○赤保谷
説明員 お答えを申し上げます。
多岐にわたる御
質問でございますが、まず最初に、ことしの生乳需給の逼迫している
状況あるいはこれからの見通しということでございますが、今年度につきましては年度当初におきまして、平成三年度の需給計画では生乳生産八百四十八万トン、それから飲用牛乳向けで五百十八万四千トンと見込みまして、畜産
振興事業団による輸入は五万ないし十五万八千トンと見込んだところでございます。
しかし、その後三年度に入りまして、生乳生産は北海道は順調に推移はしておりますけれ
ども、都府県は種つけのおくれ等昨年の猛暑の後遺症と、あるいは一部
地域、
九州を
中心でございますが、そういうところで天候不順による粗飼料生産が不良であったということによりまして依然回復がおくれている、そういうことによりまして、
全国的には前年を若干下回って推移をしておったわけですが、一方、飲用等向け生乳供給量はおおむね堅調に推移をいたしたために、乳製品向けの生乳供給量は前年を下回って、バターあるいは脱脂粉乳の生産量は減少したわけでございます。このため、バター、脱脂粉乳の大口需要者向けの価格は安定指標価格を大幅に上回って推移していたところでございます。
なお、今後の生乳の需給についてでございますが、安定化に向かうものと
考えられるわけですけれ
ども、天候要因等の予測しがたい要因もございますので、需給
状況を慎重に見守ってまいりたいと
考えております。
それから、二つ目のバター、脱粉の輸入の問題について
お尋ねでございましたが、年度当初、その時点での最新のデータをベースに需給の見通しにつき最善を尽くしたわけでございますけれ
ども、今年度に入りまして、正確に予期しがたい要因が積み重なったこともありまして、需給が堅調に推移することとなったわけでございます。このためバター、脱脂粉乳の大口需要者向け価格は安定指標価格を大幅に上回って上昇していたところでございます。先ほど申し上げたとおりです。
こういうような需給
状況に対処するために、北海道、都府県の生乳の生産動向だとか国内の乳製品の生産動向あるいは飲用牛乳の消費動向、乳製品のユーザー等の需要の動向さらには乳製品の価格動向、そういった種々の要素を総合的に勘案いたしまして、乳製品需給の安定に必要な輸入量を決定したどころでございます。
このような
状況をそのまま放置しておきますと、国内実需者等から、現在の価格安定制度、さらにはそれを支えている一元輸入制度の根幹についての批判に発展しかねない、そういう事態も
考えられましたし、また実需者の乳製品離れを助長するというようなことも
考えられる、いわゆる擬装乳製品の輸入を増加させる、それで国産乳製品の将来的な需要の
確保に問題が生ずる、そういうような事態も
考えられますので、乳製品の需給の逼迫に
対応して必要最小限の数量につき、緊急やむを得ず輸入を少ししたということでございます。
それから需給計画の見直しの御
質問がございますが、生乳の需給表ですけれ
ども、年度当初のいろいろなデータから予測される生乳の需給の当初見通しでありまして、年度を通じた
加工原料乳の生産の指標としての
意味を有するいわゆる限度数量を審議する際に、その参考に資するものとして畜産
振興審議会に提出しているものでございます。
現実の生乳需給につきましては、飲用需要を
中心に変動が大きいものがございまして、往々にして当初に見通した生乳需給表から乖離することがあるわけですが、このような場合には、乳製品の需給、価格の安定を弾力的に行うために、生乳需給表で見込んだ当初見通しの輸入量を上回る輸入、あるいは逆にこれを下回る輸入を行ってきたところでございます。
今回の輸入に当たりましても、乳製品価格の高騰という事態に対処するために、乳製品需給の早期安定を図る、そういう見地から対処してきたところでございます。
それから、生乳需給が安定するような長期的な計画、計画生産をすべきではないかというのがその次の御
質問ですが、生乳生産は、その性格上急激に増産をしたり減産をしたりということには一定の限界がございます。あわせて、そのような急激な変化をするということは酪農
経営上も好ましくないと
考えられるわけでございます。したがいまして、
生産者団体すなわち中央酪農
会議は生乳生産及び酪農
経営の安定を図る、そういう見地から、従来単年度ごとに
実施をしておりました計画生産を、平成元年度から三年間という中期的なものに変更して
実施をしているところでございます。
この中央酪農
会議の中期的な需給調整計画ですが、年度途中の予期できなかった生乳需給変動、そういうことに対しましては、目標数量の追加配分、いわゆる特別調整乳というような形での追加配分をするとか、逆に全乳哺育等によりまして出荷の調整をする、そういうような内容になっておるわけでございます。
今年度におきましては、北海道の生乳生産は順調に回復する一方で、都府県の生産には回復のおくれが見られるわけでございます。これは生産目標数量設定の際には予期することが困難であったものでありまして、これに対しましては、今後特別調整乳の追加配分あるいは各
指定団体の生産目標数量達成へ向けた取り組みがなされるものと
考えております。今後とも生乳需給の動向等に
対応した計画生産が行われるよう、私
どもとしましても所要の
指導助言を行ってまいりたい、かように
考えておるところでございます。
それから、事業団の機能の問題についての御
質問でございますが、御承知のとおり事業団は、いわゆる不足払い法の定めるところによりまして、
指定乳製品の価格が安定指標価格の上下一定割合を基準に変動をしたときには、
指定乳製品の買い入れまたは売り渡しを行うことができることになっているわけでございます。
指定乳製品等の売買操作を
実施するか否かは、そのときどきの国内の価格動向により判断すべきものであると
考えるわけですけれ
ども、そういうことで、従来国内の価格安定を図る観点に立ちまして対処してきたところでございます。今後とも国内の価格安定を図る、そういう制度の
趣旨に則しまして、適切に対処をしてまいりたいと
考えております。
国内産の乳製品をストックする、在庫に抱えて需給調整したらどうかというような
お話もございましたが、これにつきましては、
一つには在庫の存在、これは市況を圧迫しまして正常な需給
関係以上に価格を引き下げるというおそれがある、それからまた、事業団の在庫管理上から見ましても、品質劣化等の面から、長期に在庫を抱えるということは適当でないというような問題がございまして、慎重に対処する必要があると
考えております。
その次に、酪農肉用牛近代化計画を早期に改定する、いつごろ改定するのかという御
質問ですが、このいわゆる酪肉基本方針につきましては、酪肉
振興法上昨年一月に策定された「農産物の需要と生産の長期見通し」に則して新たな基本方針を作成する必要があるということ、それから平成三年度から牛肉の輸入が自由化された、そういった
状況を踏まえまして新たな
振興指針を示す必要がある、そういう
状況でございまして、昨年三月、畜産
振興審議会に対しまして基本方針の作成に関して諮問を行い、審議を願っているところでございます。
現在、基本方針の改定
作業は、いわゆる酪肉
振興法の定めるところに従って、いろいろな事項につきまして
作業をしているわけですが、なおこれからいろいろと分析、
検討することが必要であると思います。例えば、
生産コストの目標については、将来その普及が見込まれております受精卵移植技術等の新技術の普及、定着の問題だとか、交雑種雌牛の繁殖利用、肥育雌牛の一産取り肥育等の新しい方式の普及、定着の可能性の問題、あるいは自由化後の輸入牛肉と国産牛肉との競合性、そういった問題、種々いろいろな点を見きわめるためには、さらなる分析、
検討が必要であるというふうに
考えておるわけでございます。また、今回から飼料作物生産のための指標、これについても新たに盛り込もうということにいたしておりまして、なおそういうことに時間がかかっておるということでございます。
いずれにしましても、事務的な案の作成に鋭意
努力をしまして、畜産
振興審議会に具体的に諮った上で取りまどめていきたいと
考えております。いつごろかという
お話でございますが、できるだけ早くしたいというふうに
考えております。
それから、保証乳価の
引き上げの問題がございました。平成三年度の
加工原料乳の保証価格等につきましては、いわゆる不足払い法に基づきまして、生産費
調査の結果等を踏まえて、その他の経済事情を勘案して、畜産
振興審議会の意見をお聞きをして、三月末に適正に決定をしたところでございます。
保証価格等につきましては、物価その他の経済事情に著しい変動が生じる等の場合には改定することができるということになっているわけですけれ
ども、
先生おっしゃいました子牛価格の低落という事態がある一方で、金利の低下ということもありますし、飼養規模の拡大といったこともある。そういったコスト低下要因もございますので、いろいろ勘案すれば保証価格の改定の議論にまでは至らないのではないかと
考えられるところでございます。
それからその次に、いろいろ個体の価格が下がっている、それはどういう理由、原因で、どんな
状況なのかという
お話がございました。いろいろ理由がございますけれ
ども、枝肉の価格に連動をして個体の価格が下がっている、当然といえば当然でございますが、細かく申し上げてもよろしゅうございますけれ
ども時間もあれですから、また御
要望があればお答えを申し上げます。
それから、乳肉複合
経営強化事業における交付要件なり奨励金の単価の
引き上げの
お話でございます。
昨年の夏以降、先ほど来申し上げておりますが、ぬれ子の価格が低下しているわけですけれ
ども、酪農
経営における所得の安定
確保を図るためには、乳肉複合
経営を推進して、ぬれ子の付加価値向上のための哺育育成への取り組みを進めることが重要である、そういうことでございますが、現実に見てみますと、酪
農家の多くはぬれ子を哺育しないまま出荷をしているのが
現状であります。そこで、国としては昔から——昔からというか、昭和五十八年から乳用種のぬれ子の哺育育成を行う場合に奨励金の交付事業を推進してきたところでございますが、さらにことし、平成三年度におきましては、ぬれ子価格の低落という事情を考慮いたしまして、事業内容の拡充を行ったところでございます。
それで、御指摘のぬれ子の一カ月程度の哺育に対する奨励金、ことしからそうしたわけでございますけれ
ども、この事業が事故率の高い離乳前の時期を酪
農家がみずから哺育を行う、そういうことによりまして健全な肥育素牛の供給とぬれ子の付加価値を高めようとすることに対する奨励を目的としたものである、そういう
趣旨のものである、それから、その積算におきましてもいわゆるかかり増し経費を基礎としている、そういうようなことでございますので、奨励金の交付要件となっている期間を短縮するとか、あるいは奨励金の単価の
引き上げを行うということは困難ではないかというふうに
考えております。