○
政府委員(
井嶋一友君) まず、先ほど
被疑者補償規程の
性質と申しますか、それにつきましては御
説明いたしましたので、そちらから先に申し上げたいと思いますけれ
ども、
検察官の行います不
起訴処分と
家庭裁判所の行います不
処分決定とがどうしても
性質が違うということがございます以上、まずそれを
法律的に乗り越えられない
制度の違いがあるということでございます以上、やはり
大臣の
訓令として、
検察官が守るべき
訓令として定められております
被疑者補償規程というものをいじって、
裁判官がなさる不
処分決定についてこれを取り込んで、
検察官のこの
規程で
補償しろというような
改正をいたしますのはやはり無理ではないだろうかというふうに
考えております。
それで、ちょっと先ほど
類推適用すべきではないかという御
質問の際に私間違ったことを申したようでございますのでちょっと訂正させていただきますが、
裁判官のした不
処分決定に関して
検察官が
補償云々するのはおかしいというときに、私は本来
被疑者補償規程でと申し上げるべきところを
刑事補償法でというふうに申し上げたそうでございまして、その分間違いでございますので訂正いたします。
そこで、
補償規程を
改正するということは困難ではないかというふうに
考えております。
そこで、あと残りますのは
刑事補償法でございます。まさに私は、これが物事の
性質に対応するものとして、いわばこれを何とかする必要があるというふうに
考えるのが筋じゃないかなというふうに
考えております。
少年審判につきましては、
性質ももう既に
委員よく御存じのとおりでございますけれ
ども、いわゆる成人の
刑事事件あるいは
少年の
刑事事件におきますその
手続構造と申しますのは、御承知のとおり、
刑事訴訟法によりまして
検察官と弁護人が両当事者となりまして、証拠を出し合って物事の黒白を争うという
手続を進行した結果、
裁判官が事実を認定して有罪、
無罪を決める。そして、しかもその
手続は三番まで両当事者に上訴する権利が認められている。しかしその後で確定したものについては、一事不再理ということで既判力があるということ。そういうようなことで、いわゆる当事者構造と申しますけれ
ども、当事者構造の中で確定いたしました
無罪という非常に重い事実、これに対しては国として
補償すべきであるというのが
刑事補償法の
考え方でありまして、これを
性質の違う
少年に関する
保護処分について適用することの可否が今回
最高裁で論議された。その結果、
最高裁では、やはり
刑事補償法の解釈ではそれは難しい、こういう御
決定があったという
理解でございます。
そうしますと、結局
少年審判はどういうことが行われているのかと申しますと、御案内のとおり、物事の黒白を争う
手続ではございませんで、
少年の
非行あるいは
少年の虞犯性あるいは触法
少年といったような
少年の保護を
目的とした
手続が
家庭裁判所裁判官の職権的な
調査権をもとにして
保護処分、国親的
保護処分として
手続が進められるという形でございますので、全く当事者構造をとっていない。したがいまして、物事の黒白というものが両当事者が出て争うという形では行われておりませんので、大ざっぱと言ったら非常に問題がございますけれ
ども、要するに両当事者が
責任を持って主張し合った中での結果ではないという
意味においては刑事
手続とは違うという面がございます。かつまた、
保護処分につきましては、
検察官は当事者として関与できません。
少年は付添人をつけることはできます。専ら
少年の側からのいろんな問題はございまして、請求はできますけれ
ども、要するに
裁判官の職権的
審査を受ける、こういう構造になっております。そして、かつ
少年だけが抗告できる、こういう形になっております。そして、かつまたいわゆる一事不再理というものはございません。そういうようなことで
考えますと、結局
少年の
保護処分の
性質がそうである以上は
刑事補償法が適用される余地はないという
裁判所の
決定はやむを得ないだろう、こう思うわけでございます。
そこで、
少年につきましてはどうしたらいいのかということでございますけれ
ども、
委員御案内のとおり、
少年法の
改正の問題といたしまして法制審議会に諮問をいたしました結果、五十二年に中間答申を得ておるわけでございますけれ
ども、それによりますれば、要するに、
少年審判手続において
少年の権利
関係の
規定が必ずしも十分でない。それをもっときちっと整備しろという御
指摘がある一方で、やはりある程度
検察官にも公益の代表者という
意味で関与させて、ある程度
審判に協力することをさせてはどうか。あるいは特に問題になると思いますが、
非行事実があるかないかというような問題のときには特にそういった
意味合いが強いだろう。そして、かつまたそういうことで決まった
決定については、あるいは抗告といったことも
検察官に認めてもいいんじゃないかというようなことで、そういう
少年に対する権利保護をもっと高める。他方、公益的な見地からもうちょっと
検察官に関与させてはどうかというような、両方をもう少し取り込んだ形で
改正をすれば、
少年についても若干刑事
手続的なものが入るわけでございますけれ
ども、より細密なことができるのかもしれないといった
意味で中間答申が出ておるわけでございます。
そして、かつまたこの答申の中ではそういったことを受けて、
少年については、不開始
決定あるいは不
処分決定ということじゃなくて、
非行事実がなかったという
決定主文をつくるようにすべきだと、こういうことも言われているわけでございます。そうしますと、そういった
決定があった場合には、今度はそういう
改正が行われましたら、
憲法の言う
無罪の
裁判といったものにより類似するというか形が出てくるのではないかということでございますので、そういった
意味合いにおきまして、
少年法の
手続を
改正するという中間答申の線を何とか実現していけば、あるいは
少年に関する
補償といったものも可能にはなるのかなというふうに
考えております。事実中間答申の
理由書の中にはそういったことも書いてございます。
私
どもはそういったことを踏まえて
少年法の
改正を何とか実現いたしたいと
考えておりますが、こういう機会でございますから、さらにその検討を深めてまいりたい、このように思っているわけでございます。