○野沢太三君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
平成三年度
予算三案に対し、賛成の討論を行います。
今
我が国は、戦後最大の外交的試練の場を迎えています。
今回の
湾岸戦争は、東西の冷戦構造が大きく変化し、新しい国際秩序が確立されようとしていたやさきにおける地域紛争でありましたが、国連安保理事会の決議を受けた米国を中心とする多
国籍軍の血と汗により終息を見ましたことを多といたします。
今回の
我が国の
湾岸での平和回復への
協力は、国際秩序の維持の観点からも、憲法の枠内でなし得る努力としてまことに当を得たものでありました。総計百三十億ドル相当の多
国籍軍等への
支援は、紛争当事国以外の資金拠出としては最大であります。この
貢献に対しては
世界各国が高く評価いたします一方、国内の世論調査では、過半数の
国民が支持しており、
政府の
対応の正しさが広く認められております。我々は、この一連の
政府の
対応、
国際貢献への英断に深く敬意を表するところであります。
本
予算案は、国際的にはこのような
湾岸での平和回復活動への
貢献に引き続き
湾岸の戦後復興への
協力に備えるなど、一層の国際
協力に努めることとしております。また、国内的には、持続的な内需の拡大を図りつつ財政を再建し、来るべき本格的な高齢化社会への
対応を考慮しながら、社会資本、とりわけ生活関連の社会資本整備の充実に努力するという均衡のとれた
予算編成となっております。以下、賛成する主な理由を申し上げます。
賛成の第一の理由は、財政再建への努力が着実になされていることであります。
平成二年度
予算での赤字公債発行体質からの脱却後も、依然財政状況が厳しいことには変わりありません。そのため、本
予算においても引き続き建設国債の発行縮減が図られ、公債依存度は七・六%にまで引き下げられております。二年度末で公債残高が百六十八兆円を上回る現状では、財政制度審議会の答申にある公債依存度を五%以下に引き下げるという目標の達成が強く望まれているところであります。本
予算において公債依存度を前年より〇・八ポイント引き下げた
政府の努力は多とされるべきでありますが、今後の財政運営に当たっては、中期的財政運営の新努力目標に沿って引き続き財政改革を強力に推進していくことを要望しておきます。
賛成の第二の理由は、公共事業
関係費の計上が適切であり、生活関連重点化枠設置に見られるように、
国民のニーズを十分反映していることであります。内需中心の持続的な経済拡大を目標とする
我が国では、景気の動向に配慮した社会資本整備が不可欠であり、本
予算では一般会計公共事業費は前年度比六%増と高い伸びを確保しております。また、今後十年間で四百三十兆円の公共投資を行う初年度といたしましても、
平成二年度末に期限の到来する第六期
住宅建設五カ年計画など八分野の五カ年計画が策定され、その目標を達成するのに見合う規模、金額を計上しております。二十一世紀に入ると
世界に類例を見ない高齢化社会を迎える
我が国においては、今こそ公共事業を積極的に行い、社会資本整備の充実に努める好機であります。どうかその実施に当たっては、多極分散の方針に沿って地域の実情に十分配慮した配分を期待するものであります。
賛成の第三の理由は、高齢化社会に備え、社会福祉
予算の計上が適切になされていることであります。本
予算においては、二年度より始まった高齢者保健福祉推進十カ年戦略を着実に推進するため、特別養護老人ホームなどの入所施設
予算の改善、ホームヘルプサービス、ショートスティ、デイサービスの在宅福祉の三本柱の充実等が十分に配慮されております。また、出生率の激減という社会問題に対し、児童手当の支給を第一子にまで拡大する等の措置を講じており、子供からお年寄りまで広く視野におさめ、将来を見据えた
予算となっております。我々は、社会福祉の一層の充実と活力あるバランスのとれた社会の実現に向けての
政府の努力を高く評価するものであります。
賛成の第四の理由は、
日本の経済力の拡大、国際的地位の向上に伴う
世界的な期待にこたえ、必要な経済
協力等の
国際貢献費用が計上されていることであります。
政府は、六十三年六月に
政府開発援助につき第四次中期目標として過去五カ年の実績を倍増させた援助を行う意欲的な計画を決定し、本
予算では一般会計
政府開発援助
予算は二年度比八%増、経済
協力費では七・八%増と
一般会計予算の伸び率を上回り、主要経費別の分類で見た伸び率はトップとなる
予算措置であります。また、内容におきましても、無償資金
協力の増額、技術
協力の拡充等が行われ、相手国の要望に配慮したものとなっております。このように、本
予算では、国際的責任を果たすため
政府開発援助の中期目標の達成に向けて着実な前進が見られ、我々は
政府の英断を評価するとともに、このような国際
協力に理解を示される
国民の皆様に深く感謝するものであります。
賛成の第五の理由は、防衛
関係費の計上が昨今の国際情勢を考慮して時宜にかなっていることであります。東西冷戦構造の終結と軍縮に向けて
世界的な動きが始まったものの、
アジアはかねてより単純な二大勢力の対峙による冷戦構造というだけでは割り切れない情勢であります。このたびのイラクのクウェート侵攻を見るにつけ、防衛力整備の重要性、地域において力の過度の集中や力の空白が生じた場合の危険性が改めて認識されるのであります。こうした観点から、
我が国防衛体制を考えるに際し、日米安全保障条約を基軸とする節度ある防衛力整備が不可欠であり、昨年決定されました中期防衛力整備計画は正面装備の維持更新と後方
支援体制の一層の充実を図り、現在の
世界情勢とそれに伴う
我が国の防衛力整備のあり方を正しくとらえたものと言えます。したがって、これに基づく本年度
予算の防衛
関係費の計上も適切妥当なものであり、我々は
政府の節度ある防衛
政策を評価するとともに、単に一国平和主義に陥ることなく、
世界平和に一層目を向けた国連中心の外交
政策の展開をあわせて要請するところであります。
そのほか、
平成三年度
予算は中小企業対策費、農林水産
関係費、文教・科学技術
関係費等、当面する財政需要に対し、
予算を適切に計上しており、現状において編成し得る最良の
予算であると確信いたします。
以上、
平成三年度
予算に賛成する主な理由を申し述べましたが、冒頭申しましたように、
湾岸戦争は、冷戦後の新しい国際秩序のあり方を投げかけました。平和と繁栄を最大限に享受する経済大国、国際国家として、今後、
我が国が何をなすべきか、また、何ができるかを真剣に考え、国連平和維持活動への参加等の人的
貢献を含めて
我が国に課せられた国際責務を果たすことが何よりも必要であります。
この情勢の中で、まず
我が国外交の基軸である日米
関係の強化を進めながら、
ゴルバチョフ大統領来日を契機に
北方領土の返還と
日ソ平和条約の締結に向けて
総理初め各閣僚の一層の御努力を期待いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)