○
柳田委員 私の経験からお話をさしていただきますと、私がおりましたのは東京の国立
大学の船舶工学科というところなのですが、船の性能を実験するときには模型船をつくりまして、どんがらの設計なのですが、それを水槽の中ですうっと走らすわけです。その水槽、東大の水槽は何と海軍の持ち物だ。戦後四十数年
たちながら、その遺物を使いながら実験をしておる、そういう実態もあります。
一つの研究室に係る
予算も非常に少のうございまして、今はいろいろと実験をしたり、またコンピューターでいろいろと数値計算というのもやっておるわけであります。ですから実験と数値計算、これは二本柱でやっておるわけであります。計算をするにしても、コンピューターを動かすとお金がかかる、これは
学校のコンピューターでもお金がかかるわけです。ただ、外部に比べると非常に安いということもあるわけなんですけれ
ども、こういう科学計算というの似非常に時間がかかるわけですね。一晩コンピューターを回し続けないと答えが出ないという現状もありまして、安い安いといいながら、トータルとってみると非常な費用がかかる。さらに実験をしますと、その実験の素材をつくるためにまた大変なお金がかかるので、非常に節約をしながらしなければならない。それをトータルとっていろいろ
考えてみても、研究室におりるお金では
予算が足りないということで、いろいろと
学校の
先生が地方へ学術講演に行かれる。そのときにそれなりの足代をいただけるところもあるわけなんですが、それを全部プールしまして、コンピューターの計算費用に出しているという非常に涙ぐましい
努力をしているのが現実でございます。行ってお話をしたからといって、そう何十万も何百万ももらえるんじゃなくて、もらっても足代ですから微々たるものであります。ですから、
先生としては
学校に残って研究をしたいのはやまやまですが、財源確保もあるので、お話しに来いと言われれば地方まで出向いていく。そして、そのもらったお金でコンピューターを動かす費用を出して、学生のために
努力をしておる、そういうふうなのが現実であります。
さらに、
学校を卒業して会社に入ります。会社に入りますと、私の場合は特別かもわかりませんけれ
ども、
学校で、
大学で学んできたことは、会社では通用しない。そういう、何といいますか、会社に入るとやはり研究部門に入ったわけでありますけれ
ども、会社で使ういろいろな知識、そして手法、いろいろなものがあるわけですが、そのレベルと
大学のレベルとは格段に違う。だから、
大学でやったことは全部忘れて、極端に言うと会社に入ってから
勉強し直せということまで言われるくらい、もう既に会社と
大学の研究といいますか、格差が開いている。果たしてこれで
大学の役割が成り立っておるんだろうかな、会社に入った
時点で、先輩諸氏に言われたときにべそう思ったのも私だけかもわかりませんが、何か割り切れない気持ちがしたという記憶がございます。
そういうこともありますので、今後日本の行く朱と、先ほどお答えがありました、原料を輸入して、そして製品に加工して輸出しているのが日本だと。その加工する技術については、やはり会社の
努力もあるかもわかりませんが、いろいろな研究を
大学がして、それを会社なりが使って世界にまさる技術を日本が身につけて、加工貿易、原料を輸入して製品を輸出する国、これが成り立つのではないかと思っております。ほとんどを会社の研究にゆだねておるというのが現状かもわかりませんが、会社というのは、やはり営利企業でありますので、
自分の会社が利益が出る分については幾らでも研究費は投資するわけであります。全然利益が出ない研究についてはびた一文も出さない。これは営利企業としていたし方のないことだと思うわけであります。ただ、日本のすべての産業のいろいろな基盤を
考えていきますと、やはり日の当たらない研究部門にもそれなりの財源をつぎ込み、そしていい人材を入れて
努力をしていかなければ、日本の将来の経済といいますか、世界と競争していく日本としては危機的状況になるのではないかな。そういう
観点からしても、できるだけ大蔵省当局としても、
文部省に係る
予算は、枠は一緒ですよ、中で調整をしなさいというのではなくて、もう少し高等
教育に別個でもプラスするという気構えで
努力をしていっていただきたいというふうに思います。
そうはいうものの国の財源としても限られておりますので、
学校の中でも、産業界としてもいろいろと頭、知恵をひねりながらやっている面もあるように聞いております。産学協同という
視点になるかと思うのですけれ
ども、企業の方から冠講座、寄附講座ということでお金を出して、この研究を
大学でしてくださいというお話もあるように聞いておるわけであります。ただ、企業というのは営利企業、
大学の性質と大分違うわけでありまして、その中でただ乗りでやっているのじゃないかという批判も若干聞かないわけではないのでありますけれ
ども、基礎研究に重点を置いた研究に援助ができるように、政府も税制の面でも積極的に支援して環境
整備を図ってはどうか。つまり
学校にこういうふうな研究をしてくれというのも
一つありますけれ
ども、さらに
自分の企業とは
関係ないけれ
ども、いろいろな研究をするということで企業が
大学に寄附をする。これはストレートなパターンかもしれませんけれ
ども、何か
一つ受け皿をつくって寄附をする。そして、その使用方法については
大学といろいろ相談をしながらやっていく。その際に、企業には、寄附した先にはそれなりの税制の面で支援ができないか。非課税にたるとかいうことがあれば、寄附をやっているんだから非課税になっているということがあるかもわかりませんが、何かその辺で税制面からのいい支援策があればなという
感じを持っております。
ちなみに言いますと、国公
私立大学の研究者が使える研究費の総額が昨年で六百億円弱。民間企業で日立やトヨタ、これが一社で三千八百億円。
大学全部で使えるのが六百億円で、一社の企業が使う金が三千八百億円。どう
考えても何か変な
数字だなというふうに思うのです。
国内でも寄附を受けている
大学はあるようであります、国内の企業が国内の
大学に寄附をしている企業もある。ところがもう一方、日本の企業が海外の
大学に寄附をしているというのもよく聞くわけなんです。トータルをとってみるとどっちが多いのかな。日本の企業が海外に寄附している金と、日本の企業が国内の
大学に寄附している金とどっちが多いのだろうかな。まあその是非を問うわけじゃないですけれ
ども、いろいろと
努力はされているな。ただ、足りないがために日本の優秀な頭脳が海外に出ていっている。また先ほどの話に戻るわけですが、また危機的状況が来るのではないかなという気がしております。先ほど言ったのは、専門家ではないのでわからないのですが、
一つの私なりの案だったわけですけれ
ども、こういうふうな研究費などの補助については、
文部省という枠だけではなくて、
関係各省庁あるいは民間企業すべてがタイアップして、いろいろな
観点から、独創性に富んだものにこの研究費の補助、研究者の育成が
考えられないものかなという気がしておるのですけれ
ども、いかがでございましょうか。