでありますが、現実の政策との間にはまだまだ埋めなければならない点がたくさんあると思います。そういったような点につきまして、先ほど参考人は、環境アセスメント、環境影響評価の問題やら太陽電池などのいろんな例を引かれましたけれども、一体どうしてそういったような点が現実にならないのか。  過去に、この外交総合安全保障に関する調査会でも、私も中西会長のもとに関西電力太陽電池の発電あるいは千葉における京セラの太陽電池のそういった実験装置というものも視察をさせていただきました。そういう面では地球に優しいというか、エコロジカルなそういった電力発電装置ではありますけれども、なぜそれが一般に普及し ていかないのか、そういったような問題があると思いますが、それについての竹内参考人の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
  35. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) これはレスターブラウンさんもよく言われることですけれども、やはり非常に必要なのはとにかく政治的なイニシアチブだと。とにかくもうやるべきことは大体議論は出尽くしているので、それをやるかやらないかの問題だという意味では、まことにこの場で言いにくいんですが、私は今の状況は政治が寝ているんではないかなという気がするわけです。  先ほども言いましたように、ドイツなどでは住民の意思を議員が非常に敏感に受けとめて、議会でいろいろ研究もすれば法案も出す、そういうことがやはり政府をずっとリードしていって、政府もやらざるを得なくなる、産業界もそれに応じざるを得なくなるというシステムがあると思うんです。  レスターブラウンさんも本の中でも繰り返し言っておりますが、日本の政治的なイニシアチブこそが大事なので、日本には技術もお金も両方能力があるけれども、もう一つだけ欠けているのが政治的な意思決定だ。ここさえやれば日本というのは地球環境の問題に大変な貢献ができるのではないかと。  私も全くそのように考えておりまして、これほど日本にとってふさわしい国際貢献の分野は私はないと思うんです。各党の見解を見ておりまして何の異議もありませんし、全く一致しているわけです。考え方が一致しているわけですから、やろうと思えば私はできるのではないかなという気がするんです。
  36. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 ちょっと話は変わりますけれども、一九八八年の九月二十七日にニューヨークの国連総会で、ソ連のシェワルナゼ外相は、今日の地球規模の問題、とりわけ経済問題、環境問題への取り組みに関する緊急の決定を行うことができる国際的なメカニズムを国連の枠内において設立することが必要である。そのために国連環境計画、UNEPを生態系保存のため有効な決断をなし得る環境理事会に改組すべきであるという提案をいたしましたが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  37. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 私は、なぜ地球環境問題が政治の舞台に急浮上したかということを考えてみました場合に、一つは、一九八八年の年初から地球上にいろいろな異変が起こったということ。それは北海でアザラシが死んだり、バングラデシュの三分の二以上が水につかったり、あるいはアメリカや中国に熱波が襲ったり、日本には大変な冷夏が襲ったり、いろいろ異常なことが起こって、人々の意識が非常に喚起されたということがあると思うんですが、私はそれ以上にやはり米ソの緊張の緩和が次なる人類にとっての驚異に目を向けさせたというふうに思うわけです。その間には、かなりヨーロッパを中心とします政治的な動機があったのではないか、つまり東ヨーロッパあるいはソ連の政治改革というものとの絡みがあったのではないかなということを私は強く感じているんです。  昨年の春に、私は、東ヨーロッパからバルトにかけて民衆の蜂起、政治体制に対する立ち上がりというものがどういうところから起こってきたかということを知ろうと思って、東ローヨッパとバルトを歩いてきたんですが、先ほど百瀬先生からもお話がありましたように、エストニアの燐灰石の問題であるとか、各国共通してそこにあるのは環境の問題が出発点にあるような気がするのです。  一例だけ挙げますけれども、ブルガリアのジフコフ政権は大変に安定した政権だった。それが一九八九年十一月の十日、つまりベルリンの壁が破れた次の日ですが突然辞任をしてしまう。私ソフィアに。参りまして、いやその一番の源流は環境問題なんだという話を聞きまして、大変興味深くそれを逆流して取材をしたのです。といいますのは、ブルガリアの一番北のところに工業都市でルッセという町がございます。ドナウ川を挟んでルーマニアと国境を接しておりまして、この町には五年間で二百五十回の塩酸を含んだ霧が襲ってくる。なぜ襲ってくるかというと、気象条件によって、風向きによって、あるいは湿度によって実はドナウ川を挟んだルーマニアの塩酸工場からこの霧がやってくる。霧がやってきますと、人々は外に出ていて息ができなくなる。みんなハンドバッグやポケットに大きなハンカチを持っておりまして、これで口と鼻を覆って家の中に駆け込む、そしてカーテンを閉めて霧の去るのを待つというような生活をずっと強いられてき。たわけです。  これに対して、ついに立ち上がったのが母親でありまして、子供の命を守れ、子供はもう息ができないと言って、母親が乳母車を先頭にいたしまして三千人のデモがルッセの共産党の本部を取り囲むというようなことが実は二年ほど前に起こりまして、共産党の方はもちろんこのデモの指導者に対して厳しい処罰をしたわけです。そこでソフィアにいますインテリたちが、こんなことではこれはもう大変なことだということで、その地方の母親たちと手を結びまして地下運動を始める。この地下運動が目標といたしましたのは、それから一年後ぐらいにソフィアで全ヨーロッパ環境会議が開かれるという予定になっておりまして、それへ向けてずっと準備、作戦を練っていく。そして、この会議が一九八九年の十月の下旬ぐらいから開かれたわけですけれども、この会議の会場の前で、ブルガリアの環境はこんなにひどいというデモをするわけです。  それに対して、西ヨーロッパからもたくさんお客さんが来ている場ですから、警官隊がこれを排除しようと思ってデモ隊に対して大変な暴行を働く。西ヨーロッパのテレビがこれを映して、西ヨーロッパで大変に大きな問題になる。その波が再びブルガリアの方に襲ってきてジフコフさんは辞任せざるを得ないような状況になる。会議が終わって一週間後に、ブルガリアまでは改革の波は及ばないだろうと思われていたジフコフさんまでがやめてしまうという事態になったわけです。  そのように、環境の問題というものが社会の負の部分に人々の目を向けさせる、これは幾ら情報統制をしようが、自分たち自身で感じられる問題ですから、そういうものがきっかけになって運動が始まり、それがやがては体制自身を改めない限りは解決しない問題だと。ルーマニアとの外交交渉を母親たちは要求するわけですけれども、おまえたちは共産党の中を二つに割るのかというようなことでルーマニアに対して何も交渉をしてくれない。そして、その塩酸の霧がずっと降り続くという状況が続いていく。  そういうことから出発をしておりますので、つまり、それがやはり体制を変えなければ何ともならないんだという政治運動へやがては発展していくというような経過、こういう流れというものはどこの国にもありまして、これは何も社会主義の国だけではなくて、同じことは今西側の国々にも突きつけられている問題ではないか。つまり、過剰生産、過剰消費、過剰廃棄のこういう体制を続けていれば、いつかはそれが全体を破壊してしまうことに向かうのではないか。それにやはり我々自身が目を向けなければならないのであって、そこに最も敏感なのは、私は、政治がどうしてもそこへ目を向けなければ、やがてはソ連や東欧で起こったのと同じようなことが起こらないとは限らないと。つまり我々自身がそういうことにどの段階で気がつくかということだと私は思いますので、やはりそこで政治的なイニシアチブがどうしても必要ではないかなというふうに考えております。
  38. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 続いて、百瀬参考人に伺いたいと思います。  先ほどもお話ございましたが、バルト海の地域における資源・環境問題、こういったものが自立運動の重要な契機になり、ドライブをしたということを伺いましたけれども、エストニアの東北部では燐灰石の大規模な採掘計画が行われて水が干上がる、また農業都市もそのために窮乏に陥るおそれが出る。それから、ラトビアではダム建設などの環境破壊があり、リトアニアではチェルノブイリ型の原子炉へのおそれ、そういったようなものが結びついて一つには独立の要求ともなり、それがエスカレートして命令経済のもたらしてきたいわゆる公害というものを克服するというような運動が大きな体制変革の動きにつながったということを伺ったわけです。  最後にちょっとお触れになられましたけれども、最近、北東アジア、特に韓国や北朝鮮あるいは日本ソ連、中国、そういった国々の太平洋を取り巻く環太平洋地域と申しますか、そういった地域での地域的な交流やら、いろんなそういう問題が随分起こっているようでございます。一面においてはそれが一つのボーダレスな動きとしてその地域の活性化につながると同時に、また反面ではバルト三国とは違う形で公害が発生するのじゃないかということも懸念されるわけです。それにつきまして特に日本の、環日本海といいますか、その地域のそういった問題について、参考人の専門家としてお考えになられてお気づきの点があったらお教えいただきたいのです。
  39. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) ただいまの御質問の点でありますけれども、これは先ほどのお話の中にもちょっと出てまいりましたけれども、いわゆる先進国というのは早々と公害を体験して、それに対する対策もいろいろと練ってきた、またそういう対策を練る余裕もあったと。ところが、それに対していわゆる後発国の国々、これは先進国によって以前は植民地など犠牲にされていたような国々も含めまして、そういうところは開発にあるいは工業化に熱心の余り公害問題にまで対策がなかなか回らない、そういう矛盾があると思うんでございますね。そして、それが一つの北東アジアなら北東アジア地域という中に一緒に存在しているというところに大きな問題があるのだと思います。  これは、端的に申しまして、バルト海地域の場合から連想いたしましても、いわゆる先進国はどうしてもこういう問題では後発国に対して支援と申しますか、いろいろな発想はあり得るわけで、つまり先進国の方ではもう既に公害の問題はこうやって克服している、後発国の方もそういう公害を出さないようにして但しい、こういうふうに注文をしたくなるというのはこれは当然でございますけれども、それじゃどうやって克服できるのかといったときに、後発国の側ではとてもとてもそういう余裕はない場合が多いと思うんでございますね。ですから、そこはやはり先進国が、これは口で言うはやすく行うはなかなかかたいことでしょうけれども、相当に後発国に対する支援あるいは協力をする、そういう心がけが必要ではないかと思います。  バルトの場合にも、北欧諸国というのはそれをやっているわけでございまして、いろんな形で、例えば技術の転移でございますね、技術を輸出する、あるいは資本的な面での援助、さらにアドバイスをする、そういうふうな三種類ぐらいの方法を使いましてやっているわけでございますけれども、その方向には運命共同体という、この理由のいかんにせよ、とにかく一緒の生態系の中に住んでいて、そしてそこで現実に出てくる公害というものが我々にも及ぶんだという、これをどうするかという自分たちの問題として取り組むという姿勢が北欧諸国の場合には非常にあるように思われます。この点なども何か御参考になるかと思われます。
  40. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 バルト三国の場合、一つの共通のモデル的なものとしてフィンランドを想定しながら進んだということを伺っているんですが、それはどういったような点でしょうか。
  41. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) それは、主としてソ連に対する対応の仕方という点でございますね。つまり、ソ連に対して自主的な外交をやっていくためには非常に粘り強い取り組みが大切である。理念的には反発することもあるいはただただ譲歩していくこともまずい、それはやはり一つの一定のプリンシプルを立てながらできるだけプラグマティックに譲歩する。それはソ連の力が強大だったからまでだというふうに言えばそうですけれども、小国の外交はそうせざるを得ませんので、それをバルト三国が非常に心がけていたというふうに私には思われます。  それは、指導者がそういうことを口にいたしましたし、それから実際に両大戦間の、第二次大戦前とそれからしばらくその直後ぐらいと、それから最近の独立運動のプロセスではまるきり対応が違うわけでございます。非常に長期的には、ソ連と申しますか、もっと具体的に申しますとロシアとかあるいはソ連を構成しているウクライナとか白ロシアとか、そういうところと長期的に協力していくような方策をいろいろとっているわけでございますね。それが私は今日の、八月の事件の後でありますけれども、バルト三国の独立につながったというふうに思っております。その点で、バルト三国はフィンランドを一つのモデルにしたらいいと。これはラトビアの亡命者の団体ですらもそういうことをラトビアに対して勧告しておりました。  ただ、もう一つは、バルト三国が発展のモデルにするというふうに言っている場合には、よくエストニアが言うんでございますが、第二次世界大戦前は、独立時代のエストニアというのはフィンランドとほぼ同じような経済水準あるいはそれより上だったと。したがって、あのままもしあの時代が続いて独立国であれば、フィンランドと同じように発展できたんだと。それがソ連の占領によってこうなったのであると言って、ソ連による占領に対して抗議するとき、その理由としてそれを挙げるわけでございますね。そのことが一つあるのかもしれません。  それからもう一つは、北欧とかあるいは環バルトの協力の場合に、一般的に北欧の研究者を含めてよく言われますことは、バルト三国というのは将来例えばアジアの方のNIESでございますね、どうもそういう国々に匹敵するような発展をするんじゃないかというふうなことが、あれがモデルになるんではないかというふうによく言われておりますけれども、大体そんなところでございます。
  42. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 以上で終わります。
  43. 山田健一

    ○山田健一君 それでは、私から参考人の方に御質問さしていただきたいと思います。  この外交安保調査会で、けさもレスター・ブラ、ウンさんをお招きして大変いいお話を聞きました。まさにイデオロギーの時代からエコロジiの時代、こういう形で外交安保調査会地球環境問題についても集中的に調査研究を行うということは、一つの大きな時代的な使命というものを改めて今感じているわけでありますが、まず、西岡参考人の方にお伺いしたいと思います。  先ほど、竹内参考人の方からもお話がありましたいわゆる技術のあり方といいますか科学技術、西岡さんの方からも、これから自然科学プラス社会科学の結合という方向がこの中でもお示しをいただいておるわけでありますが、やはり今までの科学技術のあり方というものも基本的に今問われているのではないか。ブレークスルーという話が出ておりましたけれども、ややもすれば技術偏重、その中でまあ何とか技術を革新していくことによって乗り越えていけるというような、言ってみればそれに対する過信といいますか、そういうものもあったんではないか。時あたかもそういう時期で、自然科学なり社会科学、さらに言えば政策科学といいますか、そういったところまでを視野に入れたこれからの対応策が必要だと、こういう御指摘をされております。  全くそのとおりだと思いますし、今日までのある意味では総括をするという意味で、ブレークスルーという今日まで求められてきた一つの概念といいますか、こういうものについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねをさしていただきます。
  44. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) お答えします。  今まさに竹内参考人からも話がありましたけれども、いわゆるすべてをテクノロジーで何とかやっていこうという動きはテクノフィックスと言われ、フィックスというのは物事をきちんと直していこうとかよりよくしていこうということなんですけれども、テクノフィックスと言われる一つの大きな潮流であったわけです。しかしながら、その潮流の底にあるのは、常に、エネルギーはどこから持ってくるとか、それからそれを廃棄するところまで考えていないといったところに基本的な弱みがあったしうに思われます。  最初に、地球環境問題二つの側面という中で、特にツケ回しかきかないという話を私はしたわけですけれども、例えばひとつ自動車をつくるにしても、現在我々がやらなきゃいけないのは、その自動車の鉄をつくり、それから加工し、それがガソリンを使って走り、最後に廃棄されてどこかにリサイクルされる。その全工程においてどういうエネルギーが使われるんだろうかということを考えなきゃいけない。今までは、それは日本の中では安いエネルギーを買ってくるということからスタートしていたんですけれども日本から追い出しただけで話は済まないというツケ回しのことを考えてみますと、どうも今までのテクノロジーのあり方についてはいささか疑問がある。  テクノに対してソシオということを言っております。我々のライフスタイル自身を見直す時期に来ているんではないかと。我々が常にフローを求めて、人よりも速く走るとか、人よりたくさん自動車に乗るとか、いい自動車に乗るといったことが本当に楽しい生活を我々に与えてくれていたんだろうかというところまで戻って考えなきゃいけない。そういう面で、ソシオフィックスと言っておりますけれども、教育だとか価値観だとか、そういったものまで戻って考える時代になってきております。そして、私百年の計と申し上げましたけれども、長期的に取り組むために次かしてはならないのがやはり教育であると思われます。現在の、早い話が、先ほど申しましたようにたくさんのフローを抱えるのが社会的にいいとか格好いいとかそういうことではなく、それぞれのプロセスを楽しむとか現在あるままを楽しむとか、なかなか口だけでは言いにくい話なんですけれども、そういった価値観の変換が求められている、その中で技術も大きく変わらざるを得ないと考えております。
  45. 山田健一

    ○山田健一君 全く話が変わりますが、環境国立環境研究所地球環境研究センター、こういうことでありますのでちょっとお尋ねをしてみるんですが、先ほどから異常気象の例もありました。地球環境が人為的な、人間としてのこれは後いろいろ歴史的に評価をされるでしょうけれども、このたびの湾岸戦争に伴うあの地域の海洋汚染、大気汚染地球環境の大変大きな破壊に実はつながっておりますし、一方ではバングラデシュのサイクロン、中国での大洪水、いろいろと気象変動、さらにはフィリピンでピナツボ火山、今度の爆発にしてもそうですが、こういった現実の予測も確かに必要ですが、実態調査といいますか、その辺はどの程度なされているのか、湾岸の問題も含めて現状と、それから先ほども言われましたように、政策的なオプション、本当はそこまで提示ができれば一番我々もありがたいわけでありますが、そこら辺の見通しといいますか、調査とそういった対策についてどう考えておられるか、ちょっと聞かしてください。
  46. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) 第一の点で、どこまでわかっているのだろうか、またその調査はどれくらいできてきているんだろうかということに対して、それを示す余りいい基準はないんですけれども、例えば地球の状態をしっかりと監視するためには五百キロメートルぐらいのメッシュで一点の観測所が要る。そうしますと世界で約六千ぐらいの観測所が要ると言われています。これは一つの言い方ですけれども、そういうことを言っている人もいる。そうしますと、現在、天気予報の測候所はたくさんあるんですけれども地球の温暖化などに関連する温室効果ガスなどの観測点はせいぜい二十ぐらいです。日本はそのうち一つ、それから我々が今つくろうとしている二つ目ぐらいだということですから、いかに情報が不足しているかということはおわかりになるかと思われます。  それから二つ目の例といたしまして、それじゃどれだけ世界じゅうで貴重な生物がなくなっているんだろうか。これは、一年に何万種だとか、あと数十年の間に何百万種なくなるというぐあいにも言われておるわけです。これは科学の話なんですけれども、いろいろ生物学者によって種というものに対する数え方がみんな違うわけです。ノミのことをしっかりやっている人はいろいろノミの分派まで数えて、それは一種だからノミだけで五十種あるとおっしゃるかもしれませんけれども、じゃ一体どういう基準でもってはかったらいいのかということですらまだ科学者の中でもなかなか合意がとれていない。木の種類をどう考えるかとかそういうようなこともありまして、まだその辺の段階だということです。ですから、例えば生態系生態系と言っておりますけれども、これを勘定する手だても確立しておらないし、それから人工衛星で幾らはかっても木の全体のボリュームはまだわからない。どれだけ炭素のボリュームとして地上にあるんだろうかということを確実には言えない。上から見たら緑があるとかないぐらいはわかりますけれども、そういう状況でございます。ですから、観測をもう少しやらなきゃいけないという状況はそのとおりです。  しかしながら、私が再びここで強調したいのは、観測は観測であり、観測を強くすることによって我々はより効果的な手を打てるだろう、より早く手を打てるだろう、こういうことを願ってやっておるわけですけれども、それを理由に対策を打たないと言っていることではないわけで、情報がなくても手を打たなきゃいけないことがたくさんあるかと思われます。もちろん、対策については現在いろいろ考えておる。省エネの手もあれば新しいエネルギーをつくる手もいろいろあるかと思います。我々はある程度もう全面作戦をとらなきゃいけない状況にあります。
  47. 山田健一

    ○山田健一君 なかなか大変だと思いますが、観測体制も十分でないということで、しっかり調査を含めてさらに進めていただきたいと思います。  次に、竹内参考人にお尋ねしたいと思います。  国際政治の中で地球環境問題の位置づけをされまして、お話を聞いて全く同感であったわけでありますし、政治家の、あるいは政治のイニシアチブ、これにかかっておる、こう言われるともう言うことはないわけであります。特に私も、最後に言われましたように、地球環境の対策、経済的なシステムの転換を含めてそうでありますが、これはやっぱりエネルギー政策の転換というのが一つの大きな避けて通れない柱になっているだろうというふうに思います。今までのエネルギー政策というのが言ってみればエネルギー産業政策といいますか、供給する側の理論と政策、これで展開されてきた。しかもそういう中で、お話がありましたように、原発の問題にしてもそうでありますし、来年の地球サミットに向けても、日本としては合いわゆる行動計画をつくった、こういうふうに言っておるわけでありますが、この行動計画すら達成もどうなのかというお話がありまして、私も全くそのように思っております。  その背景が、いわゆるエネルギー政策といいますか、総合エネルギー調査会の需給見通し、これが言ってみればこれから原発を今の倍以上ふやしていくという計画でありまして、それに基づいた行動計画というバックグラウンドになっているわけでありますから、とても現実的にはいろんな問題があるなというふうに思っております。  そういった意味で、エネルギー政策の転換を、これは不可避だというふうに思っておりますが、行動計画そのものについてもそういった意味でいろいろ問題点なきにしもあらず、こういう状況の中で政治的にイニシアチブをとっていくということになった場合に、大体どの辺が、どういう問題が一番のポイントといいますか、先ほど西ドイツの例もお話しいただきました、日本として世界に向けてどういう点をアピールしたらいいのか。レスターブラウンさんはいわゆる熱帯雨林の話で、きょう、どうも森林破壊をやめるようにというような話がかなり日本に対してあったようでありますが、その辺についてはどのようにお考えになっておられますか。
  48. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 私は、政治的イニシアチブということはやろうと思えばできるような気がするんです。  一例を挙げますと、イギリスのサッチャーさんは、環境に対しては非常に冷たい人だった。ドイツや北欧の環境先進国に対してはほとんど背を向けていた。ところが、あるときからサッチャーさんが非常に環境派に転向するんです。それは一九八八年の秋ですが、サッチャーさんの政治的な勘で、政治的な動機で私はやられたと思うんですけれども、東ヨーロッパの改革を進めるために彼女が環境というものをかなり使ったような形跡が幾つもあるわけですけれども、サッチャーさんが環境派に転向すると同時に、今まで非常に後ろ向きだった人が一気に変わったことによってヨーロッパじゅうにそういう波をつくる、大変影響力が大きかった存在だと思うんです。  今、国際会議やなんかで日本の対応というものは、ヨーロッパの非常に積極的な姿勢とアメリカの消極的な姿勢のちょうど間に立って様子を見ながら風見鶏をやっているわけですけれどもアメリカを何としても引き込んでこなければ意味がない、そのとおりだと思うんですが、アメリカを引き込むための策としては、やはり日本が思い切ってヨーロッパ並みの積極政策をとることによってアメリカを引き込めるというふうに、そっちの考えに私は加担をしたいんですね。アメリカに同情的なことを日本が言っていればアメリカは孤立をしないわけですから、日本がいるわけですからアメリカの態度というのはなかなか変わらないだろうと私は思うんです。ヨーロッパの人やほかの途上国の国々人たちもよく言っておりますが、かぎを握っているのは日本なんだと、日本がもう一歩積極的になってくれればアメリカもついてこざるを得ないだろうし、そうなればソ連だけが幾ら今混乱の中にあるとはいっても何もしないというわけにもいかなくなるだろうということで、私は日本が非常に大きなかぎを握っているように思うわけです。  それで、具体的にはエネルギーの問題が一番重要な問題であるし、世界全体もそうですが、特に日本は石油の依存が高いわけですから、ここからどうやって少しでも依存度を下げていくかということしかないと思うんですね。そのためには自然エネルギーを導入するとか、あるいは全体のエネルギーの使用量を節約するということに前向きな政策を出していくということだと田小うんです。日本の場合には、オイルショックの後には非常な節約が実現したんですが、石油の値段が緩んだ途端に実はエネルギー消費というのはどんどんどんどんまた伸びてしまう。例えば、消費税を導入したときに一緒に物品税を引き下げておりますけれども、要するにエネルギー消費の大きいもの、例えば電気冷蔵庫ですとか自動車ですとか、そういうものの物品税を大幅に下げているわけで、この税金が下がること自体は国民は大変歓迎をするでしょうけれども、そこにはエネルギーをどうやって節約していくかというような考え方は実はないわけです。  今、エネルギー政策で求められているのは、先ほど言われましたとおり、供給側からの考え方ばかりじゃなくて使う方のことを考えなければいけない。それで、オイルショックのときのことを考えればまだまだむだなエネルギーを使っているわけですから、そこを例えば住宅の断熱化であるとか、あるいは地域に落ちている廃熱の利用であるとか、そういう細かい政策を積み上げていけばエネルギーの消費量というものほかなり減るのではないか。  そして一方で、自然エネルギーを導入しやすいようなそういう制度をなるべくつくってやる。そのこと自身は、供給量は率としては私は非常に低いと思うんですけれども、それは低くても、もうそういう自然エネルギーを使わなければいけないんだというようなことを政府もあるいは国会もやり出せば全体のエネルギーを節約しようという意識に非常に結びつくと思うんです。ですから、そういう意味でインセンティブを与えてやる、幾つかの制度をつくって。自然エネルギーなんというのはまさに象徴的に私はいいと思うんですが、そういうことを日本は積極的に導入するんだということによって全体のエネルギー節約の意識を高めていくということが非常に重要ではないかなというふうに思います。
  49. 山田健一

    ○山田健一君 ありがとうございます。  もう余り時間がありませんので、最後に、百瀬参考人に一点だけお尋ねいたします。  論文をちょっと読ませていただきまして、昨年の段階でバルト三国についてはいろいろ歴史的な経過を踏まえて、いろんな曲折はあるにせよこの三国はいずれ自立をする、独立をする、こういうことで見通しを明らかにしておられまして、非常に的確な見通しを読ませていただきまして本当に感心いたしておるわけであります。  特に、ソ連のああいった政変等も踏まえて、まさにあの中でも御指摘になっておられますように、環境問題をむしろ中心に、環境という一つの要因があって、それが逆に地域間の共同体的な発想といいますか、そういうものが非常に培われてきた。確かにその契機には東西両ドイツの基本条約というものがあったということでありますが、それが逆にまた非軍事的な、非政治的な一つの結びつきというものをより強めていくということになってくれば、これから軍事的な、あるいは政治的な側面を含めてあの地域の一大安全保障共同体的なものができ上がっていくのか、経済的に見てもあの地域一つの大きな経済圏域ができ上がっていくのか。ヨーロッパ経済のいわゆる下部構造的な一つ役割を担っておるという御指摘もなさっておるわけでありますが、この辺の将来の展望といいますか、その辺を最後にちょっとお聞かせをいただきたいと思っております。
  50. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) ただいまの御質問で、まず経済的な共同体、こういう動きは今後加速していくというふうに思っております。やはりそこにバルト三国と北欧諸国だけでなしに、ソ連邦のロシア共和国でございますね、それからカレリア自治共和国とか、そういうところも含んだあの地域一帯の経済的な相互依存の発展というものが進むのが一番望ましいでしょうし、既にフィンランドがそれを提案しております。私はそれについては長期的には見通しがあるというふうに思って声ります。  特に、ヨーロッパ地域と申しますとヨーロッパ全体を地域というふうに定義しております。しかし、今までの議論では、まさに今御指摘の下部地域とか下位地域というものがどういうふうにそこに絡まるのかという話が余り日本では紹介されていないんですが、私はヨーロッパ全体の地域統合が進むときに下位地域としての環バルト海の動きというのは非常に重要になると思います。  それから、軍事問題でございますけれども、これは全く今不透明でございまして、どうなるかということがまだよくわからない。  ただ、一つ例を申し上げますと、八月政変の後でノルウェーの国防大臣のホルストという人、これは軍事戦略の大変な大家でございますけれども、この人が今は安全保障については全く発想を変えなければいけないかもしれない。ちょうどノルウェーが中立主義からNATOへ加わる、同盟参加を決意した一九四八年、四九年、あの時期に匹敵するような転換期に直面しているかもしれない。というのは、具体的に言うと、ソ連が解体していって、あるいは共和国が分離していって、核の問題がどうなるか、核兵器の問題がどうなるか。そうなると、ノルウェーはここでもってバルト海地域の非核兵器地帯案というものを出すべきかもしれない、そういうことを言っておるわけです。ノルウェーは今まで事実上の非核兵器地帯だといってフィンランドのケッコーネン大統領の提案を断わってきたわけでございますけれども、今ではノルウェーの国防相がそういうことを言い出しているということで、まああちらの軍事戦略家もちょっと見通しが立たないという非常に大きな発想の転換期に直面しているかもしれない。そういうことは事実のように思われます。
  51. 翫正敏

    ○翫正敏君 西岡秀三参考人にお伺いします。  事前に読ましていただきました「地球環境の二十年-認識から行動へ」という論文の中に書いてありますところに関連して三点質問したいんですが、時間の関係もありますので、三点次々とお聞きをしますから、まとめてお答えいただきたいと思います。  この論文の中で、「一九九二年にはブラジルで国連環境開発会議が開催され、気候変動防止に関する枠組み条約や熱帯林・生物の多様性に関する条約の締結が予定されている。」ということが書かれておりますし、また「宇宙からみた地球」という項目のところでは、「宇宙からの観測がまざまざと地球環境破壊を見せつけた例が、アマゾン横断道路を軸に魚の骨状にのびた熱帯雨林伐採の映像である。今や熱帯雨林の消失は年間十四万平方キロメートルにおよびさらに加速されつつあり、このままの速さで開拓が進めば、来世紀後半にはアジアの森林をはじめとして、つぎつぎに全滅すると予想されている。」、このような指摘がありますので、関連してお聞きしたいわけであります。  まず、地球の温暖化ということについてでございますが、この図は、新聞に載っておりました東京都立大学教授の三上岳彦さんの研究された結果の図なんですけれども、過去二万年の温度変化を示した図だそうで、温度は最終氷期のピークをゼロとした場合、つまり二万年前ですが、の温度差をあらわしているわけです。一万年前に最終氷期が終わりまして、急激に温暖化してきたことを示しています。「「この後、氷期のうち、過去千年ぐらいをみると、数百年から数十年単位ではっきり現れる気候変動がある。うち寒冷化が典型的に現れた十六世紀-十九世紀が「小氷期」で、太陽活動や火山活動などが関連していると考えられています」 「小氷期」中、最も寒冷だった十七世紀末から十八世紀初めにかけて、太陽の黒点数は著しく減少。特に一六四五年から一七一五年までの七十年間は、黒点数がほとんどゼロに近くなった」、こういう指摘をしておられます。  さらに、「ここ十数年間の急激な地球温暖化は、大気中への二酸化炭素の放出量が増加したことなど人間活動影響が大きいとされる。ところが、温暖化は既に十九世紀後半から始まっていることが、小氷期研究者たちによって明らかにされている。三上教授は「ヨーロッパ日本では一八五〇年から六〇年代にかけて小氷期が終了したと考えられる。温暖化はその直後から現れており、最近になって突然起きたわけではない」」こういうふうに言っておられるわけです。また、「「二酸化炭素抑制などは大事だが、同時に気候変動の大きな流れも見る必要がある。この時期の気候変動のメカニズムを知ることが、温暖化の解明や二十一世紀の気候を予測するために必要なのです」」、こういうふうに言ってこの図面をつくっておられるわけでありますので、この三上さんの学説に対してどういうふうに思われるかをお答えください。  それから二番目は、木材の生産量につきましての国連食糧農業機関、FAOの統計でございますけれども、先進国の木材生産量が一九八六年には十四億九千八百八十五万立方メートルであり、その内訳は、用材として十二億一千七百三十五万立方メートルで八一%、燃料用材として二億八千百五十万立方メートルで一九%。発展途上国の木材生産量が八六年で十八億百二万立方メートル、内訳は、用材として三億七千五百十四万立方メートルで二一%、燃料用材としては十四億二千五百八十八万立方メートルで七九%。これを両方合計いたしますと三十二億九千九百八十六万立方メートルで、内訳が、用材として十五億九千二百四十八万立方メートル、四八%、燃料用材として十七億七百三十八万立方メートル、五二%、こういう数字になりまして、これは八九年の統計を見ましても、数字は少しふえておりますけれども、パーセントとしてはほぼ同じパーセントを示しておりまして、全体的には用材に四八%、燃料用に五二%という数字になっておるわけであります。  そこで、そういうところから焼き畑と森林破壊の関係というもの、また薪炭材の採取と森林破壊の関係というものが問題になっているわけでありますけれども、この点について、こういうふうに私は思うんですが、西岡参考人はどういう御見解が、お示し願いたいと思います。  伝統的な焼き畑の方法は、川筋から二キロメートル前後入ったところまでしか耕地としては使わず、ある範囲内で小規模に行い、移動して数年後もとのところに戻る。もとに戻るまでには、二次林が十メートルないし十五メートルぐらいの高さで復活している。この移動範囲は、すべて先祖代々使った二次林で、原始林にはほとんど手をつけていない。そしてその境界から奥の方には原始林が広がり、狩猟や採集の場となっている。もしこのような条件でも森林破壊されるならば、今世紀に入る前に森林は消えていなければつじつまが合わない。したがって焼き畑は森林破壊の原因ではない。  焼き畑による森林破壊が目立つ土地は、第一には、過去において輸出用の商業伐採が集中的に行われている。第二に、その伐採跡地に、政策的移民や自然移民が押し寄せて伐採道路を伝わって入植し、広範な土地を繰り返し焼いて荒廃地にしてしまう場合である。これらの移民は、伝統的な作物を多種小規模につくるエコロシカルな耕作法を知らず、コショウなど、そのときに世界市場でもてはやされる換金作物を単作することが多いため、土地の荒廃が促進されてしまうのである。こうして見ると、破壊的な焼き畑は、森林破壊の原因というよりもむしろ不健全な開発政策の結果として生じるものであると考えられる。  それから次に、薪炭材と森林破壊でありますけれども、焼き畑と並んで、熱帯林破壊の元凶と一般にされているものに薪炭の採取がある。しかし、薪炭などの燃料材の消費量と産業用木材の生産量を単純に合算して、そのうち薪炭材の占める割合をそのまま熱帯林損失に対して責任のある割合と考えるのであれば、それは正しくない。燃料材の量と産業木材生産量とはどちらが多いと比較できる性格のものではなく、まきや炭などの燃料材は、家計調査に基づいて一家族における消費量に人口を掛けて算出するのであって、森林で伐採される木材生産量から算定されるのではない。  燃料材の利用は熱帯林の破壊とはほとんど無関係であり、燃料材は熱帯閉鎖林ではなくて二次林、しかもほとんどが地域住民の耕作地で採取されるものが大半である。そうした二次林地域は、もともと木材業者が商業伐採のために関心を寄せる場所ではない。しかも、枯れ木を拾い集めたり枝木を払うのであって、大木を根元から伐採して薪炭材に利用することはほとんどない。また、そうした薪炭材は大半が自給のために採取するものであって、商業的に売りに出すためにとってくるのではない。むしろ、薪炭材の採取が問題となるのは、半乾燥地域において、人口密度が非常に高く、人々が生存のたかにやむを得ず生木を切り取っていくことで砂漠化が進行するような場合である。最近のランドサットの衛星写真によればニューデリーなどの都市部周辺において円形状に森林が荒廃しているさまが観測できるという。  しかしながら、東南アジアの熱帯林などで、薪炭材の採取が森林破壊の原因であるというデータは存在しない。薪炭材の採取は、採取量が産業用木材量と比較して大きくても、東南アジアにおける熱帯林の破壊の原因ではないことは常識ではないかと私は思います。  東南アジアにおける商業伐採は、人口の希薄な閉鎖林で行われるものであり、熱帯林を最初に破壊する活動であります。通常、一ヘクタール当たりせいぜい商業木は四、五本しか生えていませんが、そうしたわずかな商業的に価値のある樹種を摘出するために伐採地面積の四割までが林道建設、伐採の際の樹木のなき倒し、ブルドーザーによる摘出作業などによって破壊されています。商業伐採による熱帯林の破壊は伐採作業そのものによって生じるだけにとどまらず、林道の建設によって初めて侵入可能となった閉鎖林に対する入植や移住政策、農地転換などの開発プロジェクトによって最終的に完全に破壊されてしまうのだと思います。  いずれにせよ、森林破壊の原因を焼き畑や薪炭材に求める論理は責任逃れのため以上の何物でもないと思います。熱帯林にかかわる日本の木材その他の貿易、消費、開発援助の総合的な見直しか今求められているというのが真実であると思います。国内、国外の多くの人々は、日本の政府、業界関係者が熱帯林保全のための総合的かつ抜本的な政策の樹立とその速やかな実施へと行動を起こすことを待っています。そのための時間はもはや余り残されてないのだ、そういうことであります。  それから、もう一点でありますが、ブラジルにおける大カラジャス計画というものについて前に質問をしましたのですけれども、これについてごく簡単にお聞きしますが、この計画につきまして御存じであればお答えいただきたいんです。  カラジャス計画の基幹はカラジャス鉄道であります。この鉄道の目的は海外輸出のために鉱山からサンルイスまで鉄鉱石や農林産品を運ぶ、またブラジル東北地方からカラジャスに入植する人々を運ぶことであります。ブラジル政府は、「土地なき人々に、人々なき土地を」というスローガンで失業者や貧農の入植を奨励しています。しかし、この人々が持続的な農業を打ち立てるのは困難であり、熱帯林を伐採し、開拓地を次々に造成し、二、三年で土地を放棄して新たな土地に移るという無差別な焼き畑農業が行われております。さらに、その放棄された土地が牧場に変えられたり、牧場経営者が残りの木をことごとく伐採しています。そこへまた、工業用材確保のための商業的伐採が追い打ちをかけておる。さらに、鉄鉱石の製錬、セメント生産用の木炭のために自然林が乱伐される。そして、今後十五年から二十年以内にこの地方の自然林は姿を消すのではないかと言われております。  この大カラジャス計画の進展に伴って発生する自然林の消滅は、この地域のインディオの生活基盤そのものを奪うことになっています。この計画によって約四十のインディオの集落が犠牲になり、一万三千人以上のインディオが生活基盤を失っています。しかし、基本計画、総合計画にはそのことは何も触れられていないところか、インディオという言葉すら見当たらないのであります。  ブラジルの連邦インディオ局も、インディオ社会め保護について有効な機能を果たしていません。それは、ブラジル政府の進める統合政策の実施機関であり、先住民の利益と権利を擁護するのではなく、大カラジャス計画に彼らを組み入れる役割を果たしています。前記ECや世銀のインディオ社会支援プロジェクトの資金は、この連邦インディオ局を通じてなされ、むしろ彼らの人権侵害を引き起こし、一九八七年六月に終了してしまいました。カラジャス地方では、入植者とインディオの間で頻繁な対立も発生しており、深刻な問題をはらんでいます。  以上のような状況を招いた責任の多くは、国際協力事業団、JICAの作成したマスタープランに問題があったのだと私は言わざるを得ないと思いますが、どのようにお思いになりますか。お答えください。  以上で終わります。
  52. 中西一郎

    会長中西一郎君) 西岡参考人に申し上げます。  翫委員の持ち時間は答弁も含めまして十六時十一分までなんです。あと五、六分残っているんでしょうか。上手にお答えいただければ大変ありがたいと思います。
  53. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) まず第一点です。お手元にこの図が配られました。これを見ていただきまして一つ作業をしていただきたいんですけれども、ちょうど山がおりておりますね。そこに線を引いていただきますと、全体的な傾向としてどう下がっていくかということが大体おわかりになるかと思います。その線をラインのAとしまして、もう一つの作業をお願いしたいのは、この一番最後に「現在」というところがございまして、ここに温度の目盛りが打っでございます。四度のところ、六度がありまして、上に八度というのをつけていただきまして、そこに丸を打っていただきまして、そこをB点とします。  今、私どもが問題にしておりますのはそのB点なんです。といいますのは、長期的には確かにこの下るトレンドがあると言われております、これも決して明快なものではございませんけれども。しかし、その下るカーブは最初に書いていただいたようなA点のA線でございまして、非常に緩やかに下がっております。  一方、今度IPCCで予測いたしましたのは、この百年の間に約四度上がると言われています。ですから、私ここで八度のところに点を打っていただきたいというのは、それから横軸にも本当は百年とらなきゃいけないんですけれども、百年はこの目盛りでは大体五ミリぐらい向こうへ行ったところだというぐあいに考えてもらって、面倒くさいからもう真っすぐ上に上げてもらったんですけれども、いかに我々がこれから対面しようとしている温暖化の問題が長期的なトレンドから外れて大きなものであるかがおわかりになると思われます。  これについては、幾つか言いたいことがたくさんございますけれども、一般的に、それではこの一万年前と六千年前の間で何度温度が上がったかといいますと、これは約二度ぐらい上がっているとしますね、このグラフから見ますと。そうしますと、四千年の間に二度上がったわけです。我々が直面しようとしているのは百年の間に四度上がるという状況でございまして、このグラフは二万年しかございませんけれども、十六万年前までさかのぼって考えてみますと、我々が直面しようとするこの温度上昇というのはこれまで十六万年間なかった上昇でございます。そういう状況であることを認識していただきます。  それから、この学説につきましては、温度変化が何で起こるかにつきましては三つ原因があります。一つは、地球自身が真っすぐ回らないで曲がって回りますので、太陽からのエネルギーを受けてそれがちょっとずつ変わるものだから温度が変化する、これが一つであります。  それから、二つ目は太陽活動自身が変化する。これだと十一年周期で変化しておりまして、これはずっと変化しているから今さら考えてもしょうがない。我々は百年の話をしているわけです。  そうしますと、残った三つ目の人為的な原因、これは炭酸ガスによる増加。炭酸ガスの増加というのはもともと温室効果というのが実際あるわけです。もし炭酸ガスがなかったらこの地球の温度はマイナス十八度と言われております。炭酸ガスが今三五〇ppmあるおかげで今の十五度という温度が、平均して十五度と言われている温度が保たれているわけです。その炭酸ガスが急激にふえることによって温度が上昇するということでございますから、これは理屈でありまして、ほかの条件が変わるかもしれませんけれども、変わらないとしたら、それはそれくらい上がるというのが科学的な推測に基づくほぼ確実な推測ではないかなと思われます。  ですから、我々が直面しようとしている気候変動の問題が、長期のものと短期のものとを考え合わせなきゃいけないことは重々承知でございますけれども、いかに急激なものか、おわかりになるかと思います。  それから、木材の問題につきましてお話をしますけれども、今地球上で熱帯林なり植生がやられているという話は、面積的に考えますと用材で使うのもあればそれから燃料用材で使うのもあれば、それから農地を開拓するということがございます。農地を開拓するのは、用材とか燃料とかいうことではなくて、要するに広い面積が欲しいから焼くのでございまして、これはここには勘定されていないわけです。そういう面から見ますと、その開拓するという行動自身が面積を減らしていると。これは御指摘のとおり、例えば移植政策、インドネシアやブラジルで行われております都市の住民を田舎へ持ってくるという政策が相当きいているということは確かでございまして、ここで言われている日本は余り責任がないという話じゃなくて、非常に大きな部分が焼き畑に関連しているということは私は事実であると思われます。  最後のお答えはちょっとできません。
  54. 中西一郎

    会長中西一郎君) また、個人的に御連絡をお願いします。
  55. 和田教美

    ○和田教美君 私の持ち時間は十五分でございますので、お答えはひとつ簡潔にお願いしたいと思います。  まず、三人の参考人方々に一問ずつ質問を申し上げます。  まず、西岡参考人にお尋ねいたします。  地球環境問題、特に地球温暖化問題につきましては、政府は持続可能な開発という考え方を基本にとっておりますけれども、一方で環境経済の成長が両立し得るのかという深刻な疑問の声も根強く聞かれております。既に環境庁からはCO2排出量を二〇〇〇年に九〇年レベルで抑えても三・四%の成長を維持することは可能であるという試算がなされているというふうに聞いております。確かにCO2の排出抑制を中心とした地球環境対策によって経済の受けるダメージは短期的にはかなり大きなものがあるというふうに私は予想いたします。  しかし、一方で公害防止機器だとか、あるいは代替品開発等の環境関連産業、こういうものの新たな内外需要を呼び起こすことにもなりますので、うまく誘導すれば環境庁の試算のとおり安定成長に軟着陸させることがあるいは可能かもしれません。いずれにいたしましても、これからは環境と両立し得る経済、産業のあり方ということを真剣に追求していく必要があると考えますが、このことにつきまして参考人はどうお考えになりますか、お答えを願いたいと思います。
  56. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) 二点あると思います。一つは、今のGNPという指標をまず前提に置きまして、これは大切だということを前提に置きまして炭酸ガスを抑えるということが果たしてGNPを減らすかどうかという問題がございます。  御指摘のとおり、短期的には幾らかの影響があるわけですけれども、新しい価値を見出すとか、新しいものをつくり出すということですから、このメカニズムからいいますと必ずしも長期的には減るものではないと。  それから、最近になりまして、これはむしろ竹内参考人の方がよく御存じなんですが、OECDでいろんなモデルを使って炭酸ガスを減らそうとすると果たしてどれだけ経済成長が停滞するものであろうかということを検討しました。これはみんなが個別にやっていますと、非常に政策的な考えが入っていまして、あるものは物すごく大きく出る、あるものは物すごく小さく出るということがございますので、条件を一つにして三つ四つのモデルを一遍走らせてみようじゃないか、そういう試みをやったところが、大体三十年間で最終的に三%、すなわち年間でいいますと〇・数%の経済的なダメージがあるんではないかというあたりに落ちつきつつあると。しかし、この問題も最近もう一度見直して、もうちょっと上がななんという話になったりしましてまだ十分に経済的な見通しがとれていない。しかし、その影響はそれほど大きくないんじゃないかと思われます。  それから二つ目は、果たしてGNPということで我々の経済成長、経済的な豊かさははかれているかという問題です。我々は長期的に次の世代まで考えに入れたGNPを――これは朝、レスターブラウンさんの話があったと思いますので、私は多くは申し上げません。現在必要なのは、従来のフローを主としたGNPといった指標じゃなくて、ストック、我々のリソース、環境の資源、森林、そういったものを勘定に入れた環境勘定と言っておりますけれども、そういったストックを勘定に入れた新しい経済指標でもって我々の福祉を判定する必要が出てきているというのが現状でございます。
  57. 和田教美

    ○和田教美君 それでは、竹内参考人にお尋ねいたします。  最近、地球環境問題を論じる際に地球環境安全保障という言葉がしばしば我々の耳に入ってまいります。午前中のレスターブラウンさんのお話でもこの地球環境問題ということがございました。とにかく地球規模で、国境を越えた環境破壊が進行しつつある時代において、従来のような一国レベルあるいは軍事的側面を強調した安全保障、あるいは国家の主権というふうな概念自体を見直す必要があると私も考えますし、地球共同体との観点から安全保障の優先目標として地球環境の保全という問題を位置づけることも可能だ、また必要だというふうに考えます。  先ほど、竹内参考人は、ポスト冷戦下の国際問題は軍事面から非軍事面への協力に移ったというふうなこともおっしゃっておりましたけれども、この調査会外交総合安全保障を主要なテーマとしております調査会でもございますので、これとの関連あるいは環境問題と軍縮というふうな観点に絞っていただいても結構ですから、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  58. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 来年のブラジルで開く地球サミットを見ましても、必ずしもいわゆる環境、非常に狭い意味での環境というテーマだけではなくて、非常にたくさんのNGOの方々が集まりますし、非常に幅広いテーマが取り上げられると思うんです。例えば、女性の問題であるとか、あるいは先住民の問題であるとか、いろんな団体が集まりますので、必ずしも温暖化の問題だとかオゾン層の問題だとか、そういうことだけではなくて、つまりそういう国境を越えでいろいろな問題が発生しているということすべてが取り上げられるのではないか。地球全体の問題としていろいろな問題が取り上げられるし、それをすべて包含しながら考えていこうというのが地球環境の問題じゃないかなという気がするんですが。
  59. 和田教美

    ○和田教美君 いや、軍事的な安全保障環境問題とのかかわり合いという問題について御意見があればお聞かせを願いたい。  レスターブラウンさんは軍縮を進めていけば資源、資金の相当部分を環境問題に移転することができるというふうなことも午前中指摘されましたけれども、特に御意見があればひとつお聞かせ願いたいと思います。
  60. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 平和の配当金などという言葉が大変流行になりまして、軍事費というようなものをほかの脅威の方に振り向けるべきだというような議論は随分盛んに行われていると思います。いろいろな場で行われていると思います。その中に当然非常に大きなテーマとしてこの環境問題というようなものも入ってきているというふうに思うわけです。  それからもう一つは、今まで使っていたそういう支出を非軍事的な面に移していこうというのと同時に、もう少し新たに地球規模での財源を考えていこうではないかという考え方がもう一つあると思うんですけれども、例えば今までは海や空を船や飛行機がただで使っていた、そういうものも国際的な人類共通の財産なんだから、そういうものを利用するに当たっては課徴金というようなものを取って、それを地球環境全体の問題として使っていったらどうだというような考え方も出てきているわけです。
  61. 和田教美

    ○和田教美君 ありがとうございました。  百瀬参考人にお尋ねします。  ポスト冷戦時代においては、地球的な規模の環境破壊による生命、身体、財産への脅威からの防衛が、先ほども申しましたように、安全保障の最重要テーマの一つに位置づけられると私は考えます。そうした地球環境脅威への対応においては、これまでの安全保障政策に見られたような対立の原理ではなくて、協調の原理が非常に重要であるというふうに考えます。  百瀬参考人は、先ほど環バルト海諸国環境協力問題についていろいろと御意見をお述べになりましたけれども、今後、環境問題は各国を束ねる外交上の共通目標あるいは安全保障上の重要なイシューというふうになり得るものかどうか。先ほどちょっと議論も出ておりましたけれども、その点が一つと、もう一つは、バルトの経験をアジア・太平洋地域を含めて世界環境安全保障政策に当てはめて考えるならばどういうことがヒントとして考えられますか。ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  62. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) 結局、軍縮の問題といい、それから地球的な安全保障の問題といい、そこにありますのはやはり兵器をどのくらい減らすとか、そういうふうな話し合い以前の信頼関係の問題と申しますか、信頼醸成の問題ですね。その信頼醸成からの軍縮をやっていくという発想というのは、ようやくこの十年ぐらいになって現実化しできたわけでございまして、それはヨーロッパで非常に成功している。したがって、私は、地域の場合の問題であれ、あるいはグローバルな安全保障の問題であれ、根本に信頼醸成という努力が不断に続けられていくことが必要であると思っております。  特に、バルト海地域について申しますと、非常に長年月にわたる信頼醸成の努力、そしてさらにその結果としての協定を結んでいくというそういう努力がずっと続けられてきたわけでございまして、そういう地道な努力が続けられることが、この北東アジアについても必要であると、そういうふうに思っております。
  63. 和田教美

    ○和田教美君 結構です。
  64. 立木洋

    ○立木洋君 最初に、西岡参考人にお尋ねしたいと思いますが、参考人がお書きになった資料の中に、地球の温暖化の問題というのは早くから人類が注目してきた問題で、その後いろいろな国際会議等で、現在のままで進行するならば将来の予想値はどうなるかというふうなことがいろいろ出されておりますし、同僚議員の質問に対してもいろいろお答えになりました。非常に重要な問題だろうと私たちも考えておるわけです。  ただ、日本政府が今回発表した数値、この努力目標ということの中に、CO2の排出量について二〇〇〇年以降一九九〇年レベルでの安定化を図ると、これは一人当たりの排出量ということになっているわけですね、そういう条件がつけられている。これは、先ほど竹内参考人もおっしゃいましたけれども、例えば自動車の排ガス規制なんかの問題で、排ガスの規制はやられても自動車の生産量は規制されなかったということが、実際に排ガス規制全体から見るならばどうなったのかということも述べられたと思うんですが、この一人当たりの排出量について二〇〇〇年以降一九九〇年レベルで安定化を図る、私はこれはどうもやっぱりしり抜けのような気がするんですが、この点についての御意見やお考えがあればお聞かせいただきたいと思うんです。  それと関連して、アメリカがこの問題では非常に渋っておりますし、頑強な頑固な立場をとっておりますから、そういうことも関連して、日本の目標の立て方をどういうふうにお考えになっているのかもあわせてお尋ねしたいと思います。
  65. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) まず、IPCCという科学者が集まった会議では、少なくとも現在のレベルに温度を保っておこうと、正確に言いますと大気中の炭酸ガス濃度を保っていこうといたしますと、我々はいろんなガスを出している分を現在よりも六〇%下げないとだめであろうという結論を出しております。ですから、私に言わせると二〇%とかなんとかいうのは単なる妥協の産物なんでありまして、それはほとんど特に何の意味も持っているわけじゃございません。ただし、私は影響のことをやっておりますけれども、徐々に温度が上がっていくのであれば地球は耐えられるんではないかなという一つの、みんなが集まってその辺がなといったぐらいの話なんで、これは何度も申しますけれども、正確には科学的には立証されない話なんです。そうしますと、二〇%よりもうちょっと頑張って四〇%ぐらいやっていくと何とか地球がサステーナブルでやっていけるかなというような暗黙の了解があるように思われます。そういう意味で、二〇%じゃ物足りないというのが私の率直な意見でございます。  しかしながら、一九九〇年、第二回の世界気候会議というのがありまして、先進国、途上国も全部集まりまして、みんなが話し合った結果で大体の相場というのが、これは政治的な話ですが相場というのが決まったのが一九九〇年レベルで大体二〇〇五年ぐらい。まで何とか抑え込もうと、もしくは頑張るところはそれより二〇%ぐらい減らそうじゃないかということになっておるようです。ですから、この件につきましては、科学者としては物足りないけれども、多分このあたりがいわゆる先進国のビヘービアから見たらまあ第一段の落としどころかなというぐあいに考えますが、とてもこんなものでは間に合わないということをまずお話を申し上げておきます。  それから、米国の態度につきまして、米国と欧州とでなぜこんなに差があるのかということが私は実はいまだもってわからないんですけれども米国はまだまだフロンティア経済、カウボーイ経済とどなたかも言っておりました、ボールディングがカウボーイ経済と言ったんですが、先に行けばすべて資源はある、働けば幾らでも物は降ってくるという状況を仮定した経済であると。また、それが人々の生活の中にしみ込んでいるということもあるようでして、それは先ほど私が申しましたように、もうツケ回しかきかない閉鎖系である、どこにも新しい資源なんかないんだよということを前提にしていけば、明らかに変えねばならない方向ではないかと思っております。  以上です。
  66. 立木洋

    ○立木洋君 次に、竹内参考人にお尋ねしたいんですが、さっき地球環境破壊が進行している問題についての三つの点からの指摘がありまして、私も注目してお聞きしたわけですが、確かに環境破壊がどういう状態になっているかということがすべて一〇〇%わからなくても、今の状態で直ちに手をつけなければならないということは非常に重要なことだろう、これは問題の発想の転換が極めて重視されるというふうに私は考えるわけです。  しかし、同時に、そのことを肯定した上でなんですけれども、今の地球環境破壊の原因がどこにあるのか。言うならば、それはさまざまな要因があると思うんですけれども、主な原因がどこにあるのか。例えば熱帯林の減少なんかの問題についても、先ほどもちょっと同僚議員が言いましたけれども、論争の的になっているんですね。焼き畑の問題だとか、海外に進出して伐採してくるのが多いだとかどうだとかいうふうないろいろな計算の仕方で違うんですが、しかしこの問題について言えば、例えばエネルギーの消費量なんかの問題について言えば、産業や運輸分野で大体七三%というふうなことが日本で出されているんですね。だから、国民全般に省エネを訴えていくというようなことはもちろん必要でしょうけれども、しかし主な問題をどこで押さえるべきかという、地球環境破壊の主な原因を重視して問題点を明確にしていくということも、発想を転換していく上で非常に重要な点じゃないかと思いますが、このことに関連して参考人、何か御意見がおありでしたら述べていただきたいと思うんです。
  67. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 今、途上国が大変団結を固めまして、地球環境破壊の責任は先進国の工業化にあるんだということを非常に強く言っております。したがって、我々が地球環境保全対策をとるお金は先進国が出しなさい、しかもそれは先進国の途上国に対する援助というような性格のものではなくて、先進国の責任に対する賠償だというふうなことを非常に強く言い出しております。これはやはり正論でして、先進国の方もこれを否定するということは非常に難しいんじゃないかなという気がするんです。だからこそ途上国の方は、一つは先進国が払い、そのお金を途上国の方が自由に使えるような基金をつくりなさい、こういうことを言っておりまして、一方で先進国の方は、そういうお金をつくってしまえば途上国はどうもしっかりした地球環境対策をやらないんじゃないだろうかなというような疑いがありまして、ここ のところの先進国と途上国の間の意見の隔たりというものは非常に大きくて、これをどうやって埋めていくのかというのは最大のテーマであるし、まさにブラジルで世界の全首脳が集まるという最初の機会というのは、私はここを埋める努力じゃないかなという気がするわけです。  途上国方にとってみますと、西洋文明が入り込んで、今までの自分たちの経済がやはりどうしても壊されたということを目の当たりにしていますので、この原則はなかなか曲げようがありません。六月に北京で聞きました途上国の会議ではそういう幾つかの原則を確認しておりますので、途上国の方の団結というのは非常に強くなっておりますから、この地球環境問題で世界の合意をつくっていくというのはまだまだなかなか本当に至難のわざだなという印象を持っております。
  68. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、百瀬参考人にお尋ねしたいと思います。  参考人は、環境問題と国際政治ということにかかわりがおありでございますので、そういう観点からお尋ねしたいんですが、去年の十二月四日の国連総会で、軍事活動への割り当て資源を環境保護の市民的努力に利用する方針の作成という決議が採択されております。これは軍縮と環境保護の問題とを結びつけて国連総会が採決した最初の決議文になっているわけですが、この軍事活動への割り当て資源を環境保護の市民的努力に利用する方針の作成ということに賛成したのが百三十八カ国、反対したのが三カ国、棄権したのが十二カ国、となっております。反対したのがアメリカ、イギリス、フランスの三カ国で、棄権したのは日本ほか発達したと言われている資本主義国の十二カ国というふうになっているわけですが、国際政治の観点から、先ほども同僚議員が質問されましたけれども、軍縮の問題を進めていくということは、やはり今地球環境の問題が大きな問題になってきているというのはもちろんですけれども、しかし軍縮の問題というものを精力的に進めていくという観点が忘れられてはならないんではなかろうか、環境問題と国際政治を考える場合に。国連で最初にこういう決議がされたのに棄権する、反対するというのを私たちは極めて批判的な目で見ているんですけれども環境問題と国際政治の観点から国連で最初に決議されたこの問題についての意義というか、どういうお考えをお持ちなのか、聞かせていただければありがたいと思います。
  69. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) 国連の決議に関して私十分な情報を持っておりませんので、それに対して真っ向からお答えするということはちょっとできませんけれども、ただ私は、この軍縮の問題と申しますか、それをさらに広くとらえますと東西間の緊張の緩和と申しますか、あるいはポスト冷戦というふうな動きでございますね、そういうものが環境問題に限らず、さらに南北問題の上にどのような影響を及ぼしていくか、そういう問題につきまして私常々感じているのでございます。  一つの考え方、期待としましては、東西間の対立が解消していけばその分め軍事費と申しますか、その分の入費が南の世界の発展に貢献していく、つまり、南北問題の解決に回されていく、そういう期待が一つはあると思うんです。しかし、現実はどうかと申しますと、必ずしもそうはなっていない。東西間の対立の解消の結果、南北の問題もまた解消の方向に向かっているかといいますと、むしろ深刻化しているというそこら辺の事実が残念ながらあると私は思います。やはり東西間の対立の解消ということがむしろ南北問題の解消という方向に向かうように努力をすべきものと私は思っております。  その関連で、私は南北問題の解消の中に環境問題が十分に入るというふうに思っておりますので、国連の決議そのものについては国際政治やいろいろな裏の問題とかありますので、それについてはちょっと私専門研究者という形ではお答えはできませんけれども、大づかみの物の考え方としてはかように考えております。
  70. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 もうけさからレスター・ブラウツ氏から、参考人の皆さんからずっと環境問題についての話は、今の状況というのは再三出ておりますので、ちょっと私は視点を変えてというか、先ほど出ました各省庁の縄張り争いというか、そういう中でとにかく今すぐに手を打たなきゃいけない問題が多々あると思うんですが、実際にそれが実行されないという状況の中で、私自身水の問題と、それからある意味エネルギーという部分で大変興味を持ちまして、風車を我々のグループでつくりました。大変有効な三面式という回転をする風車もできております。  せんだって、中国に行ってまいりまして、シルクロードを走ったんですが、ちょうどこれはトルファンというところから先なんですが、風車の町がありましたけれども、とにかく条件によっては風車というのは大変有効じゃないかなという気がいたしました。  先ほどから、まずもってとにかく今日本環境のリーダーシップをとれということが再三出ております。まさに私は、今日本が果たすべき役割というのは環境に向けて強いリーダーシップをとるべきであろうという気がいたします。  そこで、私も再三言っているんですが、国連の機能というのはまだまだ不十分な部分があるであろう。これから国連がより強い方向へとみんなが協力していくべきであろうと思いますが、日本の中に第二国連ビルというんでしょうかね、そういう構想を持って、環境を思い切ってそこで世界を引っ張っていくというようなことを私も考えてはいるんです。  そこで、まず環境に関する問題を日本人がどのくらいの意識で今とらえているかというと、この前もこの委員会でちょっと質問しましたが、かなりの部分で皆さん興味を持っていますと。確かに興味は持っていると思うんですが、それについてどのくらい積極的であるかというと、まだまだ非常に認識が薄いんじゃないかと思います。これから恐らく日本だけがクリーンになっても、ほかでそのかわりのいろんな公害を出しては同じじゃないかということがここに指摘されておりますけれども、お金がかかると思うんですね、この環境に関しては。膨大なお金がかかるわけですから、その部分で日本はこれから環境税なんというとまたいろいろ問題が起きますが、あるところではそういうことが検討されておりますし、その辺についてちょっと西岡参考人にお聞きしたいと思います。
  71. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、この前ペルシャ湾岸に例えば九十億ドル出した、それとほぼ同額が援助という形で日本で使われていることは御承知のとおりだと思います。さらにほぼ同額ぐらいが要るんではないかなという指摘もあるわけですけれども、そういうわけで非常に金がかかるということは確かでございます。  環境税とか、もしくは今カーボンタックスと言われているものにつきましては既にオランダやスウェーデンでは課税されておりますし、だんだんとそういう方向で、それから、我々が二〇%なり炭酸ガスを減らす手段といたしまして、やはり課税にするか、もしくはこれはトレーダブルエミッションといって、権利を一人一人に与えてそれをやりとりするといった、金のやりとりが発生しないような形でやるかという議論もございますけれども、やはり課税というのが非常にいい方向であるかと思います。  しかしながら、今の経済的なといいましょうか、メカニズムからいいますと、例えばガソリンの税金を今の倍ぐらいにしないと、みんな減らす方向には向かないということもわかっております。しかしながら、倍にすると、言ってみれば税金が上がり過ぎということもあって、かえってまた使うときの問題もいろいろございますので、インセンティブを与えるという意味では、わずかであっても環境税をかける方向はかなりの大勢を占めてくるように思われます。
  72. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 竹内参考人にお聞きしますが、先日も、日本環境問題をもっともっと教育の場に取り入れるべきだということで、私も、若い人からいろんな質問が来ますし、電話のメッセージを送っておりますと、その反応が大変で、小学校、中学校から、我々が日ごろ余り考えていなかったことを教えてくれましたといって子供たち意見を送ってくれるんです。  この前も申し上げたのですが、ベレンの場合は既に教育の場に環境の問題を取り入れているんですが、世界的に見ると、環境という問題は教育の場にどのくらい取り入れられているんでしょうか。
  73. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) ちょっと私、その点詳しく知りません。  ただ、私は国民一般の中に、自分たちの周りあるいは地域地球全体の環境を守らなきゃいけないという意識は大変芽生えているというふうに思います。世論調査などでもそういうような結果は出てきているわけですけれども、特に女性、それから子供に私はその傾向は強いような気がいたします。  それで、一つだけ余計なことを言わせていただきますが、私、あるところで私と同じような仕事をしているイギリスの新聞記者に会いまして、日本政策がなかなか変わらなくて私は困るんだということを言いましたところが、彼が言いますにはそれは絶対大丈夫だと。今の子供たちの意識が強いから何年かすればこれは必ず変わる、そう信じて私は仕事をしているというようなことを言われまして、私は大変励まされたことがありました。
  74. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 ひとつ私も、今地球上にいる五十三億の人たちが一人一人の責任としてもっともっと環境というものをどうとらえるか、その地域によって問題は違ってくると思いますけれども、そういう意味で、政治の場だけで訴えても国民がなかなか素直に受け取れないという部分もあると思うんです。そこで私は、長年プロレスという社会に生きてきまして、イベントの効果というのが大変強くありまして、ですから、来年のエコ92に関しても、向こうの政府の関係者と今打ち合わせをしておりますが、イベントをやりましょう、アメリカでも大変有名な歌手たちも参加するような話で今進んでいるんですが、環境問題というかたい部分じゃなくて、一般の大衆がわかりやすいような訴え方という、あるいは自分が一番ファンである歌手その人から出てくる言葉というのは大変その人にとって影響が強いと思うので、これは実現できるかどうか、まだ検討中なんですが、何とか実現しようと思って今考えています。  そこで、百瀬参考人にお伺いいたしますけれどもソ連の関係で、私は外国へ行くと必ずジョギングをするものですから、そこの川とか湖とかいろいろなところの汚染が非常にわかるというか、もうとにかく行く先々の河川、港、その水の汚染が進んでいるんですね。特にモスクワ川とかあの辺あたりの汚染というのはひどい状況で、私はソ連というりは核の汚染はともかくとして、自然環境の部分ではそんなに汚染されてなかったんじゃないかという気がして、実際に行ってみて、我々のところよりもはるかにそういう破壊が進んでいるということを見てきました。ただ、さっきも言ったように、お金と環境という問題で、ソ連が今後そういうものを負担していけるとは思わないんですね、今の経済状況あるいはこれから十年先。そうすると、世界でこういういろんな取り決めを決めたとしても、実際に守っていくということは信じがたいんですけれども、それについてちょっと意見を聞かせてください。
  75. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) これも私、ソ連ウォッチャーでございませんので、正面からお答えしかねますけれども、結局、問題は技術の問題と、それからそういう環境対策をやっていく場合の社会機構や政治機構の問題であるというふうに思われます。  したがいまして、今後、ソ連に対して環境問題対策などが進んでいる西欧諸国が支援をする場合には、単にお金の面だけではなくて技術の移転とか、さらには機構ですね、いろんな社会機構とか政治機構とか、そういうところでもってアドバイスをする、そういうことが非常に必要になるんではないか。  一つの例といたしましては、今、北欧会議がバルト三国に対してそういう面でかなり支援をするような試みをやっておりますけれども、その場合には、北欧の政治的な機構ですとか、あるいは政治的な機構を支える思想ですとか、そういうものを持ち込むというか、情報として与えるようなこともしきりにやっておりますけれども、そういう点も私は非常に必要ではないかというふうに思います。
  76. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 これから日本環境のリーダーシップをとっていく、先ほども出ました政府あるいは一国だけで解決できる問題でないという部分で、まさに国民が一致してこれはやっていかなければいげない。  私が聞いたところによりますと、アメリカは寄附金というか、あれが十四兆五千億という年間の数字ですが、日本の場合はそれの百分の一で一千四百億ですか、そういうことを聞いたんですが、このNGO活動に関する資金ですね、確かにWWFにしても大変すばらしいビルにいて、みんながそういうものの研究に没頭できるような環境にあるという気がいたしましたけれども日本は、さっきも言いました税金という問題がありましたけれども、企業なりいろんなものが十分まだ日本は理解してないんじゃないか、政治献金は随分するようですけれども、実際に環境にはそういう支援をしてないような気がいたしますけれども、これについてはどうでしょう、環境研究センターとして、これからこういうふうにしてもらいたいという政府への要望があったら、ちょっと聞かせてください。
  77. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) その件につきまして非常に心強い御質問だと思うんですが、先ほどから申し上げましたように、日本のNGOというのは、十分研究をするための人材、それから政策をつくるための人材、調査をするための人材を抱えるほどの力が残念ながらございません。それは財政的なベースがないからです。  一方、アメリカは政府の方は何もしなくても、ワールド・リソース・インスティチュート、リソーセス・フォー・ザ・フューチャーなど数えれば数限りないところが政策をつくり、ビジョンを掲げ、それを種に論争をするという形態ができ上がっております。  今、十四兆という話を聞いてびっくりしたんですが、私ども環境庁の方で地球環境研究ということで新たにつくった枠がことしは十七億円でございますから、もう飛行機一台にもならないような状況ということで、これだけのベースがあれば相当のことができるんではないかなと思われます。  一つは、税制の問題があるのかもしれません。私、昔、ナショナルトラストの関係をやりましたときにも、環境を主とする財団に対する寄附の免税がなかなかできなかったという経過がございますけれども、そういう面で大いに国民の参加を求める仕組みをつくっていただきたいと考えております。
  78. 高井和伸

    高井和伸君 百瀬参考人にお尋ねいたします。  全体の話を聞いておりまして、環境問題解決策は、先進国はある意味では途上国に近づき、途上国はある意味では先進国に近づく生活、経済を含め、国家間の平準化ということをやらない限り環境問題は解決というんですか、いい方向に向かわない、私はこう思うわけです。そういった観点を持った上で、一国の努力を最大限にしても隣の国が努力しない場合やっぱり環境問題はうまくいかない。こういった仕組みを考えるときに、国際政治を行っていく従前の概念だけでは、国家という単位だけではうまくいかないということを先ほどもおっしゃっておられました。経済のレベルあるいは生活のレベル、いろんなサービスを享受するレベル、そういったものをある一定のモデル的にして先進国はやや制限的に落とす、後進国もやっぱり人間の欲望がある以上は先進国に近づく、発展国と言うべきでしょうか、そういった観念からいった場合の国際政治システムは今のままではい かぬというようなことの方向にある例としてバルト三国の話も出た、こう思うわけです。  国際機関もありますけれども、速やかに国際間の平準化に資するような国際政治の手法というものはどんなものを考えられるのか、これが質問です。
  79. 百瀬宏

    参考人(百瀬宏君) これはもう大変な御質問でございまして、それに私がお答えできればもうもっと業績を上げていると思いますけれども、しかし非常に真剣に考えなければならない問題です。  おっしゃいますように、いわゆる先進国と後発国との間の平準化、そういうことを目指すということが大変に大切でございますけれども、問題はそこへ行き着くのがいつのことか、この実現は大変に難しい問題であると思います。しかし、少なくともそういう平準化という心がけと申しますか、方向づけですね、それを両者が持つ、つまりそれだけ北と南がそれぞれ現実的になるという、物を考える上で現実的に物を考えていくという、そういうことに私は尽きるかと思います。その上で一生懸命相互理解を重ねて努力をしていかなければならないだろうと思いますけれども、その場合に、おっしゃいますようにやはり国家と国家の間の話し合いだけでは相互理解にはなかなか到達できない。国際機構もそうですけれども、とりわけ国家の中の地方と申しますか、地域と申しますか、あるいは個人と申しますか、そういう間の交流というものが進んで、そして、いわば比喩的ですけれども、下からの相互理解が積み重なっていくということが大変に必要であるというふうに私も存じます。  ただ、私は、国民国家というものは国際秩序がつくられていく上でどうもこれは便利なものであると申しますか、それをなくして急に世界国家とかあるいは小単位がお互い、そういう場合でも必ず対立は起こりますので、むしろ国民国家というものを理念化する、あるいは絶対化するという旧来の行さ方から脱して、国民国家というものを限りなく相対化しながらやはり国民国家というものの存在が必要である、そしてそこの過程において、国民国家と横並びして国際関係で出てくる国際機構なり、また地方なり個人なりの活動というのは、おっしゃいますように非常に重要だと思います。
  80. 高井和伸

    高井和伸君 竹内参考人に御質問いたします。  先ほどのお話の中で、NGOの協力が不可欠である、政策決定の場面、例えば資源、環境を保全するというような政策を決定する場面に市民の参加が必要だ、それに資するために情報公開あるいは手続面での整備も必要だ、こうおっしゃられました。その具体的なお考えのベースをもう一度質問するようなことになると思うんですが、先ほど私が百瀬参考人に質問いたしました平準化という中に国民相互間の理解の深化というような言葉が出てきたと思いますが、そういった問題と同じなんでしょうか。そこいらの参考人のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  81. 竹内謙

    参考人(竹内謙君) 今、地球環境保全のキーワードになっていますサステーナブルデベロプメント、これについての理念は各国とも非常に評価をしておりまして、この合意はできておると思うんです。  そこで、先ほども言いましたけれども、サステーナブルデベロプメントの基本というのは、結局自分たちが決めるんだと、自決権みたいなものですね。したがいまして、平準化と言った場合に、例えば今の要するに西洋文明の物差しで見た平準化というようなものとはまた違うと思うんです。途上国は途上国それぞれの国の考え方、あるいはもっと細かく言えば、それぞれの地域の考え方で自分たちがどういうふうに決めていくのかということであって、今の要するに西側の経済的な状況に近づくとか、そういうこととはやや私は違うのではないかなと。自分たちが物を決める、そのために情報公開であるとか市民参加であるとかそういうものを保障していくということがこのサステーナブルデベロプメントの大原則ではないかなというふうに考えています。
  82. 高井和伸

    高井和伸君 西岡参考人に最後の質問をいたしますけれども、「分散型巨大システム科学に対応した国際化への強化が必要である。」というようなまとめの言葉がございます。私、今までのお話を聞いておりまして、科学面で環境を抑止できるという側面も非常に大きいだろうと思いますけれども、ただ、人間の欲望というのは際限がない。便利のためにはあらゆるものを犠牲にというか、使う。そういった技術面の世界とそういった人間の属性に、何とも不可解な部分に環境問題が属している側面、ここらの環境問題を克服する上での陣取り合戦をするとどのぐらいの比率になるのか。抽象的に言うと五対五ぐらいで、技術面が五割あれば克服できる、あるいは人間経済に対する、あるいは欲望に対する、サービスを受けたいということに対するそういった気持ちが半分ぐらいだと、こう理解したらいいのか、西岡参考人の立場からどんなふうにとらえておられるか、質問いたします。
  83. 西岡秀三

    参考人(西岡秀三君) 非常に難しい御質問だと思いますが、私はこの問題については極めてペシミスティックでございます。多くの人はそんなに長く考えて生きているわけではないということもございまして、その生きている問だけをどう楽しく過ごすかということが基本でございますので、例えば科学はそういった思考のしもべとしていつまでたっても動くであろうということがありまして、やっぱり陣取り合戦はそっちの方がどうも強いんじゃないかなというぐあいに思っております。  ですから、そういう面で私は、科学というのは物事を知るという面ではいいんですけれども、物事を解決していくという面では必ずしも力になっていないということがございまして、それをどうインテグレートするかということで先ほど分散型巨大システムということを言ったわけでございますけれども、すべてがテクノロジーで解決するという幻想はかなり難しいであろうと思われます。  先ほどのお話にもございましたように、やっぱり新たな文明というものを見つけなきゃいけない。環境の問題でもうこれは二十年前から言われていることなんです。例えば、いつも言うんですけれども、南の孤島でだれか現地の人が寝つ転がっていたと。西洋人が来てたたき起こして、おいおまえ、しっかり働けよ、働くといいことがあるぞと。どういうことがあるんだと。いろいろ働いて金もうけて……。それで、金もうけて価するのとその現地の人が聞きますと、それは金もうけて海辺でごろごろ寝るんよ、それがいい一生なんだ。だからそういう生活いいだろうと言ったら、なにおれの今の生活と変わらないじゃないか、何でそんなにわざわざ働くんだということを問われて、その先進国の人が参ったという図がありまして、一体全体我々何のためにぐるぐる物を回して楽しんでいるのかという問題があります。  先ほどの話にありましたように、それぞれの文明の中で自分が何に満足しているのかということをよく知るような、最終的には教育もしくは価値観だとか祖先から受け継いだものとか、そういうことが果たして陣取り合戦で勝てるかどうか、いささか私は疑問のところです。
  84. 高井和伸

    高井和伸君 ありがとうございました。
  85. 中西一郎

    会長中西一郎君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  西岡参考人、竹内参考人及び百瀬参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙の中、長時間の御出席をいただきまして貴重な御意見を賜りました。まことにありがとうございます。本調査会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会