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1991-08-31 第121回国会 衆議院 証券及び金融問題に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年八月三十一日(土曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 大野  明君    理事 衛藤征士郎君 理事 戸井田三郎君    理事 中村正三郎君 理事 穂積 良行君    理事 松永  光君 理事 加藤 万吉君    理事 中村 正男君 理事 草川 昭三君       浅野 勝人君    粟屋一敏信君       井奥 貞雄君    石原 伸晃君       魚住 汎英君    遠藤 武彦君       尾身 幸次君    金子 一義君       田中 秀征君    武部  勤君       二階 俊博君    野田  実君       原田 義昭君    松本 十郎君       村上誠一郎君    山下 元利君      宇都宮真由美君    上野 建一君       大木 正吾君    仙谷 由人君       松浦 利尚君    水田  稔君       安田 修三君    渡辺 嘉藏君       日笠 勝之君    冬柴 鉄三君       正森 成二君    中井  洽君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 左藤  恵君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         厚 生 大 臣 下条進一郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         大蔵大臣官房長 篠沢 恭助君         大蔵大臣官房総         務審議官    小川  是君         大蔵省理財局長 寺村 信行君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   冨沢  宏君         厚生省年金局長 加藤 栄一君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁三重野 康君         参  考  人         (日本証券金融         株式会社取締役         社長)     多島 達夫君         参  考  人         (東京証券取引         所専務理事)  長川 和弘君         参  考  人         (日本銀行理事丹治  誠君         証券及び金融問         題に関する特別         委員会調査室長 兵藤 廣治君     ――――――――――――― 委員の異動 八月三十一日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     二階 俊博君   木村 義雄君     原田 義昭君   笹川  堯君     武部  勤君   野田  実君     石原 伸晃君   村井  仁君     井奥 貞雄君   井上 一成君     上野 建一君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     村井  仁君   石原 伸晃君     野田  実君   武部  勤君     笹川  堯君   二階 俊博君     奥田 敬和君   原田 義昭君     木村 義雄君   上野 建一君     井上 一成君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  証券及び金融問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  証券及び金融問題に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君、日本銀行理事丹治誠君、日本証券金融株式会社取締役社長多達夫君及び東京証券取引所専務理事長川和弘君、以上四名の方々出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ―――――――――――――
  4. 大野明

    大野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松永光君。
  5. 松永光

    松永委員 私は、今日までの当委員会における審査の経過、そして特に先般の証人喚問の結果等を踏まえまして、私個人の所見を交えながら、数点にわたって大蔵大臣、特に証券局長等にひとつ質問をしてみたいと思います。  私は、この委員会委員として参加をいたしまして非常にその感を強くしたわけでありますが、今次の証券金融不祥事、中でも証券不祥事というものが我が国国益を害することはまことに大きい、大変な事態を引き起こしたという認識を深めました。それは、一面においては我が国証券市場信用を一挙に失墜してしまった。一般の投資家やまともな国民は、容易に証券市場に対する信用を回復しないでしょう。しかし、そういう状態が長く続きますというと、ひいては我が国産業資本市場での資金調達が極めて困難になるわけでありまして、そのことは、ひいては産業界設備投資資金に不足を生ずるかもしれない。そういったことは日本経済の順調な発展に大きな支障ともなるわけでありまして、これは一日も早くあらゆる措置を講じて証券市場信用回復に努めなきゃならぬ重大な問題だというふうに私は思います。  同時にまた、一方においては我が国経済構造についての諸外国信用をも失墜せしめた。これは大蔵大臣も大変今まで苦労してこられたわけでありますが、日米構造協議の場などはその典型でありますが、それ以外にも対外経済摩擦関連する協議の場で諸外国日本に対する非難の声は、日本という国は自由経済、公正な自由競争が行われておる国だと表面は言っているけれども実際は違うんじゃないか、極めて閉鎖的で不公正な経済行動のなされておる国だという、これはいわれなき批判、この批判をかわすために大蔵大臣も大変苦労してこられたと思う。私も、しばらくの間でありましたけれども通産大臣として構造協議の場その他で、日本経済行動日本商慣習、こういったものに対する諸外国のいわれなき誤解を解くために少なからず苦労した経験があります。  ところで、今後の証券不祥事は、日本非難する人たちに、それ見たことか、日本は不公正な国だという口実を与えたような感じもするわけでありまして、その点でも我が国国益を著しく傷つけたというふうに言わざるを得ません。そういう重大性にかんがみて、大蔵大臣は、私が見る目でも痛々しいぐらいまで深刻にこの問題を受けとめられて、問題解決のために必死の思いで頑張っていらっしゃる、私はそうお認めするわけでありますが、ここで改めて大蔵大臣のこの問題解決へ向けての決意のほどをまず承っておきたい、こういうふうに思うわけであります。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、委員から御指摘のありました諸点それぞれに私は正しい御指摘を受けておる、そのように心得ます。そして、私個人はともかくといたしまして、今大蔵省として必死で、五つ原因に分類しながら、特に証券に限定してお答えをいたしますとするなら五つ原因問題点を集約し、それぞれへの解決策を見出すべく全力投球をしておりますのも、まさにそうした思いからであります。  多少言葉をつけ加えることをお許しいただきますならば、この問題が発生いたしましてからサミットに参りますまでの期間が、心理的に私にとって一番ある意味ではつらい期間でありました。問題の重要性十分認識をしながら、いかにしてサミットにおける日本特殊論を防ぐか、あの時期における私の思いというものはそこに集約しておりました。たまたま蔵相レベル会合冒頭に、リードの役回りが日本に回ってまいりましたので、その冒頭で、私は証券金融における現状説明をし、その解決への努力方向、今申し上げるほど精緻なものではありませんでしたけれども方向づけをいたしました。その時点で私の脳裏にありましたものは、一つはウルグアイ・ラウンドにおけるサービス分野における論議、もう一つ問題点日米金融協議あるいは構造協議のフォローアップの場、こうした場においていかにこの事態を理解させ、解決への時間を稼ぐかということでありました。  たまたまどこの国からも求められないうちにこの問題の説明に踏み切りましたことから、蔵相レベル会合において日本特殊性を云々する声はありませんでしたし、全体会合においてもこの問題は全く触れられませんでした。しかし、それは私は、私のその時点における説明で納得を得たものという楽観は全くいたしておりません。むしろ私の言い分を聞き、その方向というものは是認しながら、努力が本当に払われるかどうかに対していわば非常に冷ややかな目で見守っている、それが私は現状であると思います。十月になりますと、IMF・世銀総会がアジアの一角で開かれることになります。この時点までに日本政府としてどれだけの、また日本市場そのものとしてどれだけの努力を積み重ね、目に見える形で説明ができるかが、国際的に信頼回復への足がかりをつかみ得るかどうかの私はぎりぎりのタイミング、そのように考えておりまして、今その意味では時計との競争のような思いで御審議を受けております。  そうした状況にありますことも与野党通じまして両院の関係委員方々に御理解をいただき、御叱正を受けながらも、同時にいかにして信頼回復に向かうかについての御協力を心からお願いを申し上げます。
  7. 松永光

    松永委員 私は、個人的なことを申して恐縮ですが、二十数年来大臣の後輩としていろいろ指導をしていただきました。極めて剛直な方でありまして、顔つきは大変柔和でありますのでたくさんの女性のファンもいらっしゃる。しかし、内実は極めて剛直な方。慶応大学の剣道部のキャプテンとして、小手などはねらわずに専ら面だけねらって打っていったという話もあるそうでありますが、そういう私の尊敬する橋本先輩が、私の目から見て本当にやせ細る思いで頑張っていらっしゃる姿に、私は政治家としてますます尊敬の念を持っておるわけでありますが、ただ、私がこの永田町かいわいで耳にすることで非常に不愉快なことがあります。  それは何かというと、プラザ合意以来の我が国金融政策、これが金余り現象を生み、その結果として一億総財テクに走ったなどという言葉であります。なるほど金余り現象はあったでしょう。しかし、財テクに走ったのは、日本国民の中でいえば決して多数ではないと私は思う。財テクに走っておる人たちから見れば、類は類を呼ぶでその周辺の人はほとんどやっておったかもしれません。しかし、私の知っている限り、あるいは私の選挙区の事業者等を見ますというと、鋳物業でも機械業でも汗と油にまみれて、歯を食いしばって頑張ってきた。円高という厳しい状況の中で合理化近代化を進めて、そして生き抜いてきた。そしてまた、金融緩和の中で設備資金が借りやすくなりましたので、金利負担も少なくなってきたので、そこで思い切った合理化投資、近代的な生産設備への投資もできたということなのでありまして、この問題の背景に金余り現象があったんだ、だからある程度やむを得なかったなどのごとき言葉を耳にすることは、私、大変不愉快なんだ。そういったことを言ったからといって、この不祥事を起こした者の責任がいささかも軽くなるものではありません。私はそう思うのでありますが、大蔵大臣所感を承りたい。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、プラザ合意以降の円高、そしてその円高日本企業が対抗していくだけの基盤を整備するまでのために金融を緩和いたしました措置が決して誤りではなかった、政策選択として誤りではなかったという気持ちは、委員も御指摘をいただきましたように基本的に持っております。しかし同時に、その金融の超緩和状況におきまして、それが例えば土地の騰貴の原因に全く関係がなかったか。あるいは、まさに今バブルの崩壊という言葉がよく使われますけれども証券市場に非常に大きな活気をもたらす、それが一部の責任感を忘れた証券取引の実態に発展しなかったかと言われれば、そうした面も私は否定できないと思います。  ですから、我々として今本当に反省しておりますことは、基本的な政策誤りがなかったと言いながら、附帯して起こるであろう、そうした付随的な問題に対して目配りが足りなかったのではなかろうか、この反省は確かに私はございます。そして、例えば土地に対し総量規制という手法を我々は今導入しております。これは本来、非常措置であります。しかし、その非常措置をいまだ継続をいたさなければならない状況が現にございます。こうしたことを考えてまいりますと、基本的な政策誤りなかったと言いながらも、その付随現象として発生した問題に対しての目配りが足りなかったという点は、少なくとも私どもはその責任の一端を担わなければならない、私はそう思います。
  9. 松永光

    松永委員 私は、今度の証券不祥事関連して、同僚委員質問を聞き、また証言を聞いて考えるわけでありますが、もう少し証券局が、サボっておったとは言いませんけれども緊張感を持って対応しておったならば、私は未然に防止できた面もあったのじゃなかろうか、こう思う点があります。  それは何かというと、同僚委員質問で明らかになったことでありますけれども、数年前から一部の証券会社損失補てんをしておるということは知っておったわけですね。それで、証券会社に対する定期検査等の場でこの損失補てんの有無を重点項目とするということも決められておったわけですね。しかし、重点項目とするということぐらいならば、私は何でこの証取法の第五十条の禁止行為の中で――実は省令禁止行為を明記し得るわけですね、省令で。で、この間の田渕証人証言を聞いて感じたんですが、彼は、事前の損失保証約束をしての勧誘行為は禁止されておる、しかし事後の補てん法律にないという前提での私は証言だったように思う。で、大蔵大臣の常々の発言等々から見まして、損失補思というのはそもそもあってはならぬことだ、法律以前の当然の禁止事項なんだ、こういう発言がございました。私もそう思う。保証約束禁止事項なんだから、実行行為はもっと許されないことは当然のことなんです、これは。法律解釈からいえば、筋道からいえば。しかし、事業者の側からいえば、法律に明記されていることは比較的よく守るんだ。法律に明記されてないというと、それは法律に書いてありませんからということで逃げ口上にされるおそれがあるわけです。ですから、平成元年十二月二十六日に、事後的な損失補てんや特別の利益提供も厳にこれを慎まれたいという通達を出しておるわけなんでありますが、これを出すぐらいなら省令改正をして、そして法文上明記することが証券業界にそれを守らせる上では効果があったんじゃないか、こういうふうに私は思う、後のことですけれども。  同時にまた、この関連で、この通達を見ますというと、第一項目で事後的な損失補てん等を厳に慎むことを行政指導すると同時に、実は原則としていわゆる営業特金をやめろということも、同じこの通達の中に書いてあるわけですね。これは、ある意味では二律背反的になるおそれがあるんだ。営業特金をすぐやめろというならば、多少のトラブルが起こる可能性があるんだよ。そうすると、そこで何かの手当てをしないというとやめられない、こういうことになり得るんだね。  その関連で、実はこれは、これもまた委員発言等の場で私も承知したわけでありますが、またほかの資料でも明らかなことなんでありますけれども、まず第一に営業特金をやめさせることが先決なんだ、やめるためにやむを得ず多少のことがあってもそれは大目に見るんだなどのごとき、それが本当なのか誤解なのか知らぬけれども証券業界に与えたんじゃないかということを、私の推論かもしれぬけれども、そういったあたりも、私は今回のこの証券会社による大口投資家に対する損失補てん――これはもう御存じのとおり、たくさんの人たちが、いわゆる投資家というほどじゃないけれども少し小金を持っておる人、あるいはパートで働いて少し節約して金を持っておる奥さんなどというものまでが証券会社外交員の甘い口に誘われて、この株は絶対上がりますよ、特にひどいのがNTTだ、大蔵省が売り出した株だからね、これは三百五十万円、四百万円になりますよ、こう言われて、二株、三株、五株買った人かうんといるんだ、まじめな国民に。その株ががたっと下がっているものだから、今さらそういう甘い口をもって誘いに来た人はもうその近場の支店にはいないから、それで恨んでいたんだ。そこへもってきて今回の大口投資家に対する損失補てんがあったものだから、ひどいわと非難の声が集中しているんですよ。  そういうことを考えますと、先ほど言ったとおり、損失補てん事例がしばしば見受けられた。だから、検査重点項目というふうに指定するぐらいならば、そして、ましていわんや元年十二月二十六日に通達を出すぐらいならば、この省令を改正して、これは大蔵省だけでできる話でございますから、法文上明記して、そして厳重禁止を言い渡せばあの証券会社人たちも聞いたんじゃなかろうかな、そういうふうに思うね。その点について、所感をひとつ局長言ってください。
  10. 松野允彦

    松野(允)政府委員 確かに、御指摘のように過去の検査におきましても損失補てんが散見されて、そういう事例があったことは事実でございます。それで、平成元年の十一月に非常に大規模なものが明らかになりまして、それに対して通達を出して損失補てんを禁止するとともに、その温床となるというふうに考えられておりました営業特金適正化するようにという指導を始めたわけでございます。営業特金適正化といいますか、営業特金をなるべくやるなという指導は既にその前からやってはいたわけでございますが、通達を出して指導を強化したというのは十二月からでございます。  御指摘のように、その時点でこの損失補てんについて損失保証などと並んで省令で規定をし、省令違反ひいては法令違反というようなことにした方が適切ではなかったかという御指摘でございます。これは、今から振り返ってみますと、確かにそういう御指摘につきましては、私ども当時の対応が行政指導通達でやったということについて甘いのではないかという御批判を受けるということについては、私ども非常に責任を痛感する次第でございます。当時の状況では、一つ損失補てんという行為がいろいろな手口で行われるということで、非常に省令に列記するというのが難しいという問題もあったと思います。  それからもう一つは、通達を出しまして、御指摘のように営業特金適正化しようとすれば、どうしてもトラブルが起こって損失補てんが発生するんではないか、そういうことが予想できなかったかという御指摘でございます。この点につきましても、確かに振り返ってみますと一月から急落をしたわけでございまして、その過程営業特金適正化を進めていくということになりますと、どうしてもトラブルが起こり、あるいは損失補てんというようなものが起こってくるということは、振り返ってみればそういう点で、証券会社通達指導にもかかわらず通達発出後も損失補てんをやむを得ず行った、こういうことを報告をしてきているわけでございますが、当時通達を出しましたときに、言いわけになって恐縮でございますが、一月からの急落というものがそれほど予想されていたという状況でもございません。十二月まで非常に株式市況が好調でございまして、そういう好調の中では営業特金適正化がそういうトラブルなしに何とかできるんではないかという判断があったということも、これも事実でございます。その辺のところの考えが甘かったと言われますとそのとおりでございますけれども、当時の状況では、通達発出後にあれほどの急落になるというふうな予想がされなかったという点も事実でございます。  いずれにいたしましても、この損失補てんという問題につきまして過去に幾つか例があり、しかも十一月にこれほどの大きなものが生じたときに省令で対応せずに行政指導通達ベースで対応したという点については、振り返ってみますと確かに甘い点があった。あわせて営業特金適正化、これは一-三月で全部適正化しろというような指導をしたわけではございません。ある程度の猶予期間を置いて適正化をしろ、しかも解約をしろということまで言ったわけではございませんので、ただ、たまたま三月というのは決算期でございまして、営業特金をその段階である程度、事業会社、法人の方から見ますと、ある程度の成績を三月決算期に上げたいというようなこともあって、トラブルあるいは損失補てんというようなものが膨らんだという事情もあるれけでございますが、確かに御指摘のように、この通達による取り組みというものが結果として非常に甘い行政であったという点の御批判は、我々としては非常に反省をもって受けとめているところでございます。
  11. 松永光

    松永委員 私は、この通達が守られなかったというのは非常に残念なことだと思っておるのです。普通は日本の場合には、ほかの役所、庁の通達行政指導日本業界はよく聞くのですよ。そういう意味では大蔵省証券会社からなめられておったんじゃないかなとすら思う。でなければ、通達趣旨、そういった。ものが必ずしも徹底してなかった。徹底世しめる場はあったはずなんだ。それをこの間、日興の岩崎さんが証言しておりましたね。四社の社長会、一カ月に一遍あって、大蔵省審議官以上の人に来てもらって、そして協議するんだという話がありましたが、私はそういう会は意味のある会だと思っているんだ。それは産業界実情というのは、役所の中ではなかなか本当はとれないからね。やはり飯でも食いながら、ざっくばらんにこの業界実情を上の方の人がよく把握する。意味のあることなんだ。ただしかし、岩崎証人が言うように、単なる雑談ですよ、あれは。やはり業界実情を把握する、そういう場として活用するならば大変意味のあることだ、私はそう思うね。そういう場でもこういったことについてきちっと真意を説明する、こういったことで通達徹底化を図るべきじゃなかったのか。あるいは、その後も月一遍の会合は続いておるわけでしょう。そういう場でもこの趣旨徹底が図られたはずだと思うのだけれども、そういう点、どうですか。
  12. 松野允彦

    松野(允)政府委員 確かに私ども、四社の社長と定例の会合を持っております。あるいは各担当レベルでもそういう会合を持って、証券行政の考え方あるいは証券業界証券市場状況というものについての意見交換をしているわけでございます。その場でこの通達趣旨については当然説明をし、営業特金適正化とあわせて損失補てんというものが不適正な行為だということで、そういう機会をつかまえて十分指導をしてきたというふうに考えるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、結果としてこの市場急落過程証券会社トラブル処理あるいは営業特金損失補てんというようなことで、やむにやまれずやってしまったという点について、そういう場での徹底も十分ではなかったのではないかという御批判、これは私ども同じように、通達行政ではございますけれども、おっしゃるように通達というのは、免許企業でございますから、当然普通の場合は守られる、あるいは我々としても守らせるという責任があるわけでございまして、この件についてはたまたまそういう格好になってしまったという点について、大変深く反省をしているわけでございます。
  13. 松永光

    松永委員 この問題が起こると、世間で言われたことは、大蔵省業界との癒着ということを随分言われたね。癒着があればなめられて通達が守られないんですよ。もちろん、大蔵省の役人をしておるような人は有能な人が多い。で、その能力を買って民間会社で来てくれということでその会社に行く。退官後のその人の生活権を害するわけにはいきませんからね、これは。これは結構なことなのでありますが、しかし大事なことは、役所に勤めておった人であればなおさらのこと、役所のことをかさに着たり、あるいは自分の前歴をかさに着たりした行動をすることは、これは許されないです。慎まにゃいかぬ。よその役所関係者は大体慎んでいると思うけれども、どうも大蔵関係が慎んでいないという風評もあるね。だからなめられるんだよ。そういった点は厳しく対応していかにゃならぬ。しかも、有能だということを大蔵省関係者が言っちゃだめだよ、ほかの人が言わなければ。非常にきざに聞こえたね。私はそう思う。  そこでもう一つ聞きますけれども、次は東急株の問題です。これもこの委員会における質疑の中で明らかになったことでありますが、あろうことか、これはもう全くあり得ないことが起こったという感じを私はします。それは、暴力団が東急電鉄株を八九年の四月から九月、十月初旬にかけて千数百万株が、あれは二千万株を超えているのかな、そういう株を暴力団は手にしたんだな。その後に野村は盛んに推奨して、全国のいろいろな店で、この株は必ず上がります、五千円まで行きますなどという推奨をして、そして値をつり上げていったということでありまして、結果的にはそういう好ましからざる団体の関係者に巨額の利益を与えるという可能性を与えてやったわけだな、これは。株価操作事件、過去にも何件もあったようでありますが、これほどの反社会的な株価操作ないしはそれに類する違法、不法な行動はないというふうに私は見ますね。  で、これも田渕証人証言にありましたけれども、その東急電鉄の推奨販売について大蔵省の定期検査指摘をされて、反省しておるという証言がありましたけれども大蔵省は定期検査でどういう事実をつかんだんですか。その事実をつかんでおるから厳しく注意したんでしょうから、それをおっしゃってください。
  14. 松野允彦

    松野(允)政府委員 東急電鉄株の売買の状況につきましては、野村証券に対します直近の定期検査におきまして、野村証券が元年の十一月に社内資料で東急株を取り上げまして、非常に多数の営業店において東急株のシェアが非常に高くなっているというような状況にあるという、そういう事実。それから、その中には短期間の間に反復して売買しているお客がいるというような、そういうお客が多数認められるというような事実を把握いたしまして、野村証券の営業姿勢、推奨、投資勧誘態度というものに問題があるんではないかというようなことを指摘していたところでございます。  現在、引き続きまして検査を続行しておるわけでございまして、そういったような事実は定期検査でつかんだわけでございますが、それを踏まえまして、今具体的に各営業店におきます営業の推奨のやり方、御指摘のようないろいろな情報、報道がなされております。そういう点も踏まえまして、必要の場合には勧誘を受けた投資家に対してもその間の事情を聞くというようなことを行っているわけでございまして、私どももこの問題、御指摘のように暴力団関係者が大量に買った後で推奨が始まり、高騰が始まったという点、まあ野村証券が取り上げた理由がいろいろあるにいたしましても、そういう一連の状況を見ますと非常に軽率である、非常に問題があるというふうに感じているわけでございます。  残念ながら、現在までのところ、その暴力団関係者が買った株を高く売り抜けるために意図的に株価を操作して高騰させだというような事実を証明するものは見つかっていないわけでございますが、そういった一連の流れを見ますと、そういうふうな疑いもあるわけでございます。そういう点も念頭に置きながら、検査を精力的に進めているところでございます。
  15. 松永光

    松永委員 私は、この我が国証券市場信頼回復のために新しい法律をつくって、あるいは法律改正をして、そして再発を徹底的に防止するということは非常に大事なことだと思う。しかもこれは急がなならぬことであると思いますけれども、その前にやるべきことは、不祥事を起こした人が法令に違反するならば、厳正な処置をするということが大事なことだと思う。不祥事を犯した人がぬくぬくとしておっては、また同じことをする人が出てこぬとも限らぬわけだ。悪を犯した人が厳正な処置を受けるということが、ある意味では二度と起こらないようにするために非常に大事なことだと思う。その意味で、あれですな大蔵省証券局証券会社に対して特別検査に入っておると、こういうお話でしたな。この特別検査、私は大車輪でやって、そして例えば九〇年三月期以降の分、九〇年四月以降の分等についてありやなしや、こういった点も速やかな検査をして、あったならあったと、これだけやと、なかったらなかったと、はっきりさせることが信頼回復の第一歩だというふうに思いますね。  同時にまた、野村証券の場合にはこの東急電鉄株の推奨販売の問題等について証取法違反に該当するような事実があるかないか、それは最終的には検察庁が頑張っていただかなならぬと思うけれども、そういった点を速やかにやらにゃいかぬ。おくれればおくれるほど国民信頼回復がおくれる。そうすると我が国国益の回復はおくれるわけでありますから、事は重大でありますので、できることなら私は九月いっぱいぐらいには、今国会中にはこうでございましたということを、国会で概略でもいいから、中間報告でいいから、できる程度のスピードアップで頑張ってもらいたいなと。人手が不足しておることは承知しておるけれども、承知しておるけれども証券局長、部下を督励して頑張ってくださいな。どうですかな。
  16. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、この特別検査によりまして、九〇年四月以降の損失補てん状況あるいは東急株の今御指摘のような問題、すべてを含めまして今鋭意検査を進めているところでございます。私どもも四社同時に入っておりますものですから、非常に検査官が手薄といいますか、勢力は分散はしておりますけれども、ともかくできるだけの努力を払って全力を尽くして現在検査に取り組んでいるわけでございまして、今御指摘のような点も念頭に置きながらできるだけ早く検査を終了し、しかもその中に問題のある事故が起これは、これは証券市場信頼回復のためにできるだけ証券会社に対してその内容を明らかにするようにということを指導してまいりたいというふうに思っております。国会中にという御要請でございます。これは十分念頭に置いてやっていきたいというふうに思っております。
  17. 松永光

    松永委員 きょうは刑事局長、御苦労さまですが、これも今委員会調査等で明らかになったことでありますけれども、今回の証券不祥事関係で野村証券が商法上の特別背任罪あるいは証券取引法違反、株価操作の罪として関係者から告発されておる。その告発を東京地検は受けておるということを聞いておったわけでありますが、その告発に基づいて、私どもの得ている情報では東京地検、関係者の事情聴取を始めたというふうに聞いておるわけでありますけれども、私ここで刑事局長に申し上げたいのは、今度の証券不祥事は、冒頭申し上げたとおり、ある意味では我が国経済の名誉がかかっているような不祥事が起こっておるわけでありますから、そしてまた、これを速やかに真相を解明して、そして刑罰法規に触れるような行いをした者があったとすれば迅速な手続を進めるということが私は国民信頼回復の前提条件だ、こう思うわけだ。  だから普通の告発事件とは違う。随分いろんな事件の告発はあると思いますけれども、これはそ、ういう特殊な極めて重要な事件でありますので、私は何も別に人を片っ端から罪へ落とせとは言いませんけれども、疑惑については厳正に、そして特に迅速に徹底した調べをして、そして国民の前に明らかにする。そのことが、冒頭申し上げた、今回の不祥事国益を著しく傷つけたわけでありますから、速やかに市場信頼回復、あるいはまた、諸外国日本の経済はアンフェアだ。などという非難の火の粉が降りかかってくるわけでありますから、それをはねのける意味でも、今回の告発は特別重要な事柄という認識のもとに、迅速に厳正に真相解明にひとつ入っていただきたい、そして頑張っていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、この関係について、まあ捜査に入っておるとすれば言えないこともあるでしょうから、言える範囲内で、経過とそれから今後の方針をお話しいただければありがたいと思うのですが。
  18. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  委員今仰せのように、野村証券関係いたしましていわゆる東急株の株価操縦事件、いわゆる証券取引法百二十五条二項違反でございます。及び損失補てんが商法上の特別背任罪に当たるという告訴。告発、これらが係属しておることは、当委員会でも何回かお答えをしたとおりでございます。こういった告発を受けまして東京地検におきましては、その告発事実の有無を中心といたしまして、目下関係人の取り調べあるいは証拠資料の収集といったことを行いながら捜査をしておるところでございます。  ところで、厳正、公平に早くやれというお話でございますが、ここ数年、委員御案内のとおり、財政経済関係罰則に違反をする事件が非常に多発をいたしておりまして、その中で傾向としては非常に大型化しておる、あるいは複雑化しておるといったようなことが見受けられるわけでございますが、こういった事犯に対しましては、もう委員既に御案内のとおり、検察におきましては、それぞれの事件につきましてここ数年精力的に取り組んでまいっておるわけでございます。これは我々といたしましても、法務、検察といたしましては、そういった事件をひとつ検察の重点事項といったことで取り組んでまいっておるわけでございます。  そういったことは前提として申し上げました上で、この具体的事件の話でございますけれども、具体的事件の話となりますと、私がいつも申し上げますように、見通しその他を申し上げる立場にはございません。しかしながら、委員仰せのとおり、マスコミあるいは先般来の国会の御論議といったものは十分検察も承知をしておるわけでございまして、そういったことを踏まえて特別な意識を持って捜査に当たっておることは、私も十分推測し得るわけでございます。今後、さらにそういった気持ちでやっていくものと思います。その上で、事実があるかないか、証拠に基づいて適正、的確に判断をするものと承知をいたしておりますので、見守っていただきたいというふうに思うわけでございます。
  19. 松永光

    松永委員 御苦労だけれどもしっかり頑張ってくださるように。  以上で私の質問は終わりまして、残りの時間は穂積委員に任せます。ありがとうございました。
  20. 大野明

    大野委員長 これにて松永君の質疑は終了いたしました。  次に、穂積良行君。
  21. 穂積良行

    ○穂積委員 私は、この特別委員会でのこれまでの政府への質疑と、それから証人喚問、さらには参考人からの事情聴取を踏まえまして、総括的に今回の証券業あるいは銀行に係る不祥事につきましての問題の根源を明らかにするとともに、今後このような不祥事が二度と起こらないような再発防止について、業界についてどのように考えていただくか、あるいは政府の責任者として当局がどのように対処するかを質問したいと思います。いろいろ私の見方なり考え方を申し上げますが、最後にはぜひ大蔵大臣に、きちんとしたこの問題についての総括的な所見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  今から四、五年前、昭和の時代の終わりころに、私はこんな話を聞いたことがございます。ある一代で財をなした実業家の方が、これはまじめな人なんですが、こんなことを言った。今の世の中はどうもおかしい、何をやってももうかる、土地を買ってももうかるし、それから株を買ってももうかるし、物をつくれば売れに売れてこれももうかる、こんな世の中は本当にいつまで続くんだろうか、どうもおかしいぞ、こういうときには注意しなければならないとその実業家が言われたことを、私は記憶しております。これがあの当時、いわゆる財テク日本国じゅう、まあ全国民とは言いませんが、多少の金を持った国民まで含めて、財界、産業界に行き渡った雰囲気ではなかったかと思います。  このバブルの時代の状況がなぜ起きたのか、その原因を考えて、歴史を振り返って、現時点に立ってどう反省し、今後の政治においてどのように関係業界指導していくかということこそが課題であるかと思います。特に、財政あるいは金融政策については、この証券金融問題についての反省の上に立って、今後の政策推進を誤りなくすることが肝心だと私は思います。  思えば、このバブル時代の前は、国際経済社会の中で我が国の輸出はまことに好調で、膨大な国際収支の黒字が国際的に問題になった。日本だけがいい思いで経済発展をし、そして他国にそのしわが寄るようなことはどうか、特にアメリカ側から日本貿易摩擦ということで問題とされたわけでありますが、そのような経済摩擦の解消ということが国際的に問題となった結果、あのプラザ合意が成立したと思います。そのプラザ合意に基づいて、それまでの我が国がバブル経済としてああいう状況になっていったことに対する逆の方向での、まあどんな方向で健全な経済発展をさせるかということが課題になったかと思うのですが、そのバブル経済をもたらしたのは、そのプラザ合意による円高・ドル安、国内では金利安で、そして内需拡大。  まあ内需拡大と言えば、これは国民生活を真に豊かにしようという生活重視、そうした政策を進めようということの裏腹でありましたが、それが実はこの円高・ドル安のもとでのお金のあり余るような状況、過剰流動性資金というものが、内需拡大で真に国民の生活を豊かにするということに結びつかないような面でおかしなことが出てきた。それが土地価格の上昇であり、株価上昇であり、さらにはこれらに関連して、ゴルフ場の会員権を買えばもうかるわ、さらには絵を買えばもうかる、荷がとにかくもうかりそうなものに金を投ずればそれが上がってもうかる。一億総財テク時代、バブル、こんな状況になったのがあの状況だったと思うのですが、このような状況というもののもとでいろいろ、とにかく土地の値段も上がり株も上がる、ほかのものも上がるという中では表に出なかったような、本当は足を踏み外した実業界が虚業に走ったということのツケが、今日こうした問題の根源をなしていると私は思うのであります。  そのようなことを考えますとき、あのプラザ合意の結果とられた財政金融政策と、それからその結果引き起こしたバブル状況ということについて、今のような見方について、私の見方のように言ってよろしいか、まずは大蔵大臣、それに金融政策責任の一端を担う日銀総裁、それぞれに所感をお伺いしたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに今委員が御指摘になりましたように、昭和六十年九月のプラザ合意以降急速に進展いたしました円高のもとで、経済活動は停滞し、一方、物価は安定基調で推移いたしておりました。そうした中で内需中心とした景気の拡大を図りますために、政府は財政、金融両面にわたる経済政策を実施してまいりました。後ほど日銀総裁お答えになると思いますけれども、昭和六十一年一月以降、公定歩合も五次にわたって引き下げられてきておりました。そうした政策の効果もありまして、私は、我が国の経済というものが昭和六十一年末に底を打ちました後、内需中心の息の長い景気拡大を続けてきていると思います。その限りにおいて、私はこの政策選択が誤っていたとは思いません。  しかし他方、今委員からは国民財テクという言葉をお用いになりましたけれども国民財テクでなかった証拠、圧倒的多数の国民財テクという行動に走っておられなかった証拠と申し上げては恐縮でありますが、そのために、これは過去の土地高騰のときに土地政策として有効なシステムを我々がつくり上げていなかったこともありまして、また、その余剰資金の一部が証券市場に流れ込んだということもありまして、株高、土地高というものが生じてまいりました。その時期において、国民の中に資産格差の拡大ということが一つの不公平として非常に強い指摘をなされていたことを思い起こしていただきたいと思うのであります。これは国民財テクではなかったということなんです。これはどうぞ御理解をいただきたい。  そして、そういう中で我々なりに、例えば土地に対して、大蔵省の立場で申しますならば税制において、あるいは総量規制という手法において対応策は講じてまいりましたけれども、そうした中で、例えば投機的な取引が活発化し、あるいは潤沢な資金供給が図られているという中で、一部の金融機関において内部の管理体制が確立されないままに安易に業容の拡大、収益第一主義に傾斜していった部分はあるのではなかろうか。証券市場においても収益中心といった行動が、むしろ証券マンとしての倫理とは別に評価の対象になり、今日のような事態を招く原因をつくったのではなかろうか。もちろん、それに対しての行政監督の責任を持つ我々が適切な対応が不十分であったということもあわせて、私は今、事態をそのように受けとめております。
  23. 三重野康

    三重野参考人 お答えします。  今大蔵大臣がるるお申し述べになりましたので、私からつけ加えることは少のうございますが、委員の御指摘の流れに沿ってもう一度金融政策の流れを申し上げてみたいと思います。  委員が御指摘になりましたように、プラザ合意のときに、あのときに日本は大幅な対外不均衡を是正するという大きな国際的命題を背負ったわけでございます。そのために、物価を安定させながら、しかも円高・ドル安の不況の中にあって輸出主導型から内需主導型に経済構造を変えていかなければならない、そういう大きな流れの中で政策運営が行われたわけでございまして、今大蔵大臣もおっしゃいましたが、六十一年から六十二年にかけて五回公定歩合を下げたのもその線に沿ったことだと思います。それが今日の、イザナギ景気を超えるか超えないかという長い景気拡大をもたらしたことは事実でございますが、これまた委員が御指摘のとおり、資産価格の上昇、いわゆるバブル経済を招いたということもこれは事実であります。  もちろん、私どもはその後公定歩合を引き上げて引き締めに転じましたが、その間が長過ぎたんじゃないかという御批判はあることは十分承知しております。ただ、そのときは物価はゼロインフレだ、しかも対外不均衡是正というのはまだなかなか進まない、そういう状況のもとでなかなか引き締めに転じなかった。それが、対外不均衡の是正もある程度完成し、景気も軌道に乗ったところで引き締めを始めたわけであります。しかし、これ一は弁解を幾らいたしましても、結果はバブル経済を生み出したということはそのとおりでございまして、私どもがその後五回にわたり公定歩合を引き上げましたのは、もちろん物価の予防的引き締めということではございますが、そういうバブルの是正ということを十分視野に置いての上のことでございます。しかし、ここにおいて私どもは大きな反省材料を得たと思っております。それは、やはり金融緩和のときに、単なるフローの物価だけではなくてストックのプライスにも十分配慮した政策を行っていかなければならないということでございまして、これは今後の金融政策の運営について十分反省材料として努めてまいりたいと思います。  そういう大きな政策の流れの中にありまして、委員指摘のとおり、例えば一連の不祥事件が起きたわけでございまして、この不祥事件はもちろん、例えば金融機関について申しますならば、これは表面的には内部管理の不備でございます。しかしそれはもっと奥底まで参りますと、やはり経営姿勢ということに到着すると思います。それは、今申し上げました政策の流れの中にあって、金利の自由化、国際化、バブルの発生、是正、そういう中にあって、当然金融機関の経営姿勢というものがそういうリスク管理を変更しなければならないのにもかかわらず、業容、収益ともに量優先という政策をとったことが今日に至ったと思います。  もちろん私は、多くの金融機関がこういう中にあっても立派に職務を遂行していることは知っておりますけれども、今回の事件を契機としまして、事件を起こした金融機関だけではなくて、取引先金融機関全体に対しても経営姿勢の再点検を要請しておりまして、それは今後、要請するだけではなくて、日々のモニタリングあるいは実地考査を通じてそれが適正に行われるように、私どもとしても努力してまいりたい、かように考えております。
  24. 穂積良行

    ○穂積委員 大蔵大臣おっしゃるように、確かに国民全部が財テクに狂奔するということではなかった、それは事実だろうと思います。しかし、一番こういうことについてきちんとした姿勢で営業をすべき銀行の状況は、あの当時はそれこそ、片方では預金高競争、そして預金がふえるようなことなら多少無理をしてでもというような風潮、そしてあり余るほどの今度は預金の貸出先、安全有利な運用ということを考えるとどこに貸すか、こんな状況で、まあ多少問題があってもと言ってはなんですが、貸付先を見つけるのにいろいろ工夫をした。その一つが、例えば系列下のノンバンクなど子会社などを通じて、実業と私は言えないようなそうした分野にも金が流れる。利息を稼げればよいというような風潮がびまんした、こんな感じがするわけであります。まあそのときに片方では、預金金利よりは株の方がもうかりますよ。株が一本調子で上がっていく、そういう中で、銀行よさようなら、証券よこんにちはといううたい文句に乗せられて、今度は株の市場が活況を呈してあんな状況になっていった、こんなことですね。  そうした中で、実は国民、特にまじめな国民からすれば、この状況は一体何だ、何やってももうかるということでもうけている連中はおれたちとは無縁の連中だ、おれたちにしてみれば、特に過剰流動性を原因とする結果と私は思いますが、地価上昇、土地が値上がりして、本当に生活重視、ゆとりある生活ということで持ち家を持とうとしても、土地が高くなって持ち家なんてとても夢のまた夢という状況になった、地価問題。そこで、土地の価格を引き下げるためにあらゆる努力をしなければならないということで土地政策が進められた、こういう経過がありますね。土地基本法に基づく諸施策、それと並行しての金融政策、特に総量規制、日銀では窓口指導ということで、このバブルを抑える方向に今度は政策の大転換が図られたという経過ですね。  そのようなことで、今度は一本調子にいろいろなものが上がり続けということから、まずは土地の値上がりの抑制、さらには窓口指導その他からして、今度は株もそうは一本調子でなくなるということで、歯車が逆に回り始めたという、そう回すような政策がとられた、そうして今度はそのバブルがはじける過程に入ったところでさまざまな不祥事が表に出てきた、こういうことですね。そう私は理解いたします。  その一面は、先ほど松永委員からるる御質問がありましたように証券市場の問題ということだと思いますが、特に証券関係では、私は二、三点お伺いしたいんですが、一つはこの平成元年の十二月の例の証券局通達。あの通達で、どうもやはりいわゆる営業特金、特定金銭信託契約に基づく勘定を利用した取引というものについてきちんと始末をしろということを言い、かつ同時にきちんと、もう損失補てんはするな、そういうことを言った。それが証券会社への証人喚問で証人側が言ったように、まあ補てんをどういう形でか行わなければその営業特金の始末ができないということでやってしまいました、申しわけありませんと、ここで何回も謝っている、こんな状況でしたね。で、それについて私は、やはりその通達を出すときにその関係を大蔵当局はどのように考えていたか、予測できなかったかというようなことについて、まあ私は多少大蔵省のこの通達を出すに際しての不用意なところがあったのではないかという気がいたしますが、これについては証券局長からきちっとしたお答えをいただきたいと思います。
  25. 松野允彦

    松野(允)政府委員  御指摘のように、平成元年の十二月二十六日付で通達が出ております。その通達は、一つは事後的な損失補てんを厳に慎む、それからもう一つ営業特金適正化する、つまり投資顧問づきにして営業特金でなくすという、あるいはそれがどうしてもできない場合は、利回り保証とか売買一任的なことをやらないという確認書をとるというような指導を始めたわけでございます。  先ほども申し上げましたように、この十二月二十六日に通達を発出する段階では、株価、株式市況状況が順調であれば営業特金適正化、これは損失補てんの温床になるというようなことで、この適正化がぜひとも必要だという判断をしていたわけでございまして、その適正化を行うということが結果的に損失補てんをやらざるを得ないというような状況になるというのは、通達発出時点では恐らくそういう判断はなかったというふうに考えられる。それは、株式市況が年末まで非常に好調だったということもございます。一月から株式市場急落を示したわけでございまして、通達発出時点の判断としては、営業特金適正化という問題については、もちろん一年という時間をかしているということもございまして、これが損失補てんあるいはトラブルを招くというような判断は必ずしもそういうふうなことにはならない、むしろ温床をできるだけ早くなくし、損失補てんというようなものが行われないように前提条件を整理するというようなことにはいいタイミングだ、そのタイミングが結果的にはおくれたというような御批判もあろうかと思いますが、そういう判断で通達を出したわけでございます。  結果的に見ますと、確かに御指摘のように営業特金適正化をめぐって、株価の急落局面でどうしても損失補てんを行う、あるいはトラブルとなってその処理を行うというような状況になり、証券会社がそれに対して、通達が出ているにもかかわらずそれを破る形で損失補てんを行ったという事実は、これは事実でございます。その点については、私どもも結果として見た場合に、この通達を出したタイミングがよかったのかどうかという点については大変反省をしなければならないという点もございますし、あるいは通達発出後その指導がなまぬるかったんではないかという点につ、きましても、これも私ども責任を痛感しているわけでございます。ただ、通達を出した段階の判断といたしましては、今申し上げたように、必ずその営業特金適正化をめぐって損失補てんが行われざるを得ないような状況になるというようなことの判断はなかったというふうに私は考えるわけでございます。
  26. 穂積良行

    ○穂積委員 今お話しのように、平成二年の一月の株暴落、株価下落でうまく営業特金の整理ができなくなったというような事情があったんで、それは予見できなかったといえばそれまでですが、問題はしかし、肝心の損失補てんはやってはいけないんだということを一本の行政通達で実現しようとしたところに、やはり今となっては無理があった、こういう感は否めないと思いますね。そういう意味では、これはこれからの国会の問題になりますが、証券取引法においてどのようにその辺をきちっと法律レベルの問題として措置していくのか、こういう課題があると思います。  この問題についてやはり現在残っているのは、大手の会社とか大口の顧客などはどういう形でかうまく補てんを受けたのに、おれはなけなしの退職金をもうかると思って株につき込んでしまった、半値に下落して大損したというような、風潮に乗せられて株に手を出した多くの国民からすれば、不公平感が残るのはこれは現実だと思いますが、この辺について、問題は補てんを受けれる企業なり個人と受けれない一般投資家、この間のどの辺でどう補てんをしあるいは補てんをしなかったということの理由をはっきりさせつつ、不公平感が残る国民にどう説明するかということだと思いますが、これは証券局長、どんなふうに思いますか。大蔵大臣、お答えですか。
  27. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど松永委員から、国際的な影響という視点からこの問題についてのお問いかけがございました。また今委員から国内の、まさに国民の空気を踏まえての御指摘がございました。本来なら双方あわせてお答えをし、完全なお答えとすべきでありましょう。  この事件と申しますものは、今委員が御指摘になりましたように、内外の一般投資家市場に対する心情というものを非常に大きく傷つけた。しかしそれ以上に、実は特定の人だけが有利な取り扱いを受けたということに対する不公平感というものを国民の中に広く行き渡らせてしまったということで、極めて深刻な問題を私どもに投げかけております。しかし、これはもう繰り返しおわびを国民にも申し上げてきたことでありますけれども、現実に一番多く例えば私たちに与えられる国民の声というのは、要するにそういう格好で補てんを受けた者のお金を取り返せないか、また取り返すべきだという声でありますが、実は今日、法的にはそういう行動ができる権限は我々には与えられておりません。法制度もそのようにはなっていないわけであります。  そういたしますと、私はこの前以来、この証券市場証券会社証券行政というものをめぐるさまざまな御議論の中から問題点五つに絞り込んでまいりましたが、一つ証券市場というもののルールの不透明さ、もう一つはペナルティーの問題、そしてもう一つ検査・監視機能のあり方、そして自己責任の問題、そして証券行政というもの、行政そのもののあり方、五つに問題を整理してまいりましたけれども、そうした視点から、この問題には各政党にもまた国会にも御協力をいただきながら、特定の者だけが利益を得た、それを取り返すこともできないのかという国民指摘に対しての答えを出していく責任が我々にはあると思っております。
  28. 穂積良行

    ○穂積委員 これについて、なお問題点指摘一ついたします。  それは、補てんをしたのはすべきでなかったことをしたという意味では、その証券会社は株主に対してこれは申しわけないことをしたという立場になりますね。それをどうしてくれる。本来ならばその分を益に計上して株式配当でも回すとか、そういうようなことでの株主との間の民事上の問題、さらには商法上、善良な株主に対して経営責任はどうだったかということでも商法上の、場合によっては刑事上の問題になるかと思うのですが、その辺についての問題認識をどのように持っておられるか、お答えいただきたいと思います。
  29. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、この場合証券会社でございますが、これは取締役が職務を会社のために忠実に行わなければならないというような規定があり、この義務に反した場合には損害賠償責任を負うというのが、商法の二百六十六条という規定がございます。さらには会社に損害を与える、害することをはかって任務に背くという、いわゆる特別背任罪という規定もあるわけでございます。証券会社は、将来の取引関係の維持強化のために行ったという説明をしているわけでございます。  私どもの立場といたしまして、そういうものが今申し上げたような商法の規定上どう評価されるかという点につきましては、これは個々の事実関係に基づいて民事訴訟あるいは刑事訴訟の中で判断されるべき問題ではないかというふうに考えるわけでございまして、私どもとしてこれについて見解を申し上げるという立場にはないことを御理解をいただきたいと思います。
  30. 穂積良行

    ○穂積委員 それはそうすると、他にこれを扱う行政当局ありということですね。  さて、株の業界でお客を証券市場に引き込む勧誘行為のあり方が、一つこれは問題としてあると思います。私もかつて商品市場の取締法について関与したことがありまして、商品市場では過当征勧誘行為を厳しく取り締まり、そして商品市場にお客を引っ張り込んで身ぐるみはぐような不祥事のないようにするという行政の歴史でありました。商品市場の場合には、客殺しはいけないよというような言葉まであるのです。  ところが証券市場の場合、勧誘のやりようなどについてさらに行政指導を強める分野があるのではないかと思います。先ほども話が出ておりましたけれども、損するかもしれませんよと言って株を買わせるというようなことはまずはないでしょうけれども、絶対もうかるからどうですかというようなことの物の言いようとかその辺、特に株の乱高下の状況ではその辺が客とのトラブル一つにもなることですから、こうしたことについての行政上の業界への指導についてはどのようにお考えですか。
  31. 松野允彦

    松野(允)政府委員 証券会社投資勧誘の行為状況につきましては、かねてから私どもも行き過ぎた勧誘行為をしないようにという指導を続けてきているわけでございます。しかし残念ながら、御指摘のように証券事故が発生するというようなことで、その内容を見ますと、行き過ぎた勧誘行為というものが見られるわけでございまして、これについてさらに指導を強化していく必要があるということもあるわけでございますが、それ以外に、例えば営業マンの成績評価に当たりまして、そういうような勧誘行為というものを、結局営業マンの成績、手数料の収入というようなものにある程度目標があるというようなこともあって、あるいはそれが成績評価で非常に重視されるというようなことも大きな原因になっているわけでございまして、そういう営業員の成績評価というものをもう少し変えていくべきではないか。手数料収入とかいうようなものだけではなくて、お客とのトラブルというようなものが起こらない、あるいはトラブルが起こった場合には、それはいかに手数料を上げていっても成績評価上非常にマイナスを受けるというような、そういう評価体系というものの見直し、それは営業マン個々の勧誘態度、勧誘行為に対する一つの方策でございますが、さらに証券会社として内部的にそういうものをチェックできるような、営業の一線でチェックをできるような体制を整えるべきではないか。  従来は、営業店における内部管理といいますのは、どうしても営業の中で行われるということで、営業の中で流されていたというような傾向もございます。今回、そういうことではなくて、内部管理をする人間は本社直属で別の部門に属するといいますか、そういう直接の担当役員に直属するというような形で、独立して内部管理ができるような仕組みをつくれというようなことも指導をしたわけでございます。業界におきましても、このたびこの問題が起こりまして、倫理綱領というようなものを発表いたしました。その中で、個人投資家に対する営業姿勢というようなものも大きな項目に挙がっているわけでございます。  従来からいろいろと指導してまいっておりますが、一必ずしも証券事故というものが防げてないということも事実でございます。今申し上げたような問題に加えまして、そういう行き過ぎた勧誘態度を営業マンのところでチェックする、あるいはそれができない場合でも社内管理でチェックするとか、いろいろな方法を考えて、行き過ぎた勧誘態度がないように、引き続ききめ細かい指導をしていく必要があるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  32. 穂積良行

    ○穂積委員 証券業界については、今後の金融自由化時代を考えますと、その経営基盤をどのように固めていくのかという課題があろうかと思います。その場合、問題の手数料ですが、現在は定率手数料ですね。アメリカは手数料は自由、こうした国の例などもありますが、この辺どんな方向でこの手数料問題に取り組んでいくのか。現在は中小証券は八割くらいが手数料依存だというのですが、その辺。これは手数料以外に稼ごうとすると、先ほどの、要するに自分が証券取引の当事者として入るということで顧客との関係がおかしくならないかという問題もありますが、そうしたこともあって、手数料以外の収入を証券業者がどう稼ぐかということもあるのですけれども、まずはこの手数料問題についての今後の検討の方向についてお聞かせいただきたいと思います。
  33. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 既に委員が御承知のように、アメリカあるいはイギリス、フランスなどにおきまして、株式委託手数料は当事者間の自由な交渉にゆだねられております。同時に、これらの諸国においてこうした現象が起きていると報じられておりますものの第一点は、機関投資家の手数料は自由化の結果低下した、しかし交渉力のない小口の投資家の手数料は総じて上昇傾向を示した、同時に、市場の機関化現象というものが促進をされ、市場における価格変動の幅は大きくなった。さらに、これはアメリカの例でありますけれども証券会社が手数料の減収を補うべく自己売買、またMアンドA業務に傾注しておる。また、大手証券会社への集中度が高まるなど、証券会社の財務、業務の健全性、ひいては証券市場の安定性に影響が生じてきている、自由化の結果として。こうした状況があることも御承知のとおりであります。  しかし同時に今、日本の株式委託手数料の問題を考えてみますと、数次にわたる引き下げの結果、現在の水準というものは海外と比較いたしましても遜色のない水準にあると言えると思います。しかし、それではこのままでいいのかと言われるなら、そうではありません。引き続きその水準につきましては機動的、弾力的な見直しを行われる必要はありますし、さらに手数料制度の制度そのもののあり方につきましても検討を進めていくべき課題だ、私どもはそのように認識しております。  先日来、御自分の提案を含めて、例えば自由化をした場合に小口の顧客の取扱手数料に影響が出ない仕組みはこういうふうなものではないかというような御意見をつけて見解を述べられた委員も、党派を超えておられるわけでありまして、私どもとしては、制度のあり方につきましても検討を進めてまいりたいと考えているところであります。
  34. 穂積良行

    ○穂積委員 今回の不祥事に対する証券業界についての措置として、やはり先ほども申しましたけれども証券取引法で補てん問題等を明らかにするということと、それからもう一つは、証券業界に対する指導監督体制をどのようにきちんとしていくかという課題があろうかと思います。そこで実は私は、いろいろ議論のある問題ですけれども一つの考え方を持っております。  戦後、公正取引委員会がつくられて、自由な資本主義経済の守護神としての地位を与えられ、活動を願ってきた、こういう経過があるわけですが、その公取も、かつての新日鉄誕生に際しての同意審決などで、とかくの論議もされたわけであります。これまでの公取のたどった道を考えると、さて公取にどのような今後の、先ほど言いました守護神としての働きをやっていただけるのかという課題がありますが、私は証券における公正な取引ということも、独禁法上これは守備範囲に入っていると思うのですが、もちろんそれは個人の取引ということになると外れるということのようですけれども事業者間の証券取引の公正さを保持するということは、これは独禁法上、公正な取引方法ということの中にも読める話であると思いますし、今回、片や大蔵省証券局指導監督をしているとはいいながらも、公正な取引の保持という意味では公取は一言あってしかるべきではないか。また、今後の組織論としてこうした分野での活動を広げていくというようなことを、これは公取自体は答え方が難しいかもしれませんが、立法政策として一議論あっていいんじゃないかと思います。  それについて公正取引委員長の、証券の公正取引ということでの公正取引委員会の立場と、今申し上げた今後の組織問題についての所見を伺いたいと思います。
  35. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたように、独占禁止法という法律市場経済体制の公正な自由な競争の秩序を守る、そのために公正取引委員会が設けられておりまして、大変強い権限と強い使命を与えられておりまして、私ども日夜そのために努力をしておるわけでございますが、さて今の証券会社をめぐる各種の取引について、独占禁止法との関係につきまして若干見解を申し述べさせていただきたいと思います。  独占禁止法では、大きな規制の分野といたしまして、私的独占あるいはカルテル、もう一つは不公正な取引という領域がございます。前者の領域につきましては、これはいわば独占禁止法固有の領域でございまして、証券会社であろうと銀行であろうといかなる会社であろうと、業種を問わず私的独占なりカルテルの行為があった場合には、専権的にこれは公正取引委員会責任を持って規制すべき分野でございます。   一万の不公正な取引方法の分野につきましては、各種の不公正な取引方法というものが法令上行為類型が規定されておりまして、その一つといたしまして、正常な商慣習に反して不当な利益を供与することによって顧客を取引に誘引する、これは不公正な取引方法の一つの類型として規定されておるわけでございます。この独占禁止法の不公正な取引方法の構成要件の考え方というのは、先ほど委員も御指摘になりましたように、事業者間の公正な競争、本件についていえば証券業者間の公正な競争という観点からこの構成要件というものはつくられておるわけであります。その点から見ますと、今回のいわゆる損失補てんという形での利益供与が、行為の態様によって不公正な取引方法に該当するということは十分考えられます。  ただ、翻って考えてみますると、証券取弘法領域におきましては、独占禁止法が事業者間の競争という観点に比べまして、むしろ端的に投資家相互間の平等な取り扱いと申しますか、そういった観点も含めて投資者保護の観点から、損失補てん自体を違反する行為あるいは不適当な行為として規制されておるというところで、いわば今回のような問題につきましては、やはり証券取引規制を所管する所管庁におかれましてこれを規制される、それは行政機能の重複を避けるという観点からもそういった所管庁において直接規制されることが期待されておるし、かつ有効であるというのが基本的な考え方であろうと思うわけであります。  今回の問題発生に当たりまして所管庁の方から、先般大蔵省が特別検査を実施されるに当たりまして、今後所管庁として事態を究明し、かつ事態の是正を図るためにいろいろな手を打つという連絡を私ども受けておりまして、その観点からは、しばらく現在所管庁である大蔵省が進めておられる措置なり施策あるいは検査の結果等を見守るべきであろう、それが適当であろうというのが我々の判断でございますし、その上でなおかつ公正取引委員会として、不公正な取引に該当するものとして措置をとることが適当であるかどうかという判断をするのが、私ども時点での考え方でございます。  なお、最後に申されました今後の証券取引規制をどうするか、あるいはそのための有効な行政組織をどうするかというのは、まさに今政府全体あるいは国会等でも御議論になっておる問題でございまして、冒頭に申し上げました独占禁止法を規制する、それを所管する公正取引委員会の所管の範囲あるいは責任という観点から見ますると、ただいまの委員の御質問に直接お答えを、あるいは見解を申し述べるということは適当でもありませんし、またそういうことは申し上げることは差し控えなければならないというふうに考えております。
  36. 穂積良行

    ○穂積委員 この問題は世上には、要するに証券業の育成などを一生懸命考えなければならないセクションと、これを厳しく行儀作法を監督するというセクションが同じところでいいのかという議論もあるわけです。特にこの問題については、例えで言いますと、大蔵省は例のNTTの株をできるだけこれは高い値段で売りたいという気持ちもあろうし、これからもJRの問題などを考えればそういう立場が一方にあるのではないか。そうした大蔵省のいろいろなセクションと、証券行政証券業を監督するセクションというものが同じ大蔵省の中ではどうかという議論がありますね。  そこで大蔵大臣、あなたはかって行政改革についても、党にあって敏腕を振るわれました。尊敬しております。行政機構は、むやみにこれは理由なしに拡充するというわけにはいかないけれども、必要なものはきちっとつくっていく、必要なら要員もふやすということだろうと思いますが、ただ、アメリカのようにSECのような機構を別途つくるということがいいのか、あるいはせっかく業界に対する客観的な立場での監督などを行う公取という役所があるんだから、その公取にこの問題についても一つのセクションを設けるか、大蔵からある部分を移すかしてつくるというようなことなども検討の課題ではないかと私は思っておるのです。これについて、大蔵大臣のただいまのお気持ちをお伺いしたいと思います。
  37. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今既にもう委員が御承知のように、当初事件発生以来、大蔵省として全力を挙げて再発防止に取り組む一つの中で、プロジェクトチームを編成し検査・監視の体制の問題についても検討を開始いたしましたものが、その後総理から御要請があり、行革審がこの問題についての検討を引き受けていただき、しかも明年度予算編成時に間に合うようにその結論を出すという御意思を示していただきましたので、八月十九日の行革審において、私どもが今まで検討してまいりました内容を全部御説明をすると同時に、この問題について行革審の御検討を待っている姿勢にあることは御承知のとおりでございます。  そこで今私は、委員の御指摘について二つのお答えを申し上げたいと思います。  まず第一に、公正取引委員会を活用するという言い方は、委員長がおられる前で失礼でありますけれども、その公正取引委員会を活用するという手法についてどうか。私は、これは一つの御見解として承らせていただきたいと思います。  と同時に、これについて申し上げたいことは、例えばアメリカのSECがよく証券取引一つの機関として例示に出てまいりますけれども、イギリスにおいては御承知のように大蔵省の権限のもとSIBがあり、自主規制団体がありという仕組みがございます。日本証券局がその行政を主管している。これらで共通いたしますことは、まず第一に、自主規制団体というものが神よし団体ではない、そして相当な自己規制機能を持っている。取引所もまた同様であります。そして、それを前提として証券行政、登録制、免許制あるいは認可制、それぞれの国の制度の違いはありますけれども、そのいわばスタートから最終までの段階はどこの国でも一貫した行政が行われているということであります。また同時に、公務員の経験をお持ちの委員として、局ごとの行政というものが他局に影響されて行われるものではない、これは証券局においても同様でありますが、そういう仕組みであることも、委員御経験から御理解がいただけると思います。  そこで、私どもが八月十九日に行革審に、プロジェクトチームとして検討してまいりました内容を御説明いたしました。それを簡潔に申し上げたいと思います。  まず第一点で、私ども検査機構というもののあり方を考えましたとき、問題意識を持ちましたのは、その所掌事務というものを考えますときに、行政機能と検査機能の両機能の所掌のあり方と、証券と銀行の両業務の分野の所掌のあり方をどうするか。もう一つは、検査権限というものを現行の法体系の中で与えられている範囲に限定して考えるのか、あるいは現行の権限を越えて準司法的権限をも持つべきかどうか。また検査対象は、現行法では証券会社及び銀行のところでとまっているわけですけれども、その取引先まで及ぶようにすべきものであるかどうか。  さらに、告発あるいは行政処分との関係についで、検査の結果というものを司法当局への告発及び行政処分にどうつなげるか。また、行政処分の適正さを確保する、担保するためにどのような所掌、仕組みが考えられるか。さらに、取引所など自主規制団体との関係で、新しい監視機構というものは自主規制団体の機能が強化され、自己規制能力を持つことを想定するかしないか。それと同時に、人的な体制の上で、採用、訓練、人事、処遇等をどう考えるべきか。またもう一つの問題として、責任体制、すなわち内閣に対しあるいは国会に対し、どのような責任を持つ組織にすべきか。こうした問題点を、私ども問題点として認識をいたしました。  その上で、所掌事務につきましては、行政機能と検査機能の両機能の間には一定の節度ある距離というものが保たれることが必要である。そして同時に、どうしても必要とされる両機能間の連絡調整というものにつきましては、これを実質的には維持する必要がある。また、金融証券の両市場というものが相互連関を強めております今日、ざらに今後予想される金融制度改革による相互参入といった問題を考えますと、やはり金融証券市場というものを視野に置いた検査機構というものが望ましいのではなかろうか、そんな問題意識を持ちました。  また、権限につきましても、調査権限、検査権限につきましては、現在のような任意的な検査権限だけではなく、ある程度の準検察的権限を持たせる方が望ましいのではないだろうか。今は御承知のように、取引先の方に口頭で聞くことはできましても、その方の言っておられることに対して資料を見せていただくことができません。こうしたことを考えますと、多少は権限が拡大すべきではないだろうか。それと同時に、やはり行政検査というものが適正に行われることを制度的に担保する意味でも、第三者的にそのチェックあるいは助言をいただく何かの仕組みを考える必要があるんじゃないだろうか。また、やはり取引所など自主規制の関係については、諸外国でもそうでありますけれども、自主規制機関というものが政府の規制と並んで一定の重要な役割を担っていただくようにしていくべきではないだろうか。私どもとしてはこんな問題意識を持っておったわけであ一ります。  これを八月十九日の行革審にすべて御報告を申し上げ、御審議をゆだねております。
  38. 穂積良行

    ○穂積委員 今の問題の意識についてはよくわかりました。この問題は、なお引き続き、これは自民党内でもいろいろ議論のあるところですし、与野党ともこれは勉強していく話ではないかと思います。証券関係では証取法の改正をどうするかということは、また関係委員会で御議論いただくと思いますので、このくらいにいたします。  さて、これは日銀総裁にもぜひ大蔵大臣とともにお聞きいただきたいのですが、現在の総量規制、確かに効果があらわれております。その結果、不動産業者の中には倒産に追い込まれている一という例もかなり出ているわけですね。不動産業にとどまらず、この総量規制の中で日本経済全体が、これ以上この状況が続くと落ち込んでおかしいことにならないかということが懸念されております。そういうことからしますと、現在の総量規制についてどうするかということは、財政金融上の一大課題だろうと思います。日銀の窓口指導ですか、窓口指導については既にこれを解消しているということですけれども、この問題について、いずれ総量規制緩和という方向をとらざるを得なくなると思いますが、そのタイミングと、それからこの総量規制を外してまた不祥事のもとになるバブル状況などが出るということでは、これはいけない。そうしたことを考えて政策を進めなければならないと思います。そういう意味で、この辺、現況をどうとらえ、さてこの難しい問題についてどんな姿勢で今後取り組んでいくかについて、大蔵大臣と日銀総裁と、一言ずつお話をいただきたいと思います。
  39. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 便宜、私から先にお答えをいたし、その後、日銀総裁の御見解をちょうだいしたいと思います。  この総量規制という考え方を取り入れました理由は、既によく委員も御承知のとおりに、我々本来、土地の問題につきましては国土計画なり都市一計画というものが先行すべきものであると考えてまいりました。しばしば本院でも、私はそのように申し上げてまいりました。そして、今はおかげさまで土地基本法を制定していただいたわけでありますが、それ以前からの流れの中で、地価高騰に対し何らかの歯どめをかけなければならないというときに、非常に強く御要請のありましたものは、一つ金融であり、一つは税制であります。片方は、地価税という形で御協力をいただきました。そして、金融につきましてしばしば通達を発出して不動産に対する融資を規制してまいりましたが、十分な効果が上がらないということから、総量規制に踏み切ってきたわけであります。今、おかげさまで一部では地価の下落が報ぜられるといったところまで参りまして、総量規制の効果は着実に出てまいったと思っております。そして一方では、今委員が御指摘のように、最近、建設あるいは不動産関連企業におきまして資金繰りなど逼迫をしているといった声が上がってまいりまして、業況悪化の兆しかあることも承知をしております。  しかし、やはり総量規制の基本的な考え方というのは、本当に内需拡大に必要な、あるいは新しい宅地開発に必要な資金を抑え込むということでないことは御承知のとおりでありまして、これは各金融機関が十分御判断をいただかなければなりませんけれども金融面からもその地価対策に積極的に取り組むということで今日まで進められてまいったものであり、金融機関の融資全体の中において均衡のとれた水準をということで求めてきているものでありますから、その点は私どもなりにその効果というものも見ておるわけであります。これはもとより非常の手段ですから、いつまでも続けるという性格のものでないことは、これは間違いありません。しかし、ようやく効果が出てきたというところでありまして、私どもといたしましては、なお、その効果を注意深く見守っております。今後、金融経済状況その他を考えながら、もちろん適切に対応しなければならないことはおっしゃるまでもありません。  そこで、今後どうするかという御指摘でありますけれども、これは私どもとして、ことし一月二十五日の閣議決定をいたしました総合土地政策推進要綱におきまして、今後における状況の中で、また、「土地関連融資が急増し、地価高騰の恐れが生じた場合に、総量規制がタイミングを逸することなく効果的に発動される仕組みを創設する。」とされておりまして、この仕組みがどうあるべきかについて現在検討を進めている最中でございます。
  40. 三重野康

    三重野参考人 私ども現状判断を申し上げたいと思います。  先生御案内のとおり、七月」一日に私どもは公定歩合を〇・五%下げまして、それから約二カ月たっているわけでありまして、その間の情勢をご単に申し上げてみたいと思いますが、日本経済はこの間拡大基調は続けておりますが、引き続き緩やかな減速といいますか、テンポはスローダウンしていると思いますが、ただ、かなり高いとごろからの減速でございますので、現在の経済活動のレベルはまだかなり合同いところにある。したがいまして、物の需給あるいは雇用というものも、ひところに比べますとやや需給が緩んではきておりますが、まだ全体としてはタイトさを持っていると思います。  この先を考えましても、設備投資個人消費ともに、これもひところに比べると弱くはなっておりますが、いまだにやはり底がたさは持っていると思います。したがって、ここで直ちに景気が失速するとかあるいはスローダウンが加速するとか、そういう状態にはないと思っております。その間にありまして、先生御指摘のとおり、不動産業等における倒産は増加しておりますが、不動産業全体としてはまだ非常に悪いというわけでもございませんし、また、ただいま申し上げましたように、景気が引き続き底がたいことから見まして、一般の健全な経営をしている事業全般に倒産が広がるという状態にはないと思っております。  一方、物価でありますが、これは国内卸売物価は幸いにして、石油関連商品の低落等も幸いして横ばい、前年比は十カ月ぶりに二%を割っております、ただ、消費者物価は、消費者物価全体も、あるいは鮮魚食料品を除いたコアの消費者物価も、三%台前半で下げ渋っております。さっき申しましたように、まだ景気が底がたいということでありますので、いわゆる人件費あるいは物流費のコトスアップという上昇圧力がまだなくなったわけではございませんので、先行きについて、物価に手放しの安心感はとても持てないというふうに考えております。  かような状況でございますので、今後の金融政策といたしましては、引き続き物価安定というものを基軸にしました態度は堅持いたしまして、今後の金融経済情勢の推移がどうなっていくのか注意深く見守ってまいりたい、かように考えております。
  41. 穂積良行

    ○穂積委員 今回のこの証券金融問題を通じて、私は冒頭にも実業という言葉を使いましたが、痛感しますのは、銀行こそその実業を振興することを使命として努力するべき組織ではないか。そういう気持ちで産業を助け、鼓舞し、正常な発展を遂げさせるようなことに銀行関係者が努力するということを期待したいと思っているのです。虚業であってはならない。虚業の中にはいかがわしい筋、いわゆる暴力団、やくざというようなのもそれに含まれると思います。やくざという言葉は、これは字引きで見たのですが、三つのかるたでやるばくちで一番悪い数字が八と九と三だ、それでやくざと言うというのが語源だそうですがね。そういうのはこの世の中で余計な、よからぬものですから、これに銀行がつけ込まれるようなことや何や、まことに恥と思ってもらわなければならない。そういうことで、暴力団との関係などは証券業者も銀行もきちっとしなければならないし、その辺は関係業界に強く反省を促さなければならないと思うわけです。  そういう中で、さて稲川会がまだ株を保有している東急電鉄株、あの始末をどうするのか。今の時価で処分すれば大損こく。しかし、それをずっと持たせておいたら会社としてどうなるんだということなどもありますが、こうしたことについて、例えば日興や野村などは、債権保全とその始末との関係などいろいろあると思いますけれども関係当局は、そうした面でもやくざとの関係、二度と変なかかわりで恥をかかないようにするように、指導を強化していただきたいと思います。これは要望にとどめます。  さて、いろいろ申してまいりましたけれども、今回のいろいろな経過の中で起こった金融界の不祥事について、証券分野については先ほど私からも申しましたけれども金融問題について行政の最高責任者である大蔵大臣としてどのようにこの経過をとらえ、そして今後かかる不祥事のないような指導を強化していくという意味での諸措置をどう進めるかについて、総括的に大臣から所見を承りたい。
  42. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 最近発生いたしました一部金融機関における大型預金証書偽造事件などの不祥事件、また過剰融資問題などをめぐり、金融機関の業務運営につきまして厳しい社会的な御批判を受けております。また、私自身の元秘書の軽率な行動もこれに批判の輪を広げているということでありまして、私自身この問題について監督責任を感じている部分がございます。高い公共性、社会性を有する金融機関におきまして必ずしも健全かつ適切な業務運営が図られなかったことにつきましては、これを指導監督する立場にある行政当局としてまことに遺憾に感じますと同時に、当局の責任に対するもろもろの御批判に対して、厳粛にこれを受けとめなければなりません。  今回の一連の事件の背景というものを考えますと、バブル経済の消長、金融の国際化、自由化の進展がもたらしました金融経済環境の急激な変化の中で、金融機関が内部管理体制の整備が不十分なまま安易に業容の拡大に走っだということが挙げられると思います。さらに、今回の一連の事件の発生が、当該金融機関に対する社会的批判にとどまらず、金融システム全体のその健全性に対する信頼を喪失させだということは大変大きな問題であり、金融システムというものが一国の経済構造の根幹をなすものでありまして、いやしくもこれが信頼が揺らぐようなことがあってはなりません。  こうした認識のもとに、行政当局といたしまして、今回の不詳事件等の反省を踏まえ、再発防止及び金融システムの信頼回復のため、これから申し上げるような対応策を実施していきたいと考えております。同時に、これは金融界自身においても、一丸となって早急に信頼の回復に向けての自主的な経営努力というものが発揮されることを強く願っております。  第一点は、金融機関の内部管理体制の総点検についてでありまして、既に金融機関に対し指示した内部管理体制の総点検を推進させる一方、全銀協など業界団体に対しまして、金融取引のルールや諸慣行などの見直しを求めると同時に、金融機関の内部検査体制のあり方についての検討機関設置を求めることとしたいと思います。  二点目は、金融機関の公共性、社会性の確保についてでありまして、金融機関に対し公共性、社会性が確保されますように、その業務運営、経営姿勢の点検を求めます。また、経営内容のディスクロージャーの推進を求めるほか、金融機関における暴力団対策、麻薬取引に絡むマネーロンダリング対策が適切になされるように指導したいと思います。  第三点は、行政の透明性と検査体制の充実についてでありまして、金融行政の透明性を高めるべく、簡素合理化を目的とした通達の見直し、整理を行います。他方、当局の金融検査におきましては、内部管理体制を含めた金融機関の業務についての重点的かつ機動的な検査を実施し、検査手法の充実を図るほか、金融機関内部の検査組織との連携を図ることとしたいと思います。  第四番目は、ノンバンクヘの対応でありまして、ノンバンクの預金担保融資の実態調査を早急に取りまとめますとともに、さらなる実態調査やノンバンクに対する指導のあり方の検討のために、関係者による検討会を設置いたします。また、金融機関における関連ノンバンクの管理体制の強化を求めます。  五番目は、金融システムの安定性の強化でありまして、自己資本比率規制、大口信用供与規制などの金融機関の健全性確保の枠組みを整備する一方で、金融機関の相互援助制度の一層の充実など、信用秩序維持のための環境整備を図りたいと思います。また、外国銀行の経営破綻問題などへの適切かつ迅速な対応を図るべく、金融当局者間における国際協力を進めることとしたいと思います。  今後における同様の事件の再発を防止しながら、我が国金融システムの信頼が回復されるよう、今申し上げました方向に沿って関係方面と緊密な協力体制をとりつつ最大限の努力をいたしたいと考えておりますので、本委員会におかれましても、おしかりはおしかりとして、今後の再発防止に向けての努力については御支援を賜りますように、心からお願いを申し上げます。
  43. 穂積良行

    ○穂積委員 終わります。
  44. 大野明

    大野委員長 これにて穂積君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺嘉藏君。
  45. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員  昨日、一昨日の証人並びに参考人審議を見ておりまして、与野党真剣な審議をされたことに敬意を表する次第ですが、しかし、あの中身を見ておりましてまず第一に感じたことは、時間がない。各党それぞれ二十分、三十分、中には進民連のように五分、これじゃさすがの鋭鋒、駿馬も髀肉の嘆をかこつに気の毒なくらいであった。そこへもってきて答弁の仕方が、中には引き延ばしを図るような答弁の姿勢。私は、特に野村の田渕さんの証言を聞いておりましていらいらしてきた次第です。あれを見ておりました多くの国民は、田渕さんがうまい答弁したと思わない、むしろずるい人だ、人格者とは思わない声が多かった。あるいはまた、とぼけはうまいけれども信頼できないんじゃないか。あるいはまた、小細工であって大経営者ではないじゃおいか、こういう声を私は聞いたのです。  今度のこの調査は、言うまでもなく将来の再発・防止のためには、まず調査をきちっとやる。それで問題点をきちっとえぐり出して、その問題点ほどこにあったかということをきちっと確定する。三つ目に、それらの上に立って再発防止を図る。こういうようなことが必要であることから考えても、この際、社会党を初め野党五党が今要求をいたしておりますが、田淵義久前社長、節也前会長、それに徳本、山下両氏、合わせて四人を再度証人喚問いたしまして、そして損失補てんのもっと中身の問題、あるいはまた大蔵省通達の違反をめぐる大蔵省業界との関係、あるいはまた東急株株価操作の問題、暴力団関係の問題等々について、再度これらの人々の証人喚問を行うことによって所期の当委員会としての目的を達したい、こういうふうに考えておるわけですが、ぜひひとつ大野委員長の英断によってこれの実現をお願いしたいと思うのですが、どうですか。
  46. 大野明

    大野委員長 当問題につきましては、後刻理事会において協議いたすことといたします。
  47. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 これが実現しませんと、まだまだ不明確なままで将来の問題、こういうことになりますると、将来また二度と欠陥を招かないとは限りませんので、このようなことがきちっと明らかになるまでは、我々としては、新しいこの証券取引法の改正については軽々に、簡単に取り組むことができないということも申し添えまして、この昨日まで続きました証言参考人審議の中で、際立った問題だけ大蔵大臣に聞きたいのですけれども。  特に野村証券の田渕さんの証言の中で、六十一年の秋に秘書室長が総会屋を通じて石井会長と会った、総会屋の名前はきのうまで覚えておったけれどもきょうば忘れた、余りにも愚弄した証言だと私は聞いておりました。と同時に、その紹介のときに、大事な人であると紹介して口座をつくらせた。属性は言わなかった。属性は暴力団関係だとこう言われておるが、言わなかった。これは、あわせて石井さんの名前ではなくて仮名でやりました。仮名でやっちゃいかぬということはもう明らかなんだ。こういうことを野村証券は承知していたわけなんですが、これに対して、東急株の勧誘につきましても行き過ぎがあった、こういうことは反省しております。しかし、これは行き過ぎじゃない。この程度のことは、セールスマンに号令をかければだあっと走る、脱兎のごとく走る、そんなことは当たり前です。ノルマがかかっておる。しかし、それをやらせた基本は、この東急株の株価操作。であることはもう明らかなんだ。これが株価操作でなかったら、証券法の百二十五条は無用の長物になる。当然これは百二十五条、株価操作の禁止事項に該当すると思うわけですが、大蔵省はこれをどう受けとめておられるか。  それから、通達が元年の十二月に出た。明くる年の三月の専務会で、百六十億のこの補てん会社ぐるみでやりましたと彼は堂々と述べたんです。余りにも不届きじゃないですか。余りにも大蔵省通達をなめておるんじゃないですか。こかは国民をなめておることなんです。  このことについて私は二つの疑問を持ちました。一つは、大蔵省が黙認していたから、二年三月の専務会で野村は堂々と百六十億の補てんやむを得ないと決めたのか。それとも、そうでなかったら、大蔵省通達は相手にする必要がない、守る必要がない、こういう気持ちであったのか、この二つなんです。そうでなかったら、百六十億を。補てんするときに野村証券大蔵省へ、こうこうこういう事情でやむを得ないので補てんさしてもらいたいと言いに来るべきなんだ。どうかこの点について大蔵大臣、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  48. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 院においてこの特別委員会が設置をされましたことは、大蔵省当局の行政責任も問われておると私は思っております。そして、その御審議の中において証人喚問あるいは参考人招致が行われ、それぞれの御論議が行われたことは承知をいたしておりますし、その内容につきましては、私自身も注意深く拝聴してまいったつもりであります。しかし、それは院の真相解明の御努力の中のことでありまして、同じくやはり我々自身委員会から責任を問われております行政当局の責任者として、その内容について見解を申し述べる、あるいは意見を言わせていただく、それは私は差し控えるべきことであると思います。現に、先日来報道機関の方々からいろいろな角度の御質問を受けましたときにも、私はすべてその姿勢を通してまいりました。今委員からその証人の証言内容についてのお尋ねがございましたけれども、どうぞその点は私にはお許しをいただきたいと思います。  ただ、一点申し述べたいことは、行政通達というものの権威に対しお問いかけのありましたところ、この点については私なりの考え方を申し述べたいと思います。元年十二月に通達を発出いたしましたことを含め、今回までの私の政治家としての経歴の中で、各省庁の責任を持ちました場面場面で通達というものを発出することを了承し、それぞれの場面で通達を発出させた経験は何回かございます。それぞれの通達というものは、それなりの権威を持って受けとめられ、その指導というものは有効でありました。また、その内容に不明確な部分がありましたとき、その通達を発出した内容に対しての問い合わせが行われておりました。その問い合わせが行われた経験も私はございます。今回の通達につきましても、私は、行政当局の通達としてそれだけの権威を持って受けとめられるものと当然のことながら考えておりました。しかし、結果としてそれは踏みにじられました。  そういう中で、今委員が二つの角度から、一つは、行政当局として違法行為を黙認したのか。黙認はしておりませんということは繰り返し申し上げております。そして、その行為に対しての社内処分を求める等の行為もしてきたということも既に御承知であります。そういう処分を行わせしめたということ自体、私は黙認をしていたと言われる性格ではないと思います。しかし同時に、通達というものが守られないという実例がまざまざと目の前に見せつけられました以上、少なくともその守られなかった内容に対しては、それが示す方向誤りでない限り、法的な規制をもって臨む以外にない。今、私はそのように、みずからの心の中で整理をいたしております。
  49. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 過日、大臣が本会議場で切々たる答弁をされたときに、朝日新聞がコラムで、泣くな龍ちゃんと、こう書いたんですね。私はあれを見て実感だったんです。むしろ私に言わせれば、大臣には将来があるんだ、こうつけ加えたいくらいです。ですから、今真剣に取り組んでいらっしゃることには、心から敬意を表する。しかし、私は甚だまだ隔靴掻痒の感がするんです。踏みにじられた通達に対してあの程度のことでいいのかどうかということ、余りにも横着いんじゃないか、こう思うのです。  そこで、これからの措置につきましていろいろまたお尋ねをしていきますが、私は今までのこの審議の中で、余りにも証券会社はなめておるのか、横着いのか、それとも通達を相手にしとらぬのか、不届き至極だと言わざるを得ないと思うのですから、ひとつ厳正にこれから対処していただきたい。  と同時に、今補てんが明らかになったわけです。公表いただいたわけですが。この補てんによって、これは予算委員会審議されて、公表せよ、しない、押し問答をやっておるときに、七月の二十九日だったと思いますが、日経新聞が朝刊にぽんと公表の、何といいますか粗筋が出た。そして、それに引きずられた形だと私は思うんですが、一斉に公表に踏み切ったように私は見ている。それがために、中身も私はばらばらの感を覚えたわけです。  なぜかというと、各社に当たってみたんです。あなたのところ、これ中身どうですか、これどうですかとずうっと各社当たってみると、そうすると、とっさのことだったもので、十分何といいますか打ち合わせ、連携といいますか、それはしていない。これは当然で、いいと思う。大蔵省の方からも、これはこうだということもきちっと斉一的な基準がなかった。それがために、何が補てんで何がどうか、税務調査の結果なのか何か、いろいろな意見で、中には新株の問題も税務調査指摘されてそのまま入れたというところもある。あるいはまた、株については入れてない、新株については入れなかった、いろいろなところが、私がじかに聞いた結果出てきたんです。  その結果、まず株についてきちっと出したと私が思ったのは大和証券であって、それ以外はどうも新株については出ていないんじゃないか、新株で補てんした分。あるいはまた、前に、訂正前にもう既に補てんじて有報に載せていたところ、勧角なんかありますが、そういうところは今度の補てんの中に入っていない、補てん公表の中に入ってない。だから、ばらばらな中身でないか。これはやはり公正を期さなきゃなりませんので、ちょうど現在検査も進められておりますから、この際きちっとした中身の公表をもうこ遅出し直していただきたい、こういうふうにお願いを申し上げたい。  と同時に、この補てんを受けたところは、これは税法上これをどう扱うかということにつきましては、普通法人は当然これは法人収益なり、個人は贈与なり、いろいろな形で税の対象になりますが、ところが公益法人の場合はこれにならないわけですね。いろいろな公益法人があります。非課税になるんだ。なぜかといえば、これは公益事業ということで収益事業でないというんですが、私に言わせれば、集めた金、これが、共済のような立場でもあるいはまた宗教法人の場合でも何でもいいんです、集めた金を預けておいたら自然に利息がついた。これは私は公益収入に付随したものだと思うけれども、積極的に営業特金なんかをやって、そして、あるいはまた一括契約をやったり財テクに走ったというものは、これはもう明らかに私は収益だと認める、収益事業の範疇に入る、こう思うんですけれども、この点についても、斉一を期していただく必要上、御見解を聞きたい。  それといま一つ、私はむしろ疑問に思うんですけれども、これを交際費として継続性が、取引の継続のためにやむを得ず払ったんだから交際費だという考え方ですが、私はむしろそれは当たらないんじゃないかな、こう思うんです。なぜかといえば、これは損失補てんと明らかになっておるんですから、だから、損失補てんをやっちゃいけないという証取法違反ではあっても、税法上でこれを縛るのでは、これは私はおかしいんじゃないかと、こういうふうに考えておるんですが、この点について御答弁いただきたい。
  50. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 第二点以降税法に関連いたします部分につきましては、具体的な事例として、そのそれぞれの事務に当たる職分の者からお答えをすることをお許しをいただきたいと思います。  ただ、冒頭指摘のありました、委員御自身が何社かを当たってごらんになって、ばらつきがあるのではないかという御指摘がございました。そして、あるいはそういうことはあるのかもしれません。ただ、同時に、あの時点で公表されましたリストというものは、既に繰り返し申し上げておりますように、証券会社そのものが自分で損失補てんという意識を持っていたもの、それに加えて税務調査の中で損失補てんとして認定したものを加えたものでありまして、私どもはそれなりに正確さを持つものと思っております。  ただ同時に、今大手四社に対して特別検査に入っております。そうした中において、今委員が御指摘になりましたような視点も当然検査に入っておる者たちは持って検査に当たっておると存じますけれども、今局長も委員の御指摘を聞いておりましたことでありまして、当然これを反映させる努力をしてくれるものと思っております。
  51. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 まず公益法人の課税の問題についてでございますが、先生も先ほどおっしゃいましたように税法の定めに従いますと、収益事業とその他の公益法人本来の事業とを区分経理をいたしまして、収益事業に属する収入についてだけ課税の対象となるというふうになっております。したがいまして、公益事業本来の会計の部分からその資金を運用いたしまして、それから収益が生じたというものにつきましては、税法の建前上課税をされないということになっておりまして、私どもといたしましても、これに従って取り扱っておるわけでございます。  それから交際費課税の問題でございますけれども、これはこの支出した側が取引関係の維持のためにその支出をしたということでございますと、これは税法の立場からとらえまして交際費ということで課税をいたすわけでございますけれども、これは証券取引のいろいろな規制のサイドの問題とは一応切り離して、税法の立場から見ればそういうことになっておる、そういうことでございます。
  52. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今の公益法人のことについて、これは公益事業の延長という意味で非課税だ、こういうふうに扱われるわけですが、これは法律にあるわけじゃないのですよ。単なる通達で、あなた方が判断していくのですよ。だからその判断は、今までのような、単なる金を集めたやつを預けていたというだけなら私もやむを得ぬと思うけれども、そうでなしに積極的に踏み出して契約して、そして財テクを図るということは、これは明らかに収益事業ですよ、今は。だからあんなもの、財テクにみんな走ったじゃないですか。あれは収益じゃないですか。冗談じゃないですよ。だから、そういう点をきちっとしないと税の課税に不公平がある。まだまだ問題はあるけれども、その点をもう一遍言っておきますから。  それで、引き続いて大和証券の有報の訂正報告書の件についてお尋ねをいたしたいのですが、これは今度の訂正報告書ではなくて、既に大蔵省は報告前に承知していたんじゃないか、こういうことを委員会でも質疑が行われて、結局知っていた。そして 結果的には八年も前から知っていた、こういうことがにじみ出てきたわけですが、これは平成元年の十二月の二十七日に大和証券が出した訂正報告書ですが、これによりますると、五十九年のこの会計年度で百十二億の損失補てんをいたしました、こう明瞭に書いてあるわけですね。そして、迷惑料は六億八千九百万払いました。この損失補てんに係る清算額百二十九億、迷惑料六億八千九百万、この問題についていろいろ調べた結果、五十四年当時に大和証券の法人部長が知り合いの宮崎貞夫さんに、損失補てんをした支出先をどこかに受け皿をつくらないと損失の金が出てこないので、受け皿を引き受けてくれということで頼んだ。宮崎さんはそれを承知をした。それがために、宮崎口座にはどんどんどんどん損失がふえていく。しかし、その損失はだれのものか。五十六年九月になって、数社に分けであったこの損失の受け皿を一本化するために、会社の名前が変わって三協エンジニアリングとこうなって、代表者宮崎さんはかわらない。そして、この結果、集めてみたら百億を超えていた、こういうことになったわけですね。  そこで、この預け損失減少のために、大和証券は株を高く買って安く売るという三協エンジニアリングとのやりとりをやって、五十七年九月には九十七億、五十八年九月には百八億、五十九年十一月には百四億、こういうふうに減ったりふえたりしたが、余り芳しくない。そういうことで五十九年の十一月の末に百十二億になったので、それで子会社の大和ビル管理株式会社の株、額面五百円のものを三協エンジニアリングに八百一円で買い取らせ、それを大和証券等が今度は一株三万一千三百円で買い取るひこのことによって百十二億を捻出し、そして六億八千万の、約六億九千万のこの迷惑料も捻出して清算をしたというわけなんですが、こういう事実は当然大蔵省、御存じですね。
  53. 松野允彦

    松野(允)政府委員 お尋ねの大和証券平成元年十一月に明らかになりました損失補てんでございますが、訂正有価証券報告書をその際提出をさせたわけでございまして、その中に、五十年代前半から事業法人部で顧客との証券取引で生じた損失を他の事業会社に肩がわりさせた、それが判明し、それを六十年九月期に子会社の株式を処分することによって清算在したというようなことで、訂正報告書を提出しているわけでございます。したがいまして、今御指摘のような事実が大体この訂正報告書に書かれているというふうに私、考えております。
  54. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私が聞きたいのは、書かれておるんじゃない、前もってこれは承知していたはずだ。なぜか。昭和五十七年四月には、大蔵省は大和証券検査をやっていらっしゃる。それから五十八年の四月には、税務署も調査に入っておる。そして五十九年の八月には、また大蔵省検査に入っていらっしゃる。これが検査でわからぬはずはない。それから三協エンジニアリングに対しても  今のは大和証券ですよ。三協エンジニアリングに対しても五十七年の末に税務調査が入って、それの延長線上で大和証券は出てきておるし、反面調査を受けておる。  こういう事実から見て、大蔵省はもうこの五十七年の四月、良心的に言うなら五十六年の九月に大和証券が数社を集めて百億になった時点で報告を受けておらなければならぬはずだ。そうでなかったならば、五十七年の四月の検査でこれは明らかにならなければならぬはずなんだ。この点が報告があったのか、あるいはまた検査によって明らかになったのか。このなった検査は五十七年なのか、五十九年なのか。あるいはまた、税務調査によって出てきた結果、報告を受けたのか。これを明らかにしてもらいたい。
  55. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、大和証券に対しては定例的に検査に入っております。しかし、この件につきましては、大変残念ではございますが、他の事業会社にという、いわゆる会社の簿外というような形になっていたこともございまして、検査では発見ができなかったわけでございまして、私どもとしては、平成元年の十一月に明らかになり、有価証券報告書の訂正を求める段階でその経緯についていろいろと大和証券から聞いた結果、先ほど申し上げたようなことで損失補てんが行われたという報告を受けたわけでございまして、検査過程では、大変残念ではございましたけれども発見できなかったというのが事実でございます。
  56. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私ども大蔵省そして証券局そしてそれの行われる税務調査を含めて、検査というものに信頼しておるわけですが、これだけの膨大なことが行われて検査もやっておりながら、あるいはまた、税務調査も行われておるからそこから否認が出ておる。そういうことがありながら、それでわからぬというようなことは、ちょっと僕らの頭では想像できない、あなた方のようにすばらしい頭脳の持ち主が。だから、もしもこんなことなら、これからの検査国民信用しませんよ。二回もやり、税務調査も行われておるのに、それでわからずに元年の十一月まで放置していた。こんなことだから、むしろこれは癒着していたのではないか。そうでなかったら、大和証券側からもこうこうこういう事実がありました、こういうことを報告させるような行政指導が行われていなかったことは、行政指導そのものが甘かったからじゃないですか。どうなんです、これは。
  57. 松野允彦

    松野(允)政府委員 検査過程で発見できなかったことは、確かに検査が不十分だったということの御指摘を受けるという点では、大変私ども責任を感ずるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、これはかなり簿外で行われていたということもございまして、どうしても検査過程で発見ができなかったということでございます。  また、大和証券が自社の中でこの判明したときに私どもに報告が来なかったという点につきまして、私どもの方からその事情がわかりませんから報告を求めるというようなことはできなかったわけでございますが、大和証券が自発的にこういう問題を報告をしなかったということも、これも事実でございまして、そういった点を踏まえまして、この十一月に問題が明らかになりましたときに、当時の責任者の更迭あるいは退職を含めまして、厳正な社内処分を行わせたところでございます。
  58. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 済んだことはしょうがないというものの、余りにもこれでは検査というものに対して国民信用をしなくなるんじゃないですか。と同時に、元年の十一月までわからなかったというのは、私どもにとっては意外なんです。  それでは、この損失補てんの先ほどこであり、その損失補てんを生ぜしめたのは会社なのか職員個人なのか、この点はどうなんです。と同時に、この補てん先の公表はされたのかされてないのか。されてなければ、これからされるのか。
  59. 松野允彦

    松野(允)政府委員 当時の報告によりますと、最初にこういう問題が起こりましたのは、先ほど御指摘になりましたように事業法人部の部長ということでございまして、その段階では必ずしも会社が把握してなかった、会社がそういうような損失が生じてきたというのは把握してなかったということは、事実のようでございます。  それから、補てん先でございますが、これは当時公表はされておりません。
  60. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 この機会に、それならもう一遍聞いておきますけれども、法人事業部長が勝手にやっていた、だから会社は知らなかった、だから後で知った。そこで問題は、それなら知ったということで、先ほど申し上げたように八百一円の株を三万一千三百円で今度は大和証券等が買い上げる、こんなべらぼうなことで会社に損を与えたわけですが、この事実から見て、当時この問題等に関連して税務調査も行われ、あるいはまた法務省もこれにはいろいろな関心をお持ちであったわけですが、きょうは本当に万障繰り合わしていただいたそうですが刑事局長、この点については、私はこれは会社に対して明らかに損失を与え、商法で言う特別背任に当たるのではないか、こう思うのですが、どうです。
  61. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答え申し上げます。先ほど委員仰せになりました大和証券と三協エンジニアリング株式会社に絡みますいわゆる預け損失及びその移しかえという一連の事件は、もう委員御案内と思いますけれども、三協エンジニアリング株式会社に対する法人税法違反事件として検察庁が国税の告発を受け、平成元年十月二十五日に起訴をした事件でございます。  これにつきましては、これは三協エンジニアリシグが起訴されているわけでございますけれども、それにつきましては平成二年三月二十九日に第一審の判決がございまして、先ほど名前が出ました宮崎被告人は懲役二年六月の実刑になっておりまして、この人が現在控訴をいたしておりますので、裁判自体はまだ確定しておりません。こういう事件でございます。  この法人税法違反事件の捜査の過程におきまして、他の罪名に触れるものをどうしたのか、こういう趣旨のお尋ねがあると思うわけでございますが、当時把握といいますか、わかりましたいわゆる一番もとになる損失補てん、これは非常に古い話というふうに聞いておりまして、当時、もちろん当時罰則もなかったわけでありますけれども、特別背任その他の容疑につきましても検討をしておるわけでございますが、当時既に公訴時効にかかっておったというふうに報告をされておるわけでございます。  さらに、今お尋ねの、その後最終的に三協エンジニアリングの損失計上を解消するためにとられた措置、つまり大和ビル管理株式会社の株式を廉価に売却をした、この行為につきましても当然特別背任といった嫌疑が出るわけでございますけれども、これにつきましても当時検討いたしたという報告はございますが、委員御案内のとおり、特別背任と申しますのは、いわゆる図利加害の目的と申しますが、本人及び第三者の利益を図る、あるいは株式会社に害を加える、こういうことを我々図利加害と申すわけでございますが、この図利加害の目的があったかどうかということが重点になるわけでございまして、本件の場合、結局大和証券としてその損失を解消するための一連の措置であるということでもございますので、やはりこれは本人に害を与えるという目的ではない、つまり本人と申しますのは大和証券になるわけでございますが、といったような判断もございまして、結局当時その他の嫌疑につきましても検討しましたが、いずれも他の刑罰法令に触れる事実はなかったということで、三協エンジニアリングの起訴にとどまったというふうに聞いておるわけでございます。
  62. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それぞれの立場でそれぞれ検討されて、そしてそういう方針が出た以上は、今もう時効も完成しておりますので、これでそれ以上追及しませんけれども、私はこれは金額がしれておるならともかく、合わせて百二十億に近いような金がこういうふうに行われるというようなことは、これはどう考えても正常でない、証券業界問題点一つとして指摘を強くいたしておきますので、よろしくお願いをいたします。刑事局長さん、あと急ぐなら結構でございます。  続いて、七月の十七日付のテーミスの記事につきまして、七月の八日、国税庁がテーミスと学研に、七月六日のテーミスの取材の状況から誤りがあると困るからということで注意を促す電話をされたそうですが、しかし七月九日、テーミスは、八〇%の株主である学研の指示でその回収破棄、休刊を余儀なくされた。私のところにも「国税庁」と印刷した郵便物が送られてきました。これはかなりのところへ出た。これですけれども、これは国税庁の本物だと私は思わない。しかし、そこの中に入ってきましたこのテーミスの記事を私は読みまして、週刊誌の記事としては普通のものである、こう私は受け取りました。そして、それに毎日新聞の報道した中身も出てまいりました。これによりますると、今回の証券スキャンダルは、これは「新旧国税庁長官が暗闘の果てに」というタイトルはついておりますが、中身をずっと読んでいきますると、そうすると、これはこの程度のことだな、こういう推論も成り立つかな。あるいはまた、毎日新聞の記事はこれは皆さんが御存じのとおりですから言いませんけれども、どこに問題があると大蔵省は思って学研、テーミスに注意を喚起されましたか。
  63. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 国税庁といたしましては、週刊テーミスの取材に応じております過程で、記事内容が事実に即した正確なものとなるように申し入れを行ったということは事実でございますが、しかし、それはあくまでも正確な記事にするようにという申し入れをしたものでございまして、圧力をかけたというような事実は全くございませんし、まして週刊テーミスの休刊というような言葉を一切使ったことはございません。
  64. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それは、休刊なんというような言葉大蔵省が使うはずはないんで、これは当たり前のことなんですが。  そこで私は思うのですけれども、取材に当たりまして、相手は国税庁です。口のかたいこと、また怖い役所だというイメージは一般的なんです。そしてここにも書いてある。送ってきた人は、「国税庁の祭りが恐ろしく、かく申し上げる小生も残念ながら氏名を控えさせていただきます。」と書いてある。これはみんなの実感なんです。  むしろこういうものは内容を見て、その上で名誉棄損に当たると思えば必要な手段を講ずればいいのです、大蔵省、国税庁でも。それを、今申し上げたような立場の役所が発行の前日に、七月八日ですから、九日に発行したわけですから発行の前日に学研にも電話を入れた。発行先はテーミスですから、テーミスだけにしたならまだともかく、学研にまでする必要はないんです。これは行き過ぎだと私は思う。また、その電話の中身もかなり強圧的だったとも言われております。文書の中にいろいろ匿名が出たり、ニュースソースを秘匿したような文書がありますけれども、これはこの程度のことは当たり前のことなんです。そして実際にこういう結果、学研が回収、休刊、こういう指示をしたわけですから、結果的には言論の自由はここで剥奪されたんじゃないか、結果的にはこうなったんじゃないか、こう思うのですが、大臣はどう思われますか。
  65. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、雑誌が休刊をされるされない、それはそれぞれの出版社の次心意的な、恣意的と言ってはいけません、経営判断の問題であろうと思います。同時にやはり国税庁にも、人権という言い方はおかしゅうございますけれども、国税庁にも、取材に応じた以上、正確な報道をしてもらいたいという気持ちはあろうと思います。私は、実は今委員指摘になりましたその記事を、見出しは見たんですが、中細かく、最初から余りおもしろくなさそう、不愉快な気分の方が先に出まして読みませんでした。(渡辺(嘉)委員「その程度のものなんですよ」と呼ぶ)ですから、それがその程度のものかどうかも実は中身を存じません。ただ一般的に申し上げて、やはり不適当な記事がありました場合にそれに対して注意を喚起する権利は、国税庁といえども当然のことながら持っておると思います。
  66. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 だから何回も言うように、私は出てからならいいと言うの。出てから中身を見て必要な手段をとるのが、国税庁にも保障された人権なんですよ。国税庁という怖い、怖いと言ったらおかしいけれども、そういう立場の者が学研まで言うと、これは学研だって言うのですよ。なぜかといえば、私の調査並びに内部告発のその後の文書を読んでみると、学研はこの各発行誌の広告をかなりの量受けている。また、深い関係のある博報堂の社長の磯辺律男さん、会長の近藤道生さんらがこれにかかわっていたという疑いも出てきたんです。この両名とも元の国税庁長官で、磯辺さんは東京国税局長も務めていられたというのですが、これはそのとおりですね。
  67. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 私どもといたしましては、あくまでも事実に即した内容となるような申し入れを行ったわけでございまして、これは当然許されることだと考えております。これは私どもの広報室を通じて行っております。  磯辺律男さん、近藤道生さんは、いずれも国税庁長官をやられた方でございます。
  68. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 引き続いて、私の調べによりますると、また先ほどの申し上げた内部からの文書によりますると、この学研の古岡秀人会長と社長の古岡混さんと磯辺さんとは親戚づき合いであり、親しい間柄だ。仲人も務めたり、滉社長の家庭教師までやっておられたと聞いております。この磯辺さんを通じて国税庁が発行を中止させたという、そういうことも聞いたんですが、これは事実ですか。
  69. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 先ほど申し上げましたように、この申し入れは私どもの広報室を通じてやっております。そのような、先輩にお願いしたというような事実はございません。
  70. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 もう一方、元の東京国税局長で証券業協会の専務理事並びに副会長を十数年務められた現在の東京証券会館の社長、これは守屋九二夫さんですが、彼はこの国税当局に働きかけて、証券スキャンダル、新旧長官のあつれきの記事の差しとめ、場合によっては学研を調査も辞さないというような通報をしろ、こういうような話もあって、局の調査部としては不承不承これを学研に通報したというような、こういうばかげたことまで私の耳へ入ってきたわけですが、これは、この内部から告発された人によると、税務現場では、この二、三日の動きで証券大手と省内の癒着ぶりに憤りを覚えたと付言してある。  そしてこの学研は、山一証券から三十二億九千九百万円。私は、出版界のこういう各社見ておりまして、まさか学研のようなまじめな会社かと思って、まじめだからどうとかいう意味ではないんですが、こんな補てんが三十二億九千九百万円もあるということに実際はびっくりしたんです。だから、こういうようなことがいろいろあって、これらの一連の動きからこの休刊につながったのではないか。となれば、これはもう言うまでもなく、自由の基本は言論の自由であることは言うまでもない。国税庁がこのような疑いを持たれることは、私はあってはならないし、ないと信じたいんですけれども、この点について大臣はどういうふうに御認識されますか。
  71. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもも週刊誌の種によく使われております。そして、大体私の経験をそのままに申し上げますと、出版されます前日にはそのゲラ刷りを、こういう記事を書いたということで送りつけてこられます。おかげで、実は発売をされます日には、その朝の新聞に出ております広告を見ると、大変嫌な思いをしながらその送りつけられたゲラを思い出す場面もしばしばであります。恐らく私は、先ほど委員が一日前にということを言われました。私、実は詳細を存じませんけれども、恐らくそのような形で出版社、その雑誌から国税庁にそれが届いた。これは内容に対して正確を欠くということから、私は、国税庁の広報から出版社に対して、正確な記事を書いてほしい、例えばこの辺は事実と違うではないかということを申し上げたことはあろうと思います。  ただ同時に、今いろいろな方の名前を委員がお挙げになりました。確かに大蔵省の先輩の方々であり、かつて国税庁にかかわりを持たれた方々のお名前だと私も思います。しかし、そうした方々が例えば圧力をかける側に図られるとか、そういう行動をとられるとは私は思えません。同時に、今委員がはしなくも申されましたように、その委員が引用されました手紙でありますか印刷物でありますか、国税庁は怖いということを理由に名前を書いておられないということでありますが、私は、やはりそれだけの自信を持ってお書きになる方であるならば、本来お名前を付すべきだけの責任はおありではなかろうかと思います。  私自身、運輸大臣のときに、実は国鉄の分割・民営という問題の中で、国鉄の内部の方々から随分たくさんの投書をいただきました。忘れもいたしませんけれども、一番最初にいただいた手紙は、おまえなんぞ死んじまえという手紙だったんです。しかし、名前が書いてありました。そして私は、幾ら何でもひどいと思って、はがきでひどいじゃないかというはがきを、本当はその住所を半信半疑で出しました。しばらくたちましたら、まさか大臣が本当に読んじゃうとは思わなかった、しっかりやってくださいという返事が返ってきました。当時結局、私、後で時々語りますけれども、八百通を超える国鉄の内部からの職員の投書をもらいましたし、そのうちの相当部分は反対の投書でありましたけれども、私は、旧国鉄というのは男の子集団だったんだなと思うのは、みんな正々堂々と名前を書いて、自分のその部署なりあるいは自宅の住所をみんな書いてきたんです。そして、私はそれに片っ端から全部返事を書きましたけれども、あて先不明で返ってきたのは一通もありませんでした。私は、やっぱりそれぐらいの自信を持った自分の見解というものを、今委員が引用された方が持ってくださったならという気がいたします。
  72. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 前の国鉄の職員のお褒めのお話も聞きましたが、私も、そういう立派な組合をつぶそうとする動きに対して、むしろあったら断固として頑張らなきゃならぬと、余計決意を固めました。同時に、今申し上げたこの問題につきましては、単なる投書だけでなくて、私自身もいろいろ調べたところがある、このことを付言しておきます。  次に移ります。ちょっと時間がないので、あとちょっとボリュームがあり過ぎるのですが、はしょります。  一つは、新株の公開制度、それから店頭株の発行について、前のリクルート事件のときに、角谷証券局長は何回も、この反省の上に立って、こういうことで、これはこれからきちっとします、こういうことですが、私の調査によりますると、これはまだまだきちっとなっていない、このリクルート事件以後でも。特に店頭株の問題、それから新規株公開の問題、これにつきましても非常に偏っておる。これは調べてみますると、昭和六十二年の一月から六十三年の三月まで、それから三年の三月まで、この四年少しを調べてみたんですが、新株の発行によって、NTTやそういうような特殊なものを除きまして、そして税、手数料その他除きましても、約三千七百二十億円からの差益が生じておる、初値と公開値とですね。それから、店頭株につきましても約二千六百二十億、こういうものがあって、これが実に驚くなかれ、その八〇%近くは四大証券が主幹事になって操作をし、そしてそのうちの半分に近い、全体の三三%が、これが野村証券で押さえておる。実にこれは偏った実態が浮かび上がっておるわけです。私は、ここに多くの投資家が――入札制度だといいながら、入札の結果は特定の人にしか明らかにならずに、落札者は明らかにしておらない。こういうことは私は好ましくないので、この際こういう点も、これが大衆投資家が納得できるような、落札者、だれが落札したんだということが透明になるような制度をこの際つくるべきではないか。そして、大衆投資家を納得の上で参加できるようにしてあげないと、私は、証券市場は離れる人はあっても、衰微することはあっても、これから伸びていかないのではないか。  いま一つは、今後の対策についてもあわせて触れておきますけれども、私は、いろいろな御意見が出ておりましたけれども、多くのことは触れません。ただ、SECのフライシュマンさんの発言を読売新聞で拝聴いたしました。立派な御意見を述べていらっしゃる。要するに、SECはアメリカの産物なんだ、その国々の習慣、制度があるんだ、だからワシントンから東京へこれを輸出しようとは思っていない。あるいはまた、固定手数料についてもいろいろな意見を述べていらっしゃる。これは今度のスキャンダルと深くかかわりがあるというふうには一概に言えないのじゃないかとか、その他いろんな意見を述べていらっしゃるが、私は現在の野村証券がこのようにうわっと市場を占めておる、四大証券は九十何%を占めるような勢いである、こういうようなところから、これを補てんしたのは、したのではない、補てんできたんだ、むしろこういうことを言う人がある。利益があったから補てんできたんだ、利益のできないところに補てんできなかったんだ。こういうところから見ても、これがもしも自由手数料化するとむしろ過当競争になって、中小その他は脱落する以外にない、私はそう思っておるんです。今の、そのほかのいろんな業界の大企業と中小企業のこの格差を見て、特に私は中小企業の立場から痛感をしておるわけです。   そういうような意味と、それからこれを自由に登録制度にしてどんどんやらしたらどうか、こういう意見もありますが、私は、今のような自由競争の中でこれを登録制度にするようなことは、むしろこれは百害あって一利か二利にすぎないんじゃないか、こう思うわけなんです。だから、今の制度そのものは当然見直しをしなければなりません。なりませんが、やはり免許制度によってきちっとした証券会社でやらしていく。大衆も信頼する。検査したけれどもわからなんだというよう。な検査はもうやらない。そういうふうにしてきちっと、国民の信頼するような免許制度はやはり維持していくことが必要じゃないか。そうすれば、当然SECのようなものをアメリカから何も輸入してこなくたって、日本の独自の検査機構をつくり上げればいいんじゃないか。  それには、国税庁があるがごとく大蔵省の中にもやっぱり金融監視機関をきちっと設けて、先ほどから何回も言うけれども検査したけれどもわからなんだというような、国民に不信感を与えるようなことのないようにやられるべきではないか。これは将来のことなんですが、しかしこういうような見直し保つきまして、私ども冒頭に申し上げたように、もっと事実を明らかにしてからでなければこういう問題に取り組む用意はできませんけれども、しかし将来の姿の一つとしては、私はそういう意見を持っておるわけなんですが、大臣の御答弁を承り、将来の所信を承り、私の質問を終わります。
  73. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御答弁を申し上げます前に、一点、秘書官からちょっと注意がありましたので、お許しを得て言葉を直させていただきます。先ほど国鉄職員の例を引きましたとき、男の子集団と申しましたが、女性もいたんではないですかという指摘を受けました。ただ、投書をくれたのは全部男性でありまして、女子がおらなかったものですから、その男の子という言葉を使いました。むしろ集団という言葉に改めさせていただきます。  その上で、今三点にわたって御指摘がございました。この手数料問題につきましては、本日だけではなく、予算委員会の当時からさまざまな角度からの御意見をいただいております。そして、今日の証券損失補てん問題の背景の一つとして、手数料の固定制というものを挙げられる御意見もあります。また、今委員がはしなくも述べられましたように、欧米で手数料の自由化に踏み切りました国で、むしろ弊害が生じておることも事実であります。私どもといたしましては、こうした両面を見ながら今後とも手数料というもののあり方については検討する必要があると思います。  また、免許制のもっと運用を考えるという御指摘をいただきましたが、現在の免許制というものが、御承知のように、戦後登録制のもとで出発をいたしました証券業というものが、さまざまな問題の中で免許制に移行したという経緯は確かにございますし、その問題が再燃することを我々は防がなければなりません。他方、免許制のもとにおいても新規参入が阻害されることがあってはならないと思いますし、今後ともに免許制の維持を基本とするべきであると証券取引審議会の御報告においても述べておられますけれども、我々はやはり投資家保護という面から一体どちらがいいかということを考えながら、同時に、より開かれた市場に育てていくための手法というものは講じていかなければならないと思います。  また、SECを輸入するのではなく、むしろ証券検査そのものをもっと真剣に考えるという御指摘、私も真剣に承りました。そして、その体制といいますかあり方につきまして行革審に御論議をいただいております中でありますので、その機構という点については、私はお答えを控えさせていただきたいと思います。ただ、そのいかんにかかわらず、検査の質の向上という点につきましては、今プロジェクトチーム、積極的にその具体的な改善強化策の検討を進めているさなかでありまして、今般、検査の支援のための電算システムの開発計画を含む具体的な検査手法の改善策、あるいは研修制度の充実による職員の検査能力の向上などの方策に真剣に取り組んでまいりたい、そのように考えております。  御意見ありがたく拝聴いたしました。
  74. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 終わります。
  75. 大野明

    大野委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  76. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上野建一君。
  77. 上野建一

    上野委員 今度の一連の不祥事、あるいは事件一と言った方がいいかもしれませんが、多くの問題でまだまだ解明されてない点が非常に多い。解明が正確になされていなければ、その対応する、対処する対策、あるいは法律を変えるといいましても、まだまだ問題が残されたまま中途半端な法改正になりかねない。そういう意味で、きょうはまずもうちょっと内容についてただしていきたい。大変今度の問題は隠された部分が多過ぎて、証人、参考人もお呼びになったわけでありますけれども、これもまた極めて不親切な、ある意味では隠すために証言をしているような感じさえ持ったところでございます。そういう意味で、きょうこれからお伺いする点についてはできるだけ率直にお伺いをいたしたい、こう思います。  そこで、まず金融の方からお伺いいたしますが、昨日の富士銀行の問題、頭取が参りましてお話がありましたが、富士銀行は二千六百十四億、この金を今度の事件で融資がノンバンクからなされた、こういうお話でございましたが、一体この二千六百十四億について、重立っただけでも結構ですけれども、一体どういうところのノンバンクから出され、そしてどういうところにこのお金が行ったのか、大筋だけまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  78. 土田正顕

    ○土田政府委員 御説明を申し上げます。  昨日、富士銀行の頭取が申しましたときのそのパックデータといたしましては、ノンバンクにつきまして、赤坂支店で十四社、日比谷支店、神田駅東支店各一社を考えておったと思います。ただ、このとき参考人も申しましたようでございますが、ノンバンクは銀行の方でいわば了解なしに公表するのは差し控えたいということのようでございますし、それから、各社の了解を得て書面にて報告させていただきたいというような説明をしたように私どもは了解しております。ただいま銀行が恐らくこのノンバンクとその相談中であるというような状況であろうと思われます。  そのようなこともございますので、私どもの方からこのノンバンクの個別の名前を申し上げるのは差し控えたいと存じます。
  79. 上野建一

    上野委員 そういうことではわからぬのですよね。一体ノンバンクがどういうところに出しているのか。ある意味では、ノンバンクなんかもう明確にされた上で、それではそのノンバンクには一体どこの銀行、金融機関がお金を出したのか、そこまでもうわかっていなきゃ、またそういうことが明確でなけりゃおかしいと思うのですよ。そうでなけりゃこの問題の解明にならない。もちろんこれは警察関係はやっていると思いますけれども、しかし、銀行局長、あなたのところには少なくとも報告はあるんじゃないですか。わかっているけれどもここでは言えないというのか、全然そういうことは知らないというのか、それはどちらですか。
  80. 土田正顕

    ○土田政府委員 今回の一連の事件でございますが、銀行とそれからそれぞれ問題があったノシバシク、また融資先もございますが、との間に、本件をめぐって事故発生までの間に本件についての取引関係があったわけではございませんし、銀行員でありました事故者、それも既に懲戒解雇されておるわけでございますが、その事故者との関係でつながって登場してくるにすぎないわけでございます。いわば銀行監督当局といたしまして、そのようなそもそもノンバンクはいわば外部の第三者の立場に立つわけでございます。  ただいま御説明申し上げましたように、会社の数などは聞きましたとおりをそのまま申し上げておりますが、このノンバンクの固有名詞を申し上げますことは、その企業の信用に影響するおそれ、もあることでもありますし、また捜査当局との関係からも極めて慎重を要しますので、差し控えさしていただきたいと存じます。
  81. 上野建一

    上野委員 それでは、知っているけれども国会には言えない、特別委員会までつくったけれども特別委員の皆さんには申し上げるわけにいかない、こういうことだというようでありますけれども、それでは、捜査当局にお伺いしますが、このノンバンクから金を引き出した会社がかなり多くあるわけですけれども、その会社は、抵当も出さないで、にせの証書を一緒になってつくったのかどうかは知らぬけれども、いずれそういうもので、偽造されたもので金を借りた、こういうことになるわけですけれども、一体この融資を受けた会社はどういうことになるんでしょうか。ある意味じゃ共謀だとも思えるんだけれども、それはどういうふうになっていますか。捜査中でしょうか。
  82. 國松孝次

    國松政府委員 富士銀行に係る不正融資事件につきましては、警視庁において七月二十五日に有印私文書偽造、同行使及び商法の特別背任の容疑で告訴を受理をいたしまして、現在捜査をいたしておるところでございます。  お尋ねのように、ノンバンクあるいはそれから先いろいろと融資を受けた会社などにつきましても今鋭意捜査をいたしておるところでございまして、ただ、それにつきまして、その融資を受けた会社などが刑罰法令の適用の上でどういう評価を受けるのかということは、一にかかって事実がどういうことであったのかということによるわけでございまして、そういうものが現在まだ捜査中でございますので、いかんとも現在の段階ではお答えをできる段階には立ち入っていないということでございます。
  83. 上野建一

    上野委員 そうすると、この問題、大変根が深いんでありますから問題なんですけれども、そこで、ちょっとお伺いしますが、この金融を受けた会社の中でずば抜けて多いのが、私はもう率直に私の調査に従って名前を申し上げます。出島運送というのがありますけれども、この出島運送は富士と東海を合計しますと八百十億を超えるんですけれども、これはどうしてこの会社だけが大きいのか、銀行局長、わかっていますか。
  84. 土田正顕

    ○土田政府委員 個別の融資先の状況につきましては、それまでそれぞれの銀行と正規の取引があったものはむしろ少のうございます。そのような関係もございますので、私どもはこの実情については、銀行から聞くという以外に事情を調査する手段がないわけでございますが、その銀行自体につきましても甚だ個別の融資先について持っている情報は貧弱でございますので、お尋ねの企業につきまして、殊に捜査中でもございますし、今立ち入った御説明を申し上げるまでの材料は残念ながら持ち合わせておりません。
  85. 上野建一

    上野委員 私は、大蔵省という中の銀行局、これはもう大変な権限を持っている、それが内容を知らないはずがないんで、しかも前に私がほかの委員会で聞いたときには、銀行との関係のあるノンバンクについては把握しています、ただし銀行系でないのはわからない、こういうお話がございました。  そういう経過などを考えますと、銀行局が全体を把握してないということはないはずなんです。ないはずだし、先ほども、わかっているんだけれども言えないということなんだけれども、これは委員長、今すぐでなくてもいいんですけれども、資料を出していただきたい。それで、もし必要なら私の方からも出しますけれども、やはりこれは公開をしなけりゃ今度の問題の全容がわからないでしょう。まだまだ私ども調べてもわからないところがいっぱいある、隠されている点がある、こういうことですから、ぜひ委員長の方でこの資料の提出をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  86. 大野明

    大野委員長 後刻理事協議にさせていただきたいと思います。
  87. 上野建一

    上野委員 また後ほどこの金融問題、さらに触れますが、そこで大蔵大臣にお伺いしたいのですが、大蔵大臣は秘書の問題で大変御苦労をされたようですけれども大蔵大臣は津川雅彦という俳優についてはお知り合いだというふうに聞いていますが、どうでしょうか。
  88. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私の方からは二十数年間の友人であると心得ております。
  89. 上野建一

    上野委員 さらに、全日販の花田敏和社長は御存じですね。
  90. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 全日販の社長としての花田さんは存じ上げておりません。そして、花田さんという方は、私の北海道の後援会の法人会員でありました株式会社日計の当時副社長として、私の後援会の創立のパーティーに参加しておられたということであります。ですから、私は全く面識がないとは申し上げられません。ただ、率直に申し上げて、お顔と名前との一致する方ではございません。
  91. 上野建一

    上野委員 そこでもう一つ、小林元というのでしょうか、秘書が金融の話をつけた、こういう中で、いろいろ関係するのが少なくとも三人が出てくるんですけれども、その一人、これは橋本大蔵大臣が秘書を糾明された際にきっと話が出たと思うのですけれども、十億を中華料理店の尾花という店に金融をした、そういうことがもう既に出ていますが、この中身について、何に使ったかということについては聞かれましたですか。
  92. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず一点、尾花さんが経営しておられるのは中華料理店ではありませんで、てんぷらのお店であります。  それから、私の秘書が融資を御紹介したという事実はそのとおりでありますが、今委員がお使いになりましたような深入りをした状況ではないと存じます。  それから、糾明というお言葉がございました。私は、確かに事実、小林君にいろいろどういったことだったんだということは聞きましたけれども、糾明という言葉の持つ意味は、非常に何か犯人の取り調べのような感じを持ちまして、少なくとも私はそのような気持ちで小林に事実をただしておりません。  そこで、小林に確認をいたしましたところ、その尾花さんの融資のお話は、これは御本人のプライバシーに属することもありますので、私はその弁護士さんを介し、また富士銀行から確認をいたしましたことを総合して申し上げたいと存じますが、尾花さんは富士銀行の赤坂支店に借り入れの申し入れをされまして、平成二年の六月から三年五月にかけまして数回にわたって融資の実行を受けられました。小林元秘書が御紹介をいたしましたのは、その最初の時期であります。  そして、その融資につきましては、中村という当時の渉外課長さんが担当されたわけでありますが、尾花さんはその所有するすべての不動産の明細を提出をされ、必要の都度担保設定することを申し入れておられました。一また、不動産の買いかえのためのつなぎ融資、既応借り入れの借りかえ、新規不動産の購入など、その使途を明細にしておられたと聞いております。そして、尾花さんは富士銀行から正規の融資であると確信しておられたわけでありますし、再三にわたって根抵当権設定登記手続を実行するよう申し入れもしておられたということであります。その後、発覚いたしましたこととして、中村元課長等の不正行為のために正規の手続がとられておりませんでしたため、富士銀行側に調査を求められ、事実関係を確認をされた上、正規の契約を締結をされ、担保登記等手続も実行され、現在本来の正常な取引になっていると承知をいたしております。  小林元秘書からは、尾花さんを中村元課長に紹介いたしました後に、尾花さんから中村さんの部下の方に融資申し込みの書類をつくってもらって進めてもらっていますという趣旨の報告を受けて、また中村元課長からは、尾花さんはたくさん不動産を持っておられる、うまく動かせば困ることは何もないといった話を聞いておられたということでありますが、融資の詳細については承知をいたしておりません。ただし、現在すべて富士銀行の正規の融資になっておりますことから考えてみまして、個別のその使途等について今、私は問題のなかったものと思います。
  93. 上野建一

    上野委員 ところが、その十億のうち、借りる目的であった借地権つき家屋は、金額が六億強ですね。そして、この不動産に関係をした開発会社調査をしましたら、残りの四億弱には、どうも中村、それから小林両氏が、どういうふうにしたのかわかりませんが、二人がどこかへ持っていったんじゃないかという疑いがある、こういうことが出てまいりました。  そこで、捜査当局にお伺いいたしますが、この問題については、この四億の問題については捜査当局は何か調査をされている点があるでしょうか。
  94. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今私は個人のプライバシーのこともありますのでとお断りをし、現実にすべてが富士銀行の正規の融資に切りかえられておりますということを申し上げております。捜査云々というお言葉をお使いになりまして、その中に問題点をお持ちのようでありますが、これは、私は尾花さんのためにも小林のためにも申し上げたいことでありますが、むしろ私は、尾花さんの弁護士さんに確認をして申し上げたことであります。
  95. 國松孝次

    國松政府委員 先ほど申しましたように、富士銀行にかかわる不正融資事件につきましては、現在捜査中でございますので、具体的事実につきましては答弁することを差し控えさせていただきますが、御指摘のございました融資金の使途に関する件につきましては、現在までのところそのような事実は私ども把握をいたしておりません。
  96. 上野建一

    上野委員 それでは、また後ほど少し明確にしますが、今橋本大蔵大臣は、花田敏和社長については後援会に入っているけれども、親しい関係ではない、こう否定をされております。ところが、津川雅彦、有名な俳優さんですが、この方がやはり融資を受けた。ところが、途中からコンサルタント料ということで契約したというので切りかえた。ところが、この話は、いわゆる北海道の浦臼町の開発と関係をしておるわけでありまして、そのコンサルタント料として一億五千万、そのことがなっておりますけれども、そういう話について大蔵大臣、直接かどうかは知りませんが、あるいは小林という秘書をやったのか、そこのつながりがあるというふうに私の調査ではそうなっておりますけれども、その関係はいかがでしょうか。
  97. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一に、先ほど申し上げましたように、津川さんは、私は自分の友人であると思っております。そして、津川さんのお話というのは、時期は私ははっきりいたしてな。いということでありますけれども、恐らく昨年の五月ごろに、津川さんではなく津川さんの経営される会社の方から融資について相談に乗ってくれる方あるいは銀行がないかという御相談があって、中村元課長を紹介したと報告を受けております。内容については、詳細は存じませんが、八月、たしか二日でありましたか三日でありましたか、小林に関する問題が報道されまして、急ぎ津川さんの事務所にも連絡をとり、中身を伺いました上で、記者会見で申し上げております。そして、たしかコンサルタント料を受けられて、富士銀行からの融資というものは受けておられないと承知をいたしておりまして、それ以上の詳細は、私は存じません。
  98. 上野建一

    上野委員 この全日販という会社は、大蔵大臣の名前を頻繁に出すことによっていろいろな活動をしておった経過があります。非常に親しいんだ、こういうことを言っておりますし、それから今度の場合、全日販は少なくとも百二十億のお金を引き出しております。そして、そのことが表に出始めたので、この北海道の浦臼町の第三セクター、これの社長辞任するとかいろいろな動きになってあらわれている。その北海道の浦臼町は富士銀行も大丈夫だ、そういうことで、おれの後ろには大蔵大臣もついているんだ、こういうことも含めて大変この開発に乗り込んでいったわけですけれども、それがあなたの三十年来の友達である津川さんをその浦臼町に連れていって、連れていったのかどうか、いかないか――コンサルタント料として多額の金を取っている、こういうつながりになっています。  そういうことを考えますと、これは大蔵大臣が利用されたのかどうかは別にして、そういうことがどうもだんだん明確になってきつつありますけれども大蔵大臣はこの点についてはどうお考えでしょうか。
  99. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、津川さんが年来の友人であると私が思っておりますことはそのとおりです。また、今、津川さんの会社の経理の御相談からの話は御報告を申し上げたとおりであります。  同時に、先ほどから委員、全日販という会社の名前をお出しになりますが、全日販の社長を私の後援会であるその日計の当時の副社長でありました花田さんがしておられるということは、確かに御指摘のとおりでありますが、私はそういう事実を知っていたわけでもございません。そして、全日販という会社は私の後援会員でもございません。
  100. 上野建一

    上野委員 そこのところはまた後ほど資料を出していただいて、それからさらに問題を明らかにしていきたいと思いますが、このあれを見ますとノンバンクの数の多いこと。富士銀行だけでも十二社、そしてもっと多いというふうに言われております。それからさらに金を引き出した会社、今まで申し上げたところ、そこを含めてもう二千億を超す金が引き出されている、こういうことなんですが、そこで銀行局長、最後にお伺いしますが、この富士銀行の二千六百十四億円、そして焦げつきと思われるのが二百七十七億円という、昨日証言がありましたけれども、残りの焦げつき以外の、二千六百十四億円から焦げつきを引いた分はどのような形で処理をされたと報告をいただいていますか。
  101. 土田正顕

    ○土田政府委員 これは富士銀行の方から聞いたとおりを申し上げますが、富士銀行は事件発覚後、個別の融資先と思われるものと接触をいたしまして、富士銀行とそれぞれの融資先との間の正規の融資関係に切りかえる、そして必要な担保の保全にも努めるというような行動をやったもののようであります。そこで、富士銀行といたしましては、そのような手続によって一応債権確保のめどがついたと判断されたものは、昨日申したような、また今委員から御指摘のありましたような回収不能という額から除いて計算をしておるようでございます。  ただ、この辺につきましては、何分にも私どもの方といたしましては、今後の富士銀行と、それからいわば富士銀行との正規の融資につけ直された融資先との間の個別の取引関係の成り行きを見てみるしかないというふうに考えておりまして、今後どのようになるのかにつきまして具体的な見込みを立てることは、私どもの方からは差し控えたいと思っております。
  102. 上野建一

    上野委員 なかなか内容を言いませんので、それじゃ私の方から確認をしておきたいと思いますが、これはどうでしょう。協和埼玉銀行、協和埼玉ですね、埼玉銀行が八十億のお金を不正融資をしている。それで、ノンバンクは四社。それから借りてるところは二社。それから東海銀行は、ノンバンクは、オリックスファイナンスを中心にいたしまして、ノンバンクが六百三十億。そして、その金を八つ以上の会社で借りている、こういうことが出ていますけれども、この点はどうでしょう。間違いないでしょうか。もっと多いでしょうか。
  103. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいま御指摘になりました社数については、私どもも大体そのように聞いております。それから、金額につきましては、これはそれぞれの、協和埼玉銀行及び東海銀行が告訴をいたしました金額、それとただいま御指摘のありました金額は一致しておると思います。
  104. 上野建一

    上野委員 それじゃ後で資料を出してもらうことにいたしまして、次の問題に、時間の関係もありますので、移らしていただきます。  次は、実は私はこの質問をするのにいささか迷ったのでありますけれども、この問題を調査をしてみますと、大変常識的に考えても不当だと思われる点が多い。それに、特に私ども、議員もそうですけれども、一般の国民、庶民の立場で物を考えなければ、政治不信というのはますます大きくなる、こういうことを考えますと、やはりこの問題は何らかの機会に明らかにすべきじゃないか、こう考えておりましたので、余り時間はとりませんが、申し上げてみたいと思います。  実は、これは元銀行局長、そして日銀の理事、そういう役職にございまして、名前は吉田正輝さんでありますけれども、この方が高級マンションを交換をした、こういうことでございます。まあ交換ですから、自分の持っておったものが向こうと同じ価格なら問題がないんでありますけれども、その差が余りにも大きい。これは評価の仕方、いろいろあると思いますが、大方のところ、持っておったマンションは約八千三百万。そして交換をした、今住んでいるところは約四億。そして、これはピーク時にはもっと高かった。例のこのマンションは、そう言うと皆知っているかもしれませんが、あの山口百恵さんが住んでおったマンションであります。大変な、高輪にある、我々から見ると超豪華マンションと言ってもいいと思うのですが、その交換をされた。  そういうことなんですが、これは既に銀行局長をやめてから、日銀の理事になってからの話でありますから、先ほども申し上げたように、私もちょっとだれに聞けばいいのか、質問すればいいのかちょっと迷うぐらいの問題ですけれども、しかし問題は、この土地謄本、家屋と土地の謄本をとってみますと、そのところに相手は、会社は横浜銀行の、いわゆる抵当権を設定して、横浜銀行から二億の金を借りている、こういうことになっているのですが、その横浜銀行は、いわゆる大蔵省の事務次官、歴代事務次官が天下りをして頭取をやっておられる、こういう銀行でございます。そしてその銀行からその会社が借りている。そうすると、交換したところにさらにお金がくっついていくのですね。抵当もくっついていく、二億という金がくっついていく。ところが、二億の価値はない、片っ方は。  そういうことを考えますと、どうもやはり元銀行局長、日銀理事というのはどの程度役に立つか私わかりませんが、そういうものが背景にあった。そしてさらには、この局長時代には、今悪名高い住友銀行が、平和相互銀行ですね、あそこを吸収合併をした際の立て役者、いわば銀行局長の許可なければそんなことできっこないですが、非常に積極的に活動された銀行局長ということになっている。そしてその相手の会社も、やはり住友銀行ともいろいろな形が、関係がある。あるいは、まあ元局長さんも、申し上げませんが、少し関係がやはりある。  こういう、ずっと中身を見ますと、時間がありませんので省略いたしますが、やはり一つ大蔵省からの天下りが、余り大きいかどうかわかりませんが、マイナス面としてやはりこう出てきている。今の横浜銀行の会長も、名誉会長ですかね、それも大蔵省の昔の事務次官、現在の頭取もかつての事務次官、こういうことであります。  そんなことをいろいろ考えますと、これは非常に差のあるものを交換をされた。もちろん八百万かのお金を自分の土地につけ加えてやったそうでありますけれども、それにしても差がある。これはやはり、高級官僚としてそういう枢要な地位にあった人がこういうことをやることは好ましいかどうかと考えますと、今後こういうことがあってはならないと私は考えます。どちらかというと道徳的な、道義的な問題になるかもしれませんが、その点がある。  それからもう一つは、これは税務上、まあいろいろ聞きますと税務上は問題ないと、それだけ差があって問題がないというのも私もよくわからぬのですけれども、これから研究しなきゃなりませんが、一体そこら辺のところもどうなっているのか。これはやはり今後研究する必要があるんじゃないだろうか。税金上の問題は、これはまた角度が多少違う、現在が幾ら高くてもこういう事情だというようなことは、いろいろ固定資産税その他の関係もありますから問題が――これは答弁なくて結構です。もう時間ありませんので。  そこで、こういうことについては大蔵省はどう受けとめておられるか。私はやはりこれは先輩と、随分広いOB、いわゆる先輩といえどもそういう行為をしておることによって大蔵省全体の綱紀にかかわる問題ではないだろうか、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  105. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 お答えをいたします。  吉田氏は、昭和六十一年の六月に銀行局長を最後に大蔵省を退官をいたしております。御指摘のマンション交換は、今先生からお話がございましたように、吉田氏が大蔵省を退官をした後の話と承知をいたしております。また、吉田氏の純粋にプライベートな事柄のように承知をしておりますので、私どもといたしましてコメント申し上げる立場にないことを御理解を賜りたいと存ずるわけでございます。  吉田氏は、大蔵省を退官後、日銀理事に再就職をいたしたところでございますが、まあ日銀を含めまして、このような非営利団体においては、その課せられた公共的役割を適正に遂行いたしていきますために、この目的にかなう有能な人材を各方面から求めているというふうに考えております。   この再就職問題に関しては、公務員の長年にわたる経験と高度の知識が退職後においてさらに活用されるというそのこと自体は、私どもといたしまして意味のあることと考えているところでございます。もちろん役所側におきまして、大蔵省に在職した者が再就職をしておるということによって行政がゆがめられるようなことがあってはならぬということにつきまして、常に戒心をしておるところでございます。
  106. 上野建一

    上野委員 この問題はひとつ反省的に受けとめていただいて、今後の問題に、おかしなことにならぬようにひとつお願いしたい。特に、やはり天下りというのはよくない。もちろんそれは全部が悪いと私は申し上げませんが、もう例えば横浜銀行のように、これは大蔵省の銀行だと言われるような格好で人事が配置をされているというのはどうも理解できない。確かに有能かもしれませんが、歴代事務次官が全部銀行の頭取にとって有能だというのはちょっと言い過ぎじゃないだろうかということも考えられますので、そこら辺のところはぜひ今後の問題にしていただきたいし、それから天下りについては、やっぱりどこかでけじめをつけてやらないといかぬのではないだろうか、こう思いますので、その点、申し上げておきます。  それから次に、年金事業団の問題に珍らしてい。ただきますが、年金事業団は五十三億円の補てんを受けた。ところが、これは補てんでないんだということを厚生大臣は繰り返し言っておりまして、ちょっと意外な感じを受けましたが、その後私はこの問題についていろいろ調べてみますと、年金事業団の資金がいろいろと運用されておる。その運用の中で出てきたわけですけれども、ただ、国債の売買によって生じた、まあ向こうが親切にやってくれたんだ、簡単に言うなら補てんではなくてサービスでやってくれたんだ、こういうことのようでありますけれども、しかし、この中身を見ますと、自家運用のお金は年々拡大をされている。  この点は今後の年金問題として重要だと考えておられるようでありますけれども、この中身を見ますと、まず助言枠というのがあって、野村、大和、日興、山一、この四社に限定をして、助言を受けながら債券をいろいろと処理をされている、回転をさせておられるようでありますけれども、私は非常に危ないと思われる点は、まず、野村、大和、日興、山一の投資顧問会社の助言を受けてやっているんだ、こう言っておるんですけれども、この助言会社そのものがそれぞれ証券会社の、まあ簡単に言うなら親分、子分みたいなもので、ほとんどの社員を調べましても、野村の投資顧問会社は野村の社員、大和は大和、全部もう系列が決まっておりまして、しかもこれは独自にいろんな助言をするなんということはでき得ないような仕組みになっている。もう証券会社の言いなりです。  そして、それを受けるこちら側は課長以下五名でやっている、こういうことですから、これは大臣が、随分立派にやっておられるという、私はほかの委員の方の質問で聞いておりますけれども、そういうことにはなっておらないじゃないか、こう思いますが、大臣、どうでしょう。
  107. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  年金福祉事業団が扱っております資金は、委員指摘のように、勤労者の積み立てた大事な資金でございますので、年金事業団といたしましては、その運用について万遺憾なきを期す、こういうことでございます。  その場合に、これは規則でございまして、運用の先は、株券とかあるいはワラント債とかあるいはまた先物とか、そういうものは一切扱うことができませんので、国債、公社債というものに限られておるわけでございます、もちろん別に預金もありますけれども。そういうことで、自家運用をするということで、今お話がありましたように、年金事業団の方には担当の職員が五名で日夜研さんをしながらその運用に当たっておりますけれども、やはり専門ではないと御指摘の点もございますので、投資顧問会社意見を聞きながらその処理をいたしている、こういうことでございます。  それぞれ投資顧問会社が親会社があるからどうのこうのという関係につきましては、これは具体的にどういうふうになっているか、私たちの方はつかみ切れませんけれども、いずれにいたしましても、投資顧問会社のそれぞれの適切なアドバイスによりまして、しかも、その上で自主的な判断の上で主として国債を売り買いをしておる、こういうことでございますので、その意味において適切に処理されている、私はこのように考えております。  なお、先ほど来ちょっとお話がありました損失補てんということにつきましては、年金福祉事業団では損失を出しておりませんので、したがって、損失補てんを受けたという認識はないわけでございます。損失というのは、普通常識的に考えますと、例えば株でえらいブラックマンデーの後で穴をあけて、それを企業の方、要するに投資家の方の要請とか話し合いで穴を埋めた、これはけしからぬ、こういうことになりますけれども、そういう穴がないのでありまして、堅実に運営してきた、こういうことが今までの実績でございます。
  108. 上野建一

    上野委員 そうおっしゃっていますが、ただ、例えば転換社債を扱っていますよね。大臣、知らないでしょう。この転換社債というのは、今下がっていたりいろいろ大変ですよね。ほとんど手を出さないというのが転換社債なんだそうで、まあいいのもあるでしょうけれども、ほとんどそういうことのようですが、そういうこと。  それから、これは時間がありませんから急ぎますので申し上げますが、内部告発による情報なんですけれども、野村証券というのは私はもう全然信用できない会社だと思っていますから、なおこの際申し上げるのですが、野村証券の吉田真幸という副社長、この間四月まで副社長ですね、三月までですか、現在はベンチャーキャピタルというところの、これは上場予定の会社にお金を貸す会社、こういうように考えればいいようでありますが、年間五十社ぐらいを上場しているそうであります。その会社の今社長ですけれども、この吉田真幸氏は、事業団の資金を元にして、今の転換社債の問題も含まれているかもしれませんが、そのほかに、いわゆる株と言われる問題も事業団に対していろいろやっているんだ、こういう情報があるのですが、そういうことについては気がついておられますか、おられませんか。
  109. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 私の方でそういうお話があるということで調べましたけれども、御承知のように、規則によりまして運用は株は禁止され亡おりますのでやっておらない、そういう報告を受けております。
  110. 上野建一

    上野委員 この問題は後でまた機会を見て申し上げますが、最後に信用取引をめぐる問題について、きょうは参考人日本証券の多島社長さん、そして東京証券の専務理事さんにおいでいただいております。どうも御苦労さまでございます。  そこで、今度の証券問題全体を通じて問題だと思いますが、現在の株の売買というのは、本来の目的である投資というよりも投機が中心になって行われている。したがって、会社が事業を発展をさせてそして株主に配当を払う、そういう立場にはなくて、専ら投機のために株が売買をされている。かつては日本でも、ある会社の株をおれは持っている、それで配当は幾らもらっているんだということが一つの、何というか自慢になっておったこともあったわけですけれども、今はそんなこと全然ない。しかも会社会社で、まさに会社役員が自分の会社のように振る舞っておりまして、そこからいろんな不当なことが起こっている。政治献金もその一つでありますけれども、まさに株主を無視した形で今日の会社の運営がされている点が大部分だと言わざるを得ません。  そして特にその象徴は、私は株主総会に象徴されていると思うんですね。あの日本の株主総会をごらんになったら、株主の立場とかあるいは会社の中における民主主義とかそういうものというのはもう全然感じられない。まさに何か、何といったらいいんですか、小学校の生徒会よりももっと悪いような印象でありますけれども、そういうことを考えると、これはもう今度の問題を契機にして、商法の改正も含めて日本の株式会社のあり方を考えなきゃならぬときに来ていると思いますが、その点は証券局長に一言、時間ありませんので一言でぜひお願いしたいと思います。  そこで、そういう中で株の売買が行われておりますが、その中で証券取引所にかかわる問題でありますけれども一つは、私は具体的な例でやるのが一番いいと思いますが、証券取引法の改正にもかかわりますけれども平成二年の十月十五日、これは日証金が通達を出しました。これは特定の銘柄について出したわけでありますけれども、これは福助という株であります。これは、この時点でなぜそういう通達を出して規制をかけたかといえば、福助株が日証金の段階で百万株以上不足をしておる、こういうことになったわけでありますけれども、そこで、こういう規制をかけること自体、私は問題なんじゃないだろうか。  これは例えばロンドン、ニューヨークの証券取引所ではこういことをやっておらない。現に、今度の問題になった補てんの禁止あるいは五%ルール、第二十七条の二十三、そこに、さらには相場操縦の禁止、内部者取引の禁止など、それぞれ法律で禁止をされているわけですね。その上でなおいろんなことを時々日証金とかその他がやる、こういうことなんですが、ところが、この日証金が規制をかけてから、これが百万株ですから、百万株以上不足しているんですから、この百万株以上の不足の段階が限度だということでそこで規制をかけたわけですから、それ以後は、むしろ株不足は減るわけなんですね。ところがふえているんですよ、これは。規制をかけながらふえている。  そうなりますと、これは明らかに特定顧客に対してだけはオーケーを出してほかには売ってない、そういうことになります。例えば十月の二十三日には信用取引では売りが二十万株、買いが十万株、こういうことになっておる。それで明らかに十万株不足がふえざるを得ない。こういうやり方というのは一体どういうことなんでしょうか、この際お伺いします。
  111. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、日本の現在の株式の配当利回りは非常に低い水準になっております。平成二年度で〇・四九%まで低下をしているわけでございます。  そうなりますと、どうしてもキャピタルゲインねらいの投機的な証券市場になるというような問題があるわけでございまして、私ども、配当政策は基本的に企業の経営政策の問題ではございますが、やはり株式市場資金調達をしているわけでございますから、投資家に利益を還元するという意味で、配当性向の引き上げということにより意を用いてほしいということを発行会社にも要望いたしておりますし、また引受証券会社、これもアンダーライターとして当然そういうことを考えるべきだということで、引受証券会社にもそういう指導をしております。また、証券取引所においても、個人株主育成ということから、そういう配当政策の見直しについて発行企業に要望しておるわけでございまして、こういうことを通じて証券市場の現在のような投機的な市場を、できるだけ配当利回りを上げることによって、健全な株式投資をする個人投資家を参加しやすいような市場に持っていきたいというふうに努力をしているわけでございます。
  112. 多島達夫

    ○多島参考人 参考人の多島達夫であります。  今先生が申し上げられました御質問にお答え申し上げます。  幾つかのことが含まれていたと思いますが、一つは、マーケットは本来自由であるべきである、規制は極力廃止しろというふうな点が第一点としてございました。私どもも、マーケットは本来自由であるべきだというふうに考えております。ただ、私ども信用取引に必要な株券を貸借取引ということで供給する仕組みとなっておりますが、信用取引の円滑な運営を図るためには貸借取引というものが受け皿になっておりまして、それで供給する仕組みになっておるわけでございますが、株券というものは有限なものでありまして、貸借取引の貸し林業務に支障を生ずることになる場合には、取引所において受け渡し決済ができないという事態につながる場合もあるわけでございます。したがいまして、過去におけるいろいろな経験を踏まえまして、その場、ケース・バイ・ケースに応じまして規制を行うこともやむを得ないというふうに考えております。  それから、第二の御質問は事実関係だったと思。いますが、福助株のことを挙げられました。私ども本来マーケットは自由であるべきであり、規制はなるべく加えないでおこうということでやっているわけでございますが、福助株につきまして、平成二年十月二十二日に事前調整という格好でその貸し株の数量につきまして制限を加えておりまして、十月二十二日、事前調整を加えました結果は、その後順次、信用取引で言えば売り残高、これが減少しております。その後一局一低があったわけでございますが、平成三年、本年の一月二十九日の段階で、事前調整では貸し株に支障が生ずるというおそれが出ましたので、一月二十九日以降、全面的な新規の貸し株の停止の措置をとらさしていただきました。」それで、それ以降は、先生御案内のように信用取引残高の売り、売りの残高は順次減少しているというのが事実関係でございます。
  113. 上野建一

    上野委員 時間がなくなりましたので、最後に申し上げることだけちょっとお許しをいただきたいと思いますが、ところが、こういう規制をかけておきながら、そしてこれは自民党の長老になる人あるいは現役の大物代議士などもこの信用売りを試みた、その規制があってから。規制がかかっているからだめなんだ、こういうことでありました。  そこで、そうすると、この規制がかかることによって一般はもう全部シャットアウトしていながら、ところが一月の十四日、ちょっと日にちを見てください、これはもしあれなら表がありますからこれをごらんに入れてもいいのですけれども、この一月十四日からの一週間、七営業日、七日の営業日ですね、この間に百五十万株の不足になっているのです。だから、規制をかけておきながら株不足がだんだんふえているということはおかしいでしょう、これはどう考えても。これは介入しているからこういうことになるのです。だから株の操作につながりかねないと思うのです、こういうことをやれば。一般の人は断っておいて、日証金に、断ってください、売り買いは断ってくださいと言いながら、これから以後は勧めているわけですね、十月以降はそれでやっている。ところが、一月投降ではまさに異常な状態が生まれている。こういうことを考えますと、これはやはりこの日証金なりが介入したと思わざるを得ない点が出てきます。  そこで、時間がありませんので終わりますが、最後に東証の専務理事さんにお伺いしたいのですが、こういう不当なやり方、例えばここに仲介申し立て書も出ています。ところが、大蔵省はこれについて、半年にもなるのに何の返事もない。そういう状態ですけれども、この日証金の今度の行動、これらの行動、あるいはこれは東証が指導しているのだと思いますけれども、こういう事態があっていいのかどうか、そこのところはどうでしょう。
  114. 長川和弘

    長川参考人 お答え申し上げます。  先生も御指摘のとおり、本来株式市場は公平かつ自由な市場であるべきです。私どもといたしましても、今御指摘の福助株の問題などにつきましても、常々状況変化をとらえましてウォッチをしてまいっておるところでございます。  この具体的な御指摘の銘柄について申し上げますれば、一部の投資家による買い集めが大変、昨年の秋以来急速に極端に進んだという経過がございます。私どもといたしましては、マーケットの運営ということの公平を期する意味では、すべての投資家に、すべての一般投資家、機関投資家の皆様に安心して参加していただけるようなマーケットとして運営していくことが重要でございまして、ごく一部のそうした極端な動きにつきましては、一般の投資家に不測の損害を与えるおそれがあるということから、望むところではございませんけれども規制をせざるを得ないという場面があるわけでございまして、今回のこの福助株の問題につきましても、そうした特殊な動きをベースにして私どもの判断で規制を徐々に強化し、より安定的な市場運営を図ろうとしたものでございます。
  115. 上野建一

    上野委員 どうもありがとうございました。  問題はいろいろまだ残っていますが、これは直接いろいろとお伺いして問題を究明していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします旧
  116. 大野明

    大野委員長 これにて大野君の質疑は終了いたしました。  次に、宇都宮真由美君。
  117. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 社会党の宇都宮真由美でございます。よろしくお願いいたします。  私は、金融問題について主に質問させていただきたいと思うのですけれども、まず初めに証券問題について、損失保証の定義ですね、これについて一点だけ質問させていただきたいと思います。  ここに、一つ証券会社の社員が顧客に対して書いて提出した文書があるのです。その中には株の名前と株数が書いてあって、「上記銘柄の決済期に於けます実質損失分に就きましては、ある程度の時間内に新発の転換社債及びワラント債等の売買にて私の責任にて必ずうめあわせる様致しますので何卒上記の件よろしく御配慮お願い申し上げます。」そういう約束が書いてあります。それが証券取引法五十条一項三号で禁止されています損失保証による勧誘あるいは証券会社の健全性の準則等に関する省令、いわゆる健全性省令一条二号で禁止されています特別の利益提供による勧誘、その行為に該当する行為であるかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。  そして、多分当たらないというお答えが返ってくるのじゃないかと思いますので、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
  118. 松野允彦

    松野(允)政府委員 突然のその文書でございまして、今お聞きしただけでございますので、具体的にそれが当たるかどうかという点は、具体的な文面を見て判断させていただきたいと思うわけでございますが、確かに外務員の中には、そういう損失保証と客に受け取られるような行為をしているという例がございます。(宇都宮委員、資料を示す)こういう文面、私どもも見たケースがございます。  消してございますので、具体的に大和証券のだれかというのがわからないわけでございますが、私どもの今まで経験しております中で、外務員が、証取法五十条一項三号に言います損失保証というものに該当するような行為をした例がございます。そういうようなことをめぐってお客との間にトラブルが起こりまして、いわゆる証券事故と言っておりますが、こういう形でトラブルが起こり、トラブルが起こりますと、外務員の責任は、これは会社が民事上は責任を負うという規定がございます。したがいまして、その証券事故をめぐって会社がお客と話し合いをし、その責任をとったという事例がございます。  そういった場合には、私どもの処理は、外務員が証取法五十条のこの損失保証に違反した行為をしたということで、外務員の例えば登録を取り消すとかいうような形で証券事故として処理をした例があるわけでございまして、具体的なこの文面、どういう外務員がどういう投資家に、どういう時点で、どういう状況で出したのかというのがわかりませんけれども、もしあれでしたらこれを、ちょうど検査も入っておりますものですから調べさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、外務員がこういうようなことをして、それがトラブルになり、証券事故になり、外務員が登録抹消等の処分を受けたという例は過去にもございます。
  119. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 私は、こういうことをした外務員の責任を追及しようとも、そういうことを思っているわけでもないわけで、要するにここに書いてあるような約束事です。これが損失保証による勧誘行為あるいは利益提供による勧誘の行為に当たるのかどうか、この判断についてお聞きしているのですけれども
  120. 松野允彦

    松野(允)政府委員 この文面、拝見いたしますと、それに当たる可能性が非常に高いと思います。今申し上げましたように、これが具体的にどういう外務員からだれに対して出されたものか、どういう状況で出されたのかというのがよくわかりませんので、文面だけで判断する限りでは、これはやはり事前に、損失が出た場合には必ず埋め合わせます、こう書いてございますから、損失保証に当たるという可能性は非常に高いのではないかというふうに判断いたします。
  121. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 その場合、「決算期に於けます実質損失分」というのが、損失が発生してからの約束あるいは発生する前の約束とで、当たる場合と当たらない場合とで変わりますか。
  122. 松野允彦

    松野(允)政府委員 証取法で現在禁止しておりますのは、事前に損失保証して勧誘する行為を禁止しているわけでございますので、明らかに事後、損失が発生してからその補てんをめぐって話し合いが行われ、補てんが行われるということで、事前に損失補てんすることを約束して勧誘がないということでございますと、それは現在の証取法には触れない行為だということになるわけでございます。
  123. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 これは私は、この文書は損失が発生してからの文書かと思って、当たらないのじゃないかと思ったのですけれども。  じゃ、ちょっと例で具体的に、例えばA株を千株買いませんか、この株は将来上がりますから買いませんか、もしこの株取引で損をすれば損失保証します、そういう約束が、そういうことを言って勧誘するのが多分五十条一項三号の典型的な例だと思うのですけれども、そうでしょうか。
  124. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘のように、株を、もしそれが値下がりして損が出た場合にその損失の全部または一部を負担しますということを約束して勧誘をいたしますと、それは五十条一項三号に言う損失保証をした勧誘行為ということになります。
  125. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうすれば、例えばある証券会社と一番最初の取引を開始する前に、うちではお客様に損はさせませんよ、うちでもし損をさせた場合にはその損失保証しますよ、後で埋め合わせますよ、そういう約束をして取引を勧誘する行為ですね、一般的に。そういう行為は五十条一項三号に入るのですか。
  126. 松野允彦

    松野(允)政府委員 五十条一項三号の行為は、当然これは違法行為禁止行為でございますから、普通の証券会社の場合には、社内の従業員のルールとしてそういう勧誘行為をしないことという、これは法律で禁止されておりますから当然のことでございますので、そういう社内のルールがあるわけでございます。そういう社内のルールがあるにもかかわらず、外務員がもし今のようなことで勧誘をいたしますと、それは外務員が社内ルール、もちろん証取法にも違反するというような行為をしたということになろうかと思います。
  127. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうすれば、例えば、もし取引を開始する前に、健全性省令の一条二号の方ですけれども、うちの方では手数料を割り引きますから、うちと取引を開始してください、そういうのはやはり利益の提供による勧誘として健全性省令に触れることであり、証券取引法五十条にも触れる行為である、そういうことが言えるのでしょうか。
  128. 松野允彦

    松野(允)政府委員 手数料につきましても、これは証券取引所が決めたものを証券会社はそのとおりお客から手数料を受け入れるようにということに、これは取引上めルールでございますからそうなっておりまして、したがいまして、そういうことを外務員が、もし投資家に対して手数料の割引をするということになりますと、まずその手数料を受け取らないという意味でのルール違反にもなりますし、あわせて特別の利益提供一つの態様だということになろうかと思います。
  129. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうすれば、今回の損失補てんなんですけれども、要するに過去に起こった損失補てんする、そういう利益を与えて以後の取引を継続してもらう。たしか一昨日の日興証券岩崎会長ですかも言っていらしたと思うのですけれども、要するに、損失補てんをしたのは、これからも取引を継続してほしいからだ、そういうふうな話があったと思うのですけれども、そうすれば事後の取引を、損失補てんするという利益を与えて事後の取引を勧誘する、そういう行為に触れるんじゃないんですか。
  130. 松野允彦

    松野(允)政府委員 私どもが聞いておりますのは、確かに取引維持あるいは取引関係の維持強化のためにやったんだということを証券会社の方は私どもに言っているわけでございますけれども、それが具体的に勧誘行為があったかどうかという点につきましては、これはおもんぱかってやったんだというふうに言っているケースが多いわけでございまして、勧誘行為があったというところまでは私どもは把握をしていないわけでございます。
  131. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 損失補てんするという行為が、そもそも事後の取引を継続してもらうということで勧誘行為に当たるんじゃないんですか。そういうふうに考えるのが常識だという気がするのですけれども、いかがですか。
  132. 松野允彦

    松野(允)政府委員 五十条の損失補てん、あるいは利益提供をして、損失保証をして勧誘する行為ということは、要するにそういう勧誘行為を禁止をしているわけでございまして、これは、そういう勧誘をするということは投資家投資判断をゆがめる、ひいては市場の価格形成をゆがめるという、そういう観点から勧誘行為を禁止をしているわけでございます。  今回の場合、取引関係の維持強化のために、そういうことを考えて証券会社損失補てん行為をしたといたしましても、そのこと自体が投資家投資判断行為をゆがめるというような勧誘行為だというふうに判断するかどうかという問題でございまして、具体的な勧誘行為がないというようなこともありますし、投資判断をゆがめるような行為として損失補てん行為が行われたというのは判断しにくいというふうに私どもは考えているわけです。
  133. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 同じことを押し問答しても始まりませんので、この勧誘行為というのは法の規定上だと、結局こういう勧誘行為があれば違反、この法律違反ということになるわけで、その勧誘行為の結果、お客さんがその株を買おうと買うまいと、そして買って、それで損をしようともうけようと、そして損をして、それで補てんされようとされまいと、それは全く関係なくて、勧誘行為があれば成立するんですよね。
  134. 松野允彦

    松野(允)政府委員 法律の規定はそうでございます。
  135. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうすれば、結果的にこういう行為が問題になるのは、勧誘行為があって、そして株を買って、そして損をして、そして損失補てんされない場合だけだと思うんですよ、表面上にあらわれるのは。そういうところからお尋ねするんですけれども、今までに証券取引法違反で、損失保証による勧誘あるいは利益提供による勧誘行為として行政処分された例がどの程度あるんでしょうか。
  136. 松野允彦

    松野(允)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、外務員の中にそういう損失保証行為を行い、それに基づいて、それが原因となってトラブルになり、証券事故になるというような場合に、外務員に対する行政処分として外務員登録取り消し処分というようなことが行われるわけでございますが、こういう例が、例えば平成三年三月期には証券事故が全体で九十七件ございましたが、そのうち、損失保証が絡んでいたといいますか、全部損失保証だけではございませんけれども損失保証関係していたケースが十四件ございます。そのうち、それにかかわる行政処分が五件行われております。
  137. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 五件はあったそうですけれども、この法律をそういうふうに限定して解釈すると、ほとんど法律違反として行政処分される場合はないんじゃないかと思うんですよ。結局この法が功を奏してないといいますか、そういうことになるんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  138. 松野允彦

    松野(允)政府委員 しかし、こういう形で外務員が行政処分を受けますと、その後五年間は外務員としての活動が一切禁止されるわけでございまして、そういう観点からいきますと、外務員にとっては、損失保証というようなこと、あるいはほかの違法行為もそうでございますけれども、そういうことをやることによって外務員行為ができなくなるということで、もちろん会社もそういうことをしないようにというルールを課しているわけですけれども、かなり重いペナルティーだというふうに私どもは考えるわけでございます。
  139. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 重いペナルティーかどうかよりも、そういう行為があれば必ず発見できるかどうか、そういう行為をした者が必ず、少なくともその行為をした者のほとんどが処分を受ける、そういう形にしておかないと法としては効果がないんじゃないか、そういう観点から申し上げたわけです。  続いて金融問題の方に移らせていただきます。  この委員会というのは、当然のことながらこのような不祥事が二度と行われないようにするため、そのための調査をすることが目的だろうと思います。したがいまして、できるだけ真相を究明するという点につきましては、私たちの立場と大蔵省の立場は変わりないと思いますので、できるだけ誠実に、簡単にお答えいただきたいと思います。  まず、今回の不正融資に始まります銀行の不祥事、これがどこに原因があったかということを突きとめないといけないと思うのですけれども、もちろん行為者にも問題はあったかとは思います。ただ、今の時期にこれだけ多くの事件が一斉に発覚したということは、行為者だけに原因があるのではないということが言えると思います。そして、大きくは経済政策といいますか、その結果としての現在の経済状況、いわゆるバブル経済の破綻という言葉が使われておりますけれども、そういう経済状況原因があったかとは思います。ただ、そういうことは、起こらない方がいいには違いないんですけれども、これからも起こると思いますので、こういうことが起こった場合にも、こういう経済状況になった場合にも、こういう不洋事が起こる前に防止できる、あるいは起こったら早急に発見できる、そういうシステムが必要ではないかと思います。そしてまた、銀行の経営姿勢、いわゆる利益至上主義、これにも原因があったということは、昨日の銀行の頭取方の答弁にもありました。  そこで、私はきょうは、こういう不正融資等の違法行為が起こった場合にできるだけ早急に発見できる、そういうシステムを銀行の中、あるいは銀行の外に設けておく必要があるということで、主に、もちろん銀行内部の調査検査の制度を充実させるということも必要なんですけれども、それは一応おいておきまして、今は大蔵省が監督官庁として検査を行っています。そして日銀が考査を行っております。その制度について少しお尋ねしたいと思います。  八月二十日ごろですか、行革審の鈴木永二会長が、こういうことが二度と起こらないようにするためには、証券金融あわせた監視・検査機関をつくる必要がある、大蔵省の息が直接かかるものでは国民の納得が得られない、そういうふうな発言をなさったという新聞報道がありましたけれども、私もそういう立場から質問させていただきたいと思います。  そこで、現在の大蔵省の監督のあり方についてお聞きするんですけれども大蔵省検査というものが、詳しく言えば切りがないと思うんですけれども、大体どういう形で、どのくらいの間隔で行われているのかということについて、大まかな説明をしていただきたいと思います。
  140. 土田正顕

    ○土田政府委員 大まかなということでございます。簡単に御説明させていただきます川  大蔵省が行っております金融検査は、銀行であれば銀行法に根拠がございますが、金融機関の業務の健全性の維持、それから公共的機能の円滑な発揮というようなことを目的として行われるものでございます。  検査事項、それから検査の手順、いろいろございますが、これはもしなんでございましたら、お尋ねを待ちましてさらに御説明を申し上げます。  検査対象機関数は、本省におきましては、銀行から生損保まで、その他若干ございますが、約五百五十でございます。それから、財務局が信用金庫などの検査を担当しております。その対象は約五百九十でございます。  検査体制は、銀行局では検査部、それから財務局はそれぞれやはり検査の担当組織がございまして、そこで担当しております。  検査状況でございますが、これはいろいろな面もございますが、ごく一言だけ申しますと、本省では年間七十行ないし社程度を検査しております。そのほか、銀行につきましては財務局主担で十行程度検査をしております。一行当たり、大体検査官五名から七名程度で、四週間から六週間程度をかけて検査をするのが普通でございます。
  141. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、一つの銀行に検査が回ってくるのは大体どのくらいに、何年に一回とかになるんでしょうか。
  142. 土田正顕

    ○土田政府委員 これは平成二年度の例を申し上げます。  サンプル的で恐縮でございますが、都市銀行三年五カ月、長期信用銀行二年九カ月、信託銀行三年二カ月、地方銀行、これは第二地銀を除きまして二年四カ月、第二地銀二年二カ月というようなことでございます。  なお、都市銀行その他につきましては、検査周期を短縮すべく鋭意努力中でございます。
  143. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 その場合、例えばある銀行の検査に入ったということは、本店に入るわけですか、それとも全支店という意味ですか。
  144. 土田正顕

    ○土田政府委員 検査はまず現物検査というところから始まります。この現物検査は適宜支店を選ぶわけでございますが、それから実地調査をやり、それから本部に集合いたしまして資産査定なり本検査を続けるわけでございます。そこで、現実に臨席いたします店の数というものは、これはおのずから極めて限られた数になるわけでございまして、普通の場合、一例でございますが、やはりこの現物検査に参りますのは二カ店程度、それから実地調査をやりますのが五カ店程度というふうに御了解いただきたいと存じます。
  145. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ただ、大蔵省検査が入ったということは、ある支店の状況、その現物検査なり実地検査なりしたその支店の状況だけしかわからないという意味ではないんでしょう。全体の状況がわかるということでいいんですね。
  146. 土田正顕

    ○土田政府委員 これは検査の全体の目的とも関係いたしますけれども、やはりこの銀行なら銀行の検査の最大の目的は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するためということでございまして、いわばそのための手法といたしましては、銀行なら銀行のそのシステム全体がうまく動いておるかどうかというところに主眼がございます。  それで、そのためにいろいろな活動をするわけでございますが、一番努力を集中いたしますのは資産の査定でございます。この資産の査定は全店についての資産査定を行いますけれども、その査定を行う作業の場所は、普通、本部におきまして支店の支店長その他担当者に集まっていただきまして、そこで行うということでございます。  それで支店の現場でいろいろと作業をいたしますのは、例えばその銀行が立てておりますいろいろなシステム、いろいろな事務処理ルールその他が実際に個別の支店で間違いなく行われておるかどうかをチェックするという、いわばサンプル調査的な意味でチェックをするという位置づけにとどまるものでございます。
  147. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、富士銀行、埼玉銀行、東海銀行、東洋信用金庫、日本興業銀行につきまして、一番最近に入りました検査の日時、年月日をお願いいたします。
  148. 土田正顕

    ○土田政府委員 御指摘五つにつきまして、とりあえず着手時期の年月ということで順次申し上げます。  日本興業銀行、平成元年十月でございます。それから、ちょっと順不同かもしれませんが、東洋信用金庫、これは近畿財務局が実施しております。平成二年八月でございます。それから富士銀行、平成元年一月であります。東海銀行、昭和六十三年十月でございます。それから協和埼玉は、まだ合併前の埼玉銀行時代に検査に入りましたのが、着手時期は平成二年一月でございます。
  149. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 わかりました。  次に、大蔵省のこの検査と並行して日銀の考査というのが行われるということなんですけれども、簡単にその概要と、もし大蔵省検査とここが違うんだという点がありましたら、その点、そしてやはり先ほどの銀行につきまして考査に入った年月日、わかりましたらお願いします。
  150. 丹治誠

    丹治参考人 お答えいたします。  まず日本銀行の考査の内容でございますが、これは貸し出し、有価証券など考査先の資産内容について調査をするとともに、いろいろなリスクがございます。信用リスク、金利リスク、価格変動リスクなど各種リスクをその銀行がどういうふうに管理しているか、そういった管理体制や事務処理体制を調べることによりまして、その銀行あるいは金融機関の経営実態を把握しまして、健全経営のために指導するということでございます。対象は、日本銀行と当座預金取引がある金融機関でございまして、平成二年末で六百五十五先でございます。  それから考査の頻度、期間、人員等について申しますと、一般的には二、三年に一回ぐらいの頻度、それから一回については大体二、三週間ぐらい、考査人員は相手の金融機関の規模によって違いますが、大きなところで十名強ぐらい、小さいところで五名程度でございます。  それから、大蔵省検査とどこが違うかということでございますけれども大蔵省の方の検査の内容につきましてはちょっと申し上げる立場にございませんので、お許しをいただきたいと思います。  それから、先ほどの金融機関に一番最近時点でいつ考査を行ったかということにつきましては、富士銀行は元年の十月から十一月にかけてでございます。協和銀行の方でございますが、六十三年の八月から九月にかけて行いました。東海銀行が、これは元年の八月から九月でございます。埼玉銀行の方が、六十二年の十一月から十二月でございます。日本興業銀行が平成二年の十一月から十二月でございます。なお、東洋信金はことしの二月に実施しております。  以上でございます。
  151. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 それで、後で大蔵省の方は詳しくお聞きしますけれども、日銀の考査でこのいわゆる四行、信用金庫一つとあと四銀行ですね、ここで何かおかしなところとかそういうことがあった、何かここは注目したとか、そういうところはあったんでしょうか。
  152. 丹治誠

    丹治参考人 お答えいたします。  私どもの考査の場合には、先ほどの大蔵省さんと同じように営業店の、これはサンプリング的に臨席検査等もしておりますし、事務処理体制やチェックシステムに問題がないかという点についても調査しておりますが、今度のケースでは、いずれも支店の事務処理を指導監督する立場にある人が、しかも帳簿等に全く跡の残らないような形で不正を働いたということでございまして、大変残念ながらそういう異常なことを発見することはできませんでした。
  153. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 多分富士銀行、埼玉銀行、東洋信金につきましては、こういう犯行が行われた後、考査が入っているという形になると思うのですけれども、わからなかったと。それは不可能という意味ですか、幾らどうしても不可能だったと。あるいはしようと思えばできたんじゃないかと、そうお考えになりますか。
  154. 丹治誠

    丹治参考人 お答えいたします。  そういう問題意識を持って非常にチェックをすればできたことかもしれませんが、その時点ではそういう発見ができませんでした。ただそれは、こういう事件は今後とも全くチェックできないということではなくて、例えば銀行の中のいろいろなダブルチェック体制、あるいは大事な証書や書類をどう扱うかというようなことを改善していくことによって、今後これを防ぐことは可能ではないかと思っております。
  155. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 不可能ではないということだけれども、できなかったということですね。  次に、大蔵省の方にも同じお尋ねをするのですけれども、一大蔵省も、富士銀行、埼玉銀行、東洋信金につきましては、多分、事件以後、検査がなされていると思います。その点について何らかの疑問点がございましたかどうか、お願いします。
  156. 土田正顕

    ○土田政府委員 検査の着手時期は先ほど申し上げましたとおりでございますが、若干御説明をいたしますと、今度の事件の発生時期、興業銀行の話はちょっと別でございますが、その他の事件の発生時期について、これは金融機関側が公表しておりますものが事件の発生時期であるというふうに考えまして、検査の実施時期との関係を個別に申し上げますと、富士銀行以外の金融機関については、たまたまと申すべきでございますが、検査の後に不祥事件が発生しております。また富士銀行も含め、いずれの金融機関についても、実は不祥事件発生支店には臨席をしておりません。  それから、興業銀行の例でございますが、興業銀行の説明による偽造預金証書の受け入れ時期は、私どもが前回興業銀行に検査に入りました後でございます。したがいまして、もし検査をやっておればわかったかというお話は、これはいわば推測的な御説明を申し上げるしかないのでございますが、ただし、もちろん発見できたかどうかは、いろいろ難しい議論はあったかと思いますけれども、これらの金融機関に検査をいたします際に、それぞれ内部事務管理面での不備がないかどうかにつきましては、それぞれしかるべく検査に努めているところでございまして、個別の内容について御説明をずることはできないのでございますが、これらの金融機関につきましても、例えばでございますが、現金過不足の発生とか、それから事務ミスから欠損が見込まれている例とか、それから基本的な事務取り扱いでの不備事例が依然として後を絶っていないこととか、不祥事件の発生も依然認められることとか、そのような事実を指摘いたしまして、銀行側の一層の事務体制の充実を促しておるということは事実でございます。
  157. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 東洋信金について近畿財務局の検査が一九九〇年の八月に行われた、そういう報道が新聞に、朝日新聞だったと思うのですけれどもなされていまして、その中で、多分、東洋信金では一九九〇年の四月には既に行われている、不正行為が。偽造の預金証書がつくられている。そういうことだったと思うので、そうだと、二宮洋二理財部長ですか、その方が、昨年四月の不正が事実だとすると検査漏れということになるというふうな談話を新聞では報道されていましたけれども、それは間違いなんでしょうか。
  158. 土田正顕

    ○土田政府委員 私どもは東洋信用金庫からの説明を受ける以外に当面調査の方法がないのでございますが、この東洋信用金庫の方で事件の概要を発表いたしましたときには、この事件は平成二年のたしか十月からであるというような発表があったと思っております。その後、もちろんいろいろな実態究明の努力が主として検察当局を通じて行われておることと存じますが、その詳細と申しますか、その動向については私ども情報を入手し得る立場にございませんので、それから後はいわば推測なり仮定の議論を出ないわけでございます。その点、ご理解を賜りたいと存じます。
  159. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 八月二十七日の新聞報道では、最初の偽造証書はもっと前で一九八七年九月だ、そういう報道もなされておりました。したがいまして、新聞報道を見る限りは、検査より前に既にこういう行為が行われているということは、地検の調べでもありますから、それの報道ですから、明らかではないかと思います。  それは一応おいておきまして、次の質問に移りたいと思うのですけれども、興業銀行のこの検査についてお聞きしたいと思います。  興業銀行は、偽造証書の受け入れというのはことしの四月ということで、その偽造証書を受け入れたことを発見するというのは無理であつだろうと思います。その前ですから、検査は。  ただ、今問題になっています尾上縫さんとの取引というのは、きのうの証言だと、最高では、興銀と興銀リースと興銀ファイナンスと三社合わせてピーク時には、それが一九九〇年十月末ごろだそうですけれども、二千四百億円を融資していたという話なんですけれども、興業銀行としては、やはり個人にこれだけの融資をするのはすごく注目すべきことではないかと思うのですけれども、その点と、大蔵省検査で興業銀行が融資している額だけがわかるのでしょうか。それとも、いわゆる系列のノンバンクも含めてそういう三社が尾上縫さんにこれだけ融資している、そういうことも発見できるのでしょうか。
  160. 土田正顕

    ○土田政府委員 興業銀行が一個人にそのような多額な貸し出しをすることの問題点につきましては、昨日、興業銀行の頭取御本人からもいろいろと反省のお話があったように承っております。  そこで、検査との関係で御説明を申し上げます。  興業銀行に前回検査に入りましたのは、先ほど申し上げましたような平成元年十月でございますので、このときには、昨日の御説明もあわせ考えますと、その偽造預金証書の問題はまだなかったように思われます。  そこで、それはそれといたしまして、前回の検査のときに貸し付けの状況なりその他を見たかということでございますが、それはやや検査の内容になりますので、詳細な答弁は差し控えさせていただくわけでございますけれども、やはり一般論ではございますが、金融機関の貸し付けについて、網羅的ではございませんけれども、相当部分について元利の回収の可能性、確実性などについて点検を行っておることはもちろんでございます。  ただ、その際に、関係の別会社までを含めたところでこの貸付残高を把握するようになっておるかというお尋ねにつきましては、これは率直に申しまして現段階では自動的にそのように合算をして見るというふうにはなっておりません。ただいま二千四百億というピーク時の融資額の御紹介がありましたが、その時点における興業銀行本体からの融資、これは九百億ぐらいであったかと思いますけれども、それは当然検査の対象になり得たものでございます。ただ、興銀から事情を聴取いたしましたところでは、やはり九百億円に達したとは申しながら、十分な融資審査を行った上で株式、金融債などを担保として貸し付けをしており、債権保全上は問題がないと考えていたというような説明を受けております。
  161. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ちょっとあれなんですけれども、要するに興銀の検査で、興銀系列と言われていますノンバンクが、まあ例にとれば尾上さんに幾ら貸していたかということまで把握できるんでしょうか、できないんでしょうか。
  162. 土田正顕

    ○土田政府委員 御指摘の問題をやや一般的に申し上げることをお許しいただきたいと思いますが、金融機関に対する検査で当然対象になりますのは金融機関本体の行動でございます。その場合に、系列のノンバンクがやはり貸し出しを行っておる、その貸し出しのところまで含めていろいろ見ることができないかという問題意識であるように拝承しているわけでございますが、このノンバンクというのは、いわば銀行とは独立した別の企業体でございますので、銀行に対する検査権はノンバンクには及びません。  そこで、銀行からノンバンクについての情報なり統計をとることが容易であるか、また銀行を通じてノンバンクの行動をコントロールすることが容易であるかという問題になるわけでございますが、そこは、実はこれまでの経験の示すところでは、ノンバンクに関する一般的な金融機関本体が持っている情報の程度というのは非常に千差万別でございます。それで、必ずしも銀行が関連ノンバンクの管理体制を整えているという状況にはないのでございます。  殊に、多少長くなって恐縮でございますが、これはいろいろな事情がございまして、金融緩和期には、その親元の銀行からではなく、金が欲しければほかの銀行やノンバンクから幾らでも資金を借りることができたというようなこともございまして、親銀行の統制力は著しく弱まっておりました。また、やや立ち入った話でございますが、系列ノンバンクの経営には古参の先輩が当たっておるというようなこともあって、現役の後輩からなかなか文句をつけにくいというような、そういうケースもあるというようなことも聞いておるわけでございます。  そのようなこともございまして、銀行が関連のノンバンクの管理体制を確立しているとは到底言えない状況でございますが、その点、私どもも問題意識を持っておりまして、けさほど大蔵大臣から御説明申し上げましたような一連の行動の中で銀行に監査、ノンバンク管理体制の強化を求めたいと思い、その具体的な方法などもこれから考えたいと思っているところでございます。
  163. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 確かにノンバンクというのは、いずれにしろ銀行から、まあ興銀が興銀リースあるいは興銀ファイナンスに幾ら融資しているか知りませんけれども、それもお聞かせいただきたいと思いますけれども、それは保護しなければならない預金者のお金なわけですよね。それが興銀リースに行くということは、またそこから次のところに貸し出されるということがはっきりしているわけなんです。そうしますと、その興銀リースが持っている債務者に対する債権、それの価値というのは、興銀にとっての資産を評価する上でも非常にそれは重要なことではないかと思うのです。  そういう意味で、ファイナンスなりリースなり信販なりクレジットなり、そういうところは一般の生産業とかそういう企業とかとは全く違うと思うのです。そういう意味で、大蔵省のノンバンクに対する検査ですね、それは、やはり銀行に対する検査というのはその系列のノンバンクに対する検査にもつながらないと、本当の意味での預金者の保護ということにはならないかと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  164. 土田正顕

    ○土田政府委員 ノンバンクの状況をどうやって把握するべきかということでございます。この点につきまして、まず銀行検査の活動を自動的に子会社なり別会社にまで及ぼさせるということはなかなか無理であろうかと思います。と申しますのは、銀行は形式上は関連ノンバンクに対して五%程度の出資持ち分しか持ってないからでございまして、銀行に対する検査権が子会社に自動的に及。ぶというふうにはなかなかならないと思われます。そこで、むしろ別途ノンバンクに対しましてどのような監督権限を直接持つのがよろしいかといういそういう議論として従来アプローチをしてきておるわけであります。  そこのところを御説明申し上げますと、これはいわば貸金業規制法上の監督権限の問題になりますので、これは、従来は御承知のとおり資金需要者等の、つまり借り手の利益の保護の目的で規制法が制定されておったわけでございますが、その後、先般通常国会において法改正がございまして、ことしの九月以降新たに事業報告書その他の報告を求めることができるようになりました。ただ、この活動は、そのときの御審議の結果でございますが、土地関連融資の実態把握及び適正化のため、必要最小限度でなければならないという位置づけでございます。したがいまして、当局といたしましては、ノンバンクによる一般の貸出金にまで報告を求める法的な権限は認められていないというふうに考えるわけでございます。  ただしかし、このような法的権限には制約がございますけれども、昨今のいろいろな事件や問題にかんがみまして、ノンバンク側の自主的な協力があればということでございますが、ノンバンクの一般的な貸し付け先の状況についても、今後はできる限り実情把握に向けて努力してまいりたいと考えております。
  165. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 時間がなくなったので、最後に大ざっぱな聞き方になって申しわけないんですけれども、いわゆる日本興業銀行あるいは興銀ファイナンス、興銀リースが不動産会社に対する融資で問題になっているところが末野興産というところ、あるいは富士住建というところがあるというのを多分いろいろ報道なされていると思うのですけれども、そういう点につきまして、大蔵省検査ではどれだけの把握をなさっていますでしょうか。そして、現在バブル経済の破綻ということで、その代表格というのがやはり土地、不動産と株じゃないかと思うのです。そういう意味で、融資をする際に、不動産業者に対する融資とかあるいは株を扱っているもの、あるいは株式の投資に使うための融資というのについては、今の時期だと特に検査する必要があるんじゃないかと思うんですけれども、その点、大蔵省検査ではどういうふうな配慮を払われてなされておりますか。  例えば、日本興業銀行が不動産関係者にあるいはレジャーとか、いわゆるバブルのそういう関連にどれだけの融資をしているかとか、そういうことを把握なさっていますでしょうか。だから、末野興産、富士住建と、そして最後の一般的な業種別に対する把握をなさっているかどうかということだけお答えいただけますか。
  166. 土田正顕

    ○土田政府委員 御指摘の具体的な企業について論評を申し上げますことは、多少その企業の信用にも影響いたしますので差し控えさせていただきたいと思いますが、昨今いわゆる金融の引き締まり基調とそれから不動産価格の、一部においては低落しておりますが、低落、したがって、その担保価値の減少というような一連の現象によりまして、財テク関連企業ないしは一部のそういう不動産業の方で資金繰りその他に問題を生じているという報道は散見されるところでございます。  それで、実際にどのような状況になっておるのかということは、検査よりもむしろ主取引銀行その他からのヒアリングによって動向を把握しております。ただ、現実にこのような大型の企業になりますと、一つや二つの金融機関からの借り入れに依存しているということではございませんので、何十という金融機関及びノンバンクからの多額の借り入れによって経営をしておるということでございますので、動向の把握は決して十分できているとは申しがたい実情でございます。  私どもは、御指摘の興業銀行はもちろんでございますが、それのみならず、この関連のいろいろな金融機関の健全経営の確保という観点から、最近特に問題を生じやすいようなその方面の企業への融資について懸念がないかどうか、十分な注意を持ってリスク管理に当たるように要望しておるところでございます。
  167. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 いずれにしましても、こういう自由主義市場に対する信頼あるいは政治に対する信頼を取り戻すのが私たちの務めだと思いますので、十分調査の上、二度とこのようなことが起こらないような方法を協力し合ってつくっていきたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  168. 大野明

    大野委員長 これにて宇都宮君の質疑は終了いたしました。  次に、安田修三君。
  169. 安田修三

    ○安田(修)委員 今度の事件でどうしても解明されなければならぬということは、一つは、補てんは一体何だったのだろうかということです。もう一つは、相場操縦が現に行われているのに、大蔵省はそれを的確に把握しながらメスを入れるという決意が出てこないということです。そういう点で私は、時間が短いですから詳しく事例を申し上げることはできませんが、多少の事例を申し上げまして順次質問したいと思います。  まず補てん問題ですけれども、この補てんというのは、きのうまでいろいろと証券会社証人喚問等によりましての見解もございました。大蔵省も今特別検査もやっておられます。今日までの補てん大蔵省としてこれは一体何であったか、このことについての意義をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  170. 松野允彦

    松野(允)政府委員 損失補てん、公表されたものについて私ども証券会社からいろいろと報告を受けているわけでございます。中には、大部分はいわゆる営業特金に絡みまして、それの運用をめぐって証券会社が一任的に運用をしていたというような問題、そういった問題をめぐって損失が起きたときに、その損失をどうするかということをめぐってその補てんが行われた。その動機は、私どもの有価証券報告書の訂正などにおきましても、そういう法人との取引関係を維持し、さらに強化していくというような観点から証券会社が一方的に行ったというようなケースが多いというふうに聞いておりますし、また、株価が急落し、営業特金適正化するというような段階におきましてトラブルが起こって、その営業特金の整理のために必要な、やむを得ないということで損失補てんを行ったというふうなものもあるようでございます。  そういったことから申しますと、大まかに申し上げてやはり大口の顧客、主として法人の顧客でございますが、それに対する取引関係を今後も維持強化していくという観点から行ったもの、あるいは整理のために営業特金適正化する、トラブルを処理するために行ったというふうに大きく分けられるというふうに思うわけでございます。
  171. 安田修三

    ○安田(修)委員 私は、今おっしゃった局長の言葉というのは、これは極めてきれいなことでありまして、それが本当に大蔵省の考えなら、私は極めてこれは重大だと思うのです。  そこで、なぜかといいますと、よく癒着問題も言われます。田渕証人は先般弁明していかれました。昨年の七月二十六日、新聞報道によりますと、山一、大和証券大手二社を含む証券会社十数社の実は補てん問題が出ましたときに、山一証券の三木淳夫副社長は新聞談話にこう言っております。「税務調査で一部の取引について質問を受けたのは事実だが、指摘されるようなケースはない。国税当局にも個々の取引について説明し、納得してもらったはずだ。」それからまた、大和証券の十亀博光常務はやはり同じ新聞報道で「一部に報道されているようなワラントなどを使った損失補てんの事実は全くない。六十三年九月期及び元年三月期の税務調査はすでに終了しているが、その過程とその後も当局から何の指摘もなかった。なぜ当社の名前が出ているか理解に苦しむ。」  少なくとも検査・監督・免許権を持つ大蔵省を相手にこのようなことを言うということは、先般の田渕証人の総会における発言とあわせますと、まさに皆さん方が今まで知っていたということは、先般来委員会でも明らかになっているのですね。まさに皆さん方がこのことを指導し黙認してきたということがはっきりしておるじゃないですか。だからこそあいまいな言葉しか出ないんじゃないですか。その点、局長とうでしょうか。
  172. 松野允彦

    松野(允)政府委員 損失補てんにつきましては、過去の検査におきまして、そういった損失補てんといいますか、あるいは大口顧客に対する利益供与というようなことで検査においても指摘をした例がございます。その都度それについては、大口顧客に対する利益供与ということは適正ではないということで検査指摘し、その改善を求めてきたわけでございますので、平成元年の十一月に大規模な損失補てんが明らかになりまして、それを踏まえて、通達で事後の損失補てんというものを厳に慎むようにという指導をしたわけでございます。  私どもとしては、確かに過去の検査におきましてそういう利益供与が散見されたということは認識をし、それについて最善の指導をし、改善努力を求めてきたわけでございますが、通達後もこういうようなものが結果として出た、株価の急落局面で営業特金適正化をめぐって発生したとはいえ、こういったものが通達後も行われたということについては、行政指導が甘かったのではないかというような御批判を賜らざるを得ないと思うわけでございますし、私どもとしても証券会社に対しては、こういう損失補てんは不適切な行為であるということはかねてから強調してきているわけでございまして、決して黙認をしたということではございません。改善指導をし、あるいは場合によっては社内処分を要請したということでございます。
  173. 安田修三

    ○安田(修)委員 昨年の新聞発表があったときに、このときは実は旧三井銀行の、山一証券のこの補てんに絡んで三井銀行自身が紹介したお客さんに五十億円の損失補てんを行ったのがやはり出まして、そこでこのときに、橋本大蔵大臣は七月二十七日の閣議後の記者会見で「公共性の高い金融機関というものを考える時、非常に残念だ。今後、こういうことが起こらないよう厳正に指導するとともに、どう対応するか議論を詰めたい」、こういう談話を新聞に発表しておられます。そしてこのときも大蔵省証券界は、こうした不公正な取引の是正に向けた制度改革に着手しようということが言われてきたわけですね。  ところが、そういう教訓が一つも生かされずして、証券局自身が何も取り上げない先に国税だけが先行して摘発しておるんじゃないですか。国税が摘発しなければこれはやみの中でしょう。これは大臣、一体どういうことなんですか。皆さんのおっしゃっている一昨年の通達、そして昨年のおたくのこの閣議後に発表されたこと、一つも今回生かされてこなかった。一体何でしょう。これが癒着がなくて何があるのですか。癒着以外でなくて、何がどうして。こういうことをさせておるのですか。
  174. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 その日付は私も正確に記憶をいたしておりませんが、七月の下旬にそうしたことがありましたこと、そしてそれに対して記者会見、閣議後でありましたか何か、いずれにしても記者会見の要請があり、その朝、会見の前に事態の報告を受けまして私は記者会見に応じました。この時点では、どちらかといいますと、証券会社損失補てんということよりも金融機関としてのかかわり方の方に世間の御関心は多かったように記憶をいたします。この時点で三月末の報告をあわせて受けましたので、他に証券会社数社が補てんの事実があるという報告を受け、それも私はその場で報告をいたしたように覚えております。  そしてそういう事態、今になりましてその認識の甘さというおしかりを受ければ私はそれを甘受する以外にありませんけれども、当時私どもの頭に、少なくとも私の頭にありましたのは、証券取引審議会において、また金融制度調査会において、いわゆる証券金融の垣根問題と言われる部分についての議論がだんだんだんだん大詰めに近づいてまいるころでありました。そして、将来そう遠くないうちにその御答申がいただけるであろうという状況も私は感じておりました。そしてその時点において、いわば二つの大きな垣根で隔てられておりましたこれらの問題が、どういう形であれ、相互乗り入れの方向に動いていくであろうという見通しもつけられる状況でありました。  そうした中で、当然のことながら証券取引法の改正という問題はその延長線上に出てまいります。これは、要するに市場がより開かれ、参入機会がふえてくるという中で解決されていく問題と、私は実はその当時そのような受けとめをしておりました。それが認識が甘かったというおしかりであればこれは甘受いたしますけれども、それをもって黙認した証左と言われますのは、私としては非常に残念な、その一言に尽きる思いであります。
  175. 安田修三

    ○安田(修)委員 それでは局長にまた伺いますが、一体それでは今度の場合、これは機関投資家だけに実は補てんしたんでしょうか。一部個人がありますけれども、なぜ機関投資家中心なんですか。
  176. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今回公表されました補てん先には、一部個人がございますのでも、大部分が機関投資家あるいは法人でございます。これはやはり、いわゆる財テクの手段として営業特金というものが大変利用されました。営業特金といいますのは、契約上は企業、法人あるいは機関投資家が一定の資金を信託銀行に信託をいたしまして、その運用指図は自分が行うという形のものでございます。したがいまして、営業特金そのものについてその仕組み自体が問題があるということではないわけでございますが、その運用権を持っております企業あるいは機関投資家が、その運用をするに当たって証券会社投資助言を受けるというような形をとるわけでございます。  それが、運用上はその投資助言というものがやや売買一任的な形になっていたというようなことで、それが損失が出た場合にこれを補てんするというようなことが証券会社の側から行われたわけでございまして、そういう営業特金をめぐるものがかなり多いわけでございます。もちろん営業特金でない形のものもございますが、そういった関係で、特に財テクというような風潮の中で、機関投資家あるいは一般の事業法人というようなものが、あるいは金融法人もそうでございますが、金融機関とかそういうものが補てんの対象として多くを占めているということになっているわけでございます。
  177. 安田修三

    ○安田(修)委員 私、局長が本気でそういうことを考えていらっしゃるのなら、それこそ企業をかばうか、この補てん問題をかばうか、大変甘いと思うし、これから言うのが私は本来の補てんの本質ではないかと思うのです。  例えば、個人の場合は確かにトラブルからということで先般来言われております。野村証券の発表した個人投資家M・Y、これは雑誌によりますと、東京精密株式会社の会長葉山雅章氏ということが判明しております。この方は温厚堅実な人柄だと言われている方だそうでございまして、十九億円もの補てんを受けられたわけでありますから、その運用額というのは極めて大きいと言わな。きゃなりません。この大口の投資家補てんを受けられなかったんですね。そこでトラブルが起きた、だから補てんしたということになっている。なぜか。葉山さんは賠償を求めたんですよ。その結果、野村証券がいわゆる補てんしたわけでしょう。個人の場合は会社と争わなければ補てんしないんです。店その事例を私はもう一件、今野村証券池袋西口支店で現に係争になっていることについて後ほど紹介いたします。これは三年前、参議院予算委員会でこれとは別の事件が、同様なことが取り上げられておるのです。偶然にもまた昨年出ておるんですよ。で、大蔵省も、照会しましたら報告を受けておるとおっしゃっていますんで、私は後から紹介しますが。  さて、なぜそれでは機関投資家個人投資家を分けて機関投資家だけに保証しているか。今、大口のそういうお客さんを大事ということでありましたが、その大事さというのは別なんですね。私は、四大証券が今日巨大な力を持っておるのは、アンダーライター業務があるからではないかと思うんです。それは実に、すなわちこの有価証券の引き受け・発行業務、これがあるからじゃないか。なぜか。莫大な手数料が入るから。実に四大証券日本の株式の九〇%、債券引き受けの七〇%を実は持っているんですね。手数料は三%以下ということになっております。しかも、四大証券がこのように株式で九〇、債券の引き受け七〇、そして、主幹事証券会社はそのうちの五〇か七〇%を実は分け前として先に発行をとってしまうわけですね。したがいまして、もし一千億円の社債を発行したとすれば、そのうちの三%手数料掛ける七〇とした場合に二十一億円ががっぽり入ってしまうわけですよ。大口の会社を大事にしなきゃならぬ理屈はここにある。  もう一つ、回転商い。手数料稼ぎのために一日何十回も、これは私はきょう東急の例を引き出そうと思っておりましたら、この間から各党の皆さんがある事例を持ち出されました。全国のやつを私も調べておったんです。きょうは省きます。あのようにやって莫大な手数料を稼ぐわけですね。株価が上がったときにも損した例を後からほかのやつを申し上げますけれども、だからこのような補てんをしなきゃならぬ事例事態が出てくる。このことをつかずしてどうして補てんがお客さんのため、単に後をつなぐためということが言えますか。ここにメスを入れなければ、補てん問題は私は本質は出てこないと思うんですよ。局長は専門家としてこのことに目を当てていないとすれば、私は大蔵行政のこれは全くの欠陥だと思う。どうですか。
  178. 松野允彦

    松野(允)政府委員 先ほど、取引関係維持強化というような言葉で申し上げました。これは証券会社がそういうふうに言っているのを御紹介しただけでございまして、私も、今御指摘のように、この取引関係という中に引受幹事関係というのが非常に大きな位置を占めているということは十分認識をしているわけでございます。したがいまして、そういう引き受け業務と、一方でブローカー・ディーラー業務というものを併営をしておいて、しかも、四大証券という大きな証券会社が特に引き受け業務において寡占的といいますか、非常に大きなシェアを占めているという現実を非常に私ども行政としても問題視をしているわけでございます。もちろん、行政指導の問題でございますので、なかなか両業務の間の遮断を、例えばインサイダーとかいろいろな面で情報遮断とかいうことはやって指導をしてまいっておりますが、これを企業分割をしろということをなかなか命ずるというところまでは、行政指導としていかないわけでございます。  ただ、先ほど大臣からも申し上げましたが、一方で私どもは、発行市場におきます四社の寡占状態を解消するための一つの方法として新規参入を認める必要があるんではないかということで、そういう方向で、今、証取法の改正あるいは全体の金融制度の見直しの中で、その引き受け業務への参入というものを認めていくという方向で検討を進めているわけでございますし、また御指摘の主幹事が非常に大量のシェアをとってしまうという、これは現在の引き受け方式の問題でもございます。  この引き受け方式の見直し、つまり、より中小証券をたくさん参加させた引受シ団を組んで、それによって主幹事のそういう圧倒的なシェアを小さくする。あるいはいわゆる販売可能性といいますか、四大証券で販売を引き受けたものを販売いたしますとどうしても自分で売ってしまうということになる。そうなりますと、押し込み販売みたいなことも起こるわけでございまして、やはり引受シ団をもう少し大きく組むとか、引受手数料を下げる、あるいは受託手数料を下げる、いろいろな面について現在方策を考えているわけでございまして、この損失補てんが生じた一つの大きな原因に、こういう引き受け業務における寡占状態、あるいは主幹事関係を重視するということがあるということについては、私どもも十分問題を認識しているつもりでございます。
  179. 安田修三

    ○安田(修)委員 初めて局長からその種の発言が聞けました。そこをやはり専門家ですから知っていらっしゃるはず。それをなぜ大蔵省、今までそれを言わなかったか。私はぜひ今の発言に基づいて進めていただきたいし、この視点を絶対曲げてもらっては困る。  さらにそれを少し詰めたいところですが、事例を先に進ませてもらいまして、そこで、先ほど言いました野村証券の池袋西口支店の問題でございますが、昨年の二月二十八日、支店長が顧客、Aさんとしておきましょう、この方へ参りまして、この方は基金融機関の役員で、長期投資のための実は株所有をしておられまして、株を動かしていないわけですね。当時、野村証券から買い付けた株三銘柄を持っておられまして、そのうち石川島播磨の七十五万株が対象になって、担保に入れて信用取引をしてくれ、こういうことになるわけでありますが、これは実はこの方、その株そのものは基金融機関に融資のために預けていらっしゃった。そこへ、フジタ工業の株五十万株、ぜひ信用取引でやらしてもらいたい。私はそういうことを今までやらないんだからだめだと。いや、そうじゃないと。以来、執拗に攻められまして、とにかく一流会社の支店長だから任せてください、会社からマル秘命令が出て、絶対もうかるんだからと、こう言って執拗に攻められまして、とにかく任せよと言うものですから、それならと言って根気負けして、この方のおっしゃるには根気負けした。そこで、担保に入っているからだめだと、私も金融機関の役員だからわかっているのだからと。いや特別な方法でやりますから迷惑はかけませんと言って、実は承諾をさせた。  フジタ工業は当時一株一千九百円でありましたが、その後、最高値二千二百七十円をつけてから順次下がってきました。そして、その最高値をつけだというのは、実はフジタ工業CBの発行を行ったときでございまして、CBの転換価格が一千九百三十二円、一千九百三十二円クリアせずして下がっていったわけであります。この方が、フジタ工業の株、信用取引を承諾した翌日、実はフジタ工業の株は上がりました。やはり支店長の言ったことだなと思ったそうであります。その後、何の連絡もございません。そのうち、実はいわゆる追い証の問題が出てまいったわけでございます。そこでびっくりしたわけですね。何の連絡もなくして、とにかく追い証の問題が出てきた。それから、実はここで紛糾してまいります。この方は、早く手を引かなければならぬということで、野村ファイナンスからお金を借りて、つなぎ資金として、支店長の言うとおり、何とか九月段階で整理をしてまいりましたが、ついにその利息にも事欠きまして、十二月、自分の他の持ち株券処分して一切手を引かれました。  さてそこで、今これが紛争をしておるわけであります。事実を詳しく申し上げないとわかりにくいだろうと思いますが、大蔵省に照会しましたら、その種の報告があるということでございますので、はしょります。  私、結論的に申し上げまして、いわゆる過度の回転商いがこの中にあります。そして、特定銘柄の勧奨が十分含まれております。言った言わぬという問題は出ましょうが、あります。そして一任勘定で勝手に回転しておったということですね。それから、信用取引の約諾書が、実は判こを押してないのです。だから、どうして信用取引約諾書がないものに信用取引をやったかということですね、向こうが。  こうした一連のことを見て、さらに裏づけることは、これが私は少なくとも本店か主管支店の了解があったと思われることは、追い証途中でいながら、この方は約束が違うじゃないか、そんなもの、おれは追い証を出す必要ないじゃないか、おまえ何で勝手にやったのだ、こう言ったら、それが追い証なくしてそのまま九月までずうっと行ってしまったのですから、だから上の了解がなければ、これはできないということですね。  実はこうしたことが起きて、今まだ未解決です。大蔵省も、双方の言い分が食い違っておったと言っています。たまたま初め、冒頭言いましたように、六十三年予算委員会で別の事件として野村証券の池袋西口支店がやはりこの種のことが取り上げられております。同じ支店で二度も、しかもこのことは、私は全国野村証券の支店にあるということを今まで聞いてきたが、実例を知ったのは初めてです。大蔵省はこうしたことに対して一体、五十条違反という問題について今までメスを入れたことはないのか、私は不思議でなりません。  先般、田渕節也証人は、三月に大蔵省検査指摘を受けたという点を言っておりました。指摘をしておきながら、何ら大蔵省が厳正な態度をもって臨んでこなかったということは一体どういうことか、後ほどそのつながりも言いましょうが、とにかく局長、答えてください。
  180. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今御指摘の野村証券の池袋西口支店でのトラブルの問題、私どもも内容を、事実関係を把握しているわけでございますが、確かに御指摘のようにいろいろな問題があるという認識があるわけでございます。ただ、証券会社とお客との内容に非常に乖離がございまして、行政の立場として一体どういうふうに判断していいのかというのが非常に難しい問題があるわけでございます。私ども、できるだけ当事者の主張が歩み寄るようにということで証券会社指導し、証券会社の行き過ぎがあれば、それに対して厳正な措置をとるということでやってまいっているわけでございまして、先ほども外務員の個人的な損失保証の例というようなものも散見をされているわけでして、そういったものが見つかれば、これは外務員に対する責任行政処分ということで、登録取り消しなどが行われているわけでございます。  本件につきましては、今申し上げましたように、我々も両者から事情を聞き、事実関係を確認をしているわけでございますが、何分非常に事実関係、両者の言い分が離れておりまして、行政としてどういうふうに判断していったらいいのかというのが、率直に申し上げて非常に現在困難な状態にあるわけでございます。  私どもが聞くところによりますと、当事者で事実関係が全く一致しないという場合には、司法上の手続に従って解決するというような動きもあるやに聞いているわけでございます。行政としてできるだけ投資家のそういう御意見あるいは事実関係を聞き、かつ証券会社に対してそれに対する反論を聞くというようなことで事情を究明しているわけでございますが、どうしても判断がつきかねる、困難だというようなケースが率直に申し上げて非常に多いわけでございまして、そういう場合に最終的に当事者間で話し合いがつき、和解ができる、あるいはどうしてもそれができないで司法手続に移行するということは、ある程度私どもとしてはやむを得ないんじゃないかなというふうな感じがするわけでございます。  いずれにいたしましても、行政としてはできるだけ両者の言い分を聞き、それに対する考え方なり、あるいは証券会社の営業姿勢の問題というところで何か問題があれば、それに対して改善を指導するということはやってきているわけでございますが、やはりこのトラブル処理におきます行政の立場というのにも限界があるということは、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  181. 安田修三

    ○安田(修)委員 私はトラブル処理の問題を言っておるんじゃないのですよ。同じ、中身が違っても、銀行、信託銀行、この種のいわゆる金融界、たくさんのものがありますけれども、この種の問題が起きておるのは証券界だけじゃないですか。銀行関係では、いろいろなことがあったってこんなことが起きますか。使い込み事件とかいろいろなのありますよ。この種のことがお客さんとありますか。きょうは銀行局長に通告してありませんから聞きませんけれども、私はこの種のケースのトラブルはまずはほとんどないと思うのですよ。ということは、証券業界はこの種のトラブルが起きるようなことに皆さんが許しているからですよ。これを私は言っているのですよ。  だから、私はこの問題は、トラブル解決してくれと、そう言っておるんじゃない。トラブルが起きないように、皆さんが免許権を持って監督しているのに、なぜそういうような行政指導をしないのですか、あれほど密接に行政指導をしておると言いながら。このことを言っておるのですよ。だから私は、きょうはこれは事例だけで挙げたんですから、今ここでこれ以上これは皆さんに言いませんが。そこで、今補てん問題を言っている事例として私言っているわけですので、これは回転商いの問題から出てきておるんじゃないかということで言ったわけです。  さらに次に進みますが、山一証券が、実は子会社である山一総合ファイナンスに営業特金損失補てんとして三十六億一千二百万円行ったことが公表されました。どうして三十六億一千二百万というのを補てんしなきゃならなかったか、この判断を実は聞きたいわけですが、局長に聞いてもどうせ先ほどのよく似た話が出ると思うので私は先回りして言いますけれども、というのは、山一証券が子会社のファイナンスの約四百億の金を預かって運用したわけですね。専門家が運用しておるのですよ。それがどうして三十六億一千二百万も補てんしなきゃならぬような損失を出したかということです。これはブラックマンデーでも何でもないときなんですよ。それで言っておるんです。  といいますのは、このファイナンスが特金を開設したのは八七年、昭和六十二年の十二月、実は特金を開設、それはブラックマンデーによって損失が拡大したために収益拡大を図ろうとして営業特金を開設したわけですね。このときは翌年、いわゆる昭和六十三年の一月四日が一番最安値で二万一千二百十七円。翌日から実は株価が上がって、ずっと棒上げになってきたわけですね。その上がったときに実は特金が開設されておるわけです。それが、それではなぜそのときに三十六億一千二百万の、専門家が穴をあげるような回転をやったか。これは毎日の売り買いを激しくしていわゆる手数料稼ぎ、本社が手数料稼ぎに毎日売り買いを激しくしたということですよね。だからこのような赤字が出てきた。それを補てんしなきゃならなかった、こういうことじゃないですか
  182. 松野允彦

    松野(允)政府委員 御指摘の山一総合ファイナンスの損失補てんの件、実は御質問を受けまして私もどうしてこんな時期にこういうふうな大量な損失が出たんだというふうな、率直にそういう感じを持ったわけでございます。ただ、中身を詳細にまだ私どもチェックはしておりません。確かに山一総合ファイナンスが金融機関から資金調達をして、そのお金で株式を中心に運用を行ったということでございます。ただ、運用期間というのは非常に短くて、四カ月ぐらいでございます。  中身は詳細には見ておりませんが、御指摘のような短期の回転商いというのは余りないわけでございます。四カ月でございまして、ほとんど回転商いをやっていないわけで、どうも結果的にはこの運用した株が非常にまずいものを運用したということで説明をせざるを得ないような形でございまして、回転商いでないかどうかという点については、御指摘もございまして、私ども問題意識を持って見たわけでございますが、回転商いというものはその四カ月の間にはほとんど見られないということでございます。  したがいまして、どうも運用のやり方が極めて拙劣だったというふうに判断せざるを得ないわけでございます。運用した株につきましては、詳細にチェックをしていないわけでございますけれども、どうも結果的には、この間ですら下がった株ももちろん銘柄によってはございます。そういったものを運用していたというふうに判断せざるを得ない。回転というのは四カ月間でほとんどございません。したがいまして、非常に、プロでありながら何という運用をしたんだろうなというのは、私もそういう感じをせざるを得ないところでございます。
  183. 安田修三

    ○安田(修)委員 公の席で証券局長から、プロでありながらまずい運用をした山一証券は天下に恥をさらしておるようなもので……。  さて、参考までに申し上げておきますと、この補てんの三十六億一千二百万円は、昭和六十三年四月十一日米国債、これは大蔵省の資料でございます。三億二千万ドル、単価九・九六ドル、これを九・九六ドルで売って同日十八・九五ドルで買い戻して、一日にして三十六億一千二百万円を埋めてしまった。一日一生懸命汗水たらして五千円、六千円稼いでおる人がおるのに、三十六億一千二百万円昼飯食っておる間に埋めてしまった。まさに荒っぽいやり方。こういうことが行われているかと思いますと、まことに大蔵大臣、残念でございますね。  さて、私は補てん問題、こう思うのです。一つは利回り保証、これは約束はないが、先般来のいろいろな審議やあるいはまた証言やあるいはまた当局の答弁等にもありますが、目標値を示してきたという話がよく出ます。この事例は特に公的資金関係、すなわち年金関係とかその他に見られるわけでありますが、そして今大口機関投資の場合、これは明らかに私は損失保証含みがあることは間違いないと思いますね。  大蔵省が本気なら、法五十条のいわゆる不公正取引禁止に違反しておるとして、私は厳正にこれは調べなきゃいかぬ。そういう問題意識を持って調べるという決意が出ないということはおかしいのですね。私はそれを持ってやってもらいたい。あなたは検察庁じゃないのだから、別にそう言って、なければ何ともないのですよ。免許権を持つ役所として五十条に違反するという目的意識を持ってやっています、だが、やってみてなきゃない、あればちゃんと皆さんは告発でも何でもできるのですから。それから三十五条の免許取り消し等もありますから。だから私は、そういう目的意識を持ってやるという決意が必要である、もう一つは、これは今言いました回転商いの場合はたくさんいろいろあるのです。山一の場合は、局長が見られて運用のまずさで、なかったとおっしゃればそれで結構でございます。他にもありますので、これは手数料稼ぎですね。これは外務員がそのためにノルマを課せられて、そしてじゃんじゃんいろいろな苦労をしてやっているわけですね。私は、お客の利得を抜きにして勝手に売り買いをしたり過度に繰り返し売ったり、そのために損失が出たことに対して補てんしていくという、もうかれば何でもできるというこうしたやり方というものを、これはぜひこの際、不正の手段、計画または技巧をなした行為として、法五十八条の違反として私は調べる必要があるんじゃないか。  そしてさらにもう一つ、一体、では受けない人はどうするのか、補てんの。受けた人はいい。受けない人はどうする。この公正さを行政はどのように保つのか、これを私は最後に聞かしてもらいたい。今言った三点。  皆さんはこの際、特例を出して、受けてない人にも証券会社が全部埋めてやれ、この際、こうおっしゃるのか、あるいは受けた人を何かそのお金を返せと言うのか、返させと言うのか、私は、何らかの行政的な指導なり措置がなければ国民は納得しない。これは局長から聞いて、大蔵大臣に後聞きたい。
  184. 松野允彦

    松野(允)政府委員 最初の二つの問題について私からお答えさせていただきます。  損失保証が、つまり五十条違反行為があったのかどうかという問題意識を持てという御指摘でございます。これは、私ども今四社に特別検査に入っておりまして、そういう問題意識を持って損失保証の有無について検査の重点事項にして調べているわけでございます。損失保証といいましても、これは口頭でなされますとなかなか実際の証拠は見つからないわけでございますが、しかし、大量の損失補てんが行われたという以上は、損失保証があったんではないかという問題意識を持つというのは我々の立場として当然でございまして、その点については十分の問題意識を持って検査をしているつもりでございます。  それから、回転売買あるいは手数料稼ぎという問題でございます。これは従来から、そういうことをやめるためにどういうふうな指導が有効かという点について考えていろいろと施策をとってまいっているわけでございますが、なかなかこれはという妙案があるわけではございません。  ただ、例えば営業員の成績評価のときに、そういう手数料収入だけを評価にはしないで、お客とのトラブルが起こらないというようなことも成績評価の非常に大きな柱にすべきではないか、あるいは、お客から預かっているいわば預かり資産というようなものが順調に大きくなるといいますか、そういったことも評価の対象にすべきではないかというようなことで、営業マンの成績評価制度というものを通じて営業マンの投資勧誘態度を何とか改めさせることができないか。さらに、それでも営業マンが行き過ぎた勧誘を行うという場合には、営業店の中においてそういうものが早期にチェックできるような体制というものもつくる必要があるということで、いろいろなことを要請してまいっているわけでございますが、残念ながらなかなかそういう問題が完全に根絶できないという点は事実でございます。いろいろな方策を考えながら、今申し上げたような点を中心にさらに指導を強めてまいりたいというふうに思っております。
  185. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 安田委員がお述べになりました気持ちは、個人として申すなら私も同じような気持ちであります。  しかし同時に、行政当局として法律を超えて行動することは許されません。そして、現行法において、遺憾ながら、当然倫理的に行われるべきではない行為ということから、ほかの国と同様に損失補てんというものを禁止していないこの状況の中で、我々として、その損失補てんを受けた方に対してそのお金を返せとかどうとかということを申し上げる権限を全く行政当局として持っておりません。  先般来、本院の御論議の中で、この事実解明がすべて済むまでは法改正その他には移れないというような御質問をたびたび受けながら、解明は解明として法改正の努力をさせていただきたいと私が繰り返してお願いをいたしておりますことは、一つは、少なくともやってはならないはずのものが現実に行われ、こんなに普遍的に行われているという意識はなく、それを通達で禁じ、その通達が無視されたという現実が出た以上、せめてその部分だけでも法律的に禁止の措置をとらせていただきたい。そして取引一任勘定取引というものを、その温床となったのならこれもとめさせていただきたい。同時に、受けたお客さん側に対しても何らかの措置がとれるようなルールをつくらせていただきたいとお願いをしております理由は、まさに御指摘のようなことが心の中にあるからであります。
  186. 安田修三

    ○安田(修)委員 それでは、株価操縦の方について少し質問したいと思います。  私は、背景には野村証券そのものが非常に思い上がった行き方というのが随分あると思うのです。それも私は、やはり今の大臣や皆さん、とやかくと言うわけじゃなくして、野村証券そのものの、歴代ずっとこの政府関係とのいわゆるつながりといいましょうか、そういうものは非常に深いものがある。現に田渕節也氏にしましても、さきの中曽根総理時代、大変もう、例えば後援会の山王経済研究会メンバーで、特にそのうちの親しい人たちだけでつくっていた山親クラブのメンバーでありますとか、あるいはまた竹下さんが総理大臣になると、早速若手財界人でつくりました竹下登氏を囲む木鶏会の世話人でありますとか、その他いろいろたくさんあります。そういうような点で、大変まず政界の関係とは密接なつながりがあった。  また、野村総研の初代所長の佐伯喜一さんですね、この方は元防衛庁の防衛研修所の所長さんでございますね。二代目の中川幸次さん、これがまた中曽根元総理の海軍主計将校時代の同期で、毎月会っていらっしゃると言われております。それほど親しい間柄、そして元日銀副総裁で中曽根総理のかつての経済政策に関する研究会のメンバーであり、そしてまた行政改革審議会の民間活力推進方策研究会座長、規制緩和分科会主査、税制調査会特別委員、こうしたいろんな役職をこなしてこられまして、言うなれば野村証券が株の売り出しで盛んに民活問題をやったときと軌を一にしておるわけでありますけれども、いわゆる中曽根総理時代の民活推進の情報、施策立案の方向性、こういうものに接触する一番大事なところに実はおられた人たちがみんなこうなんですね。こうなりますと、私は、株の推奨、特定銘柄の推奨販売戦略、そうした中にこうしたことの情報源というのはふんだんに実は入っておるというところに私は、野村から出しておられるPR話その他を見ると一目瞭然にわかる。  そこで、私はここでNTT株の問題を実は聞きます。  はしょって申し上げます。実はNTT株を上場するときに東京電力の株が非常に上がってまいりました。それは、万年低位株、電力株というのは安定した株の銘柄としてほとんど変動がない。それが一九八六年――すなわち昭和六十年二千円台であったものが四千円、七千円と順次上がっていって、八六年、昭和六十一年ですね、八月二十一日、七千六百三十円になった。この後、ちょっと下がる。これはどの株でもそうだそうでありますけれども、株屋さんが振り落としですか、とにかく一遍下げるんだそうでございますが、その後、今度はさらに急騰します。いわゆる十月一日、八千二百九十円。一進一退ありますけれども、とにかくどんどん上がって、翌八七年、昭和六十二年四月二十二日、史上空前の九千四百二十円という最高値をつける。その後はぐっと一遍に反落してしまう。  で、NTTは御存じのように実はこの二月の九日に第一次百六十五万株ですが、百十九万円の売り出しでしたが、初値は百六十万円で実は売り出されました。この株の動き、いわゆるNTTと比べるのは日本にないのです、このマンモス会社。あの業種、しかも今までだれも参入したところがなかった。結局、電気へん、しかも世界最大の民間電力会社、結局、東京電力の株、同種として上げていった。これは世間公然たる事実。問題は、それをどのように検証するかということですね。私はこれが一つ。  二点目。NTT株第二次の放出、その昭和六十二年の十一月十二日に向かってでございますが、行われたわけでありますが、このときは今度は石川島播磨、これはウオーターフロント、いわゆる東京湾横断道路。それから新日鉄、これはまたいわゆる企業再構築とかなんとかという作戦を展開して、そして石川島の場合も、二百円のぼろ株がどんどん上がって七百八十円まで上がっていく。新日鉄も、百六十四円で低迷しておったのが四百五十四円に上がっていく。とにかく、前段の措置、一年前から周到に上がっていっているところがあるのですね。  それは、なぜこう言うかというと、いわゆる野村証券の出されているPR誌にそれが出ておるわけですね。だから私は、これはまさにこうしたことが野村証券の力によって株が操縦されて上がっていった。その株の動きの一端が、先般東急電鉄の、各委員から詳しく日々の動き、週間の動き、月間の動き、そのシェアまでいろいろ出されましたが、あれに明らかであります、東急の場合に。  そして私は、このことをもう一つ考えるのは、大蔵省、実は証券会社に対して免許権を持っておって、そして報告、監督、検査をやりながら、今度はNTTの株の売り出し側でしょう。JRもやるときなんです。だから、大蔵省は四大証券に借りがある。このために赤字財政にどんと入れてもらったのですから、借りがある。だから、これは世間で言われるように、大蔵省と四大証券が組んでやったんだ、こう言われるのはそこにあります。  そして、第二次の場合も、十月十九日のブラックマンデーを挟むのですね。にもかかわらず、NTT株は二百六十万台で買い支えられるのですよ。どうですか、放出終わった後はとんと下がるんじゃないですか。私はこれ、四大証券の支えがなければブラックマンデーを乗り切ることはできなかったわけ。なぜ乗り切ってきたのか、四大証券が買い支えたから。だから私は、これは大蔵省としては大変四大証券に借りがある。そのことが、前に、補てんに戻ると、やはり癒着原因はいろいろなところにあるのかな、こう言わざるを得ぬことになってしまうのですね。私は、そのためにも今度は厳正にいろいろなことをやってもらいたい、こう思うのです。  さて、今言った二点、どうせ皆さんは否定されるでありましょうが、局長、ひとつ答えてください。
  187. 松野允彦

    松野(允)政府委員 今御指摘になりましたNTTの第一次放出の前後におきます東京電力株、それから第二次に際しましての新日鉄株、あるいは石川島播磨重工業株の株の値動きにつきましては、これは私どもも、特にNTTの放出という問題とは別ではございますけれども、いろいろと株価審査を常時しておりまして、急激に上がったということについての審査はしたわけでございます。いろいろと考え方はあるわけでございますが、東京電力株の場合には、やはり円高とか原油安とか金利低下というトリプルメリットというものが相当、そういうものを受けて業績が好調であるということを背景にして人気化をしたということも、これも事実でございます。  そういったようなことで、株価操作と申しますのは、やはり法律では、特定の者が意図的に株価を上げる、あるいは下げるという場合もございますが、そういったようなことを指しているわけでございまして、株式市場の場合に、人気化をして。買いが集中するというだけで株価操作と言うわけにはなかなかまいらないわけでございます。  もちろん、その勧誘行為が非常に行き過ぎて、そういうようなことを意図して勧誘をした、あるいは集中して特定の者がそういう売買をしたということになりますと、これは株価操作というような疑いが強くなってまいるわけでございますが、個々の株につきましては、その銘柄銘柄においてその状態でいろいろな評価が与えられるわけでございまして、新日鉄、石川島播磨の場合には、先ほど御指摘がありましたように、例えば東京湾の問題、湾岸の開発問題、あるいはリストラクチャリングというようなことで取り上げられているわけでございます。これが全くのうそだということになりますと、これはまた法律上問題になるわけでございますが、いろいろなそういう一応の根拠を持った事情で人気化をする、それでたくさん買い注文が入ってきて価格が上昇するというものにつきましては、人為的にそういうことが行われたということがない限りは、なかなか株価操作だという決めつけをするのは難しいわけでございます。  いろいろな状況についてどういう解釈をするかというのはいろいろとあろうかと思うわけでございますが、少なくとも私どもがこのNTTの一次、二次の放出の前後におきます東京電力株あるいは新日鉄、石川島播磨の工業株の株価の動きにつきまして、その当時詳細に調査をいたしたわけでございますけれども、今申し上げましたように、その株についての一応の人気化の事情というものもあるわけでございまして、特定の証券会社が意図的に株価を引き上げたというような確証を得るという、そういう事実を把握するということができなかったということでございます。
  188. 安田修三

    ○安田(修)委員 そんな、株屋さんはへまなことやりませんよ。いわゆる大々的な宣伝戦をやって、無配当のぼろ株が十カ月やそこらで一遍に何倍にもなっておる。そこのところで皆さんが調査してもらわなければならぬ、操縦している実態をですね。  そこで、例えば東急の場合も、前段として東急ホテルチェーンの株を上げてきておるやつがあるのですよね。いわゆる野村証券がたくさんの株を持っている三洋証券が買い占めをやる。そして、ここにまた許永中の宮国産業が前段にまた絡んでまいりますけれども、とにかく、こうしたことについて、私は、指摘されたら大蔵省は、これだって百二十五条の違反意識を持ってこの際やはり全部調べてもらわなければならぬ。疑惑があると言われたら、皆さんは謙虚にこれを調べてみることが必要だ。人手が足らぬ。先ほど松永先生もおっしゃっております。人手が足らぬこともあろう、だがやってもらいたい。私も、皆さんは大変だけれども、ぜひそういう意識を持ってやってもらいたい。  さてそこで、今の場合、百二十五条違反でひとつ調べてもらいたい。これが一つ。どうですか。
  189. 松野允彦

    松野(允)政府委員 百二十五条違反問題というのは、今申し上げましたようになかなか実際の事実関係を、事実を集めてそれを法に当てはめるということの作業がございます。特定の人間が人為的にやっているというのが市場面で明らかであれば、これは比較的簡単でございますが、多数の投資家がいわば注文が出て、動員されたという言い方もあるかもしれませんが、多数の投資家の注文によって株価が形成されているという場合に、それがある特定の意図を持って行われたかどうかという点を調査するというのはかなり難しい問題でございます。  しかし、私どもも五十五条で、必要に応じて投資家に対してまで事情聴取をするということが、証券会社の営業に関係した限りではございますけれども、認められているわけでございまして、そういった検査権限もフルに利用しながら、株価操作についてはより一段と検査を深めていきたいというふうに思っているわけでございます。
  190. 安田修三

    ○安田(修)委員 警察庁、来ておられますですね。
  191. 大野明

    大野委員長 はい、来ております。
  192. 安田修三

    ○安田(修)委員 はい、どうも。せっかく来ておるのに、抜かしますと申しわけないので、二つまとめて。  一つは、警察庁のアンケート調査によりますと、暴力団等からの金品の要求等の経験を有する企業は、二千百六社の調査のうち、証券・保険業は七一・七%、企業全体の四一・二%の中で断トツであります。また売上高規模別では、一兆円以上の会社は六八・九%、これまた大会社ばかりターゲットにされたわけですね。警察庁は、そこでこういうのをひとつ、暴力団のこの種の企業ねらいに対してどのように対策を行われるかということと、もう一つは、再三問題になっております岩間カントリークラブの会員権の預かり証事件、この件について一体捜査機関の方ではどのような対処を今考えておられるのか、この点、二点まとめてひとつお聞きしたいと思います。
  193. 國松孝次

    國松政府委員 証券業界等に対します暴力団の側からの金品要求につきましては、御指摘のようなアンケート結果が出ていることは、そのおっしゃるとおりでございます。  このような状況に対する私どもの対策ということでございますが、もちろんこれらの会社に対する金品要求が恐喝罪等刑罰法令に触れる事実が判明すれば、これを断固取り締まるというのがこれは当然のことでございます。また、こうした要求行為が処罰法令、刑罰法令に触れないというものでありましても、さきの国会でつくっていただきました暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律が施行されれば、その新法を活用いたしまして必要な法的措置をとることができるようになると存じます。  またその一方で、このたびの証券問題で明らかになりましたように、一部の企業が暴力団の資金活動を助長するような巨額の融資を行うことはまことに不都合なことでございますので、そうしたことを正し、企業活動から暴力団を排除するよう、各企業において努力をいただくことも大切なことでございますので、先般はそのような見地に立って、日本証券業協会長などに対しまして、証・券取引等からの暴力団の介入の排除について要請を行ったところでございます。今後ともそうした努力を続けてまいりたいと考えております。  また、岩間カントリーゴルフクラブの会員権資格保証金預かり証券でございますけれども、この預かり証は平成元年四月ごみ、同カントリークラブ代表取締役名で発行されたものであると思われますが、この預かり証をめぐる売買等の事実関係につきまして現在解明を行っているところでございます。
  194. 安田修三

    ○安田(修)委員 簡単に一つだけ。大蔵大臣、最後、国際証券市場の問題を伺います。  そこで、日本証券業界、今後信用を回復するためにも、私は日本の四大証券はニューヨークの市場に上場する必要があるんじゃないか、そうしたことも大蔵省は当然行政指導の中で考えていく必要があるのじゃないかと思いますが、その点だけお伺いしておきたいと思います。
  195. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは長々とした御答弁を申し上げる気はございませんけれども、やはり私は本質的には、それぞれの企業の経営判断の中から選ばれるべき行動と、そのように思います。
  196. 安田修三

    ○安田(修)委員 終わります。
  197. 大野明

    大野委員長 これにて安田君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る九月二日月曜日午後零時二十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二分散会