運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1991-10-02 第121回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十月二日(水曜日)     午前十時八分開議 出席委員   委員長 牧野 隆守君    理事 新井 将敬君 理事 園田 博之君    理事 中村喜四郎君 理事 浜野  剛君    理事 原田昇左右君 理事 井上 一成君    理事 上原 康助君 理事 遠藤 乙彦君       伊東 正義君    鯨岡 兵輔君       田名部匡省君    福田 康夫君       宮下 創平君    井上 普方君       岡田 利春君    川崎 寛治君       川島  實君    土井たか子君       松原 脩雄君    神崎 武法君       玉城 栄一君    古堅 実吉君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア 小原  武君         フリカ局長         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長  委員外出席者         外務大臣官房審 川島  裕君         議官         外務委員会調査 市岡 克博君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 九月十八日  辞任         補欠選任   井上 普方君     渡部 行雄君 同日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     井上 普方君     ――――――――――――― 九月十八日  朝鮮民主主義人民共和国との国交回復早期実現  に関する請願串原義直紹介)(第二八七号  ) 同月十九日  朝鮮民主主義人民共和国との国交回復早期実現  に関する請願清水勇紹介)(第三五五号)  同(井出正一紹介)(第三八三号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第三八四号)  同(北沢清功紹介)(第三八五号)  同(田中秀征紹介)(第三八六号)  同(堀込征雄紹介)(第三八七号)  同(宮下創平紹介)(第三八八号)  同(小坂憲次紹介)(第四七四号)  同(羽田孜紹介)(第四七五号)  同(村井仁紹介)(第四七六号)  同(中島衛紹介)(第五一一号) 同月二十四日  米空母インディペンデンス横須賀配備反対に  関する請願加藤万吉紹介)(第七四六号) 同月三十日  李恩恵問題等日朝交渉議題として取り上げ  ・ることに関する請願坂本剛二君紹介)(第  一六九八号)  同外一件(上草義輝紹介)(第一九二二号)  同(浦野烋興君紹介)(第一九二三号)  同外五件(金子徳之介紹介)(第一九二四号  )  同(亀井久興紹介)(第一九二五号)  同(木村義雄紹介)(第一九二六号)  同(後藤田正晴紹介)(第一九二七号)  同外四件(菅原喜重郎紹介)(第一九二八号  )  同(山口俊一紹介)(第一九二九号)  李恩恵問題等日朝交渉議題として取り上  げることに関する請願新井将敬紹介)(第  一六九九号)  同(伊藤公介紹介)(第一七〇〇号)  同(伊吹文明紹介)(第一七〇一号)  同(石川要三紹介)(第一七〇二号)  同(今枝敬雄紹介)(第一七〇三号)  同(宇野宗佑紹介)(第一七〇四号)  同(原田義昭紹介)(第一七〇五号)  同(植竹繁雄紹介)(第一七〇六号)  同(江口一雄紹介)(第一七〇七号)  同(大野明紹介)(第一七〇八号)  同外一件(尾身幸次紹介)(第一七〇九号)  同(石原伸晃紹介)(第一七一〇号)  同(木村守男紹介)(第一七一一号)  同(田辺広雄紹介)(第一七一二号)  同(北川石松紹介)(第一七一三号)  同(倉成正紹介)(第一七一四号)  同(小林興起紹介)(第一七一五号)  同(古賀誠紹介)(第一七一六号)  同(額賀福志郎紹介)(第一七一七号)  同(田原隆紹介)(第一七一八号)  同(戸井田三郎紹介)(第一七一九号)  同(中島源太郎紹介)(第一七二〇号)  同(中山正暉紹介)(第一七二一号)  同(長勢甚遠君紹介)(第一七二二号)  同外一件(浜田卓二郎紹介)(第一七二三号  )  同(船田元紹介)(第一七二四号)  同(保利耕輔君紹介)(第一七二五号)  同(牧野隆守紹介)(第一七二六号)  同(松田岩夫紹介)(第一七二七号)  同(松本十郎紹介)(第一七二八号)  同(村田敬次郎紹介)(第一七二九号)  同(中西啓介紹介)(第一七三〇号)  同(与謝野馨紹介)(第一七三一号)  同(和田一仁紹介)(第一七三二号)  同(綿貫民輔紹介)(第一七三三号)  同(片岡武司紹介)(第一九三〇号)  同(柳本卓治紹介)(第一九三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月二十日  邦人保護基本方針等に関する陳情書  (第二八  号)  武器輸出国際的禁止に関する陳情書  (第二九号)  米空母インディペンデンス配備反対に関する陳  情書  (第三  〇号)  竹島の領土権の確立及び同島周辺海域における  漁業の安全操業確保に関する陳情書  (第三一号)  日朝国交正常化早期実現等に関する陳情書外  三十件  (第三二  号)  子ども権利条約等早期批准に関する陳情書  外九件  (第三三号) 同月三十日  日朝国交正常化実現に関する陳情書  (第一一六号)  南朝鮮から核兵器を撤去し朝鮮半島を非核地帯  にすることに関する陳情書  (第一一七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国際情勢に関する件  請 願    一 朝鮮民主主義人民共和国との国交回復      早期実現に関する請願串原義直君紹      介)(第二八七号)    二 同(清水勇紹介)(第三五五号)    三 同(井出正一紹介)(第三八三号)    四 同(唐沢俊二郎紹介)(第三八四号      )    五 同(北沢清功紹介)(第三八五号)    六 同(田中秀征紹介)(第三八六号)    七 同(堀込征雄紹介)(第三八七号)    八 同(宮下創平紹介)(第三八八号)    九 同(小坂憲次紹介)(第四七四号)   一〇 同(羽田孜紹介)(第四七五号)   一一 同(村井仁紹介)(第四七六号)   一二 同(中島衛紹介)(第五二号)   一三 米空母インディペンデンス横須賀配      備反対に関する請願加藤万吉紹介      )(第七四六号)   一四 李恩恵問題等日朝交渉議題として      取り上げることに関する請願坂本剛      二君紹介)(第一六九八号)   一五 同外一件(上草義輝紹介)(第一九      二二号)   一六 同(浦野烋興君紹介)(第一九二三号      )   一七 同外五件(金子徳之介紹介)(第一      九二四号)   一八 同(亀井久興紹介)(第一九二五号      )   一九 同(木村義雄紹介)(第一九二六号      )   二〇 同(後藤田正晴紹介)(第一九二七      号)   二一 同外四件(菅原喜重郎紹介)(第一      九二八号)   二二 同(山口俊一紹介)(第一九二九号      )   二三 李恩恵問題等日朝交渉議題とし      て取り上げることに関する請願新井      将敬君紹介)(第一六九九号)   二四 同(伊藤公介紹介)(第一七〇〇号      )   二五 同(伊吹文明紹介)(第一七〇一号      )   二六 同(石川要三紹介)(第一七〇二号      )   二七 同(今枝敬雄紹介)(第一七〇三号      )   二八 同(宇野宗佑紹介)(第一七〇四号      )   二九 同(原田義昭紹介)(第一七〇五号      )   三〇 同(植竹繁雄紹介)(第一七〇六号      )   三一 同(江口一雄紹介)(第一七〇七号      )   三二 同(大野明紹介)(第一七〇八号)   三三 同外一件(尾身幸次紹介)(第一七      〇九号)   三四 同(石原伸晃紹介)(第一七一〇号      )   三五 同(木村守男紹介)(第一七一一号      )   三六 同(田辺広雄紹介)(第一七一二号      )   三七 同(北川石松紹介)(第一七一三号      )   三八 同(倉成正紹介)(第一七一四号)   三九 同(小林興起紹介)(第一七一五号      )   四〇 同(古賀誠紹介)(第一七一六号)   四一 同(額賀福志郎紹介)(第一七一七      号)   四二 同(田原隆紹介)(第一七一八号)   四三 同(戸井田三郎紹介)(第一七一九      号)   四四 同(中島源太郎紹介)(第一七二〇      号)   四五 同(中山正暉紹介)(第一七二一号      )   四六 同(長勢甚遠君紹介)(第一七二二号      )   四七 同外一件(浜田卓二郎紹介)(第一      七二三号)   四八 同(船田元紹介)(第一七二四号)   四九 同(保利耕輔君紹介)(第一七二五号      )   五〇 同(牧野隆守紹介)(第一七二六号      )   五一 同(松田岩夫紹介)(第一七二七号      )   五二 同(松本十郎紹介)(第一七二八号      )   五三 同(村田敬次郎紹介)(第一七二九      号)   五四 同(中西啓介紹介)(第一七三〇号      )   五五 同(与謝野馨紹介)(第一七三一号      )   五六 同(和田一仁紹介)(第一七三二号      )   五七 同(綿貫民輔紹介)(第一七三三号      )   五八 同(片岡武司紹介)(第一九三〇号      )   五九 同(柳本卓治紹介)(第一九三一号      )      ――――◇―――――
  2. 牧野隆守

    牧野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  3. 原田昇左右

    原田(昇)委員 中山外務大臣は先日、国連総会に出席されて、各参加国と精力的に意見交換を行われて帰国されたと伺っております。大変御苦労さまでございました。  そこで、そういう情報を踏まえてお答えいただきたいと思うわけでございますが、まず、去る九月二十七日、ブッシュ大統領は、米国核兵器を一方的にかつ大幅に削減し、ソ連も同様の措置をとるように呼びかけることを内容とする演説を行ったわけでございます。  そこで、この新しい米国提案、これは従来の核抑止体制を根本的に見直して、安定的で信頼性のある最小抑止を目指すものであると思うわけであります。新時代の到来、ソ連の内政が大幅に画期的に変わっていくということを見据えた極めて適切な提案として、私は大変高く評価すべきではないか。そして、この新しい状況は、世界から過剰な核兵器を撤去し、必要で最小限の核抑止実現する絶好の機会を生み出しておるわけでありますが、同時に、ソ連国内混乱で、各共和国に分散配置されております核兵器、これがあるいは核拡散したり核ジャックされたり、大変心配状況にあるのではないかと思うわけです。そういう心配をしっかりした管理体制をもってやってもらわなければならないという願いも込めての提案ではないかと思います。  そこで、この提案によって一体我が国安全保障体制あるいはアジア太平洋地域安全保障体制にどういう影響が出てくるのか。我が国安全保障日米安保体制基軸として展開しておるわけでございますが、これらについてどういうように今後我が国政策を考えていく必要があるのか、率直にお伺いをしたいと思います。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 今回のブッシュ大統領の一方的な核の削減宣言というものは、新しい時代、新しい世紀に向かっての平和を確保していくという意味で極めて大きな意義があったと考えております。  今委員からも御指摘のように、ソ連においては、クーデター失敗後のソ連国内混乱の中でソ連が有する核をいかに管理するかということが極めて大きな国際的な関心でございますし、我が国もまた隣接国としてこの核の管理の問題に重大な関心を持っておるわけでございますが、大統領のこういうふうな宣言ソ連指導部に対して、ソ連の核の管理確保とともに、ソ連がこれに対応して新しい平和のために思い切った削減に踏み切るように呼びかけたものというふうに理解をいたしております。  元来、日本安全保障政策は、必要最低限我が国安全保障に要する基盤的な防衛力を整備するという基本的な考え方に立っており、もとより我が国非核三原則で核を保有いたしておりませんから、引き続きこの防衛力の整備に一段と努力をしなければなりませんが、この世界の変化に対応して、日本政府としても中期防衛計画のある一定時の次の見直しの際に、国際情勢等を十分勘案しながら検討しなければならないと考えております。
  5. 原田昇左右

    原田(昇)委員 御承知のように、韓国北朝鮮につきまして、北朝鮮核開発を行っているのではないかという疑問が持たれておるわけであります。我が国北朝鮮国交回復を早く実現しようということについては、この委員会請願が先ほど理事会で採択に至るという段取りになりつつありますけれども、その北朝鮮核兵器をもし保有するというようなことになったら、これは我が国の安全にも重大な影響を及ぼすことになるわけでありまして、我が国としてはこのような事態は何としても阻止しなければならない。  既に我が国を含む多くの国が、北朝鮮国際原子力機関保障協定締結するように核不拡散条約に基づいて求めておるわけでございますが、北朝鮮韓国における米国核兵器の存在を理由に核不拡散条約上の義務を怠っておるわけであります。先日のアメリカ核軍縮提案は、このような事態にも大きな影響を与えると考えられるわけでございますが、いかがでしょうか。私は、これによって北朝鮮との国交正常化交渉が促進でき、また北朝鮮の、もちろんその前提として北朝鮮が今口実にしていること自体がおかしいわけでありますが、韓国内に配置されていると見られる米軍の核も撤去されるわけでありますから、北朝鮮の少なくとも不合理な口実ももうなくなるということになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  6. 谷野作太郎

    谷野政府委員 私の方からお答えさせていただきます。  まず、今回のこのブッシュ大統領提案に対しまして北朝鮮がどのような反応を示したかということをお話ししたいと思いますが、北朝鮮はこれに対しまして声明を出しまして、基本的に今回のブッシュ大統領提案在歓迎するということを言っております。そして、かくなる上は当然韓国においても米国核兵器撤収措置がとられなければならない、またそういうふうに期待するということを述べておりまして、韓国から核兵器撤収されるならば、北朝鮮のただいま先生お話しになりました保障措置協定締結の道も開かれるであろうということを申しております。  他方、北朝鮮の要人、すなわち党の書記の方ですが、この人は、米国による韓国からの核兵器撤収とともに北朝鮮に対する核兵器不使用の保障というものを米朝間米国北朝鮮の間で話し合いたいということも言っておりまして、今後このブッシュ大統領提案を受けて北朝鮮がどういうふうに具体的にこの施策を展開していくか、今ちょっと不透明なところがあるのが気になります。  いずれにいたしましても、ただいま先生お説のとおりでございまして、今まで北朝鮮はいろいろな条件をつけてこの保障措置協定締結を拒否しておるわけでございますけれども、この協定締結自体はNPTに加盟したなれば当然発する義務でございまして、それに対していろいろな別の条件をつけること自体非常に不当だと考えます。  これから十一月にまた第五回の日朝交渉を行いますが、そういった場におきまして引き続きこの協定早期かつ無条件締結、そして核査察完全履行を強く北朝鮮側に求めていきたい、このように考えております。     〔委員長退席園田委員長代理着席
  7. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いずれにいたしましても、今回の米国の新しい提案を契機に、私は世界核戦略には全く新しい時代が来ておる。しかも、世界の大勢は大幅な軍縮に向かっておるわけであります。そういう点で、特に極東地域の安全を考える場合に、私はまずソ連についても、ヨーロッパの兵力削減ということを進めるだけでなくて、極東において大幅な軍縮を促進してもらわなければならないし、また中国に対してもあるいはインドに対しても、この戦略というものは相当なインパクトを与えるはずであります。我が国外交としてしっかりこの点を踏まえてやっていただかなきゃならないし、我が国防衛計画見直しについても前向きに考えていく必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 日本立場として、我が国はかねがね核被爆国としての立場から、核兵器の究極的な廃絶というものを強く主張をし、一貫してその姿勢を堅持してまいったわけでございます。そういう立場で、今回のブッシュ大統領の思い切った大胆な提言というものは、私は、ソ連における大きな政治上の変革の中で行われただけに、世界に対する新しい時代の宣告をされたというような認識を持っております。  こういう意味で、核保有国がこれから核のあり方をいかにすべきか、いわゆる安定して、そして削減をしながら平和への努力を続けていくということが極めて可能な方向を見出しつつあるという認識を持っておりまして、中国インド等においても新しいこの歴史の流れの中で新しい核を廃絶していくという考え方方向協力されることを日本政府としては心から期待をしておきたいと思います。
  9. 原田昇左右

    原田(昇)委員 さて、現在国際情勢は非常に大きなスピードで激動を続けておるわけでございますけれども、このような変化する国際情勢の中にありまして、我が国米国との関係安全保障においても、また、共通の自由と民主主義という価値観を有するという点においても、経済相互依存度の深さということからいっても、我が国外交基軸日米関係にあると言っても過言ではないと思うのです。  ところが、残念なことに湾岸危機はこの日米関係に大きな影を投げたと思うのです。米国議会では、日本の対応が遅いとか人の面の協力がないとか日本貢献が少な過ぎるといったような対日批判がほうはいとして起こりました。特に九十億ドルの資金協力に関連して生じた為替差損の問題は、一時日米関係を極めて気まずいものにしたことは事実だと思うのであります。我が国は追加的な資金協力を行うことを決定し、これによって問題は一応解決を見たと言えると思いますが、この問題に関し、米国不満というものは果たして解消したと考えていいでしょうか。
  10. 川島裕

    川島説明員 お答えいたします。  確かに、湾岸危機のころに我が国貢献策につきまして、今先生が御指摘になりましたようないろいろな不満というものが米国議会あるいは米国世論に見られたわけでございます。ただ、その後、湾岸危機もああいうことで終わりまして時間がたってきたということ、それから、考えてみますればやはり我が国貢献というものは大変大きかったということもあって、それからもう一つ、掃海艇の派遣でございます、ああいう形で人的な貢献も行ったということから、その後見ておりまして、米国の対日世論というものは、ひところの湾岸危険の真っ最中の米国世論が高ぶっていたころに比べますと随分好転したというふうに感じております。
  11. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今の御答弁で、我が国貢献が寄与した金額が非常に大きかったというお話がありましたけれども湾岸危機の際我が国は、国民に新たな税負担までお願いして貢献を行ったわけであります。この点についてアメリカ我が国貢献をもっと正当に評価すべきではないかと考えております。このように我が国ができる限りの貢献を行ったにもかかわらず、国際社会において必ずしも正当な評価が得られないということは、我が国貢献世界にPRする努力を十分に払わなかった面があるのではないか、外交当局責任者としてどういうようにお考えになっておりますか。  また、湾岸危機に際してアメリカは、我が国を初めドイツあるいは湾岸諸国から資金協力を得たため、実際には財政負担は余りなくて、また在庫の兵器を一掃したということにもなる、むしろ収支バランスではそんなに損していない、こういう話が伝わっております。この点、政府はいかに評価しておられるのか。実際のところ、最近もうかなり湾岸戦争を振り返っていろいろな本も出ております。日本貢献というのはどのくらいなウエートがあったのか、その辺も具体的にお伺いしたいと思うわけであります。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 政府委員からお答えを申し上げる前に、私が大臣として一言申し上げておきたいと思います。  この湾岸危機に対する日本貢献に対して一時アメリカ議会にいら立ちがあったことは事実でございます。しかし、日本資金協力をするという決断をして貢献をする、また周辺国に対する経済協力も行うということによって、今日では日米関係は何ら不安を感じさせる問題はございません。それは、先般のロンドン・サミットにおけるベーカー国務長官と私との会談におきましても、今日ほど日米関係が安定している状態はないということをアメリカ国務長官が私に申しておりますし、そういう意味では日米関係は極めて安定した状態にあるということを申し上げておきたいと思います。  なお、詳細につきましては川島審議官からお話を申し上げたいと思います。
  13. 川島裕

    川島説明員 お答えいたします。  まず、広報活動のことでございますけれども、私どもといたしましても、日本の顔と申しますか、節目節目でどういうことを考え、どういうことをやろうとしているかというのを明確に打ち出すのが大変重要だと思いまして、累次貢献策を決めました際は、総理御自身から内外記者会見等々で基本的な立場等を説明していただきましたし、それから在米各公館、総領事館含めまして、相当いろいろございますけれども、PRというものは随分やったつもりでございます。それで、説明いたしますと、やはり我が国の特に、何と申しましても九十億ドルといいますか、あの辺の重さというものはそれはみんなわかるという感じになってはきておる次第でございます。  それから、それでは我が国貢献がどんな重さかということにつきまして申しますと、クウエート、サウジアラビア、この辺の域内の諸国が百三十五億ドル等出しまして、これに比べまして、日本があのときは俗に言う九十億ドルというのがあったわけですけれども、やはり大変大きな、財政的な比重は大きかったということかと思います。  そこで、それが米国が要した全体の費用との関連でどんな感じであるか、端的に言って米側が得したのじゃないかという話につきましては、まだ最終的な締めと申しますか出ておりませんですけれども米側としては、これはもとより各国の拠出によって、もうけちゃうというようなことは全く考えておらない、やはりいろいろな湾岸作戦で金がかかっているので相当額が必要だったということは、折に触れて私どもには説明しておりますし、いろいろな場で述べておる次第でございます。     〔園田委員長代理退席委員長着席
  14. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今の答弁不満です。そんな答弁ないですよ。もうちょっとちゃんとやってもらわなきゃ困るな。大体九十億ドルも国民に負担させておいて、政府は今までどういう調査をしておるんだ。いいかげんな答弁しちゃ困る。
  15. 川島裕

    川島説明員 補足いたします。  九十億ドルにつきましては、これは一兆一千七百億円でございますけれども、湾岸における情勢、我が国国際社会における地位等を考えまして、当時湾岸の平和と安定の回復のために国連諸決議に従って活動している各国の諸経費ということで、これは補正予算に計上させていただきまして、三月……
  16. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ちょっと待って。私はそんなこと聞いているんじゃないよ。大体全体の、湾岸において当時のいろいろな歴史的な資料が出てきておるわけです。「司令官たち」という本も出ているし、いろいろその当時の分析が各機関で行われておる。そういうときに、我々はこれだけの拠出をして、一体それが全体のどういうウエートを占め、どういうような貢献であったのか、どの程度の意義があったのか、その辺を国民に十分説明してもらわなければ困るじゃないですか。今ごろになって何もわからないなんて、湾岸のときは、それは戦争をやっていたから、それは私たちは言いませんけれども、もう決算をやってもいいときでしょう。ところが、何も、いいかげんな話じゃ話にならぬですよ。
  17. 川島裕

    川島説明員 お答えいたします。  湾岸平和協力基金に対して累次拠出を行ったわけでございますけれども、これはいずれ湾岸平和協力基金の運営委員会が、平和基金から受け取った関係各国とも協議して財務報告を作成の予定でございます。それがまだできておりません。いずれそれができたら湾岸平和協力基金の方から我が国に報告をするということになっておりますので、それが来ますればきちんとした形での最終的な締めができるということでございます。まだ今のところできてない……
  18. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ちょっと待ってくれ。アメリカ自身が、アメリカ政府なり何なりの議会に対する報告とか何かないのかね。  時間の関係がありますから、これは後にして先に進みますが、後で再答弁をしてもらいたい。
  19. 牧野隆守

    牧野委員長 それじゃ、外務省から後刻報告すること。原田君。
  20. 原田昇左右

    原田(昇)委員 次に、日米関係について、米ソの冷戦終結でソ連はもう脅威ではないという考えが米国内において広がってきておって、それに伴って、逆に日本経済力が米国にとって最大の脅威だというような見方も出てきておるわけです。民間にはアメリカの学者が書いた日米再び戦争だというような見方すら出ておるわけでありまして、もちろんこういう人が全体の世論を代表するとは思いませんけれども、このような認識米国内で広がるようなことになれば、日米両国のみならず、世界全体にとりましても重要な、日米関係に大変な悪影響が出てくるということが言えると思うのです。  大臣は、米国の世論の動向をどういうように認識され、また対日世論を改善するためにどういう手を打っていくお考えでございますか。本年十一月にはブッシュ大統領の訪日が予定されております。この機会に日米関係の一層の強化に取り組むお考えをぜひ聞かせていただきたいと思います。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 日米関係をいわゆる安定した状況確保していくということは、日本外交の基本的な姿勢でございます。そういう中で、ソ連の政治体制、経済体制が大変な大混乱に陥っているという中で、アメリカの国民は、この新しい国際社会を構築する中でアメリカの強いリーダーシップというものが新しい世紀を開く、自分たちの大きな努力が功を奏したという誇りを持っていると私は思います。特に、湾岸戦争における一方的なイラクのサダム・フセイン大統領の敗北というものが、国連軍が、国連が中心となった機能であったとはいえ、このアメリカ貢献というものは相当大きなアメリカ人に対する自信と誇りを持たせたと私は認識をしております。  そういう中で、ソ連経済的にも軍事的にも非常に難しい状態にこれから変化していくという中で日本アメリカ関係はどうなっていくのかということについて、私は、率直に申し上げて、一昨日の夜もクオモ・ニューヨーク州知事とゆっくり懇談をさせて。いただきました。  私はその席ではっきり申し上げた。我々は四十五年前にアメリカに戦争で敗北したんだ。そして、何もない国家、しかし我々に残されていたものは、七千万人の生き残った日本人が戦前に受けた教育の大きな影響があったと私は思っている。私は、はっきり申し上げて、クオモ知事に、百二十年前になりますか、明治維新当時に日本が新しい鎖国の窓を開くといったときに、明治天皇の政治というものが、日本の全国に義務教育制度で学校をつくり、国民に等しく教育を受けさせる、そして全国に鉄道を国が敷く、そういって日本の新しい体制というものを築き上げる貢献をされてきたということが、いわゆる敗戦に至るまでの日本の国民の教育水準を上げるために非常に大きな効果があったと私は考えておるということを申しました。  そして、その残った日本人がアメリカに指導された中で民主主義、自由主義経済というものを身につけて、アメリカがいろいろと技術を移転してきた。あるいは資金的にも支援をした。そういう中で日本人の自助努力で今日の経済大国になってきたと思う。私は、アメリカが持っていたかつてのすばらしいアメリカ、あるいは宗教に敬けんなアメリカ人、あるいは教育に熱心なアメリカというものがどこにいったのかということを大変憂慮をしている人間の一人だ。  これに対してクオモ知事がはっきり言われたことは、我々はみずからの努力アメリカのすばらしい失ったものを取り返すことが必要だということを言っておられました。  私は、やはりこれからアメリカとの話し合いの中で、非常に日本アメリカは入り込んだ、経済的にも関係が深くなっている。そういう中で、新しいグローバルパートナーシップとしてどのようにこの新しい世紀のために地球社会に貢献をしていくかということを両国が真剣に考えていく必要がある。それは、はっきり申し上げて、麻薬もアメリカにとっては大きな問題じゃないか。日本は麻薬問題でそんなに大きな悩みを持っていない。子供たちの問題も、いろいろな問題をアメリカは抱えている。そういった問題を私は率直に話し合いましたけれども、私は、太平洋戦争を開始した十二月八日というのはことしで五十年の記念すべき年を迎えているわけでありますが、それをいかに日米の双方が、新しい日米関係を未来に向かってつくり上げていく盟約関係をつくり上げるかということが大切である。  こういうことで私は、大統領の訪日の機会に、グローバルパートナーシップとしての日米関係を、世界に向かって、新しい世紀のために、地球社会のために、共同で宣言を発出するという機会であり、日米憲章の発出をすべき時期であるということをベーカー国務長官に申しまして、ベーカー長官も、全く異議はない、こういうことで、大統領の訪日される機会に新しい日米憲章を発出して世界宣言をいたすべきであるというふうに考えております。
  22. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今の新しいグローバルパートナーシップ、非常に私は評価いたします。ぜひとも今回、ブッシュ大統領も訪日されるときでありますので、しっかりと日米関係をさらに深いきずなで結びつけ、グローバルパートナーシップにのっとって、世界の平和に貢献する日米関係を構築できるようにお願い申し上げる次第でございます。  さて、ソ連について申し上げたいと思います。  ソ連のクーデターの失敗とその後の急激なソ連情勢の変化というものは、第二のロシア革命ともいうべき歴史的意義を有すると思います。今回のクーデター阻止の中心的役割を演じましたエリツィン・ロシア共和国大統領については、私は、彼がロシア大統領に就任する前に、昨年一月、訪日した際に、当時私は建設大臣でありましたので、彼が連邦国家建設委員会議長の役職にあった関係から、日ソ関係について今後を話し合いまして、また意気投合した結果、テニスを一緒にやるというようなこともやりました。彼の人柄に親しく触れる機会を持ったわけであります。極めて率直な、愛すべき人柄だと思います。その飾り気のない性格と非常に強い意志を持った人柄というものは、時として批判を招くこともありますけれども、しかし、その彼の強い人柄こそが今回のような非常事態に真価を発揮し、歴史的な役割を演ずることになったと思うわけであります。  そのエリツィンさんが、ロシア共和国大統領として、ぜひ日本とも親善友好関係を深めていきたい、この間来たハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行という方がおりますが、これもエリツィンさんの非常に信頼する人だそうですが、この人も、ぜひ日ソ間で平和条約を結びたい、いや日ソ間じゃない、日ロ間ですか、日ロ間で平和条約を結びたいというように述べておりました。いずれにいたしましても、エリツィンは、戦勝国と戦敗国との区別は存在しないということを公言しておるくらいでありまして、私は非常に期待できると思うわけであります。  連邦の中央集権的な軍事力を中心にKGBを持っている非常に強い国家ソ連から、共和国中心の体制になっていくということは、むしろ日本として歓迎すべきであり、ロシア共和国との関係を、ぜひとも深く友好関係のきずなをつくり上げていくということは大変大事なことではないかと思います。この点について、大臣の所見をいただきたい。  私は、ソ連民主主義が健全に発展していくことこそが、ソ連のみならず、世界全体の平和と安定にとって極めて重要ではないかと考えております。そのため、我が国としては、何としてもソ連並びに各共和国、これを温かく迎え入れて、民主主義に向けた改革の成功のためにソ連協力をしていく必要があると思うのです。北方領土問題につきましても、このような過程の中で解決していくべきものではないか。北方領土問題を解決しない限り対ソ支援は一切しないという考え方は、余りにも硬直的であり、見直していかなきゃならないと思います。しかし同時に、バルト三国も独立を達成したわけですから、こういうチャンスに私たちは北方領土問題についても十分な話し合いをして、解決を図っていかなきゃならぬと思います。各共和国の役割、ソ連の中において共和国の占める地位というのはまだはっきり確定はしておりませんが、少なくともロシア共和国と、そしてさらにソ連邦との、ぜひともこれからの交渉並びに協力関係を確立していかなきゃならぬと思います。  大臣の御所見をいただきたいと思います。
  23. 中山太郎

    中山国務大臣 ロシア共和国を含めて、ロシアの十五の共和国というものの中からバルト三国というものが独立をするといった中で、日本と国家として近接しているロシア共和国との関係は、これから極めて重要な立場を占めるものというふうに理解をいたしております。  私は、そういう意味で、ロシア共和国大統領になられたエリツィン大統領原田委員が本当にともにテニスを楽しまれて、いろんなことをお話し合いされたということについては、私どもは大変、原田委員が持っておられる個人的な関係も国家としてもありがたいものだ、実はそういうふうに思っておりますけれども、これからの日ソ関係というものをどのように考えていくのがいいのか。  我々の領土問題を解決して平和条約をつくるという基本的な考え方は、私はこの原則を変えるわけにはまいらない。しかし、この新しいソ連の歴史的変化の中で、ソ連民主主義、これをどのように発展させていくために日本協力をしていき、また世界協力をするかということが、先日のニューヨークにおけるG7の外相会議でも議論が行われました。その中で、ソ連に対する援助のあり方、こういったものについて各国はどのように対応するのか、やがて来る厳しいソ連の冬に、ソ連の国民がどのような困窮な状態に陥ることが見通されるのか、こういった問題については各国とも調査を急ぐということをやっておりますし、日本政府は既に九月二十日に、極東地域の食糧事情、医薬品事情調査のために使節団を派遣いたしまして、昨夕、一部、第一班が帰ってまいりました。  昨晩は、私も報告を受けております。ハバロフスク地区の、あるいはチタ地区の報告がまだ来ておりませんから、全体的な御報告を申し上げる段階にまだ来ておりませんけれども、我々としましては、ソ連の冬に向かっての国民の受ける苦労といいますか、その中で特に医薬品、食糧、こういったもの、特に医薬品問題が非常に状況が悪いというふうにも一部報告がなされておりますので、全部の報告が整い次第、日本政府としては冬に対する人道的な支援を強化していくという方針を明確に伝えたい、このように考えております。
  24. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今、G7のお話もありましたが、この前新聞を見ておりましたら、八月二十二日ですか、フランスのデュマ外相が、ソ連で起こったクーデターの一因は日米の、西側の対ソ金融支援の出し渋りにある、サミットでも日本アメリカが反対したためにつぶれてしまった、そこでゴルバチョフは手ぶらで帰ったためにクーデターになった、こういうことを言っておるわけであります。それから、先ほど申し上げましたが、この前来たハズブラートフ議長代行と会いましたが、彼もそのようなことを述べて、同様の発言をしておりました。  これは、私は本当にそうなのかなという、クーデターの原因の一つだ、こういうことで、こういうクーデターが起こって、またソ連のファシズムあるいは全体主義国家が実現し、また冷戦が復活するようなことに歴史が逆戻りしたら大変だから、ぜひ私たちを応援してくれ、こういう論法ではあるのですけれども、その点どうお考えですか。
  25. 中山太郎

    中山国務大臣 この間私もロンドン・サミットにも出ておりますし、先日ニューヨークで行われましたG7の外相会議にも出ておりますけれども、フランスのデュマ外相も出ておりましたが、ソ連に対する大量資金援助というものが現時点では好ましくないということで意見が一致をいたしております。それはどういうことかと申しますと、いわゆるソ連側の受け皿、これが非常に混乱をしている、こういうことで、受け皿をどうするかという問題について、援助のあり方というものは当面人道的援助に限るべきであるというのが先般のG7の外相会議考え方の一致した点でございました。  そういうことに基づいて、ECはECで、モスクワにそういう受け皿のためのいわゆる連絡機構というようなものをつくる必要があるということを言っておりますし、昨日帰ってまいりました田中大使の報告を聞きますと、州政府は州政府でしっかりと今民主化に向けて努力をしておるということでございますから、私は、これからソ連あるいは各共和国と十分協議しながら、どのような形で援助をすることが一番的確にソ連の民主化、自由化に貢献できるかということの検討をしなければならないと考えております。
  26. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いや、お答えはそれでいいのですけれども、問題はフランスのデュマ外相が、日本が反対したからつぶれてしまって、それがクーデターの原因だなんということを、新聞情報ですが、言っておるのですね。この辺はどう考えるかということを率直に伺いたい。
  27. 中山太郎

    中山国務大臣 フランスのデュマ外相はかねてから、このソ連に対する資金援助を急ぐべきだという説の論者であります。私はそういうふうな考え方ではないということで、昨年のサミットでもこのソ連に対する援助のあり方について、結論としては、合意されたことは、OECDとかIMFとか世界銀行とかEBRDとかの専門的な経済視察団を出してその調査の結果を待とうということで去年は一致し、その報告の結果で大量的な資金援助は意味がないということが報告書に明記されておりましたから、日本政府もそのようにやってきましたし、デュマ外相がそのようなことをおっしゃったことは、新聞で出ておるとしましても、私に対しては一切そのような発言はございません。
  28. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ソ連が民主化するに従って、世論の役割というのは大変大きいと思うのです。北方領土問題についても、北方領土に住んでいる人、あの周辺の人たちあるいは極東の、シベリア等におられる方々、この前札幌まで、病院に子供が来ましたね。ああいうのは非常にいいことだと思いますし、もっともっと門戸を開き、日本考え方なりなんなりを十分伝えるとか日本と交流するとか、少し世論喚起をする必要があると思うのですが、いかがですか。
  29. 中山太郎

    中山国務大臣 委員のお考えのとおりだと私も思っております。
  30. 原田昇左右

    原田(昇)委員 では、次に移ります。  ソ連が民主化の道を歩く中で、中国の人権問題を背景にして米国の対中姿勢が非常に硬化しておると思うのです」また、中国の側におきましても、湾岸危機の後の世界米国の一極支配になるのではないかというようなおそれを中国は持っておって、対米警戒感を強めておるという中で、米中関係は今後さらに厳しくなっていくような感じがして大変憂えておるわけでございますが、いかがでしょうか。  海部総理の訪中を経て日中関係は従前の関係を回復したと言えると思うのですけれども、このような厳しい米中関係を踏まえながら、来年に迫りました日中国交正常化二十周年に向けてどのような対中政策を展開していくお考えか、率直にお伺いしたいと思います。
  31. 谷野作太郎

    谷野政府委員 まず前段のお話でございますけれども先生の御懸念のように、私どもも、米中関係が冷え込んだ状況において、日中関係が十歩も二十歩も前へ進むということはなかなか難しい面があるという意味におきまして、米中関係の今後の行方というものに対しては大変懸念をし、関心を持って見守っておるところでございます。  第二点の、さてそこで、海部総理の御訪問を受けて今後どういう対中政策を展開していくかということでございますが、申すまでもなく、そういう中で、また国際情勢が大きく変わりつつあるわけでございますから、そういう中で、アジアの平和あるいは安定のために、安定した良好な日中関係確保していくということは大変大事なわけでございます。  そういう文脈で先般の総理の御訪問もあったわけでございますが、明年は日中が国交正常化をいたしましてたまたま二十周年という一つの節目の年になるわけでございまして、そこに目がけていろいろなことが既に双方の政策において計画されております。要人の相互訪問をやろうとかあるいはいろいろな文化行事を北京なり東京で行おうというようなこと、それから先般の海部総理の訪中のときにも先方の首脳と話されておりましたけれども、今後やはり青少年交流というものを一層活発にしていこうというようなお話し合いも首脳会談で出ておりました。また、二十周年、来年に向けて、民間の側におかれましても、いろいろな多彩な行事が既に計画されておるというふうに伺っておりまして、いろいろなことが相まって、ぜひとも来年、二十周年、二十一世紀に向けての日中関係を自信を持って見通せるようなそういうよい年にしたいというふうに考えております。
  32. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは次に、軍備管理軍縮に関しましてお伺いしたいと思います。  我が国は、国連と協力して京都において軍縮会議を開催するなど、積極的な努力を展開してきたわけでありますが、この会議では、海部総理大臣が、通常兵器の国際移転の国連報告制度を創設することを提唱したわけであります。その後、外務大臣もこの間国連総会で演説されて、たしかこの問題を提起され、我が国は関連する決議案を国連に提出するという旨を発表しておると伺っておりますが、本当にこの決議案を出すことは私はまことに時宜を得たものだと思いますし、その努力がぜひとも実るようにやっていただきたい。具体的に今度の中東の問題を見るにつけましても、この通常兵器の国際移転の少なくとも報告制度を確立するということは、今後の世界の平和と安定にとって大変大事なことだと思います。  さらに、私は、核兵器については、ブッシュ提案によって新しい局面が出てきたし、これからの紛争予防システムの確立ということについても国連において提案されておると伺っておりますが、それらについても真剣に我が風としては努力を傾注して、そういう面で我が国が国際的な、本当に役に立つ役割を演じなければならないと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  33. 中山太郎

    中山国務大臣 日本はかねて軍縮問題について国家として大変強い意思を国際社会に明確にしてまいりましたが、特に今年五月の国連の京都の軍縮会議におきましても、海部総理は強くそれをアピールされたわけであります。国連総会におきましては、通常兵器の国際的移転の報告制度の確立を日本政府としては提案をいたしておりまして、日本とECのトロイカ会議におきましても、EC側も日本のいわゆるこの考え方について現在協議を重ねているといったところでございます。  なお、核の廃絶問題につきましては、私はジュネーブにおける軍縮会議において日本政府の意思を明確に訴えております。大変、軍縮へ向けての一つの転換期に到達したものと考えておりまして、委員の御指摘のとおり、私どもは今後とも日本政府として強く推進していく必要があると考えております。
  34. 原田昇左右

    原田(昇)委員 我が国は一国平和主義に陥ることなく、世界の平和のため憲法の許す範囲内で一層積極的な役割を果たしていかなければならぬと思うのですが、特に、これから人的な面で、人の面の協力を一層積極的に行っていかなければならぬと思うわけであります。このため、今PKO法案が国会で審議されておるわけですが、最近のカンボジア問題、カンボジア和平をめぐる問題は急速に進展を遂げておりまして、パリ会議を十月末にも行うということが合意されております。さらに、そのパリ会議で、次のステップとしてカンボジアに各国が国連の旗のもとに平和協力隊を派遣しなければならないというときがすぐやってくるわけですね。そうすると、それはPKOの今度の法律を一体いつまでにやれば間に合うのか、その辺はどう考えておられますか。
  35. 中山太郎

    中山国務大臣 カンボジアの和平と和平成立後の日本協力のあり方について、先般ニューヨークにおきましてシアヌーク殿下、またフン・セン首相とそれぞれ個別にお目にかかって意見を交換をいたしました。このシアヌーク殿下とフン・セン首相との間の話し合いというものは極めて緊密に行われておりまして、今回のカンボジア和平の会議の開催はほぼ間違いがないと私は確信をいたしております。多分十月一の下旬、パリにおいて開催されることになると思います。  そういった中で、私はシアヌーク殿下に対して、当時同席をいたしておりました今川大使をカンボジアのSNCの日本代表部の代表として任命したことを改めて通告をし、このSNCの本部がプノンペンに設置をされる、そういった場合に、今川大使がそこで日本政府の意思を代表して今後の連絡をさせていただくということも改めて確認をいたして帰ってまいりました。  私は、このカンボジアの和平が成立をし、そして署名が終わる、そしてSNCの本部がプノンペンに設置をされて、シアヌーク殿下の私に対するそのときのお話では、十一月の十四日に自分はプノンペンにSNCを設置するという考え方をお示してございましたが、和平会議が一週間程度早まることも今日言われております。そういう中で、日本の人的貢献あるいは経済協力といったものも大変大きな期待を持っておられることは事実でございます。日本政府としては、できる限りの人的、経済協力をいたしたいと考えておりますが、国連暫定機構、これがどういう形でこのSNCとの関係を確立していくかということについては、今川大使とプノンペンにおけるSNC代表との間で十分協議をさせながら今後進めてまいりたい。  なお、PKO法案との関連のお尋ねでございますが、私は、政府として御審議をいただいている法案ができるだけ早い機会に成立をすることを心からお願いをいたしておる立場でございます。
  36. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大臣、要するに、できるだけ早く成立することを期待しているという話なんだけれども、もちろんそうでしょうけれども、このプログラムでいって果たして間に合うのですか。
  37. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  現在、国連の事務当局が、あくまでも構想でございますので今後変わるかもしれませんけれども、構想として考えておりますのは、二段階にわたる監視団と申しますか平和維持隊と申しますか、そういうものを出そうということでございます。  まず第一段階のものは、包括的な和平が成った場合にできるだけ早く監視団的なものを派遣しようということで、現在の構想では場合によっては年末までに三百名程度のものを出すことを考えているというのが一つでございます。  それからもう一つは、和平が成った後、半年ぐらいたってから、先ほど大臣が申し上げたこれが本格的なカンボジア暫定機構でございますけれども、そういう計画を持っているということでございます。  ちなみにPKO法案との関係では、自衛隊の方に依頼して派遣するという点につきましては、防衛庁当局の話では一年内外の準備期間がかかるということでございますので、なかなか監視団として、上級士官を個人として例えば十名二十名派遣するということであればあるいはこういうことに間に合うのかもしれませんけれども、他方、私たちは、カンボジア暫定機構の中には行政監視でありますとか選挙監視、そういった役割もございますので、例えばナミビアに日本が送りましたけれども、あのようなものをこのPKO法案を通じて送ることはできるわけでございまして、そういう意味では、PKO法案が早期に成立する場合にはこの法案に沿ってそういう分野で人を派遣することはできるというふうに考えております。そういう意味で、できるだけ早くの成立をお願い申し上げておるということでございます。
  38. 原田昇左右

    原田(昇)委員 カンボジア和平は、アジアにおける大変大事な問題であると思います。ぜひとも我が国として最も重要な案件として積極的な貢献を行っていただきたい。そしてアジア太平洋地域の平和と安全の確保に十分な貢献をするように期待をいたしておきます。  以上、時間でございますので、まだ重要な問題幾つか残っておりますが、これで終わります。ありがとうございました。
  39. 牧野隆守

    牧野委員長 福田康夫君。
  40. 福田康夫

    ○福田委員 先般、外務大臣が第四十六回の国連総会で行われました一般演説は、いわゆる国連演説でございますけれども、内容の充実した格調の高い演説であるというふうに私まず評価を申し上げます。  具体的な提案も数多く見られました。例えば湾岸紛争の教訓として、ただいま原田委員からも御指摘ありました、紛争を未然に防ぐための紛争予防システムの確立とか、また通常兵器の国際移転の国連報告制度の創設、またそのためのデータベースシステムを整備するというふうな構想が示されたわけでありまして、そのほか、提案やら決意の表明とともに、平和を望む、そのために日本が全力を挙げて努力をするというふうな姿勢が鮮明にあらわれているというふうに私は思います。  そしてもう一つ、「新しい世界は、対立から協力へと向いこというふうな言葉が入ってございました。この認識は特に目新しい言葉ではないのでありますけれども、しかし改めてこういうふうに演説の中で拝見いたしますと、大変新鮮でもあるし、また、世界もとうとうここまで来たのか、こういうふうな感慨を持つのでありまして、そういう意味で、私は大変この言葉が気に入ったわけであります。今後、演説の中にありますいろいろな提案とか決意をいかにして日本が実行していくか、これがこの演説の国際評価を決めるものだというふうに思いますので、まずは、この有言実行に外務省、もちろん政府一丸となってでありますけれども、特に外務省の御努力をお願いしたい、こういうふうに思います。  この演説の中に、我が国の基本的立場ということで、「我が国民は、過去の戦争に対する厳しい反省の上に立ってこういう言葉が入っておりました。そこで、この言葉についてお尋ねをしたいのでありますけれども、たまたま昨日は総理大臣が、国際平和協力特別委員会でもって質問に答えまして、厳しい反省をした、こういうふうに申しておられます。それから、天皇陛下がただいま御旅行中でありますけれども、先般東南アジアで反省のお言葉を述べられておる、こういうふうなことであります。  そこで、「過去の戦争に対する厳しい反省の上に立ってこという大臣のこの言葉の中身、これはどういうものであるか。心の中で悪いことをしたという反省も当然あるわけでありますけれども、また、今後こういうふうなことを繰り返してはいけない、こういう意味合いもあろうかと思いますし、また、今まで長い期間にわたって、そういうことを繰り返さないためのいろいろな方策も国民を挙げて努力してまいったということも事実であるというふうに思います。そういうふうないろいろな意味を含んだ言葉であるというふうに理解いたしておりますけれども大臣のお考えは特に変わったところはございませんか。
  41. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、外務大臣に就任をさせていただいて以来、いろいろな国の外務大臣との会談を持つ機会に感じますことは、戦後四十五年間、この資源のない国家が、国民の大変な努力によって、あるいはまた民主主義と自由主義経済原理の上に立って国家というものの再建に成功した。そして、その技術力は世界で一流である。経済的には世界の大国となった。こういう状況の中で、東南アジアの国々は、第二次世界大戦で受けた被害の傷跡がまだ家族を失った人たちの心の中に残っている。  そういう中で、例えば周辺国の国家予算と日本の防衛費というものを比較してみると、昨年あたりでは、日本の防衛費というものはドル建てでは三百五億ドル程度に当たるわけであります。一方、韓国の国家予算は三百二十億ドルといったような状態にある。中国では、ドルで計算をすると七百億ドルぐらいの国家予算になると言われておりますが、そういうふうに考えていくと、アジアの国々の中には、日本経済大国になった、そして米ソの緊張が崩れた、そしてアメリカは一方的に軍事力を削減するという新しい方向性を打ち始めている、こういう中で、日本が再び経済大国から軍事大国になっていくのではないかということを言葉として私に伝える方がおられます。  こういうことを国際的な場で、日本政府あるいは日本国民の意思として明確に、軍事大国に再びならないということを、太平洋戦争開始五十周年のこの記念すべき時期に当たって、改めて国際場裏に日本政府が意思を明確に示すということが、これからの日本に対する国際的な視点というものが明確になっていくということを期待しでそのような決意を表明したということに御理解をいただきたいと思います。
  42. 福田康夫

    ○福田委員 ただいまの御説明よくわかりましたけれども、反省というのは事実の確認がなければできないことだろうというふうに思うのであります。そういう意味でいいますと、戦争については、我々の世代、辛うじてでありますけれども、戦争の実態を肌身に感じている、そういう世代なのであります。しかし、我々から下の世代になりますと、その事実を知識としての認識はあるけれども、しかし肌身に感ずるような認識ではない、経験もしてないわけでありますので、その辺、若い人がどこまで理解をしているかということについては、私自身は大変疑念を持っております。ただいまのお話で、外に対して、今までの日本の積み上げた事実をもとにして世界に対してそういうふうな御説明をされる、これは当然のことでありますけれども、しかし、その言葉があるからには、内に対してもやはり説得力を持ったことをしていかなければいけない、こういうことではないかと思うのです。そういう意味で、裏腹の関係にある、もしくは一心同体というふうな問題ではないかというふうに私は思っております。  そこで、たまたま昨年三月のアメリカのタイムという雑誌に記載されておりました「ドイツの事情」というのがございまして、これは、ドイツの統一が決まって、しかしまだ統一をしていない、こういうふうな段階でありますけれども、当時、昨年の春でございますけれども、ドイツが統一するとまた昔の強大国になるのではないかという脅威論というのがヨーロッパであったわけであります。しかし、実際にいろいろな調査をしてみますと、決してそうではない、脅威に思っていないということがわかったのです。  これはタイムの記述でございますけれども、例えばソ連の場合には、二千六百万人の人が殺された、にもかかわらず今現在決してドイツに対して脅威を持っていない、そしてまたフランスでも、回答者の六八%が統一によって平和はさらに確実になる、こういうふうに考えております。例外はポーランドでありまして、ポーランドは、これは領土の三分の一がドイツ領であったというふうなこともありまして、これは六四%が統一に反対をしたというふうなことでありますけれども、その他の周辺諸国については決して反対の声は大きくなかった、こういうふうなことでありまして、ヨーロッパの方々の考え方が随分変わった、ドイツに対する見方が変わった、こういうふうに言えるのではないか、こう思うのであります。その大きな原因は、要するにドイツ国民が昔の国民でないんだ、こういう認識なんです。ですから昔と同じようなことを繰り返すことはない、こういうふうな判断の上に立ってのアンケートの回答というふうに考えていいんじゃないかと思います。  確かにドイツは、これは西ドイツでございますけれども、いろいろなことをしているんですね。特に教育面では徹底して戦争の事実を知らせる、そういう教育をしているということであります。例えば、小学校は繰り返しヒトラー、ナチズム、ホロコーストが教えられ、死の収容所のニュース映画を見せられ、強制収容所の展示を見学に行き、高校では丸一年間歴史で第三帝国を扱う。それから軍隊、西ドイツ軍はオンブズマンの厳しい監査を受ける、兵士は法や道徳に反する命令を拒む義務があるというふうな精神規範が教えられる。そして、ネオナチの組織は禁止、反ユダヤ的声明も法律で禁じる。ここまで徹底して国民教育をしておる、それも若いころから教え込む、こういうふうなことであります。  これは聞いたことでございますけれども、今なおホロコーストの現場とかというふうなものはドイツの領内に数多く残されておる、二十数カ所とかというふうな話も私聞いたのでありますけれども、何カ所か確認いたしておりません。しかし、数多くのそういうふうな現場が残され、それが記念館としてだれでも見学できるようになっている、こういうことでありまして、そういうことを含めて考えた場合に、日本はそこまでの教育をしていないんじゃないかな。  私、そこまで必ずしもやれというわけじゃないのです。しかし、戦争の悲惨さの事実を次の世代もしくは次の次の世代が忘れてしまうというふうなことになった場合に、私はやはり恐ろしいなというふうな感じを実は個人的には持っておりまして、そういうことで我々は、次の世代にいろいろとそういうふうなことを語り継いでいかなければいけないという責務があるんじゃないかな、こう思っております。事実認識を誤った世代が誤った判断をするというふうなことがありますれば、また歴史を繰り返すということにもなりかねない、こういうふうに思っております。  ドイツにおいては、教育面では、教科書問題ですけれども、もう四十年前にゲオルクエッカート教科書研究所というものができておりまして、ここでは内外の教科書を数多く集め、そして客観的な事実を記述するように、その研究所からドイツ連邦国とか各地区、各市の教育機関に建言をするというふうなことをしておりました。そういうふうな結果、ドイツの教科書は非常に客観的に書いてあるというふうな評価がされていると聞いております。私、文教の専門家ではありませんので、それ以上のことは知りませんけれども、そのくらいやっておりますので、やはり日本も事実の認識をしてもらうという努力を先ほどの外務大臣の外に対する発言の裏返しのこととして、国内に向けてやっていかなければいけないんじゃないかということを思うわけであります。大臣、どうでしょうか。
  43. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員の御指摘のことは極めて重要な問題だと思います。  海部総理も去る五月でございましたかシンガポールにおける演説において、戦争というものについて、次の世代へ語り継ぐために、これはやはり教育を通じて徹底してやるべきであるという趣旨を日本政府として明確に打ち出されたわけでありますから、教育を通じ、また我々は毎年八月十五日の終戦記念日に全国民が戦争というものについて改めて思いを込める、どういう悲惨なことが行われたかということについて、国民が八月十五日というものはいわゆる終戦記念日というか戦争の終わった日であるということを共通の認識として持ち続けていくということも極めて重要なことでありますし、私どもはそういう意味で、今後とも、戦争について国としてもこれを明らかに語り伝えていくことを努力していかなければならないと思っております。
  44. 福田康夫

    ○福田委員 外務大臣の御意向を伺いまして安心をしたいと思うのでありますけれども、これは文部省に、文教の専門家に任せるということではなくて、外務省の方からもやはりそういう働きかけを文部省にする、そして外と内を合わせるという努力をされることが必要ではないか、こういうふうに思うのです。  ただいまPKOとか掃海艇のために自衛隊を派遣するというふうなことがいろいろと議論されておる最中でございますけれども、これに対して中国またアジアの国々が懸念を表明するというふうなことも、やはりそういうことから考えますと若干の理はあるんじゃないか、こういうふうに私は思っておりますので、ひとつこの面における大臣並びに外務省の取り組みを十分になさってくださるようにお願いをしたいと思います。  次に、湾岸戦争のいろいろな教訓、先ほど湾岸戦争の教訓として具体的な提案大臣が演説なさいましたけれども、この湾岸戦争、湾岸紛争のさなかにおいて日本の国家として一体何をなすべきかという義務については、これはもう本当にいろんなことを考えさせられ、また、その材料も提供してもらったわけであります。最大の問題は、国際社会の中で日本国家としてのあり方というものが問われまして、日本のシステムが国際秩序にマッチしていないんじゃないかというようなことが明らかになったということではないかと思います。  日本と非常に似た状況であったのがドイツでございまして、ドイツと日本の湾岸対応というものを比較をしてみたのでありますけれども、ドイツも御承知のとおり日本と全く似た環境で対応が鈍くて、そして批判をされたわけであります。  まず第一に、憲法とか基本法とかというふうなことで軍事行為が限定をされているということ、それから国民の間に戦争アレルギーがあるということで、戦争嫌い、こういうふうなことでありました。そういうふうなところは日本と非常に似通っているのではないか、こう思っております。  ドイツのそういうふうな姿勢に対しましては、アメリカもヨーロッパも大変な批判をいたしまして、欧州の恥だとか、イギリスなんかはスワインという言葉を使っていますね。スワインというのは、辞書を見たら、豚なんですよ。豚とか卑劣なやっとかそういうふうな言葉なんですけれども、そこまでののしったということがございましで、そういうふうな批判があったものですからドイツも慌てたかどうか知りませんけれども、いろんな対応策を打ち出してきた。資金協力それから掃海艇派遣、またトルコヘの空軍の派遣、ミサイル部隊の派遣、それから戦後は油の汚染の除去とかいうふうなことで、トルコヘの空軍、ミサイルの派遣以外は日本とまあ大体似たようなことになっております。そのドイツの対応策の中身でありますけれども、これはちょっと御説明願えますか。
  45. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 今福田委員指摘のように、ドイツは日本と共通するいろいろな制約要因もございますし、日本とまた違ったいろいろな条件下にございます。そういう中でドイツ政府は、資金協力の面におきましては総額約百四億ドルの拠出をいたしておるということでございますし、実際の軍事協力面におきましては、委員指摘のとおり、ドイツは基本法の建前の中でも、NATOの加盟国として、NATOに入っていることから生ずる協力義務はこれを遂行するということでございますので、NATOの条約の適用範囲内においてはこれに協力していくということで、御指摘のように、一つは地中海にこれは限定をされたわけでございますけれども、実際に掃海艇六隻、フリゲート艦一隻、補給艦四隻という艦艇を派遣した。さらに空軍につきましては、今御指摘のとおりトルコの領域におきまして、ここは当然NATOの条約の適用の範囲内でございましたので、空軍作戦機一個飛行隊、約十八機だったようでございます。それから対空ミサイル部隊四ないし五個中隊を派遣をして、その面で軍事的な協力をいたしたというふうに承知をいたしております。
  46. 福田康夫

    ○福田委員 そのようなドイツの対応策は、日本の対応策を比較した場合に、ドイツの方はそれを決めるとすぐ実施した。例えば資金協力にしましても、それを発表すると直ちに実行に、実施に移した、こういうふうに私はこれは聞いている、新聞なんかで見たわけでありますけれども。  日本はそれに比べると大分時間がかかっているように思うのであります。例えば、これは外務省で調べていただいた資料でございますけれども日本資金協力九十億ドルの例を挙げますと、発表したのが一月二十四日、拠出を実行したのが三月十三日。これは補正予算を組むと、こういうふうな国会承認の問題があったから、このようにおくれた。これはもう日本国内では当然のことでありますけれども、しかし、日本は言うけれどもなかなか実行しないというのは当時言われたことでありまして、そういうふうなことを言われて我々、日本国民の一人として何とかならないかなというふうなことを考えたことがあるわけであります。その前に実行した分も、八月三十日に十億ドル拠出を決めて実行したのは九月二十五日、これは一カ月以内でございますから早かったですけれども、その次の分は、九月二十一日に発表して、拠出は三カ月後の十二月二十五日、こういうふうなことになっております。これも国会承認の手続があったわけでありますけれども、こういうふうな緊急事態において、緊急を要するようなものについてやっぱりこういうふうに時間がかからなきゃいけない、国会承認が必要だとはいうものの時間がかかるということについて、これは何とか改善する方法はないのかな、こういうふうな気持ちがいたすのであります。  九十億ドルのことにつきまして国会でいろんな議論がなされました。例えばその積算根拠を示せだとか、それからこの使途を明確にしろ、こういうふうなことも質問があったわけで、これに随分時間を費やした、こういうふうに私も記憶いたしておりますけれども、さてドイツでは、ドイツの議会ではそのような議論がありましたか。
  47. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 私の承知しておりますところでは、ドイツにおきましては若干日本と違った制度になっておる。ドイツ基本法の中にそういう規定があるようでございますけれども、予算の成立前であっても緊急に必要な資金というものを政府が短期の借り入れによって調達をして、それでとりあえず支出をするという制度がドイツの憲法上も認められている。これがドイツ政府の対応をかなり柔軟にする一つの根拠になっているというふうに承知をいたしております。
  48. 福田康夫

    ○福田委員 私の得た情報では、ドイツの国内では公式、非公式を問わずそのような議論なく金額を決め、それを直ちに実行した、こういうふうに私は聞いております。ですから、戦費を武器弾薬の購入に使わないなんというふうな注文もつけてないし、そして戦費負担のための増税はこれは当然であるといったような、そういうふうな国民世論でもあったというふうに聞いております。  そういうことでございますので、私、日本も、国会承認の手続、これは必要かもしれないけれども、やはり国会内でよく緊急性を話し合って、早く実行できるような体制を組まないと、これはやはり今後の国際システムに日本のシステムが合ってないということとしてまた追及を受けるんじゃないかというふうに思います。この点につきましては、政府だけでなく野党の御協力も得なきゃいけないというふうに私は思うのであります。  そういうふうなことで、もう一つ申し上げれば掃海艇でございます。掃海艇もドイツは日本よりも一カ月以上早く実行しているということであります。これもドイツ内で多少の反対意見もあった、ようですけれども、決断を早くしたということであります。日本の場合にはちょうど地方統一選挙がございまして、国内の地方選挙に不利になってはいかぬというふうな与党の判断もあったというふうに聞いておりますけれども、まあ選挙が終わってからその派遣を実施したということでありますけれども、国際的な問題というふうなことを考えれば、どうせ派遣するものであればもっと早くやるべきではないか、また野党の方々も選挙にそういうことを利用しないということが必要なのではないかということで私は考えています。そういうふうないろいろな事例を考えてみまして、日本の国会もまたいろいろそういうふうなことを考えていかなきゃいけないという時期になっているんじゃないかな、こういうふうに思っております。  ドイツのPKOは、これはどういうふうな状況になっておりますか。
  49. 丹波實

    ○丹波政府委員 ドイツにおきましては、ドイツの基本法というものを改正しなければPKOに参加できるのかできないのかという点についていろいろ議論があったわけですが、ドイツ政府といたしましては、やはり基本法を改正して、きちっとした形でPKOに参加する法体制をつくろうということで、現在その準備を行っていると承知いたしております。
  50. 福田康夫

    ○福田委員 湾岸紛争はこれ以外にも本当にいろいろな教訓を残してくれたのでありますけれども政府、また公的な立場の機関または人員がいろいろな形でこういう紛争またはそれにまつわる業務に携わり、また時には身命を賭すというふうなことをされたわけであります。これは公務でございますから、私は当然のことと言えば当然のことであろうと思うのでありますけれども、片や民間の場合には、例えば民間企業やそれに属する民間人、こういう人たちの中にも、体を張ってそして危険を冒して企業を守り、またそれが国益につながるんだというふうなことで頑張った人はたくさんいるんだということ、そしてそういうふうな事実がなかなか表に出てこないということを私はこの際申し上げて、そして少しその実例を御紹介申し上げましで皆様方の御理解を得たい、こういうふうに思っているわけであります。  これは実はサウジアラビアで操業いたしておりますアラビア石油の場合ですけれども、紛争中は目立った行動をするとイラクからやられる、こういうふうな不安がありましたので、殊さら事実を隠して行動したというふうなことであります。最近そういうふうな心配がなくなったものですから、同社の社長の小長氏が日経連の広報誌に「湾岸戦争に学ぶ企業の危機管理」というふうな特集の中で述べているものがありますので、それに沿って御説明をいたします。  アラビア石油は、御承知のとおり日本の資本として初めて石油開発に中東で成功をし、そしてサウジアラビアの政府と合弁で操業をしておる会社であります。油田と製油所がペルシャ湾に面しておりまして、カフジというところにございます。カフジはクウエート国境からわずか十数キロ南に位置するところであります。年間一千万キロぐらいの石油を生産し、そして日本にそのほとんどを持ってくる。昭和三十六年に操業を開始しまして、現在まで三十年間、合計で三億キロ以上も石油を日本にもたらしている、こういう日本にとりまして大事な企業というふうに考えられます。従業員は現地人、日本人合わせまして約二千人、こういう規模の企業でございます。  この小長社長の記録によりますと、八月二日に紛争が開始した、そしてイラク軍がクウエートに侵攻したわけであります。クウエート国境のイラク最前線からわずか十八キロのところにカフジの鉱業所があるのでありますけれども、大変な危険な状態に陥った、こういうことであります。  そして、八月九日にサウジにあります日本大使館の退避勧奨というものが出まして、日本の商社とかメーカーとか、そういうところの在留者はサウジの全土から一斉に引き揚げた。一部は帰国し、一部はほかの地域に逃げたということでしょうか、そしてアラビア石油も家族だけは帰国させました。しかしアラビア石油は、国籍を問わずすべての従業員にその鉱業所にとどまることを命令したわけであります。そしてあくまでも残留して操業を続けよう、こういう決意をしたのであります。  この決意は当然会社のトップがしたわけでありますけれども、その理由は、従業員が二千名である、家族を含めると一万名の直接の関係者がいる。カフジ地区は人口が三万ということでありますので、その約三分の一を占めるということになります。アラビア石油の操業をとめるというふうなことがあって、そしてこの地区から日本人の社員を初めその従業員たちが離散するというふうなことになりますと、この地域の社会に対して背を向けるというふうなことを意味するのではないか。そういうことによりまして社会的道義的な責任が果たせなくなる、こういう事情がありました。  それから次に、会社の創立当初からの目的というのが、日本への石油供給の安定的な確保、これを目指しておったわけでありますけれども、これが貢献できなくなる、こういうことになるわけであります。特にエネルギー情勢が、イラクそれからクウエートから原油供給がなくなるということでありますれば非常に逼迫するのではないかというふうな状況の中で、サウジの政府もそうでありますけれども米国ども増産をぜひしてくれ、こういう要請が来ておりました。もしこの要請にこたえないで操業をとめるということになりますと、日本は非協力であると。アラビア石油が非協力だけれども、しかし日本が非協力である、こういうふうに判断される可能性が出てきたわけであります。そのような判断で、危険な状態で操業を無理して続けたということでありました。  そういう状態を見まして日本のマスコミは、「アラビア石油は経営者が社員の生命の安全を非常に軽んじておる、企業の利益を優先している」というふうな批判もしたこともあったわけであります。  八月十日に緊急対策本部を発足させまして、危機管理のメニューを作成したわけであります。しかし、当然のことながら社員の不安は増大し、また、社員の日本に戻る家族から不安を訴える声が続出をした。こういう状況になりまして、八月十五日に東京で留守家族大会というのを開きました。アラビア石油がなぜ操業をとめないのか、それはそういうふうな会社的そして国家的な使命があるのだということをよく説明し、また、同社の当時副社長でありました小長氏が現地に行って、自分でちゃんとよく見てくるということを約束して、そして不満を和らげるという努力をしたのであります。  そして小長副社長はカフジに飛びました。当時日本人は百十七名カフジの鉱業所に残っておりましたけれども、そういうふうな人に状況を伝え、そしてまた、退避計画とか退避壕のシェルターをつくるとかいうふうな処置を講じて安心をさせたということであります。それから後は、当時社長でありました江口氏そして小長副社長、この二人が交代で毎月現地に赴いて、現地の人に安心してもらうというふうな方策を講じていたということであります。  緊急避難計画も子細につくりました。危機管理でございますけれども、千五百人分のシェルターの建設もした。それから船で脱出するようにボートも用意した、こういう準備をいたしました。  そして、いよいよ開戦をするかもしれぬという一月十二日に大使館から退避勧奨が出ました。しかし、そういう人たちは残ったわけでありますけれども、その人数を減らそうということで、日本人を五十人にまで減らしたわけであります。現地人も三百五十人最後まで残ったわけでありますけれども、一月十七日、ロケット弾が着弾をしたということで、シェルターに一斉に退避をした。そして五時間シェルターで攻撃に耐えた。カフジの市当局からは全員の退避命令が出ておる、そういう状況の中で五時間退避壕におったわけでありますけれども、昼ごろになりまして、砲撃が少しやんだところで二十台の車に分乗して脱出を図った。最後の車には当時責任者、専務がいたようでありますけれども、その鉱業所の最高責任者が乗った。そして脱出をしている。そして夕方、タンマン市のホテルで一同全員が無事を確認した、こういうふうな経緯でございました。  そういうふうな、最後の最後まで操業を頑張ったということで、このことについて、サウジの政府はもちろんのこと関係者から大変評価を得まして、そしてナセル石油大臣が二月にはわざわざテレビで、「カフジのアラビア石油は極めて勇気ある行動をとった」というふうな激賞もし、そしてその結果、日本も面目を保つことができた、こういうことであります。  私はなぜこういう話をするかといいますと、本当に日本人は中東から帰っちゃったのですよ。例えば私はこの六月にアラブ首長国連邦、ア首連に参りました。そこでいろいろ話を聞いてきたのでありますけれども、アラブ首長国連邦にも石油の操業会社がございまして、これは三社ございます。この三社は残りましたけれども、三社以外の金融機関、商社とかメーカーの人、そういう人たちは一斉に八月二日以降日本に帰ってしまった。こういうふうな事実がありまして、日本人は日本の銀行に行ったって決済ができないというふうなこともございましたし、また日本人はどこ行ってもいなくなっちゃった、連絡もつかない、こういうふうなことでアラブ首長国連邦の人は大変寂しい思いをした、こういうことなんであります  その後どういうことが起こったかと申しますと、それを埋めるかのごとくアメリカの軍隊とかその他ヨーロッパの軍隊がだあっと入ってきたということであります。それで、やはりアメリカとかヨーロッパの国々は頼りになるな、心細い思いをしていたア首連にとりましては本当に力になるのは欧米だな、こういう感じを受けたというのが後で聞いた話でございますけれども、そういうふうなさなかでございますから、このアラビア石油が残った、また大勢の人が残って最後の最後まで頑張っだということは、これは大変なことであったのではないかなというふうに思います。  この社長、副社長がどういうふうな気持ちていたか。このことによって一人でも人命が損なわれるというふうなことがあった場合には、これはもう本当に償い切れない責任を負わなければいけないということは当然であっただろうと思いますし、またしかし、その反面、早々と撤退するというふうなことをしたならば、これは、世界最大の石油の輸出国でありますサウジアラビア、そして埋蔵量もこれからもどんどんふえていくのじゃないかなというふうに言われておりますサウジアラビアとの関係がどうにかなってしまうのじゃないか、アラビア石油だけじゃなくて日本との関係もおかしくなってくるのではないかというふうなことをこの両首脳の立場で考えたのではないか、こう思っております。  そこで、私は教訓として、まず第一、危機管理がしっかりできていて、そして現地のリーダーが権限を委譲されて、そして的確な判断をするということができれば民間人でも安全を図ることができるのではないかということ。第二に、民間人といえども一身の安全のみを考えず、企業とか国家の目標を理解して使命感を持って行動することができるということであります。それから第三点、留守家族に対しては、夫や父が危険な状態の中にいるのでありますけれども、そういう人たちの父や夫の使命をよく理解して、また会社の方がコミニュケーションをよくして十分な連絡を毎日のようにするというふうなことをすれば決して、不安は不安かもしれぬけれども、その不安を幾らかでも解消することができる、こういうことであります。それからもう一つは、社長とか副社長というトップが現地に赴くという、みずから行動するということが社員の信頼をから得た、こういうことであります。  この四つの教訓を、今政府の議論しておりますPKOの安全性とか、そういうことに当てはめて考えてみたのでありますけれども、私はやはり、そういうふうな使命感を持つということがあれば危険度というものをかなり軽減することはできるのではないかなというふうに思っております。ましてや公務のことでございます。民間人でもここまでやるのですから、公務の人が多少の危険があるからといって行かない方がいいなんという考えは、これはもう忘れた方がいいのじゃないかな、こういうふうに思っております。  そういうふうなことを私は教訓として得まして、また、こういうふうな民間企業のやったことというのはなかなか表面に出ません。ですから、せめてこの機会をいただいて、そういう事例を紹介する次第でございます。  次に、湾岸貢献の方はもうこの程度にいたしまして、外務大臣が訪ソを予定されて、そして近く出発される、こういうことでございます。きのう、きょうの新聞報道によりますと、パンキン外相がテレビ会見をしまして、中山外相が訪ソ時にゴルバチョフ、エリツィン両大統領と会う、そして北方領土の返還、平和条約交渉の枠組みをつくる、こういうふうな報道をされておりますけれども、この辺の事実関係は、もしくはそのような話がもう既にあるのか、またその見通しがどうなっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  51. 中山太郎

    中山国務大臣 訪ソの時期につきましては、現在事務レベルで最終的な詰めを行っている段階でございますので、ここで何日ということをまだ申し上げる段階にないと思いますが、先般のニューヨークにおきますパンキン外相との会談におきまして、パンキン外相は私に対して、日本政府に対して領土問題を解決して平和条約を締結するためにソ連の連邦としても努力をするという姿勢を示されたことは事実でございまして、私は、エリツィン大統領が言っておられた次世代にこの問題の解決をゆだねるということではなく、現在の政治家がこの問題を解決するべき責任がある、こういうことを明確に申し上げました。それで、ソ連としては、日本の外務大臣が早い時期にソ連を訪問して領土問題を含めた平和条約の問題を話し合うということで合意に達したということでございます。
  52. 福田康夫

    ○福田委員 先ほども若干話が出ましたけれどもソ連に対する食糧援助のための調査団、田中団長が一昨日ですか、帰国をされたようでございまして、食糧事情の調査も入っていると思いますけれども、この援助をするにしましても、これはなかなか大変なことだろうと思うんです。どのようなものを出すか、出すのは簡単だけれども、しかしその配給が十分にうまくいくのかどうか、こういう問題があろうかと思います。  ソ連経済情勢は、申し上げるまでもなく破滅的な状況でございまして、GNPだけで言いましても、一昨年、一九八九年がマイナス八%、それから一九九〇年がマイナス一七%、昨年でございます。それから、ことしてございます、これは民間の見通してはありますけれどもマイナス二五%、こういうふうなことになっております。この三年間合計しますと、何と五〇%、GNPが減っている、こういうことになるわけでありまして、私どもにはとても想像のつかないぐらいの大きな数字になるわけであります。そういうふうな破滅的な危機的な状況の中で、食糧の援助だけで済むのかどうか、またその配給ができるのかどうか、これは今後の検討課題かもしれません。また、近々農林省の調査団も行くというふうな話も伺っておりますので、その辺、そういうことも含めてよく調査をされてこられるんだろうと思いますけれども、この田中団長の帰国報告で何か特徴的なことがございますでしょうか。特に、実際にこれが実行に移せるかどうかという可能性の問題でありますけれども、お教えください。
  53. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 今福田委員指摘のとおり、ソ連経済、わけても食糧あるいは農業を中心といたしました状兄は大変に深刻な面があるという認識から、私どもも、一つは外務大臣が報告を申し上げましたように、九月二十日から三十日まで田中大使を団長とし、九州大学の金田教授を副団長といたしまして関係省庁の専門家から成る調査団を極東・シベリア地域に派遣をいたしました。このグループはその後二班に分かれまして極東の主要な州を回って、いろいろな資料、データ等を集め、いろいろな実情を視察してまいりました。  また同時に、同時並行的にソ連邦にございます我が方の在外公館、ソ連邦大使館が主体でございますけれども、からも四班にわたります調査団を組みまして、当然のことながらロシア共和国に重点があるわけでございますが、こちらから出ました調査団が距離的にカバーできなかったロシア共和国の西部の部分、ノボシビルスク、スベルドロフスク、チュメニあるいはクラスノダールといった地域、そのほかに食糧事情も念頭に置きつつソ連の現在の経済情勢、実態というものを現地に行っていろいろ調査をし、把握するということから、ほかの共和国、ウクライナ、白ロシア、モルドバ、カザフ、キルギス、グルジア、アルメニア。といったような共和国にもこれらの調査団を派遣をいたしております。  こういう調査団が、田中団長の極東調査団は一昨日帰ってまいったわけでございますけれども、モスクワから派遣をいたしました調査団も相次いで今帰ってまいって、資料、データの整理中でございます。そういうものを総括、総合いたしまして、御指摘の食糧危機と言われるものが一体どういうものであるか、あるいはさらに人道上の緊急援助ということで医療の面でも関心があるわけでございますが、この面も厚生省の専門家も入っていただきまして、極東・シベリア地域についてはかなり調査をしていただいております。食糧、医療というものを中心といたしました緊急人道援助、何が、どの程度、どこに、いつという問題を、これから政府部内で検討してまいりたいというふうに考えております。
  54. 福田康夫

    ○福田委員 話は飛びますけれども、エリツィン大統領の動静、休養されているのか、もしくは健康状態とか、そういうふうな情報がございますか。
  55. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 私どもがモスクワからの報告で聞いておりますのは、現在エリツィン・ロシア共和国大統領は休暇をとって静養をしておられるというふうに承知をいたしております。
  56. 福田康夫

    ○福田委員 最後に、ただいま国際平和協力特別委員会でPKO法案と一括審議をされています緊急援助隊法の一部改正、これについてちょとお尋ねしたいのでありますけれども、先般、私、その委員会で質問をさせていただきまして、そしてどれくらいの規模で国際緊急援助隊を発動するのか、防衛庁の方のお考えは、医療協力百八十人、空輸二百六十人、給水百人、全部で五百人を若干超える、こういうふうな規模で対応するというふうなことを言っておられるわけであります。これはもちろん今までの国際緊急援助隊法、現在の法律から考えれば、またその実行状態から考えれば、飛躍的に増員をし、拡充も充実もするだろうというふうに期待できるわけでありますけれども、PKO法案では二千人まで出せるという上限を設けているということから考えて、私は三百人とか五百人とかいうふうな枠にとらわれずにこの援助隊の規模を考えていただけないかな、こういうふうに思っています。  その理由は何かと申しますと、やはり日本は平時における協力ということ、今の憲法のもとではそれ以外できないわけでありますので、その中で最も平和的な活動、象徴的な活動になる可能性の強い、また、そういう場面が来ますと必ず要請が来て、また期待もされるであろうというこの緊急援助隊をもっと日本は活用して、そしてさすが日本はそういうふうなことに頑張る国だというふうな印象づけをほかの国に、また国際社会にしなければいけないのではないかというふうに思っておるから、あえてそういうふうに申し上げるのであります。  また、先般のPKO委員会で私が質問した中で、PKO法案では手当は考えている、しかしこっちの方では考えていない、特に考えていないというふうなことでありまして、これは私は危険の度合いがあるかどうか知りませんけれども、同じ自衛官が出動するというときに、災害援助とPKO活動とで待遇に差があるとかいうふうなことではうまくいかないんじゃないかな、また危険度からいいましても、私は決して災害援助の方が安全だというわけにはいかないだろうというふうに思いますし、ぜひこの点はもっと組織拡充という方向で検討をしてもらえないかどうか、こういうふうに思っております。  そういうことでありますので、いろいろな難しい問題がございます。これはもう承知しておりますけれども、しかし、今の国際システムに日本の中のシステムを、秩序を合わせるというふうなことが大事であるということであれば、そういうふうな努力をしなければいけないというのは当然でありますし、またこのことについては憲法問題とかそういうふうなことは一切ないだろう、こういうふうに思いますので、私はこっちの方にさらに力を加える必要があるのじゃないかな、こう思っております。  特に外務大臣、外務省にこの緊急援助隊にさらに力を傾けてくださることをぜひお願いしたいのでありますけれども大臣はどのようにお考えになりますか。
  57. 中山太郎

    中山国務大臣 今回、国際緊急援助隊法の改正をお願いするに当たりまして、この国際緊急援助隊の体制を強化する、事務局を充実しなければならないという考え方の中で、経済協力局の中にその専門の室をつくるということにいたしました。そして、人員等も充実をさせて対応しなければならない。また国際協力事業団が実施主体になるわけでありますから、そこにおきましても制度の充実を行うように既に準備を進めておりまして、御期待に沿うように努力をいたしたいと考えております。
  58. 福田康夫

    ○福田委員 日本人が自衛隊をどういうふうに見ているかという総理府の世論調査がございまして、その世論調査によりますと、災害派遣が、もう自衛隊は災害派遣で大変役に立ってきた、こういうふうに評価する人が七六%、これに民生協力というものを加えますともう八〇%以上が自衛隊の今までの仕事であるというふうな評価を国民がしているわけであります。そういうことから考えて、災害復旧活動とそれから自衛隊というのは切っても切り離せないことであるのであります。  それから、将来に対してどういうふうに考えるか、自衛隊が今後力を入れていくべき仕事という中でも、これもやはり四十数%の人が災害派遣と民生協力、こういうものを希望しておりまして、これは国の安全確保というよりも若干多いくらいなんであります。そういうふうな期待が国民の中にあるということ。そしてまたもう一つ、災害等のために外国に自衛官を派遣するということについて五四%の人が賛成をしている、こういうふうな結果が出ております。反対は三〇%であります。  そういうふうなことから考えましても、自衛隊に災害問題でもって海外に行っていただくということは、自衛隊の非常に重要な任務ではなかろうかな、PKOに行くけれども災害援助には行かない、こういうことは自衛隊には許されないことではないかな、そういうふうなことをすることによって、自衛官の、自衛隊の誇りをさらに持つことができるのではないかなというふうに私は思います。  そういうことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  59. 牧野隆守

    牧野委員長 この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  60. 牧野隆守

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上普方君。
  61. 井上普方

    井上(普)委員 私は、この三月の六日にお尋ねいたしたわけなのでありますが、特にことしは真珠湾攻撃すなわち画未開戦の」五十周年に当たる、したがって、開戦のときになぜだまし討ちと言われたか、その原因を明確にしろということを申し上げたのであります。  と申しますのは、外務省本省といいますか、国は、最後通牒を開戦のすなわち真珠湾攻撃の二時間前にワシントンでハル国務長官に手渡すようにという指令があったにもかかわらず、実際はそれから三時間十分おくれてこれを手渡すようになった。したがって、真珠湾攻撃をやった後一時間十分後に手渡すような失態が行われておったのであります。アメリカが、最後通牒が来る前に真珠湾攻撃をやったじゃないか、だからこれをだまし討ちと言うのだというので、当時、アメリカはリメンバー・パールハーバーと言うし、日本はだまし討ちをする国である、こういうことで非常に攻撃を受け、今日に至るまでも、真珠湾攻撃記念の日という法案が五十年を経た今日もアメリカの国会の中で続々と法律案として出されておるということを聞くのであります。  しかし、最後通牒が攻撃から一時間十分おくれたのは一体どこに原因があるのだといえば、現地の日本のワシントン大使館の怠慢と申すべきか、それ以外の何物でもないのであります。ここらあたりについての反省というものが今まで全然行われていない。この点について私は質問をいたしたのでありますが、七年前にも質問をいたしておいたのですが、その後外務省としては反応がさらさらないし、またそのときに、実態をよく調べてそして御報告するという外務大臣の御答弁でございましたので、改めて、この問題について外務省としてはどうお考えか、そしてそれをどのように処置されるおつもりか、お伺いいたしたいと存じます。
  62. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生当時御質問いただいたときも御説明申し上げたと思いますけれども、残念ながら当時の関係者の多くが既に亡くなっておられることもございまして、事実関係の詳細はわからない点が多々ございます。しかしながら、先生指摘のように覚書の手交が遅延して遺憾な事態を招いだということは残念ながら事実でございまして、私どもも深く反省しているところでございます。  何が起こったかという点でございますけれども極東軍事裁判記録、当時の外務大臣であられた東郷氏の回想録等々種々の資料を調査したところによりますと、在米大使館におきましては、この問題の十二月の六日、土曜日ですが、それから七日、日曜日につきまして、週末であるにもかかわらず、大使以下大半の館員が一体となってこの覚書の処理に当たっていたと思われますけれども、今申し上げたようなことで、秘密保持、機密保持のためにタイピストを使ってはならないという本省からの訓令もあったりいたしまして、全体としてタイプがおくれたというふうに承知しております。  それから、さらに申し上げれば、この覚書の電報は全体として十四部に分割されて発電されておりまして、十二月七日の午前中にはすべて在米大使館において解読を下しておりまして、訓令どおり午後一時には対米伝達が可能とされておりましたけれども、タイピストを使わなかった、訓令もありましたので覚書のタイプをタイピングにふなれな館員が行ったこともございまして、浄書に時間がかかったりして実際の対米手交時間が一時よりもおくれたというふうに私どもは推測しております。  いずれにいたしましても、先生指摘のようにこのような遺憾な事態を生んだことに関しましては、外務省としては従来より重大な教訓として受けとめておりまして、執務体制等の改善に心がけており、万遺漏なきを期しているところでございます。
  63. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、御存じのとおり、日米開戦の直前というのは非常に国内においては緊張しておった。ハル・ノートが渡されたのが十一月の末、国家憲田出としては開戦をやるということを決め、また来栖三郎大使は急遽ワシントンヘ飛んだという時期でもあります。  しかし、私はこの前も申したんだが、「昭和天皇独白録」というのが出されました。これは寺崎英成君の作文だが、その中になぜおくれたかということについては全然書かれていない。当時ワシントンにおられた寺崎さんであります。この前も申したんだが、この点を非常に気にせられておったのが昭和天皇であるということも私は承っておる。当然独白録に書いてあるだろうなと思ったけれどもそのことについては一行も書いてない。だから、あの独白録というのは本当かいな、うそかいなと言って私は疑問を持つ一つであります。しかし、あの解説の最後にも書いてあります。これは、そういうような、大使館ではおくれてもやむを得ぬような雰囲気であったというような、すなわち緊張感がワシントン大使館にはなかったということ、こういう解説が書かれておるのであります。  それで、国が命運かける、これこそ本当に命運かけるときに外務官僚が、今あなたはおっしゃるけれども、タイプがおくれたのだ、こうおっしゃる。しかし、最後通牒というのは、これはタイプでなかったらいかぬのですか、手書きでもいいんでしょう。あるいは日露、日清の戦争のときにタイプライターというのはありやせぬ。タイプがおくれたというのは理由にならない。そしてまた、それだけ重大なことが、タイプライターの打てるのは一人しかいなかったのですか、奥村勝蔵さん一人しかいなかったのですか。あのワシントンの大使館には当時少なくとも日本人は二十数人おったはずだ。タイプライターが一人しか打てぬというようなことはないはずだ。この点とうなんです。
  64. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私ども承知しておりますのは、奥村さんがタイピストを使ってはいけないということで御自分で打っておられたということでございます。  先生の御質問の、ほかにいなかったのかという御指摘でございますけれども、私ども関係者が先ほど申し上げましたようなことで大半はお亡くなりになっておられまして、先生の御質問に適切にお答えできないのは申しわけないと思いますが、残念ながらちょっと承知しておりません。
  65. 井上普方

    井上(普)委員 大臣、重大な反省として調べたとおっしゃる、外務省は。しかし、二十数人おった外務省の役人、日本人ですよ。タイプライターは、奥村さんだけしかいなかったのですか。そこまで調べてでなかったら、この問題の解決にはならない、教訓にはならないと思う。奥村さん一人しかタイプライターを打てなかったのですか、当時の役人は。そこまでも調べていないじゃないですか。どうなんです。ここらあたりに、外務省はこれは重大な反省であり重大な教訓であると申されるけれども、本当に調べておるのか。亡くなった人が多いからわからぬというようなことでは済まされない問題なんですよ。  私は、このことについては、終戦直後にこれは問題にならなければならなかった、しかし、奥村勝蔵さんは御存じのとおり終戦連絡中央事務局第五部長になるし、また寺崎さんは御用掛になるというようなことで今日までほおかぶりしてきた、それがずっと続いて今外務省が種々批判せられておる原因をつくっておると思うのだ。  北米局長、どうなんです。そこまでも調べもせずに重大な教訓とかあるいは重大な反省が行われるとお考えなんですか、どうなんです。
  66. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生指摘の、タイプを打てる人がほかにいなかったかという点でございますけれども、先ほど申し上げたようなことでなかなか客観的にきちんと調べがたいのでございますが、藤山元大使が当時おられたわけでございまして、今先生が御指摘の奥村書記官がタイプを打っておられたのを藤山さんと結城さんがチェックを手伝われたということですけれども、藤山大使によれば、英語ができてタイプを打てるという人は奥村さん一人だけだったと言っておられます。ただ、残念ながら、今申し上げたことで本当にほかにいなかったのかどうかということは、藤山大使はそうおっしゃっていますけれども、ちょっと私ども確認ができない点はお許しいただきたいと思います。
  67. 井上普方

    井上(普)委員 私はなぜこういうことを言うかというと、なぜこのことを反省しなきゃいかぬかというと、今外務省に対しまして非常に批判が強い、特に行革審まで、今の外務省のあり方についていかがなものか、もっとしっかりしてほしいということを申されるのである。私もそう思う。  私が、再々申し上げるので恐縮なんですが、在外公館へ行って、一体これで日本外交はいいんだろうかということを考えるのはいつものことなんです。外務省には優秀な人が入っておるはずだが、なぜこういうように外務省というのはだらしない役所になっておるんだと。私は、もう二十五年、きのう表彰受けて国会議員として二十五年やってきたけれども日本で一番重要な役所はどこだといったら外務省と文部省だと私はいつも言っているのです。その外務省と、ほかのところで言うのは嫌いなんだが、文部省というところが、ともかく我々の意に満たない役所になっている。日本はこういう国でございますから、これは外務省がしっかりしなきゃいかぬということは感ずるんだけれども、定員法の関係等々もありましょう、人員も多くならない。中にはテンマやいうような制度をつくって得々としているような外務省だ。  これはさておきまして、そこで松浦さん、聞くが、重大な教訓としてこれを受け取っておるというのは、教訓としてどういう具体的な措置を講じていますか、お伺いいたしたい。
  68. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりましたように、外交に携わる者の重大な責任ということは、私ども日ごろ痛切に感じ、またいろいろな機会を通じてそのようなことを、省員の教育と申しますか訓練と申しますか、そういう過程を通じて配慮してまいっているつもりでございます。厳しい御指摘につきましては厳正にこれを受けとめなければならないと思いますし、また、そのような気持ちで日々新たな対応をしてまいりたいと思うわけでございます。  それで、ただいまの十二月六日、七日の経緯を通じての私どもの一つの反省というものがあるとすれば、やはり東京からの情報あるいは訓令というものを的確にかつ迅速に任国政府あるいは任国における関係者に伝達をする、それによって私ども外交の実態についての十分な理解がいくということが一つあろうかと思います。私どもとしては、限られた人員の中で、この電信の授受にまつわる体制につきましては、当然のことでございますが二十四時間という体制をしいて本省並びにそれぞれの在外公館において対応しておるという状況が一つあろうかと思います。また、相手国の、任国の政府にきちんと情報を伝達するために、それなりの熟練した技術も習得をしておくことがそれなりに必要なことだということを厳粛に受けとめ、私ども省員の教育の中でそういう技術的な問題も含めての教育をしているところでございます。
  69. 井上普方

    井上(普)委員 それじゃお伺いする。  あなた方、幹部が心がけておると言ったところで、具体的にどういうことをやっているんだと私はお伺いしているのです。新規採用される研修のときに、こういうような事実があった、これは日本外務省の一大恥辱であるという教育をやっていますか。このことを具体的に研修のときにやっていますか、お伺いしたい。どうです。
  70. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  私ども外交に携わる者として、重要な外交交渉、戦後の事例を一つとってみますと、サンフランシスコにおける講和条約交渉、あるいは一九五六年前後における日ソ交渉、あるいは二十年前の沖縄返還交渉といったような重要な外交交渉というものがございます。こういう具体的な事例の中で、我々の諸先輩がどういう考え方でそれぞれの外交問題に取り組んだか、そういうことを研修所研修課程の中で十分に研修を積んでもらうプログラムを組む等、時間を割いているところでございます。
  71. 井上普方

    井上(普)委員 毎年四月から五月にかけて、新しく外務省に入った新規の採用については研修している。そのときにあなた方は、過去においてこういう失敗があって国はこういうような迷惑をこうむったんだということを言うたことがありますか。どうです、そのことだけお伺いする。あなたがごちゃごちゃ言うと長いから。
  72. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますが、具体的にだれがどういう状況のもとで今先生が御指摘になりましたような文言を使いながら講座を持ったかどうかということについては、私もつまびらかにはいたしません。ただ一般的には、こういう重要な交渉事項についての経緯とか背景とか、そういうものはまとめた形での勉学をしているというふうに理解をいたしております。
  73. 井上普方

    井上(普)委員 このことについて、外務省が公式文書で、ともかく出したことはない。あるいは研修のカリキュラムの中にこれが組み入れられたことは私は聞いておらない。ありますか、あったら何年にやったか言ってください。  臭い物にはふたをして今日まで来たのが外務省の態度じゃありませんか。それは、日ソ交渉、サンフランシスコ平和条約、大事です。大事だけれども、真珠湾最後通牒を、日米開戦の最後通牒を出すときほど重要なことはない。これは外務省の一大恥辱じゃありませんか。これをほおかぶりして、教訓にせずして何です。このごろ「外交フォーラム」とかなんとかいうような雑誌が出ているが、これにこの事実を書いたことがありますか。これこそ重要な反省なんだ、反省と教訓なんだ。我々の先輩がかかることをやって、今日、五十年後においてもやはりだまし討ちをしたんだということを言われているんじゃないですか。外務省の役人の怠慢と失態のためにこういうようになっているんじゃないですか。  それから、もう一つ聞く。最後通牒がタイプライターでなければならぬというようなことはどこにありますか。日本語で渡してもいいはずだ。ここらあたりはどうなっているんですか。緊急を要する場合は日本語で出してもいいはずだ。手書きの英文で渡してもいいはずだ。こういうような初歩的なことが外務省は抜けているんじゃないですか。だから聞いているんだ。どうです。
  74. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 ただいまの、当時の十四本のワシントンの日本大使館あての訓令を、全文をちょっと持ってきておりませんけれども、私の記憶で申し上げれば、先ほどもちょっと申し上げましたように、タイピストは使わないでという指示が、専門のタイピストは使うなという指示があったわけでございますけれども、やはりきちんとタイプして出すという前提で訓令が打たれたと思いますので、先生が先ほど来御指摘のような、タイプの過程で、あるいは浄書の過程でおくれが生じたというふうに理解をしております。
  75. 井上普方

    井上(普)委員 タイプで出すのがいいのか、手書きでやらなきゃいかないか、この選択の問題だ。これだけ重要な問題を、タイプでなければいかぬかとかいうようなことじゃないでしょう。ここらあたりに外務省の物の軽重を考える能力がなかったことが示されると思う。それよりも午後一時に手渡せという訓令の方が重要じゃないですか。こういうことを私は言いたいんだ。物事の軽重というものを忘れたやり方をやったんじゃないだろうか。  そしてまた、「昭和天皇独白録」を見ると、ともかく緊張感がワシントン大使館にはなかったというようなことを書かれておる。それが言いわけの一つになっているのですよ。私は、これほど国家としては重要なときにこのようなことが起こったので、少なくともその間のいきさつを反省を込めて、どうです外務大臣、お伺いするんだが、このごろどうも外務省の「外交フォーラム」とかなんとかいう雑誌が出ておる。次官がおかしげなことを書いてみたり、あるいはまた若手の課長が論文を出してみたりしておるらしい。そこらあたりにここらあたりのいきさつを、五十年に当たって、最後通牒がおくれたのは、いつまでに出せという本国の命令であったにもかかわらず出先大使館の怠優によってあるいは選択の誤りによってこのようなだまし討ちをした、最後通牒が戦闘行為よりもおくれたということを論文にお書きになる御意思がございませんか。  それは外務省にとってはつらいことでしょう、役人にとってはつらいことでしょう、先輩がそんな不始末をしてかしたんだから。しかし、ここから初めて日本外交というものは第一歩を踏み出すんだ、反省の第一歩を踏み出すんだということになりはしませんか。行革審で、日本外交がおかしいぞ、国の識者の間でそうなっている。あそこには元外務大臣もおられるけれども、恐らくそういうお気持ちで外務大臣を務められたんじゃないだろうかと私は思う。だから、私はあえて申し上げるのだが、こういうようなことをひとつ発表なさって、反省の資料にするお気持ちはありませんか。
  76. 中山太郎

    中山国務大臣 委員が本当に日本の国のことを考えて、また日米関係のこれからの問題も考えて御質問を重ねていただいていることを私はよく理解をいたしております。  今お尋ねのございました開戦当時の在米大使館、日本大使館のいわゆる対米通告について、時間的な誤差が起こってきた、そういうことによって結果的に日本がこの宣戦の通告がおくれて現実的にはハワイで戦闘が行われた、開始されたという事実を御指摘いただいているものと私は考えております。  私は、前回の委員の御質問以来、この問題、絶えず省内でもいろいろと確認をいたしてまいりました。今北米局長から御説明を申し、また官房長からもその経過についてもお答えをいたしましたが、事実、タイプを打てる人間というものが一人しかいなかった。きょう、先ほども申し上げておりますように、このタイプの、機密保持のためにタイピストを使えない、使うなという本省からの厳しい訓令があったわけでありますから、そこのところで大変手間取ったということは事実でございます。  そのようなことで、私はこの委員会の場を通じて、この問題に対する委員の深い御関心とともに、私ども外務省といたしましては、これからは戦争というものがないということを憲法のもとで誓っておりますからそのような通告をいたすことはもう再びございませんけれども、我々に求められているものは、国際化する新しい時代の中で外務省がこの体制では十分賄い切れるかどうかということは、行革審からも厳しい御指摘もございますし、省内では外交強化懇談会というものを私の諮問機関として開催して、早急に結論を出すように努力いたしております。今後はこのような御心配をかけるようなことがないように、全力を尽くして省を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
  77. 井上普方

    井上(普)委員 大臣おっしゃいますが、先ほども重大な反省がある、それは折々おっしゃるでしょう。しかし、外交官の研修が四月から五月に行われるときに、カリキュラムの一つとしてもこれは取り上げられておりませんよ。外交官の心がけの第一歩ではありませんか。そしてまた、タイプライターは奥村さん一人しか打てないということはない。寺崎さんは当時ピクニックに行っておったではないですか。あの人はタイプを打てぬというはずはないんだ。大使館にはタイプを打てる人はたくさんおったはずだ。ところが、それが集まってこなかったんですよ、大使館へ。だからこういうことになったんだ。たとえタイプを打って渡せという指令であっても、手書きで、あるいは日本語で最後通牒を渡しても悪いことはありはしない、国際慣行上。どちらが大事なんだという取捨選択の能力がなかったということ、考えてみれば。  だから私は申し上げる。ここに私は問題があると思うので、少なくとも外交の、外務省が出しておる雑誌がようけある。その中に、こういう五十年に際しまして反省の一項目ぐらいは事実を、外務省官僚としてはまことに恥ずべきことであるけれども、恥辱だけれども、これくらいのことはお書きになったらいかがですか、こう申しておる。それが反省であり、それが次への教訓であると私は思う。いかがです。
  78. 中山太郎

    中山国務大臣 外交官を志す人たちの外務研修所におけるカリキュラムの中で、このような歴史的な経過というものについて十分研修生に研修するように心がけるよう努力をいたしたい、このように考えております。
  79. 井上普方

    井上(普)委員 これから新しく出てくる外交官に期待いたしましょう。それが一つ。  あと、もう時間がございませんので、一つお伺いいたしてみたいのだが、このたび国際協力法というのですか、国際緊急援助隊の派遣に関する法律という法律は、実はこの外務委員会で審議せられたのですね、この前つくられたとき。ところが、このたびは特別委員会の方に移っておるのでまことに残念に思っておるのであります。  この緊急援助隊というのは、法律ができてから何回海外出動、出て行ったのでございますか、お伺いいたしたい。
  80. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 突然のお尋ねでございましたので記憶によってお答え申し上げるわけでございますが、たしかこの四年間に十数回の事例があったと思います。
  81. 井上普方

    井上(普)委員 私が調べたところでは十九回だ。十九回出動している。ところが、実は私は今度のあの援助隊法の改正案を見てみますと、国会に報告することということになっている。それで一体どんなことになっているかと思って調べてみた。ところが、この国際緊急援助隊の派遣に関する法律を通すに際しまして附帯決議が出ているのですね。その附帯決議の最後に、「国際緊急援助活動に関して講じた措置については、随時、当委員会に報告すること。」となっている。何回報告しましたか、随時。
  82. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 突然の御質問で担当局長参っておりませんが、これまで私どもの承知いたしておりますところは、この外務委員会のそれぞれの理事先生方にその都度状況報告を文書にしてお配りをし、この実態について御連絡を申し上げたということがございます。  ただ、この件につきましては、今後、より具体的な方法で御報告をするという方法についてただいま外務委員会関係の方面と御相談をしているところでございますので、その点について、まとまり次第また御報告を申し上げたいと思います。
  83. 井上普方

    井上(普)委員 この附帯決議をいたしましたときには、外務大臣は、この附帯決議を拳々服膺してこれを行います、こうおっしゃったはずです。ところが、理事に個人に渡したのかもしらぬ。しかし、この項目には「随時、当委員会に報告すること。」とある。「当委員会」ですよ。全然やっとらぬじゃありませんか。だから、今度の援助隊、あるいはまた、PKOというのか、あれにつきまして、報告するといったって、外務省のやることじゃ、こんなことまで欠けておるのに、やらぬじゃないか、何が信用できるのだ。  当委員会に報告することが実際行われてない。聞けば、これから考えます、四年前にこれだけちゃんと、大臣もこれは拳々服膺いたします、こうおっしゃっているのだ。それをもう委員会が済んだら、さいならということで何もやらない、実行してない。ここに外務省に対する不信感があるし、当委員会はなめられておるなという感じが私はしてならない。国会無視だ。国会軽視だ。だから、今度のPKOについても、後から事後報告すればいいといったって信用できるかということに相なるのだ。  大臣、どう思います。あなたが拳々服膺するという、そのときやられた大臣じゃありませんけれども、今の話を聞いてどう思います。
  84. 中山太郎

    中山国務大臣 この問題につきましては私も十分認識をいたしておりまして、今までの経過を調べてまいりました。  御指摘のように、委員長を通して委員会の席で報告をしているということはせずに、各理事先生方に報告をしてきたということであったという報告を聞いておりますが、これは、その附帯決議の趣旨を尊重いたしまして、私の責任においてこれから委員会に必ず報告をするということをこの機会に明確に申し上げておきたいと思います。
  85. 井上普方

    井上(普)委員 当たり前のことが当たり前に行われていないところ、そこに問題があるのですよ。理事に報告したらいいというような話じゃないはずだ。こういうところに、外務省に対する不信感がある。これからやります、すべてこ九からやりますです。こんなことが行われてない。  そしてまた、今後は海外派兵するんだ。自衛隊を出すというのは間違いだ、これは。それでも、こういうような事例があるから私はあえてこういうことをお伺いしているんだ。今まで外務省というのは、外交というのは内政の延長だなんということを盛んに言われるけれども国内の政治について、あるいは国会についてほとんどこういうようなでたらめなことをやっている。一体、これで果たして日本外交というのはどうなるのか、私は憂えてならないのであります。  もう時間が参りましたので、この程度にいたしますけれども、どうか向こうでは、十二月八日のあのいきさつについては公式に、ひとつ一般国民がわかるように大臣も事実を鮮明にすることが一つ。並びに、今度の援助隊につきまして、こういうような不始末をやっておる事態につきましても十分なる反省を行っていただきたいことを強く要求すると申しますか、当然のことですけれども、やらなきゃならないことを申し上げて、私は質問を終わります。
  86. 牧野隆守

    牧野委員長 井上一成君。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 まず、私は中山外務大臣に、外務大臣として大変御努力をなさっていらっしゃることには一定の評価をしたい、こういうように思います。さらに、我が国の主体的な国連中心の外交をより強く展開をしてほしい、そういう強い希望もこの折に申し上げておきたい、こう思います。  アメリカブッシュ大統領が、先月二十七日、テレビを通してアメリカの全国民に強く核兵器の規模と種類の大幅削減提案いたしました。このことについて、発表に先立ってイギリスだとかフランスだとかドイツに対しては事前にアメリカ側から通告がなされている。さらには、韓国に対しては親書をもって、アメリカ韓国とのいわゆる安全保障に係る公約は何ら変わりがない、そういうことも強く強調をされているわけなんですけれども、友好国でありパートナーであると日ごろから強く強調されている我が日本政府に対して、アメリカは何らかの事前にこのことについての連絡があったのかどうか、まずその点からお聞きをしていきたいと思います。
  88. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生言及されましたブッシュ大統領核兵器削減イニシアチブは、アメリカの東部時間では九月二十七日でございますけれども日本時間にいたしますと二十八日の朝九時になりますが、前の日の二十七日の夕刻、アマコスト大使がブッシュ大統領からの海部総理あての親書を持って総理を往訪いたしまして、今回のブッシュ大統領のイニシアチブにつきまして事前に説明をいたしました。したがいまして、アメリカ側からはきちんと事前の連絡がございました。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 今回のブッシュ大統領核軍縮提案我が国はどのように受けとめているのか、その点も聞いておきたいと思います。
  90. 中山太郎

    中山国務大臣 今回のブッシュ大統領の大胆で勇気のあるイニシアチブを世界の平和と安定に資するものとして高く評価をいたしておりますし、核兵器の究極的な廃絶を我々の国家としては理想としておりますので、そういう観点からも高くこれを支持をしてまいりたいと考えております。  今後、ソ連の首脳部がブッシュ大統領の呼びかけに応じて具体的に迅速かつ的確に対応していくことを我々は心から期待をいたしております。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 今回の核軍縮提案は、今大臣も少し触れられましたけれども核兵器の全面廃絶をうたったわけではないわけなんです。今回の提案は、基本的には核兵器の低水準での均衡を推進し、戦略的な安定性を図るのが目的ではなかろうか、私はこういうふうに理解をするわけなんですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  92. 中山太郎

    中山国務大臣 全くお説のとおり、私どももそのような認識をいたしております。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 ブッシュ大統領はゴルバチョフ大統領なりエリツィン大統領に事前に概要を伝えた、肯定的な見解だったと報道されているわけなんですけれども、私は幾つかの疑問がやはり残るのではないだろうか、こういうふうに思うわけなんです。  端的に、ソ連はいわゆる戦略核体系を根本的に揺るがすICBMの削減を素直に受け入れるということは、政府としてはソ連が素直に受け入れるというふうに受けとめていらっしゃるのか、あるいはいろいろな面で条件を含めた疑問をお持ちなのか、この点についてはいかがですか。
  94. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先般STARTが米ソ間で署名されましたけれども、それ以前の三本柱でございますね、戦略核の三本柱の比率というものをミリタリー・バランスで見てみますと、ソ連はICBMに大変比重をかけておりまして、先生御承知のとおり約六〇%ぐらいがICBM、これは弾頭数ですが、重爆撃機が七、八%、SLBMが三〇%ちょっとを上回っている、アメリカの場合にはICBMにかける比重が二五ということで、まさに六〇対二五というところが先生指摘の問題で、STARTが発効いたしますと、これは相対的に変化はしますけれども、しかしながらアメリカとの関係で見ますとICBMの比重というのはソ連が圧倒的に高い、まさにそういう前提で今般のブッシュ大統領提案ソ連にどういう意味を持つかというのが先生の御質問の核心だと思いますけれども、まさにICBMの一層の削減という点につきましてはブッシュ提案は非常に慎重な言い回しになっておりまして、この廃棄に同意するよう努力することを提案するということで、二重、三重の輪をかけている。  ここはまさにアメリカとしてもソ連のこの問題の削減の困難性ということも念頭に置いて慎重な言い回しをしているということで、御承知のとおり今月の九日、十日に次官レベルの折衝がワシントンで行われることになっていますが、私たちとしてはまさにこの点は先生おっしゃるとおり非常に注目していかなければならない点であるというふうに考えております。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 ブッシュ大統領湾岸戦争では確かに国際的リーダーシップを発揮ができ得たというふうに私は思うわけですが、アメリカ国内の内政問題については抱える問題が非常に多いわけなんですね。辛うじてそういう時期に当たったのか、それは別にしても、なぜ今この時期にこのような核戦略の歴史的転換を行ったのであろうか。  と申し上げるのは、つい二週間ほど前は、ブッシュ大統領ソ連の軍事的脅威が大幅に減少したことは認めていないわけなんですね。さらに、ソ連の将来自体まだ不透明である、あるいは第三世界での核拡散の見通しは変わらない、地域紛争には今後とも注意しなければならないなど、そういう理由によって当面の国防費の新たな削減は行わない、そういうことをつい二、三週間前までは話していたのが、九月二十七日にこの歴史的転換ともいうべき核戦略の転換を発表した。そういう意味で、那辺にこういう状況の変化を起こさせ得たのか、政府はどういうふうにその点については考えていらっしゃるのか。  今少しお話がありましたように、アメリカの一方的核削減によってソ連の同意を導き出す、あるいはソ連の核の拡散防止を図る(あるいはソ連戦略核縮小への努力を求めるんだ、そういう言い回しでお答えがありましたけれども、なぜ今のブッシュがこういう思い切った政策転換を発表したのか、そこの辺についてはどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  96. 丹波實

    ○丹波政府委員 推測、分析、いろいろ込めまして四つの点を御指摘申し上げたいと思うのです。  一つは、やはりこのような提案によりまして、イニシアチブによりまして、世界核兵器を一挙に減少させることによって、世界をより安全なものにしたいということが一つ。  二つ目は、ソ連に対しまして核兵器の大量生産というものから民主主義への樹立という方向転換をさせるイニシアチブというものを打ち出したいという考え方があろうかと思います。  三つ目には、八月におけるソ連におきますところのクーデターの失敗と、それを受けましたソ連の新しい方向の動きの中で、各共和国核兵器の配備に一体どういう影響を及ぼすようになるのかという問題を念頭に置いて、ソ連との間で、より安定的な戦略核その他の核の問題を含めて安定的な関係というものを築いていきたいというのが三つ目がと思います。  四つ目には、先生も御承知のとおり、一九九五年にNPTの延長の問題を迎えておる、非核保有国はその米ソを中心とする核保有国に対して、核の削減をもっと進めてくれ、そうでなければこの九五年の延長という問題についてはそう大手を振って賛成だと言うわけにはいかないという圧力が非核保有国からあるものですから、そういうことも念頭に置いての行動ではないかというふうにとりあえず私たちは分析しております。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、アメリカは具体的にこの核軍縮をどう実施していくつもりなのか、そういう分析はいかがでしょうか、どうなさっていますか。
  98. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、先般のブッシュ演説の中でも触れられておりまして、大きく分けて二つの分野になると思うのです。  一つは、ソ連も同様な対応をすることを期待しつつも、しかしアメリカとしては一方的に既に実施していく、例えば戦略爆撃機の全警戒態勢の解除、既にこれはアメリカが実施したわけですけれども、それからもう一つは、例えば地上発射の戦術兵器を一方的に引き揚げていくということはもう近々着手し始める、そういう、ソ連が同じことをすることを期待しつつも、しかしアメリカとしては一方的に実施していくという分野が一つ。もう一つは、先生が御指摘になられたICBMの削減の問題については、ソ連との話し合いを通じて削減をしていく。そういう二つの分野に分けられると思いますが、そういう二つの対応を通じて実施していくんではないかというふうに考えております。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 前段の一方的な核削減についても、じゃだれが検証するんですか。
  100. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、今後行われる米ソの話し合いで、まさに先生が御提起になられたと同じ質問をソ連側もし、かつアメリカソ連側にする、そういう過程を通じてその問題についても解決を見ていくんではないかというふうに私たちは期待しております。
  101. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカは、ソ連には提案をしているわけですが、他の核保有国に対してはどのように対応するつもりだとお考えなのか。  さらに、我が国は今回のブッシュ提案を受けて、核保有国に対しての働きかけをする用意があるのか、あるいは何かの呼びかけを考えていらっしゃるのか。そういう点についても聞いておきたいと思います。
  102. 丹波實

    ○丹波政府委員 他の核保有国との関係では、まず御承知のとおりフランス、イギリスを含めた会議をやろうではないかという話が動いておることは御承知のとおりです。  それから日本の働きかけの問題でございますけれどもソ連に対しては既にそのアメリカ提案というものに積極的に対応していただきたいという申し入れをいたしておる次第でございます。ちなみに、先ほどの報道によりますと、パンキン・ソ連の外務大臣はニューヨークにおきまして、ソ連としてはこのブッシュ提案に大胆かつ詳細に対応するということを発言しておるようでございます。
  103. 井上一成

    井上(一)委員 ブッシュ大統領は、核軍縮提案の中でSDIに対する問題に触れているわけなんです。さらにはステルス戦略爆撃機B2の開発は続行していく、あるいはSDIに十分な予算を配分しなければならない、近代化プログラムを強力に追求していくという、そういう、この二十七日の演説の要旨の中にあるわけなんです。  私は、これは戦略的安定の確保という、そういうことに位置づけながらも、なおかつ矛盾を感じるんではないか。片側では核軍縮、そして片側ではSDIを初めとする予算の十分な配分ですね。そういうようなアメリカ提案というものに矛盾を感じませんか。片側ではソ連に向けて核軍縮をやろう、そういう呼びかけをし、今のお答えでは一方的にでもアメリカは核軍縮に向かう、こういうことなんですが、片面でやっぱりSDIを大きく取り上げているわけです。議会の支援も求めたい、こういうことを言っておるわけなんですけれども、こういう核軍縮とSDIの推進とは相矛盾することでありますね。  こういう点についてどう理解をし、あるいはどう評価をし、どういうふうに受けとめて、政府はこの点についてどういう見解を持っていらっしゃるのか、このことも聞いておきたいと思います
  104. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今回のブッシュ大統領のスピーチの中にアメリカの基本的な軍事戦略は昨年の八月に発表したものによるということを言っておりますが、去年のまさに八月に発表いたしましたアメリカの基本的な戦略の第一の点は、先ほど先生もちょっとお触れになりましたけれども核抑止力のバランスとそれから防御体制、SDI、この点を第一に挙げているわけでございまして、今回の点も、先生も先ほど来繰り返し御指摘しておられますように、核抑止力の低いレベルのバランスということであるわけでございまして、決して全廃というところまでは言ってないわけでございます。したがいまして、ブッシュ大統領としては、一方において核の削減について積極的なイニシアチブをとりながら、他方において弾道ミサイルによる限定的な攻撃に対する防御システムの配備という点は進めていくという姿勢をとっているわけでございます。  ちなみに、さらに申し上げれば、ブッシュ大統領は今回の演説でも触れておりますけれども、今弾道ミサイルを持っている国は約十五カ国でございまして、十年以内にはその数がさらに二十カ国にも上がるということを指摘しているわけでございます。  この関連で申し上げたいと思いますのは、そもそもこのSDIというのは非核の防御システムで弾道ミサイルを無力化するということで、核軍縮を推進するということとSDIの推進ということはそういうことでブッシュ大統領は二本立てで考えているわけでございまして、私どもはその点は理解できるものと考えております。
  105. 井上一成

    井上(一)委員 いや、二本立てであなたが理解をする、通常は理解ができないんですよ。SDIの開発を推進し、片っ方では核軍縮をやろう。  さらに、それじゃ重ねて、アメリカ核軍縮提案に対してソ連は相応の措置をとる用意がある、それにこたえる用意がある、同時にソ連は核実験の全面禁止を行うべきだと考えているということが述べられているわけなんですね。私は、核軍縮を行う第一段階、前段ともいうべき段階でやっぱり世界の人たちだれもが共通して認識するのは核実験の停止だと思うんですね。ソ連は核実験の全面禁止を行う用意があるという、そういうコメントをしていますし、今回のブッシュ大統領提案はもとより核実験の停止なんというものは含まれていないし、SDIとB2も含めて核戦略、近代的、より質的に強力な核兵器に対する開発を片っ方では進めよう、そして片っ方では核軍縮提案した。非常に矛盾をしている。論理的にも整合性がない。そういうことを政府はきっちりと言わなきゃいけない。  さらに、アメリカの今回の提案に核実験の停止が含まれていないわけでありますけれども、それこそ核実験の停止も含めて核軍縮というものは進んでいくという私の認識なんです。そういう点について政府はどのように分析をし、かつまたどのように考えていらっしゃるのか。私の論理が矛盾しているのか、あるいはあなた方が、今北米局長が理解をしますと言われたけれども、その胸のうちは非常に苦しいと私は思いますよ。そんなことは本当は通らないんですよ。SDIの開発を進めると言いながら核軍縮を行うと提案をすることは、これは本当に矛盾した論理だと私は思うんです。  北米局長として今お答えがあったんですけれども、しかし私は違う。そんな考えは整合性がない、核軍縮へ向けての一致した方向性ではない、こういうふうに指摘をし、もっと強い我が国立場我が国の考えを、被爆国である我が国は、核実験の停止を含めて、友好国であるアメリカに対してそのような考え方を申し述べるべきである。それはアメリカ大統領あるいはアメリカの議会が決めることでアメリカの国民が選択することであるとしても、我が国は少なくとも核実験を含めて核軍縮に向けて取り組むべきであるということをしっかりとアメリカに伝えなければいけないという私の認識です。  この点については、こんなことを言うと失礼かもわかりませんが、中山外務大臣も大変軍縮に取り組んでいらっしゃるわけですけれども、私の考え方が間違いなのか、あるいは私の考え方に少なくとも近づいていらっしゃるのか。これはひとつ大臣から答えていただきましょう。
  106. 丹波實

    ○丹波政府委員 済みません、大臣の前にちょっと事実関係を含めまして。  先生の問題意識、私たち全く同じく共有するものでございます。確かに今般のブッシュ提案の中には核実験の問題は含まれておりませんけれどもアメリカは依然として、核の抑止というものを維持していくためにはある程度の実験というものを当面必要としているという考え方に立っているのではないかと推察いたしております。  他方におきまして、米ソ間で御承知のとおり、昨年に米ソの核実験制限条約というものを発効させまして、アメリカとしてはいわゆるステージ・バイ・ステージ・アプローチということでこの核実験問題に取り組んでいくということを考えているわけでございまして、これは一九八七年九月の米ソ外相会談のときにアメリカがそういう考え方を発表しておるわけです。  このステージ・バイ・ステージと申しますのは段階を踏みながら核実験停止に向かっていくということでございまして、一、二の段階を申し上げますと、例えば核兵器削減を初めとする軍備管理軍縮問題全般の状況を考慮する、それからもう一つは、核兵器に関する技術的発展の状況等を総合的に勘案し、そういういろいろなステージを考えながら進めていくというのがアメリカ考え方でして、私はこの点についても今後米ソが話し合って、地下核実験の完全停止、現在御承知のとおり百五十キロトンということが限界になっておりますけれども、進めていっていただきたいというふうに思っております。  私たち、アメリカを含めてと申しますか、アメリカに対しましてもこの問題は言っているつもりでございまして、これは例えば国連総会の第一委員会における堂ノ脇大使の一般演説の中にも反映されていますし、それから先般中山外務大臣がジュネーブの軍縮会議で行われた演説の中にも、私たちは国際社会の中にアメリカも含めて核実験停止問題は訴えているつもりでございます。  ちなみに日本といたしましては、ジュネーブで核実験停止のためのアドホック委員会というものを設置したのですけれども、これは堂ノ脇大使がワシントンに出かけられてアメリカを説得した上でそういうアドホックの委員会をつくって、そこで日本が考えておりますステップ・バイ・ステップ方式、これは検証の技術が進展していくのに合わせて制限のキロトンを下げていくという考え方ですけれども日本がまさにイニシアチブをとった分野でございまして、私たちはこの問題はやはり真剣に取り組んでいかなくてはいかぬと思っております。  全体として、結論として、先生がおっしゃったことと全く同じ問題意識を共有しているつもりでございます。
  107. 中山太郎

    中山国務大臣 今、丹波国連局長が今までの日本考え方というものについて申し上げておりますけれども、我々は唯一の被爆国である。これは世界じゅうどこにもないわけでありますから、日本としてはこの核実験停止実現のために、ステップ・バイ・ステップの方式でありますけれどもこの提案を行って、地震波を利用した地下核実験検証のための世界的なネットワークづくりに貢献するなど従来より努力をしてきておりますが、今後ともそのような努力を続け、一日も早く核実験の、特に核保有国の実験がだんだんと減少していって、やがて核実験がないといったような世界実現するということが最も好ましいことだと考えております。
  108. 井上一成

    井上(一)委員 新たな核開発につながることが核実験なのですから、ステップ・バイ・ステップという手順の問題を詳しく説明されましたけれども我が国は、核実験を停止する、その一点を強く主張し、かつ世界のすべての国に、とりわけアメリカに対して強く求めていくべきであろう。外務大臣の今のお答えでも決して後ろ向きではないと思いますが、国連局長も私の考えと共有する部分があるということですから、これは念のために強く申し上げておきたい、こういうふうに思います。  さらに、今回のブッシュ大統領の核削減提案というものは我が国の安全政策についても少なからず影響を与えるわけであります。日米安保条約の中におけるいろいろな矛盾点等については時間の関係がありますからここでは省略をし、アメリカが新しい国防政策、核軍縮に転換するわけでありますから、我が国にも当然その安全保障政策にかかわっての影響が出るわけであります。そのことと同時にアジア・太平洋外交見直しを行わなければならないのではないか、私はこういうふうに思うわけであります。そういう点についてはどういうふうに認識をされていをのか、この点についても聞いておきたいと思います。
  109. 中山太郎

    中山国務大臣 今回のブッシュ大統領提案によって大幅な核の削減というものの提案が行われたわけでありますが、特にアジア地域においては地上戦術核の撤去というものが明確にされた、また海上の戦術核もこれを撤去するということが明快に述べられているわけでありまして、大変大きなこの地域における戦略上の変化が起こってまいったというふうに私は認識をいたしております。  我が国を含めて、アジア太平洋地域はこれからの安全保障というものをどのように考えていくか。これはさきのASEAN拡大外相会議でも日本としては、そのような考え方で協議をする高級事務レベルの会合を持つべきだという提案を既にいたしておりまして、先般はマニラにおいてもそのようなフォーラムが挙行されております。  この地域に核の保有国が現実に今まだ存在をしているという事実がございます、中国等も核戦力を持っていると言われておりますから。そういうことを考えますと、アジア地域における安全保障問題というものは、一日も早く核のない状況というものが期待されるわけでありますけれども、現実にはなかなかそのような理想的な状況を現出する状況にはまだ至っていない。  そこで、我々の国の安全保障という問題につきましても、我々はこの基盤的な防衛力を整備して、必要最低限安全保障政策というものだけは堅持をしていく必要がある。あわせて日本の持っている日米安保というものも堅持する必要があろうかと考えております。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 ブッシュ大統領は艦船からの核の撤去ということを発表しているわけなんです。これはアメリカ艦船に核が搭載されているという事実を認めた、そういう裏づけがあっての発表になるわけです。とりわけ私たちは常に、非核三原則を国是とする我が国が核の持ち込みを許してはいけない、そういうことを再三強く政府に問いただし、かつ強くそれを求めてきたわけであります。  私は、この際だから、特にブッシュ大統領が訪日されるわけでありますし、そういう折に我が国非核三原則の国是をもう一度念を押すためというか念を押して、もちろん在日米軍基地のそれぞれの基地における疑問もあるわけでありますが、とりわけ艦船における核搭載の問題についてはブッシュ大統領が訪日をした折にこれは強く申し入れをすべきである。現状の問題ということに私は今触れていません。あえて我が国非核三原則の国是をこの折に十分アメリカブッシュ大統領に直接伝える必要があろう、こういうふうに思うのです。大臣、いかがでございましょうか。
  111. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、米国日本非核三原則というものは政府上層部も含めてこれは十分熟知をいたしておりまして、そういう意味で、アメリカ日本非核三原則の国是ともいうべき問題は大統領も含めてよく御認識いただいていると信じております。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 いつも同じような答弁に政府側はなるわけです。  私は、ブッシュ大統領が訪韓をされたときに必ず韓国政府韓国側もそのようなことについて触れられると思うのです。我が国は何ら触れない。今までの信頼関係の上に成り立ってという過去の答弁を繰り返すだけではなく、念には念を入れるというか、新たなブッシュ提言に対してまた新たに我が国が強く非核三原則の意思を伝えるということは外交として当然だと思うのですよ、大臣。私は、決して過去のことについてとやかく今指摘をし、あるいは具体的な事例についてここで論議をしようとは思いません。しかし、ブッシュ大統領日本を訪ねたときには、本当に時期がいいのではないですか。ブッシュ大統領の核軍縮への提言を受けて、特に艦船の核搭載についての撤去ということはブッシュ大統領が言ってらっしゃるのだから、発表していらっしゃるのだから、あえて私はそういうことを強く伝えるべきである。もう一度重ねて強く求めてお答えをいただきたい。韓国でそのような発表があり、我が国では何らそういうことについては触れられなかったとすれば大変残念なことになる。そういうことで、あえて先を見た、先を読んだ質問を私はしているわけなんです。いかがですか。
  113. 中山太郎

    中山国務大臣 ブッシュ大統領の訪日の際の恐らく、恐らくじゃございません、訪日の際の首脳会談のテーマの一つとして、この新しい国際情勢の中でこれからの安全保障問題というものが、今委員の御指摘のようにブッシュ提案も含めて安全保障問題というものが国際的にもまたアジア地域を含めてもいろいろと協議をされるものであるという認識を持っておりまして、日本政府としても、それらの機会にいろいろと意見を交換いたしたい、このように考えております。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 私は、強く私の見解を申し上げておきましょう。ぜひその点はブッシュ大統領に申し入れをすべきであるということです。  アジア外交見直しという点で一つ私は事実関係についてお尋ねをしておきたいと思うんですが、今フィリピンにおいて米軍基地の撤去の問題がフィリピンの大きな政治問題であり、国民的問題である。いわば上院で米軍の基地存続が、条約が否決をされた。このことは既にもう私から申し上げる必要はないと思うんですけれどもアメリカとフィリピンとの基地存続の基地協定、これは条約上失効している、その効力は失われている、私はそう思っているわけなんです。外務省はそういうふうに認識されていますか。
  115. 谷野作太郎

    谷野政府委員 お答え申し上げます。  まさにその点が、ただいまフィリピンの国内におきまして上院の方々あるいは憲法論者等も含めて、その方々の間で論争となっておるところでございます。  事実関係を若干申し上げますと、米比軍事基地協定というのがありまして、ただいまお話しのように、これにかわる新しい協定につきましては上院で先般批准がなりませんでした。その後起こりましたことは、それまでの米比基地協定につきまして一体これがいつまで有効なのかということにつきまして、既に有効な期限は終わっておるという解釈と、いやそうではない、あと一年ぐらいは有効であるということで真っ向から主張が対立しておるという事実がございます。  他方、フィリピンの国内の憲法がございます。ここには、本件の問題につきまして「フィリピン共和国アメリカ合衆国の間の協定が一九九一年に失効した後はこ云々と書いてございまして、憲法にはそのように一九九一年をもってこの協定が失効するという記述がございますが、これにつきましても実はいろいろ解釈がその後分かれてきておるようでございます。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 いや、私の聞いているのは、私はフィリピン憲法に照らして、上院で否決をされた今回の態様については、もう既にそのフィリピンとアメリカとの基地協定は失効しているという認識なんです。外務省はどういう認識をしているか、失効しているという認識に立つのか、いやそうでないというのか、どちらなんですか。
  117. 谷野作太郎

    谷野政府委員 これはせっかくのお尋ねでございますけれども、ただいまフィリピンの国内におきまして憲法の解釈も含めていろいろ論争が行われておるところでございますので、そういう状況の中で日本政府として第三国の、あるいは第三国間の協定の解釈あるいは第三国の憲法の解釈について、こういう公式の場で断定的なことを申し上げるのは適当でないかと思います。
  118. 井上一成

    井上(一)委員 いや、何を言っているんですか。そんなばかな答えがありますか。私は、失効している、それはフィリピン憲法に照らしてそうだ。フィリピンの国民がどういう選択をされるかということはフィリピン国民の自由な意思なんです。私はあなたに押しつけているんじゃないんです。外務省はどういう認識を持っているんだといって聞いているんです。いろいろな意見がございまして、いろいろな意見があればいろいろな意見で、外務省は常に結論を出さないんですか。外務省はちゃんとした、日本政府はちゃんとした一つの考え方を示さなければいけないわけです。何を言っているんですか。それはフィリピンの国内にも政治情勢がいろいろありますから、いろいろな立場の人がいらっしゃるわけなんです。だけれども、これはフィリピンの憲法から照らして失効している、こう私は言っているんです。政府はどうなんですかと言うんです。もう一度答えなさい。これは答えられなければ答えるまで私は待ちますよ。統一してください。
  119. 谷野作太郎

    谷野政府委員 先ほどお答えしたことの繰り返しになりますけれども、恐らく先生が念頭に置いておられるのは憲法の規定だと思います。確かに、素直に読めば一九九一年に失効というふうに読めますけれども、さてそれでは、一九九一年の、まだ十二月まである。したがって、今この時点ではまだ米比基地協定は失効してないんだという解釈も、例えばフィリピンの官房長官という高い地位におられる方がおっしゃっております。  他方、それに対しまして先生のような御認識、私はそのような御認識の方がフィリピンの中では有力だと思います。いや、そうではなくて、もう既に失効しておるんだという考え方の方が有力だと思いますけれども、最後のお答えになりますけれども、私が申し上げたいのは、ぜひ御理解いただきたいのは、そういう状況日本政府が、この種の第三国の問題について、微妙な法律問題について今の時点で有権的なことを申し上げるのは差し控えたい、そういうことを申し上げておるわけでございます。
  120. 井上一成

    井上(一)委員 いや、繰り返して申しわけないけれども、申しわけないというよりこれは質疑だから答えなければいけないんだよ。答えられないなんというような、外務省がそんなこと。  報道によれば、大使館筋はいわゆる上院の採決について失望するというコメントを出しているわけだ。これこそ内政干渉なんだよ、これこそ。フィリピンの国民が、議会がどういう選択をしようとも、我が国はそれを、いわゆる民族自決の尊重なら民族自決の尊重という一つの理念を持って、哲学を持って物事を判断していかなければいけないわけであって、私が、いや、もう九一年で失効ですよ、上院が否決をしたことは、こう言えば、フィリピンの国民の大多数はそうでしょうと。私はそんな世論調査的なことをあなたに聞いているんじゃないんだよ。少ないとか多いとかの問題でもない。日本政府はどう認識しますか、これをどういうふうに受けとめますか。これはやはりきっちりと答えてもらわないと困りますね。  特に委員長、答えられなければ時間を置いてでも、私は次の質問に入れない。
  121. 谷野作太郎

    谷野政府委員 再度の、繰り返しの御答弁にならざるを得ませんけれども、条約自体は、当事者がフィリピンとアメリカでございます。したがって、この条約をどう解釈するかということにつきましては、有権的な解釈をなし得るのはフィリピン政府でありアメリカ政府であるということでございまして、その解釈の問題についてフィリピンの国内で、政府の中でいろいろ意見があるということでございますから、そういう状況で、日本政府として断定的なことを言えとおっしゃることでございますけれども、これは哲学の問題ではなくて法の解釈の問題でございますから、なかなかなし得ない問題だと思います。  それから憲法の問題。これも第三国の憲法の問題でございまして、先ほど申し上げましたように、少なくともことしいっぱいは有効であるという解釈も可能じゃないかという議論もあり、いやそうではないという議論もあって、今そういう非常に白熱した論争が行われておるわけでございますから、そういう中で、これまた日本政府として右だ左だと言うことは適当でないと思います。なし得ないことだと思います。ぜひ御理解を得たいと思います。
  122. 井上一成

    井上(一)委員 苦しい答弁をしているわけなんだが、先ほどフィリピンの国民の大多数は私の意見、見解ということまで言われているわけだ。片側では、フィリピン大使館筋がコメントした報道は、失望すると。  私はなぜこういうことを言うかというと、少なくとも大きな援助国である我が国、そして同じアジアに位置する日本に対するフィリピンの人たちの期待と信頼はやはり高まりつつあるし、我が国に対する期待感というのは相当強いものがあるわけなんですよ。我が国が国際的貢献を果たしていくというのは、まさにアジアにおける我が国のリーダーシップというかそういうことにもっともっと力を入れていかなければいけないわけだし、そういうことに目を向けなければいけないわけだ。私は、アメリカとけんかをしなさいとかアメリカと争いなさいなんというそういうことではない。アメリカにも我が国の考えというのはもう少しはっきり言いなさい、もっとはっきり言いなさいと。自国に他国の軍隊を置くということは真の独立てはないというのは私の持論なんです。  だから、フィリピンの国民の大多数が選択したことについて、否決したことについては私はそれなりの評価をしたいし、まさにフィリピンの国民が自由な意思で自由な判断で行ったみずからの選択を尊重していくべきだ、こういうふうに思うわけだけれども、このことについては、政府に、特に外務省に、ちょろこい外務省だと私は言いたいね。  外務省、本当にこんな状況でおったら、あなた方、大変失礼だけれども日本外交というものがアジアにおいて何ら位置づけが、これこそみんなから信頼を含めて存在を認めてもらうということはでき得ない。そういう点については今のお答えでは大変不十分だし、後の人の質問があるから、これは委員長、強く委員長に、こういう答弁を繰り返しておったらだめですよ。次からこんな答弁だったら本当に私は統一した答弁を待ちますよ。しかし、強い私の考えを申し上げたから、わかっていると思う。わかっていると思うから、十分対応を誤らないようにしてほしい。  さらに、アジアの問題で一点、私は触れておきたい。  アジアの安定と繁栄というものを願う我が国として、カンボジア問題については中山外務大臣大変御苦労し、一定の見通しが持てる今日になったわけです。このことについては、我が国の今後の役割も十分果たしていかなければいけないわけ」ですが、きょうは私は、アジアで今大きな問題になっているミャンマーの問題について触れておきたい。  強い関心を私自身は持っています。そういう意味で、今日我が国とミャンマーとの外交関係はどういう状況であるのか、まずこの点から聞いておきたいと思います。
  123. 谷野作太郎

    谷野政府委員 お答え申し上げます。  政府関係は既に承認関係にございますので、いわば通常め外交関係を取り結んでおりますけれども、他方現在の政権は軍事政権でございまして、しかも約束されております民政への移管というのは実はなかなかはかどっていないという状況下におきまして、日本とミャンマーの関係は残念ながらいろいろな面で制約を受けております。その最たるものが経済協力でございまして、詳しいことは申し上げませんけれども一言で申し上げれば、昔からのいわゆる継続される案件は一部継続されておりますけれども、新しい経済協力というものは、例外的なものを除いてほとんどとまっておるという状況でございます。
  124. 井上一成

    井上(一)委員 相手国ミャンマーの現政権から我が国に対して何らかの働きかけが今日まで、公式、非公式を含めてあったでしょうか。
  125. 谷野作太郎

    谷野政府委員 ただいまの民政移管の問題につきましては私どもも強い期待を述べ、先方もいずれそのように取り運ぶということを言っておりまして、その種の対話は常時ミャンマーにおいて現地の大使を通じて行われております。  それから経済協力につきましては、先方からぜひこれの再開を早くしてほしいという要請が来ておりますけれども、先ほど申し上げたような状況でございますので、今のところ日本政府は慎重に対応しておるということでございます。
  126. 井上一成

    井上(一)委員 ミャンマiの政治情勢については、もう私から申し上げる必要はないと思うのです。  今、アウン・サン・スー・チー女史が軟禁状況にある。人権問題、人道的な問題あるいは政治的安定の問題、そういう意味も含めて、内政干渉という域に入らずしてアジア地域における安定と発展というか経済援助も含めて、やはり我が国が一定の役割を果たしていかなければいけないのではないだろうか、そういう考えを持っているのです。そういうことについては、外務省、政府はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  127. 谷野作太郎

    谷野政府委員 先ほどちょっと触れましたように、ミャンマーにおける現状につきまして私どもは大変憂慮しておりますし、そのような気持ちを現地におきまして、あるいは東京におきましても先方政府に伝えてきておるところでございます。ただいまアウン・サン・スー・チーさんのお名前が出ましたけれども、この方もいわば拘禁状態にございまして、私どもは、現政権側とアウン・サン・スー・チー女史も含めて野党のリーダーの方々との間の和解が一日も早く図られる、そして先ほど来申し上げておりますようにその結果として民政移管も一日も早く実現するということを強く期待しておりますし、そのようなことをいろいろな場を通じて先方に申し上げてきておるところでございます。
  128. 井上一成

    井上(一)委員 私は、このミャンマーの社会体制を正常化というか安定化させるためにもいわゆる双方の対話のテーブルをつくるべきであり、またそれは我が国関係諸国にも十分な協力を求めてぜひそのような対話のテーブルをつくるべきである、こういう見解を持つ」ているわけなのです。  ひとつそういう点について大臣から、どういうお考えを持っていらっしゃるのか。そういうことに取り組んでいくという、まさにカンボジアにおける和平のテーブル、まあミャンマーの場合は内戦状況ではありませんから和平という言葉ではなく、いわゆる政治安定、民生安定、そして人権が守られていく、我が国経済協力も復活できる、あらゆる意味アジアの安定に大きな一つの重要な問題だと思うので、ぜひ対話のテーブルを日本がつくっていく、そういう取り組みを持ってほしいという強い希望もありますので、それを申し上げて、見解を聞かせていただきたいと思います。
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 ミャンマーにおきます早期の民政移管及び国内における関係者との間の和解のための環境醸成に向けて、現在の政権と野党との対話を図るために日本政府として今後どのような役割が果たせるのか、委員からは積極的に役割を果たすべきだというお考えでございますが、関係国と協力をしながらこの問題について検討してまいりたい、このように考えております。  何せ御案内のようにミャンマーという国は外国からの干渉に極めて敏感に反応して拒絶する体質を今まで持っておりますから、そういうものも十分踏まえながら日本としてはできるだけの努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  130. 井上一成

    井上(一)委員 最後に、私は、毎々申し上げるように、世界のすべての国からなくすべきは核と差別、守るべきは平和と人権である、ひとつそういう理念を柱に、より平和外交を推し進めていただけることを強く要望して、質問を終えたいと思います。
  131. 牧野隆守

    牧野委員長 遠藤乙彦君。
  132. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 当面する国際情勢の主要な問題につきまして質問をさせていただきます。  まず、何といってもブッシュ大統領提案でございますけれども、この提案はINFの撤廃合意、それからSTARTの合意に続きまして、大変画期的な、また時宜を得た提案であると高く評価をするわけでございます。  このブッシュ提案につきましては既に私以前の委員からるる意見が出され議論がされておりますので省略をいたしますが、一つお聞きしたい点は、このポスト冷戦という時代に移行しまして核軍縮、グローバルな次元での核軍縮というのは非常に大きく進展を見ております。他方、それにかわってむしろこれからの大きな課題として浮上してきているのは、特にこの核問題に関して浮上してさているのは地域紛争と絡んだ核拡散という問題だろうかと思います。具体的には朝鮮半島であり、インド・パキスタンであり、あるいは中東地域であると思いますけれども、このようにポスト冷戦に移行することを通じて核問題あるいは核戦略といった問題が非常に急速な変貌の過程にあるわけでございまして、こういった点がまずお聞きしたい点ですけれども、ポスト冷戦時代における核問題をそもそもどうとらえていくのか、この点につきまして大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  133. 中山太郎

    中山国務大臣 ブッシュ大統領の今回の核の削減に関する発表については、私は、アメリカ核保有国として今日までの米ソの対決の中で維持してきた核を一方的に削減をする、こういった強いメッセージを世界に発出した、そういう意味では我々核被爆国としては極めて高い評価をし、これが進展することを心から支持をいたしたいと考えております。  また、ソ連のゴルバチョフ大統領はこれに対して対応する姿勢を示すメッセージを発出されておりますけれども、ソビエトが一日も早くこれに対応する決断をされることを期待するものであります。
  134. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私のお聞きしたい点は、そういったグローバルな次元での米ソ間の核軍縮というのは大幅に進展するであろうということだと思うのですが、他方、これからの新たな差し迫った課題として、地域紛争と絡んだ核の拡散という問題が、これからの核問題の大きなといいますか、むしろ最大の課題として浮上している。その点につきまして大臣としてはどのように御認識を持ち、あるいは日本としてどのように取り組むかという点をお聞きしたいと思います。
  135. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府としてはもちろんのこと、世界のあらゆる国が核の拡散をいかに防ぐかということが、これからの国際平和の運営にとっては極めて大きな問題であると考えております。そういう意味で、今回のいわゆるブッシュ大統領のアピール、メッセージを踏まえて、世界核保有国がいわゆる核の移転を含め削減をさらに一層進めていく、そして究極的には核のない世界ということを実現するように我々は努力しなければならない、このように考えております。
  136. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 その御決意はよくわかるわけですが、具体的に地域・紛争と絡んだ核の問題、非常に差し迫った課題でございますので、我が国としてももっとダイナミックなイニシアチブを発揮すべきじゃないかというのが私の感じでございまして、今までもちろん我が国は唯一の核の被爆国として核軍縮を推進してきたわけですけれども、もっともっと道義的な権威を持って積極的に推進すべきだと思っております。そういったことで、地域紛争と絡んだ核の拡散の防止について我が国としての総合的な一つの提案ないし考え方を検討し、これから提示していくようなことはすべきではないのか、このような意見でございますが。
  137. 丹波實

    ○丹波政府委員 いわゆる国際社会で、ポスト・デュアル・ウォー、二つの戦争の後の世界という言葉がはやっていますけれども、そういう中で、私たち実は大量破壊兵器の問題に国際社会が取り組まなくてはいかぬと思っているのです。  四つございまして、一つは先生が問題提起をしておられる核の不拡散の問題、二つ目は化学兵器の問題でして、三つ目は生物兵器であり、四つ目はミサイルの不拡散の問題。その中で、唯一の被爆国としてやはり日本として非常に重要視すべきはもちろんこの核の不拡散の問題でございまして、まず二つのことを私たちは考えなければならないというふうに考えております。  一つは、世界の中でまだ核の不拡散の体制に入っていない国々について、日本の働きかけによっていかにNPT加盟国を、現在百四十数カ国ございますけれども、ふやしていくかということで、日本なりに努力をしてきておることは先生も御承知だと思うのですが、例えば昨年五月、海部総理自身がインド・パキスタンにそういう働きかけを行われ、それからことしの訪中に当たりましては中国を説得いたしまして、結局訪中の間に中国がNPT体制に加入するということを決定した。そういう意味で、加盟国をふやすための日本努力。  二つ目の努力は、IAEAの査察体制といったものをいかに改善強化していくかということであろうかと思います。この分野におきましても、ジュネーブにおきます日本の代表部あるいは国連におきますいろいろな委員会その他で日本としては働きかけをしてきたつもりでございますし、海部総理の京都の演説の中でも触れましたけれども、今後ともそういう努力を強化していきたいという、そういう分野で日本はイニシアチブを発揮していきたいというふうに考えておる次第です。
  138. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 我が国努力は評価をしているわけですが、通常兵器移転規制につきましては大臣提案をされて、非常にこれは印象的なイニシアチブだと評価しておりますけれども、ぜひそれと見合って地域核軍縮ないし核不拡散の問題につきましてもより一歩踏み込んだ提案努力をさらに強化をしていただきたいという要望を表明をしたいと思っております。  続いて、これに関連して北朝鮮の問題ですけれども、査察の問題がネックになって今まで進展が余りなかったわけですけれども、今回のブッシュ大統領提案によりましてそういった条件の一つが動いたわけでございまして、そういったことを考えますと、十一月に予定されております第五回の日朝交渉もかなり大幅な進展があるのではないかとの観測も出ておりますけれども、ここら辺につきましてどういう見通しになるのか、御回答をお願いをしたいと思います。
  139. 谷野作太郎

    谷野政府委員 私もそのように期待いたします。  今回のブッシュ大統領提案を受けまして、北朝鮮はこれに対して歓迎の談話を基本的に発表いたしました。他方、午前中も本委員会で御答弁したところでありますけれども、党の高い地位の人が、従来の議論にもありましたけれども米国北朝鮮に対する核不使用ということを約束せよ、これに対して米朝間で話し合いを始めようということを言っておりまして、もう一つ今後の北朝鮮の核の問題に対する先方政府の対応ぶりが不透明なところがございます。しかしながら、冒頭に申し上げましたように、基本的に歓迎するという談話を発表しておりますので、この方ずっと問題になっておりますIAEAとの保障措置協定締結、そして査察の履行ということについて、この機会に前向きの決定的な前進があればと強く期待しておるところでございます。
  140. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 特に、この核査察の受け入れにつきましては当然の義務なわけでありまして、ぜひ次回の交渉におきましてもこの点を強く北側に迫っていただきたいと要望をしたいと思っております。  続いて、北朝鮮の国家承認の問題につきましてお聞きしたいと思います。  既に政府としては北朝鮮の国連加盟を機に国家承認の問題も実務的に検討されているというふうに伺っておりますけれども、承認の時期としてどれぐらいのことを見込んでおられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  141. 谷野作太郎

    谷野政府委員 確かに、国家承認の問題については政府部内でいろいろ検討した経緯がございます。ただいま具体的な時期をどのように考えておるかということのお尋ねでございますけれども、これは、まずはただいまお話のありました核の問題についての前進がなければなかなか難しかろうと思いますし、その他の問題につきましても、日朝関係において、正常化の話し合いにおいていろいろな面で前進が図られるというようなことも望ましい環境をつくることでございましょうし、それから第三点に申し上げれば、十月の末に予定されておりますけれども、南北の間の対話、これについても前向きの動きが始まれば、そういったことも今お話しの国家承認ということを考えるに好ましい環境を整えるものだと私どもは思っております。
  142. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 国家承認の問題は、確かに一面我が国政策判断の問題ではあるかと思いますが、他方、国際法上の要件を満たせばこれはやはりやるべき話でもあるわけですから、なかなかそこら辺の判断というものは難しい点があることは理解できるわけですが、ただ、北朝鮮韓国とともに国連に同時加盟したということは、もちろん国連への加盟ということはイコール国家承認じゃないと思いますけれども、他方、国連に加盟したということは国家としての実体があるということも意味をするし、あるいは国際法を遵守するという能力も一応あるという前提で加盟が認められるわけですから、当然国家承認の要件はかなり満たしているという面もあるわけでして、そういった意味では北朝鮮の国連加盟ということが国家承認という問題にどのように影響を及ぼしておるのか、あるいは日本政府としてどのように北朝鮮の国連加盟というものを国家承認との関係でこれを評価し、考えているのか、この点につきまして答弁をお願いしたいと思います。
  143. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国際法上の要件につきましては先生ただいまおっしゃいましたとおりでございますが、確認的に申し上げますと、国家承認の要件といたしましては、いわば一定の領域においてその領域にある住民を統治するための実効的な権力が確立していることというのが第一点であろうと思います。この点に関しましては、北朝鮮におきましてはそのような実態がかなり前から存在するということは明らかであろうと思います。  それから第二点といたしましては、国際法を遵守する意思と能力ついても考慮するという点でございまして、この点につきましては国連に加盟を認められたということで基本的にはそのような要件も満たされているのではないかというふうに考えます。ただ、具体的な、例えばIAEAの問題でございますとかいろいろ現在問題になっておりますけれども、基本的な考え方としては国連に加盟を認められたということで国連憲章上の要件も満たされているというふうに考えます。  また、これも先生先ほどおっしゃいましたとおりでございますが、しからば国連の加盟が認められれば、またそれに賛成票を投ずれば我が国として当然に国家承認をしたことになるのかということになりますれば、それは必ずしもそうではない。国家承認は我が国北朝鮮との二国間の問題でございますし、最終的には我が国が判断すべき一方的な行為でございますので、その点はそのようなことではないということでございます。  したがいまして、いずれにいたしましても現在北朝鮮とは国交正常化交渉をやっておるわけでございますので、そのような二国間の交渉の中で、北朝鮮我が国との交渉の中で判断していく問題であろうというふうに考えております。
  144. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 御説明は理解できるわけですが、もう少し別の角度からお聞きしたいのです。  それでは、確かに国家としての実態そして国際法遵守能力という点ではほぼ満たされているという今の御答弁だったと思いますが、特にこの第二の国際法遵守能力の点でまだ若干問題点が残されているという御回答であったかと思います。  要するに、必要条件はかなり満たされているけれども十分条件にまだ至っていないというふうに理解しているわけですが、それでは、具体的にどのポイントが満たされれば国家承認になるのか、条件を満たすのか、そのハードルは何なのか、具体的にこの点とこの点というふうにおっしゃっていただくとありがたいと思います。
  145. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど申し上げたとおりの制度と申しますか要件のもとで国家承認を行うということでございますが、繰り返しになりますけれども、国家承認という制度は承認する側の一方的な行為でございますので、必ずしも国際法上の要件が満たされれば必ず承認をしなければならないというものではない点も御承知のとおりでございます。  したがいまして、その承認のタイミングにつきましては北朝鮮との国交正常化交渉全体の中で適切な時期を判断していくということでございまして、どんな点が満たされれば承認を行うという点はなかなか的確にお答え申し上げにくいところでございます。今後、この交渉の中で判断していくということに尽きるであろうと思います。
  146. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、カンボジアの問題を少しお聞きしたいと思います。  カンボジア問題、急速に今和平が進展をして、我が国も多大な努力をこれに傾注したことは高く評価をしておるところでございますが、我が国として今後カンボジアの和平以後の貢献として、一つは大規模な復興支援、もう一つは国連平和維持活動を通ずる協力、この二本柱であると理解しておりますけれども大臣は先般、カンボジア復興会議ですか、これを提案されたと承知しておりますけれども、これの具体的な構想の内容、そしてこの見通しにつきましてお聞きをしたいと思います。
  147. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は、カンボジア和平の調印後にこのカンボジア復興会議、これは御案内のようにカンボジア和平会議の第三委員会の共同議長国として、これを積極的に進めるべきだという考え方を持っておりまして、この十一月の中旬ごろにSNCの本部がプノンペンでつくられるという形になりますと、日本政府としてはできるだけ速やかに東京におきましてカンボジアの復興会議、これを開催いたすべく万端の準備を進めており、既に予算の面でも確保いたしておるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。  また先般、シアヌーク殿下にこの考え方を伝えましたところ、シアヌーク殿下も大変結構であるということで、ぜひお願いをしたいということでございました。
  148. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 本格的なカンボジア支援に先立って、他方緊急にいろいろやれるようなテーマがあり得るのだと思います。例えば、このカンボジアには現在地雷がたくさんまだ埋められておって、これによって住民に相当被害が出ているという報道があるようでございますが、この地雷の処理について、例えば先方から要請があれば自衛隊を派遣するようなことは考えられるのかどうか、この点につきまして御回答をお願いします。
  149. 中山太郎

    中山国務大臣 自衛隊の派遣等は法律でその目的に、自衛隊法に書かれておりませんので、自衛隊の派遣を、そのような作業に従事させるために出すことは不可能である、現在の段階では不可能であると考えております。
  150. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 一つつけ加えるのを忘れました。このPKO法案が成立すると仮定した場合、それによってカンボジアヘ、地雷処理のために先方ないし国連を通ずる要請があった場合自衛隊を出すことができるのか、あるいは出す意向があるのかどうか、こういった点でございます。
  151. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま大臣から、新法がまだ御承認を得てないという状況での御答弁がございましたけれども、ただいま先生から、現在御審議いただいているPKO法案が通った場合どうかというお尋ねでございますので、その点についてお答え申し上げたいと思います。  御承知のとおり、この新法の目的といたしまして、国際連合平和維持活動そして人道的な国際救援活動という二つの柱を挙げておりまして、それらを任務とするわけでございますが、三条の第三号というところに具体的な任務が掲げられているわけでございます。この中に三号の二という、「放棄された武器の収集、保管又は処分」という具体的な業務が掲げられている点は御承知のとおりでございます。したがいまして、このような業務に該当するものであれば、恐らく、地雷の処理あるいは機雷の処理というものが例えば放棄された武器の処分というものに該当すれば、これはこの新法のもとでは自衛隊の任務といたしましてこのような業務に携わるということは法律上はできるようになるということでございます。  ただ、具体的にカンボジアの場合にそのような要請があるかどうか、また、要請がありましてもこれに応ずることが適当であるかどうかという点はまた別の問題でございます。
  152. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次の問題として、今カンボジアでは洪水が起きているというふうに報道があります。三十年ぶりの大洪水で二十万人が家を失っているというふうに報道されておりますけれども、こういったカンボジアの問題につきまして、やはり人道的な観点から本格的な援助を行う意図はないかどうか、この点につきましてお答えを求めます。
  153. 谷野作太郎

    谷野政府委員 ただいま先生からお話のございましたカンボジアの洪水にかかわります我が国からの援助につきましては、先般シアヌーク殿下から海部総理あてに親書が届きまして、緊急援助の要請がなされました。  そこで、そういうことを受けまして、八月の月末でございましたけれども我が国といたしまして、このカンボジアの最高国民評議会、いわゆるSNCに対しまして総計千五百万円強の必要な救援物資を送達したところでございます。内容はテントあるいは医薬品、医療器材等でございます。
  154. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今千五百万円とおっしゃいましたか。(谷野政府委員「千五百万円でございます」と呼ぶ)大変微々たる額だとは思うのですが、もう少し印象的な額をぜひこの際やるべきじゃないかと強く要望したいと思います。少しけたを間違えているのではないかという気がいたしますけれども、二けたぐらいアップしてもいいんじゃないかと思っております。  次に、もう一つカンボジアの関係で検討していただきたい点は、アンコールワットの問題でございます。  これは長い戦乱の中で放置されて人類の文化遺産が相当傷んでおるということでして、細々と国際協力で若干の修復作業が行われていると聞いておりますけれども、やはり何といいますか、人類の共通の文化遺産として、それからカンボジア民族の和合の象徴として、精神的な一つの象徴としてこれに大規模な修復支援をすることは、またこれも非常に大きな意味のあるものと考えておりまして、この点につきましての現状及びこの取り組みにつきまして回答願います。
  155. 谷野作太郎

    谷野政府委員 確かにそういう面での協力といいますか、そういうことも和平が到来いたしますれば大変重要なことだと思います。既に国内におきましてアンコールワットの修復、保存について大変関心を寄せられる方々が大勢いらっしゃいまして、それに向けて特定の委員会も発足いたしました。かつ、その多くの方々が現地を視察されております。  したがいまして、そんな国内の動きもございますので、他方国連には、私の担当ではございませんがたしかそのための信託基金のようなものもあるやに聞いておりますので、日本が拠出したものでございますが、そういった資金をこれに将来充てるということもまた可能かと思います。積極的に進めるべき協力の分野だと思います。
  156. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次は、ソ連につきましてお聞きします。  ソ連情勢、大変な大きな変化を受けて、また北方領土問題にも非常に一つの進展の兆しか見えてきている感じはいたしますけれども、他方、今の段階で北方領土におけるソ連住民に非常に不安が起きているという面も否定できないと思います。  そこで、むしろこれからの北方領土問題、返還促進に当たって一つのポイントは、やはり北方領土に住んでいるソ連側住民に対してどうやって安心を与え、また展望を与えるか、これが一つのポイントになると思います。そういった意味で、今までの我が国の北方領土返還主張に加えて、返還を前提とした上で将来その北方領土をどう使っていくのか。特にソ連側住民に対して混住を許すとかあるいは特定のステータスを与えるとか、ソ連側住民に対して安心を与えるあるいは展望を与え、返還が双方にとって得なんだということを強くメッセージを送るような具体的な突っ込んだ提案をすべき時期に来ていると私は思うわけでございますが、こういった考え方につきましてはいかがでしょう。
  157. 中山太郎

    中山国務大臣 北方四島に居住しておられるソ連の方々、この方々が返還後にどのようないわゆる権利を保有することができるかといった問題は、現地に住んでおられるソ連の方々にとっては極めて重大な関心事であろうと思います。私は、それとあわせて、この地域に駐留しているソ連軍、これの撤退をどうするのかといった問題が先に議論をされるべき問題であろうと思いますが、いずれにいたしましても、そこに住んでおられるソ連の方々に、領土の返還が行われた後に政府がどのような対応ができるかということについては、政府部内で検討を既に始めているところもあるというふうに考えております。
  158. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私、タイミングとしてそろそろそういう構想を出していっていい時期ではないかと考えておりまして、この返還を前提とした上でそのソ連軍隊の扱いあるいはこの住民の扱いにつきまして明確なビジョン、メッセージを持った提案をぜひ早急にすべきだと考えますので、この点も御検討をお願いしたいと思っております。  それからもう一つ、この前大臣が国連に行かれまして対ソ五原則を発表されました。これは私も、とりあえず今までの政経不可分、拡大均衡という流れからさらにより幅広い視野に立って、柔軟な原則として評価をするものでございますけれども、この五原則の趣旨というもの、それからこの五原則は今までの拡大均衡原則にかわるものとしてとらえていいのか、その点につきまして答弁をお願いします。
  159. 中山太郎

    中山国務大臣 先般の国連総会に先立ちまして、日ソの外相会談におきましてパンキン外相に日本のこの五つの考え方というものを説明をいたし、改めて国連総会の場で日本政府考え方として示したわけでございます。  この考え方に基づきまして、私どもはこれから日ソの問題の解決のために努力をやっていく所存でございますけれども、先般の外相会談でこの協議をいたしました際に、ソ連側から、ぜひこの領土問題も含めて平和条約の解決に前向きに努力をしたいということで、私の訪ソを要請したわけであります。その後いろいろと事務レベルで協議をいたしてまいりましたが、先ほど枝村駐ソ大使から報告がございまして、十月の十四、十五両日、ソ連が、ソ連邦及びロシア共和国双方が受け入れるということを決定したという通知があったことも工の機会に申し上げておきたいと思います。
  160. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間ですので、以上で終了します。ありがとうございました。
  161. 牧野隆守

    牧野委員長 玉城栄一君。
  162. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、この委員会でもたびたび取り上げられましたフィリピンのクラーク基地の閉鎖に伴う沖縄基地への移駐の問題についてお伺いをしたいわけでありますが、もう既に沖縄に来ております。それは今までの外務省のお答えでは、一時的なものである、そして今アメリカ本国でどこに移駐先をするかということについて検討中である、そういうお答えはいただいてきておりますけれども、そのとおりでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
  163. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 その後の状況でございますけれども、引き続き米側といたしましては鋭意検討しているということで、まだ結論が出ていないと承知しております。
  164. 玉城栄一

    ○玉城委員 沖縄に今来ているのは、もう既に来ているのはC141の輸送機、それから第三五三特殊作戦航空団、これは嘉手納基地と普天間基地ということでありますが、これを正確に御報告をいただきたいのです。
  165. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生指摘のとおりでございまして、一時的にクラーク基地から、火山の爆発もありまして避難してきておりますのは、輸送空軍、これは既に嘉手納に配備されております第六〇三軍事空輸支援群の増員という形でございます。  それからもう一つは、これも先生が言及されました三五三特殊作戦航空団でございます。この特殊作戦航空団は隊員が約三百名でC130輸送機三機、MC53型ヘリコプター四機と承知しております。
  166. 玉城栄一

    ○玉城委員 沖縄の基地に来た時期はいつごろですか。
  167. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 三五三部隊につきましては、ことしの六月に嘉手納に移動してきたと承知しております。
  168. 玉城栄一

    ○玉城委員 それだけですか。来ている時期、三五三は六月に嘉手納に来たと。その前もあるのですか、その後もあります、ほかにもあります。規模、要員等、家族も含めてお伺いします。
  169. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 最初に申し上げました六〇三軍事空輸支援群の増員に関しましては、これはいろいろ報道がございますけれども、詳細に関しましては私ども、いろいろな出入りがあると承知しておりまして、現時点でどういう形で増員になっているのか承知しておりません。  それから、三五三特殊部隊に関しましては、先ほどちょっと詳しく御報告いたしましたので繰り返すことは控えたいと思いますが、全体として家族がどうなっているかという点は私ども承知しておりません。
  170. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは正確に御報告いただきたいのですが、心配しているのは、いわゆるクラーク基地が閉鎖になりました後、その肩がわりを沖縄の基地でされるのではないかということで、この移駐については非常に関心を持たれているわけですね。  家族についてもこれは同様です。家族を知らないといったって、あなた、米軍、兵隊、アメリカの軍人の家族についてはちゃんと提供しているわけでしょう、施設を。それを知らないというのはおかしいのじゃないですかね。
  171. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私ども委員へ先ほど御報告させていただいておりますことは、日常の米側との外交上の接触を通じて承知したものでございますけれども、全体として、一般論として申し上げれば、繰り返し申し上げておることでございますけれども、安保条約上このような部隊の移動につきましてアメリカ日本に対し協議しなければならないという立場に立っておりませんので、私どもも詳細を把握していないということでございます。  それから、家族に関しましては先ほど承知していないと申し上げましたけれども、家族に関しましては、この三五三部隊の関連でございますけれども、兵員は約三百名と申し上げたとおりですが、家族に関しましては沖縄に今移動していないということでございます。
  172. 玉城栄一

    ○玉城委員 家族は移動していないということですね。
  173. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来先生の御指摘のように二つございまして、輸送空軍と三五三特殊部隊とでございますが、輸送空軍に関しましては、繰り返しいろいろ出入りがございましてちょっと現時点のを私ども把握しておりませんが、三五三に関しましては、兵員が約三百名で、家族は既にアメリカ本土に引き揚げておりまして沖縄には移動してきていないということでございます。
  174. 玉城栄一

    ○玉城委員 実際にこういう形で沖縄の米軍基地、嘉手納それから普天間基地に、なし崩し的とでもいいましょうか、クラーク基地の閉鎖に伴って来ているわけですね。一時的という理由、沖縄に来たのは一時的だと、そうおっしゃいましたが、それから結論はまだ本国では出ていないということをおっしゃっているわけですが、これは松浦さん、いわゆる外務省としては、日本政府としてはどういうお考えなんですか。
  175. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 繰り返してございますけれども、先ほど来御説明しておりますこの二つの部隊の関係の移駐は、私どもまさに一時的と考えているわけでございますが、一般論として申し上げれば、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持という安保条約の目的達成のために有益なものに関しましては基本的に協力していくという姿勢が必要と考えておりまして、あくまでもこれは一般論でございまして、具体的なことに関しましてはさらにその都度検討をする必要があると考えておりますけれども、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、この安保条約のメカニズムというものに関しましてもぜひ御理解を賜りたいと思います。
  176. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、その安保条約のメカニズムというようなお話も前々から伺っているわけですね。ですから、いわゆる外務省として、アメリカ局長とされてはどういうお考えを持っているかということ、どう思われるか。御存じのとおり、沖縄の基地はもういっぱいです。満杯ですね。それに、閉鎖したということでフィリピンから来るということは、これはもうみんな反対しているわけです。そういう中で皆さんはどのように考えているかということですね、移駐問題を。
  177. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 この委員会その他の場でも申し上げてきていることでございますけれども、安保条約のもとで日本米軍に提供しております。その施設、区域が沖縄に集中している、その結果沖縄の方々にいろいろな形で御迷惑をおかけしているということに関しましては、私ども大変心苦しく思っておりますけれども、ぜひとも御理解賜りたいと思いますのは、このように国際情勢が大きく動いておる中におきまして、日米安保条約というものは引き続きアジア・太平洋の平和と安定の基本的な枠組みとして堅持していく必要があると私ども考えております。この安保条約のもとで、米軍はいわゆる前方展開戦略という形で日本に駐留して、そのかなりが沖縄に駐留しているわけでございますが、その点に関しましては沖縄の方々にもぜひ御理解を賜りたい、こういうふうに考えております。  しかしながら、具体的な問題に関しましては、その都度この委員会その他の場で御指摘いただいておりますので、それを踏まえて従来からも誠実にアメリカ側と話し合ってきたつもりでございますが、今後も、具体的な問題で地元の方にいろいろ御迷惑をおかけしているという点に関しましては、さらにお話を承って、アメリカとも話をしてまいりたいと思っております。
  178. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、県民感情なり今の沖縄の基地の状況からすれば、フィリピンから来るということについては、皆さんは、松浦さんアメリカ局長ですからどう考えますかということです。どう思いますか。
  179. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今一時的に先ほど来話題になっております二部隊が沖縄に移駐をしてきていることに関しましては、フィリピンにおきます火山の爆発ということを踏まえて一時的にまさに移駐してきていることでございますので、ぜひ沖縄の方々の御理解を得たいと思います。
  180. 玉城栄一

    ○玉城委員 おっしゃることは、やむを得ない、フィリピンから、クラーク基地から移駐してくるのもやむを得ない、それは理解してもらいたいという意味ですか。
  181. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今私が申し上げましたのは、火山の爆発に伴って一時的に移駐してきていることに対してぜひ御理解を賜りたいということを申し上げたわけでございまして、今後のことに関しましては、先般来御説明申し上げておりますように米側において鋭意検討中ということでございますので、私が今申し上げましたのは、今回の一時的な移駐に関して申し上げたことでございます。
  182. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカが当然検討しているのでしょう。大いに検討するのは構いませんが、いわゆる日本政府、外務省としてはどう思いますか、どう考えますか、沖縄にフィリピンから移駐してくるということについてどう考えますかということです。こうお伺いしているわけです。
  183. 牧野隆守

    牧野委員長 松浦局長。同じ質問だから、わかるように。
  184. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 非常に難しい質問をなさいますので、お許しをいただきたいと思いますが、先ほど来繰り返し申し上げておりますが、アメリカ側が鋭意検討しているということでございますので、今後のことに関しまして現段階で私が意見を申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  185. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは最後まで伺いますれども、沖縄の米軍基地はまだ飽和状態でもないまだ余力はあるから来ることはオーケーしても構わないということですか。また、県民感情も別にそういう抵抗はないからいいじゃないですかということなんですか。
  186. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私、先ほども申し上げておりますように、在日米軍に提供しております施設、区域が沖縄に集中して沖縄の方々に御迷惑をおかけしているということは十分認識しているということは申し上げたわけで、それをも踏まえて、沖縄におきます施設、区域の整理統合に関しましては、近年鋭意努力をして、昨年も二十三事案、約一千ヘクタールに関して、返還につきまして基本的な合意に達したわけでございます。したがいまして、その点に関しまして十分理解をしているつもりでございます。     〔委員長退席園田委員長代理着席
  187. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、そういう答えを聞いているのではなくて、松浦さんはどう思いますかということ、簡単なんですよ。それをあなたは余計なことをたくさんしゃべっていますけれども、そうでなくて、どう思われますかということを伺っております。
  188. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、具体的に先生が御指摘の点に関しましては、現在アメリカが、クラーク基地の閉鎖に伴うクラーク基地が持っております機能の再配分については検討中ということでございますので、これに関しましては現段階で私が一定の仮定を置いて意見を述べることはぜひ避けたいと思いますので、御理解を賜りたいと思いますが、一般論として、先ほど来申し上げておりますように、日米安保条約というのは引き続きアジア・太平洋の平和と安定の基本的な枠組みとして私どもは堅持していくという必要があると考えているわけでございまして、この日米安保条約の目的達成のために、有益なものに関しては基本的に協力していくという姿勢が必要であるということを繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。
  189. 玉城栄一

    ○玉城委員 いやいや。ですから、沖縄の米軍基地は、地元の県民感情も、これ以上の増強といいますか、これは県民感情としても非常に抵抗がある、無理ですよ、そういうふうに思うのか、あるいは松浦さんは、いや沖縄はまだ大丈夫だ、基地は余力がある、だから来てもいいというように思うのか、どちらですかということを伺っているわけです。
  190. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来私どもの気持ちは繰り返し申し上げているつもりでございますが、沖縄に施設、区域が非常に集中している、御迷惑をおかけしているということは十分認識しておりまして、それがゆえに、沖縄の施設、区域の整理統合、そして二十三事案の返還、さらには残りの十八事案の返還に向けましてもさらに努力をしていきたいということでございまして、その点、先生が先ほど来繰り返し、地元のことをわかっているかという御指摘でございますけれども、その点に関しては重々承知しているということを繰り返し申し上げたいと思います。
  191. 玉城栄一

    ○玉城委員 全然答えをいただいていないので、もう一回お伺いしますが、クラーク基地の閉鎖に伴って米軍がいわゆる沖縄に来ていますね、一時的という理由で。ですから、もうこれ以上いわゆる移駐というものは沖縄で無理ですよというふうに考えられるのか、まだ余力があるというふうに考えられるのか。どうですか、その辺のところ。
  192. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 繰り返し申し上げておりますけれども、沖縄に米軍の施設、区域が非常に集中しているということは十分認識しているわけで、既存の施設、区域の整理統合に努力をしているわけで、その既存の施設、区域の整理統合の関連で新たな施設、区域の提供ということが条件つきになっているものが若干はございますけれども、そういうことを離れて言えば、先生が御指摘のように、現在の沖縄で新たな施設、区域を提供するということがいかに大きな問題であるかということは重々承知をしているつもりでございます。  ただ、先生が繰り返し御指摘の、現在の沖縄の施設、区域の使用状況をどう考えるかということに関しましては、残念ながら私は現在の沖縄の施設、区域の使用状況について意見を申し上げるほどデータを有していないので、先ほど来、一般論として、地元の方々のお気持ちは十分承知しているということを申し上げておりますので、それを繰り返させていただきまして、お許しをいただきたいと思います。
  193. 玉城栄一

    ○玉城委員 事は、いわゆるフィリピンにある米軍基地の機能が移ってくるか、こないかという大問題ですから、許してくださいとかそういうことでなくて、私がお伺いしたいのは、松浦局長さん自体が、アメリカ局長なんですから、沖縄では無理ですよ、これ以上無理ですよ、県民感情あるいは規模、いろんな面からそう思うのか、あるいはまだ受け入れられる余裕はあるというふうに思うのか、その辺を伺っているわけです。
  194. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、具体的な点になりますと、施設、区域ということに限定して申し上げれば、既存の施設、区域の整理統合の関係で移転先の問題がございますけれども、それを別とすれば、私どもは、今沖縄において新たな施設、区域の提供を考えるということが非常に無理であるということは十分承知しているわけでございますが、先生指摘のもう一つ、既存の施設、区域の活用状況からしてこれ以上、今既存の施設、区域の状況がどうなっているんだ、もう既に満杯ではないか、こういう御指摘かと思います。その点に関しましては、私は残念ながら自分の意見を申し上げるほど今データを持ち合わせていないということを繰り返し申し上げているわけでございます。
  195. 玉城栄一

    ○玉城委員 結局、結論は、自分には言えない、答弁できないということですね。  ではちょっと、別の質問に変わりますけれども、那覇軍用港湾施設、これは第十五回安保協議会で返還合意、ただし条件として移設先を見つけるということで、十四年ぐらいですか、ずっと続いているわけなんですね。これは、その移設先というのは今後の見通しはどうなりますか。
  196. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 まさに先生指摘の那覇の港湾施設につきましては、第十五回安保協で全面返還が合意されておりますけれども、移設条件つきで合意をされているということでございます。しかしながら、それを踏まえまして、現在の日米間で鋭意検討を行っているところでございますが、残念ながら現時点では移設先の見込みが立っていないという状況でございます。
  197. 玉城栄一

    ○玉城委員 御存じのとおり、沖縄県では大規模な基地の代替地というものは非常に難しいのですね。難しいから長い間続いているわけですから。今後も見通しもないということですが。  そこで、ちょっとこの施設の中に文化財的なものがあるわけですね。ですから、そういういわゆる共同使用という形で外務省も考えてみる必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  198. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 共同使用という御提案に関しまして、実は私きょう初めてお伺いする点でございますので、先ほど来申し上げておりますように今移設先を探すということで日米間で調整をしてきておりますけれども先生の御提案も念頭に置いてさらに検討を進めたいと思います。
  199. 玉城栄一

    ○玉城委員 全面的な那覇軍港の返還要請のために、あれは所在が那覇市ですから、那覇市の市長さんがアメリカの本国に折衝に行っております。ですから、全面返還されるまでの間、暫定的にでも一時使用、共同使用という形で、文化財だとか   ほとんどこの軍港は広大な面積が遊休化しているのですね。ですから、そういうものをやはり共同使用するという形で、もしそういう案が出て。きたら検討されますでしょうか。
  200. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生今の、那覇の港湾施設が遊休化しているというお話でございましたが、これは確かに毎日使っておるということではございませんけれども米軍にとりましては不可欠の港湾施設ということでございまして、必要なときは必要な施設でございます。したがいまして、移転先が必要だということで、移転先について検討を進めているわけでございますが、先生今御提案の共同使用に関しましては、ちょっと私今初めてお伺いいたしましたので、この場ですぐ即答することができないわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように念頭に置いてさらに検討を進めたいと思っております。  先生が言及されました親泊那覇市長さんの御訪米に当たりましては、私も直接いろいろお話をさせていただいておりますし、それからワシントンでの行政府関係者のアポイントの取りつけに関しましても私どもいろいろな側面からも応援させていただいておる次第でございますので、そういう点も踏まえまして、またさらに検討を進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。     〔園田委員長代理退席委員長着席
  201. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も参りましたので、いつまでもそういう不可能なことを、難しいことを前提に置いて移転先が見つからないから、見つからないからということで延ばしてきているということはよくないのですね。だから、せめて使える部分だけでも使うという形の考え方をしていかないと、これは永久にできませんよ。だから、せめて全部返還されるというそれまでの間、暫定的にでもやはり共同使用という形でしてもらいたい。  といいますのは、これは既にやっておるのですよ。この地域の自由貿易地域、これは共同使用になっていますから。そういう形を拡大して、あれは、那覇軍港というのは五十七・五へクタール、それから自由貿易地域というのは三ヘクタールですね。この自由貿易地域の考え方が拡大すればいいわけですから。だから、せめて全面返還されるまでの間はそういう形ででも使用するということを考えるべきだと思うのです。いかがでしょうか。
  202. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来ちょっと申し上げておりましたように、きょうの時点で、先生提案されました共同使用に関しまして自信を持って払お答えできませんので、先ほど来申し上げておりますように、先生がきょう御提案されましたことも念頭に置いてさらに検討を進めたいということを申し上げたいと思います。
  203. 玉城栄一

    ○玉城委員 終わります。
  204. 牧野隆守

    牧野委員長 古堅実吉君。
  205. 古堅実吉

    ○古堅委員 世界文化遺産及び自然遺産の保護条約の批准の問題について、最初にお尋ねします。  一九八七年七月二十三日、参議院予算委員会で、日本共産党の内藤議員がそれに関して質問い一たしました。当時の倉成外務大臣も稲村環境庁長官も、その批准に向けて鋭意努力する、そういう答弁をされています。あれから四年が過ぎました。一九七二年十一月十六日第十七回ユネスコ総会で、当時の議長国であった日本の萩原大使が議長を務められ、そのもとでこの条約が採択されたのであります。それから来年まで二十年になります。  この条約の現在の締約国数は何カ国ですか。
  206. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生指摘のとおり、この条約は一九七二年の十一月、パリにおきましてのユネスコ総会で採択されたものでございます。現在の締約国は、私たちの計算では百十七カ国になっております。
  207. 古堅実吉

    ○古堅委員 百十七カ国が加盟するまで日本はその結論を出してこなかった。いかにそれがおくれてきたかはその数字を見るだけでも歴然たるものがございます。日本は、いかなる障害があって批准がおくれているのか、その理由を明確に御説明願いたいと思います。
  208. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  まず、この条約の構成につきましてですけれども、一つは、先生御承知とは思いますけれども、文化遺産と称しまして、記念的な意味を有する彫刻、絵画、考古学的な物件または構造物といったようなもので歴史上、美術上または科学上顕著な普遍的価値を有するものを保護する、国内的、国際的に保護するという考え方が一つ。もう一つございまして、もう一つは自然遺産と称されまして、自然の記念物で観賞上または科学上顕著な普遍的価値を有するものを、それぞれの締約国の国内で保護し、かつ国際的にも保護しようというこの趣旨からいたしまして、基本的にもちろん日本にとっても好ましい条約であるという考え方のもとで今日まで検討してきたわけですが、検討の対象は、その運用上必要な国内実施体制整備の問題等、いろいろ解決すべき点が残されておって、関係省庁を交えて今日まで検討してきておるということでございます。  なお、ことしの春の国会で外務大臣からもお答え申し上げたところでございますけれども政府といたしましては、この条約の締結は本当にもう今や急ぐべきものであるというふうに考えておりまして、できるだけ速やかにこの現在行っておる検討を下したいというふうに考えております。
  209. 古堅実吉

    ○古堅委員 どこかそれに反対している省庁でもあるのですか。それともただ単に、二十年近くも過ぎて今日に至っだということは、外務省を初めとする日本政府がそれに対する真剣な意欲がない、そういうところに尽きるのですか。もう一度お尋ねします。
  210. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  私が承知しておりますところでは、この条約の加入に対しまして反対しておる省庁はございません。先ほども申し上げましたけれども、この条約の実相上、遺産関係と申しますか、文化遺産、自然遺産関係日本国内法といたしましては、自然公園法とか自然環境保全法あるいは文化財保護法、いろいろな国内法がございますけれども、そういう国内法との整合性の問題、実施上の諸問題ということを検討してきたということでございます。  繰り返しになりますけれども、私たちはこの条約は本当にもう早期に批准されるべきものであるという認識のもとに検討を急いでおりまして、できるだけ早く国会におかけしたいというふうに考えてございます。
  211. 古堅実吉

    ○古堅委員 それでは、いつ国会への承認手続をとられますか。もっと具体的に突っ込んで申し上げれば、来期の通常国会には提案されるおつもりですか。
  212. 丹波實

    ○丹波政府委員 本当に、できるならば早い時期の国会におかけしたいと思っております。ことしの春の国会で、委員会は忘れましたけれども、私は両三年には検討を下するように真剣に取り組んでまいりたいということを申し上げましたけれども、そういう気持ちは今でも変わっておりません。
  213. 古堅実吉

    ○古堅委員 そんな気の長いことをお尋ねしているのじゃないのですよ。来期の通常国会にも出されるおつもりは今のところないのですね。
  214. 丹波實

    ○丹波政府委員 私が申し上げてきた全体の文脈の中で、できればそうしたいとは思いますけれども、しかし確定的な時期をここでお約束申し上げることはいまだできない段階でございます。
  215. 古堅実吉

    ○古堅委員 明確におっしゃれないほどにまだ何らかの重大な障害があるとでもおっしゃるのですか。何が障害になっておるのですか、明確にお答えください。
  216. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどから申し上げておりますけれども国内の実施体制整備の問題につきまして、例えばことしの一月にも、関係省庁、文部省、環境庁でございますけれども、勉強会を開いてその問題点を今洗い出したりしておるわけでございますけれども、そういう検討をできるだけ速やかに下して、できるだけ速やかに国会におかけしたいというふうに考えております。
  217. 古堅実吉

    ○古堅委員 今おっしゃる趣旨を生かして最善の努力を払い、できるだけ次の通常国会に提案する、そういう努力をされるという面ではお約束いただけますか。
  218. 丹波實

    ○丹波政府委員 懸命な努力の結果にもかかわらず、来年の通常国会にかけることができなかったときに、私の食言問題にならないという、そういう範囲内において懸命の努力はしたいと思いますけれども、確定的な時期を申し上げるということはやはり難しい、ぜひ御理解いただきたいと思います。繰り返しますけれども、一生懸命にやりたいと思います。
  219. 古堅実吉

    ○古堅委員 あなたお一人だけが責任を持っている、あなたが最高責任者であるというふうにも理解してない面もありますから、ここでそれ以上のことは申し上げませんが、しかし、言わんとしている趣旨を受けとめていただいて、最善の努力を払ってください。もう余りにも長過ぎます。やるのかやらぬのかが問われていると申しても過言でもありますまい。  去る五月十八日、琉球大学で第四回南西諸島自然保護シンポジウムというのが開かれました。私も帰って、それに参加いたしました。そのシンポジウムの中で、この条約が批准されれば沖縄の西表島やあるいは沖縄本島北部の山林地域が指定の候補地になり得る、そういう話もそこで出ておりました。日本で、自然遺産の保護地としてどんなところが候補地として考えられるか、お答えいただければそういうお考えについてもお尋ねしたいと思います。
  220. 丹波實

    ○丹波政府委員 申しわけございませんけれども、そういう具体的な特定の地域の問題につきましては、私、こういう公式の席上で発言できるほど知識がございませんので、御勘弁いただきたいと思います。
  221. 古堅実吉

    ○古堅委員 それでは次に進みます。  ブッシュの核戦力削減措置問題についてお尋ねします。  ブッシュ大統領は核戦力削減措置を発表いたしました。ワルシャワ条約機構の崩壊とソ連の激変など東西の冷戦の対抗の枠組みが崩れて、世界的に核兵器は不要であるとの世論と運動が強まるもとで、世界最大の核兵器大国が、部分的とはいえ、一方的な核兵器削減に踏み切ったことは、世界平和のために大変歓迎すべきことではございます。しかし、残される核兵器は依然として地球を何回も破壊し尽くすことができる、そういう規模のものがありますから、人類がなお絶滅の恐怖から解放された、このように言える代物ではございません。そうであれば、一層力を込めて追求されなければならない問題は、一切の核兵器の緊急の廃絶、そこにございます。  大臣、唯一の原爆被爆国として、すべての核兵器を、究極目標などということをおっしゃるのではなしに、一日も早い廃絶を目標にした外交を展開することこそ日本に求められている名誉ある立場ではないか、そのように思います。大臣の御所見を賜りたい。
  222. 中山太郎

    中山国務大臣 日本は唯一の核被爆国として、かねて核の廃棄の問題については熱心に主張を繰り返してきましたが、本年五月におきます京都における国連の軍縮会議、これにおいては海部総理が強いアピールを出しておりますし、またジュネーブにおきます軍縮会議におきまして、私自身からも核兵器の究極的な廃絶のための日本政府の強い意思を主張しておりますこともよく御理解をいただいているとおりだと思います。今後ともそのように努力をいたさなければならないと考えております。
  223. 古堅実吉

    ○古堅委員 私が力を込めて申し上げようとしているのは、究極の目標ということで遠い遠いかなたに追いやるのではなしに、核兵器などを持っておるべき理由、それを是認するわけにはいかぬという日本立場から速やかに展開せぬといかぬのじゃないか、そこをお聞きしたいのですよ。  ブッシュ大統領は演説の中で、メージャー英国首相、ミッテラン仏大統領、コール・ドイツ首相ら同盟国首脳との協議があったことを明らかにしております。その中には日本は入ってないのですか。
  224. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 ブッシュ大統領がスピーチをいたします前の目に、海部総理にも親書を届けてこられまして、スピーチで明らかにいたしました今回のイニシアチブの概要を事前に連絡してきています。したがいまして、先生が今言及されました表現では、明示的には日本のことが書いてございませんが、その他の同盟国という中に日本が入っているものと考えております。
  225. 古堅実吉

    ○古堅委員 ブッシュ大統領が言っております、協議した、そういう形のものですか。ただ単に、ペーパーを示された、こういう発表をしますよというふうな連絡的なものですか。
  226. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど私が申し上げましたブッシュ大統領の親書は在京のアマコスト大使が持ってまいりまして、それに対します総理のコメントを求めました。それに対しまして総理からは概要を聞いた上で、勇気ある大胆な提案で、これを歓迎し評価するということを言われまして、それをアマコスト大使はブッシュ大統領に直ちに伝えたものと承知しております。
  227. 古堅実吉

    ○古堅委員 コメントを求められた、そのときに、総理はすべての核兵器は廃絶すべきだということもおっしゃらなかったのですか。
  228. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 その場でいろいろ今私が申し上げた以上の詳細なやりとりはございませんでしたけれども、御記憶と思いますけれども、総理は翌日、総理大臣コメントを出しておられまして、その中で今回のブッシュ大統領のイニシアチブは、「世界の平和と安定に資するものとして高く評価し、核兵器の究極的廃絶に向けた大きな一歩として強く支持する」、こういうコメントを出しておられます。
  229. 古堅実吉

    ○古堅委員 あなたの悪い癖だよね。質問に答えなさいよ。なぜ質問しないことを、翌日の発表のことを言うのですか。先ほど玉城議員に対するあなたの答弁というのも、そばで聞いていましても本当に怒りが頭にくる、そんな感じですよ。  結論的には、首相は何も主張されなかったということなのでしょう。情けない話ですよ。唯一の原爆被爆国としての日本が今何を求めなくてはいかぬか、世界に胸を張って日本はそう考えている、そのために努力する、こういう機会に、いかにアメリカに従属的な立場とはいえ、きちっとしたことを言うべき重要な機会でもあった。それなのに、あえてそういうことを言うこともなかった。まことに許せない、情けない話です。  今回の削減措置で、戦域核兵器はすべて廃棄されるようだが、戦術核兵器戦略核兵器はそれぞれ何%が削減されることになるか、あるいは核弾頭の何割が削減されるということになるか、政府としてその数字的なものをつかんでおられたら御説明いただきたい。
  230. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 アメリカについて申し上げたいと思います。  先生御案内のように、核兵器戦略核兵器と中距離と戦術核兵器ございますが、中距離に関しましては、INFで既に合意を得まして、ことしの五月にアメリカは廃棄を完了しております。  今回対象になっておりますのは戦略核と戦術核でございますけれども戦略核に関しましては、STARTの枠内での合意、つまり、七年間で、アメリカについて申し上げれば、弾頭の数では約四〇%を削減することになっておりますけれども、それをソ連側との話し合いによって繰り上げ実施するということでございます。  それから戦術核に関しましては、全体像ははっきりいたしませんけれども、地上発射の戦術核は一〇〇%破壊、それから海洋発射の戦術核は全部引き揚げますけれども、半分は破壊し、半分は保管するということでございます。それから地上配備の海軍航空機搭載の戦術核に関しましては一〇〇%引き揚げ、かつ破壊するということでございますが、戦術核全体に関して、これが、アメリカが今保有しておるものの何割が廃棄に、何割が保管になるのか、そういう数字は残念ながら把握しておりません。
  231. 古堅実吉

    ○古堅委員 横須賀を母港化した空母インディペンデンスを中核とする米第七艦隊は米軍核抑止力を構成するというのが日本政府の言ってきたことなんですけれども、これは今も変わりありませんか。
  232. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 一般論として申し上げますと、日本は、いわゆるアメリカの核の傘、アメリカの核の抑止力に依存するという基本政策をとっておりますけれども、具体的にどの艦船、どの航空機、どの地上配備の核ということに関しましては、具体的なことは私どもは考えておりませんで、一般的にアメリカの核の抑止力に依存するということでございます。  それから個々の艦船に関しましては、念のため申し上げますけれども、日米間には安保条約及び関連取り決めに基づきます、きちんとしたメカニズムがございまして、このメカニズムをアメリカ側も尊重するということでございますことを改めて申し上げたいと思います。
  233. 古堅実吉

    ○古堅委員 今回の削減措置では、平時は一切、この第七艦隊のすべての艦船からもすべての核兵器が撤去される、平時には核兵器積載なしということになるのでしょうか。
  234. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 戦術核に関しましては、先生指摘のとおりの状況になるものと承知しております。
  235. 古堅実吉

    ○古堅委員 それでは、前へ進めます。  この削減計画はいつから実施されるのですか。伝えられるところでは六カ月後と言われるけれども、六カ月後は一切の艦船から核がおろされるということになるのでしょうか。
  236. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 まだ具体的な戦術核兵器撤収のタイムスケジュールについては承知しておりません。
  237. 古堅実吉

    ○古堅委員 既に若干の報道もあるところですから、日本政府がそういうマスコミでの報道の範囲さえも知らない、ここに答えられないということでは、それ自体が大変な問題だと思うのですね。  この削減措置には、海外配備の空軍の核兵器については触れられておりません。日本には嘉手納あるいは三沢に空軍が配備され、核兵器が持ち込まれている疑いが依然として強いものがございます。沖縄の辺野古などもその疑惑が強い、そういうところの一つです。 この際、これらの核疑惑を解明するために、政府として、国民の納得する、責任ある方策をとられてはどうですか。大事な点です。
  238. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほども申し上げましたように、核の持ち込みに関しましては安保条約及び関連取り決めのもとにおきまして、きちんとしたメカニズムがございます。具体的にはアメリカは条約上の義務として日本に事前協議を求めなければならないということになっております。そして、アメリカ政府は再三にわたりまして安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き履行するということを言ってきております。  したがいまして、私どもは、先生今お触れになりました具体的な点も含めて、事前協議が行われない以上、アメリカによる核の持ち込みがないということに関しましては何らの疑いも有しておりません。ぜひ、国民の方々にもこの点は御理解を得たいと思っております。
  239. 古堅実吉

    ○古堅委員 もう聞きたくもないほどの同じことの繰り返しになっておりますが、アメリカの言い分をひたすら信じ切って、国民の重大な疑惑にも何ら答えようとする態度がない、みじんもそういうところがないということは、まことに重大な問題だと申さねばならぬのですね。もう、これ以上そういう態度をとり続けるのじゃなしに、アメリカ核抑止力への依存政策を今放棄すべきときではありませんか。  大臣からそのことについて、そういう方向に行くのか、ひたすら固執されるのか、お聞きしたい。
  240. 中山太郎

    中山国務大臣 我が国安全保障に責任を持つ政府といたしましては、今日、ブッシュ大統領が戦術核及び戦略核というものの削減についてアピールを出されましたけれども、現実の問題として隣国のソ連にはまだ一万発近い核がございまして、隣接国である日本といたしましては、この国の安全を確保するためには日米安保条約を堅持し続けなければならないというのが責任のある外務大臣としての考え方でございます。
  241. 古堅実吉

    ○古堅委員 アメリカ核抑止力に依存する、アメリカの核の傘のもとで日本の安全を守る、そういう虚構に基づいた考え方をずっと言い続けてまいりました。お日様が照って、空はさんさんと輝いているのに、アメリカが雨が降るよというふうに言ったといって、アメリカの雨傘に一緒にしがみついて道を闊歩するなどということになりますと、これはやはり世間、世界の常識からしますと、あいつはおかしいな、だれも納得しない、そういうことにかかわる問題です。しかも、唯一の原爆被爆国ではありませんか。まことに許せない態度を一層固執し続けようということでありますが、これはどこから見ても国民の声でもないし、国会の声でもないというふうに指摘しておかなければなりません。  ブッシュ提案によりますと、米第七艦隊は平時には核兵器を搭載しないが危機及び有事には核兵器を搭載することになるというふうに言っています。我が国非核三原則は、いかなる場合であれ核兵器は持ち込ませないということになっております。政府としてはそれを変更するようなことはおりませんか、明確にお答えいただきたい。
  242. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 変更する考えは一切ございません。
  243. 古堅実吉

    ○古堅委員 それは正しいんだ。ただ、憲法があります、だから憲法の禁じている戦力、軍隊もあるはずがないなどというふうな形で現実を見るわけにはいかない。非核三原則があります、だから核兵器にかかわって持ち込ませることもしない、通過させるなど考えてもいないなどというのとも意味が違うのです。国民を欺き続けて、事前協議で実際にはアメリカの思うままにしておる。だからこそそういう論議が今必要なのです。  ブッシュ提案に対して、今度はソ連が核実験の禁止を呼びかけました。どうお考えですか、大臣、お答えください。
  244. 丹波實

    ○丹波政府委員 核実験の問題につきましては、今回のブッシュ提案先生御承知のとおり触れておりませんけれども、これは、アメリカ側は核の抑止力というものを有効に維持するためには、当面まだ核実験というものは必要だという考え方に立っているものと推察されます。しかしながら、御承知のとおり米ソ間の核実験制限条約というものが昨年発効しておりまして、これに基づきましてステージ・バイ・ステージに核実験禁止の方向に段階的に進んでいこうという考え方があるわけですが、私たちとしてはまさに両国がこういうステージ・バイ・ステージということで次の段階に進んでいくことを期待するものでございます。
  245. 古堅実吉

    ○古堅委員 要するに、ソビエトが提起している核実験の禁止、それは日本政府としては好ましいことだ、そういう方向に行くべきだというお考えなんですね、念を押してお聞きします。
  246. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  世界が核実験停止の方向に向かっていくべきであるという考え方につきましては、先般のジュネーブにおきますところの中山大臣の演説あるいは堂ノ脇大使の国連における演説、その他の場所で日本政府としてはきちっと表明してきておりますし、かつ、そのステップ・バイ・ステップ方式と申しますか、検証の技術の発展段階に合わせて停止の方向に進んでいくべきであるという考え方に向かって、日本としてもできるだけの協力をしたいという考え方で対応してきておる次第でございます。
  247. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣にお聞きします。  核実験を禁止することはいいことだ、日本政府としてもその立場は肯定できるというのであれば、ブッシュ大統領核兵器削減について演説されたそれを評価して、ソビエトにもその方向に進めるように日本としても振り向けようというのが総理の意思表示でもあったならば、逆にソビエトが核実験も禁止しようじゃないかということを言っている、日本政府がそれを肯定するのであれば、アメリカに向かって、世界のすべての国に向かって核実験を禁止するようにしようじゃないかと積極的な努力をする、そういうつもりはございませんか。
  248. 中山太郎

    中山国務大臣 今国連局長が御答弁申し上げたように、私自身がジュネーブの軍縮会議におきまして日本政府の意思を明確に国際的な場で発言をいたしておるわけでございますから、日本政府の意思というものは各国がよく理解をいたしていると信じております。
  249. 古堅実吉

    ○古堅委員 今ソビエトから新たな提起が出ておるだけに、先ほど局長からも説明があったように、アメリカはそれをやろうとしているんじゃないかというまた一万の核大国の態度というものもあるゆえに、この時期にそれにかかわる具体的な努力をするということは、世界的な意味合いにおいても評価を受ける、そういうことにかかわる質問なんですよ。  既存の核兵器を速やかに廃絶する道と、新たにいかなる核兵器の製造もしない、核実験も一切禁止する、これは人類の切実な願いではありませんか。この際、政府として一切の核兵器廃絶を目指す方針をまとめて世界にアピールされてはどうですか、平和日本のそういう態度を示してはどうですか。外相、お答えください。
  250. 丹波實

    ○丹波政府委員 核の実験停止のみならず、核の廃絶ということが人類の究極の目標であることについて異論のある人はいないと私は思います。  他方におきまして、今日の国際社会安全保障というものが依然として核の抑止力によって維持されているというのも事実でございまして、この二つを両立させながらいかに究極の目標に近づいていくのかというのが一番重要な問題と申しますか、そういう中でいかに。ステップ・バイ・ステップにその目標に近づいていくかという問題だと思います。
  251. 中山太郎

    中山国務大臣 委員も御存じと思いますが、改めて私は、先日の国連総会におきまして、日本政府として、「我が国は唯一の被爆国として核兵器の究極的廃絶を目指し、段階的核実験停止も提案してきております。米ソ戦略兵器削減条約の署名を高く評価し、更なる核軍縮努力に期待するとともに、昨今のソ連情勢に鑑み、国際社会が同国による諸条約の批准、履行と厳格な核管理を希望している旨指摘しておきたいと思います。」と、明確に国際社会にアピールをしておるわけであります。
  252. 古堅実吉

    ○古堅委員 沖縄米軍墓地機能の世界的位置づけと拡大について若干質問させていただきます。  今問題となっていますブッシュ大統領の演説の中で、もう一つ重要なところがございます。昨年八月の新防衛戦略に言及したところで、こう言っています。「今度はこの概念に基づいて、米国戦略を再構成する段階だ。あらたな基盤戦力は今日の戦力より五十万人少なくなる。この新戦力は多用途で、世界のどこでも挑戦に対抗しうる。」と述べています。  そこで聞きますが、在日米軍も「再構成」が進行しているというふうに思われますが、このブッシュ構想によれば、在日米軍も、世界のどこでも挑戦に対抗する戦力になるということにならざるを得ません。在日米軍世界のどこでも挑戦に対抗する、そういうことは日米安保条約の建前に照らしても許されてはならない、そういう問題、含みであります。  外務省の見解を明確にしてください。
  253. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生が最初に御提起されました今後のアメリカ軍全体の削減でございますけれども、これは今回のスピーチにも、今先生言われたような形で言及がございますが、要するに、九五年までに全体として約二五%の削減をする、それに伴って陸軍、海軍、海兵隊、航空師団等を合理化再編していくというのが一つございます。  それからその関連で、これは昨年四月に発表されましたアジア・太平洋におきます戦略的枠組みの中で公表されておりますアジア一太平洋におきます米軍削減計画で、これは第一段階が今進行中でございまして、アジア太平洋地域から約一割、日本に関しましては約四千八百人の削減を三年がかりで来年の末までに行うというものでございます。  それから、第二番目に先生が言及されました今のアメリカの全体の再編合理化計画との関連がございますけれども、これはこの委員会、その他の場でも繰り返し申し上げておりますが、在日米軍はあくまでも日本の安全と極東の平和と安全のために日本に駐留しているわけでございまして、そういう実態があるかどうかということが重要でございます。私どもは、そういう実態があるというふうに認識をしているわけで、この点今後私どもも十分注意をしていきたいと思っておりますが、在日米軍極東を離れてその他の地域に時折移動するからといって、そういう実態がもうなくなっているということは決して言えないわけで、やはりそういう実態があるかどうかということをしっかり見ていく必要がある、こういうふうに考えております。
  254. 古堅実吉

    ○古堅委員 ちょっと時間もございませんので、急いでもう少し具体的な問題を聞きたいと思います。  クラーク基地の閉鎖に伴う沖縄への移駐、それが一時的だと外務省が言ってからもう一カ月が過ぎました。定着しつつあります。これは、今引用いたしました「再構成」、そういうことにかかわる内容となりつつあるのであります。大事なことは、そういう移駐による基地の強化というのが、アメリカ自身が指摘しておりますように、クラーク基地の損失を補うためにアラスカ、沖縄、グアムの空輸能力が拡張されるだろうということに見合う内容になりつつあるというものであります。政府は、そういう方向の、クラークとの関係における沖縄基地の強化、果たす役割というものをそのまま認めるおつもりですか。  同時に、今度は、クラーク基地に配備されておった第三五三特殊作戦航空団が沖縄に移駐し、嘉手納に三百人、普天間基地に九十人がおります。これは一時的だといっても、そういう形で実際定着の方向に展開されつつあるのです。沖縄の基地機能は明らかに、アメリカブッシュ大統領の演説の中にある新戦力の「再構成」、そういう方向に強化されつつある、定着されつつあるということなのですが、それをあえて政府は何も問わない、そのまま許しますということになるのですか。
  255. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来御説明させていただいておりますけれども、フィリピンの火山の爆発、さらにはクラーク基地の閉鎖に伴います、クラーク基地が持っておりました機能の再配分ということに関しましては、米側において現在鋭意検討中で、いろいろな報道がございますけれども、まだ結論が出ていないと承知しております。したがいまして、先ほども御説明いたしましたけれども、現時点で行われております沖縄におきます航空輸送部隊の一時的な増強、それから三五三特殊部隊の一時的な移駐というのはまさに一時的な移駐でございますので、全体的な恒久的なものは現在アメリカが検討中ということでございますので、その検討結果を待ちたい、こう考えております。
  256. 古堅実吉

    ○古堅委員 一時的だといっても、沖縄は、その事態がどのようにいくであろうかということを、定着との関係において考えて、総反発しています。この間、県議会で、全会一致でそれに対する抗議の意見採択がなされ、政府、国会への要請がなされました。そういう県民意思にかなうような形で努力をするのが政府立場でなければいけないのじゃないですか。  大臣、もう。一度、そういう事態に対して、いささかでも県民の意思にこたえるような努力はされるのか、重ねてお伺いします。
  257. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は、日米安全保障の条約上の義務から基地を提供しておりますけれども、その基地が沖縄に相当多数集中しているということは、私ども、沖縄の県民の方々に対してかねて大変御苦労かけているということを十分認識をいたしておりまして、この基地の整理統合につきましても、北米局長が申し上げておりますように日米間で協議を重ねております。私どもは、そのような立場に立ちまして、条約上の義務を果たすとともに、沖縄県民の方々にもこの政府日本安全保障に対する考え方を十分御理解をいただきたいと考えております。
  258. 古堅実吉

    ○古堅委員 そんな弁明は許せぬ、そういうことを申し上げて、終わります。
  259. 牧野隆守

  260. 和田一仁

    和田(一)委員 きょう私は、非常に短い時間でございますが、日本外交交渉の基本にかかわるような大事な問題について具体的にお尋ねいたしますので、明確なお答えをお願いしたいと思う次第でございます。  というのは、我が国朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮とは、これは韓国同様に非常に歴史的にも文化的にも古いつながりを持った関係がございますけれども、今日、両国、日本北朝鮮との間の国交は正常化しておりません。  先ごろ来、世界の流れというものは、まさに冷戦後の新しい国際秩序の確立ということに各国がそれぞれ努力して、国連の活性化を図りながらその責任を分担していこう、こういう時代に入りました。韓国北朝鮮も国連に同時加盟という事態になったわけでございます。  世界の平和と繁栄を築いていくためにも、私どもはこうした両国断の関係の改善には積極的に、しかし真剣に努力をして取り組んでいかなければいけない、こう思うわけでございまして、そこできょうは、この日朝国交正常化交渉について少しお尋ねしたい、こう思います。  ちょうどきょうは二日で、国連でも北朝鮮代表の演説が行われるのではないかという気もいたしますが、今私の手元には「第四回目朝国交正常化交渉の概要」という紙がございます。これを拝見いたしておりまして、これに基づいて御質問したいと思うのです。  八月の三十日にこの交渉が行われたわけですが、  本会談に先立ち開催された実務者協議におい  て、北朝鮮側は事前の合意に違反し、李恩恵問  題について調査に応じることを拒否。日本側よ  り強硬に反駁し、遺憾の意を表明したのち、今  後ともこの問題を避けて通ることは出来ない旨  強調した結果、北朝鮮側が、日本側が希望すれ  ばいつでも本件について実務レベル協議に応じ  ることを了承したので、三十一日午後より本会  談を開始。こうありますが、そのとおりでしょうか。まずそのことを簡単に御説明いただきたい。
  261. 谷野作太郎

    谷野政府委員 お時間の関係があるようでございますから繰り返しません。ただいま仰せのとおりでございます。
  262. 和田一仁

    和田(一)委員 この四回の会談の前、つまり三回目の会談が決裂した事情というのはどういうことだったんですか。
  263. 谷野作太郎

    谷野政府委員 三回目の会談を行います。その前に、警察当局におきましてこの李恩恵の問題について一定の捜査の進展があり結果が発表されました。それを受けまして私どもといたしましては、この日朝交渉の場がせっかくあるわけでございますから、かつまたこの問題は、私ども日朝交渉の場において避けて通れない問題だ、こういう認識のもとにこれを取り上げたわけでございます。  先方は、一言で申し上げれば、この問題は全く日朝交渉関係のない問題であるし、彼ら北朝鮮の言葉で言う南朝鮮のでっち上げであるという主張をいたしまして、大変厳しい雰囲気のもとに、第四回目の交渉をいつやるかということの見通しも得ないまま会談が非常に厳しい状況で終わったのが第三回目の交渉でございました。
  264. 和田一仁

    和田(一)委員 これは避けて通れないと同時に、この問題はこういった交渉をする前提として非常に私は大事な問題ではないかと思うのですね。まあ先方さんの方は、これはでっち上げであるとか謀略であるとか、こういうような表現で問題にしないという、そのことをそのまま受けとめて本会議に入る前にこの問題の日本側の要求を棚上げするような格好で、そしてその事務レベルの協議に応じることにしたという、その辺はどういうことでしょうか。
  265. 谷野作太郎

    谷野政府委員 確かに、これを棚上げにしたのではないかという一部の報道も当時ございましたけれども、決してそのようなことではございません。私どもは、第四回の交渉に先立ちましてこの問題について大変激しいやりとりをいたしまして、この問題につきましては北朝鮮側との間におきまして今後ともいつでも実務レベルでこれを取り上げていくということをきちんと確保した上で第四回の本交渉を始めたわけでございますので、これを横に置いてあるいは棚上げにしてうやむやにしたということは一切ございません。
  266. 和田一仁

    和田(一)委員 当初の交渉の激しいやりとりと今何回かおっしゃいましたけれども、確かに厳しい姿勢で対応されていたと思うんですが、それがどうもこの間の会談で入れなくなってしまったためにいささか腰砕けになって、実務者レベルに落として本会議に入ったという印象が強いんですね。私はここは非常に大事だと思っております。いろいろな意見があるかもしれません。しかしこの問題は基本的に言って、先ほども問題になりましたけれども国際社会の一員として国連に加盟した国家である以上やはり国際法上のいろいろな問題は守っていただかなければいけないし、同時に両国間の国内法というようなものも尊重し合える、そういう信頼関係がまずないといけない、こう思うわけですね。  我が国の国民がこの主権下にある国内から拉致されて、そしてあれは大韓航空機の工作員ですか、金賢姫という日本人に化けた工作員の日本人化の教育を担当していたこういう人物がいまだ拉致されたままである。これはやはりこの事件全体の解明のためにも、日本としても人権の問題も含めてぜひとも解明しておかないといけない非常に大事な問題だと私は理解しております。これは時と場合によって間違えれば、この大韓航空機の爆破事件というのは日本のパスポートを偽造した工作員によって企てられた事件で百十五名の犠牲者が出た大変な事件でございました。これははっきりと犯人が逮捕されてこういう関係が出てきたからいいけれども、そうでなければ日本がやったものと誤解をされて、日本韓国との間の信頼関係がめちゃめちゃになるだけでなくて、国際的にも大変な信用を失って、その友好、信頼を回復するのはそれは到底容易なことでないと言われるくらい大事な事件である。  それに関連しているこういう問題を私はやはり納得いくような前提で交渉してもらうということが非常に大事だと思うのですが、今後の展開の中でいかがでしょうか。この問題についてもう少しきちっとした姿勢でおやりいただきたいという私の意見に対してお考えをお聞かせいただきたい。
  267. 谷野作太郎

    谷野政府委員 ただいま和田先生からお述べになりました諸点、私どもも全く認識を同じくいたします。まさにあの事件が犯人が逮捕されないでそのままに放置されたなれば日韓関係に大変ゆゆしい影響を持ち得たということにおきまして、私ども日本にとって大変ゆゆしい事件でございました。  ただいまるるお述べになりました先生のこの問題についての強い御関心を十分体しまして、引き続き北朝鮮側とは十分この問題についても対応していきたいと思います。
  268. 和田一仁

    和田(一)委員 次回は十一月予定というふうに伺っております。その前には南北の会談もあるやにも伺っております。私は、こういった問題が非常に国民にとっても関心は高いし、この問題だけでなく核の査察の問題もこの交渉の前段として非常に重要な問題だ、こう理解いたしておるわけでございます。  今世界的に核がなくなっていこうという方向に向かって着々と歩んでいるとき、こういった核査察を拒否するということをそのままでは、私は近隣の国家である日本日本が近い国であるというだけでなくてアジア全体の安全保障にも関連してこれは極めて大事だ、こう思うわけでございます。  核拡散防止条約の加盟国として私は、この全面的な核査察の受け入れということは当然なことであると思うわけでございます。本会談の冒頭発言から議題の一、二、三というふうにこの紙には書いてございまして、経済問題、国際問題というふうに書いてございます。その中で議題の三に、国際問題の一つとして核関連施設の査察の問題がございますが、この見通しについていかがでしょうか。
  269. 谷野作太郎

    谷野政府委員 この問題につきましては、実は予備会談の過程におきましてこれを議題にすることについて非常に苦労いたした経緯がございますが、いずれにいたしましてもやっと議題の対象にいたしまして、とにかくこの問題について北朝鮮との間で話し合いはされておるということでございます。  さてそこで、先ほど来お話がございますように、今般アメリカの側におきましてかなり思い切った措置がとられたわけでございますから、かくなる上は私は、北朝鮮の側において今まで彼らがとっておった態度、すなわちIAEAとの保障措置協定締結あるいは協定の履行、これと彼らの言う南における米軍の核の存在というものを条件づけた主張というものは、もはや理由が相当なくなるのではないかと思います。そういう口実はつけ得なくなるのではないかと思います。  他方、先ほどもお話ししましたけれども北朝鮮の側におきましても今般のアメリカ措置につきましては一応歓迎の意を表しておりますので、そういうことを踏まえて何とか、いずれ、私どもの大変な関心がございます、先生の御関心事でもあります北朝鮮の核の問題につきまして大変大きな前進が図られればと思います。十一月の交渉におきましては、もとより私どもも引き続き強くその点を、協定締結とその査察の完全履行ということを強く求めていきたいと思います。
  270. 和田一仁

    和田(一)委員 先般ブッシュ大統領が核の撤去についてコメントを出されました。北朝鮮は、核査察についての条件というか査察を拒否する理由として、やはり韓国における米軍の核の査察をやらせる、あるいは撤去しろ、こういうことが言われておったと思うのですが、今、陸あるいは海の核はもうやめていくということになってまいりました。いわゆる戦術核、地域核、こういうものは撤去していこうということになりますと、北が主張していた韓国の核も急速にこれはそういう方向でなくなっていくというふうに私は思うわけです。  そうなりますと、北側がこの核査察に対して今まで要求していた条件みたいなものがなくなってくる。私は、比較的早い時期にそういう意味での合意ができるかな、こういう期待も若干あるんですが、この辺は国際会議の中でいろいろお話ししておられる大臣、こういった見方についてどういうふうに御理解なさっておるでしょうか。
  271. 谷野作太郎

    谷野政府委員 私の方から、それではとりあえず御答弁いたします。  先生がおっしゃいましたような強い期待は私どもも先ほど申し上げましたが持っておるわけでございまして、米国の今回の措置によりまして北朝鮮はもはや彼らの従来の主張というものはなし得なくなったと思いますので、その意味におきまして、これを転機にいわゆる北朝鮮における核査察問題の大きな突破口が開かれればというふうに考えております。  他方、見通しにつきましては、私どものことではなくて、あくまでも北朝鮮側がこれからどういうふうに対応するかということでございまして、強い期待を表明するという以上にはないわけでございますけれども、全くその点におきましては先生のお述べになったところと私どもは気持ちを同じくいたします。
  272. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の国連総会北朝鮮も国連に加盟したわけでございますから、国際機関の査察というものを完全に受けるということが国際社会でこれから活躍をされるであろう朝鮮民主主義人民共和国のためにも極めて有意義なことであると私どもは期待をいたしておりますし、それがひいてはアジア日本も含めてこの地域の安全にも非常に大きな貢献をするものだと考えております。
  273. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、この核の査察というものは加盟国としては当然果たすべき義務であって、そういうものを交渉条件にする、取引の材料に使うということはおかしい。こういうことは、やはり国際社会の一員としてしっかりした格付ができた国家としてはもうそろそろきちっと考えてもらわなければいけないことである。そういうことをきちっとさせながらこういった二国間での国交正常化の努力が積み上げられていかないと、その辺を大ざっぱに考えていくとえらいことになるな、こういう感じが強くするわけでございます。  きょうは対ソ関係の問題で、特に北方領土の問題についてのいろいろな動きが出ておりまして、兵藤局長もいらっしゃるのでいろいろとお聞きしたかったのですが、五時までにこの委員会を終わらせたいという思いもございまして、きょうは、ほかの質問は別の時間に回させていただいてこれで終わらせていただきますが、どうぞまた次の機会によろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  274. 牧野隆守

    牧野委員長 この際、政府より発言を求められておりますので、これを許します。川島審議官。簡潔にお願いいたします。
  275. 川島裕

    川島説明員 午前中の原田先生湾岸危機に関する御質問につきまして補足させていただきます。  湾岸危機に際して米国が要した経費につきましては、八月十五日付の米行政管理予算局の報告書によりますれば、米国が要した追加経費は六月末までに確定していない経費も含めて六百十億ドルを超えると見積もられております。六百十億ドルはあくまでも米国が湾岸における平和回復活動にこれまで要した追加的経費でございまして、米国がこうした活動を行い得る兵力の維持に要している基礎的な経費は含まれておりませんで、これをも含めた米国の総経費は一千億ドル以上に上るというふうにされております。  そこで、各国からの拠出につきましては、九〇、九一年の両年にわたるコミットメントの総額は五百四十億ドルとなっておりまして、日本の貢・献はそのうちの約百億ドル、二割という極めて実質的な割合を占めております。なお、日本以外には、サウジ及びクウエートがそれぞれ約百六十億ドル、ドイツが約六十五億ドル、ア首連が約四十億ドルの拠出を行っております。  このような日本の多額の拠出につきましては、米国においてはブッシュ大統領を初めとして米行政府関係者等より繰り返し謝意が表明されております。      ————◇—————
  276. 牧野隆守

    牧野委員長 次に、請願の審査を行います。  今国会、本委員会に付託されました請願は五十九件であります。  本日の請願日程第一から第五九の各請願を一括して議題といたします。  まず、請願の審査方法についてお諮りいたします。  各請願の趣旨につきましては、請願文書表によりまして既に御承知のことと存じます。また、先刻の理事会におきまして慎重に御検討いただきましたので、この際、各請願についての紹介議員よりの説明等は省略し、直ちに採否の決定をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 牧野隆守

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  採決いたします。  本日の請願日程中、朝鮮民主主義人民共和国との国交回復早期実現に関する請願十二件の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  278. 牧野隆守

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 牧野隆守

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  280. 牧野隆守

    牧野委員長 この際、御報告いたします。  今国会、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり八件であります。      ————◇—————
  281. 牧野隆守

    牧野委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 牧野隆守

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時散会