○
戸田菊雄君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表し、
海部総理の
所信表明に対し、質問をいたします。
私は、質問に先立って、昨年暮れ近くに
噴火活動を再開し、本年六月に四十一名もの死者・
行方不明者を出し、いまだに一万一千人もの住民の皆さんが
避難生活を余儀なくされております。そうした被災者の皆さんに衷心よりお見舞いを申し上げます。
その要請される対策の詳細につきましては、既に我が党の
田邊委員長が触れられましたので重複を避けますが、しかし、昨日の総理の答弁は
現地被災者の要望にこたえておりません。
生活補償のための施策が欠落いたしております。特別な
立法措置を講じることが必要だと考えますが、総理の温情あふれる、かつ
政治的決断を求めます。お答えをいただきたいと存じます。
ところで、現在、日本での活火山は八十三カ所、そのうち気象庁は雲仙岳を含めて十九カ所で常時観測を行い、警戒を続けております。その
観測要員は全国で六十名、地震計、
観測機器等の使用は大
部分リースで、
年間予算はわずかに二億円程度、各大学での研究費を含めても微々たるものであります。雲仙における
火山予知・
観測体制が極端に脆弱に過ぎるということを指摘をせざるを得ません。こうした自然の災害を未然に防ぐためには、
基礎研究を初め、予知・
観測体制を抜本的に強化する必要があると考えますが、総理のお考えを承りたいと存じます。(拍手)
それでは、初めに金融・
証券不祥事についてお伺いをいたします。
今
臨時国会は、
証券国会とも形容されておりますように、
証券不祥事の
徹底的究明、
再発防止体制の整備が最優先の課題となっております。銀行の
不正融資、架空預金問題など次々と明らかになっている
金融不祥事と考え合わせると、
バブル経済の中でバブルの両輪と言われる銀行、証券は言うに及ばず、特定の企業や個人が土地や証券にかかわるやみの取引にいかに深く手を染めていたか、その実態が露呈しているのであります。
リクルート事件に引き続いて、土地や株の高騰に象徴される
バブル経済のもとで、日本全体が
金まみれになっていたその異常さが、バブルがはじけると同時に明らかになっているのであります。
日本経済の強さの裏返しとしての我が国の特異な
経済構造が諸外国からも奇異の目で見られており、金融・
証券不祥事に象徴される
バブル経済の
崩壊過程で出されているうみは徹底的に出し尽くさなければなりません。
周知のように、
リクルート事件は政界に波及し、
自民党政権は窮地に追い込まれ、
海部政権の誕生によって何とか延命いたしました。今回の金融・
証券不祥事においても、
大蔵大臣の元秘書が
不正融資の仲介をした事実などが明らかになっており、そのほかにも、一部
マスコミなどでは
自民党実力者がさまざまな形で取り上げられており、国民の疑惑の目は銀行、証券、
大手企業や行政にとどまらず、政治の世界にも向けられようとしております。不祥事の
防止体制を整備し、ゆがんだ
経済社会を正し、公平、公正な社会を構築するためにも、そして政界に対する国民の疑惑と
政治不信をなくすためにも、金融・
証券不祥事の全容の
徹底的解明が
緊急課題となっております。
総理、今回の金融・証券の一連の
不祥事発生の原因は、
自民党政治そのものにあると考えますが、総理の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)
その観点から、
証券不祥事、
金融関係の事件につきまして、以下幾つかの疑問点を具体的に質問をいたしますので、総理、
大蔵大臣の明確な御答弁をお願いをいたします。
第一に、
証券会社が取り扱っていた
特定金銭信託にかかわる
損失補てん問題であります。
大口顧客に限定した
損失補てんは、
大衆投資家の不満、
不公平感を呼び起こし、
我が国資本市場における
証券会社と
事業会社などとの相互依存のゆがんだ
市場構造、行政との
癒着関係が露呈しております。株価が高騰を続ける中で、
証券取引の
自己責任原則さえ忘れ去られていたのであります。
この
損失補てんに関しては、大手四社に続き、準大手・中堅十三社から
損失補てん先リストが公表されております。
大蔵本省が所轄をする二十二の
証券会社については補てんの事実がないと報告している会社もあるため、それで報告されたものは尽きていると説明をされておりますが、しかし、これで本当に八七年のブラックマンデー以後の
損失補てんのすべてが明らかになった、今後追加、訂正は絶対にない、こう断言できましょうか。
損失補てんの概念が、
証券会社が
有価証券の売買につき、
証券会社が
損失補てんの目的を持って財産上の利益を供与することと漠然としか規定されておりません。
証券会社に自主的に公表させただけでは全く不十分と考えられますが、大蔵省は独自の調査、検査をしたのか、それとも今後するのか、その結果を公表する考えはないのか、九〇年四月以後の
損失補てんの事実の有無、
財務局管轄の
中小証券の
損失補てんリストの公表問題とあわせてお答えを願いたいと存じます。(拍手)
第二に、大蔵省は、九〇年三月期までについて、当時、
証券会社から
損失補てんについて
自主報告を受けていたにもかかわらず、その一部が表ざたになった都度、それについてだけ社内処分などの
行政指導を行っていたにすぎません。なぜ報告を受けた時点でその全容を公表し、適切な対処策、改善策を講じなかったのか。行政の怠慢で責任は重大であると思われますが、
大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。
さて、これまでに
証券会社から公表された
損失補てん先リストについてでありますが、それを子細に点検をいたしましても、
上場企業でもなく、実態の不明な企業もあり、実態を解明するには、リストのより詳細な説明が不可欠であります。
自民党有力政治家の縁者が関係する企業名があるといったことが報道されておりますが、政治家の
関与いかんについて国民の前に明らかにするためにも、
補てん先の詳細な説明を求めます。
同時に、個々の事例について、
損失補てんの理由、目的、
期間ごとの
補てん額、その手口などを明らかにしていただきたいと存じます。
損失補てんの手口については、国債、外債、
外貨建てワラント債、新株等を利用したものなどかなり具体的に説明されておりますが、個々の事例における目的との関連は明らかでありません。大蔵省は、
一定期間ごとに
証券会社から
特定金銭信託の運用について報告を受けているのでありまするから、特金の残高の推移、そのうち
投資顧問のつかない、いわゆる
営業特金の金額とその割合なども掌握しているはずだと思います。それもあわせて詳しく公表していただきたいのであります。(拍手)
第三に、
証券会社の
特定金銭信託の運用の実態について疑問がありますので、お尋ねをいたします。
特定金銭信託は、委託者もしくは
投資顧問会社の指示に従って、受託者である
信託銀行が受託した金銭を
有価証券で運用するものであります。それが、委託者の指示もなしに、
証券会社の裁量によって運用されていたことが今回の
損失補てんの事態をもたらした原因となっております。
株価高騰の中で急増した大企業のエクイティーファイナンス、すなわち
新株発行を伴う
資金調達などの主幹事となったり、その他の
取引関係を確保するため、
証券会社は利益保証に近いことを行い、
大口投資家である大企業も、金銭を委託すれば一定の利益が加わって回収されることを当然のごとく考えていたようであります。
投資顧問のつかないいわゆる
営業特金の場合は、特に一括委任的な取引が常態化していたと思います。ですから、今回、
補てん先リストが明らかになっても、補てんを受けていた側は、その認識はなかったなどということになるわけであります。こうした
証券会社の一括委任的な特金の運用は、
信託制度に反していると思いますが、いかがでございましょうか。八九年十二月の通達以前は、そうした実態を大蔵省は承知していながら黙認していたのではないでしょうか。そうであれば、大蔵省の
監督責任が問われることとなりますが、いかがでございましょう。その後、一括委任的な取引はすべて禁止されたのか、含めて御所見を伺いたいと存じます。(拍手)。
第四に、今回、
損失補てん先リストでは、
野村証券系や
大和証券系の
投資顧問会社が関与した
特定金銭信託についても、その
親証券会社が
損失補てんを行っていた事例が明らかになっております。
営業特金だけではたく、通達に従って
投資顧問に移した特金についても、
投資顧問会社みずからではなく、その親証券が
損失補てんをしていたことは、
投資顧問会社の独立性、さらには
投資顧問制度そのものの存在意義に疑念を抱かせる事態と言わざるを得ません。今回の補てん問題で、
投資顧問業法に反した事例あるいは疑わしい事例はないのか、
投資顧問の実態はどうなっているのか、また、今後
投資顧問制度について改善策があれば明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
ところで、今回の
損失補てん問題を検討してみますると、制度それ自体の趣旨からして、
特定金銭信託よりも
受託者側の裁量の余地が格段に広い
信託銀行の
指定金銭外信託、いわゆる
ファンドトラストは、特金よりも制度上
損失補てんが行われやすいのではありませんか。今までのところ、そうした事実は公になっておりませんが、実際
損失補てんが行われていたのではないかといったことが一部ではうわさされておりますが、そうした事実は全くないのか、調査しているのか、
ファンドトラストの現状はどうなっておりますか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
第五に、
野村証券の
東急電鉄株の
株価操作疑惑についてお尋ねをいたします。
大蔵省は、平成元年末の
野村証券などによる
東京急行電鉄株の
投資勧誘、集中売買は、
通達違反の疑いが濃いという問題意識を持って調査を進めていると説明しております。これは
通達違反で済まされることではありません。既にこの件については、
証券取引法第百二十五条が禁じている
株価操作の被害に遭ったとの告発が出ており、東京地検で捜査中でございます。
野村証券が
東急電鉄株を参考銘柄とし、同社で発行している「
ポートフォリオウィークリー」などで盛んに推奨し、
営業活動を行っていたことは周知の事実でございます。この株をめぐっては、
暴力団関係者による株の買い占め、それを担保に
資金調達などの事実が明らかになっており、徹底した
真相究明が求められておりますが、大蔵省として、
通達違反だけではなく、
株価操作の疑惑を調査する考えはございませんか。検察、警察では今捜査されていると思いますが、証取法に違反する
株価操作の事実は明らかになっておりませんか。それぞれお答えを願いたいと存じます。(拍手)
第六に、最近続々と明らかになり、
刑事事件ともなっております銀行などの
不正融資問題について御質問をいたします。
土地、株、
ゴルフ会員権が高騰を続ける中で、
総量規制等が行われる以前は、特に銀行は、それらの取引に関係する融資を、系列のいわゆるノンバンクなども介在させて、異常に膨らませていたようであります。バブルがはじけるとともに、そのような
融資関係で不正が大々的に行われていたことが芋づる式に露呈しているのでございます。それは
証券不祥事の比ではありません。
不正融資ではなくても、不良債権化しているものは巨額に上ると予想されますが、大蔵省はその金額など詳細に把握していると思います。その実態を明らかにしていただきたいと存じます。
また、
富士銀行などが巨額の
架空預金証書をでっち上げ、それを利用して
不正融資が行われていましたが、大蔵省はこうした
不正融資、問題のある
資金流通の実態をどの程度掌握しておりましょうか。
富士銀行の
不正融資では、
大蔵大臣の元秘書が仲介役をしていたとのことですが、大臣の責任は重大であると考えます。
金融監督行政の責任者である
大蔵大臣は、どのようにその責任をおとりになるお考えでございましょうか、御所見を伺っておきたいと存じます。(拍手)
第七に、昭和四十六年に株式の
時価発行定着に伴って、
企業内容開示制度の改善が図られました。
有価証券届け出制度の強化、
半期報告書、
臨時報告書制度の創設など改正がなされたわけであります。
開示制度の強化のため、
有価証券届け出制度の虚偽の記載について
発行会社の
賠償責任、
担当役員、
公認会計士、元
引受証券会社の
賠償責任も明示されました。野村、
富士銀行当該年限有価証券報告書は、虚偽記載に相当すると思いますが、御見解はいかがでございましょう。また、
担当役員、
公認会計士の責任は重大であると考えますが、
大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)
第八に、
証券取引法第一条では、
国民経済の適切な運営と投資家の保護にあることを規定しております。銀行その他の
金融機関が
金融市場の担い手であると同様に、
資本市場としての
証券市場の担い手は
証券会社であります。つまり証券の発行を通じて財政、
産業資金の調達に寄与すると同時に、
証券流通を通じて
一般投資家の資産の運用と保全を図ることが目的であります。終始、公平、公正に
証券市場が運営されなければならないことはもちろんでありますが、
再発防止のために
SEC等の
第三者機関等を設置することが必要かと存じますが、総理の御見解をお伺いしたいと存じます。(拍手)
次に、消費税の見直しについて質問をいたします。
消費税については、昨年
税制両院合同協議会が設置され、与野党が合同の場で
税制全般にわたり熱心に論議いたしました。結局、消費税に対する野党の廃止、自民党の存続の態度は簡単に折り合いのつくものではなく、あるべき間接税の論議はじっくり継続することとして、消費税の
緊急是正措置について協議されたのであります。
その結果、さきの
通常国会で不十分ながらも第一段階の消費税の
緊急是正にかかわる法案が成立し、一部は既に実施されております。そして、
緊急是正についての合意が成立するに際し、懸案の
飲食料品関係の非課税については引き続き協議し、九二年度
税制改正に間に合うようこの十月までに結論を得ることとされております。
飲食料品の非課税は、消費税の最大の欠陥である
逆進性緩和のために欠くことができないことであります。与野党間の協議をまとめるためには、
自民党側の譲歩が不可欠かと存じます。政府としては
飲食料品の非課税を早急に実施する考えはありませんか。これは政府みずからが昨年国会に提出したいわゆる
消費税見直し法案にも不十分ながら盛り込まれていたことであります。政府の考えをお聞かせください。
また、
自民党首脳が
国際貢献のための財源として消費税の税率の引き上げを実施する案を公言したことがありましたが、消費税の
税率引き上げは行わないという
海部内閣の公約はどうなったのでありますか。私どもは消費税の廃止を目標にしておりますが、政府は、少なくとも消費税の税率を引き上げることはないとこの場で明言する必要があります。総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
次に、
湾岸平和基金拠出金、いわゆる九十億ドルの補てん問題についてお尋ねをいたします。
そもそもこの九十億ドルは、
アメリカ軍を中心とした多国籍軍への
資金協力を目的としたものであり、
アメリカからの要請に従った
戦争協力費でありました。そうした指摘に対し、政府・自民党は、憲法で禁止されている
集団的自衛権の概念は実力の行使に係るもので、この基金への拠出は実力の行使ではない、したがって、憲法上問題はない、
アメリカからの要請に従ったものでもないと強調して拠出したのであります。しかし、憲法上の疑義を払拭できず、
武力行使を支持するような基金への拠出は中止すべきでありました。その後、御承知のように、
アメリカは為替による目減り分を補てんするよう要求し、政府はそれにこたえて今年度予算の予備費で支出したようでございますが、それは事実でございましょうか。昨年も、予備費の
使用目的として問題があることは再三指摘をいたしたところでございます。追加しないとしていた
平和基金への
追加拠出をまたしても予備費で行ったことは重大問題であります。
また、政府は、武器弾薬などの購入には使用しないと確約しましたが、本当に使用されなかったのか確認する必要がございます。
湾岸平和基金の
使用状況、特に
アメリカの
使用状況について、総理、御見解をお示し願いたいと存じます。(拍手)
次に、今国会に提出が予定されております
PKO法案に関連してお尋ねをいたします。
政府・自民党は、我が国の
国連平和維持活動、いわゆるPKOへの協力について、あくまでも停戦確保や兵力引き離しなどを任務とする
平和維持軍本隊への参加、そして自衛隊の部隊としての参加を目指そうとしております。しかし、武力の行使または武力による威嚇を目的としない
平和維持軍というものは想定することが難しく、それへの我が国の参加、とりわけ自衛隊の参加は、いかに限定条件をつけても、
武力行使または武力による威嚇を目的に他国の領土、領空、領海への自衛隊の派遣であり、自衛隊の
海外派兵そのものであり、従来からの
政府見解にも明確に反することでございます。
政府・自民党は、この法案を再度国会に提案をしようといたしておりまするけれども、この問題は、昨年の
国連平和協力法の廃案によって既に
解決済みであり、我が国の
国際貢献、
国連協力の手段、方向性は明確にされているのであります。政府は、
平和維持軍への参加、自衛隊の
海外派兵を提案すべきではないと存じますが、そのような企図は放棄すべきだと考えますが、総理のお考えはいかがでございましょう。(拍手)
次に、環境問題についてお尋ねをいたします。
地球環境の悪化が叫ばれて既に久しいものがあります。それにもかかわらず地球の環境は残念ながら悪化の一途をたどっております。
環境汚染による地球の温暖化やオゾン層の破壊によって、もはや地球の運命は風前のともしびとさえ極言されております。私は、今こそ
地球環境を守るため政治が全力を挙げて取り組むべきと考えますが、総理はどのようにお考えでございましょうか、御見解を承りたいと存じます。
総理が述べられた
国際貢献策では、重要な
国際課題である
地球環境保全について触れられていないのはどうしたことでありましょうか。来年六月ブラジルで開かれる
国連環境開発会議、
地球サミットでは、気候変動に関する
枠組み条約、
地球温暖化防止条約が大きなテーマとなることが、さきの
ロンドン・
サミットの
経済宣言でもうたわれております。先進国の一員である我が国も、そうした貢献策を明らかにすべきだったと考えますが、総理はどのようにお考えか、お答えください。
また、
地球環境保全に森林の果たす役割が重要になっているとき、
国内木材需要の七五%を外国に頼り、このうち消滅することが懸念されている
熱帯林木材を
世界貿易の四割も輸入している我が国が、森林の再生のための貢献策として、
熱帯森林再生基金制度を提唱する必要があると考えますが、総理にそのようなお考えはございましょうか。さらに国内の
森林資源を充実し、外国の
森林資源を温存できるよう、百二十国会で成立した
森林法改正による
森林整備事業計画の充実、国土の二割を占める
国有林野事業の再建、
森林資源の充実にふさわしい
予算措置を講ずるべきだと考えますが、総理にそのようなお考えがあるのか、明確に御所見をお述べいただきたいと思います。
次に、
我が国農業と米の
市場開放問題についてお尋ねをいたします。
先月の
ロンドン・
サミットまでの間、国内では財界、政府・自民党、
マスコミ等が一斉に米の
部分開放論を展開し、もはや米の
市場開放は避けられないという
ムードづくりが意図的に行われてまいりました。しかし、ガット・
ウルグアイ・ラウンドの
農業交渉における最大の問題は、大規模な
企業農業を代弁する
アメリカと、環境を重視し、
家族農業を守ろうとするECとの間の
輸出補助金をめぐっての激しい攻防が展開されたのであります。決して日本の
米市場開放が
農業交渉の障害になっているわけではありません。
今日、我が国では米は過剰基調にあり、四国全域に匹敵する面積の減反を農業者に強制しているときに米の
市場開放を行えば、さらなる減反を強制することになりましょう。農業の将来に希望を失った生産者の
生産意欲は減退し、
水田農業は壊滅的な打撃を受けることは火を見るよりも明らかであります。しかも、日本の水田は、国民の食糧を安定的に供給するという重要な役割のほかに、国土の保全、
自然環境の維持、
地域経済の活性化など、国民にとってはかり知れない役割を担っているのであります。もし
市場開放を行えば、失うものが余りにも大きいと指摘せざるを得ません。
さきの
ロンドン・
サミットにおいて採択されました
経済宣言を見ますると、
日本政府が強く要求していた非
貿易的関心の考慮が盛り込まれており、我々も総理以下の御努力を高く評価をいたしたいと思います。しかし、同時に、この
経済宣言の中には、ガット・
ウルグアイ・ラウンド交渉の
年内解決に向けて、
各国首脳の
交渉介入の用意が明記されております。各国の農業問題に関する主張が大きく変化する展望のない中で、各国の主張がこのまま平行線をたどった場合、総理はどのようなお考えを持って交渉に臨まれるのか、
ガット農業交渉に臨まれる総理の
基本姿勢について改めて承りたいと存じます。(拍手)
次に、総合農政の見直しについて質問をいたします。
去る五月末、農林水産省に新しい食料・農業・
農村政策検討本部という名称の機関が設置されました。この
政策検討本部における
検討項目の各論、六項目ほどでありまするが、これを拝見をいたしますると、「多様な担い手(
農業経営体)の育成」と題し、「従来の
家族的農業経営に加えて、
地域的広がりをもち、持続的、安定的な経営が可能な多様な担い手(
農業経営体)を育成し得るよう、
農地所有と
農業経営の分離、農地の所有、利用等のあり方につき検討」するとし、第三セクターや法人的な
土地所有など、従来の
家族経営以外の経営体の農業への参入を認めていこうとしております。これは現行の農地法で言う、農地は耕作する農民が所有するという
基本的概念を逸脱しており、極めて問題だと考えます。総理の明快な御答弁を求めます。(拍手)
世界の
農業政策の流れは、
環境破壊型の大
規模農業ではなく、
環境保全型の
家族農業でございます。農政の
抜本的改革を行うのであるならば、
公益的機能を多分に持った
自然環境保全型の
家族農業の維持と
農村地域社会の発展を柱とした
地域農業振興対策をまず確立すべきではないでしょうか。そしてそのためには、過疎、高齢化、農山村の崩壊など、戦後農政のひずみが象徴的に集中している中
山間地帯の対策を急がなければなりません。
地域農業の振興、中
山間地帯対策に関する総理の御見解をぜひとも承りたいと存じます。(拍手)
漁業問題について質問をいたします。
国民に貴重な水産たんぱく食料を供給する漁業もまた二百海里体制下において、北洋サケ・
マス漁業や底びき網漁業の撤退など、依然として国際的に厳しい状況が続いております。殊に、一部の
環境保護運動には行き過ぎた面もあり、資源に対する科学的な根拠を無視して、
捕鯨禁止、
流し網漁業の禁止、さらにはクロマグロの
捕獲禁止を求める動きがございます。
関係漁業者は、
地球環境保護の名のもとに、このような規制がすべての漁業に及ぶのではないかと不安のうちに漁業を行っております。私は、海洋資源を食糧資源として利用することが今後ますます重要となってくると確信をいたします。したがって、遠洋漁業と呼ばれる国際・公海漁業は適正規模で維持するべきだと考えますが、政府は、厳しさを増す国際・公海漁業をどのように維持されるのか、農林水産大臣の御見解を承っておきたいと思います。(拍手)
さらに、我が国水域に隣接する漁場として重要な東シナ海においては、ことしの四月から六月にかけて、山口県など西日本のはえ縄漁船が、公海上において国籍不明の船舶によって威嚇射撃を受けるなど襲撃され、資材や金品が強奪される事件が多発し、関係漁民を恐怖のどん底に陥れております。事態の究明と我が国漁民の安全操業の確保が緊急の課題となっておりますが、政府は、こうした国際法上直ちに外交問題に発展する公海上における海賊行為ともいうべき国際的事件に対してどのように対応されているのか、農林水産大臣の御所見を承りたいと存じます。
最後に、部落問題について質問いたします。
さきの
通常国会における野党の六十数回にわたる質疑で明らかになりましたように、部落差別の実態は依然として厳しいものがあります。また、最近出された地域改善対策協議会会長談話においても、いわゆる「一般対策への円滑な移行の方策」の取りまとめが困難である旨が率直に述べられております。部落差別の現状の厳しさへの認識がえんきょくに示されているのであります。さらに、来年度以降においても何らかの法的措置を求める国民的世論も急速に高まってきております。もはや今年度限りで法を打ち切るということに執着したままでは進まない状況となっております。したがって、この際、政府として地対協に対して、さきの予算委員会の総理答弁にあるように……