○宮澤弘君 誤解のないように申し上げたいんですが、私もお金だけの
協力でいいと言っているんじゃございません。確かに人的
協力というものを考えていかなければならない。しかし、何かお金を出すことが肩身の狭いような言い方を世の中でされる向きがありますから、これだけのお金が出せるということは、これは
日本としても誇っていいことではないか、そういうことを申し上げた次第でございます。
そこで、九十億ドル拠出の根拠の問題で、これは衆議院でも、また
先ほど同僚議員との間でもいろいろ論議がございました。
私ども選挙区へ帰りますと、財政的な応分の
支援をしなければならない、これはみんなわかります。そのとおりだと申しますけれども、それでは一体その九十億ドルというのは何なんだろうということになりますと、なかなか理解が得られない面もございます。
しかし、今ここで問答をいたすつもりはございませんで、問答を避けまして、これまでのいろいろな議論を私聞きましたので、それについての私の意見と申しますか、感想を申し上げますからよく聞いておいていただいて、最後に
総理のひとつ所感を承りたい、こういうことにいたしたいと思います。
総理は、
日本の置かれた
立場、国際的な地位というようなことからいって応分の負担をしなければならない、その場合に具体的な判断基準として、あるいは
日本のGNPが
世界のGNPの一五%であるとか、あるいは
日本の貿易額が
世界の貿易額の一〇%であるとか、あるいはまた衆議院では、石油が一バレル十ドル上がるとどれぐらいの負担になるとか、そういうようなことをおっしゃったというふうに私は記憶をいたしているのであります。そういうものを総合的、自主的に判断をして決めたんだというふうに言っておいでになります。まさに自主的に判断なさる、これはもう当然でありまして、
日本国が拠出をするのでありますから
日本国の
総理大臣が自主的に判断をなさる、これは私は当然だと思いますけれども、その総合的とおっしゃるところがどうもわからないところがあるのでございます。
無論、この種の予算でございますから、普通の予算のように大蔵省の主計局の主計官が一々積み上げてできる予算でない、これはわかります。湾岸の平和活動がどういうふうに展開をするかもわからないのでありますから、その積み上げでないということはこれはわかるのでありますけれども、しかし、といって、それでは、例えばある朝
総理がぱっと目を覚まされて、天啓といいますか、神のお告げのように、うん、九十億ドルだと、まあまさかそういうことではもちろんこれはあり得ない。
総理はやはり御自身としていろんな基準というものを考えて頭の中で整理をされている、私はそういうふうに思うのであります。
先ほどGNPの一五%を
日本は
世界のうちで占めているんだ、これはなかなかやはりわかりがいいと思います。
国民としても、それならばまあ一五%ぐらいは負担してもいいんじゃないかというふうに思うのでありますけれども、問題はそれじゃ一体そのもとでございますね、何の一五%かというところがなかなかこれはぴんとこない面があるんだろうと思います。
俗なことを申し上げて恐縮でありますけれども、例えば町内会の運動会が全体で十万円かかる。そうすると、あそこの家は御大家だから二万円出したらいい。あの会社は出入りのトラックが住民に迷惑をかけているから三万円出しなさい。あとはひとつみんなで均分に千円ずつ負担しようじゃないか。例えばそういうように初めに大体かかるお金というものがあって議論が出てくるんだろうと私は思うのでありますが、そういう点で
総理は総合的にお考えになったという
お話でありますけれども、その一番もとの一体どのぐらいかかるんだというようなことも恐らく頭におありになって、それをいろいろな基準というものに照らし合わせてお考えになったんだろう、私はそう思うのでございます。,
一方、
アメリカの
戦費でございますね、
戦費に関しては
総理大臣も大蔵大臣もいろいろな計算の仕方があるんだ、いろいろな試算があるんだ、
先ほども二百八十億ドルから八百六十億ドルでございますか、そういうことがあるとおっしゃいました。大蔵大臣が
アメリカに行かれてブレイディ財務
長官といろいろな話をなさって、大蔵大臣も実に幅があるんだ、試算に幅があるということをおっしゃった。それで衆議院でありますか、そういういろいろ話をしていろいろな感触を得て帰ってきて、それに基づいて
総理大臣に
報告をして、
総理大臣がお決めになったんだ、こういうふうに
報告をされておいでになる。そういうふうに大蔵大臣が
アメリカでいろいろ話をせられて得られた感触、
総理大臣に御
報告になった感触の中には、
先ほどの
お話のように二百八十億ドルという試算もある、四百五十億ドルという試算もある、八百六十億ドルという試算もある、そういうようなものを大蔵大臣から御
報告をお受けになって、そういう向こうのいろいろな情報というものも頭に入れて御判断になった、そういうふうに考えるのが至当ではないだろうか、私はそういうふうに考えております。
ある財界人で、九十億ドルというのは
日本の名目GNP一日分だということをあのとき言った人がおりますが、なるほどそれはそれで非常にわかりやすいというか、説明がしやすいことであるのかもしれません。
いずれにいたしましても、私は今までの問答を承っておりまして、そういうような感想と申しますか、意見を持つわけでありますが、
総理は一体、私が今申し上げたことについてどういう所感でありますか承りたいのでございます。これは
国民が関心を持っておりますことでありますので、今後もひとつ
国民の理解がより深まるようにいろいろ説明その他についてまたお考えをいただきたいと思うのでありますけれども、とりあえず私が今申し上げたことについての御所見を承りたいと思います。