○不破哲三君 私は、
日本共産党を代表して、海部首相に
質問いたします。
まず、
証券スキャンダルの問題です。
この
事件の深刻さ、重大さは、何よりもまず、それが
個々の
企業にとどまらず、
証券業界を中心に、多くの部門の多数の
企業が関係した構造的な腐敗
事件だというところにあります。だからこそ、事実が明らかになるとともに
国民の怒りと批判が噴き出し、国際的にも
日本の経済と
政治の信頼性が広く問われているのであります。この腐敗
事件の全貌を解明し、その
社会的、
政治的な
責任を明らかにすることに、この
国会が
国民に負っている
最大の責務があると言っても決して言い過ぎではありません。
この点で、
総理に第一に求めたいのは、全貌解明への徹底した努力であります。
問題の
損失補てんについて、十七の
証券会社から一応の
リストが公表されましたが、内容は、九〇年三月までと時期を限っている上、元本一億円未満の分は省かれています。また、その他の
証券会社でも少なからぬ
損失補てんがあると
指摘されています。
補てん先の
リストだけでなく、
補てんがどのような仕組みによって行われてきたかの解明も重要です。こうした点から見るならば、十七社の自主的な発表をもって事実の解明が終わったとすることはできません。証人喚問を含む
国会での徹底解明、
大蔵省が把握している事実の全面公表など、
事態の本格的な解明に向かっての
総理の
見解と態度を問うものであります。(
拍手)
第二は、
証券スキャンダルに対する
政府、特に
大蔵省のかかわりの問題です。
野村証券の田淵前社長は、
損失補てんについて、
大蔵省の承認を得てやったと言明しました。後であいまいな釈明などもありましたが、仮に事後
報告にもせよ、
大蔵省が事実を知りながら黙認していたとしたら、事は重大であります。
証券業界が
特定の相手に対して
損失補てんをしていることを
大蔵省はいつ知ったのか、またそれにどう対応してきたのか。
損失補てんは、不公正
取引の代表的なものとして
証券取引法が明文で
禁止している不法行為です。その違法性を
政府がどう認識してきたのか、明確な
答弁を求めます。(
拍手)
大蔵省証券局が四大
証券の社長会と毎月定期の会合を持ってきたことは、三年前の衆院
予算委員会で当の
証券局長自身が認めたことでした。それほど密接な関係のある
証券業界で、大
企業に対する
損失補てんが大
規模かつ系統的に行われてきたのです。この不公正
取引は、
大蔵省も承知の上で実行されてきたというのが真相ではありませんか。
大蔵省がそうした不公正
取引の
世界に首まで浸り込んでいたからこそ、
大蔵大臣のおひざ元で
秘書が
銀行絡みの経済犯罪に関与するといった、容易には信じられない
不祥事まで起こったのではありませんか。その
大蔵大臣と大蔵当局の
責任問題を
総理が過去形で語り、
解決済みであるかのように扱ったことは、理解に苦しむところであります。ここに今
国会が解明すべき
最大の問題の一つがあることを
指摘し、
総理の
責任ある
答弁を求めるものであります。(
拍手)
第三に、
証券スキャンダルは、
土地投機、株投機を膨れ上がらせた、いわゆる
バブル経済の落とし子であります。
バブル経済は、大
企業にはぬれ手でアワの大もうけの舞台を提供しましたが、
国民にとっては多くの経済的な苦しみのもとになりました。実際、それは大都市を中心に全国の地価の狂乱的な暴騰を引き起こし、
国民の住宅難を極端に深刻なものとしました。史上最低水準への金利引き下げで
国民が失った預貯金金利は、三十兆円を超えると計算されています。さらに、一億総財テク時代とあおられる中で、多くの
国民が株式投資に引き込まれましたが、大
企業に特権を与えた
損失補てんの体制は、まさにこういう
一般投資家の犠牲の上に立ったものでした。
バブル経済は、
日本経済の避けられない局面ではなく、
政府と財界が
協力してつくり出したものでした。その引き金となった公定歩合の強引な連続的引き下げ、不公正
取引の
最大の足場となった
営業特金制度の創設、NTT株の売り出しによる財テクのあおり立てなど、
バブル経済の枠組みは、まさに
政府自身が政策的につくり上げたものではありませんか。その破綻が空前の
証券スキャンダルとなってさらけ出された今日、
政府は
バブル経済を生み出した
政治的
責任を明確にすべきであります。(
拍手)
第四に、歴代の
自民党政府は、
証券業界の中心人物に
政府のいわば政策顧問といった地位を与えてきました。今回の
事件の主役となった
野村証券を例にとっても、田淵前会長は
消費税導入の際の
政府税調を初め多くの審議会の委員を歴任してきました。野村総研の中川前社長は、
行政改革推進審議会で規制緩和分科会の
責任者となり、
企業活動をより野放しにする体制づくりに活躍しました。
企業の
利益のためには違法行為も平気という人々が
日本の経済政策を左右する重要ポストを占める、こうした
事態がまかり通ってきたのも、
自民党政府と財界、特に
証券業界との癒着の深さを示すものです。
国民に背を向けた
政府と財界の異常な結びつきを、この機会にきっぱりと清算すべきではありませんか。
総理の
見解を求めます。(
拍手)
総理、
政府のかかわりを含め、
事件の全貌を解明して初めて、
再発防止策も実際に生きた力を持つ内容を持って立てることができます。私たちは、そのためにこの
国会であらゆる努力を尽くす決意であります。
この
事件を通じても痛感されたことですが、私は、民活と行革を看板にした八〇年代の
政治が、大
企業と軍事費を優遇する一方、
国民生活の諸問題を冷遇してきたことについて、
総理に率直な反省を求めたいと思います。
雲仙対策の問題でもそのことははっきりあらわれています。
雲仙では住民の避難が始まって既に三カ月近くが経過しました。私は、火砕流で亡くなられた
皆さんに心からの哀悼の意を表するとともに、極めて厳しい条件の中で
災害に立ち向かわれている住民の
皆さんにお見舞いを申し上げるものです。
被災地の現状には多くの
国民が深い関心を寄せていますが、この火山
災害に対する
政府の
災害対策の立ちおくれは余りにもひどいものです。先日のテレビで島原市長が、現状を訴えながら、いまだに国から一円の補助金も出ていないと述べたことは、全国に大きな衝撃を与えました。突発的な
災害には
予備費を緊急に充てるのが当然ですが、
政府はまだ
予備費の支出に踏み切っていません。
総理が
対策実施中として挙げた二十一の分野のどれを追跡
調査しても、財源の不足が壁となって、現地の切実な要求の実現が阻まれているのが偽らざる実情であります。この
状況は、避難後半月で十一億円の
予備費支出を決めた伊豆大島噴火の先例と比べても全く異常なものであります。また、激甚
災害法の正式な指定は行われておらず、活動火山法の適用も部分的です。
こうした立ちおくれの
原因はどこにあるのか。
大蔵省の担当者は、私たちの
調査に対し、
予備費はほとんど湾岸戦争関係で
使用し、残額が六百八十億円しかないという事実を述べました。
総理、これが
政府の
雲仙対策の実情なのでしょうか。そうでないというのなら、
雲仙対策に真剣な態度で臨むという
政府の意思を、
予備費の緊急の支出を初め、十分な財政的な裏づけをもって明らかにすべきではありませんか。(
拍手)
日本は、
地球の陸地面積の〇・三%以下という狭い列島に、
世界の活火山の一割が集中しているという有数の火山国です。長期的な問題としては、その
日本での火山
対策の根本的なおくれが問題にされなければなりません。八十三の活火山のうち、気象庁が
地震計での常時
観測をしているのは十九火山、精密
観測の体制はそのうち四火山だけ、それ以外の火山は
地震計も置かず、十年に一度の巡回検診に頼るという貧弱な体制です。
この
状況なのに、気象庁の火山
対策の新規施設
整備費は、八〇年代の初めにはそれでも年間一億数千万円あったものが、現在の二千万円台にまで大幅に削られてきました。噴火は、八三年の三宅島、八六年の大島、八八年の十勝岳と相次ぎましたが、臨調行革の大なたは情け容赦なく振るわれたのであります。これを根本的に立て直し、
災害対策の面でも、
観測体制の面でも、火山国にふさわしい体制をつくることは、
雲仙の被災地の緊急の
要請にこたえると同時に、
国民的な安全を保障する急務であります。
総理の積極的な対応を求めるものであります。(
拍手)
次に、
国際貢献の問題に進みたいと思います。
世界では、軍事ブロックの対抗というこれまでの体制に大きな変化が起こり、ワルシャワ条約機構など東側の軍事ブロックは解体に至りました。
世界の平和を追求する立場に立つならば、これを軍事ブロックの体制全体をなくす転機とするように力を注ぐのが当然であります。そして、核兵器廃絶を中心に軍縮を促進しつつ、
世界と
日本の経済力を貧困問題、
環境問題などの解決に役立てる努力を尽くすべきであります。ここにこそ
日本の
憲法の平和原則を踏まえた
国際貢献の大道があるのではありませんか。(
拍手)
世界には
日本が貢献を求められている多くの重要問題があります。例えば、
世界子供白書は、毎週二十五万人以上の幼い子供が、簡単に防げる病気や栄養不良で命を落としているという事実を、現在の
最大の罪として挙げています。この点で、
総理が出席した昨年九月の子供のための
世界サミットは、二〇〇〇年までに子供の生存、
保護、発達のために達成すべき主要目標とそれをやり遂げる行動計画を決めました。それに必要な資金は、向こう十年間、年間二百億ドルずつとされています。これを湾岸戦争での
日本の戦費負担百十億ドルと比べるなら、
日本がこうした諸問題の解決に本気で取り組んだときに、どれだけ大きな国際的イニシアチブが発揮され、どれだけ大きな
世界の共感が得られるか、理解されると思います。私は、
日本の経済力を子供の健康と生命の
保護、貧困問題、
環境問題などのために、最優先で役立てることを強く提唱するものです。
総理の
見解を伺いたいと思います。(
拍手)
人的な貢献の面でも、
日本は
憲法の平和原則を持った国として、軍事活動とは厳密に一線を画しつつ、医療、教育、
災害救助、
環境などの分野でこそ積極的な対応をすべきであります。これらの分野では、
日本の努力がまだまだ不足しており、その体制も十分でない現状、これを正して、思い切った拡充が必要であります。しかし、国際緊急援助活動に
自衛隊を
参加させるなど、これを殊さらに軍事活動と結びつける計画は、平和的な活動として進めるべき分野に本来の趣旨に反する
状況をつくり出すもので、同意することはできません。
軍縮の分野でも、核保有の大国が
交渉するその枠内で、その後を追うだけにとどまるべきではありません。核兵器廃絶の
課題に
世界政治の緊急の中心問題として取り組み、あらゆる情勢の中でそれに接近し、実現する努力を一貫して払うことは、被爆国
日本が独自に担うべき重大な
課題であります。
自民党は、従来、通常兵器が同時に廃絶されない限り、核兵器廃絶には賛成できないという態度をとってきました。この
課題を問題にするとき、必ず究極的という形容詞をつけるのはそのためですが、
総理もこの立場を繰り返しました。被爆
国民の願いを代表するには、こうした棚上げ論を乗り越えての努力が必要であります。
また、
総理は、経済
協力の実施に当たって、武器の輸出入を含むその国の動向に十分な注意を払うという態度が
サミットで評価されたと述べました。この問題に真剣に取り組むなら、湾岸戦争の教訓からいっても、当然、武器の輸出国は経済援助の対象から外すというきっぱりした態度をとるべきであります。軍縮問題でのこうした態度が、そしてその努力が、
世界平和への直接の重要な貢献をなすことは疑いありません。
総理の
見解をただすものであります。(
拍手)
今、
政府が
国際貢献と言って提起しているのは、全く反対の道であります。すなわち、
自衛隊の海外派遣を焦点に、
憲法の平和原則の壁をいかにして破って軍事的な海外活動に踏み出すか、ここに
日本の
国際貢献の
最大の
課題があるとする立場です。これは
世界情勢の転換の時期に、
日本の進路を誤るものと言わなければなりません。
法案はまだ公表されていませんが、
平和維持軍を含む
国連平和維持活動に
自衛隊を部隊として
参加させることが骨組みになっていると聞きます。
そこで、幾つかの基本点について伺いたい。
第一、
自衛隊が違憲か合憲かという問題では、私たちとあなた方の間に根本的な意見の違いがあります。しかし、現
憲法のもとで
自衛隊の海外での軍事活動が認められないことは、従来の
国会答弁に照らしても大局の一致があったはずであります。
PKOとはほかならぬ海外での軍事活動を基本とするものですが、
政府は従来みずから認めてきた立場も
憲法解釈も投げ捨て、
自衛隊の海外での軍事活動に踏み切るつもりなのですか。これが第一点であります。
第二、
政府は
PKOへの
参加にいろいろ条件をつけて矛盾を取り繕おうとしていますが、そのこと自体が新たな矛盾を生む結果となっています。昨年十月、国連事務総長は、
PKOの訓練計画のガイドラインとして平和
維持活動の訓練マニュアルを作成し、加盟国に送付しました。それによれば、
PKOに
参加した部隊は、指揮系統の問題でも、
武力行使の問題でも、自衛の
概念についても統一した規定と規律のもとに置かれます。幾ら
政府が独自の
参加条件を決めても、
PKOの統一的な規定とは別個の条件、例えば
状況が変化したら撤退するといった条件で制約された異質の部隊がこれに
参加する余地はないのであります。
政府は、事務総長名の
さきの文書を含め、
PKOのこういう
実態を承知の上であれこれの
参加条件を問題にしているのですか。それとも、
国連協力の名で
自衛隊海外派遣のための法体制さえできればよいというのが真意なのですか。明確に伺いたいと思います。(
拍手)
第三、さらに重大なことは、
政府が
協力の対象を国連の
PKOに限定せず、その他の国際
機関への
協力など、
自衛隊の海外派遣により広い道を開こうとしていることです。昨年の
国連平和協力法案でも、同じ論法で多
国籍軍への軍事
協力が問題にされました。
国連協力を看板にしながら、なぜ
協力の対象を国連に限らないのか。ここで言う「その他の国際
機関」という範囲にはどのような限定があるのか。具体的な
答弁を求めます。
政府の
法案づくりは、
憲法との関連でも、当の国連との関係でも無理に無理を重ねたもので、
自民党内の意思統一にもいまだ成功していないように聞いています。にもかかわらず、
政府がこの
国会で是が非でもこの
法案に日の目を見させようとしているのはなぜか。私は、
世界の紛争地域での
自衛隊の軍事活動を求める
アメリカの戦略的思惑がこの問題の根底に何よりも強く働いていることを、特に昨年来の日米間
交渉の経過に照らして痛感せざるを得ません。
総理、日米軍事同盟やそれに基づく
海外派兵の計画などにいつまでも固執する態度では、軍事同盟の解体が
世界的な
課題となっているこの時代に対応することはできません。激動する
世界情勢は、この古い枠組みの打破、軍事同盟のぎずなに縛られない自主独立の道への転換をこそ求めているのであります。(
拍手)
最後に、小
選挙区制の問題です。
総理は、
自民党の
選挙制度改革案を、
政治に民意を的確に反映できるシステムと呼びました。これほど無
責任な偽りの言葉はないでしょう。四割台の得票で八割の議席を保障する
選挙制度のどこに民意の的確な反映があるでしょうか。日米安保と大
企業の
利益を最優先させてきた
自民党政治の古い枠組みが、あらゆる面で再
検討を迫られている今日ですが、
選挙制度をつくりかえて、その
自民党に多数議席を保障し、
自民党政治の永続化を図る、また、いわゆる海外筋からの
要請にできるだけ機敏にこたえる、ここに小
選挙区制の
最大のねらいがあることは明白ではありませんか。
総理、
国民主権の立場に立つならば、
選挙制度のよしあしをはかる
最大の基準は、
国民の意思が
国会の構成にどれだけ正確に反映されるかに置くべきであります。
総理はこの基本問題についてどのような
見解をお持ちですか。民意の的確な反映を重視するというのなら、まず自分の提案をその基準に照らして
検討すべきであります。四割台の得票で八割の議席というのは、前回の総
選挙結果に基づく多くの試算が一致して示していることですが、
総理は、こうした結果をもたらす
選挙制度が民意の的確な反映を保障するシステムだと本気で
考えているのでしょうか。
小
選挙区制の理由づけとして
総理が持ち出した
最大の議論は、複数の候補者を立てると政策不在の
選挙になるということでした。しかし、これは
自民党の
選挙戦のやり方にかかわる苦情にすぎません。それがまずいというのなら、
自民党自身が総裁の
責任で正すべきであって、その是正方を
選挙制度に求めるなどは全く筋違いの話であります。(
拍手)しかも、複数立候補は、地方
選挙ではどの党も共通してやっていることであり、それがすべて政策不在だというのは、政党
政治と有権者の全体をばかにした話ではありませんか。民意の的確な反映を問題にするなら、緊急かつ最優先に実施すべきは、法律にも明記され、
国会でも決議した定数の抜本的是正であります。
政府・
自民党はこの定数是正をなぜ回避するのか、
国民の前で納得のいく
答弁を求めるものであります。(
拍手)
どの党でも、あるべき
選挙制度を探求する権利を持つのは当然であります。しかし、この問題については、定数是正を実行した上で総
選挙で
国民の判断を求め、次の段階で
国会がよりよい
選挙制度の議論に取り組む、これが民主的な筋道ではありませんか。
政府の小
選挙区制導入計画は、
自民党の党利党略を最高の指針に押し立てた
日本の民主主義への正面からの挑戦であります。民主主義の
政治制度と
国民の自由を将来にわたって守り、発展させることは、戦前戦後六十九年の歴史に裏づけられた
日本共産党の確固とした信条であります。
私は、この立場から、反民主的な小
選挙区制導入の計画とその
法案を撤回することを
総理に厳しく要求し、
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣海部俊樹君登壇〕