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下条国務大臣 本件は、今御
指摘のように、予算
委員会でもお話を申し上げたわけでありますが、事の起こりが、損失補てんという言葉でこのことが出てきたわけでございます。ところが、厚生年金は、勤労者の大事な掛金に基づいて長寿社会の高齢者の
方々に年金をお払いする大事な資金を扱うところでございますから、これはしっかり運用しなきゃならぬ。しかも損を出してはいかぬ、こういうことでありますから、そういう
意味において、私はこの問題が起こったときに年金
福祉事業団を呼びまして聞きましたところ、過去において損を出したことはない、わずかなものだけれ
ども、補てんという問題につながるような大きな損は出ていないということでありますから、損失の補てんということは、厚生年金あるいは年金
福祉事業団に関連してはないわけでございます。したがって、本件、この大きな騒ぎになっておりますところの損失補てんという概念からいうならば、年金
福祉事業団については、損失が起こらないものに対して損失補てんは起こっていないということでありますから、そういう
意味でその枠内には入らない、こういう解釈をしておったわけでございます。
ところが、その後だんだんと証券局の方で概念規定が変わってまいりまして、要するに発表の段階で、そういうように損失がないところに補てんということはあり得ないわけでありますから、そうでなくして、証券会社の方が大口取引者に対して優遇をした、こういう利益誘導と申しますか利益供与と申しますか、そういうことがあったということをまた次の概念規定の
範囲で広げてきたわけでございます。その中にこの年金
福祉事業団の資金運用が入っておった、こういうことでございます。
ただ、この問題につきましても、
先ほど局長から御説明いたしましたように、年金
福祉事業団としてはルールの
範囲において取引をしておるわけでございますから、その売買が、向こうさんからいわゆる利益誘導を受けた、あるいは利益供与を受けたという取引であるということは、確認の方法がないわけでございます、正式の取引でございますから。
ただ、向こうさんとしてもう
一つ、今度は証券局でなくて今お話しの税務の問題でございますから、税務の方の立場でいうと、証券会社が年金
福祉事業団に売ったその国債の価格が、いわゆる損をした。その損が認められたら更正決定するということでございますから、これは損をして売ったのか、損をしないで売ったのかということは、これは投資のための顧問会社に聞いて年金
福祉事業団がやっておるわけでございますから、これは知る由もないのですね。わからない。こういうことでありますから、年金
福祉事業団においては、私があえて申し上げれば、大事な年金をお預かりしている、その運用の立場で損をあけないように、しかも適切な
範囲のルールの中で処理をしてきた、こういうことがはっきりしておるわけでございます。
なお、最後のところで、ディーリング中の金額の問題についてお話がございましたけれ
ども、資金運用は、御承知のように株とかワラント債だとか先物とか、そういったものを一切やらない。今大きな問題になっているのは、みんなそういうことをやって穴をあけたところの企業の問題でございますけれ
ども、年金
福祉事業団は、
委員も御承知のように、これはもうそういうことができない。堅実なる国債の売買で、いわゆる預託金利を上回る利回りを確保して年金のために資金を積み立てておく、こういうことでございますから、国債の売買のいわば本当のわずかなマージンで利幅を稼いでいくということであります。持っております資金は大きいですから、
一つのロットがでかい金額で売買されることは、これは当然でございます。したがって、金額が大きいからおかしい、こういうことにはならない。やはり金額は大きいけれ
ども、集中的にその相場がいいときは午前でも午後でもそこのときに集中して売買をして、今の安全な利回りを確保していくというのは、これはディーリングの常道だと私は思いますので、そういう
意味においてひとつ御
理解をしていただきたいと思います。
なお最後に、こういう問題が起こったことによって、
委員の御心配の
一つが、年金
福祉事業団に対する信頼がどうなるか、それに傷がつくじゃないかというお話につきましては、私もまことに遺憾に思います。このことについては、
先ほど最初に申し上げたように、そういうことが起こらないように、要するに、証券会社の方のこういう扱いをきちっとルールで決めていただかなければ、私
たちの方はわからないということでありますので、そういう
意味で、今新しいルールづくりに、それぞれの関係者が今検討していらっしゃることに対して、その成り行きを見守っておる次第でございます。