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薮仲委員 ちょっとここで質問を変えたいと思いますので、
国土庁長官、次の方まで退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。済みません。
ここで、私はかの質問をたくさん持っていたのですけれ
ども、やはり将来のために
自分の言いたいことは一回は言っておきたいと思いますので、借地借家法に私は質問を変えさせていただきたいと思います。ほかの問題は、後日また機会があったらやらせていただきたいと思います。
私はこの借地借家法の今回の改正の中で、特に正当事由にかかわる部分について非常な懸念、また果たしてこれが正しいあり方なのかという疑問を持っております。その意味で質問を展開させていただきたいと思います。
〔
木村(守)
委員長代理退席、
北村委員長代理着席〕
建設大臣は、大臣御就任前に
土地特の
委員長であられて、
土地基本法のときの
委員長でございました。
土地というものがいかに大事であるか、海部内閣としても総合
土地政策要綱を推進をしなければならない、地価のあるべき姿をどうするかということがあのときは非常に論議されました。私も
土地特の
委員でございましたし、党の責任者として論議に加わってまいりました。あのとき一番焦点になったのは何か。海部総理が、持つ者と持たざる者、格差を是正しましょう、これが大事ですというのが私の脳裏から離れないところでございます。まじめに働いたサラリーマンが、片や
土地を持っている、片や持っていない。用意ドンで同じ会社に入って十五年、二十年たったとき、
土地を持っている方の同僚は億万長者、片や一軒の家も持てないサラリーマンをしているというこの現実を直視して、持つ者と持たざる者の格差を是正しよう、私はこの
考え方は正しかったと思います。
そこで、今回のこの借地借家法、私も勉強しました。ところが、私は法務省の方にお願いしたい。私の部屋に民事
局長初め――きょうも民事
局長に来てくださいと言ったら、法務
委員会があるのでお見えになれない。御
説明になった方は私にこう何回もおっしゃる、これは当事者間の権利、利害の調整で直接
土地の政策にかかわるものではございません。私
どものところにぺーパーできちんと御答弁をいただいております。しかし、この借地借家法はまさに
住宅問題であり
土地問題です。周知のように、現行民法というものは契約は自由です。当事者間で契約をどう結ぼうと自由です。しかし、あの民法の六百十七条、
法律の
専門家じゃない私がこんなこと言うのはおかしいのですが、あの六百十七条では、期間の定めのない賃貸借は各当事者が随時解約の申し入れができるという建前になっているのです。これを何とかしなければいけないというので、契約自由という原則の中にやはりこの弱い立場の借り主、こちらの権利を守ろうということで、特例法として大正十年にできたことはここにいらっしゃるすべての方が御
承知です。
しかし、あの十年にできたときに何が論じられたか。御案内のように、解約の延長がそこでうたわれただけでした。それではまだまだ借り主側が不安定であるということで、
昭和十六年に何をやったかといいますと、いわゆる経済的に優位な地主や家主が、解約を理由に賃料の増額を要求したりあるいは権利金を要求するというような事例が多かったものですから、借家人の社会的、経済的な立場が脅かされてはいけない、守ろうということであの正当事由が明定されたことは、御案内のとおりです。あのとき何が大事だったのか。やはり借地・借家人の権利を守ってやらないと我々国民にとって大事な生存の基盤ともいうべき居住権、
生活権の基盤の
住宅に不安があってはいけない、こういうことであれが明定されたわけです。それ以来今日まで、戦後のあの劣悪な
住宅事情の中でも借家人あるいは借地人はそう困らないで
生活をしてこられた。借地人、借家人にとって、これは
自分の
生活を守ってくれた、ある意味では憲法のような本当に居住の権利というものを守った重要な
法律だったと思うのです。
ところが、今回の改正の一番
問題点は、この六条、二十八条のいわゆる正当事由ですが、さっき借家には余り
関係ないと言いましたけれ
ども、二十八条は借家です。六条は借地です。同じことが書いてあるじゃないですか。あれを聞いていて、私はふんまんやる方なく突然質問に立ったわけでございますけれ
ども、法務省は最近の判例をもとに正当事由に書き加えました。
法律の文面は、もう法務省の寺田参
事官よく御存じですから申し上げませんけれ
ども、わかりやすく言えばどういうことかというと、正当事由を補てんするために立ち退き料を認めますよ、借家の場合は家の老朽度ということが正当事由に入りますよ、あるいは簡単なことを言えば、銀座のど真ん中に低層木造
住宅があったら、
周辺の
土地の利用
状況からしてこれは地主が本来得べき収入を受けていられない、不当に権利が抑圧されている、だからこれについては正当事由の
考え方の中に入れましょう、こういうことが行われたのです。建物の利用
状況とか老朽化とか、簡単に言えば、イメージしてもらうと、低層木造
住宅をどうるすかという話なんです。私は、今の法務省は地上げ屋がやっていることを
法律で裏打ちした、法務省は地上げ屋のお先棒をやったのか、このくらいの感じを持っておるのです。
本当はきょう都市局あるいは
住宅局長に伺いたかったのは、
建設省は来年度の
住宅政策の中で、低層木造
住宅を何とかかえていこうということで木賃再生アクションプログラム、あるいは
都市計画中央審議会に
都市計画の
内容をどうするか、いろいろ
計画して
住宅をつくろうとしている。こんなのを権利の調整でやってもらうのはもってのほかだ。これはまさしく
建設省あるいは
関係省庁が力を合わせて、低層
住宅をどうやってこの都市の中で再生していったらいいのだ、住んでいる方の、権利を損なわないでやるか、これは
建設省が本気になってやるのです。借地借家法でやろうなんてとんでもないと私は思うのです。
そこで、私も戦後の判例をずっと見てみたのです。あの劣悪な状態のとき、戦後社会の
住宅事情が悪いとき、借地人や借家人の権利を守るためによく使われた言葉で、一たん貸したら返してくれない、こういう言葉があるように、借地人や借家人の権利を守りました。当時私が、
生活の本拠地です、営業の根拠地ですと言えば、正当事由が認められなくて私はずっとそこに住んでいられた、これが基本的にはあるわけです。しかし、私が何を言いたいかというと、参
事官も御
承知のように、三十八年以降のあの地価の値上がりが始まって、四十年代の判例は変わっているのです。七〇%ぐらいは正当事由を認めているのです。今法務省が入れようとした立ち退き料であるとか、家屋の老朽化とか、使用
状況とか、収益の
状況とかを、裁判所は認めてきているのです。
法律に書かなくたって、裁判官の判断は健全だと私は思うのです。法務省は、社会情勢や経済情勢に
法律が適応しない。適応しなかったかもしれないけれ
ども、日本の裁判官の判断は正しかったと私は思うのです。判例を調べてごらんなさい。正当事由をしっかり認めているじゃないですか。社会経済に合ったように認めていますよ。しかも、こんなことを私が言うのもおかしいですけれ
ども、いわゆる地主と家主、借地人と借家人の利益を比較して、ちょうどはかりのてんびんにかけるようにして、
法律用語で言えば利益の比較の原則という、このどちらに利益がどうなのかといってんびんにかけて、裁判官はその裁量権の中で時代、社会に合ったようにきちんと判例が如実に示しております。正当事由が、現在の社会情勢に対して裁判所がきちんと機能しなかったか、立派に機能している。
私は何を言いたいかというと、その四十年代の判例を書き加えることが正しいことかどうか疑問なんですよ。七十年前、あの十月革命というロシア革命が起きた。今はどうですか。ゴルビーさんになってから東西の壁、ベルリンの壁、吹っ飛んだじゃないですか。八月革命と言われるように、あのロシアが三日で吹っ飛んだじゃないですか。時代、社会というのはどんどん変わりますよ。あなたの頭で三日後の世界情勢が判断できるのですか。今あなたが正当事由の中にそういうふうに入れたけれ
ども、時代、社会が変わらないのだったらそれでもいい。私が懸念するのは、時代、社会は変わるのです。今海部。内閣が一番やっているのは何ですか。あの湾岸戦争以来、国際貢献じゃないですか。岸内閣の安保改定のときを考えてごらんなさいよ、
国会の周りがどうだったか。とうとい生命が失われたじゃないですか。あのときの憲法の前文と九条は今と変わっていませんよ。あのときナショナルフラッグを立てて、日本の国旗を立ててペルシャ湾に自衛隊が自衛艦を使って行くなんということは考えましたか、考えられないじゃないですか。
しかし、現状を見てごらんなさい。
国会も国民も、憲法の条文は変わっていなくても、時代、社会、世界情勢の変化に合わせてきちんと、国民は賢明です、
国会も機能しているじゃないですか。それはツーレートという批判もあるかもしれないけれ
ども、それなりの立場でみんなが一生懸命やってきたんじゃないですか。憲法の条文が変わらなくたって、あの自衛隊をどうするか、今PKOの問題、PKFの問題、当時は全く考えられない問題が真剣に国政の場で論じられているじゃないですか。これは憲法を何にも変えていませんよ。でも、時代、社会、世界情勢の変化を、
国会も国民も世界も容認してきてくれているじゃないですか。
それを考えると、あなたが、法務省が、たかが四十年代の判例がどうのこうの、おこがましい。あしたから時。代が変わらないとあなたが断言できるのか。変わるじゃないですか。それなのに、判例を書き加えてある、この借地・借家法というものを変えなければならない。私も
住宅をずっと勉強してきました。じゃ、
東京の
土地の状態が今どうなっているんだ。持ち家と借家の状態がこの
法律をいじらなければならないほど変わっているのかどうか。
あなたにきょうは勉強していってもらいたいから、時間がないので、
土地局長来ていますか、ちょっと数字だけ言ってください。私の要求するのは、
東京都の行政面積から国公有地、西多摩、島嶼、農地、山林、原野を除いて宅地面積が何平米か。少なくとも資料に残っているのは、十五年前の一九七五年と一九九〇年の資料があるはずです。これで個人、法人の
土地所有の
状況は大幅に変わっているのかどうか、数字だけ言ってください。
説明は私がしますから。