○竹村泰子君 私は、
日本社会党・護憲共同を
代表いたしまして、ただいま議題となりました
平成二年度第二次
補正予算二案に対し、
反対の討論を行います。
まず
最初に、去る二月二十四日、世界の多くの人々の願いと祈りもむなしく対
イラクの地上戦が開始されたのは極めて残念なことであります。
もとより、今回の一連の
事態を招いたのは、昨年八月二日の
イラクによるクウェート侵攻であり、私
たちは
イラクのクウェートからの撤退を求めてまいりました。そして、一月十七日の多国籍軍の軍事活動の開始後もその速やかな終結と話し合いによる平和的な
事態の打開を強く祈願してきたわけであります。これは世界の
国々の願いであり、非同盟国やソビエトを中心に
イラクのクウェートからの撤退とそれによる戦争の終結、地上戦の回避が模索されました。
イラクからクウェート撤退の意向も示されながら受け入れられず、残念ながら二月二十四日、地上戦に突入し、二十八日、戦闘停止となりました。
この過程において、
政府は地上戦回避のための具体的努力を何ら行わず、アメリカに
代表される多国籍軍の行動を強く支持し、その軍事的
判断に配慮するのみで、
イラクの自発的な撤兵を促し惨禍の拡大を防止するという平和への努力がほとんどなかったと言わざるを得ません。この結果、クウェートや
イラクの人々が言語に絶する悲哀を味わったことは見過ごすことはできません。
以上を踏まえて、以下
反対の
理由を申し述べます。
反対の第一の
理由は、今回の
補正予算の眼目である九十億ドルの支出は、名目上は湾岸平和基金への拠出ということになっており、
国会答弁でも繰り返しそう答えられましたが、その実態は多国籍軍、とりわけアメリカ軍の戦費に充当されることであります。アメリカの戦費に使われるということは米国の
補正予算の内容から見ても明らかであります。このような支出は実質的な集団自衛権の行使と言うべきであり、
憲法九条に違反することは明白であります。私
たちはこのような
憲法違反の九十億ドル支出を容認するわけにはまいりません。
日本はただ米国に追随するだけでなく、戦火の中からの叫びを聞き、被災民への食糧、医療の援助などを積極的に行い、アジアの一員としての独自の平和回復の道を模索すべきでありました。停戦となった現在、そうした方向あるいは戦後復興への資金拠出こそ
憲法のうたう
平和主義の理念を実現する正しいあり方と
考えるものであります。
反対の第二の
理由は、この
予算が実質的には
平成三年度
予算と一体化していることであります。
政府は、今
補正予算の九十億ドルの大部分を国債で賄い、その償還を行うべく急遽三年度
予算の修正を提出し、防衛費等十七億円分の一般歳出を削減しました。しかも、後年度負担分まで含めると
平成六年度まで合計一千億円に上る防衛費の削減まで表明しているのであります。こうした
予算編成のあり方は、
補正予算と本
予算のけじめを乱すのみならず、
予算の単年度主義という大原則に明確に反しており、断じて認めるわけにはまいりません。
反対の第三の
理由は、今回の財源捻出策として既定経費の節減及び予備費の減額を行ったことであります。
政府は、当初
予算の
審議では、編成された
予算はベストのものであると称し、私
たちの
予算修正要求に応じないにもかかわらず、二年度
予算の一次、二次補正で合計二千五百十七億円余りの既定経費の節減を行い、あわせて二百五十億円の予備費の減額も行われました。このことは、当初
予算編成がずさんだったことの証左であり、
政府の言うベストの
予算編成とほど遠かったことも明白です。私
たちはこうした
政府の
予算編成に対する独善的とも言える態度に強く抗議いたします。
最後に、今回の湾岸危機に際し、
内閣は
自衛隊法の百条の五の一項につき立法趣旨を無視した解釈を行い、
国会の立法
権限をかいくぐり、特例
政令で
輸送対象者の適用範囲を拡大し、
海外派兵につながる
自衛隊機による難民
輸送を行おうとしました。これは
憲法七十三条の定める
法律を誠実に
実行する義務及び九十九条の
憲法尊重擁護義務に明らかに違反するものであります。
しかも、
国会開会中であり、
自衛隊機派遣のことが焦点として厳しく論じられていたにもかかわらず、このときにあえて特例
政令を
制定したことは、
国民の声を踏みにじり、
国会を無視したものであり、
議会制民主主義国家とは断じて言えるものではありません。
政府のこうした態度に強く抗議し、猛省を求めまして、私の
反対討論といたします。(拍手)