○太田淳夫君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま議題となりました
自衛隊掃海艇等の
ペルシャ湾への
派遣に関する
報告に対して、
総理に
質問をいたします。
政府が今回実施する
自衛隊の組織としての
海外派遣は、
昭和二十九年の
自衛隊創設以来初めてのことであり、
自衛隊政策だけではなく、
国家の基本政策の重要な変更を意味するものと言わなければなりません。こうした重要問題が、
国会での十分な
論議も行われず、
政府の裁量によって一方的に
決定されることは到底認められないのであります。
質問の第一点は、
自衛隊の
海外派遣に道を開こうとした
国連平和協力法案が廃案となり、PKOに関する三党
合意に至った経緯、C130
輸送機派遣のための
特例政令の制定とそれが実際に機能しなかった事実は、
自衛隊の
海外派遣に対する
国民の
反対の
意思として生まれたものであるということであります。
総理は、こうしたことをどう認識しておられるのか、明らかにしていただきたいのであります。
国民世論無視の
政府のやり方は、何が何でも「初めに
自衛隊派遣ありき」との批判を免れないと思うのであります。こうしたことが認められるならば、法治
国家として極めて問題であります。そればかりか、
我が国内のみならず、
アジア諸国、
世界の
国々から不信の目が向けられるおそれすらあります。この点について、
総理の見解をしかと承りたいと思います。
第二点は、何ゆえ今、だれの
要請から、急いで
ペルシャ湾まで
自衛隊の
掃海艇を
派遣しなければならないかの必然性が極めて不明瞭であるということであります。
国連などの国際機関からの
要請があったというのであればまだしも、
湾岸諸国や
我が国の
経済界が望んでいるといった理由だけでは
国民は納得できませんし、
我が国による侵略の記憶が残る
アジア諸国の
懸念と不安を払拭することはできません。
中東石油に対する
我が国の依存度は極めて高いものがありますが、だからといって、それが直ちに
掃海艇の
派遣を正当化するものではありません。むしろ、
国際貢献というよりは、
世界の
国々からは単に石油欲しさに
派遣したと受けとめられる可能性が大であることを知るべきでありますが、
総理の見解を求めるものであります。
第三点は、
掃海艇を
派遣する
法的根拠があいまいであるということであります。より正確に言えば、
法的根拠がないにもかかわらず
派遣しようとしている点であります。
政府は、
自衛隊法第九十九条を根拠にするということでありますが、これは第二次
大戦後の
日本周辺の
機雷を
除去するために、「雑則」として定められたものであります。
日本の内水や周辺
海域の
機雷除去について
規定したこの第九十九条でもって一万三千キロも離れた
ペルシャ湾の
機雷除去に当たらせようということは、
政府みずからの拡大
解釈によって
国会が定めた法律の重さを突き崩そうとすることであり、認めるわけにはいかないのであります。
もし、
掃海艇を
派遣することがどうしても
我が国の国益上避けて通れないものであると
政府が判断したのであれば、正々堂々と
国会に対し
自衛隊法の改正を求めるべきものであります。あるいは、
派遣する
地域、期間、規模などを限定した特別時限立法を行い、そこに
国民と
国会の
意思を反映させるべきであります。
自衛隊の基本的運用は、シビリアンコントロールのもとに置かれるべきであり、それが民主主義
国家の鉄則であります。防衛政策の根本的変更とも言うべき
自衛隊の
海外派遣について、
国会の立法
措置も経ずに
政府限りの
措置で済まそうとする姿勢は、まさにシビリアンコントロールを無視するものであり、民主主義の否定につながりかねない危険なものと言わざるを得ないのでありますが、
総理の明確な答弁を伺いたいのであります。
第四点は、仮に国内の
懸念を無視し、無理押しの形で
掃海艇を
派遣したとしても、どれだけの効果を
期待できるのであろうかという疑問であります。
我が
海上自衛隊の
機雷処理能力は
世界でも第一級と言われていることは承知しております。ただ、
海上自衛隊は、これまで国内の海底地形や海洋気象を熟知した沿岸で
機雷処置に従事していたにとどまり、これまで蓄積されてきた
経験、技術が、事情に疎い
ペルシャ湾でどれだけ通用するのか全く未知数であります。また、
報道によれば、米国等が既に八百個近くを
処理済みであり、残るは五百個程度と言われています。
掃海艇は、
機雷処理という特殊な
任務に従事するために小型の木造
船舶であり、これが一万三千キロの外洋を
航海して
ペルシャ湾に到着するまでには一カ月を要すると言われています。一カ月後には残る
機雷の相当数が
処理されてしまっているのではないかとも
考えられますが、
政府からは最新の情報が聞かれません。これでは
掃海艇派遣の必要性が本当にあるのかどうか、判断しがたい面があります。
政府は現状をどのように把握しておられるのか、伺いたいと思います。
第五点は、
武力紛争終結後であれば紛争に巻き込まれるおそれがないから
自衛隊の
海外派遣が可能であるとの論理が、今後無原則に使われることへの疑念をぬぐい切れないことであります。
この論理でいけば、
要請があれば
クウェートの地雷
処理にも、また和平が実現した場合には、カンボジア国内の地雷
処理にも陸上
自衛隊を
派遣することにもなりかねません。また、プルトニウムの運搬船護衛のために自衛艦の
派遣を行うことにもなりかねないなど、歯どめなく
自衛隊の
海外派遣が可能ということになります。平和時の
自衛隊の
海外派遣について歯どめはあるのかどうか、明確にしていただきたい。
自衛隊の運用、なかんずくその
海外派遣については、慎重かつ冷静な
議論を行い、
国民のコンセンサスを得るルールをつくり上げることと、
アジア諸国民の
理解を得ることが絶対的要件であります。
総理の明確な答弁を求めます。
次に、防衛庁の幹部が臨時行政改革推進
審議会のヒアリングにおいて、
湾岸貢献策における
自衛隊の
派遣論議について、法
解釈で
自衛隊がおもちゃにされている、
自衛隊内の不満は爆発寸前と
発言したと
報道されております。私は、
政府がこれまで明確な
自衛隊政策を示し、
国民に
理解を求め、民主的な
手続を踏んで対応してこなかった結果、このような
発言につながったと思うのであります。
政府のあいまいな
自衛隊政策が
国民の
信頼をなくし、
自衛隊内の不満を生み、また士気を損なっていることを
自衛隊の最高
責任者として
総理は
反省すべきでありますが、
総理の見解を伺いたいのであります。
掃海業務は、事実上かなりの危険を伴う業務であり、しかもインド洋のはるかかなたでの業務であり、
派遣される
自衛隊員の労苦ははかり知れません。
派遣を命ずる
総理は、その
責任を片時も忘れることは許されません。同時に、
海外派遣についての
国民的合意も得られないまま危険な業務に従事させられる
隊員の心中や御家族の気持ちをどう
考えておられるのでしょうか。なぜ、もっと
議論し、その
目的、
意義について
国民の
理解を求め、
国民大多数の
支援のもとに
決定できないのでしょうか。このような
政府のこそくなやり方に不安を抱き、一部の
隊員の
派遣辞退すら起こっているのが実情であります。
総理は最高
責任者としてどう
考えられるのか、伺いたいのであります。
以上、
総理の明快な見解を求めるとともに、
政府の独断による
自衛隊の
海外派遣には強く
反対することを表明いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣海部俊樹君
登壇、
拍手〕