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政府委員(
井嶋一友君) 刑法等を中心とします罰則の罰金額の引き上げにつきましては、法制審議会の総会で去る十二月十三日答申がございまして、現在その立法作業に着手したばかりでございます。
確かに
委員おっしゃるとおり、罰金の額と申しますのは、罪質と罰金の額が横並び的にもバランスよく
体系的に整備されなければならないということは御
指摘のとおりでございます。
ただ、現在のメカニズムを若干御
説明申し上げますと、刑法典ができましたときに、今
委員がおっしゃったような
意味合いでの罰金と罪質との
体系的な骨組みができ上がったわけでございますが、その後昭和二十三年に刑法の罰金の額はそのままいじらずに、罰金等
臨時措置法という
法律によりまして刑法の各規定に書いてございます額を五十倍するという
法律ができ上がったわけでございます。それによりまして刑法の
体系を
維持しつつ、罰金額を読みかえて運用してきたわけでございますが、それにつきましては昭和四十七年に当時の経済変動にスライドさせるという
意味合いにおきまして罰金等
臨時措置法を改正いたしまして、そのときに四倍に改めるということにしたわけでございまして、結局、都合現在は刑法典のそれぞれに書いております額の二百倍をもって読みかえていくという運用をしておるわけでございます。
その四十七年の改正以降十八年たちまして、消費者物価が二・五倍あるいは
労働賃金が三・何倍といったようなことになりましたので、従来と同じ手法で刑法等の基本的な
体系はいじらずに経済変動に伴う罰金の適正化を図ろう、こういうことで今回法制審議会に諮問をいたしましてその旨の答申をいただいたわけでございますので、今回の作業は従来二度行いました罰金等
臨時措置法といったメカニズムによります罰金額の引き上げを図るための方法を採用しているわけでございます。
ところで、御
指摘のように、罪質と罰金額が公平でなければならない、あるいはバランスをとらなければならないことは当然でございますが、刑法典ができまして以来随分たっておりまして、今日の状況にかんがみますと、各方面から、ある罪については罰金が要らないのではないか、またあるいは、ある罪には罰金が要るのではないかといったような、いわゆる実質的な見直し論も出てまいっておるわけでございます。これにつきましては大変長い検討を要する問題でもございます。刑法の基本にかかわる問題でもございますので、法制審議会におきましてはそういったものも含めました罰金刑の持っております基本問題について引き続き
調査、審議を行って答申をいただくということになっておりますので、もうしばらく
刑事法部会で御審議をいただきまして、その結果を得まして立案作業に着手したいと考えているわけでございます。そういった
意味で、
委員御
指摘の点はなおまだ検討を続けてまいりたい、このように考えているわけでございます。
それから、もう
一つございましたが、経済的劣後者に罰金が重くのしかかる、それに対してどう対処するのか、こういう御
質問でございました。物理的な
意味と心理的な
意味と二通りあるのかと思いますけれども、物理的に罰金が払えない場合は、御案内のとおり、労役場留置ということで労役場に入っていただいて払っていただくことになるわけでございますけれども、前回改正いたしました罰金等
臨時措置法を改正いたしましたときも、統計的に見ましてはそれほど労役場留置がふえたという統計はございません。したがいまして、今回もそういった
意味での心配はしておらないわけでございます。
ただ、心理的にやはり裕福な人とそうでない人との間に罰金の額によって受ける心理的な違いはあるだろうと思います。それを公平にやるためにどうしたらいいかという問題は、実は
一つ罰金の
制度として日額罰金制という
制度がございます。これによりますれば、罰金何日、日額幾らといったような形で判決をいたしまして、裕福な人とそうでない人とに日額の決め方によって差をつけて罰金の痛みを平等化するという
制度があるわけでございまして、イギリスその他で採用しているものでございますけれども、実はこの問題につきましても御
指摘のような
事情もございますので、先ほど申しました基本的な問題としての検討課題の
一つとして法制審議会にお願いをしておるわけでございます。