○國弘正雄君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表し、
平成二年度
補正予算三案に対し反対の討論を行います。
内外に問題が山積する中、今日ほど
海部内閣の実行力と決断とが求められているときはありません。
政治改革の実行のために発足したはずの
海部内閣ですが、この点においてはとかく足踏み状態が目立ち、つい昨日も、さる自民党の領袖が人事に関連して
海部内閣の公式な姿勢と背馳するような発言を行っています。ロッキードやリクルートなどにいつまでもかかずらわるような、くだらない、センチメンタルなことでは云々という発言がこれであります。センチメンタルという言葉の当否はともかく、
政治改革の必要がまだのど元を過ぎていないのは明白であります。にもかかわらずの自民党有力者のこの発言、早くも熱さを忘れたのではないかという危惧を抱きます。この点について私は、
海部総理がセンチメンタルであり続けられることを一人の国民として切望しておきます。
中東問題についてですが、ブッシュ政権やその在外代表者にどうも振り回され過ぎてはいないかという国民の声がようやくしきりです。他の諸問題についてと同じく中東問題につきましても、
アメリカには多様な声が存在するので決して一枚岩ではありません。それだけに、ある政権のある一時期の選択に決定的に深入りすることは、多様性が身上の
アメリカとつき合う上ではむしろ下策と言うべきです。
ましてや、今回、国際協力をにしきの御旗に
日本国憲法をないがしろにし、四十年の戦後史をお蔵入りさせ、自衛隊の海外派遣への道を開こうとした政府のもくろみに対し、多くの国民は、保守支持者を含め警戒心を募らせ、国会
審議における政府答弁の迷走ぶりに不安をかき立てられたのであります。当の
アメリカにおいてすら、あの法案は十分な品質管理もなく、慌ただしくつくられた欠陥商品で、しかも事前の
市場調査もないままに嫌がる消費者に押しつけようとしたものとみなされ、廃案は当然であったという声が聞かれるぐらいです。
さて、ここで
補正予算に反対する理由を申し述べさせてください。
その第一は、湾岸平和基金拠出金の計上についてであります。
イラクによるクウェート侵攻が国際法や国際慣行に反する暴挙であることは言うをまちません。しかし、
日本の資金拠出は多国籍軍支援に向けられ、先ほ
ども問題にされましたように、そのほとんどは米軍への援助にほかなりません。本補正における拠出金計上の実態もこの多国籍軍支援への追加支出であり、我々が目指すべき国連主導のもとでの和平回復のための活動費用とはまことにもってほど遠い存在と断ぜざるを得ません。この手の資金の計上に反対をするゆえんであります。
加えて、湾岸平和基金への拠出が交換公文の形をとったことに小生は危惧を覚えます。予備費の支出と本
補正予算の計上を合わせ二千六百億円もの国民の税金が、国権の最高機関たる国会の承認をいわば足抜けする形で計上されるというやり方は、外交問題を一握りの外交専門家の専権事項としていわばブラックボックス化し、国会
審議の空洞化を加速させる点で、国会の存在を重からしめるゆえんではあり得ないと思います。
交換公文という行政府にとっては極めて便利かつお手軽な方法が、過ぐる日、やや古いことを申し上げて失礼でありますけれ
ども、日独伊三国同盟締結以前にも画策され、
日本の運命を大きく誤らせた経緯を思うにつけましても、今回の財政支出を伴う海外支出経費については、その根拠となる国際条約の国会承認の必要を強く訴えるものであります。
第二の反対理由は、緊急性に欠ける項目についての予算が計上されている点でありまして、この点についてももう既にるる議論が行われております。
先ほ
ども日米親善交流基金、スポーツ振興基金が当初予算に組み入れられずに、財政法に言う
補正予算作成の正当な理由に当たらないままに、またしても何ゆえああいう形で計上されたのか論議されましたが、私にもどうしても納得がいきません。
平成元年度
補正予算に引き続いての今回の同様の措置に強く反対するものであります。
特に本年における災害の多発と税収の伸び悩みを考慮に入れますならば、必ずしも緊急の火急性を有するとは言いがたい複数の基金の設立は放漫財政のそしりを免れがたいと思われるのですが、いかがなものでありましょうか。そして、このことは必要最小限を上回る国債の増発、その結果としての財政再建のつまずきという第三の反対理由につながります。
赤字公債からの脱却という目標をようやく達成したとはいえ、国債残高は百六十兆円を超えます。本格的な財政再建への道はなお険しいと言わざるを得ません。政府が建設国債の減額を目指すことで第二段階の財政再建を進めるとしたのは理の当然であります。しかし、その折も折国債の増発を行うというのでは、てにをはが合わないことおびただしいと断ぜざるを得ません。国債の増発は、したがって必要最小限にとどめられてしかるべきだと思います。
以上の三つの理由のほかに、この
補正予算は、国民のすべてとは申しませんが、多くが廃止もしくは凍結を求めている消費税が組み込まれたままになっているなど、幾つかの不備を抱えており、不適切だと言わざるを得ません。
以上の理由で、私はこの
補正予算三案に対し反対をするものであります。
反対討論を終わります。(拍手)