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参考人(
山本保博君) 私、災害医療には過去相当数行っておりまして、その中で私の気のついたことをお話し申し上げたいと思います。
まず、
日本の災害医療に関してでございますけれ
ども、私は最も大事なことは人材の育成ではないかというふうに
考えております。現在、我々のJMTDRというものがありますけれ
ども、JMTDRの人員というのは三百三十名程度でございます。しかしながら、
外国の災害援助の機関を見渡しますと何万という単位の皆さんが登録しておりますので、その人材の違いというものをまず痛感するわけでございます。
そして、人材がなぜ
日本では育たないのかということでございますけれ
ども、それは
日本では災害医療と申しましょうか災害の専門家というのがゼロでございますとともに、災害の講座もないというのが実情だと思っております。そして、どうして災害医療というものがそれほど現在のところは少ないのかということでございますけれ
ども、やはりそれは
日本の全体の雰囲気が災害に対しては、特に
外国への医療協力あるいは災害援助でございますけれ
ども、
日本の全体の関心度が低いのではないのかなという気がいたします。
実は現場に出ますと全く反対でございまして、現状では災害オリンピックという形になってまいります。そして、災害の
先生方というのはどんな
先生でもいいというわけにはいかないわけでございます。耳鼻科の
先生や皮膚科の
先生が行ってもそんなに役に立つものでもないということは御承知のとおりだと思いますが、そういう災害医と申しましょうか救急医というものが現在では育っていないというのが
現実でございます。それを現場に行って
日本のレベルはというふうに言われますと、非常に問題があるのではないのかなということを強く感じております。
そして、災害の医療の現場ではどういう災害医の要件があるのか、
条件があるのかと申しますと、やはり災害医療に経験のある
先生がどうしても必要でございます。それから、現場に行きますとどうしても文化の違い、風習の違い、そういうことが当然たくさん出てまいりますので、現場の文化あるいは宗教、風習にある程度理解のある
先生方が行かなければいけないということが非常に大事なところになってきます。それから、国際機関等の経験のある人が行かなければいけないでしょうし、あるいは語学の問題、あるいはチームワークの問題、このような要件というものがあると思いますが、そういう要件の中での現在の人材の育成というものをやはりもう少し
考えなければいけないのではないかという気がいたします。
それから、今お話が出ておりました、現在の状態では我々民間機を乗り継いでいきますけれ
ども、民間機を乗り継いで、時には三十時間にも達するような乗り継ぎ乗り継ぎで行くことがありますけれ
ども、実際には災害の現場というのは三日、四日以内に行かなければいけないということがありまして、実はその辺の問題点もあるのではないかという気がいたします。
もう
一つは、災害の現場では通信機の問題もあると思いますが、現在では
日本と、あるいは現地と大使館を結ぶ通信機も不自由するのが現状だと思っております。
それから専用機の問題でも、今お話しの政府の専用機が出てきたとしても、実はこの専用機というのはいつでもどこでも飛んでいけるのかなという気がいたします。
外国では百人、二百人の単位の医療援助あるいは災害援助の皆さんたちが軍用機で参ります。これは事実でございますが、
日本ではそういう準備が整っていないというのが現状だと思います。その辺のことについてもこれからもう少しみんなで
考えていかなければいけないのではないかという気がいたします。
それからもう
一つは、災害医療というものはリスクを伴うものだということは当然だと我々は思っております。特に、アフリカ等の災害の現場に出たときには、半分あるいは三分の二程度の
先生方、看護婦さんたちが病気になって帰ってきました。これは我々もリスクというのはどうしてもしようがない、我々のリスクをゼロにしてということはなかなか難しい問題があると思いますけれ
ども、その辺の補償の問題等もやはりこれからみんなで
考えていかなくてはいけない。
あるいはボランティアという問題につきましても、
外国でのボランティアのとらえ方と我々のとらえ方が少し違うことがあります。それは、ボランティアというのは時間的なボランティアとか
精神的なボランティア、経済的なボランティア、いろんなボランティアがありますけれ
ども、
外国では時間をボランティアするんで経済はボランティアしないというものもありますし、いろいろな問題もありますので、その辺もこれから
考えていかなければいけないのではないかというふうに思います。
全体的には以上でございます。