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参考人(
大内力君) 大変難しい御質問をいただきまして十分お答えできるかどうかわかりませんが、まず第一点の
国有林野
会計の問題でございますが、これは
二つの側面があるかと思います。
一つは、先ほども触れました
累積債務の問題でございまして、先ほど申し上げましたように、これを一応別
会計にしてそれなりに
処理する、ある程度
一般会計からの繰り入れも考える。こういう点は今までの対策に比べると一歩前進したものというふうに思いますが、ただその
累積債務の解消のために先ほど申し上げましたように
財産を処分するとか、あるいは
経営の
合理化で対処をする、それによって二兆円のかなりの部分、半分以上だったかと思いますが捻出するというようなことは果たして実現性があるのかどうか。また、それを無理にやりますと、先ほど申し上げましたように
乱開発を招くとか、あるいは貴重な
国民の資源を損耗させるとか、いろいろな問題がありはしないか。
そういう
意味で
累積債務の問題というのはもう少し広い視野に立ちまして、これは御承知のとおり、
日本の国家が背負っております債務というのは何も
国有林野事業だけではございません。
一般会計あるいは地方財政まで加えますならば、これはいろんな計算があって正確にはわかりませんが、恐らく私は二百兆円を超えるだろうというふうに思っております。その中の二兆というのは大きいといえば大きい、小さいといえば小さいとい
うことでございますが、やはりこれは
国民全体の問題でございますので、そういう国全体の債務をこれから長期にわたって
処理をしていく、こういうものの一環としてもはや
国有林野事業からは一応切り離して
処理をしていくという道を考えるべきではないか。
それから第二点として、日常的な
国有林野事業会計の立て方でございますが、これは今までの特別
会計の単
年度収支均衡主義という大変林野にはそぐわない無理な原則を立ててきた、そのことにいろいろ大きな問題があるかと思います。林野
事業というのは言うまでもなく長期の、数十年にわたって回転する問題でございまして、しかも
木材価格は絶えず動きますし、単年度均衡ということ自体が非常に難しい、それを無理にやろうとすることにいろいろな問題が生じた原因がありはしないかと思います。
それからもう
一つ、収支均衡でございますが、これも今までほかの
参考人の
方々からもお話がございましたように、特に
国有林は奥山でございまして、ここで
国有林に課せられている任務というのは、林木の
生産という経済
事業それよりも、今日ではむしろ自然環境の保全、国土の保全、その他さまざまの公益的な
事業の方がはるかに重要な
意味を持っている、また
国民の期待もその点にますます大きくかかってくるように思っております。こういうのはすべていわば非経済
事業でございまして、それによって収入を上げるということが目的ではない、
国民のために活性のある自然を維持していくということであろうかと思います。こういう費用は当然
一般会計で負担すべきものだというふうに思います。
かつて私が提案したのは、やや空想的と
先生方には笑われるかもしれませんが、むしろ
国有林野事業会計の
処理の仕方は、まず
森林計画の方をきちんと立てて、それに従って自然を大切にした形の合理的な施業をやる、それによって適当な収入はもちろんあると思いますが、その収入が経費に対して不足をしたときには一年ごとに
一般会計から繰り入れをしていく、こういう形の
会計原則を立てる必要がありはしないか、こういうことを提案したことがございますので、もし御
参考にしていただければ幸いかと思います。
それから、農
山村対策の方は、これは大変大切な問題でございますが、もちろん林野だけでもできない、あるいは農水省だけでもできないことでございまして、むしろ
一つの
地域として中
山間地帯というものをとらえて、そこで全体としてのさまざまの対策が必要であろう。
林業だけではなくて、農業も工業も商業もあるいはサービス業も、そういうものすべてをひっくるめて
地域社会というのをいかに
活性化していくか、こういう問題を考えなければいけない。これは残念ながら
日本の行政というのはともすれば縦割りになっておりまして、農水省は農水省、国土庁は国土庁、環境庁は環境庁と別々にやっておりまして、
一つの
地域をまとめてきちんと対策を立てる、こういうことに今までなかなかなってこなかったように思いますが、これはこれからぜひ工夫をしていただきたいことでございます。
今例示的にお挙げになりました地方交付税の問題、これもいろいろの問題があるわけでございますが、特に今の交付税の算定基準、これはぜひ見直す必要があるかと思います。その算定基準の
一つの要素として
人口はある程度計算に入りますけれども、例えば
山林の
面積とか、あるいは
山林の
状態とかいうものは今の交付税の計算の中にはきちんと入らない、基本財政需要の計算に入らないような仕組みになっております。そこで
山村の方はいつも問題にされているわけでございますが、
山村というのは
面積が広大である、山火事が起こったり土砂崩れが起こったりいろんなことが起こる。これを維持するのに
地元の
町村は大変大きな負担がかかるにもかかわらず交付税ではほとんどそれが見られない。そこに大変大きな問題があるということは前から
山村の
方々が指摘されていることでありまして、私も全く
賛成でございまして、もう少し交付税の基本財政需要を算定するときに、
山村の特殊性、それから山の維持のために必要な経費というようなものを基本財政需要の中に算入できるような仕組みを考えていただくということが必要ではないかと思います。
それからもう
一つ、国境措置もこれも大変必要なことでございまして、今全国の
民有林が荒れ果てているということも、あるいは
国有林の
会計の赤字が大きくなつているということも、御承知のとおり
木材価格が、国産材が非常に低迷しているということでございます。杉丸太を中心として考えますと、現在ほかの物価との関係で考えますと、最盛時、今から十五年ぐらい前の一番高かったときに比べて恐らく現在の
木材価格は実質六割程度だと思います。したがって、
林業経営というものはますます採算がとれなくなる、それが
山村の過疎化を一層
促進するということになっているわけでございます。
しかし、この問題はもう少し大きなグローバルな問題としてお考えいただきたいわけですが、今御承知のとおり
日本が過大な
木材輸入をしているということで、これは地球的な規模で熱帯林その他の
森林を破壊しているということが大きな国際問題になり、
日本はしばしば非難をされているわけでございます。これは実は林産物だけではない、農産物でもそうでございますが、ガットそのものも一次産品については本来例外措置を認めるという基本原則を持っているわけでございます。ただ、最近のウルグアイ・ラウンドなんかの動きを見ておりますと、一次産品貿易もできるだけ自由化して貿易を拡大することが最善の措置だという考え方が非常に強くなっておりますが、一次産品については私はこれは大変疑問に思っております。
今、林産物について申し上げましたように、無原則的に貿易を拡大いたしますと、輸出国の山も荒れてしまいますし、輸入国の山も荒れてしまうということになります。したがって、これから我が国として追求していくべきことは、一次産品貿易については合理的な国際管理をして自然破壊にならないような範囲で一次産品貿易をやっていく、こういう仕組みをガットが中心になって国際的に樹立をしていく、こういうことが必要であり、それをむしろ
日本政府はガットに対して提言すべきだという
意見を持っております。しかし、それは長期にかかわることでございましょうから、とりあえず考えられますことは、もし国際的な理解が得られますならば
木材輸入については適当な国境措置を考える。
一つの方法としては、ECの変動課徴金
制度のようなものを考えることが可能だろうと思います。そしてその収入は、今まで
木材を輸出しておりましてそれが
一つの大きな経済的な支えになっておりますような途上国に十分に還元をして、途上国の
開発それから
森林の回復というもののために使うというような形で国内の問題と国際的な関係というものを調整する、こういう道はないだろうかということを前に提言したことがございますので、これも御
参考までに申し上げておきます。