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1991-09-25 第121回国会 衆議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年九月二十五日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 川崎 寛治君    理事 愛野興一郎君 理事 片岡 武司君    理事 住  博司君 理事 長勢 甚遠君    理事 藤井 裕久君 理事 岩田 順介君    理事 永井 孝信君 理事 河上 覃雄君       赤城 徳彦君    大石 正光君       坂井 隆憲君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    畑 英次郎君       二田 孝治君    伊東 秀子君       池端 清一君    沖田 正人君       川俣健二郎君    土肥 隆一君       井上 義久君    小沢 和秋君       伊藤 英成君    高木 義明君       徳田 虎雄君  委員外出席者         参  考  人         (日本経営者団 小川 泰一君         体連盟専務理         事)         参  考  人         (日本労働組合 河口 博行君         総連合会事務         局長)         参  考  人         (北海道大学法 保原喜志夫君         学部教授)         労働委員会調査 下野 一則君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 九月二十日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     宮路 和明君   大石 正光君     坂井 隆憲君   坂本 剛二君     平田辰一郎君 同日  辞任         補欠選任   坂井 隆憲君     大石 正光君   平田辰一郎君     坂本 剛二君   宮路 和明君     赤城 徳彦君 同月二十五日  辞任         補欠選任   坂本 剛二君     坂井 隆憲君   五島 正規君     土肥 隆一君   金子 満広君     小沢 和秋君   伊藤 英成君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   坂井 隆憲君     坂本 剛二君   土肥 隆一君     五島 正規君   小沢 和秋君     金子 満広君   高木 義明君     伊藤 英成君     ――――――――――――― 九月十九日  労働行政強化に関する請願伊藤英成紹介  )(第四三二号) 同月二十四日  労働行政強化に関する請願金子満広紹介  )(第五九〇号)  同(中村巖紹介)(第七一八号)  同(河上覃雄君紹介)(第八二三号) 同月二十五日  労働行政強化に関する請願伊藤英成紹介  )(第八九八号)  同(伊藤英成紹介)(第九六〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月二十日  建設産業労働者後継者養成制度の拡充に関す  る陳情書  (第七八号)  パートタイマーの労働条件改善に関する陳情  書  (七九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(労働時間短縮  に関する諸問題)      ――――◇―――――
  2. 川崎寛治

    川崎委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、労働時間短縮に関する諸問題につきまして、参考人として日本経営者団体連盟専務理事小川泰一君、日本労働組合連合会事務局長河口博行君、北海道大学法学部教授保原喜志夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  労働時間短縮に関する諸問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人方々から御意見十分程度お述べいただき、次に委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず小川参考人お願いをいたします。
  3. 小川泰一

    小川参考人 御紹介をいただきました日経連専務理事小川でございます。本日こういう機会を与えていただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  第一点でございますが、日経連は、企業立場から労働時間短縮問題を労働問題の最重点課題一つとして位置づけ、広く企業の間の合意形成に努めておる次第でございます。  日経連は、毎年、春の労使交渉に備えまして「労働問題研究委員会報告」という、きょうお配りすればよかったのでございますが、こういう冊子を発表いたしておりますが、ことし発表したものの中に、「労働時間については、国民意識変化も踏まえて労使短縮への積極的努力が必要である。生産性向上成果配分をより積極的に労働時間短縮配分するようそれぞれの産業企業において労使が意欲的な目標を定め、総実労働時間の短縮に鋭意、取り組むべきである。また、勤労者が真の豊かさを享受するために、労働時間短縮に向けて、どのような条件整備が必要かを真剣に検討すべき時期を迎えている。」と述べているところでございます。  その結果もございまして、企業認識は年々高まっておりまして、さまざまな形態週休二日制や新しい形の休日・休暇制の導入、フレックスタイムなどの弾力的な労働時間制の採用など、企業の実態に合わせた工夫が進められております。  当連盟が毎年実施をいたしております春の労使交渉に関しますトップマネジメント意識調査がございますが、ことしの春の労使交渉で時間短縮に取り組んだ企業は、昭和六十二年当時は二四%でございましたが、ことしは四八%に増加いたしております。また、今後の対応について意見を聞きましたところ、賃上げ時短を同じ比重で取り組む、あるいは、今後は賃上げよりも時短重点を 置いて取り組むといった回答が五五・八%に至っております。  また、同じくことしの春の労使交渉では、鉄鋼産業大手労使が、一九九〇年代の半ばまでに所定労働時間千九百時間を切ること、年間総実労働時間についてもその時期までに千八百時間台になることなどを盛り込みました労働時間短縮の中期、ビジョンが合意されておりまして、他産業でも同様の動きが出ております。  御承知のとおり、企業におきます時間短縮の円滑な実施に当たりましては、経営トップ層の決断、これはもとより必要でございますが、それよりも第一線の現場を含めまして労使でじっくりと協議して、実務上の問題点を深く掘り下げつつ条件整備に取り組むことが何よりも必要でございます。したがって、今回の鉄鋼労使のようにある程度の陣間をかけた計画的な対応が最も大切であろうかと思っております。  二番目でございますが、以上申し上げましたように、時間短縮については企業といたしましても労使協力のもとに積極的に対処しておりまして、その効果も逐次上がっているものと存じておりますが、前途には大変厳しい課題が存在いたします。  それは労働力不足の問題でございます。もちろん労働力不足は、かえって機械化自動化など企業合理化を促す作用がございまして、結果として時間短縮を促進するという側面があることは否定できません。かつての高度成長時期に産業界は現在より厳しい人手不足のもとで時間短縮を進めた経験がございます。しかし、御高承のとおり、昨今の労働力不足は人口構成から申しまして構造的なものでございます。今後の景気変動により若干の労働力緩和も考えられますが、長期的に見て大きく需給が緩むとは考えられません。しかも、情報化の急激な進展サービスに対する要請が多様化かつ高度化しておることで、ますます人手を必要とする分野が増大いたしております。平成二年度には百五十六万人といういまだかつてないような多数の新規労働力雇用市場に参入いたしておりますにもかかわらず人手不足が解消しないのは、このような産業構造変化に大きな原因があると存じます。  こういった情勢の中で、労働力確保と時間短縮双方実現するためのコスト増にどう対処するか、まことに深刻なジレンマに直面している企業立場をぜひ御理解いただきたいと存じます。特に、我が国産業のすそ野を支え、とりわけサービス産業の大部分を占めております中小企業につきましては、その困難さは倍加されるのでございまして、今後の政策立案推進の面で特段の御配慮お願いしたいと存じます。  もちろん、日米構造協議等でも議論されましたように、我が国経済社会にはいまだ非能率部分も少なくございません。企業労使労働時間短縮に真剣に取り組むことによって、そうした非能率や不合理な制度が明らかになり、改善も進むと思います。各種の効率化投資にもまだ進める余地がございまして、例えば荷役であるとか搬送、保管の分野などでは立ちおくれが見られておりまして、今後の改善が期待されております。あるいは大企業中小企業関連企業間の取引慣行見直しなど、幅広い協力体制企業間でも必要であろうかと存じます。  しかし、今後、時間短縮コストを個別の企業だけで吸収するには限界がございます。どうしても時短の意義が社会個人のあらゆる場面で浸透され、時短促進を受けとめることができるような社会環境システムが必要にならざるを得ない次第でございまして、言うなれば、自分の時間を大切にするとともに人様の時間も大切にするといった考え方で、国民生活見直していくことが不可欠であると思います。身近なところで申し上げますと、ますます多様化しておりまして、一部では過剰とも言われております消費サービスあり方消費者企業双方から再検討していく、あるいは休日、休暇についても、極端な一時期集中を関係者合意を得ながら改善していくといったようなことも必要であろうかと思います。そういった国民に広い選択の幅を与えるような形で豊かさとゆとりある生活実現することが時短目標であろうかと存じます。  三番目に、せっかくこういう機会を与えていただきましたので、二、三、お願いを申し上げたいと存じます。  第一点は、労働時間法制の問題でございます。経済運営五カ年計画におきます時短目標については、計画期間中の経済情勢労働需給企業経営の動向などを見きわめつつ努力していかねばならない課題であると考えております。しかしながら、法定四十時間制への移行につきましては、中小企業あるいは特定の業種への厳しい影響を考えますときに、慎重な上にも慎重な対応が望まれるところであります。労使時短交渉促進機運も進んでおりますが、深刻な労働力不足、避けられない時短コスト負担などか一つ経済計画タイムスケジュールだけでは解決できないと思います。企業の置かれております立場を重ねて御理解をいただきたいと存じます。  二番目は、時短環境づくりの一環としまして、国や地方自治体の規制やそれに伴う諸手続の見直し簡素化あるいは公共事業発注時期の平準化など、企業に対する必要以上の人手労力負担を軽減するようぜひとも強い御指導をお願いいたしたいと存じます。  第三は、時間短縮の結果を勤労者が豊かに享受できるような条件整備、すなわち物価の安定、住宅、通勤問題の緩和余暇施設の充実など長期的な課題についても引き続き御配慮をいただきたいと存じます。  最後でございますが、これからの労働時間を考えていく上では、個人職業意識生活観価値観変化十分視野に入れることが大切であろうかと思います。また、仕事の面でも研究、企画、調査、営業を初め自由裁量余地の多い専門職分野がウエートを増してきております。雇用形態については既に多様化がかなり進んでおりますが、労働時間の面でも、企業経営上の必要性と、個人選択を適切に考慮しながら制度を組み立てていくことが要請されていると言えます。フレックスタイム裁量労働などの労働時間の弾力化、あるいはアニバーサリー休暇長期リフレッシュ休暇、さらにはライフステージによる生涯労働時間の配分など、今後労使が知恵を出し合ってこれからの労働時間のあり方を柔軟な姿勢で求めていくべきではないかと存じております。  同時に、豊かさやゆとりは、基本的には我々日本人の勤勉の結果として与えられるものであるという原点を忘れてはならないというふうに自戒をいたしております。  これをもちまして、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  4. 川崎寛治

    川崎委員長 ありがとうございました。  次に、河口参考人お願いをいたします。
  5. 河口博行

    河口参考人 御紹介いただきました日本労働組合連合河口でございます。よろしくお願いいたします。  本日このような機会を与えていただきましたことを心より御礼を申し上げます。話の内容につきましてレジュメ風資料をまとめておきましたので、御参照いただければ幸いでございます。  まず最初に、現在の日本労働時間の現況についての認識を申し上げさせていただきたいと存じます。  三ページのところに労働省が出しております日本の総実労働時間の推移の図がございますけれども、この図をごらんになってわかりますように、六〇年代から七〇年代初頭まで時間短縮が進んで、オイルショックとともに七〇年代後半から八〇年代前半は停滞した時期でありまして、現在は再び時間短縮時代が流れ出しておる、こういうことでございます。そこで、その面では、停滞した時期というのは経営者労働組合もある面では雇用あるいは賃金引き上げを重視してやってきたということになりましょうが、八〇年代の後半から九〇年代に入りまして労働力不足を背景にしな がら時間重視に変わってきて、今一気に取り戻す時期に入っている、このよ一つ認識しております。  それから、その次の四ページをあけていただきたいのですが、今、日本労働時間で非常に私ども注視しておりますのは、表としては余り強調しておりませんが、内部的に重視しておりますことは、欧米との労働時間の格差が大きいということは既に国民的な常識になっておりますが、国内における産業間あるいは業種間格差が非常に大きいということ、異常に拡大しているということを御注目いただきたいと思うわけです。  表の一表にございますように、年間実働時間の最上位にありますのは、これは労働組合の名前で申しますと情報通信労連でございまして、NTT及び系列の会社を入れましても実働千八百四十六時間でございまして、NTTだけでいえば千八百時間を実働で割っております。それから、下位のところは運輸関係でございまして、二千五百四十時間。連合に入っている組合は比較的大きい組合、中堅の組合でございますけれども、それでも二千五百四十時間ありまして、上と下との差では七百時間近い差があるということでございます。ヨーロッパと、西ドイツと五百時間違うといいますけれども、国内上下差をいうとこれだけの差がある。さらに、ついででございますから比較的下位のところを申し上げますと、自動車、電機、機械産業、こういった現在の輸出を主導している産業でございまして、ある面でいえば豊かさを稼ぎ出している産業というふうに運輸も含めて言えるのかもしれませんが、これだけの格差があるということは御認識をいただきたいと思います。  それから、短期的なことでございますけれども、九〇年から九一年は日本の時間短縮にとっては画期町な年であったと思いますし、ことしから来年にかけてもそうであるというふうに思っております。そのような面では、多少オーバーかもわかりませんが、千八百実労働時間へ向けての展望というものが見えてきた、あるいはそのための条件整備ができてきたというふうに積極的に見ております。その面では、十数年にわたった長いトンネルを抜けだというのが実感でございます。  そのまず第一点は、労使とも労働時間を賃上げ同等の力で取り組むということであります。当たり前のことでありますが、労働組合にとって同等の力で取り組むということは初めてのことでございます。そういった意味で、民間及び官公庁ともに非常に成果の出た年であります。  二番目に、政府国会、今日までは社会労働委員会になりますが、国会政策制度改善に非常に具体的に取り組み始められた。基準法政令改正も行われると同時に、通産関連下請振興基準改正も行われる。さらには、中小企業労働力確保法が成立をされる。あるいは、少し間接的になりますが育児休業法が成立するというふうに、極めて具体的に政策が進み出したということであります。  それから、社会的にも機運が出てきておりまして、昨年衆参両院ゆとり決議を行っていただいた以降、現在三千二百十五の自治体のうち千以上の自治体ゆとり宣言をしておりまして、ただ宣言だけではなくて、これの施策化へ今一気に動き始めているところが現状でありまして、非常に雰囲気ができておりますということを申し上げておきたいと思います。  三番目に、これからの対策等についてでございますけれども、政府目標でいえば九二年が千八百実働時間への目標年度でございますけれども、連合は一年おくれの、少しずらして九三年千八百時間実現ということを掲げておりますが、中にはこれは厳しいのではないかという声もないことはございませんけれども、全体的には長い長い経過に立っておりますから、この目標を崩さない、九三年に千八百時間を実現する。そのためにことしは二千時間を切っていく。現在毎勤統計でいえば二千四十四時間でございますから、五十時間程度短縮して千九百時間台に入れていく。それから九二年度は、来年は千九百時間台を割る。そして最終の九三年に千八百時間を実現する。大変厳しい目標になりますけれども、それはぜひやっていきたい。  制度的にも、ことしの人事院勧告で、官公庁につきましては九二年の早い時期に週休二日制を実施すべきもの、こういう勧告がなされておりますが、連合としては、早い時期というのは四月というふうに理解をしてぜひその実施を求めていきたいと考えております。官公庁週休二日制に入る以上、民間もそれに余りおくれてはいけないという基本的な考え方を持っておりまして、したがいまして、民間につきましては全民間について九三年四月より週四十時間制に移行する、そのために来年の通常国会労働基準法のこの時間の部分に関してはぜひ改正お願いしたいというふうに考えております。  それから、これが基本的な目標でございますが、九一年から九二年に向けての重点的な課題として五点ぐらい挙げて考えております。  それで、一点は、基準法改正そのものでございますが、あわせて労働時間の短縮を促進していく仮称促進法、あるいは労働省等では適正化というような用語を用いでございますが、現在の制度だけではなくて、産業別業種別、そして都道府県別目標設定して、社会的に休日なりあるいは時間外労働なりを規制していくといいますか、そういうシステム都道府県ごと業種別につくっていくということが必要であるというふうに考えておりまして、そういったものもぜひ来年の通常国会で法案を御検討いただきたいということでございます。それから、あわせまして、国民祝日法についての改正でございますが、昔から言っておりますが、メーデー、五月一日の祝日化ということについて強く要望をしているところであります。  こういった形で、労働時間関係関連三法をぜひ通常国会実現を目指していくということが基本的な態度です。  それからその次に、中小企業労働時間の短縮については、これは最も重要な部分で、事実上中小企業のところにもう焦点が移ってきたというふうに思っておりますが、実効ある政策を推進していく。法律はできたけれどもそれが効果的に使われていないということでは意味をなしませんので、中小企業労働力確保法を初め中小企業政策を徹底的に生かしていくということが必要であると思っております。また、時間短縮困難職種と言われております看護婦トラック運輸あるいは建設、情報処理、こういったような困難職種につきましても、各産業労使が取り組むことはもとよりでございますが、政府関係省庁が積極的に取り組んでいく。例えば運輸であれば運輸省、建設関係であれば建設省そのものが既に積極的姿勢に変わっておられますだけに具体化にかかっていくことが大事ではないか、このように考えております。  それから、網羅的に申し上げて恐縮ですが、学校五日制についてもそろそろ実施計画明確化社会的な協力が必要であるということを申し上げておきたいと思います。  その面で、これまた資料を使って恐縮でございますが、五ページの資料を参照していただきたいのですが、最近、学校五日制についての各新聞社のいろいろな世論調査が行われておりますが、いずれも非常に前向きでございます。これは静岡県で三つのところで意識調査をしたものでございますが、静岡県の教職員組合地域教育懇談会を日常やっているところの父母対象に行いますと、賛成が六〇%を超える、あるいは文部省がいわゆる実験校を指定をしてやっているところの父母対象にいたしましても六〇%からの賛成が得られる、こういうことでございます。しかし、右の図は静岡県の労働組合がつくっております教育研究所が無作為で父母対象にした調査でございますが、これによりますと反対が比較的多い、こういうことでございますけれども、ということは、教育委員会にいたしましても教組にいたしましても、社会全体が積極的に取り組んでいきますと学 校五日制については急速に進んでいくという傾向が出ておりますので、社会的に積極的に取り組んでいくことが必要である、このように考えております。  その意味で、学校五日制推進協議会仮称でございますが、そういったものを、教育委員会やPTAだけではなくて、地域父母あるいはいろいろな代表の方が参加してつくっていくことが必要ではないか、このように考えております。  それから、あわせまして、太陽と緑の週というふうに五月のゴールデンウイーク労働組合はそういうふうに呼んでおりますけれども、そのときのメーデーの日を学校を休日化していく運動というものが現在起こっておりまして、大分等では既に具体的に検討に入っておりますが、当面としては、学校を振りかえていって五月のゴールデンウイーク全体を連休にしていく、こういう取り組みを進めております。そういったことにつきましても御理解を賜りたいと思っております。  それから、社会に対するいろいろな取り組みでございますけれども、既に国にもゆとり推進本部というものを連合は求めておりますが、都道府県においてもこの種のものを積極的に求めていきたい。特に、地方におきまして労働関係予算というのは全予算の大体一%ぐらいだと思いますけれども、その面では、週休二日制時代を迎えて地域社会における関連設備とかあるいは関連施策というものを充実させていく意味におきましても、地方で積極的にそういった予算拡大というものが必要であるというふうに考えております。同時に、ゆとり対策本部で官民含めて参加して運動を推進していくということが必要であると思っておりますが、当面、予算枠拡大だけではなくて、金が足らなければ時短宝くじというようなものを自治省が発行されて、それを施策の財源の一つにしていくのも一つの材料であるというふうに考えております。また同時に、社会的なアピールをする意味も含めて申し上げました。  最後に、世の中に提言する運動として申し上げたいことは、やはり社会全体の取り組み意識を変えていくために、ノー残業デーが現在急速に進みつつありますが、少なくとも週一回のノー残業デーと、そしてできれば月一回の社会の休日、正月並みの休み方ということが必要である、環境的にもしなければならない段階に来ているというふうに思っておりまして、そういったものが必要ではないか、同時に、行き過ぎたサービスの是正ということもまた必要ではないか、このように考えております。  労働時間の短縮進展とともに自由時間の拡大ということになりますが、そういった面でリゾートということが問題になってきますが、そのときに——今日のいわゆるリゾートというのは年収二千万以上でないと使えないようなリゾートになっているかと思いますけれども、そういった意味で、過疎の農村あるいは漁村と連携したリゾートというものを考えていくときに来ているというふうに考えておりまして、こういった施策もこれから必要であるというように考えております。  終わりに、時間短縮というのは、単に労使間の問題や労働条件改善だけではなく、世の中全体の改革を引き出していくというふうに考えておりますので、当委員会が積極的にリードされますことをお願い申し上げまして、私の方の報告にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 川崎寛治

    川崎委員長 ありがとうございました。  次に、保原参考人お願いをいたします。
  7. 保原喜志夫

    ○保原参考人 北海道大学の保原です。よろしくお願いします。  お手元に簡単な資料を差し上げてございますので、ごらんいただければと思います。  私は、比較的早い時期、できれば一九九〇年代の前半のうちに日本の総労働時間を千八百時間ぐらいに持っていく必要があるというふうに思っております。先ほど河口参考人からも同じ資料で御説明がありましたが、現在、昨年度の日本の総労働時間は二千四十四時間でありますから、千八百時間まで持っていくというのはかなり大変なことでありますけれども、資料をごらんいただきますと、所定労働時間と所定外の労働時間、おわかりいただけると思いますが、所定労働時間はある程度短くなってきておりますが、総労働時間がそれほど短くなってきていない、つまり、時間外がかなり多いということでございます。この点については後からもし御質問があればまたお答えを申し上げたいと思います。  それでは、労働時間の短縮がなぜ必要であるかということについて次にお話を申し上げたいと思います。  私は、短縮の必要な理由を大きく二つ考えております。  一つは、労働者の健康の維持改善、我々働く者の健康をどういうふうに維持し改善していくかということであります。  最近、働き過ぎで健康を害するとか、場合によっては働き過ぎによる過労死というようなことがいろいろ言われています。過労死の原因については医学的な究明を待たなければなりませんが、少なくとも普通の労働者が働き過ぎで死ぬんじゃないかというおそれがあるような働き方はやめなければいけない。我々は生きるために働くわけでありますから、本末転倒にならないような配慮を早急になすべきであるというふうに思います。  それから、時短の必要の第二の理由は、国際世論への対応ということであります。  いわゆる日本人は働き過ぎだということで、貿易競争その他の諸条件において日本は他の先進国に比べて有利な条件で競争しているじゃないかということが既にかなり以前から言われてきているわけですが、労働時間について外国から待ってもらうといいますか、もう少しで何とか改善するから待ってくださいと言うのも、もうそろそろ限界に来ているということが言えるかと思います。日本は数年前から外国に対して幾つか約束をしておりまして、例えば輸入の拡大とか内需の拡大とか約束をしていまして、それはある程度黒字減らしというような形で実現しておりますけれども、労働時間についてはまだまだその約束が果たされていないということが言えます。     〔委員長退席、永井委員長代理着席〕  それで、差し上げました資料の三枚目をごらんいただきたいと思います。  この表の縦の列の右から二列目をごらんいただきますと年間労働時間が記されています。この年間労働時間をごらんいただきますと、EC諸国は大体千六百時間台に平均しますと入ってきているということが言えます。中には千五百時間台になりつつあるところも若干の国について見られるわけであります。この数字を数年前と比較しますと、数年前は大体千八百時間台で推移していたわけでありまして、ヨーロッパは日本よりももっと速いスピードで時間短縮が行われているということが言えます。我々が当面目標にしております千八百時間というのは、実は数年前のヨーロッパの水準であったわけです。もとよりヨーロッパの労働市場の事情と我が国では多少異なるところがありまして、御案内のとおり、ヨーロッパは大変失業率が高い、したがって、少ない仕事をみんなで分け合おうといういわばワークシェアリングの考え方による時間短縮の促進ということが大きな要因としてあります。これは事実でありまして、日本とは事情が違うところでございます。しかしながら、そういう実数ではっきり日本との差、約四百時間の差が見られるということが言えます。  次に、縦の列の一番左側をごらんいただきたいと思います。  こちらをごらんいただきますと、通常の週最大労働時間が法律ではどういうふうに決まっているかということが載っておりますけれども、これをごらんいただきますと、法定の労働時間は意外に長いということがわかります。一番短いのがフランスで三十九時間というのがあります。それからベルギーが四十時間、スペインが四十時間、ルクセンブルク四十時間とありますが、極端な例では、イギリスでは労働時間の法的規制は全くあり ません。  それから、ここには載っておりませんが、アメリカも何時間以上働かせたら処罰するという罰則を伴った法的規制はないというふうに聞いております。アメリカではただ、何時間以上働かせたら残業手当を払えというそういう制度があるだけというふうに承っております。  ドイツをごらんいただきますと、法定の労働時間は四十八時間であります。しかし、実際には週三十五時間制を採用しようというような動きさえ出ておりまして、法定労働時間と所定労働時間の差が大変大きいと言うことができます。なぜこういうような状況になってきたのかというと、これは労働時間の短縮が主として労働協約を通じて行われている、つまり、経営者団体と労働組合、特に労働組合が大変な努力をしまして労働時間短縮に貢献をしていると言うことができます。  法律で規制をしますと、どうしても一律、画一的ということになりますから、業種ごとあるいは地域ごとの特徴というのをなかなか十分にしんしゃくできないということが言えます。これに対しまして、労働協約で、しかも横断的な労働協約を結んで短縮をやるという場合にはかなりきめ細かな対応が可能ということになりまして、そういう意味で、いわば先進的な産業あるいは先進的な地域でまず時短が進められて、それがだんだん全国に広まっていくというようなことが可能かと思います。     〔永井委員長代理退席、委員長着席〕  我が国では、残念ながら労働組合時短に対する取り組みは、一生懸命やられているとは思いますが、必ずしも効果を発揮しているということは言いがたいわけでありまして、その点、何か特別の施策が国政の段階でもあるいは必要じゃないかという気がしております。例えば、ちなみにフランスでは三十九時間労働法制になっておりますが、これも各地方産業別の協約を積み上げて全国協約を結んで、その全国協約の内容を立法化したのが三十九時間制であります。  以上、詳細はもし御質問があれば後ほどお答え申し上げたいと思いますが、EC諸国の労働時間の実態は以上述べたような次第でございます。  それから、アメリカにつきましては、私も不勉強ではっきりした数字を持っておりませんが、一般には実労働時間は千九百時間前後、千九百時間を少し割ったのじゃないかというふうに言われておりますが、アメリカでは大体そういうような状況であります。  これからどういうふうにして時短を進めていくのかということも、いろいろな方法があり得るかと思いますが、それは後ほどもし必要があれば私の考えを述べさせていただきたいと思います。  ただ、千八百時間というのは具体的にはどういう数字がというと、これは一般にも言われていますように、週四十時間、それから年次有給休暇二十日を全員が完全取得する、それでもまだ千八百時間にならないのですね。それで、若干の病欠その他欠勤を見越すと何とか千八百時間にいくか。そういう意味で週四十時間制、ということは週休二日制ですけれども、それで年休二十日という前提でも千八百時間は難しい、何とかそれでいけるかというような数字がと思います。ただ、週休二日制を法律で定めるということは恐らく世界のどこの国もやっておりませんので、法定週休二日というのはかなり困難といいますか、現状では必ずしも妥当ではないのじゃないかと思いますので、各企業産業界等で労使で御相談いただいて、週休二日で何とか週四十時間——週四十時間は既に少なくとも法律の条文にはあるわけですから、あと休みをどういうふうにふやしていくかという問題になります。それから最後に、残業をどう減らすか、これが大問題でありますけれども、私も残業を減らすよい手だてというものは今のところ考えついておりませんけれども、残業を何とか減らす努力をしなければいけない。日本と外国の実労働時間の相違のかなりの部分が実は残業の長さによっているということが言えるかと思います。  それでは、私の意見陳述をこれで終わらしていただきます。(拍手)
  8. 川崎寛治

    川崎委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 川崎寛治

    川崎委員長 これより質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人のお名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある委員は挙手を願います。
  10. 赤城徳彦

    赤城委員 自由民主党の赤城徳彦でございます。  ただいまは参考人の諸先生方から大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  我が国も大変豊かになってまいりまして、今や生活の質を求める、ゆとりと豊かさを求める、そういう時代に入ってまいったと思います。今や労働時間短縮国民的な課題であり、千八百労働時間というのももう労使あるいは国民全体の一つ目標として定着しているんじゃないかなというふうに考えますのでは、その千八百労働時間というものを具体的にどういうスケジュールでどうやって達成していくかという方法論になってきますと、いろいろと御意見も分かれるところではないかというふうに思うわけです。特に先ほど保原参考人からお話がございましたように、諸外国の例を見ますと、必ずしも法律上厳しい労働時間を制限しているわけではないけれども、労使の努力によって実態はかなり労働時間が短くなっている、こういうお話を伺いますと、もちろん法律上の規定というのも大変大事だとは思うんですが、ただ、実態が後をついてこないということになると問題でありますので、やはりここは労使の意欲というか意識というものが大変大事だというふうに思います。  そこで、最初に小川参考人にまずお伺いしたいのです。  先ほどの御意見の中に、人手不足ということが今大変問題になっているというお話がございました。産業構造的に人が不足しているということになりますと、いかにコストを削減していくかということも大事なんですけれども、人手不足が時間短縮にどういう影響を持つのか、この点なんですね。表向きは、今人手不足だからなかなか人が来ない、週休二日ぐらいにしないと若い人は来てくれないというふうに言われておりまして、時間短縮にはプラスのようなことも言われておりますけれども、実際は——私の友だちで前に就職したんですけれども、大変人気のある企業に就職しました。そこはもう完全週休二日というのは早くからやっておったんです。実際入ってみると、いや、とんでもない、土曜も日曜も自宅に仕事を持ち帰ってやらなければいけなかった、残業も大変多いというような話を聞きました。これは職種によっても大分違うと思うんです。建設運輸関係では残業が非常に多い。人手不足ということがかえって労働強化につながっているというような実態もあると聞いておりますけれども、そこら辺は実態はどういうふうになっておるのか、お尋ねしたいと思います。
  11. 小川泰一

    小川参考人 大変厳しい御指摘でございますが、私どもはつまびらかに各業態別、職種別の実態を掌握しているところではございませんが、今企業は、御指摘のとおり週休二日をしなければあるいは休暇を十分差し上げなければ人が来てくれない、特に若い人が来てくれないという実態でございまして、立場が大変厳しい中小企業を含めて若い人たち、人手が集まるように労働条件改善に努めているところでございます。したがいまして、そういう側面では人手不足が時間短縮を促進するというところがありますことは先生の御指摘のとおりでございます。一方、仕事自体は、正直な話、世の中から消えてなくなるわけではございません。大変乏しい人手を集めて陣容を整えまし て、需要家、お客様の仕事を満足にさはこうとすると、そこには絶対的な人手不足というのがまた逆にのしかかってまいりまして、私申し上げましたように、大変厳しいジレンマに立ち向かっておるというのがその点であろうかと存ずるわけでございまして、どういう職種か私存じ上げませんけれども、場合によっては表看板と実際とは大変食い違うという実態もあろうかと思います。  その辺は今後どうすべきかという問題でありますが、一つは、やはり私は、御意見具申し上げましたように、社会的な合意によって、もし仮に不要不急のものがあればあるいは優先順位として劣るものがあれば、それは人手の面からサービスなり生産を逐次見直していかざるを得ないのではないかというふうに思っているところでございまして、その辺はひとつ先生方の御指導をいただきたいと思います。  また、いかに仕事がたくさんあるからと申しましても、家に持ち帰ったり体を壊すほど労働させるということは極めて不適切でございまして、もし仮にそういうことを強行すればおのずと人手が離散をするわけでありまして、企業の方でも限界がございます。したがいまして、私は、究極的には人手不足と時間短縮双方全うしながら健全な産業社会を築いていくためには、日本の経済成長の質を問い直さなければいけないんではないか。三%、四%量的に伸びるのがよし、経済計画あるいはお国の予算等でもGNPがただ数量的に伸びればよしという、そういう見方を今後長期的に変えていかなけれはこのジレンマは解決しないのではないかというふうに私は思っております。  もう一つ日本の今後の効率化のポイントはホワイトカラーでございまして、生産現場においてはかなり合理化が進んでおりまして、恐らく諸外国と比較いたしましても劣らないだろうと思いますが、ホワイトカラーの効率がやはり今後検討すべき余地があると言われておりますので、私ども日経連といたしましては、その辺を中心にメスを入れて世の中全体の効率化を図ってまいりたい、そんなふうに思っているところでございます。
  12. 赤城徳彦

    赤城委員 ヨーロッパなどでは人が余っている、余っている中でワークシェアリングを進めていくということで労働時間がどんどん少なくなっていったんですけれども、日本の場合は人手不足ということで大変ジレンマがあるとい一つことがよくわかりました。  さて、労働者側の方なんですけれども、労働者側も時間短縮というのは願ってもないことだとは思うんですが、実際いろいろなアンケート調査をしてみますと、労働時間が長くなっても収入がふえることがより望ましいというような意見の者が中年層、四十歳を超えると多くなる。労働時間が短くなった方がいいという人よりも、長くなっても収入が多い方がいいという人が四十歳を境にして多くなるというふうなアンケート結果も出ておりまして、これが特に超過勤務の削減については足を引っ張っているんじゃないか。恒常的な残業の温床になっているのは、実は労働者の側にも、少しぐらいは残業しても収入が多い方がいい、そういう意識があるんではないかな。春闘なんかでも、時間短縮と収入の増、この両にらみになってどこか不徹底になっているんではないかと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。河口参考人にお伺いします。
  13. 河口博行

    河口参考人 今、赤城先生が御指摘のとおりの傾向を今日まで持っていたことは否定できません。確かに、労働組合も、先ほど申し上げましたように、八〇年代までは賃金を重視してきたことは事実でございます。現在は、先ほど申し上げましたように、賃上げ労働時間の短縮同等の力で進めるという立場に立っておりまして、ナショナルセンターのレベルから職場、職域レベルまで現在それが徹底している過程でございます。  それで、ある面では、残業代というものが生活費に組み込まれている、とりわけ日本の中高年の場合には、支出面で多くのことを負担しなければならないという状況がありますだけに、そういったことは否定でき得ない事実でございますけれども、仕組みと意識改革と両方を進めていって時間外労働を減らしていくということが大事であると思っております。現業部門に関しましてはさほどの大きい負担、時間外労働が強烈にあるという——製造部門ではありませんが、特に開発とか研究とかの分野の三十代の層というものほかなり長い時間を持っておりますから、そういったところは、御指摘の点を改善していくのには、規制を少し強めることと意識改革と両方を強めていかなければならないと思っております。  なお、ついでに申し上げれば、中高年と若い層とを比較すれば、若い層は時間を非常に重視しているということもまた特徴でございます。  以上です。
  14. 赤城徳彦

    赤城委員 まさに今お話があったとおりでございまして、その超過勤務手当が収入に組み込まれているというところが非常に問題になっているのじゃないかなと思うのです。日本の総労働時間がなかなか減らないというのは、先ほど保原参考人からお話がありましたように、所定外労働時間、超過勤務というもの、これを減らさない限りは千八百にいかないわけでございまして、その辺の意識改革というのを特に進めていかなければいけないのじゃないかと思うのです。  これも前に何かで見たものなんですけれども、どのくらい収入に組み込まれているのかということで、所定外労働時間が百八十五時間なんですが、大体百時間所定外を減らすと月収が一万五千円減ってしまう。これはかなり大きな数字になると思うのですね。自動車業界では、収入の約二割を残業で稼いでいるなんという話も聞いております。今回それを労使協定で百時間削減するというふうな前進があったというふうにも聞いておりますが、そういうことでこれは大変大きな問題であろうと思います。  この残業の根っこにあるのがいわゆる三六協定で、ここにやはり問題が突き当たってくると思うのですね。三六協定というのは、労働法の中ではかなり特殊な書き方をしているのじゃないかと思うのですが、要するに、労使の自主性に任せる。ヨーロッパでは、お話しのように大変うまくいって、法律の規定ではかなり時間が長いのだけれども労使の協定で実際は短くしている。ところが、我が国では今お話しのように、労働者側がどうも超過勤務をある程度は受け入れているというところが、せっかくその協定制度があるのになかなか労働時間が削減できないという元凶にあるのじゃないか。本来であったら、その協定の改定のときに組合側が強く要求して協定の時間を削減していくというふうな方向に進むべきではないかなと思うのですが、その辺、特にその三六協定との関係でいかがでしょうか。河口参考人にお伺いしたいと思います。
  15. 河口博行

    河口参考人 御指摘のとおりと思っております。  三六協定の協定につきましては、高度成長時代労働時間短縮が進んだ時代は、労働組合の工場レベルあるいは事業所レベルで、事業所単位に労使間で非常に厳しい協定に当たっての協議といいますか交渉をしておりました。この三六協定を比較的労働組合が緩めたと言えば語弊がありますけれども、結果としては緩めたことになりますが、私の実感で申し上げれば、第一次オイルショック、第二次オイルショック、さらに最近で言えばプラザ合意以降の円高危機、こういう時期にやはりどうしても雇用賃上げというものを重視していくということになり、そういった面での厳しさというものが不足したというふうに思っております。現在欧めまして、昨年からことしにかけて三六協定の協定の強化ということを改めて原点に立って強調をしております。これからもさらに厳しくしていかなければならないと思っております。  これが原点でございますが、あわせまして、社会的な取り組みといたしまして、特に日本は業界そろってとかあるいは産業そろってということがございますだけに、また、先ほどの保原先生の社会的な意味での労働協約を促進していくというよ うな意味合いにおきまして、都道府県別業種別の休日についての目標を決めて努力していくとか、あるいは時間外労働についての削減目標を設定して努力していく、こういった社会的な制度が必要であると思っておりますが、そういったものによって欧米にあるような労働協約的なものを社会的に制度化することによって進んでいくというふうに考えております。そういったようなものが、先ほど申し上げた労働時間短縮促進法というような言葉に置きかえて申し上げた内容でございますが、そういったことを社会的に業種別労使が検討する時期を迎えているというふうに思っております。
  16. 赤城徳彦

    赤城委員 次に、その三六協定の制度面でちょっとお尋ねしたいと思うのです。  三六協定の延長時間に関する指針というものが出ておりまして、この指針によりますと、月五十時間、年四百五十時間を限度とする、これは限度でありますので、実際はその以内で協定を結ぶように、こういうことで指針が定められております。  その指針の運用状況を見ますと、月四十五時間から五十時間あるいは年四百時間から四百五十時間という範囲で協定を結んでいるという例が約半分、かなりこれが定着していると思うのです。ただ、これは限度でありますので、この限度で決めますと、そこまではやってもいいのかというふうなことも起きてくるのではないか。現在の所定外労働時間が百八十五時間ということでありますので、年間四百五十時間を限度とするというこの限度というのは、百八十五時間に比べたらかなり長いのではないかというふうにも思うわけです。  先ほど申しましたように、労使の自主性に任せるといってもなかなか進まない面もあるということであれば、むしろこの限度の方をもうちょっと厳格にやっていくべきではないかという気もいたします。これは、例えば年少者とか女子の場合の規制というのがあるわけでございますし、たとえその三六協定によっても残業していい、させるべき限度というものがおのずとあるのではないか。これは指針でやるのがいいのかあるいは法律上このくらいまでという限度を決めて、なお目標とすべき残業時間を指針なり通達なりで決めて、それを削減するように指導していく、何かそんなふうな仕組みも考えられるかと思いますけれども、制度上そこら辺の、残業の限度を決めるその仕組みはどうあるべきかということをお尋ねしたいと思います。保原参考人にお伺いします。
  17. 保原喜志夫

    ○保原参考人 先ほど差し上げましたヨーロッパ、EC諸国の表の左から二列目に、EC諸国で認められる時間外労働の法的規制の一覧が載っておりますのでごらんいただきたいと思いますが、全体としてかなり厳しい線になっております。  私はフランスに合計三年ばかり住んだことがありますのでフランスの例を御紹介いたしますと、フランスの場合は、こういうふうに週九時間、年間百三十時間というかなり厳しい規制がありまして、その上に、八時間の残業をしますと残業手当をもらったほかに一日代休がとれるという制度になっております。現実に残業はいわゆる現場労働では余り行われていないということが言え名と思います。そういうことで、法的規制がかなり厳しい上に労働協約で厳格な制限をしておりまして、残業手当を協約で上積みするとかいろいろなことをやっておりましてかなり残業がしにくい状態になっております。  今、赤城先生から御質問がありました、残業の最長時間、年間最長時間あるいは月の最長時間、週の最長時間というのを日本で例えば法律で決めるということが妥当かどうかという問題、あるいはその必要があるかということですが、法律でいわば残業の天井を決めるといいますか最長時間を決めるということは、可能であればあった方がいいと私は思います。  ただ問題は、どのくらいのところにその天井を設けるかということになりますと、今、赤城先生から御指摘がありましたように、日本の超過勤務労働はかなり長いのでありまして、平均で百八十五時間といいましても、四百時間のところとか五百時間のところとかいろいろあります。もし法律で決めるということになりますと、それに違反した場合は処罰ということになりますから、かなり重大な問題になってきます。そうすると、天井をかなり高く設定しなければいけない。そうすると、二つ問題が出てきます。一つは、ああ、そこまでは残業やらせてもいいのかなという問題が出てきます。もう一つは、これは多少日本が見えを張るということになるかもしれませんけれども、諸外国から見ますとえらい高いところに残業の時間を設定しているなというように見えるということが言えると思います。  それで、これは私の個人的な意見としましては、現在のところは、そういうわけで天井を設定するのはまだ時期が早い、もう少し他の方法によって残業を減らす努力をすべきではないかと考えております。  以上でございます。
  18. 赤城徳彦

    赤城委員 ありがとうございます。  続きまして、労働時間が長くなるもう一つの要因としまして、年次有給休暇、これが余り取得されていないということについてお尋ねしたいと思います。  職場にどうも有給休暇をとりづらい雰囲気があるということを聞いております。自分が休むとほかの人にその仕事のしわ寄せが来るんじゃないかと気兼ねしたりとか、そういうふうな雰囲気があると聞いております。そこで、労使が一体となって計画的にとるようにしよう、むしろ使用者の側が、有給休暇の希望を出しなさい、それでスケジュールを決めてとっていただく、そういうことで六十二年の労基法の改正計画的付与制度というのができたわけでございますけれども、これがどのくらい利用されているのか、お尋ねしたいと思います。まず、小川参考人にお伺いします。
  19. 小川泰一

    小川参考人 申しわけありません、ちょっとデータを持ち合わせておりませんが、有給休暇一般のことについて少しお答えをさせていただきたいと存じます。  日本の有給休暇の取得の日数が全体として少ないということは事実でございます。これを現業労働といわばホワイトカラー部門と比べてみますと、昨日も実は鉄鋼の方のお話を聞いたわけでありますが、交代勤務あるいは現業部門は八割とか九割、もう事実とっておられるところが多いわけでございます。ただ、どうしても仕事の代替性とかなかなか区切りがつきにくいというホワイトカラー部門が有給休暇取得の日数が総体的に少ない、あるいは年配者が少ないというような傾向がございまして、これをどうするかというのが今後の課題でございまして、御指摘のように一つ計画的付与で強制的にある程度とらすということが第一点であろうかと思います。これはそれぞれの経営によって違いますが、経営者が率先してやっているところもございますので、おいおいそういう方向に進むのではないかと思います。  もう一つは、一般的な有給休暇のほかに、ホワイトカラーについては例えばアニバーサリー休暇であるとかリフレッシュ休暇であるとか、ある程度義務的にまとめてとらせるようなシステムを導入していくのが有効ではないかと思っております。やはりどうしても日本人は自主的に何か休暇を自分の家庭の都合でとるというのはなかなかとりづらいという性格を持っておりまして、一つ制度で、例えば夏休みは必ずとるとか、自分の結婚記念日にはみんな休むとか、あるいは十年たったら強制的に二十日間休むとかそういうシステムを並行して導入していく方が実質的に時間短縮にもなりますし、休暇の効果もあるのではないかと思っております。  計画的付与については、御指摘のとおり推進すべきであると思いますが、労働省調査によれば、計画実施平成二年で一三・三%、日数四・四日だそうでございまして、まだまだ普及率は低いのではないかと思っております。
  20. 赤城徳彦

    赤城委員 この計画的な付与ということなんですけれども、次に河口参考人にお伺いしたいと思 うのです。  本来、有給休暇というのは労働者の権利としていついつ休みたいと言えば権利として与えられるものだと思うのですが、使用者の側が例えば夏休み、いついつからいついつまでを休みにする、ついてはその有給休暇をそこに振り当てるというようなことで計画的付与をされていると思うのです。これをやれば全くやらない場合に比べたら休む日数はふえるとは思うのですが、そのかわり労働者の側が自主的にとれる日数というのは減るわけでありまして、今の制度では五日だけは自分の、労働者の自由にしていい、それを超える部分については計画的付与に振り向けるということで調整を図っていると思うのですが、制度的に見て、本来労働者の自由にとれるようなそういうフリーハンドを持っていた方がいいのか、それとも、計画的な付与ということで、拘束はされるけれども日数がある程度とれるというふうな仕組みがいいのか、そこら辺の意識をお尋ねしたいと思うのです。
  21. 河口博行

    河口参考人 自由にとるかどうかという点については、まず付与日数との関係がございまして、現在の一般的な制度としては勤続が短いと付与日数が低いということになって、特に若い層はそうなりますから、若い層は計画的に振り当てられるとそれはちょっとまずい、こういうことになりますから、一律付与日数を二十日に持っていくということが当面の目標ということになっていこうと思います。中高年のように勤続年数がふえてしかも持ち越し日数も持っておりますと、計画的に付与されても比較的自由、こういうことになりますから、一つは付与日数の水準を若い人を含めて全体を引き上げるということがまず必要だと思っております。  それからもう一つは、計画的ということに関しましては、例えば、今連合等も、五月のゴールデンウイークに間のところを年休をとって事実上一週間連続休暇とか、あるいは夏休みに前後をくっつけて一週間とか二週間とか、こういうことを進めていきますから、そういう形でできるだけそういった長期休暇的なものを社会的にも進めていくことはある程度必要ではないかと思っております。  ここの資料にも少しつけてありますけれども、ヨーロッパの場合の年次有給休暇の取得日数と付与日数の関係を出しておりますけれども、まず付与日数、取得日数ともに多いのと、長期休暇が非常に多いということが決定的な差でございますので、そういったものをさらに進めていかなければならないと思っております。  最後に、日本の取得率を高めていくことについて一言だけつけ加えさせていただきますれば、やはりこの点も労働組合のこれからの努力が必要だと思っておりますが、ある一定期間徹底して一〇〇%取得するように運動を起こしていくということが必要だと思っております。その面では意識改革が必要である、体験的にそれは言えるというふうに思っております。それに伴いまして企業の方も、御承知のとおり出勤日数は原価計算の重要な基礎になっておりますから、その面で、原価計算上の基礎は実績でもって原価計算をしていきますから、完全に年休を取得すれば年休を一〇〇%取得した状況で原価計算をしていくということになっていきますので、一度はそれはやり切っていかないとまずいと思っております。  以上です。
  22. 赤城徳彦

    赤城委員 最後に、保原参考人にお伺いしたいと思うのです。  制度的な面でアニバーサリー休暇とか太陽と緑の休暇とかあるいは夏休み、正月休み——夏休み、正月休みはほとんどの企業がやっていると思うのですが、そういう決まった休みと、それから有給休暇という本来労働者の権利として保障されている休み、これは別のものなんじゃないかな。今の計画的付与制度というのは両者をうまく調和させたものなんだけれども、これは次善の策ではないか。本来は、沫まった正月休み、夏休みというのがあって、それと別に権利としての有給休暇がある、この有給休暇がもし取得率が悪いのであれば、それはもっと権利性を高める、あるいは使用者の側の義務性を強めるといいますか、そういう形でのフリーハンドとしての有給休暇という制度はやはり別建てなんじゃないかな、それと別に決まった休暇制度というのがあっていいんじゃないかなというような気がいたしますけれども、制度的に見ていかがでしょうか。
  23. 保原喜志夫

    ○保原参考人 今御指摘のとおりだと思います。日本労働基準法では昭和六十二年の改正計画年休制度ができまして、これが夏休み等に利用されておりまして、何らかの形で夏休みを連続してとらせているような企業が約八割というふうに言われていますけれども、日本の場合はこの時季に一時的にほとんどの企業が集中をしまして大変な休みのラッシュというのになって、御案内のとおり飛行機の切符もとれないという状況であります。  私は、まず法律論としましては、現行の規定を変える必要があるかどうかというところまではちょっと言う気がありませんが、少なくとも使用者に計画的な年休を取得させるための調整の権限と責任を持たせる。ただ、これは罰則をつけるとか何かになるとまた別の問題が起きますから、訓示規定といいますか指導的な規定を設けるということが考えられるんじゃないかと思います。  現在、年休権につきましては、最高裁判所の時季指定権説という考え方が学説、判例で受け入れられていまして、この時季指定権説というのは、労働者がその持っている年休日数の範囲内で年休の日を指定しますと、使用者は特段の事情がない限りは当然にその日に年休になってしまうということであります。この時季指定権説をそのまま貫きますと、労働者の権利保護には大変いい側面を持っているのですが、しかし反面、使用者としてはいつ時季指定権を行使されるか予測がつかないわけですから、年間の年休調整はなかなか難しくなります。したがいまして、この判例も、場合によっては何らかの形で立法的な方法を考えて、余り無理のない程度に労働者の希望と企業全体の年休取得の調整ができるような法制度をもう考える時期ではないかというふうに思います。  ただ、これは労働者のいわば重要な権利の一つをある程度制限する機能も営みかねないのでありまして、立法技術上慎重な配慮が必要であるかと思いますけれども、諸外国は御案内のとおり、大体年の早い時期に労働者がみんな自分はこの時期にとりたいとかいろいろそういう希望を出しまして、労働組合が一括して雇い主と相談をして年休の時期をだんだん決めていく。最終的には雇い主が決める。その場合に労働協約等である程度順序が決まっていて、例えば子供のある人が優先だとか、夫婦で同じ企業に働いている人は同じ時期にとらせるようにするとか、いろいろなことが決められている場合が多いですけれども、いずれにしても、現行制度では雇い主の方の調整が非常にしにくい状況にありまして、これが年休をとらないあるいは年休取得日数が伸びない一つの原因だろうと思います。  そのほかにいろいろなことがありまして、例えば風邪引き、腹痛といったような病気のときに欠勤はどうもまずいというので年休をやはりとっておこうとか、それからもう一つは、年休をとると場合によっては成績査定が低くなるというような会社もあるというふうに聞いておりますので、そういうことは直していかなければいけない。諸外国では風邪引き、腹痛の場合については特別の措置をいろいろ設けております。それからもう一つは、成績査定というのが現場労働者では、ヨーロッパではほとんど問題になりませんので気楽にと言ったら言い過ぎですが、その日の賃金を失うと思えば休めるわけですが、日本はいろいろなものに最後まで、場合によっては退職金にまで響くようなことがありますから軽々にはなかなか休めない、そのために年休をどうしても残しておくということになりますので、そういう計画的な付与、使用者による調整をもし制度化するという場合には、何かそういうちょっとした病休とか何か についての手当てを、もう少し現在の健康保険法以上の手当てを何らかの形でする必要があるんじゃないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  24. 赤城徳彦

    赤城委員 ありがとうございました。
  25. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私は、日本社会党・護憲共同の伊東秀子でございます。  きょうは参考人のお三人の先生方には大変示唆に富んだ貴重な御意見を伺いまして、本当にどうもありがとうございました。  それで、まず私の方は保原先生にお伺い申し上げたいのです。  先生の御指摘の中に、所定外労働時間の問題性と、それから労働時間が長いということが労働者の健康や安全にとって非常に問題を生んでいるというような御指摘をいただいたわけでございます。  私も、実労働時間が若干減ってきていると言われながら、きょう先生がお出しいただいた表の一枚目の右上にございますように、所定外労働時間については四年間を平均でとってみましても一向に減っていない、これが大変問題ではなかろうかと考えているわけでございます。特に、なぜ所定外労働時間が減らないか。労働者が自分の時間を大切にしたい、残業はしたくないと思っても半強制的でノーが言えない状況がある。つまり、半分業務命令的に、本人の同意は不要という形で残業命令が出されている職場の実態があるのではなかろうか、私はそこが問題じゃないかと思うわけでございますが、この点についての先生のお考えと、こういった自分の時間、所定の労働時間以外を残業に使う場合に、欧米ではどのような本人の選択権と言えばいいのでしょうか、自分の自由な時間を自分で自由に使うか残業に充てるかの当人の選択権あるいは同意というようなものはどういう形になっているのか、この点についてちょっとお願いいたします。
  26. 保原喜志夫

    ○保原参考人 まず、日本の法律論ですが、これは伊東先生の方がよりお詳しいと思いますが、法律論では、残業協定があってそれから労働協約や就業規則があって、法的には少なくともそれだけで残業が命じられる、残業を命じることが使用者にとって可能だという見解が有力であります。しかし、そのような場合でも個別具体的に、つまり、残業の日時、それから仕事の中身、それからだれに残業させるかという特定の人間を指定して使用者が残業の申し込みをする、それで労働者がうんと言わなければ残業義務は発生しないというような個別同意説という考え方があります。一時は裁判でもかなり採用されましたが、現在はそれほど裁判では大きな力を持っていないと言うことができます。しかし、若干のものは現在でも見られます。学説としては、多数説とは言えませんけれどもかなり有力説であるということは言えるかと思います。しかし、この点については最高裁の判例がまだ出ていませんので何とも言えないと言うことができます。一般的には、残業協定があり、しかも残業義務を義務づけるような労働協約や就業規則あるいは個別労働契約があれば、使用者は一方的に残業を命じることができるというふうに考えられているわけです。  諸外国と比べて日本の残業の特徴は、計画残業があるということであります。伊東先生御指摘のように、一カ月なら一カ月の間休日を除いて毎日二時間ずつとか、そういう計画残業が日本ではかなりの企業で見られます。むしろ大企業でかなり見られるわけですけれども、これはいろんなことが言われていますが、一つ日本雇用慣行と深く結びついておりまして、日本はいわゆるかなりの部分で終身雇用の慣行かありまして、不景気であるあるいは受注減だということで簡単に労働者を解雇できないという事情から、忙しいときには計画残業、それから忙しくないときには残業させないで帰すというのが一般化して現在に至っているのだろうと思います。  したがいまして、これは雇用慣行か違いますから一口に言えませんが、アメリカでは、解雇は現在も労働組合が弱いところではかなり自由であると言うことができますけれども、ヨーロッパでは、一九七〇年代から解雇には正当事由が必要であるというような立法がかなり出てきまして、一九八二年にはILO条約でそういう趣旨の内容のものが採択されております。ただ、これはいろんな事情がありましてまだ批准している国は少ないようですけれども、しかし既にそういう傾向になっておりまして、ヨーロッパでは従来ほどは解雇は自由でなくなってきているということが言えます。にもかかわらず、計画残業は存在しないというと大げさだと思いますが、少なくとも私はヨーロッパでは余り聞いたことがないということが言えます。  私が多少知っているフランスの例を申し上げますと、フランスではほとんど現場の人は残業がありません。ほとんどありません。特に忙しい場合は雇い主が命じますけれども、これはだれでもがわかりますから、同意したかしないかというのは裁判では問題になっておりません。というのは、ごくごく例外の場合ですから、働く人も、うん、きょうはやむを得ないなというような感じであります。それからフランスの場合は、週三十九時間ですが一日十時間までは働かしてもいいことになっていますから、つまり、法律上当然に働かしていいことになっていますので、まあ十時間を超えるというのは少ないということが言えるかと思います。  そういう事情がいろいろ違いますけれども、もう一つは、現場労働者でなくて、ホワイトカラーのちょっと上層部分は時間管理を外されている国が多いのです。日本はかなりのところまで労働基準法の適用が及んでおりますけれども、時間管理が外されておりまして、この実態はなかなかわかりません。ただ、散見するところでは、ヨーロッパの人たちもホワイトカラーのある程度、日本でいえば課長補佐、課長とかあるいは本社の係長ぐらいの人たち以上の人は猛烈な働き方であります。少なくとも労働密度はかなり高いということが言えます。違うのは、休みの日はきちんと休む。ただ、労働密度は極めて高いということは言えるかと思います。それが残業をしないで済む一つの理由かなと思いますけれども、ただ、ホワイトカラーの人たちの多くは時間管理を外されているために統計に出ておりませんから、私の近辺で見聞きしたことを御紹介申し上げる次第です。  以上です。
  27. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の保原参考人の御意見の中にも出てまいりましたが、労使慣行、労働慣行として、現実には計画残業と言えばいいのでしょうか、使用者の側の一方的な計画あるいは都合のもとに所定外労働時間を労働させられている実態があるということでした。  小川先生にお尋ねしたいのですけれども、今の問題は法律上は本人の同意を要するか否か、つまり、三六協定がありまして、就業規則で結ばれて残業はできることになっているけれども、本人が残業はしたくないと思っているときにノーと言えない。言えるか言えないかは保原先生が御解説くださいましたようにいろいろ説があるのですけれども、実態はそれが通っていない、ノーが言えない状況があるというこの点についていかに経営者方々はお考えでいらっしゃるのか、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  28. 小川泰一

    小川参考人 大変厳しい御指摘でございますが、残業というものに対する経営側の考え方を少し前提として申し上げたいと思います。  第一点は、私も現場の労務管理者をやったことがございますが、残業を減らすというのは現場の管理者の最大の課題でございまして、私は、不必要な残業をやらすような経営者、管理者は、これは管理者の資格がないというふうに思っております。しかしながら、現実にはかなりの残業があるわけでありまして、そのときには、確かに三六協定があり、就業規則があり労働協約がある以上は経営者の指示権が私どもはあると思っておりますが、そこはやはり現場の管理者の一つの人間関係の維持という側面がございまして、どうしても残業ができないような事情のある方を強制的に残業 させるということは、仮に例外的にあったといたしましてもそれは大変まずいやり方でありまして、喜んでやってくれるかどうかは別といたしまして、十分理解を得ながらやらせていくのが筋であるし、残業はもう極力減らすのが人間関係の上からもコスト管理の上からも最大の課題であるということはぜひひとつ御認識をちょうだいいたしたいと思います。  その上で、計画残業があるということでございますが、確かに一部の産業、一部の企業ではある時期に限って繁忙期は計画的な残業があり得ると思います。しかし、私は、少なくとも労働組合があれば労働組合の一般的な理解を得ながらやっていると思います。決して強制的に、かつ労働組合の了解も得ないで残業を計画的に継続させるということはないと思いますし、またあってはならないというふうに思っております。  それからもう一つは、保原先生も御指摘ございましたように、どうしてもやはり雇用慣行かございまして、今後はどうなるかわかりません。従来は雇用慣行かございまして、いざ不況というときにはぎりぎりまでいわゆる解雇をするということはいたしません。その反面、忙しいときには多少の残業を我慢していただくというようなこともあったかもしれません、また現にあるかもしれません。今後はどうなりましょうか、勤労者意識も変わりますからまた労務管理の仕方も変わっていくと思いますが、もし仮にそうなったときには、反面、多少ドライな雇用も覚悟せざるを得ないのではないかというふうに思っております。
  29. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の小川先生の御意見、大変貴重に伺わせていただいたのですが、ちょっとつけ加えて御質問させていただきますと、今後の労働慣行としては、当人、労働個人が残業したくないという意思を尊重する現場慣行をつくっていきたいというふうなことで受けとめてよろしいでしょうか。
  30. 小川泰一

    小川参考人 私は実態面を申し上げているわけでありまして、法律的にはこれは保原先生の御専門でございますが、私どもはやはり企業がどうしても必要なときには、三六協定があり就業規則があり労働協約があり、その範囲内でお願いをして、原則として企業が必要なときには従っていただくというのが私は管理の筋目であると思いますけれども、実際問題として御家庭の事情があったりお体のぐあいが悪かったり、他にどうしても都合のあるときまで強制的にするような労務管理はいかがかと思うという意見でございます。
  31. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 もう一度保原先生にお伺いします。  赤城先生の御質問の中で、三六協定の上限を法定化したらどうかという御質問に対して、法定は今の段階ではまずいんじゃないか、いろいろ諸外国との関係あるいは今五百時間もやっているような業種もあることを考えればという御説明でしたけれども、とすれば、現段階で行政指導なりあるいは通達なりガイドラインでもいいのですけれども、業種ごとにやはり上限を、妥当な上限を設定して、それ以上超えないように事実上行政指導していくような、そういったことが必要ではなかろうかと私は考えるわけですが、その点についてはいかがですか。
  32. 保原喜志夫

    ○保原参考人 伊東先生のおっしゃるとおり、私も賛成でありまして、業種ごと、あるいは地域地方ごと、あるいは事業規模等に応じて行政指導を徹底していくということが必要かと思います。そのためには具体的な数字を設定して、それをだんだん下げていくといいますかそういうことが必要だろうと思います。ただ、法律でこれをやりますと、特に罰則をつけますと大変なことになる。事実上守れないということになりますと逆効果を招くおそれがありますので、法律でやるのは現在の段階では時期尚早か、そういう意見でございます。
  33. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 どうもありがとうございました。
  34. 岩田順介

    ○岩田委員 日本社会党・護憲共同の岩田でございます。  きょうは三人の先生にはお忙しいところ貴重な意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。  主として河口参考人にお尋ねをさせていただきたい、こう思っております。  先ほどからるる議論がありましたけれども、例えば年休の取得や残業について、これが正式に影響する人事考課に関連をしてくる、こういう日本の風習というか慣行も一方である。考えてみますと、そのことが働き過ぎ日本だとか経済成長を支えてきた一つの大きな要素であるというふうに考えられなくもない。しかし、いわゆる内外の情勢というのは、時短問題に限って言えばこれは一つの大きな潮流となってもうとめることができない、こういう事態であろうと思います。したがいまして、この時短問題というのは、単に労働行政分野だけではなくて、言ってみれば、日本全体というか文化をも含めた日本が問われている問題でもある。そういった意味では過渡期ではないか、こういうふうに私、先ほどの議論を拝聴いたしまして深く感じるわけであります。したがって、先ほど保原先生おっしゃいましたけれども、法的にどうするかという規制の問題がありましたけれども、しかし、促進するための法律はこれから当委員会でも議論をしていくべき重要な課題であります。また、これは国民全体の価値観の成熟といいますか転換といいますか、こういったものを図っていかなければならない。さらには、社会全体の時短問題を進める環境整備も必要だろう、こういうふうに痛切に感じたわけであります。  河口参考人にまずお聞きをしたいのです。  先ほどのお話にもありましたが、これは小川専務理事の方からもお話がございましたけれども、ことしの春の交渉で、これは鉄鋼のことだと思いますけれども、いわゆるタイムスケジュールが決まったというお話もございました。これは連合全体の春闘の総括を読ませていただきましても、私も評価する大きな前進点であろうと思います。そういった状況から、例えば公務員のいわゆる時短問題についても門戸があげられる、こういう状況がありますね。一方では、看護婦さんを擁している病院等の多くの課題も残していることは事実であります。  ところで、労働者側がどういう方針を持たれていくかということが当面大きな問題の一つでありますけれども、先ほどのお話の中で、鉄鋼は九〇年代の半ばを目指して千八百時間、こういうことになっていますね。それから連合の方も九三年をめどにする、こういう状況がありますね。一体これはどういうふうに今後、調整というのは悩みの問題だろうと思いますけれども、どういうふうに労働側としては展開をされる予定なのか、方針なのか、まずお伺いをしたいと思います。
  35. 河口博行

    河口参考人 先ほどの資料でも御説明いたしましたように、日本の総実労働時間は非常に分布が広がっておりますが、連合全体といたしましては、連合の平均でもって一九九三年に千八百時間に到達をしたい、このように考えております。富士山の登山に例えますと、現在、千八百時間ということが頂上であるとすれば、先ほど申しましたように上位のところは既に頂上に到達をしておるわけでございまして、すそ野のところはまだ一合目のところにいる、こういう状況でございますから、全体でもって千八百時間に登山していく、こういうことを考えております。  それから、先ほど鉄鋼の九〇年代半ばということは、あの中には少し微妙な言葉もあって、組合の努力も入っていると思いますが、九〇年代半ばまで、までというのは前というような意味も含めておりまして、全体的にはできるだけ目標に近づいていこうというふうに考えております。  ついでで恐縮でございますが、公務員が来年のできるだけ早い時期に入るということによってこれが実施できれば、一気に加速をしていくというふうに考えております。  以上でございます。
  36. 岩田順介

    ○岩田委員 関連をしてお尋ねしたいと思いますけれども、心配をいたしますのは、八八年の労基 法改正では四十時間という原則が確立をされて、これを千八百時間にどう近づけていくかということでありますが、適用猶予、特例が設けられておりますね。これは除外される労働者の数でいきますと何と大体六〇%、これくらいになるのではないかというふうに思っております。  政府の経済五カ年計画、これは九二年度より千八百時間、これも明確になっている方針ではありますが、連合の組織内の状況としては、大体お伺いをいたしましたけれども、全体どういうふうに進んでいくのか、河口先生のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 河口博行

    河口参考人 今御指摘のとおり、適用を猶予されているもの、それから特例措置によるものということを連合としても非常に重視をしておりまして、連合も組織内のメンバーだけではなくて、全勤労者を代弁しなければならない立場に立っているというふうに考えております。そこで、考え方といたしましては、一九九三年四月一日で本則にありますような週四十時間制というものに移行するということが必要ではないか。それで、やはり全体も非常に格差が広がってきておりますだけに、全体を、ある最低水準についてはそれで引き上げていくということが必要であろうと思います。その原則をやはり貫いた上で、なおかつどうしてもという場合が出たときに初めて例外的なことが考えられるのではないか。今の段階では格差が広がっているだけに、それだけに、より原則を貫くことが大事じゃないか、そして、全体の格差を圧縮するということが必要ではないかと考えております。時期的にはやはり九三年四月一日から踏み込んでいくということが国民的に大事ではないかと思っております。
  38. 岩田順介

    ○岩田委員 私もそういう踏み込んでいくことは非常に重要ではないかというふうに思いますが、なおかついわゆる適用除外になっております。種を見ますと、鉱業、運搬交通業、清掃、屠畜、こういう業種につきましては、従業員の規模を問わず、全体的に適用除外、猶予と特例を合わせますと二千七百万を超える労働者が対象になっている、こういうふうに表には出ているわけであります。その他の業種においても規模が小さいほど適用除外になっているという、こういうことになっておるわけでありますが、概して中小企業ほど時短の到来は遅くなるというようになるのではないか、今、河口さんもおっしゃいましたけれども、そういう心配をしておるわけです。  もう一つ、これは労働省が出しております労働組合の基礎調査というのがありますが、それによりますと、労働組合の組織率は年々低下をいたしておりまして、六十三年では二五%を切って二三・三%ぐらいになっているのではないかというふうに読み取れます。これも千人以上は六六・一%の組織率、それから百人から九百九十九人までが二六・八%の組織率。問題は三十人以下の組織率というのが大体六・三%程度にとどまっているわけですね。これは労働時間の短縮だけではなくて、その他の間接、直接労働条件もかなり劣悪だというふうに見ても差し支えないのではないか、こういうふうに考えるわけですね。したがって、先ほどもいろいろ御議論がありますけれども、労働組合と使用者側のいわゆるコンセンサス、経営の将来方針、基本戦略まで含めた合議が必要なことは言うまでもありませんが、おおむね中小零細の大部分は未組織だとしますと、これはやはり使用者側も大変だし、労働者側、従業員の方も代表がないということになりまして、やはり煩瑣な日常にかまけて勢い残業が多くなっていく、これは容易に想定されるわけですね。  私がお伺いしますのは、組織率といわゆる時間短縮の問題を初めとする改善の問題というのは大きな関係があるのではないか、そのことと、将来これをどういうふうにしていくのか、これはしていかなければならぬわけですけれども、お考えをお伺いしたい、こう思っています。
  39. 河口博行

    河口参考人 組織率の問題につきましては、先生の御指摘のとおり、労働組合あるいは連合にとりましても最大の課題というふうに認識をしております。もちろんこれから組織率の回復を目指していかなければなりませんが、現在時点での立場ということを申し上げれば、未組織労働者を含めて連合は代表をしている立場であって、組織しているしていないにかかわらず、同じ勤労者として対政府あるいは対経営者と交渉をしていきたいという立場に立っているということを強調しておきたいと思っております。  それで、それを現実の場に移していく場合に、労働時間とのかかわりで申し上げれば、先ほどの陳述のときに労働時間短縮促進法というようなことを申し上げましたけれども、例えば都道府県において産業業種別労使労働時間短縮について社会的に話し合えるという制度をつくっていきますと、またそこに公益関係者が参与していく、あるいは政府でいえば地方労働基準局がこれについて中心になって考えていくということになっていきますと、組織率の低い分を社会的な制度によって補っていくことが可能であるし、全勤労者を、未組織労働者の声を代弁することが可能である、このように考えております。現在ある制度で申し上げれば最低賃金制度がございますが、それは都道府県において業種別に協議が行われておりますけれども、その種に近いような制度になっていくかもしれませんが、そういったものが必要ではないかというふうに考えております。  以上です。
  40. 岩田順介

    ○岩田委員 御答弁いただきました中にも、それをカバーするものとしていろいろ方法はありましょう。  環境の問題で一つお伺いしておきたいと思いますのは、今出ました労働基準監督署の問題ですね。  これも最近指摘されておりますけれども、例えば二十年前と比べまして労働監督実施率を見てみますと、二十年前は一〇%あったものが五%ぐらいに減っている。これは一にかかって監督官、職員の減少でこういう傾向になっているわけですね。一九八〇年と一九八八年を比較いたしてみますと、労基法適用事業所というのはこの間五十万件ふえているわけですね。これぐらいふえているわけです。それから労災の適用事業所も百八十四万から二百二十七万にふえているわけですから優に五十万ですか、ふえている、こういう状況です。ところが、監督官の数は三千百七十八名から三千二百三十七名と若干の増にとどまっているわけですね。したがいまして、例えば労基法適用事業所について見ますと、監督官一人当たりの職場数というのが何と千十三から千百四十五にふえていますね。それから、労災適用事業所で見ますと五百七十九が優に七百にふえている。こういう一万の状況があるんですね。これを一体どうするかというのは我々この当委員会課題でもありますけれども、ひとつ御意見があればお聞かせを願いたい。  それと、最後の質問になりますけれども、地方の問題にもお触れになりました。業種別目標を設定するとか地方別にどういうふうに目標を設定するかということがありました。その際、いわゆる労働省の出先機関ではありませんけれども、各都道府県に労政事務所を持っていますね。これは一九五六年だったと思いますけれども、必置義務であったのがそうでなくなっております。過去は労働組合の組織化の問題等についても労働講座等をするようになっておりましたが、それがなくなった。しかし、現在でも労働組合等に対するいわゆる社会教育やその他啓蒙といういわゆる事務の内容を有しているわけでありますが、この労政事務所も行革の関係でかなり減ってはおります。しかし、時代のニーズにこたえようとする一生懸命の努力も各労政事務所では見られますね。東京の場合を見てみますと、いわゆる派遣労働に対する相談を懸命にやっておられて効果を上げられておりますが、これらの労政事務所等の職員の増員と、かかる労働行政に対する地方のかかわりですね、こういったものはやはりこれから極めて重要な要素になっていくんではないか、こういうふうに思いますけれども、御所見があればお伺いをし たいと思います。
  41. 河口博行

    河口参考人 基本的に同感でございまして、労働行政並びにいろいろな地方の基準審議会等を含めまして連携した作業が必要になってきている、改めて必要になってきているという認識に立っております。今いろいろな状況についてお話しの点につきまして十分な参考意見を申し述べるだけの素材を持っておりませんので、基本的な態度だけ申し上げて意見にかえさせていただきたいと思っております。  それから、これは御質問の内容ではございませんが、地方関連してもう一つ事例を申し上げておきますが、例えば今、青森県とか大分県等が労使あるいは県挙げて一体になって労働時間短縮等に取り組んでおられるわけです。それがある面では、例えば青森県全体として、経営者を含めて時間短縮が青森がこれから生き残っていく最も有力な道であるということで各業界挙げて、労使挙げて取り組んでおられますが、そういった中で今の地方の各労働行政の機関あるいは委員会、こういったものの役割が改めて今重要になってきているというふうに思っておりますので、余分なことでございましたがつけ足しておきたいと思っております。  以上です。
  42. 岩田順介

    ○岩田委員 ありがとうございました。
  43. 永井孝信

    ○永井委員 日本社会党・護憲共同の永井孝信でございますが、きょうは参考人の皆さんには心から感謝を申し上げたいと思います。  今までの参考人方々の御意見あるいは同僚の、各議員の質問を聞いておりまして若干気になることについてお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  まず初めに、小川参考人にお聞きするわけでありますが、小川参考人は、労働時間短縮について条件整備の時期に来ているということを言われました。企業認識はそういう意味ではかなり深まってきている。ことしの春闘でも賃上げ時短を一緒に、あるいは時短重点にということを入れると五五・八%の労使間で、企業でそういう交渉が行われておるということを言われました。非常に重要な示唆に富んだ御意見だと思うわけであります。そこで、日本産業構造として、大企業がありまして、そしてそれの系列の企業がずっと下請、孫請、たくさんございますね。その関係で、今この御意見を述べていただいた中に、非常に中小零細企業の時間短縮が進んでいないという実情についても、それぞれ三人の方々からの御意見で把握することができました。  ところで、日本独特のやり方かもしれませんけれども、ジャスト・イン・タイム方式というのがございますね。これはかってこの委員会でも私の方からかなり問題提起をしたことがございますけれども、例えば、下請企業時短にかかわる親企業の発注方式ということについて昨年め十月に中小企業庁がアンケート調査をとっています。そのアンケート調査でいきますと、この発注がしばしば変更がある、その変更に対応するために、例えば休日とか労働時間、残業、これらを含めて労使間で協議をしておりましても、その労使間で一たん決めた残業であるとか休日出勤というものを変更しなくてはならなくなったというのが八四・五%に上っているのです。これはジャスト・イン・タイム方式の親企業にとっては非常に便利のいいものでありますけれども、中小零細企業に働く者にとっては時間短縮をするにしても非常に困難な状況になっていると思うのでありますが、これについての御所見を小川参考人からひとつお伺いしたいと思います。
  44. 小川泰一

    小川参考人 私は不幸にしてジャスト・イン・タイムの細かい現場の実情を知らないものでございますので的確なお答えはできないと思いますが、私は意見陳述の中で二点申し上げております。  一つは、大企業関連企業の仕事のやり方を調整していくべきであるということを申し上げたのは、この辺を頭に置いているつもりでございます。それからもう一つは、一般論として、おのれの時間を大切にすると同時に人様の時間を大切にするという一般論を申し上げております。これはジャスト・イン・タイムだけではありませんが、自分の便利あるいは自分の余暇を楽しむために、結果として人様の時間を必要以上に食ってしまうという考え方は転換をしなくてはいけないのではないかというふうに申し上げております。  そういう範疇からまいりますと、ジャスト・イン・タイムで仮に親企業が大変効率的な資材の回転をいたしましても、結果として、親企業の資材の回転を円滑にする。ために道路を込ましたりあるいは下請企業の方の労働時間がむだに使われる、あるいは下請企業方々の休日なり残業に響くというようなことがあってはならないと思います。ただ、企業は効率性を追求するものでございますからいろいろ工夫をいたしますが、その効率性はトータルとしての効率であるという観点からぜひこれから見なければいかぬだろうというふうに思っております。  もう一つ余分なことをつけ加えますが、私が申し上げましたのは、やはり政府なり地方自治体の規制に伴うさまざまの諸手続あるいは工事の発注方式等においてもそういう問題点が見られます。これも目的とそれによって費やされる民間労働時間とのバランスをよく考えて御指導をいただきたい。余計なことではございますが、私は、そういう物の考え方でこれから労働時間の問題を社会的に広く条件整備をしていく必要があると思っております。
  45. 永井孝信

    ○永井委員 重ねてこの関係についてお伺いしたいと思うのでありますが、日経連の賃金労務管理部課長の島崎さんという方が論文を発表されていらっしゃいます。この論文を読ませていただきました。その中で、中小零細企業に人材を集める場合に就職試験をしますね。そのときに、今までと違って、応募してくる若い人たちがどういうことをまず企業の側に聞くかといいますと、有給休暇はちゃんと消化させてもらえますか、海外に福利厚生施設はあるでしょうか、こういうところまで希望が変わってきているのですね。したがって、就職決定の際には、週休二日制を重視するというものが七九・五%に上っている。あるいは東京商工会議所の調査によりますと、会社に欲しい制度として長期休暇に関心が集中している、これが八七・七%、あるいはフレックスタイム制を採用しているところを望みたいというのが四六・七%というふうに、若者の考え方も随分変わってきているわけですね。  さてそこで、最前も参考人から御意見を聞いておったわけでありますが、中小企業労働時間が長い、残業が多い、先ほど私が申し上げましたように、勤務のあり方について変更もしばしばある、そういうことから若者がそっぽを向きがちだ。じゃその若者に、どういいますか、中小企業に希望を持たせるようにしていくためには逆にそのことが解消されなくてはいけない、時間短縮をしなくてはいけない。そうなると、参考人も言われておりますように、コスト高という問題が起きてくる。だから、人手不足コスト高と時間短縮という問題は、めぐりめぐって前から三万すくみのような形になっているのが現状ではないかと思うのですね。そういう意味で、参考人が言われておりますように、時間短縮に関する条件整備の時期に来ているという認識が非常に深まったということはすばらしいことなんですね。しかし、今言われたように、大企業中小企業取引慣行見直しということがやはりここで大きな問題になってくると私は思うので、このことをさらに私は聞いていきたいと思うのです。  例えば、全国中小企業団体中央会による「平成二年中小企業労働事情実態調査結果」というものがこの島村さんの論文の中に発表されておるわけではありますが、それを引用させていただきますと、「中小企業が今後労働時間短縮を進めていく上で必要な主な環境条件としては、「取引先・顧客の協力理解が得られること」」これを四六・九%の企業が望んでいらっしゃいます。二つ目には「法律などにより強制的な営業休日が創設される こと」を望む、これが三二・九%に上っております。あるいは「受注単価・量・納期など取引条件が改善されること」、これは小川参考人が言われたことですね、これが三〇・六%に上っております。そしてさらに「同業組合地域などで時間短縮の共同歩調がとれること」、こういうふうに望んでいらっしゃる方が二九・四%いらっしゃるわけです。  こういうことについて経営者団体として、大企業だけではなくて中小零細企業に時間短縮を促進するための環境整備について、これからどのように具体的に取り組むことを考えていらっしゃるのか、ひとつ簡明にお答えいただきたいと思います。
  46. 小川泰一

    小川参考人 第一点は、大企業の方にそういった条件整備をするように理解を求めるというのが一つであろうかと思います。もう一点は、やはり企業というのは最終的には自分の力で生きていくというのが責務でございますから、中小企業に、他人に頼らずに、政府その他のさまざまな御支援もいただきながら自力で、今先生が御指摘になったような条件を満たしていく方向で頑張るという」ようなことでいろいろ施策を練っておりますが、同時に、やはりそういった条件整備には時間がかかるわけでありまして、時間、時間と言ってはこれは切りがないわけでありますが、労働法制その他については厳しい適用を覚悟はいたしておりますが、その適用については実態を見ながら漸進的にぜひひとつよろしくお願いをしたいということも強く要望しているところでございます。
  47. 永井孝信

    ○永井委員 続けて河口参考人にお聞きしたいと思うのです。  今の問題ですけれども、今同僚の議員からも御指摘がありましたように、労働組合の組織率は極めて低くなってきています。その低くなってきている未組織労働者というのは、中小零細企業が圧倒的に実態的には多いと思うのですね。そうなりますと、例えば三十六条協定に基づいて残業あるいは休日出勤を労使間で決めるといっても、労働組合はない。だから、労働基準法でいうと、従業員の過半数を代表する人との間で了解をし合って基準監督署に届けなければいかぬ、こういうことになるのですが、実際、実態的にはそのことはなかなか守られていないと思うのですね。これは私の経験からいっても、そういう労働組合のないところではなかなか守られていないと思うのです。これが河口参考人の御説明の資料の中の「労働時間分布」というところに端的に出てきているのではないかと思うのですね。例えば所定外労働時間は、上位では七十五時間、下位では五百九時間と、物すごい差がありますね。休暇の取得にいたしましても、上位のところは九六%という数字が出ておりますが、下位では一九%、このいわゆる下位というのが中小零細企業に主として占められているのではないかと思うのですが、企業の側にも環境整備に努力してもらいますけれども、労働組合連合として、これは日本の最大のナショナルセンター、組織でありますから、この連合地域の中で中小零細企業にどのようにそういう環境整備について労働運動立場から取り組みをされるのか、あるいはされるという展望を持っていらっしゃるのか。これは河口参考人が言っておられますように、一九九三年には少なくとも週四十時間制をきちっとしていきたいというその願いからいきますと、そのことが裏づけとなって運動的に反映されなければいかぬと思いますので、河口参考人からお聞きをいたしたいと思います。
  48. 河口博行

    河口参考人 まず、基本的な姿勢について申し上げたいと思いますけれども、連合は今八百万組織をしておりまして、都道府県の組織もほぼ完全にでき上がってまいりました。それで、特に来年度に向けまして一番重視しておりますのは、今先生御指摘のような中小企業及び未組織労働者を含めまして、そこにある面で全力を挙げていく。連合はある面で言えば中小企業労働者の対策に最重点で当たっていく。もう少し露骨に言えば、大きい官公庁組合とか民間の大きい組合は自前でやっていけるわけだからというぐらいの意識で取り組んでいきたいというのが基本でございます。  具体的には、労働関係で、賃金であるとかあるいは労働時間の問題も先ほど来申し上げたような制度化あるいは都道府県レベルの取り組み、今先生御指摘のような取引慣行見直しを含めました内容等につきましても、大企業労組とも連携しながらそこは全力を挙げて協力をしていくというような体制をつくっていくというようなことが必要でありましょうし、また、社会的な運動を起こしていくということが必要であると思っております。  なお、労働時間の格差の問題について抽象的に上位とか中位とか下位とかいうような表現をとりまして恐縮でございますが、傾向としては中小企業の方が制度的に時間が長いのでありますけれども、現在で申し上げれば、下位の方に分布しておりますのは必ずしも中小企業だけではございません。広く運輸、機械、金属等が比較的長い部類に属しているということで、その中には大企業はもちろんあります。中小企業は、どちらかというと、全体傾向では時間は減ってくる傾向にある。従来のように長ければ逆に入が行かなくなったという実情があるんでしょうけれども、そういったことを資料的な意味で補足、つけ加えておきます。
  49. 永井孝信

    ○永井委員 保原参考人に一問だけお尋ねしたいと思うのでありますが、法制度あり方ですね。  今言われたように、例えば残業の上限時間云々の問題も功罪それぞれあるわけですね。確かに、御指摘されておりますように、何十時間と上限を決めますとそこまでは当たり前となってしまいますし、それが低過ぎればなかなか企業としては回っていかないということもあるでしょう。だから、法定化するということは非常に難しいのでございますが、今も私が指摘しましたように、法律などによって強制的な制度をつくってもらいたいという中小零細企業なんかを中心に強い要望があるんですね。私どももやはりここまで来た以上は、ヨーロッパと同じようにするということにはなっていかぬと思うのでありますが、日本日本的に時間短縮が効果あらしめるように具体的なことについて法制化を求めていきたいと私どもは考えているんです。  そこで、年休の消化の仕方とか残業の上限の問題でもう一度お尋ねしますけれども、法的にそれはなじまないよというところは端的に言ってどういうところがございますか。
  50. 保原喜志夫

    ○保原参考人 絶対的にこれは法的規制になじまないとかなじむとかというのは、すべてのことについて多分言えないと思います。例えばイギリスでは労働時間の規制そのものがないというようなこともあります。ただ、現状では超過勤務時間、残業の時間の天井を設けるというとかなり高いところに置かなければいけないので、先ほど申し上げました理由で現状ではまだ妥当でないというか、時期尚早であろうということが言えると思います。これに対して、年休の取得の仕方については、年休の日数の増加も含めて積極的に法制度の面でも考えるべきであろうというふうに思います。  これも復習になって恐縮でございますが、雇い主に年休の調整の権限をある程度持たせる。ただ、これは労働者の権利を阻害しないようなやり方でないといけないと思いますけれども、労働者の希望を十分聞いた上で雇い主の責任で全体の調整をする。労働組合がある場合には労働組合と相談をするのが一番いい方法だと思いますけれども、それで全体の調整をして、例えば五月ぐらいから休み始めで十月ぐらいに終わるとか、あるいは場合によっては冬に休むのを希望する人はそちらの方に回ってもらうとか、その中でただ夏休みだけはみんなでとろうとか、そういうようなことで細切れ年休ではなくて、一週間、十日、場合によっては二週間というようなものを、工場の関係で工場を閉めて一斉にという場合もあり得ると思いますが、今サービス業が多くなってきまして一斉休業というのは難しいと思いますから交代で大いにとっていただく、そのような何らかの法的な 手当てがそろそろ必要な時期に来ているのではないかというふうに思います。ただ、これは労働者の権利を侵害しないように気をつけないといけないと思いますので、法技術上かなり詳細な検討をした上でないといけないというふうに考えております。  以上でございます。
  51. 永井孝信

    ○永井委員 ありがとうございました。
  52. 河上覃雄

    河上委員 公明党・国民会議河上でございます。  参考人の皆様には御多忙の折、本当に御苦労さまでございます。もうお疲れになったことと思いますが、もうしばらくでございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  私は細かい個別的な問題をお尋ねしたかったわけ。でございますが、二十分の限られた時間でありますので、時短についての基本的なお考えをお伺いさしていただきたいと思っております。  初めに、各参考人それぞれにお伺いしたいわけでありますが、六十二年の労基法の改正によりまして一週四十時間、一日八時間、この労働制の原則が定められました。しかし、この規定につきましては六十三年四月一日から当分の間は週四十六時間の法定時間と定められて、さらに中小企業運輸交通業等一部の業種につきましては六十六年、すなわち平成三年、本年に当たるわけでありますが、三月三十一日までは週四十八時間とするという猶予措置がとられたわけであります。その後、本年四月の政令改正等で週四十六時間を四十四、時間と短縮されて今日に至っているわけでありますけれども、六十三年の法改正から三年半の歳月が経過したわけであります。  その間、総実労働時間の変化を見てみますと、六十二年度が二千百二十時間、そして法改正後の六十三年度には二千百時間、前年比マイナス二十時間となって、元年には二千七十六時間、さらに平成二年では、先ほど示されておりましたように二千四十四時間と、微々たる減少傾向にあるとはいえ——政府が示しました経済運営五カ年計画の一九九二年度一千八百時間の達成、あるいは連合さん、労組の皆さんが目標といたしました一九九三年の一千八百時間の達成、これにはほど遠いのではないか、こう思っております。現実的には達成困難な状況を迎えてしまっているのではないか、私はこのように認識をしておりますけれども、今後の時短推進に当たって、このような方向で来たにもかかわらずなぜこれだけの状況にしかないのか、この原因をしっかり確認しておくことは時短推進に当たって大事な要件ではないかと思っております。  この点を踏まえて、きょうはそれぞれお立場の違うお三方に来ていただいておるわけでございますが、まず一つは、一九九三年中の達成見込みはあるのかないのか、どうお考えになるか。もう一点は、これまでの経緯を踏まえまして何がネックとなって時短推進が十分進まなかったのか、この辺についての御見解をそれぞれお伺いしたいと思います。
  53. 小川泰一

    小川参考人 ちょっと難しい御質問でございますが、私どもは主要企業労働組合企業労使交渉を眺めておると申しますか、よく注目をしている経過から見ますと、一九九三年の達成は、目標ではございますが相当困難ではないかというような感じを率直にいたしております。  それから二番目に、なぜ達成できなかったのかということでございますが、私ども、労働時間の短縮というのは社会的な合意によって進むところもございますが、企業にとっては生産性向上成果配分であることはもう間違いございません。コスト増をどうやって吸収していくかということに落ちつくわけでございまして、やはり賃金と労働時間との配分のバランスをもう少し考えていかねばならないので、少し二兎を追い過ぎているのではないかというのが第一点。もう一つは、先ほどから申し上げておりますように、時短促進要因でありながら最終的には大きなジレンマに陥らざるを得ない日本経済の拡大と逆の方向に参ります人手不足、この辺が私は最終的に相当大きなネックになるのではないか。それから三番目は、やはり日本国民の皆様の意識を少し変えていかないと、レジャーにしても大変忙しく他人の労力を消費する、あるいは大変立派な包装を望むとか、そういうところを変えていかないとなかなか進まぬのではないかと私は思っております。
  54. 河口博行

    河口参考人 まず、見通しの見込みでございますけれども、短い期間で、現在時点から九二年なりあるいは九三年という期間を見ますと、非常に厳しい状況にあることは否定できませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、八〇年代を通じまして非常に長い長い論議経過と取り組み経過をもって今日まで来ている。連合運動にいたしましても五カ年計画で今日取り組んできておるということでございますから、先行き非常に時間はないわけでありますが、やや日本的体質になりますけれども、目標に向かって駆け込んでいって実現していく、このように考えておりまして、現在ではできるという決意と展望の上に立っている。流ればその流れに入ってきたので、いかにも日本的体質でございますけれども、全体が駆け込んでいくということになろうかと思っております。  それから、何がネックかと言われますと、非常に難しい問題がございますけれども、私自身の認識で申し上げれば、ここにも少しメモしておきましたけれども、今日までの日本経済社会を初めましてあらゆる社会が、競争と効率というものを最優先して社会システムというものができ上がってきておりますし、それは先ほどの下請振興基準も含めまして微細にわたるところまでそれでシステムができ上がっておりますから、一カ所だけの変更ではなかなか動かないということが大きいと思っておりまして、そういった意味では、日本全体のシステムのリストラクチャリングと申しますか改革ということに時間短縮はなっていくというふうに思っておりまして、そういったものがほぼ具体的にでき出してきたというのが私の認識でございます。労使間でもはっきりそういった認識に立っておりますし、政府、各省庁におかれましても、国会の論議におきましても、あるいは都道府県とか地方業種、業界におきましても、そういう段階に入ってきておりますから、全体のシステムが変わる方向に入ってきた、このように考えておりまして、その面では大きく転換をしていく時期だ。変わるときというものは、世界の情勢じゃございませんけれども、一気に変わっていくものである、このように考えておりますし、それはいい方向になっていくと思っております。  以上です。
  55. 保原喜志夫

    ○保原参考人 時短の見込みにつきましては、両参考人意見と同じでありますので省略させていただきます。  なぜ時短がなかなか進まないかということでございますが、私は昭和六十二年の法改正の前後から日本全体として時短が必要であるという認識が大変高まったというふうに思っておりまして、これからもそう簡単な道ではないと思いますが、六十二年以来あるいはその前後から我が国労働時間についての議論が大変盛んになりまして、これが時短のいい方向に向かうきっかけになっているというふうに思われます。例えば私どもの法律家の仲間でも、労働時間について論文を書くというのは数年前まではほとんどなかったことでありまして、せいぜい残業の個別同意が必要かとか、それから年休は好きなときにとれるかというような議論があった程度であります。ところが最近は、出される労働関係の論文の恐らく数分の一は労働時間関係のものでありまして、法律家の間だけでもこういう関心が非常に高まっていると言うことができるかと思います。  それで、なぜ時短がなかなか進まないかということですが、技術的な話ですが、まず週休は比較的順調に進んでいると思います。それから年休の消化も必ずしも十分ではありませんが、もう少してこ入れをすればある程度進むかと思います。それで一番問題なのは、先ほどから問題になっております残業でありまして、これがなかなか減らな い。これも先ほどからいろいろな理由が言われておりますが、今そろそろある決断をすべき時期に来ているというふうに思います。それは賃金を削っても労働時間に回すかというその決断であります。  例えば、フランスの話ばかりして恐縮ですが、一九八四年に私は一年ばかりパリにおりましたが、そのときに、ちょうど労働三十九時間制が施行されて実施されたころでありますが、従来の四十時間から三十九時間に減らす場合に企業の方は賃金も四十分の一減らすということを言いまして、これが労働組合との間で大問題となりました。労働組合は、賃金が減るのであれば時短意味がない、したがって三十九時間制で従来の賃金をもらいたいということで、一九八四年以降もこの議論がずっと続いております。フランス政府は、この問題に対しまして労働条件改善機構というものを労働省の外局に設けまして、具体的に中小企業に対してどういうふうにやったら賃金を減らさないで労働時間短縮ができるかという指導を徹底的に行っておりますけれども、しかし、なかなか実効が上がらないというのが実情でありまして、外国、少なくともフランスについてはそれだけ苦労をして労働時間を短縮しているということでありますから、日本も、これは大変差しさわりのある発言ですが、賃金を削ってもとまでは言わなくても、もう一銭もふえなくてもというぐらいの、こういうことを言うとおしかりを受けるかもしれません、そのくらいの覚悟でないともう進まないと思います。  以上です。
  56. 河上覃雄

    河上委員 保原先生にもう一問お願いしたいわけですが、先ほど先生の方から、時短を推進するに当たって重要な要素が労働者の健康の問題、それから国際世論への対応、これが大事だ、こういうふうな御意見がございました。  日本労働時間は欧米諸国に比べてかなり長い。ドイツ、フランスと比較しますと五百数十時間差がある。例えば、さらに観点は別になりますが、日本とドイツの一人当たりの国民所得を比較してみますと、西ドイツでは一万二千八百八十七ドル、日本では一万二千九百十三ドル、日本が西ドイツの一・五倍働いても国民所得においては差がない、こういう現状にあるわけでありまして、これでは、先ほどもお話が出ましたように、私は、外国では生きるために働くのでしょうけれども、日本では働くために生きている、こうやゆされても仕方がない現状があるのではないか、このように認識しております。その上で、先生の方から話がございましたように、欧米諸国では失業率等が高いためにワークシェアリング等をしっかりやりながらという要因分析のお話もございましたけれども、この欧米諸国との格差、こうしたものは一体何に起因なされるのかとお考えでしょうか。この点簡潔にお願いしたいと思います。
  57. 保原喜志夫

    ○保原参考人 どうも法律屋の守備範囲をはるかに超えた大変難しい問題で、私も先生の御質問仁はお答えできないのですけれども、あえて申し上げれば、日本一つ非常に不利な点がある。それは国土が狭いということであります。国土が狭い上に山が大変多くて平野が少ない、一人当たりの面積が非常に小さいためにいろいろなものの値段にはね返ってくるということが言えるかと思います。コーヒーの値段一つとりましてもほとんどが人件費で、もう一つ人件費と並んで土地の値段、結局場所によってコーヒーの値段が違うというのはまさに土地の値段の問題であろうと思います。そういう不動産のいわば価格が外国と比べてべらぼうに高いというのが一つの原因かと思いますけれども、もう一つは、あえて言えば日本はかなり余計な仕事をしている。例えば流通機構が必要以上に複雑であるとかそういうことが言えるかと思います。ただ、経済学者の間でも、なぜドイツが生産性が高いのかということではいろいろな御意見があってまだ定説がないというふうに承っておりまして、私もはっきりお答え申し上げることはできないわけです。  ヨーロッパで、例えば自動車工場を私も随分見てまいりましたが、工場の労働日本の方がはるかに労働密度が高いという気がするのですね、素人目に見まして。したがって、現場の労働者はドイツの人が日本より余計働いているとか労働密度が高いとは必ずしも言えないような、少なくとも見た目にはそういうふうに見えます。ただ、ホワイトカラーはかなり労働密度が高いという気がします。これは我々自身も含めて、いわば勤務時間中新聞を読んだりお茶を飲むというようなことはほとんど見られないということがあって、猛烈に働く。これは土日が完全に休みであるし、バカンスが長いということに裏打ちされていると思いますけれども、ホワイトカラーのところ、オフィスの部門ではもしかしたら生産性が違うのかなという気がします。これは全くの感じだけで申し上げて恐縮でございますが、そういうことで御勘弁いただきたいと思います。
  58. 河上覃雄

    河上委員 もう時間でございますが、一点だけ小川参考人お願いをしたいと思います。  実は、これは先ほど永井先生の方からもお話が出ました中小企業時短の問題でありますけれども、ある従業員三十人の会社の社長さんとお話をいたしました。完全週休二日制をおとりになられますか、答えはできないということなのですが、以下のような点を挙げておりました。一つは、合理化に限界がある。もう一つは、一日分の賃金の保障の問題があります。それから三つ目に、親会社にコストアップを要求されると思います。四つ目に、税制の優遇措置の問題があります。五つ目に、大企業時短のしわ寄せが中小企業等にくることが懸念されます。これはコストあるいは時間の両面から。中小企業の集約的な御意見ではないか、私もこう思っておりますし、先ほど来のお話の中でもここに構造的な意味も含まれているのではないかと思っております。  中小企業我が国産業構造の中にとって非常に大切な位置にあると思っておりますが、この方々時短推進に当たって、中小の場合にはもう一つ大手さんのあり方が非常に影響してくるのではないかと私は思っておりますが、この観点から将来の中小企業時短、もちろんその中小さんが大企業さんの系列にあるものと系列下ではないもの、これは随分違ってくると思っています。そうした観点を踏まえながら、小川参考人は将来の中小企業時短をどのように考慮していけばよろしいとお考えか、ここだけお聞かせ願いたいと思います。
  59. 小川泰一

    小川参考人 なかなか一口では申し上げられませんが、先ほどから申し上げておりますように、どうしても親企業中小企業の製品に頼るというような現実があれば、これからはお互いの工夫によって、人手がなくなればそれでおしまいでございますから、親企業がリーダーシップをとりながら中小企業協力することによって双方とも適切な着地点があるのではないかというふうに私は思っております。  ただ、そうは申しましても、国際競争の場合は限界がございますので、例えば生産地点を海外に移すとかあるいは立地を変えるとか、トラスチックな工夫もこれからは中小企業に要望されてくるのではないかと思っておりますし、また、中小企業が独自のノーハウを持ち独自の魅力で人を集められるようにまで成長しないと、今後の生き残りが大変難しくなっていく世の中になるのではないかと思っておりまして、ともどもこれから勉強してまいりたいと思っております。
  60. 河上覃雄

    河上委員 どうもありがとうございました。
  61. 小沢和秋

    小沢(和)委員 参考人の皆さんには大変御苦労さんでございます。  私、日本共産党の小沢でございます。  私は、時間がごくわずかしかありませんので、河口参考人に幾つかの点をお尋ねしたいと思います。  先ほど来のお話を伺って私ある意味ではびっくりしたのです。七〇年代後半から八〇年代後半の半ばまでは時短の推移が停滞していたけれども、九〇年から九一年への取り組みによってやっと長いトンネルを抜けて千八百時間実現への展望と条 件の整備ができた、こういうふうに評価されているようでありますけれども、実際に今組合として取り組んでいるこの姿勢あるいは活動でずっと推していけば九三年には千八百時間に到達できる。こういう御判断なのでしょうか。
  62. 河口博行

    河口参考人 先ほども少しそのことについて御質問がありましたのでお答えしたとおりでございますが、現在から九三年ということでいえば極めて時間は短いわけでありますが、今日までの長い取り組み経過から申し上げれば、短い期間ではございますけれども、達成をしなければならないし、やっていきたい、やれば可能性はある、このように考えております。
  63. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、今実労働時間あるいは残業時間など統計で私たちが議論する基礎にしておるものが、実態よりはかなり低く出ているのではないかというふうに思うのです。それはサービス残業の問題であります。  私の地元の安川電機というところで大規模なサービス残業が活動家の手で摘発され、労基署の指導によって数百万円の賃金の支払いが行われたことがあります。残念ながら、そのとき労働組合は動きませんでした。  それで、労働省調査でも残業が完全に支払われているのは、六七・五%、つまり三分の二程度の職場であるというような数字もあるようでありますけれども、連合としてはサービス残業が広範にあるということを認めておられるのかどうか、それから、そういっただ働きというような、これは非人間的な行為だと私は思いますけれども、それを一掃するためにも労働組合として積極的に取り組む必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  64. 河口博行

    河口参考人 サービス残業の点について連合はどうとらまえているかということでございますけれども、直接的なサービス残業をしている例というのは全体的には少ないと思っております。それで、今の具体的な固有名詞を挙げられたところなどにつきましても基本的には相当のことがされている、もし出ているとすれば極めて例外的なことがあったかという感じておりますが、改めてチェックしてみたいと思います。  それから、いわゆる土日等にかばんの中に書類等を入れて帰っていって家で勉強したり仕事をしたりという部類をサービス残業と見るかどうかという点は、これは明らかにあるわけでございまして、この点につきましては、法律的な意味とか協約的な意味におきますれば直接的なサービス残業とは言いがたいものが多いだろうと思いますけれども、しかし、その中に含まれておりますいろいろな状況から出てくる、そこまでしなければならない状況というものにつきまして、さらに社会全体あるいは労使間で改善をしていかなければならない、このように考えております。そういった面で、ある面で今日過労死という言葉に象徴されますように、そういったものが社会全体の取り組みとして、また労使間の取り組みとして強力に進めなければならないということを申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  65. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今、過労死というお話も出たのですけれども、私は、サービス残業のようなことがもっともっと先にいくというと、その過労死というような状況になってくるんじゃないかと思うのです。  それで、この過労死という点で私一つお尋ねしたいのですけれども、国際自由労連の機関誌でこの過労死の問題が大きく取り扱われたということについて連合が抗議的な申し入れを行われたというふうに聞いておりますけれども、これはそういう過労死というような事実が日本にないという認識に基づいてのものか、私は、過労死というのもかなり広範に今日本には残念ながらある、だからその対策を急がなければならないし、労働組合にもその点でも期待をしているわけですが、連合としての見解、対策、お尋ねしたいと思います。
  66. 河口博行

    河口参考人 過労死についてあるいは特に労災等の認定に係る分野のことで連合として見解をまとめまして、先日労働省に申し入れかつ改善方を申し入れているところでございますが、あわせて、この問題につきまして非常に幅広い検討と研究が必要でございますけれども、全国的に取り上げてこの問題の解決に取り組んでいきたいということを申し添えておきたいと存じます。
  67. 小沢和秋

    小沢(和)委員 時間がないから次の質問をいたしたいのですが、私は、残業が特に問題だと思いますし、この残業を抜本的に減らすためには、先ほどから話が出ておりますように、まず職場やあるいは単組などの段階で三六協定をめぐって時間を抑えるための強力な闘いが必要だと思います。さらに、政府に対しても、大臣告示で三カ月百五十時間というような非常に緩い目標が今掲げられておりますけれども、これを厳しくする、さらにへ労働基準法そのものの中に残業の最高限度時間を厳しく盛り込んでいくというような改正がぜひ必要になるし、政府に対してもそのことを迫っていかなければならないのではないかと思いますけれども、この点お尋ねします。
  68. 河口博行

    河口参考人 基本的に同感でありますということを申し上げておきたいと思います。  まず、残業について三六協定を強化していくということは先ほども申し上げましたが、一層強化をしていきたいというふうに思っております。それから、現在、時間外規制の指針として労働省が目安時間を出しておりますが、今そのことを御指摘でございますけれども、その現行の目安時間につきまして今から連合といたしましてもさらに検討を深めて、この目安時間を減らしていくということを、現在一年間では最高四百五十時間ということで大臣告示されておりますけれども、それを例えば四百時間にするとかさらに短くするとか、こういったことが労働組合として申し入れられなければなりませんし、労使間でも協議され、政労使間でも協議されていかなければならぬ、それを都道府県単位に、または業種単位にこういったものが進められるような制度をつくり上げていきたいということを申し添えておきたいと思います。  以上です。
  69. 小沢和秋

    小沢(和)委員 もう一つ最後にお尋ねしたいと思いますけれども、私は、資本の側も今、労働時間が非常に長いということで国際的な非難を浴びておりますし、それから、国内的にも若い労働者がそういうことでは来ないというようなことで、ある程度は取り組まなければならぬだろうという覚悟はしていると思うのです。しかし、そういうような資本の姿勢に私たちが寄りかかっておったのでは、これは時短というのは、若干は進むかもしれないけれども、まあその程度以上にはならぬのじゃないか。  それで私、それこそ昔からのことを言う必要もないと思いますけれども、メーデーの起源をひもといてみても、これは八時間労働制を要求するアメリカの労働者のゼネストから始まったものでありますし、最近の例でいつでも、世界の労働時間短縮の最先頭を行っているドイツの労働者などは相当に闘っているわけですね。先ほど保原参考人労働組合の果たす役割がやはり決定的だとおっしゃいましたし、私もそういう感じがするわけであります。そういう点で、労働組合としては、いろいろな組織があるけれども、こういうみんなが一致している問題についてはそれこそ大きな構えで、場合によったらそういう足並みをそろえた実力行使なども含めて闘わないというと、本格的には前進がないのじゃないかということを私考えておりますが、その点についての見解をお尋ねして終わりたいと思います。
  70. 河口博行

    河口参考人 御意見として十分承ってまいりたいと思いますが、ある面で基本的な流れとしましては大きくそういうときに、取り組むときに来ていると思っておりますが、ある面で申し上げれば、今具体的な実践を積み上げていくことが非常に大事であると考えておりまして、その面では先端を切っていく産業なりあるいは企業なり地方なり、それぞれのところが具体的なモデルを今つくり上げて、全体がそれに一挙に到達していくということが必要であろうと思っております。その認 識の上に立って、労働組合としてしかるべき取り組みなり闘争力なりというものを発揮しなければならない場面というのは、ここ一、二年のうちには必要なときは必要な行動をとっていきたい、このように考えております。
  71. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。
  72. 高木義明

    高木委員 私は、民社党の高木義明でございます。  各参考人方々には、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。時間も限られておりますので、本来ならばそれぞれの参考人方々にお答えをいただきたいわけでありますが、均衡を欠く点もあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。  まず、小川参考人にお伺いをいたします。これはすべての参考人方々の御意見もお聞きしたいのでございますけれども、あえて経営者側という立場でお尋ねをするわけであります。  御承知のとおり、政府計画では一九九二年度中に千八百時間を達成、連合におきましては一九九三年、こういうことでありまして、政府計画からしますとあと二年の間に約二百五十時間の労働時間の短縮ということになるわけでありまして、大変厳しい、ある意味では不可能ということも言われておるわけでございます。  そういう中で、先ほどの意見陳述の中に、小川参考人におきましては、いわゆる週四十時間制の法制化については緩やかにしてほしいというふうな御意見でございました。これに対しまして、連合といたしましては、次期通常国会で法制化をしてほしい、こういう相反する御意見でございましたが、これは今後労使によっての自主的な協議の中で進展していくものと私は期待するわけでございますが、この辺の食い違いについて、非常に厳しいのではないかと思いますが、御所見があればお伺いをしておきたいと思います。
  73. 小川泰一

    小川参考人 繰り返すようでございますが、労働時間の短縮コスト増をどうやって吸収していくかということに尽きると思います。四十六時間から四十四時間になります間に三年間の猶予をいただきまして、その間何とか実態がそれに追いついたわけでございます。四十四時間は猶予措置その他を含めますと二年ということになっておりますが、労働時間がだんだん短くなればなるほど着地が困難性がより倍加するというふうに思っております。したがいまして、実態が伴って完全に労働時間短縮を法のもとでしていくためには、計画その他もございまして目標その他もございましょうが、着実にステップを踏んでいくことが適切な措置であろうかと思っております。  繰り返すようでございますが、だんだん短くなればなるほど、四十時間に近くなればなるほど同じ二時間であっても短縮するのが困難になるというような情勢をぜひひとつ御認識をいただいて、努力はいたしますけれども、よろしくお願いいたしたいと存じます。
  74. 高木義明

    高木委員 同じく小川参考人にお伺いしますけれども、中小企業時短促進については、これは大切な問題でございます。現状としましては、例えば短納期で発注をするとか、あるいは多頻度にわたって小口の納入をお願いする、こういった取引慣行一つの大きな問題にされておるわけでございます。私は、それはそれで今後ぜひ是正の方向で取り組んでいただきたいと思うわけでございますが、一部こういうものについて、中小企業時短がされやすいようにコスト増について国が何らかの配慮をする、いわゆる時短助成金の制度我が国がつくってはどうかということを私たちは考えるわけでございますが、この点について何か御所見があればお伺いをしておきたいと思います。
  75. 小川泰一

    小川参考人 お国からお金をちょうだいするということについては、これは大変結構なことでございますが、企業の体質という観点から見ますともろ刃の剣でございまして、いつまでもお金がいただけるわけじゃございませんので、その間に体力をつけて二本の足で自分で立てるという方向で御支援をいただくならば結構だと私は思います。例えば、設備の近代化であるとか、あるいは従業員が集まりやすいような厚生設備に対する御支援であるとか、そういう方向で、企業の体質強化で、いずれはそういったものを御辞退しながら自分の足で立てるという方向に御助成を願えればよろしいかと思いますが、直接的な御支援は中小企業のためになるのかどうか、それは個別個別がありましょうが、いささか疑問な点があるのじゃないかと私は思っております。
  76. 高木義明

    高木委員 今度は連合立場からお尋ねをしておきたいと思います。  我が国がいわゆる先進諸外国に比べまして労働時間が長いという大きな要因の中には、所定外労働時間の問題もさることながら、一つには週休日数が少ない、それから二つ目には年次有給休暇の取得日数が少ない、これが長時間労働の大きな要因ではないかな、こういうふうに私は考えておるわけでございますけれども、この点について働く立場から何とか解決に向けて取り組むべきだと思っておりますが、取り組み方針なりがありましたらお伺いをいたしたいと思います。
  77. 河口博行

    河口参考人 同感でございますが、取り組みに当たりましては、先ほども申し述べましたように、労使間で取り組む問題、対企業と取り組む問題、対政府に要請し、また国会お願いすべき事項、地方で取り組むべきこと、それから国民的に問題提起をし、消費者を含めて御協力お願いしたいこと、こういった全分野で取り組んでいかなければならないと思っております。  今の問題は、時間外労働の問題、年休の問題、週休日の問題、それがすべてそういったことにかかわっていきますので、そういったことを対企業、対政府、対県あるいは対消費者等を含めてアピールをしていく運動を、この秋から来年春というものが決定的に大事であると思っておりますが、そういった意味で九一年から九二年というものは日本労働時間の短縮にとって決定的な大事な時期である、このように申し上げ、それを強力に進めてまいりたいということを申し添えまして意見にかえさせていただきます。
  78. 高木義明

    高木委員 時短について考えるときに、どうしてもこの問題でも国際協調というのが大きな課題ではないかと私は思っております。したがいまして、今日まで国際競争力というのがよく経済界で出てきた言葉でございますが、労働時間の短縮の問題は諸外国とも十分な連携をとる必要があると思っておりますが、連合としてそういう国際関係の協調についての何か取り組みがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  79. 河口博行

    河口参考人 広い意味で国際協調をしていきたい。具体的には、国際自由労連なり各産業別労働組合のレベルでいろいろな討議を行っておりまして、また、労働時間につきましても国際的な水準というものが当然ございますから、当然欧米から日本労働時間についても指摘を受けておるところでございますから、国際的な公正労働基準という考え方で、日本は現在の西ドイツ、フランス等までいかないまでも、少なくとも当面アメリカの労働時間なりイギリスの労働時間のところには迫っていくということが国際的協調の基本であるというふうに考えております。それでなければ日本がいろいろな面でまた国際的にも孤立していく、このように考えておりますので、そういった視点で取り組んでまいりたいと思います。  以上です。
  80. 高木義明

    高木委員 ありがとうございました。
  81. 川崎寛治

    川崎委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る十月二日水曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会