○
河口参考人 御
紹介いただきました
日本労働組合総
連合の
河口でございます。よろしく
お願いいたします。
本日このような
機会を与えていただきましたことを心より
御礼を申し上げます。話の内容につきまして
レジュメ風に
資料をまとめておきましたので、御参照いただければ幸いでございます。
まず最初に、現在の
日本の
労働時間の現況についての
認識を申し上げさせていただきたいと存じます。
三ページのところに
労働省が出しております
日本の総実
労働時間の推移の図がございますけれども、この図をごらんになってわかりますように、六〇年代から七〇年代初頭まで時間
短縮が進んで、オイルショックとともに七〇年代後半から八〇年代前半は停滞した時期でありまして、現在は再び時間
短縮に
時代が流れ出しておる、こういうことでございます。そこで、その面では、停滞した時期というのは
経営者も
労働組合もある面では
雇用あるいは
賃金引き上げを重視してやってきたということになりましょうが、八〇年代の後半から九〇年代に入りまして
労働力不足を背景にしな
がら時間重視に変わってきて、今一気に取り戻す時期に入っている、このよ
一つに
認識しております。
それから、その次の四ページをあけていただきたいのですが、今、
日本の
労働時間で非常に私ども注視しておりますのは、表としては余り強調しておりませんが、内部的に重視しておりますことは、欧米との
労働時間の
格差が大きいということは既に
国民的な常識になっておりますが、
国内における
産業間あるいは
業種間格差が非常に大きいということ、異常に
拡大しているということを御注目いただきたいと思うわけです。
表の一表にございますように、
年間総
実働時間の最上位にありますのは、これは
労働組合の名前で申しますと
情報通信労連でございまして、
NTT及び系列の会社を入れましても
実働千八百四十六時間でございまして、
NTTだけでいえば千八百時間を
実働で割っております。それから、
下位のところは
運輸関係でございまして、二千五百四十時間。
連合に入っている
組合は比較的大きい
組合、中堅の
組合でございますけれども、それでも二千五百四十時間ありまして、上と下との差では七百時間近い差があるということでございます。ヨーロッパと、西ドイツと五百時間違うといいますけれども、
国内で
上下差をいうとこれだけの差がある。さらに、ついででございますから比較的
下位のところを申し上げますと、自動車、電機、
機械産業、こういった現在の輸出を主導している
産業でございまして、ある面でいえば豊かさを稼ぎ出している
産業というふうに
運輸も含めて言えるのかもしれませんが、これだけの
格差があるということは御
認識をいただきたいと思います。
それから、短期的なことでございますけれども、九〇年から九一年は
日本の時間
短縮にとっては
画期町な年であったと思いますし、ことしから来年にかけてもそうであるというふうに思っております。そのような面では、多少オーバーかもわかりませんが、千八百実
労働時間へ向けての展望というものが見えてきた、あるいはそのための
条件整備ができてきたというふうに積極的に見ております。その面では、十数年にわたった長いトンネルを抜けだというのが実感でございます。
そのまず第一点は、
労使ともに
労働時間を
賃上げと
同等の力で取り組むということであります。当たり前のことでありますが、
労働組合にとって
同等の力で取り組むということは初めてのことでございます。そういった
意味で、
民間及び
官公庁ともに非常に
成果の出た年であります。
二番目に、
政府と
国会、今日までは
社会労働委員会になりますが、
国会が
政策、
制度改善に非常に具体的に
取り組み始められた。
基準法の
政令改正も行われると同時に、
通産関連の
下請振興基準の
改正も行われる。さらには、
中小企業労働力確保法が成立をされる。あるいは、少し間接的になりますが
育児休業法が成立するというふうに、極めて具体的に
政策が進み出したということであります。
それから、
社会的にも
機運が出てきておりまして、昨年
衆参両院で
ゆとり決議を行っていただいた以降、現在三千二百十五の
自治体のうち千以上の
自治体が
ゆとり宣言をしておりまして、ただ
宣言だけではなくて、これの
施策化へ今一気に動き始めているところが現状でありまして、非常に雰囲気ができておりますということを申し上げておきたいと思います。
三番目に、これからの
対策等についてでございますけれども、
政府目標でいえば九二年が千八百
実働時間への
目標年度でございますけれども、
連合は一年おくれの、少しずらして九三年千八百時間
実現ということを掲げておりますが、中にはこれは厳しいのではないかという声もないことはございませんけれども、全体的には長い長い経過に立っておりますから、この
目標を崩さない、九三年に千八百時間を
実現する。そのためにことしは二千時間を切っていく。現在
毎勤統計でいえば二千四十四時間でございますから、五十時間程度
短縮して千九百時間台に入れていく。それから九二年度は、来年は千九百時間台を割る。そして最終の九三年に千八百時間を
実現する。大変厳しい
目標になりますけれども、それはぜひやっていきたい。
制度的にも、ことしの
人事院勧告で、
官公庁につきましては九二年の早い時期に
週休二日制を
実施すべきもの、こういう
勧告がなされておりますが、
連合としては、早い時期というのは四月というふうに
理解をしてぜひその
実施を求めていきたいと考えております。
官公庁が
週休二日制に入る以上、
民間もそれに余りおくれてはいけないという基本的な
考え方を持っておりまして、したがいまして、
民間につきましては全
民間について九三年四月より週四十時間制に移行する、そのために来年の
通常国会で
労働基準法のこの時間の
部分に関してはぜひ
改正を
お願いしたいというふうに考えております。
それから、これが基本的な
目標でございますが、九一年から九二年に向けての
重点的な
課題として五点ぐらい挙げて考えております。
それで、一点は、
基準法の
改正そのものでございますが、あわせて
労働時間の
短縮を促進していく
仮称促進法、あるいは
労働省等では
適正化というような用語を用いでございますが、現在の
制度だけではなくて、
産業別、
業種別、そして
都道府県別に
目標設定して、
社会的に休日なりあるいは時間
外労働なりを規制していくといいますか、そういう
システムを
都道府県ごとに
業種別につくっていくということが必要であるというふうに考えておりまして、そういったものもぜひ来年の
通常国会で法案を御検討いただきたいということでございます。それから、あわせまして、
国民の
祝日法についての
改正でございますが、昔から言っておりますが、
メーデー、五月一日の
祝日化ということについて強く要望をしているところであります。
こういった形で、
労働時間
関係の
関連三法をぜひ
通常国会で
実現を目指していくということが基本的な態度です。
それからその次に、
中小企業の
労働時間の
短縮については、これは最も重要な
部分で、事実上
中小企業のところにもう焦点が移ってきたというふうに思っておりますが、実効ある
政策を推進していく。法律はできたけれどもそれが効果的に使われていないということでは
意味をなしませんので、
中小企業労働力確保法を初め
中小企業政策を徹底的に生かしていくということが必要であると思っております。また、時間
短縮の
困難職種と言われております
看護婦、
トラック運輸あるいは
建設、情報処理、こういったような
困難職種につきましても、各
産業の
労使が取り組むことはもとよりでございますが、
政府の
関係省庁が積極的に取り組んでいく。例えば
運輸であれば
運輸省、
建設関係であれば
建設省そのものが既に
積極的姿勢に変わっておられますだけに
具体化にかかっていくことが大事ではないか、このように考えております。
それから、網羅的に申し上げて恐縮ですが、
学校五日制についてもそろそろ
実施計画の
明確化と
社会的な
協力が必要であるということを申し上げておきたいと思います。
その面で、これまた
資料を使って恐縮でございますが、五ページの
資料を参照していただきたいのですが、最近、
学校五日制についての各
新聞社のいろいろな
世論調査が行われておりますが、いずれも非常に前向きでございます。これは
静岡県で三つのところで
意識調査をしたものでございますが、
静岡県の
教職員組合が
地域教育懇談会を日常やっているところの
父母を
対象に行いますと、
賛成が六〇%を超える、あるいは文部省がいわゆる
実験校を指定をしてやっているところの
父母を
対象にいたしましても六〇%からの
賛成が得られる、こういうことでございます。しかし、右の図は
静岡県の
労働組合がつくっております
教育研究所が無作為で
父母を
対象にした
調査でございますが、これによりますと反対が比較的多い、こういうことでございますけれども、ということは、
教育委員会にいたしましても
教組にいたしましても、
社会全体が積極的に取り組んでいきますと学
校五日制については急速に進んでいくという傾向が出ておりますので、
社会的に積極的に取り組んでいくことが必要である、このように考えております。
その
意味で、
学校五日
制推進協議会、
仮称でございますが、そういったものを、
教育委員会やPTAだけではなくて、
地域の
父母あるいはいろいろな代表の方が参加してつくっていくことが必要ではないか、このように考えております。
それから、あわせまして、太陽と緑の週というふうに五月の
ゴールデンウイークを
労働組合はそういうふうに呼んでおりますけれども、そのときの
メーデーの日を
学校を休日化していく
運動というものが現在起こっておりまして、
大分等では既に具体的に検討に入っておりますが、当面としては、
学校を振りかえていって五月の
ゴールデンウイーク全体を連休にしていく、こういう
取り組みを進めております。そういったことにつきましても御
理解を賜りたいと思っております。
それから、
社会に対するいろいろな
取り組みでございますけれども、既に国にも
ゆとり推進本部というものを
連合は求めておりますが、
都道府県においてもこの種のものを積極的に求めていきたい。特に、
地方におきまして
労働関係予算というのは全
予算の大体一%ぐらいだと思いますけれども、その面では、
週休二日
制時代を迎えて
地域社会における
関連設備とかあるいは
関連施策というものを充実させていく
意味におきましても、
地方で積極的にそういった
予算拡大というものが必要であるというふうに考えております。同時に、
ゆとり対策本部で官民含めて参加して
運動を推進していくということが必要であると思っておりますが、当面、
予算枠の
拡大だけではなくて、金が足らなければ
時短宝くじというようなものを自治省が発行されて、それを
施策の財源の
一つにしていくのも
一つの材料であるというふうに考えております。また同時に、
社会的なアピールをする
意味も含めて申し上げました。
最後に、世の中に提言する
運動として申し上げたいことは、やはり
社会全体の
取り組み、
意識を変えていくために、
ノー残業デーが現在急速に進みつつありますが、少なくとも週一回の
ノー残業デーと、そしてできれば月一回の
社会の休日、
正月並みの休み方ということが必要である、環境的にもしなければならない段階に来ているというふうに思っておりまして、そういったものが必要ではないか、同時に、行き過ぎた
サービスの是正ということもまた必要ではないか、このように考えております。
労働時間の
短縮の
進展とともに自由時間の
拡大ということになりますが、そういった面でリゾートということが問題になってきますが、そのときに——今日のいわゆるリゾートというのは年収二千万以上でないと使えないようなリゾートになっているかと思いますけれども、そういった
意味で、過疎の農村あるいは漁村と連携したリゾートというものを考えていくときに来ているというふうに考えておりまして、こういった
施策もこれから必要であるというように考えております。
終わりに、時間
短縮というのは、単に
労使間の問題や
労働条件の
改善だけではなく、世の中全体の改革を引き出していくというふうに考えておりますので、当
委員会が積極的にリードされますことを
お願い申し上げまして、私の方の報告にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)